カテゴリー「1995年の作品」の50件の記事

2020年9月17日 (木)

BAD MOON RISING『OPIUM FOR THE MASSES』(1995)

1995年4月にリリースされたBAD MOON RISINGの3rdアルバムにしてラスト作。1996年夏には本作で初めてのUSリリースが実現しており、こちらのUS仕様(日本オリジナル盤未収録の3曲含む)も1996年9月に日本発売されています。

カル・スワン(Vo)&ダグ・アルドリッチ(G)、前作がほぼ完成したタイミングで加入したイアン・メイヨー(B)&ジャッキー・レイモス(Dr)が4人揃って初めて本格制作したアルバムであり、ソングライティングもBMR名義で制作されています(そうそう、本作ではバンド名を「B.M.R.」と記号的に表記するケースが増えていました。これはBAD MOON RISINGという“ビッグ・イン・ジャパン”的イメージを払拭するためと、グランジ以降の風潮に合わせたものだったのでしょうかね)。

プロデューサーとして新たにノエル・ゴールデン(TRIUMPH、NIGHT RANGERダフ・マッケイガンなど)を迎えた本作は、前作『BLOOD』(1993年)でのアメリカナイズされたダーク&ヘヴィ路線をさらに推し進めたもので、90年代前半のオルタナ・メタルからの影響を強く感じさせる1枚に仕上がっています。もはやデビューアルバム『BAD MOON RISING』(1991年)の頃とはまったく別のバンドです(苦笑)。

そういうこともあり、デビュー当時からのファンおよびLION時代からカル&ダグを応援してきたリスナーにとって本作は許しがたい“裏切りの1枚”だったのかもしれません。が、当時から思っていたことですが……これ、そんなに悪いアルバムでしょうか?

前作『BLOOD』ではカルの歌唱スタイルと乖離していた楽曲の方向性が修正されており、この抑揚の少ないボーカルパフォーマンスに合った楽曲がしっかり用意されている。オープニングを飾る「Belligerent Stance」なんてまさにその好例じゃないかな(どこか末期THIN LIZZY的で、それもカルのボーカルに似合っている)。ハードロック的リフメイカーとしては弱点の目立ったダグのプレイも、本作でのオルタナ・メタル的作風には絶妙にフィットしているし(グランジやオルタナ・メタルではHR/HMほど、かっちりしたアンセミックなギターリフがそこまで必要とされていませんでしたしね)。

以降も『BLOOD』でのスタイルをよりオルタナ側へと寄せることによって、もともと淡白だったカルのボーカルワークを活かすことに成功。ダグもジミ・ヘンドリクス直系のフリーキーなフレージングを活用することにより、90年代半ば前後の空気感を見事に捉えた印象深いプレイを楽しむことができる。「Into The Pit」や「Free」のような楽曲なんて、このタイミングじゃなか生まれなかったであろう異色作ではあるものの、非常にマッチしているんですよね。

『BAD MOON RISING』はLION時代に果たせなかった目的を消化するための「延長戦」であり、『BLOOD』は次のスタートへ向かう上での処女作、そして今作はメンバーが固定されようやく到達できたデビュー作だった。そう考えると、このアルバムがこういう内容になったのも納得いくのではないでしょうか(いや、古くからのファンにはそんなことまったくないかな)。一般的には駄作扱いの本作ですが、今も昔も変わらず愛聴できる「90年代半ばを象徴する」1枚です。

なお、先にも書いたように本作は日本盤とUS盤とで収録内容、曲順がまったく異なります。個人的には日本盤の収録内容および曲順がもっとも馴染む仕上がりではないかなと思っているので、これから購入する方にはぜひこちらをオススメします(残念ながらSpotifyなどストリーミングサービス未配信なので、中古CDショップで探してみてください)。

 


▼BAD MOON RISING『OPIUM FOR THE MASSES』
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2020年8月21日 (金)

EVIL STIG『EVIL STIG』(1995)

1995年8月にリリースされた、EVIL STIG唯一のアルバム。日本盤は同年9月に発売。

EVIL STIGはジョーン・ジェット(Vo, G)とシアトルのパンク/グランジバンドTHE GITSのメンバーによって結成されたスペシャルバンド。結成の経緯としては、フロントメンバーだったミア・ザパタ(Vo)が1993年に強姦殺人により他界したTHE GITSと、同時期に性差別やレイプに対する反対声明を掲げベネフィット活動を行っていたジョーンが邂逅。この事件にショックを受けたジョーンはBIKINI KILLのキャサリーン・ハンナとともに「Go Home」という楽曲を制作(JOAN JETT & THE BLACKHEARTSのアルバム『PURE AND SIMPLE』に収録。MVも制作されました)、依然犯人が捕まらない捜査に協力することになります。また、THE GITSのメンバーもジョーン側に「私的調査の資金調達のためのベネフィットコンサートに参加してもらえないか」と打診。その結果、ジョーンがTHE GITSに加わりEVIL STIG名義でツアーを行うことになるわけです。

逆から読むと「GITS LIVE」というバンド名のEVIL STIGによるこのアルバムは、そのツアーでのライブ音源をまとめた、非常に生々しいサウンドのパンクロックアルバムに仕上がっています。初めて聴いたときはその剥き出し感に「スタジオライブ音源なのかな?」と思いましたが、曲間にうっすら聞こえる歓声に気付いたとき、改めてこれがライブ音源だと実感するはずです。

アルバムの大半は「Second Skin」をはじめとするTHE GITSが残した2枚のオリジナルアルバムからで、そこに「Crimson & Clover」などJOAN JETT & THE BLACKHEARTSの既発曲のEVIL STIGバージョン、さらにジョーンとTHE GITSの残されたメンバー3人との共作ナンバー「Last To Know」が収められております。THE GITSの楽曲はどれも2分台のシンプル&ストレートなパンクロックで、これらの楽曲では当時“元祖ライオット・ガール”などと若手ガールズバンドから支持されたジョーンのパンク的側面が従来以上に表出した好演を堪能することができます。

また、THE BLACKHEARTSの楽曲をTHE GITSのメンバーが演奏したバージョンでは、原曲よりも尖った演奏により攻撃性も増幅。特に、ラストのシークレットトラックとして収められている「Go Home」は、原曲のダルな雰囲気とは異なる前のめり加減がたまりません。

当時のジョーン自身、先のBIKINI KILLやL7、BABES IN TOYLANDなどシアトル/グランジシーンとも関わり深かったこともあり、「ジョーン・ジェットがグランジに染まるとこうなる」というサンプルとしても非常に興味深い1枚。何気にお気に入りの1枚です。

なお、本作の収益の多くがミア殺害事件の捜査費用に寄付。事件発生からだいぶ時間が経ってしまったものの、2003年には犯人が逮捕されています。

 


▼EVIL STIG『EVIL STIG』
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2020年4月23日 (木)

STRAPPING YOUNG LAD『HEAVY AS A REALLY HEAVY THING』(1995)

デヴィン・タウンゼンド率いるバンド/プロジェクト・STRAPPING YOUNG LADの1stアルバム。海外では1995年4月、日本では同年7月にリリースされました。

スティーヴ・ヴァイとのプロジェクトVAI、THE WiLDHEARTSのサポート・ギタリストを経てようやくたどり着いた、デヴィンのリーダー・プロジェクト。VAIの時点でもその奇才ぶりは相当発揮していたと思いますが、実はあんなもんじゃなかった!ということを、このアルバムを通じて嫌というほど思い知らされることになります。

レコーディングではデヴィンはボーカル、ギター、キーボード、プログラミングのみならず、ミックスやエディットまで担当。ギターの一部をプロジェクト終了までデヴィンとタッグを組むことになるジェド・サイモン、ドラムをエイドリアン・ホワイトという、その後正式メンバーとなる布陣が参加しております。

『超怒級怒濤重低爆音』と名付けられた邦題に、聴く前から度肝を抜かれるかと思いますが、いざ聴いてみればそれも納得のタイトルだと気づくはずです。なんでしょうね、この爆音の壁(笑)。フィル・スペクターが手がけるサウンドに対して“Wall of Sound”なんて呼ばれていますが、さしずめ本作で表現されているのは“Wall of Heavy & Loud Sound”といったところでしょうか。オープニングの「S.Y.L.」からして、音の隙間が一切見当たらない爆音に次ぐ爆音の嵐で、そこにどこかサイケデリックでスペーシーなボーカルが乗る。むちゃくちゃヘヴィなくせして、しっかりキャッチーさが備わっているんですよね。

だから、爆音で鳴らし続けていても苦痛じゃない(いや、この手の音楽が苦手な人には苦痛以外の何ものでもないでしょうけど。苦笑)。かつ、曲と曲のつなぎが自然なので(要は音の切れ目がない)、頭から数曲はまるで組曲のようにも感じられるのです。

VAI時代からもともとギタリストとして自身をアピールしたかったデヴィン、このアルバムではものすごい音圧の“ディストーション・ギターの壁”を作っています。しかも、軸になるリズム(ドラム)もブラストビート的なすごいテンション&BPMで叩き続ける。「Cod Metal King」のように打ち込みビートを用いたナンバーも用意されていますが、これなんて“NINE INCH NAILSがデスメタルを演奏した”かのような仕上がりですし。演奏もボーカルも終始カオスの塊なのに、それでいて聴き手を飽きさせないキャッチーなメロディも随所に散りばめられている。なんでしょうね、この絶妙なバランスは。今の耳で聴いても十分にヘヴィでキャッチーな、強烈なメタルアルバムです。

デヴィン・タウンゼンドという男の才能が完璧な形で凝縮された本作。実は、その才能はさらに多岐にわたることを、その後展開される数々のプロジェクトでさらに思い知らされるわけですが、それはまた別の機会に。

なお、日本盤や海外リイシュー盤にはJUDAS PRIESTのカバー「Exciter」などを追加収録。同曲はストリーミングでも聴くことができるので、アルバム同様に『UNLEASHED IN THE EAST』(1979年)でのライブバージョンをさらにアグレッシヴにアレンジしたカバーをお楽しみください。

 


▼STRAPPING YOUNG LAD『HEAVY AS A REALLY HEAVY THING』
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2019年10月 5日 (土)

SUPERGRASS『I SHOULD COCO』(1995)

1995年5月にリリースされた、イギリスのトリオ(当時の正式メンバーは3人、のちに4人組に)ロックバンドSUPERGRASSのデビューアルバム。日本では同年4月末に、2週間ほど早く先行発売されています。

1994年にシングル「Caught By The Fuzz」でデビューを果たした彼ら。同曲は当時全英43位という、新人のわりには好成績を残していますが、続く「Mansize Rooster」は20位、翌1995年発表の「Lenny」でついに初のTOP10入りを果たし、その後の代名詞的1曲となる「Alright」で全英2位という記録を樹立することになります。

これを受けて、アルバム自体も全英1位を獲得。世界中でのトータルセールスは100万枚を超え、まさに時代の寵児と呼ぶにふさわしい存在へと成長していきます。

オープニングを飾る「I'd Like To Know」を筆頭に、彼らは若さはち切れんばかりの勢いとキラキラしたポップさ、そして随所に散りばめられた“Very British”なひねくれ感が魅力。デビューしたタイミングもあり、ブリットポップ・シーンにおける代表格のひとつとカウントされていますが、もしデビューしたタイミングが異なれば純粋に「非常にイギリスらしいポップバンド」と評されたのかもしれません。ただ、その際にはここまでのヒットを飛ばしたのかどうかはわかりませんが。

大半の楽曲が2〜3分程度とコンパクトで、1曲1曲に複数のフックが用意されている。それは流麗なメロディラインであったり、耳障りの良いコーラス&ハーモニーであったり、あるいは疾走感あふれるバンドサウンドであったり、よくよく聴けば非常に寝られていることが伺えるアレンジであったり……シンプルなくせに、とにかく情報量が多いんですよ(笑)。

だからなのか、リリース当時このアルバムを初めて聴いたとき、妙に疲れたことをよく覚えています。聴きやすくてカッコいいのに、トータル13曲で40分程度なのに、それでもぐったりするこの感覚。それもあって、当時はアルバム全体を通して聴き込むよりも、好きな曲だけをピックアップして聴いていた記憶もあります。

今聴くとこの“ラフに聴こえるようで、実は緻密”なサウンドがたまらなくクセになるのですが、あの頃はあの頃でそういう思いがあったと……それもいい思い出です(笑)。

そんな彼らが2010年の解散から約10年を経て、再結成を果たします。すでにTHE POLICEのカバー「Next To You」をデジタルリリースしていますが(同曲は来年リリース予定のベストアルバムにも収録予定)、大人になっても抑えることを知らず突っ走ることを忘れない彼ら、大好きです。

 


▼SUPERGRASS『I SHOULD COCO』
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2019年9月17日 (火)

KING CRIMSON『THRAK』(1995)

1995年4月上旬にリリースされた、KING CRIMSONの11thアルバム。日本では1ヶ月前倒しの同年3月初頭に発売されています。

前年秋にダブル・トリオ編成では初音源となるミニアルバム『VROOOM』(1994年)を発表し、その新たな実験を世の音楽ファンに知らしめた新生クリムゾン。とはいえ、『VROOOM』はあくまで処女作/テスト作であり、本当のデビュー作はこのフルアルバムなのです。

このアルバムを聴く際、まずはスピーカーを通さずにヘッドフォンもしくはイヤフォンで聴いてもらいたいんです。要するにこれ、左右それぞれにトリオ編成の演奏を振っているわけです。

わかりやすいのが、オープニングの「VROOOM」〜「Coda Marine 475」かな。リズムだけ取り出すと、L(左)がシンプルにリズムキープをしていて、R(右)のドラムはオカズを入れまくっている。これ、片方ずつ聴くだけでも新鮮な気持ちでそれぞれの楽曲に向き合えると思います。

そういった演奏面・録音面のみならず、本作は楽曲自体も非常に興味深いものが多い1枚でもあります。いわゆる“メタル・クリムゾン”の代表作『RED』(1974年)と、『DISCIPLINE』(1981年)をはじめとする“ニューウェイヴ・クリムゾン”3部作のいいとこ取りといった内容で、先の「VROOOM」「Coda Marine 475」はメタル・クリムゾンの延長線上、「Dinosaur」はメタルとニューウェイヴの掛け合わせ、「Walking On Air」はニューウェイヴ期の進化系とそれぞれ言えるんじゃないでしょうか。

と同時に、本作の歌モノ楽曲群からはビートルズの影響が見え隠れするんですよね。「Dinosaur」のAメロや「Walking On Air」、あるいは「One Time」といったメロウなナンバーからは、ジョン・レノンの幻影が浮かび上がってきますし。特に「One Time」はリズム感やアレンジこそ現代的ですが、メロディが持つ切なさは初期のエモーショナルさにも通ずるものがあるのでは? そう言ってしまいたくなるほど、過去のクリムゾンのいいとこ取りな1枚なわけです。

しかし、この時期のクリムゾンの良さを本当に知りたいのなら、このスタジオ作品だけでは十分に伝わらないかもしれません。そう、本当に凄みはライブにこそあるのですから。当時は『B’BOOM』(1995年)と題した2枚組ライブアルバムもリリースされており、こちらではアルバム収録曲に加え「Frame By Frame」や「Elephant Talk」、さらには「Red」や「Larks' Tongues In Aspic Part II」も披露されているので、気になる人はぜひ中古盤などでチェックしてみてください(ストリーミングサービスでは配信されていないので……)。

 


▼KING CRIMSON『THRAK』
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2019年8月30日 (金)

TEENAGE FANCLUB『GRAND PRIX』(1995)

1995年5月にリリースされた、TEENAGE FANCLUBの5thアルバム(日本では同年6月発売)。本国イギリスではCreation Recordsから販売されましたが、アメリカや日本ではメジャーのGeffen Records流通3作目のアルバムとしてリリースされています。

個人的に3rdアルバム『BANDWAGONESQUE』(1991年)、そして今作に続く6thアルバム『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』(1997年)は非常に重要な作品で、こと“パワーポップ”というジャンルで語ろうとするとこの『GRAND PRIX』というアルバムは傑作以外の何物でもないなと思っております。

デヴィッド・ビアンコ(オジー・オズボーンAC/DC、THE POSIES、トム・ペティなど)を共同プロデューサーに迎えた本作は、前作『THIRTEEN』(1993年)よりも骨太で、それでいてしなやかさが際立つバンドサウンドを楽しむことができる良番。とにかく曲が良いし、音の質感も“グランジ以降だけど、ブリットポップほどあからさまじゃない”といった印象で、普遍性の強いものに仕上がっているんじゃないかと思っています。事実、リリースから25年近く経った今聴いても、まったく古臭さを感じませんしね。

全13曲中、ノーマン・ブレイク(Vo, G)が5曲、ジェラルド・ラブ(Vo, B)&レイモンド・マッギンレイ(Vo, G)が各4曲というベストバランスで楽曲制作されており、冒頭の「About You」(レイモンド作)、「Sparky's Dream」(ジェラルド作)、「Mellow Doubt」(ノーマン作)という流れも最高。そこから「Don't Look Back」(ジェラルド作)、「Verisimilitude」(レイモンド作)、「Neil Jung」(ノーマン作)という構成も圧巻で、ここまでの6曲(アナログでいうとA面かな)が完璧すぎるんですよ。なんだ、このアルバム。貶すところないし!ってくらいに。

もちろん7曲目「Tears」(ノーマン作)以降の流れも文句なしで、最後のお遊び的組曲「Hardcore / Ballad」(ノーマン作)も締めくくり的方もベストの一言。全13曲で42分というボリュームといい、パーフェクトとしか言いようがありません。もし人生の10枚を選べと言われたら、間違いなくその1枚に本作を選ぶことでしょう。

チャート的にも本作で初めて全英チャートTOP10入り(7位)を果たし、「Mellow Doubt」(全英34位)、「Sparky's Dream」(同40位)、「Neil Jung」(同62位)というヒットシングルも生まれています。前作までが良くも悪くもグランジの波に飲み込まれ不幸に見舞われたTFCですが、ここでギターロップ/ギターポップバンドとしてその地位を確立。続く次作『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』でその人気を決定づけることになります。

 


▼TEENAGE FANCLUB『GRAND PRIX』
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2019年3月21日 (木)

SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』(1995)

『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)を携えたワールドツアー終了後、なかなか再始動しないGUNS N' ROSESに対して痺れを切らしたスラッシュ(G)。ダフ・マッケイガンギルビー・クラークがソロ契約&ソロアルバム発売を果たしたのを機に、ついに自身もソロ活動を本格始動させます。

1994年に結成されたSLASH'S SNAKEPITは、ソロというよりはあくまでバンド名義での活動を主としたもの。このへんにスラッシュのこだわり(何がやりたいのか)が伺えます。集まったメンバーは元JELLYFISHのエリック・ドヴァー(Vo)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)に、ギルビー・クラーク(G)&マット・ソーラム(Dr)というガンズ組。レコーディングにはディジー・リード(Key)も参加しているので、これじゃあ“アクセル・ローズとダフ抜きのガンズ”と言えなくもないですが、そもそもギルビーもマットもディジーもオリジナルメンバーではないので微妙ですが。

こうして、マイク・クリンクを共同プロデューサー、ミックスにスティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロというガンズの諸作品を手がけてきた布陣を迎えて1995年2月に発表されたのが、このデビューアルバム。全米70位とガンズのソロ活動の中ではもっとも成功した1枚で、さすがアクセルと肩を並べる存在と言えます。

イジー・ストラドリンがアーシーでレイドバックしたロックンロール、ダフがパンクを主軸とするならば、スラッシュは土着型の王道アメリカンハードロックが武器と言えるでしょう。実はそれって、ガンズと聞いて我々がまず最初にイメージする要素だったりしませんか? つまり、このアルバムで展開されているサウンドや楽曲スタイルって、「もしガンズが1995年当時にニューアルバムを作ったら、半分くらいはこんな路線になるんじゃないか?」というものなんですよ(もちろん、残り半分はアクセルの色が強いものになるはず)。

ガンズの武器であるスラッシュらしいギターフレーズ&ソロ(と音色)、『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)あたりで聴けたラフだけど硬質なサウンドプロダクションのせいもあって、確かに本作はどことなくガンズっぽいですし、なんなら一連のソロアルバムの中で一番ガンズに近い1枚だと思います。楽曲自体も(のちにアクセルが訴えますが)ガンズの次の作品に向けて作ったものも含まれているようですし。

ただ、すべてがすべてスラッシュひとりで書いた曲ではないですし、大半はエリックとの共作だったり、中にはギルビー単独で書いた曲や、ダフやイジーの名前がクレジットに入った(!)曲も含まれている。そういった意味では本当に「SLASH'S SNAKEPITというバンドのアルバム」を目指したものなんでしょうね。

エリックの歌声はアクセルほどハイトーンでストレートなものではないので、歌を聴いてそこまでガンズを思い浮かべることはないですが、それでも「Beggars & Hangers-On」や「Good To Be Alive」「What Do You Want To Be」のような曲をアクセルが歌ったらどうなるんだろう……というワクワク感も多少あったりして。

全14曲で70分というトータルランニングが『USE YOUR ILLUSION』シリーズに通ずるものがあるのですが、『USE YOUR ILLUSION』と比べると楽曲のカラーがバラエティに富んでいるわけでもないので、さすがに尺的にキツイと感じることも。6分前後および6分超えの曲が4曲も含まれていることから、もうちょっとアレンジ力のある人間がバンドに携わっていたら、さらに完成度の高い内容になったのではないか……そういった意味ではバンドとはいえ、やはりソロはソロなんですね(メインバンドに対するオナニーという意味で)。

この布陣でのSLASH'S SNAKEPITこれが最初で最後。この5年後にスラッシュ以外のメンバーを総入れ替えして2ndアルバム『AIN'T LIFE GRAND』(2000年)を発表していますが、そちらについてはまた別の機会に。



▼SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』
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2018年12月16日 (日)

ANTHRAX『STOMP 442』(1995)

1995年10月にリリースされた、ANTHRAX通算7枚目のオリジナルアルバム。3代目シンガーとしてジョン・ブッシュ(当時ex. ARMORED SAINT)が加わった前作『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)は全米7位、50万枚以上を売り上げる好成績を残しました。が、今作の制作に入ったところでダン・スピッツ(G)が脱退(事実上のクビのようです)。残されたジョン・ブッシュ、スコット・イアン(G)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)の4人を中心にレコーディングされました。

前々作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)で提示した“スピードではなくヘヴィさに特化したスタイル”は、前作『SOUND OF WHITE NOISE』でグランジ以降のモダンヘヴィネス路線を導入することでさらに磨きがかかります。特に、ジョン・ブッシュという個性的なボーカリストを獲得したことで、どんなにポップでキャッチーなメロディの楽曲だろうが、それを彼が歌えばヘヴィになる。この武器を手にしたことは、あの頃のANTHRAXにとってかなり大きかったはずです。

そして、この『STOMP 442』ではモダンヘヴィネス路線にさらに拍車がかかることで、90年代前半に追い求めたスタイルがついに完成の域に達します。ヘヴィさはそのままに、過去2作よりも軽快さが増したことが本作最大の魅力で、オープニングの「Random Acts Of Senseless Violence」から“いい感じ”にアルバムは進行していきます。特に、「Fueled」や「Riding Shotgun」のような楽曲は前作にはなかったタイプで、1995年という時代を振り返ってみてもかなり特徴的な楽曲だったように記憶しています。

ダン・スピッツという個性的なリードギタリストを欠いたものの、本作にはのちにANTHRAXに正式加入するポール・クルック、PANTERAのダイムバッグ・ダレル、スコット・イアンのギターテックだったマイク・テンペスタ(ドラマーのジョン・テンペスタの弟。のちにPOWERMAN 5000に加入)などを迎えることで乗り切ります(「Nothing」や「American Pompeii」「Tester」ではチャーリーもソロを担当)。中でも、やはりダイムバッグ・ダレルが特徴的なギターソロを聴かせる「King Size」と「Riding Shotgun」は必聴モノで、特に後者のオープニングで聴くことのできるスリリングかつメロディアスなソロは“これぞ名演!”と呼べるものではないでしょうか。

正直、このアルバムを最初に聴いたときは「……地味!」と思ったものです。『SOUND OF WHITE NOISE』までのANTHRAXが持っていた派手さが完全に消え失せ、モノトーンで玄人向けなサウンドになってしまった、とガッカリしたのです。ぶっちゃけ、駄作とまでは言わないものの、聴く頻度はかなり低かったと思います。それも、つい最近まで……。

ところが本作、本当に久しぶりに聴き込んだら……めっちゃ良いんですよね。正直、個人的名盤に挙げる『PERSISTENCE OF TIME』や『SOUND OF WHITE NOISE』よりも良いんじゃないか。そんな気すらしてきました。

しかし、本作や『SOUND OF WHITE NOISE』といったElektra Records時代の諸作品を含むジョン・ブッシュ時代のスタジオアルバム全作品を日本ではストリーミングで聴くことができないんです。こんな不幸、あっていいものなんでしょうか……ジョン・ブッシュ再評価および90年代〜ゼロ年代前半のANTHRAX再評価に必要不可欠な要素なのですから、ぜひとも早急に配信を開始してもらいたいものです。



▼ANTHRAX『STOMP 442』
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2018年10月31日 (水)

MARILYN MANSON『SMELLS LIKE CHILDREN』(1995)

1995年10月にリリースされた、MARILYN MANSONのEP。デビューアルバム『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』(1994年)と、続くメガヒット作『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)をつなぐという意味でも、またバンドがブレイクを果たすという点においても非常に重要な1枚となっています。

EPとはいいながらも、16曲(トラック)も用意されており、トータルランニングは54分超え。ボリューム的には完全にフルアルバムのそれなのですが、なぜ本作をEP扱いにしたのか、その理由は16トラック中歌モノが8トラック、うち4トラックが前作『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』収録曲のリミックス、1トラックは『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』収録曲のリテイクバージョン、残り3トラックは新録のカバー曲という内訳だから。ほかの8トラックは曲をつなぐSEやコラージュ的インストとなっています。

ですが、これがオリジナルアルバム並みに楽しめる内容でして。どんよりとしたダークさが全体を覆い、SEを多用したことにより聴きようによってはホラー映画のサウンドトラックのようにも聞こえる。その作風がMARILYN MANSONというバンド、およびマリリン・マンソン(Vo)のキャラクターを見事に表しており、本作で日本デビューを飾ったという点においてはそのイメージ作りに大きな貢献を果たしたのではないでしょうか。

そうそう、本作には現在まで必ず演奏されているEURYTHMICS「Sweet Dreams (Are Made Of This)」の名カバーが収録されているほか、初期のライブには欠かせなかったパティ・スミス「Rock 'N' Roll Nigger」、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス「I Put A Spell On You」と、ダークで彼ららしいアレンジが施されたカバーが楽しめます。

リミックスも原曲を知らなければ「こういうものなんだ」と思ってしまうほどに自然な作り。新録のカバー曲含め、MARILYN MANSONの次章が大いに期待できるものであることが、この1枚から存分に感じられるはずです。

それもこれも、デビュー時からのプロデューサーであるトレント・レズナー(NINE INCH NAILS)とのコラボレーションが見事にハマったからこそ。のちの不仲を考えると、このあたりから『ANTICHRIST SUPERSTAR』くらいまでがまさに奇跡のタイミングだったのかもしれませんね。

本作はEPながら全米31位という好記録を樹立(前作はチャートインせず)。ミリオンセールスを記録しています。続く『ANTICHRIST SUPERSTAR』での大ブレイクへの下地が、ここで完全に出来上がったわけです



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2018年9月29日 (土)

GARBAGE『GARBAGE』(1995)

NIRVANAの『NEVERMIND』(1991年)やTHE SMASHING PUMPKINSの『SIAMESE DREAM』(1993年)などで知名度を上げたプロデューサー/エンジニアのブッチ・ヴィグ(Dr, EFX)が、仕事仲間のスティーヴ・マーカー(B)、デューク・エリクソン(G)、そして紅一点シャーリー・マンソン(Vo)とともに結成したUSバンドGARBAGE。彼らが1995年8月にリリースしたデビューアルバムが、バンド名を冠したタイトルの本作です。

本作は全米20位(200万枚以上)、全英6位とこの時点ではイギリスでの人気が高く、シングルもアメリカでは「Vow」(全米97位)、「Only Happy When It Rains」(同55位)、「Stupid Girl」(同24位)という結果に対し、イギリスでは「Vow」(全英138位)、「Only Happy When It Rains」(同29位)、「Queer」(同13位)、「Stupid Girl」(同4位)、「Milk」(同10位)とヒットに恵まれています。また、アルバム未収録曲「Subhuman」もイギリスではシングルヒット(同50位)と、かなり景気が良いのがわかります。

さて、気になるサウンドですが、“グランジらしさ”をところどころに感じさせつつも、実際にはもっとクラブミュージックのカラーが強い作風。ギターを軸に曲作りをしているわけではなく、あくまで芯にあるのはシャーリーの歌。そこにスタジオワークに長けたメンバーたちがグランジやオルタナティヴロック、シューゲイザー、トリップホップなどさまざまな装飾を付け加えていくわけです。

ちょうどアメリカではグランジが死に、ベックなどヒップホップけと傾倒したダウナーなサウンドが人気を博し、イギリスではOASISBLURを筆頭としたブリットポップブームが勃発し、同時にUNDERWORLDMASSIVE ATTACKをはじめとするダンスミュージックが盛り上がり始めていた。そんな中登場したGARBAGEのサウンドは、まさしく“ちょうどいい”加減の内容だったのではないでしょうか。

また、シャーリー・マンソンのルックス……女性的な美しさと、どこかドラァグクイーン的な側面も持ち合わせた、カリスマ的な佇まいと歌声も、その“ちょうどよさ”に拍車をかけたような気がします。

今聴いても、本当にカッコいいアルバムですよね。オープニングの「Supervixen」のイントロやグランジならではの強弱法を用いたアレンジ、「Queer」の気怠さ、「Only Happy When It Rains」の切なさ、「Not My Idea」のデジロックっぽさ、「Stupid Girl」のポップさ、そして「Milk」のトリップホップ的チルアウト感……寸分の隙もない、完璧なデビューアルバムだと思います。

が、こんなのはほんの序の口。彼らは続く『VERSION 2.0』(1998年)でさらなる音楽的飛躍を遂げることになります。



▼GARBAGE『GARBAGE』
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