2017/09/10

HANOI ROCKS『SELF DESTRUCTION BLUES』(1982)

海外では1982年夏にリリースされた、HANOI ROCKS通算3作目のスタジオアルバム……ということになってますが、正確には1980〜82年にシングルのみで発表された楽曲を寄せ集めたコンピレーションアルバム。とはいえ、正式なスタジオアルバムと言われても納得してしまうほど、このバンドらしさに満ち溢れた1枚と言えるかもしれません。

例えば1stアルバム『BANGKOK SHOCKS, SAIGON SHAKES, HANOI ROCKS』(1981年)よりも前に発表された事実上のデビューシングル「I Want You」(1980年)や「Desperados」(1981年)、「Dead By X-Mas」(同年)のほか、当時の最新シングル「Love's An Injection」といった楽曲が含まれているほか、シングルのB面(カップリング)曲として発表されたもののライブではすでに人気の高かった「Taxi Driver」「Beer And A Cigarette」「Problem Child」など意外と重要な曲も収録されており、ファンならずとも聴き逃せない作品集となっています。

音楽的にもバラエティに富んでおり、ストレートなパンクチューン「Problem Child」やピアノを効果的に用いたポップな「Love's An Injection」「Café Avenue」「Dead By X-Mas」、ディスコビートを導入したパーカッシブな「Kill City」、のちにマイケル・モンロー(Vo)のソロ作や再結成HANOI ROCKSなどで何度かセルフカバーされる表題曲「Self Destruction Blues」、シンセの導入によりどこかニューウェイブ色が感じられる「Whisper In The Dark」、レゲエテイストの「Desperados」など、とにかく一筋縄でいかないこのバンドの個性がもっとも強く表れた内容ではないでしょうか。

ライブバンドとしては非常に“真っ直ぐ”なイメージの強い彼らですが、実は音楽的にはここまで雑多なロックバンドだということを知る上で、本作は非常に重要な作品集だと思います。特に解散後はこういったコンピレーション盤がいくつもリリースされましたが、このバンドをよく知る上では本作のほか、後期シングルにのみ収録されたレア曲とラズル(Dr)急逝後に制作されたデモ音源を含む『LEAN ON ME』(1992年)はぜひとも聴いておきたいところです。

そういう意味ではこのアルバムは、初期HANOI ROCKSの“裏ベスト”とも言えるのではないでしょうか。個人的には非常にお気に入りの1枚です。



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投稿: 2017 09 10 12:00 午前 [1982年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク

2015/01/16

Judas Priest『Screaming For Vengeance』(1982)

Judas Priestの映像をいろいろ見返していたら、自分がリアルタイムで体験できなかった頃のライブ映像に見入ってしまい……仕事を忘れて2時間くらいネットサーフを繰り返していました。自分が初めて生で体験したのは1991年の「Painkiller」を携えた来日公演(代々木体育館)だったので、それより前(「Defenders of the Faith」でのツアー)は観られなかったんですよね。そもそもリアルタイムで聴き始めたのは「Defenders of the Faith」ツアー後なので、行けるわけもなく……。

「Defenders of the Faith」でJudas Priestに出会って、次に聴いたのが「Screaming For Vengeance」なわけですよ。もうね、しばらくはこの2枚だけで生きていける……当時はそのくらい聴きまくった記憶があります。その頃はまだレコードの時代で、レンタルでも簡単に手に入ったのがこのへんだったってだけなんですが(「British Steel」あたりもあった気がするのですが、ほかにも聴かなきゃいけない / 聴きたい新作や旧譜がたくさんあったので、中学生の小遣いでは網羅することなんてできなかったわけです)。

「Screaming For Vengeance」はアナログで聴いたときの生々しい音がとにかく好きで、それをクロームのカセットテープにダビングして聴きまくってました。その“アナログ+カセット”で聴いたイメージが強く、実は90年代に入ってからCDで聴き返したときはちょっと違和感があったような……(同じことは「Defenders of the Faith」をCDで聴いたときにも感じました)。逆に「Turbo」や「Ram It Down」みたいなアルバムはCDで聴いたクリアなサウンドのほうが気に入った記憶もあり(まあ「Ram It Down」の頃になるとすでにCDしか出てなかったような気もしますが)。

その後、2000年前後にPriestの全作品がリマスタリング再発。音自体はよりクリアになりつつ、アナログ時代に聴いた厚みのある荒々しいサウンドが復活したような気が……って、単にCD音源に耳が慣れただけなのかな? とにかく、それくらい思い入れの強いアルバムなわけです、「Screaming For Vengeance」と「Defenders of the Faith」の2枚は。


で、本題はここから。「Screaming For Vengeance」ってアルバムは、本当に隙のないヘヴィメタルアルバムといいますか。捨て曲なし、全10曲(オープニングの「The Helion」がインストかつ次の「Electric Eye」への序章なので実質9曲)で40分欠けるくらいのトータルランニング。疾走感ある曲が並んでいて、ただヘヴィなだけじゃなくてしっかりメロディアス、しかもどの曲も4分前後で聴きやすい。ちょうどプログレとかDeep Purple、Rainbowあたりの長尺曲に馴染めなかった頃で、そこで出会ったこのアルバムの潔さに感動したのを今でも覚えてます。ぶっちゃけアルバムに1曲だけでいいんですよ、5分台の曲なんて。あとは3〜4分の曲でまとめて、全部で10曲あるかないかだったら最高。一番いいのは、46分のカセットにちゃんと収まる作品。A面B面それぞれ23分以内の作品ね。たまにあるんですよ、片面だけ20分欠けるくせに、もう片面は25分くらいあるやつが。そういう意味で「Screaming For Vengeance」という作品は、両面とも20分あるかないかというベスト中のベストだったわけです。

もちろん楽曲自体の完成度も素晴らしかったですよ。今聴いてもそのコンパクトさは圧巻といいますか。「British Steel」をUS向けに進化させた結果が「Screaming For Vengeance」なのかな、なんて勝手に思ってます。そこから再びブリティッシュ寄りに押し戻して“深化”させたのが「Defenders of the Faith」。結局今でもアルバムとしてよく聴くのはこの2枚なんです。「Painkiller」も聴く頻度は高いけど、この2枚ほどではないかなと。アナログでいうところのB面(「Night Crawler」以降)は先の3枚にも負けないくらい好きですけどね。

それでですね、80年代中頃にメタルにハマった人間は、その数年前にアメリカで「US Festival 1983」という数十万人集めたフェスがあったことを雑誌などで知るわけです。西新宿あたりのブート屋さんでそのへんの映像を見つけては、その観客の多さに驚かされるわけですが、数年前に発売された「Screaming For Vengeance」の30周年アニバーサリーエディションにはこの「US Festival 1983」でのPriest出演パートをほぼ収めたDVDが付属しています。日中の野外で演奏された12曲。「Screaming For Vengeance」をリリースしてアメリカでブレイクした時期の、脂の乗った演奏を楽しめるわけです。この時期の映像としては、過去にも「Live Vengeance '82」というDVDが発売されていて、「US Festival 1983」前年のライブをフルセットで楽しめますが、ここはぜひ伝説となった「US Festival 1983」での映像を名盤とともに楽しんでもらえたらなと思います。

3月に新作「Redeemer of Souls」を携えたジャパンツアーを行うJudas Priest。同時期には「Defenders of the Faith」30周年アニバーサリーエディションのリリースも控えています。個人的には「Redeemer of Souls」を「70年代〜80年代初頭に立ち返ったかのような楽曲を現代のテクニックとサウンドで表現した」作品と捉えているので、来日公演に行こうと思ってる人には「British Steel」「Screaming For Vengeance」「Defenders of the Faith」の3作はぜひ聴いておいてもらいたいと思っています。というか、これから「Screaming For Vengeance」に出会える人がいるかと思うと本当に羨ましいなと……。



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投稿: 2015 01 16 12:16 午前 [1982年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2004/09/07

とみぃ洋楽100番勝負(19)

●第19回:「1999」 PRINCE('82)

 そうか、この曲ってそんなに前の曲だったんだ。けど俺が初めて聴いたプリンスの曲がこれなのね。初めて聴いたアルバムは、続く大ヒット作「PURPLE RAIN」('84)だったけど。

 個人的にはこの曲を含む5作目のアルバム「1999」以降の作品‥‥「LOVESEXY」や、後にリリースされることになる無題アルバム(通称「BLACK ALBUM」)辺りまでが最もハマった時期で、特に「AROUND THE WORLD IN A DAY」「PARADE」「SIGN 'O' THE TIMES」の3作は一切隙のない名作中の名作だと思っております。中学〜高校の頃、影響受けまくったもん。これがなければ、個人的には岡村靖幸に行かなかったと思うし。

 で、"1999"。カッコいいよね、純粋に。ま、ファンクって部類に分けられるんだろうけど‥‥個人的には「ポップ」というか「ポップス」だったんだよね。ヘンテコなポップス。プリンスの顔が気持ち悪いとか声が変だとかいろいろ意見はあるだろうけど‥‥特にガキの頃だったから、周りはみんなそんな風に言ってたよね。特にマイケル辺りと比較してさ。

 そういえば‥‥ベタだけど、この曲を1999年の元旦一発目に聴いた記憶が。みんなもそうじゃねぇの?(と勝手に決めつけ)

 まぁプリンスに関してはベスト盤から聴くのもいいけど、アルバムだったら素直に「PURPLE RAIN」辺りから聴いてください。あるいは'90年代以降のNEW POWER GENERATIONと組んだ時のやつとか。K-1のテーマソングになってるやつとか入ってるし。「1999」は意外とアクが強いので(ってプリンスの作品は全部アク強いけど)慣れてからの方がいいかな、と。

 プリンスについては、もう1回くらい語りたいな。



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投稿: 2004 09 07 12:00 午前 [1982年の作品, Prince, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック

2004/08/27

とみぃ洋楽100番勝負(8)

●第8回「Save A Prayer」 DURAN DURAN('82)

 DURAN DURANは最初に聴いたのが "Is There Something I Should Know?"(邦題:プリーズ・テル・ミー・ナウ)かな。サントリーだか何かのテレビCMに使われてたよね、この曲。それがDURAN DURANの曲だと当時の「ROCK SHOW」って音楽雑誌で知って。写真メインの雑誌で、如何に当時のロック/ポップシーンがビジュアル重視だったかってのが伺える1冊で、ホント当時の俺はこの雑誌のお世話になりっぱなしでね。ニューロマンティックもハードロックもグラムも、とにかく「美しい」「カッコいい」アーティストは全てここから学んだのよ。

 DURAN DURANも最初はビジュアルから入って、音は完全に後追い。それこそ先のCMで初めてビジュアルと音が一致した程。

 一番最初に手を出したアルバムは、何故かセカンド「RIO」から。"Is There Something〜" 入ってないのにね(ファーストの再発盤に追加収録されたんだけど、当時のレンタル店に旧盤しかなかったのね)。当時出たばかりのサードでもなく、ジャケットの絵に惹かれてこのセカンドにしたという。

 俺のルーツのひとつだよね、間違いなく。適度にダンサブルで、曲によってはロック比重も高い。当初のコンセプトが「Funk meets Punk」だったこともあって、そういう曲調がメインなんだけど、俺が彼等のことを心底気に入ったのはそういった曲ではなくて、もっと耽美性の強い、如何にもヨーロッパのバンド的なスローナンバーだったのね。

 そこで、表題曲。シングルにもなったけど、とにかくDURAN DURANにしか出せない「色」がバンバン表出した名曲。アルバムテイクのまったり感も良いんだけど、もっと力強いライヴテイク('84年リリースのライヴ盤「ARENA」収録)の方も捨てがたい。要するに名曲ってことですよ。この曲のイントロ、俺内では「'80年代を代表する名シンセ・リフ」のひとつですね。VAN HALEN "Jump" やJOURNEY "Separate Ways"、EUROPE "The Final Countdown" に匹敵する程のね。



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投稿: 2004 08 27 12:00 午前 [1982年の作品, Duran Duran, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/08/24

とみぃ洋楽100番勝負(5)

●第5回「Oh, Pretty Woman」 VAN HALEN('82)

 正確に言えば、"Intruder" 〜 "Oh, Pretty Woman" というアルバムやPVのような組曲的な流れな。やっぱりこの曲はあの導入部("Intruder")あってこそだと思うので。

 俺にギターを弾かせようとした友人の兄貴(第3回参照)が、エアロの次に聴かせたのがVAN HALENの「DIVER DOWN」というアルバム。多分当時の最新作がこれだったんだと思う(だって "Jump" の大ヒットって、俺が中学に入るか入らないか位の頃だから)。

 けどさ、全然印象に残らなかったのよ、アルバムは。今思えばこのアルバムってカバー曲が半分近くあって、かなりやっつけ仕事的な1枚なんだよね。でも人気的にはピークに達しようとしてる頃で。日本ではバンド自体の人気以上にエディ・ヴァン・ヘイレンっていうギタリストへの人気の方が先行してたように記憶してます。だってギター雑誌の表紙、年に何回飾るんだよ!?って程に出まくってたからね。

 単純にこの曲は好きだった。やっぱりほら、ロイ・オービソンの原曲からして既に名曲じゃない。そこにデイヴ・リー・ロスの軽薄なボーカルが乗って、スカスカなリズムが乗って、ギターだけは暴れまくるという。何かね、そこが好きだった。ギターの音色もさ、続く「1984」で若干変わるんだよね。ギターが変わるんだっけ? とにかく、この曲は大好きだった。

 結局この曲を聴いたところで俺はギターを持とうとは思わなかったわけだけど(決定打は同じ彼等の "Jump" のギターソロだったからね)、何となく「ロックのギターってカッコいいじゃん?」って子供心に思わせたのが、VAN HALENだったかなぁ、と。ひとつの切っ掛けとなった1曲ですよね、多分。



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投稿: 2004 08 24 12:00 午前 [1982年の作品, Van Halen, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/07/20

O.S.T.『爆裂都市 (BURST CITY)』(1982)

  今から20年以上も前に公開された映画「爆裂都市 (BURST CITY)」のサウンドトラック盤としてリリースされたこのアルバム。表題の通り、ただのサントラと侮ると痛い目を見ますぜ。

  まず参加メンバー。映画の中にも登場する架空のバンド、バトルロッカーズのメンバーには陣内孝則(THE ROCKERS)や大江慎也&池畑潤二(THE ROOSTERS)といった、所謂「めんたいロック」シーンの中から登場した当時注目株だったメンツが。当然このバンドの為のオリジナル楽曲もサントラ盤には収められているんですが、これが凄まじいの何のって。バトルロッカーズ名義では7曲(内1曲はバージョン違いなので、実質6曲)のオリジナルソングが収録されていて、それらの楽曲が大江やロッカーズの谷信雄によって書かれているという点もポイントのひとつでしょう。まんまルースターズな曲もあれば、ルースターズとロッカーズが見事に融合したかのような凄まじいロックンロールもある。陣内が歌っているものの、時々陣内の音量よりもコーラス取ってる大江の音量の方が上回ってる時があって、一瞬ドキリとさせられたり。

  とにかく曲のテンションが高いの何のって。当時のルースターズやロッカーズのテンションもハンパじゃなかったけど、それを遙かに上回ってるように感じるのは俺だけじゃないはず。このアルバムにはロッカーズの曲も数曲入ってるんですが、正直それと比べてしまうと‥‥他にも陣内の実質上ソロといえる曲"視界ゼロの女"も入ってたりして、いろいろ興味深いポイントが多いんですよね(ちなみにこの曲、映画にも企画から参加している泉谷しげるが作詞してます)。

  それともうひとつ、大きなポイントといえば、1984というユニットの存在でしょう。花田裕之、井上富雄、池畑潤二の3人からなるユニット‥‥早い話が、大江抜きのルースターズ。完全なるインストバンドなんですが、ここに収録された3曲(池畑作曲の"ソルジャー"、井上作曲の"ソロー"、花田作曲の"キックス")を聴くと、何となくその後‥‥大江が「壊れて」しまった後のルースターズを少しだけ垣間見れるような気がしないでもないかな‥‥と。初期衝動的なロックを表現していた初期ルースターズ、大江の精神世界をそのまま音にしてしまったかのようなセカンド~サード・アルバム以降のルースターズ、そして大江がいなくなった後のルースターズ‥‥どれに一番近いかは、聴いた人が判断すればいいことなんですが、これも「記録」としては非常に興味深い楽曲だと思います。ま、どれも短いインストなんで、あれといえばあれなんですが。

  やはりこのアルバムの格好良さは、何度も書くけどバトルロッカーズに限ると思います。映画の企画とはいえ、こういった「奇跡的な組み合わせ」が一時でも実現したんだから。興味がある人は、この映画のビデオを観ることもオススメします。安く市販されているし、レンタル店にも大手ならあるでしょうし。

  唯一残念なポイントを書くとするならば‥‥映画にもマッド・スターリンとして出演していたTHE STALINの楽曲が収録されていないことでしょうか。権利の関係とかいろいろあったんでしょうけど(もしかしたら、それ以前に歌詞の検閲云々でカットされたのかも)、1曲でいいから‥‥まぁトータルバランスを考えれば、陣内色が強い現行の形がいいのかもしれませんが。



▼O.S.T.『爆裂都市 (BURST CITY)』
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投稿: 2003 07 20 12:00 午前 [1982年の作品, Compilation Album, ロッカーズ] | 固定リンク

2003/07/07

HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT』(1982)

HANOI ROCKSのセカンドアルバム。'82年1月に本国フィンランドでリリース、初のナンバー1アルバムとなった記念すべき1枚。ここ日本では'83年1月に初来日記念盤として遅れてリリース。ま、その前作(ファースト)の「白夜のバイオレンス」が'82年9月リリースということを考えれば、とても早いリリースペースということになりますが。っていうか、この頃('83年1月頃)には既にシングル&未発表曲集である「SELF DESTRUCTION BLUES」もリリースされちゃってるんだよね、本国では。そう考えると、楽曲生産&発表ペースの活発化と共に人気も上がってるんだよね、彼等。それだけツアー本数も増えるだろうし、メディアでの露出も増えるだろうからね。

この当時のメンバーはファーストのレコーディング時と同じ。日本盤ジャケットにはラズルの姿があるけど、彼が加わったのは'82年夏。つまりフィンランド盤リリース時はジップ・カジノ在籍、日本盤リリース&初来日時はラズル在籍という違いがあるんです。それに日本盤のジャケット、「SELF DESTRUCTION BLUES」フィンランド盤と同じものを使ってたり、といろいろ複雑なことになってます。

このアルバムが切っ掛けになって、イギリスでも人気が出たんですよね。「サウンズ」誌や「ケラング!」誌でのレビューや特集記事で絶賛され、ライヴも行った結果、彼等は英国に移住することになるわけです。その後の彼等の活躍はご存じの通り。そうそう、イギリスでの活動があったから、ラズルとも出会えたんだった(彼だけイギリス人だしね)。そう考えると、非常に運命を感じるアルバムなんですよね。音楽的にも大きな成長が伺えるし。というわけで、簡単に全曲解説をしてみますか。

●M-1. Motorvatin'
  邦題「炎のドライビン」で知られる1曲。ここ日本ではシングルカットまでされてる程の人気曲。確か "Tragedy" と共にPVも作られたんだよね(ってスタジオで演奏してるだけの映像ですが)。ハノイお得意のストレートなポップンロールといったところでしょうか。イントロのベースフレーズを聴いただけで卒倒しそうになるんだよなぁ‥‥中盤のギターソロ合戦、その後に訪れるハープソロといい、ハノイのカッコ良さを集結させた1曲といえるでしょう。

●M-2. Don't Follow Me
  とにかくメロディアス。無軌道なワイルドさという点ではファーストに及ばないかもしれませんが、こういった優れたメロディの楽曲が多いのがこのアルバムの第一印象。途中、リズムが狂う箇所があるのが玉に瑕ですが(特にマイケルね)、それは若さ故ってことでひとつ。ま、ここで叩いていたジップもいろいろプレッシャーを感じていたようですし。アンディによる(?)ファルセットでのコーラスも耳を惹きます。そしてサックスソロ。カッコ良すぎ。

●M-3. Visitor
  前曲との流れで聴くと、本当に考えられてる曲だなぁ、という印象が強いかも。シンセを要所要所に導入してる点も興味深いし。Aメロ~Bメロと盛り上げて、サビメロがいきなり低いキーでタイトルを連呼という、考えてるんだか何も考えてないんだかな曲構成も独特で、まぁ彼等らしいよね。

●M-4. Teenangels Outsiders
  この曲、このアルバムの中で一番好きかも。ってとにかくサビメロですよね、この曲は。勿論、イントロのギターもカッコイイし、高めのキーで叫ぶマイケルの歌い方もいいし、ちょっと泣きの入ったメロディも‥‥ハノイらしいよね、いろんな意味で。

●M-5. Sweet Home Suburbia
  前作でいうと "Village Girl" と同系統の楽曲、かな? イントロのオリエンタルな雰囲気のギターフレーズがいい味出してます。けどハノイって、こういうリズムが好きだよね。中盤のフレーズやメロ&コード進行がちょっとディスコ入ってます。

●M-6. M.C.Baby
  再び疾走チューンの登場。系統的には1曲目"Motorvatin'"と同じ。ただ、こっちはスライドギターが入ったりしてて、ちょっと工夫されてます。こっちの方が全体的にシンプルかもね。

●M-7. No Law Or Order
  ミディアムスロウのバラードチックな1曲。メインリフのメロディーが抜群。ギターのカッティングがレゲエやスカのリズムを取り入れている点に、彼等の「ただのロック馬鹿じゃねぇぜ!」という意気込みが感じられる。って、多分THE CLASH辺りの影響なんだろうけどね(そう考えると、歌い方もちょっとジョー・ストラマーっぽいかも)。途中挿入されるマイケルのセリフも渋くてカッコイイ。

●M-8. Oriental Beat
  アルバムタイトル曲。「東洋のビート」ってことで、歌詞の中にも「Chinese Girls」とか「Geisha Girl」なんて言葉も出てきます。まだ見ぬ東洋の地をイメージだけで語ってるんでしょうけど、この辺の胡散臭さがまた彼らのイメージに合ってるんだよね。とにかくカッコイイ1曲。イントロのギターフレーズを聴いただけでシビれる。サックスソロも短いながらも、カッコ良すぎ。

●M-9. Devil Woman
  ちょっとロカビリー的な雰囲気を持ったロックンロール。メロディやリズム自体は彼等特有のそれなんだけど、ちょっとしたフレーズやコード進行が正にロカビリーといった感じ。THE CLASHでいうところの "Brand New Cadillac" といった感じでしょうか。いろいろ挑戦しようってのが伺えるよね。この曲はハーモニカのカッコ良さに尽きるでしょう。

●M-10. Lightnin' Bar Blues
  このアルバム唯一のカバー曲。ソングライターとして「H. Axton」という名前があるんですが、誰でしょうか‥‥ゴメンナサイ、判りません。むしろ知ってる人がいたら教えて欲しいくらいです(20年近く聴いてるけど、未だに判らないってのも、ねぇ‥‥)。「ダイヤの指輪もキャディラックもいらない、欲しいのは酒だけ」なんていう歌詞も、酒飲みな彼等にピッタリ。ライヴヴァージョンではもっとスローテンポで演奏され、個人的にはそっちの方が好みかも。ま、これはこれで悪くないけど、ちょっと淡泊過ぎかも。

●M-11. Fallen Star
  1曲だけ全然雰囲気が違う、マイナーキーのピアノバラード。ホントにピアノだけをバックに、マイケルが切なそうに歌ってるんだよね‥‥これこそ異色中の異色。多分ライヴでも殆ど歌われたことがないと思うんだけど、こういう風に「アルバム」を意識した曲作りを始めたのも、この作品集の特徴かも。本当に幅が広がってるんだもん、前作リリースからの1年でここまで成長するというのも‥‥ま、殆どの楽曲を手掛けるアンディの成長なんですけどね。

●最後に‥‥
曲解説中に何度か書いたように、このアルバムではファースト「白夜のバイオレンス」に見られなかったようなタイプの楽曲が幾つか見受けられます。そして「ライヴでやってた曲をただレコーディング」といった次元から「アルバムを想定した曲作り・アレンジ」といった成長も見て取れるでしょう。ミュージシャンにとってセカンドアルバムは鬼門、なんて表現をよく耳にしますが、それはそういったことから言われるんでしょうね。とにかく、ここでバンドは1ランクも2ランクも上へ成長するわけです。更にこのアルバムのリリース後、イギリスでの知名度アップや初の日本公演等を経て、更にラズルという新しい仲間も加わり、HANOI ROCKSは更に上のランクへと上り詰めていくわけですよ‥‥そういう意味では、本当に興味深い作品集ではないでしょうか?



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投稿: 2003 07 07 10:40 午後 [1982年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク

2003/03/31

THE STALIN『STOP JAP』(1982)

  最近ヒットチャートを賑わしている、一般的に「パンク」ロックと呼ばれているバンド達を聴くと、正直反吐が出そうになる。何時から「パンク」っていうのは、健康的・健全なものになってしまったの? 世間や社会に対して何の不平不満もない、主義主張もない音楽に対して「パンク」という言葉を使ってしまってもいいの?‥‥というような違和感が常に俺の中にあるのね。これって‥‥'80年代のホコ天・バンドブームの頃の「ビートパンク」と何ら変わらないじゃないの(そもそも「ビートパンク」って何だよ!?)。BLUE HEARTSをより健全にした、JUN SKY WALKER(S)以降の音‥‥いや、ジュンスカは嫌いじゃなかったんだけど、その後に続々登場した亜流バンドに嫌気が差したのね。で、今も似たような状況で、モンゴル800が大ブレイクしたと同時に、同系統のバンド‥‥敢えて名前は出さないけど‥‥が続々と登場して、それぞれヒットチャートを賑わしているのね。俺、正直この状況が健全だとは全然思えなくて。みんな、彼等(そういったバンド達)に何を求めて聴いているんだろうね。正直俺には判りません。それって俺が歳取ったってことなのかな?

  所謂ロンドンパンクが勃発したといわれる'76~'77年頃に、それに触発されるようにここ日本でもパンクバンドが幾つか登場しました。が、それらは水面下での活動といった感じで、当然ながらメジャーシーンに顔を出すことはありませんでした。ここ日本でもメジャーシーンにパンクバンドが登場するようになるのは、それから3年以上経ってからのことです。そして'82年になってようやくメジャーデビューしたのが、今回紹介するTHE STALINのメジャーデビュー盤(通算2作目)「STOP JAP」です。

  THE STALINが何故伝説的な存在として未だに語られることが多いのか‥‥それは数々の奇行にあるといえます。例えばライヴ中にバケツいっぱいに入ったブタの臓物を客席にぶちまけたり、ボーカルの遠藤ミチロウが全裸になったり、女性客にフェラチオさせたり、乱闘になって機材をぶち壊すことが日常茶飯事だったり‥‥そういったエピソードがどんどん一人歩きして、その音楽性以上に有名になってしまったわけです。

  そういったエピソードが先に耳に入ってくるためか、彼等の音楽についてはあまり語られる機会が少なかったように思うんですが、ここで聴かれるサウンドは先に挙げたような「健康的なパンクロック」とは完全に一線を画するもの。不健全極まりない、非常にハードコアな世界といっていいでしょう。勿論、現在のハードコアサウンドと比べれば全然軽いサウンドなんですが、これを今から20年以上も前に、メジャーでやっていたという事実。これが全てなんですね。SEX PISTOLSを皮肉ったかのような名曲"ロマンチスト"からスタートし、先のINUの「メシ喰うな!」へのアンサーソングともいえる"ワルシャワの幻想"で終わる全15曲、約35分の内容は当時としてはかなり過激で、歌詞の面でも検閲が入って「殺す」なんていう直接的な表現を「おろす」という風に音が似て非なる表現に変えさせられたりして、かなりストレスの残るレコーディングだったようです。が、そうはいいながらもやはりこのアルバムの爆発力というのはハンパじゃなく、今聴いても全然色褪せてない輝きを持っているわけです。

  例えばその数年後に登場するBLUE HEARTS以降のバンドと比べても、同じパンクサウンドを基本としていながら全く違うバンドである点がご理解いただけるかと思います。LAUGHIN' NOSEなんかは元々こういったハードコアな色を持っていながら、メジャーデビュー前後にBLUE HEARTSに通ずるような明るい路線が前面に出るようになりましたが(その後、再びコアな方向へと回帰していきましたが)、やはりこういった音楽性(歌詞を含めて)でメジャーで活躍するのは、まだまだ保守的だった'80年代にはかなり難しかったといえるでしょう。インディーシーンで活動するにしても今みたいに確立されていませんでしたしね。

  個人的にはこのアルバム以上に、インディーズからリリースされたファーストアルバム「TRASH」('81年)を聴いて欲しいのですが、これは当時もアナログで2,000枚しかプレスされなかった幻の1枚なので、なかなか探すのが難しいと思います(今でもヤフオクでブートやCD-Rに焼いたものを見かけますが、粗悪品が多いのでオススメはしませんが‥‥)。そういう意味では、今でも比較的手に入れやすいこのメジャー盤をまず聴いてもらうのが一番かと。ベスト盤とかいろいろ出てますが、まずはこのアルバムを手にとってみてください。ルースターズや初期のBOφWY等、'80年代初期のルーツロックを語る上でも欠かせない作品ですので、特に今の10代の人達に聴いてもらいたいですね。そしてこれを聴いた後に、また今巷を賑わせている「パンクロック」バンドを聴いてみてください‥‥俺の言わんとしてることが理解してもらえることでしょうね。



▼THE STALIN『STOP JAP』
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投稿: 2003 03 31 12:00 午前 [1982年の作品, STALIN, THE] | 固定リンク