IGGY POP『THE IDIOT』(1977)
1977年3月18日にリリースされたイギー・ポップの1stソロアルバム。
THE STOOGES解散後にデヴィッド・ボウイと出会い、彼のバックアップでIGGY & THE STOOGESとして再始動。『RAW POWER』(1973年)を完成させるも、活動がままならずままバンドは空中分解し、イギーは重度の薬物依存状態に陥ります。そんなイギーに再び手を差し伸べたのがボウイ。アメリカからベルリンへと彼を引き込むと、当時ボウイが興味を持っていたジャーマンロック/クラウトロックに興味を持ち始めます。
その流れから、2人のコラボレーションがスタート。ベーシックトラックをある程度固めたところで、トニー・ヴィスコンティが介入。カルロス・アロマー(G)、ジョージ・マーレイ(B)、デニス・デイヴィス(Dr)といったボウイ『LOW』(1977年)の参加メンバーが追加レコーディングを行なって、アルバムを完成に導きます。
ちなみに、『LOW』のリリースは1977年年1月で、追ってこの『THE IDIOT』がリリースされていますが、実際の制作期間は『THE IDIOT』が1976年7〜8月で、『LOW』は同年9〜11月。つまり、『THE IDIOT』は『LOW』の習作ともいえる1枚であり、2作は兄弟のような存在であることが伺えます。あとは、ブライアン・イーノがいるかいないかの違いか。そこはかなり大きいですものね。
イギーは本作について「a cross between James Brown and Kraftwerk」と表現していますが、なるほど納得の例えです。THE STOOGESにおけるダウナーな部分を強調させた楽曲群と、適度に取り入れられたエレクトロの要素、パンクというよりはのちのポストパンク的にも映るその方向性は、ある意味では“早すぎた1枚”と言えるかもしれません。しかし、これがあったからのちのJOY DIVISIONへとつながり、さらにはDEPECHE MODEやNINE INCH NAILSへと続いていった……というのは大袈裟でしょうか。
イギーらしい躍動感は次作『LUST FOR LIFE』(1977年)に譲るものの、アート性や実験性の豊かさにおいては本作のほうが優っており、そこも含めてボウイの色が強く出てしまった感は否めません。のちにボウイ自身が『LODGER』(1979年)で歌詞とタイトルを改め「Red Money」と題してセルフカバーした「Sister Midnight」、メガヒット作『LET'S DANCE』(1983年)で取り上げた「China Girl」など、彼自身の思いれが強い楽曲が並んでいるのかもしれません。
長尺で実験性の強い「Dum Dum Boys」や「Mass Production」、ボウイのサックスが煌びやかさを生み出す「Tiny Girls」、そして映画『トレインスポッティング』で「Lust For Life」とともに印象的なシーンで使用された「Nightclubbing」など、聴きどころ満載。イギーのヘロヘロボーカルも妙にマッチしていて、気持ちよく楽しめる1枚です。
▼IGGY POP『THE IDIOT』
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