DAVID BOWIE『DIAMOND DOGS』(1974)
1974年5月24日にリリースされたデヴィッド・ボウイの8thアルバム。初出時の邦題は『ダイアモンドの犬』。
『THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS』(1972年)、『ALADDIN SANE』(1973年)で架空のロックスター“ジギー・スターダスト”を演じ続けたボウイは、強く根付いてしまったイメージから脱却するために1973年7月3日、イギリスでの最終公演にて“引退”を宣言。カバーアルバム『PIN UPS』(1974年)でティーンエイジャーの頃の気持ちを取り戻しつつ、次に向けたステップの一環としてバックバンドTHE SPIDERS FROM MARSを解散させます。
そうした流れの中で出会ったジョージ・オーウェルのSF小説『1984年』に感銘を受けたボウイは、同作からインスパイアされたアルバム制作に取り掛かります。しかし、オーウェルの遺族から『1984年』を使った作品作りを拒否されることに。同じ頃にウィリアム・バロウズが一躍有名にした“カットアップ”手法(ひとつの文章を切り刻み、ランダムに並べ直して新たな文章を作り上げる技法)を用いた作詞術に興味を持ち、新作に取り入れることに。結果として『1984年』とは異なる、「半人半獣の主人公が退廃した未来を予言する」という新たなコンセプトを立ち上げ、『DIAMOND DOGS』というアルバムを完成させます。
ボウイ自身がプロデュースを手がけ、ストリングスのみ旧友トニー・ヴィスコンティが担当。レコーディングではボウイ自身が大半のギターを演奏し、マイク・ガーソン(Key)やエインズレー・ダンバー(Dr)といった前作からのメンバーやハービー・フラワーズ(B)、トニー・ニューマン(Dr)、アラン・パーカー(G/「1984」のみ)、アール・スリック(「Rock'N Roll With Me」のみ)といった面々が脇を固めます。
音楽的には「Diamond Dogs」や「Rebel Rebel」などを筆頭に、グラマラスなロックンロールが中心。過去2枚のオリジナルアルバムの延長線上にある1枚と言えるでしょう。しかし、先にも書いたように作詞の手法が変わったことにより、言葉から受けるイメージに変化が生じていたり、オープニングのSE的トラック「Future Legend」からM-6「Rebel Rebel」まで続くコンセプチュアルな作風などもあり、単なるグラムロックとは異なる印象を受けます。
後半もその作風は踏襲されているのですが、徐々にダークさや穏やかさが強まっていきまず。そんな中、ファンキーなギターストロークとストリングスを大々的にフィーチャーしたスリリングな「1984」(あれ、しっかり使っちゃってるし。笑)や「Big Brother」など、ソウルフィーリングが強まった楽曲も見つけることができ、ボウイなっりに試行錯誤していることも伺えます。
アルバムとしてのインパクトは過去2作には及ばず、やはり過渡期という印象は拭えませんが、本作が続く『YOUNG AMERICANS』(1975年)で迎える新たな変革期への序章になるとは、リリース当時は誰も予想できなかったのではないでしょうか。
▼DAVID BOWIE『DIAMOND DOGS』
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