DAVID BOWIE『STATION TO STATION』(1976)
1976年1月23日にリリースされたデヴィッド・ボウイの10thアルバム。
前作『YOUNG AMERICANS』(1975年)でブラックミュージックからの影響をストレートに表現したボウイでしたが、改めて「白人の自分がブラックミュージックを表現すること」と真摯に向き合い始めます。その結果、ストレートにブラックミュージックを演奏するのではなく、ヨーロッパ人である自分の感性を通過させることが今作のテーマへとつながっていきます。
前作の制作にも携わったハリー・マスリンを共同プロデューサーに、カルロス・アロマー(G)やアール・スリック(G)、ジョージ・マーレイ(B)、デニス・デイヴィス(Dr)、ロイ・ビタン(Key)といった名うてのセッションミュージシャンをレコーディングに迎えてLAにて制作。その結果、ヨーロッパ特有の翳りやひんやりとした空気感を孕んだ独自のソウルミュージックを構築することに成功しています。
オープニングを飾るタイトルトラック「Station To Station」は10分以上におよぶ、プログレッシヴな大作。文字通りのプログロックというよりは初期KRAFTWERKにも通ずるテイストが感じられ、続く『LOW』(1977年)以降に取り組む電子音楽への片鱗も見え隠れします。まさにこの1曲に本作のすべてが集約されてる……というのは過言でしょうか。そういった意味では、『YOUNG AMERICANS』と『LOW』をつなぐ過渡期的1枚なのかもしれません。
もちろん、前作の延長線上にある「Golden Years」のような曲もあるし、その流れを汲みつつ次作以降の香りを漂わせる「TVC15」や「Stay」みたいな曲もある。さらに、80年代以降のアダルト路線を先取りしたような「Wild Is The Wind」(ニーナ・シナモンのカバーでお馴染みの1曲)まで存在し、一定のトーンを保ちながらも実は意外といろんなことにトライしているという、非常に面白い1枚だったりします。
自身が“プラスティックソウル”と呼んだ『YOUNG AMERICANS』がどこかユルさを孕んだ“迷い”の1枚だとしたら、その“迷い”がひとつのスタイルへと結実していく予兆を示したのがこの『STATION TO STATION』だったのかな。そういった意味では、実は70年代の諸作品においてもっとも重要なアルバムかもしれません。
▼DAVID BOWIE『STATION TO STATION』
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