DAVID BOWIE『DAVID BOWIE』(1967)
1967年6月1日にリリースされた、デヴィッド・ボウイの記念すべき1stアルバム。
ボウイは1964年にDAVIE JONES WITH THE KING BEES名義でシングル「Liza Jane」でレコードデビューを果たしますが、以降THE MANISH BOYS、DAVIE JONES WITH THE LOWER THIRD名義でシングルを複数枚発表するものの鳴かず飛ばず。1996年にシングル「Do Anything You Say」にて名義を現在のデヴィッド・ボウイへと変更し、同年後半にDecca Recordsが新設したレーベル・Deram Recordsと契約し、12月に「Rubber Band」をリリースします。翌1967年4月には「The Laughing Gnome」を発表し、同年6月1日にシングル「Love You Till Tuesday」とともにこの1stアルバムを同時リリースすることになります。
全14曲が収録された本作は、プロデューサーにマイク・ヴァーノン(FLEETWOOD MAC、ジョン・メイオールなど)、エンジニアにガス・ダッジョ(エルトン・ジョンなど。その後の「Space Oddityのプロデューサー)を迎えて制作。全楽曲がボウイの書き下ろしで、先の3枚のシングルのうち「The Laughing Gnome」のみ未収録となります(ほか2曲に関してもシングルとは別バージョンで収録)。
さて、気になる内容ですが……60年代半ば〜後半らしいマージービートを下地にした、スウィング感の強いビートポップとフォーキーなサウンドが中心。当時のレーベル的にはボブ・ディラン的な詩人としてボウイを打ち出したかったようですが、確かにその片鱗も随所に感じられるものの、ではそれが特出した才能かと言われると、この時点では未開花と言わざるを得ません。ですが、メロディメイカーとしての才能はすでにこの時点でかなり魅力的なものがあり、続く2ndアルバム『DAVID BOWIE』(1969年)のかけらもわずかながら見つけることができるはずです。
Deram時代のボウイはシングルヒットを飛ばすこともできず、アルバムもチャートインせず。結局、同レーベルとの契約は3枚のシングルと1枚のアルバムのみで終了してしまいます。その後、ボウイがシングル「Space Oddity」でシーンへと返り咲く(当時、全英5位を記録)までに、さらに2年の歳月を要することになるわけです。
そういう作品ということもあり、1990年にEMIが着手したボウイのカタログ・リイシュー企画には(レーベルが違うということもあり)本作は含まれておらず、しばらくはボウイのキャリアからスルーされてきました。が、1997年にDecca Recordsから本作収録曲+アルバム未収録のシングル&未発表音源にて構成された企画盤『DAVID BOWIE: THE DERAM ANTHOLOGY 1966-68』がリリースされたことを機に、わずかながら再注目されるように。サブスク全盛の現代においては、ほかの代表作とあわせて楽しむことができるようになりました。良い時代になったものです。
後年、ボウイは本作制作期の楽曲を中心に再録したアルバム『TOY』に2000年頃取り掛かりますが、結局お蔵入りとなり、2021年まで日の目をみることはありませんでした。世の中的には黒歴史のような1枚になっていましたが、当の本人にとってはキャリアの(真の意味での)原点であり、技術や才能を開花させた晩年にもう一度ちゃんとした形として残したかったという思いも強かったのかもしれませんね。
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