2022年12月31日 (土)

INDEX

当ブログにて公開中のレビュー、および1998年12月1日からスタートした『とみぃの宮殿』に掲載された記事を当ブログにて再公開したレビューのインデックスページになります。(2019年12月9日更新)


【0〜9】 【A】 【B】 【C】 【D】 【E】 【F】 【G】 【H】 【I】 【J】 【K】 【L】 【M】 【N】 【O】 【P】 【Q】 【R】 【S】 【T】 【U】 【V】 【W】 【X】 【Y】 【Z】 【あ】 【か】 【さ】 【た】 【な】 【は】 【ま】 【や】 【ら】 【わ】 【コンピレーション】 【フェスティバル/イベント】 【企画記事】 【年間ベスト】 【100番勝負】 【映画レビュー】

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2019年12月31日 (火)

2019年9月〜10月のアクセスランキング

ここでは2019年9月1日から10月31日までの各エントリーへのアクセス数から、上位30エントリーを紹介します。

内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いたトップ30。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2019年7〜8月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)(※2019年9月30日更新/NEW!)

2位:TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)(※2019年9月13日更新/NEW!)

3位:MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)(※2019年9月11日更新/NEW!)

4位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日更新/↓2位)

5位:ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)(※2018年4月12日/↑23位)

6位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日更新更新/↑9位)

7位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)(※2018年5月16日更新/↑16位)

8位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)(※2019年10月9日更新/NEW!)

9位:PRINCE『BATMAN』(1989)(※2019年2月13日更新/Re)

10位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日更新/↓6位)

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2019年12月10日 (火)

SWEET OBLIVION『SWEET OBLIVION』(2019)

QUEENSRYCHEのフロントマン、ジェフ・テイトが新たに立ち上げたプロジェクト・SWEET OBLIVIONのデビューアルバム。2019年6月発売。

QUEENSRYCHE脱退後、もうひとつの同名バンドを立ち上げ我々を混乱に陥れた張本人ジェフ・テイト。その後、OPERATION: MINDCRIMEとバンド名を変え活動を続けていましたが、ここではイタリアのプログレッシヴ/テクニカル・メタルバンドDGMのシモーネ・ムラローニ(G, B)と新たにタッグを組むことで、メロディアスな(かつ比較的モダンな)王道HR/HMにチャレンジしています。

良くも悪くも、オルタナメタルに特化した『PROMISED LAND』(1994年)以降の路線にこだわり続けたジェフですが、本作では良い意味でそれ以前のサウンドスタイル、特に名作『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)や続く『EMPIRE』(1990年)あたりに存在した魅力が復調しているように感じます。

とはいえ、まったく同じことをやっているわけではなく、そこにはシモーネのメロディセンス、彼と同じDGMのメンバーであるエマニュエル・カサーリ(Key)、ファビオ・コスタンティーノ(Dr)を迎えたことで実現した適度にテクニカルかつモダンな演奏が功を奏し、オルタナ路線には感じられなかったキラメキや艶やかさまで見出すことができるのですから、シモーネ様様といったところでしょうか。

そして、ジェフ・テイトという稀代のシンガーはやはりヘヴィメタルを歌うべき人間なのだということにも、ここで改めて気付かされるはずです。オルタナメタルやらモダンヘヴィネス以降の頭でっかちなHR/HMも決して悪いわけじゃない。だけど、モノには限度があるし、そればかり延々続けられてもお客は飽きてしまうわけです。だって、そこばかりを求めて老舗(=ジェフのもと)を訪れているわけではないのですから。みんな最新のテイストも美味しがってくれるけど、結局一番食べたいのは定番の“あの”なわけですしね。

期せずして、そういった老舗の味が復活することになったSWEET OBLIVIONというプロジェクト。きっと今現在のQUEENSRYCHEのファンも喜んでくれるはず。現QUEENSRYCHEが最新作『THE VERDICT』(2019年)で示した路線にも比較的近く、適度に『EMPIRE』あたりのカラーが含まれている本作は、もしかしたら“あの頃”のQUEENSRYCHEが本来進むべきだった未来の姿なのかもしれませんね。

もし、このプロジェクトが継続的に作品を発表してくれるのなら、きっと次のアルバムはもっと練りこまれたメロディの楽しめる、真の意味での「“あの頃”のQUEENSRYCHEの続き」が見られるのかも……そんな淡い期待をしつつ、このプロジェクトの成功を祈りたいと思います。

 


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2019年12月 9日 (月)

H.E.R.O.『HUMANIC』(2019)

2019年4月下旬にリリースされた、H.E.R.O.の1stアルバム。日本盤も海外盤とほぼ同時期に発表されています。

H.E.R.O.はクリストファー・スティアネ(Vo, G)、アナス“アンディ”・キルケゴール(Dr)、ソレン・イテノフ(G)からなるデンマーク出身のハードロックバンド。同郷のDIZZY MIZZ LIZZYのサポートアクトを通じて知名度を上げ、日本デビュー前に2018年11月のイベント『HOKUO LOUD NIGHT』で初来日を果たしたほか、2019年1月のスラッシュ来日公演でサポートアクトを経験。耳の早いリスナーの間では、その憂いあるメロディとフレッシュなサウンドが人気を博し、本格的な日本デビューを待ち望む声が高まっていたそうです。

デビューアルバムは、DIZZY MIZZ LIZZYやD-A-Dといった同郷バンドを多数手がけてきたニック・フォスをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え制作。もともとメンバー3人とも、本国ではそれぞれキャリアを重ねてきたプロフェッショナルなミュージシャンなこともあり、本作に収められた楽曲はどれも完成度の高いものばかり。サウンド的にはハードロックという狭い枠をすでに超えており、エレクトロの要素を味付けに用いたモダンなポップテイストも至るところに見受けられます。

また、例えばヘヴィさひとつ取り上げても、そこにはクラシックロック的なヘヴィさは皆無で、むしろグランジ以降のヘヴィさやニューメタルを通過したヘヴィさなど、あくまで“90年代を通過したゼロ年代”以降のそれ。しかも、そういったヘヴィさはサウンドの軸にあるわけではなく、こちらもテイストとして取り入れているといった雰囲気で、それよりもさらに深いところにある軸からは「ただ単に、いい曲を作りたい」という強い欲求が透けて見える。

そう、どの曲も本当にメロディがしっかり練り込まれていて、さまざまなテイストのバンドサウンドはあくまでその美メロを最大限に活かすための手段にすぎないのです。そのへんの職人っぽさに好き嫌いが分かれそうな気もしますが、僕は素直に受け入れられました。だって、結局は曲の良さがすべてですから。

もともとシンガーソングライターとして活躍していたクリストファーの歌声もクセが強すぎず、どの曲も無難に歌いこなしている。そのへんの没個性は少々不満と言えば確かに不満なのですが、それを補って余るバンドアンサンブルの妙とグッドメロディがあるので、帳消しになっているところもあります。

でも、ライブであれだけ評価が高まったのだから、きっと生で観たら/聴いたらもっと魅力的なのかもしれませんね。来年1月末〜2月には早くも単独再来日も決定したので、機会があったらそこで確かめてみたいと思います。

 


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2019年12月 8日 (日)

CROWN THE EMPIRE『SUDDEN SKY』(2019)

2019年7月中旬に発表された、CROWN THE EMPIREの4thアルバム。日本盤未発売。

もともとはツインボーカル体制の5人組だった彼らは、アメリカ・ダラス出身のメタルコア/ポストハードコアバンド。2017年初頭にコ・リードボーカル(スクリーム担当)のデヴィッドが脱退し、アンドリュー・ヴェラスケス(Vo)を中心に置きヘイデン・ツリー(B)がスクリームを兼任する形で活動を継続。2018年にはこの4人編成で来日を果たし、日本のcoldrainとツーマンツアーを行い話題となりました。また、CROWN THE EMPIREは過去にもONE OK ROCKと全米ツアーを行った経験もあり、日本のリスナーには若干馴染みのある存在と言えるかもしれません。

4人編成となり初めて制作した本作は、過去の作品と比べるとさすがにスクリームの比率が低くなっており、アンドリューのクリーンボイスを前面に打ち出した(かつ、効果的に用いた)“わかりやすい”作風にシフトしています。

もちろん、適度なヘヴィさやザクザクした気持ち良いギターサウンドは存分に楽しむことがでいます。ぶっちゃけ、ボーカルがクリーンパート1人に重点を置くことで、ギターの見せ方/聞かせ方は以前よりも前に出たものになっているのではないでしょうか。逆に言えば、それくらい過去の作品は2人のシンガーの個性が強かったわけでもあるのですが。

バンドとしてのグルーヴやアレンジでどうこうより、本作はグッドメロディと伸びやかなボーカルを最良の形で活かした曲を作ることに重点を置いている。結果、キャッチーでコンパクトでわかりやすいアルバムが完成した、と。うん、すごくわかりやすい流れですよね。スクリームも適度な頻度で挿入され、アグレッションを表現するという点において非常によいアクセントとなっている。むしろ、昔からこれくらいの比率で構築されており、このバランスがちょうどいいんじゃないかと思えるほど。

この感じ、誰かに似ているな……とアルバムを聴き進めていたのですが、気づきました。先に挙げたcoldrainです。特にここ最近の彼らですね。「What I Am」や「Red Pills」みたいな曲を聴くと、よりそう感じられるのではないでしょうか。

歌で戦うことに対してちゃんと自信のついた最近のcoldrainは無敵の一言。最新アルバム『THE SIDE EFFECT』(2019年)はもはやメタルだラウドだハードコアだと括るのが馬鹿らしくなるくらいにオリジナリティに長けた内容で、今のCROWN THE EMPIREって実はそこに追いつこうとしているんじゃないか……そんな気すらしてきます。

それくらい歌心を持った今のCROWN THE EMPIRE。すごく優れたアルバムだと思いますが、実はこれもまだ通過点でしかないんでしょうね。そういう意味では、この次に誕生するであろう新作こそ彼らの代表作になるのではないか。そんな気がしています。今はこの変化/進化を前向きに受け入れたいと思います。

 


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2019年12月 7日 (土)

BAD OMENS『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』(2019)

2019年8月初頭にリリースされた、BAD OMENSの2ndアルバム。日本盤未発売。

2016年夏、Sumerian Recordsからアルバム『BAD OMENS』でデビューを飾ったアメリカ産のメタルコアバンド。当時はツインギター編成の5人組でしたが、前任ベーシストが怪我で脱退してからは、ギタリストのひとりがベースに転向し、残された4人で活動を継続。その新体制で制作されたのが、この3年ぶりの新作です。

フロントマンであるノア・セバスチャン(Vo)の過去の発言やそのボーカルスタイルから、BRING ME THE HORIZONと比較されることの多かった彼ら。散々言われたからか、本作からはそういった色合い(特にボーカルスタイルから)は払拭されつつあります。とはいえ、やっぱり好きなんだろうな……と感じさせるポイントも要所要所で残されており、そこを好意的に受け取るか、あるいは単なるフォロワーとして切り捨てるかで、このバンドに対する評価も大きく変わるのではないかと思います。

ですが、本作はそういった穿った見方を悔い改めたくなるくらいよくできた1枚。オープニング「Kingdom Of Cards」での穏やかな歌モノ/ポップ路線には面食らいますが、続く「Running In Cricles」では前作にあった激しさが増し始める。先行公開されたキャッチーな「Careful What You Wish For」のムーディな作りは最近の(無理やり見ようとすれば)BMTHとの共通点も見つけられるものの、4曲目「The Hell I Overcame」から続く数曲で展開されるハードコアなサウンド/アレンジは圧巻の一言。適度なキャッチーさも備わっており、ただ激しく“押す”だけでは終わらない魅力が至るところに散りばめられている。5曲目「Dethrone」のカオスさや6曲目「Blood」でのモダンメタル的味付けなど、とにかく1曲1曲が個性的でまったく飽きがこないんです。

特に印象的なのが、終盤に収められた「Said & Done」と「Burning Out」というムーディな2曲。前者はLINKIN PARKなどモダンメタルコア以前のニューメタル的な香りが強く、後者はそれこそBMTH以降のポストハードコアといったイメージ。同じようなスタイルでも、ルーツの異なる2曲を並べることでその違いを見せつける構成に、思わずニヤリとしてしまいます。

そして、ラストを飾る「If I'm There」。これも穏やかな楽曲なのですが、前2曲からの流れといい非常にニクい構成だなと思います。オープニングのソウルフルな流れとこのエンディング。どこまで計算づくで配置したのか、個人的にも一度メンバーに聞いてみたいくらいです。

確実に前作よりスケールアップを果たした本作は、現在のBMTHほど“外側への開放”は感じられませんが、狭いシーンの中から飛び出そうとする気概は十分に伝わってくる、非常に好感の持てる1枚です。いや、これは年間ベストクラスなんじゃないの?

 


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2019年12月 6日 (金)

CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』(2019)

CRYPTOPSYが2019年6月中旬にリリースした日本限定アルバム。

全8曲が収録された本作は、同年7月中旬に実現した7年ぶりの来日公演を記念して企画されたもので、もともとはアルバム前半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』(2015年)、後半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』(2018年)が初出という、連作となったシリーズEPをひとまとめにした内容となっています。

現在のメンバーはフロ、マット・マギャキー(Vo)、クリス・ドナルドソン(G)、オリヴィエ・ピナール(B)、フロ・モーニエ(Dr)の4人。ロード・ワーム(Vo)が脱退してからもだいぶ経ちますし、もはやこの4人編成は安定感すら感じられます。

事実、僕も7月13日の代官山UNIT公演に足を運んでいますが、計算され尽くしたプレイの数々と、音数が多いにも関わらずすべての音の粒が感じ取れるほどクリアなサウンドは、この手のバンドとしては異例といえるもので、熱狂的なリアクションを見せるオーディエンスとの相乗効果により、今まで観た彼らのステージの中でも一番と呼べる内容でした。まあとにかく、フロ・モーニエ先生の千手観音ドラミングが圧巻の一言で、あれだけ連打しても音の粒一つひとつが感じられるのは奇跡的だなと思うわけです。観られて本当によかった。

さて、改めてアルバムの話題に戻りましょう。前述のとおり、本作は2つの録音時期が異なるEPをひとつにまとめたもので、2作品の間には3年というタイムラグが生じています。しかし、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』のラストである4曲目「Framed by Blood」と、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』のオープニング曲である5曲目「The Wretched Living」の間にその“3年の差”は一切感じられません。そこには『THE BOOK OF SUFFERING』というひとつのテーマのもとに制作された連作という要素も大きく影響しているのでしょうか。

むしろ、アナログでいうところのA面(『TOME I』)とB面(『TOME II』)という形で、うまく色付けされているとさえ感じられる。つまり、これら8曲は本来収まるべき場所に、収まるべき形で収まったと言えるのではないでしょうか。

メロディやドラマチックさは皆無で、終始無慈悲なまでに轟音で攻めまくり、ときには複雑怪奇な展開で聴き手を驚かせる、CRYPTOPSYならではの個性はどの曲でも健在。むしろ、1曲1曲の際立ちはなかなかのものがあると思います。それはアルバムという形を想定して録音したものではなく、4曲のみというEPとして録音したのも功を奏しているのかもしれませんね。

正式なオリジナルアルバムではありませんし、この形で聴くことができるのは日本のファンのみですが、エクストリームメタルのエクストリームたる所以を存分に味わえる貴重な1枚はぜひとも2019年のうちに触れておいてもらいたいところです。

 


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2019年12月 5日 (木)

ABBATH『OUTSTRIDER』(2019)

2019年7月上旬にリリースされた、ABBATHの2ndアルバム。

ABBATHとはノルウェーの伝説的ブラックメタルバンドIMMORTALのフロントマンとして活躍したアバス・エイケモ(Vo, G)が、バンド脱退後の2015年に自身の名前を冠して結成した4人組バンド。同年秋の『LOUD PARK 2015』ではアルバムリリース前にも関わらず、早くも初来日公演が実現しており、その際にはアグレッシブなステージングとは相反した、アバスの日常におけるお茶目なキャラクターが一部に話題にもなったのは記憶に新しいと思います。

2016年に発表されたデビューアルバム『ABBATH』はIMMORTAL時代からひとつのスタイルにこだわらないアバスらしく、スラッシュメタルやパワーメタルなど正統派ヘヴィメタルからの影響も見え隠れする意欲作でした(ボーナストラックとしてJUDAS PRIESTのカバーも収録されていましたしね)。ということは、本作も前の作品とは若干テイストの異なる興味深い内容に仕上がっているはず……と、僕は聴く前からワクワクしていたわけです。

実際に届いたこのニューアルバムは、ある意味で自分の想像どおり、そしてある意味では想像をはるかに超えた力作に仕上がっていました。

例えば、前作でもそうでしたが、すでにABBATHはブラックメタルという狭い範疇にこだわっていないということ。もちろんブラックメタル的要素も演奏面からふんだんに感じることができるのですが、それ以上にピュアなクラシックメタルからの影響がストレートに表れているのです。そういった点は前作同様、本作にも楽曲に彩りを与えております。

基本的な路線は前作『ABBATH』の延長線上にあると言える内容で、そこに冠しては想像どおりであったわけですが、もう一方の「想像をはるかに超えた」という点……実はこちら、アバスのルーツといえる80年代初頭のオールドスクールなHR/HM、特にブラックメタルの始祖的存在であるVENOMや彼らを生み出したNWOBHMシーン、さらにはスウェーデンのBATHORYなどからの影響が表面化。前作でのドラマチックかつオーソドックスな正統派メタルと、ブラックメタルのルーツがミックスされ、そこに現代的な演奏スタイルが加わる……はい、新しいABBATHの出来上がり、というわけです。

BATHORYからの影響という点に関しては、アルバムのエンディングを飾る「Pace Till Death」は文字どおりBATHORYのカバーでストレートに表現している。一周回ってここまでど直球なブラックメタルを、今のアバスが表現するのはいろんな意味で感慨深いものがあります。と同時に、改めてアバスというアーティストの(ブラックメタルという狭い範疇で括っておくには勿体ないほどの)非凡さを感じさせる仕上がりでもあると思いませんか。

ブラックメタルというと意図的に劣悪な録音状態の作品も少なくないですか、こういった高品質で、かつブラックメタルの進化した姿を表したアルバムが正当な評価を下されることを願ってやみません。

 


▼ABBATH『OUTSTRIDER』
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2019年12月 4日 (水)

DESTRUCTION『BORN TO PERISH』(2019)

2019年8月上旬にリリースされた、DESTRUCTIONのニューアルバム。

彼らの歴史って「シュミーア(Vo, B)在籍時」「『CRACKED BRAIN』期」「グルーヴメタル期」の3つに分けられると思うのですが(シュミーア在籍時だけでも3人編成と4人編成で分けられたり、80年代と2000年代以降に分けられたりするのですが、ここでは割愛)、基本的に「グルーヴメタル期」は歴史に含まない派もいるみたいでして……そうなると、今作が一体何作目のオリジナルアルバムになるのかまったく見当がつきませんが、まああれです、10数作目です(適当)。

さて、シュミーア(Vo,B)とマイク(G)を中心に40年近くにわたり活動を続けるDESTRUCTIONですが、シュミーアが1999年に復帰してからはトリオ編成が20年近く続いてきました(その間、ドラマーの交代はありましたが)。常に「3人編成が一番だ」と公言し、80年代末からの4人編成時代を“なかった”こととしてきた彼らが、2019年に入っていきなり若手のダミア・エスキッチ(G)とベテランなランディ・ブラック(Dr/ex. ANNIHILATOR、PRIMAL FEARなど)を新メンバーに迎え再び4人編成に返り咲き。この布陣で完成させたのが、この『BORN TO PERISH』なわけです。

ぶっちゃけ、4人になったことに驚きは隠せませんでしたが、実際にアルバムを聴けばギターでの表現に多彩さが加わり、楽曲アレンジの幅も確実に広がったことが理解できるはずです。比較的ストレートなスラッシュナンバーが多かった近作と比べても、今作での技巧的アレンジはとても新鮮に映るはずです。まあ80年代末のテクニカル路線とは若干異なりますが、ランディ・ブラックが安定感の強いドラミングで地盤を支えるこの“ど直球なパワーゲーム”も悪くないですよね。

オリジナルアルバムも10数作と重ねていけば、バンドとしての新鮮さはどんどん薄れていきますし、実際ここから新しい要素を入れようとするとファンから反感を買ってもおかしくはありません。しかし、DESTRUCITONにおける今回の変化は……過去に経験したさまざまな変化を考慮しても非常にポジティブに受け入れられるものではないでしょうか。うん、これは変化というよりも進化と呼ぶにふさわしいものだと僕は解釈しています。

ただ、ひとつだけ残念なのが「これ!」と言えるキメの1曲が見当たらなかったこと。ここに今作を代表するようなキラーチューンが1曲でも含まれていたら、問答無用の最高傑作になっていたのではないか……そう思わずにはいられません。それでも、ここ数作の中でも高く評価されるべき1枚だと思いますけどね。好きな人にはたまらない、無心で楽しめるスラッシュメタルアルバムですよ。

 


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2019年12月 3日 (火)

MAMIFFER『THE BRILLIANT TABERNACLE』(2019)

2019年11月初旬にリリースされた、MAMIFFERの5thアルバム。

MAMIFFERはマルチプレイヤーでもある才女フェイス・コロッチャ(Vo, Piano, Organ, etc.)と、公私ともに彼女のパートナーであるアーロン・ターナー(G)の2人からなる、アメリカ・シアトルを拠点に活動する男女2人組ユニット。ドローンやアンビエントなどに属する、HR/HMやラウドロックとは距離のあるサウンドを主軸としているものの、ISISやSUMAC、OLD MAN GLOOMなどのエクストリームミュージック系バンドで活躍してきたアーロンが途中から正式加入したことで、ヘヴィな要素が急増。どこかドリーミーながらも重厚さが散りばめられた独特のサウンドは、エスクトリームミュージックやオルタナティヴロック、ポストロックを愛聴するリスナーにも十分にアピールするものとなっています。特にここ数作はヘヴィ系を好むリスナーには親しまれたようで、過去3回行われた来日公演も見事成功を収めています。

前作『THE WORLD UNSEEN』(2016年)から3年ぶりに発表された本作は、通常のアルバムのように一定期間に集中して制作されたものとは異なり、2013年頃(3rdアルバム『STATU NASCENDI』制作時)から2018年にかけて断続的に行われた数々のセッションから、当時制作していたアルバムにはそぐわなかった楽曲を軸に、新たに方向性を絞り込んで完成させた1枚です。

近作で聴けたアーロンのダイナミックなギターサウンドはオープニングトラック「All That Is Beautiful」などでは楽しめるものの、基本的には抑え気味で、MANIFFER=フェイスの原点でもあるピアノとエレクトロニクスに主軸を置いた作風にシフトチェンジ。近年ますます存在感を増しているフェイスのボーカルに焦点を当てた、“静”の要素が強い作品集となっています。ボーカリストとしてのフェイスの表現力が著しく成長している事実は、本作における最大の聴きどころと言えるのではないでしょうか。

また、どこか宗教音楽のような厳かさを伴う楽曲の数々は、方向性的に最近リリースされたチェルシー・ウルフの最新作『BIRTH OF VIOLENCE』との共通点も感じられます。向こうはアメリカのフォーキーなルーツミュージックに回帰した1枚でしたが、こちらは同じルーツミュージックでも、もっとトラッドミュージック的と言いましょうか。しかも、チェルシー・ウルフはアコースティック楽器に主軸を置いたオーガニックな作品でしたが、MAMIFFERはピアノとエレクトロニクスをベースにした近代音楽的な作風。こういった違いはあるものの、向かおうとしている先は実はそう変わらないのではないか。2作を聴くと、そんな印象を受けるのですが、いかがでしょう?

エクストリームミュージックという括りで考えると、こういった試みが同ジャンル進化におけるひとつの到達点、もしくは通過点と捉えることもできるのではないでしょうか。そういった意味でも、このMAMIFFERの新作が2019年の音楽シーンで果たす役割は非常に重要な気がしてなりません。個人的には年間ベストアルバム候補の1枚です。

なお、本作は日本盤のみ20分にもおよぶアンビエントトラック「Salt Marsh」を収めたボーナスディスク付きの2枚組仕様。配信バージョンではこちらのトラックは聴くことができないので、ぜひフィジカル(かつ日本盤)で楽しんでもらいたいところです。

 


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2019年12月 2日 (月)

ALICE COOPER『BREADCRUMBS』(2019)

アリス・クーパーが2019年9月に発表した6曲入りEP。海外ではアナログで2000枚限定リリースというレアアイテムでしたが、日本では同年11月末にCDとして発売されました。

今年はHOLLYWOOD VAMPIRESとして6月に新作アルバム『RISE』をリリースしたばかりのアリスですが、ソロ名義の新作は2017年のアルバム『PARANORMAL』以来2年ぶり。とはいえ、今作には純粋な新曲は1曲しか含まれておらず、1曲は『THE EYES OF ALICE COOPER』(2003年)収録曲「Detroit City」のリメイク「Detroit City 2020」、残り4曲はカバー(このうち1曲はメドレーなので、正式には5曲のカバー)というバラエティに富んだ構成となっています。

とはいえ、新録曲のみで構成された本作は、『PARANORMAL』およびHOLLYWOOD VAMPIRESでの経験が昇華された聴き応えのある、ポップでパンキッシュなガレージロック集。ドライブ感の強い「Detroit City 2020」や「Go Man Go」やニューヨークパンクの香りがちらつく「East Side Story」(ボブ・シーガーのカバー)、ファンキーさが際立つ「Your Mama Won’t Like Me」(スージー・クアトロのカバー)、ブルージーかつソウルフルな「Devil With A Blue Dress On」(MITCH RYDER & THE DETROIT WHEELSカバー)と「Chains Of Love」(THE DIRTBOMBSカバー)、初期のアリス・クーパーにも通ずる世界観の「Sister Anne」(MC5カバー)と、たった6曲(実質7曲)で21分と短いながらもボリューミーに感じられる“濃い”仕上がりなのです。

カバーで取り上げたアーティストを見ればわかるように、本作はアリスが自身のルーツであるデトロイトのガレージロック/アーリー・パンクロックに回帰したと受け取れる内容。あえて過去のオリジナル曲「Detroit City」をリメイクしたあたりにも、そのへんの熱い意思が感じ取れます。サウンド的には『PARANORMAL』セッションで試みた初期ALICE COOPER BANDの面々との共演、姿勢としてはHOLLYWOOD VAMPIRESでの経験が良い形で反映されており、良い意味で肩の力が抜けた本作はアリスの本領発揮と言わんばかりの良作ではないでしょうか。

また、そういったアリスの意思に華を添えるのが豪華ゲスト陣。マーク・ファーナー(G / GRAND FUNK RAILROAD)、ウェイン・クレイマー(G / MC5)、ミック・コリンズ(Vo / THE DIRTBOMBS)、ポール・ランドルフ(B, Vo / JAZZANOVA)、ジョニー“ビー”バダニェック(Dr / MITCH RYDER & THE DETROIT WHEELS)というデトロイト周辺のハードロック/ガレージロック/ソウルを代表する面々が顔を揃えています。そんな作品を、『PARANORMAL』から引き続きボブ・エズリンがプロデュースを手掛けているというのが、またたまらないですね。

ライブでは相変わらずショーアップされた“あの”世界観を維持しつつ、音源では好き放題かまし続けるアリス。年齢的にもこの先どれだけの新作を残し続けることができるかは神のみぞ知る状況ですが、ぜひこのスタイルを可能な限り維持し続けてもらいたいところです。

 


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2019年12月 1日 (日)

BLOOD INCANTATION『HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE』(2019)

アメリカ・コロラド州デンバー出身のデスメタルバンド、BLOOD INCANTATIONが2019年11月下旬に発表した2ndアルバム。

2011年に結成された彼らは、フレットレスベースを使うベーシストを擁する4人組バンド。2013年にセルフタイトルのデモテープを発表後、地道な活動を続け、2016年にリリースした1stフルアルバム『STARSPAWN』が一部界隈で反響を呼びました。

ブルータルデスメタルやテクニカルデスメタル、プログレッシヴデスメタルなど、オールドスクールなデスメタルからより進化したスタイルが混在する昨今ですが、このBLOOD INCANTATIONの方向性は楽曲こそ複雑な展開を持つものが見受けられるものの、演奏スタイル自体はオールドスタイルなものに近いのではないでしょうか。かつ、本作には「Inner Parths (To Outer Space)」のように単なる残虐性をプッシュしたものとは異なる、(ギターフレーズが)メロウでスペーシーな楽曲も存在する(といっても、味付け程度ですけどね)。オールドスクールの中でもまた新たに派生したスタイルと言えなくもないのかな。

その“新たに派生したスタイル”の中でも彼らが個性的なのは、“コズミック・デスメタル”なるSFや宇宙など神秘性の高いテーマを扱った歌詞を歌っている点。うん、とても2019年の作品だとは信じられないアートワークからも伝わってくるよね(笑)。

アルバムタイトルの「Hidden History Of The Human Race」とうフレーズも、実はアメリカで1993年に出版された書籍『Forbidden Archeology: Hidden History Of The Human Race』から取られたものじゃないか……と。もっとも同著は宇宙云々はあまり関係なく、どちらかというと超常現象寄りなのかな……いや、実際に読んでないのであんまり深くは語れませんが。

それはともかくとして。アルバム自体はすごくカッコいいです。80年代〜90年代初頭のオールドスクール・デスメタルの精神を引き継ぎつつも、2000年代以降のテクニカル路線を通過することで、残虐さの中にもドラマチックさが垣間見れる。1曲1曲は5〜7分台と決して短いものではないのですが、その中に複数のさまざまな要素が凝縮されており、情報量の多さという点においては非常に現代的なのです。

で、その真骨頂と言えるのが、アナログB面……最後のトラックとなる「Awakening: i. Form The Dream Of Existence... / ii. To The Multidimensional Nature Of Our Reality / iii. (Mirror Of The Soul)」。実は本作、全4曲で36分強という「?」な内容なのですが、そのラストトラックはタイトルのみならず楽曲の尺も18分と大変な長さになっています(まあ組曲ですからね、そうは聴こえないんだけど。実は彼ら、1stアルバムの時点で1曲目から13分の大作をぶちかましているんですけどね)。

でもね、これが意外とスルスルと聴き進められちゃうのよ。不思議だね。単調じゃないからこそ18分も楽しめるというのは大きいんでしょうけど、逆に単調じゃないにしてもこの手のジャンルで18分も聴き手を飽きさせずに惹きつけられるのは相当な技量なないと無理なんじゃないでしょうか。そういう意味では、彼らはこの1曲に持てるすべての経験値を詰め込み、そんな自分たちに勝ったのではないか、と。

このアルバムで初めて接したバンドではありますが、これはなかなかうれしい出会いだったな。うん、もしこの「Awakening: i. Form The Dream Of Existence... / ii. To The Multidimensional Nature Of Our Reality / iii. (Mirror Of The Soul)」(長いよ! 「Awakening」でいいじゃん!笑)を生で聴く機会があるのなら……ぜひ一度はライブを観てみたいものです。

 


▼BLOOD INCANTATION『HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE』
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2019年11月30日 (土)

2019年11月のお仕事

2019年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※11月27日更新)

 

[紙] 11月27日発売「VOICE BRODY」vol.6にて、「新サクラ大戦」佐倉綾音、山村響×福原綾香の各インタビュー、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」岩田陽葵インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月26日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにてBABYMETALライブレポートBABYMETAL、イギリスからの盟友BMTHと繰り広げた「奇跡の共演」が公開されました。

[紙] 11月25日発売「CONTINUE」Vol.62にて、TRIGGER特集内「キルラキル」6話・12話・20話レビューと「キズナイーバー」解説を執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月22日、「リアルサウンド」にてオーディション企画『ONE in a Billion』制作スタッフインタビュー坂道オーディションやNizi Projectも制作 ソニーミュージック新人開発スタッフに聞く、今求められるアーティストの条件が公開されました。

[紙] 11月22日発売「TV Bros.」2020年1月号にて、のろしレコード『OOPTH』、佐藤千亜妃『PLANET』、TORO Y MOI『SOUL TRASH』の各ディスクレビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 11月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2019年12月号にて、THE YELLOW MONKEYインタビューおよびディスコグラフィー作成、BBHF尾崎雄貴インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 11月12日、「ぴあアプリ」にて乃木坂46秋元真夏インタビュー乃木坂46新キャプテン・秋元真夏が語る、WOWOWドラマの裏側と後輩たちへの想いが公開されました。

[WEB] 11月8日、「リアルサウンド」にてTHE PINBALLS古川貴之インタビューTHE PINBALLS 古川貴之の人生に影響を与えた4作品とは? ルーツから浮かぶ根底にある想いが公開されました。

[紙] 11月2日発売「日経エンタテインメント!」2019年12月号にて、=LOVE齊藤なぎさ、≠ME冨田菜々風の各インタビュー欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」構成を担当しました。(Amazon

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また、10月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1910号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

SLAYER『THE REPENTLESS KILLOGY (LIVE AT THE FORUM IN INGLEWOOD, CA)』(2019)

2019年11月に発売された、SLAYERの最新ライブアルバム。

オフィシャルな形で単体のライブアルバムが発売されるのは、名盤『DECADE OF AGGRESSION』(1991年)以来28年ぶり(!)。思えば『LIVE INTRUSION』(1995年)や『WAR AT THE WARFIELD』(2003年)、『STILL REIGNING』(2004年)などライブ映像は豊富にリリースされているんですよね。今作もライブアルバムと同じ公演がDVD/Blu-rayでも発売されますし、彼らの場合は音源よりも映像で楽しんでほしいっていうことなんでしょうかね。

それはさておき。今回は現地時間で本日11月30日、このライブ作品と同じLAのThe Forumでのライブを最後にツアー活動を停止させます。バンドのマネージャーは直近のインタビューで「ツアーがこれで終わりなだけで、バンドが終わるという意味ではない」と発言しているので、今後レコーディング作品として何かしらの予定が控えているのか、あるいはアーカイブ的な過去音源がどっさり発表されるのか、あるいは単発でのライブ活動があるのか……そこは悲観的にならないようにしておきたいと思います(とはいえ、今年3月の最後の来日公演では感傷的になってしまいましたが)。

さてさて。このライブ作品について触れておきましょう。本作は2017年8月5日のThe Forum公演をまるまる収めたもので、タイミング的にはフェアウェル・ツアーが発表される前のもの。同年10月には『LOUD PARK』で来日もしているので、セットリスト的にはほぼ同一となっています(ライブアルバムで演奏された「Hallowed Point」に替わり、日本では「Fight Till Death」というレア曲を披露)。現時点での最新オリジナルアルバム『REPENTLESS』(2015年)からの楽曲も程よく含まれた、グレイテストヒッツと呼ぶにふさわしいセットリストではないでしょうか。

上記のとおり、これからSLAYERに触れようというビギナーとっては現時点での入門編的1枚と言えるでしょう。が、いかんせん音質がイマイチなんですよね。なんていうか、軽すぎるんです。ボーカルが前にで過ぎていて、ギターが若干後ろに退いている、そしてドラムの音に重量感が一切感じられない。せっかくヘヴィで狂気的な演奏を繰り広げているのに、それが最良な形で伝わらないのは残念でなりません。これ、ライブ映像作品用のミックスをそのままCDにも流用したんでしょうね。

要するに、この点においても彼らがライブアルバムというアイテムをそこまで重視していないことが伺えます。おかげで、聴いても感傷的な気分に陥らずに済みました(笑)。あと、不思議とYouTubeに上がっている映像音声のほうが、実際のアルバムよりも音に厚みがある気がするのですが、これは気のせいなんでしょうか……。

初期の楽曲に限定してしまえば、バランス的には『DECADE OF AGGRESSION』が最高の1作ですし、オールキャリアを振り返りたい人には今作が最適(ただ、音質に難あり)。一長一短ありますが、まずはストリーミングサービスで聴き比べて、自分に合った作品を選んでみてはいかがでしょう。

肝心の映像作品に関しては、後日別枠でたっぷり触れたいと思います。

 


▼SLAYER『THE REPENTLESS KILLOGY (LIVE AT THE FORUM IN INGLEWOOD, CA)』
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2019年11月29日 (金)

NILE『VILE NILOTIC RITES』(2019)

2019年11月初頭にリリースされた、NILEの9thアルバム。

言わずと知れた、アメリカ・サウスカロライナ州出身のテクニカル・デスメタルバンドNILEですが、実は僕自身ここまでちょっと避けてきたバンドでした。理由は特にないのですが、なんとなく経験していたといいますか。聴けば絶対にハマることはわかっていたのに……要するに、入りどきを見失っていたんでしょうね。彼らが登場した90年代末から2000年代初頭、ちょっとこの手の新しい音楽と距離を置いていたタイミングもあったし、そこを外してしまってからは新作が出るたびになんとなく手が伸びなかったり。

で、各種ストリーミングサービスが始まってから自分の中で「新譜を貪欲に聴いていこう」と意識を変え、これまで触れてこなかったバンドにも積極的に手を出すようにしていたのもあり、今回ようやくNILEについて触れるタイミングが訪れたわけです。

予備知識としては「とにかくブルータルでテクニカルなデスメタル」「中近東などワールドミュージックの要素を導入」「トリプルボーカル」程度しかなく、そんな自分が初めて聴いたNILEのアルバム。うん、カッコいいじゃん(笑)。もっと早くに聴いておけよ!と自分にツッコミを入れておきます。

痙攣気味に手数の多いドラミングが心地よいのと、中近東を彷彿とさせるフレージング、次々と変化を繰り返す曲展開、と同時に「Seven Horns Of War」のように9分近くにもわたる大作では映画のサウンドトラックのようなドラマチックさを演出するアレンジ力。どれを取っても最高峰だと思いますし、2分程度のショートチューンから先の大作まで、とにかく1曲1曲をちゃんと聞かせよう、惹きつけようとする工夫が随所に用意されていると思いました。

正直、トリプルボーカルの聴き分けは軽く触れた程度ではわからない部分も多いですが(笑)、きっとちゃんとした役割分担があるのでしょう。ここに関しては素人でゴメンなさい。

あと、この手のバンドの音源としては非常に聴きやすいミックスバランスで、そこにも単なるオナニーで終わらない、ちゃんと作品を届けようとするバンドの姿勢が垣間見える気がします。とにかく聴きやすい! これ、この手のバンドとしては異例じゃないかな。この手のバンドならあえて聴きにくくすることで難解さを増す、あるいは聴き手に違和感を与える手法だってできるはずなんです。でも、それをしない。しっかり“作品”というものと向き合っているし、もっと言えば芸術性の高いデスメタルだと思うんですよ。自分で書いてみて、「芸術性の高いデスメタル」ってかなりアレだとは思いますが(笑)。

あえて過去の作品に触れてからではなく、いきなりこのアルバムから入ったことでNILEというバンドに素直に興味が持てたし、ここから過去作をさかのぼって聴いてみようと思えたので、自分的には良い出会いだったと思います。無心になりたいときにヘッドフォンで、ひたすら爆音で楽しみたい1枚です。

 


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2019年11月28日 (木)

ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』(2019)

2019年11月初頭発売の、ALCEST通算6作目のオリジナルアルバム。今作からNuclear Blast Recordsからのリリースとなります。

前作『KODAMA』(2016年)はその1作前の『SHELTER』(2014年)とも異なる作風で、緊張感を伴う長尺の楽曲が目立ちましたが、本作も基本的にはその延長線上にある1枚なのかなと。ですが、軸にあるものは近しいのですが、その『KODAMA』ともどこか違う印象を受ける。何が違うのでしょう?

これは僕だけの感じ方なのかもしれませんが、今作から「Sapphire」のMVが制作されたこと、そこでの演奏シーンを目にして感じたことが……「ああ、ライブか」と。そこを意識して作ったか、あるいは無視して作品として完結させるか、その意識の違いが2作の差なのかなと思いました。

どちらかといえば、『KODAMA』はスタジオ作品として優れた1枚を完成させようと目論んだのかなと。もちろんライブで演奏することは意識していたとは思います。だって、レコーディングでは実際にプレイしているわけですから。でも、そういう次元ではなく、もっと“作品”として突き詰めたいという思いの強さが表れたのが『KODAMA』という力作だったのではないでしょうか。

一方で、今回の『SPIRITUAL INSTINCT』には初期のブラックメタル臭が戻ってきている楽曲も少なくない。そういった躍動感がライブ感にもつながっているように思えるのです。実際、今回のアルバムを通して聴くと“スタジオで膝を突き合わせて作り込みました”という印象はあまり受けず、むしろ“セッションを重ねに重ねた結果、ここにたどり着いた”、そんな声さえ聞こえてきそうなくらい“生”の息吹が伝わってくるのです。

ALCESTのテーマのひとつは、ネージュ(Vo, G, B, Synth)が子どもの頃に夢で見た「色も形も音もない架空の世界」を音で表現すること。それをいかに“生”の音で表現するか、非常に困難な作業だったと思います。実際、今作の制作に際してネージュは「長く困難だったけど、やりがいのあるプロセスだった」とコメントしています。

今回、あえて“生”という言葉を意図的に使ったのは、先のライブ感のみならず、アルバムの節々から伝わってくる宗教音楽的な香りにもなぞらえています。アルバムタイトルに「Spiritual」というワードを用いているところにも通ずるのでしょうが、人が生きるうえで寄り添ったり敵対したりする宗教、あるいは肉感的なものと相反する精神世界。こういったものを能動的なバンドサウンドで、いかに先鋭的でエモーショナルに表現するか。そりゃあ難しい作業ですわな。

でも、彼らはこのアルバムでそれをしっかり成し遂げたのではないでしょうか。名盤『KODAMA』や『SHELTER』とも異なる、また新たな傑作。できる限り爆音で接したい1枚です。

 


▼ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』
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2019年11月27日 (水)

TYGERS OF PAN TANG『RITUAL』(2019)

2019年11月リリースの、TYGERS OF PAN TANG通算13作目のオリジナルアルバム。

バンド名を冠した前作『TYGERS OF PAN TANG』(2016年)がその年の年間ベスト候補に入ってもおかしくないくらいの良作で、1年遅れで聴いた僕は「もっと早くに聴いていれば……」と肩を落としたくらい。今聴いても本当に優れた、良質のブリティッシュ・ハードロックアルバムだと思うんですね。

で、前作から3年を経て届けられた本作。バンドメンバーは2013年から変わっていないようですが、ギタリストの表記が「ミッキー・クリスタル」から「マイケル・マクリスタル(Michael McCrystal)」に変わっています。おそらくメンバーチェンジではなく、同じ方のはず。そういう安定感もあってか、本作も前作に劣らぬ完成度の1枚となっています。

オープニングトラック「Worlds Apart」のリフからして鬼気迫るものがあり、そのまま勢いで押すのかと思いきや、実はミディアムとアップの中間くらいの程よいテンポ感。この適度な疾走感が気持ち良いったらありゃしない。ヤコボ・メイレ(Vo)の歌声も適度な湿り気とねっとり感があり、こういった泣メロの楽曲にピッタリ。その後も「Destiny」「Rescue Me」とミディアムテンポのマイナーチューンが続き、いい感じの流れとなっています(後者のリフは完全に過去の焼き直しですが。笑)。

全体的にはミドルテンポ中心の作風ですが、中には古き良き時代のファストナンバー「Raise Some Hell」、後半のパワフルなアレンジが好印象なメタルバラード「Words Cut The Knives」、ヘヴィなリズムが気持ち良いアップチューン「Damn You!」のような変化球も用意されており、バランス的にも良好じゃないでしょうか。

ミディアムナンバーにしても、すべてが似たり寄ったりというわけでもなく、「Love Will Find A Way」のような“これこれ!”と膝を叩きたくなるような王道ナンバーも、「Art Of Noise」みたいにグルーヴィーなリズムを持つ楽曲も含まれているので、決して飽きることはないかなと。

しかも、アルバムラストを飾るのが7分半におよぶ大作バラード「Sail On」。この曲がまた良いんですよね。ブルースベースのハードロックとは異なる、NWOBHM通過組だからこそ生み出せる唯一無二のHR/HM感。新鮮さは皆無ですが、だからといって無視できない存在感はさすがの一言だと思います。前作が気に入った方なら間違いなく、本作もお気に入りの1枚になるはずです。全11曲で50分強(日本盤ボーナストラック除く)というトータルランニングもベストですしね。

 


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2019年11月26日 (火)

DOWN 'N' OUTZ『THIS IS HOW WE ROLL』(2019)

DEF LEPPARDのジョー・エリオット(Vo)が中心となり2009年に結成されたバンド、DOWN 'N' OUTZが2019年10月に発表した3rdアルバム。過去2作はMOTT THE HOOPLEやBRITISH LIONS、イアン・ハンターのカバーが中心だったのに対し、今作は全12曲中11曲がオリジナル曲。過去の作品と作風が逆転した、初のオリジナルアルバムとなります。

DOWN 'N' OUTZはジョーのほか、THE QUIREBOYSのポール・ゲリン(G)&ガイ・グリフィン(G)、元VIXENのジェア・ロス(B)、WAYWARD SONS、元TOKYO DRAGONSのフィル・マティーニ(Dr)、そしてキース・ウェア(Key)という6人からなる、いわゆる“スーパーバンド”のひとつ。もともとは先に挙げたMOTT THE HOOPLE周りのアーティストのカバーを楽しむためのサイドプロジェクトで、これまでに発表した2枚のアルバム(2010年の『MY REGENERATION』、2014年の『THE FURTHER ADVENTURES OF…』)も肩の力が抜けた歌と演奏を楽しむことができ、個人的にも気に入っていた2作品でした(これらは2016年に日本盤もリリース)。

前作から5年ぶりに制作された3rdアルバムは、こういった“カバーする対象”からの影響を色濃く表したオリジナルナンバーで占められており、ちょっと聴いただけでも「70年代のブリティッシュロックバンドの、隠れた名盤」的な匂いを感じ取れるはず。それくらいよく作り込まれた正統派ブリティッシュロック/グラムロックの後継作品なのです。

ジョーが歌っていることで、至るところからDEF LEPPARDとの共通点も見つけることができますが、あそこまで神経質な作り込みは皆無。ロックバンドならではのラフさを残しつつ、そこにQUEENやMOTT THE HOOPLEなど70年代中盤のブリティッシュバンドの優雅さや上品さ(または、ある意味での下品さ)を散りばめた楽曲の数々はさすがの一言です。「Last Man Standing」のような楽曲を聴くと、思わず涙が込み上げてくる……なんていうリスナーも少なくないのでは。

すべてが“ロック”というわけではなく、中には「Music Box」のようなトラディショナルなインスト曲も含まれているし、ゴスペルを思わせるコーラスが印象的な「Walking To Babylon」もある。そして、本作唯一のカバー曲である「White Punks On Dope」(過去にはMOTLEY CRUEもカバーしたTHE TUBESのカバー)があったりと、非常にバラエティに富んだ内容なのです。アメリカ産グラムロックのTHE TUBESですが、DOWN 'N' OUTZの手にかかれば違和感なくブリティッシュの流れで楽しむことができる。この流れも非常に面白かったです。

DEF LEPPARD周りの新作というよりは、古き良き時代のブリティッシュロックの後継者が発表した普遍性の高い1枚として気楽に向き合ってほしい良作。きっとこの先も暇さえあれば引っ張り出して聴きたくなる1枚だと思います。

 


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2019年11月25日 (月)

DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』(2018)

2018年11月末にリリースされた、DEF LEPPARDの最新グレイテスト・ヒッツ・アルバム。2枚組仕様とDISC 1のみの単品、同時期にデジタルリリースされたオリジナルのクリスマスソング「We All Need Christmas」を加えたアナログ盤の3形態が発売されました。

DEF LEPPARDのグレイテストヒッツ・アルバムはこれまでにも複数発表されておりますが、世界共通の収録内容という点においては本作が初めて。最初のベスト盤『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)は北米とヨーロッパで一部収録内容が異なりましたし、ヨーロッパ&日本向けの『BEST OF DEF LEPPARD』(2004年)と北米向けの『ROCK OF AGES: THE DEFINITIVE COLLECTION』(2005年)もリリース時期および内容が異なるものでした。

そこから13、4年ぶりに制作された新たなグレイテストヒッツ・アルバムは、2005年以降に発表された新録曲……カバーアルバム『YEAH!』(2006年)、オリジナル作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)、新曲入りライブアルバム『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)、最新オリジナルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)、Spotify限定シングル『SPOTIFY SINGLES』(2018年)を加えた全35曲にて構成されています。

CD単品(1枚もの)および2枚組仕様のDISC 1は従来のグレイテストヒッツ同様、おなじみのシングルヒットをまとめたもの。そこに『SPOTIFY SINGLES』から「Personal Jesus」(DEPECHE MODEカバー)のリミックス・バージョンを追加した内容で、正直新鮮さは皆無。「Pour Some Sugar On Me」や「Rocket」がMV用に編集されたバージョンではなく、アルバム『HYSTERIA』(1987年)のテイクという点は過去のベストとは異なるところでしょうか。

となると、注目すべきは2枚組仕様のDISC 2ということになるわけでして。「Personal Jesus」以外の“2005年以降に発表された新録曲”はすべてこちらにまとめられており、というか“大ヒットしなかった曲”の総決算的な1枚とでも言えばいいのでしょうか(苦笑)。個人的にはこちらのディスクの内容が新鮮味を持って楽しむことができました。

実験作『SLANG』(1996年)からの楽曲をはじめ『DEF LEPPARD』からのシングル曲、「Promises」や「Bringin' On The Heartbreak」「Tonight」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」といったDISC 1から漏れた80〜90年代の中ヒット曲、一般的には駄作として扱われる『X』(2002年)から唯一選ばれ佳作「Now」など、いわゆる“隠れた名曲”が満載なわけです。DISC 1が誰もが知る“DEF LEPPARDのパブリックイメージ”だとしたら、DISC 2は“DISC 1を通過した人に向けた、DEF LEPPARDのディープサイド”とでも言えばいいのかな。とにかく、これまで発表されたグレイテストヒッツ・アルバムの中では一番新鮮味を持って向き合えた1枚でした。

ちなみに、単曲配信された新曲「We All Need Christmas」はアコースティックベースの、シンプルなバラード。昨年よりDEF LEPPARDの過去作がデジタル配信開始となったことで、このように新曲を気軽に配信できるようになったのは、彼らのようにアルバム1枚に5〜10年近くかけてしまうバンドにとっては良い傾向なんじゃないでしょうか。「Two Steps Behind」の延長線上にあるこの曲、ストリングスをフィーチャーした美しいメロディは非常にリラックスして楽しめるもので、今後この季節になったら聴いておきたい1曲になるといいですね。

なお、本作のストリーミングバージョンは、『DEF LEPPARD』からの3曲を除いた全32曲入り。これはリリース元が異なったり契約上のあれこれが原因なんでしょうけど、今や個人でプレイリストを作れる時代。ここに改めて「We All Need Christmas」を含む全36曲の完全版を用意しましたので、こちらでお楽しみいただけたらと。

 


▼DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』
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2019年11月24日 (日)

KISS『LICK IT UP』(1983)

1983年9月に発表された、KISS通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は『地獄の回想』という邦題で、オリジナルの“被せジャケット”付きで同年11月にリリースされています。90年代に復活する“地獄”シリーズ、ひとまず本作で一度完結したようです。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ヴィニー・ヴィンセント(G)、エリック・カー(Dr)。オープニングトラック「Exciter」のリードギターでリック・デリンジャーがゲスト参加しています。「Lick It Up」(全米66位/全英31位)、「All Hell's Breakin' Loose」がシングルカットされ、アルバム自体は全米24位、全英7位という好成績を残しています。

本作で初めてメイクを落とし、素顔で活動を始めたことも話題となり、そのままセールスに反映されたようですね。と同時に、1983年というとQUIET RIOT『METAL HEALTH』DEF LEPPARD『PYROMANIA』とったHR/HMメガヒット作が誕生した記念すべき年。前作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)でHR/HM化したKISSにとってこのムーブメントは“満を辞して”と言えるものだったはずです。先見の明があったのか、ただ商売っ気が強かっただけなのか(主にジーンの)。

作風的には『CREATURES OF THE NIGHT』の延長線上にあるハード路線ですが、かっちりしすぎ&重すぎた前作よりも軽やかさ、しなやかさが増しているのが本作の特徴かな。また、先に挙げた「Lick It Up」のように“本来のKISS”らしいポップ&キャッチーな楽曲が含まれていることも、アルバム全体のバランスに良い作用を与えています。

全10曲中、ポールとジーンのリードボーカル曲の割合は半々。特にアナログA面(M-1「Exciter」からM-5「Gimme More」)はポールとジーンのボーカル曲が交互に置かれているので、素直に“楽しい”と思えるのでは。

一方で、アナログB面(M-6「All Hell's Breakin' Loose」からM-10「And On The 8th Day」)ポール曲2曲、ジーン曲3曲とまとめて置かれており、CDで考えると「Gimme More」からポール曲3曲、「Fits Like A Glove」からジーン曲3曲とかたまってしまっているのがちょっと……エゴなんですかね(笑)。ただ、ヘヴィメタル的なファストチューン「Gimme More」とロックンロール的ファストチューン「Fits Like A Glove」とそれぞれの色や姿勢の違いが楽しめるという点においては非常に興味深い内容。なにより、1曲1曲の出来が非常にクオリティ高いですしね。

また、ヴィニーのギタープレイも前作以上に自由度が高い(まあ前作はエース・フレーリーの影武者的存在でしたしね)。ソングライターとしても非常に優れておりましたし、本作をもってバンドを脱退してしまうのは非常に勿体ないと改めて思います。

ロックを聴き始めた時点で、すでにKISSはノーメイク期だったわけで、そんな自分にとってこのへんの作品はど定番中の定番なわけです。今となっては“70年代のロックンロール期こそKISS”と声高に言われ続けていますが、いえいえ。これこそ自分にとってのKISS原体験ですから。忘れちゃいけない良盤のひとつです。

 


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«FREDDIE MERCURY『NEVER BORING』(2019)

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