カテゴリー「1993年の作品」の54件の記事

2019年6月19日 (水)

CRY OF LOVE『BROTHER』(1993)

1993年5月にリリースされたCRY OF LOVEの1stアルバム。メジャーのColumbia Recordsからの発表で、ここ日本でも同時期に国内盤がリリース(1997年には2ndアルバム『DIAMONDS & DEBRIS』発売に伴い再発も)されています。

アメリカ・ノースカロライナ州出身の彼らはケリー・ホーランド(Vo, G)、オードリー・フリード(G)、ロバート・キーンズ(B)、ジェイソン・パターソン(Dr)の4人組。このデビュー作はジョン・カスター(CORROSION OF CONFORMITYなど)をプロデューサーに迎え、かのマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオにてレコーディング&ミキシングされた意欲作です。

聴いてもらえばわかるように……というかジミ・ヘンドリクスのアルバムタイトルを引用したバンド名からもわかるように、彼らのサウンドはブルースやカントリー、サザンロックなどからの影響が強い土着的なアメリカン・ルーツ・ロックそのもの。派手さ皆無の地味目なロック/ハードロックをシンプルなバンドアンサンブルで表現し、その上に玄人好みなギタープレイと味わい深いボーカルが乗るといったものです。

FREEやBAD COMPANYを彷彿とさせつつも、LYNYRD SKYNYRDやTHE ALLMAN BROTHERS BANDとの共通点も見え隠れするその方向性は、好きな人にはたまらない、クセになるものではないでしょうか。その一方で、こういったルーツ・ロックに興味を見出せないリスナーには「どの曲も一緒」と突き放されてしまう地味目な1枚でもあるのですが。

確かに「これ!」といった1曲は存在しません(とはいえ、収録曲「Peace Piple」は当時Billboardメインストリームロックチャートで1位、「Bad Thing」は同2位を獲得しているのですが)。ちょっと気を抜けばダラダラと通り過ぎていってしまう、気づいたら最後の曲だった……そんな引っかかりの弱さも否めません。が、視点を変えれば「心地よく浸れるサウンド&楽曲群」と言えなくもないのかなと。個人的には後者寄りの評価で、決して頻繁にリピートするような作品ではないですが、たまに聴くと染みる。そういう1枚かなと。

それこそTHE BLACK CROWESや、最近のGRETA VAN FLEET、あるいはRIVAL SONSあたりが好きという人ならスッと入っていける1枚だと思います。

で、このバンドのギタリストでもあるオードリー・フリードはのちにTHE BLACK CROWESに加入。1999年のフジロックで来日しております。さらにベースのロバート・キーンズものちにLYNYRD SKYNYRDに加入。このへんも玄人好みっぽさが強くて、うれしいような悲しいような。

残念ながらフロントマンのケリー・ホーランドは2014年に亡くなっているので、この編成での復活は望めませんが……ただ、2ndアルバムに参加した2代目シンガーのロバート・メイソン(ex. LYNCH MOB、現WARRANTなど)は現役なので、こちらでの可能性はゼロではないですけどね。

 


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2019年6月11日 (火)

ANGRA『ANGELS CRY』(1993)

ブラジル出身のヘヴィメタルバンド、ANGRAが1993年11月にリリースしたデビューアルバム。

ANGRAはVIPERを脱退したアンドレ・マトス(Vo)が、ラファエル・ビッテンコート(G)と1991年に結成。のちにキコ・ルーレイロ(G/現MEGADETH)、ルイス・マリウッティ(B)、マルコ・アントゥネス(Dr)を迎えバンドとしてスタイルを確立させていきます。

聴いてもらえばわかるように、彼らはブラジルのバンドながらもジャーマンメタル的な“クサメタル”を地でいくスタイルで、そこにアンドレがVIPER時代から得意としていたクラシックの影響が散りばめられた、いかにも日本人が好きそうな楽曲がずらりと並ぶわけです。

90年代前半はちょうどここ日本で、HELLOWEENをはじめとするジャーマンメタルがウケていたこともあり、またVIPERの2ndアルバム『THEATRE OF FATE』(1989年)がここ日本でも高く評価されていたこともあり、このアルバムはデビュー作ながらも日本でバカ売れしました。そりゃあイングヴェイがオリコン総合チャートで1位を獲る時代ですもん。今では考えられない、想像できないようなことが起こっていたわけです。

オープニングSE「Unfinished Allegro」はクラシックというよりも、(そのチープさ含め)RPGゲームのBGMっぽさがあって今聴くと「……大丈夫?」と思ってしまいますが、続く名曲「Carry On」で確実にノックアウトされるはずなのでご心配なく(笑)。

「Carry On」ばかりが取り上げられる機会の多いアルバムではありますが、もちろんそのほかにも名曲三昧。タイトルトラック「Angels Cry」はクサメタル/クラシック/プログレメタルの要素をミックスした大作ですし、ドラマチックな盛り上がりを見せるメタルバラード「Stand Away」やカイ・ハンセン(G)&ディレク・シュレヒター(G)のGAMMA RAY組がソロ弾きまくりな約8分の大作「Never Understand」、「嵐が丘」の邦題でおなじみのケイト・ブッシュの代表曲「Wuthering Hights」の名カバー、メロディ運びが完全にジャーマンメタルのそれという「Evil Warning」、そしてアルバムラストにふさわしい圧巻の組曲「Lasting Child」……サウンドプロダクション的には多少難があるものの、楽曲自体はどれも出色の完成度ではないでしょうか。90年代前半のHR/HMシーンを語る上で最重要とは言い切れないものがありますが、ここ日本を基準に考えた場合欠かすことのできない1枚であることは間違いありません。うん、名作。

つい先日、アンドレ・マトスが心臓発作で47歳にして亡くなるというニュースが飛び込んできました。アンドレ、自分と同い年だったんだね。全然意識してなかった……同世代、特に同学年のアーティストが若くして亡くなるのはなんともやりきれない気持ちになります。今の僕にできることと言えば、彼が残した作品を忘れずに聴き続けること、そしてこうやってテキストで彼の偉業をまだ知らない人に伝えること。これが誰かのきっかけになって、つながっていくことを願ってやみません。

 


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2019年5月23日 (木)

BLUE MURDER『NOTHIN' BUT TROUBLE』(1993)

日本先行で1993年9月にリリースされたBLUE MURDERの2ndアルバム。海外では翌1994年2月に発売されたようです。前作『BLUE MURDER』(1989年)から4年ぶりに発表された本作は、その間のすったもんだ(カーマイン・アピス&トニー・フランクリンのリズム隊脱退など)を経て、難産の末に完成した1枚です。

プロデューサーは前作でのボブ・ロックからジョン・サイクス(Vo, G)のセルフプロデュースへと変更。とはいえ、ミックスはマイク・フレイザーというボブ・ロックがらみの人選なので、サウンドの質感的には前作の延長線上にあると言えるでしょう。

肝心の楽曲ですが、前作がWHITESNAKE“サーペンス・アルバス”に対する執念(と言う名の怨念。笑)が前面に出まくった作風だったのに対し、本作はそこだけに固執せず、ジョン・サイクスというアーティストの全キャリアを総括するような楽曲が揃っています。その“全キャリア”というのはプロのギタリストとしてだけではなく、彼が子供の頃に愛したブリティッシュ・ロックまでを包括するもので、ハードロックというジャンルだけでは括りきれないバラエティ豊かなものと言えます。

例えばオープニングを飾る「We All Fall Down」は完全にジョンが参加した末期THIN LIZZYですし、ボーカルの節回しもフィル・ライノットを彷彿とさせるもの。スリリングなアップチューンで冒頭を飾ると、続くSMALL FACESのカバー「Itchycoo Park」では急に牧歌的な雰囲気に。アコースティックギターがメインのこの曲で早くも和んだ空気を作り上げると、3、4曲目はWHITESNAKE時代に得たソングライティング力をフルで発揮させた「Cry For Love」「Runaway」というエモーショナルな楽曲が続く。しかも、これらで1stアルバムでの力みが完全に抜けきった、伸びやかなボーカル&ギターを聴かせてくれるのですから。

以降、「Dance」のようにポップで豪快なハードロックあり、ジョンの代わりにケリー・キーリングが歌うアップチューン「I'm On Fire」、メジャーキーのエモいバラード「Save My Love」、グルーヴィーな「Love Child」、流麗なメロディが印象的な「Shouldn't Have Let You Go」、ダイナミックな大作「I Need An Angel」、トラッドミュージック風の「She Knows」と、さまざまなタイプの楽曲が並び、改めてジョン・サイクスというソングライターの非凡さが体感できる構成となっています。

そういった意味ではアルバムとしてのまとまりは1stアルバムよりも薄いかもしれません。が、シンガーとしても力量が向上し、またギタリストとしてもより深みを増した本作の楽曲群の出来は、明らかに前作よりも上。何を重視するかで本作の対する評価は異なるかもしれませんが、このアルバムがBLUE MURDER名義では事実上最後のスタジオアルバムになったという現実を目の当たりにすると、ジョンの才能はBLUE MURDERという狭い枠の中には収まりきらなかった……ということなのかもしれません。

つまり、ここでようやくWHITESNAKEに対する“復讐”は終わったんじゃないかなと。以降もデヴィッド・カヴァーデイルに対する不平不満を口にし続けるジョンですが、実はこのアルバムでけじめはつけていた。そんな気がしてなりません。

 


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2019年4月26日 (金)

DURAN DURAN『DURAN DURAN (THE WEDDING ALBUM)』(1993)

1993年2月にリリースされた、DURAN DURAN通算7作目のオリジナルアルバム。当時のメンバーはサイモン・ル・ボン(Vo)、ジョン・テイラー(B)、ニック・ローズ(Key)、ウォーレン・ククロロ(G)の4人。80年代後半にオリジナルメンバーのアンディ・テイラー(G)、ロジャー・テイラー(Dr)が相次いで脱退して以降、セールスをどんどん下げていった彼らでしたが、このアルバムからは「Ordinary World」(全米3位/全英6位)、「Come Undone」(全米7位/全英13位)、「Too Much Information」(全米45位/全英35位)というヒットシングルが次々誕生し、アルバム自体も全米7位、全英4位と久しぶりのTOP10入りを記録しました。

前作『LIBERTY』(1990年)で能動的なロックバンド感を強調した彼らでしたが、デジタル感を含む全盛期のそれとは異なるものであったことからバンドとファンとの間に大きな溝が生まれました。まあ、新たにドラマーとギタリストを加えて5人組で再出発!と意気込み過ぎたのも、今となってはよくなかったのかもしれません。

のちにドラマーが脱退し、4人編成になったことでサウンド/アンサンブル的にはバンド色を残しつつも当時のダンスミュージックのカラーを採用。この両刀使いっぷりが功を奏し、ダークな楽曲がシーンを席巻するグランジムーブメントの中でも純粋に楽曲が評価されたわけです。

確かに「Ordinary World」は80年代のDURAN DURANと比べればアクが弱いといいますか、ハードロック以降の“普通に良い曲、良いバラード”でしかありません。が、その普通こそが実は大事だと気づかせてくれたのもこの曲。良い曲を感動的なアレンジで壮大に仕上げることで、当時はまだ主流だったラジオなどで好意的に受け入れられた、と。

また、前作からのロック的側面を残しつつも時代性を反映させた「Too Much Information」、その時代性をハウスなどのダンスミュージック側に寄せた「Drowning Man」や「Come Undone」、“普通に良い曲”を素直に表現した「Breath After Breath」といった曲からは、バンドがこの作品に賭ける強い意気込みが感じられます。

かと思うと「None Of The Above」や「Shelter」のように、サウンドメイキングこそ当時の時代性が反映されているものの軸の部分は80年代のままな楽曲もあるし、バンドのルーツを表現したTHE VELVET UNDERGROUNDのカバー「Femme Fatale」もある。雑食性が以前にも増していますが、こういったジュークボックス的な方向性ってMTVの時代をサバイブした彼ららしいとも言えるのかな。

80年代の彼らの作品と同じような気持ちで接することはないですが、これはこれで“よく出来た”1枚。NIRVANAPEARL JAMらがシーンのトップに君臨していた時代にこんなアルバムがヒットしたという事実を踏まえつつ触れてほしい、あの時代の空気が伝わってくる良作です。

 


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2019年3月19日 (火)

DUFF McKAGAN『BELIEVE IN ME』(1993)

GUNS N' ROSESダフ・マッケイガン(B)が1993年9月(日本では同年10月)に発表した、現時点で唯一のソロアルバム。当時はガンズが『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)に伴うワールドツアーが終了したあとで、バンドとしての活動が一時的に休止していたタイミング。本作の2ヶ月後には、事前にレコーディングされていたカバーアルバム『THE SPAGHETTI INCIDENT?』(1993年)もリリースされています。

ガンズの在籍メンバーとしてはいち早くソロ活動に乗り出したダフ(元メンバーのイジー・ストラドリンは脱退後の1992年にアルバムを発表していますが、ガンズに所属したままでのソロ活動はこれが初)。このアルバムでダフはベースはもちろんのこと、リードボーカルやリズムギター、ドラム、ピアノなど大々的に挑戦。どこか“スリージーロック版レニー・クラヴィッツ”みたいなスタイルで、アルバム作りに臨んでいます。

曲によってはさまざまなゲストミュージシャンも多数参加。スラッシュ(G)やギルビー・クラーク(G)、ディジー・リード(Key)、マット・ソーラム(Dr)といった“アクセル・ローズ抜き”ガンズの面々に加え、ジェフ・ベック(G)やレニー・クラヴィッツ(Vo)、当時SKID ROWのメンバーだったセバスチャン・バック(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、ロブ・アフューソ(Dr)など、顔の広いダフらしい豪華な面々が華を添えています。

ダフ自身はガンズのアルバムやライブでも「So Fine」や「New Rose」「Attitude」などでその歌声を披露してきましたが、決して個性的で上手というタイプではない、雰囲気で聴かせる“ヘタウマ”タイプ。当然このアルバムでもそういったスタイルが全開で、ガンズのアルバムをパンク/オルタナ側に寄せたその作風に妙にフィットしています。スラッシュがリードギターを弾きまくるオープニング曲「Believe In Me」からして、そのカラー押しまくりですものね。

かと思えば、クラヴィネットを多用したファンキーな「(Fucked Up) Beyond Belief」があったり、オルガンやストリングスを被せたスローバラード「Could It Be U」があったりと、相変わらず器用さも提示している。なんて感心していると、1分半程度のタイトルまんまな疾走パンクチューン「Punk Rock Song」なんて曲もある。さすがダフ、我々の思い描くパブリックイメージを裏切りません。

さまざまなゲストミュージシャンのカラーも強く打ち出しながらも、それに消されることのないダフの個性。アルバムとしては決して完成度が高いとは言い難いラフな内容ですが、そこも含めて当時のガンズのメンバーが作ったソロアルバムという印象が強いかも。この春、久しぶりにソロライブを行うというダフ(※参照)、そのあとには本作以来となるソロ名義でのアルバムもリリース予定なんだとか。ガンズでの活動を経た今の彼がどんな作風のアルバムを作るのか、そしてどんなゲストが参加するのか、とても気になります。



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2018年12月31日 (月)

OZZY OSBOURNE『LIVE & LOUD』(1993)

1993年6月にリリースされた、オジー・オズボーンのライブアルバム(同タイトルのライブ映像作品もあり)。1991年秋から翌年終盤まで行われたアルバム『NO MORE TEARS』(1991年)を携えて行われたワールドツアーの中からのベストテイクをセレクトして、CD2枚に収録。このツアーは当時、オジーの引退ツアーと銘打って行われたものだったこともあり、『NO MORE TEARS』からのヒット曲と中心にしつつも、BLACK SABBATH〜ソロの代表曲満載のグレイテスト・ヒッツ的選曲となりました。

オジーはこれまで4枚のフルアルバム(1982年の『SPEAK OF THE DEVIL』、1987年の『TRIBUTE』、2002年の『LIVE AT BUDOKAN』、そして本作)といくつかのライブEP、アルバム復刻版付属アルバムといった形でライブアルバムを発表しています。『SPEAK OF THE DEVIL』はBLACK SABBATH時代の楽曲オンリー、『TRIBUTE』は初期のソロ2作品とサバス曲のみ、また『LIVE AT BUDOKAN』はCD1枚ものということもあり、いわゆるフルスケールのライブがまるまる収められた形は、天時点ではこの『LIVE & LOUD』のみとなるわけです。

しかも本作、アルバム終盤の「Black Sabbath」でオジー、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Dr)の4人が集結。当時ありえないと言われていたオリジナル・サバスが復活した様子が、音源として収められているわけです。まあ、ここから10年も経たないうちにオジー・サバスは本格的に復活して、ニューアルバムやら来日やらが実現するわけですが(そこまでに復活から10数年を要しましたが)。

さて、アルバムの内容について。この当時のバンドメンバーはザック・ワイルド(G)、マイク・アイネズ(B)、ランディ・カスティロ(Dr)という編成。マイクはこのツアー終了後、ALICE IN CHAINSに加入してさらに知名度を上げることになります。

ザック在籍時のライブ作品はEP『JUST SAY OZZY』(1990年)や『LIVE AT BUDOKAN』がありますが、前者はギーザー在籍時とはいえ6曲のみだし、後者はチューニングを1音下げたバリバリにダーク&ヘヴィサウンドにシフトした時期。半音下げとはいえ、初期の楽曲をオリジナルに忠実に、かつザックらしいプレイも織り交ぜた若々しいギターを存分に楽しめるという意味でも、本作はたまらない内容と言えるでしょう。

オジーのボーカルに関しては、スタジオでオーバーダブしているので省略。ライブの生々しさは演奏面で味わいつつ、ボーカルは“いつもどおり”のものを楽しめる。“作品”という観点では文句のつけようがない1枚だと思います。

年明け3月には『DOWNLOAD JAPAN 2019』で正真正銘の“最後の”来日を果たすオジー。ありがたいことにザックも帯同しているので、全音下げのバリヘヴィなチューニングながらもオールタイムベストを堪能できることでしょう。そういった期待も込めつつ、年の瀬にこのアルバムを聴いて待望の来日に思いを馳せてみてはいかがでしょう。



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2018年12月 6日 (木)

KISS『ALIVE III』(1993)

1993年5月発売の、KISS通算3作目のライブアルバム。当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ブルース・キューリック(G)、エリック・シンガー(Dr)の4人。前年1992年に発表したスタジオアルバム『REVENGE』を提げたUS公演から厳選された16曲(日本盤およびデジタル盤は1曲追加の全17曲)で構成されています。

ライブ盤としての前作『ALIVE II』(1977年)から16年ぶりのライブ作品ということで、実は80年代のKISSって1枚もライブ作品を残していないんですよね。だから、ノーメイク時代の正式なライブアルバムは本作のみという(1996年に『KISS UNPLUGGED』も発売されていますが、あれはアンプラグドライブなので割愛します)。

というのも、80年代、特にKISSがメイクを落とし活動していた80年代半ばはMTVの時代。音のみから映像ありきの時代へと移行していったこともあり、KISSもあの時代にしてはいち早くライブビデオ『ANIMALIZE LIVE UNCENSORED』を1985年に発売しているのです。また、1987年にはMVと70年代〜80年代のライブ映像をミックスした『EXPOSED』も発表していますし、そういう意味ではこの2作品を“80年代流の『ALIVE』シリーズ”と捉えることができるかもしれません。

そうやって時代に敏感なKISSが、90年代に入り再びライブアルバムをリリースしたというのが興味深いところなのですが、派手なヴィジュアルを推した80年代からそういったヴィジュアルありきの時代が終わりを告げ、再び音で勝負みたいな世界に戻っていった。特に1993年なんて時代はNIRVANAPEARL JAMがバカ売れしていた時代です。KISS自身も『REVENGE』でヘヴィかつ生々しいサウンドへとシフトチェンジしましたし、ビデオ作品からこうやって再びライブアルバムという手法に変えたのは、ある意味正解だったのかなと。そういう嗅覚だけは異常に冴えてますからね、この人たち(とはいえ、同時期には『ALIVE III』のライブ映像に70年代の秘蔵映像を追加したビデオ作品『KISS DONFIDENTIAL』も発売されているのですが、それはそれということで)。

さて、その本作ですが内容的には『REVENGE』の楽曲を軸にしつつ、70〜80年代のKISSの名曲を織り交ぜた、実にグレイテスト・ヒッツ的な選曲となっています。「Deuce」や「Rock And Roll All Nite」「Detroit Rock City」といった過去の『ALIVE』シリーズにも収録されていたヒット曲はもちろんですが、『ALIVE II』以降に発表された「I Was Made For Lovin' You」や「I Love It Loud」「Heaven's On Fire」「Lick It Up」「Forever」といったヒット曲/代表曲に加え、「I Still Love You」や「Watchin' You」といったレア曲もあったりと、なかなかこの時代らしいセレクト。KISSがヘヴィメタル化した『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から3曲も選ばれているのも、90年代前半のKISSのモードを物語っているのではないでしょうか。

あと、ご存知のとおりKISSはライブ作品のオーバーダブをしたりボーカルやギターを差し替えたりすることで知られていますが(そんなのファンしかしらないって。笑)、本作のサウンドの質感がまさに「スタジオライブ音源にスタジアムでの完成を被せた」ような仕上がりでして。本当に純粋なライブアルバムとは言い難い、非常に“整理された”サウンドなのです。そこを良しとするか否かで、本作に対する評価もまた変わってくるのかなと。ただ、このアルバムが発売された当時、KISSは1988年以来の来日公演がまったく実現していなかったため、日本のファンにとってはあの頃のライブの雰囲気に触れるという意味で非常に重要な役割を果たした1枚だったのではないかと思います(あの頃、誰もが海賊盤に手を出せたわけではないしね)。

僕ですか? そんな小難しいこと考えず、夢中になって聴きまくってましたが(笑)。KISSに関しては、そういう楽しみ方が正しいのではないかと思うのです。踊らされてナンボでしょ?



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2018年11月 1日 (木)

DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』(1993)

1993年10月にリリースされた、DEF LEPPARD初のコンピレーションアルバム。1991年1月にスティーヴ・クラーク(G)を失い、残されたメンバー4人で5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)を完成させたバンドは、その直後に新メンバーとしてヴィヴィアン・キャンベル(G)を迎えます。そこでバンドは、スティーヴ・クラーク在籍時にひと区切りつけるために、過去のアルバム未収録曲や未発表曲をひとまとめにしたアルバムを作る計画を立てます。

ちょうどそんなタイミングに、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年公開)のサウンドトラックに提供した「Two Steps Behind」がシングルヒット(全米12位)。もともとこの曲も『ADRENALIZE』からのシングル「Make Love Like A Man」に収められていたものに手を加えたもので、当然この『RETRO ACTIVE』に収録。そういう良き流れもあり、アルバム自体も純粋な新作ではないものの全米9位、全英6位という好成績を残しています。

収録曲の大半は『HYSTERIA』(1987年)および『ADRENALIZE』のレコーディングセッションから生まれたものばかりで、アルバム冒頭を飾る「Desert Song」と「Fractured Love」は『HYSTERIA』セッション時に生まれたアウトテイク。スティーヴ在籍時の貴重な音源で、『HYSTERIA』に入れるにはちょっとヘヴィ&シリアスすぎたのかなと。決して悪くはない出来で、普通にアルバムに入っていても違和感はないかも。

3曲目「Action」(ご存知SWEETのカバーで、今ではライブ定番の1曲)以降は、ヴィヴィアン加入後の音源やこのアルバム用にレコーディングされたテイクも混在。同じ曲の別テイクも複数含まれており、「Two Steps Behind」「Miss You In A Heartbeat」はそれぞれ2 バージョン、3バージョン(うち1バージョンはシークレットトラック)と「ちょっと余計じゃない?」と若干のクドさも。とはいえ、それぞれアコースティックバージョンとエレクトリックバージョンでカラーが異なるので、ファンなら楽しめるんじゃないかなと。

のちに発売された『HYSTERIA』30周年盤にも含まれている「Ride Into The Sun」「Ring Of Fire」「I Wanna Be Your Hero」は、本作収録バージョンとは若干ミックスが異なります。また、『ADRENALIZE』日本盤にボーナストラックとして収められた「She's Too Tough」と「Miss You In A Heartbeat」(エレクトリックバージョン)も新たにリミックスが加えられているので、マニアはその違いを聴き比べるのも面白いかもしれませんね。あ、「Ride Into The Sun」は『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979年)が初出なので、聴き比べの際にはそちらもお忘れなく。

純然たるシングルコレクションとは異なり、あくまでオリジナルアルバムのアウトテイクやお遊び的楽曲が中心なので、バンドの本筋とは若干異なりますが、逆に軸にあるものがより見えやすい1枚かもしれません。そういう意味では、本作はDEF LEPPARDを語る上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。個人的にもお気に入りの上位に入る作品集です。



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2018年10月11日 (木)

MICK JAGGER『WANDERING SPIRIT』(1993)

1993年2月にリリースされた、ミック・ジャガーの3rdソロアルバム。1989年に発売されたTHE ROLLING STONESのアルバム『STEEL WHEELS』とそれに伴う大々的なワールドツアー、その模様を収めたライブアルバム『FLASHPOINT』(1991年)のリリースと、ストーンズに関する大仕事を終え、ひと段落したタイミングに制作されたのが、この5年半ぶりのソロアルバムでした。イギリスでは前作の26位を上回る12位、アメリカでは過去最高の11位にランクイン(50万枚以上の売り上げ)。「Sweet Thing」(全英24位、全米84位)、「Don't Tear Me Up」(全英86位)というシングルヒットも生まれています。

過去2作ではビル・ラズウェルやナイル・ロジャース、デイヴ・スチュワートといった旬のプロデューサーを迎えましたが、本作ではRED HOT CHILI PEPPERSなどでおなじみのリック・ルービンと初タッグ。すでにこの頃、リックはAC/DCの新作に着手したりと、オールドロック復興支援的な役割に不可欠な存在となっていました。もしかしたらミック、ここでのリックとのタッグがうまくいったら次のストーンズの新作も……なんてことも考えていたのかしら。

そして、過去2作との最大の違いはバンドサウンドに特化した作風だということ。前2作はジェフ・ベックを迎えつつも、バンド的な楽曲とダンサブルなポップソングをうまくミックスした作風でしたが、今回は曲によってゲストプレイヤーとしてレッチリのフリーやレニー・クラヴィッツが参加しつつも、ほぼ固定のバンドメンバーで制作。1988年のソロツアーに参加したジミー・リップ(G)がバンマス的な役割を果たしたのでしょうか、彼は本作を携えたソロライブにも参加しております。また、ストーンズの『STEEL WHEELS』や同ツアーに携わったマット・クリフォードもハープシーコードなどでその名前を見つけることができます。

まあとにかく、オープニングの「Wired All Night」からドライブ感あふれるロックンロールを聴かせてくれ、続く「Sweet Thing」ではブラックテイストの強いファンクチューン、「Out Of Focus」ではアメリカ南部風ロックでストーンズファンを楽しませてくれます。レニー・クラヴィッツとのデュエット「Use Me」(ビル・ウィザースのカバー)やジェームズ・ブラウンでおなじみの「Think」のファンクロックカバーなど、ストーンズでやるにはちょっと……と思われる楽曲もピックアップされているのが、いかにもソロっぽくて良いです。

「そうそう、こういうミックが聴きたかった!」と、80年代のストーンズファンならそう評価したことでしょう。しかし、この頃にはすでにストーンズは息を吹き返しており、本作の翌年1994年夏には早くも次作『VOODOO LOUNGE』を発表しているので、また本作の評価は変わってくるのかなと。とはいえ、その内容の良さにはまったく文句はありませんし、ミックのソロでここまでワクワクさせられたのも初めてのこと。今でも聴く頻度の多いお気に入りの1枚です。



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2018年9月14日 (金)

THE ALMIGHTY『POWERTRIPPIN'』(1993)

グラスゴー出身の4人組バンドTHE ALMIGHTYが1993年春にリリースした、通算3作目のオリジナルアルバム。前作『SOUL DESTRUCTION』(1991年)リリース後に脱退したタントラム(G)に代わり、元ALICE COOPER BANDのピート・フリージン(G)が加入して初のアルバムになります。プロデューサーはマーク・ドッドソン(JUDAS PRIESTANTHRAXSUICIDAL TENDENCIESなど)が務め、「Addiction」(全英38位)、「Over The Edge」(同38位)、「Out Of Season」(同41位)などのシングルヒットもあり、アルバム自体も全英5位というキャリア最高位を記録しました。

前2作をして“MOTÖRHEADよりもMOTÖRHEADらしい”などと言わしめた(いや、そんなことないですけど)バンドが、このアルバムで大きな変化を迎えます。それは、いわゆる“爆走ロックンロール”的なスタイルが影に潜み、代わりに当時主流だったグランジやヘヴィロック的側面を強めていくのです。

オープニングを飾る「Addiction」なんてALICE IN CHAINSあたりがやっていたとしても不思議ではないテイスト/サウンドだし、続く「Possession」もPANTERA的と言われれば確かにそれっぽい。MOTÖRHEADのモの字もありゃしない。

けど、軸にある哀愁味あふれるメロディとボーカリゼーションは変わっておらず、モダンなサウンドになっているものの「Over The Edge」のようにガッツはあるけどどこか悲しげなメロのヘヴィチューン、「Jesus Loves You… But I Don't」というもの悲しげなヘヴィバラード、「Out Of Season」というグルーヴィーかつブルージーなミディアムナンバーなど、前作までのファンも納得できる(させる)だけの佳曲も揃っております。

そして、少ないながらも「Powertrippin'」という爆走ロックンロールも残されているし、その後のライブでオープニングを飾る機会の多かったアップチューン「Takin' Hold」もある。決してただスピードを緩めただけではなく、そのバリエーションを横に広げただけなのだ、と。

後半に進むにつれてディープなミディアムヘヴィチューンが並びますが、「Instinct」あたりはちょっと退屈かな……続く「Meathook」はリフとグルーヴ感で乗り切ってますけど、ラストの「Eye To Eye」もちょっと弱い。全12曲ではなく10曲程度に絞っておけば、かなりの名盤になったはずなんですが……そこだけが残念でなりません。ま、これがあったからこそ、続く超傑作『CRANK』(1994年)が生まれたわけですけどね。

ちなみに本作、日本盤限定で『LIVE FROM DONINGTON '92』と題した7曲入りEPが付いた2枚組仕様も発売されました。こちらではすでに発売前の「Addiction」をやっていたりして、非常に興味深い内容です。中古店を探せば今でもよく見つかるので、ぜひトライしてみてはどうでしょう。



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