MOUNTAIN『CLIMBING!』(1970)
1970年3月にリリースされたMOUNTAINの1stアルバム。
MOUNTAINはレスリー・ウェスト(Vo, G)、CREAMのプロデューサーとして知られるフェリックス・パパラルディ(Vo, B)、N.D.スマート(Dr)、スティーヴ・ナイト(Key)の4人で結成されたアメリカのハードロックバンド。もともとはレスリーのソロアルバム『MOUNTAIN』(1969年)にフェリックスとN.D.が参加したことを機に活動がスタートしたもので、バンドとして動き出した直後にドラマーがコーキー・レイングに交代し、このデビューアルバムが制作されることになります。
MOUNTAINというと、本作にも収録されシングルヒットした「Mississippi Queen」しか知らないというリスナーも少なくないのでは。かくいう私もこれ1曲しか聴いたことがなかったし、アルバムも特に手を伸ばしてこなかったので、レスリーが亡くなったと知ったこのタイミングに「せめてオリジナルアルバム1枚くらいは……」と思い、この代表曲を含むデビューアルバムを聴くことにしました。
まず、バンドメンバーのクレジットからもわかるように、「Mississippi Queen」を歌うレスリーのみがリードシンガーかと思えば、9曲中3曲がレスリーのリードVo曲で1曲がインスト、それ以外は2曲がフェリックスのリードVo曲で、残り3曲がレスリー&フェリックスのツインVo曲という。アルバムを通して聴いてみるとこのフェリックスのでしゃばりが、良くも悪くもバンドの個性を弱めているような印象を受けました。だって、「Mississippi Queen」や「Never In My Life」で聴けるレスリーのパワフルなボーカルは唯一無二のものであり、ほかの何者にも代えがたい存在だと思いますし、それを差し置いて自分も歌おうと思ったフェリックスという人間の神経がちょっと信じがたいところがあるんですよ。
もちろん、複数のシンガーが存在することで多彩さを見せることはできると思うし、タイミング的には「CREAMに対するアメリカからの回答」と受け取ることもできる。でも、このバンドはCREAMというよりも自国のジミ・ヘンドリクスに対する回答だったんじゃないかなと。だからこそ、レスリーという稀有なシンガー&ギタリストの存在感をもっと前に出すべきだったんと思うんです。勿体ないなあ。
なんてことを書いておりますが、アルバム自体は非常に楽しめました。この時代ならではの空気感が伝わってくる音像やプレイスタイルは言わずもがな、なによりもメロディが非常にわかりやすい。個人的にはGRAND FUNKよりも好みかもしれません。
ちなみに、フェリックスが歌う「Theme For An Imaginary Western」は彼自身がプロデュースを手がけたCREAMの、ジャック・ブルースがソロアルバム『SONG FOR A TAILOR』(1969年)のために書いた曲のカバー。このアルバムもフェリックスがプロデュースを担当しているので、まあ……あれですね、一丁噛みが過ぎると言いますか(苦笑)。
このまま別のアルバムも聴き進めるかどうかは……余裕ができたらにしたいと思います(笑)。あ、せっかくなので本作の前に出たレスリーのソロアルバムを先に聴いてみようかな?
▼MOUNTAIN『CLIMBING!』
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