カテゴリー「1969年の作品」の12件の記事

2022年1月31日 (月)

THE BEATLES『THE BEATLES: GET BACK - THE ROOFTOP PERFORMANCE』(2022)

2022年1月28日からストリーミング配信がスタートした、THE BEATLESのライブアルバム。デジタルリリース、およびフィジカルリリースは今のところ予定なし。

本作は1969年1月30日、ロンドンのサヴィル・ロウにあるApple Corps Ltd.本社の屋上で行われた、THE BEATLESの事実上ラストライブの模様を完全収録したもの。昨年秋に公開されたドキュメンタリー映像作品『THE BEATLES: GET BACK』の中にも同シーンは登場しますが、その際にジャイルズ・マーティンとサム・オケルによって初めてステレオ&ドルビーアトモス・リミックスが施されています。

大勢の聴衆が集まってしまったことで警察が介入し、約40分で中断/終了したこの“ルーフトップ・コンサート”と呼ばれるラストライブ。ビートルズにとって人前でライブ演奏を披露するのは、1966年8月29日のサンフランシスコ公演以来2年5ヶ月ぶりのことでした。ここで演奏された全10曲(複数テイクがあるので、実質5曲+英国歌「God Save The Queen」のセッション)はすべてラストアルバムとなった『LET IT BE』(1970年)のセッションから生まれたものですが、スタジオテイクよりも生々しくドライブ感の強い演奏/パフォーマンスは「これぞ“ライブバンド・THE BEATLES”」と呼べるものばかりではないでしょうか。

オープニングを飾る「Get Back」からして重心の低い、うねるようなグルーヴを思う存分に堪能することができる。同曲はテイク3まで収録されていますが、個人的にはポール・マッカートニーのボーカルが冴え渡る一発目のテイクが一番良いかな。以降もジョン・レノン&ポール・マッカートニーのハモリが鳥肌モノの「Don't Let Me Down」や「One After 909」、ロックバンド然としたパフォーマンスの「I've Got A Feeling」「Dig A Pony」と、どれもアルバム音源以上の仕上がりです。

曲間のちょっとしたやりとりや音出しの様子、メンバーの掛け声などもそのまま残されており、ライブアルバムというよりはスタジオセッションの模様をそのまま残したような音源でもある。かつ、観客との距離があることから歓声も含まれていないことから、その生々しさと緊張感がダイレクトに伝わる。そうそう、こういうビートルズの演奏が聴きたかったのよ……と思ったファンも少なくないはずです。音の分離やミックスのバランスもちょうどいい塩梅で、とても53年前の音源とは思えないほどのクオリティですし。ピーター・ジャクソンがこのタイミングにあのドキュメンタリーを完成させていなかったら、この先も黙殺されていたかもしれない貴重な音源、本当にありがたいです。

CDやアナログ盤などフィジカルリリースも熱望されている本作ですが、おそらく映像版『THE BEATLES: GET BACK』のソフト化にあわせて改めて販売されるのではないでしょうか。そんな気がしてなりません(そもそもソフト化の可能性があるのかどうかも謎ですけど)。なので、今のところは気軽に楽しめるストリーミング版で飽きるまでリピートしてやろうと思います(いや飽きないと思いますが)。

 


▼THE BEATLES『THE BEATLES: GET BACK - THE ROOFTOP PERFORMANCE』
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2019年6月 8日 (土)

DAVID BOWIE『DAVID BOWIE (SPACE ODDITY)』(1969)

1969年11月にリリースされたデヴィッド・ボウイ通算2作目のオリジナルアルバム。本作、僕ら世代は髪がツンツンに立ったボウイの顔を捉えたジャケットに『SPACE ODDITY』というタイトルが付けられた1枚として馴染んできましたが、実は本来のタイトルは『DAVID BOWIE』と非常にシンプルなもの。ジャケットもカーリーヘアのボウイを収めたものでした。実は僕らが知る『SPACE ODDITY』というアルバムタイトル&ジャケットは1972年の再発時から続いていたもので、現在は本来のジャケット&ジャケットに戻っています。

この時期はグラムロック期前夜で、ボブ・ディランからの影響濃厚のフォーキーなスタイル。アコギを軸にしたアンサンブルは、時にフルートなどを用いることでのちのスタイルに通ずる耽美さを醸し出しています。

そんな中、オープニングを飾るヒットシングル「Space Oddity」(全英5位/1972年に全米15位、1975年には全英1位)ではサイケデリック/アシッド感満載のフォークロックに仕上げられています。まさに歌詞にある宇宙空間にひとり取り残された男のように、異空間での浮遊感と不安感が同時に押し寄せてくるこのアレンジ&サウンドは決してハッピーなものではないものの、何度も聴きたくなるようなフックがたくさん用意されたスルメものの1曲です。

また、「Wild Eyed Boy From Freecloud」はグラムロック期にもメドレー内で披露されており、耽美かつドラマチックなアレンジのスローナンバーはグラム期のそれともまた異なる(しかし、ボウイのそれとわかる)魅力を堪能することができるはずです。

「Letter To Hermione」や「An Occasional Dram」「God Knows I'm Good」などの内向的なフォークナンバーからは、ディランのみならずサイモン&ガーファンクルあたりからの影響も見え隠れする穏やかなノリで、ボウイの歌い方も時に力みゼロの脱力感で、また時に悲壮感漂うほど悲しげなもので、のちの彼から感じる爬虫類的(というか異星人のよう)な独特感は皆無。これもまたボウイなわけです。

個人的なクライマックスは、アナログ各面のエンディングを飾る「Cygnet Committee」と「Memory Of A Free Festival」の2曲。ともに9分半、7分強という大作ですが、すでに本作以降に展開されていくボウイ独自のスタイルが完成しているんじゃないか、と思わせるほどの内容なのです。歌詞のテーマ的にも個と社会という対比が感じられますし、次作『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』(1970年)以降の活動を考える上でも重要な2曲ではないかと思います。

ボウイビギナーが最初に聴くべき1枚ではないものの、初期の『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』が気に入った人なら確実に引っかかる、地味ながらもスルメな楽曲集ではないかと。最近、この時期の作品をやたらと聴きまくっているのですが、今の自分のモード的に非常にしっくりくるんですよね。

 


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2019年1月 8日 (火)

THE BEATLES『ABBEY ROAD』(1969)

1969年秋にリリースされた、THE BEATLES通算11枚目のスタジオアルバム(のちに公式作品化された『MAGICAL MYSTERY TOUR』を除くと10枚目)。発表は次の『LET IT BE』(1970年)のほうが後ですが、レコーディング自体は『LET IT BE』のセッション(“Get Back Sessions”)を経て行われているので、こちらが正真正銘のラストアルバムと言われていました(その後、新たに1970年の音源が見つかり、改めて『LET IT BE』がラスト作に)。当然ながらアメリカやイギリスではNo.1を獲得しており、特にアメリカでは現在までに1200万枚を超える最大のヒット作となっています(1968年発売の前作『THE BEATLES』は1900万枚を売り上げていますが、こちらは2枚組なので実質950万セットということになります)。

上記のように、“Get Back Sessions”で手応えを得られなかったビートルズは、「最後にしっかりしたアルバムを1枚作ろう」として今作の制作に臨みます。その気合いが、アルバム終盤のメドレー(特に「Golden Slumbers」からの流れ)に表れているように思います。といっても、これはポール・マッカートニー主導で制作されたようなものなので、絶賛しているのがポール自身というのがなんとも(笑)。ジョン・レノンは同メドレーが収められたアナログB面に関しては「雑多で好きじゃない」的な発言を残していましたしね。

じゃあ、アナログA面に当たるM-1「Come Together」からM-6「I Want You (She's So Heavy)」まではどうかといいますと……確かに良いんですよ。ジョン主導のダルなロック「Come Together」は言うまでもなく、続くジョージ・ハリスン作の「Something」といい、ポール渾身のボーカル楽しめるロッカバラード「Oh! Darling」といい、リンゴ・スターらしさがにじみ出たポップソング「Octopus's Garden」といい。そして、A面ラストを締めくくる8分近いヘヴィブルース「I Want You (She's So Heavy)」。後期ビートルズの良い部分が凝縮されているんですよね。

こんな充実しているんだもん、そりゃB面はね……と思いきや、実はB面も素晴らしいのですよ。いきなりジョージの名曲「Here Comes The Sun」から始まり、賛美歌のような美しさを感じさせる「Because」、終わりの始まりそのものな「You Never Give Me Your Money」、その後のメドレーへと良き橋渡しとなる「Sun King」などなど……思えば、B面って「Because」からすでに始まっているんですよね、壮大なメドレーが。特に「Sun King」から「The End」までは、1〜2分の楽曲で切れ目なくつながっているんですから。ジョンもある程度意図していたとはいえ、ポールが我が物顔で自画自賛するのに耐えられず、先の否定的発言につながったのかしら。もし今も生きていたら……いや、やめましょうか、たら・れば話は。

そんなこんなで、どうしても後半のメドレーに目が耳が行きがちですが、個人的にはこのアルバムは「ジョージ・ハリスンの才能が一気に爆発した1枚」と捉えています。すでに前作の時点でその兆候はあったわけですが、この作品の頃にはジョージのソングライティング力はジョンやポールに匹敵するレベルにまで到達していたわけですから。しかも最後の最後に。皮肉なものですね。

そういえば、去年はホワイト・アルバムのボックスセットが後半に発売されましたけど、本作も同様の形で復刻されるんですかね……気になるところです。



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2019年1月 7日 (月)

THE ROLLING STONES『LET IT BLEED』(1969)

1969年12月に海外でリリースされた、THE ROLLING STONES通算8枚目(イギリスにて/アメリカでは10枚目)のスタジオアルバム。前作『BEGGARS BANQUET』(1968年)でブルース/ロックンロールへと回帰した彼らが、その路線をさらに推し進めた傑作のひとつ。60年代後半の彼らを語る上で、『BEGGARS BANQUET』と併せて紹介されることの多い1枚です。

本作のレコーディング中に、オリジナルメンバーのブライアン・ジョーンズ(G)が脱退。代わりにミック・テイラーが加入し、「Country Honk」と「Live With Me」の2曲のみですが早くもその手腕を発揮しています。

本作の凄みは、ブルースやカントリーなどのルーツミュージックをベースにしつつも、「Gimme Shelter」や「Monkey Man」のようにサイケデリックでダークなナンバーや、約7分にもおよぶ(ライブでは10分を超えることも)プログレッシヴなブルースロック「Midnight Rambler」、ゴスペルをフィーチャーした壮大なバラード「You Can't Always Get What You Want」といった、その後のストーンズに必要不可欠な名曲を多数残していることでしょうか。そもそも、アルバムのオープニングが不穏な雰囲気の「Gimme Shelter」から始まるという時点で、本作が『BEGGARS BANQUET』と並んで名作と捉えられている理由がおわかりいただけるかと(前作はいきなり「Sympathy For The Devil」始まりですからね)。これも、ベトナム戦争などの影響で不安定だった当時の世相を反映させた結果なんでしょうね。

「Tonky Tonk Women」のカントリーバージョン「Country Honk」こそ牧歌的な曲調ですが、それ以外の楽曲からはいつも以上にシリアスな空気を感じる。「Live With Me」はまだしも、若干緩やかな雰囲気の「Let It Bleed」でさえ節々から殺伐としたものが見え隠れするんですから、どれだけ1969年って怖い時代だったんだよって話ですよ。自分もまだ生まれていなかったですし、その数年後に生を受けたとはいえリアルタイムでは当時のことは覚えてないですから。ここ日本は高度成長期末期だったとはいえ、まだまだ貧富の差も激しかったですし、それが戦争を行なっていたアメリカとなると……ミック・ジャガー(Vo)やキース・リチャーズ(G, Vo)の目にはどう映っていたんでしょうね。

加えて、本作制作中にはブライアンの急逝(7月3日)もあり、こういった不幸もアルバムのダークさに拍車をかけたはず。そういった意味では、ダークでネガティヴだった60年代末に自身でけじめをつけた、そんな区切りの1枚だったのかもしれません。

それにしても、本当に名曲揃いの1枚で捨て曲皆無。キースが初めて全編リードボーカルを担当した「You Got The Silver」もあるし、ロバート・ジョンソンのカバー「Love In Vain」もある。後者はライブバージョンのほうが優れていますが、このスタジオバージョンも悪くない。また、キースが全面的にギターを担当しているという点においても、本作は注目すべき1枚ではないでしょうか。

ここまでで一度ダークさを振り切り、ミック・テイラーを加えたストーンズは続く『STICKY FINGERS』(1971年)で正真正銘の再生を遂げることになります。



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2018年8月21日 (火)

THE ROLLING STONES『THROUGH THE PAST, DARKLY (BIG HITS VOL.2)』(1969)

昨日の「Jumpin' Jack Flash」つながりで引っ張り出したのが、このアルバム。高校生の頃、これと『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』(1966年)を同時購入し、初期のTHE ROLLING STONESをひたすら勉強しまくったのも、今となっては懐かしい思い出です。

本作は1969年9月に英米でリリースされた、通算2枚目のベストアルバム。タイトルからもわかるように、『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』に続く第2弾ということで、ヒットシングルの数々がセレクトされています。

実はこのアルバム、英米同時リリースながらもそれぞれ選曲が異なるんですよね。60年代はTHE BEATLES同様、国ごとにオリジナルアルバムの選曲が少しずつ異なったり、本国では発売されていないアメリカ制作のアルバムがあったりと、いろいろ複雑なんですよね。

で、僕が購入したのは「Jumpin' Jack Flash」から始まるイギリス版の選曲のほう(『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』はもともとアメリカ制作だったのですが、のちに異なる選曲のイギリス版も発売。こちらも僕が購入したのはイギリス版選曲のほうです)。

イギリス版のほうは選曲が非常に興味深く、基本的には1967〜69年のサイケデリック期の楽曲が中心。「2000 Light Years From Home」や「We Love You」「She's A Rainbow」「Dandelion」といった楽曲はこの当時ならではといえるもので、そこに初期の「You Better Move On」やフォーキーな「Sittin' On A Fence」、サイケデリック期と南部ロック期の間にある「Street Fighting Man」、70年代ストーンズの兆しが見え始めた「Honky Tonk Women」が入り乱れてと、バンドとしての過渡期ぶりが凝縮されているんですよね。

このへんのどっちつかずな感じもストーンズらしいと思うし、こんななんだからそりゃあ70年代後半以降のディスコやらダブやら、あらぬ方向に進んでしまうのも致し方ないのかなと。ストーンズを80年代半ばから聴き始めた後追い世代としてはそう思うわけです。

ちなみに、「Paint It Black」から始まるアメリカ版のほうも後から聴いてみたのですが、やっぱりしっくり来ないんですよね。もうね、「Jumpin' Jack Flash」のあとに「Mother's Little Helper」が来る流れがする込まれてしまっているので。こればかりはどうにもなりません。

今でこそCD複数枚でキャリアを総括するベストアルバムは当たり前ですけど、アナログ盤ならではの曲数(12曲程度で40分前後)は手軽に聴けて、しかもリピートしやすいので“ながら聴き”には最適。いやあ、良質なベストアルバムですよこれは。



▼THE ROLLING STONES『THROUGH THE PAST, DARKLY (BIG HITS VOL.2)』
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2017年12月 1日 (金)

LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN II』(1969)

1969年1月にアルバム『LED ZEPPELIN』でデビューを果たしたLED ZEPPELINが、同年10月に早くも発表した2ndアルバム。前作は全英6位、全米7位止まりでしたが、続く本作でついに英米で1位を獲得。シングルカットされた「Whole Lotta Love」も全米4位を記録、カップリングの「Living Loving Maid (She's Just A Woman)」までもが全米65位まで上昇し、現在までにアメリカのみで1200万枚以上を売り上げた、まさしく大ヒット作となりました。

ビギナーからの「ツェッペリンでまず最初に聴くならどのアルバム?」という質問は、コアなロックファンになればなるほどよくされたのではないでしょうか。そしてその際に多くの人が、必ず「2ndか4枚目」という無難な答えをしていたはずです。事実、僕自身も最初に聴いたツェッペリンのアルバムは本作でしたから(当時レンタル店に2ndと4th、ライブ盤しかCDを置いておらず、2nd以外はレンタル中だったのでこれを借りたのでした)。

ブルースを基盤にしたハードロックという点においては前作のほうが初期衝動性が高いのかもしれませんが、続く本作ではその衝動をより高い完成度にまで昇華させた、一寸の隙もない完全無敵のハードロックアルバムに仕上がっています。1曲目の「Whole Lotta Love」から、冒頭のジミー・ペイジによるギターリフとロバート・プラントによるパワフルなボーカルが冴えまくり、中盤のサイケデリックなインストパートと続くギターソロでのタイトなドラミングを聴けばいかにジョン・ボーナムというドラマーが素晴らしいかを理解できるはずです。

さらに「What Is And What Should Never Be」や「The Lemon Song」での強弱を生かしたドライブ感あふれるジョン・ポール・ジョーンズのベースプレイ、「Thank You」での彼のオルガンプレイなど、本当に聴きどころが多い1枚です。

アルバム後半もロック界屈指の名ギターリフを含む「Heartbreaker」や、本作中もっともポップな「Living Loving Maid (She's Just A Woman)」、アコースティックギターを使ってうまく強弱を表現した「Ramble On」、ギターとドラムのためにあると言っても過言ではないインスト「Moby Dick」、プログレッシヴなブルースロック「Bring It On Home」と、とにかく捨て曲なし。全体的に前作以上にキャッチーでメジャー感が強まっているのは、当時ノリノリでイケイケだったバンドの状態を表しているかのようですね。

……ん、誰ですか、ブルースの名曲からパクりまくりじゃん!とか言ってるのは? それ間違ってないけど謹んでください! 確かに既存のブルースナンバーからの引用が多いのがツェッペリンの(良くも悪くも)個性ではあるのですが、それも「サンプリング文化のはしり」と考えれば納得……でき……いや、なんでもないです。

冗談はさておき。初めてこのアルバムと出会ってから今年で30年。す聴き飽きてしばらく距離を置いていた時期もありますが、こうやって久しぶりに引っ張り出して聴くと、やっぱり良いなと思える。いろいろ言われながらも、やっぱりロックやHR/HMにとってひとつのお手本となるアルバムなんですよね。



▼LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN II』
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2017年6月18日 (日)

LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN』(1969)

1969年初頭にリリースされた、LED ZEPPELINの記念すべき1stアルバム。当時は全英6位、全米7位と1位こそ獲っていないものの、今日までに全米だけでも800万枚を超える売り上げを記録。デビュー作としては申し分のないヒット作になったと思いますし、本作のこの成功があったからこそ続く2ndアルバムから快進撃が始まるわけですからね。

私自身がツェッペリンを聴き始めたのが高校1年の頃。最初は2枚目、続いて4枚目というありがちなコースをたどったわけですが、その次が実は……3rdなんです(笑)。そっちに行っちゃったか〜って感じかもしれませんが、当時地元のレンタル店に2枚目〜4枚目とライブ盤しかなかったもので。

しかし、1988年にツェッペリンのアルバムが廉価版として再発。2000円以下で手軽に手に入るということで、まず最初に購入したのがこの1stアルバムだったのです。以降、高校生の小遣いで少しずつ、リリース順に買い集めていくのですが、途中でなぜか全作品をアナログ盤でいただくというハプニングが。結局高校生の間に全アルバムを制覇することができたわけです。

1stアルバムの印象というと、やはり1曲目「Good Times Bad Times」イントロの、「ダン、ダン!」というインパクトの強いジョン・ボーナム(Dr)のドラムなわけですが、初めて聴いたときはそこまで衝撃を受けることなく(苦笑)。むしろ「Communication Breakdown」みたいな速い曲にばかり目が(耳が)行ってしまったという。そりゃあ2ndと比べたら、1曲目のインパクトは弱いかもしれませんが、今となっては本作のカッコ良さ、嫌というほどに理解できます。

「Good Times Bad Times」のインパクトもさることながら、つづく2曲目「Babe I'm Gonna Leave You」のドラマチックさも完璧。続くブルースナンバー2連発「You Shook Me」「Dazed And Confused」(ここまで4曲中3曲がカバーという)でこのバンドの真髄をじっくり味わい、B面はもうちょっとバラエティに富んだ楽曲群を味わう。どことなくゴスペルチックな「Your Time Is Gonna Gome」、インスト「Black Mountain Side」、ファストチューン「Communication Breakdown」ときて、再度ブルースカバー「I Can't Quit You Baby」「How Many More Times」で締めくくる。カバー曲ですら自分たちのオリジナル曲みたいに仕上げてしまう独自のアレンジ力。ジミー・ペイジ(G)、恐るべし。

アレンジャー、プロデューサーとしての才能はもちろんのこと、本作でのギタープレイもなかなかのもの。ボンゾのリードドラム(笑)に引っ張られるように、決してテクニカルではないものの弾きまくるギター。その上で女性の喘ぎ声のごとくハイトーンボイスで歌いまくるロバート・プラント(Vo)。グルーヴ感の強いベースラインでリードドラムを支え、時にキーボードプレイも披露するマルチプレイヤーのジョン・ポール・ジョーンズ(B, Key)と、この時点ですでに才能溢れまくりな面々が揃ったことが伺えるわけです。

1st派か2nd派かでときどき意見が分かれることがありますが、自分の場合は基本的には2nd派なんですが(インパクトの強さで)、僅差で1stも好きだからどっちが優れてるなんて言えない(ただ、もっとも好きなのは『PRESENCE』なんですが)。ただ、今このタイミングでは1st派かもしれません(笑)。だって、本当に素晴らしいデビューアルバムなんだもの。改めて聴き入ってしまいましたよ。

……と、今回も思い出話でお茶を濁してしまい、申し訳ありません。なお、2014年発売のデラックス・エディションについては、後日改めて取り上げたいと思います。



▼LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN』
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2004年11月22日 (月)

とみぃ洋楽100番勝負(96)

●第96回:「21st Century Schizoid Man」 KING CRIMSON ('69)

 そりゃやはり、「とみぃの宮殿」というサイト名の元ネタなだけに、この曲を外すことはできないですよね。実際、このアルバム・この曲との出会いがなかったら、俺はプログレというジャンルに(一時的とはいえ)のめり込むこともなかったでしょうからね。

 中学の頃かな‥‥このジャケットと出会ったのは。当時のレンタル店に飾ってあって。インパクトだけでいったら間違いなくナンバーワンだもんね、これを店頭に飾るってことは。で、それに勝るとも劣らないサウンド。2004年の今聴いても、全然色褪せてない。むしろ今聴くとそのヘヴィな世界観やサウンドに圧倒されるんだけどね。これがもう35年も前のものなのか‥‥そう考えるとゾッとするね。俺だってまだ生まれてなかったんだから。

 プログレと呼ばれるジャンルの中で唯一、全アルバムを揃えた経験があるのは、後にも先にもCRIMSONだけ。ライヴにしても同様。高い金だして廃盤になってるボックスセットの中古盤に大枚はたいたり、既に持ってるアルバムなのに紙ジャケが出れば思わず手を出してしまったり、挙げ句の果てにアナログ盤まで買い揃える始末。正直、この「クリムゾン・キングの宮殿」だけで3枚は持ってるからね、俺。もう、ただのアホだよね。うん、俺もそう思うもん。

 自分の留学先であったイギリス・ボーンマスがロバート・フリップの故郷であると知った時の嬉しさといったら‥‥どう表現していいもんか。思わず奇声上げちゃったからね、マジで。そんくらい好きってことですよ。ま、だからといって仲良くなりたいとは思わないけど(滅茶苦茶偏屈そうだしね)。それに‥‥あのプレイが自分にとって、決して究極とはいえないしね。飛び道具ですよやはり。

 だけど‥‥だからこそ憧れるんだよね。永遠の憧れ。あそこには近づけないし、近づきたくもない。遠くから眺めてるだけ。だからこそいいんだよ、あれは‥‥あんな世界、本気で入り込んでしまったら、それこそ「21世紀の精神異常者」になっちゃいますからね(やっぱりこの曲の邦題は、誰が何と言おうと「精神異常者」の方がピッタリですよ)。だから今日も俺は、音源集めまでで踏みとどまるわけです。



▼KING CRIMSON「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」(amazon

2004年11月 7日 (日)

とみぃ洋楽100番勝負(81)

●第81回:「Here Comes The Sun」 THE BEATLES ('69)

 凄くアホっぽい話かもしれないけど、俺は専門学校にBEATLESで入学して、BEATLESで卒業したようなもんなのね、マジな話。

 入学の推薦試験での面接で、如何に自分がBEATLESを、そしてジョン・レノンを愛してるかを力説した時に、面接官に「何か歌える?」みたいに挑発されて思わず歌った "Imagine"(丁度'91年の湾岸戦争時)といい、卒業の課題で弾き語りをした "Here Comes The Sun" といい‥‥全部繋がってるんだよね、この頃の俺にとって。

 勿論 "Here Comes The Sun" はジョンの曲ではなくて、ジョージ・ハリスンがBEATLESの事実上最後の録音作品集となった「ABBEY ROAD」の中に残した1曲。この曲は'91年の秋にジョージが来日して東京ドームでやったライヴでも演奏されてて、そこで触れて「畜生、なんていい曲なんだよ!」って驚いた1曲。この頃、まだ「ABBEY ROAD」って聴いてなかったんだよ。んで、すぐにアルバム買って聴いて‥‥

 ジョージは決して目立った存在じゃなかったし、ソングライターとしても遅咲きだったんだよね。中期以降、どんどんと個性・実力をつけていって、「ホワイト・アルバム」前後で開花して、最後の最後に "Somethings" と "Here Comes The Sun" という名曲を残すんだから‥‥個人的にはアルバム後半のメドレーやジョンの楽曲も(勿論ポールのもね)素晴らしいと思うんだけど、やはりジョージの曲があるとないとでは大きな違いだな、と。それくらいジョージの個性ありきの1枚だと力説したい。

 卒業も決まって、1月から暇を持て余してた俺は、まぁ既にバイトしてたんだけど(就職しないでバンドで食ってくって決めてたからね)、冬期講座をわざわざ取ってさ。その中に「BEATLESで学ぶ英語講座」みたいな講義があって。毎回彼等の曲を1〜2曲取り上げて、それを解釈しながらリリース当時の歴史やBEATLESのことを学んでいき、最後に外人講師のギターに合わせてみんなでその歌をうたう‥‥そういう講義。面白いでしょ?

 で、最後の課題で「好きな曲を、好きな形で歌ってください」というのがあって。俺が選んだのがこの曲だったと。丁度バンドのレコーディング時期と重なっててさ。早朝からバイト、午後遅くに講義、夜から深夜までレコーディングみたいな生活が半月くらい続いたけど、本当に思い出深い1曲になったな、と。

 だからこそ‥‥ジョージの死には相当なショックを受けましたよ。丁度今頃だよね‥‥もう3年近く経つのかな‥‥久し振りにアコギを引っ張り出して、弾き語ってみようかしら‥‥



▼THE BEATLES「ABBEY ROAD」(amazon

2004年9月21日 (火)

とみぃ洋楽100番勝負(33)

●第33回:「Whole Lotta Love」 LED ZEPPELIN ('69)

 中学〜高校の頃、よく「FM STATION」とか「FM FAN」を買ってたんですよ。今の若い子は知らないだろうけど、所謂FMラジオの番組表雑誌なんですよ。ここに「どの番組では何が流れる」といった具合に放送曲目が載ってるわけね。エアチェック族としては必需品だったわけ。

 で、幼い頃はこれらの雑誌の音楽特集記事からいろいろ勉強したわけですよ。「名盤100選」みたいな企画が、必ず年に1度はあるわけでして。

 確か高校に入った頃に「洋楽歴史的名盤100選」みたいな企画で挙げられていたのが、DEEP PURPLE「MACHINE HEAD」とLED ZEPPELIN「II」だったんだよね。共に名前は知ってたものの、実は中学時代は全然通過してなくて(いや、嘘。DEEP PURPLEは "Smoke On The Water" 知ってたし、雑誌「BURRN!」のラジオCMで必ず流れる "Burn" のリフとサビも耳にしてたし、何より再結成パープルの「PERFECT STRANGERS」はレンタルで借りて聴いてたしね。でも夢中にはならなかったって意味で、通過してません)‥‥で、思い切って借りたわけですよ。

 最初に「MACHINE HEAD」を聴いて、おー "Highway Star" はかっけーなぁ、とか、"Lazy" のスリリングな演奏がめちゃめちゃイカすなー、とか思ってたわけですよ。あーパープルって意外にカッコいいんだ、とRAINBOW派の俺も素直にそう感じたんですね。

 ところが‥‥ZEPのCDをトレイに落とし、プレイボタンを押した後‥‥ものの数分でやられちゃったわけ。判るでしょ、この "Whole Lotta Love" 1曲のインパクト‥‥

 自分が音楽を「作る」上で、その原点となってるのは間違いなくBEATLESとZEPなのね。高校時代の俺にとって、確かにZEPは「最高のハードロックバンド」だったんだけど、今では全然そんな認識ないからね。普通に頭のイカれたミクスチャーロックバンド、くらいの認識ですよ。

 とにかく。ZEPは "Stairway To Heaven" や "Rock And Roll" から入るんじゃなくて、このセカンドから入っていくのが正しい道だと思います。そこからファースト、そして4枚目に行けばいいんじゃないの?



▼LED ZEPPELIN「II」(amazon

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