2017/05/23

COVERDALE・PAGE『COVERDALE・PAGE』(1993)

1993年初春にリリースされた、元LED ZEPPELINのジミー・ペイジ、そして当時WHITESNAKEの活動を停止させていたデヴィッド・カヴァデールが結成したスーパーグループCOVERDALE・PAGEの、最初で最後のアルバム。大概のスーパーグループは大した成功を収めることもなく、短命で終わるわけですが、このバンドの場合もアルバム作ったはいいけどワールドツアーが行われることもなく、同年12月に日本でツアーが行われたのみというありさま。まぁそんなもんですよね。

大ヒット作『WHITESNAKE』(1987年)とそれをフォローアップする『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)で、それまでの中音域を軸とした歌い方からハイトーンでガナる歌唱法に変わり、喉を酷使しまくったカヴァデール。バンドメンバーともなんだかんだあり、結局1990年夏のツアー終了をもってWHITESNAKEの活動を一旦休止させます。

同じ頃、1988年に初の本格的ソロアルバム『OUTRIDER』のリリース、同年春に実施されたAtlantic Records 40周年コンサートでのジェイソン・ボーナム(ジョン・ボーナムの息子)を交えた編成でのLED ZEPPELIN復活な、そして1990年にZEPPELINのスタジオアルバムリマスタリング&ボックスセットのリリースなど、解散以降ようやくZEPPELINと本気で向き合い始めたペイジ。当初はロバート・プラントに再結成を持ちかけたようですが、過去を振り返るのが嫌いなプラントから拒否られ、「だったら、他に歌える奴と組むか」……と思ったかどうかは知りませんが、80年代後半に「ZEPクローン」のきっかけを作ったカヴァデールと組むことになるわけです。

「LED ZEPPELINとWHITESNAKEの邂逅」とも「LED ZEPPELINとDEEP PURPLE(だが3、4期)の邂逅」とも受け取れるこのCOVERDALE・PAGE。カヴァデールとペイジ、そして当時AEROSMITHなどで名を上げていたエンジニアのマイク・フレイザーが共同プロデュースを務め、レコーディングにはドラムにデニー・カーマッシ(元MONTROSE、HEART。この後、WHITESNAKEに加入)、ベースにヨルグ・カサス(80年代にグロリア・エステファンのMIAMI SOUND MACHINEにいた人みたいです)、キーボードにレスター・メンデス(サンタナはじめラテン系アーティストと関わりが深い、ソングライター兼キーボーディスト)が軸となって参加しています(一部楽曲で元THE BABYS、BAD ENGLISHのリッキー・フィリップスがベースを弾いていたり、MVで当時THUNDERに在籍していたマーク・スネイク・ラックハーストがベースを弾いていて、これを理由にバンドをクビになったなんて話もあります)。

さて、前置きが長くなりましたが……アルバム、長くないですか?(苦笑) 11曲で60分超え。当時はCD大全盛期突入期で、多くのロックバンドが60分超えの作品を続発していましたが(AEROSMITH『GET A GRIP』、BON JOVI『KEEP THE FAITH』など)、COVERDALE・PAGEの場合は1曲あたりのカロリーが高い! 3分台〜4分台前半の楽曲は2曲のみ、6分超えは4曲(ほぼ6分を含めて5曲)ですからね。これ、単にペイジの趣味なのか、カヴァデールがペイジと組めるからと頑張っちゃったのか。

ただ、それぞれの楽曲は「当時における現代的なハードロック」として考えればよくできていると思います。なにせペイジが本腰を入れてZEPPLEINの封印を解いて作った楽曲に、そこに当時バリバリハイトーン+加齢による枯れも加わり始めたカヴァデールの歌が乗るわけですから、悪いわけがない。

もちろん、それはフラットに見ればの話。これがLED ZEPPELIN、WHITESNAKEどちらか一方にでも偏ってしまったら、一気に駄作の烙印が押されてしまいそうな気がしますが。

基本的にはWHITESNAKEが『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』、『SLIP OF THE TONGUE』で試みた“ブルージーで仰々しいバンドサウンドにハイトーンボーカルが乗る”スタイルがベースにあり、そこにペイジならではのアイデアが加えられていくといった印象。だからZEPPELINファンからすれば不満が多そうですし、WHITESNAKEファンからすれば「直近2作と比べたらギターが……」と思うかもしれない。そう、だからどちらか一方に偏っちゃダメなんです。気を確かに。

サウンドやバンドアレンジ自体はペイジらしさも確かにあるし(特にアコースティックギターを多用したプレイやハーモニカを導入するところ)、ソロ作『OUTRIDER』がレイドバックしたブルースロックだったから正直ここまでモダンなことやるか!という驚きも多かった。けど、ペイジ自身はこれに近いことをプラントとやりたかったんだよね。中音域がセクシーなカヴァデールがさんざん「もうおなかいっぱい」と言ってたハイトーンを連発するのは、そのへんも大きく関係しているんじゃないかと思われます。

とはいえ、ちゃんと中音域を多用した楽曲も収められていて。バラードタイプの「Take Me For A Little While」や「Take A Look At Yourself」がまさにそれで、前者はZEPPELINタイプ、後者はWHITESNAKEタイプと受け取ることもできるかと(また比較しちゃった)。ペイジが得意とする中近東テキスト+フォーキーさが色濃く表れた(主に前半)「Easy Does It」もそっち寄りかと。もっと言えば「Shake My Tree」や「Pride And Joy」にもそういう要素がちゃんと含まれているよね。さすがに枯れすぎで最初聴いたときは度肝を抜かれたけど。

前半の「LEDクローン」的楽曲も決して悪くないんだけど、個人的には終盤の3曲……当時のカヴァデールがいかにもやりそうなヘヴィブルース(しかも本作最長の約8分)「Don't Leave Me This Way」、ライブのオープニングにふさわしくてひたすらカッコいい「Absolution Blues」、ZEPPELINやWHITESNAKEというよりCOVERDALE・PAGEとしての可能性を感じさせたラストトラック「Whisper A Prayer For The Dying」が良いんですよね。派手さ的には前半4曲(「Shake My Tree」「Waiting On You」「Take Me For A Little While」「Pride And Joy」)なんだろうけどね。

時代的にはグランジ全盛期、HR/HMはすでにオールドウェイブ的存在に追いやられていた中発表された本作は、全米5位、全英4位を記録。セールス的には全米50万枚止まりだったようです。WHITESNAKEの新作と考えればまずまずの成功と言えるし、LED ZEPPELIN関連作と捉えれば低調と言わざるをえない。この微妙な結果がプロジェクトの寿命をより縮めた、とも言えますが……ただ、この“実験”があったからこそ、ペイジは翌年以降にプラントと組んでアルバム作ったりライブをしたりできたわけで、カヴァデールもWHITESNAKE再編へと動きだすことができたわけです。そういう意味においては、スーパーグループではあったけどそれぞれにとって過渡期だった……と言ったら失礼でしょうか。



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投稿: 2017 05 23 12:00 午前 [1993年の作品, Coverdale・Page, Jimmy Page, Led Zeppelin, Whitesnake] | 固定リンク

2017/03/24

VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)

MOTLEY CRUEのシンガー、ヴィンス・ニールがバンドから解雇されたのが1992年2月のこと。忘れもしません、当時僕はイギリスに留学中で、ホームステイ先で観ていたMTV内のニュースでこの情報を知ったのですから……半年くらい前に初のベスト盤(正確にはコンピレーションアルバム)『DECADE OF DECADENCE』がリリースされ、滞在先でもよくカセットをリピートしていたぐらい大好きなバンドの突然の情報に、そりゃあ動揺しまくりですよ。今みたいにインターネットもない時代、しかも海外滞在中にそんな情報を得たところで続報を調べようもないし。

ところがそこから数ヶ月後、ヴィンスは映画『ENCINO MAN』(邦題:原始のマン)のサウンドトラックに初のソロナンバー「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」を提供します。この曲は当時DAMN YANKEESのメンバーだったジャック・ブレイズ&トミー・ショウとともに制作されたもの。まだソロバンドのメンバーも確定していなかったものの、キャッチーなHRナンバーで歌うヴィンスからは“MOTLEY CRUEそのもの”といった印象を受けました。さらにその頃、マイケル・モンローと新バンドJERUSALEM SLIMを組んだはずのスティーヴ・スティーヴンス(G)がヴィンスのバンドに加わったという噂が広まります。その噂は真実となり、JERUSALEM SLIMは空中分解。スティーヴはヴィンスと一緒にアルバム制作に突入するのでした。

MOTLEY CRUE解雇から1年ちょっと経った1993年4月、ついにヴィンスの初ソロアルバム『EXPOSED』発売。MOTLEY CRUEほどのメガヒット作にはならなかったものの、全米13位という好成績を残しました。ここ日本でも同年秋に日本武道館公演を含むジャパンツアーを行い、大成功を収めました。

ソロバンドのメンバーはヴィンス、スティーヴのほかデイヴ・マーシャル(G / FIONA、SLAUGHTERなど)、ロビー・クレイン(B / RATT、BLACK STAR RIDERSなど)、ヴィッキー・フォックス(Dr / ENUFF Z'NUFFなど)という編成。レコーディングにはデイヴは参加しておらず、すべてのギターパートと一部のベースはスティーヴが弾いています。

さてさて、肝心の音ですが……「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」で感じた“MOTLEY CRUEらしさ”が全編に感じられるものの、実は楽曲自体はモロにMOTLEYを意識したものって数曲なんですよね。例えばオープニングを飾る「Look In Her Eyes」がMOTLEYらしいかと問われると、意外とそんなでもない。だけど、ヴィンスの声が乗ると不思議とMOTLEYっぽく聞こえる。いかに彼の歌声が唯一無二の武器かが、これだけでも嫌というほど理解できると思います……その観点で語ると、「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」だってMOTLEYというよりはNIGHT RANGERですもんね(笑)。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』〜『DR. FEELGOOD』期のMOTLEYを意識した「Sister Of Pain」や「Can't Have Your Cake」みたいな曲もあるにはあるけど、アルバムの中でのクライマックスとなるのは、先の「Look In Her Eyes」や、アルバム中盤の山となる「The Edge」のようにヴィンスの歌とスティーヴのギターがぶつかり合う楽曲。特に後者はフラメンコギターがフィーチャーされており、スティーヴの個性出まくりの1曲。シリアス調の「Living Is A Luxury」あたりもこの組み合わせだからこそ作り出すことができたナンバーだと思います。

と同時に、ヴィンスからイメージする“ヤンチャなアメリカンHR”まんまな楽曲も同じくらい存在。先の「Can't Have Your Cake」もそうだし、「Fine, Fine, Fine」「Gettin' Hard」なんかもその路線でしよう。そこにアメリカンHRバンドならではのバラード「Can't Change Me」「Forever」が加わり、おまけにL.A.メタルバンドお約束のカバーとしてSWEETの名曲「Set Me Free」まで取り上げている。“これぞ全部乗せ!”と言わんばかりの、サービス精神旺盛な(それでいて音楽性もしっかり伴った)1枚に仕上がっているんですから、さすがとしか言いようがありません。

ちなみに、日本盤のみボーナストラックとして、ロッド・スチュワート「Blondes (Have More Fun)」とRAMONES「I Wanna Be Sedated」という、ヴィンスのパブリックイメージに合ったカバー2曲が追加されています。購入するならぜひ、この2曲が入っている日本盤をオススメします。

ここまで完璧に“MOTLEY CRUEをイメージさせつつも、そこを超えた”作品をヴィンスがリリースしたことで、これに続く本家MOTLEY CRUEに対するハードルはさらに高くなったと思います。しかし、その本家が1年後に発表したのが、あの『MOTLEY CRUE』だったことで多くのファン(自分を除く)が落胆したのを、今でも昨日のことのように覚えています。そりゃあこの『EXPOSED』みたいな路線を期待したくなるよね。



▼VINCE NEIL『EXPOSED』
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投稿: 2017 03 24 12:00 午前 [1993年の作品, Motley Crue, Steve Stevens, Vince Neil] | 固定リンク

2017/03/18

HAREM SCAREM『MOOD SWING』(1993)

カナダの4人組HRバンドHAREM SCAREMが1993年にリリースした2ndアルバムにして、ここ日本でのデビュー作『MOOD SWING』。発売から20年以上経った現在も、このアルバムが放つ魅力はまったく色褪せていません。

1993年というと、世の中的にはHR/HMが完全に“過去のもの”に成り下がり、アメリカやヨーロッパではNIRVANAやPEARL JAM、SMASHING PUMPKINS、ALICE IN CHAINSといったグランジバンド、そのフォロワー的に登場したSTONE TEMPLE PILOTSなどがチャートやツアーで成功を収めていた時期、翌1994年4月にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺したのと同じ頃から少しずつシーンは停滞していくことになるのですが、90年前後に活躍したHR/HMバンドの多くはセールス面で相当の苦戦を強いられ続けます。その結果、グランジ寄りのサウンドを取り入れ始めたり、ひどい場合はメジャーレーベルからドロップし(契約解除され)たり……しかし、ここ日本では少しだけ状況が異なりました。そう、日本ではまだHR/HMは死んでいなかったのです。

そんな状況下で発表された『MOOD SWING』というアルバム。とにかく冒頭2曲(「Saviors Never Cry」「No Justice」)のパワフルかつメロディアスなスタイルに、一発でノックアウトされたのをよく覚えています。ギターソロが死に絶えた時代にここまで弾きまくるか!というピート・レスペランスのプレイは圧巻だし、ハスキーさがいい味を出しているハリー・ヘスのボーカルも気持ちいい。楽曲はDOKKENが一番良かった頃を彷彿とさせつつも、アレンジやコーラスワーク、サウンドプロダクションからはDEF LEPPARDの影響が強く感じられる。なんだこれ、本当に1993年のアルバムか!?と最初は疑ったほどです。

ポップで軽やかな「Stranger Than Love」が終わると、本作のハイライトである「Change Comes Around」へ。5分という決して長くはない時間の中にHR/HMの起承転結がぎっしり詰め込まれたこの曲は、ボーカルも演奏もメロディもアレンジも「これが僕たちの求めるHR/HMのカッコよさだ!」と力説したくなるほどで、リリースから何年経とうがアンセムなのに変わりない。いやぁ、今もこの曲聴いてますが、ライブでの盛り上がりが目に浮かびますよ……。

もちろんその後も“かゆいところに手が届く”楽曲群目白押し。ソウル&ブルースフィーリング抜群な「Jealousy」、80年代の残り香が感じられる「Sentimental Blvd.」、ギターインスト「Mandy」からモダンなハードナンバー「Empty Promise」、歌と同じくらいギターも主張し続けるバラード「If There Was A Time」、“声”のみで構成された異色作「Just Like I Planned」、冒頭のギタープレイが鳥肌モノのダイナミックなHRチューン「Had Enough」……本当、捨て曲一切なし。

そういえば本作発売20周年を記念して、2013年には再レコーディングアルバム『MOOD SWING II』もリリースされていますが、最初に聴くならまずはオリジナルのこちらから。日本では続く3rdアルバム『VOICE OF REASON』(1995年)の評価が非常に低いですが、僕としては本作と同じくらいに好きな作品です。なので下手にベスト盤などに手を出すよりは、『MOOD SWING』と『VOICE OF REASON』の2枚を中古でゲットしたほうがいいと思いますよ。



▼HAREM SCAREM『MOOD SWING』
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投稿: 2017 03 18 12:00 午前 [1993年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2017/03/01

ANTHRAX『SOUND OF WHITE NOISE』(1993)

ANTHRAXが1993年5月にリリースした、通算6枚目のオリジナルアルバム。前年に2代目ボーカル(にしてバンドの知名度向上に貢献した)ジョーイ・ベラドナが脱退し、後任として迎えられたジョン・ブッシュ(元ARMORED SAINT)が初参加したのが本作『SOUND OF WHITE NOISE』です。ちなみにジョン以外はスコット・イアン(G)、ダン・スピッツ(G)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)という2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)から続く黄金期メンバー。のちにダン・スピッツが脱退するため、このラインナップも本作1枚きりとなります。

ハードコアやスラッシュメタル、ヒップホップなどいわゆる“ストリートミュージック”を体現してきたANTHRAXですが、ジョン・ブッシュという新たなシンガーが加わったことでさらに新たな要素……当時の主流だったグランジやグルーヴメタルなど、いわゆる本道とは一線を画するオルタナティヴなサウンドに手を出します。スラッシュメタルを極限まで突き詰め煮詰めたような内容の前作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)で、それまでの路線をやりきったという思いも多少はあったのかもしれませんし、同時代を駆け抜けたMETALLICAがブラックアルバムで天文学的大成功を手にしたことを羨ましがったのもあるかもしれません。だからこそ、メンバーチェンジをきっかけ(もしくは言い訳)に大胆なシフトチェンジが図れたんでしょうね。プロデューサーにJANE'S ADDICTIONやALICE IN CHAINSを手がけたデイヴ・ジャーデンを迎えたのも納得です。

本作にはいわゆる疾走系スラッシュは皆無。速い曲はあるにはあるけど、単に突っ走るというよりはグルーヴを重視した“音の塊”のような楽曲(「Potters Field」や「C11 H17 N2 O2 S Na」「Burst」)が中心。シングルカットされた「Only」や「Room For One More」「Hy Pro Glo」はまさにその代表格といえる楽曲で、ANTHRAX第2章を代表するナンバーとしてライブで披露され続けます。

かと思えば、当時ブレイクしていたTVドラマ『ツイン・ピークス』からの影響受けまくりなスローナンバー「Black Lodge」みたいな曲も存在。従来のファンからしたらこの変化は裏切り以外のなにものでもないんでしょうけど、かのMETALLICAも欲しがったと言われるジョン・ブッシュを手に入れたんだから、そりゃいろいろ試したくなりますよね。ましてや時代はNIRVANA、PEARL JAM、ALICE IN CHAINS、SOUNDGARDEN、SMASHING PUMPKINSといったバンドがチャートを席巻し、これまでANTHRAXが居座っていたシーンには新たにPANTERA、速さを切り捨てたMETALLICAがトップに君臨しているんですから……「変わらなくちゃ」っていう強迫観念に駆られても不思議じゃない。

では、本作はそんなに“時流に乗った駄作”なのかというと、実はそんなこともなく。むしろ、僕自身は彼らのキャリアの中でも3本指に入るほど好きな1枚です。『PERSISTENCE OF TIME』からここにたどり着いたというのも、個人的にはとても腑に落ちるんです。楽曲の出来もいいし、アレンジも歌もアルバムの流れもベスト。本作が当時、全米7位にランクインし、過去最高のセールスを記録したというのも納得できます。だって、世の中的に旧世代バンドに成り下がっていたANTHRAXが流行りに乗ったとはいえ、世間にちゃんと受け入れられたという証拠ですから(従来のファンからは敬遠されたかもしれませんが)。



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投稿: 2017 03 01 12:00 午前 [1993年の作品, Anthrax] | 固定リンク

2017/01/31

ANNIHILATOR『SET THE WORLD ON FIRE』(1993)

カナダ出身のスラッシュメタルバンド、ANNIHILATORが1993年に発表した3rdアルバム『SET THE WORLD ON FIRE』はここ日本で彼らが本格的に受け入れられるきかっけを作った(同年の初来日公演に結びつけた)、重要な1枚です。

彼らの名前はデビュー作『ALICE IN HELL』(1989年)の時点で耳にしていました。といっても、当時は日本盤も出ていない状況で、名前も「アナイアレイター」ではなく「アニヒレイター」と紹介されてたわけですが(某TBS『PURE ROCK』での話)。その後、僕は1990年の2ndアルバム『NEVER, NEVERLAND』で初めて彼らの音に本格的に触れるのですが、リフはカッコいいけど……とそこまでハマらなかった記憶があります。今聴くと、とても良いんですけどね。ただ、ブレイクに導くような完成度かと言われると「まぁB級止まりだよな」というのも否めないわけでして。

その後、メンバーチェンジやレーベルとのゴタゴタがあって、次作発表までに3年かかってしまうわけですが、その間にメタルシーンで起きたことといえば……METALLICAのブラックアルバム(1991年)が天文学的大ヒットを記録したこと、そしてPANTERA『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)が発表されたこと、この2つが以降の流れをガラッと変えてしまいます。また、メインストリームにいたHR/HMがグランジに取って代わられる事態に。きっとジェフ・ウォーターズ(G, Vo)は焦ったと思うんですよ。時代が変わる前に、早くアルバムを出さなきゃって。

その焦りは、良くも悪くも本作に反映されています。いわゆる旧来のスラッシュ路線を残しつつも、グルーヴ感を強調したミドルテンポの楽曲もあり、さらにはMETALLCIAが「スラッシュバンドだってバラードやったっていいんだよ」と形にしてしまったがためのスローバラード導入……これだけ見たら一貫性がない作品になっているんじゃないかと思いますが、いやいや。これが意外と良いんですよ。

仰々しいオープニングからザクザクしたリフ&リズムのユニゾンが気持ちいい「Set The World On Fire」は80年代の色合いを残しつつモダンな方向に歩み寄っている。続く「No Zone」は王道パワーメタル、「Snake In The Grass」はオープニングこそバラード調ですが実は跳ねたリズムを持つグルーヴメタルだし、「Phoenix Rising」な泣きのバラード、「Knight Jumps Queen」は冒頭のベースラインが気持ちいいミドルテンポのスラッシュナンバー、「Sounds Good To Me」はアップテンポだけどバラードの色合いを持つメロウな楽曲、そしてどこかアメリカンなブギー調スラッシュ「Don't Bother Me」からテクニカルスラッシュ「Brain Dance」で締めくくり。その後日本盤にはボーナストラックとしてJUDAS PRIESTのカバー「Hell Bent For Leather」が追加されてますが、この終わり方も悪くないです。

ジェフ・ウォーターズはMEGADETHにスカウトされたという逸話を持つほどのテクニシャン。このアルバムでもその非凡なプレイは随所にフィーチャーされてますが、それ以上にソングライターとしてもかなりの才能の持ち主であることは一聴しておわかりいただけるかと思います。しかし、遅すぎた。いかんせん時代が悪かった。本作がもう1年早くリリースされていたら、北米でもそれなりの結果を残すことができたんじゃないかと……でも、1年早かったらこういった内容になっていなかったのも事実であって、そこのもどかしさは拭えません。本当はもっと表舞台で光るべき人なんですけどね……最近の状況を見ていると、少しだけ悲しい気持ちになってきます(主に髪型的な意味ですが)。



▼ANNIHILATOR『SET THE WORLD ON FIRE』
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投稿: 2017 01 31 12:00 午前 [1993年の作品, Annihilator] | 固定リンク

2017/01/24

SCORPIONS『FACE THE HEAT』(1993)

SCORPIONSが1993年9月にリリースした、通算12枚目のオリジナルアルバム。1990年に発表した前作『CRAZY WORLD』ではそれまでの諸作品をずっと手掛けてきたディーター・ダークスから離れ、キース・オルセン(HEARTやEUROPEなど)をプロデューサーに迎え、ポップさを増したロック路線に移行。今作からは「Winds Of Change」という(ある意味歴史的な)大ヒット曲が生まれます。また同作からは泣きのバラード「Send Me An Angel」もシングルカットされ中ヒットとなったことで、「SCORPIONS=バラードバンド」的なイメージが植え付けられつつありました。

本作『FACE THE HEAT』が発表されるまでの3年間、フランシス・ブッフホルツ(B)の脱退やロックシーン流行の変遷(HR/HMからグランジへ)などがあり、同作は「Winds Of Change」での成功は一旦チャラな状態になった中でのリリースだったと言えます。そんな作品のプロデューサーとして白羽の矢が立てられたのは、BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』『NEW JERSEY』やAEROSMITH『PERMANENT VACATION』『PUMP』、そしてAC/DC『THE RAZORS EDGE』をメガヒットへと導いたブルース・フェアバーン。実はブルース起用については『CRAZY WORLD』のタイミングにはすでに話し合われていたそうで、このタイミングに満を持して実現したわけです。

フェアバーンのプロデュース作品というと職業作家を積極的に採用した高品質の楽曲が、クリアで密度の高いサウンドで構築されるイメージが強いのですが、本作もその例から外れない高品質のハードロックサウンドを楽しむことができます。ただし楽曲自体は、バラードバンドのレッテルを払拭するかのようにハードめな作風のものが大半で、純粋なバラードはシングルカットされた「Under The Same Sun」と本編ラストの「Lonely Nights」程度。もう1曲、「Woman」というスローナンバーもありますが、こちらはバラードというよりはヘヴィブルースのイメージが強く、このへんも全体からにじみ出るヘヴィさの余韻なのかなと。

また、職業作家の採用という点においても、フェアバーンは直近に手掛けたAEROSMITH『GET A GLIP』にも携わったマーク・ハドソンを本作でも起用。「No Pain No Gain」「Someone To Touch」「Nightmare Avenue」で楽曲制作に携わるほか、先のバラード「Under The Same Sun」ではクラウス・マイネ(Vo)、フェアバーンと共作しています。マーク・ハドソンが関わったことでポップになったというわけではなく、メロディがより際立ったものになったというのが正解なのでしょう。実際「No Pain No Gain」も「Nightmare Avenue」もヘヴィさやアグレッシヴさを保ちつつ、非常にメロディアスな仕上がりなのですから。

ドヘヴィなミドルチューン「Alien Nation」からスタートし(しかもこの曲が1stシングル!)、さらに重くジワジワくる「No Pain No Gain」へと続く冒頭の構成。そして前作の流れになる軽やかなロック「Someone To Touch」、“SCORPIONS流「Imagine」”と言えなくもない「Under The Same Sun」から再びヘヴィな「Unholy Alliance」と、変化自在な構成はなかなかのもの。“これぞSCORPIONS!”というテンポ感を持ちつつもどこかアメリカンな「Hate To Be Nice」、シャッフルビートが心地よい「Taxman Woman」ときて、終盤に「Ship Of Fools」「Nightmare Avenue」のアップチューン2連発。最後は泣きメロバラード「Lonely Nights」でしっとり締めくくります。いいアルバムじゃないですか、これ! ただ、日本盤はこの後、“神を信じる”という日本語詞サビにギョギョッとする「Kami O Shin Jiru」、アコースティカルな「Daddy's Girl」と、結果的にバラード3連発になるので、このアルバムの“軸”がブレてしまい勿体ない構成に)

リリースされたタイミングによってはもうちょっと好意的に評価され、80年代の作品並みのセールスを記録していたのかもしれませんが、時は1993年。全米24位まで上昇するも、セールス的には50万枚にも満たない結果で終わりました。その後バンドはポップ寄りな『PURE INSTINCT』(1996年)、『EYE II EYE』(1999年)を立て続けに発表しますが、『FACE THE HEAT』から11年後の2004年、『UNBREAKABLE』で再度ヘヴィ路線へと立ち返るのでした。



▼SCORPIONS『FACE THE HEAT』
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投稿: 2017 01 24 12:00 午前 [1993年の作品, Scorpions] | 固定リンク

2016/12/27

GEORGE MICHAEL and QUEEN with LISA STANSFIELD『FIVE LIVE』(1993)

1993年春に発表された、ライブ音源で構成されたEP。ジョージ・マイケルのソロ名義の作品ではなく、QUEENやリサ・スタンスフィールドとの共演が繰り広げられた1992年4月20日のイギリス・ウェンブリースタジアムでのフレディ・マーキュリー追悼ライブでのライブ音源がメインのため、こういうアーティスト名義となっております。

5曲中2曲がQUEENナンバーのカバー。1曲目「Somebody To Love」はシングルカットもされて、当時全米30位まで上昇しております。もう1曲は4曲目の収められた「These Are The Days Of Our Lives」。こちらはQUEEN、リサ・スタンスフィールドとの共演トラックです。「Somebody To Love」ほどのインパクトはないものの、これはこれでアリかなと。

そういえば、このステージでの共演を機に「フレディの後任はジョージがいいんじゃ」なんて話をちらほら挙がったこともありましたっけ。歌唱力はもちろんのこと、いわゆるセクシャリティにおいても共通点があるし、そういったところで適任なんて噂されたのかもしれないけど、結局QUEENはご存知のとおり現在アダム・ランバートと一緒にステージに立っているわけですから。結果論とはいえ、結局はこれでよかったのかな、と。

QUEENとの共演トラックばかりに目が行きがちですが、そのほかの3曲にも注目しておきたいです。ジョージ・マイケルはWHAM!時代からカバー曲のセレクト、その仕上がりに対して定評がありましたが、今作ではハウス系アーティストADAMSKIとソウルシンガーのシールによるコラボ曲「Killer」と、THE TEMPTATIONSなどのカバーでも有名な「Papa Was A Rollin' Stone」の10分にわたるメドレー、そして映画『バグダッド・カフェ』の主題歌として知られる「Calling You」をセレクト。それぞれ1991年春にウェンブリーアリーナで行われた、2ndアルバム『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL.1』(1990年)を携えたツアーからの音源で、同作での作風の延長線上にあるアレンジ(主に前者のメドレーで)を堪能することができます。一方で、「Calling You」は『FAITH』(1987年)での「Kissing A Fool」にも通ずるジャジーなテイスト。ジョージのスウィートな側面が遺憾なく発揮された、名カバーのひとつと言えるのではないでしょうか。

ちなみに今作、最後の最後にQUEENの「Dear Friends」(1974年の3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』収録)が収められたバージョンも存在します。これは同作が、当時ジョージが所属するソニー系からではなく、QUEENの所属レーベルParlophone(北米圏ではHollywood Records)からのリリースというのも大きく影響しており、「あくまでQUEENプロジェクトの一環」として発表されたものであることが伺えます。ジョージ自身、その後のリリースは『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL.1』から続く3rdソロアルバム『OLDER』まで約6年もの歳月を要することになるので、その中間となる1993年にこういう作品をリリースしておけたのは(しかもそこそこのヒット作になったのは)以降の活動へつなげる意味でもいい効果をもたらしたのではないでしょうか。また、QUEENも2年後の1995年に“オリジナル”アルバム『MADE IN HEAVEN』を発表することになりますしね。



▼GEORGE MICHAEL and QUEEN with LISA STANSFIELD『FIVE LIVE』
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投稿: 2016 12 27 12:00 午後 [1993年の作品, George Michael, Queen, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2016/12/20

AEROSMITH『GET A GRIP』(1993)

前作『PUMP』が全米アルバムチャート5位(TOP5入りは1976年の『ROCKS』以来13年ぶり)、現在までに700万枚も売り上げるという大成功を収めたAEROSMITH。『PUMP』を携えたワールドツアーを終えた後もソニー時代のボックスセット『PANDORA'S BOX』(1991年)発表や、MTV10周年イベントでマイケル・ケイメンと「Dream On」をオーケストラ共演、GUNS N' ROSESのライブにゲスト出演(スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーのみ)など話題に事欠きませんでしたが、その裏側では『PUMP』を超えるアルバムを作り上げようと試行錯誤していました。その結果、前作から約4年という歳月を経て通算11枚目のオリジナルアルバム『GET A GRIP』は完成したのです。

今作は一度12曲程度でまとめあげられたものの、メンバーやスタッフが客観的にアルバムを聴いて「何か足りたい」として新たに楽曲を制作。そういう経緯を経て、全12曲(イントロ&アウトロおよびボーナストラックを除く)で60分強という大作が完成したわけです。スティーヴンのラップボーカルをフィーチャーしたイントロから「Eat The Rich」へと流れるオープニング、そのままほぼ曲間なく「Get A Grip」「Fever」「Livin' On The Edge」へと続く構成は、前作『PUMP』にも匹敵するもので、緊張感だけで言えば今作のほうが優っていると個人的には思っています。

バンドとしての熱量は全キャリア中でも『ROCKS』に匹敵するものだし、そこに絶妙なバランスで“枯れ”具合が混在する。1曲1曲の完成度も非常に高く、「カッコいいロック」よりも「単純にいい曲」を目指したかのようなヒットシングル「Livin' On The Edge」(全米18位)、「Cryin'」(同12位)、「Amazing」(同24位)、「Crazy」(17位)も目白押し。久しぶりにジョー・ペリーがリードボーカルを取った「Walk On Down」も箸休めで終わっておらず、頭から終盤まで一切の隙なし。だからこそアウトロとして収録されたお遊び的インスト「Boogie Man」までたどり着くと、肩の力を抜いてホッとできるわけです。

人間の集中力が持続するのは30〜40分程度、なんてよく言われますし、昔の名盤は(アナログ盤の収録状況なども要因ではあるものの)大半が30〜40分前後の作品ばかり。60分前後のアルバムとなると数曲は印象に残らないことも多いのですが、こうやって最後まで集中して楽しめる、引き込まれる長編ハードロックアルバムはDEF LEPPARD『HYSTERIA』と本作ぐらいじゃないか……と思うのですが、いかがでしょう?

2016年現在、彼らの全アルバムを振り返ると、初の全米No.1を獲得したこの『GET A GRIP』こそが第2のピークだったのは間違いない事実。彼らが80年代後半から目指したサウンドもここで一度完成を見るわけです。だからこそ、ここから長い試行錯誤が再び続くことになるのでした。そういう意味では、『GET A GRIP』は非常に罪深いアルバムでもあるのです。



▼AEROSMITH『GET A GRIP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 20 01:30 午前 [1993年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2015/05/09

ACCEPT『Objection Overruled』(1993)

昨年リリースされた通算14枚目のオリジナルアルバム「Blind Rage」が本国ドイツで初のチャート1位を獲得するという快挙を成し遂げたAccept。残念ながらPanzerを結成したハーマン・フランク(G)とステファン・シュヴァルツマン(Dr)が脱退してしまうというアクシデントがあり、成功を掴んだ3度目の再結成に不穏な空気が……と思ってたら、先月末にようやく新メンバーが発表され、今後も変わらず活動を続けていくことが明かされたばかり。バンドに2度目の黄金期をもたらした布陣の終焉は悲しいものがありますが、きっとAcceptは今後もそのスタイルを崩すことなく、男らしい正統派ヘヴィメタルを聴かせてくれることでしょう。

……と書いてみたものの、今日の主役は3代目ボーカル、マーク・トーニロ加入後の作品ではなく、現在のAcceptへとつながるきっかけを作った最初の再結成の際に制作された9thアルバム「Objection Overruled」についてです。


1993年初頭に再びウド・ダークシュナイダー(Vo)を含む布陣で制作された本作。デイヴィッド・リースを迎えた8thアルバム「Eat the Heat」(1989年)には発売当時「こんなのAcceptじゃない!」とがっかりしたファンも多かったようですが(僕もその1人)、今聴くとそこまで悪くないと思えるのは自分だけでしょうか。それよりも再結成後の……いやなんでもないです。

1993年というと海外ではすでにNirvana、Pearl Jamといったグランジ勢、Panteraをはじめとするヘヴィ / ラウド勢の台頭により正統派ヘヴィメタル / ハードロックバンドは瀕死の状態に陥ってた時期。そんな状況下でこういったストレートなメタルアルバムを制作した心意気は、今思うと素晴らしいものだと思うし(次作以降の変化はこの際無視する)、発売から22年経った今聴いてもちゃんと「聴ける」1枚なんですよね(上から目線でごめんなさい)。

先日CDショップを覗いた際、リマスタリングされ海外で再発売されていることを知りました。再発モノでおなじみ「Cherry Red Records」内のメタル専門レーベル「HNE Recordings」からのリリースですが(※参照)、日本盤に入っていた「Rich & Famous」など追加要素は一切なし。同レーベルから再発されている他の作品と比較すると内容としては弱いですが、自宅でダンボールの片隅に眠っている当時のアルバムを引っ張りだすのも面倒だし、それに昨年新作を聴いて「このへんのアルバムも久しぶりに聴いてみたいな」と思ってたところだったので、思わず手を出してしまったわけです。

いやあ、改めて聴くと発売当時の感情がよみがえってきますね……やっぱりオープニングのタイトルトラックの疾走感。ここでガッツポーズを取ったファンは多かったはずだし、まんまなタイトルに苦笑いを通り越して感動すら覚えるヘヴィナンバー「Slaves To Metal」、アルバム中盤に位置するアンセム感の強い「All Or Nothing」、泣きのバラード「Amamos La Vida」から流れるように続くファストナンバー「Sick, Dirty And Mean」、同じく泣きのインスト「Just By My Own」からエンディングを飾るファストチューン「This One's For You」などなど、今も色褪せない王道メタルチューン満載の展開はマーク・トーニロが参加した「Blood of the Nations」以降の作品に通ずるものもあれば、そこともまた違った「80年代からの流れ」もあったりとなかなか感慨深いもの。とはいいながらも、ちょっと弱いな……と感じてしまう楽曲も少なからずあったりして。特にシングルカットされた2曲目「I Don't Wanna Be Like You」や本作の中では唯一、現在もライブで披露される機会のある「Bulletproof」あたりはちょっと弱いような気もしていて(今聴くとですが)。MVが制作された「Protectors Of Terror」もかな……「Balls To The Walls」での成功をそのまま引き継いだ流れだとは思うんですが、リフ含めもうひと工夫欲しかったかもと思ってしまうわけです。

あと、これは非常に重要な要素だと思うんですが……当時(90年代の2度目の再結成時)はシングルギター編成だったこと。やっぱり「Acceptといえばツインリード」という人も多いと思うんです。少なくとも制作時は4人編成だったものの、ライブはもう1人ギターを入れて5人編成で活動していくんだろうなと考えていたのに……。

実はAcceptのライブを観たのは唯一この「Objection Overruled」に伴う来日公演のときだけ。その際の印象があまり良くなくて、個人的にはその後Acceptに対する印象がどんどん薄くなっていったんですね。80年代はライブに間に合わず、解散後に発表されたライブアルバム「Staying A Life」でこのバンドに対する熱がどんどん上がっていき、そして発表された再結成。なのにあのツインリードが聴けない……そりゃがっかりですよ。しかも期待していたアルバムタイトルトラック「Objection Overruled」が演奏されず(「This One's For You」はやってた記憶がありますが)……

と、ネガティブな思い出までもがよみがえってきてしまった「Objection Overruled」ですが、決して悪いアルバムではないですよ。あくまで個人的な思い出ばかりですので。Accept史の中では弱い作品かもしれないけど、時代背景を考えると非常に重要な1枚かもしれないし。この勢いで、さらにネガティブな思いしかない「Death Row」(1994年)、「Predator」(1996年)も改めて聴いてみようかしら。さすがに20年経てば当時とは違った楽しみ方もできるかもしれないしね。



▼Accept「Objection Overruled」
(amazon:海外盤CD / 海外盤CD国内流通仕様

投稿: 2015 05 09 10:43 午前 [1993年の作品, Accept] | 固定リンク

2005/09/17

寝る前にこれ聴け!(5)

 さ、久し振りにやってみましょうか、「こんなもん聴いて寝れるか!」とお叱りの声が来たり来なかったりする、このコーナー。フェスも終わり、ちょっと落ち着いて来た今日この頃。イベント前も何のその、しっかり更新しますよー。

 さて。そんな今夜のテーマは『ジャーマンメタル』。 しかも'80年代後半〜'90年代初頭の、ジャーマンメタルが最もジャーマンメタルらしかった時代のアルバムばかりを3枚。ま、基本的にはこの辺りを中心にどんどん派生していったといった感じでしょうか。実は俺自身も久し振りに聴くアルバムばかりで、多少ノスタルジーに浸ってますが、そんなことはお構いなし、男汁150%でお送りします。


・BLIND GUARDIAN「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」('90)
 あれ、何でこのCDが我が家にあるんだろう‥‥確かにブラガはこのアルバムだけリリース当時(浪人生時代)買ったけど、田舎に引っ込む時に売り払った記憶が‥‥あ、会社辞めた先輩から借りっ放しだ。ま、いいか‥‥
 んで今、久し振りに聴いてるんですが、今じゃもっと洗練されてるんだろうけど、この当時はモッサリ感が強くて、尚かつ「そうそう、ドイツっぽいよね!」っていう‥‥ある種ACCEPT辺りにも通ずる男臭さも備わってるのな。いや、いいんじゃないの。


▼BLIND GUARDIAN「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」(amazon


・GAMMA RAY「INSANITY AND GENIUS」('93)
 これも多分、先輩から借りっ放しの1枚‥‥借りパクってこういう事を言うんですか?(汗)まぁいいや。こうやって話のネタになればこのCDも浮ばれるだろうよ(死んでないって)。
 GAMMA RAYで一番好きなアルバムかも。ていうか、このアルバム以降は聴いてないんですが(えー)。1stよりも2nd派だった数少ない人間だった俺ですが、この3rdでの振り切れっぷりに当時ハマったものです。カイ・ハンセンはHELLOWEENの初来日以来観てなかったんですが、このアルバムの時は来日公演行った。そんくらい気に入ってました。


▼GAMMA RAY「INSANITY AND GENIUS」(amazon


・HELLOWEEN「KEEPER OF THE SEVEN KEYS PT.1&2」('87/'88)
 ゴメン、反則だけどこの日本限定の2枚組完全版を選ばせて。思い入れだと「〜1」だけど(初来日公演観てるだけに)、"Eagle Fly Free" とか "I Want Out" が入ってるから「〜2」も外せないのよ。
 HELLOWEENはマイケル・キスク時代ってこの2枚しかちゃんと聴いてないんだけど(カイ・ハンセンのボーカル時代はちゃんと聴いてるし、アンディ・デリス加入後は2枚くらい聴いた)やはり特別ですわな。あのアホっぽいPVといい、このガキっぽい名前といい(「Halloween」と「Hell」を引っ掛けてる、3歳児級の駄洒落だしな)、ANIMETALも真っ青なメロといい‥‥だから良いんだよ、うん。


▼HELLOWEEN「KEEPER OF THE SEVEN KEYS PT.1&2」(amazon

投稿: 2005 09 17 01:25 午前 [1987年の作品, 1988年の作品, 1990年の作品, 1993年の作品, Blind Guardian, Gamma Ray, Helloween] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/06/13

CATHEDRAL『THE ETHEREAL MIRROR』(1993)

 イギリスを代表する(?)ドゥーム・メタルバンド、CATHEDRALの1993年にリリースした2ndアルバム「THE ETHEREAL MIRROR」。恐らく多くのファンにとっても、そして俺からしても『CATHEDRALの代表作』と呼べる1枚なんじゃないでしょうか。

 個人的には『元NAPALM DEATHのボーカルが作った、新しいバンド』というイメージで接して1st EPで非常に痛い目に遭ったバンドなんですよ‥‥だって、『世界最速!(曲の短さが)』が謳い文句だったあのバンドのボーカルが作るバンドですからね、そりゃ更に速いやつを期待してたわけ。ところが出てきたのは『世界最低速!』みたいな、地を這うか如く超スローな曲が延々と続くんですよ。

 リー・ドリアン(元NAPALM DEATH〜CATHEDRALのVo)がやってるバンドだから‥‥って理由だけで聴き始めたんだけど、まぁとにかく初期の音源は取っ付き難くて、その手のサウンド‥‥所謂『ドゥーム・メタル』と呼ばれるジャンルに慣れてない身としてはね。

 ところがさ。この2ndアルバムでこのバンド、いきなり化けるんですよ。

 理由は幾つかあると思うんですよ。メンバーチェンジだったり、ツアーを経験したことによる自信だったり。けど最大の理由は、メジャーから配給されるようになったことでしょう。このアルバム、本国イギリスや日本ではその筋では老舗と呼べる『Earache』からのリリース(当然インディー)なんですが、何故かアメリカではかの『Epic』からのリリース/配給だったんですよ。実はこの時期('93〜94年頃)の『Epic US』って結構他所の国のバンドに目を向けてた時期だったんですよ。多分アメリカ国内ではNIRVANAやPEARL JAMといったグランジ系、METALLICAやPANTERAのようなメタル寄りのバンドがそれぞれチャート上で大成功を収めていた時期。そろそろ新しい波を‥‥と考え、積極的に海外のバンドに目を向けていたんでしょうね。例えばこのCATHEDRALの他にも同じ『Earache』出身の爆走デスメタル・バンド、ENTOMBED(スウェーデン出身)が、『Roadrunner』所属の新世代デスメタル・バンド、SEPALTURA(ブラジル出身)が、それぞれワンスポット(アルバム1枚契約)でこの時期、アルバムをアメリカ国内でリリースしてるんですよ。CATHEDRALもその流れで見初められたんでしょうけど‥‥多分『Epic』のA&Rは「これからは‥‥デスメタルが来る!」と本気で思ってたんでしょうね。ま、結局どのバンドもチャート的な大成功を収めることはなかったんですが(かろうじてSEPALTURAがトップ50に入った程度かな)。

 話をCATHEDRALに戻しましょう。そういったメジャー配給が影響して、制作費を多く貰えたのか、とにかくサウンドプロダクションが数段上にレベルアップしてるんですよ。それ以前とも、そして再びインディー配給に戻ったそれ以後と比べても、このアルバムだけ異質なんですよ。良くも悪くも『アメリカン』というか‥‥いや、俺はそこがまた好きだったりするんですが。プロデュースやエンジニアを務めたのが、デイヴ・ジャーデンやリック・ルービンの下で仕事していたことがあるデヴィッド・ビアンコという人。この人のサウンドにはやはり癖があって、とにかくドラムサウンドが分厚いんですよ。例えばALICE IN CHAINSの初期作品辺りを思い浮かべてもらうと判りやすいかな‥‥そこに加えて、ギターのザクザク感も歯切れ良く録音されてて、如何にもメタルの人といった感じで、個人的にはこの組み合わせはベストマッチングだと思ってます。

 曲も、確かにスローな曲もあるにはあるんだけど、無駄に長くなくてコンパクトにまとまってるのが殆ど。長くてもせいぜい6分くらいまで。さすがに以前みたいに10分超えるようなのはなし。しかもアレンジにメリハリが利いてて、良い意味で洗練されてるのね。この辺はアメリカ人プロデューサーを迎えたことによる影響が大きいのかな。コンパクトな曲の中にもしっかりと展開が盛り込まれていて、その辺はブリティッシュ・メタル的かな、と。

 やはりハイライトとなるのは前半‥‥頭の "Ride" から始まる怒濤の流れでしょう。明らかにBLACK SABBATHの影響下にあるサウンドで、前作ではただ「引き摺る」だけだったアレンジが、このアルバムでは更に「聴かせる」方向に意識がいってるんじゃないかと。同じスラッジ系でも前作の曲と今作の "Enter The Worms" とでは雲泥の差じゃないかな。ま、真性マニアはこっちよりも1st時の路線の方が好きなんでしょうけど。そしてその後にくる "Midnight Mountain" の名曲振りといったら‥‥これこそヘヴィメタル・ディスコですよ。そしてメロウなバラード調と言えなくもない "Fountain Of Innocence" のような曲まである。この前半だけでも彼等がこの1年ちょっとで如何に成長したかが手に取るように判るんじゃないでしょうか。

 このアルバム時期に初来日、当時はまだツインギター編成だったんですよね。その後、BLACK SABBATHと同じシングルギター編成(4人組)になり、アルバムの制作を重ねていくわけですが、やはりこの2ndが雛形となってその延長線上にある作品を量産してるように映ります。そういう意味でも、このアルバムが彼等にとってその後の路線を決定づける布石になったのは間違いないようです。所謂アメリカの『ドゥームメタル』とはまた違った、独特な個性を持ったアルバムなので、是非一度聴いてみてください。



▼CATHEDRAL「THE ETHEREAL MIRROR」(amazon:日本盤US盤

投稿: 2005 06 13 01:25 午前 [1993年の作品, Cathedral] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/03/04

GUNS N' ROSES『THE SPAGHETTI INCIDENT?』(1993)

 さて。唐突に新コーナーというか新コンテンツを始めてみようかと思います。

 思えばこのサイト(ブログ)、一般公開以前に完了してるコンテンツ(「洋楽100番勝負」)とかあるんだよね‥‥で、ラジオ絡み以外で純粋な連載ものコンテンツって皆無なのね。ずっと考えてはいたんだけど、なかなかいいアイデアがなくてね。

 ところが数日前。急にあることを思いついたんですよ‥‥いや、思いついたとかそういうレベルじゃなくて‥‥単純に、2005年も2ヶ月過ぎてようやく今年の抱負が決まったというか。既に旧正月も終ってるって話ですよ、ええ。けどね、フェスの発表とかいろいろあって、そして2月には俺の根っことなるようなアーティスト達‥‥マニックスだったり元GN'R組だったりが来日して、今年に入ってからジンジャーがいろいろやらかしたり、MOTLEYが復活して新曲だしたり、HANOI ROCKSが新作出して来日しようとしてたり、日本でもZIGGYを取り巻く周辺が慌ただしかったり‥‥ロケンロールが素敵なことになってるんですよ、ええ。

 というわけで‥‥今年2005年の抱負は今更ながら‥‥


「ロックンロールと無理心中」

に決まりましたので、ええ。冗談抜きで。ただ心中するんじゃなくて、ロケンロールを道連れに、無理心中してやりますよ! それくらいの覚悟で今年は大晦日まで突っ走るつもりです。奇しくも今年はロック生誕50周年らしいですからね、景気いいじゃないですか! いや、まぁ今年限定とは言わずに、このまま死ぬまで爆走し続けたいですけどね!

 ってことで、新コーナー。単純に『こんなロケンロールを道連れに無理心中したい』と思わせるロック名盤/隠れた名盤/珍盤等を紹介する、単純に俺のオナニーです(ま、こういうことを書いて、ネット上にアップすること自体がそもそもオナニー以外の何ものでもないわけですが)。で、オナニーついでに、道連れにする相手もオナニーしてるような奴にしようじゃないか‥‥ってことで、記念すべき第1回はガンズのパンク・カバー集「THE SPAGHETTI INCIDENT?」に決定したわけです(すっげー強引だな)。

 1993年末にリリースされた、GUNS N'ROSESの企画アルバム。既に「USE YOUR ILLUSION 1&2」('91年)制作時に録音されていたパンク・カバー曲を、後々シングルかミニアルバムとしてリリースしようとしてたらしく、レコーディング中アクセル・ローズはラーズ・ウルリッヒ(METALLICA)に「何かいいパンク曲ない?」って探りを入れてたんだって。ま、ラーズもラーズで「他人に薦めるくらいなら、自分らでやっちゃえ!」ってことで "So What" とかやっちゃってましたけど。

 そんなEP用に数曲レコーディングしてたものに、ダフ・マッケイガンがソロで録音したものと、新たにレコーディングした非パンク曲を追加してフルアルバムに仕上げてしまったのが、これ。'91年春から約2年以上に渡って続いた長期ワールドツアーも終了し、その打ち上げというか後夜祭的な1枚と呼べるかもしれません。だから全曲カバー。しかもパンクばかり。それも有名バンドの、地味な曲ばかり。

 1曲目の非パンク、THE SKYLINERSの "Since I Don't Have You" は別として、その後に続くTHE DAMNED、U.K.SUBS、NEWYORK DOLLS、IGGY & THE STOOGES、THE DEAD BOYS、T-REX(SOUNDGARDENとのメドレー)、NAZARETH、MISFITS、SEX PISTOLS、JOHNNY THUNDERS、FEAR‥‥メジャーとマイナーの差がスゴイよね。まぁちょっとしたパンク好きなら全部名前は知ってるだろうし、曲も比較的手に入りやすいものばかりなんで耳に馴染んだものばかりなはず。なのにT-REXやSEX PISTOLSの曲はメチャクチャ地味なマイナー曲ばし、NEWYORK DOLLSも1stの方じゃなくて2ndからってがミソ。この中で一番メジャーっていったらTHE DAMNED "New Rose" とIGGY & THE STOOGES "Raw Power" くらいなんじゃないかな‥‥って思ってるのは、俺だけ?

 既に'92年頃から演奏されてたMISFITS "Attitude"(ダフのボーカル)や、'90年の「ファーム・エイド」でも確か演奏されたU.K.SUBS "Down On The Farm" 等、ライヴで馴染みの曲もあるので、ファンなら思わずニヤリとしちゃうんじゃないかな。

 あとダフのボーカル曲が多いのがいいね("New Rose"、"Raw Power"、"Attitude"、"You Can't Put Your Arms Around A Memory")。お遊びっぽいし、何よりもダフのラフな下手上手ボーカルを聴いてるとそれだけでパンクっぽく聴こえてくるし。あとスラッシュも歌ってるんだよね、"Buick Makane" で、アクセルとデュエットって形で。それこそ先に書いたような「後夜祭的お遊び」感が強いし。

 あとさ、ほら。"Ain't It Fun" でアクセルとマイケル・モンロー(HANOI ROCKS)がデュエットしてるでしょ。原曲を歌うスティヴ・ベイターズは'80年代半ば、ニューヨークでマイケル・モンローとルームシェアしてたっていう繋がりもあるし、アクセルはHANOI ROCKSに憧れて、自身のレーベルからHANOIの旧譜を再発したり、マイケルの "Dead, Jail Or Rock'n'Roll" PVでは遊びに来たアクセルが飛び入りしたり‥‥そんな『いろいろな結びつき』を感じさせる、強烈な1曲なんだよね。とにかくカッコ良過ぎ。

 ま、現在のアクセルは、そんなマイケルを脅威に感じて同じステージに立つ事を拒んでるようですが(2001年のサマソニの件な)。

 とにかく。GN'Rの所謂黄金時代の終焉を飾ったのが、このお遊びアルバムだったことは間違いないでしょう。そして、お遊びだったからこそ、オリジナルアルバムにない『緩さ』が感じられたり‥‥「GN'R LIES」と同じだよね、方向性は違ってるけど。

 パンクロックの名曲/迷曲をオナニー的にカバーして、アルバムにまでしてしまって、挙げ句の果てにシークレットトラックにチャールズ・マンソンの曲までカバーしてしまうという無防備振り。というかバカっぷり。やはり地獄に道連れしたいよ、アクセル・ローズくん。



▼GUNS N'ROSES「THE SPAGHETTI INCIDENT?」(amazon

投稿: 2005 03 04 12:23 午前 [1993年の作品, Guns N' Roses] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/09

とみぃ洋楽100番勝負(83)

●第83回:「So Young」 SUEDE ('93)

 SUEDEの登場は衝撃だった、とか当時からメディアは騒ぐけど、それって結局「その頃はそういうバンドがいなかった/時代遅れだった」から、物珍しくて騒いでただけじゃん。勿論、そういうスキャンダラスな側面だけでなく、しっかりした曲が書けたからこそ、彼等は名実共にトップに躍り出たわけだけど。

 元々グラマラスなロックが好きだった俺からすれば、最初の数枚のシングル‥‥ "Drowners" とか "Metal Mickey" は正直物足りなかったのね。ルックス的には別にケバいってわけでもないし(あれだったら初期JAPANなんてどうなるんだよ!?とか当時はよく思ったもの)、曲はまぁ所謂UKロックのレールの上にあるフォーマットから外れてないよな、とかいろいろ不満もあったし。

 けどさ。3枚目のシングル "Animal Nitlate" で俺的にドカンときてね。やっぱりバーナード・バトラーの粘っこいギターだよね。あれが完全開花したのがこの曲辺りからかな、と。勿論その片鱗は前2曲にも十分あったけど、やはり物足りなかったし。

 そしてアルバムがリリースされて、買ってみて。1曲目の "So Young" でトドメを刺されて。ブレット・アンダーソンのボーカルも思ってた以上に「色っぽい」し、相変わらずバーニーのギターは凄いエロいし。まぁサウンドプロダクションがイモっぽいとこは差し引いても、こりゃ面白い新人がイギリスから出て来たなぁ‥‥ってドキドキしたもんですよ。

 ただひとつ。非常に残念なのが、バーニー在籍時のライヴを一度も観ることができなかったこと。1stの時はチケット取れなかったんだよな。んで、「来年には2ndアルバムが早くも出るみたいだし、その時は必ず行こう」って思ってたのに‥‥結果はご存知の通り。だから俺、2ndの単独来日の時は行かなかった。初めて観たSUEDEのライヴは3rdリリース直前にお台場のイベントで来日した時だもん。アチャー。

 今となってはどの曲も忘れ難い思い出いっぱいで、どの時代のアルバムもお気に入りなんだけど、デビュー当時にはそういう風に感じていたんですよ、俺。今つるんでるような友人達は知らないだろうけどさ(いや、今まで誰にも言ったこともなかったけどさ)。

 そんなブレットとバーニーが再び、THE TEARSというバンドで活動を共にするというじゃないですか。頭では「SUEDEとは別物」と理解してるものの、やはり期待しちゃうわけですよ‥‥だってそりゃそうでしょ? 意地悪な意味ではなく、純粋に「この21世紀に、このふたりが揃う意味」を知りたいですからね。すっげー楽しみだよね。



▼SUEDE「SUEDE」(amazon

投稿: 2004 11 09 12:00 午前 [1993年の作品, Suede, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/08

とみぃ洋楽100番勝負(82)

●第82回:「Amazing」 AEROSMITH ('93)

 多分このアルバムからエアロに入ったという、現在20代の洋楽ファン、多いんじゃないかな? 今でこそ映画「アルマゲドン」の主題歌("I Don't Want To Miss A Thing")やコカ・コーラのCMソング("Jaded" 等)といった「誰もが一度は耳にしたことがある洋楽ソング」の仲間入りを果たしている彼等だけど、そういう意味での「一般層への知名度アップ」は多分この「GET A GRIP」という初の全米ナンバー1アルバムと、このアルバムを引っ提げて敢行された'94年4〜5月の来日ツアーのお陰だったんじゃないかな、と。何せ武道館&横浜アリーナで計10回近くの公演を全てソールドアウトにしたわけですからね‥‥

 そして。俺にとっても「GET A GRIP」というアルバムは初心を思い出させてくれた、思い出深い1枚なんですね。丁度学校も卒業した頃にリリースされて、フリーター生活も始まって。でも順調にいくはずだったバンドが空中分解して、ひとりぼっちになってしまって。あーこんなはずじゃなかったのに、人生どこで間違えたんだろう‥‥って初めて自分の選択を(一瞬だけど)後悔した時期でさ。バイトが終わると、とりあえずスタジオに行って個人練習で発声練習と簡単な弾き語りで歌をうたって。夜に家に戻って、ひとりコンビニ弁当食べながらテレビ観て音楽聴いて‥‥泣きはしなかったけど、あぁ何か違うなぁ‥‥って。

 珍しく対訳を読みながらこのアルバムを聴いててさ。最後の曲であるこの名バラード "Amazing" の歌詞を読んで、ハッとして。正に今の俺だったのよ、この歌詞は‥‥

It's amazing / with the bling of an eye you finally see the light / It's amazing / when the moment arrives that you know / you'll be alright / It's amazing / and I'm sayin' a prayer / for the desperate hearts tonight

 あー俺、まだ何にも始まってなかったよな。始まった気になってたけど、何も始めてなかったよな、って。そう思ったら泣けてきてさ。涙が止まらなくてねぇ‥‥自分の足下を見つめ直して、気持ちも新たに前を向いた瞬間に立ち会ってくれたのが、俺のロック童貞を奪ったオヤジ共だったと。

 この曲には他にもすっげー好きな歌詞があってね。

Life's a journey not a destination

あーホントそうだよなぁって、凄く納得させられて。父親のいない自分にとっては、正に「親父からの格言」みたいなもんでさ。この曲の歌詞の一言一句を噛み締めて、次の日からまた音楽活動に積極的になったんだよね。路上に出たり、ギター1本でも歌わせてくれるイベントに出させてもらったりしながら、新しいバンドを組もうと試行錯誤を繰り返し‥‥



▼AEROSMITH「GET A GRIP」(amazon:限定盤通常盤

投稿: 2004 11 08 12:00 午前 [1993年の作品, Aerosmith, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/05/08

DINOSAUR JR.『WHERE YOU BEEN』(1993)

J・マスシス率いるDINOSAUR JR.の、通算6作目(だよね?)となるアルバム「WHERE YOU BEEN」は、ある意味『時代のど真ん中』に投下された爆弾みたいなものでした。前作「GREEN MIND」がリリースされたのが'91年初頭。そう、まだNIRVANAを始めとするグランジの波が訪れる以前の制作/リリース。いろんな意味でその後のアメリカ・ギターロック・シーンを変えてしまったグランジ・ムーブメント‥‥ある意味「GREEN MIND」という傑作は、そのシーンの中で語られる機会が多かったと記憶しています。

そして'93年2月。グランジの津波が依然絶えない時期にドロップされたこのアルバム。メディアや音楽ファンの間でも賛否両論だった1枚‥‥当時の音楽雑誌では確か「J・マスシスがニール・ヤングになってしまった」とか何とかいって、酷評されていたような気が‥‥それくらい前作との違いを感じさせる、意欲的な1枚だったといえるでしょうね。

確かに泣きのギターやドッシリとしたマイナーミドルチューンにJ・マスシスの歌が載ると、何となくニール・ヤングっぽいような気さえするよな‥‥うん、そういえば当時このアルバムを聴いた時、同じようなことを感じたかも。けどそれって雑誌での予備知識があったからかもしれないし(聴いたのが先か、雑誌読んだのが先か、実はもうよく覚えてないんですが)‥‥ただね、ひとつだけ確かなことがあるのよ。それは‥‥俺にとっては、明らかに「GREEN MIND」よりもこの「WHERE YOU BEEN」の方が好きだった、一発で気に入ってしまったという点。この事実だけは変えようがないしね。事実、今でもよく聴くDINOSAUR JR.のアルバムとなると、真っ先に手を出すのはこのアルバムだしね(ま、だから最初に取り上げる作品もこれに決めたわけだけど)。世間的には「GREEN MIND」であったり、あるいはそれ以前のインディーズ時代の作品なんだろうけどさ、俺が彼ら(というかJ)を認識し、受け入れたのがこのアルバムからだったんだから、そりゃ仕方ないよね。

単なる轟音ギターバカで終わらない、いちソングライターとして、そしていちミュージシャンとしての成長を伺わせる内容で、楽曲のバラエティーも非常に広がっていると思います。NIRVANAという存在がいたからこその成長/変化だった、と取ることもできますが‥‥まぁ単純にそういう時期だったんでしょうね。決して歌の上手い人ではないんだけど、このギターとこの曲には、やはりこの頼りなさげなJのボーカルじゃないとハマらないんだよね。

俺、よくさ、「胸を掻きむしられるような情熱的な曲」ってのを求める時期があるのね。どうしようもなく切なくなって‥‥本当はそれを他者(=女性)に求めればいいんだろうけど、なかなかそうもいかないこともあってね(深く追求するなそこ)。そういう時に必ず聴きたくなるのが、このアルバムの1曲目、"Out There"。熱すぎないボーカルなのに、ギターフレーズだけはもう涙腺緩みまくりな名フレーズの連続。ホント、この1曲だけの為にアルバム引っ張り出すこともしばしば。そんだけ俺、愛に飢えてるってことか‥‥!?

ほのぼのした歌モノあり、轟音ギターが載った疾走チューンあり、アコースティック主体の聴かせる曲ありで、インディーギターロックやグランジといった表現では片付けられない、いや、片付けてはいけない魅力的な楽曲ばかり。ま、初期の彼らを好む人達からは「終わった」作品なのかもしれないけど、正直俺はここから「今のJ・マスシス」が始まったと思ってるような人なのでね。現在の彼のソロアルバムが好きな人は間違いなく一発で気に入る作品集だと思いますよ。

NIRVANAとかニール・ヤングとかグランジとかインディーギターロックとか‥‥正直、そんなのどうでもいいのよ。別にDINOSAUR JR.を語るのに必ず必要な要素だとも思えないし(いや、必要なのかもしれないけどさ)‥‥個人的にはまず、まっさらな状態でいきなり聴いて欲しい1枚。そう、こんな駄文読む前に、まずは聴いてみてくださいよ!



▼DINOSAUR JR.『WHERE YOU BEEN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 05 08 08:29 午前 [1993年の作品, Dinosaur Jr.] | 固定リンク

2004/01/23

JESUS JONES『PERVERSE』(1993)

間もなく久し振りの来日を果たすJESUS JONES。その彼らが世界的に大ヒットを記録した前作「DOUBT」から2年振りに発表した、'93年のサードアルバム「PERVERSE」。前作でイギリスや日本のみならず、アメリカでも大ヒットを記録した彼ら。特にシングル "Right Here, Right Now" と "Real, Real, Real" が共にチャートのトップ10入りを果たす程。当時イギリスでは「マッドチェスター」と呼ばれる、マンチェスター出身のダンサブルなロックバンド(STONE ROSESやHAPPY MONDAYS等)が絶大な人気を誇っていましたが、ことアメリカではさっぱりでして‥‥「イギリス臭」が強ければ強い程、アメリカでは嫌われるわけですよ‥‥そんな中、EMFは "Unbelievable" で全米ナンバー1を、そしてJESUS JONESは上記の2曲で同じように成功を収めたわけです。恐らく、'90年前後に登場したイギリスのバンドの中で、最もアメリカで成功したのはこの2バンドだったと記憶しています。

そんな成功に後押しされ、リリースされたのがこの「PERVERSE」だったのですが‥‥これが当時、賛否両論だったと記憶しています。つまり、成功した前作「DOUBT」の路線とは明らかに異なる、「ホントにやりたいこと、やっちゃいました!」的空気が漂う、非常にアーティスティックな内容なのです。大ヒットした "Right Here, Right Now" と "Real, Real, Real" 的なポップ路線は影を潜め、ヘヴィでダーク、更に当時主流だったハウスやテクノの領域に完全に足を伸ばしつつあることを伺わせる作風。アイドル的な側面すら見せていた前作にあったポジティヴさすら、あれは作り物だったんじゃないか、実はこっちの方が本当の彼らの姿なんじゃないか‥‥なんて当時は思ったりもしました。ま、要するに「DOUBT」を発表してから全世界をツアーで回り、その間にアメリカでの大ヒットがあって、そういった「これまで経験できなかったもの」を観てきた結果、人間として、そしてミュージシャンとしてひと回りもふた回りも大きく成長させたのだと‥‥根本にあるものは実はそんなに変わっていないんだけど、引き出しが増えた分だけいろんな装飾も増えたし、また「自分達は今後、どういう方向に進んでいけばいいのか‥‥?」というのも、多少なりとも見えてきたんでしょうね。それがこの「PERVERSE」だったと。リリースから11年(!)経った今、改めてこのアルバムを聴くとそう思えてくるわけです。

前作とは大きく変わるとはいいながらも、俺はこれを名作だと思ってますからね。ポップサイドを代表するのが「DOUBT」だとしたら、その反対‥‥ダークサイドを代表する作品がこれだと。ダークとはいっても、聴いていて膝を抱えて凹んでしまうようなものとはちょっと違うんですけどね。トーンは確かに暗く重いものなんですが、楽曲そのものはメロディアスなものが多く、過去の彼らと比べればポップ度は低いんですが、それでも十分にポップなわけですよ。例えばシングルにもなった1曲目 "Zeros And Ones" とか "The Right Decision"、"Magazine" といった辺りは前作の延長線上にあるといってもいい作風ですしね。

そんな中、アルバムからもファーストシングルとなった "The Devil You Know" の美しさ、怪しさといったら‥‥俺、当時から本当にこの曲が大好きで、それが高じて自身がDJやる時に思わずかけてしまった程。今聴いても全然アリですよね? そう思いません??

このアルバム、日本盤には2曲のボーナストラックが追加された全14曲入りなんですが、残念ながら現在は生産中止みたいなんですね。ボーナストラックである "Caricature" と "Phoenix" のハードコア・テクノ振りを聴いて、どれだけ当時ブッ飛んだことか。21世紀を迎えた今聴くと「別に、この手のバンドって腐る程いるじゃん?」って軽くあしらわれてしまうんでしょうけど、ホント当時は衝撃だったんですよ、良くも悪くも。

そういったハードな側面も備えつつ、特にこのアルバムは後半以降のダークな盛り上がりが絶品でして‥‥英米盤だとラスト3曲("Tongue Tied"、"Spiral"、"Idiot Stare"の流れね)、日本盤だとその前に "Phoenix" が入るので、ラスト4曲ってことになりますか‥‥ヘヴィでダークで耽美。あのJESUS JONESが!?って感じですよホント。

確かにね、ファーストやセカンドの路線が好きだった人に不評なのは、よーく判るんですよ。実際、当時俺の周りにいたJJファンにも、このアルバムを聴いて離れて行った奴、結構いたし。けど、俺は全く逆で‥‥更に好きになっちゃったんだよね。やるな、マイク・エドワーズ!って。

ちなみにこのアルバム、前作の余波を受けて大ヒット‥‥というわけにはいきませんでした。アメリカでは確か惨敗だったんじゃないかな? ま、この失速のお陰で、続く4作目のアルバムをリリースするまでに4年以上もの歳月を要することになっちゃったんだけどね‥‥

以前、もしJESUS JONESで最初に聴くなら「DOUBT」をオススメする!と書きましたが、あれを書いた'99年当時と比べ、かなりボーダレスな時代となった今だからこそ、この「PERVERSE」を最初に聴いてみるのもいいかな?なんて思います。ま、あれから5年近く経って、バンドも無事復活し、更にはベスト盤まで出たし、5年前と比べれば状況は良くなっているとは思いますけど(来日が決まるくらいですからね!)‥‥結局、日本盤とか出ないし、廃盤多いし。中古でもいいんで、ホント興味を持ったら聴いてみ!



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投稿: 2004 01 23 03:07 午前 [1993年の作品, Jesus Jones] | 固定リンク

2004/01/10

SOUL FLOWER UNION『カムイ・イピリマ』(1993)

  SOUL FLOWER UNIONの、記念すべきファーストアルバム。今から10年前‥‥1993年11月にリリースされたこのアルバム、俺は当時大嫌いでした。このアルバムを聴いたことで、俺は彼等のファンを辞めたくらいですから‥‥いや、ファンって程でもなかったけど、とにかく積極的に彼等の音楽と接することは止めました。結局、その後7年近く経つまで、彼等の音源に手を出すことはなかったわけですから、そのショックの大きさが何となく判っていただけるかなぁ、と。

  元々はNEWEST MODELとMESCALINE DRIVEというふたつの別々のバンドだった彼等。共に'80年代半ばにシーンに登場し、ある時期から交流が生まれ、そして行動を共にするようになった‥‥互いのライヴに双方のメンバーがステージに上がったり、アルバムに参加したりして、更に共鳴し合っていく中での合体‥‥それはごく自然な流れでした。当時リアルタイムで彼等を見ていた者なら、誰もがそう思ったはずです。

  とはいうものの、ここで聴けるサウンド‥‥これは「SFUサウンド」というよりもむしろ‥‥MESCALINE DRIVEのそれなんですね。それもそのはず、実はこのアルバムは最初、MESCALINE DRIVEのサードアルバムとして制作していたものなんです。中川敬等NEWEST MODELの面々が全面参加し、更にゴージャスに、更にビルドアップしたサウンドを得たMESCALINE DRIVEになるはずだったのに、その途中で彼等は合体して、ひとつのバンドになってしまった。新しいスタートを切るというよりも、元々あったものの延長線上といったノリ。それがこのファーストアルバムなのです。

  収録曲全10曲でメインボーカルを務めるのは、そのMESCALINE DRIVEのボーカルだった内海洋子。中川はその個性的な歌声で所々コーラスを取ったり、数パートでリードを取るのみ。伊丹英子の歌声も聞こえてきたりしますが、やはりこのアルバムでの「バンドの顔」は内海の声なんです。だからなのか、中川がリードを取るようになる後のSFUから入っていったファンや、俺みたいにNEWEST MODELが大好きだった者からすると、もの凄い違和感が残るんです。つまり多くの人にとって「SFUの顔=中川敬」という公式があるのに、それを完全に無視したのがこのアルバム、しかも新バンドの記念すべきファーストアルバムだったと。そりゃね、裏切られた気にもなりますよ。

  で、あれから10年経ち、俺も大人になり、懐も広くなり、それなりに理解力も持つようになった今聴くと‥‥特に悪いとは思わない。決して「死ぬほど好き!」なんて口が裂けても言えないけど、それでも「これもありだな?」と思えるくらいにはなってましたね。中川サイドから物事を見ようとすると確かに厳しい作品かもしれませんが(とはいっても、全曲に中川の名前がクレジットされてるので、曲そのものからは彼等らしさを十分感じることができるんですが)、もっとフラットな気持ちで接すると、内海洋子というシンガーの個性や醍醐味を存分に味わえる1枚なんですわ。何よりもこの人、英語の発音が非常によろしい。MESCALINE DRIVE時代から英語で歌うことが多かったわけですが、ここでも1曲目 "お前の村の踊りを踊れ" での英詞ラップ(そしてそこに絡む中川のボーカル)や "ブルーギル" 等で彼女のネイティヴ並みの英語を堪能することができます。他にもストレートなロックンロール "霊柩車の窓から" とか、ファンキーなロックンロール "殺人日和"、スローテンポで彼女の歌を存分に味わうことができる "ひぐらし" やファーストシングル "世界市民はすべての旗を降ろす" 等、とにかく個性的で誰にも似ていない/何処にも属さないロックンロールを体験することができます。そういった意味では本当に一種独特な存在だったわけですよ、彼等は。

  その後の展開を考えると、ここでの彼等はまだ落ち着いた印象を受けます。結局更にいろんなものを飲み込んでいって、ドンドン成長していった彼等の、スタート地点と考えるにはちょっと弱い気もします。そういう意味ではこのアルバム、ふたつのバンドがひとつに合体して、そこから新しいサウンドを手に入れるまでの過渡期かな?という気もします。決して悪くはないんだけど、その後の彼等を知っちゃうとちょっと‥‥みたいな。いや、それでも十分に興味深い1枚ですけどね。内海は現在「うつみようこ」名義でフラワーカンパニーズや元THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、SFUのメンバーと共に活動していますが('90年代末にSFUは脱退済。その後も時々サポートとしてライヴには参加しています)、そこでの彼女に歌に興味を持った人なら絶対に気に入ると思います。ま、ここ数年のSFUから入っていった人は最後に聴いた方がいいかもしれないけど‥‥。



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投稿: 2004 01 10 12:00 午前 [1993年の作品, Soul Flower Union] | 固定リンク

2003/10/13

ENUFF Z'NUFF『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』(1993)

アメリカのハードロック/パワーポップ/グラムロック・バンド、ENUFF Z'NUFFが1993年春にリリースした、通算3作目となるオリジナルアルバム「ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE」。前2作をリリースしていた「Atlantic/Atco」レーベルから契約解除され(ファーストアルバム「ENUFF Z'NUFF」に比べ、セカンド「STRENGETH」は待ったくといっていい程ヒットしなかった)、新たに「Arista/BMG」と契約。前作から約2年振り、満を持してのリリースとなるはずが、出鼻を挫かれるような出来事が起きます。

それはデビュー時から参加していたドラムのヴィッキー・フォックスの脱退です。レコーディングには参加しているものの、丁度この頃から元MOTLEY CRUE(当時)のシンガー、ヴィンス・ニールと活動を共にし始め、結局ENUFF Z'NUFFを脱退し、ヴィンス・バンドに加入することになるのです。そういうこともあって当時のアルバムジャケット(→右上)にはメンバーが3人しかいないのです。が、ジャケット撮影終了後に無事、リッキー・ペアレントという人物の加入が決まります(その後、現在に至るまで彼はバンドに在籍しています)。

更に、ギタリストのデレク・フリーゴにもレコーディング中に脱退騒動が持ち上がります。実際、一時期バンドを離れたようです。レコーディングには初期のバンドに関わっていたジーノ・マルティノが参加したものの最終的には復帰、ツアーにも参加しています(が、このアルバムのツアー終了後に正式脱退)。

そして‥‥レコーディングに入る前に、シンガー/ギタリストのドニー・ヴィがドラッグ問題で入院~リハビリのため、数ヶ月バンドを離脱する事件も起きています。セカンドアルバム「STRENGETH」がファースト以上にダークでヘヴィな作風だったのは、ソングライターであるドニーのドラッグ癖が影響していたのだ、と後に自身が語っています。

レコード契約を失ったりメンバー個人の問題や脱退騒動等、バンドとしてはどん底といっていい状態だった彼等ですが、心機一転、このアルバムではこれまでとは違ったアプローチで新たな側面を見せてくれています。

まずこのアルバムのレコーディング・セッションは2度行われています。HEARTや復活後のCHEAP TRICK、POISONやBAD ENGLISHといったハードロック/産業ロックを多く手掛けてきたリッチー・ズィトーをプロデューサーに迎えた7曲("Right By Your Side"、"These Daze"、"Innocence"、"One Step Closer To You"、"Takin' A Ride"、"The Love Train"、"Mary Anne Lost Her Baby")と、ドニー&チップ・ズナフ&フィル・ボナーノという布陣でプロデュースされた5曲("Superstitious"、"Black Rain"、"Master Of Pain"、"Bring It On Home"、"Rock N World")に分かれるのですが、こうやってレコーディング時期毎に分けてまとめて聴いてみると前者と後者とで作風が若干違うことに気づきます。リッチー・ズィトーが手掛けたということもあってか、前作までにあったBEATLES的なポップな側面を更にシュガーコーティングしたかのような人工的なサウンドエフェクトをあしらった前者に対して、'93年という時代背景(産業ハードロックの後退~グランジ/ヘヴィロックの台頭)を踏まえた上でそういった要素を取り込んで自己流に表現しようとする新たな側面を見せてくれる後者は、確かに前作までの「ヘヴィ」とは違ったヘヴィさを表現してるように感じます。内面的ヘヴィさを強調した「STRENGETH」とは違った、単純に装飾としてのヘヴィさ。楽曲の持つメロディ自体はそれまでと何ら変わっておらず、むしろそのポップなメロディセンスは更に磨きがかかっているようにも感じられます。確かに「時流に乗って便乗しようとしてる」と非難することも出来るでしょうし、「完全に消化しきれていない」という声もあるでしょう。けど、個人的な趣味からいえば初期3枚のメジャーレーベルからのアルバムの中では、これが一番聴きやすいと思うんですよね。保守的ながらもメロの冴えは抜群なリッチー・ズィトーが手掛けた楽曲群といい、時流に乗ったアレンジを持つヘヴィなセルフ・プロデュース作といい、とにかく聴きやすい。ハードロックの範疇でのサウンドですが、これはこれで素晴らしい1枚だと思いますよ。

とにかく名曲揃いなんですよ。後にガールズ・ポップバンドであるTUESDAY GIRLS(後にTUESDAYSに改名)はENUFF Z'NUFFの曲を幾つかカバーしてるんですが、特にこのアルバムからのファーストシングルにもなった"Right By Your Side"は出色の出来で、Z'NUFFバージョンは勿論、TUESDAY GIRLSバージョンもまた良いんですよね。他にも名バラード"Innocence"や、やはりメロの冴えが異常に優れている"Mary Anne Lost Her Baby"等、印象に残る曲は沢山あります。

しかし、いくら1曲1曲が優れているからといっても、アルバムのトータルバランスとしてはちょっと‥‥という気もしたりして。プロデューサーが2チームあったり、レコーディング時期やアプローチがそれぞれ異なっていたり等、いろんな事情が絡んでくるんですが、それらは全てバンドの意思ではなくレコード会社の指示だったことも、彼等の弁護のために記しておきます。その後、そういったメジャーレーベルのやり方に嫌気が差した彼等は、インディーレーベルで地道に活動していくことになります。

そうそう。このアルバムはリリース後、暫くして廃盤になってしまうんですが(唯一日本盤のみ入手可能でしたが、非常に品薄で手に入りにくかったのも事実)、このアルバムの権利を「BMG」から買い取り、2000年秋にインディーレーベルから再発されています。ジャケットが2種類あるのはそのためです。また、当初は日本盤にのみボーナストラックとして収録されていた"Fingertips"というバラードも、再発盤に無事追加収録され、現在では世界共通の全13曲入りとなっています。その他、再発時にバラされた事実として、当時GUNS N'ROSESのメンバーだったスラッシュが1曲、"The Love Train"でギターを弾いているというのも、新たな魅力となっているのではないでしょうか(ま、言われるまで気づかなかったし、言われても「そんな気がする」程度なわけですが)。



▼ENUFF Z'NUFF『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』
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投稿: 2003 10 13 06:41 午後 [1993年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2003/09/05

小沢健二『犬は吠えるがキャラバンは進む』(1993)

  もう10年ですよ、この「犬は吠えるがキャラバンは進む」がリリースされてから。この10年の間にアルバム、たったの4枚ですよ。しかも3枚目と4枚目の間、5年くらいですよ‥‥実質、小沢健二が精力的に活動したのって、'90年代半ばだったわけですよ。フリッパーズ・ギターの解散があって、その後このアルバムを作って、そこからの快進撃をリアルタイムで通過した人達って、もう20代半ばから30代だったりするわけですよ。そりゃオザケンも年を取るわけだわ。

  俺ね、フリッパーズが大嫌いだったの。今でも進んで聴くタイプの音楽じゃないんだけど、以前よりは聴けるようになってきた。何でだろう、あの当時('90年代初頭)の俺、ああいう小洒落た音楽が苦手だったというか‥‥ま、ヘヴィでハードコアな世界にドップリ浸かってた時期ですしね。デビュー盤~セカンドまではリアルタイムで普通に聴いてて、それ以降の盛り上がりに気後れして‥‥以降、オザケンソロやCorneliusが登場するまで、彼等に対して嫌悪感みたいなのがあってね。だからよく、同年代の人達と当時の音楽の話をする時、絶対にフリッパーズの話題になっても俺、全然着いて行けなくて。まさか「大嫌いだった」とは言えないしね。

  そんな俺が、彼等に対して好意を抱くようになる切っ掛けが、実はこのアルバム。シングル"天気読み"は普通にTVの深夜番組で観たり聴いたりしてたんだけど、特にどうって思わなかったのね。

  ところがね、その後このアルバムを聴く切っ掛けを得たんですよ。まぁ自分で買ったり借りたりしたわけではなくて、当時一緒に住んでた彼女が友達からこのアルバムを借りてきて。で、そこで初めて通してアルバムを聴くわけですよ‥‥何かね、最初は全然印象に残らなくて。オザケンの歌い方、その後と比べると特別ここでは淡泊じゃない? そういうのもあったんだろうけど‥‥

  けどね、2度3度とリピートしてるうちに自然と口ずさんでるのね、アルバムの曲を。最初は"暗闇から手を伸ばせ"であったり"地上の夜"であったり。でその内に今度は"昨日と今日"とか"ローラースケート・パーク"辺りを覚えちゃったりして。"向日葵はゆれるまま"でまったりしたり、"カウボーイ疾走"にちょっと自分が好きな空気を感じ取ったりとか‥‥そういう風に、何度も繰り返し聴く度に好きになっていったアルバムなんですよ。

  やっぱり今でもこのアルバムを聴く時って、そういう当時の淡い想い出が脳裏をよぎるのね。だから余計に切なくなるんだ、聴いてるこっちが。別に想い出に浸りたくて聴くわけじゃないんだけど‥‥

  このアルバム、現在は廃盤扱いで。確か数年前に「Dogs」というタイトルでジャケット変更されて再発されたんだった(→ジャケットはこれ。真っ白ですが、CDケースがカラフルなので目に付くはず。あ、中身は再発前と一緒です)。その後、全ての音源が廃盤扱いになったわけだけど、去年新作のリリースに合わせて「Dogs」、「LIFE」、「球体の奏でる音楽」の全3作が再発されたので、何とか聴けるわけですが‥‥やはりこのアルバムは(オザケンはこの呼び方を推奨してなかったけど)「犬キャラ」バージョンの方を手にして欲しいな。オザケンによるセルフライナーノートがあるんですよ(再発の際にカットされた模様)。これを是非読んで欲しいなと。最初に一回通して聴いて、その後ライナーノート読んで、歌詞を読みながらまた聴く。それを是非実行して欲しいなと。そして"天使たちのシーン"にシビレて欲しいなと思うわけです。

  オザケンの全作品の中で一番好きなアルバムというわけではないんだけど、一番印象に、そして一番想い出に残ってるのは間違いなくこのアルバム。他人の評価はそれぞれでしょうけど、俺にとっては忘れられない、かけがえのない1枚なのです。



▼小沢健二『犬は吠えるがキャラバンは進む』
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投稿: 2003 09 05 12:00 午前 [1993年の作品, 小沢健二] | 固定リンク

2003/02/03

Theピーズ『とどめをハデにくれ』(1993)

  '92年4月にサードアルバム「クズんなってGO」をリリースした後、年間50~60本ものライヴを行ったピーズ。翌'93年7月にはる・アビさん・ウガンダによる編成での3枚目、通算4作目(アルバムとしては5枚目)となる「とどめをハデにくれ」をリリースします。が、リリースしてから暫くした後、秋の西日本ツアーを目前にウガンダが脱退するというハプニングに直面します。結果としては黄金期メンバーでの最後のアルバムとなってしまった作品ですが、後の彼等の音楽性を考えると、非常に重要な1枚といえるのではないでしょうか?

  前作までと違った点が幾つか目立ちます。まず、長い曲が幾つも収録されている点。1曲目"映画(ゴム焼き)"が8分台、2曲目"好きなコはできた"が7分半、ラストの"シニタイヤツハシネ ~born to die"に至っては10分という大作となっています。ただ、これらの楽曲が起承転結がハッキリした長編大作かというとそうではなく、必要に応じて演奏したらたまたま8分とか10分になってしまった、といった感じかと思われます。これらの楽曲を聴いてもそれほど長いとは感じられず、むしろ本当に必要だったからこその長さだったんだなぁと思わされます。

  また、前作までの主要素のひとつだった「エロ/バカ」路線が後退し‥‥っていうか、殆ど見当たりません。代わりに自身を見つめる「自己嫌悪的内容」や純粋なラヴソングが大半を占めるようになりました。この辺はバンドとしての方向転換というよりも、はる自身の心境の変化が非常に大きいのではないでしょうか。

  そして、初期からの重要スタイルのひとつである、疾走感を持ち合わせたパンキッシュなロックンロール路線の楽曲が殆ど見当たらない点も、注目に値すると思います。パンク寄りから更に土着的なロックンロール路線へと移行していく流れはセカンド「マスカキザル」から顕著になっていましたが、ここで完全にシフトチェンジしたといってもいいでしょう。バンドブームが廃り、そこから登場したバンド達が如何にオリジナリティをもった音楽性を誇示していくかが'90年代前半のポイントだったと思うのですが、ここでピーズは完全に「ピーズ・スタイル」を作り上げたといっていいでしょう。それだけこのアルバムに収められた楽曲の個性が強いということですし。RCサクセション以降に登場した「ニッポンのロックンロールバンド」の流れを組みつつ、はるにしか書けない詩(「詞」というよりも、もはや「詩」ですねこれは)やメロディ、ピーズにしか表現できない世界観‥‥この時点でピーズはひとつの頂点に達したのかもしれません。

  ここ最近、改めてピーズのオリジナルアルバムをファーストから「リハビリ中断」までぶっ通しで聴く機会が何度かあったんですが、やはりこのアルバムの重要性、そして特異性ってのを改めて感じましたね。前半のハイライトである"好きなコはできた"~"日が暮れても彼女と歩いてた"~"みじかい夏は終わっただよ"といった一連のラヴソング。ひとつの恋が生まれて、それを育み、そして終わっていく様‥‥歌詞だけ読んでいると、本当に切なくて泣けてくる。10代の頃、もしこれらの曲と出逢っていたらまた違った印象を受けただろうし、20代の頃に聴いていたら違った感じ方でググッときただろうし、そして30代の今聴くと‥‥更にマジ泣きしそうになってる俺がいるという。本当に何気ない日常の断片なんだけど、それが日記みたいなリアルさが感じられて余計に心に響くわけです。

  そして‥‥このアルバムのポイントのひとつとなる「自己嫌悪的内容」の楽曲群‥‥"映画(ゴム焼き)"、"手おくれか"、"日本酒を飲んでいる"、"シニタイヤツハシネ ~born to die"‥‥誰もがここに挙げたような曲の歌詞みたいな事、思ったり体験したりしたこと、あるんじゃないでしょうか? 心でそう感じながらも、決して言葉にすることがなかったそれらの思い。それをストレートに表現したはる‥‥恋愛での行き詰まり、そして人生への行き詰まり‥‥だけど、ここからはただの「諦め」だけでなく、だからこその逆説的な「生への執着」も感じられます。というより、活動休止前と違って、まだここにはポジティブさを強く感じるんですよね‥‥じゃなかったら"今度はオレらの番さ"なんて曲は生まれないでしょうし、ここには入れないと思うし。

  まだピーズを聴いたことがないという人、是非"シニタイヤツハシネ ~born to die"と"日が暮れても彼女と歩いてた"だけでも聴いてみてください‥‥というよりも、絶対に聴いて欲しい。勢いだけのピーズじゃない、ホンモノのロックンロールバンドとしてのピーズを全身で感じ取ってください。

  この後、ピーズが次のアルバムを発表するまでに、約3年もの月日を要したのは、何もパーマネントのドラマー不在だったからではなく、ここで多くの事を吐き出してしまったから‥‥なのかもしれませんね。



▼Theピーズ『とどめをハデにくれ』
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投稿: 2003 02 03 03:45 午前 [1993年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

2001/11/16

FIGHT『WAR OF WORDS』(1993)

今回のテーマは「モダンヘヴィネス/ラウドロック好きにもアピールするHM/HR」ということで、元JUDAS PRIESTのボーカリスト、ロブ・ハルフォードがバンド脱退後に結成したFIGHTの、'93年に発表したファーストアルバム「WAR OF WORDS」を取り上げたい。

正直、今回のテーマで取り上げるべき作品は山程ある。今後、第2弾、第3弾としてこのテーマを続けると思うが、まず最初に「ヘヴィメタルの象徴」というべきシンガーが何故モダンヘヴィネス路線へと進んでいったのか‥‥この辺を考えてみると、非常に面白いのではないだろうか?

'90年秋にJUDAS PRIEST史上('90年当時)最もアグレッシヴな作品「PAINKILLER」をリリース、起死回生を果たした。若手メタルバンド(MEGADETHやPANTERA等)とツアーに回ったり「OPERATION ROCK'N'ROLL」というパッケージツアーではALICE COOPERやMOTORHEAD等と全米をサーキットしたりして、約1年近くに及ぶ長期ツアーを成功させた。

'92年頃、とある映画のサウンドトラックにロブはPANTERAのメンバーをバックに"Light Comes Out Of Black"というモダンヘヴィネス寄りの楽曲を発表。同じ頃、PRIESTはファストナンバーを集めたベスト盤の制作に乗り出す‥‥のだが、どこでどうなったか、'93年に入ってロブがソロアルバムを作っていること、そしてそれがバンド「FIGHT」へと変化していくこと、更にPRIEST脱退へと繋がっていく。

そうして出来上がった作品が、この「WAR OF WORDS」というアルバム。先のPANTERAとの共演を思い浮かべる、非常に当時のモダンヘヴィネス勢に影響を受けた作品となっている。勿論、そうはいってもそこはメタルゴッドの事、冒頭からいきなりハイトーンボイス炸裂の"Into The Pit"からスタートし、そのままノリのいい名曲"Nailed To The Gun"へと流れていく(この2曲は最近のHALFORDのツアーでも演奏されているので、自分のキャリアの中でも残すべき名曲だという思いがあるのだろう)。その後は、ミディアム~スローテンポの重い曲が大半を占める。

'90年代前半のロックシーンを支えたのは、METALLICAやPANTERAといったメタル寄りのラウドロック勢と、NIRVANAやPEARL JAM、SOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINSといったシアトルからのグランジ組だったのはご存じだろう。'90年前後までのロックシーンを支えてきたHM/HRバンドは時代遅れとなり、次々と契約を切られるか、音楽性のシフトチェンジを強いられる。そんな中、IRON MAIDENを脱退したブルース・ディッキンソンはソロになって「SKUNK WORKS」というグランジ・プロジェクトを始めたり、再結成したDOKKENはDOORS的な色合いを見せつつも、実はPEARL JAMのHM版だったという復活を遂げる(しかもそこそこ成功してしまう)。MOTLEY CRUEはボーカルが代わったことをいいことに、「DR.FEELGOOD」から大衆性を薄めたハードコアなヘヴィロックを我々に打ち出す‥‥そう、一時代を築いたメタルバンド達は皆、生き残る為に必死だったのだ。

しかし、このロブの音楽的進化(あえてこう呼ばせてもらう)には、そういう「必死さ」「切羽詰まり感」があまり感じられなかった。むしろ「PAINKILLER」を更に一歩押し進めた/モダンにしたような魅力さえ見え隠れする。これはコアなPRIESTファンには否定されそうだが‥‥もしロブがPRIESTを脱退していなかったら、あの時期にJUDAS PRIESTは「WAR OF WORDS」に比較的近い作風のモダンヘヴィネス系アルバムを作っていたのではないだろうか?その後のPRIESTが「PAINKILLER」という名作から7年も経ってから「JUGULATOR」という、時代遅れスレスレのモダンヘヴィネス系アルバムを発表したことからも、そのことが伺えるような気がしてならない(逆に「JUGULATOR」というアルバムは、発表があと3年早かったらきっと名盤と呼ばれていたのかもしれない)。

ロブという人は、周りのブレイン(パートナー)さえしっかりしていれば、かなりの実力を発揮するアーティストだと思うのだ。PRIESTしかり、FIGHTのファーストしかり、今回のHALFORDしかり。しかし、FIGHTはセカンドアルバム「A SMALL DEADLY SPACE」をリリース後に空中分解してしまう。ファーストでのイニシアティヴを握っていたのがロブ本人で、周りの若手メンバーはそれをサポートする形で出来たのがあの名盤だった。しかし、セカンドではそれが逆転してしまった気がする。若手が引っ張る形でロブはそれに自分の色をつける‥‥結果出来たのが、ヘヴィでスロウな曲が中心の、訴えるものが少ない中途半端な作品だった。その後ロブは、トレント・レズナー(NINE INCH NAILS)のレーベルからTWOというバンドでデビューするものの、ここでもボブ・マーレットという人間が出しゃばったため、どの層に訴えているのかが不明の中途半端な1枚を残して解散となる(ここのギタリストが、後にMARILYN MANSONに加入することとなるジョン・5だということはご存じだろうか?)ロブ自身にそういうモダンロックへの憧れのようなものが強くあるのだと思うし、「TURBO」でシンセギターを導入したり、「RAM IT DOWN」「PAINKILLER」で早い曲を多めに入れたりスラッシュ寄りになったりという時代感覚は、ロブのみならず他のPRIESTのメンバーにも兼ね備わってるものなのかもしれない。ただ、それが若手よりもちょっとだけずれているだけで(笑)。いや、その「ズレ感覚」が結果オーライとなって、名作を作ってこれたのだと思うのだが。

昨今のヒップホップ寄りモダンヘヴィネスとは違うが、PANTERAやその手のハードコアな路線が好きな人に、間違いなくアピールする作品だと思う。個人的にはPRIEST脱退後のロブの仕事の中ではHALFORDのファーストとどっこいどっこいで好きな作品だ(音楽性が違うため、どっちの方が好きとは選べない)。



▼FIGHT『WAR OF WORDS』
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投稿: 2001 11 16 04:15 午後 [1993年の作品, Fight, Judas Priest] | 固定リンク

2001/06/17

RADIOHEAD『PABLO HONEY』(1993)

今やギターロック・バンドなんて軽々しく呼べなくなってしまったRADIOHEAD。テクノやヒップホップなど、それまで他ジャンルとされてきた音楽の要素を貪欲に吸収し、RADIOHEADにしか作れない音楽を世に発表し続ける「ロック」バンドである彼らにも、未熟な頃があった。そう、どんな大物バンドにもデビュー時は存在するのだ。

今回ここで紹介するのは、そのRADIOHEADが'93年に発表したデビューアルバム「PABLO HONEY」である。

1991年夏、イギリスはオックスフォードでバンドは結成される。メンバーは不動の5人‥‥トム・ヨーク(Vo & Gt, etc.)、ジョニー・グリーンウッド(Gt & Key)、エド・オブライエン(Gt & Backing Vo)、フィル・セルウェイ(Dr)、コリン・グリーンウッド(Ba)。名字から判る通り、ジョニーとコリンは兄弟である(コリンが兄)。幼馴染みともいえるような5人で結成されたRADIOHEAD(当初は「ON A FRIDAY」という名前だったそうだ)はインディーズからのリリースもなくいきなり英EMIと契約、'92年5月にはファーストEP「DRILL EP」(アルバムにも収録されている"Prove Yourself"他)をリリース。同年9月にはその後の彼らの「代表曲」であり、ある意味「トラウマ」でもあるシングル"Creep"を発表。当時はトップ40に入るヒットにとどまった。翌'93年2月にはサードシングル"Anyone Can Play Guitar"を発表した後に、このファーストアルバムがリリースされることとなる。

当時は大ヒットには到らず、アルバム発表後にリリースされたファースト未収録新曲"Pop Is Dead"もヒットには結びつかなかった(ちなみに現在はこの曲、日本盤ファーストにボーナストラックとして追加収録されている)。

しかし、この後彼らをある「大事件」が襲う。誰も予想していなかった出来事‥‥それはアメリカでのブレイクだった。MTVでの"Creep"ヘヴィーローテーションに後押しされる形で、この曲はビルボードシングルチャートで36位まで上り詰める。更にアルバムも32位まで上昇し、50万枚近いヒットを記録するのだ。

このヒットの煽りを受け、イギリスでも"Creep"再リリース。歌詞に入る「fucking」のお陰でラジオですらかけてもらえなかったこの曲が、とうとうトップ10入りするのである。雑誌ではこの曲をNIRVANAと比較したり、あろうことかTHE POLICE "Every Breath You Take"("見つめていたい")と比較するものまで現れる。メディアだけではなく、ミュージシャンからも絶賛される。SUEDEやBLURのメンバー、R.E.M.のマイケル・スタイプまで‥‥この1曲によって全てが変わったのだった。

さて、そんなこのアルバムだが、「OK COMPUTER」以降の彼らしか知らない人にとってはかなり意外な音楽性なのではないか? RIDE辺りからの影響とも受け取れる「WALL OF DISTORTION-GUITAR SOUNDS」、NIRVANA以降多くのアーティストが参考にした「4つのコードを延々繰り返す曲」「強弱法」(Aメロでは静にに、Bメロになると途端に爆発したかのような轟音をならす、"Smells Like Teen Spirit"にみられるあの曲調)等、まだRADIOHEAD特有のオリジナリティーというものはあまり見られない。強いて挙げれば、ジャズからの影響が伺える"Blow Out"や、'80年代後半あたりのU2のような"Stop Whispering"などはとても印象深い。

しかし、このアルバムの目玉といえるのはやはり"Creep"であり、それと同系統といえる"Prove Yourself"、"Vegetable"のような「自己嫌悪ソング」なのではないだろうか? 「グランジ以降」や「グランジに対するイギリスからの回答」とかいろんな解釈ができるだろうが、やはりそこはイギリス。アメリカのグランジに比べると、繊細すぎるのだ。逆に、俺はそこに惹かれたわけだが。

勿論、上に挙げた以外にも「ジム・モリソンになぁれ」な歌詞が印象的な"Anyone Can Play Guitar"や"You"、"How Do You?"、"Ripcord"といった印象的な曲は多い。しかし、どうしても"Creep"という「踏み絵」的存在がある限り、このアルバムは今後も違った見方をされる可能性が高い。純粋に1枚のギターロック・アルバムと考えれば、平均点以上の出来だと思うのだが。

その後、セカンドアルバム以降で開花する「RADIOHEADらしさ」を考える上でも、このファーストアルバムはその後の彼らにとっての「習作」とも呼べる貴重な1枚なのかもしれない。或いは、U2がファーストから「WAR」というアルバムまでの3枚を通過してから「THE UNFORGETTABLE FIRE」という新たな地平へ辿り着いたのを、RADIOHEADというバンドはこの「PABLO HONEY」1枚でそれを成し遂げてしまったのかもしれない。当然「THE BENDS」という作品の音楽性とU2のそれとは全くの別物だが、バンドの成長の度合い/過程というのを考える上でも、これはちょっと興味深いものがあると思うのだが(更にRADIOHEADの場合は、「PABLO HONEY」と「THE BENDS」の間に「1.5枚目のアルバム」を制作し、それを半ばボツにしている過去がある。これも後々触れていきたいと思う)。

まぁインディーズでのリリース経験のない彼らがいきなりメジャーデビューしたことも大いに関係しているのだろうが、やはりこのアルバムはその後のRADIOHEADと比べると最も「らしさ」が薄いのは否めない。それでも、この時期が一番好きという人も多い(特に「OK COMPUTER」以降が苦手という人)。これはこれで素晴らしい作品だと思うので、是非ライヴでもここからもっと披露して欲しいと思うのだが‥‥



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投稿: 2001 06 17 04:56 午前 [1993年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2001/06/15

MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993)

結局、ファーストアルバムは1位にはならず(全英13位)、外野は「ああ、どっ ちみち解散するのね!?」とマニックスのことをせせら笑った。しかし、'93年に入りバンドはあろうことか、セカンドアルバムの制作に着手したのであった。このことに対して、当時リッチー・エドワーズは解散撤回声明文をプレスに発表している。当時「rockin'on」等にも載ったので、ご覧になった方も多いだろうが、最近の彼らしか知らない人には是非ここでその対訳を目にしてもらいたい。これを「言い訳」と取るか、「無様に生き続けることを選んだバンドの意志の強さ」と取るかで、このアルバムに対する評価が分かれるだろうから‥‥

さて、世間の風当たりは更に強くなる中、5月には先行シングル"From Despair To Where"を発表し、これまで以上にヒットさせることに成功。そのまま6月には約1年4ヶ月振りとなるセカンドアルバム「GOLD AGAINST THE SOUL」を発表する。前作から1年ちょっとしか経っていない上、これまでも連発するシングルのカップリングに沢山の未発表曲をリリースしてきているのに、この多作振り‥‥頭が下がる思いだ。しかも本当にクオリティーが高い。アルバムは初のトップ10入りを果たし、その後リカットされたシングル3枚("La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)", "Roses In The Hospital", "Life Becoming A Landslide")はどれもヒットを記録し、前作以上の成功を手にすることになる。

全10曲という、現在までの彼らの作品の中では一番収録曲数が少ないアルバムではあるが、その分アルバムとしてのまとまりやメリハリがしっかりしていて、すんなり聴けてしまう1枚かもしれない。何故か初期のファンには不評なようだが、楽曲のクオリティーは前作以上だ。

ファーストでも見え隠れしていたハードロック色を前面に打ち出し、これでもか!?って位に「泣き」や「哀愁」を色濃く表し、「BURRN!」辺りのリスナーにも好評だったようだ(実際、初来日時には同雑誌からインタビューを受けているし、このアルバムまでは好意的に紹介されていた)。

泣きのハードロック"Sleepflower"からアルバムはスタートする。まず一聴して気づくのは、リズムパートの強化だろう。ベースが前作以上にブリブリいっていて、更にドラムはファーストのアメリカ盤のように生ドラムになっている(一部打ち込みの曲もあり)。音も生々しさを増し、「俺達はバンドなんだよ」という主張が所々に漲っている。続くシングル曲"From Despair To Where"、これはどうだろう? 早くもマニックスはここで新境地に達している。続く"La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)"もそうなのだが、ここら辺の曲からはモータウンの影響を伺わせる。パンク一辺倒かと思わせておいて、この懐の深さ。いや、単純にこのバンドは「良い曲」を書くことに命を懸けているのかもしれない。

その後もハードさを増した"Yourself"、QUEENやTHIN LIZZY辺りからの影響が見え隠れするバラード"Life Becoming A Landslide"、WiLDHEARTSのジンジャーが当時「今年出た中で最高のレコードだ」と大絶賛した"Roses In The Hospital"(これを受けてジェームズは「自分達のレコードを除いて、って意味だろ?」と返している)など、流れとしては非常に統一感のある、ある意味前作とは対極にある作りとなっている。

ラスト3曲("Nostalgic Pushead", "Symphony Of Tourette", "Gold Against The Soul")はポップな中にもヘヴィさを強調した作りになっていて、ある種異色作ともいえる。特に最後の2曲はヘヴィなリフもさることながら、前作で提示したヘヴィさとは違う次元の「閉鎖的でヘヴィな空気感」を持った、ある意味次作への予告編と受け取ることができる(とはいっても、音楽的スタイルはまた違うのだが)。

そういえば、このアルバムの時期はHR系バンドとのツアーも幾つかあったようだ。特に有名なところでは、あのBON JOVIが「KEEP THE FAITH」に伴う英国ツアーの際に行ったスタジアム公演で、このマニックスを起用したことだろう。あれは誰のアイディアだったのだろうか? そして、それを受けてマニックスは何を思って出演したのだろうか? 「お前ら、俺達のこと好きだろ?("You Love Us")」と皮肉混じりに唄い、世間から憎まれ嫌われてナンボと思ってきたマニックスが、ここにきて何万もの大衆の前で演奏する機会を得る。多くの人間に支持されるようになりながらも、反面それを拒絶しようとするバンド。このバランス感が次作への起爆剤へと繋がったのは、間違いないだろう。

それまであったロックンロール色をよりメタリックな方向へと転化し、1曲1曲により整合感を持たせ、暴れるよりも合唱するタイプの曲が多いことから、実はこの作品は4作目「EVERYTHING MUST GO」と共通する面が多々ある。アンセム・タイプの楽曲が多いにも関わらず、現在このアルバムからライヴで披露される曲は数少ない。ファンの支持率も意外と低いようだし‥‥とにかく、純粋に名曲目白押しな1枚なので、是非手にとって欲しい。



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投稿: 2001 06 15 09:57 午後 [1993年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2001/06/05

THE WiLDHEARTS『EARTH VS THE WiLDHEARTS』(1993)

というわけで、6月のオススメ盤には‥‥先頃初期のメンバーでの再結成を発表し、更には来日まで決定したWiLDHEARTSのオリジナル・ファーストアルバム「EARTH VS THE WiLDHEARTS」を取り上げることにした。ご存じの通り、今回再結成に参加しているメンバーはジンジャー(Vo & Gt/ご存じ、最近はSILVER GINGER 5としても来日したばかり)、ダニー(Ba & Vo/解散後はTHE YO-YO'Sとして来日も果たした)、CJ(Gt & Vo/脱退後はHONEYCRACKを経て、THE JELLYSで活躍)、スティディ(Dr & Vo/脱退後、WHATEVERに加入するも、アルバムリリース前後に脱退。その後CJと共にTHE JELLYS結成)という、まさしくこのアルバムを作った面子なのだ。何か今のところ、スティディは都合で来日公演には参加できないようで、その後任だったリッチ(現在はGRAND THEFT AUDIOで活躍中)が急遽参戦するという予定になってる。まぁどっちにしろ、このアルバムのツアーはリッチが参加していたわけだから、俺的には問題なし(けど、やっぱCJとスティディで観たかったって気持ちも多少あり)。

このアルバムは1993年後半にリリース。プロデュースには当初、ミック・ロンソンが携わる予定だったが、ご存じの通りミックはガンのためにその年の春に亡くなっている。プロデュースを依頼した時には既に病魔と闘っている最中だったのだろう。幸運にも1曲、"My Baby Is A Headfuck"の中でギターソロを披露している。ということで、プロデュースにはバンド自身が当たり、1曲("Suckerpunch")のみマーク・ドッドソン(JUDAS PRIEST, THE ALMIGHTY等)がプロデュース。このアルバムからはシングルとして、"Greetings From Shitsville"、"TV Tan"、そして"Suckerpunch"がリカットされている。また、現在のイギリス盤とアメリカ盤にはシングルオンリーで後にリリースされた"Caffeine Bomb"が追加収録されている。その代わりといってはなんだが、日本盤には先のシングル"TV Tan"のカップリングである"Show A Little Emotion"と"Down On London"がボーナストラックとして追加収録されている。"Caffeine Bomb"は日本盤「FISHING FOR LUCKIES」で聴けるので、ここでは貴重な音源を含んだ日本盤を購入すべきだろう。

とにかく、多くの人間がイメージする「WiLDHEARTS像」というのは、実はこのアルバムの楽曲群だったりする。ゴリゴリしたヘヴィーなギターリフに、パート毎にテンポが変わる展開、そこに乗るバブルガム・ポップなメロディー。1曲目の"Greetings From Shitsville"が正にその典型で、ライヴではモッシュやダイヴが起こること必至なナンバー。それに続くは、名曲"TV Tan"。後の"I Wanna Go Where The People Go"や"Sick Of Drugs"のプロトタイプとなった曲だ。勿論、それ以前には"Weekend"といった曲もあるわけで、この手の曲が好きな人間にはたまらない、パワーポップとさえ呼ぶことのできるタイプの1曲。

ライヴで定番の、後半複雑な展開をする"Everlone"や、ヘヴィーなリフを重ねに重ねた"Shame On Me"、ホンキートンク・ピアノと女性コーラスが気持ちいいストレートなロックンロール"Loveshit"、これも如何にもワイハーらしいファスト&メロウな"The Miles Away Girl"、ミック・ロンソン参加の定番ロックンロールナンバー"My Baby Is A Headfuck"、そこからメドレー形式で続く"Suckerpunch"の流れは、いつ聴いても圧巻。

ポップな前半に、プログレ的展開を持つ後半が対照的な"News Of The World"、コミカルなイントロから途端に高速化する"Drinking About Life"、そしてライヴのラスト定番曲となっているヘヴィな"Love U Til I Don't"という、全11曲の流れは正に完璧としか言いようがなく、これを初めて聴いた時、俺は「こいつらについてく!」と決心したのだった。

とにかく、このアルバムの時点で既にジンジャーという人は、自身のソングライターとしての幅広さを証明している。'93年当時、まだOASISがマンチェスターのクラブで眠っていたこの頃、こんなソングライターはいなかった。残念ながら、既に当時から「BURRN!」でしか取り上げられることのなかった彼らだが、もし最初から「rockin'on」や「クロスビート」等といった、HM/HR以外をメインに扱う洋楽専門誌で紹介されていたなら‥‥時代は変わっていたかもしれない。

「BURRN!」系バンドの中では、彼らは革新的バンドだったかもしれない。しかし、その他の洋楽専門誌では「メタル」と切り捨てられ、日の目を見ることはなかった。その風貌からも、それは仕方ない結果なのかもしれない。けど、もし彼らがWEEZERやGREEN DAYあたりと同列で語られていたら‥‥「アメリカン・パンクに対する、イギリスからの回答」と呼ばれていたかもしれない。そう思うと、悔しくてたまらない。

幸い、この「とみぃの宮殿」には彼らのファンが多かったし、俺やそういった方々の熱の入った絶賛に後押しされ、お気に入りのひとつとなったという話も聞く。けど、まだまだだ。この再結成を切っ掛けに、もっと多くの人間に支持されてもいいのではないだろうか? 先に挙げた2バンドに興味がある方、そしてそれらの音が好きなパワーポップ・ファン。確かに毛色は多少違うとは思うが、許容範囲には入っていると思うのだ。是非「聴かず嫌い」はやめて、彼らの世界に飛び込んで欲しい。一度ハマッたら、二度と戻ってこれない世界ではあるけれど‥‥(笑)



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投稿: 2001 06 05 06:06 午後 [1993年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2000/12/25

LUNA SEA『EDEN』(1993)

  前作から11ヶ月で到着した通算3枚目(これは現在においても最短リリース期間だ)。このアルバムから、楽曲の作詞作曲クレジットがバンド名義になり、ファンは自分のイマジネーションを使って原曲の作者を想像して楽しむようになる(?)。ファーストから早2年にして、既にここにはあの暴力性や狂気は感じられない。歌詞には依然としてゴシック色を臭わせるものもあるが、ここにある多くの歌詞にはもっと想像力をかき立てる、開放的なものを感じる。

  楽曲自体は前作の延長上といっていいだろう。2曲("Anubis"と"Lastly")を除いては、このアルバムの為に新たに書かれた楽曲だ。つまりこのアルバムから、いよいよ『ファンが望むLUNA SEA』と『一般ロックファンにアピールするLUNA SEA』を意識した曲作りを開始するわけだ。アルバム自体、そして楽曲のクオリティーは前作と比にならない程飛躍している。1曲目"Jesus"のイントロから既にドキリとされてしまう。演奏も更にタイトになり、ボーカルも更に表現力が増し、ゴスだの何だのと言っていた2年前が懐かしくさえ思える程だ。

  このアルバムに先駆けて、初のシングル"Believe"がリリースされた事も特筆すべき点だろう。アルバムリリース後にも更に"In My Dream (With Shiver)"がリカットされている事から、当時の彼らが如何に(大きな意味での)音楽シーンに自分達の音を浸透させるかという命題と真剣に向き合っていたかがご理解いただけるだろう。これまでのLUNA SEAのイメージを更に突き詰めた前者と、新境地といえるポップな後者という、両極端な2曲を選んだ点にも拘りが伺える。この2曲がトップ20ヒットした事もあって、ロックファンにも「LUNA SEA!?ああ、あの化粧バンドね?」程度の印象を残す事に成功した。後は如何に「心に残る普遍的楽曲」を世に広めるか、というレベルにまで達しつつあった。

  最後にひとつだけ。このアルバムには好きな楽曲がとても多いのだが、アルバムとして考えた時、非常に印象が薄いような気がする。それは前作の延長上という事もあってか、『二番煎じ』的楽曲が数曲ある点だろう。ファンならご理解いただけるだろう。「そこがいいんだ」と言われてしまえばそこまでだが、そういうものを彼らに求めていなかった為、どうしても未だに聴く頻度が他のアルバムより低いのだ。決して駄作でも平凡作でもない、単に前2作のインパクトが強かっただけなのだ。



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投稿: 2000 12 25 02:00 午前 [1993年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク