2018年10月 9日 (火)

PRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』(1994)

1994年3月にリリースされた、PRIMAL SCREAMの4thアルバム(日本では同年4月発売)。前作『SCREAMADELICA』(1991年)で全英8位、50万枚を超えるヒットを記録し、バンドは時代の寵児となりました。が、当時すでにヘロイン中毒でヘロヘロだった彼らは、この状態で次のアルバム制作に突入。イギリスを離れ、アメリカ・テネシー州メンフィスにてトム・ダウド(アレサ・フランクリンエリック・クラプトン、ロッド・スチュワートなど)をプロデューサーに迎えてレコーディングに突入したのですが……。

このへんは近く発売される本作のオリジナルバージョン『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP: THE ORIGINAL MEMPHIS RECORDINGS』と比較していただければおわかりいただけると思いますが、元のセッションはとにかく毒気の抜けたユルユルの“ストーンズもどき”なんですわ。もちろん、テイクによってはオリジナル版のほうが好み、っていう楽曲もなくはないですが、それでもすべてをこのままリリースするわけにはいかなかったと。

曲によってはジョージ・クリントンが参加&リミックスを担当してそれらしくなったものの、さすがに“ジャンキーがほぼ勢いで作ったかのような代物”をそのまま世に出せるわけもなく、ジョージ・ドラクリアス(THE BLACK CROWESRIDEREEFなど)が新たにミックスし直し、現代的な要素が加わることに。こうして、総制作費42万ポンド(笑)と言われる名(迷)作が難産を経て完成したわけです。

が、個人的にはこのアルバム、リリース当時から好きだったんですけどね。きっとミック・ジャガーは嫉妬したんじゃないかな、って。たぶんミックがストーンズでやりたいことって、こういうことなんじゃないの?って思ったわけです。

確かに『SCREAMADELICA』という、新たな時代を作る作品の後にここまでレイドバックされたら、そりゃあ呆れますよ。だけど、ボビー・ギレスピーというロックバカがお薬の力を借りて、なんの工夫もなくストレートにやりたいことをやった結果がオリジナル版であり、そこに多少の“作為”を加えた結果、少しだけ時代に寄り添った。最高じゃないですか。

「Rocks」(全英7位)も「Jailbird」(全英29位)も、その“作為”があったから名曲になったわけだし、アルバム自体も(セールス的には前作に及ばないものの)全英2位という好記録を残せたわけだしね。2ndアルバム『PRIMAL SCREAM』(1989年)でのガレージロック色や8thアルバム『RIOT CITY BLUES』(2006年)でのオーガニックなロックンロール色とも違う、1994年という時代の転換期にしか生み出せなかったであろうこの異色作、間もなくリリースされるオリジナル版とともに、ぜひこのタイミングにじっくり浸ってみてください。



▼PRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 10 09 12:00 午前 [1994年の作品, Primal Scream] | 固定リンク

2018年10月 4日 (木)

SLAYER『DIVINE INTERVENTION』(1994)

1994年9月に発表された、SLAYER通算6作目のオリジナルアルバム。前作『SEASONS IN THE ABYSS』(1990年)から4年ぶりのスタジオ作品となりますが、その間にはライブアルバム『DECADE OF AGGRESSION』(1991年)のリリース、凄腕ドラマーのデイヴ・ロンバード脱退、新たに元FORBIDDENのポール・ボスタフ加入、映画『ジャッジメント・ナイト』のサウンドトラック『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』(1993年)にポール参加後初のスタジオ音源「Disorder」を提供するなど、常に話題には事欠かない状況でした。

『SEASONS IN THE ABYSS』をそれまでの路線……スピードの『REIGN IN BLOOD』(1986年)と重さの『SOUTH OF HEAVEN』(1988年)を総括するかのような集大成的作品に仕上げ、過去10年のベストアルバム的内容の『DECADE OF AGGRESSION』でそれまでの活動に(デイヴ脱退という予期せぬハプニングも含め)ひと区切りをつける形となったSLAYER。新ドラマーが加入したこともあり、また音楽シーンが1990年からの4年で大きな変化を迎えたことも影響し、SLAYERは新たなステージへと突入します。

ブラックアルバム期のMETALLICAPANTERAを筆頭としたグルーヴメタルや、NIRVANAなどをはじめとするグランジがメインストリームを席巻していた時代に投入されたこの作品は、時代に迎合することなく、バンドが持つ凶暴性と狂気性のみに特化した内容と言っても過言ではありません。ぶっちゃけ、『SEASONS IN THE ABYSS』で感じられたメロウさ、(それまでのSLAYERと比べての)親しみやすさは完全に消え失せ、無慈悲なまでに轟音とスピード、ヘヴィさで圧倒させます。

また、音質的にも意図的なのかデッドなサウンドで録音されており、そこに異質さを感じるものの、逆にこういった演出によって凶暴さをより強めることに成功。そういった要素は、エモーショナルさすら感じさせた前作とは相反した無機質なものへと昇華させており、それが本作が潜在的に持つ狂気性をより強める結果につながっています。

ぶっちゃけ、リリース当時に初めてこのアルバムを聴いたときは馴染めなかったんですよ。いや、『SEASONS IN THE ABYSS』で自分自身がこのバンドに対してどこか“甘さ”を感じるようになっていたんでしょうね。だからこそ、ここまで圧倒的な作品(というよりも、音の塊)をつぶけられて、そこについていけなかったと。そういうことなんだと思います。

そういえば、上でこのアルバムを無慈悲と表現しましたけど、無慈悲=NO MERCY……1stアルバム『SHOW NO MERCY』(1983年)……ああ、そうか。これってSLAYER第2章の幕開けを飾る、新たなデビューアルバムだったのか。発売から25年近く経って、ようやく理解できた気がします。

こんな残虐なアルバムが、全米8位という過去最高記録を打ち出したのも興味深い。ホント、最高のカムバック作ですね。



▼SLAYER『DIVINE INTERVENTION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 10 04 12:00 午前 [1994年の作品, Slayer] | 固定リンク

2018年9月26日 (水)

BLUR『PARKLIFE』(1994)

1994年4月はイギリスの音楽シーンにとって大きな分岐点となりました。それはOASISがシングル「Supersonic」でデビューを果たし、BLURが通算3作目のアルバム『PARKLIFE』を発表したから……このブリットポップ2大バンドが、その後を大きく変えてしまうスタイルでシーンのど真ん中に立とうとした、そんな記念すべき瞬間でした。

BLURはデビュー作『LEISURE』(1991年)の時点で全英7位を記録し、マッドチェスターやらシューゲイザーやらが流行りつつある英国シーンの中で大健闘します。ですが、続く“very british”な2ndアルバム『MODERN LIFE IS BUBBISH』(1993年)がセールス的には前作に及ばず(全英15位)、このまま人気を落としていくのかと思いきや、『MODERN LIFE IS BUBBISH』での“very british”路線をさらに濃くした『PARKLIFE』というアルバムでキャリア最大の成功を収めることになります。

チープな打ち込みリズムにグルーヴィーなベースライン、途中から加わるオルタナティヴロック色の強いザラザラしたギター。そんな中、デーモン・アルバーン(Vo)はサビでシンプルなフレーズをひたすら繰り返す。この中毒性の強い「Girls & Boys」が全英5位を記録したのを筆頭に、ひと昔前のポップス的アレンジで聴き手を惹きつける「To The End」(同16位)、映画『さらば青春の光』で主演を務めた俳優フィル・ダニエルズをフィーチャーした“90年代の英国国家”「Parklife」(同10位)、前作からの延長線上にありながらもよりBLURらしさが極まった「End Of Century」(同19位)と、とにかくインパクトの強いヒットシングル満載。アルバムは当然1位を獲得し、本国イギリスだけで100万枚を超える大ヒット作となりました。

もちろんこのほかにも、イギリスのバンドらしいひねくれ感満載の「Tracy Jacks」や「Jubilee」、グレアム・コクソン(G, Vo)のオルタナ感がストレートに表れた「Bank Holiday」や「Trouble In The Message Centre」、ファンキーなリズム&ギターフレーズが心地よい「London Loves」、そしてアルバム終盤を劇的に盛り上げる「This Is A Low」など、とにかく名曲目白押し。さらに、「The Debt Collector」などアルバムの合間に用意されたインスト/インタールードも良い味を出しており、アルバムを通して聴く際の箸休め的役割を果たしています。

前作『MODERN LIFE IS BUBBISH』と本作、そして続く『THE GREAT ESCAPE』(1995年)がBLURにおける“ブリットポップ3部作”と呼ばれており、デーモンの「ブリットポップは死んだ」宣言が記憶に残る『BLUR』(1997年)以降の作品と一線が引かれています。にしてもさ、『MODERN LIFE IS BUBBISH』から『THE GREAT ESCAPE』までのBLURって、年に1枚アルバムを出しているんですよね……そりゃあ燃え尽きますよ。しかも、周りからはOASISとの比較でいろりろ焚きつけられたわけですから、「ブリットポップは死んだ」と宣言する権利は彼らにこそあると思います。そんな、良くも悪くも“時代”を作ってしまった1枚です。



▼BLUR『PARKLIFE』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

投稿: 2018 09 26 12:00 午前 [1994年の作品, Blur] | 固定リンク

2018年9月12日 (水)

MANIC EDEN『MANIC EDEN』(1994)

1994年3月に日本でリリースされた、エイドリアン・ヴァンデンバーグ(ex. VANDENBERG、ex. WHITESNAKE、VANDENBERG'S MOONKINGS)率いるMANIC EDEN唯一のアルバム。メンバーはヴァンデンバーグ(G)、LITTLE CAESARのロン・ヤング(Vo)、WHITESNAKE時代に活動をともにしたルディ・サーゾ(B)&トミー・アルドリッジ(Dr)の4人。

もともと1993年に、エイドリアンがルディ&トミーのリズム隊と、ジェイムズ・クリスチャン(ex. HOUSE OF LORDS)とで行ったセッションが結成のきっかけ。そこからボーカルがロン・ヤングに替わり、そこから正式にバンドとして活動開始。全11曲中6曲がエイドリアンとロンの共作で、残り5曲はエイドリアンが単独で書いたものになります。

WHITESNAKE時代に本格的に関わるはずだったアルバム『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)ではほぼ全曲をデヴィッド・カヴァーデイルと共作したものの、腕の不調でレコーディングにはまったく参加できず。そういう意味では、彼が丸々関わったアルバムとしては、本作はVANDENBERGの3rdアルバム『ALIBI』(1985年)以来9年ぶりとなります。

聴く前から、このメンツを確認してなんとなく「WHITESNAKE以降の、ブルースベースのハードロックになるんだろうな」と思ってましたが、本当にそのとおりの音で、VANDENBERGはどこへ行った……と古くからのファンは嘆きたくなる内容だったのではないでしょうか。

実際、エイドリアンの(我々が想像する)ギタープレイの良さはここには全く反映されておらず、ジミヘンみたいなギタープレイで、ジミヘンみたいな曲やLED ZEPPELINみたいな曲やジャニス・ジョプリンみたいな曲を作ってみたらこうなったよ、と言わんばかりの内容。いや、そんなにひどくはないんですけどね。でもね……。

ただ、LITTLE CAESARおよびロン・ヤング側の視点でこのアルバムを語ると、彼のシンガーとしての色気や魅力は存分に伝わるものになっているのではないかなと。オープニングの「Can You Feel It」や「When The Hammer Comes Down」といったソウルフル/ブルースフィーリングを漂わせたロックナンバー、「Ride The Storm」や「Do Angels Die」のようなバラードナンバーはカヴァーデイルでは歌えなかったでしょうからね。そういう意味ではナイス人選だったのかも。

ただ、こういう音楽性にこのリズム隊はないな。残念ながら。この2人を使うなら、もっとメタリック寄りにしてもよかったのに(そのほうが個性が生きたような)。そこも踏まえて、非常に中途半端な作品だなと。うん。

ただ、それでも忘れた頃に引っ張り出して聴きたくなってしまうのは、僕がVANDENBERGもWHITESNAKEもLITTLE CAESARも好きだからでしょうね。よかった、そんな人生で(笑)。



▼MANIC EDEN『MANIC EDEN』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 09 12 12:00 午前 [1994年の作品, Little Caesar, Manic Eden, Whitesnake] | 固定リンク

2018年9月11日 (火)

SKIN『SKIN』(1994)

1994年に発表された、イギリスの4人組バンドSKINによる1stアルバム。オリジナル盤はメジャーのEMI / Parlophone Recordsからリリースされ、プロデュースはキース・オルセン(オジー・オズボーンWHITESNAKEHEARTなど)が担当。本国では最高9位まで上昇する、ヒット作となりました。

この時期、イギリスではHR/HMに新たな波が訪れ始めたタイミング。THUNDERの2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992年)が全英2位を記録したのを筆頭に、LITTLE ANGELSの3rdアルバム『JAM』(1993年)が全英1位、THE ALMIGHTYの3rdアルバム『POWERTRIPPIN'』(1993年)が全英5位と、1990年前後にデビューしたバンドたちがこぞって好成績を残していました。

この波に乗らんとばかりに、SKINもデビューするのですが、彼らのサウンドはTHUNDERとLITTLE ANGELS(主に初期)の中間といった印象。適度にブルージーなブリティッシュハードロックをベースに、聴きやすく思わずシンガロングしたくなるキャッチーさを持った楽曲がずらりと並びます。オープニングを飾る「Money」のカッコよさは言うまでもなく、続く「Shine Your Light」や「House Of Love」はTHUNDERにも通ずるロックンロール感がある。「Colourblind」のおおらかなリズムはどこかモダンだし、かと思えば「Which Are The Tears」みたいなソウルフルな王道バラードもある。

THUNDERほどルーツ重視というわけでもなく、LITTLE ANGELSほどポップでもない。だけど、しっかりモダンさも兼ね備えている。そのへんは、本作リリース当時からよくカバーしていた「Unbelievable」(EMFが1990年に発表したシングル。全米1位、全英3位を記録)など、そのセンスにも表れているのではないでしょうか(そのへんのセンスは、続く2ndアルバム『LUCKY』で一気に爆発するのですが)。

当時、HELLOWEENのマネジメントに所属していたことで、初来日が彼らのオープニングアクトだったというのも、今思えば「なるほど」とも思えるし、逆に「だから日本でブレイクできなかったのかな」とも思える。本作は今聴いても優れたハードロックアルバムだと思うし、そのわりにここ日本ではあんまり“届いて”気もするし。そういう歯がゆさを持った1枚、ぜひこの機会に触れてみてはいかがでしょう。しっかりストリーミングにも入ってるしね。



▼SKIN『SKIN』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 09 11 12:00 午前 [1994年の作品, Skin] | 固定リンク

2018年9月10日 (月)

GODSPEED『RIDE』(1994)

アメリカ・ニュージャージーの5人組バンド、GODSPEEDが1994年に発表した唯一のオリジナルアルバム。プロデュースを手がけたのは、SKID ROWのベーシスト、レイチェル・ボラン。デビュー時にその色が着いちゃったことで、HR/HMファンには「野暮ったい」と言われ、オルタナ界からは「SKID ROW流れ」と揶揄され。不幸というかなんというか。

ベーシストが2人、ギターが1人という珍しい編成のバンドで、サウンド的には時代もあってか非常にグランジ/ヘヴィロックからの影響が強いスタイル。グランジといってもMUDHONEYとかMELVINSとか、あるいはHELMETあたりの流れにあるバンドかなと。非常にグルーヴィーなミドルテンポのヘヴィロックが次々と繰り出されます。

ベースが2人ってことは、普通にベースラインを弾くメンバーと、リズムギター的にパワーコードを弾くメンバーがいるってことですかね(生で観たことないのでわからないし、MVではそのへんがわかりにくいので)。サウンドはめっちゃぶっとくてダーティ。爆音で聴くと、本当に気持ち良いんですわ。トリップするってやつですかね。ああ、あの時代がよみがえってきます。

今となると、こういうサウンドってBLACK SABBATHの影響下にあるストーナーロックということになるんでしょうか。事実、このバンドが解散したあと、メンバーの何人かはSOLACE、THE ATOMIC BITCHWAXというストーナー界隈ではそこそこ名の知れたバンドに参加しているので(さすがに僕もSOLACEぐらいは知っていましたが)。GODSPEEDとしてはAtlantic Recordsからメジャーデビューしているものの、むしろ解散して以降のほうが出世している気がします。

良く言えばヘヴィで気持ちいい、悪く言えばどの曲もリフやテンポが似通っている(ラストの「My Brother」は16分もあって、さすがに退屈します)。聴く人によって評価が大きく分かれるアルバム/ジャンルかもしれませんが、2018年に聴いても特に古臭さは感じません(元から古臭かったという話もありますが)。ラップメタル以前の、ゴリゴリでグルーヴィー、引きずるようなリズム感のヘヴィロックを堪能したい方にはぜひ触れてほしい1枚かもしれません。

こうやって久しぶりに聴いてみると、いかにこのへんのジャンルがのちのSKID ROWのアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)に影響を与えたかが、おわかりいただけるかと思います。元凶はお前だったのか、レイチェル。

にしても、今思うとバンド名がよろしくなかったですよね。検索するとき、GODSPEED YOU! BLACK EMPERORばかりが引っかかって、このバンドにたどり着けないったらありゃしない(苦笑)。



▼GODSPEED『RIDE』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 09 10 12:00 午前 [1994年の作品, Atomic Bitchwax, The, Godspeed, Skid Row] | 固定リンク

2018年8月18日 (土)

STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994)

1994年7月にリリースされた、元JOURNEYのフロントマンであるスティーヴ・ペリーの2ndソロアルバム。ソロ作品としては前作『STREET TALK』(1984年)からおよそ10年ぶり、スティーヴが参加したスタジオアルバムとしてもJOURNEYの『RAISED ON RADIO』(1986年)以来8年ぶりと、ファンにとってはまさに待望の新作でした。

事実、当時JOURNEYに大した思い入れのなかった僕ですら、「おお、久しぶりに!」と真っ先に飛びついたくらいですから。

ニール・ショーン(G)やジョナサン・ケイン(Key)といったJOURNEY組は1989年にBAD ENGLISHとして再デビューしてブレイクを果たしましたが、スティーヴは自身が先にバンドから離れたにも関わらず、このアルバムまでかなりの時間を要しています。

プロデュースに当たったのはスティーヴ本人と、ジェイムズ・ジンボ・バートン(QUEENSRYCHE、TRIXTER、LITTLE ANGELSなど)、ゴスペル/R&B系シンガーソングライターのティム・マイナーの3人。作品自体、このメンツからも想像できるような高品質の産業ハードロックとR&Bテイストの歌モノロックが入り混じった、我々が想像する“JOURNEYのスティーヴ・ペリー”らしい1枚に仕上がっています。

1曲目の「You Better Wait」のオープニングに感じられる讃美歌調のアレンジ、そこから流れるように突入するメロディアスハードロックサウンドに、当時は歓喜したものです。だって、1994年といえばカート・コバーン(NIRVANA)の急逝はあったものの、シーンはまだまだグランジまっただ中、かつヘヴィでラウドな音楽がもてはやされる時期でしたから。

ミディアムテンポでAOR寄りのハードロック/ハードポップと、じっくり聴かせるミディアム/スローバラードの数々。新しい要素はこれといって見受けられませんが、終始安心して聴ける1枚。各楽曲、非常に手の込んだ完成度の高いものです。『ESCAPE』(1981年)から『RAISED ON RADIO』までのJOURNEYらしさも至るところから感じられますし、ファンなら間違いなく気に入る作品集ではないでしょうか。特に後半の盛り上げで重要な役割を果たす壮大なバラード「Missing You」と、ラストの大人びたスローナンバー「Anyway」は涙なしには聴けない1曲なはずです。

ですが、スティーヴの歌声……最初に聴いたときは、その“枯れ”っぷりに驚きを隠せなかったことも、記しておかねばなりません。最近公開された24年ぶりの新曲「No Erasin'」を聴いて、さらなるその“枯れ”っぷりに時の流れを感じたものですが(とはいえ、すでにスティーヴも69歳。そりゃあ衰えますよ)、それを最初に感じたのはこのアルバムだったな、と久しぶりに本作を聴いて思い出しました。

上記のような時代背景や、8年ぶりの音源などといった不安要素があったものの、本作は全米15位、50万枚を超えるヒットとなりました。また、「You Better Wait」(全米29位)、「Missing You」(同74位)というシングルヒットも生まれています。このアルバムを携え、ソロとしての来日公演も予定されていましたが、二度目のJOURNEY脱退理由にもなった退行性骨関節疾患のために実現せず。その後、JOURNEY再結成などいろいろありながらも、ソロとしては3作目となる『TRACES』(2018年)が完成するまでには、さらに24年もの歳月を要するのでした。



▼STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 18 12:00 午前 [1994年の作品, Journey, Steve Perry] | 固定リンク

2018年5月30日 (水)

R.E.M.『MONSTER』(1994)

アメリカで1994年9月、日本では同年10月にリリースされたR.E.M.通算9枚目のスタジオアルバム。初の全米1位を獲得した前々作『OUT OF TIME』(1991年)、ディープな作風でグランジ層にも存分にアピールした前作『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』(1992年)はともに400万枚を超えるセールスを記録しましたが、それらに続く本作も全米1位、400万枚以上を売り上げ、人気を維持。また、「What's The Frequency, Kenneth?」(全米21位)、「Bang And Blame」(全米19位)、「Strange Currencies」(全米47位)というヒットシングルも生まれました。セールス的にはこのあたりが彼らのピークということになるのでしょうか。

ダークで穏やかな作風ながらも、バンド史上最高傑作と呼ぶにふさわしい内容だった前作『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』から一転、本作では当時の流行にあえて乗っかりにいったかのような荒々しくて激しいギターロックサウンドが展開されています。

しかし、そこはR.E.M.のこと。軸にあるメロディや歌詞で表現されるテーマには前作からの流れをしっかり感じることができます。オープニングの「What's The Frequency, Kenneth?」こそ高揚感が強く、ポップさもしっかり兼ね備えていますが、続くダウナー感漂う「Crush With Eyeliner」や「I Don't Sleep, I Dream」、打ち込みビートを取り入れた「King Of Comedy」と、歪んだギターを前面に打ち出しつつも、その世界観にはどこか前作と共通するものが存在しています。そう、ただ流行に乗っかってやっただけでは済まさない。若い奴には負けてられねえよ!と意気込みながらも、どこか余裕がつきまとう。それが R.E.M.というバンドの凄みなのかもしれませんね。

アッパーな「Star 69」やカントリー調バラード「Strange Currencies」を挟んで突入する後半戦では、オルガンサウンドを前面に打ち出したソウルフルな「Tongue」や、過去のヒットシングルにも通ずるマイナー調の前半とオルタナ色が強まるサビとの対比が興味深い「Bang And Blame」、若干後ろに引っ込んだボーカルが印象に残るギターロック「I Took Your Name」、カオティックなギターオーケストレーションとタンバリンを伴奏にマイケル・スタイプ(Vo)が歌う「Let Me In」、爆発しそうな勢いのフィードバックギターが心地よい「Circus Envy」と個性的な楽曲が並び、歪んだギターを軸にしたエモーショナルな「You」でエンディングを迎えます。

確かに荒々しさという点においては、ブレイクを果たした『DOCUMENT』(1987年)以降では飛び抜けていると思います。が、ただ激しいだけではなく、しっかり穏やかさも備わっている。『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』とは表現方法は異なるかもしれないけど、この2枚の間にはどこか共通するものが存在している。だから、本作を語る際には『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』は欠かせない、そんな1枚だと思っています。



▼R.E.M.『MONSTER』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 30 12:00 午前 [1994年の作品, R.E.M.] | 固定リンク

2018年5月12日 (土)

NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)

昨日のMEATHOOK SEEDを聴いて、急に思い出したのが今回紹介するNAILBOMB。名のあるメタル/ラウド系バンドのメンバーが集まって作ったプロジェクト、90年代前半という微妙なタイミングでのインダストリアルメタルへの接近など共通項がいくつかあってか、自分の中で同じ枠に入れていた2組なんですよね。

NAILBOMBは当時SEPULTURAに在籍していたマックス・カヴァレラ(Vo, G)と、当時FUDGE TUNNELの一員だったアレックス・ニューポート(Vo, G)が立ち上げたプロジェクト。本作『POINT BLANK』は1994年3月(日本盤は4月)にリリースされた唯一のオリジナルアルバムで、レコーディングには同じくSEPULTURAのアンドレアス・キッサー(G)、イゴール・カヴァレラ(Dr)、FEAR FACTORYのディーノ・カザレス(G)がゲスト参加しています。

サウンド的には当時のSEPULTURAが持っていたモダンヘヴィネス的な重さよりも、もっと直線的でパンキッシュなメタルサウンドに、インダストリアル調のサンプリングや打ち込みビートなどをミックスしたもので、感覚的にはMINISTRYに近いものがあるかも。

最初に「MEATHOOK SEEDと同じ枠」と書いたものの、手法は一緒でも出てくる音が異なるものというのが面白い。もちろんそれは「NAPALM DEATHOBITUARY」と「SEPULTURA+FUDGE TUNNEL」という違いによるものであって、違うのは当たり前の話なんですけど。だけど、なぜか同じ枠で括りたくなってしまう理由、同意してもらえますかね?

SEPULTURAのスラッシュメタル/モダンヘヴィネスとも異なる、どこか単調でパンキッシュなスタイルはカヴァレラがのちに結成するCAVALERA CONSPIRACYにちょっと近いものがあったりすると思うのですが、いかがでしょう? もちろん、完全に一致しているわけではないですけど、カヴァレラがこのNAILBOMBでアレックス・ニューポートと試したことが10数年後に再びCAVALERA CONSPIRACYでトライされたと考えたとき、その間の出来事やバンドの経緯を踏まえると合点がいくのではないでしょうか。

あと、MEATHOOK SEEDを久々聴いたときは新鮮さが得られたのに、このNAILBOMBでは同じような感覚が得られなかったのはなぜなんでしょうね。それも不思議……って、CAVALERA CONSPIRACYがあったからか。納得(苦笑)。

NAILBOMBは本作リリース後にライブを行なっており、翌1995年にはライブアルバム『PROUD TO COMMIT COMMERCIAL SUICIDE』を発表しています。なお、こちらにはライブ音源のほかにスタジオ音源2曲が追加収録されているので、新曲目当てで聴いてみてもいいかもしれません。



▼NAILBOMB『POINT BLANK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 12 12:00 午前 [1994年の作品, Fudge Tunnel, Nailbomb, Sepultura] | 固定リンク

2018年4月15日 (日)

DIZZY MIZZ LIZZY『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994)

ティム・クリステンセン(Vo, G)率いる、デンマーク出身のトリオバンドDIZZY MIZZ LIZZYによるデビューアルバム。本国では1994年3月に、ここ日本では1995年1月に発表された本作は、特にここ日本では収録曲「Glory」が高く評価されたこともあり、10万枚を超えるヒット作となりました。

ハードロックからの影響を感じさせつつも、グランジ以降のオルタナロック色が強いバンドアンサンブル、北欧のバンドらしく哀愁味漂うメロディが混在する独特のスタイルは、同時期に活躍したアメリカやイギリスのバンドにはないもの。なおかつ、ハードロックファンをも魅了するこのスタイルは、グランジは受け付けなかった日本のロックファンからもそれなりに評価されたようでした。

確かに「Glory」1曲を聴いただけでは、HR/HMファンが喜びそうなメロディ、フレーズが目白押しかと思います。実際、90年代を代表する名曲のひとつではることには間違いありませんが、このバンドの本質って実はこの曲よりも「Waterline」や「Barbedwired Baby's Dream」「67 Seas In Your Eyes」あたりから感じられる独特なバンドアンサンブルだと思うのです。

そういえば、同じトリオ編成ということで、当時RUSHあたりと比較する声があったのも、今となっては懐かしいですね。もちろん、音楽性はまったく異なりますけど、言わんとしてることは理解できます。ポール・マッカートニーみたいな名ソングライターと、LED ZEPPELINやRUSHみたいに独自のグルーヴ感を生み出すバンドが合体したような存在なわけですからね。

アルバムのオープニングを飾る「Waterline」のシンコペーションを効かせたバンドプレイやパートによってテンポ感が変化するアレンジ、「67 Seas In Your Eyes」あたりで自然に飛び込んでくる変拍子、「Silverflame」のサビでみせる独特なメロディの刻み方、などなど。ソングライティング力の高さはもちろんのこと、バンドとしての演奏力の高さやアレンジ力に優れている点など特筆すべきポイントがたくさんありまして。要するに、「Glory」1曲だけでは語りきれない魅力があるからこそ、このバンドは現在に至るまで長きにわたり愛され続けているわけです。

ソングライティングに関しては、特にティム・クリステンセンという稀代のソングライターによるところも大きく、90年代末にこのバンドが解散して以降もソロアーティストとして日本でも高評価を獲得し続けている事実からも、その実力が伺えるのではないでしょうか。

とにかく、捨て曲なしの約55分(日本盤ボーナストラック除く)、頭からラストまでぶっ続けて聴いてその魅力をたっぷり堪能してほしいと思います。



▼DIZZY MIZZ LIZZY『DIZZY MIZZ LIZZY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 04 15 12:00 午前 [1994年の作品, Dizzy Mizz Lizzy] | 固定リンク

2018年4月 7日 (土)

THE BLACK CROWES『AMORICA』(1994)

1994年11月にリリースされた、THE BLACK CROWES通算3作目のスタジオアルバム。前作『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)が全米初登場1位を獲得し、200万枚以上を売り上げるヒット作となりましたが、バンドはそういった現実に浮かれることなく、より独自の道を突き進むことになります。

ジャムセッションをもとに制作し、そこから曲を煮詰めるわけでもなく、ライブならではのフリーキーな雰囲気をそのまま残した前作での路線は、そのまま本作にも引き継がれています。が、前作はゴスペルコーラス隊をフィーチャーしたり、どことなくLED ZEPPELIN的なハードロックテイストが強まっていたりと、HR/HMファンでもなんとなく入っていける要素が感じられたのですが、本作はサザンロック/ジャムバンド色を前面に押し出したことにより、“こっち側”のリスナーにはちょっと取っ付きにくい内容になってしまった印象もあります。

だからといって内容が悪いかと言われると、まったくそんなこともなく。パーカッシヴなテイストを強めたオープニングトラック「Gone」や、なんとなくラテンの匂いもする(ちょっとサンタナ的といいますか)「High Head Blues」は単純に気持ちよく聴けるし、前作までのカラーが引き継がれたソウルフルな「A Conspiracy」は単純に良曲。シンプルなリフの積み重ねとスライドギターによるソロでグイグイ引っ張っていく「Cursed Diamond」、単なるアコースティックバラードでは終わらない、どことなくダークな色合いが見え隠れする「Nonfiction」と、アルバム序盤から非常に濃厚な構成なのです。

もちろん、後半もよりディープな展開を見せていきます。ハードロック的なサウンドで構築された「She Gave Good Sunflower」、メロディがちょい難解な「P.25 London」、サイケデリック風味のバラード「Ballad In Urgency」、淡々としたサザンロック風バラード「Wiser Time」、デルタブルースからの影響が強い「Downtown Money Waster」、1stアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)から持つ彼ららしさがそのまま引き継がれた「Descending」と、後半に進むにつれてじっくり聴かせる系の楽曲が増えていきます。

確かにアルバムとしての完成度は過去2作よりも若干劣るかもしれません。が、THE BLACK CROWESがどんなライブバンドなのか、それがもっとも体現できているのがこの3作目なのではないでしょうか。

ジャケットのインパクトが強すぎて、ちょっと手にしにくい1枚かもしれませんが、この猥雑さ含め『AMORICA』というアルバムを構築していると考えると、なんとなく納得できるものがあったりして。



▼THE BLACK CROWES『AMORICA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 04 07 12:00 午前 [1994年の作品, Black Crowes, The] | 固定リンク

2018年4月 6日 (金)

ALICE IN CHAINS『JAR OF FLIES』(1994)

1994年1月に発表された、ALICE IN CHAINSの7曲入りEP。1992年9月に発表した2ndアルバム『DIRT』が全米最高6位、400万枚を超える大ヒット作となったものの、1993年にマイク・スター(B)が脱退。これを受けて、オジー・オズボーンのフェアウェルツアーを終えたマイク・アイネズが新たに加わり、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』のサウンドトラックに新曲「What the Hell Have I」「A Little Bitter」を提供。さらに同年10月には初来日公演が実現し、バンドとして(表向きは)最高潮の中で制作された最新作がこの『JAR OF FLIES』でした。

事実、『DIRT』の大ヒットを受けて、本作はアメリカBillboard 200にて初の1位を獲得(アルバム扱い)。300万枚以上売り上げるヒット作となりました。

『DIRT』ではとにかくヘヴィでダークさを追求し、かっちり作り込んだ世界観を提供したALICE IN CHAINSですが、今作ではもっとルーズで温かみのあるサウンドを楽しむことができます。そもそも彼らは1stアルバム『FACELIFT』(1990年)と『DIRT』との間に4曲(隠しトラックを含めると5曲)入りEP『SAP』(1992年)を発表しており、ここでフルアルバムでは表現しきれない繊細なアコースティックサウンドを提供。この『JAR OF FLIES』も『SAP』の延長線上にある作風で、冒頭2曲「Rotten Apple」「Nutshell」こそ『DIRT』にも通ずるダークさがありますが、音像自体はもっと穏やかで柔らかいもの。この感触からも、『DIRT』とは異なる方向性の作品であることが伺えます。

また、「I Stay Away」や「No Excuses」あたりは、のちに制作される3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)のテイストにも通ずるものがあるし、中でも「I Stay Away」や「Don't Follow」が持つポジティブな美しさは、フルアルバムを聴いただけでは伝わってこない側面を強く感じることができるはずです。

かと思えば、「Swing On This」のようなジャムの延長から生まれたような楽曲があったり、彼ららしいひんやりしたギターオーケストレーションと、弦楽器とアコギが生み出す温かみとのコントラストが興味深いインスト「Whale & Wasp」もある。たった7曲、30分程度の短い作品集ですが、ヘヴィでダークで怪奇な印象の強いこのバンドが“ただそれだけではない”ことを証明する上で非常に重要な1枚と言えるでしょう。日本盤に付けられた『アナザー・サイド・オブ・アリス』という邦題、最初に目にしたときは「……ないわーっ!」って思ったけど、今振り返るとあながち間違いではないんですよね。

個人的には初来日公演の中野サンプラザ2日目、紗幕がかかる中でオープニングに演奏された、当時はまだ未発表曲だった「Nutshell」の印象が特に強く。そこから「Junkhead」で静寂を切り裂く構成含め、レイン・ステイリー(Vo)を含む唯一の来日は今でも忘れられません。



▼ALICE IN CHAINS『JAR OF FLIES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 04 06 12:00 午前 [1994年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2018年3月30日 (金)

RICHIE KOTZEN『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994)

1994年11月に発表されたリッチー・コッツェン通算4作目のソロアルバム。1992年にPOISONに加入し、翌年『NATIVE TONGUE』(1993年)を発表するものの、のちに脱退してしまうリッチーが、新たに取り組んだのがトリオ編成のバンドで、自身がボーカルを担当して『NATIVE TONGUE』路線のR&Bがかったロックアルバムを制作することでした。

メジャーのGeffen Recordsと契約して発表した最初の作品となる本作は、プロデュースをPOISONの『NATIVE TONGUE』やMR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001年)などで知られるリッチー・ズィトーが担当。ちなみにリッチー・ズィトーはほかにCHEAP TRICKの復活作『LAP OF LUXURY』(1988年)BAD ENGLISHのデビュー作『BAD ENGLISH』(1989年)HEARTの『BRIGADE』(1990年)など産業ロック色の強い作品を中心に手がけており、これだけ知ると聴くのが不安になってくるのですが、今作ではリッチー・コッツェンの魅力を存分に活かした生々しい1枚に仕上げられています。

全体的にはハードロックというよりも、ブルースやR&Bをベースにした黒っぽいアメリカンロックに近い印象。リッチーの歌声も渋みにみちたものだし、ドラムのアトマ・アナーもHR/HMよりもフュージョンやソウルのそれに近いイメージがあります。が、いざギターソロに突入するとリッチー・コッツェンらしい速弾きがバシバシ登場。それをカッコいいと受け取るか、「こういう音なのに……邪魔!」と受け取るかで好き嫌いが分かれそうな気もします。

もともと速弾き/テクニカル系プレイヤー中心レーベルShrapnel出身という偏見が強かったので、個人的にも彼がPOISONに加入したときは「あんなヘタクソ集団に加わって大丈夫かよ?」と心配になったものですが(もちろんPOISONに対する心配です。おっと失礼)、結果はご存知のとおり。過去のPOISONにない魅力を引き出した、非常にブルージーでソウルフルなカッコいい1枚に仕上がっていました。

また、リッチーがポール・ギルバートの後釜としてMR. BIGに加入したときは、POISONやその後のソロ活動の成果もあり、「意外と合ってるんじゃない?」という好意的な声と「いやいや、ボーカリスト2人もいらないっしょ?」という否定的な声両方があったと記憶していますが、僕個人としてはリッチー在籍時に残された2枚は悪くないと思っています(好きか嫌いかはまた別ですが)。

そんな、何かと偏見を持たれやすいギタリスト/シンガーのリッチーの、本当の魅力が遺憾なく発揮された最初の作品がこのアルバム。これがなければ、のちの『WAVE OF EMOTION』(1996年/こちらも名盤)も生まれることはなかったでしょうし、THE WINERY DOGSというバンドも誕生しなかったはずです。そういう意味でも、本作は彼のキャリアを語る上で非常に重要かつ欠かせない1枚なのです。

ソウルフルなゴスペル風コーラスや隙間の多いバンドアンサンブル、そこを無理矢理埋めようとする音数の多いギターソロ。このアンバランスさを面白がれたなら、本作は絶対にあなたにとって大切な1枚になるはずです。ソウルの名曲「Reach Out I'll Be There」でさえ、あんなに弾きまくるリッチーの執念、僕は嫌いじゃないです。むしろこのアルバム、大好きなんですよ。だから、先日この企画で低価格再販されて非常に喜んでおります。あとは、普通に配信やストリーミングでも聴けるようになったら最高ですね!



▼RICHIE KOTZEN『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 03 30 12:00 午前 [1994年の作品, Richie Kotzen] | 固定リンク

2018年2月24日 (土)

NINE INCH NAILS『THE DOWNWARD SPIRAL』(1994)

1994年3月(US/日本では4月)にリリースされた、NINE INCH NAILSの2ndフルアルバム。デビュー作『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)から4年半ぶりとなりますが、その間には所属レーベルとの裁判の長期化などが影響し、EP『BROKEN』(1992年)やリミックスEP『FIXED』(1992年)を発表するにとどまりました。

満を持してリリースされた『THE DOWNWARD SPIRAL』は、トレント・レズナーという男の狂気と破壊性、耽美さと変態性、そして死生観などが濃厚に反映された強烈な1枚に仕上がっています。

前作同様にデジタルビートを軸にしつつも、『BROKEN』で得たハードロック的手法も至るところに多用されており、オープニング曲「Mr. Self Destruct」や「Heresy」のディストーションギターはまさにその応用編と呼ぶにふさわしい出来。かと思えば「Piggy」のように少ない音数で狂気を表現したり、疾走感のある変拍子ビートで突き進む「March Of The Pigs」、変態性を前面に打ち出したミディアムテンポのダンスチューン「Closer」と、とにかく個性的な楽曲が満載です。冒頭5曲を聴くだけで、NINおよびトレントが『PRETTY HATE MACHINE』を起点にかなり遠くまでたどり着いたことが伺えるはずです。

もちろん、その後もヒップホップとインダストリアルビートを掛け合わせた「Ruiner」、アコースティックの要素を効果的に用いたインダストリアルメタル「The Becoming」、そして「A Warm Place」からエンディングへと突き進むダウナーで内省的な構成……最後にたどり着く「Hurt」。最後の一行、“I would find a way”とともに爆発するギターとバンドサウンド。破壊と再生。終末と誕生。いろんなことをイメージさせるこの終盤の流れは、ただただ圧巻の一言です。

正直、発売当時このアルバムを初めて聴いたとき、一度通して聴いたあとしばらく手を伸ばすことができませんでした。それくらい衝撃的で、あとからボディブローのようにジワジワ効いてくる内容なのです。特に、日本盤で対訳を読みながら聴いたりした日には……いろいろ思いを馳せてしまい、反芻〜消化するまでにかなりの時間を要することになると思います。

そのくらい情報量が多いし、濃密だし、思いや念がびっしり詰まった65分。移動中や“ながら”聴きなんかではなく、家でスピーカーの前に座って大音量で、あるいは音楽の邪魔になるものを排除した状態で、ヘッドフォンにてこのアルバムと向き合ってほしいと思います。

本当、なんて神がかっているんだろう……この時点でもNINの来日は実現していません(だって初来日は2000年に入ってからですから)。もしこのタイミングでの来日が実現していたら……日本のロックの、いろんなものが変わったのかもしれませんね。まあ、今さらの「たら・れば」話でしかありませんが。

個人的にはRADIOHEAD『OK COMPUTER』(1997年)と同じぐらい、20代の自分に大きな影響を及ぼした大切なアルバムです。



▼NINE INCH NAILS『THE DOWNWARD SPIRAL』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

投稿: 2018 02 24 12:00 午前 [1994年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

2018年2月 1日 (木)

V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』(1994)

1994年6月にリリースされた、KISSのトリビュートアルバム。ちょうどKISS結成20周年を記念して、当時のメンバーも制作に携わった1枚で、レニー・クラヴィッツガース・ブルックスANTHRAXGIN BLOSSOMSTOAD THE WET SPROCKETDINOSAUR JR.EXTREMETHE LEMONHEADSTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESといったメタル/オルタナ/カントリーなどKISSに影響を受けた幅広いジャンルのアーティストに加え、ここ日本からもYOSHIKI(X JAPAN)が参加。さらに、メイナード・キーナン(TOOL)、トム・モレロ&ブラッド・ウィルク(RAGE AGAINST THE MACHINE)、ビリー・グールド(FAITH NO MORE)からなるスペシャルユニットSHANDI'S ADDICTION(JANE'S ADDICITONをKISSの楽曲「Shandi」にひっかけてもじったもの)まで参加しております。

まあKISS愛に溢れた……というよりは、各アーティストが平常運転でKISSの楽曲をカバーしたといったほうが正しいのかもしれませんね。だって、1曲目の「Deuce」からレニー・クラヴィッツ、直球勝負でカバーしつつも彼らしく味付けしてますから。ちなみにこの曲、ハーモニカでスティーヴィー・ワンダーもゲスト参加してます。

かと思えば、KISSご本家が演奏で加わったガース・ブルックス「Hard Luck Woman」は、カバーというよりもコピー。本家がいつもどおりに演奏して、ポール・スタンレーがハーモニーで加わっているんだから、そりゃあ“まんま”になっても仕方ないですよね(笑)。ANTHRAXの「She」も平常運転、というか途中まで“まんま”すぎて、後半に彼らならではのこだわりのアレンジが加わるという。この時期の彼らは、ボーカルがジョン・ブッシュ時代なので、こういったジーン・シモンズ色の強い曲はピッタリですね。

そういえば、1994年というとグランジブーム末期というタイミングで、KISSから影響を受けたと公言するグランジバンドも少なくありませんでした。そういうこともあって、GIN BLOSSOMS、TOAD THE WET SPROCKET、DINOSAUR JR.あたりのグランジ/オルタナロックバンドのKISSカバーは良い味を醸し出しています。GIN BLOSSOMS「Christine Sixteen」こそストレートなカバーですが、TOAD THE WET SPROCKET「Rock And Roll All Nite」のアコースティックスローカバー、DINOSAUR JR.「Goin' Blind」のヘヴィで泣きまくり、かつ脱力系なカバーは完璧すぎるほどの素晴らしい仕上がり。1994年という時代感を見事に反映した、本作の中でもベストテイクと言えるでしょう。

そして、本作中もっとも異色のカバーがSHANDI'S ADDICTION「Calling Dr. Love」。トム・モレロの変態ギターを存分に活かしたテイクで、参加メンバーの各バンドの個性が見事に反映されたアレンジは、最高の一言。のちのヘヴィロック/ラウドロック一大革命を先取った1曲と言えるかもしれません。

その他にも、EXTREMEらしくファンクロック的“ハネた”ミディアムナンバーへと昇華させた「Strutter」、あの有名なツインリードギターをブラスで再現した爆笑モノのTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES「Detroit Rock City」、いかにもYOSHIKI、というかまんまX JAPANな「Black Diamond」のオーケストラバージョン、ボーナストラックとして追加されたドイツのバンドDIE ÄRZTEの「Unholy」ドイツ語カバー(途中でディスコな“あの曲”も飛び出したり)など、聴きどころ満載。トリビュートアルバムとしては、かなり力の入った1枚ではないでしょうか。そりゃまあ、アーティスト本人が尽力してるんだもんね。

ちなみに本作、今のようにKISSがメイク時代に戻る前の作品ながらも、全米19位まで上昇。50万枚を超えるヒット作となりました。今思えば、このへんの成功が数年後のオリメン&メイク復活の布石になったんでしょうね。

なお、本作はストリーミング配信はおろか、デジタル配信自体が行われておりません。勿体ないったらありゃしない。



▼V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 02 01 12:00 午前 [1994年の作品, Anthrax, Compilation Album, Dinosaur Jr., Extreme, Faith No More, Garth Brooks, Gin Blossoms, KISS, Lemonheads, the, Lenny Kravitz, Mighty Mighty Bosstones, the, Rage Against The Machine, Toad the Wet Sprocket, Tool, X JAPAN] | 固定リンク

2018年1月19日 (金)

THERAPY?『TROUBLEGUM』(1994)

北アイルランド出身のトリオバンドTHERAPY?が1994年初頭にリリースした、メジャー2ndアルバム(インディーズ盤含めると通算4作目)。『NURSE』(1992年)でメジャーデビューを果たした彼らでしたが、同作は全英38位止まり。が、本作『TROUBLEGUM』にも収録された「Screamager」がリード曲のEP『SHORTSHARPSHOCK E.P.』(1993年)が全英9位、続く『FACE THE STRANGE E.P.』(同年 / 「Turn」収録)が全英18位、『OPAL MANTRA』(同年 / アルバム未収録)が全英14位、さらにシングル「Nowhere」が全英18位と好状況を経てこのアルバムをドロップ。結果、全英5位という現在までの最高順位を獲得することとなりました。以降も「Trigger Inside」(全英22位)、「Die Laughing」(全英29位)とヒットシングルが生まれています。

本作では反復されるダンサブルなインダストリアルビートが魅力だった『NURSE』までの路線から一歩踏み出し、より直線的でエモーショナルな楽曲が増えた印象。オープニングのショートチューン「The Knives」や「Screamager」、「Nowhere」はまさにその代表例で、そういった新境地ナンバーが受け入れられた結果、ヒットにつながったのだから面白いものです。

かと思えば、前作までのダークな色合いを兼ね備えた「Unbeliever」「Lunacy Booth」、グランジやオルタナからの影響が強い「Femtex」「Unrequited」があったり、JOY DIVISIONのカバー「Isolation」もある。確かにリフの反復などには前作までの色合いが見え隠れしますが、全体的にはロックバンドとしての躍動感が強烈に強まった意欲作という気がします。

だからこそ、「Nowhere」や「Die Laughing」のようなメジャーキーのポップな楽曲が入っていても違和感なく楽しめるし、むしろそういった異色の楽曲が強い個性を放っているのだから不思議ですよね。ダークだけどエモーショナル、そしてキャッチーでポップ。このスタイルは次作『INFERNAL LOVE』(1995年)でさらに極まることになるわけです。

なお、本作は数年前にCD3枚組のデラックス盤も発売。シングルのカップリングやリミックス、ライブ音源などがまとめられています。このリミックスバージョンに、過去のインダストリアルテイストが生かされているので、この使い分けはさすがだな、わかってるなと思ったのは僕だけではないはずです。



▼THERAPY?『TROUBLEGUM』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

投稿: 2018 01 19 12:00 午前 [1994年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2018年1月18日 (木)

TERRORVISION『HOW TO MAKE FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE』(1994)

イギリス出身の4人組バンドTERRORVISIONが1994年春に発表した2ndアルバム。PIXIESやTHROWING MUSESなどを手がけ、のちにFOO FIGHTERSHONEYCRACKFEEDERなどにも携わるギル・ノートンをプロデューサーに迎え制作された本作からは「Oblivion」(全英21位)を筆頭に、「Middleman」(同25位)、「Pretend Best Friend」(同25位)、「Alice What's The Matter?」(同24位)、「Some People Say」(同22位)と5曲ものヒットシングルが生まれ、アルバム自体も最高18位と好セールスを記録。知名度を一気に上げる起爆剤となりました。

彼らのサウンドは非常にカテゴライズが難しく、ハードロックと言ってしまえば確かにそう聴こえるし、RED HOT CHILI PEPPERSあたりのヘヴィなファンクロックと言われればそうとも受け取れる。ブリットロックの中に入ってしまえばそれっぽいと思えるし、グランジと言われれば確かにそれっぽい。要するに、1曲1曲が独立して際立った個性を持っているため、いざアルバムで接するとバンド本来の顔が見えてこなかったりするのです。そこが良い点でもあると同時に、ここ日本のようなシーンでは弱点にもなる。ある意味、評価の難しい存在かもしれません。

事実、僕自身もリアルタムで最初に彼らの楽曲に触れたのは、ちょっとグランジがかったミディアムナンバー「Middleman」から。次にオールディーズテイストのポップロック「Oblivion」を聴いたら頭に「?」の文字が浮かび上がり、さらに風変わりなハードロック「Alice What's The Matter?」やミクスチャーロック風の「Pretend Best Friend」を聴いてさらに疑問は大きくなるばかり。

アルバムを聴くと、ファンクロック的な「Stab In The Back」があったりヘヴィなギターリフがカッコイイ「Descotheque Wreck」があったり、リフだけ聴いたら完全にメタルなファストチューン「What The Doctor Ordered」、アコースティックギターやストリングスをフィーチャーしたもの悲しげなヘヴィバラード「Some People Say」と、とにかく一貫性が感じられない。

でも、視点を変えれば、この一貫性のなさこそがTERRORVISION最大の武器であるわけで。何度も聴き込むとこのアルバム、かなり芯の通ったアルバムだと気づかされるわけです。要するにミクスチャーロックバンドなんですよね。ブリティッシュロックバンドがミクスチャーに挑戦するとこうなる、という好例なのではないでしょうか。そう考えると、このひねくれっぷりこそがイギリス人そのものなんだなと改めて実感させられるはず。こんなアルバム、アメリカ人にはなかなか作れませんよ。



▼TERRORVISION『HOW TO MAKE FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 01 18 12:00 午前 [1994年の作品, Terrorvision] | 固定リンク

2017年12月27日 (水)

JIMMY PAGE / ROBERT PLANT『NO QUARTER』(1994)

1993年にデヴィッド・カヴァーデイル(WHITESNAKE)と「COVERDALE・PAGE」というユニットを組んだものの、アルバムは小ヒット、ライブもここ日本でしか実現せず、短命に終わり途方に暮れていたジミー・ペイジ。翌1994年年に入るとMTV「Unplugged」の特別企画として、盟友ロバート・プラントと「Unledded」(=LED ZEPPELINではない)と題したスペシャルライブを実施しました。ここでツェッペリンの名曲群を新たな解釈でアレンジして披露し、さらに新たに書き下ろされた新曲も含まれていたことで、「ツェッペリン復活か?」とざわざわし始めます。そして同年11月、この音源を編集したライブアルバム『NO QUARTER』がリリースされたわけです。

本作で取り上げられたツェッペリンナンバーは「Nobody's Fault But Mine」「Thank You」「No Quarter」「Friends」「Since I've Been Loving You」「The Battle of Evermore」「That's The Way」「Gallows Pole」「Four Sticks」「Kashmir」の計10曲。「Thank You」や「Since I've Been Loving You」あたりは原曲に近いロックアレンジで再現されていますが、「Nobody's Fault But Mine」はフォーキーなアレンジに、「No Quarter」はキーボードレスで歌とギターのみで表現されるなど、新たな解釈が加えられています。

またEGYPTIAN ENSEMBLEの参加により「Friends」「The Battle of Evermore」、そして先の「Nobody's Fault But Mine」などはよりエキゾチックなテイストが増し、「Kashmir」にはLONDON METROPOLITAN ORCHESTRAの参加により原曲が持つドラマチックさが増強されております。

アコースティックテイストの楽曲(『LED ZEPPELIN III』および『同 IV』収録曲)が多数選出されていることからこういう方向性になったのかと思われますが、もともとこの手のテイストはジミー・ペイジの好物ですし、ロバート・プラントも自身の作品にこういうテイストを積極的に取り入れていたので、なるべくしてなった作風なのかもしれません。

これに合わせて新たに制作された新曲群「Yallah」「City Don't Cry」「Wonderful One」「Wah Wah」は、非常に時代性が強い作風。エキゾチックさにサンプリング/ループなど現代的要素をミックスされたサウンドは、「もしツェッペリンがその後も続いていたら、こんなことにも挑戦していたかも」と納得させられるもの。かといって、初期の楽曲のような絶対的な強さは皆無。そこは仕方ないかな……と当時も妙に納得してしまった記憶があります。

アルバム自体、全米4位・全英7位とそこそこの成功を収めたことで、2人はこの活動を継続。1998年には全曲新曲で構成されたオリジナルアルバム『WALKING INTO CLARKSDALE』もリリースします。



▼JIMMY PAGE / ROBERT PLANT『NO QUARTER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 27 12:00 午前 [1994年の作品, Jimmy Page, Jimmy Page / Robert Plant, Led Zeppelin, Robert Plant] | 固定リンク

2017年12月20日 (水)

MACHINE HEAD『BURN MY EYES』(1994)

1994年夏にリリースされた、MACHINE HEADのデビューアルバム。当時のメンバーはロブ・フリン(Vo, G)、ローガン・メイダー(G)、アダム・デュース(B)、クリス・コントス(Dr)。Billboard 200に入るようなヒット作ではないものの、その後のHR/HMシーンにおいて非常に重要な1枚として現在まで愛され続けています。

もともろロブは80年代後半から90年代初頭まで活動したスラッシュメタルバンド、VIO-LENCEのギタリストで、バンド解散後にローガンやアダムらと結成したのがMACHINE HEAD。ストレートなスラッシュメタルをやるかと思いきや、そこは時流に乗ったというか、METALLICA“ブラックアルバム”PANTERA以降の流れを汲むグルーヴィーで重々しいヘヴィメタルを展開しております。

なぜこのアルバムが“一時代を築いた”なんて言われているのか、それは起伏に富んだ楽曲アレンジもさることながら、ロブ&ローガンによるギターワークではないでしょうか。オープニングトラック「Davidian」のギターリフや、ハーモニクスなどを交えたプレイや音色は、例えばPANTERAにおけるダイムバッグ・ダレルのそれ同様に、当時のギターキッズたちが夢中になるようなものでした。特にグランジ以降、派手なギターソロを排除したシンプルなギタープレイが主流になっていましたが、カート・コバーン(NIRVANA)が亡くなった1994年春前後に登場したHR/HMの重要作品……本作『BURN MY EYES』やSEPULTURA 『CHAOS A.D.』やPANTERA『FAR BEYOND DRIVEN』、CARCASS 『HEARTWORK』あたりからは、派手なギタープレイを主軸に置いた新たなスタイルのHR/HMを感じることができるはずです。

楽曲のバラエティは次作以降、さらに幅広くかつクオリティが向上していくのですが、本作でのトーンの統一感やヘヴィさ、全体に漂う閉塞感などは以降の作品には感じられないものかもしれません。このへんはもしかしたら、グランジ一色だったロックシーンに対するアンチテーゼという意味もあったのかもしれません(勝手な想像ですが)。

PANTERAともMETALLCIAとも違うヘヴィさ、ダミ声だけど意外とメロウなロブのボーカル、そしてギター弾きなら真似したくなるリフワークやソロ。リリースから20数年経った今聴いても独創的ですし、「Davidian」や「Old」「None But My Own」「The Rage To Overcome」「Block」あたりは思わずコピーしたくなるくらいカッコいい。特に3rdアルバム『THE BURNING RED』(1999年)以降はアルバムごとに変化を繰り返しているバンドですが、軸になる部分はすでにこの時点から存在している。ぜひその原点をここで確認してみてください。



▼MACHINE HEAD『BURN MY EYES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 20 12:00 午前 [1994年の作品, Machine Head] | 固定リンク

2017年12月18日 (月)

KORN『KORN』(1994)

1994年秋にリリースされた、KORNの1stアルバム。KORNっていわゆるラップメタル/ニューメタルと呼ばれるヘヴィ系バンドのハシリ的存在だったのかなと、今になってみて思うのですが、実は当時はそういう感覚がまったくなかったんですよね。

自分の肌感覚的には「周りのバンドマン、国内メタル系アーティストがざわざわ騒ぎだし、よく名前を挙げるバンド」という存在でした、KORNって。たぶんPANTERAが1992年に一気にブレイクして、それに続くようにSEPULTURAがグルーヴィーでヘヴィなアルバム『CHAOS A.D.』を1993年にリリースして……その間には、メタルというよりはハードコアサイドにいたBIOHAZARDのようなバンドや、ちょっと変態チックなオルタナバンドFAITH NO MOREもいた。結局、KORNはその延長線上から誕生した印象だったんですよね。

そうそう、1993年にはもう1枚、重要な作品があった。映画『JUDGEMENT NIGHT』のサウンドトラック。あそこでメタル/ヘヴィ系バンドとヒップホップアーティストがコラボレーションしたことは、KORNの誕生(デビュー)にも大きく影響しているんじゃないかなと。そういう土壌ができつつあったところにデビューしたわけですから。

で、実際にこのアルバムを当時聴いたとき……1曲目「Blind」のオープニングに鳥肌を立て、一発でハマったことをよく憶えています。が、それもこの1曲だけで、実のところ他の曲に関しては理解できるものと理解が追いつかないものが半々ぐらい。正確に理解/評価できていたかと言われると、非常に微妙なのです。

そりゃあ、今のKORNと比べたら本作でやってることは多少難易度が高いかもしれません。だからこそ3枚目の『FOLLOW THE LEADER』(1998年)が出たときは「やたらと聴きやすくなったな」と驚いたんですが。

7弦ギターを使った独特のサウンドと、スラップを多用しバキバキいうベース、METALLICA 『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)での電子音的ドラムサウンドをさらにデッドにして進化させたようなリズム、そして変幻自在なジョナサン・デイヴィス(Vo)の、歌とも叫びとも取れる表現方法。あの頃、みんながこのアルバムに嫉妬したし、みんなが真似したがった。本当にズルいアルバムだと思います。

久しぶりにじっくり聴いてみたけど、20年前に感じた難易度はそこまで感じなくなっていました。ああ、当時は考えすぎてたのか、それともこういう音に慣れてしまったのか。ただただ、大きな音で聴くと気持ち良いアルバム。今はそれで十分かなと思います。

そういえば、リリース当初は本作、歌詞も対訳も付いてなかったんですよね。それが、2011年の国内盤再発の際に、聞き取りによる歌詞とその対訳が付くようになったので、それだけのためにも国内盤を購入する意味があると思いますよ。



▼KORN『KORN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 18 12:00 午前 [1994年の作品, Korn] | 固定リンク

2017年9月20日 (水)

CATHEDRAL『STATIK MAJIK』(1994)

1994年に発表された、CATHEDRALの4曲入りEP。直近の最新アルバム『THE ETHEREAL MIRROR』(1993年)からの代表曲「Midnight Mountain」をリードトラックに、未発表の新曲3曲を加えた構成なのですが、これがEPとかミニアルバムとは呼べないようなボリュームでして……4曲で40分超の、フルアルバム並みの内容なんです。

「Midnight Mountain」は今さら言うまでもなく、ダンサブルなビートを用いることで、CATHEDRALが単なるBLACK SABBATHフォロワーではないオリジナルな存在へと導くことに成功した1曲。発売から24年経った今聴いても、やっぱりカッコイイですもんね。

で、残り3曲が本作で初公開の新曲になるわけですが、「Hypnos 164」「Cosmic Funeral」は『THE ETHEREAL MIRROR』に収録されていても不思議じゃない、ドゥーミーなハードロック。1曲の中にいくつもの展開が用意されており、リー・ドリアン(Vo)のヘタウマボーカルが曲に合った安定感を放ち始めているから不思議です。特に「Cosmic Funeral」は途中で挿入される鍵盤(オルガン?)の音色が70年代の香りを醸し出しており、そこから突入する2本のギターバトルがハンパなくカッコイイ。1stアルバム『FOREST OF EQUILIBRIUM』(1991年)でのダークでドゥーミーで超低速な世界観がまるで嘘のように感じられるほどに。

ここまで1曲5分前後。「Cosmic Funeral」のみ7分もありますが、トータルでも17、8分です。ということは……そうです、ラストの「The Voyage Of The Homeless Sapien」が約23分もある超大作なのです!(笑)

序盤のヘヴィでダークで超スローな展開は、まさしく彼らが『FOREST OF EQUILIBRIUM』で表現していたスタイル。これをデス声ではなくヘタウマボーカルで表現することにより、『FOREST OF EQUILIBRIUM』とはまた異なる世界観が構築されていくのです。

しかもこの曲、単なるドゥームメタルではなく、曲が進むにつれてさまざまな展開を見せていく。もはやプログレッシヴロックのそれに匹敵する世界観なのです。アナログ時代でいえば、A面でシングルカットできそうな5分程度の楽曲を数曲並べておいて、B面で組曲風の超大作を入れる。世が世なら本作こそ『THE ETHEREAL MIRROR』に続く3rdアルバムになっていたかもしれません。

しかし、そこはリー・ドリアンとギャリー・ジェニングス(G。本作ではBも担当)のこと。ここで試したことはあくまで実験の一環で、あれこれ試した結果、次作『THE CARNIVAL BIZARRE』(1995年)はよりストレートで王道のハードロック路線を選ぶわけです。

アメリカでグランジ/グルーヴメタルが流行っていた中、イギリスからはCATHEDRALみたいな突然変異的バンドが登場していた。決して主流にはなれなかった音ではなるものの、当時の時代背景を考えると当時CATHEDRALが残した作品群は非常に興味深いものがあります。ぜひ「The Voyage Of The Homeless Sapien」1曲だけでもいいんで、聴いてもらいたいものです。

ちなみに、日本盤はさらにボーナストラック(日本未発売だった以前のEP収録曲など)を追加した、全9曲・70分超の大作となっております(笑)。



▼CATHEDRAL『STATIK MAJIK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 09 20 12:00 午前 [1994年の作品, Cathedral] | 固定リンク

2017年9月19日 (火)

CORROSION OF CONFORMITY『DELIVERANCE』(1994)

ノースキャロライナ出身のハードコア/メタルバンドCORROSION OF CONFORMITY(以下、C.O.C)が1994年秋に発表した、通算4作目(メジャー移籍1作目)のスタジオアルバム。マイク・ディーン(Vo, B)脱退後に加入した専任ボーカルのカール・エイゲルが唯一参加、そしてペッパー・キーナン(Vo, G)が初参加した前作『BLIND』(1991年)から3年ぶりの新作で、本作でマイク・ディーンが復帰。ペッパーが大半の楽曲でリードボーカルを担当しています(マイクも1曲のみボーカル担当)。

全14曲中でペッパーが単独で4曲、他メンバーとの共作で8曲とソングライティング面で大活躍。これによるものが大きいのか、前作までのハードコアとスラッジを融合させたようなサウンドが、今作ではよりレイドバック気味な方向に転換しています(とはいえ、前作の時点で今作への予兆は感じられたのですが、まさかここまで大きな舵取りをするとは当時誰も想像してなかったのではないでしょうか)。

どこかBLACK SABBATHを彷彿とさせるヘヴィロックサウンドは、良く言えば先のようにレイドバックした本格派に、悪く言えばオッサン臭くなった。ただ、この方向転換が功を奏し、バンドのキャリア上もっとも成功したアルバムとなりました。同じサバスからの影響という意味では、イギリスのCATHEDRALとの共通点もないことはないですが、そこまでの(良い意味での)“コピー感”は皆無。それよりもアメリカのバンドらしい“埃っぽさ”が全面に散りばめられているところに、このバンドの個性が感じられるのではないでしょうか。

そういう意味ではサバスほどの邪悪さや陶酔感は皆無で、カラッとしたサウンドがただひたすら気持ち良い。ストーナーロック的側面で語れば、ジョシュ・ホーミがかつて在籍したKYUSS、そしてのちに結成するQUEENS OF THE STONE AGEにも通ずるものがありますが、ペッパーの歌声のせいもあって、ブラックアルバム以降のMETALLICAとの共通点も感じられます。

そういえばC.O.Cの次作『WISEBLOOD』(1997年)にジェイムズ・ヘットフィールドがゲスト参加したり、逆にペッパーがMETALLICAの作品にゲスト参加したり、しまいにはジェイソン・ニューステッド脱退後のオーディションにベーシストとして招いたりと、METALLICAの面々にはよほど気に入られていたようですね(C.O.Cから影響を受けて、『LOAD』『RELOAD』がああいう作風になった、なんて話もあるくらいですし)。

ハードコアとメタルのクロスオーバーサウンドが楽しめるという点においては、前作『BLIND』のほうが評価が高いのかもしれませんが、現在まで続くこのバンドのスタイルを確立させたという意味では、本作『DELIVERANCE』は非常に重要な1枚と言えるでしょう。個人的にも本作と次作『WISEBLOOD』はかなり気に入っている作品です。



▼CORROSION OF CONFORMITY『DELIVERANCE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / iTunes

投稿: 2017 09 19 12:00 午前 [1994年の作品, Corrosion of Conformity] | 固定リンク

2017年9月18日 (月)

PRONG『CLEANSING』(1994)

ニューヨーク出身のクロスオーバー(懐かしい響き……)/スラッシュメタルバンドPRONGが1994年初頭に発表した、通算4作目(メジャー3作目)のスタジオアルバム。前作までのマーク・ドッドソン(ANTHRAXSUICIDAL TENDENCIESMETAL CHURCHなど)から代わり、今作ではテリー・デイト(SOUNDGARDENPANTERADEFTONESなど)にプロデューサー変更。さらにベーシストが元KILLING JOKEのポール・レイヴンに替わったほか、新たにキーボーディストが加わり4人編成に。

とはいえ、スラッシュメタルを軸にしつつもどこか無機質でインダストリアル調のヘヴィサウンドは健在です。ヘヴィなリフとグルーヴィーなリズムが織り成す気持ち良さが最高なオープニング曲「Another Wordly Device」からスラッシーなファストチューン「Cut-Rate」まで、頭4曲の構成は圧巻の一言。そこからヒップホップの影響すら感じさせるミディアムテンポの「Broken Peace」、“もしBLACK SABBATHがインダストリアル調になったら”な表現がぴったりな「One Outnumbered」など、とにかく聴きどころの多い1枚です。

トミー・ヴィクター(Vo, G)のダミ声ボーカルは、PANTERAというよりもHELMETのそれに近く、スラッシュメタルのカラーを残しつつグルーヴ感を強調した作風からもHELMETと比較されることが当時は多かったように記憶しています。

しかし、こうやって今聴いてみると新加入のポール・レイヴンのカラーなのか、どこかKILLING JOKEにも通ずる点も多いんですよね。そういう意味では、最新のテイストを取り入れつつもバンドの原点へと接近していった“原点回帰にして新境地に突入した”意欲作と呼べるでしょう。本作があったから続く次作『RUDE AWAKENING』(1996年)にたどり着けたわけですしね。

PANTERAの大ブレイク以降HR/HMシーンの主流となりつつあった“モダンヘヴィネス”の流れを汲む、非常に気持ち良いノリと重さを兼ね備えた好盤にも関わらず、ここ日本ではさほど高い評価を得ることがなかった。HELMETのほうが先に成功を収めたしまったため、またメタル上がりだったことからPRONGは本国アメリカでもこれといった大成功を収められませんでした。とはいえ、本作は本国でもっとも成功したアルバムなんですよね(全米126位ながらも30万枚以上のセールスを記録)。バンドは『RUDE AWAKENING』リリース後に解散してしまいますが、2002年には早くも再結成。ここ数年は毎年のように新作をリリースしているので、興味を持った人は本作と『RUDE AWAKENING』あたりからぜひ手に取ってみてはどうでしょう。



▼PRONG『CLEANSING』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / iTunes

投稿: 2017 09 18 12:00 午前 [1994年の作品, Killing Joke, Prong] | 固定リンク

2017年5月26日 (金)

SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』(1994)

SOUNDGARDENが1994年春にリリースした通算4枚目のオリジナルアルバム。前作『BADMOTORFINGER』(1991年)が高く評価され、セールス的にもアメリカで200万枚を突破。GUNS N' ROSESやSKID ROWといったHR/HM勢とツアーをしながらも、ちょうどNIRVANA、PEARL JAMを筆頭としたシアトル勢によるグランジ・ムーブメントに突入したタイミングの作品だったこともあり(彼らもまたシアトル出身)、オールドスクールファンと新世代のファンの両方を掴むことに成功したわけです。さらにニール・ヤングあたりともツアーを回ってたし、もはや敵なし状態に突入したタイミングで制作されたのが、この『SUPERUNKNOWN』という傑作だったわけです。

不況とは裏腹にCD全盛期といえる時期の作品とあって、本作は70分超えの大作。アナログ時代だったら間違いなく2枚組アルバムとして評価されたことでしょう。そういう作品とあってか、内容も非常にバラエティに富んだもので、前作以上に音楽性の懐の深さを見せております。

例えばこれまでだったら「BLACK SABBATHやLED ZEPPELINのハードロックサイドにパンクを掛け合わせた」楽曲が中心だったところに、今作では「LED ZEPPELINがやりそうな、サイケデリックなアコースティックナンバー」あたりにも手を出しており、ストレートなロックチューンからサイケデリックバラード、変拍子の効いたハードロック、陰鬱で(ジャンルとしての)ドローンっぽいヘヴィナンバー、アコースティックサウンドを前面に打ち出した民族音楽まで本当に幅広い。作品としての成り立ちは異なりますが、きっとここで彼らは「俺たちの『PHYSICAL GRAFFITI』(LED ZEPPELINが1975年に発表した2枚組アルバム)」を作っておきたかったのかなと。そう思わずにはいられません。

前作の時点でかなりキャッチーさが強まってきてはいましたが、今作では小難しいアレンジを取り入れつつもメロディはさらにキャッチーさが強まっている。1曲目「Let Me Drown」の時点で耳に残る強いメロディが飛び込んでくるし、しかも大半の楽曲が「印象的なフレーズをリピートすることで、聴き手の耳に強くこびりつかせる」ことに成功している。また、ほとんどの楽曲が4分前後(短いもので1分半、長くても7分欠ける程度。しかも1曲だけ)と聴きやすく、曲数が多い(US版は15曲、インターナショナル版は16曲)わりにするする聴けてしまうわけです。すでに前作『SUPERUNKNOWN』の時点でその予兆は見られたわけですが、今作でその手法はさらに極まったと言えるでしょう。

その結果、本作はSOUNDGARDENの作品中唯一の全米No.1を獲得。トータルで500万枚以上ものセールスを記録したのでした。また、本作からのシングル「Black Hole Sun」もスマッシュヒットを記録(全米エアプレイチャート24位)。ミュージックビデオも多数制作されました。

いわゆるグランジ・ムーブメントの中でももっとも正統派HRの色合いが強かったSOUNDGARDEN。NIRVANAはある種パンクだったし、PEARL JAMは最初から王道アメリカンロックだった。SMASHING PUMPKINSはニューウェーブの香りをただよわせ、ALICE IN CHAINSは生粋のハードロック小僧がいろいろ拗らせて小難しい方向に顔をツッコミ出した。ドラッグとかいろんな影響もあってか、どんどん厨二っぽさを拗らせて早死にした奴もいたけど、結局一度も解散せずに生き残ったのはPEARL JAMだけ。だって普通のロックバンドだったんだもん。

そんな中、SOUNDGARDENはアンダーグラウンドなサウンドから徐々に洗練されていき、たどり着いた場所が“現代版LED ZEPPELIN”みたいな変に仙人じみたポジション。80年代後半、多くのHR/HMバンドが欲していたそのポジションを別の形で手にしてしまったわけです。とことん不思議なバンドですよね。

結局彼らは、続く『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)ですべてやりきったとして、1997年4月に解散を発表。潔いんだか、不器用なんだか。



▼SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

で、2010年に再結成してコンスタントに活動を続けていたわけですが……最初の解散から約20年後の2017年5月17日、デトロイトでのコンサートを終えたクリス・コーネル(Vo, G)がホテルで首を吊って死んでいるところを発見。まさかこんなにあっけない形で終わってしまうなんて思ってもみなかったなぁ。

実はこのテキストも、書いては消して、書いては消してを繰り返し、最終的にいつもどおりフラットな形で書くことを決め、こういう形になりました。

このアルバムがリリースされる2、3ヶ月前にSOUNDGARDENは初来日公演を実施。僕も足を運びましたが、結果としてこれが唯一の日本公演になってしまったわけです。おそらく再結成後も何度か来日に関して話し合いがあったと思われるのですが、それは叶わぬ夢で終わったわけです。

なんか一番まともそうだけど、一番ストイックそうな奴がここまで生き延びて、でも結局自分で自分の人生を終わらせてしまった。つくづくグランジってやつはタチが悪かったなぁ……こうやって、みんなが忘れた頃にまた“あっち側”に連れて行っちゃうんだから。本当にもう勘弁してほしいです。


投稿: 2017 05 26 12:00 午前 [1994年の作品, Soundgarden, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2017年5月10日 (水)

PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』(1994)

ザック・ワイルドがこの夏、オジー・オズボーンと再びタッグを組んでツアーをするそうですね。ザックがオジーバンドで本格的にギターを弾くのは2007年のアルバム『BLACK RAIN』に伴うツアー以来。ここ数年も「OZZY & FRIENDS」名義で共演する機会はあったものの、正式なギタリストとして活動をともにするのは10年ぶり。気づけば1987年にオジーと出会って、今年で30周年なんですよね。

近年はBLACK LABEL SOCIETYやソロでの活動が中心のザック。1988年にオジーの5thアルバム『NO REST FOR THE WICKED』でプロデビューしたわけですが、自身が中心となって制作されたアルバムは1994年に発表されたPRIDE & GLORY名義によるアルバム『PRIDE & GLORY』が最初でした。

このPRIDE & GLORYというバンドは、オジーの最初の引退宣言(90年代初頭)を受けてザックがジェイムズ・ロメンゾ(B)、ブライアン・ティッシー(Dr)が結成したトリオバンド。ザックはギターのほか、ボーカルも兼務しています。ザックの歌がそれなりにうまいとか、意外とオジーに似てるとかいう噂はその前から耳にしていましたが、確かにこのアルバムで聴けるザックのボーカルは「オジーの声をもっとドライにしてソウルフルさを足した」ような歌声です。ギターもあれだけうまいのに、歌も個性的かつ味があるなんて、なんて才能に恵まれた男なんでしょう。

サウンドは、ザックの才能が本格的に発揮されたオジーの6thアルバム『NO MORE TEARS』でも聴けた、“BLACK SABBATH直系のヘヴィロック+THE ALLMAN BROTHERS BANDやLYNYRD SKYNYRDなどサザンロックやブルースからの影響が強いルーズなアメリカントラディショナル”をさらに強化させたもの。オープニングの「Losin' Your Mind」なんて、イントロでいきなりバンジョーが登場しますからね。ただ、そのあとに押し寄せてくるリフの塊、のたうちまわるギターソロはザックのイメージそのまんま。続く「Horse Called War」なんて“オジー meets ジャニス”的な疾走チューンですし、その後も歌とギターを前面に打ち出したヘヴィロックやカントリーナンバー、ストリングスを取り入れたサイケデリックロックなどが続出します。

すごくカッコ良い楽曲満載なのですが、ひとつ難点が。このアルバム、非常に長い! ボーナストラックを除いても全13曲で70分。現行のリイシューバージョンなんてボーナスディスク付きの2枚組で、本編が13曲、ボーナス盤6曲で計100分ですからね……アナログだったら2枚組、下手したら3枚組になっちゃいますよ(苦笑)。

ただ、そのボーナスディスクに収録されているのが、BLACK SABBATH「The Wizzard」、LED ZEPPELIN「In My Time of Dyin'」、THE BEATLES「Come Together」とカバー三昧。カバーというよりもコピーに近い前者2曲も良いですが、ギターの替わりにピアノを弾きながら歌うブルージーな「Come Together」もなかなかの仕上がり。全部聴いたらかなりお腹いっぱいになると思われますが、ぜひこのカバーだけでも聴いてみてほしいです(嘘です、本編も最高なので、まずはそちらから聴いてみてください)。

結局PRIDE & GLORYはこのアルバム1枚でその活動に幕を下ろしてしまいますが、本作に含まれているいくつかのアコースティックナンバー(先の「Come Together」含む)がひとつのヒントとなって、1996年にソロ名義のアルバム『BOOK OF SHADOWS』を発表することになるのでした。



▼PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤2CD

投稿: 2017 05 10 12:00 午前 [1994年の作品, Black Label Society, Pride & Glory, Zakk Wylde] | 固定リンク

2017年4月11日 (火)

DEMOLITION 23.『DEMOLITION 23.』(1994)

HANOI ROCKS以来のパーマネントなバンドとなるはずだったJERUSALEM SLIMが短期間で、しかもアルバム完成を待たずして空中分解してしまったマイケル・モンロー。傷心のまま再びソロに戻るのかと思いきや、懲りずに新たなバンドを結成します。

マイケル以外のメンバーは、JERUSALEM SLIMから引き続きサミ・ヤッファ(B)、元STAR STARのジェイ・ヘニング(G)、そしてジミー・クラーク(Dr)という布陣。もともとはニューヨークのクラブで演奏していたカバーバンドがベースになっており、それがそのままDEMOLITION 23.という名前のパーマネントなバンドへと進化していきます。そして1994年6月、日本先行リリースという形で“最初で最後の”アルバム『DEMOLITION 23.』が発表されました。

JERUSALEM SLIMではかっちり作り込まれたLAメタル的サウンドが特徴でしたが、DEMOLITION 23.ではマイケルのルーツであるパンクロックに再びフォーカスを当てています。サウンドも生々しくてルーズなものばかり、楽曲も非常にシンプルでわかりやすさ重視といった印象。『NOT FAKIN' IT』にも参加していたリトル・スティーヴンスもプロデュース&曲作りに加わっていることから、『NOT FAKIN' IT』をよりラフにした作風、といえばわかりやすいかもしれませんね。

また、カバー曲も「Ain't Nothin' To Do」(DEAD BOYS)、「I Wanna Be Loved」(ジョニー・サンダース)、「Endangered Species」(UK SUBS)と、バンドとしてのコンセプトが非常にわかりやすいものばかり。さらにJERUSALEM SLIM時代に制作された「The Scum Lives On」も、DEMOLITION 23.の手にかかるとSEX PISTOLS的なカラーへと一変しています。

1本筋の通った男気溢れるアルバムだけど、“これ!”といったキメの1曲がないのもまた事実。それもあってか、全体的にB級感が漂っており、初めてこのアルバムを聴いたときは「もう表舞台に舞い戻るのは無理かも……」とちょっとだけガッカリしたものです。決して悪くはないんだけど、ベストでもない。この作風自体が、当時のマイケルの心情を表しているようで、なんとも言えない気持ちになります。

ちなみにDEMOLITION 23.にはその後、ジェイ・ヘニングに代わり元HANOI ROCKSのナスティ・スーサイドが加わるのですが、程なくして脱退。これによりバンドも短命で終わることになり、さらに傷心のマイケルは10年近く住んだニューヨークを離れ、故郷のフィンランドへ戻ることを決意するのでした。



▼DEMOLITION 23.『DEMOLITION 23.』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 04 11 12:00 午前 [1994年の作品, Demolition 23., Hanoi Rocks, Michael Monroe] | 固定リンク

2016年12月20日 (火)

AEROSMITH『BIG ONES』(1994)

Geffen Recordsから約10年で4枚のオリジナルアルバム(『DONE WITH MIRRORS』『PERMANENT VACATION』『PUMP』『GET A GRIP』)を発表し、作品ごとにセールスを上げていったAEROSMITHの、同レーベルへの(結果として)置き土産となったベストアルバム。収録曲は4枚のアルバムから……と言いたいところですが、ヒット曲に恵まれなかった『DONE WITH MIRRORS』からは未選出で、『PERMANENT VACATION』以降のヒットシングルを軸に構成されています。

改めて復活後のエアロはヒット曲作りと真剣に向き合ったんだなというのがわかる内容で、ライブでおなじみのナンバーが目白押し。70年代の代表曲で固められた『GREATEST HITS』(1980年)と比較するのは野暮ですが、あの頃にあったアクの強さは皆無といっていいでしょう。一方で、いかがわしさや危うさと引き換えに手に入れた強靭なサウンドと巧みなアレンジのすごさも、このアルバムからたっぷり感じられるのではないでしょうか。

本作には2曲の新曲(「Walk On Water」「Blind Man」)と1曲のアルバム未収録曲(「Deuces Are Wild」)も収録。新曲は『PERMANENT VACATION』『PUMP』『GET A GRIP』でおなじみのブルース・フェアバーンの手によるものではなく、新たにマイケル・ベインホーン(レッチリやSOUNDGARDENなど)を起用しているのも興味深いところ。デッド感の強いサウンドとグルーヴィーなアンサンブルのミックスが絶妙な「Walk On Water」に、「エアロのこの先」を少なからず感じたのも、今となっては懐かしい思い出です。

そういえばこのアルバム、曲順も素晴らしいと思います。特に「Eat The Rich」のゲップの後に「Angel」が続くあたりは真骨頂ではないかと。



▼AEROSMITH『BIG ONES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 20 02:00 午前 [1994年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2015年10月 4日 (日)

MEGADETH『YOUTHANASIA』(1994)

MEGADETH通算6枚目にしてムステイン、エルフソン、マーティ、ニックという黄金期布陣で制作された3作目のスタジオアルバム。

コンパクトでメロウなミディアムテンポの楽曲が中心というアルバム構成は、セールス的に大成功した前作から引き継いだもの。実際、チャート的にも前作の2位に次ぐ4位という高順位にランクインしており、グランジ全盛だった時期にしては大健闘した記憶が。しかし、アルバムとしての印象が非常に希薄で、ファンの間でも「これがベスト!」という人は少ないのでは。

とはいえ、1曲1曲の完成度は高いものが多く、ザクザクしたリフが気持ちいいオープニング「Reckoning Day」、前曲の流れを汲むグルーヴィな「Train of Consequences」、後にリメイクもされる泣きのバラード「A Tout le Monde」、初期のニヒルさが復活しつつある「Victory」などは今聴いてもいいと思う。

ただ、やはり全体的に似たり寄ったりのテンポ感&雰囲気の曲が続くことで、1枚通して聴くにはちょっと厳しいかも。久しぶりに通して聴いたけど、やっぱりキツかったというのが本音。後に迎える大きな転換期を前にした過渡期的作品。



▼MEGADETH『YOUTHANASIA』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD

投稿: 2015 10 04 12:20 午前 [1994年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2015年1月13日 (火)

祝ご成人(1994年4月〜1995年3月発売の洋楽アルバム20枚) ※改訂版

新成人の皆さん、おめでとうございます。というわけで今回は、新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1994年4月〜1995年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

あ、並びはすべてアルファベット順です。

Beastie Boys「Ill Communication」(Amazon

Blur「Parklife」(Amazon

Dinosaur Jr.「Without a Sound」(Amazon

Helmet「Betty」(Amazon

Jeff Buckley「Grace」(Amazon

Korn「Korn」(Amazon)(レビュー

Machine Head「Burn My Eyes」(Amazon)(レビュー

Madonna「Bedtime Stories」(Amazon

Manic Street Preachers「The Holy Bible」(Amazon)(レビュー

Nine Inch Nails「The Downward Spiral」(Amazon / 日本盤1994年4月発売)

Oasis「Definitely Maybe」(Amazon

Pearl Jam「Vitalogy」(Amazon)(レビュー

Pink Floyd「The Division Bell」(Amazon / 日本盤1994年4月発売)

Portishead「Dummy」(Amazon

The Prodigy「Music for the Jilted Generation」(Amazon

R.E.M.「Monster」(Amazon

Radiohead「The Bends」(Amazon)(レビュー

Slayer「Divine Intervention」(Amazon

Suede「Dog Man Star」(Amazon

Weezer「Weezer (The Blue Album)」(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。それこそThe Beatlesの「Live at the BBC」、The Rolling Stones「Voodoo Lounge」、Nirvana「MTV Unplugged in New York」、The Stone Roses「Second Coming」といったものから、Marilyn Mansonのデビュー作「Portrait of an American Family」、Sloan「Twice Removed」、Sick of It All「Scratch the Surface」、The The「Hanky Panky」、Bonston「Walk On」、TLC「CrazySexyCool」、Van Halen「Balance」、Beck「Mellow Gold」あたりまで。カート・コバーンが亡くなって20年なんですね。そう考えると20年なんてあっという間ですよ、本当に。

※1/13 17:40加筆修正
Nine Inch Nails「The Downward Spiral」という個人的に絶対に欠かせないアルバムの存在を思い出させてくれたいっしーさんに感謝。というわけで、セレクトを一部改訂しております。

投稿: 2015 01 13 12:06 午前 [1994年の作品, 1995年の作品, Beastie Boys, Blur, Dinosaur Jr., Helmet, Jeff Buckley, Korn, Machine Head, Madonna, Manic Street Preachers, Nine Inch Nails, Oasis, Pearl Jam, Pink Floyd, Portishead, Prodigy, The, R.E.M., Radiohead, Slayer, Suede, Weezer, 「20年前」] | 固定リンク

2005年8月16日 (火)

LOUDNESS『HEAVY METAL HIPPIES』(1994)

TAIJI(B)のみならず、バンド創始者のひとりである樋口宗孝(Dr)まで脱退。オリジナルメンバーは高崎晃(G)のみという、ある種のワンマン体制で制作された異色の1枚。

ボーカルはMASAKI、ドラムにMASAKIの元盟友である本間大嗣を迎え、ベース不在のままレコーディングに突入(高崎がプレイ)。90年代後半の主軸となるインドテイストはこの時点では表出しておりませんが、第3期と第4期の橋渡しにして過渡期にある内容ではないでしょうか。

LOUDNESSの名の下にリリースされてはいるものの、ヘヴィでサイケデリックなテイストの楽曲群は知らずに聴いたらLOUDNESSだと気づかないのでは? もはやHR/HMの枠を超え、ヘヴィロック/ラウドロックと呼ぶにふさわしい作風に。山場のない、ダラダラと流れていくスタイルは確実に聴く者を選ぶ内容だと思います。

きっと、90年代にE.Z.O.が続いてたらこういう路線に進んだんじゃないかな……そう思わずにはいられない、評価の難しい1枚。



▼LOUDNESS『HEAVY METAL HIPPIES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2005 08 16 03:30 午前 [1994年の作品, E・Z・O, Loudness] | 固定リンク

LOUDNESS『ONCE AND FOR ALL』(1994)

1992年に『LOUDNESS』を発表後、2度にわたる全国ツアーを実施して大成功を収めた第3期LOUDNESSですが、翌年になるとMASAKI(Vo)が脱退する・しないで揉めに揉め、痺れを切らしたTAIJI(B)がバンドを離れることに。結局MASAKIはバンドに復帰し、結果として第3期は短命で終わることになります。

そんな彼らの貴重なライブ音源が、1994年春に突如リリース。全10曲とCD主流時代にしては非常にコンパクトなものですが、そのへんからも「契約上出さねばならぬ」などのやっつけぶりが感じられます。

アルバムの大半は当然『LOUDNESS』収録曲なので、あの作品が気に入っている人なら間違いなく楽しめる1枚。ただ、このライブ盤が本当に面白いところは、MASAKIが「Crazy Doctor」や「S.D.I」といったLOUDNESSの代表曲を歌う以上に、LOUDNESSがE.Z.O.の「House Of 1,000 Pleasures」をプレイしてるという事実ではないでしょうか。歌や演奏は粗いけど、それ以上の価値はある内容だと思います。



▼LOUDNESS『ONCE AND FOR ALL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2005 08 16 03:00 午前 [1994年の作品, E・Z・O, Loudness, X JAPAN] | 固定リンク

2004年12月18日 (土)

加藤いづみ『skinny』(1994)

 加藤いづみにとって1994年っていうのは、前年('93年)に突然訪れた "好きになって、よかった" による中ブレイクを、どう持続させるか、あるいは同曲で彼女に興味を持った人をどのようにして完全にこっち側に振り向かせるか‥‥という、恐らくこれまでの彼女の音楽人生の中で一番「戦った」1年だったんじゃないでしょうか。その結果、アルバム2枚(内1枚はベスト的内容)という、これまでで一番リリースの多かった1年だったように、あれから10年経った今、思うわけですよ。

 通算4作目となるこの「skinny」というアルバム。8曲しか入っていなってことでミニアルバムと捉えることもできますが、前述の "好きになって、よかった" 以降、そしてそれよりも前にリリースされながらもオリジナルアルバムに収録されていないシングル曲が幾つかあるにも関わらず、それらを排除してまで「オール新曲」によって構築された作品集。実験的とも挑発的とも取れますが、それ以上に「従来のファンにも、"好きになって〜" 以降のファンにも、『新しい加藤いづみ』を提示したい」という意思表明のように俺は受け取ったわけ。実際、それまでの3枚と比べると何となくだけど‥‥あぁ、何か新しいことに挑戦したいというか、更にワンランク上にステップアップしたいんだな、というような聴こえ方をしたんですね。

 聴き方によってはそれまでの延長線上にある作風だろうけど、1曲1曲と取り上げると意外とこれまでとはタッチが若干違ってきているように感じられるのね。例えばアルバム冒頭の "ハッピーエンド・カフェ" と、最後を締めくくる名曲(そして先行シングルでもある)"坂道"。この2曲は特にこれまでより更に上のステージに上がりたいという意思の表れじゃないかと思える程に、作り手側の気合いがビシビシ伝わってくるんですよ。で、個人的にはそれらが上手くいっているように感じられました。というか、シングル(実は前者は "坂道" のc/w曲でもあるんですが)を最初に聴いた時点で、思わず小さくガッツポーズをしちゃったくらい。それくらい会心の一撃だったんですよ。それもあってか、この年は彼女のライヴ、結構行ったもんなぁ。「地球を救え!」の武道館ライヴもこの年でしたっけ? あれも何とかチケット取って行ったよなぁ‥‥とか。このアルバムを聴くと、いろいろ思い出すことが多いですね。

 残念ながらそういった作り手側の意思は完全に聴き手に伝わらず、このアルバムも思った以上のセールスを記録できませんでしたが、個人的には2nd「星になった涙」に匹敵するくらいの作品集です。決して派手なスタイルでもないし、癖のある歌声が人によっては苦手意識に作用するかもしれないけど、やはりこの人は俺にとって「一番大好きな女性シンガー」ですから。贔屓目を抜きにしてもね‥‥いや実際には抜きにすることなんて出来ないんですが(笑)。



▼加藤いづみ『skinny』
amazon

投稿: 2004 12 18 03:15 午前 [1994年の作品, 「10年前」, 加藤いづみ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年12月15日 (水)

電気グルーヴ『DRAGON』(1994)

 電気グルーヴを代表する1枚といっていいでしょう。これも1994年リリース。ホント、世界的に時代が動いた1年だったんですね、1994年は。

 前作「VITAMIN」でその後の「化け」の片鱗はあったものの、この「DRAGON」で一気に化けちゃいましたね。そして電気はその後「ORANGE」を経て、「A」にたどり着くんですから。全ての始まりであり、そして終着点でもある。そういう意味でも興味深い作品。それまでテクノとかに興味なくて、単純に「電気面白いよねー」と無邪気に笑ってた連中の顔を引きつらせる程の殺傷力。ド頭の “ムジナ” でまずいきなりヤラレちゃいますからね。カッコ良すぎ。海外にはエイフェックス・ツインやUNDERWORLD、ORBITALがいたけど、俺らには電気がいる!ってくらいに、これは日本が世界に誇れるテクノ作品の代表的な1枚ですよ。

 勿論どの曲も素晴らしく、インスト~歌あり~インストと、交互に配置される構成もさすがで、これまでの「歌モノ電気」を気に入っていた人も飽きさせない流れ。そしてこのアルバム、最後の最後に訪れる名曲中の名曲、"虹"。これがあることで、更にこのアルバムは名作度を高めているわけです。ホント、この曲がフロアでかかった瞬間に、未だに鳥肌立つもの。そして五島良子の声‥‥これも曲の演出に一役買っているんだよね。泣ける。泣きながら踊る。そして訪れる多幸感‥‥あれだ、もうこの曲はUNDERWORLDにおける "Born Slippy" と一緒だ。つうか我々日本人にとっての "Born Slippy"。それがこの "虹" なわけですよ。もうね、この曲1曲だけで数時間語れるし、これだけでいくらでも泣ける。俺にとってはそれくらいの名曲。

 何度も言うけど、決してこの「DRAGON」は "虹" のためだけのアルバムではないのよ。全てが素晴らしくてカッコいい。そして最後の最後に "虹" が配置されているからこそ、この作品集は我々にとって掛け替えのない1枚になった。そういうことなんですよ。



▼電気グルーヴ『DRAGON』
amazon

投稿: 2004 12 15 12:30 午後 [1994年の作品, 「10年前」, 電気グルーヴ] | 固定リンク

2004年12月 3日 (金)

奥田民生『愛のために』(1994)

 ユニコーンを最後に観たのは1993年の武道館だったかな‥‥その年の夏、富士急にて数バンドによるイベントを行い、実質それが最後のライヴになってしまったわけで、その後いきなり「解散しました」の告知があったんだよね‥‥同年秋頃かな。んで年末にベスト盤が出て。それから約1年、奥田民生は隠居しちゃうんだよね。テレビのバラエティー番組にバスフィッシングのために登場したりはしてたけど。

 この "愛のために" という曲がリリースされたのが、1994年秋。正にユニコーン解散から1年経った後のこと。当時スタートしたばかりの音楽番組「HEY! HEY! HEY!」のエンディングテーマに起用されたこともあり、またテレビ出演時のバックメンバーに先にユニコーンを脱退した川西さんの姿があったり等、いろいろと驚かされつつも、曲自体が非常にキャッチーなロックナンバーで、尚かつ「ユニコーンの奥田民生」をいい意味で引き継いでいるイメージもあったからか、いきなり100万枚近くものセールスを記録しちゃって。当然これが民生最大のヒット曲になってしまったわけですが。

 その後の彼の活動経緯は既にご存じの通り。今年でソロデビュー10周年。マニアックで渋い方向にだんだんと流れているようで、時々ポツリと "愛のために" 級のポップなメジャーナンバーを持ってくる("イージュー☆ライダー" とか "さすらい" とかね)憎い奴‥‥それが奥田民生に対する、俺の印象。ま、だからこそ信用でき、そして愛されているんだけどね。このまま変わらず(そして今以上更にマイペースで)20周年まで突っ走ってください。そして‥‥またいつか、「ソロ活動、解散!」とか言ってバンド活動なんかもやってみてください。あなたならやりかねないと思うけどな。



▼奥田民生『29』("愛のために" 収録)(amazon

投稿: 2004 12 03 12:01 午前 [1994年の作品, 「10年前」, 奥田民生] | 固定リンク

2004年12月 2日 (木)

THE YELLOW MONKEY『JAGUAR HARD PAIN』(1994)

 2004年もあと1ヶ月を切ってしまったので、1994年ネタもあと30日くらいしか扱えないわけですか‥‥そろそろ洋楽以外にも気になる作品を取り上げてみますか。

 1994年の日本の音楽シーンってどうだったか、皆さん覚えてます? コーネリアスが1stアルバムリリースしたり小沢健二が「LIFE」をリリースしたり、奥田民生が "愛のために" でソロデビューしたりMr.Childrenがアルバム「Atomic Heart」をリリースして "innocent world" でレコード大賞を獲得してしまったり。LUNA SEAが "ROSIER" で大ブレイクしてGLAYが "RAIN" でメジャーデビューして。そんな1年なんですよね。

 でこの年、個人的に印象に残ってるアルバムのひとつに、THE YELLOW MONKEYの3rdアルバム「JAGUAR HARD PAIN」というコンセプトアルバムがあるんですね。イエモン自体はデビュー時から追っていて、非常に気に入っていたバンドのひとつだったわけですが、このアルバムが俺的には決定打となりましたね。コンセプトアルバムといわれてるけど、過去2枚のアルバムよりもポップ且つコンパクトな曲が多いんですよね。歌詞は勿論初期の彼等らしい独特(文学で、エログロで、そしてロケンロー)な世界観を持った唯一無二のもので、聴き手を選ぶかもしれません。が、だからこそ俺は惹かれたんですよ。いや、惹かれたというよりも、ジェラシーを感じましたね。

 このアルバムを経て、まるで憑き物が落ちたかのようにどんどんとポップ且つメジャーになっていったイエモン。勿論その後の作品も大好きですよ。けど、この頃のツアーを思い出すと、正直今でも鳥肌立ちますね。個人的にはこの作品と「SICKS」が彼等のベストだと思ってます。



▼THE YELLOW MONKEY『JAGUAR HARD PAIN』
amazon

投稿: 2004 12 02 12:05 午前 [1994年の作品, YELLOW MONKEY, THE, 「10年前」] | 固定リンク

2004年11月12日 (金)

とみぃ洋楽100番勝負(86)

●第86回:「Spin The Black Circle」 PEARL JAM ('94)

 デビューから暫く、PEARL JAMに関しては「曲は良いけど、そこまでは‥‥」っていう感じで接していて。例えばNIRVANAが盛り上がるのは判るのね。カート・コバーンのカリスマ性や奇行とか、ロックファンが飛びつきそうな要素が沢山あるし。SOUNDGARDENもまぁ音が派手だし。ALICE IN CHAINSはビジュアル的にもしっかりしたイメージがあるし。SMASHING PUMPKINSは‥‥ああそうか、俺ってPJとスマパンの良さに気づくまでに、随分と時間を要したんだよな。

 アルバム2枚聴いてもピンとこなくて。それは「自分にとって決定的な1曲」ってのがなかったからなんだよね。"Alive" とかカッコいいと思うし、"Even Flow" なんてPV観るとオオッ!とも思うんだけど、決定力不足かな、と。

 そんな中、'94年末にリリースされた「VITALOGY」というアルバム。紙ジャケ&ブック形式のパッケージが目を惹くこのCDに手を出し、頭数曲で今までにないようなハードさ、勢い、ガムシャラさみたいなものがストレートに伝わってきて。特に "Spin The Black Circle" な。結局単純な俺は、こういうシンプルでストレートなパンクソングを待ってたのかな、と。そういうものをPJに求めること自体アレなわけですが。いやいや、初めてエディ・ヴェダーの凄さが判ったような気がしたもん。判ったような気になったもん。

 そして。このアルバムとこの曲を聴いたから、俺は翌'95年2月の武道館公演のチケットを取ったんだよな。あの武道館は忘れられない‥‥俺の生涯ベスト3ライヴに入ってるもん、あの武道館は。アーティストに深い思い入れはないのに、それだけ衝撃を受けたってことは‥‥判ってもらえるよね? ただバンドが凄かったんじゃなくて、客も凄かった‥‥全てが相乗効果で最高のモノになった。それがPJ初来日だったんだよね。

 数年前に来た時はタイミング悪くて行けなくてさ。後でかなり後悔したんだよねぇ‥‥次は必ず行く! 何があっても。



▼PEARL JAM「VITALOGY」(amazon

投稿: 2004 11 12 12:00 午前 [1994年の作品, Pearl Jam, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月11日 (木)

とみぃ洋楽100番勝負(85)

●第85回:「Sabotage」 BEASTIE BOYS ('94)

 この連載をずっと読んできた人の中で、もし自分と同世代の人がいたら「何で'80年代中盤に『あの』曲を取り上げないの?」と不思議に思う人もいるかもしれないよね。だってRUN D.M.C.やファルコが取り上げられてるのに、どうしてBEASTIE BOYSの "Fight For Your Right" がないのか、って。

 いや、勿論当時よく聴いた1曲だし、今でも凄く好きですよ。けど、あの曲は「自分の中でのBEASTIE BOYS史」にとっては単なる取っ掛かりの1曲であって、そこまで重要な曲じゃないんですよ。むしろ俺的には'90年代以降の彼等の方が好きになる要素満載なんですよね。

 前作「CHECK YOUR HEAD」辺りからおおっ!?って感じて、この「ILL COMMUNICATION」で一気に爆発した感じかな、俺内で。"Root Down" とか "Sure Shot" とかいろいろ重要な曲があるけど、ここはやはり "Sabotage" でしょう。勿論あのPV込みで。

 下手なヘヴィロックやラップメタルを聴くよりも遥かにカッコいいし。まだ日本でRAGE AGAINST THE MACHINEが評価されるようになる、3年も前のお話ですよ。元々ハードコアバンドだったBEASTIESが放った、彼等なりの'94年ロックシーンに対する答え‥‥っていうのは言い過ぎかしら。

 とにかく。未だにフロアでこの曲を聴くと血が逆流する程に興奮するし、これを聴いた後となっては "Fight For Your Right" はちょっと真面目に聴けないよなぁ‥‥とても同じアーティストがやってるとは思えない程にね。ま、あっちはあっちで、ギャグとして今でも成立してるから、それはそれでいいのかもね。ライヴでは聴きたいと思わないけど。

 幸か不幸か(?)、2005年1月の来日公演は、夏のサマソニ時とは違ってバンドスタイルでのライヴとなるようで、当然ながら "Sabotage" も期待してしまうわけですが‥‥って俺、チケット取ってないんですけどね!(行く気は満々だけど)



▼BEASTIE BOYS「ILL COMMUNICATION」(amazon

投稿: 2004 11 11 12:00 午前 [1994年の作品, Beastie Boys, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月10日 (水)

とみぃ洋楽100番勝負(84)

●第84回:「Where Did You Sleep Last Night」 NIRVANA ('94)

 ゴメン、NIRVANAから何か1曲選ぶって、俺的には非常に難しい作業なのよ。世間的には "Smells Like Teen Spirit" なんだろうけど、俺的には「非常に優れたハードロック」としてしか機能しないし、あの曲(少なくとも俺にはあれは「パンク」ではないな、と)。反則だけど、アルバム「IN UTERO」まるまる1枚を1曲としてカウントさせて欲しいくらいで(俺的には、人生の中で大切なアルバム3枚のうちの1枚だからね)。

 で、自分が一番カート・コバーンという「才能」を愛おしいな、と感じた曲を選んだなら、このカバー曲になってしまったと。

 ご存知の通り、現在までカートの、そしてNIRVANAの「公式な」形で最後のライヴ音源。もうすぐボックスセットがリリースされるから、そこにはもっと後の、死の数ヶ月前のライヴ音源が収録されているかもしれないけど、やはりこのアルバムの、このテイクに敵うものは他にはないだろな‥‥と。まだボックス聴いてないけど、そう実感するわけですよ。

 死んでしまった奴のことをとやかく言うつもりもないし、言いたくもないけど‥‥やはり生き続けてこそですよ。この歌を聴くと、いつもそう思う。そして、NIRVANAが大好きだった大切な友人のことを思い出すんだよな(彼はカートが亡くなってから4年後の同じ日に、やはり自ら命を絶ってます)‥‥彼もこの曲の、一番最後の絞り出すように歌うパートを聴くと鳥肌が立つ、って言ってたっけ。いつか一緒にNIRVANAみたいなバンドやろうぜ、とか言い合ってたけど‥‥

 曲の評価とは全く関係ないけど‥‥やはり死んでしまうのはズルい。ある意味「勝ち逃げ」であり、そしてある意味では「永遠の負け」なんだから。その人にとって、それがその時一番の選択だったのかもしれない。でも、俺は自ら命を絶つ奴は絶対に許さないし、認めない。

 死んで伝説になるなんて、糞だ。



▼NIRVANA「UNPLUGGED IN NEW YORK」(amazon

投稿: 2004 11 10 12:00 午前 [1994年の作品, Nirvana, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年10月28日 (木)

PANTERA『FAR BEYOND DRIVEN』(1994)

MOTLEY CRUEジョン・コラビ(Vo, G)を迎えて制作したアルバム『MOTLEY CRUE』とほぼ同時期にリリースされた、90年代の最新型ヘヴィメタルを奏でるPANTERAのメジャー3作目のアルバム『FAR BEYOND DRIVEN』。MOTLEY CRUEは全米初登場6位、50万枚に達するのがやっとでしたが、この『FAR BEYOND DRIVEN』は全米チャート初登場1位を記録。METALLICAのブラックアルバム以来の快挙といえる結果を打ち出しました。

けどこれ、良くも悪くも1位を獲るような内容だと思えなくてね。当時は個人的にはPANTERAのアルバムの中で一番聴く頻度が低い1枚でした。良く言えば当時のバンドの勢いがそのまんまダイレクトに表現されている。でも、悪く言えば“やりたいこと”と“やってること”の間に微妙なズレがあるように思る。

しかも、それを必要以上にハードコアに表現しすぎて、『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)で掴んだリスナーを手放すことになっていないだろうか、と聴いているだけで心配になってきたんです(余計な心配ですが)。

ハードコアに徹しようとして、無理にメロウな面をそぎ落としてるようにも感じられるし。メロディアスさはBLACK SABBATHのカバーであるラストの「Planet Caravan」で挽回する、くらいの潔さすら漂ってますしね。そういう意味では、非常にバランスの悪いアルバムに思えるですよね。

もちろん、当時これが1位を獲ったってことは、いかに彼らが求められていたかを象徴する出来事だとは思うんですが……。

で、本作発売からしばらく経って聴き返すと……意外と受け入れられる自分がいることに気づく。完成度は続く『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(1996年)のほうが数歩先に行っていると思いますが、これは1994年という(旧体制メタルが死に絶え、グランジが時代を席巻する)あの時代だからこその音とテンションだったんだなと。フィル・アンセルモ(Vo)の無軌道に吠えまくるボーカルといい、必要以上にテクニカルにダイムバッグ・ダレル(G)のプレイといい、全部その表れだったんだと。

と同時に、バンドの人間関係がどんどん噛み合わない方向に進み始めた時期の最初の作品でもあるわけで、そういった点においても先のちぐはぐさを表した1枚かもしれません。

結果的に、彼らが全米1位を獲ったのはこれが最初で最後。奇跡のアルバムだったのかな、今思えば。



▼PANTERA『FAR BEYOND DRIVEN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2004 10 28 12:20 午前 [1994年の作品, Pantera] | 固定リンク

2004年10月26日 (火)

FRANK BLACK『TEENAGER OF THE YEAR』(1994)

 今年は再結成PIXIESで我々の度肝を抜いた、フランク・ブラック。ま、PIXIESではブラック・フランシスなんだけど。正直どっちでもいいや。

 で、そんな彼が'94年にリリースしたソロ2作目「TEENAGER OF THE YEAR」。はっきり言って、名盤。ソロ1枚目が個人的にしっくり来なかったこともあり、これには思わずガッツポーズ取ったね、当時。だってタイトルからしてズルいじゃん。「TEENAGER OF THE YEAR」だよ!? それでこのジャケットだぜ‥‥ふざけるにも程がある。

 いや、嘘ですよ。正直もうPIXIESみたいなのを彼には求めてなかったし(当時はBREEDERSもいたしな、俺的には)だからこそPIXIES存続中に制作されたソロ1枚目はどうにもこうにも‥‥ね?

 いろいろ新境地と呼べる点も多く、まぁ相変わらず1分台〜3分台の曲がわんさか並んでる辺りは、さすがというか。しかもこのアルバム、全22曲、62分もの大作だからね。アナログだったら間違いなく2枚組だなこれ。更に当時の日本盤って2枚組仕様で、ディスク2として6曲入りの8センチシングルが付いてたんだよね。トータル28曲、全79分‥‥あー、CD1枚に入り切らないからか?(いや、ギリギリ入りそうだけど)マニックスですらなし得なかった偉業をフランク・ブラックが、しかもこのジャケットで実現してしまうとは‥‥しかも名盤‥‥恐れ入りました。

 さっきから改めてこのアルバムを聴き返してるんだけど、6曲目の "Speedy Marie" の中盤、ベースだけになるパートとか聴いちゃうと‥‥これがキム・ディールのゴリゴリベースだったらなぁ‥‥とか、いろいろ考えちゃうね。って当時もそんなこと考えてたよな、俺‥‥思考回路、成長無しかよ。

 カート・コバーンの死後すぐにリリースされたこのアルバム。勿論フランクはカートの死以前にこのアルバムを完成させてたし、その作品作りにカートのことが影響することはなかっただろうけど‥‥PIXIESみたいなバンドをやりたくてカートが始めたNIRVANA‥‥もしカートが生きることを選んでこの作品と出逢っていたなら‥‥また何かが変わったのかもしれないね。



▼FRANK BLACK『TEENAGER OF THE YEAR』
amazon

投稿: 2004 10 26 12:00 午後 [1994年の作品, Frank Black, Pixies, 「10年前」] | 固定リンク

2004年10月25日 (月)

RIDE『CARNIVAL OF LIGHT』(1994)

1994年6月発売の、RIDE通算3作目のオリジナルアルバム。プロデューサーを前作『GOING BLANK AGAIN』(1992年)でのアラン・モウルダーからジョン・レッキー(THE STONE ROSESRADIOHEADNEW ORDERなど)に交代した本作は、文字どおり“脱・シューゲイザー”な1枚に仕上がっています。

前作の時点ですでにその予兆はあったのですが、今作ではいわゆるギターポップ的側面をより強調し、かつ全体的にレイドバックした作風へ。いわゆるギターポップのルーツにある、60〜70年代のトラッドミュージックをベースにしたロックが展開されています。

ディストーションもフィードバックもありませんが、メロディ自体は我々が知る“あのRIDE”のまま。実は「Like A Daydream」の頃から変化していないことが伺えます。

なのに、リリース当初は「?」なアルバムだったんですよね、僕的に。リードシングル「Birdman」がどうにも退屈に思えて……いや、今聴くとその良さを理解できるし、アルバム自体もすごく良いんだけど。この頃からマーク・ガードナー(Vo, G)よりもアンディ・ベル(Vo, G)が主導権を握り始めたんでしたっけ? アルバムクレジットを見ると、前半がマーク作中心、後半がアンディ作メインなんですが、前半の“らしさ”はわかるものの、「Birdman」以降の新機軸が最初は本当に理解できなかったんです(あくまで「RIDEがやる」という上で)。

RIDEというバンドには確固たるリーダーが最初から存在していなかったところ、マークとアンディのエゴがより強く表出し始めた。それがこのアルバムから形になり始めて、次の『TARANTULA』(1996年)で空中分解してしまう結果を生み出すわけです。

RIDEというバンドが本来持つポップネスを、轟音ギターやフィードバックという“ガワ”を取っ払うことでより強靭なものへと昇華させた。そういった意味では、本作の果たした役割は非常に大きなものがあるのではないでしょうか。

けど、一番好きな曲がディストーションギターをフィーチャーしたカバー曲「How Does It Feel To Feel?」というのは、今となっては皮肉な話ですよね(苦笑)。今はそのほかの曲も同じくらい愛せていますけど。



▼RIDE『CARNIVAL OF LIGHT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2004 10 25 07:12 午前 [1994年の作品, Ride] | 固定リンク

2004年10月12日 (火)

続・10 YEARS

 '94年ビルボード年間アルバムチャートは以下の通り。

NO.1:ACE OF BASE「THE SIGN」
NO.2:MARIAH CAREY「MUSIC BOX」('93年リリース)
NO.3:SNOOP DOGGY DOG「DOGGY STYLE」
NO.4:O.S.T.「THE LION KING」
NO.5:COUNTING CROWES「AUGUST AND EVERYTHING AFTER」
NO.6:PEARL JAM「VS」('93)
NO.7:TONI BRAXTON「TONI BRAXTON」 ('93)
NO.8:JANET JACKSON「JANET」('93)
NO.9:MEAT LOAF「BAT OUT OF HELL II : BACK INTO HELL」('93)
NO.10:MICHAEL BOLTON「THE ONE THING」

 んで、シングル年間チャートは以下の通り。

No.1:ACE OF BASE / The Sign
No.2:ALL 4 ONE / I Swear
No.3:BOYZ II MEN / I'll Make Love To You
No.4:CELINE DION / The Power Of Love
No.5:MARIAH CAREY / Hero
No.6:LISA LOBE & NINE STORIES / Stay
No.7:TONI BRAXTON / Breathe Again
No.8:BRYAN ADAMS, ROD STEWART, STING / All For Love
No.9:ACE OF BASE / All That She Wants
No.10:ACE OF BASE / Don't Turn Around

 文字通り、'94年のアメリカはACE OF BASEの年だったと。グランジもパンクもブッチぎっての1位ですからねぇ。そんな時代だったのか‥‥

投稿: 2004 10 12 02:04 午前 [1994年の作品, 「10年前」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

10 YEARS 〜1994〜

 ラジオの特集用ネタで、10年前‥‥1994年を代表するようなアルバムを調べてるんですが、主立ったところは以下のような感じでよろしいですかね?

・ALICE IN CHAINS「JAR OF FLIES」
・BEASTIE BOYS「ILL COMMUNICATION」
・BECK「MELLOW GOLD」
・BLUR「PARKLIFE」
・GREEN DAY「DOOKIE」
・JIMMY PAGE & ROBERT PLANT「NO QUARTER」
・MANIC STREET PREACHERS「THE HOLY BIBLE」
・NINE INCH NAILS「THE DOWNWARD SPIRAL」
・NIRVANA「MTV UNPLUGGED」
・OASIS「DEFINITELY MAYBE」
・THE OFFSPRING「SMASH」
・PANTERA「FAR BEYOND DRIVEN」
・PEARL JAM「VITALOGY」
・PINK FLOYD「THE DIVISION BELL」
・PRIMAL SCREAM「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」
・R.E.M.「MONSTER」
・ROLLING STONES「VOODOO LOUNGE」
・SOUNDGARDEN「SUPERUNKNOWN」
・THE STONE ROSES「SECOND COMING」
・STONE TEMPLE PILOTS「PURPLE」
・UNDERWORLD「DOBNOBASEWITHMYHEADMAN」
・WEEZER「WEEZER」

 以上。自分が普段聴く範疇内に限って選んでみたんですが、他にも「あれが抜けてるじゃん!」「オイオイ、あれ忘れてるよ!」ってのがあったら、ドンドン教えてください。

 勿論、全部が全部ラジオでかけられるわけじゃないですが(あまりの多さだったら、複数回に分けて‥‥例えばUS編/UK編みたいに‥‥放送したいと思います)自分の記憶が抜けてる部分、当時自分が通ってない方面等、教えていただけると幸いです。

 ちなみに1994年の主立った出来事というと‥‥

・カート・コバーン自殺
・ウッドストック'94開催
・ブリットポップ勃発
・USパンク大ブレイク
・映画「フォレスト・ガンプ」大ヒット

 ちなみにさっきからずっと、「WOODSTOCK '94」ライヴ盤聴いてます。COLLECTIVE SOULとかCANDLEBOXもこの年か‥‥

(追記)
 mixiの方で貰った情報で、以下のアルバムも1994年製とのこと。

・DINOSAUR JR「WITHOUT A SOUND」
・JIESUS LIZARD「DOWN」
・HELMET「BETTY」
・PAVEMENT「CROOKED RAIN」
・VELVET CRUSH「TEENAGE SYMPHONIS TO GOD」
・HOLE「LIVE THROUGH THIS」
・G.LOVE & SPECIAL SOUCE「G LOVE & SPECIAL SOUCE」
・JON SPENCER BLUES EXPLOSION「ORANGE」
・SHED SEVEN「CHANGE GIVER」
・RADIOHEAD「MY IRON LUNG」EP
・PRODIGY「MUSIC FOR THE JILTED GENERATION」

 そして同年に行われたロラパルーザ'94出演者は以下の通り。

■Main Stage:
・Smashing Pumpkins
・Beastie Boys
・Green Day
・A Tribe Called Quest
・The Breeders
・L7
・Nick Cave and the Bad Seeds
・Boredoms

■Side Stage:
・Stereolab
・Charlie Hunter Trio
・Shonen Knife
・Lambchop
・Guided By Voices
・The Flaming Lips
・Verve
・Boo Radleys
・Cypress Hill
・Black Crowes

投稿: 2004 10 12 01:20 午前 [1994年の作品, 「10年前」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003年11月26日 (水)

PEARL JAM『VITALOGY』(1994)

ひと月振りにシリーズ再開。今回から暫く「シアトル/グランジ・シーン」を中心にお送りしていこうかと思います。まず手始めに、現在も変わらず活躍し続けているメジャーバンドのひとつ、PEARL JAMが'94年末にリリースした通算3作目のオリジナルアルバム「VITALOGY」を紹介しましょう。

PEARL JAMがグランジ以前のシアトル・シーンの中でカルト的な人気を得ていたバンド、GREEN RIVERとMOTHER LOVE BONEのメンバーによって結成されたバンドだということはご存じでしょうか? いや、もはやそんなことは問題ではないですよね。そんなふたつのバンドのメンバーが合体し、更にエディ・ヴェダーという新たなる「カリスマ」を手に入れた、それがPEARL JAMでした。

デビューは'91年秋。NIRVANAの「NEVERMIND」とほぼ同時期にリリースされた「TEN」でシーンに登場するわけです(そういえばこの2枚、日本盤が出る前に一緒に輸入盤で買ったんだっけ)。が、当初はあまり話題にはなりませんでした。

しかし、NIRVANAのブレイク('91年末以降)によって、同じようなシアトル出身のバンド達が全面的にメディアに取り上げられるようになり‥‥そう、所謂「第二のNIRVANA」を探せ的な青田買い状態だったわけです‥‥運良く'92年春に発表したPEARL JAMのセカンドシングル "Even Flow" のPVがMTVでヘヴィローテーションとなり、ここから彼等の人気に火がついたわけです。実際このPVはライヴ映像なんですが、彼等の魅力を余すところなく収めた非常に素晴らしいPVだったと記憶してます。

その後の彼等の大躍進は説明するまでもないでしょう。「TEN」が1,000万枚に迫る勢いで売れ続け、'93年10月にはセカンドアルバム「VS」をリリース(そもそもこのアルバム、最初は無題でリリースされたんですよね。セカンドプレスからこのタイトルが付いたわけで)、PVの制作やシングルカット、雑誌メディアへの露出を一切止めたのもこの頃から。まぁあれだけ大ブレイクしてカリスマだの書かれたり、あることないこと噂を書かれ‥‥そりゃ嫌気も刺しますよね。NIRVANAとの比較、メディアがでっち上げた確執等、ホントいろいろあったわけですよ。

しかし、この後ひとつの時代が終わるわけです。そう、'94年4月。カート・コバーンの自殺ですね。これはライバルであり友人でもあったPEARL JAMのメンバーにも衝撃を与えます。勿論エディにも‥‥

所謂「グランジ終焉の幕引き」を始めたのがカートだったとするなら、その最後のトドメを刺したのがPEARL JAMのこの「VITALOGY」というアルバムだったように、今となってはそう思えますね。

このアルバムは前2作とは若干作風が異なります。ダイナミックなハードロックチューンとムーディーで穏やかなトーンの楽曲によって構成されていたファースト、その流れを組みつつもより荒々しくなっていったセカンドの後、彼等はこの「VITALOGY」で一気に爆発してしまいます。それは「グランジの象徴」と呼ばれたカートに対する哀悼であり、そのグランジそのものに対する怒りや憤りであり、更には『PEARL JAM』というバンドに対して貼られてしまったレッテルを焼き尽くすこと‥‥だったのではないかな、と思うわけです。

バンドとして新たな岐路に立たされていたのも事実ですし、そういったネガな要因が彼等の作品づくりに影響したのもまた事実でしょう。しかし、それにしてはこのアルバムはいびつ過ぎはしないでしょうか?

頭2曲の勢いと攻めと叫び。1曲目のタイトルが "Last Exit" というのも何かそれらしいし、続く2曲目はもはやパンク以外の何ものでもない "Spin The Black Circle"、しかもこれがアルバムから最初のシングルとして選ばれた事実。3曲目では聴き手に "Not For You"(「この曲はおまえらの為のもんじゃないよ」)と高らかに宣言し、まるでU2をオルタナ化してしまったかのような "Tremor Christ"、前作までの流れを組むムーディーな "Nothingman"、再び熱く滾る血を見せつける "Whipping"。ここまでが所謂「第一章」。極端に攻撃的ながらも、ここまでのサウンドはまだPEARL JAMとして考えて納得のいくものなんですね。

ところが‥‥7曲目以降の「第二章」、このアルバムはここからが「その後のPEARL JAM」を示唆するような内容になっているんですね。インタールード的な "Pry, To" に続き従来の路線を更にディープにしたかのような "Corduroy"、それまでのPEARL JAMとかなりかけ離れた前衛的なアコースティックナンバー "Bugs"、これまでになかったような色合いを持つ "Satan's Bed" の後にこのアルバムのハイライトとなる "Better Man" に到達します。その後、ムーディー且つグルーヴィーな "Aye Davanita"、アルバムの閉めに相応しい名曲 "Immortality" ときて、最後に8分近くもあるサウンドコラージュ的インスト "Hey Foxymophandlemama, That's Me" で混沌を極め終了します。「第一章」での判り易さに比べ、「第二章」ではまるでメインストリームにいることに対して窮屈さを感じてるかのような作風で聴き手を翻弄するのです。

そう、元々は(メジャーのソニーからアルバムをリリースしていたとはいえ)シアトルのオルタナティヴシーンの中のひとつであったPEARL JAMが、チャート上での大成功を収め、気づけば自身がメインストリームの代表格と呼ばれるようなバンドに変わっていたわけですよ。そうした「自身が気づかないうちに起こった」変化に対する、周りからの批判や酷評。そしてそんなバンドを支えてくれるファン。そういったことに対する答えがこの「VITALOGY」だったのではないでしょうか?

このバンドは非常に器用で才能に溢れたミュージシャンの集まりだなと個人的には思ってます。だからメジャーに耐えうる作品作りも難なくできるし、同時に非常にマニアックで前衛的と呼べるような作風に持っていくこともできる。そう、だからこそ彼等は非難さることが多かったのかもしれませんね。

その後の彼等がこの「VITALOGY」での「第二章」で見せたような作風を押し進めていったのは承知の通り。初期のハードロック的作風が好みの人には、このアルバム以降の作品が正直厳しいというのも頷ける話です。しかし、何度も言うようにこのバンドの真骨頂は「VITALOGY」以降なのですよ。このアルバムでグランジという見えないムーブメントにトドメを刺したからこそ、このバンドはその後もアメリカで根強い人気を持ち、現在に至るのかもしれません。と同時に、だからこそここ日本では彼等はウケが悪いのかもしれません‥‥いや、それは違うか。

このアルバムを引っ提げて'95年2月、彼等は初めて日本で演奏する機会を得ます。今や伝説となっている武道館公演、俺が生涯観たライヴの中でも間違いなく3本指に入る衝撃的なライヴだったことをここに記しておきます。このアルバムに伴うツアーだったからこそ、衝撃度が増したのかもしれませんね。



▼PEARL JAM『VITALOGY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 11 26 03:20 午後 [1994年の作品, Pearl Jam] | 固定リンク

2003年10月31日 (金)

MOTLEY CRUE『MOTLEY CRUE』(1994)

'80年代中盤から'90年代初頭にかけて、HM/HRシーンのみならず一般のロックシーンにおいてもその名を知らしめたMOTLEY CRUE。彼等がいなかったらその後GUNS N'ROSESも、あるいはALICE IN CHAINSすら登場していなかったかもしれない‥‥なんていうのは大袈裟でしょうか? とにかく、'80年代後半から'91年頃の彼等は今考えてみてももの凄い破滅的で、それでいて魅力的なバンドだったなぁと思うわけです。多分、今こんなバンドがいたら間違いなく1ヶ月で解散してるんじゃないか‥‥そう思える程にね。そりゃ'70年代のLED ZEPPELINとかAEROSMITHの方が凄かったのかもしれない。けどリアルタイムで通過した'80年代~'90年代前半において、そのライフスタイルでMOTLEY CRUEとGUNS N'ROSESを超えるようなバンドはそれこそNIRVANAくらいだったんじゃないか‥‥なんて思うわけです。

今回紹介する、自らのバンド名をタイトルにしたアルバムは、'94年春にリリースされた通算6枚目のオリジナルアルバム。前作「DR.FEELGOOD」('89年)が爆発的な大ヒットを記録し(アメリカだけで当時400万枚以上ものセールスを記録)、1年以上に渡る長期ツアーが繰り広げられ、バンドはそのまま長期休暇に入るかと思いきや、'91年にはヨーロッパでの夏フェスに出演、そして同年秋にはデビュー10周年を記念するコンピレーション盤「DECADE OF DECADENCE」を発表。その年の後半から再びバンドはオリジナルアルバムの為の製作期間に突入‥‥と当時報道されていました。

しかし、歴史的事件が起こります。'92年2月。その知らせを俺は滞在先のドイツのホテルでMTVを観てる時に聞かされます。そう、ボーカルのヴィンス・ニール脱退。当時の拙いヒアリング力で頑張ってニュースに耳を傾けると、どうやら解雇されたような感じ‥‥そう、ヴィンスは解雇に近い形で脱退となったのです。

その当時の衝撃といったら‥‥以前、どこかにも書いたと思うけど‥‥俺の10代の頃のヒーローだったわけですよ、MOTLEY CRUEは。そのバンドからシンガーが脱退する‥‥リーダーでありベーシストでもあるニッキー・シックスは以前から「もしこの4人の中の、誰かひとりでも抜けるような事があったら、その時はバンドの解散を意味する」と名言していました。つまり、ヴィンスの脱退、イコール、俺にとっては「MOTLEY CRUEの終焉」を意味するわけですよ。何でよりによって海外でこんな知らせを聞かなきゃならないのさ‥‥その後帰国するまでの道中、俺がどんな気持ちでいたか‥‥想像つくかい?

バンドはその後、SCREAMというバンドのシンガー、ジョン・コラビを迎えてアルバム制作開始、結局ヴィンス解雇からまる2年後、「DR.FEELGOOD」から4年半後にリリースされたのがこのアルバムだったわけです。

以上がこのアルバムをリリースするまでの時代背景。ま、要するにこのアルバムはMOTLEY CRUEであってMOTLEY CRUEではない、ってことですか、ニッキーの言葉を額面通りに受け取るなら。事実、彼は一時期本気でバンド名を変えることを考えていたみたいですしね(それを阻止したのが誰だったのか、レコード会社か、スタッフか、それともニッキー本人か)。

で、ここからが俺の感想‥‥ボーカルが変わると、やってることが以前と同じでも全く違って聞こえちゃうんだよね、不思議と。そりゃまぁバンドの顔であるシンガー‥‥しかも10年以上バンドを支えたオリジナル・シンガーが抜けたわけですから、印象も変わるし、何よりもそれまでバンドを応援してきたファンは馴染めないと思うんですよ。「MOTLEY CRUE=ヴィンスの声」だったわけですから。そしてヴィンスを蔑ろにしていた一部のファンも改めて彼の個性なり偉大さなりをハッキリと認識したわけです。

でもね‥‥言いますよ、ハッキリと。あのね、この「MOTLEY CRUE」ってアルバムが俺は大好きであって、俺内では「MOTLEY CRUEの作品の中でも最高傑作」だと信じて疑わないわけですよ。コアなファンからすれば絶対に否定されるだろうけど、敢えて声を大にして言いたかったわけですよ、ずっと前から。ぶっちゃけ、このサイトが立ち上がった頃からいつ言おうか、いつ取り上げようかと様子を伺ってたんですが、気づいたら取り上げるの忘れちゃっててね。サイト立ち上げ5周年を前にやった言えたわけですよ。

音楽的には前作の延長線上にある作風だと思うんですが、同じオーバープロデュースでも「DR.FEELGOOD」がアニメ的な過剰さだとしたら、こっちはヤクザ映画的な過剰さなんですね。「DR.FEELGOOD」は確実にエンターテイメントの世界の中のヘヴィロックだったんだけど、このアルバムではそういったカラフルさエンターテイメント性が薄れ、もっと現実的且つモノトーンの世界観を構築してるわけですよ。うーんとね、KISSとPINK FLOYDくらい違う、みたいな。そう、違うんだけど、その根本にあるものは実は一緒なんだよね‥‥だってMOTLEY CRUEなんだもん、あくまで(ま、KISSとPINK FLOYDはあんまり繋がらないとは思いますけどね)。

楽曲自体はヴィンス在籍時から制作されていたものが殆どなわけで、そういった意味ではここに収められた楽曲をヴィンスが歌ったとしても絶対に違和感は生じないわけですよ。けど、より似合っているという意味では、ヴィンスよりもジョン・コラビの方が最適だった、と。このアルバムが俺内で名作になれたのは、間違いなくジョン・コラビが歌っていたから。そのポイントは大きいんですよ。

METALLICAのブラック・アルバムを聴いて、同じ製作陣で作ったのに何故にこんなにも違うんだ!?と強烈なジェラシーを感じたというニッキー。このアルバムの過剰さは、そういった彼の想いが見事に形になっているし、尚かつ彼が少年時代に愛したロック‥‥特にPINK FLOYDやLED ZEPPELINの諸作のようにプログレッシヴでヘヴィ、いろんなサウンドを詰め込んだ正しく「Wall of Sound」。出だしの3曲‥‥ "Power To The Music"、"Uncle Jack"、"Hooligan's Holiday" の並びは圧巻。こんなにも重い空気を持ったMOTLEY CRUE、過去初めてでしょうね。

そして明らかにレニー・クラヴィッツ移行の流れにあるサイケな大作 "Misunderstood"、ZEPのトラッドソング的な "Loveshine"、最も過去の流れにあるパーティーチューン "Poison Apples"、SOUNDGARDENみたいなグルーヴ感を持つ "Hammered"、元々このアルバムのタイトル候補だった "'Til Death Do Us Part"、代表曲 "Dr.Feelgood" の流れを組む "Welcome To The Numb"、アルバム中最も速い "Kickstart My Heart" 的な "Smoke The Sky"、ヘヴィなグルーヴィーチューン "Droppin Like Flies"、ラストを飾るMOTLEYらしいバラード "Driftaway" ‥‥全12曲(ボーナストラックは除く)でほぼ60分というトータルランニングは彼等のオリジナルアルバムでは過去最長。それまで「アルバムは40分程度が丁度いい」みたいなことを言ってたバンドがですよ!? そうえいばこのアルバムに対して「アナログだったら2枚組になるような作品集」というコメントをしてたな、ニッキー。PINK FLOYDの「THE WALL」とかZEPの「PHYSICAL GRAFFITI」みたいな作品集にしたかったんだろうな、きっと‥‥

そんなボリューム感があってヘヴィで聴き応えのあるアルバムなんだけど、やはり大ヒットはしなかったのね。ビルボードでは初登場こそトップ10入りしたものの、10週もしない内に100位圏外落ち、50万枚にやっと届く程度のセールス。前作の8分の1‥‥ま、時代がグランジだとかPANTERA的なヘヴィ路線に移行していたってのも大きく影響してるんだろうけど。

そうそう、このアルバムってやっぱりPANTERAやMETALLICAといった「後続」達からの影響が大きいですよね。それまでは自分達が先頭に立って時代をリードしていたのに、気づいたらフォロワーに成り下がってしまった‥‥4年半は本当に大きかったんだなぁと改めて実感しましたね、うん。けど、オリジネーターだろうがフォロワーだろうが、このアルバムが良く出来たヘヴィロックアルバムなのには違いない。今、LINKIN PARKとか聴いてるような若い子達にはちょっと違って聞こえるかもしれないけど、これも紛れもないヘヴィロックですよ。



▼MOTLEY CRUE『MOTLEY CRUE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 10 31 05:27 午前 [1994年の作品, Motley Crue] | 固定リンク

2003年10月28日 (火)

ENUFF Z'NUFF『1985』(1994)

ENUFF Z'NUFFが1994年にリリースした企画アルバム。正式なオリジナル・アルバムではなく、これは1985年頃に録音されたデモ音源を編集して1枚にまとめたもの。メジャーデビューが1989年だから、それよりも4年も前ってことになるんだけど、これがかなり面白い音源集でして。

メジャーデビュー後の彼等は時代のせいか(80年代中~後半、アメリカではハードロックがブームだった)かなり硬質でビッグプロダクションなアルバムを連発してきたけど、ここで聴ける音源は、まぁインディーズ紛いのデモ音源ということもあってかなりチープなんだけど、楽曲の構成がまず違うのね。

メロディの潤いや根本的な部分は既にこの時点で完成されてるといっていいんだけど、何せ曲調がハードロックというよりもパワーポップ色の方が強いというか。確かに現在にも通ずるハードな面もあるし、いかにもアメリカ人的な大袈裟な面も同時に存在するんだけど、ここではもっとルーツに忠実というか。例えば彼等がインディーズシーンでのブレイクの切っ掛けとなった「Catholic Girls」なんて曲調とかドニー・ヴィの歌声がまんまエルヴィス・コステロなのね。他にもコステロを彷彿させる楽曲はいくつもあるんだけど、他にもCHEAP TRICKだったり、それこそビートルズだったり。そういったルーツを臆面もなくひけらかしてるのがこのアルバム。実はこのアルバムが好き、っていうズナフ・ファンって結構いるんじゃない?

メンバーはさすがにリリース当時のメンツとは違い、ドニーとベースのチップ・ズナフは基本メンバーだからいいとして、ギターには90年代中盤の彼等を支えた旧友・ジーノ・マルティノが、ドラムにはB・W・ボウスキーという人が参加してます。ま、ジーノに関しては「おいおい、こういう曲でそんなに弾きまくらなくても……」とちょっと困ってしまう面もあるにはあるんですが、まぁそれも時代ってことで、ええ。基本的にはギターもそんなに歪んでないし(メジャー3作と比べてね)もっと温かみがある音がするんですよね。ドラムの音色も前作までにあった人工色は全くないし。ま、プロデュースらしいプロデュースがされてないってのも大きな要因なんでしょうけど。けどミックスに関しては一応一流所のクリス・シェパードが担当してるんですよね。だからちゃんと聴けるものに仕上がってるってのもあるんでしょうね。

アルバムはいきなりSMOKEY ROBINSON & THE MIRACLESの70年のナンバー1ヒット曲、「Tears Of A Clown」で始まるんですが、このへんの遊び心もまた憎い。ギターソロを除いてですけどね(相変わらず弾き過ぎ)。余韻を引きずったまま名曲「Catholic Girls」へと流れていくんですが、これが自然な感じでまたいいんですわ。

コステロっぽい「Day By Day」、絶対にジョン・レノンを意識してるであろうピアノバラード「No Second Time」ときて、イントロの泣きメロが印象深い「Hollywood Squares」(どう聴いてもコステロ!)、ちょっとCHEAP TRICK的かな?と思えなくもないポップロック「Fingers On It」、BON JOVIあたりの哀メロ・ハードロックを彷彿させる美メロ・マイナーチューン「Aroused」、これぞアメリカン!なハード・シャッフル「Marie」、典型的なアメリカンロック「I'll B The 1 2 Luv U」、アルバム中最もヘヴィな側面を持つメロディアスロック「Goodbye, Goodbye」で終わるかと思わせて、シークレットトラックとなるアコースティックナンバー「You Got A Hold Of Me」で終了。約40分というトータルランニングも丁度いいし、とにかくメジャー3部作と違って気楽に聴けるのがいいですね。

ここにはドラッグによるドンヨリとした重い空気もないし、サイケな色合いもないし、意図したヘヴィさもない。凄く自然体なんですね。自然体だからこそ、若気の至りでギターソロ弾きまくったり、聴いてて恥ずかしくなるような「まんま」な引用も登場する。けどそれは決して悪いことだと思わないし、むしろその後の「完成された」ズナフを考えると「これがあったから今があるんだな」と素直に思えるんですね。そういった意味で非常に重要な1枚ですし、むしろファーストから聴くよりもこのアルバムを最初に聴いた方がいいんじゃないか、って思える程。ま、これから聴いちゃうと、その後のハードロック路線がちょっと歯がゆく感じるかもしれませんが。

そうそう。丁度このアルバムの頃(1994年)ってアメリカでもレコード契約がなくて、日本でアルバムを3枚(『1985』含む)リリースしてるんですよ。アルバムジャケットだけでなくリリースした時期とか順番も若干変わってくるんですね。一応今回はUSでのリリース順を参考にレビューで取り上げる順番を決めてます。ま、読む方としてはあまり関係ない話かと思いますが。



▼ENUFF Z'NUFF『1985』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 10 28 06:46 午後 [1994年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2003年7月 5日 (土)

加藤いづみ『IZUMI -SINGLES & MORE-』(1994)

  このサイトを始めた頃、まさかこの人をこういう形で取り上げることが出来るようになるとは思ってもみませんでした‥‥「ロック」っていう広いようで狭い括りが足枷になって、こういう良質なポップスを取り上げる機会を自ら失っていたわけですから。けど、昨年末辺りから、そういった枠に囚われることなく、自分が好きな音楽をバンバン紹介するようになり、そうした矢先にこの人の久し振りのアルバム・リリースの吉報が飛び込んできたわけです‥‥そう、今回は加藤いづみが'94年10月にリリースしたコンピレーションアルバム「IZUMI -SINGLES & MORE-」を取り上げたいと思います。

  このアルバムは、'91年にデビューした彼女が約3年の間にリリースした4枚のアルバムと9枚のシングルの中からシングル曲を中心に(当時の彼女は、オリジナルアルバム未収録のシングルナンバーというのが結構あったんですね)、そのC/W曲、更には未発表バージョンや完全未発表曲まで収めた、「ファンへのクリスマスプレゼント」となったわけです。このアルバムがリリースされる数ヶ月前に、加藤いづみ最大のヒット曲となった"好きになって、よかった"での中ブレイク(オリコン・トップ20入り)があり、そういった初心者への入門編としての役割も十分果たしているわけです(ま、そっちの方が本来の目的なんでしょうね)。

  シングル曲は7曲‥‥当時の代表曲といえる"好きになって、よかった"や"髪を切ってしまおう"の他、"美しすぎて"(かのガロのカバー)や"この街が好きだよ"、"さよならが言えない"といったシングル・オンリーの曲や、"どれだけあなたのことを"(アルバム「skinny」からリカットされた時のシングル・ミックスで収録)、デビュー曲"Zero"といった辺りまで収められています。残念なのは、個人的には彼女の楽曲で三本指に入るくらい大好きな "坂道" がオミットされたことでしょうか‥‥いい曲なのに、残念。

  また、シングルのカップリング曲だった"シスタームーン"と"彼がやって来る"もアルバムには今回初収録。共に彼女らしさ満点のいい曲なので、これから加藤いづみを聴こうという人にはいい取っ掛かりになるんじゃないですかね。

  けど、ここまでの音源なら、俺みたいな濃いファンなら全て持ってる音源なわけですよ。で、そういう人の為の「スペシャル」な音源が3曲‥‥"星になった涙"の別バージョン、"ナチュラル・ガール"のライヴテイク(共にオリジナルバージョンはセカンドアルバム「星になった涙」に収録)、更にここでしか聴けない完全未発表曲"あぁ、雪は降る -Merry X'mas '94-"といった曲も収められてるわけです。ま、これがアルバムタイトルでいうところの「& MORE」なわけですね。"星になった涙"はオリジナルバージョンにはなかった歌詞とメロディが追加されていて、普通に独立したひとつの楽曲として成立しています。"ナチュラル・ガール"のライヴテイクは、スタジオテイクとは違ったアレンジになっていて、彼女のライヴがどんな感じなのかが何となく伺える貴重な音源になっているのではないでしょうか。そして"あぁ、雪は降る -Merry X'mas '94-"は、まぁクリスマスソングですよね。彼女らしいスローバラードに仕上がってます。まぁオマケといった感じですよね、季節限定モノですし。

  正直なところ、今のJ-POPモノを中心に聴いてる人達に彼女の歌がどう響くのか、全然想像がつかないのですが‥‥だってここに収められた殆どの楽曲、加藤いづみ本人が書いたものじゃなくて、プロデューサーでもある高橋研が書いたものですからね。女性が歌詞を読んで、どこまで入り込めるのか‥‥ま、そういう意味ではモーニング娘。におけるつんく♂みたいなもんなんでしょうか?(男性が書いた歌詞を歌う、といった観点での話)

  その後、彼女はレコード会社移籍の際に何枚かベスト盤をリリースしてますが、個人的に一番しっくり来るのが、実はこれなんですよね。ベスト盤としても機能してるし、普通にオリジナルアルバムとしても聴けないことはないし。そうそう、ガールポップなんて言葉がよく使われるようになったのも、彼女がブレイクした頃でしたね。今現在もそういった女性シンガーもののポップスが好きな人で、まだ加藤いづみを聴いたことのないという人がいたら、是非このアルバムを聴いてみてください。中古盤屋で安く手にすることが出来ると思うんで。



▼加藤いづみ『IZUMI -SINGLES & MORE-』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 07 05 12:00 午前 [1994年の作品, 加藤いづみ] | 固定リンク

2003年7月 3日 (木)

桑田佳祐『孤独の太陽』(1994)

  先月、サザンオールスターズがデビュー25周年を記念して、そのデビュー日と全く同じ日にデビュー曲「勝手にシンドバッド」をスペシャルエディションで再発したわけですが、これが何と1位を取ってしまうという快挙を果たしまして。「何やってんのよ、現役の若手達!」って気持ちもなきにしもあらず、まぁ結局は「限定盤」って言葉に弱い日本人のこと、買っちゃったんでしょうね。ベスト盤やら何やらに絶対に入ってるから、サザン聴くような人なら必ず持ってる曲なのにね。

  んで、そういうこともあってか、たまたま古い友人とメールにて「一番好きなサザンのアルバムって何よ?」って話題になりまして。「好きな曲」ってことになるとまぁいろいろあると思うんですが、ことサザンのオリジナルアルバムになると、全然想像がつかないんですよね、他人の選びそうなのが。んで実際、自分が選んだのって、「KAMAKURA」か「SOUTHERN ALL STARS」のどっちかってことで、結局最後まで1枚には絞れませんでした(ちなみに友人は「人気者でいこう」を選びました)。それぞれに思い入れがあるアルバムだけに、しかも共に初めて買ったサザンのLP(アナログレコード)とCDなんですよね。だから余計に思い入れあるんですよ。

  で、逆に今度は「だったら桑田佳祐のソロだとどれ選ぶ?」ってこっちから質問し返したんですよ。そしたら面白いことに、こっちはふたりして意見が一致したんですよ。それが今回取り上げる「孤独の太陽」なんですけどね。

  このアルバムは'93年の桑田ソロ活動再開後の集大成として'94年9月にリリースされた、ソロアルバムとしては2作目のオリジナルアルバムになります。'93年秋にシングル"真夜中のダンディ"を発表後、少し間が空いて翌年夏にシングル"月"を発表後、このアルバムを発表したわけです。とにかくこの時期の桑田は活発で、アルバムを出した後にもシングル"祭りのあと"(このアルバムには未収録)を、翌'95年初頭には当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったMr.Childrenと共にチャリティーシングル"奇跡の地球(ほし)"をリリースしたりしています。

  '80年代にリリースしたファーストソロ「KEISUKE KUWATA」は、ポップ職人としての桑田を見事に表現した素晴らしい内容でした。勿論、俺も当時よく聴きました。しかし、ポップを追求するという意味では彼にはサザンもあるわけで、この時のソロというのは今思うと「純粋なソロ」という気がしないんですよね。単純にサザンが上手く軌道しなかったからやってみた、といった感じ。実際の理由はちょっとど忘れしちゃったけど(原坊の育児休暇だったっけ? それはKUWATA BANDの時か?)。

  けど、このセカンドソロに関しては、そういう「ポップ職人」としての色よりも、もっとドス黒い‥‥非常に内向的で、個を感じさせる内容になってると思うんですね。例えば使われる楽器にしても、ギター1本とハーモニカのみだったり、打ち込みを使用しつつもどこかバンドサウンドを意識させるものだったり、音色もカラフルというよりはモノトーンといった印象を受けるし。勝手な思い込みかもしれませんが、ここで聴ける楽曲は過去のどの楽曲・アルバムよりも「桑田佳祐自身」をさらけ出したものになってるんじゃないでしょうか。勿論そこは桑田のこと、自身をさらけ出しながらもどこかフィクションぽさを感じさせる色もしっかり見られる。単なるオナニーにならず、「音楽作品」として成立させるためのアレンジがしっかり成されています。

  '89年から'92年にかけてのサザンの活動は、とにかく凄まじいものがありました。アルバムは3枚(「SOUTHERN ALL STARS」、「稲村ジェーン」、「世に万葉の花が咲くなり」)も制作し、ツアーもやり、しかも桑田は映画まで制作。ポップアーティストとしてここまでやれば文句ないだろ、と周りを威嚇せんばかりの働き振り。そして「ここまでやったんだから、次は好き勝手にやらせてもらう」と言わんばかりの内容になった「孤独の太陽」。頭2曲("漫画ドリーム"と"しゃアない節")がモロにボブ・ディランしてたり、言葉もなくなる程に素晴らしい"月"、ブルーズというよりは日本特有の「ブルース」に近い"僕のお父さん"、冴えが素晴らしい桑田流ロックンロール"すべての歌に懺悔しな!!"等、とにかく渋い。そんな中、キラリと光るのがポップ色豊かな"飛べないモスキート(MOSQUITO)"。これなんてサザンでそのままやっても違和感ない曲調ですしね(当たり前か、両方「桑田本人」なんだから)。前半の段々と盛り上がっていく構成、"真夜中のダンディー"を境に更に深い方向へと進んでいき、最後の最後に名曲"JOURNEY"で終わるという構成は、本当に今聴いても圧巻。いやぁ、本当にいいアルバムだわ。

  2001~2年に三度ソロ活動を行った桑田。シングルでポップな側面を強調し、アルバム(「ROCK AND ROLL HERO」)でロック/ブルーズ的側面を強調、最後に集大成的な2枚組ベストで締めるという流れはとにかく圧巻でした。が、やはりどこか物足りない。それは「作家・桑田佳祐」の色合いが強かったからでしょうね。そういう意味では、このアルバムみたいな作風に戻ってくるにはもうちょっと時間を要するみたいですね。ま、気長に待たせてもらいますよ。



▼桑田佳祐『孤独の太陽』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 07 03 12:00 午前 [1994年の作品, 桑田佳祐] | 固定リンク

2003年4月 4日 (金)

RADIOHEAD『MY IRON LUNG EP』(1994)

RADIOHEADが'94年秋にリリースしたEP‥‥というか、ミニアルバムがこの「MY IRON LUNG」。日本盤は未発売で、ヨーロッパ諸国にていろんな形態(CDシングルや今回紹介するEP形式等)でリリースされたようだけど、今回は現在でも比較的入手しやすくて、尚かつ最も聴いてもらいたい重要作品として、この8曲入りEPを選びました。だってさぁ、ここに入ってる8曲の内、6曲はその後のオリジナルアルバムにも未収録だし、何しろ‥‥ここが一番重要。本来リリースされるはずだったセカンドアルバムに収録予定だった楽曲群がここで聴けるんだから。

RADIOHEADは'93年リリースのファーストアルバム「PABLO HONEY」に続くセカンドアルバムを'94年からレコーディングし始めました。当初は同年5月にシングルを、9月にアルバムという予定だったらしく、プロデューサーにジョン・レッキー(STONE ROSESやKULA SHAKER等、'90年代のUKロックではお馴染み)を迎え、ファーストとはかなり内容の異なった「真の意味でのファーストアルバム」(トム・ヨーク談)を試行錯誤の中、制作しました。実際、5月にリリース予定だったシングルも"Just"と発表され、同時期に日本を含む極東ツアーの開始も発表されていました。が‥‥急遽、シングルは発売中止。ツアーのみが決行されることとなったのでした(この曲は後のセカンド「THE BENDS」に無事収録)。

この時の日本ツアーでは後のセカンドに収録される"My Iron Lung"、"Bones"、"Black Star"、"The Bends"等といった楽曲が既に演奏されていました。ということは、これらの楽曲は既にこの時点でレコーディングが終了していたということになります(実際に当時のインタビューでもメンバーはそう語っていたし)。にも関わらず、シングル発売は中止になった。何故か? その答えがこのEPと、そして後のリリースされた「THE BENDS」に隠されているのです。

このミニアルバムは後の「THE BENDS」にも収録されることになる"My Iron Lung"をリーダートラックとし、レコーディング初期段階に制作された6曲と、既に発表されていた代表曲"Creep"の弾き語りアコースティックバージョンの計8曲から構成されています。"My Iron Lung"はご存じの通り、その後のRADIOHEADを占うかのような、ファーストとは異なって混沌としていて複雑怪奇で、それでいてグランジっぽい暴力性とセンチメンタリズムが同居した、突然変異のような1曲。この初期段階でレコーディングされた曲の中には他にも"Just"という、やはりその後の代表曲と呼べる硬質ナンバーも含まれていることから、レコーディング初期にはかなり実験的で、UKギターロックバンド的な色合いが後退して、ある種プログレチックな方向へと進もうとしていたように感じられます。しかし同時に、ファーストに入っていそうなストレートな曲やメランコリックなギターロックも制作されていました。"The Bends"等はそのままアルバムに収録されましたが、残念ながら選外となってしまったのがこのEPに収録された6曲ということになるようです。つまり、ここの6曲+「THE BENDS」の一部の楽曲こそが、本来セカンドアルバムとしてリリースされる予定だった曲達なのです。

既に我々は「THE BENDS」というアルバムを知っているし、散々聴いてしまっているわけで、あの傑作を前にするとここに収められたアルバム未収録の6曲は印象が薄いと言わざるを得ません。が、ファーストの楽曲群と比べれば確かにクオリティーが高いし、違った次元に進もうとしていることがちゃんと伺えます。既に「THE BENDS」でやろうとしていることの半分はここに表現できているし。けど、何故「THE BENDS」というアルバムが素晴らしかったかというと、そこには"High And Dry"や"Fake Plastic Trees"、"(Nice Dream)"といった「人間らしい温かみ」が存在するからです。勿論、それまでのRADIOHEADにもそういった要素はあったけど、ここまで包み込むような温かさは正直感じなかったと思うんですよ。けど、レコーディングを中断してツアーをして、そして何が足りなかったのかを把握して改めてレコーディングに向かった時、こういった楽曲が生まれたのかもしれませんね。そういう意味ではこれで正解だったと思うし、だからこそRADIOHEADはああも成功できたのでしょう。そして、そういった楽曲がその後の彼等の重要な要素になったことは言うまでもありません。

如何にセカンドアルバムが重要な1枚となるか、彼等はよく知っていました。だから彼等は2枚分ものレコーディングをした。そして実質上3作目となる「THE BENDS」をセカンドアルバムとしてリリースして、ファーストリリース時よりも更に高い地位を得た‥‥そしてよりアーティスティックに、そしてより混沌とした音楽性を追求することとなるのです。

この続きは「THE BENDS」のレビューで語ることにしましょう。



▼RADIOHEAD『MY IRON LUNG EP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 04 04 04:59 午前 [1994年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2003年1月16日 (木)

B'z『The 7th Blues』(1994)

  これまた意表を突いたアルバムを選んだと思って、更にビックリするんでしょうね? 「ラルクの次はB'zかよ!? とみ宮ももう終わりだな」とかいった感じで‥‥って言ってるそこのキミ。実は「ロック聴き始めた切っ掛けはB'zでした」っての、隠してるだろ? えっ、そうなんだろ?? なっ、悪いことは言わないから、全部素直に吐き出しちまいなよ‥‥誰も責めないからさ‥‥って誰に向かって俺は説得してるんですか?

  つうわけでB'zです。多分いつもうちのサイトをご覧になってくれてる人の半数以上が「‥‥何故?」とか「‥‥けっ!」と思ってるであろうB'z。恐らく殆どの人が「ギャグでしょ?」と焦ってるであろうB'z。「とみぃはB'z好きだったのか‥‥ガクガクブルブル」と既にブラウザのブックマークを消去しようとしてるそこのあなた、ちょっと待って。ここはひとつ、最後まで読んでから消すかどうか判断してください。

  まず‥‥アルバムレビューに入る前に‥‥ちょっと以下の楽曲名に目を通しておいてください。


・AEROTHMITH / Cryin'
・LED ZEPPELIN / Nobody's Fault But Mine
・COVERDALE・PAGE / Shake My Tree
・LENNY KRAVITZ / It Ain't Over 'Til It's Over
・DAMN YANKEES / Don't Tread On Me
・JIMI HENDRIX / Little Wing
・VAN HALEN / Right Now
・THE BEATLES / Hey Jude
・GARY MOORE / The Loner
・CREAM / White Room


‥‥全部知ってますか? ま、知らない曲も数曲含まれてるでしょうね(特にDAMN YANKEESとかCOVERDALE・PAGEはHM/HRファンじゃなきゃ知らないかも)。判る人なら判るでしょうけど、上に挙げたこれらの楽曲、今回取り上げるB'zの「The 7th Blues」収録曲の元ネタ‥‥言い方は悪いですが、パクリ元となった楽曲だと言われています。もっとも、ホントのところはメンバーのふたりにしか判りませんが、聴いた感じでは確かにリフや曲の構成等、かなり近い印象を受けます。ま、過去にもB'zはZEPの "Trampled Under Foot" やMOTLEY CRUE "Time Is Change"、AEROSMITH "What It Takes" 等からいろんなものを「拝借」してる前科があるので、やっぱり‥‥ねっ?

  ってそういう事が言いたいのではなくて‥‥多くの人が抱くB'zの印象ってそういう「洋楽ロックのオイシイとこ取り」ってイメージの他に、「ピコピコした打ち込みサウンド」ってのがあると思うんですよ。ヒットした切っ掛けとなった "Bad Communication" がそういう曲だったし、元々ギターの松本がTM NETWORKでサポートメンバーとしてギターを弾いてた経緯があるからね、何となく流れが見えるわけよ。

  個人的な話になりますが‥‥以前東京で仕事してた頃、仕事先の上司が稲葉と同じ大学出身で、同級生、しかもサークルまで一緒だったそうなのね。軽音サークルでバンドやってたみたいで、丁度周りがAORとかで盛り上がりつつあった頃だったそうなんだけど、稲葉はというと‥‥もう、普通のハードロック少年だったそうで。「時代遅れなDEEP PURPLEとかやってたよ」とその人は言っておりました。既にその話を聞いた頃のB'zは今回のアルバムのようなハードロック路線に片足突っ込んでた頃だったので、妙に納得した記憶があります。元々松本ってギタリストもハードロック畑の人だしね。

  というわけで、今回紹介するアルバムを通して俺が何を訴えたいのかというと‥‥「洋楽ロックへの入り口」としてB'zを入門編として聴いてきた人達に向けて、そしてそういったB'zを毛嫌いしてきた人達への問題提議というか‥‥B'zって、そんなに貶す程酷い音楽やってるか?っていうね、うん。ま、ハードロックとか日本語でやるハードロックが嫌いな人には今回のレビュー、何も訴えかけるものがないと思いますが、面白そうだと思った人は興味深く読んでやってください。

  俺らが10代の頃、丁度'80年代中盤から'90年代に突入するまで、所謂「ハードロック/ヘヴィメタル」がチャート上で成功する時代があったわけですよ。BON JOVIやGUNS N'ROSES、METALLICAといったバンドがブレイクして、アルバムのみならずシングルまでチャート上位に食い込んだり、そういったバンドが東京ドームや武道館クラスを2日も3日も満杯にする時代だったわけですよ。で、ここ日本にも'80年代初頭から「日本のバンドによるメタル・ムーブメント」、略して「ジャパメタ」っつうものがあったわけですね。現在再結成して活躍しているLOUDNESS、ANTHEM、EARTHSHAKER、44MAGNUMといったところが有名所ですね。他にもBOW WOW(後のVOW WOW)、FLATBACKER(後のE.Z.O.)、PRESENCE(後にJUDY & MARYを結成する恩田快人が参加していた)、BLIZZARD、RAJAS、ACTION、REACTION、浜田麻里、等々‥‥中にはアメリカでそこそこ結果を出したLOUDNESS、イギリスで成功しレディングフェスに出演した経歴も持つVOW WOW、KISSのジーン・シモンズがプロデュースしたE.Z.O.なんていうワールドワイドな活動をしていたバンドもいた程です(そして今、そういった日本のバンドに影響を受けた海外のアーティストも多く活躍しています。元MR.BIGのポール・ギルバートや元MEGADETHのマーティ・フリードマンなんかがその代表ですね)。そしてこのジャパメタは、後にX(後のX JAPAN)という怪物を生み出すわけです。そして、それと引き替えにジャパメタは死語となり、次第に「ビジュアル系」なんていう微妙な呼び名で呼ばれることになるわけです‥‥その黎明期に活躍したDEAD ENDやGASTANKなんてのもいましたが。

  おっと‥‥ちょっと話が脱線しましたね。で、'90年代以降、ハードロックやヘヴィメタルは下火になります。METALLICAやPANTERAといったコア系のバンドの活躍はありましたが、グランジの台頭によってグラマラスでゴージャスなサウンドを持ったバンド達は一掃されるわけです。けど、日本は特別でまだMR.BIGやBON JOVIといったバンドに効力がありました。と同時に、X JAPANが大ブレイクし、いわば国民的バンドになってしまったりしました。誰ももう彼等のことを「ジャパメタ」とか「ヘビメタ」なんて呼ばなくなりました。

  でね‥‥俺らがガキの頃は、洋楽への入り口としての口当たりの良い、聴きやすい音を持った、それでいてサウンド的にハードでカッコイイバンドってのが結構いたわけですよ。それがBON JOVIだったりVAN HALENだったり、あるいはJOURNEYやNIGHT RANGERといった‥‥ライトメタルとか産業メタルなんて言葉で貶されたりもしますが、そういった良質のバンドが沢山いたわけです。だってそういうバンドがヒットチャート上にウジャウジャいたわけですから。マイケル・ジャクソンやマドンナを聴くのと同じ感覚でBON JOVIやMOTLEY CRUEを聴いてたわけですよ、俺にしろ周りの友人にしろ。「カイリー・ミノーグとWHITESNAKEのアルバム、いいよね?」とか、そういった会話が普通だったわけです(自分の周りだけかもしれませんが)。

  ところが、'90年代以降、そういった「チャート上でも成功していて万人に愛され聴きやすい」教科書的入門編バンドが少なくなってしまったんですね。MR.BIGとかは頑張ったけど、それ以外だと‥‥NIRVANAやRADIOHEADやOASISで洋楽に入った人も多いんでしょうけど‥‥なんか味気ないかなぁ、と俺は思ったりするわけです。では'90年代に入ってそういう「ロック入門編」の役割を果たしたバンドって?‥‥となると、これがX JAPANだったりB'zだったりすることが多いわけですよ。'80年代はまだロックはアングラなイメージがあり、特に日本ではボウイやレベッカといったバンドがチャート上でも大成功を収めるまで、そこまでロックが大々的に一般の世界にアピールすることは少なかったと思うんですよ。それが'80年代末からのバンドブーム、'90年代に入ってからのビジュアル系ブームによって、お茶の間に長髪/髪の赤い化粧した男達が普通に登場したりする時代になるわけですから‥‥20年前だったら考えられないですよね?

  そういう風に、ここ日本でも普通にロックが一般化した状況になり、特に洋楽からロックに目覚める必要もなくなる‥‥そうなると、一番身近で手頃なロックからスタートするわけですが‥‥そこでチャートでも大成功を収めていたB'zが登場するわけです(いや~ここまでの前振り、長かった‥‥)

  この「The 7th Blues」という2枚組アルバムがリリースされたのが'94年春。デビューから既に6年近く経ってからのこと。その前から既にハードロック色を要所要所に散りばめてきた彼等が、本格的にそういうサウンド一辺倒で臨んだのがこのアルバムなわけです。ここにはあの「ピコピコした打ち込みサウンド」は皆無。全部が固定バンドメンバーによるバンドサウンドで、そこに曲によってブラスが加わったりストリングスが入ったりするわけです。歌詞は判りやすい日本語(20曲中、英語詞も2曲有り)、リフやメロディは最初に挙げたような洋楽ハードロックからの影響が強く、しかも適度にハードで適度にソフト。そして周りが言う程酷くない。むしろ完成度はかなり高い方だと思います。実際、サウンドにしてもレコーディングをLAで、ミックスをChris Lord-Algeというグラミー賞も受賞したことのあるエンジニアが担当してるわけですから、その辺の洋楽ハードロックバンドと比べても特に違和感はないわけです(歌詞を除けば)。個人的にはこのアルバム、ディスク2の方が好みで、エアロばりのロッカバラード"Don't Leave Me"(スカパラホーンズが大活躍)からまんまZEPな"Sweet Lil'Devil"への流れ、過去のB'zナンバーを英語詞&ブルージーにリアレンジした"Slave To The Night"、"Lady Navigation"、大陸的な大らかさを持ったアメリカンハードロック"Jap The Ripper"、B'zらしいメロがハードロックに乗った佳曲"春"等、ホント捨て曲なしだと思うんですよ。"もうかりまっか"みたいな遊び曲もあるんだけど、決して捨て曲ってわけでもないし。ま、稲葉のシャウトがまんまスティーヴン・タイラーだ、という指摘はこの際無視しますけどね。

  実はこのアルバム、B'zファンからは当時酷評されたらしいんですね。「B'zらしくない」「ヘヴィすぎる」等といった理由で。確かに暴走し過ぎな気もしますね。実際、このアルバムに伴うツアー終了後、再び彼等は打ち込みを多用したサウンドも復活させて、音楽的には非常にバランスのいい「LOOSE」というアルバムをリリースしてますしね。かつてハードロック少年だった稲葉と松本が、ある程度地位を得たことで初めて「好き放題やった」いや「やり尽くした」作品。それがこのアルバムだったのかもしれませんね。だからこその2枚組だった、と。

  このアルバムからロックに入ったっていう人、結構いるみたいですね。確かに過去のB'zのイメージに囚われずにこのアルバムを聴くと、普通にカッコイイと思うし、更にあなたがまだ洋楽にノータッチだったとしたら、ここに収められているパク‥‥いや、影響を与えた原曲も聴いてみたいと思うかもしれませんね? そういう意味で、このアルバム及びB'zは'90年代、日本の多くの少年少女達にとっての「扉」となったわけです。

  もし‥‥B'zが二人組というユニットではなくて「○人組のバンド」として存在していたら‥‥そしてそのデビューがあと5年早かったら‥‥間違いなく彼等はハードロックバンドとして、そしてジャパメタバンドのひとつとして認識されていたでしょう。今頃「BURRN!」の表紙を飾っているかもしれませんね。先にTM NETWORKフォロワーとして登場してしまったが為にそのチャンスは逃してしまいましたが(そして多くのロックファンにとって忌むべき存在にもなってしまった)、この際ちゃんと彼等の功績を評価してもいい時期にきてるんじゃないでしょうか。リリースから9年経っても古さを感じさせないこのアルバムを今聴くと、尚更そう思えてくるわけです。

  最新のツアーではとうとう海外で知名度のあるメンバー(特に元MR.BIGのビリー・シーン参加には誰もが驚いたことでしょう)をリズム隊に迎え、海外からもお呼びがかかったという噂のB'zですが、もうハードロック一辺倒な作品を作ることはないんでしょうね。近作だと「BROTHERHOOD」というアルバムが比較的そういう作風だった、と人伝に聞いています。確かにシングル曲 "ギリギリCHOP" なんてまんまVAN HALEN風ハードブギーですしね(で、アルバムバージョンではMR.BIGのリズム隊がプレイしてるわけですし)。意外とあのまま彼等がハードロック路線を続けていたら‥‥セールス的には落ちていたでしょうけど、間違いなく「B'zを聴いてロックに目覚めた」という中学生が増えていたでしょうね。そう考えると、ちょっと勿体ないかなぁ‥‥という気も。

  ワールドカップ関連でエアロと共演したり、クリスマス限定パッケージでバラードベストを出したり、確かにそのひとつひとつの行動は我々ロックファンからすれば「???」なのかもしれませんが、それとやってる音楽、そしてその音楽の出来は別物です。売れてるから駄目、なんて理由で無視するのも結構ですが、今一度ヒットチャートを賑わしているアーティスト達にも目を向けてみてはどうでしょうか?



▼B'z『The 7th Blues』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 01 16 12:33 午前 [1994年の作品, B'z] | 固定リンク

2002年4月 5日 (金)

NIRVANA『MTV UNPLUGGED IN NEW YORK』(1994)

早いもので、今日で丁度8年経つわけだ‥‥ここ数年は特に4/5だからといって彼を、そしてNIRVANAを意識することはなかったのだが(自分にとっては別の意味で忘れられない日となってしまったので。詳しくは別項「About Kurt Cobain」参照)、先週だったか、たまたまビデオテープの整理をしていたら、そこに見覚えのないテープが一本。消して使おうと思って内容を確認したら、それがこのNIRVANA最初で最後のMTVアンプラグド出演時のものだったのだ。すっかりそのテープの存在を忘れていた俺は、思いっきり最後まで見入ってしまった、深夜の2時過ぎから(しかも平日に)‥‥そして眠れなくなってしまうわけだが。

このライヴが収録されたのは、'93年11月18日。亡くなるまで約5ヶ月のタイムラグがあるわけだが‥‥その5ヶ月間に何があったとか、どう変わってしまったいや変わってなんかない‥‥なんて話題はこの際無視する。そういうスキャンダラスな話題がどうしてもつきまとってしまうのは、カート・コバーンの死に方を考えれば仕方ないことなのかもしれないが、まずはそういう色メガネなしで聴いて欲しい。もしあなたが、まだNIRVANAというバンドの音に触れたことがない人なら、雑誌やネット上での情報を得る前に、まっさらな状態でこのアルバムに接して欲しい。

何度も言うが、俺はカート・コバーンという男の生き方を今でも肯定する気にはなれない。けど、それでも彼が作り出した曲、歌、そしてNIRVANAというバンドは今でも大好きだ。最初に彼等のアルバム「BLEACH」に触れた時は余り熱心に聴き込むことはなかったが、続く出世作「NEVERMIND」ではその楽曲よりも、カートの歌、歌声に一番惹かれたという事実を、今でも良く覚えている。決して上手とは言い難いが、独特なざらついた声で唄われる "Something In The Way" を初めて聴いた時の、あの何とも言い表しがたい気持ち‥‥あれは何だったんだろう?って今でも思う。聴き終えてから急激に鬱になる‥‥ぶっちゃけて言えば、死にたい気分になってしまったのだ。何故か判らないが、俺は「NEVERMIND」というアルバムを初めて聴いた時、興奮せずにどん底の気分を味わうことになったのだ。後にも先にも、こんな気分にさせられたアルバムはこれだけだ(そんなもんだから、その直後に聴いたR.E.M.の「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」でさえもポップに聞こえてしまった)。結局それは、カートの声や唄い方によるものなんだろうな、と今では思う。特にこのアンプラグドライヴで唄われているような曲を聴くと、そういうカートの独特な魅力が際立つわけだ。決して彼は叫んだりスクリームするだけではない、ちゃんと「歌」を知っていたのだ。だからこそNIRVANAは「ポップ」になり得たのだ‥‥そうは思わないだろうか?

このアルバムの特徴はオリジナルアルバム3枚からの楽曲の他に、カート達が影響を受けたアーティスト達のカバーソングがある。VASELINESの "Jesus Doesn't Want Me For A Sunbeam"、デヴィッド・ボウイ "The Man Who Sold The World"(邦題:世界を売った男)、MEAT PUPETSは3曲("Plateau"、"Oh Me"、"Lake Of Fire")でそのメンバーも参加している。そして‥‥一番最後に唄われるのは、戦前ブルーズシンガーの中ではかなり異色の存在だったといえるレッドベリーの "Where Did You Sleep Last Night"。このアルバム最大のハイライトといえるパフォーマンスではないだろうか? 映像で観ると特によく判るが、一番最後の一節を唄う直前のブレイクでの、彼のブレス‥‥そしてその表情。俺が知ってるカート・コバーンという男が見せた、優しい表情‥‥少なくとも俺にはそう見えた。映像でその表情を観てしまった今となると、やはり「ここで終わってよかったのかな‥‥」と思えてしまうのだ。

今でも自分にとって大切なアルバムの1枚にNIRVANAの「IN UTERO」を挙げているが、最もよくプレイヤーにのせるアルバムとなると、実はこのアンプラグド盤だったりする。結局俺は、NIRVANAにロックだとかグランジを見ていたのではなく、「ポップな歌」を求めていたのだろう。



▼NIRVANA『MTV UNPLUGGED IN NEW YORK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2002 04 05 02:20 午前 [1994年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2001年6月15日 (金)

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE』(1994)

前作「GOLD AGAINST THE SOUL」が予想以上にヒットしたマニックス。ツアーも大盛況に終わり、前作からのシングルから間髪入れず、'94年5月に"Faster"と"P.C.P"の両A面シングルを発表、16位と大健闘する。これはちょっと衝撃的シングルだった。何せ初期のパンク路線を更に進化させたかのような攻撃性、そしてサウンドは更に生々しく響き、全ての音が機能的に鳴っているのである。今現在までも、このシングルがマニックス史上最強だという意見は非常に多い(俺も全く同感である)。

続けて8月にシングル"Revol"(22位)を発表。これもまた面白い曲で、まるでテクノを思わせるような反復リフが登場する、カッチリと作り込まれたパンクソング(タイトルはリッチーの造語で、逆から読むと「LOVER」ということではないだろうか? 次作でも"Enola/Alone"という曲があったし)。

そしてそのすぐ後に3作目となるアルバム「THE HOLY BIBLE」をリリース。前作からまたまた1年2ヶ月という短期間で発表されていることから、本当にリッチー在籍時のマニックスは多作で、尚かつ良質な曲を連発していたなぁと実感する。その後もシングル"She Is Suffering"(25位)を10月にリリースしている。

前作からのラストシングルとなった"Life Becoming A Landslide"のカップリング曲(日本盤はシングル「FASTER」に収録)で既にその兆候は見せていたが、この「THE HOLY BIBLE」はファーストともセカンドとも違った、ある種脅迫じみた凄みがある。時代が時代だっただけに('94年というとカート・コバーンが亡くなった年)こういう「閉所恐怖症」的サウンドになったとも考えられるが、やはりここで考えるべきは当時のリッチーの精神状態だろう。歌詞からもそれは感じ取ることができるし、何より当時を知っている人間なら、その頃の彼の奇行を覚えているだろう。ベロンベロンになり何も覚えてないくらいまで酔っぱらい、薬に手を出し、何度か自殺をも試み強制入院させられたことを。家族同然だったバンドのメンバーは本気で心配し、ニッキーは毎日リッチーを見舞ったという。一端中止したツアーもリッチーの快復を待ち、翌'95年初頭には頭を坊主にし、一見快復したかのように見えたリッチー。この年の春には来日も決まっていたのだが‥‥2月1日、滞在していたホテルから、リッチー・エドワーズは忽然と姿を消すこととなる。その後、自殺説や誘拐説などいろいろ憶測で語られているが、現在に至るまで彼の消息はつかめていない。これによってバンドは活動休止、彼の所在/生存が判るまでバンドとして動かないことに‥‥

何がリッチーを苦しめ、何に駆られてこのアルバムを作ったのかは確か当時のインタビューで語られていたはずだが‥‥ここでは純粋に作品についてのみ語っていこうと思う。

とにかくそれまでの作品と違い、非感情的なメロディー、機能的なリズム、生々しいサウンド、曲を盛り上げるというより単なる装飾のひとつに過ぎないギターソロ等、どれをとっても前2作とは異なる作りとなっている。勿論、これまでの片鱗は所々に見え隠れするし(当時はそう思えなかったが、今聴くと非常にポップなメロディーをしていて、どこをとってもマニックスらしい楽曲ばかりなのだ)、"This Is YesterDay"のようなその後の彼らの雛形ともいうべきメロウな曲もあるにはある。しかし大半を占めるのは、グランジともパンクとも言い難い、ある種独特なヘヴィサウンド。ヘヴィといっても、昨今のヘヴィロックのようなサウンド的なものではなく、もっと本質に迫るようなヘヴィさ‥‥人間の内面をナイフでえぐり取るような鋭さや重さを持った音。そして更に深く、更に重みを増した歌詞。作曲はジェームズとショーンが中心に行っているが、このアルバムに関してはリッチーのディレクションが影響しているようだ。

変拍子が意外だった"Yes"から5曲目"Archives Of Pain"までの流れは正に圧巻で、正直初めてこのアルバムを手にした時は、最後まで通して聴けずにここら辺で1度止めてしまっている。音楽的変化よりも、その重さに耐えられなくなったのだ。これは決して気楽に聴けるアルバムなんかではない。しかし、一度その世界にハマってしまうと、二度と戻ってこれなくなる。これはそういうアルバムだ。

パンクバンドとしてスタートしたマニックスが、ここで一度原点を見つめ直したという考え方もできるかもしれない。しかしこれはそんな生易しいもんじゃない。ファーストでの失敗、セカンドの予想以上の好評価を経て、ここに辿りついたのだ。いや、ここまで追いつめられたのだ。その後、リッチーを失ったマニックスはこれ以上重く攻撃的な作品を発表してはいない。作品の質感や一部のパンクソングに対して、最新作「KNOW YOUR ENEMY」をこのアルバムと比較する人も多いが、やはり全く違うものだと言わざるを得ない。振り幅としては最も「負」にある1枚なのだが、これを最高傑作と呼ぶファンは多い。しかし、リリース当初の英国メディアの評価は全く逆だったことも付け加えておく。トップ10には入ったものの、セールス的には前作程ヒットしなかったという事実も(尚、アップ後の情報として'94年の英国・NMEかメロディメーカーのどちらかで「年間ベストアルバム」のトップ10内にランクインしていたという話がある。これは俺も何となく記憶してるので間違いないだろう。つまり、最も賛否両論が激しかった作品ということになるのだろう)。

このアルバムに対しては、1曲1曲を取り上げるのではなく、作品1枚を通して聴いて欲しい。俺はこのアルバムからどれがオススメの曲か?と問われると、正直答えに困る。何故なら自分にとって、この13曲で1曲というようにカウントしているからだ。「THE HOLY BIBLE」というひとつの組曲だと考えている。

何度かいろんなところで書いたが、自分の人生にとって非常に重要な1枚である。



▼MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 06 15 10:00 午後 [1994年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2001年5月28日 (月)

WEEZER『WEEZER (a/k/a “Blue Album”)』(1994)

記念すべきWEEZERのファーストアルバム。実はアメリカと日本とでは発売時期に約1年の時差があり、アメリカでは'94年5月に、ここ日本では遅れて'95年3月にリリースとなっている。これは当初、アルバム自体が本国でもそれ程プッシュされていなかったからではないだろうか? 結果としてシングル"Buddy Holly"のラジオやMTVでのヒットが要因となり、ここ日本でも知られるようになったと記憶している。

プロデュースにあたっているのは、なんとあの元THE CARSのリック・オケイセックだ。'80年代中盤をリアルタイムで通過してきた人なら覚えているだろう、彼らのことを。ジョン・マット・ランジ(DEF LEPPARDやブライアン・アダムスのプロデュースでお馴染み)も彼らをプロデュースしていて、特に代表作といえる「HEARTBEAT CITY」は名盤の1枚として俺の記憶の中に残っている。

リックのみならず、またエンジニアもクリス・ショウと、ポップ職人達が手掛けたこのアルバム。珠玉のメロディーがてんこ盛りだ。

実は俺、このアルバムが出た当時、WEEZERのことが、そしてこのアルバムが大嫌いだった。いや、アルバムはまだ聴いてないな、セカンドを先に聴いてからの、完全な後追いだから。俺が嫌いになった原因、それは先の"Buddy Holly"のビデオクリップだった。後に日本のAIRが"Today"という曲のビデオでまんまパクッているが(苦笑)、あの雰囲気やルックスがどうも苦手だったのだ(同じような理由で、当時はPAVEMENTも苦手だった)。この時期、俺はTFCからも遠ざかっていたし‥‥所謂パワーポップ的なものが苦手だったようだ。

しかし、そんな偏見を捨てた今、このアルバムは純粋に心に響く「音」を持っている。1曲目から名曲目白押しだし。KANSASの名曲"Dust In The Wind"を彷彿とさせるアルペジオが印象的な"My Name Is Jonas"、そして畳み掛けるようにスタートする超名曲"No One Else"、そのAIRがいろいろアイディアを拝借している(笑)"The World Has Turned And Left Me Here"や"Undone - The Sweater Song"、如何にもアメリカンなパワーソング"Surf Wax America"、「エレキギターを持ってバカな歌をプレイするんだ」と唄い、歌詞にKISSも登場する"In The Garage"等、数え上げればきりがない。とにかく10曲全てが名曲。文句なし‥‥って評価が一般的なんだろうな、きっと。

ただ、個人的趣味から言わせてもらえば、このサウンドプロダクションが好きになれない。「これがいいんだよ」という人もいるだろうけど、俺的には甘いっつうか‥‥これらの曲をセカンドのプロダクションで聴きたいなぁ‥‥そうすれば、本当に完璧なアルバムだったんだろうなぁと。そのプロダクションが更に彼らの歌や演奏の「ヘロヘロ」具合に拍車をかけているんだけど‥‥逆効果?俺にはそう思える(一般的な評価はそこがいいってことになってるんだろうけど)。まぁ何はともあれ、いいアルバム。最初に手を出すならこれでしょう。



▼WEEZER『WEEZER (a/k/a “Blue Album”)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 05 28 05:49 午後 [1994年の作品, Weezer] | 固定リンク

2000年12月26日 (火)

LUNA SEA『MOTHER』(1994)

  前作から1年半後にリリースされた、通算4作目にして初のチャート誌ナンバー1アルバムであり、初のプラチナム(100万枚以上の売り上げを記録した)アルバム。つまりこのアルバムによってLUNA SEAというバンドは名実共に真のメジャーの仲間入りをしたわけだ。

  まず'94年7月に3枚目のシングルとなる"Rosier"を発表するのだが、これがいきなりチャートのトップ10入りし、ロングランヒットとなる。これまでの2枚のシングルとも違う、パンキッシュ且つポップなナンバーは一般的にも受け入れられ、この曲を引っ提げて彼らはテレビの歌番組にも進出する。更に同年9月のシングル"True Blue"では、初登場第1位を記録という大業を成し遂げる。そして満を持して発表されたアルバムは予想以上の大ヒットを果たした。この大ヒットによって『X JAPANの弟バンド』的ポジションから、そのX JAPANをも脅かす存在にまで成長し、他の同系統バンドより一歩抜きん出る事になる。

  前作がセカンド「IMAGE」の延長上だったのに対し、ここでは更に飛躍した成長振りを見せている。1曲目"Loveless"からしてレベルが違う。マニアックな音作りをしていながら、ポップなメロディー、そして多くの人間にアピールする普遍的内容の歌詞。それに続く大ヒット曲"Rosier"。そしてメタリックな重量級ミドルナンバー"Face To Face"。如何にも彼ららしいファストナンバー"Civilize"と流れは完璧。そして5曲目に問題作ともいえる、8分以上もある大作"Genesis Of Mind~夢の彼方へ~"。今作から毎回、アルバムのへそとなる箇所には必ずプログレッシヴな大作が収められるようになり、その楽曲こそがそのアルバムのツアーにおける山場となった。この曲、イントロのアルペジオが印象的で、独特の空気感を作り出している。そしてここでのRYUICHIの歌にはハッとさせられる事多し。特に後半の盛り上がり箇所での感情移入度に何度ドキドキした事か‥‥この歌詞は彼の大切な友人との死別をテーマとしているらしい。この曲を涙ながらに唄う姿も何度か目撃されているそうだ。

  後半は、やはり新境地ともいえるポップな"Aurora"からスタートし、パンキッシュな"In Future"、低~中音域で唄われるメロウな"Fake"、ナンバー1ヒット"True Blue"と流れ、最後のアルバムタイトルナンバーであり、後にシングルカットもされた"Mother"へと続く。このタイトルトラックが素晴らしい。終末感を匂わせながらも、ただ求めるのは『愛』だと叫ぶ。人間が母親に求める根元的なもの、それが愛だろう。「MOTHER」は何も『母親』だけを意味する言葉ではない。もっと大きく捉えれば、それは地球であり、宇宙である。我々を作り出したもの、それを人は「MOTHER」と呼ぶのだろう。"Loveless"という曲からスタートし、『愛が欲しい/愛して欲しい』と唄う"Mother"で終わるこのアルバムは、一種のコンセプトアルバムとも言える。完璧なアルバムとはこういうものを指すのだ。

  名実共に成功を収めた彼らの最初の目標は、'89年5月の結成から約5年半にして達成された。そして彼らは新しい問題に衝突する。それは『更に多くの人間に自分達の歌を届けるには?』、そして『如何にして「MOTHER」というアルバムを越えるか?』という、産みの苦しみを味わう事になるのであった。



▼LUNA SEA『MOTHER』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 26 12:00 午前 [1994年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000年11月28日 (火)

BON JOVI『CROSS ROAD』(1994)

ON JOVI としての、初のベストアルバムをデビュー10周年の年にリリース。これがベスト盤としては異例の大ヒットを記録し(アメリカでもトップ10入り、ヨーロッパでは軒並み1位を記録、ここ日本に関してはオリコン総合チャートで初登場2位、ミリオンセールスを記録した)全世界で1500万枚以上ものセールスを記録し、今現在もその数字は伸び続けているという。

しかもこのアルバム、ただのベスト盤なら既発曲のみで構成されたものでもおかしくないのに、完全な新曲を2曲収録、しかもリリースされる地区によって収録曲が若干異なるというコレクター心をくすぐる内容となっている。更にこのアルバムからの先行シングル「Always」がアメリカやヨーロッパで、シングルとしては過去最高のセールスを記録したのだ。イギリスで最高2位、アメリカでは4位までしか上昇してないが、この4位というのが曲者で、なんと12週に渡って4位をキープし続けたのだ。結果、売上としては4週連続1位を記録した87年の「Livin' On A Prayer」をも軽く抜いてしまったのだった。

ここでその収録曲の違いについて説明しておこう。まず日本盤。リリース当時の仕様は全15曲入りで、10曲目に日本のみの収録ということで2ndアルバムから「Tokyo Road」を、更に15曲目にはボーナストラックとして3rdアルバムから「Never Say Goodbye」が収録されている。

次にアメリカ盤。全14曲入りで、10曲目には「Livin' On A Prayer」の別バージョン(アコースティック仕様)「Prayer 94」を収録、ボーナストラックはなし。

EU(ヨーロッパ)盤は全15曲入りで、10曲目には5thアルバムから「In These Arms」を、15曲目には日本盤同様「Never Say Goodbye」を収録している。

最後にあまり見かけないが、存在しているという事で‥‥一風変わったラテンアメリカ盤。実はその存在を噂でしか耳にしておらず、現物にお目にかかったことはない。しかし、仕様としてはアメリカ盤+ボーナストラックとして5thアルバム収録の「Bed Of Roses」のポルトガル語バージョン「Cama De Rosas」の全15曲入りらしい(ちなみにこの曲は日本盤でも、限定盤だったが5thのメガ・エディション2枚組にも収録されていた。現在高額で取引あされているが、「In These Arms」のライヴトラックも入っているので、興味があったら探してみては如何だろうか?)。

というわけで、現在上記の4バージョンが存在していたのだが‥‥数年前に始まった旧譜のリマスター化に伴い、どうやら世界各国共通仕様になりつつあるようだ。現在までに確認されているリマスター盤仕様は2バージョン。日本盤とアメリカ盤が同じ仕様で、94年当時の14曲入り仕様(10曲目が「Prayer 94」)になり、EU盤は曲目・曲数に変化はなし。まぁ日本盤の「Tokyo Road」ってのが本来、どうだかなぁ的選曲だったので、これから手を出す人にとっては有難いことだろう。

内容に関しては特に記しておくべきことはないだろう。どの仕様に手を出すか?は聴き手の判断に任せるとして‥‥新曲2曲(「Always」「Someday I'll Be Saturday Night」)は本来なら、これに続く6枚目のオリジナルアルバムに収録される予定だったそうだが、ファンサービスという事で先にこっちで発表することにしたそうだ。しかし結果、これが次作への橋渡しとしては想像以上の結果を収めたため、続く『THESE DAYS』は半年近くリリース日程を早めなければならなくなってしまった‥‥嬉しい誤算である。

ちなみにこの時期にレコーディングされていながら、『CROSS ROAD』にも『THESE DAYS』にも収録されなかった曲がもう1曲あって、それは映画のサウンドトラックとして使用されている。「Good Guys Always Wear White」というアップテンポなナンバーで、『THIS COWBOY WAY』という映画の主題歌として発表された。当時サントラ盤も日本発売されたが、現在なら先の「Someday I'll Be Saturday Night」のマキシシングル日本盤で聴く事が出来る(他にも「Prayer 94」も収録されているので、お買い得だ)。

94年秋にリリースされ、その間も新作の為の作業は続行していたが、ベスト盤があまりにもビッグセールスを記録したため、急遽95年4月からワールドツアーを開始することになった。しかもこれまでにニューアルバムを完成させなければならず、本来はこのツアーが終了してから(10月頃)発表されるはずだったが、結局援護射撃の形をとって6月にリリース(何と日本はそれよりも1ヶ月先行だった)されることになったため、BON JOVIの周囲は更に慌しくなり始める。

そうそう、オリジナルメンバーのアレック・ジョン・サッチ(B)が脱退したのもこの頃だった。結果、レコーディング参加作品としてはこのベストでの新曲2曲が、PVでは「Always」が最後となってしまったのだった。



▼BON JOVI『CROSS ROAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 11 28 12:01 午前 [1994年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000年7月27日 (木)

THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』(1994)&『FISHING FOR MORE LUCKIES』(1995)

一見ニューアルバムのようだが、実はそうではないのがこの「FISHING FOR LUCKIES」だ。これがまた厄介というか、複雑なんだわ‥‥復習存在する本作について解説していきたいと思う。

①『FISHING FOR LUCKIES』(1994 / ファンクラブ限定バージョン)

'94年12月にファンクラブを通して発売された6曲入りミニアルバムとして最初に「FISHING FOR LUCKIES」というタイトルで通信販売された。当初、これらの楽曲はオリジナル・フル・アルバムとしては2作目にあたる「P.H.U.Q.」の為にレコーディングされたものだ。まず'94年6月に"Inglorious"と"Sky Babies"の2曲入りシングルをアルバム前にリリースする予定だったが、レコード会社が長い曲を嫌った為(この2曲だけで20分近くある/笑)、難色を示したそうだ。更にこの時期にレコーディングされたものは結局、1年後に日の目をみるわけだ(「P.H.U.Q.」自体はその1年後にリリースされた)。

収録曲は以下の通り。


1. Inglorious
2. If Life Is A Love Bank I Want An Overdraft
3. Schizophonic
4. Do The Channel Bop
5. Geordie In Wonderland
6. Sky Babies


'95年1月にはこのアルバムの中からM-2とM-5を収録したシングルがレコード会社を通してリリースされた。また、後に発売される「P.H.U.Q.」の英国初回盤にはボーナストラックとしてM-1とM-3の2曲が、同アルバム日本盤ボーナストラックとしてM-2とM-4がそれぞれ収録され、一般のルートでも聴く事が出来るようになった。


②『FISHING FOR MORE LUCKIES』(1995 / 9曲入りバージョン)

イギリスの音楽雑誌では通販版「FISHING FOR LUCKIES」が大絶賛されたことから、レコード会社は'95年夏頃に改めてこのアルバムに未発表曲2曲と"I Wanna Go Where The People Go"のデモバージョンを追加した形で、同じジャケットに『MORE』を赤字で追加しただけの形の「FISHING FOR MORE LUCKIES」をリリースしようとした。しかし「1度発表されたものにクズのようなデモを足しただけのアルバムなんか、リリースさせるか!」とジンジャーは怒り、リリース中止を呼び掛けた。ライヴでもお客に向かって頻繁に「あんなアルバム、買うなよ!」と訴えかけていた。

その後、カット盤として一般流通しているので、当時は簡単に手に入れることができた。ちなみに収録曲は上の6曲に


7. Underkill
8. Saddened
9. I Wanna Go Where The People Go (Early Version)


という9曲入りとなっている。

多分俺が持ってるのは、その流通してしまったものを複製したブートレッグだと思う。ジャケットの印刷が粗いし(恐らくカラーコピーで複写した2世、3世だろう)、背がカットされていないので。まぁファンならマスト!ってアルバムでもないし、本当に興味があるハードコアなマニア向けの作品でしょう。そういえば、最近はどこのCDショップでもこれ、見かけないなぁ‥‥


この頃の楽曲にはとにかく大作志向が目立った。どちらかというと短くて聴きやすい曲を「P.H.U.Q.」に集め、大作や実験的な曲を「FISHING FOR LUCKIES」に入れたのではないだろうか。後に発表される現行バージョンには「P.H.U.Q.」にも通ずるポップな小楽曲を中心に追加したことによって、より内容が充実しているが、初めて現行バージョンでこれらの大作を耳にした時は、とにかく驚いたのを覚えている。これら4曲はパンク版プログレというわけの判らないカテゴライズをしたくなる程(笑)、起伏が激しい。まるでローラーコースターに乗ってるかのように‥‥しかし、これらの曲がこのアルバムの中では1番好きだったりするのだから、少なくとも俺にとってはこのアルバムの曲をこのような形で発表した事に意義があったということだろう。

そういえば、これらの大作はライヴで披露されたと聞いた事がない。彼等のライヴがどういうものか知っている人なら、それらが何となく合わないんじゃないか?と思うことだろう。俺も同感だ。ジンジャーが最後まであれらの楽曲を完奏するするとは思えない(笑)。絶対に途中で飽きて、他の曲をやりそうな気がする。まぁそんな事はどうでもいいか。このアルバムの再発バージョン、ジンジャーは嫌いで1度も聴いていないらしいから。最初のバージョンは気に入っているらしい。そもそも、結果としては同じようなアルバムが3度発売されたわけだが、雑誌のレビューは再発を重ねる毎に評価が低くなっていったそうだ。何がどう悪かったのかは判らない。要するに「同じアルバムを何度も再リリースして、小金稼いでるんじゃねぇよ!」って事なのかもしれない。



▼THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2000 07 27 06:16 午後 [1994年の作品, 1995年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

1999年12月 1日 (水)

THE ALMIGHTY『CRANK』(1994)

このアルバムがリリースされた94年というのは、実は微妙な時期だったりする。既に5、6年前という計算になるが‥‥アメリカでは91年にグランジ・ムーブメント勃発後、それまでメインストリームにいたバンドが「OUT OF TIME(時代遅れ)」として隅に追いやられ、替わって新たにオルタナ系と呼ばれたバンドがトップを取り、成功を収めた。イギリスではこの年にOASISがデビューし、いきなり大ブレイクを果たす。それと前後してBLURがブリット・ポップという言葉を決定づける『PARKLIFE』を発表し、後続バンドへの道を開いた。その一方で、それまでチャートを振わせるまでに成長していたTHUNDERやLITTLE ANGELSといったバンド達はレーベルからのドロップアウトや解散に追い込まれた。成功する新たなグループがいる一方で、シーンから消え去る・過去の遺物として外に追いやられるアーティストがいる。それはショービジネスの世界にいる限り、延々と繰り返される現実だ。

こうやって新たな勢力が押し寄せて危機感を感じる旧勢力。彼らはどうやって「今」を生き残ろうとしたのか‥‥3つの選択が考えられる。ひとつは「我が道を行く」タイプ。AC/DCみたいに「何があろうが知ったこっちゃない」と得意のストロングスタイルで突き進むタイプ。次に「新たなシーンを築くリーダー」タイプ。古くはデヴィッド・ボウイなんかがそうだし、グランジ末期にデビューしたベックもこれにあたる。そして一番厄介なのが「時流に合わせてスタイルを変えるフォロワー」タイプ。別のものが流行ればそれに合わせて音やイメージを戦略的に変える。例えば‥‥多すぎて書ききれないが(笑)‥‥DOKKENなんかもそうだしMOTLEY CRUEもしかり。特にMOTLEYなんてそれまでシーンのリーダー的存在だったのが、PANTERA等のブレイク後、明らかにフォロワーへと移行している。

レコード会社がそういう変化を求めても、我々オーディエンスは極端な変化を求めない、受け入れない。するとアーティストとリスナーとの間に壁が生じる。そしてアーティストは苦悩する。「どれが自分にとって一番よい選択なのか?」判っているはずだ、自分が一番やりたい音楽をやればいい事を。しかしそれでは契約を切られてしまう。明日からまたインディーズに逆戻りだ。しかし自分に嘘をついてレコード会社の言いなりになれば、今度はファンが見放す。レコードは売れない。それでもレコード会社は「新しい音」を求める‥‥悪循環。

しかしシーンの流れに乗ることによって、それまで以上の成功を収め支持されたバンドが当時イギリスにいた。長くなったが、それが今回の主役THE ALMIGHTYであり、その決定打となったのがこの『CRANK』というアルバムなのだ。

初期の彼らは「MOTORHEADよりもMOTORHEADらしい」という評判で、男臭いワイルドなロックを聞かせる、如何にもイギリスらしいバンドだった。そんな彼らに転機が訪れる。'92年、ギタリストのタントラムが脱退、替わりに加入したのが当時アリス・クーパーのサポート等で活躍したカナダ人のピート・フリージンだった。新たな血を得た彼らが次の一手として我々に差し出したのが、'93年春リリースの『POWERTRIPPIN’』だ。ここで劇的な変化をする。それまでのMOTORHEAD路線はそのままに、新たにグランジやヘヴィロックの要素を取り入れ、よりモダンなサウンドへと進化したのだ。これが誰の提案だったのかは知らないが、このリスクを伴う変化は多くの音楽ファンに好意的に受け入れられた。そりゃ離れたファンもいるだろう。しかし概ね歓迎されたようで、結果このアルバムは全英チャート初登場5位という、当時としては異例のチャートアクションで迎えられた。

 そして事務所やレコード会社の移籍を経て翌年9月に発表されたのが、4枚目のアルバムである『CRANK』なのだ。このアルバムで彼らは進化ではなく深化を選んだ。散漫な印象があった前作での音楽性を、「へヴィ」「スピード」に焦点を絞って制作した結果、非常にトータルバランスの良い傑作に仕上がった。バラードなど1曲もなく、スピード、へヴィ、グルーヴィーなサウンドが約50分間最後まで続く。聴いてて掌に汗をかくアルバム‥‥こう言えばいいだろうか? こんなアルバム、当時はどこを探してもなかった。当然このアルバムも大成功を収めた。

「パンクとヘヴィロックの融合」「ブリティッシュロックの突然変異」等いろいろ言われるが、そんな事よりも俺は「'94年という時代に、イギリスで、しかもメジャーレーベルから発表した」点をまず評価したい。サウンド的にもメジャー配給の(プロダクションにお金をかけた)せいもあるのだろう、抜けのいいドラムサウンドに腰の据わったベース、カミソリの刃の如く鋭いギターリフ。そして何よりポップな歌メロ、サビでのオーディエンスを意識したシンガロング。当時俺達が何を欲していたのか、何を必要としていたのか、彼らには判っていた。そして自らもが納得できる作品を作りだし、レコード会社もセールス面で納得させた。完璧すぎるくらいに完璧なアルバム。これ以上何を言えばいい? 文句は聴いてから言えってぇの!

ファンに支持されただけでなく、ミュージシャンからも支持されたこのアルバム。このアルバムやTHE WiLDHEARTSが、今のパンキッシュでへヴィなバンド達のお手本となっているのは明らかだと思う。そしてここ日本にも彼らを支持する人はいる。LUNA SEAのJがこのアルバムを気に入って当時頻繁に聴いていた事は、ファンの間でよく知られている。時流に乗ろうが時代に左右されようが、最後は「よい作品」を作ればみんなが認める‥‥こんな「至極簡単な事」をTHE ALMIGHTYは僕らに教えてくれた。それだけに解散は痛かった。そして今、彼らは復活を果たした。もうじき新作も発表する。変化し続けるのか、それとも更に極めるのか‥‥次はどんな一手で攻めるのか。楽しみでならない。



▼THE ALMIGHTY『CRANK』
(amazon:国内盤CD

投稿: 1999 12 01 12:00 午前 [1994年の作品, Almighty, The] | 固定リンク