カテゴリー「1982年の作品」の19件の記事

2020年4月18日 (土)

VAN HALEN『DIVER DOWN』(1982)

1982年4月にリリースされたVAN HALENの5thアルバム。

3rdアルバム『WOMEN AND CHILDREN FIRST』(1980年)、4thアルバム『FAIR WARNING』(1981年)とオリジナル曲のみで勝負した作品を連発したVAN HALENですが、セールスは下がる一方。年に1枚というな創作ペースも災いし、ここでいわゆる“マンネリ感”が強く表出してしまます。

全12曲と一見すると今までで一番楽曲が多い印象を受けますが、内訳的には3曲がインスト/インタールードで、そのうち2つは次の曲の前奏的な役割。さらにカバー曲が過去最多の5曲と、歌モノ・オリジナル曲は実質4曲という体たらく。完全に過渡期中の過渡期やん。

ですが、本作は「(Oh) Pretty Woman」(全米12位)や「Dancing In The Street」(同38位)と、カバー曲ながらもヒットシングルが続出。アルバム自体も全米3位と過去最高順位を打ち出し、セールス面でもダブルミリオン達成と息を吹き返すきっかけを与えてくれます(最終的に、現在までに400万枚以上を売り上げています)。

また、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)のギターも前作『FAIR WARNING』から引き続き水を得た魚のように、変幻自在なプレイで我々を楽しませてくれます。「Hang 'Em High」での難易度高めなリフ、「Cathedral」でのバイオリン風ボリュームコントロール、「Dancing In The Street」でのディレイを用いたダンサブルな味付けなど、インパクトは強めかと。

カバー曲中心なので、楽曲自体は悪いわけがない。また、アレンジ的にも至るところから“らしさ”が感じられる。バンドの創作面でのマンネリ感は否めないものの、プレイヤビリティにおいてはさらに高まっていることが伺えるはずです。

なお、「Big Bad Bill (Is Sweet Wlliam Now)」ではアレックス(Dr)&エディ兄弟の実父ジャン・ヴァン・ヘイレンがクラリネットで参加。そういうお遊び感もあってか、“ユルさ”が印象に残る1枚。だからこそ、次に『1984』(1984年)や「Jump」という傑作が産み落とされるなんて、誰も想像できなかったのではないでしょうか。

 


▼VAN HALEN『DIVER DOWN』
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2020年3月11日 (水)

WHITESNAKE『SAINTS AND SINNERS』(1982)

1982年11月にリリースされたWHITESNAKEの5thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年12月に発表されました。

これまで1年間隔でアルバムを制作してきたWHITESNAKEですが、本作は過去最長の1年半という期間を要してファンの手元に届けられています。もちろん、半年なんて今の感覚で言えば誤差範囲ですし、デビューからここまで休みなく走り続けてきたバンドですから、これくらいの間隔ができても別に不思議ではありません。

しかし、前作『COME AN' GET IT』(1981年)のレビューに書いたようにバンドとしてのマンネリ化が始まっていたWHITESNAKE。バンマスのデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)は本作制作に入る前、公私ともにかなりのプレッシャーに襲われていたとのこと。そういう不安を抱えたままスタジオ入りすると、今度はバンド内がギクシャクしていることにも気づく。最初のセッション時には長年のプロデューサーであるマーティン・バーチ(DEEP PURPLERAINBOWBLACK SABBATHIRON MAIDENなど)も不在。すべてが噛み合わない状況の中、スタジオを変えるなどして制作を続けるも、カヴァーデイル的にはお手上げ状態に。

結果、アルバムは無理くり完成させられます。楽曲は全10曲中、カヴァーデイル単独で書いた楽曲が4曲と前作と同じ流れ。ほかはバーニー・マースデン(G, Vo)との共作が2曲、ミッキー・ムーディ(G)との共作が3曲、バンドメンバー6人の名前がクレジットされた1曲という内訳です。これがすべてバンドの内部分裂に関係するのかは正直定かではありませんが、確かにカヴァーデイルが単独で書いた「Bloody Luxury」や「Victim Of Love」といった楽曲は比較的よくできているほうなんですよね。

もちろん、そのほかの楽曲も素晴らしいですよ。演奏も聴くぶんにはタイトさが伝わる、前作『COME AN' GET IT』の延長線上にある作風ですし。個人的には地味に感じた前作よりも、若干派手さが復調しているような印象も受けますし。それもあってか、全体的な作風としても次作『SLIDE IT IN』(1984年)に通ずる要素がところどころから感じられます。

また、本作には「Crying In The Rain」と「Here Go I Again」という、5年後に7thアルバム『WHITESNAKE』(1987年)でリメイクする突出した2曲を含むんでいることも大きなトピックかなと。混沌とした時期のアルバムながらも、こういった突き抜けた楽曲が収録されたことで救われているのも非常に大きいと思います。

本作完成後、バンドはカヴァーデイル、ムーディ、ジョン・ロード(Key)のレコーディング参加メンバーにメル・ギャレー(G, Vo/彼はレコーディングにもコーラスで参加)、コリン・ホッジキンソン(B)、そしてコージー・パウエル(Dr)という新たな編成へとシフト。「Here Go I Again」のMVはこの布陣で撮影されたものですね(アルバム裏ジャケなどに写っているのもこの6人です)。それもあって、アルバムにはレコーディングメンバーは記載されておりません。また、そんな不安定さは結果として、数字にも表れてしまいます。リードシングル「Here Go I Again」は全英34位、アルバム自体は全英9位と、どちらも前作から数字を落とす結果に。そんな複雑な時期の、本当に混沌とした本作は大きな括りでの第1期WHITESNAKE終焉をそのまま形として表した1枚なわけです。

なお、本作は2006年のリマスター化に際し3曲のボーナストラックを追加。「Young Blood」「Saint An' Sinners」の別テイクと、未発表曲「Soul Survivor」を楽しむことができます。「Soul Survivor」は歌が入っていない未完成なものなので、完全にオマケでしかありませんが……。

 


▼WHITESNAKE『SAINTS AND SINNERS』
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2019年10月10日 (木)

VANDENBERG『VANDENBERG』(1982)

オランダのハードロックバンド、VANDENBERGが1982年9月に発表した1stアルバム。

エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)を中心に結成された4人組バンドで、メンバーはエイドリアンのほかバート・ヒーリンク(Vo)、ディック・ケンパー(B)、ジョス・ズーマー(Dr)という編成。結成から程なくしてAtlantic Recordsと契約し、このアルバムを発表しています。

ちなみにエイドリアンはVANDENBERG結成前にTHIN LIZZYWHITESNAKEのギタリスト・オーディションを受けて、ともに落選したとのこと。この時点ですでにオランダから外に出ていきたいという思いが強かったのでしょうね。本作はアメリカでも最高65位という好成績を残しており、さらに本作からシングルカットされた「Burning Heart」も全米39位のスマッシュヒットを記録。異国からの新人がデビューでここまでの成績を残すのは異例のことですし、そもそも1982年というとLAメタル勢を中心とするHR/HMブーム前夜。アメリカ国内ではVAN HALENがヒットを飛ばし続ける中、NIGHT RANGERといった気鋭の新人が登場し、オジー・オズボーンと活動を共にしたランディ・ローズ(G)が飛行機事故で亡くなったタイミング。ブーム前夜ではあるものの、新たなヒーローが求められていた時期であったことは間違いありません(日本のLOUDNESSが海外でウケ始めたのも、そういった理由からでしょうし)。

そんな中登場したVANDENBERG。北欧のバンドらしい湿り気の強いメロディを持つ楽曲のみならず、VAN HALENにも通ずるカラッとしたハードロックナンバーも含まれており、そのへんのバランス感が新しさとして受け入れられたのかもしれません。思えばこの頃ってSCORPIONSくらいでしたものね、イギリス以外のヨーロッパのHR/HMバンドがアメリカで成功していたのって。

オープニングの「Your Love Is In Vain」の軽快さって、今聴くとちょっとVAN HALENっぽくもあれば、オジーっぽくもあるのかなと。そこに流麗なアコギソロを冒頭に用意した「Wait」のような楽曲や、泣きのバラード「Burning Heart」、豪快なギターリフ&ソロを含む疾走感の強いファストチューン「Ready For You」、ブギーのリズムなのに不思議とヨーロッパのバンドらしい勇ましさと繊細さが混在した「Too Late」など個性的な楽曲が複数含まれている。正統派マイナーハードロック「Nothing To Lose」も、勢いのみで突進する「Out In The Streets」も文句なしのカッコよさを放っている。そりゃ売れるしウケるわけだ。

そして、この感覚ってのちのDOKKENにもつながっていくのかな、と改めて思いました。DOKKENの1st〜2ndあたりの雰囲気と本作の空気感って、非常に近いものがありますよね?

あと、こういった豪快さと繊細さを併せ持つスタイルって、意外と日本人が好きなんじゃないかな。派手になりすぎず、ちゃんと侘び寂びを感じさせる要素が含まれている。そりゃ日本でもウケるわけですね。納得です。

僕自身はリアルタイムだと3rdアルバムにしてラスト作となった『ALIBI』(1985年)からの後追い組ですが、完成度的には次作『HEADING FOR A STORM』(1983年)と『ALIBI』のほうが上かもしれないけど、未完成ならではのデビュー作らしい勢いは本作が圧倒的。なんだかんだで一番聴くのもこの1stアルバムかもしれません。

 


▼VANDENBERG『VANDENBERG』
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2019年7月20日 (土)

DURAN DURAN『RIO』(1982)

実はこのエントリーがTMQ-WEBにとって3000件目になります。前身の「とみぃの宮殿」時代に公開したエントリーでこちらで補完していないものも含めれば、とうに3000件は突破しているんでしょうけど、まあ目に見えてわかったということで、今回は自分の音楽人生におけるルーツ的1枚を紹介したいと思います。

本作はDURAN DURANが1982年5月に発表した2ndアルバム。すでにデビュー作『DUNRAN DURAN』(1981年)が全英3位のヒットを記録しており、「Girls On Film」がMTVの恩恵を受け全英5位というヒットを飛ばしたあとの1枚とあって、この2作目のアルバムは全英2位まで上昇。また、イギリスでの勢いをそのままに、このアルバムで本格的なアメリカ進出を図り、「Hungry Like The Wolf」(全英5位/全米3位)、「Save A Prayer」(全英2位/1985年の再発時に全米16位)、「Rio」(全英9位/14位)といったヒットシングルを多数生み出したほか、アルバム自体も全米6位、ダブルプラチナムを獲得しています。まさに、彼らやCULTURE CLUBなどの活躍が第2次ブリティッシュ・インベイジョンへとつながっていくわけです。

本作では1stアルバムで見受けられた線の細さが払拭され、よりロックバンド然としたスタイルが確立されています。そのへんはヒットシングル「Hungry Like The Wolf」や「Hold Back The Rain」「New Religion」あたりに強く表れていると思います。また、アルバムより先にシングルリリースされていた「My Own Way」も、アルバムバージョンとしてリテイク。シングル版は軽快さが際立つ仕上がりでしたが、アルバム版はテンポをグッと落としたヘヴィファンクチューンへと変貌を遂げています。

もちろん、従来の彼ららしいニューウェイヴ的なカラーも残されています。ブラックミュージックからの影響を感じさせながらも、どこかいびつで白人らしいアレンジが印象的な「Rio」や「Last Chance On The Stairway」あたりはそういった楽曲と言えるのではないでしょうか。このへんも前作と比べたら、芯の太さが全然違いますよね。たった1年で何があったんだ?と思えるほどの成長ぶりです。

で、本作のハイライトとなるのがラスト2曲……「Save A Prayer」と「The Chauffeur」です。どことなくオリエンタルな雰囲気が漂うシンセのリフが印象的な「Save A Prayer」ですが、実はジョン・テイラー(B)のベースラインの非凡さや、アンディ・テイラー(G)のなんてことはないのに耳に残るギタープレイの妙技など、実にアレンジが凝った1曲なのです。もっとも、本作を初めて聴いた中学生の頃はそんなことに気づきもせず、もっと大人になって楽器を触るようになって理解したことですけどね。

そして、ラストを飾る「The Chauffeur」の耽美さ……このへんを聴くと、初期ヴィジュアル系バンドがこの時代のバンドからいかに大きな影響を受けていたかが伺えるのではないでしょうか。

静と動を巧みに使い分け、しかもそれらを卓越したアレンジ力で聴かせる。この当時、バンドとしてのライブでの演奏力はまだまだだったという話もありますが、こういったスタジオワークでの経験がどんどんライブにも反映されていき、また幾多のワールドツアーを経て彼らは真の意味でのライブバンドへと成長していった。そういった意味では、本作はDURAN DURANというバンドにとって本当の意味でのスタート地点だったのかもしれません。

 


▼DURAN DURAN『RIO』
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2019年7月 7日 (日)

IRON MAIDEN『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982)

1982年3月にリリースされたIRON MAIDENの3rdアルバム。初期2作で歌っていたポール・ディアノから、元SAMSONのブルース・ディッキンソンが本作から参加しています。

「Run To The Hills」(全英7位)、「The Number Of The Beast」(同18位)といったヒットシングルも生まれ、アルバムは初の全英1位を獲得。アメリカでも最高33位と初のTOP40入りを果たし、100万枚以上を売り上げる大きなヒット作となりました。

粗暴で男臭いディアノのボーカルから一点、ディッキンソンはがなるようなハイトーンが特徴で、彼の個性を活かした曲作りが早くも多数見受けられます。オープニングを飾る「Invaders」のパンキッシュなスピード感は1stアルバム『IRON MAIDEN』(1980年)でも見受けられたものですが、そこに歌い上げるようなハイトーンが加わることで新たな魅力が加わっています。うん、プログレッシヴなパンクアルバムから普通のHR/HMアルバムへとシフトしたような(「普通の」と言いますが、そこはかなりのハイクオリティなんですけどね)。

かと思えば、センチメンタルなアルペジオから始まるヘヴィチューン「Children Of The Damned」、同名ドラマのセリフがそのまま用いられた「The Prisoner」などディッキンソン時代ならではの“らしい”曲が続きます。「The Prisoner」のポップさもなかなかのものがありますよね。

そして、「22 Acacia Avenue」のようなドラマチックなメロディを持つナンバーやポップさが際立つ「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」と、アルバム中盤で大きな山場を迎える。特にシングルヒットした「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」、そしてのちに触れる「Hallowed Be Thy Name」は今でもライブで演奏されており、ディッキンソン・メイデンのパブリックイメージを語る上で欠かせないナンバーと言えるでしょう。

ドタバタしたドラミングが印象的な「Gangland」を経て、「Total Eclipse」へ……あれ、最新リマスター盤(2018年)だとこの曲カットされてる! そうなんです。1998年のリマスター盤ではラスト前にシングル「Run To The Hills」のカップリング曲「Total Eclipse」が追加収録されていたんですが、現行の最新リマスターではオリジナルアナログ盤の仕様に沿った内容に戻されています。まあ、別にないっちゃあなくても平気なんですが、「Total Eclipse」がある曲順に慣れていたのでちょっとした違和感が。

で、ラストに名曲中の名曲「Hallowed Be Thy Name」。最高の締めくくりですね。こういった楽曲がレパートリーに加えられるようになったのも、ブルース・ディッキンソンという稀代のシンガーが加わったからこそ。単なる“第二のデビュー作”という以上に、1stアルバムとは別の意味でメイデンの歴史に、そしてHR/HMの歴史において欠かせない1枚です。

 


▼IRON MAIDEN『THE NUMBER OF THE BEAST』
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2019年4月26日 (金)

NIGHT RANGER『DAWN PATROL』(1982)

1982年11月にリリースされたNIGHT RANGERのデビューアルバム。70年代末にファンクバンドRUBICONに参加していたブラッド・ギリス(G)、ジャック・ブレイズ(B, Vo)、同バンドのツアーメンバーだったケリー・ケイギー(Dr, Vo)を中心に、MONTROSEのメンバーだったアラン・フィッツジェラルド(Key)とその友人ジェフ・ワトソン(G)という5人でRANGERというバンドを結成し、のちに現在のNIGHT RANGERへと改名。デビュー前にはランディ・ローズ急逝後のオジー・オズボーンのバンドにブラッドが一時参加するなどして、知名度を上げてからのデビューとなりました。

アーミングを多用したストロングスタイルのプレイを聴かせるブラッドと、両手タッピングによる“8フィンガー”奏法が話題となったジェフという異なるタイプのギタープレイヤー、ジャック&ケリーのリズム隊がリードボーカルを務めるという異色のスタイル、なおかつ楽曲が適度にハードで歌メロがポップ、親しみやすいバラードも要するという絶妙なバランス感はこのデビュー作の時点ですでに完成の域に達しつつあります。

特にオープニング2曲「Don't Tell Me You Love Me」(全米40位)、「Sing Me Away」(同54位)を聴けば、このバンドの魅力の大半が伝わるんじゃないか……というのは言い過ぎでしょうか。でも、個人的にはそれくらいこのバンドの個性を端的に表した2曲だと思っています。

かと思えば、「Call My Name」のようなピアノバラードがあったり、「Eddie's Comin' Out Tonight」みたいにドラマチックなハードロックナンバーがあったりと、どの曲も個性が強い。次作『MIDNIGHT MADNESS』(1983年)以降、能天気なアメリカンロック色を強めていき、パブリックイメージ的にもそっち側とパワーバラードのバンドと印象付けることになってしまいますが、まだこのデビュー作の時点ではマイナーキーの楽曲でドラマチックさや仰々しさを打ち出している。「Can't Find Me A Thrill」なんて適度なメジャー(コード)感がありつつも泣きの要素が備わっているし、「Young Girl In Love」はそこまで能天気ってわけでもない。この感覚をもっと保ち続けてくれたら、その後の歴史もまた変わったんじゃないかな(と同時に、あそこまでヒットしなかったかもしれないけど)。

圧巻はラストの「Night Ranger」。スタジオ音源も素晴らしいですが、この曲は特にライブテイクが素晴らしく。ライブでこの曲をやってくれないと、個人的には非常にがっかりするくらい、個々のプレイヤーの個性が輝く1曲なんですよね。気になる人がいたら、ぜひYouTubeで同曲のライブ映像を探してみてください。

というわけで、ポップさでは次作以降より若干劣るものの、ハードさという点においてはキャリア中1、2を争う仕上がり。そりゃいきなり全米38位という好成績を残すわけです。

 


▼NIGHT RANGER『DAWN PATROL』
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2018年11月22日 (木)

QUEEN『HOT SPACE』(1982)

1982年5月に発売されたQUEEN通算10作目のスタジオアルバム。前作『FLASH GORDON』(1980年)が同名映画のサウンドトラック盤だったこともあり、全英10位/全米23位と、前々作『THE GAME』(1980年)の英米1位と比べて低調な結果で終わっていました。それもあり、続くこの『HOT SPACE』に対する期待は相当大きなものがあったと思われますが、誰もがそのサウンドの変貌ぶりに腰を抜かした……のではないかと想像します(なにせこのへんはリアルタム組ではないので)。

『THE GAME』でシンセサイザーを解禁し、続く『FLASH GORDON』では全面的にフィーチャーした彼ら。この『HOT SPACE』ではその路線を踏まえつつ、当時のヒットチャートを賑わせていたダンスビートやディスコサウンドを軸に楽曲制作を敢行するのです。

「Another One Bites The Dust」の大成功がバンドにどれだけの影響を及ぼしたのかわかりませんが、彼らはこのアルバムで(それまでも随所から感じられた)ブラックミュージックへと本格的に傾倒します。オープニングの「Staying Power」なんてブラスをフィーチャーした、これぞファンクミュージック!と言いたくなるファンキーな楽曲で、ドラムは打ち込み、ベースもシンセベースを導入するなど、とても70年代のQUEENとは比べようがないほどの変貌を遂げています。

その後も「Dancer」「Back Chat」「Body Language」と、時代を感じさせる黒っぽいダンスミュージックが満載。「Dancer」のサビ後ろで鳴っているブライアン・メイ(G, Vo)のディストーションギターを聴いて、ようやく「自分はQUEENのアルバムを聴いているんだ」と思い出すくらい、しばらくQUEENという存在を忘れさせてくれる。そんな1枚です(笑)。

ところが、アルバム後半に入ると突如従来のQUEENがよみがえってきます。「Put Out The Fire」のようなハードロックチューンを聴くと、彼らは自分たちがどんなバンドであったか決して忘れたわけではないことに気づかされるし、ジョン・レノンを追悼するピアノバラード「Life Is Real (Song For Lennon)」も我々がよく知るQUEENが表現されているのですから。

「Calling All Girls」のようなポップロックも『THE GAME』の流れを組む良曲ですし、シンセが全面フィーチャーされているものの「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」だってコーラスを聴けばQUEENそのもの。フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)のファルセットがセクシーなソウルバラード「Cool Cat」なんて、アルバム前半の打ち込みサウンドと比べたら全然受け入れられるし、アルバムのラストはデヴィッド・ボウイとのデュエット曲「Under Pressure」ですから。あれ、これ完全にQUEENじゃん。俺、QUEENのアルバム聴いてたわ!って、最後の最後でしっかり満足させてくれるのですよ。

序盤で濃厚な実験作を並べてリスナーを引かせてしまう本作ですが、通して聴くと実はちゃんと“QUEENらしい”内容だって気づかされる。「Action This Day」でロジャー・テイラー(Dr, Vo)が、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」でブライアンがそれぞれ一部歌唱していますが、メインボーカルを務めるのはほぼフレディのみというのも、バンドの作品というよりものちにリリースされることになるフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)に通ずるものがあるなと、今聴くと思うわけです。

QUEENの歴史上、どうしても駄作だとか失敗作だとかそういうネガティブな印象の強い1枚ですが(チャート的には全英4位、全米22位。シングルも全英1位の「Under Pressure」を除けば、「Body Language」が全英25位/全米11位、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」が全英17位、「Back Chat」が全英40位と低調な結果に)、本作があったからこそ80年代後半以降の“マジック”が確立するわけですから。80年代のQUEENを語る上では欠かせない1枚であることは間違いありません。



▼QUEEN『HOT SPACE』
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2018年3月11日 (日)

MOTLEY CRUE『TOO FAST FOR LOVE』(1981 / 1982)

記念すべきMOTLEY CRUEのデビューアルバム。本作は1981年11月にバンドの自主レーベルLeathür Recordsから一度発売されたのち、1982年8月(US)にロイ・トーマス・ベイカーがリミックスを施したバージョンがメジャーレーベルElektra Recordsからリリースされています。つまり、『TOO FAST FOR LOVE』には2つのバージョンが存在しているわけです。

僕が初めて聴いたのは、80年代後半に当時のワーナー・パイオニアから発売されたCD、つまりElektra Recordsのバージョン。その後、同作には別バージョンがある、その収録内容もアレンジも異なるらしいぞ、という噂を聞いて西新宿あたりをさまよって、Leathür Recordsバージョンのかなり高額なブートレッグCD(同作のCDは公式には制作されていないので、間違いなくレコードからそのまま起こした音源)を購入してその内容に驚かされました。あれ、こっちのほうがいいじゃん!って。

収録内容の違いはWikipediaなどで確認していただくとして……LeathürバージョンとElektraバージョンがどう違うのかについて触れていくと、まず音の厚みが全然違う。当然、リミックスを施したElektraバージョンのほうが全体的に音像に厚みが感じられる。さらに、曲によってはギターやボーカルがオーバーダビングされており、そういった試みも功を奏している。うん、最初にこっちを聴いたら、これカッコいいじゃん!と間違いなく思うんですよ。

ところが、Leathürバージョンのほうはインディーズらしい音の細さ、ラフさが存在するんです。むしろ、そういった要素が曲の持つグラマラスさ、そしてMOTLEY CRUEというバンドが持つ猥雑さを強調しているんじゃないか。あれ、こっちのほうがいいんじゃね?と思わされる。不思議ですよね。

例えば「Live Wire」終盤のドラムブレイク後に入る歓声や、「Come On And Dance」のエンディングのひっぱり方、「Too Fast For Love」のスローなイントロパートと投げやりなエンディングなど、こういった味付けがメジャーのElektraバージョンではカットされているわけです。唐突に終わるメジャー版の「Come On And Dance」も、ギターのバッキングが重ねられたことで重みが増したメジャー版の「Live Wire」もカッコいいんですけど、MOTLEY CRUEというバンドの存在意義や当時のイビツさを考えると、やはりLeathürバージョンのオリジナルミックスのほうが数歩優れていると言って間違いないでしょう。

あと、メジャー版からは「Stick To Your Guns」という楽曲がカットされています。これはLeathürバージョンのアルバムに先駆けて発売されたMOTLEY CRUE初のシングルの表題曲なんですが、まあ確かに他の楽曲と比較するとちょっと完成度が劣る気がするので、外されて正解かもしれません。実際、Elektraバージョンは終始勢いがある曲順で、テンションや熱量という点においてはLeathürバージョンより優ってますし。まあどちらも一長一短あるので、できることなら両方聴いてほしいなと。

あ、楽曲に関しては言うことなし。このバンドの持つ音楽的ポピュラリティの高さがこの時点ですでに完成されていますし、荒削りながらもキャッチーなナンバーばかり。ここ数年、個人的には『MOTLEY CRUE』(1994年)と同じくらい好きな1枚に昇格しています。本作がなかったら、もちろん続く『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)もなかったし、よりキャッチーでグラマラスな『THEATRE OF PAIN』(1985年)もなかったわけですから。もちろん、『DR. FEELGOOD』(1989年)にだってたどり着けなかったと思いますよ。改めて本作と『DR. FEELGOOD』を聴き比べると、意外と共通点が多いですしね。

最後に。現在CDでの一般流通、およびデジタル配信やストリーミングで聴くことができるのはElektraバージョンのほうのみ。ボーナストラックとしてLeathürバージョンの「Too Fast For Love」や、「Stick To Your Guns」と「Toast Of The Town」(初シングル収録の2曲)などは聴くことができます。どうしてもLeathürバージョンをまるまる聴きたい!という方は、ボックスセット『MUSIC TO CRASH YOUR CAR TO: VOL. 1』(2003年)を探していただくか、2011年に日本でリリースされた『TOO FAST FOR LOVE』30周年記念ボックスを手に入れるほかなさそうです。ちなみに、どちらも現在は廃盤状態。しかも、これらに収められている音源は僕が高校生時代に入手したブートレッグと同じく、当時のレコードから起こした音源という“公式ブートレッグ”ですのでご注意を。

 


▼MOTLEY CRUE『TOO FAST FOR LOVE』
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2017年11月13日 (月)

ASIA『ASIA』(1982)

KING CRIMSON/元UKのジョン・ウェットン(Vo, B)、元YESのスティーヴ・ハウ(G)、元EMERSON, LAKE & PALMERのカール・パーマー(Dr)、元THE BUGGLES/元YESのジェフ・ダウンズ(Key)が結成した“スーパーバンド”ASIAが、1982年初春に発表したデビューアルバム。イギリスの老舗プログレバンド出身の4人が一堂に会してどんな音楽を奏でるのかと思いきや、いきなり「Heat Of The Moment」みたいなポップロックを完成させたんですから、そりゃあ当時リアルタイムで聴いてたプログレファンには「裏切りだ!」って思うくらいショックだったんじゃないかと察します。

リアルタイムでは1985年の3rd『ASTRA』から入ったので、1枚目と2枚目『ALPHA』(1983年)は完全に後追い。たぶん中学3年か高校1年のときに聴いたのが最初じゃないかな。HR/HMに慣れた自分が聴いても楽しめる、プログレのテイストを残した“ポップでキャッチーでコンパクト”なロックチューンが並ぶデビュー作は、特にお気に入りでした。まず、オープニング「Heat Of The Moment」のシンセにやられて、耳障りの良いメロディに心が持っていかれた。そこから、よりプログレチックなポップロック「Only Time Will Tell」、アレンジこそプログレ風だけどサウンド自体はハードロック寄りの「Sole Survivor」、この冒頭3曲が特に大好きでした。

昨日のSTYXじゃないけど、こういうプログレポップって仰々しいプログレッシヴロックが好きな人からしたら、本当にどう映るんでしょうね。いや、特に答えはいらないですが。残念ながら自分はHR/HMを入り口に上記のようなUKプログレバンドに接し、さらにはSTYXやASIAのようなバンドも貪欲に聴いてきたクチなので、どれも偏見なく楽しめるんですよね。節操ないと言われたらそれまでですが。

こういう、各プレイヤーの技量を最良の形(なのかな?)でアレンジに組み込み、プレイヤーが陥りがちな“オナニー的プレイ”を排除してコンパクトに、かつポップに組み立てた楽曲は本家プログレよりも気楽に楽しめると同時に、曲の至るところにフックが仕込まれているから、変に聴き流すこともできない。気づいたらメロディの親しみやすさを通り越して、各プレイヤーのこだわりのプレイまで聴き込んでいる自分がいる。特にこの1stアルバムに関してはそいういうことが多いような気がします。

「Time Again」の“これぞ!”といった仰々しさも好きだし、「Wildest Dreams」のハードロック的壮大さも好きだし、「Without You」のAORバラードも嫌いになれない。とにかくよく出来たアルバムですよ。リリースから今年で35年? 驚きました。ロックとしてもポップスとしても機能する、本当に高性能な1枚です。



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2017年11月 3日 (金)

KISS『CREATURES OF THE NIGHT』(1982)

1982年秋に発表された、KISS通算10作目のスタジオアルバム。70年代末のディスコ路線を経て、前作『MUSIC FROM “THE ELDER”』(1981年)ではオーケストラを導入したコンセプトアルバムにチャレンジし、往年のヒット作ほどの評価を得ることなく、どんどん先細りしつつあったKISSが、起死回生の一撃として制作したのがこの『CREATURES OF THE NIGHT』です。

聴いてもらえばわかるように、本作では70年代のロックンロール路線ともディスコとも異なる、骨太でメタリックなサウンドへとシフトチェンジ。楽曲制作にはアダム・ミッシェルやのちにバンドに加わるヴィニー・ヴィンセント(G)、さらには当時はまだ無名だったブライアン・アダムス&ジム・ヴァランスのコンビも関わっており、それまでのシンプルでわかりやすいポップなスタイルから時代の流行に合わせたメタル路線がずらりと並んでいます。

また、演奏面でも前作から加入したエリック・カー(Dr)と、エース・フレーリー(G)に代わってレコーディングに参加したヴィニー・ヴィンセントの個性が存分に生かされた硬質で豪快なハードロックを楽しむことができます。ちなみに、クレジットやジャケットにはエースの名前や姿があるものの、実際のレコーディングには一切携わっていないとのこと。結果、本作リリース後にエースはバンドを離れています。

豪快なドラミングとマイナー調のメロディが心地よいポール・スタンレー(Vo, G)歌唱曲「Creatures Of The Night」からスタートすると、以降はジーン・シモンズ(Vo, B)歌唱曲とほぼ交互にメロウな楽曲(ポール歌唱)とワイルドなヘヴィチューン(ジーン歌唱)が並びます。“空耳アワー”でおなじみの「Danger」やヘヴィバラード「I Still Love You」、今でもライブでは定番の「I Love It Loud」やジーンの“火吹き曲”としておなじみの「War Machine」など聴きどころ満載。全9曲中ジーン歌唱曲が5曲というのも、作風を考えれば納得です。

当時、本作は全米45位と決して大きな成功を収めることはできませんでしたが、KISSは次作『LICK IT UP』(1983年)ではついにメイクを落として素顔になり、ヘヴィメタル路線を追求していき『ANIMALIZE』(1984年)や『ASYLUM』(1985年)などでセールスや人気を復調させていきます。その間にはヴィニー脱退〜マーク・セント・ジョン加入&脱退〜ブルース・キューリック加入と紆余曲折があるんですけどね。

ちなみに本作、素顔で再びヒットを飛ばした1985年にリミックス&ジャケットを当時の編成(ポール、ジーン、エリック、ブルース)に変えて再発。しばらくオリジナル盤は廃盤状態でしたが、現在はリミックス盤が廃盤となり、オリジナル盤が復活しております。



▼KISS『CREATURES OF THE NIGHT』
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