カテゴリー「1986年の作品」の59件の記事

2024年5月 7日 (火)

TESLA『MECHANICAL RESONANCE』(1986)

1986年12月8日にリリースされたTESLAの1stアルバム。日本盤はアナログが翌1987年2月25日、CDが1989年5月10日に発売されています。

80年代初頭にCITY KIDDと名乗っていたカリフォルニア州サクラメントのローカルバンドが、1984年にジェフ・キース(Vo)、フランク・ハノン(G)、トミー・スキーオ(G)、ブライアン・ウィート(B)、トロイ・ルケッタ(Dr/ex. ERIC MARTIN BAND)というメンバーが揃ったことで、バンド名を現在のTESLAへと改名。以降、精力的なライブ活動を展開したのちにGeffen Recordsと契約し、スティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロ(A-HAGUNS N' ROSESMETALLICAマドンナなど)をプロデューサーに迎えてデビューアルバムを制作します。

当初こそ大きな話題にならなかったものの、地道なツアーと「Little Suzi」(全米91位)のスマッシュヒット、「Modern Day Cowboy」や「Gettin' Better」のMVがMTVでヘヴィローテーションされたこともあり、アルバムはリリースから数ヶ月後に最高32位まで上昇。最終的に100万枚を超えるヒット作となりました。

いわゆるヘアメタルに部類されるバンドではあるものの、その無骨で土着的なサウンドは同時期にデビューしたCINDERELLAとの共通点も見受けられ、ヘアメタル界隈の中では硬派な印象を受けます。ヘアメタルというとグラムロックからの影響(ヴィジュアルのみならずサウンド面でも)が感じられますが、このTESLAに関してはそういった側面はまったく感じられず(MVでは多少メイクはしていますが)、そのへんは同じカリフォルニアでもサクラメントという土地柄の影響かもしれません。

先の「Modern Day Cowboy」や、アルバム冒頭を飾る「EZ Come EZ Go」、ライブのオープニングにふさわしいファストチューン「Comin' Atcha Live」などは正統派ハードロックバンドの印象が強いし(「Modern Day Cowboy」で聴けるドラマチックなアレンジやギターのツインリードはむしろヘヴィメタル的か)、その一方で「Gettin' Better」や「Little Suzi」などアコースティックテイストを適度にはらんだアーシーさは、その後のBON JOVIPOISONなどのヒットとの共通点も見受けられる。また、「We're No Good Together」ではソウルフルな側面を打ち出したパワーバラードが展開されており、1987年以降のHR/HMシーンのひと足先を進んでいるようにも映る。さらに、全12曲/約53分というCDを意識したトータルランニングもアナログ/CD移行期間において先見の明があった、と受け取ることもできる。いろんな意味でシーンの一歩先を読んでいた、実はかなり優れたデビューアルバムだったことを後々理解することになります。

出来過ぎ!ってくらいによく作り込まれた本作でしたが、続く『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』(1989年)ではそのスタイルがさらに洗練され、キャリア最大のヒットを記録することになります。

 


▼TESLA『MECHANICAL RESONANCE』
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2024年4月 7日 (日)

BLACK SABBATH featuring TONY IOMMI『SEVENTH STAR』(1986)

1986年1月28日にリリースされたBLACK SABBATHの12thアルバム。

前作『BORN AGAIN』(1983年)では元DEEP PURPLE/GILLANのイアン・ギランをフロントマンに迎えるという荒技に出たサバス。しかし、アルバム発表後にオリジナルメンバーのビル・ワード(Dr)が再脱退、ギランもパープル再結成が決まったため早々に離脱してしまい、サバスは活動休止に陥ってしまいます。

そういった状況を受け、リーダーのトニー・アイオミ(G)は初のソロアルバム制作に着手。当初は前任フロントマンのロニー・ジェイムズ・ディオJUDAS PRIESTロブ・ハルフォード、そして元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズといった複数のシンガーを起用する形をイメージしていたようで、そのバックをデイヴ・スピッツ(B/ex.WHITE LION、ex.IMPELLITTERIなど)、エリック・シンガー(Dr/KISS、ex.GARY MOORE、ex.ALICE COOPERなど)というアメリカ人メンバーと、サバスでサポートメンバーを務めていたジェフ・ニコルス(Key)という布陣で固めてレコーディングを行う予定でした。が、シンガーに関してはあれやこれやがあり、最終的にはグレンの単独参加に落ち着くことになります。

すべての楽曲をアイオミが執筆するわけですが、そのメロディやサウンドは否が応でもサバスっぽくなるのは致し方ありません。「In For The Kill」や「Turn To Stone」といったファストナンバーはディオ期サバスの延長線上にあるものの、時代の流れに沿ってリズムがよりアップテンポになっていることから、若干USメタルっぽさも感じられます。グレンのボーカルもディオのようにねっとり歌うでもなく、適度なブルージーさで比較的ストレートに歌い上げる。サバス臭を残しつつも80年代半ばという時代性を反映させたスタイルは、ソロ作品としては非常に良いのではないでしょうか。なによりも、エリック・シンガーのドタバタドラム(笑)がカッコいいったらありゃしない。

もちろん、アイオミが得意とするミドルヘヴィナンバーもしっかり用意されています。インタールード的な「Sphinx (The Guardian)」から続くタイトルトラック「Seventh Star」は、間違いなく本作のハイライトと言える仕上がり。アイオミのギタープレイはもちろんのこと、ほかの要素も含めすべてが正しい方向に噛み合った、名曲と呼ぶべき1曲ではないでしょうか。

アルバム後半には比較的ポップめな「Danger Zone」を筆頭に、アイオミがWHITESNAKE的ブルースロックに挑戦したような「Heart Like A Wheel」といった変化球もありますが、前半ほどの緊張感、充実度は感じられず、アルバムの中でも微妙な仕上がりの「Angry Heart」、2分半程度の泣きメロバラード「In Memory」と大きな山なしで終了してしまいます。

アイオミのソロアルバムとしてなら、こういう内容もアリかなと思うのですが、リリース当時もっとも残念だったのは、本作をBLACK SABBATH(正確にはBLACK SABBATH featuring TONY IOMMI)名義で発表してしまったこと。サバスの新作として受け取るなら、確かに微妙な点も多いかもしれません。なにせアメリカンな要素が強まっているし、サバスのアルバムにしては終盤尻すぼみだし(ソロだったならアリっちゃあアリなんだけど)。レーベル側が“売る”ために出した条件だったとはいえ、この施策は間違いだったんじゃないかな。

なお、本作を携えたツアーを北米から開始するも、たった数公演でグレンは解雇されてしまいます。そんな彼の代役に選ばれたのが、のちにBADLANDSに加入するレイ・ギラン。彼が歌唱するライブ音源は本アルバムのデラックスエディション付属のボーナスディスクで聴くことができます。音はかなり悪いですが、「The Mob Rules」や「Die Young」といったディオ期、「War Pigs」「N.I.B.」などオジー・オズボーン期の楽曲まで楽しめ、グレン以上に圧巻のボーカルパフォーマンスを楽しめるので、ぜひチェックしてみてください。

 


▼BLACK SABBATH featuring TONY IOMMI『SEVENTH STAR』
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2024年3月19日 (火)

BERLIN『COUNT THREE & PRAY』(1986)

1986年10月13日にリリースされたBERLINの4thアルバム。テリー・ナン(Vo)を要する布陣での『PLEASURE VICTIM』(1982年)を正式な1作目とカウントするならは、本作は3作目に当たります(当時の日本盤には3rdアルバムとの表記あり)。日本盤は同年11月25日発売。

「No More Words」(米23位)というキャリア最大のヒット曲を生み出した前作『LOVE LIFE』(1984年)から2年半ぶりの新作。同アルバムは50万枚を超えるスマッシュヒットを記録しましたが、その後映画『トップガン』のサウンドトラックに参加したことを機に、その人気は最高潮に達します。同映画サントラからの2ndシングル「Take My Breath Away」は初の全米&全英1位を獲得。そんな高状況の中ドロップされたのが、このオリジナルアルバムとなります。

新たなプロデューサーとしてボブ・エズリン(ALICE COOPERKISSPINK FLOYDなど)を迎えた肝入りの本作。レコーディングはテリー、ジョン・クロフォード(B)、ロブ・ブリル(Dr)の3人にサポートメンバーを加えた形で制作されます。ギタリストとしてはデヴィッド・ギルモア(PINK FLOYD)やケイン・ロバーツ(当時ALICE COOPER BAND)のボブ・エズリン界隈に加え、テッド・ニュージェント(DAMN YANKEESなど)やエリオット・イーストン(THE CARS)などの個性的な面々が参加していますが、アルバムのクレジットには誰がどの曲に参加しているかまでは記されておらず。

ボーカル&リズム隊というアンバランスなメンバーが残ったこともあってか、アルバム冒頭を飾る「Will I Ever Understand You」や「Tras」、リードシングル「Like Flames」(米82位/英47位)はニューウェイヴを通過したハードロック的な、ビートの強い1曲に。特に「Will I Ever Understand You」ではタイトなドラムソロもフィーチャーされており、あくまで“テリー・ナン with リズム隊”ではないことを強くアピールします。

かと思えば、尺八や琴、琵琶といった和楽器がフィーチャーされた浮遊感の強い「You Don't Know」(英39位)、クラシカルなピアノフレーズが耳に残る「When Love Goes To War」などニューウェイヴ側に振った楽曲、前作の流れを汲むダンサブルなシンセポップ「Sex Me, Talk Me」なども含まれている。そんな中に、ジョルジオ・モロダーが手掛けた大ヒット曲「Take My Breath Away」まで収録されているもんだから、アルバムを通してやりたかったであろうハード&タイトな側面がぼんやりしてしまい、全体的にどっちつかずな方向性で終わってしまいます。

1986年後半というと、まもなくBON JOVI「You Give Love A Bad Name」で大ヒットを果たし、翌1987年にはハードロック新世代を迎えようとする過渡期。そんな来たる新世紀を予見したかのようなハードエッジなテイストを導入しつつも、それ以前のシンセポップやニューウェイヴも捨てきれない。さらにレーベル側のゴリ押しであろう「Take My Breath Away」という色の異なる異物まで打ち込む。そりゃ評価も分かれるわけで、大したヒットシングルも生まれず、アルバムは米61位/英32位(実はイギリスでは初のチャートイン)という結果で終わるわけです。

結局、バンドは1987年3月の初来日公演を含むワールドツアー終了後、解散することに。その10年後の1997年にテリー・ナンを中心に再結成を果たし、現在も細々と活動は続いているようです。本作を含むGeffen Records時代のアルバムはサブスクでは聴くことができませんが、MVなどはYouTubeでも視聴可能です。

 


▼BERLIN『COUNT THREE & PRAY』
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2023年1月13日 (金)

IGGY POP『BLAH-BLAH-BLAH』(1986)

1986年10月23日にリリースされたイギー・ポップの7thアルバム。日本アナログは同年10月21日、同CDは11月21日に発売。

1983年夏からしばらくの間、薬物依存の治療に取り組みつつ日常生活を安定させようと、音楽活動を休止したイギー。同じ頃、盟友デヴィッド・ボウイが過去の共作曲「China Girl」をアルバム『LET'S DANCE』(1983年)でセルフカバーし、シングルとしても大ヒットさせるなど、印税面でイギーをバックアップします。また、ボウイは続く『TONIGHT』(1984年)でイギーをレコーディングに呼び、コーラス参加などで少しずつリハビリさせていくことに。こうしてイギーは少しずつ自身の音楽活動にも着手し始め、新しいアルバムのためにボウイと楽曲制作を進めていきます。

プロデューサーにはQUEENやボウイ、YESDURAN DURANなどで知られるデヴィッド・リチャーズを迎え、元SEX PISTOLSスティーヴ・ジョーンズ(G)や本作のツアーにも参加するケヴィン・アームストロング(G)、ボウイとの交流も深かったマルチプレイヤーのエルダル・キジルチャイとともにレコーディングを敢行。80年代半ばらしい打ち込み主体の、キラキラしたポップ感が異彩を放つアルバムを完成させます。

イギーの持ち味的にはこのテイストは「ちょっと違うんじゃないか?」という声が多いかと思います。が、まずは彼自身を表舞台に引きずりあげることが当時の重要項目であり、本作はその役目を見事に果たす1枚だったのではないでしょうか。事実、リリース当時は「Real Wild Child (Wild One)」や「Cry For Love」のMVがMTVを中心にヘヴィローテーションされましたし。また、「Isolation」などを筆頭に、楽曲の方向性やサウンドの作風的にもボウイが大ヒットを飛ばした『LET'S DANCE』や『TONIGHT』の延長線上にあり、かつボウイが楽曲制作に携わり、コーラスでも参加していることはアピールポイントとしても非常に大きく、当時中学生だった僕のようなイギー初心者にも触れやすかったわけですからね(アラフィフ世代の洋楽リスナーは本作でイギーを初めて知ったという方も少なくなかったことでしょう)。

実際、どの曲も非常によく作り込まれており、ボウイファンなら「これ、自分で歌えよ!」と思ってしまうような良曲も少なくありません。それをイギーが、あえて煮えたぎるパワーを抑えた穏やかな歌声で表現するアンバランスさ。好きなことをするために我慢してこれを歌い切ったという解釈もできるでしょうが、大半の楽曲制作にイギー自身が関わっていることを考えると、実はここで表現されていることも少なからず彼の内面に蓄積されていたものと捉えることもできるはず。事実、ここでの経験はその後の作品にも多々反映されていますしね。

スティーヴ・ジョーンズは「Fire Girl」「Cry For Love」「Little Miss Emperor」(この曲のみアナログ未収録)の3曲でイギーと共作を果たし、「Cry For Love」では彼らしいワイルドなギターソロも披露。当時のスティーヴはアンディ・テイラー(元DURAN DURAN)とのコラボレーションなどで経験を蓄積していた最中で、これらの経験が続く初ソロアルバム『MERCY』(1987年)へとつながっていきます。

セールス的にも全米75位/全英43位とまずまずの結果を残し、アメリカではソロデビュー作『THE IDIOT』(1977年)の全米72位に続く成功を収めました。この成功があったから、坂本龍一のアルバム『NEO GEO』(1987年)参加(「Risky」を歌唱)が実現したり、本領発揮の『INSTINCT』(1988年)が生まれたりしたわけですからね。

 


▼IGGY POP『BLAH-BLAH-BLAH』
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2022年7月16日 (土)

STRYPER『TO HELL WITH THE DEVIL』(1986)

1986年10月24日にリリースされたSTRYPERの2ndフルアルバム。日本盤は同年11月21日発売。

全米84位を記録&50万枚以上を売り上げ、彼らの人気を決定づけた前作『SOLDIERS UNDER COMMAND』(1985年)から1年5ヶ月で届けられたスタジオアルバム。名バラード「Honestly」が全米23位という好記録を樹立したこともあり、本作は最高32位まで上昇し、100万枚を超えるキャリア最大のヒット作となりました。

スピードチューン「Soldiers Under Command」から始まった前作から一変、今作は仰々しいイントロダクション「Abyss (To Hell With The Devil)」に続いてミドルヘヴィのタイトルトラック「To Hell With The Devil」で幕開け。続くキャッチーな「Calling On You」、哀愁味の強いキラーチューン「Free」とミディアムテンポの楽曲で序盤が固められています。さらにそこからバラード「Honestly」へと流れる構成含め、アルバム前半の聴きやすさでリスナーを一気に引き込むことに成功。そりゃ売れるわと納得させられます。

かと思えば、中盤にはオズ・フォックス(G)が書き下ろした前のめりなアップチューン「The Way」でヘヴィメタルバンドらしさを追求し、打ち込みベースを同期させたミドルヘヴィ「Sing-Along Song」、爽快感の強いハードロックナンバー「Holding On」で緩急を付ける。そこから再びヘヴィなスピードナンバー「Rockin' The World」で勢いを付けたかと思えば、讃美歌のようなスローバラード「All Of Me」で空気を一変させ、最後はストレートなメタルチューン「More Than A Man」で締めくくり。全11曲/41分があっという間に感じられるほど夢中になれる、非常に完成度の高い1枚です。そりゃ売れるわと納得させられます(二度目)。

いわゆるグラムメタル/ヘアメタルに分類されるバンドの中でも、比較的ヘヴィメタル度の高いサウンド/楽曲が多い彼らですが、本作では元来持ち合わせていたポップ感が一気に開花。それが「Calling On You」や「Honestly」のようなメジャーチューン、「Free」や「To Hell With The Devil」みたいなマイナーキーの楽曲に集約されているのではないでしょうか。それをマイケル・スウィート(Vo, G)の伸びやかなボーカルで表現することにより、嫌味なく楽しめることができるのは改めてすごい才能です。そりゃ売れるわと納得(三度目)。

加えて、彼らは敬虔なクリスチャンということで、歌詞などでキリスト教への信仰の強さが示されている。いわゆるクリスチャンメタルと呼ばれるジャンルの先駆者なわけですが、宗教観にそこまで意識的ではない日本人にとっては純粋に楽曲そのものが評価された……と、筆者は当時を振り返り、そう記憶しています。うん、単純に曲が良くて聴きやすかったんですよ。

今聴くとサウンド的に多少の古臭さも否めませんが、楽曲の良さは決して色褪せない。そんな80年代後半を代表する“マスト”な1枚です。

 


▼STRYPER『TO HELL WITH THE DEVIL』
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2022年5月30日 (月)

GENESIS『INVISIBLE TOUCH』(1986)

1986年6月6日にリリースされたGENESISの13thアルバム。日本盤アナログは同年6月9日、CDは7月23日発売。

フィル・コリンズのソロアルバム『NO JACKET REQUIRED』(1985年)のメガヒットや、マイク・ラザフォードによるプロジェクト・MIKE + THE MECHANICSのアルバム『MIKE + THE MECHANICS』(1985年)のスマッシュヒットなどソロ活動が順調な中、バンドとしては全英1位/全米9位の大ヒット作となった前作『GENESIS』(1983年)から2年8ヶ月ぶりの新作。プロデュースは前作から引き続き、バンドとヒュー・パジャム(THE POLICE、XTC、THE HUMAN LEAGUEなど)が手がけています。

オープニングを飾るタイトルトラック(全米1位/全英15位)のよう、全体を通じてフィルのソロ作にも通ずるポップさが強調された仕上がりで、プログロック的な要素は9分近い大作「Tonight, Tonight, Tonight」や約11分におよぶ組曲「Domino」、インストゥルメンタルナンバー「The Brazilian」程度にとどまっています。まあそれだけあれば十分かな。それ以外はほぼ全曲がシングルカット可能なポップロックばかり。事実、先の「Invisible Touch」以外にも「Throwing It All Away」(全米4位/全英22位)、「In Too Deep」(全米3位/全英19位)、「Land Of Confusion」(全米4位/全英14位)、そしてシングル向けに短く編集された「Tonight, Tonight, Tonight」(全米3位/全英18位)と、アメリカでは発表した5枚のシングルすべてがTOP5入を果たす快挙を成し遂げ、アルバム自体も全米3位/全英1位と記録。アメリカでは600万枚を超えるキャリア最大のヒット作となりました。

大ヒットの要因は、もちろんフィルのソロ活動やMIKE + THE MECHANICSの成功も大きく影響していると思いますし、なにより各ソロ活動から矢継ぎ早にバンドのリリースへと移行したのもプロモーション的に素晴らしい判断だったと言えるでしょう。そして何より、収録されたどの楽曲もポップソングとしての完成度/強度が異常に高い。プログロックとして捉えれば、もはや範疇外と言わざるを得ない方向性ではあるものの、ひとつのポップアルバムとして向き合うとこれ以上はないほど極上の内容ではないでしょうか。

大半の楽曲でシンセドラムを使用することで、いかにも80年代的で軽薄なサウンドになっているのは否めませんが、当時は子供心にこの音に対して“未来”を感じたのもまた事実。「Land Of Confusion」での生音とデジタルのミックスは、素直にカッコいいと思ったものです。また、当時は退屈に感じる瞬間もあった「Tonight, Tonight, Tonight」も、今の耳で聴くと実は非常に練り込まれたアレンジであり、このサウンドメイクだからこそ小難しくならずに済んだことも理解できます。

加えて、MTVという媒体を効果的に活用したMV制作も大当たりに一役買ったと言えるでしょう。シングルカットされた全5曲すべてにMVがあてがわれたわけではないものの、バンドの健在ぶりを示すような作風の「Invisible Touch」や、メンバーや当時の著名人そっくりのパペットが登場する皮肉たっぷりな「Land Of Confusion」などは、当時ヘヴィローテーションされていた印象があります。

フィルのソロアルバムよりはロック色が強く、かといってかつてのGENESISほどロック度/プログロック度は高くない。だけど、ヒットチャートを賑わすポップスとしてもロックとしても十分に通用する、高い完成度を誇る。もちろん、いろいろ考えれば難癖も付けられますが、もはやそれすら虚しくなってくるほど良質な内容。これぞ“ザ・ミドル80's”なロック/ポップスではないでしょうか。つい数日前に映画『トップガン』のサントラを“80年代的”と紹介しましたが、このアルバムもその象徴的な1枚。

 


▼GENESIS『INVISIBLE TOUCH』
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2022年5月23日 (月)

V.A.『TOP GUN: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1986)

1986年5月13日にリリースされた、映画『トップガン』のオリジナル・サウンドトラックアルバム。

本作はアメリカで1986年5月16日、日本では同年12月6日に公開された同名映画の主題歌や劇中挿入歌を集めた作品集。映画『フットルース』での大ヒットに引き続き起用されたケニー・ロギンス、再ブレイク前のCHEAP TRICK、久しくアメリカでのヒットを失っていたBERLIN、グロリア・エステファン率いるMIAMI SOUND MACHINE、『フットルース』でのマイク・レノ(Vo)に続いてバンドでの参加となったLOVERBOYビリー・アイドルとのコラボレーションで知名度を上げていたスティーヴ・スティーヴンスなどバラエティに富んだ面々が参加しています。

本作からはケニー・ロギンス「Danger Zone」(全米2位)および「Playing With The Boys」(同60位)、BERLIN「Take My Breath Away」(同1位)、LOVERBOY「Heaven In Your Eyes」(同12位)といったヒットシングルも多数誕生(CHEAP TRICK「Mighty Wings」もシングルカットされたものの、チャートインせず)。これらのシングルヒットや映画のバカ売れを受け、アルバム自体も全米1位/全英4位を記録。今日までにアメリカのみで900万枚を売り上げるメガヒット作となっています。

大半の楽曲を職業ライター(ジョルジオ・モロダーやハロルド・フォルターメイヤーなど)が手がけたことで、楽曲自体からは各アーティストの“色”はほぼ伝わりません。そこはもう、映画のさまざまな場面を盛り上げるために用意された楽曲ですから、最終的にそれを誰が歌うかってだけですよね(これが原因で、参加を断ったアーティストも多いとのこと)。ヒット曲コンピの側面もある程度ありながらも、あくまで映画ありきの1枚。時代的にもMTVを意識した、映像ありきのコンピレーションアルバムと言えるのではないでしょうか。

実際、本作からシングルカットされた楽曲のMVにはすべて映画の名シーンが効果的に使われており、もはや映画がアルバムを売るための壮大なロングMVなんじゃないかと錯覚するほど。時代ですね。

映画産業的にも音楽産業的にもイケイケだった80年代半ば、本作の大成功は良くも悪くも、その後に続く“メガヒット/豪華アーティスト参加サントラ”の雛形になったことは間違いありません(もちろん、それ以前の『フットルース』サントラのヒットがあってこそですが)。

今聴くと、いろんな意味で時代を感じさせる内容ですが、名実ともにここから唯一ブレイクしたスティーヴ・スティーヴンスにとっては、いろいろ忘れられない1枚なのではないでしょうか。これがなかったら、翌年のマイケル・ジャクソン『BAD』(1987年)参加もなかったでしょうから。

なお、本作は1999年、2006年にそれぞれスペシャルエディション、デラックスエディションとして再発。映画で使用されながらもサントラ未収録だったオーティス・レディング「(Sittin' On) The Dock Of The Bay」、THE RIGHTEOUS BROTHERS「You've Lost That Lovin' Feelin'」といった印象的な楽曲が追加された“完全版”となっており、サブスクではこちらのバージョンを聴くことができるようです。なお、2006年版にはさらにREO SPEEDWAGON「Can't Fight This Feeling」、MR. MISTER「Broken Wings」、EUROPE「The Final Countdown」、STARSHIP「Nothing's Gonna Stop Us Now」、ジェニファー・ラッシュ「The Power Of Love」と映画には一切関係ないものの、同時期にヒットした楽曲5曲が追加されています。

いよいよ映画『トップガン マーヴェリック』が公開間近。今度のサントラは本作のような形ではなく、レディー・ガガやハンス・ジマー、ハロルド・フォルターメイヤーによる楽曲が中心のようですが、懐かしのケニー・ロギンス「Danger Zone」なども再収録されるようなので、若干は「あの頃」を追体験できるかもしれませんね。

 


▼V.A.『TOP GUN: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
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2022年2月24日 (木)

BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND『LIVE/1975-85』(1986)

1986年11月10日にリリースされたブルース・スプリングスティーンのライブアルバム。日本盤は同年11月9日発売。

本作はメガヒット作『BORN IN THE U.S.A.』(1984年)に続いて制作されたアナログ5枚組/CD 3枚組という破格のボリュームのボックスセット形式のライブ・コンピレーション作品。そんな高額商品にも関わらず全米1位を獲得し、アメリカのみで現在までに400万セットを売り上げるという記録を樹立しています。また、本作からは「War」(全米8位、全英18位)、「Fire」(全米46位、全英54位)、「Born To Run」(全英16位)という、ライブ音源ながらヒットシングルも複数生まれました。

そのタイトルからも想像できるように、本作には1975年から1985年までに実施された、スプリングスティーンと彼のバンド・THE E STREET BANDとのライブ/ツアーから厳選された40曲をコンパイル。その中でも中心となっているのが1978年7月のRoxy Theater公演(8曲)と、『BORN IN THE U.S.A.』を携えた1984〜85年のアリーナ/スタジアムツアー(9曲)でしょうか。逆に、タイトルに銘打った1975年の音源はオープニングの「Thunder Road」1曲にとどまっています。

リリース当時のスプリングスティーンのライブは3時間超えは当たり前という時期。これは単に曲数を多く披露するのではなく、ライブならではのアレンジで1曲が10分前後にも及ぶことが多いという、ライブバンドならではの醍醐味を体現した結果でした。なので、本作からもそういった要素の片鱗は随所から感じ取ることができます。

基本的には年代順に音源が並んでいるのですが、最初はクラブ/ホールクラスから始まるので歓声もその程度のもの。しかし、アナログ盤のディスク2 B面(CDだとディスク1の12曲目)「Hungry Heart」からその感性の大きさが急変する。クレジットを見ると、ちょうどアルバム『THE RIVER』(1980年)で初の全米1位を獲得し、ツアーもアリーナクラスに移行したタイミングと重なります。そういったスプリングスティーンの成功の過程を、ライブパフォーマンスの充実度だけではなく、その周辺の環境からも感じ取れるのが本作の興味深いポイントではないでしょうか。

スプリングスティーン入門編としてはちょっと敷居が高い作品かもしれませんが、ベストアルバムや代表作をひととおり聴いたあとに彼のライブの凄みに触れてみたい方にはうってつけの作品集です。極上のロックンロールはもちろん、メッセージ性の強いシリアスなナンバー、意外なカバー曲などバラエティに富んだ選曲を、全盛期のライブを追体験する感覚でお楽しみください。

さて、ここからは余談。

DVD/Blu-rayがCDとほぼ変わらぬ価格帯で入手できること、またYouTubeなど動画サイトの普及や、スマホでライブ映像を手軽に撮影した映像をSNSなどで公開することが増えた結果、今ではライブ作品=映像作品が当たり前。しかし、1986年当時はVHSなどのビデオソフトは軽く1万円を超える高額商品で、まだまだライブアルバムの需要は高かった。しかし、アナログ盤からCDへと移行するタイミングということもあり、ライブアルバム自体も40〜50分程度のシングルディスクものか100分前後の2枚組がメイン。ライブの全貌を音源で公開するというよりは、ひとつのライブ/ツアーから厳選された10曲前後でひとつの作品を制作したのがライブアルバム、という認識だったと思います。

そんな中、ライブアルバムの概念をぶち壊してくれたのがこのアナログ5枚組作品。ボックスセットという概念すらなかった時代ですから、「アナログ5枚組なんてアリなんだ!」と中学生の自分は非常に驚きました。もちろん、中学生の小遣いでは手が出ない作品だったので、せいぜいレンタル店で借りるのが関の山。しかし、レンタル代も通常のアナログ盤/CDの数倍かかり、かつそれをダビングするカセットテープ代も5倍ですからね(苦笑)。

なもんですから、本作に初めて触れたのはもっと大人になってから。20代後半にCD 3枚組を中古で購入したのが最初だったかな。でもね、アナログ5枚分を無理矢理CD 3枚に詰め込んだもんだから、意図しないところで曲が切れたりしているんですよね。そういった意味では、アナログ5枚組(のちに日本のみで、CD 5枚組も限定発売されましたが)で楽しむべき内容かもしれません。

もうひとつ余談。

今日このタイミングに本作を取り上げたのは、ご時世柄「War」というカバーを聴きたくなったから。さまざまなアーティストによって取り上げられてきたこの曲、日本では「黒い戦争」の邦題で知られ、特にエドウィン・スターのバージョン(1970年)が有名ではないでしょうか(ほかにもFRANKIE GOES TO HOLLYWOODもカバーしていたので、スプリンスティーンの前に彼らのカバーで知っていたという方も、当時は少なくなかったのでは)。

スプリングスティーンがこの曲をシングルカットした際、ライブ映像をもとにしたMVも制作されているのですが、ここではCD音源同様に曲に入るまえのMCも含めた形となっており、実はこのMCが非常に重要だったりします。もし英語に堪能な方でしたら、ここまで含めじっくり理解していただきたいですし、MVも冒頭とエンディングに重い意味が込められているので、そちらにも注目してみてください。

 


▼BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND『LIVE/1975-85』
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2022年2月 1日 (火)

GLASS TIGER『THE THIN RED LINE』(1986)

1986年6月11日にリリースされたGLASS TIGERの1stアルバム。日本では『傷だらけの勲章』の邦題で、同年11月21日発売。

GLASS TIGERは1983年にカナダ・オンタリオ州ニューマーケットで結成された5人組ロックバンド。Captol Recordsと契約後、ブライアン・アダムスのソングライティングパートナーとして知られるジム・ヴァランスをプロデューサーに迎え、このデビューアルバムを完成させます。アルバムにはブライアン・アダムス(と彼のバンドメンバーでもあるキース・スコット)もゲスト参加していることもあって、シングル「Don't Forget Me (When I'm Gone)」は本国チャート1位、USチャートでも最高2位というデビューヒットを果たします。以降も「Thin Red Line」(カナダ19位)、「Someday」(カナダ14位、米7位)、「You're What I Look For」(カナダ14位)、「I Will Be There」(カナダ11位、米34位)スマッシュヒットを連発。アルバム自体もカナダ3位、米27位と好記録を残し、アメリカでは50万枚を超えるヒットさくとなりました。

サウンド的にはニューウェイヴを通過したポップロック/産業ロックといった印象ですが、「Thin Red Line」や「Don't Forget Me (When I'm Gone)」といった楽曲からはハードロック的なテイストも伝わります。特に後者や「Someday」といったヒット曲にはジム・ヴァランスもソングライターとして参加していることもあり、楽曲としての完成度の高さも印象的です。

ブライアン・アダムスがフックアップしたことがヒットにつながったことは大きな要因のひとつですが、ブライアンのような開放感の強いストレートなロックンロールをイメージすると、ちょっと肩透かしを喰らうかも。そのブライアンが印象的なコーラスで参加した「Don't Forget Me (When I'm Gone)」や「I Will Be There」あたりはブライアンの楽曲との共通点も見つけることができますし、「Ancient Evenings」のようにハードロック的アプローチを備えた楽曲も存在するにはしますが、このバンドはギターを前面に打ち出すよりも「Close To You」や「Vinishing Tribe」のようにシンセを軸にしたニューウェイヴタッチのナンバーが大半を占めるので、そのへんは覚悟してから触れたほうがよいかと思います。

そういったシンセメインのアレンジやドラムの音色などに時代を感じずにはいられませんが、個人的にはこの「ハードロックの色を含むニューウェイヴ」感は意外と心地よいものがあり、単なる一発屋ポップロックバンドと切り捨てるには勿体ない存在/アルバムだと思っています。ちょっと視点を変えたら、DURAN DURAN以降の英国ニューロマンティック勢に対するカナダからの答え、と受け取ることもできるのかなと。そこにソングライティング面でブライアン・アダムス一門がフォローアップすることで、何かに似ているようで実はオリジナリティに満ち溢れた不思議な1枚が完成した。それがこの奇跡のバランスで成立する隠れた名盤なのかもしれません。

ちなみに僕、本作は日本盤リリース直後にCDを購入しています。確か、BOØWY『BEAT EMOTION』(1986年)の次に買ったのがこのアルバムだったんじゃないかな。つまり、人生で2番目に購入したCDがこれだった、と。そりゃ思い入れもありますよ。中学3年生の自分、意外と見る目あったのかな(苦笑)。

なお、本作はユニバーサルミュージックが企画する『初CD化&入手困難盤復活!! HR/HM VOL.5:世界15カ国編』の一環で、3月23日に廉価盤として再発予定。本作をHR/HMの範疇に含んでしまって本当に大丈夫? 「カナダから登場した正統派ハード・ロック・バンドのデビュー・アルバム」と言い切っても本当に平気?とこちらが勝手に不安を覚えていますが、これを機に当時スルーしていたHR/HMリスナーの琴線にも触れることがあったら、いちファンとしてはこの上なく幸せでございます。

 


▼GLASS TIGER『THE THIN RED LINE』
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2021年11月24日 (水)

QUEEN『LIVE MAGIC』(1986)

1986年12月1日にリリースされたQUEEN通算2作目のライブアルバム。日本盤は同年12月20日にアナログにて発売され、1988年2月3日に初CD化されています。


※YouTube上に『LIVE MAGIC』関連の公式映像はゼロのようなので、同時期の公式映像から。

フレディ・マーキュリー(Vo)存命中、QUEENのライブアルバムは『LIVE KILLERS』(1979年)とこの『LIVE MAGIC』の2枚のみ。しかも、この『LIVE MAGIC』はQUEENにとって最後のツアーとなった『The Magic Tour』から1986年7月11、12日のイギリス・Wembley Studium公演、7月27日のハンガリー・ブダペスト公演、そしてツアーファイナルにしてQUEEN最後のライブとなった8月9日のイギリス・Knebworth Park公演から抜粋されたライブベスト的内容。その“抜粋”の仕方も非常にクセの強いもので、本格的なライブアルバムを期待すると肩透かしを喰らう可能性が高い珍品です。

というのも、全15曲中「One Vision」「A Kind Of Magic」「Under Pressure」「Another One Bites The Dust」「Hammer To Fall」「Radio Ga Ga」のみほぼフル演奏ですが、それ以外の楽曲は当時演奏されたテイクをエディットしてメドレーっぽくつなげた形で、「Bohemian Rhapsody」に至っては、中盤のオペラパートをまるまるカットするという暴挙ぶり(怒)。なので、15曲(うち1曲はエンディングSE「God Save The Queen」なので実質14曲)で49分とアナログ1枚に収まる短さなのです(この49分はCDでの長さで、実際のアナログ盤は47分とさらに2分ほど短いのですが)。

当時の最新アルバム『A KIND OF MAGIC』(1986年)でQUEENに夢中になった筆者にとって、このライブアルバムがいかに期待外れだったか……来日が実現せず、今みたいにYouTubeで手軽にライブ映像を漁ることもできず、仮にライブ映像作品を購入しようとしても当時のVHSビデオテープ作品はどれも軽く1万円超えという時代。悶々としながらこのライブアルバムと向き合ったことは、言うまでもありません。

フレディ逝去後、先のWembley Studium公演をまるまる収めた2枚組作品『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992年)がリリースされ、中学生時代の悔しさをここで解消したこと、今でもよく覚えています。さらに2000年代以降は各時代の秘蔵ライブアルバムが制作され、それらを貪るように聴き漁り……自分がQUEENのライブ作品に対して敏感なのは、きっとこの『LIVE MAGIC』での落胆が大きかったのかもしれませんね。

Wembley Studium公演は先の『LIVE AT WEMBLEY '86』、ブダペスト公演はのちにリリースされた『HUNGARIAN RHAPSODY: QUEEN LIVE IN BUADPEST』(2012年)で完全版が公開されているので、ここで希少価値が高いのはラスト公演となった Knebworth Park公演の音源のみ。QUEEN関連のライブ作品では本来重要視されるべき作品にもかかわらず、先のようなエディットのため評価が低いという、なんともアレな1枚なので、コアファン以外は無理して手にするべきではないと思います。まあ、そもそも日本ではデジタル配信およびストリーミングサービスでも未配信ですけどね。

このアルバム、当時は日本やヨーロッパでのみ発売され、セールス的に不遇期だったアメリカでは未発売。血胸、フレディ死後の1996年8月になってようやくUSリリースされたのです。しかし、現在はQUEENのカタログ・リイシュー時に今作が含まれることはなく、廃盤状態の国も少なくないようです。そんな中、ここ日本では2019年に本作がSHM-CD仕様でフィジカルリリースされておりますので、気になった方は(無理にとは言いませんが)購入してみてはいかがでしょう。

 


▼QUEEN『LIVE MAGIC』
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