カテゴリー「1994年の作品」の66件の記事

2019年6月16日 (日)

CINDERELLA『STILL CLIMBING』(1994)

1994年11月にリリースされた、CINDERELLAの4作目にして最後のオリジナルアルバム。バンドはこのアルバム以降、活動を休止させたり再開させたりを繰り返しますが、結局新作が制作されることはなく2017年にその活動に終止符を打つことになります。

前作『HEARTBREAK STATION』(1990年)は湾岸戦争が発端となるワールドツアーの縮小、および以降の不況やHR/HMシーンの衰退なども要因となり、過去2作ほどの成功を収めることはできませんでした(それでも100万枚を超えるヒットとなりましたが)。また、音楽性的にも過去2作のハードロック色が後退し、よりブルージーでアーシーなサウンドへとシフト。その後のグランジ・ムーブメント勃発などもあり、この方向転換はうまく機能しませんでした。

1992年には映画『ウェインズ・ワールド』のサウンドトラックに新曲「Hot & Bothered」を提供。『HEARTBREAK STATION』の延長線上にある楽曲でしたが、バンドはこれを起点に4thアルバム制作へと着手し始めます。しかし、レコード会社からなかなかゴーサインが降りず、悶々とした日々が続きます。その結果、フレッド・コウリー(Dr)が脱退し、スティーヴン・パーシー(Vo/RATT)が結成したARCADEに加入。CINDERELLAはセッションドラマーとしてケニー・アロノフを迎えてスタジオすることとなりました。

聴いてもらえばわかるように、サウンド的には2ndアルバム『LONG COLD WINTER』(1988年)と前作『HEARTBREAK STATION』の中間といったところでしょうか。いや、若干『LONG COLD WINTER』でのタフでハードな色合いが強まっている気もします。それは勢いに満ちたオープニング曲「Bad Attitude Shuffle」を聴けばご理解いただけるかと。

この曲といい、続く「All Comes Down」や「Talk Is Cheap」といい、とにかく「そうそう、こういうCINDERELLAを待ってたのよ!」というハードな曲が満載。かと思えば、地声とハイトーンを駆使したバラード「Hard To Find The Words」もあるし、大音量で楽しみたいファストチューン「Freewheelin」もある。ピアノバラード「Through The Rain」やダークなブルースロック「Still Climbing」「The Road's Still Long」だってある。1作目『NIGHT SONGS』(1986年)でのメタリックな色もあれば、ブルースベースのハードロックを基盤にした『LONG COLD WINTER』の色も、レイドバックしたルーツロック路線の『HEARTBREAK STATION』色も存在する。そういった意味では、本作はCINDERELLAの集大成的作品と言えるのではないでしょうか。

時代も災いして、本作は全米178位とまったくヒットにはつながりませんでした。つい最近まで廃盤状態でしたし、配信すらされていませんでした。しかし、作品の完成度としては初期の傑作にも匹敵するバランスの1枚だと思っています。ストリーミングサービスでもようやく聴けるようになりましたので、ぜひこの機会に本作の放つ熱量に触れてみてください。

 


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2019年6月 7日 (金)

SUEDE『DOG MAN STAR』(1994)

1994年10月に発表された、SUEDEの2ndアルバム。

デビューアルバム『SUEDE』(1993年)はブリットポップ前夜のリリースながらも全英1位を獲得し、早くもトップバンドの仲間入りを果たします。と同時に、ブレット・アンダーソン(Vo)のスキャンダラスな発言が一人歩きすることで、音楽面以上にそちら側で話題になることも増え、そういった状況に嫌気がさしたバーナード・バトラー(G)は2ndアルバム完成直前にバンドを脱退。ギターのレコーディングはすでに完了していたこともあり、本作『DOG MAN STAR』はバーナード在籍時最後のスタジオ作品となってしまいました。

アルバムリリースと前後して、オーディションを経て新ギタリストのリチャード・オークスが加入。当時まだ17歳というその年齢に驚かされましたが、個人的には「バーナードのいないSUEDEなんて……」という思いが強く、この時期の彼らに対しては消極的だったことをよく覚えています。

しかし、それと作品の完成度は別の話。1stアルバムも確かに素晴らしい内容ですが、現在までにおいてSUEDEというバンドのなんたるかが的確に表現されているのが実はこの2ndアルバムではないかと信じています。それくらい寸分の隙もない、徹底した完成度の1枚なのです。

いわゆるギターロック然としたイメージの強かった前作と比べると、本作はその要素も残しつつ(「Heroin」「New Generation」など)、よりダークでディープな方向へと突き進んでいます。どこか黒魔術を思わせる不気味なオープニングトラック「Introduction The Band」や、重量級のロッカバラード「This Hollywood Life」なんて、前作では考えられなかった方向性でしょう。ブラスセクションをフィーチャーした「We Are The Pigs」もまた然り。

ですが、本作最大の聴きどころ(山場)は多数用意されたスローナンバー、これなのですよ。前半だったら超名曲の「The Wild Ones」や「The Power」といったドラマチックでセンチメンタルな楽曲群は、グラムロック期のデヴィッド・ボウイと完全に重なるし、後半のクライマックスとなる「The 2 Of Us」から「Still Life」までの4曲の流れは本当に壮絶なものがあるし、中でも9分半にもわたる「The Asphalt World」のアレンジ(およびバーナードのギタープレイ)・構成は圧巻の一言です。この後半のためだけに本作を購入しても決して損しないと言い切れるほど、名作中の名作なのです。

ここで初期のスタイルを完璧な形で完結させてしまったSUEDE。ギタリストの交代ということもあり、この後の方向性を模索することになるのは仕方ないわけですが、にも関わらず次作『COMING UP』(1996年)で新たな最盛期を築き上げてしまうのですから、本当にこの時期の彼らは神がかっていたわけです。

 


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2019年6月 3日 (月)

HELMET『BETTY』(1994)

1994年6月に発表された、HELMETの3rdアルバム(メジャーのInterscope Recordsからの新作としては、1992年の『MEANTIME』に次ぐ2作目)。「Milquetoast」などのラジオヒットを受け、チャート的には前作の68位を上回る全米45位まで上昇し、イギリスでも最高38位と初ランクインを果たしました。

前作では1曲のみスティーヴ・アルビニが携わり、全体のミックスをアンディ・ウォレスという時の人が手がけましたが、今作ではトッド・レイ(ジャック・ジョンソン、HOUSE OF PAIN、BEASTIE BOYSなど)とブッチ・ヴィグ(NIRVANATHE SMASHING PUMPKINSGARBAGEなど)がプロデュース、アンディ・ウォレスがミックスを担当しています。

前作ほどの残虐さや過剰さは薄れましたが、緻密なバンドアンサンブルと整理されたサウンドからはじんわりと狂気が感じられるものに仕上がっている印象を受けます。ジョン・ステニアー(Dr)のドラミングは相変わらず数学的でひたすらカッコいいのですが、前作で聴けたカンカンしたスネアサウンドは若干抑え気味。ミックスのせいもあるのでしょうけど、そこだけが残念でなりません。しかし、そのぶんペイジ・ハミルトン(Vo, G)&ロブ・エチェベリア(G)のストリングス隊とのバランスも良く、アルバムの完成度としては過去イチではないかと思います。

ペイジ・ハミルトンのボーカルも前作で聴けたシャウトに近いスタイルは減退し、落ち着いたトーンで淡々と歌うことでクールさと同時に狂気性を感じさせるものへと昇華。シングルカットもされた「Milquetoast」での淡々と歌う中、演奏がどんどん熱を帯びていくアレンジは圧巻モノです。

かと思えば、抑え気味に叫ぶ「Tic」で感じられるコントロール感、「Rollo」でのグルーヴ、「Street Crab」や「Clean」での引き摺るようなヘヴィなリズム、ジャジーなギタープレイから突如ノイジーなインプロヴィゼーションへと変化するインスト「Beautiful Love」(ジャズのスタンダードをカバーしたもの)、ヒップホップからの影響が強い「The Silver Hawaiian」、脱力感ハンパないオルタナブルース「Sam Hell」などバラエティに富んだ楽曲が満載。ここでペイジ・ハミルトンのアーティスト性が一気に開花し、バンドとしての個性も確立されることになったわけです。

初期衝動性の強いインディー盤『STRAP IT ON』(1990)や衝撃のデビュー作『MEANTIME』を良しとするリスナーからは、本作で試みた実験は快く思われていないようですが、HELMETというバンドの極みは本作にあると個人的には考えています。1994年というロックにおける重要な年にリリースされたという点において、決して欠かすことができない必聴盤ではないでしょうか。

 


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2019年5月 5日 (日)

GUN『SWAGGER』(1994)

スコットランドのグラスゴー出身4人組バンド、GUNが1994年7月(日本では9月)にリリースした3rdアルバム。もともとは5人組編成で、A&M Recordsから『TAKING ON THE WORLD』(1989年)メジャーデビューを果たした彼らでしたが、2ndアルバム『GALLUS』(1992年)発表後にギタリストの1人が脱退し、ドラマーも交代。このアルバムから4人組バンドとして再出発しました。

プロデュースを手がけたのはクリス・シェルドン(THERAPY?THE ALMIGHTYTERRORVISIONFEEDERなど)。レーベル的にはTHERAPY?の『TROUBLEGUM』(1994年)を担当した経緯もあって、この組み合わせになったんでしょうかね。でも、すごくピッタリだと思います、ここで表現されている音に。

本作からはリードシングルとして、ファンクグループCAMEOが80年代半ばにヒットさせた「Word Up!」のカバーがヒット(全英8位)。アルバムもキャリア最高の全英5位まで上昇し、バンドにとっても代表作と言える1枚となりました。

「Word Up!」やオープニングトラック「Stand In Line」を聴けばなんとなく気づくと思いますが、ここで展開されているサウンドはハードロックをベースにファンクやヒップホップなど“跳ねた”ビートを取り入れたミクスチャーロック的なもの。時代的にレッチリの大ヒットなどもあって、こういう方向にシフトしていくハードロックバンドは当時少なくなかったと記憶していますが、そんな中で彼らはここでようやく“らしさ”や独特の個性を手に入れ、自信を得たのかもしれません(といってもこのバンドの場合、その後も作品ごとにサウンド的な変遷を繰り返すことになるのですが)。

もちろん、前作までにあったストレートなビートに湿り気のある英国らしいメロディが乗った「Don't Say It's Over」(全英19位)や、トラディショナルな空気感を持つ「The Only One」(同29位)のような楽曲も健在。かと思えば、どストレートにラップメタルにトライした「Something Worthwhile」やグルーヴィーながらもポップさが保たれた「Seems Like I'm Losing You」のような楽曲も含まれていて、微笑ましいといいますか。うん、この不器用さ、嫌いじゃないです。

好きなことを全部やっているだけという点においては、決して器用なバンドとは言えないかもしれません。が、それらが1枚のアルバムに並んだときにちぐはぐさを生み出すことなく自然と統一感を生み出している。これこそが先に記した“らしさ”や独特の個性なんじゃないでしょうか。

ミクスチャーロックと言い切ってしまうにはわかりやすいし、HR/HMの枠で括ろうとすると散漫すぎる。1994年というあの時代の空気感がそのままパッケージされた本作は、実は当時を語る上で欠かせない良作ではないかと思っています。

 


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2019年3月20日 (水)

GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』(1994)

イジー・ストラドリンに代わり、GUNS N' ROSESにギタリストとして加入することになったギルビー・クラーク。80年代半ばにアイドル的な立ち位置のパワーポップバンドCANDYや、ハードロックバンドKILL FOR THRILLSなどで活躍したのちにガンズに加わるのですが、バンドがスタジアムバンドとして人気肥大していく中でツアーのみに参加ということもあって、正直ミュージシャンとしてどこまでの才能がある人なのか、いまいちわかっていなかったところがありました。

そんな中、ガンズ活動休止中にダフ・マッケイガンに続いてソロアルバムを発表するのがギルビーだとわかると、当時のファンは「お前かよ!」と総ツッコミを入れることになるわけです。だって、オリメンのスラッシュより先なんですから。

そんなわけで、1994年7月にVirgin Recordsから発表されたのがこの『PAWNSHOP GUITARS』というアルバム。ガンズが所属するGeffen Recordsからではないというあたりに、いろいろ政治的なものを感じますね。

プロデュースを手掛けたのは、キース・リチャーズとの仕事などで知られるわディ・ワクテル。レコーディングには同じくガンズからマット・ソーラム(Dr)とディジー・リード(Key)が全面参加し、スラッシュやダフも数曲でゲスト参加。さらに、ダフやスラッシュのアルバムにはノータッチだったアクセル・ローズがストーンズのカバー「Dead Flowers」で、ギルビーとデュエットしているという事実に、これまた多くのファンが「……なぜ!?」と驚くことになるわけです。笑える。

ほかにもPIXIESフランク・ブラックSKID ROWのドラマー、ロブ・アフューソ、ELECTRIC ANGELSや2代目SLASH'S SNAKEPITに在籍し現在ALICE COOPER BANDで活躍中のライアン・ロキシーなども名を連ねています。何気に豪華ね。

ギルビーのボーカルは可もなく不可もなくの“ヘタウマ”タイプ。適度にパンキッシュなスリージーハードロックにはこれくらいでちょうどいいのかもしれません。作曲面でも「Cure Me... Or Kill Me」のようなハードロックから「Tijuanna Jail」のポップパンク、「Skin & Bones」のホンキートンク路線、「Johanna's Chopper」でのサイケロックまで、ガンズ路線からポップなものまで意外と器用にこなせることがわかります。あと、ストーンズの「Dead Flowers」とTHE CLASHの「Jail Guitar Doors」(ダフとフランク・ブラックがゲスト参加)というカバーのセンスもなかなか。この才能がガンズで一度も活かされることがなかったのが悔やまれます。

この手のロックとしては、実は隠れた名盤的色合いの強い1枚。過去のガンズ在籍メンバーの中では(大全盛期に在籍していたにも関わらず)もっとも影の薄いギルビー。今となってはアクセルのゲスト参加って、「まあこれで許してや?」的なご祝儀だったのかな……というのは言い過ぎでしょうか(苦笑)。



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2019年2月 7日 (木)

BACKYARD BABIES『DIESEL & POWER』(1994)

1994年にリリースされたBACKYARD BABIESの1stフルアルバム。1987年に前身バンドが結成され、1989年から現在の名前で活動を開始した彼らは、このフルアルバムまでの5年間にいくつかのデモ音源とEP『SOMETHING TO SWALLOW』(1991年)を発表していますが、ちゃんとしたアルバムという形で制作されたのは本作が初めて。バンドの名前が一気に知れ渡るのは続く2ndアルバム『TOTAL 13』(1998年)からのことで、日本でも同作からのイメージが強いのも事実。結果、『TOTAL 13』の成功も手伝って、ここ日本では翌1999年にこの『DIESEL & POWER』が初リリースされることになります。

また、本作は海外でも何度か再リリースを繰り返しており、直近だと2006年にボーナストラック「Lies」を追加した14曲仕様が発売されているようです。現在デジタルおよびストリーミングで聴くことができるのも、この再発バージョンになります。

『TOTAL 13』はパンキッシュかつキャッチーでコンパクトな楽曲がずらりと並ぶ、非常に聴きやすい印象が強いですが、それもこれもドレゲン(G, Vo)が『DIESEL & POWER』以降にTHE HELLACOPTERSに参加したことが大きかったのではないでしょうか。ニッケ・アンダーソン(Vo, G)と絡んだこと、および『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(1996年)『PAYIN' THE DUES』(1997年)で学んだことが、『TOTAL 13』には直接的に反映されていると思うのです。

では、“それ以前”となるこの『DIESEL & POWER』はどうかといいますと、良くも悪くも“それまでの影響”がストレートに、色濃く表れた1枚と言えるでしょう。その影響とはGUNS N' ROSESであり、80年代後半のスリージーで埃っぽいブルースベースのハードロック。曲によっては『TOTAL 13』以降の彼らに通ずる部分も見受けられるのですが、『TOTAL 13』と同じスタイルを求めてしまうとちょっと厳しい印象も。曲の出来・不出来の差も見受けられ、60分近い長尺のトータルランニングは聴く人によっては若干厳しいものがあるかもしれません。

……と、『TOTAL 13』リリース当時は感じていたのですが、あれから20年近く経った今聴き返してみると、意外と普通に楽しめる自分がいるのもまた事実。それはBYBが一時活動休止した際、ニッケ・ボルグ(Vo, G)やドレゲンがリリースしたソロアルバムに本作の片鱗が感じられたからに他ありません。つまり、このデビューアルバムの時点ではバンドとしての調和よりも、メンバー個々がやりたいこと、表現したい音がそのままど直球に出てしまった。そう捉えると、非常に微笑ましく思えて仕方ありません。

曲によってはサックスやホーンセクション、オルガンなどをフィーチャーしており、このへんは最近の彼らにも通ずるものがある。ただ、表現力が乏しかったせいもあり、こういった味付けが当時はうまくできなかっただけ。結局、やりたいこと、やろうとしてることはこの時点から現在に到るまで何ひとつ変わっていない。ただ、それを表現する上での技術が作品を重ねるごとに上手になった。それだけのことなんでしょうね。

まもなく結成30周年を記念したニューアルバム『SILVER & GOLD』をリリース予定の彼ら。昨年発表された先行シングル「Shovin' Rocks」ではさらに無駄を削ぎ落とした、シンプルなロックンロールを鳴らしていますが、それすらもこの30年で得た知識と経験がなせる技なのかもしれません。



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2019年1月19日 (土)

DAVID LEE ROTH『YOUR FILTHY LITTLE MOUTH』(1994)

デヴィッド・リー・ロスが1994年3月に発表した、通算4作目のソロアルバム。前作『A LITTLE AIN'T ENOUGH』(1991年)から3年ぶりの新作で、プロデュースを手掛けたのは“かの”ナイル・ロジャース。CHICのメンバーであり、デヴィッド・ボウイ『LET'S DANCE』(1983年)やマドンナ『LIKE A VIRGIN』(1984年)を筆頭に、DURAN DURANINXSミック・ジャガーなどをヒットに導いた立役者で、正直それまでデイヴが築き上げてきたソロの方向性すべてに当てはまる人でもないので、このタッグを知ったときは正直不安を強く感じたことをよく覚えています。

ただ、デイヴは単なるハードロックシンガーではなく、もっと広い意味でのエンターテイナーであるため、あながち間違いでもないのかな、とも思うようにもなったわけで。そんな不安定な気持ちの中、本作からのリードシングル「She's My Machine」が公開されると……「あれ、意外と悪くないかも?」という感情が。確かにそれ以前にあった“ダイヤモンド・デイヴ”感……カリフォルニアの燦々と輝く太陽のもと、はっちゃける曲とは一線を画するものの、このクールでスマートなハードロックも悪くないぞ、と。そこでようやく、アルバムに対して前向きな気持ちが勝るようになりました。

いざ届けられたアルバムを聴くと、なるほど、これはハードロックとは若干異なるものの、大人になったダイヤモンド・デイヴがハリウッドからニューヨークに舞台を移したような、そんな作品ではないかと捉えることができたわけです。変なこだわりや固定観念され捨てされたら、純粋に楽しめるぞ、と。

スティーヴ・ヴァイ、ジェイソン・ベッカーと過去のアルバムでは凄腕ギタリストと組んできたデイヴですが、本作ではテリー・キルゴアとタッグ。デイヴとは古い付き合いで、LA界隈では古くからその才能を評価されてきたギタリストなんだとか。ヴァイやジェイソンと比較したら派手さは皆無だし、特別光るものも感じられませんが、大人びた楽曲の世界観を的確なプレイで表現していることからも、その腕前は確かなものなんだってことが伺えます。

アルバム自体も、先述の「She's My Machine」や「Everybody's Got The Monkey」「Big Train」のようなハードロック寄りの楽曲もあるものの、それ以上に耳に残るのがスローブルース「Experience」やソウルフルな「A Little Luck」、レゲエ調の「No Big 'Ting」、ブルージーなロッカバラード「Night Life」といった非ハードロック曲。デイヴのボーカルも冴え渡っています。また、ブギーテイストのタイトルトラックやシンプルなロックンロール「Hey, You Never Know」など、地味ながらもしっかり作り込まれたロックナンバーも多数含まれており、決して非ロック作品ではないのでご安心を。

チャート的には全米78位、セールス面でも10万枚に満たない売り上げで、デイヴはそれまで所属したWarner Bros. Recordsから離れることになるのでした。

いかにもショービズの世界の人が作ったアルバム、と揶揄することもできますが、そもそもグランジ全盛のあの時代に、地味ながらもここまでどストレートにショービズ臭プンプンのアルバムをメジャーレーベルから発表した、デイヴの男気もなかなかのものじゃないか、という気がするのですが。それもまあ、今となっては……ですけどね。



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2018年12月 7日 (金)

THE ROLLING STONES『VOODOO LOUNGE』(1994)

1994年7月にリリースされた、THE ROLLING STONES通算20作目のオリジナルアルバム(イギリスにて。アメリカでは22枚目)。ビル・ワイマン(B)脱退後初のオリジナルアルバムで、レコーディングにはマイルス・デイヴィスやスティングのサポートで知られるダリル・ジョーンズが参加。以後、彼は現在に到るまでツアーやレコーディングに参加する準メンバーとしてバンドに関わっています。

前作『STEEL WHEELS』(1989年)のセールス的成功および大々的なワールドツアーが好評を得たこともあり、本作は全英1位/全米2位という高記録を残していますが、シングルに関しては「Love Is Strong」(全英14位/全米91位)、「You Got Me Rocking」(全英23位/全米113位)、「Out Of Tears」(全英36位/全米60位)、「I Go Wild」(全英29位)と大きなヒットにはつながりませんでした(なんでも、ストーンズとしてヒットシングルが生まれなかったは初めてのアルバムなんだとか)。

プロデュースを手がけたのはドン・ウォズとTHE GLIMMER TWINS(ミック・ジャガーキース・リチャーズ)。本作の前に、キースは『MAIN OFFENDER』(1992年)、ミックは『WANDERING SPIRT』(1993年)とソロアルバムを制作しており、それぞれストーンズとして久々の長期ツアーから解放されたためか、非常にストレートなロックを聴かせてくれました。そういうモードも影響してなのか、ストーンズとして5年ぶりの新作となったこの『VOODOO LOUNGE』は非常に“Back to basic”的な作風となっています。

確かに、産業ロック的でとても“Well-made”だった前作と比べると、本作のスカスカ感と肩の力の抜けた演奏は古くからのストーンズファンが知る“らしさ”に満ちあふれています。60年代のポップサイドにも通ずる「New Faces」や「Moon Is Up」あたりは、その肩の力の抜け具合が良い方向に作用した好例だと思います。特に「Moon Is Up」は、単なる焼き直しで終わらないモダンさがあり、常にアップデートを繰り返していることを感じさせます。

かと思えば、60年代末のオカルトチックな雰囲気を漂わせる「Love Is Strong」がアルバムのオープニングを飾ったり、70年代前半のワイルドサイドをイメージさせる「You Got Me Rocking」や「I Go Wild」もある。「Suck On The Jugular」は80年代以降のダンス/ディスコ路線をモダン化させたものだし、キースVo曲のプログレッシヴなブルース「Thru And Thru」もある。原点回帰すると同時に、これまでのストーンズをごった煮しつつ新たなテイストも包括する。歴史の長いバンドが今もなお、成長過程にあることを伺わせるのがこの『VOODOO LOUNGE』の魅力だと思います。

確かに変態的なベースラインがなくて物足りないって声もわかりますが、オープニングが「Love Is Strong」でラストが「Mean Disposition」という時点でこのアルバムは最高なんですよ。僕はこのユルさがたまらないんです。



▼THE ROLLING STONES『VOODOO LOUNGE』
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2018年10月27日 (土)

ALICE COOPER『THE LAST TEMPTATION』(1994)

1994年7月リリースの、アリス・クーパー通算20枚目のスタジオアルバム。モダンな産業ハードロックサウンドによる『TRASH』(1989年)で再ブレイクを果たし、続く同系統の『HEY STOOPID』(1991年)もそれなりの成功を収めましたが、本作は生々しいバンドサウンドを主軸に据えた、時代に呼応した作品となっています。

プロデューサーにはドン・フレミング(SONIC YOUTH、TEENAGE FANCLUBHOLEなど)、デュアン・バロン&ジョン・パーデル(オジー・オズボーンDREAM THEATERKIXなど)、アンディ・ウォレス(SEPULTURAFAITH NO MOREBLIND MELONなど)を迎え制作。曲ごとにプロデューサーが異なり、ドンは「Nothing's Free」「Lost In America」「Bad Place Alone」、デュアン&ジョンは「You're My Temptation」「Lullaby」「It's Me」、それ以外の楽曲をアンディが手がけています。

ドン・フレミングがプロデュースした「Nothing's Free」「Lost In America」あたりは70年代のアリス・クーパーらしさが復活しつつ、90年代前半のシーンを接見したオルタナティヴロック/グランジからの影響も感じさせる生々しいサウンドで、シンプルで刺々しいバンドサウンドの中にしっかりキャッチなーメロディが備わっている。かと思えば、ジャック・ブレイズ(NIGHT RANGER)&トミー・ショウ(STYX)のDAMN YANKEESコンビのペンによる「You're My Temptation」「It's Me」あたりは、前作までの流れを汲みつつもしっかりモダンな色付けが施されているのですから、さすがの一言です。

とはいえ、本作最大の聴きどころは中盤に置かれた「Stolen Prayer」「Unholy War」の2曲ではないでしょうか。前者はアリスとクリス・コーネルSOUNDGARDEN)との共作で、後者はクリス単独による書き下ろし曲。クリスは2曲でボーカル&コーラスでも参加しており、その存在感を示しています。本作発売の数ヶ月前にSOUNDGARDENはアルバム『SUPERUNKNOWN』で初の全米1位を獲得したばかりで、そんなクリスをソングライター&ボーカルでフィーチャーするあたりにアリスの本気度が伺えます。クリスらしいダークな楽曲を歌うアリス、最高です。

また、本作は70年代の名作『WELCOME TO MY NIGHTMARE』(1976年)の主人公であるスティーヴンが登場するコンセプトアルバムでもあります。そのへんも往年のファンには興味深いものがあるのではないでしょうか(当時発売された限定盤には、そのへんのストーリーが描かれたコミックも同梱されていました)。

ここまでやったにも関わらず、残念ながら本作は全米68位止まり。シングルヒットも生まれていません。グランジ世代にはオリジネーターであるアリスも“旧世代側の人”と受け取られてしまったのでしょうか。『TRASH』や『HEY STOOPID』は苦手だけど70年代のヒット作は好きというリスナーもスッと入っていける、隠れた名盤だと思うので、機会があったらチェックしてみてください。



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2018年10月 9日 (火)

PRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』(1994)

1994年3月にリリースされた、PRIMAL SCREAMの4thアルバム(日本では同年4月発売)。前作『SCREAMADELICA』(1991年)で全英8位、50万枚を超えるヒットを記録し、バンドは時代の寵児となりました。が、当時すでにヘロイン中毒でヘロヘロだった彼らは、この状態で次のアルバム制作に突入。イギリスを離れ、アメリカ・テネシー州メンフィスにてトム・ダウド(アレサ・フランクリンエリック・クラプトン、ロッド・スチュワートなど)をプロデューサーに迎えてレコーディングに突入したのですが……。

このへんは近く発売される本作のオリジナルバージョン『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP: THE ORIGINAL MEMPHIS RECORDINGS』と比較していただければおわかりいただけると思いますが、元のセッションはとにかく毒気の抜けたユルユルの“ストーンズもどき”なんですわ。もちろん、テイクによってはオリジナル版のほうが好み、っていう楽曲もなくはないですが、それでもすべてをこのままリリースするわけにはいかなかったと。

曲によってはジョージ・クリントンが参加&リミックスを担当してそれらしくなったものの、さすがに“ジャンキーがほぼ勢いで作ったかのような代物”をそのまま世に出せるわけもなく、ジョージ・ドラクリアス(THE BLACK CROWESRIDEREEFなど)が新たにミックスし直し、現代的な要素が加わることに。こうして、総制作費42万ポンド(笑)と言われる名(迷)作が難産を経て完成したわけです。

が、個人的にはこのアルバム、リリース当時から好きだったんですけどね。きっとミック・ジャガーは嫉妬したんじゃないかな、って。たぶんミックがストーンズでやりたいことって、こういうことなんじゃないの?って思ったわけです。

確かに『SCREAMADELICA』という、新たな時代を作る作品の後にここまでレイドバックされたら、そりゃあ呆れますよ。だけど、ボビー・ギレスピーというロックバカがお薬の力を借りて、なんの工夫もなくストレートにやりたいことをやった結果がオリジナル版であり、そこに多少の“作為”を加えた結果、少しだけ時代に寄り添った。最高じゃないですか。

「Rocks」(全英7位)も「Jailbird」(全英29位)も、その“作為”があったから名曲になったわけだし、アルバム自体も(セールス的には前作に及ばないものの)全英2位という好記録を残せたわけだしね。2ndアルバム『PRIMAL SCREAM』(1989年)でのガレージロック色や8thアルバム『RIOT CITY BLUES』(2006年)でのオーガニックなロックンロール色とも違う、1994年という時代の転換期にしか生み出せなかったであろうこの異色作、間もなくリリースされるオリジナル版とともに、ぜひこのタイミングにじっくり浸ってみてください。



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