2022年12月31日 (土)

INDEX

当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2020年1月17日更新)


【0〜9】 【A】 【B】 【C】 【D】 【E】 【F】 【G】 【H】 【I】 【J】 【K】 【L】 【M】 【N】 【O】 【P】 【Q】 【R】 【S】 【T】 【U】 【V】 【W】 【X】 【Y】 【Z】 【あ】 【か】 【さ】 【た】 【な】 【は】 【ま】 【や】 【ら】 【わ】 【コンピレーション】 【フェスティバル/イベント】 【企画記事】 【年間ベスト】 【100番勝負】 【映画レビュー】

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2020年2月29日 (土)

2019年11月〜12月のアクセスランキング

ここでは2019年11月1日から12月31日までの各エントリーへのアクセス数から、上位30エントリーを紹介します。

内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いたトップ30。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2019年9〜10月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)(※2019年9月30日更新/→1位)

2位:TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)(※2019年9月13日更新/→2位)

3位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日更新/↑20位)

4位:CRY OF LOVE『BROTHER』(1993)(※2019年6月19日更新/Re)

5位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)(※2019年10月9日更新/↑8位)

6位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日更新/↓4位)

7位:11月24日、エリック・カーを偲んで。(※2005年11月25日更新/Re)

8位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日更新/↑10位)

9位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日更新更新/↓6位)

10位:MICHAEL MONROE『ONE MAN GANG』(2019)(※2019年11月3日更新/NEW!)

 

11位:VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)(※2017年3月24日更新/↑13位)

12位:MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』(1998 / 2009)(※2019年11月22日更新/NEW!)

13位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/↓11位)

14位:MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)(※2019年9月11日更新/↓3位)

15位:THE CULT『ELECTRIC』(1987)(※2017年9月22日更新/↑19位)

16位:ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)(※2018年4月12日/↓5位)

17位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)(※2018年5月16日更新/↓7位)

18位:DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)(※2019年5月13日更新/↑25位)

19位:IN FLAMES『COLONY』(1999)(※2019年11月5日更新/NEW!)

20位:BLOOD INCANTATION『HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE』(2019)(※2019年12月1日更新/NEW!)

 

21位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓15位)

21位:BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)(※2018年2月4日更新/Re)

23位:UGLY KID JOE『AMERICA'S LEAST WANTED』(1992)(※2019年11月8日更新/NEW!)

24位:IRON MAIDEN『POWERSLAVE』(1984)(※2019年11月1日更新/NEW!)

25位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/Re)

25位:UFO『WALK ON WATER』(1995)(※2017年8月10日更新/↓14位)

25位:FLYING COLORS『THIRD DEGREE』(2019)(※2019年12月12日更新/NEW!)

28位:THE OFFSPRING『AMERICANA』(1998)(※2018年9月7日更新/Re)

29位:THE WiLDHEARTS『DIAGNOSIS』(2019)(※2019年10月8日更新/↓25位)

29位:WHITESNAKE『FLESH & BLOOD』(2019)(※2019年5月11日更新/Re)

29位:U2『THE UNFORGETTABLE FIRE』(1984)(※2019年6月25日更新/Re)

29位:PRETTY MAIDS『UNDRESS YOUR MADNESS』(2019)(※2019年11月19日更新/NEW!)

29位:2019年総括:④楽曲編&印象的なライブ編(※2019年12月31日/NEW!)

29位:PRINCE『BATMAN』(1989)(※2019年2月13日更新/↓9位)

2020年1月31日 (金)

2020年1月のお仕事

2020年1月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※1月11日更新)

 

[紙] 1月11日発売「ヘドバン Vol.25」にて、「時代を変えたメタル・アルバム」ベスト50内のアルバム評を担当・執筆、「35名が選ぶ、俺の/私の2019年のメタル系ベスト・アルバム」企画に寄稿しました。(Amazon

[WEB] 1月9日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のコラム白石麻衣が胸に秘めた乃木坂46への熱い思い “グループの顔”として残した功績を振り返るが公開されました。

[紙] 1月4日発売「日経エンタテインメント!」2020年1月号にて、乃木坂46秋元真夏インタビュー、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」構成、日向坂46渡邉美穂の新連載「今日も笑顔で全力疾走」構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 1月3日、「リアルサウンド」にて乃木坂46秋元真夏インタビュー乃木坂46 秋元真夏 1万字インタビュー「後輩グループも背負っているという責任感が芽生えてきた」が公開されました。

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また、12月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1912号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

2020年1月18日 (土)

ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』(1993)

1993年5月にリリーされた、ロバート・プラント通算6作目のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年6月に発売されています。

80年代後半のHR/HMブームの延長で、LED ZEPPELINに再評価が集まり、カタログのCD廉価盤リリース(日本において)、Atlantic Recordsの周年イベントでの再結成ライブ、さらにはジミー・ペイジ初のソロアルバム『OUTRIDER』(1988年)やプラントの4thソロアルバム『NOW AND ZEN』(1988年)のリリースおよび両作にお互いゲスト参加するなどのトピックもあり、『NOW AND ZEN』はアメリカで300万枚を超える大ヒットに。続く『MANIC NIRVANA』(1990年)も全英15位/全米12位のスマッシュヒットを記録するなど、個人としても非常に充実した時期を迎えていた90年代前半、プラントはこの『FATE OF NATIONS』で新たな試みに挑戦します。

それは、打ち込み主体だった過去2作(『NOW AND ZEN』『MANIC NIRVANA』)から打って変わって、バンドサウンドを軸にしたアルバムを制作すること、バンドメンバーに名うてのミュージシャンを迎えることでした。

クリス・ヒューズ(TEARS FOR FEARSピーター・ガブリエルポール・マッカートニーなど)を共同プロデューサーに迎えた本作では、曲ごとに多彩なゲストプレイヤーが参加。そこで気に入なったメンバーが、おそらくその後のツアーにも参加することになったのではないかと想像しますが、そのメンツはフランシス・ダナリー(G/ex. IT BITES)、ケヴィン・スコット・マクマイケル(G/ex. CUTTING CREW。2002年逝去)、マイケル・リー(Dr/ex. LITTLE ANGELS)といった新しいところから、ダグ・ボイル(G)、チャーリー・ジョーンズ(B)、クリス・ブラックウェル(Dr)、フィル・ジョンストン(Key)など過去のアルバム/ツアーにも参加した面々も見つけることができます。

プラントはこのアルバムについて「本作を制作する前に、MOBY GRAPEやJEFFERSON AIRPLANE、ティム・ハーディン、QUICKSILVER、TRAFFICなど自分のルーツを振り返った」とコメントを寄せていますが、これがすべてなんでしょうね。つまり、LED ZEPPELINに参加する前、音楽を始めた頃の気持ちにまで一度立ち返って、改めて音楽を作ろうとした。そのために気心知れた仲間だけじゃなくて、新しい血も加えることで化学反応を期待したと。

その結果、「Calling To You」や「Memory Song (Hello Hello)」「Promised Land」などずっと避けてきたツェッペリン的ハードロックに堂々とチャレンジしているわけです。まあ、過去2作でその助走はできていたので、今作でそれに挑むことはそう難しくなかったと思います。環境的にも追い風が吹いていましたしね。

かと思えば、トム・ハーディンのカバー「If I Were A Carpenter」含めトラッド調の楽曲もいくつか含まれておるし、「29 Palms」のようなAOR風ポップロック、「Great Spirit」というソウルナンバーも用意されている。全編でツェッペリンしまくっているわけではなく、自身のルーツに忠実にさまざまなタイプの楽曲に挑戦する。ある意味ではバンド時代〜ソロ活動の集大成とも言える作風ではないでしょうか。そういう意味では雑多と言えなくもないですが、自分は前時代的な打ち込みポップ主流だった近作よりも好きな1枚です。

にしても、ここでの試みがそのままツェッペリンのセミ再結成……PAGE AND PLANTへとつながるとは、このときは考えてもみませんでしたが(またこの締めかよ。笑)。

 


▼ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』
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2020年1月17日 (金)

FRANCIS DUNNERY『WELCOME TO THE WILD COUNTRY』(1991)

IT BITESフランシス・ダナリーが1991年11月に発売した初ソロアルバム。当初はVirgin Japanを通じて日本のみのリリースでしたが、のちに海外でも発表されたようです(2001年には彼自身のプライベートレーベルから、リマスター&ボーナストラック追加で再発されています)。

1990年夏にバンドを脱退したフランシスはイギリスからLAに渡り、「テクニカル・バンドの枠に収まりたくない」という思いからネオ・プログレッシヴロック=ポンプとは異なるバンド結成を画策。マイケル・リア(B/アルバムクレジットではヴェガス・レアと記載)、エディ・バッダー(Dr/同、ナン・バッダーと記載)をオーディションで迎え、IT BITESの4thアルバムを一緒に制作する予定だったデヴィッド・ヘンツェル(GENESIS、マイク・オールドフィールド、BRAND Xなど)とともにレコーディング。まだバブルの余韻が残っていたのでしょうか、日本のVirgin Japanのバックアップでここまでのデビューアルバムを完成させたわけです(今の時代じゃ考えられないことですが)。

本作はプログレッシヴロックというよりもハードロックやブルースロックの色合いが強い、自由度の高い内容に仕上がっています。それは、きめ細かに作り込まれた楽曲が目立ったIT BITESとは相反し、スタジオセッションでのナマ感がそのまま採用された作風に強く表れていると思います。

オープニングの「Jack Won’t Let You Go」、続くタイトルトラック「Welcome To The Wild Country」のカッコよさたるや。“Very British”な作風だったIT BITESを愛するファンからしたら、このアメリカナイズされた楽曲&サウンドは絶望を覚えるレベルかもしれませんが、ことIT BITESに関しては完全に後追いだった僕からしたら本作は「純粋にカッコいいハードロックアルバム」の1枚でしかありませんでした。

アンチ・テクニカルを掲げてIT BITESを脱退したフランシスですが、本作でのギタープレイはかなりの技巧派で、テクニカルの範疇に含まれるものだと思います。が、それらのプレイが設計図どおりに作られたものではなく、その場の感情・思いつきによって奏でられたものであることは、このアルバムを聴けばご理解いただけるはず。つまり、テクニックの使い方の違いが大きいわけです。僕はIT BITESでの表現も(今となっては)大好きですが、本作で表現されているスタイルもお気に入り。つまり、いろんな引き出しを持つフランシス・ダナリーってカッコいいと思うわけですよ(単純な話ですが)。

「Kiss Me」みたいなブルースロックもたまらないし、どこかIT BITES時代にも通ずる空気感を持つ(だけど良い意味でアメリカナイズされた)9分近い大作「Jackal In Your Mind」も素敵。「Heartache Reborn」のようなポップチューンも、「All I Ever Wanted Was You」という豪快なロックナンバーも、皮肉に満ちた歌詞が最高なアコースティックバラード「Another Day」も、どれを取っても最高の一言。女性コーラスが加わることでゴージャスさが増している点も、本作を良い方向に導いていますし、個人的には90年代の名盤のひとつに挙げたい「もっと知られるべき」1枚だと確信しています。

だけど、このアルバム発表後にまさか彼がロバート・プラントのツアーバンドに加入することになるとは、さすがに想像もしてなかったけどね(笑)。

 


▼FRANCIS DUNNERY『WELCOME TO THE WILD COUNTRY』
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2020年1月16日 (木)

LED ZEPPELIN『IN THROUGH THE OUT DOOR』(1979)

1979年8月にリリースされたLED ZEPPELINの8thアルバム。

前作『PRESENCE』(1976年)から3年5ヶ月という、もっとも長いスパンを経て届けられた本作。もちろんその間には2枚組ライブアルバム『THE SONG REMAINS THE SAME』(1976年)の発売もありましたが、1977年夏のツアー中にロバート・プラント(Vo)の息子が亡くなったり、ジョン・ボーナム(Dr)が暴行事件で逮捕されたりと災難が続き、ツアーも途中でキャンセルに。一時代を築いたロックバンドは長きに渡り沈黙することになります。

その合間にはイギリスでのパンク・ムーブメント勃発もあり、ツェッペリンは完全に「過去のもの」として見なされるように。しかし、約1年の休止期間を経てバンドは再集結し、今後の方針をミーティング。秋にはついにレコーディングに突入することになります。

ジミー・ペイジ(G)完全主導で制作されたキーボードレスの“ギターアルバム”『PRESENCE』に対して、本作ではジョン・ポール・ジョンズ(B, Key)が大活躍。当時の最新鋭シンセサイザーを導入するなど、全曲でジョンジーのピアノやキーボードがフィーチャーされています。

また、作曲面でも全7曲中ジョンジーは6曲にクレジット。ペイジ&プラント単独で書かれたのは朗らかなカントリーロック「Hot Dog」のみ。全体的にもペイジのカラーは希薄で、初期〜中期のバンドが持っていた鋭角的なブルース・ハードロック色は完全に払拭されています。

それに取って代わったのが、サンバに加えて当時流行り始めていたテクノポップという、新境地的な要素。オープニングの「In The Evening」こそ多少エッジの効いたギターを楽しむことができますが、続く「South Bound Saurez」ではメインのリフを刻むのはピアノですし、続く「Fool In The Rain」もしかり。そこに先の「Hot Dog」が続くわけですから、緊張感みなぎる『PRESENCE』とはある種対極にある作風と言えるでしょう。

アルバム後半には10分を超えるテクノポップ的リフを持つ「Carouselambra」でバンドとしての新境地を見せつけ、プラントが亡き息子について歌ったバラード「All My Love」、ソウルフルなボーカル(特に終盤が圧巻!)が際立つ「I'm Gonna Crawl」と“大人になったツェッペリン”を全面的にアピール。パンク・ムーブメントと来たる新たなHR/HMムーブメントの間にこうした新機軸を打ち出したのは、バンドとしてもかなりの冒険だったのではないでしょうか。

結果的には翌年ボンゾが急逝したことで、本作が最後のオリジナルアルバムとなってしまいましたが、当時はここで終わるなんてこと誰も考えていなかったと思います。しかし、結果として「All My Love」や「I'm Gonna Crawl」のような“エモさ”で締めくくることになってしまった本作は、ボンゾの遺作という意味において冷静な判断を下し難い、非常に厄介な1枚となってしまいました。サウンド面での変化なども含めて、本作には手を出しにくいと思っている(いた)リスナー、少なくないんじゃないでしょうか(実際、僕もツェッペリンのカタログを聴き進める際、本作に手を伸ばしたのは本当に最後でしたから)。

正真正銘のラスト作として、数年後に未発表曲集『CODA』(1982年)を発表しているものの、やはりツェッペリンはここで終わった。本来ならジョンジーの新たな才能が開花した本作を経て、ここで抑えた分のペイジのアイデアも炸裂した、正真正銘の“LED ZEPPELIN第2章”が次作でスタートするはずだったんでしょうね……。たられば話を今さらしても後の祭りですが、実際どんな化学反応が起きたのか……我々の想像を絶するものになったかもしれないし、あるいは本作の延長でお茶を濁したのか。本当にどうなっていたんでしょうね?

 


▼LED ZEPPELIN『IN THROUGH THE OUT DOOR』
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2020年1月15日 (水)

PINK FLOYD『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』(1987)

1987年9月にリリースされたPINK FLOYDの13thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年10月に発売されています。って、今思えばRUSH『HOLD YOUR FIRE』(1987年)とほぼ同タイミングにリリースされたんですね。それで同じような印象を持ったのかしら。

自分が洋楽ロックを聴き始めて、最初に接したPINK FLOYDの新譜がこれでした。当時高校1年生だった僕は「これがPINK FLOYDか……」と胸をワクワクさせながら、本作と向き合った記憶があります。なにせ、『狂気(THE DARK SIDE OF THE MOON)』(1973年)や『THE WALL』(1979年)といった名作に触れるのは、そのもっとあとになってからですからね。

すでにMTVや『ベストヒットUSA』といった洋楽番組でリードトラック「Learning To Fly」のMVを目にしていたので、そのサウンドがどんな感じかは理解していました。この1曲を聴いた限りでは「あれ、プログレっていうかもっと小難しいと思ってた。めっちゃソフトじゃん」という感想。今思えば、完全にAORと同じ感覚でした。

で、アルバムをレンタルして聴くわけですが(当時、アナログ盤も発売されていたと思いますが、ここはいい音で……という短絡的な理由でCDを借りることに)……「これ、プログレ?」と疑問を感じるわけです。ロジャー・ウォーターズがいない、デイヴ・ギルモア主導だとかCDの解説にも書いてあったと思いますが、ほぼ初心者の僕からすればそういった要素は二の次なわけで、ここで鳴らされている音楽こそがすべて。「なんだか16歳の自分には難しいな……」と思ったのでしょうね。カセットテープにダビングして2〜3回聴いて、放ったらかしにしたと思います。

結局、90年代に入って上京して、自分のお金でCDを自由に購入できるようになってから再びこのアルバムと向き合い、その魅力に気づいたわけです。

HR/HMがメインストリームに躍り出た時代だったからか、質感的には重厚さこそ感じられるものの、本作はプログレッシヴロックというよりはAOR的要素の強い1枚だと思います。要所要所に短尺のインタールードを挟むことでコンセプチュアルな雰囲気を醸し出していますが、ストーリーとしてのトータル性はあまり感じられない。“コンセプチュアルな雰囲気”、これこそがすべての1枚かなと。

歌詞やタイトル(特にアナログM-1〜5のA面)においては、ロジャーなきあと新たに手がけることになった元SLAPP HAPPYのアンソニー・ムーアの手腕によるものが大きいと思います。ニック・メイソン(Dr)&リチャード・ライト(Key)も制作に貢献しているものの、基本的にはギルモアがPINK FLOYDを立て直そうとほぼソロ体制で作り上げた、そんな1枚かもしれません。

だからなのか、『鬱』という邦題のわりにはピースフルでポジティブな空気に満ちている気がします。サウンドのファット感はハードロックやAORが主流だった80年代半ばならではといえばそれまでですが、かなり聴きやすいもので、先鋭的だったプログレの香りは薄いかも。そんな中、デイヴのギターはかなり魅力的なフレーズ/プレイ満載で、「On The Turning Away」や「Sorrow」といった楽曲での“地味なのに印象に残る味わい深い”フレージングはさすがの一言。まあ、そこには高校生の頃はまったく耳が行きませんでしたが(派手さしか求めていなかったので。笑)。

ちなみに今作、全英/全米3位を記録。全米だけでも400万枚以上を売り上げる大ヒット作となり、バンドの健在ぶりをアピールすることに成功しています。よかったね、ギルモアさん。

時代に呼応した“アリーナロック化したPINK FLOYD”と言ってしまえばそれまでですが、これはこれで良いと思うんです。これがあったから、末期の傑作『THE DIVISION BELL』(1994年)が生まれたわけですから。

 


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2020年1月14日 (火)

RUSH『HOLD YOUR FIRE』(1987)

1987年9月にリリースされたRUSHの12thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年10月に発売されています。

『MOVING PICTURES』(1981年)から本格化した“ラジオ・ライク”なショートチューン路線。シーケンサーを導入したシンセサウンドが加わったことで、それ以前のプログレッシヴロック的な作風からニューウェイヴ的スタイルへと移行したことで、RUSHはよりポップで親しみやすい作品を極めていくことになります。

本作はその“80年代のシンセポップ路線”の集大成といえるような内容で、ドラムのカラフル&メロディアスなタムタムの音色や、ギターよりもシンセが際立つアレンジ、どこか憂いの感じられる切ないメロディからは、職人技ともいえる極みが感じられます。

時代的にもYESが「Owner Of A Lonely Heart」で全米1位を獲得し(1983年)、GENESISは「Invisible Touch」という極上のポップソングで全米No.1に輝いた(1986年)あとに、RUSHもついに究極のポップ路線を完成させた。上記の流れを顧みると、この進化は非常に納得いくものがあるのではないでしょうか。

ただ、残念ながらRUSHの場合こういった試みがシングルヒットにまでは結びつかず、さらにアルバム自体も『MOVING PICTURES』を最後にセールスが失速。本作はしばらく続いた全米TOP10入りを逃し(最高13位)、売り上げも50万枚止まり。思えばこのバンドの場合、歌詞を書いているのはニール・パート(Dr)ですものね。知的すぎたのかな……そりゃフィル・コリンズとは違いますよ。

まあ冗談はさておき。どの曲も非常によく作り込まれており、ぶっちゃけ隙が見つからない。かといって、それが息苦しさを与えるのかというとそんなこともなく、一流のポップソングとしても成立している。なのに、よく聴き込むと各々のプレイ/アレンジが非常にテクニカルで凝っている(だから「隙が見つからない」んですけどね)。しかも今作は、「Time Stand Still」と「Prime Mover」にコ・リードボーカルとしてエイミー・マンが参加しているのも大きな特徴。RUSHのアルバムに女性シンガーがフィーチャーされるのはこれが初めてだったんじゃないかな。ドラムやシンセの音色/エフェクトに時代を感じてしまうものの、楽曲の質は80年代の作品で最高のものと言えるでしょう。

RUSHはこの傑作のあと、ポップ路線のまとめとしてライブアルバム『A SHOW OF HANDS』(1989年)をリリース。その後、さらなる混沌への入り口として13thアルバム『PRESTO』を1989年11月に発表します。ギリギリ80年代の作品ではあるものの、すでにここで『COUNTERPARTS』(1993年)への布石が感じられるのですが、それについてはまた別の機会に。

 


▼RUSH『HOLD YOUR FIRE』
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2020年1月13日 (月)

RUSH『MOVING PICTURES』(1981)

RUSHが1981年2月にリリースした、通算8作目のスタジオアルバム。日本盤は同年4月、当時にEPIC SONYから発売さてました(当然アナログ盤で)。

最初期のハードロック路線から徐々に大作路線へと移行したRUSHでしたが、前作『PERMANENT WAVES』(1980年)制作時に「ラジオで好まれる、短くキャッチーな曲を用意しろ」とレーベルから急かされたことで、その路線をさらに変化させていきます。

そんな中で生まれたこの『MOVING PICTURES』という作品は、ラジオで好まれる4分台の楽曲を中心にしつつも、「YYX」のようにテクニカルなインスト曲、「The Camera Eyes」といった10分超の大作も用意されており、バンドとしてのそれ以前のアイデンティティを残しつつも新たなフィールドへと挑もうとする野心がバランスよく混在する、まさに傑作と呼ぶにふさわしい1枚に仕上がっています。

シンセを導入した“ラジオ・ライク”な(それでいて、このバンドらしい小難しさもしっかり備わっている)「Tom Sawyer」といい、軽快なノリを持つ「Red Barchetta」といい、どれも本当にキャッチーでポップなんですよね。だけど、演奏面だけでいうと実はものすごくテクニカルなことをやっている。良い意味で気を抜けない楽曲が冒頭から並ぶのですが、その気の抜けなさにおける極め付けが先のインスト「YYZ」という……この曲の超絶さ、圧巻です。

かと思えば、再びキャッチーなロックンロール「Limelight」が登場したり、プログレバンド的な神秘性が前面に打ち出された11分にわたる組曲「The Camera Eye」があったり、それに続く「Witch Hunt」で大作の余韻をさらに味あわせてくれたりする。で、ラストに再びシンセポップ調の「Vital Signs」で締めくくる。中盤〜後半にかけてプログレッシヴな側面をこれでもかと提示していますが、アルバム序盤とラストはポップ路線で固めるこの構成、「初心者の皆さんも安心して楽しめます」と導入しておいて、先に進むと「あれ、話が違うじゃん……でも、これもいいな?」とどんどん小難しさに慣れていく。そんな仕掛け(ある種の罠)が非常に心地よいんですよね。

「RUSHの最高傑作は?」と質問されたとき、きっとどのアルバムから入ったかによって(あるいはどのアルバムが好きかによって)挙げる作品は異なるかと思いますが、この『MOVING PICTURES』には大作路線ファンや80年代のポップ路線リスナー、90年代のグランジ/ヘヴィ路線ファンもを唸らせる魅力を持っているのではないでしょうか。記録的にも本国カナダで初めて1位を獲った作品であり、アメリカでも最高3位、400万枚以上というキャリア最高セールスを誇る1枚ですし。個人的には90年代の傑作『COUNTERPARTS』(1993年)とあわせて「初心者にオススメしたい入門盤」に挙げたいと思っています。

既報のとおり、ドラマーのニール・パートが今年1月7日に脳腫瘍のため逝去したことが1月11日にアナウンスされました。2018年のインタビューでゲディ・リー(Vo, B)がニールの音楽家としての引退を明かしていたため、バンド復活の道は絶たれていたわけですが、その時点ですでに療養中であり、先が長くないことはわかっていたんでしょうね……。残念でなりません。

 


▼RUSH『MOVING PICTURES』
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2020年1月12日 (日)

祝ご成人(1999年4月〜2000年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今年で6回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、前回(1998年4月〜1999年3月)から当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)と被っていることもあり、選出時いろいろ感慨深いものがあったりするのですから、長く続けてみるものですね。

さて、企画説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1999年4月〜2000年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちらです)

 

AC/DC『STIFF UPPER LIP』(2000年2月発売)(Spotify)(レビュー

ATARI TEENAGE RIOT『60 SECOND WIPE OUT』(1999年5月発売)(Spotify)(レビュー

BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999年6月発売)(Spotify)(レビュー

CIBO MATTO『STEREO☆TYPE A』(1999年6月発売)(Spotify

D'ANGELO『VOODOO』(2000年1月発売)(Spotify

THE DILLINGER ESCAPE PLAN『CALCULATING INFINITY』(1999年9月発売)(Spotify

DISTURBED『THE SICKNESS』(2000年3月発売/US)(Spotify)(レビュー

THE FLAMING LIPS『THE SOFT BULLETIN』(1999年5月発売)(Spotify

FOUNTAINS OF WAYNE『UTOPIA PARKWAY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

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MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』(1992)

1992年7月にリリースされた、MINISTRYの5thアルバム。

MEGADETHの来日公演(1991年初頭)の開場SEとして『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989年)が使用されたことで注目を集め、同作が1991年11月にようやく日本盤化。同時期には海外でニューシングル「Jesus Built My Hotrod」がリリースされ、このスラッシュメタル化した楽曲を通じて同ユニットにさらなる注目が集まり始めます。

こうして翌年に届けられたニューアルバムは、『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』での「Thieves」「Burning Inside」、そして先の「Jesus Built My Hotrod」を気に入ったリスナーなら一発でハマる内容に仕上げられました。

アルバム冒頭の「N.W.O.」から5曲目「Jesus Built My Hotrod」までの流れはとにかく圧巻で、メタル化したMINISTRYの真骨頂といえる内容です。スラッシーなギターリフを軸に、時に生ドラムに近いリズム、時に「Thieves」「Burning Inside」路線のマシンビートを用いて展開される楽曲群は、スラッシュメタルとハードコアパンクの中間といったところでしょうか。「TV II」での曲調や、それに乗せたアジテートはメタルというよりもハードコアのそれですしね。それに続く「Hero」なんて完全にメタルマナーですから、そりゃニヤニヤものでしょう。

圧巻は、アルバム中盤に置かれた「Jesus Built My Hotrod」。この曲の殺傷力と中毒性はリリースから30年近く経った今も衰えることなく、2020年の今聴いてもクセになる魅力を放ち続けています。ちなみに、この曲でボーカルを担当しているのはBUTTHOLE SURFERSのギビー・ヘインズ。この組み合わせも最高ですね。

……と、前半5曲でインダストリアル・メタルの真骨頂を楽しめる本作。ところが、続く6曲目「Scare Crow」で空気が一変します。BPMをグイッと落とし、引きずるようなミディアムヘヴィなリズムの上で単調なギターリフとボーカルが繰り返されるのみ……これが8分半も続くのですから(笑)。続く「Psalm 69」もシンフォニックなサウンドを用いつつも単調に繰り返されるフレーズ、途中でテンポチェンジしてヘヴィメタル的な展開を見せますが、再びスローに戻り、またテンポチェンジして……の反復。「Corrosion」は若干BPMが上げ気味ですが、メタルというよりはインダストリアル側に思いっきり寄った作風。ラストの「Grace」もヘヴィさを保っていますが、楽曲というよりはコラージュと呼ぶに近い作風。こうして前半の高揚感とは相反する、カオスな展開でアルバムは幕を降ろすのでした。

前作の「Thieves」「Burning Inside」や、シングル「Jesus Built My Hotrod」でMINISTRYに興味を持ったライト層をアルバム前半で惹きつけて、後半のダウナー4連発で地獄の底に落とし込む(笑)その悪意こそ、MINISTRYの本領発揮といったところでしょうか。傑作度という点においては前作のほうがはるかに上ですが、リスナーを挑発する作風という点では本作の右に出るものはないのではないか。そう思わずにはいられない快作です。

 


▼MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』
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2020年1月11日 (土)

ゾンビスクール!(2015)

あらすじ
小説家を目指しNYに出たが、パッとしないクリントは早々に夢を諦め、母校の小学校で臨時職員として勤め始める。出勤初日から、生意気な子供たちには舐められ、個性的すぎる教師たちとはイマイチそりが合わない。しかし、小学校教師になっていたかつての同級生、ルーシーと再会し思い出話と共に淡い恋心を募らせる。
給食の時間。子供たちは大好きなチキンナゲットを頬張り、賑やかな時間が過ぎていく。
そして、午後の時間が始まる。ツインテールの少女、シェリーにいつものようにちょっかいを出すいじめっ子、ペイトリオットだが、シェリーの様子がおかしい。ペイトリオットが髪を引っ張ると、毛束が皮膚ごと剥がれ落ち、そのまま倒れこむや否やシェリーはペイトリオットの顔に噛みつく。
何が起きたか分からないまま、学校中はパニック! 次々とゾンビ化していく子供たち相手に、楽器やスポーツ用品で武装した教師たちが立ち向かう。キッズゾンビVSイカれた教師の戦いの火蓋が切って落とされた!

小学校を舞台にしたゾンビ/パンデミック映画。給食のチキンナゲットに含まれた病原菌からひとりの少女が感染、そこから次々にほかの生徒へと感染していくという流れなんですが、なんとゾンビ化するのは“子供”のみ(どこまでが“子供”かは本編にて確認を)。大人は噛まれたり傷つけられても下痢、嘔吐止まりという、なんともご都合主義(笑)。しかし、そういった条件が物語を面白くしているのは確かで、無軌道に暴れまくる子供たちを前に本気で立ち向かう大人(教師)たちの姿が滑稽なのもまたよし。

そういったコメディタッチのストーリーながらも、血生臭さやスプラッター要素は適度に用意されており、大人たちが内臓むき出しにされたり、腕を千切られたり、目玉を抜き取られたり……(苦笑)。途中で挿入されるイメージシーンでは、内臓(腸?)で縄跳びをする子供の姿も用意されており、もはやここまでくるとクスッとしてしまうのも確か(苦手な人には笑えないシチュエーションですが)。

『ゾンビランド』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』的な作風で亜流っちゃあ亜流かもしれませんが、本作を面白いものと昇華させているのは製作総指揮および主演をイライジャ・ウッドが務めていること。しかも、イライジャは小説家として芽が出ず、ニューヨークから田舎に出戻りというパッとしない臨時教員役を見事に演じきっているのですから、最高ったらありゃしない。『コマンドー』をパロッた終盤の決闘シーンといい、ヒロインとのネチネチした三角関係といい、どれを取ってもアホらしくて最高。クライマックスのやっつけ方含め大人がここまで子供をいたぶるのは、コンプライアンス的に問題ないのかという点は気になりますが(苦笑)。

(*80点)

 


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NINE INCH NAILS『HESITATION MARKS』(2013)

2013年9月初頭にリリースされた、NINE INCH NAILS通算8作目のオリジナルアルバム。

前作『THE SLIP』(2008年)を携えたワールドツアーの終了(2009年秋)をもって活動を終了することを発表。以降は妻とのユニットHOW TO DESTROY ANGELS、アッティカス・ロスとタッグを組んで映画『ソーシャル・ネットワーク』のサウンドトラックなどを手掛けるにとどまりました。もちろん、その間にはNIN名義での新曲「Theme From TESTUO: The Bullet Man」を映画『鉄男 THE BULLET MAN』(2010年)のために書き下ろしたり、1stアルバム『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)のリマスター盤発表(2010年)、U2の名盤『ACHTUNG BABY』(1991年)のトリビュートアルバム『AHK-toong BAY-bi Covered』(2011年)に「Zoo Station」のカバーを提供したりなどの動きもあり、完全に“終わった”わけではないことを匂わせ続けました。

そして2013年に入り、ついに活動再開を宣言。ニューアルバム発表前の7月末には『FUJI ROCK FESTIVAL '13』の初日ヘッドライナーとして4年ぶりの再来日も実現しました。このライブはネット中継もされたので、現地に行けなかったけど中継で観たというファンも少なくなかったはずです。僕は幸い現地で観ることができたのですが、2009年に続いてまた雷雨という……(苦笑)。しかし、いきなり未発表の新曲「Copy Of A」から始まり、ミニマルにリアレンジされた「Sanctified」、そして直前に配信リリースされた先行シングル「Came Back Haunted」という冒頭3曲の流れに(その演出含め)圧倒されたことを、今でもよく覚えています。当日のライブ音源はその後、オフィシャルサイトを通じて無料配信されたので、こちらで耳にしたというリスナーも少なくないです。

結局このフジロックでは、アルバムリリース1ヶ月前に「Copy Of A」「Came Back Haunted」「Find My Way」という3つの新曲を聴くことができましたが、いざ届けられたアルバムは想定の範囲内であると同時に、事前の想像を超える内容という構成でした。

まず、「想定の範囲内」というのは、「Copy Of A」や「Came Back Haunted」から想像できた路線であるということ。“らしさ”を残しつつも、よりミニマムな方向へとシフトしていくんだろうなという予想にかなり近い作風だったと思います。それゆえに、聴き方によっては淡白に感じられるかもしれません。

で、もうひとつの「事前の想像を超える」というのは、ブラックミュージック的解釈のアレンジを持つ楽曲が多い点。ファンクミュージックからの影響は過去数作にも散りばめられていましたが、今作におけるそれは直接的なものではなく70年代末〜80年代のニューウェイヴが持っていたブラックミュージックの色合いが強くにじみ出ているんじゃないか。そんな印象を受けました。

そういった意味では、先のミニマムかつシンプルな作風と相まって、NINの作品の中でもかなり聴きやすい1枚と言えるでしょう。初心者向けという点においては、『WITH TEETH』(2005年)にも近いかなと。しかし、作品の方向性としては実は傑作『THE FRAGILE』(1999年)に似ている……そんな「意図的に“らしさ”に照準を合わせた」ような作品なのかな。結局、この路線を軸にのちのEP三部作(『NOT THE ACTUAL EVENTS』『ADD VIOLENCE』『BAD WITCH』)も制作されているような印象を受けますし。

安心感は与えてくれるものの、90年代に受けたあの衝撃はもはや過去のもの。どこに焦点を置いて語るかによって、評価が大きく二分する1枚かもしれませんね。

 


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2020年1月10日 (金)

新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)

あらすじ
ソウル発プラン行きの高速鉄道KTXで突如起こった謎の感染爆発。列車内で凶暴化する感染者たち―乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻と夫、そして高校生の恋人同士…彼らは終着駅にたどり着くことができるのか―?目的地まであと2時間、絶体絶命のサバイバルが今はじまる!

韓国発のゾンビ映画。ゾンビといってもロメロ直系のスタンダードスタイルではなく、『28日後...』『バイドハザード』に習ったスピーディな動きをするヤツ。しかも、劇中ではソンビというワードは一切登場せず、化学薬品の汚染→感染という経路で感染者のアクションを“暴動”と捉えているところは『28日後...』に近いかもしれません。

ただ、本作の面白かったポイントは非感染者が高速鉄道という、行動範囲が限られた密室空間で物語の大半が進行するという点でしょう。密室系パニックアクション映画はこれまでにもたくさんありましたが、そこにゾンビものを混ぜ込んだことで、パニック度が過剰に盛り上がり、かつ銃社会ではない韓国を舞台にしているところもリアリティが感じられる。終始ダレることなく楽しめました。

実はこの作品最大の敵はゾンビ/感染者ではなく、同じ人間だという風刺(かな?)じみたところはどことなくロメロっぽいかも? そんなこともないか。コン・ユ演じる主人公の「自分さえよければ」というマインドや、最初から最後まで自分勝手さが際立った高速バス会社の常務、老姉の博愛心を嫌悪する老妹、ほかの車両から逃げてきた主人公たちを「感染しているかもしれない」という不確定な理由で排除しようとする他の生存者たち……そんな中で、子供ならではのピュアさをみせる主人公の娘と、妊娠中の女性の発言/行動は最初から最後まで安心していられたし、物語の救いになったところも大きかったと思います(結末的にも納得ですしね。悲しいエンディングだったけど)。

ゾンビ映画として接すると点数はかなり低めだけど、パンデミック系パニック映画として楽しめば十分に完成度は高いのではないでしょうか。事実、韓国内でもかなりのヒット作となり、続編の制作も決定しているようですし、アメリカでのリメイクも決まっているんだとか。欧米映画にありがちなネタを逆輸入するとどうリメイクされるのか、そちらも気になるところです。

(*84点)

 


▼新感染 ファイナル・エクスプレス
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DAVID BOWIE『EARTHLING』(1997)

1997年2月初頭にリリースされたデヴィッド・ボウイ通算20作目のオリジナルアルバム。前作『1. OUTSIDE』(1995年)から1年5ヶ月という非常に短いスパンで制作・発表されました。

当初、『1. OUTSIDE』を筆頭にブライアン・イーノとタッグを組んだ5部作の制作を予定していましたが、同作が思った以上のヒットを果たせず(その前の『BLACK TIE WHITE NOISE』が全英1位を獲得したのに対し、次作は8位止まり。セールス的にも半減しています)、次回作の制作は無期延期に。代わりにボウイは、自身がプロデュースの中心となり新たな方向性を模索します。

ナイル・ロジャースと10年ぶりのタッグが実現した『BLACK TIE WHITE NOISE』、イーノとも10数年ぶりに共演した『1. OUTSIDE』と、過去のパブリックイメージから解放されたボウイは自由奔放に音楽制作と向き合い始めた時期でしたが、このセルフプロデュース作(共同プロデューサーにバンドのギタリストであるリーヴス・ガブレルスと、ニューヨークで活躍するマーク・プラティの名も)では当時クラブシーンで盛り上がっていたドラムンベースやジャングルを基盤に、『1. OUTSIDE』を携えたワールドツアーの充実感を表すバンドサウンドをミックスさせた意欲的な楽曲を聴かせてくれます。

1997年というと、その年の春にはTHE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』を発表し全英1位/全米14位のヒットを記録、THE PRODIGYも同年夏に『THE FAT OF THE LAND』が全米/全英1位を記録するなど、最新のダンスミュージック/クラブミュージックが一気にメジャー化したタイミング。そういった意味ではボウイ、先見の明があったのかもしれません(単純に流行りものが好きなだけという話もありますが)。

しかし、ボウイ流にドラムンベースを解釈した楽曲群は、決してそれらをまんま模倣したわけではなく、リーヴスのギターがうねりを上げ、マイク・ガーソンのピアノがジャジーな雰囲気を作り上げたりと、良い意味での違和感を残す作風となっている。打ち込みビートに生のリズム隊を重ねて人力ドラムンベース化していたり、またある曲では普通にハードロックのフォーマットの上にドラムンベースのリズムが乗っていたりと、ボウイらしい工夫は至るところから感じることができます。

とはいえ、実は本作はリリース当時、あまり評価が高くなかった印象があります。「またボウイが流行りに乗った」「せっかく『1. OUTSIDE』でイーノとタッグ組んだのに、次がこれか……」とか。実際、チャート的には全英6位止まり、セールス面でも前作とほぼ同等となかなか伸び悩みましたが、「Little Wonder」(全英14位)、「Dead Man Walking」(同32位)とヒットシングルも生まれております。あ、アメリカでは「I'm Afraid Of Americans」がリカットされ、最高66位を記録。同作のMVにはトレント・レズナー(NINE INCH NAILS)が出演して話題にもなりました(同曲のリミックスも手掛けていますしね)。

 


▼DAVID BOWIE『EARTHLING』
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2020年1月 9日 (木)

POWER TRIP『MANIFEST DECIMATION』(2013)

2013年6月に発売されたPOWER TRIPの1stアルバム。日本盤未発売。

POWER TRIPはアメリカ・テキサス州ダラス出身の5人組バンドで、古き良き時代のスラッシュメタルやハードコアパンク、それらが融合し80年代後半に生まれた“クロスオーバー”と呼ばれるジャンルを現代によみがえられたサウンドが好評を博しています。

彼らのリリース元であるSouthern Loud Recordsは、SUNN O)))やSLEEP、EARTHなどが在籍するドゥームメタル、ストーナーロック、ドローンメタルなどを中心とした名門レーベル。いわゆるエクストリーム・メタル専門レーベルからのデビューということで、その特殊性にも注目が集まるわけですが……正直、ここまで真っ当でストレート(しかもB級色が濃厚)なスラッシュメタルバンドがテン年代にデビューしたことに驚かされることになるわけです。

“B級色が濃厚”と書きましたが、そこは名門レーベルが携わっているわけですから、レコーディングやミックスに関しては超A級。アーサー・リツクがプロデュースを担当しているのですが、彼はのちにSACRED REICH、CAVALERA CONSPIRACY、CRO-MAGSなどスラッシュ/クロスオーバーバンドを多数手がけることになるので、POWER TRIPでの功績が評価されたんでしょうね。

アルバムで展開されているサウンド、楽曲はぶっちゃけ……「80年代にこういうバンド、たくさんいたよね?(笑)」と言いたくなるような、まるで2013年という時代を無視した世界観。しかも、スラッシュといってもMETALLICASLAYERのようなメジャー感の強いバンドとは異なる、メジャーの一歩手前にいるB級インディバンドのそれなもんですから、懐かしくて思わずにやけてしまうという。でも、当時のバンドと大きく違うのは……リフやアレンジなど含め、非常に練り込まれたB級であるということ。すごく矛盾しているかもしれませんが、あの当時のB級感を意図的に演出しつつも、楽曲の殺傷力は非常に強いものが仕込まれている。だから、何度も繰り返し聴きたくなるし、何度飽きないわけです。これ、めちゃめちゃ恐ろしいことですよ?

そういった計算ができる(あるいは本能でそれができてしまう)バンドだからこそ、高く評価されているわけですよね。しかも、単なる80年代の焼き直しで終わっておらず、ちゃんと90年代以降の音楽のフィルターも通過しつつ、その結果としてあえて80年代のこのスタイルを選んでいるわけですから。最強以外の何ものでもないわけです。

彼らは2017年に日本デビュー作にあたる2ndアルバム『NIGHTMARE LOGIC』をリリース後、2018年9月には初来日も実現。これを機に、ここ日本でも高い評価を受けることになります。この2月には人気イベント『leave them all behind』出演のため再来日も決定しているので、ぜひこの機会に生の彼らに触れていただきたいものです(って僕が書くまでもありませんが)。

 


▼POWER TRIP『MANIFEST DECIMATION』
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2020年1月 8日 (水)

KVELERTAK『KVELERTAK』(2010)

ノルウェー出身の6人組HR/HMバンド、KVELERTAKが2010年6月に本国でリリースした1stアルバム。北米では6曲のボーナストラックを追加した形で、翌2011年3月に発売されています。日本盤未発売。

僕が彼らのことを知ったのは、続く2ndアルバム『MEIR』(2013年)からで(同作で日本デビュー)、後追いでこの1stアルバムまでたどり着きました。で、「うわーっ、もっと早くに出会っていたかった!」と実感させられることになるわけです。

トリプリギター編成でサウンドはストレートなロックンロール/爆走ハードロックと聞くと「それ、3人も必要?」と思ってしまうわけですが……この分厚さを出すには3人必要! 絶対3人じゃなきゃダメなわけですよ。

彼らが体現しているのは“Black 'N' Roll”と呼ばれる“ブラックメタル+ロックンロール”というエクストリーム・メタルの一種で、MOTÖRHEAD直系のハードドライヴィングなロックンロールに、ブラックメタル調のスクリームを乗せたスタイルは決して馴染みやすいとは言い切れないもの。しかし、アルバムを聴き進めていくと不思議とクセになってくるのです。

ギタリスト3人は無駄じゃないか?と先に書きましたが、このうち1人はピアニストも兼任。曲によってはTHE HELLACOPTERSにも通ずるピアノプレイも聴かせてくれます。これがね、いいんですよ。例えば「Blodtørst」のサビで聴けるアンサンブル……ひとりがリフを刻み、もうひとりが泣きまくりのギターソロを乗せる。そして3人目はギターを弾かずにシンプルなピアノリフを刻み続ける……そうそう、俺たちが好きな北欧ロケンローバンドってみんなこうだったじゃん!っていう事実を思い出させてくれるのです。

にしても、メロディの役割を流麗なギターソロ/フレーズで代用してくれるところは、メロデスにも通ずるものがあるのかな。言語は非英語(1曲だけ英語詞)ですが、スクリームでほぼ何を歌っているか判別できないので、特に問題ないかなと(笑)。そのへんのブラックメタルやデスメタルが好きで、かつ北欧の爆走ロケンローバンドが好きというリスナーなら間違いなく受け入れられるはずです。

あと、リミッターを外したかのような生々しい録音状態も最高の一言。実は本作(と続く『MEIR』)ではプロデュース&ミックスをCONVERGEのカール・バルーが担当しているんです。ね、納得でしょ?

現在流通しているCDおよびストリーミング版は、USリリース同様6曲追加された全17曲バージョン。こちらでは2010〜2011年のBBCセッションズ4曲と2009年のデモ音源2曲を楽しむことができます。

 


▼KVELERTAK『KVELERTAK』
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2020年1月 7日 (火)

DEFTONES『DIAMOND EYES』(2010)

2010年5月にリリースされた、DEFTONESの6thアルバム。

2006年に前作『SATURDAY NIGHT WRIST』を発表した彼らは、2008年にテリー・デイトとともに『EROS』と題された次作の制作に着手しました。しかし、同年11月にチ・チェン(B)が交通事故に遭い、意識不明の重体に。バンドはチェの意識が戻るのを待ち続けますが、一向に回復の兆しが見えず、2009年1月末にセルジオ・ベガ(QUICKSAND)を一時的に迎えて活動することを宣言。同年4月に新ラインナップによる初ライブを実施します。

そして6月、『EROS』の制作はチェが回復するまで保留することを宣言し、新たにニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSHALESTORMMASTODONなど)をプロデューサーに迎えて別のアルバムを制作。こうして3年半ぶりの新作はよくやく完成したわけです。

デビューから4thアルバム『DEFTONES』(2003年)まで一貫してテリー・デイトとタッグを組み続けたDEFTONESが、前作『SATURDAY NIGHT WRIST』で初めて新しいプロデューサー(ボブ・エズリン&ショーン・ロペス)を迎えたわけですが、ニックは次作『KOI NO YOKAN』(2012年)も続投したことから、当時やろうとしていたことにフィットしていたと言えるでしょう。

当初予定していた『EROS』は、怒りを表現したダークでヘヴィな作品になると言われていました。しかし、代わりに作られた『DIAMOND EYES』は“Optimistic(=楽観的)”な作風を意識したと言われています。これは、チェの事故によりバンドを取り巻く状況が悲劇的に捉えらえることを危惧し、あえてそうした作風を意識したのでしょう。

また、本作では過去数作で用いられたPro-Toolsといったデジタル編集を一切使わず、初期2作(『ADRENALINE』や『ADROUND THE FUR』)のようにメンバーが膝を突き合わせて演奏して曲を完成させていく手法を取っています。これはベーシストがセルジオに交代したことも大きかったのではないでしょうか。

さて、“Optimistic”な作風と言われる本作ですが、ヘヴィさとソフトさのバランスが非常に絶妙で、メロディラインも叫びよりセクシーさや気怠さが強く感じられるものが多い、非常に聴き応えが強い内容となっています。オープニングトラック「Diamond Eyes」から3曲目「CMND/CTRL」までの流れは、どこか『ADROUND THE FUR』時代を思わせる雰囲気で、バンドとしての躍動感が強くアピールされています。

かと思えば、「You've Seen The Butcher」や「Beauty School」のように3rdアルバム『WHITE PONY』(2000年)にも通ずるムーディさが強調された楽曲も用意されている。中盤になると再び「Rocket Skates」のようなヘヴィな楽曲も登場しますが、やはり後半のヤマとなるのは「Sextape」や「976-EVIL」といったメロディアスかつエモーショナルなナンバーでしょう。この2曲の存在は本作にとって非常に大きなものがあり、このアルバムを単なるヘヴィ/ラウドロックでは片付けきれないものへと昇華させています。

本作はある種、1stアルバム『ADRENALINE』から前作『SATURDAY NIGHT WRIST』までの集大成と言えなくもありません。しかし、これは新体制になったことでバンドを新たに立て直す意味でも必要な作業だったのでしょう。不慮の事故により、意図せず第二のデビュー作を作る羽目に陥ったわけですから。

なお、本作は全11曲のオリジナルナンバーで構成された通常盤に加え、「Do You Believe」(原曲:THE CARDIGANS)、「Ghosts」(原曲:JAPAN)、「Caress」(原曲:DRIVE LIKE JEHU)のボーナストラック3曲を加えたiTunes限定デラックスエディションも用意。ストリーミングバージョンではこのうち、「Do You Believe」と「Ghosts」が追加された13曲バージョンが配信されています。ただ、3曲とも翌2011年に限定リリースされたカバー曲集『COVERS』で聴けるので、基本的には11曲のみのCDバージョンでも問題ないと思います。

 


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2020年1月 6日 (月)

QUEENS OF THE STONE AGE『RATED R』(2000)

2000年6月にリリースされた、QUEENS OF THE STONE AGEの2ndアルバム(メジャー1作目)。日本盤は海外から少々遅れて、同年9月に発売されています。

USストーナーロック界で人気が高かったKYUSSのギタリストだったジョシュ・ホーミ(ジョシュ・オム)が、1995年のバンド解散を経て2年後にQOTSAを結成。PEARL JAMのストーン・ゴッサードが設立したプライベートレーベルLoosegroove Recordsから、セルフタイトルの1stアルバムを1998年に発表したのを経て、2000年にUniversal Music傘下のInterscope Recordsから本作にてメジャー進出を図ることとなります。

そのメジャー1作目のオープニングを飾る「Feel Good Hit Of The Summer」を初めて聴いたときの衝撃たるや……だって、歌い出しから〈Nicotine, valium, vicodin, marijuana, ecstasy and alcohol〉の連呼ですから(笑)。そのインパクトの強いフレーズを、タガが外れたかのようなガレージロックサウンドに乗せてジョシュが歌うわけですよ……そりゃ一発で好きになるでしょ?

時代的にはニューメタルからラップメタル、メタルコアと次々に新世代メタルが台頭し始めていたタイミング。そんな中、古臭い(いや、ある種カビ臭い)ハードロックサウンドをベースに、ストーナーロックと呼ばれるコアなジャンルをよりわかりやすい形に咀嚼し、より現代的なものへと昇華させようとしたQOTSTの果たした役目はかなり大きなものがあったと思います。

単なるストーナーロックの廉価版では終わらず、90年代以降のオルナタティヴ・ロックやグランジからの影響もしっかり見え隠れするし、それ以前のクラシックロックからの影響も忘れていない。しかも、先の「Feel Good Hit Of The Summer」や続く「The Lost Art Of Keeping A Secret」、中盤に登場する「Monsters In The Parasol」や「In The Fade」など、どの曲もメロディが非常にキャッチーなんですよね。演奏/アレンジ面ではグランジ的なサイケデリック感を存分に漂わせつつも、歌メロ自体はNIRVANAや……もっと初期のパンク、それこそRAMONESにも通ずるポップさを併せ持つわけですから。そりゃあ、どんどん支持を集めることになるわけですわ。

ところが、このアルバムって当時Billboard 200(アルバムチャート)にランクインしていないんですよね。インディーズからの1stアルバムですら最高122位まで上昇しているというのに。結局、彼らは続く3rdアルバム『SONGS FOR THE DEAF』(2002年)でいきなり全米17位を記録し、人気バンドの仲間入りを果たすわけです(同作ではドラムをFOO FIGHTERSのデイヴ・グロールが叩いたのも大きかったのでしょう)。

一般的なヒットこそしなかったものの、シーンに残したインパクトという点においては間違いなく大きなものがあった。20年前の夏、ロック系クラブイベントで「Feel Good Hit Of The Summer」がガンガンかかりまくっていたこと、僕は忘れません。

 


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2020年1月 5日 (日)

RAGE AGAINST THE MACHINE『RENEGADES』(2000)

2000年12月に発表されたRAGE AGAINST THE MACHINE唯一のカバーアルバム。現時点(2020年1月)におけるラストアルバムでもあります。日本盤は海外に数日先駆け、11月末にリリースされました。

RATMは同年10月、ザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)のバンド脱退により事実上解散状態に。今作のレコーディングは同年春に終えていたことから、アルバムは当初の予定どおり無事リリースされることとなりました。つまり、バンドが事実上存在しないタイミングでの“最後の置き土産”となったわけです。

カバー集ということで、その選曲はある種バンドのルーツと呼べるようなものばかり。選出時期も最古はボブ・ディランの「Maggie's Farm」(1965年)、最新のものでもブルース・スプリングスティーンの「The Ghost Of Tom Joad」(1995年)と選曲の幅が30年という面白いことになっています。

AFRIKA BAMBAATAAやERIC B. & RAKIM、CYPRESS HILLなどヒップホップ方面でのルーツもあれば、MC5やTHE STOOGESといったパンクのオリジンたち、MINOR THREATなんていうハードコアでのルーツもある。そこにTHE ROLLING STONES、ディラン、スプリングスティーンというロック/フォークなどの先駆者の楽曲も名を連ねますが、これらは“プロテスト・ソング”という意味での影響が多いいのでしょう。そんな中、ニューウェイヴに属するDEVOの楽曲が含まれているのが非常に興味深いところです。

そういった多ジャンルにわたる楽曲群を、いかにもRATMらしい味付けでリフォーム&リメイクしているわけですが……これがカッコイイのなんの。カバー集と知らずに聴いたら、確実に「RATMの新しいアルバム」もしくは「RATMの未発表曲集」と勘違いしてしまうのではないでしょうか。それくらい、どの曲でもザックのラップ、トム・モレロ(G)やリズム隊の主張がハンパないんです。

アレンジ力という点においても、オープニングの「Microphone Fiend」(原曲:ERIC B. & RAKIM)から完全にオリジナルなものだし、原曲の雰囲気を最大限に生かした「Kick Out The Jams」(原曲:MC5)や「Down On The Street」(原曲:THE STOOGES)みたいにストレートな楽曲もある。すでにライブではおなじみだったスプリングスティーンの「The Ghost Of Tom Joad」なんて、ある意味別の曲ですからね。さらに、ストーンズの名曲「Street Fighting Man」でのタガの外れ方や、原曲は疾走感が強い「Beautiful World」(原曲:DEVO)をシンプル&スローなバラードに変えてしまうアレンジ力はさすがの一言。特に後者では、あのザックが朗々と“歌って”いるのですから。いろんな意味で驚きと新鮮さが感じられる1枚です。

SpotifyやApple Musicではこれらの原曲も手軽に聴くことができるので(アルバムリリース当時は、それぞれ探すのが面倒だったんだよなあ。笑)、こちらで作成したプレイリストを参考にしてみてください。ね、聴き比べると面白いでしょ?

ストリーミング版ではカットされていますが、CDですとこの12曲のあとに「Kick Out The Jams」と「How I Could Just Kill A Man」のライブテイクが追加されていますが、これらはのちにリリースされたライブアルバム『LIVE AT THE GRAND OLYMPIC AUDIORIUM』(2003年)にも収録されているので、気になる方はこちらもチェックしてみてはどうでしょう。

 


▼RAGE AGAINST THE MACHINE『RENEGADES』
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«SYSTEM OF A DOWN『HYPNOTIZE』(2005)

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