カテゴリー「1985年の作品」の34件の記事

2020年6月 3日 (水)

STORMTROOPERS OF DEATH『SPEAK ENGLISH OR DIE』(1985)

1985年8月にリリースされた、S.O.D.ことSTORMTROOPERS OF DEATHの1stアルバム。日本盤は1992年3月、ANTHRAXの1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年)のオリジナル・フォーマットのリイシューとともに初リリースされました。

S.O.D.はANTHRAXのスコット・イアン(G)&チャーリー・ベナンテ(Dr)、元ANTHRAX〜NUCLEAR ASSAULTのダン・リルカ(B)、M.O.D.のビリー・ミラノ(Vo)というスラッシュメタル/ハードコアパンク界気鋭のアーティストたちによるプロジェクト。メタルにハードコアを掛け合わせることで生まれたクロスオーバー・スラッシュ(単にクロスオーバーと呼ばれることも)を武器に、本作1枚で伝説を作り上げました。

本作の魅力は全21曲で30分にも満たないショートチューンがたっぷり詰まっているところでしょうか。もともとANTHRAXの2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)から漏れた毛色の違う曲を披露する場として結成されたこともあり、曲によっては初期ANTHRAXに通ずるものもあります(「Milk」なんてまさにですよね。まあこの曲はのちに本家でセルフカバーされていますが)。

それに加えて、お遊びと言えなくもない1分前後のショートチューン、さらには数秒程度の完全なるギャグ・ナンバーなども用意されています。当時僕の周りで「世界最短の曲!」として話題になりまたが、しばらくしてその座をNAPALM DEATHに奪われることになるのでした(笑)。

終盤の畳み掛けるようなショート(ギャグ)チューンの連発は置いておいて(笑)、序盤の「Sargent D And The S.O.D.」や「Kill Yourself」「Freddy Krueger」「Milk」などの楽曲は、アレンジ次第ではANTHRAXの『FISTFUL OF METAL』に入っていても不思議じゃないですよね。これをビリー・ミラノが歌い、よりハードコアに徹することでメタルとは別モノへと昇華されたわけです。

しかし、今でこそメタルとハードコアのミクスチャーは当たり前の世界ですが、この頃はメタルとパンク/ハードコアの世界が交わることは決してあり得ませんでした。それが許されない時代に進んでこういう作品を世に送り出したことで、1990年前後にはクロスオーバーが許容されるようになるわけです。先駆者ですよね。

本作を入り口にハードコアへ足を踏み入れたメタルリスナーも少なくないのではないでしょうか。今の耳で聴くとそこまで刺激的には思えませんが(いろいろ聴いて麻痺しているんでしょうね)、ハードコア経由のメタル作品としては非常に真っ当な1枚です。歴史的価値が高い作品なので、ぜひ一度触れておくことをオススメします。

 


▼STORMTROOPERS OF DEATH『SPEAK ENGLISH OR DIE』
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2020年5月23日 (土)

CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』(1985)

1985年に発表され、LA出身の4人組バンドCANDY唯一のオリジナルアルバム。

日本でも『ウィークエンドでファン・ファン』の邦題でアナログ盤がリリースされ、表題曲「Whatever Happened To Fun...」が結構な頻度で当時のMTVなどでオンエアされたので、記憶に残っている40代半ばのリスナーも少なくないのでは。かくいう僕も、同曲のMVを目に耳にしたことでアルバムをレンタル。カセットにダビングしたアルバムをリピートしたものです。

大きなヒットもなく、アルバム1枚で解散してしまったバンドではありますが、彼らは80年代末から90年代にかけて再び(小規模ながら)注目を浴びることになります。

アルバム制作時のメンバーはカイル・ヴィンセント(Vo)、ギルビー・クラーク(G)、ジョナサン・ダニエル(B)、ジョン・シューベルト(Dr)。ギルビーはKILL FOR THRILLSやGUNS N' ROSESの一員として名を上げ、ジョナサン&ジョンはライアン・ロキシー(G)らとELECTRIC ANGELSを結成。カイルもソロ・アーティストとして90年代後半から活動が活発化します。そういったメンバーの活躍時にちょくちょくCANDYの名前を目にすることになり、「あれ、CANDYって『ウィークエンドでファン・ファン』の?」と気づくわけですが、アルバムは廃盤状態。なんなら、CD化すらされていません。

こういったメンバーの活躍によって、CANDYはバブルガムポップ/グラムポップ/パワーポップ界隈では半ば伝説化。アルバムは高値で取引されるようになりますが、2012年にRock Candy Recordsから再発(初CD化)され手軽に楽しめるようになるわけです。

当然、CDを即購入した筆者ですが、アルバムを聴き始めてすぐに違和感を覚えます。「あれ、曲順違くない?」と。そうなんです、US盤と日本盤とでは収録曲順が異なっていることに、ここで初めて気づくわけです。

ちなみに、当時の日本盤の曲順は下記のとおり。

A-1. Whatever Happened To Fun...
A-2. Turn It Up Loud
A-3. American Kix
A-4. Last Radio Show
B-1. Kids In The City
B-2. Weekend Boy
B-3. First Time
B-4. Electric Nights
B-5. Lonely Hearts

ところが、US盤(現行CD含む)はM-1「Whatever Happened To Fun…」とM-3「American Kix」が入れ替わっています。シングル曲「Whatever Happened To Fun…」から始まる日本盤を親しんできたので、すぐにその違いに気づくわけですよ。

まあ、そんな違和感もCDを聴き返すうちにすぐ慣れるわけですが。

さて。今回のレビューは現行CDに沿って話を進めます。軽快なアメリカンロック「American Kix」からスタートするアルバムは、全体的に音の軽さとカラッとした質感がポップな曲調にフィットしており、全9曲/36分があっという間に感じられるはず。適度に挿入されるコーラス(シンガロング)のせいもあって、何度か聴いていると不思議と口ずさめるようになるのではないでしょうか。

9曲通して聴くと、改めて「Whatever Happened To Fun…」が突出した出来であることに気づかされますが、もちろんほかの楽曲もそこまで悪いわけではない。6分半近くもある「Last Radio Show」で聴かせるセンチメンタリズムは意外と日本人好みなテイストですし、王道のパワーポップチューン「Kids In The City」や「Weekend Boy」などもマニアにはたまらないはず。個人的にはアルバム前半(「American Kix」や「Turn It Up Loud」)がカラッとしたアメリカンロックだとしたら、後半(アナログB面)がパワーポップ的側面に特化した作風かなと。リリース当時は「Whatever Happened To Fun…」を含むA面ばかりリピートしていたけど、今ならアルバム後半を激プッシュします。

ちなみに、彼らのバックに付いていたのは元RASPBERRIESのウォーリー・ブライソン。プロデュースを手がけたのも、同じRASPBERRIESやエリック・カルメン、BAY CITY ROLLERSなどで知られるティース(ジミー・レナー)と、いわゆるパワーポップ界隈の重鎮たちでした。まあ、時代的にHR/HMがヒットし始めた時期だったので、タイミングが悪かったかもしれませんね。

なお、本作は今のところデジタル/ストリーミング配信は国内外でされておりません。Apple Musicでは2003年に発表された未発表音源集『TEENAGE NEON JUNGLE (RARE & UNRELEASED)』が配信済みなので、こちらで主要ナンバーの別テイクを楽しむことができます。

 


▼CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』
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2019年11月12日 (火)

STRYPER『SOLDIERS UNDER COMMAND』(1985)

1985年5月にリリースされた、STRYPERの1stフルアルバム。日本では同年8月に発表されました。

デビュー作となった『THE YELLOW AND BLACK ATTACK』(1984年)は当初6曲入りのミニアルバム形式でしたが、のちに「My Love I'll Always Show」「Reason For The Season」などを追加した形で再発。こちらを1stアルバムと捉える方も多いようです。

とはいえ、STRYPERの人気や存在を決定づけたという点においては、本作『SOLDIERS UNDER COMMAND』に軍配が上がるのではないでしょうか(セールスなどトータル面では続く『TO HELL WITH THE DEVIL』なんでしょうけど)。

マイケル・ワグナー(ACCEPTDOKKENMETALLICAなど)をプロデューサーに迎えて制作された本作は、Enigma Recordsという当時さほど大きくなかったインディーズレーベルの制作にわりにはかなり完成度の高いヘヴィメタルアルバムに仕上がっています。彼らは次作『TO HELL WITH THE DEVIL』でミドルテンポの楽曲が軸の作風にシフトしてしまうのですが、本作に関しては疾走感の強いアップチューンも複数用意されており、メタルアルバムとしてはとてもバランス感に優れた構成/内容と言えるでしょう。

とにかく、オープニングを飾るタイトルトラック「Soldier Under Command」からしてパーフェクト。彼ら特有の美しいハーモニーもしっかり用意されており、メロディ自体は非常にキャッチーで親しみやすいものなのですが、ギターリフやソロプレイなどを含む演奏面でのアグレッシヴさが適度に保たれていることから、ヤワに感じることはゼロ。その流れから美メロ&美ハモの「Makes Me Wanna Sing」へと続いても違和感なしで、この爽快感こそがSTRYPERの醍醐味だと改めて実感することができるはず。

「First Love」や「Together As One」のような美しいバラードもあれば、メタリックで前のめりな「The Rock That Makes Me Roll」もポップな「(Waiting For) A Love That's Real」も軽やかな「Reach Out」もあるし、マイケル・スウィート(Vo, G)のハイトーンが印象的なミドルヘヴィ「Surrender」もある。ラストの「Battle Hymn Of The Republic」まで本当に捨て曲なし、完成度の高い美メロHR/HMアルバムだと断言できます。

確かに歌詞の面ではキリスト賛歌と呼べるような内容ばかりですし、「Soldier Under Command」にしても〈俺たちは神の使命を受けた兵隊だ〉って内容ですからね。普段ヘルやサタンだって歌詞にばかり触れてきた輩には敷居の高さを感じてしまうでしょうけど(笑)、これはこれで全然アリ。僕自身はクリスチャンでもなんでもありませんが、歌われている内容含めてスッと入ってくる、理解できるものなのでノー問題です。

とにかく、メロディックHR/HM作品として非常に高品質な1枚なので、偏見を捨てて一度触れてみてはいかがでしょう?(って言いながら、実は日本ではストリーミング配信されてないのですが。残念 → 2020年5月14日現在、本作の国内ストリーミング配信が解禁されていました!)

 


▼STRYPER『SOLDIERS UNDER COMMAND』
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2019年3月29日 (金)

ANTHRAX『SPREADING THE DISEASE』(1985)

1985年10月にリリースされた、ANTHRAXの2ndアルバム。ニール・タービン(Vo)とダン・リルカ(B)が脱退し、代わりにジョーイ・ベラドナ(Vo)とフランク・ベロ(B)が加入し、以降の黄金期ラインナップが完成。まず1985年2月にEP『ARMED AND DANGEROUS』を発表し、続いてこのアルバムをリリースしました。また、本作はIsland Recordsからの初メジャー流通ということもあってか、チャートインできなかった1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年)とは異なり全米113位という記録を残しています。

基本的な作風は前作『FISTFUL OF METAL』の延長線上にあるのですが、より歌えるシンガーが加入したことで、スラッシュメタル的なサウンドスタイルの中にも正統派メタル的な要素が強まったような印象を受けます。ミディアムテンポの「Madhouse」なんてまさにメンバーチェンジが功を奏した1曲ですしね。

とはいいながらも、全体的にスピード感を強調した楽曲が中心。次作『AMONG THE LIVING』(1987年)ではよりプログレッシヴで複雑なアレンジの楽曲が増えていきますが、オープニングの「A.I.R.」や続く「Lone Justice」を聴く限りでは本作ではまだ直線的な疾走チューンが中心かな。

その一方で、次作での「Indians」にも通ずるドラミングのヘヴィナンバー「The Enemy」や1stアルバムでのパンキッシュなスタイルをそのまま引き継いだ「Aftershock」、ミドルテンポの歌モノパワーメタル「Medusa」といった変化球も含まれており、スピード一辺倒で終わらせない気概も感じられます。このへんのバランス感が徐々に調整されていき、最終的にはミドルヘヴィ中心の作風へとシフトしていくのですから、そういう意味では本作はそのスタート地点と捉えることができるでしょう。

EP『ARMED AND DANGEROUS』で先行リリースされた「Armed And Dangerous」はこのアルバムにも収められていますが、EPとは別ミックス。この曲とラストの「Gung-Ho」は前ラインナップ時代に書かれた曲で、クレジットにはニール・タービンやダン・リルカの名前も見つけることができます。つまり、この作品は黄金期への橋渡し的内容、過渡期的内容と呼ぶこともできるでしょう。以降の作品と比べて完璧なまでの名作度が若干低いのは、そういった要因もあるのかもしれません。

ただ、個人的にはずっとこのアルバムが一番好きだったんですよ、ANTHRAXの中では。もちろん最初に聴いたアルバムというのも大きいですし、それこそMETALLICA『MASTER OF PUPPETS』(1986年)を手にした直後くらいに初めて聴いた1枚でもあるので、自分の血となり肉となったという点でも重要なんです。



▼ANTHRAX『SPREADING THE DISEASE』
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2019年1月 2日 (水)

ARCADIA『SO RED THE ROSE』(1985)

1985年秋にリリースされたARCADIA唯一のオリジナルアルバム。「Election Day」(全米6位/全英7位)、「Goodbye Is Forever」(全米33位)、「The Promise」(全英37位)、「The Flame」(全英58位)というシングルヒットも手伝って、アルバム自体も全米23位(ミリオン突破)、全英30位という好成績を残しています。

ARCADIAとは、当時活動休止中だったDURAN DURANのサイモン・ル・ボン(Vo)、ニック・ローズ(Key)、ロジャー・テイラー(Dr)が結成したサイドプロジェクト。先にアンディ・テイラー(G)、ジョン・テイラー(B)がTHE POWER STATIONを結成したことを受け、1年遅れでこちらを始動させたわけです。

この面子に加え、アルバムのプロデューサーがDURAN DURANの『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』(1983年)などを手がけたアレックス・サドキンという布陣。さらに、アルバムにはゲストプレイヤーとして土屋昌巳(G/ex. 一風堂。後期JAPANのツアーにも参加していましたしね、この流れは理解できます)、カルロス・アロマー(G/デヴィッド・ボウイなど)、デヴィッド・ギルモア(G/PINK FLOYD)、ハービー・ハンコック(Key)、アンディー・マッケイ(Sax/ROXY MUSIC)、スティーヴ・ジョーダン(Dr)、スティング(Cho)、グレイス・ジョーンズ(Cho)などが参加。もうこれだけで、アルバムのテイストがイメージできるかと思います。

で、その中身はDURAN DURANからブラックミュージック寄りのニューウェイブテイストは残しつつパンクロックの要素を排除し、シンセポップ色を強めたもの。DURAN DURANの耽美な世界観を強調させたそのサウンドは、『RIO』(1982年)や『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』の延長線上にもあり、その後DURAN DURANが進むかもしれなかった“もうひとつの可能性”と捉えることができます。

というわけで、当然のように「Hungry Like The Wolf」や「The Reflex」といったテキストの楽曲は皆無。ミドルテンポ中心の作風なので、終始安心して聴いていられるかと思います。それもあって、THE POWER STATIONにあった刺激的な要素はゼロで、そこに不満をこぼす人も少なくないのでは。しかし、当時中学生だった自分は不思議とこの「どことなくエロを感じさせる、大人の雰囲気」に惹かれたんですよね。

サイモンの歌とニックのソングライティング&シンセが強く、ロジャーのカラーはほとんど感じらないかもしれません(苦笑)。また、曲によってはグレイス・ジョーンズ(「Election Day」)やスティング(「The Promise」)のコーラスが際立っており、刺激とまでは言わないけど良いフックにはなっているのではないでしょうか。

このアルバムでの世界観にジョン・テイラーが持ち帰ったファンクロックのテイストが加わったことで、DURAN DURANの『NOTORIOUS』(1986年)に続く……と考えると、DURAN DURANというバンドの史実上絶対に欠かせない1枚だと断言できるはずです。



▼ARCADIA『SO RED THE ROSE』
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2018年6月18日 (月)

MEGADETH『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!: THE FINAL KILL』(2018)

MEGADETHが1985年6月にリリースしたデビューアルバム『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』を新たにリミックス&リマスターを施し、未発表のライブ音源などを追加し、ジャケットも新たに作り直した、まさに“THE FINAL KILL”というサブタイトルにふさわしいデラックスエディション。

『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』はその音の悪さ、ジャケットのチープさ(レーベルから与えられた予算を、デイヴ・ムステインがドラッグに使ってしまったため、制作にかけるお金がなくなったことが原因だとか)から、2002年には新たにリミックス&リマスターを施しジャケットを一新したバージョンが発売されています(現在配信などで聴けるのがこちらのバージョン)。確かにあのチープさが払拭され、2本のギターやドラムなどがすべてセンター寄りにミックスされていたオリジナル盤を“モノラル的”と呼ぶなら、こちらはしっかり左右にパンされた“ステレオ的”に生まれ変わっています。

ですが、このアルバム。何度かの再発のたび中身に手を入れられた曰く付きの1枚でして。1985年版(8曲入り)に入っていたナンシー・シナトラのカバー「These Boots」(オリジナルタイトルは「These Boots Are Made For Walkin'」)が、作者から「歌詞がお下品極まりない!」とクレームが入り、1995年再発版にてカット(7曲入り)。2002年版で晴れて「These Boots」が復活するのですが、歌詞に規制が入り、ところどころに“ピー”音が加えられるというひどい展開に(同曲は1985年版では4曲目に収録されていましたが、2002年版から8曲目に変更)。なお、同作から「Last Rites / Love To Deth」「The Skull Beneath The Skin」「Mechanix」のデモが追加され、全11曲入りとなります。

さて。そこから16年経ち、バンドも結成35周年を迎えた2018年に“最終バージョン”として発表された『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!: THE FINAL KILL』。音のキレがより研ぎ澄まされ、ドラムサウンド(特にバスドラ)により重みが加わったことで、「1985年のインディーズ作品のサウンド」からかなりかけ離れた、非常に“イマドキ”な音にバージョンアップしています。また、今回のリミックスではオリジナル版には入ってなかった音も追加され、よりゴージャスに変化。ぶっちゃけ、かなりカッコいいです。本当に細かな違いですが、2002年版よりもスッと入っていける仕上がり。2004年にCapitol Records時代のオリジナルアルバムがムステイン主導でリミックス&リマスタリングされましたが、まさにあの一環で補正された1枚と言えるでしょう。

しかも、問題の「These Boots」も今回から“ピー”音が外されている。それどころか、新たにムステインのボーカルが再録されているんですよ。これにはびっくりしました。ただ……現在のキーに合わせてなのか、曲自体のキー(チューニング)が落とされているのがちょっと……違和感残りまくり。今のムステインに往年のキーを求めるのは酷でしょうけど、そこだけはちゃんと原曲キーでやってほしかったな。あと、曲順も1985年版に戻してほしかった。ま、オッサンのたわごとですけどね。

あと、今回のデラックス版には新たに『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』収録曲全曲(「These Boots」除く)の未発表ライブ音源が追加収録されています。「ムステインが自宅の屋根裏から発掘したVHSテープより、初出となる86〜90年の貴重なライヴ音源」(プレスリリースより)とのことで、もちろん時期によってバンド編成が異なるものが並列しています。といっても、「The Skull Beneath The Skin」1曲だけ、マーティ・フリードマン(G)&ニック・メンザ(Dr)在籍時ってだけですけどね。これらの音の悪さについては……まあオマケですね。最近のMETALLICAのリイシューと同じ感覚で楽しめたらと。

にしても、改めてこのアルバムってこんなにカッコいい曲だったんだ(いや、もちろん今までもカッコいいと思ってたけど、オリジナル版を聴いて感じていたブルータルな“カッコいい”とは違う、整合感がしっかりあって攻撃的な“カッコいい”なんですよね、今回のって)ってことを再認識するきっかけをくれたこのリイシュー版。最高ですね。「Last Rites / Love To Deth」「The Skull Beneath The Skin」「Rattlehead」「Mechanix」あたりはここ最近のMEGADETHしか知らない若いリスナーにこそ聴いてほしいし、全体を通して今の彼らが失ってしまった(もはや取り戻せない)ギリギリ感、ヒリヒリ感を追体験してもらいたいものです。



▼MEGADETH『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!: THE FINAL KILL』
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2018年6月14日 (木)

RATT『INVASION OF YOUR PRIVACY』(1985)

1985年6月(日本では7月)に発表された、RATT通算2枚目のスタジオフルアルバム。メジャーデビューアルバム『OUT OF THE CELLAR』(1984年)は折からのLAメタルブームに見事に乗っかり、全米7位まで上昇。トータルで300万枚を超えるセールスを記録したほか、「Round And Round」の全米12位を筆頭に、「Wanted Man」(全米87位)、「Back For More」(全米ロックチャート27位)といったヒットシングルも生まれました。

前作から1年4ヶ月という短いスパンで制作された今作は、引き続きボー・ヒル(WINGERKIXアリス・クーパーなど)がプロデュースを担当。基本的には前作の延長線上にある作風で、前作『OUT OF THE CELLAR』を気に入った人ならスッと入っていける1枚ではないかと思います。

本作はシングルカットされた「Lay It Down」(全米40位)と「You're In Love」(全米89位)の印象が特に強く、それ以外の8曲との間に差があるようなイメージもあります。実際、本当にこの2曲は突出した完成度だと思いますが、それ以外にも良い曲はあるんですよ? 例えばスティーヴン・パーシー(Vo)が単独で書いた「Never us Love」とか、今は亡きロビン・クロスビー(G)とスティーヴンの共作による「Give It All」、RATT流ヘヴィバラード「Closer To My Heart」、ホアン・クルーシェ(B)単独ライティングによる「What You Give Is What You Get」とか、いかにも“らしい”曲満載ですし。

それでも本作が前作と比べて「インパクトが弱い」などと言われてしまう理由は、楽曲のバラエティの幅にあるのかなと思うわけです。例えば、全体的に楽曲のテンポ感が非常に似通っている。「You're In Love」タイプの楽曲がもっともBPMが速いもので、それ以外はミドルテンポ、もしくはもうちょっとBPMの落ちるミドルヘヴィの楽曲ばかり。前作における「The Morning After」みたいな疾走系のハードロックチューンが皆無なため、どうしてもアルバムとしての起伏に欠ける。決してメロウとは言い難いスティーヴンの歌唱スタイルもあって、聴く人によっては退屈と感じてしまうかもしれない。それが本作最大の欠点なのかなと。

ただ、そういった欠点もRATTというバンドにおける魅力のひとつと言えなくもないわけで、このようなミドルテンポの楽曲を指して“Ratt & Roll”なんて呼ぶ声もあったりします。そういう点においては、彼らが個性を確立した1枚と言えるでしょう。

初期3作の中ではもっとも評価が低いかもしれませんが(個人的には1st>3rd>2ndなので)、これはこれで嫌いになれない。フックになるギターリフや節回しも、聴けば聴くほどクセになるし。そのへんを受け入れられるか否かで、本作に対する評価はだいぶ変わりそうな気がします。



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2018年5月23日 (水)

ZZ TOP『AFTERBURNER』(1985)

ZZ TOPが1985年10月に発表した、通算9作目のオリジナルアルバム。前作『ELIMINATOR』(1983年)が1000万枚を超えるメガヒット作となり、大きな期待を寄せられる中リリースされた今作は、それでも500万枚以上を売り上げる大ヒットを記録。「Sleeping Bag」(全米8位)、「Stages」(全米21位)、「Rough Boy」(全米22位)、「Velcro Fly」(全米35位)というヒットシングルも生まれました。

前作から顕著に表れ始めたデジタルビートを導入したサウンドメイキングは、本作でさらに激化。アルバムオープニングを飾る「Sleeping Bag」は当時の流行だったオーケストラヒットを取り入れた、もはやロックバンドが打ち出すサウンドとは思えないダンサブルなものへと変化/進化していました。

僕が初めて触れたZZ TOPのアルバムが本作なのですが、正直「これ……ロックなの?」と思ったことを、今でもよく覚えています。そりゃあ「Sleeping Bag」「Stages」と続いて、若干生バンド感が増した(それでも本作の中では、という比率の話)「Woke Up With Wood」あたりでようやく「あ、やっぱりロックバンドなんだ」とうっすらと実感し始めるという……なんじゃそりゃ。

確かに楽曲の構成自体はブルースベースのロックンロールなんですよね。上に挙げた「Sleeping Bag」や「Woke Up With Wood」なんて完全にブルージーなロックナンバーですから。装飾に惑わされてはいけません……とはいえ、この機械的なドラムサウンドを聴いたら、誰でも最初はそう思えないかもしれませんよね。

かと思えば、「Rough Boy」みたいなAOR調バラードもあるし、キラキラしたシンセとダンサブルなビートが印象的な「I Got The Message」や「Velcro Fly」みたいな曲もある。ロックというよりもポップスじゃん、と。

だけど、本作の軸になるのはやっぱり「Can't Stop Rockin'」や「Planet Of Woman」「Delirious」のような疾走感の強いロックンロールなんですよね。リズムのエフェクトのみならずギターのエフェクトもどこか機械的で、しかもシンセも多用してるからどうしてもそう思えないかもしれないけど……完全にロックンロールです。本当に。

まあ、売れる音ですよね。リリースから30数年経った今聴くと若干のダサさすら感じられますが、当時はこういったデジタルな要素が新しかったし、ZZ TOPみたいに埃っぽいサウンドのロックバンドがこういった最先端にトライすること自体が“ロック”だったのかもしれない。

ちなみに彼ら、ライブでもちゃんとこのサウンドを再現してくれるから素晴らしい。一度だけ生で観たことがあるけど、そのときも本作のヒット曲をそのままの形で聴かせてくれたし。プロとして徹底していて素晴らしいと思いましたし、改めて良曲揃いのアルバムだなとも再認識しました。



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2018年5月22日 (火)

CHARLIE SEXTON『PICTURES FOR PLEASURE』(1985)

1985年、弱冠16歳でメジャーデビューを果たしたアメリカ人シンガー&ギタリストのチャーリー・セクストンによる1stアルバム。本国アメリカでは最高15位まで上昇したほか、ここ日本でもアイドル的人気で大きな成功を収めました。また、デビューシングル「Beat's So Lonely」は全米17位にランクインし、日本でもMTVやラジオでのヘヴィローテーションが後押しし、スマッシュヒットを記録しています。

本作のプロデュースを手がけたのが、ビリー・アイドルなどとの仕事で知られるキース・フォーシー。キースはプロデュースのみならずプログラミングや、ソングライティングでも本作に華を添えており、そのサウンドの質感はどこかビリー・アイドルの諸作品にも通ずるものがあります。

当時もそうでしたが、まず音楽雑誌『ミュージックライフ』などでそのヴィジュアルを目にして、そのあとで楽曲を耳にしたわけでして……その甘いルックスとは相反して、歌声は年齢のわりに渋みがある低音という。このギャップもまたカッコいいんですよね。しかも長身で髪を立てて……って、この1985年という時代を考えると、日本にはBOØWYがいたわけで、そことの共通項も見え隠れしたりして。そりゃウケるわけですね。

ギタープレイは、まあ確かにうまい。適度なテクニックを兼ね備えており、だけど派手すぎない。あんまり派手に弾きまくるとハードロックの人だと思われちゃうしね。この人、もともとはブルースとかカントリーとかそっち側の人ですから。なのに、このニューウェイヴがかったビートロックをやらされてしまうあたり、いかにも80年代的といいますか……まあそれがよかったんだけどさ。

今聴くと、曲によってはちょっとトゥー・マッチかなと思えたり、ちょっとチープかなと感じたりしてしまうんですが、それでも「Impressed」や「Beat's So Lonely」、「Hold Me」といったあたりはリリースから30数年経った今でもカッコいいと思える。「Restless」あたりもアレンジがアレンジだったら、今でも通用する1曲なんじゃないでしょうか。

ちなみに現在のチャーリーは、ご存知の方も多いと思いますがボブ・ディランのバンドでギタリストを担当しています。一時離れたという話も耳にしましたが、今年のフジロックではバンドメンバーとして来日してくれるのでしょうか。

なお、本作はサブスクリプションサービス未配信。CDもほぼ廃盤状態で、何年かに一度廉価版や紙ジャケで再発されたりするので、タイミングよく見つけた場合は迷わず購入することをオススメします。



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2018年5月21日 (月)

INXS『LISTEN LIKE THIEVES』(1985)

海外で1985年10月にリリースされた、INXS通算5枚目のスタジオアルバム。前作では“時の人”ナイル・ロジャースをプロデューサーのひとりに迎え「Original Sin」などのヒットシングルを生み出しましたが、今作ではSEX PISTOLSやROXY MUSIC、QUEENなどを手がけてきたイギリス人プロデューサー、クリス・トーマスとともに制作。全米11位という過去最高位を叩き出し、200万枚以上を売り上げるヒット作となりました。また、シングル「What You Need」は初の全米トップ10入り(最高5位)を記録したほか、「This Time」(全米81位)、「Listen Like Thieves」(全米54位)というスマッシュヒットも生まれました。

“ファンクがかったニューウェイヴサウンド”を信条としていた彼らでしたが、前作ではそのファンキーさがナイル・ロジャースの功績によりさらにニューヨーク寄りの音となっていました。が、今回は大御所イギリス人プロデューサーとの作業というのも影響してか、豪快なハードロックやパンクロック的なカラーも表出し始めています。それがまさにヒット曲「What You Need」であり、同じくシングルカットされた「This Time」や「Listen Like Thieves」でもあるわけです。

ほかにも「Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain)」や「Biting Bullets」あたりもロック色が強まっていますが、ところどころにニューウェイヴの香りも感じられます。このバランス感は、本作から2年後に発表される大傑作『KICK』(1987年)で本格的に開花することになります。そういう意味では、本作は『KICK』の習作と捉えることもできそうです。

にしても、全体的にどの楽曲もコンパクトにまとまっているところにも、次作との共通項が見え隠れしていて興味深くないですか? 「Same Direction」のみ5分近くありますが、大半は2〜3分前後ですからね。

アメリカでシングルカットされた3曲のみシリアスさが強い印象で、それ以外はどこか陽気さすら感じられるのも興味深いポイント。そういった意味では、先の3曲が若干浮き気味な気がしないでもないですが、このアンバランスさも今となっては愛おしく感じられるのですから不思議なものです。だって、マイケル・ハッチェンス(Vo)を含む編成での新作やライブは、今後望めないわけですからね……。

個人的には「What You Need」「Listen Like Thieves」「Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain)」という冒頭3曲の流れと、「This Time」を経て「Three Sisters」「Same Direction」「One X One」「Red Red Sun」の後半〜エンディングの流れが非常に気に入っています。



▼INXS『LISTEN LIKE THIEVES』
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