カテゴリー「1978年の作品」の21件の記事

2023年3月14日 (火)

JUDAS PRIEST『STAINED CLASS』(1978)

1978年2月10日にリリースされたJUDAS PRIESTの4thアルバム。

『SIN AFTER SING』(1977年)から10ヶ月のスパンで届けられた、Columbia Records移籍第2弾アルバム。前作はDEEP PURPLEのロジャー・グローバー(B)のプロデュースでしたが、今作はバンドとデニス・マッケイ(トミー・ボーリン、CURVED AIR、BRAND Xなど)が全体をまとめあげ、最後にレーベル側から「シングル向きの曲を用意しろ」と迫られ、新たにSPOOKY TOOTHの「Better By You, Better Than Me」をジェイムズ・ガスリーのプロデュース下でレコーディングしています。

作風的には『SIN AFTER SING』の流れを汲むものの、全体を通してメタリックさが増しており、ハードロックバンドとしての純度が非常に高い1枚に仕上がっています。前作制作時はドラマー不在だったことで、サイモン・フィリップスがサポート参加しましたが、今作からはレス・ビンクスが正式メンバーとして参加。オープニングを飾る「Exciter」のイントロで聴かせる派手なドラミングや、曲を通して気持ち良く響くスピード感の強いリズムは、このバンドのレベルを一気に引き上げたと言っても過言ではありません。そういった意味では、本作(および「Exciter」)はバンドからのハードロック宣言だったのかもしれませんし、そこから12年後に『PAINKILLER』(1990年)でこのオープニングのオマージュのようなメタルチューン「Painkiller」を生み出したのも意図的なものだったんだろうなと気付かされます。

前作の延長線上にある「White Heat, Red Hot」や「Stained Class」「Savage」、カバーながらも本作の色に見事に染め上げられている「Better By You, Better Than Me」、2ndアルバム『SAD WINGS OF DESTINY』(1976年)の頃を思わせつつもよりメタリックに進化した「Saints In Hell」、その後のスタイルとの共通点も豊富に見つけられるラストナンバー「Heroes End」など、続く『KILLING MACHINE』(1978年)『BRITISH STEEL』(1980年)のプロトタイプのような作風は、サウンドから伝わる時代感を意識させしなければ十分に楽しめる内容だと思います。

また、本作には先の「Exciter」にも匹敵する名曲「Beyond The Realms Of Death」も収録。7分近くにおよぶこの大作は、のちにパワーバラードと呼ばれるスタイルの先駆けでもあり、イントロで表現された繊細さと泣きの要素、緩急/強弱が効果的なロブ・ハルフォード(Vo)のボーカルなど無駄が一切存在しな完璧な1曲といえます。現在でも頻繁にライブで披露されていますが、さすがにダウンチューニングだったりキーを下げていたりなど原曲の魅力には及ばないものの、それでも感動的な空気は伝わるはずです。

「Exciter」と「Beyond The Realms Of Death」のインパクトが強いことで、ほかの楽曲の印象が弱いという感想もありますが、『SIN AFTER SING』で得た経験が新メンバー獲得によってさらに良い方向へと作用し始めた、“きっかけ”の1枚として評価してほしい良作です。

 


▼JUDAS PRIEST『STAINED CLASS』
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2023年1月 1日 (日)

JAPAN『ADOLESCENT SEX』(1978)

1978年4月8日にリリースされたJAPANの1stアルバム。日本盤は『果てしなき反抗』の邦題で、同年3月に発売。

1974年結成と、パンク/ニューウェイヴ勃発前に活動を開始したJAPAN。デビュー時のメンバーはデヴィッド・シルヴィアン(Vo)、ロブ・ディーン(G)、ミック・カーン(B)、リチャード・バルビエリ(Key)、スティーヴ・ジャンセン(Dr)の5人で、日本ではそのグラマラスなヴィジュアルとバンド名のおかげもあって、本国イギリスより早くから人気を博しました(さすが、ヴィジュアル系を生み出した国ですね)。

JAPANの音楽性が開花するのは3作目『QUIET LIFE』(1979年)であり、5作目『TIN DRUM』(1981年)で完成形に到達することになります。という意味では、このデビューアルバム“革命前夜”的な処女作と受け取ることもできるでしょう。事実、どこかアンバランスさが際立つ本作には(演奏技術やアイデアをまとめる能力という点において)未熟な面が目立ちます。

ですが、その未熟さが唯一無二の個性の原石となっていたのもまた事実。グラムロックを下地に、そこからソウルミュージックへと回帰していったデヴィッド・ボウイの如くブラックミュージックのテイストが随所に散りばめられている。ただ、そのテイストは欧米のブラックミュージックではなく、よりアフロミュージック寄りのトライバルなリズム感が目立つもので、そういった味付けがいびつな引っ掛かりにつながっています。

また、そこにニューウェイヴ開花前夜のシンセ主体のサウンドメイクが加わることにより、ジャンル分けが難しい独特のサウンド感を作り上げることに成功。どこまで計算しての結果だったのかは今となっては謎ですが、おそらく好きなものを掛け合わせた結果の偶発的な方向性だったのではないかと察します。

「Wish You Were Black」というアレなタイトルと、そこで表現されるクセの強いリズムワーク。のちにディープ&セクシーな歌声を聞かせるようになりデヴィッド・シルヴィアンの、まだ完成される前の初期衝動性の強い爬虫類っぽいボーカルも、今となってはこの独特なサウンド&楽曲に妙にマッチしているのですから、不思議なものです。

どの曲もキャッチーとは程遠いマニアックさが強く表出しており、ヴィジュアル先行とはいえ彼らが日本でいち早く受け入れられたのは本当に謎。アルバムラストを飾る9分超の名曲「Television」なんて、今聴くとめっちゃカッコいいと感じますが、仮に10代のロックビギナー時代に触れていたとしたらどこまで理解できていたのか……。そういった意味では、大人になる前にやりたい放題やり尽くしたのがこのデビュー作だったのかな。

 


▼JAPAN『ADOLESCENT SEX』
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2022年12月 4日 (日)

KISSのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスAEROSMITHに続く「ベストアルバムを総括する」シリーズ第3弾(シリーズだったのか……)はKISS。まあとにかくベスト盤やコンピ盤、ボックスセットが多い方々ですが、今回は数あるベスト盤の中からレーベル主導で制作された『MILLENNIUM COLLECTION』シリーズを除く、バンド側の公式リリースに絞ってセレクトしております。中には新曲やレアトラックなど含まないもの、現在廃盤でサブスクでも配信されていないものも含まれていますが、あえて掲載してみます。

とにかく非常に長いエントリーなので、心してお読みください……(苦笑)。

 

 

『DOUBLE PLATINUM』(1978)

 

1978年4月2日にリリースされたKISS初のグレイテストヒッツアルバム。アナログ2枚組、CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成。新曲こそ皆無ですが、既存楽曲に加え「Strutter」のリテイクバージョン「Strutter '78」やリミックステイクなどが豊富。サブスクではApple Musicはフルで楽しめますが、Spotifyでは「Calling Dr. Love」と「Black Diamond」が歯抜け状態。Amazon Musicでは配信すらされていないようなので、どうにかしていただきたいものです。

詳しくはこちらのエントリーを参照のこと。

 


▼KISS『DOUBLE PLATINUM』
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『KILLERS』(1982)

 

1982年6月15日にリリースされた、KISSにとって2作目の公式コンピレーションアルバム。アナログ/CDともに1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『KILLERS』
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『CHIKARA』(1988)

 

1988年5月25日に日本限定でリリースされたコンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。

枚数限定生産ということで、現在は廃盤。ただ、中古盤ショップを回れば意外と簡単に見つけられるはず。値段もそこまで張っていないので(Amazonは論外!)、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼KISS『CHIKARA』
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『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

 

1988年11月15日にリリースされた、KISSにとって3作目の公式コンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。

内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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『GREATEST KISS』(1997)

 

1997年4月8日にリリースされたKISSの公式コンピレーションアルバム第4弾。日本盤は1997年1月の来日公演にあわせて、1996年12月9日発売。CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、ピーター・クリス(Dr, Vo)。オリジナル編成およびメイクアップ期へと回帰した彼らのワールドツアーにあわせて制作されたもので、北米、ヨーロッパ、日本とそれぞれ収録曲が一部異なるのが特徴。

これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。

オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。

サブスクでも聴くことができますが、Apple Musicでは日本盤バージョンで配信、Spotifyはヨーロッパバージョンでの配信のようです。

 


▼KISS『GREATEST KISS』
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2022年12月 3日 (土)

KISS『DOUBLE PLATINUM』(1978)

1978年4月2日にリリースされたKISS初のグレイテストヒッツアルバム。

当時、アナログ2枚組で発表された本作には、新たにレコーディングし直された「Strutter」や、リミックスが施された「Hard Luck Woman」「Calling Dr. Love」「Firehouse」など半数におよぶ10曲が未発表テイクで構成。原曲を知る人にはその斬新なリミックスに、当時はかなり驚かされたのではないでしょうか。後追いの自分にとっては、本作が初めて聴いたKISSのクラシックアルバムということもあり、ここで聴ける楽曲群が原点。なので、初めて「Strutter」のオリジナルバージョンを聴いたときはそのテンポの速さに驚きましたし、「Black Diamond」のエンディングの違いに動揺したことをよく覚えています。

「Strutter '78」と題されたリメイクバージョンはテンポダウンすることで、当時流行していたディスコビートに接近。思えば、のちの「I Was Made For Lovin' You」の布石はこの時点で存在していたことにも気づかされます。

その一方で、「Hard Luck Woman」はアコギのみをバックに歌唱するパートが増えていたり、「Detroit Rock City」では中盤がコンパクトにまとめられていたりと、リメイクに近いリミックスとなっています。そりゃあ、このバージョンの耳馴染みが強ければ、オリジナルバージョンを聴いたたら違和感覚えますわな。

本作で圧巻なのは、「Rock Bottom」のイントロ(アルペジオパート)に「She」をくっつけた新解釈。エンディングのリピート含め、これを先に聴いたら(以下同文)。あと、アルバムラストを飾る「Black Diamondのイントロとエンディングのアイデアも、様式美然としていてカッコいい。こういったアイデアどこから生まれたんだろう。ズルイわ。

いわゆる初期6作の代表曲はほぼ網羅されており、シンプルなロックンロールから華やかなハードロックへと進化する過程、さらにはHR/HMの原点でありグランジのオリジネーターである理由もこの20曲からしっかり感じとることができるはずです。

ちなみに本作、そのタイトルのように本国でダブルプラチナム(200万枚のセールス)は記録することはできず。最高22位、100万枚(2枚組なので50万セット)という結果を残しています。この年はメンバー4人がソロアルバムを同時リリースするなど、バンドとしても小休止状態だったので、つなぎにしては上々だったのではないでしょうか。ここでひと区切りつけたからこそ、続く『DYNASTY』(1979年)で本格的にディスコサウンド/ビートに取り組むことができたわけですしね。

 


▼KISS『DOUBLE PLATINUM』
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2022年10月31日 (月)

QUIET RIOT『QUIET RIOT II』(1978)

1978年12月2日に日本限定でリリースされたQUIET RIOTの2ndアルバム。海外では2022年7月8日、No Remorse Recordsを通じて初めて発売されました。

『静かなる暴動』と邦題の付けられた日本限定発表のデビューアルバムに続いて早くも届けられた本作。1978年夏から秋にかけてレコーディングが行われたものの、アルバム完成直後にケリー・ガルニ(B)がバンドを脱退。入れ替わるようにルディ・サーゾが加入し、アートワークに加わっています(レコーディング未参加ながらも、クレジットにも彼の名前が記載されています)。

軽やかなグラムポップ色濃厚だった前作と比べると、本作収録曲の多くはずっしりとしたミディアムチューンが中心。相変わらずバブルガムポップ的なキャッチーさは強いものの、演奏やアレンジ面でハードさが強まり始めています。それでも、のちのヘアメタル期と比べるとだいぶ“軽い”ですが。

やりたいことを詰め込み始めた結果、1曲の尺が4〜5分と長くなり始めていることからも、バンドとして、そしてミュージシャンとしての技術や才能が開花し始めていることが、ソングライティング面での創意工夫から伝わります。ここではとにかく、ランディ・ローズ(G)のギタリストとしての華が一気に開花していることが一番でしょう。「Eye For An Eye」や「Trouble」「Killer Girls」「Face To Face」あたりの派手なプレイを耳にすると、のちのオジー・オズボーンとのコラボレーション……『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)で聴くことができるプレイとの共通点も豊富に見つけられます。

また、バンドとしてもその後の『METAL HEALTH』(1983年)への架け橋が用意されており、オープニングを飾る「Slick Black Cadillac」はその後『METAL HEALTH』でもリメイクされることに。『METAL HEALTH』バージョンにはないアレンジなど含め、耳慣れたバージョンとの違いは新鮮に響くのではないでしょうか。

さらに、前作でも取り上げたSMALL FACESのカバーがここにも登場。今回は「Afterglow (Of Your Love)」をピックアップしており、若干大人びたアレンジ含めアルバム全体のトーンにもマッチしております。QUIET ROITはその後も「Itchycoo Park」を『TERRIFIED』(1993年)でも取り上げているので、SMALL FACES好きはケヴィン・ダブロウ(Vo)の趣味なのかもしれませんね。

1stアルバム同様にB級と言ってしまえばそれまでですが、だからといって切り捨てられない魅力が随所に用意されている。QUIET RIOT云々ではなく、70年代後半のUSハードロックやグラムポップ、パワーポップなどに多少なりとも興味がある方、そしてランディ・ローズというギタリストに興味があるリスナーなら手を伸ばしておいて間違いのない1枚です。

なお、2022年に再発された音源は一応「公式リリース」という形になっていますが、音源自体はマスターテープを元にしたものではなく(マスターが復旧不可能なほどに劣化していたとのこと)、日本盤アナログレコードからの盤起こしがベースになっている、ちょっとグレーな代物。1stアルバム同様、こちらもサブスク未解禁ですのでご注意を。

 


▼QUIET RIOT『QUIET RIOT II』
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2022年10月30日 (日)

QUIET RIOT『QUIET RIOT』(1978)

1978年3月2日に日本限定でリリースされたQUIET RIOTの1stアルバム。海外では2022年7月8日、No Remorse Recordsを通じて初めて発売されました。

Wikipediaなどによると、QUIET RIOTは1973年にランディ・ローズ(G)を中心に結成されたとのこと。当初はMARCH 1 〜 LITTLE WOMENなどという名義で活動していたとのことで、メンバーはランディのほかケヴィン・ダブロウ(Vo)、ケリー・ガルニ(B)、ドリュー・フォーサイス(Dr)という布陣。1975年に『SUICIDAL SHOW』と題した3曲入りEPを発表するも、鳴かず飛ばず。本国でのディールをなかなか得られない中、なぜか日本のCBSソニー(現・Sony Music)と契約し、日本限定でアルバムを2枚リリースすることとなります。

『静かなる暴動』と邦題の付けられた本作は、全12曲を収録。EP『SUICIDAL SHOW』に収録された「Just How You Want It」や「Back To The Coast」(『SUICIDAL SHOW』収録の「West Coast Tryouts」をリメイクしたもの)に加え、SMALL FACES「Tin Soldier」やDAVE CLARK FIVE「Glad All Over」といったカバー曲も収められています。カバーを取り上げるのは、すでにこの頃からのことだったんですね。

ランディ脱退後、新たな編成でメジャーデビューし大ブレイクした『METAL HEALTH』(1983年)の片鱗を見つけようとすると、ちょっと「?」と感じるかもしれない本作。ハードロックというよりはグラムポップやバブルガムポップ的要素の強いテイストで、それこそのちにカバーするSLADEやSWEETといったUKパワーポップのオリジネーターなどとの共通点も見つけられるサウンドではないでしょうか。

と同時に、ランディのギタリストとしての非凡さはここではまだ発揮されておらず、ケヴィンのボーカルを軸にノリノリのロックンロールを聴かせていく方向に主軸を置いているような印象も受けます。リズム隊の演奏も随所に危うさが感じ取れるし、そりゃあ本国のメジャー契約も難しいかなと。

確かに『METAL HEALTH』以降の彼らのイメージで接すると、少々退屈に感じられるかもしれない。それでも、いい曲もあるんですよ? 先に紹介した「Just How You Want It」や「Back To The Coast」、アルバムのクライマックスを飾る「Demolition Derby」などはグラムポップとして捉えると全然アリ。個人的には好物の類なので、B級感こそ強いけど存分に楽しめる1枚です。

なお、2022年に再発された音源は一応「公式リリース」という形になっていますが、音源自体はマスターテープを元にしたものではなく(マスターが復旧不可能なほどに劣化していたとのこと)、日本盤アナログレコードからの盤起こしがベースになっている、ちょっとグレーな代物。最初に際し、オリジナルの12曲に加え『SUICIDAL SHOW』からの3曲も追加収録されています。

ケヴィンもこの世を去った今、オリジナルマスターからの最初は絶望的かもしれません(僕自身、それを理解した上でここで紹介しています)。サブスク未解禁ですが、それでも興味があるという方はぜひチェックしてみてください。

 


▼QUIET RIOT『QUIET RIOT』
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2021年9月26日 (日)

JOHNNY THUNDERS『SO ALONE』(1978)

1978年10月にリリースされたジョニー・サンダースの1stソロアルバム。

1975年のNEW YORK DOLLS脱退を経て、一緒に脱退したジェリー・ノーラン(Dr)とTHE HEARTBREAKERSを結成。パンクムーブメントがイギリスで勃発する1977年に唯一のアルバム『L.A.M.F.』を発表しますが、そこから1年に初のソロアルバムを完成させます。

スティーヴ・リリィホワイト(U2、XTC、ULTRAVOX、モリッシーなど)を共同プロディーサーに迎え、レコーディングにはSEX PISTOLSスティーヴ・ジョーンズ(G)&ポール・クック(Dr)、フィル・ライノット(Ba, Vo/THIN LIZZY)、スティーヴ・マリオット(Harp, Piano, Vo/SMALL FACES、HUMBLE PIE)、クリッシー・ハインド(Vo/THE PRETENDERS)、ウォルター・ルー(G/THE HEARTBREAKERS)などジョニーの交友関係の幅広さを感じらせる面々が多数参加。『L.A.M.F.』の延長線上にありながらも、ソロならではのパーソナルな側面を感じさせる楽曲も含む、バランス感に優れた1枚に仕上がっています。

カバー曲が多いのも彼ならではといったところで、VENTURESの「Pipeline」のカッコよさ(HANOI ROCKSのカバーはこれが元でしょう)をはじめ、THE SHANGRI-LAS「Great Big Kiss」、オーティス・ブラックウェル(THE WHOなどもカバーした)「Daddy Rollin' Stone」、NEW YORK DOLL時代のセルフカバー「Subway Train」など彼らしいセレクト/アレンジで楽しませてくれます。

かと思えば、今日までマイケル・モンローGUNS N' ROSESなどさまざまなアーティストにカバーされてきた「You Can't Put Your Arms Around A Memory」や「Ask Me No Questions」といったミディアムスローのアコースティックナンバー、NEW YORK DOLLSの延長線上にありながらも時代に呼応したサウンドの「Leave Me Alone」、SEX PISTOLSに対するディスソング「London Boys」などオリジナルソングも魅力的。1992年のCD化の際にはオリジナルの10曲に加え、T. REX「The Wizard」のカバーなどを含む4曲が追加されており、こちらも捨て曲なしで楽しむことができるはずです。

『L.A.M.F.』はオリジナル版に音質面で難があり、のちに数々の“別ミックス”が続発するという珍事を生み出しましたが、そういった意味ではジョニー・サンダースのソロワークスにおける入門盤は本作がいいのかなと。『L.A.M.F.』も破壊力も捨てがたいですが、ソングライティング面、アレンジ面での総合力では本作のほうが数歩かなと感じています。事実、僕もジョニーのソロ作品は本作(1992年の初CD化時)からでしたしね。NEW YORK DOLLSからの流れで聴くにもちょうど良い気がします。

ジョニーのヘロヘロボーカルも、どこか初期のキース・リチャーズを彷彿とさせるものがありますし。そういった意味でも本作は“究極のヘタウマ芸術”における、ひとつの到達点ではないでしょうか。

 


▼JOHNNY THUNDERS『SO ALONE』
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2021年9月 9日 (木)

CHEAP TRICK『HEAVEN TONIGHT』(1978)

1978年4月24日にリリースされたCHEAP TRICKの3rdアルバム。

デビュー作『CHEAP TRICK』(1977年)が1977年2月発売、前作『IN COLOR』(1977年)が同年9月発売と約7ヶ月間隔でのリリースペースが続いていた初期のCHEAP TRICK。適度なパンキッシュさとガレージロック度の強い1作目、極端なポップネスへと振り切った2作目を経て、続くこの3作目では過去2作の中間に位置する、バランス感に優れた良作に仕上げられています。

ポップ度に関して言えば前作にも匹敵する甘さが備わっているものの、それを構築するバンドサウンドがより“硬く”なったことで、ロックバンドとしてのタフさが急増。結果、「Surrender」や「On Top Of The World」のようなポップな楽曲もロックチューンとして通用する、これこそパワーポップと言わんばかりの仕上がり。かと思えば「High Roller」や「Oh Claire」のように1作目に含まれていそうなヘヴィ路線の楽曲、「Heaven Tonight」のようなヘヴィバラード、「Stiff Competition」を筆頭とするハードドライヴィンなロックチューン、「How Are You?」みたいに前作の流れを継承するポップソングも用意されており、ソングライターとしての幅もより広がりを見せています。

この短期間でソングライターとしてはもちろんのこと、ロックバンドとしての表現力も一気に成長を遂げ、早くも初期の集大成と呼べるアルバムを完成させたCHEAP TRICK。海外でのリリースタイミングには、ここ日本で初の日本武道館公演も成功させ、その模様を収めたライブアルバム『AT BUDOKAN』(1978年)は初の全米トップ10入り(最高4位)を果たすことになります。

とはいえ、直前にリリースされた今作もその時点では過去最高の全米48位まで上昇し、シングル「Surrender」も全米62位と初のシングルトップ100入りを遂げるのですから、『AT BUDOKAN』での成功はここで約束されていたといっても過言ではありません。

集大成的内容の『HEAVEN TONIGHT』、ライブでの躍動感を伝える『AT BUDOKAN』を経て、CHEAP TRICKは4thアルバム『DREAM POLICE』(1979年)で最初の大きなピークに到達します。リリースの流れに沿って各アルバムを聴いていくと、バンドが波に乗っていく感覚が伝わるはず。特に『IN COLOR』から『HEAVEN TONIGHT』、『HEAVEN TONIGHT』から『DREAM POLICE』への流れはその進化ぶりがより明確に理解できるのではないでしょうか。

 


▼CHEAP TRICK『HEAVEN TONIGHT』
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2021年1月17日 (日)

PATTI SMITH GROUP『EASTER』(1978)

1978年3月にリリースされたパティ・スミスの3rdアルバム(PATTI SMITH GROUP名義でのリリース)。

本作からはブルース・スプリングスティーンとの共作「Because The Night」が全米13位/全英5位の大ヒットシングルが生まれ、アルバム自体も全米20位/全英16位まで上昇。パティ・スミスを一段上のステージへと引き上げる、代表作のひとつとなりました。

ジョン・ケイル、ジャック・ダグラスが手がけた初期2作はガレージロックやハードロック色が漂う作風でしたが、今作ではそこにパンキッシュな色合いが加わることで、のちにパティ・スミスが“パンクロックの女王”と呼ばれるようになるきっかけを作ります。「Rock N Roll Nigger」のような直線的なパンクロックも存在しますが、本作におけるパンキッシュさは「Space Monkey」や、「Rock N Roll Nigger」の序章といえる「Babelogue」などから垣間見える呪術的な歌唱スタイルによるものが強いのかなと。「Babelogue」などで聴けるポエトリー的な歌唱スタイルはデビュー作『HORSES』(1975年)の時点から存在していたものですが、初期のそれはもうちょっと知的さが強かったような。それと比べると、今作でのポエトリーはより開放的な側面が強まり、そのエネルギッシュさこそパンクロックの根源なのでは……本作を聴くと、そう思わずにはいられません。

かと思えば、先の「Because The Night」のようにエモーショナルな楽曲も存在する。スプリングスティーン自身のセルフカバーもあれば、10,000 MANIACS、CASCADA、GARBAGE、マイケル・スタイプ(R.E.M.)、BON JOVIなどさまざまなアーティストが音源やライブでカバー。パンククラシックというよりは(作風的にも)ロッククラシックと呼ぶにふさわしい1曲と言えるでしょう。この曲と同時に「Rock N Roll Nigger」みたいな曲も並列して存在するあたりが、本作最大の魅力ではないでしょうか。

で、その2曲をつなぐかのように、間には民俗音楽的なアコースティックナンバー「Ghost Dance」が居座っており、ほかにもスローバラード「We Three」、ダルなゴリゴリのガレージロッ組曲「25th Floor」「High On Rebellion」などバラエティに富んだ楽曲で固められている。サウンド的なパンクではなく、精神性でのパンクを表現した本作は、「パンクロックとは何か?」を考える上で改めて重要な1枚のような気がします。

若い頃は見過ごしていた気づきが、この年齢になったからこそいろいろ発見できる。と同時に、大人になるにつれて失ったものにも気づかせてくれる。歳を重ねるたびに聴くと、その感じ方の変化が大きい生き物のような怪作です。

 


▼PATTI SMITH GROUP『EASTER』
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2020年11月 6日 (金)

AC/DC『IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT』(1978)

1978年10月にリリースされたAC/DC初のライブアルバム。

『ギター殺人事件 AC/DC流血ライヴ』の邦題で長きにわたり親しまれている本作は、当時の最新アルバム『POWERAGE』(1978年)リリース直前の1978年4月30日にグラスゴーのApollo Theatreにてライブレコーディングされたもの。今作のあとに出世作『HIGHWAY TO HELL』(1979年)を発表しているのもあり、本作はそれ以前のAC/DCにおけるベストヒット的内容と言えるでしょう。

ボックスセット同梱作品を除けば、本作がボン・スコット(Vo)在籍時唯一のライブアルバムであり、次のライブ作品『LIVE』(1992年)までは本作こそがAC/DC最強のライブアルバムとして親しまれてきました。まあ、そもそも『LIVE』はブライアン・ジョンソン(Vo)が歌っているので、同じ曲が含まれているとはいえ別モノと切り分けて考えるのが妥当かと思います。

ちなみにこの4月30日にグラスゴー公演では全12曲が披露されており、そのうち10曲をアルバムに収録(カットされたのは「Dog Eat Dog」と「Filling Thing」)。曲順は一部異なるものの(実際のライブでは2曲目だった「Problem Child」がアルバムでは5曲目など)、アルバムの構成としては非常に流れもよく、ロックンロールバンドとしてのAC/DCをベストな形で表現しているように映ります。

そう、この時期のAC/DCはハードロックというよりはハードブギー、もっと言えばシンプルにロックンロールバンドなんですよ。オープニングを飾る「Riff Raff」とかハードロック調ではあるものの、コードなんてシンプルなブルース進行ですし(LED ZEPPELINの「Rock And Roll」に通ずるものがありますよね)、「Bad Boy Boogie」から「The Jack」の流れなんてまさに王道ロックンロールですから。ハードロック色が強まったのって、結局ブライアン加入後の『BACK IN BLACK』(1980年)以降なんじゃないかな。だから、先の『LIVE』と切り分けて考えるのは当然なのです。

全10曲で約53分(アナログ1枚もの)は当時で考えると長尺ですし、アナログ盤で聴くラストの「Rocker」の音の悪さといったら、それはそれは(笑)。ですが、「Whole Lotta Rosie」以降の後半の熱量は特筆すべきものがあります。実際のライブとは異なる流れながらも、そのあとに当時の最新曲「Rock 'N' Roll Damnation」と初期の代表曲「High Voltage」を挟んで「Let There Be Rock」「Rocker」へと続く構成は最高以外の何ものでもありません。これ以上はないでしょ?ってくらい、究極の流れなのです。高校生のときから何百回、何千回とこの流れに興奮したことか。

アンガス・ヤング(G)のギタープレイの凄みやボン・スコットのフロントマンとしてのカリスマ性も存分に伝わる本作、初期AC/DCの入門編としてオススメの1枚です。

 


▼AC/DC『IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT』
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