2018年9月21日 (金)

THE ROLLING STONES『STEEL WHEELS』(1989)

1989年8月にリリースされた、THE ROLLING STONESの19thアルバム(イギリスにてアメリカでは21枚目)。前作『DIRTY WORK』(1986年)から3年ぶりの新作にあたり、全英2位、全米3位を記録(アメリカでは200万枚を超えるヒット作に)。本作からは「Mixed Emotions」(全英36位、全米5位)、「Rock And A Hard Place」(全英63位、全米23位)、「Almost Hear You Sigh」(全英31位、全米50位)というシングルヒットも生まれましたが、この結果からですと“アメリカ>イギリス”寄りなアルバムということになるのでしょうか。アルバム発売直後の8月31日からはワールドツアーもスタート。その一環で、1990年2月には東京ドーム10回公演という、今では考えられないような規模感の、待望の初来日公演も実現しました(僕もこのうちの1公演に足を運び、アリーナ最前ブロックでノックアウトされました)。

ミック・ジャガー(Vo, G)キース・リチャーズ(G, Vo)の不仲でストーンズ活動再開が絶望的となり、ミックは『PRIMITIVE COOL』(1987年)、キースは『TALK IS CHEAP』(1988年)とそれぞれソロアルバムを発表。ミックなんてストーンズより先に、1988年春に東京ドームで初来日公演をやっちゃいましたからね。

そんな中、1989年に入ってから2人の仲が修復に向かい、そのままバンドでスタジオ入り。プロデュースをミック&キースとクリス・キムゼイ(過去にプロデューサーとして『UNDERCOVER』、エンジニアとして『STICKY FINGERS』『SOME GIRLS』『EMOTIONAL RESCUE』に参加)を手がけ、チャック・リーヴェル(Key)といったおなじみのメンツに加え、マット・クリフォード(Key)やサラ・ダッシュ(Cho)、リサ・フィッシャー(Cho)、バーナード・ファウラー(Cho)などその後のツアーにも参加する面々が新たに参加しています。

サウンド的には“産業ロック版ストーンズ”と揶揄したくなるくらい、モダンで硬質な音作り。かなりミックのカラーが反映されているのかなと思いきや、楽曲面ではキースらしいリフやメロディも至るところに感じられ、良い具合に2人の色がミックスされているのかなと。それこそ「Mixed Emotions」という楽曲のタイトルどおりに(本来は困惑のほうの意味ですけどね)。

ミックにしろキースにしろ、歌声がすごくみずみずしくて、それぞれのソロアルバムのときより若返っているような印象すら受けます。また、チャーリー・ワッツ(Dr)のドラムも冴えているし、ロニー・ウッド(G)もミックとキースをうまいことサポートしながら自分の色を出している。ビル・ワイマン(B)に至ってはある意味いつもどおり変なフレーズ弾きまくりで、「Break The Spell」では個性出しまくり。

そうそう、本作って王道な曲がたくさんある一方で、変な曲も含まれているアルバムでもありますよね。ツアーのオープニングSEに使われた「Continental Drift」の民族音楽っぽさや、どす黒いブルースロック「Break The Spell」とか。「Almost Hear You Sigh」もストーンズというよりはキースのソロっぽいしね(変な曲ではないけど)。

ストーンズが90年代に突き進むために、改めて足並みをそろえた。そのために必要なドーピングがここに施されている……そう考えると、非常に納得のいく作品ではないかと。個人的には、やっぱり初来日の思い出が強いので忘れられないアルバムです。

が、このアルバムと続くライブアルバム『FLASHPOINT』(1991年)がビル・ワイマン最後のアルバムになるとは、この頃は考えてもみなかったですけどね。



▼THE ROLLING STONES『STEEL WHEELS』
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投稿: 2018 09 21 12:00 午前 [1989年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2018年7月21日 (土)

CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』(1989)

聖飢魔IIのギタリストとして活躍していたジェイル大橋こと大橋隆志が1987年にバンドを脱退し、旧友・畑江康弘(B)とともに渡米。ロサンゼルスでジョエル・エリス(Vo)、ランディ・メアース(Dr)ともに結成した4人組バンドCATS IN BOOTSの、最初で最後のフルアルバム。メジャーのEMIと契約し、日本で1989年9月、海外で同年10月にリリースされています。

AC/DCやROSE TATTOO、INXSSTEELHEARTなどに携わってきたマーク・オピッツをプロデューサーに迎えた本作。ジェイル大橋と聞くと聖飢魔IIでの「FIRE AFTER FIRE」や「アダムの林檎」といった正統派メタルチューンのイメージが強いのですが、ここでは大橋が本気でやりたかった、あの時代ならではのスタイルによる「当時のLAの空気感をそのまま表したかのようなルーズでスリージーなハードロック」が展開されています。

オープニングの「Shot Gun Sally」を筆頭に、とにかくスリリングでひたすらカッコいいハードロックばかり。日本人臭はまったく感じられず、言われなければ絶対に「80年代にヒットし損ねたLA出身のB級バンド」と信じてしまうはずです(まあそれも間違いではないのですが)。

今聴いても、どの曲にもキャッチーさが感じられ、いろんなところからフックが感じられる。ちょっとDEVOを思わせるリフの「Long, Long Way From Home」とか、VAN HALEN的なハードブギー「Nine Lives (Save Me)」、どことなくサイケデリックなロッカバラード「Every Sunrise」、AEROSMITHをLAメタル風にしたような「Judas Kiss」など、印象に残る曲も多数だし、とにかくアルバムとしてのテンポ感が良いんですね。

もしあの時代のUSハードロックバンドが好きならば、絶対に気に入る1枚だと思います。騙されたと思って、ぜひチェックしてみてください。

ちなみに彼ら、いきなりアルバム8枚契約と鳴り物入りでデビューを果たし、ラジオやMTVでのオンエアも好調だったにも関わらず、翌1990年には解散。国籍が違えばそれだけ価値観も異なるわけですからね。難しいものです。

当時は今と異なり日本人臭さがにじみ出てしまえば、間違いなく海外で受け入れられなかったし、メジャー契約もできていなかったでしょう。LOUDNESSだって、『THUNDER IN THE EAST』(1985年)や『LIGHTNING STRIKES』(1986年)だったからこそ、アメリカで受け入れられたわけですから。これはこれで大正解だと思います。



▼CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』
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投稿: 2018 07 21 12:00 午前 [1989年の作品, Cats in Boots] | 固定リンク

2018年7月20日 (金)

VAIN『NO RESPECT』(1989)

デイヴィ・ヴェイン(Vo)率いるサンフランシスコ出身の5人組バンド、VAINが1989年夏頃にリリースしたメジャーデビューアルバム。爬虫類的な佇まい&アクションで見る者の目を惹くデイヴィ・ヴェインですが、その声も非常に個性的で、本作の聴きどころのひとつもそんなフロントマンのカリスマ性であることは間違いありません。

本作のプロデュースを手がけたのはポール・ノースフィールド(RUSHASIAQUEENSRYCHESTEELHEARTなど)で、全米154位の小ヒットを記録しています。実はデイヴィ自身もベイエリアではそこそこ名の知れたレコーディングプロデューサーで、かのDEATH ANGELのデビュー前のデモレコーディングなども手がけています。

そんな彼ですから、本作にもコ・プロデューサーとして名を連ねています。なんというか、カリスマ性もありながら、職人的な作業も得意とする。いわば、全部自分が関わっておきたい、自分が作るものには全部自分が目を通しておきたい、そんなワンマン主義なところがある人なのかもしれません。

そんなデビューアルバムですが、意外にも直線的で適度にヘヴィなハードロックが満載。あれ、作る作品自体は結構まともなものなんですね。

オープニングを飾る「Secrets」やMVも制作された「Beat The Bullet」など、どの曲も適度なキャッチーさと、適度なヘヴィさ&軽やかさが共存しており、スラスラと聴き進めてしまう。ある意味ではAC/DC的と言えるかもしれませんが、あそこまでクセも強くないのが弱点かもしれません。

あと、12曲あるうち似たタイプの楽曲が少なくないことも、デビュー作にしては弱点かもしれません。冒頭数曲の強さは申し分ないのですが、後半に進むに連れて印象に残る曲があまり見受けられないのは、50数分もあるアルバムをすべて聴くにはちょっと厳しいかも。

そんなだから、終盤にバラードタイプの「Without You」があったり、最後の最後に軽快な疾走ロックンロール「Ready」が飛び込んでくると、ちょっとホッとするのですが。なんとなく、最初と最後に救われる。そんなアルバムです。

そういえば当時、TBS『PURE ROCK』で「Beat The Bullet」のMVをよく目にしたなあ。個人的にはこの1曲のインパクトだけでも十分でしたけどね。

そんなVAIN、90年代前半に解散してしまうものの、すぐに再結成して現在も活動中。昨年2017年には新作『ROLLING WITH THE PUNCHES』も発表しております。機会があったらこのへんもしっかり聴いてみたいと思います。



▼VAIN『NO RESPECT』
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投稿: 2018 07 20 12:00 午前 [1989年の作品, Vain] | 固定リンク

2018年7月19日 (木)

FASTER PUSSYCAT『WAKE ME WHEN IT'S OVER』(1989)

海外で1989年8月末、日本では1ヶ月遅れ同年9月末に発売されたFASTER PUSSYCATの2ndアルバム。全米トップ100入り(最高97位)を果たし50万枚以上のセールスを記録したデビューアルバム『FASTER PUSSYCAT』(1987年)からはチャートインするようなヒットシングルは生まれませんでしたが、今作では彼ららしいバラードナンバー「House Of Pain」が全米28位のヒットとなり、アルバムも全米48位&50万枚以上のセールスを記録しました。

プロデュースを手がけたのはBANG TANGO、LOVE/HATE、CINDERELLAなどを手がけるジョン・ジャンセン。薄っぺらくてグラマラスでスリージーなサウンドが良くも悪くも個性につながった前作から一変、本作では骨太で重心の低いハードロックサウンドが楽しめます。

演奏も決して上手ではないという印象だった彼らも、そのイメージを払拭しようと本作ではかなりプレイに力を入れたようで、そういったネガティブな部分があまり目に/耳に入ってきません。むしろオープニングの「Where There's A Whip, There's A Way」「Little Dove」での音の太さとタフさがにじみ出たプレイからは、同時期にリリースされたAEROSMITH『PUMP』MOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD』的な匂いすら感じられます。

最初にラジオだったかMTVだったかで先行シングルの「Poison Ivy」を聴いたとき、ぶっちゃけカバー曲だと思ったんですよ。それくらい、彼らにしては良くできた楽曲だと思ったから(実際、そういうタイトルの楽曲ありますしね)。ところが、アルバムを購入して気づいたのですが、これオリジナル曲なんですよね。びっくりしました。で、続く「House Of Pain」を聴いてもっとびっくりするわけですが。こんな素敵な曲が作れるんだ、作れるようなバンドになったんだ、と。

その後も「Gonna Walk」や「Pulling Weeds」など、リズムでかなり遊んでいる曲が並びます。で、思うわけですよ……「これ、ちゃんとライブで演奏できるのかな?」って(苦笑)。それくらい“出来過ぎ感”が強すぎる内容だったので。彼らの場合、褒めることや感心することを通り過ぎると心配になってくるんですよね……なぜでしょうか。

思えばこの頃から、80年代後半を覆っていた軽やかな空気を求める感覚は、どんどんヘヴィなものを欲するようになっていくわけで、1989年ってその転換期だったのかなと思っています。先に挙げたようなバンドのヒット作がまさにその幕開けを飾り、1991年にMETALLICAブラックアルバムという“ヘヴィロックの教科書”を完成させてしまう。そこから、ハードロックバンドもヘヴィメタルバンドもそっち側に寄せていき、そんなことをしている間にシアトルからは新たな刺客が現れたと。そんな微妙な時期に生まれた、時代の徒花によるまさしく“時代の徒花”らしい1枚。パーティ感の強い「Slip Of The Tongue」「Tattoo」ですらヘヴィさを伴っているんですから、本当に面白い時代に生まれた名(迷?)作です。



▼FASTER PUSSYCAT『WAKE ME WHEN IT'S OVER』
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投稿: 2018 07 19 12:00 午前 [1989年の作品, Faster Pussycat] | 固定リンク

2018年7月17日 (火)

L.A.GUNS『COCKED & LOADED』(1989)

1989年8月に発表された、L.A.GUNS通算2作目のオリジナルアルバム。デビューアルバム『L.A. GUNS』(1988年)完成後に加入したスティーヴ・ライリー(Dr)がレコーディングに初参加した作品で、フィリップ・ルイス(Vo)、トレイシー・ガンズ(G)、ミック・クリプス(G)、ケリー・ニッケルズ(B)、スティーヴという全盛期メンバーがレコーディングのみならず曲作りにも本格的に参加した1枚でもあります。

プロデュースを手がけたのは、MOTLEY CRUECHEAP TRICKPOISONDOKKENなどでおなじみのトム・ワーマンと、デュアン・バロン&ジョン・パーデル(オジー・オズボーンアリス・クーパーDREAM THEATERなど)というゴールデンチーム。演奏や音質含め初期衝動の塊だった前作とは異なり、かなり“整理された”ハードロックアルバムに仕上げられています。

パンキッシュな疾走感はできる限り抑えられ、代わりにメロディや演奏面が非常に練りこまれている。1曲1曲の仕上がりは非常に高品質で、かつ楽曲のタイプの幅も広がっている。このへん、上記プロデューサー陣がかなりテコ入れしたんじゃないかと想像できます。

例えば「Rip And Tears」のような曲も、前作に入っていてもおかしくないんだけど、要所要所にフックが仕込まれている。その一番わかりやすい形が、エンディングですね。こういった仕掛けはMOTLEY CRUEの楽曲にも存在しましたが、ライブ感を強めるという意味でもこの仕掛けは成功しと言えるでしょう。

アレンジという点においては、「Malaria」や「Magdalaine」といった楽曲が生まれたことも、このバンドにとって非常に大きかったと思います。ヘヴィさやサイケデリック感を打ち出したこれらの楽曲は、アルバムの中でも異彩を放っているし、ライブにおいても見せ場のひとつになったのは間違いありません。事実、前者はいまでもライブで披露される機会が多いですし、そういう意味でも本作中盤、「Never Enough」〜「Magdalaine」の流れは以降の“L.A.GUNSらしさ”にもつながる重要な要素になったのではないでしょうか。

また、この時期のHR/HMバンドにとって重要なファクターだった“パワーバラード”、“アコースティックテイスト”もしっかり備わっており、その2つを効果的に用いた「The Ballad Of Jayne」というヒットシングル(全米33位)も生まれました。これを受けてアルバムも最高38位まで上昇し、無事ミリオンセールスを記録したわけですから。

さて、L.A.GUNSのメジャー時代(80年代後半〜90年代前半)の諸作品って、一切デジタル配信&ストリーミング配信されてないんですね。しかも、本作に関しては国内外で廃盤状態みたいですし(5年くらい前に、ボーナストラックが追加されたものが再発レーベルRock Candy経由で流通していましたが、今はどうなんでしょう)。つい先日、1枚目のほうは国内盤が1000円で限定再発されましたが、むしろこっちのほうを再発してほしいんですよね。同企画の第2弾の際にはぜひお願いします!(いや、むしろあの企画の選盤に関わりたいくらいですけどね)


※代わりに2000年にリリースされたオリジナル編成での再録バージョンを。



▼L.A.GUNS『COCKED & LOADED』
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投稿: 2018 07 17 12:00 午前 [1989年の作品, L.A.Guns] | 固定リンク

2018年7月15日 (日)

GREAT WHITE『...TWICE SHY』(1989)

1989年4月発売の、GREAT WHITE通算4作目のスタジオフルアルバム。前作『ONCE BITTEN...』(1987年)が100万枚を超えるヒット作となったことを受け、同作で垣間見せたブルースロック路線をより強めた続編的な作風に仕上がっています。それはタイトルの関連性(2作あわせて「Once Bitten, Twice Shy」=日本の「あつものにこりてなますを吹く」と同意のことわざ)からも伺えると思います。

オープニングを飾る「Move It」の、どこか洗練されたクールさにまず度肝を抜かれる本作は、モダンさとブルージーさを併せ持つ「Heart The Hunter」、ヘヴィなんだけどちょっとしたフレーズにジャズっぽさすら感じさせる「Hiway Nighs」など、前作にありそうでなかった新たなタイプの楽曲がずらりと並びます。

かと思うと、儚さと美しさを兼ね備えた名バラード「The Angel Song」があったり、ヘヴィなブルースロック「Mista Bone」、ファンキーなギターフレーズ&アレンジが気持ち良い「Baby's On Fire」と緩急に富んだ流れも楽しめる。さらに「House Of Broken Love」みたいにブルージーなロッカバラードもあれば、泣きのアコースティックバラード「She Only」もある。どの曲もかなりアレンジやメロディが練られており、本当に捨て曲がないから驚きです。

で、アルバムラストを締めくくるのがアルバムの表題曲ともいえる「Once Bitten, Twice Shy」。元MOTT THE HOOPLEのイアン・ハンターがソロでヒットさせた名曲のカバーですが、オリジナルに比較的近いアレンジなものの、それでもGREAT WHITEらしさに満ち溢れているという好カバーです。実際、この曲はアルバムからの先行シングルとして全米5位のヒットを記録しています。また同曲のヒットに導かれ、アルバム自体も全米9位まで上昇。200万枚を超えるヒット作となりました。『ONCE BITTEN...』で得た経験と成功をうまく活かせたわけですね。

全9曲とコンパクトなアルバムですが、CDのみ5曲目に「Bitches And Other Women」、ラストに「Wasted Rock Ranger」が追加されています。前者はTHE ROLLING STONESの「Bitch」とFOREIGNERの「Women」をメドレーにしたアコースティックカバー、後者はブラッド・ベイカー作のカントリーナンバー。カバー曲や他者の楽曲が多くなってしまうことから、アナログ盤では省かれたのでしょうか(そもそもアルバム自体、9曲でも約50分というボリュームでしたし)。CD世代の我々にとっては、この2曲を加えた11曲バージョンのほうが馴染みが強く、今の配信バージョン(オリジナルの9曲入り)は少々物足りなかったりもします。

なお、「Wasted Rock Ranger」はベストアルバムなどで聴くことができるので、ストリーミングサービスで探してみてください。1990年の初来日公演でもアンコールで最後に演奏された、ファンには馴染み深い1曲ですので。



▼GREAT WHITE『...TWICE SHY』
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投稿: 2018 07 15 12:00 午前 [1989年の作品, Great White] | 固定リンク

2018年5月16日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)

1989年11月にリリースされた、WHITESNAKE通算8作目のスタジオアルバム。1987年春に発表された前作『WHITESNAKE』からのシングル「Here I Go Again」は全米1位、「Is This Love」が全米2位という大ヒットとなり、アルバム自体も全米2位、全英8位まで上昇。アメリカだけで800万枚以上ものセールスの大出世作となりました。これを受けて、『WHITESNAKE』を携えたツアーでのバンドメンバー……エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)、ヴィヴィアン・キャンベル(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)でレコーディングに突入しようとしたところ、ヴィヴィアンが脱退。代わりに加入したのがスティーヴ・ヴァイというゲテモノギタリストだったことから、当時はかなりの大騒ぎとなりました。

曰く「ブルースベースのハードロックバンドに、ブルースが弾けないキワモノギタリストが加入した」と。確かにそうかもしれませんが、そもそも前作『WHITESNAKE』の時点でWHITESNAKEはブルースという軸のひとつを放棄していたような気もするのですが……まあ、いいでしょう。

曲作りは基本的にデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とエイドリアンの2人で進め、さてスタジオに入りましょうというときにエイドリアンの腱鞘炎が発覚。完治までレコーディングを待てなかったカヴァーデイルは、エイドリアンのデモをもとにヴァイがすべてのギターパートを担当。エイドリアンがプレイしたベースの部分は残しつつも、ところどころにヴァイらしい派手なオカズが挿入された、“ギターオリンピック”的なサウンドが展開されてしまいます。

リリース当時、やれギターがうるさいだのなんだの叩かれましたが、ちゃんと聴くとそもそも楽曲のベースの部分がしっかり作り込まれていない、つまり詰めが甘いのではないかと気付くんじゃないでしょうか。例えばキー設定が高すぎて、デヴィッドはただわめいているように聴こえるし、それによってリズム隊も軽く聴こえてしまう。そこにあんなギターが乗るもんだから、ねぇ。エイドリアン、もうちょっとどうにかならなかったのかと。

そんなだから、リメイクした「Fool For Your Loving」も浮きまくり。この曲までキーを上げてしまい、原曲の雰囲気壊しまくりです。前作での「Here I Go Again」も「Crying In The Rain」も原曲どおりのキーだったからこそあの世界観をよりゴージャスにすることができたのに……嗚呼、全部空回り。

ただ、そんなアルバムの中にも「これは!」と呼べる楽曲がいくつか存在します。そこだけは声を大にして伝えておきたい。それが「Now You're Gone」や「The Deeper The Love」といった前作の延長線上にあるポップ路線と、「Judgment Day」と「Sailing Ships」の大作路線。特に「Judgment Day」は今でもライブで頻繁に演奏されており、いわば「WHITESNAKE版(LED ZEPPELINの)『Kashmir』」みたいな楽曲として愛されています(ホントかな)。で、「Sailing Ships」は……これは以前取り上げた『STARKERS IN TOKYO』(1997年)のアコースティックバージョンが素晴らしいので、こちらを聴いてもらえば(スタジオ版じゃないのかと)。スタジオ版は後半のボーカルキーが上がるところがちょっとね。悪くないんだけど、やりすぎ感が強くて。

と、ここまで書いたら「これは駄作なんじゃないか?」とお思いかもしれません。そう、駄作かもしれませんが……嫌いになれないのも事実。何気によく聴くんですよ、このアルバム。リリースタイミングが大学受験間際だったこともあり、受験の往復や勉強の合間によく聴いたし、浪人中もなんだかんだで聴いたので、そういう記憶が強いのかもしれません。だからこそ、嫌いになれない。少なくとも自分の中では「そこそこ」の1枚です。

なお、WHITESNAKEは本作をリリースした1年後の1990年秋、ワールドツアーの終焉をもってバンド活動を休止してしまいます。

あ、もうひとつ。『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』同様、本作には複数のバージョンが存在するので、そちらについても記しておきます。


<1889年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Cheap An' Nasty
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kittens Got Claws
06. Wings Of The Storm
07. The Deeper The Love
08. Judgment Day
09. Slow Poke Music
10. Sailing Ships


↑こちらは下↓のジャケットで発売された、オリジナルバージョン。僕はこの曲順に慣れ親しんでいたので、20年後に発表された20周年バージョンおよび現行のリマスターバージョンの曲順はなんとなく馴染めずにいます。



▼WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE (ORIGINAL EDITION)』
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で、こちら↓が現行バージョン。2曲目に「Judgment Day」の時点であり得ない。後半の侘び寂びの無さもあり得ない。戻してくれ、頼むから。


<2009年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Judgment Day
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kitten's Got Claws
06. Cheap An' Nasty
07. The Deeper The Love
08. Slow Poke Music
09. Wings Of The Storm
10. Sailing Ships
11. Sweet Lady Luck [Single B-Side]
12. Now You're Gone [U.S. Single Remix]
13. Fool For Your Loving [Vai Voltage Mix]
14. Judgment Day [Live... In the Shadow of the Blues]
15. Slip Of The Tongue [Live at Donington 1990]
16. Kitten's Got Claws [Live at Donington 1990]


再発版はシングルのみ収録のトラックや複数のライブ盤からのライブ音源も混ざっていて、なんだか忙しいので困ります。ホント、作り手の気まぐれで10数年経ってから曲順変えるのやめてほしい。お前にとってそれが正解でも、俺たちの思い出まで修正できないんだから。

というわけで、僕はリマスター盤もプレイリストでオリジナルの曲順に戻して再生してます。本作はまだストリーミング配信されてないみたいだけど、どうせじきに配信始まるはずだから、その際にはぜひオリジナルバージョンでの再生をオススメします!(まだ一度も聴いてない人にとっては、それこそこれもお節介かしらね)



▼WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE (NEW EDITION)』
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投稿: 2018 05 16 12:00 午前 [1989年の作品, Steve Vai, Whitesnake] | 固定リンク

2018年4月14日 (土)

D-A-D『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』(1989)

デンマークの4人組ハードロックバンド、D-A-Dが海外で1989年3月、ここ日本では同年12月に発表された世界デビューアルバム(本国では通算3作目)。もともとはDISNEYLAND AFTER DARKというバンド名でしたが、ワールドワイドデビューを機に現在のD-A-Dに改名。ぶっちゃけ、記号性の強い今の表記のほうがカッコいいですけどね。

デンマーク出身のバンドなんですが、サウンド的にはAC/DCっぽいストロングスタイルのハードロックとパンク以降の疾走感、どこかウェスタンを彷彿とさせるカラッとしたギターサウンド、そこに北欧らしい湿り気の強いメロディが乗るというアンバランスさがこのアルバムの魅力。オープニングナンバー「Sleeping My Day Away」や「Point Of View」といったマイナーキーの楽曲に、そういった泣きの要素が強く反映されており、リリース当時ここ日本でも「Sleeping My Day Away」はラジオヒットした記憶があります。

かと思うと、上にも書いたように「Jihad」や「Rim Of Hell」「Girl Nation」で聴けるAC/DC的なロックンロール、「ZCMI」「True Believer」みたいなマカロニウエスタンテイストのアップチューン、メタリックな「Ill Will」みたいな硬派な楽曲も複数存在する。というか、このバンド本来の持ち味って実はこっち側なんじゃないかなと思うのです。とはいえそこは、次作『RISKIN' IT ALL』(1991年)を聴いて改めて実感するわけですが。

フロントマンのイエスパ・ビンザー(Vo, G)のしゃがれ声、スティグ・ペダーセン(B)の2弦しか張ってないベース(とヘルメット姿。笑)と音のみならずビジュアルでも楽しませてくれた彼ら。「Sleeping My Day Away」はアメリカでもそこそこ当たったらしく、このアルバム自体も全米116位まで上昇したとのこと。つまり、世界でもっとも売れたD-A-Dのアルバムということになるようです。

もちろん素晴らしい作品なんですが、これが当たってしまったがために、その後も“第二の「Sleeping My Day Away」”を求められ続けてしまう不幸が続くわけですが、彼らはそんなこと御構いなしに活動を継続。一度も解散することなく、2014年には結成30周年を迎え、今もヨーロッパを中心にライブを続けているようです。

90年代半ば、グランジからモロに影響を受けたアルバム『HELPYOURSELFISH』(1995年)も当時はびっくりしたけど、今聴くと非常に良いんですよ。ここ日本ではしばらくリリースが途絶えていますが、『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』を起点にして久しぶりに彼らのアルバムを掘ってみたいと思います。



▼D-A-D『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』
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投稿: 2018 04 14 12:00 午前 [1989年の作品, D-A-D] | 固定リンク

2018年2月19日 (月)

ERIC CLAPTON『JOURNEYMAN』(1989)

エリック・クラプトンが1989年11月に発表した、ソロ名義で通算11枚目のオリジナルアルバム。前2作を手がけたフィル・コリンズから、大御所ラス・タイトルマンにプロデューサーを変更して制作された最初のアルバムで、重厚なハードロックから彼のルーツであるブルース、さらにはAORにも通ずる大人の色香漂うモダンなポップロックまで、まるでそれまでのキャリアを総括するかのようにバラエティに富んだ、非常に聴き応えのある1枚に仕上がっています。

とはいえ本作はクラプトン単独書き下ろし曲が皆無で、大半が職業作家による楽曲やジョージ・ハリスン書き下ろし曲「Run So Far」(ジョージは同曲のレコーディングにも参加)、さらにはエルヴィス・プレスリー「Hound Dog」やレイ・チャールズ「Hard Times」といったスタンダード曲のカバー、ボ・ディドリー「Before You Accuse Me」のブルースカバーなどで締められています。そんな中でクラプトンはソングライティングにおいて、シングルカットもされたミック・ジョーンズ(FOREIGNER)との共作「Bad Love」、当時は若手ブルースギタリストとして頭角を現し始めていたロバート・クレイとの共作「Old Love」の2曲に携わったのみ。

じゃあクラプトン色が薄いのかといわれると、実はそんなこともなく。ギタープレイはもちろんのこと、ボーカルワークでも存在感の強さを証明しています。実際、本作はセールス的にも成功を収めており、「Bad Love」はここ日本でもCMソングに起用されて馴染み深い1曲となっています。

また、本作に収録された楽曲が過去のソロ曲やCREAM〜DEREK AND THE DOMINOS時代の名曲たちと混ざり合ったときの自然さときたら……本作に続いて発表されたライブアルバム『24 NIGHTS』(1991年)でもこの『JOURNEYMAN』からの楽曲が軸になっていることからも、本作はクラプトンの80年代後半以降における代表作のひとつになったことが伺えるのではないでしょうか。

他人が書いた曲とはいえ、重厚なハードロック「Pretending」やソウルフルなバラード「Running On Faith」、産業ロックテイストのミドルナンバー「No Alibis」は良曲と呼べるし、特に前2曲は当時のライブにおいても重要な役割を果たすキラーチューンだったと思います。また、フィル・コリンズがドラムで参加した疾走感の強い「Bad Love」、ライブでは終盤にエモーショナルなギターソロが長尺で展開される「Old Love」、のちの“アンプラグド”でおなじみとなる「Before You Accuse Me」と、印象深い楽曲が満載。「Hard Times」での“枯れ”感や「Lead Me On」で聴かせるアダルト感も、のちの「Tears In Heaven」や「Change The World」に通ずるものがあるのではないでしょうか。

クラプトンのソロ作というとどうしても70年代の諸作品をまず最初に挙げる傾向が強いですが、80年代育ちの自分としてはそこに本作も付け加えたいと思うくらい、大好きな1枚です。この当時のクラプトンを深く知りたければ、本作と先のライブ盤『24 NIGHTS』、そしてメガヒット作『UNPLUGGED』(1992年)の3作品を聴けば間違いないはずです。



▼ERIC CLAPTON『JOURNEYMAN』
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投稿: 2018 02 19 12:00 午前 [1989年の作品, Eric Clapton, George Harrison] | 固定リンク

2018年2月16日 (金)

TESTAMENT『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(1989)

TESTAMENTが1989年8月(US)にリリースした、通算3作目のスタジオアルバム。過去2作(1987年の『THE LEGACY』、1988年の『THE NEW ORDER』)がどちらかというとテクニカルな真性スラッシュメタルアルバムという印象でしたが、この3作目で一気に化けた(変化を遂げた)印象が強く、僕のようにこのアルバムからTESTAMENTを知ったというリスナーは当時少なくなかったはずです。

アルバム冒頭を飾るタイトルトラック「Practice What You Preach」はMVも制作され、当時MTV「Headbangers Ball」で大プッシュされていた記憶が。スピードで押し切る疾走スラッシュというよりも、ある程度アップテンポだけどグルーヴ感も強く、なにより歌メロがキャッチーということで「がなるだけのスラッシュは苦手」というメタルファンにも受け入れられたんじゃないでしょうか。実際、かなり正統派メタルに近づいた印象もありますし。

で、この曲だけでなく、続くストレートな「Perilous Nation」やミドルテンポの「Envy Life」など、スラッシュの色合いはところどころに残しつつも、パワフルな正統派メタルと呼ぶにふさわしい仕上がりなんですよね。その極め付けとして、タイトルがまんまな「The Ballad」まであるし。

もちろん、「Blessed In Contempt」や「Nightmare (Coming Back To You)」みたいなスラッシュ寄りの楽曲も少ないけど存在している。だけど、やっぱり本作の主力になるのは「Practice What You Preach」や「Greenhouse Effect」みたいな楽曲なわけです。そう考えると、本作を経て1枚(1990年の『SOULS OF BLACK』)を挟んで、『THE RITUAL』(1992年)でその路線の究極形にたどり着くのも頷ける話なわけです。

あと、このバンドの面白みはアレックス・スコルニク(G)の変態的なギタープレイ&フレーズの数々でしょう。どの曲からも「え、そんな音階弾くの?」っていうフックになるプレイが飛び出してくるし、特にラストのインスト曲「Confusion Fusion」はその極め付けの1曲。過去2作にもその要素は存分に含まれていたものの、彼の才能が完全に開花したのは本作なんじゃないかと確信しています。

最近のハードコアな路線ももちろん大好きですよ。でも、ちょっとヤワいくらいに聞こえるこの時代のアルバムも捨てたもんじゃないなと思うのですが、いかがでしょう?



▼TESTAMENT『PRACTICE WHAT YOU PREACH』
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投稿: 2018 02 16 12:00 午前 [1989年の作品, Testament] | 固定リンク

2017年7月12日 (水)

MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989)

MINISTRYが1989年に発表した通算4作目のスタジオアルバム。初期はニューウェイブやエレクトロニックボディミュージックの流れにあるサウンドが特徴でしたが、1988年の3rdアルバム『THE LAND OF RAPE AND HONEY』あたりからインダストリアル色が強まり、続く本作ではそこにメタリックな要素が加わり、のちの方向性が定まることになります。

リリース当初はここ日本でも一部のマニアにしか知られていなかった彼らが、一躍ここ日本のメタルファンの間で注目を集めることになったのは、1991年初頭に行われたMEGADETHの来日公演の開演前SEに、本作の冒頭2曲「Thieves」「Burning Inside」が使用されたことから。僕も当時、中野サンプラザでMEGADETHを観ていますが、確かに客入れ時に流れていたこの2曲が異常にカッコよかったことをよく憶えています。当時は今のようにインターネットもなく、それがMINISTRYというバンド(ユニット)の楽曲だと知るのは数ヶ月後、音楽誌『BURRN!』を読んでからでした。

反復する性急なデジタルビートの上に、ザクザクと気持ち良いスラッシュメタル風ギターリフが乗る。ボーカルもメロディを歌うのではなく、がなるように叫び散らすだけ。タイミング的にはちょうどNINE INCH NAILSに注目が集まり始め(彼らはGUNS N' ROSESとの共演などにより、1989年に発表したデビュー作『PRETTY HATE MACHINE』でプチブレイク)、日本でもSOFT BALLETがボディミュージックを極め、デジタルサウンドを本格的に取り入れる前のTHE MAD CAPSULE MARKETSがメジャーデビューした時期。そういう時代背景を考えると、この時期にMINISTRYが日本で“見つかった”のは興味深いところです。

本作の魅力は、スラッシーな楽曲一辺倒ではないところ。冒頭3曲はその系統の楽曲ですが、「Cannibal Song」はゴスやニューウェイブのカラーが感じられるし、「Breathe」はパーカッシブなドラムパターンが印象的。終盤の「Faith Collapsing」はダークなミドルチューンだし、ラストの「Dream Song」なんてどこか宗教じみた世界観が展開されている。「Thieves」「Burning Inside」のカラーを求めて本作に手を出したメタルファンにはちょっと厳しい内容かもしれませんが、のちのゴシックメタルなどにも通ずる世界観が繰り広げられていると考えれば、意外と入っていきやすいのではないでしょうか。

メタル度という点においては、次作『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)より劣るものの、やはり冒頭2曲の完璧さを考えたら、まずは本作から聴いてほしい。そう力説したくなるほど、お気に入りの1枚です。



▼MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』
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投稿: 2017 07 12 12:00 午前 [1989年の作品, Ministry] | 固定リンク

2017年7月10日 (月)

THE CULT『SONIC TEMPLE』(1989)

リック・ルービンをプロデューサーに迎えた1987年の3rdアルバム『ELECTRIC』で、ゴシックテイストのニューウェイブサウンドからハードロック路線へとシフトチェンジし、それなりに成功を収めたTHE CULT。続く1989年の4thアルバム『SONIC TEMPLE』では時代の寵児ボブ・ロックをプロデューサーに迎え、より硬質なサウンドへとビルドアップさせます。

初期の『DREAMTIME』(1984年)や『LOVE』(1985年)のイメージは完全に払拭され、音だけ聴けば同時期に制作されたBLUE MURDERの1枚目MOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD』、あるいはBON JOVI『NEW JERSEY』AEROSMITH『PERMANENT VACATION』にも通ずるものがあります。もちろんそこを狙っての起用なんでしょうけど、リック・ルービンらしさ満載のスカスカなハードロック(『ELECTRIC』)とはある種対局の作品を完成させたなという印象があります。

それは楽曲の構成にも端的に表れており、3分前後の楽曲が中心だった前作から一変、今作では4〜5分台の楽曲が中心で、オープニングの「Sun King」は仰々しいオープニングを含む6分超え、「Soul Asylum」に至っては7分半もあるのですから驚きです。

もちろん、ただ長くすればいいってわけじゃないい。そこはボブ・ロックが絡んでいるので問題なし。過剰なまでにドラマチックなアレンジが施されたことによって、THE CULTというバンドが本来持ち合わせていた“湿り気”が強調される結果となりました。むしろ前作のカラッとしたサウンドが異質なわけで、本作で聴ける音/アレンジのほうが実は本来の彼らに近いのでは……という錯覚に陥ってしまうのですから(笑)、さすがとしか言いようがない。

イアン・アストベリー(Vo)のボーカルも絶好調だし、なによりもビリー・ダフィー(G)のギターの暴れっぷりといったら。その後も印象的なギタープレイが聴ける作品はいくつかありますが、「American Horse」みたいにハードな曲ではグイグイ攻め、「Edie (Ciao Baby)」のような聴かせる曲では引きのプレイで印象づける、バランスの良いギタープレイを楽しむという点においては本作が随一ではないかと思います。

当時MTVや『PURE ROCK』(TBSで日曜深夜に放送されていた、HR/HM専門プログラム)で「Fire Woman」のMVが頻繁に流れていた印象があり、「ああ、THE CULT売れてるなぁ」なんて思ってましたが、実際に本作は全米10位という最大のヒット作になったんですよね。「Fire Woman」自体も全米46位とバンド史上最大のヒット曲になったし、他にも「Edie (Ciao Baby)」が全米93位まで上昇。後にも先にも、Billboard TOP100にランクインしたのはこの2曲のみ。

あ、本作のレコーディングではブライアン・アダムスのバンドでおなじみのミッキー・カリー(Dr)がドラムを叩いてますが、ツアーではのちにGUNS N' ROSESに加わるマット・ソーラムが参加していたのも、この時期の特筆すべきポイントです。



▼THE CULT『SONIC TEMPLE』
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投稿: 2017 07 10 12:00 午前 [1989年の作品, Cult, The] | 固定リンク

2017年6月28日 (水)

NIRVANA『BLEACH』(1989)

1989年初夏に発表された、NIRVANAの記念すべきデビューアルバム。バンドの結成が1987年なので、約2年後には本作をリリースしているんですね。もっとも彼らが今のような知名度を獲得するのは、そこからさらに2年以上要するわけですが(それにより、本作に対する評価も激変します)。

米・シアトルを拠点とするインディーレーベル「Sub Pop」から発表された本作は、当時ほとんど話題になることなく、当然日本盤が発売されるのも次作『NEVERMIND』(1991年)の大ヒット以降ですし、自分が記憶してる限りでは1990年夏時点では輸入盤すら都内でもほとんど見かけることはなかったはずです(だって、当時彼らのことを知ってアルバムを探し回ったんですから)。

1989年当時はまだグランジなんて言葉すら耳にすることはなかったし、かのSOUNDGARDENがようやくメジャーから『LOUDER THAN LOVE』を発表した程度。MUDHONEYやMELVINSといったバンドはすでに活動していましたが、ここ日本では“知る人ぞ知る”な存在でした。

しかし、ここで聴けるサウンドは初期グランジムーブメントにおいて非常に重要なもの。確かに『NEVERMIND』以降ですべてが変わってしまいましたが、それでも多くのリスナーが「グランジと聞いてイメージするもの」は『NEVERMIND』よりもこの『BLEACH』に詰まっているのではないか……あのムーブメントから25年も経った今だからこそ、余計にそう思うわけです。

決して録音状態が良いとは言えない、インディーズならではのチープな音質にラフな演奏。楽曲もニューウェーブを通過したようなものから、当時のマニアックなインディーロック、どことなくハードロックの色合いもあったりなかったり……と一筋縄でいかない印象が強いですが、歌メロはこの時点で非常にポップなものが多いのも事実。1曲目「Blew」からしてそうですし、きわめつけは「About A Girl」。このあたりのカラーを強めていくことで、のちの『NEVERMIND』へと続いていくんだなと実感させられます。

それと、久しぶりに本作を聴いて思ったのは……カート・コバーン(Vo, G)という人は本当にMELVINSが好きだった(リスペクトしていた)んだな、と。たまたま初期MELVINSの作品を聴いていた流れで本作を聴いたからか、余計にそう感じたのでした。そういえば本作にはそのMELVINSのデイル・クローヴァー(Dr)も参加してますしね。当時、短期間でも一緒に活動できたことは嬉しかったんじゃないか……なんて、本作を聴いて勝手に想像するわけです(まぁ実際、MELVINSと出会って自分の人生は変わった、なんてこと言ってましたしね、カート)。全体的にヒリヒリとした作風なのに、今となってはそういう微笑ましさも感じられる奇跡の1枚。何周も回って、彼らの作品の中で今一番気に入っているのが本作だったりします。

NIRVANAをこれから聴くなら、「もちろん最初は『BLEACH』から」……とは言いませんよ。素直に『NEVERMIND』から聴けばいいと思います。そこから『BLEACH』にさかのぼるか、『IN UTERO』(1993年)に進むかはあなたの自由。どちらを選んだとしても、きっと驚くことでしょうから(苦笑)。



▼NIRVANA『BLEACH』
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投稿: 2017 06 28 12:00 午前 [1989年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2017年5月15日 (月)

PRETTY BOY FLOYD『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』(1989)

MOTLEY CRUE、特に初期3作の彼らに影響を受けたことがあからさまなのが、今回紹介するPRETTY BOY FLOYという4人組ハードロックバンドのデビューアルバム『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』です。アメリカでは1989年末、ここ日本では1990年1月にリリースされた本作、僕も日本盤がリリースされた直後に入手したことをよく覚えています。

まず、そのルックス。GUNS N' ROSESの登場を機にHR/HMシーンがグラム路線からより肉感的な路線へと完全移行したタイミングに、この完全に勘違いしたケバケバしさ。ヴィンス・ニールを彷彿とさせる甲高い歌声と、決して上手とは言い難い楽器隊のテク、深めのリバーブがかかったサウンドプロダクションに初期MOTLEYやPOISONのような薄っぺらい(最高の褒め言葉)楽曲の数々。完全に時代に逆行しているその肝の座り具合に呆気にとられたし、これを80年代が終わろうとするタイミングに発表したメジャーレーベルの心意気(あるいは気の迷い)にも拍手を送りたい。いやいや、本気で。

仰々しいオープニングSEから静寂を打ち破るドラム、そこからスタートするアルバムタイトルトラック「Leather Boyz With Electric Toyz」は完全に初期MOTLEYそのもの。「Oh〜Ooooh〜」とシンガロングしたくなるコーラスといい、ヘタウマなボーカルといい、80年代の悪しき部分を完璧にサンプリングしております。続くリード曲「Rock And Roll (Is Gonna Set The Night On Fire)」の“未完成ならではの、勢いのみで作られた”感も悪くない。

その後もそういった楽曲がずらりと並ぶのですが、特筆すべきは5曲目の「Toast Of The Town」。この曲はMOTLEY CRUEが1981年、デビューアルバム『TOO FAST FOR LOVE』のインディーズ盤を発表する前にリリースしたシングル『STICK TO YOUR GUNS』のB面曲で、当時は廃盤状態で入手困難だった1曲。そのレア曲をセレクトするあたりに、彼らのマニアックぶりというか「俺たち、初期のMOTLEY CRUEになりたいんや!」という健気な気持ちが感じ取れて好感が持てます。だって、上手にカバーしようとせず、完全に“ヘタウマだった時代のMOTLEY CRUE”を完璧に、下手なままコピーしてるんですから。

また「Wild Angels」や「I Wanna Be With You」といったバラードタイプの楽曲も含まれていますが、いわゆるパワーバラードというよりは“アコースティック色強めのミディアムポップチューン”という印象が強いかな。全10曲で36分程度という長さも初期L.A.メタルを踏襲しているし、実際適度な長さで飽きる前に終わるからちょうど良いんですよね。

なんだか褒めてるのか貶してるのか微妙かもしれませんが、個人的にはお気に入りの1枚。万人にはオススメしませんが、あの時代のL.A.メタルが好きで、
B級バンドに対しても寛容なリスナーにこそ聴いてほしい“隠れた名盤”です。



▼PRETTY BOY FLOYD『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』
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投稿: 2017 05 15 12:00 午前 [1989年の作品, Pretty Boy Floyd] | 固定リンク

2017年4月 9日 (日)

MICHAEL MONROE『NOT FAKIN' IT』(1989)

1984年12月にラズル(Dr)が交通事故死したことで、翌1985年に解散したHANOI ROCKS。そのフロントマンであるマイケル・モンローは拠点をニューヨークに移し、1987年に初のソロアルバム『NIGHTS ARE SO LONG』をリリースします。同作は全10曲中7曲がカバーおよびマイケル以外のソングライターが書いたもので、“HANOI ROCKSよ再び”という思いで接したリスナーにとってはインパクトの弱い作品でした。演奏もHANOI ROCKS最終作の『TWO STEPS FROM THE MOVE』で聴けたタイトなものとは異なる、非常にユルいものでしたしね。

そこから2年後の1989年9月、マイケルは2ndソロアルバム『NOT FAKIN' IT』をメジャーレーベルのMercury Recordsから発表します。同作ではソングライティングのパートナーとして、ブルース・スプリングスティーンのE STREET BANDの一員として知られるリトル・スティーヴンスを迎え制作。さらにHANOI ROCKS時代の盟友ナスティ・スーサイド(G)も曲作りのみならずレコーディングにも参加。前作『NIGHTS ARE SO LONG』にも参加していたイアン・ハンター(Piano)やフィル・グランデ(G)といった面々や、ジミー・リップ(G)、アントン・フィグ(Dr)、トミー・プライス(Dr)、ジョン・リーガン(B)、ケニー・アーロンソン(B)などロックファン、ハードロックファンなら一度は耳にしたことがある名プレイヤーたちがタイトな演奏を聴かせてくれます。

楽曲自体も全10曲中カバーを2曲に抑え、1曲のみリトル・スティーヴン書き下ろし、他7曲はマイケルを中心に書き下ろされたオリジナル曲となっています。初めて聴いたとき、オープニングの「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」からマイケルの鬼気迫るシャウト&ボーカルに圧倒されたのを覚えています。HANOI ROCKSの幻影を追っていた人たちにとっては、ここで聴ける隙の一切ないロックンロールは求めるものとは異なるサウンドだったかもしれません。

しかし、マイケルがタフでセクシーな歌声を存分に響き渡らせた本作を嫌いになれる人がどれだけいるんでしょうか。HANOI ROCKSではないけど、否定のしようがない、いや、否定という言葉をねじ伏せてしまうほどの力強さと説得力を持ったロックンロールアルバムを前にしたら、そんなことどうでもよくなってしまうはずです。

LAではなくNYに移り住んだことが功を奏した人選&サウンドは、当時最盛期を過ぎようとしていたLAメタルとは異なる、新鮮な魅力満載でした。男臭さという点においては、LAから登場したGUNS N' ROSESのそれとはまた違っていたところも興味深かったし、ポップでキャッチーな「Man With No Eyes」もあれば、男の哀愁や物悲しさを漂わせる「Smoke Screen」みたいな曲もあり、このへんに少なからずHANOI ROCKSの片鱗を感じて涙した人もいたはず。そう、マイケルはしっかりとHANOI ROCKSを抱えたまま前進し続けていたのですよ。表面だけを見て判断したり偏見さえ捨てれば、芯にある精神は何も変わっていないことに気づくはずなのに……。

そういえば、当時からHANOI ROCKSからの影響を公言していたGUNS N' ROSESの面々が、マイケル再生に一役買ったのも思い出深い話。「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」のMV収録ライブにはアクセル・ローズもゲスト参加したし、その後のライブではスラッシュもゲスト出演しています。また、ガンズのプライベートレーベル、UZI SuicideからHANOI ROCKSのアルバムを再発したりと、マイケル界隈が少しずつ賑やかになっていったのでした。

また、ここ日本でも本作はヒットを記録。同年末に東京ドームで行われたカウントダウンイベントでは、のちに新バンドを結成することになるスティーヴ・スティーヴンス率いるATOMIC PLAYBOYSのキャンセルに伴い、マイケルが急遽出演。翌年春にはツアーで再来日を果たし、その際にはナスティが飛び入り出演してHANOI ROCKSナンバーで共演した記憶があります。これを機に、さらに世界的ブレイクを果たしてくれる、と確信していたのですが……事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものですね(続く)。



▼MICHAEL MONROE『NOT FAKIN' IT』
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投稿: 2017 04 09 12:00 午前 [1989年の作品, Michael Monroe] | 固定リンク

2017年3月15日 (水)

WARRANT『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』(1989)

80年代のHR/HMブーム末期にLAから登場したのが、今回紹介するWARRANT。結成は1984年と比較的早いほうですが、メジャーデビューは1989年とそこから5年の歳月を要しています。

本国では1989年1月にリリースされた彼らのデビュー作『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』。そのアルバムタイトルと、“銭ゲバ”をそのまま具現化したかのようなイラストのジャケットから、WARRANTのことを知らない人は「きっと攻撃的なスラッシュメタルはハードコアでもやってるのかな」なんて想像するかもしれませんが、その中身は……グラムメタルとまでは言わないものの、適度なハードさが兼ね備わったポップなHRといったところでしょうか。

彼らのことを最初に知ったのは、たぶんMTVかTBS『PURE ROCK』で観たMV「Down Boys」だったと記憶しています。僕はてっきりPOISONの亜流みたいなものを想像していたら、音はもっとまともでまずそこに驚かされた。しかし、パフォーマンスがRATTやSCORPIONSがやってるようなフォーメーション(フロントメンバーがアクションを揃えるやつ)をもっと過剰にしたもので、そこに若干退いたんです。正直、アルバムを買ってまで聴こうとは思えなくて。

その後も「Big Talk」のMVをテレビで目にはしてましたが、そこまで心を動かされることもなく。パワーバラード「Heaven」が全米2位を記録する大ヒット曲になっても、「ああ、そう」くらいな感じでスルーしていたのでした。

で、1990年に上京後、2ndアルバム『CHERRY PIE』リリース時に「ちゃんと聴いてみようか」と思い、同作と一緒に1stも購入。こうしてようやくアルバムをフルで聴くことができたのでした。本国でのリリースから1年半以上経ってからのことです。

正直、バンドに対するイメージはそこまで大きくは変わりませんでした。よく作り込まれた楽曲群、適度にテクニカルでそつのない演奏、クセもそこまで強くなくて耳馴染みの良いボーカル……そう、非常に優等生すぎるんですよ、デビューアルバムのくせに。

確かにデビューアルバムってそれまでの活動の集大成的内容になるとは思うんです。でも、これはいろんな意味で過剰すぎないかと。下積みが長かったせいもあるのかもしれないし、ブーム末期にデビューしたことも大きく影響してるのかもしれないけど、ちょっとリスナー側に歩み寄りすぎなんじゃないかな。冷静に聴いて、そういう印象を持ちました。

しかし、本作リリースからすでに28年経過した2017年に聴いてみると……不思議と印象が変わらない。そう、当時からそうであったように、古くもないし新しくもない。こんな普遍性の強いアルバムだとは当時考えてもみなかったな。バンドは現在も活動していますが、ボーカルのジェイニー・レインは2011年に亡くなっています。この歌声を新作で再び耳にすることはできませんが、本作や『CHERRY PIE』などといった作品は世の評価ほど悪くないよということだけは声を大にして伝えておきたいと思います。



▼WARRANT『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』
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投稿: 2017 03 15 12:00 午前 [1989年の作品, Warrant] | 固定リンク

2017年3月14日 (火)

ALICE COOPER『TRASH』(1989)

アリス・クーパーにとってキャリア18枚目のスタジオアルバムにあたるのが、1989年に発表された『TRASH』です。多少カルト的なイメージが強かった彼ですが、70年代はチャート的にも大成功を収めたアーティストのひとり。80年代前半は不遇の時代を過ごしますが、世の中がHR/HM万歳な時期に突入するにつれてアリス・クーパー再評価の声が挙がり始めます。また、彼のバンドに在籍したメンバーが結成したWINGERが大成功したことも、再び彼に注目が集まる大きなきっかけになったのではないでしょうか。

そんなタイミングに満を持して発表された『TRASH』。プロデューサーをBON JOVIなどのソングライターとして知られるデズモンド・チャイルドが務め、全10曲中9曲の楽曲制作にデズモンドが携わります。またその中にはジョーン・ジェットやジョン・ボン・ジョヴィ&リッチー・サンボラ(BON JOVI)といったデズモンド門下のアーティストの名も。レコーディングにもジョン&リッチーのBON JOVI組のほか、AEROSMITHからはスティーヴン・タイラー、ジョー・ペリー、トム・ハミルトン、ジョーイ・クレイマーの4人、キップ・ウィンガー(WINGER)、スティーヴ・ルカサー(TOTO)、ケイン・ロバーツ(80年代中盤のアリス・クーパー・バンドのギタリスト)といった錚々たる面々が参加した、豪華な1枚に仕上がっています。

アルバム自体は、“デズモンド・チャイルドが関わったアルバム”というイメージそのままの内容。おどろおどろしいアリス・クーパーのパブリックイメージとは相反する、美メロ満載のポップでキャッチーなハードロックアルバムです。1曲目の「Poison」や3曲目「House Of Fire」を聴いて、「BON JOVIかよ!」と当時ツッコミを入れたくなったHR/HMも少なくないはずです。しかし、これをジョン・ボン・ジョヴィが歌うのとアリス・クーパーが歌うのとでは、まったく違うものに仕上がるのだから本当に不思議。「Poison」の歌い出しなんて、アリス・クーパーがロウトーンで歌うことで、どこかおどろおどろしさが増すし。

とはいえ、どの曲もジョン・ボン・ジョヴィが歌う姿を簡単に想像できるし、脳内で勝手にボーカルをジョンに変換できる。5曲目のバラード「Only My Heart Talkin'」なんて、まんまAEROSMITHですしね(なんならこの曲、スティーヴン・タイラーがコーラスで参加してますし)。アリス・クーパーならではの個性という点においては、楽曲面にはそれほど強いものは感じられないかもしれません。

それでも1989年、このアルバムの成功によってアリス・クーパーはギリギリHR/HMブームに間に合った。時流に乗ることで、続く『HEY STOOPID』(1991年)や『THE LAST TEMPTATION』(1994年)でより好きなことがやれるようになったわけですから、結果良かったのではないかと。また、『TRASH』が売れてくれたから、1990年に念願の初来日公演も実現したわけですしね。

全米7位の大ヒット曲となった「Poison」をはじめ、「House Of Fire」「Bed Of Nails」などといったシングル曲以外にも良曲満載で、本当に捨て曲なし。最初に聴く1枚ではないかもしれませんが、あの時代の空気感に触れたいという人にはわかりやすい作品だと思います。



▼ALICE COOPER『TRASH』
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投稿: 2017 03 14 12:00 午前 [1989年の作品, Alice Cooper] | 固定リンク

2017年2月16日 (木)

SKID ROW『SKID ROW』(1989)

“BON JOVIの弟分”的存在として1989年初頭にメジャーデビューを果たしたSKID ROW。デビュー作『SKID ROW』からの1stシングル「Youth Gone Wild」のMVは当時、ここ日本でもTBS『PURE ROCK』で毎回のようにオンエアされることでHR/HMファンの間で浸透していきました。だって曲良しサウンド良し、ボーカルのセバスチャン・バックのルックス良し声良しで非のつけどころが見当たらなかったんですから、仕方ないですよ。

“BON JOVIの弟分”云々は、メンバーのデイヴ・スネイク・セイボがジョン・ボン・ジョヴィの幼馴染で一緒にバンドをやっていたことがあること、ジョンが運営する「New Jersey Underground」のサポートでデビューにこぎつけたこと、同じドグ・マギーがマネジメントを担当していることから。『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)で天文学的大ヒットを記録し、続く『NEW JERSEY』(1988年)もそれに匹敵するヒット作となったタイミングでのデビューだったこともあり、SKID ROWは1年と経たぬうちに大成功を手にします。

1stシングル「Youth Gone Wild」こそ全米99位と低調に終わりますが、続く泣きのバラード「18 And Life」は全米4位、アコースティックギターを取り入れたパワーバラード「I Remember You」も全米6位を記録し、アルバム自体も最高6位、現在までにアメリカのみで500万枚を超える大ヒット作となっています。ホント、アメリカにおける HR/HMブーム末期に登場した最後の大型新人という呼び名がふさわしい存在だったと思います。

ヒットシングルがバラードばかりですが、アルバム全体を覆うのは若さ、怒り、抑圧、衝動という攻めの空気感。パンキッシュな雰囲気の「Piece Of Me」やポップなHR「Can't Stand The Heartache」もありますが、基本的にはパワフルな「Big Guns」、疾走感あふれる「Sweet Little Sister」、そしてアンセミックな「Youth Gone Wild」などメタリックな色合いがこのバンドの持ち味。そこにパンクなスタンスが加わることで、バンドとして唯一無二の個性を確立していくことになります。

ちょうど西海岸からGUNS N' ROSESが登場し、それに応えるように東海岸からSKID ROWが登場。パンクマインドでHR/HMを鳴らしてはいるものの、最終的にお互い異なるスタイルを作り上げたのは非常に興味深いところです。



▼SKID ROW『SKID ROW』
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投稿: 2017 02 16 12:00 午前 [1989年の作品, Skid Row] | 固定リンク

2017年2月 7日 (火)

BAD ENGLISH『BAD ENGLISH』(1989)

1989年デビューのスーパーバンドつながり、なおかつ現在JOURNEY来日中ということで、今日はBAD ENGLISHの1stアルバム『BAD ENGLISH』を紹介します。

BAD ENGLISHはJOUNEYを活動休止させたニール・ショーン(G)とジョナサン・ケイン(Key)が、元THE BABYSのフロントマンで「Missing You」を全米No.1ヒットさせたソロシンガーのジョン・ウェイト、同じく元THE BABYSのリッキー・フィリップス(B)、トニー・マカパインやCACOPHONYで活躍したディーン・カストロノヴォ(Dr)と結成した5人組バンド。一部からは“JOUNEYの再編”と呼ばれたほか、ジョナサン・ケインもJOURNEY加入前はTHE BABYSのメンバーだったこともあり“新生THE BABYS”なんて声もありました。

JOURNEYの活休前ラスト作『RAISED ON RADIO』(1986年)がハードロックというよりもAOR的なアメリカンロックアルバムだったこともあり、このBAD ENGLISHのデビュー作にはハードロック寄りの楽曲が比較的多く含まれています。ニール・ショーンも曲を殺さない程度に弾きまくってますし、ジョナサン・ケインのキーボードも80年代半ばの産業ハードロックそのものといったテイスト。そしてなにより、スティーヴ・ペリー(JOURNEY)ほどキーは高くないものの哀愁味の強い枯れた歌声が魅力のジョン・ウェイトが、暑苦しすぎないボーカルで聴き手を楽しませてくれます。リードトラックとなった「Forget Me Not」なんてまさに、各メンバーの個性が存分に生かされたロックチューンですしね。

しかし、「Open Arms」の大ヒットが生んでしまった“JOURNEY=バラード”という公式を、このBAD ENGLISHも引き継いでおり、全13曲中バラードタイプの楽曲が4曲(「Possession」「When I See You Smile」「Price Of Love」「Don't Walk Away」)と比較的多く含まれています。中でも「When I See You Smile」は全米1位、「Price Of Love」は全米5位と立て続けにシングルカットされ大ヒット。これに導かれるようにアルバム自体も最高21位まで上昇、100万枚を超えるセールスを記録しました。バラードバンドのレッテルを剥がしたかったはずのニール・ショーン、ここでもその呪縛から離れられなかったわけですね。

とはいえ、職業作家のダイアン・ウォーレンが書き下ろした「When I See You Smile」も、ジョン・ウェイト&ジョナサン・ケイン作の「Price Of Love」も間違いなくいい曲ですし、JOURNEYの香りがするマイナーキーのハードロック「Tough Times Don't Last」、激しいドラムに引っ張られるようにニール・ショーンのギターが唸る「Ready When You Are」、豪快なハードロック「Lay Down」や「Rockin' Horse」など聴きどころの多い1枚なのは確か。60分超えの収録時間はちょっとアレですけど、純粋にいい曲がたくさん詰まったアルバムと考えればマイナスにはならないはず。

それにしてもスーパーバンドってどこも基本的に短命なんですよね。BAD ENGLISHも1991年に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースして解散してますし。そりゃあこれだけの大物たちだもん、みんなエゴが強かったわけです。それと90年代に入り湾岸戦争を境に不況に突入、ロックもグランジをはじめとするダークなものが主流になっていき、こういったHR/HMは前時代的なものになってしまいます。もう5年早かったら、どのバンドももう1枚くらいアルバムを作れたのかもしれませんね。



▼BAD ENGLISH『BAD ENGLISH』
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投稿: 2017 02 07 12:00 午前 [1989年の作品, Bad English, Journey] | 固定リンク

2017年2月 6日 (月)

GARY MOORE『AFTER THE WAR』(1989)

本日2月6日は、2011年に急逝したゲイリー・ムーアの命日だったんですね。先ほどTwitterに流れてきたつぶやきで知りました。それで、今朝から彼の諸作をいろいろ引っ張り出して聴いているのですが……せっかくだから1枚選んで、急遽取り上げてみようかと思った次第です。

ゲイリー・ムーアが遺した名作群の中からどれか1枚選べと言われると、非常に悩みどころでして……80年代の作品はどれも好きなものばかりですし、そんな中でもやっぱり『WILD FRONTIER』(1987年)は群を抜いてお気に入りだけど、同じくらい『STILL GOT THE BLUES』(1990年)も好き。さて困ったぞと悩んでいると、iTunesで上記2作の間に挟まれた1枚のアルバムに目がいったわけです。それが今回紹介する『AFTER THE WAR』です。

本作は1989年初頭にリリースされた、通算8作目のオリジナルアルバム。前作『WILD FRONTIER』である種ひとつのピークを迎えたゲイリーが、新たなるステージであるブルースサイドへと移行する前に見せた過渡期的側面と言えなくもない本作は、彼がハードロックギタリストとして音楽と向き合った最後の作品と受け取ることもできます。事実、タイトルトラック「After The War」や「Speak For Yourself」、オジー・オズボーンをボーカルにフィーチャーした、当時のLED ZEPPELIN劣化コピーバンドを皮肉った「Led Clones」、名曲「Out In The Fields」、VAN HALENばりのハードブギー「This Thing Called Love」、陽気なハードロック「Livin' On Dreams」「Ready For Love」と、本作以降のアルバムではなかなか聴くことのできないタイプのオリジナル楽曲をたっぷり楽しむことができます。どこか洗練された感があるのも、本作の特徴かもしれませんね。

と同時に、本作には次作『STILL GOT THE BLUES』への布石も用意されています。それがロイ・ブキャナンのカバー「The Messiah Will Come Again(メシアが再び)」。リリース当初はアナログ盤に未収録だったこの曲、それ以前のアルバムに収められたインストナンバーと比べるとプレイスタイルもよりブルージーになっており、これがあったからこそ『STILL GOT THE BLUES』へとすんなり入っていけたという人も少なくないのではないでしょうか。

と同時に、前作『WILD FRONTIER』でみせた母国アイルランドへの強い思いも、「Blood Of Emeralds」や、THIN LIZZYのカバー「Emerald」などで再び表現されています(アルバム冒頭とエンディングに収められたインスト「Dunluce (Part 1)」および「Dunluce (Part 2)」もその流れですよね)。そういう意味では本作、過渡期というよりも過去数年の集大成かつ新たなステップへの序章と捉えたほうが健全かもしれませんね。リリースから28年も経っていて正直驚きましたが、その魅力を再認識してほしい1枚です。

ちなみに本作のレコーディングには、同作のツアーに参加するもすぐに脱退してしまったコージー・パウエル、名手サイモン・フィリップス、エルトン・ジョンやケイト・ブッシュとの共演でも知られるチャーリー・モーガン、そして「Emerald」の原曲でも叩いているTHIN LIZZYのブライアン・ダウニーと複数のドラマーが参加しています。ほぼ打ち込みで表現された『WILD FRONTIER』と比べたら非常に肉感的ですし、ライブが見えてくる音像ですよね。さらに2002年以降に流通しているリマスター盤に追加収録されたライブテイクでは、のちにKISSに加入するエリック・シンガーが叩いているようです。そのへんのプレイの違いを聴き比べてみるのも、面白いかもしれませんね。



▼GARY MOORE『AFTER THE WAR』
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投稿: 2017 02 06 12:00 午後 [1989年の作品, Cozy Powell, Gary Moore] | 固定リンク

MR. BIG『MR. BIG』(1989)

ここ数日BLUE MURDERBADLANDSを取り上げてきましたが、今回紹介するMR. BIG含めて……思えば1989年って“スーパーバンド”と呼ばれる大物アーティストや名プレイヤーが結成した新バンドが続出した1年だったんですよね。ジョン・ウェイトと元JOURNEY組が結成したBAD ENGLISHも1989年デビューでしたし。この風潮は、1986年を起点としたアメリカでのHR/HMブームが過渡期に突入したことを表していたのかもしれません。

さて。今回は日本のHR/HMファンなら誰もが知っている“BIG IN JAPAN”ことMR. BIGのデビュー作を紹介します。メンバーはソロシンガーとして活躍してきたエリック・マーティン(Vo)、元RACER-Xのポール・ギルバート(G)、元TALAS〜デヴィッド・リー・ロス・バンドのビリー・シーン(B)、IMPELLITTERIやテッド・ニュージェント・バンドなどに在籍したパット・トーピー(Dr)の4人。アルバムは全米46位という成績を残し、続く大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)につなげることになります。

デヴィッド・リー・ロスのアルバム『EAT 'EM AND SMILE』でスティーヴ・ヴァイとのテクニカルなユニゾンプレイでHR/HMファンやギター&ベースプレイヤーを沸かせたビリーが、RACER-Xで強烈な速弾きを披露したポールとバンドを組んだことで、ファンは当然同様のユニゾンプレイを期待するわけですが、それは1曲目「Addicted To That Rush」で早くも実現します。

しかし、アルバムを聴き進めていくと本作は決してギター&ベース中心のアルバムではなく、エリックの歌が軸になっているブルースベースのハードロックアルバムであることに気づかされるわけです。「Wind Me Up」「Merciless」とグルーヴィーなミドルチューンが続き、4曲目でようやくタッピングを多用したビリーのベースソロが聴こえてきて「おおっ!」と期待してしまうのですが、当の「Had Enough」自体は泣きメロの歌がメインのバラードナンバー。その後も「Big Love」や「How Can You Do What You Do」「Anything For You」、「Rock & Roll Over」とキャッチーでメロウな楽曲、「Blame It On My Youth」や「Take A Walk」などのブルーステイストのロックチューンが続きます。

とはいえ、そういった歌主体の楽曲の中でもビリー&ポールは常人にはとても弾けないような、テクニカルなフレーズを散りばめています。そのへんがMR. BIGの個性につながっているわけですが、ここまでブルース色、テクニカルさを前面に打ち出すのは、この編成では本作が最初で最後。次作以降、ポールのカラーが色濃くなっていき、ポップさを強めた楽曲志向のバンドへと変化していきます。



▼MR. BIG『MR. BIG』
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投稿: 2017 02 06 12:00 午前 [1989年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017年2月 5日 (日)

BADLANDS『BADLANDS』(1989)

『BARK AT THE MOON』(1983年)、『THE ULTIMATE SIN』(1986年)とオジー・オズボーンのアルバム2作にギタリストとして参加したジェイク・E・リーが、オジーのもとを離れて結成したのがこのBADLANDSというバンド。1989年に本作『BADLANDS』で華々しいデビューを飾ります。

当時のメンバーはジェイクのほか、レイ・ギラン(Vo)、グレッグ・チェイソン(B)、エリック・シンガー(Dr)。レイはバンド脱退後の1993年に死去、エリックは本作のツアー後にバンドを離れ、アリス・クーパー・バンドを経てKISSに加入します。

さて、1989年初夏にリリースされた本作。ジェイクがリーダーシップを取るバンドということで、『BARK AT THE MOON』や『THE ULTIMATE SIN』のようなサウンドを想像したと思いますが、全体を覆うのはアメリカ南部の香りがするブルースベースのハードロック。ロバート・プラントばりのハイトーンボーカルを聴かせるレイ・ギランの個性を生かしつつ、ジェイクはソロ以外では弾きすぎない、曲ありきの作品作りに挑んでいます。

とはいえ、そこはジェイクのこと。印象的でカッコいいギターリフから始まる「High Wire」から始まり、ラジオやMTVでのウケを狙ったポップな「Dreams In The Dark」、曲中のインタープレイにゾクゾクする「Winter's Call」など、随所でジェイクならではのギタープレイを楽しむことができます。これも全部、かっちりとベースを固めるリズム隊と圧倒的迫力のボーカルがあってこそ好き放題弾けるというもの。もちろん楽曲自体の出来も水準以上なので、単なる「ギタリストウケを狙った作品」で終わらずに済んでいます。

曲間に入るアコースティック小楽曲「Jade's Song」もあれば、bayfm『POWER ROCK TODAY』のジングルでもおなじみのアップチューン「Hard Driver」もあるし、ハネ気味のリズムが心地よいブルースナンバー「Rumblin' Train」、LED ZEPPELINを現代的なアレンジで再現させたような「Devil's Stomp」、スローブルース調バラード「Seasons」、グルーヴィーな「Ball & Chain」もある。ブルースを軸にしたハードロックナンバーの数々は、確かにそれ以前のジェイクのカラーとは異なるけど、これはこれで最高にカッコいいと思うんです。

続く2ndアルバム『VOODOO HIGHWAY』(1991年)では本作に若干あったモダンさが減退し、より土着的なサウンドを聴かせてくれるのですが、リリース翌年にバンドは解散。1998年には3rdアルバム制作に向けて録音されたデモ音源をベースにした未発表曲集『DUSK』も発売されています。残念ながらBADLANDSの作品は廃盤になっているものが大半なので、中古で見つけたら必ずゲットしておくことをオススメします。



▼BADLANDS『BADLANDS』
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投稿: 2017 02 05 12:00 午前 [1989年の作品, Badlands] | 固定リンク

2017年2月 4日 (土)

BLUE MURDER『BLUE MURDER』(1989)

さて、昨日の続きを。ジョン・サイクス(G)はWHITESNAKEにて初めて曲作りおよびレコーディングで貢献したアルバム『WHITESNAKE』を1987年に完成させますが、レコーディング中からたびたびデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)と衝突していたこともあり、アルバム発売前にバンドを脱退。ライブでこれらの楽曲を弾くことが一度もなかったわけです。その『WHITESNAKE』はアメリカのみで800万枚ものセールスを記録。印税は懐に入ったものの、表向きはバンドの成功を味わうことなく、ひたすらデヴィッドに対する憎悪の思いのみが加速していったのでした(これ、憶測ですよ。誤解なきよう)。

そんなジョン・サイクスは“打倒WHITESNAKE”のもとにコージー・パウエル(Dr)やフィル・スーザン(B)、レイ・ギラン(Vo)などとBLUE MURDERと命名したバンドを結成。しかし二転三転して、最終的にカーマイン・アピス(Dr)、トニー・フランクリン(B)、そしてジョンがボーカルも兼任するトリオ編成となり、本作『BLUE MURDER』を完成させます。

プロデューサーはAEROSMITH『PERMANENT VACATION』、BON JOVI『NEW JERSEY』などで名を馳せたボブ・ロック。あの鋭いギターサウンドとドラムのビッグサウンドがここでも堪能できるだけでなく、トニー・フランクリンという名うてのフレットレスベースプレイヤーが加わったことによる不思議なグルーヴ感を楽しむことができます。

楽曲自体は『WHITESNAKE』アルバムの延長線上にあると言っていいでしょう。ただ、デヴィッドのブルーステイストが加わらないことで非常にモダンなテイストが前面に打ち出されており、単なる姉妹作で終わらないオリジナリティも確立されています。それは1曲目「Riot」から明白で、「Still Of The Night」のアレンジが下地にある「Sex Child」、WHITESNAKEでは表現しきれなかったドラマチックさを追求した「Valley Of The Kings」、アコースティックを基調としたアーシーなテイストから壮大なアレンジへと変化していく「Jelly Roll」など、序盤から聴きどころ満載。もちろん「Out Of Love」や「Black-Hearted Woman」など、『WHITESNAKE』をバージョンアップされた楽曲も含まれています。

カーマイン・アピス&トニー・フランクリンという鉄壁のリズム隊とのアンサンブルも最高で、かつジョンのギターもこれでもかとフィーチャーされている。けれど単なるギター・オリエンテッド・アルバムでは終わっておらず、メロディのポピュラリティもしっかり維持しつつ、ジョンのボーカルもしっかり主張している。これがデビューアルバムか!?と驚きが隠せない完成度持つ、ギタリスト必聴の1枚です。

にしても、この妙にセクシーさを前面に打ち出したMVもWHITESNAKEをなぞっていて、バチバチ感が見え隠れします。WHITESNAKEと同じGeffen Recordsからのリリースというのも大きいんですけどね。

残念ながら本作は全米69位と大成功には程遠い結果しか残せず、この編成は短命に終わります。また、こんなに『WHITESNAKE』の継承的アルバムを作っておきながら、本作は1986年に亡くなったフィル・ライノット(THIN LIZZY)に捧げられています。そのあたりにもジョンの歪んだ対抗心みたいなものが感じられて、意地らしいなと思ってしまいます。



▼BLUE MURDER『BLUE MURDER』
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投稿: 2017 02 04 12:00 午前 [1989年の作品, Blue Murder, Whitesnake] | 固定リンク

2017年1月22日 (日)

TESLA『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』(1989)

アメリカ出身の5人組ハードロックバンド、TESLAが1989年初頭にリリースした2ndアルバム『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』は、彼らを一躍人気バンドの仲間入りへと導いた重要な1枚です。1986年末に本国で発表されたデビューアルバム『MECHANICAL RESONANCE』も当時全米32位まで上昇し、100万枚近いセールスを記録。同作からは「Little Suzi」というヒットシングル(全米91位)も生まれ、続く2ndアルバムにはバンド自身も、そして周囲もさらなる成功を望んでいたはずです。

リードトラック「Heaven's Trail (No Way Out)」はラジオやMTVで、それまで以上のヘヴィローテーションを獲得し、のちにシングルカットされるバラード「Love Song」は全米10位という大ヒットを記録。アルバム自体も最高18位まで上昇し、結果的には200万枚以上を売り上げました。また、1990年に発表されたアコースティックライブアルバム『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』も、当時MTV発祥の企画「Unplugged」が大人気だったことから全米12位のヒット作に。同作からのシングル「Signs」も全米8位のヒットシングルとなりました。

タフなアメリカンハードロックを軸に持ちつつも、「Little Suzi」や「Signs」のようにアコースティックサウンドを前面に押し出したアーシーなサウンドも得意。これがウケないわけがないと思うんです。ボーカルにクセがあるぶん、他のバンドとの差別化もしっかりできているし、当時主流だったBON JOVIタイプともGUNS N' ROSESタイプとも異なる。だけどアメリカ人が好きな要素がたっぷり詰め込まれている。確かに日本ではちょっと弱いタイプのバンドかもしれません。しかし、90年代半ばに一度解散した後、2000年に再結成してからはコンスタントな活動を続けられるのも、彼らがアメリカという土地に馴染んでいる証拠だと思います。

日本のリスナーにはbayfm『POWER ROCK TODAY』のジングルで知られる、豪快なハードロック「Hang Tough」からスタートするこのアルバム。基本的にはこの曲や「Heaven's Trail (No Way Out)」のような重さと豪快さが特徴のミドルチューンが軸になっています。アルバム中盤にようやくファストチューン「Yesterdaze Gone」が登場すると、そこから後半は「The Way It Is」や「Love Song」といったバラードナンバーが主役に。泣きのスローバラードから徐々に激しさを増していく、DEF LEPPARD「Bringin' On The Heartbreak」〜「Swich 625」タイプの「Paradise」はアルバムのクライマックスにふさわしい1曲です。そしてそこから再びヘヴィな「Party's Over」で締めくくるあたりに、このアルバムの軸がどこであるかを再認識させられるわけです。

TESLAは昨年、デビューアルバム『MECHANICAL RESONANCE』のリリース30周年を記念したツアーと、そのライブ音源を収めたアルバム『MECHANICAL RESONANCE LIVE』をリリースしたばかり。日本にもこのアルバムの再現ライブをしに来てほしいと思うのと同時に、2019年にはぜひ『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』再現ライブを実現させてほしいものです。もちろんその際には来日もお願いします!



▼TESLA『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』
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投稿: 2017 01 22 12:00 午前 [1989年の作品, Tesla] | 固定リンク

2017年1月10日 (火)

TIN MACHINE『TIN MACHINE』(1989)

デヴィッド・ボウイが初めてバンドを組む、という話題だけが先行し、その音楽性自体は二の次だったような記憶が残るTIN MACHINE。思えば80年代に入ってから以前の“ペルソナ”をすべて剥ぎ取り、『LET'S DANCE』で大ヒットを収めたものの、そこから状況は尻すぼみに。新たな鍵を手にするため、現状打破を考えてのバンド結成だったのかなと思うわけです。

ボウイ(Vo, G)、リーヴス・ガブレルス(G)、トニー・セイルス(B)、ハント・セイルス(Dr)という4人で制作された1stアルバム『TIN MACHINE』は、過去のボウイのカラーを覆すような、ボウイのみならず他の3人のカラーも見事に入り混じった、真の意味でのバンド作品。どこかブルージーで変態的な「Heaven's In Here」からゆったりとスタートするアルバムは、続くタイトルトラック「Tin Machine」を起点に熱量が上がっていきます。全体の印象としてはギター主体の古き良き時代のハードロック的手法がベースで、そこにボウイらしい翳りと湿り気のある歌声&歌メロが加わることで既存のハードロックとは異なるスタイルを確立。3曲目「Prisoner Of Love」なんて、まさにその好例だと思います。

たぶん時代だったんでしょうね。世の中的にロックバンドが世界を席巻し、それまでの数年間動くことのなかったROLLING STONESまでレコーディング&ツアーを開始したのが1989年だし。ボウイにしても何か新しいことをすべきだと感じていたでしょうし、それがたまたまバンドだったと。世が世だったら、これがヒップホップやテクノだった可能性もあるし。それはそれで聴いてみたかったですけどね。

ヘヴィにアレンジされたジョン・レノンのカバー「Working Class Hero」やストレートな「Under The God」「Sacrifice Yourself」あたりを聴くと、もう一度くらいステージでこれらの楽曲を歌ってもよかったんじゃないか、なんて思ったり。もはやそれすら叶わぬ夢ですが。1991年に発表された2ndアルバム『TIN MACHINE II』がもし失敗していなかったら、このバンドがどこまで続いていたのかな……とはいっても、きっと短命で終わったんでしょうけどね。



▼TIN MACHINE『TIN MACHINE』
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投稿: 2017 01 10 12:00 午前 [1989年の作品, David Bowie, Tin Machine] | 固定リンク

2016年12月20日 (火)

AEROSMITH『PUMP』(1989)

前作『PERMANENT VACATION』で文字通り完全復活を果たしたAEROSMITHが1989年秋、前作から2年ぶりに発表したのがこの通算10枚目のオリジナルアルバム。プロデュースにブルース・フェアバーン、エンジニア&ミックスにマイク・フレイザー、ソングライティングにデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランスという前作からの布陣を迎えた今作は、前作での成功をそのまま引き継ぐかと思いきや、よりアグレッシヴで肉感的、それでいてしっかり聴かせる要素も含むという、「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚となっています。

アップテンポで攻めまくるオープニングの「Young Lust」から前作にはなかった色合いですし、楽曲そのものに70年代の彼らにあった危うさが復活。そのまま間髪入れずに「F.I.N.E.」へと続くのですが、この曲もヒットシングル「Dude (Looks Like A Lady)」の流れにあるものの、躍動感は前作と比べものにならないほど。そして今作からのリードシングル(全米5位)「Live In An Elevator」でヘヴィさとキャッチーさを兼ね備えた新たなエアロをアピールします。特にこの曲では中盤のジョー・ペリーによるギターソロが圧巻。この頭3曲で完全にノックアウトさせられるはずです。

その後もサイケデリックでポップなミディアムナンバー「Janie's Got A Gun」(全米4位)、ブラスの音色が気持ちよいソウルフルなロック「The Other Side」(同22位)、「Angel」とは異なりアーシーさに満ち溢れたカントリーバラード「What It Takes」(同9位)といったヒットシングル、小気味良いテンポ間の「My Girl」、ブルージーな色合いをモダンなサウンドで表現した「Don't Get Mad, Get Even」、トム・ハミルトンのブリブリしたベースがカッコいい「Voodoo Medicine Man」など良曲満載。アルバムトータルとしても(日本盤ボーナストラック「Ain't Enough」を除くと)全10曲で約47分と非常に聴きやすく、何度も聴き返したくなる1枚ではないでしょうか。事実、この曲を「復活後、最高の1枚」に挙げるリスナーも少なくないようで、僕自身も日によって『GET A GRIP』か『PUMP』のどちらかを「復活後、最高の1枚」にピックアップしています。

先に「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚と書きましたが、その後の作風(サイケデリックさの急増、アルバム1枚の曲数が一気に増える、1曲が長くなる、etc.)を考えると、本当の意味でのAEROSMITHのターニングポイントはこのアルバムだったのかもしれません。



▼AEROSMITH『PUMP』
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投稿: 2016 12 20 01:00 午前 [1989年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2005年10月23日 (日)

TERRORIZER『WORLD DOWNFALL』(1989)

 18〜9才の頃、それまで好きだったスラッシュメタル/スピードメタルから一歩踏み出して、所謂「ハードコア」の世界み魅せられ始めてた俺。最初の切っ掛けは間違いなくNAPALM DEATHの登場だったんですが‥‥要するに『より重く、速い曲をっ!!』ってことだったんですよね。でも‥‥あの頃は若いから、重いよりも速い方を選んでた気がするなぁ。音が極悪でスカスカのB級でも、ひたすら高速でアッという間に終っちゃう曲‥‥そっちに魅せられてた気がします。

 このアルバムに出会ったのも多分15〜6年くらい前だったと思うけど、最初に聴いた時は正直全然ピンとこなかったんですよ。だってこれよりも激しい音はもっとあったし、それに‥‥TERRORIZERってどうしてもメタルにしか聞こえなかったんですよ、良くも悪くも。その後、俺自身がこの手の音から暫く離れるようになったので、売り払っちゃったんですよね。で、気づいたらいつの間にかこのアルバム、貴重盤としてなかなか手に入らなくなって‥‥

 3年くらい前に、知り合いからこのアルバムを譲り受けて。思わず「懐かしーっ!」って叫んじゃいましたよ、その場で。んで、持ち帰って早速聴いたら‥‥意外に聴きやすくてビックリしましたね。あれ、こんなだったっけ?って。そりゃリリースから15年以上経って、その間にデスメタルもグラインドコアもいろいろと細分化され、いろいろなバンドが登場しては消えていきましたから‥‥けど、このTERRORIZER唯一のアルバム「WORLD DOWNFALL」って、2005年の今聴いても全然色褪せてないと思うんですよね。確かに最近のバンドの音やスタイルと比べれば確実にオールドスクールに近いんでしょうけど、これよりも酷いバンドは現在いくらでもいるし、実際聴きやすいのがよろしいですよね。

 デス声といっても聞き取りやすい方だし、実際この程度は今の時代だと全然デス声にはカテゴライズされないかもしれない。ギターはシングルギターなので昨今のメロデスみたいなツインリードもないし、尚かつギターソロらしきものが一切存在しない。ただひたすらリフの嵐。ベースラインも動きまくっていて、これはテクニック必要ですよね。そして‥‥強烈なブラストビートを聴かせてくれるドラム。噂ではこのドラム、ワン・バスドラ、シングルペダルで挑んでるそうで‥‥そんなドラムを叩くのは、MORBID ANGELでお馴染み、ピート・サンドヴァル。そういえばこのTERRORIZER、ベースには同じくMORBID ANGELのデヴィッド・ヴィンセントも参加してるんだった(このアルバムではボーカルは担当してません。ちなみにデヴィッドは既にMORBID ANGELも脱退済)。更にギターはNAPALM DEATHのジェシー・ピンタードだし。所謂「グラインドコア/デスメタル界のスーパーバンド」だったわけですよ、今思えば(ま、当時の俺はMORBID ANGELは名前しか知らなかったし、ジェシーはまだNAPALM DEAHT加入前だったから、そんな感覚全然なかったけど。結果論ですよね)。

 とにかくひたすらカッコいい。万人受けするタイプの音ではないけど、もしこの手のサウンドが好きでこのアルバムをスルーしてるって奴がいたら、悪い事は言わない、今すぐに聴け! と命令したくなるくらいにカッコいい。正直、このアルバムに触発されて、最近バンド始めたようなもんだしね。未だに俺の中で「デス/グラインドコアの名盤」と言われて真っ先に思い浮かべるのが、これなんですよね。

 今思い出した。去年の夏頃、ピート・サンドヴァルがTERRORIZERのセカンドを作るって言ってたような記憶が‥‥デヴィッド・ヴィンセントの参加は不明だったけど、その他の2人は参加予定で、2004年末からレコーディングしたいって‥‥言ってたような‥‥あれ‥‥まだ出てないってことは‥‥



▼TERRORIZER「WORLD DOWNFALL」(amazon

投稿: 2005 10 23 05:48 午後 [1989年の作品, Terrorizer] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005年8月16日 (火)

LOUDNESSの'90年代前半作品、USにて初リリースに。

 最近、「Wounded Bird」っていうレーベルから'80年代の名盤が再発されてるんですよ。例えばWINGERの2ndとか3rdENUFF Z'NUFFの廃盤だった2nd辺りが最近ここから再発されたりしてて。

 んでこのレーベル、調べると「Atlantic Records」周辺のものしか再発してないのね。どうやらその辺の傘下みたいで、廃盤モノの再発専門レーベルのようです。ソニーでいうところの「Legacy」みたいな感じ?

 でさ。最近このレーベルから、日本のLOUDNESSのUS未発売だった時期の作品がまとめてリリースされてるんですよ。これは再発とは言わずに、初US盤化ってことになるのかしら。既にこの時期のLOUDNESSは海外での契約はなかったはずで、非常にドメスティックな活動だったのね。歌詞も日本語ものがポツポツと復活し出した頃だし(ま、アルバムに1〜2曲程度?)、そりゃ海外でのリリースはキツイよな、と。音楽的にも「THUNDER IN THE EAST」の頃とは全く違うバンドになっちゃってるし。

 来月、現オリジナルメンバーによる最新作「RACING」の英語版ヨーロッパでもリリースされるけど、これを機に再評価とか起こるんでしょうか。そういえば去年だったっけ、ヨーロッパのフェスにLOUDNESSがスペシャルゲストとして呼ばれたのって。その辺の影響もあるのかしら。

※アルバムタイトル前の「○」が過去USでのリリースあり、「●」は今回USで初出となるアルバム。



○THUNDER IN THE EAST('85年)amazon
‥‥USデビュー盤。ビルボードのアルバムチャートの74位にランキングしたことで有名。"Crazy Nights" のイメージが強いんだけど、この曲はそれまでの彼等らしくない、非常にアメリカンなミドルヘヴィチューンなのよね。全体的にその辺を意識した曲作りになってるので、当時は賛否あったように記憶してます。



●8186 LIVE('86年/US未発売)amazon
‥‥デビュー5周年記念の代々木体育館ライヴを収録した2枚組ライヴ盤。ライヴ盤としては通算2作目だけど、とにかくベスト選曲なので当時よく聴いた記憶が。



○HURRICANE EYES('87年/USバージョン)amazon
‥‥「Atlantic Records」からのUSリリース第3弾。"S.D.I." のイメージが強いけど、実は "This Lonely Heart" や "Rock'n'Roll Gypsy"、"So Lonely" 等、非常にポップなメロを持った曲が多い意欲作。日本では後に「日本語バージョン」のアルバムも製作されましたっけ。



○SOLDIER OF FORTUNE('89年)amazon
‥‥'88年に二井原脱退、更にワールドワイドな活動を目指すためにアメリカ人シンガー、マイク・ヴェセーラを迎えて製作されたUSリリース第4弾。が、歌詞やメロディ自体は二井原在籍時には完成していたもので、マイクはそれに沿って歌っただけのよう。だからなのか、我々日本人にも取っつきやすい、メロディアスなハードロックを聴かせてくれます。売れなかったけど、アメリカでの評価はかなり高いようです。



○ON THE PROWL('91年)amazon
‥‥マイク加入後2作目にしてUSリリース第5弾。デビュー10周年記念と称して、過去の代表曲を当時のメンバーで再録音。勿論原曲が日本語の歌詞は全部英語に。何故か "Crazy Nights" や "Loudness"、"Crazy Doctor" といった王道が選ばれてない。"In The Mirror" とか "Sleepless Night" 等の出来はなかなか。他に新曲が幾つか入ってるけど、これは微妙。正直、「SOLDIER OF FORTUNE」がウソみたい。そういう意味でも非常にアメリカン。ただ、その割りには海外で全然話題にならなかったようだけど。



●LOUDNESS('92年/US未発売)amazon
‥‥マイクが'91年夏のUSツアー後脱退(ていうか半ばクビ)、更にオリジナルメンバーの山下(ベース)まで脱退し窮地に立たされるも、MASAKI(元E.Z.O./Vo)とTAIJI(元X/Ba)の加入で「ある意味」過去最高のメンツになってしまった、このメンバーによる唯一のオリジナル盤。当時はスポーツ新聞にも大きく取り上げられたよね、TAIJI加入で。でも音はLOUDNESSというよりもE.Z.O.に近い気が。ボーカルのせいか。そして全然Xぽくない。両バンドが好きだった者としては複雑だった。当然、このアルバムのツアーは結構な数追っかけたよ。



●ONCE AND FOR ALL('94年/US未発売)amazon
‥‥上記「LOUDNESS」リリース時のツアーを収録したライヴ盤。当然メインは「LOUDNESS」収録曲なんだけど、このライヴ盤の本当の凄さはMASAKIが "Crazy Doctor" や "S.D.I" を歌う以上に、LOUDNESSとしてE.Z.O.の "House Of 1,000 Pleasures" をプレイしてる事実でしょうか。演奏は粗いけど、それ以上の価値はあると思うよ。



●HEAVY METAL HIPPIES('94年/US未発売)amazon
‥‥案の定TAIJIがすぐに脱退して、しかもドラムの樋口まで脱退。MASAKIも一時脱退という半ば解散状態の中、出戻りMASAKIと共に製作された1枚。ドラムにはMasakiの盟友、本間大嗣(元E.Z.O.、現在はANTHEM)を迎え、ベースは高崎自らが弾いてる。非常にサイケでヘヴィな1枚。今聴いてもLOUDNESSには聞こえない。多分E.Z.O.が続いてたらこういう路線に行っちゃったのかなぁ、という気も。



●LOUD'N'RAW('95年/US未発売)amazon
‥‥「HEAVY METAL HIPPIES」リリース後のクラブツアーを収めたライヴ盤。ベースはアルバム完成後に加入した(当時)元ANTHEMの柴田直人。曲がアレなので勿体ない気がするけど‥‥聴きどころは、DEEP PURPLEの "Speed King" のカバーかしら。あと、やっぱりMASAKIには "S.D.I" は歌いこなせないと思う。宝の持ち腐れだよな、双方にとっても。


 「LOUDNESS」以降の、ワーナー在籍時のオリジナル盤とライヴ盤が海外初リリースとなるわけね。ま、E.Z.O.のファンって海外にも多いだろうから、そういう意味での需要はあるだろうね。そして、どういう評価を受けるのかが気になるところ。

 そういえばAmazonで、「LIGHTNING STRIKES」('85年のUSリリース第2弾)のみ見つからないよ。って思ったら、このアルバムだけ再発されてないでやがんの。確かに俺の中でも一番微妙な1枚なんだけどね。

 ‥‥考えてみたら、E.Z.O.のアルバムも紙ジャケ・リマスターでこの春に再発されたけど、当のMASAKIは何してるんでしょうか‥‥ニューヨークにいるんだっけ? もっと活発に音楽活動やって欲しいんだけどなぁ‥‥難しいだろうけど。

投稿: 2005 08 16 08:47 午後 [1985年の作品, 1986年の作品, 1987年の作品, 1989年の作品, 1991年の作品, 1992年の作品, 1994年の作品, 1995年の作品, Loudness] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005年7月13日 (水)

寝る前にこれ聴け!(3)

 えーっと、急ではありますが、9月18日(日/祝前日)にDJイベントやります。「AIN'T IT FUN」とはまた違った、濃ゆいイベントです‥‥題して「MOTLEY CRUE NIGHT」というクラブイベントを‥‥11月のモトリー・オリジナルメンバーでの来日を記念して、HM/HRややさぐれロケンローを中心としたイベントを一晩中やります。詳細はまた後日に発表しますが、メタル熱復活がこんなところにまで影響を及ぼそうとは‥‥怖いです自分でも。

 そんな感じで、11月の「AIN'T IT FUN」Vol.2まで、こちらのイベントで楽しんでください。遊びなし、相当マジな内容でいきますんで。

 さて本題。まだまだ続く「夜のオカズ」。 今夜のテーマは「1989年のスーパーグループ」です。


・BLUE MURDER「BLUE MURDER」('89)
 ジョン・サイクス(元THIN LIZZY〜WHITESNAKE等)、カーマイン・アピス、トニー・フランクリンという鉄壁のトリオによるデビュー盤。本来はドラムがコージー・パウエル、ボーカルにレイ・ギランが入るはずだったんだけど、いろいろあってこの3人で落ち着いたのね。
 とにかく、モダンでテクニカルなハードロックが聴けます。WHITESNAKE程湿っぽくなく、乾いた感じが曲から漂ってます。ちなみにボブ・ロックのプロデュース。ホント、正に「ギターアルバム」といった印象。今でも好きな1枚。


▼BLUE MURDER「BLUE MURDER」(amazon


・BADLANDS「BADLANDS」('89)
 元オジー・オズボーン・バンドのジェイク・E・リーによるニューバンド。ボーカルがBLUE MURDERをクビになったレイ・ギラン、ドラムにその後KISS入りするエリック・シンガーがいたりで、興味深い。
 ジェイクの「らしい」ストラト・サウンドが魅力的。意外にもZEP的ブルーズ・ロックが好きだということがここで判明、ボーカルもロバート・プラントばりのハイトーンで対抗。凄く時代を感じさせる1枚じゃないかな。久々聴いたらホント良かった。


▼BADLANDS「BADLANDS」(amazon


・MR.BIG「MR.BIG」('89)
 元TALAS〜デイヴ・リー・ロス・バンドのビリー・シーン、元RACER-Xのポール・ギルバートによるニューバンド。ボーカルはVAN HALENにも誘われたことのあるエリック・マーティン。
 まだMR.BIGが「Big in Japan」になる前の、本当の意味での「ルーツロック」的な音を鳴らしてた名盤。ギター&ベースによるユニゾンプレイもさることながら、とにかく曲が良い。その後のポップ路線とは違った、枯れつつも派手という相反する要素を見事に融合した1枚に仕上がってる、と思う。評価的には2ndなのかな、やっぱり。けど "Anything For You" がある時点で、俺的にはこっちの方が上。まだポール・ギルバートの色が濃く表出する前の、「ビリー・シーンのバンド」だった頃の、輝かしき1枚。


▼MR.BIG「MR.BIG」(amazon


 というわけで、同期デビューの「有名プレイヤーによるスーパー新人バンド」を集めてみたんだけど、BADLANDSが久々聴いたらすげーカッコ良かった!

投稿: 2005 07 13 11:00 午後 [1989年の作品, Badlands, Blue Murder, Mr. Big] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005年7月10日 (日)

寝る前にこれ聴け!(2)

 微妙にまたドタバタしとります。つーわけでお茶を濁すわけではありませんが、またこのコーナーの更新をば。メタルに興味ない人スマン。けどマジで今、俺の中で十数年振りにメタルが盛り上がってるもんで‥‥ま、聴いてるのは全部10代半ば〜20代前半に聴いてたものばかりだけどね。しかも一度売り払ってしまったものを、最近はまた中古で買い直してるような状況。

 まぁ‥‥あれですよ。このメタル熱再発を記念して、近々何か面白い企画が発表できるかもしれませんよ‥‥イヒヒ。夏フェス終ったらまた会いましょうね!(ニヤリ)

 それでは今夜の3枚。テーマはズバリ『ブルージー』。声がセクシーでブルージーなシンガーのいるバンド。一部それに該当しないかもしれないけど‥‥まぁ気にするなや。


・GREAT WHITE「...TWICE SHY」('89)
 イアン・ハンター(元MOTT THE HOOPLE)ヒット曲 "Once Bitten, Twice Shy" のカバーが当時全米トップ10入りしたお陰で、このアルバムも大ヒットしたんだよね(確かアルバムもトップ10入りしたはず)。もっとも、個人的にはこれの前の「ONCE BITTEN...」の方が好きな曲多いんだけど。これはこれで「枯れた」感じが良いんです。ま、この後更に「枯れ」過ぎちゃうんですけどね。「...TWICE SHY」はやはり初来日絡みの騒動(メンバーの過去の犯罪歴が問題になり、入国できる/できない等揉め、最終的にビザが下りる)があったから、思い出深いのです。行ったなぁ、ライヴ。確か雑誌「BURRN!」のシリーズ企画「BURRNING LIVE」とかいうやつの第1弾だったんだよね。懐かしいです。


▼GREAT WHITE「...TWICE SHY」(amazon


・BAD MOON RISING「BAD MOON RISING」('91)
  元LIONのカル・スワンとダグ・アルドリッジによるバンド。バンド名は恐らくCCRの同名曲から取った、と記憶してます。LION末期のゴタゴタ(ドラムのマーク・エドワーズの事故〜バンド休止〜日本での不透明なチャリティーイベント開催、そこへのカル・スワン不参加等)を経て、いよいよ主要メンバーの2人が本格的に動き出した感が強かったよね、当時。LIONのそのチャリティーにも行ったし、BMRの初来日公演も行ったなぁ‥‥
 カル・スワンの声ってデヴィッド・カヴァーデイル(WHITESNAKE)をより隠らせてパワーダウンさせたような印象が強くて。要するに「どこまでいっても一流になれない宿命」を背負ったような声というか。ま、そのB級っぽさが好きなんですが。それこそ「ブルーズ」という気もしないでもないよね‥‥偏見かしら。ちなみにダグのギターは微妙なんだけどね。個人的にはそんなに好きなタイプではないです。ソロもそんなに印象に残らないし。けど今や彼もWHITESNAKEの一員ですからね。感慨深いですよ、それを思うと。


▼BAD MOON RISING「BAD MOON RISING」(amazon


・TESLA「PSYCHOTIC SUPPER」('91)
 オリジナルアルバムでいうと3枚目になるのかな。これの前にアンプラグドアルバム(「FIVE MAN ACOUSTICAL JAM」)が出て、それが大ヒットした後の作品なんだけど、完全に振り切れちゃってるというか、ハード&ヘヴィなんスよ。特に頭3曲("Change In The Weather" 〜 "Edison's Medicine" 〜 "Don't De-Rock Me")の怒濤の流れがスゲエ。中盤〜後半にメロウ/スロウナンバーがあるんだけど、これもアンプラグドの二番煎じってわけじゃなく、普通にブルージーなロックバンドのバラードといった印象。かなり良かったのに売れなかったのが残念。あ、東京ドームのカウントダウン(1991年大晦日。METALLICA、EUROPE、THUNDERが出演)で観たなぁ、この年の年末に。それを最後に来日してないんですよね‥‥数年前に再結成して、オリジナルアルバムまで出してるようだし、是非小さいハコでいいんで来日して欲しいなぁ。絶対に行くのに。


▼TESLA「PSYCHOTIC SUPPER」(amazon

投稿: 2005 07 10 10:35 午後 [1989年の作品, 1991年の作品, Bad Moon Rising, Great White, Tesla] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年10月27日 (水)

とみぃ洋楽100番勝負(70)

●第70回:「Head Like A Hole」 NINE INCH NAILS ('89)

 彼等‥‥というかトレント・レズナーとの出会いは、完全にGUNS N'ROSES、特にアクセル・ローズのお陰なんだよね。

 '91年春。同年9月にリリースの、約4年振りとなる新作「USE Y0UR ILLUSION 1 & 2」の完成を待たずに全米ツアーを開始したガンズ。雑誌等にライヴ・レポートが載り始めた6月頃にようやく「7月に新曲が出る。しかも映画『ターミネーター2』の主題歌だ」という情報が出回り‥‥当時はインターネットなんてなかったからね。そのツアーのブートCDが出回り始めたのも、多分この頃からかな。西新宿に通って、2枚組で1万円近くもするような、当時未発表の新曲が数曲演奏されているそのブートを前に、ただただ指をくわえるしかなかった貧乏学生の俺‥‥

 そんなガンズのブートジャケットや雑誌の写真で、必ずアクセルが着てたのが「NIN」というアルファベットをモチーフにした黒や赤のTシャツ。これが「NINE INCH NAILS」というアーティストのTシャツだと知ったのは、それからもうちょっと後のこと。

 既に'89年末にはリリースされていたNINのファースト「PRETTY HATE MACHINE」。このアルバムはリリース当時、当たり前のように話題になることもなく、当然日本でも話題にならなかったし、日本盤が出るのなんて結局ガンズ効果で話題になって'92年初頭にようやくですからね。

 俺はそのちょっと前‥‥'91年秋頃だったのかな? TVKの番組で‥‥大貫憲章だったのかな‥‥この "Head Like A Hole" のPVを放送して。「バンド名義だけど、トレント・レズナーという男のひとりユニットみたいなもんだ」という説明があって‥‥あのマネキンの頭がグルグル回るPVを初めて観て‥‥PV以上にその音にやられて‥‥DEPECHE MODEの曲調にJANE'S ADDICTIONとか当時のオルタナ系のギターとかボーカルをのせたその楽曲に一発でノックアウトされたわけですよ。「あー成る程。こりゃアクセルも気に入るわけだ」と妙に納得して。西新宿を探しまわって、ようやくUS盤「PRETTY HATE MACHINE」を見つけて。残念ながらPVのテイクとアルバムのテイクは違うのね、"Head Like A Hole" って(EPにはいろんなテイクが入ってて、当然PV用リミックスも入ってます。確か「Clay」ってバージョンがそれ)。けどさ‥‥アルバムすっげー良かったよね。その後の作品の凄みには及ばないけど、'91年に初めて聴いた時は「また新しい音楽が登場した!」って感動したもんなぁ‥‥で、翌年に "Wish"(EP「BROKEN」収録)で更に度肝を抜かれて、'94年には「THE DOWNWARD SPIRAL」が決定打になって‥‥俺にとってのNINはここで終わってるんだけど(勿論その後も素晴らしいと思うし愛聴してるけど、思い入れではここまでなのね。若かったしね俺も)、今聴いても良いものはやっぱり良い。"Head Like A Hole" も最高にカッコいいし。

 2004年。既に「THE FRAGILE」から5年ですよ。オリジナルアルバムを5年周期でリリースしてきた('89年、'94年、'99年)トレントですが、さすがに年内中に4作目のオリジナルアルバム発表は無理かな‥‥



▼NINE INCH NAILS「PRETTY HATE MACHINE」(amazon

投稿: 2004 10 27 12:00 午前 [1989年の作品, Nine Inch Nails, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年10月17日 (日)

とみぃ洋楽100番勝負(60)

●第60回:「Epic」 FAITH NO MORE ('89)

 レッチリよりも先に、恐らく「オルタナ」と当時呼ばれていたジャンルの中で一番最初に成功したのが、このFAITH NO MOREだったんじゃないでしょうか。ブレイク自体は1990年に入ってから、シングルとしてこの "Epic" という曲が全米チャートのトップ10入りしちゃったもんだから‥‥当然名前は雑誌で目にしてたので知ってたけど、曲を聴いたのはこの曲のPVを目にしたときが初めてでね。

 何だろ、これは‥‥ラップパートがあって、けどヒップホップとも違う。イントロの壮大な感じと、ビッグなギターリフ。完全にヘヴィメタルしてるギターソロ、判りやす過ぎるポップなサビ。そしてあの意外なエンディング‥‥明らかに今まで自分が接してきたジャンルとは違うものだと、すぐに理解できたけど‥‥よく判らない「凄さ」は確かに伝わってきたのね。でも、この1曲じゃ不十分だった。

 後でレンタルしてアルバムを聴いてみたら‥‥普通のハードロックあり、フュージョンぽい曲あり、ヘヴィなナンバーあり、泣きのバラードっぽいのあり、更にBLACK SABBATHのカバーあり‥‥で、結局何がやりたいの? 凄いんだろうけど、どうにもピンとこなくてね。"Epic" が凄過ぎたのかな‥‥

 ってずっと思ってたのよ、この曲を初めて聴いてから2年くらい。確かにステージでの奇行にはいろいろ惹かれるものがあったけど(脱糞するなよステージ上で)、音楽的にはね‥‥

 けどさ。俺の中でそれがやっと追いついたのが、続く「ANGEL DUST」ってアルバムが出た時。ここで俺の中で初めて重要なバンドに格上げされた気がします。

 明らかに、あの曲はいろんな切っ掛けだったんだよね。俺にとっても、そして当時の音楽シーンにとっても。この曲がヒットし出した頃から、世のハードロックやヘヴィメタルは過渡期に向かっていったからね。



▼FAITH NO MORE「THE REAL THING」 (amazon

投稿: 2004 10 17 12:00 午前 [1989年の作品, Faith No More, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年10月16日 (土)

とみぃ洋楽100番勝負(59)

●第59回:「Stone Cold Bush」 RED HOT CHILI PEPPERS ('89)

 そうか。ガンズとかエアロとかマイケル・モンローとか言ってたけど、1989年っていろんな意味で節目の年でもあったわけだね。そういった「如何にも'80年代的なバッド・ボーイズ・ロックンロール」から、「オルタナティヴ」と呼ばれる雑多なジャンルへの、ひとつの切っ掛けを作るような1年だったわけだ。

 当時の音楽雑誌「ミュージックライフ」等でも、既に「アメリカ西海岸から新しい『波』が押し寄せてきている」という記事が紹介され始めた、1989年。そんな中に名前が挙がっていたFISHBONE、JANE'S ADDICTION、そしてRED HOT CHILI PEPPERS。それぞれ、ハードロック的なスタイルの中にスカやファンク、サイケな要素等これまでのHM/HRとは一線を画するような音楽性とファッションを持った変わり者ばかり。

 その中でも一際目を惹いたのは、やはりレッチリとJANE'Sでしたね。共に女性の裸をモチーフにしたアルバム・ジャケットで、特にレッチリの方はアナログ盤で見るとそのインパクトが絶大でして。たまたま予備校の講習で千葉に出てた時に、輸入盤で見つけて買ったんだよな、これ。

 全部の曲が新鮮で、自分に取って全く新しいジャンルに感じられたんだけど、その中でも一番気に入っていたのが、ファンキーなアッパーチューン "Stone Cold Bush"。ギターのストロークとベースのスラッピングが兎に角カッコ良過ぎ。そしてアンソニーの若々しいボーカルな。ホント、ドキドキしながら何度も聴いたもん。

 そうだ。この年ってハードロックの世界では「再生組」が沢山誕生した年でもあったんだね。BLUE MURDER、BAD ENGLISH、MR.BIG‥‥勿論どれも良いと思ったけど、やはりストリートから生まれてくる音楽‥‥先のバッド・ボーイズ系だったり、レッチリ等のオルタナ系だったり‥‥の方がよりリアルに感じられたんだよね。もしかしたら、既に気づいちゃってたのかもしれないね、そういった業界の裏側みたいなものに‥‥信用するな、って。

 まぁ兎に角。レッチリは1989年に初めて出会って、何故かチャンスがなくて2002年まで生で観る機会がなかったんだよね。あ、2度チャンスを奪われてるのか‥‥1992年の、最終公演中止(よりによって、この公演のチケットしか持ってなかった)と、1997年のフジロック1年目(出発前日に肺炎でダウン)と‥‥つくづく俺にとって厄介な存在なんですわ、ええ。



▼RED HOT CHILI PEPPERS「MOTHER'S MILK」 (amazon

投稿: 2004 10 16 12:01 午前 [1989年の作品, Red Hot Chili Peppers, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

とみぃ洋楽100番勝負(58)

●第58回:「Dead, Jail Or Rock'n'Roll」 MICHAEL MONROE ('89)

 でさ。ハノイとかMOTT THE HOOPLEとか、そういったバンドばかり追ってても結局は現存しない、解散したバンドなんですよね。リアルじゃない。いや、その音そのものは「リアル」以外の何ものでもないけど、'80年代後半に10代後半を過ごす自分にとっては、エアロの「PUMP」やモトリーの「DR.FEELGOOD」、そしてガンズの「APPETITE FOR DESTRUCTION」やストーンズの「STEEL WHEELS」といったアルバムの方が、ずっとずっとリアルに響いたんですよ。何故か。それは彼等が今もなお自分が生きる瞬間と同じ時間を共有しながら活動し続けているから。そんな中からこれらの名作を出してくれたから。

 でも、元ハノイ組だって黙っちゃいない。'85年の解散後、紆余曲折ありながらも一番最初に力強く雄叫びを挙げたのがマイケル・モンローだったわけ。しかもハノイ時代よりも強靭なシャウトで。

 もうさ、タイトルが全てじゃない? のたれ死ぬか、投獄されるか、ロックンロールするか‥‥三択ですよ、三択。どれも茨の道なのですよ、当時のマイケルにとって。けど、実質一択だよね‥‥だって、どう考えたってロックンロールしかないじゃん。愚問なのよ。それを判っていながら、敢えてシャウトする。マイケル・モンロー版 "It's Only Rock'n'Roll" なんですよ、これは。

 そして‥‥俺のテーマ曲でもあるんですけどね。この曲を初めて聴いた時の衝撃といったら‥‥エアロもモトリーもガンズも、もうどうでもいいや!ってくらいにガッツポーズ取りましたもん、俺。そしてPVではそのガンズのアクセル・ローズがゲスト出演。一緒にステージで歌ってますからね。

 時代遅れでも全然構いませんよ‥‥やっぱり33才の俺にとっても、18才の俺にとっても、全く変わってないってことですから‥‥たかがロックンロール、されどロックンロール。

 Rock Like Fuck!



▼MICHAEL MONROE「NOT FAKIN' IT」 (amazon

投稿: 2004 10 16 12:00 午前 [1989年の作品, Hanoi Rocks, Michael Monroe, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年9月29日 (水)

1989

 15年前ですか‥‥まだ高校生だったよ俺。笑

 さて、実は近く「RADIO TMQ」で『1994特集』をやろうと思ってるんですよ。ほら、今年で結成10周年とかデビュー10周年ってバンド、多いでしょ?

 実はそれ以外にもブリットポップ勃発10周年とか(かなりこじつけ。ま、OASISのデビューとBLURの「PARKLIFE」が'94年ってだけだよね)カート・コバーン死後10年とか、アメリカン・パンク(GREEN DAYやOFFSPRING)のブレイクとか、ウッドストック25周年とか、ベックの登場も'94年なんですよね、奇しくも。

 日本だと奥田民生ソロデビュー、オザケン「LIFE」リリース、ミスチル「Atomic Heart」リリース、スピッツ「空の飛び方」リリース、コーネリアスもファーストアルバムをリリースしてるし、HIDEもソロアルバムをリリースしてる。そんな1994年。

 意外と面白い特集が組めると思うんですけどね。勿論邦楽は流せないわけですが。洋楽だけでもグランジ末期、ブリットポップ、ラウドロック(PANTERAが1位取ったのもこの年か)、アメリカの新しい波(ベックとかWEEZERね)‥‥ねっ、結構面白いのができると思わない?

 で、ビルボードの10年前のチャートとかを調べてたんですよ。そしたら何故か間違って15年前をクリックしちゃって‥‥それが1989年。

 5年違うだけでここまで違うか!?と思わされるチャート内容ですよ。だってハードロックがヒットチャート上にわんさかいるもん。

 1989年9月30日付けのアルバムチャート・トップ100。

 07位:SKID ROW「SKID ROW」
 08位:MOTLEY CRUE「DR.FEELGOOD」(この翌週、1位に)
 10位:WARRANT「DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICK」
 18位:GREAT WHITE「TWICE SHY」
 23位:AEROSMITH「PUMP」
 24位:ALICE COOPER「TRASH」
 35位:LIVING COLOUR「VIVID」
 37位:WHITE LION「BIG GAME」
 40位:BON JOVI「NEW JERSEY」
 41位:WINGER「WINGER」
 48位:BAD ENGLISH「BAD ENGLISH」
 49位:THE CULT「SONIC TEMPLE」
 57位:L.A. GUNS「COCKED & LOADED」
 60位:FASTER PUSSYCAT「WAKE ME WHEN IT'S OVER」
 65位:DANGEROUS TOYS「DANGEROUS TOYS」
 67位;GUNS N'ROSES「APPETITE FOR DESTRUCTION」
 70位:BANG TANGO「PSYCHO CAFE」
 74位:RED HOT CHILI PEPPERS「MOTHER'S MILK」
 77位:TESTAMENT「PRACTICE WHAT YOU PREACH」
 80位:GORKY PARK「GORKY PARK」(旧ソ連のバンド)
 84位:MR.BIG「MR.BIG」
 95位:ANDERSON,BRUFORD,WAKEMAN,HOWE「A,B,W,H」(元YES)
 97位:GUNS N'ROSES「GN'R LIES」
 99位:TANGIER「FOUR WINDS」
 100位:METALLICA「...AND JUSTICE FOR ALL」

 レッチリとかA,B,W,H辺りまでも敢えてハードロックに入れちゃったけど、まぁ時代が時代だしね。とりあえず。

 100位中25枚がHM/HR系。つまり四分の一ってことですか。つーか何に驚いたかって、俺、ここにある25枚、全部聴いた事あるってことですよ! 既に売っ払っちまったものもあるけど、この内の半数以上はまだ手元にあるからね。驚きだよマジで。

 続いて同日のシングルチャート・トップ50も。

 02位:WARRANT「Heaven」(最高2位)
 06位:SKID ROW「18 And Life」(最高4位)
 21位:AEROSMITH「Love In An Elevator」(最高5位)
 23位:MOTLEY CRUE「Dr.Feelgood」(最高6位)
 38位:BAD ENGLISH「When I See You Smile」(最高1位)
 43位:LIVING COLOUR「Glamour Boys」(最高31位)
 50位:GREAT WHITE「Once Bitten, Twice Shy」(最高5位)

 こちらは50曲中7曲がHM/HR系。所謂パワーバラード系が約半分(3曲)というのも、何となく時代を感じさせるというか。勿論これらの曲もよく知ってるし、SKID ROWやGREAT WHITEのこの曲(元MOTT THE HOOPLEのイアン・ハンターのカバー)は高校時代にバンドでコピーもしたし。

 よくよくアルバムチャートを見てみると、未だ第一線で頑張ってるのって、AEROSMITHとMETALLICA、それにレッチリとBON JOVIくらいじゃん。SKID ROWとかも細々と活動してるけど、既にボーカルも音楽性も違うしな。GREAT WHITEとか、WINGERとか、WARRANTとか‥‥確かに未だに活動してるけどね。LIVING COLOURも復活したっけ。

 ホント、時の流れを感じさせるチャートですね‥‥



▼LIVING COLOUR「VIVID」(amazon

投稿: 2004 09 29 09:09 午後 [1989年の作品] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年1月14日 (水)

MOTLEY CRUE『DR.FEELGOOD』(1989)

MOTLEY CRUEが1989年秋に発表した5枚目のアルバム、「DR.FEELGOOD」はそれまで蔓延していたグラマラスでスリージーなロックンロール路線を一喝した、非常に力強いハードロック・アルバムでした。と同時に、MOTLEYを「LAメタルで有名なバンド」から一気に「世界的に有名なロックバンド」へと導いた、記念碑的な1枚でもあるわけです。

バンドがこのアルバムをリリースするまでの2年ちょっとの間に、とにかくいろんな出来事がありました。ニッキー・シックスがドラッグで死にかかったり、同じくニッキーが2人いた!?なんていう訴訟があったり、とにかくバンドとしてはいつ解散してもおかしくない状態。それは他のメンバーも同様で、とにかく再びバンドを立て直す為に全員がクスリや酒を断ち、初めてクリーンな状態でアルバム制作に挑んだのです。プロデュースにはそれまでの作品を手掛けたトム・ワーマンの元を離れ、当時売り出し中だったボブ・ロックを初めて起用。カバー曲を一切含まない、純然たるオリジナル曲が10曲(オープニングのSEを含めると11曲)詰まった、非常に純度の高いハードロックを展開する名作を作り上げてしまったのでした。

バンドにとって初のトップ10シングルとなった "Dr.Feelgood" をはじめ、合計5曲ものシングルヒットを生み出し、アルバムもリリース後数週で初の全米ナンバー1を獲得。最終的に500万枚を超えるセールスを記録する、バンドにとっても最大のヒット作となったのです。

とにかくこのアルバム、それまでとの最大の違いは「サウンドの無骨さ」でしょうか。ただ、無骨なんだけど非常にしなやかなんだよね。そこがさすがといいましょうか。ドラムサウンドひとつ取っても、かなりエフェクトがかけられたビッグプロダクションなんだけど、逆にそういった「人工的」な部分が如何にも胡散臭いMOTLEYらしくもある。ギターにしてもマーシャルのアンプ直結といったものではなくて、エフェクターいろいろ通して作り込まれたイメージが強く、ドラムサウンドにピッタリ合ってるんですよ。AEROSMITHやGUNS N'ROSESのサウンドを「サイケな色合い」と表現するなら、このアルバムでのMOTLEYはズバリ「どぎついまでの原色」といったところでしょうか。変化球なしの直球。マッチョで男臭い。だけどメロディアス。それがこのアルバム最大の魅力でしょうね。

曲に関しては文句無し。ニッキーやミック・マーズがメインで書かれた楽曲が殆どなのですが、1曲1曲どれもが素晴らしい。ヘヴィ且つグルーヴィーな "Dr.Feelgood" といい、同じくグルーヴィーながらも後半の展開がサイケ色豊かで、ちょっとBEATLESの "I Want You" が入ってる "Slice Of Your Pie"、復活後のエアロにも通ずるアメリカンロック "Rattlesnake Shake"、誰もが名曲中の名曲と認定するであろうスピードロック "Kickstart My Heart"、2曲目のトップ10ヒットとなったバラード "Without You"、如何にもMOTLEYといったパーティーロックチューン "Same Ol'Situation (S.O.S.)"、ファンキーな "Sticky Sweet"、ちょっとCHEAP TRICK入ってる?な "She Goes Down"、メンバー曰く「ロッド・スチュアートやFACESをイメージさせる」名曲 "Don't Go Away Mad (Just Go Away)"、アルバムラストを飾るMOTT THE HOOPLE的バラード "Time For Change" ‥‥あー、どれも忘れられない名曲ばかり。18~9才の頃、ホント毎日こればかり聴いてたよなぁ俺。全部そらで歌える程ですよ。個人的にはこの年('89年)リリースされたアルバムの中でも、エアロの「PUMP」とマイケル・モンローの「NOT FAKIN' IT」と並ぶ、大傑作。今聴くとさすがにあの「人工着色料タップリな」ビッグプロダクションに時代を感じたりしますが、楽曲自体には全く古臭さは感じられず、むしろ新鮮に聴けますよね。こういったストレートなハードロックがなかなか聴けなくなってしまった今だからこそ、御本家に再びこういった直球を放って欲しいと願っているんですが‥‥

このアルバムリリース後、旧ソ連(今のロシア)でBON JOVIやオジー・オズボーン、SCORPIONS等と初のコンサートを行い、ヨーロッパ~アメリカ~日本等といった具合にまるまる1年をツアーに費やし、早くも'91年には新曲を含むベスト盤「DECADE OF DECADENCE」を発表、再びヨーロッパでショートツアー、更に幾つかのロックフェスに出演するなどして、バンドとしても頂点を極めていたわけです。となると当然、これに続く「名作」が楽しみになるわけですが、'92年2月にシンガーのヴィンス・ニール脱退(事実上の解雇)というアクシデントに見舞われ、MOTLEYの「三日天下」はアッという間に終了してしまうのでした。あーあ。ま、そういったところも含めて「MOTLEYらしい」っちゃあらしいんですけどね!



▼MOTLEY CRUE『DR.FEELGOOD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 01 14 05:22 午前 [1989年の作品, Motley Crue] | 固定リンク

2003年12月16日 (火)

SOFT BALLET『EARTH BORN』(1989)

  2002年夏に奇跡的復活を果たしたSOFT BALLET。その彼等のデビューアルバムがこの「EARTH BORN」。リリースは1989年だから、今から14年前ってことになりますか。ある意味、あの時点でこんなアルバムを作っていたってことが驚きというか、改めて聴いてみてもメッチャ新鮮なんですよね、このアルバム。

  所謂エレポップだったりテクノポップの延長線上にある作風で、例えばDEPECHE MODEであったりULTRAVOXといったUKバンドを彷彿させる、優雅さと緻密さを持ち合わせたサウンド作り/曲作りが印象的で、一歩間違うと当時主流だったTM NETWORK辺りのラインに行ってしまいそうにもなるんですが、最終的にああいう形にならなかったのは最初からコンセプトがしっかりしていた点と、遠藤遼一という個性的なシンガー、そして他の二人(森岡賢と藤井麻輝)の強烈な個性‥‥こういった濃い要素が当時日本に蔓延していた他のエレポップ/ダンス・ユニットと一線を画していたわけです。ゴス的な要素が強いのもこのユニットの強力な個性だしね。

  バックトラックは完全に打ち込み主体で、基本的にはシンセも全てプログラミングによるものでしょう。そこに所々生楽器(アコースティックピアノであったり、エレキ&亜コーステックギターであったり)が挿入される。非常に人工的で機械的な印象が強いんですが、何故かボーカルまでは機械的になりきれない。所々人工処理されたボーカルパートもあるんですが、基本的には熱っぽい遠藤のボーカルが全体を覆っている。このバランス感こそがSOFT BALLETがSOFT BALLETである所以なのかもしれませんね(そしてそういった均等を完全に解体したのが、後々連発するリミックスワークなのかな、と)。

  もうこのアルバムはオープニングの "BODY TO BODY" が全てなんですね‥‥っていうのは少々言い過ぎでしょうか。とにかくそれくらい、この曲のインパクトが強いのね。当然ながらこの俺も、リアルタイムでこの曲を聴いて衝撃を受けたひとりだからさぁ、やっぱりねぇ。ビジュアル要素のインパクトも相当でしたが、曲自体は実は非常にしっかりと作られた、ポップでメロディアスなナンバーばかりなんですよね、このアルバム。歌メロだけ取ったら普通のポップソングとして通用するものばかりだし。けど、バックトラックは非常にマニアックなんですよね。まぁマニアックとはいっても、実はこのアルバムのサウンドが一番一般受けしやすい、判りやすいサウンドなんじゃないかな、と今となっては思うわけですが。後にどんどんマニアックな方向へと突き進んでいきますからね、このユニットは。まぁそれは「売れることを拒否」した結果なのではなくて、単純に作家陣(森岡と藤井)の音楽家としての成長を意味するものなんですけどね。

  エレポップ的なものって、実は'80年代前半にかなり流行っていて、そういう意味では'89年という時代(当時はバンドブーム真っ盛り)にこの音/スタイルで勝負するということは、かなりリスキーだったはずなんですよ。しかもかなりダークだし。ところがこのユニットはそういったマイナス要素を逆手にとって、最大に武器にしてしまった。よりそういった面を増長させて、唯一無二の存在へと上り詰めるわけです。そういう意味では「早すぎたバンド」なのかもしれませんね。実際、彼等が最初の活動休止を宣言した頃、世の中は第二次バンドブームといえる「ビジュアル系」ブームだったわけですから。SOFT BALLETのようなユニットもそのルーツのひとつとして挙げられることも多いようですしね。

  そうそう、このアルバムを聴いていると、ふと同じような方向を目指していた海外のバンドを思い出します‥‥そう、NINE INCH NAILS。ほぼ同時期に誕生したといっていいこの2組。意外なほど共通点が多いような気が‥‥まぁSOFT BALLETが3人で役割分担してることを、トレント・レズナーは全部ひとりでこなしてしまっていたわけですが。

  改めて聴いてみて、本当にカッコイイと思いますよ。多少時代の流れを感じさせるサウンドがなきにしもあらずですが、十分通用すると思うし。"BORDER DAYS" とか "EARTH BORN" とか今聴いてもイケてると思うしね。復活後の彼等も好きですが、やはり思い入れでは初期の3枚なんですよね‥‥。



▼SOFT BALLET『EARTH BORN』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 12 16 12:00 午前 [1989年の作品, SOFT BALLET] | 固定リンク

2003年6月24日 (火)

ZIGGY『それゆけ!R&R BAND REVISITED』(1989)

  前作「NICE & EASY」から約3ヶ月後にリリースされた、ミニアルバム形式の1枚。4曲入りなので本来なら「EP」扱いなんでしょうけど、彼等が「ミニアルバム」と呼ぶ以上は、こちらも同じように捉えることにしましょう(実際、チャート上でもアルバム扱いでしたしね)。レコーディング自体は「NICE & EASY」とほぼ同時期に行われたようですが、あちらが海外録音なのに対し、こちらは国内録音。しかも一度レコーディングしたことのある楽曲を再レコーディングしただけ。勿論、ただ「しただけ」ではないわけですが‥‥

  恐らくロスでのレコーディングから帰国後、そのままの勢いで録音されたであろうこの4曲。メジャーデビュー前にインディーズから唯一発表されている「それゆけ!R&R BAND」という4曲入りのアナログ盤を、結成5周年記念ということで改めて録音し直してメジャーからリリースしたのがこれ。当然インディー盤の方はこの時点で既に手に入らない、プレミアものになっていたし、にも関わらずここに収められた4曲はライヴではお馴染みの曲ばかり。メジャーデビュー後にファンになった俺のような人間にとって、この企画は大変有り難いものでした。

  とにかく勢いがいい。ブレイク前夜の「勢い」がそのまま真空パック状態で収録されてます。ブラスやキーボードといったサポートメンバーが加わっているものの、基本的にはインディー盤でやったことを「この時点での技術」と「この時点でのアレンジ」で表現したものになってます。とはいっても、基本的には何も変わってないわけですが‥‥曲の良さは最初っから良かったんだもん、変えようがないわな?

  インディー盤では最後の曲がシンバルのフェイドアウトで終わっていたので、このメジャー再録音盤ではシンバルのフェイドインからスタートする形になってたり、この時期ギターの松尾がハマッてたスライドギターをふんだんに取り入れたり等、それなりに遊び心も満載。きっと余裕が成せる技なんでしょうね。

  恐らくこの手のロックンロールを好きな人なら、誰もが間違いなく「まるっきりパクリやん!」とひっくり返る1曲目"それゆけ!R&R BAND"のメインリフ。そう、某AEROSMITH(全然某じゃないし)の某曲のリフまんま。しかも歌い方というか、シャウトもまんま某スティーヴン・タイラーだし(だから全然某じゃないってば)。ま、若気の至りというか‥‥カッコイイから許されてるけどな。続く2曲目の"I CAN'T STOP DANCIN'"のファンキーなノリも、某エアロのそれに近いし。スライドギターやブラスが加わったことで、更にそれっぽくなっちゃってるし。ま、カッコイイから許されてるけどな。そして3曲目"FEELIN7 SATISFIED"は如何にも彼等らしい某HANOI ROCKS(だ・か・らぁ、全然某じゃないってば)の流れを組む、ポップでメロディアスなロックンロール。結局はこの基本ラインがあって、その後の "I'M GETTING' BLUE" や "GLORIA" が生まれたわけですからね。ハーモニカソロのシンプルさも好印象。俺の「ZIGGYで好きな曲、ベスト5」に常に入ってる1曲。ま、ハノイのパクリだろうが何だろうが、カッコイイから許されてるけどな。最後はバラード"BURNIN' LOVE"。これも某ハノイ(‥‥)の "Don't You Ever Leave Me" 辺りの流れを組む、アルペジオが印象的なイントロを持つ名曲。これもハーモニカのシンプルさが光ってます。後に「HEAVEN AND HELL II」('02)にてセルフカバーされますが、個人的にはこのモロにハノイなアレンジが大好きなんですよね。やっぱりカッコイイから許されてるんだけどな。

  ということで、いろいろ小難しいことをやろうとしてた「NICE & EASY」とは正反対の、やり慣れたことをやり易い方法で取りかかったのがこのミニアルバム。バンドとしてもひとつのピークを迎えるに当たり、ここで一旦原点を見つめ直そうとしたのかもしれません。

  このミニアルバムと同時リリースされたのが、ドラマ主題歌に起用された "GLORIA" の再発盤。その後の快進撃はご存じの通り。チャートのトップ10入り、当時放送されていたチャート番組「ザ・ベストテン」への出演、メディアへの大量露出、そしてバンドブーム‥‥初の武道館公演を成功させたのもこの頃。バンドは快進撃を続けながらも「‥‥何か違う」と違和感を感じ続ける。にわかファンの増大、第二の "GLORIA" を求める外野の声、もっとヒットシングルを‥‥そういった声に答えるかのように、ファーストアルバムに収められていたファーストシングル "I'M GETTIN' BLUE" までもが再発されるのです(が、これは思ったほどの大ヒットを記録することは出来ませんでした)。

  そういった雑音を全てはね除けるようなサウンドを求め、バンドは最初のピーク‥‥頂点へと突き進むのでした。



▼ZIGGY『それゆけ!R&R BAND REVISITED』
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投稿: 2003 06 24 12:35 午前 [1989年の作品, ZIGGY] | 固定リンク

2003年4月25日 (金)

ZIGGY『NICE & EASY』(1989)

  前作「HOT LIPS」から10ヶ月振りとなる、'89年3月リリースの通算3作目のアルバム。その10ヶ月の間、ZIGGYは何をやっていたかというと‥‥ツアーに次ぐツアー、そして'88年秋には初めてのシングルらしいシングル(それまでのシングルはアルバムからのリカットといった印象が強かった)「SING MY SONG」をリリースし、チャート上でもまずまずの成功を収め、更に翌年2月にリリースされたこのアルバムからの先行シングル"ONE NIGHT STAND"がトップ10に届きそうな勢いでヒットを飛ばしたのです。過去2枚のアルバムが好意的に受け入れられ、更にシングル曲も好調、ツアーもどんどん大規模になっていき、巷ではバンドブームなる胡散臭いムーブメントが‥‥追い風のみで遮るものは何もない状態のZIGGYは、このサードアルバムこそが真の意味での勝負作になることは判っていました。だからなのかどうか判りませんが‥‥彼等は念願の海外レコーディングを決行します。しかもその土地に選んだのが、当時のロックシーンでも主流といえるであろうロサンゼルス。GUNS N'ROSESやMOTLEY CRUEといったバンドを生んだ街でもあり、また'80年代初頭から盛り上がっていたLAメタルの中心地でもあるこの土地で、彼等は作業を行ったのです。

  そのせいもあってか、全体的にかなりカラッとした音像を持つこのアルバム。それまでの楽曲に強く出ていたウェット感が後退し、かなり埃っぽいサウンドになっています。例えば先にシングルでリリースされた"SING MY SONG"ひとつとっても、このアルバムでは再レコーディングされていて、シングルバージョンはHANOI ROCKS直系の、ポップでウェット感のあるロックンロールといったイメージだったものが、このアルバムバージョンではかなり荒々しい、男っぽくてぶっきらぼう、それでいてほんのちょっと優しさを感じるアレンジ‥‥所謂「LAバージョン」になってます。個人的趣味で申し訳ないですが、もう完全にアルバムバージョンの方がカッコイイ。シングルの野暮ったいテイクも捨てがたいんだけど、完全に「当時のバンドの勢い」を真空パックしたかのようなアルバムテイクの方が数段優れてると思うんですね。もしこのアルバムにあのシングルバージョンがそのまま収録されたとしたら、かなり浮いた存在になっていたはずだし、アルバムとしてのトータル性を考えた場合、やはりLAで再録音したのは当然だと思うし、実際シングルバージョンを超えてるんだから問題ないと思いますよ。一粒で二度おいしい程度に思っておけばいいんじゃないでしょうか。

  当然、他の曲もこういったストロングスタイルの楽曲が多く、いきなり「またAEROSMITHのパクリかよ!?」と腰を抜かしそうになる"GYPSY BLOODED"で勢いよくスタートするんですが‥‥これまでと違った印象でスタートするんですよね。ファンキーな曲調ってのも大いに関係してると思うんですが、ギターひとつ取ってもそのプレイがパワーコードによるリフではなくて、カッティングを多用したコードストロークがメインになってたり。明らかにバンドとして一段上に行こうとしてるのが見て取れます。続く2曲目"WHAT CAN I DO? (UNDER CONTROL)"もちょっとこれまでと違った色合いを見せてるし、"STARDUST BLUES"みたいに「アメリカまで来たんで、それっぽいことやってみました」的な懐の深さを見せるかのようなノリの曲まで登場。かと思えば完全にLAメタルしてる"SHOUT IT OUT LOUD"や"TAKE THE CHAIN AWAY FROM MY HEART"みたいな楽曲もあるし。勿論、これまでの彼等らしいスリージーなロックンロール("ONE NIGHT STAND"、"SWEET SURRENDER"、"SWEET SOUND OF R&R")もあるんだけど、どっちかっていうと新境地的な楽曲の方が耳に残るんだよね、それが好きか嫌いかはまた別問題なんだけどさ。バラードタイプの曲にしても、これまでの泣かせるバラードとは違って今回の"CLOSE YOUR EYES"は更に枯れた、正に男のブルーズと呼べるであろうカントリータイプの楽曲だったりするんですよね。丁度当時はLAメタル系のバンド群が皆アコースティックギターを導入したバラードで大ヒットを記録してた時代なんですね。だからってわけじゃないだろうけど、ZIGGYも多少はそういった影響を受けたのかなぁ‥‥なんて穿った見方をしてしまいたくなる程、非常にロスに感化された作風になってるんですよ、このアルバム。前作以上にハードロック色の強い、非常に'89年という時代を反映させた作風になってるなぁと。

  サブタイトルにもある通り、初の海外レコーディングで相当気合い入ってたんだと思うのね。しかもここまでかなりいい感じで地位を上げてるわけだし、ここで一発大きいアタリを当てたいはずだし‥‥しかし、このアルバムはトップ10入りこそするものの、メンバーが期待する程の大ヒットにまでは至らなかったんだわ。けどまぁ、当時もそう思ったけど‥‥過去2作と比べれば明らかに異色作だし、まだまだ練り切れてないポイントも多いのよ。だもん、大ヒットを記録しないで当然といえば当然なんだよね‥‥嫌いじゃないんだけど。どうしても"SING MY SONG"が収録されてるってことで、俺の中では結構高い評価をしてるんだけど‥‥それにしてもさぁ、このアルバムが大ブレイクの切っ掛けにはならず、その数ヶ月後に1年前に出したシングル("GLORIA")がその起爆剤になるとは当の本人達、これっぽっちも思ってなかっただろうね。ま、バンドが頂点へと登り詰める前の、過渡期的作品集とでもいいましょうか。悪いアルバムではないんで、興味を持った方はファースト、セカンド、そして4作目「KOOL KIZ」の後にでも聴いてみてください。そして"SING MY SONG"の素晴らしさに仰け反ってくださいね!



▼ZIGGY『NICE & EASY』
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投稿: 2003 04 25 12:33 午前 [1989年の作品, ZIGGY] | 固定リンク

2003年3月 6日 (木)

ENUFF Z'NUFF『ENUFF Z'NUFF』(1989)

シカゴ出身のハードロック/パワーポップ・バンド、ENUFF Z'NUFFが199年夏にリリースした、記念すべき1stアルバム。当時のメンバーは現在も在籍するボーカル&ギターのドニー・ヴィとベースのチップ・ズナフの他に、ギターにデレク・フリーゴ、ドラムにヴィッキー・フォックス(脱退後、MOTLEY CRUEのボーカル、ヴィンス・ニールのバンドに加入)の4人。もともと'80年代中盤から活動していたバンドで、1985年には既に地元シカゴのインディーレーベルからレコードを出していたらしいけど、このアルバムにてメジャーデビュー。1989年当時は丁度「メタル・バブル」の末期で、LAメタルから派生した「バッドボーイズ・ロック/スリージー・ロック」が主流で、西のGUNS N' ROSES、東のSKID ROWが人気を集めていた頃。マッチョで男性的でワイルドなサウンドが持てはやされ、第二のガンズみたいな二流バンドが次々とデビューしていた中でのデビューだったわけです。

今でこそズナフは「CHEAP TRICKの後継者」的に解釈される事が多いですが、この当時の彼等は聴いてもらえば判る通り、ちょっとサイケ色の強いハードロックといったサウンドでした。しかもルックスが、初期のPOISONも真っ青な、派手でケバケバのグラムファッション。このアルバムを聴いて「気に入った!是非前座として使いたい」と言ったAEROSMITHジョー・ペリーも、その後にMVを観て難色を示した、なんて話もあった程、ちょっと時代に逆行してるんじゃないの!?と思われてたようですね。しかし、実際のサウンドの方はかなりミュージシャン受けが良く、確か当時、BON JOVIジョン・ボン・ジョヴィやMOTLEY CRUEのニッキー・シックスなんかが高く評価してたんじゃないか、と記憶しています。

ファーストシングルでありオープニング曲でもある「New Thing」はサイケなグラムロック調の良い曲なんですが、ギターソロになるともう、時代を感じさせるというか。所謂「速弾き」が登場するわけですよ。また、ところどころに登場するハーモニクス音やチョーキングが、モロにハードロック系のそれという、如何にもなギターサウンドに、今現在の彼等しかしらないパワーポップ・ファンは引いてしまうかもしれませんが、楽曲単体として評価すると、非常に優れた曲だと思います。リリース当時から既に聴いていたわけですが(逆に俺はその「New Thing」のMVを観て気に入ったんですが)、やっぱりこの曲や、シングルヒットも果たしたサイケなバラード「Fly High Michelle」は今聴いてもいいと思うし、実際名曲と呼んでも差し支えないと思います。アレンジさえ今のズナフ風にすれば、全然2003年の楽曲として通用するはずですし。

もしこのアルバムを聴いたあなたが「パワーポップを求めて聴いたんだけど、俺ハードロックもいける口なんだよね?」って人だったら、他の曲も間違いなく気に入るでしょうね。「She Wants More」や「In The Groove」みたいなスローブルース(サイケ)ロックあり、ちょっとLAメタルに影響された?的脳天気な「Hot Little Summer Girl」あり、ポップなハードロックチューン「For Now」あり、ワイルドなロックンロール「Kiss The Crown」あり、80年代的なパワーバラード「I Could Never Be Without You」あり、ウエスタン調のイントロが味わい深い「Finger On The Trigger」あり、となかなか佳曲揃いなんです。あの当時、B級のBON JOVI崩れ、ガンズ崩れが山程いた中、やはりそれなりのオリジナリティと光るモノは持っていたようで、だからこそジョー・ペリーやニッキー・シックスみたいなビッグ・ネームが彼等に興味を持ったんでしょう。

BON JOVIやGUNS N' ROSESといったバンドの成功により、時代がよりルーツミュージック/ブルース的な方向へ流れていたためか、その後のズナフには見られないようなブルーズ色が強い楽曲が多く収録されている点も興味深いですし、既にCHEAP TRICK的手法を用いている点も特筆すべきポイントでしょう。が、これはまだまだスタート地点にしか過ぎません。今後、いろんな意味でこのバンドは成長や変化を繰り返していくことになります。それはいい意味も、そして悪い意味も含まれているのですが(ま、その辺は後々のアルバムレビューで述べることにしましょう)。

それにしても、「Fly High Michelle」という曲はリリースから13年以上も経った今聴いても、本当に色褪せない、いい曲ですねぇ。たとえその内容がソングライターであるドニーの「ドラッグのオーバードーズで亡くなった恋人」について歌われた曲であっても。だからこその美しさ、儚さなのかもしれませんね。アコースティックアレンジで聴いてみたいな、一度。



▼ENUFF Z'NUFF『ENUFF Z'NUFF』
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投稿: 2003 03 06 06:35 午後 [1989年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2003年1月31日 (金)

Theピーズ『グレイテストヒッツVOL.2』(1989)

  Theピーズの記念すべきデビューアルバムは、当時としては破格のアルバム2枚同時発売でした。もっとも、当初は「40曲入りの2枚組アルバム」としてリリースされる予定だったものが、どういったわけか結局2枚別個のアルバムとして発表、収録曲数も各16曲、計32曲入りとなってしまったのでした。当時のインタビューでも「レコード会社がそれ(40曲入り2枚組のデビューアルバム)を了解すればリリース可能」というニュアンスのことを言っていたので、最終的にはレコード会社の判断だったのでしょう。'89年11月、異常な程のバンドブームの中彼等はデビューしました。当時のメンバーは、はる(ボーカル&ベース)、アビさん(ギター)、後藤マスヒロ(ドラム)の3人。が、リリースして間もなく、ドラムのマスヒロが脱退。いきなり暗雲立ちこめる状態に陥ってしまうのでした(翌年、マスヒロは再結成した頭脳警察に参加。後に人間椅子に加入する等、現在も現役で活躍しています)。

  2枚別々に分けられたアルバムは特に1枚毎にコンセプトがあるというわけでもなく、単に流れがいいように並べた結果こうなっただけという感じ。レコーディングしたのをそのまま順々に詰め込んでいったというよりは、もっと考えて構成されているように感じられます。基本的には2~3分のパンクソングなのですが(今聴くとサウンド的にはやはり'80年代という時代を感じさせるかも)、演奏がかなりタイトで、コピーしようと思うと意外と難しく、テクニックを要する曲が多いんですよね(以前、タレントの千秋が「学生の頃、コピーしようとしたら難しくて出来なかった」と言ってたことがありましたが、正にその通り)。ギターとベースのユニゾンプレイが比較的多いんですが、これが結構曲者。だってこれらをはるは歌いながら弾いてるわけですから‥‥更にドラムもパンクのそれというよりも、かなりメタリックなプレイをしてます。その辺が如何にも'80年代的というか‥‥ギタープレイにしてもオーソドックスなロックンロールフレーズが殆どなのに、リズムが重かったりツーバスパタパタしてたりして、当時としてはかなりユニークな存在だったのではないでしょうか?(‥‥当時はそこまで気が付かなかったけど)

  実は俺、このアルバムだけはリリース当時、しっかり2枚買っていて、マスヒロ在籍時のライヴも観ているんですよ(確かカステラ等が出演したイベントだったはず)。当時はピーズよりもカステラの方が好みだったので、結局はその後のマスヒロ脱退も影響して、ちゃんと追ってこなかったんですよね。が、一昨年に出たベスト盤、そして昨年夏の奇跡的復活、更には周りの人間の多くがピーズの魅力について語りだし‥‥自分まで影響されてしまい、最終的には昨年12月にとうとう復活ピーズを観るにまで至ったという。というわけで、ここら辺で各アルバムについて少しだけ語ってみたいと思います。

『グレイテストヒッツVOL.2』解説

  個人的には当時"バカになったのに"に匹敵する程好きだった"肉のうた"から勢いよくスタートする「~VOL.2」。基本的にはシングル曲は1曲も入っていないわけですが、そんなのは全然関係なし。基本的には2枚でひとつのアルバムなので。ここには「作詞:あさかわ いさみ」による楽曲が2曲("1等賞"と"階段")収められ、それ以外は全てはるの手によるもの。この「あさかわ いさみ」氏ですが、各アルバムのジャケットやブックレット内のイラスト全てを手掛けている人でもあるのですが、当時はどういった人なのか全く知りませんでしたが、この程この人が現FIRESTARTERのベーシスト、SAMMY氏であることが判明。当時から彼等は交流があったようですね(そう考えると、後にピーズに加わるドラムのウガンダは後にそのFIRESTARTERのFIFI氏と共にTWEEZERSというスーパー・パワーポップバンドを組み、その流れでSAMANTHA'S FAVOURITEに加わるわけですから、世の中狭いもんです)。

  ピーズの(特に初期の)歌には「デブ」「ブス」「バカ」といった言葉がよく登場し、それらコンプレックスを感じさせる言葉を逆手にとって、聴き手が思わず笑ってしまうような歌詞に乗っけたりしてます。聴く人によっては「差別的だ」と毛嫌いするかもしれないクセの強い歌詞ですが、逆にこういった歌詞を一緒になって大声張り上げて歌ってしまう辺りに、俺は「そんなの生きてく上で、ほんの些細なことだ」と笑ってけ飛ばしてしまうような力強さを感じてしまいます。そういったところに多くの人が惹き付けられていったのかもしれませんね。

  ミディアムでとても綺麗なメロを持った曲に"バイブレーター"なんて歌詞を乗っけたりしてしまうセンスは、さすがだと言わざるを得ません。凡人には考えつかない、いや、躊躇して出来ないであろうことを簡単にやりのけてしまうはるに脱帽(いや、そこまで考えてないという話もありますが)。

  それにしても‥‥"気ばらしのバット"、"中国たばこ"、"悪魔の渋谷"、"ブスだからい-や"、"バカになったのに"(以上「~VOL.1」)、"肉のうた"、"デブ・ジャージ"、"パープー"、"夢のリーゼント"、"なっとーばかりくっててもいいのか"、"カラーゲ"(以上「VOL.2」)というタイトルだけでも、一体このバンドはどういう歌を歌うバンドなのか、そしてどんな音を出すバンドなのか、普通なら全く想像が付かないでしょうね? そして、そんなタイトルとは相反するようなカッコイイサウンドとプレイを聴かせ、耳に馴染みやすいポップなメロを持った曲だなんて、思いもしないでしょうね。そこがピーズの良さであり醍醐味でもあるんですけどね。

  今聴くとその後のアルバムとは若干方向性やサウンドに違和感を感じなくもないですが、根本にあるものは結局今現在と何も変わってないように思います。間もなくリリースされる復活作「Theピーズ」と聴き比べて(あるいは歌詞を読み比べて)みるのもいいかもしれません。ちゃんとそれなりの年の取り方をしてきたのか、それとも相変わらず何も変わってないのか‥‥新作を聴いて興味を持った人は是非聴いてみて欲しい2枚ですね。既に14年前からこういうことをやってたんだという‥‥ねっ? そして現在活躍する多くのバンドにどれだけの影響を与え続けたかを、ここぞとばかりに感じ取ってくださいね。

  嗚呼‥‥今夜も我が家ではエンドレスでピーズサウンドが爆音で響いております‥‥



▼Theピーズ『グレイテストヒッツVOL.2』
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投稿: 2003 01 31 03:38 午前 [1989年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

Theピーズ『グレイテストヒッツVOL.1』(1989)

  Theピーズの記念すべきデビューアルバムは、当時としては破格のアルバム2枚同時発売でした。もっとも、当初は「40曲入りの2枚組アルバム」としてリリースされる予定だったものが、どういったわけか結局2枚別個のアルバムとして発表、収録曲数も各16曲、計32曲入りとなってしまったのでした。当時のインタビューでも「レコード会社がそれ(40曲入り2枚組のデビューアルバム)を了解すればリリース可能」というニュアンスのことを言っていたので、最終的にはレコード会社の判断だったのでしょう。'89年11月、異常な程のバンドブームの中彼等はデビューしました。当時のメンバーは、はる(ボーカル&ベース)、アビさん(ギター)、後藤マスヒロ(ドラム)の3人。が、リリースして間もなく、ドラムのマスヒロが脱退。いきなり暗雲立ちこめる状態に陥ってしまうのでした(翌年、マスヒロは再結成した頭脳警察に参加。後に人間椅子に加入する等、現在も現役で活躍しています)。

  2枚別々に分けられたアルバムは特に1枚毎にコンセプトがあるというわけでもなく、単に流れがいいように並べた結果こうなっただけという感じ。レコーディングしたのをそのまま順々に詰め込んでいったというよりは、もっと考えて構成されているように感じられます。基本的には2~3分のパンクソングなのですが(今聴くとサウンド的にはやはり'80年代という時代を感じさせるかも)、演奏がかなりタイトで、コピーしようと思うと意外と難しく、テクニックを要する曲が多いんですよね(以前、タレントの千秋が「学生の頃、コピーしようとしたら難しくて出来なかった」と言ってたことがありましたが、正にその通り)。ギターとベースのユニゾンプレイが比較的多いんですが、これが結構曲者。だってこれらをはるは歌いながら弾いてるわけですから‥‥更にドラムもパンクのそれというよりも、かなりメタリックなプレイをしてます。その辺が如何にも'80年代的というか‥‥ギタープレイにしてもオーソドックスなロックンロールフレーズが殆どなのに、リズムが重かったりツーバスパタパタしてたりして、当時としてはかなりユニークな存在だったのではないでしょうか?(‥‥当時はそこまで気が付かなかったけど)

  実は俺、このアルバムだけはリリース当時、しっかり2枚買っていて、マスヒロ在籍時のライヴも観ているんですよ(確かカステラ等が出演したイベントだったはず)。当時はピーズよりもカステラの方が好みだったので、結局はその後のマスヒロ脱退も影響して、ちゃんと追ってこなかったんですよね。が、一昨年に出たベスト盤、そして昨年夏の奇跡的復活、更には周りの人間の多くがピーズの魅力について語りだし‥‥自分まで影響されてしまい、最終的には昨年12月にとうとう復活ピーズを観るにまで至ったという。というわけで、ここら辺で各アルバムについて少しだけ語ってみたいと思います。

『グレイテストヒッツVOL.1』解説

  いきなりギター&ベースのユニゾンがカッコイイ"全部あとまわし"からスタートする「~VOL.1」の方は、1曲だけカステラのトモとの共作による"中国たばこ"以外は全部はる作詞作曲による楽曲。基本的にはアッパーでパンキッシュでポップなメロを持った楽曲がメインで、中にはかなりメタリックなプレイを聴かせる"汗まみれ"、気の抜けたイメージがありながらも演奏がかなりタイトな"ブスだからいーや"みたいな曲もあって、既にデビュー当時から楽曲のバラエティ豊かさの片鱗は見えていたわけです。

  個人的には「~VOL.2」よりもこっちの方を聴きまくった記憶があります。というのも、シングル曲にもなった"バカになったのに"が入ってるのが大きいんですよね。当時、この曲はリリースと同時期に開局した千葉県初のFM放送局「Bay FM」の深夜のリクエスト枠でよくかかってたんですよ。所謂チャート番組でして、毎晩明け方まで所謂J-POPものから、当時全くマイナーだったNEWEST MODELやボ・ガンボス、フリッパーズ・ギター等が毎晩のように流れ、その中にこのピーズもいたわけです。だから、"バカになったのに"を聴くと、当時受験勉強をしながら夜遅くまで聴いてたそのラジオ番組を思い出すわけです(バンドブーム自体は当時はクソと思ってましたが、今思うと本当にいい時代だったと思いますマジで)。

  ピーズ・ソングの三本柱である「日常の些細な出来事(恋愛系も含む)」「エロ」「自分を見つめる深い精神世界」の内、この頃は前者2つがまだメインだったように感じられます(後に、アルバムを重ねる毎に3番目の要素が占める割合がどんどん高くなっていき、その結果活動停止となるわけですが‥‥)。当時は「バカロック」だとか「ポコチンロック」なんて呼ばれていましたが、それも今となっては懐かし話。呼び名なんてどうでもいいんですよ。ユニコーンやブルーハーツ、JUN SKY WALKER(S)といったバンドばかりが持てはやされる中、こういったバンド達がシーンの底辺を支えていたという事実。そして紆余曲折ありながらも、最後に残ったのはどういうバンドだったか‥‥それは皆さんがよくご存じでしょう。

  今聴くとさすがに時代を感じさせる歌詞もあるにはありますが、基本的にはどれも2003年の今聴いても全く色褪せておらず、全然通用すると思いますが、如何でしょうか?



▼Theピーズ『グレイテストヒッツVOL.1』
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投稿: 2003 01 31 03:35 午前 [1989年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

2000年7月22日 (土)

DEAD END『ZERO』(1989)

今回のテーマは「ヴィジュアル系好きにもアピールするHM/HR」ということで、その元祖的存在ともいえるDEAD ENDのラストアルバム(通算4枚目)「ZERO」('89年)を紹介しよう。まず最初にお断りしておきたいのは、DEAD ENDはデビュー時こそメタルバンドとして取り上げられ、実際にそのようなスタイルだったが、彼等はいい意味でアルバム毎に変化していき、このラストアルバムではついにHM/HRとは呼び難い音楽スタイルを作り上げた。今の時代だったら音を聴いて「ヴィジュアル系」の一言で片づけられてしまうかもしれない。が、これがリリースされた1989年当時は問題作として取り上げられたのをよく覚えている。つまり「これはメタルか否か?」と‥‥

まずアルバムを聴いて驚くのは、あるバンドにそっくりだということだろう。とにかく1曲目"I Want Your Love"のドラムパターン、イントロのギターフレーズ、コード進行、ボーカルの低いトーンから入ってサビで爆発するパターン‥‥まるでL'Arc~en~Cielじゃん!?(笑)いや、これの場合ラルクが似ているのだが。この曲以外にも現在のラルクの楽曲に通ずるスタイルを見出す事が出来るし、聴く人が聴けばLUNA SEAにも共通するところもある。ヴィジュアル・イメージも初期のLUNA SEAに似てるし‥‥って別にヴィジュアル系のネタばらし大会をするつもりはない。ぶっちゃけた話、今のヴィジュアル系のルーツにはX JAPANとDEAD ENDの影響が大きいと言いたかったのだ(勿論その他にも沢山の先人達がいたのだが、代表的なという意味でこの2つを挙げてみた)。

DEAD ENDはインディーズからの「DEAD LINE」('86年)、メジャー1枚目「GHOST OF ROMANCE」('87年)ではメタル以外の何者でもない音楽を提供している。アクが強くて聴く者を選んでしまうような「魑魅魍魎」な詞の世界などは、初期のLUNA SEAやラルクにも共通するものがある。実際にラルクはインディーズ時代に黒夢と共演した際に、自らのルーツを紹介する意味でDEAD ENDの曲を何曲かカヴァーしている。その後メジャーデビューしてからも度々DEAD ENDの曲を取り上げ、あろう事か初の武道館公演でも1曲演奏しているのだ(その模様はセル・ビデオとして流通している)。

メンバーがDEAD ENDが大好きだったという事実以外にも、ラルクとDEAD ENDには共通の人物が2人いる。ひとりはラルクのアルバム「TRUE」('96年)まで在籍していたドラマーのSAKURA(翌年春、麻薬所持の為逮捕、脱退となり、昨年ZIGZOというバンドでシーンに復帰している)。彼はラルク加入前、DEAD ENDのドラマー、MINATO(湊雅史)のローディーをしていた経験がある。DEAD END事実上のラストライヴとなってしまった日比谷野音でのライヴを収めた2枚組アルバム「DEAD END」('90年/現在は2枚別々に売られている)のブックレット内のスペシャルサンクス欄の中には彼の名前が載っているので、興味がある人は探してみるといいだろう(勿論、本名でだが)。まぁこの手の事実は、よくある「ラルクの謎」みたいな下世話な本を探せばよく載っているはずだが。

ふたり目は『ラルク第5のメンバー』ともいえる、プロデューサーの岡野ハジメだ。彼は'80年代にPINKというバンドでベースを弾いていた(このバンドには当時布袋寅泰とも活動を共にし、現在はPUGS等で活躍する、ホッピー神山も在籍)。その彼がDEAD ENDのメジャー第2弾(通算3作目)「SHAMBARA」('88年)のプロデュースを手掛ける事によって、DEAD ENDの音楽の幅はどんどん広がっていった。この「ZERO」も岡野のプロデュース作品で、ここではプロデューサー以上の仕事をしていて、作曲陣にも加わっているのだ("I Want Your Love"や"Crash 49"、そしてシングルナンバーでもあった"So Sweet So Lonely"にメンバーとの連名としてクレジットされている)。その結果、このラスト作は前作以上にHM/HRとはかけ離れたスタイルを築き上げた。当時こういう音を出していたバンドは他にはいなかったという意味で彼等は先駆者であり、残された作品は今も色褪せていない。特にこのアルバムは2000年という現在にも通用すると思う(事実、知り合いに何も言わずに聴かせたら、ラルクの未発表曲だと思ったそうだ)。

さて、最初に述べた「これはメタルか否か?」の問いだが‥‥リリース当時、俺はこのアルバムを聴いて絶望したのをよく覚えている。「SHAMBARA」まではギリギリ耐えられた。が、これはもはやHM/HRではない。そう思ったのだ。結局、レンタルでダビングしたテープを殆ど聴かないまま、この作品は忘れ去られていた。

それから10年近く経ってから彼等のベスト盤に手を出して改めてそれらの楽曲に触れ、何ら違和感を感じなかったのだ。初期の曲は今聴くとちょっと辛いかもしれないが、「SHAMBARA」や「ZERO」の楽曲は今の時代にもアピールするんじゃないか? いや、下手なB級ヴィジュアル系より比べ物にならない位にいい。そして、ラルクやLUNA SEAとの共通点を見つけだした‥‥10年前の俺には「メタルじゃない」という偏見があったからこのアルバムを嫌ったけど、それは間違いだった。これは名盤だ。もし日本のロックの歴史を振り返る企画があったら、是非挙げたい1枚である。

「猿にも解るメタル講座」という観点から考えれば、「SHAMBARA」の方がコンセプトに適合しているのかもしれない。しかし、取っつき易さや切っ掛けとしてはこの「ZERO」の方が効果絶大である。現在DEAD ENDのアルバムはどれも2,000円前後で手に入れる事が出来るし、'97年にはベスト盤「ALL IN ONE」もリリースされた。解散してから7年後にである。これが何を意味するか、判ってもらえるだろう。あの頃('89年前後)、BUCK-TICKといったバンド達がブレイクしていく中、結局最後まで外野からは「メタルだ」と呼ばれ、メタル村からは「もうメタルじゃない」と敬遠された。スタイル/音楽性が新しかった、ただそれだけの為に。何かこれって、今回のテーマにピッタリじゃないか?

今からでも遅くない。このアルバムで興味を持ったら「SHAMBARA」も気に入るはずだし、心配ならベスト盤に手を出せばいい。とにかくこの企画にはうってつけの『入り口』だと思うから‥‥



▼DEAD END『ZERO』
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投稿: 2000 07 22 07:50 午前 [1989年の作品, DEAD END] | 固定リンク