カテゴリー「1991年の作品」の59件の記事

2019年7月31日 (水)

BAD ENGLISH『BACKLASH』(1991)

1991年8月にリリースされた、BAD ENGLISHの2ndアルバムにしてラストアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて同年9月に発売されました。

パワーバラード「When I See You Smile」が全米1位を獲得し、続く「Price Of Love」も全米5位まで上昇。これを受けてアルバム『BAD ENGLISH』(1989年)も100万枚を超えるセールスを記録するなど、さすがJOURNEY+THE BABYS(というかジョン・ウェイトのソロアーティストとしてのネームバリューか)なスーパーバンド、いきなり素晴らしい結果を残します。

で、続く2ndアルバムは60分強というボリューミーな前作から一転、全10曲で48分という非常に聴きやすい“アルバム本来の形”に収まっています。

プロデューサーは前作のリッチー・ズィートから“産業ロック王”ロン・ネヴィソン(HEART、SURVIVOR、DAMN YANKEESなど)に交代。若干硬めだった質感が、本作ではもう少しナチュラル、だけど高品質というバランスに生まれ変わっています。

また、前作には先の「When I See You Smile」のように外部ライターが手がけメンバーは一切作曲に関わっていない楽曲も複数含まれていましたが、本作はダイアン・ウォーレンやラス・バラッド、マーク・スピロなど著名なソングライターが参加しつつも、それらがすべてジョン・ウェイト(Vo)やジョナサン・ケイン(Key)、ニール・ショーン(G)らとの共作となっています。このへんは前作での経験によるものなのか、はたまたロン・ネヴィソンによるものなのかはわかりませんが、バンド感が強まるという点においては好印象かもしれません。

とはいえ本作、意外と地味なんですよ。前作も決して派手ではなかったけど、さらに輪をかけて地味になっている印象を受けます。まあ視点を変えれば、それは“こなれてきた”という証でもあるのかなと。別の言い方をすれば、しっかり大人のメンバーたちが余裕を持って“遊んでいる”ということなのかもしれません。

でもね、その地味さ加減が嫌いになれないのも、また本作の魅力といいますか。アコースティックギターを前面に打ち出した「Time Stood Still」や、AOR調の「Savege Blue」など、ミディアムテンポのバラードナンバーが相変わらず素晴らしいのです。まあ、10曲という限られた曲数のうち、ミディアム/スロウナンバーが4曲というのはちょっとどうかと思いますけど、“大人のハードロック”という解釈をすれば全然ありなのかもしれません。

ただ、残念なのが突出した1曲がないこと。同じパワーバラードにしても、本作の「The Time Alone With You」は「When I See You Smile」同様にダイアン・ウォーレンが関わっているのに、突き抜けていない。あと一歩なんですよね……そういう楽曲が少なくないことは、実は好調なようで裏では陰りが見え始めていた当時の状況が反映されているようで、怖くもあります。だって、本作リリースから数ヶ月後には解散しているわけですから……。

ジョン・ウェイトの歌声は相変わらず素晴らしいし、ニール・ショーンも的確なギタープレイで聴き手を楽しませてくれる。ジョナサン・ケインは相変わらずシンセ前に出過ぎだし、ディーン・カストロノヴォのドラムも馬鹿デカイ。あとひとりは……まあいいや。戦争後の不景気だったり、HR/HMブームの終焉だったりいろいろ要因はあったとはいえ、バンドって終わるときはあっけないんだなと思わされた、苦い1枚です。

 


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2019年7月25日 (木)

OUTRAGE『THE FINAL DAY』(1991)

OUTRAGEが1991年10月に発表した、通算4作目のオリジナルアルバム。

過去3作は国内で制作され、良くも悪くも“NWOBHM以降のHR/HM+METALLICA以降のスラッシュメタル”を適度なバランスでミックスされたヘヴィメタルサウンドが中心で、「日本にはいないタイプ」という意味では素晴らしかったし、決して悪くはないんだけど「もう一声……」という思いが正直あったのは事実。特に前作『THE GREAT BLUE』(1990年)のときにそれを強く感じた記憶があります。

ですが、この4thアルバムはそれまでの制作環境を一新し、ドイツ・ケルンでのレコーディングを敢行。さらに、プロデューサーに元ACCEPT(当時)のステファン・カウフマンを迎え、バンドとして新境地に突入したことをアピールしました。

結果、これまで以上にサウンドが“生きもののようにうねっている”のが本作最大の特徴。オールドスクールなヘヴィメタルをベースにしつつ、パンクロックやスラッシュメタルの無軌道さを巧みに取り入れた“OUTRAGEらしさ”がついに確立されたのかな……そんな印象を強く受ける、強烈な力作に仕上がっています。

オープニングの「My Final Day」から間髪入れずに続く「Madness」への構成、および2曲の楽曲としての強力さには目を見張るものがあり、この2曲だけで本作が過去3作とは異なるベクトルを向いた意欲作であることが伺えるはずです。

その後、ヘヴィなミドルチューン「Follow」で一度ストーンと落としたあとに「Wings」「Sad Survivor」で再び血湧き肉躍るテンション高めの曲が続く。後半は「Visions」のようなシリアスなミドルナンバーがあったかと思えば、静と動を巧みに使い分けた傑作「Veiled Sky」、男臭さとセンチメンタリズム、泣きの要素がよき配分でミックスされたバラード「River」と聴かせる曲があったりして、ラストは再びファストチューン「Fangs」で締めくくり。トータルで41分半というトータルランニングも絶妙ですし、本当に文句のつけどころがない1枚だと思います。

タイミング的に、METALLICAがブラックアルバムを発表した2ヶ月後ぐらいで、あちらはミドルヘヴィを中心とした新機軸を築き上げたものの「もっと速い曲も聴きたいのに……」と不満を感じ始めていた時期。そんな中、緩急が最高のバランスの本作が届けられて「そうそう、これが聴きたかった!」と歓喜したリスナーは少なくないはず。もし日本のHR/HM史を語ることがあったら、間違いなく重要作として真っ先に挙げるべき1枚だと思います。リリースから30年近く経った今聴いても、まったく色褪せない傑作です。

 


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2019年7月 4日 (木)

ALICE COOPER『HEY STOOPID』(1991)

1991年7月にリリースされた、アリス・クーパー通算19作目のスタジオアルバム。前作『TRASH』(1989年)で収めた成功をフォローアップするために制作された本作は、前作以上に多数のソングライター&ゲストが参加した豪華な内容となっています。

「Poison」(全米7位/全英2位)や「House Of Fire」(全米59位/全英65位)などの好記録もあり、アルバム『TRASH』は全米20位/全英2位という久しぶりのヒット作に。時代的にもギリギリHR/HMがシーンでもてはやされ、また制作時は景気的にもギリギリ不況に陥る前だったこともあり、この『HEY STOOPID』にはかなりの大金が注ぎ込まれたのではないか……そのサウンドプロダクションやゲスト陣を前にすると、改めてそう実感します。

プロデューサーにピーター・コリンズ(RUSHQUEENSRYCHEゲイリー・ムーアなど)を迎えた本作は、『TRASH』以上に産業ロック色の強い、きめ細やかなサウンドを伴う非常に“作り込まれた”1枚。ソングライティングは基本アリスとジャック・ポンティが軸になっていますが、「Dangerous Tonight」では前作での立役者デズモンド・チャイルド、「Feed My Frankenstein」ではゾディアック・ワープマインド、「Die For You」ではニッキー・シックス&ミックマーズ(MOTLEY CRUE)とジム・ヴァランスがそれぞれ関わっています。

で、特筆すべきなのはゲスト陣。タイトルトラック「Hey Stoopid」にはスラッシュ(G/GUNS N' ROSES)&ジョー・サトリアーニ(G)、オジー・オズボーン(Vo)が参加。それぞれ聴けばすぐにわかるくらいの個性を発揮しています。オジーなんてまんまだからね(笑)。

そのほか、「Burning Our Bed」「Little By Little」「Wind-Up Toy」にもジョー・サトリアーニ、「Feed My Frankenstein」にはニッキー・シックス(B)、スティーヴ・ヴァイ(G)、ジョー・サトリアーニ、「Hurricane Years」「Dirty Dreams」にはヴィニー・ムーア(G/彼は本作のツアーにも一部参加しました)、「Die For You」にはミック・マーズ(G)……と、クレジットを羅列するだけで文字数稼げてしまうくらい(笑)。

これだけ豪華なんだもん、出来が悪いわけがない。曲も良い、サウンドも良い、演奏も抜群。個人的には「Might As Well Be On Mars」みたいにドラマチックな曲がお気に入りです。

(そういえば、「Feed My Frankenstein」は映画『ウェインズ・ワールド』でも使用され、アリスも劇中に登場しましたね。懐かしい……)

ですが本作、先に記したように不景気に突入し、それによってウケる音楽の傾向も80年代的ハデなものからダークでシンプルなものへとシフトしていき(そう、1991年ってグランジ元年ですものね)……「Hey Stoopid」(全米78位/全英21位)、「Love's A Loaded Gun」(全英38位)、「Feed My Frankenstein」(同27位)とイギリスでこそまずまずのシングルヒットを残したものの、アルバム自体は全米47位/全英4位止まり。アメリカでの売り上げは前作の半分(50万枚)程度で終了しています。

そういえば、本作発売後にはJUDAS PRIESTMOTORHEAD、DANGEROUS TOYS、METAL CHURCHといったレーベルメイトとともに移動式フェスツアー『OPERATION ROCK & ROLL TOUR』も実施したのですが、不景気の煽りを受け31公演を終えたところで終了したという話も。あの時代を通過していない世代にはわかりにくい話かもしれませんが、結構深刻だったんですよ、あの頃は(と、急にオッサン目線)。

まあ、何はともあれ。あと1年早くリリースされていたら『TRASH』並みのヒット作になったはず。それくらい、力の入った(&お金をつぎ込んだ)隠れた名盤です。

 


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2019年5月29日 (水)

GENESIS『WE CAN'T DANCE』(1991)

1991年10月にリリースされた、GENESIS通算14枚目のスタジオアルバム。フィル・コリンズ(Vo, Dr)、マイク・ラザフォード(G, B)、トニー・バンクス(Key)という“メガヒット期”の黄金トリオでの最後のアルバムにして、前作『INVISIBLE TOUCH』(1986年)や前々作『GENESIS』(1983年)にも匹敵する大ヒット作(全英1位/全米4位。イギリスでは過去最高の5×プラチナム、アメリカでも4×プラチナムを記録)となりました。

また、前作ほどではないものの、「No Son Of Mine」(全英6位/全米12位)、「I Can't Dance」(全英7位/全米7位)、「Hold On My Heart」(全英16位/全米12位)、「Jesus He Knows Me」(全英20位/全米23位)、「Never A Time」(全米21位)とヒットシングルも多数誕生しています。

ヒュー・パジャムをプロデューサーに迎えた『GENESIS』『INVISIBLE TOUCH』の2作でシンセポップ路線を確立させたGENESISでしたが、ぶっちゃけフィル・コリンズのソロとの違いはどこにあるのか……という疑問が生まれたのもまた事実。特に『INVISIBLE TOUCH』はその方向性が顕著で、それもあってシングルがバカ売れしたのもあったんじゃないでしょうか。

ところが、フィルのソロが80年代末から内省的な方向へとシフト。その余波はバンドの路線にも多少なりとも影響……したと言えるのではないでしょうか。

特に、今作の序盤は「No Son Of Mine」「Jesus He Knows Me」「Driving The Last Spike」といつになくシリアス路線です。特にこの3曲はロック色も強まっており、アップテンポの「Jesus He Knows Me」や10分にもおよぶ「Driving The Last Spike」からは“もともとはプログレバンドだったんだよね、俺たち”という強いこだわりも見え隠れします。

かと思えば、打ち込みを多用したダウナーなダンスポップ「I Can't Dance」があったり、AOR的なミディアムバラード「Never A Time」、プログレポップ=ポンプ的路線の「Dreaming While You Sleep」、アダルトロックな「Tell Me Why」や「Living Forever」、フィル・コリンズらしい王道バラード「Hold On My Heart」など聴き手を選ばない心地よいテンポ感/サウンドの楽曲が続きます。とはいえ、どの楽曲もアレンジまで含め非常にきめ細やかに作り込まれたものばかりで、隙を一切見せることはない。

さらに、終盤に入ると再びダークなアダルトロック「Way Of The World」、スタンダード調のバラード「Since I Lost You」と続き、最後は再び10分強のモダンなプログレナンバー「Fading Lights」で幕を下ろします。

全12曲で71分という非常に長いアルバムですが、プログレバンドとしての意地とヒットメイカーとしての誇り、そしてアーティストとして現状維持を望まない成長ぶりなどいろんな要素が凝縮された結果、このボリュームとなったのでしょう。結果、フィルはここでバンドとしてやり尽くしてしまったが故に脱退を選ぶことになるのですが。

ポップアルバムとしての『INVISIBLE TOUCH』の完成度の高さは疑いようがありませんが、片やロックアルバムとしての極みは本作にて表現されている。それも間違いない事実なわけです。個人的にはGENESISのアルバムでもっとも好きな1枚です。

 


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2019年5月22日 (水)

BADLANDS『VOODOO HIGHWAY』(1991)

1991年6月発売の、BADLANDS通算2作目のスタジオアルバム。デビュー作『BADLANDS』(1989年)発表後にエリック・シンガー(Dr)が脱退(のちにアリス・クーパー・バンド→KISSへ)。代わりにジェフ・マーティンが加入します。ジェフはRACE-Xではシンガーでしたが、もともとはドラマーとして音楽活動をしていたとのこと。当時はそういった事実を知らなかったので、このパート変更に驚いたものです。

さて、ジェイク・E・リー(G)を中心に、BLACK SABBATHなどで活躍したレイ・ギラン(Vo)を迎えて結成されたこのバンド。デビューアルバムではジェイクのブルース趣味と産業ハードロック色が絶妙なバランスでミックスされた良作でしたが(このへんはプロデューサーのポール・オニールの手腕によるものが大きいのかなと)、本作では産業ハードロック色が後退し、生々しいブルースロック/ハードロックが展開されています。

レイの圧倒的なボーカルはそのままに、彼の力量を見事に活かしたブルースフィーリングに溢れた楽曲群は、前作の路線を好んでいたリスナーには少し地味に感じるかもしれません。が、その完成度はなかなかのものがあり、生々しいサウンドプロダクション(そう、ここも前作とは相反する色付けなんですよね)と相まって非常にカッコよい仕上がりとなっています。

いわゆる“ウェル・メイド”なサウンドから、80年代末あたりを起点により“ロウ(生)”っぽいサウンドが好まれるようになりだしたのもあり、このアルバムは(ハードロック/ヘヴィメタルがオン・タイムかどうかは別として)非常に時代感のある作りではないかと、今聴くとそう思えてきます。事実、このアルバムが発売された1991年、この数ヶ月後にNIRVANAPEARL JAMといったシアトル勢がメジャーデビューすることを考えると、なるほどと納得するものがあるんですよね。

さてさて。ジェイクのギターは要所要所で速弾きも飛び出しますが、それはオジー・オズボーンのところで聴かせた80年代らしいものとは異なるタイプで、あくまでブルースロックをベースにしたフリーキーなもの。リフは相変わらずカッコいいんだけど、以前と比べたらシンプルで単調なものが増えているかもしれません。が、良く捉えればそれはあくまでこれらの曲調に合わせたものであり、そういう意味でもバランス感に優れた作品だと思います。

ジェフのドラミングもテクニカルというよりは、地味ながらも曲に合った、的確なプレイが中心。グレッグ・チェインソン(B)のベースと合わせて、リズム隊は前に出過ぎることなくギターとボーカルをバックアップすることに終始徹している印象です。

セールス的には惨敗したものの(全米140位)、個人的には1stアルバムよりもお気に入りの1枚。前作同様、現在ストリーミングサービスにはBADLANDSのメジャー作2枚は配信されておらず、iTunesなどでのダウンドード販売も国内流通なし。本当、勿体なさすぎですよ、ワーナーさん!

 


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2019年1月 4日 (金)

SIMPLY RED『STARS』(1991)

1991年10月にリリースされた、SIMPLY REDの4thアルバム。アメリカでは76位と、過去の作品と比べて低調で終わっていますが、本国イギリスでは前作『A NEW FLAME』(1989年)に続く1位を獲得。「Something Got Me Started」(全米23位/全英11位)、「Stars」(全米44位/全英8位)、「For Your Babies」(全英9位)、「Thrill Me」(同33位)、「Your Mirror」(同17位)とヒットシングルが多数生まれたこともあり、イギリスだけで300万枚を超えるメガヒットを記録しました。

ソウルやR&B(ブルー・アイド・ソウル)を軸にしながらも、サウンド的にはハウスやジャズファンクなど当時流行していた最新のダンスミュージックも取り入れられており、ポップス層からクラブ層まで幅広く受け入れられた1枚だったような記憶があります。

この当時、メンバーとして屋敷豪太(Dr, Programming)が参加していたことでも大きな話題となりましたが、まあとにかく1曲1曲の完成度が異常に高い。シングルヒットした「Stars」や「For Your Babies」のポップミュージックとしての存在感の大きさ、「Your Mirror」のジャズの影響下にありながらもマイケル・ジャクソン級のソウル感、「She's Got It Bad」のファンクロックとしてのグルーヴ感、「Model」に漂うダビーな空気など、桁外れの楽曲がずらりと並ぶのですから、そりゃ売れるわけですよ。

そして、こういった楽曲を時に優しく、特にファンキーかつセクシーに歌い上げるミック・ハックネル(Vo)のボーカリストとしての力量も、ハンパないったらありゃしない。加えて、そのバックを支えるプレイヤー人の演奏力。そつなくこなしているようで、実はめちゃくちゃ高い技術の上で成り立っていることは、何度も聴き込むことで理解できました。完璧な楽曲と完璧な歌と完璧な演奏が生み出す自然体。これって実はすごく難しいことだと思うんです。

世代的にはもちろんデビュー時の「Holding Back The Years」(全米1位/全英2位)の頃から知っていますし、アルバムにも普通に“流行のポップス”として触れてきましたが、今作はそことはまた違った光や存在感を放っているように思います。言い方を変えれば……リリースから30年近く立っているにも関わらず、今聴いても新鮮に楽しめるというエヴァーグリーンな1枚。そんな時代を超越した作品と断言できます。

とか言いながら、実は本作、リリースしてすぐは手を出さなかったんですね。テレビのチャート番組(たぶんフジテレビの『BEAT UK』)で「Something Got Me Started」は耳にしていたものの……ところが、1992年に入って数ヶ月間イギリスに滞在した際、ラジオやMTV、CDショップで本作からのシングル「Stars」や「For Your Babies」を耳にして、「なんじゃこりゃ!?」と驚くわけです。しかも、これがSIMPLY REDの楽曲だと知って、さらにびっくり。そりゃ購入しますよね、現地で(当時はCDウォークマン的なものはまだ高価だったか発売されてなかったかで、当然カセットテープで購入)。

なので、このアルバムを聴くと当時のイギリスの景色が思い浮かんでくるんです。そんな、個人的にはとても重要な1枚。それを抜きにしても名盤なんですけどね。



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2018年12月 3日 (月)

POISON『SWALLOW THIS LIVE』(1991)

1991年11月にリリースされた、POISON初のライブアルバム。3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)を携えて行われた1991年のUSツアーの中からマイアミ公演とタンパ公演のベストテイク(笑)を厳選し、フルライブが丸々再現された形で構成されています。さらに、本作のために制作された新曲4曲も追加されており、KISSにおける『ALIVE II』(1977年)を模した2枚組作品と言えるでしょう。実際、スタジオアルバム3枚の区切りで作ったベスト盤的ライブ作品集ですしね。

POISONのライブを観たことがある人がどれだけいるかわかりませんが、ベストアルバム『POISON'S GREATEST HITS 1986-1996』(1996年)のレビューで書いたように、本当に80年代の彼らの演奏力は酷いものでした(少なくとも、自分が観たライブの印象ですが)。そこまでうまいわけじゃないのに、妙にテクニック志向に走ったり、そこからさらに表現力を必要とするブルースやソウルのテイストを取り入れたりと、まあその勘違いっぷりといったら笑いすら込み上げてきます。

しかし、このバンドの場合はその“勘違いっぷり”に加えて、ポップでキャッチーな楽曲を書く才能に恵まれていたこと、その2つがうまいこと噛み合ったおかげで爆発的大ヒットを手にすることができたわけです。プラスして、時代も追い風になったのも大きかったですけどね。

だけど、演奏力だけは本当にどうにもならない。練習しても、その人の潜在能力を超えるものは出てこないわけですから。結局、ポップセンスに優れた4人は演者(演奏力ではなく、ステージで魅せる者としての技術)としての才能は優れていたものの、プレイヤーとしての技量はある一定値以上伸びなかったわけです。

その現実が、この2枚組アルバムには余すところなく収録されています(笑)。いや、冗談抜きで。もちろん、アリーナクラスをバンバン埋めていたバンドです。バンドとしてはある程度聴ける演奏や歌を披露していますが、これがソロプレイ……ライブでのお約束的なギターソロコーナーやドラムソロコーナーになると……あとは言わなくてもわかるよね?(苦笑) ホント、なんで10分前後もあるギターソロやドラムソロまでそのまま入れちゃったんでしょうね……と言われたら、エゴ以外の何者でもないわけですが。

幸いにも、2000年代に入ってからCD1枚モノで再発された本作からは、このソロコーナーはカットされています。安心してください、ヒット曲のオンパレードを楽しめます(笑)。けど、ここはあえてソロコーナーを完全収録した2枚組バージョンをオススメしておきたい! この気持ち、共有しましょうよ!

あ、新曲についても触れておきますか。当時シングルカットされた「So Tell Me Why」は非常にポップで、サビもキャッチーで親しみやすい1曲。そのわりにヒットしませんでしたけど(アメリカではランクインせず、イギリスでは最高25位)。「Souls On Fire」は『FLESH & BLOOD』に入っていそうな、ブルースハープをフィーチャーした黒っぽいロックで、「Only Time Will Tell」はデビューアルバム『LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN』(1986年)に入っていそうなバラードで、「No More Lookin' Back (Poison Jazz)」はタイトルどおりPOISON流のジャズ……ではなく、ギター弾き倒しのアップチューンでこれも1stアルバムに入ってそうなテイスト。まあ、どれも本気で書いたというよりはアルバムのアウトテイクっぽいような気が。熱心なマニアに向けた、ボーナス的な4曲なのかな。

本作は全米51位と、過去3作のスタジオアルバムと比べたら失敗に近い数字しか残せませんでしたが、1991年という時代性を考えるとそれも納得かなと。なお、本作リリース後にC.C.デヴィル(G)がバンドを脱退し、代わりにリッチー・コッツェンが加入。バンドはより本格志向の4thアルバム『NATIVE TONGUE』(1993年)で再起を図ることになりますが、そのへんは同作のレビューをご覧ください。



▼POISON『SWALLOW THIS LIVE』
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2018年9月13日 (木)

LITTLE ANGELS『YOUNG GODS』(1991)

1991年春にリリースされた、LITTLE ANGELSの2ndフルアルバム。プロデュースを担当したのはジェイムズ・“ジンボ”・バートン(ゲイリー・ムーアQUEENSRYCHEスティーヴ・ペリーなど)とアンディ・ジュリアン・ポール(元SKIN組によるb.l.o.w.など)が担当し、「Boneyard」(全英33位)、「Product Of The Working Class」(全英40位)、「Young Gods (Stand Up, Stand Up)」(全英34位)、「I Ain't Gonna Cry」(全英26位)といったヒットシングルを多数生み出しました。アルバム自体も全英17位という好成績を残しており、彼らの出世作と呼べる1枚となっています。

メジャーデビューフルアルバム『DON'T PREY FOR ME』(1989年)の頃は“イギリスからのBON JOVIへの回答”的な触れ込みもあったような記憶がありますが、それはサウンドがポップでライトなハードロックだったこと、編成が同じ5人組だから、というのも大きかったのかもしれません。

ですが、この2枚目のアルバムではそういった比較は馬鹿馬鹿しいぐらい、彼ららしいオリジナリティとイギリスのバンドとしてのアイデンティティを掴み取った、そんな印象を受けます。とはいえ、ミックスはアメリカでスティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロ(GUNS N' ROSESMETALLICAマドンナデヴィッド・ボウイなど)に任せているので、うまい具合に英米の良いところをミックス……なんて思惑もあったのかも(アメリカでの成功はレーベル側の思惑かもしれませんが)。

アップテンポのハードロック「Love Is A Gun」や派手なブラス系シンセのリフがいかにもな「Natural Born Fighter」など前作の延長線上にある楽曲含まれているものの、基本的にはミディアムテンポのロックンロールやポップロックをメインとした作風。そのミディアムの中でも若干アップめ、若干スローめというふうに強弱を付け、聴き手を飽きさせない工夫が施されています。

オープニングの「Back Door Man」からグルーヴィーな「Boneyard」への流れ、軽やかなアコースティックギターが心地よい「Young Gods (Stand Up, Stand Up)」、泣きのギターフレーズが涙腺を刺激するバラード「I Ain't Gonna Cry」と、この冒頭4曲を聴いただけで、前作以上の完成度かつオリジナリティに驚かされるはずです。

また、「Young Gods」や「Product Of The Working Class」「The Wildside Of Life」などではブラスセクションも導入され、そのへんが一介のハードロックバンドとは異なることを感じさせます。キーボーディストもピアノを中心にした音作りで、独特のグルーヴ感を生み出しているし、ところどころに入るボーカルの高音シャウトやギターの速弾きが入らなかったらTHE QUIREBOYSをもっと派手にしたようなイメージ止まりで、ハードロックバンドだとは思わないんじゃないでしょうか(それが良いか悪いかは別として)。

あ、僕は大好きですよ、このアルバム。ただ、日本盤はボーナストラック3曲追加で、トータル68分と長いのが玉に瑕ですが。日本国内ではApple Musice、Spotifyどちらもストリーミング配信されていないのが残念極まりない(海外では配信されています、念のため)。

ここでの成功があったからこそ、彼らは次作『JAM』(1993年)でさらなる“深化”の道をたどり、全英1位を獲得することになるのですが、それはまた別の機会に。



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2018年8月10日 (金)

SHADOW KING『SHADOW KING』(1991)

当時FOREIGNERを脱退したルー・グラム(Vo)が、同じくDIOWHITESNAKE〜RIVERDOGSと渡り歩いてきたヴィヴィアン・キャンベル(G)と結成したスーパーバンド、SHADOW KING。彼らが1991年10月(日本では同年11月)に発表した、唯一のアルバムが本作になります。

バンドのメンバーはルー、ヴィヴィアンのほか、ルーの旧友でのちにFOREIGNERにも加入するブルース・ターゴン(B)、KISSのレコーディングセッションに参加したり、のちにCINDERELLAなどに加入するケヴィン・ヴァレンタイン(Dr)の4名。キース・オルセン(FOREIGNER、オジー・オズボーン、WHITESNAKE、HEARTなど)をプロデューサーに迎え制作されたこのアルバムは、非常にクオリティの高い産業ハードロック/メロディアスハードロックの隠れた名盤です。

全10曲中、ヴィヴィアンが作曲に関わっているのはラストの「Russia」のみ(ルーとの共作)。それ以外のすべてがルーとブルースの共作で、ある意味ルー・グラムのソロアルバムやルー復帰後のFOREIGNERにも通ずる世界観が展開されています。いや、むしろこれ、80年代後半、『INSIDE INFORMATION』(1987年)以降のメロディアスハードロック路線のFOREIGNERじゃん。

ギターは要所要所で、確かにヴィヴィアンらしいプレイ(主にソロ)を楽しめますが、本作における最大の武器は良質のメロディとルーのパワフルなボーカル。WHITESNAKEでシンガーとギタリストのバトルに懲りたのか、はたまたRIVERDOGSでバランス感を学んだのか、ここでのギタープレイはかなり後ろに引いたものになっていて、そこだけは若干不満が残るかなと(ヴィヴが参加しているとわかっているから、余計に)。とはいえ、曲の良さやアルバムの完成度を前にすると、実はギターがそこまで重要ではないことに気づかされるわけですが。

この湿り気のあるマイナーキーと、要所要所に挿入されるシンセ。強く主張せず、バッキング(パワーコードやアルペジオなど)に徹するギター。それってもう、本当にFOREIGNERなんですよね。これを聴いたあとに、ルー復帰作となる『MR. MOONLIGHT』(1994年)を手にすると、あら不思議。同じバンドのように思えてくるのですから……。

ってくらい、このジャンルが好きな人なら絶対にハマる1枚。当時まったく話題にならなかったし売れもしなかったので、バンドはすぐに解散。翌1992年に入るとヴィヴはDEF LEPPARDに加入。ルーとブルースはFOREIGNERに加わり、ケヴィンはCINDERELLAへ……。なんだ、みんなこのバンドを踏み台にしてるんじゃないか(笑)。

そんな不運のバンド、この機会に触れてみてはいかがでしょう。



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2018年7月18日 (水)

MOTLEY CRUE『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991)

1991年10月にリリースされた、MOTLEY CRUEの結成&デビュー10周年記念コンピレーションアルバム。初の全米No.1獲得&600万枚を超えるメガヒットとなった5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)に続くアイテムということもあってか、本作は全米2位&200万枚以上もの売り上げを記録しました。

気になる内容はといいますと、この10年間に発表された5枚のオリジナルアルバムから2曲ずつピックアップして収録+コンピレーションアルバムや映画のサントラに提供したアルバム未収録曲や本作のために録り下ろした新曲&カバー3曲を加えた全15曲で構成。こう聞くとベストアルバム的な印象を受けるかもしれませんが、まあだいたい正解です。

1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)からは「Live Wire」「Piece Of Your Action」の2曲をセレクト。しかしこの2曲、インディーズバージョンともメジャーバージョンとも異なる、新たにリミックスされた“第3のバージョン”なのです。2作目以降の音に近づけようとして、かなりエフェクトがかけられてますが……ちょっと“トゥー・マッチ”すぎます。

2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)からは「Shout At The Devil」と「Looks That Kill」を選出。こちらは本作用にリマスタリングされたのみで、原曲と大きく変わりません。で、3rdアルバム『THEATRE OF PAIN(1985年)からは「Home Sweet Home」「Smokin' In The Boys Room」の2曲。無難ですね。

こちらは前者のみ「Home Sweet Home '91」と題したリミックスバージョンとなっておりますが、リミックスとは名ばかりで、ボーカル&ギター以外のバックトラックが再録音されているのです。トミー・リー(Dr, Piano)のピアノはよりアコースティック色が強くなり、リズム隊はボブ・ロックの手によって“『DR. FEELGOOD』以降”のサウンドに生まれ変わっています。また、コーラスパートも一部追加録音されているようで、サビに厚みが加わっています。こちらの再録バージョンは本作からシングルカットされ、チャート上では原曲(全米89位)を超える全米37位を記録しました。

4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)からは「Girls, Girls, Girls」と「Wild Side」の2曲で、特に手を加えた形跡なし。で、5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)からは「Dr. Feelgood」と「Kickstart My Heart」の2曲が選ばれ、後者は1990年7月のUSツアーからライブ音源が採用されています。この曲だけライブってどうなのよ?っていう考えもありますが、当時ライブアルバム未制作だったこのバンドにとっては、貴重なテイクだったかなと。

以上10曲、セレクトからも単なるグレイテストヒッツではないことが伺えます。それだったら『DR. FEELGOOD』からもっと曲を増やすでしょうし。

で、本作はここからが本編といっても過言ではないわけでして。サントラやコンピ収録の「Teaser」「Rock 'N' Roll Junkie」は『DR. FEELGOOD』の流れからレコーディングされたものなので、どちらもボブ・ロックがプロデュースしたもの。前者はDEEP PURPLEでも活躍したギタリスト、トミー・ボーリンのカバーです。後者はニッキー・シックス(B)のリフとミック・マーズ(G)のカッティングがカッコいい1曲です。

新たにレコーディングされた新曲「Primal Scream」なんですが(本作からの1stシングルで、全米63位を記録)、メロディがキャッチーではない地味な曲という印象。ですがこれ、ライブで聴くとめちゃめちゃカッコいいんですよね。トミー・リーが生み出すグルーヴ感とミック・マーズのスライドギターが絶妙で、不思議と飽きがこないんですよ。サビのコール&レスポンスも明らかにライブをイメージして作ったものでしょうしね。

さらにもう1曲、オリジナルの新曲「Angela」はパワーポップ寄りのメロディアスなロックナンバー。「Primal Scream」との対比が面白い。あんまりライブで披露されたことのないレア曲じゃないかなと。この曲もドラムとギターがカッコいいったらありゃしない。

そして、最後の最後にカバー曲……ベタ中のベタ、SEX PISTOLSの「Anarchy In The U.K.」です。彼らにしては手垢のついた曲に手を出したなと。なぜ今これを選んだ!?と当時は疑問に思ったものですが(数年前にMEGADETHがカバーしたばかりじゃん!って)……まあ、普通のカバーです。以降のライブでは定番化してしまいましたが、個人的にはどうでもいい1曲です。

ちなみに、本作はワーナー(本国のElektra Records)との契約が終了し、権利を自身のレーベルに移行させてからは廃盤状態に。大半の新曲/コンピ収録曲は『SUPERSONIC AND DEMONIC RELICS』(1999年)で聴くことができるので、CDを中古盤で安く購入するか配信で『SUPERSONIC AND DEMONIC RELICS』をチェックするかしてみてください。


※念のため、こっちも貼っておきますね。



▼MOTLEY CRUE『DECADE OF DECADENCE '81-'91』
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