カテゴリー「1992年の作品」の60件の記事

2020年7月23日 (木)

MARTY FRIEDMAN『SCENES』(1992)

1992年11月にリリースされたマーティ・フリードマンの2ndソロアルバム。日本盤は『シーンズ〜憧景〜』という邦題にて、翌1993年2月に発売されました。

マーティのソロ作品としては、1988年発表の『DRAGON'S KISS』以来、4年ぶりのオリジナル作品。前作制作時はCACOPHONYに在籍していたこともあり、はたまた相方のジェイソン・ベッカー(G)を意識してなのか、『DRAGON'S KISS』はShrapnel Records所属ギタリストらしく速弾きを駆使したメタリックな作品でした。そんな中にも、東洋音楽のフレージングやメロディが随所に散りばめられており、これがのちのMEGADETH加入につながったと言われています。

MEGADETH加入後に発表されたこの2ndアルバム、全8曲中前半4曲をかの喜多郎が、後半4曲をマーティ自身とスティーヴ・フォンタノがプロデュースを手がけるという異色の内容に。もっとも、すでにこの頃にはマーティの東洋音楽(特に歌謡曲や演歌といった日本の音楽)への傾倒ぶりは知れ渡り始めていたので、喜多郎とのコラボレーションもなるほどと納得するものがあったのは事実です。

レコーディングにはMEGADETHでの盟友ニック・メンザ(Dr)が全面参加。すべての楽曲にドラムがフィーチャーされているわけではありませんが、バンドアンサンブルが楽しめる楽曲ではニックのダイナミックなプレイを楽しむことができます……が、だからといって『DRAGON'S KISS』的メタリックな楽曲は皆無。すべてミドル/スローテンポで統一されたムーディな楽曲群を、重いヒットながらもメロディの邪魔をしない的確なプレイで支えています。

ディストーションギターよりもクリーントーンを中心としたメロウなプレイの数々は、非常にエモーショナルかつセンチメンタリズムが強調されたもので、確かに演歌的な“泣き”の要素も感じ取ることができます。しかし、完全に演歌そのものかと言われるとまったくそんなこともなく、むしろヨーロッパのバンドあたりにも通ずる“泣き”に近いものがあるのかな。日本人がそのへんの音に惹きつけられるのって、実はそのへんの感覚が非常に近いのかもしれませんね。

「Realm Of The Senses」のオープニングや曲中に日本の演歌的な女性のセリフがフィーチャーされていたり、マーティの奏でるメロディもまんま演歌だったりと(笑)、一歩間違えばズッコケ要素になりかねないのですが(1曲だけ抜き出せばそうなりかねない)、このアルバムの流れで聴けば成立するこの世界観。ハマったら抜け出せないものがあるのは確かです。

マーティのソロ作品中もっとも異質な1枚ですが、実は一番好きなギター・インストゥルメンタル・アルバムはこれなんですよね。発売から30年近く経つクラシック的作品ですが、今でもリラックスしたいときにBGMとして活用する、間違いなくマーティのベスト・ワークのひとつです。

 


▼MARTY FRIEDMAN『SCENES』
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2020年4月24日 (金)

TESTAMENT『THE RITUAL』(1992)

1992年5月に発表された、TESTAMENTの5thアルバム。

表題曲MVがMTV「Headbangers Ball」でヘビロテされたことで、アルバム自体も初の全米トップ100入り(77位)を果たした3作目『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(1989年)、続く4thアルバム『SOULS OF BLACK』(1990年)も全米73位とまずまずの成績を残したTESTAMENT。1987年のメジャーデビュー以降、アルバムを年に1枚とコンスタントにリリースを続けてきましたが、初めて1年7ヶ月という(彼らにしては)長いスパンをかけて完成させた5作目は、バンドにとって新たな挑戦がぎっしり詰め込まれた1枚となっています。

まず、本作の興味深いところはスラシュメタルから距離を取り、正統派HR/HMへと接近したことでしょう。直近の2作でその予兆はあったとはいえ、ここまで潔く舵を切るか……と当時は驚いたものです。

初期3作を手がけたアレックス・ペアリアスから初めてマイケル・ローゼン(FORBIDDEN、LAAZ ROCKIT、MORDREDなど)へとプロデューサーを変更した前作『SOULS OF BLACK』を経て、今作では新たにトニー・プラット(CHEAP TRICKDIO、VOW WOWなど)、ミックス・エンジニアにはナイジェル・グリーン(IRON MAIDENDEF LEPPARDAC/DCなど)というメジャー感の強い人選で制作に臨んでいます。

それもあってか、確かにサウンドの密度が過去4作とはまったく異なるものに。音圧の高さ、音数の多かったスラッシュ路線を排除したことにより、全体的にクリーンな音質で1音1音をより明確にさせるような音像/ミックスが施されており、それによりチャック・ビリー(Vo)のボーカルやアレックス・スコルニック(G)のギターソロがより際立つようになっています。

また、チャックの歌うメロディラインも明確にわかりやすいものへと昇華されており、単調さが目立ちマンネリ感が否めなかった前作からかなりの進歩が見られます。それらのメロディをより有効活用するために、テンポもグッと落とし、リードトラック「Electric Crown」のノリの良さ、「So Many Lies」や「Deadline」で展開されるグルーヴィーさ、「The Ritual」「Return To Serenity」といったバラード調の楽曲で強調されるエモさなど、ミドルテンポの中でもさまざまな工夫が用意されています。

正直、TESTAMENTの諸作品中もっとも刺激の少ないアルバムなのは否めませんが、「Electric Crown」や「Return To Serenity」のような楽曲を聴くと当時の彼らは“新世代のJUDAS PRIEST”になりたかったのかな……と。当の本家は逆に『PAINKILLER』(1990年)を経てよりスラッシュ/エクストリーム化が進んでいたわけですが。

アルバム自体は全米55位と、グランジ全盛の中大健闘。しかし、本作を最後にアレックス、ルイ・クレメンテ(Dr)が相次いで脱退し、いわゆる全盛期ラインナップは崩壊してしまいます。変化の代償はかなり大きかったようですね。

 


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2020年4月 5日 (日)

ALICE IN CHAINS『SAP』(1992)

ALICE IN CHAINSが1992年2月に発表した4曲入りEP。日本盤は海外からだいぶ遅れ、初来日公演に合わせて1993年10月下旬に初リリースされました。

1stアルバム『FACELIFT』(1990年)のツアーを終えたバンドは、キャメロン・クロウ監督による映画『シングルス』のために新曲を制作することになりスタジオ入り。ここで翌1992年初夏に発表される「Would?」(のちに2ndアルバム『DIRT』にも収録)や、『DIRT』収録曲の「Rooster」、そしてこの『SAP』収録曲を含む10曲前後のデモが完成します。バンドはこの機会を無駄にすることなく、1991年11月に再びスタジオ入り。PEARL JAMのデビューアルバム『TEN』(1991年)を手がけたばかりのリック・パラシャーとともに、4〜5日でこのEP収録曲をレコーディングしたのでした。

“樹液”を意味するタイトルの本作(アルバムジャケットが、まさに樹液を採取する様を表現したものです)は、まさにバンドの根幹となる歌に焦点を当てた楽曲が並び、それらをシンプルなアコースティックサウンドで表現するという、その後のALICE IN CHAINSにとって必要不可欠なスタイルがここでひとつ完成します。

レコーディングには同郷シアトル出身のHEARTからアン・ウィルソンがゲスト参加。またSOUNDGARDENクリス・コーネルMUDHONEYのマーク・アームといった気心知れた仲間たちも加わり、リラックスした環境の中で制作されたことが伺えます。

アン・ウィルソンはオープニングトラック「Brother」で主張の強い歌声を響かせ、ジェリー・カントレル(G, Vo)が初めてリードボーカルを担当した「Am I Inside」でも美しいコーラスを聴かせてくれます。また、クリス&マークが参加した「Right Turn」はALICE IN CHAINS、SOUNDGARDEN、MUDHONEYの合体ということで“ALICE MUDGARDEN”名義による楽曲となり、それとわかるボーカルを耳にすることができます。

アコースティック主体といいながらも、「Got Me Wrong」では適度に歪んだギタープレイも楽しむことがで、その不穏なメロディ運び含め、続く『DIRT』や『JAR OF FLIES』(1994年)への布石を見つけることができるはず。たった4曲しか収録されていないものの、実はバンドの歴史上非常に重要な作品ではないかと思っています。

なお、本作のCDではラストナンバー「Am I Inside」終了後にお遊びナンバー「Love Song」を隠しトラックとして収録しています。こちら、Apple Musicなどでは単独楽曲として聴くことができますが、Spotifyでは未収録。できれば配信版でも隠しトラックとして通してほしかったですね。

 


▼ALICE IN CHAINS『SAP』
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2020年2月24日 (月)

BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』(1992)

1992年6月末にリリースされたBLACK SABBATHの16thアルバム。日本盤は約1週間遅れの、同年7月上旬に発売されました。

トニー・アイオミ(G)にトニー・マーティン(Vo)、コージー・パウエル(Dr)を中心とした布陣で14thアルバム『HEADLESS CROSS』(1989年)を制作し、同作のツアーからニール・マーレイ(B)が加入。その編成で15thアルバム『TYR』(1990年)を制作したBLACK SABBATHは、ロニー・ジェイムズ・ディオ時代の名盤『HEAVEN AND HELL』(1980年)を思わせる様式美スタイルでリスナーを喜ばせてくれました。

しかし、この布陣は長くは続きませんでした。「ロニー時代のサウンドに挑むなら、せっかくだし当の本人呼んじゃえよ!」ってことで(いや違うけど)、トニー・マーティンに代わりロニー御大を呼び戻したアイオミ。さらにベーシストをオリメンのギーザー・バトラーに交代し、ディオ/アイオミ/ギーザー/コージーという夢のような編成が実現します。

ところが、コージーが落馬により骨折。バンド離脱を余儀なくされ、後任にヴィニー・アピスが加わることになります。これにより10thアルバム『MOB RULES』(1981年)の編成が復活することになり、いわゆる“ディオ・サバス”としての3作目『DEHUMANIZER』が生まれるわけです。

アルバム発売前に、映画『ウェインズ・ワールド』のサウンドトラックに新曲「Time Machine」を提供。『HEAVEN AND HELL』に収録されていしょうなアップテンポのハードロックで、我々の期待を煽ってくれましたが、いざ届けられたアルバムは『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』とも、それこそ直近の『TYR』とも異なる、現代的なヘヴィさが強調された異色作でした。

様式美を意識した作風というよりは、当時流行り始めていたモダンヘヴィネス系を彷彿とさせる、リフでグイグイ引っ張り続けるダークなミドルチューンが中心。そこにディオのボーカルが乗ることで“らしさ”は若干維持されているものの、歌メロの抑揚が過去の名作ほど起伏に富んだものではない。この平坦さ(今聴くとそこまで平坦でもないけど)こそ1992年という時代ならではで、ディオにしろアイオミにしろ「過去の焼き直し」ではなく「今のシーンと対峙する」ことを念頭に置いたアルバム作りに臨んだことが伺えます。

アイオミのリフワークはさすがの一言だけど、オジー・オズボーン在籍時のヘヴィさとも異なる新たなダークさ、ヘヴィさを表現している。かつ、そこに従来らしさもにじませているもんだから、リリース当時は非常に複雑な新曲になったものです。「あれ、アイオミ先生……トニー・マーティンをクビにしてまでやりたかったことがこれなの?」と。

ところが。ディオ・サバスはこの1枚で再び頓挫。アイオミ先生は再びトニー・マーティンを呼び戻し、『HEADLESS CROSS』路線を推し進めた傑作『CROSS PURPOSES』(1994年)を完成させ、一方のディオ御大はモダンヘヴィネス路線に特化した『STRANGE HIGHWAYS』(1993年)をリリースするのでした……はい、戦犯が誰かおわかりですね(笑)。

でもね。本作のリリースから30年近くを経た今、このアルバムとしっかり向き合うと……めっちゃ良いんですよ。ディオらしさもしっかり表現できているし、アイオミのリフメイカー/ソングライターとしての才能も際立っている。むしろ、グランジやモダンヘヴィネス系が台頭し始めたタイミングに、HR/HMのオリジネイターとしてちゃんと“今”と向き合い、そこで自分ができることを提示してくれている。退屈な曲がゼロとまでは言いませんが、全体を通して普通に楽しめる1枚だと思います。

個人的にはイントロで異彩さを放つ「Master Of Insanity」や、途中での展開がいかにもな「Computer God」、サイケなメロディラインが新鮮な「Sins Of The Father」、もっともディオ・サバスらしい「Too Late」などお気に入り多数。まあ、ここでの経験がさらに10数年後にHEAVEN AND HELLという変名ディオ・サバスへとつながっていくわけですが、それはまた別の機会に。

 


▼BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』
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2020年1月12日 (日)

MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』(1992)

1992年7月にリリースされた、MINISTRYの5thアルバム。

MEGADETHの来日公演(1991年初頭)の開場SEとして『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989年)が使用されたことで注目を集め、同作が1991年11月にようやく日本盤化。同時期には海外でニューシングル「Jesus Built My Hotrod」がリリースされ、このスラッシュメタル化した楽曲を通じて同ユニットにさらなる注目が集まり始めます。

こうして翌年に届けられたニューアルバムは、『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』での「Thieves」「Burning Inside」、そして先の「Jesus Built My Hotrod」を気に入ったリスナーなら一発でハマる内容に仕上げられました。

アルバム冒頭の「N.W.O.」から5曲目「Jesus Built My Hotrod」までの流れはとにかく圧巻で、メタル化したMINISTRYの真骨頂といえる内容です。スラッシーなギターリフを軸に、時に生ドラムに近いリズム、時に「Thieves」「Burning Inside」路線のマシンビートを用いて展開される楽曲群は、スラッシュメタルとハードコアパンクの中間といったところでしょうか。「TV II」での曲調や、それに乗せたアジテートはメタルというよりもハードコアのそれですしね。それに続く「Hero」なんて完全にメタルマナーですから、そりゃニヤニヤものでしょう。

圧巻は、アルバム中盤に置かれた「Jesus Built My Hotrod」。この曲の殺傷力と中毒性はリリースから30年近く経った今も衰えることなく、2020年の今聴いてもクセになる魅力を放ち続けています。ちなみに、この曲でボーカルを担当しているのはBUTTHOLE SURFERSのギビー・ヘインズ。この組み合わせも最高ですね。

……と、前半5曲でインダストリアル・メタルの真骨頂を楽しめる本作。ところが、続く6曲目「Scare Crow」で空気が一変します。BPMをグイッと落とし、引きずるようなミディアムヘヴィなリズムの上で単調なギターリフとボーカルが繰り返されるのみ……これが8分半も続くのですから(笑)。続く「Psalm 69」もシンフォニックなサウンドを用いつつも単調に繰り返されるフレーズ、途中でテンポチェンジしてヘヴィメタル的な展開を見せますが、再びスローに戻り、またテンポチェンジして……の反復。「Corrosion」は若干BPMが上げ気味ですが、メタルというよりはインダストリアル側に思いっきり寄った作風。ラストの「Grace」もヘヴィさを保っていますが、楽曲というよりはコラージュと呼ぶに近い作風。こうして前半の高揚感とは相反する、カオスな展開でアルバムは幕を降ろすのでした。

前作の「Thieves」「Burning Inside」や、シングル「Jesus Built My Hotrod」でMINISTRYに興味を持ったライト層をアルバム前半で惹きつけて、後半のダウナー4連発で地獄の底に落とし込む(笑)その悪意こそ、MINISTRYの本領発揮といったところでしょうか。傑作度という点においては前作のほうがはるかに上ですが、リスナーを挑発する作風という点では本作の右に出るものはないのではないか。そう思わずにはいられない快作です。

 


▼MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』
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2019年11月 8日 (金)

UGLY KID JOE『AMERICA'S LEAST WANTED』(1992)

UGLY KID JOEが1992年9月にリリースした1stフルアルバム。

前年秋に6曲入りEP『AS UGLY AS THEY WANNA BE』をインディーズから発表していた彼らですが、年明け1991年春に同作からのシングル「Everything About You」が全米9位の大ヒットに。同作も最高4位、200万枚を超えるヒット作になったことから、そのままメジャーのMercury Recordsと契約を交わし、猛スピードでフルアルバムを完成させます。

マーク・ドッドソン(ANTHRAXMETAL CHURCHSUICIDAL TENDENCIESなど)をプロデューサーに迎えて制作された本作は、良くも悪くも“1992年という時代性”が反映された興味深い1枚となっています。

そもそもUGLY KID JOEはHR/HMバンドなのか、あるいはグランジと並列で語られるべきオルタナティヴ・ロックバンドなのか。当時はHR/HMの枠で語られていましたが、そのヴィジュアルはスラッシュメタル以降グランジ未満といった過渡期的なもので、実は“グランジ/モダン・ヘヴィネス以降”の枠で語るべき存在なのではと個人的には思っています。明らかにSOUNDGARDENALICE IN CHAINSからの影響が伺える楽曲も含まれていますしね。

また、グルーヴィーなリフ&リズムを重視した楽曲群は明らかにモダン・ヘヴィネス以降のそれだし、跳ねたリズムを用いたファンクロック的アレンジはレッチリ以降のそれ。中にはサイケ色が感じられる楽曲も複数あり、そのへんは『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)以降の流れを汲むものなのかなと。

そう、実はこのアルバムって『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』以降の作品でもっともあの空気感を体現した“HR/HMサイドからの回答”なんじゃないかという気がするんです。このユルさはメタルのそれではなく、確実にレッチリ以降のそれなんじゃないかなって。いかがでしょう?

とはいいながらも、プロデューサーの人選によるものなのか、「Goddamn Devil」にはロブ・ハルフォードがフィーチャーされていたり、SUICIDAL TENDENCIESのディーン・プレザンツ(G)がゲスト参加していたりと、鋼鉄要素も存分に味わえます(と同時に、JANE'S ADDICTIONのスティーヴ・パーキンスもゲスト参加しているので、その流れで考えても先の“レッチリ以降”につながるのかなと)。

全米6位の大ヒットとなったハリー・チェイビンのカバー「Cats In The Cradle」や、MVも制作されたグルーヴメタル「Neighbor」「So Damn Cool」、前EPからの流用となる「Everything About You」など初期の代表曲はここでほとんど楽しめるので、まずはこれを聴いておけば問題ないかと。むしろ、これ以外に聴くべき作品があるのかというと(以下略)。

当時は時代の徒花的存在として相当バカにされたバンドですが(もちろん今も重要視されていませんが)、上に書いた“『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』のHR/HMサイドからの回答”という観点で触れると違った見方ができる、今となっては歴史的価値の高い1枚だと思っています。

 


▼UGLY KID JOE『AMERICA'S LEAST WANTED』
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2019年5月30日 (木)

PETER GABRIEL『US』(1992)

1992年9月発売の、ピーター・ガブリエル通算6枚目のオリジナルアルバム。前作『SO』(1986年)から6年ぶりの新作でしたが、その間には映画『最後の誘惑』サウンドトラックアルバム『PASSION』(1989年)や初のベストアルバム『SHAKING THE TREE』(1990年)が発表されていたので、意外と空いた感覚は少なかったような記憶があります。

『SO』が全英1位/全米2位を記録し、特にアメリカでは500万枚以上を売り上げ、「Sledgehammer」(全英2位/全米1位)や「Big Time」(全英13位/全米8位)といったヒットシングルまで生み出したピーガブですが、続く本作『US』は前作の延長線上にある世界観が展開されています。

ですが本作、『SO』にあった煌びやかさや派手さは皆無。ひたすら地味でダウナーでダークな世界観が展開されていきます。確かにこれも『SO』の中にあった一部分ではあるものの(いや、大半はこういった作風で、むしろ「Sledgehammer」や「Big Time」といったシングル曲が異色だったわけですが)、この地味さは1992年という時代にもフィットしていたんじゃないか……当時を振り返ると、そんな印象が残っています。

だってこのアルバム、『SO』以上に聴きまくったもの。中高生の頃にヒットした『SO』は、MTVでのブレイクもあって至るところで楽曲を耳にしましたが、アルバム単位では10代半ばの小僧が聴くには少々大人びた内容だったんですよね。ところが、そこから6年を経て20代に突入した自分は多少なりともいろんな音楽を耳にするようになったこともあり、この『US』の地味さが妙に心地よかったりしたんですよね。

序盤3曲(「Come Talk To Me」「Love To Be Loved」「Blood Of Eden」)の流れるような穏やかさは、そのサウンドに身を任せるだけで気持ち良い。かと思うと、先の「Sledgehammer」の進化系でもある「Steam」のキャッチーさは本作の中では異色の輝きを放っている。めっちゃポップですよね、この流れで突如現れると。

そして「Only Us」で再びダウナーな世界へと舞い戻り、異常に音数の少ないスタンダート調スローナンバー「Washing Of The Water」で心を落ち着かせ、ピーガブ流ヘヴィロックと言えなくもない「Digging In The Dirt」で再び熱を帯びる。オリエンタルな香りのする「Fourteen Black Paintings」やロック色の強いミディアムダンスチューン「Kiss The Frog」を経て、最後に穏やかな中にも高揚感を覚えるビートが心地よい「Secret World」で約60分の旅を終える。うん、完璧な構成じゃないでしょうか。

何気に『SO』よりも好きだし、実際『SO』よりも完成度の高い1枚だと思うのですよ。セールス的には『SO』には及ばないものの、僕の中では一番リピートする機会の多い作品です。

 


▼PETER GABRIEL『US』
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2019年3月18日 (月)

IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS『IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS』(1992)

4年ぶりのオリジナルアルバム『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)のリリースを待たずしてGUNS N' ROSESを事実上脱退したイジー・ストラドリン(G, Vo)。そんな彼が1992年10月、自身のメインバンドとなるTHE JU JU HOUNDSを携えて発表したのがこのアルバム。ガンズと同じGeffen Recordsからのリリースで、全米102位という記録を残しています。

THE JU JU HOUDSのメンバーはイジーのほか、元THE GEORGIA SATELLITESのリック・リチャーズ(G)、ジミー・アシュハースト(B)、チャーリー・クィンタナ(Dr)という布陣。ジミーはのちにBUCKCHERRY(2005〜2013年)の一員としても活躍しています。また、アルバムには元THE FACESのメンバーでストーンズのサポートでも知られるイアン・マクレガン(Key)や、レニー・クラヴィッツとのコラボレートでおなじみのクレイグ・ロス(G)、ニッキー・ホプキンス(Piano)、ロニー・ウッド(G, Vo)など豪華なメンバーがゲスト参加しています。

ガンズのメインソングライターのひとりだったイジーがほとんどの楽曲をひとりで書いていることもあり、どうしてもガンズと比較してしまいがちですが……ああ、この人はアクセル・ローズの管理下で窮屈な思いをしていたんだな、というのがこのアルバムを初めて聴いたときの印象でした。こんなに肩の力が抜けていて、それでいてクールさがしっかり保たれている極上のロックンロールアルバム、今のガンズには作れないよな、って。

かっちり作り込まれた『USE YOUR ILLUSION』シリーズというよりは、ラフさの目立ったデビューアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)をよりレイドバックさせたようなこのアルバム。オープニングの「Somebody Knockin'」のリラックス感からして、70年代のストーンズが戻ってきたかのような錯覚を覚えます。かと思えば、2曲目にレゲエの名曲「Pressure Drop」をパンキッシュにカバー(終盤に思いっきりレゲエになりますが)。「Shuffle It All」での哀愁漂うソウルフルな色合いや、「How Will I Go」でのレイドバックしたアコースティックテイストなど、とにかくすべてにおいて力み過ぎていない。だから、聴いてるこっちも曲が進むにつれてどんどん脱力していく。『USE YOUR ILLUSION』2作に窮屈さを覚えたリスナーには、こちらこそが“我々が望むもの”だったのかもしれませんね。

とはいえ、筆者的には『USE YOUR ILLUSION』での気が触れんばかりの完璧主義と、イジーのソロで聴けるレイドバック感、両方があってこその“初期ガンズ”なんですけど。そのさじ加減って本当に難しいんですね。そして、バンドって本当に難しい。このアルバムを何度も聴くにつれ、そう思わずにはいられませんでした。

クライマックスは、終盤に収められたロニー・ウッドのカバー「Take A Look At The Guy」。本家ロニーも歌とギターでゲスト参加していて、一瞬「あれ、今どっちが歌ってるの?」ってくらいイジーとロニーが似た雰囲気を醸し出している。ああ、イジーがもう少し心が強かったら、ガンズにおけるロニーみたいな存在になれたのに……(結局、その役割をダフ・マッケイガンが担っていくわけですが)。

THE JU JU HOUNDS名義はこの1枚のみで終了しますが、イジーはこのあとも不定期でソロアルバムを作り続けます。今や仙人のような立ち位置の彼。またこういったノリノリ(死後)のR&Rアルバムを作ってほしいところです。



▼IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS『IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS』
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2019年3月14日 (木)

LYNCH MOB『LYNCH MOB』(1992)

1992年4月(日本では5月)にリリースされた、LYNCH MOBの2ndアルバム。デビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)から1年半という比較的短いインターバルで発表されましたが、実はその間にボーカリストがオニー・ローガンからロバート・メイソンへと交代するというハプニングが発生しています。そういう人事異動があったからこそ、早く“次”を見せたかったのかもしれませんね。

オニーは決してテクニカルなシンガーではなかったけど、1stアルバムで表現されていたアグレッシヴなハードロックには最適だったと思います。しかし、新人ということもあってか、パワーで押し切るだけといった武器の少なさも見え隠れしていました。実際、初来日公演を観たときもそのへんの未熟さが露呈し、評価は微妙かな……と思いましたし。

ところが、2代目シンガーのロバートは(同じく無名ながらも)どんなタイプの楽曲でも無難にこなすタイプ。良く言えば器用、悪く言えば突出した個性に欠ける。なもんで、このアルバムも最初に聴いたときは『WICKED SENSATION』ほどのパンチが感じられませんでした。

しかし、ジョージ・リンチ(G)にとってはようやく「エゴを出しすぎず(ドン・ドッケン)、未熟さの感じられない(オニー)プロフェッショナル」なシンガーを手に入れられたわけで、なもんだから楽曲の幅も一気に広がっている。攻撃性は若干影を潜め、ギターも曲によっては少し引っ込むことを覚え始めました(笑)。

が、このバランス感が本当に絶妙で、よくやくここで“バンド”になれたのかな、と今聴くと感じるわけです。でなければ、ブラスセクションをフィーチャーした歌モノ「Tangled In The Web」やムーディーな「Dream Until Tomorrow」のような楽曲はやれなかったと思いますし。

いや、本当にどの曲もよくできているんですよ。オープニングの「Jungle Of Love」からして前作の路線をより洗練させ、そこにEXTREME的な“ハネ”を加えた新しさがあったり、「Heaven is Waiting」なんてDOKKENでもやれそうだし、前作にはなかったアップチューン「I Want It」もあるし。さらに、QUEENのカバー「Tie Your Mother Down」まである(タイミング的にフレディ・マーキュリーへのトリビュートなんでしょうか)。全10曲、非常にバランスが良くて、構成も練られている。ブルース色が減退したのも大きいのかな。この洗練された感にDOKKENでいうところの3rdアルバム『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に近いものがあると思うのは僕だけでしょうか。

チャート的にも前作の全米46位に次ぐ最高56位を記録。グランジ勢が台頭し始めたタイミングとはいえ、なかなか検討したと思うんです……なのに、このアルバムで一度解散するんですよね(苦笑)。その後、ジョージとミック・ブラウン(Dr)はDOKKEN再結成に参加することになるわけです。



▼LYNCH MOB『LYNCH MOB』
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2019年2月 6日 (水)

THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』(1992)

1992年11月(日本では翌1993年1月)にリリースされた、THE WiLDHEARTS通算2作目のEP。同年4月に発売された初EP『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』に収録された4曲を新たにテリー・デイト(SOUNDGARDEN、PANTERA、DEFTONESなど)がリミックスしたものに、新曲4曲を追加した2枚組EP(CDおよびアナログ)となります。ただし、日本ではCD1枚にまとめられていたこともあり、これがデビューアルバムと認識されることもしばしば。正式な1stアルバムは続く『EARTH VS THE WiLDHEARTS』(1993年)となるのでお間違えなく。

2枚組仕様だとDISC 1が『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』のリミックス盤で、曲順はオリジナルとは異なるものになっています。彼らの原点的1曲である「Nothing Ever Changes But the Shoes」から始まるオリジナル盤の曲順も気に入っていますが、いかんせん僕自身最初に聴いたのが『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』日本盤なので、フェイドインしてくる「Turning American」始まりの構成が身に焼き付いている。これはもう、卵が先か鶏が先かと同じようなものなので、どれが正解とは言い難いものがありますよね。

オリジナル盤と比べたら、リミックスされた『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』バージョンの4曲はどれも芯が太くなった印象で、新録された後半4曲とのクオリティの差はほぼ感じない。むしろ初期4曲の時点で楽曲の完成度が異常に高いことに改めて気づかされるのではないでしょうか。

DISC 2(日本盤後半)の4曲も捨て曲なしで、彼らが1992年のデビュー年の段階でその個性を確立させていたことに気づかされます。比較的ポップでキャッチーさが際立つ曲が多いのが後半4曲の魅力かな。「Splattermania」はもちろんのこと、のちにライブの定番曲にまで成長する「Weekend (5 Long Days)」、ワイルドなロックンロール調の「Something Weird Going On In My Head」、バラード風でエンディングのアレンジにクスっとさせられる「Dreaming In A」と、どれもメロディのキャッチーさがハンパない。サウンドアレンジのヘヴィさが印象的な前半との対比もしっかり感じられるし、何よりジンジャー(Vo, G)のソングライターとしての非凡さがこの時点ですでに際立っていたことに驚かされるばかり。シンガーとしてはもう一歩ですけどね(笑)。

日本のファンにとっては、すべてはここから始まったと言っても過言ではない重要な1枚。現在は廃盤状態で中古盤をこまめに探すしか入手方法はありません(デジタル配信もされていないし)が、2010年に再発された『EARTH VS THE WiLDHEARTS』リマスターバージョン(2枚組仕様)のDISC 2にまるまる収録されているので、こちらの新品を探したほうが早いかもしれません(曲順は初出EPに沿ったものになっていますのでご注意を)。



▼THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』
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