THE ROLLING STONES『BEGGARS BANQUET』(1968)
今から半世紀(50年)前の作品なんですね……今聴いてもそんな感覚を受けないのは、単にここ30年くらい聴きまくって慣れてしまったからなのか、それとも自分の耳がおかしいからなのか……。
1968年12月に発表された、THE ROLLING STONE通算7枚目(イギリスにて/アメリカでは9枚目)のスタジオアルバム。前作『THEIR SATANIC MAJESTIES REQUEST』(1967年)で試みたサイケデリック路線がひと段落し、次の一手が待たれていた1968年5月、バンドはその後50年にわたり演奏し続けることになる名曲中の名曲「Jumpin' Jack Flash」をシングルリリースします。全英1位、全米3位という好成績を残したこの曲を起点に、再びロックンロール路線へと回帰していった彼らが黒人音楽へと再度接近します。
よりアメリカ南部的サウンドへと寄ったサウンドは、全体的にアコースティックの香りが強いもので、70年代前半の諸作品と比較すると非常に落ち着いた作風。が、どこか狂気じみた世界観が展開されているのも本作の魅力であり、それはオープニングを飾る「Sympathy For The Devil」や「Street Fighting Man」のような楽曲から強く感じ取れるはずです。
とにかく1曲目の「Sympathy For The Devil」から強烈。ドラムではなくパーカッションによるビートが全体を引っ張り、そこに切り込むキース・リチャーズ(G)の鋭いギターソロは、どこかハードロック的。かと思うと、ブライアン・ジョーンズのスライドギターが良い味を出しているブルースナンバー「No Expectations」や、ミック・ジャガー(Vo)とキースのハーモニーが絶妙なカントリーナンバー「Dear Doctor」、アコギとスライドギター、ハーモニカの相性も抜群なブルース「Parachute Woman」など、とにかく全体的にブルーステイストに満ち溢れています。
かと思うと「Street Fighting Man」みたいなアンセミックな楽曲があったり、70年代のストーンズのプロトタイプ的な「Stray Cat Blues」や、序盤をキースがメインに歌う「Salt Of The Earth」といった印象的な楽曲が含まれていたりと、とにかく粒ぞろい。
全体を通して聴いたときの印象はどこか地味なんだけど、それはエレキよりもアコギの印象が強いからかもしれません。しかし、その味付けが功を奏し、60年代後半の不安定な世の中を表現しているように感じ取ることもできたりで。とにかくあの時代にもっともフィットした1枚かもしれません。
そして、60年代末から70年代へと続く狂騒への入り口となった、忌まわしき1枚とも言えるかもしれません。ストーンズがバンドとして一歩大人に近づいた、歴史的にも重要な作品です。
▼THE ROLLING STONES『BEGGARS BANQUET』
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