PRINCE & THE REVOLUTION『PARADE』(1986)
1986年春に発表された、プリンス通算8作目のオリジナルアルバム。PRINCE & THE REVOLUTION名義では『PURPLE RAIN』(1984年)、『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)に続く3作目にして最終作に当たります。本作からは「Kiss」が全米1位(同年間19位)、「Mountains」が同23位、「Anotherloverholenyohead」が同63位を記録し、アルバム自体も全米3位まで上昇しています(ミリオンセールス達成)。
同年に公開されたプリンス主演映画第2弾『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』のサウンドトラックとして制作されたという点においては、メガヒットとなった『PURPLE RAIN』(同名映画のサントラ)と同じポジションの1枚ですが、音楽性や内容的にはロック色が濃厚だった『PURPLE RAIN』とは異なり、よりファンク色が強く、かつ『AROUND THE WORLD IN A DAY』でのサイケデリック色、さらにジャズの色合いも加わった、音楽性が一段と広がりを見せた1枚に仕上がっています。
どうしても大ヒットした「Kiss」の印象が強くなってしまいますが、ジャンルレスな1〜2分台のショートチューンが矢継ぎ早に繰り出される前半(アナログA面のM-1〜7)の構成はなかなかに気持ち良いものがあり、だからこそ唯一5分台の楽曲「Girls & Boys」(ヨーロッパのみでシングルカット。MVも制作)が非常に強く印象に残るというのもあります。
後半に入ると前作の流れを汲む「Mountains」もあるし、代表曲「Kiss」もあるし、何よりもアルバムラストを飾る名バラード「Sometimes It Snows In April」もある。特に7分近い大作の「Sometimes It Snows In April」は、彼が去って以降はこの季節になると毎年聴きたくなる1曲でもあります。そろそろ暖かくなってきたなって季節なのに、急に真冬のような寒さまで気温が落ち込む1日には、ふとこの曲が脳内で流れ始めるんですよね。
映画のサントラということを抜きにしても、アルバムとしてなかなかにバラエティに富んだ本作。映画の大失敗&酷評もあり、このアルバムに対する評価も一時は決して高いものではありませんでしたが、改めてプリンスのキャリアを振り返るとすごく充実した1枚であることが理解できるはず。特に、ここからTHE REVOLUTION解散〜『SIGN O' THE TIMES』(1987年)でソロ名義での活動再開という流れを考えると、本作はひとつの区切りであり大きな分岐点でもあるのかなと。
まあとにかく、良い曲が多いし、アルバムとしても聴きやすく優れているので、80年代の代表作のひとつとして今このタイミングにオススメしておきたい1枚です。
▼PRINCE & THE REVOLUTION『PARADE』
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