『SIN AFTER SING』(1977年)から10ヶ月のスパンで届けられた、Columbia Records移籍第2弾アルバム。前作はDEEP PURPLEのロジャー・グローバー(B)のプロデュースでしたが、今作はバンドとデニス・マッケイ(トミー・ボーリン、CURVED AIR、BRAND Xなど)が全体をまとめあげ、最後にレーベル側から「シングル向きの曲を用意しろ」と迫られ、新たにSPOOKY TOOTHの「Better By You, Better Than Me」をジェイムズ・ガスリーのプロデュース下でレコーディングしています。
作風的には『SIN AFTER SING』の流れを汲むものの、全体を通してメタリックさが増しており、ハードロックバンドとしての純度が非常に高い1枚に仕上がっています。前作制作時はドラマー不在だったことで、サイモン・フィリップスがサポート参加しましたが、今作からはレス・ビンクスが正式メンバーとして参加。オープニングを飾る「Exciter」のイントロで聴かせる派手なドラミングや、曲を通して気持ち良く響くスピード感の強いリズムは、このバンドのレベルを一気に引き上げたと言っても過言ではありません。そういった意味では、本作(および「Exciter」)はバンドからのハードロック宣言だったのかもしれませんし、そこから12年後に『PAINKILLER』(1990年)でこのオープニングのオマージュのようなメタルチューン「Painkiller」を生み出したのも意図的なものだったんだろうなと気付かされます。
前作の延長線上にある「White Heat, Red Hot」や「Stained Class」「Savage」、カバーながらも本作の色に見事に染め上げられている「Better By You, Better Than Me」、2ndアルバム『SAD WINGS OF DESTINY』(1976年)の頃を思わせつつもよりメタリックに進化した「Saints In Hell」、その後のスタイルとの共通点も豊富に見つけられるラストナンバー「Heroes End」など、続く『KILLING MACHINE』(1978年)や『BRITISH STEEL』(1980年)のプロトタイプのような作風は、サウンドから伝わる時代感を意識させしなければ十分に楽しめる内容だと思います。
また、本作には先の「Exciter」にも匹敵する名曲「Beyond The Realms Of Death」も収録。7分近くにおよぶこの大作は、のちにパワーバラードと呼ばれるスタイルの先駆けでもあり、イントロで表現された繊細さと泣きの要素、緩急/強弱が効果的なロブ・ハルフォード(Vo)のボーカルなど無駄が一切存在しな完璧な1曲といえます。現在でも頻繁にライブで披露されていますが、さすがにダウンチューニングだったりキーを下げていたりなど原曲の魅力には及ばないものの、それでも感動的な空気は伝わるはずです。
「Exciter」と「Beyond The Realms Of Death」のインパクトが強いことで、ほかの楽曲の印象が弱いという感想もありますが、『SIN AFTER SING』で得た経験が新メンバー獲得によってさらに良い方向へと作用し始めた、“きっかけ”の1枚として評価してほしい良作です。
「Wish You Were Black」というアレなタイトルと、そこで表現されるクセの強いリズムワーク。のちにディープ&セクシーな歌声を聞かせるようになりデヴィッド・シルヴィアンの、まだ完成される前の初期衝動性の強い爬虫類っぽいボーカルも、今となってはこの独特なサウンド&楽曲に妙にマッチしているのですから、不思議なものです。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。
内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。
これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。
オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。
当時、アナログ2枚組で発表された本作には、新たにレコーディングし直された「Strutter」や、リミックスが施された「Hard Luck Woman」「Calling Dr. Love」「Firehouse」など半数におよぶ10曲が未発表テイクで構成。原曲を知る人にはその斬新なリミックスに、当時はかなり驚かされたのではないでしょうか。後追いの自分にとっては、本作が初めて聴いたKISSのクラシックアルバムということもあり、ここで聴ける楽曲群が原点。なので、初めて「Strutter」のオリジナルバージョンを聴いたときはそのテンポの速さに驚きましたし、「Black Diamond」のエンディングの違いに動揺したことをよく覚えています。
「Strutter '78」と題されたリメイクバージョンはテンポダウンすることで、当時流行していたディスコビートに接近。思えば、のちの「I Was Made For Lovin' You」の布石はこの時点で存在していたことにも気づかされます。
その一方で、「Hard Luck Woman」はアコギのみをバックに歌唱するパートが増えていたり、「Detroit Rock City」では中盤がコンパクトにまとめられていたりと、リメイクに近いリミックスとなっています。そりゃあ、このバージョンの耳馴染みが強ければ、オリジナルバージョンを聴いたたら違和感覚えますわな。
やりたいことを詰め込み始めた結果、1曲の尺が4〜5分と長くなり始めていることからも、バンドとして、そしてミュージシャンとしての技術や才能が開花し始めていることが、ソングライティング面での創意工夫から伝わります。ここではとにかく、ランディ・ローズ(G)のギタリストとしての華が一気に開花していることが一番でしょう。「Eye For An Eye」や「Trouble」「Killer Girls」「Face To Face」あたりの派手なプレイを耳にすると、のちのオジー・オズボーンとのコラボレーション……『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)で聴くことができるプレイとの共通点も豊富に見つけられます。
また、バンドとしてもその後の『METAL HEALTH』(1983年)への架け橋が用意されており、オープニングを飾る「Slick Black Cadillac」はその後『METAL HEALTH』でもリメイクされることに。『METAL HEALTH』バージョンにはないアレンジなど含め、耳慣れたバージョンとの違いは新鮮に響くのではないでしょうか。
さらに、前作でも取り上げたSMALL FACESのカバーがここにも登場。今回は「Afterglow (Of Your Love)」をピックアップしており、若干大人びたアレンジ含めアルバム全体のトーンにもマッチしております。QUIET ROITはその後も「Itchycoo Park」を『TERRIFIED』(1993年)でも取り上げているので、SMALL FACES好きはケヴィン・ダブロウ(Vo)の趣味なのかもしれませんね。
Wikipediaなどによると、QUIET RIOTは1973年にランディ・ローズ(G)を中心に結成されたとのこと。当初はMARCH 1 〜 LITTLE WOMENなどという名義で活動していたとのことで、メンバーはランディのほかケヴィン・ダブロウ(Vo)、ケリー・ガルニ(B)、ドリュー・フォーサイス(Dr)という布陣。1975年に『SUICIDAL SHOW』と題した3曲入りEPを発表するも、鳴かず飛ばず。本国でのディールをなかなか得られない中、なぜか日本のCBSソニー(現・Sony Music)と契約し、日本限定でアルバムを2枚リリースすることとなります。
『静かなる暴動』と邦題の付けられた本作は、全12曲を収録。EP『SUICIDAL SHOW』に収録された「Just How You Want It」や「Back To The Coast」(『SUICIDAL SHOW』収録の「West Coast Tryouts」をリメイクしたもの)に加え、SMALL FACES「Tin Soldier」やDAVE CLARK FIVE「Glad All Over」といったカバー曲も収められています。カバーを取り上げるのは、すでにこの頃からのことだったんですね。
確かに『METAL HEALTH』以降の彼らのイメージで接すると、少々退屈に感じられるかもしれない。それでも、いい曲もあるんですよ? 先に紹介した「Just How You Want It」や「Back To The Coast」、アルバムのクライマックスを飾る「Demolition Derby」などはグラムポップとして捉えると全然アリ。個人的には好物の類なので、B級感こそ強いけど存分に楽しめる1枚です。
カバー曲が多いのも彼ならではといったところで、VENTURESの「Pipeline」のカッコよさ(HANOI ROCKSのカバーはこれが元でしょう)をはじめ、THE SHANGRI-LAS「Great Big Kiss」、オーティス・ブラックウェル(THE WHOなどもカバーした)「Daddy Rollin' Stone」、NEW YORK DOLL時代のセルフカバー「Subway Train」など彼らしいセレクト/アレンジで楽しませてくれます。
かと思えば、今日までマイケル・モンローやGUNS N' ROSESなどさまざまなアーティストにカバーされてきた「You Can't Put Your Arms Around A Memory」や「Ask Me No Questions」といったミディアムスローのアコースティックナンバー、NEW YORK DOLLSの延長線上にありながらも時代に呼応したサウンドの「Leave Me Alone」、SEX PISTOLSに対するディスソング「London Boys」などオリジナルソングも魅力的。1992年のCD化の際にはオリジナルの10曲に加え、T. REX「The Wizard」のカバーなどを含む4曲が追加されており、こちらも捨て曲なしで楽しむことができるはずです。
『L.A.M.F.』はオリジナル版に音質面で難があり、のちに数々の“別ミックス”が続発するという珍事を生み出しましたが、そういった意味ではジョニー・サンダースのソロワークスにおける入門盤は本作がいいのかなと。『L.A.M.F.』も破壊力も捨てがたいですが、ソングライティング面、アレンジ面での総合力では本作のほうが数歩かなと感じています。事実、僕もジョニーのソロ作品は本作(1992年の初CD化時)からでしたしね。NEW YORK DOLLSからの流れで聴くにもちょうど良い気がします。
ポップ度に関して言えば前作にも匹敵する甘さが備わっているものの、それを構築するバンドサウンドがより“硬く”なったことで、ロックバンドとしてのタフさが急増。結果、「Surrender」や「On Top Of The World」のようなポップな楽曲もロックチューンとして通用する、これこそパワーポップと言わんばかりの仕上がり。かと思えば「High Roller」や「Oh Claire」のように1作目に含まれていそうなヘヴィ路線の楽曲、「Heaven Tonight」のようなヘヴィバラード、「Stiff Competition」を筆頭とするハードドライヴィンなロックチューン、「How Are You?」みたいに前作の流れを継承するポップソングも用意されており、ソングライターとしての幅もより広がりを見せています。
1978年3月にリリースされたパティ・スミスの3rdアルバム(PATTI SMITH GROUP名義でのリリース)。
本作からはブルース・スプリングスティーンとの共作「Because The Night」が全米13位/全英5位の大ヒットシングルが生まれ、アルバム自体も全米20位/全英16位まで上昇。パティ・スミスを一段上のステージへと引き上げる、代表作のひとつとなりました。
ジョン・ケイル、ジャック・ダグラスが手がけた初期2作はガレージロックやハードロック色が漂う作風でしたが、今作ではそこにパンキッシュな色合いが加わることで、のちにパティ・スミスが“パンクロックの女王”と呼ばれるようになるきっかけを作ります。「Rock N Roll Nigger」のような直線的なパンクロックも存在しますが、本作におけるパンキッシュさは「Space Monkey」や、「Rock N Roll Nigger」の序章といえる「Babelogue」などから垣間見える呪術的な歌唱スタイルによるものが強いのかなと。「Babelogue」などで聴けるポエトリー的な歌唱スタイルはデビュー作『HORSES』(1975年)の時点から存在していたものですが、初期のそれはもうちょっと知的さが強かったような。それと比べると、今作でのポエトリーはより開放的な側面が強まり、そのエネルギッシュさこそパンクロックの根源なのでは……本作を聴くと、そう思わずにはいられません。
かと思えば、先の「Because The Night」のようにエモーショナルな楽曲も存在する。スプリングスティーン自身のセルフカバーもあれば、10,000 MANIACS、CASCADA、GARBAGE、マイケル・スタイプ(R.E.M.)、BON JOVIなどさまざまなアーティストが音源やライブでカバー。パンククラシックというよりは(作風的にも)ロッククラシックと呼ぶにふさわしい1曲と言えるでしょう。この曲と同時に「Rock N Roll Nigger」みたいな曲も並列して存在するあたりが、本作最大の魅力ではないでしょうか。
で、その2曲をつなぐかのように、間には民俗音楽的なアコースティックナンバー「Ghost Dance」が居座っており、ほかにもスローバラード「We Three」、ダルなゴリゴリのガレージロッ組曲「25th Floor」「High On Rebellion」などバラエティに富んだ楽曲で固められている。サウンド的なパンクではなく、精神性でのパンクを表現した本作は、「パンクロックとは何か?」を考える上で改めて重要な1枚のような気がします。
『ギター殺人事件 AC/DC流血ライヴ』の邦題で長きにわたり親しまれている本作は、当時の最新アルバム『POWERAGE』(1978年)リリース直前の1978年4月30日にグラスゴーのApollo Theatreにてライブレコーディングされたもの。今作のあとに出世作『HIGHWAY TO HELL』(1979年)を発表しているのもあり、本作はそれ以前のAC/DCにおけるベストヒット的内容と言えるでしょう。
そう、この時期のAC/DCはハードロックというよりはハードブギー、もっと言えばシンプルにロックンロールバンドなんですよ。オープニングを飾る「Riff Raff」とかハードロック調ではあるものの、コードなんてシンプルなブルース進行ですし(LED ZEPPELINの「Rock And Roll」に通ずるものがありますよね)、「Bad Boy Boogie」から「The Jack」の流れなんてまさに王道ロックンロールですから。ハードロック色が強まったのって、結局ブライアン加入後の『BACK IN BLACK』(1980年)以降なんじゃないかな。だから、先の『LIVE』と切り分けて考えるのは当然なのです。
全10曲で約53分(アナログ1枚もの)は当時で考えると長尺ですし、アナログ盤で聴くラストの「Rocker」の音の悪さといったら、それはそれは(笑)。ですが、「Whole Lotta Rosie」以降の後半の熱量は特筆すべきものがあります。実際のライブとは異なる流れながらも、そのあとに当時の最新曲「Rock 'N' Roll Damnation」と初期の代表曲「High Voltage」を挟んで「Let There Be Rock」「Rocker」へと続く構成は最高以外の何ものでもありません。これ以上はないでしょ?ってくらい、究極の流れなのです。高校生のときから何百回、何千回とこの流れに興奮したことか。