カテゴリー「1993年の作品」の75件の記事

2023年2月20日 (月)

U2『ZOOROPA』(1993)

1993年7月5日にリリースされたU2の8thアルバム。

前作『ACHTUNG BABY』(1991年)発表後、1992年から大規模なワールドツアー『Zoo TV Tour』をスタートさせたU2。アルバムはメガヒットを記録した5thアルバム『THE JOSHUA TREE』(1987年)に次ぐセールスで、ツアーも各地で大盛況となっていましたが、バンドはツアーの合間を縫ってジ・エッジ(G, Vo)主導によるミニアルバムの制作に取り掛かります。

しかし、テクノやエレクトロミュージックの要素を積極的に導入した『ACHTUNG BABY』での手応えもあってか、バンドの創作欲求はEPやミニアルバムの枠では収まり切らず、結果として全10曲入りフルアルバムへと拡張されていくことになります。プロデューサーにはジ・エッジと前作から引き続きブライアン・イーノ、そして『THE JOSHUA TREE』以降レコーディングエンジニアとして参加し続けているフラッドが名を連ね、前作以上にディープな“オルタナティヴ”ロック作りに果敢に挑んでいます。

80年代のU2を知る者にとっては違和感満載で、ドーピング感すら伝わるテイストだった『ACHTUNG BABY』と比較すると、本作で展開されている楽曲の方向性からはそのドーピングが切れてもなおダンスし続ける、虚しさのようなものが伝わる。そういった点でも、良い意味で(?)の空回り感が独自の空気作りに作用しており、結果として誰にも真似しようのない異色の1枚へと昇華されています。

アレンジ自体は『ACHTUNG BABY』以降のエレクトロ路線なんですが、良い意味で“抜け”感が強く、そのおかげで情報量が若干抑え気味。また、楽曲の方向性的には80年代の彼らを思わせるものも多く、「Babyface」や「Lemon」などはアレンジこそ90年代的ですが軸のメロディラインは往年の彼らそのもの。シングルカットもされた「Stay (Faraway, So Close!)」や「The First Time」なんて80年代後半の彼らまんまですしね。

そんな中、ジ・エッジの振り切り具合が最高潮に達した「Numb」や「Daddy's Gonna Pay For Your Crashed Car」、ジョニー・キャッシュをフィーチャーした「The Wanderer」にはブライアン・イーノとのコラボ作『ORIGINAL SOUNDTRACKS 1』(1995年/PASSENGERS名義)や次作『POP』(1997年)への布石も見え隠れします。溢れ出るアイデアを短い時間(本作の制作はたった2ヶ月とのこと)で形にするという点においても、『POP』の習作とも言える過渡期的1枚だったのかな。

実験色が相当強い内容にも関わらず、本作は全米&全英1位を獲得。セールス的には『ACHTUNG BABY』には遥か及ばなかったものの、「Stay (Faraway, So Close!)」がヴィム・ヴェンダース監督の映画『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』の主題歌に起用されたことでシングルヒット(全米61位/全英4位)しています。そして、結果としてこのアルバムを携える形で1993年12月、U2は三度目のジャパンツアー(東京ドーム2DAYS公演)を実現させるのでした。

 


▼U2『ZOOROPA』
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2023年2月 9日 (木)

LITTLE ANGELS『JAM』(1993)

1993年1月31日にリリースされたLITTLE ANGELSの3rdアルバム。日本盤は同年1月25日発売。

前作『YOUNG GODS』(1991年)が全英17位と、本国でスマッシュヒットを記録。また、同作からは「Boneyard」(33位)、「Product Of The Working Class」(40位)、「Young Gods」(34位)、「I Ain't Gonna Cry」(26位)とTOP40入りシングルが4作も生まれ、着実に知名度を高めていきます。

そんな成功の一方で、アルバム完成後にオリジナルドラマーのマイケル・リーが脱退し、THE CULTへ加入することに。リーに代わり、新たにマーク・リチャードソン(のちにSKUNK ANANSIEFEEDERにも加入)が加わり、ツアーを乗り切ります。そして、新たな布陣で完成させた勝負作となる3rdアルバム、なんと初の全英1位を獲得することになります。

前作で感じさせたハードロックの枠からの脱却、それがこのアルバムでは一気に開花しています。よりポップで華やか、それでいてサイケデリック調でオルタナティヴロック的な側面も強く感じさせるカラフルさは、当時国内専門誌で酷評されたことが記憶に残っています。いや、そんな狭い枠に捉われさえしなければ、本作は非常に完成度の高いロックアルバムとして評価できるはずなんですが。

過去作で見受けられたブラスをフィーチャーするスタイルは、リードシングル「Too Much Too Young」(全英22位)を筆頭に本作でも積極的に取り入れられています。しかもこの曲、コーラスでかのブライアン・アダムスもゲスト参加。コーラスというより、もはやサブボーカルと言ったほうがぴったりな目立ち具合なんですけどね。

このほかにも、適度な枯れ具合が心地よいミディアムチューン「Soapbox」(同33位)、ヒップホップ以降のファンキーさが活かされた「Don't Confuse Sex With Love」、ビートルズ調のサイケナンバー「Womankind」(同12位)、アコースティック色の強いバラード「The Colour Of Love」や「Sail Away」(同45位)、泣きメロっぽい湿り気がたまらないストレートなロック「I Was Not Wrong」、パワフルなギターリフとビートが気持ちよく響く「Tired Of Waiting For You」など、とにかく佳曲揃い。前作ほどのハード&ヘヴィさは皆無ながらも、ブラスを要所要所にフィーチャーした豪快なポップロックの数々で、最後まで飽きさせることなく楽しませてくれます。

グランジ全盛かつブリットポップ前夜の過渡期的時期に、こういった正統派サウンドで1位を獲ったこと自体奇跡的ですし、その成功もあって今作を携えたツアーではVAN HALENBON JOVIのサポートで本国を回るなど、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たそうとします。が、1位を獲得したものの、セールス的には期待以上の成績を収めることができず、彼らは続くベストアルバム『A LITTLE OF THE PAST』(1994年/全英20位)をもってメジャーのPolydor Recordsと契約終了。解散の道を選ぶこととなるのでした。

ちなみに、本作を含むLITTLE ANGELSのPolydor時代の3作品は2022年3月に国内廉価盤が再発されたものの、ストリーミングは国内未配信。できれば配信を通じてより多くの人に届くよう、お願いしたいところです。

 


▼LITTLE ANGELS『JAM』
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2022年11月 4日 (金)

ARCADE『ARCADE』(1993)

1993年4月8日にリリースされたARCADEの1stアルバム。日本盤は同年4月1日先行発売。

ARCADEは1991年、RATT解散後にスティーヴン・パーシー(Vo)が結成したハードロックバンド。メンバーは元CINDERELLA(当時)のフレッド・コウリー(Dr)、フランキー・ウィルセックス(G/ex. SEA HAGS)、ドニー・シラキュース(G/ex. GYPSY ROSE)、マイケル・アンドリュース(B/ex. 9.0)という布陣で、当時は「元RATTと元CINDERELLAのメンバーによる新バンド」という側面が強く打ち出されていたい印象が強いかな。

グランジ全盛の時代にメジャーのEpic Recordsと無事契約し、プロデューサーにデヴィッド・プラッター(DREAM THEATERFIREHOUSENIGHT RANGERなど)を迎えて制作。1993年という時代をまったく無視した(笑)、良くも悪くも開き直りの感じられるハードロックアルバムに仕上がっています。

オープニングの「Dancin' With The Angels」はアップテンポで攻めの姿勢が感じられる1曲。スライドギターのフレーズがどことなくAEROSMITH「Let The Music Do The Talking」に似ていますが(楽曲のテンポもね)、気にしないことにします。続くリード曲「Nothin' To Lose」はRATTの延長線上にあるミディアムテンポの地味なハードロック。このダークさは当時の時代を反映していると言えなくもないけど、根本にある方向性は80年代のヘアメタルそのもの。うん、何も変わってない(笑)。

いかにもなパワーバラード「Cry No More」、モロにRATTな「Screamin' S.O.S.」やブルージーな「Messed Up World」など、全体を通して似たようなテンポ感で攻める姿勢はRATTそのものですが、どの曲も似たり寄ったりで平均的な仕上がり。元CINDERELLAのメンバーが在籍するもののドラマーということもあり、ソングライティングや演奏面でそこまでCINDERELLAのカラーも見えないですし、そもそもギタリスト2人の色が薄味ということで、突出した個性が見受けられない。完全にスティーヴンの独り相撲といったところでしょうか。

アルバム後半に進むと、アグレッシヴなアップチューン「All Shook Up」、ピアノとアコギを用いたメロウなバラード「So Good... So Bad...」、初期RATTナンバーの焼き直し「Mother Blues」(のちにRATTのリメイクアルバム『COLLAGE』(1997年)で再録)など耳に残る曲もなくはないですが、前半の煮え切らなさが災いし、そこまで大きなインパクトを残すことなくアルバムは終了。リリース当時、数回聴いてCDラックの奥のほうにしまってしまったこと、今でも忘れません。

そういった印象は、リリースから30年近く経った今もそう大きく変わることはなく、やはり耳に残る曲はここに上げたようなものばかり。あとは「Calm Before The Storm」やラストの「Reckless」あたりかな。まあ全13曲の半分くらいは悪くないと思えるのですから、決して駄作ではないのでしょう。ただ、これがデビュー作と言われると……先が思いやられますよね?(苦笑)

RATTやらCINDERELLAでの功績があるからこそ、かろうじてここにつながったのでしょうけど、どうにも成功してやろうという野心が伝わってこないし、むしろ開き直って趣味全開にも受け取れる。HR/HM瀕死の1993年という時代において、まったく危機感のない本作はある意味では奇跡の1枚なのかもしれません。

 


▼ARCADE『ARCADE』
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2022年10月31日 (月)

QUIET RIOT『THE RANDY ROHADS YEARS』(1993)

1993年11月12日にリリースされたQUIET RIOTのコンピレーションアルバム。日本盤は同年12月21日発売。

本作はランディ・ローズ(G/1982年没)在籍時の海外未発売音源や本邦初公開となる未発表曲を含む、レアトラック集。多くの楽曲にはリミックスが施されているほか、未発表曲「Force Of Habit」以外のボーカルトラックはケヴィン・ダブロウ(Vo)によって再レコーディングされています。なので、日本限定発売の1stアルバム『QUIET ROIT』(1978年)および2ndアルバム『QUIET RIOT II』(1978年)のオリジナル音源とも異なるテイクを楽しむことができます。

全10曲中、『QUIET ROIT』から3曲(うち1曲はバージョン違い)、『QUIET ROIT II』からは3曲(うち1曲がバージョン違い)、それ以外の4曲は未発表曲となっています。『QUIET ROIT』収録曲「Mama's Little Angels」の別バージョンとなる「Last Call For Rock 'N' Roll」は新たに歌詞が書き直されており、『QUIET ROIT II』からの「Afterglow (Of Your Love)」(SMALL FACESカバー)はリズム隊を排除したアコースティックバージョンで収録(終盤にちょっとだけリズム隊が加わります)。「Mama's Little Angels」はドラムトラックもリメイクされており、完全に80年代以降のQUIET RIOTの音そのものに進化。また、後者はアコギの音色がオジー・オズボーン『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)でのランディの音色に近づけられており、そのあたりからもバンド側のランディに対する敬意や愛情が伝わります。

実際、本作収録の多くの楽曲におけるギターサウンドは、新たにカルロス・カヴァーゾ(G)所有のマーシャルアンプを介して再生されるなどして、チープだったオリジナル音源にふくよかさを加えることに成功しています。また、1977年のライブ音源「Laughing Gas」にフィーチャーされた長尺のギターソロは、別々で演奏された複数のギターソロを繋ぎ合わせたもので、その中にはのちの「Dee」や「Goodbye To Romance」などで耳馴染みのあるプレイ/フレーズも登場します。

アルバムを通して聴くと、どうしてもB級臭が否めなかった『QUIET ROIT』や『QUIET RIOT II』ですが、現代的に手が施された本作でのバージョン/トラックを聴くと、実は70年代に彼らが実践してきたことはその後のQUIET RIOTとさほど大きく違っていないことにも気づかされるし、当時にオジーとタッグを組む前からランディ・ローズは素晴らしかったのだという事実も再確認できる。その評価のわりに残された音源が少ないだけに、本作はランディのファンやすべてのHR/HMファンにとって非常に貴重な音源集と言えます。

ところが、本作は2022年10月時点で廃盤状態。サブスクでも未配信のままです。この11月11日からはランディの自伝映画『ランディ・ローズ』も国内公開されるだけに、聴きたい人が手軽に楽しめる状態にしてほしいものです。

 


▼QUIET RIOT『THE RANDY ROHADS YEARS』
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2022年3月12日 (土)

ブライアン・アダムスのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスの最新オリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)、素晴らしい内容でしたね。この新作を機に、ぜひ若い世代にも彼の名作たちに触れていただきたい(そのためのサブスクリプションサービスですしね)。しかし、数あるオリジナルアルバムのどれから手を出したらいいのか、せっかくならオイシイとこ取りして手軽に楽しみたい! そういう方のために、このエントリーでは複数制作されている彼のベストアルバム/グレイテストヒッツアルバムを簡単に紹介していきたいと思います。

紹介するのは、アーティスト主導で制作された4作品。レーベル主導で販売された『ICON』(2010年)は除外しています。このエントリーを頼りに、どの時代のどの作品が自分に適しているか、吟味してみてください(もちろん、ヒット曲/代表曲の被りが多いので、全部手を出す必要はありません)。

 

 

『SO FAR SO GOOD』(1993)

 

1993年11月2日発売の、ブライアン・アダムス初の公式ベストアルバム(日本盤は同年11月8日発売)。CD1枚モノ。

過去には日本限定で『HITS ON FIRE』(1988年)という2枚組作品(DISC 1が当時の最新作『INTO THE FIRE』、DISC 2に『CUTS LIKE A KNIFE』『RECKLESS』からのヒットシングルに加え、アルバム未収録のシングルB面曲やライブテイクをコンパイル)が限定販売されましたが、ワールドワイドでのベストアルバムは今作が初めて。全米ブレイクのきっかけとなった3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)からシングル3曲、メガヒットとなった4thアルバム『RECKLESS』(1984年)からは全米1位を記録した「Heaven」を含む6曲、5thアルバム『INTO THE FIRE』(1987年)からは「Heat Of The Night」1曲のみ、そして当時の最新オリジナルアルバムである6thアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)からは世界的大ヒット曲「(Everything I Do) I Do It For You」を含む3曲をピックアップ。さらに、本作のみの新曲としてシングルヒット(全米7位/全英2位)もした「Please Forgive Me」が用意されています。

『CUTS LIKE A KNIFE』『RECKLESS』からのヒットシングルは網羅されていますが、『INTO THE FIRE』からは「Hearts On Fire」(全米26位/全英57位)、「Victim Of Love」(全米32位/全英68位)の2曲、『WAKING UP THE NEIGHBOURS』からは「There Will Never Be Another Tonight」(全米31位/全英32位)、「Thought I'd Died And Gone To Heaven」(全米13位/全英8位)、「All I Want Is You」(全英22位)あたりのシングル曲が選外に。かつ、このアルバムと同時期にリリースされ大ヒット中だった、映画『三銃士』の主題歌として制作されたロッド・スチュワートスティングとのコラボ曲「All For Love」(全米1位/全英2位)も未収録となっています。

『WAKING UP THE NEIGHBOURS』が引き続きロングヒット中だった時期の1枚ということもあり、80年代のブライアンをおさらいするに最適な内容。ブレイク前の1stアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)、2ndアルバム『YOU WANT IT YOU GOT IT』(1981年)は気持ち良いくらいにスルーされているのも納得です。非シングル曲の「Kids Wanna Rock」(『RECKLESS』収録曲)も選ばれていることもあり、本作と『WAKING UP THE NEIGHBOURS』を持っていれば、この時点でのブライアン・アダムズはほぼ網羅できるといったところでしょうか。

実は、このテキストを書き始めて初めて気づいたのですが、先月まで配信されていた本ベストアルバム。いつの間にかサブスクから消えてます。あれ、もしかしてこの時点で企画倒れでは……(汗)。

 


▼BRYAN ADAMS『SO FAR SO GOOD』
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『THE BEST OF ME』(1999)

 

1999年11月15日発売の、ブライアン・アダムス2作目のベストアルバム(日本盤は同年11月17日発売)。CD1枚モノ。

『SO FAR SO GOOD』から6年のスパンを経て制作された本作ですが、その間にオリジナルアルバムは『18 'TIL I DIE』(1996年)『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)の2枚しか出ておらず、かつ両作ともアメリカではかつてのようなヒットにはつながっていないこともあってか、本ベストアルバムが全米リリースされるのは2001年になってからでした。

全16曲の収録曲のうち『SO FAR SO GOOD』との被りは5曲と意外に少なめで、その内訳は4thアルバム『RECKLESS』から2曲(「Summer Of '69」「Run To You」と地味なセレクト)、6thアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』から2曲(「Can't Stop This Thing We Started」「(Everything I Do) I Do It For You」)、1stベストアルバム『SO FAR SO GOOD』から当時の新曲「Please Forgive Me」、アルバム未収録だったブライアン&ロッド・スチュワート&スティングによる「All For Love」(1993年)、7thアルバム『18 'TIL I DIE』から4曲、8thアルバム『ON A DAY LIKE TODAY』から3曲(うち「Cloud Number Nine」は未発表リミックスバージョン)、そして1997年に発表されたライブアルバム『MTV UNPLUGGED』のみ収録の新曲2曲(「I'm Ready」「Back To You」)と、本作のために制作された新曲「The Best Of Me」。『SO FAR SO GOOD』が80年代のUSヒットに寄せたものだとしたら、本作は90年代以降のUKヒットを総括した内容といったところでしょうか。

上記のように『SO FAR SO GOOD』との被りが比較的少ないこともあり、1993年以降の90年代を振り返る意味では非常に手軽な内容と言えます。とはいえ、本作も泣く泣くカットされた90年代のヒット曲が少なくないので、『SO FAR SO GOOD』同様にあくまでビギナー向けの1枚といったところでしょうか。

なお、本作も2022年2月までサブスク上で確認できたものの、気づけば『SO FAR SO GOOD』とともに消えてしまいました。

 


▼BRYAN ADAMS『THE BEST OF ME』
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2021年11月30日 (火)

STING『TEN SUMMONER'S TALES』(1993)

1993年3月9日にリリースされたスティングの4thアルバム。日本盤は同年2月28日に先行発売。

実の父親の死と直面したこともあり、内省的で重苦しさも感じられた前作『THE SOUL CAGE』(1991年)から2年ぶりの新作は、正反対で陽気な作風。スティング(Vo, B)のほか、ドミニク・ミラー(G)、ヴィニー・カリウタ(Dr)、デヴィッド・サンシャス(Key)という布陣を軸に制作されたこともあってか、非常にバンド感の強い内容に仕上がっています。

THE POLICE時代を彷彿とさせる大きなノリのポップロック「If I Ever Lose My Faith In You」を筆頭に、そのタイトルからもわかるようにマカロニウェスタンをパロったカントリーロック「Love Is Stronger Than Justice (The Munificent Seven)」と、頭2曲だけでも過去3作とは異なるテイストであることが伝わります。特にジャズに系統した初期2作からは想像もできないポップさは、ある意味THE POLICE時代からの続きが描かれているようにも映ります。

その考えは「Field Of Gol」や「Seven Days」などといったポップ色の強い楽曲で、さらに確信へと変わります。かと思えば、初期作の延長線上にあるアレンジの「Heavy Cloud No Rain」もあるのですが、楽曲のスタイル自体はロックンロールのフォーマットにあり、このあたりからもスティングが本作で何を示したかったのかがご理解いただけるはずです。

ブギー調の「She's Too Good For Me」、変拍子を用いた「Saint Augustine In Hell」などは“もしTHE POLICEが90年代まで続いていたら”なんて想像してしまいたくなる作風だし、「Everybody Laughed But You」はTHE POLICEからソロを経て再びバンドに戻ったら……なんてこともイメージしたくなる仕上がり。さらに、アルバムのエンドロール的な「Epilogue (Nothing 'Bout Me)」の軽やかさ含め、本当に終始聴きやすいアルバムなんですよね。

また、本作には映画関連の楽曲が2曲含まれており、それもあって認知度がある程度高い作品かもしれません。その中でも「Shape Of My Heart」は映画『レオン』のエンディングで印象的な使われ方をしたこともあり、特に日本のリスナーの中にはこのアルバムがお気に入りという方が少なくないはずです。

楽曲のポップさはさることながら、それを巧みなアレンジ&演奏で支えるバンドエンバーの才能には驚かされるばかり。同作を携えた来日公演、僕も当時日本武道館に足を運びましたが、ヴィニー・カリウタのドラミングの素晴らしさや、ドミニク・ミラーのギタリストとしての多才さに圧倒されたことをよく覚えています。そりゃあこの2人、続く『MERCURY FALLING』(1996年)でも続投するわけです(ドミニクに至っては『THE SOUL CAGE』から3作連続なので、もはや片腕的存在でしょうしね)。

ソロ1作目『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』(1985年)に若干の敷居の高さを覚え、なおかつTHE POLICE時代のテイストを求めるのであれば、本作は入門編としてうってつけの1枚だと断言します。スティングのソロキャリアにおいても、もっとも間口が広くて奥がドロドロ(笑)な1枚ですしね。

 


▼STING『TEN SUMMONER'S TALES』
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2021年11月14日 (日)

THE QUIREBOYS『BITTER SWEET & TWISTED』(1993)

1993年2月18日にリリースされたTHE QUIREBOYSの2ndアルバム。日本盤は同年3月31日発売。

デビューアルバム『A BITTER OF WHAT YOU FANCY』(1990年)が全英2位という好記録を樹立し、「7 O'Clock」(同36位)、「Hey You」(同14位)、「I Don't Love You Anymore」(同24位)、「There She Goes Again」(同37位)を複数のヒットシングルも生み出したTHE QUIREBOYS。さらにライブアルバム『LIVE (RECORDED AROUND THE WORLD)』(1990年)も発表するなど、デビューから1年でトップバンドの仲間入りを果たすことになります。

しかし、1991年からハードロック全盛期からグランジやヒップホップを主体としたシーンに移行し始め、THE QUIREBOYSのようなクラシックロックをベースにしたバンドには苦しい時代に突入。これにより、長期にわたり制作を続けてきた2ndアルバムは完成までに難航することになります。

プロデューサーにかのボブ・ロック(METALLICAAEROSMITHBON JOVIMOTLEY CRUEなど)を迎えた本作。ラフでアーシーなロックンロールを武器とするTHE QUIREBOYSと、メタリックな音を武器とするプロデューサーのボブがどのような化学反応を起こすのかに注目が集まりましたが、ここに関しても終盤でテコ入りされ、THE ROLLING STONESなどで知られるクリス・キムゼイが第二のプロデューサーとして介入。ボブがプロデュースした多くの楽曲にリミックスを施したり、あるいは新たにクリスのプロデュースで楽曲が制作され、最終的に約3年ぶりの新作は全14曲/60分という非常に長尺なアルバムとして届けられることになります。

確かにボブが関わったであろう楽曲は全体的にドラムが硬質な、重心の低いミックスとなっています。が、もともとドラムの音が固めのバンドなだけに違和感はほぼなく、「ぶっちゃけ、ボブである必要があったのか?」という疑問すら生じます。楽曲のスタイル自体は前作の延長線上にあるものですが、デビュー作がそれまでのストック中心だったことを考えると、ここで聴くことができる新曲群は2年近くにおよぶワールドツアーを経て得た自信がラフなロックンロールとして良い形で凝縮されたのではないでしょうか。

ですが、楽曲の幅という点では焦点が絞れたぶん、前作ほどのバラエティの幅は感じられないかも。それを良しとするか否かで本作に対する評価も変わりそうな気がします。

シングルカットもされたHOT CHOCOLATEのカバー「Brother Louie」が出色の出来で、この1曲のためだけに本作を手に取ってもいいほど。ちなみにこの曲、ほぼ同時期にかのBON JOVIもライブでカバーしていましたね。

 


▼THE QUIREBOYS『BITTER SWEET & TWISTED』
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2021年7月28日 (水)

METAL CHURCH『HANGING IN THE BALANCE』(1993)

1993年10月7日にリリースされたMETAL CHURCHの5thアルバム。日本盤は同年8月21日に先行発売。

Epic Records移籍第1弾アルバム『THE HUMAN FACTOR』(1991年)が前々作『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)同様に高評価を獲得したものの、湾岸戦争勃発の影響によるワールドツアー短縮、および不景気からくるレーベル内淘汰によりアルバム1枚で契約打ち切りとなってしまったMETAL CHURCH。そんな苦境にもめげず、新たにジョーン・ジェット運営のBlackhearts Recordsと契約(アメリカと日本のみ。ヨーロッパではSPV / Steamhammer Recordsと契約)し、2年半ぶりの新作を完成させます。

アートワークの酷さに聴く前から引き気味になるリスナーも少なくないでしょうが、中身は前作の延長線上にある王道パワーメタルの良作。インディーズ落ちによる予算削減も影響してか、音質はあまり良くないのですが、その生々しいサウンドがミドルヘヴィナンバーには不思議と合っているような気がします。

重めのミドルナンバーと疾走感の強い楽曲が交互に並ぶ序盤の構成は、過去2作のスラッシュメタルの影響下にある作風とは異なるものが感じられ、特にジェリー・カントレル(G/ALICE IN CHAINS)がリードギターで参加したオープニング曲「Gods Of Second Chance」や、BメロがJUDAS PRIEST的なアップチューン「Losers In The Game」(この2曲のタイトルの素晴らしさよ)、前作を経たことで生まれたシャッフル調のヘヴィチューン「Hypnotized」、当時のツアーでオープニングを飾った「No Friend Of Mine」、いかにも彼ららしいヘヴィバラード「Waiting For A Savior」という前半の流れは完璧に近いものがあります。

後半もBUDGIE「Breadfan」を彷彿とさせるイントロの「Conductor」から始まり、アメリカ人目線で原爆について歌われた「Little Boy」(コーラスでジョーン・ジェットもゲスト参加)、ザクザク刻むギターリフが気持ち良い「Down To The River」、緩急に富んだアコースティックギターの使い方が絶品な「End Of The Age」、終盤に向けての小休止的インスト「Lovers And Madmen」を経て突入するパワフルなミドルチューン「A Subtle War」という構成で締め括り。特に後半は7〜8分台の長尺曲「Little Boy」「End Of The Age」で魅せる構築美にうっとり。その合間に入るアップチューンがそれぞれタイプが異なることと相まって、前作とは異なる色彩美で聴き手を魅了します。

マイク・ハウ(Vo)のボーカルも良好ですし、これでレコーディング環境やミックスにもっとお金をかけていたら最強のメタルアルバムになっていたはずだし、彼らも解散という道を選ばずに済んだのでは……もちろん、今となってはの話ですが。

本作を携えたワールドツアーを2年にわたり続けたMETAL CHURCHでしたが、1996年にバンドは解散の道を選択。マイク・ハウは音楽業界を引退することとなるのでした(その19年後、マイクはMETAL CHURCH復帰とともに業界にカムバック)。

 


▼METAL CHURCH『HANGING IN THE BALANCE』
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2021年6月24日 (木)

METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』(1993)

1993年11月23日にリリースされたMETALLICA初のボックスセット作品。日本盤は『メタルVOX・ライヴ!』という邦題で、ほぼ同タイミング(1994年年明けだったかな?)に発売。

本作は1993年2月25〜7日および3月1〜2日のメキシコ・シティ公演のベストテイクで構成された3枚組CDと、1992年1月13、14日のサンディエゴ公演と1989年8月29、30日のシアトル公演を収めた2枚のDVD(初出時はVHSテープ3本)を同梱したもの。初盤(VHS)にはバックステージパスのレプリカやTシャツ、ブックレットも封入された豪華仕様でしたが、とにかく箱が大きくて収納に一苦労したことをよく覚えています(苦笑)。2003年頃に最初された形態は、3枚組CD+DVD2枚(DVDはシングルCDなどに用いられる薄いケース)のみのコンパクトな形に変わったので、こちらの記憶が強いという若いリスナーも少なくないかもしれませんね(もはやVHSを再生する機器も中古じゃないと手に入らないでしょうし)。

ワールドツアーの模様が逐一音源化される『LIVE METALLICA』企画が始まる前は、本作が唯一のMETALLICAライブ音源ということもあり、特に90年代半ばから2000年代初頭はかなり重宝された作品だったのではないでしょうか。特にバンドの絶頂期であるブラックアルバム(1991年)を携えたツアーの模様を、フルスケールで楽しめるライブアルバムですしね。ブラックアルバムのツアーではここ日本にも2度(1991年大晦日の東京ドームと1993年3月)訪れているものの、以降は1998年、2003年とほぼ5年おきの来日でしたし(リリースもしばらく途絶えたしね)、その間にファンになったリスナーがライブを追体験するという点でも、本作はかなり重要な役割を果たした作品だったと断言できます。

全24トラック、約3時間という特大ボリュームのライブはまさに当時の彼らそのもの。ミックスの派手さも非常に90年代的ですよね。ブラックアルバムの楽曲が軸になるものの、要所要所で「Creeping Death」や「Fade To Black」「Seek & Destroy」「Whiplash」など初期の楽曲が挿入されるセットリストは、意外と今と変わりないんですよね。ただ、『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)収録曲をメドレー形式で10分にまとめた「Justice Medley」なるコーナーがあったり、「Seek & Destroy」をジェイソン・ニューステッド(B)が歌っていたりするのはこの時期ならですし、QUEEN「Stone Cold Crazy」カバーがあったりするのもお得感満載。ベストアルバム的コンピレーションアルバムが存在しない彼らにとっては、初期5作品をおさらいする上でも実はかなり有能な1枚(CD3枚組)ではないでしょうか。

そして、映像のほうに関して。確か1992年のライブはこの時期のMVなども手がけたウェイン・アイシャムがディレクションを担当していたと記憶します。それもあってか、冒頭のドキュメンタリー的イントロダクションが20分もあって煩わしかったりするのですが、そこを除けば非常に90年代初頭らしい“MTV感覚のライブ映像“と言えるのかな。今の目で観るとちょっと作りすぎ感が否めませんが、歴史的資料としては十分かなと。

もうひとつの1989年の映像は、もともと商品化を予定していなかったこともあり、質はイマイチ。ですが、当時オフィシャルで現存する『...AND JUSTICE FOR ALL』期のライブ映像はこれだけだったので、特にブラックアルバム以降ファンになった方々にはうれしい逸品だったはずです。正直、僕は1992年のほうよりこっちばかりリピートしたなあ……それこそVHSテープが擦り切れるほどに(誇張なし)。

2021年9月10日にはブラックアルバム発売30周年を記念したボックスセットが発売されます。こちらにもさまざまなライブ映像が収録される予定ですが、そことはまた違った、作品性の高いライブ映像という意味でも、本作は事前にチェックしておくべき重要作品だと言っておきたいです。

さ、もう一回1989年のライブ映像を再生しますか(今はDVDなのでご安心を。笑)。

 


▼METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』
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2021年6月18日 (金)

PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』(1993)

1993年5月3日にリリースされたPINK CREAM 69の3rdアルバム。日本盤は同年6月17日発売。

日本デビュー作となった前作『ONE SIZE FITS ALL』(1991年)は、そのメロディアスなハードロックサウンドとアンディ・デリス(Vo)のハスキーな歌声との相性も抜群で、本国ドイツでは最高22位まで上昇。ここ日本でも高く評価され、国内未発売だった1stアルバム『PINK CREAM 69』(1989年)の日本盤リリースや初来日公演実現など大きな結果へとつながりました。

そんな好状況を経て届けられた3作目ですが、何やら過去2作とは少し質感が異なります。甘く官能的なメロディラインはどこかモノトーンなものへとシフトし、アルバムを構築する楽曲群もヘヴィでエッジの効いたミドルテンポが中心。要するに、1993年という時代(グランジブームの真っ只中、かつPANTERAMETALLICAブラックアルバムを筆頭とするグルーヴメタルがシーンを席巻)がモロに反映された作りへと変化しているのです。

こういう要素も過去2作(特に前作)には含まれていたものなので、突然変異というわけではない。だけど、ここまであからさまに偏ると、さすがに面食らうよね……ってことで、リリース当時は「悪くはないけど、コレジャナイ」と常々感じていた1枚でした。シングルカットされた「Keep Your Eyes On The Twisted」やミディアムバラード「Somedays I Sail」、エモーショナルなアップチューン「Shattered」などは前作までのカラーが感じられるものの、さすがにオープニングを飾る「Face In The Mirror」や、アルバム中盤に配置された「Dyin' Century」のダークさにはたじろぐよね……って話なんです。

確かに「Monday Again」のようなファストチューンや、メロディラインは過去2作には及ばないもののそれに限りなく近い作風の「Till You're Mine」など、仮に前作に含まれていたとしたら普通に楽しめるであろう楽曲も存在するのですが、過去2作にあったキラーチューンが存在しないこと、そしてアルバム冒頭の流れの悪さ(歯痒さ)がこのアルバムをワンランクもツーランクも落としている気がしてなりません。

久しぶりに聴いてみたら、当時ほどネガティブな印象を受けなかったし、最後まで新鮮な気持ちで楽しめたんです。確かにダークさ、モノトーン感は否めませんが、そういうアルバムが3作目に生まれたとしても決して不思議じゃない。ただ、そのさじ加減や見せ方がうまくなかった。ここから3曲くらいダークな曲を間引いて、「Livin' My Life For You」や「Signs Of Danger」「Where The Eagle Learns To Fly」級の名曲がひとつでもあれば、アンディ・デリスはバンドを辞めずに済んだのではないか……だとしたら、その後のHELLOWEENには誰が加入していたのか。たられば話をしたところでどうにもなりませんが、そんな未来もあったんじゃないかと思うと、やはり罪作りな1枚だなと思わずにはいられません。

 


▼PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』
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