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カテゴリー「1991年の作品」の105件の記事

2022年4月12日 (火)

AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2022年版)

先日ブライアン・アダムスで試してみた、いちアーティストの公式ベストアルバム/コンピレーションアルバムをひとつのエントリーの中で総括する記事AEROSMITH版です。

AEROSMITHは1973年のデビュー以降、Columbia Records(1973〜1984)→Geffen Records(1985〜1997)→Columbia(1997〜2021)→Universal(2021〜)と移籍を繰り返してきましたが、現在は全カタログの権利をUniversalが取得したことで、今後Columbia/Sony時代の音源もUniversalからフィジカル再発/デジタル配信されることになりそうです。

そういった意味では、ここに記す代表的なコンピレーションアルバムのいくつかは今後、姿を消すことになるかもしれません。それでもこの機会に改めて、ひとつの記録として記事を残しておくのはアリかなと思い、今回の執筆に至りました。

選出したベストアルバムは、レーベル主導によるシリーズ企画(Universalの『THE MILLENNIUM COLLECION』など)を除く、新曲やレア曲などを含む9作品。中には廃盤になっていたりサブスクで聴けないものも含まれていますが、ご了承ください。また、すでに単独エントリーで公開済みの作品もありますが、その場合は該当記事のリンクを貼っておきますのでご参考ください。

 

 

『AEROSMITH'S GREATEST HITS』(1980)

 

1980年11月にリリースされた、バンド初のベストアルバム。

そのタイトルどおり、収録内容はシングル曲を中心にしたもので、アナログ時代ということで全10曲/約38分というコンパクトな内容でまとめられています。また、構成的にもリリース順に並べられているので、いきなり「Dream On」から始まるという曲順はロックバンド的にどうなのかな?という疑問も残ります。

収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。

また、映画サントラに提供したビートルズのカバー「Come Together」が収録されている点も注目ポイントかな。『LIVE! BOOTLEG』(1978年)ではライブバージョンを先に聴くことができましたが、スタジオテイクがエアロのアルバムに収録されるのはこれが初めて。そこも本作が長く愛された要因のひとつかなと。

なお、本作がリリースされた頃にはすでにバンドの人気も低迷期に突入しており、チャート的には大きな成功を収めることはありませんでしたが、そこから数年後の再ブレイクも手伝い、セールス的には現在までに1000万枚を超えるメガヒット作となっています。

 


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『GEMS』(1988)

 

1988年11月にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。

『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。

本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。

今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。

コアなファンの中には、先述の『AEROSMITH'S GREATEST HITS』より本作のほうが好きという方も、意外と多かったりして。かくいう僕も本作、大好物ですからね。

 


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2022年1月11日 (火)

THE ALLMAN BROTHERS BAND『SHADES OF TWO WORLDS』(1991)

1991年7月2日にリリースされたTHE ALLMAN BROTHERS BANDの10thアルバム。日本盤は同年8月23日発売。

1989年に再結成を果たし、翌1990年に再始動後初のアルバム『SEVEN TURNS』をEpic Recordsから発表。今作はその再結成アルバムから1年という短いスパンで届けられた、トム・ダウドのプロデュースによる充実作です。

序盤は「End Of The Line」「Bad Rain」と比較的シンプルな楽曲で固められていますが、M-3「Nobody Knows」は彼ららしいインプロビゼーションをたっぷりフィーチャーした11分にもおよぶ大作。ディッキー・ベッツ(Vo, G)と再始動から加入したウォーレン・ヘインズ(G)の、それぞれの個性が際立つプレイは圧倒的の一言で、10分超の長尺にもかかわらずまったく飽きることなく、むしろゾクゾクした緊張感を保ちながら楽しむことができます。

一方、アルバム終盤に配置された「Kind Of Bird」はジャズミュージシャンのチャーリー・パーカー(Sax)に捧げられた、ジャズ的アプローチのインストゥルメンタルナンバー。パーカッシヴなリズムとフュージョンを彷彿とさせるギター&キーボードプレイの数々は、カントリーやブルースを通過した「Nobody Knows」とも異なる魅力を放っており、気持ちよく堪能できるはずです。

さらに、アルバムラストを飾るのはロバート・ジョンソンのカバー「Come On In My Kitchen」。ディッキー・ベッツ&ウォーレン・ヘインズによるスライドギタープレイのカッコよさといったら、たまらないものがあります。ブルージーなんだけどソウルフルというアレンジも完璧で、完全に自身のものとして成立させています。

デュエイン・オールマン(G)亡き後、彼を彷彿とさせるようでまったく異なる個性を発揮させるウォーレン・ヘインズのプレイこそ、実は本作最大の聴きどころ。ねっとりしたフレージングやスライドプレイは、ただただ圧倒的の一言で、当時31歳という若手に属する彼に触発されて他のメンバーのプレイも輝きを取り戻している。グレッグ・オールマンのボーカル&オルガンプレイも味わい深さが増しており、フレッシュさと芳醇さが程よくミックスされた、傑作と呼ぶに相応しい仕上がりではないでしょうか。

デュエイン時代の70年代の諸作品はもちろん名盤ばかりですが、聴きやすさという点においては本作こそビギナー向け。ここを入り口に、70年代の名作たちに手を出してみてはいかがでしょう。

 


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2022年1月 9日 (日)

TIN MACHINE『TIN MACHINE II』(1991)

1991年9月2日にリリースされたTIN MACHINEの2ndアルバム。日本盤は同年9月4日発売。

ソロキャリアを一旦ストップさせて、バンドの一員に徹することで新たな“ムーブ”を求めたデヴィッド・ボウイ。1989年に1stアルバム『TIN MACHINE』を発表するも、イギリスで3位、アメリカでは28位とそこまで大きな成功を収めることはできませんでした。その後、1990年のソロキャリアを総括するツアー(および、ソロ時代のカタログリイシュー)を経て、それまで在籍したEMIを離れて新興レーベルのVictory Musicと新たに契約し、本作を完成させます。

バンドメンバーはボウイ(Vo, G)、リーヴス・ガブレルス(G)、トニー・セイルス(B)、ハント・セイルス(Dr)と前作と同様。プロデューサーには前作から引き続きティム・パルマー(TEARS FOR FEARSオジー・オズボーンU2など)が参加し、「One Shot」のみヒュー・パジャム(THE POLICEGENESISピーター・ガブリエルなど)がプロデュース&ミックスを手がけています。また、前作では全14曲中5曲がボウイ単独で書き下ろされた楽曲でしたが、今作はボウイ単独は「A Big Hurt」1曲のみ。「Sorry」に至ってはハント単独名義での楽曲ですし、この曲と「Stateside」ではハントがリードボーカル担当と、完全にボウイが4分の1に徹しようと務めていることが伺えます。

楽曲は前作よりもより産業ロック/ハードロック的な質感が増しており、ボウイのソロ作でいえば直近の『NEVER LET ME DOWN』(1987年)にもっとも近いんじゃないでしょうか。ただ、あのアルバムが80年代半ば的な音だったのに対し、こちらはより1990年前後の質感に近付いており、感触的にはそこまで悪い印象は受けません。

ただ、曲から“ボウイらしさ”が伝わらない。大半の楽曲はボウイとリーヴスの共作で、演奏もリーヴスの派手なギターが目立つアレンジ。ボウイはお膳立てされたトラックの上で好きに歌っている……といったところでしょうか。「Baby Universal」や「You Belong In Rock N' Roll」など、確かに今聴いても水準以上の仕上がりだと思います。だけど、ボウイがキャリアを総括する際にここからどの曲を選ぶかと言われると非常に困ってしまう。そんな歯痒い1枚とも言えるのです。

あと、個人的に一番グッときたのがROXY MUSICのカバー「If There Is Something」というのもどうかと思いました。ボウイ以外が歌うヌルいブルースロック「Stateside」や「Sorry」は、純度の高いボウイを求めて本作に触れるのならば蛇足以外の何ものでもないですし、やはり全体的に「無理して聴かなくていいかな」という空気が漂っているのは否めないかな。うん、ボウイのカタログで最後に聴くべき番外編だと思っておけば間違いありません。

そんなこと書いてますが、このアルバム。日本では現在廃盤状態。海外では2020年7月にMusic On CDを通じて最初されていますが、デジタル配信は現在まで未解禁。日本のみならず海外のSpotifyにもApple Musicでも聴くことができない状況です。これに関しては随分前から海外でも話題になっており、本作だけがISO/Parlophone(現在カタログを管理するレーベル)以外からのリリースであることなどがデジタル配信未解禁の理由ではないかと言われています。もしデジタル解禁するならリリース30周年の2021年に踏み切ったはずですが、そんな噂一切なかったですしね。この先、気軽に聴くことができる日が来るのかどうか……まあ中古CDなら安価で入手可能なので、気になる方はAmazonなりディスクユニオンなりで探してみてはどうでしょう。

 


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2021年12月31日 (金)

1991 in HR/HM & Alternative Rock

ハードロックやヘヴィメタルにとって大きな転換期となった1991年。この年はMETALLICAやGUNS N' ROSESのビッグタイトルが発表されたほか、SKID ROWやVAN HALENがBillboardで初登場1位を記録する快挙を成し遂げた、HR/HMシーンにとってインパクトの強い1年でした。しかし、それと同時にNIRVANAやPEARL JAMがメジャーデビューを果たし、同年末から1992年にかけて全米チャートを席巻。彼らやALICE IN CHAINS、SOUNDGARDENなどシアトル中心バンドによるグランジ・ムーブメント勃発元年としても記憶されています。

そういった音楽シーンにとって転機であると同時に、湾岸戦争やソ連崩壊など世界情勢でも大きな転換期を迎えた1年でもあります。この年を境に、日本ではバブル崩壊を迎え、不景気に拍車がかかるなど、いろんな意味で1991年は変化の1年でもあるわけです。

そんな1991年から今年で30年。当サイトで取り上げた同年リリース作品をひとまとめにしたいという思いが、かなり前から芽生えており、少しずつ作業に取り掛かっていたのですが……気づいたら12月後半(苦笑)。非常に中途半端な形ではありますが、ひとまず公開してみようと思います。

以下、月別に「リリース作品」「主なトピック(出来事)」をまとめています。リリースアイテムは発売日が明確でないものもあるため、アルファベット順に並べています。また、トピックに関しては、●:音楽、■:政治・情勢、▲:スポーツ、※:映画、ドラマ、エンタメなど、とカテゴリー分けを施してあります。

とにかく、記録として残しておきます。2021年が過ぎても、随時1991年リリース作品のレビューは続けていく予定なので、その都度このエントリーに追加していく予定です。当時を振り返るもよし、何かを考える題材にするでもよし。あなたにとって、なんらかの参考になることを願っています。

※2022年1月11日0:00更新:THE ALLMAN BROTHERS BAND『SHADES OF TWO WORLDS』追加

 

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2021年12月30日 (木)

MARILLION『HOLIDAYS IN EDEN』(1991)

1991年6月24日にリリースされたMARILLIONの6thアルバム。日本盤は『楽園への憧憬』の邦題で、同年7月26日発売。

前作『SEASONS END』(1989年)からバンドに加入したスティーヴ・ホガース(Vo)参加作第2弾。本国イギリスでは常にTOP10にアルバムを送り込んできたMARILLIONですが、ことアメリカに関しては3作目『MISPLACED CHILDHOOD』(1985年)が最高47位を記録した以外、これといった成功を収めていません。これに痺れを切らしたアメリカのレーベル側から「MTVやラジオでヒットするコンパクトな曲を」のオーダーがあったとか、なかったとか(1991年という時代にそうしたオファーを出す自体が、時代遅れという気が)。結果、今作は3〜4分台の楽曲を中心に構成された、非常にコンパクトで聴きやすい1枚に仕上がっています。

確かに、シングルカットされた「Cover My Eyes (Pain & Heaven)」(全英34位)、「No One Can」(同33位)、「Dry Land」(同34位)などのポップさは前任ボーカルのフィッシュ時代と比べたら別モノに映るかもしれません。しかし、このきめ細かいポップネスは他の誰に真似できるものではない。もともとGENESISのフォロワーなんて言われてきた彼らですが、ここにきてMARILLIONは80年代以降のGENESISにも匹敵する大衆性を手に入れた……と解釈することはできないでしょうか。プロデューサーにポップス畑のクリストファー・ニール(A-HA、MIKE + THE MECHANICS、セリーヌ・ディオンなど)を迎えたことも、本作のシルキーなポップサウンド化に拍車をかけたことは間違いないでしょう。

しかし、すべてがすべてポップになったわけではありません。オープニングを飾る「Splintering Heart」やタイトルトラック「Holidays In Eden」で聴くことがでいるスリリングな演奏は、従来の彼らならではの魅力・個性を感じ取ることができる。こういったバランス感で成り立っている事実も忘れてはなりません。

だけど、先のシングル曲で見せた劇的な変化のほうが聴き手に強い印象を与えたのも、また間違いのない事実。本作で彼らに見切りをつけたなんてリスナーも少なくありません。僕自身はこのバンドに対して強い印象やこだわりを持っていなかったため、むしろ80年代の諸作品以上にリピートした記憶があります。だって、素直にいいアルバムじゃないですか。この半年後にリリースされたGENESISの『WE CAN'T DANCE』(1991年)と同じ感覚で触れていたのかもしれませんね。

ホガースのクセの強くない歌声と、それに相反して変幻自在な音色で聴き手を魅了するスティーヴ・ロザリー(G)のプレイ&フレージングの相性も抜群。ハードロックとかプログレッシヴロックとかそういうジャンルを超越し、普遍性の強いロック/ポップスとして成立させた本作は、以降の活動においてひとつの基盤になっていきます。本国では全英7位と、前作同様のヒットを記録したものの、アメリカでは曲順まで変えたにもかかわらず完全に惨敗。結果、バンドは次作『BRAVE』(1994年)で今作でのポップ化を踏まえた上で再びコンセプチュアルなアルバム作りにトライすることになります。

残念ながら本作、1991年の初版以降再発されていません。名盤として謳われている『BRAVE』の影に隠れがちですが、その完成度の高さ含め再評価されるべき1枚ではないでしょうか。

 


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SAVATAGE『STREETS: A ROCK OPERA』(1991)

1991年10月4日にリリースされたSAVATAGEの6thアルバム。日本盤は同年11月28日発売。

全米134位まで上昇した前作『GUTTER BALLET』(1989年)から1年10ヶ月ぶりの新作。プロデューサーのポール・オニールが書き下ろした物語に基づいて、メンバーのジョン・オリヴァ(Vo, Key)&クリス・オリヴァ(G)、そしてポールが書き下ろした楽曲で構成されたキャリア初のコンセプトアルバムです。

サブタイトルにもあるように、まさに“ロックオペラ”と呼ぶに相応しい壮大な内容ですが、1曲1曲と単独で取り上げても成立するような作りとなっているので、変に構えることなる接することができるはず。物語自体はニューヨークでドラッグに溺れるミュージシャンを中心に進行しており、そのへんは対訳の付いた日本盤にてしっかり追っていただけると本作の魅力をより深く理解することができることでしょう。

オープニングトラック「Streets」やアルバムからのリード曲「Jesus Saves」のように、ジョン・オリヴァのしゃがれ声が生かされたメタルチューンもあれば、ドラマチックな「Tonight He Grins Again」、どことなくAOR的な軽やかさも伝わる「Strange Reality」や「You're Alive」、ブギーっぽいノリを持つアップチューン「Sammy And Tex」、吟遊詩人という表現がぴったりハマるピアノバラード「A Little Too Far」や「Believe」と、とにかくバラエティに富んだ内容。しかし、これらがバラバラに並ぶわけではなく、ちゃんとひとつの流れを作りながらうねうねと進行していくのです。

ジョンのボーカルは好き嫌い分かれるタイプかもしれませんが、幅の広い楽曲群を巧みに歌いこなしており、結果としてこの人でなければ成立しないことが実感させられる。パワフルな特に「St. Patrick's」や「Can You Hear Me Now」のようにオペラと呼ぶに相応しい楽曲や、先のバラード群のようなスローナンバーでこそ彼の味わい深いボーカルは効果を発揮。歌唱力で感動させるとかそういう形ではなく、歌から伝わる熱で聴き手の心を動かす、そういうタイプの歌い手だなと改めて実感させられます。

そして、何より素晴らしいのがクリス・オリヴァのギタリストとしての非凡さ。リフワークはもちろんですが、そのメロディアスなフレーズの組み立て方や感情のアップダウンを表したフレーズングの数々は特筆すべきものがあり、これぞギターヒーローと呼ぶに相応しいプレイヤーだなと思うはず。しかし、実際には彼がメジャー進出したタイミングやこうした名盤が1991年という時代に発表されたことから、思うほどの評価を得ることはできませんでした。

事実、この大作はBillboard 200にチャートインすることなく、Billboard Heatseekers Albumsで最高31位を記録したのみ。続く『EDGE OF THORNS』(1993年)ではジョンは一度表舞台から退き、新たなシンガーにザッカリー・スティーヴンスを迎えます(ジョンは作曲やプロデュース、キーボーディストとしてレコーディングに参加)が、同作リリースの半年後となる1993年10月、クリスは交通事故でこの世を去ってしまいます。

ジョン&クリスのオリヴァー兄弟が全面的にフロントメンバーとして活動した作品は、この『STREETS: A ROCK OPERA』が最後。そういった事実もあってか、クリスの墓石には「Believe」の一節が刻まれているんだとか。また、クリス逝去後にはOVERKILLが当時の最新作『W.F.O.』(1994年)にトリビュートソング「R.I.P. (Undone)」を書き下ろし、VICIOUS RUMORSは『WORD OF MOUTH』(1994年)、TESTAMENT『LOW』(1994年)をクリスに捧げています。

まあ、そうした事実は差し置いても、本作は1991年のHR/HMシーンにおいて絶対に欠かすことのできない1枚だと断言したい。時代が違っても大きなヒットにつながる内容ではないかもしれないけど、メタルリスナーにとっては絶対に押さえておきたい1枚です。

 


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FATES WARNING『PARALLELS』(1991)

1991年10月29日にリリースされたFATES WARNINGの6thアルバム。日本盤は翌1992年2月25日発売。

Billboard 200(全米アルバムチャート)で最高141位を記録した前作『PERFECT SYMMETRY』(1989年)から約2年ぶりの新作。新たなプロデューサーとしてテリー・ブラウン(RUSHVOIVODCUTTING CREWなど)を迎えた、80年代から90年代へと移行する過渡期らしい内容に仕上がっています。

RUSHの名プロデューサーを引っ張ってきたことから、なんとなく70年代後半から80年代にかけてのRUSHのようなことがやりたいのかな?という印象を受けますが、いざ聴いてみるとその楽曲や音のアプローチはQUEENSRYCHEのそれに似ており、中でも『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)でのメタリックな質感に一番近いような気がしてなりません。楽曲が持つダークな空気感はまさに同作が発していたそれと共通するものもあり、なんだか兄弟作みたいだなという印象すら受けます。かつ、レイ・アルダー(Vo)のハイトーンを駆使した歌唱スタイルもどことなくジェフ・テイト(現SWEET OBLIVION)そっくりですしね。

しかし、QUEENSRYCHEの同作が正統派ヘヴィメタル的な方向性だったのに対して、今作にはもうちょっとモダンな質感が強く備わっているような気がする。実は、そのモダンな質感というのが、DREAM THEATERや同時期のVOIVODあたりと共通するものだったのかなと、30年経った今はそう感じています(ちなみに、「Life in Still Water」にはそのDTからジェイムズ・ラブリエがコーラスでゲスト参加)。

プログメタルの枠で括られるものの、意外と仰々しいプログレッシヴロックっぽさは皆無。むしろ、中期RUSHと初期QUEENSRYCHEっぽさを掛け合わせ、そこにモダンな味付けを施すことでプログメタルよりも普遍的なヘヴィメタルに近づいてしまった。それに加え、前作『PERFECT SYMMETRY』までにあったテクニカルメタル的方向性も若干後退し、必要最低限に押さえたことでその普遍性はより強まった。さらに、「Eye To Eye」や「We Only Say Goodbye」のようなポップさを強めた楽曲を含むことで、アルバムとしてのとっつきやすさも非常に強い。HR/HMアルバムとしてはかなりバランス感に優れた1枚と言えるでしょう。

しかし、そういったアルバムが1991年という歴史の節目に発表された。本作は日本を含めWarner Bros.経由でメジャー流通されたにもかかわらず、発売からしばらくして契約破棄となってしまい、ほとんどプロモーションされることなくヒットにつなげることができませんでした。かつ、同時期のツアーではPANTERAのサポートという、なんとも食い合わせの悪い組み合わせがさらにマイナス方向に作用してしまった。それもこれもすべて、1991年という時代のせいなんでしょうか……。

ただ、個人的には初めて手にしたFATES WARNINGのアルバムなだけに、思い入れも強いんですよね。久しぶりに聴いてみたけど、やっぱり良い内容ですし。若干味付けに80年代味を感じる箇所もありますが、そこも含めて愛すべき1枚だと思っています。

 


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2021年12月29日 (水)

CORROSION OF CONFORMITY『BLIND』(1991)

1991年11月5日にリリースされたCORROSION OF CONFORMITYの3rdアルバム。日本盤は翌1992年2月21日発売。

フルアルバムとしてはMetal Blade Recordsから発表された前作『ANIOSITY』(1985年)から実に6年ぶりの、Relativity Records移籍第1弾作品。RelativityはインディーズながらもSony流通だったこともあり、日本でも無事日本盤が発表されています(なお、正式なメジャーデビューは続く『DELIVERANCE』(1994年)より)。

このアルバムはカール・エイゲル(Vo)、ペッパー・キーナン(Vo, G)、ウッディ・ウェザーマン(G)、ピル・スウィッシャー(B)、リード・ミューリン(Dr)という、マイク・ディーン(Vo, B)不在の異色な布陣で制作。基本は専任ボーカルのカールが歌っていますが、「Vote With A Bullet」のみペッパーも歌っており、続く『DELIVERANCE』以降の布石を残しています(1995年にメジャーのColumbiaから再発された際には、ペッパーVo曲はもうひとつ「Jim Beam And The Coon Ass」が追加されています)。

サウンド的にはハードコアパンクからの影響が強く表れた前作やその後のEP『TECHNOCRACY』(1987年)から脱却し、スラッシュメタルやハードロック/ヘヴィメタルの側面が強まったイメージが強い。ザクザク切り刻むようなギターリフと、グルーヴィーなリズムセクション、ハードコア以降のボーカルスタイルという要素の融合は、当時“クロスオーヴァー”なんて呼ばれていましたが、一方では次作で本格的に開花するレイドバックしたスラッジメタルスタイルの片鱗も随所から感じ取ることもできる。ある意味過渡期と言えなくもないですし、バンドが首謀者(マイク)を欠いたことで新たなステップに進もうともがいていると見ることもできます。

しかし、それを抜きにしても、ミクスチャーやクロスオーヴァーなどのカテゴライズで括るには勿体ないくらいにクールなサウンドは、2021年の耳で聴いても非常にカッコよく聞こえます。カールのボーカルはペッパーほどガッツがあるというわけではなく、時々ヘロヘロな様子も伺わせますが、逆にこのタッチがミクスチャー/クロスオーヴァーっぽいと言えなくもない(偏見かな?)。これをガッツリ歌い上げちゃうと、普通のスラッシュメタルになっちゃいますものね。

とはいえ、オープニングの「These Shrouded Temples...」や中盤の「Shallow Ground」、本編ラストの「...Remain」といった短尺のインストナンバーから次曲に流れるドラマチックな構成は、なんとなく旧来のスラッシュメタル的でもあり、音的には従来のメタルやスラッシュとは質感が多少異なるものの、そういった点に親しみを覚えてしまう。特に「Shallow Ground」から「Vote With A Bullet」へと続く構成はゾクっとするものがあり、カールのヘロヘロ声との違いもあって気が引き締まります。

スラッジを軸にした路線は、その後の『DELIVERANCE』へと引き継がれ、次々作『WISEBLOOD』(1996年)で完全に開花。特に後者は日本でも好セールスを記録し、1997年に初来日も実現したほどの結果を残しており、80年代のハードコアスタイルからの脱却という意味でもこの『BLIND』は数年後のブレイクへ向けた助走がスタートした、重要なターニングポイントだったと言えます。これも、1991年らしい空気を漂わせる、“らしい”1枚ですね。

なお、本作リリースから30年後の2021年11月5日には、1988年および1991年のデモ音源6曲を追加したエクスパンデッド・エディションもデジタルリリース。1988年のデモはマイク脱退後/カール加入前という貴重な時期によるものです。

 


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KYUSS『WRETCH』(1991)

1991年9月23日にリリースされたKYUSSの1stアルバム。日本盤未発売。

KYUSSは米・カリフォルニア州パームデザート出身のストーナーロックバンド。前身バンドでの活動を経て、1989年にバンド名をSONS OF KYUSSに変更、翌1990年に初のEP『SONS OF KYUSS』を自主制作で発表しました。その後、ジョン・ガルシア(Vo)、ジョシュ・ホーミ(G)、ニック・オリヴェリ(B)、ブラント・ビョーク(Dr)という布陣が揃い、Dali Recordsから1stアルバムをリリースすることになります。

KYUSSというと『BLUES FOR THE RED SUN』(1992年)以降の作品のイメージが強く、実際同作やメジャー移籍後の『WELCOME TO SKY VALLEY』(1994年)でその個性が開花した印象があります。それは間違いない事実であり、この1stアルバムではまだ前進バンド時代からの空気を残した、ハードコアパンクの影響下にあるハードロック/ヘヴィメタルが中心となっています。

ストーナーロックというと、ヘヴィで引きずるようなミドル/スローテンポというパブリックイメージがあるかもしれませんが、本作で聴くことができる楽曲の大半は性急なビートで若干前のめりなアップチューン。オープニングを飾る「(Beginning Of What's About To Happen) Hwy 74」や続く「Love Has Passed Me By」と、2曲連続でガレージパンク以降の疾走感を伴う楽曲が続き、良い意味でストーナーロックの印象を覆してくれます。

もちろん、「Son Of A Bitch」などミドルチューンも複数存在しますが、BPM的には通常のストーナーロックよりは速いものが多数で、ジョン・ガルシアのボーカススタイルや歌声の作用して、どこかMETALLICAにも通ずる空気感を感じ取ることができます。タイミング的にはブラックアルバム(『METALLICA』)の1ヶ月後に発売されているので、このタイム感はこの時代ならではのものだったのかもしれません。

ハードコア的な側面も随所から見つけることができるという点では、同時代に活躍し、のちにストーナー色を強めていった先輩格のCORROSION OF CONFORMITYにも似たところも多い。そういえば、彼らもMETALLICA的な空気をはらんでいますものね(しかも、ペッパー・キーナンと、KYUSSの2代目ベーシストのスコット・リーダーはのちにMETALLICAの新ベーシストオーディションも受けていますし)。

全11曲の収録曲の中には、自主制作EP『SONS OF KYUSS』から「Black Widow」「Deadly Kiss」がそのまま流用されたほか、「Love Has Passed Me By」「Katzenjamme」「Isolation(EP収録時のタイトルは「Isolation Desolation」)」の3曲は再レコーディングされている。そういった点を考慮すると、本作は結成からここまでの集大成としてまとめられたもので、ある意味では続く2ndアルバム『BLUES FOR THE RED SUN』がKYUSSとしての本格的デビュー作と言えるのかな。なので、このアルバムはそれ以前のSONS OF KYUSS時代とそれ以降のKYUSS時代の過渡期でもあると。そう考えると、次作での劇的変化も納得いくものがあります。

『BLUES FOR THE RED SUN』以降とは別モノかもしれませんが、1991年の時代性が強く反映されたという点においてはHR/HMリスナーにとって外せませんし、ジョシュ・ホーミおよびQUEENS OF THE STONE AGEのリスナーにも聴いておいてもらいたい、良質な1枚です。

 


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MONSTER MAGNET『SPINE OF GOD』(1991)

1991年12月6日にリリースされたMONSTER MAGNETの1stアルバム。日本盤未発売。

バンドとしては続くメジャーのA&M Recordsと契約した2ndアルバム『SUPERJUDGE』(1993年)、特に4作目の『POWERTRIP』(1998年)以降に日本でもその知名度を高めていったと記憶しています。が、インディーズのCaroline Recordsから発表された唯一のアルバムである本作はバンドの歴史を語る上では欠かせない、原点的な1枚であり、2006年には現在のアートワークに変更されてSteamhammer Recordsからの再発も実現。いまだに日本盤化は実現していないものの、現在はストリーミングサービスを通じて気軽に触れることができるようになっています。

現在まで在籍するメンバーはフロントマンのデイヴ・ウィンドーフ(Vo, G)のみ。プロデュースはウィンドーフと当時のギタリスト、ジョン・マクベインが共同で手がけています。作風、内容的には現在まで踏襲され続けているストーナーロック/サイケデリックロックをベースに、時代を超越した音・曲作りを展開。1991年というとTROUBLEがメジャーリリースを続けていたり、KYUSSも1stアルバム『WRETCH』をリリースしたりと、ストーナーロック界隈に注目が集まり始めていた時期と言えるかもしれません。メジャー感の強い一般的なハードロック/ヘヴィメタルから一歩踏み込んで、よりマニアックかつ新たなヒーローが求められていたタイミングとも言えるのかなと。

そういった意味では、ウィンドーフのカリスマ性やBLACK SABBATHをよりUSガレージロック的に表現したバンドサウンド、マニアックなようで意外にもキャッチーな楽曲群は“新たな波”としてシーンで高く評価されたようです。その結果が、次作でのメジャー進出につながるわけですからね。思えば、SOUNDGARDENALICE IN CHAINSのようなシアトル産バンドがすでにメジャー進出していた時期であり、MONSTER MAGNETのようなバンドが持て囃されるのは時間の問題だったのかもしれません。

インディーズだからとか1作目だからとか、そういった枕詞がいならいほどにすでに個性が完成されており、以降の作品と比較しても引けを取らない内容。もちろん2作目以上はメジャーのプロダクションで制作されていることもあり、音の質感やお金のかけ方に違いはありますが、楽曲面に関してはこの荒々しさをはらむアレンジ含め、この時期にしか出せない個性も楽しむことがでる。中でも、「Node Scene」や「Black Mastermind」「Spine Of God」「Ozium」といった長尺曲で展開されるスペーシーさやサイケデリック感は特筆すべきものがあり、リリースから30年経った今聴いても素直にカッコいいと思える仕上がりです。

あと、ほかのストーナー勢と比較するとMONSTER MAGNETの楽曲や演奏には“華”が感じられ、それはこの1作目の時点からすでに備わっていることにも気付かされます。危うさや妖しさの中に存在する、このメジャー感の強い華がのちのブレイクにもつながっていくんでしょうね。GRAND FUNKの「Sin's A Good Man's Brother」をカバーしている点も、そのへんにつながっているような気がしてなりません。

どんどん骨太になっていくメジャー進出後はもちろんですが、本作も初心者にマストで聴いていただきたい良作。特にカバー曲中心の最新アルバム『A BETTER DYSTOPIA』(2021年)との共通点もたくさん見つけられるので、同作とあわせてチェックしていただきたい1枚です。

 


▼MONSTER MAGNET『SPINE OF GOD』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ

 

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