2017/03/10

AC/DC『BLOW UP YOUR VIDEO』(1988)

記憶に間違いなければ、僕が初めて購入したAC/DCのアルバムはこの『BLOW UP YOUR VIDEO』です。初めて聴いたアルバムはその前作にあたる(オリジナルアルバムではないけど)『WHO MADE WHO』(1986年)だけど、あれはレンタルレコードだったし。

というわけで、今回紹介するのはAC/DCが1988年初頭にリリースした通算10作目(本国オーストラリアでは11作目)のオリジナルアルバム『BLOW UP YOUR VIDEO』。時代背景的には言うに及ばず、1986年末のBON JOVI大ブレイクを機に勃発したHR/HMムーブメントの最中、最初に発表されたAC/DCの新作がこれでした。このちょっとまえにAEROSMITHが『PERMANENT VACATION』(1987年)で大復活を果たし、彼らのフォロワーといえるGUNS N' ROSESやRATTといったバンドがエアロに対するリスペクトを発言。特にガンズからはそれと同じくらい名前が挙がっていたのが、このAC/DCでした。実際、初期の彼らはライブでよく「Whole Lotta Rosie」をカバーしていましたしね。

当のAC/DC自体は1980年に発表した『BACK IN BLACK』が爆発的ヒットを記録し、続く『FOR THOSE ABOUT TO ROCK WE SALUTE YOU』(1981年)は念願の全米No.1を獲得。しかし、フィル・ラッド(Dr)脱退以降、セールスを一気に落としてしまい、いわば落ち目になりかけていたタイミングでした。そこに世界的なHR/HMムーブメント、若手アーティストからのAC/DC待望論と状況が好転しだしたところで、起死回生の一手としてこのアルバムが発表されたわけです。

リアルタイムで聴いたときは、とにかく冒頭の2曲「Heatseeker」「That's The Way I Wanna Rock 'N' Roll」のカッコよさにやられ、それ以降の楽曲は地味という印象でした。まぁ当時16歳になったばかりのガキンチョでしたしね。派手なアレンジこそサイコーみたいな勘違い、誰にでもありますよね。

で、リリースから30年近く経った今、以降のバンドの歴史も踏まえつつ聴き返すと、やっぱり原点回帰的な思いが込められていたんだなということに気づかされます。その原点は大ヒットした『BACK IN BLACK』やその前の『HIGHWAY TO HELL』(1979年)ではなく、それこそオーストラリアでバンドを始めた頃まで遡るのかなと。全体的に無駄がなくてシンプルなのはいつもどおりなんですが、そこに加えて(後任ドラマーのサイモン・ライトのジャストなドラミングにも関わらず)前のめり感が強い。言い方を変えると……若々しくてパンキッシュなんですよ。

先に挙げた冒頭2曲は言うまでもなく、それ以外の曲からも貫禄よりフレッシュさに満ち溢れている。しかも、昔は地味だと思い込んでいた楽曲群が、実はポップで親しみやすいものばかりだということにも気づかされる。「Mean Streak」も「Go Zone」も「Kissin' Dynamite」もめちゃめちゃ良いし、「Nick Of Time」や「Ruff Stuff」みたいにポップで親しみやすい楽曲、AC/DC流泣きメロが気持ちいい「Two's Up」、“これぞパンク”と言わんばかりに攻めまくる「This Means War」みたいな曲もある。あれ、全然地味じゃないじゃんか、と。

結局AC/DCはこの2年後、1990年にさらにポップで親しみやすいアルバム『THE RAZORS EDGE』で再び天下を獲ることに成功するのですが、そこと比べたら『BLOW UP YOUR VIDEO』は確かに地味。セールス的にも復調はしたけど、過去の大ヒット作と比べたらそこまでのヒットとも呼べない。過渡期の1枚と呼ばれがちですが、あのタイミング、あの時代背景があったからこそAC/DCが踏ん張って生み出すことができた奇跡のアルバムだったのではないかと、発売から29年経った今思うわけです。いや、本当にいいアルバムですよ。



▼AC/DC『BLOW UP YOUR VIDEO』
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投稿: 2017 03 10 12:00 午前 [1988年の作品, AC/DC] | 固定リンク

2017/02/14

POISON『OPEN UP AND SAY...AHH!』(1988)

1作目『LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN』(1986年)の大ヒットを受け、1988年5月に発表されたのが本作『OPEN UP AND SAY...AHH!』(邦題:初めての***AHH!)。先行シングル「Nothin' But A Good Time」がいきなり全米6位の大ヒット曲となり、アルバムも全米2位まで上昇。その後も「Fallen Angel」(全米12位)、「Your Mama Don't Dance」(全米10位)とヒット曲連発となり、中でも本作からの3rdシングル「Every Rose Has It Thorn」は初の全米No.1を獲得し、1989年のビルボード年間チャート3位に輝くメガヒット曲に。アルバム自体も最終的にはアメリカのみで500万枚を突破する、バンドにとって最大のヒット作となりました。

ツアーに次ぐツアー、そして1stアルバムとそれに伴うシングルが次々にヒット、さらに映画『レス・ザン・ゼロ』のサウンドトラック参加と、1987年はひたすら話題作りに事欠かなかったPOISON。そこから半年に満たないインターバルでこのアルバムが発表されたのですから、タイミングとしては最高だったはずです。しかも、1987年にはWHITESNAKE『WHITESNAKE』、MOTLEY CRUE『GIRLS GIRLS GIRLS』、DEF LEPPARD『HYSTERIA』、そしてGUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』がリリースされ、それぞれ年またぎで大ヒットを記録するという空前のHR/HMブームだったわけですから、ウケないわけがないのです。

そんなタイミングにリリースされたPOISONの2ndアルバム。プロデューサーにはMOTLEY CRUEの諸作を手掛けてきたトム・ワーマンを迎え、どこか“チャラさ”と“ナヨナヨ”したイメージのあった前作から“ナヨナヨ”の部分を完全排除。“チャラさ”を適度に残しつつ、バンドとしてのタフさ、男らしさ/男臭さを増量することで当時のMOTLEY CRUEやGUNS N' ROSESに急接近するわけです。それはケバさが抜けたヴィジュアルからも伺えるかと思います。「Every Rose Has It Thorn」のMVなんてカウボーイハットにカウボーイブーツという出で立ちで、やたらとセクシーなオネエさんが登場するあたりはGUNS N' ROSESのみならずWHITESNAKEからもアイデアを拝借してますしね(まぁこういう作風が当時の流行りだったわけですが)。

そういえば、本作にはカバー曲(LOGGINS & MESSINA「Your Mama Don't Dance」)が収録されているのも興味深いポイント。直近でKISS「Rock And Roll All Nite」がウケたというのもあるでしょうけど、本作はむしろプロデューサーのトム・ワーマンのアイデアかなと。MOTLEY CRUEがトム・ワーマンのプロデュース作で毎回カバーを試みてましたしね(「Helter Skelter」「Smokin' In The Boys Room」「Jailhouse Rock」)。それにQUIET RIOTも「Cum On Feel The Noize」「Mama Weer All Crazee Now」でヒットを飛ばしてますし、LAメタルにおけるカバーはひとつの文化だったのかな。さかのぼれば、VAN HALENなんて初期の作品はカバーが多かったですしね。

そういえばPOISONはこのアルバムを携えた来日公演で、ついに日本武道館のステージに立ちます。演奏力は相変わらず、しかもやたらと長いギターソロ&ドラムソロまでフィーチャーされ、いろんな意味で物議を呼んだのも懐かしい話です。



▼POISON『OPEN UP AND SAY...AHH!』
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投稿: 2017 02 14 12:00 午前 [1988年の作品, Poison] | 固定リンク

2017/01/28

HELLOWEEN『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』(1988)

80年代前半にSCORPIONSやACCEPTがドイツ出身ということだけで付けられた“ジャーマンメタル”というレッテルが大きな意味を持ち始めるのは、HELLOWEENが登場してからのこと。多くのHR/HMファンがイメージする“ジャーマンメタル”の音楽性を確立させたのが、「守護神伝」という邦題が冠された2部作でした。

そのうちの2枚目にあたる『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』は1988年に発売。マイケル・キスク(Vo)、カイ・ハンセン(G)、マイケル・ヴァイカート(G)、マーカス・グロスコフ(B)、インゴ・シュヴィヒテンバーグ(Dr)という黄金期メンバーでは本作と、その前作『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART I』(1987年)の2枚しか制作されておらず、『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』リリースから数ヶ月後にカイ・ハンセンがバンドを離れてしまうのです。なので、本作を携えた来日公演はカイを含む編成では実現しませんでした。

前作からの連作ということで、音楽性は基本的に同じ枠内にあるものと言えるでしょう。しかし、第2弾となる本作では楽曲の幅が前作から少し広がりが感じられます。オープニングのオーバーチュアー「Invitation」から「Eagle Fly Free」の流れは、JUDAS PRIESTにおける「The Hellion」〜「Electric Eye」に匹敵する“メタル古典組曲”。コミカルな「Rise And Fall」もあれば、アンセミックな「Dr. Stein」もある。仰々しいメタルバラード「We Got The Right」や、攻撃的な「March Of Time」、疾走感が気持ち良いパワーメタル「I Want Out」ときて、最後は13分もの大作「Keeper Of The Seven Keys」で幕を降ろす。ラストの大作に関しては前作の「Halloween」のほうが完成度は上ですが、これはこれで悪くないと思います。

曲によって前作を超えていたり前作に満たなかったりするものの、そこはあくまで“2枚でひとつ”の連作だからこそ、と目をつぶっておきましょう。とはいえ、アルバム単体としての完成度は並のメタル作品以上ですし、1988年という名盤揃いの1年の中でも歴史的価値が非常に高い1枚なのは間違いありません。

今年は現編成のHELLOWEENに元メンバーのカイ・ハンセン、マイケル・キスクが加わり、「PUMPKINS UNITED WORLD TOUR」と題して世界各国を回る予定。インゴ・シュヴィヒテンバーグは22年前に亡くなっているため黄金期編成が完璧な形で復活することはできませんが、それでも5分の4が揃うわけですから、来日した際にはこのアルバムの楽曲をオリジナルに近い編成で楽しむことができそうです。



▼HELLOWEEN『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』
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投稿: 2017 01 28 12:00 午前 [1988年の作品, Helloween] | 固定リンク

2017/01/27

EUROPE『OUT OF THIS WORLD』(1988)

1986年に発表した3rdアルバム『THE FINAL COUNTDOWN』が本国スウェーデンや日本のみならず全米8位、全英9位というワールドワイドなヒット作となったEUROPE。同作リリース後にはオリジナルギタリストのジョン・ノーラム脱退という波乱もありましたが、後任キー・マルセロの活躍によりワールドツアーを完遂します。

そういう流れを経て、キー・マルセロを迎えて制作された初のアルバム『OUT OF THIS WORLD』が1988年8月にリリース。チャート的には全米19位、全英12位と前作には及びませんでしたが、アメリカではミリオンを突破するヒット作になっております。またシングルカットされた「Superstitious」も全米31位のヒット曲に。辛うじて次作へ望みをつなぐことに成功した、と言えるでしょう。

数字的には代表作『THE FINAL COUNTDOWN』を下回る『OUT OF THIS WORLD』ですが、そんなに出来の悪いアルバムなのでしょうか? 確かにリリース当時の評価はあまりよろしくありませんでしたが、今聴き返してみると……そんなに悪い作品だとは思えないんですよね。

EUROPEというバンドの歴史を考えれば、1stアルバムからここにたどり着いたことはファン的に望まない結果だったのかもしれません。しかし『THE FINAL COUNTDOWN』を起点に考えると、『OUT OF THIS WORLD』という作品は“全体的により洗練され、1曲1曲の作り込み度が増した、美メロ満載のアルバム”と呼ぶことができるはずです。

シンセとギターが軸足になっているように見えますが、実はこのアルバムの芯の部分はジョーイ・テンペストによる歌。だからキー・マルセロもギターを弾きすぎていないし、ソロも必要最低限の長さといった印象です。リズム隊も曲の地盤をしっかり固め、シンセは曲の彩りをより鮮やかにしている。バラードにしても、前作での「Carrie」と比較すると本作の「Coast To Coast」は劇的なアレンジが付けられています。「Ready Or Not」なんて、ギターのバッキングがクリーントーンのアルペジオと歪み系パワーコードが交互に登場する。もっともわかりやすいのは、2ndアルバム『WINGS OF TOMORROW』収録の「Open Your Heart」をリアレンジして再収録したバージョンでしょう。2ndアルバムにあったシンプルさ、いなたさは消え、当時主流だったパワーバラードに生まれ変わっているのですから(だからこそ、若干のシンプルさが残っているラストナンバー「Tomorrow」を聴くとホッとするのですが)。バンドがあの頃、どこを目指していたかがこの1曲から存分に感じられるはずです。

バンドの試みは世の中的には受け入れられなかったかもしれませんが、あれから30年近く経った現在は時代が何周もして、我々も素直に受け入れられる態勢になってのではないでしょうか。シンセの音色にこそ時代感が表れていますが、今こそ余計な情報や偏見を捨てて楽しんでほしい1枚です。



▼EUROPE『OUT OF THIS WORLD』
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投稿: 2017 01 27 12:00 午前 [1988年の作品, Europe] | 固定リンク

2017/01/26

QUEENSRYCHE『OPERATION: MINDCRIME』(1988)

忘れた頃に復活する“1988年縛り”(笑)。いや、改めて名盤の多さに気づかされたわけですよ、今年に入ってレビューを書き始めてみると。

今回紹介するQUEENSRYCHE(当時はまだ「クイーンズライチ」と紹介されてましたね。懐かしい)の3rdフルアルバムにして出世作となった『OPERATION: MINDCRIME』も1988年製。以前DOKKENの『BACK FOR THE ATTACK』を紹介したときにも書きましたが、当時Q PRIMEとマネジメント契約していたバンドが1988年前後に発表したアルバム、すべてCD対応で60分超えの作品ばかりなんですよね(他にもDEF LEPPARD『HYSTERIA』、METALLICA『…AND JUSTICE FOR ALL』も)。

ただ、QUEENSRYCHEが他のバンドの長尺アルバムと一線を画するのは、この『OPERATION: MINDCRIME』がひとつのストーリーに沿って物語が進行していくコンセプトアルバムだということ。もともとプログレッシヴなメタルサウンドでコアな人気を博した彼らが、ここぞという勝負タイミングでコンセプトアルバムを発表したのは、HR/HMが“売れる”時代に逆行していたと思うんです。事実、リリースされてしばらくはセールス的にもイマイチだったと記憶しています。しかし同じ事務所のDEF LEPPARDやMETALLICAのツアーに帯同することで知名度を上げ、翌1989年になるとシングルカットされた「I Don't Believe In Love」や「Eyes Of A Stranger」がMTVやラジオで頻繁にオンエアされ、アルバム自体もチャート上は最高50位とやや低調ですが、セールスにおいては100万枚を突破。この結果が、続く1990年の4thアルバム『EMPIRE』の大ヒットにつながるわけです。

コンセプトアルバムというと小難しいプログレッシヴロックのイメージが強いかもしれませんし、それによって手を伸ばしにくいという人もいることでしょう。しかし、本作においてはそんな心配は無用。オープニングトラック「I Remember Now」のセリフにいきなり及び腰になるかもしれませんが、続くインストナンバー「Anarchy-X」から正統派メタルチューン「Revolution Calling」への流れでそんな不安は解消されるはずです。

その後も「Speak」「Spreading The Disease」のようなファストチューン、エモいメロディの「The Mission」と続き、10分超えの「Suite Sister Mary」で最初の山場を迎えます。この曲のみコンセプトアルバムの色合いが濃いと思いますが、苦手な人はここを乗り切れば後半はスピードナンバー「The Needle Lies」、超名曲「Breaking The Silence」、そしてシングルカットされた「I Don't Believe In Love」や「Eyes Of A Stranger」とエンディングに向け盛り上げ、最後は再び「I Remenber Now」のセリフが登場してアルバムの幕を下ろします。

ね? 曲単体はコンセプトアルバムとか余計なことを感じさせない、ど真ん中のヘヴィメタルでしょ? “プログレメタル”弱ばりでDREAM THEATERあたりと一緒くたに語られてしまいがちですが、楽器陣のテクニカルさは楽曲の味付け程度で、全体的には1曲4〜5分に収めてられていて(アルバムに1曲くらい例外あり)、素直に楽しめるはず。なので苦手意識を捨てて、気軽に接してみることをオススメします。そこを乗り越え、改めてアルバムの物語に興味を持ったときは、ぜひいろいろ調べてから聴き返してみると新たな発見があるはずです。



▼QUEENSRYCHE『OPERATION: MINDCRIME』
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投稿: 2017 01 26 12:00 午前 [1988年の作品, Queensryche] | 固定リンク

2017/01/14

L.A.GUNS『L.A.GUNS』(1988)

L.A.GUNSって名前を最初に聞いたとき、「GUNS N' ROSESのパチもん」だと思ったのはここだけの話。いや、同じような人、絶対にいると思うんですよ。そんな彼らが1988年(……)初頭にリリースした1stアルバムが本作。確か最初のMVが「Sex Action」だったので、そのタイトルに「マジかよ!」と突っ込んだの、昨日のことのように覚えてます。

もともとは初期GUNS N' ROSESにアクセル・ローズらとともに在籍したトレイシー・ガンズ(G)がバンド脱退後に結成したのがこのL.A.GUNS。メンバーは他に元GIRL(現DEF LEPPARDのフィル・コリンも所属していたイギリスのグラムメタルバンド)のフィリップ・ルイス(Vo)、メジャーデビュー前のFASTER PUSSYCATに在籍したケリー・ニケルス(B)、W.A.S.Pの元メンバーだったスティーヴ・ライリーなど、その筋で知られる面々が参加していました。そこに元GN'Rのメンバーがいる、しかもバンド名に「GUNS」が入ってるとなると、そりゃ騒がれるわけですよね。

デビューアルバムで聴けるサウンドはGN'Rのデビュー作『APPETITE FOR DESTRUCTION』のそれとは若干異なり、土臭さが薄くグラマラスさが強めに打ち出されたもの。1曲1曲が3分前後のものばかりというのも特徴で、ボーカリストやギタリストの主張の強さよりもバンド一丸となってぶつかってくるようなイメージが強いかな。トレイシー・ガンズやミック・クリプス(G)のギタープレイには、(比較対象として挙げてしまうのは気が引けるけど)GN'Rのスラッシュほどの強い個性は感じられないし。

また、楽曲面での強みや確たる個性というのは本作ではあまり感じられず、なんとなく勢いで乗り切っちゃいましたという印象が強いのも事実。「No Mercy」「Sex Action」「One More Reason」といった冒頭3曲の印象はかなり強いものの、中盤のアコギインスト「Cry No More」から続く唯一のバラード「One Way Ticket」、GIRLのカバー「Hollywood Tease」以外はインパクトが薄い気がします。

結局L.A.GUNSは続く2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)で“らしさ”を掴み(このアルバムが最大のヒット作となります)、大きなヒットにはならなかったけど3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991年)でその個性を完全に確立させることに成功します。しかし、デビュー時から続いた全盛期メンバー(トレイシー、フィル、ミック、ケリー、スティーヴ)は同作を最後に終焉を迎え、2000年代に入るとフィル中心のL.A.GUNSとトレイシー中心のL.A.GUNSという「2つのL.A.GUNS」が存在するというややこしい事態に。RATTも最近そういう話がありましたし、ファンとしてはこういうの本当に困りますよね。

いわゆる名盤とは違うかもしれませんが、バンドの勢いという点においては以降の作品とは比較にならないものがあるので、今作は1曲1曲を取り上げるというよりはアルバム全体のノリを楽しむことをオススメします。



▼L.A.GUNS『L.A.GUNS』
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投稿: 2017 01 14 12:00 午前 [1988年の作品, L.A.Guns] | 固定リンク

2017/01/13

OZZY OSBOURNE『NO REST FOR THE WICKED』(1988)

オジー・オズボーンにとって通算5枚目のオリジナルアルバム『NO REST FOR THE WICKED』は、1988年に発表されました。前任ギタリスト、ジェイク・E・リーの脱退を経て、1987年春にランディ・ローズ時代のライブ音源を収めた『TRIBUTE』を発表。そういったブランク期間に行われたオーディションを経て加入したのが、加入当時20歳だったザック・ワイルド。今ではいかついオッちゃんになっちゃいましたが、当時はポスト・ランディと言わんばかりの美少年だったんですよ(ただし、ルックスのみ)。

そんなザック加入後、初のアルバムには前作から引き続きランディ・カスティロ(Dr)、古くからの付き合いとなるボブ・ディズリー(B)、ジョン・シンクレアー(Key)が参加。レコーディング終了後にはBLACK SABBATH時代の盟友ギーザー・バトラーが加わり、ツアーではサバスの1/2が揃ったことでも話題になりました。

クラシックがルーツのランディ・ローズ、日本人の血を引くジェイク・E・リー(2人の間にはNIGHT RANGERのブラッド・ギルスなどもいましたが、ここでは割愛)に続くギタリスト、ザック・ワイルドは2人とも違ったカラーの持ち主。尊敬するギタリストとしてランディの名を挙げつつも、ブルースやカントリーからの影響も強く、その色合いは作品を重ねるごとに強く表れていきます。

しかし、本作ではまだその独特な個性は完全に発揮されているとは言いがたく、あくまで「オジーが主役のアルバム」の中で、与えられた見せ場の中だけで暴れている印象。とはいえ、そのギターソロやリフワークが尋常じゃないくらいカッコいいんですけどね。オープニング「Miracle Man」冒頭のリフだけで心を持っていかれた本人(私)が言うんですから、間違いない。そこから、あのギターソロ。ああ、すげえ奴が現れたぞ、と。正直、音源だけ聴いてたらオジーの存在を忘れてしまうくらいです(いや、そんなことはないけど)。

やたらとポップで「LAメタル版オジー」と言わんばかりの前作スタジオアルバム『THE ULTIMATE SIN』から一変、そして初期2作とも異なる攻撃性を持った楽曲&サウンドはBLACK SABBATH時代のそれとも異なり、1988年という時代に非常にマッチしたものでした。そういう意味では本作、ザックという若い未成熟な個性、そしてオジーのことを熟知したランディ・カスティロ、ボブ・ディズリーなど熟練メンバーのサポートが融合することで生まれた、奇跡的な1枚なのかもしれません。

頭3曲(「Miracle Man」「Devil's Daughter (Holy War)」「Crazy Babies」)の怒涛の構成、「Bloodbath in Paradise」「Fire in the Sky」の中盤、そして「Tattooed Dancer」「Demon Alcohol」の攻めまくりな後半。とにかく空きのない構成です。だからこそ、CDでボーナストラック的なポジションの「Hero」と「The Liar」は蛇足かなという気も。楽曲自体は悪くないけど、このアルバムの中では置きどころが難しいかなと。そこだけが勿体ないと思ってます。

オジーとザックの蜜月期は、続く1991年の6thアルバム『NO MORE TEARS』でピークを迎えますが、それはまた別の機会に。



▼OZZY OSBOURNE『NO REST FOR THE WICKED』
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投稿: 2017 01 13 12:00 午前 [1988年の作品, Ozzy Osbourne] | 固定リンク

2017/01/12

WINGER『WINGER』(1988)

そもそもWINGERってバンド名がズルい。カナ表記すれば「ウインガー」ですよ。「ウイング(=羽)」に「ガー」ですから。メタルばかり聴いてるボンクラ高校生からしたら「ヤベエ奴らが出てきたぞ!」とまず思うわけですよ。そこにきて、あの半裸に近いビジュアル(「Madalaine」や「Seventeen」のMVにて確認)とBON JOVIをやたらとムサくしたようなルックス。RATTっぽさがありつつも、あそこまでとっつきにくくない。そりゃ売れるわけですよ。

というわけで、1988年(またかよ……)という時代の恩恵をもっとも受けたバンド、WINGERのデビュー作です。アリス・クーパーのバンドに在籍したキップ・ウィンガー(Vo, B)とポール・テイラー(Key, G)、のちにDOKKENやWHITESNAKEでも活躍するレブ・ビーチ(G)、そしてDIXIE DREGSなどに在籍したロッド・モーゲンスタイン(Dr)という凄腕4人が繰り出すバンドサウンドはとにかくテクニカルなもので、「Hungry」や「Headed For A Heartbreak」などで聴けるアンサンブルは一瞬「プログレかよ!」と突っ込みたくなるようなもの。かと思えばRATT的な「Seventeen」や「Hangin' On」もあり(とはいえ、前者のバンドアンサンブルも非常にテクニカル)、楽器好きリスナーにも存分にアピールする内容ではないでしょうか。

さっきからやたらと「RATTっぽさ」「RATT的な」と書いてますが、それも納得、プロデューサーがRATTの諸作を手掛けてきたボー・ヒルですから。いわゆる「ボー・ヒル・サウンド」なるものがあるのかと問われると少々疑問ですが、でも彼がプロデュースしたRATTのアルバムやWINGERの本作、そしてWARRANTの2ndアルバム『CHERRY PIE』には少なからず共通点があるのは確か。各バンドともタイプは異なりますが、サウンドの質感やアレンジにその共通点は見つけられるはずです。

そんな「RATTサウンド」ならぬ「ボー・ヒル・サウンド」の恩恵を受け、なおかつ各メンバーの持つ地力や裏方生活で養った作曲&自己プロデュース能力のすべてを費やしたのが、このデビューアルバムだったのではないでしょうか。1988年という時代やプロモーションの力もあったと思いますが、本作は全米21位まで上昇し、100万枚以上のセールスを記録。シングルカットされた「Seventeen」が全米26位、「Headed For A Heartbreak」が全米19位、「Hungry」が全米85位と好成績を残しています。とはいえ、シングルカットされていない「Without The Night」や「State Of Emergency」「Time To Surrender」といった楽曲の完成度も侮れず、結局全曲捨て曲なしと言える1枚です(唯一のカバー曲、ジミヘンの「Purple Haze」は多少蛇足感が否めませんが)。

ということで、やっぱり今口にしてみても、WINGERってバンド名の響きはズルいと思います。



▼WINGER『WINGER』
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投稿: 2017 01 12 12:00 午前 [1988年の作品, Winger] | 固定リンク

2017/01/11

VINNIE VINCENT INVASION『ALL SYSTEMS GO』(1988)

1987年から1989年くらいまで、TBSにて日曜深夜に放送されていたHR/HM系プログラム『PURE ROCK』。この番組の中ではアメリカのHR/HM系専門FM局「KNAC」でのオンエアチャートが紹介されていて、いわゆるシングルカットやMV制作されていない「アメリカのラジオならではの楽曲」がランクインしているのも特徴でした。

ここで個人的にずっと気になっていたのが、ロバート・プラントばりのハイトーンボーカルが印象的な「Ashes To Ashes」というミドルテンポの楽曲。「VINNIE VINCENT INVASION」というバンド名を目にして「Vが3も入ってるバンド名、カッコいいな」と、ボンクラにも程がある感想しか思い浮かばなかった自分、どうかと思います。だって、あれだけ愛聴してきたKISS『CREATURE OF THE NIGHT』の立役者であるヴィニー・ヴィンセントのバンドだって、最初の時点で気づかなかったんだから。

ヴィニーがKISS脱退後に結成したのが、このバンド。先の「Ashes To Ashes」が収録されているのが、1988年(またかよ)に発表された2ndアルバムにしてラスト作となる『ALL SYSTEMS GO』でした。当時のメンバーはヴィニー(G)のほか、マーク・スローター(Vo)、ダナ・ストラム(B)、ボビー・ロック(Dr)という4人。バンド解散後、マークとダナはご存知、SLAUGHTERとして1990年にデビュー作『STICK IT TO YA』を発表して大ブレイク。ボビーはNELSONに加入して、同じく1990年にデビュー作『AFTER THE RAIN』が大ヒットしています。ヴィニー、踏んだり蹴ったりだな。

さて、アルバムのほうですが……結果論ではありますが、のちのSLAUGHTERにも通ずる重厚なコーラスワークと適度に軽いアメリカンハードロックサウンドを交えつつ、ヴィニーのアグレッシヴなギタープレイとマークの超絶ハイトーンボーカルが終始暴れまくる1枚となっております。ちょっとクラシカルな要素を持つ楽曲は「Ashes To Ashes」や、シングルカットされ映画『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』のサントラにも収録された「Love Kills」、ミディアムテンポのバラードタイプ「That Time Of Year」ぐらいでしょうか。

残りはどこかしらに脳天気さが見え隠れする、アメリカナイズされたハードロック。もちろんそれはそれでカッコいいので問題ないですが、本作を聴くと改めてヴィニーって「KISSの人」なんだなと実感させられるわけです。かといって、単なる「KISSの延長」で終わっておらず、ちゃんとKISS時代に見せた以上のことを楽しめるし、何よりマーク・スローターという稀代のシンガーと組んだことによる奇跡を見せてもらえたという意味でも非常に価値のある1枚なんじゃないでしょうか。

KISSファンすべてが楽しめるかと問われると疑問ですし、両手をあげてオススメはしませんが、少なくともSLAUGHTERの諸作品が気に入っているというHR/HMファンには間違いなく楽しめる作品だと思います。SLAUGHTERよりもギターが前面に出ていて、適度に激しさもあるので十分堪能できるはずです。



▼VINNIE VINCENT INVASION『ALL SYSTEMS GO』
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投稿: 2017 01 11 12:00 午前 [1988年の作品, Slaughter, Vinnie Vincent Invasion] | 固定リンク

2017/01/08

YNGWEI J. MALMSTEEN'S RISING FORCE『ODYSSEY』(1988)

イングヴェイ・マルムスティーンのソロ名義(RISING FORCE名義含む)での通算4作目のアルバム。いわゆるギターファンには初期3作(1984年の『RISING FORCE』、1985年の『MARCHING OUT』、1986年の『TRILOGY』)に対する評価が高いと思うのですが、そもそもそこまで速弾きが好みではない自分からすると、初期のインスト主体の作風はそこまでピンとこなくて。むしろそのへんは大人になってからのほうが受け入れられるようになった気がします。

で、この4thアルバム『ODYSSEY』はそれまでの歴代シンガー(ジェフ・スコット・ソート、マーク・ボールズ)のように、当時そこまで知名度の高くなかった方々と違い、すでに名のあるジョー・リン・ターナー(後期RAINBOW)をフロントマンに据えることで、一気にメジャー感が増した1枚。何より、歌メロの親しみやすさが急増したのがポイントで、本作からの1stシングル「Heaven Tonight」のキャッチーさ(これこそ「All Night Long」以降RAINBOWが目指したポップ路線の延長)がすべてを物語ってるんじゃないでしょうか。イングヴェイ、この曲によって本気で全米制覇を目指したんだろうなぁ。

本作がリリースされたのも1988年(この縛り、まだ続いてたのか。笑)。前年1987年にBON JOVI、WHITESNAKE、DEF LEPPARD、MOTLEY CRUE、そしてGUNS N' ROSESらが勃発させたアメリカでのHR/HMブームによって、いわゆるB級バンドにまで注目が集まり始めたタイミングということもあり、それまでカルト的な人気を誇るギタリストだったイングヴェイも「これは!」と思ったに違いない。そこで手に入れた相棒ジョー・リン・ターナーの知名度と実力によって「俺、行けるんちゃう?」と思ったことでしょうね。

確かに本作、これまでの彼の作品の中ではもっとも高い全米40位という記録を樹立。イギリスでも初のチャートイン(27位)を果たしており、それなりの結果を残しております。実際「Heaven Tonight」のMVも当時MTVなどでかなり目にしたんじゃないでしょうか(ここ日本でもTBS『PURE ROCK』でオンエアされてましたし)。でも、ジョーはこのアルバム1枚のみで脱退。その後、セールスにおいては本作並みの成功を手にいれることはできておりません。ただ、別の意味で知名度は高めたので、それはそれでいいんじゃないでしょうか。

(にしても、このMVでのボーカル以上に目立とうとするイングヴェイ。冷静に観ると笑えてきますね)

このアルバム、今聴いても本当に良い“歌モノ”HRアルバムですね。オープニング2曲「Rising Force」「Hold On」の美メロ、ポップな「Heaven Tonight」、泣きの「Dreaming (Tell Me)」、ゴリ押しのインスト「Bite The Bullet」からドラマチックな歌モノ「Riot In The Dungeons」や「Deja Vu」、終盤のクライマックス「Faster Than The Speed Of Light」から続くインスト2連発「Krakatau」「Memories」。単なる歌モノで終わらせず、ちゃんとイングヴェイらしい自己主張もインスト3曲で果たしてる。このバランス感でかろうじて「イングヴェイのアルバム」という面目を果たしているというか。さすがですね。

改めてクレジットを見ると、ベースにボブ・ディズリーが参加してたり、ドラム&キーボードがアンダース&イエンス・ヨハンソン兄弟だったり、ミックスを担当してるのがスティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロだったりと、いろいろ時代を感じさせます。そういえば、過去3作と比べて音質が良くなった気がしたのも、こういったエンジニア陣の尽力によるものだったんですね。納得です。



▼YNGWEI J. MALMSTEEN'S RISING FORCE『ODYSSEY』
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投稿: 2017 01 08 12:00 午前 [1988年の作品, Yngwei Malmsteen] | 固定リンク

2017/01/07

RIOT『THUNDERSTEEL』(1988)

RIOTの記念すべき復活作、というか第二のデビュー作と呼ぶにふさわしい1988年発売の6thアルバム。RIOTというと頭がオットセイ、首から下が人間という謎のキャラクターが映ったジャケットのイメージが先行しがちですが、楽曲的には「Warrior」や「Narita」といった初期のイメージが強かったと思います。ツインリードを多用した、古き良き時代のハードロックといいますか。良くも悪くもそのイメージ止まりだったかなと。しかも80年代に入ると、これといった大きなヒットにも恵まれず、徐々に先細りしていたと思うんです。

ところが、1988年に突如この『THUNDERSTEEL』というアルバムとともに大復活。アルバムで聴ける音楽性もオールドスクールなハードロックから、一気にパワーメタルやスラッシュメタル的なスタイルへと進化したもんだから、そりゃ当時はびっくりしましたよ。

ハイトーンボーカルが特徴のトニー・ムーア、そして超絶ドラマーのボビー・ジャーゾンベクの加入がバンドにもたらした影響はかなり大きかったと思います(レコーディングでは一部のドラムを当時LIONのマーク・エドワーズが叩いてます)。哀愁に満ちたメロディはそのままに、リフワークやアレンジは現代的なものになり、スピード感もヘヴィさも当時のメタルに負けないものでしたし、実際言われなかったらこれがRIOTの新作だと誰も信じなかったと思います。

のちに、これと同じような体験をとあるバンドですることになるんですよね。それがJUDAS PRIESTの『PAINKILLER』(1990年)。感覚的にはあれに近いかもしれません。もっと最近だと……いい例え、ありますかね?

とにかく。今聴いてもオープニングの「Thundersteel」の衝撃は変わらないし、「Flight Of The Warrior」や「On Wings Of Eagles」、「Johnny's Back」の疾走感は気持ちいいし、「Bloodstreets」や「Run For Your Life」のパワーメタル感はハンパないし、聴いていてため息が出る。こういう変化の仕方、こういう成功の仕方もあるんですね。

残念ながら2012年にリーダーのマーク・リアリ(G)が亡くなってしまいましたが、バンドは現在も存続中。2014年にはアルバム『UNLEASH THE FIRE』を発表し、何度か来日公演も行いました。

このアルバムも1988年発売。そう考えると、HR/HMシーンにおける1988年ってひとつのピークだったのかもしれないですね。



▼RIOT『THUNDERSTEEL』
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投稿: 2017 01 07 12:00 午前 [1988年の作品, Riot] | 固定リンク

2017/01/06

KIX『BLOW MY FUSE』(1988)

この曲、よくTBS『PURE ROCK』でオンエアされてましたよね。ということで今回紹介するのはアメリカの5人組ハードロックバンド、KIXが1988年にリリースした4thアルバム『BLOW MY FUSE』。ええ、今日も懲りずに1988年縛りです。

KIXは1981年にアルバム『KIX』でメジャーデビューするのですが、しばらく鳴かず飛ばず。3rdアルバム『MIDNIGHT DYNAMITE』(1985年)の全米60位がピークで、そこから3年後にリリースされた『BLOW MY FUSE』も発売当初はそこまで大きな話題にはなりませんでした。

しかし、「Cold Blood」「Blow My Fuse」「Get It While It's Hot」とアルバムから制作されたMVが好反応を得たこと、人気バンドのオープニングアクトを務めることで着実に人気を高めていき、同作からのパワーバラード「Don't Close Your Eyes」が全米11位まで上昇。アルバムも最高46位を記録し、100万枚を超えるヒット作となったのでした。

当時のKIXはよく「アメリカのAC/DC」みたいな例えをされていたのですが、正直この例えがよくなかったんじゃないか?なんて今思うわけでして。だって、我々が想像するAC/DCのサウンド、楽曲よりも幅広いことやってますもの。特にこの『BLOW MY FUSE』というアルバムでは、楽曲1つひとつに異常なこだわりをもって制作したことが伺えます。

どの曲もやたらとキャッチーでメロディアス。シンプルなロックンロールと思わせておいて、要所要所にフックが効いてる。だから何度聴いても飽きがこない、不思議なクセを持つアルバムなんです。そういえばこのアルバムでは、テイラー・ローズ(AEROSMITH、JOURNEY、オジー・オズボーンなど)やボブ・ハリガンJr.(JUDAS PRIEST、KISS、シェールなど)ら職業作家が制作に加わった楽曲も多く、そのへんも個々の楽曲の際立ちに関係しているんでしょうね。捨て曲なし、最後まであっという間に聴けてしまい、気づけば二度三度とリピートしてしまう。ポップさがありつつも、しっかりエッジの効いたロックが楽しめる、最高の1枚だと思います。

なお、KIXはこの後、1991年に5thアルバム『HOT WIRE』、1995年に6thアルバム『SHOW BUSINESS』を発表してから解散。2003年に再結成を果たし、2014年に7thアルバム『ROCK YOUR FACE OFF』を発表しています。ここでも、80年代と変わらぬキャッチーで勢いのあるロックンロールが楽しめるので、機会があったらぜひ聴いてほしいと思います。ちなみに当サイトでもリリース当時、レビューを掲載しているのでご参考まで。



▼KIX『BLOW MY FUSE』
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投稿: 2017 01 06 12:00 午前 [1988年の作品, Kix] | 固定リンク

2017/01/05

KINGDOM COME『KINGDOM COME』(1988)

そろそろ正月気分も薄らいできた頃。この1988年縛りもそろそろいいかな……なんて思ってきたタイミングですが、今日もこの年に生まれたアルバムを紹介します。もはや意地です。

1988年のHR/HM界において切っても切り離せないのが、LED ZEPPELINクローン問題。ちょうど前年1987年、WHITESNAKEがモロZEPな「Still Of The Night」をリリースして物議を呼んだのが始まりだったのでしょうか。1988年になると本家ZEPがAtlantic Records 40周年コンサートで一夜限りの復活を果たし、ロバート・プラントがソロアルバム『NOW AND ZEN』でZEP楽曲をサンプリング、ジミー・ペイジも初の本格的なソロアルバム『OUTRIDER』でZEP調サウンドを解禁。ZEPの話題やZEP風の曲が増え始めたのが、この1988年という年だったのです。

そして、その象徴的なバンドとして必ずピックアップされるのが、今回紹介するKINGDOM COMEというバンド。ドイツ出身のフロントマン、レニー・ウルフがアメリカで結成した5人組バンドなのですが、そのデビューアルバムである本作からの楽曲のいくつかが、「まるでZEP」ということで良くも悪くも話題になったのでした。

その代表的な楽曲が、デビューシングル「Get It On」と2ndシングル「What Love Can Be」。前者はグルーヴィーなメインリフと曲中の刻むようなリフ&コード進行がZEPのいくつかの楽曲に酷似していること、後者は楽曲そのものよりもボーカルワークが若き日のロバート・プラントまんまということで、このバンドの登場を境に「ZEPクローン」なんて揶揄も生まれたくらい。

がしかし。これ、そこまで叩かれるような作品でもないんですよね。確かにZEPからアイデアを拝借した楽曲は多々あるのですが、それを抜きにしてもハードロックアルバムとして非常に高品質。いかにも80年代後半なビッグサウンドは、当時BON JOVIやAEROSMITHをヒットさせたボブ・ロックのプロデュースによるもの。その後ボブはTHE CULT『SONIC TEMPLE』やBLUE MURDERのデビュー作を経て、MOTLEY CRUE『DR.FEELGOOD』、そしてMETALLICAのブラックアルバムへと到達するわけです。

ブルースをベースにしたハードロックが軸になってはいるものの、ギタリストがブルース寄りではなく完全にハードロック寄りなので、リフがZEP的でもその他のプレイは完全に80年代のHR/HM。中にはどこかDEEP PURPLE的なシャッフルナンバー「The Shuffle」、マイナー調メロディが気持ち良いパワーソング「Now Forever After」「Shout It Out」まである。「Get It On」のインパクトが強かったため、こういった良曲が見過ごされてしまうのは非常に勿体ないと思うわけです。

もうちょっと登場が早かったら、ここまでネガティブに騒がれずに済んだのに。ホント、いいアルバムなんですよ? 当の「Get It On」だって、なんだかんだ言ったってカッコいいし。ぜひフラットな気持ちで触れてみてほしいと思います。

なお、KINGDOM COMEはその後も地道に活動を続けていたのですが、昨年夏にその活動を終了。最後の最後に、この1stアルバムの編成で活動しようとしたそうですが、残念ながら全員揃うことはありませんでした。



▼KINGDOM COME『KINGDOM COME』
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投稿: 2017 01 05 12:00 午前 [1988年の作品, Kingdom Come] | 固定リンク

2017/01/04

HURRICANE『OVER THE EDGE』(1988)

正月から1988年のアルバムが続いてますが、今日も1988年の作品です。しかも、一気にマイナー路線にシフトチェンジです。

HURRICANEというバンドをご存知でしょうか。今回紹介する『OVER THE EDGE』は彼らの2ndアルバムで、当時のメンバーはケリー・ハンセン(Vo)、ロバート・サーゾ(G)、トニー・カヴァーゾ(B)、ジェイ・シェレン(Dr)の4人。このメンバー名を目にして「おやっ?」っと思った方もいるのではないでしょうか。実はギターのロバート・サーゾは昨日紹介したQUIET RIOTに在籍したルディ・サーゾ(B)の実弟、トニー・カヴァーゾはQUIET RIOTのカルロス・カヴァーゾ(G)の実弟なのです。パートがそれぞれ逆なのでややこしさはありますよね。ちなみにロバートとトニーを引き合わせたのは、こちらもQUIET RIOTのケヴィン・ダブロウと言われています。そういうこともあって、HURRICANEはデビュー当初「QUIET RIOTの弟分」のような見られ方もしていました。

この『OVER THE EDGE』は彼らにとって最大のヒット作。KISSやアリス・クーパーを手掛けたことで知られるボブ・エズリンがプロデュースを担当しているのですが、全体に漂う「どことなく劇的で大袈裟なアレンジ」は間違いなくボブの手によるものだと思います。

ですが、曲単体はどれも非常に聴き応えのあるダイナミックなハードロックばかり。オープニングを飾る「Over The Edge」の哀愁味の強いメロディとサウンドは、とてもLA出身のバンドとは思えないもの。続く2曲目がアリス・クーパーの代表曲「I'm Eighteen」のカバーというのは、やはりプロデューサーのアレなんでしょうか。とはいえこっちは非常にヘヴィなアレンジで、なおかつボーカルのケリー・ハンセンの力量が遺憾なく発揮された好カバーとなっております。

そしてシングルカットされ全米でスマッシュヒットした「I'm On To You」(カバーを除くと、この曲のみバンドのオリジナルではない)、デビュー作『TAKE WHAT YOU WANT』(1985年)収録の「Hurricane」に続くバンドのテーマ曲的な「Messin' With A Hurricane」など、どこか影のあるマイナーチューンが続きます。

その後はブルージーな「Insane」、疾走感のある「Spark In My Heart」と曲の幅を広げていくのですが、終盤間際に極め付けの1曲「Shout」が登場。個人的には「Over The Edge」「I'm On To You」とあわせてオススメしたい1曲です。そしてラストはアメリカンバンドらしく、ブギー調のインストナンバー「Baby Snakes」で締めくくり。曲中に入る電話のやり取りが若干ウザいですが、「Shout」でキレイにエンディングを迎えた後のエンドロール的ボーナストラックと思うことにしています。

このアルバム、楽曲の良さはもちろんですが、ボーカルのケリー・ハンセンがすべてなのではと思っています。ちなみにHURRICANEはこのアルバムの後、ギターのロバートが脱退し、替わりに当時LIONを脱退するかしないかで揉めていたダグ・アルドリッチが参加。1990年に『SLAVE TO THE THRILL』というアルバムを発表後、しばらくして解散。2000年にケリー、ジェイを中心に再結成するものちに解散。2010年からはロバート、トニーが中心となって再びHURRICANE名義で活動しているようです。

なお、ケリーはというと、2005年からはかのFOREIGNERのフロントマンとして活動中。ライブアルバムやスタジオ作品で、名曲の数々をケリーの歌声で聴くことができます。こちらもなかなか素晴らしいので、ぜひチェックしてみてください。



▼HURRICANE『OVER THE EDGE』
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投稿: 2017 01 04 12:00 午後 [1988年の作品, Hurricane] | 固定リンク

2017/01/03

QUIET RIOT『QR』(1988)

QUIET RIOTの作品を取り上げるなら、まず最初にUSデビュー作であり最大のヒット作でもある『METAL HEALTH』(1983年)でしょう。まったく異論はありません。がしかし、個人的にケヴィン・ダブロウ(Vo)が唯一参加していない1988年の4thアルバム(日本限定でリリースされた2枚のアルバムを含めると6枚目)『QR』も捨て難いんです。

『METAL HEALTH』で大ブレイクするものの、その後バンドはリリースを重ねるごとにセールスを落としていくのですが、それに反比例するようにケヴィン・ダブロウのわがまま振りは加速。これに嫌気が差した他のメンバーはケヴィンをバンドから解雇、新たにROUGH CUTTのフロントマン、ポール・ショーティノを迎え、さらにベースもチャック・ライトからショーン・マクナブへとメンバーチェンジし、ポール、ショーン、フランキー・バネリ(Dr)、カルロス・カヴァーゾ(G)という編成で制作されたのがこの『QR』です。

QUIET RIOTというと、「Cum On Feel The Noize」での陽気なイメージで語られることが多いですが、そもそも『METAL HEALTH』のタイトルのようにメタリックな要素も持ち合わせたバンドなわけで。そういった同作のタイトルトラックなどはまさにそういう楽曲だったわけですが、世間の求めるQUIET RIOT像は陽気なアメリカンHRバンドだったのです。そのジレンマと真正面から向き合い、本来自分たちがやりたかったこと、そしてポール・ショーティノという稀代のシンガーを手に入れたからこそできること、これらが見事に形として表されたのが今作なのです。

MVにもなったオープニングトラック「Stay With Me Tonight」(当時よくTBS『PURE ROCK』でもオンエアされてましたね)で聴かせるブルージーな歌声と、カルロス・カヴァーゾの生き生きとしたギタープレイ。最初に聴いたときは「これがあのQUIET RIOTか!?」と度肝を抜かれました。ちょうどこの頃、KINGDOM COMEの登場もあってか「LED ZEPPELINクローン」バンドが次々に登場していた時期で、この新生QUIET RIOTもそう見られてしまいがちでしたが、彼らの場合は「もろZEP」というよりは「ZEPからの影響を随所に感じさせるアメリカンHR」と呼んだほうが正しい気がします。

作風的には前作『QR III』(1986年)の延長線上にあるのですが、シンセ類を抑えたこと、ボーカルの節回しがブルージーなのが功を奏し、高水準のハードロックアルバムに仕上がっています。それに今こうやって聴き返すと、意外と『QR III』にも通ずるポップさも感じられますしね。とにかくギタープレイが生き生きとしてるのが素晴らしくて、個人的には『METAL HEALTH』の次に好きな作品です。

ただ、残念ながら本作は以前のようは成功を収めることはできませんでした。今でもこのアルバムに対する評価はそれほど高くないようですが、本作が他の諸作と同じように「QUIET RIOTのアルバム」として純粋に評価されることを願わんばかりです。



▼QUIET RIOT『QR』
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投稿: 2017 01 03 12:00 午後 [1988年の作品, Quiet Riot] | 固定リンク

2017/01/02

BULLETBOYS『BULLETBOYS』(1988)

この「Smooth Up In Ya」を聴くと、懐かしのTBS『PURE ROCK』を思い出すという世代も多いのではないでしょうか?(30代以下の方にはわからないネタでごめんなさい) それいくらいこの曲のインパクトが強かった、アメリカはLA出身の4人組ハードロックによる1988年のデビューアルバム『BULLETBOYS』。

以前はRATTのギタリストだったというマーク・トリエン(Vo)、カーマイン・アピスが結成したバンドKING COBRAのギタリストだったミック・スウェダ(G)といったそれなりに名のあるバンド出身のメンバーが結成した、ある意味(当時流行りだった)“スーパーバンド”のひとつとしてWarner Bros.から鳴り物入りでデビュー。VAN HALENで知られるテッド・テンプルマンをプロデューサーに迎えたこのデビューアルバムからは、先の「Smooth Up In Ya」が全米71位、ソウルグループTHE O'JAYSのカバー「For The Love Of Money」が全米78位とスマッシュヒットを記録。アルバム自体も全米34位まで上昇し、ゴールドディスク(50万枚)を獲得する好スタートを切りました。

テッド・テンプルマンのプロデュース、ボーカルのマークのルックスを指してデイヴ・リー・ロスみたいという声があったことから、初期VAH HALENと比較する者も多かったと記憶しています。「Smooth Up In Ya」「For The Love Of Money」で聞ける重々しいミドルナンバーはVAN HALENとはちょっと異なるかもしれませんが、確かに3曲目「Owed To Joe」や4曲目「Shoot The Preacher Down」あたりはそれっぽくもあります(後者のボーカルは確かにデイヴからの影響が強いし)。同じミディアムでも7曲目「Hell On My Heels」のほうがVAN HALEN的でもあるし……うん、全体的にVAN HALENからの影響が感じられるかな? それがテッド・テンプルマンの意図するものだったのかもしれないけど、ボーカルの声質はデイヴのそれとは異なるし、ギタープレイもエディ・ヴァン・ヘイレンとは違うタイプ。どちらかというと、アレンジがVAN HALEN寄りなのかな、と。でもBULLETBOYSのほうがもっと土臭さが強く、それでいてモダンなイメージもあるんですよね。そこが1世代後に登場したバンドの強みなのかもしれないけど。

このバンド、個人的にとても好きで、Warner Bros.から発表した3枚のアルバム(本作と1991年の2nd『FREAKSHOW』、1993年の3rd『ZA-ZA』)はどれも気に入っております。バンドは現在も存続しており、マーク以外は完全に入れ替わってる状態。2015年には最新作『ELEFANTE'』も発表てしており、若干年老いたマークの声以外は1stアルバムから続く“それっぽさ”を維持してくれてます。これから聴こうという人には新作よりもまず、このデビュー作から触れてみることをオススメします。



▼BULLETBOYS『BULLETBOYS』
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投稿: 2017 01 02 12:00 午後 [1988年の作品, Bulletboys] | 固定リンク

2017/01/01

GUNS N' ROSES『GN'R LIES』(1988)

新年あけましておめでとうございます。2017年最初の更新です。

ということで、GUNS N' ROSESが1988年にリリースした2ndアルバム『GN'R LIES』を紹介したいと思います。いや、新年早々平然と1988年のアルバムを紹介するのもいかがなものかと思いますが、アレです。今年で『APPETITE FOR DESTRUCTION』でメジャーデビューしてから30年というのと、間もなくスラッシュ、ダフ・マッケイガンを含む編成での来日公演も行われるということで。いいじゃないですか。

まぁ本当の理由は、年末から実家に戻ってやることがなくて部屋を漁っていたら、高校時代に聴いていたHR/HMのカセットテープがわんさか出てきたので、そこで気になった作品をピックアップしようかと思いまして。なのでここから数日は、80年代後半のHR/HM作品が続くと思うので、あしからず。

話題をガンズに戻しまして。本作は先に挙げたデビューアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)に続く作品なのですが、これを正式に2ndアルバムと呼んでしまっていいものかは、実は困りものの1枚でして。なにせ(アナログでいうところの)「片面がライブ音源、片面がアコースティック主体のスタジオ音源」という異色作なのですから。全8曲、トータルで33分程度というミニアルバム的な短さもあって「いやいや、『USE YOUR ILLUSION』が2ndでしょ?」という声もありますし。いや、もうこの際2ndアルバムで通します。

本作は1〜4曲目(アナログA面)に、1986年に1万枚限定でリリースされたインディー盤『LIVE ?!*@ LIKE A SUICIDE』収録のライブテイク(実際にはスタジオライブ音源に歓声を被せた代物らしいですが)、5〜8曲目に『APPETITE FOR DESTRUCTION』リリース以降にレコーディングされたアコースティック主体の新録曲が収められているのですが、これが結構侮れない作品でして。まずライブテイクにはここでしか聴けないオリジナル曲(「Reckless Life」「Move To The City」。正確には「Reckless Life」はHOLLYWOOD ROSE時代の楽曲なので、これもカバーと言えるかも)と、今でもライブで披露される頻度がそこそこ高いカバー曲(ROSE TATTOOの「Nice Boys」とAEROSMITHの「Mama Kin」)が用意されていること。デビュー前の勢いに満ちた、生々しい演奏と歌を堪能することができるはずです。

そしてスタジオテイクですが、シングルカットもされ全米4位を記録した代表曲「Patience」や、ライブで披露される頻度の高い「Used To Love Her」、『APPETITE FOR DESTRUCTION』にも収録されていた「You're Crazy」のレイドバックバージョン、さらにはライブでは今やほとんど演奏されない「One In A Million」といった4曲を用意。『APPETITE FOR DESTRUCTION』にはいわゆるアコースティック調の楽曲やバラードが皆無だったので(それに一番近かったのが「Sweet Child O' Mine」)、ガンズの奥深さを知らしめるという点において非常に意味のある1枚と言えます。また、本作がリリースされた1998年末というのが、ちょうど初来日タイミング(1988年12月)だったこともあり、擬似とはいえ彼らのライブ音源に手軽に触れることができる貴重な作品でもあったわけです。

よく「『APPETITE FOR DESTRUCTION』こそがガンズの真髄」なんて声も耳にしますが、いえいえ。『GN'R LIES』で見せた“軟”の部分もGUNS N' ROSESにおける重要な要素ですよ。なので「『APPETITE FOR DESTRUCTION』だけが〜」みたいな言い方をする輩は信用しません! 個人的には本作、『APPETITE FOR DESTRUCTION』と同じくらい大好きなアルバムです。



▼GUNS N' ROSES『GN'R LIES』
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投稿: 2017 01 01 12:00 午後 [1988年の作品, Guns N' Roses] | 固定リンク

2015/10/03

Megadeth全アルバム私的レビュー(1/5)

1985年に1stアルバム『Killing Is My Business... And Business Is Good!』をリリース、ということは今年でMegadethデビュー30周年なんですね。だからてっきり年内に出ると思っていたニューアルバムですが、どうやら2016年1月発売ということになったようです。

で、「とみぃの宮殿」時代から今日まで、僕はMegadethのアルバムについてほとんど言及してないんですよね。かろうじて(当時問題作と言われた)8thアルバム『Risk』のみで、代表作に関しては皆無。これまでに14枚のオリジナルアルバムが発売されているのであれば、いっそのこと全作レビューをするのも面白いかな、と。もちろん1枚1枚についてそれなりの文字量を要したいところですが、日々の仕事との兼ね合いもありますので、「1枚500文字程」という制限を付けてレビューしてみようかなと思います。かなり私情の入ったレビューになると思いますので、参考程度に楽しんでもらえると幸いです。


■1st『Killing Is My Business... And Business Is Good!』(1985年/2002年)

洗練されたサウンド/アレンジの次作以降と比べると(特にリイシュー前のオリジナル盤は)ジャケ含めチープさが目立つも、荒々しくのたうちまわりながらも複雑に絡み合うリフの嵐は今では聴けないものだけに、かなりカッコイイと思う。インテレクチュアルスラッシュとか何とか言われたけど、結局はひたすら速いヘヴィメタル。「The Skull Beneath The Skin」「Rattlehead」といったスラッシュナンバーの印象が強いもんだから影に隠れがちだけど、「Looking Down The Cross」あたりから漂う正統派メタル臭はのちの作品にも通ずるものがある。Metallica「The Four Horsemen」のオリジナルバージョンとムステインが主張する「Mechanix」もスピードメタルとしてはカッコイイものの、プログレッシブなMetallica版を先に聴いているだけに多少の物足りなさを感じるのも事実。それにリイシュー版で復活した「These Boots」のピー音は正直萎えるので、できれば外してほしかった。音は悪いけど、80年代にリリースされたオリジナル盤で楽しんでほしい1枚。


▼Megadeth『Killing Is My Business... And Business Is Good! (Reissue)』
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■2nd『Peace Sells... But Who's Buying?』(1986年)

メジャーデビュー作にしてMegadethの出世作。「Peace Sells」や「Wake Up Dead」のMVを通してその存在を本格的に認知した身としては思い出深い1枚だし、今でも彼らのアルバムの中で聴く頻度の高い作品。前作でその片鱗を見せていたインテレクチュアルスラッシュ路線がようやくしっかり形として成り立ったという意味でも、彼らの歴史上、そして80'sメタルの歴史上で欠かせない1枚だと断言したい。先に挙げたMV曲以外にも「The Conjuring」「Devils Island」「Good Mourning/Black Friday」「My Last Words」など名曲多し。ま、全曲捨て曲なしと勝手に認識してるわけだが。そんな中で唯一収録されたカバー曲「I Ain't Superstitious」のアレンジセンスもなかなかのもの。当時CMにも使用されてたので、あのイントロを聴いて「おお?」と思う世代も多いかも。2011年に発売された25周年エディションには当時のライブ音源を追加したボーナスディスクが付くので、これから聴く人はこちらを手にとってみることをオススメ。


▼Megadeth『Peace Sells... But Who's Buying?』
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■3rd『So Far, So Good... So What!』(1988年)

ムステイン&エルフソン以外のメンバーを一新して制作。チャート的にもセールス的にも前作以上の成功を収めたにも関わらず、ドラッグの問題で思ったような活動ができなかった時期の作品ということで、実は個人的にしばらく影の薄い1枚だった。しかし、2000年代に入ってからリリースされたリミックス&リマスター盤を改めて聴いて、その考えを改め直した。オリジナル盤は分厚い霧のかかったようなエフェクト(ミックス)のせいでどこか馴染めずにいたけど、これは完全に好みの問題。オリジナル盤のほうが一枚岩的な音が好きという人もきっと多いはず。まあそんな好みの問題は置いておいて、楽曲は過去2作で試みたインテレクチュアルスラッシュの最終型と呼べる完成度の高いもの。インスト「Into The Lungs Of Hell」からスラッシーな「Set the World Afire」へと流れる冒頭の構成も素晴らしいし、初のバラード調ナンバー「Mary Jane」「In My Darkest Hour」も泣きすぎておらず適度な冷たさが心地よい。どうしても「Anarchy In The U.K.」の印象が強いアルバムだけど、実はこの曲だけが浮いてるような印象も。それ以外は完璧な1枚。


▼Megadeth『So Far, So Good... So What!』
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投稿: 2015 10 03 12:18 午前 [1985年の作品, 1986年の作品, 1988年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2015/04/29

Cinderella『Long Cold Winter』(1988)

HALESTORM's LZZY HALE And TOM KEIFER Perform CINDERELLA's 'Nobody's Fool' In Nashville (BLABBERMOUTH)

この記事を読んで、久しぶりにトム・キーファーのソロアルバム「The Way Life Goes」を引っ張り出して聴いていたんですが、もう発売から丸2年経つんですね。で、流れ的には漏れなくCinderellaへと向かうわけですが……iTunesにも、MP3ぶっ込んでるHDにもCindrellaのアルバムが1枚しか入ってなくて。しかも先のニュースでカバーされた「Nobody's Fool」が収められた1stではなく、2nd「Long Cold Winter」という。


個人的にはCindrellaというと、ドラムがかわいそうなバンドという認識が強く。いわゆる全盛期のメンバーとしてはフレッド・コウリーという人がバンドに在籍していたわけですが、この人って1stアルバムや2ndアルバムでは叩いてないんですよね。1stアルバム「Night Songs」では別のドラマーが叩いていて、レコーディング終了後に加入。ビデオクリップではフレッドが叩いているし、その後のツアーでも彼がしっかり見せ場を作ったわけですが、続く本作のレコーディングであまりのテクのなさにプロデューサーやメンバーが呆れ、再びスタジオミュージシャンを招集して制作した……と記憶しています。しかも、そこで呼ばれたドラマーがコージー・パウエルやデニー・カーマシー。そんな高度なスキルが要求されてたなんてフレッドさん、思いもしなかったでしょうね。しかもかわいそうなことに、フレッドさんはその後バンドに復帰して、コージーやデニーが叩いたものをコピーするわけです。しかしフレッドさん、3rdアルバム「Heartbreak Station」ではレコーディングに無事完全参加。セールス的には過去2作に及ばず、湾岸戦争の影響やHR/HMからグランジへの移行などが災いしてCinderellaを正式脱退することに。残念な人だ。

とまあ、そんな印象のあるCinderellaですが、個人的にアルバムを通してよく聴いたのがこの2ndアルバム。正式なクレジットがないので実際どの曲でコージーやデニーが叩いているのか、そしてフレッドのテイクはどの程度残されてるのかは一切不明です。実際本当に残されてるのかも微妙。とまあそんなことは関係なく、ブルースベースの良質ハードロックが楽しめます。

1stアルバムは80年代半ばらしい派手でメタリックなサウンドと、適度にヘヴィな楽曲の数々が印象的で、Bon Joviのバックアップもあって大成功を収めました。同作ではそれほどブルースロックの色合いは感じられませんが、Bon Joviが3枚目の大ヒット後、続く「New Jersey」でブルース色を強めたように、Cinderellaも時流に乗ってか、それとも売れて本来やりたかったことができるようになってか、この「Long Cold Winter」でルーツ色を強めます。

オープニングのドブロギター&ブルースハープに驚かされるものの、曲が進むに連れてあのヒステリックなボーカルも健在だし、前作の延長線上にあるハードロックナンバーもあるしで、前作までのファンを安心させる要素も残されてます。とはいえ、ピアノとストリングスの音色に心洗われるメジャーキーのバラード「Don't Know What You Got (Till It's Gone)」、「Still Got The Blues」以降のゲイリー・ムーアを彷彿とさせるスローブルース「Long Cold Winter」、牧歌的なカントリーロック「Coming Home」といった新境地ナンバーも飛び出し、明らかに前作で掴んだファンをふるいにかけるアルバム構成となっています。

……と、キツい書き方をしましたが、改めてこのアルバムを聴いてたら実際この変化についていけなかった友人が当時いたことを思い出しちゃったもので。まあ仕方ないですよね、いきなりブルース言われても。しかも1988年って猫も杓子もブルースだ、本格派だって鞍替えし始めたタイミングだったので(ヴィジュアル系で言うところの、急に髪を短くしたり化粧を薄くしたりするタイミングみたいなものでしょうか)。MTVロック的なきらびやかな世界観から、Guns N' Rosesの成功によってリアリティのあるものへと移行していき、Led Zeppelinの再評価とともにKingdom Comeみたいなクローンバンドが続出したり……まあ、そういう時期です。

とはいえ、Cinderellaは1stアルバムのツアーをしてる時点で自身のルールを垣間見せるカバーや演奏をしており、この変化 / 進化は必然なわけです。運良く(いや悪く?)たまたまタイミングが合ってしまったくらいな感じと言えばいいのか。

でもね、発売から30年近く経った今聴いてもカッコイイと思えるアルバムであるのは確か。実際、リリース当時も1stアルバム同様2、300万枚ものヒットにつながっているわけですから。歴史に名を刻むような作品ではないかもしれませんが、80年代後半のロックシーンを華麗に彩った重要な作品だと個人的には思います。



▼Cinderella「Long Cold Winter」
(amazon:輸入盤 / MP3

投稿: 2015 04 29 04:12 午前 [1988年の作品, Cinderella] | 固定リンク

2005/09/17

寝る前にこれ聴け!(5)

 さ、久し振りにやってみましょうか、「こんなもん聴いて寝れるか!」とお叱りの声が来たり来なかったりする、このコーナー。フェスも終わり、ちょっと落ち着いて来た今日この頃。イベント前も何のその、しっかり更新しますよー。

 さて。そんな今夜のテーマは『ジャーマンメタル』。 しかも'80年代後半〜'90年代初頭の、ジャーマンメタルが最もジャーマンメタルらしかった時代のアルバムばかりを3枚。ま、基本的にはこの辺りを中心にどんどん派生していったといった感じでしょうか。実は俺自身も久し振りに聴くアルバムばかりで、多少ノスタルジーに浸ってますが、そんなことはお構いなし、男汁150%でお送りします。


・BLIND GUARDIAN「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」('90)
 あれ、何でこのCDが我が家にあるんだろう‥‥確かにブラガはこのアルバムだけリリース当時(浪人生時代)買ったけど、田舎に引っ込む時に売り払った記憶が‥‥あ、会社辞めた先輩から借りっ放しだ。ま、いいか‥‥
 んで今、久し振りに聴いてるんですが、今じゃもっと洗練されてるんだろうけど、この当時はモッサリ感が強くて、尚かつ「そうそう、ドイツっぽいよね!」っていう‥‥ある種ACCEPT辺りにも通ずる男臭さも備わってるのな。いや、いいんじゃないの。


▼BLIND GUARDIAN「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」(amazon


・GAMMA RAY「INSANITY AND GENIUS」('93)
 これも多分、先輩から借りっ放しの1枚‥‥借りパクってこういう事を言うんですか?(汗)まぁいいや。こうやって話のネタになればこのCDも浮ばれるだろうよ(死んでないって)。
 GAMMA RAYで一番好きなアルバムかも。ていうか、このアルバム以降は聴いてないんですが(えー)。1stよりも2nd派だった数少ない人間だった俺ですが、この3rdでの振り切れっぷりに当時ハマったものです。カイ・ハンセンはHELLOWEENの初来日以来観てなかったんですが、このアルバムの時は来日公演行った。そんくらい気に入ってました。


▼GAMMA RAY「INSANITY AND GENIUS」(amazon


・HELLOWEEN「KEEPER OF THE SEVEN KEYS PT.1&2」('87/'88)
 ゴメン、反則だけどこの日本限定の2枚組完全版を選ばせて。思い入れだと「〜1」だけど(初来日公演観てるだけに)、"Eagle Fly Free" とか "I Want Out" が入ってるから「〜2」も外せないのよ。
 HELLOWEENはマイケル・キスク時代ってこの2枚しかちゃんと聴いてないんだけど(カイ・ハンセンのボーカル時代はちゃんと聴いてるし、アンディ・デリス加入後は2枚くらい聴いた)やはり特別ですわな。あのアホっぽいPVといい、このガキっぽい名前といい(「Halloween」と「Hell」を引っ掛けてる、3歳児級の駄洒落だしな)、ANIMETALも真っ青なメロといい‥‥だから良いんだよ、うん。


▼HELLOWEEN「KEEPER OF THE SEVEN KEYS PT.1&2」(amazon

投稿: 2005 09 17 01:25 午前 [1987年の作品, 1988年の作品, 1990年の作品, 1993年の作品, Blind Guardian, Gamma Ray, Helloween] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/10/10

とみぃ洋楽100番勝負(52)

●第52回:「Can I Play With Madness」 IRON MAIDEN ('88)

 IRON MAIDEN。JUDAS PRIESTと並んでこの頃、『KING OF HEAVY METAL』の称号が最も相応しかったバンド。だけど俺、全然眼中になかったのね。"Aces High" とか "Wasted Years" とか "2 Minutes To Midnight" の良さに気づくの、'90年代に入ってからだからさ。

 で、俺が初めてMAIDENを「おお、これがもしかして良いんじゃないの!?」と思えるようになったのが、この曲から。そして初めて買ったアルバムもこの曲が入った「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」。ギターシンセとかに走ったり、曲がポップになったとかいろいろ言われてた時期だけど、ハッキリ言って名盤。コンセプトアルバムとかそんなのどうでもいいから。捨て曲なし。頭からケツまで捨てるところ、一切ないからさ。

 この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされたんだけど、もうね、ド頭からいきなりサビをアカペラ・コーラスでかますわけですよ。お前はBON JOVIか!?ってくらいに。あのMAIDENがですよ? そりゃコアなファンからは非難されるわけだ。でも、それがあったからこそ俺みたいな敬遠してた奴らが振り向いたんだけどね。Aメロとサビのテンポやリズムが違ってたり、ギターソロになると劇的な展開があって、ツインリードがビシッと決まって、またあのサビに戻るっていう‥‥あー、たった3分半でここまでやれるんだ、って。ポップソングとかメタルとか、そんなカテゴリーはどうでもよくてさ、単純にカッコいいわけですよ。

  そういえば、このアルバムでの来日って実現しなかったんですよね。セットがデカ過ぎて海外に持ち出せないっていう話もあった程だけど、明らかに人気の面ではこの頃がひとつのピークでしたよね。その後短い活動休止期間があって、休止明けにメンバーチェンジがあって‥‥そういう意味でも、重要な1枚なんじゃないかな。

 ヘヴィメタルっていう小難しいカテゴライズを忘れて、純粋に「1枚のロックアルバム」として、そして「1曲の、純粋に良い曲」として接して欲しいですよね。



▼IRON MAIDEN「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」 (amazon

投稿: 2004 10 10 12:00 午前 [1988年の作品, Iron Maiden, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/10/07

とみぃ洋楽100番勝負(49)

●第49回:「Perfect」 FAIRGROUND ATTRACTION ('88)

 このコラムの高校編から度々登場する、俺にいろんな新しい音楽を教えてくれた友人Aくん。このFAIRGROUND ATTRACTIONも彼が教えてくれたんだよな確か。ヒットチャートで上位にランクしてたので名前は知ってたんだけど、彼がいち早く輸入盤を東京で仕入れてきて、それをダビングしてもらって。勿論一発で気に入ったわけですよ。

 '80年代のバンドなのに、凄く懐かしい感じ‥‥音に温かみがあるというか。それはバックの演奏もそうなんだけど、それ以上にボーカルのエディ・リーダーの声によるものが大きかったのかな、と。多分この頃って「UKロックは死んだ」とか言われてた頃ですよね‥‥THE SMITHSが解散した後で、何だかよく判らない似非ポップバンドがイギリスから沢山登場して、それらがまた中途半端にアメリカでブレイクして。でも俺等はそんなのを望んでたわけじゃねぇぞ!とか内心思ってたりして。そんな時に登場したもんだから、待ってました!とばかりに受け入れられて。勿論これが「THE SMITHSの後継者」だとは誰も思わなかったんだけどさ。

 エディ・リーダーって、何故だか気になる存在なんですよね。勿論この曲が収録された大ヒット作「THE FIRST OF A MILLION KISSES」もヘヴィローテーションだったし、今でも聴く機会の多い1枚なんですが、それ以上にその後のソロ活動‥‥これも未だにちゃんと追ってる、数少ないアーティスト(というか女性シンガー)のひとりなんですよ、俺にとって。

 そういえば最初で最後の来日公演も、学校休んでAくんと一緒にクラブチッタまで行ったなぁ‥‥まぁそんなことばっかりやってたから‥‥いや、その先は言わないでおこう(この先は次回に続く。のか?)。



▼FAIRGROUND ATTRACTION「THE FIRST OF A MILLION KISSES」 (amazon

投稿: 2004 10 07 12:00 午前 [1988年の作品, Fairground Attraction, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/06/05

エレファントカシマシ『エレファントカシマシ』(1988)

エレファントカシマシが1988年3月にリリースした、記念すべきファーストアルバムにして、日本のロック史のその後の流れを変えた(と個人的に勝手に思い込んでいる)名盤。そう、ファーストにして既にエレカシは完成されちゃってたのよ。だからその後の数枚‥‥勿論素晴らしい作品なんだけど‥‥においてはこのファーストでのインパクトや完成度が常にちらついてたんだよね、聴き手にとっても、そして宮本浩次にとっても。

当時の日本のロックシーンは、所謂バンドブームまっただ中。'86年頃からボウイ、レベッカといったバンドがヒットチャート上でも大成功を収め、'87年にはブルーハーツがオーバーグラウンドへ、と同時にプリンセス・プリンセスやユニコーン、JUN SKY WALKER(S)、筋肉少女帯、ZIGGY等といったいろんなタイプのバンドが登場し、それぞれチャート上でも成功を収めるようになっていき、「第二の○○」、「ポスト○○」を求めてレコード会社はインディーシーンにまで手を伸ばすわけですよ。そして更にいろんなタイプのバンドがメジャーデビューしていき、'89年に入ると「イカ天」がスタート、いよいよその勢いに拍車がかかるわけです。

エレカシは正にそんな中デビューしたバンド。残念ながらデビュー後10年近くは大きなヒットに恵まれることはありませんでしたが、そのデビューアルバムはメディアやリスナーに大きな衝撃を与えたわけです。

ハードロックを通過したかのようなゴリゴリなロックサウンド。宮本による詩的且つ文学的、それでいて「なんじゃそりゃ?」と突っ込みを入れたくなるような、およそ時代の流行に逆行した歌詞、それを割れんばかりの声でシャウトする宮本。だけどしっかり歌詞は伝わってくる、隙間の多いアレンジ‥‥決して洋楽の何かに似ているとか、誰々のフォロワーといったカテゴライズが出来ないバンドスタイル/サウンド。これは確かに特異な存在ですよ。考えてもみてくださいよ。時代はビートロックやらパンクポップ的なものがもてはやされている頃ですよ。愛だ恋だを歌ったシュガーコーティングされたラブソング、躁的にひたすら「頑張れ」と歌う応援ソングが世に蔓延る中、「世の中まるく治めるなら 頭脳はいらないさ 少しばかりの悪知恵と 金があればいい」("デーデ")や「ニタリ ニタリと策士ども 転ばぬ先の杖のよう わけのわからぬ優しさと 生きる屍こんにちは」("花男")なんていう時代錯誤な歌詞をもってデビューですよ!? それがシャウトで歌われ、そのバックにはLED ZEPPELINばりにヘヴィでゴリゴリのハードロックサウンド。アルバムをスタートさせた瞬間、ロックファンなら "ファイティングマン" イントロのギターリフで一発ノックアウトでしょう。

勿論そういった「押し」だけじゃない。その後のソフトサイドにも通ずるブルージーなバラード "やさしさ" なんて今聴いても鳥肌モノだし、小気味良い "浮き草" や "てって" みたいなポップ路線もしっかり収録している。で、そういうソフト面で安心すると、"習わぬ経を読む男" ~ "BLUE DAYS" ~"ゴクロウサン" という歌詞の面でもサウンド面でもゴリゴリにヘヴィな曲が続くんだから、ホント侮れない。というか、このアルバムの中に入ってしまうと、そういったポップな楽曲すら非常にハードに聞こえてくるもんだから不思議だよ。

決してパンクというわけではないけど、このアルバムは間違いなく「日本のロック」という枠の中において、「ハードコア」のひとつの進むべき道を開拓したといっていいでしょう。直接的なサウンド面でのハードコアパンクと違い、精神面に響いて重くヘヴィでゴリゴリなハードコア。それが『エレファントカシマシ』というバンドの登場によって開拓された。彼らをリスペクトするバンドは多いものの、真の意味でのフォロワーは未だに現れていないように思います。そう、デビューから既に16年も経っているのにね。それだけこのバンドのスタイルや存在が特異で唯一無二なものだということがご理解いただけるかと思います。

ファーストにしてここまで凄まじいアルバムを作ってしまうと、その後が心配になるわけですが‥‥アルバムを重ねていく内に、また彼らは更に進化(というか傍若無人な程に深化)していくわけです。それと引き換えに、どんどんとアンダーグラウンド方面へと傾いていこうともね。



▼エレファントカシマシ『エレファントカシマシ』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2004 06 05 03:39 午前 [1988年の作品, エレファントカシマシ] | 固定リンク

2004/05/26

VAN HALEN『OU812』(1988)

サミー・ヘイガー加入後2作目となるVAN HALEN 通算8枚目のアルバム「OU812」。リリース当時は意外と賛否あったように記憶してるけど、その割りにはメガヒットを記録したんだよね。記憶が間違ってなければ当時だけでも400万枚以上売ってるはずだし、シングルヒットも4曲出てるし("Black And Blue"、"When It's Love"、"Finish What Ya Started"、Feels So Good")、約10年振りの来日公演も東京ドームで実現したし(ま、ソールドアウトにはならなかったわけですが)。多分前作「5150」での大ヒットを後押しするには十分な役割を果たしたんじゃないかな?

聴いてもらえば判るように、前作の延長線上にある作風なんだけど、よりソフトになった印象が強いかな。全体の音像も前作と比べると薄くて細いイメージがあるし(ある意味、デイヴ・リー・ロス時代の音作りに戻ったかのような印象)、ギターがいつもよりも前に出てないような気が‥‥その分、サミーのボーカルが完全に前面に押し出されてるのと、いつも以上にキーボード(シンセ)が目立っています。といってもシンセが入ってる曲って10曲中たったの3曲なんだよね。だけど頭2曲("Mine All Mine" ~ "When It's Love")がそのシンセ導入曲なもんだから、余計にそのイメージが強いのかな。今聴いてもかなりポップな印象ですよね、この2曲は。

速い曲にしても、例えば前作でいう "Get Up" と今作での "Source Of Infection" とでは全然感じが違うしね。明らかに今作の楽曲の方が軽めでポップな印象。ま、"Get Up" と比べる自体がどうかと思うけどね。

丁度このアルバムがリリースされた1988年前後って、所謂「ルーツロック」的な路線がもてはやされていた時代なんですね。BON JOVIが "Wanted Dead Or Alive" という曲で提示した路線、所謂「ブルーズ」を基調としたハードロックに目が行きだした頃。VAN HALENも彼らなりの「ブルーズ」をこのアルバムで表現してくれてます。これまでもブルーズっぽい楽曲はあったものの、そのものを、あるいはモロなブルーズロックを披露したことはありませんでした。このアルバムでは "Cabo Wabo" や "Black And Blue" といった曲で、VAN HALEN流ブルーズロックを聴かせてくれているわけですが、そのどれもがちゃんと「どこからどう聴いてもVAN HALENの曲」として成り立っている辺りはさすがというか。デイヴが歌ってもそれっぽくなってたでしょうけど、あの当時の時代の流れを考えると、サミーが歌った方がよりフィットしてるんじゃないかな‥‥と思えるのです。いや、サミーだったからこそ実現したのかも。アルバムラスト(本来はCD用ボーナストラックで、アナログ盤には未収録だった。ま、CD主流の現在においてはどうでもいい豆知識ですが)を飾るLITTLE FEETのカバー "A Aporitical Blues" なんて、間違いなくこのメンツじゃなきゃ出来なかっただろうカバーでしょうしね(で、これがまたらしいようならしくないような感じで、非常にカッコいいんですわ)。

サミー在籍時の4作品の中では恐らく一番評価が低い作品と思われていますが、このアルバムでのこういった挑戦が続く新作への布石になっていたりするんですよね‥‥うん。

そういえば、このアルバムがリリースされた頃(当時高校2年生)、最初に友達が買って、それをみんなが借りてダビングして、音楽仲間&バンド仲間全員に広まっていったんですが、聴いた感想がみんな一緒だったのが面白くて、今でも記憶に残ってます。それは「こっちを先に出せばよかったのにね?」という意見。そう、「1984」に続くアルバムは「5150」ではなくて、この「OU812」の方がよかったんじゃないか、サミー加入後1作目として「OU812」を先に作るべきだったんじゃないか?ということですよ。その後の歴史を見てきた今となっては「う~ん?」と思いますが、当時は本気でそう感じたんですよね‥‥それだけ「5150」というアルバムのインパクトって強かったんだよな、そしてデイヴ時代をリアルタイムで通過した世代としては違和感があったんだよなぁ、と。



▼VAN HALEN『OU812』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 05 26 05:44 午後 [1988年の作品, Van Halen] | 固定リンク

2003/08/11

DEAD END『shambara』(1988)

自身の音楽人生に於いて『原点的存在といえる重要作品』を紹介していくという企画。その第二弾となるのが、'80年代中~後期に活躍した日本のバンド、DEAD ENDのメジャー第二弾アルバム(通算3作目)「shambara」。そうですね、前回紹介したGUNS N'ROSESとほぼ同時期にここ日本で活躍したバンドになるわけですが、このバンドの場合‥‥カテゴライズに困るというのもあるんですが、とにかく活動期間が短くて(メジャーでアルバム3枚、実質3年ちょっとしか活躍してないわけですよ)、逆に今の若い子なんて知らなくて当たり前な存在ですよね。ま、例えばこのアルバムからプロデューサーが、後にかのL'Arc-en-Cielを手掛ける岡野ハジメ(元PINK)だなんてことから、ラルクが影響を受けたバンドとして一部ファンの間では知られているし、また元黒夢~現SADSの清春が最も影響を受けたバンドとして名前を挙げることが多いのも、このバンドだったりするわけで‥‥そういった関係で、ビジュアル系の元祖的に捉えられているかもしれませんね。ま、それもあながち間違いではないんですが‥‥元々はこのバンド、メタルバンドなわけですよ。それこそ、X(後のX JAPAN)的というか。いや、実際には全然違うわけですが。

俺ね、それまでDEAD ENDってそんなに興味がなかったのよ。インディー盤はまぁカッコイイかなぁなんて思ってたけど、メジャー1発目「GHOST OF ROMANCE」ってアルバムが何となく苦手で。今では全然そんなことないんですが、16才の俺はそう感じてたんですね。元々ニューロマンティックとかビジュアル要素の強いロック/ポップスが好きだったし、ゴス系やそういった影響を受けたパンク~ニューウェーブなんてのも好んで聴いてたわけですが‥‥これだったら、まだGASTANKの方がカッコイイじゃない?とか思ってた程で。

ところがね、'88年にリリースされたこのアルバムを聴いて、印象が全然変わっちゃったのね。いや、正確には「変わった部分」と「変わってない部分」がしっかり同居してるんだけど、俺にはもう‥‥1曲目"Embryo Burning"のインパクトがかなり強烈だったわけ。つうか何、このギターオーケストレーションによる大袈裟なイントロは!?って。いや、大好きなのよ、こういったクラシカルな要素を持ちつつ、それでいてモダンなサウンドっていうのが(勿論、「モダン」ってのは当時の話ね)。で、しかもあの流れるような怪しいメロディに魑魅魍魎な世界観の歌詞。実際には魑魅魍魎度は前作より退化してるんだけど、それでもこういうサウンドに見事マッチしてるのね。前作までが「アングラなメタル」だとしたら、このアルバムでのサウンド・メロディ・歌・アレンジ全てが「ムーディーなゴシックロック」という方向に進んでるように感じられるんだわ。アレンジなんて本当に凝ってるし、実際各メンバーの技量ってのはハンパじゃないわけだし、それに見合った複雑で、けどそれでいてポップでキャッチーな演奏・アレンジだったりするんだよね。リリースから15年以上経った2003年に聴いても(多少の古臭さは拭えないものの)全然アリなんだよね、不思議と。

例えばね、このアルバムの前年('87年)にリリースされたDEF LEPPARDの「HYSTERIA」とか、当時一部で台頭していたポンプ・ロック(プログレ風味の強いロック/ハードロックバンドを指してこう呼んでいた時代があったのです。MARILLIONなんかがそう呼ばれていたと記憶してます)等からの影響や流れも感じるし、同時にプロデューサーである岡野ハジメが在籍していたPINK的なものも感じられなくもない。それでいてギターソロなんてまんまマイケル・シェンカーみたいなメロウで泣きまくりだし、リフやバッキングはただ歪んだ音1色ではなく、クリーントーンやいろんなエフェクターを通したサウンドを取り入れたり‥‥って、まんまその後のビジュアル系ですよね、この流れ。そうね、確かに彼等があのまま活動を5年、10年と続けていたら(それって全く想像できないわけですが)、ビッグヒットこそないものの、多分カルト的な人気バンドになっていたのかもしれませんね。

個人的にはアルバムトップの"Embryo Burning"や、ミドルヘヴィな"Junk"や"Blood Music"、最近でいうとGacktなんかがやっても何ら違和感のない中東風アレンジのアコースティックナンバー"Heaven"みたいな曲が特に好きだったりするんですが(勿論、その他の『前作の流れを組むメロウなハードロックチューン』も大好きですよ)、中でもとりわけ、アルバムラストの"I Can Hear The Rain"というマイナーチューンがね、もう大好きでして。英語詞の、泣きのギターソロ炸裂の名曲なんですよ。ダークなAメロ、それに相反する情熱的なサビやエンディングといった素晴らしいメロディ、派手さはないものの的確にメロディを盛り上げていくリズム隊。けどね、やっぱりこの曲のメインはギターなわけですよ。メインリフ部分に挿入されるアコギや、歪んだバッキングと共に鳴っているクリーントーンのアルペジオ、どれを取っても印象的なんですね。ギター弾きの人には是非聴いて欲しい名プレイだと思っております。いや、このアルバムでの足立祐二(Gt)のプレイは特筆すべきポイントが山程あるんで、是非機会があったら聴いてもらいたいですね、うん。

個人的には足立のギターよりもボーカルのMorrieからの影響の方が強いんですけどね。ホント、「伝説の~」って表現がピッタリなバンドですよね。たった数枚のアルバムを残しただけで未だにこうやって語られる機会があるってことは、それだけ強烈なインパクトを当時放っていたってことですからね。リアルタイムで通過した人達は、今でも彼等を引きずってたりするんじゃないかな?(ま、当然俺もそのひとりなわけですが)



▼DEAD END『shambara』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 08 11 07:47 午前 [1988年の作品, DEAD END] | 固定リンク

2003/05/10

METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988)

1988年夏にリリースされた、ジェイソン・ニューステッドを含む新体制での1作目(通算4作目)となるオリジナルアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』。メインソングライターのひとりであった前任ベーシスト、クリフ・バートン(1985年9月没)を欠き、いよいよジェイムズ・ヘットフィールド&ラーズ・ウルリッヒ体制へと移行していった過渡期的内容といえる1枚になっています。

まず、これまでとの大きな違い。全9曲(日本盤ボーナストラック除く)中、7曲が6分超、7分以上が4曲、10分近い曲が2曲という非常に大作指向の内容となっています。勿論これまでもそういった指向はあったのですが、特に今回はそれが顕著に表れている作りになっていて、尚かつ過去の彼等に必ず存在していた様式美性が減退、いや、殆ど見当たりません。非常に無機質・無感情といえるような渇いたサウンドと、乱暴な変拍子、ザクザクしながらも非常に渇いたギターサウンド、そこから生み出されるリフに次ぐリフ。ギターソロもどこか感情を押し殺したかのようなメロディになっています。勿論、そこに載るメロディは過去同様判りやすいものが多いのですが。

このアルバム、リリース当時は「問題作」として叩かれることが多かったように記憶しています。10分近くあるような楽曲でも「起承転結がない」とか、METALLICAらしい速い曲が殆どないとか(ラストの「Dyers Eve」程度でしょうか)、亡くなったクリフが残したメモを元に作られたインスト曲「To Live Is To Die」も垂れ流しに近い駄曲だとか(クリフのメモをジェームズが朗読するといった内容)……確かに前作『MASTER OF PUPPETS』と比べれば雲泥の差なのかもしれません。しかし、クリフを失いジェイソンという新しい才能を手に入れたバンドが、新しい地平へと向かう為に試行錯誤しているのは明らかに伺えるし、実際今聴くとそこまで悪くないと思います。恐らくそれは、今聴けば続く次作『METALLCIA』アルバムへの布石として捉えることが出来るからでしょう。

実際、このアルバムではミドルテンポのヘヴィでグルーヴィーな楽曲が中心になっているといえます。3曲目「Eye Of The Beholder」(ヨーロッパでのシングル第1弾)や6曲目「Harvester Of Sorrow」(同じくセカンドシングル)がその代表例でしょう。実際、その後のツアーでもこれらの楽曲はライヴで演奏される機会が多かったですし。アルバムトップの変拍子ナンバー「Blackened」にしろ、普通なら「速い曲」と認識されるんでしょうけど、中間部でのミドルテンポになるパートのインパクトが強いこともあって、一筋縄ではいかないようになってますし、それは「The Shortest Straw」や「The Frayed Ends Of Sanity」にしても同じかもしれません。

そういう面からこのアルバムを「駄作」と見下す人が多かった中、ある1曲が全てを変えてしまいます。そう、今や最重要曲のひとつといえる「One」。この曲がその後のMETALLICAの全てを変えてしまいます。

まず、1989年に入り彼等はこの楽曲でバンド史上初となるプロモーションビデオを制作するのです。これは当時かなり大きな話題になりました。今や当たり前となっているPVを、当初は敬遠していたMETALLICAがとうとう……といた感じで。そしてほぼ同時期、1989年2月に行われた米・グラミー賞会場で彼等はこの曲を生演奏するのです。それを観た「それまでMETALLICAに興味を示さなかった」人達から「あれは何だ?」「なんていう曲だ!?」という声が多く挙がり、アメリカでの最初のシングルとなったこの曲はチャートを上層、最終的にトップ50に入る大成功を手に入れるのです。シングルヒットのお陰で、チャートから落ちていたアルバムも再びヒットし、最終的には6位まで上昇し、200万枚近いセールスを記録するのでした。

一介のスラッシュメタルバンドだった彼等が、約6年の歳月をかけて「アンダーグラウンドの帝王」から一般的な成功を手に入れるようにまで成長したのです。結果、これ以降のスラッシュバンドはこのアルバムでのMETALLICAをお手本として「脱・スラッシュ」方向へと移行していくのです。

「ヤケクソ気味で大袈裟な80年代のMETALLICA」から「グルーヴ感を大切にした重いサウンドを信条とする90年代のMETALLICA」への橋渡し的作品として、非常に重要な作品であるのは確か。実際、クリフを失った彼等はよく頑張ったと思います。

しかし、この作品には最大の欠点があるのです。それは「ベースサウンドが全くといっていい程聞こえない」こと。この頃からハードロック/ヘヴィメタルの世界にも「5弦/6弦ベース」が広まりだします。それまでは比較的ジャズやフュージョンの世界で活用されることの多かった楽器ですが、どうしても「E」(ギターの6弦、ベースの4弦の開放音。ヘヴィメタルの世界ではEキーで作られる楽曲が多い)よりも低い低音を鳴らしたい、しかしチューニングを下げると上手いニュアンスが表現出来ない。そういった理由でジェイソンも当時から5弦ベースを使うことが多かったようです。しかし、これはミックスした人間が悪かったのか、まだHM/HRの世界で一般的でなかったからなのか、上手く活かし切れていない、ミックスし切れていないのです。ギターの低周波と被ってしまい、しかもベースが控え目にミックスされてることもあり、ちょっと聴いただけではベースの音を見つけることが出来ない……これって新人イジメかよ!?と当時話題になりましたよね(そういえば、同時期にリリースされたDOKKENの「BACK FOR THE ATTACK」での5弦ベースが使われ、やはり同じようにEより低い音が殆ど聞き取れなかったですよね)。

今みたいに5弦以上のベース、7弦ギターが当たり前のラウドロック界では考えられない事かもしれませんが、そういった先人達の苦労があって今があるということなんでしょう。願わくば、今後旧譜をリマスターする機会があったなら、是非このアルバムに関してはリミックスを施してベース音量をもっと上げてくださいね。そうすると、全く違った印象を得ることができるはずですから(ホント、このアルバムの曲を耳コピする時、すっげー苦労したんだから)。



▼METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL』
(amazon:国内盤

投稿: 2003 05 10 03:55 午前 [1988年の作品, Metallica] | 固定リンク

2003/04/15

ZIGGY『HOT LIPS』(1988)

  '87年10月にデビューしたZIGGYが約半年後('88年5月)にリリースしたセカンドアルバムが「HOT LIPS」。こんなに短いサイクルでリリースが続いたものの、この時点で既に彼等は結成後4年近く経っているわけで、デビュー時のラインナップになってからも2年近く経過し、オリジナル楽曲もかなりの数ストックしていたはず。なのでファーストもセカンドも基本的にはアマチュア時代から演奏してきた楽曲がメインになっているのではないでしょうか。

  にしては、このセカンドの楽曲は‥‥サウンド・プロダクションのせいもあるんでしょうけど、かなり硬質な印象を受けます。ファーストがスカスカなロックンロールサウンドだとしたら、このセカンドはもっと煌びやかで派手なハードロックといったイメージでしょうか。いきなり強烈なシャウトで腰を抜かしそうになる"HOT LIPS"でアルバムはスタート。演奏のテンションもかなり高く、とにかく隙がないといった印象。この曲と双璧を成すハイテンション・ハードロックナンバーが6曲目の"PLAYING ON THE ROCKS"。ゲストプレイヤーとして、今は亡きジョニー・サンダース(元NEW YORK DOLLS)がこの曲でギターソロを弾いてるんですが‥‥未だにどれがジョニーのソロなのか‥‥何か噂では、ワンテイク、10分程適当に弾いて終了したという話なんですが‥‥本当でしょうか。アナログでいうところのA面・B面のそれぞれ1曲目となる楽曲なだけに、かなり強烈な印象を与える2曲ですね。

  かと思えば、前作にありそうでないタイプの"WHAT DO YOU WANT?"とか、最近またよく演奏される"BORN TO BE FREE"とか‥‥メロディはかなりポップなんですが、演奏が非常にテンション高め(歌もハイテンションなシャウト多用だし)。ファーストのレコーディング後からの短期間で、如何にバンドとして成長したかが伺えますね。

  かと思うと、またまたAEROSMITHに似た曲あるよね!?的ブルージーなブギーナンバー"HIGHWAY DRIVING NIGHT"みたいな曲もあって、ちょっとホッとしたりして。しかし、このアルバム最大の山場、というか‥‥良い意味でも悪い意味でもキーポイントとなる楽曲は、シングルとしてもリリースされた"GLORIA"でしょう。最初はアルバムと同時期にシングルカットされたものの、ヒットとはお世辞にも呼べない程度のセールスしか記録できませんでした。が、それから1年後。'89年7月からスタートしたテレビドラマの主題歌として再リリース後、記録的なヒットとなってしまったのです。確かオリコンで4位くらいまで行ったのかな? 放送終了間際の「ザ・ベストテン」にまで出演する程の「ZIGGY現象」への布石となってしまったのです(そう、良くも悪くもね)。前作収録の "I'M GETTIN' BLUE" 路線の延長線上なのですが、ロックとしても、そしてポップスとしても十分に成立してしまう程のメロディと歌詞。そしてタイミング良く訪れたバンドブーム。更にトレンディドラマ主題歌への起用‥‥偶然に偶然が重なった結果といえば聞こえがいいですが、結局は楽曲の良さが全てだったわけです。だってさ、この曲のPVとか観たことあります? 俺、高校生だった当時、音を切ったテレビを点けっぱなしにして試験勉強してたんだけど、ふと画面に目をやると‥‥一瞬MOTLEY CRUEの新しいPVかと錯覚した程、ケバケバした衣装&メイクの男達がステージ狭しと動き回ってる映像が飛び込んできて、暫くしてからそれがZIGGYだと気づいた程、ちょっと見には海外のハードロックバンドと殆ど同じルックスなわけ。絶対にビジュアルから入っていったら音まで辿り着いてないはず。そういう意味では一般的には殆ど無名だったZIGGYがドラマ主題歌に起用されヒットしたのは、やはり音楽が全てだったわけですよ。

  勿論、このアルバムにはその他にもポップなシャッフルナンバー"LAST DANCEはお前に"とか、その後の彼等を考えれば非常に異色作といえるだろう"TOKYO CITY NIGHT"、流れるようなメロディが素晴らしいポップロック"POOR BOY"、哀愁のバラード"STARTIN' AGAIN"等々、素晴らしい楽曲が沢山収録されているわけですが、とりわけその中でも"GLORIA"が主題歌に選ばれたとことで、バンドに成功を運び込んだのと同時に、その後「見えない亡霊」との戦いが延々続くことになったんですから、皮肉なもんです。ま、そのお陰でバンドとしてもひと皮もふた皮も剥けていくわけですから、結果オーライなのかもしれませんね。

  基本的な音楽スタイルはファーストアルバムの時点で既に完成していただけに、その後の彼等は如何にその基本スタイルからバンドとしての幅を広げていくか、あるいはそのスタイルを更にビルドアップすることでより深いものにしていくか、といったポイントがこのセカンド以降の課題なわけですが、"GLORIA"1曲で語られてしまうことの多いこのアルバム、逆にそれ以外の曲の方がグラマラスなロック/ハードロックとしては面白い、と言っておきましょう。って、普通のロックファンならバランス良く楽しめる作品ですけどね。

  "GLORIA"大ヒットも今は昔。バンドは知らないけど曲は聴いたことがあるって人も未だに多いってことは、既に普遍的名曲の仲間入りを果たしているってことなんでしょうね。その割りに意外とカバーされる機会の少ないこの曲。もっと本家がバシバシと演奏してもいいんじゃないでしょうか!?(って最近のステージでは結構やってくれてるようだけどね)



▼ZIGGY『HOT LIPS』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 04 15 12:31 午前 [1988年の作品, ZIGGY] | 固定リンク

2001/11/24

FREDDIE MERCURY & MONTSERRAT CABALLE『BARCELONA』(1988)

「ロックバンドQUEENのシンガー/ポップシンガーとしてのフレディ・マーキュリー」をイメージして手を出すと痛い目を見る、非常に難解且つ評価の難しいクラシカルなボーカル作品、というイメージの強いこのソロ第2作目。フレディがシンガーとして最も憧れていたオペラ界の重鎮、モンセラ・カバリエとの共演を実現させたという意味では、フレディの長年の夢を1枚の作品として記録した非常に重要なアルバムという風に解釈できる。が、いくらQUEENでオペラチックな要素が強く出色していようが、オペラそのものを好きこのんで聴くロックファンは少ないだろう。そういう意味では、俺が唯一持っているオペラ作品集という事になるのだが(笑)。

実際、この共演についてフレディは1984年頃から考えていたらしい。そして1986年頃のテレビインタビューでもオペラに対する情熱、とりわけカバリエに対する愛情を熱く語っていたという。そして幸運にもそのコメントがカバリエ本人の元に届き、QUEENのマネージメントがふたりの対面をセッティングした。そして意気投合したふたりはアルバム制作へと乗り出すのだった。

実は今聴くと、意外とQUEENとの共通点や要素が多い事に改めて気付かされる。それはサウンドプロデュースに末期QUEENを支えたデヴィッド・リチャーズとマイク・モーランが関わっている点が大きく関係している。味付けやアレンジ等は『INNUENDO』と比較的近いものを感じるし、幾多にも重なったオペラコーラスはQUEENまんまだし、判る人が聴けば純粋に「QUEENのフレディ」が作った作品として評価することが出来るはずだ。ただ、ブライアンのあの印象的なギターワークとロジャーの力強いドラムビートがない点を除けばの話だが。

1曲目「Barcelona」は1992年のバルセロナ・オリンピックでも散々耳にしたことと思うので、ご存じの方が多いと思う。当時はしっかりとPVまで作られた程の力の入れようで、ちょっと驚いた‥‥というよりも、高校生だった俺は引いた記憶が(苦笑)。純粋なロック小僧だった俺にはまだ早かったようだ。続く2曲目「La Japonaise」はフレディお得意の日本語歌詞が登場する、間違ったアジア解釈が登場するアレンジが絶妙な(笑)迷曲。その他の曲のも共通することだが、その後のQUEENのアルバム‥‥特に『INNUENDO』への伏線となるアイディアが幾つも垣間見れるのだ。既にこの頃にはHIVに感染している事をフレディ自身が認識していたはずなのだ‥‥世界最高峰のバンドの一員、そして音楽家としての夢の実現。ある意味、この作品でフレディは音楽家としての夢を全うしてしまったのかもしれない。

それにしても、シンガーとしてのフレディの引き出しの多さ、テクニシャン振りには舌を巻く。歌唄いを目指してる方がもしこれを読んでいたら、悪いことは言わない。ジャンルが違うからと言わずに、是非この作品を手にして欲しい。シンガーとは本来、こういうものなのだといういいお手本になるだろうから。

最後に、モンセラ・カバリエのフレディに対する評価を紹介しよう。

「『BARCELONA』はフレディの素晴らしい音楽的才能のサンプルだと思うわ。彼はただのポピュラー・シンガーじゃなく、ピアノを弾いて私のために作曲できるミュージシャンなのね。彼は違った音楽のスタイルを一緒にする新しい方法を発見したわ。彼が、この分野の第一人者で、唯一の人なのよ。」



▼FREDDIE MERCURY & MONTSERRAT CABALLE『BARCELONA』
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投稿: 2001 11 24 01:00 午前 [1988年の作品, Freddie Mercury, Queen] | 固定リンク

2000/10/09

BON JOVI『NEW JERSEY』(1988)

それまで1年に1枚のハイペースでアルバムを発表してきたBON JOVI。前作が空前の大ヒットを収めた結果ツアーは延びに延び、結局15ヶ月にも及んだ。87年10月にツアーが終了し、年内はそのまま休養に当て、年明けからジョンとリッチーは再び曲作りを開始、春には前作と同じスタッフ(プロデューサーにフェアバーン、ミックスにボブ・ロック)でスタジオ入りした。今回はソングライター・チームにデズモンドの他に、今やセリーヌ・ディオンやエアロスミス「I Don't Want To Miss A Thing」でお馴染みのダイアン・ウォーレン等も加わっている。アルバムは勿論前作の余波を受け1位に、当時だけで500万枚以上のセールスを記録。シングルも5曲をリカットし(「Bad Medicine」「Born To Be My Baby」「I'll Be There For You」「Lay Your Hands On Me」「Living In Sin」)全てがトップ10入り、特に「Bad Medicine」と「I'll Be There For You」は1位を記録した。「Bad Medicine」はここ日本でサンヨーのテレビCM(メンバー達本人が出演)に起用されていたので、覚えている方も多いだろう(「まるでBON JOVI」なんてキャッチコピーもあったっけ)。

前作での勢いをそのまま受け継いだ、ある意味延長線上にある内容だが、このアルバム辺りからいよいよ彼等(というかジョン)のルーツ的側面も見え始める。前作での「Wanted Dead Or Alive」におけるアコースティックギター導入がその後のHM/HRシーンに大きな影響を与えたのは上で書いたが、ここでは更にそれを押し進めた楽曲が揃っている。「Wild Is The Wind」「Stick To Your Guns」なんて曲がそうだ。また「Love For Sale」なんてお遊び的な曲も収録されている。しかしここで声を大にして言いたいのは、「Blood On Blood」の存在だろう。それまで同郷のブルース・スプリングスティーンからの影響を口にはしていたが、ここまであからさまにその影響を出したのは、この曲が初めてである。スプリングスティーンの名曲「Born To Run」のBON JOVI版とも言えるこの曲は、初期BON JOVIの代表曲でもあるし、その後のライヴでもハイライトとなった。

また、ライヴでもオープニングを飾った「Lay Your Hands On Me」の導入部でのドラムにも当時は度肝を抜かれたものだ。明らかに前作における「Let It Rock」導入部(当時のCDには「Pink Flamingos」と曲名も付いていたし、1曲としてカウントされていたのだが‥‥)を意識したものだろう。(音楽的にではなく、作品的に)様式美的な前作に対し、拡散方向へ向かった新作。当時のインタビューでやたらとLED ZEPPELINの名前を挙げていたのをふと思い出した。

楽曲に関しては前作同様、文句なしの出来ではないだろうか? 正直甲乙付け難い。特にアナログでいうA面(1~5曲目)の充実振りは絶品である。最初に手を出すならこのアルバムか前作だろう。共に購入して、その成長振りを感心するのもアリだろう。まぁベスト盤でもいいが、この2枚にはヒットシングル以外にも名曲がやライヴでの定番曲が多いので、是非アルバム単位で聴いて貰いたい。

このアルバムに伴うツアーは88年10月31日にダブリンからスタートした(確かDEF LEPPARDのジョー・エリオットが飛び入りして、THIN LIZZYの「The Boys Are Back In Town」を共演したのだった)。その年の年末には日本にて初の東京ドーム公演を、カウントダウンのフェスティバル形式で実現。RATT、KINGDOM COME、BRITNEY FOXが出演した。翌89年8月にはロシア(当時のソ連)にて初のライヴをSCORPIONS、MOTLEY CRUE、OZZY OSBOURNEらと実現した。その充実振りとは裏腹に、彼等のストレスは次第に溜まっていき、ツアー終了と同時にピークに達した結果、次のアルバムまでに4年という歳月を要することになるのだった。



▼BON JOVI『NEW JERSEY』
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投稿: 2000 10 09 12:01 午前 [1988年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク