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当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2024年4月16日更新)


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2003年4月〜2004年3月発売の洋楽アルバム20選 *NEW!2023年総括 *NEW!2023年上半期総括1991 in HR/HM & Alternative Rock


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2024年4月30日 (火)

2024年4月のお仕事

2024年4月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※4月17日更新)

 

[WEB] 4月17日、「音楽ナタリー」にてインタビュー 竹内アンナ×竹内朱莉インタビュー|入れ替わりたいほどリスペクトし合う竹内コンビが公開されました。

[WEB] 4月17日、「音楽ナタリー」にてインタビュー bokula.インタビュー|多彩なアレンジが光るEPの制作秘話、CDとサブスクの狭間世代にとってCDとはが公開されました。

[WEB] 4月12日、「リアルサウンド」にてインタビュー 岩本蓮加&田村真佑、乃木坂46を担う自信 プレッシャーの中で乗り越えた『バスラ』も振り返るが公開されました。

[WEB] 4月10日、「音楽ナタリー」にてインタビュー 乃木坂46 伸び盛り5期生の魅力が爆発!「超・乃木坂スター誕生!」Blu-ray BOX特集が公開されました。

[紙] 4月8日発売ヘドバン Premium Vol.1にて、NOVA TWINS来日公演レポートを担当しました。(Amazon

[WEB] 4月7日、「リアルサウンド」にてインタビュー WHITE SCORPIONがシンパシーを生むのはなぜなのか? 「Satisfaction graffiti」で手にした真の“らしさ”が公開されました。

[WEB] 4月5日、「音楽ナタリー」にてインタビュー 月刊偶像|アイドルの“歌力”を世界に発信、第1弾はヤママチミキ(GANG PARADE)×真部脩一が公開されました。

[紙] 4月4日発売「日向坂46新聞」2024春号にて、日向坂46齊藤京子インタビューを担当しました。(Amazon

[紙] 4月4日発売「日経エンタテインメント!」2024年5月号にて、櫻坂46大園玲 連載「ミステリアスな向上心」および日向坂46上村ひなの 連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

 

2024年4月18日 (木)

LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2023)

2023年4月7日にリリースされた、LINKIN PARKの2ndアルバム『METEORA』(2003年)の20周年記念デラックス盤。全43曲入りのCD3枚組と、全89曲で構成されたボックスセットおよびデジタルエディション、アナログボックスセットの3仕様が用意されています。

アメリカで1000万枚以上、全世界で約3000万枚を売り上げたデビュー作『HYBRID THEORY』(2000年)に続く2作目ということで、相当なプレッシャーの中で制作されたかと思いますが、結果はご存知のとおり。初の全米1位を獲得したほか、アメリカのみで800万枚以上、全世界で2700万枚というメガヒットを記録し、前作にも劣らない成績を残す代表作のひとつとなりました。

ボックスセットにはリマスタリングされたアルバム本編(CD&アナログ)のほか、2003年11月に発売されたバンド初のライブアルバム『LIVE IN TEXAS』(CD版未収録曲含む)と未発表ライブ音源集『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』(ともにアナログ)、過去にファンクラブ経由で発表された『METEORA』期のデモ音源をまとめた『LPU RARITIES 2.0』(CD)、『METEORA』期の貴重なライブ音源をコンパイルした『LIVE RARITIES 2003-2004』(CD)、「Lost」「Fighting Myself」といった未発表曲や本邦初公開となるデモ音源をまとめた『LOST DEMOS』(CD)、そしてアルバム制作ドキュメンタリー映像『THE MAKING OF METEORA』(DVD)やソウルやマイアミなど2003〜4年のライブ映像(DVD)をひとまとめに。

一方、3枚組バージョンはDISC 1に『METEORA』+未発表曲「Lost」、DISC 2に『LPU RARITIES 2.0』、DISC 3に『LIVE RARITIES 2003-2004』という構成。今回の再発において重要になってくるのは、おそらくボックスセットのみで聴ける『LOST DEMOS』と、ライブコンパイル盤『LIVE RARITIES 2003-2004』になると思っているので、本稿では『LOST DEMOS』と『LIVE RARITIES 2003-2004』中心に解説していきます。

『LOST DEMOS』

「Lost」は新たに手が加えられ、アルバム本編に含まれていても不思議ではない仕上がりにまで到達。それによって、未発表曲というよりも“新曲”のイメージが強いかも。初期の彼らに対してのイメージどおりの1曲ではないでしょうか。ただ、アルバムに含まれていたら“つなぎ”の1曲で終わっていたかもしれません。

「Fighting Myself」は『METEORA』で描かれている世界観の延長線上にある、ヒップホップマナーの1曲。「Lost」がチェスター・ベニントンのクリーンボーカル中心だとしたら、こっちはマイク・シノダのラップを軸にしたグルーヴィーな仕上がりです。「Resolution」あたりもこの流れにあるのかな。一方、「More The Victim」「Massive」「Healing Foot」はテイスト的に『HYBRID THEORY』寄りで、『METEORA』への通過点的な内容。アルバム本編から漏れるのも仕方ないかな。もちろん、もっとブラッシュアップできたらアルバム本編に含まれていても不思議じゃないんですが、当時はそこまでの魅力が見出せなかったのかもしれませんね。

そのほか、「Faint」や「Lying From You」のデモバージョンも含まれており、ブラッシュアップされる前の原石ぶりを確認することができます。『LPU RARITIES 2.0』に収録されたバージョンとはそれぞれ異なるので、完成版含めた聴き比べもできそうです。


『LIVE RARITIES 2003-2004』

ライブをまるまる1本収めた『LIVE IN TEXAS』や『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』とは異なり、こちらは『METEORA』期の象徴的なツアー/フェスのハイライト的内容で、全10曲と非常にコンパクト。自身のツアーのほか、『Reading Festival 2003』や『Rock Am Ring 2004』での記念碑的音源も含まれています。

この中で特筆すべきはラスト3トラックかなと。初期の「Step Up」から「Nobody's Listening」へのメドレー、そこにE-ECUTIONERSの「It's Goin' Down」をミックスしたスペシャルバージョンは、ライブならではの特別感があります。また、NINE INCH NAILS「Wish」のカバーや、KORNジョナサン・デイヴィスをゲストに迎えた「One Step Closer」もスペシャル感が強く、当時のバンドの勢いがダイレクトに伝わります。どれもシングルやファンクラブ経由では既発音源ですが、こうして手軽に聴けるようになったのはありがたい限りです。

 


▼LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』
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2024年4月16日 (火)

LINKIN PARK『PAPERCUTS: SINGLES COLLECTION 2000-2023』(2024)

2024年4月12日にリリースされたLINKIN PARKのコンピレーションアルバム。

チェスター・ベニントン(Vo)の急逝以降、デビューアルバム『HYBRID THEORY』(2000年)20周年盤(2020年)や2ndアルバム『METEORA』(2003年)の20周年盤『METEORA20』(2023年)といったボックスセットで未発表曲を公開してきたLINKIN PARK。本作はバンドのキャリアにおいて、初にして唯一のシングルコレクションアルバム/グレイテストヒッツアルバムとなります。

アルバムに収録されているのは全20曲。内訳的には

オリジナルアルバム
1st:『HYBRID THEORY』(2000年):4曲(Crawling、Papercuts、In The End、One Step Closer)
2nd:『METEORA』(2003年):4曲(Faint、Breaking The Habit、Somewhere I Belong、Numb)
3rd:『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年):3曲(Bleed It Out、What I've Done、Leave Out All The Rest)
4th:『A THOUSAND SUNS』(2010年):1曲(Waiting For The End)
5th:『LIVING THINGS』(2012年):2曲(Castle Of Glass、Burn It Down)
6th:『THE HUNTING PARTY』(2014年):0曲
7th:『ONE MORE LIGHT』(2017):1曲(One More Light)

EP、ファンクラブ限定EPなど
『COLLISION COURSE』(2004年):1曲(Numb/Encore)
『UNDERGROUND 6』(2006年):1曲(QWERTY)

サントラ、コンピ盤など
『TRANSFORMERS: REVENGE OF THE FALLEN - THE ALBUM』(2009年):1曲(New Divide)
『METEORA20』(2023年):1曲(Lost)

となり、ここに『ONE MORE LIGHT』制作時のアウトテイク(未発表曲)「Friendly Fire」が追加されています。いわゆる代表曲はほぼ網羅されている印象があり、特に3rd『MINUTES TO MIDNIGHT』あたりまでのヒットシングル(「New Devide」含む)まではほぼ楽しむことができます。意外だったのは4th『A THOUSAND SUNS』からのヒット曲「The Catalyst」(全米27位)が外されていたこと、6th『THE HUNTING PARTY』からは1曲も選出されていないこと、最終作『ONE MORE LIGHT』からは唯一のヒット曲「Heavy」(全米45位)ではなくタイトル曲が選ばれていることなどでしょうか。20曲収録しても67分程度と、CDでもまだ2〜3曲追加するだけの余白があったものの、あえて20曲と区切りのいいところでまとめているは潔いのかもしれませんね。

こうやってシングル曲/リード曲中心で彼らの作品を振り返ると、大半の尺が3分前後とかなりコンパクトであることに気付かされます。いわゆるハードロックやヘヴィメタルにおける「インストパートをフィーチャーすることで5分を軽く超える」という概念があまり感じられず、ボーカルやラップを軸にして、そこに味付けとしてほかの楽器が入るという姿勢は、もしかしたらほかの同時代のニューメタルバンドと並べたときに特異に映るかもしれません。そういった点からも、彼らはHR/HMの枠だけでは語り尽くせない稀有な存在だったと認識できるはずです。

本作における注目ポイントは、先に触れた未発表曲「Friendly Fire」、そしてファンクラブ限定で聴くことができた「QWERTY」の存在でしょうか。「QWERTY」は日本でもCDリリースされているので耳にしたことのあるファンは多いことでしょう。こうして久しぶりにサブスクを通じて楽しめるようになったのはありがたい限り。かつ、『ONE MORE LIGHT』の世界線の“続き”である「Friendly Fire」では、あのアルバムの物語はまだ完結していないことを思い出させてくれる(だって、予定されていた日本公演が中止になってしまったわけで、我々日本人は『ONE MORE LIGHT』収録曲をナマで体験していないわけですから)。この曲をアルバムラストに置くことで、不完全な終わり方をしたこのバンドの“If”の世界線を描いているようにも受け取ることができ、なんとも言えない余韻を残してアルバムは終了します。

LINKIN PARKの真の魅力はこの1枚だけでは伝わりきらないと思います。これはまだ彼らに出会えていなかった人たちへの新たな入り口であり、かつて彼らと同じ道を歩んでいた同胞たちと数年ぶりに思い出を共有するため(そして、未発表曲を通して新たな思い出を生み出すため)のアイテムでしかないわけですから。ここを起点に、各オリジナルアルバムに初めて触れたり、あるいは久しぶりに引っ張り出してみたりして、ここにはない名曲にも触れてみる、そのきっかけ作りにほかならない。けど、その「ほかならないきっかけ作り」が実は大切なんですよね。

 


▼LINKIN PARK『PAPERCUTS: SINGLES COLLECTION 2000-2023』
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2024年4月14日 (日)

METALLICA『72 SEASONS』(2023)

2023年4月14日にリリースされたMETALLICAの11thアルバム。

オリジナルアルバムとしては前作『HARDWIRED... TO SELF-DESTRUCT』(2016年)から6年5ヶ月ぶり。とはいえ、その間には3rdアルバム『MASTER OF PUPPETS』(1986年)や4th『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)、5th『METALLICA』(1991年)のデラックス版(それぞれ2017年2018年2021年に発売)、アナログ版とデジタルのみで発表したアコースティックライブアルバム『HELPING HANDS... LIVE & ACOUSTIC AT THE MASONIC』(2019年)、再びオーケストラと共演した『S&M2』(2020年)、ブラックアルバム収録の12曲を53組が1曲単位でカバーしたコンピレーションアルバム『THE METALLICA BLACKLIST』(2021年)と、とにかく話題目白押し。かつてほど飢餓感はなかったのですが、本作から最初のリードシングル「Lux Æterna」が2022年11月末に公開されたときは、さすがに興奮しました。

ここまでの流れは先の「Lux Æterna」、そして2023年に入って順次公開されていった「Screaming Suicide」「If Darkness Had A Son」「72 Seasons」の項目を読んでいただき……ここからはリリース当時のメモを元に、発売1周年を機に改めて本作の魅力を振り返ってみたいと思います。

本作のタイトルに用いられた「72 Seasons(72の季節=18年)」という表現は、古代中国で考案された季節を表す方式のひとつで、日本でも古くから自然の変化を知らせるのに使われているものなんだそう。ジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)はこのタイトルについて「ひとつの人生の最初の18年、つまり“本当の自分”や“偽りの自分”を形作っていく年月のことを指している」、要するに「ひとつのキャラクターが確立される上で非常に重要な期間が最初の18年なのだ」と説明しています。アメリカでは多くの州で18歳が成人と認められ、ここ日本でも成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたばかり。人間が大人として認められるひとつの節目が18歳であり、物事の考え方や趣味嗜好もこれくらいの年齢で固まってくると言われます。メンバーの多くが60歳前後になったこのタイミングに、人生の第1形成期を振り返るような作品をドロップすることは、かつてはロック/メタルシーンの兄貴分だった彼らが今や親世代やそれ以上の存在になったという事実の表れでもあるのかな。そう考えると、デビュー40周年を迎えたこのタイミングに改めて40年という歳月の重みがダイレクトに伝わるはずです。

そんな本作。リリース数週間前に一度試聴させていただき、のちにリリース日にCDが届いてからじっくり聴き込んだわけですが(発売日0時のストリーミング解禁は我慢)、正直言って期待以上の出来でした。とはいえ、この1年の間にほかの魅力的な作品に触れるに連れ、「さすがに今年はMETALLICAを年間ベストに入れることはないかな」と消極的になることもありましたが、結果はご存知のとおり。2024年に入ってからしばらく経ちましたが、昨年末以来に大音量でじっくりと再生しておりますが、やっぱり良い。

リリース時の雑誌クロスレビューで「ここに収められた12曲はメタルというよりもハードロックと呼んだほうがしっくりくる作風」と書きましたが、その思いに対しては今も変わりはありません。だって、それはMETALLICAがメタルという鎧を捨て去ったわけではなく、彼らなりのヘヴィメタルを追求した結果、“深化”の先にあったのが自身のルーツ(=人生最初期の18年)と向き合った音を奏でることだっただけなのですから。

オープニングを飾るタイトルトラックを筆頭にどの曲もリフ、リフ、リフの嵐。特にアップとミドルを交互に繰り返す曲構成といい、怒りや葛藤、迷いなどと真正面から向き合った歌詞といい、安定感と瑞々しさが混在する楽曲の数々はどこからどう聴いても前作の延長線上にある、これまでのMETALLICAを総括する作風そのもの。ただ、同時に前作との違いも要所要所から感じ取ることができます。

その筆頭に挙げられるのが、ギターの歪みや音色をはじめ全体的にサウンドがまろやかなこと。なんだけど、全体的に音のきめ細やかさだったりクリアさ、重さが気持ち良い仕上がりで、この手の作品にしては異常に音が良いことに気づかされます。また、楽曲のテンポ感もメタルというよりはハードロックのそれに近いんだけど、かといって古臭いかと言われるとそういうわけでもなく、しっかりとモダンさを感じ取ることができる。その点においては、深化よりも進化と受け取ることもできます。

その一方で「72 Seasons」や「Lux Æterna」「Too Far Gone?」などは、彼らにとって重要なルーツであるNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)時代のバンド群がフラッシュバックしそうな、オールドスクールな作風。そこに80年代後半の彼らと印象が重なる「Shadows Follow」、『LOAD』(1996年)『RELOAD』(1997年)の空気をはらんだ「Sleepwalk My Life Away」や「Inamorata」、ブラックアルバム路線をモダン化させた「You Must Burn!」や「Chasing Light」と、活動前期=デビューからの18年間を強くイメージさせる楽曲が並ぶことも興味深い。

そういった楽曲群を自身が強く影響を受けた「10代の頃に夢中になったルーツミュージック」のテイストでまとめ上げるのですが、そこには先のNWOBHMのみならずTHIN LIZZYBLACK SABBATH、あるいはUFO(およびマイケル・シェンカー)など70年代から活躍するバンドたちの色も見え隠れして、どこか10代の少年たちがスタジオに入ってセッションを楽しんでいるようにも映ります。カーク・ハメット(G)のギターワーク(主にメロウなソロ)も、どこか往年のハードロックを彷彿とさせるものがありますしね。あと、バラード調楽曲を排除した姿勢もそうした傾向とつながるかもしれない。そういった意味では、今作って「“Garage Days”の続き」もしくは「Back To “Garage Days”」と受け取ることもできないでしょうか。

ジェイムズの書く歌詞は非常にシリアスかつネガティブな傾向が強いものばかりですが、これも裏を返せば「影があるから光がある」という「Lux Æterna」のテーマにもつながるし、そんな「Lux Æterna」を真っ向から否定するような歌い出しの「Chasing Light」にはギョッとさせられる。でも、この歌詞もしっかり読み解けば逆説的に希望を持たせる内容であることに気づかされる。ネガティブな側面を入り口に聴き手との距離を縮め、吟味していく中で真の意味を理解させるその手法は、兄貴というよりは親目線に近く、これも今の彼らの年齢に合ったやり方なのかもしれません。

メタルを捨てた問題作とか過去の焼き直しとか、否定的に解釈することは簡単です。とはいえMETALLICAは『MASTER OF PUPPETS』以降、常に問題作を提供し続けてきたバンド。作品を重ねるごとにファンベースの広がりやリスナー数の増大などの違いはありますが、この姿勢自体は平常運転なはずなんですよね。ロック低迷と言われるアメリカにおいて、ブラックアルバムからの6作連続1位記録は途絶えてしまいましたが(最高2位。イギリスやドイツなどでは1位獲得)、メジャー感のあるヘヴィなロックにおける基準は本作で更新されたことは間違いないはずです。

あとは、2013年を最後に実現していない来日公演が実現すればいいのですが(新作を伴うツアーとなると、2010年が最後)、こればかりは難しそうですね……。

 


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2024年4月13日 (土)

DEEP PURPLE『MACHINE HEAD (SUPER DELUXE EDITION)』(2024)

1972年3月25日にリリースされたDEEP PURPLEの6thアルバム『MACHINE HEAD』の発売50周年を記念して制作されたデラックス・ボックスセット。海外では2014年3月29日、日本では同年4月24日発売。

ロック史に残る“言わずと知れた”クラシック作品の本作は、90年代後半以降さまざまな節目にデラックス仕様が発売されてきました。最初が25周年タイミングで、このときは当時の最新リミックスバージョンとリマスターバージョンからなる2枚組、続いて40周年のときには最新リマスター盤、1997年リミックス、Quad SQステレオバージョン、そして単独販売されていたライブ盤『IN CONCERT '72』(1980年)の最新リミックス盤をまとめたボックスセットが発売。約10年ぶりに届けられる今回のアニバーサリー・エディションは半世紀の節目ということもあって、おそらく最後のデラックス仕様ではないかという気がしています。

CD3枚組、アナログ盤1枚、Blu-rayオーディオ1枚で構成された今作最大の注目ポイントは、CDおよびアナログ盤、Blu-rayオーディオに収録されているドゥイージル・ザッパ監修による2024年リミックスでしょう。これ、かなり現代的な質感に変換されており、オープニングを飾る「Highway Star」のイントロを一聴しただけでもその違いに気づくはず。曲によっては尺がエクスパンドされていたり、オリジナルバージョンにない音(イアン・ギランのスクリームやシャウト、リッチー・ブラックモアのちょっとしたギターフレーズなど)が散りばめられていたりと、聴き慣れたアルバムに対して(良くも悪くも)違和感を覚えることでしょう。人によっては「改変すんなや!」と怒りを覚えるかもしれませんが、個人的には新鮮な気持ち(と耳)で接することができました。

最新リミックスバージョンも収められているので、ドゥイージル版リミックスとの聴き比べも可能ですが、例えばオリジナル版(リミックス)が「狭いスタジオで5人が向き合って爆音を奏で、一丸となって迫ってくる」イメージだとすると、ドゥイージルのリミックスは「5人の距離がある程度離れたステージ上で、1人ひとりの楽器の分離がしっかりした、広がりのある音が感じられる」印象といったところでしょうか。同じトラック/演奏を使いながら、こうも違ったイメージを与えられること、またオリジナル版では気づけなかったちょっとしたプレイの癖なども見つけることができ、そういった意味でも後者はリスナー視点というよりもプレイヤー視点で聴けば聴くほど発見が多い1枚ではないでしょうか。あと、ミックス的にも後者は現代的な低音重視感と音のふくよかさが強調されているので、オリジナルリリースから52年も経過していることをあまり感じさせない仕上がりとも言えるかな。かといって2024年の音そのものではないんですけどね。このへん、ニュアンスを伝えるのが難しいですが、それぞれの感覚で一度触れてみてほしいところです。

また、本作のもうひとつの注目点は、先に触れた『IN CONCERT '72』の最新リマスター盤に加え、完全未発表の『LIVE IN MONTREUX 1971』も用意されていること。こちらは1971年4月の音源とのことですが、オーディエンス録音なので音質的にはおまけ程度(もちろん、本作用にデジタルリマスタリングが施されていますが)。とはいえ、オーディエンス録音だからこその迫力というのも存分に味わえ、特に「Speed King」の暴力的な音圧はこの録音ならでは(と同時に、この時期のDEEP PURPLEだからこそ)と言えるでしょう。時期的には“『MACHINE HEAD』前夜”ですが、スイス・モントルーという共通点(『MACHINE HEAD』はモントルーでレコーディング)もあることから、ここから『MACHINE HEAD』は始まった……と受け取ることもできるのでは。そういった意味でも、非常に貴重な音源だと断言しておきます。

2024年に『MACHINE HEAD』という作品について触れること、改めて何かテキストを残すことにどれだけ意味があることなのかわかりません。ですが、僕自身こういうリリースでもない限り、この先の人生において本作について執筆することもないと思うので、自分のルーツを振り返るという意味だけでなく、この歴史的名盤と何十年ぶりに腰を据えて向き合うという意味でも素敵な機会をもらえたのかなと。今はそんなポジティブな気持ちでいます。

 


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2024年4月11日 (木)

DIO『THE LAST IN LINE』(1984)

1984年7月2日にリリースされたDIOの2ndアルバム。

DIO名義でのデビュー作となった前作『HOLY DIVER』(1983年)から約1年1ヶ月という短いスパンで届けられた本作。ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)、ヴィニー・アピス(Dr)、ヴィヴィアン・キャンベル(G/現DEF LEPPARD)、ジミー・ベイン(B)という前作と同じメンバーに、前作を携えたツアーから参加したクロード・シュネル(Key)という布陣で初めて制作されたスタジオ作品となります。

前作で確立させたDIOらしいスタイルを、より研ぎ澄ましたのが本作と言えるでしょう。楽曲のスマートさはもちろんのこと、ヴィヴィアンのギタープレイもより個性を確立させたものへと進化しており、彼の初期における代表作と言える内容だと断言できます。

オープニングを飾る「We Rock」は、DIOにとってアンセムと呼べるような代表曲。前作でオープナーを務めた「Stand Up And Shout」よりも洗練された感とドラマチックさが増しており、これぞヘヴィメタルと呼びたくなるような仕上がりです。続くタイトルトラック「The Last In Line」はRAINBOWBLACK SABBATHから引き継ぐ仰々しいミディアムヘヴィの完成形と言えるもの。ヘヴィメタルファンならこの2曲だけで完全に心を鷲掴みにされるはずです。

その後も緩急に富み、アレンジの練り込まれた楽曲群が並びます。「We Rock」同様のファストチューンながらも荒々しさが際立つ「I Speed At Night」や、キャッチーなミディアムナンバー「One Night In The City」、サバス時代の某曲を再構築したかのような(笑)「Evil Eyes」、ポップテイストがのちの作風に影響を与えることになる「Mystery」、「The Last In Line」にならぶ仰々しい大作「Egypt (The Chains Are On)」など、楽曲の充実度は前作以上。そりゃあ全英4位、全米23位と前作以上のヒットになるのも納得です。

ただ、アルバムとしてのインパクトはデビュー作『HOLY DIVER』のほうが上なんですよね。事実、リピートするのも不思議と今作より前作のほうが多い。特に今作においては、冒頭2曲のインパクトが強すぎるがあまり、それ以降が平均点以上の仕上がりでも薄く思えてしまうのかもしれません。そういえば、学生の頃はダビングした本作のカセットをA面の途中までしか聴かないことも多かったな……。

でも、久しぶりにアルバム通して聴いてみたら、やっぱりいいアルバムだなと再認識。子供の頃は飽き性だったのもあって、これをじっくり楽しむ余裕がなかったのかもしれません。今の感覚だったら、『HOLY DIVER』よりこっちのほうが好みかも。

 


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2024年4月 9日 (火)

BLACK SABBATH『THE ETERNAL IDOL』(1987)

1987年11月23日にリリースされたBLACK SABBATHの13thアルバム。

前作『SEVENTH STAR』を伴う北米/イギリスツアーを終え、1986年後半かられっきとしたサバスの新作制作に取り掛かったトニー・アイオミ(G)。グレン・ヒューズ(Vo)の代役としてツアーをサポートしたレイ・ギラン(Vo/BADLANDS)や、前作のレコーディング&ツアーにも参加したデイヴ・スピッツ(B/ex.WHITE LION、ex.IMPELLITTERIなど)、エリック・シンガー(Dr/KISS、ex.GARY MOORE、ex.ALICE COOPERなど)、そしてお馴染みジェフ・ニコルス(Key)という布陣で楽曲制作に臨もうとするも、デイヴ・スピッツが早々に脱退。代わりにボブ・デイズリー(B/ex.RAINBOW、ex.OZZY OSBOURNEなど)が加わり作業を続けるのですが、今度はレイ・ギランが解雇されてしまいます。結果、レイはサバスに参加しながらも1曲として正式なスタジオ音源を残すことなくバンドを去るのでした。

難航した後任シンガー探しですが、新たにトニー・マーティンという逸材を発掘。しかし、ボブ・デイズリーもレコーディング終了後にバンドを離脱してしまい、最後の最後まで不安定な状態のままアルバムは完成に至ります。

ディオ期のスタイルを再追求しようとしたアイオミですが、それはほぼ成功したと言っても過言ではないでしょう。ディオほどのアクはないものの、声質が彼に近いこともあり、また新人とは思えぬほどの歌唱力と相まって、いかにも“らしい”世界観を構築しています。楽曲自体の出来も良く、仰々しいアレンジのオープニングトラック「The Shining」を筆頭に、アグレッシヴな「Hard Life To Love」や「Lost Forever」、王道サバス的なドラマチックさが際立つタイトルトラック「Eternal Idol」など、ディオ期の2作品(『HEAVEN AND HELL』『MOB RULES』)を好むリスナーなら文句なしに受け入れられるはず。いや、その延長線でより進化した第2期サバスを存分に楽しめることでしょう。

しかし、そういった完成度とは相反し、チャート的には大失敗。本国イギリスでは初めてTOP30入りを逃し(最高66位)、アメリカでは初めて100位内にも入りませんでした(最高168位)。1987年というとBON JOVIDEF LEPPARDWHITESNAKEGUNS N' ROSESなどHR/HM勢が大ヒットを飛ばした大きな転換期。サバスのようなオリジネーターに注目が集まってもおかしくないはずなのですが、どうやら世間が求めるHR/HMとは違っていたのかもしれません(それ以上に、ほぼ無名のフロントマンが加わったことで注目度が落ちたということもあるのでしょう)。

とはいえ、現在までオジー・オズボーンに次いで在籍期間の長いフロントマンはこのトニー・マーティン。参加作品数もオジーの9枚に次ぐ5枚と、本来ならバンドの顔(のひとり)と断言してもおかしくないのですが、いかんせんオジーとディオの存在感&功績が大きすぎて……。ホント、かわいそうな人だよなあ……。

なお、本作のデラックスエディションにはレイ・ギラン在籍時のデモ音源を収録。インスト曲「Scarlet Pimpernel」以外の全8曲を(デモ音質とはいえ)彼のボーカルで楽しむことができます。これ聴いちゃうと、ボーカリストとしての存在感はトニーよりもレイなんだよなあ……ここでも残念な結果に。いや、トニーが本領発揮するのは次作からですので!

ちなみに、本作のツアーが始まる頃にはエリック・シンガーもバンドを離れ、新たにジョー・バート(B)&テリー・チャイムズ(Dr/ex.THE CLASH、ex.THE HEARTBREAKERSなど)が参加することに。その後、本作のセールス的大失敗を理由に、バンドはデビュー時から在籍してきたVertigo Records(英)およびWarner Bros.(米)との契約を終了こととなります。サバスにとっては、この時期がもっとも暗黒期と言えるかもしれませんね。

 


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2024年4月 7日 (日)

BLACK SABBATH featuring TONY IOMMI『SEVENTH STAR』(1986)

1986年1月28日にリリースされたBLACK SABBATHの12thアルバム。

前作『BORN AGAIN』(1983年)では元DEEP PURPLE/GILLANのイアン・ギランをフロントマンに迎えるという荒技に出たサバス。しかし、アルバム発表後にオリジナルメンバーのビル・ワード(Dr)が再脱退、ギランもパープル再結成が決まったため早々に離脱してしまい、サバスは活動休止に陥ってしまいます。

そういった状況を受け、リーダーのトニー・アイオミ(G)は初のソロアルバム制作に着手。当初は前任フロントマンのロニー・ジェイムズ・ディオJUDAS PRIESTロブ・ハルフォード、そして元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズといった複数のシンガーを起用する形をイメージしていたようで、そのバックをデイヴ・スピッツ(B/ex.WHITE LION、ex.IMPELLITTERIなど)、エリック・シンガー(Dr/KISS、ex.GARY MOORE、ex.ALICE COOPERなど)というアメリカ人メンバーと、サバスでサポートメンバーを務めていたジェフ・ニコルス(Key)という布陣で固めてレコーディングを行う予定でした。が、シンガーに関してはあれやこれやがあり、最終的にはグレンの単独参加に落ち着くことになります。

すべての楽曲をアイオミが執筆するわけですが、そのメロディやサウンドは否が応でもサバスっぽくなるのは致し方ありません。「In For The Kill」や「Turn To Stone」といったファストナンバーはディオ期サバスの延長線上にあるものの、時代の流れに沿ってリズムがよりアップテンポになっていることから、若干USメタルっぽさも感じられます。グレンのボーカルもディオのようにねっとり歌うでもなく、適度なブルージーさで比較的ストレートに歌い上げる。サバス臭を残しつつも80年代半ばという時代性を反映させたスタイルは、ソロ作品としては非常に良いのではないでしょうか。なによりも、エリック・シンガーのドタバタドラム(笑)がカッコいいったらありゃしない。

もちろん、アイオミが得意とするミドルヘヴィナンバーもしっかり用意されています。インタールード的な「Sphinx (The Guardian)」から続くタイトルトラック「Seventh Star」は、間違いなく本作のハイライトと言える仕上がり。アイオミのギタープレイはもちろんのこと、ほかの要素も含めすべてが正しい方向に噛み合った、名曲と呼ぶべき1曲ではないでしょうか。

アルバム後半には比較的ポップめな「Danger Zone」を筆頭に、アイオミがWHITESNAKE的ブルースロックに挑戦したような「Heart Like A Wheel」といった変化球もありますが、前半ほどの緊張感、充実度は感じられず、アルバムの中でも微妙な仕上がりの「Angry Heart」、2分半程度の泣きメロバラード「In Memory」と大きな山なしで終了してしまいます。

アイオミのソロアルバムとしてなら、こういう内容もアリかなと思うのですが、リリース当時もっとも残念だったのは、本作をBLACK SABBATH(正確にはBLACK SABBATH featuring TONY IOMMI)名義で発表してしまったこと。サバスの新作として受け取るなら、確かに微妙な点も多いかもしれません。なにせアメリカンな要素が強まっているし、サバスのアルバムにしては終盤尻すぼみだし(ソロだったならアリっちゃあアリなんだけど)。レーベル側が“売る”ために出した条件だったとはいえ、この施策は間違いだったんじゃないかな。

なお、本作を携えたツアーを北米から開始するも、たった数公演でグレンは解雇されてしまいます。そんな彼の代役に選ばれたのが、のちにBADLANDSに加入するレイ・ギラン。彼が歌唱するライブ音源は本アルバムのデラックスエディション付属のボーナスディスクで聴くことができます。音はかなり悪いですが、「The Mob Rules」や「Die Young」といったディオ期、「War Pigs」「N.I.B.」などオジー・オズボーン期の楽曲まで楽しめ、グレン以上に圧巻のボーカルパフォーマンスを楽しめるので、ぜひチェックしてみてください。

 


▼BLACK SABBATH featuring TONY IOMMI『SEVENTH STAR』
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2024年4月 6日 (土)

ACCEPT『BLIND RAGE』(2014)

2014年8月15日にリリースされたACCEPTの14thアルバム。日本盤は同年8月13日発売。

前作『STALINGRAD』(2012年)から2年4ヶ月ぶり、3代目シンガーのマーク・トーニロ(Vo)加入後3作目のスタジオアルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という再々結成後不動の布陣での最後のアルバムとなります。

プロデューサーはもはやお馴染みのアンディ・スニープ(ARCH ENEMYJUDAS PRIESTMEGADETHなど)。楽曲面においても過去の良い面を十分に残しつつ、それらを現代的にバージョンアップさせることに成功しており、もはや何の不安も感じられない。そういう意味でも、新たな黄金期を迎えつつあることが伺える良質なメタルアルバムに仕上がっています。

オープニングのファストチューン「Stampede」こそ彼らにしては若干平均点的な仕上がりですが、続く「Dying Breed」「Dark Side Of My Heart」のキラーチューンぶりには目を見張るものがあり、キャッチーなメロディラインや重厚で男臭いコーラスワーク、パワフルなギターリフとタイトなバンドアンサンブル、ウルフによるクラシカルかつメロウなギターソロといった、このバンドに必要不可欠な要素がすべて揃っている。文句の付けようがありません。

〈Oh Oh〜〉コーラスやロシア民謡的メロディを取り入れたミドルヘヴィ「Fall Of The Empire」、泣きメロパワーメタル「Trail Of Tears」、冒頭のアコギ含め哀愁味漂う「Wanna Be Free」、ギャロップビートが軽快な「200 Years」、ストレートなメタルチューン「Bloodbath Mastermind」など、楽曲のバリエーションも比較的幅広く、似たようなタイプの楽曲で固められることの多いこの手のバンドにしては、最後の最後まで飽きずに楽しめるのも本作の魅力。終盤に用意されたメタルバラード的な「The Curse」や、恒例のなったクラシックからの引用ギターソロ(今回はエドヴァルド・グリーグ『PEER GYNT(ペール・ギュント)』より「Morning Mood(朝)」)をフィーチャーした締めくくりに相応しい疾走ナンバー「Final Journey」までの全11曲、スルッと聴くことができるはずです。

ギターソロやちょっとしたアレンジのこだわりで1曲1曲が5分前後と、比較的長尺な楽曲が並び、トータルで60分近くあるので、本当に好きな人じゃないと厳しいかなと思いつつも、前半を難なく楽しめたなら最後まであっという間なはず。歴史に残るような名曲やバンドを代表するような1曲は見当たらないかもしれないけど、すべてが平均点もしくはそれ以上の完成度なので、結果としてアルバムの充実度は100点に近い。トニー加入後の第3期(80年代を第1期、90年代を第2期と大雑把に分けてます)における、この時点での代表作と断言してしまっていいと思います。

事実、本作は本国ドイツで初のチャート1位を獲得。アメリカでも35位と過去最高記録を樹立し、イギリスでも7thアルバム『RUSSIAN ROULETTE』(1986年。最高80位)以来のTOP100入り(85位)を果たしています。そんな好状況だっただけに、2014年末にハーマン、そしてステファンが相次いで脱退してしまったことは残念でなりません。

 


▼ACCEPT『BLIND RAGE』
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2024年4月 4日 (木)

ACCEPT『DEATH ROW』(1994)

1994年10月4日にリリースされたACCEPTの10thアルバム。日本盤は同年11月2日発売。

ウド・ダークシュナイダー(Vo)、ウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・カウフマン(Dr)という黄金期の4人が再び集結し制作した前作『OBJECTION OVERRULED』(1993年)に続く1枚。常にツインギター編成で活動してきた彼らでしたが、再結成後はライブにおいてもシングルギター編成だったこともあり、本作でもそのスタイルは継続。前作以上にシングルギターで聴かせるアレンジが施されています。

しかし、それ以上に本作が独特な作りなのは、その楽曲/サウンドのテイストの違いでしょう。1994年という時代もあってか、本作で聴くことのできる方向性はそれまでのオールドスクールなHR/HMとは一線を画する、グランジ以降のシンプルなアレンジ、およびMETALLICAPANTERAを通過したグルーヴメタルを踏襲した路線。オープニングを飾るタイトルトラック「Death Row」の作風に、多くのリスナーが当時腰を抜かしたものです(笑)。

あれから30年経った今聴くと、これはこれで面白いなと思えるのですが、当時は時代に迎合したと思われても仕方ないくらいに“今(90年代前半)風”に寝返っており、かつ彼らがこういうスタイルをやっても曲自体が面白くならないという事実が重くのしかかるだけでした。続くアップチューン「Sodom & Gomorra」もそういった傾向を踏襲しつつも、無理に80年代的疾走感を取り入れようとして、メロディにいまいち高揚感が足りない。お家芸といえるクラシックからの引用ギターソロ(ここではハチャトゥリアン「剣の舞」をフィーチャー)はあるものの、全体的にモノトーンで盛り上がりに欠けるアレンジが足を引っ張っている感は否めません。

では、本作が完全なる失敗作かと言われると、まったくそうも言えないんですよ。3曲目「The Beast Inside」では前作までの黄金サウンドが復調している。メロディラインや野郎臭いシンガロングなど含め、彼らに必要な要素がすべて揃っているんです。かと思えば、モダン色を強めつつも従来の彼ららしさが感じられるミドルヘヴィ「Dead On!」、軽快なファストチューン「Guns 'R' Us」、80年代にやっていたことをモダン化させたような「Like A Loaded Gun」と佳曲が続く……「意外」と言っては失礼かもしれませんが……「意外と聴き進めることができる」んです、このアルバム。

アルバム後半もグルーヴメタル的リフを用いながらも従来のACCEPTらしさも混在する「What Else」や「Stone Evil」、のちにカウフマンの健康上の理由からツアーに参加することになるステファン・シュヴァルツマン(Dr)が叩いた「Bad Habits Die Hard」や「Prejudice」、個人的には本作で「The Beast Inside」に次いでお気に入りのアップチューン「Bad Religion」、ジム・ステイシー(Vo)期の楽曲をリメイクした「Generation Clash II」、憂に満ちた泣きのバラード「Writing On The Wall」と、バラエティに富んだ楽曲が揃っている。ただ、ここで終わらせておけばよかったものの、ダメ押しで泣きの「Drifting Apart」とエドワード・エルガー「威風堂々」のカバーというインスト2連発をぶち込み、トータル71分強という我慢大会が展開されるわけです(苦笑)。

本作を駄作にしてしまっている最大の原因は、「歌メロやリフの弱さ」以上に「曲数が多い」ことではないでしょうか。正直、この15曲中5曲は削って、曲順を変えれば平均的な仕上がりにはなったはず(メロやリフの弱さはどうしようもないからね)。オープニングのタイトルトラックで聴き手をふるいにかけるのはいいんですが、そこからダラダラと山場のない楽曲群を聴かされ続けたら、そりゃ誰だって駄作って呼びたくなります。

曲単位では5点中4点を与えられるものがいくつか存在し、残りは2〜3点という残念な1枚ではありますが、先に述べたように嫌いにはなれないし、意外と面白いなという気づきも見つけられる、時間が経ったことで評価が変わりつつある“不運な時代の、不運なアルバム”ではないでしょうか(かといって傑作、良作とも言い難いんだけどな)。

 


▼ACCEPT『DEATH ROW』
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2024年4月 2日 (火)

ACCEPT『BALLS TO THE WALL』(1983)

1983年12月5日(欧州)にリリースされたACCEPTの5thアルバム。北米では1984年1月、日本でも1984年に入ってから発売されたので、世界的に見て「1984年のアルバム」と捉えることができるでしょう。

前作『RESTLESS AND WILD』(1982年)が北米では1983年に、メジャーのPortrait Records(Epic Recordsの姉妹レーベル)から発売されたこと、また当時のUSシーン的にもHR/HMに注目が集まっていたタイミングで、先に同郷のSCORPIONSが成功を収めていたことから、続くACCEPTにも期待が寄せられていました。事実、本作のタイトルトラックはMVも制作され、当時MTVでヘヴィローテーションされたと聞いています。結果、このアルバムは本国で初チャートイン(最高59位)しただけでなく、アメリカでも最高74位まで上昇し、キャリア唯一のゴールドディスク(50万枚以上)を獲得しています。

本作はウド・ダークシュナイダー(Vo)、ウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・カウフマン(Dr)、前作完成後にバンドに加入したハーマン・フランク(G)という布陣で制作された唯一のアルバム。ハーマンは本作完成後に脱退し、前任のヨルグ・フィッシャー(G)が再加入することになります。プロデュースはバンド自身が務め、ミキシングエンジニアを過去数作から引き続きマイケル・ワグナー(DOKKENSKID ROWWHITE LIONなど)が担当。切れ味の強かった前作にさらなる重みを加えることで、バンドの個性が本格的に確立された1枚と言えるでしょう。

メタルアンセムと呼ぶに相応しいタイトルトラック「Balls To The Wall」は、スピード感を除くこのバンドの魅力がすべて詰まった究極の1曲。「ACCEPTってどんなバンド?」と質問されたら、この曲を聴かせればいい。それくらい“らしい”1曲と言えるのではないでしょうか。

もちろん、本作はそれ以外にも良曲揃い。「Balls To The Wall」にも匹敵するミドルテンポのメタルアンセム「London Leatherboys」、疾走感に満ち溢れた「Fight It Back」、次作『METAL HEART』(1985年)のタイトルトラックと同じテンポ感/リズム感を持つメロウな「Head Over Heels」、このバンドらしい魅力的なギターリフ&メロディを持つミディアムナンバー「Losing More Than You've Ever Had」と、アルバム前半の充実ぶりは前作以上。トータルでの流れ/テンポも良いのでスルスル聴き進められます。

アルバム後半もその傾向は引き継がれており、軽快なアップチューン「Love Child」を筆頭に、ノリの良いミドルナンバー「Turn Me On」、ザクザクしたリフとスピード感が心地よい「Losers And Winners」、欧州のバンドらしい憂いがにじみ出た「Guardian Of The Night」、彼ら流のメタルバラード「Winter Dreams」で綺麗に締めくくります。

キャッチーさやキラーチューンの多さで言えば次作『METAL HEART』が勝るところでしょう。しかし、ヘヴィメタルアルバムとしてのトータルバランスや全体の空気感、“らしさ”においては本作がベスト。「ACCEPTの代表作は?」と質問されたら、『METAL HEART』よりも本作『BALLS TO THE WALL』を挙げるメタルリスナーが多いのは、そういった理由からかもしれません。

自分は『METAL HEART』からACCEPTに触れた人間なので、思い入れ的には同作のほうが断然上ですが、やはり「ACCEPTのアルバムで最初に聴くなら」と問われたら『BALLS TO THE WALL』をピックアップすると思います。

 


▼ACCEPT『BALLS TO THE WALL』
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2024年3月31日 (日)

2024年3月のお仕事

2024年3月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※3月29日更新)

 

[WEB] 3月29日、「Rolling Stone Japan」にてインタビュー SUM 41が語る解散の経緯と30年の歩み、ポップパンクとメタルが共存する「最後の作品」が公開されました。

[WEB] 3月27日、「リアルサウンド」にてライブレポート トゲナシトゲアリ、無謀な挑戦を乗り越えたバンドの力 アニメ放送への弾みをつけた初ワンマンが公開されました。

[WEB] 3月19日、「リアルサウンド」にてインタビュー Little Glee Monsterが現体制初アルバム『UNLOCK!』で開いた扉 過去曲を再録して気づいた変化もが公開されました。

[紙] 3月19日発売日向坂46デビュー5周年記念公式BOOK「H46MODE vol.1」にて、齊藤京子 卒業ソロインタビュー、おみそしるコンビ(河田陽菜&丹生明里)対談、四期生 正源司陽子&藤嶌果歩 対談、「ハッピーオーラを感じるとき」ソロインタビュー(齊藤京子、河田陽菜、丹生明里、上村ひなの、髙橋未来虹、正源司陽子、藤嶌果歩)、TAKAHIRO インタビュー、CRE8BOY インタビューを担当しました。(Amazon

[WEB] 3月15日、「リアルサウンド」にてライブレポート 乃木坂46、乗り越えた“試練”を糧に進む13年目への一歩 全124曲披露した12回目の『バスラ』が公開されました。

[WEB] 3月15日、「SPICE」にてインタビュー 藤井隆、プロデューサーとしての後藤輝基2年ぶりの新譜への想い そして主宰として歩んだSLENDERIE RECORD10周年を語るが公開されました。

[WEB] 3月14日、「SPICE」にてライブレポート 自己最大キャパZepp DiverCity公演でammoがみせたリアリティ「まだ“ここ”じゃない。まだゴールじゃない。」が公開されました。

[WEB] 3月12日、「音楽ナタリー」にてインタビュー Technics×「RECORD STORE DAY」|今年のアンバサダーあのが語るレコードへの愛着が公開されました。

[WEB] 3月10日、乃木坂46『12th YEAR BIRTHDAY LIVE』のオフィシャルライブレポートを執筆。ニッポン放送NEWS ONLINEなど複数媒体で公開中です。

[WEB] 3月8日、「Billboard JAPAN」にてインタビュー 神はサイコロを振らない、新曲「May」と勢いが増す春夏ライブシーズンで新境地を開くが公開されました。

[WEB] 3月6日、「Rolling Stone Japan」にてライブレポート Crossfaithの「これまで」と「これから」をロングセットで体現、激情の単独公演レポが公開されました。

[紙] 3月4日発売「日経エンタテインメント!」2024年4月号にて、櫻坂46大園玲 連載「ミステリアスな向上心」および日向坂46上村ひなの 連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[イベント] 3月1日からスタートした日向坂46展「WE R!」にて、館内展示年表の作成、展示用メンバーインタビューなどを担当しました(後日販売される図版にも掲載予定)。5月19日まで開催中です。

 

GREEN DAY『DOOKIE』(1994)

1994年2月1日にリリースされたGREEN DAYの3rdアルバム。日本盤は同年6月25日発売。

それまでインディーズのLookout! Recordsから作品を発表してきたGREEN DAYが、メジャーのReprise Reocrdsへ移籍して最初に発表した作品。本作からの「Longview」がBillboard Alternative Airplayで1位を獲得したのを筆頭に、「Basket Case」(同チャート1位)、「Welcome To Paradise」(同7位)、「When I Come Around」(同1位)とヒット曲を連発し、アルバムも最高2位まで上昇。セールス的には現在までに1000万枚を超える、キャリア最大のヒット作となりました。

当時のシーンを振り返ると、彼らのメジャーデビューはカート・コバーンNIRVANA)が亡くなる2ヶ月前のこと。つまり、アメリカで社会的現象を巻き起こしたグランジムーブメントが沈静化する直前のタイミングだったんです。サウンド的にはグランジ同様、シンプルで無駄のないバンドアンサンブルを軸にしているものの、そこに古き良き時代のパンクロックらしいメッセージ性、モノトーンな作風が中心だったグランジから一転して幾分カラフルでポップなメロディが、それまでの反動としてなのか、好意的に受け入れられた。特に、「Basket Case」などのMVで見せるシニカルさはグランジから地続きなところもあったので、すんなりと受け止められたのかなと思っています。

そして、彼らの人気を決定づけた要因のひとつに、1994年8月に開催された野外フェス『Woodstock '94』も挙げられるでしょう。1969年に行われた伝説のフェス『Woodstock Music And Art Fair』の25周年企画として実施されたこのフェスには、METALLICAAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSNINE INCH NAILSなど当時のアメリカを代表するバンドも多数参加。GREEN DAYは公演3日目(8月14日)のサブステージ(South Stage)の5番手(ちょうど真ん中あたり)に登場し、客席から泥を投げ込まれたり観客がステージに乱入したりとかなりカオスな状況が今でも伝説として語られています。

当時、僕はこのアルバムを買った記憶がまったくないんですが、気づいたらなぜかCDが家にあったんです。当時の友人か彼女が上に忘れていったものかと思ったのですが、思い当たる人たちに聞いて回っても「自分のものじゃない。けど、お前の家でよく聴いてたよな」という返事ばかり。そういう不思議な縁で出会った1枚なんです。もちろん、ラジオで「Basket Case」や「Longview」は耳にしていたし、「Basket Case」のMVも面白いと思っていた。だけど、自分から進んで手にするかと言われたら、当時の自分は購入していなかったんじゃないかな。そういった意味でも、妙な縁でつながった1枚なんです。

また、その頃の自分はパンクといえばUKパンクのイメージが強く、USパンクはそこまで詳しくなかった。せいぜいRAMONESくらいだったかな(さらにそのルーツとなるようなアーティストも聴いていたけど)。だから、アメリカから生まれた新たなパンクと言われても「え、グランジがあるのに?」と消極的になってしまっていた。そう考えると、誰が置いていったのか、このアルバムを我が家に与えてくれたことは価値観をぶち壊す上でもかなり重要なトピックだったと思います。

RAMONES直系のポップでキャッチーなパンクチューンの数々は、そのRAMONES同様に50'sや60'sのUSポップやR&Bとの共通点が見受けられる。だけど、バンドアンサンブルは非常に尖っていて、歌詞に目をやるとグランジにも通ずるネガティブさも見受けられる(もっとも、家にあったのは輸入盤だったので、歌詞を理解したのはもっとあとのことですが)。決して彼らの台頭で時代が激変したのではなく、90年代初頭から続くダークなムードをそのまま引き摺りつつ、怒りの矛先が少しずつ変わっていった。そのターニングポイントを作ったのがGREEN DAYや、同時期にヒットを飛ばしたTHE OFFSPRINGのようなバンドたちだったんでしょうね。

ちなみに、彼らは次作『INSOMNIAC』(1995年)を発表したあと、1996年1月に初来日ツアーが実現。僕は当時晴海にあった会場でのスタンディングライブ(オープニングアクトにHi-STANDARDが出演)で、彼らのステージを初めて目撃しています。当時のエピソードについてはこちらのインタビューにも詳しく載っているので、併せてお読みくださいませ。

 


▼GREEN DAY『DOOKIE』
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2024年3月30日 (土)

GREEN DAY『SAVIORS』(2024)

2024年1月19日にリリースされたGREEN DAYの14thアルバム。

前作『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』(2020年)から約4年ぶりの新作。前作発表直後に新型コロナウイルスのパンデミック期に入ってしまったことで、同年3月末から予定されていた8年ぶりの来日は翌2021年3月に延期されるも、状況が緩和されることなくそのまま中止に。特に海外では3月以降ロックダウンに突入したことで身動きが取れなくなり、ビリー・ジョー・アームストロング(Vo, G)はYouTubeにカバー曲を公開し始めます。それがのちに“自身の人生のサウンドトラック”をテーマにしたカバーアルバム『NO FUN MONDAYS』(2020年)へとつながっていきます。

2021年に入るとバンドは「Here Comes The Shock」「Pollyanna」「Holy Toledo!」といった新曲、ライブアルバム『BBC SESSIONS』などを発表し、夏にはパンデミックの影響で延期されていたFALL OUT BOYWEEZERとのツアー『Hella Mega Tour』を実現させます。そして、同年末にいよいよ次作に向けてスタジオ入り。三部作アルバム(9th『¡UNO!』、10th『¡DOS!』、11th『¡TRÉ!』 )以来となるロブ・キャヴァロとの共同プロデュースにより2023年まで作業が続けられ、完成したのが本作となります。

原点回帰を狙った前々作『REVOLUTION RADIO』(2016年)、そこにソウルやモータウン、グラムなどのさらなる原点要素を加えつつ無駄を削ぎ落とした前作『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』と、セルフプロデュースによる2作を経て気心知れたロブとのタッグ復活。しかも、バンドにとってターニングポイントとなった3作目『DOOKIE』(1994年)、7作目『AMERICAN IDIOT』(2004年)からそれぞれ30年、20年という大きな節目に両作に携わったロブが制作に参加するということは、この新作がバンドにとってそれだけ大きな意味をもたらす作品になるであろうことは想像に難しくありません。

事実、ここで聴ける楽曲の数々は『REVOLUTION RADIO』ほど尖りすぎておらず、かといって『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』より実験色も強くない。『DOOKIE』や『AMERICAN IDIOT』といった名作(と、その間に発表してきたほかの諸作品)の延長線上にある「成熟したパンクロック」のあるべき形が提示されている、と受け取るのが正解でしょう。

アルバム冒頭の「The American Dream Is Killing Me」でみせるドリーミーでキラキラしたテイストを筆頭に、「Look Ma, No Brains!」や「1981」などのアンセミックなポップパンクチューン、「Bobby Sox」や「One Eyed Bastard」を筆頭とするルーツミュージックの香りを漂わせるパワーポップナンバーの数々、「Goodnight Adeline」あたりから感じられるパワーバラード的テイストなど、これまで彼らが培ってきたスタイルの総決算と呼べる楽曲がずらりと並ぶ。しかも、それらが単なる過去の焼き直しで終わっておらず、アーティストとしての成長や成熟ぶりもしっかり感じ取ることができる。GREEN DAYという名の下にすべきことを、最適なバランスで実現させたのが“救世主”という意味を持つタイトルを冠した本作なのです。

困難を伴う数年間を乗り越え、満を持して届けられたGREEN DAYの最新アルバムは、今を生きるすべての世代に向けた新たなバイブルになるのではないでしょうか。いや、そうなってほしいと願わずにはいられません。近年、オリヴィア・ロドリゴのような新世代アーティストがポップパンクをフィーチャーすることで、アヴリル・ラヴィーンが再評価されたりしましたが、2024年に入ってから発表されたこのGREEN DAYの新作やSUM 41のラストアルバム『HEAVEN :X: HELL』などを通じて、ロック低迷なアメリカで再び大きな波が戻ってくることを心の底から願っています。

 


▼GREEN DAY『SAVIORS』
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2024年3月29日 (金)

SUM 41『HEAVEN :X: HELL』(2024)

2024年3月29日にリリースされたSUM 41の8thアルバム。日本盤未発売。

前作『ORDER IN DECLINE』(2019年)から4年8ヶ月ぶりの新作にして、バンドにとって最後のオリジナルアルバム。2022年に「初期のポップパンク色の強い側面と、最近のメタリックなテイストを強めた側面からなる2枚組アルバムを制作する」とアナウンスしていた彼らですが、翌2023年5月9日に突如「このアルバムと、それに伴うワールドツアーをもって解散する」と宣言。今年2024年1月から翌2025年1月30日まで実施されるツアーをもって、バンドは30年近くにおよぶ活動に終止符を打つことになります。

『HEAVEN』サイドと呼ばれるDISC 1には、先述のポップパンク路線を軸とした全10曲を収録。こちらは初EP『HALF HOUR OF POWER』(2000年)や1stフルアルバム『ALL KILLER NO FILLER』(2001年)で示した、軽やかでキャッチーなパンクチューンが満載で、「Fat Lip」(2021年)以来に全米1位を獲得した「Landmines」(ともにBillboard Alternative Airplayチャートにて)を筆頭に、オープニングを飾るに相応しいファストナンバー「Waiting On A Twist Of Fate」、1分半のショートチューン「Johnny Libertine」など親しみやすいメロディを持つ楽曲がずらりと並びます。しかし、単に原点回帰を狙っただけの浅はかさは皆無で、過去20年間の活動で積み重ねてきた説得力と「ながら聴き」できないほどの求心力が感じられるほどの熟練味が味わえます。

個人的には、同サイドのラストを飾るミディアムナンバー「Radio Silence」にグッと引き込まれます。いわゆるポップパンクとは一線を画する作風ですが、この仰々しいほどのアンセム感こそSUM 41の魅力だと強く実感させる、珠玉の1曲ではないでしょうか。

一方、前々作『13 VOICES』(2016年)や前作『ORDER IN DECLINE』といった、デイヴ・バクシュ(G)復帰後の作品に漂うメタル臭が強調されたDISC 2=『HELL』サイドは、前ディスクの「Radio Silence」から自然な流れを作る異色の「Preparasi a Salire」を挟み、「Rise Up」からメタリックな色が際立つ楽曲で“こちら側”のリスナーをも楽しませてくれます。そもそも、2ndアルバム『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年)や3rdアルバム『CHUCK』(2004年)など2000年代の作品からもモダンメタルのテイスト(=デイヴのカラー)は散りばめられており、デリック・ウィブリー(Vo, G)そういったデイヴの持ち味を存分に活かそうとした結果だったことは一聴瞭然。最初期のポップパンク色とこのメタル色は、今やSUM 41にとって欠かせない大きな2軸なわけですから、その両極端に振り切ったアルバムを最後に同時制作することは宿命だったのかもしれません。

先に挙げた2ndアルバムや3rdアルバム、あるいは近作のファンであったら絶対に受け入れられるであろう本ディスク。重心の低いミドルチューンや疾走ナンバーが交互に押し寄せる構成も非常に聴ききやすいものがあり、ギターソロに関しても『HEAVEN』サイドよりも速弾きが目立ちます。個人的には2000年代以降のモダンメタルに往年のクラシックメタル的要素を注入した「You Wanted War」が大のお気に入り。この曲のギターリフやフラッシーかつクラシカルなギターソロはぜひメタルファンにしっかりと確認してもらいたいな。

また、彼らのアルバムには珍しくカバー曲も用意されおり、THE ROLLING STONESの名曲「Paint It Black」をストレートに演奏してます。こちらはお遊び/おまけ感の強い1曲かな。単に好きだからやってみたくらいの感覚なのかもしれません。

つい先日『PUNKSPRING 2024』でのヘッドライナー出演を含むジャパンツアーを終えたばかりの彼ら。ニューアルバム発売直前でしたが、本作から披露されたのはすでに配信済みだった「Landmines」と「Waiting On A Twist Of Fate」にとどまったようです。ここから本作収録曲も小出しにされていくとは思いますが、フェアウェルツアーとなると過去曲に焦点が上がることになるだろうから、本作収録曲の多くがライブで演奏されないまま活動終了してしまうのかな。アルバムとしての完成度がどちらも高いだけに、少々勿体ない気もしますが……それもまた宿命なのかなと。

 


▼SUM 41『HEAVEN :X: HELL』
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