2019年3月18日 (月)

IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS『IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS』(1992)

4年ぶりのオリジナルアルバム『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)のリリースを待たずしてGUNS N' ROSESを事実上脱退したイジー・ストラドリン(G, Vo)。そんな彼が1992年10月、自身のメインバンドとなるTHE JU JU HOUNDSを携えて発表したのがこのアルバム。ガンズと同じGeffen Recordsからのリリースで、全米102位という記録を残しています。

THE JU JU HOUDSのメンバーはイジーのほか、元THE GEORGIA SATELLITESのリック・リチャーズ(G)、ジミー・アシュハースト(B)、チャーリー・クィンタナ(Dr)という布陣。ジミーはのちにBUCKCHERRY(2005〜2013年)の一員としても活躍しています。また、アルバムには元THE FACESのメンバーでストーンズのサポートでも知られるイアン・マクレガン(Key)や、レニー・クラヴィッツとのコラボレートでおなじみのクレイグ・ロス(G)、ニッキー・ホプキンス(Piano)、ロニー・ウッド(G, Vo)など豪華なメンバーがゲスト参加しています。

ガンズのメインソングライターのひとりだったイジーがほとんどの楽曲をひとりで書いていることもあり、どうしてもガンズと比較してしまいがちですが……ああ、この人はアクセル・ローズの管理下で窮屈な思いをしていたんだな、というのがこのアルバムを初めて聴いたときの印象でした。こんなに肩の力が抜けていて、それでいてクールさがしっかり保たれている極上のロックンロールアルバム、今のガンズには作れないよな、って。

かっちり作り込まれた『USE YOUR ILLUSION』シリーズというよりは、ラフさの目立ったデビューアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)をよりレイドバックさせたようなこのアルバム。オープニングの「Somebody Knockin'」のリラックス感からして、70年代のストーンズが戻ってきたかのような錯覚を覚えます。かと思えば、2曲目にレゲエの名曲「Pressure Drop」をパンキッシュにカバー(終盤に思いっきりレゲエになりますが)。「Shuffle It All」での哀愁漂うソウルフルな色合いや、「How Will I Go」でのレイドバックしたアコースティックテイストなど、とにかくすべてにおいて力み過ぎていない。だから、聴いてるこっちも曲が進むにつれてどんどん脱力していく。『USE YOUR ILLUSION』2作に窮屈さを覚えたリスナーには、こちらこそが“我々が望むもの”だったのかもしれませんね。

とはいえ、筆者的には『USE YOUR ILLUSION』での気が触れんばかりの完璧主義と、イジーのソロで聴けるレイドバック感、両方があってこその“初期ガンズ”なんですけど。そのさじ加減って本当に難しいんですね。そして、バンドって本当に難しい。このアルバムを何度も聴くにつれ、そう思わずにはいられませんでした。

クライマックスは、終盤に収められたロニー・ウッドのカバー「Take A Look At The Guy」。本家ロニーも歌とギターでゲスト参加していて、一瞬「あれ、今どっちが歌ってるの?」ってくらいイジーとロニーが似た雰囲気を醸し出している。ああ、イジーがもう少し心が強かったら、ガンズにおけるロニーみたいな存在になれたのに……(結局、その役割をダフ・マッケイガンが担っていくわけですが)。

THE JU JU HOUNDS名義はこの1枚のみで終了しますが、イジーはこのあとも不定期でソロアルバムを作り続けます。今や仙人のような立ち位置の彼。またこういったノリノリ(死後)のR&Rアルバムを作ってほしいところです。



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投稿: 2019 03 18 12:00 午前 [1992年の作品, Georgia Satellites, the, Izzy Stradlin, Ronnie Wood] | 固定リンク

2019年3月14日 (木)

LYNCH MOB『LYNCH MOB』(1992)

1992年4月(日本では5月)にリリースされた、LYNCH MOBの2ndアルバム。デビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)から1年半という比較的短いインターバルで発表されましたが、実はその間にボーカリストがオニー・ローガンからロバート・メイソンへと交代するというハプニングが発生しています。そういう人事異動があったからこそ、早く“次”を見せたかったのかもしれませんね。

オニーは決してテクニカルなシンガーではなかったけど、1stアルバムで表現されていたアグレッシヴなハードロックには最適だったと思います。しかし、新人ということもあってか、パワーで押し切るだけといった武器の少なさも見え隠れしていました。実際、初来日公演を観たときもそのへんの未熟さが露呈し、評価は微妙かな……と思いましたし。

ところが、2代目シンガーのロバートは(同じく無名ながらも)どんなタイプの楽曲でも無難にこなすタイプ。良く言えば器用、悪く言えば突出した個性に欠ける。なもんで、このアルバムも最初に聴いたときは『WICKED SENSATION』ほどのパンチが感じられませんでした。

しかし、ジョージ・リンチ(G)にとってはようやく「エゴを出しすぎず(ドン・ドッケン)、未熟さの感じられない(オニー)プロフェッショナル」なシンガーを手に入れられたわけで、なもんだから楽曲の幅も一気に広がっている。攻撃性は若干影を潜め、ギターも曲によっては少し引っ込むことを覚え始めました(笑)。

が、このバランス感が本当に絶妙で、よくやくここで“バンド”になれたのかな、と今聴くと感じるわけです。でなければ、ブラスセクションをフィーチャーした歌モノ「Tangled In The Web」やムーディーな「Dream Until Tomorrow」のような楽曲はやれなかったと思いますし。

いや、本当にどの曲もよくできているんですよ。オープニングの「Jungle Of Love」からして前作の路線をより洗練させ、そこにEXTREME的な“ハネ”を加えた新しさがあったり、「Heaven is Waiting」なんてDOKKENでもやれそうだし、前作にはなかったアップチューン「I Want It」もあるし。さらに、QUEENのカバー「Tie Your Mother Down」まである(タイミング的にフレディ・マーキュリーへのトリビュートなんでしょうか)。全10曲、非常にバランスが良くて、構成も練られている。ブルース色が減退したのも大きいのかな。この洗練された感にDOKKENでいうところの3rdアルバム『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に近いものがあると思うのは僕だけでしょうか。

チャート的にも前作の全米46位に次ぐ最高56位を記録。グランジ勢が台頭し始めたタイミングとはいえ、なかなか検討したと思うんです……なのに、このアルバムで一度解散するんですよね(苦笑)。その後、ジョージとミック・ブラウン(Dr)はDOKKEN再結成に参加することになるわけです。



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投稿: 2019 03 14 12:00 午前 [1992年の作品, George Lynch, Lynch Mob] | 固定リンク

2019年2月 6日 (水)

THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』(1992)

1992年11月(日本では翌1993年1月)にリリースされた、THE WiLDHEARTS通算2作目のEP。同年4月に発売された初EP『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』に収録された4曲を新たにテリー・デイト(SOUNDGARDEN、PANTERA、DEFTONESなど)がリミックスしたものに、新曲4曲を追加した2枚組EP(CDおよびアナログ)となります。ただし、日本ではCD1枚にまとめられていたこともあり、これがデビューアルバムと認識されることもしばしば。正式な1stアルバムは続く『EARTH VS THE WiLDHEARTS』(1993年)となるのでお間違えなく。

2枚組仕様だとDISC 1が『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』のリミックス盤で、曲順はオリジナルとは異なるものになっています。彼らの原点的1曲である「Nothing Ever Changes But the Shoes」から始まるオリジナル盤の曲順も気に入っていますが、いかんせん僕自身最初に聴いたのが『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』日本盤なので、フェイドインしてくる「Turning American」始まりの構成が身に焼き付いている。これはもう、卵が先か鶏が先かと同じようなものなので、どれが正解とは言い難いものがありますよね。

オリジナル盤と比べたら、リミックスされた『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』バージョンの4曲はどれも芯が太くなった印象で、新録された後半4曲とのクオリティの差はほぼ感じない。むしろ初期4曲の時点で楽曲の完成度が異常に高いことに改めて気づかされるのではないでしょうか。

DISC 2(日本盤後半)の4曲も捨て曲なしで、彼らが1992年のデビュー年の段階でその個性を確立させていたことに気づかされます。比較的ポップでキャッチーさが際立つ曲が多いのが後半4曲の魅力かな。「Splattermania」はもちろんのこと、のちにライブの定番曲にまで成長する「Weekend (5 Long Days)」、ワイルドなロックンロール調の「Something Weird Going On In My Head」、バラード風でエンディングのアレンジにクスっとさせられる「Dreaming In A」と、どれもメロディのキャッチーさがハンパない。サウンドアレンジのヘヴィさが印象的な前半との対比もしっかり感じられるし、何よりジンジャー(Vo, G)のソングライターとしての非凡さがこの時点ですでに際立っていたことに驚かされるばかり。シンガーとしてはもう一歩ですけどね(笑)。

日本のファンにとっては、すべてはここから始まったと言っても過言ではない重要な1枚。現在は廃盤状態で中古盤をこまめに探すしか入手方法はありません(デジタル配信もされていないし)が、2010年に再発された『EARTH VS THE WiLDHEARTS』リマスターバージョン(2枚組仕様)のDISC 2にまるまる収録されているので、こちらの新品を探したほうが早いかもしれません(曲順は初出EPに沿ったものになっていますのでご注意を)。



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投稿: 2019 02 06 12:00 午前 [1992年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, the] | 固定リンク

2019年1月 5日 (土)

ERIC CLAPTON『UNPLUGGED』(1992)

1992年8月にリリースされた、エリック・クラプトンのアコースティック・ライブアルバム。同年1月に行われた『MTV UNPLUGGED』の収録ライブから、のちにアルバム『PILGRIM』(1998年)でレコーディングされる「My Father's Eyes」や「Circus」などを除く全14曲が収められています。また、本作は全米1位、全英2位という大成功を記録し、特にアメリカでは1000万枚以上を売り上げるなど、その後のアンプラグド・ブームの火付け役となりました。

ちょうど本作の収録と前後して、クラプトンが映画『ラッシュ』のサウンドトラックを制作し、そこに収録したアコースティックナンバー「Tears In Heaven」が全米2位、全英5位と、彼のキャリア中もっとも成功した1曲となったこともこのアンプラグド・アルバムの成功に拍車をかけたことは間違いありません。

収録曲ですが、「Tears In Heaven」をはじめ「Old Love」や「Running On Faith」など過去のアルバムに収録されたオリジナル曲、DEREK AND THE DOMINOS時代の名曲「Layla」以外は、クラプトンの趣味趣向が反映されたブルースのカバー中心。もちろん、その中には「Before You Accuse Me」や「Rollin' And Tumblin'」といったCREAM時代からソロ時代までに取り上げてきたおなじみの曲も含まれています。

その中には、クラプトンが敬愛するロバート・ジョンソンのカバーも多く含まれており、ここでの経験がのちのブルース・カバーアルバム『FROM THE CRADLE』(1994年)やロバート・ジョンソンのみをカバーしたスタジオアルバム『ME AND MR. JOHNSON』(2004年)につながっていくわけです。

全編でクラプトンのアコースティックプレイと、リラックスした歌声を担当できる本作は、エレキスタイルで表現される緊張感の強い演奏とは異なる側面が反映されています。例えば「Layla」でのキーを下げ節回しを変えた歌唱スタイルなんて、まさにその色がもっとも強く表れているので、これがダメって人には無理強いできないかな。そんな人いるかどうかわかりませんが。

まあ本作は、ここ日本でもバカ売れしましたし、アメリカでも第35回グラミー賞(1993年)で6部門にノミネートされたうち3部門受賞(最優秀男性ロックボーカル、最優秀年間アルバム、最優秀ロックソング)を獲得。ギター弾いてた奴は急にアコギ(しかも、クラプトンと同じマーチンの000-42)を購入したり、来日した際にはそれまでロックのロの字もなかった女性から「行きたい!」と急に連絡が来たり……良くも悪くも“ブーム”を作ってしまった、罪深き1枚なんですわ。まあ、内容の良さとはまったく別の話題ですが。

なお、本作は2013年にカットされた「My Father's Eyes」や「Circus」、放送のために2回演奏された楽曲なども含むボーナスディスクや別売りされていたDVD同梱のデラックス・エディションも発売。90年代前半、早くも名曲と噂されていた「Circus」(当時のタイトルは「Circus Left Town」)聴きたさに西新宿界隈をさまよった身としては、クリアな音質で当時の音源を楽しめるこのバージョン発売には歓喜したものです(ぶっちゃけ、『PILGRIM』のスタジオバージョンよりこっちのほうが好きなので)。



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投稿: 2019 01 05 12:00 午前 [1992年の作品, Eric Clapton] | 固定リンク

2018年10月14日 (日)

RIDE『GOING BLANK AGAIN』(1992)

1992年3月にリリースされた、RIDE通算2枚目のオリジナルアルバム(日本では4月に発売)。1stアルバム『NOWHERE』(1990年)から1年半という短いスパンで届けられた本作は、プロデュースをバンド自身と前作のミックスを手がけたアラン・モウルダー(MY BLOODY VALENTINETHE SMASHING PUMPKINSNINE INCH NAILSなど)が担当。自己最高の全英5位を記録し、本国では10万枚を超えるヒット作に。「Leave Them All Behind」(同9位)、「Twisterella」(同36位)というシングルヒットも生まれました。

8分を超えるオープニングトラック「Leave Them All Behind」こそ“これぞシューゲイザー!”と呼びたくなるほど完成度の高い楽曲ですが、本作は決してシューゲイザー一辺倒というわけではありません。むしろ、シューゲイザーのフィールドに片足を突っ込みながら、もう片方で“脱シューゲイザー”を宣言するような、そんな力作に仕上がっています。

前作『NOWHERE』は確かにシューゲイザーの代名詞的作品だったと思います。しかし、「Leave Them All Behind」を初めて聴いたとき……ぶっちゃけ「あ、軽く前作を超えやがった」と思ったものです。強度という点においては、本作の無双感はハンパないんですよ。

かと思えば、歪み系の弱いギターポップチューン「Twisterella」にびっくりさせられ、“もはやパワーポップじゃん!”と叫びたくなる「Not Fazed」、前作にあったスタイルのひとつを進化させた叙情的な「Chrome Waves」など、音楽性の幅を一気に広げ始めています。

これってつまり、友達同士で「これやろうぜ!」って軽い気持ちで始めたバンドが、経験を積んだことで急激に進化していった……その一番良いタイミングを捉えたということなんでしょうかね。事実、この先メンバー間のバランスがいびつになり始め、急速に終焉へと向かっていくわけですから。

「Leave Them All Behind」とは別の形でシューゲイザーを体現している「Cool Your Boots」や「OX4」など、次作『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)ではもう聴けない輝き……バンドとしてここでクライマックスを迎えるなんて、あの当時は考えもしなかったなぁ。

個人的な思い出をひとつ。このアルバムがリリースされた頃、僕はイギリスに留学中でした。たまたま観たBBC『TOP OF THE POPS』で流れた「Leave Them All Behind」のスタジオライブ映像(たぶん当て振りだったと思う)に衝撃を受け、アルバムは発売されてすぐに購入。当時ポータブルCDプレイヤーなんて持っておらず、カセットしか聴けない状況だったので、当然カセット版を購入するわけです。旅の間、ずっと聴きまくったなぁ……。で、帰国してCDを購入したんだった。マニックス『GENERATION TERRORISTS』とこれはイギリス滞在中、本当にお世話になったアルバムでした。そんな大切な思い出の詰まった1枚です。



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投稿: 2018 10 14 12:00 午前 [1992年の作品, Ride] | 固定リンク

2018年10月 5日 (金)

NINE INCH NAILS『BROKEN』(1992)

1992年9月にリリースされた、NINE INCH NAILSのEP。1stアルバム『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)のリリース元TVT Recordsとの裁判があり、思うように新作を発表できなかったトレント・レズナー。そういった経緯もあり、本作は新たに契約を結んだInterscope Records経由での実に3年ぶりの新作となりました。人気や注目度がひたすら高まる中でのリリースとあって、本作は全米7位という好記録を残しています。

エレポップやインダストリアル、エレクトリックボディミュージックを彷彿とさせる前作から一変、本作では激しいギターを軸にした実に攻撃的な作品集に仕上げられています。6曲入りと実に短い作品集ですが、その内訳も2曲がSE的なインストなので、実質4曲の歌モノということになります。

で、その歌モノ楽曲が実に素晴らしく。オープニングSE「Pinion」から続く「Wish」は、当時主流だったダンスミュージックの手法をそのままヘヴィなギターミュージックに置き換えたようなインダストリアルメタルの名曲。現在までほぼ毎回ライブで披露される、彼らの代表曲のひとつになっています。

そこから続く「Last」が、これまたヘヴィ&ラウドでカッコいい。小休止的なインスト「Help Me I Am In Hell」を挟んで始まる「Happiness In Slavery」は前作の延長線上にあるボディミュージック的な作風ですが、その強度は前作以上。さらに「Wish」の続編的なファストチューン「Gave Up」で激しく幕を降ろします。ホント、一寸の隙も見せない完璧な作り。

で、本作はアメリカでの初リリース時に8センチCDが特典として付き、こちらに「Physical」と「Suck」の2曲が収録されていました。前者がアダム・アントのカバーで、後者はトレントも制作に携わったPIGFACEのカバー。で、日本やアメリカ以外の国ではこれらの楽曲はCD本編に、トラック98、99に収録されていました。つまり、トラック7からトラック97までは1秒程度の無音が収録されており、ストレートプレイだったらこの無音を経てラスト2曲へ到達、メンドくさかったら一気に曲を飛ばさなければ聴けないわけです。CDが99トラックしか収録できないという事実を突きつけられたというか、逆に99トラックをフルで使ったCDに初めて出会ったというか。トレントの不敵な笑みが浮かんできそうな仕掛けですね。

あと、本作といえば世に公開できないMVが制作されたのも印象深い出来事でした。本作からは「Last」以外の5曲(ボーナス2曲除く)のMVが制作されており、そのうち「Happiness In Slavery」はとてもじゃないけどオンエアできないってことで、1997年発売のビデオ作品『CLOSURE』まで正式な形では公開されていませんでした。内容については文字にするとアレなので(笑)、ネットで調べてみてください。ちなみにこの『CLOSURE』、国内リリースはこれまでなし。2本組VHS版が発売後数年間は西新宿あたりで入手可能でした。2004年にはDVDバージョンも発売されたようです。

※以下、エグい内容ですので閲覧注意。

なお、NINは今年9月13日からスタートした全米ツアー『Cold and Black and Infinite North America 2018』で、ライブ冒頭からこの『BROKEN』をボーナス2曲含む形で完全再現披露しています。「Happiness In Slavery」が演奏されたのは1995年以来だとか……なんだそれ、生で観たいぞ。



▼NINE INCH NAILS『BROKEN』
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投稿: 2018 10 05 12:00 午前 [1992年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

2018年8月19日 (日)

HARDLINE『DOUBLE ECLIPSE』(1992)

昨日のスティーヴ・ペリーの項で触れた元JOURNEY組(ギターのニール・ショーン、キーボードのジョナサン・ケイン)が結成したBAD ENGLISHですが、1991年8月に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースしてすぐに解散。ニールと、同バンドのドラマーだったディーン・カストロノヴォはジョニー(Vo)&ジョーイ(G)のジョエル兄弟と意気投合し、デヴィッド・リー・ロスのツアーなどに参加したトッド・ジェンセン(B)の5人でHARDLINEというバンドを結成するのでした。

本作は、1992年4月にリリースされたデビューアルバム。プロデュース自体をニール自身が担当しており、ソングライティングに関してもジョエル兄弟とともに行っております。

ここ日本では本作収録曲の「Hot Cherie」が先行して名曲扱いされ、このイメージで語られることの多いバンドかもしれませんが、アルバム自体は「Hot Cherie」のように哀愁味あふれる泣きのハードロックとは異なる、カラッとした王道アメリカンハードロック風味で仕上げられています。

オープニングの「Life's A Bitch」や続く「Dr. Love」など、重量感のあるミディアムテンポがいかにもアメリカンハードロック的ですし、アコースティックギターを用いたバラード「Change Of Heart」もJOURNEY時代のピアノバラードやBAD ENGLISHでのパワーバラードと比べたらケレン味の薄い作風と言えるでしょう。

しかし、本作がそれでも名作と呼ばれるのは「Hot Cherie」1曲のせいだけではなく、こういった良質のハードロックナンバーを、的確な演奏とジョニー・ジョエルという新たな可能性を持つシンガーが歌っていることも大きいのではないかなと。とにかく、ジョニーの歌が非常に良いのですよ。BON JOVIほどクセが強くなく、だけど胸に響く歌心が感じられる。そしてポップにもハードにも歌いこなせるその実力に、「本当にこれ、無名の新人?」と思わされたものです。

個人的には「Rhythm From A Red Car」や「Everything」「Bad Taste」のようなハードロックチューン、「Can't Find My Way」みたいなバラード、「I'll Be There」的な壮大さを持つミディアムナンバーがお気に入り。もちろん「Hot Cherie」も素晴らしいですけどね。

とにかく、JOURNEYやBAD ENGLISHとはまた異なる、良質のアメリカンハードロックバンドであることは間違いありません。ただ、ニールはこのアルバム1枚でとっとと脱退してしまうのですが(苦笑)。それにより、バンドも解散するのですが、1999年には再結成を果たしており、現在はジョニーのみが残りバンドを継続しています。



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投稿: 2018 08 19 12:00 午前 [1992年の作品, Hardline, Journey] | 固定リンク

2018年7月 6日 (金)

SLAUGHTER『THE WILD LIFE』(1992)

1992年4月に発売された、SLAUGHTER通算2枚目のスタジオアルバム。デビューアルバム『STICK IT TO YA』(1990年)が200万枚を超えるヒット作となったのを受け、完全にその延長線上にある作風でまとめられています。

どこかひねくれたメロディを持つミドルテンポの「Reach For The Sky」でスタートすると、続くアップチューン「Out For Love」では前作からのヒットシングル「Up All Night」がラジオから流れてくるというシャレた仕掛けも用意。曲調やアルバムの構成もかなり前作を意識しているので、新作なのに初めて聴いた感が薄い1枚です。

あ、それでもオーバープロデュース気味だった前作と比較して、本作はもっと“むき出し感”が強いかも。そのへんは1992年という時代に合わせているのかもしれませんね。ただ、そのオーバープロデュース感こそがSLAUGHTERの魅力でもあったんですが……。

で、そのオーバープロデュース感を見事に引き継いでいるのが、4曲目「Days Gone By」かなと。完全にQUEENを意識したピアノバラード風の1曲なのですが、単なるバラードで終わってない風変わりなポップロック調なところも、後半のコーラスの重ね方も、往年のQUEENを彷彿とさせます。前年11月にフレディ・マーキュリーが亡くなったことを受けて制作されたであろうことが、聴けば想像できる1曲です。前作の延長線上にある楽曲が多い中で、この曲が本作においてかなり強いフックになっていることは、間違いありません。

もちろん、そのほかにも日本のVOW WOWに提供した「Move To The Music」のセルフカバーや、泣きメロのミディアムナンバー「Real Love」、ブルースハープをフィーチャーした渋めの「Old Man」など印象に残る曲は含まれていますが、いかんせん14曲で60分オーバーという内容はちょっとトゥーマッチすぎやしないかなと。もう2、3曲フックになる印象深い曲が含まれていたら、また違ったんでしょうけど……ちょっと狙いすぎてやりすぎた感が強いかもしれません。

チャート的には前作を超える全米8位を記録していますが、セールスは前作の4分の1にあたる50万枚程度で終了。シングルヒットも「Real Love」が最高69位にランクインしたのみ。まあグランジ全盛の中でこれだけの成績を残せたのは、ある意味では奇跡なのかもしれませんが。

あ、現行CDはさらにボーナストラックが追加されており、70分超えの大ボリュームになっております。まあ、こっちは本当におまけ程度の内容。やっぱり「Old Man」から「Days Gone By」のアコースティックインストでしっとり終わるほうが、この長尺作品にはぴったりな気がするので。



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投稿: 2018 07 06 12:00 午前 [1992年の作品, Slaughter] | 固定リンク

2018年7月 4日 (水)

IRON MAIDEN『FEAR OF THE DARK』(1992)

1992年5月にリリースされた、IRON MAIDEN通算9枚目のスタジオアルバム。ヤニック・ガース(G)が加入して2枚目、そして長きにわたりメイデンのフロントマンとして活躍したブルース・ディッキンソン(Vo)の(当時)最後のオリジナルアルバムにあたり、全英1位(通算3作目)/全米12位を記録しています。また、本作からは「Be Quick Or Be Dead」(全英2位)、「From Here To Eternity」(全英21位)、「Wasting Love」(チャートインせず)、「Fear Of The Dark」(ライブテイク/全英8位)というヒットシングルも生まれました。

プロデュースを手がけたのは、初期からバンドとタッグを組んできたマーティン・バーチ。ですが、彼は本作を最後にプロデュース業から引退しており、そういう意味でもメイデンファンには印象に残る1枚かもしれませんね。

これまでのメイデンのアルバムは40分台が基本、長くても51分程度で、そういう場合は曲数も8〜9曲ということが多かったと思います。が、本作ではそういった“お約束”が破られ、全12曲で58分というCD時代らしい長さになっております。かといって1曲が長いものばかりかというとそうでもなく、7分程度あるのは「Afraid To Shoot Strangers」と「Fear Of The Dark」の2曲のみ。ほかは3〜4分程度が中心。そのへんのコンパクトさは前作『NO PRAYER FOR THE DYING』(1990年)に通ずるものがあると言えます。

ですが、本作はそれ以前の作品とちょっと違う印象を受けるんですよね。それは音の質感によるものが大きいのかなと。前作までが80年代の延長にある“ドンシャリ”的なサウンドだとすると、本作はもっとファットで硬質なイメージ。メタルシーン自体がそういう音を求めつつある時代だったというのもあるんでしょうけど、ここらへんに“90年代のメイデン”の軸足を見出せはしないでしょうか。

また、楽曲のテイストも従来のメイデンらしいものから、もっとLED ZEPPELIN的なスタイル、ポップなテイストのものなども増えており、名ソングライターのひとりであったエイドリアン・スミス(G)を失ったマイナス要素はあまり感じられません。いや、人によってはこの新機軸が嫌っていうこともあるのかな。当時、日本では比較的ポジティブに受け入れられていた記憶があるのですが。

ブルース・ディッキンソン脱退は、リリースからしばらく経って発表されたものでしたが、そういった意味でも本作はブルース在籍時の集大成的なものであると同時に、バンドとしての“これから”を示す大事な1枚でした。

ひたすら直線的なファストチューン「Be Quick Or Be Dead」や、メロウな「Childhood's End」「Judas Be My Guide」、シンプルなバラード「Wasting Love」、プログレッシヴな「Fear Is The Key」、そして現在まで歌い継がれるメタルアンセム「Fear Of The Dark」など印象的な楽曲も多く、個人的にも今でも好きな1枚です。



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投稿: 2018 07 04 12:00 午前 [1992年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2018年6月 1日 (金)

BLIND MELON『BLIND MELON』(1992)

アメリカ・カリフォルニア出身の5人組バンド、BLIND MELONが1992年9月にリリースしたデビューアルバム。「No Rain」(全米20位)のヒットも手伝い、アルバムはじわじわ売れ続け、全米3位まで上昇。400万枚を超える大ヒット作となりました。

このバンドのブレイクの裏には、実はGUNS N' ROSES(というか、アクセル・ローズ)がいることはご存知でしょうか。バンドのフロントマン、シャノン・フーン(Vo)は1991年秋に制作されたガンズのMV「Don't Cry」に出演し、アクセルとツインボーカルという形でパフォーマンスしています。これがきっかけとなり、BLIND MELONはCapitol Recordsとメジャー契約したわけです。

が、アルバムを聴いてもらえばおわかりのとおり、そのサウンドはガンズとはちょっと結びつかない、ブルースやカントリーやサイケなどの要素を取り入れた土着的なロック。どちらかといえば、当時大ブレイクしていたTHE BLACK CROWESや、「Under The Bridge」がバカ売れしていたRED HOT CHILI PEPPERS、そしてグランジ勢の中でもPEARL JAMあたりのほうに近い存在だったと言えるでしょう。結局、アクセルが絡んだことで同系統の音を求めたリスナーが、いざ聴いてみたらイメージと違って失望。最初こそ話題性だけで、本格的に売れるまでしばらくは足枷になっていたことは間違いありません。

「Soak The Sin」や「Tones Of Home」「Paper Scratcher」みたいにファンキーなノリを持ちつつ、「I Wonder」や「Change」のように落ち着いた雰囲気のアコースティックナンバー、さらには「No Rain」を筆頭としたサイケデリックな香りのする楽曲……こうやって今聴くと、90年代末にジョン・フルシアンテ(G)が復帰したレッチの諸作品に通ずるものがあると感じるのは、僕だけでしょうか。あるいは、アーシーな楽曲はジャック・ジョンソン以降のサーフロックにも通ずる……いろんな意味で、BLIND MELONが残した功績は非常に大きかったと言えなくはないでしょうか。

まったくヘヴィではないし、むしろドラムの軽さや前代を覆う高めのトーンは、同時代にブレイクしていたNIRVANAやSOUNDGARDENとは一線を画するもの。カリフォルニアとシアトルの違いと言ってしまえばそれまでですが、それにしても同じ時代に似たようなルーツを持ちながらもここまでベクトルが異なるか、と考えると思いものがありますね。

その後BLIND MELONは1995年8月に2ndアルバム『SOUP』をリリースするも、2ヶ月後にシャノン・フーンがオーバードーズで死去。一度は解散しますが、新たなボーカリストを迎えて2006年に再結成しています。



▼BLIND MELON『BLIND MELON』
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投稿: 2018 06 01 12:00 午前 [1992年の作品, Blind Melon] | 固定リンク

2018年5月31日 (木)

SOUL ASYLUM『GRAVE DANCERS UNION』(1992)

アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス出身の4人組ギターロックバンド、SOUL ASYLUMが1992年10月にリリースした6thアルバムにして、最大のヒット作(日本では同年11月発売)。本作からシングルカットされた「Runaway Train」が1993年に入ってから全米5位を記録し、アルバムは最高11位まで上昇。200万枚を超えるヒット作となりました。

このバンド自体、実は本作リリース時点で結成10年を超えるキャリアの持ち主で、今作が6枚目のアルバムという事実からもそのへんの“苦節ウン年”的な空気を感じるかもしれません。

実際のところ、それまでトップ200内にチャートインすらしていなかった彼らがなぜ「Runaway Train」でいきなりブレイクできたのか。確かにグランジやオルタナティヴロックが主流だった時代ですし、彼らのような土着型のオルタナギターロックが受け入れられやすい環境は整っていたと思います。

が、実際のところはこの「Runaway Train」のMVに大きな理由が隠されています。「Runaway Train」=家を飛び出した若者を題材にしたこの楽曲のMVでは、アメリカで行方不明になっている少年少女の名前と顔写真が紹介され、何かしらの情報を求めていることが伝えられたのです。MVが単なる楽曲紹介のためのツールや、バンドや映像作家のための新たな表現手段だけで収まらず、ある種の社会貢献にもつながる可能性があることを、このMVは証明したわけです。

このMVがMTVを通じて大きな反響を呼び、曲の良さも相まって大ヒットに。事実、このMVの効果は絶大で、親元に無事戻った子供も少なくないそうですが、中には亡くなっていることが確認されたり、すさんだ家庭から距離を置いていた子供が無理やり元の場所に戻されるという不幸なケースもあったそう。必ずしも良いことばかりではないという、難しさも浮き彫りになりました。

と、「Runaway Train」の話題に終始しましたが、アルバム自体も適度なオルタナ感と土着的なカントリーロック感がミックスされた、“アダルトなオルタナロック”を展開。「Somebody To Shove」のような攻めのナンバーやヘヴィなミディアムチューン「April Fool」もあるものの、基本的にはアコギを多用したロック/ポップチューンが中心。「Runaway Train」が気に入ったなら、問題なく楽しめる1枚だと思います。

ちなみにSOUL ASYLUM、現在も細々と活動を継続中。2005年にはオリジナルメンバーのカール・ミューラー(B)が亡くなり、現在はTHE REPLACEMENTSやGUNS N' ROSESなどで活躍したトミー・スティンソンが在籍しています。また、2016年には実に21年ぶりの来日公演も実現したばかりです。



▼SOUL ASYLUM『GRAVE DANCERS UNION』
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投稿: 2018 05 31 12:00 午前 [1992年の作品, Soul Asylum] | 固定リンク

2018年5月28日 (月)

INXS『WELCOME TO WHEREVER YOU ARE』(1992)

1992年8月にリリースされた、INXSにとって通算8枚目のスタジオアルバム。前々作『KICK』(1987年)および前作『X』(1990年)で本格的な全米ヒットを記録し、それまで低調だったイギリスでもついにブレイクを果たした彼らでしたが、90年代に入ると彼らのような派手なスタジアムロックバンドに対する風当たりが強くなり始めます。U2がダンスミュージックに傾倒し始め、DEPECHE MODEはよりオルタナ色を強めていったこの時期、INXSはというとキラキラしたダンサブルなスタジアムロックから少し違った方向へと進み始めます。

このアルバム、一聴すると若干地味に聴こえるかもしれません。確かに「What You Need」や「New Sensation」のような突き抜けた派手さはないです。が、1曲1曲が鬼のようにめちゃめちゃ精密に作り込まれており、そういった楽曲がずらりと並ぶことで一種異様な空気感を作り上げています。

まず、オープニングの小楽曲「Questions」からしていつもと違う雰囲気を醸し出している。どこかワールドミュージック的でもあるこの曲から流れるように続くのは、ワイルドな「Heaven Sent」。派手さはあるけどこの並びで聴くとどこか地味に聴こえるから不思議です。でも90年代前半にこういった“ど真ん中”のアリーナロックを高らかに鳴らすことに、なんの迷いも感じない彼らの姿勢、素晴らしいです。

かと思うと、「Communication」や「Not Enough Time」のように落ち着いた大人の雰囲気のミディアムチューンがあったり、クラブミュージックに特化したダンスチューン「Taste It」もある。そして“大人なロック”「All Around」で前半を締めくくる。

後半は、どうしてこんな曲がこのタイミングに完成したんだ?と驚きを隠せない「Baby Don't Cry」からスタート。ストリングスやブラスを大々的にフィーチャーしたこの異色のポップチューンを、彼らはOASISが誕生する数年前にすでに完成させていたんですよね。そこから落ち着いた雰囲気のポップナンバー「Beautiful Girl」へとつなげ、ダンサブルな「Wishing Well」、キャッチーなメロのロック「Back On Line」、ハウス調のビートが新鮮な「Strange Desire」と続き、最後は宗教チックなダークさを持つスローチューン「Men And Women」でアルバムは終了します。

よく聴けば前作『X』からの流れをよりミニマムな方向へと推し進めた作品であることは理解できるのですが、『KICK』で得たものを血肉にしつつも新しい道を歩みだしたことが感じられるのではないでしょうか。そして、ロックなのにポップ、ポップなのにロックで頭からケツまで一切の無駄がない作風……個人的には、これ以上完璧に作り込まれたロックアルバムはないんじゃないか?と当時思ったほどです。

このアルバムがリリースされた頃に組んでいた自分のバンドで、メンバー間で「こういうバンドになりたい。このアルバムが理想」とよく話していたことをよく覚えています。今でもキャッチーなロックアルバムに触れるときは、心のどこかでこのアルバムを比較対象として聴いてしまっているところがあるかもしれません。本当に、それくらいお気に入りの1枚です。

なお、本作は全米では最高16位とトップ10入りを逃し、シングルヒットも「Not Enough Time」の28位、「Beautiful Girl」の46位が最高。一方、イギリスでは本作で初のチャート1位を獲得したほか、「Heaven Sent」(31位)、「Baby Don't Cry」(20位)、「Taste It」(21位)、「Beautiful Girl」(23位)と数多くのヒット曲を生み出しています。思えばBON JOVIのようなバンドがアメリカで苦戦した90年代、イギリスではアルバムやシングルがバカ売れしていたんですよね。この傾向についても、いつか改めて触れられたらと考えています。



▼INXS『WELCOME TO WHEREVER YOU ARE』
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投稿: 2018 05 28 12:00 午前 [1992年の作品, Inxs] | 固定リンク

2018年4月18日 (水)

FAIR WARNING『FAIR WARNING』(1992)

ドイツ出身のメロディアスハードロックバンドFAIR WARNINGが、1992年に発表したデビューアルバム。ドイツ本国では同年3月、日本では半年遅れて9月にリリースされましたが、音専誌などで高く評価されたことから翌1993年には初来日公演も実現。本国以上にここ日本で強い支持を誇る、“ビッグ・イン・ジャパン”的な存在のひとつです。

もちろん、それだからといって一発屋だとか作品が一過性のものだとか、そんなことはまったくなく、リリースから25年以上経った今聴いても非常に優れたハードロックアルバムであることには間違いありません。

昨日紹介したPINK CREAM 69同様、このバンドもいわゆるジャーマンメタル的なカラーを持ち合わせない存在のひとつで、ウレ・リトゲン(B)とヘルゲ・エンゲルケ(G)の書くヨーロッパのバンドらしい哀愁味強めのメロディを武器に、それらを非常に卓越したバンドアンサンブルとフロントマンであるトミー・ハート(Vo)の圧倒的なボーカルで表現することにより生まれるマジックで、このデビュー作は埋め尽くされている。それがすべてだと思います。

「Out On The Run」や「The Heat Of Emotion」(かのジノ・ロートによる書き下ろし曲)といったメロウなアップチューン、「When Love Fails」「One Step Closer」「Take A Look At The Future」をはじめとする聴き応えのあるミディアムナンバー、そして「The Call Of The Heart」「Long Gone」「Take Me Up」などこのバンドにとって大きな武器のひとつであるメロディアスなバラードなど、どこをどう切り取っても名曲ばかり。

かと思えば、「The Eyes Of Rock」みたいにメジャーキーの疾走ナンバー、シンセを味付けに加えることでキラキラ度が増す「Hang On」のような楽曲もあり、同系統の楽曲一辺倒では終わらない。ヨーロッパを基盤にしたバンドにアメリカンフレイバーを散りばめるという点においては、先に名前を挙げたPINK CREAM 69と共通する要素も多々ありますが、ボーカリストのカラーが違うと印象もここまで変わるんだな、ということを強く実感できるはず。僕はアンディ・デリスタイプのシンガーが好きだったので、最初こそFAIR WARNINGには苦手意識があったけど、ちゃんとアルバムを聴くとその曲の良さに気づかされ、いつの間にか苦手意識もなくなっていました。

そういった意味ではこのバンド、同郷の大先輩であるSCORPIONSの80年代以降のスタンスに近いものがあるのかもしれません。そう考えると、『LOVE AT FIRST STING』(1984年)以降のSCORPIONSとの共通点も見えてくるのではないでしょうか。

その後も名作と呼ばれる作品を数々発表していますが、トータルとしての完成度の高さはこのデビュー作が随一だと思っています。



▼FAIR WARNING『FAIR WARNING』
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投稿: 2018 04 18 12:00 午前 [1992年の作品, Fair Warning] | 固定リンク

2018年2月 3日 (土)

SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』(1992)

SKID ROWが1992年秋に発表した5曲入りカバーEP。前年初夏に発表した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』が全米チャート初登場1位という快挙に輝き、同作を携えたツアーも1年以上継続。そのファイナルを控えたタイミングでのリリースだったのですが、収録曲の大半は過去のシングルにカップリングで収録されたものばかり。ですが、こうやって彼らのルーツナンバーを彼らのサウンドで楽しめるというのは、ファンにとっては少なからず嬉しいものがあるのではないかと思います。

カバーされているのは、RAMONESKISSJUDAS PRIESTRUSHジミ・ヘンドリックスと、彼らのサウンドからすれば何にひねりもないセレクト。RUSHに多少こだわりが感じられたりしますが、ピックアップしたのが1stアルバムからというあたりにこだわりがあまり感じられないのでは……という話も(苦笑)。まあ、いいじゃないですか、微笑ましくて。

とにかく、どの曲も原曲に忠実で素直なアレンジ。オープニングのRAMONES「Psycho Therapy」(ボーカルはベースのレイチェル・ボラン)も若干ヘヴィにはなっているものの、基本的なアレンジはまんま。KISS「C'mon And Love Me」は原曲にあったアコースティカルな色合いが消えてしまったものの、メロの良さは完全に生かされており、これはこれでグッド。プリースト「Delivering The Goods」はご本家ロブ・ハルフォードがゲスト参加したライブテイクをそのまま収録。そりゃあまんまですよね(笑)。

で、RUSH「What You're Doing」ですが、実はこれを聴くと「なぜ『SLAVE TO THE GRIND』というアルバムが完成したのか?」という、その理由の片鱗が見えてくるんじゃないかという気がするんです。そして、ここから次作『SUBHUMAN RACE』(1995年)へとつながっていく理由もね。結局、こういうグルーヴィーなハードロックをJUDAS PRIEST的方法論で表現したかったんですね。

最後のジミヘン「Little Wing」のみ、本作で初出のカバー。これも、まぁまんまっちゃあまんまですが、ギタリスト2人が本家に無理やり近づこうと頑張っております。残念ながらそこには到達できてないのですが、いい線いってるんじゃないかなと。これを聴くと、『SLAVE TO THE GRIND』での泣きのバラード(「Quicksand Jesus」「「In A Darkened Room」「Wasted Time」」のルーツも垣間見えるという。なるほどですね。

たった5曲、20分にも満たないEPですが、もしあの当時のSKID ROWがのちのGUNS N' ROSESみたいにフルカバーアルバムを作ったとしたら、ほかにどんなアーティストを取り上げたんでしょうね。



▼SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』
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投稿: 2018 02 03 12:00 午前 [1992年の作品, Jimi Hendrix, Judas Priest, KISS, Ramones, Rush, Skid Row] | 固定リンク

2017年11月22日 (水)

EXTREME『III SIDES TO EVERY STORY』(1992)

1992年秋に発表された、EXTREME通算3作目のオリジナルアルバム。1990年夏にリリースした前作『EXTREME II: PORNOGRAFFITTI』からのシングル「More Than Words」が全米1位、続く「Hole Hearted」も全米4位とヒット曲を連発し、アルバム自体も全米10位まで上昇し、200万枚以上も売り上げる結果に。続く本作はその成功を踏まえた、前作の延長線上にある内容になるかと思われました。

しかし、いざ届けられたアルバムはアナログ盤で2枚組に相当するコンセプチュアルな内容。確かに「More Than Words」的アコースティック/バラード路線も「Get The Funk Out」の流れを組むファンクメタル路線も引き継いでいるものの、よりやりたい放題でとっ散らかった作風と言えるような代物でした。

「Yours」「Mine」「The Truth」という3つの側面=III SIDESから構成された本作は、大雑把に言うと「Yours」がハードロック/ファンクロックサイド、「Mine」がメロウ/バラードサイド、「The Truth」はプログレッシヴロックサイド……といったところでしょうか。

「Yours」はヌーノ・ベッテンコート(G)のギタープレイが前面に打ち出されたファストナンバー「Warheads」からスタート。続く先行シングル「Rest In Peace」はファンキーでサイケデリックながらも歌メロがキャッチーな、いかにもシングル向きの1曲。ギターソロ終盤に登場するジミヘンの名フレーズ含め、彼らの遊び心が感じられる仕上がりです。「Politicalamity」「Cupid's Dead」は彼らのファンクロックサイドを強調させた楽曲で、それぞれ前作の延長線上にありながらもより深みを増した印象があります。そんな中で「Color Me Blind」はちょっと異色の1曲かな。ストレートなメロディアスハードロックなのですが、すごく引っかかりのある楽曲なんです。そういう意味では、彼らの新境地と言えるかもしれません。

続く「Mine」は、ギターレスのポップバラード「Seven Sundays」からスタート。これなんて、もろにQUEENですよね。そこから「Hole Hearted」の流れをくむ「Tragic Comic」続き、次の「Our Father」からの構成はまさに初期のQUEENのアルバム。大げさでドラマチックで、ロックの域を逸脱したポップさは、確かにハードロックを彼らに求める層にはちょっと疑問が残る楽曲群かもしれません。

で、そこをさらに激化させたのが「The Truth」サイド。全3曲から構成された「Everything Under The Sun」という組曲は、トータル22分におよぶ大作で、ストリングスや管楽器まで登場する……もはやハードロックの枠で語りたくなくなる壮大な交響曲です。「ああ、ヌーノはこれがやりたかったんだな」と、ここにたどり着いて納得させられました。つまり、メタルサイドもファンクサイドもポップサイドもちゃんと残して、それを序盤に詰め込んで、最後の最後に「ここからは好きにやらせてもらいます」と20分以上の組曲を投入する。見方次第では作り手のオナニーと受け取られてしまう可能性も高いですが、でもリスナーが求めるものもしっかり提供しているわけで、そこはちゃんとバランスが取れてると思うんですよね。

そういうオナニー的な部分が災いして、というわけではないでしょうが、本作は全米10位と前作同様の記録を残すものの、セールス的には50万枚止まり。というのも、世の中的にはNIRVANAをはじめとするグランジ勢がロックシーンを席巻し、ハードロック勢は“時代遅れ”として後ろに追いやられてしまったわけです。そんな状況下でもこれだけの数字を残せたのは、ある意味ラッキーだったのかもしれませんね。

ちなみに本作、収録時間の関係でCDバージョンだと「Mine」サイドラストナンバーの「Don't Leave Me Alone」がカット。アナログやカセット版には問題なく収録されているのですが……ということもあって、国内盤初版発売時は同曲のみが収められたオマケの8cmCDが付いていたりもしました。配信が主流になった今こそ、完全版で再発してほしいんですけどね。



▼EXTREME『III SIDES TO EVERY STORY』
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投稿: 2017 11 22 12:00 午前 [1992年の作品, Extreme] | 固定リンク

2017年9月24日 (日)

DREAM THEATER『IMAGES AND WORDS』(1992)

1992年初夏にリリースされた、DREAM THEATER通算2作目のフルアルバム。デビュー作『WHEN DREAM AND DAY UNITE』(1989年)はここ日本でも一部マニアの間で話題となりましたが、ボーカル脱退などもありその後しばらくは話題になることはありませんでした。

が、“正統派メタル冬の時代”に突入した1992年、突然変異と言われてもおかしくない形で復活。ジェイムズ・ラブリエ(Vo)という“ちゃんと歌える”メタルシンガーを迎えたことで、QUEENSRYCHEの成功以降いくつも誕生した“プログレッシヴメタル”中でも頭ひとつ抜けた存在へと成長します。

ギターやベース、キーボードのテクニカルなユニゾンプレイ、長尺で起承転結のしっかりした楽曲(全8曲で57分。最長はラストの「Learning To Live」の11分半)、ボーカルパートよりもインストパートのほうがはるかに長いなど、プログレ特有のカラーは確かに強いものの、今聴くとこのアルバムってヘヴィメタル以外の何ものでもないんですよね。

時代背景を考えると、グランジ全盛でメタルといえばMETALLICAブラックアルバムPANTERAHELMETをはじめとするヘヴィでグルーヴィーなバンドがトレンドの時期。いわゆる様式美を軸にした正統派ヘヴィメタルや華やかに着飾ったファッションメタル、テクニック至上主義のバンドは“時代遅れ”だったわけです。実際この時期を境に、それまでメインストリームにいたHR/HMバンドはどんどんグランジやグルーヴメタル系からの影響をあからさまに見せた作品を出して、次々と失敗していく。なのに、DREAM THEATERはこんなにも“ど真ん中”なアルバムを、メジャーレーベルから堂々とリリースしたのですから、驚くのを通り越して「何考えてるんだよ!?」と言いたくなってしまうわけですよ。

思えば制作自体はグランジだグルーヴメタルだと騒がれる前には始まっているわけで、良い意味でそういったトレンドに影響を受けていない。ただ自分たちの信じた道をまっすぐ進んだら、世の中的に“突然変異”と受け取られるような作品を完成させた。これが真実なんでしょうね。

また、彼らがここまでど直球にヘヴィメタルと向き合ったのも、きっと本作が最初で最後なんじゃないでしょうか。もちろん本作以降のアルバムもすべてヘヴィメタルアルバムには違いないのですが、続く『AWAKE』(1994年)以降の作品では、DREAM THEATER自身もトレンドから影響を受け、低音を効かせたヘヴィロック路線へと移行しているんですから。そういう意味でも本作は奇跡であり、やっぱり異色なんですよね。

楽曲単位では本当にどれも素晴らしいので、ここで何か解説するよりもまずは聴いてもらうのが一番かなと。ちなみに、先日の来日公演で本作の完全再現ライブが披露されましたが、そこで改めて感じたのは、自分はアルバムB面(「Metropolis Part I: The Miracle And The Sleeper」「Under A Glass Moon」「Wait For Sleep」「Learning To Live」)が本当に好きだということ。これらの名曲を現在のテクニックで再現されるなんて、最高以外の何ものでもないですよね。



▼DREAM THEATER『IMAGES AND WORDS』
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投稿: 2017 09 24 12:00 午前 [1992年の作品, Dream Theater] | 固定リンク

2017年9月17日 (日)

THERAPY?『NURSE』(1992)

北アイルランド・ベルファスト出身のトリオバンドTHERAPY?による、1992年秋発売のメジャー1stアルバム。1991年後半と1992年前半にそれぞれミニアルバム『BABYTEETH』『PLEASURE DEATH』をインディーズから発表し、のちにメジャーのA&Mと契約し、リリースされたのがこの『NURSE』というフルアルバムになります(『BABYTEETH』『PLEASURE DEATH』の2作品に収録された全楽曲は、のちに北米地区で『CAUCASIAN PSYCHOSIS』と題したコンピレーションアルバムとしてリリース)。

『BABYTEETH』や『PLEASURE DEATH』で展開された「オルタナインディロックとインダストリアルメタルをミックスしたサウンド」「カンカン鳴るメロタムの音と反復するパーカッシブなリズム、それに合わせてシークエンスされるギターリフ」「無機質だけど、どこかエモーショナルなメロディ」といった要素が、本作ではより強まっており、それが早くもこのバンドの個性として確立されつつあることが伺えます。オープニングを飾る「Nausea」はもちろんのこと、続くシングルヒット曲「Teethgrinder」はまさにそのもっともたる1曲と言えるでしょう。

かと思えば、次作『TROUBLEGUM』(1994年)以降その色合いがより強まっていく、ダークでひんやりとしたミディアム/スローのエモーショナルな要素が「Gone」あたりから感じられ、メジャーデビュー作の時点で“今後の大変貌の予兆”が散りばめられています。特にチェロを導入した叙情的な「Gone」、ダブのテイストを取り入れつつもどこかダークな「Deep Sleep」あたりはJOY DIVISIONに通ずるカラーがあり、このバンドがどこから生まれ、どこに向かっていこうとしているかが何となく理解できるのではないでしょうか。

ヘヴィなギターリフなメタリックな曲調が一部混在していることから、どうしてもHR/HMの流れを組むバンドと認識されそうですが、どちらかと言えば同時代にアメリカで勃発したグランジムーブメントに対するヨーロッパからの返答だったのでは……なんて言ってしまっては大袈裟でしょうか。残念ながら、彼らに続くような個性的なバンドがそこまでおらず、時代はもっと肉感的なダンスミュージック(マッドチェスターなど)へと接近。続くブリットポップにもかすらなかったものの(だからMANIC STREET PREACHERSTHE WiLDHEARTSといったバンドと共闘したのも頷ける話)、次作『TROUBLEGUM』を機にチャート的にも成功を収めるので、まぁよかったのかなと。



▼THERAPY?『NURSE』
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投稿: 2017 09 17 12:00 午前 [1992年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2017年9月15日 (金)

R.E.M.『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』(1992)

1992年秋発表の、R.E.M.通算8枚目のスタジオアルバム。前年春にリリースした前作『OUT OF TIME』が初の全米1位を獲得し、ノリにノッている状況で1年半という短いスパンで発表された本作。『OUT OF TIME』がポップな作風だったこともあり、当初次作ではロック色の強い作品を想定して、前作完成からすぐにセッションに取り掛かったそうですが、実際に完成したものは一聴すると非常に内向的なもの。先行シングルにしてオープニングトラックの「Drive」を最初に聴いたときは、正直「……暗っ!」と若干引いたことを覚えています。

そう、“暗いアルバム”というのが『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』に対する第一印象。ロック色の強い作品は2年後の『MONSTER』(1994年)まで待つことになりますが、本作は本作で表層的には暗いんだけど、実は非常に優しくて温かいアルバムなんですよね。

アメリカの音楽シーンはちょうど1年前にNIRVANAPEARL JAMがメジャーデビューを果たし、数ヶ月後に大ヒット。すでに本作がリリースされる頃にはグランジが一大ブームとなっていた時期でした。また情勢的にも湾岸戦争以降の不況、アメリカ大統領選挙(1992年)など時代の変わり目でもあったわけです。

そんな中でR.E.M.がこのアルバムでテーマとして選んだのが「死」や「絶望」といった一見ネガティブなもの。しかし、彼らはそのテーマを最終的に非常に前向きで、「生」へとつないでいくわけです。ポジティブに背中を押す楽曲もあれば、逆説的に生の尊さを伝えようとする楽曲もある。傷つきながらも現実から目をそらさず、希望を捨てず、生きることを諦めない。ラストナンバー「Fined The River」にたどり着く頃には、その答えが聴き手の心の中にそれぞれ見つかるんじゃないかと思います。

だからこそ、「Everbody Hurts」という曲の歌詞がより強く響く。楽曲単位でも素晴らしいナンバーですが、このアルバムのテーマに沿って聴くことで、その意味はより深いものに感じられるはずです。そして終盤……「Man On The Moon」「Nightswimming」「Find The River」の流れは圧巻の一言。この時代だったからこそ成し遂げることができた、珠玉の楽曲構成ではないでしょうか。

アコースティック楽器を多用していたり、ストリングスを全面的に導入したり(ジョン・ポール・ジョーンズがオーケストラアレンジを担当)とソフトな面が印象に残る作品ですが、実はものすごく“力強い”アルバムだと思っています。R.E.M.のアルバム中もっとも好きな1枚です。



▼R.E.M.『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』
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投稿: 2017 09 15 12:00 午前 [1992年の作品, Led Zeppelin, R.E.M.] | 固定リンク

2017年9月 4日 (月)

THE BLACK CROWES『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992)

デビューアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)の大ヒットを受け、1992年春に発表されたTHE BLACK CROWESの2ndアルバム。本作発表前にはジェフ・シーズ(G)が脱退し、元BURNING TREEのマーク・フォード(G)が加入。さらにエディ・ハーシュ(Key)も加わり、6人編成で本作『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』を制作します。

デビュー作で提示した「ROLLIN STONESからの影響を感じさせつつも、適度にハードで、それでいてサザンロックの香りも漂わせる土着的ロックンロール」路線はここでも踏襲されていますが、本作ではよりサザンロック色を強めています。曲作りの時点でジャムセッション度が高まっていることもあってか、コンパクトな楽曲が少なくなり、全10曲中6分を超える楽曲が3曲もあることに驚かされます。

ですが、それぞれの楽曲を決して長いとは感じることがないのは、1曲1曲がしっかり練りこまれているから。ジャムをもとに制作されているものの、歌メロがキャッチーでアレンジもある程度固められている(軸だけしっかり固め、あとは自由)。さらに、女性ゴスペルコーラスが加わることで、音の厚み、温かみがより増している。

デビュー作のレビューで「サザンロックってちょっと敷居が高いとかとっつきにくいという印象がある」と書きましたが、少なくともこの2ndアルバムの時点まではTHE BLACK CROWESに対してそういう印象はまったくないんですよね。その傾向が強まるのは、次作『AMORICA』(1994年)以降からなので(笑)。そういう点においては、サザンロック入門編としては非常にとっつきやすい1枚かもしれません。クリス・ロビンソン(Vo)も艶やかだし、リッチ・ロビンソン(G)もただひたすらカッコ良く、意外とHR/HMファンにも入っていきやすい作品なんじゃないかな。

アップテンポの楽曲はオープニングの「String Me」と後半一発目の「Hotel Illness」程度。あとはミディアムテンポのグルーヴィーな楽曲とスローナンバーが中心で、そこも聴きやすさにつながっているのかも。さらに「Remedy」や「Black Moon Creeping」「No Speak No Slave」みたいにヘヴィな楽曲も気持ちよく聴ける。ラストには恒例のカバー曲「Time Will Tell」(今回はボブ・マーリー)も収録。ボーナストラックとして「Sting Me」のスローバージョンやカバー曲「99 lbs.」も含まれておりますが(現行盤にはこの2曲は未収録なのかな?)、そこまで含めた60分近い内容でも決して長すぎるとは感じない、濃厚なロックンロールアルバムだと断言できます。

にしてもHR/HMがチャート上で死滅し始め、グランジが勢力を拡大し始めた1992年前半に本作は全米1位を獲得しているという事実はすごいことだと思います。本作を携えた初来日公演も非常に記憶に残っていますし、ファン的にも印象深い1枚なのではないでしょうか。個人的には彼らのアルバムでもっともお気に入りの作品です。



▼THE BLACK CROWES『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』
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投稿: 2017 09 04 12:00 午前 [1992年の作品, Black Crowes, the] | 固定リンク

2017年8月25日 (金)

RAGE AGAINST THE MACHINE『RAGE AGAINST THE MACHINE』(1992)

RAGE AGAINST THE MACHINEのデビューアルバム『RAGE AGAINST THE MACHINE』がリリースされて、今年で25周年なんだそうです。ということは、20周年でデラックスエディションが発売のが今から5年も前のことなんですね。改めて時の流れの早さに驚かされます。

本作が最初にリリースされたのが、1992年秋のこと。僕は確か『BURRN!』のレビューで彼らのことを知ったんだと記憶しています。確か点数的には70点台でそこまで高くなかったと記憶しているし、当時はようやくRED HOT CHILI PEPPERSがブレイクして、ファンクやヒップホップにメタル的手法を取り入れたバンドが少しずつ認められつつあったタイミングだったのかな。まだ彼らのようなバンドを“ミクスチャー”とか“クロスオーバー”とか曖昧な表現でカテゴライズしていた時期だったと思います。

正直、僕も当時このアルバムを聴いてはいるのですが、ぶっちゃけハマらなかったんですよ。なぜならメロディらしいメロディがない、本当にヒップホップ寄りのアプローとだったから。バックトラックはめちゃくちゃカッコイイのに、歌メロがないという。今思えば、本当に恥ずかしい限りです。

で、彼らに本格的に興味を持ち始めたのは、それから4年後に2ndアルバム『EVIL EMPIRE』(1996年)がリリースされてから。あのアルバムで一気にハマり、改めて1stを聴き返したら「なんだよ、カッコイイじゃないか!」と今更気づかされたわけです。

彼らを語る上で、サウンド以上に歌詞で綴られている政治的観点は非常に重要だと思います。が、ここ日本に住んでいると完全には理解しきれない問題が多いのもまた事実。それは言語の問題以上に、我々がいかに海外の情勢に無関心かということにもつながるわけで、このバンドが歌っていることを突き詰めれば突き詰めるほど、自分の無知さが恥ずかしくなるのです。

ここでそういったポイントについて説明していくと、正直この何倍ものテキストが必要になるので、そのへんは歌詞や対訳を確認しつつ、気になった項目をググっていくことをお勧めします(あくまで役割放棄じゃないですよ、これは)。

サウンドに関しては何も言うことなく、ただひたすらカッコイイだけ。彼らの成功があったから、その後ラップを取り入れたヘヴィロックバンドがバンバン現れるわけですからね。どうしてもザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)のカリスマ的佇まいとボーカル、そしてトム・モレロ(G)の変態的なギタープレイにばかり注目しがちですが、僕はティム・マコーフォード(B)とブラッド・ウィルク(Dr)の鉄壁なリズム隊にこそこのバンドのすごさがあるのではないかと認識しています。それがすでにこのデビュー作の時点でほぼ完成されていることに驚かされるわけです。だって、リリース時はメタルが死に絶えNIRVANAPEARL JAMが一時代を築いていたタイミングですからね。あの時期にこういうバンドがひっそりと誕生していたという事実がまたすごいと思うわけです。

本格的にハマった2ndはもちろんのこと、実質的ラスト作となった3rd『THE BATTLE OF LOS ANGELES』(1999年)も、カバーアルバム『RENEGADES』(2000年)も大好きですが、どれか1枚挙げろと言われたら僕は迷わすこの1stアルバムをピックアップします。

彼らは2000年に一度解散し、その後復活して再び2011年に活動を止めています。ぶっちゃけ、今こそ彼らのようなバンドが求められているのに、それでも復活しないのには何か大きな意味があるんじゃないか……そんなことを昨年後半からずっと考えています。ホント、今なんですけどね……。



▼RAGE AGAINST THE MACHINE『RAGE AGAINST THE MACHINE』
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投稿: 2017 08 25 01:00 午前 [1992年の作品, Rage against the Machine] | 固定リンク

2017年8月16日 (水)

HELMET『MEANTIME』(1992)

HELMETが1992年初夏に発表した2ndアルバムにして、メジャーデビュー作。本作でこのバンドはブレイクしたと言っても過言ではありませんが、そのブレイクの裏側には2つの大きな要因が隠されていました。

ひとつは、彼らも以前から属していたインディロック村から飛び出した、グランジシーンの本格ブレイク。NIRVANAを筆頭に、ハードなギターとパンキッシュなバンドアレンジを施したサウンドが一世を風靡し、メディアは“第二のNIRVANA”を見つけようと躍起になっていた時期でした。

そしてもうひとつは、グランジが駆逐したメタル村からの新たな動き。前年の1991年、METALLICAがそれまでのスラッシュメタルサウンドを捨ててスローでヘヴィなサウンドを軸にした5thアルバム『METALLICA』を発表し、翌1992年初頭にPANTERAがそこにグルーヴ感を加えた傑作『VULGAR DISPLAY OF POWER』をリリース。この2作以降、メタル村では同作とグランジを下地に新たな道を模索し始めます。

そんな絶妙なタイミングに発表されたのが、このHELMETのアルバム『MEANTIME』でした。本作には上記2つの要素がすべて含まれており、かつ作為か感じられないナチュラルな作風だった。しかも、全体に漂う知的さも功を奏し、ネクストブレイクが期待されるバンドとして各メディアで紹介されるようになりました。

かのスティーヴ・アルビニが録音し、NIRVANA『NEVERMIND』を手がけたアンディ・ウォレスがミックスしたオープニング曲「In The Meantime」、ザクザクしたギターリフとキャッチーな歌メロが気持ちよい「Unsung」を筆頭に、聴き応えのあるナンバーばかり。のちにBATTLESを結成するジョン・ステニアー(Dr)のカンカン鳴るスネアも特徴的で、ギターやベースとシンクロするプレイはその後の片鱗を感じさせます。

また、ペイジ・ハミルトン(Vo, G)による時にがなり、時にメロウに歌うボーカルスタイルもオルタナロックともハードコアとも受け取れるもので、幅広い層から支持される要因に。ギターにしてもソロを強調するよりもリフに次ぐリフの応酬で、ギターサウンドそのものを音の塊として提供する姿勢が感じられます。そこもPANTERA以降のメタル村から受け入れられた要素だったように思います。

結局チャート的には全米68位、50万枚止まりで大きなヒットにはつながりませんでしたが、HELMETの登場は確実にその後のヘヴィ/ラウドシーンに一石を投じたはず。グランジ側にしろメタル側にしろ、当時を振り返る際に忘れてはならない1枚です。



▼HELMET『MEANTIME』
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投稿: 2017 08 16 12:00 午前 [1992年の作品, Helmet] | 固定リンク

2017年8月13日 (日)

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



▼V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
(amazon:国内盤 / 海外盤CD / 海外盤2CDデラックス盤

投稿: 2017 08 13 12:00 午前 [1992年の作品, 2017年の作品, Alice in Chains, Chris Cornell, Heart, Mudhoney, Pearl Jam, Smashing Pumpkins, Soundgarden] | 固定リンク

2017年7月11日 (火)

FAITH NO MORE『ANGEL DUST』(1992)

FAITH NO MOREでどのアルバムが一番好きか?と尋ねられたとき、意外と意見が割れるんじゃないかなという気がしていて。どの作品で初めて彼らに触れたかも大きい気がするんですが、僕の場合は大ヒットした『THE REAL THING』(1989年)から入ったものの、実はその次の4thアルバム『ANGEL DUST』が一番気に入っているんですよね。

1992年6月に発表された本作は、シングル「Epic」の大ヒット(全米9位)によってミリオンヒットとなった『THE REAL THING』に続くアルバムで、マイク・パットン(Vo)がバンドに加わってから通算2枚目のスタジオ作品です。プロデューサーマット・ウォレスとバンドという、前作とまったく同じ布陣。前作が予期しなかったヒットを記録しただけに、プレッシャーもかけられたんじゃないかと想像しますが……いざ完成した本作は、その後の“やりたい放題”ぶりを予見させる内容で、非常にバランス感に優れた1枚ではないかと思います。

無駄にメジャー感があってキャッチーな楽曲が多かった『THE REAL THING』と比較すると、そのへんのカラーは若干抑え目。シングルカットされた「Midlife Crisis」や「A Small Victory」、「Everything's Ruined」あたりは確かにメジャー感こそあれど、派手さは皆無。そこに加えてシリアスかつヘヴィな「Land Of Sunshine」や「Caffeine」、どこか間の抜けたイメージの「RV」、複雑怪奇なハードコア「Malpractice」、“オペラ座の怪人+ファンク+キッズコーラス”と支離滅裂ながらもカッコいい「Be Aggressive」など、非常にクセの強い楽曲がずらりと並ぶのですから。ミクスチャーだなんだと新しい音楽に触れて喜んでいた前作のノリを期待して本作に手を出したら、次々に邪悪なキャラクターが飛び出すパンドラの箱を開けてしまった……そんな体験ができるはずです(笑)。

思えばFAITH NO MOREにHR/HMテイストが強く感じられたのは、本作までなんですよね。それは、本作を最後に脱退したギタリスト、ジム・マーティンのプレイによるものが大きいのかなと。その後バンドに加わり、再結成にも参加するジョン・ハドソンと比べると、無駄に派手ですからね(見た目含め)。

ちなみに本作、チャート的にはFAITH NO MOREのキャリアで唯一全米10位内に達したアルバム(最高10位)。実は『THE REAL THING』って、11位止まりなんですよ。ただ、順位的にはそんなに変わらないけど、セールス的には『THE REAL THING』が100万枚、本作『ANGEL DUST』は50万枚とシングルヒットの有無で差が出てしまったようです。

なお、再発盤には追加収録されてますが、本作リリースからしばらくしてバンドはライオネル・リッチーが在籍したCOMMODORESの名曲「Easy」のカバーをシングルリリース。こちらは全米58位という中ヒットを記録しています。前作ではBLACK SABBATH「War Pigs」を取り上げていた彼らが、次作でCOMMODORESをセレクトしたというのも面白いし、こっちのほうが本来の彼らのセンスなんでしょうね(本気とも冗談とも取れる微妙なラインが)。



▼FAITH NO MORE『ANGEL DUST』
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投稿: 2017 07 11 12:00 午前 [1992年の作品, Faith No More] | 固定リンク

2017年4月26日 (水)

STONE TEMPLE PILOTS『CORE』(1992)

ALICE IN CHAINSが『FACELIFT』(1990年)でメジャーデビューをし、NIRVANAがメジャー第1弾アルバム(通算2枚目)『NEVER MIND』(1991年)、そしてPEARL JAMが『TEN』(1991年)、SMASHING PUMPKINSが『GISH』(1991年)という1stアルバムをそれぞれ発表し、SOUNDGARDENが『BADMOTORFINGER』(1991年)をドロップしたことで、1992年に入ると一気に盛り上がりが加熱したシアトルのグランジシーン。特にNIRVANA、PEARL JAMの大ヒットがその後のロックシーンを大きく変えていくことになるわけですが、この流れに呼応するかのようにカリフォルニアから1組のバンドがデビューします。それが今回紹介するSTONE TEMPLE PILOTSというバンドです。

……って説明、今更いらないと思いますが。スコット・ウェイランド(Vo)、ディーン・ディレオ(G)、ロバート・ディレオ(B)、エリック・クレッツ(Dr)の4人からなるこのバンドは、1992年9月にAtlantic Recordsからアルバム『CORE』でメジャーデビュー。日本盤リリースは確か翌1993年春頃だったと記憶しています。ちょうど1992年末から1993年初頭にかけて、FENなどのラジオ局でこのアルバムからのシングル曲「Sex Type Thing」を耳にするようになりまして、正直そのときは「PERAL JAMみたいな音、声だな。新曲か?」くらいに思ってたのですが、それがSTONE TEMPLE PILOTSという名前のバンドだと知ったのは、ちょっと時間が経ってからでした。

「Sex Type Thing」のALICE IN CHAINS+PEARL JAMな“グランジかぶれ”サウンドは評価よりも嘲笑の対象になりかねない1曲でしたが、アルバムを聴くとそのかぶれっぷりはさらにひどいもの……いや、東海岸で起こっていたムーブメントに対する西海岸からの回答と受け取れるような内容でした。

オープニング「Dead & Bloated」や「Where The River Goes」のタメを効かせたプレイや、「Wicked Garden」「Sin」あたりに漂うサイケデリック感はSOUNDGARDENにも通ずるものがあるし、「Creep」の枯れたアコースティックテイストはPEARL JAMともNIRVANAとも言えなくない。「Plush」のポップ感は……と、言い出したらキリがないのでこのへんに止めておきますが、とにかくあの時代の“良いとこ取り”なテイストはある意味卑怯でもあり、一周回って天才ですらあるなと。

ただね、どの曲もメロディやアレンジ、楽曲の作りは優れているんですよ。模倣からスタートしたのかどうかは別として、そこだけは素直に評価したい。結果、最初から最後まで素直に楽しもうとすれば最高のハードロックアルバムだと思いますしね。

また、本作の時点ではまだ露呈してなかったスコットの良くも悪くもカリスマチックな面は、作品を重ねていくごとに肥大しくことに。最終的にはそこがマイナスに働きバンド脱退〜オーバードーズでの急逝というバッドエンドへとつながるわけですが。

それと、すでに本作からも存分に感じられると思いますが、楽器隊の演奏能力の高さ、特にディーンのギタリストとしての非凡さはもっと評価されてもいいのではないかと思います。そのルックス含め、ジミー・ペイジ直系的印象が強いですし。

今ではそこまでネガティブに捉えられることはないと思う作品ですが、若い方々は偏見なく、そしてあの時代をリアルタイムで通過したおっさんおばさんたちは一度フラットな気持ちで本作に接してみてはどうでしょう。ほら、意外と良かったでしょ?



▼STONE TEMPLE PILOTS『CORE』
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投稿: 2017 04 26 12:00 午前 [1992年の作品, Stone Temple Pilots] | 固定リンク

2017年4月10日 (月)

JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』(1992)

2ndソロアルバム『NOT FAKIN' IT』がそれなりの成功を収め、またHANOI ROCKSフォロワーたちのおかげでその名をより広めることができたマイケル・モンロー。しかし、アルバムは成功したものの、バンド時代に得た充足感を当時のソロバンドメンバーから得ることができず、『NOT FAKIN' IT』に伴うバンドは解体。きっとソロツアーでナスティ・スーサイドと共演したことで、改めて自分の隣にはアクの強いギタリストが必要なんだと気付かされたんでしょうね。

さて、そんなマイケルが新たなパートナーとして白羽の矢を立てたのが、当時ビリー・アイドルのもとを離れてATOMIC PLAYBOYSとして活動していたギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスでした。いやいや、アク強すぎだろ!?とツッコミを入れたくなったのは、ここだけの話です。

その頃からすでに「JERUSALEM SLIM」というプロジェクト名は挙がっており、これがそのまま新バンド名へと移行していきます。バンドのメンバーはマイケル、スティーヴのほか、HANOI ROCKS時代の盟友サミ・ヤッファ(B)、元SHARK ISLANDのグレッグ・エリス(Dr)。マイケル&サミはよいとして、それ以外の2人は完全にLA流れだよなぁ、合うのかなぁ……でも怖いもの見たさで、音も聴きたいしライブも観たいし。

確か1992年春発売の音楽誌『BURRN!』の表紙&巻頭インタビューをマイケル&スティーヴが飾り、いかに2人のケミストリーが素晴らしいものか、やっぱり俺には個性の強いギタリストが必要だったんだ的なことをマイケルが嬉しそうに話していた記憶があります。この時点で『ATTITUDE ADJUSTMENT』と題されたアルバムは完成間近、おそらく初夏にはリリースされるんだろうなと思っていました。

が、その後はご存知のとおり。スティーヴはマイケルのもとを離れ、HANOI ROCKS解散のきっかけを作ったヴィンス・ニール(当時は元MOTLEY CRUE)のソロバンドへと加わるのです。悪夢再び。マイケルは相当なショックを受け、最終的にJERUSALEM SLIMはアルバムの完成を待たずして正式に解散することとなるのです。

ところが、1992年10月に決定したマイケルの来日ツアー。おそらくこれ、当初はJERUSALEM SLIMのアルバムツアーとして計画されていたものだったと思うんです。しかしバンドはすでにない、アルバムもできてない。来日はするけどプロモーションするアイテムも何もない。じゃあ……ってことで、同時期に日本限定で発表されたのが、今回紹介するJERUSALEM SLIM唯一の音源であるアルバム『JERUSALEM SLIM』なのです。

プロデューサーに当時SKID ROWなどで知られていたマイケル・ワグナーを迎え制作された本作。こうやって聴くとほぼ完成してるじゃん!と不思議に感じるのですが、全11曲中正式なスタジオ音源は9曲、残り2曲は本編収録曲のデモトラックということで、おそらくはもう1〜2曲制作していたのかな、それらが完成する前にスティーヴがトンズラしちゃったのかな、なんて思うわけですよ。まぁ9曲でも十分に通用する内容だと思いますけどね。

マイケルにとっての前作『NOT FAKIN' IT』が“NYバージョン”だとすると、本作『JERUSALEM SLIM』は楽曲、演奏、アレンジ、質感すべてが“LAバージョン”と呼ぶにふさわしい内容。そしてバンドの作品、マイケルのアルバムというよりも“スティーヴ・スティーヴンスのアルバム”という印象も強い。もちろん大半の楽曲をスティーヴが手がけていたことも大きいけど、ここまでアクの強いギタープレイが全面的に押し出されているせいで、マイケルの印象が非常に薄いのです。ボーカルvsギターの対決に、完全に飲まれてしまっている。分が悪すぎるよさすがに。

「Criminal Instinct」みたいにダークな曲、「Gotta Get A Hold」「World Is Watching」みたいな泣きの曲はマイケルにも合ってる。けど、一番マイケルらしい楽曲が、実は「Teenage Nervous Breakdown」(LITTLE FEATのカバー)というのも納得というか悲しいというか……。

あと、アルバム前半はスティーヴ色濃厚、6曲目「Lethal Underground」以降はマイケル色強めという構成も興味深いかな。偶然そうなったのかもしれないけど、個人的には後半4曲が特にお気に入りです。中でも、KING CRIMSON「Epitaph」を彷彿とさせるラストナンバー「World Is Watching」は、スティーヴ相手じゃなければ間違いなく生まれていなかった1曲。ライブでは披露されることはないだろうけど、これを聴くことができただけでも、このマイケル的には不本意なリリースも意味があったんじゃないかな。

ちなみに本作、数年後には海外でもリリース済み。その際には日本盤未収録の「Scum Lives On」(のちに結成するパンクバンド、DEMOLITION 23.で再録音される「The Scum Lives On」の原曲。JERUSALEM SLIM版はどこかTHE WHOっぽさも感じられたり)が追加収録されています。やっぱり9曲で完成ではなかったのですね。

今では完全になかったことにされているJERUSALEM SLIM。マイケルとスティーヴの和解なんて考えられないし、今のマイケルを見ていたらJERUSALEM SLIMでやってたことを今再びやるなんて想像もつかないけど……本当に、一度だけでも観てみたかったです。



▼JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』
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投稿: 2017 04 10 12:00 午前 [1992年の作品, Jerusalem Slim, Michael Monroe, Steve Stevens] | 固定リンク

2017年4月 2日 (日)

PRETTY MAIDS『SIN-DECADE』(1992)

活動歴35年を超え、今や母国デンマークの人気HMバンドにまで上り詰めたPRETTY MAIDSが、1992年3月にリリースしたのが本作『SIN-DECADE』。僕は前作『JUMP THE GUN』からこのバンドの音に触れたのですが、DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァーがプロデュースした同作は、疾走感あるファストチューン含め当時のパープル諸作品に通ずる“野暮ったさ”が感じられ、なんとなく素直に好きと言えない1枚だったことをよく覚えています。「Attention」とか男臭いバラード「Savage Heart」とか、良い曲も多かったんだけどね。

その後、ツインギター&キーボードを含む6人編成だったバンドからメンバーが次々に脱退。気づけばロニー・アトキンス(Vo)、ケン・ハマー(G)の2人だけになってしまい、そこにケン・ジャクソン(B)、マイケル・ファスト(Dr)が加入し、新たに4人編成でバンドを立て直して本作を完成させたわけです。

プロデューサーはMETALLICAの初期作品を手がけたフレミング・ラスムッセン。分厚いドラムビートから始まる「Running Out」を筆頭に、本作はパワフルなファストチューンとヘヴィなビートが気持ち良く響くミドルチューンをバランス良く配置した聴き応えのある1枚に仕上がっています。タイトルトラック「Sin-Decade」のドラマチックさも素晴らしいし、「Nightmare In The Neighbourhood」や「Come On Tough, Come On Nasty」のキャッチーさ、「Know It Ain't Easy」でのアコースティックギターを取り入れたアメリカンロック的な爽やかさなど、実は楽曲のバラエティ豊かさも絶妙で硬軟のバランスが非常に良いんですよね。そこにしっかり「Raise Your Flag」「In The Flesh」みたいな疾走パワーメタルチューンが加わることで、“メタルバンドのメタルアルバム”としてしっかり成立している。

そんなアルバムのラストを飾るのが、ジョン・サイクスが過去にヒットさせた楽曲「Please Don't Leave Me」のカバー。この仕上がりがまた最高でして……ここまでアルバムの締めくくりにふさわしい曲が他にあるのか?と問いただしたくなるくらい、完璧な選曲だと思います。また、原曲を知らない世代にもこの曲の素晴らしさをアピールすることに成功し、結果として当時BLUE MURDERとして活動していたジョン・サイクスも自身のライブでこの曲を取り上げ始めることになるわけです。

ただし、このカバーの成功がひとり歩きしてしまったのも事実。こんなにも硬派なアルバムを完成させ、かつ成功させたにも関わらず、「Please Don't Leave Me」のカバー1曲だけで片付けられることも多かったと記憶しています。事実、バンドはこのカバーのヒットにより、次作のミニアルバム『OFFSIDE』(1992年)、5thフルアルバム『STRIPPED』では「Please Don't Leave Me」のアコースティックカバーを制作することになってしまうのです(当時はアンプラグドブームでしたしね)。このへんはバンドの意思というよりも、二匹目のドジョウを狙ったレコード会社からの指示だったんでしょうね。

と、良くも悪くもバンドのその後を左右させてしまった、歴史にも記憶にも残る1枚。それがこの『SIN-DECADE』でした。内容は間違いなく最高なので、ぜひ一度聴いてみてほしいです。



▼PRETTY MAIDS『SIN-DECADE』
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投稿: 2017 04 02 12:00 午前 [1992年の作品, Pretty Maids] | 固定リンク

2017年3月27日 (月)

DEF LEPPARD『ADRENALIZE』(1992)

1991年1月8日、DEF LEPPARDのギタリスト、スティーヴ・クラークが亡くなりました。当時は小さいながらも新聞記事にもなったし、bayfm『POWER ROCK TODAY』では4時間まるまる追悼特集を組んだほどでした。DEF LEPPARDは当時、1987年夏発売の4thアルバム『HYSTERIA』に続く新作を制作している途中でしたが、これにより作業は一時中断。1983年の3rd『PYROMANIA』発売から『HYSTERIA』が完成するまでも、リック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失う悲劇が起こりましたが、まさか二度も大きな不幸が訪れることになろうとは……。

その後、バンドはスティーヴの代役を立てずにフィル・コリン(G)がすべてのギターパートを担当。こうして1992年春に完成したのが前作から4年ぶりの新作『ADRENALIZE』でした。

当時だけで全米で700万枚近くも売り上げた『PYROMANIA』、そして『PYROMANIA』をさらに上回る1000万枚に到達した『HYSTERIA』とメガヒットアルバムが2枚も続いたいあとだけに、プレッシャーは相当なものがあったと思います。しかもソングライターのひとりでバンドの初期メンバーを最悪の形で失ったあとだけに、バンドはどんな思いで制作と向き合ったのか……新曲を耳にするまでは、こちら側にもそんな不安がたくさんありました。が、先行シングルにしてアルバムのオープニングトラック「Let's Get Rocked」はそんな負の要素が一切感じられない、ひたすらポジティブさに満ちあふれた1曲でした。これには、きっと多くのHR/HMファンが驚かされたんじゃないでしょうか。

『HYSTERIA』ほど緻密に作り込まれた感じではなく、かといって『PYROMANIA』みたいに生々しいロックサウンドというわけでもない。スティーヴに捧げた7分超のエピック「White Lightning」はあるものの、ほかは1曲1曲が非常にコンパクトで、全10曲(日本盤ボーナストラック2曲を除く)で44分程度。12曲で60分超えだった『HYSTERIA』とはある種相反する作風かもしれません。思えば、時代はすでにグランジ時代に突入したタイミング。パンキッシュで生々しくてコンパクトな方向へと突き進み始めた時代の変わり目に、DEF LEPPARDがこういう“らしくて、らしくない”作品を発表し、それが英米1位を獲得してしまったのは、今となっては非常に面白い話です。

そういえば、本作収録の「Tonight」は前作『HYSTERIA』制作中には存在した楽曲だというし、「Heaven Is」「Make Love Like A Man」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」「I Wanna Touch U」「Tear It Down」にはスティーヴの名前もクレジットに入っている。そりゃあ『HYSTERIA』にも通ずる色合いがあるよなと。だけど、バンドは次のフェーズに進みたがった。そういう意味においては、この『ADRENALIZE』はメガバンドDEF LEPPARDにおける過渡期の1枚なのかもしれません。真の意味での新章は、本作完成後に加入したヴィヴィアン・キャンベルと一緒に制作した次作『SLANG』(1996年)から始まるわけです。



▼DEF LEPPARD『ADRENALIZE』
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投稿: 2017 03 27 12:00 午前 [1992年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年2月19日 (日)

W.A.S.P.『THE CRIMSON IDOL』(1992)

先日、W.A.S.P.の名盤『THE CRIMSON IDOL』が今年で発売25周年を迎えるにあたり、全曲再現ライブの実施と再レコーディングアルバム制作が発表されびっくりしました(詳細はこちら)。「あれ、こないだも全曲再現ライブやってなかったっけ?」と。あれってもう10年前のことで、発売15周年記念で行ったものだったんですね。時の流れの早さにただただ驚くばかりです。

というわけで、今日はW.A.S.P.が1992年に発表した通算5枚目のスタジオアルバム『THE CRIMSON IDOL』です。いわゆる王道HR/HMが好きな人なら、一度はこのアルバムに触れたこと、あるいはこのアルバムの名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。1992年という、今思えばHR/HMシーンが冬の時代に突入したタイミングに発表されたこのアルバム。当初はフロントマンのブラッキー・ローレス(Vo, G)が相次ぐメンバー脱退を受け、ソロアルバムとして制作されたアルバムだったそうです。しかし、レコード会社からの「W.A.S.P.名義で発表したほうがいいのでは?」というアドバイスを受け、最終的には『THE HEADLESS CHILDREN』(1989年)に続くオリジナル作品になったという経緯があります。

作風的には、いきなりシリアス路線になってファンを驚かせた前作『THE HEADLESS CHILDREN』の流れにあるもの。前作ではアレンジ面でどことなくアメリカンロック的な陽気さもそこはかとなく感じられましたが、この『THE CRIMSON IDOL』ではその空気も払拭され、よりシリアスな正統派ヘヴィメタルアルバムに仕上げられています。

また、本作はジョナサン・アーロン・スティールという架空のロックスターを中心に物語が進行するコンセプトアルバムとなっています。前作『THE HEADLESS CHILDREN』ではTHE WHOの「Real Me」(有名なロックオペラアルバム『QUADROPHENIA(四重人格)』収録曲)をカバーしていましたが、思えばあの時点で「THE WHOのコンセプトアルバムみたいな作品を作りたい」といった構想があったんでしょうね。事実、『THE HEADLESS CHILDREN』には少なからずロックオペラ的要素が散りばめられていましたし。

そういった「コンセプトアルバム」「ロックオペラ」という枕詞に躊躇してしまいがちなメタルファンも多いかと思いますが、心配は無用。1曲目「The Titanic Overture」からいきなりノックアウトされるはずです。そのまま「The Invisible Boy」「Arena Of Pleasure」と疾走感のある王道メタルチューンが続くと、4曲目で名曲中の名曲「Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue)」が登場。この曲、最初はタイトルだけ知ったときは「ああ、ブラッキーの股間にノコギリ付いてたし、そういうのね」と半笑いでした。もちろん、曲を聴いて土下座したい気持ちになったのは言うまでもありません。この起承転結しっかりした9分近い大作こそが、『THE CRIMSON IDOL』というアルバムで何をやろうとしているのかを一番わかりやすく表しているのではないか、だから約9分というリスキーさはありながらも最初のシングルにピックアップされたんでしょうね。

アルバムはその後も熱を帯びながら進行し、一大叙情詩「The Idol」でクライマックスに突入し、心安らぐバラード「Hold On To My Heart」を経て本作最長(約10分)の「The Great Misconceptions Of Me」で大団円を迎えます。特にこのラスト3曲の流れが持つドラマチックさは圧巻で、前半のピークを「Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue)」に置くとしたら、後半は間違いなくこのパートだと断言したいです。

実はこのアルバム、イギリスや日本では1992年初夏にリリースされたものの、本国アメリカでは1年後の1993年5月まで発表されなかったという曰く付きの1枚。それもあってか、米ビルボードではチャートインせず。イギリスでの21位を筆頭に、ノルウェー11位、スイス24位、オーストリア30位、スウェーデン31位、ドイツ35位とヨーロッパ圏で好意的に受け入れられました(もちろんここ日本は言うまでもなく)。アルバムを聴くとそれもなんとなく頷ける内容ですものね。

エゴやキャラの強いメンバーがバンドを離れ、ブラッキーひとりですべてをコントロールできる状況だったからこそ完成させることができたこのアルバム。もしあのままクリス・ホルムズ(G)やジョニー・ロッド(B)がバンドに残っていたらソロアルバムを作ろうなんてこと自体考えなかったでしょうし、仮に『THE HEADLESS CHILDREN』をもっと昇華させた作品を作ろうとしても、ここまでの完成度には至らなかったんじゃないでしょうか。と同時に、このアルバムを完成させることができたからこそ、W.A.S.P.というバンドが紆余曲折ありながらも2017年現在も存続できているんでしょうね。それだけ大きな意味と価値を持つ本作、まだ聴いたことがない人はぜひこの25周年というタイミングに手にしてみてください。

なお、現在はブラッキーのナレーションやライブテイク、本作からのシングルのみに収録されたカップリング曲などを追加収録した2枚組仕様もリリースされています。ライブテイクはリリース年夏に実施された野外フェス『MONSTERS OF ROCK』の音源で、新作からのナンバーに加え「I Wanna Be Somebody」「Wild Child」「Real Me」といった代表曲も楽しめます。



▼W.A.S.P.『THE CRIMSON IDOL』
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投稿: 2017 02 19 12:00 午前 [1992年の作品, W.A.S.P.] | 固定リンク

2015年10月 4日 (日)

MEGADETH『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992)

1992年にリリースされた通算5作目のスタジオアルバムにして、MEGADETH最大のヒット作。前作で感じられた変革の予感が、ここで一気に開花した1枚。ビルボード2位、セールス的にも過去最高の200万枚という結果を残した作品だけど、いわゆるスラッシュメタルから脱却したことで一部ファンからは踏み絵のような1枚なのかもな、という気も。

前年にリリースされ天文学的大ヒットとなったMETALLICAの“ブラックアルバム”に対するMEGADETHからの回答というか、とにかくミドルテンポ中心で、どの曲もMEGADETHにしてはコンパクトにまとまったものばかり。中には「Sweating Bullets」のようなシャッフルリズムの変化球もある。

個人的には後半、ストレートなファストチューン「High Speed Dirt」からこれまでのように複雑な展開を持つラストナンバー「Ashes In Your Mouth」の流れ/構成がお気に入り。

良い解釈をすれば、ムステインが先細りになりつつあったメタルシーンを背負う覚悟を決めた1枚と受け取れる。実は聴く頻度の高いアルバム1位がこれ。でも……このアルバムタイミングで武道館公演が決まっていたのに結局ムステインの悪い癖で中止になってしまったことで、個人的にはあまりいい印象のない時期でもあるわけだが。



▼MEGADETH『COUNTDOWN TO EXTINCTION』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD

投稿: 2015 10 04 12:10 午前 [1992年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2005年12月 8日 (木)

PANTERA『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992)

PANTERAが1992年初頭に発表した、通算2作目のメジャー配給作品。前作「COWBOYS FROM HELL」がMOTLEY CRUEやSKID ROWといったメジャーフィールドのバンドからも愛され、と同時にコア層からも支持されつつあった中に、いきなりこんな無茶苦茶な作品を放り投げた当時の勢いは、今思い返しても凄いものがあったなぁ‥‥と。

このアルバムがリリースされる直前、俺はイギリスに留学中で。現地で読む音楽雑誌でもこぞってこのアルバムは絶賛されていて、中には5つ星が付いてるものもあった程。勿論PANTERA自体は知ってたし聴いてたんだけど、そんなに絶賛される程凄いとは思ってなかったのね。適度にヘヴィで適度に聴きやすい、程度の印象しかなくて。

そんなもんだからその後、ドイツを旅行してる最中にリリースされたこのアルバムを試聴した時の衝撃といったら‥‥オープニングの "Mouth For War" のイントロ、リフ一発でやられてるのに、更にフィル・アンセルモの

 『Reeeeeveeeeeeeeenge!』

っていうドスの利いた叫びにビリビリと鳥肌立ちまくり。あれに反応しなかったら絶対に嘘だったよね。更に "A New Level"、"Walk" とミドルヘヴィナンバーが続き、ダイムバック・ダレル(当時はダイヤモンド・ダレルだったけど)の縦横無尽に暴れまくるギターにまたやられ。勿論フィルのボーカルにもね。そしてアルバム前半のハイライトであるファストチューン "Fucking Hostile" と、ミドルヘヴィバラードと呼んでも差し支えないであろう "This Love" の2曲‥‥METALLICAでさえミドル中心のバンドへと変化してしまった今、こいつらは本気で信じられる‥‥そう実感した瞬間だったなぁ。

アルバム後半もミドルヘヴィでアグレッシヴな曲が続き、最後の "Hollow" のギターに泣かされ。後半のヘヴィな展開にもゾクゾクしてアルバムは終了するんだよね。聴きながら手に汗握るアルバムは久し振りだったよ。METALLICAのブラックアルバムやGUNS N'ROSESの「USE YOUR ILLUSION」の2枚を通して聴いた時も興奮したけど、PANTERAの時は‥‥もっと違った衝撃を受けたなぁ。価値観が変わっちゃうくらいの。

リリースから間もなく14年もの月日が経とうとしてます。そして‥‥あれから1年経っちゃったよ‥‥このブログを初めて1週間後に、まさかあんなに衝撃的な事件・事故が起こるとは‥‥正直、未だに信じられない面もありつつ、今久し振りにこのアルバムと接してるわけですが‥‥

もうこのトリッキーでメロウでソウルフルで気が狂ったかのようなギタープレイを、新しいフレーズやリフを聴くできないんだな、と。感傷的になるような音じゃないんだけど‥‥だからこそ、余計に感傷的になっちまうんだよな。

畜生。



▼PANTERA「VULGAR DISPLAY OF POWER」
(amazon:日本盤US盤

投稿: 2005 12 08 12:30 午前 [1992年の作品, Pantera] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005年8月16日 (火)

LOUDNESS『LOUDNESS』(1992)

1991年夏のUSツアー後にマイク・ヴェッセーラ(Vo)がバンドを脱退(というか半ばクビ)、さらにオリジナルメンバーである山下昌良(B)まで脱退し窮地に立たされるも、新たなシンガーとして元E.Z.O.のMASAKIが加入。さらに、X JAPANを脱退したばかりのTAIJI(B)まで加わるという、ある意味過去最高の豪華なメンツとなった第3期LOUDNESSによる唯一のオリジナルアルバム。

サウンド的には従来のLOUDNESSというよりも、MASAKIのおどろおどろしいボーカルのせいもあってE.Z.O.に近い気が。TAIJIが加入したとはいえX的要素は皆無で、むしろ当時主流となりつつあったモダンヘヴィネス系を追った新境地的作品に仕上げられています。

正直、80年代のLOUDNESSが好きなリスナーには複雑な印象を与える1枚かもしれません。しかし、セールス的には彼らのキャリア中もっとも売れた1枚でもあります。歯がゆい。

ただ、「LOUDNESSであることを無視すれば」非常に良くできたラウドロック/メタルアルバムではないかと。高崎晃(G)とTAIJIのインタープレイも素晴らしいし、ラストを飾るファストチューン「Firestorm」なんてスラッシュメタル真っ青な出来ですし。この編成でもう1枚くらい作ってほしかった気もするけど、この危うさや緊張感があったからこんな奇跡的な1枚を作ることができたのかな。

海外の新たな潮流をこんなにも意識した作品なのに、本作から活動の場をドメスティックに固定。アメリカで発売されたのは、ここから13年たった2005年だったというのは、不幸以外の何ものでもありませんね。



▼LOUDNESS『LOUDNESS』
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投稿: 2005 08 16 02:30 午前 [1992年の作品, E・Z・O, Loudness, X JAPAN] | 固定リンク

2005年3月23日 (水)

KEITH RICHARDS『MAIN OFFENDER』(1992)

 第1回目から随分と間が空いてしまいましたが、不定期連載企画『ロケンロールと無理心中』第2回、いきますよーっ。

 この企画で選ぶアルバム、比較的メジャーではない作品‥‥まぁ取り上げるアーティストはメジャー中のメジャー、ロックンロールの世界でいったらど真ん中な人達ばかりなんでしょうけど、そんな中でも個人的に好きでオススメしたい作品がたまたま地味なモノばかりになる、という‥‥ホントに需要があるのかどうか判りませんが、まぁ自己満足でやってる企画なので特に気にしないことにします。

 んで第2回目にして、超王道中の王道、ROLLING STONESのギタリスト、キース・リチャーズを取り上げたいと思います。

 キースのソロ活動はといいますと、ストーンズでデビューして24年目(1988年)にして初めてソロアルバムをリリースするんですね。その前には単発シングルや映画サントラ(チャック・ベリーのやつね)はあったけど、キースが中心となって主導権を握り、彼が曲を書いて彼が歌う完全なソロアルバムっていうのは、その'88年にリリースされた「TALK IS CHEAP」が最初だったわけですよ。これにしたって当初は出すつもりのなかったもので、単にミック・ジャガーがなかなかストーンズに戻ってこなくてソロ活動に精を出してたから、しびれを切らしたキースがとうとう動き出した、という‥‥まぁある意味では偶然の副産物なんですよね。その後ストーンズは'89年に合流して「STEEL WHEELS」というアルバムを作って、同年夏から翌年夏にかけてワールドツアーを敢行、その中には初となる日本公演(東京ドーム10公演がソールドアウト!)が含まれるわけです。で、'91年には新曲2曲を含むライヴ盤「FLASHBACK」をリリース、その後はまた暫くストーンズはお休み、それぞれ自由な活動へと移るわけです。ま、ここでビル・ワイマンが脱退してしまうので、その休憩時間は結局'94年頃にまで及ぶわけですが。

 この長い休憩期間に、各メンバーそれぞれソロアルバムをリリースしてます。ミックも、ロン・ウッドも、そしてチャーリー・ワッツまでもジャズでアルバムをリリース。当然キースもソロアルバム第二弾を制作するわけです。それが今回紹介する1992年リリースの「MAIN OFFENDER」です。

 「TALK IS CHEAP」がストーンズの次回作を待つ間に作られた『偶然の副産物』だとしたら、この「MAIN OFFENDER」は最初から『ソロアルバム』としてキッチリ作られた、ホントの意味での1stアルバムになるのかもしれません。そういうこともあってか、「TALK IS CHEAP」にはストーンズ的な『陽』のイメージが強く感じられるものの、この「MAIN OFFENDER」はもっと『閉じた』ような‥‥『個』であったり『陰』のイメージをこれまで以上に強く感じるんですね。勿論ストーンズの顔が作るアルバムですから、ストーンズらしさも十分感じられるんですが、何だろう‥‥無理をしてないというか、肩の力がいい具合に抜けた、タイトなんだけど適度に緩さを持った、独特且つ唯一無二の世界観を表現してます。一聴しての印象は『地味』以外の何ものでもなく、特に引っかかる名曲も存在しない、聴く人が聴いたらそのままスルーしてしまいそうなアルバムかもしれません。実際、俺も最初手にした時は‥‥まだ20才とかそのくらいだったのかな、その良さが完全に判ったとは言い難い年頃で、無理して何度も聴いてみたけど‥‥「TALK IS CHEAP」以上に好きにはなれなかったのね。まぁ「MAIN OFFENDER」より前のストーンズの作品が「STEEL WHEELS」みたいな派手な作品だったから、余計かもね。

 ところがね‥‥このアルバム、年を取るに連れ、聴く頻度がどんどん高くなってるんですよ。何時頃からだろう‥‥5〜6年前からかな、気づいたらこのアルバムばかり聴いてる時期ってのが必ず年に1〜2度あって。それが年に3〜4回に増え、また翌年には2ヶ月に1回になり、最近じゃ月に1回は必ずCD棚から引っ張り出す機会があるわけ。何でか知らないけどさ、聴いてると非常に落ち着くんだよね‥‥テンポ間が心地よいのかなぁ。変化球もなく、リズム的にもミドルテンポが中心で、途中でスロウチューンやレゲエのリズムが取り入れられたり。ストーンズみたいな速い曲もシャッフルもヘヴィなブルーズもない。肩肘張らない自然体の、空気みたいなロックンロール。当たり前のように鳴らされるキースのギターに、呼吸するかのようなキースの歌声。癒されるってやつとはちょっと違うけど‥‥ロックンロール・チルドレンにとっては、これが子守唄みたいなもんなのかしら。まぁ50超えた(当時)オジイに子守唄なんて歌ってもらうような趣味は持ち合わせてないけどさ‥‥それでもこの音、このタイム感、このフィーリング、この空気感‥‥全てが自分の生活に必要なものなんだなぁ、と。今改めてこのアルバムを聴いてそれを噛み締めています。

 キースのソロアルバムをこれから聴こう、っていうなら最初は「TALK IS CHEAP」を聴くといいですよ。この「MAIN OFFENDER」を最初に聴くことはオススメしません。ましてやストーンズをしっかり聴いてこなかったなら尚更ね。ストーンズにドップリと浸かった人生を送って来た人なら‥‥既に2枚共聴いてるか。

 まぁアレですよ‥‥俺にとっては墓場まで持っていきたいアルバムなわけですよ。



▼KEITH RICHARDS『MAIN OFFENDER』
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投稿: 2005 03 23 12:00 午前 [1992年の作品, Keith Richards, Rolling Stones] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月14日 (日)

とみぃ洋楽100番勝負(88)

●第88回:「Creep」 RADIOHEAD ('92)

 最初ね、他の曲を選んでたのよ、レディヘに関しては。"Just" を。けど‥‥やっぱり自分に嘘はつけないしね。この曲に本気で救われたから‥‥

 言うまでもなく、RADIOHEADというバンドを一気にスターダムに押し上げた、彼等の代表曲。そして同時に忌むべき存在でもあるわけですが。代表曲といいながら、実は最近では殆ど演奏される機会がないという‥‥ちなみに俺、未だに一度も生で聴いたことありませんけどね。タイミング悪過ぎ。

 うーん‥‥この曲に関して語るのは、正直避けて通りたかったんですよね‥‥なんつーか、自分の中の恥部について語るみたいで、恥ずかしいとかを通り越して、凄く嫌悪感があるんですよね。いや、勿論大好きな曲なんですけど‥‥でも大声では大好きとは言いたくない、言いにくいというか。うわぁ‥‥この100番勝負の中で、一番の難関かもしれないよこれ。

 一言で言うなら‥‥本当に死にかかっていた俺を救ってくれた曲。って書くと、何だかロックンロールに過剰な期待をしてる、夢見る奴みたいで嫌なんですが。けど事実だから仕方ないわな。本気で死にたい病にかかってた時、この曲に目を覚まされたっつーの? そんな1曲。そして‥‥そういったロックンロールへの過剰な期待とかロックンロールマジックとか、そういう夢からも目を覚まさせてくれた1曲でもあるんだけどね。

 そういえばこの曲‥‥何度か弾き語りライヴで歌ったことあったなぁ。つい感情が入り過ぎて、力みっぱなしになっちゃうんだよね‥‥良くも悪くも。ライヴで一度も聴けない分、俺が歌うことでバランス取ってるというか‥‥多分、ライヴで聴く日が来たら‥‥また(いろんな意味で)目が覚めちゃうんだろうね。なんかそんな気がするよ。



▼RADIOHEAD「PABLO HONEY」(amazon

投稿: 2004 11 14 12:05 午前 [1992年の作品, Radiohead, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月 6日 (土)

とみぃ洋楽100番勝負(80)

●第80回:「Turning America」 THE WiLDHEARTS ('92)

 そうそう、'90年代前半のイギリス・ハードロックシーンで忘れちゃいけない存在がもう1組いたのを忘れてた。肝心のTHE WiLDHEARTSを‥‥ってさ、結局それって俺が彼等を「HM/HR」として認識してないから忘れがちなのかな、なんて勝手に思ったりもするんですが。まぁカテゴリーなんてどうでもいいや、カッコ良ければ全て良し!

 '92年前半に「MOND AKIMBO A GO-GO」っていうEPがイギリスでリリースされて。これがすっげー気になってさ。だって「BURRN!」のレビューに「BEATLES meets METALLICA」とか「ヘヴィなCHEAP TRICK」とか書かれちゃねぇ‥‥聴かないわけにいかないじゃない、この俺が。で、たまたまアナログ盤を所有してた友人からダビングしてもらって。ところがそいつ、A面とB面を間違えてダビングしやがって、本来 "Nothing Ever Changes But My Shoes" から始まるはずなのに、B面の1曲目 "Turning America" から録音してくれやがったんですよ‥‥けどインデックスには「1. Nothing〜/3. Turning America」って書いてやがるし。普通間違えないだろ、おい。

 だから俺は、暫くの間ずっと "Turning America" のことを "Nothing〜" だと思い込まされて‥‥いや、サビ聴けば判るから普通。なのですぐに気づいたけど。

 けど‥‥俺的には "Turning America" が最初の出会いで良かったように思います。この曲のメッセージ(アメリカに渡って英国魂を忘れてしまった過去の偉人達について歌ってたり)や曲のスタイルがモロに俺好みだったこともあって、忘れられない出会いになったなぁと。勿論 "Nothing〜" が最初だとしても、きっと俺は何かしらの理由をつけて「忘れられない出会い」とか言い張ってただろうけどね。

 そういえば、'01年の再結成後初来日(7月)や'03年12月の来日ツアーという俺が行けなかった時に限って、この "Turning America" をプレイしてやがるそうで‥‥ムカつくなぁ、ったく!



▼THE WiLDHEARTS「EARTH VS THE WiLDHEARTS」(再発盤に収録)
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投稿: 2004 11 06 12:00 午前 [1992年の作品, Wildhearts, the, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月 4日 (木)

とみぃ洋楽100番勝負(78)

●第78回:「In These Arms」 BON JOVI ('92)

 1992〜3年頃。世の中的にはイギリスからのマッドチェスターが下火になって、アメリカからのグランジに盛り上がっていた頃、海の向こうではBON JOVIやDEF LEPPARDを聴くことは、非常に恥ずかしい行為でした。所謂「インディーロック」「オルタナティヴロック」こそが主流になってしまった時代に、それ以前のメインストリームロックであったBON JOVIやDEF LEPPARDといったバンドを聴くことは、単なる「時代遅れ」として捉えられていたのです。当然ながら、セールス的にも大苦戦していた時期です(そういう意味では、そんな中でも善戦していたAEROSMITHやVAN HALENっていうのは、つくづく国民的バンドだったんだなぁ、と改めて思ったりして)。

 しかし。ここ日本では違いました。DEF LEPPARDは武道館公演を2〜3回もやってたし(満員にはなってなかったけど)BON JOVIに至っては武道館数回の他に代々木体育館でも数回、ジャパンツアーで10万人近い動員を記録していたんですよ、'93年という時代に(もうひとこと付け加えておくと、日本ではグランジって殆ど盛り上がってなかったように思います。その後の「ブリットポップ」と比べると雲泥の差ですよね)。

 周りの、ちょっと気取った「自称・洋楽ファン」は、そういった欧米や音楽雑誌メディアからの情報を鵜呑みにして、ちょっと前まで「高校時代はBON JOVIとかWHITESNAKEとか聴いてた」という自らの過去をひた隠ししようとするんですね。あーバカバカしい。インディーロックもハードロックもメタルもパンクもテクノもR&Bもラップも、全部同じ「音楽」として接していた俺からすれば、そんなの‥‥いや、バカバカしいからコメントは控えます。そんなことに無駄な時間を費やしたくないんで。

 で、BON JOVI。ファンの間では評価の低いこの「KEEP THE FAITH」というアルバム。確かにアルバム前半のテンション及び名極度の高さに比べると、後半のダメダメさがその当時彼等が置かれていた状況を物語っているようにも思えて、ちょっと悲しくなりますが‥‥大ヒットこそしなかったものの、この "In These Arms" という曲は彼等がこれまでにリリースしてきた楽曲の中でも、絶対に5本の指に入る至高の名曲なんですね。当然、(特に日本の)ファンの間でも評価が高い1曲なんだけど、何故かベスト盤には入ってなかったりで(UK及びEU盤には入ってたのかな?)ファン以外には知名度が低い1曲でもあるんですよね。惜しいなぁ‥‥ギターソロ明けのジョンのボーカルに、絶対涙するはずなのに。

 こうやって未だに現役として、しかも成功を収めているBON JOVIと、死ぬことで自らを神格化してしまったNIRVANAのカート・コバーン。どっちが重要とかどっちがより孤高とかいうつもりはありませんが‥‥けど少なくとも、今の俺にとっては間違いなくBON JOVIの方が大切ですね。だって、生き続けてくれてるから。生き続けて、活動し続けて、新しい曲を沢山生み出し続けてくれてるから。それだけで十分なんですよ。



▼BON JOVI「KEEP THE FAITH」(:
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投稿: 2004 11 04 12:00 午前 [1992年の作品, Bon Jovi, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年10月29日 (金)

とみぃ洋楽100番勝負(72)

●第72回:「Mouth For War」 PANTERA ('92)

 俺とPANTERAとの出会いは、'91年頃。MOTLEY CRUEのドラマー、トミー・リーが「PANTERAはいい!」と大絶賛してたことでその名前を知ってさ。けどその時は音を聴いてみようとは思わなくて。で、そんなことも忘れていた'92年2月。当時イギリスにホームステイしてたんだけど、現地で愛読していた「ケラング!」や「メタル・ハマー」(そこそこ、懐かしい!とか言わない)でPANTERAという聞き覚えのある名前のバンドの「VULGAR DISPLAY OF POWER」というアルバムが5つ星で大絶賛されてたわけですよ。が、これを読んだ時にはまだリリースされておらず。結局このアルバムを最初に見かけたのはドイツに旅行中の時で、我慢できずに現地で買っちゃったんですよね、帰国しないと聴けないのにも関わらず。

 ‥‥てなことを去年の今頃、「とみぃの宮殿」に書いてるんですよ、PANTERAのベスト盤レビューの中で(詳しくはここ)。ベスト盤のレビューなのに、完全に「VULGAR DISPLAY OF POWER」のレビューなんですよ。っつーか、俺とPANTERAとの衝撃的な出会いについてですね。

 ホント、それくらいこのアルバムのトップナンバー "Mouth For War" にはガツンとやられたんですよ(正に「やられた」は「殺られた」という当て字がピッタリ)。今聴いても、ボーカルが入る瞬間の、「Reeeeeveeeeeenge!」っていうドスの利いたフィル・アンセルモの声を聞くと失禁しそうになる程。メタルとかハードコアとかロックとか、そういう小難しいこと一切考えずに、ただただ本追うの赴くままに聴きたい1曲。

 現在33才の俺がこの曲に対して、20才そこそこだった当時の俺と同じ気持ちのまま向き合えるってのは、本当に嬉しいというか有り難いというか‥‥それだけ成長してないってことなのかな。アハハ‥‥

 けどさ。40才になっても、50才になっても、ずっとこの曲に興奮できるような、そんなバカのままでいたいと。ずっと「終わらない青春」を追い続けて生きていきたいな、と。この曲を何度もリピートしながら、今そう思っているのであります。



▼PANTERA「VULGAR DISPLAY OF POWER」(amazon

投稿: 2004 10 29 12:00 午前 [1992年の作品, Pantera, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年5月 9日 (日)

THERAPY?『CAUCASIAN PSYCHOSIS』(1992)

アイルランド出身のトリオバンド(現在は4人組)、THERAPY?が'91年にイギリスでリリースした1stミニアルバム「BABYTEETH」(7曲入り)と、'92年初頭に同じくイギリスでリリースされた2ndミニアルバム「PLEASURE DEATH」(6曲入り)を1枚にまとめて北米地区でリリースしたのが、今回紹介する「CAUCASIAN PSYCHOSIS」というアルバム。ミニアルバムにしろこの編集盤にしろ、インディーズからのリリースで、このリリースを経て'92年後半にメジャーの「A&M」から正式なファースト・フルアルバム「NURSE」でメジャーデビューするわけですが、まぁこれらの初期音源はそのファーストへの習作というか、インディーバンドならではの「これから何かが始まる感」が強い、面白い音源集になってるわけですよ。

THERAPY?というと、時期によって音楽的にもちょっとずつ変化があるので一概に「こういうバンド!」と断言し辛い面もあるんですが、まぁ基本的には「ヘヴィなギター、ヘヴィーに反復されるギターリフ、哀愁味漂うメロディー」ってことになるんでしょうか? ただ、このアルバムの前半部(1stミニアルバム「BABYTEETH」)の頃はまだメロディー面は弱いんですよね。どちらかというと「ノリ」を重視した作風で、例えば1曲目の "Meat Abstract" なんて反復されるギターリフがまるでテクノのそれみたいだし、リズムもダンス系のそれに近いし、かなりその辺を意識したアレンジになってたりします。で、無機質なサンプリングが被さることで、更にインダストリアル系の色合いも強いし。また "Loser Cop" のイントロ部ではジャジーのサックスが被さっていて、かなりフリーキーな印象を受けます。というように、特に「これがTHERAPY?サウンドだ!」という限定がし辛い、ちょっと散漫な印象を受ける7曲なんですよね。勿論悪くないと思うし、これだけ聴いたら「何だか面白そうな存在だな~」と思うでしょうし。実際、俺もそのひとりだったしね。

で、アルバム後半部(「PLEASURE DEATH」)になると、メジャー盤「NURSE」移行の作風にかなり近づきます。いや、既にここで「THERAPY?サウンド」が一度完成したと言ってもいいかもしれません。その後を感じさせる "Dancin' With Manson" とか名曲と名高い "Potato Junkie" 辺りはそのままメジャー盤に入っていてもおかしくないですしね(特に後者は後にリリースされるベスト盤にも選出されてますし)。

実は俺が最初に聴いたTHERAPY?の音源集もこの2ndミニアルバムでした。この音源がリリースされた当時('92年初頭)、俺はイギリスに短期留学中でして、現地での音楽情報収集に「Metal Hammer」や「Kerrang!」といった音楽誌を読んでいたんですね。その両方でこの「PLEASURE DEATH」というミニアルバムが取り上げられていて、しかも「Kerrang!」においては5つ星が付いてたと記憶してます。それで買ったんだよな、これ。で、ハマるまではいかなかったんだけど、何だか良さげなバンドだなーってことで気に入って。

帰国して暫くしてから、友達が「THERAPY?ってバンド、知ってるかー?」って俺に聞いてきて。で、「あー知ってる知ってる。向こう(イギリス)でも話題みたいだよー」って話になって。そこでその友人は俺に「アルバムいいよなー」って言うんですよ。「アルバム!? ミニアルバムじゃなくて??」って話になって‥‥そこで初めて「CAUCASIAN PSYCHOSIS」の存在を知ってね。ちょっとブートっぽい作りが怪しいかなぁと思ったんですが、収録曲を見ると後半に先のミニアルバム収録曲が全部入ってるんで「あー、別に海賊盤でもなさそうだなー」と。調べるとアメリカ向けに2つのミニアルバムを1枚にまとめたものだった、と。しかもこの編集盤をリリースしてるのが、インディーレーベルとしても老舗的存在な「Touch And Go」だったりしたもんだから(最初気づかなかったんだよね、それに)‥‥一体何事だ、と。しかもその頃には既に「A&M」との契約も決まっていたし‥‥アメリカではグランジで盛り上がっている中、イギリス(正確にはアイルランド)からはそれとは違った波が訪れようとしてるなぁ‥‥MANIC STREET PREACHERSといい、そのすぐ後に登場するTHE WiLDHEARTSといい‥‥そんな予感めいたことを感じさせてくれたのが、このTHERAPY?でした。ま、上にも書いたように、俺がこのバンドにハマっていくのは、更に1年以上経ってからの話なんですけどね。それはまた別の機会にってことで。

THERAPY?をこれから聴こうって人には絶対にオススメしない1枚ですし、オリジナルアルバムを全部聴いてから最後に手を出しても遅くない作品集だと思いますよ。実際、ベスト盤にもここから数曲入ってますし、そこで初期の作風が気に入ったら手を出すもよし、といった感じかな。



▼THERAPY?『CAUCASIAN PSYCHOSIS』
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投稿: 2004 05 09 05:14 午後 [1992年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2004年4月 5日 (月)

NIRVANA『INCESTICIDE』(1992)

NIRVANAが「NEVERMIND」で大ブレイクした'92年、次のアルバムまでの穴埋めとして(かどうかは知らないけど)、メジャーデビュー以前にインディーズからリリースしたシングル、コンピレーション盤にのみ収録されていた楽曲を1枚にまとめ、同年12月に発表されたのがこの「INCESTICIDE」というアルバム。当時、恐らく多くのロックファンが「NIRVANAの新しいアルバム!」を期待してたんだけど、その期待をいろんな意味で裏切ったのが、このアルバムだったといえるでしょう。だって、多くのロックファンは「NEVERMIND」で見られたNIRVANAを期待したはずなのに、ここにあるのはどちらかというとインディーズからのファースト「BLEACH」に近い印象の内容。特にここのみで聴ける未発表3曲に多くの人は「次の一手」を期待したのに‥‥

けどね、このアルバム。聴けば聴く程クセになる1枚なんですよ。そりゃね、「NEVERMIND」での彼らがどうしようもなく好きだ!って人にとっては少々厳しい内容かもしれません。けど、この1年後にリリースされることとなるサード「IN UTERO」を通過してしまえば、ここで聴ける楽曲が如何にポップに響くことか‥‥本来「BLEACH」と「NEVERMIND」との橋渡し的作品として制作されたはずなのに、気づいてみればこれは「NEVERMIND」と続く「IN UTERO」への橋渡し的作品になっていたというね。カート・コバーンからの「次はもっとピュアになるから、覚悟しとけよ!」という新規ファンへの親切なテキスト‥‥それがこの「INCESTICIDE」だったのではないでしょうか。ま、死んでしまった今となっては、そんなこと彼に聞く事も出来ないわけですが‥‥

クオリティーの高いシングル曲 "Dive"、"Sliver"、"Stain"、"Been A Son"、"Aneurysm" といった辺りは「NEVERMIND」にも通ずるポップさと硬質さを両方備えた、非常に高品質な楽曲群。まぁ「NEVERMIND」の域には達していないのかもしれませんが、俺はこっちの方が好きなんですよね。そうそう、その「NEVERMIND」にも収録されていた楽曲のパンクバージョン、"(New Wave) Polly" ってのもありますね。どこがニューウェーブなのかは疑問ですけどね。

それ以外にも、'92年2月に来日記念盤としてリリースされたものの、すぐに廃盤になってしまった幻のミニアルバム「HORMOANING」にも収められていた英・BBCラジオでのセッション(DEVOやVASELINESのカバーも含む)も数多く収録されていて、特にアルバム前半は比較的ポップで勢いのある曲が多く、かなり聴きやすくなってると思います。

が、後半(9曲目 "Beeswax")辺りから雲行きが怪しくなるんですよね‥‥どちらかというと前半部が「NEVERMIND」的としたら、後半部は「BLEACH」的といいますか‥‥特に未発表曲の3曲("Hairspray Queen"、"Aero Zeppelin"、"Big Long Now")の怪しい雰囲気は「NEVERMIND」にはなかったもの。ポストパンクやニューウェーブの色合いさえ感じられ、如何にこのバンドが「ただのパンクバンド」では済まされないいろいろな要素を持ったバンドだったかが伺える一面ではないでしょうか。残念ながらこういった色合いは後の「IN UTERO」からはそれ程感じられず、ある一過性のものだったのかな‥‥けどカバーセンスにもこの辺の色合いは表れてるし、後に出演することとなる「MTVアンプラグド」でもその辺のセンスはしっかり感じられたので、やはりこれらもバンドの持ち味と呼ぶ事ができるでしょう。そう、何もグランジはBLACK SABBATHやKISSやCHEAP TRICKやアングラ・パンクだけから影響を受けてたいわけじゃないんですよね。

多分NIRVANAをこれから聴く人はベスト盤だったり「NEVERMIND」といった代表作から手を伸ばし、このアルバムになんて見向きもしないんでしょうけど‥‥もし彼らの本質的な部分に触れたいのなら、是非このアルバムを聴いて欲しいなと思います。そう、どうせ聴くならベスト盤と一緒にこの「INCESTICIDE」も買っちゃいなよ!



▼NIRVANA『INCESTICIDE』
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投稿: 2004 04 05 02:17 午前 [1992年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2004年1月18日 (日)

BRIAN MAY『BACK TO THE LIGHT』(1992)

QUEENのギタリスト、ブライアン・メイが初めて本格的に取り組んだソロアルバム。それが今回紹介する『BACK TO THE LIGHT』という作品です。

リリースは1992年9月ですから……「彼」の死から1年待たずに発表されたことになるのですが、そもそもこのソロアルバム自体、「例の悲劇」の前から制作されていたものなので、その後のゴタゴタ(って言い方はちょっとアレかと思いますが)で本来予定されていたリリース日程よりもかなり遅れての発表ということになるようです。だって、ここに収録されている初のソロ・シングルとなった「Driven By You」って、1991年の春頃にはリリースされて、しかも英国ではトップ10ヒットしてるんですよ。恐らくブライアンの中では「その後、もう1~2枚シングルを切っていって、年末にはアルバムを出せれば」くらいの予定だったんじゃないですかね。ところが……ご存知のとおり、同年夏にフレディ・マーキュリーの容態が悪化、11月には亡くなってしまいます。QUEENのメンバーはそれぞれの仕事を差し置いて、フレディに付き添ったという話があるほど、4人の絆は強く、結局その後も1992年4月にウェンブリー・スタジアムで行われた「The Freddie Mercury Tribute Concert For Aids Awareness」まではただひたすら「QUEENのブラアン・メイ」として突っ走ったのですから。そりゃアルバム制作が中断しても仕方ないし、誰も彼を責められないと思いますよ。

そうやって長い期間を経て完成したこのアルバム。そもそもブライアンはほかのメンバー……フレディやロジャー・テイラーとは違い、バンド存命中は殆どソロらしいソロ活動を行ってこなかった人なんですね。やったとしても、彼の個性を全面的に活かしたものとは言い難い、映画のサウンドトラックばかりで、唯一「BRIAN MAY & FRIENDS」名義で1983年にリリースしたミニアルバム『STAR FLEET PROJECT』があるだけ。これにしたってインストもので、かなり肩の力が抜けた「お遊び」のようなもの。「QUEENのブライアン・メイ」を求めるファンにとっては、正直「歌ってギター弾きまくるブライアン」が聴きたかったはずなんですね。

そういう意味で、ようやく重い腰を上げて初めて本格的なソロ活動を開始したのは、1991年のシングル「Driven By You」が最初といっていいでしょう。これにしたって、フレディが表立った活動をできなかったことに対する苛立ちへの、彼なりの解消法法だったのだと思います。ミュージシャンとしてステージに立ちたい、もっとロックしたい。そういった強い思いが彼をソロ活動へと導いたのでしょう。もちろんQUEENの今後のことが脳裏をよぎったから、踏み切ったのでしょうし。

とにかく、当時フレディがそんなことになってるなんて一切知らされていなかった我々としては、ただ純粋にこのシングルの発表を喜んだものです。だって、どこからどう聴いても「QUEENのブライアン・メイ」そのものなんだもん、この曲。しかもMVでバックを支えるのがコージー・パウエルやニール・マーレイといった、UKロック史の生き証人ばかりなんだから。この人選に思わず唸っちゃったはずだよ、みんな(ただこの曲、レコーディング自体は打ち込み中心で、すべてブライアンとエンジニアの手によるものなのでした。それでもMVではライヴを意識した人選が嬉しかったんですよね)。

結局、続く新曲は1年以上経ってから、例のトリビュート・ライヴで初披露されていた「Too Much Love Will Kill You」という思わせぶりなタイトルのバラード。本当に大号泣ですよ、この曲を初めて聴いたときは。しかも当時は、まさかこの曲がQUEENとしてもレコーディングされていたなんて知らなかったし、絶対にフレディのことを思って書いた曲だよな?って信じてましたからね。当然、ここまでのシングル2枚でアルバムに対する期待が高まるわけです。

そういう感じで期待しているところに発表されたアルバム『BACK TO THE LIGHT』は、ある意味で期待どおり、そしてある意味では予想以上の内容でした。まず、どこからどう聴いても「QUEENのブライアン・メイ」だらけ。正に「金太郎飴」的な1枚といっていいかもしれません。QUEENでのブライアンというと……例えば彼が過去にQUEENで書いてきた楽曲を思い浮かべればわかるように、非常にハードロックしていてギターが前面に出ている曲が中心。で、その期待に応える反面、彼のルーツを感じさせるようなタイプの楽曲もあったり、カバーもあったりで、とにかく「QUEENのブライアン・メイ」を意識して、そのイメージの集大成といえるようなアルバムを作ったかな、という印象が強いんですね。

QUEENの代表曲「We Will Rock You」の一節を引用しかたのような歌詞が登場する「The Dark」というインタールード的ナンバーから幻想的に始まり、そのまま『THE GAME』以降のQUEENを彷彿させる壮大な「Back To The Light」へと続いていきます。派手なドラムが印象的なんですが、これを叩いているのが先のMVにも登場したコージー・パウエル。ここからはしばらくくコージーが叩く曲が続き、黒っぽくてシンプルなロックンロール「Love Token」(QUEEN時代の「Headlong」に近い印象)から、このアルバム最初のハイライトといえるハードロックチューン「Resurrection」へと続きます。

この曲、サブタイトルとして「with Cozy Powell」という表記がある、コージーのドラムが全面にフィーチャーされた1曲でして、ライヴだとこの曲中で彼のドラムソロが挿入されたりします。シングルカットまでされて、MVではコージーのソロショットがかなりの割合で映し出されたりしてましたよね。そうそう、この曲ではキーボードをかのドン・エイリー(コージーとはRAINBOW時代等での盟友)が弾いてたりします。70~80年代のUKロック/ハードロック・シーンに興味がある人なら、誰もが一度は目にする名前ばかり。ホント、すごい組み合わせですよね、今考えても。

のっけから大ハードロック大会した後、しっとりと「Too Much Love Will Kill You」で泣かせて、再び「Driven By You」でペースアップ。次の「Nothin' But Blue」は三連リズムのブルージーなバラード。で、こでは前述のコージーやドンのほかに、QUEENでの盟友ジョン・ディーコンがベースで参加しています。この曲もアレンジ次第ではQUEEN「Who Wants Live Forever」みたいな1曲になったんでしょうけど、敢えてそうせずにブルージーなアレンジにしたのは個人的に正解だと思います。コージーのドラムも派手なんだけど、ちゃんと歌を盛り上げる叩き方してるんでうるさいと感じないんですよね。そして「I'm Scared」では、かのジョン・レノン「God」をパロッたかのような歌詞を載せた、シンプルなロックンロール。ま、本人はそんな意識、ないでしょうけどね。

再び三連リズムを用いたブルージーな「Last Horizon」が。しかしここではブライアンは歌わず、彼のメロウなギターを前面に打ち出したインスト曲になっています。途中でリズムが四拍子に変化したり等、いろいろ工夫されていて、ギタリストのインストものが苦手って人にも取っ付きやすくなってるような。そこから、QUEEN時代の「39」にも通ずる印象のカントリー調「Let Your Heart Rule Your Head」へ。こういう曲、ちゃんとQUEEN時代からやっていたし、そういう意味でも本当にこれまでの集大成という色合いが強いかな。けど、個人的にはもっとストレートなロックアルバムになるのかな?と勝手に思い込んでいただけに、こういうQUEEN的雑多作品集に仕上がるとは思ってなくて、そこにはただ驚かされるばかりでした。

その後、ちょっとフレディのことを思い出させるタイトルを持つ「Just One Life」という感動的なバラード(実際にはPhilip Sayerという人に向けて書かれているようです)を経て、最後に彼のルーツのひとつでもあるSMALL FACESの、非常にヘヴィなカバーバージョンとなった「Rollin' Over」で締めくくられます。ここでは元MANFRED MANNのシンガー、クリス・トンプソンがブライアンとデュエットしています。曲の途中でビートルズ「Day Tripper」のメインリフを引用していたり、如何にもQUEENなギターハーモニーが飛び込んできたりで、ちょっとSMALL FACESの曲には聞こえなかったりするんですが、ま、そこも含めて最初から最後まで「QUEENのブライアン・メイ」らしいアルバムだ、と言い切ることができるでしょう。曲のエンディング、最後の最後で再び「The Dark」の一節に戻っていくという作風といい、やはりこれは「QUEENのブライアン・メイ」じゃなきゃ作れなかった作品でしょうね。

最初から最後まで「QUEENのブライアン・メイ」という表現をしましたが、だからといってこれがQUEENの焼き直しだとか、「ブライアン・メイというひとりのアーティストとしての個性が薄い」って言ってるわけじゃないですよ。良い意味で、敢えてそう表現してるんですから。もし、もっと彼のルーツ的な側面、それこそ「独立したひとりのアーティストとしてのブライアン」を堪能したかったら、続くセカンド・ソロアルバム『ANOTHER WORLD』を聴くことをオススメします。ライトなQUEENファンからするとちょっと厳しいという声が聞こえてくる『ANOTHER WORLD』ですが、僕はこっちも彼らしくて良い作品だと思います(カバー曲が非常に多いという点がマイナスポイントになっているのもわりますが、ファーストの作風を考えると、そして長らく続いた「QUEENとしてのけじめ/後始末」を考えると、ああいう作品にたどり着いたのは何となく理解できるんですよね)。

このアルバムを引っさげて、ブライアンはコージーやニール・マーレイを含むメンバーでツアーに出ています。1993年秋にはここ日本にもソロとして初来日を果たし、1994年初頭にはこのツアーを収めたライヴアルバム『LIVE AT THE BRIXTON ACADEMY』と、同名のライヴビデオもリリースされました。この活動が一段落ついた後、再び彼は「QUEENのブライアン・メイ」として、『MADE IN HEAVEN』の作業へと取りかかるのでした……。

ブライアンはQUEEN時代にもいくつかのリードボーカル・ナンバーを残しています。QUEENにハマると、意外と彼のナンバーに惹かれるという声を耳にする機会が多いんですが(勿論フレディあってのQUEENなわけですが)、そういった人なら間違いなく楽しめる1枚ですし、またQUEENで好きな曲のクレジットを見るとブライアンの曲が多かったという人もまた楽しめる作品でしょう。そして、そういう細かいことにこだわらない、単純に「QUEENの別の顔」として楽しむことも可能ですし、純粋に「ギタリストのソロアルバム」として聴くのもアリでしょう。決して「歴史的名盤」とは言い難いですが、それでも古き良き時代……ブリットポップに染まる前のイギリスを存分に堪能できる、非常に優れたアルバムだと断言できます。



▼BRIAN MAY『BACK TO THE LIGHT』
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投稿: 2004 01 18 12:00 午前 [1992年の作品, Brian May, Cozy Powell, Queen] | 固定リンク

2004年1月12日 (月)

Mr.Children『Everything』(1992)

  Mr.Childrenが'92年5月に発表した、記念すべきデビューアルバム。メンバー4人、そしてプロデューサーである小林武史という布陣はこのデビュー時から出来上がっていて、現在に至るまで不動のチームとしての仕事振りを発揮しているわけです(ま、ホントの裏事情は本人達じゃないと判らないでしょうけどね)。7曲入りということでミニアルバムという解釈もできると思いますが、彼らが所属するレコード会社「TOY'S FACTORY」ってこういう形態でのアルバムリリースが結構多いんですよね。例えばJUN SKY WALKER(S)や筋肉少女帯も7曲前後入りのアルバムというのを過去何枚か出しているし。値段的にも2,000円程度で通常のアルバムよりも1,000円近く安くてお手軽。そういう意味では手を伸ばしやすいデビュー盤かもしれませんね。

  俺とこのバンドとの出会いは、ここに収録されている "君がいた夏" のPVをTVKで目にして。ああ、フリッパーズ・ギター以降の流れを汲む、ネオアコ・チックな音を出すバンドだな、とか、ロックというよりもポップバンド‥‥BEATLES初期の、ある時期を彷彿させるイメージを持ってるな、とか、そういった印象を持ったのを思い出します。俺が彼らに注目し出したのはその数ヶ月後にリリースされた "抱きしめたい" からなので、当然このアルバムは後追いで聴いたことになります(アルバム自体を購入したのは「versus」が最初ですから)。

  個人的にこのアルバムを最も聴き込んだのは、多分「Atomic Heart」以降‥‥ツアーでいうと'95年夏のスタジアムツアー「空」辺りまでかな。当時は彼らのポップサイドよりもロック的側面に興味が集中していた時期なので(俺内でね)、またライヴでもこのアルバムでの曲はあまり披露される機会が少なくなっていった時期ということもあり、どうしても手が伸びる回数が少なかったんですよね。ミスチルなら何でもいいの!的純粋なファンの皆さんとは違って、非常にひねくれた聴き方をしてましたからね、俺(ここのコードがどうだとか、この転調が凄いだとか、ここのフレーズが○×の "~" って曲に似てる、とかさ)。

  というわけで‥‥来るべきニューアルバムを前に、改めて彼らの足跡を追ってみようかと思い、こうしてファーストアルバムから取り上げてみようかと思ったわけでして‥‥正直、ミスチルを語る時って、もの凄いパワーを使うわけですよ。通常のレビューの数倍も時間をかけて書くわけでして(すんなり書けない・書きにくいというのもあるんですが)。ま、手始めに曲数が少ないこのアルバムから‥‥ってのが真相なんですが(ホントは「Atomic Heart」から手を出そうとしたんですが‥‥やっぱり無理でした。一番思い入れが強い時期ですからね。それだけに‥‥)。


●M-1:ロード・アイ・ミス・ユー
  イントロでのギターのストロークが印象的な、ミドルチューン。誰もが指摘するでしょうけど、明らかにTHE POLICE(かのスティングが在籍したロックバンド)のデビュー曲、"Roxanne" のメインリフからアイディアを拝借しているかな‥‥と。小林の手が加わる前のバージョンがどうだったのか判りませんが、どちらにしろよく小林がOKを出したな、という気が。で、イントロ~Aメロでは "Roxanne" の影を引きずりつつも、Bメロでマイナーコードからメジャーコードに転調、そのままスケール感が大きな展開を見せます。特にサビでの流れるようなメロディには、その後の桜井和寿を彷彿させる冴えを感じます。「プロのミュージシャン」というよりは、まだこの時点では「ロックファン」といった視点の方が強いのかな、という気も。その後も彼らは幾度となく海外の有名アーティストの楽曲からアイディアを拝借していましたからね。

●M-2:Mr.Shining Moon
  スウィング感が気持ちいい、ポップチューン。コード使いやブラス/オルガン/パーカッションの挿入の仕方がどことなくブラックミュージックに通ずるものがあって、ギターポップのスウィング感というよりも、もっとファンキーな要素を強く感じますね。この辺のアレンジの妙技は正に小林によるものでしょう。サザンオールスターズ辺りで試した手法を、ここでも遺憾なく発揮しています。新人のそれとは思えないくらいに。

●M-3:君がいた夏
  後にシングルとしてリカットされ、PVも制作された1曲。アルバムより後発だけど、これを「デビュー曲」と認識する人が多くいるのはそのためでしょう。後に尾崎豊や佐野元春のような「言葉を詰め込みすぎた譜割り」が目立つようになるミスチルですが、それを聴いた後にこの曲を聴くと間延びしすぎた印象を受けますが‥‥まぁ、その辺は個々の趣味もあるでしょうからね。個人的にはこのゆったりとして一言一句を大切に歌う姿勢に、当時から好感が持てたし、更に'50年代のアメリカン・ポップスを彷彿させる大らかさがとても気に入っています。これがシングルとして選ばれたのは、何となく理解できますね。後のヒット曲にも通ずるものがありますし。

●M-4:風 ~The wind knows how I feel~
  ドラムが印象的な1曲。これもアメリカンロックに通ずる大らかさを持っていて、例えばブルース・スプリングスティーンみたいなノリを感じるわけ。ミスチルというとエルヴィス・コステロ等のブリティッシュ・ロック/ポップからの影響をよく耳にするかと思いますが、後に「深海」以降で見られるように、アメリカン・ロック/ポップからの影響も大きいわけで、これはその辺の要素を強く出した1曲かなという気がします。

●M-5:ためいきの日曜日
  アルバム唯一のバラードナンバー。とにかく「オシャレ」という印象が強いアレンジで、例えば後に発表される "抱きしめたい" とも違った流れにあるタイプ。勿論これもミスチルの持ち味なんだけど‥‥どちらかというと、小林武史の持ち味だったのかな?なんていう気も。それを上手く桜井が吸収していったのでは‥‥後にこの辺の路線や音楽性の延長線上からスガシカオやaikoといったアーティストが登場したのと同時に、ミスチル本人達がこの手の路線を封印してしまったのが、非常に印象的ですね。あ、あとこの曲って意外とサイケなのね。特に後半の盛り上げ方が‥‥安直な例えだけど、中期BEATLESのそれに近いものがあるかな、と。意外とヘヴィなギターと、それに被さるストリングス系シンセ、レズリースピーカーを通したかのようなウネウネするサウンド、等々。後に「深海」というアルバムを作ることを考えると、ホント興味深いですね。

●M-6:友達のままで
  アコーディオンぽい音色のシンセ(本物?)とソフトな音色のオルガン、ビブラフォンが心地よい、アップテンポのギターポップ。間奏でいきなり飛び込む変拍子が程よいアクセントになればよかったんだけど、なんか空回りしてるような気も。ま、若気の至りということで。アコギの音が前面に出てることで、ネオアコっぽさを強調してる感じが、完全にその辺を狙って(狙わせて)いたことが伺えますね。

●M-7:CHILDREN'S WORLD
  アルバム中、最もロック色の強いストレートな1曲。メインフレーズとなるアルペジオが心地よく、アコギにも中盤(サビ)ではエフェクトがかけられていたり等、ただのロックチューンで終わらないような工夫が要所に見つけられます。とにかく仕事が細かいね、小林武史って人は。バッキングのディストーションギターもちょっとキース・リチャーズが入った刻み方をしてて、ああこの辺は桜井が弾いてるんだろうな、なんて勝手に想像して楽しんでます。


●総評
  というわけで駆け足でコメントしましたが、ある点において「何故コメントしないの?」と疑問に思われるかもしれません。そう、これまでのミスチル・レビューでは必ずといっていい程触れてきた「歌詞」について。意図的に解説中では語らないようにしたんですが‥‥正直なところ、非常に幼いかな、と。いや、そりゃ現在30歳をとうに越えた俺からすれば、ここにある歌詞は幼いと感じるかもしれませんが‥‥それでも、セカンドアルバム以降と比べてもちょっと幼すぎる気がするんですよね。多分、アルバム用に作った楽曲というよりは、それ以前からライヴで幾度となく演奏されていた持ち歌の中から厳選された7曲なんでしょうけど‥‥デビュー時のメンバーが22歳とすると、それ以前‥‥20~21歳頃に書かれた曲が多いのかな? ふと、自分がハタチの頃ってどうだったかな?と思い浮かべてみたんですが‥‥ゴメン、思い浮かばなかった。奇遇にも成人式シーズンにこれを書いてるわけですが、もし今ハタチ前後の男性がこのアルバムを聴いて(歌詞を読んで)どう思うのかなぁ‥‥なんてね。自分もその位の年齢から自分で曲を作って歌詞を付けたりしてたけど、その当時の自分の作品と比べると‥‥音楽性や路線が全く違うから、比べるのはちょっとか‥‥って気がしないでもないけど、それでもやっぱり子供っぽさを強く感じるのね。それは決して悪いとは思わないし、これがデビュー前の彼らの「売り」だったのかもしれないけど‥‥セカンドやサードから入っていった者からすると、ちょっと厳しいかな、と感じちゃう、と。「アホー、そこがいいんじゃないか!」というお叱りの声が聞こえてきそうですが、ま、そういう奴もいるんだよってことでお許しください。

  そういう意味からしても、このアルバムってのはデビュー盤にして「過去との決別」の印でもあったわけか‥‥と続く作品群を聴いて思うわけですよ。同じ「少年の心」を歌うにしても、見せ方・聴かせ方が変わるとこうもグレードアップするもんなのか‥‥と、まざまざと見せつけられるわけですね‥‥って、おっと。その続きはまた今度、「KIND OF LOVE」のレビューで‥‥。



▼Mr.Children『Everything』
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投稿: 2004 01 12 12:00 午前 [1992年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2004年1月 4日 (日)

THIN LIZZY『BBC RADIO ONE LIVE IN CONCERT』(1992)

先日、「THIN LIZZY、歴代ベスト・ライヴ・アルバムに選ばれる」というニュースを取り上げたんですが、ここで選ばれたのは「LIVE AND DANGEROUS」という初期の名ライヴアルバムなんですね。もうこれは聴いていて当たり前なライヴ盤なわけですよ、俺からすると。'70年代のリティッシュロックを語る上で(ま、正確にはフィル・ライノットがアイリッシュってこともあって、厳密にはブリティッシュロックではないのかもしれませんが)外せない1枚なわけですよ。例えば俺的には‥‥イギリス人ではないけど、イギリスからブレイクしていったという意味では外せない‥‥AC/DCの「IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT」と同じくらいの意味合いを持つ作品なわけですよ。

で、そのTHIN LIZZYなんですが、バンド存続時に2枚のライヴ盤を出してるんですね。ひとつが上に挙げた「LIVE AND DANGEROUS」、そしてもう1枚(正確には2枚組なので1組と呼ぶべきか)が解散時のツアーをまとめた「LIFE」という作品。編成も音楽性も異なる2種類のライヴ盤なのですが、ファンならどちらも抑えておきたいアルバムですよね。

解散後暫くして‥‥'86年1月4日にフィルが亡くなります。そして'90年代に入り、何故かTHIN LIZZYが再評価される機会が増えます。未発表曲を含むベスト盤がリリースされたり、ラジオ音源を使用したライヴ盤が出回ったり‥‥今回紹介するアルバムも、そういう意味では「未公認」に近い形でリリースされたライヴ盤なのですが‥‥けどこれ、歴史的価値の点で考えると非常に重要な1枚な気がするんですよね。

ここに収められた音源は、'83年8月に出演したイギリス「READING FESTIVAL」で演奏した際のものです。この時のライヴは当時、英BBCラジオで放送され、この音源もその為にレコーディングされたものです。なので商品化を目的にレコーディングされたものではないので、音質も最高とは言い難いレベルです(ま、そんなに悪くはないですけど、所々酷い箇所も見受けられます)。当日、同フェスのヘッドライナーとして出演した際の演奏が、ほぼ完全収録という形で収められたこのライヴ盤が、何故そんなに希少価値があるのか‥‥それは、このライヴが正真正銘の「THIN LIZZYのラストライヴ」だったからなのです。

本来、彼等は'83年初頭に「THUNDER AND LIGHTNING」というスタジオアルバムを発表し、それに伴うツアーで解散することになってました。資料によると同年5月の日本公演がラストになる予定だったそうです。が、このフェアウェル・ツアーが大盛況だったこともあり、プロモーター側がどんどん追加公演を増やしていき、解散が先延ばしになり、結局3ヶ月も延長されてしまった、というのが真相みたいですが‥‥どちらにしても、英国を代表する大フェスティバルで最期を迎えることができたのは、ある意味幸せだったのかもしれませんね。

演奏された曲目はラストアルバム「THUNDER AND LIGHTNING」からの4曲を含む、正にベストヒット的内容になってます。たった14曲ということもあって、確かに完全に納得がいく選曲とは言い難いですが、それでも「あぁ、こういう形か‥‥」と個人的には納得ができるんですけどね。フェスだからね、どうしても7~80分程度でしょ、どんなに最長でも。そんな場所でもラストでは "Still In Love With You" を10分近くに渡って演奏してしまうんですから。しかもそこでのスコット・ゴーハムとジョン・サイクスのギターバトルがまた凄いのなんのって。最後の最後で力を振り絞って1音1音を奏でてる様が目に浮かぶようなプレイなんですよね。個人的にも共に大好きなギタリストなので、尚更ですよね。

そうそう、最初この音源を聴いた時(まだその頃は「LIFE」を聴いてなかったんです)、てっきりジョン・サイクスのプレイだと思ってた方が、実はスコット・ゴーハムのものだったことを知らされた時、もの凄いショックを受けましたからね。だってさ、メチャクチャ若返ってるんだもん、スコットのプレイが。ジョンに感化されて凄い速弾きとかしてるのね。"Thunder & Lightning" とか聴くと凄いよね。初期の頃の、シンプルだったTHIN LIZZYが好きだったファンには不評なラストアルバムだけど、俺はこれ、LIZZYの作品でも3本指に入るくらい好きだし。メタリックだけど、曲自体はメロディアスでポップなんだよね。そこは間違いなくフィルの持ち味なんだよな、と。ジョン・サイクスの才能も正直、まだまだ完全に開花したとは言い難いものですしね、この頃は(結局「ジョン・サイクスらしさ」が完全開花したのって、WHITESNAKEで「サーペンス・アルバス」を制作してる時期でしょ?)。

このライヴだと、やはり個人的にピークとなるのは "Emerald" 以降の流れですかね。ここから "The Cowboy Song" ~ "The Boys Are Back In Town" ~ "Suicide" で一旦本編終了して、その後 "Rosalie" ~ "Dancing In The Moonlight" ~ "The Cowgirl Song" のメドレーがあって、最後の最後に "Still In Love With You" で聴かせ/歌わせ/泣かせて終わるという構成。実は前半は新曲や当時未発表だった "A Nihgt In The Life Of A Blues Singer"(確か後のフィルのソロシングルに収録されたんでしたっけ?)といった新しめの曲が中心なんですよ‥‥限られた時間を考えれば、バランス的には申し分ないのかもしれませんね。

実はこのラストライヴ音源集、現在ではなかなか手に入りにくい一品みたいなんですね。俺が持ってるのは国内盤なんですが、これをリリースしていたのが、今は亡き「アルファ・レコード」なんです(当時、YMOやSOFT BALLETといったアーティストのリリース元。現在はソニーがここの音源を再発してますが、それも国内アーティストに関してのみ)。だから‥‥権利関係がどうなってるのか判りませんが、少なくとも再発は暫く有り得ないでしょうね。となると、輸入盤なんですが‥‥amazonでも品切れ状態が続いてるようです。もし店頭でこのCDを見つけたなら、とりあえず買ってみることをオススメします。あ、その前にまず「LIVE AND DANGEROUS」やスタジオアルバム(ベストでも可)を聴いているのが大前提ですけどね。

最後に‥‥あれから18年経ちましたか。当時中学生だった俺は、結局リアルタイムでTHIN LIZZYを通過することはありませんでした(何せ最初にフィルの事をしったのが、ゲイリー・ムーアーとのデュエット曲 "Out In The Field" ですからね)。後追いで、しかも'90年代に入ってから彼等に夢中になった俺ですが‥‥やはりいいものは、いつ聴いてもいいんですよ。カッコイイ音を、素直にカッコイイと言える。それが素敵なんですから。



▼THIN LIZZY『BBC RADIO ONE LIVE IN CONCERT』
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投稿: 2004 01 04 05:11 午後 [1992年の作品, Thin Lizzy] | 固定リンク

2003年12月13日 (土)

BUCK-TICK『殺シノ調ベ -This is NOT Greatest Hits-』(1992)

BUCK-TICKが今から約12年前、丁度デビュー5年後くらいの92年3月にリリースしたアルバム『殺シノ調ベ -This is NOT Greatest Hits-』はそのタイトルにある通り、単なるグレイテスト・ヒッツではなく、メンバー自らが選曲して、全ての楽曲を当時の技術やアイディアによってリアレンジ&再演した、オリジナル・アルバムの延長線上にある1枚と呼んでもいい内容になってます。

バンドとしてはこの時点でオリジナルアルバム6枚(インディー盤『HURRY UP MODE』を含む)を発表していて、普通なら別にベストアルバムをリリースしてもいい頃。シングルヒットも連発していたし、そういった楽曲を軸にして選曲すれば、それなりにヒットしたでしょう。しかしそこはBUCK-TICK、一筋縄ではいかないのですよ。確かにこの時点までにメジャーからリリースされたシングル曲5曲(「JUST ONE MORE KISS」「悪の華」「スピード」「M・A・D」「JUPITER」)は全部選曲されてるし、既に定番曲となっていた「HYPER LOVE」「…IN HEAVEN」「ICONOCLASM」等といった曲も選ばれてる。『HURRY UP MODE』からもちゃんと「MOON LIGHT」が選ばれてるし……けど個人的には「ROMANESQUE」とか「SEXUAL XXXXX!」とか「太陽ニ殺サレタ」辺りもリアレンジされたのを聴いてみたかったなぁ、って。まぁこの選曲は92年時点でのバンドにとって「改めてアレンジしてみたい」「どうしても入れておきたい」と強く感じた14曲でしょうし、アルバムとしてのトータル性を考えるとこれはこれでアリかな、と思うので良しとしましょう。

それにしてもこのアルバム……曲によっては全然表情が違うものもあれば、全く別の曲になってしまってるものもある。前者の代表が「DO THE "I LOVE YOU"」や「HYPER LOVE」、そして「TABOO」のオープニング(ドリフ世代には懐かしい、あちらの「ABOO」をフィーチャリングしてます)だったりするし、後者の代表は正しく“狂って”しまった「M・A・D」でしょうか。他の曲も、例えばデビュー期の荒々しい楽曲だったら、成長した歌と演奏で表現して新しい表情を見せているし、ヒットシングルもニュアンスを変えるだけで聞こえ方がかなり違ってくる。中途半端なリミックスとかするアーティストが多い中、完全にアレンジし直して、しかも演奏も歌も録り直してるこのアルバムはかなり異質であり、そういったリミックスと比べちゃうと‥‥悪いけど、格が全然違いすぎ。そして本人達が「これはグレイテスト・ヒッツなんかじゃない」と言い切る潔さ(そして皮肉)。カッコ良すぎだってば。

初期のビートロック然とした「…IN HEAVEN」がこんなにもストレートでカッコイイ曲に様変わりしてたり、そのままメドレーっぽく続く「MOON LIGHT」、ちょっとテンポを抑えて重さと暗さが増した「悪の華」、更に儚さが増したかのような「JUPITER」、エロさ200%アップな「TABOO」、そしてそのままの流れでなだれ込むエンディング「HYPER LOVE」。どれもオリジナル版リリース当時、散々聴き込んだ曲ばかりなのに、このリアレンジ・アルバムで聴くと滅茶苦茶新鮮に聞こえて、別の曲を聴いてるような錯覚に陥る時さえあるのね。特に『HURRY UP MODE』~『SEVENTH HEAVEN』辺りの曲は、当時の拙い演奏力のせいで全部が全部伝わっていたとは言い難かったんだけど、ここにきて一気に突き抜けた感じ。本当にポップでいい曲書くバンドなんだよね、彼等は。

このアルバムを境に、その後のBUCK-TICKはよりダークで、尚かつヘヴィな路線へと“深化”していったけど、根本にある“ポップさ”って全然変わってないのね。それは今年リリースされた新作『Mona Lisa OVERDRIVE』にしても同じ。時代時代に合った装飾(アレンジ)を纏ってはいるものの、一本筋が通ってるんだよね。だからこそ結成から20年近くも不動の5人で活動が続いているわけであり、そして不動の人気を維持しているんですね。納得です。

もしこれからBUCK-TICKを聴いてみようって人。とりあえず新作から聴いていくのがいいんだろうけど、過去の作品で1枚ってことなら、俺は迷わずこのリアレンジ・アルバムをオススメします。初期の代表曲はほぼ網羅してるしね。



▼BUCK-TICK『殺シノ調ベ -This is NOT Greatest Hits-』
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投稿: 2003 12 13 11:16 午前 [1992年の作品, BUCK-TICK] | 固定リンク

2003年11月24日 (月)

QUEEN『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992)

夕べ、旧友たちとカラオケに行ったんですよ。で、みんな最近の音楽に疎いもんだから、歌う曲が自分たちの学生時代……80年代や90年代初頭に流行った邦楽/洋楽のヒット曲ばかり。僕なんて当時やってたバンドでカバーした曲を歌えって周りからせかされるわけでして、GUNS N' ROSESAEROSMITHKISSLED ZEPPELINDEEP PURPLEROLLING STONESBON JOVIに……そしてQUEEN。本当に気分がいい時にしか歌わない、究極中の究極「Bohemian Rhapsody」をホント久し振りに歌って……そこで急に思い出したりして。11月24日がフレディ・マーキュリーの命日だってことを。

たまたま今日24日はここ日本で祝日だったわけで、僕は日中ずっと彼らのCDばかりを聴いてたんですね、随分と久し振りに。つうかこんなに真剣に、長時間QUEENの楽曲に触れたのは多分学生時代……フレディが亡くなった12年前以来じゃないかって程に、5~6時間ぶっ通しで彼らのアルバムを聴いたりライヴDVDを観たりしてるんです。

今年の僕の誕生日(8月6日)に、ある1枚(正確には2枚組)のDVDが日本で発売されました。『LIVE AT WEMBLEY '86』と題されたそのライヴDVD。10数年前にビデオ版でリリースされていた同タイトルの、完全収録版と呼べるDVD。すでに海外ではリリースされていたものの、リージョンコードの関係で日本の家庭用DVDプレイヤーでは観れなかったようで、僕はこの日本版DVDの発売を待ったわけです。

結局、僕は一度も彼らのライヴを生で観ることができませんでした。彼らに夢中になりだした頃が、このライヴDVDでメインとなっているスタジオアルバム『A KIND OF MAGIC』がリリースされた1986年夏頃。ちょうどこのライヴが行われた頃だったわけで、最後に来日公演を行ったのは前年1985年春のこと。まだ僕が彼らに対して「コミカルでカッコ悪い」というイメージを抱いていた頃。MTVでガンガンに流れていた「Radio Ga Ga」や「I Want To Break Free」といったMVのイメージだと錯覚してた、13~4歳のガキンチョだった頃の話。そんな僕に純粋にカッコイイと思わせたのが「One Vision」という曲であり、『A KIND OF MAGIC』というアルバムであり、そのアルバムの中にも収録されている「Princes Of The Universe」というハードロックチューン。ポップなイメージの強かったQUEENが自分にとって「激カッコいいハードロックバンド」として機能し、そしてのちに「生涯で大切な存在」となっていくわけです。

ま、そのへんのことは、QUEENやフレディに関するコンテンツで散々書いてきたので、今回は割愛。そちらを是非お読みください。

で、ここからが本題。このライヴCDは今から11年半前、フレディが亡くなった後の1992年5月に追悼盤のひとつとしてリリースされた、上記DVDと同内容の2枚組作品。収録された日(1986年7月11&12日)と曲目から考えて、ほぼ同音源と考えていいでしょう。DVD版がリリースされるのがその12年近くも後ですし、またこのアルバムには「QUEEN最後のフルライヴ音源」という重要な意味合いもあったことから、当時は非常に重要視されていました。

これよりも6年も前に『LIVE MAGIC』というCD1枚モノのライヴ盤も出ていたんですが、そちらはそのウェンブリー・スタジアムでの音源のほかにもブタペスト公演の音源も入っていて、なおかつ非常にコンパクトになっているため(そしてフェードアウトする音源まであり)、とても中途半端な印象が強かったんですが、この『LIVE AT WEMBLEY '86』は2枚組で約2時間、ライブをまるまる収録という形になっているんですよ。しかも彼らが最後に行ったツアーの中でもハイライトとなったウェンブリー・スタジアム公演ですからね(結局、彼らはその翌月の8月にネブワースでの大規模コンサートを最後にライヴ活動を休止するわけです)。

ハッキリ言って、ここに収められているQUEENの、特にフレディのパフォーマンスは最高には程遠い出来です。が、やはりこれは作品として、「形」として残されることに意味があるわけですよ(最後のライヴツアーを丸々収めた音源)。リリース当時にはDVDなんて素晴らしいメディアは存在せず、ビデオテープやレーザーディスクが主流。そして、ライヴアルバムという形体にもまだまだ重要な意味合いがあった時代。今みたいに手軽にDVDが楽しめる時代ではなかったわけですよ、10年前は。これも何度も書いてるけど、僕はライヴアルバムという作品が、音にイマジネーションをかき立てられるこの形体が大好きなんですね。だからQUEENのこのアルバムも、一度も観れなかった彼等のライヴに行った気になりたくて、何度も聴いたわけです。ライヴビデオは出ていたけど、あんまり観なかったんですね。何でか判らないけど。

QUEENにはもう1枚、70年代の彼等の集大成と呼べるライヴ盤『LIVE KILLERS』(1979年)という作品があるんですが、そちらは若くて荒々しく勢いがあった頃のQUEENをパッケージした素晴らしいライヴ盤で、僕も大好きなアルバムです。けど、この落ち着いてるけどエンターテイメントとしては究極中の究極といえる『LIVE AT WEMBLEY '86』という作品も大好きなんですよ。どちらか1枚を選べと言われると非常に困るんですが……今の気分だったら、こっちを選んじゃうかもしれません。

選曲は完全にグレイテスト・ヒッツ的内容。『A KIND OF MAGIC』というスタジオ盤でのツアーではあるんですが、演奏されている曲はそこからのシングル曲4曲のみ。80年代以降の「ポップなQUEEN」と70年代の「ハードロッキンなQUEEN」が半々で収められているんですが、中でも注目なのはディスク2の冒頭。名バラード「Love Of My Life」や「Is This The World We Created?」以降の、アコースティック・メドレーでしょう。地元ならではのリラックスした雰囲気の中歌われるロックンロール・クラシックの数々。その後に満を持して登場する超名曲「Bohemian Rhapsody」。そして終盤を盛り上げるのが「We Will Rock You」や「We Are The Champions」といった定番だけでなく、「Hammer To Fall」「Crazy Little Thing Called Love」「Radio Ga Ga」という80年代の大ヒットナンバーだという事実。いかに当時の彼らが「国民的バンド」として受け入れられていたかが、このセットリストからも伺えるのではないでしょうか。特に「We Will Rock You」や「We Are The Champions」の定番の流れを断ち切るように挿入された、当時の最新曲「Friends Will Be Friends」でのオーディエンスの大合唱。これを聴けば十分ですよね?

ディスク1前半の、初期の隠れた名曲メドレーも素晴らしいですし、その後に演奏される80年代のヒット曲も素晴らしい。フレディをバックアップするロジャー・テイラーやブライアン・メイのコーラスワークも抜群だし、その彼らのプレイにもハッとする瞬間が多いし。あまり絶賛されることのないジョン・ディーコーンのベースプレイも、実はツボを押さえた名演ばかりだという事実に改めて気づかされますし。「QUEENというライヴバンドの何たるか」がすべて凝縮された、優れたライヴアルバムなのではないでしょうか。

一番いいのは映像付きのDVDを観ることなんでしょうけど、やはり俺はアナログ的人間なんでね……このライヴアルバムをぶっ続け2時間聴いて悦に入ってるほうが似合ってるみたいです。

はぁ……もう12年も経ったのか……なのに何時まで経っても「大人」になれそうにもないや、僕は。



▼QUEEN『LIVE AT WEMBLEY '86』
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投稿: 2003 11 24 03:37 午前 [1992年の作品, Queen] | 固定リンク

2003年6月23日 (月)

THE WiLDHEARTS『MONDO AKIMBO A GO-GO』(1992)

イギリスが生んだ酒飲みロックンロールバンド、THE WiLDHEARTSが'92年4月に発表したデビューEP。当時日本盤でのリリースはなく、その存在自体もごく少数のマニアしか知らなかったような状況だったにも関わらず、当時の「BURRN!」誌の輸入盤レビューで取り上げられ、(確か)89点という高得点を得ていました。ってこの俺もそのレビューを読んで知った程ですから。その後、このEPを探し回ったのですが結局見つからず、当時唯一このEP(アナログ盤)を持っていた友人からダビングしてもらって、やっと聴けたという一品。結局、WiLDHEARTSの音源がここ日本でもリリースされるようになるのは、更に1年近く経った'93年1月ですから‥‥インターネット全盛の今では考えられないでしょうけどね?

当時のメンバーはジンジャー、ダニー、CJという現在でもお馴染みのメンツに加え、元DOGS D'AMOURのドラマー、バム・バムという4人。収録された4曲は全てジンジャーの手によるもの。曲そのものは後のダブルEP「DON'T BE HAPPY...JUST WORRY」に全て収録されるのですが、このEPのそれらは完全にミックスが違います。良く言えば生々しい、悪く言えば「最高級のデモテープ」(‥‥誉めてるのか、これは?)といった、ある意味チープな録音。しかし楽曲自体は非常に優れていて、既にデビューの時点でその後の彼等が進むべき道筋が完成されているのです。ポップなメロディにザクザクしたギターリフ、2声・3声にも及ぶコーラス、複雑な展開を繰り返すアレンジ。デビュー当時から「BEATLES meets METALLICA」なんて呼ばれていた程で、正しくその通りなのですよ。ま、もっと判りやすく言えば「ヘヴィなCHEAP TRICK」‥‥余計判りにくいか。とにかく、判り易さが全て。ポップでヘヴィ。相反する要素なのに、見事に混在する。ヘヴィメタルのファンも、そしてパンキッシュなものを好むファンも、更にはCHEAP TRICK辺りのパワーポップ的なバンドを好むファンも、そして‥‥ある意味「古典的なブリティッシュ・ロック」を好むファンをも魅了するサウンド。いそうでいなかった存在。それがWiLDHEARTSの登場だったのです。

WiLDHEARTSの基本形のひとつと言える永遠のパワーポップソング"Nothing Ever Changes But The Shoes"、ヘヴィメタリックなリフやリズムを持つ前半とパンキッシュな後半とのコントラストも素晴らしい"Crying Over Nothing"、'01年の再結成ツアーでも久し振りに演奏されていた彼等の「出発点」と呼べる"Turning America"、ヘヴィなリズムの上に乗る浮遊感漂うメロディが気持ちいい"Liberty Cap"。どれを取っても、その後の彼等の楽曲の基本ラインとなる曲ばかり。特に"Nothing Ever Changes But The Shoes"は最初の解散('98年10月)に至るまで毎回のように演奏され続け、'99年8月の日本で実現した、ただ1回の復活ライヴでも1曲目にプレイされた程。前回のジャパンツアー('02年12月)では演奏されなかったようですが、されたらされたで嬉しい1曲なんですよね。曲頭のスローに始まるパートでの「oi! oi! oi!」の連呼は「‥‥くるぞ、くるぞ、来るぞ!!!」って感じで気持ちが高まるし、エンディングのヘヴィなパートもギターが暴れまくってて気持ちいいし。てなことを書いてたら、ライヴバージョンが聴きたくなってきたよ。

楽曲そのものは上にも書いたように「DON'T BE HAPPY...JUST WORRY」で聴けるので問題ないですが、どうしてもオリジナルバージョンで聴きたいという人はこまめに中古盤屋を探し回るか、'98年1月にここ日本でのみリリースされた4枚組ボックスセット「MOODSWiNGS AND ROUNDABOUTS」を手に入れるしかないようです。このボックスのディスク1が正しくこのEPのCDシングルなのです。但し、このボックスセット自体も初回限定生産品だったので、探すのに一苦労するかもしれませんが‥‥(海外でも高値が付いてるようで、たまに俺のところにも譲って欲しいというメールが海外から届く程です)

久し振りに引っ張り出して聴いてますが、やっぱりいいですね。俺が最初に彼等の音と出会ったのも丁度11年前の今頃ですよ‥‥紆余曲折ありながらも、こうやって彼等が未だに「THE WiLDHEARTS」の名で活動していること、そして一度も彼等のことを嫌いにならずにファンをやっていられることが正直驚きですね。やっぱり俺にとっては本当に重要で大切なバンドですよ、彼等は。



▼THE WiLDHEARTS『MONDO AKIMBO A GO-GO』
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投稿: 2003 06 23 06:42 午後 [1992年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, the] | 固定リンク

2003年2月 1日 (土)

Theピーズ『クズんなってGO』(1992)

  '90年9月にセカンドアルバム「マスカキザル」をリリースした後、ひたすらライヴを続けたTheピーズ。とにかく'91年はライヴの1年で、春・秋に西日本を、夏に北日本・北陸方面を回るツアーを決行。その合間に東京では単独ライヴの他にイベント出演、小さいクラブでのゲリラライヴを突発的に行ってきました。結局次のアルバムが発表されるまでに約1年半もの時間を要することとなってしまうのだけど、その分待たせた甲斐のある素晴らしいサードアルバムを我々に届けてくれたのでした。

  はる・アビさん・ウガンダというメンツになって2年、やっとバンドとしても安定感が備わったいい時期にリリースされたのがこの「クズんなってGO」というアルバム。基本的には前作の延長線上にあるような、思いっきり肩の力の抜けたロックンロールを中心とした内容。そんな中、はるのソングライターとしての才能も更に開花していき、例えば"電車でおでかけ"や"クズんなってGO"のようなポップソング、メロウな"ふぬけた"、アビさんのオルガンを取り入れた名バラード"君は僕を好きかい"というように、後期の名曲群に繋がるようなタイプの楽曲が既にこの辺りから続々と登場してる点に注目してもらいたいと思います。

  このアルバム辺りから3ピース・バンドにありがちな「ギター・ベース・ドラム」という固定サウンドに拘らない、他の楽器を取り入れることも始めています。例えば"ラブホ"でのウガンダによるハーモニカやチューブラー・ベルズ、"電車でおでかけ"でのトランペット、アビさんによるオルガンやピアノ等、ライヴでは3人の演奏のみになるのだけど、アルバムはアルバムといった感じで多少遊び心が取り入れられるようになっています。また、レコーディング的にもただ演奏を録音したものをそのまま収録するのではなく、"平和"のエンディング部のように、スタジオ作ならではの実験(というか遊び)を始めたりもしています。しかし、それらは例えばBEATLES中期のような「ライヴを無視したスタジオ作」とまではいかず、あくまで「ライヴで演奏される楽曲」をスタジオなりの味付けをした程度のアレンジなので、前作までのピーズを好きだった人は安心してこのアルバムも聴いてください。前作を気に入ってる人なら間違いなく更に好きになるはずなので。

  このアルバム辺りになると、エロ路線の楽曲もファーストの頃と比べると、ちょっと切なさのようなものを感じるようになってきます。切なさ‥‥いや、空しさもちょっと入ってるかな? ファーストがどちらかというと「中学生の悶々さ」だとすると、この頃はもうちょっと上の、ただ悶々ではなくて、そこに伴う儚さ・空しさを同時に感じるんですよね。同じようなことを歌ってるようでも、何故かそう感じてしまうのは、もしかしたらサウンドの変化によるものも大きいのかもしれないし、はるの歌に味わいのようなものが感じられるようになったからかもしれません。同じバカっぽいことを歌ってても、今現在の俺が聴くとこのアルバムの曲の方が個人的にはググッとくるんですよね。ファーストは「ハハハッ」って笑って済ませられたのが、このアルバムになると、もうちょっといろいろと考えてしまうという‥‥ま、ライヴになったらそんなことまで考えてる余裕なんて全くないんですけどね。

  リアルタイムでは既にもうこの時期はピーズ、全然聴いてませんでした。なので、ここに収録されている楽曲を最初に聴いたのは一昨年出た2枚同時発売のベスト盤からです。けど、今聴いても全然色褪せてないですね? 11年も前のアルバムだけど、全然真新しい作品として接することが出来る1枚です。確かに音質的にはメジャーのそれというよりは、かなり安っぽいインディーズもの‥‥いや、デモテープといった方がいいかもしれないけど、逆にその生々しいサウンドがこれらの楽曲に合っているってのもあります。背伸びしない等身大のサウンドといったところでしょうか。"やりっぱなしでサイナラだBye Bye"や"便所モンキー"、"ニューマシン"、"まったくたのしいぜGO GO"といった勢いのいい名曲、上に挙げたようなミディアム~スロウでメロディアスな名曲、とにかく名曲目白押しの1枚です。



▼Theピーズ『クズんなってGO』
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投稿: 2003 02 01 03:42 午前 [1992年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

2002年4月24日 (水)

ALICE IN CHAINS『DIRT』(1992)

「アリス・イン・チェインズ」ボーカル変死
米国の人気ロックバンド「アリス・イン・チェインズ」のボーカル、レイン・ステイリー(34)がシアトルの自宅で死んでいるのが19日、見つかった。20日に地元当局者が明らかにしたところでは死因は不明。遺体は腐敗が始まっており、ステイリーと確認されるまで検査が必要だった。アリス・イン・チェインズは'90年にアルバム「フェイスリフト」でデビュー。麻薬などをテーマにした暗く不気味な音色で人気を集めた。
     ‥‥2002年4月22日「スポーツ報知」より

ご存じの通り、ALICE IN CHAINS(以下AICと略)は95年秋リリースのサードアルバム『ALICE IN CHAINS』リリース後、表だった活動をしていない。レインの重度のドラッグ癖が原因と言われていた。サードアルバムリリース後はMTVでのアンプラグド出演やKISSのリユニオン・ツアーの前座として数回ライヴを行った程度。レコーディングに至っては98年秋にボックスセット用に録音した「Get Born Again」など数曲のみ(レインは単発でRAGE AGAINST THE MACHINEのメンバーらとCLASS99というユニットで映画のサントラにPINK FLOYDの「Another Blick On The Wall (Part 2)」カバーを録音している)。バンドはほぼ解散状態だったといっていいだろう。

しかし、それでもバンドは公には解散発表はしていない。ギターのジェリー・カントレルは97年に初のソロアルバム『BOGGY DEPOT』をリリースした際の取材で「状況が整うのを待っている」というような発言をしていたはずだ。そう、バンドのメンバーはレインの克服を根気よく待っていたのだろう。先の新曲録音も奇跡に近かったのかもしれない(たった1曲しか録音されなかったという事実が全てを物語っていると思う)。そして、完全復活は叶わぬ夢となってしまった‥‥

NIRVANAの現役時代を知らない10代のファンでも、メディアでの扱われ方等から彼等が如何に凄かったかを想像することが出来るだろう。SMASHING PUMPKINSはついこの間まで活動していたわけだし、PEARL JAMは未だ現役だ(日本のメディアでの扱われ方には疑問が残るが)。SOUNDGARDENは解散して暫く経つものの、ボーカルのクリス・コーネルRAGE AGAINST THE MACHINEの残党とCIVILLIAN(のちのAUDIOSLAVE)というバンドを結成したことで関心が向けられつつあったし(結局クリスは脱退してしまったが)、STONE TEMPLE PILOTSも解散の危機を乗り越え、順調にリリースを重ね、最近ではツアーも行っている(相変わらず日本へは93年11月以来来ていないがために、その評価は低いが)。

しかし、AICはどうだろう? 名前は知っていても、その音に触れたことのある10代のロックファンはどれだけいるのだろう?

アーティストの死が切っ掛けで、初めてその音楽に触れるというケースはよくあることだ。過去にもhideを敬遠してきた洋楽ファンが彼のソロアルバムやzilchのアルバムに触れて、その音楽の素晴らしさに気付いたといったことがあった。そういう形で彼等の音に接することに不快感を示す者も多いだろう。しかし、こんな過小評価されてきた状況を打破するいい切っ掛けではないだろうか?

きっとこれまで表だって取り扱ってこなかった雑誌メディア(rcokin'on等)がここぞと追悼特集を組むのかもしれないが、その前にまず音に接して欲しい。そう思って今回、急遽予定していたオススメ盤と差し替えて、この92年リリースのセカンドアルバムを紹介することにしたのだから。

この「DIRT」というアルバムは92年秋にリリースされ、全米チャート初登場6位を記録し、約200万枚ものセールスを記録した出世作だ。このアルバムの発売前から彼等に対する評価は高まっていた。91年春にはMEGADETHのオープニングアクト、その後MEGADETH、ANTHRAXSLAYERが交互にヘッドライナーを変わるカップリングツアー「CLASH OF THE TITANS」へも参加、更にはVAN HALENのオープニング等も務めた。そういえばMETALLICA『METALLICA』アルバムリリース時のインタビューでジェームズ・ヘットフィールドはお気に入りのバンドとしてAICの名前を挙げたりしていた。そう、AICは当初メタル系アーティストから高い評価を受けていたのだ。

それもそのはず、AICは結成当初はメタルバンドだったのだから。クリス・コーネルが「奴らは元はRATT(80年代に活躍したLAメタルバンド)みたいなファッション/音楽性だった」と日本の雑誌インタビューでチクッたりもしていた。その後、独自の音楽性を確立していった結果、唯一無二の存在となったのだ。

このアルバムのユニークな点はBLACK SABBATHLED ZEPPELINを彷彿させるヘヴィリフや変拍子、そこに乗る不協和音気味コーラスだろう。アルバムトップの「Them Bones」からして上の要素を全て持ち合わせているのだから、最初に聴いた時のインパクトは絶大なものだった。勿論ファーストアルバムから聴いていたし、その音楽性を気に入っていたのだが(独自の暗さとハーモニーが好みだった)、このアルバムで完全に化けたといっていいだろう。

そして歌詞の難解さも大きな特徴といえるだろう。難解というよりも、芸術的といった方がいいのだろう。日本盤を買ったのなら、是非対訳に目をやってみて欲しい。この歌詞読みながら聴いてると、マジで凹む。サウンド的にはこれよりもヘヴィなアルバムはいくらでもあるが、ここまでトータル的に暗さ・重さを強調した作品はそうはないだろう。それもただ闇雲に暗いのではなく、芸術作品として完成され尽くしているのだから。

アルバムの音とは関係ないが、このアルバムからは4曲のシングルカット、5曲のビデオクリップが制作されている。シングルは「Them Bones」「Angry Chair」「Rooster」「Down In A Hole」、PVはその4曲に加え映画「SINGLES」サウンドトラックにも収録された「Would?」。この「Would?」がMTVでヘヴィローテーションされたお陰で、セカンドアルバム大ヒットの土台が出来上がったのだ。

今聴くと、他のシアトル勢とはかなり異質なサウンドを持ったバンドだっといえる。リフの刻み方等から、元々の出所(メタル出身)が伺えたりするが、そこから突然変異したかのようなサウンドアプローチ。そして何よりも、レインの独特な歌唱。これがあるとないとでは大違いなのだ。ジェリーのソロアルバムは確かにAICを彷彿させるものだった。しかし、いくらメインソングライターがアルバムを作ったからといって、そこに乗った「声」はレインではない。その違和感にどうしても馴染むことができず、このソロアルバムはあまり聴く機会がなかったと正直に告白しておく。かのSTONE TEMPLE PILOTSがAICとPEARL JAMのパクリバンド呼ばわりされたのも、今は昔。その後、彼等のようなサウンドを持ったバンドはなかなか現れなかった。それだけ個性の強いサウンドだったといえるだろう。

しかし時代は流れ、このアルバムから10年近く経った今、AICからの影響を公言するバンドが増えている。その代表格がSTAINDだろう。他にもAICから影響を受けたであろう新人バンドを幾つか見かけるが、そういうサウンドに出会うたびに「本家は何やってんだか‥‥」と何度思ったことか。その度にこのアルバムを引っ張り出して‥‥ってことが、特にこの1~2年の間に何度かあった。実は‥‥虫の知らせだったのだろうか、つい先日、AICのボックスセットを注文したばかりだった。

レイン・ステイリーの声や歌唱は本当に独特なものだった。聴いてすぐ彼のものだと判る程に。カート・コバーン程ぶっきらぼうでもなく、ビリー・コーガン程好き嫌いが激しいわけでもなく、クリス・コーネル程熱くもなく‥‥何か、人間ではなく別の生き物のように感じられる瞬間が何度かあった。例えば初期のデヴィッド・ボウイのアルバムを聴いてると、時々「この人は本当に宇宙人なんじゃないだろうか?」なんて思った時が10代の頃あったが、まさにそんな感じなのだ。

それにしても‥‥本当にいいアルバムだなぁ。90年代にリリースされた作品で死ぬ程聴き込んだ作品の上位5枚に必ず入るであろう1枚だといえる。このアルバムやファースト『FACELIFT』やサード、あるいはアンプラグド盤等を聴いた今の10代のファンは、どう感じるんだろう‥‥


     Did she call my name?
      I think it's gonna rain when I die.

            ‥‥"Rain When I Die"



▼ALICE IN CHAINS『DIRT』
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投稿: 2002 04 24 12:00 午前 [1992年の作品, Alice in Chains, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2001年11月24日 (土)

KISS『REVENGE』(1992)

KISSというバンドは過去、何度かの転機を迎え、その度に新たな魅力を我々に提示してきた。そもそもがBEATLESのようなバンドを目指していた彼らがメイクを施した時点で、その最初の転機を迎えているのだ。その後も初のライヴアルバムだったり、メンバー4人同時ソロアルバムリリースだったり、エースやピーターの脱退だったり、そのメイクさえも落としてしまったり‥‥その度に彼らはそれを話題として用い、再び表舞台へと飛び出していったのだ。しかし、それらの転機の中には予め用意されていた作為的なものもあれば、本人達もが予期できなかった予想外の出来事もあった。そして、それがバンド史上にとって最悪な出来事だったことも‥‥

このスタジオ作品としては16作目に当たる「REVENGE」というアルバムは1992年5月にリリースされている。このアルバムから新たにドラマーとして、先頃のフェアウェルツアーにもピーターの代役として一緒に回ったエリック・シンガーが加わっている。アルバムは時代に呼応したかのようなヘヴィな作風で、新しい試み(ジーンがボーカルの曲からスタートしたり、10数年振りにポールとジーンの掛け合いがあったり、「DESTROYER」期のようなサイケな作風の曲があったり等)が幾つかみられる中、久し振りの全米アルバムチャートトップ10入り(6位)を果たした。

しかし、そうした大成功の裏には悲劇があったことを、最近のファンには意外と知られていないようだ。このアルバムは1991年11月24日に癌の為に亡くなった2代目ドラマー、エリック・カーに捧げられている。いわば追悼盤と呼べる1枚であり、或いは弔い合戦の1枚とも言えるのだ。

KISSは'80年代中盤から人気が下降傾向にあった。同時期に活躍したAEROSIMITHやCHEAP TRICK、ALICE COOPERといったアーティストがチャート上で再び成功を収め、新たなファンを獲得していく中、KISSだけが伸び悩んでいた。そして'90年代に入り、時代はよりハードコアなものを求めた。METALLICAやPANTERAの台頭、BLACK SABBATHに影響を受けたであろうシアトル勢の登場。ここでKISSは先のエアロやチートリには出来ないであろう手段を取る。そういったヘヴィな要素を取り入れ、これまでのきらびやかな要素‥‥所謂'80年代LA的要素を排除し、肉体性や暴力性を強調した音作りに移行していったのだ。勿論そこはKISSのこと、そうはいっても歌メロやコーラスはポップで親しみやすいものなのだが。所謂シアトル勢がBLACK SABBATHだけでなく、KISSやCHEP TRICKといったポップ勢にも影響を受けている事をご存じだろう。KISSはそういった事を全て逆手に取り、相手の領域に入り込んで自らの個性を際立たせたのだ。

KISSの新作が「REVENGE」というタイトルになるという話は、エリック・カーが亡くなる1年も前から噂に上っていたので、何もエリック・カーの弔いの為に付けられたタイトルという訳ではないのだが、やはり劇的な何かを感じずにはいられない。結局は『復讐』なんてタイトルは、当時の音楽シーンだったり、若手バンドに対してだったり、KISSを「時代遅れ」と笑った評論家やリスナーに対して向けたものだったのだ。そして最終的には『己』に向けた言葉でもあるのだ。

このアルバムを機にバンドは再び上昇気流に乗り、やはり10数年振りにライヴアルバム「ALIVE」の第3弾を発表したり、自らが制作に携わるトリビュート盤やらアンプラグド盤等、企画盤目白押し、更にはオリジナルメンバーでの再結成等々、話題を欠くことなく現在に至っている。しかし、その転機の大本となっているのが、低迷期をずっと支え続けたエリック・カーというドラマーによるものだったという事実、これだけは忘れないで欲しい。

早いもので、あれから10年経った。あの頃20歳だった自分も、気付けば30歳。これを機に、自分の気持ちにケリを付ける為にこのレビューを書いた。決して忘れるためにではなく、ずっと忘れない為に。



▼KISS『REVENGE』
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投稿: 2001 11 24 04:15 午前 [1992年の作品, KISS] | 固定リンク

2001年6月16日 (土)

MANIC STREET PREACHERS『STARS AND STRIPES -GENERATION TERRORISTS US MIX-』(1992)

マニックスといえば、イギリスを代表する人気バンドというイメージがある。ここ数年はやっと日本でもその人気が定着したようで、この春に発表された新作「KNOW YOUR ENEMY」は不況続きの日本の洋楽部門の中でもなかなか善戦しているようで、リリースから数ヶ月後にTV用コマーシャルが作られた程らしい。

ところで、ヨーロッパ諸国や日本での人気は理解できるとして‥‥アメリカでのマニックスってどうなんだろう?と思う新規ファンの方々は多いのではないか? 例えばOASISやBLURがアメリカでもセールス的に成功したり高い評価を得ている反面、SUEDEやこのマニックスのように全く話題にのぼらない英国産バンドもいる。かのSTONE ROSESでさえ50位前後だったと記憶している。

アメリカ人は外国のアーティストに冷たい。よくそういう話を耳にする。例えば、DEPECHE MODEが'93年にリリースしたアルバム「SONGS OF FAITH AND DEVOTION」以後、英国アーティストがアメリカで1位を取るのはあのBEATLES「ANTHOLOGY 1」まで待たなければならないし、現役アーティストとなるとそれから更に数年後のBUSHやPRODIGYまで待たなければならない。英国色を強く感じさせない、インターナショナルな音ならば意外と成功を収めるようだが、「いかにも」なマニックスやSUEDE等はかなり苦戦を強いられているようだ(しかもSUEDEは過去に同名アーティストがいたために、アメリカでは「LONDON SUEDE」と名乗らなければならない。「X JAPAN」や「LONDON QUIREBOYS」も同様である)。

そのマニックス、デビュー当時はかなりアメリカデビューに力を入れていた。アメリカ盤「GENERATION TERRORISTS」はイギリスより数ヶ月遅れてリリースされた。しかもアメリカリリースに際して18曲→14曲に絞り込み&差し替え、アメリカ人が好みそうな音にリミックス、更に数曲に至ってはドラムをリズムボックス→生ドラムに差し替え、ギターやコーラス、キーボードをダビングするというサービス尽くし。ジャケットはそのままで、右下の方に例の「PARENTAL ADVISORY」の文字を入れた米盤「GENERATION TERRORIST」は結局、ビルボードの140位程度だったと記憶している(笑)。

で、ここで紹介するのはそのアメリカ盤ではなく(恐らく現在はアメリカでも廃盤だと思う。既にアメリカでのマニックスの権利はソニーにはなく、ヴァージンが持っているはずだから)、同年8月にここ日本でリリースされた、「STARS AND STRIPES -GENERATION TERRORISTS US MIX-」という編集盤。8曲しか入っていない、いわばセカンドまでの場つなぎミニアルバムである。この当時はマニックス、シングルやミニアルバムが連発してリリースされていた時期だ。それだけ鳴り物入りでデビューしたということだろう。

収録された曲の大半はオリジナル・ファーストに収録されているもので、リミックスされたりドラムが差し替えられたりしているので、オリジナル音源を知っている人にとってはかなり違和感があるのではないだろうか? 例えば"Slash N'Burn"なんて、完全に普通のアメリカンハードロックと化しているし、"You Love Us"もあの胡散臭さが消え、ストレートでパンク色豊かなハードロックに変化している(ジェームズの変なコーラスも加わったし/笑)。曲そのものは全くいじっていないのに、ドラムを差し替えミックスをクリアにしただけで、こうも印象が変わるものか?と当時はかなり衝撃的だった(いろんな意味で)。

その他の曲も"Crucifix Kiss"にはピアノが加わったり、"Little Baby Nothing"は更にポップさが強調されたような感じがするし、いかにもブリティッシュなはずの"Nat West-Barclays-Midlands-Lloyds"も妙にカラッとしている(知っている人も多いと思うが、この曲のタイトルは英国の主要銀行の名前を並べたものだ)。

ドラムはそのままだが、若干ミックスをした程度で収まっているのが、"Repeat"の2バージョン。きっと他のアルバム収録曲もそんな感じなんだろう‥‥って実は当時、このアメリカ盤は店頭で手に取っただけで、持ってないのだ。すぐにこのミニアルバムが出たので、こっちで済ませてしまって、暫くしたらアメリカ盤は手に入らなくなったという‥‥たまに中古盤屋で見かけるらしいので、その時は是非ゲットしようと思う。

で、何もこのアルバムはリミックスだけではない。かろうじて1曲、オリジナル盤未収録の曲が入っているのだ。それが"Democracy Coma"だ。UK盤"Love's Sweet Exile"シングルで既発の曲だが、日本&アメリカ初登場の1曲だ。当時は輸入シングルよりも歌詞付きの国内盤を重宝していた俺としては、大変ありがたい1曲だった。

それにしても、この曲のみ特にリミックスがなされていないように感じるのは‥‥俺だけだろうか? この曲のみ、初期マニックスの武器であった「鋭さ」と「甘さ」が両方感じられるのだが‥‥それにドラムも下手ウマっぽくて(笑)雰囲気出てるし。意外と好きな1曲である。

まぁ早い話が、ファーストのオリジナル盤を持ってる人は特に聴く必要はないであろう1枚で、マニアの方、又は"Democracy Coma"を聴きたい、ショーンの生ドラムを聴きたい、ジェームズの変なコーラス(掛け声?/笑)を聴きたいという変わり者のみ、お金を出して買ってみては如何だろうか?(ごめんなさい、マニアの皆様)

最後に、その後のマニックスのアメリカとの闘争についても書いておこう。セカンド「GOLD AGAINST THE SOUL」は無事世界共通仕様でアメリカリリースされた(しかしリリース時期が若干遅れたと記憶している)。ファースト同様、ジャケットには例の「よい子は買っちゃだめだよ」シール(笑)がプリントされていた。で、チャート上では大惨敗。全く話題にはならなかったようだ。ツアーもするにはしたようだが‥‥

その後、VERY BRITISHな「THE HOLY BIBLE」はアメリカリリースが見送られたと記憶している。3人になってからの「EVERYTHING MUST GO」は無事イギリスリリースの2ヶ月後に発表されたようだ(これもチャート圏外らしい。アメリカでの詳しいチャートアクションは判らないので、是非知っている人がいたら情報提供して欲しい程だ)。まぁ売れないレコード出す程、レコード会社も甘くはないってことでしょう。

で、'99年。アメリカでのみヴァージン・レコードと契約(当然、イギリスや日本ではエピックのまま)。プロモーションに全力を賭けるとのことでその年の4月に「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」がリリースされる。当時アメリカでもプロモーション活動をしている。が‥‥(苦笑)

この春、1ヶ月遅れで新作「KNOW YOUR ENEMY」も同じヴァージンからアメリカ・リリースされた。が、未だにチャートインしたという情報は入ってきていない‥‥ニッキー曰く「もうアメリカは諦めた」‥‥諦めなさいって、大味なアメリカ人には判らないってば!(苦笑)



▼MANIC STREET PREACHERS『STARS AND STRIPES -GENERATION TERRORISTS US MIX-』
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投稿: 2001 06 16 09:53 午後 [1992年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2001年6月 5日 (火)

MANIC STREET PREACHERS『GENERATION TERRORISTS』(1992)

「30曲入りの2枚組アルバムを1枚だけ作って、世界中でナンバー1になって解散する。上手くいかなかったらその時も解散」‥‥初期マニックスといえば、この名(迷)言だろう、間違いなく。そんな彼らが1992年2月に放ったのが、このアルバムだ。だがしかし、公言通りの作品とならなかったことによって、一種神がかっていたデビュー前のマニックスは、ここで「ただのバカ」「負け犬」のレッテルを貼られることとなる。

1991年春にメジャーレーベルである「COLUMBIA」(後のEPIC UK)と契約したマニックス。まずはシングル"Stay Beautiful"を発表する。既にインディーズでは1位を取っていた彼ら、このメジャー第1弾はナショナル・チャートの40位まで上昇する。続く"Love's Sweet Exile"は26位、そして1992年に入り再録音した"You Love Us"は16位と着実にチャート上での成功を手にしていき、2月14日にいよいよファーストアルバム「GENERATION TERRORISTS」がリリースされるのであった。が、しかし‥‥

公言していたような30曲入りの2枚組アルバムではなく、18曲入りの1枚ものCDだった。かろうじてアナログ盤は2枚組だったものの、30曲には12曲も足らなかった‥‥単に力尽きたのか、レコード会社が拒否したのか定かではないが‥‥まぁ普通デビューアルバムで2枚組なんて拒否するわな。ただでさえ売らなきゃならない存在なのに、話題だけ先行していたとはいえ、本当にそれを出すかとなると‥‥やはり無理だろう。そこで本当に30曲入りだったら、ある意味「伝説」になってたのだろうけど‥‥反吐が出るくらいに。

まぁ18曲でもいい。パンクが18曲だったらきっと、このアルバムはここまで語り草にはならなかっただろう‥‥そう、18曲でも十分すぎるくらいに内容が濃いのだ。パンクあり、ハードロックやメタルあり、なんならスラッシュっぽいギターリフあり、アコースティックあり、メロディアスなミディアムあり、女性ボーカルの入ったポップソングあり、ヒップホップ調リミックスあり、とバラエティーに富んでいるのだ。普通、ファーストアルバムといったら自己紹介として、自らが最も得意とする手法で勝負するはずだ。インディーズ時代のマニックスを想定すれば、きっと18曲入りのパンクアルバムになるはずだと、皆が信じていたはずなのだ。しかし出来上がったのは、ビッグプロダクション、ドラムはリズムボックス使用のカッチリした作り、ギターは更に厚みを増し、更にメロウで泣きの要素が増し、シンセまで被せている。「LONDON CALLING」(THE CLASHの名作)のようなアルバムを期待したファンを、ここまで裏切ったデビューアルバムもないだろう。

アルバムリリース後も"Slash N'Burn"(20位)、"Motorcycle Emptiness"(20位)、"Little Baby Nothing"(29位)をシングルカットし、その間には更に、アルバム未収録のカヴァー曲"Theme From M.A.S.H. (Suicide Is Painless)"を発表し、初のトップ10入りを果たす。この時期のシングル攻勢は半端なもんじゃなく、どのシングルにも必ず2~3曲の未発表曲/新曲が収録されていた。これらを全部足せば30曲にはなるだろう。なんだ、そういうことか(笑)。で、どの曲も決して捨て曲という感じではなく、かなりフックの効いた曲が多い。「マニックスB面曲には名曲多し」という格言があるが、それは間違いなく本当だ。特に「EVERYTHING MUST GO」までの各シングルのカップリング曲は、どれも素晴らしい。既に廃盤となっているシングルも多いが、見つけたら即買いだ。

それにしても、なんでここまでとっ散らかった内容になったのだろうか。これは以前どこかで書いたかもしれないが、俺はマニックスを「サンプリング世代の代表」だと考えている。現在ではオリジナリティーに溢れた楽曲を連発しているが、この頃の楽曲は過去の偉人達からの流用が多く(とはいってもパクリとかそういう次元ではないのだが)、例えば初期パンクの姿勢だったり、HANOI ROCKSやNEW YORK DOLLSらのルックス/ファッション、GUNS N'ROSESのフックが効いた楽曲や粘っこいギター、PUBLIC ENEMYに代表されるような政治的メッセージ‥‥ヒップホップ世代とまでは言わないが、これらの偉人達からオイシイ要素をサンプリングし、4人の才能と共にミキサーにかけ、出来上がったのがこのアルバムだと言えるだろう。勿論、これはかなり無茶苦茶なこじつけではあるが‥‥彼らは過去の偉人達に憧れて、ああいう風になりたかった。どんなに醜い生き様を晒そうが、それが伝説になるのだと‥‥他者に殺されたジョン・レノンを笑うことで、彼らはまず歴史に名を残そうし、暴言の数々を繰り返し「俺達はフェイクなんかじゃないぜ!」とポーズをとる。しかしそれが逆効果なのは全て計算済みなのだ。だから彼らは「作品」で結果を残そうとした。素晴らしい楽曲、素晴らしいアルバムこそが彼らにとって全てだったのだ。リッチーにはそれだけの自信があった。そしてこれはそれに見合った内容だった(と今でも信じたい自分がいる)。

しかし、結果は惨敗。アルバムは初登場こそ13位だったが、その後それ以上チャートを駆け上がることはなかった。ここ日本では例の解散発言が話題を呼んで、4万枚という新人としては異例のセールスを記録、同年春の初来日も大成功に終わった(内容は別として)。しかし、ここ日本でも当然1位になることはなかった(総合チャートはおろか、洋楽オンリーのチャートでさえも)。アメリカでも同年初夏に再編集されてリリースしたのだが、ビルボードの100位以内にも入らなかった。惨敗。完全なる敗北。残された道はただひとつ、「解散」だった。

ところで、当時誰もが不思議に思っただろうが、マニックスはCOLUMBIAとの契約の際に、「アルバム5枚」分の契約を交わしているのだ(笑)。じゃあ残された4枚分の契約は、どうやって消化するのか‥‥来日当時のインタビューで(確かリッチーとジェームズだったと記憶しているが)「KISSみたいにメンバー4人同時にソロアルバムでも出したらどうですか?」と記者に提案され、「それ、いただき!」と言ったとか、言わないとか‥‥(苦笑)

Gttape実は俺、これらの「解散発言」なんて、当時はこれっぽっちも知らなかった。そもそも彼らが載るような雑誌なんて読んでいなかったし(そう、当時はまだ「BURRN!」にお世話になっていた時期だ/笑)、その前年に"You Love Us"のインディーズPVを観たきりだったのだ。名前こそ記憶の片隅に残っていたものの‥‥

'92年1~3月、俺はイギリスに短期留学していた。そこでよく「ケラング!」や「メタル・ハマー」のようなHM/HR専門誌を購読していた。で、当時からこれらの雑誌でマニックスやTHERAPY?といったバンドは話題になっていたのだ。この「GENERATION TERRORISTS」というアルバムも確か5つ星で満点の評価を受けていた。で、買ったわけだ、右にあるカセットを(これはかなり貴重じゃないだろうか?)そりゃ聴きまくったさ、当時‥‥テープが擦り切れるんじゃないかって程、毎日聴き込んだ。そして帰国後、国内版CDを買い揃えたのは言うまでもない。当然、ミニアルバム「STAY BEAUTIFUL」も。残念ながら初来日公演には足を運べなかったが(初めて観たのは翌年秋の2度目の来日時だった)、60分で終わったとか、演奏がアマチュア以下だったとか、リッチーのアンプからは音がしない(笑)とか、いろいろな神話を残して初来日を終えたそうだ。

記録に残るデビューアルバムを発表したアーティストはそれ以前にもごまんといたし、これ以後にも沢山登場した。しかし、ここまで記憶に残るデビュー作を発表したのは、後にも先にもマニックスのみじゃなかろうか?(頭脳警察の場合は、当時は発売されなかったのでこれには入らない)この「1位を取れなかった」という敗北感がその後のバンドの、いや、リッチーの運命を大きく変えていくことになるのは、また先々に話すこととしよう。



▼MANIC STREET PREACHERS『GENERATION TERRORISTS』
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投稿: 2001 06 05 09:48 午後 [1992年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2000年12月25日 (月)

LUNA SEA『IMAGE』(1992)

  インディーズでのファーストアルバムから丁度1年後、メジャーレーベルからリリースされたのがこのアルバム。たったの1年である。しかもメジャーからのファーストアルバムであるにも関わらず、既に大御所級の拘りを持って制作に当たり、レコーディングに2ヶ月をかけたのも有名な話(楽曲自体はインディーズ時代からライヴで披露されてきた曲ばかりなのに、だ)。たった1音の微妙なニュアンスにさえも拘り、結果3つのスタジオを使い同時進行でレコーディングされたそうだ。

  前作から1年とはいっても、ここに収められた楽曲の殆どが前作と同時期に書かれた曲だったり、或いはそれ以前からある曲だったりするのだが、早くも楽曲のスタイルの幅が広がっている点がポイント。更に今作からいよいよ登場したのがSUGIZOのバイオリンだ。このバイオリンの音が他のバンドにはない世界を作り出していて、いいアクセントとなっている。マリス・ミゼルが登場する5年以上も前に、だ。

  楽曲の幅だけではなく、メンバーそれぞれの力量も高くなっているのも大きい。複雑なギタープレイ("Dejavu"のバッキング等を聴いて欲しい)をハイテンポで再現したり、リズム隊の拘りフレーズの応酬もこれでもか!って位にビシバシ飛び込んでくる。そして何より、RYUICHIの歌唱力の向上が一番大きい。ただ力強くがなる事が多かった前作から一変し、今作では大きなメロディーを一音一音大切に唄ったり、抑えた唄い方やファルセット等も多用し始めている。ただ力強かった前作よりも緩急の幅がついた点に、音楽的成長を伺う事が出来る。

  後にライヴ定番曲となる、前作にはないポップなメジャーナンバー"Wish"や、アップテンポの中に大きなノリのメロディーを乗せた佳曲"Image"、ヘヴィな異色ミディアムナンバー"Search For Reason"、シャッフルリズムが小気味よい"In Mind"等、前作の延長線以上のクオリティーを持ったこのメジャーデビュー作が好意的に受け入れられた事もあって、LUNA SEAのメンバーは更にその上‥‥一般のロックファンにもアピールする曲作り・音作りにチャレンジしていく。この飽くなき挑戦は「終幕」まで続くのだった。



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投稿: 2000 12 25 01:00 午前 [1992年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000年11月28日 (火)

BON JOVI『KEEP THE FAITH』(1992)

90年にツアー終了後、バンドは長期休暇に突入した。その間にジョンは『BLAZE OF GLORY』(90年)を、リッチーは『STRANGER IN THIS TOWN』(91年)をそれぞれ発表。それなりの成功を収めた。ソロ活動の最中、90年末には再びバンドとして日本の地を踏み、カウントダウン形式のフェスティヴァルを行った。(CINDERELLA、SKID ROW、QUIREBOYSが出演)しかし、いざツアーを行ったものの、やはり休養前と状況が何も変わっていないことが判明し、再び彼らは沈黙を守ることに。

そんな彼らが再び結集したのが、92年に入ってからだった。ジョンは存続をかけてメンバーとミーティングを重ね、その結果当時のマネージメントを離れ、新たに独立。またジョンがそれまで書き溜めていた楽曲を元に、そのままレコーディングに突入した。プロデューサーにはそれまでミックスを担当していたボブ・ロックが担当。当時彼は既にMOTLEY CRUEやMETALLICAで売れっ子となっていたので、当然の組み合わせと言える。4年の沈黙にも関わらずアルバムはトップ5入りし、プラチナディスクを獲得。アメリカでは4曲がシングルカットされ(「Keep The Faith」「Bed Of Roses」「In These Arms」「I'll Sleep When I'm Dead」)、特に「Bed Of Roses」はトップ10入りを果たした。またアメリカ以外のヨーロッパ諸国や日本ではその他にも「I Believe」と「Dry County」がシングルカットされ、大ヒットしている。

バンドはこのアルバムの為に30曲以上を用意したという。当時ブートレッグでもそれらのデモ曲が出回っていたが、どうも迷いが伺えた。この頃は既にNIRVANAやPEARL JAM、METALLICAが一時代を築いていた頃で、80年代を支えてきたDEF LEPPARDやBON JOVI のようなバンドには風当たりが強かった。そう考えると、LEPS『ADRENALIZE』の初登場1位やこの『KEEP THE FAITH』の第4位というのは1位以上の意味を持つといえる。だって、いろいろ迷いながらもアルバムとして発表された楽曲群はこれでもか!?って位に前向きな内容だったのだから。方や「I Hate Myself And I Want To Die」(NIRVANA)と唄っているのに対し、「I Believe」や「Keep The Faith」という前向きなメッセージを掲げて戻ってきたのだ。これが4年もブランクがあるバンドか!?っていうポテンシャルの高い楽曲が詰まった、隠れた名盤だろう。

ちなみにこのアルバム、古くからのファンにはいまいち印象が薄いらしい。当時俺の周りではそういう声が多かったのを覚えている。それと同様に、「バンドというより、ジョンのソロアルバムみたい」という声も多かった。確かにジョン単独で書いた楽曲が多いのもその理由のひとつだろう。実際にジョンは後にこのアルバムを「“I”的(私的)なアルバム」と表現している。まぁバンドとしてのミーティングで解散が決定していれば、これらの楽曲はジョンのソロとして発表されていたのだろうから、あながち間違いでもないのかもしれない。「Bed Of Roses」のような6/8拍子のバラードも、ソロを通過していなければ出来ていなかったかもしれないし。

それにしてもこのアルバム、ダンスビートにU2のエッジ(ギタリスト)を思わせるストロークギター(カッティング)を導入した新境地「Keep The Faith」や、「どうしてこれが当時大ヒットしなかったの?」って思わせる名曲中の名曲「In These Arms」、METALLICAも真っ青なヘヴィ路線「If I Was Your Mother」、プログレッシヴな大作「Dry County」等名曲目白押しな前半の充実振りに比べると、後半テンションが落ちるのが惜しい。まぁ名バラード「I Want You」のような曲もあるが‥‥確かライヴでもアルバム前半の曲ばかりが演奏されていたように記憶している。

こうやって曲名を読んでいくと、時代に合わせてなのか、非常にシンプル且つ短いタイトルが多い。上に挙げたものの他にも"Fear"なんてのもあるし。そう考えていくと、従来のBON JOVI らしさを基本に、時代に合わせて変化しようとしているのが伺えるように思う。BON JOVI なりの90年代スタイルを見つけ出そうとするかのように‥‥それがまだ完成しきっていない、過渡期的作品集なのかもしれない。そういえば、当時の雑誌レビューで「ジョンの書く曲とリッチーのギターソロがかみ合っていない」なんて声もあったっけ‥‥。

このときのツアーは93年に入ってから開始され、アメリカを回った後に6月来日。ジョンの第1子が生まれたため来日が遅れ、初日のみ延期という形をとったものの、続く2日目は3時間を越えるボリュームでファンを魅了させた。この頃から「BON JOVI のライヴは2時間以上やる」というのが常識になったような気がする‥‥また、1曲目もフレキシブルに変えていったようで、アルバム通り「I Believe」から始まることが殆どだったが、たまに「With A Little Help From My Friends」(BEATLESのカヴァー。ジョー・コッカーのカヴァーバージョンで演奏)から始まったり、「Livin' On A Prayer」のアコースティック・バージョン(後の「Prayer 94」の原型)から始めるなんて意表を突いたオープニングもあった。ちなみに俺はその3つを体験している。



▼BON JOVI『KEEP THE FAITH』
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投稿: 2000 11 28 12:00 午前 [1992年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000年3月27日 (月)

THUNDER『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992)

日本には'91年大晦日のカウントダウンライヴで初来日し、底力を見せつけたTHUNDER。このライヴ終了後曲作りに入り、満を持して'92年8月にリリースされたのがこのセカンドアルバム。プロデューサーには前作同様アンディ・テイラーが担当。セールス的に最も成功したのがこの作品だ。(全英初登場2位)シングルカットは4曲。唯一全英シングルチャートのトップ20入りした"A Better Man"が収録されている。またこのアルバムを伴って同年12月に初のジャパンツアーを決行している。

前作をリリース後暫く経ってからヒットしたために、彼等は2年近くに渡ってツアーを続ける事になる。その結果、正に「待望の」と呼ばれるに相応しい作品として受け入れられた。楽曲的には前作の延長線上にあるが、更に的を絞ってきた感がある。先の"Low Life~"や"Everybody Wants Her"といった曲は、前作の"Love Walked In"や"Dirty Love"といったヒット曲の焼き直しともとれる。が、特に"Low Life~"。これは焼き直しだの何だのと言ってる場合じゃないくらい、完成度が高い! たった4分の中に起承転結がはっきりと刻まれていて、特に後半のVo.の盛り上がりには胸を掻きむしられるように、切なく苦しい。ブルーズロックの名曲のひとつとして、これからも語り継がれていくに違いない。この曲が当時ヒットしたということは、まだイギリスでは当時こういう音が求められていたのだろう。その傾向がたった数年で変わってしまうとは‥‥

また、6分を越えるプログレッシヴな大作が2曲、アナログでいうところのA面B面のラストやその前にそれぞれ収録されている。特にライヴでも披露されることの多かった"Empty City"はこのアルバムのハイライトのひとつだ。これといったギミックのない、正に歌と楽器だけでこれだけ聴かせるバンドは、当時そうはいなかった。全く間延びせずに最後まで緊張感を持続するこの曲、ライヴでも一種異様な緊張感を放っていた。

1stでもそうだったが、この2ndでもバラード調ナンバーは絶品だ。先の"Low Life~"は勿論の事、特に俺がお薦めしたいのがシングルカットもされた"Like A Satellite"。当時のライヴヴァージョンは前ベンが弾くピアノとVo.のみで演奏され、ギターソロの直前からバンド全体が入り、あの印象的なツインリードギターが披露されるという、感動的なアレンジで披露されていた。勿論このアルバムヴァージョンも素敵だが、個人的にはライヴアレンジの方が数段上だと思う。このシングルのC/Wとして当時のライヴが収録されているが、探すのは少々難しいかも。

その他にもブギー調のナンバーや当時主流だったレニー・クラヴィッツ風のファンキーな曲も収録されているが、特に突出したイメージはなく、あくまで「ブルーズベースのロックバンド」の曲という形で1枚のアルバムに収録されている。まぁ悪く言ってしまえば、それ程印象に残らない中途半端さがあるのだが‥‥この当時からもっとこの辺に力を入れていれば、彼らの将来は変わっていたかもしれない。



▼THUNDER『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』
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投稿: 2000 03 27 01:58 午後 [1992年の作品, Thunder] | 固定リンク