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カテゴリー「1983年の作品」の30件の記事

2022年2月 8日 (火)

NIGHT RANGER『MIDNIGHT MADNESS』(1983)

1983年10月26日にリリースされたNIGHT RANGERの2ndアルバム。

シングルカットされた「Don't Tell Me You Love Me」(全米40位)、「Sing Me Away」(同54位)のスマッシュヒットも手伝い、デビューアルバム『DAWN PATROL』(1982年)が全米38位まで上昇。これを受け、ちょうど1年という短いスパンで届けられたのがこの2ndアルバムでした。

プロデューサーには前作から引き続きパット・グラッサー(GIUFFRIAなど)を迎えて制作された本作。基本的な作風は前作の延長線上にあるのですが、楽曲の洗練度がより増したこと、かつ各プレイヤー陣の個性がより際立ったことにより、その完成度の高さは前作以上のものに。さらに洗練された3rdアルバム『7 WISHES』(1985年)とバンドの原点である1stアルバムの中間に位置する、非常にバランス感に優れた力作に仕上がっています。

アルバム冒頭を飾る代表曲「(You Can Still) Rock In America」を聴けば、ソングライティング面やメッセージ性、そして各プレイヤーの力量含めNIGHT RANGERのすべてが伝わるはず。とにかく聴きどころ豊富な1曲で、ブラッド・ギリス(G)とジェフ・ワトソン(G)というスター性豊かで個性のまったく異なるギタリストの魅力がしっかり理解できることでしょう。もちろん、ジャック・ブレイズ(B, Vo)という類い稀なるフロントマンの才能も同様で、サビ前の〈They Gonna Rock it! Rock it! Rock it!〉で聴けるシャウトなんて最高の一言ですよね。

そんな爽快感の強い1曲を経て、浮遊感の強いギタープレイをフィーチャーしたミディアムナンバー「Rumours In The Air」(これも名曲)、VAN HALENチックなギターリフが特徴的な攻めの「Why Does Love Have To Change」、ケリー・ケイギー(Dr, Vo)のボーカルを存分に活かしたセンチメンタルなバラード「Sister Christian」、ライブのオープニングを飾ることの多いダイナミックなハードロック「Touch Of Madness」、AOR調の空気感が絶妙なバランスを誇る「Passion Play」、このバンドのポップサイドが最良の形で表現された「When You Close Your Eyes」、オープニングのツインリードギターがひたすらカッコいい「Chippin' Away」、アコースティックギターとシンセの絡み、そして2人のシンガーのハーモニーが非常に心地よい「Let Him Run」……と、全9曲/39分があっという間に感じられるほどの充足感を味わえる。問答無用の1枚です。

本作からは「(You Can Still) Rock In America」(全米51位)、「Sister Christian」(同5位)、「When You Close Your Eyes」(同14位)というヒットシングルを生み出し、アルバム自体も最高15位まで上昇。売り上げ100万枚を超えるヒット作になり、バンドの知名度を一気に引き上げることに成功します。しかし、バラードやポップサイドの楽曲がシングルヒットしたことが、次作以降バンドを大いに悩ませることになるのでした。

個人的な思い入れの強さはリリース時にリアルタイムで触れた『7 WISHES』に譲りますが、このバンドの入門編としては本作が最良。ヘヴィ側にもポップス側にもギリギリ振り切らない、バランスに優れた産業ハードロックの傑作だと断言しておきます。

 


▼NIGHT RANGER『MIDNIGHT MADNESS』
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2022年2月 1日 (火)

BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』(1983)

1983年1月18日にリリースされたブライアン・アダムスの3rdアルバム。

1stアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)、2ndアルバム『YOU WANT IT YOU GOT IT』(1981年)と大きなヒットを飛ばすことができなかったブライアン・アダムス。起死回生とばかりに制作されたこの3作目からは、リードシングル「Let Him Know」こそ不発に終わりましたが、続くリカットシングル「Straight From The Heart」が本国カナダで初のTOP20入り、アメリカでも最高10位という高記録を残すことに。これを受けてアルバムもカナダで9位、アメリカで8位まで上昇し、「Cuts Like A Knife」(カナダ12位、米15位)、「This Time」(カナダ32位、米24位)と続々シングルヒットを飛ばし、続く4thアルバム『RECKLESS』(1984年)メガヒットへの下地を作ることになります。

プロデュースは前作から引き続きボブ・クリアマウンテン(THE ROLLING STONESデヴィッド・ボウイブルース・スプリングスティーンなど)とブライアン本人。音の解像度の良さは次作ほどではありませんが、あの時代のアルバムにしては非常にクリアで、ギターの音の粒もよく聞き取れるミキシングではないでしょうか。ゲートリバーブのかかったドラムサウンドも特徴的で、80年代らしさ満載です。

また、このアルバムのレコーディングから以降長きにわたり活動をともにするキース・スコット(G)が初参加。キース、デイヴ・テイラー(B)、ミッキー・カリー(Dr)、トミー・マンデル(Key)という90年代後半まで続く鉄壁の布陣が完成します。さらに、レコーディングにはルー・グラム(Vo/当時FOREIGNER)がコーラスでゲスト参加しています。

楽曲は『RECKLESS』期よりもラフさが目立つ、よい意味で“野暮ったさ”が感じられる内容。『RECKLESS』も十分ハードロック的側面を持つ作品ですが、本作のほうが80年代初頭的ハードロックさが伝わる楽曲が多く、「Take Me Back」や「Don't Leave Me Lonely」あたりは当時のKISSにも通ずるものがあるのではないでしょうか。それもそのはず、後者はソングライティングにKISSのエリック・カー(Dr, Vo)が参加しているのですから。これはKISSの当時の最新作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)にブライアンと彼の相棒ジム・ヴァランスが「Rock And Roll Hell」「War Machine」にコライトで加わったことへのお返しだったのかもしれませんね。この「Don't Leave Me Lonely」、聴けば聴くほどKISSっぽく思えてくるから不思議です(笑)。

「This Time」「Straight From The Heart」「Cuts Like A Knife」と代表曲が並ぶアナログA面の充実度の高さは、改めて目を見張るものがあります。これらのヒットが続く『RECKLESS』のベースになっていることは間違いないでしょう。「Straight From The Heart」は同じバラードでも、のちの大ヒット曲「Heaven」ほどのダイナミズムはないものの、このシンプルさが良いというファンも少なくないはず。僕自身も「Heaven」や「(Everything I Do) I Do It For You」のようなドラマチックさに磨きがかかったパワーバラードより、素朴さの伝わる「Straight From The Heart」のほうがお気に入り。特にこの曲、ライブバージョンが素晴らしいんですよね。1983年当時、MTVなどでオンエアされていたライブ映像を観て僕は一目惚れ(一耳惚れか)したんですが、この映像は今でもYouTubeで視聴可能なので、ぜひチェックしてみてください(↓)。

同じバラードでも、アルバムラストを飾る「The Best Was Yet To Come」も味わい深くて最高。アナログB面は前半と比べて若干地味さが気になりますが、「Don't Leave Me Lonely」やポップな「Let Him Know」、そしてこの「The Best Was Yet To Come」で帳消しにしてくれるはず。全曲ベストとは言い難いものの、そのアンバランスさ含めて当時23歳のブライアン・アダムスを追体験できる1枚です。

 


▼BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』
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2021年10月10日 (日)

MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年10月1日にリリースされた、MOTLEY CRUEの2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカルでの発売なしの、デジタル限定作品となっています。

今年6月に4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)と3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、9月には5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)の最新リマスター盤を立て続けにリリースしたMOTLEY CRUE。これらはバンド結成40周年の記念企画の一環で、残すは1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)のリマスター盤発表を待つばかり。こちらはオリジナル盤の発売と同日の11月10日を予定しているようです。

過去に取り上げてきた作品の中では1983年制作と、本作がもっとも古いアルバム。当時の録音技術や機材の影響もあり、例えば『DR. FEELGOOD』と比べたらそのプロダクションに大きな差を感じてしまうのは仕方のないところ。しかし、この生々しさを伴うサウンドプロダクションこそ『SHOUT AT THE DEVIL』の魅力であり、ブレイク直前のはちきれんばかりのパッションと勢いが見事な形で表現された良作(および良ミックス)だと思っております。

で、実際に2021年の技術および価値観で最新リマスタリングが施された本作ですが、全体的に丸みを帯びた、非常にバランスの整えられた音像に変化しています。これまでの作品もそうであったように、その違いがもっとも表れているのがドラムサウンド。オリジナルバージョンおよび以前のリマスター作ではスネアにヒットがかなり刺々しく、それが本作に収録された楽曲群/テイストにフィットしていました。

ところが、これらも今の耳で聴くと若干古臭く感じられる。時代的にアナログ録音だと思うので、そのへんの個性/魅力が端的に表れているのだと思います。また、時代的にはすでにCDは存在していたものの、マスタリングでそこまで意識していなかったはず。アナログレコードで聴くとその魅力/威力を遺憾なく発揮するものの、CDだと若干チープに感じられ、ぶっちゃけ70年代の音像とさほど変わらない(ちょっと言い過ぎか)。そのへんが、時代時代のリマスタリングで徐々に変化していったわけですが、今回の配信を意識したリマスタリングはまさに2020年代にフィットしたものと言えるのではないでしょうか。

ほかの作品ほどギターの音像には変化は感じられず、若干音量が増したくらいの違いかな。ボーカル含め、コンプをかけて均一化したようなバランス感の良さは、ヘッドフォンやイヤフォンで聴けばより深く理解できると思います。ただ、この均一化が果たして『SHOUT AT THE DEVIL』という作品に最適なのかどうかは、ちょっと疑問も残りますが。

以前、レギュラーで出演しているDJイベントで本作のアナログ(1983年当時の日本プレス盤)を大音量で回したのですが、そこで耳にした音がこれまで聴いてきた『SHOUT AT THE DEVIL』の中ではベストだった、という一言だけは付け加えておきます。結局、アナログ主流の時代に制作された音源はアナログ盤で聴くのが一番!(趣旨が変わってる)

 


▼MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
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2021年4月18日 (日)

RATT『RATT EP』(1983)

1983年8月23日に海外でリリースされたRATTの1st EP。

本作はアルバム『OUT OF THE CELLAR』(1984年)でメジャーデビューする約半年前に、バンドの主宰するインディレーベルTime Coast Communicationsから発表された6曲入りEP。『OUT OF THE CELLAR』でのブレイク後にはリミックスを施した形でメジャーのAtlantic Recordsから再リリースされています(日本盤アナログ初出は1985年3月10日。1987年5月10日には初CD化もされました)。

残念ながら、現在ではCDは廃盤状態。ストリーミングでも配信されていない状況ですが、「You Think You're Tough」を筆頭にバンドにとって重要な楽曲も複数収録されており、今でも最初を望む声は少なくないのではないでしょうか。

バンドの初期衝動を端的に表したファストチューン「Sweet Cheater」からスタートする本作は、続く「You Think You're Tough」「U Got It」「Tell The World」など、『OUT OF THE CELLAR』にも匹敵する良曲揃い。すでにこのEPの時点で“RATTらしさ=RATT 'n' Roll”が完成の域に達していたことが窺えます。

かと思うと、メジャー1stアルバムにて再録される「Back For More」のオリジナルバージョンも収録。こちらはインディーズならではのサウンドプロダクションと間延びしたアレンジが印象的で、全体のまとまりや完成度でいったら間違いなくメジャー・バージョンのほうが格段に上。しかし、Aメロで飛び込んでくるフアン・クルーシエのオクターブ弾きのアクセントが妙に心地よく、個人的にはこのインディーズ・バージョン、大好きなんですよね。10代後半、こっちばかり聴いていた記憶があります。

そして、AEROSMITHもデビュー作『AEROSMITH』(1973年)でカバーしたルーファス・トーマス作「Walking The Dog」も収録。この選曲やアレンジなどからも、RATTが初期はAEROSMITH的なスタイルをメタリックなサウンドで表現しようとしていたことが窺えるのではないでしょうか。

本作のアナログ盤は中古ショップを回れば比較的安価で入手できますが、CDは割高なのでご注意を。ただ、「Tell The World」「You Think You're Tough」のみバンド初のシングルコレクションアルバム『RATT & ROLL 81-91』(1991年)で聴くことができるので(かつ、こちらも安価で入手可能なので)、まずはこのベスト盤を手にすることをオススメします。間違っても、現行のベスト盤『TELL THE WORLD: THE VERY BEST OF RATT』(2007年)は買わないように(こちら、タイトルがこれなのに肝心の「Tell The World」はおろか、本EPからの楽曲が皆無という謎の1枚なので)。

今やCDは死にゆくメディアなので、盤での再発は期待薄ですが、デジタルならば権利関係さえクリアすれば可能性大なので、ぜひともなんとかしてもらいたいなと。配信が決まったら、迷わずデジタル購入しますので!

 


▼RATT『RATT EP』
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2021年1月22日 (金)

TEARS FOR FEARS『THE HURTING』(1983)

1983年3月にリリースされたTEARS FOR FEARSの1stアルバム。

ここ日本ではヒット曲の数々がCMソングに使用されたこともあり、2作目『SONGS FROM THE BIG CHAIR』(1985年)や3作目『THE SEEDS OF LOVE』(1989年)のほうが知名度は上ですが、個人的にはTEARS FOR FEARSといえば本作というくらいの思い入れがある1枚。ちなみに、本作は本国イギリスで1位を記録しております(意外にも、次作『SONGS FROM THE BIG CHAIR』は全英2位止まり)。

「Pale Shelter」(再発後に全英5位)、「Mad World」(同3位)、「Change」(同4位/全米73位)と何気に2ndアルバム以上にシングルヒットの打率が高い本作。ジャケットのセンスといい、程よい“A級とB級の間”感が心地よく響く楽曲群のセンスといい、すべてにおいてツボ。これが『SONGS FROM THE BIG CHAIR』になると完全に“抜け切って”しまうため、ここで味わえる丁度良さが物足りないんですよね。

といっても、僕も本作に関しては完全に後追いなので偉そうに言えませんが(笑)。2nd→3rdをリリースされたタイミングに聴き、そのあとに1stにたどり着いたら「なんだ、1作目が一番好みじゃんか」と気づかされるという。要するに、80年代初頭のニューウェイヴの延長線上にある“A級とB級の間”のサウンド/楽曲が好みってだけですね(笑)。

カート・スミス(Vo, B)のボーカルはすでに完成されている感が強いですが、一方でローランド・オーザバル(Vo, G)の歌唱はどこか垢抜けなさが残っていて、その野暮ったさがまた良かったりする。そういったボーカルで、メル・コリンズ(ex. KING CRIMSONなど)のサックスが乗った「Ideas As Opiates」、ダークさの目立つ「Memories Fade」、まったくヒットしなかったけどキャッチーさ抜群のデビューシングル「Suffer The Children」、どことなくインダストリアルロック風の「The Prisoner」など個性的な楽曲が披露される。最高じゃありませんか。大好物すぎます。そりゃあ30周年記念ボックスセットまで購入しちゃいますわな(笑)。

とはいえ、普通は上に挙げた『SONGS FROM THE BIG CHAIR』や『THE SEEDS OF LOVE』か、初期3作をまとめたベストアルバム『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』(1992年)から入るのが最適。ベストアルバムを聴いて「なんだ、初期シングル曲もいいじゃん」と思えたり、代表作2枚を聴いて「このバンドのテイスト、好みかも」と実感できたら、ぜひこの1stアルバムにも手を伸ばしてみてください。

 


▼TEARS FOR FEARS『THE HURTING』
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2021年1月 6日 (水)

DAVID BOWIE『LET'S DANCE』(1983)

1983年4月にリリースされたデヴィッド・ボウイの15thアルバム。

70年代はヒット作なども多数生み出したものの、どこかカルトスター的なイメージの強かったボウイ。本作のリリース直後には大島渚監督作品『戦場のメリークリスマス』に出演し、ここ日本でも一般的な知名度を高めることに成功します。

そんな中でリリースされた今作は、CHICのナイル・ロジャースをプロデューサーに迎え制作。ナイルは今作と前後してINXS「Original Sin」やマドンナ『LIKE A VIRGIN』、DURAN DURAN「The Reflex」などをヒットさせており、いわばメジャー感の強い“時の人”。そんな人選なもんですから、このアルバム自体も非常にわかりやすいダンス・ポップアルバムに仕上がっており、リードシングル「Let's Dance」は全米/全英1位を獲得したほか、「China Girl」は全英2位/全米10位、「Modern Love」は全英2位/全米14位とヒット曲を連発。アルバム自体も全英1位/全米4位という好記録を樹立しました。

ナイル・ロジャースのプロデュースに加え、ミックスをボブ・クリアマウンテンという売れっ子を採用。レコーディングにはナイル自身がギターをプレイしたほか、当時はまだ無名だったスティーヴィー・レイ・ヴォーンがリードギターを担当。ドラムにオマー・ハキムやトニー・トンプソンなど、それまでのボウイからしたら想像もつかないメンツを迎えているわけですから、そりゃわかりやすいわけですよ。当時中学生だった自分には、ボウイの入り口としてはこれ以上ないくらいに間口が広いんですから。

オープニングの「Modern Love」からして完全にアリーナロック/スタジアムロックですからね。続く「China Girl」ではタイトルからも想像できるようなオリエンタルテイストを交えたポップ・ソウル(これがイギー・ポップとの共作&イギーへの提供曲のセルフカバーであることは、当時中学生だった自分は後々知るわけですが)。で、「Let's Dance」はシングル(MVバージョン)よりも長尺の、7分半超えのフロア仕様。これ1曲取り上げても、彼が当時何をしたかったかが何となく想像できるんじゃないでしょうか。

頭3曲はシングル向けのわかりやすさ満載な楽曲並びですが、以降の「Without You」や「Ricochet」あたりは前作『SCARY MONSTERS (AND SUPER CREEPS)』(1980年)のあたりのニューウェイヴ流れの楽曲もあり、実は大人になってから聴くと頭3曲よりもこのへんの楽曲のほうがツボだったりするんですよね(ヒット曲はベスト盤などで散々聴き飽きたのもありますが)。「Criminal World」もその流れの1曲ですよね。アナログA面ラストからB面への流れ、やっぱり今聴いても悪くないです。

かと思えば、同名映画に提供した楽曲のリテイク「Cat People (Putting Out Fire)」があったり、序盤のテイストをシンセ主体で焼き直したような「Shake It」があったりで、終盤に向けてちょっとだけ尻すぼみ。ちょっと勿体ないエンディングかな。

コアなリスナーからは酷評されたり、グラム期やイーノ三部作こそボウイだと断言するような方々からは敬遠されがちな作品ですが、映画からボウイに入っていったようなビギナーには実は一番わかりやすい良作なんじゃないでしょうか。で、他の作品をどんどん聴き進めていくうちに物足りないと感じるようになり、一周すると「やっぱりいいんじゃない?」と再確認できる。そんな1枚です。

 


▼DAVID BOWIE『LET'S DANCE』
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2019年11月24日 (日)

KISS『LICK IT UP』(1983)

1983年9月に発表された、KISS通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は『地獄の回想』という邦題で、オリジナルの“被せジャケット”付きで同年11月にリリースされています。90年代に復活する“地獄”シリーズ、ひとまず本作で一度完結したようです。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ヴィニー・ヴィンセント(G)、エリック・カー(Dr)。オープニングトラック「Exciter」のリードギターでリック・デリンジャーがゲスト参加しています。「Lick It Up」(全米66位/全英31位)、「All Hell's Breakin' Loose」がシングルカットされ、アルバム自体は全米24位、全英7位という好成績を残しています。

本作で初めてメイクを落とし、素顔で活動を始めたことも話題となり、そのままセールスに反映されたようですね。と同時に、1983年というとQUIET RIOT『METAL HEALTH』DEF LEPPARD『PYROMANIA』とったHR/HMメガヒット作が誕生した記念すべき年。前作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)でHR/HM化したKISSにとってこのムーブメントは“満を辞して”と言えるものだったはずです。先見の明があったのか、ただ商売っ気が強かっただけなのか(主にジーンの)。

作風的には『CREATURES OF THE NIGHT』の延長線上にあるハード路線ですが、かっちりしすぎ&重すぎた前作よりも軽やかさ、しなやかさが増しているのが本作の特徴かな。また、先に挙げた「Lick It Up」のように“本来のKISS”らしいポップ&キャッチーな楽曲が含まれていることも、アルバム全体のバランスに良い作用を与えています。

全10曲中、ポールとジーンのリードボーカル曲の割合は半々。特にアナログA面(M-1「Exciter」からM-5「Gimme More」)はポールとジーンのボーカル曲が交互に置かれているので、素直に“楽しい”と思えるのでは。

一方で、アナログB面(M-6「All Hell's Breakin' Loose」からM-10「And On The 8th Day」)ポール曲2曲、ジーン曲3曲とまとめて置かれており、CDで考えると「Gimme More」からポール曲3曲、「Fits Like A Glove」からジーン曲3曲とかたまってしまっているのがちょっと……エゴなんですかね(笑)。ただ、ヘヴィメタル的なファストチューン「Gimme More」とロックンロール的ファストチューン「Fits Like A Glove」とそれぞれの色や姿勢の違いが楽しめるという点においては非常に興味深い内容。なにより、1曲1曲の出来が非常にクオリティ高いですしね。

また、ヴィニーのギタープレイも前作以上に自由度が高い(まあ前作はエース・フレーリーの影武者的存在でしたしね)。ソングライターとしても非常に優れておりましたし、本作をもってバンドを脱退してしまうのは非常に勿体ないと改めて思います。

ロックを聴き始めた時点で、すでにKISSはノーメイク期だったわけで、そんな自分にとってこのへんの作品はど定番中の定番なわけです。今となっては“70年代のロックンロール期こそKISS”と声高に言われ続けていますが、いえいえ。これこそ自分にとってのKISS原体験ですから。忘れちゃいけない良盤のひとつです。

 


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2019年8月14日 (水)

OZZY OSBOURNE『BARK AT THE MOON』(1983)

1983年12月にリリースされた、オジー・オズボーンの3rdアルバム。

1982年3月19日にランディ・ローズ(G)を事故で失い、失意のどん底だったオジー。正式な後任が決まるまではバーニー・トーメ(TORME、GILLANなど)やブラッド・ギルス(NIGHT RANGER)がライブでサポートを務めましたが、オーディションを経てジェイク・E・リー(RATT、ROUGH CUTT)が正式加入。こうしてようやく3rdアルバムの制作までこぎつけることとなりました。

レコーディングにはボブ・ディズリー(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)、ドン・エイリー(Key)という布陣が参加。トミーはライブにこそ参加していたものの、オジーとのスタジオレコーディングはこれが初となります(が、レコーディング終了後にバンドを離脱。後任としてカーマイン・アピスが加入)。

楽曲クレジットはすべてオジーの名前のみとなっていますが、ギターリフなどは当然ジェイクによるもの。ランディ時代の2作(1st『BLIZZARD OF OZZ』、2nd『DIARY OF A MADMAN』)にあった繊細さは後退し、ギタープレイ同様に豪快さの目立つ楽曲/アレンジが多いような気がします。そういう意味ではブリティッシュHR/HMを下地にしつつも、よりアメリカンな音に近づいたということなのでしょうか(本格的な“アメリカ化”は次作『THE ULTIMATE SIN』で一気に開花するわけですが)

どうしてもタイトルトラックの印象が強い本作ですが(メロディ、アレンジ、ボーカル、ギタープレイ含めすべてが完璧)、それ以外にも良曲は多数存在します。例えばマイナー調のミディアムナンバー「You're No Different」やアメリカンHR化した「Rock 'n' Roll Rebel」、スリリングなファストチューン「Centre Of Eternity」、オジーのビートルズ趣味が大きく反映されたピアノバラード「So Tired」、前作の「S.A.T.O.」をよりアメリカナイズさせたシャッフルチューン「Slow Down」、アルバムラストを飾るドラマチックな「Waiting For Darkness」……意外と良いんですよね。

前2作のイメージで接すると、その作風の違いに戸惑うのもわかります。僕も最初はそうでしたから。特に、2002年以降流通しているリミックス盤はギターと同じくらいシンセが前に出過ぎていたり、ドラムの音に変化があったりと、オリジナルミックスと異なる妙な演出が施されているので、より戸惑うんじゃないかな。可能でしたら、90年代まで流通していたCDを中古で安く手に入れるのをオススメします。

あと、現行盤と配信/ストリーミング版はボーナストラック2曲(「Spiders」「One Up The ‘B’ Side」)が追加されており、アルバムとしての完成度を落としているので、個人的にはあまりオススメしないかな。これ、いらないよマジで……。

まあ、とにかく。これ以降のオジーの作品の雛形はある程度ここで完成しているし、もっと言えば90年代の大ヒット作『NO MORE TEARS』(1991年)の原点でもあるのかなと。そういう意味でも、非常に重要な1枚だと思っています。

 


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2019年8月 6日 (火)

ALCATRAZZ『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』(1983)

ALCATRAZZが1983年10月にリリースしたデビューアルバム。日本では2ヶ月遅れて、同年12月に発売されています。

MICHAEL SCHENKER GROUPを脱退したグラハム・ボネット(Vo)が、自身がオーバーグラウンドに進出するきっかけとなったRAINBOWと同系統のバンドを組もうとして、元NEW ENGLANDのメンバーとともに結成したのがこのALCATRAZZ。RAINBOW的ということで、当然リッチー・ブラックモアから影響を受けたギタリストを探すわけですが、そこで白羽の矢が立ったのがSTEELERという当時はほぼ無名だったバンド(のちにボーカルのロン・キールがKEELを、ドラムのマーク・エドワーズがLIONを結成することで、ここ日本では特に再注目されるようになるわけですが)のギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンというわけです。

……なんて説明、古くからのHR/HMファンにはもはや必要ないかと思いますが、念のため(笑)。

今回このタイミングに紹介しようと思ったのは、今日という日に「Hiroshima Mon Amour」をじっくり聴きたいなと思ったから。ご存知のとおり、この今日は1945年8月5日に原子力爆弾が投下された広島に捧げたものです。歌詞に登場する“Little Boy”はその広島に落とされた原爆のコードネームを意味するもので、歌詞の中には投下後の悲惨さがさまざまな比喩で表現されています。

初めてこのアルバムを聴いたときは、オープニングを飾る「Island In The Sun」のキャッチーさや、RAINBOWっぽいリフを持つ「Jet To Jet」にばかり耳がいきがちでしたが、やっぱりこのアルバムは(個人的には)「Hiroshima Mon Amour」なんですよね。この曲でのグラハムのハイトーンを聴くと、自然と涙が溢れそうになるし、イングヴェイの速弾きを含むギターソロもここでは負の感情の高まりを見事に投影してくれていると思うし。

実は、本当にたまたまなんですが、今年の8月6日は広島に滞在しているんですね。自分の誕生日に広島にいることはもちろん生まれてから初めての経験なのですが、だからこそ今日はこの曲を静かに聴きたいな、と。

やっつけっぽくてちょっとアレですが、もちろんそのほかの楽曲も素晴らしいですし、RAINBOW系統のハードロックが好きなリスナーなら絶対に聴いておくべき1枚だと思います。個人的には捨て曲なし、ってくらい好きな1枚ですし。

と同時に、やはり日本人なら「Hiroshima Mon Amour」を歌詞の内容含めて、じっくりと吟味してもらいたい。そう願ってやみません。

 


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2019年5月24日 (金)

THIN LIZZY『THUNDER AND LIGHTNING』(1983)

1983年3月にリリースされた、THIN LIZZYの通算12枚目にして最後のスタジオアルバム。

解散が決定してから制作されたアルバムって、その多くが“やっつけ”だったり過去のパブリックイメージに沿った想定範囲内の内容だったりすることが多いんだけど、これは異常にテンションが高く、かつ過去のイメージに捉われず新境地に到達してしまったという異色の1枚です。

フィル・ライノット(Vo, B)、スコット・ゴーハム(G)、ブライアン・ダウニー(Dr)という黄金期のメンバーに、前作『RENEGADE』(1981年)から加入したダーレン・ワートン(Key)に、本作が初参加のジョン・サイクス(G)という5人で制作。ジョン・サイクスがソングライティング面で大健闘したのかというと、ジョンの名前は「Cold Sweat」で確認できるのみ。ジョンが加入したのは本作のレコーディング直前で、すでに大半の楽曲は完成していたそうですから、またジョンのような若いミュージシャンが加わったことで演奏に熱が入ったってことなのかもしれませんね。

前のめりなスピードチューン「Thunder And Lightning」のスリリングな構成、ダークで穏やかな「The Sun Goes Down」、メロディアスハードロック「The Holy War」「Cold Sweat」など正統派HR/HMファンにもアピールする楽曲を含みつつも、「Baby Please Don't Go」や「Bad Habits」「Heart Attack」のように従来のTHIN LIZZYファンにも馴染みやすい楽曲もしっかり用意されている。完全に変わったのではなく、バンドとしての軸は残しつつも時代に歩み寄ってヘヴィなスタイルを取り入れた。それがこの進化の理由なのかもしれません。

フィルの味わい深い中音域で歌われる楽曲群は、当時主流だったハイトーンやがなるようなボーカルとは相反するもので、それがどこかパンク的でもあり。そこがTHIN LIZZYを唯一無二のバンドとして知らしめた要因といえるでしょう。事実、「Thunder And Lightning」はバックトラックだけ聴けばスピードメタル的な作風ですが、フィルのボーカルが乗ると急にパンクロックっぽくなるから不思議です。

古くからのファンには賛否あるようですが、僕は初めて聴いたTHIN LIZZYのスタジオアルバムがこれだったので、やっぱり思い入れが強いんですよね(生粋のジョン・サイクス・ファンなもので)。でも、ジョンが弾いているから云々を抜きにしても、本作は非常に素晴らしいハードロックアルバムだと断言できます。

最後に、本作で好きなギタープレイのほとんどが、ジョンのものではなくてスコットのプレイだという事実も書き残しておきたいと思います。

 


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