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カテゴリー「1980年の作品」の28件の記事

2023年1月10日 (火)

DAVID BOWIE『SCARY MONSTERS (AND THE SUPER CREEPS)』(1980)

1980年9月12日にリリースされたデヴィッド・ボウイの14thアルバム。

実験性の強かった“ベルリン三部作”は、その音楽自体に対する評価は非常に高かったものの、セールス的には決して大成功とは言い難く、特にシングルヒットに関して言えば「Sound And Vision」の全英3位、「Boys Keep Swinging」の同7位以外はTOP10入りを逃しています(かの「"Heroes"」でさえ最高24位ですし)。そのポップ嗜好が前作『LODGER』(1979年)あたりから少しずつ復調し始め、従来の実験性をポップ感が上回り始めたのがこの『SCARY MONSTERS (AND THE SUPER CREEPS)』となります。

共同プロデューサーにはトニー・ヴィスコンティ、レコーディングにカルロス・アロマー(G)やジョージ・マーレイ(B)、デニス・デイヴィス(Dr)といった鉄壁の布陣を迎えるも、過去3作でタッグを組んだブライアン・イーノ(Synth)は今作では不参加。代わりにロバート・フリップ(G/KING CRIMSON)、ロイ・ビタン(Piano)、ピート・タウンゼント(G/THE WHO)といった豪華な布陣が名を連ね、ボウイが思い描く新たなスタイル完成の手助けをしています。

オープニングを飾る「It's No Game, Pt.1」での日本語ナレーションをフィーチャーしたアバンギャルドさに不意を突かれるも、以降は前作で試みたニューウェイヴ的手法が見事に開花。ロバート・フリップらしさ万歳のギターフレーズを随所に散りばめた「Scary Monsters (And Super Creeps)」、自身の代表曲「Space Oddity」の主人公・トム少佐は実は宇宙飛行士ではなく単なるジャンキーだったと歌う「Ashes to Ashes」、王道感の強いミディアムロック「Teenage Wildlife」など、時代とリンクした楽曲群がズラリと並びます。

この中から「Ashes to Ashes」が、シングルとしては「Space Oddity」(1975年)以来となる全英1位を獲得(セールス面でも本国で70万枚近いヒットに)。続く「Fashion」も全英5位/全米70位と好成績を残し、さらに「Scary Monsters (And Super Creeps)」(全英20位)、「Up The Hill Backwards」(同32位)とスマッシュヒットを続けます。特に本作リリース後には、QUEENとのコラボ曲「Under Pressure」(1981年)の全英1位/全米29位という話題作もあり、この良い流れを続く『LET'S DANCE』(1983年)での最盛期へとつなげていくことになります。

実験性と大衆性を天秤にかけ、大衆性を若干強目に打ち出したことで、独自の先鋭的な個性を見事に保ちながら音楽的/セールス的にも成功を手にしたボウイ。『LET'S DANCE』では大衆性に全振りして旧来のファンを不安に陥れるものの、その采配含めてデヴィッド・ボウイ。僕は『LET'S DANCE』からボウイに入った世代ですが、この頃の空気感をリアルタイムで味わってみたかったなと思わせられる1枚です。

 


▼DAVID BOWIE『SCARY MONSTERS (AND THE SUPER CREEPS)』
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2022年8月 3日 (水)

KISS『UNMASKED』(1980)

さて、KISS何度目かの「最後の来日(笑)」が決まったので、本日は当サイトでまだ取り上げていなかったスタジオアルバムを紹介したいと思います。オリジナルアルバムに関しては、これでコンプリートかしら?

本作は1980年5月にリリースされたKISSの8thアルバム。日本では『仮面の正体』の邦題で知られる1枚です(あれ、『地獄の〜』じゃないのか)。

ディスコビートを大胆に取り入れた「I Was Made For Lovin' You」(全米11位)やソウルフルなミディアムナンバー「Sure Know Something」(同47位)のヒットも手伝い、前作『DYNASTY』(1979年)は全米11位、100万枚を超えるセールスを残しました。そこから1年3ヶ月という短いスパンで届けられた次作は、プロデューサーに引き続きヴィニー・ポンシアを起用。前作での成功に気を良くしての続投だと思いますが、これが今回ばかりは悪い方向に導くことになってしまいます。

本作の特徴は、外部の職業作家が手がける楽曲を多数採用していること。80年代半ば以降のHR/HMシーンではもはや当たり前のコライト/楽曲提供という手法ですが、今作においてはそれがあまり良い作用を生み出しておらず、やたらとポップで日和った楽曲で構成されることになってしまいます。

オープニングの「Is That You?」はソングライティングにメンバーが一切関わっていない1曲ですが、この曲はKISSらしいポップロック感を表現することに成功。続くシングル曲「Shandi」(全米47位)も前作の流れを汲んだ作風ですが、少々“甘すぎる”かな?という印象も。ここまでの2曲はポール・スタンレー(Vo, G)が歌唱しています。そこからエース・フレーリー(G, Vo)が歌うストーンズテイストの「Talk To Me」、ジーン・シモンズ(Vo, B)が歌うソウルタッチのミディアムナンバー「Naked City」、再びポール主導のポップロック「What Makes The World Go 'Round」で前半を締めくくります。

後半(アナログB面)はシングルカットされながらもチャートインすらしなかったポール歌唱の「Tomorrow」からスタート。若き日のブライアン・アダムスあたりが歌ったらハマりそうなポップロックですね。続いてエース歌唱の「Two Sides Of The Coin」ですが、この曲はどことなく“ストーンズ meets ニューウェイヴ”みたいな雰囲気もあり、変な浮遊感がところどころから伝わります。その流れでジーン歌唱の「She's So European」、ポール歌唱の「Easy As It Seems」とあまりKISSらしくないヘンテコ(苦笑)な曲が続きます。前者はピコピコしたシンセの音色/アレンジに時代を感じるし、後者はディスコ路線の延長にあるのにアレンジが中途半端。さらに続くエース歌唱の「Torpedo Girl」もその延長線上にあるテイストだけど、エースのヘロヘロボーカルと不思議な調和を生み出しており、嫌いになれない仕上がりに。最後はジーンらしい重厚さも含まれたハードロックチューン「You're All That I Want」でエンディング。

いい曲もあるし、リリースから40年以上経った今聴けばKISSらしいアルバムと受け入れることはできるけど、彼らのキャリアを総括するならば、そこまで重要度の高い1枚ではない。完全に過渡期丸出しで、そりゃあピーター・クリス(Dr, Vo)も脱退するわな、と。

そうそう。ピーターは本作のクレジットに名前を連ねてはいるけど、曲作りやレコーディングには不参加。「Shandi」のMV撮影で久しぶりに姿を見せるも、その直後に正式脱退が発表されます(レコーディングには、『DYNASTY』でも大半のトラックでプレイしたアントン・フィグが参加)。

このテキストを書くために、それこそ10数年ぶりに聴いた1枚ですが、KISS史的には中途半端ながらもひとつのポップロックとして触れると非常に充実した作品ではないでしょうか。もちろん、率先して聴くような重要作ではないですが、これはこれでアリだなと思いました。

 


▼KISS『UNMASKED』
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2022年4月12日 (火)

AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2022年版)

先日ブライアン・アダムスで試してみた、いちアーティストの公式ベストアルバム/コンピレーションアルバムをひとつのエントリーの中で総括する記事AEROSMITH版です。

AEROSMITHは1973年のデビュー以降、Columbia Records(1973〜1984)→Geffen Records(1985〜1997)→Columbia(1997〜2021)→Universal(2021〜)と移籍を繰り返してきましたが、現在は全カタログの権利をUniversalが取得したことで、今後Columbia/Sony時代の音源もUniversalからフィジカル再発/デジタル配信されることになりそうです。

そういった意味では、ここに記す代表的なコンピレーションアルバムのいくつかは今後、姿を消すことになるかもしれません。それでもこの機会に改めて、ひとつの記録として記事を残しておくのはアリかなと思い、今回の執筆に至りました。

選出したベストアルバムは、レーベル主導によるシリーズ企画(Universalの『THE MILLENNIUM COLLECION』など)を除く、新曲やレア曲などを含む9作品。中には廃盤になっていたりサブスクで聴けないものも含まれていますが、ご了承ください。また、すでに単独エントリーで公開済みの作品もありますが、その場合は該当記事のリンクを貼っておきますのでご参考ください。

 

 

『AEROSMITH'S GREATEST HITS』(1980)

 

1980年11月にリリースされた、バンド初のベストアルバム。

そのタイトルどおり、収録内容はシングル曲を中心にしたもので、アナログ時代ということで全10曲/約38分というコンパクトな内容でまとめられています。また、構成的にもリリース順に並べられているので、いきなり「Dream On」から始まるという曲順はロックバンド的にどうなのかな?という疑問も残ります。

収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。

また、映画サントラに提供したビートルズのカバー「Come Together」が収録されている点も注目ポイントかな。『LIVE! BOOTLEG』(1978年)ではライブバージョンを先に聴くことができましたが、スタジオテイクがエアロのアルバムに収録されるのはこれが初めて。そこも本作が長く愛された要因のひとつかなと。

なお、本作がリリースされた頃にはすでにバンドの人気も低迷期に突入しており、チャート的には大きな成功を収めることはありませんでしたが、そこから数年後の再ブレイクも手伝い、セールス的には現在までに1000万枚を超えるメガヒット作となっています。

 


▼AEROSMITH『AEROSMITH'S GREATEST HITS』
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『GEMS』(1988)

 

1988年11月にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。

『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。

本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。

今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。

コアなファンの中には、先述の『AEROSMITH'S GREATEST HITS』より本作のほうが好きという方も、意外と多かったりして。かくいう僕も本作、大好物ですからね。

 


▼AEROSMITH『GEMS』
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2022年3月23日 (水)

KILLING JOKE『KILLING JOKE』(1980)

1980年10月5日にリリースされたKILLING JOKEの1stアルバム。日本盤は翌1981年、『黒色革命』の邦題で発売。

当時のメンバーはジャズ・コールマン(Vo, Synth)、ジョーディー・ウォーカー(G)、ユース(B)、ポール・ファーガソン(Dr)の4人。70年代末のパンクロック/ポストパンク/ニューウェイヴの流れを汲む方向性で、のちにシンセサイザーを多用したインダストリアルロック色を強めていきますが、本作ではエレクトロ要素は味付け程度にとどめ、ギターとドラムを前面に打ち出した(ある意味では旧体制的なパンクロックから80年代的な新時代へと移行する)過渡期的1枚と受け取ることもできます。

リズムが特徴的で、空間系のエフェクトを施したギターサウンド、隙間を埋めるように適度に被せられたシンセの音色、呪術的なメロディラインを吐き捨てるように歌うボーカルなど、パンクからニューウェイヴへの過渡期ならではといった楽曲の数々は、聴く人によっては退屈に映るかもしれません。しかし、この独特のグルーヴは非常にクセになるものがあり、個人的には「Wardance」や「The Wait」など比較的派手めな曲よりも「Tomorrow's World」や「S.O.36」みたいにダブ的要素を含むミディアム/スローナンバーがツボだったりします。

もちろん、初めて聴いたときは冒頭の「Requiem」(かのHELMETもカバー)や疾走感の強い「Bloodsport」、グルーヴィーな「Complication」、METALLICAの名カバーでお馴染みの「The Wait」にTHE MAD CAPSULE MARKETSも取り上げた「Wardance」などに夢中になったものです。今聴いてもこれらの楽曲は色褪せていませんし、初聴時の即効性の強さはリリースから40年以上経った今も維持され続けていると思います。

イギリスではパンクが下火になり、ポストパンクやニューウェイヴが盛り上がり始める一方で、アンダーグラウンドに追いやられていたHR/HMが新亜種=NWOBHMとともに新たなブームを起こし始めていた1980年。実はパンク勢のみならず、メタル新興勢力側からも密かに支持されていたのではないかと思わせられる、そんな魅力に満ちた本作は、そういった意味でも過渡期の中の1枚だったのかな。だからこそ、絶妙なバランス感で仕上がった奇跡の1枚なのかもしれませんね。

なお、オリジナル盤は「Primitive」で終わる全8曲構成ですが、デジタル/ストリーミングを踏む現行盤はアルバム未収録曲「Change」や「Requiem」シングルバージョン、「Primitive」「Bloodsport」のラフミックスなどを含むボーナストラック5曲を追加。「Change」のダブミックスなんてものも含まれており、おまけにしては十分すぎるほど楽しめるボリューミーな内容ではないでしょうか。

 


▼KILLING JOKE『KILLING JOKE』
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2021年1月19日 (火)

U2『BOY』(1980)

1980年10月にリリースされたU2の1stアルバム。

1979年9月に初のEP『THREE』を発表し、続いて1980年に『ANOTHER DAY』『11 O'Clock Tick Tock』と2枚のシングルをリリースしたU2。この『11 O'Clock Tick Tock』ではFactory Recordsの取締役にしてJOY DIVISIONなどのプロデューサーとして知られるマーティン・ハネットがプロデュースを担当しており、続く1stアルバムも彼がプロデュースを手がける予定でしたが、イアン・カーティス自殺が深い影を落とし、制作直前にスティーヴ・リリーホワイトへと交代することになります。しかし、この交代劇がのちのU2快進撃へと大きな影響を与えることとなるわけです。

デビューアルバムにも関わらず、すでに初期U2の世界観が見事な形で完成/表現。スティーヴのプロデュース&ミックスによる特徴的なサウンドプロダクションも、このU2サウンドの確立にかなり大きな影響を与えていることが、特に本作のデラックス・エディションのボーナスディスクに収録された“『BOY』以前”の楽曲群と比較することでより明確になります。

パンク/ニューウェイヴ以降の“ネクストステップ”を示しつつ、ダブリン出身のバンドらしい(といっていいのかな?)仄暗さや湿り気を持ったメロディが、雷が落ちるかのような衝撃を与えるサウンドメイクと合わさることで、唯一無二のスタイルを作り上げている。「I Will Follow」で示されるストレートなロックサウンドや、「The Electric Co.」で見せる“パンク以降”のスタイル、さらには「Twilight」や「An Cat Dubh」などのミドルチューンで表現されたテイストなど、先に述べたように初期U2のスタイル/世界観はこの1作目で早くも固まったといっても過言ではありません。

本作以降、特に3作目『WAR』(1983年)以降のU2を知っている耳で聴くと、確かに未熟さも目立つ1枚かもしれません。が、本作がなければ『WAR』はなかったわけで、ここで早くも第1章の幕開け&完結を届けられたからこそ、彼らの貪欲な音楽探求の旅は果てしなく続いていったわけです。そういった意味でも、本作が果たした役割は想像以上に高いものがあるのではないでしょうか。

個人的には、本作における推し曲は「The Electric Co.」かな。後にも先にも、ここまでパンキッシュに攻めるU2は見られないですし、特に同曲はイントロを拡張させたライブバージョン(2ndアルバム『OCTOBER』デラックス版やライブアルバム『LIVE: UNDER A BLOOD RED SKY』に収録)が最高にカッコいいので、ぜひ合わせてチェックしてもらいたいです。

 


▼U2『BOY』
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2020年12月22日 (火)

PAUL McCARTNEY『McCARTNEY II』(1980)

1980年4月にリリースされたポール・マッカートニーの2ndアルバム。ポール&リンダ・マッカートニー名義での『RAM』(1971年)を含めると、通算3作目というカウントになります。

純粋なソロ名義では『McCARTNEY』(1970年)以来10年ぶりですが、その間にはWINGSとしての活動に注力しており、7枚ものスタジオアルバムとライブアルバム&ベストアルバムを各1枚ずつ発表。相変わらずその多作ぶりには驚かされるものがあります。

そのWINGSの、結果としてラストアルバムとなった『BACK TO THE EGG』(1979年)のリリース時期には制作に取り掛かっていた今作。『McCARTNEY』の続編という意味を示すタイトルからもわかるように、『McCARTNEY』同様すべての楽器をポールが演奏するというDIY精神に満ちた内容になっています。ただ、前作から10年も経ったことで、録音技術や楽器テクノロジーも進化し、1970年当時は4トラックだった録音機材も1980年前後には16トラックにまで進歩。さらにシンセサイザーといったハイテク(笑)機材も大々的にフィーチャーされるようになりました。

このアルバム、オープニングを飾る「Coming Up」(全米1位/全英2位)のキャッチーな印象が強いものの、実はここまで突き抜けた1曲というのはこれくらい。もちろん全体のクオリティは高く、ポップ/ロックアーティストとしてのポールの魅力は存分に伝わるのですが、WINGSを離れてのガス抜きという側面も含まれていることから、やはり本作は『McCARTNEY』の続編なんだなと強く実感させられます。

そういったこともあって、本作ではポールの根っこの部分にある地味で落ち着いた側面も描かれているのですが、前作がアコギベースだったのに対して、今作では「Waterfalls」などに見られるようにエレピをはじめとする電子機器を軸にしているのは大きな違い。「Temporary Secretary」や「Front Parlour」では当時流行していたテクノ/テクノポップからの影響が伺える、シンセ中心の派手な楽曲に仕上がっており、そういった意味では本作もまた実験的な1枚と言えるのではないでしょうか。

また、「Front Parlour」や「Frozen Jap」のようなインストナンバーからは、ドイツのKRAFTWERKや当時海外でも注目されていた日本のYELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)からの影響も見え隠れします。特に「Frozen Jap」は日本を題材にした楽曲ということもあって、和テイストのメロディ含めYMOからの英曲が強いのではないでしょうか。ただ、タイトルに“Jap”という蔑称を用いているあたりに、当時のポールの日本に対するイメージも感じ取ることができます(本作リリースの数ヶ月前、ポールは1966年のビートルズ初来日以来となる日本公演をWINGSとして行う予定でしたが、税関で大麻所持を摘発および日本公演中止。以降、ポールの再来日公演は1990年3月まで待たねばなりません)。

さらに、本作リリースの約半年後となる12月8日には、ビートルズ時代の盟友ジョン・レノンが射殺されこの世を去るという衝撃的な事件も起こります。全米3位/全英1位という好成績を残した本作をドロップした年ではあったものの、ポールにとっての1980年は非常に暗い影を落とす、大きなターニングポイントになったのではないでしょうか。

なお、2011年にリイシューされた本作のリマスター盤のスペシャル・エディション(CD2枚組)およびデラックス・エディション(CD3枚組+DVD)には、この時期にはおなじみのクリスマスソング「Wonderful Chrismastime」も追加収録。オリジナルの10曲(現在は「One Of These Days」を加えた11曲)仕様ももちろん良いですが、アウトテイクや同時期に制作されたアルバム未収録曲を含むこちらのエディションもオススメです。ストリーミングでも気軽に楽しめますので、ぜひ本編を存分に味わったあとにお楽しみください。

 


▼PAUL McCARTNEY『McCARTNEY II』
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2020年12月 1日 (火)

DIAMOND HEAD『LIGHTNING TO THE NATIONS』(1980)

1980年10月にリリースされたDIAMOND HEADの1stアルバム。

いわゆるNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)シーンから登場した重要バンドとして、IRON MAIDENDEF LEPPARDらとともに名前の挙げられる機会の多い彼らですが。メタルリスナーにとってはMETALLICAネタ元 重要なルーツのひとつとして知られているのではないでしょうか。特に本作に収録された全7曲中、METALLICAがカバーしたのは計4曲(「The Price」「Am I Evil?」「It's Electric」「Helpless」)ということもあり、初めて触れたとしても「初めて聴いた気がしない」ような印象を受けるメタルファンも多いはず(筆者がまさにそれでした。笑)。

本作はインディーズからのリリースであり、のちに数度にわたりジャケットを変更して再発され続けています。また、今作で高い支持を得たことによりバンドはMCA Recordsと契約し、2作目『BORROWED TIME』(1982年)でメジャーデビューを果たします。その際、今作収録の「Lightning To The Nations」と「Am I Evil?」が再録されており、改めてデビューアルバムの人気の高さを伺わせることとなりました。

さて、気になるこのデビュー作ですが、録音状態はさすがに年代を感じさせるチープさが目立ちますが、演奏自体はメイデンや初期LEPSにも通ずるプログレッシヴさを擁するハードロックサウンドを展開。ですが、メイデンのようなパンキッシュさはほぼ存在せず、LEPSみたいな若々しさも皆無(笑)。どちらかというと、玄人好みのハードロックなのかなという印象を受けます。

でもね、歌も演奏も曲も、良いんですよ。オープニングを飾る「Lightning To The Nations」から「The Price」へと続くアッパーな流れといい、9分半にもおよぶプログレッシヴな展開の「Sucking My Live」といい、そこからドラマチックな展開を持つ「Am I Evil?」への流れ、リフと歌の節回しがクセになる「Sweet And Innocent」、METALLICAでおなじみの「It's Electric」「Helpless」2連発で締めくくり。約40分があっという間に感じられるのです。どの曲もギターリフや歌メロのキャッチーさが際立つし、それ以前の70年代ハードロックほどの古臭さも感じられない。きっと40年前に自分が10代半ばのロックリスナーだったら、このアルバムにHR/HMシーンの未来を感じたんでしょうね。しかも、同時期にはメイデンの『鋼鉄の処女』もあるわけですからね。

40年前に突如シーンに登場したメイデンやDIAMOND HEADって、きっと2020年でいうBRING ME THE HORIZONCODE ORANGEのような存在だったのかな……なんて思いを馳せながら本作と、その40年後にリメイクされた『LIGHTNING TO THE NATIONS 2020』を立て続けに聴く2020年最後の1ヶ月の始まりなのでした(以下、『LIGHTNING TO THE NATIONS 2020』レビューに続く)。

 


▼DIAMOND HEAD『LIGHTNING TO THE NATIONS』
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2020年10月17日 (土)

RUSH『PERMANENT WAVES』(1980)

1980年1月14日に海外でリリースされたRUSHの7thアルバム。

初期のハードロック路線から『2112』(1976年)、『A FAREWELL TO KINGS』(1977年)で大作主義/プログレ路線へと移行して自身の個性を確立し始めたRUSHでしたが、ことアメリカでは『A FAREWELL TO KINGS』の33位が最高で、シングルにいたっては「Closer To The Heart」の76位が最高。レコード会社的にも「ラジオで流しやすい適度な長さの、キャッチーな楽曲」を欲しがったことでしょう。実際、バンド側にもそういったプレッシャーは少なからずあったのかもしれません。

また、70年代末あたりになるとハードロックやプログレといったジャンルが旧世代として敬遠されがちになり、代わりにパンクロックやニューウェイヴといった新たなジャンルに注目が集まり始める。ちょうどこのシーンの変遷がバンドの変化/進化とうまくフィットし、次のディケイドへと突入した1980年頭にこの『PERMANENT WAVES』という意欲作で、新たな門出を迎えることになるわけです。

とはいえ、今作は以前の大作主義と80年代以降のコンパクト路線の間にある、過渡期といえるような内容。オープニングを飾る「The Spirit Of Radio」ではシンセを全面的にフィーチャーしたアレンジで、かなりキャッチーかつ親しみやすい内容ですが、要所要所にレゲエなどの新機軸も取り入れられており、複雑に変化していく構成はRUSHならではといったところでしょう。それでも、この曲が与えたインパクトは相当強いものがあり、続く「Freewill」とのオープニングはバンドの再出発/リニューアルにふさわしいものでした。実際、「The Spirit Of Radio」はシングルカットされ、本国カナダで22位、アメリカでも51位、さらにイギリスでは13位と過去最高位を更新しています。

アルバムは全6曲、アナログでは各面3曲ずつで、頭2曲で新機軸のコンパクト&キャッチー路線の片鱗を伺わせで、各面ラストで従来の大作路線をしっかり提示しています。A面ラストの「Jacob's Ladder」は7分半、B面ラストの「Natural Science」は3曲から構成された9分強の組曲。A面は上記のように頭2曲でポップな新機軸を打ち出しており、そのあとに従来の“らしさ”を「Jacob's Ladder」アピール。B面も同じくキャッチーなメロディ&曲調の「Entre Nous」やセンチメンタリズムの強い「Different Strings」などでしっかり引きつけておいて、最後の最後でプログレ超大作「Natural Science」で締めくくるという、良くも悪くも「そうはいっても、これまでの路線を簡単に捨てられないよね?」という意地みたいなものが伝わってきます(笑)。いや、これはこれでいいんですけどね。

結局、こういった意地は次作『MOVING PICTURES』(1981年)から少しずつ薄れていき、80年代半ばには完全に払拭されることになります。70年代と80年代後半以降の橋渡しという意味で、最初は過渡期と表現しましたが、実はこれくらいのバランスが心地よかったりするのもまた事実。本作や『MOVING PICTURES』がファンから名盤として高く評価されるのは、そういう理由もあるんでしょうね。個人的には80年代半ばの路線と90年代のゴリゴリスタイルがお気に入りなのですが、それでもこの時期の2作は特別な思い入れがあります。今春にはリリース40周年記念盤も発売されているので、ぜひこの機会にチェックしてみてはいかがでしょう。

 


▼RUSH『PERMANENT WAVES』
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2020年8月 8日 (土)

JUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』(1980 / 2010)

1980年4月にリリースされたJUDAS PRIESTの6thアルバム。

日本公演の模様を収めたライブアルバム『UNLEASHED IN THE EAST』(1979年)を最後にレス・ビンクス(Dr)が脱退。新たに元TRAPEZEのデイヴ・ホーランド(Dr)が加入し、同ライブアルバムを手がけたトム・アロムがそのままプロデューサーを担当し完成したのが、のちにバンドを代表するこの歴史的名盤になります。

ブルースベースでプログレッシヴなハードロックを展開した初期のスタイルから、前作『KILLING MACHINE』(1978年)で見え隠れし始めたコンパクト&シンプルな作風へと完全移行した今作は、ギターリフの強度を強めることでハードロックからヘヴィメタル的スタイルへと見事に進化。これが当時イギリスのアンダーグラウンドで勃発し始めた「New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)」ムーブメントと見事に合致し、シーンから好意的に受け入れられ、全英4位という過去最高記録を樹立することになります。特に本作からは「Living After Midnight」(全英12位)、「Breaking The Law」(同12位)、「United」(同26位)とヒットシングルを連発したことも、アルバムの成功を導いたと言えるでしょう。

スピード感の強い「Rapid Fire」でスリリングさを演出したかと思うと、バンドにとって大きな意味を持つテーマソング「Metal God」、キャッチーなアップチューン「Breaking The Law」、ヘヴィさとキャッチーさを併せ持つ「Grinder」や「United」など、すべての楽曲が2〜3分台で構成された聴きやすい構成でアルバム前半はあっという間に終了。「You Don't Have To Be Old To Be Wise」から始まる後半もポップさの際立つ「Living After Midnight」やレゲエを思わせるイントロからヘヴィなサウンドへと移行するアレンジが魅力的な「The Rage」、圧巻のスピードメタル「Steeler」など、聴きどころ満載で全9曲というコンパクトな尺と相まって、興奮して気づいたら終わってる……みたいな1枚と言えるのではないでしょうか。とにかく捨て曲なし。ロブ・ハルフォード(Vo)のボーカルパフォーマンスもノリにノッてるし、バンドのヒリヒリした演奏&アレンジも最高の一言。カミソリをイメージしたサウンドは確かに切れ味抜群なんだけど、同時にポップ&キャッチーさも備わっていることを忘れてはいけません。

オリジナル盤および現行盤はアナログA面が「Rapid Fire」から「United」までの5曲、B面が「You Don't Have To Be Old To Be Wise」から「Steeler」までの4曲という構成なのですが、僕が初めて聴いた80年代半ばは1曲目が「Breaking The Law」に変更され、2曲目から「Rapid Fire」「Metal God」「Grinder」「United」、アナログB面が「Living After Midnight」「You Don't Have To Be Old To Be Wise」「The Rage」「Steeler」という構成で、今とは異なるものでした。これ、実はUS盤の曲順とのことで、この流れに慣れ親しんでしまったものですから、のちにオリジナル盤の曲順に戻ったCDを聴いたときに違和感がしばらく残ったものでした。まあ、シングル曲を各面の頭に置く構成にした意味もわからないではないですけどね。

とにかく、プリーストを語る上で真っ先に挙がるであろうHR/HMの教科書的1枚。80年代のHR/HMシーンが新たな幕開けを飾る、その象徴と言える傑作です。

 


▼JUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』
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なお、本作のリリース30周年を記念して2009年には同作完全再現パートを含むワールドツアーが実施され、この模様を収めたライブDVDを同梱したアニバーサリー・エディションも2010年に発売されています。この記念盤、国によっては最新ライブDVDから「Prophecy」を除いた15曲入りライブCDが追加された3枚組仕様も販売されています。こちらのライブディスクはiTunes Storeや一部ストリーミングサービスでも配信されているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

プリーストは同ツアーで、2009年10月に行われた『LOUD PARK 09』の初日ヘッドライナーとして来日しており、これがK.K.ダウニング(G)を含む編成での最後の来日となってしまいました。この際、僕は『TV Bros』の表紙および特集の一環としてロブ・ハルフォードにインタビューしており、当日はこの『BRITISH STEEL』のジャケTシャツを着て臨んだことをよく覚えています(ロブもかなり喜んでくれました)。インタビューはライブ当日午後に都内で行い、そのまま幕張入りして夜にはライブ……自分の人生にとっても忘れられない1日になりました。そういった意味でも、このアルバムは自分の音楽人生にとって大きな思い出の1枚でもあります。

 


▼JUDAS PRIEST『BRITISH STEEL: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
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2020年5月14日 (木)

CHEAP TRICK『ALL SHOOK UP』(1980)

1980年10月にリリースされた、CHEAP TRICK通算5枚目のスタジオアルバム。

ライブアルバム『AT BUDOKAN』(1979年)および4thスタジオアルバム『DREAM POLICE』(1979年)がともに全米TOP10入り(前者が3位、後者が6位)を果たし、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たしたCHEAP TRICK。これらのヒットをフォローアップすべく制作された今作『ALL SHOOK UP』は、ある意味ではバンドが本来挑戦したかったことが表現されているのですが、それは必ずしもファンが望むものではなかったという、わかりやすい例になっています。

プロデューサーに迎えられたのが、かのジョージ・マーティン。レコーディングエンジニアにはジェフ・エメリックという、ビートルズでおなじみの布陣で制作された本作のレコーディングはAbbey Road Studio……ではなく、Air Studioにて行われました。

バンドとしての個性を確立させた初期3作、そこからさらに一歩前進した『DREAM POLICE』で確固たる「CHEAP TRICKらしさ」を手にしたものの、今作ではそれとは同じことはしなかった。かといって「まんまビートルズ」というわけでもない。適度なハードロック感を残しつつも、彼らは本作で早くも“大人”になろうとしていたのではないか。1作目の『CHEAP TRICK』(1977年)から本作までの5作を続けて聴くと、よりそう感じられるのです。

オープニングを飾る「Stop This Game」で表現された壮大さは過去4作にはなかったものですし、「Just Got Back」や「Can't Stop It But I'm Gonna Try」では従来の“らしさ”をより大人びたものへと進化させている。かと思えば、ジョージ・マーティンとタッグを組んだからこそ生まれたであろう「World's Greatest Lover」のような名バラードもあるし、かの“すかんち”が某曲で元ネタにした「Baby Loves To Rock」のようなロックンロールナンバーもある。どちらも確実にジョン・レノンポール・マッカートニーの影響下にあるアレンジですよね。

後半も『DREAM POLICE』でトライしたことがビルドアップされたかのような「High Priest Of Rhythmic Noise」や「Go For The Throat (Use Your Own Imagination)」、ストレートな「Love Comes A-Tumblin' Down」、トライバルで風変わりな「Who D' King」など個性的な楽曲が満載。ただ、過去4作にあった「弾けるようなパワーポップ感」は若干薄れつつあるような印象もあります。そこを良しとするか否かで評価がわかれそうですね。

『AT BUDOKAN』、『DREAM POLICE』とわかりやすいパワーポップ/ロック作品が続いたことで、(またジョージ・マーティンなど憧れのスタッフと共作することで)バンドとして新たな一手を提示しようと思ったのでしょうが、リスナーはそれでも「第二の『DREAM POLICE』」を欲しがった。結果、本作は全米24位と前作から順位を落とし、セールス面でも50万枚と売り上げ半減します。シングルもチャートインしたのは「Stop This Game」(全米48位)のみ。内容は過去4作にも匹敵する(いや、個人的には今一番ピンとくる)1枚ですが、ヒットには結びつきませんでした。

また、ハードなツアー生活に嫌気が差したトム・ピーターソン(B, Vo)は、本作完成後にバンドを脱退。バンドはピート・コミタを迎え、ツアーを行います。ここから約8年間、バンドの低迷期が続くわけですね……。

 


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