2022年のうちに振り返っておきたいと思ったのが、マイケル・ジャクソン最大のヒット作にしてポップミュージック界における歴史的名盤『THRILLER』(1982年)について。自分は世代的に『THRILLER』バカ売れ期の末端にギリギリ触れており、当時のMTV(地上波時代ね)や『ベストヒットUSA』、『SONY MUSIC TV』を録画して「Thriller」のショートフィルムや「Beat It」「Billie Jean」のMVを何度もリピートしたものです。
そんなこんなで、今年で『THRILLER』リリースから40年。アニバーサリー盤も発売されましたが、個人的には25周年盤のときの盛り上がりと比べるとやや気持ちが劣りますが(そりゃあマイケル生前でしたからね、25周年のタイミングは)、周年タイミングに取り上げておかなくちゃなと思いながらも、年末に向けての繁忙期でまったく触れる機会がなく、気づけば大晦日。時間も多少できたので、やるなら徹底したいなと思い、マイケルのソロキャリア黄金期の始まりといえる『OFF THE WALL』(1979年)から『DANGEROUS』(1991年)までの(個人的思い入れの強い)4作品について、コンパクトな形で触れていこうかなと思います。
古巣Motown Recordsを離れ、Epic Recordsへ移籍しての第1弾アルバム。意外にも全米チャートでは最高3位と1位を獲得していませんが、「Don't Stop 'Til You Get Enough」「Rock with You」とシングル2作連続全米1位を獲得し、ほかにも「Off The Wall」(同10位)、「She's Out Of My Life」(同10位)とヒット曲を連発し、アルバム自体は現在までにアメリカで900万枚以上、全世界で2000万枚以上の売り上げを記録しました。
初めてマイケル主導で制作されたアルバムであり、プロデューサーにはクインシー・ジョーンズを起用。ソングライター陣もポール・マッカートニー(「Girlfriend」)やスティーヴィー・ワンダー(「I Can't Help It」)、デヴィット・フォスター(「It's The Falling In Love」)などソウル/R&Bに捉われない幅広い人選で自身の表現の幅を広げています。
大ヒットした「Don't Stop 'Til You Get Enough」「Rock with You」のようなソウル/ディスコをベースにした楽曲はもちろんのこと、全体を通してポップフィールドでも通用する曲作りが徹底され始めたのがこの時期なのかな。ただ、続く『THRILLER』以降と比べると全体の統一感が強いことから、まだまだ“ブラックミュージックの範疇”というイメージが強いかもしれません。だからこそ、より気持ちよく楽しめる“アルバム”という印象が、彼の作品中もっとも強いのですが(以降の作品は良くも悪くも“プレイリスト”的なのかなと)。
前作から引き続きクインシー・ジョーンズを共同プロデューサーに起用。ソングライターに前作から引き続きのロッド・テンパートンに加え、スティーヴ・ポーカロ(TOTO)&ジョン・ベティス(「Human Nature」)やジェイムズ・イングラム(「P.Y.T. (Pretty Young Thing)」)などを起用。また、アルバムから漏れたアウトテイクの中にはマイケル・センベロが関わった「Carousel」や、Yellow Magic Orchestraの楽曲に新たに歌詞を付けた「Behind The Mask」などが含まれていたことも話題になりました。
また、ゲストアーティストのメンツも多彩で、「The Girl Is Mine」ではポール・マッカートニーとのデュエットを展開(同時期にポール側が発表した「Say Say Say」でも2人のデュエットを披露)。「Beat It」のギターソロではエディ・ヴァン・ヘイレン(VAN HALEN)をフィーチャー(かつ、リードギターをTOTOのスティーヴ・ルカサーが担当、ドラムもTOTOのジェフ・ポーカロがプレイ)したことでも話題となりました。
本作からは「The Girl Is Mine」(全米2位)、「Billie Jean」(同1位)、「Beat It」(同1位)、「Wanna Be Startin' Somethin'」(同5位)、「Human Nature」(同7位)、「P.Y.T. (Pretty Young Thing)」(同10位)、「Thriller」(同4位)とアルバム収録曲9曲中7曲がシングルヒット。オリジナルアルバムながらもグレイテストヒッツ的側面も強く、そういった意味でも(結果的に)プレイリストの先駆け的な1枚と言えるのではないでしょうか。
音楽的にも前作『OFF THE WALL』での方向性を推し進めつつ、ポップ色をより強めた「The Girl Is Mine」、ハードロックギターを採用した「Beat It」(さらに、アルバム未収録ながらもテクノ色を取り入れた「Behind The Mask」)など、“ポップ”を軸足により幅広いフィールドで戦おうという前向きさが伝わります。また、当時主流となり始めたミュージックビデオ制作にも果敢に取り組み、約14分にもおよぶ当時としては異例の大作「Thriller」が大反響を呼ぶなど、今や当たり前となった“音楽への映像の積極的導入”における先駆者的作品とも言えます。
1980年晩秋に発表された『ACE OF SPADES』 が、本国で勃発していた新たなヘヴィメタルの波(NWOBHM=New Wave Of British Heavy Metal)に見事に乗り全英4位を記録。続くライブアルバム『NO SLEEP 'TIL HAMMERSMITH』(1981年)に関しては勢い余って初(かつキャリア唯一)の全英1位を獲得したことで、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たしました。
前作『ACE OF SPADES』ではスピード感に頼りすぎることなく、緩急に満ちた構成で聴き手を飽きさせませんでしたが、今作は冒頭のタイトルトラック「Iron Fist」から4曲連続で疾走系の楽曲で固められています。「Ace Of Spades」の成功に味をしめて……なんてことはまったくないとは思いますが、ここまで突っ走りまくりなのは、メタルの範疇で語られることに対する彼らなりのアンチテーゼだったのかな……なんて解釈するのはお門違いでしょうか。スピードメタルの元祖とも言われるものの、ここでのしなやかなファストナンバー群は間違いなくパンク直系のそれ(なにせ「Speedfreak」なてストレートなタイトルの曲まであるくらいですから)。ギターソロこそハードロックの影響下にあると受け取ることができますが、全体的にはやはりパンクが軸になっていることは間違いないと思います。
そんな中で、ミドルテンポ寄りのグルーヴィーなM-5「Loser」やM-7「America」は全体の中で非常に良いフック に。スピード感が強調されたアルバムの中だからこそ、より映える仕上がりと言えるでしょう。また、アルバム終盤にも「(Don't Let 'Em) Grind Ya Down」「(Don't Need) Religiion」とミドルナンバーが2曲配置されておりますが、前半が突っ走り気味だっただけに終盤ちょっとトーンダウンしてしまった印象もなきにしもあらず。このへんは曲順でもうひと工夫あったら、最初から最後まで熱量を落とすことなく楽しませられたのではという気もします。本作唯一の欠点はそこだけかな。
あとは、全12曲どれも純度200%のMOTÖRHEAD節炸裂。結果としてレミー・キルミスター(Vo, B/2015年12月没)、“ファスト”・エディ・クラーク(G/2018年1月没)、フィルシー・“アニマル”・テイラー(Dr/ 2015年11月没)の黄金期トリオによる最後の作品となってしまいましたが、『ACE OF SPADES』とこの『IRON FIST』でバンドとして臨界点を迎えたという意味では、この布陣が崩れてしまったのは仕方ないことかなと、40年経った今になって実感しています。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。
内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。
これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。
オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。
続いて、気になる特典ディスクの内容。ここではスーパー・デラックス・エディションの内容に沿って触れていきます。まずDISC 2&3には同タイミング(本作発売前)に制作されたコンピ盤『KILLERS』(1982年)に収められた新曲4曲や、当時の未発表デモ音源を多数収録。このデモには「Nowhere To Run」や「I'm A Legend Tonight」など『KILLERS』収録曲のほか、「Deadly Weapon」「Betrayed」などその後制作された楽曲と共通するタイトルの未発表曲も含まれています(タイトルこそほぼ同一ですが、のちに発表された楽曲とは別モノです)。未発表曲の多くはのちのスタジオアルバムに収録されたとしても不思議ではない内容で、ちゃんとレコーディングしていたらしっかりリリースできたものばかり。
DISC 4&5には1982〜83年にかけて実施された、『CREATURES OF THE NIGHT』を携えた全米ツアーからのライブ音源に加え、ツアーで使用されたサンドエフェクト6テイクも収録。当時日本公演が叶わなかった本ツアーの断片を、こういった音源の数々から追体験できるなんて、よい時代になったものです。ライブ音源はひとつの曲に対して収録地が異なる複数テイクが含まれているので、ライブアルバムという観点ではなく“記録”として触れるのがベストかと。ヴィニー・ヴィンセント(G)がプレイするKISSクラシックナンバーの数々を楽しめるという点では、希少価値の高い内容ではないでしょうか。
基本的な楽曲作りは名作『DREAM POLICE』(1979年)や『ALL SHOOK UP』の流れを汲むものですが、味付けや質感はニューウェイヴ直下にあるもの。オープニングトラック「I Want You」や「Oo La La La」「Saturday At Midnight」「I Want Be Man」あたりは完全にその延長線上の楽曲と言えるでしょう。
その一方で、ポップでキャッチーなミディアムバラード「If You Want My Love」、ハードロックとグラムロックをミックスしたような「Lookin' Out For Number One」、シングルカットもされた「She's Tight」など従来の彼らのイメージを踏襲した楽曲も存在。とはいえ、「She's Tight」あたりはちょっとした味付けにニューウェイヴ風味も加わっており、時代を感じさせます。
オジー・オズボーン(Vo)在籍時はライブアルバムを1枚も制作することもなく、オジー脱退後に1973年の音源がバンドの許諾なしに『LIVE AT LAST』(1980年)と題して発表されたのみ。バンド公認のライブアルバムはこのロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)在籍時の音源が最初の正式リリースとなるわけです。
本作はディオ加入後2作目のスタジオアルバム『MOB RULES』(1981年)を携えて、1982年4〜5月に実施されたUSツアーからセレクトされたもの。当時のメンバーはトニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)のオリジナルメンバーにディオ、『MOB RULES』から参加のヴィニー・アピス(Dr)、そしてツアーメンバーのジェフ・ニコルス(Key)という布陣。『HEAVEN AND HELL』(1980年)や『MOB RULES』からの楽曲をライブで再現するにはキーボードは欠かせませんものね。
アルバムのキモとなるのは、もちろんディオ加入後の楽曲……「Neon Knights」や「Children Of The 」シー「Heave And Hell」といった『HEAVEN AND HELL』収録曲や、「Voodoo」「The Mob Rules」「The Sign Of The Southern Cross」をはじめとする『MOB RULES』収録曲。スタジオ音源以上に生々しくワイルドなディオのボーカルと、ライブならではのフリーキーさも織り交ぜたアイオミのギタープレイは聴き応え満点で、個人的にはスタジオテイク以上にお気に入りです。特に長尺ギターソロをフィーチャーした12分にもおよぶ「Heave And Hell」と、続く「The Sign Of The Southern Cross」からメドレー形式で「Heave And Hell」へと戻っていく構成では、ライブならではの醍醐味を堪能できるはずです。
バンドメンバーはオジー(Vo)、ブラッド(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)という布陣。実際のライブではオジーのソロ曲も披露されていますが、アルバムには当初の計画どおりサバスナンバーのみが収められています。ランディ在籍時からオジーのライブではすでに「Iron Man」「Children Of The Grave」「Paranoid」といったサバス曲は披露済みで、その様子はのちに発表されたライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)などでも確認できます。
プロデュースおよびミックスは直近のスタジオアルバム『DIARY OF A MADMAN』(1981年)を手がけたマックス・ノーマンが担当。質感的にはかなり近いものがありますが、オジーのソロ曲には合っているこのプロダクションもサバス曲にはちょっと軽すぎる印象も。というよりも、ルディ&トミーのリズム隊が軽すぎるのと、ブラッドのギターワークがメタリックではないことが、アルバム全体の軽さに影響を与えているような気がしてなりません。
とはいえ、選曲自体はサバスの1stアルバム『BLACK SABBATH』(1970年)と2ndアルバム『PARANOID』(1970年)という代表作からの楽曲中心(メドレー含む全13曲中7曲)で、そこに「Sympton O The Universe」や「Snowblind」「Sweet Leaf」「Never Say Die」などオジーらしいセレクトが含まれており、これがオジーがイメージするBLACK SABBATH像なのかなと興味深いものがあります。本作発売から半月後にはロニー・ジェイムズ・ディオを加えた本家サバスも『LIVE EVIL』(1982年)というライブ作品を発表しており、そちらに含まれるオジー在籍時の楽曲がすべて『SPEAK OF THE DEVIL』にも含まれていることを考えると、オジー側とトニー・アイオミ(G)側の初期サバス像はほぼ一緒なのかもしれませんね。
アルバムからのリード曲にして、映画『ロッキー3』のテーマソングとしてシングル化されたタイトルトラック「Eye Of The Tiger」が6週連続全米1位(同年間チャート2位)を記録し、シングルのみで800万枚を超えるヒット曲に。さらに「American Heartbeat」(同17位)や「The One That Really Matters」(同74位)といったスマッシュヒットも生まれ、アルバム自体も全米2位まで上昇するミリオンヒット作となりました。
どうしても「Eye Of The Tiger」の印象が強い1枚ですが(だって、アルバムの1曲目)、実は本作が本領発揮するのは続く2曲目「Feels Like Love」以降。この軽やかで疾走感の強いアメリカンロックを筆頭に、AC/DCを彷彿とさせるミディアムナンバー「Hesitation Dance」、ノリの良いハードロックチューン「The One That Really Matters」、ピアノやシンセの音色が心地よいマイナーキーの「I'm Not That Man Anymore」と佳曲が続きます。この4曲だけでもだいぶバンドの印象が変わるのではないでしょうか。
アナログB面の冒頭を飾る6曲目「Children Of The Night」でのアコギを活用したダイナミックなアレンジ、バンドの繊細な部分を前面に打ち出したメロウなバラード「Ever Since The World Began」、個人的には「Eye Of The Tiger」以上の完成度を誇ると確信する名曲「American Heartbeat」と聴き応えのある楽曲が連発され、最後はパワーバラード調のミディアムナンバー「Silver Girl」で締め括り。非常によく練り込まれた、完成度の高いハードロック/産業ロックアルバムだと思います。
前作『ANIMAL MAGNETISM』(1980年)発売がちょうどイギリスでのNWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)ムーブメント拡散期と重なったことで、RAINBOWやJUDAS PRIESTらとともに人気を集め、その勢いのまま彼らは本格的にアメリカ進出。今作リリースがUSメタルブーム勃発期だったこともあり、同作は全米10位という大成功を収めます。本作のヒットが、続く『LOVE AT FIRST STING』(1984年)の爆発的ヒットにつながるわけですね。
バンドの代表作のひとつとして知られる本作ですが、ヘアメタルなどのキャッチーさが強まった『LOVE AT FIRST STING』路線のベースが今作の時点ですで完成していることに気付かされるかと思います。アグレッシヴさを強めた疾走チューン「Blackout」や「Now!」「Dynamite」あたりはNWOBHMムーブメントから受けた影響が表れた仕上がりですが、続く「Can't Live Without You」や「Arizona」でのポップさは以降の彼らの作品にも反映されていくことになるし、70年代から備えてきた憂いを満ちたマイナーキーの「No One Like You」や「You Give Me All I Need」もバンドの大きな武器として作用している。次作以降は後者のポップサイドが強調されていくことになるので、今作はSCORPIONSのヘヴィメタルサイドが強めに表出した初期〜中期最後の1枚と言えるかもしれません。
かつ、先に触れたポップサイド/メロウサイドの充実や、終盤に置かれたミドルヘヴィの「China White」や泣きのバラード「When The Smoke Is Going Down」含め、続く次作での“完璧な作品至上主義”へと到達する前の“ライブバンド然とした存在感”は80年代初頭というタイミングならではのもの。“80年代のSCORPIONS”のパブリックイメージが完成の域に達しつつあるという点でも、実は本作は『LOVE AT FIRST STING』以上に(バンドにとっても、HR/HMシーンにとっても)重要な1枚ではないでしょうか。
国内サブスクリプションでは、つい最近まで5thアルバム『TAKEN BY FORCE』(1977年)から10thアルバム『SAVAGE AMUSEMENT』(1988年)までのバンド充実期の名作たちが未配信でしたが、2021年12月に突然カタログに加わったことを確認。これも2022年2月22日にリリース予定の7年ぶり新作『ROCK FOREVER』へ向けての施策なんでしょうか。だとしたら、こうして代表作の数々が手軽に楽しめるようになった今回の配慮は非常にうれしい限りです。