2022年12月31日 (土)

INDEX

当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2018年11月20日更新)

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2018年11月30日 (金)

2018年11月のお仕事

2018年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※11月16日更新)


[WEB] 11月16日、「リアルサウンド」にてHi-STANDARDのアーティスト分析「Hi-STANDARDによる新たなサプライズ “語り合いたくなる”ドキュメンタリー映画公開までの軌跡」が公開されました。

[WEB] 11月3日、「リアルサウンド」にてONE OK ROCKのライブ評「ONE OK ROCK、なぜオーケストラとコラボ? 新たな実験が行われた日本ツアーを振り返る」が公開されました。

[WEB] 11月2日、「BUBKA WEB」にてけやき坂46金村美玖×河田陽菜×丹生明里 座談会「ひらがなだいありー」の序文が公開されました。

[紙] 11月2日発売「日経エンタテインメント!」2018年12月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆、BiSHセントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコのインタビューを担当・執筆しました。(Amazon


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また、10月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1810号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

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2018年11月21日 (水)

QUEEN『SHEER HEART ATTACK』(1974)

QUEENが1974年11月(日本では同年12月)にリリースした通算3作目のスタジオアルバム。『QUEEN II』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表され、前作のスマッシュヒット(全英5位)も後押し、また先行シングル「Killer Queen」の大ヒット(全英2位)もあって、イギリスで最高2位まで上昇する代表作となりました。本作からはこのほかにも「Now I'm Here」(全英11位)のヒット曲も生まれ、アメリカでもアルバムは最高12位を記録(シングル「Killer Queen」も全米12位のヒット曲に)。本作を携え、1975年春には初の来日公演も実現しています。

前作ではプログレッシヴなハードロックをよりコンセプチュアルに煮詰め、また多重録音による“QUEENらしさ”を確立させることで、1stアルバム『QUEEN』(1973年)にあった“先人たちの亜流”的な評価を払拭することに成功。しかし、バンドは『QUEEN II』を同じことを続けるのではなく、その個性をさらに独特なものへと昇華させます。

スタジオ録音らしい多重録音は本作でも健在ですが、今作ではそこにより強いライブ感が加わり、ロックバンドとしてのストロングスタイルと、本来持ち合わせているポップセンス、そしてクラシックなど古典音楽への傾倒など、さまざまな音楽要素がバランスよく混在。オープニングの「Brighton Rock」や「Now I'm Here」ではドライブ感のあるハードロックサウンドを聴かせつつ、前者ではブライアン・メイ(G, Vo)がディレイを多用した津軽じょんがら風ギターソロを披露しています。

かと思えば、フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)による英国出身らしいクラマラスなポップソング「Killer Queen」もある。さらに、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)作の「Tenement Funster」、フレディ作「Flick Of The Wrist」「Lily Of The Valley」と組曲のような構成で、前作で得た武器を最大限に生かしている。

アルバム後半でもより際立つ個性を見せており、フレディ作のドラマチックな「In The Lap Of The Gods」、METALLICAものちにカバーしている高速ハードロック「Stone Cold Crazy」、ブライアン作のピアノバラード「Drea Friends」からジョン・ディーコン(B)作のキャッチーな「Misfire」、フレディ作の軽やかなロックンロール「Bring Back That Leroy Brown」と1〜2分程度の短尺曲が立て続けに並び、ブライアンが自らボーカルを担当するスローナンバー「She Makes Me (Stormtrooper in Stilettoes)」から「In The Lap Of the Gods... Revisited」というコンセプチュアルな展開で締めくくり。約40分、あっという間に聴き終えてしまう1枚なのですよ。

どの曲も非常に個性豊かで素晴らしく、まさに“これぞQUEEN”と呼べるものばかり。我々の知るQUEENはここでまず完成されたと言っても過言ではありません。

そして、ジョン・ディーコン作の楽曲が初めて収録されていることにも注目しておかなければなりません。4人の優れたソングライターの才能がここで開花したという点でも、本作は真の意味でのデビューアルバムと言えるのではないでしょうか。

本作がなかったら、代表曲「Bohemian Rhapsody」を含む次作『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)は生まれなかったはずですから。個人的にもアルバム単位で3本指に入るくらい好きな1枚です。



▼QUEEN『SHEER HEART ATTACK』
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投稿: 2018 11 21 12:00 午前 [1974年の作品, Queen] | 固定リンク

2018年11月20日 (火)

DIMMU BORGIR『EONIAN』(2018)

今年結成25周年を迎えたノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンド、DIMMU BORGIRの通算10作目となるスタジオアルバム(オリジナルアルバムとしては9作目)。前作『ABRAHADABRA』(2010年)から実に8年ぶりに発表された、待望の新作となります。本国では2位という高記録を獲得したものの、アメリカでは前作の42位には及ばぬ142位止まり。しかし、イギリスでは過去最高の73位まで上昇するほか、ドイツとフィンランドで最高4位、スイスで最高5位、オーストリアでも最高10位を記録しています。

ここ数作、オーケストラとのコラボレーションが通例となっていた彼らですが、本作でもそのスケールの大きな世界観は引き継がれています。ただし、今作では生演奏を起用せずサンプリングで済ませているとのこと。一聴した限りでは、実際のオーケストラとの違いはそこまで顕著ではないし、違和感もないので問題なし(音のタッチによほど時間をかけたのではないかと推測されます)。

しかも、このアルバムでは前作や2011年のライブにも参加した合唱隊・SCHOLA CANTORUM CHOIRも全面参加。ブラックメタルならではのブルータルさと、合唱隊のハーモニー&オーケストラサウンドが融合した、どこまでも突き抜けるような壮大さが最初から最後まで展開されています(どの曲ももちろんですが、特にラストのインスト「Rite Of Passage」の美しさといったら!)。

そもそも、このアルバムのテーマ自体が“時間の幻聴性”という壮大さを伴うもの。それを2012年頃から5年以上かけて完成までこぎつけたわけですから……どれだけ気の遠くなる作業だったか、想像を絶するものがあります。

内容的には、前作あたりまでに存在したクリーンボーカル……シャグラット(Vo, Key)以外のゲストが歌うパートがなくなり、すべて彼のデス声で通されています。そこが単調さにつながる危険もありますが、そのぶんを合唱隊がうまくフォローしてくれます。

また、バンドのプレイもブルータルさを少々残しているものの過去の作品ほどではなく(せいぜい9曲目「Alpha Aeon Omega」程度かな)、ミドルテンポを中心とした、あくまでオーケストラと合唱隊ありきのアレンジが施されている気がします。各曲5〜6分程度というのも、こういった編成のわりには練りこまれ、しっかりまとめられている印象が強いです。ホント、気の遠くなる作業だったんでしょうね……。

以前からのファンには酷評されているようですが、自分のようにそこまで熱心なリスナーではない人間には比較的好印象な1枚。というか、好きです。もはやこれをブラックメタルと呼べるのかどうか問題もありますが、これもヘヴィメタル/エクストリームミュージックの進化形のひとつ。素直に楽しみたいと思います。



▼DIMMU BORGIR『EONIAN』
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投稿: 2018 11 20 12:00 午前 [2018年の作品, Dimmu Borgir] | 固定リンク

2018年11月19日 (月)

CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』(2018)

ノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンドDIMMU BORGIRのフロントマン、シャグラットがギタリストとして参加するプロジェクト、CHROME DIVISONの2018年11月発売の5thアルバムにしてラストアルバム。

ここ日本でも3rdアルバム『3RD ROUND KNOCKOUT』(2011年)が国内盤としてリリースされた経験がありますが、今作は今のところ国内盤リリース予定なし。3rdおよび4thアルバム『INFERNAL ROCK ETERNAL』(2014年)に参加した2代目シンガー、シェイディ・ブルーが昨年脱退し、今作では初代シンガーのエディ・ガス(爆走R&RバンドTHE CARBURETORSのフロントマン)が再参加。さらに、2代目ベーシストのオギーも昨年脱退しており、本作ではシャグラットがベースを兼任しております。

デビュー以来、一貫してMOTÖRHEAD直系のバイカーロックをプレイしてきた彼ら。その信念はラスト作でも突き通されており、哀愁味漂う(まるでカントリーウエスタンのオープニングのような)インスト「Return From The Wasteland」からヘヴィなロックンロール「So Fragile」へとなだれ込む構成はさすがの一言。以降もアップテンポでヘヴィさを伴う男臭いロックンロールが次々に繰り出されていきます。

THE HELLACOPTERSよりはヘヴィロック寄り、だけど泣きのメロディは共通するものがある。かつ、MOTÖRHEADほど速すぎず、適度なアップテンポ感がこのヘヴィさと相まって、本当に気持ち良い。「Walk Away In Shame」ではミドルテンポにシフトチェンジするパートがあったり、ギターのツインリードや女性ボーカル(Miss Selia)がフィーチャーされたりと、いろんなフックが仕掛けられています。「You Are Dead To Me」のアレンジも、なんとなくストーナーロック的なものが感じられるし、「The Call」あたりにはモダンメタルの色合いも見え隠れする。こういった要素が彼らの独自性確立につながっていることは間違いありません。

DIMMU BORGIRの白塗りメイク&シンフォニックなサウンドをイメージすると、この泥臭いバイカーロックにつながりにくいかもしれません。が、こうやってノーメイクで別の側面を見せてくれるところに人間味を感じるし、こうした生々しいロックでよりその温かみを見せて/聴かせてくれると「なんだ、めっちゃいい奴じゃん」と不思議と株が上がる……のは気のせいでしょうか(完全に偏見ですね)。

メタル耳にも十分に耐えうる重さが伴っているので、いわゆるガレージロックに物足りなさを感じるHR/HMリスナーにも打ってつけではないでしょうか。本作でその活動に幕を降ろすのは非常に勿体ない気がしますが、今は頭を空っぽにして本作を爆音で楽しみたいところです。



▼CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』
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投稿: 2018 11 19 12:00 午前 [2018年の作品, Chrome Division, Dimmu Borgir] | 固定リンク

2018年11月18日 (日)

AZUSA『HEAVY YOKE』(2018)

THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)と、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームミュージックファン生唾モノのメンツが揃ったバンドAZUSA。彼らが2018年11月にリリースしたのが、このデビューアルバム『HEAVY YOKE』です。

AZUSAはこの3人に紅一点のエレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成。バンド名の“アズサ”から日本人女性が関係あるのかと思いきや、「18世紀当時、南カリフォルニアにいたコマ・リーというネイティヴ・アメリカンの少女は断食と祈りで、人々の病を治すことができた。“アズサ”という名は彼女の神秘的な力で病が治ったという部族の長老が与えたもの。彼らトングヴァ族の言葉で“祝福された奇跡”を意味する」そうです。

そんな神秘的なバンド名を持つ彼ら。このメンツから想像できるサウンドが終始展開されているのですが、特筆すべきはエレーニのボーカルでしょう。

時には男性真っ青なスクリームを轟かせ、時には癒しのような繊細な歌声で囁く。プレス資料にある「ケイト・ブッシュがボーカルのSLAYER、もしくはアネット・ピーコックとDEATHのコラボレーションをあなたは想像できるだろうか?」という説明も納得のボーカルパフォーマンスを、存分に楽しめます。

もちろん、これはボーカルだけが素晴らしいからというわけではなく、そのバックでうねるように変幻自在な演奏を繰り広げる楽器隊の手腕によるものも大きいわけですが。つまり、どっちもクセが強いのに相手を負かしてないし、自分も相手に負けていない。力と力のぶつかり合いをしつつも、共倒れすることなく、むしろするりとかわしたりしながら両者の魅力を引き出している。これって簡単なようですごく難しいことだと思うのですが、それをいとも簡単にやり遂げている。いやいや、ものすごいアルバムですよ、これ。

全11曲(日本盤はボーナストラック1曲追加)で34分(日本盤は38分)というトータルランニングもちょうどよい。狂気じみた作品だけど、これくらいのボリュームだと何度も繰り返し聴きたくなるし、聴き返すにはちょうど良い長さなんですよね。

変拍子があったり不協和音が飛び出したりと、ヘヴィロック/ラウドロックファンはもちろんのこと、ハードコアやアヴァンギャルドな音楽が好きな人にもアピールするものが少なからず含まれている本作。エクストリームミュージックにおける最新形……と言ってしまうのは大げさかもしれませんが、2018年に彼らのようなバンドが登場し、このアルバムでその存在感を時代に刻み込んだことは間違いない事実。これ、ライブで観たらどうなるんだろう……ただただ、それだけが楽しみでならない、今一番“生で観たい”バンドのひとつです。



▼AZUSA『HEAVY YOKE』
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投稿: 2018 11 18 12:00 午前 [2018年の作品, Azusa, Dillinger Escape Plan, The] | 固定リンク

2018年11月17日 (土)

SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』(2018)

NYHCの重鎮、SICK OF IT ALLが2018年11月にリリースした通算12枚目のスタジオアルバム。前作『THE LAST ACT OF DEFIANCE』(2014年)から4年ぶりの新作にあたり、『LIFE ON THE ROPES』(2003年)以来15年ぶりとなるFat Wreck Chordsからのリリース作品となります(流通はこれまでどおり、Century Media Recordsからですが)。

僕自身はこのバンドの熱心なリスナーではなく、90年代初頭にRelativity Records(日本ではソニー)から発表された2nd『JUST LOOK AROUND』(1992年)や、メジャー移籍作となった3rd『SCRATCH THE SURFACE』(1994年)と続く4th『BUILT TO LAST』(1997年)程度しか聴いていませんが、90年代半ばの来日公演(アイルランドのTHERAPY?とのジョイント公演)には足を運んだことがある、その程度の知識しかありません。

が、このアルバムは全17曲33分、気持ちが途切れることなく最後まで楽しむことができました。速かろうがミドルで重かろうが、どの曲も1〜2分で完結している。中には1分に満たないショートチューンも存在し、気を抜けばどんどん曲が進行していくこのテンポ感、嫌いじゃないです。それに、チュー・マドセン(彼らの過去作のほか、THE HAUNTEDやDARK TRANQUILLITY、日本のDIR EN GREYONE OK ROCKBABYMETALなど)がミックスを手がけていることも、この聴きやすさの大きな要因かもしれません。

モダンメタルとのミクスチャー化が顕著だった『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり、シリアスさの目立つ初期の『JUST LOOK AROUND』ともちょっと違う、もっとストレートなハードコアパンクといったイメージでしょうか。中には陽気さが感じらえるメロディックハードコア寄りのナンバーもあり、そういった楽曲がアクセントとなって単調になりがちなこの手の作品に深みを作っているような気がしました。

また、「『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり」と書いたものの、そういった要素が完全に払拭されたかと言うとそうではなく、“通過した過去の要素”たちも本作の中から感じ取ることができます。それが30年以上にわたり地道な活動を続けてきた、彼らなりのこだわりであり強みなのかもしれませんね。

Spotifyの新作リリースの中からたまたま見つけ、久しぶりに聴いてみようとおもったのがきっかけでしたが、こうやって新鮮な気持ちで彼らの音と接することができたのは嬉しい限り。基本的には店頭でCDを購入するほうが好きですが、こういう出会いがあるとストリーミングサービスも捨てたもんじゃないなと思えました。



▼SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』
(amazon:海外盤CD / MP3

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投稿: 2018 11 17 12:00 午前 [2018年の作品, Sick Of It All] | 固定リンク

2018年11月16日 (金)

RISE OF THE NORTHSTAR『WELCAME』(2014)

フランス出身の5人組ハードコア/ニューメタルバンド、RISE OF THE NORTHSTARが海外で2014年11月、日本で2015年8月にリリースした1stアルバム。海外ではNuclear Blast Records、日本ではワーナーミュージックから発売されました。

そのジャケットから日本先行ではないかと思われがちですが、実はかなり前から何度も日本を訪れているくらいの親日家の彼ら。とにかく日本の文化、マンガやアニメが大好きで、バンド名は『北斗の拳』をモチーフにしつつも、ヴィジュアルは日本の(古き良き時代の)ヤンキーを思わせる学ラン姿という“全部のせ”状態。それでいて、東日本大震災の際には復興支援のチャリティソング「Phoenix」をリリースしたりと、とにかく愛すべきバカヤロウたちなのです。

そもそもこのアルバムも収録曲に目を向けると、「Welcame (Furyo State Of Mind)」「Samurai Spirit」「Tyson」「Bosozoku」……「不良」「侍」「タイソン=おそらくマイク・タイソンではなく『ろくでなしBLUES』の前田太尊」「暴走族」と、偏った日本のカルチャー満載。しかも「Bosozoku」のオープニングには、日本を代表する暴走族実録映画『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』からのサンプリングが含まれていたりと、とてもテン年代の作品とは思えないもの(これ、権利的に大丈夫なのかなぁ? ほかにも「Ahthentic」や「Blast 'Em All」の隠しトラックにも日本語のセリフが。これもヤンキーアニメかヤンキー映画から拝借したものではないでしょうか)。

過去の楽曲には「Demonstrating My Saiya Style」なんていう『ドラゴンボール』をイメージさせるものもあり、MVでは来日時に訪れた渋谷や秋葉原、甲子園球場まで登場します(しかも、どのMVも日本語訳が用意されている)。これ、日本人がやったらただダサイだけだし、そもそも権利的にいろいろアレだろ!と突っ込みたくなるのですが、不思議と彼らがやると微笑ましいで済ましたくなるのですから、不思議なものです。

サウンド自体はBIOHAZARD以降のニュースクール・ハードコアの影響下にあるもので、そこにスラッシュメタルやメタルコア、ラップメタル/ラップコアなどの要素を加えた、特別新しいとは言えないスタイルですが、そのリズム&ボーカルのグルーヴ感とキレの良いギターリフはただただ気持ちよく楽しめます。「Samurai Spirit」の「♪Sa Sa Sa Sa Sa, Samurai Spirit!」ってフレーズなんて、まさにその真骨頂ですよね。

また本作は1曲のみカバー曲を収録。それがNY出身のラッパー、ファロア・モンチの「Simon Says」というのもなかなかのもの。ほかのオリジナル曲と並べて聴いてもなんら違和感なく楽しめます。

こういったバンドは瞬発力重視のネタものとして消費されがちですが、つい最近4年ぶり(日本では3年ぶり)の2ndアルバム『THE LEGACY OF SHI』をリリースしたばかり。より濃密なROTNSを堪能できます。



▼RISE OF THE NORTHSTAR『WELCAME』
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投稿: 2018 11 16 12:00 午前 [2014年の作品, Rise Of The Northstar] | 固定リンク

2018年11月15日 (木)

PIG DESTROYER『HEAD CAGE』(2018)

アメリカはヴァージニア州アレクサンドリア出身の5人組グラインドコアバンド、PIG DESTROYERが2018年9月に発表した6thアルバム。実は20年以上のキャリアを持つ重鎮で、本作は前作『BOOK BURNER』(2012年)から実に6年ぶりの新作となります。

このバンド、もともとはベーシスト不在でしたが、前作リリース後(2013年)に初めてベーシストが参加。本作はベーシスト(ジョン・ジャーヴィス)を含む5人体制での初レコーディング作品に当たります。

ベーシストが加わるというバンドにとって大きな変革が訪れたためか、本作にはサウンド自体にも大きな変化が表れています。例えば、これまでの作品はグラインドコアバンドらしく、1曲が1分前後と非常にコンパクトなショートチューンばかりで、アルバム自体も20曲前後で30分程度のものが多かったように思います(アルバムによっては10分近くある実験的なナンバーも1曲程度含まれていましたが)。

ところが、本作は全12曲で31分。5曲が1分台とこれまでどおりですが、2分台後半から3分台後半の曲が半数近くを占め、それらの楽曲はスピードに頼らないグルーヴィーなものだったりします。ボーカルはいつもどおりグロウルやらデスボイスやら中心で、ミドルテンポになろうがメロウになることは一切ないのですが、アレンジのバリエーションが増えたことでアルバムに緩急が付き、これまでの「なんだかわからないうちに終わっていた」という傾向が薄まりつつあります。これが良いことなのか悪いことなのかは、彼らに何を求めるかでまったく異なりますが、個人的には「なんだか面白いことになったな。これ、聴きやすいぞ」と思いました。

まあそもそも、このバンドに聴きやすさを求める輩がどれだけいるのか?って話ですけどね。

聴きやすさの話題が続きますが、本作はミックスのバランスも非常に聴きやすくなっている気がします。ベースの低音域が加わったこともあってか、かなり聴きやすい。ミキシングを担当したウィル・パットニー(BODY COUNT、MISS MAY I、SHADOWS FALLなど)の手腕によるものも大きいんでしょうか。

ショートチューンのカッコよさは文句のつけようがありませんが、メタル耳で聴くと終盤の「The Last Song」あたりはツボじゃないかな。7分におよぶラストナンバー「House Of Snakes」もドゥーミーかつメタリックで、爆音で聴いたらなお気持ちよし。普段そこまで積極的にグラインドバンドを聴くわけではないですが、この作品は非常に楽しめました。



▼PIG DESTROYER『HEAD CAGE』
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投稿: 2018 11 15 12:00 午前 [2018年の作品, Pig Destroyer] | 固定リンク

2018年11月14日 (水)

THE FEVER 333『MADE AN AMERICA』(2018)

ボーカル、ギター、ドラムのトリオ編成によるアメリカのラップコアバンド、THE FEVER 333のデビューEP。海外では2018年3月にデジタルリリースされ、ここ日本では同年7月の『FUJI ROCK FESTIVAL '18』での初来日に合わせて同月に初CD化発売されています(海外では未CD化でデジタルとアナログ盤のみ)。

フジロックでのパフォーマンスが大反響を呼び、ロックファンのみならずメタル界隈の一部でも話題になった彼ら。早くも来年3月の単独来日も決まり、さらに年明け1月には1stフルアルバム『STRENGTH IN NUMB333RS』のリリースも控えています。海外では新人ながらも『KERRANG!』誌の表紙を飾り、BRING ME THE HORIZONのサポートアクトも決まるなど、まさに今もっとも旬なバンドのひとつと言えるでしょう。

Roadrunner Records期待の新人という文字面だけで判断したら「どんなメタルバンドだよ!?」と期待してしまいがちですが、お聴きのとおりモダンなテイストを含む、メタルやパンク、ラウドの枠だけには収まらない音をかましています。「新世代のRAGE AGAINST THE MACHINE」なんて声も聞こえてきましたが、いやいや、彼らはTWENTY ONE PILOTS以降のポストハードコア/エモ/ラウド/ポップスの流れを踏襲した、生まれるべくして生まれたバンド……ルーツや出身が異なるだけで、実はベクトル的にはTWENTY ONE PILOTSと比較的近いような気がするのは、僕だけでしょうか。きっとフジロックでのパフォーマンス映像を観た影響も強いんでしょうね。

とはいえ、そう判断するのはこのEPに含まれた7曲と、先のライブパフォーマンスによるものが大きいので、続く1stフルアルバムを聴いたらまた印象が変わるかもしれませんが、それはそれとして(すでに配信済みのリードトラック「Burn It」からはこのEPをさらに一歩押し進めたカッコよさが漂っています)。

確かにRATM以降のラウドシーンに現れた新たな可能性として、メタル/ラウド村側から花火を打ち上げたいのはよくわかります。けど、そこはもっと広い目で見ておかないとね。

ポップな側面も至るところから感じられますが、基本的にはストリート寄りの攻め攻めな内容。収録曲の「(The First Stone) Changes」にはラッパーのイェラウルフがフィーチャーされていたり、このプロジェクト自体にBLINK-182のドラマー、トラヴィス・パーカーが携わっていたり、メタル/ラウド/パンク系プロデューサーとしても活躍するジョン・フェルドマン(GOLDFINGER)が全面参加していたりという点からも、彼らの出身が伺えるし、現時点でどこに進んでいきたいのかも理解できます。

というわけで、個人的にはメタル/ラウド村よりはもっと広いフィールドでのびのびと活躍してほしいなと願わんばかり。まずはフルアルバムと、来年の来日公演ですね。そこで正確な判断を下したいと思います。



▼THE FEVER 333『MADE AN AMERICA』
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2018年11月13日 (火)

QUEEN『ON AIR』(2016)

2016年11月にリリースされたQUEENのライブアルバム。フレディ・マーキュリー(Vo)の死後、現役時代を超える数のライブ作品が掘り起こされ発表されてきましたが、本作はその中でもちょっと異色の内容で、1973年2月(デビュー前)から1977年10月(6thアルバム『NEWS OF THE WORLD』リリースタイミング)までの間にQUEENがイギリスの国営ラジオ放送局BBCに出演した際の音源をまとめたものになります。

QUEENはこの期間、6回にわたりBBCセッションを行なっています(1973年2月5日、同年7月25日、同年12月3日、1974年4月3日、同年10月16日、1977年10月28日)。6回中5回が1974年10月まで、つまり3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』リリース直前(1974年11月発売)ということで、2枚組CDに収録されている全24曲中20曲がQUEENの初期3作品からということになります。

スタジオセッションというと、いわゆるスタジオライブを思い受かべると思いますが、ここで聴ける音源はそういった“ライブバンドQUEEN”のラフな面を捉えたものではなく、アルバムと同じように楽器をオーバーダビングしたも少なくありません。音楽ファンならよく“BBCセッション”というワードは耳に/目にするかと思います。中にはQUEENの本作やLED ZEPPELINの『BBC SESSIONS』(1997年)を筆頭に、BBCセッションをまとめたアルバムもあるし、NIRVANA『INCESTICIDE』(1992年)に出演音源がコンピレーション盤に含まれるケースも多々あります。

そもそもこのセッションが始まったきっかけは、60年代のイギリスにはラジオ局が1日にかけられるレコードの数に制限が設けられており、その抜け道として番組/局独自のライブ音源を用意したと。今となってはかなり無茶な制限ですが、そのおかげで数々の貴重な音源や名演を楽しむことができたのですから、ありがたいかぎりです。

さて、QUEENに話題を戻しましょう。初セッションとなった1973年2月5日のテイクからは4曲を収録。レコーディングは済んでいたものの、リリースがまだだったデビューアルバム『QUEEN』(1973年)から「My Fairy King」や「Liar」といった初期ならではの楽曲、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもフィーチャーされたSMILE時代の楽曲「Doing All Right」などを楽しむことができます。「Liar」ではギターがオーバーダブされていたりと、スタジオライブながらもQUEENというバンドが持つこだわりがしっかり感じられます。

2回目の1973年7月25日セッションからは4曲。アルバム『QUEEN』発売直後ということもあり、前回も披露した「Keep Yourself Alive」「Liar」、そしてアルバムの核を担う「Son And Daughter」を演奏しています。そんな中、次作『QUEEN II』(1974年)収録曲「Seven Seas Of Rhye」のシングルカップリング曲「See What A Fool I've Been」を演奏していること。シンプルなブルースロックという、彼らにしては異色のこの曲からは次作の片鱗は見つけられませんが、続く3回目のセッション(1973年12月3日)では早くも『QUEEN II』(1974年)収録曲「Ogre Battle」を披露しています。時系列的にはすでに『QUEEN II』のレコーディングは終わっている頃なので、リリースに3ヶ月ほど先駆けて実験的に披露したということなのでしょうか。ボーカルこそオーバーダブされているものの、「Ogre Battle」の生々しさはスタジオテイクとは異なる緊張感があり、これ1曲のために本作を購入しても不思議じゃありません(大げさですかね。笑)

ここまでがディスク1の12曲。これだけでもかなり濃いですね(笑)。

さて、後半戦へ。4回目のセッション(1974年4月3日)は『QUEEN II』リリース直後。ここからはデビューアルバムから「Modern Times Rock'n'Roll」と『QUEEN II』から「Nevermore」「White Queen (As It Began)」の3曲がピックアップされています。「Modern Times Rock'n'Roll」は前回のセッションでも演奏されていますが、パンキッシュでやけくそさが強かった前回と比べてテンポダウンし、重さが増したこちらのテイクも悪くない。けど、ここでは『QUEEN II』からの2曲に焦点を当てたいな。

5回目のセッションはさらに半年後の1974年10月16日。発売を翌月に控えた3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』からの4曲が演奏されていますが、あえてヒットシングル「Killer Queen」を外しているところが興味深い(そっちはシングルをオンエアしてもらえるしね)。ロック然とした「Now I'm Here」や「Stone Cold Crazy」に加え、フレディらしい「Flick Of The Wrist」、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)作&歌唱の「Tenement Funster」をピックアップしており、ここから始まるQUEEN全盛期の勢いみたなものが少なからず見えてくるのではないでしょうか。特に「Tenement Funster」でのブラアン・メイ(G, Vo)のギタープレイは圧巻です。

ラストは3年ほど時間が空いた1977年10月28日。世界的大ヒット作『NEWS OF THE WORLD』からの5曲で、「We Will Rock You」はオリジナルバージョンと当時ライブのオープニングを飾ったファストバージョンの2テイクを収録。前者はスタジオ音源からそのままリズムトラックを流用したんじゃないかなって音で、ロジャーの銅鑼→女性ナレーション→ブライアンのギターリフとそのままファストバージョンへと切れ目なく続きます。実際のライブバージョンよりもテンポが遅いですが、コーラスの厚み含めとにかくカッコいい。のたうちまわるようなギターソロも素敵です。で、「Spread Your Wing」で小休止して、ラスト2曲「It's Late」「My Melancholy Blues」で締めくくるアルバム同様の構成、本当に最高です。

以上、駆け足でアルバムを追ってきましたが、スタジオアルバムとも通常のライブアルバムとも異なる魅力、ぜひ実際に聴いて感じてください。映画でQUEENに注目が集まっているこのタイミングだからこそ、改めてスポットを当てたい作品です。

なお、本作はBBCセッションCD2枚に加え、1973〜1986年の間にBBCでオンエアされたライブ音源やインタビュー音源を追加したCD6枚組ボックスセットも用意。こちらのBBCセッションパートは実際のラジオパーソナリティの声も入っており、2枚組バージョンの通常盤とは異なる雰囲気を楽しめます。



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2018年11月12日 (月)

MUSE『SIMULATION THEORY』(2018)

初の全米No.1を獲得した前作『DRONES』(2015年)から約3年ぶりに発表される、MUSEの通算8枚目のスタジオアルバム。ロバート・ジョン・マット・ラング(DEF LEPPARDブライアン・アダムスAC/DCなど)とタッグを組んだ前作から一変、本作では旧知の仲間であるリッチ・コスティ(FOO FIGHTERSTHE MARS VOLTAAT THE DRIVE-INなど)に加え、マイク・エリゾンド(ドクター・ドレー、エミネム、MAROON 5など)、シェルバック(テイラー・スウィフト、アデル、アダム・ランバートなど)、ティンバランド(ジャスティン・ティンバーレイク、ミッシー・エリオット、ONE REPUBLICなど)という異色のプロデューサー/ソングライターを多数迎えた、バラエティ豊かな内容に仕上げられています。

本作は昨年5月に発表されたシングル「Dig Down」からスタートしたと言っても過言ではないでしょう。当初は単発シングルであり、これが次作への序章とはまた異なるものであるようなアナウンスもあったかと思いますが、年が明けてから2月に「Thought Contagion」、7月に「Something Human」と不定期に新曲が届けられると、ようやくニューアルバム発売情報も発表され、秋には「The Dark Side」や「Pressure」といったリードトラックも解禁。どの曲も完成度は高いものの、アルバムとしてまとまったときの方向性がボンヤリしていたような気がして少々モヤモヤしたものがありました。そう、曲単位では本当に素晴らしいんですけどね。

先週末に届けられたニューアルバム。デラックス盤やスーパーデラックス盤などボーナストラックが複数含まれるバージョンがあるものの、今回はアルバム本編11曲(トータル42分程度)について話を進めたいと思います。

まず、40分台のコンパクトなアルバムはずいぶん久しぶりだなと。振り返ると、全米ブレイクのきっかけとなった4thアルバム『BLACK HOLES AND REVELATIONS』(2006年)以来(トータル45分)でした。最近は50分強で、本編中に大作が含まれていたり、曲数が13曲くらい入っていたりしましたからね。

ですが、この11曲42分という内容、先に書いたようにトータリティに関しては過去イチで薄いものと言えるでしょう。従来のMUSEらしい変態的ギタープレイをフィーチャーしたロック/ポップチューンを含みつつも、モダンなエレクトロポップの要素を強めたシングル向き楽曲、ヒップホップ色濃厚なナンバーなど、かなり斬新な楽曲も複数含まれています。ですが、それらは決して「MUSEらしくない」ものではなく、しっかりとMUSEのフォーマットの中でギリギリのラインをはみ出したりはみ出さなかったりしながら、ジワジワとその許容量を広げているのです。ぶっちゃけ、曲単位で聴いたら(例えば先行リリースされた「Dig Down」みたいに)若干拒否反応を示すかもしれませんが、アルバムの流れで聴くと意外と馴染んでしまうのだから、不思議です。

そうなんです。トータリティは薄いんだけど、不思議と「MUSEの作品集」としては当たり前のように楽しめる。これまでの「アルバム」というフォーマットを重要視したスタイルとは明らかに異なるものの、この流れで聴けば抵抗なく聴き進められるのです。そんなマジックみたいなアルバムがこの『SIMULATION THEORY』なのかもしれません。

アルバム冒頭の2曲(「Algorithm」「The Dark Side」)は確かにアルバムというフォーマットを想定した構成だと思いますし、ラスト2曲(「Dig Down」「The Void」)も同様でしょう。それを意図して作られたものなのか否かはわかりませんが、ストリーミング主流時代に突入した今、アルバムというフォーマットの意味が薄まりつつある中でMUSEというバンドがこんな作品を提示してきた。これ自体がある意味現実を表すと同時に、挑戦でもある。そう受け取ることはできないでしょうか。

ぶっちゃけ、アルバムとしての思い入れは過去作ほど強いものにはならないかもしれない。だけど、聴く頻度は異常に高くなりそうな気がする。そんな新時代の代表作になりそうな1枚の登場です。

だからこそ、デラックス盤、スーパーデラックス盤に別バージョンを複数収録したというのも頷ける話。とはいっても、個人的には受け付けませんけどね、アルバムの流れとしては。こちらは単体で聴いて楽しんでいます、出来が良いものも多いので。



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2018年11月11日 (日)

TEARS FOR FEARS『RULE THE WORLD: THE GREATEST HITS』(2017)

2017年11月に発売された、TEARS FOR FEARS通算3作目のコンピレーションアルバム(アーティスト主導の作品のみ買うカウント)。2枚目の『SATURNINE MARTIAL & LUNATIC』(1996年)がシングルのカンプリング曲やレアトラックをまとめたものだったので、純粋なグレイテスト・ヒッツとしては『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』(1992年)以来25年ぶりになります。また、本作はイギリスで最高12位まで上昇と、4thアルバム『ELEMENTAL』(1993年)以来24年ぶりのトップ20入り作品となりました。

収録された全16曲中、11曲が前作『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』にも収録されていることから、前のベストを持っている人は購入を躊躇してしまいがちですが、その11曲のうち「Shout」「Change」「Pale Shelter」「Mothers Talk」が別バージョン(前2曲はシングル&ラジオエディション、「Pale Shelter」は初期シングルバージョン、「Mothers Talk」はUS向けリミックスバージョン)なので、若干新鮮な気分を味わえるかもしれません。

となると、注目すべきポイントは残り5曲ということになるのでしょうか。

5曲すべてが『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』以降にリリースされた楽曲ばかりで、うち2曲(「I Love You But I'm Lost」「Stay」)は本作のために用意された新曲。「Break It Down Again」はローランド・オーザバル(Vo, G)ソロ体制になった4thアルバム『ELEMENTAL』から、「Raoul And The Kings Of Spain」は5thアルバム『RAOUL AND THE KINGS OF SPAIN』(1995年)から、そして「Closest Thing To Heaven」がローランド&カート・スミス(Vo, B)体制が復活した最初のアルバムにして最新オリジナルアルバム(6作目)『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』(2004年)からの各シングルとなります。

既発の3曲はそれぞれ全英20位、31位、40位とそこそこの記録を残しているので、ここに収録されるのは納得かなと。むしろ、80年代のTEARS FOR FEARSしか知らないリスナーにとってはほぼ新曲みたいなものなので、ここで聴けるのはある意味(バンドにとっても、そして新たな発見となるリスナーにとっても)ラッキーかもしれません。特に『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』は日本リリースがなかっただけに、ぜひこの機会にその片鱗に触れてみることをオススメします(残念ながら、Apple Musicでは「Raoul And The Kings Of Spain」と「Closest Thing To Heaven」は国内試聴不可。Spotifyは問題なく聴くことができます)。

で、本作最大の聴きどころは『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』以来の新曲ということになるのでしょうか。リードシングルとして先行発売された「「I Love You But I'm Lost」はどこか1stアルバム『THE HURTING』(1983年)の頃を彷彿とさせつつも、しっかり現代的なポップスとして通用するようなアレンジが施されている。やや音数が多いのが前時代的に映るかもしれませんが、比較的良曲ではないかと思います。

もう一方の「Stay」は正反対で、音数の少ない浮遊感漂う1曲。現代的なアプローチという点においてはこちらのほうが勝るのかなと。コード使いや節回しからも“らしさ”が感じられますし。まあ、「アルバムの中の1曲」という印象の地味曲ですよね。悪くはないです。

というわけで、数(要素)は少ないけど現在進行形であることを提示してくれたこのベストアルバム。本来ならTEARS FOR FEARSはこのアルバムを携えて今年1月からツアーを行う予定でしたが、「予期せぬ健康上の懸念と医師の指示」を理由に来年1月まで延期。その間には『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』以来となるオリジナルアルバムのリリースもアナウンスされていましたが、こちらに関しては今年4月以降音沙汰がないので、おそらく来年以降まで持ち越しかなと。ベスト盤で聴ける新曲に特別落胆させられることもなかったので、まあ気長に待ちたいと思います。



▼TEARS FOR FEARS『RULE THE WORLD: THE GREATEST HITS』
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2018年11月10日 (土)

BOY GEORGE『THIS IS WHAT I DO』(2013)

2013年10月に本国イギリスで、翌2014年3月に北米や日本でリリースされたボーイ・ジョージの9thソロアルバム。純粋なオリジナルアルバムとしては、1995年の5thアルバム『CHEAPNESS AND BEAUTY』以来、18年ぶりになるようで、本国では全英33位という好成績を残しています。これはソロデビュー作『SOLD』(1987年)に続く高順位(29位)とのことで、当時メディアでは「20世紀のポップアイコンが、ついに魔法を取り戻した」「今年最高のカムバック作品」などと高く評価されました。

僕自身、ボーイ・ジョージの新作を手にしたのは先に挙げた『CHEAPNESS AND BEAUTY』以来なので、完全に“終わった人”の枠の中にいた人だったんですが、YouTubeで目に耳にしたリードトラック「King Of Everything」があまりに素晴らしく、すかさず輸入盤を購入。半年後にはボーナストラックがたっぷり追加された国内盤も購入しています(あれ、レコード会社からサンプルをもらったんだっけ? ちと記憶が曖昧ですが、手元には12曲バージョンと18曲バージョンの2仕様の音源ファイルがあります)。

サウンド/楽曲的にはボーイ・ジョージがCULTURE CLUB以降展開してきたレゲエ/ソウルミュージックをベースにした、よりアダルトで艶やかになった楽曲群が楽しめます。しかも、ボーイ・ジョージの声が(ドラッグや不摂生も影響してか)野太くかつ枯れ気味になっていることで、味わい深さや強い哀愁を感じさせてくれるのです。

正直、最初に「King Of Everything」を聴いたときはその声の太さに若干引いたものの、それもアルバムを通して聴けばすぐに慣れてくる。80年代の彼が持っていたキラキラしたスター感皆無ですが、楽曲の完成度やボーカルパフォーマンスの説得力含め本当に素晴らしいのです。

もちろん、単なるレゲエやソウルの焼き直しで終わっておらず、ヒップホップ以降のテイストも加えられ、アレンジの質感も現代的なものに近づけられちえるので、そこまで古臭さは感じない。だけど、初期のボーイ・ジョージが持っていた強い刺激や即効性は皆無。もしかしたら、そこが聴き手を選ぶ基準になってしまうかもしれません。

がしかし。これを受け入れられた人であれば、先日発売されたBOY GEORGE AND CULTURE CLUB名義の新作『LIFE』は一発でハマるはず。この助走があったからこそ、CULTURE CLUB名義での新作にまで到達できたと僕は思っています。そういう意味でも、新作『LIFE』を語る上で必要不可欠な1枚として、新譜を紹介する前にピックアップさせていただきました。

北米および日本盤はボーナストラックで水増しされた大ボリュームになってしまっていますが、12曲入りアルバムとして考えると非常に聴きやすい内容だと思います。『LIFE』で再びボーイ・ジョージに興味を持った人、あるいは『LIFE』で初めてCULTURE CLUBやボーイ・ジョージに触れた人(少ないと思いますが)、ぜひ続いてこの『THIS IS WHAT I DO』も聴いてみてください。だって、最近のCULTURE CLUBのツアーではこのアルバムからも演奏されているのですから。



▼BOY GEORGE『THIS IS WHAT I DO』
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2018年11月 9日 (金)

SUEDE『THE BLUE HOUR』(2018)

2018年9月リリースの、SUEDE通算8枚目のスタジオアルバム。再結成後としては3作目のアルバムとなり、過去2作でプロデュースを務めた(初期作でおなじみの)エド・ビューラーが離れ、新たにアラン・モウルダーが初プロデュースを担当しています。

復活後の『BLOODSPORTS』(2013年)、『NIGHT THOUGHTS』(2016年)、そして本作は三部作を想定して制作されたそうで、その最終章となる今作は映画のサントラ的テイストが好印象だった前作を引き継ぐ、“これぞSUEDE!”なお耽美アルバムに仕上がっています。

本作のタイトル『THE BLUE HOUR』とは、日の出前と日の入り後に発生する空が濃青色に染まる時間帯を指します(アルバムジャケットで表現されている、まさにこの絵ですね)。つまり、深夜を表現した『NIGHT THOUGHTS』から夜明けまでの短い時間帯、その刹那を凝縮したのがこのアルバムなわけです。もう、この時点でSUEDEそのもの。聴く前から「これは傑作に決まってる!」と勝手に決めつけていました。

で、実際に聴いたら……これ、キャリア最高傑作じゃないか?って言いたくなるくらい、本当に素晴らしい内容なんです。問答無用のデビューアルバム『SUEDE』(1993年)はもちろん、続く『DOG MAN STAR』(1994年)や大ヒット作の3rdアルバム『COMING UP』(1996年)に並ぶ、いや、僕個人としては(現時点では)それらを超えたと言いたくなるくらい、圧倒的な内容だと思うのです。

序盤のドラマチックな流れといい、その楽曲群を見事な形で表現する楽器隊、「これしかない!」と言わんばかりに唯一無二なブレット・アンダーソン(Vo)のボーカル。すべてが完璧なバランスの上で成り立っており、そのどれもが他者を邪魔しない控えめさを持ち合わせている。なのに、「これじゃなくちゃダメ!」と納得するぐらいの説得力と存在感も兼ね備えている。だけど、どこかいびつ……うまく表現できないのですが、本当にそんなアルバムなのです。

パワフルなギターロックもあれば、ストリングスを効果的に用いたスローナンバーも多数用意。むしろ、そっちが中心なのですが、だからといってロックバンド的なパンチが弱いかと言われると、全然そんなことがない。むしろ、このバンドの場合はそっち側でノックアウトを狙ってくるから油断大敵。気づけばハートを鷲掴みにされ、目には涙が……みたいなことになるので、聴く際には細心の注意を。

曲単位でこれが好き!というよりも、アルバム全体を通してひとつの曲(組曲)みたいなアルバム。そう思っていたのですが、ふとしたときにYouTubeでたどり着いた「Life Is Golden」のMVにドキリとさせられ、気づいたらこの曲を延々リピートしていた。歌詞の内容とチェルノブイリの廃墟感を表した映像に後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けました。個人的にこんな1曲がまたSUEDEの中から出てくるなんて、想像もしてなかったから本当に不意打ちを食らった気分です。

地味だけど豪華。そして濃厚。2018年はまだ終わっていませんが、間違いなく本年度のベストアルバムです。



▼SUEDE『THE BLUE HOUR』
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2018年11月 8日 (木)

THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』(2018)

昨日取り上げたGRETA VAN FLEET同様、現在Universal Recordsが力を入れているロックバンドがこのTHE STRUTSなのは間違いないと思います。本作は本国イギリスで2014年に発売され、その後2016年に再リリースされたデビューアルバム『EVERYBODY WANTS』に続く2ndアルバム。個人的にはGRETA VAN FLEET以上に“待望の”という表現がぴったりな1枚でした。

前作をワールドワイドリリースして以降、シングルを小出しにするなどして2作目のアルバムへと向かっていった彼ら。プロデューサーにはブッチ・ウォーカーFALL OUT BOYアヴリル・ラヴィーン、ケイティ・ペリーなど)とサム・ホランダー(PANIC! AT THE DISCOWEEZER、ONE DIRECTIONなど)というアメリカ有数の名ソングライターを迎えて制作。結果、前作以上にモダンでカラフルなアルバムに仕上がりました。

フロントマンのルーク・スピラー(Vo)のフレディ・マーキュリーを思わせるルックスやファッション、歌声などから“第二のQUEEN”的な扱いをされることも少なくないTHE STRUTS。このアルバムもそうしたQUEEN的雑多さ満載の1枚で、聴く人によっては「焦点の定まらないもの」とネガティヴに受け取られる可能性もあります。が、そもそも80年代のQUEEN自体がそういう傾向が強かったため、70年代の彼らを評価するリスナーからは敬遠されていたところもあったと思います。その一方で、ロックだとかハードロックだとか固定のジャンルにこだわらないリスナーからは「ヒットチャートを賑わせるアーティストのひとつ」として、そのポップでキャッチーな楽曲自体を純粋に評価された。結果、彼らは80年代半ばにライブにおいてキャリア最大のピークを迎えるわけですから、世の中わからないものです。

それと同じことが、このTHE STRUTSの2作目にも言えるんじゃないか。そんな気がしています。ストレートなロックチューンもあれば、モダンな味付けがされたポップナンバーもある。前作以上にアメリカンフレイバーが強まっていますが、その軸には古き良き時代のブリティッシュポップ/ロックからの影響が感じられる。それらの楽曲を、どこかフレディ・マーキュリーを彷彿とさせるシンガー(ルーク)が歌うのですから、嫌が応にもQUEENを思い浮かべてしまう。そりゃあ僕が嫌いなわけがない(自分の話で恐縮ですが)。

アルバム中盤の「Fire (Part 1)」や終盤の「Ash (Part 2)」なんて、本当にQUEENですよね。ちょっと泣けましたもん。かと思えば、KE$SHAとコラボしたバージョンも捨てがたい「Body Talks」や「Primadonna Like Me」みたいな“今ドキ”な音もある。エヴァーグリーンな「Somebody New」や「Tatler Magazine」を聴いてもなお「売れ線に走ったバンド」と揶揄するというのなら、きっとこのバンドはあなたには合わないんだと思います。けど、1曲くらいは引っかかる曲、あるはずです。そういう“お子様ランチ”的アルバムなのですから。

お子様ランチは子どもがある一定の年齢に達すると注文するのを躊躇し、ある程度大人になると「子どもの食べ物」だと敬遠される。けど、自我を確立した大人になるとちょっと懐かしくなって食べてみたくなったりもする……このアルバムを聴いて、そんなことを思い浮かべたりもしました。自分の好きな食材(=音楽要素)がてんこ盛りの1枚。こういうバンドが2018年に存在してくれることに感謝したいです。



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投稿: 2018 11 08 12:00 午前 [2018年の作品, Struts, The] | 固定リンク

2018年11月 7日 (水)

GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(2018)

GRETA VAN FLEETが2018年10月末にリリースした、待望の1stフルアルバム。1st EP『BLACK SMOKE RISING』(2017年)が全米182位、2枚組EP『FROM THE FIRES』(2018年)が全米36位と、バンドに対する注目度と比例するように順位を上げてきた彼らですが、このフルアルバムでは全米3位という好記録を獲得。イギリスでも最高12位という順位を残しております。今年8月の『SUMMER SONIC』での初来日は残念ながらキャンセルされてしまいましたが、この力作を携えて2019年1月にはついに単独来日公演も決定。今度はキャンセルしないでね。

さて、1年ぶりの新作となるこのフルアルバム。基本的には過去2作のEPと路線は一緒です。全10曲でトータル46分というトータルランニングも程よくて聴きやすい。過去作でハマったというリスナーなら間違いなく気にいる内容かと思います。

オープニングは「Age Of Man」という6分にわたるサイケデリックなスローナンバー。よく引き合いに出されるLED ZEPPELIN的な豪快ハードロックではなく、意表を突いた始まり方だと思います。もちろんM2「The Cold Wind」、M3「When The Curtain Falls」ではZEP的なロックが展開されているのでご安心を。1stアルバムでここまで思い切ったオープニングを用意するとは、すでに貫禄すら感じられます。

で、「Age Of Man」を聴いて改めて思ったのですが、ボーカルのジョシュ・キスカのハイトーンってロバート・プラントというよりはジョン・アンダーソン(ex. YES)のほうが近いんじゃないかなって。「The Cold Wind」や「When The Curtain Falls」では確かにプラントっぽく聞こえるんだけど、それって節回しだったり歌い方がプラント的なんだろうなと。声質自体は意外とアンダーソンのそれなのかもしれません。だからなのか、「Age Of Man」はどことなく70年代のYESを思い出したりもして……そう感じません?

とはいえ、アルバム全体で表現されているのはZEP以降の土着的なブルース(ハード)ロック。南部的なフレイバーももちろん健在で、そういった意味ではTHE BLACK CROWES的でもある……なんて解説は、今さらいらないですよね。むしろ、こういう新人を前にするとオッサンほどうんちくを語りたくなる傾向が強いので、過去との比較はこのへんにしておきます。

これを純粋に“新しい”と感じられるリスナーが本当に羨ましい。この50数年の間に何度も生まれては廃れ、そして再生されてきたスタイルが2018年に再び“新しい”音楽として浸透し始めている。それって本当に素晴らしいことですよね。実際、40代半ばの自分が聴いてもカッコいいと思えるわけですから、若い子たちにとってはその比じゃないんだろうなあ。

どの曲も良いんだけど、やっぱり個人的にグッとくるのは「Age Of Man」や「Lover, Leaver (Taker, Believer)」といった長尺の楽曲。特に後者は中盤のインストパートがツボです(YouTubeではライブ映像が公開されていますが、インプロヴィゼーションを含む30分近い圧巻のプレイを楽しめます)。この曲、CDでは5曲目というベストなポジションに配置されていますが、配信バージョンはラストに置き換え。代わりに5曲目には配信シングルとして先行リリースされたショートバージョン「Lover, Leaver」が置かれています。個人的にはCDバージョンの曲順のほうが好み。

あと、日本盤CDはボーナストラックとして1st EP『BLACK SMOKE RISING』の4曲が丸々追加されているので、初めてGRETA VAN FLEETに触れるビギナーはこっちを購入するといいんじゃないかな。



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投稿: 2018 11 07 12:00 午前 [2018年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク