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カテゴリー「1994年の作品」の81件の記事

2021年9月 8日 (水)

ENUFF Z'NUFF『SEVEN』(1997)

1997年2月18日に海外でリリースされたENUFF Z'NUFFの7thアルバム。日本では1994年9月30日にCHIP & DONNIE名義で、『BROTHERS』というタイトルにて発表されました。

制作時期が『TWEAKED』(1995年)と重なること、特に日本では同作と同時期(1994年11月末)発売ということで、表裏一体の2枚であることが伺えます。ヘヴィ&ダークな『TWEAKED』と比べると、CHIP & DONNIE名義で発表されることとなった今作はよりパワーポップ色の強い、カラフルさと穏やかさが同居した意欲作に仕上がっています。

レコーディングメンバーはドニー・ヴィ(Vo, G, Key)、チップ・ズナフ(B, G, Vo)、ジョニー・モナコ(G)、リッキー・ペアレント(Dr)という布陣で、アディショナル・プレイヤーとしてデレク・フリーゴ(G)が3曲ほど参加。『TWEAKED』がドニー、チップ、リッキーにジーノ・マルティノ(G)という布陣だったことを考えると、この『SEVEN』および『BROTHERS』が最新ラインナップだったということになるのでしょうか(続く『PARAPHERNALIA』も同編成で制作されていますしね)。

上記のように日本では当初、バンドとは別名義の、あくまでドニーとチップによる“レノンマッカートニー”的作品集として発表されたこともあり、「やけにパワーポップ側に振り切ったアルバムだな」と感じながら聴いた記憶があります。しかし後年、海外では “ENUFF Z'NUFFの7作目”としてカウントされるようになったことで、素直に“バンドの一部”と捉えられるようになったんじゃないでしょうか。特に海外では、本作のあとに『PARAPHERNALIA』が続くという流れも自然ですし、『TWEAKED』と本作との間にレアトラック集『PEACH FUZZ』(1996年)を挟んでいることも効果的ですよね。

内容に関しては、文句なしの高品質さを誇り、ビートルズ・ライクな側面やCHEAP TRICKを彷彿とさせるカラー、90年代初頭のオルタナティヴロック的なテイストも随所に散りばめられており、曲によってはハードロック度が高いものもあり。『TWEAKED』から毒気を抜くとこうなるんじゃないか?とも感じられる部分が豊富にあるので、やはり今作は『TWEAKED』と地続きであり、一緒に語るべき重要な1枚ではないでしょうか。

『PARAPHERNALIA』以降のZNUFFが好きなら、間違いなく気に入るであろう1枚。いや、むしろ『TWEAKED』という“アク抜き”を含めて本作が好きな人なら、以降の活動は間違いなく受け入れられずはず。バンドにとって分岐点となった1枚ではないでしょうか。

なお、本作は海外での正式リリースに伴い3曲のボーナストラックが追加されています。うち1曲は『BROTHERS』にも収められたジョン・レノン「Jealous Guy」のカバー。残りの2曲はオリジナル曲の「For Your Girl」と「I Won't Let You Go」で、後者はサックスをフィーチャーしたアレンジがなかなかです。

 


▼ENUFF Z'NUFF『SEVEN』
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2021年6月18日 (金)

HELLOWEEN『MASTER OF THE RINGS』(1994)

1994年夏にリリースされたHELLOWEENの6thアルバム。日本盤は同年8月24日発売。Wikipediaでは海外盤は7月8日リリースとあるのですが、これが正しいかどうかは不明。日本初盤帯に「日本先行発売」と記されているので、海外でのリリースは8月末以降の可能性が高いですね。

前作『CHAMELEON』(1993年)を携えたツアーを終えたあと、マイケル・キスク(Vo)とインゴ・シュヴィヒテンバーグ(Dr)がバンドを離れ、残されたマイケル・ヴァイカート(G)、ローランド・グラポウ(G)、マーカス・グロスコフ(B)は新たにアンディ・デリス(Vo/ex. PINK CREAM 69)、ウリ・カッシュ(Dr/ex. GAMMA RAY)を迎えた新編成でアルバムを制作。気心知れたトミー・ハンセンとともに起死回生の1枚を完成させます。

前々作『PINK BUBBLES GO APE』(1991年)、前作『CHAMELEON』で正統派ヘヴィメタル路線から徐々に離れていったHELLOWEENでしたが、そうした嗜好の強かったキスクが抜けたことで再びパワーメタル路線が復活。アンディ・デリスという“歌える”シンガーを得たことで、そういったスタイルにPINK CREAM 69あたりがやりそうなメロディアスハードロックのテイストも加わった、1本芯が通りつつもバラエティ豊かな作風へとシフトします。

シンフォニックなSE「Irritation (Weik Editude 112 in C)」からアップテンポの歌モノメタル「Sole Survivor」へと続く構成は、どこか『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS: PART II』(1988年)を彷彿とさせるものがあるし、王道疾走メタル「Where The Rain Grows」はこれぞHELLOWEENという十八番的1曲。かと思えば、アンディが作詞作曲した「Why?」はHELLOWEENに新たな魅力を与えているし、ローランド書き下ろしの「Mr. Ego (Take Me Down)」はこれまでにないタイプのミディアムヘヴィチューンに仕上がっている。遊び心の強い「The Game Is On」はやはりヴァイカート作かとニヤリとさせられたと思えば、PINK CREAM 69でやっても違和感のないバラード「In The Middle Of A Heartbeat」やひたすら突っ走る「Still We Go」で新しいHELLOWEENを提示する。各ソングライターのカラーが色濃く表れつつも、アンディが歌うことでアルバムに統一感を持たせ、「これが1994年のHELLOWEENだ!」と高らかに宣言するという、ある意味力技の1枚と言えるでしょう。

初めて聴いたときは「いいアルバムだけど、これをHELLOWEENと呼んでいいものか……」という違和感も残りました。しかし、そんな迷いも数回リピートしたことには払拭され、気づけばHELLOWEENのキャリア中1、2を争う傑作にまで昇格。今でも聴く頻度の高いアルバムのひとつです。

このアルバムが当時、日本で数10万枚も売れたことは決して忘れてはならないし、HELLOWEENが真の意味でトップバンドの仲間入りを果たせたのは本作の功績が大きい。本来なら本作のあとか次作『THE TIME OF THE OATH』(1996年)のタイミングに日本武道館に立っておくべきだったよな……と、改めて思わずにはいられません。BON JOVIがミリオンヒットするなど、HR/HMが日本でバカ売れした90年代半ばは夢のような時代でしたよね……(遠い目)。

そんな、あの頃メタルファンなら誰もが聴いていた名作を2021年現在、日本ではストリーミングサービスはおろかデジタル配信もされていないという事実。悲しいったらありゃしない。ぜひ『PINK BUBBLES GO APE』から『BETTER THAN RAW』(1998年)までの諸作品と『KEEPER OF THE SEVEN KEYS: THE LEGACY』(2005年)の、国内未配信のアルバムを各種ストリーミングサービスでも楽しめるようにしてもらいたいところです。

 


▼HELLOWEEN『MASTER OF THE RINGS』
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2021年5月 5日 (水)

ANNIHILATOR『KING OF THE KILL』(1994)

1994年10月10日にリリースされたANNIHILATORの4thアルバム。

ジェフ・ウォーターズ(G, Vo)、アーロン・ランドール(Vo)、ニール・ゴールドバーグ(G)、ウェイン・ダーリー(B)、マイク・マンジーニ(Dr)という最強の布陣で3rdアルバム『SET THE WORLD ON FIRE』(1993年)を完成させ、アメリカではメジャーのEpic Records流通が実現するも、この編成は短命に終わります。結果、デビュー時から所属するRoadrunner Recordsとの契約も終了し、気づけばジェフのみになってしまったANNIHILATOR。彼は新たなメンバーを探すのではなく、ドラム以外のパートをすべて自分ひとりでこなすことでアルバムを1枚完成させます。

CMC Internationalと契約して届けられた本作では、ドラムをランディ・ブラック(DESTRUCTION、ex. W.A.S.P.、ex. PRIMAL FEAR)がプレイしていますが、曲によってはドラムマシンを使っているようにも聞こえます。このへんのレコーディング手法は現在まで続いており、そういう意味では現在のANNIHILATORのベーシックを作った1枚と言えるでしょう。

楽曲に関しては前作あたりで見受けられたグルーヴメタルの影響濃厚な「The Box」や「Annihilator」なども存在し、非常に時代を感じさせる内容となっています。初期ANNIHILATORに惹かれた者にとっては、本作はある種の“踏み絵”のような1枚だったのではないでしょうか。ところが、そんなグルーヴメタル調の楽曲の中でも、とりわけタイトルトラック「King Of The Kill」の出来が良いもんだから、無下に否定することもできないんですよね。

また、「Bad Child」や「21」「Second To None」のような正統派ヘヴィメタルの影響下にある楽曲や、「Hell Is A War」のように初期ANNIHILATORを継承する楽曲もしっかり残されており、そのへんに好感が持てるものの、いかんせんアレンジとジェフのボーカルが薄味なもので、とてもベストとは言い難い。特に『SET THE WORLD ON FIRE』のようにバランス感の良かったアルバムの後だけに、当時はどうしても劣って聞こえてしまったわけです。

でも、リリースから25年以上経った今の耳で聴くと……確かに薄味ですが、これはこれで悪くないんですよね。ジェフのボーカルにもさすがに慣れてしまったこともあり(笑)、今ほどの貫禄はないものの、これはこれでいいじゃないか……と許せてしまう。時間の流れってときには残酷ですが、こうやって物事をポジティブに感じられるような変化も起こしてくれるのだから、本当に不思議なものです。

上にも書いたように、紆余曲折ありながらも現在まで続く(特に制作面での)ジェフのワンマン体制の原点でもあるので、ぜひチェックしておいてほしい1枚です。なお、現行の曲順は1994年発売時のものとは若干異なるので、中古盤を購入する際そのへんご注意を。

 


▼ANNIHILATOR『KING OF THE KILL』
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2021年4月11日 (日)

MAYHEM『DE MYSTERIIS DOM SATHANAS』(1994)

1994年5月24日にリリースされたMAYHEMの1stアルバム。日本では2008年4月26日、輸入盤に帯と解説を封入し、『狂魔密儀』という邦題でリリースされたのが初出となります(正式な日本デビュー盤は2014年発売の『ESOTERIC WARFARE』まで待つことになりますが)。

今年3月下旬からついに日本でも公開された映画『ロード・オブ・カオス』。海外では1998年に出版された同名書籍『Lords Of Chaos』(日本でも『ブラック・メタルの血塗られた歴史』のタイトルで発売)を下敷きに、1990年代前半におけるノルウェーのブラックメタル・シーンの中でもひときわ過激な存在だった“インナーサークル”……特にMAYHEMというバンドを軸に物語が描かれています。完全なるドキュメンタリー的な内容ではなく、『ボヘミアン・ラプソディ』のように演出もしっかり加わった“映画”となっており、コアなブラックメタルファンの間では評価が分かれたようですが、僕は(原作を読んでいる身でも)映画として十分に楽しむことができました。観終わったあとのどんより感含め、これはすごい作品ですわ。

で、そのMAYHEM。劇中にも登場するデッド(Vo)が参加したオリジナルアルバムは1枚も残されていないんですよね(デモ音源以外での正式リリース前に自殺)。このアルバムで歌っているのは、当時セッションメンバーとして参加したアッティラ・チハーなる人物(映画にもレコーディングシーンに登場しますが、あの役者さんはアッティラの実の息子なんだとか)で、デッドが書いた歌詞はそのまま使用されています。アッティラはハンガリーのブラックメタルバンド、TORMENTORで歌っていた人だそうですが、いわゆるブラックメタル的な歌唱スタイル(高音でキリキリ金切声を上げるようなもの)とは一線を画する、非常に宗教色の強い独特な“歌”を聴かせてくれます。

また、楽曲スタイル自体もブラックメタルにありがちな要素(痙攣ギターリフやブラストビートなど)を含みつつも、スラッシュメタルをベースにした個性的なヘヴィメタルを展開。デッドの自殺後にバンドを離れたネクロブッチャー(B)に代わり、本作ではBURZUMのヴァーグ・ヴィカネスがゲスト参加。つまり、正式メンバーはユーロニモス(G)とヘルハマー(Dr)の2人のみなんです。CDの裏ジャケにも2人の写真のみが掲載されており、1作目のスタジオ作品なのに特殊な環境でまとめ上げられたにも関わらず、本作が「ブラックメタルの教科書」的存在として現在まで高く評価されているのは、やはりバンドのネームバリューと唯一無二のスタイルによるものが大きいのでしょうね。

あとこのアルバム、ブラックメタルのわりに音がそこそこ良いのも異色といいますか。わざと劣悪なサウンドプロダクションでまとめられた作品が多いジャンルの中で、このクリアさは当時かなり画期的だったようです(僕は完全に後追いなので、その後に聴いた初作品との比較論となってしまいますが)。それもあって(そして楽曲のかっちりしたまとめ方も含め)、本作はブラックメタル初心者にも触れやすい1枚と言えるのではないでしょうか。ぶっちゃけ僕、ほかのいろんなブラックアルバムの名盤と呼ばれるものから先に手を出して、あとから本作に触れたら「あ、クオリティが全然違う!」と驚きましたから。

なお、本作は1993年にレコーディングが完了するも、同年8月にユーロニモスがヴァーグに刺殺されたことを受け、リリースまでに約1年かかっています(つまり、アルバム発売時の正式メンバーはヘルハマーのみ!)。ユーロニモス&ヴァーグがアートワークに登場する教会を爆破しようと企んでいたという噂もあったりと、とにかくいろいろアレなエピソードをたくさん擁する本作。できれば映画『ロード・オブ・カオス』と本作でのデッドの書いた絶望的な歌詞と合わせて、じっくりこのアルバムの世界に浸ってもらいたいところです。

 


▼MAYHEM『DE MYSTERIIS DOM SATHANAS』
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2020年9月19日 (土)

CHEAP TRICK『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994)

1994年3月末にリリースされたCHEAP TRICKの12thアルバム。日本盤は同年4月上旬、『蒼い衝動』の邦題を付けて発表されています。

前々作『LAP OF LUXURY』(1988年)でセールス的に大復活を果たすものの、続く前作『BUSTED』(1990年)で『LAP OF LUXURY』ほどの成績を残すことができなかったCHEAP TRICK。折りからのHR/HMブームにも陰りが見え始めたことも影響し、1991年に発表した初のベストアルバム『THE GREATEST HITS』を最後にデビュー以来10数年にわたり在籍したEpic Recordsを離れることになります(その後、1993年にはロビン・ザンダーが初のソロアルバム『ROBIN ZANDER』をリリースしています)。

HR/HMブームが後押しして復活した彼らでしたが、今度はそのHR/HMを壊滅させたグランジ勢から「ルーツはCHEAP TRICK」という新たなバックアップが。これによりバンドは新たに老舗Warner Bro.と契約することになり、VAN HALENやTHE DOOBIE BROTHERSなどで知られるテッド・テンプルマンをプロデューサーに迎え、約4年ぶりの新作を完成させます。

「The Flame」的なバラードシングルやラジオヒットを目指した産業ロック路線にとらわれることなく、バンドはここで本来の自分たちらしさを取り戻します。オープニングを飾る「My Gang」のポップでキャッチーなギターロック、初期のダーク&サイケ感を取り戻したヘヴィな「Woke Up With A Monster」、そして黄金パワーポップチューン「You're All I Wanna Do」、「The Flame」を通過したことで生まれた自然体のスローバラード「Never Run Out Of Love」、キャッチーさの際立つミドルバラード「Didn't Know I Had It」など、アルバムは冒頭から中盤にかけて名曲目白押し。過去2作の産業ロック的な作りから脱却し、アルバム全体の音の抜けも非常によろしく、ボーカルと楽器隊のバランスの良さ、各楽器の音の粒までしっかり聞き取れそうなミックスなど含め、80年代以降のCHEAP TRICKの作品中もっとも高品質な1枚と言えるのではないでしょうか。

異色のダンスチューン「Ride The Pony」を筆頭に、硬質なギターロック「Girlfriends」「Let Her Go」、80年代後半の経験が見事に活きたミドルナンバー「Tell Me Everything」、70年代の彼らを思わせるヘヴィバラード「Cry Baby」、ハードなサウンドと軽やかなリズムがミックスされたダンスロック「Love Me For A Minute」と、アルバム後半も前半ほどではないにせよ完成度高め。個人的には前半5曲が鉄壁すぎるがゆえに、後半の楽曲群は若干質が落ちると感じてしまいます。といっても、平均点以上の出来なんですけどね。

日本盤はここにボーナストラック「Sabre Dance」(ハチャトゥリアンの「剣の舞」)のカバーを追加収録。異色のクラシックカバーではあるものの、意外とCHEAP TRICKというバンドに合っているから不思議です。

バンド本来の姿を取り戻した勝負作だったものの、過去2作には及ばない全米123位という結果を残し、結局Warner Bros.とは本作1枚で契約を終了。この時点ではグランジ経由の再評価は数字につながることなく、バンドは3年後に自主レーベルから2度目のセルフタイトルアルバム『CHEAP TRICK』(1997年)で再浮上に挑むことになります。

 


▼CHEAP TRICK『WOKE UP WITH A MONSTER』
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2020年6月14日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』(2014)

2014年12月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSの3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の20周年記念エディション。日本盤未発売。

1994年8月に発売された『THE HOLY BIBLE』は、オリジナルメンバーのリッチー・エドワーズ(G)を含む4人編成としては最後の作品。2004年12月には本作のリリース20周年を祝して、最新リマスター盤+当時完全未発表だったUSリミックスバージョンの『THE HOLY BIBLE』+未発表のデモやライブ音源の2枚組CDと、ライブ映像やテレビ出演時の映像を含むDVDからなる3枚組エディションが発売されており、『THE HOLY BIBLE』のデラックス盤としてはこれが2作目にあたります(日本盤限定で2009年、シングルC/W曲を追加した2枚組紙ジャケ・エディションも発売されています)。

20周年盤は『THE HOLY BIBLE』の最新リマスター盤(DISC 1)、『THE HOLY BIBLE』USリミックスの最新リマスター盤(DISC 2)、シングルのカップリング&リミックス集(DISC 2)、ライブ音源やBBCセッションなどをまとめたライブ集(DISC 4)のCD4枚組に『THE HOLY BIBLE』最新リマスターのアナログ盤、写真集を同梱したボックスセットとなっており、これさえあれば『THE HOLY BIBLE』期のマニックスの音源は完璧!と呼べる内容……だと思っていたんです。ところが、10周年エディションに含まれていたデモやライブ音源は20周年ボックスには未収録。ありゃりゃ……と思ったら、最近気づいたんですが、デジタル版およびストリーミング版には新たにDISC 5が追加されており、こちらに10周年エディションのみで聴くことができた音源がまとめられており、映像を除けば確実にこのデジタル版で網羅することができます。

ということで、豪華な箱やアナログ盤、写真集などが欲しい人はフィジカル(ボックスセット)で購入し、音源だけあればいいという方はiTunesやAmazon Musicなどでデジタル版を購入すればいいかなと(Amazon Musicは6000円ですべて手に入りますしね)。

名盤『THE HOLY BIBLE』に関しては、19年前に熱と愛がこもったテキストを残していますので、そちらに譲ります。最新リマスターでは音の生々しさとダイナミズムはより極まっているんじゃないでしょうか。1994年当時の若干チープなサウンドも、実はこのスタイルにはぴったりなので、どちらが最高とは断言し難いのですが……。

で、今回はUSリミックスを中心に書いていこうかなと思います。このUSリミックス、その名のとおり1994年当時にアメリカでのリリースに向けてトム・ロード・アルジがリミックスを担当したもの。最終的には契約などの関係でUSリリースが実現せず、2004年までお蔵入りされていたわけですが、当時はオリジナル版よりもリバーブが効いてウェットさが増したリミックスに「!?」と疑問を感じたものですが、何度か聴いていると意外と悪くないことにも気づきます。質感的には前作『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993年)で展開したアリーナロック的なものに若干近づけたかったのかな。でも、グランジ全盛だった1994年だからこそ、オリジナル版の『THE HOLY BIBLE』は光り輝いたわけで、そこの読みは実際のところどうだったんだろう?と思わざるを得ません。結果、リリースは叶わなかったわけですが、もしUSリミックス版があの当時世に放たれていたら、少しは歴史が変わったのでしょうか。

ギターの音像/押し引きがオリジナル版以上にメリハリが効いていて、ドラムのタイトさも嫌いじゃないし、「Yes」のエンディングや「She Is Suffering」のエフェクトなどオリジナル版にはないものも追加されており、そのへんの聴き比べも非常に面白いんじゃないでしょうか。

DISC 3にはシングルのカップリングで聴くことができた「Too Cold Here」や「Love Torn Us Under」などの隠れた名曲などを網羅。このへんは続く『EVERYTHING MUSG GO』(1996年)への布石だったんだなと気づかされる部分もあるので、改めて興味深いものがあると思います。このほか、オリジナル・リリース時の日本盤にボーナストラックとして収められたライブ音源や、バーナード・バトラー(G)がゲスト参加したSUEDE「The Drowners」のカバーライブ音源、THE CHEMICAL BROTEHRSなどによるリミックス音源、さらには「Revol」の未発表バージョンも聴くことができます。

DSIC 4はリリース当時、英BBCで収録されたAstoriaでのライブ音源や、2014年にBBC Radio 4のために収録されたスタジオライブ音源4曲を収録。Astoriaでのライブはフルスケール収録ではありませんが、それでも全13曲とかなりボリューミーな内容となっています。そして、新録のスタジオライブはすべてアコースティックアレンジを施されたもので、「This Is Yesterday」といったいかにもな楽曲のほか、「Faster」や「P.C.P.」などパンキッシュな楽曲が日和ることなくアコースティックバージョンで生まれ変わっています。これはこれで今のマニックスらしくて、個人的には嫌いじゃないかな。

『THE HOLY BIBLE』をこれから初めて聴く人には、まず13曲入りのオリジナル版をオススメします。ストリーミングなら1994年のオリジナル版も2014年のリマスター版も両方聴けますので、どちらから入ってもいいかな。で、本作を気に入ってマニックスというバンドを十分理解した上で、このボックスを存分に味わうといいんじゃないでしょうか。なので、まずは10数枚におよぶオリジナルアルバムを先に堪能して、デラックス・エディションは余生のお楽しみとして残しておいてもいいと思いますよ(笑)。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』
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2020年6月11日 (木)

SLY『SLY』(1994)

1994年11月下旬にリリースされたSLYの1stアルバム。

SLYは当時EARTHSHAKERを解散させたばかりの石原慎一郎(G)が、元バンドメイトの二井原実(Vo/当時ex. LOUDNESS。石原とはデビュー前のEARTHSHAKERで活動)とともに立ち上げたプロジェクトに、同じくLOUDNESSを脱退した樋口宗孝(Dr)と、元BLIZARDの寺沢功一(B)が加えた4人で活動。80年代に一世を風靡したジャパメタ・バンドの人気メンバーが一堂に会したこともあり、デビューアルバムのTVスポットが深夜に大量オンエアされるくらい、当時鳴り物入りのデビューを果たしました。

で、肝心の音ですが、このメンツから想像できるような80'sジャパメタ的な要素は非常に薄く、むしろ樋口さん脱退前のLOUDNESSのアルバム『LOUDNESS』(1992年)の延長線上にあるラウド/モダンヘヴィネスをベースにしたモダンなメタルサウンドが展開されています。ぶっちゃけ、シャラ(石原)がいるし、二井原さんのパワフルさを活かしたメロウなHR/HMを楽しめるのかと思っていたら、リードトラック「Kingdom Come」のヘヴィさにひっくり返った……それも、今となっては懐かしい限りです。

冒頭2曲(「Cry Of War」「Kingdom Come」)は確かにミドルテンポのグルーヴィーなヘヴィチューンですが、その完成度は非常に高く、むしろジャパメタ的な“クサさ”を排除したことで、同時期に台頭した同系統の海外バンドにも負けないクオリティだと断言できます。特に「Kingdom Come」のカッコ良さ、特筆に値するものがあると思うんですよ。

かと思えば、ストリングスをフィーチャーした壮大なヘヴィバラード「I Spend My Life Just Loving You」や、もっともこの4人らしさが表出したタイトルトラック「Sly」にように、メロディアスさに特化した楽曲もちゃんと用意されている。二井原さんのボーカルも艶やかで、80年代後半のLOUDNESS以上の輝きを放っているし、樋口さん&寺沢さんの地を這うようなリズムセクションも最高の一言。特に樋口さんのプレイは水を得た魚のように、伸び伸びと暴れまくっていて、個人的には本作こそ彼の90年代のベストワークと確信しています。

で、EARTHSHAKER時代のメロウなギタープレイを期待していたら、その予想を大きく裏切るヘヴィなギターワークでリスナーを驚愕させたシャラ……こんなプレイもできるんだ!と、個人的には好意的に受け取りました。だって、カッコいいじゃないですか。ねえ?

このサウンド&アレンジだからなのか、あるいは作曲者のセンスなのか、単調なメロディが多いことと、全13曲で70分近い長尺のトータルランニングは難点ではあるものの、それ以外は文句なしの完成度。世が世なら、日本を代表するHR/HM作品として高評価を受けたはずです。

……そう、時代が悪かったんです。海外含め、世の中的にHR/HMの人気は低迷し、特に80年代に活躍したアーティストたちは時代遅れとして、若者にスルーされてしまう傾向が強かった。大々的なパブ効果もあって、それでも本作はチャート的に成功したと記憶していますが……。

あ、あと本作が世の中的に廃盤だったり配信/ストリーミングで聴くことができないのは何よりの不幸だと思うので、ぜひアルバム全4作(とEP)のすべてを今すぐデジタル解禁していただきたい! 不遇すぎますよ、このバンド。

 


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2020年3月 2日 (月)

BBM『AROUND THE NEXT DREAM』(1994)

1994年5月中旬にリリースされた、BBM唯一のオリジナルアルバム。日本盤は海外から1ヶ月遅れの、同年6月中旬に発売されました。

BBMはBRUCE BAKER MOOREの略で、ジャック・ブルース(Vo, B)、ジンジャー・ベイカー(Dr)、ゲイリー・ムーア(Vo, G)というメンバー3人の苗字の頭文字を取ったもの。90年代に入ってから『STILL GOT THE BLUES』(1990年)、『AFTER HOURS』(1992年)とブルースにどっぷり浸かっていたゲイリー・ムーアが、1993年にジャック・ブルースのバースディライブにゲスト参加したことをきっかけに元CREAM組と邂逅。ゲイリーとしては自身のルーツである伝説的バンドCREAMの面々と一緒にバンドを組む最高の機会を手にし、一方のジャック&ジンジャーからすると「いつまで経ってもエリック・クラプトンが乗り気じゃないCREAM再結成を、それに匹敵する若い才能とともに限りなく近い形で実現することができる」わけで、まあWin-Winな関係だったことが伺えます。

アルバムは全10曲中6曲をゲイリー&ジャックのタッグで制作(一部楽曲にはジャズの系譜にあるキップ・ハンラハンの名前も)で、「Naked Flame」「Wrong Side Of Town」の2曲がゲイリー単独で書いたもの、残り2曲はブルースのカバー(「High Cost Of Loving」「I Wonder Why (Are You So Mean to Me?)」ともにアルバート・キングで知られる楽曲)となっています。

プロデューサーはゲイリーの諸作を手がけてきたイアン・テイラー。なんとなくこの流れから、本作が『STILL GOT THE BLUES』や『AFTER HOURS』の延長線上にあることが想像できることでしょう。実際、アルバムで展開されているサウンド、楽曲はまさにそういったスタイルにあるもの。ですが、ゲイリーはあくまで“バンドのギタリスト”に徹し、ボーカルの大半をジャックが担当している。そこへんはCREAMというレジェンドに対するリスペクトも大きかったのではないでしょうか。オープニングの「Waiting In The Wings」や「Glory Days」なんて、ゲイリーというよりはCREAMのそれですものね。

かと思うと、「Where In The World」のようなCREAMともゲイリーとも異なる(ある意味では両者っぽいですけどね)、毛色の違う新境地ナンバーも含まれている。続く「Can't Fool The Blues」はゲイリーのブルースアルバムに含まれていても不思議じゃない仕上がりで、ここではゲイリーが思いっきり歌いまくっている。「Naked Flame」で聴けるボーカルも味わい深くて、個人的には好印象です(ゲイリー作ですがジャックが歌っているジャジーな「Wrong Side Of Town」も最高です)。

「I Wonder Why (Are You So Mean to Me?)」ではこのトリオらしいヒリヒリした演奏を堪能できますが、全体的にはこれを超えるような緊張感は皆無。むしろ、最初に聴いたときは「……ユルすぎない?」と不満を感じたほどでした。それはCREAMとの比較のみならず、ゲイリーの過去作との比較も含めて。きっとこれが1994年にゲイリー・ムーアという“若造”がジャック&ジンジャーというレジェントに立ち向かうギリギリのラインだったんでしょうね。

歌の比率が低いぶん、ゲイリーのギターは非常に濃厚さを増しており、なかなか聴き応えがあると思います。なので、ゲイリーのアルバムの延長で聴けば間違いなく楽しめるはず。間違っても「CREAMの再現」なんてハードルを高くしないように。

なお、BBM自体は同作を携えたショートツアー後に空中分解。2002年には本作のリマスター&エクスパンド盤が発表されていますが、そちらにはアルバム未収録の「Danzer Zone」「The World Keeps On Turnin'」「One Day」やデモ音源などが楽しめます。この中でも「One Day」は出色の出来で、のちにゲイリーのベストアルバムにも収録されたほど。「Still Got The Blues」にも通ずる泣きのバラードで名曲度が高いものの、アルバム本編から漏れたということはジャック&ジンジャーとやるべき曲ではなかったのかもしれませんね。

 


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2019年10月21日 (月)

TESTAMENT『LOW』(1994)

1994年9月末に発売された、TESTAMENTの6thアルバム。日本では1ヶ月遅れの、同年10月末にリリースされました。

もともとその素養はあったとはいえ、前作『THE RITUAL』(1992年)にてスラッシュ路線からJUDAS PRIESTにも通ずる正統派ヘヴィメタル路線へと舵を切ったTESTAMENT。チャート的には全米55位と過去最高の数字を残すものの、同作のツアー中に凄腕ギタリストのアレックス・スコルニックが脱退してしまいます。さらに、ドラマーのレイ・クレメンテも相次いで脱退。バンドは窮地に立たされてしまいます。

そんなTESTAMENTを救ったのが、ex. DEATH〜ex. OBITUARYのジェームズ・マーフィ(G)とex. EXODUSのジョン・テンペスタ(Dr)という新メンバー。才能、技術ともに申し分のない面々が加入したことで、バンドは前作から一転、時流に乗ってか非常にヘヴィな方向へと舵を切り直します。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINERED HOT CHILI PEPPERSSICK OF IT ALLなど)を迎えて制作された本作は、アレックス・スコルニックに負けず劣らずの変態さが備わった(笑)ジェームズ・マーフィのクールなギタープレイと、リズムがヨレることで定評のある(苦笑)レイ・クレメンテとは相反して芯の通った重々しさが魅力のジョン・テンペスタのドラミングが1994年というあの時代を反映させたサウンドを作り上げています。

つまり、今作で聴けるヘヴィさは初期のスラッシュ路線とは異なる、グルーヴメタルやモダンヘヴィネス寄りのヘヴィさなのです。この音に合わせて、チャック・ビリー(Vo)の歌唱法にも変化が生じ、本作から初めて“デス声”を導入します。普通に歌い、がなっても十分に個性的なチャックでしたが、デス声導入によって没個性期に突入……といっては言い過ぎでしょうか。

まあとにかく、TESTAMENTとしての個性は若干薄らぎつつあるものの、この時代を象徴するヘヴィメタルという点においては非常によくできた1枚だと思います。「Low」といい「Dog Faced Gods」といい、爽快すぎるほどのヘヴィさが随所から感じられるし、彼らならではのメロウなバラード「Trail Of Tears」もある。日本の成人コミック『超神伝説うろつき童子』を題材にした「Urotsukidōji」なんていうテクニカルなインストナンバーも含まれており、実は聴き応えという点に関しては非常に充実度の高い1枚だと思います。

チャート的には全米122位と前作を大きく下回ってしまい、本作をもってメジャーのAtlantic Recordsとの契約も終了してしまいますが、その結果彼らの“激化”は続く『DEMONIC』(1997年)で最初のピークを迎えることになります。

 


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2019年9月23日 (月)

STONE TEMPLE PILOTS『PURPLE』(1994)

1994年6月にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの2ndアルバム。

グランジ・ムーブメントの後押しもあり、デビューアルバム『CORE』(1992年)は1993年に入ってからバカ売れ。全米3位まで上昇し、800万枚を超えるメガセールスを記録しました。

ブレンダン・オブライエン(PEARL JAMAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSなど)がプロデュース&ミックス、ニック・ディディア(INCUBUSRAGE AGAINST THE MACHINEAUDIOSLAVEなど)の黄金コンビが再びタッグを組んだ本作は、基本的には前作の延長線上にある内容。かっちり作り込まれた1stアルバムと比較すると少々肩の力が抜けた感があり、その恩恵もあってかグルーヴ感は前作以上ではないかと思います。

バンドとしての安定感も前作以上に増しており、終始安心して楽しめる1枚だと思います。『CORE』を気に入った人なら間違いなく楽しめる内容ですしね。

……で終わってしまいそうですが(苦笑)。本当にこれ以上書きようがないくらい、STONE TEMPLE PILOTSらしい1枚なんですよね。

だからなのかわかりませんが、リリース当時はこのアルバム、僕はそこまでハマれなかったんですよ。良いのはわかるんです。聴いていて体が反応しますし。だけど、「だったら、前のやつ聴くからいいや」と思ったのもまた事実でして。それくらい前作を踏襲しすぎていて引っかからなかったという。

思えば、アルバム発売の1年前に、映画『クロウ/飛翔伝説』のサントラに提供した新曲「Big Empty」の時点で、「ん?」と感じていたんですよ。「いやいや、周りが絶賛するほどすごい曲か?」って。彼らにしては普通の出来ですし、平均点をクリアしてるんでいいでしょ?くらいの意気込みしか感じられないというか。

でも、思えばそれって、すでに始まっていたスコット・ウェイランド(Vo)のドラッグ癖の影響だったのかもしれませんね。

「Vasoline」や「Interstate Love Song」といったシングル曲、後期にも通ずるアコースティックチューン「Pretty Penny」、パーカッシヴな「Lounge Fly」など特筆すべき楽曲は確かにいくつもあるんだけど、アルバムとして通して聴いたときにピンとこない。なぜなんでしょうね。

そういったモヤモヤ感を、まさか続く3rdアルバム『THE MUSIC... SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP』(1996年)が払拭してくれることになるとは、この『PURPLE』がリリースされた当時は思いもしませんでしたが。

ちなみに本作、前作からの勢いを引き継ぎ、初の全米1位を獲得。セールス的にも前作に匹敵する600万枚以上を売り上げています。

 


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