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当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2023年4月7日更新)


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2023年4月30日 (日)

2023年4月のお仕事

2023年4月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※4月11日更新)

 

[WEB] 4月11日、日向坂46オフィシャルサイト特設ページ「四期生のぽかぽか写真館」にて竹内希来里さんインタビューを担当しました。

[WEB] 4月10日、「Rolling Stone Japan」にてライブレポートBABYMETAL、新たな旅の「はじまり」を目撃が公開されました。

[WEB] 4月10日、日向坂46オフィシャルサイト特設ページ「四期生のぽかぽか写真館」にて平尾帆夏さんインタビューを担当しました。

[WEB] 4月9日、日向坂46オフィシャルサイト特設ページ「四期生のぽかぽか写真館」にて渡辺莉奈さんインタビューを担当しました。

[WEB] 4月8日、日向坂46オフィシャルサイト特設ページ「四期生のぽかぽか写真館」にて正源司陽子さんインタビューを担当しました。

[WEB] 4月6日、「リアルサウンド」にてライブレポート日向坂46、現体制初の声出し解禁ライブで怒涛の盛り上がり 層の厚みや演出に磨きがかかった横浜スタジアム公演が公開されました。

[紙] 4月6日発売「ヘドバン」Vol.39にて、METALLICA「72 Seasons」超ロングレビュー、LINKIN PARK「Meteora」ヘドバン流ライナーノーツ、「Meteora」20周年記念盤クロスレビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 4月34発売「日経エンタテインメント!」2023年5月号にて、櫻坂46大園玲の連載「ミステリアスな向上心」および日向坂46上村ひなのの連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

2023年4月 7日 (金)

AUGUST BURNS RED『DEATH BELOW』(2023)

2023年3月24日にリリースされたAUGUST BURNS REDの10thアルバム。日本盤未発売。

前作『GUARDIANS』(2020年)から3年ぶりに発表された本作は、10枚目のスタジオアルバムというだけではなく、結成20周年のタイミングに届けられる節目の1枚。メタルコア/ポストハードコア専門レーベルのSharpTone Records移籍第1弾作品でもあり、お馴染みのプロデューサー陣(カーソン・スロヴァク&グラント・マクファーランド)とともに制作されました。

冒頭に2分前後のイントロダクション「Premonition」で緊張感を高めたかと思うと、そのまま矢継ぎ早に「The Cleansing」へと突入する流れは非常にドラマチック。かつ、その「The Cleansing」が約8分にもおよぶエピカルな作風で、従来の彼ららしさを残しつつも劇的なアレンジで聴き手を惹きつけます。さらにそこから、ジェシー・リーチ(Vo/KILLSWITCH ENGAGETIMES OF GRACE)をフィーチャーした「Ancestry」へと切れ目なしでなだれ込む。なにこれ、カッコいいったらありゃしない。

このバンドらしいヘヴィさや疾走感をしっかり保ちつつ、適度なドラマチックさで緩急を作り上げる構成は、どこかコンセプトアルバムのようにも感じられる。特にアルバム前半の畳みかけは圧巻で、ジェイソン・リチャードソン(G/ex. BORN OF OSIRIS、ex. CHELSEA GRIN)のテクニカルなプレイをフィーチャーした「Tightrope」からカオティックな「Fool's Gold In The Bear Trap」への流れは絶品の一言。後者は序盤のムーディーさから後半一気に捲し立てる攻撃的なアレンジに、鳥肌が立ちまくりです。

その後も曲間ほぼゼロで「Backfire」へとつなげ、緊張感を緩めることなくアルバムは進行。グルーヴィーな「Revival」を終えるとようやく静寂が訪れ、1分半程度のSE「Sevink」を境にアルバムはクライマックスへと突入します。パワフルな「Dark Divide」や「Deadbolt」で独立した世界を構築しつつ、終盤はダーク&ヘヴィな「The Abyss」、そして再び8分前後の長尺曲「Reckoning」で劇的なエンディングを迎えます。なお、前者にはERRAのJT・ケイヴィー(Vo)、後者にはUNDERØATHのスペンサー・チェンバーレイン(Vo)がゲストとして華を添えています。

M-1「Premonition」からM-7「Revival」までがほぼ組曲のような構成で圧倒されるも、「Sevink」を挟んで展開される終盤4曲はそれぞれ独立した小世界といった印象で、前半〜中盤ほどの緊張感は得られないかもしれません。そこのみがマイナスポイントですが、トータルではかなり力の入った作品集と受け取ることができます。ゲスト陣もここ20年のUSメタルコア界隈のスター選手が揃った感がありますし、そういった点でもひとつの大きな節目の作品であることが伝わります。初〜中期とはまた頃なる、円熟期にふさわしい充実の1枚ではないでしょうか。

 


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2023年4月 6日 (木)

LOUD PARK 23@幕張メッセ(2023年3月26日)

Img_67992017年を最後に開催がストップしていたメタルの祭典『LOUD PARK』。2019年からは『DOWNLOAD JAPAN』に形を変えて春開催に仕切り直されたものの、翌2020年以降コロナ禍の影響で実現ままならぬ状態が続きました。そして、2022年夏にかろうじて二度目の『DOWNLOAD JAPAN』が行われたものの、2023年はいろいろな大人の事情で『LOUD PARK』が限定復活。本来なら秋開催だったラウパーも、『DOWNLOAD JAPAN』の通例に倣って3月末に実施されることとなりました。

しかも、当初から決まっていた『KNOTFEST JAPAN』の前週に、1日のみ(大阪/東京の連日開催)。開催決定はうれしかったものの、そのメンツが不安だったことは事実です。しかし、いきなりのPANTERAのヘッドライナーに大興奮。海外に行かないと観れないと思っていただけに、これはどんなことをしてでも会場に足を運ばねばと思い、いろんなスケジュールを調整して会場に向かいました。

ただ、連日の激務&寝不足もあり、開演の11時前に到着することは不可能に。雨がぱらつく中、入場したのはH.E.R.O.の演奏が始まってすぐのことでした。

 

H.E.R.O.
ライブは初見。知らない間にギタリストが脱退しておりトリオ編成に。しかし、小編成とは思えぬほどゴージャスさの伝わるサウンド&バンドアンサンブルに、予想外に惹きつけられました。同期を使用しているとはいえ、この音の厚みと(幕張メッセというラウド系に不向きな会場ながらも)音響の良さ、そして聴きやすい楽曲の数々に心奪われたことは特筆しておきます。クリストファー・スティアネ(Vo, G)の声質もヘヴィな音像に負けることなく、耳に届いてきましたあし。ネームバリュー的にはラウパー向きだけど、音的には『DOWNLOAD JAPAN』なのかな。メタルとは言い難いサウンド/楽曲だけど、フェスの序盤には最適な人選だと納得でした。

セットリスト
01. Gravity
02. Lead The Blind
03. Never Be The Same
04. I Hope This Changes Everything
05. This Means War
06. Made To Be Broken
07. Monster
08. Cynical
09. Dangerous
10. Superpowers
11. Oxygen

 

OUTRAGE
『DOWNLOAD JAPAN』はフロアの前後にステージを配置していましたが、今回のラウパーは例年どおり左右に2つのステージを設置。真正面から観ようとすると、毎回隣の島に移動する必要がありました。H.E.R.O.は比較的後方から眺めていましたが、OUTRAGEは真ん中あたりまで移動。前回のラウパー以来のライブ観覧だったので期待していたのですが……サウンドチェックかと思っていたTHIN LIZZY「Thunder And Lightning」が実は本編1曲目だったという、非常にユルユルしたスタートを切ります。以降も近作からのゴリゴリなハードコアチューン中心に展開。しかも、音がデカいわりに音響劣悪、ボーカル様が酔っているのかマイクをかなり離した状態で歌っていたり、謎の舞踏を交えたパフォーマンスを見せたり……あれ、こんなバンドだったっけ?と困惑。久しぶりに聴いた「In Union With Earth」もメロディラインが完全に別モノになっていましたし……。結局、定番の「My Final Day」「Megalomania」を最後に持ってくることでなんとか最後まで乗り切りましたが、本音を言えばあまり褒められたステージではなかった気がします。本編唯一の日本人枠がこれかあ……と落胆したことは記録として残しておきます。

セットリスト
01. Thunder And Lightning
02. Therritorial Dispute
03. Machete...
04. Hot Rod Immunity
05. You Care? I don't Care
06. In Union With Earth
07. Summer Rain
08. My Final Day
09. Megalomania

 

BLEED FROM WITHIN
OUTRAGEで落胆し、早くも耳が疲れてしまったこともあり、楽しみにしていたBLEED FROM WITHINは後方でまったり観覧することに。同じ爆音でも、こちらはバランスがしっかり取られており、あまり耳が疲れない(かといって音圧が足りない、刺激が足りないということもまったくない)。多弦ギターを使用していることもあってか、あの7弦の周波数が妙に心地よく響き、かつ楽曲も非常に好み。本来なら前方に移動するところを、一度腰を落としてしまったがために……あれ、眠気が……(寝てませんが)。それくらい終始気持ちよく楽しめる音でした。

セットリスト
01. I Am Damnation
02. Into Nothing
03. Pathfinder
04. Stand Down
05. Temple Of Lunacy
06. Sovereign
07. Levitate
08. The End Of All We Know

 

AMARANTHE
2019年の『DOWNLOAD JAPAN』以来のライブ観覧。というか、それ以来の来日になるのか。その間にスクリーム担当ののヘンリック・エングルンド・ヴィルヘルムソンが脱退し、この日は海外ツアー同様ゲストシンガーとしてLOST SOCIETYのサミー・エルバンナが参加していました。体格のよかったヘンリックと比べると、サミーは線が細くどこか病的に映りますが、そんなことお構いなしに激しいスクリームを響かせ存在感をアピール。エリース・リード(Vo)やニルス・モーリン(Vo)に負けず劣らずのボーカルパフォーマンスを発揮していました。披露された楽曲自体もダンサブルなEDMメタル中心で、体調さえよければ終始ダンスしていたんでしょうね。ただ、この日は心境的に心の底から楽しめなかったのが残念。健康って大事ですね。

セットリスト
01. Fearless
02. Viral
03. Digital World
04. Hunger
05. Strong
06. Helix
07. Maximize
08. Amaranthine
09. The Nexus
10. Call Out My Name
11. Archangel
12. That Song
13. Drop Dead Cynical

 

CARCASS
2バンドをまったり観覧したことで、少々体力も回復。フロア真ん中あたりまで移動して、待望のCARCASSを楽しみました。オープニングSEこそ「1985」でしたが、それに続く1曲目は新作からの「Kelly's Meat Emporium」。ライブ向きだ。カッコいいったらありゃしない。ジェフ・ウィーカー(Vo, B)も調子良さそうだし、ビル・スティア(G)のギターも気持ちよく響く。そこから「Buried Dreams」「Incarnated Solvent Abuse」の連発で早くも絶頂へ。「そうそう、これが観たかったんだよ!」眼前のパフォーマンスに体調が回復していくのが手に取るようにわかりました。「This Mortal Coil」あたりでジェフのアンプトラブルでギターの音が出なかったりもしましたが、以降は新曲を交えつつ代表曲を連発。ダン・ウィルディング(Dr)のリズムワークがとにかく心地よく、終始安定しながらも要所要所でカオティックな空気を味わうことができ、最後には「Tools Of The Trade」まで聴けて大満足の50分間でした。そりゃ、終了後に「優勝!」とツイートしたくもなりますわ。

セットリスト
01. 1985 〜 Kelly's Meat Emporium
02. Buried Dreams
03. Incarnated Solvent Abuse
04. Under the Scalpel Blade
05. This Mortal Coil
06. Tomorrow Belongs To Nobody / Death Certificate
07. Dance of Ixtab (Psychopomp & Circumstance March No. 1 On B)
08. Black Star / Keep On Rotting in the Free World
09. The Scythe's Remorseless Swing
10. Corporal Jigsore Quandary
11. Heartwork
12. Tools Of The Trade / Carneous Cacoffiny

 

STRATOVARIUS
ライフが回復したのも束の間のこと、CARCASS終了後はフロアの最後方にまで移動し、腰を下ろすどころは横になってしまう始末。そんな中、STRATOVARIUSが心地よいメロディを奏で続けてくれ……気づいたらラストの「Hunting High And Low」のイントロ。ごめんなさい(苦笑)。

セットリスト
01. Survive
02. Eagleheart
03. Stratosphere
04. Father Time
05. Paradise
06. Bass Solo
07. Frozen In Time
08. Black Diamond
09. World On Fire
10. Unbreakable
11. Hunting High And Low

 

NIGHTWISH
ストラトの流れでまだ横になっていたのですが、それほど詳しくない自分でも知ってる名曲も多く用意されたセトリに、気づいたら体を起こして聴き入っていました。病気の影響で年初に予定されていたジャパンツアーは中止になっていましたが、実はこっちに出演するためのキャンセルだったのでは?と思ってしまうほどにフローア・ヤンセン(Vo)のボーカルは冴え渡っていましたし、サウンド面含めトータルバランスが非常に優れており、初見でも存分に満喫できるステージだったと思います。今回のラウパーにおいて、個人的にもっとも大きな収穫はNIGHTWISHだったかもしれません。

セットリスト
01. Noise
02. Storytime
03. Tribal
04. Élan
05. Dark Chest Of Wonders
06. I Want My Tears Back
07. Nemo
08. Shoemaker
09. Last Ride Of The Day
10. Ghost Love Score

 

KREATOR
フレデリク・ルクレール(B)加入後初の日本公演、というか個人的には初来日の1992〜3年以来となる生KREATORでした。ミレ・ペトロッツァ(Vo, G)のヒステリックなボーカルは健在ですし、それ以上に曲間にちょいちょい挟む煽りのワードチョイスがツボすぎて、首を振るより腹を抱えて笑ってしまった。新作『HATE ÜBER ALLES』(2022年)からの楽曲は2曲ほどで、あとは新旧/緩急に富んだセットリストで観る側をまったく飽きさせない。超初期の名曲「Tormentor」がなかったのは残念ですが、それでも「Flag Of Hate」や「Pleasure To Kill」あたりをしっかり聴けたのはうれしかったな。あと、個人的名盤の前々作『GODS OF VIOLENCE』(2017年)以前の近作楽曲もライブ映えするものばかりだったので、もっと真剣に聴き込もうと思いました。PANTERA前で体力温存する予定が、しっかり暴れさせてもらいました。

セットリスト
01. Hate Über Alles
02. Hail To The Hordes
03. Awakening Of The Gods
04. Enemy Of God
05. Phobia
06. Satan Is Real
07. Hordes Of Chaos (A Necrologue For The Elite)
08. 666 - World Divided
09. Flag Of Hate
10. The Patriarch / Violent Revolution
11. Pleasure To Kill

 

PANTERA
KREATOR後半あたりからフロアの人口密度/圧縮率が急増。そうか、PANTERAだけ目当てのお客さんもそれだけ多いってことなのね。ステージが暗幕で覆われる中、フロアの雰囲気はそれ以前とは異なる異様なものに変わってることに気づき、こちらもテンションがどんどん上がっていく。そして、オープニングムービー&SEを経て、「Mouth For War」からライブがスタート! 海外では「A New Level」始まりでしたが、ここ日本から1、2曲目が入れ替わった結果、最高の幕開けになったのではないでしょうか。

ザック・ワイルド(G)は彼らしさを要所要所に滲ませつつも、基本的にはダイムバッグ・ダレルのプレイに忠実。チャーリー・ベナンテ(Dr)も同様で、変にエゴを見せることなく、あくまでダイム&ヴィニー・ポール(Dr)へのリスペクトを込めたサポートぶりで、各々の役割に徹しているように映りました。それがよかったのか、フィル・アンセルモ(Vo)もレックス・ブラウン(B)も変に気張ることなくライブに集中できていたように思います。

フロアの熱気はこの日一番といいますか、それ以前の演者とか比べものにならないほど異様なもので、「そうそう、90年代のPANETARAってこんな感じだったな」と懐かしく感じたり、一方で新鮮さが伝わってきたりと、終始なんとも言えない不思議な感覚に陥っていました。が、曲が始まるごとにそのイントロに興奮し、拳を上げて一緒に歌い暴れるのは昔と変わらず。歳はとったけど、記憶は一瞬にして過去を呼び戻してくれるんですね。

選曲的には海外公演同様で、キャリア最大のヒット作『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)と唯一の全米1位獲得作『FAR BEYOND DRIVEN』(1994年)からの楽曲が中心。ラスト作『REINVENTING THE STEEL』(2000年)からは「Yesterday Don't Mean Shit」のみで、『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(1996年)に至っては完全スルー。まあそれも理解できます。今回はPANTERA“再結成”ではなく、“ダイム&ヴィニーへの敬意を込めてPANTERAナンバーを演奏する”ことがメインなのですから。

フィルの声は比較的出てるほうだったんじゃないかな。ただ、昔の来日公演同様MCでは英語でコミュニケーションを取ろうとするもリアクションが悪く、急に不機嫌さを見せたりする。その都度、日本語が話せるスタッフをステージに呼び込んで通訳させる。これも昔と一緒。ギリギリご機嫌を保てたようで安心です。

ライブは文句なしに最高でした。過去と比べるとかそういう無駄なことをせず、目の前で繰り広げられるステージを邪心なしで楽しむことができた。それで十分だと思います。あくまで1回こっきりのお祭りという認識でいたからこそ、僕自身も無邪気に楽しめたと思いますし。

きっと今年の夏くらいまでこのメンツでフェスなどに出演して、今回のプロジェクトは終了するんじゃないかな。むしろ、そうであってほしい。金儲けも大切だけど、これ以上長く続けたらフィル自身次に進めないような気もしますしね。

セットリスト
01. Mouth For War
02. A New Level
03. Strength Beyond Strength
04. Becoming / Throes Of Rejection (Outro)
05. I'm Broken / By Demons Be Driven (Outro)
06. Use My Third Arm
07. 5 Minutes Alone
08. This Love
09. Yesterday Don't Mean Shit
10. Fucking Hostile
11. Cemetary Gates (Tape Intro) / Planet Caravan
12. Walk
13. Domination / Hollow
14. Cowboys From Hell

 

■最後に
『DOWNLOAD JAPAN』あたりと比較すると、客層がかなり上だった印象。出演者的にそうなるのも致し方ないかな。それこそ、ラウパー、『DOWNLOAD JAPAN』、『KNOTFEST JAPAN』の出演者(日本人アーティスト含む)をミックスして3で割れば、もっとバランス良い客層になる気もします。そうすることが、こういったジャンルの拡大や同フェスの継続にも好影響を及ぼすと思うのですが、いかがでしょう?

2023年4月 5日 (水)

BURY TOMORROW『THE SEVENTH SUN』(2023)

2023年3月31日にリリースされたBURY TOMORROWの7thアルバム。

初の全英TOP10入り(最高10位)を記録した前作『CANNIBAL』(2020年)から約2年半ぶりの新作。コロナによるロックダウンの影響でリリースが予定より遅れたものの、アルバムはセールス的に好記録を残すことができました。が、その後のツアーはすべて中止・延期に。こういった影響もあってか、2021年夏にはオリジナルメンバーのジェイソン・キャメロン(G, Clean Vo)が脱退してしまいます。しかし、バンドは新たにエド・ハートウェdル(G)とトム・プレンダーガスト(Key, Clean Vo)を迎え、6人編成で活動再開。少しずつライブを開催する中で、2022年3月には「Death (Ever Colder)」、6月には「Life (Paradise Denied)」を立て続けに配信リリースし、健在ぶりをアピールします。

そして、ついに完成したニューアルバム『THE SEVENTH SUN』。過去2作から引き続き、アルバムのプロデュースを手がけたのはダン・ウェラー(SikThのギタリスト)。先の配信ナンバー2曲はアルバム本編に含まれていないものの(日本盤にはボーナストラックとして追加収録)、それを補って余るほど良曲揃いの力作に仕上がっています。

クリーンボーカルが交代したことで、どれだけ前作から自然な流れで本作と向き合うことができるのか心配もありましたが、先の配信楽曲で徐々に慣れてきたこともあってか、アルバムは強烈なオープニング曲「The Seventh Sun」から安心して(かつ、興奮したまま)最後まで楽しむことができるはずです。

前作の洗練された作風は本作にも引き継がれていますが、今回はそれ以前に作品に存在していた暴力的なアグレッションが復調しており、そこも含めて全体のバランス感に優れている。ダニエル・ウィンター・ベイツ(Unclean Vo)もより迫力を増し、トムのクリーンボーカルとの対比も良好。互いが双方の良さ・魅力を見事に引き出すことに成功しており、非常に充実したボーカルワークを楽しめるはずです。かつ、「Heretic」には盟友WHILE SHE SLEEPSのロズ・テイラー(Vo)、「The Carcass King」にはタトゥーアーティスト/ミュージシャンのコディ・フロストがそれぞれゲスト参加し、多彩さを加えています。

多彩さといえば、楽曲の幅の広がりも本作の大きな特徴。ドラマチックさとブルータルさが混在するタイトルトラックのほか、キャッチーな王道メタルコア「Abandon Us」や「Recovery?」、殺傷力抜群の「Force Divide」や「Wrath」、ゴシックテイストの強いメロウなミディアムチューン「Majesty」、コディ・フロスト含む3人のシンガーの特性が見事に発揮された「The Carcass King」など捨て曲ゼロなうえに、キラーチューンも満載。バンドとして確実なステップアップを遂げたと同時に、メンバーチェンジが功を奏した起死回生の1枚ではないでしょうか。

現時点ではまだ英国チャートの結果は出ていませんが、できることなら前作を超える数字を残してほしいですし、それを受けて来日にも期待したい……そう心の底から強く思えるほどの力作です。

 


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2023年4月 1日 (土)

EMPIRE STATE BASTARD『HARVEST』(2023)

2023年3月24日に配信リリースされたEMPIRE STATE BASTARDの1stシングル。

EMPIRE STATE BASTARDはBIFFY CLYROのサイモン・ニール(Vo, G)と、同バンドのツアーサポートメンバーにしてOCEANSIZEのフロントマンでもあるマイク・ヴェナート(G, Vo)によるサイドプロジェクト。この2人を中心に稼働するものの、レコーディングやツアーにはSLAYERを筆頭に数々のバンドで活躍するデイヴ・ロンバード(Dr)、そしてBITCH FALCONのナオミ・マクラウド(B)が参加することが事前にアナウンスされ、音源がひとつも公開される前に発表された3本のライブが即日完売するなど、早くから注目を集めてきました。

3月26日の1stステージを目前に公開された、記念すべきデビュー曲はサイモンがBIFFY CLYROで表現してきたいくつかの側面のうち、メタル/ハードコア的方向に特化した仕上がり。サイモンも歌うというよりは叫ぶことでこのエクストリームな楽曲を完璧な形に昇華させようとしており、そこにマイクの攻撃性の強いギターと、どこからどう聴いてもデイヴ・ロンバードという派手なドラミングが随所にフィーチャーされている。一旦スタートしたら3分にも満たないこの曲、秒に感じられるほどカオスな時間を堪能できます。特に終盤10数秒で体感できる怒涛のプレイは圧巻の一言です。

また、〈We can build a different world(俺たちは新しい世界を築くことができるんだ)〉〈My patience is wearing thin(俺の忍耐力は薄れている)〉といった繰り返されるフレーズ、どこか神話性や神秘性が強い歌詞なども印象的で、いずれリリースされるアルバムを通してどんなことを伝えたいのか、表現したいのかも気になるところです。

YouTube上にアップされているライブのファンカム映像を観ると、ダーク&ムーディな楽曲も存在しているようですが、今後どういった楽曲がドロップされているのか、とにかく今年もっとも楽しみなプロジェクトです。

 


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2023年3月31日 (金)

2023年3月のお仕事

2023年3月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※3月31日更新)

 

[WEB] 3月31日、「billboard JAPAN」にてインタビューGARNiDELiAがJ-POP名曲を「歌ってみた」 初のカバーアルバムのこだわりを語るが公開されました。

[WEB] 3月31日、「billboard JAPAN」にてインタビューNMB48が引き継ぐレガシー、そして13年目の挑戦を語るが公開されました。

[WEB] 3月29日、「リアルサウンド」にてライブレポートペンタトニックス、観る者の度肝を抜いた圧倒的な“声の力” Little Glee Monsterとも共演した3年ぶりのジャパンツアーが公開されました。

[紙] 3月29日発売乃木坂46公式書籍「10年の歩き方」にて、メンバー取材およびライティング(執筆)を担当しました。(Amazon

[WEB] 3月29日、「乃木坂46 鈴木絢音 卒業セレモニー」(3月28日)のオフィシャルレポートを担当。BUBKA WEBをはじめ、さまざまなWEBメディアに掲載中です。

[WEB] 3月25日、「リアルサウンド」にてインタビューLittle Glee Monster、新体制初EP『Fanfare』で貫いた攻めの姿勢 初ツアーで6人が掴んだ確かな手応えが公開されました。

[紙] 3月25日発売「Rolling Stone Japan」vol.22にて、BABYMETAL「THE OTHER ONE」アルバムレビュー執筆を担当しました。(Amazon

[WEB] 3月24日、「音楽ナタリー」にてインタビューBABYMETAL「THE OTHER ONE」特集|初心者でもわかるニューアルバム解説&WWEプロレスラーASUKA特別寄稿が公開されました。

[WEB] 3月24日、「音楽ナタリー」にてインタビュー「BABYMETAL RETURNS - THE OTHER ONE -」をライター2人が振り返るが公開されました。

[WEB] 3月23日、「SPICE」にてインタビュー指原莉乃プロデュースのアイドルグループ=LOVE、2023年最初の最新シングルリリースをへの想いを訊くが公開されました。

[WEB] 3月22日、「SPICE」にてインタビュー初武道館直前!クマリデパート長編インタビュー【後編】 「自信満々の顔をしてこの6人で武道館に立ちたいです」目前に迫る初の武道館公演への胸の内が公開されました。

[WEB] 3月20日、「SPICE」にてインタビュー初武道館直前!クマリデパート長編インタビュー【前編】 ”これがクマリデパート”現在進行形を詰め込んだ2年振りのフルアルバムを語るが公開されました。

[WEB] 3月16日、「音楽ナタリー」にてインタビューSunny Sunnyインタビュー|あさぎーにょが別名義で表現する、人々を優しく照らす音楽が公開されました。

[WEB] 3月16日、「音楽ナタリー」にてインタビューTHE BAWDIES×Technicsコラボライブ開催記念特集|「音楽をより近くに感じられる」高性能イヤフォンを体験が公開されました。

[WEB] 3月10日、「音楽ナタリー」にてインタビューDEZERT SORAロングインタビュー|エンタテイナーとして覚醒したV系ドラマーの誓いが公開されました。

[WEB] 3月10日、「BARKS」にてインタビューNAO AIHARA、「自問自答も全部無駄ではなかった」が公開されました。

[WEB] 3月8日、「SPICE」にてインタビュー指原莉乃プロデュースとなるアイドルグループ≒JOY、結成からの1年と新曲「スイートシックスティーン」への想いを紐解くが公開されました。

[WEB] 3月8日、「SPICE」にてライブレポート=LOVE「この会場を私たちと皆さんの愛でいっぱいにしてください!」2年振りの武道館公演を多幸感で包み込むが公開されました。

[WEB] 3月8日、「リアルサウンド」にてライブレポート櫻坂46 三期生、『おもてなし会』で見せた11人の強力な個性 「Nobody's fault」から「BAN」「夏の近道」まで披露が公開されました。

[WEB] 3月6日、「櫻坂46 三期生おもてなし会」(3月5日)のオフィシャルレポートを担当。Pop'n'Rollをはじめ、さまざまなWEBメディアに掲載中です。

[紙] 3月3日発売「日経エンタテインメント!」2023年4月号にて、櫻坂46大園玲の連載「ミステリアスな向上心」および日向坂46上村ひなのの連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[紙] 3月2日発売「ヘドバン・スピンオフ11」にて、LOVEBITE asamiインタビュー、harunaインタビュー、オリジナル作品&映像作品レビュー、ビクター担当ディレクター杉山頼行インタビュー、俺の/私の「PANTERAベスト・アルバム」+「PANTERAベスト・ソング」を執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月1日、楠木ともりファンクラブサイト「TOMOROOM」にてKusunoki Tomori Birthday Live 2022『REIGLEAM』東京公演ライブレポートが公開されました。

METALLICA『72 SEASONS [Single]』(2023)

2023年3月30日に配信リリースされたMETALLICAの新曲。

この曲は4月14日発売予定の6年半ぶりのオリジナルアルバム『72 SEASONS』からの、リードシングル第4弾。昨年11月末に突如配信された「Lux Æterna」、今年1月中旬に発表された「Screaming Suicide」、同3月初頭に発表された「If Darkness Had A Son」に続く楽曲で、その曲名からもわかるようにアルバムの冒頭を飾るタイトルトラックです。

全12曲が収録され77分超の大作となっているニューアルバムの、トラックリストは下記の通り。

01. 72 Seasons
02. Shadows Follow
03. Screaming Suicide
04. Sleepwalk My Life Away
05. You Must Burn!
06. Lux Æterna
07. Crown Of Barbed Wire
08. Chasing Light
09. If Darkness Had A Son
10. Too Far Gone?
11. Room Of Mirrors
12. Inamorata

「Lux Æterna」が3分半程度のショート&ファストナンバー、「Screaming Suicide」が比較的従来の彼ららしい5分半のアップチューン、「If Darkness Had A Son」は『LOAD』(1996年)『RELOAD』(1997年)期をブラッシュアップさせた6分半のミディアムナンバーと、ここまで比較的バラエティに富んでいて、かつ原点回帰とキャリア総括的な方向性になるのかと予想させてきましたが、このタイトルトラックもその延長線上にある1曲と言えるでしょう。

約7分40秒という長尺なこの曲は、アップとミディアムを交互に繰り返す、プログレッシヴな展開を持つアレンジ。とにかくリフに次ぐリフというHR/HMファンが喜びそうな作風は、どことなく4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)の頃を彷彿とさせます。スラッシュメタルの枠からはみ出し、独自のスタイルを確立させようとした80年代後半のテイストと、曲中何度も出てくる〈Feeding on the wrath of man.../人の怒りを糧に〉というフレーズからもおわかりのように怒りをテーマにした歌詞など、キャリア40年を超える今もそこを軸に創作活動と向き合っているという事実に改めて驚かされます。

もちろん、80年代後半に試みた施策とまったく同じわけではありません。その間の経験が見事に反映された、非常に洗練されたアレンジ/サウンドを楽しむことができますし、歌詞の質感やその怒りの矛先も20〜30代の彼らとは異なるものが伝わる。「俺たちのアニキ」だったジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)が親世代、あるいはそのひとつ上の世代になったことで表現する怒りとは一体なんなのか……この曲のみならず、アルバムの全編からそういったジェイムズの「今」が伝わるのがこの新作なのかもしれませんね。

ファンならず間違いなく一発で気に入るであろうこのテイスト、方向性。時代に逆行したそのスタイル含め、今度のMETALLICAはオーバーグラウンドでどこまで支持されるのか、非常に楽しみになってきました。リリースまであと2週間、期待に胸躍らせながらその瞬間を待つことにしましょう。

 


▼METALLICA『72 SEASONS [Single]』
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2023年3月25日 (土)

PANTERA『COWBOYS FROM HELL: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2010)

1990年7月にリリースされたPANTERAのメジャー1作目『COWBOYS FROM HELL』の20周年記念エディション。海外では2010年9月14日にCD2枚組および3枚組仕様の2形態で発売されました(日本盤未発売)。

本稿は3枚組エディションについて触れていきます。まず、DISC 1には『COWBOYS FROM HELL』リマスター音源を収録。リマスタリングされた最新音源は1990年という時代の間に制作されたオリジナル音源と比べて、だいぶ厚みとヘヴィさが増している印象。テリー・デイトによるもともとの音は、このサウンドのわりに(特にダイムバッグ・ダレルのギターの)線が細い/痩せている印象が強く、ドラムもヴィニー・ポール(Dr)のドラムサンドも軽く聞こえていたところを、だいぶヘヴィ補正が加えられたことでこのバンド本来の魅力が伝わりやすい形には変化したかなという気がしています。

3枚組仕様にのみ収録のDISC 2には、『COWBOYS FROM HELL』に伴うライブから1990年に開催された『Foundations Forum』の7曲と1991年にモスクワで開催された『Monsters Of Rock』の5曲を収録。「Domination」「Primal Concrete Sledge」「Cowboys From Hell」「Heresy」「Psycho Holiday」の5曲はまる被りですが、メジャーデビュー間もない時期のコンベンションライブとソ連崩壊直前に200万人前後の聴衆が押し寄せたと言われるフェス公演とシチュエーションはまったく異なります。録音状態は前者のほうが優れているものの、ライブの臨場感は確実に後者のほうが上。特にモスクワでの『Monsters Of Rock』はAC/DCMETALLICAMOTLEY CRUEなどの強豪たちとの共演ということもあり、バンドが頂点へと登り始めた最初期の勢いも加わったエネルギッシュなライブを楽しめるはずです。

バンドはその後、次作『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)にて本格的なブレイクを果たすわけですが、その人気が爆発する前夜の記録としては非常に興味深いものがあるのではないでしょうか。その後のライブではあまり披露されなくなった『COWBOYS FROM HELL』収録曲も少なくないですし、特に「The Art of Shredding」あたりは1988年12月のライブ音源『BEFORE WE WERE COWBOYS』(2015年)と比較してみても面白いかもしれません。

さらにDISC 3は『COWBOYS FROM HELL: THE DEMOS』と題した、『COWBOYS FROM HELL』収録曲およびアルバム本編には収録されなかった未発表曲のデモ音源集。1989年に録音されたという11のデモ音源の中でもっとも注目を集めるのは、本ディスクのオープニングを飾る「The Will To Survive」でしょう。正統派メタル調の楽曲スタイルは『COWBOYS FROM HELL』の方向性というよりも、その前作『POWER METAL』(1988年)の流れを汲むもの。フィル・アンセルモ(Vo)もスクリームしたりガナったりするよりもハイトーンで歌い上げており、思わずニヤニヤしてしまいます。ちなみに、この曲の一部はのちに『VULGAR DISPLAY OF POWER』に収録される「This Love」に流用されることになります。

そのほかにも、「Shattered」の冒頭に仰々しいイントロダクションが追加されていたりと、その後発表される正規盤音源とは一部異なるアレンジも要所要所に見つけることができます。ストレートな演奏の上で素直に歌い上げられている「Cemetery Gates」も、「The Will To Survive」の流れで聴くとなるほどと納得させられるものもあり、改めてこのバンドの自出を再確認できるのではないでしょうか。

なお、DISC 3の『COWBOYS FROM HELL: THE DEMOS』は2010年当時にBlack Fridayの一環として3000枚限定で単独アナログ化。音源自体はサブスクでも聴くことができるものの、本アナログは現在入手困難の1枚となっています。

ここ数日、『LOUD PARK 2023』ヘッドライナーとして約20年ぶりの来日を控えたPANTERAのスピンアウト作品をピックアップしてきましたが、こうした記事がラウパーへの期待を煽るものになっていることを願っています(ダイムやヴィニーはすでにこの世にいないものの、ザック・ワイルド&チャーリー・ベナンテを含む編成でのステージはメタルファンなら目撃しておかないといけないものですからね)。

 


▼PANTERA『COWBOYS FROM HELL: 20TH ANNIVERSARY EDITION』
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2023年3月24日 (金)

PANTERA『FAR BEYOND BOOTLEG: LIVE FROM DONINGTON '94』(2014)

2014年6月2日にリリースされたPANTERAのライブアルバム。

本作はもともと、同年3月24日にリリースされたPANTERAのメジャー3rdアルバム(通算7作目)『FAR BEYOND DRIVEN』(1994年)の20周年デラックスエディションにボーナスディスクとして付属していたものを、アナログ&デジタル限定で単独販売したもの。本ライブアルバムの日本盤単独リリースは実現していませんが、『FAR BEYOND DRIVEN』20周年盤は国内盤化もされているので、フィジカルで入手したい方はそちらを探してみることをオススメします(アルバム本編もリマスタリングが施され、迫力が増していますしね)。

さて、このライブアルバムですが、PANTERAがもっともノリにノッていた1994年のライブを収めたもので、1994年6月4日にイギリス・ドニントンパークで開催された野外フェス『Monsters Of Rock』出演時の音源となります。同年春に『FAR BEYOND DRIVEN』が初の全米1位を獲得、イギリスでもキャリア最高の3位を獲得したタイミングであり、当然彼らはフェスのメインステージに出演。AEROSMITHがヘッドライナーを務めた年で、PANTERAはPRIDE & GLORYTHERAPY?に次ぐ3番手としてステージに立っています(その後、SEPULTURAEXTREME、AEROSMITHという出順)。

当日のセットリストは以下のとおり。

01. A New Level
02. Use My Third Arm
03. Walk
04. Strength Beyond Strength
05. Domination / Hollow
06. Slaughtered
07. Fucking Hostile
08. This Love
09. Mouth For War
10. Primal Concrete Sledge
11. Cowboys From Hell

このうち、アルバムには「A New Level」「Primal Concrete Sledge」を除く9曲を収録。当時の触れ込みでは「『Monsters Of Rock』出演時の模様を完全収録」と謳われていましたが、録音状態の不備が理由でしょうか。結果としてこういう中途半端な形となっています。ライブのオープニング定番曲である「A New Level」をカットし、当時の新曲「Use My Third Arm」からスタートする形は少々意外かもしれません。

PANTERAの公式ライブアルバムとしてバンド存命中に唯一残されたライブアルバム『OFFICIAL LIVE: 101 PROOF』(1997年)と比べると、ボリューム的には物足りないかもしれません。しかし、ドニントンパークで数万人のオーディエンスを前に繰り広げられる圧巻のステージの雰囲気は、この音源からも十分に伝わってきますし、人間関係的にも良好だった(つまり、バンドとしてもっとも脂の乗っていた)時期の鉄壁のライブを追体験できるという点では、非常に重要な意味を持つ音源だと言えるでしょう。

圧倒的なバンドアンサンブルは言うに及ばず、もはや獣のようにスクリームしまくるフィル・アンセルモ(Vo)は唯一無二。個人的には「Slaughtered」から「Fucking Hostile」へと傾れ込む怒涛の構成がハイライトかな。特に後者はなかばヤケクソ気味なスピード感で、サビやエンディングで〈Fucking hostile!〉と一斉に叫ぶオーディエンスの声には鳥肌が立ちます。

ちなみに、本作には『OFFICIAL LIVE: 101 PROOF』に未収録の「Mouth For War」のライブテイクも収録。こちらの熱量も何ものにも変え難い魅力があるので、必聴です。まあ要するに……PANTERAのライブ音源はすべてマストで押さえておくべきってことですね。

 


▼PANTERA『FAR BEYOND BOOTLEG: LIVE FROM DONINGTON '94』
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2023年3月23日 (木)

PANTERA『BEFORE WE WERE COWBOYS』(2015)

2015年9月11日にリリースされたPANTERAの非公式ライブアルバム。当初は『BORN IN THE BASEMENT: THE DALLAS BROADCAST 1988』というタイトルで発表。日本では2018年4月6日に限定発売されています。

昨今のサブスク中心の音楽生活においては、ふいにこういった作品が追加されてビックリさせられることも少なくありません。本作もそのひとつであり、後ろめたさはありつつもついつい再生してしまう自分がいます。正直、本サイトでもこの手のアイテムはあまり紹介しないようにしていたのですが、内容が内容なだけに(かつ、この時期の音源を公式に聴く手段がないので)こうして改めてピックアップしてみました。

本作は1988年12月20日、アメリカ・テキサス州ダラスの The Basement Clubで行われたPANTERAのFMラジオ放送用ライブ音源に、非公式リリースに際してデジタルリマスタリングを施したもの。1986年に加入したフィル・アンセルモ(Vo)を擁する編成で初のスタジオアルバム(通算4作目)『POWER METAL』(1988年)を発表し、半年後に行われたライブのようです。

初期3作はグラムメタルの延長線上にあるサウンドでしたが、フィルの加入により(アルバムタイトルどおり)パワフルなメタルバンドへと生まれ変わったPANTERAですが、当時はまだメジャーデビュー前。本作のタイトルのように『COWBOYS FORM HELL』(1990年)前夜”という、非常にレアなタイミングでのライブとあって、選曲的にも今では想像できないような内容のステージが展開されています。

全9曲が収められた本作ですが、冒頭4曲(「Death Trap」「Rock The World」「Power Metal」「We'll Meet Again」)は『POWER METAL』からの選曲。『COWBOYS FORM HELL』以降しか知らない世代にとっては、この時点で相当新鮮に映ります。スタジオ音源では正統派メタル的カラーが強いものの、こうしてライブテイクを耳にすると、どの曲も『COWBOYS FORM HELL』期の片鱗を感じさせ、楽器隊(特にギターのダイムバック・ダレル)のプレイに関してはすでに“『COWBOYS FORM HELL』以降”を感じさせる完成度。そりゃあメジャーに引っ張られるわけだと納得してしまいます。

またこの時点で、のちに『COWBOYS FORM HELL』に収録される「The Art Of Shredding」「The Sleep」も披露されており、早くもバンドが次の変化に向けて動き出していたことも確認できます。大まかなアレンジはその後のスタジオバージョンと一緒ですが、やっぱり『POWER METAL』の楽曲とはちょっと質感が異なることもあり、このライブの流れで聴くと馴染んでいるようで乖離しているようでもあり、なかなか面白いことになってます。

さらに、本作には9分にもおよぶダイム(当時はダイアモンド・ダレル)のギターソロや、「This Bud's For You」のお遊びカバーなども含まれており、その後公式に残されたライブ作品とはまた違った味わい深さも伝わります。音質的には不安定さも否めませんが、ひとつの記録として、また『POWER METAL』収録曲の一部を追体験する上で非常に貴重な作品と言えるのではないでしょうか。いつサブスク上から消えるかわからない1枚ですが、『LOUD PARK 2023』での来日を前にチェックしてみてはどうでしょう。

 


▼PANTERA『BEFORE WE WERE COWBOYS』
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2023年3月22日 (水)

BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』(2003)

2003年4月22日にリリースされたBLACK LABEL SOCIETYの4thアルバム。日本盤は同年3月29日発売。

前作『1919 ETERNAL』(2002年)からほぼ1年という、非常に短いスパンで届けられたオリジナルアルバム。アメリカでは売り上げを前作の倍近くに伸ばし、初めてBillboard 200(全米アルバムチャート)入り(最高50位)を記録しました。

前作と何がそんなに違ったのでしょうか。ひとつは、ドラム以外のすべてのパートをザック・ワイルドひとりで担当したこと。ドラムのみ前作から参加したクレイグ・ニューネンマッハー(ex. CROWBAR)がプレイしているのですが、そもそも前作も3曲のみロバート・トゥルヒーヨ(現METALLICA)が参加したのみで、それ以外の曲ではザックがベースも弾いていたので、そこまで大きな変化というわけではない。そもそも、それ以前の『SONIC BREW』(1999年)『STRONGER THAN DEATH』(2000年)の時点でザックはドラム以外のパートをすべてレコーディングしていたので、これに関してはただ原点に戻っただけと言えます。

では、楽曲面が大きく変化したのか。そこに関しても、前作までの延長線上にあるものなので、そこまで変わったとは思えない。ただ、楽曲の質感に関しては一聴して粗暴に思えるものの、実は洗練され始めていることにも気付かされる。ヘヴィすぎるギターリフに圧倒されるかもしれませんが、実はアレンジもかなり手が込んだものが多く、「Suffering Overdue」でのスマートな冴え渡りぶりには驚きを隠せません。どうしても似たようなヘヴィナンバーの連発で1曲1曲の差別化に苦心しそうなジャンルですが、このアルバムにおける各曲の個性の際立ちぶりからは、前作以で得た手応えが非常に大きなものだったことが伺えます。

また、アコースティック色を強めた「The Blessed Hellride」、ダークなパワーバラード調「Blackened Waters」、アーシーでセンチメンタルなピアノバラード「Dead Meadow」といった変化球もしっかり用意。さらに、自身の師匠ともいえるオジー・オズボーンがゲスト参加した「Stillborn」といった話題性の強い楽曲も含まれており、楽曲のバラエティ豊かさや充実度は過去イチかもしれません。特段変わったことや新しいことにトライしたわけではない本作、作品を重ねるごとにバンドの軸がより強靭なものへと確立されていったからこそ、特別なことをしなくても当たり前のような傑作へと昇華させることができたわけですね。それが、売り上げやチャート成績にも反映された。そう考えると、この結果は納得といいますか、ごく当たり前の評価なのでしょう。

とにかく、この時期のザックの創作意欲は尋常じゃないものがあり、翌年春には早くも次作『HANGOVER MUSIC VOL.VI』(2004年)を発表することになります。

 


▼BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』
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2023年3月21日 (火)

EUROPE『EUROPE』(1983)

1983年3月14日にリリースされたEUROPEの1stアルバム。日本盤タイトルは『幻想交響詩』。

EUROPEは1979年にジョーイ・テンペスト(Vo)、ジョン・ノーラム(G)、ジョン・レヴィン(B)、トニー・レノ(Dr)によって結成された、スウェーデン・ストックホルム出身の4人組(当時)ハードロックバンド。当初はFORCEと名乗っており、1982年にスウェーデンで開催されたコンテストで優勝したことでデビュー権を獲得。このタイミングに現在のEUROPEに改名し、本作で華々しく(かな?)デビューします。

全9曲中、インストの「Boyazont」以外はすべてジョーイが作詞作曲を担当。70年代のブリティッシュハードロックなどからの影響が強く感じられる王道ナンバーが中心で、アルバム冒頭を飾る疾走チューン「In The Future To Come」やドラマチックな名曲「Seven Doors Hotel」など、すでに次作へとつながる様式美ナンバーが用意されており、無名の新人らしからぬ高クオリティぶりを見せています。

それ以外にも叙情的な「The King Will Return」「Words Of Wisdom」、NWOBHMからの影響も感じられる「Farewell」や「Paradize Bay」「Memories」、ジョン・ノーラムの(ギタリストとしての)メロディメイカーぶりが遺憾無く発揮された「Boyazont」など聴きどころ満載。録音状態など含めると、すべてにおいてA級とは言い難いものの、B級+くらいの完成度は保っており、ここ日本でも「Seven Doors Hotel」を中心に高く評価されました(現在のアートワークは、日本盤用に制作されたものが世界デビューの際に採用)。また、本作が評判となり、続く『WINGS OF TOMORROW』(1984年)ではEpic Recordsとのワールドワイド契約も実現しています。

ギターやベースのチューニング、ボーカルのピッチの甘さが若干気になるものの、今聴いてもこの若さと勢いに満ち溢れた内容は『WINGS OF TOMORROW』とは異なるものがあり、あのタイミングだからこその真似できない魅力と言えるかもしれません。もしその後もキーボード主体のアレンジを採用することなく、本作で試みた方向性で進んでいたとしたら、その後どうなっていたんでしょうね。間違いなく「The Final Countdown」は生まれていなかった(世に出ていなかった)とは思いますが……。

本作発売から今年で40周年。このアニバーサリータイミングに『WALK THE EARTH』(2017年)以来となる新作にも期待したいですし、何より節目らしい活動があるのかも楽しみです。

 


▼EUROPE『EUROPE』
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2023年3月20日 (月)

JOURNEY『FRONTIERS』(1983)

1983年2月1日にリリースされたJOURNEYの8thアルバム。

「Who's Crying Now」(米4位)、「Don't Stop Believin'」(同9位)、「Open Arms」(同2位)、「Still They Ride」(同19位)とヒットシングルを連発し、アルバム自体もキャリア初の1位を獲得した前作『ESCAPE』(1981年)。現在までにアメリカのみで1000万枚以上のセールスを誇る名盤から約1年7ヶ月という、今から考えると非常に短いスパンで届けられたのがこの『FRONTIERS』というアルバムです。普通に考えたら、相当なプレッシャーが伴った制作だったのではと予想しますが、この時代ってそういったことを考える余裕もないくらい時間に追われ続けていたのかもしれませんよね。

アメリカンロックの大らかさとポップスとして通用するソフト感のバランスにもっとも優れた前作を経て、今作ではより洗練された上質なサウンドと、このバンドが本来持ち合わせていたハードロック/プログロック的な側面を(ちょうどアメリカでも人気爆発寸前だった)HR/HM視点で昇華させた作風でまとめ上げた印象。楽曲の方向性的には前作の延長線上にあるので、「ソフトでポップなJOURNEY」を期待するリスナーも十分に満足させるだけの内容に仕上がっているのではないでしょうか。

とはいえ、アルバムの冒頭を飾る「Separate Ways (Worlds Apart)」の若干シリアスで仰々しいイントロ、全体を覆う硬質さは「おや、前作とはちょっと違うかも?」と思わせるに十分な1曲。今聴くとチープなシンセリフですが、このあとにVAN HALEN「Jump」やEUROPE「The Final Countdown」がヒットすることを考えると、そのルーツと言えなくもないかな。事実、80年代半ばの“メンバーにキーボードがいた”洋楽カバーバンドはみんなこの「Separate Ways (Worlds Apart)」をコピー/カバーしていましたしね。

で、その若干シリアスな作風はミディアムバラード調の「Send Her My Love」、ダイナミックはハードロック「Chain Reaction」へと続いていきます。前作ではスティーヴ・ペリー(Vo)/ニール・ショーン(G)/ジョナサン・ケイン(Key)の三頭体制で楽曲制作を行ったことでバランスに優れていたわけですが、今作ではペリー&ケイン名義の楽曲も増え(「Separate Ways (Worlds Apart)」「Send Her My Love」「After The Fall」)、挙げ句ケイン単独名義によるピアノバラード「Faithfully」まで存在。ペリー/ケイン/スティーヴ・スミス(Dr)による「Back Talk」なんて曲も存在し、バンド内のバランス感が少しずつ崩れ始めていることにも気づきます。

アルバム前半は前作で得た成功をなぞろうとして若干空回りしている印象もありますが、「Edge Of The Blade」以降のアルバム後半ではニール・ショーンのカラーを強めたハードロック全開。ヘヴィバラード「Troubled Child」やパーカッシヴなドラミングが気持ち良い「Back Talk」、若干プログロック的で演奏陣のテクニカルさが際立つ「Frontiers」、ダイナミックなハードロック「Rubicon」と前半とはまた違った色合いで楽しめるはず。序盤にバラードタイプの楽曲を固めてしまったため、どこか軟弱な印象が付きまとう本作ですが、最後まで聴くとバンドの芯がしっかり伝わる良作なんですよね。

本作からは「Separate Ways (Worlds Apart)」(米8位)、「Faithfully」(同12位)、「After The Fall」(同23位)、「Send Her My Love」(同23位)といったヒットシングルも生まれ、アルバムもアメリカで最高2位(しかも9週連続)を記録。現在までにアメリカのみで600万枚以上を売り上げています。しかし、次作制作に向けて動き出そうとしたタイミングに、ロス・ヴァロリー(B)とスティーヴはバンドを脱退。メインソングライターの3人が残り、バンド活動を継続させることになります。

 


▼JOURNEY『FRONTIERS』
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2023年3月19日 (日)

HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』(2023)

2023年3月17日にリリースされた、HANOI ROCKSの2ndアルバム『ORIENTAL BEAT』(1982年)の40周年記念リミックスアルバム。

もともとは1982年1月に本国フィンランドで発売され、日本でも追って1983年1月に初来日記念盤として発表された代表作のひとつ。本作制作時のメンバーはマイケル・モンロー(Vo, Sax)、アンディ・マッコイ(G, Vo)、ナスティ・スーサイド(G)、サミ・ヤッファ(B)、ジップ・カジノ(Dr)で、のちの黄金期を支えるラズル(Dr)加入前最後のオリジナル作品となります。

本リミックス盤に付属のマイケル・モンローによる解説によると、当初の『ORIENTAL BEAT』のミックスにまったく納得していなかったとのことで、90年代にGUNS N' ROSES経由でUzi Suicide Recordsから再発される際にリミックスを希望したんだとか。しかし、当時はオリジナルのマルチトラックが行方不明になったと聞かされ、泣く泣く断念。しかし、数年前にUniversal Musicの倉庫で本作のマルチトラックが発見され、マイケルを中心に新たな形で本作が生まれ変わることになったのでした。

今回のリミックスに際し、曲順も一部変更。例えばオリジナル盤では8曲目に収録のタイトルトラックが、このリミックス盤では1曲目に配置されていたり、本来は2曲目の「Don't Follow Me」が新たに8曲目に変更されていたりと、聴き慣れたものから若干違和感も残る形に。ただ、これも2、3回と通して聴き返すと慣れてくるので、特に問題はないかな。

で、気になるのがリミックス効果。確かにギターのバランスが良くなったり、リズム体のチープさが少々払拭されたかな。全体的によりモダンなバランス感に調整されていて、80年代に初めて聴いたときとはまた違った心地よさが伝わる内容に生まれ変わっています。80年代にはあのB級感のあるチープなミックスが合っていたし、そこに惹かれたところもあったんだけど、これからHANOI ROCKSに触れるリスナーには確かに少々厳しいと言わざるを得ないかな。そういった点では、今回の改訂はマイケル・モンローが当初イメージしていた音というよりも、今の耳で聴いても耐え得るミックスに調整し直したというのが正しいのかもしれませんね。

また、「Oriental Beat」に顕著だけど、オリジナルバージョンを何百回と聴いてきた耳にも「……あれ?」と感じるボーカルが数ヶ所存在します。これは、マルチトラックに残っていた未使用のボーカルトラックを新たに採用したとのことで、「Oriental Beat」以外にも数曲で新規採用されているようなので、もうちょっと聴き込んで違いを見極めてみたいと思います。

もはやニューアルバムは期待できないと思っていたHANOI ROCKSですが、昨年の1日限りの再結成ライブに続きこのリミックスアルバムの発売など、メンバーが元気でいる限りはこうしたサプライズもまだまだあるのかもそれませんね。

 


▼HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』
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2023年3月18日 (土)

CARCASS『SURGICAL STEEL』(2013)、『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』(2014)

『SURGICAL STEEL』は2013年9月13日にリリースされたCARCASSの6thアルバム。日本盤は同年9月4日発売。

2007年にジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)にマイケル・アモット(G)、体調面を考慮して不参加となったケン・オーウェーンに代わりARCH ENEMYのダニエル・アーランドソン(Dr)という布陣で再結成ツアーを行ったCARCASS。2012年にはマイケル、ダニエルがバンドを離れ、ジェフとビルは新作制作を前提として活動を継続します。

その後、現在までバンドに在籍するダニエル・ワイルディング(Dr)が正式加入。この3人で『SWANSONG』(1996年)以来17年ぶりとなるアルバム制作に臨みます。プロデューサーには名盤『HEARTWORK』(1993年)や『SWANSONG』を手掛けたコリン・リチャードソン(FEAR FACTORYNAPALM DEATHBULLET FOR MY VALENTINEなど)が担当したことからもわかるように、グラインドコアを通過した初期メロディックデスメタルやスラッシュメタル的テイストのアルバムが完成。そこに、ミックスでアンディ・スニープ(OPETHKILLSWITCH ENGAGETESTAMENTなど)が加わることにより、単なる原点回帰では終わらないモダンさも随所で感じられる1枚へと到達します。

『SURGICAL STEEL』というタイトルが、JUDAS PRIESTにおける『BRITISH STEEL』(1980年) のオマージュだという話もありましたが、そういった点からも彼らがこの復活作で「90年代以降のブリティッシュメタル/エクストリームメタル」を現代によみがえらせようとした……そう解釈できる音ではないでしょうか。アルバム冒頭を飾るアンセミックなインスト「1985」もどこか往年のヘヴィメタル的な空気感があり、ちょっと及び腰になってしまいますが、そこから唐突に雪崩れ込む「Thrasher's Abattoir」の残虐さに一安心(笑)。以降も(レコーディングではビルひとりですべてのギターパートを録音したものの)このバンドらしさ満点のツインリードギター&リフが随所に用意され、曲が切り替わるたびに思わずガッツポーズしたくなるほどの高揚感を味わえます。

復活作としては文句なしの仕上がりで、軽く平均点越えの内容だと思うのですが、CARCASSというエクストリームな存在にとってはいささかお行儀が良すぎるような印象も。1枚のヘヴィメタルアルバムとしては100点に近いクオリティですが、ことエクストリームの観点で接すると「もう一声」という本音も漏れてきます。

とはいえ、ライブで聴くと文句なしの高揚感が味わえるので、そういった意味では「ライブで化ける」曲たちが並んだ良作なのかもしれませんね。

 


▼CARCASS『SURGICAL STEEL』
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その後、『SURGICAL STEEL』に収録されなかったアウトテイク(日本盤および海外諸国でのデラックス盤に追加されたボーナストラックを含む)で構成されたEP『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』が2014年11月10日にリリースされます。日本盤未発売。

新たなツアーを行うために海外で発売された本作は、『SURGICAL STEEL』セッションから生まれた全5曲を収録。『SURGICAL STEEL』日本盤に追加収録された「A Wraith In The Apparatus」「Intensive Battery Brooding」といった耳馴染みの強い曲のほか、完全未発表の「Zochrot」「Livestock Marketplace」、『SURGICAL STEEL』冒頭を飾ったインスト「1985」のリプライズ・バージョンという『SURGICAL STEEL』との関連性の強さを感じさせる作品となっています。

「A Wraith In The Apparatus」「Intensive Battery Brooding」はスピード感よりも重さ重視したテイストで、アルバム本編と比べたらインパクトは若干弱め。ただ、「Intensive Battery Brooding」は終盤にアップテンポにギアチェンジするアレンジがカッコいいので、これはこれでアリ。

「Zochrot」も前2曲の延長線上にある作風ですが、仕上がり的にはアルバムに入っていても不思議じゃないレベル。アルバムに含まれていたら、よいフックになっていたかもしれません。「Livestock Marketplace」は『HEARTWORK』期のCARCASSというよりも『SWANSONG』期に近い内容で、ビルのカラーが強く表出した1曲ではないでしょうか。これもフックとしては十分な役目を果たしてくれそうな良曲です。

 


▼CARCASS『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』
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そして、これら2枚の作品を1枚のCDにまとめたのが、2015年10月30日にリリースされた『SURGICAL STEEL (COMPLETE EDITION)』です。日本盤は海外に先駆けて、同年10月7日発売。

当初はEP『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』が日本盤未発売だったことを受け、『SURGICAL STEEL』日本盤に未収録だった『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』からの3曲を追加する「『SURGICAL STEEL』ワークス完全版」として『LOUD PARK 15』での再来日にあわせた日本限定リリースの予定でしたが、のちに別ジャケットで海外でも発売。結果として、似たようなアートワークの作品が3枚も並ぶこととなります。

内容に関しては上で触れた通りですが、EPがミドルテンポ中心でクオリティ的にもアルバムより若干落ちること、かつトータル全16曲/約65分という長尺作品となってしまったことで、アルバムの魅力が良い形で伝わりきらないような印象も受けます。ただ、「1985」で始まり「1985 (Reprise)」で終わる構成はドラマチックで良いと思うので、EPからの4曲をカットして「Mount Of Execution」〜「1985 (Reprise)」でアルバムが終了していたらアルバムの持つ抒情性がより強調されたんじゃないかなと、今さらながらに思ってしまいます。

ぶっちゃけ『SURGICAL STEEL』1枚持っていれば問題ありませんが、CARCASSのすべてを知っておきたくて『SURGICAL STEEL』未聴の方ならこのコンプリートエディションを入手しておけば大丈夫でしょう。

なお、『SURGICAL STEEL』に関連したこの3作品は、国内サブスクでは未配信。配信で購入したい、聴きたいという方はBandcampで購入できますので、こちらをチェックしてみてください

 


▼CARCASS『SURGICAL STEEL (COMPLETE EDITION)』
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