カテゴリー「1987年の作品」の78件の記事

2026年7月 9日 (木)

「#プリンス三昧」プリンス全スタジオアルバム解説③(1991〜1995年)

このエントリーは今年1月から6月にかけて筆者のインスタアカウントで不定期連載してきた、ハッシュタグ「#プリンス三昧」付きのプリンス全スタジオアルバム(一部関連作品やコンピ盤、リミックス盤なども含む)55回分の投稿を、時系列(リリース年月)順に再構成してまとめたものです。第1回はこちら第2回はこちらからご覧ください。

第3回はレーベルとの関係がこじれた最初の過渡期である1991年〜1995年に発表した10作品についてです。

 

 

PRINCE & THE NEW POWER GENERATION『DIAMONDS AND PEARLS』(1991)

1991年10月1日リリースの13thアルバム。前作の一部でお披露目されていたTHE NEW POWER GENERATIONを携えての1作目。

過去2作での過渡期を経て新時代に突入した感の強い、ポップで開放的な楽曲多数。それもあってか本作からは生前最後のシングル1位を獲得した「Cream」を筆頭に「Diamonds And Perls」(3位)、「Gett Off」(21位)、「Money Don't Matter 2 Night」(23位)、「Insatiable」(77位)と久しぶりにヒット曲を量産。アルバム自体も最高3位、200万枚以上を売り上げる、新たなディケイドの幕開けに相応しい1枚となりました。

刺激は少ないかもしれないけど気づくと手を伸ばしている良盤。『PURPLE RAIN』同様の入門編的作品かな。

 


▼PRINCE & THE NEW POWER GENERATION『DIAMONDS AND PEARLS』
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PRINCE & THE NEW POWER GENERATION『LOVE SYMBOL』(1992)

1992年10月13日リリースの14thアルバム。正式タイトルはジャケットにデカデカと掲載されている記号なので表記できず。一般的には「LOVE SYMBOL」などと呼ばれており、日本盤も『ラヴ・シンボル』と銘打って発売されました。

THE NEW POWER GENERATIONを携えての2作目となりますが、前作と比べたら大衆性は薄いのですが、だがそこがいい。だってオープニングからある種のジャイアニズム炸裂の「My Name Is Prince」(36位)、2曲目が「Sex MF」(66位。MFはもちろんMother Fxxkerのこと)ですからね(笑)。嫌いになる要素がまったくない。大衆性が薄いものの、しっかりと「7」(7位)というポピュラリティの高いヒット曲もしっかり用意されている。全体的にノリで気持ちよく楽しめる1枚ではないでしょうか。

しかし、これ以降再び模索の時期に入るんですよね。1年に新作1枚ペースはひとまずここまで。

 


▼PRINCE & THE NEW POWER GENERATION『LOVE SYMBOL』
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THE NEW POWER GENERATION『GOLD NIGGA』(1993)

1993年8月31日リリースの、THE NEW POWER GENERATION名義の1stアルバム。当時、ライブ会場などで限定販売されたレアな作品。

この年、プリンスはデビューから所属してきたワーナーとの関係を終え、6月には「シンボルマーク(The Artist Formerly Known as Prince)」を新たな名前として掲げます。『LOVE SYMBOL』と前後して制作されたものの、リリースは1年後。ということは、タイミング的にプリンスという名前を一時的に捨てていた頃。PRINCE & THE NEW POWER GENERATION名義ではないので、本作では殿下の名前はクレジットされていませんが、楽曲はほぼ殿下が手がけたものでギターやコーラスなどのレコーディングにも参加しています。

空気感的には先の『LOVE SYMBOL』やその前作『DIAMONDS AND PEARLS』の延長線上にあるジャズファンク/ヒップホップサウンドなので、殿下ファンはもちろんこの頃の彼の作品が好きな方なら安心して楽しめる内容。ただ、殿下のあの声あってこそと感じる方には物足りなさもあるかも。THE TIMEなどファミリー作品として触れるのが一番かな。

ちなみに本作はサブスク配信なし。CD自体も廃盤状態で、殿下の関連作品ではもっとも入手困難な1枚と言われています。

 


▼THE NEW POWER GENERATION『GOLD NIGGA』
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PRINCE『THE HITS / THE B-SIDES』(1993)

1993年9月14日にリリースされた、プリンス初のベストアルバム。

その一方で、ワーナー側は契約消化の意味も兼ねて1978年から1992年までのプリンスのキャリアを総括する、『THE HITS 1』『THE HITS 2』と題した2枚のベスト盤を制作。それぞれにヒット曲を振り分けつつ、各アルバムに未発表曲/テイクを2曲ずつ収録。また、その2枚をまとめた『THE HITS / THE B-SIDES』はシングルでしか聴けなかったアルバム未収録曲をまとめ、さらに未発表を2曲を追加したボーナスディスク付きCD3枚組仕様。要は3枚組を買えってことですねわかります(笑)。プリンス本人が望んでないベストであることは当時から理解できていたけど、やはりB面集欲しさに買っちゃいますよね。

本作の目玉はようやく世に出た本人歌唱の「Nothing Compares 2 U」(ライブバージョンだけど)。これだけで十分です。シングル曲は「Kiss」のシングルバージョン(フェードアウトするやつ)が初収録なのが嬉しいくらいで、あとは無駄に短縮されたエディットにイライラするので無理して聴かなくてもいいかな。部屋で流しっぱなしにする分にはちょうどいいアルバムですが。

 


▼PRINCE『THE HITS / THE B-SIDES』
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PRINCE『THE BEAUTIFUL EXPERIENCE』(1994)

1994年5月17日にリリースされたEP。番外編的な1枚。サブスク未配信。

ワーナーと揉めまくってるタイミングの1994年は、真の意味での過渡期。プリンス名義ではなくあの変な記号(笑)名義で自身のレーベルから発表されたこのEPは、当時のヒット曲「The Most Beautiful Girl In The World」(3位)をネタにいろんなバージョンを作って1枚にまとめたもの。サビの名フレーズだけは共通しているものの、どれもらしいアレンジが施された似て非なるものに仕上がっていて、かつシームレスな構成なのでちょっとしたコンセプトアルバムのようにも聞こえる。なので最後にオリジナルバージョン(シングルと同テイク)がくると、なぜかホッとするという。全7トラックで33分というトータルランニングもちょうどいい。

日本盤は当時(確か)エイベックスから出ていて、さらに2曲追加されて44分くらいの尺なので、もはやフルアルバム並み。ただ、追加されたテイクは蛇足気味の内容かな。

そもそもこの曲、盗作疑惑でしばらくデジタル配信されてなかったんですよね(現在は解決済み)。それもあって本作は現在も復刻企画やサブスク配信をスルーされてるのかな。まあそこまで重要な1枚ではないという判断もあったんだろうけどね。

 


▼PRINCE『THE BEAUTIFUL EXPERIENCE』
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V.A.『1-800-NEW-FUNK』(1994)

1994年8月12日にリリースされたコンピレーションアルバム。サブスク未配信。

殿下がシンボルマークへ改名した際に立ち上げたNPG Recordsのカタログ的コンピ。当時は日本盤もリリースされました(海外盤にリミックス数曲追加した仕様)。プリンス名義の楽曲は当然ながら未収録で、ジョージ・クリントンやマイテ、メイヴィス・ステイプルズのほか、殿下が携わるTHE NEW POWER GENERATIONやMADHOUSEの楽曲、さらにはMINNEAPOLISという謎のユニットの新曲も収録。実はこのMINNEAPOLIS、殿下や彼と関わりの深いメンバーたちによる覆面ユニットだったりします。

あと、「Love Sign」はノーナ・ゲイと殿下のデュエットソングですし、それ以外にも多くの楽曲を殿下が執筆しているので、90年代半ばの殿下(とその仲間たち)の空気に触れるという意味では副読本として役立つかも。必聴盤とは言い難いものの、全オリジナルアルバムを網羅し、なおも殿下を掘り起こしたいという方にはオススメしてもいいのかな。なお、例によって本作も国内サブスク未配信。海外でもTidalでしか確認できないですが、CD自体は中古盤屋をこまめに回れば意外と簡単に(かつ安価で)見つけられるはずです。

 


▼V.A.『1-800-NEW-FUNK』
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PRINCE『COME』(1994)

1994年8月16日にリリースされた15thアルバム。

オリジナルアルバムとしては『LOVE SYMBOL』から2年振りですが、プリンス名義で発表された本作はジャケットにある「1958 / 1993」の表記が示すように、ある種の遺作(契約消化のための1枚)。実際、内容はかなりダーク&エロティシズム全開で、当時は「あれっ?」と思った記憶が。ただ、今聴くと11分超のオープニングトラック「Come」からしてシビれる展開。殿下がリアルタイムでやりたい・表現したいものとは乖離していたのかもしれないけど、時間が経過して何周もしたことで不思議とジャストで響いているような気が。今回の全作振り返りで一番の収穫でした。

 


▼PRINCE『COME』
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PRINCE『THE BLACK ALBUM』(1987 / 1994)

1994年11月22日にリリースされた16thアルバム。サブスク未配信。

1987年末発売予定だった幻の1枚が、『COME』の3ヶ月後にようやくリリースに。とはいえ、これも先のワーナーとの契約消化によって正式リリースが実現したのかなと。実際、当初の発売スケジュールから7年も経っていたため、1994年当時すでに若干の古臭さもあったし、散々騒がれたもののそこまで名盤か?という疑問もあったなあ。そういう意味では、あえて限定リリースにしたのは納得かも。

とはいえ、昨今の再発ムーブの中に本作が含まれていないのは如何なものかと。早くサブスクでも聴けるようにして、西新宿を回って海賊盤を探した90年代初頭の記憶を決していただきたい(笑)。

 


▼PRINCE『THE BLACK ALBUM』
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THE NEW POWER GENERATION『EXODUS』(1995)

1995年3月27日にリリースされた、THE NEW POWER GENERATION名義での2ndアルバム。サブスク未配信。

全21トラックと一見ボリューミーながらも、歌モノは10曲(残りはインタールード)。発売は半年近く早いものの、制作は『THE GOLD EXPERIENCE』と並行して実施されており、それもあってか音的にはオーソドックスなファンクやソウルが中心。殿下の名前は再びクレジットされていないものの、全曲のソングライティングとベース(さらに一部楽曲の加工ボーカル)で参加しています。当たり前だけど、どれも殿下が歌っても成立する曲ばかりで、前作ほどの弾けっぷりは感じられないこともあり、聴きやすさは前作以上。ということもあり、前作が気に入った方には少々物足りないかも。

前作同様、今作も一般流通しなかったので現在は入手も非常に困難。そろそろここへんのワークスも配信解禁してほしいんだけどねえ。

 


▼THE NEW POWER GENERATION『EXODUS』
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PRINCE『THE GOLD EXPERIENCE』(1995)

1995年9月26日にリリースされた17thアルバム。

本人が望んだ純粋なオリジナルアルバムとしては『LOVE SYMBOL』l以来3年振りか。ということもあって、かなりバランスに優れた内容でキャッチーな良曲満載。ダーク期をようやく抜けた印象もあるんだけど、まだ前レーベルからの流通とあってか全力全開にまでは至ってないかな。

前年のヒット曲「The Most Beautiful Girl In The World」(3位)が正式にアルバム収録されたほか、「Eye Hate U」(12位)や「Gold」(88位)といったヒットシングルも含まれており、比較的聴きやすい内容にも関わらず大きなヒットに繋がらなかったのは、一連の揉め事も影響したか。ただ、日本では「Endorphinmachine」が某格闘技中継で使用されたこともあって。それなりに売れた記憶が。

 


▼PRINCE『THE GOLD EXPERIENCE』
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2026年7月 7日 (火)

「#プリンス三昧」プリンス全スタジオアルバム解説②(1984〜1990年)

このエントリーは今年1月から6月にかけて筆者のインスタアカウントで不定期連載してきた、ハッシュタグ「#プリンス三昧」付きのプリンス全スタジオアルバム(一部関連作品やコンピ盤、リミックス盤なども含む)55回分の投稿を、時系列(リリース年月)順に再構成してまとめたものです。第1回はこちらからご覧ください。

第2回はセールス/内容ともに黄金期と呼べる1984年以降、1990年までの7作品についてです。

 

 

PRINCE & THE REVOLUTION『PURPLE RAIN』(1984)

アメリカ本国で1984年6月25日発売の6thアルバム。個人的にはプリンスへの入り口となった1枚です。

殿下の自伝的同名映画のサウンドトラックの役割も果たした作品で、前作『1999』(1982年)でのロング&大ヒットも手伝って初の全米1位を獲得。アルバム自体、アメリカだけで1000万枚を超えるメガヒットに。本作からは「When Doves Cry」「Let's Go Crazy」が1位、「Purple Rain」が2位、「I Would Die 4 U」が8位、「Take Me With U」が25位とヒットシングルも多数生まれました。

初めてPRINCE & THE REVOLUTION名義で発売された本作は、バンド録音中心ということもあってか全体的にロック色が濃厚。パーティ感の強いハードロックな「Let's Go Crazy」、泣きのロックバラード「Purple Rain」を筆頭にとにかく聴きやすい。加えて前作での大作志向が減退し、どれも4分前後とコンパクトかつキャッチー(タイトルトラックのみ約9分もありますが)。なので、どれをシングルカットしたとしてもそれなりのヒットが約束されたようなもの。ノリにノるってこういうことなんですよね。だってMTV(いや、『ベストヒットUSA』かも)で「When Doves Cry」のMVを観て(曲を聴いて)、最初こそあのビジュアルにたじろいだ自分が「それでも聴きたい」と思ってしまうほどの魅力を放っていたんですから。

今ではそこまで聴くアルバムではないけど、この入門編があったからハマれたのだから大きな意味がある。前作『1999』とあわせて聴くと、より当時の状況を理解してもらえるかも。

なお、本作に関しては過去により深く触れておりますので、こちらも合わせてチェックいただけるとありがたいです。

 


▼PRINCE & THE REVOLUTION『PURPLE RAIN』
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PRINCE & THE REVOLUTION『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985)

1985年4月22日リリースの7thアルバム。前作『PURPLE RAIN』のメガヒット(現在アメリカのみで1000万枚超)を受けて、10ヶ月という短いスパンで届けられたTHE REVOLUTIONとの2作目。

実は、レコーディング自体は『PURPLE RAIN』とほぼ同時期に行われたものが多数なんだとか。サウンドのテイスト的には共通するものが多いものの、曲調はポップでロックだった前作とは異なり、いわゆるサイケデリックロック/ポップが中心。冒頭のタイトルトラックなんて、中近東の民族音楽テイストですからね。

もちろん「Paisley Park」や「Raspberry Beret」みたいなポップチューンもあるけど、それもサイケ味が散りばめられていてストレートだった前作とは異なる印象。しかし、これが非常にクセになるんですよね。そんな中で異彩を放つ「Tamborine」「America」あたりのハードファンク、次作への布石とも言える「Condition Of The Heart」や「Temptation」でのジャズ風味が非常にいい味を出しています。

本作は自分がプリンスにハマるきっかけの1枚。彼の全キャリアの中でトップ3クラスで好きなアルバム。

 


▼PRINCE & THE REVOLUTION『AROUND THE WORLD IN A DAY』
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PRINCE & THE REVOLUTION『PARADE』(1986)

1986年3月31日リリースの8thアルバム。殿下が手がける主演映画『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』のサントラ的立ち位置の、THE REVOLUTION名義での3作目にしてラスト作。

全米1位を記録した名曲「Kiss」や無機質ファンク「Girls & Boys」、前作の流れを汲むサイケソウル「Mountains」(全米23位)といった個性的なシングル曲を含むも、全体的には前作でのサイケ色にジャズサウンドを散りばめた大人なテイスト。音のおもちゃ箱的側面もあった前作や前々作とは異なり、音数も意識的に減らしている印象もあり(「Kiss」なんてその最もたるや)、初めて聴いたときは子供ながらに地味に映ったものです。が、ある程度大人になってから触れてみると……気持ちいいのなんの。組曲的に進む冒頭から緩急に飛んだ中盤、そして感動的なジャズバラード「Sometimes It Snows In April」で締めくくる流れは完璧の一言。

『1999』から始まった快進撃といいますか、ここらへんの流れは本当に神がかってる。映画は思い切りコケたけんだけどね(実際に観たのは20年以上経ってから)。

なお、本作に関しては過去により深く触れておりますので、こちらも合わせてチェックいただけるとありがたいです。

 


▼PRINCE & THE REVOLUTION『PARADE』
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PRINCE『SIGN O' THE TIMES』(1987)

1987年3月20日リリースの9thアルバム。再びソロ名義に戻ったかと思えば、いきなりアナログ/CDともに2枚組でやりたい放題(『1999』はCDではギリ1枚に収録)。

しかも『1999』とは異なり、今作は全16曲入りで含まれる楽曲のジャンルもバラバラ。『AROUND THE WORLD IN A DAY』がビートルズにおけるサージェント・ペパーズだとすると、本作はホワイト・アルバムか。ただ、ビートルズと違って殿下はこれをたったひとりで作り上げてしまったところが恐るべし。

だって、ミニマルサウンドの無機質ファンクなタイトルトラックから始まり、ゴージャスなパーティロック、クールなラップ、不穏なソウル、サイケポップ、王道ロック&ポップ、セクシャルなR&B、さらにはシリアスなハードロックまで入ってるんだから。当時はびっくりしたけど、いろんなジャンルが詰まってるからこそ一番好きなのかも。殿下のアルバムはそれまでレンタルで済ませてきたけど、初めてCDで購入した作品がこれでした。

なお、本作に関しては過去により深く触れておりますので、こちらも合わせてチェックいただけるとありがたいです。

 


▼PRINCE『SIGN O' THE TIMES』
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PRINCE『LOVESEXY』(1988)

1988年5月10日発売の10thアルバム。前作『SIGN O' THE TIMES』から半年強で、『BLACK ALBUM』と題された謎の新作リリースがアナウンスされるも突如中止に。地元のショップでも予約告知してたからよく覚えてる。

で、その代わりに前作から1年後にこの問題作が登場(内容はまったく問題作じゃない)。先行の8センチCDシングルは2トラック入りだったけど、CDアルバムは9曲1トラック(意味わかりますか? 9曲分が40数分のひとつのトラックとして収録されていたということです)。初めての経験に戸惑いながらも、当時は編集点を見つけてカセットにダビングしてそっちばかり聴いてた(笑)。10年くらい前にサブスク配信が始まった当初はまだ1トラックだった記憶があるけど、気づいたら9トラックに分割されたバージョンも出回るように。作品の良し悪しには関係ないかもしれないけど、ある意味一番インパクトのあったCDかも。

あ、内容的には前作『SIGN O' THE TIMES』ほどの実験性はなく、軸が絞れている印象。『BLACK ALBUM』収録予定だった楽曲もいくつか含まれておりますが、それを抜きにしても非常にポップで楽しい1枚。自分的黄金期はここまでかな。

なお、本作に関しては過去により深く触れておりますので、こちらも合わせてチェックいただけるとありがたいです。

 


▼PRINCE『LOVESEXY』
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PRINCE『BATMAN』(1989)

1989年6月20日リリースの11thアルバム。実写/イラスト含め殿下本人の欠片すら存在しないジャケットはこれが初めてか。

それもそのはず、本作はティム・バートン監督の同名映画のサントラ的立ち位置なのだから。が、実際には劇中で使われた曲は少なく、どちらかというとイメージアルバム的な1枚。そういう意味では『PURPLE RAIN』に近しいものがあるかな(ロックとヒップホップ寄りという違いはありますが)。全米1位を記録した「Batdance」は歌モノではないサウンドコラージュ的ダンスチューンだし、そのほかの歌モノもスルッと聴けてしまうくらい薄味。映画の相乗効果もあって『AROUND THE WORLD IN A DAY』以来の1位に輝いたけど、前作までの好調ぶりを考えると肩すかすを喰らうかも。

そこも含めて好き嫌い分かれそうだけど、当時10代後半の自分は『LOVESEXY』からの流れでよく聴いた記憶が。ただ、バットマン効果とはいえ、日本人の感覚だとなぜそこまでヒットしたのか当時は謎でした(笑)。

なお、本作に関しては過去により深く触れておりますので、こちらも合わせてチェックいただけるとありがたいです。

 


▼PRINCE『BATMAN』
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PRINCE『GRAFFITI BRIDGE』(1990)

1990年8月20日リリースの12thアルバム。またもや映画のサントラ。しかし、今回は殿下自身が手がける同名映画のサントラ的1枚なので、前作『BATMAN』とはちょっと意味合いが異なるか。

今作は自身の歌唱曲のみならず、THE TIMEなどプリンスファミリーの楽曲(制作には殿下が関与)、テヴィン・キャンベルやジョージ・クリントンとのコラボ曲も多数含まれていて、最初こそ「?」でしかなかった。そりゃサントラなんだから、こういう作風もあるわなと今ならスッと理解できるけど、これまで全部自作自演してきたのになんで?と思わずにはいられなかった。かつ、約70分と非常に長尺。それらの理由もあって、当時もそこまで聴き込まず、敬遠した記憶も。

が、今聴くとそこまで悪いわけでもなく、なんなら前作よりも好き。とはいえ1曲1曲のインパクトは相当薄く、アルバムとしてあまり印象に残らないのも事実。

 


▼PRINCE『GRAFFITI BRIDGE』
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2024年11月10日 (日)

サブスクに存在する音源を通して1980年〜1994年のHR/HM(およびそれに付随するハード&ヘヴィな音楽)の歴史的推移を見る

当サイトではかつて『1991 in HR/HM & Alternative Rock』というエントリーを公開しています。これは過去数年メインストリームだったHR/HMがグランジと入れ替わる絶妙なタイミングとなった1991年の音楽を、当時の世相とともに振り返りながらサブスクで聴いていくという内容でした。で、これと同じようなエントリーを1994年版で作ろうかと思っていたのですが、まとめながら歴史的観点(音楽以外を含む)ではそこまで大きくないような気がしまして……。

で、同じタイミングにこちらのイベントのためにプレイリストを共同制作していたのですが、その流れで「これを年代別に作ってみたいな」と思うようになり。だったら先の1994年までを年間プレイリストで辿っていくのはどうかな、という考えに至ったわけです。

ちゃんと始めるなら何年からがいいのかな……と熟考したところ、やはりNWOBHMが勃発したと言われる1980年から1年区切りで辿っていくのがいいんじゃないか、ということで、ここ数ヶ月ちまちまと作業しておりました。で、先ほど最後の1年となる1994年のプレイリストを完成させたので、こうしてエントリーとしてまとめるに至りました。

ぶっちゃけ、考察もなにもないです。これらを年代順に聴いていくことでそれぞれ見えてくるもの、気づくことは間違いなくあるでしょう。僕から「これがこうだから、こうなった」なんて細かいことはあえて言いませんが、もし何か付け加えるとしたら……意外とサブスク上に存在しない重要作品や楽曲が欠けているという事実と、HR/HMというジャンルが80年代後半からどんどん拡大していき、リリースアイテムも格段と増えたこと。例えば100曲でまとめる際、1980年と1994年とではその数に差がかなり出てしまったこと(1980年はHR/HMの絶対数が少なく、本来なら取り上げたいNWOBHMの名曲もサブスク上に存在せず、結果として無理やりパンクからの派生や1アーティストから2曲選んだりしている。一方で1994年のアイテムは国内外含め200曲近く集まり、そこから削っていくのにひと苦労した)。かつ、ジャンルとしてもどんどん洗練されていき、主流となるサウンドの方向性もどんどん変化していることにも気づくはず(結局言ってるし)。あと、90年代以降の音楽は今聴いても古さを感じないけど、80年代前半はまだ70年代の延長にあるんだなと再認識させられました。いろいろ面白かった。

ということで、ここから1年単位で作ったプレイリスト(各100曲)。それぞれ7〜8時間とかなり長尺ですが、暇なときにでもダダ流ししながらお楽しみいただけると幸いです。

 

■1980年

 

■1981年

 

■1982年

 

■1983年

 

■1984年

 

■1985年

 

■1986年

 

■1987年

 

■1988年

 

■1989年

 

■1990年

 

■1991年

 

■1992年

 

■1993年

 

■1994年

2024年4月 9日 (火)

BLACK SABBATH『THE ETERNAL IDOL』(1987)

1987年11月23日にリリースされたBLACK SABBATHの13thアルバム。

前作『SEVENTH STAR』を伴う北米/イギリスツアーを終え、1986年後半かられっきとしたサバスの新作制作に取り掛かったトニー・アイオミ(G)。グレン・ヒューズ(Vo)の代役としてツアーをサポートしたレイ・ギラン(Vo/BADLANDS)や、前作のレコーディング&ツアーにも参加したデイヴ・スピッツ(B/ex.WHITE LION、ex.IMPELLITTERIなど)、エリック・シンガー(Dr/KISS、ex.GARY MOORE、ex.ALICE COOPERなど)、そしてお馴染みジェフ・ニコルス(Key)という布陣で楽曲制作に臨もうとするも、デイヴ・スピッツが早々に脱退。代わりにボブ・デイズリー(B/ex.RAINBOW、ex.OZZY OSBOURNEなど)が加わり作業を続けるのですが、今度はレイ・ギランが解雇されてしまいます。結果、レイはサバスに参加しながらも1曲として正式なスタジオ音源を残すことなくバンドを去るのでした。

難航した後任シンガー探しですが、新たにトニー・マーティンという逸材を発掘。しかし、ボブ・デイズリーもレコーディング終了後にバンドを離脱してしまい、最後の最後まで不安定な状態のままアルバムは完成に至ります。

ディオ期のスタイルを再追求しようとしたアイオミですが、それはほぼ成功したと言っても過言ではないでしょう。ディオほどのアクはないものの、声質が彼に近いこともあり、また新人とは思えぬほどの歌唱力と相まって、いかにも“らしい”世界観を構築しています。楽曲自体の出来も良く、仰々しいアレンジのオープニングトラック「The Shining」を筆頭に、アグレッシヴな「Hard Life To Love」や「Lost Forever」、王道サバス的なドラマチックさが際立つタイトルトラック「Eternal Idol」など、ディオ期の2作品(『HEAVEN AND HELL』『MOB RULES』)を好むリスナーなら文句なしに受け入れられるはず。いや、その延長線でより進化した第2期サバスを存分に楽しめることでしょう。

しかし、そういった完成度とは相反し、チャート的には大失敗。本国イギリスでは初めてTOP30入りを逃し(最高66位)、アメリカでは初めて100位内にも入りませんでした(最高168位)。1987年というとBON JOVIDEF LEPPARDWHITESNAKEGUNS N' ROSESなどHR/HM勢が大ヒットを飛ばした大きな転換期。サバスのようなオリジネーターに注目が集まってもおかしくないはずなのですが、どうやら世間が求めるHR/HMとは違っていたのかもしれません(それ以上に、ほぼ無名のフロントマンが加わったことで注目度が落ちたということもあるのでしょう)。

とはいえ、現在までオジー・オズボーンに次いで在籍期間の長いフロントマンはこのトニー・マーティン。参加作品数もオジーの9枚に次ぐ5枚と、本来ならバンドの顔(のひとり)と断言してもおかしくないのですが、いかんせんオジーとディオの存在感&功績が大きすぎて……。ホント、かわいそうな人だよなあ……。

なお、本作のデラックスエディションにはレイ・ギラン在籍時のデモ音源を収録。インスト曲「Scarlet Pimpernel」以外の全8曲を(デモ音質とはいえ)彼のボーカルで楽しむことができます。これ聴いちゃうと、ボーカリストとしての存在感はトニーよりもレイなんだよなあ……ここでも残念な結果に。いや、トニーが本領発揮するのは次作からですので!

ちなみに、本作のツアーが始まる頃にはエリック・シンガーもバンドを離れ、新たにジョー・バート(B)&テリー・チャイムズ(Dr/ex.THE CLASH、ex.THE HEARTBREAKERSなど)が参加することに。その後、本作のセールス的大失敗を理由に、バンドはデビュー時から在籍してきたVertigo Records(英)およびWarner Bros.(米)との契約を終了こととなります。サバスにとっては、この時期がもっとも暗黒期と言えるかもしれませんね。

 


▼BLACK SABBATH『THE ETERNAL IDOL』
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2023年1月14日 (土)

STEVE JONES『MERCY』(1987)

1987年7月にリリースされたスティーヴ・ジョーンズの1stソロアルバム。

SEX PISTOLSのギタリストとして知られるスティーヴ・ジョーンズですが、バンド解散後はTHE PROFESSIONALSやCHEQUERED PASTといったバンド活動のほか、フィル・ライノット(THIN LIZZY)やイギー・ポップアンディ・テイラーと共演するなどして、音楽を続けてきました。そんな彼が1986年にMCA Recordsと単独契約。同年秋にはアメリカのテレビドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』の挿入歌として初のソロ楽曲「Mercy」を、同じく1986年11月公開(日本では1988年6月公開)の映画『サムシング・ワイルド』に「With You Or Without You」を提供するなどして、ソロキャリアを重ねていきます。

同2曲を含む初のソロアルバム、プロデュースを手がけるのはスティーヴ自身とボブ・ローズ(マイケル・デ・バレス、ジュリアン・レノンなど)、ポール・ラニ(MEGADETHENUFF Z'NUFF、SANCTUARYなど)という面々。ギターやベースに加え、スティーヴ自身がボーカルを担当しており、ドラムはブライアン・アダムスとの活動で知られるミッキー・カリーと名手ジム・ケルトナー、キーボードはボブ・ローズが担っています。

ピストルズでの重厚感の強いギターサウンド、直近のイギー・ポップ『BLAH-BLAH-BLAH』(1986年)やアンディ・テイラー『THUNDER』(1987年)で聴かせたワイルドなギタープレイをイメージして本作に触れると、その地味な作風に驚くのではないでしょうか。豪快なハードロックやパンクロックはここには皆無で、終始穏やかなトーンで展開されるミディアロックの数々は、クスリ抜けして真人間になったスティーヴがそのまま反映されたかのような仕上がりです(「Drugs Suck」なんてタイトルの曲まで収録されるくらいですからね)。

抜けの良いシンセ&ドラムとギターが比較的抑えめというミックスに、1987年という時代性を感じずにはいられません。スティーヴの中低音中心のボーカルのせいもあり、個人的にはチャーリー・セクストンのデビューアルバム『PICTURES FOR PLEASURE』(1985年)と似た印象を受けるのですが、年齢的なこともありチャーリーのほうがみずみずしく華やかさが勝っており、じゃあこのスティーヴのソロアルバムの魅力はどこかと問われると……純粋に曲の良さなのかな、と。

メロディメイカーとしては(自身の声域を考慮したこともあってか)飛び抜けた個性は感じられないものの、不思議と聴いていて心地よい曲ばかり。ラストのスタンダードナンバー「Love Letters」のカバーまで全10曲、大きな山場や高揚感を迎えることなく終了するものの、なぜか嫌いになれない1枚なんですよ。

スティーヴが心の平穏を取り戻すため、リハビリがてら取り掛かった本作は続く2ndアルバム『FIRE AND GASOLINE』(1989年)で本領発揮するための、プレ・ソロデビュー作なのかもしれません。ホント、傑作ハードロックアルバム『FIRE AND GASOLINE』と比べると対照的な内容ですからね。

このアルバムと『FIRE AND GASOLINE』、しばらく廃盤状態でしたが2019年初頭にRock Candyから再発。昨年にはサブスクでも無事解禁されております。

 


▼STEVE JONES『MERCY』
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2022年12月31日 (土)

マイケル・ジャクソンの黄金期をオリジナルアルバムで振り返る(1979〜1991年)

2022年のうちに振り返っておきたいと思ったのが、マイケル・ジャクソン最大のヒット作にしてポップミュージック界における歴史的名盤『THRILLER』(1982年)について。自分は世代的に『THRILLER』バカ売れ期の末端にギリギリ触れており、当時のMTV(地上波時代ね)や『ベストヒットUSA』、『SONY MUSIC TV』を録画して「Thriller」のショートフィルムや「Beat It」「Billie Jean」のMVを何度もリピートしたものです。

なもんですから、原体験としては続く『BAD』(1987年)のほうがリアルタイム感が濃厚で、初来日となった後楽園球場公演をはじめさまざまな記憶がよみがえってきます(初めて&唯一生で観たのは1992年12月の『Dangerous Tour』でしたが)。

そんなこんなで、今年で『THRILLER』リリースから40年。アニバーサリー盤も発売されましたが、個人的には25周年盤のときの盛り上がりと比べるとやや気持ちが劣りますが(そりゃあマイケル生前でしたからね、25周年のタイミングは)、周年タイミングに取り上げておかなくちゃなと思いながらも、年末に向けての繁忙期でまったく触れる機会がなく、気づけば大晦日。時間も多少できたので、やるなら徹底したいなと思い、マイケルのソロキャリア黄金期の始まりといえる『OFF THE WALL』(1979年)から『DANGEROUS』(1991年)までの(個人的思い入れの強い)4作品について、コンパクトな形で触れていこうかなと思います。

 

 

『OFF THE WALL』(1979)

 

1979年8月10日にリリースされたマイケル・ジャクソンの5thアルバム。

古巣Motown Recordsを離れ、Epic Recordsへ移籍しての第1弾アルバム。意外にも全米チャートでは最高3位と1位を獲得していませんが、「Don't Stop 'Til You Get Enough」「Rock with You」とシングル2作連続全米1位を獲得し、ほかにも「Off The Wall」(同10位)、「She's Out Of My Life」(同10位)とヒット曲を連発し、アルバム自体は現在までにアメリカで900万枚以上、全世界で2000万枚以上の売り上げを記録しました。

初めてマイケル主導で制作されたアルバムであり、プロデューサーにはクインシー・ジョーンズを起用。ソングライター陣もポール・マッカートニー(「Girlfriend」)やスティーヴィー・ワンダー(「I Can't Help It」)、デヴィット・フォスター(「It's The Falling In Love」)などソウル/R&Bに捉われない幅広い人選で自身の表現の幅を広げています。

大ヒットした「Don't Stop 'Til You Get Enough」「Rock with You」のようなソウル/ディスコをベースにした楽曲はもちろんのこと、全体を通してポップフィールドでも通用する曲作りが徹底され始めたのがこの時期なのかな。ただ、続く『THRILLER』以降と比べると全体の統一感が強いことから、まだまだ“ブラックミュージックの範疇”というイメージが強いかもしれません。だからこそ、より気持ちよく楽しめる“アルバム”という印象が、彼の作品中もっとも強いのですが(以降の作品は良くも悪くも“プレイリスト”的なのかなと)。

ポップスとしての強度は『THRILLER』や『BAD』ほどではないものの、アルバムとしてのまとまりや完成度は同2作よりも数歩上。“キング・オブ・ポップ”の快進撃がここから始まったという点では、絶対に欠かすことのできない傑作第1号です。

 


▼MICHAEL JACKSON『OFF THE WALL』
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『THRILLER』(1982)

 

1982年11月29日にリリースされたマイケル・ジャクソンの6thアルバム。

前作から引き続きクインシー・ジョーンズを共同プロデューサーに起用。ソングライターに前作から引き続きのロッド・テンパートンに加え、スティーヴ・ポーカロ(TOTO)&ジョン・ベティス(「Human Nature」)やジェイムズ・イングラム(「P.Y.T. (Pretty Young Thing)」)などを起用。また、アルバムから漏れたアウトテイクの中にはマイケル・センベロが関わった「Carousel」や、Yellow Magic Orchestraの楽曲に新たに歌詞を付けた「Behind The Mask」などが含まれていたことも話題になりました。

また、ゲストアーティストのメンツも多彩で、「The Girl Is Mine」ではポール・マッカートニーとのデュエットを展開(同時期にポール側が発表した「Say Say Say」でも2人のデュエットを披露)。「Beat It」のギターソロではエディ・ヴァン・ヘイレン(VAN HALEN)をフィーチャー(かつ、リードギターをTOTOのスティーヴ・ルカサーが担当、ドラムもTOTOのジェフ・ポーカロがプレイ)したことでも話題となりました。

本作からは「The Girl Is Mine」(全米2位)、「Billie Jean」(同1位)、「Beat It」(同1位)、「Wanna Be Startin' Somethin'」(同5位)、「Human Nature」(同7位)、「P.Y.T. (Pretty Young Thing)」(同10位)、「Thriller」(同4位)とアルバム収録曲9曲中7曲がシングルヒット。オリジナルアルバムながらもグレイテストヒッツ的側面も強く、そういった意味でも(結果的に)プレイリストの先駆け的な1枚と言えるのではないでしょうか。

音楽的にも前作『OFF THE WALL』での方向性を推し進めつつ、ポップ色をより強めた「The Girl Is Mine」、ハードロックギターを採用した「Beat It」(さらに、アルバム未収録ながらもテクノ色を取り入れた「Behind The Mask」)など、“ポップ”を軸足により幅広いフィールドで戦おうという前向きさが伝わります。また、当時主流となり始めたミュージックビデオ制作にも果敢に取り組み、約14分にもおよぶ当時としては異例の大作「Thriller」が大反響を呼ぶなど、今や当たり前となった“音楽への映像の積極的導入”における先駆者的作品とも言えます。

全9曲と最近のアルバムと比べたら短い印象もありますが、1曲1曲の個が強いことから何度聴いても飽きがこない。リリースから40年経った今聴いても懐かしさと同時に新鮮さも常に見つけられる、「これぞ歴史的名盤」と言える1枚。いまだ超えることのできない壁(アメリカだけで3400万枚超、全世界で7000万枚超のセールス)を打ち立てた、ポップミュージック界のマスターピースです。

 


▼MICHAEL JACKSON『THRILLER』
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2022年2月25日 (金)

THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』(1987)

1987年9月28日にリリースされた、THE SMITHSの4作目にして最後のオリジナルアルバム。日本盤は同年9月21日に先行発売。

前作『THE QUEEN IS DEAD』(1986年)は全英2位まで上昇し、本国イギリスでは(オリジナルアルバムとしては)最大のヒット作に。また、アルバム未収録のシングルを連発していたことで、翌1987年に入ると2作目のコンピレーションアルバム『THE WORLD WON'T LISTEN』をヨーロッパで発表し、一方アメリカでは同年3月に『LOUDER THAN BOMBS』と題した内容の異なるコンピ盤を続発します。

一方、モリッシー(Vo)とジョニー・マー(G)の関係性はどんどん悪化。そんな中でも1987年春には本作のレコーディングに突入します。スティーヴン・ストリート(BLUR、THE CRANBERRIES、KAISER CHIESなど)を共同プロデューサーに向か入れ、4月には一度完成するものの、翌月にシングル用にレコーディングを追加で実施。しかし、そのあとでジョニー・マーが渡米してしまい、夏には彼のバンド脱退がアナウンスされます。公認ギタリストを迎えて一度はセッションを試みるものの満足いかず、結局9月に入ってバンド解散を発表。アルバム発売を前にして、THE SMITHSは約5年にわたる短い歴史に幕を下ろすのでした。

ここ日本にもアルバム発売前後に「どうやらTHE SMITHSが解散したらしい」という情報は伝わってきており、僕も本作を聴く際にはすでにその事実を認識していました。変な話、そういったネガティブな要素のせいで本作をまともに聴くことができませんでした。シングルとして先行リリースされていた「Stop Me If You Think You've Heard This One Before」や「Girlfriend In A Coma」は解散前には耳にしていたものの、アルバムの流れで聴いたときは不思議とネガティブに響いてしまったのです。

緩急に富んだ内容ながらもタイトル曲のささくれ立った感が個人的に響いた前作『THE QUEEN IS DEAD』と比べると、本作は全体的に穏やかな空気に包まれている。それを成熟したと受け取るか日和ったと切り離すかで評価は分かれると思いますが、リリースから約35年経った今の耳で聴くと間違いなく前者。「I Started Something I Couldn't Finish」の音像やスタイルなんて完全にモリッシーのグラムロック趣味が反映されたものだし、「Stop Me If You Think You've Heard This One Before」終盤のギターワークは“これぞジョニー・マー!”と太鼓判を押したくなるほどで、このへんは個人的にも大好物です。

かと思えば、後半はダークさを極めた「Last Night I Dreamt That Somebody Loved Me」や“これぞ成熟の極み”な「Unhappy Birthday」、遊び心に満ちた「Death At One's Elbow」、アルバムの締め括りに相応しい「I Won't Share You」など佳曲揃い。アルバムとしてのまとまりも過去イチだと思うし、結果論ですがこれが最終作になってしまったのも納得がいく内容です。

若い頃はTHE SMITHSのアルバム中もっとも聴く頻度の低かった1枚でしたが、歳を重ねるごとにその現象が逆転。今では『THE QUEEN IS DEAD』や『MEAT IS MURDER』(1985年)と同じくらいリピートする機会の多いアルバムです(一番再生しているのは、コンピ盤『THE WORLD WON'T LISTEN』ですが。苦笑)。あと、このアルバムを聴いたあとにモリッシーのソロ第1弾アルバム『VIVA HATE』(1988年)に触れると、いろんな意味で納得できるのではないでしょうか。

 


▼THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』
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2022年2月24日 (木)

R.E.M.『DOCUMENT』(1987)

1987年8月31日にリリースされたR.E.M.の5thアルバム。日本盤は同年10月21日発売。

1983年に『MURMUR』でデビューして以来、インディーズのI.R.S. Records所属ながらも常にアルバムを全米TOP40に送り込んできたR.E.M.。この5作目のアルバムからは「The One I Love」という初の全米TOP10入りシングル(最高9位)や「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」(全米69位)というスマッシュヒットが生まれ、アルバム自体も最高10位まで上昇。最終的にプラチナムアルバムに認定されました。

本作のプロデュースを手がけたのは、以降10年近くにわたりタッグを組むことになるスコット・リット(NIRVANAINCUBUSHOLEなど)。バンドサウンドや音楽性自体は前作からの延長線上にあるものの、より洗練された印象を受けます。実際、MTVなどで「The One I Love」が流れてきても、インディーバンドとは思えないほどのメジャー感が伝わるサウンドプロダクションだった、と当時を振り返り記憶しています。

作詞面でもそれまで歌詞が若干難解だったり、歌詞カードを見ながらじゃないと聞き取れないと、そういった面が取り沙汰される機会が多かった彼らですが、今作では「The One I Love」で聴けるシンプルな歌詞、わかりやすい言葉選びなどに変化を見出すことができます。同じくヒットした「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」にしても、言葉をギュッと詰め込んだ節回しながらもサビなどではシンプルさが際立つ。このへん、実は前作『LIFES RICH PAGEANT』(1986年)あたりから顕著になり始めていたんですよね。その実験がここで開花し、続くメジャー第1弾アルバム『GREEN』(1988年)で爆発するといったところでしょうか。

アルバム序盤はオープニングを飾る「Finest Worksong」こそヘヴィな音像で強いインパクトを与えるものの、「Welcome To The Occupation」から「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」までは比較的明るめで軽やかかつ穏やかなロックチューンで構成。中にはWIREのカバー「Strange」も含まれており、原曲のヘヴィ&スローな雰囲気からテンポアップ&軽快さを強調したことで、完全に自分たちのモノにしてしまっています。正直、指摘されなければR.E.M.のオリジナル曲だと信じていしまうほどです。

アルバムB面(後半)は、ヒットシングル「The One I Love」からスタート。哀愁味の強いメロディとともに、ここからアルバムの雰囲気が少しずつ変化してきます。若干のダークさをはらんだ「Fireplace」やグルーヴィなリズムとヘヴィな音像の「Lightnin' Hopkins」はアルバムに程よいアクセントを加え、若干のサイケデリックさを漂わせた「King Of Birds」を経て、最後はダーク&ヘヴィな音像の「Oddfellows Local 151」で締め括り。アルバム中盤で「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」と陽気に歌っていたけど、気づいたらどんよりした空気に変化しているという、この構成含めてお見事としか言いようがない1枚です。

このアルバムリリースからしばらくして、バンドはメジャーのWarner Bro.への移籍を発表。同作から1年強で6thアルバム『GREEN』を届け、ダブルミリオンの大ヒットを成し遂げます。そう、R.E.M.の快進撃はこの『DOCUMENT』(とシングル「The One I Love」)のヒットから始まったのです。そうった意味でも、彼らの音源に触れる上ではマストな1枚です。

 


▼R.E.M.『DOCUMENT』
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2021年6月26日 (土)

MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年6月11日にリリースされたMOTLEY CRUEの4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカル発売なし、デジタルのみのようです。

先に『THEATRE OF PAIN』(1985年)最新リマスターを取り上げましたが、実はこの『GIRLS, GIRLS, GIRLS』がMOTLEY CRUE結成40周年記念リマスター企画の第1弾だったんですね。6月前半、仕事でバタバタしていたので完全に見逃していました(苦笑)。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』は2017年8月にリリース30周年記念でリマスター盤がワールドワイドリリースされていますが、そっちは聴いていないんですよ……あまりにも評判が悪かったので(苦笑)。どうやらリマスター効果があまりなかったのか、それもと旧企画の音源をそのまま使っていたのか。国内リリース元もアレでしたしね(ジャケットも酷かったし)。

そういったことを踏まえて、この最新リマスターに触れてみたのですが……オリジナル版にあったナマっぽさを活かしたが故の線の細さが払拭され、全体的にふくよかな音になった印象を受けました。あと、『THEATRE OF PAIN』の最新リマスターを聴いた直後にこちらに触れたこともあってか、全体のまとめ方、整理の仕方が非常に近い印象を受け、リアルタイムで聴いていたときに両作に感じた差異がほぼなくなった気がします。

こうやってリマスタリング効果によって比較的近い音になった2作を続けて聴くと、楽曲的にも連続性が感じられるというか、バンドとしてアルバムごとにまったく違うことにチャレンジしていたのではなくて、バンドの音楽性自体はほぼ変化せず、ちょっとした味付けやヴィジュアル戦略で聴き手側が受け取るイメージに影響を与えていたんだな、と気づかされます。こんな簡単なことに、今までどうして気づかなかったんだろう。刷り込みや思い込みって怖い。

ボブ・ロックが手がけた『DR. FEELGOOD』(1989年)以降のゴージャスな音作りと比べるとさすがに異なるものがありますが、80年代半ばに制作されたこの2作が実は兄弟のような存在だったんだ……そんな事実に改めて気づけたのは、今回のリマスター効果のおかげかな。となると、いずれ登場するであろう2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)のリマスター効果が非常に気になるところです。なにせ、『SHOUT AT THE DEVIL』から『GIRLS, GIRLS, GIRLS』まではトム・ワーマンのプロデュース作ですからね(ミックスは『SHOUT AT THE DEVIL』のみ異なるから、その差は多少あるかもですが)。

 


▼MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
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2021年1月26日 (火)

ECHO & THE BUNNYMEN『ECHO & THE BUNNYMEN』(1987)

1987年7月にリリースされたECHO & THE BUNNYMENの5thアルバム。

実は80年代のBUNNYMENって、リアルタイムではそこまでしっかりと通っていなくて。ちゃんと聴くきっかけになったのが1985年のシングル「Bring On The Dancing Horses」で、初めてちゃんと聴いたアルバムがその年に発売されたベストアルバム『SONGS TO LEARN & SING』。完全なる後追いで「The Cutter」や「The Killing Moon」などといった代表曲と出会うわけです。

そんな自分が初めてリアルタイムで対峙することになるオリジナルアルバムが、このセルフタイトルアルバムでした。当時の状況としては、ピート・デ・フレイタス(Dr)が脱退→再加入というバンドとして不安定だった時期で、本作にもそういったバンドの“迷い”が少なからず表出してしまっています。が、僕は最初に触れたオリジナルアルバムってこともあってか、この不安定さが妙に心地よかったりするんですよね。

当時はシングルカットされた「The Game」「Lips Like Sugar」「Bedbugs And Ballyhoo」のような楽曲に惹かれたのですが、大人になってから聴くと「All In Your Mind」や「Bombers Bay」「Lost And Found」のようなニューウェイヴ影響下のロックナンバーも味わい深くてツボ。派手さこそ皆無ですが、この適度な暗さと哀愁味がたまらなく心地よい。「New Direction」とか当時シングルカットしていても不思議じゃない佳曲だと思うんですが、いかがでしょう?

かと思えば、ポップ度の高い「Over You」や「Blue Blue Ocean」があったりして、「あれ、いいじゃん!」と再認識させられる。終盤には「Satellite」みたいなワイルドさがにじみ出たロックチューンがあったり、90年代の再結成時にも通ずる穏やかで美しいミディアムナンバー「All My Life」があったりと、ここからバンドとして新しい歴史が始まる予感も伝わってきます。

結果的に、本作を最後にフロントマンのイアン・マカロック(Vo, G)が脱退してしまったり、1989年にはピートが交通事故でこの世を去ったりと、オリジナルメンバーでのラスト作となってしまいましたが、ベストアルバムでひと区切りをつけて、バンドとしてはこのアルバムを新たな基準として次のステップへと進もうとしたのでは……ただ、イアンが「ソロになるからバンド抜けるね」と言い出してしまったのを機に、本格的にバンドは解体してしまう。新たなシンガーを迎えて『REVERBERATION』(1990年)というアルバムを作っているものの、それは真の意味での“次の次”ではないしね。聴いてみたかったな、あの4人での“次の次”を。

ということで、視点を変えれば本作も非常によくできたロックアルバムであることがおわかりいただけるかと。偏見なしで触れてほしい1枚です。

なお、本作は2003年にリマスタリング&ボーナストラック追加で再発。アルバム収録曲の初期テイクやTHE DOORS「Soul Kitchen」のカバーなど7曲を楽しむことができます。実は、同時期に映画『ロストボーイ』のサウンドトラックに、同じくTHE DOORSのカバー「People Are Strange」を提供しているのですが、すごく好きなテイクなんですよね。言っちゃえば、このアルバムのテイストの延長線上にあるというか……だから、こっちの再発盤にも入れてほしかったんだけどな。残念(同曲は後発のコンピ盤などで聴くことができます)。

 


▼ECHO & THE BUNNYMEN『ECHO & THE BUNNYMEN』
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