カテゴリー「1983年の作品」の21件の記事

2019年5月24日 (金)

THIN LIZZY『THUNDER AND LIGHTNING』(1983)

1983年3月にリリースされた、THIN LIZZYの通算12枚目にして最後のスタジオアルバム。

解散が決定してから制作されたアルバムって、その多くが“やっつけ”だったり過去のパブリックイメージに沿った想定範囲内の内容だったりすることが多いんだけど、これは異常にテンションが高く、かつ過去のイメージに捉われず新境地に到達してしまったという異色の1枚です。

フィル・ライノット(Vo, B)、スコット・ゴーハム(G)、ブライアン・ダウニー(Dr)という黄金期のメンバーに、前作『RENEGADE』(1981年)から加入したダーレン・ワートン(Key)に、本作が初参加のジョン・サイクス(G)という5人で制作。ジョン・サイクスがソングライティング面で大健闘したのかというと、ジョンの名前は「Cold Sweat」で確認できるのみ。ジョンが加入したのは本作のレコーディング直前で、すでに大半の楽曲は完成していたそうですから、またジョンのような若いミュージシャンが加わったことで演奏に熱が入ったってことなのかもしれませんね。

前のめりなスピードチューン「Thunder And Lightning」のスリリングな構成、ダークで穏やかな「The Sun Goes Down」、メロディアスハードロック「The Holy War」「Cold Sweat」など正統派HR/HMファンにもアピールする楽曲を含みつつも、「Baby Please Don't Go」や「Bad Habits」「Heart Attack」のように従来のTHIN LIZZYファンにも馴染みやすい楽曲もしっかり用意されている。完全に変わったのではなく、バンドとしての軸は残しつつも時代に歩み寄ってヘヴィなスタイルを取り入れた。それがこの進化の理由なのかもしれません。

フィルの味わい深い中音域で歌われる楽曲群は、当時主流だったハイトーンやがなるようなボーカルとは相反するもので、それがどこかパンク的でもあり。そこがTHIN LIZZYを唯一無二のバンドとして知らしめた要因といえるでしょう。事実、「Thunder And Lightning」はバックトラックだけ聴けばスピードメタル的な作風ですが、フィルのボーカルが乗ると急にパンクロックっぽくなるから不思議です。

古くからのファンには賛否あるようですが、僕は初めて聴いたTHIN LIZZYのスタジオアルバムがこれだったので、やっぱり思い入れが強いんですよね(生粋のジョン・サイクス・ファンなもので)。でも、ジョンが弾いているから云々を抜きにしても、本作は非常に素晴らしいハードロックアルバムだと断言できます。

最後に、本作で好きなギタープレイのほとんどが、ジョンのものではなくてスコットのプレイだという事実も書き残しておきたいと思います。

 


▼THIN LIZZY『THUNDER AND LIGHTNING』
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2018年4月30日 (月)

DURAN DURAN『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』(1983)

昨日紹介したビリー・アイドルの『REBEL YELL』(1983年)と同時期にリリースされたのが、DURAN DURAN通算3枚目のスタジオアルバム。前作『RIO』(1982年)でついに全米での人気(最高6位)も確かなものとした彼らは、この3rdアルバムでその地位をより強固なものとしました。初の全英1位獲得に続き、アメリカでも最高8位を記録。「Union Of The Snake」(全米・全英ともに3位)、「New Moon On Monday」(全米10位、全英9位)、「The Reflex」(全米・全英ともに1位)というヒットシングルも人気の後押しに一役買ったことは確かで、今振り返ると1982〜1985年あたりがDURAN DURAN人気のピークだったことは間違いありません。

グレイス・ジョーンズやTHOMPSON TWINS、TALKING HEAD、FOREIGHERなどのプロデュース/エンジニアで知られるアレックス・サドキンをプロデューサーに迎えた唯一のアルバム(シングル「Is There Something I Should Know?」はミックスのみ。のちに別プロジェクトARCADIAで再びプロデュース担当)。前作『RIO』で聴けた“シンセをフィーチャーしたロックバンド”的サウンドをさらに進化させ、ここでは完全にシンセをメインに、ギターは前に出るよりもセンスの良いフレーズを随所に取り入れるという程度の活躍に収まっています。

が、この手法が1983年という時代に見事にフィットしたんでしょうね。「New Moon On Monday」や「Union Of The Snake」といったヒット曲はシンセの印象が強いですし、「(I’m Looking For) Cracks In The Pavement」「I Take The Dice」あたりもシンセポップ的な色合いが強い。じゃあギターは全然ダメかというとそんなことはなく、「The Reflex」しかり「Union Of The Snake」しかり、アンディ・テイラー(G)が軽快なカッティングストロークを聴かせてくれます(ここで鬱積したものが、のちのTHE POWER STATIONで爆発→脱退につながるんでしょうかね)。

サイモン・ル・ボン(Vo)ののっぺりしたボーカルも、このサウンドで聴くと不思議と欠点が目立たない。むしろ、セクシーにすら思えてくるんだから驚きです。シンガーとしては間違いなくこのアルバムとARCADIAでの活動時期が最高潮だったのではないでしょうか。事実、本作を携えたツアーの模様を収めたライブアルバム『ARENA』(1984年)でボーカルパフォーマンスも(スタジオで追加録音しているとはいえ)なかなかのものがありますし。

DURAN DURANの代表作は?と尋ねられたら、間違いなく『RIO』を挙げますが、もっとも完成度の高いアルバムは?と聞かれたら僕はこの『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』を選びます。それくらい、バンドの熱量と時代が求めるものとがぴったり一致した1枚だと思うのです。



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2018年4月29日 (日)

BILLY IDOL『REBEL YELL』(1983)

そして『反逆のアイドル』は今年で35周年……やっぱりこういう邦題文化って素敵。

パンクバンドGENERATION Xのフロントマンだったビリー・アイドルが、1983年11月に発表した2ndフルアルバム。「Rebel Yell」(全米46位、全英62位)、「Eyes Without A Face」(全米4位、全英18位)、「Flesh For Fantasy」(全米29位、全英54位)、「Catch My Fall」(全米50位)とヒット曲が多数生まれ、アルバム自体も全米6位、200万枚以上を売り上げる好成績を残しています(一方でイギリスでは36位止まり)。

前作『BILLY IDOL』(1982年)の延長線上にあるポップでわかりやすいロックを軸にした作風ですが、本作ではとにかくビリーの相方スティーヴ・スティーヴンス(G)の才能が一気に開花したことで、そのサウンドはより独創的なものへと進化しています。

それはオープニングを飾る「Rebel Yell」1曲取り上げてもおわかりいただけるかと思います。オープニングのフィンガーピッキングを用いたリフ、バッキングひとつとっても派手ですし、おもちゃの光線銃をフィーチャーした独特なギターソロなんて圧巻の一言。これがあるとないとでは大きく異なりますよね。

かと思えば、アダルトな雰囲気の「Eyes Without A Face」があったり、キャッチーな「Catch My Fall」があったり、ヘヴィなギターリフが印象的な「Flesh For Fantasy」があったり。さらに疾走感に満ち溢れたハードロック「Blue Highway」や「(Do Not) Stand In The Shadows」、ニューウェイブの影響下にある不思議なバラード「The Dead Next Door」もある。これを元パンクロッカーがやっているのかと思うと複雑な気持ちにもなりますが、隣に立つハードロックギタリストの影響が強いんだろうなと考えれば不思議と納得できるんですよね。

ビリーは決して器用なシンガーではありませんし、パンク出身ということもあってか、変に作り込まれた楽曲よりもシンプルな楽曲のほうがその歌声が映える気がします。そういう意味では、本作における「Eyes Without A Face」「Flesh For Fantasy」あたりがギリギリのラインなのかなと思ったり。あと、アクが強すぎるがあまり、極端にポップ過ぎてもダメという。

そのへんのことを相方がよく理解していたからこそ、こういう奇跡的な1枚を作ることができたんでしょうね。実際、スティーヴが抜けたあとの作品はいろいろやろうとして失敗してますし。難しいものですね。



▼BILLY IDOL『REBEL YELL』
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2018年4月25日 (水)

THE POLICE『SYNCHRONICITY』(1983)

乃木坂46通算20枚目のシングル『シンクロニシティ』発売および大ヒット、おめでとうございます。

ということで、今日はこのタイトルを最初に知ったとき、オッさんリスナー誰もが思い出したであろうTHE POLICEの5thアルバムにして最終作となった『SYNCHRONICITY』を紹介したいと思います。

アルバムを出すごとに本国イギリス以上にアメリカで大きなヒットを飛ばし始めたTHE POLICE。前作『GHOST IN THE MACHINE』(1981年)はついに全米2位、300万枚ものヒット作となりました(イギリスでは当然のように1位獲得)。また、同作からは「Every Little Thing She Does Is Magic」(全英1位/全米3位)というヒットシングルも生まれ、あとはどのタイミングで全米1位を獲得するのかと、誰もが注目しているところでした。

そんな中、先行シングル「Every Breath You Take」に続いて1983年6月に発表されたのが、本作『SYNCHRONICITY』。「Every Breath You Take」はイギリスのみならずアメリカでも初の1位を獲得し、しかも8週連続1位という偉業を成し遂げました。アルバムのほうもこれに続いて全米1位を獲得。さらに「Wrapped Around Your Finger」(全英7位/全米8位)、「Synchronicity II」(全英17位/全米16位)、「King Of Pain」(全英17位/全米3位)とヒットシングルが多数生まれ、結果アメリカでは800万枚を超えるメガヒット作となったのでした。

パンクにレゲエをミックスしたシンプルなバンドサウンドからスタートしたTHE POLICEが、7年程度でたどり着いた到達点。テクニカルなバンドアンサンプルを多用した「Synchronicity I」のようなロックチューンから民族音楽的な「Walking In Your Footsteps」、アンディ・サマーズ(G)が歌う国籍を感じさせない「Mother」、ラテンポップロックと読んでも差し支えない「Miss Gradenko」、ギターがパワフルなハードロック「Synchronicity II」など、楽曲としてはかなりバラエティに富んだ印象の強いアルバムです。

そこから、スティング(Vo, B)の淡々とした歌い出しがストーカーまがいな歌詞と妙にマッチする「Every Breath You Take」で後半戦に突入。以降、「King Of Pain」「Wrapped Around Your Finger」とヒット曲が続き、アナログ盤はジャジーさすら感じさせるレゲエソング「Tea In The Sahara」で幕を下ろします。そこにCDやカセットではさらに、「Murder By Numbers」というのちのスティングのソロ活動につながる1曲が追加されています。

スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランド(Dr)と創作意欲も演奏技術も優れた、エゴの強いミュージシャンが作り出した終着点。いろんな意味で、バンドとしても臨界点に突入していたんでしょうね。本作を携えたワールドツアーを終えると、バンドは活動休止に突入。スティングはジャズに傾倒したソロアルバム『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』(1985年)を発表し、THE POLICEに次ぐ成功を収めます。そして1986年、再びスタジオ入りした3人でしたが、結局過去のヒット曲「Don't Stand So Close To Me」のリメイクバージョン1曲を残したのみで、THE POLICEは長い沈黙に入るのでした。



▼THE POLICE『SYNCHRONICITY』
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2018年2月15日 (木)

SLAYER『SHOW NO MERCY』(1983)

本国アメリカで1983年12月にリリースされた、SLAYERの記念すべき1stアルバム。スラッシュメタルという観点でいうと、METALLICA『KILL 'EM ALL』(1983年7月発売)から5ヶ月遅れて、ANTHRAXの『FISTFUL OF METAL』(1984年1月発売)に1ヶ月先駆けて発表されており、USスラッシュ勢の中でもかなり初期の作品に入ると思います。

現在のスピード感と比較すれば、速いは速いけど、まだまだヘヴィメタルの範疇における速さかなという印象。それ以上に、どこから影響を受けたがわかりやすい構造を持つ楽曲群が次作『HELL AWAITS』(1985年)以降とも異なり、非常に微笑ましく感じられます。そういったところは、METALLICAの『KILL 'EM ALL』にも通ずるものがありますね。

METALLICA同様に、IRON MAIDENみたいに複雑な展開を持つ楽曲からの影響が強いながらも、METALLICAほどパンクの色は感じられない。むしろVENOMあたりのスピード感と、そのVENOMやMERCYFUL FATEの影響下にある悪魔主義的側面が歌詞やおどろおどろしいサウンドに表出しているところは、METALLICAやANTHRAXといったMOTÖRHEAD色の強いバンドと異なる点ではないでしょうか(ジャケットのイラストしかり)。

ただ、トム・アラヤ(Vo, B)の吐き捨てるような、それでいて時にヒステリックなハイトーンも飛びたすボーカルスタイルは、同時代を生きたジェイムズ・ヘットフィールドと共通するものが感じられ、非常に面白いと思うんです。これがNWOBHM以降なのか、はたまた別の(それこそハードコアあたりからの)影響なのか。

「Metal Storm / Face The Slayer」といった組曲(アルバム最長の約5分)があるものの、基本的には3分前後のストレートな楽曲が中心。アルバム冒頭を飾る2曲「Evil Has No Boundaries」「The Antichrist」なんて、80年代後半以降のSLAYERと比較したら完全に別モノに聴こえてきますからね。『HELL AWAITS』までの間に一体どんな変化を迎えたのか、気になるところです。

が、その答えは意外と簡単でして。本作から半年後の1984年6月発売のEP『HAUNTING THE CHAPEL』が果たした役割が非常に大きかったわけです。同作に収録された「Chemical Warfare」が、SLAYERが進む道を決定付けたと言っても過言ではないでしょう。そこについては、また別の機会に。



▼SLAYER『SHOW NO MERCY』
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2017年12月 5日 (火)

DIO『HOLY DIVER』(1983)

ロニー・ジェイムス・ディオがBLACK SABBATH脱退を経て結成した、自身のリーダーバンドDIO。そのディオがサバス時代の盟友ヴィニー・アピス(Dr)、ディオとRAINBOWで活動をともにしたジミー・ベイン(B)、のちにDEF LEPPARDに加入するヴィヴィアン・キャンベル(G)という編成で1983年に制作したのが、DIO名義でのデビューアルバム『HOLY DIVER』です。

展開されているサウンドは、直近のサバスでのアルバム『HEAVEN AND HELL』(1980年)や『MOB RULES』(1981年)をよりメタリックにしたもの。もちろん、ディオが在籍した時代のRAINBOWの作風にも近いものがありますが、基本的にはサバスでの2枚のアルバムでの経験がそのまま活かされていると言っていいでしょう。

また、歌われている歌詞もディオがRAINBOWやサバスで表現してきた、中世のファンタジックな世界観が軸になっており、彼が描いたこういった幻想的な詩世界は後続のHR/HMバンドたちの大きな影響を与えました。一方で、(アートワーク含む)こういったテイストが他ジャンルから揶揄の対象になったのもまた事実で、これを受け入れられるかられないかでDIOの楽しみ方は大きく変わってしまうかもしれません。

とはいえ、そのサウンドやディオのボーカルは歌詞の内容とは関係なく、パワフルな王道HR/HMとして純粋に楽しめるはずです。ディオの演歌じみたボーカルは言うまでもなく、それ以上に特筆すべきなのがヴィヴィアンのよる若々しいギタープレイでしょう。DEF LEPPARD以降しか知らないリスナーにとっては、ここで表現されているアグレッシヴなプレイは驚きの対象かもしれませんが(まあ、最近のDIOトリビュートから始まったLAST IN LINEとかありますけどね)、1曲目「Stand Up And Shout」での前のめりなギターリフはリリースから35年近く経った今聴いてもカッコ良いの一言。続くヘヴィなミドルチューン「Holy Diver」やキャッチーな「Caught In The Middle」でのギターソロは必聴です。

また、楽曲自体が意外とバラエティに富んでいて、優れものばかりなのも本作の特筆すべきポイント。シンセを前面に打ち出した「Rainbow In The Dark」や、アコースティックギターをフィーチャーしたヘヴィメタルバラード「Don't Talk To Strangers」(ヘヴィになってからの展開、およびヴィヴィアンの攻めのギターソロも含め最高です)など、聴きどころ満載なのです。人によって好みはあるのかもしれませんが、基本的には捨て曲なしの1枚だと思っています。だからこそ、DIOは本作を再現するツアーも2000年代半ばに行ったのでしょうし(その模様は、2006年発売のライブアルバム『HOLY DIVER LIVE』で確認できます)。

2010年5月16日にディオが亡くなり、残念ながら今後新作を期待できないDIOですが、だからこそ彼が残した名作の数々をこういう形で後世に伝えていけたらなと……そう思いながら、今夜もこのアルバムを爆音で聴くわけです。



▼DIO『HOLY DIVER』
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2017年11月20日 (月)

HANOI ROCKS『BACK TO MYSTERY CITY』(1983)

初めて聴いたHANOI ROCKSのアルバムが本作『BACK TO MYSTERY CITY』でした。1983年5月に発表された通算3作目のオリジナルアルバム。スタジオアルバムとしては、前作にあたるコンピレーション盤『SELF DESTRUCTION BLUES』(1982年)を含めれば4作目となります。

本作は間違いなく、彼らの名をワールドワイドに知らしめるきっかけとなった第一歩。事実、本作の高評価がのちのメジャー契約けとつながったわけですからね。

で、実際にその内容も過去3作から格段にレベルアップしています。プロデュースを手がけたのは、元MOTT THE HOOPLEのデイル・グリフィンとピート・オヴァレンド・ワッツ(デイルは昨年1月、オヴァレンドは今年1月にそれぞれ亡くなっております。ご冥福をお祈りします)。前作までにあった“バタ臭さ”や“B級臭”が一気に薄らぎ、とても“北欧出身のインディーグラムロックバンド”なんて感じさせない音に仕上げられています。

そして、楽曲自体のクオリティ(主にアレンジ面)が格段に向上。オープニングのアコギ&フルートによるインスト「Strange Boys Play Weird Openings」から名曲「Malibu Beach Nightmare」へと続く構成は、ロック史屈指の名演と断言したいし、なによりその「Malibu Beach Nightmare」の名曲ぶりといったら……グラムロックとパンクの良さを絶妙にブレンドし、さらに自分たちのオリジナルへと昇華させたその技量に、改めて驚かされます。

そのほかにも「Mental Beat」や名バラード「Until I Get You」、ポップでキャッチーな「Ice Cream Summer」、ライブのクライマックスに相応しい「Back To Mystery City」など、今聴いても最高にクールな名曲が豊富。パンクロックのオリジネーターへのリスペクトも込められた「Tooting Bec Wreck」もあれば、どこかニューウェーブテイストの「Lick Summer Love」、ドラマチックなコード進行&アレンジが日本人好みな「Beating Gets Faster」もある。次作にして最初の解散前ラストアルバムとなってしまった『TWO STEPS FROM THE MOVE』(1984年)が第1期HANOI ROCKSの完成形だとすると、本作で表現されているのはそのプロトタイプであり、A級とB級の間にいる彼らのアンバランスさが色濃く表現されているんじゃないでしょうか。そして、そこが味わい深いし、すごく興味を惹かれるんですよね。

ハードロックでもないしパンクロックでもない、グラムロックでもない彼らの微妙な立ち位置がこのアルバムを聴けば理解できる。そんなオリジナリティに満ち溢れた傑作です。



▼HANOI ROCKS『BACK TO MYSTERY CITY』
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2017年11月12日 (日)

STYX『KILROY WAS HERE』(1983)

1983年2月にリリースされた、STYXの11thアルバム。オープニングを飾る「Mr. Robot」の、ボコーダー越しの〈ドモアリガット、ミスターロボットー〉ってフレーズを覚えているオーバー40の皆様ならご存知の作品かもしれません。もしくは、この曲だけは知ってるけどアルバムは聴いたことがない、そんな人のほうが多いのかな。実際、僕もアルバム自体は20歳を超えてから初めて聴きましたから。

実は自分の小遣いで生まれて初めて買った洋楽シングルが、先の「Mr. Robot」でした。中学に上がる前だったから、まだ小学生だったかもしれませんね。MTVで知ったとかそういうことではなく、当時何かのCMソングに使用されていて、あのフレーズが気に入ったというのと、小2から6年間エレクトーンを習っていたので、もともとYMO以降のテクノポップに興味があったというのもあります。で、この曲ばかりをひたすら聴きまくったわけです。なので、僕の中ではその後数年間「STYX=Mr. Robot」だったわけです。

STYX自体は、本作リリース後のツアーをもって活動休止。なので、僕が本格的に洋楽ロックを聴き始めてから1990年の復活まで新作は一切発表しておらず、むしろソロアーティストとしてのデニス・デ・ヤング(Vo, Key)やトミー・ショウ(Vo, G)のほうに馴染みがあるくらい。トミーなんて“DAMN YANKEESの人”ってイメージのほうが強いですからね。

そのDAMN YANKEESの初来日公演で、トミーがSTYX時代の曲をいくつか披露しており、そこで初めて初期のベスト盤を聴いたのかな。オリジナルアルバムは名盤と言われる10th『PARADISE THEATER』(1981年)が最初だった記憶が。それで、しばらくしてから本作『KILROY WAS HERE』を手にしたのでした。

近未来SFをモチーフにしたコンセプトアルバムということで、シンセを全面的に使用したプログレロック/プログレポップ/産業ロックが展開されている本作。テクノポップ調なのは先の「Mr. Robot」程度で、以降はSTYXらしいバラードやハードロック、プログレポップが次々と飛び出します。ボーカルもデニスやトミーのほか、ジェイムズ・ヤング(Vo, G)も歌っているのかな。メンバー5人全員にアルバム内のストーリーに沿った役名が与えられていて、どこかミュージカルチック。しかも日本語フレーズ同様に東洋風のメロディやフレーズもところどころに取り入れられており、我々日本人には比較的親しみやすい作風なんじゃないでしょうか。

本作に関しては、ぜひ国内盤の歌詞カード対訳を目にしながら聴いてみてほしいですね。それによって、アルバムの印象も少しは変わると思うので。

というのも、何も知らずに聴いたら……プログレのわりに音が軽くてそこまで複雑じゃないし、むしろJOURNEYやNIGHT RANGERのほうが近いんじゃないかと思うほど。まあこれがアメリカンプログレポップと言われたらそれまでなんですが、普段HR/HMに慣れてしまっている耳にはちょっと軽く聴こえてしまうのも事実。やれ産業ロックだなんだと、そういう偏見を捨てて純粋に“ドラマチックな近未来コンセプトアルバム”として接したら絶対に楽しめる1枚だと思います。楽曲単位でも優れたものが多いですし、そのへんのバンドに興味がある人はぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょう。



▼STYX『KILROY WAS HERE』
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2017年11月 4日 (土)

QUIET RIOT『METAL HEALTH』(1983)

1983年春に発表された、QUIET RIOTの記念すべき全米デビューアルバム。彼らは70年代、ランディ・ローズを含む編成で『QUIET RIOT』(1977年)、『QUIET RIOT II』(1978年)の2枚を日本でのみ発表していますが、ワールドワイドデビューという意味ではこの『METAL HEALTH』が1stアルバムになるわけです。

時代背景的には、ちょうどこの頃からアメリカでHR/HMがウケ始め、このQUIET RIOTとDEF LEPPARDが全米チャートの上位にランクイン。『METAL HEALTH』は当時としては異例の全米1位を獲得し、600万枚以上を売り上げました。ちなみに、DEF LEPPARDも1983年に発表した3rdアルバム『PYROMANIA』が全米2位に輝き、現在までに1000万枚以上ものセールスを記録していることはご存知のとおり。この2バンドの大成功が、後続たちへ道を切り開いたと言っても過言ではありません(もちろん、それ以外の要素も存在しますが、話が長くなるのでここでは割愛させてください)。

QUIET RIOTはL.A.メタルにカテゴライズされたバンドですが、聴いてもらえばわかるように「適度にハードで適度にポップ」という絶妙なバランス感で成り立つ楽曲&サウンドが魅力。しかもカバー曲(SLADEのヒット曲「Cum On Feel The Noize」)をシングルカットすることで、ラジオヒットやMTVでのヘヴィローテーションに後押しされチャート的にも成功を収め(全米5位)、HR/HMファン以外にも浸透していったわけです。これは先のDEF LEPPARDも同様で、MTVのスタートによってミュージックビデオ(つまりヴィジュアル)が重要視される時代が到来したことで、見た目が派手なHR/HMバンド側に風向きが変わっていったわけですね。

「Cum On Feel The Noize」のみならず、派手なパーティソング「Slick Black Cadillac」、ハードだけどメロディアスで口ずさみたくなる「Metal Health (Bang Your Head)」、泣きメロを伴った疾走ナンバー「Breathless」、ヘヴィメタル寄りのファストチューン「Run For Cover」、穏やかなミディアムチューン「Don't Wanna Let You Go」、故ランディ・ローズに捧げるピアノバラード「Thunderbird」など、とにかくキャッチーで親しみやすい曲が豊富。B級感皆無で、一聴して「こりゃあ売れるわ」と頷ける内容です。

彼らの場合、このデビュー作の出来が良すぎたのが不幸だったといいましょうか、続く『CONDITION CRITICAL』(1984年)以降、一気に失速してしまいます。今みたいに3年に1枚でも許される時代ならまだしも、当時は毎年のようにアルバムを発表していた時代ですから、ツアー三昧で曲作りも追いつかなかったんでしょうね。そういった意味でも、大成功は収めたものの不運なバンドだったのかもしれませんね。



▼QUIET RIOT『METAL HEALTH』
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2017年11月 2日 (木)

MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL』(1983)

1983年秋に発表された、MOTLEY CRUEの2ndアルバムにしてその名を世に知らしめた出世作。ちょうどアメリカのHR/HMブームと重なったこともあり、本作は全米17位という高順位を記録し、現在までにアメリカだけで400万枚以上を売り上げる最初のヒットアルバムとなりました。

1982年にアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年にインディーズから発表されたアルバムをリミックス&曲順を変えたもの)でメジャーデビューを果たした彼らでしたが、当初は“間違った方向のグラムロック”的なイロモノ/キワモノと捉えられていたようです。ですが、楽曲自体はキャッチーだったこともあり、それが全米77位という小ヒットにつながったのでしょう。

続く今作では、プロデューサーにCHEAP TRICKなどで知られるトム・ワーマンを迎えて制作。どこか軽さとB級感が伴っていた前作から一変し、本作では硬派でメタリックなサウンドと楽曲を聴かせてくれます。

オープニングSE「In The Beginning」からタイトルトラック「Shout At The Devil」へと流れていく構成は、リリースから35年近く経った今聴いても最高に震えますし、その表題曲のカッコ良さたるや……活動後期〜末期のヴィンス・ニール(Vo)がこれくらい歌えていたら、もっと伝説に……(以下略)。

シングルカットされた「Looks That Kill」や「Too Fast To Fall In Love」のキャッチーさ、「Bastard」「Red Hot」みたいな攻め攻めのメタルチューン、「God Bless The Children Of The Beast」「Danger」みたいに泣きメロを伴うバラード(のちの「Home Sweet Home」とは異なる、ヘヴィメタルバラード)、そしてTHE BEATLES「Helter Skelter」のヘヴィメタル版カバーなど、とにかく今聴いてもカッコ良いし、2017年でも前々通用するハードロックナンバー満載の1枚だと思います。

完璧さを求めるのであれば、最大のヒット作となった5th『DR. FEELGOOD』(1989年)のほうが上かもしれませんが、適度な隙があってA級とB級の間にいるこの感じは、それ以前にもそれ以降にも同じような作品がないだけに、本当なら比較のしようがないのですが……うん、個人的には彼らのキャリア中でもっとも好きな1枚です。

90年前後になると、古くからのファンの間で本作と『DR. FEELGOOD』、どっちが名盤か?なんて議論もあったのですが、結局はこの『SHOUT AT THE DEVIL』と『DR. FEELGOOD』がその後のモトリーにとって、良くも悪くもベースになってしまったような気がします。まぁ『DR. FEELGOOD』でやりすぎてしまった、というのもあるのかもしれませんが……。

ヴィンスの声が出まくりなのはもちろん(笑)、トミー・リー(Dr)のドラミングもミック・マーズ(G)のリフワーク&ソロプレイも、ニッキー・シックス(B)のソングライティングもすべてが冴えまくった、「こりゃ売れるわ」という1枚。もはや叶いはしませんが、一度は本作の完全再現ライブなんてのも観てみたかったもんですね。



▼MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL』
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