カテゴリー「1993年の作品」の64件の記事

2020年9月16日 (水)

BAD MOON RISING『BLOOD』(1993)

1993年3月にリリースされたBAD MOON RISINGの2ndアルバム。日本で先行リリースされたのち、同年5月にイギリスやヨーロッパ諸国にてUnder One Flag経由で発売されています。

1991年にデビューアルバム『BAD MOON RISING』をリリースしたのちに、ここ日本で初のライブツアーを実施したカル・スワン(Vo)&ダグ・アルドリッチ(G)。ツアーではアルバムレコーディング同様、チャック・ライト(B)&ケン・メリー(Dr)のHOUSE OF LORDS組が参加しましたが、続く今作でもほとんどの楽曲でチャック&ケンがリズムセクションをレコーディング。制作後期に元HURRICANE ALICEのイアン・メイヨー(B)とジャッキー・レイモス(Dr)が正式加入し、初めてパーマネントの4人バンド・BAD MOON RISINGが完成します(アルバムブックレットにはイアン&ジャッキーの姿も)。

プロデュースは前作同様、マック(QUEENEXTREMEBLACK SABBATHなど)が担当(カル&ダグも共同プロデューサーとしてクレジット)。レコーディングエンジニアとしてマックのほか、ジョー・バレシ(AVENGED SEVENFOLDQUEENS OF THE STONE AGEWEEZERなど)の名前も見つけることができます。基本的には前作の延長線上のあるスタイルなのですが、1作目をブリティッシュロック寄りとするなら、今作はよりアメリカナイズされた作風と言えるかもしれません。

適度に湿り気のあるブルージーなハードロックという点においてはまったく変化はないのですが、サウンドの質感が若干モノトーン寄りでダークさが増している。また、メジャーキーのアップチューンやミドルテンポのアンセミックな楽曲が良いアクセントとなっていた前作と比べると、今作は全編ミドル〜スロー中心で統一感が強い、そのぶん単調さが目立つ結果となっています。前作でのLION経由のヘアメタル〜正統派ハードロック路線から、時流に乗ってグランジ寄りのダーク&ヘヴィさが際立つスタイルへとシフト。これが従来のリスナーやファンには不評を買ったようです。

しかし、楽曲の出来はそこまで悪いものとは思えず、リリースから30年近く経った今、久しぶりに聴くと「意外と良いじゃない?」と思えるのです。リリース当時はあんなに落胆したのに。

で、何度か聴き返しているうちに気づきました。これ、曲とカル・スワンの声(歌唱スタイル)がマッチしていないんじゃないか?と。良く言えば味わい深い、悪く言えば抑揚があまりないカルのボーカルスタイルが、土着的なヘヴィロック路線に適していないような気がしてならないのです。もうちょっと派手な歌い手が歌唱したら、このメロディラインをうまく歌いこなせたのでは……今となっては後の祭りですが。

あと、やはりダグのリフメイカーとしての力量不足も目立ちますよね。こればかりは本当に仕方ないとはいえ……だからこそ、彼のようなギタリストには次作『OPIUM FOR THE MASSES』(1995年)のようなスタイルが適していた気がするのですが、それはまた別の機会に。

“ビッグ・イン・ジャパン”の名を欲しいままにし、海外ではまったく無名だった彼ら。残念ながら各種ストリーミングサービスでは配信されていないことから、今では中古CDショップで彼らの音源を手に入れるしかなさそうです(比較的安価で入手可能なので、この機会にぜひ)。

 


▼BAD MOON RISING『BLOOD』
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2020年7月21日 (火)

HELLOWEEN『CHAMELEON』(1993)

1993年5月末にリリースされたHELLOWEENの5thフルアルバム。日本盤は同年6月初頭に発表されました。

マイケル・キスク(Vo)、マイケル・ヴァイカート(G)、ローランド・グラポウ(G)、マーカス・グロスコフ(B)、インゴ・シュヴィヒテンバーグ(Dr)という布陣では前作『PINK BUBBLES GO APE』(1991年)に続く2作目であり、最後の作品。本作を最後にキスク、そしてインゴが脱退するという、いろいろアレないわく付きな1枚でもあります。

『PINK BUBBLES GO APE』でそれ以前の“カイ・ハンセン期”を完全に払拭し、新たな路線を模索し始めたHELLOWEENですが、良くも悪くもキスクの色が前面に打ち出されるようになり、古くからの“ジャーマン・メタル”的スタイルから脱却したポップで多様性の強いハードロックサウンドに対して、従来のファンから異を唱える声が増え始める。その決定打となったのが本作なのですが……今の耳で聴くと、確かに多様性の広がりは否めませんが、だからといってクオリティが低いかと問われるとまったくそんなことはなく、むしろ非常に完成度の高い、ポップなハードロックアルバムとして楽しむことができるはずです。

……なんていうものの、実はそこを純粋に評価できるようになるまでが、従来のリスナーには高い関門なわけでして。どうしても「HELLOWEENらしさ」や「ジャーマン・メタルらしさ」というパブリックイメージを取り払って接することが難しいと思うんですよ、彼らのようなオリジネーターに対しては。だからこそ、本質を理解するまでに相当な時間を要するわけですが。

オープニングを飾る「First Time」は本作中もっとも従来の彼ららしいと言えますが、それでも硬質さやスピード感がかなり抑えられており、むしろメロディと声のみで「HELLOWEENらしさ」を実感せざるを得ない。これに続くリードシングル「When The Sinner」の衝撃といったら……ブラスセクションを大々的にフィーチャーした陽気なポップロックですからね(笑)。ブラスを取り入れた楽曲はこのほかにも「Crazy Cat」などがありますが……いや、「HELLOWEEN云々」を抜きにすれば非常にカッコいいんですよ。だけど、どうしても「『Eagle Fly Free』のHELLOWEENが〜」「『Future World』のHELLOWEENが〜」という大前提があって接するわけですから……難しいですね。

そのほかの楽曲にしろ、いわゆるジャーマン・メタルの枠からは完全にはみ出していますし、そもそもヘヴィメタルの範疇に含まれるのかどうかすら怪しい。だけど、1曲1曲のキャッチーさや完成度の質は異常に高い。と同時に、アルバム1枚にまとまったときに節操のなさにも気づかされる。今のようなサブスク全盛の時代だったら、このようなプレイリスト的なアルバムもアリあんでしょうけど、いかんせん時代が早すぎた。僕自身、このアルバムをまともに理解できるように(評価できるように)なったのって、ここ数年ですから(それまで、ほとんど手を出すことがなかった)。

HELLOWEENという枠の中で捉えれば非常に異質な1枚なのは間違いないです。ただ、それでも『PINK BUBBLES GO APE』の次にこの意欲作が続くというのはなんとなく理解できるし、もっと言えば……ジャンルや過去の功績などを無視して“今の感覚”で接することができるのならば、本作は間違いなく「バラエティに富んだ良質なハードロック作品」と評価することができるのではないでしょうか。全12曲で70分超えという大作ですが、先に挙げたような楽曲群や名バラード「Windmill」、9分を超える大作「I Believe」など、各ソングライターの色が要所要所で突出しながらも聴きどころも多い1枚なので、ビートルズにおける『ホワイト・アルバム』的感覚で接することをオススメします。

 


▼HELLOWEEN『CHAMELEON』
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2020年6月13日 (土)

MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL: DELUXE EDITION』(2020)

1993年6月にリリースされたMANIC STREET PREACHERSの2ndアルバム『GOLD AGAINST THE SOUL』。本作から発表されたシングルに収められたカップリング曲、アルバム収録曲の未発表デモトラックなどをCD2枚にまとめ、未公開写真からなる豪華なフォトブックレット形式のパッケージで2020年6月12日に発売されたのが本デラックス・エディションです(日本盤は1ヶ月少々遅れ、同年7月22日にリリース予定)。

現在のマニックスしか知らない方々のために説明しておくと、デビューアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)にて世界中で1位を獲得して解散、獲得できなくても解散と大口を叩いてデビューした彼らでしたが、アルバムは当初予定していた「30曲入り2枚組」には10数曲及ばない形で発表され(CDは1枚ものでしたが、アナログなら2枚組)、全英最高13位、当然ほかの国でも1位には程遠い結果のみを残して、このまま解散するのかと思われていました。しかし、複数枚のメジャーアルバム契約を残していた彼らは解散宣言を撤回し、素直にこの2ndアルバムを制作、リリースしたのでした(このへんの経緯については、過去に執筆した1stアルバムのレビューや、その前後の作品のレビューをご確認ください)。

そんな敗者の十字架を背負った中で完成させたこのアルバムですが、いろんな意味で自由奔放なデビューアルバムと、マニックスの過激さが創作面で最大限に発揮された3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の間に挟まれた今振り返ると、ちょっと優等生すぎる印象を受けます。いや、好意的に評価すれば「やっと肩肘張らずに、好きな音楽を表現できた」と捉えることもできるでしょう。

このアルバムはその後のマニックスにおけるひとつの基準になったのも事実でして、サウンド的にはハードにもポップにも寄せられる、だけど軸にあるメロディは常にわかりやすくて親しみやすいものでなければいけない、と。本作があったから『THE HOLY BIBLE』に振り切ることができたし、その後の『EVERYTHING MUST GO』(1996年)へとつなぐこともできた。『GENERATION TERRORISTS』が“可能性のおもちゃ箱”であり“真のデビューアルバムへの処女作”だとしたら、この『GOLD AGAINST THE SOUL』こそがバンドにとって真のデビューアルバムだった。リリースから27年を経て振り返ると、そう捉えることもできるのではないでしょうか。

さて、そんな本作の最新デラックス・エディション。アルバム本編には最新リマスタリングが施されており、楽器1つひとつの粒の際立ちが非常によい形で再現されており、各楽器の主張がオリジナル盤以上に感じられる仕上がりになっています。もともとエッジは効いてるけど全体のバランスがよかった本作でしたが、より今の時代に合った聴きやすい形に生まれ変わったのではないでしょうか。

カップリング曲にはハード&メロウなアルバム本編よりもパンキッシュなものが多く、続く『THE HOLY BIBLE』への布石が見え隠れするのも興味深い……なんていうのは言い尽くされていますよね。改めて捨て曲なしのカップリングも存分にお楽しみいただければと思います。

で、肝心のDISC 2=アルバムデモですね。音質は決して優れたものではありませんが、アルバムよりもラフな演奏で、かっちり作り込まれる前の楽曲群は「これはこれで悪くないじゃん」と思わされるものばかり。ドラムのモタる感じとか、その後のライブにも通ずるものがありますし、そこも含めてマニックスのグルーヴ感が存分に伝わってきます。

曲によってはデモ音源が存在しなかったのか、ライブテイクでお茶を濁している曲もありますが(「Yourself」のみですが)、大まかなアレンジは完成バージョンと大差がないのも興味深いところ。とはいえ、中には完成バージョンと異なるアレンジ(ストリングスの代わりにハミング)の「From Despair To Where」、異なるアレンジのデモが複数存在する「Drug Drug Druggy」や「Roses In The Hospital」など、新たな気づきを与えてくれるものも少なくありません。個人的には「Nostalgic Pushed」はデモのほうが好きだなとか、完成バージョンよりもダークさ、ダーティさが際立つ「Symphony Of Tourette」や生ドラムバージョンの「Gold Against The Soul」など完成版よりも好印象を与えてくれたりと、27年前に受け付けられた記憶やイメージを更新させてくれました。

デモ音源のあとに収められたTHE CHEMICAL BROTHERSらによる「Roses In The Hospital」「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」のリミックスも、久しぶりに聴いたら面白かったなあ。90年代前半から半ばにかけて、マニックスの輸入盤シングルを買い集めていた頃の自分をふと思い出し、懐かしくなりました。

90年代に発表されたアルバム5作についてはすべてデラックス・エディションが発売されたので、もうこれ以上新たな未発表音源が発掘されることはないかと思いますが、これを機に改めて『GENERATION TERRORISTS』から未発表音源集を振り返ってみようかと思います。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL: DELUXE EDITION』
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2020年4月26日 (日)

I MOTHER EARTH『DIG』(1993)

1993年8月にリリースされたI MOTHER EARTHの1stアルバム。

I MOTHER EARTHはカナダ出身の4人組オルタナティヴロックバンド。本作はCapitol Recordsからのメジャーデビュー作で、日本でも当時「Rain Will Fall」のMVが伊藤政則氏の番組で紹介され、一部で注目を集めました。

グランジ・ムーズメント最盛期と言える1992〜93年にかけて、シアトルの外側からさまざまなポスト・グランジバンドが青田買いされましたが、彼らもその流れで世に広められた印象が強い。なので、グランジ視点で解釈すると「PEARL JAMの流れを汲む土着性の強いバンド」と捉えることもできるでしょう。

しかし、彼らの魅力はそういったリフ主体のシンプルなギターロックとは異なるところにあると思っていて、例えばアルバムでは「Rain Will Fall」の次に収録されている「So Gently We Go」で聴けるムーディーかつサイケデリック色の強いサウンドスケープからは、むしろ『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)あたりでRED HOT CHILI PEPPERSが展開させたスタイルとの共通点を見つけることができるはずです。

そういう見方をすれば、先の「Rain Will Fall」で聴くことができるギターリフ/カッティングもグランジというよりも、ファンクを通過したそれと捉えることができるはず。また、SOUNDGARDENあたりのサイケデリアとも一線を画するものがあり、当時ひと足先にブレイクしていたBLIND MELONあたりと同じ枠で捉えるべきバンド/アルバムではないかと気づくことでしょう。

実はこのバンド、当時にグランジシーンにおけるオルタナティヴな存在だったのかなと。かつ、BLIND MELONほどの突き抜けたポップさが足りなかったこともあり、あの時代で多くの人に見つけられないまま見過ごされてしまった。ある意味“早すぎたバンド”だったのかもしれませんね。

ワンコードで引っ張る曲構成や要所要所でパーカッションやハモンドB3オルガンを強調したアレンジ、それにより1曲5分6分超えは当たり前で、ラストの「The Universe In You」なんて8分を超えてしまう。トータル12曲で68分というトータルランニングはアナログ時代なら2枚組相当の濃さですし、一見さんにはちょっとハードルが高い内容かもしれません。しかし、レッチリほど黒人音楽からの影響をそのまま出そうとせず、あくまで白人的観点で表現したサイケデリックファンクロックの数々は、リリースから30年近くを経た今聴いても新鮮に響くはずです。

CDはすでに状態ですが、中古ショップでこまめに探せばすぐに見つけられることでしょう。また、ストリーミングサービスでは過去のカタログから本作のみ聴くことができるので、もし本作で彼らにハマった方がいたら続く2ndアルバム『SCENERY AND FISH』(1996年)もぜひ聴いてほしいな。プログレ色も強まった(RUSHのアレックス・ライフソンもゲスト参加)、よりドープな内容に仕上がっているので、間違いなく“こっち側”に戻ってこられなくなるはずなので(笑)。

 


▼I MOTHER EARTH『DIG』
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2020年4月22日 (水)

VAI『SEX & RELIGION』(1993)

1993年7月に発表された、スティーヴ・ヴァイの新プロジェクトVAI唯一のアルバム。ヴァイのソロ作品としてカウントすると、通算3作目のスタジオアルバムに当たります。

1990年秋にWHITESNAKEがライブ活動を停止すると同時に、バンドを離れたヴァイは前作『PASSION AND WARFARE』(1990年)に続くアルバムの準備に取り掛かります。ここでヴァイは自分と肩を並べる“バケモノ級”アーティストを求め、T.M.スティーヴンス(B)&テリー・ボジオ(Dr)という強烈なリズム隊とタッグを組むことに。さらに、当時無名だった若干21歳のデヴィン・タウンゼンド(Vo, G)を発掘し、最終的にはVAIというバンド(プロジェクト)名でアルバムを完成させ、ツアーに臨むことになります。

全13曲(日本盤のみ14曲)中、インストは3曲。つまり、10曲が歌モノというヴァイの作品としては異色の内容。しかも、内1曲(ラストの「Rescue Me Or Bury Me」)ではヴァイ自身がボーカルも担当しています。作曲はもちろん、作詞まで含めて (2曲を除いて)すべてヴァイが手がけるという点にでは、歌われる内容やメッセージまで含めて彼の作品であるわけで、歌と言葉で何かを伝えようとする意識の変化には興味深いものがあるなと、リリース当時感じていました。

アルバムを聴くとまず何より、デヴィンというボーカリストの力量に驚かされるはずです。今やSTRAPPING YOUNG LADやDEVIN TOWNSEND PROJECTでお馴染みのデヴィンですが、声域の広さやパワフルさと繊細さを併せ持つ表現力、マイク・パットン(FAITH NO MORE)にも匹敵する変態性(ラップボーカルやスクリーム、さらにオペラボーカルまで)は、今まで出会ったことのないタイプで、正直どう捉えていいのかわからなかった記憶も。しかも、ヴィジュアルがアレじゃないですか(笑)。「あ、ヴァイやボジオと渡り歩くくらいだから、やっぱりヤバイ人なんだ」と(苦笑)。

「『PASSION AND WARFARE』に変態的なボーカルを乗せるとこんなふうになるのね」という内容は、歌モノロック/メタル観点で捉えれば若干の敷居の高さを覚える作風ですが、プレイヤー視点で聴くとギター、ドラム、ベースそれぞれのハイテクさに耳と心を奪われるはず。そういった意味では、80年代前半の“ニューウェイヴ期”のKING CRIMSONに通ずるものもあると、個人的には感じています。

序盤の「In My Dreams With You」や「Still My Bleeding Heart」で魅せるポップネスと、「Dirty Black Hole」でのセバスチャン・バック(ex. SKID ROW)ばりのシャウト&スクリームとのギャップ、ハンパないです(笑)。MVも制作された終盤の山場「Down Deep Into The Pain」からヴァイ自身が歌う「Rescue Me Or Bury Me」へと続く最後の構成など、とにかく最初から最後まで沸点みたいな変態度の高い1枚です。

 


▼VAI『SEX & RELIGION』
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2020年4月20日 (月)

VAN HALEN『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』(1993)

1993年2月に発表されたVAN HALEN初のライブアルバム。

今ほど映像作品が安価で流通していなかった80年代、デヴィッド・リー・ロス在籍時のライブ作品は公式リリースされることはありませんでした。しかし、サミー・ヘイガーにフロントが代わってから、初のライブビデオ(当時はVHSでしたね)『LIVE WITHOUT A NET』(1987年)をリリース。『5150』(1986年)からはMVが1本も制作されたなかったこともあり、このライブ映像は“動くVAN HAGAR”を目撃できるという意味で、非常に重宝しました。また、日本のファンは1989年初頭の“VAN HAGAR”初来日時(『OU812』ツアー)の東京ドーム公演が、当時テレビ朝日で深夜に放送されたものを録画して、それこそビデオテープが擦り切れるほど楽しんだのではないでしょうか(僕もそのひとりですが)。

で、作品としては『LIVE WITHOUT A NET』に続いて発表されたのが、1993年1月発売の『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』というライブビデオ。全17曲入りで120分という、『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年)を携えたツアーの様子をまるまる楽しめるという、非常に画期的な映像作品でした(DVDが登場する以前はビデオテープ主流だったこともあり、2時間を超えるライブがまるまるリリースされることは少なく、60〜90分程度に編集されることが多かったのです)。

今回紹介するライブアルバムは、このライブ映像作品のCD版ということになりますが、収録曲数は24曲と映像版より7曲多い構成。つまり、ツアーで披露された楽曲を網羅するような“いいとこ取り”な内容、要するに“1993年時点でのVAN HAGARグレイテストヒッツ”的作品に仕上がっているわけです。

なので、大ヒットした『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』からの楽曲群を軸に、「When It's Love」や「Dreams」「Love Walks In」「Finish What Ya Started」といったサミー期のヒット曲も楽しめ、なおかつ「Ain't Talkin' 'Bout Love」「Panama」「You Really Got Me」「Jump」というデイヴ期の代表曲、さらには「One Way To Rock」「Give to Live」といったサミーのソロナンバー(日本盤初版にはボーナスディスクで「Eagles Fly」も楽しめました)や、ここでしか聴けないTHE WHOのカバー「Won't Get Fooled Again」も堪能できる、至れり尽くせりなセットリストなのですよ。

『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』ツアーなので同作からの楽曲が多いのは致し方ありませんが、それでも来日が実現しなかった1991年当時の“脂の乗ったプレイ”を存分に味わえるという意味では、あの頃本作が果たした役割は非常に大きなものがありました(実は、演奏や歌の大半はあとからスタジオ修正/再録音されていることを、のちにサミーが明かしているのですが……)。アンディ・ジョーンズ特有のモワッとした、クセの強いミックスは2020年に聴くとちょっとアレですが、結局サミー在籍時のライブ作品はこれが最後(CDではこれが最初で最後)だったので、今となっては非常に貴重なアイテムと言えるかもしれませんね。なんだかんだで好きなライブアルバムです。

 


▼VAN HALEN『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』
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2020年2月25日 (火)

DIO『STRANGE HIGHWAYS』(1993)

1993年10月にヨーロッパと日本、翌1994年1月に北米でリリースされたDIOの6thアルバム。

当時18歳だったローワン・ロバートソン(G)を新ギタリストに迎え制作した『LOCK UP THE WOLVES』(1990年)がセールス的に失敗。その後BLACK SABBATHへと再加入し、『DEHUMANIZER』(1992年)という当時問題作扱いされた異色ヘヴィ作を制作、ツアーも行ったもののアルバム1枚で再脱退。自身のメインバンドDIOを再始動させます。

新たなギタリストとして迎えられのは、WWIIIといったバンドで活動していたトレイシー・Gという人物。DIO加入により一躍名を挙げた人物です。そのほかのメンバーは、BLACK SABBATHからそのままスライドしてきたヴィニー・アピス(Dr)と、DOKKEN解散後にMcAULEY SCHENKER GROUPやWAR & PEACEといったバンドで活動していたジェフ・ピルソン(B)と名うてのプレイヤーばかりで、マイク・フレイザー(AC/DCAEROSMITHTHUNDERなど)をプロデューサーに迎え満を辞して完成したのがこの『STRANGE HIGHWAYS』という問題作(笑)でした。

ディオ・サバスがモダンヘヴィネス寄りになったことで、当時は誰もが「こんなの、僕たちの求めるディオ・サバスじゃない!」と否定的な意見を寄せたと記憶しています。実際、僕自身も「『HEAVEN AND HELL』はどこに?」と完全否定したものです(その後、完全肯定派に鞍替えしましたが。笑)。『DEHUMANIZER』という「やるべきではなかった」アルバムを経て、古巣に戻ったディオが再び様式美の世界へと舞い戻った……と、本作を手に取ったときは安心したものです。

けど、オープニングを飾る「Jesus, Mary & The Holy Ghost」の冒頭数分でCD再生を止めてしまう自分……「なんだ、このヘヴィロック版KING CRIMSONは!?」と動揺を隠せず、しばらく再生ボタンを押すことができずにいました。

……モダンヘヴィネス化の戦犯はお前だったか、ディオよ(苦笑)。

CDを購入したものの、しばらくはフルで聴くことがなかったこのアルバム。1曲1曲が重すぎるし難解だし、なによりも通して聴くには非常に体力を要するんです。例えば、METALLICAブラックアルバムMOTLEY CRUEセルフタイトルアルバムも最初は同じように「通して聴くのに体力を要する」アルバムでした。しかし、慣れるとそのポップさや要所要所に用意されたフックが気持ちよく、自然とリピートできるようになっていたんです。ところが、このDIOの『STRANGE HIGHWAYS』に関してはいつまで経ってもそうならない……なぜなんでしょう。

要するにこれ、ディオ御大が歌っているからこそDIOの作品として成立しているものの、バックトラックやメロディに関してはDIOである必要のないものばかりなんです。良くも悪くも“振り切れている”楽曲群が揃った本作は、今の耳で聴けば全然スルスルと聴き進めることができる、ダーク&ヘヴィの佳作なのですが、王道メタルバンドのモダンヘヴィネス化やオルタナメタル化に対して心を広く持てきれていなかった1992〜3年の自分にはハードルの高い1枚だったわけです。

まんまKING CRIMSONなアレンジのヘヴィロック「Jesus, Mary & The Holy Ghost」を筆頭に、確かにキャッチーさや親しみやすさは皆無な楽曲ばかり。ですが、トレイシー・Gのリフワークやソロプレイは当時のモダンメタルとしてはかなり非凡なものがありますし、ディオのボーカルも必要以上にアグレッシヴかつヒステリックで、これはこれでアリと思えてしまう。「Hollywood Black」や「Evilution」「One Foot In The Grave」あたりのグルーヴ感は2020年の今も通用するものがありますし、アップテンポの「Here's To You」やヘヴィバラードの「Give Her The Gun」にはなんだかんだいってDIO節が感じられるし、結果としては「あれ、意外と良いかも?」と思えてしまう。時間の経過によって評価が大きく変わった1枚ではないでしょうか。

もちろん、80年代前半のDIOこそがすべてというリスナーもいらっしゃることでしょう。その意見は否定しませんし、それもまた正しいと思います。だけど、ちょっと視野を広げるだけで「こんな表現方法もあるんだ。こんな側面も持っているんだ」と新しい扉が開くこともある。サバスの『DEHUMANIZER』もこの『STRANGE HIGHWAYS』も歴史上スルーされることの多い作品かもしれませんが、だからこそ不意に出会ったときの「見つけた」感はより強いものがあるのではないかな。そんな「切り捨てるには勿体ない」1枚です。

 


▼DIO『STRANGE HIGHWAYS』
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2020年1月18日 (土)

ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』(1993)

1993年5月にリリーされた、ロバート・プラント通算6作目のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年6月に発売されています。

80年代後半のHR/HMブームの延長で、LED ZEPPELINに再評価が集まり、カタログのCD廉価盤リリース(日本において)、Atlantic Recordsの周年イベントでの再結成ライブ、さらにはジミー・ペイジ初のソロアルバム『OUTRIDER』(1988年)やプラントの4thソロアルバム『NOW AND ZEN』(1988年)のリリースおよび両作にお互いゲスト参加するなどのトピックもあり、『NOW AND ZEN』はアメリカで300万枚を超える大ヒットに。続く『MANIC NIRVANA』(1990年)も全英15位/全米12位のスマッシュヒットを記録するなど、個人としても非常に充実した時期を迎えていた90年代前半、プラントはこの『FATE OF NATIONS』で新たな試みに挑戦します。

それは、打ち込み主体だった過去2作(『NOW AND ZEN』『MANIC NIRVANA』)から打って変わって、バンドサウンドを軸にしたアルバムを制作すること、バンドメンバーに名うてのミュージシャンを迎えることでした。

クリス・ヒューズ(TEARS FOR FEARSピーター・ガブリエルポール・マッカートニーなど)を共同プロデューサーに迎えた本作では、曲ごとに多彩なゲストプレイヤーが参加。そこで気に入なったメンバーが、おそらくその後のツアーにも参加することになったのではないかと想像しますが、そのメンツはフランシス・ダナリー(G/ex. IT BITES)、ケヴィン・スコット・マクマイケル(G/ex. CUTTING CREW。2002年逝去)、マイケル・リー(Dr/ex. LITTLE ANGELS)といった新しいところから、ダグ・ボイル(G)、チャーリー・ジョーンズ(B)、クリス・ブラックウェル(Dr)、フィル・ジョンストン(Key)など過去のアルバム/ツアーにも参加した面々も見つけることができます。

プラントはこのアルバムについて「本作を制作する前に、MOBY GRAPEやJEFFERSON AIRPLANE、ティム・ハーディン、QUICKSILVER、TRAFFICなど自分のルーツを振り返った」とコメントを寄せていますが、これがすべてなんでしょうね。つまり、LED ZEPPELINに参加する前、音楽を始めた頃の気持ちにまで一度立ち返って、改めて音楽を作ろうとした。そのために気心知れた仲間だけじゃなくて、新しい血も加えることで化学反応を期待したと。

その結果、「Calling To You」や「Memory Song (Hello Hello)」「Promised Land」などずっと避けてきたツェッペリン的ハードロックに堂々とチャレンジしているわけです。まあ、過去2作でその助走はできていたので、今作でそれに挑むことはそう難しくなかったと思います。環境的にも追い風が吹いていましたしね。

かと思えば、トム・ハーディンのカバー「If I Were A Carpenter」含めトラッド調の楽曲もいくつか含まれておるし、「29 Palms」のようなAOR風ポップロック、「Great Spirit」というソウルナンバーも用意されている。全編でツェッペリンしまくっているわけではなく、自身のルーツに忠実にさまざまなタイプの楽曲に挑戦する。ある意味ではバンド時代〜ソロ活動の集大成とも言える作風ではないでしょうか。そういう意味では雑多と言えなくもないですが、自分は前時代的な打ち込みポップ主流だった近作よりも好きな1枚です。

にしても、ここでの試みがそのままツェッペリンのセミ再結成……PAGE AND PLANTへとつながるとは、このときは考えてもみませんでしたが(またこの締めかよ。笑)。

 


▼ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』
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2019年9月26日 (木)

HEART『DESIRE WALKS ON』(1993)

1993年11月に発売された、HEART通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は同年10月末に前倒しで先行リリースされています。

『HEART』(1985年)を筆頭に、『BAD ANIMALS』(1987年)『BRIGADE』(1990年)と産業ハードロック路線を突き進んできた彼女たちですが、ちょうどシーンがHR/HMブームからグランジ/ヒップホップ主体へと移行し始めたこともあり、HEART自身もここで軌道修正が入ります。

まず、外部ソングライター主体の楽曲群が、アン(Vo)&ナンシー(Vo, G)のウィルソン姉妹が中心になって書き下ろされた楽曲へとシフト。とはいえ、曲によっては外部ライターがサポートで入っており(あるいは、外部ライターが書いたものをアン&ナンシーが手を加える)、過去3作の“らしさ”は良い意味で損なわれていません。

ですが、そこまで産業ロック臭がしないんですよ、このアルバム。それは「アン&ナンシーがやりたいことをやった、趣味に走った」楽曲が中心になっているからかもしれません。

アルバムはカナダのDALBELLOが1985年に発表した「Black On Black」をリアレンジした「Black On Black II」から激しくスタート。原曲はシンセポップ色の強いアレンジですが、本作では名曲「Barracuda」を彷彿とさせるアグレッシヴさが際立つハードロックチューンへと生まれ変わっています。うん、良いオープニング。

かと思えば、トラッド色が際立つアコースティックチューン「Back To Avalon」があったり、産業ロック路線のミディアムバラード「The Woman In Me」もある。LED ZEPPELINの影響下にあるオリエンタルなハードロックナンバー「Rage」もあれば、美しいピアノバラード「In Walks The Night」、ハードロック調バラード「My Crazy Head」といった聴かせる曲もしっかり用意されている。

ボブ・ディランのカバー「Ring Them Bells」には同郷のALICE IN CHAINSからレイン・ステイリー(Vo)がゲスト参加し、DEF LEPPARDブライアン・アダムスでおなじみのプロデューサー、ジョン・マット・ラング書き下ろしの「Will You Be There (In The Morning)」では従来のHEARTらしさとマット・ラングらしさが融合した新境地を見せてくれる。「Voodoo Doll」や「Anything Is Possible」といったミディアム/アコースティック曲を挟みつつ、最後は再び「Desire Walks On」というハードロックナンバーで締めくくる。

「ロックバンドHEARTが帰ってきた!」と言ってしまえばそれまでですが、この方向転換はバンドをこの先も続けていく上で、このタイミングにやるべきことだった。そう、旧来のHR/HMバンドが死滅し始めたこのタイミングに。チャート的には全米48位と過去3作に及びませんでしたが、それでも50万枚以上は売り上げている。「Will You Be There (In The Morning)」も全米39位のヒットにつながりましたしね。

時代が変わろうがHEARTはまだまだ続いていくんだ……このアルバムは、そんな力強い宣言のような1枚だったのかもしれません。とはいえ、彼女たちが再びHEART名義でオリジナルアルバムを発表するのは、ここから11年も先のことになってしまうのですが……。

 


▼HEART『DESIRE WALKS ON』
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2019年9月16日 (月)

RUSH『COUNTERPARTS』(1993)

1993年10月にリリースされた、RUSH通算15枚目のアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて同年11月に発売されました。

リアルタイムでは初めてハマったRUSHのアルバムがこれ。『PRESTO』(1989年)からタイトなハードロック路線に回帰した彼らの、もっとも当時の流行を反映させた1枚ではないかと思います。

当時、オープニングの「Animate」を初めて聴いたとき、きっと誰もが「あれ……PEARL JAMじゃね?」と思ったんじゃないでしょうか。そうなんです、良い意味でグランジを独自に解釈した結果、過去2作以上にダークさが目立つハード路線を極めております。カッコいいったらありゃしない。

ギター&ベースのシンプルなリフを組み合わせるアレンジ(ユニゾンプレイ多め)は、彼らにしては若干ストレートで薄味に映るかもしれません。が、よく聴き込めばちゃんと計算されていることが理解できるし、そのへんの作り込みが当時の若手グランジバンドにはないものだったのも確か。だからこそ、グランジど真ん中世代にも響いたし、それ以前のオールドウェイヴ世代にも響いたんじゃないでしょうか。「Stick It Out」や「Cut To The Chase」なんて、まさにそういう1曲ですものね。

かと思えば、「Nobody's Hero」のようにセンチメンタリズムを前面に打ち出したミディアムバラードも含まれている。この曲は生ストリングスを導入していることもあり、ドラマチックさは本作中随一ではないでしょうか。

「Between Sun & Moon」のAC/DCチックなリフ、「Alien Shore」の豪快さ、ひんやりとしながらもポップさをキープする「The Speed Of Love」のスタイルなど、とにかく聴きどころ満載。80年代後半から目立ち始めた、どの曲も4〜5分程度のコンパクトさを重視するのも、時代を意識したものなんでしょうか。

70年代後半から80年代前半にかけての大作志向もオススメですが、そういったスタイルを「頭でっかち」と拒否してしまう輩にこそ聴いていただきたい1枚。例えば、この頃のDREAM THEATERQUEENSRYCHEが好きだって人は、絶対にハマると思いますよ。あ、もちろんPEARL JAMあたりが好きな人もね。

いわゆる旧時代のHR/HMバンドが死滅していく中、彼らは90年代前半も安定したセールスを残していました。もっとも、そこまで爆発的なヒットを飛ばしたバンドではありませんでしたが、本作はキャリア最高の全米2位を獲得。アメリカのみで50万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

 


▼RUSH『COUNTERPARTS』
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