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カテゴリー「1988年の作品」の66件の記事

2021年11月24日 (水)

KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

1988年11月15日にリリースされたKISS通算3作目のコンピレーションアルバム。日本盤は海外から少し遅れ、翌1989年1月25日発売。

公式コンピレーションアルバムとしては『KILLERS』(1982年)以来7年ぶりですが、同作は本国アメリカでは未発売だったこともあり、アメリカでは『DOUBLE PLATINUM』(1978年)以来10年ぶりのベスト盤ということになります。また、日本では1988年5月に来日記念盤として10万枚限定でリリースされた日本限定ベスト盤『CHIKARA』というベスト盤も存在。こちらは80年代の楽曲中心のレアアイテムとなっています(現在は中古屋にて安価で入手可能かと)。

さて、今作の注目ポイントはポール・スタンレー(Vo, G)主導の新曲2曲と、エリック・カー(Dr, Vo)が初めてリードボーカルを担当した「Beth」(もともとはピーター・クリス歌唱曲)、そして70年代〜80年代初頭の楽曲に新たなリミックスが施されている点でしょうか。全15曲で約52分というコンパクトさもあり、かつグラムメタル期の楽曲も複数含まれていることから、80年代のKISSをリアルで感じられる1枚と言えるでしょう。

「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲はどちらもポール歌唱曲で、ソングライティングにはポール&デズモンド・チャイルド(後者のみダイアン・ウォーレンも)が関わっています。陽気な前者とマイナーキーの後者、どちらも“KISSのポール・スタンレー”のパブリックイメージどおりの仕上がりで、ヘアメタル期の彼らの平均的な楽曲と言えるでしょう。

また、リミックスバージョンは『DOUBLE PLATINUM』の延長にあるような仕掛けが用意されているものもあり、「Love Gun」なんて終盤のポールのシャウトがカットされてストリングスが強調されていたり、「Shout It Out Loud」のエンディングがカットアウトだったり、「Deuce」など初期曲のドラムに変なリミックスが施されていたり、「Rock And Roll All Nite」なんて別モノ感半端なかったりと、ベスト盤というよりはお遊びの過ぎる魔改造アルバムといったところでしょうか(笑)。

そして、エリック・カーが歌う「Beth」……エリックの歌声はここで初めて耳にするわけですが、本家ピーターとは異なる繊細さが伝わり、この甘さはこれで良しといったところ。僕は嫌いじゃないです。

ちなみにこのベストアルバム。北米および日本盤には直近の最新オリジナルアルバム『CRAZY NIGHTS』(1987年)からのヒット曲が皆無。さすがに「Crazy Crazy Nights」くらいは入れてほしかった……ところが、本作のUK盤は収録内容が一部異なり、「Deuce」がカットされ代わりに「Crazy Crazy Nights」と「Reason To Live」の最新ヒット2曲を追加した全16曲入り(北米・日本盤は全15曲)。特に「Crazy Crazy Nights」はイギリスで4位という好記録を残していますし、入れない理由はないですものね。

なお、ストリーミングサービスで配信されているバージョンですが、Apple Musicは北米・日本バージョン、SpotifyはUKバージョンとそれぞれ異なるのでご注意を。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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2021年2月28日 (日)

ROD STEWART『OUT OF ORDER』(1988)

1988年5月23日にリリースされた、ロッド・スチュワートの15thアルバム。日本盤は同年6月25日発売。

80年代のロッドは全米TOP10入りするヒットシングルはいくつか存在していたものの、アルバムとしては(70年代のヒット作と比較して)どこか印象が薄いものばかり。そんな彼が起死回生を狙ってパートナーに選んだのが、当時THE POWER STATIONでの大躍進を経てDURAN DURAN脱退〜ソロ活動を開始したばかりのアンディ・テイラーでした。

アルバム収録曲の多くをアンディと一緒に書き、さらにアンディはギタリスト&プロデューサーとしてもアルバムに参加。そのアンディとの関係もあり、プロデューサーにはCHICのバーナード・エドワーズも名を連ね、レコーディングにはバーナード(B)&トニー・トンプソン(Dr)のCHIC/THE POWER STATION組もプレイに加わっています。

すべての楽曲で彼らがプレイしているわけではありませんが(このほか、ギターではマイケル・ランドゥー、デヴィッド・リンドレー、ジム・クリーガンら、ベースにボブ・グラウブ、ドラムにBABYSのトニー・ブロックなどが参加)、ロッド&アンディが表現したかったことはわかりやすい形で表現された、クオリティの高いポップロック作に仕上がっています。全体的にはTHE POWER STATIONの1作目というよりは、それ以降のアンディのソロや彼がプロデュースするTHUNDERTHE ALMIGHTYの諸作品をもっと落ち着いた作風にまとめた感じといいましょうか。ドラムのパワフルさからは、そういった作品との共通点を見つけられるはずです。

アンディも数曲でギターソロを披露していますが、あくまで主役はかのロッド・スチュワート。ロバート・パーマーと同じやり方では通用しないことがわかってか、ボーカルを立てた若干引き気味のミックスでギターを(それなりに)弾きまくっています。ちょうど自身のソロ作『THUNDER』(1987年)でやりたい放題したあとなだけに、この抑え方には思わずクスっとしてしまうものもあります。

まあとにかく、どの曲もよく練り込まれた“時代を感じさせるもの”ばかりで、「Lost In You」(全英21位/全米12位)、「Forever Young」(全英57位/全米12位)、「My Heart Can't Tell You No」(全英49位/全米4位)、「Crazy About Her」(全米11位)など年またぎでヒットシングルが連発。さらにこのあと、ベストアルバムからの「This Old Heart Of Mine」(全英51位/全米10位)、「Downtown Train」(全英10位/全米3位)のヒットも続き、アルバム自体も全英11位/全米20位の好成績を記録。数字的には中途半端に見えますが、セールス面ではアメリカのみで200万枚を超えるヒット作となっており、10年ぶりのマルチプラチナムを達成しています。

ロッドのソロ作といえば、FACES以降の70年代のソロ作に注目が集まり気味ですが、このへんのAOR的ポップロックも意外と悪くないんですよ。特に本作に関してはTHE POWER STATION界隈のメンバーが勢揃いしていますしね。同時期、かのロバート・パーマーは独自のミクスチャーロック/ポップを追求した『HEAVY NOVA』(1988年)を制作していますし、そのへんを踏まえて聴くとまた違った見え方がするのではないでしょうか。

本サイトでロッドの作品ってほぼ取り上げてこなかったので、これを機に今後も忘れた頃に紹介していこうと思います。

 


▼ROD STEWART『OUT OF ORDER』
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2021年2月26日 (金)

ROBERT PALMER『HEAVY NOVA』(1988)

1988年6月22日にリリースされたロバート・パーマーの9thアルバム。日本盤は同年6月24日に発売。

DURAN DURANアンディ・テイラー(当時)&ジョン・テイラー、CHICのトニー・トンプソンで結成したTHE POWER STATIONのアルバム『THE POWER STATION』(1985年)を経て発表されたソロ8thアルバム『RIPTIDE』(1985年)の大ヒット(全米8位/全英5位)と、同作からの「Addicted To Love」(全米1位/全英5位)、「I Didn't Mean To Turn You On」(全米2位/全英9位)などのシングルヒットを経て届けられた、2年半ぶりの新作。前作は『THE POWER STATION』からの流れでバーナード・エドワーズ(CHIC)がプロデュースを担当しましたが、今作ではロバートのセルフプロデュース作となっています。

タイトルの『HEAVY NOVA』はヘヴィメタルとボサノヴァをミックスした造語。前作でのシングル曲がハードロック色の強い楽曲だったこともあり、また彼自身が元来持ち合わせているR&Bやソウルなどのテイスト(本作では特にボサノヴァに特化)もそこに織り混ぜることで、彼ならではのミクスチャーロック/ポップスがここで確立されることになります。

アルバムのオープニングを飾る「Simply Irresistible」(全米2位/全英44位)は、「Addicted To Love」をより派手にバージョンアップさせたような豪快ハードロック。MVも完全にその流れにある作風ですしね。曲中に挿入される“シャキーン”という効果音が若干ギャグっぽくも聴こえますが、そこも彼ならではのユーモアといったところでしょうか。続く「More Than Ever」は翌年にデビューする布袋寅泰&吉川晃司のCOMPLEXの楽曲アイデアにもなっているであろう1曲だし、ゲレエとポルカをミックスしたような「Change His Ways」もこの並びだと自然と入っていけるし、「Disturbing Behavior」はまさに“ヘヴィ・ノヴァ”を体現したかのようなハードで朗らかな内容に仕上がっている。

その後もTHE POWER STATION以降のロバートらしい「Early In The Morning」(全米19位)や、異色のジャズナンバー「If Could Happen To You」(ミュージカル映画楽曲のカバー)、キャッチーさの際立つソウルナンバー「She Makes My Day」(全英6位)、まんまボサノヴァな「Between Us」、民族音楽とハードロック、R&Bをミックスという少し早すぎた「Casting A Spell」、ジャーメイン・ジャクソンのカバー「Tell Me I'm Not Dreaming」(全米60位)とバラエティに富んだ楽曲が並びます。とっ散らかりっぷりは前作を遥かに超え、焦点がぼやけているようにも感じられますが、個人的にはロバート・パーマーというエンタテインメント色の強いシンガーらしい、強度が非常に高い1枚という印象すら受けます。

本作までを人気のピークに、次作『DON'T EXPLAIN』(1990年)以降はセールスを少しずつ落とし始め、2003年の『DRIVE』を最後に、彼はこの世を去ります(2006年9月)。前作でのアンディ・テイラー、次作でのスティーヴ・スティーヴンスのようなスタープレイヤーが本作に参加していたら、また話題性も違ったのかなという気もしますが、これはこれで好きなので問題なし。昨日取り上げたTHE POWER STATIONの2ndアルバム『LIVING IN FEAR』(1996年)が気に入った方は、まずは本作からロバートのソロに触れてみてはどうでしょう。

 


▼ROBERT PALMER『HEAVY NOVA』
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2021年1月27日 (水)

PIXIES『SURFER ROSA』(1988)

1988年3月にリリースされたPIXIESの1stフルアルバム。

前年10月に発表されたEP『COME ON PILGRIM』(1987年)から半年という短いスパンで届けられた本作は、かのスティーヴ・アルビニがレコーディングエンジニアを担当した、数年後にオーバーグラウンドへと本格浮上するUSオルタナティヴロックシーンの夜明けを宣言する記念碑的作品。極端な話、本作がなければNIRVANA『NEVERMIND』(1991年)『IN UTERO』(1993年)も誕生しなかったはず。

轟音ギターの分厚い壁と美しくポップなメロディ、強弱を効果的に取り入れることでバンドのダイナミズムを的確な形で表現したアレンジ、そしてブラック・フランシス(Vo, G)とキム・ディール(Vo, B)の男女ツインボーカル編成という……90年代以降のUSのみならず日本のオルタナティヴロックシーンにも多大な影響を与えたスタイルは、本作の時点でほぼ完成の域に達しています。きっと初めて本作を聴いた邦楽リスナーは、「あれ、この曲のここって○●に似てる!」とか「この音色って○●のあのアルバムじゃん!」と特定のバンド名を思い浮かべるかもしれません。そう、すべてはこのバンドがルーツと言っても過言ではないのです。

オープニングを飾る「Bone Machine」の、破天荒なんだか気が抜けてるんだか、その波が交互に押し寄せるアレンジといい、ちょっとコミカルなのに異常にカッコいい「Broken Face」といい、90年代以降のロックにおける“雛形”のひとつとなった「Where Is My Mind?」といい、名曲揃いな本作。キムがリードボーカルをとる「Gigantic」も、のちにデヴィッド・ボウイがカバーすることになる「Cactus」も、鬼気迫る「Vamos」「I'm Amazed」も、すべて色褪せていない。全13曲でトータル35分にも満たないトータルランニングといい、完璧の一言なのです。

とはいっても、僕はリリース当時このアルバムに触れていながらも、そこまで心惹かれなかったんですよね。同じ学校にいた交換留学生のアメリカ人から勧められて聴いた記憶があるんですが、その頃はマッチョなメタル脳(笑)だったので、このナヨっとしたテイストが肌に合わず。ところが、数年後に上京してNIRVANAの『BLEACH』(1989年)に初めて触れ、かつその直後にリリースされた『NEVERMIND』に触れることで「あれ、このテイスト知ってるぞ?」と……PIXIESのことを思い出すわけです。そこから、自分が聴いていなかった時期に発売された『DOOLITTLE』(1989年)も『BOSSANOVA』(1990年)も、そして当時発売されたばかりの(結果的に最終作となった)『TROMPE LE MONDE』(1991年)も後追いで聴いたわけです。そういやあ、のちにWEEZERが登場したときも、PIXIESのことを思い出したっけ。あとは(以下キリがないので省略)。

ライブは再結成以降、何度も観ています。2004年のフジロックは、まさにこのアルバムの1曲目「Bone Machine」から始まったんでしたっけ(前半10数曲で東京事変に移動してしまったこともよく覚えています)。翌年末の単独来日にも行ったなあ(そのときも「Bone Machine」始まりでしたね)。そういった意味でも、本作は再結成以降により思い入れが強くなった1枚かもしれません。

 


▼PIXIES『SURFER ROSA』
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2020年12月17日 (木)

SOUNDGARDEN『ULTRAMEGA OK』(1988)

1988年10月31日にリリースされたSOUNDGARDENの1stアルバム。日本盤は1994年3月、バンドの初来日にあわせて初CD化されています。

オリジナル盤はSST Recordsからのリリースですが、2017年に発売されたジャック・エンディノによるリミックス&1987年録音のデモ音源追加によるリイシュー盤からはSub Pop Recordsから発売されています。特に日本盤はオリジナルのアートワークが採用されており、シャープになった音像とともにカッコ良さが増したような印象を受けます(インディーズバンドらしいチープなオリジナルジャケットも好きですけどね)。

メジャー進出第1弾となる次作『LOUDER THAN LOVE』(1989年)の1年前に発表された本作は、クリス・コーネル(Vo, G)、キム・セイル(G)、ヒロ・ヤマモト(B, Vo)、マット・キャメロン(Dr)という編成でレコーディング。初期の代表曲といえる「Flower」からヘヴィな音像でスタートし、アグレッシヴなアップチューン「All Your Lies」、重苦しいミドルチューン「Beyond The Wheel」など、のちに本格的開花する“SOUNDGARDENらしさ”はすでにこの時点でほぼ完成の域に達しつつあることが確認できます。

クリスのハイトーンボイスも終始絶好調。キムのギターもヒロ&マットのリズム隊が繰り出すサウンドもうねりまくっており、カッコいいったらありゃしない。でも、これを聴いて彼らを“グランジ”という枠で括るのはちょっと違和感がありゃしないか?と思うのは自分だけでしょうか。

確かに「Mood For Trouble」や「He Didn't」あたりにはその香りを感じるものの、ヒロがボーカルをとる「Circle Of Power」やハウリン・ウルフのヘヴィロック風カバー「Smokestack Lightning」、「Nazi Driver」「Head Injury」あたりからはグランジというよりはハードコアパンクからの影響が伝わってきます。もちろん、それらがグランジのルーツになっているのは間違いない事実ですが、どうにもこうにもクリスがハイトーンで歌う以上はハードロック的なものに聴こえてしまう。その個性、クセの強さがSOUNDGARDENを初期の時点で特別なものへと確立させていた、その事実を確認できるという意味において、本作の果たす役割は非常に大きなものがあるのではないでしょうか。

にしても、2017年リイシュー盤の音質のクリアさには改めて驚かされます。それもあってか、オリジナル盤の音圧やチープさに慣れてしまっていた自分にとって、このリイシュー盤は“ほぼ新作”みたいな感覚で接することができたんですよね。現在ストリーミングなどで耳にすることができるのはこちらのリイシュー盤なので、「オリジナル盤を知ってこそ真のファン!」なんていう奇特な方はぜひ中古でSST盤を探してみてください。その違いに驚くはずなので(笑)。

なお、リイシュー盤に収められたボーナストラック(1987年レコーディング)は本アルバムのレコーディングセッションからの初期バージョンのようで、「Incessant Mace」に関してはアルバム本編の完成版(6:20程度)に対してロングバージョンデモ(7:50)も用意されているので、聴き比べてみても面白いかもしれません。また、どの曲もアレンジを煮詰める前のスタジオライブ的な側面もあるので、バンド最初期のエネルギーに満ちた演奏を存分に楽しめるはずです。

 


▼SOUNDGARDEN『ULTRAMEGA OK』
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2020年9月18日 (金)

HOUSE OF LORDS『HOUSE OF LORDS』(1988)

1988年10月にリリースされたHOUSE OF LORDSの1stアルバム。日本盤は同年12月、『神々の舘』という邦題を冠されて発売されています。

HOUSE OF LORDS は1987年にGIUFFRIAを解散させたグレッグ・ジェフリア(Key)を中心に、末期GIUFFRIAに在籍したラニー・コードラ(G)とチャック・ライト(B/ex. QUIET RIOT)、ケン・メリー(Dr/FIFTH ANGEL、CHASTAINなど)の3人にJASPER WRATH、EYESといったバンドで活躍したジェイムズ・クリスチャン(Vo)を加えた5人組ハードロックバンド。KISSジーン・シモンズが新たに設立したレーベルSimmons Reocrdsと契約し、同レーベル第1弾作品としてリリースされたのがこのアルバムでした。同作はシングル「I Wanna Be Loved」(全米58位)のヒットも手伝って、最高78位という好成績を残しています。

グレッグ・ジェフリア、アンディ・ジョーンズ(CINDERELLAMcAULLEY SCHENKER GROUPVAN HALENなど)、そしてジーンの共同プロデュースにより制作された本作は、80年代後半という時代性が反映されたメロディアスでAORライクなハードロックが展開されています。元GIUFFRIAのメンバーによるバンドということでシンセ中心のサウンドがイメージされますが、本作において軸になるのは歌とギターで、全体的にはGIUFFRIAよりもハードエッジな楽曲で占められています。

ジェイムズ・クリスチャンの適度にハスキーで湿り気のある歌声は、当時すでに大ブレイクしていたWHITESNAKEのデヴィッド・カヴァーデイルを髣髴とさせるものがあります。もちろんそのへんはレーベル側(主にジーン)の狙いだったのでしょう。楽曲にしてもミドルテンポの王道産業ハードロックを軸にしながらも、「I Wanna Be Loved」のようにR&B的要素を若干含むメロウなロックや、GIUFFRIA時代を思わせる煌びやかなシンセが印象的な「Pleasure Palace」(楽曲クレジットにはGIUFFRIAのフロントマンだったデヴィッド・グレン・アイズレーの名も)、演奏力の高い各メンバーのプレイを大々的にフィーチャーしたアップチューン「Lookin' For Strange」「Slip Of The Tongue」、この時代ならではのパワーバラード「Love Don't Lie」など、比較的バラエティに富んだ楽曲群が並び、デビュー作にしては非常に完成度の高い内容となっています。

それもそのはず、ソングライター陣に目を向けるとマンディ・メイヤー(当時AISAのギタリスト。のちにGOTTHARDの一員に)やスタン・ブッシュ、CHEAP TRICKのリック・ニールセン、ジョニー・ワーマンなどといったアーティスト/職業作家の名前を見つけることができ、(バンド中心で執筆した楽曲に職業作家をコライトで入れたり、職業作家や別のソングライターが書いた楽曲をバンドで演奏する)いわゆるHEARTAEROSMITH方式を大々的に取り入れていることにも気づきます。このへんは策士ジーン・シモンズの手腕によるものでしょう。さすがです。

最初から最後まで、とにかく捨て曲なしの80'sハードロックの隠れた名盤。「隠れた〜」というのは、本作が現在国内盤廃盤状態であり、ストリーミングサービスなどデジタル配信がされていないという事実があるからです。バンドは1993年に一度解散し、2000年代に入ってから再結成。現在もジェイムズ・クリスチャン以外のメンバーを変えつつ、活動を継続しており、2020年6月には最新作『NEW WORLD - NEW EYES』も発表しています。これを機に、初期3作(本作と1990年の2nd『SAHARA』、1992年の3rd『DEMONS DOWN』)を再発してもらいたいところです。

 


▼HOUSE OF LORDS『HOUSE OF LORDS』
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2020年8月20日 (木)

JOAN JETT & THE BLACKHEARTS『UP YOUR ALLEY』(1988)

1988年5月にリリースされたJOAN JETT & THE BLACKHEARTSの6thアルバム。

まずは個人的な思い出話から。ジョーン・ジェットといえば「I Love Rock 'N Roll」の印象が強い、というかジョーン・ジェット=「I Love Rock 'N Roll」といっても過言ではないくらい。同曲がヒットしたのは1981年のことで、その頃小学生だった僕は知るはずもなく。しかし、中学生以降になるとラジオやMTVを通じてさすがに同曲を知るようになるわけです。しかし、リアルタイムで発表され続けた新曲については一切触れることなく、そのまま高校生まで上がりました。

で、高1くらいのときにマイケル・J・フォックスとジョーンが出演する映画『愛と栄光への日々』(というより、原題の『LIGHT OF DAY』のほうが馴染み深いかな)が公開され、同作のサントラを手にするのでした……同作にはイアン・ハンター、デイヴ・エドモンズ、THE FABULOUS THUNDERBIRDSなど渋めのアーティストに加えて、なぜかBON JOVIの「Only Lonely」も収録。しかし、メインになるのがジョーンやマイケル・J・フォックスらの劇中バンドTHE BARBUSTERSによる「Light Of Day」でした。ブルース・スプリングスティーンが書き下ろしたこの曲、実は演奏自体はJOAN JETT & THE BLACKHEARTSによるもの。純粋に彼らの楽曲だったわけです。

この曲が初めて触れたジョーン・ジェットの新曲だったわけで、純粋に「カッコいい!」とハマるわけです(実際にはスプリングステーンの楽曲なわけですが)。で、そこから1年くらい経ち、新たに届けられた新曲が「I Hate Myself For Loving You」。ちょっと当時ヒットしていたハードロックにも通ずるキャッチーさを兼ね備えたダルなロックンロールに夢中になり、この曲だけをかなりヘビロテした記憶があります。さらに続いてシングルカットされた「Little Liar」もその延長線上にあるミディアムバラードで、こちらも愛聴。この2曲に背中を押され、ついにアルバムに手を出すことになります。

……長かったですね、ここからがアルバムのお話です(笑)。

ハードロック耳だった当時の僕がハマるの当然といいますか、上記2曲のソングライティングにはBON JOVIのブレイクやAEROSMITHの再起を手助けした職業作家のデズモンド・チャイルドが関わっているわけです。ジョーン・ジェットらしさを損なうことなく、要所要所にBON JOVI的なフックが散りばめられた、見事な仕事ぶりだと思います。

アルバム全体を見渡すと、デズモンドが携わったのはこの2曲と「You Want in, I Want Out」の3曲のみ。だからなのか、アルバム全体を通して聴くとそこまでBON JOVIやエアロ的な香りが強いわけではありません。その他の楽曲はバンドメンバーや長年の制作パートナーであるケニー・ラグナなどが関わっていることから、過去のスタイルを踏襲したロックンロールを楽しむことができます。それにチャック・ベリー「Tulane」やTHE STOOGES「I Wanna Be Your Dog」といったお約束のカバー曲も含まれているので、ロック純度はかなり高いかと。

そんな中、個人的にクレジットを見て一番びっくりしたのが「Desire」。これ、HR/HMファンにはHEARTKISS、エアロなどでおなじみ、ポップス方面でもセリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストン、ブリトニー・スピアーズやビヨンセなどのヒット曲を手がけるダイアン・ウォーレンがソングライティングに携わっているんですよ。そう聞くと「でた、産業ロックバラード!」と想像するかもしれませんが、実際には軽やかなロックンロールだったりするから2度驚きなわけです。ダイアン・ウォーレンが中心になって書いたというよりも、ジョーンが書いた曲をブラッシュアップする程度だったのかもしれませんね。

ミックスの音像自体は80年代中〜後半にありがちなビッグプロダクション気味ですが、1曲1曲の個性は非常に強い。彼女のオリジナルアルバムの中では異色の1枚かもしれませんが、だからこそ意外とハードロックファンが聴いても飽きることなく楽しめるのではないでしょうか。

ちなみに本作、全米19位と2作ぶりの全米TOP20入りを果たし、アルバムとしては『I LOVE ROCK 'N ROLL』(1981年)以来のプラチナム・ヒットとなっています。「I Hate Myself For Loving You」(全米8位)、「Little Liar」(同19位)というスマッシュヒットが生まれたことで、自分のようなにわかリスナー(笑)が増えたことも大きかったんでしょうね。

 


▼JOAN JETT & THE BLACKHEARTS『UP YOUR ALLEY』
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2020年3月26日 (木)

THE MISSION『CHILDREN』(1988)

1988年2月初頭にリリースされたTHE MISSIONの2ndアルバム。日本盤は少々遅れ、同年5月下旬に発表されました。

1stアルバム『GODS OWN MEDICINE』(1986年)、活動初期に発表したEP収録曲をまとめたコンピ盤『THE FIRST CHAPTER』(1987年)に続いて制作された本作は、プロデューサーに元LED ZEPPELINのジョン・ポール・ジョーンズを迎え、ゴシック・テイストを残しつつも少々硬質化させたサウンドが時代にフィットしたこともあり、全英2位という好成績を残しています。さらに、「Tower Of Strength」(全英12位)、「Beyond The Pale」(同32位)というヒットシングルも生まれており、個人的には1stアルバムに並ぶ代表作のひとつと思っております。

いわゆる80年代的なニューウェイヴがかった、薄皮1枚被せたようなどんより感と、メジャーシーンで活動するバンドらしいキラキラ感も散りばめられた、“ちょうどいい塩梅”のハードさとポップさを併せ持つゴシックロックは、僕らのようなハードロック耳のリスナーにも十分親しめるもの。80年代はまだ賛否分かれたところでしょうけど、何周もして、いろんな要素を飲み込んで勢力を拡大させてきた今のヘヴィロック/ハードロック・シーンに片足を突っ込んだ人なら、間違いなく受け入れられやすい内容だと思います。

そりゃあイマドキのゴシックメタルなどと比べたら音は薄っぺらいですし、ボーカルも弱々しいかもしれません。が、そういったジャンルのルーツと考えれば十分に楽しめる作品ですし、むしろジョン・ポール・ジョーンズらしいオーケストレーションが加えられたアレンジの数々、ウェイン・ハッセイ(Vo, G)による哀愁味の強いボーカルは2000年代以降のゴシックメタル、ゴシックパンクを愛聴するリスナーにこそ聴いていただきたいなと。

また、「Heaven On Earth」や「Tower Of Strength」で鳴り響くパーカッション、および全体的に漂うトラッド色はツェッペリンにも共通するものがありますし、AEROSMITHの原曲をよりゴシック色豊かかつ壮大にバージョンアップさせた「Dream On」のカバーなど含め、クラシックロックをベースに深化したニューウェイヴのひとつの進化する道として、オーソドックスなハードロック・リスナーにも触れてほしい1枚です。

にしても、10代の頃はここまで好意的に受け取ることができなかった本作。単純に「Dream On」のカバー目当てで手を出したものの、ほかの曲にはそこまで惹きつけられなかったんだよな。ところが、大人になった今では「Beyond The Pale」や「A Wing And A Prayer」「Kingdom Come」「Child's Play」など、聴きどころ満載なことに気づかされるわけですから(「Child's Play」なんて完全にメタルファン向けの1曲ですものね)。改めて、「いろんなジャンルに触れてから昔苦手だったものに再び手を出すと、意外とイケたりする」の、大事ですね。

 


▼THE MISSION『CHILDREN』
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2020年3月 3日 (火)

THE JEFF HEALEY BAND『SEE THE LIGHT』(1988)

1988年9月にリリースされたTHE JEFF HEALEY BANDの1stアルバム。日本盤は海外から2ヶ月遅れの、同年11月に発売されました。

THE JEFF HEALEY BANDはカナダ出身のジェフ・ヒーリー(Vo, G)を中心に結成されたトリオバンド。ジェフは1歳のときに病気で盲目となりながらも、3歳でギターを手にし、膝上にギターを乗せて弾く独自のスタイルで注目を集めます。

Arista Recordsと契約後、発表された本作はジミー・アイオヴィン(ブルース・スプリングスティーン、U2SIMPLE MINDSなど)やグレッグ・ラダニー(ジャクソン・ブラウン、ウォーレン・ジヴォン、ドン・ヘンリーなど)、トム・パヌンジオ(アリス・クーパーBLACK SABBATHDEEP PURPLEなど)をプロデューサーに迎え制作。トリオ編成ならではのスリリングな演奏と、ブルージーながらも耳触りが良いAOR寄りの楽曲が楽しめるロックアルバムに仕上がっています。

音だけ聴けば、これが盲目のギタリストが歌いプレイしたアルバムとは思えないはず。それくらいジェフのギタープレイは卓越したものがあり、それはエリック・クラプトンジョニー・ウィンター、あるいはスティーヴィー・レイ・ヴォーンにも通ずる、親しみやすさとマニアックさが同居したスタイルで、ロックファンなら間違いなく楽しめる要素が満載だと思います。ボーカリストとしても派手さこそ皆無ながらも説得力の強い歌を楽しむことができるので、これらの名前にピンときたリスナーなら絶対に引っかかるものがあるはずです。

楽曲に関しても、先に挙げたようなギタリストのアルバム同様に、単なるギター・オリエンテッド・アルバムでは終わっておらず、しっかり“聴かせる”ことに徹した完成度の高いナンバーが並びます。全12曲の内訳はオリジナルが半分、ZZ TOPやフレディ・キングなどブルースなどのカバーと外部ライター提供楽曲が半分。中でもジョン・ハイアットの貢献度が非常に高く、全米5位を記録した名バラード「Angel Eyes」も彼の手によるものです。

リリース当時、TBSで日曜深夜に放送されていたHR/HM系音楽番組『PURE ROCK』で紹介されたことで、僕は彼らを知ったわけですが、そこから数ヶ月後には「Angel Eyes」がUS TOP40を紹介する番組でもオンエアされ、改めてアルバムを手にしたという経緯があります。当時高校生だった自分にはちょっと敷居が高いイメージの強かった1枚ですが、よくよく聴くと(先に触れたように)AORっぽさもあって意外と聴きやすい。特にTHE BLACK CROWESがヒットした90年代前半にはジョニー・ウィンターなどの延長で本作を楽しむことができました。なので、ブルースロックやソウル、カントリーなどの影響下にあるハードロックが好きというリスナーなら、本作にスッと入っていきやすいのではないでしょうか。

2000年頃からはソロ名義で音楽活動を続けていたジェフですが、2008年3月にガンのため41歳で逝去。思えば視力を失ったのもガンが原因だったので、彼の人生は常に病魔と隣り合わせだったのかもしれません。

 


▼THE JEFF HEALEY BAND『SEE THE LIGHT』
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2020年1月20日 (月)

IT BITES『ONCE AROUND THE WORLD』(1988)

IT BITESが1988年3月にリリースした2ndアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年4月下旬に発売されています。

ASIAのマネジメントが契約、レーベルもVirgin Records(北米以外)&Geffen Records(北米)と確実に“第二のASIA”を目論んでメディアに売り込もうとされていたIT BITES。確かにその意図もわからなくないですが、むしろこのバンドはもう少しハードロック的な香りが強かったこともあり、良い意味で当時のHR/HMムーブメントに乗ろうとしたところもあったのではないでしょうか。

全英チャート35位まで上昇したデビューアルバム『THE BIG LAD IN THE WINDMILL』(1986年)から2年ぶりに発表された本作は、前作の延長線上ではあるものの、適度なプログレ感と適度なニューウェイヴ感(時代的にもニューロマ以降やTEARS FOR FEARSあたりのそれ)、そして適度はハードロック感が備わった高性能ポップメタル作に仕上がっています。

シングルヒットもした「Kiss Like Judas」(全英76位)や「Midnight」のようなキャッチーでコンパクトな楽曲もあれば、同じくシングルカットされたけどプログレ感満載の長尺曲「The Old Man And The Angel」(全英72位)や「Once Around The World」も含まれている。前者は9分半、後者は約15分という容赦なさ(笑)。思えば前作『THE BIG LAD IN THE WINDMILL』の時点では長尺曲って6分台が最長だったので、ここで一気にプログレ度が増したんですね。むしろ僕、リアルタムではこのアルバムから入っていたので、当時は「ああ、こういうバンドなんだ」と自然と納得していましたけど。

メロディの憂いは完全にブリティッシュバンドのそれで、例えば昨日紹介したCUTTING CREWあたりにも通ずる繊細さやセンチメンタリズムが存在する。これは絶対にアメリカのバンド、あるいはほかのヨーロッパ諸国のバンドにも真似できないものだと思います。「Yellow Christian」のメロディ&アレンジのひねくれ具合なんて、絶対にイギリス産だなってわかるものですし。これ、好きな人にはたまらないですよね。

シンセの音色に時代を感じるのは仕方ないとはいえ、フランシス・ダナリー(Vo, G)のテクニカルなギタープレイや、安定感のある(と同時に軽やかな)リズム隊のプレイ、80年代らしいキラキラ感に満ちたキーボードなど、とにかく華やかさに満ちた1枚だと思います。

日本や海外での評価を決定づけた代表作ではあるものの、本国でのチャート的には前作より若干劣るんですよね(全英43位)。もちろん、そんなのは数字上だけのもので、本作の完成度を測るものではありません。捨て曲なし、文句なしの傑作。IT BITESの入門編としてぜひ手にとってみてください。

なお、本作は現在ストリーミングサービスではアルバム単体での配信は行われておらず、数年前にリリースされた“初期オリジナルアルバム3作+ライブアルバム+シングルC/W曲網羅”の4枚組CD『WHOLE NEW WORLD (THE VIRGIN ALBUMS 1986-1991)』(2014年)の中で聴くことができます。僕もこの4枚組を購入しましたが、手頃な価格でオリメン時代の音源を楽しめるのでオススメです。

 


▼IT BITES『ONCE AROUND THE WORLD』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD

 

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