2017/09/03

BLACK SABBATH『BLACK SABBATH』(1970)

DEEP PURPLEが『IN ROCK』でハードロック化計画に突入するちょっと前、1970年2月13日(金)……そう、“13日の金曜日”にリリースされたのが、オジー・オズボーンが在籍するハードロックバンドBLACK SABBATHのデビューアルバム。『黒い安息日』と邦題が付けられた本作でシーンに現れた彼らは、パープルやLED ZEPPELINとともに70年代以降のHR/HMにとって礎的存在としてリスペクトされ続けています。特にサバスの場合、HR/HMシーンのみならず90年代に登場したグランジバンド(NIRVANASOUNDGARDEN、MELVINS、ALICE IN CHAINSなど)からもリスペクトされた、数少ないハードロックバンドのひとつです。

サバスというと「Paranoid」や「Iron Man」などキャッチーな曲がパブリックイメージとしてあったり、「Paranoid」「War Pigs」など名曲目白押しの2ndアルバム『PARANOID』(1970年)を名盤として挙げがちですが、この1stアルバムだってそれに負けないくらい強力な魅力が詰め込まれているわけです。まあ言ってしまえば、サバスは1stから3rdアルバム『MASTER OF REALITY』(1971年)までは本当にハズレなしなので、どれが一番かはその人の好みによって変わってくると思います。

で、このアルバム。オープニングの「Black Sabbath」のダウナーさ加減にまずは驚かされるわけですが、今やドゥームメタルやストーナーロックなどさらにダークでヘヴィでスローなメタルが多い時代なのでちょっとやそっとでは驚きません。ただ、この曲を初めて高校時代に聴いたときは、さすがに衝撃が走ったことを今でもよく覚えています。80年代育ちの僕らの世代にとって、オジーといえばあのキャラクターありきで、しかも曲調はもっとソフトでメロディアスなハードロックという印象。ライブでは「Paranoid」や「Iron Man」はやるけど、さすがにこういったダウナーな曲は当時やってませんでしたしね(サバス曲を掘り始めるのはザック・ワイルド加入以降のことですから)。

かと思えばブルースハープをフィーチャーしたブルージーな「The Wizard」、独特のグルーヴ感を持つ「Behind The Wall Of Sleep」、キャッチーなメロディの「N.I.B.」と、アナログでいうA面だけですでにおなかいっぱい状態。カバー曲の「Evil Woman」はさておき、不穏でもの哀しげな序盤からハードに展開する「Sleeping Village」、10分超の大作「Warning」、ジャズからの影響すら感じられるスリリングな「Wicked World」と、とにかく聴きどころの多い1枚となっています。

すでに1stアルバムの時点でこのバンドのスタイルが完璧に出来上がっているのが恐ろしいというか。あとはその個性をどうソリッドに研ぎ澄ますか。それが次作、次々作で完璧なまでに表現されてしまうのですから、ドラックの力ってすごいですね(たぶん間違ってると思う)。



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投稿: 2017 09 03 12:00 午前 [1970年の作品, Black Sabbath, Ozzy Osbourne] | 固定リンク

2017/09/02

DEEP PURPLE『DEEP PURPLE IN ROCK』(1970)

DEEP PURPLEが1970年に発表した4枚目のスタジオアルバム。当時の編成はイアン・ギラン(Vo)、リッチー・ブラックモア(G)、ジョン・ロード(Key)、ロジャー・グローヴァー(B)、イアン・ペイス(Dr)の第2期と呼ばれる5人で、ギラン&グローヴァー加入後初のスタジオアルバムとなります。

それ以前のパープルは「Hush」のシングルヒット(アメリカのみ)があったものの、アルバムはからっきし売れず(特にイギリスではチャートインせず)という状態。そんな中、LED ZEPPELINが独自のハードロックサウンドで世界的に大ヒット。ここからヒントを得たリッチーが「これだ!」と言わんばかりに、それまでのオルガン中心の音作りからギターを軸にした豪快なハードロックへと移行した……という話です。

実際、オープニングの「Speed King」からギターが爆発せんばかりのワイルドぶりを見せています。ジミー・ペイジというよりもジミヘンからの影響が強いんでしょうかね。特にソロパートではギターとオルガンが即興バトルを繰り広げる感じは、確かにツェッペリン以上かもしれません。

さらに、新加入のギランのボーカルもこのバンドのハードロック化に一役買っています。ロバート・プラントのようなハイトーンとは異なるタイプではあるものの、ヒステリックなシャウトなどは後続たちに大きな影響を与えたことは間違いなし。特に「Child In Time」での強弱の付け方は、ツェッペリンの長尺曲のそれとは違った魅力が感じられる、本作におけるハイライトと言えるでしょう。

パープルというと「Highway Star」や「Smoke On The Water」が収められた『MACHINE HEAD』(1972年)のほうが名盤に選ばれがちですし、実際「パープルで最初に聴いたアルバムは『MACHINE HEAD』」という人も多いでしょう。事実、筆者もそうでしたし(当時『PERFECT STRANGERS』で再結成した頃でしたが、新作よりも先に『MACHINE HEAD』を聴きました)。しかし、『MACHINE HEAD』は“パープルHR化”から3作目にしてたどり着いたひとつの終着点。あわせてこの『IN ROCK』も楽しむと、より第2期パープルのことを深く知れると思いますよ。



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投稿: 2017 09 02 12:00 午前 [1970年の作品, Deep Purple] | 固定リンク

2017/06/16

FREE『FIRE AND WATER』(1970)

FREEのスタジオアルバムでもっともヒットしがのが、1970年6月に発売された通算3枚目のスタジオアルバム『FIRE AND WATER』です。実は彼ら、我々が思っている以上に実働期間が短く、1969年にデビューして1971年には一度解散。1972年に再結成するものの、翌1973年には再度解散しているのです。

1969年に発表された2枚のスタジオ作『TONS OF SOBS』『FREE』も決して悪くはないのですが、やはり『FIRE AND WATER』には「All Right Now」という大ヒットシングル(全英2位、全米4位)が含まれていることもあり、アルバム自体も全英2位、全米17位という出世作につながったと言えます。

考えてみたら、たった7曲しか入っていない35分程度のアルバムなのですが、その中身はかなり濃密。ポール・ロジャース(Vo)の歌声も脂が乗った状態で艶やかだし、ポール・コゾフ(G)のギターソロも非常にセクシー。アンディ・フレイザー(B)のベースラインは無駄に動き回るし、サイモン・カーク(Dr)のドラミングは大きな特徴があるわけじゃないけど妙にしっくりくるし。4人の個性は本当にバラバラなのですが、そのすべてが良い方向に噛み合った奇跡的な1枚ではないでしょうか。

前半4曲(アナログA面)の気だるさは若い頃に聴いたときは退屈に聴こえたのに、今はなぜかグッとくるものがある。で、B面(5曲目以降)のその気だるさは引き続きなんですが、「Mr. Big」後半のインタープレイはいつ聴いてもカッコ良いし、最後はポップでキャッチーな(本作中唯一陽気な)「All Right Now」で締めくくる。最後だけ取って付けた感がなきにしもあらずですが、まぁこの時代のアルバムってこういうものなんじゃないの?という一言でここは済ませたいと思います。

個人的ベストソングは、オープニングからどっしり構えた「Fire And Water」と、ピアノとポール・ロジャースのセクシーな歌声の相性抜群な「Heavy Load」、そして(バンドのほうの)MR. BIGのカバーよりやっぱり原曲のほうが最高でしょ!ってことで「Mr. Big」。もちろんそれ以外の楽曲もすべて良し。「Oh I Wept」も「Remember」も良いしね。

人によっては「FREEはライブ盤『FREE LIVE!』とベスト盤を聴いておけばOK!」と言うかもしれませんが、ここはあえて本作を真っ先にオススメしておきたいと思います。



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投稿: 2017 06 16 12:00 午前 [1970年の作品, Free] | 固定リンク

2004/11/24

とみぃ洋楽100番勝負(98)

●第98回:「Maybe I'm Amazed」 PAUL McCARTNEY ('70)

 俺にとってのポール・マッカートニーとは、"Yesterday" でも "HeyJude" でも "Let It Be" でもない。このソロ1作目「McCARTNEY」に収録された、"Maybe I'm Amazed" なのね。この曲と出会ってなかったら、多分俺はポールのことを一生「ポップスター」的視点で見続けてたかもしれない‥‥それくらい俺にとってこの曲は衝撃であって、その後の自分の考え方を変えてしまった1曲なわけ。

 この転調を繰り返すアレンジといい、ポールのシャウトを通り越したシャウトといい、今聴いてもホントに鳥肌が立つ。初めて聴いたのは‥‥高校を卒業した後くらいかな‥‥ポールの初来日があって、その後に2枚組のライヴ盤が出て。そこにライヴテイクが収録されててさ。なんかスッゲー無理してシャウトしてんなぁ、とか、もの凄い劇的に盛り上げるなぁ、とか、転調凄いなぁ、とか。いろいろ感じながらもその時はそこまでピンとこなくて。

 ところが。それから3年後。自分が初めてポールを生で体験する日が訪れて。その頃からかな、過去のオリジナル・アルバムにも手を出し始めて。そこで最初にソロ1枚目「McCARTNEY」を買って‥‥スタジオテイクのこの曲に思いっきり鳥肌立てて。何だったんだ、あれは?

 自分が音楽をやる時、曲を書く時。アレンジの手本にするのはLED ZEPPELINであり、アティチュードの手本にするのはジョン・レノンなんだけど、歌詞やメロディの手本にする‥‥いや‥‥そうしたい、そうでありたいといつも思っているのは、このポールなんだよね。確かにアルバム/楽曲、駄作も多いポールだけど、一時の多作振りを考えると、まぁそれも許せるかな‥‥とにかく中にあるもの、出て来たものを全部世にぶちまけない質なのかもしれないね、ポールって人は。そういう面では非常に共感する点が多いんだけど。

 だって‥‥こうやって俺も、アホ程文章書いて、まとめてアップしてるわけだからさ!



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投稿: 2004 11 24 12:03 午前 [1970年の作品, Paul McCartney, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/23

とみぃ洋楽100番勝負(97)

●第97回:「Mother」 JOHN LENNON ('70)

 男なんて、多かれ少なかれ皆マザコンの気を持ってる。それはどんなに偉い奴だろうが、貧しい奴だろうが、自分の母親を大切に思わない男なんていないってことだよ。女性が父親に対して感じる愛情とは、また違った形の愛情なんだろうなぁ‥‥いや、俺は女性になったことないから、正直その違いはハッキリとは判らないけど。

 ジョン・レノンの、母親に対する愛情や想いというのは、ファンのみならず、ちょっとした洋楽ファンならご存知でしょう。そのジョンがBEATLES解散後に発表した、最初のアルバムの1曲目に収録されたのが、この "Mother" という赤裸々な叫び。本当の意味での「魂の叫び」なんですね、これ‥‥だから邦題の「ジョンの魂」というタイトルは、実は凄いピッタリなんですよ。勿論これ以外の曲に対しても言えることなんですが。

 あまりにストレート過ぎて、当時のBEATLESファンの中にはついていけなかった人もいたそうですが、BEATLES後しかしらない、BEATLESがいた時代をリアルタイムで知らない俺等からすれば、これ以降のジョンこそが我々がよく知るジョン・レノンなんですよね。そして、そんなジョン・レノンに俺は惹かれたわけなんですよ。

  俺はジョン・レノンにはなれないし、なりたいとも思わない。だけど、この曲から感じられる愛だったり喪失感だったり‥‥そういった感情は共感できるし、むしろしたいと思う。それは俺が男だからかもしれないけど。



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投稿: 2004 11 23 12:06 午前 [1970年の作品, John Lennon, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/09/21

THE BEATLES『LET IT BE』(1970)

最初に取り上げるビートルズのアルバムがラストアルバムとなった『LET IT BE』というひねくれ具合が如何にもうちらしいといえばうちらしいのかなぁ、と。まぁ切っ掛けはこの『LET IT BE』がオリジナルバージョンで蘇るというニュースだったりするわけですが。ファンの間では有名なこのエピソード、その「フィル・スペクター」バージョンの方を今回紹介したいと思います。

つうかさ、高校生の頃からポール・マッカートニーの2度目の来日公演(93年秋)まで日本のファンクラブ(当時は「ビートルズ・シネクラブ」)に入ってたような人間からすれば、彼等の作品で嫌いなアルバムなんてないわけですよ。つうか愚問だってば。ま、そりゃ多少「好き」の度合いや思い入れの違いは生じますけど、概ねどれも10代~20代前半に聴き込んだものばかり。だからここ数年は意識してアルバムを聴き返すというようなことはしてなかったんですよ。『1』も未だに買ってないしね。

というわけで、このアルバム。細かい説明は要らないですよね? そういうの、もっと詳しいファンサイトが沢山あるわけだし、俺よりも知識豊富な人は沢山いるだろうから、俺はちょっと違った書き方をするとしますか。

つうかね‥‥改めてビートルズについて語るのって、何か気恥ずかしいというか‥‥難しいんですわ。ROLLING STONESやAEROSMITHについて書く方がどんなに気が楽か(ま、その割りに全然書こうって気にならないわけですが)。ビートルズについて何か書いてる文章って、どこか気難しそうなのが多いじゃないですか(俺の思い込みかもしれないけど)。だからね、ちょっと変なことでも書こうもんなら吊し上げられそうな気がしてね‥‥被害妄想ですかね? だから敢えて書かない、というのと、何か書きたいという意欲が湧かなかったというのが正直なところでして。

で、何で今になって書いてみようかと思ったのか‥‥勢いってのもありますが、まぁ切っ掛けは上に書いた通り。今なら何か書けるかな、と。で、さっきからずっとアルバムを大音量でリピートしてる最中なんですよ。

あれですよね、このアルバムって要するに時代を先取りした「リミックス盤」なわけですよね。けどそのオリジナルバージョンより先に発表されてしまったという。まぁリミックスという言い方が気に入らないなら「再構築盤」とでもいいましょうか。ライヴ録音に近い音源(中にはまんまライヴ録音もあるわけですが)を完全に他人(それまでの作品作りに携わってこなかった赤の他人)任せで仕上げてしまうという。ミュージシャン本人の想定していたモノとは全く別物が出来上がる可能性が非常に高い、いわば博打仕事ですよね。けど、あの時期(末期)の彼等にはそうせざるを得ない事情があった、と。歴史ってやつは本当に面白い。時にミラクルを起こし、時に残酷であったり。

やっぱり俺にとって「Let It Be」や「The Long And Winding Road」っていうと、このバージョンなんですよね(まぁ「Let It Be」はシングルバージョンもあるわけですが)。ポールが気に入ってなかろうが、俺にとっての、ビートルズの「Let It Be」や「The Long And Winding Road」はこの『LET IT BE』というアルバムに収録されたバージョンなわけですよ。

そういった要素もありつつ、非常に生々しくてダウナーなロックンロールを聴かせてくれるのもこのアルバム。これがバンド末期の悪状況が生んだ産物なのだとしたら、個人的にはこの路線でもうちょっと他の音源を聴いてみたいな。これ以前の数作が非常に作り込まれた作品集であったりメンバー個々の色が濃く現れた楽曲だったりしたのに対して、ここでは痛々しいまでに「バンドとしてのビートルズ」に拘ってるんですよ。で、普通のバンドだったらそれが聴くに耐えないような代物になるはずなのに、やっぱりこの人達は普通じゃなかった。ジョン・レノンとポールのコラボレート(とはいいながらも、どの楽曲も殆どがジョン/ポール単独で書かれたものですが)といい、最後の最後までメキメキと成長し続けたジョージ・ハリスンといい。リンゴ・スターの色が薄いのは、「バンドの一員」としてドラムに徹した結果でしょう。脇を固めるキーボードのビリー・プレストン(他にもストーンズ等で有名)の仕事振りも目を見張るものがあるし。何だかんだ言って、やっぱりいいアルバムだと思うんですよね。

そりゃね、俺の中での重要度合いで語ればそんなに高い位置にいるアルバムではないですけど、こうやってたまに引っ張り出して聴くと何かしら新しい発見があるのがビートルズ。何年経っても、何十回、何百回聴いても聴く度にそういった発見があるバンドなんて、他にどれくらいいるよ? 小馬鹿にしてビートルズを避けて通過する人も多いと聞きますが、これを機にベスト盤ではなくてオリジナルアルバムに手を出してみては如何でしょうか?



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投稿: 2003 09 21 12:00 午前 [1970年の作品, Beatles, The] | 固定リンク