カテゴリー「1983年の作品」の38件の記事

2023年3月21日 (火)

EUROPE『EUROPE』(1983)

1983年3月14日にリリースされたEUROPEの1stアルバム。日本盤タイトルは『幻想交響詩』。

EUROPEは1979年にジョーイ・テンペスト(Vo)、ジョン・ノーラム(G)、ジョン・レヴィン(B)、トニー・レノ(Dr)によって結成された、スウェーデン・ストックホルム出身の4人組(当時)ハードロックバンド。当初はFORCEと名乗っており、1982年にスウェーデンで開催されたコンテストで優勝したことでデビュー権を獲得。このタイミングに現在のEUROPEに改名し、本作で華々しく(かな?)デビューします。

全9曲中、インストの「Boyazont」以外はすべてジョーイが作詞作曲を担当。70年代のブリティッシュハードロックなどからの影響が強く感じられる王道ナンバーが中心で、アルバム冒頭を飾る疾走チューン「In The Future To Come」やドラマチックな名曲「Seven Doors Hotel」など、すでに次作へとつながる様式美ナンバーが用意されており、無名の新人らしからぬ高クオリティぶりを見せています。

それ以外にも叙情的な「The King Will Return」「Words Of Wisdom」、NWOBHMからの影響も感じられる「Farewell」や「Paradize Bay」「Memories」、ジョン・ノーラムの(ギタリストとしての)メロディメイカーぶりが遺憾無く発揮された「Boyazont」など聴きどころ満載。録音状態など含めると、すべてにおいてA級とは言い難いものの、B級+くらいの完成度は保っており、ここ日本でも「Seven Doors Hotel」を中心に高く評価されました(現在のアートワークは、日本盤用に制作されたものが世界デビューの際に採用)。また、本作が評判となり、続く『WINGS OF TOMORROW』(1984年)ではEpic Recordsとのワールドワイド契約も実現しています。

ギターやベースのチューニング、ボーカルのピッチの甘さが若干気になるものの、今聴いてもこの若さと勢いに満ち溢れた内容は『WINGS OF TOMORROW』とは異なるものがあり、あのタイミングだからこその真似できない魅力と言えるかもしれません。もしその後もキーボード主体のアレンジを採用することなく、本作で試みた方向性で進んでいたとしたら、その後どうなっていたんでしょうね。間違いなく「The Final Countdown」は生まれていなかった(世に出ていなかった)とは思いますが……。

本作発売から今年で40周年。このアニバーサリータイミングに『WALK THE EARTH』(2017年)以来となる新作にも期待したいですし、何より節目らしい活動があるのかも楽しみです。

 


▼EUROPE『EUROPE』
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2023年3月20日 (月)

JOURNEY『FRONTIERS』(1983)

1983年2月1日にリリースされたJOURNEYの8thアルバム。

「Who's Crying Now」(米4位)、「Don't Stop Believin'」(同9位)、「Open Arms」(同2位)、「Still They Ride」(同19位)とヒットシングルを連発し、アルバム自体もキャリア初の1位を獲得した前作『ESCAPE』(1981年)。現在までにアメリカのみで1000万枚以上のセールスを誇る名盤から約1年7ヶ月という、今から考えると非常に短いスパンで届けられたのがこの『FRONTIERS』というアルバムです。普通に考えたら、相当なプレッシャーが伴った制作だったのではと予想しますが、この時代ってそういったことを考える余裕もないくらい時間に追われ続けていたのかもしれませんよね。

アメリカンロックの大らかさとポップスとして通用するソフト感のバランスにもっとも優れた前作を経て、今作ではより洗練された上質なサウンドと、このバンドが本来持ち合わせていたハードロック/プログロック的な側面を(ちょうどアメリカでも人気爆発寸前だった)HR/HM視点で昇華させた作風でまとめ上げた印象。楽曲の方向性的には前作の延長線上にあるので、「ソフトでポップなJOURNEY」を期待するリスナーも十分に満足させるだけの内容に仕上がっているのではないでしょうか。

とはいえ、アルバムの冒頭を飾る「Separate Ways (Worlds Apart)」の若干シリアスで仰々しいイントロ、全体を覆う硬質さは「おや、前作とはちょっと違うかも?」と思わせるに十分な1曲。今聴くとチープなシンセリフですが、このあとにVAN HALEN「Jump」やEUROPE「The Final Countdown」がヒットすることを考えると、そのルーツと言えなくもないかな。事実、80年代半ばの“メンバーにキーボードがいた”洋楽カバーバンドはみんなこの「Separate Ways (Worlds Apart)」をコピー/カバーしていましたしね。

で、その若干シリアスな作風はミディアムバラード調の「Send Her My Love」、ダイナミックはハードロック「Chain Reaction」へと続いていきます。前作ではスティーヴ・ペリー(Vo)/ニール・ショーン(G)/ジョナサン・ケイン(Key)の三頭体制で楽曲制作を行ったことでバランスに優れていたわけですが、今作ではペリー&ケイン名義の楽曲も増え(「Separate Ways (Worlds Apart)」「Send Her My Love」「After The Fall」)、挙げ句ケイン単独名義によるピアノバラード「Faithfully」まで存在。ペリー/ケイン/スティーヴ・スミス(Dr)による「Back Talk」なんて曲も存在し、バンド内のバランス感が少しずつ崩れ始めていることにも気づきます。

アルバム前半は前作で得た成功をなぞろうとして若干空回りしている印象もありますが、「Edge Of The Blade」以降のアルバム後半ではニール・ショーンのカラーを強めたハードロック全開。ヘヴィバラード「Troubled Child」やパーカッシヴなドラミングが気持ち良い「Back Talk」、若干プログロック的で演奏陣のテクニカルさが際立つ「Frontiers」、ダイナミックなハードロック「Rubicon」と前半とはまた違った色合いで楽しめるはず。序盤にバラードタイプの楽曲を固めてしまったため、どこか軟弱な印象が付きまとう本作ですが、最後まで聴くとバンドの芯がしっかり伝わる良作なんですよね。

本作からは「Separate Ways (Worlds Apart)」(米8位)、「Faithfully」(同12位)、「After The Fall」(同23位)、「Send Her My Love」(同23位)といったヒットシングルも生まれ、アルバムもアメリカで最高2位(しかも9週連続)を記録。現在までにアメリカのみで600万枚以上を売り上げています。しかし、次作制作に向けて動き出そうとしたタイミングに、ロス・ヴァロリー(B)とスティーヴはバンドを脱退。メインソングライターの3人が残り、バンド活動を継続させることになります。

 


▼JOURNEY『FRONTIERS』
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2023年3月15日 (水)

IRON MAIDEN『PIECE OF MIND』(1983)

1983年5月16日にリリースされたIRON MAIDENの4thアルバム。日本盤タイトルは『頭脳改革』。

ブルース・ディッキンソン(Vo)が加わって最初のアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)は、本国イギリスで初の1位を獲得。アメリカでも初のTOP40入り(最高33位)を果たすなど、バンドの知名度を世界中に向けて一気に広めることに成功しました。そんな好機の中、クライヴ・バー(Dr)がバンドを脱退。代わりにパット・トラヴァースやTRUSTと音楽活動を積み重ねてきたニコ・マクブレインが、新ドラマーとしてIRON MAIDENに加わることになります。ここで1989年まで続く黄金期メンバー……ブルース、スティーヴ・ハリス(B)デイヴ・マーレイ(G)、エイドリアン・スミス(G)、ニコという布陣が完成するわけですね。

作風的には前作で顕著だった、ブルースのボーカルを軸にしたハードロックナンバー中心。そこにスティーヴらしさの伝わるプログレッシヴなテイストのアレンジを散りばめた長尺曲も配置し、アルバムとしてはバランス感に優れた1枚。「Die With Your Boots On」や「The Trooper」「Sun And Steel」といったアップチューンもしっかり用意されているものの、初期のような前作までにあったパンキッシュなやけくそ感はだいぶ後退し、アルバムとしての完成度を高める方向にシフトしている印象もあります。そのへんは、ドラマーの交代も大きく影響しているのかもしれませんね。

そう考えると、グルーヴ感を重視した楽曲で固められたアルバム序盤の作風も、ある意味特徴的と言えるかもしれません。オープニングを飾る「Where Eagles Dare」やライブでも披露される機会も多い「Revelations」、シングルカットもされた「Flight Of Icarus」あたりはまさにその好例ですよね。そこから後半に入ると、ムーディーな「Still Life」やギャロップリズムとシャッフルの中間みたいな「Quest For Fire」、スティーヴの気合いが一番入ったであろう7分半の大作「To Tame A Land」と、従来のカラーを絡めながら前半のテイストに合わせた楽曲群を並べる。言い方が正しいかどうかわかりませんが、IRON MAIDENにしてはちょっと「お行儀の良い」内容のような気がしてなりません。

そういうこともあってか、実は個人的にはあまり印象が強くない1枚なんですよね。聴く頻度もほかの80年代のアルバムと比べると一歩劣ると言いますか。たまに聴くと「意外といい曲多いんだよね」と思うものの、全体的に地味に思えてしまって、そこまでリピートすることなく、またしばらく時間が経ってから引っ張り出すみたいな。欧米での高評価と比べると、僕の中ではそんなポジションの1枚です。

で、今回久しぶりに聴いてみたら「……やっぱりいいじゃん!」といいうことに(笑)。ただ、このアルバムってオープニングとエンディング(最後の締め)がインパクト弱で、どうしても「また続けて聴いてみよう」という気持ちになれなくて(「このあと、まだ続くの?」っていう終わり方だし)。なので、特にラストに関してはマイナスポイントかな。

なお、本作はイギリスで最高3位と前作から数字を落とすものの、アメリカでは最高14位と初のTOP20入り。「Flight Of Icarus」(英11位)、「The Trooper」(英12位)というヒットシングルも生まれ、続く名盤『POWERSLAVE』(1984年)まで続く最盛期のとっかかりを作ることに成功します。

 


▼IRON MAIDEN『PIECE OF MIND』
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2023年3月13日 (月)

Y&T『MEAN STREAK』(1983)

1983年9月にリリースされたY&Tの5thアルバム(YESTERDAY AND TODAY名義の2枚を含む)。

3作目『EARTHSHAKER』(1981年)でひとつのスタイルを完成に近づけ、続く『BLACK TIGER』(1982年)では名曲「Forever」を含む内容でここ日本でも高く評価されたY&T。この『MEAN STREAK』は過去2作で築き上げたスタイルの完成形ともいえる内容で、プロデューサーをクリス・タンガリーディス(ゲイリー・ムーアJUDAS PRIESTTHIN LIZZYなど)に交代したことも功を奏した力作。初めて全米チャート(Billboard 200)でTOP200入り(最高103位)を記録するなど、成績面でも結果を残した1枚です。

当時のメンバーはデイヴ・メニケッティ(Vo, G)、ジョーイ・アルヴィス(G)、フィル・ケネモア(B)、レオナード・ヘイズ(Dr)という黄金期の4人。ボーカルはもちろんのこと、コーラスワークに至るまでかなり力を入れて作り込んだ印象が伝わり、いわゆる捨て曲と呼べるようなものは皆無。どれも耳に残るキャッチーさがしっかり備わっています。と同時に、演奏面でも名手であるレオナード・ヘイズのパワフルで安定感の強いドラミングを筆頭に、泣きメロが随所に散りばめられたメニケッティのギターソロ、日本人の琴線に触れるドラマチックなアレンジなど聴きどころも豊富です。

楽曲に関しても「Mean Streak」や「Lonely Side Of Town」「Break Away」「Sentimental Fool」といった湿り気の強いメロディを持つ良質な楽曲が豊富。その合間をアメリカのバンドらしいグルーヴィーなミドルヘヴィナンバー「Straight Thru The Heart」や「Take You To The Limit」、疾走感の強さが気持ち良い「Hang 'Em High」、開放感満載のアメリカンハードロック「Down And Dirty」といった王道感の強い楽曲が埋めることで、最後まで飽きずに楽しむことができます。

そんな中、我々に日本人にとっては印象深い名曲がアルバム中盤に用意されています。それが、1982年夏の初来日時のエピソードを題材にした「Midnight In Tokyo」です。日本盤CDのライナーノーツによると、この来日公演中に東京を台風が直撃したこと、そんな状況下でも熱狂的に迎え入れてくれた日本のオーディエンスに感銘を受けたことに触発されて完成した1曲なんだとか。そういったエモーショナルなトピックもさることながら、楽曲自体も「Forever」の流れを汲む泣きの様式美ナンバーで、オールドスクールなHR/HMを愛好する者なら誰もが一度は通るであろうスタンダードではないでしょうか。

「Midnight In Tokyo」と双璧をなすタイトルトラック「Mean Streak」から始まり、最後は「Down And Dirty」の意味深な笑い声で終わる本作。現在流通&配信されているリマスターバージョンにはボーナストラックとして「I'm Not Sorry」が追加収録されています。ヘヴィ&グルーヴィーなミドルナンバーはアルバムに含まれていたらフックになりそうな印象もありますが、楽曲自体の完成度は本編収録の9曲よりちょっと劣るので、外したのは正解だったのかもしれません。

本作は個人的にも前作『BLACK TIGER』と双璧をなす、このバンドの代表作だと思っています。このアルバム以降、バンドはよりヘアメタル的なライト方向へとシフトし始めるので、そういった意味でもY&Tの入り口に相応しい傑作だと言わせてください。

 


▼Y&T『MEAN STREAK』
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2023年3月10日 (金)

ERIC MARTIN BAND『SUCKER FOR A PRETTY FACE』(1983)

1983年にリリースされたERIC MARTIN BAND唯一のオリジナルアルバム。

ERIC MARTIN BANDはその名のとおり、のちにMR. BIGのフロントマンを務めることになるエリック・マーティン(Vo)を中心に結成されたUSロックバンド。もともとは415という名前で活動していましたが、同名アーティストがすでにデビューしていたため、メジャーデビュータイミングにこの名前に変更されました。

EMBことERIC MARTIN BANDのメンバーはエリックのほか、マーク・ロス(G)、ジョン・ナイマン(G, Key)、トム・デューク(B)、トロイ・ルケッタ(Dr)、デヴィッド・ジャコブソン(Key)という編成。アルバムのアートワーク表面にはエリックのみ、裏面には残りのメンバー5人が掲載されています。なお、メンバーのうちトロイはのちにTESLAを結成。ジョン・ナイマンも現在Y&Tに在籍し、音楽活動を継続しています。

JOURNEYのマネジメントに所属、かつプロデュースをそのJOURNEYを手がけたケヴィン・エルソン(彼はのちにMR. BIGの諸作品もプロデュースすることに)とロドニー・ミルズ(JOURNEYのほか38 SPECIALなど)が担当するなど、鳴物入りでのデビューだったことがうかがえる本作。内容的にもJOURNEYを筆頭とする、開放的な西海岸サウンドをベースにしたハードロック/ハードポップを堪能することができる、良質な1枚に仕上がっています。

ツインギター編成ですが、シンセが前面に打ち出されていることもあり、時代的にはSURVIVORNIGHT RANGERあたりとの共通点も見つけられますが、そのポップなメロディとエリックの親しみやすい歌声も相まって、やはりJOURNEYとの比較は避けられないかな。演奏面でも、実はよくよく聴くとテクニカルなことに挑戦していたり、凝ったアレンジが施されていたりと、単なるポップロック/AORでは終わらない魅力も秘めています。

40年前の作品とあって、アレンジ面や音作りに関しては古さは否めませんが、それでも楽曲自体の素晴らしさとエリックの若々しい歌声はエヴァーグリーンな輝きを放っている。また、MR. BIGのポップサイドとも重なる部分も多々あるので、ポール・ギルバート(G)&ビリー・シーン(B)のテクニカルなプレイさえ期待しなければMR. BIGファンも十分に楽しめる内容です。

が、それ以上にやはり80年代前半のUSハードロックを語る上で外せない1枚というのが大きいかな。VAN HALENサミー・ヘイガーほどアクが強くなく、NIGHT RANGERほど洗練されていない。このA級とB級の間に位置する感じが、個人的にはたまらないんです。

アルバム自体は当時、50万枚以上のヒット作となりましたが、バンドは1985年に解散。エリックはアルバム『ERIC MARTIN』(1985年)にてソロキャリアをスタートさせることになります。

 


▼ERIC MARTIN BAND『SUCKER FOR A PRETTY FACE』
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2023年2月 8日 (水)

BLACK SABBATH『BORN AGAIN』(1983)

1983年9月12日にリリースされたBLACK SABBATHの11thアルバム。邦題は『悪魔の落とし子』。

ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)とヴィニー・アピス(Dr)の脱退を受け、体勢を立て直そうとしたBLACK SABBATH。当初はロバート・プラント(ex. LED ZEPPELIN)やデヴィッド・カヴァーデイルWHITESNAKE、ex. DEEP PURPLE)といった有名どころから、当時はまだ無名だったマイケル・ボルトンまでもが候補に上がったものの、新たに契約したマネジメントから当時GILLANとして活動中だったイアン・ギラン(ex. DEEP PURPLE)をプッシュされ、この豪華なコラボレーションが実現することとなりました。

そもそもトニー・アイオミ(G)やギーザー・バトラー(B)はこのセッションから生まれた楽曲を、BLACK SABBATH名義として発表するつもりはなかったようで、最終的にはマネジメント側からの猛烈なプッシュでBLACK SABBATH名義でリリースされてしまったとのこと。それもあってか、楽曲の数々はオジー・オズボーン時代ともディオ時代とも異なる、不思議な浮遊感を醸しさすハードロックが展開されています。もちろん、随所からオジー時代はディオ時代の香りは多少するものの、最終的にギランの特徴的なボーカル&シャウトによって打ち消されてしまうのです。

アイオミのギターワークや、ベースとのユニゾンを基調としたリフ作りはどこかモダンさを感じさせ、のちのグルーヴメタル的でもあるような……そう、「Zero The Hero」を筆頭に、意外にもここで展開されている手法って90年代以降のグランジやオルタナメタル的なものに近いんですよね。僕自身がそれに気づいたのも、実はつい最近のことなんですが。だって、それ以前はどうしても“失敗作”“SABBATH PURPLE”みたいな揶揄がお似合いの1枚だと思い込んでいましたから。

とはいえ、アートワークの酷さは苦笑ものですし、ぼんやりしたミックスや安っぽいギターの音作りは減点対象以外の何ものでもありませんが。あと、「Digital Bitch」はどう聴いても“SABBATH PURPLE”と呼ぶにぴったりな仕上がり。「Disturbing The Priest」や「Born Again」などいいところいってる曲もなくはないんですが、もうちょっと頑張れたんじゃないかなという気も。まあ、歌うのがギランじゃねえ……と言っては失礼かもしれませんが、キャラクターのオジー、表現力のディオの後釜としては荷が重すぎますよ。

母国イギリスでは最高4位と好記録を残すものの、本作完成後にはビル・ワードが再脱退(その後、1998年まで復帰せず)。ギランも再結成DEEP PURPLEに参加するため、短期間でバンドを離れることとなります。その後、BLACK SABBATHはやむを得ず活動休止に突入するのでした。

 


▼BLACK SABBATH『BORN AGAIN』
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2022年11月17日 (木)

CHEAP TRICK『NEXT POSITION PLEASE』(1983)

1983年8月15日にリリースされたCHEAP TRICKの7thアルバム。

ロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに迎えニューウェイヴ寄りの作風へとシフトさせた前作『ONE BY ONE』(1982年)から1年4ヶ月ぶりの新作。今回はかのトッド・ラングレンと、以降も彼らの作品にたびたび関わることになるイアン・テイラーがプロデュースを担当し、2ndアルバム『IN COLOR』(1977年)の時期に立ち返ったかのようなパワーポップ節全開の1枚を完成させます。

オープニングトラック「I Can't Take It」は4thアルバム『DREAM POLICE』(1979年)制作時にはデモが存在したようですが、ここまで完成することなく残されてきた1曲。バンドアンサンブルこそニューウェイヴ通過後の色合いを感じさせますが、この溌剌としたテイストは間違いなく“あの”CHEAP TRICKが帰ってきた!と言いたくなる仕上がりです。

以降も、前作での経験を散りばめつつ初期の青臭いパワーポップに回帰した楽曲を連発。かと思えば、大人になった表現が印象的な「Younger Girl」や「3-D」、初期のテイストをバージョンアップさせたような「Don't make Our Love A Crime」や「You Talk Too Much」など良質なポップチューンが並びます。中にはTHE WHO「My Generation」のイントロを遊びでフィーチャーした「Invaders Of The Heart」のような楽曲も存在し、そのボリュームのわりに1曲1曲の濃さが際立つ仕上がりです。

そんな中、70年代後半に活躍したUKパワーポップバンドTHE MOTORSのカバー「Dancing The Night Away」(原曲のプロデュースはかのジョン・マット・ラング)、トッド・ラングレンが提供した「Heaven's Falling」といった変わり種も収録。どちらもバンドのカラーに則しており、良質なカバーといえるでしょう。

バンドメンバーの多くは本作のことを好きな作品として挙げる機会も多いですが、海外では90年代以降しばらく廃盤状態。2006年にはバンドの希望により一部楽曲を差し替え&追加した全16曲仕様(もともとアナログは12曲、CD/カセットは14曲入り)の“The Authorized Version”として最初されています。サブスクなどで聴ける現行バージョンはこちらとなっているので、旧バージョンが聴きたい方は中古ショップを探してみてはいかがでしょう。

バンドの高評価に相反して、本国では最高61位とゴールドディスク獲得を逃しています。シングルヒットも1曲も生まれておらず、まさにバンド低迷期を代表する1枚と言えるでしょう。が、「I Can't Take It」は今でもライブで頻繁に披露されるので、この曲をきっかけに隠れた良曲揃いの本作にも触れてみることをオススメします。

 


▼CHEAP TRICK『NEXT POSITION PLEASE』
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2022年11月 2日 (水)

DOKKEN『BREAKING THE CHAINS』(1981 / 1983)

DOKKENのデビューアルバム。もともとは1981年、フランスのレーベル・Carrere Recordsから『BREAKIN' THE CHAINS』のタイトルで発表されたものでしたが、Elektra Recordsからのワールドワイドデビューに際してリミックス&曲順変更、そしてタイトルを現在の『BREAKING THE CHAINS』に変更し、1983年9月18日にアメリカにて発売されています。なお、本稿では原稿のElektra版について触れていきます。

ドイツでレコーディングされた本作の制作メンバーは、ドン・ドッケン(Vo, G)、ジョージ・リンチ(G)、ミック・ブラウン(Dr)、ホアン・クルーシェ(B)という布陣。1983年のメジャーデビュー時点にはホアンはRATT加入のため脱退しており、アートワークやMVにはのちの黄金期メンバーのひとりであるジェフ・ピルソンが参加しています。

タイトルトラック「Breaking The Chains」やコンピ盤などにもたびたび収録されるファストナンバー「Paris Is Burning」など、その後のDOKKENにも通ずる原石のような楽曲も多数存在するものの、全体を通して聴くと若干のB級感は否めません。いわゆる“LAメタル/ヘアメタル”の範疇で語られることの多い彼らですが、ドイツレコーディングや当時ACCEPTなどで名を上げていたマイケル・ワグナーのプロデュースなども影響を、アメリカンな音よりも欧州メタルに接近した湿り気のあるメロディ/サウンドが特徴的で、同時期に台頭したMOTLEY CRUEやRATTとは一線を画する特殊な存在であったことは本作からもおわかりいただけることでしょう。

「I Can't See You」や「Seven Thunders」を今聴くと恥ずかしくなるようなポップさが含まれていますが、その一方で「Live To Rock (Rock To Live)」や「Nightrider」での前のめりな攻めの姿勢は次作『TOOTH AND NAIL』(1984年)への習作と受け取ることもできる。かと思えば、「Young Girls」が若干RATTっぽいリフワークなのも興味深い。ジョージ・リンチのギタープレイは派手さはあるものの、以降と比べるとこの時点ではまだ開花前といった印象も。

ところが、Elektra版に収録された「Paris Is Burning」は1983年12月のベルリン公演をベースにしていることから、1981年に録音した『BREAKIN' THE CHAINS』以降の音源/プレイ。フランス版のアルバムをレコーディングしたあとにライブを重ねることで、ジョージ自身の個性もさらに固まっていき、このElektra版「Paris Is Burning」では『TOOTH AND NAIL』でのプレイスタイルが早くも垣間見える結果となったわけですね。次作における「Tooth And Nail」でのフラッシーさにもつながる冒頭のソロプレイは、本作における最大のハイライトではないでしょうか。

なお、本作収録の「Felony」は初期のデモ音源をまとめたアルバム『THE LOST SONGS: 1978-1981』(2020年)にも収録されているので、完成版と聴き比べてみるのもいいかもしれません。

 


▼DOKKEN『BREAKING THE CHAINS』
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2022年2月 8日 (火)

NIGHT RANGER『MIDNIGHT MADNESS』(1983)

1983年10月26日にリリースされたNIGHT RANGERの2ndアルバム。

シングルカットされた「Don't Tell Me You Love Me」(全米40位)、「Sing Me Away」(同54位)のスマッシュヒットも手伝い、デビューアルバム『DAWN PATROL』(1982年)が全米38位まで上昇。これを受け、ちょうど1年という短いスパンで届けられたのがこの2ndアルバムでした。

プロデューサーには前作から引き続きパット・グラッサー(GIUFFRIAなど)を迎えて制作された本作。基本的な作風は前作の延長線上にあるのですが、楽曲の洗練度がより増したこと、かつ各プレイヤー陣の個性がより際立ったことにより、その完成度の高さは前作以上のものに。さらに洗練された3rdアルバム『7 WISHES』(1985年)とバンドの原点である1stアルバムの中間に位置する、非常にバランス感に優れた力作に仕上がっています。

アルバム冒頭を飾る代表曲「(You Can Still) Rock In America」を聴けば、ソングライティング面やメッセージ性、そして各プレイヤーの力量含めNIGHT RANGERのすべてが伝わるはず。とにかく聴きどころ豊富な1曲で、ブラッド・ギリス(G)とジェフ・ワトソン(G)というスター性豊かで個性のまったく異なるギタリストの魅力がしっかり理解できることでしょう。もちろん、ジャック・ブレイズ(B, Vo)という類い稀なるフロントマンの才能も同様で、サビ前の〈They Gonna Rock it! Rock it! Rock it!〉で聴けるシャウトなんて最高の一言ですよね。

そんな爽快感の強い1曲を経て、浮遊感の強いギタープレイをフィーチャーしたミディアムナンバー「Rumours In The Air」(これも名曲)、VAN HALENチックなギターリフが特徴的な攻めの「Why Does Love Have To Change」、ケリー・ケイギー(Dr, Vo)のボーカルを存分に活かしたセンチメンタルなバラード「Sister Christian」、ライブのオープニングを飾ることの多いダイナミックなハードロック「Touch Of Madness」、AOR調の空気感が絶妙なバランスを誇る「Passion Play」、このバンドのポップサイドが最良の形で表現された「When You Close Your Eyes」、オープニングのツインリードギターがひたすらカッコいい「Chippin' Away」、アコースティックギターとシンセの絡み、そして2人のシンガーのハーモニーが非常に心地よい「Let Him Run」……と、全9曲/39分があっという間に感じられるほどの充足感を味わえる。問答無用の1枚です。

本作からは「(You Can Still) Rock In America」(全米51位)、「Sister Christian」(同5位)、「When You Close Your Eyes」(同14位)というヒットシングルを生み出し、アルバム自体も最高15位まで上昇。売り上げ100万枚を超えるヒット作になり、バンドの知名度を一気に引き上げることに成功します。しかし、バラードやポップサイドの楽曲がシングルヒットしたことが、次作以降バンドを大いに悩ませることになるのでした。

個人的な思い入れの強さはリリース時にリアルタイムで触れた『7 WISHES』に譲りますが、このバンドの入門編としては本作が最良。ヘヴィ側にもポップス側にもギリギリ振り切らない、バランスに優れた産業ハードロックの傑作だと断言しておきます。

 


▼NIGHT RANGER『MIDNIGHT MADNESS』
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2022年2月 1日 (火)

BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』(1983)

1983年1月18日にリリースされたブライアン・アダムスの3rdアルバム。

1stアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)、2ndアルバム『YOU WANT IT YOU GOT IT』(1981年)と大きなヒットを飛ばすことができなかったブライアン・アダムス。起死回生とばかりに制作されたこの3作目からは、リードシングル「Let Him Know」こそ不発に終わりましたが、続くリカットシングル「Straight From The Heart」が本国カナダで初のTOP20入り、アメリカでも最高10位という高記録を残すことに。これを受けてアルバムもカナダで9位、アメリカで8位まで上昇し、「Cuts Like A Knife」(カナダ12位、米15位)、「This Time」(カナダ32位、米24位)と続々シングルヒットを飛ばし、続く4thアルバム『RECKLESS』(1984年)メガヒットへの下地を作ることになります。

プロデュースは前作から引き続きボブ・クリアマウンテン(THE ROLLING STONESデヴィッド・ボウイブルース・スプリングスティーンなど)とブライアン本人。音の解像度の良さは次作ほどではありませんが、あの時代のアルバムにしては非常にクリアで、ギターの音の粒もよく聞き取れるミキシングではないでしょうか。ゲートリバーブのかかったドラムサウンドも特徴的で、80年代らしさ満載です。

また、このアルバムのレコーディングから以降長きにわたり活動をともにするキース・スコット(G)が初参加。キース、デイヴ・テイラー(B)、ミッキー・カリー(Dr)、トミー・マンデル(Key)という90年代後半まで続く鉄壁の布陣が完成します。さらに、レコーディングにはルー・グラム(Vo/当時FOREIGNER)がコーラスでゲスト参加しています。

楽曲は『RECKLESS』期よりもラフさが目立つ、よい意味で“野暮ったさ”が感じられる内容。『RECKLESS』も十分ハードロック的側面を持つ作品ですが、本作のほうが80年代初頭的ハードロックさが伝わる楽曲が多く、「Take Me Back」や「Don't Leave Me Lonely」あたりは当時のKISSにも通ずるものがあるのではないでしょうか。それもそのはず、後者はソングライティングにKISSのエリック・カー(Dr, Vo)が参加しているのですから。これはKISSの当時の最新作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)にブライアンと彼の相棒ジム・ヴァランスが「Rock And Roll Hell」「War Machine」にコライトで加わったことへのお返しだったのかもしれませんね。この「Don't Leave Me Lonely」、聴けば聴くほどKISSっぽく思えてくるから不思議です(笑)。

「This Time」「Straight From The Heart」「Cuts Like A Knife」と代表曲が並ぶアナログA面の充実度の高さは、改めて目を見張るものがあります。これらのヒットが続く『RECKLESS』のベースになっていることは間違いないでしょう。「Straight From The Heart」は同じバラードでも、のちの大ヒット曲「Heaven」ほどのダイナミズムはないものの、このシンプルさが良いというファンも少なくないはず。僕自身も「Heaven」や「(Everything I Do) I Do It For You」のようなドラマチックさに磨きがかかったパワーバラードより、素朴さの伝わる「Straight From The Heart」のほうがお気に入り。特にこの曲、ライブバージョンが素晴らしいんですよね。1983年当時、MTVなどでオンエアされていたライブ映像を観て僕は一目惚れ(一耳惚れか)したんですが、この映像は今でもYouTubeで視聴可能なので、ぜひチェックしてみてください(↓)。

同じバラードでも、アルバムラストを飾る「The Best Was Yet To Come」も味わい深くて最高。アナログB面は前半と比べて若干地味さが気になりますが、「Don't Leave Me Lonely」やポップな「Let Him Know」、そしてこの「The Best Was Yet To Come」で帳消しにしてくれるはず。全曲ベストとは言い難いものの、そのアンバランスさ含めて当時23歳のブライアン・アダムスを追体験できる1枚です。

 


▼BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』
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