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当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2023年2月1日更新)


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2023年2月 1日 (水)

SLY『VULCAN WIND』(1998)

1998年6月25日にリリースされたSLYの4thアルバム。

初期2作のモダンヘヴィネスを取り込んだスタイルから一転、前作『KEY』(1996年)ではプログロック的側面を強調させつつ、80年代のジャパメタ的テイストをより強めることで旧来のファンはもちろんのこと、新たなファン層を拡大する可能性を秘めた新たなスタイルを確立させました。そんなSLYが前レーベルのBMGビクターから、新たにワーナーミュージック系列のEast West Japanへと移籍。同レーベルから最初で最後となる1枚を完成させます。

アルバムを重ねるごとに、そのアレンジがよりシンプルでソリッドなものへとシフトしているSLYですが、本作はそのスタイルの究極形といえる仕上がりで、その片鱗は全10曲で40分というコンパクトな作風からも感じ取ることができます。どの曲も3〜4分台でまとめ上げられており、二井原実(Vo)によるメロウなボーカルを軸にしつつ、石原慎一郎(G)、寺沢功一(B)、樋口宗孝(Dr)によるテクニカルなバンドアンサンブルを存分に楽しめる。前作はあからさまにプログロックからの影響が見え隠れしましたが、今作はそのへんのテイストはあくまで味付け程度。むしろ徐々に強まり始めている80'sメタルの色合いが、より濃厚に表出したことで、彼らの作品の中でもっとも聴きやすい1枚に仕上がった印象を受けます。

メンバーが影響を受けた70年代のオーソドックスなハードロックを下地にしつつ、それぞれがプロデビューして以降に表現してきた80'sジャパニーズメタル、そして90年代以降のモダンメタルを咀嚼しつつ、独自の解釈を経て到達した原点回帰的な内容は、1998年というニューメタル全盛の時代においては数周も時代遅れなものだった。しかし、これが彼らにできる最大限の譲歩であり、かつ「譲れないもの」が詰め込まれた作品だった。プログもサイケデリックもポップも飲み込み、モダンヘヴィネス側に振り切ることなく信念を突き通した結果がこれなのですから、もはやこれ以上は望めない。そういった意味でも本作は、SLYという短命に終わったバンドにとっての終着点であり臨界点だったのかもしれません。

初期2作が良くも悪くもガチャガチャしすぎていて、旧来のジャパメタリスナーにはなかなか馴染みにくかったかもしれません。そんな中、突如変化を遂げた前作『KEY』と今作『VULCAN WIND』は年寄り(笑)にも優しい、1998年時点での最新型ジャパメタだった。そりゃあ良いに決まってる。と同時に、本当にそれは1998年という時代に則したものだったのかという疑問もあり、リリース当時は正直「?」と感じたことも付け加えておきます。あれから25年もの歳月を経て、余計な邪念なしに本作と向き合うことができるようになった今、改めてリリースタイミングが悪かった1枚だなと感じています。前作以上にめっちゃ良質なハードロックアルバムですもんね。

前作『KEY』からの流れを汲むだけでなく、ちゃんと1stアルバム『SLY』(1994年)や2ndアルバアルバム『DREAMS OF DUST』(1995年)でのグルーヴメタルの経験も反映されており、「Hypocratic Oaf」のようなファストナンバーもしっかり用意されている。これが受け入れられなかったら、もうあとがない……その結果、バンドは本作を携えた全国ツアー終了後に活動停止。二井原はこの頃、「自分のような歌い手は、今のこの「時代には居場所がないのでは」と考え、引退も意識したそうです。それくらい90年代、特に90年代後半は「メタル冬の時代」だったのです(このへんは、陰陽座の瞬火さんとお話したときにも、ご本人の口から語られていましたし、当の二井原さんとお話したときもそのようなことをおっしゃられていましたしね)。

先日、このアルバムのみサブスクで数ヶ月前に解禁されていたことに気づき、2023年という本作発売から25年経ったタイミングに紹介することにしました。追って『DREAMS OF DUST』と『KEY』についても取り上げる予定です。BMGビクター時代の3作品に関しても、正式にサブスク解禁されることを心待ちにしております。

 


▼SLY『VULCAN WIND』
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2023年1月31日 (火)

2023年1月のお仕事

2023年1月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※1月30日更新)

 

[WEB] 1月30日、「リアルサウンド」にてインタビュー陰陽座が貫いてきた覚悟と信念 瞬火、20年以上に渡り追求するヘヴィメタルの可能性が公開されました。

[WEB] 1月27日、「KING RECORDS TODAY」にてインタビュー陰陽座・瞬火が語る『龍凰童子』に込めた20年培ってきたもの 「陰陽座でしかなし得ないものがそこにある」が公開されました。

[WEB] 1月27日、「音楽ナタリー」にて特集記事乃木坂46 5期生が総出演「新・乃木坂スター誕生!」見どころ紹介|メンバー&オズワルドのコメントもが公開されました。

[WEB] 1月23日、「Billboard JAPAN」にてコラムデヴィッド・ボウイやイギー・ポップとの共演で知られるベーシスト トニー・フォックス・セイルズ、来日公演を目前にその長い音楽キャリアを紐解くが公開されました。

[WEB] 1月13日、「Billboard JAPAN」にてインタビュー神はサイコロを振らない 2023年は吸収・発散の年にが公開されました。

[紙] 1月13日発売「Nagisa Saito Graduation Memorial Photo Book」にて、=LOVE齊藤なぎさ×プロデューサー・指原莉乃の対談を担当しました。

[WEB] 1月12日、「リアルサウンド」にてライブレポートSurvive Said The Prophet、堂々たる自信が生み出す躍動感 キャリア最高峰を刻んだ『Hateful Failures Tour』ファイナルが公開されました。

[WEB] 1月9日、Little Glee Monster『Little Glee Monster Live Tour 2023 Join Us!』昭和女子大学 人見記念講堂公演(1月7、8日開催)のオフィシャルレポートを担当。WWSチャンネルなどで随時公開中です。

[WEB] 1月8日、「リアルサウンド」にてライブレポートLittle Glee Monster、6人体制初の単独ライブで見せた明るい未来 ガオラーからのメッセージに涙もが公開されました。

[紙] 1月4日発売「日経エンタテインメント!」2023年1月号にて、乃木坂46梅澤美波および久保史緒里の各インタビュー、櫻坂46大園玲の新連載「ミステリアスな向上心」および日向坂46上村ひなのの連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

KATATONIA『SKY VOID OF STARS』(2023)

2023年1月20日にリリースされたKATATONIAの12thアルバム。

前作『CITY BURIALS』(2020年)から約3年ぶりの新作。本作は20年以上にわたり在籍した老舗レーベルPeaceville Recordsから、新たにNapalm Recordsへと移籍してのリリースとなります。

今作の基本的な方向性は前作の延長線上にある、“エクストリームメタルの枠から一歩外へ踏み出した、多様性の強さが伝わる”サウンド。メタルバンドらしくエッジの強さを強調させることに特化することなく、音響/空間の特性を効果的に取り入れることで、過去作よりも聴きやすい方向へと押し進めています。

もちろんディストーションの効いたヘヴィなギターリフやダイナミックなドラムサウンドは、HR/HMの範疇にあるものと言えるでしょう。しかし、先にも書いたように音響系的なエフェクトを随所にフィーチャーしつつも、音を詰め込むことに固執せず、むしろ“抜く”ことに意識的なのでは?と思わせるアレンジが目立つ。この取り組み方自体がヘヴィメタルというよりも、もっと視野を広く保ちつつ考えられたもののような気がしてなりません。

例えば「Author」のような楽曲を聴くと、ヘヴィなリフワークやバンドアンサンブルがこの曲の軸なのではなく、もはや味付けの一部なのではとさえ思えてくる。ここが過去作との大きな違いのような気がしています。KATATONIAというバンドはデスメタル/ドゥームメタルの延長線上からスタートし、ゴシックテイストを強めていく過程でクリーントーンボーカル中心のスタイルへと移行した。その時点で、こういった終着点は彼ら自身も少なからず想像できていたのではないでしょうか。

このアルバムを聴いていると、彼らのことを無理やりゴシックメタルとカテゴライズするよりも、むしろ“ゴシック色の強いプログロック/プログメタル”と認識したほうが正しいのではないかという気がしてきました。そう思うとすごくしっくりくるし、ネガティブな感情なしで楽しむことができるはずです。

ヘヴィメタル寄りのリスナーには「刺激の少ない作品に成り下がってしまった」という印象の1枚かもしれませんが、DEPECHE MODEのようなダークなサウンドを軸にするバンドや、抒情生の強いヨーロッパのプログロックを好むリスナーにはむしろ好意的に受け入れられる可能性の強い。本作はそんな“新たな扉”を開く、未知の領域へとつなぐ分岐点になる気がしています。

 


▼KATATONIA『SKY VOID OF STARS』
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2023年1月30日 (月)

VV(VILLE VALO)『NEON NOIR』(2023)

2023年1月13日にリリースされたVVの1stアルバム。日本盤未発売。

VVとはフィンランドのゴシックメタルバンドHIMのフロントマン、ヴィレ・ヴァロのソロプロジェクト。ヴィレは2017年末にバンドを解散させると、2019年には母国語で歌われたプロジェクトアルバム『VILLE VALO &AGENTS』を発表。しかし、この作品での音楽性はHIMとはかけ離れたトラディショナルなものであったことから、リスナーを困惑させます。

しかし、ヴィレはこのアルバムを経て、本格的なソロプロジェクト“VV”へと移行し、2020年3月20日に1st EP『GOTHICA FENNICA VOL.1』を発表。ところが、新型コロナウイルスの猛威が世界中を襲い、前年からスタートさせたVVとしてのレコーディングも一時中断せざるを得ませんでした。その後も、HIM時代からのパートナーであるティム・パーマー(TEARS FOR FEARSU2オジー・オズボーンなど)と断続的に制作を進め、2022年後半に本作を完成させます。

クレジットによると、すべての楽曲の作詞・作曲、アレンジ、プロデュースやエンジニアリング、そして歌や演奏をヴィレ自身で行ったとのことで、そういった意味でもHIMとの差別化ができることでしょう。実際、本作はHIM後期の作風を踏襲する楽曲群はメタリックな質感を多少含むものの、よりパーソナルな空気感を漂わせたゴシックサウンドを中心に展開されているのですから。また、曲によってはシューゲイザーやドリームポップ的な側面も見つけられ、HIMの延長線上にありながらもさらに進化していることも伝わります。

ヴィレのセクシーなバリトンボイスは本作でも健在ですが、若干肩の力が抜けた感が伝わってきます。もちろんそれは楽曲からの影響が強いと思いますが、冒頭で聴ける「Echolocate Your Love」はもちろん、「Loveletting」や「Salute The Sanguine」などHIM時代を彷彿とさせるハードロック調サウンドでも以前以上にリラックしした歌声を楽しむことができ、新プロジェクトだから、HIM解散後最初の本格的なアルバムだからといった力みはまったく感じられません。むしろこれくらいがヴィレらしくて丁度いいんじゃないか、とさえ思えるほどです。

全12曲/約56分と比較的長尺な作品集ながらも、基本的には3〜4分台の楽曲が中心。しかし、終盤に向かって「Saturnine Saturnalia」(6分半超)、「Vertigo Eyes」(7分40分超)といった楽曲も増えていくのですが、この長尺ナンバーが非常に良くて。コンパクトな歌モノももちろん最高なのですが、特にダークな中にもキラキラ感が伝わるドリームポップ的ラストナンバー「Vertigo Eyes」がインストパート含めて完璧な仕上がり。個人的には後半の「Heartful Of Ghost」からラストまでの流れがツボすぎます。

HIMってバンドは僕個人としてはそこまでどっぷりハマる存在ではなかったのですが、よりシンプルなゴシックロックへと接近し、かつシューゲイズやドリームポップ的な色合いを加えた本作はど真ん中と言えるほど“身近な存在”でした。この先もずっと愛していけそうな1枚です。

 


▼VV『NEON NOIR』
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2023年1月29日 (日)

STEVE VAI『VAI / GASH』(2023)

2023年1月27日にリリースされたステーヴィ・ヴァイの“VAI / GASH”名義による唯一のアルバム(スティーヴ・ヴァイとしては通算11作目)。日本盤は同年1月25日発売。

昨年1月発売の『INVIOLATE』 (2022年)から1年ぶりに発表された本作は、当初1991年頃に制作されていたものの、現在までお蔵入りとなっていた1枚。無名のシンガー、ジョニー・“ガッシュ”・ソンブロットとのコラボレーションから生まれた、ヴァイらしからぬバイカーズ・ロック作品です。

80年代後半以降、バイカー・カルチャーに惹かれるようになったヴァイでしたが、バイクに乗っているときに合う音楽を既存の作品から見つけることができず、「だったら自分で作ってやろう」と計画したのが本作。そんなタイミングにガッシュというミステリアスなシンガーと出会い、今回収録された8曲をレコーディングしたとのことです。本当は、自身の活動が落ち着いてからさらに追加レコーディングをしてリリースする予定だったそうですが、1998年9月にガッシュがバイク事故で急逝。そういった事情もあってここまでリリースが見合わせられていましたが、2021〜2年頃にヴァイ自身が本作についてコメントするようになり、近々リリースが実現することを匂わせていました。

さて、そんな本作ですが、確かにここ30年くらいのヴァイのイメージからはかけ離れた、爽快感の強いアメリカンロック(あるいはアメリカンハードロック)が展開されています。8曲中7曲がヴァイ単独で書かれたもので、M-7「New Generation」のみMOTLEY CRUEのニッキー・シックス(B)との共作。80年代から仲の良かった2人が、本作のレコーディング数年前に書いたものなんだとか。

確かに、バイク乗りっぽいイメージの強い豪快なロックチューンが満載で、ヴァイのプレイも奇抜さが抑え気味。ガッシュのワイルドなボーカルを活かしながら、ノリのよりリフワークやソロプレイを聴かせてくれます。そもそもヴァイ、80年代半ばはデヴィッド・リー・ロスとタッグを組んでいたわけで、こういったアメリカンロックと向き合うことにも違和感を感じさせないはずで、「Busted」や「Woman Fever」「She Saved My Life Tonight」あたりはデイヴに提供してもまったく違和感なく楽しめるようなテイストです。

かと思えば、「Let's Jam」はサミー・ヘイガーあたりが歌ったらぴったりな作風だし、ニッキーとの共作「New Generation」もどことなくヘアメタル/パーティロック的で、ヴィンス・ニールが歌っても行けそうな気がするし。本編ラストを飾るミディアムバラード「Flowers Of Fire」も、ここまで名前が挙がったアーティストやバンドがプレイしても全然行けてしまう印象がある。けど、ヴァイ的にはそうじゃないんでしょうね。そのへんはもう、本人の感覚がすべてなので僕がどうこう言ってもアレなんですが。

全8曲で約30分という昔ながらも尺ですが、もしガッシュが早逝しなかったらほかにどんな曲が生まれていなのかな。たらればを言い出したらきりがないですが、これはこれで潔いクールなロックアルバムだと思います。

 


▼STEVE VAI『VAI / GASH』
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2023年1月28日 (土)

METALLICA『SOME KIND OF MONSTER』(2004)、『LIBERTÉ, ÉGALITÉ, FRATERNITÉ, METALLICA!』(2016)

『SOME KIND OF MONSTER』は2004年7月13日にリリースされたMETALLICAのEP。

本作は前年6月5日に発売されたアルバム『ST. ANGER』からのリカットシングル「Some Kind Of Monster」を軸に、同曲のエディットバージョンや初期楽曲のライブ音源をまとめた全8曲入り作品。トータルで約43分とかなりの尺があり、世が世なら企画アルバムとして通用する1枚です。

『ST. ANGER』からはタイトルトラックを筆頭に、「Frantic」「The Unnamed Feeling」すでにシングルが3枚発表済みでしたが、この「Some Kind Of Monster」が新たにシングル化されたのは同名のドキュメンタリー映画『メタリカ:真実の瞬間』が同年7月9日から北米で劇場公開されたことが理由でしょう。映画の中でも、この曲が完成していく過程が描かれていますし、本作はいわばサントラ盤の延長線上にある1枚かなと。

「Some Kind Of Monster」はアルバムの3曲目に収録された、8分半にもおよぶ大作。ミドルテンポを軸にヘヴィなギターリフを織り交ぜながら、要所要所でアップテンポになったりとプログレッシヴな展開が用いられますが、過去のMETALLICA楽曲と比べると劇的なアレンジというわけでもなく、唐突さが際立ちます。また、リフに次ぐリフの構成で、ギターソロも皆無。起承転結のしっかりしたドラマチックな展開を期待した層には肩透かしの1曲(アルバム)だったのではないでしょうか。

それに比べ、ランディ・ストーブ&ボブロックによるエディットバージョンは4分半を欠くという、原曲の半分の尺に編集され、かつカンカンと耳障りだったスネアの音色も編集され、『ST. ANGER』以前のMETALLICAらしい音質にリミックスされている。良くも悪くもダラダラとセッションしてる感の強かった原曲から“ダラダラ”感を見事に排除することに成功したものの、曲としては山なし谷なしなアレンジになってしまった感もあり、個人的には原曲を超えられていない気がしました。ただ、ドラムサウンドに関しては興味深いものがあり、このリミックスでアルバムまるまる1枚編集しなおしたら面白いのに……なんて思ってしまったほどです。

そして、全6曲におよぶライブテイクについても。こちらは2003年6月11日に行われたパリ公演から。『ST. ANGER』発売翌週に行われた11日のパリ公演は、1日のうちに異なる3会場でライブが実施されており、本作には13時からの公演の「Motorbreath」、18時からの公演の「The Four Horsemen」「Leper Messiah」「Ride The Lightning」「Damage, Inc.」、22時からの公演の「Hit The Lights」がそれぞれピックアップされています。各公演とも10曲前後とコンパクトなものとはいえ、20年前の彼らはそんなにもアクティブかつエネルギッシュな活動をしていたんだなと、改めて驚かされます。

 


▼METALLICA『SOME KIND OF MONSTER』
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このパリ公演のうち2公演目の模様は、2016年4月22日に『LIBERTÉ, ÉGALITÉ, FRATERNITÉ, METALLICA!』と題した限定EPがリリースされており、そちらで全9曲を聴くことも可能です。

EP『SOME KIND OF MONSTER』に収録された「The Four Horsemen」「Leper Messiah」「Ride The Lightning」「Damage, Inc.」と聴き比べると、2016年版のミックスは非常に低音を効かせたふくよかなもので、オーディエンスの盛り上がりなど臨場感もより強まっている印象。楽器1つひとつの表情は2004年版のほうが聴きとりやすいので、若干好みの分かれるミックスかもしれませんね。

ちなみに、この2公演目のセットリストですが、

01. The Four Horsemen
02. Leper Messiah
03. No Remorse
04. Fade To Black
05. Frantic
06. Ride The Lightning
07. Blackened
<ENCORE>
08. Seek & Destroy
09. Damage, Inc.

といったもので、最新作『ST. ANGER』(2003年)からは「Frantic」1曲のみ。残りは1stアルバム『KILL 'EM ALL』(1983年)から3曲、2ndアルバム『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)から2曲、3rdアルバム『MASTER OF PUPPETS』(1986年)から2曲、4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)から1曲という内訳です。これは直前5月にバンドのデビュー20周年を記念した企画ライブなどで、初期曲を多数披露したことも大きく影響しているのでしょう。

「Leper Messiah」や「No Remorse」のような楽曲がライブ音源として公式に残されることに非常に大きな意味がある本作、サブスク未配信かつ当時限定盤としてリリースされたもので、現座は入手困難な1枚。僕も手元に残してありますが、1時間強のコンパクトさながらも非常に聴き応えのある良盤なので、もし中古ショップで見かけた際には迷わずゲットすることをオススメします。

 


▼METALLICA『LIBERTÉ, ÉGALITÉ, FRATERNITÉ, METALLICA!』
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2023年1月27日 (金)

THE ALMIGHTY『BLOOD, FIRE & LOVE』(1989)、『BLOOD, FIRE & LIVE』(1990)

『BLOOD, FIRE & LOVE』は1989年10月20日にリリースされたTHE ALMIGHTYの1stアルバム。日本盤は翌1990年3月25日発売。

THE ALMIGHTYはリッキー・ウォリック(Vo, G)、タントラム(G)、フロイド・ロンドン(B)、スタンプ・モンロー(Dr)という布陣で1988年に結成された、グラスゴー出身のハードロックバンド。パンクロックを通過した荒々しいサウンドは“GUNS N' ROSES以降”のそれと捉えることもできますが、彼らの場合はさらにその祖先であるMOTÖRHEADから派生したワイルド&スリージーなハードロックといった印象も強く、デビューからしばらくしてから「MOTÖRHEADよりMOTÖRHEADらしい」なんて評価も飛び交ったほどでした。

メジャーのPolydor Records(現在のUniversal)から発表された本作は、同時期にメジャーデビューしたTHUNDERTHE QUIREBOYSLITTLE ANGELSなどとともに“ブリティッシュハードロックの次世代を担う新人”が放つ良作として高評価を獲得。チャート的にもイギリスで最高62位という数字を残したほか、「Power」(全英82位)、「Wild And Wonderful」(同50位)というシングルヒットも記録。本作を携えAC/DCTHE CULT、そしてMOTÖRHEADらとツアーを回ることで、さらに知名度を高めていきました。

多くのリスナーにとってのTHE ALMIGHTYのイメージは全英5位という最高記録を打ち立てた3rdアルバム『POWERTRIPPIN'』(1993年)や最高傑作の4th『CRANK』(1994年)での“グランジ以降のオルタナ感を飲み込んだ、パンキッシュなグルーヴメタル”かもしれません。そういった意味では、本作や続く2ndアルバム『SOUL DESTRUCTION』(1991年)で展開される音楽性は少々オールドスクールに映ることでしょう。特にこの1stアルバムで聴くことができる楽曲群は、1989年という次世代への過渡期を思わせる前時代的なハードロックが中心。オープニングを飾る「Resurrection Mutha」での仰々しいアレンジは、まさに80年代そのものといったところで、多少恥ずかしさを覚えるかもしれません。

しかし、続く「Destroyed」や彼らの代表曲「Wild And Wonderful」、そして「Power」といった男臭いハードロックチューンの数々からは、リッキーが近年活動の母体としているBLACK STAR RIDERSの片鱗を見つけることもでき、彼にとってのルーツはここにあるのだと気づかされます。

中〜後期とは異なる魅力を放つ本作は、BLACK STAR RIDERSから入ったリスナーにこそ受け取ってもらいたい作品のひとつです。

 


▼THE ALMIGHTY『BLOOD, FIRE & LOVE』
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このデビューアルバムを携えたツアーの様子は、1990年10月8日にリリースされたライブアルバム『BLOOD, FIRE & LIVE』で確認することができます。日本盤は1992年7月10日発売。

1990年7月にエジンバラとノッティンガムで録音された本作は、1stアルバム『BLOOD, FIRE & LOVE』からの楽曲7曲にBACKMAN-TURNER OVERDRIVEのカバー「You Ain't Seen Nothin' Yet」を加えた、全8曲/約36分とライブ作品としてはややコンパクトな内容。ですが、「スタジオ作品よりもライブが魅力」だと言われ続けてきた彼らの魅力が、『BLOOD, FIRE & LOVE』よりもわかりやすい形で伝わる良盤ではないでしょうか。

ライブ映えする「Full Force Lovin' Machine」からスタートする構成といい、オーディエンスとの交流を含む8分近くにおよぶライブのハイライト「Wild And Wonderful」、終盤に持ってくることでドラマチックさが倍増する「Resurrection Mutha」などは、スタジオ盤だけではわからないバンドの個性をより感じることができるはずです。

日本盤は本国から2年近く遅れて発売されたのですが、「Wild Angel」「Detroit」「Crucify」と次作『SOUL DESTRUCTION』からの楽曲を含む3曲を追加収録。これは1992年12月に予定されていた彼らの初来日公演を前に、ライブバンドとしての彼らの真髄を知ってもらおうと企画されたものでしたが、『SOUL DESTRUCTION』からの楽曲を含むことでアルバム本来の軸がちょっとブレてしまったような気がしないでもありません。こういうの、一長一短ありますね。

なお、2013年11月18日にはスタジオアルバム『BLOOD, FIRE & LOVE』とライブアルバム『BLOOD, FIRE & LIVE』、および同2作発売周辺に録音されたシングルC/W曲やライブ音源をまとめたボーナスディスクで構成された3枚組作品『BLOOD, FIRE & LOVE & LIVE』がリリース。こちらはサブスク配信も最近スタートしたので、気になる方はこちらからチェックすることをオススメします。

 


▼THE ALMIGHTY『BLOOD, FIRE & LOVE & LIVE』
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2023年1月26日 (木)

BLACK STAR RIDERS『WRONG SIDE OF PARADISE』(2023)

2023年1月20日にリリースされたBLACK STAR RIDERSの5thアルバム。日本盤未発売。

前作『ANOTHER STATE OF GRACE』(2019年)から3年4ヶ月ぶりの新作。2021年にスコット・ゴーハム(G/THIN LIZZY)とチャド・スゼリガー(Dr/ex. BREAKING BENJAMIN、ex. BLACK LABEL SOCIETY)が相次いで脱退し、新たにLAを拠点に活動するザック・セント・ジョン(Dr)が加入するも、新たなギタリストを加えることなくBLACK STAR RIDERSは4人編成で活動を継続することを決意します。

その後、デビュー時から在籍してきたNuclear Blast Recordsを離れ、新たに名門Earache Recordsと契約。プロデューサーには2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』(2015年)からバンドに関わり続けているジェイ・ラストン(ANTHRAXSONS OF APOLLOARMORED SAINTなど)を迎え、リードギターをクリスチャン・マルトゥッチ(G/STONE SOURコリィ・テイラー)とリッキー・ウォリック(Vo, G)とで分け合いながら制作を進めました。

基本路線はこれまでと一緒で、リッキーらしいTHE ALMIGHTYの男臭い哀愁感漂うハードロックに、スコットこそいなくなってしまったものの、それでもバンドのアイデンティティとしてキープし続けているTHIN LIZZYからの影響を散りばめた、王道感の強いUK/アイリッシュロックが展開されています。彼らにモダンな要素を求めるなんてことはありえないし、そんな彼らの姿も見たくない。そういった意味では、ファン納得の1枚ではないでしょうか。

オープニングを飾るタイトルトラック「Wrong Side Of Paradise」がどことなく『JUST ADD LIFE』(1996年)あたりのTHE ALMIGHTYと印象が重なるのは、最近リッキーがTHE ALMIGHTYの再結成について「絶対にないなんて言わない」とSNSで発言したことでの補正もあるのかな。なんとなくですが、スコットがいなくなったことで、今まで以上にTHE ALMIGHTYっぽさが強まっているのは気のせいでしょうか。

かと思えば、「Hustle」や「Better Than Saturday Night」ではモロにTHIN LIZZY節を展開。コード使いがまんまTHIN LIZZYな後者にはDEF LEPPARDのジョー・エリオットもハモりでゲスト参加しており、それっぽさを強調させることに成功しています。カッコいいったらありゃしない。

序盤に派手めな楽曲を揃える一方で、中盤に入ると地味でマニアックな楽曲が続きます。そんな中、THE OSMONDSのカバー「Crazy Horses」のタフなアレンジに光るものが見つけられ、今までどおりなのにネクストレベルに片足ツッコミ始めた感も伝わる。そんな予感めいたものを提示しつつ、「Don't Let The World (Get In The Way)」や「Green And Troubled Land」などで再び加速し、序盤こそダークだけど実はソウルフルっていう良曲「This Life Will Be The Death Of Me」で締めくくる終盤の流れも良し。デジタル限定のスペシャル・エディションにはさらに「Cut 'N' Run」「Suspcious Times」が追加されており、どちらも捨て曲と呼ぶには少々勿体ない仕上がり。ただ、「This Life Will Be The Death Of Me」でエンディングを迎えるのがアルバムとしては正しいので、あくまでオマケ程度に受け取っておくのが吉。

本作完成後にはクリスチャン・マルトゥッチがコリィ・テイラーとの活動に専念するためにバンドを脱退。WAYWARD SONSのサム・ウッドが新メンバーとして正式加入。基本的には4人編成で活動を続けるものの、今年2月からスタートするバンドの10周年記念英国ツアーにはスコットに加え、創設メンバーのひとりジミー・デグラッソ(Dr)もゲスト参加するそうです。それはそれで観たいぞ。

 


▼BLACK STAR RIDERS『WRONG SIDE OF PARADISE』
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2023年1月25日 (水)

BRYAN ADAMS『GET UP』(2015)

2015年10月2日にリリースされたブライアン・アダムスの13thアルバム。日本盤は同年10月16日発売。

新作スタジオ音源としては70年代の名曲カバー集『TRACKS OF MY YEARS』(2014年)から約1年ぶり、新曲で構成されたオリジナルアルバムとしては『11』(2008年)から約7年半ぶりの新作。その7年の間には、『BARE BONES』(2010年)、『LIVE AT SYDNEY OPERA HOUSE』(2013年)とライブ作品も立て続けに発表されていたので、意外と空いた感覚はなかったですよね。

『11』では一部楽曲で盟友ロバート・ジョン“マット”ラングを迎え、基本的にセルフプロデュースで制作を進めていましたが、今作ではELOやTRAVELING WILBURYSのメンバーにしてジョージ・ハリスンやトム・ペティ、ポール・マッカートニーなどのプロデュースでも知られるジェフ・リンがトータルプロデュースを担当。全13曲で構成された本作ですが、新曲は9曲のみで、そのほかの4曲はその新曲のアコースティックバージョン(この別ていくのみブライアン自身がセルフプロデュース)。かつ、1曲1曲が2〜3分という古き良き時代のロック/ポップスを踏襲した構成で、アルバム自体約36分という短い尺なのです。これ、アコースティックバージョンを除いたら26分くらいなんですよ(苦笑)。

そんな短い内容ですが、どの曲もブライアンらしいキャッチーなポップロックばかり。直前にルーツ回帰的な『TRACKS OF MY YEARS』を経たこともあってか、従来の彼らしさにレイドバック感も加わり、かつジェフ・リンらしいサウンドメイクによってビートルズ・ライクな質感へと昇華されている。ソングライティング自体はブライアンとおなじみジム・ヴァランスとのタッグ中心なのですが、そもそもブライアン自身がこういうモードなんでしょう。

あと、『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)などでコラボしたフィル・ソーナリー(ex. THE CURE、ex. JOHNNY HATES JAZZ)も「That's Rock And Roll」でコライトしたほかギターを担当していたり、「Go Down Rockin'」で初期からの仲間であるキース・スコットがギターを弾いていたりするものの、レコーディングの大半をブライアンとジェフ・リンが担当しているのも、過去の代表作との大きな違いでしょうか。エンジニアリングやミキシングのみならず、演奏面でもジェフによる“ビートルズっぽさ”が大きく作用しているようです。

2023年時点での最新作『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)との共通点も見受けられ、現在に至る最新の基本スタイルはここでひとつ完成した感もあるのかな。もともと持ち合わせていた要素ではあるものの、ここまで特化させたのはヒット云々を抜きに、やりたいことをやって余生を過ごしたいという思いも強かったのかもしれません。もはや20〜30代の頃のようなメガヒットを狙うより、童心に帰って音楽を楽しむほうが合っている気がしますしね。

 


▼BRYAN ADAMS『GET UP』
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2023年1月24日 (火)

HEROES AND MONSTERS『HEROES AND MONSTERS』(2023)

2023年1月20日にリリースされたHEROES AND MONSTERSの1stアルバム。日本盤未発売。

このバンドはSLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSのベーシストであり、本国カナダでは80年代末から活動を続けるバンドTHE AGE OF ELECTRICの一員でもあるトッド・カーンズ(Vo, B)、Y&TALICE COOPER BANDなどで活躍したステフ・バーンズ(G)、EVANESCENCEの屋台骨を支えるウィル・ハント(Dr)というミュージシャンズ・ミュージシャンたちにより結成されたトリオバンド。Frontiers Recordsと契約し、昨年秋から「Locked And Loaded」や「Raw Power」「Let's Ride It」といった楽曲を配信してきました。

満を持して発表されたデビューアルバムは、バンドのセルフプロデュースにより完成したもの。長期にわたり北米のメジャーシーンで活躍してきた3人ならではの、安定感の強いパワフルな演奏を楽しむことができます。うん、各メンバーのプレイやアレンジに関してはさすがの一言です。

で、気になるのが楽曲ですよね。オープニングを飾る「Locked And Loaded」こそポストグランジ的側面を漂わせるものの、続く「Raw Power」以降はポップなメロディラインとキャッチーなサビを持つ良質なハードロック/パワーポップを聴かせてくれます。「Let's Ride It」なんて、どことなくトッド・カーンズと同郷のHAREM SCAREMあたりを彷彿とさせますよね。

要所要所でダウンチューニングを効かせたポストグランジ的なリフワークやアレンジが登場するので、一瞬ギョッとするかもしれませんが、(それこそこちらもカナダ出身の)NICKELBACKあたりとの共通点も見つけられ、そういった点からも彼らがこのバンドでやりたいことがなんとなく透けて見えてくるのではないでしょうか。こういうスタイルってお国柄によるものが大きいんですかね?

THE AGE OF ELECTRICではボーカルも担当するトッドのボーカルも古き良き時代のハードロックバンド的で、ハイトーンの伸びもよい。豪快なハードロックもパワーポップもお手のものといった印象で、良質な楽曲と相まって最後まで楽しく聴けてしまう。かつ、どの曲も4分程度にまとめられており、全10曲で39分という尺もちょうど良い。ステフ・バーンズのプレイに関しては、ソロはリフほど惹きつけられるものが少なく、そこだけが今後の課題かな。

トッドが在籍するTHE AGE OF ELECTRICをモダンにした印象の本作。SLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSのファンやY&T、EVANESCENCEのリスナーにアジャストするかどうかは微妙ですが、これはこれで良質な内容なので、深いことを考えずにリラックスしながら楽しみたいと思います。

 


▼HEROES AND MONSTERS『HEROES AND MONSTERS』
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2023年1月23日 (月)

BUCKCHERRY『BLACK BUTTERFLY』(2008)

2008年9月16日にリリースされたBUCKCHERRYの4thアルバム。日本盤は同年9月10日発売。

日本先行で2005年10月に発表され、北米では翌2006年4月に発売された前作『15』でしたが、同作から「Crazy Bitch」(全米59位)、「Sorry」(同9位)とヒットシングルが生まれたことで、アルバム自体もロングヒット。最高39位と順位的にはそこまで高くはないものの、売上的には最終的に200万枚を超えるセールスを残しています。

このヒットを受けて、アメリカでは2年5ヶ月ぶりとなる本作(日本ではほぼ3年ぶり)。新たなプロデューサーに、「Sorry」でコライトしたマーティ・フレデリクセン(AEROSMITHDEF LEPPARDMOTLEY CRUEなど)を迎えて制作され、前作の流れを汲む“新生BUCKCHERRY”らしい仕上がりとなっています。

マーティは「Tired Of You」や「Talk To Me」など全12曲中4曲で、ジョシュ・トッド(Vo)&キース・ネルソン(G)と共作。「Too Drunk...」(正しいタイトルは「Too Drunck To Fuck」)のような初期の彼ららしいいかがわしいロックンロールを含むものの、基本的には整合感の強い正統派スリージー/ハードロックが中心で、『15』からファンになったリスナーには入っていきやすい作りと言えるでしょう。

アルバム冒頭の「Rescue Me」からして、かなり毒気が抜けていることが伝わりますが、カッコよければ問題なしう。哀愁味を漂わせるミディアムナンバー「Dreams」や「Don't Go Away」、ワイルドさの伝わる「Talk To Me」や「A Child Called "It"」、初期の彼らのイメージを引き継ぎつつモダンにアップデートさせた「Fallout」、アーシーなアコースティックナンバー「All Of Me」、今や彼らのライブには欠かせないアンセムソング「Cream」と、どの曲も完成度は非常に高く、アルバムとしてのバランス感も非常に優れている。ただ、先にも書いたように毒気が薄まっていることで、初期からのファンには物足りなさを残してしまう懸念は否めません。ですから、BUCKCHERRYに何を求めるかで大きく評価が分かれる1枚かもしれませんね。

ただ、本作は配信/ストリーミングで聴くとインパクトが弱い印象を受けます。というのも、「Too Drunk...」がそのタイトルや歌詞の内容を理由にカットされており、代わりにDEEP PURPLEの代表曲「Highway Star」に差し替えられているのです。一応「Too Drunk...」は今作からのリードシングルなんですけど……。

なもんですから、一番パンチの強い曲が削られたことで、初期ファンからはさらに印象の薄い1枚になってしまったのではないでしょうか。僕も久しぶりにストリーミングで聴いて、その違和感に驚いたほどですから。なので、できることならリイシュー前の初盤を中古盤ショップで探してみることをオススメします。

 


▼BUCKCHERRY『BLACK BUTTERFLY』
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2023年1月22日 (日)

SLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『APOCALYPTIC LOVE』(2012)

2012年5月22日にリリースされたSLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS名義での1stアルバム。日本盤は同年5月16日発売。

当時はGUNS N' ROSESを離れていたスラッシュ(G)の、ソロやSLASH'S SNAKEPITを含めると通算4作目のソロワーク。前作に当たる純粋なソロアルバム『SLASH』(2010年)では曲ごとに多彩なゲストボーカルを迎えていましたが、同作にも数曲で歌唱し、かつアルバムツアーにも参加したマイルズ・ケネディ(Vo, G/ALTER BRIDGE)を固定シンガーに据え、トッド・カーンズ(B)&ブレント・フィッツ(Dr)というリズム隊との4人編成で本格的なバンド活動へとシフトします。

プロデュースを手がけるのは、『SLASH』から引き続きエリック・ヴァレンタイン(GOOD CHARLOTTE、LOSTPROPHETS、QUEENS OF THE STONE AGEなど)。前作ではどこか抜けきらない音質で好みが分かれましたが、今作ではエッジの効いた抜けの良い音質で、スラッシュがイメージするハードロックバンド像と見事にマッチし、最良の形で具現化されています。

また、楽曲に関しても前作が「ソングライター・スラッシュ」としての側面を強く打ち出したものだったのに対し、今作はバンドの一員に徹することで従来の彼らしさがより良い形で表現することに成功。GN'Rから今日に至るまでのスラッシュらしさが強くにじみ出ており、マイルズのボーカルにも見事にフィットしている。と同時に、「これ、アクセル・ローズが歌っても全然アリだな」とも思わせてくれるような楽曲ばかりで、近年の彼に興味を持ったリスナーのみならず、古くからのリスナーにもしっかりアピールする仕上がりです。

ギターリフに関しては若干の手癖感は否めませんが、ギターソロに関しては手癖以上の冴え渡りも見つけられる。どの曲もボーカルのメロディ並みにメロディアスで、非常にキャッチー。かつ、「Anastasia」を筆頭にエモーショナルなフレーズ/メロディも随所で確認でき、全15曲/約61分というボリューミーな内容ながらもまったく飽きさせない構成となっています。

本作を聴いた当時は「スラッシュ、まだまだいけるじゃん!」と感動したものです。多くのファンが「またGUNS N' ROSESに戻ってほしい」と願ってやまなかったと思いますが、個人的には「このままマイルズ・ケネディと活動を続けてもらえたら……」と強く思ったことをよく覚えています。最新作『4』(2022年)の次に聴くべき、スラッシュの代表的ソロワークのひとつです。

 


▼SLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『APOCALYPTIC LOVE』
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2023年1月21日 (土)

METALLICA『SCREAMING SUICIDE』(2023)

2023年1月19日に配信リリースされたMETALLICAの新曲。

この曲は今年4月14日に発売予定の6年半ぶりのオリジナルアルバム『72 SEASONS』からの、リードシングル第2弾。昨年11月末に突如配信された「Lux Æterna」に続く楽曲で、アルバムの3曲目として収録予定の1曲です。念の為、以下アルバムのトラックリストとなります。

01. 72 Seasons
02. Shadows Follow
03. Screaming Suicide
04. Sleepwalk My Life Away
05. You Must Burn!
06. Lux Æterna
07. Crown Of Barbed Wire
08. Chasing Light
09. If Darkness Had A Son
10. Too Far Gone?
11. Room Of Mirrors
12. Inamorata

今回のアルバムは全12曲で、トータル77分超の大作。「Lux Æterna」が3分半程度のショート&ファストナンバーだったのに対し、今回の「Screaming Suicide」は5分半と比較的従来の彼ららしい尺のアップチューンです。こうなると、やっぱり3、4曲は8分超えのプログレッシヴな楽曲が用意されているのかな?と勝手に想像してしまいます。

また、「Lux Æterna」のレビューで同曲について、そのオープニング&エンディングのアレンジ含め「METALLICAらしくもあり、どこかMÖTORHEADを彷彿とさせるものもある」オールドスクールなHR/HMと表現しましたが、要するにそれってMETALLICAのルーツでもあるNWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)を意識したものでもあるという。そこを踏まえて今回の新曲と向き合うと、こちらも従来のMETALLICA……主に3rdアルバム『MASTER OF PUPPETS』(1986年)までの初期と、90年代後半の『LOAD』(1996年)『RELOAD』(1997年)あたりの中期をミックスしつつ、原点の色合いを重視した作風でまとめ上げるという手法なのかなという気がしました。つまり、バンドとしてこのアルバムで表現したいことの軸には、確実にNWOBHMが存在しているのではないでしょうか。

歌詞においては、そのタイトルからもわかるように自死をテーマに掲げています。自身の内面と向き合うことをテーマとした歌詞は、これまでのMETALLICAの楽曲にも多く存在しますが、タイトル含めここまでストレートに表現した楽曲は初めてじゃないかな。と同時に、そういった自分の負の部分と向き合わせつつ、この曲を通して我らが親分ジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)は「君はひとりじゃない」とも呼びかける。単なるネガティブな表現ではなく、その先にあるポジティブさも感じ取ってほしい、そんな1曲ではないでしょうか。

「Lux Æterna」発表直後、僕は次のアルバム『72 SEASONS』のタイトルが表す「72の季節=18年」について、「古代中国で考案された季節を表す方式のひとつで、日本でも古くから自然の変化を知らせるのに使われているもの」と説明しました。もちろんこれも間違いではないのでしょうが、ジェイムズ自身は「生まれてからの18年で、人間の基本的部分は構築される」ことを意味し、そういった核の部分からの解放をこのアルバムにて表現したいと語っています。要は、今から40年前にアルバム『KILL 'EM ALL』(1983年)にデビューしたMETALLICAは、この新たなアルバムで「変わりようのない核」の部分を大切にしつつも、絶対的に囚われる必要はないということを証明したいのかもしれません。そういった意味では、いろんな経験を経た大人だからこその“『KILL 'EM ALL』のアップデート”が展開されるのではないか……そう予想しています。

ここから2月、3月、4月と新曲を定期的に届けてくれるのか、はたまたもっと小出しにしていくのか。4月14日までの3ヶ月弱を思う存分楽しんでいこうと思います。

 


▼METALLICA『SCREAMING SUICIDE』
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2023年1月20日 (金)

MÅNESKIN『RUSH!』(2023)

2023年1月20日にリリースされたMÅNESKINの3rdフルアルバム。

オリジナルアルバムとしては前作『TEATRO D'IRA: VOL.1』(2021年)から1年10ヶ月ぶりの新作。同作リリース時は『Eurovision Song Contest 2021』で優勝(5月22日)前とあって、今作こそがその影響がダイレクトに反映された1枚となります。

同作発表後(というか『Eurovision Song Contest』優勝後)、バンドはイギー・ポップをフィーチャーした「I Wanna Be Your Slave」新バージョンを筆頭に、「Mannmamia」「Supermodel」といった新曲や、映画『エルヴィス』に提供したエルヴィス・プレスリーのカバー「If I Can Dream」などを発表していますが、この3rdアルバムに向けた本格的な動きは昨年10月発売の「The Loneliest」から始まったと言っても過言ではありません。

曲ごと職業ソングライターとコライトを重ね、かつ1曲1曲異なるプロデューサーを迎えて制作された本作は、メンバー4人の個性をひとつにまとめる(あるいや4人の共通項をみつけてそこにスポットを当てる)のではなく、バラバラの4人の魅力をダイレクトに反映させることで、良い意味での荒ぶり具合を楽しむことができる“第二の初期衝動作”。成功がもたらしたプレッシャーを無視するのではなく、1人ひとりがそれぞれのスタンスで向かうことで、以前とは異なる化学反応が発生し、バンドとしての色をよりビビッドに表すことができたのではないでしょうか。

オープニングを飾る「Own My Mind」や「Bla Bla Bla」「Don't Wanna Sleep」など前作の延長線上のある楽曲も含まれているものの、どの楽曲もささくれだった生々しさがより前面に打ち出されたものばかり。各曲とも3分前後とコンパクトにまとめられていますが、それは計算の上でのコンパクト化ではなく、無駄を省いてソリッドに磨き上げた上での結果。だからなのか、ロックンロールが本来持っているべき攻撃性や躍動感、高揚感がどの曲からのストレートに伝わってきます。

トム・モレロ(G/RAGE AGAINST THE MACHINE)をゲストに迎えたリード曲「Gossip」は、先行配信されていた「Supermodel」などと同様、世界的成功を手中に収めたからこそのゴージャスさが伝わる。だけど、それらはセレブ的な成功とは一線を画するもので、間違いなくロックバンドがどんどん巨大化していく姿が投影されたもので、そういった姿勢はゴリゴリ感の強い「Gasoline」やライヴ映えするパンキッシュな「Kool Kids」からも感じ取ることができます。

音楽的なまとまりよりもバンドとしての“今”をダイレクトに具現化したという点では、スタイルはまったく異なるもののGUNS N' ROSESの問題作『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』(ともに1991年)との共通点を見つけることもできる。ロックバンドが思いがけない大成功を収めたときの強気な姿勢と戸惑いが、こういったいびつな形で記録として残されたのはある意味奇跡かもしれません。そういった意味でも、2022〜23年というこのタイミングにしか作り得なかった1枚かもしれません。だからこそ、世界中でバカ売れして、ロック低迷を覆すターニングポイントを作ってもらいたいところです。

なお、日本盤は昨年8月の来日公演から、豊洲PITでの単独公演にて収録された10曲を収めたボーナスディスク付き仕様も用意。コロナ禍だろうが自然と声が漏れてしまうオーディエンスの様子含め、こちらも貴重な記録の一部。アルバム本編同様にマストで聴いていただきたい、CD限定の素敵なボーナスです。

 


▼MÅNESKIN『RUSH!』
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2023年1月19日 (木)

BLIND CHANNEL『LIFESTYLES OF THE SICK & DANGEROUS』(2022)

2022年7月8日にリリースされたBLIND CHANNELの4thアルバム。日本では本作がデビュー作にあたり、同年12月21日に『シック・アンド・デンジャラス』の邦題で発売。

BLIND CHANNELはフィンランド北部にあるオウルという街出身のニューメタルバンド。ラッパーだったニコ・モイラネン(Vo)とメタルバンドに憧れを抱いていたヨエル・ホッカ(Vo)という10代の少年2人がLINKIN PARKの2ndアルバム『METEORA』(2003年)を通じて出会い、2013年のバンドをスタートさせます。翌年、にフィンランドで開催された『Wacken Metal Battle』を勝ち抜き、レーベル契約を獲得。数枚のシングルリリースを重ね、2016年9月に1stアルバム『REVOLUTION』を発表し、本国チャートで26位という好成績を残します。

その後も『BLOOD BROTHERS』(2018年)、『VIOLENT POP』(2020年)とアルバムを連発する中、2020年夏にはかつて「Timebom」(2019年)にゲスト参加したアレクシ・コーニスベシ(DJ)が正式メンバーとして加入。新たに6人組編成になったバンドは、ヨーロッパ最大の音楽の祭典『Eurovision Song Contest 2021』にフィンランド代表として参加し、今作にも収録された「Dark Side」で6位入賞を果たした。ちなみに、このコンテストで優勝したのがイタリア代表のMÅNESKIN。彼ら同様、BLIND CHANNELもこの『Eurovision Song Contest』入賞で世界各国から注目を集めることとなります。

このコンテスト出場と前後して、彼らは新たなレーベルとしてCentury Media Recordsと契約。翌2022年夏に満を持して発表された本作は、本国チャートで初の1位を獲得しています。そして、海外から遅れること約半年、アートワークを変更して日本盤が発売されたわけです。

年末の慌ただしい時期のリリースだったこともあり、スルーされてしまいがちですが、特に日本のメタル/ラウド系リスナーがそのまま見過ごしてしまうには勿体ない1枚。結成のきっかけとなったLINKIN PARK直系の2000'sニューメタルの香りがプンプンする、ヘヴィでグルーヴィー、そしてポップでキャッチーな楽曲がズラリとならぶ良作なのです。

先にも触れた「Dark Side」は本国1位、イギリスでも最高66位という成績を残した王道感の強い1曲。メロディアスな主メロとパーカッシヴなラップパート、そしてサビではシンガロングしたくなるようなキャッチーなメロディが用意されており、演奏も歌を盛り立てるための無駄のないアレンジが施されている。「Bad Idea」(フィンランド5位)や「Balboa」(同12位)、「We Are No Saints」(同18位)などのヒットシングルはどれもが高性能のポップ/ロックソングとして機能するものばかりで、ラウド系以外のリスナーにもしっかり響く個性を持っている。かつ、大半の楽曲が3分前後と非常にコンパクトで、歌に主軸を置いていることから終始飽きさせないアレンジでかっちり作り込まれている。そりゃ売れるわけだ。

個人的には「Alive Or Only Burning」が大のお気に入り。日本盤にはWE CAME AS ROMANSなどのと共演経験を持つラッパーのZero 9:36をフィーチャーした別バージョンも、ボーナストラックとして用意されています。こっちの新バージョンもなかなか良いのではないでしょうか。

目新しさはないものの、完成度だけは無駄に高い。本国ではすでに7000人規模のアリーナ会場を満員にするほどの人気ぶりで、日本でもフェス出演などがあればより知名度が広まるはず。ここでの成功経験を糧に、さらに進化する可能性の高い将来有望株の1組です。

 


▼BLIND CHANNEL『LIFESTYLES OF THE SICK & DANGEROUS』
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