カテゴリー「1974年の作品」の13件の記事

2020年8月17日 (月)

THE ROLLING STONES『IT'S ONLY ROCK 'N ROLL』(1974)

1974年10月にリリースされたTHE ROLLING STONESの12thアルバム(イギリスにて。アメリカでは14作目)。

ジャマイカで制作された前作『GOATS HEAD SOUP』(1973年)は破天荒さが際立った前々作『EXILE ON MAIN ST.』(1972年)とはある種真逆の、ダークさと穏やかさがミックスされた出色の1枚となり、セールス的にも大成功を収めました。続く今作ではその『GOATS HEAD SOUP』とも、さらにはそれ以前のアメリカ南部に傾倒した作風からも飛び出した、新機軸のロックンロールが展開されています。

ミック・ジャガーキース・リチャーズの匿名ユニット・THE GLIMMER TWINSによる初のプロデュース作品である本作は、特に80年代以降へとつながっていくソリッドかつストレートなストロングスタイルのロックンロールが展開されており、そのタイト&ファットな音像からハードロック的な志向も見え隠れします。また、近作で大活躍だったブラスセクションを排除することで、バンドの5人+ピアノというシンプルな編成で構築されたバンドアンサンブルを思う存分に味わうことができます。

まあなにより、本作はオープニングを飾る「If You Can't Rock Me」でのハードな音像&プレイに、いきなり度肝を抜かれるのではないでしょうか。THE TEMPTATIONSのカバー「Ain't Too Proud To Beg」で若干落ち着きを見せるも、本作のタイトルトラックである「It's Only Rock 'N Roll (But I Like It)」でロックバンドならではのタフさが再熱。アップテンポなライブバージョンに慣れ親しんでいると、この落ち着いたテンポの中でじわじわと熱量が高まっていくアレンジは新鮮に映るかもしれませんね。ちなみにこの曲、のちに加入することになるロン・ウッドが12弦アコースティックギターとコーラスでゲスト参加しています。

アルバム中盤の大きな聴きどころとなるのが、6分半を超える大作「Time Waits For No One」。本作を最後にバンドを去るミック・テイラーの素晴らしい長尺ギターソロと、ニッキー・ホプキンスによるドラマチックなピアノプレイをたっぷり楽しめる名曲です。さらに後半も、ノリ一発で攻めまくるハードなロックンロール「Dance Little Sister」、美しいバラード「If You Really Want To Be My Friend」、イワン・スチュアートの軽やかなピアノが耳に残る「Short And Curlies」、「Miss You」などのディスコ路線にも通ずる「Fingerprint File」など個性的な楽曲が目白押し。

そのわりに全体的には地味に映ってしまう本作、商業的には前作ほどの成功を収めることができず、イギリスでは4作連続1位記録も途絶え(最高2位)、アメリカでもかろうじて1位を記録するものの、売り上げ的にはギリギリ100万枚に届くか届かないか(80年代に入ってからミリオン突破)。シングルも「It's Only Rock 'N Roll (But I Like It)」(全英10位/全米16位)、「Ain't Too Proud To Beg」(全米17位)、「Dance Little Sister」(チャートインせず)とあまり大きなヒットに結びつきませんでした。

ミック・テイラーの脱退、新たなギタリスト・オーディションなどもあり、本作を携えたライブツアーはすぐには実現せず、結果ロン・ウッド参加(当時はFACES活動中だったためサポートメンバー)が発表されたあとの1975年6月から北米ツアーを行うのでした。ストーンズ的には、この頃はある種の低迷期だったのかもしれませんね。

 


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2020年1月21日 (火)

RUSH『RUSH』(1974)

1974年3月にリリースされたRUSHの1stアルバム。日本盤は発売日時こそ不明ですが、当時のマーキュリー・レコード(日本フォノグラム)から『閃光のラッシュ』の邦題で1975年に発売されたようです(解説の執筆日付が1975年1月なので、発売は同年3月以降かなと。となると、海外でのオリジナル盤発売から1年のタイムラグがあったことがわかります)。

当時はニール・パート(Dr)加入前で、メンバーはゲディ・リー(Vo, B)、アレックス・ライフソン(G)、ジョン・ラトジー(Dr)の3人。音楽性もニール加入後のプログレッシヴロック路線とは異なり、ゲディのハイトーンボーカルを前面に打ち出した、ギターリフ主体のハードロックが中心です。

オープニングの「Finding My Way」からして、我々の知るRUSHとは異なり……「あれ、LED ZEPPELINのCDと間違えた?」と勘違いしてしまうほど、ストレートなブルースロック/ハードロックが展開されています。ただ、ツェッペリンほどアレンジに凝った様子もなく、若干ストレートさが目立つかなと。それを「デビュー作らしい直球さ」と受け取るか「ツェッペリンやCREAMの亜流」と受け取るかで、判断は大きく異なるのではないでしょうか。

8曲中7曲がゲディ&アレックスによるもの(「In The Mood」のみゲディ単独)。なので、歌詞もこの2人によるものなので、次作『FLY BY NIGHT』(1975年)以降の作風とは大きく異なります。つまり、“我々が知るRUSH”という視点では、次作こそがRUSH本来のデビューアルバムと受け取ることもできるのかなと。

となると、本作の存在って……いやいや、これはこれで素晴らしいんですよ。「In The Mood」みたいな能天気なロックンロールはさすがに微笑ましいけど、先の「Finding My Way」や「What You're Doing」「Before And After」のハードロックぶりや、アルバムラストを飾る「Working Man」のカッコよさは以降のRUSHにはないものだと思いますし、比較してどっちが優れているとかそういう話ではない魅力が感じられますし。

ニール・パート逝去以降、RUSHのカタログをずっと聴き漁っていましたが、20年ぶりくらいに聴いたこのアルバム、やっぱり良いんです。何を差し置いても先に聴くべき1枚とまでは言いませんが、RUSHというバンドにハードロックの香りを感じて、そのルーツって何だろう?と疑問に思った人にはぜひ触れてもらいたい1枚。90年代以降のモダンはハードロック感とはまた異なる、剥き出しな表現がここで感じられるはずなので。

「Working Man」は、活動後期にも演奏されていたのがいいですよね。しかも、ちゃんと“この3人”らしく味付けされて。本当、生で観たかったです……。

にしても、上に挙げた「Finding My Way」「What You're Doing」「Before And After」は本当に格別ですね。これ、ツェッペリンあたりだけじゃなくて、初期BLACK SABBATHを好むリスナーにも手を伸ばしてほしい名盤かもしれません。

 


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2019年9月10日 (火)

UFO『PHENOMENON』(1974)

1974年5月リリースの、UFO通算3作目のオリジナルアルバム。Chrysalis Records移籍第1弾アルバムであり、初めてアメリカでチャートイン(202位)を果たした、バンドにとって本格的な第一歩となった1枚です。

本作からギターがミック・ボルトンから、ドイツ出身のマイケル・シェンカーに交代。ドイツではSCORPIONSの1stアルバム『LONSOME CROW』(1972年)でレコードデビューを果たしていたものの、世界的にみれば完全に無名の新人だったシェンカー。当時はまだ19歳と早熟でしたが、本作では早くもその才能とセンスをソングライティング&ギタープレイ面で発揮しております。

TEN YEARS AFTERのベーシストだったレオ・ライオンズをプロデューサーに迎えた本作。大半の楽曲をシェンカーとフィル・モグ(Vo)が手がけており、それもあってか、過去2作の雰囲気とは異なるものへと変化・進化しています。オープニング2曲(「Too Young To Know」「Crystal Light」)でこそサザンロック調の緩やかなロックが奏でられていますが(ちなみに「Too Young To Know」はピート・ウェイ(B)とフィルのよるもの)、3曲目「Doctor Doctor」で空気が一変。哀愁漂うスローなイントロから、最高にカッコいいハードロックサウンドとメロディアスなギターフレーズでドラマチックな展開を作り上げていきます。やっぱり何度聴いてもシビれるわ、この曲は。

単なるブルースロックとは一線を画するスローな「Space Child」を経て、アナログA面ラストを飾る「Rock Bottom」で一気にテンション爆上げ。シンプルなギターリフですが、だからこそのカッコよさがあるわけで、そこにフィル&アンディ・パーカー(Dr)のスリリングなリズムが絡む。緩急の付け方も絶妙ですし、短いフレージングの中でもしっかり“泣いて”いるシェンカーのソロプレイも最高の一言。曲が進むにつれて高揚感も増していくアレンジ含め、文句なしの1曲です。

「Doctor Doctor」と「Rock Bottom」という突出した2曲に目が行きがちな本作ですが、後半(アナログB面)も聴きどころが多いんですよ。メンバー4人の曲作による「Oh My」のタイトさ、シェンカーのアコースティックギターを堪能できる「Time On My Hands」、ハウリン・ウルフなどで知られるウィリー・ディクソン作「Built For Comfort」のヘヴィなカバーバージョン、シェンカーのメロウなプレイを思う存分に味わえるインスト「Lipstick Traces」、シェンカーのギターはもちろんですがピートのベースプレイにも注目な「Queen Of The Deep」と、前半以上にバラエティに富んだ良曲が揃っているのですから。

単なるブルースロック/ハードロックとも異なる“泣き”の要素は、ジミー・ペイジLED ZEPPELIN)ともリッチー・ブラックモア(DEEP PURPLE)とも異なるもの。これがシェンカーのドイツというルーツによるものなのかはわかりませんが(いや、そうなんだろうけど)、間違いなくシェンカーの加入がバンドを良い方向に導き始めたことだけは理解できると思います。ライブ作品やベスト盤ではなくスタジオ作品からちゃんと追いたいというリスナーは、まず本作を入門編として手に取ってみてはいかがでしょう。

 


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2019年7月21日 (日)

NEW YORK DOLLS『TOO MUCH TOO SOON』(1974)

1974年5月に発表された、NEW YORK DOLLSの2ndアルバム。

セルフタイトルアルバムで華々しいデビューを飾った……ものの、そのヴィジュアルやチープな演奏により“まがいもの”扱いされていた彼ら。トッド・ラングレンのプロデュースも今でこそトピックとなり得ますが、当時はどこまでの話題性があったのか……。

で、前作から10ヶ月というスパンで発表された本作ですが、ここで一気に確変が起こるんです。不思議なことに。

全10曲中カバーが4曲。前作では1曲のみだったので、急にカバーが増えたことに不安を覚えますが、ここでは気にしないことにします。だって、どれも出来が良いんですから。

このアルバム、とにかくリズムがヘヴィなんです。70年代のグラムロックというとリズム隊のサウンドがチープで、今の耳で聴くと「もうちょっとどうにかならんかったのか?」と思わずにはいられないのですが、このアルバムに関してはそういった心配はゼロ。だってこれ、グラムロックというよりもハードロックのそれですからね、音の太さでいったら。

で、そのヘヴィさはギターにも言えることでして。1stアルバムのサウンドプロダクション、あれはあれで悪くなかったんですけど、本作を聴いてしまうと物足りなさを感じてしまうところもあります。

実は僕、NEW YORK DOLLSの作品に触れたのはこの2ndアルバムからなんです。当時はあまりグラムロックという感覚がなく、「AEROSMITHの初期の作品みたいだな」と思っていたくらいですから。ですから、そこから数年後に1stを聴いたときは「……ん?」と思ったものです。

まあサウンドについてはここまでにしておいて。肝心の楽曲についてですが、オリジナル6曲の大半がデヴィッド・ヨハンセン(Vo)&ジョニー・サンダース(G)によるもの(4曲。ほかの2曲はジョニー単独とデヴィッド&シルヴェイン・シルヴェイン(G)によるものです)。で、どれも悪くないし、正直1stアルバム収録の名曲たちにも負けていない。オープニングの「Babylon」から、GUNS N' ROSESもカバーしたラストの「Human Being」まで捨て曲なし。そりゃカバー曲多いもんね、なんて嫌味は言わない(個人的には、ジョニーが歌う「Chatterbox」がお気に入りです)。

で、カバーが多いからなのかどうかは別として、とにかく楽曲の幅が前作以上に広がっている。グラマラスなロックンロールから前のめりなパンクロック、ハードロック、ポップ色の強いスタンダードナンバー……「Bad Detective」でアジアンテイストあふれるギターフレーズが飛び出せば、「Stranded In The Jungle」では文字通りのジャングルビートまで取り入れている。リズム面での遊びが増えたぶん、聴いていて本当に飽きないんです。そういった点を踏まえて、NEW YORK DOLLSで最初に聴くべきアルバムってこの『TOO MUCH TOO SOON』かもしれませんね。

そういえば、このアルバムを初めて触れたあとにリリースされたZIGGYの2ndアルバム『HOT LIPS』(1988年)を聴いたとき、その元ネタの数々に気づいて思わずニヤリとしたこと、今でもよく覚えています(笑)。

 


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2019年7月 2日 (火)

BAD COMPANY『BAD COMPANY』(1974)

FREEのポール・ロジャース(Vo)&サイモン・カーク(Dr)、元MOTT THE HOOPLEのミック・ラルフス(G)、元KING CRIMSONのボズ・バレル(B)によって結成されたBAD COMPANYによる、1974年6月発売のデビューアルバム。

今でいう“スーパーバンド”のはしりですよね、これ。しかも、リリース元はLED ZEPPELINが設立したSwan Song Recordsで、全米1位/全英3位まで上昇。アメリカでは500万枚を超えるセールスを記録し、「Can't Get Enough」(全米5位/全英15位)、「Movin' On」(全米19位)というヒットシングルも生まれている。どちらかというと、本国イギリスよりもアメリカでのウケが良かったんですね。

FREEではアメリカでもそこそこのヒットを飛ばしていたポール・ロジャースですが、このBAD COMPANYを通じてその歌唱力・表現力の高さを幅広い層にまで届けることに成功。彼のキャリアを通じても最大のヒット作となっているだけに、ポールを語る上では欠かせない1枚と言えるでしょう。

FREEのように楽器隊がテクニカルで主張が強いわけではない、あくまでキャッチーな楽曲をポールという稀代のシンガーが歌い、楽器隊はそれを前面に打ち出すためにバックに徹する。このアルバムにはそういう印象が付きまとっており、個人的には初めてきいた10代後半にはそこまで響かない作品でした。

その中でプレイヤー陣が強い主張を出していない、なんならシンガーもそこまで強く自身を誇示していない。そんなだから、一聴しただけでは曲が素晴らしいだけで終わってしまう。が、聴き込めば聴き込むほどにご理解いただけると思うのですが、実は1曲1曲に隙がないんですよね。無駄に完成度が高い。ソウルやブルースをベースにしたロック/ハードロックって、どうしても過剰に歌い上げたり、ギターが泣きまくったりすることが多いんですが、ここではそういった自己主張が皆無。とにかく曲の素晴らしさをアピールすることに専念している。このある意味でのクセのなさが、幅広い層にまで行き届く結果につながった……と考えることはできないでしょうか。

要するに、純粋なポップソングと同じ域にまで到達させることができたという表れだと思うんですよね。ただ、一方でメンバーが過去に在籍したアクの強いバンド群との比較で、より地味に見えて/聴こえてしまった。デビュー作からの大成功はラッキーでしたが、と同時に最大の失態も犯してしまっていた。難しいですね。

先にも挙げたように、曲は文句なしに素晴らしいです。MOTT THE HOOPLEのカバーでもある「Ready For Love」、僕はバドカン・バージョンのほうが好きですし、シングルカットされた2曲や「Bad Company」、そしてソウルフルな「The Way I Choose」など、どれも出来が素晴らしい。で、ここでの経験を経てバンドらしさをより強く打ち出したのが、次作『STRAIGHT SHOOTER』(1975年)という最高傑作なのかなと思います。こちらの作品については、また別の機会に。

 


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2019年5月27日 (月)

KING CRIMSON『RED』(1974)

1974年10月にリリースされた、KING CRIMSONの7thアルバム。ロバート・フリップ(G)、ジョン・ウェットン(Vo, B)、ビル・ブルーフォード(Dr)のトリオ編成を軸に、デヴィッド・クロス(Violin)、メル・コリンズ(Sax)、イアン・マクドナルド(Sax)などをゲストに迎えた、70年代クリムゾンのラスト作となります。

前作『STARLESS AND BIBLE BLACK』(1974年)から約半年という短いスパンで発表された本作ですが、リリース時点ですでに解散を発表済み。バンドの終焉を感じさせるメランコリックな楽曲(「Fallen Angel」「Starless」)も用意されているものの、本作で注目される機会が多いのはタイトルトラック「Red」や「One More Red Nightmare」といったヘヴィな作風の楽曲でした。

特に「Red」は歪みまくったギターサウンドを用いたヘヴィなリフを用いた、重厚感のあるミドルナンバーで、それまでのクリムソンとは一線を画する1曲と言えます。しかも、約6分半におよぶこの曲はボーカルなしのインストゥルメンタルナンバー。ドラマチックとは言い難い不穏な展開を含め、クリムゾンのメタルサイドなんて声もよく耳にします。そしてこの曲、90年代のクリムゾンサウンドの指針になっているはずで、これがなかったらあのダブルトリオ編成で奏でるメタリックなサウンドは生まれなかったのではないか、そう思っております。

また、「One More Red Nightmare」は「Red」にも通ずるヘヴィなリフを用いているものの、ボーカルが入ると急にキャッチーさが増す異色の1曲。プログレだとかメタルだとかカテゴライズが難しいものの、その後のロックに多大な影響を与えたことは間違いありません。

かと思えば、8分にもおよぶインプロビゼーションが繰り広げられる「Providence」という彼ららしい1曲も用意。この曲はライブテイクをそのまま使っているようで、バンドとデヴィッド・クロスのバイオリンとのセッションからはほかのスタジオテイクとは異なる緊張感を味わうことができます。

そして、叙情性の強い歌モノ2曲(「Fallen Angel」「Starless」)のうち、特に「Starless」は初期の「Epitaph」「The Court Of The Crimson King」(ともに1stアルバム『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』収録)にも匹敵する名曲。前半のドラマチックな泣メロと、後半の即興演奏を含む展開という12分にもおよぶ2部構成は、これぞクリムゾンと胸を張って言えるもの。ある種の集大成感も漂っております。

全5曲で約40分。6分以下の楽曲が皆無という“プログレあるある”作品の代表的な1枚ですが、1stアルバム同様に初心者も入っていきやすい内容ではないでしょうか。特に楽器の経験があるリスナーなら、ここで展開されているプレイは存分に楽しめるはず。聴けばこれが45年前のアルバムだなんて、とても信じられないと思いますよ。

ご存知のとおり、クリムゾンの諸作品はデジタル配信およびストリーミング配信がされておらず、まもなく海外ではサブスクリプションサービスでの配信がスタートするという話もあります。日本ではまだまだ先のようですが、こういった名盤が誰でも手軽に楽しめるようになると、今みたいなカルト的人気とはまた異なる広まり方もするのでは……なんて思うのですが、いかがでしょう。

 


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2018年11月21日 (水)

QUEEN『SHEER HEART ATTACK』(1974)

QUEENが1974年11月(日本では同年12月)にリリースした通算3作目のスタジオアルバム。『QUEEN II』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表され、前作のスマッシュヒット(全英5位)も後押し、また先行シングル「Killer Queen」の大ヒット(全英2位)もあって、イギリスで最高2位まで上昇する代表作となりました。本作からはこのほかにも「Now I'm Here」(全英11位)のヒット曲も生まれ、アメリカでもアルバムは最高12位を記録(シングル「Killer Queen」も全米12位のヒット曲に)。本作を携え、1975年春には初の来日公演も実現しています。

前作ではプログレッシヴなハードロックをよりコンセプチュアルに煮詰め、また多重録音による“QUEENらしさ”を確立させることで、1stアルバム『QUEEN』(1973年)にあった“先人たちの亜流”的な評価を払拭することに成功。しかし、バンドは『QUEEN II』を同じことを続けるのではなく、その個性をさらに独特なものへと昇華させます。

スタジオ録音らしい多重録音は本作でも健在ですが、今作ではそこにより強いライブ感が加わり、ロックバンドとしてのストロングスタイルと、本来持ち合わせているポップセンス、そしてクラシックなど古典音楽への傾倒など、さまざまな音楽要素がバランスよく混在。オープニングの「Brighton Rock」や「Now I'm Here」ではドライブ感のあるハードロックサウンドを聴かせつつ、前者ではブライアン・メイ(G, Vo)がディレイを多用した津軽じょんがら風ギターソロを披露しています。

かと思えば、フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)による英国出身らしいクラマラスなポップソング「Killer Queen」もある。さらに、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)作の「Tenement Funster」、フレディ作「Flick Of The Wrist」「Lily Of The Valley」と組曲のような構成で、前作で得た武器を最大限に生かしている。

アルバム後半でもより際立つ個性を見せており、フレディ作のドラマチックな「In The Lap Of The Gods」、METALLICAものちにカバーしている高速ハードロック「Stone Cold Crazy」、ブライアン作のピアノバラード「Drea Friends」からジョン・ディーコン(B)作のキャッチーな「Misfire」、フレディ作の軽やかなロックンロール「Bring Back That Leroy Brown」と1〜2分程度の短尺曲が立て続けに並び、ブライアンが自らボーカルを担当するスローナンバー「She Makes Me (Stormtrooper in Stilettoes)」から「In The Lap Of the Gods... Revisited」というコンセプチュアルな展開で締めくくり。約40分、あっという間に聴き終えてしまう1枚なのですよ。

どの曲も非常に個性豊かで素晴らしく、まさに“これぞQUEEN”と呼べるものばかり。我々の知るQUEENはここでまず完成されたと言っても過言ではありません。

そして、ジョン・ディーコン作の楽曲が初めて収録されていることにも注目しておかなければなりません。4人の優れたソングライターの才能がここで開花したという点でも、本作は真の意味でのデビューアルバムと言えるのではないでしょうか。

本作がなかったら、代表曲「Bohemian Rhapsody」を含む次作『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)は生まれなかったはずですから。個人的にもアルバム単位で3本指に入るくらい好きな1枚です。



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2018年11月 5日 (月)

QUEEN『QUEEN II』(1974)

1974年3月にイギリスでリリースされた、QUEENの2ndアルバム。アメリカでは本国から1ヶ月遅れの同年4月、日本では3ヶ月遅れの6月に発売されています。

デビューアルバム『QUEEN』(1973年)はレコーディングからリリースまでに1年以上の遅れが生じ、発売された1973年夏にはすでに彼らの中では“古い”ものとなっていました。それもあってか、QUEENは1stアルバム発売直後の1973年8月からこの2ndアルバムのレコーディングを開始。結局、本作も完成からリリースまでに7ヶ月を要する結果となりましたが、「Seven Seas Of Rhye」のシングルヒット(全英10位)も手伝い、アルバム自体も全英5位まで上昇。大ブレイクの地盤を作ることになります。

このアルバムは“White Side”と題されたアナログA面(M-1「Prosession」からM-5「The Loser In The End」まで)と、“Black Side”と称するアナログB面(M-6「Ogre Battle」からM-11「Seven Seas Of Rhye」まで)で構成されたコンセプトアルバムの一種。“White Side”はブライアン・メイ(G, Vo)の楽曲が中心で(5曲中4曲がブライアンの手によるもの。残り1曲「The Loser In The End」のみがロジャー・テイラー作)、“Black Side”はすべてフレディ・マーキュリー(Vo, Piano)による楽曲とカラー分けがされており、前作『QUEEN』にあったプログレッシヴなハードロック色をより推し進めたものになっています。

また、楽曲自体も1曲1曲が単独で成り立つというよりは数曲からなる組曲的作風が強調され、その後のQUEENの諸作品に通ずるスタイルがここで早くも確立されています。

ボーカル面でも、“White Side”では「Some Day One Day」をブライアンが、「The Loser In The End」をロジャーがそれぞれ単独で歌唱しており、“Black Side”では「The March Of The Black Queen」にてフレディとロジャーのデュエットを聴くことができます。このへんでも、次作以降の布石ができあがったと言えるでしょう。

内容に関してはもはや何も言うことはない、ってくらいに完璧な仕上がり。デビューアルバムで試みたことの完成形がここで展開されており、それでいて新たな可能性も見え始めている。本作を基盤に、QUEENは次作以降音楽的拡散を続けていくわけです。

“White Side”の「Father To Son」、“Black Side”の「Ogre Battle」と両サイドを代表する楽曲がそれぞれ冒頭(“White Side”はインスト小楽曲「Procession」に続いてですが)に置かれているという点も、本作を語る上では非常に重要なことかもしれません。かのアクセル・ローズ(GUNS N' ROSES)は「俺が死んだらこのアルバムを棺桶に入れてくれ」と言ったそうですが、それくらいあの人にも衝撃や大きな影響を与えた作品。曲単位ではなく、あくまでアルバム通してじっくり味わってほしい、そんな1枚です。



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2018年10月26日 (金)

KISS『HOTTER THAN HELL』(1974)

デビューアルバム『KISS』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表された、1974年10月発売のKISSの2ndアルバム。前作同様ケニー・カーナー&リッチー・ワイズがプロデュースを手がけているのですが、全体的に軽快な作風だった前作よりも重みのあるサウンドに仕上げられています。

前作はポップでキャッチーなロックンロールがベースにある楽曲が多かったものの、本作はよりタフでハードなノリの楽曲が増えています。エース・フレーリー(G, Vo)作の「Parasite」やジーン・シモンズ(Vo, B)による「Goin' Blind」「Watchin' You」などがその最もたる例と言えるでしょう。

また、全体を通してジーンが10曲中5曲でリードボーカルをとっていることも、ヘヴィさに多少なりとも影響しているのかもしれません。ポール・スタンレー(Vo, G)は以外にも3曲(「Got To Choose」「Hotter Than Hell」「Comin' Home」)しか歌っておらず、残り2曲(「Mainline」「Strange Ways」)はピーター・クリス(Dr, Vo)がリードを担当。以降の作品にも言えますが、ジーンが歌う曲が多いアルバムって作風的に重くなりがちなので、本作はそういった意味ではその先駆け的1枚かもしれませんね。

それもあるのでしょうか、本作は90年代に入ってからグランジ/ヘヴィロック系バンドから高く評価されていたような印象があります。「Let Me Go, Rock 'n' Roll」みたいにKISSのパブリックイメージまんまな楽曲もあるものの、本作でやっぱり印象に残るのは先の「Parasite」や「Goin' Blind」「Hotter Than Hell」「Watchin' You」だったりするのですから。グランジのルーツなんていうのも頷ける話です。

とはいえ、KISS史の中では本作ってそこまで人気の高い1枚とはいえず、人気曲の多いデビューアルバムや、「Rock And Roll All Nite」を生み出した次作『DRESSED TO KILL』(1975年)と比較すると地味と言わざるを得ません。まあ、地味だからこそ玄人好みするというのもありますけどね。

あと、本作は現在の“耳”で聴くと非常にこもった音質に感じられます。『KISS』も『DRESSED TO KILL』も、もうちょっと抜けがよいだけに、それらに挟まれた本作は余計にこもった感が強い気がしてしまうんです。ダークさ、ヘヴィさを演出するという点においては、そこが功を奏している気がしないでもないですが……もうちょっとクリアな音で鳴らされたとき、この楽曲群のイメージがどう変わるのかも興味深いところです。



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2018年3月 2日 (金)

DEEP PURPLE『BURN』(1974)

DEEP PURPLEが1974年初頭にリリースした、通算8作目のスタジオアルバム。イアン・ギラン(Vo)、ロジャー・グローヴァー(B)の脱退を経て、新たにデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とグレン・ヒューズ(B, Vo)を迎えた、俗にいう第3期編成として初めて制作されたのが本作です。本国イギリスでは最高3位、アメリカでも最高9位まで上昇するヒット作となり、「Might Just Take Your Life」(全英55位、全米91位)、「Burn」(全米105位)という、小さいながらもシングルヒットも生まれました。

第3期パープル最大の武器は、イアン・ギラン以上に歌えるシンガーが2人も加入したということ。当時無名の新人だったブルージーな声の持ち主カヴァーデイル、そしてプログレ色の強いファンクロックバンドTRAPEZEとしてある程度知られていたソウルフルな歌声のグレンの加入は、バンドの音楽性にも大きな影響を及ぼします。

アルバムタイトルトラック「Burn」こそバッハなどクラシックの手法(コード進行など)を用いたリッチー・ブラックモア(G)の王道スタイルですが、続く「Might Just Take Your Life」のR&Bからの影響を感じさせる曲調、アップテンポのハードロックスタイルながらも2人のシンガーの歌声が絡み合うことでソウルフルさを増す「Lay Down, Stay Down」、ブルースフィーリングにあふれたファンクロック「Sail Away」と、ギラン時代の第2期パープルと比べるとかなり“黒く”なっていることに気づかされます。

アルバム後半もとにかく聴きどころ満載で、ファンキーなギターリフとパーカッシブなリズムが気持ちいい「You Fool No One」、従来のパープルらしさで成り立っているはずなのに歌い手が変わるとここまで雰囲気が変わるかという「What’s Going On Here」、リッチーは初期RAINBOWで、カヴァーデイルもWHITESNAKEでカバーしたプログレッシヴなブルース「Mistreated」、エンディングにふさわしいインスト「”A”200」と全8曲、するっと聴けてしまいます。

本作はどうしてもタイトルトラックの名リフおよびクラシカルなプレイが注目されがちですが、本作のキモはそこではなく、むしろ2曲目以降であることを、声を大にして伝えたい。みんな1曲目の印象で聴こうとするから、以降の曲調の違いに落胆するわけですもんね。

あと、日本のHR/HMファン的にはタイトル曲が某メタル誌の名前に用いられたこともあって、いろいろ複雑な思いを抱えている人もいるのかなと……リフを聴くと、ラジオCMや『PURE ROCK』でのテレビCMを思い出して苦笑いしてしまったり(思いアラフォー以上の世代の話ですが。苦笑)

まあ、冗談はともかく。リッチーがパープル在籍時、最後に本気を出したアルバム。その気合いの入りっぷりをご堪能あれ。あと、カヴァーデイルは近年、本作収録曲の多くをカバーした『THE PURPLE ALBUM』(2015年)とか出しちゃってるけど、まずはこっちから聴くことをオススメします。



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