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当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2024年6月6日更新)


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2024年7月31日 (水)

2024年7月のお仕事

2024年7月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※7月24日更新)

 

[WEB] 7月24日、「リアルサウンド」にてコラム トゲナシトゲアリが中国でも人気爆発、円盤も異例の大ヒット 『ガールズバンドクライ』2024年上半期アニメシーンに残した爪痕が公開されました。

[WEB] 7月17日、「リアルサウンド」にてライブレポート Crossfaith、第2章幕開けを告げる全国ツアー 初日CLUB CITTA’公演は灼熱の一夜にが公開されました。

[WEB] 7月16日、「音楽ナタリー」にて特集記事 「アミノバイタル」特集|夏フェスを徹頭徹尾楽しむために、その秘訣を音楽ライターが指南が公開されました。

[WEB] 7月16日、「音楽ナタリー」にてインタビュー ディズニープラス|みのオススメの音楽映画・音楽ドキュメンタリー作品5選が公開されました。

[WEB] 7月7日、Little Glee Monster『Little Glee Monster Live Tour 2024 “UNLOCK!”』のオフィシャルライブレポートを執筆。Mikiki by TOWER RECORDSなど複数媒体で公開中です。

[WEB] 7月6日、「SPICE」にてライブレポート 今ライブハウスで見ておくべき女性アーティストをレコメンド LustQueen、大塚紗英、ЯeaLが三様の個性で満員のフロアを沸かすが公開されました。

[WEB] 7月6日、「リアルサウンド」にてライブレポート East Of Eden、初のワンマンツアー東京公演で実力発揮 “再会の約束”を交わし、次のステージへが公開されました。

[WEB] 7月5日、「音楽ナタリー」にてインタビュー 10-FEETはいつも通りのまま一歩先へ、今のモード詰め込んだ「helm'N bass」を語るが公開されました。

[紙] 7月4日発売 「日経エンタテインメント!」2024年8月号にて、櫻坂46大園玲 連載「ミステリアスな向上心」、日向坂46上村ひなの 連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 7月3日、「音楽ナタリー」にてインタビュー dustboxインタビュー|メロディックパンクシーンの未来へつなぐ、結成25周年記念トリビュートアルバム完成が公開されました。

 

2024年6月30日 (日)

2024年6月のお仕事

2024年6月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※6月29日更新)

 

[WEB] 6月29日、「リアルサウンド」にてインタビュー 井上梨名&村井優、“櫻坂46らしさ”を広げていく野心 全員で立った東京ドームから得た自信が公開されました。

[WEB] 6月28日、「音楽ナタリー」にてインタビュー FANTASTIC◇CIRCUSインタビュー|“LAST”になるかもしれないツアーへの覚悟が公開されました。

[WEB] 6月27日、「リアルサウンド」にてインタビュー Crossfaith、ニューアルバム『AЯK』を経て第2章開幕へ 現在地と“バンド史上最大のミッション”を語るが公開されました。

[WEB] 6月27日、「リアルサウンド」にてライブレポート 櫻坂46、充実した活動を実らせる“通過点” グループ史上最大動員数を達成した東京ドーム公演が公開されました。

[WEB] 6月24日、「Rolling Stone JAPAN」にてインタビュー otsumamiが語る活動3年目の変化、宮沢賢治の言葉と描いた「大人は忙しい」の真意が公開されました。

[紙] 6月18日発売 日向坂46高本彩花1st写真集「僕の記憶の中で」にて、高本彩花ロングインタビューを担当しました。(Amazon

[WEB] 6月17日、櫻坂46『4th ARENA TOUR 2024 新・櫻前線 -Go on back?- IN 東京ドーム』のオフィシャルライブレポートを執筆。ニッポン放送 NEWS ONLINEなど複数媒体で公開中です。

[WEB] 6月10日、「SPICE」にてライブレポート Tele、全国ツアー初日となった日本武道館公演を自分ならではの“箱庭”と化し観客とひとつの物語を作り上げるが公開されました。

[WEB] 6月10日、乃木坂46『35thSGアンダーライブ』のオフィシャルライブレポートを執筆。ニッポン放送 NEWS ONLINEなど複数媒体で公開中です。

[WEB] 6月7日、「SPICE」にてインタビュー TENSONG、中高生を中心に幅広い年代から注目を集める新世代音楽ユニットのこれまでとここからに迫るが公開されました。

[WEB] 6月5日、「リアルサウンド」にてインタビュー 欅坂46/櫻坂46、NMB48らに楽曲提供 ナスカ、グループや歌詞の魅力を最大限に引き出す作曲術が公開されました。

[WEB] 6月4日、「リアルサウンド」にてコラム THE YELLOW MONKEY、極上のロックンロールで鳴らす10枚目の名盤『Sparkle X』 アルバム全曲解説が公開されました。

[紙] 6月4日発売 「日経エンタテインメント!」2024年7月号にて、櫻坂46大園玲 連載「ミステリアスな向上心」、日向坂46上村ひなの 連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

 

2024年6月 6日 (木)

THE ROLLING STONES『HACKNEY DIAMONDS』(2023)

2023年10月20日にリリースされたTHE ROLLING STONESの24thアルバム(イギリスにて。アメリカでは26枚目のアルバム)。

スタジオアルバムとしてはブルースカバー集『BLUE & LONESOME』(2016年)から7年ぶり、オリジナルアルバムとしてとなると『A BIGGER BANG』(2005年)以来18年ぶり、というちょっと時空が歪みそうになるくらい久しぶりの新作。とはいえ、ストーンズはその18年の間に新曲を発表しているので、まったく何もしていなかったわけではないんですよね(大々的なツアーもしてたあし)。ただ、作るとなるとそれ相応の理由付けも必要になる、そんなフェーズに入ってしまったのかもしれません。

今回に関して言えば、そのきっかけとなったのがチャーリー・ワッツ(Dr)の死。ネガティブ要素から始まっているとはいえ、2019年から断続的に行なっていたチャーリーとのスタジオセッションを含む新作を形にしないことには、バンドとしても前に進めない……そう感じたかどうかはわかりませんが、ミック・ジャガー(Vo, G)やキース・リチャーズ(G, Vo)の背中を多少なりとも押したのは事実だと思います。

コロナ禍のロックダウン時に突如発表された新曲「Living In A Ghost Town」(2020年/日本盤のみボーナストラックとして収録)の時点ではまだアルバムモードではなかったようですが、本腰を入れて臨んだタイミングにアンドリュー・ワット(イギー・ポップオジー・オズボーンPEARL JAMなど)を新たなプロデューサーに起用。チャーリーが残したドラムトラックは2曲にとどめ、それ以外をチャーリー急逝後のツアーでもプレイしていたスティーヴ・ジョーダン(Dr)が叩き、ベースはアンドリューとキース、ロニー・ウッド(G)が手分けをして担当したほか、チャーリーが参加した「Live By The Sword」にはかつてのオリジナルメンバー、ビル・ワイマン(B)がゲスト参加しています。

本作はそのほかにも豪華ゲストが盛りだくさんで、ポール・マッカートニーは「Bite My Head Off」でベースをプレイしたほか、エルトン・ジョンは「Get Close」「Live By The Sword」でピアノ、スティーヴィー・ワンダーは「Sweet Sounds Of Heaven」でピアノやローズ・ピアノなど、レディ・ガガは「Sweet Sounds Of Heaven」でボーカルで客演。このほかにもベンモント・テンチやマット・クリフォードといった気心知れた面々も名を連ね、ストーンズ18年ぶりのオリジナル新作に華を添えています。

オープニングを飾る「Angry」からして、『TATTOO YOU』(1981年)あたりのストーンズを彷彿とさせる「ルーズながらもタイト」なサウンドを再現。ギターリフワークもあの頃とイメージが重なるものの、メロディライン自体は結構練り込んで作った印象が。おそらくアンドリュー・ワットというプロデューサーは、そのアーティストの一番良かった時代(=自身がファンだった頃)をアーティスト自身に再認識させ、ただ焼き直しをするんじゃなくて現代の感覚で表現させようとする、そういうタイプのプロデューサーなんでしょうね。随所から「懐かしさと安定感」と同じくらい「新しさや新鮮さ」を見つけることができます。

全体的にポップでキャッチーという『TATTOO YOU』期の彼らをイメージさせつつ、「Bite My Head Off」では年齢を感じさせないほど前のめりなパンクロックに挑戦し、「Mess It Up」ではチャーリーの跳ねたビートが気持ちいいダンスチューンを体現。チャーリー&ビルのリズム隊の上で肩の力が抜けた歌とギターを奏でる「Live By The Sword」、キースらしさ全開のいぶし銀ナンバー「Tell Me Straight」でらしさを見せつけたあとに、終盤でのミックとレディ・ガガのボーカルバトルがたまらない7分超の「Sweet Sounds Of Heaven」でクライマックスに到達し、最後はバンド名の由来となったマディ・ウォーターズの「Rolling Stone Blues」をミック&キースがシンプルにカバーして締めくくり。1曲1曲の完成度もさることながら、アルバムとしての流れも完璧で、全12曲/約48分というトータルランニングもちょうどいいから何度もリピートしてしまう。個人的にはストーンズのオリジナルアルバムの中でも上位に入る傑作ではないでしょうか。

チャーリーの不在とビルの1曲のみの復活、18年ぶりのオリジナルアルバムにして傑作、最後にバンドの原点を提示する、などなど……こういった要素から、これがラスト作になったとしても不思議じゃないくらいのドラマ性が封じ込まれた1枚。個人的にも最初に聴き終えたとき、「ここでバンドの看板を降ろしても誰も文句言えないよ」と思ったほどでした。ミックは「もう1枚作る」と息巻いているようですが、年齢的にもこれが最後なんじゃないかな……。

 


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2024年6月 4日 (火)

THE TEARS『HERE COME THE TEARS』(2005)

2005年6月6日にリリースされたTHE TEARS唯一のオリジナルアルバム。日本盤は同年7月20日発売。

2003年に活動休止を発表したSUEDEのフロントマン、ブレット・アンダーソン(Vo)が同バンドの初期2作(1stアルバム『SUEDE』、2ndアルバム『DOG MAN STAR』)でギタリスト&ソングライターとして活躍すたバーナード・バトラー(G)と約10年ぶりに和解を果たしたことで、THE TEARSと命名された新バンドを2004年に結成します。ブレットとバーニー以外のメンバーは、バーニーのソロ活動を支えてきた日本人ドラマーのマコト・サカモト(Dr)のほか、ネイサン・フィッシャー(B)、ウィル・フォスター(Key)という布陣。

楽曲制作はブレット&バーニーの2人で行われ、アルバムのプロデュースをバーニーが担当。ブレットもアディショナル・プロデューサーとして名を連ねていますが、2000年代に入りTHE LIBERTINESTHE CRIBSなどの作品で培ったバーニーのプロデューサーとしての才能が、ここでも遺憾なく発揮されています。

この2人が再タッグを組むと言われたら、誰もがSUEDE初期の2作で展開されたデカダンな世界観&グラマラスなサウンドを想像することでしょう。しかし、実際にここで鳴らされているのはSUEDE後期、特にバーニー脱退後の3rdアルバム『COMING UP』(1996年)以降の音を下地にしたもので、SUEDEとして当時の最終作でもある『A NEW MORNING』(2002年)との共通点も見受けられます。つまり、本作はポップサイドに振り切った1枚ということになります。

しかし、この2人が揃ったんだから単なるポップアルバムで終わらない。本作で2人がイメージしたのは、デヴィッド・ボウイが初期に残した『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』(1970年)『HUNKY DORY』(1971年)という2枚。ボウイが“ジギー・スターダスト”としてグラムロックスターへと君臨する前に残した、ポップでロックでフォーキーなテイスト……つまり、2人にとってのルーツサウンドを今再びここで体現しようと試みたわけです。

確かにSUEDE初期のような危うさは希釈ながらも、90年代前半に彼らがトライした「70年代初期のグラムロックのモダン化」を10年越しに再挑戦したという意思は十分に伝わります。『SUEDE』や『DOG MAN STAR』のあとにこの『HERE COME THE TEARS』を聴いたらつながりは感じられないかもしれませんが、その後のSUEDEが歩んだ道のり、そしてバーニーがMcALMONT AND BUTLERやソロ活動を通じて重ねてきたキャリアを踏まえれば十分に納得できる仕上がりではないでしょうか。

『A NEW MORNING』は悪い意味で「出来上がって」しまっていたブレットのボーカルも、本作ではSUEDE中期までの豪快さが少しだけ復調している。それもそれも、隣で“らしい”ギターを奏でるバーニーの存在が与える影響がかなり大きいはず。オープニングを飾る「Refugees」(全英9位)こそSUEDE末期の延長のようではあるものの、「Lovers」(同24位)や「Two Creatures」などでは2000年代の音で表現されるモダンなグラムロックを存分に楽しむことができるし、「The Ghost Of You」のような繊細さを伴う楽曲では初期SUEDEのシングルカップリング曲で見せた色合いを追体験できる。さらに、アルバム終盤に向けて展開されるディープな世界観も、完全に一緒とないかないものの、どこか初期のSUEDEとイメージが重なる部分がある。当時死滅していたブリットポップやグラムロックをモダンな質感で再構築したという点で、本作が果たした役割は非常に大きなものがありますし、実際に亜洋的にもしっかり作り込まれた良質なロックアルバムだと断言できるはずです。

初期のSUEDEの完全再現を求めていたリスナーには、本作は肩透かしな1枚なのかもしれませんが、ここまでブレットとバーニーそれぞれのたどった道を追ってきた筆者のような人間には、これを否定することはできない。そう考えると、一部のファンにとっては“踏み絵”のような作品なのかもしれませんね。

なお、本作リリース直後の2005年8月には『SUMMER SONIC 05』へ出演するために、ブレット&バーニーは2003年の初来日ツアー以来12年ぶりに揃って来日。本国ではアルバムチャート15位とまずまずの数字を残すものの、同年秋に所属レーベルから解雇されてしまい、以降のツアーはすべて白紙に。2006年にブレットがソロ活動へと移行したのを機に、バンドは1年足らずで活動を終了させたのでした。

 


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2024年6月 3日 (月)

JESSIE BUCKLEY & BERNARD BUTLER『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』(2022)

2022年6月17日にリリースされた、ジェシー・バックリーバーナード・バトラーのコラボアルバム。日本盤未発売。

ジェシー・バックリーは2018年公開の映画『ワイルド・ローズ』での主人公ローズ役を務めたほか、2021年公開の映画『ロスト・ドーター』では主人公ラダの若き日を演じアカデミー賞をはじめとする数々の映画賞を受賞したことで知られるアイルランド出身の女優。『ワイルド・ローズ』ではカントリー歌手を夢見るシングルマザーという設定もあり、劇中での歌唱も話題となりました。

一方、バーナード・バトラーはSUEDEの初期メンバーとしてはもちろん、ソロアーティストや音楽プロデューサーとしても名を馳せる名手。互いに接点はないように映りますが、ジェシーはかつてバーニーがプロデュースしたサム・リーのアルバムを聴いていたといい、バーニーも先の『ワイルド・ローズ』でのジェシーの歌唱を耳にしており、互いに高く評価し合っていました。そんな中、ジェシーのマネージャーが2人が対面する機会を設け、同じ精神性を持っていた2人は次第に距離を縮めていき、気づけば音楽的コラボレーションへとつながっていったわけです。

バーニーのプロデュースのもと制作された本作は、深みを強く感じさせるジェシーのボーカルを最良の形で生かした、アコースティックサウンド主体の内容。バーニーはギターのみならず、一部の楽曲ではピアノやドラムまでもを担当し、レコーディングの指揮をとります。また、シンガーでもあるバーニーですが、主役はあくまでジェシーということで彼自身は数曲でコーラスを担当するのみ。コラボ作ではあるものの、彼はあくまでプロデューサー/プレイヤーとしての共作であると認識しているようです。

ダフィー以降、バーニーが手がけてきた「夜の香りがする」アダルトなサウンドアレンジと、アコギやアップライトベース、チェロやバオイリン、トランペットやホルンなどのアコースティック楽器を主体とした音作りは、その後制作されるバーニー自身のソロアルバム『GOOD GRIEF』(2024年)との共通点も多く見つけられます。楽曲自体はそのバーニーの持ち味のひとつであるフォーキーさやジャジーさを強調したものが多く、そうしたテイストがジェシーの歌声にもぴったりハマっている。そのプロデューサーとしてのセンスも、さすがバーニーといったところでしょうか。

これをバーニー自身が歌っていたら、きっとより内省的で地味なアルバムとしてこじんまりとまとまっていたかもしれません。しかし、そうならずに適度なゴージャスさも伝わる上質な歌モノ作品として仕上がったのは、バーニー自身の創作する音楽との「距離」の違いが大きいのかなと。自分のための音楽だったら距離が近すぎて、客観的になるのが難しいところもある。しかし、コラボ作とはいえ主役は別のシンガーがいることで、自身のソロ作よりも客観視できる。いくら名プロデューサーとはいえ、さすがにこの「距離」の違いは大きいのではないでしょうか。

まあそんな邪推は置いておいて。本作は非常にクオリティの高い大人のポップスを、存分に楽しむことができる良質な作品集。アコースティック主体のサウンドながらも、「We've Run The Sistance」のようにダイナミックさが強調された楽曲も用意されているので、全12曲/約50分を退屈することなく楽しめるはず。ジェシーの知名度も大きいとは思いますが、本作が全英23位、スコットランドで8位、アイルランドで35位という好記録を残したのも納得です。

 


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2024年6月 2日 (日)

BERNARD BUTLER『GOOD GRIEF』(2024)

2024年5月31日にデジタルリリースされたバーナード・バトラーの3rdアルバム。海外でのフィジカル(CD、アナログ)リリースは同年7月5日を予定、日本盤の発売は現時点で予定なし。

純粋なソロアルバムとしては、前作『FRIENDS AND LOVERS』(1999年)から約25年ぶり。2000年代以降はプロデューサーとしての活躍が目立ったバーニーですが、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスとのコラボアルバム『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020年/制作自体は2014年。同時期にバーニーはTRANSという短命プロジェクトも始動)を発表したのを機に、徐々に創作意欲が高まっていきます。2022年には女優ジェシー・バックリーとのコラボアルバム『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』をリリースし、こちらは全英23位という好記録を残しています。さらにこれと前後して、ソロデビュー作『PEOPLE MOVE ON』(1998年)のリイシューを計画し、オリジナル盤に自身が新たに歌い直したテイク、当時のシングルカップリング曲などをまとめたCD4枚組デラックス盤も発表するなど、自身がフロントマンとして活動する機会が徐々に増えていきました。

こうした活動の中で、自身のための新曲制作にも着手。先に小規模のライブを複数行ったことも、こうしたソロセッションに対する前向きさにつながり、2023年の数ヶ月を通じて本作に収められている9曲を完成させました。

基本的な路線は『FRIENDS AND LOVERS』などでにじませていたディープな歌モノスタイルの延長線上にあります。と同時に、90年代のアレンジとは異なるシンプルさ、生々しさが強まっており、そこが良い意味で現代的と受け取ることもできる。そこに、ギタリストとして大人の表現を手に入れたバーニーが、1音1音の存在感が強いプレイで自分以外の何ものでもない表現を提示しており、派手さは皆無ながらも聴き手をグイグイと音世界へと引き込んでいく。その説得力の強さはさすがの一言です。

また、前作発表時は30歳前後だった彼も現在は50代半ばに差し掛かろうとしており、そういった加齢による歌声の変化/成長も作品にダイレクトに反映されている。これは年相応のものへと深化した、というのが正解なのでしょう。90年代の2作ではシンガーとして最初に一歩を踏み出した時期ということもあり、瑞々しさもしっかり感じられましたが、今作では本来彼が表現しようとしていた音楽を歌うに最適な歌声/声質になったことで、楽曲にもたらす説得力が段違いとなっている。この変化/進化は本作を評価する上でかなり大きな要素と言えるでしょう。

稀代のギタリストの新作というよりは、名ソングライター/プロデューサーが久しぶりに自身と向き合って、自分のためだけの楽曲集を完成させた。本作はそんな1枚ではないかと解釈しております。「Pretty D」や「London Snow」といった楽曲たちは、間違いなく「Stay」や「Not Alone」、あるいは「You Must Go On」などといったヒットシングルに匹敵する完成度を誇る名曲ですしね。

とはいえ、全体のトーンはかなり落ち着いたものであるのは事実。これを地味と受け取るか、あるいは大人の渋みと受け取るかで、本作への印象もだいぶ異なるのではないでしょうか。

 


▼BERNARD BUTLER『GOOD GRIEF』
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2024年6月 1日 (土)

BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』(1999)

1999年10月25日にリリースされたバーナード・バトラーの2ndアルバム。日本盤は同年10月20日発売。

SUEDE、McALMONT AND BUTLERでの活動を経て届けられた初ソロアルバム『PEOPLE MOVE ON』(1998年)から1年半ぶりと、比較的短いスパンで届けられたソロ2作目。前作からは「Stay」(全英12位)、「Not Alone」(同27位)、「A Change Of Heart」(同45位)とヒットシングルも生まれ、アルバム自体も最高11位という好成績を残しました。また、アルバム発売後には1998年の単独公演、1999年夏にはHOLEの代役で『FUJI ROCK FESTIVAL '99』へ出演するなど来日も複数回実現し、SUEDE時代からのファンには健在ぶりを存分にアピールすることに成功しています。

前作ではドラム以外の楽器をほぼバーニーひとりで担当したほか、ストリングス隊を大々的にフィーチャーすることでゴージャスさ、豪快さを体現することにも成功しましたが、今作では先の『PEOPLE MOVE ON』を携えたツアーでまとまったバンド編成を軸に制作。プロデュースは前作同様にバーニー自身が担当し、ミキシングをアンディ・ウォレスが手がけています。アンディの起用は、バーニーがNIRVANA『NEVERMIND』(1991年)での仕事ぶりを気に入り、ダメ元でオファーしたんだとか。

さて、作風的には前作の延長線上にある、歌ものギターロックやフォーキー&サイケデリックな楽曲を中心に構成。サイケなタイトルトラックからスタートし、SUEDE時代を彷彿とさせる豪快な「I'd Do It Again If I Could」、前作でのシングル曲路線を引き継ぐポップ&キャッチーな「You Must Go On」(全英44位)や「Cocoon」、バーニーの魅力が完璧な形で凝縮された「No Easy Way Out」、20代後半にしてここまで老成するか?と驚かせるジャジーな「Everyone I Know Is Falling Apart」、クライマックスに相応しい8分超の対策「Has Your Mind Got Away?」など、前作を気に入っている方なら間違いなく両手を上げて受け入れられる良曲ばかり。バーニーの歌もだいぶ板に付いてきた感が強く、ソロアーティストとしての方向性、スタイルがここでひとつ固まった感があります。

良く言えば、早くも“極まった”感が強い。ただ、悪く言えば新鮮さに欠ける。もともと斬新さを追求するようなタイプのアーティストではなく、ソングライターとして、ギタリストとして自身の技術や才能を極め続ける職人気質なだけに、このスタイルは一寸たりともブレていない。ただ、リリース当時が“世紀末”という時代の変わり目だったこともあって、前作よりも注目されなかったのはちょっと不幸だったかな。

チャート的には全英43位と前作ほどの成功を収めることができず、また所属レーベルCreation Recordsの閉鎖も重なり、2000年2月の再来日公演を最後にバーニーはしばらくソロ活動から離れることに。2002年にはMcALMONT AND BUTLERの2ndアルバム『BRING IT BACK』を発表し、2004年にはSUEDE時代の盟友ブレット・アンダーソン(Vo)と新プロジェクトTHE TEARSを立ち上げ、セルフタイトルのアルバム(2005年)を1枚制作。と同時に、THE LIBERTINESTHE CRIBS、ダフィーなどとのコラボレーションで、プロデューサーとして実績を積み重ねていくことになるのでした。

 


▼BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』
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2024年5月31日 (金)

2024年5月のお仕事

2024年5月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※5月29日更新)

 

[WEB] 5月29日、「音楽ナタリー」にてインタビュー 内田真礼が田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)と語るアーティストデビュー10周年が公開されました。

[WEB] 5月22日、「リアルサウンド」にてインタビュー 日向坂46、“歴史”を噛みしめて新しい姿へ 河田陽菜&山下葉留花、ワクワクの先で目指す高みが公開されました。

[WEB] 5月13日、乃木坂46『山下美月卒業コンサート』のオフィシャルライブレポートを執筆。日刊エンタメクリップなど複数媒体で公開中です。

[WEB] 5月10日、櫻坂46『8th SG BACKS LIVE!!』のオフィシャルライブレポートを執筆。日刊エンタメクリップなど複数媒体で公開中です。

[紙] 5月10日から公開のアニメ映画 「トラペジウム」にて、劇場で販売されるパンフレットのテキストを執筆。メインキャスト(結川あさき、羊宮妃那、上田麗奈、相川遥花)インタビュー、高山一実ロングインタビュー、高山一実×結川あさき対談などなどを担当しました。

[WEB] 5月7日、「Billboard JAPAN」にてライブレポート りりあ。、等身大の歌で届けた初ワンマン Aru.(ミテイノハナシ)とのデュエットも披露が公開されました。

[WEB] 5月5日、「SPICE」にてライブレポート 今ライブハウスで見ておくべき女性アーティストをレコメンド LustQueen、TRiDENT、西沢幸奏が満員のフロアに見せたケミストリーが公開されました。

[WEB] 5月3日、「リアルサウンド」にてインタビュー East Of Eden、草野華余子により引き出された真骨頂 個性を爆発させながら強固なバンドへが公開されました。

[紙] 5月2日発売 「日経エンタテインメント!」2024年6月号にて、櫻坂46大園玲 連載「ミステリアスな向上心」、日向坂46上村ひなの 連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 5月1日、「リアルサウンド」にてライブレポート THE YELLOW MONKEYはさらに新たな物語を進んでいく 3年半ぶりの東京ドーム公演で刻み込んだ“今”が公開されました。

 

KERRY KING『FROM HELL I RISE』(2024)

2024年5月17日にリリースされたケリー・キングの初ソロアルバム。

言わずと知れたSLAYERのギタリスト、ケリー・キングがバンドのライブ活動休止(2019年)後に初めて取り組んだソロプロジェクト(本作リリースが解禁されたあとに、SLAYERは今年いくつかのフェスで数本ライブを行うことを発表)。2020年初頭から盟友ポール・ボスタフ(Dr/SLAYER)とともに本プロジェクトにじっくり取り掛かり、DEATH ANGELのマーク・オセグエダ(Vo)、MACHINE HEADやVIO-LENCEなどで名を馳せたフィル・デンメル(G)、HELLYEAHのカイル・サンダース(B)というスラッシュメタル/ヘヴィミュージック界のオールスターメンバーと呼べるような布陣が揃ったところで、2023年に本作を一気に完成させます。

プロデューサーに名手ジョシュ・ウィルバー(GOJIRALAMB OF GODMEGADETHTRIVIUMなど)を迎えた本作(ケリーにとっては初タッグになるのかな?)。首尾一貫して王道かつ正統的なオールドスクール・スラッシュメタルが展開されており、全13曲/約46分まったく息つく間を与えないほどの緊張感と殺傷力を持った、いかにもケリー・キングらしい刺々しいサウンドを楽しむことができます。

期待感を十分に高めてくれるオープニングSE「Diablo」からストロングスタイルの疾走スラッシュナンバー「Where I Reign」へと続く“お約束”的な流れや、緩急に富んだドラマチックなアレンジの「Crucifixation」、ケリーらしい不穏なリフワークを楽しめる「Tension」からメドレーのように続くショートチューン「Everything I Hate About You」など、切れ味鋭いアップチューンと重々しいミドルナンバーがバランスよく配置された構成は、SLAYERファン、いや黄金期のUSスラッシュメタルを愛重してきたリスナーにはたまらないものがあるのではないでしょうか。楽曲の1つひとつの完成度も非常に高く、目新しさこそないものの、ケリー・キングというアーティストに我々が求める要素はすべてここに詰め込まれているだけに、満足度は非常に高いはずです。

また、マーク・オセグエダのボーカルスタイルもどことなくトム・アラヤを彷彿とさせるものがあり(こんなに似てたっけ? 意図的に“寄せてる”のか、それともケリー側のリクエストなのか)、その楽曲スタイルや作風も相まって、「もしSLAYERが『REPENTLESS』(2015年)に続くスタジオアルバムを制作するとしたら……」なんて“Ifの世界”まで楽しめてしまう。SLAYERの“ブレイン”でありスラッシュメタルのオリジネーターのひとりであるケリーが、がそのSLAYERをお題にベイエリア・オールスターズと一緒に「存在するはずのないSLAYERの次作」を作ってしまった。本作はそんな解釈すら可能な1枚ではないでしょうか。

オールドスクールなヘヴィメタル、そしてエクストリームミュージックをとことん愛する者なら間違いなく琴線に触れるはず。局地的には「2024年を代表するような1枚」と呼べる本作を携え、ケリー・キングは現在ツアーを行なっている最中ですが、秋にSLAYERが稼働してしまうことで一時的に活動がストップしてしまいそう。そのあとでもいいので、できればこのメンツでの来日を実現させ、定期的に新作を届けてくれるとありがたいです。

 


▼KERRY KING『FROM HELL I RISE』
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2024年5月30日 (木)

SLASH『ORGY OF THE DAMNED』(2024)

2024年5月17日にリリースされたスラッシュの最新ソロアルバム。日本盤は同年5月22日発売。

近年はGUNS N' ROSESとしてのツアーと並行して、自身のバンド・SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS名義でのソロ活動を充実させていたスラッシュ。純粋なソロ名義でのアルバムはセルフタイトルの初ソロアルバム『SLASH』(2010年)以来14年ぶり、THE CONSPIRATORSとしてのアルバム『4』(2022年)からは約2年ぶりのスタジオ音源となります。

今作では曲ごとにさまざまなフロントマン(シンガー)をフィーチャーした、『SLASH』に次ぐ内容。ただ、『SLASH』がオリジナル曲で構成されていたのに対し、今作では往年のブルース&ソウルナンバーをカバーしており、スラッシュというミュージシャン/ギタリストの根源にあるものをストレート&ダイレクトに届けるスタイルとなっています。

参加アーティストはクリス・ロビンソン(Vo, Harp/THE BLACK CROWES)、ゲイリー・クラーク・Jr.(Vo, G)、ビリー・F・ギボンズ(Vo, G/ZZ TOP)、クリス・ステイプルトン(Vo)、ドロシー(Vo/DOROTHY)、イギー・ポップ(Vo)、ポール・ロジャース(Vo/ex. FREE、ex. BAD COMPANYなど)、デミ・ロヴァート(Vo)、ブライアン・ジョンソン(Vo/AC/DC)、スティーヴン・タイラー(Harp/AEROSMITH)、タッシュ・ニール(Vo, G)、ベス・ハート(Vo)、ジョニー・グリパリック(B)、マイケル・ジェローム(Dr)、テディ・アンドレアディス(Key)などと、ジャンルの枠を超えた豪華な面々。ポップフィールドにまで幅を利かせているのは、初ソロアルバム『SLASH』同様ですね。その『SLASH』にも重複しての参加はイギー・ポップのみかしら。

選曲はCREAMの名演でお馴染み「Crossroads」をはじめ、「Hoochie Coochie Man」や「Key To The Highway」「Born Under A Bad Sign」「Papa Was A Rolling Stone」など誰もが一度は耳にしたことがある名曲から、FLEETWOOD MACの初期曲「Oh Well」やLED ZEPPELINがパクったことで知られる「Killing Floor」まで、クラシックロックのルーツナンバーが満載。これらの楽曲を原曲の空気感を大切にしつつ、スラッシュがエモーショナルで豪快なギタープレイを思う存分奏でている。また、曲ごとに色の異なるシンガーたちが、地味かつシンプルな原曲の世界に見事に華を添えており、全12曲/約70分と長尺ながらも比較的スルスルと聴き進めることができるはずです。

オープニングを飾るクリス・ロビンソン節炸裂の「The Pusher」を筆頭に、とにかくどの曲もボーカリストのカラーとスラッシュの(時に手癖に頼りつつ、時にはそこから逸脱した)エネルギッシュなギタープレイが印象的。中でも、イギー・ポップをフィーチャーした「Awful Dream」と、こういうオムニバス作品にソロで参加するのは比較的珍しいブライアン・ジョンソン参加の「Killing Floor」(しかもハープはスティーヴン・タイラー)、デミ・ロバートの色香漂うボーカルとスラッシュのマウスワウがスリリングさを醸し出す「Papa Was A Rolling Stone」は個人的にもお気に入りです。

ラスト12曲目には本作で唯一のオリジナル曲「Metal Chestnut」も用意。こちらはインストナンバーなので、アルバム本編の余韻を増幅されるようなエンドロール的役割でもあるのかな。

随所にスリリングさをはらみつつも、全体としてはリラックスモードで楽しめる本作。THE CONSPIRATORSとしてのアルバム『4』で円熟みを増し始めたスラッシュのギタープレイが、ここでさらに深まっていることに気づかされるはずです。

 


▼SLASH『ORGY OF THE DAMNED』
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2024年5月27日 (月)

BRING ME THE HORIZON『POST HUMAN: NeX GEn』(2024)

2024年5月24日にデジタルリリースされたBRING ME THE HORIZONの7thフルアルバム。国内盤含めCDやアナログなどのフィジカルリリースは9月27日を予定。

まとまった新作音源集としては、今作との連続性を感じさせる9曲入りEP『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』(2020年)から3年7ヶ月ぶり、正式なフルアルバムとしては初の全英1位を記録した『amo』(2019年)以来5年4ヶ月ぶりとなります。当初は昨年夏に配信が予定されていた本作ですが、メンバーが納得いく仕上がり基準に達していないということで、発売を翌年に延期。その新作を想定してブッキングされた来日公演および『NEX_FEST 2023』でしたが、ライブのコンセプトも中途半端な形となってしまい、その年末にはブレイクの立役者のひとりであるジョーダン・フィッシュ(Key)が脱退してしまいます。

残されたメンバーはバンドの頭脳であるオリヴァー・サイクス(Vo)を中心に制作を続行。2024年に突入してからは1月に「Koo-Aid」をデジタルリリースしたのみでしたが、5月23日に突如アルバムのデジタルリリースを告知。待望のフルアルバムがついに日の目を見たわけです。

2021年から長期にわたり制作を推し進めてきた結果、先行シングル6曲という異常な状況に陥りましたが、アルバムは全16曲/約55分と非常にボリューミー。初期デスコアの余韻をちょっとだけ残しつつも、最新型のヘヴィロック/メタルを下地にしつつもモダンでポップ、ジャンルの枠を超えて万人受けしそうな内容に仕上がっています。

ここでは『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』同様、全曲解説をじっくりしてみたいと思います。

 

M-1. [ost] dreamseeker

M-2. YOUtopia
20秒に満たないイントロダクションからシームレスで突入するオープニングトラック「YOUtopia」。90年代後半から2000年代前半のニューメタルやメタルコアからの影響が強く感じられる、非常にポジティブな色合いに満ち溢れた1曲です。この壮大さの中には近年の彼らのステージとの共通点も多く見受けられます。クライマックスのブラストビートは初期の片鱗を残していますが、そこを含めつつも“脱メタル”な意欲作と言えるのではないでしょうか。

M-3. Kool-Aid
2024年1月に配信された、本作からのリードトラック(本作から通算6曲目のシングル)。前曲から連続性を持たせた構成もあってか、単曲で聴いたときとはまた違った印象も。新体制として最初の1曲ながらも、それ以前のラウドな側面を多めに残した作風は「変わらずに進むよ」という意思の表れなのかな。とはいえ、全体を覆う質感やアレンジからはメタルの枠には収まりきらない、視野の広さも感じさせます。正直、最初にこの曲を聴いたときはここまで攻めのアルバムになるとは予想もしてなかったよ。

M-4. Top 10 staTues tHat CriEd bloOd
「YOUtopia」の流れを汲む、“2010年代のBMTH meets ポップパンク/イージーコア”な新曲。ポストハードコア的側面も残しつつも、非常に軽やかに、跳ねるように進行するスタイルからはかつてのFACTとの共通点も見受けられます。『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』での経験もしっかり昇華させつつ、ラウドなバンドサウンドとモダンなデジタルサウンドをバランスよくミックスしていて、とにかく気持ちよく響く。間違いなくライブにおける新たなキラーチューンになるはず。

M-5. liMOusIne (feat. AURORA)
BMTH同様、今年の『SUMMER SONIC 2024』での来日も決定しているノルウェー出身のシンガーソングライター、オーロラをフィーチャーした新曲。ダウンチューニングを施したゴリゴリのギターを軸に、引きずるようなスローテンポで展開されるバンドアンサンブルは一時期のDEFTONESと通ずるものもあり、ポストロック経由のニューメタルの進化形と呼べなくもないかな。これまでも随所に散りばめられていた堪能的なテイストが、ここで爆発的に発揮されているのも高ポイント。とにかく好き。これで年内にDEFTONESが新作発表したら、いい流れができそうな気がする。

M-6. DArkSide
2023年10月に配信された、本作から5曲目となるリードトラック。方向性的には『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)以降の流れを汲むもので、メロディの質感やアレンジの面で相当ブラッシュアップされた印象。シンガロングできそうなサビなど含め、アンセミックな1曲ではあるものの、この手の楽曲が彼らに複数存在することから披露するタイミングを選びそう。

M-7. a bulleT w- my namE On (feat. UNDERØATH)
アメリカの老舗ポストハードコア/メタルコアバンドUNDERØATHをフィーチャーした新曲。エモーショナルなメロディラインやギターフレーズ、ブレイクダウンパートを取り入れつつもエレクトロニカ的デジタルエフェクトも散りばめたアレンジなど、古き良き時代の開放的メタルコアと密室系デジタルをバランスよくミックスしたそのスタイルは非常に興味深いなと。アルバム中盤におけるひとつの山がこれに当たるのかしら。

M-8. [ost] (spi)ritual
どことなく宗教チックな色合いの、2分弱のインタールードはNINE INCH NAILSからの影響も感じられるんじゃないかな。

M-9. n/A
シリアスな前曲からの、脱力系の歌モノにびっくりするのでは。WEEZER的なユルめのパワーポップのようでもあり、その一方でバンドの味付けは比較的ラウド寄り(グランジっぽくもあるのかな)。特に中盤からのアレンジは刺激的で、バンドとしての新たな可能性を感じさせてくれます。従来のファンはどう思うか知らんけど、本作からBMTHに興味を持ったリスナーには優しい1曲ではないでしょうか。

M-10. LosT
2023年5月に配信された、本作から3曲目のリードトラック。当時は「BMTHがポップパンクに挑戦!?」「エモ/ポップパンク復権か!?」なんて一部で騒がれたけど、今思うとここからすべてが始まっていたんだね。アルバム発売前のライブではこの曲だけ浮きがちだったけど、今作を軸にしたツアーだったら自然な形で馴染むはず。アルバムの流れ的にも前曲からいい形でつながっているし、本当に気持ちいい構成だよね。

M-11. sTraNgeRs
2022年7月に配信された、本作から2曲目のリードトラック。2022年時点では次のアルバムが『THAT'S THE SPIRIT』〜『amo』の流れを汲む方向性からいかに抜け出すか、模索の途中だったのかな。このアルバムに収録された新曲群を目の当たりにしたら、そう感じずにはいられません。けど、こうした曲をしっかり残しているという点では『THAT'S THE SPIRIT』以降ファンになったリスナーに対して誠実でもあるのかな。そういった点では、アルバム全体のバランス取りにも難航したのかもしれませんね。

M-12. R.i.p. (duskCOre RemIx)
比較的従来のスタイルにも寄り添いつつ新規軸を見せるアルバム用新曲。ライブで映えるというよりは、アルバムの中の1曲として輝きを増すタイプのような気がします。そのタイトルと曲終盤のSE含め、続く次曲への序章と受け取ることもできるのかな。

M-13. AmEN! (feat. Lil Uzi Vert and Daryl Palumbo of GLASSJAW)
2023年6月に配信された、本作から4曲目のリードトラック。エモ/ポップパンクな「LosT」から日を置かずに配信されたこちらは、ラッパーのリル・ウージー・ヴァートやUSポストハードコアバンドGLASSJAWのダリル・パルンボ(Vo)をフィーチャーした、本作中もっともヘヴィな1曲。歌メロこそ完全に昨今のBMTHですが、演奏やアレンジ面からは2ndアルバム『SUICIDE SEASON』(2008年)期の味わいも。こういう曲がひとつ含まれると、長尺のアルバムにおける最良のアクセントとして作用している気がします。

M-14. [ost] p.u.s.s.-e
アルバム終盤へ向けたインタールード的インストナンバー。ドラムンベースをベースに、いろんなコラージュをミックスすることで聴き手をカオスな方向へと誘います。

M-15. DiE4u
2021年9月に配信された、本作からの第1弾リードトラック。このアルバムの時点ではアルバムのイメージなんてまったくできていませんでしたよね……。

M-16. DIg It
アルバムの締めくくりに用意されたのは、本作中最長となる7分超の新曲(実質5分で、その後仕掛けあり)。アルバムの終末感の強い作風/曲調はまさにクライマックスに相応しい。アレンジ的にはヒップホップ寄りで、曲が進むにつれてカオティックな装いに。バンドがひとつの場所にとどまることなく、進化や成長を続けていく。その姿の(現時点における)終着点がここなのかなという気がしました。オールドスクールなHR/HMの枠から抜けきれないリスナーにはここまでかなり厳しい内容かもしれません(それはそれで否定しません)が、筆者にとってはここで鳴っている音は現在進行形でリアルに感じられるものばかり。だからこそ、これを数年後に聴いたときにどう響くのかも気になるところです。

 

以上16曲、駆け足で解説してきましたが、いかがでしょうか。多くの楽曲で日本のラウドロックバンドPaleduskのDAIDAI(G)がコライト/アディショナル・プロデューサーでクレジットされている点も、本作は大きな注目ポイントではないでしょうか。個人的には満点に近い内容で、想像以上の仕上がりでした。配信開始後、デジタルで音源も購入しましたが、この週末はずっとこのアルバムばかり聴いていました。というか、しばらくこれしか聴けない体になってしまったのですよ……。

もうこのアルバムを無理してメタルの枠に収めたり、メタルの文脈で語ること、やめません? そういうジャンル分けが彼らの日本での広まりを邪魔するんじゃないかと、このアルバムを聴いて危機感を覚えてしまったもので。単純に「カッコいいロック」で十分。間違いなく、2024年のロックシーンを語る上で(良くも悪くも)避けては通れない傑作/問題作。だからこそ、ジャンルの枠を超えてさまざまな人に聴いてほしいんです。

これらの楽曲がZOZOマリンスタジアムで、爆音で鳴らされるのが今から楽しみでなりません。

 


▼BRING ME THE HORIZON『POST HUMAN: NeX GEn』
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2024年5月26日 (日)

COMPLEX『日本一心』@東京ドーム(2024年5月15日)

Img_8800 2011年7月に同会場で行われた同会場でのライブと同タイトル、前回は東日本大震災チャリティという名目でしたが、今回は今年1月の令和6年能登半島地震の復興支援を目的に13年ぶりに復活。前回のライブは仕事でもプライベートでも行くことができず、あとから発売された映像作品でその模様を確認。ということで、COMPLEXのライブを会場を観るのは1990年11月に東京ドームで実施されたラストライブ以来、34年ぶり(笑)。

その間も吉川晃司布袋寅泰ともにソロ公演は観ていますし、それぞれのライブでCOMPLEXの楽曲を披露してきたものの、やっぱりこの2人が揃ってステージに立つとまったく異なる緊張感が生まれ、“バンドマンとしての吉川晃司”と“フロントマンの横に立ってギタリストに徹する布袋寅泰”というここでしか見られない2人の姿を目撃できる。実は、この要素を楽しみたくて今回足を運んだところもありました。

だって新曲皆無なわけだから、今回のライブだって「1990年の再々放送」になることは想像に難しくないわけで。それでも1万数千円を払ってスタンド席から豆粒大の2人を目撃しようと思えたのは、上記のような理由が大きく。実際、セットリストは最初のアンコールまで1990年、2011年とまったく一緒でした。が、大人になって渋みを増した2人のステージングと、ギタリストとして布袋を凌駕するまでの実力を身に付け、1990年の公演よりもプレイヤーとしての側面がどんどん強まっている吉川の存在感、これらを体感できただけでも今回のチケット代は安いもんだと思っています。

序盤こそ本当に再放送的要素が強かったものの、「BLUE」から始まる中盤のメロウ&ミディアムパートで空気が一変。特にこの曲で見せる吉川の表現の深みが過去の比にならないほどで、グッと引き込まれました。ただ、そういったタイプの曲を数曲続けたおかげで、若干中弛みした感も。正直、「CRY FOR LOVE」あたりで眠気が襲ってきたのも事実。もともとのセトリがこうだったというのもあるし、年齢的にも体力温存パートとして大事なブロックではあるものの、個人的には「BLUE」をピークに少しだけテンションが落ちてしまったかもしれません。

が、奥野真哉(Key)の独壇場とも言えるインスト「ROMANTICA」のアップデートバージョンに続いて「PROPAGANDA」から始まる終盤戦で、バンド側の熱量も、そして観る側のテンションも急上昇。布袋との初コラボとなる湊雅史(Dr)のパワフルなドラミングが楽曲の持つヘヴィさ、プログロック感をさらに強め、「GOOD SAVAGE」では布袋&吉川の豪華なギターバトルが楽しめた。そこから「恋をとめないで」でこの日一番の大合唱が沸き起こり、多幸感に満ちた「MAJESTIC BABY」で本編締めくくり。アンコールは名曲「1990」やライブ感の強い「RAMBLING MAN」と、ここまでは前回、前々回のドーム公演とまったく同じ流れ。でも、ダブルアンコールに過去2回では未披露の「CLOCKWORK RUNNERS」が追加され、それまでの予定調和を一気に崩してくれたんです。1stアルバム『COMPLEX』(1989年)収録曲で唯一ドームで演奏されなかったこの曲が、ついに日の目を見たわけですね。そうか、今年で『COMPLEX』リリース35周年だもんね。大きな節目に同作収録曲をすべて披露したのも、なるほどと頷けるものがありました。

アンコールのMCで布袋の口から「吉川さん、そろそろ新曲作りませんか?」という問いかけがありましたが、これは間に受けずにリップサービスとして受け取っておきます。だって、2024年のCOMPLEXサウンドなんてまったく想像できないですし。COMPLEXって、布袋が『GUITARYTHM』(1988年)というソロ作品で体現した「1980年代半ばから脈々と続くチープなデジロック」サウンドに、同時代のニューウェイヴやニューロマンティックにかぶれていた吉川のセンスが合体することで生まれた奇跡だったわけで、それを今の2人が(テクノロジーが発達した)現代のサウンドで表現しようとしても、うまく作用しないんじゃないかと思うんです。昨今の『GUITARYTHM』シリーズの流れでCOMPLEXをやるのも違うし、だからといって過去2作のアルバムの延長線上にあるサウンドメイクで新曲を作ったとしても、中途半端に古臭いものになってしまいそうで怖いし。だったら、布袋が吉川に楽曲提供して、ギタリストとしてもレコーディングに参加するくらいがちょうどいいんじゃないかと。変に色気を出して過去を上書きするよりも、思い出は思い出のままが一番。そういう意味では、再結成ライブは今回が最後でもいいくらい(そこには、今後彼らが立ちあがろうとしなくてもいいような、安心できる日常が続いてほしいという意味も込められているのですが)。

なお、帰り際BOØWY(布袋)とルースターズ(井上富雄)とニューエストモデル(奥野真哉)とDEAD END(湊雅史)のメンバーが同じバンドにいるなんて、80年代だったら絶対に想像できなかったよな」と思ったのは、ここだけの話。改めて、長生きはするものですね。

<セットリスト>
01. BE MY BABY
02. PRETTY DOLL
03. CRASH COMPLEXION
04. NO MORE LIES
05. 路地裏のVENUS
06. LOVE CHARADE
07. 2人のAnother Twilight
08. MODERN VISION
09. そんな君はほしくない
10. BLUE
11. Can't Stop The Silence
12. CRY FOR LOVE
13. DRAGON CRIME
14. HALF MOON
15. ROMANTICA (2024 Version)
16. PROPAGANDA
17. IMAGINE HEROES
18. GOOD SAVAGE
19. 恋をとめないで
20. MAJESTIC BABY
 アンコール
21. 1990
22. RAMBLING MAN
 ダブルアンコール
23. CLOCKWORK RUNNERS
24. AFTER THE RAIN (朱いChina)

2024年5月 9日 (木)

POISON『CRACK A SMILE... AND MORE!』(2000)

2000年3月14日にリリースされたPOISONの5thアルバム。日本盤は同年6月28日発売。

本作は4thアルバム『NATIVE TONGUE』(1993年)に続くスタジオアルバムとして、脱退したリッチー・コッツェン(G)に代わりブルース・サラセノ(G)を迎え1994〜95年にかけてレコーディングされた『CRACK A SMILE』をベースにした内容。この時期、ブレット・マイケルズ(Vo, G)が交通事故(1994年5月)で重傷を負ったことから制作が長期にわたり、またその間に音楽シーンがグランジやヒップホップ中心に移行したこともあり、当初は1996年のリリースに向けてプロモ盤も制作されたもののレーベル側が難色を示し、最終的にアルバムのリリースは棚上げとなります。

結局、レーベル(Capitol Records)は契約消化作として1996年にベストアルバム『POISON'S GREATEST HITS 1986-1996』(1996年)を発表。そこに5thアルバムセッションで制作された「Sexual Thing」「Lay Your Body Down」の2曲を収録するにとどまります。しかし、1999年にC.C.デヴィル(G)がバンドに復帰し、黄金期のメンバーが復活。その後のツアーが大成功を収めたことを受け、約5年の歳月を経てついに日の目を見ることとなりました。

ジョン・パーデル&デュエイン・バーロン(アリス・クーパーDREAM THEATERL.A. GUNSオジー・オズボーンなど)をプロデューサーに迎え制作された本作は、1996年時点では全12曲入りアルバムとなる予定でした。が、『AND MORE!』という副題が付けられた2000年リリース作にアルバムアルバム本編にアウトテイク3曲(「One More For The Bone」「Set You Free」「Crack A Smile」)、2ndアルバム『OPEN UP AND SAY...AHH!』(1988年)制作時のアウトテイク「Face The Hangman」、さらに1990年の『MTV Unplugged』出演時に録音されたアコースティックライブ音源4曲を加えた、全20曲入りとなっています。

『CRACK A SMILE』本編自体はベスト盤で先行公開されていた「Sexual Thing」や「Lay Your Body Down」で何となく想像できていたように、3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)や前作『NATIVE TONGUE』の延長線上にある、非常に練り込まれよく作り込まれたハードロックアルバムと言えるでしょう。なので、その2作を楽しめる耳をお持ちでしたら難なく受け入れられることでしょう。ブルース・サラセノのギタープレイもバンドのカラーに合わせた、そつないもので収まっているので、彼のソロキャリアと同等のものを期待すると若干肩透かしを喰らうかもしれません。

90年代半ばのシーンを意識してか、ヒップホップ的テイストをほんのりと散りばめた「Shut Up, Make Love」や「No Ring, No Gets」、DR. HOOK & THE MEDICINE SHOWのカバー「Cover Of The Rolling Stone」もスパイスとして存在感を発揮していますし、そのほかのオリジナル楽曲もいかにも彼ららしいものばかり。これが『NATIVE TONGUE』と同時代に1リリースされていたら、それなりのヒットを記録していたことでしょう。しかし、1996年といったらニューメタル全盛期。そりゃあメジャーでこれを大々的に売り出そうとは思わないか……残念ですが。

時代が何周も回った2024年だったら、本作を純粋に良質なハードロックアルバムとして、あるいは歴史の一部として受け入れることもできるでしょう。そういう意味では良い時代になりましたね。

なお、アルバム終盤の5曲(「Face The Hangman」以降)が急に別のギタリスト(C.C.デヴィル)に変わるので、ちょっとした違和感を覚えるかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで(サブスクだと『MTV Unplugged』の4曲は未配信なので、そこまで『CRACK A SMILE』の世界観を崩すことはないですけどね)。

 


▼POISON『CRACK A SMILE... AND MORE!』
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2024年5月 7日 (火)

TESLA『MECHANICAL RESONANCE』(1986)

1986年12月8日にリリースされたTESLAの1stアルバム。日本盤はアナログが翌1987年2月25日、CDが1989年5月10日に発売されています。

80年代初頭にCITY KIDDと名乗っていたカリフォルニア州サクラメントのローカルバンドが、1984年にジェフ・キース(Vo)、フランク・ハノン(G)、トミー・スキーオ(G)、ブライアン・ウィート(B)、トロイ・ルケッタ(Dr/ex. ERIC MARTIN BAND)というメンバーが揃ったことで、バンド名を現在のTESLAへと改名。以降、精力的なライブ活動を展開したのちにGeffen Recordsと契約し、スティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロ(A-HAGUNS N' ROSESMETALLICAマドンナなど)をプロデューサーに迎えてデビューアルバムを制作します。

当初こそ大きな話題にならなかったものの、地道なツアーと「Little Suzi」(全米91位)のスマッシュヒット、「Modern Day Cowboy」や「Gettin' Better」のMVがMTVでヘヴィローテーションされたこともあり、アルバムはリリースから数ヶ月後に最高32位まで上昇。最終的に100万枚を超えるヒット作となりました。

いわゆるヘアメタルに部類されるバンドではあるものの、その無骨で土着的なサウンドは同時期にデビューしたCINDERELLAとの共通点も見受けられ、ヘアメタル界隈の中では硬派な印象を受けます。ヘアメタルというとグラムロックからの影響(ヴィジュアルのみならずサウンド面でも)が感じられますが、このTESLAに関してはそういった側面はまったく感じられず(MVでは多少メイクはしていますが)、そのへんは同じカリフォルニアでもサクラメントという土地柄の影響かもしれません。

先の「Modern Day Cowboy」や、アルバム冒頭を飾る「EZ Come EZ Go」、ライブのオープニングにふさわしいファストチューン「Comin' Atcha Live」などは正統派ハードロックバンドの印象が強いし(「Modern Day Cowboy」で聴けるドラマチックなアレンジやギターのツインリードはむしろヘヴィメタル的か)、その一方で「Gettin' Better」や「Little Suzi」などアコースティックテイストを適度にはらんだアーシーさは、その後のBON JOVIPOISONなどのヒットとの共通点も見受けられる。また、「We're No Good Together」ではソウルフルな側面を打ち出したパワーバラードが展開されており、1987年以降のHR/HMシーンのひと足先を進んでいるようにも映る。さらに、全12曲/約53分というCDを意識したトータルランニングもアナログ/CD移行期間において先見の明があった、と受け取ることもできる。いろんな意味でシーンの一歩先を読んでいた、実はかなり優れたデビューアルバムだったことを後々理解することになります。

出来過ぎ!ってくらいによく作り込まれた本作でしたが、続く『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』(1989年)ではそのスタイルがさらに洗練され、キャリア最大のヒットを記録することになります。

 


▼TESLA『MECHANICAL RESONANCE』
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2024年5月 2日 (木)

TESLA『BUST A NUT』(1994)

1994年8月23日にリリースされたTESLAの4thアルバム。日本盤は同年9月21日発売。

全米13位まで上昇し、100万枚以上を売り上げた前作『PSYCHOTIC SUPPER』(1991年)から約3年ぶりの新作。BAD COMPANYやGIANT、3 COLOURS REDなどを手がけたテリー・トーマスを初めてプロデューサーに迎えて制作された、メジャーレーベルGeffen Recordsからの最終作となります。

前々作『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』(1989年)からのバラードシングル「Love Song」、およびアコースティックライブアルバム『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』(1990年)の大ヒットの反動からか、前作『PSYCHOTIC SUPPER』は全体を通じてハードな仕上がりでしたが、続く今作も基本的な作風はその延長線上にあると言っていいでしょう。ただ、前作は「Edison's Medicine」といったファストチューンがリードシングルであったりアルバム序盤に配置されていましたが、今回はひたすらヘヴィなミドルテンポで攻めるという潔さ。時代的に80年代後半に登場したヘアメタルバンドが駆逐され、代わりにグランジ勢やPANTERAをはじめとするモダンヘヴィネスが台頭したことも、そうした作風に影響を与えたのかもしれません。

ドラマチックな組曲「The Gate / Invited」、転調からのツインリードソロという王道ヘヴィメタル的アレンジの「Shine Away」など、序盤からかなり熱のこもった楽曲がずらりと並び、「これは軽く前作超えでは?」と掴みもバッチリ。個人的には1stアルバム『MECHANICAL RESONANCE』(1986年)や2ndアルバム『THE GREAT READIO CONTROVERSY』をよりモダンに進化させた、という印象を当時持った記憶があります。

LED ZEPPELIN的なヘヴィグルーヴの「She Wants She Wants」や「Mama's Fool」、彼ららしいクセの強いコード使いが印象的な「Action Talks」や「Earthmover」、正統派ハードロックバンドらしいアップチューン「Cry」、エピカルな側面を強めた「Rubberband」、そして単なるパワーバラードで終わらない「Try So Hard」や「Need Your Lovin'」「Alot To Lose」など、1曲1曲のクオリティは非常に高い。過去3作での経験をより高い純度で昇華させた、充実度の高い楽曲群を前にしたら、本作こそTESLAの最高傑作と言いたくなってしまはずです。

もし、本作に対して難癖を付けるとしたら、全14曲/約70分の大作であること(日本盤はさらにLED ZEPPELIN「The Ocean」カバーを追加)。全14曲中7曲が5〜6分台と長尺で、かつ1曲の密度も高い。前作『PSYCHOTIC SUPPER』も全13曲で約68分と長尺な作品でしたが、今作も同様にすべてを咀嚼するまでに相当の時間を要しました。特に、よりシンプルな方向へとシフトしていた90年代半ばにおいては、時代に反した1枚だったこともあり、セールス的には過去3作には及ばず。全米20位/50万枚と彼らにしては低調で終わり(それでも、この手のバンドにしては当時大健闘だったのですが)、先に述べたようにデビューから在籍したGeffen Recordsとの契約はここで終了してしまい、トミー・スキーオ(G)もバンドを脱退。1996年にはバンド解散を余儀なくされます。

前作のときにも「これ、10曲に絞ったらもっとキュッと絞まったいいアルバムになったのに」と感じましたが、それは今作も同様でした。ただ、今回は前作以上に捨て曲皆無の仕上がりだっただけに、本当にそこだけが残念なんですよね。

 


▼TESLA『BUST A NUT』
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