2018年10月31日 (水)

MARILYN MANSON『SMELLS LIKE CHILDREN』(1995)

1995年10月にリリースされた、MARILYN MANSONのEP。デビューアルバム『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』(1994年)と、続くメガヒット作『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)をつなぐという意味でも、またバンドがブレイクを果たすという点においても非常に重要な1枚となっています。

EPとはいいながらも、16曲(トラック)も用意されており、トータルランニングは54分超え。ボリューム的には完全にフルアルバムのそれなのですが、なぜ本作をEP扱いにしたのか、その理由は16トラック中歌モノが8トラック、うち4トラックが前作『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』収録曲のリミックス、1トラックは『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』収録曲のリテイクバージョン、残り3トラックは新録のカバー曲という内訳だから。ほかの8トラックは曲をつなぐSEやコラージュ的インストとなっています。

ですが、これがオリジナルアルバム並みに楽しめる内容でして。どんよりとしたダークさが全体を覆い、SEを多用したことにより聴きようによってはホラー映画のサウンドトラックのようにも聞こえる。その作風がMARILYN MANSONというバンド、およびマリリン・マンソン(Vo)のキャラクターを見事に表しており、本作で日本デビューを飾ったという点においてはそのイメージ作りに大きな貢献を果たしたのではないでしょうか。

そうそう、本作には現在まで必ず演奏されているEURYTHMICS「Sweet Dreams (Are Made Of This)」の名カバーが収録されているほか、初期のライブには欠かせなかったパティ・スミス「Rock 'N' Roll Nigger」、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス「I Put A Spell On You」と、ダークで彼ららしいアレンジが施されたカバーが楽しめます。

リミックスも原曲を知らなければ「こういうものなんだ」と思ってしまうほどに自然な作り。新録のカバー曲含め、MARILYN MANSONの次章が大いに期待できるものであることが、この1枚から存分に感じられるはずです。

それもこれも、デビュー時からのプロデューサーであるトレント・レズナー(NINE INCH NAILS)とのコラボレーションが見事にハマったからこそ。のちの不仲を考えると、このあたりから『ANTICHRIST SUPERSTAR』くらいまでがまさに奇跡のタイミングだったのかもしれませんね。

本作はEPながら全米31位という好記録を樹立(前作はチャートインせず)。ミリオンセールスを記録しています。続く『ANTICHRIST SUPERSTAR』での大ブレイクへの下地が、ここで完全に出来上がったわけです



▼MARILYN MANSON『SMELLS LIKE CHILDREN』
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投稿: 2018 10 31 12:00 午前 [1995年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2018年9月29日 (土)

GARBAGE『GARBAGE』(1995)

NIRVANAの『NEVERMIND』(1991年)やTHE SMASHING PUMPKINSの『SIAMESE DREAM』(1993年)などで知名度を上げたプロデューサー/エンジニアのブッチ・ヴィグ(Dr, EFX)が、仕事仲間のスティーヴ・マーカー(B)、デューク・エリクソン(G)、そして紅一点シャーリー・マンソン(Vo)とともに結成したUSバンドGARBAGE。彼らが1995年8月にリリースしたデビューアルバムが、バンド名を冠したタイトルの本作です。

本作は全米20位(200万枚以上)、全英6位とこの時点ではイギリスでの人気が高く、シングルもアメリカでは「Vow」(全米97位)、「Only Happy When It Rains」(同55位)、「Stupid Girl」(同24位)という結果に対し、イギリスでは「Vow」(全英138位)、「Only Happy When It Rains」(同29位)、「Queer」(同13位)、「Stupid Girl」(同4位)、「Milk」(同10位)とヒットに恵まれています。また、アルバム未収録曲「Subhuman」もイギリスではシングルヒット(同50位)と、かなり景気が良いのがわかります。

さて、気になるサウンドですが、“グランジらしさ”をところどころに感じさせつつも、実際にはもっとクラブミュージックのカラーが強い作風。ギターを軸に曲作りをしているわけではなく、あくまで芯にあるのはシャーリーの歌。そこにスタジオワークに長けたメンバーたちがグランジやオルタナティヴロック、シューゲイザー、トリップホップなどさまざまな装飾を付け加えていくわけです。

ちょうどアメリカではグランジが死に、ベックなどヒップホップけと傾倒したダウナーなサウンドが人気を博し、イギリスではOASISBLURを筆頭としたブリットポップブームが勃発し、同時にUNDERWORLDMASSIVE ATTACKをはじめとするダンスミュージックが盛り上がり始めていた。そんな中登場したGARBAGEのサウンドは、まさしく“ちょうどいい”加減の内容だったのではないでしょうか。

また、シャーリー・マンソンのルックス……女性的な美しさと、どこかドラァグクイーン的な側面も持ち合わせた、カリスマ的な佇まいと歌声も、その“ちょうどよさ”に拍車をかけたような気がします。

今聴いても、本当にカッコいいアルバムですよね。オープニングの「Supervixen」のイントロやグランジならではの強弱法を用いたアレンジ、「Queer」の気怠さ、「Only Happy When It Rains」の切なさ、「Not My Idea」のデジロックっぽさ、「Stupid Girl」のポップさ、そして「Milk」のトリップホップ的チルアウト感……寸分の隙もない、完璧なデビューアルバムだと思います。

が、こんなのはほんの序の口。彼らは続く『VERSION 2.0』(1998年)でさらなる音楽的飛躍を遂げることになります。



▼GARBAGE『GARBAGE』
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投稿: 2018 09 29 12:00 午前 [1995年の作品, Garbage] | 固定リンク

2018年9月28日 (金)

SKUNK ANANSIE『PARANOID & SUNBURST』(1995)

1995年9月リリースの、SKUNK ANANSIEのデビューアルバム(日本では同年11月にリリース)。プロデューサーはシルヴィア・マッシー(TOOLSYSTEM OF A DOWNRED HOT CHILI PEPPERSなど)が担当。「Selling Jesus」(全英46位)、「I Can Dream」(同41位)、「Charity」(同40位/1996年の再発時は20位)、「Weak」(同20位)とヒットシングルが多数生まれ、アルバム自体も全英8位まで上昇するヒット作となりました。

当時のメンバーはスキン(Vo)、エース(G)、キャス(B)の3人。レコーディングまでロビー・フランスというドラマーが参加していましたが、発売を前に脱退。なので、ジャケットには3人しか写っていないわけです。ちなみに、本作発表後に元LITTLE ANGELS、のちにFEEDERにも加わるマーク・リチャードソンが加入しています。

このバンドはRAGE AGAINST THE MACHINE以降のファンクがかったヘヴィロックをベースに、ときにダブやレゲエ、エレクトロの要素も加えてバリエーションを出すサウンドスタイルと、スキンの圧倒的な歌唱力とその存在感の強いヴィジュアルが魅力。デビュー作の時点ではサウンド的にもっと焦点が定まっているというか、ヘヴィロック色が全作品中もっとも高い1枚かと思います。

かつ、歌詞は非常にポリティカルであったり、宗教問題を扱ったりと、サウンドともども攻撃的。アルバムのオープニングからして「Selling Jesus」ですしね。この曲を筆頭に、ベースがバキバキいいながらグルーヴィーにのたうちまわるサウンドは、本当に気持ちいい。

かと思えば、「Charity」のようにソウルフルなバラード、「Weak」みたいに比較的落ち着いたートーンのミディアムナンバーも収められている。攻撃一辺倒ではなく、ちゃんと音楽として聴かせることも忘れていない(当たり前か)。落ち着いたトーンからジワジワと熱量が上がっていく「100 Ways To Be A Good Girl」も素晴らしい。

RATMみたいにラップで表現しているわけではなく、スキンという女性シンガーが圧巻の歌唱力で表現することで伝わるものもあるはず。残念ながら歌詞・対訳を読まねばその詳細まで理解することは、我々日本人には難しいことかもしれません。だからこそ、本作を含む一連の作品が廃盤状態なのは非常に惜しいところ。もちろん中古店をくまなく探せば見つかると思いますが、本作リリース当時はここ日本ではブリットポップブーム。同じイギリス出身でもこの手のバンドは敬遠されていた記憶があるので、とにかくじっくり探してみることをオススメします。

で、本作が気に入れば次作『STOOSH』(1996年)はもっと気にいるでしょうし、3rdアルバム『POST ORGASMIC CHILL』(1999年)ではその音楽的成長に驚くはずです。



▼SKUNK ANANSIE『PARANOID & SUNBURST』
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投稿: 2018 09 28 12:00 午前 [1995年の作品, Skunk Anansie] | 固定リンク

2018年9月27日 (木)

THERAPY?『INFERNAL LOVE』(1995)

1995年6月にリリースされた、THERAPY?のメジャー3rdアルバム(日本では同年7月、アメリカでは翌1996年1月発売)。チャート/セールス的に大成功を収めた前作『TROUBLEGUM』(1994年)から1年半という短いスパンで制作された本作では、プロデューサーにアル・クレイ(THE WiLDHEARTSREEFフランク・ブラックなど)を迎え、さらに曲と曲をつなぐサウンドエフェクトをクラブ系アーティストのデヴィッド・ホルムスが担当。ポスト・グランジ的なザクザク感と疾走感が印象的だった前作とは異なる、ムーディで閉塞感の強いダークな作品を作り上げることに成功しています。

イギリス国内ではブリットポップ・ムーブメントが勃発し、猫も杓子も“第二のOASIS”、“新たなBLUR”を求め続けた1995年。そんな中、THERAPY?はもうひとつの新たなムーブメント……UNDERWORLDTHE PRODIGYが築き上げようとしていたエレクトロミュージックの世界へと接近……というほどでもないですが、旬なDJ(デヴィッド・ホルムス)を迎えることで、彼らの根底にあるダークでゴシックな世界観をより強化させました。もともと、彼らのメロディにはそういった影の部分が備わっていましたし、そこに特化したアルバムを作ろうと考えることは、ごく自然な流れだったのでしょう。

前作で得た手応えから、バンドはストリングスやホーンセクションを導入することにもまったく躊躇しません。リードシングル「Stories」のブラスなんて、最初に聴いたときはひっくり返りましたけど(笑)、今では「これがないと物足りない」と感じるくらいには馴染みましたし、「Bowels Of Love」や「Diane」のストリングスも絶対に必要な要素だと断言できるくらい重要ですしライブでの再現よりも、アルバムとしての完成度を考えた結果の選択肢。僕は全面支持したいな。

楽曲面でも、前作にあった陽の要素は完全に消え失せ、全編マイナーコードの切ないメロディばかり(メジャーコードの「Bad Mother」ですら物悲しく聴こえてくるし)。そういった楽曲を盛り上げる曲間のサウンドエフェクトは、確かに賛否あると思います。実はこれ、日本盤ではすべてカットされているんですよね。普通に1曲終わったらすぐ次の曲という具合に。リリース当時、僕は日本盤を購入して、ずっとそれを聴いてきたものですから、数年前にデラックスエディションが発売された際にリマスター盤の『INFERNAL LOVE』で初めてサウンドエフェクト入り(オリジナルのイギリス盤)を聴いたときには「……えっ?」と驚いたものです。

もちろん、日本盤のような聞かせ方も悪いわけではなく、最初に聴いたのがこっちだったらこれが当たり前になるわけですし。でも、作者の意図を考えたら、正解はイギリス盤のエフェクトありのほうなんですよね。最近はもっぱらオリジナル盤のほうばかりを聴いているので、完全にそっちに馴染みましたが(ストリーミングに置かれているのは、オリジナル盤のほう)。

ちなみに、本作でチェロを弾いていたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)はそのまま本作のツアーに参加し、のちにギター&チェロ担当でバンドに加入。THERAPY?は次作『SEMI-DETACHED』(1998年)から4人編成バンドとして活動していくことになります。



▼THERAPY?『INFERNAL LOVE』
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投稿: 2018 09 27 12:00 午前 [1995年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2018年7月31日 (火)

VAN HALEN『BALANCE』(1995)

1995年1月にリリースされたVAN HALEN通算10枚目のスタジオアルバム。サミー・ヘイガー(Vo)参加作としては4作目にして、最後のオリジナル作品となります。

このバンドの興味深いところは、HR/HM冬の時代に突入した90年代前半〜半ばも好セールスを維持しているところ。グランジ前夜に発表された前作『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年)は全米1位を獲得しただけでなく、アメリカだけで300万枚を超えるセールスを記録。続く本作も全米No.1に輝き、同じく300万枚以上も売り上げています。ただ、前作以降は大きなシングルヒットには恵まれず、本作からは「Can't Stop Lovin' You」が全米30位、「Not Enought」が全米97位と低調で終わっています(リード曲「Don't Tell Me (What Love Can Do)」は全米メインストリームロックチャートで1位に輝いていますが)。

前作から80年代の派手なアリーナロック色に、若干マニアック(玄人好み)なテイストが加わり、意外と時代に呼応したスタイルを確立させていた彼ら。その作風は本作でも引き継がれており、例えば「Don't Tell Me (What Love Can Do)」でのダークな曲調は従来の持ち味であると同時に“グランジ以降”を思わせるものでもあります。

かと思えば、軽やかでポップなアメリカンハードロック「Can't Stop Lovin' You」があったり、じっくり聴かせるピアノバラード「Not Enought」もある。と同時に、本作には珍しくインストナンバーが3曲も含まれている。「Strung Out」は次曲「Not Enough」への伏線的な小楽曲ですが、「Doin' Time」はアレックス・ヴァン・ヘイレン(Dr)のプレイを前面に打ち出したパーカッシヴなインスト、続く「Baluchitherium」はバンドスタイルで演奏される本格的なインストゥルメンタルナンバーなのです。サミー・ヘイガー加入後は“歌モノ”のイメージがより強まっていましたが、3曲中2曲がインタールード的なものであるとはいえこうした楽曲が増えていることに、バンドとして変革期を迎えつつあるのかな、なんてことを当時考えたことを思い出しました。

もちろん、それ以外にはサミーのパワフルなボーカルやエディ・ヴァン・ヘイレン(G)の圧倒的ギタープレイが大々的にフィーチャーされた“歌モノ”ナンバーがずらりと並び、オープニングの「The Seventh Seal」からラストのドラマチックバラード「Feelin'」までの全12曲(トータル53分)、するっと聴けてしまいます。『5150』(1986年)以降の“VAN HAGAR”作品を好きなリスナーなら文句なしで楽しめる1枚だと思います。

ちなみに、本作のプロデュースを手がけたのはかのブルース・フェアバーン。輸入盤のみに採用されたあのジャケットのみならず、この組み合わせにも当時は驚かされたものです。



▼VAN HALEN『BALANCE』
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投稿: 2018 07 31 12:00 午前 [1995年の作品, Van Halen] | 固定リンク

2018年7月28日 (土)

DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』(1995)

1995年9月に発表された、デヴィッド・ボウイ通算19枚目のスタジオアルバム。TIN MACHINEでの失敗を経て、前作『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)で再びソロアーティストとして活動再開したボウイは、早くも多作モードに突入。70年代後半のベルリン三部作(『LOW』『HEROES』『LODGER』)で共作したブライアン・イーノと18年ぶりにタッグを組み、コンセプチュアルかつモダンな作品を完成させます。

全19曲で75分という収録内容は、アナログ時代なら2枚組の大作と受け取られましたが、CD主流の90年代半ばではこのボリュームすらもどこか「当たり前」と思わされてしまうところがあったり、なかったり。まあこういったストーリー性の高い作品も、盤を裏返したり取り替えたりしなくても80分近くぶっ通し再生できてしまうCDならではと言えるでしょう。時代の恩恵受けまくりです。

前作でみせたジャジーなテイストを残しつつも、ここで全体を覆うのはエレクトリックでインダストリアルで不穏な空気感。NINE INCH NAILSのようなアーティストがもてはやされていた中では、この取捨選択は“流行りに乗っかった”と言われてしまいがちですが、じっくり腰を据えて聴くと流行りの一言では済まされない、徹底的に作り込まれたディープな世界観を楽しむことができます。

そういえば、この頃のボウイは海外ドラマ『ツイン・ピークス』の劇場版『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』に出演するなど、役者としても活躍していた時代。また、そういったダークでサイコな作品が世界的にウケている、そういうものが求められていることを考えると、ボウイがこのコンセプトアルバムの世界に飛び込んだのは納得できるものがあるのではないでしょうか。そういえば、本作からのシングル「The Hearts Filthy Lesson」が映画『セブン』のエンディングテーマに採用されたのも、今となってはなるほどと思ってしまいます。

のちにPET SHOP BOYSがリミックスしたダンスバージョンがヒットした「Hallo Spaceboy」は、ヘヴィな原曲もカッコいいですし、前作の延長線上にある「A Small Plot Of Land」や「The Motel」にもゾクゾクさせられる。かと思えばデジロック調の「No Control」があったり、ベルリン三部作にも通ずるスペーシーな「Wishful Beginning」もあるし、まんまNINな「I'm Deranged」もあり、最後はどこかピースフルな「Strangers When We Meet」で幕を降ろす……いや、本当はここで終わらず、このコンセプト作品は5部作となるはずだったんですけどね。アルバムタイトルのナンバリングはその名残り。でも、本作が思うほどヒットしなかったことから、続編は後回しに。結果、次章となるはずだった『2. INSIDE』は制作されることなく、ボウイはこの世を去るのでした。

ボウイ亡き今、このアルバムを冷静に語ることは難しいのかもしれませんが、個人的にはリリース当時から大好きでした。何も彼が時代に擦り寄るのは今に始まったことでもないですしね。それに、このダークさは今みたいな時代こそ評価されるべきとも思うのですが、いかがでしょう。



▼DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』
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投稿: 2018 07 28 12:00 午前 [1995年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2018年5月27日 (日)

DANGER DANGER『DAWN』(1995)

DANGER DANGERが1995年初夏に発表した、通算3作目のスタジオアルバム。ここ日本では1年近く遅れた1996年5月に、ようやくリリースされています。

本作の参加メンバーはブルーノ・ラヴェル(B, G)、スティーヴ・ウェスト(Dr)、そして新加入のポール・レイン(Vo)の3人。過去2作でフロントマンを務めたテッド・ポーリー(Vo)は1993年に解雇され、これに前後するようにアンディ・ティモンズ(G)とケイシー・スミス(Key)もバンドを脱退しています。

実はテッドを含む編成で『COCKROACH』と題したアルバムを制作していたものの、完成間際でクビに。新たにポールを迎えて録音し直していたところ、テッドから裁判を起こされたため、この『COCKROACH』はお蔵入りとなってしまいます(2001年にようやく、テッド版とポール版の2枚組で日の目を見ることになります)。

なので、この『DAWN』というアルバムは実質4作目になるわけですが、『COCKROACH』の中で試そうとしたモダンな作風……グランジ以降、モダン・ヘヴィネス未満な路線にフィーチャーし、大々的に展開されています。

DANGER DANGERと言われると、あのパーティロック路線が頭に思い浮かぶわけですが、本作ではそれとは真逆の、あの時代ならではのダークなスタイルが確立されているわけです。そりゃあファンから反感を買いますよね。

ところが、このアルバム。意外と良いんですよ。まず、ポール・レインの歌が素晴らしい。この人、1990年に『STICK IT IN YOUR EAR』というソロアルバムを発表しているんですが、これが名盤でして。当時日本盤も発売されており、僕も当時かなり聴きまくったものです。

その彼が、本作でも力強くしっかりと聴かせるボーカルを提供してくれたことで、アルバムの軸がしっかりしているように感じられる。ヘヴィでサイケデリックな楽曲が中心ですが、単なる亜流とは思えないくらいのクオリティなんじゃないかと思うのです。

個人的にはグルーヴィーな「Mother Mercy」や、サイケなミディアムチューン「Sorry」、アコースティックバラード「Goodbye」などがツボ。もちろんそれ以外の楽曲もよくできていると思います。DANGER DANGERというバンド名にキラキラ感を求める層には無縁のアルバムかと思いますが……「過去のイメージからしたら駄作」で終わらせないためにも、偏見なくヘヴィな音楽を楽しめるという人にはぜひ一度触れていただきたい良作だと思っています。



▼DANGER DANGER『DAWN』
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投稿: 2018 05 27 12:00 午前 [1995年の作品, Danger Danger] | 固定リンク

2018年5月26日 (土)

FIREHOUSE『3』(1995)

90年代初頭のグランジムーブメントによりメジャーシーンから一気に駆逐された、80年代後半から90年前後にデビューしたHR/HMバンド。そんな中、1990年にメジャーデビューしながらも90年代後半までかろうじて生き残ったのが、今回紹介するFIREHOUSE。彼らはデビューアルバム『FIREHOUSE』が全米21位、200万枚を超えるセールスを記録し、続く2ndアルバム『HOLD YOUR FIRE』(1992年)も全米23位、50万枚以上も売り上げまずまずの成功を収めています。

前作から約3年ぶりとなる3rdアルバム『3』は、グランジムーブメントもひと段落し始めた1995年4月に発売。アルバム自体は最高66位と過去2作には及びませんが、シングルカットしたバラード「I Live My Life For You」は全米26位とスマッシュヒットを記録。過去の名バラード「Love Of A Lifetime」(全米5位)、「When I Look Into Your Eyes」(全米8位)にも匹敵する1曲となり、ピュアHR/HMに厳しい時代を生き抜いたわけです。

では、アルバム時代もそんなピュアHR/HMなのかと言われると……グランジの影響が少なからず感じられる1枚なのです。

オープニングの「Love Is A Dangerous Thing」こそダイナミックなハードロックで、過去2作の作り込まれた作風とは異なる、時代に合わせたかのような生々しいサウンドメイキングでリスナーを良い意味で驚かせてくれます。が、続く「What's Wrong」は受け取り手によっては評価の分かれる、グランジ的なヘヴィチューンで別の意味で驚かせてくれるのです。このリフの刻み方は完全に“あっち側”の“それ”ですもんね。

でもね、アルバムの流れで聴くとそこまで悪くない……むしろ良いアクセントになっているんじゃないでしょうか。だって、“いかにも”な“それ”はこれ1曲だけなのですから。

そのほかの楽曲は、過去2作とはまた違ったタイプのアメリカンハードロック。とはいえ、聴けばそれがFIREHOUSEの楽曲だとちゃんとわかるものに仕上げられているのだから特に問題なし。「Trying To Make A Living」とか「Temptation」みたいなミドルテンポの楽曲は以前の彼らにもあったタイプだし、「Two Sides」は日本人が好みそうなメロを持った歌謡メタル系な1曲だしね。「I Live My Life For You」のほかにも「Here For You」「No One At All」というアコースティックバラードもあるし、HR/HMファンには「Get A Life」といったアップチューンも存在する。

あれ、もしかして過去2作よりも良いんじゃね?と感じる人も少なくないんじゃないでしょうかね。事実、僕は彼らの初期3作中で本作がもっとも好きなんですよね。サウンドの質感や楽曲のバラエティ含め、非常に好みのど真ん中を突いてくるので(1stアルバムは楽曲こそ完璧だけど、あのサウンドメイキングがどうにも苦手で)。

グランジの影響下にあるメタルやその色を取り込んで生き残ろうとしたバンドの作品は、当時こそクソだの邪道だのとバカにされましたが、あれから20年以上経った今だからこそひとつのHR/HM作品としてしっかり評価してもいいんじゃないか。そう思う今日この頃です。



▼FIREHOUSE『3』
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投稿: 2018 05 26 12:00 午前 [1995年の作品, Firehouse] | 固定リンク

2018年4月21日 (土)

HAREM SCAREM『VOICE OF REASON』(1995)

カナダ出身の4人組バンドHAREM SCAREMの3rdアルバム。前作『MOOD SWING』(1993年)がここ日本で高く評価されたこともあり、続く今作にも大きな期待が寄せられましたが、いざ完成したアルバムは大方の期待を裏切るような作風でした。

グランジやモダンヘヴィネス系がロックシーンに台頭し、メロディアスでビッグプロダクションがぴったりな“産業ハードロック”が時代遅れと言われ始めた時期に登場した『MOOD SWING』は、そういったガヤを吹き飛ばすほど完成度の高い1枚でした。特にここ日本では後追いで発売されたデビューアルバムも人気を博し、HAREM SCAREMといえばこの2枚!みたいなイメージが出来上がったタイミングに届けられた、待望のニューアルバム……きっと多くのファンが「HAREM SCAREMよ、おまえもか!」と落胆したんでしょうね。

『MOOD SWING』と比べたらだいぶ落ち着いた、全体を覆うダークめな空気感は確かに90年代前半特有のものだったのかもしれません。しかし、別に彼らはグランジのおこぼれをもらおうと思ってこういうサウンドにシフトチェンジしたわけではなく、あくまでこの要素も自分たちのルーツの中に存在しているものとして、前作と違うものを目指した結果がこれだっただけなんじゃなかろうか。今にしてもるとそう思うわけです。

さて、本当にこのアルバムは“HAREM SCAREMらしくない”作品なのでしょうか?

僕、そこが常々疑問だったんです。だってこれ、めっちゃ良いアルバムじゃないですか? 確かに『MOOD SWING』は完璧なまでに時代と逆行した、80年代に思いを馳せた完全無欠のハードロックアルバムだったと思います。では、今作はどうかというと、逆に時代に寄り添いつつ自分たちがやりたいことに全力でトライした。やろうとしたこと自体は『MOOD SWING』もこの『VOICE OF REASON』もほぼ同じだったはずなんです。ただ、作品をまとめ上げるうえでのベクトルがまったく逆だっただけ。それによって、当時グランジのように粗暴なサウンドに拒否反応を示していた従来のHR/HMリスナーから敬遠されてしまった。そういう不幸な1枚だったのではないでしょうか。

オープニングを飾る「Voice Of Reason」からシングルカットされた「Blue」、さらに冒頭のピアノの音色が醸し出す切なさが半端ない「Warming A Frozen Rose」という流れも非常に気持ち良いし、なによりもその「Blue」はHAREM SCAREMらしさに満ち溢れた完成度の高い1曲ですし。アルバム後半も「Breathing Sand」を筆頭に、どこかシアトリカルなテイストが感じられる楽曲が多く、本当に聴き応えのある作品。イントロこそダークだけど、「Candle」もメロディアスかつダイナミックな1曲ですし……なんでこれが嫌われなくちゃいけないんだろう……。

1stアルバム『HAREM SCAREM』(1991年)と2枚目『MOOD SWING』のインパクトが強かった、しかもその2枚のイメージが強かったおかげで、3枚目のトライが受け入れられなかった。すべて時代のせいなのか、それとも……今こそ再評価してほしい1枚です。あと、デジタル配信もぜひお願いします!



▼HAREM SCAREM『VOICE OF REASON』
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投稿: 2018 04 21 12:00 午前 [1995年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2018年4月20日 (金)

EXTREME『WAITING FOR THE PUNCHLINE』(1995)

1995年1月にリリースされた、EXTREME通算4作目のスタジオアルバム。大ブレイクのきっかけとなった2ndアルバム『PORNOGRAFFITTI』(1990年)が全米10位(200万枚超)、続く3rdアルバム『III SIDES TO EVERY STORY』(1992年)も全米10位(50万枚超)とそれなりの成功を収めますが、時代の潮流がHR/HMからグランジ的なものへと移行したことから人気も下降気味に。そういった中で、この4thアルバムの制作途中でポール・ギアリー(Dr)が脱退するというハプニングもあり、バンドとして苦境に立たされる中なんとか完成まで漕ぎ着けた1枚といえるでしょう。

とはいえ、アルバム自体はそういったネガティブな要素を吹き飛ばすような内容……でもないか(苦笑)。ええ、過去3作にあった“陽”の要素は完全に影を潜め、ひたすらダークな空気で覆われたヘヴィでザラついた作風なのです。それこそ、彼らの代名詞的な要素であった、ファンクメタルの要素も皆無。ダンサブルなカラーは若干あるものの、ファンクのそれとは一線を画するものですし。なので、このバンドに何を求めるかによっては、本作の評価は大きく異なるかもしれません。

もちろん、1枚のロックアルバムとしては非常に聴き応えのある強力なもので、例えば過去2作がAEROSMITHQUEEN的な溌剌とした“パッション命!”なアルバムだとしたら、本作はLED ZEPPELINあたりが持ち合わせた、音楽的実験と向き合いながら己の内面をサウンドで構築していく作法が用いられているような気がします。

それもあってか、サウンドプロダクションも80年代的なふくよかなものとは異なり、90年代前半らしいドライ&デッドな質感。ヌーノ・ベッテンコート(G)のギターサウンドのざらつき加減は好き嫌いが分かれそうですが、このアルバムに関して言えば非常にマッチしたものだと思うんです。プレイ自体も彼らしいテクニカルさを随所に織り交ぜているものの、派手になりすぎない“加減のわかった”奏法ですし。

ポールの後任として加入したのは、のちにDREAM THEATERに加入することになるマイク・マンジーニ。本作ではシングルカットされた「Hip Today」や「Leave Me Alone」「No Respect」の3曲のみに参加していますが、「Hip Today」でのシンプルながらも随所に派手なフィルをフィーチャーしたドラミングはキラリと光るものがあるし、なによりも「No Respect」の派手さは圧巻。特にヌーノの流麗なアコースティックギタープレイを味わえるから「Leave Me Alone」へ、そのまま「No Respect」へと続く構成は本作のハイライトと言えるでしょう。

ゲイリー・シェローン(Vo)のボーカルもこういったダークめのサウンドに合っていると思うし、何気にEXTREMEにおける裏名盤なんじゃないでしょうか。『PORNOGRAFFITTI』と双璧をなす、陽と陰を表す2作品だと思います。



▼EXTREME『WAITING FOR THE PUNCHLINE』
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投稿: 2018 04 20 12:00 午前 [1995年の作品, Extreme] | 固定リンク

2018年4月16日 (月)

ENUFF Z'NUFF『TWEAKED』(1995)

日本では1994年11月に、海外では翌1995年にリリースされたENUFF Z'NUFFの4thオリジナルアルバム。1994年5月に発売された、初期のデモ音源をまとめた『1985』は当初企画アルバム扱いでしたが、のちにこちらが4thアルバムとして認識されているようになり、この『TWEAKED』が5thアルバムに繰り下げとなっています。

メジャーのAtlantic Recordsからデビューし、2枚のアルバムを発表後、3枚目の『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』(1993年)をArista Recordsからリリースするも、1枚で契約終了。『1985』からインディーズに拠点を移し、この『TWEAKED』もインディーズからのリリースとなりました。

それもあってなのか、本作のサウンドは過去3枚と比較すると非常にチープで生々しいプロダクションです。もちろん、80年代的なビッグプロダクションが時代遅れになっていたというのもあるでしょうが、それにしてももう少しどうにかできなかったのかなと思うものの、今作が今後リマスターなりされる機会もまずないでしょうから、これはこういうものとして受け取ることにしましょう。

内容についてですが、録り下ろしオリジナル作品として前作にあたる『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』に多少孕んでいたグランジなどダークなロックからの影響は本作にも見え隠れしますが、当時言われたほどグランジ的なカラーは今聴くと感じられない気がしていて。むしろ、2ndアルバム『STRENGTH』(1991年)にあったダークさに近いようなイメージかもしれません。要するに、このカラーって彼らが本来持ち合わせていたもの……例えばビートルズにおけるジョン・レノンの色だったり、CHEAP TRICKのヘヴィさだったり、そういうものと同質なんじゃないかなと。

そして、ダークかつヘヴィだからといってポップではない、なんてこともなく。どの曲にも彼ららしいメロディアスさがしっかり混在していますし、中には「My Dear Dream」や「We're All Alright」「It's 2 Late」みたいな極上のポップチューンも含まれている。すべてがすべて、この3曲のようではないけれど、それでもENUFF Z'NUFFというバンドの本質的な部分はしっかり感じられる。いや、むしろこのバンドが本来どういうルーツを持つバンドなのかが、初期3作、さらにはデモ音源集『1985』以上に色濃く刻まれているのではないか。その後彼らが進んだ道を認識すればするほど、この『TWEAKED』という作品は非常に重要な1枚だったのではないかと思うわけです。

冒頭の「Stoned」から重々しいですが、そんな中にもキラリと光るメロディアスさとセンスがしっかり感じられる。曲によっては従来のグラマラスさに加え、ブルースフィーリングあふれるナンバーも混在しており、内向的な作風に花を添えています。『STRENGTH』を好むようなリスナーにはうってつけの1枚ではないでしょうか(だからこそ、サウンドプロダクションがもう少し……ね。苦笑)。

最後に、ジャケットについても。本作は2タイプのジャケットが存在しており、初版はアイルランドの葬儀の様子をとらえた写真が用いられており、作品本来がもつダークさと相まって不気味さを醸し出しています。が、のちの再発では不気味かつサイケなイラストが用いられており、こちらもこちらでどうかと思うもの。僕は初版のジャケが気に入っています。



▼ENUFF Z'NUFF『TWEAKED』
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投稿: 2018 04 16 12:00 午前 [1995年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2018年3月 3日 (土)

THE SMASHING PUMPKINS『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995)

1995年10月にリリースされたSMASHING PUMPKINSの3rdアルバム。CD2枚組、全28曲から構成されたトータル120分にもおよぶ大作で、収録されている楽曲のタイプもさまざまという、まさにビリー・コーガン(Vo, G)というバンドの頭脳がそのときできることをすべて詰め込んだかのような作品集です。本作は初の全米No.1を獲得し、トータル500万セット以上(1000万枚換算)を売り上げ、「Bullet With Butterfly Wings」(全米22位)、「1979」(全米12位)、「Tonight, Tonigt」(全米36位)、「Thirty-Three」(全米39位)という数多くのヒットシングルを生み出しました。

前作『SIAMESE DREAM』(1993年)の時点で、単なるオルタナ/グランジバンドとは異なるポピュラリティを携えたバンドであることを主張してきたスマパン。その後、1994年4月にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺したことを経て、シアトルを中心にしたグランジムーブメントは衰退し始め、そのグランジの死を看取ったのが1995年夏に発表されたFOO FIGHTERSデビューアルバムと、このスマパンの大作だったと個人的には考えています(1994年末発売のPEARL JAMの3rdアルバム『VITALOGY』も、レクイエムとして同じような役割を果たした作品かもしれませんね)。

美しさを強調したアルバムと同タイトルのインスト曲から、そのまま壮大なロックチューン「Tonight, Tonight」で幕を開ける本作。このオープニングからして“闇抜け”にふさわしい構成ですが、以降は「Jellybelly」「Zero」「Here Is No Why」「Bullet With Butterfly Wings」とグランジの流れを汲む彼ららしいメタリックな楽曲が並びます。フォーキーでダウナーな「To Forgive」で小休止したかと思えば、「Fuck You (An Ode To No One)」で再び攻撃性を見せ、エレクトロとグラムロックがミックスした「Love」、落ち着いた雰囲気の「Cupid de Locke」「Galapogos」、大きなノリを持つミディアムチューン「Muzzle」、9分半におよぶ大作「Porcelina Of The Vast Ocean」、サイケデリックなアコースティックバラード「Take Me Down」という流れでディスク1を締めくくります。

ディスク2も、これもグランジロックと呼ぶにふさわしいヘヴィな「Where Boys Fear To Tread」を筆頭に、力強いビートのハードロック「Bodies」、美しい音色のバラード「Thirty-Three」、ダークさを伴うアコースティックチューン「In The Arms Of Sleep」、バンドのニューウェイブ色とポップセンスが遺憾なく発揮された名曲「1979」、各楽器が一体となって攻撃するかのようなプレイが楽しめる「Tales Of A Scorched Earth」、グランジバラードという表現がなんとなく似合うプログレッシヴな「Thru The Eyes Of Ruby」とバラエティ豊かな展開。

そして後半はアコギ弾き語り「Stumbleine」、ヘヴィさとダークさが極限まで達した「X.Y.U.」、デジタルとアコースティックが融合しながらもどこか牧歌的な「We Only Come Out At Night」、アーシーさが心地よい「Beautiful」「Lily (My One And Only)」、ビリー・コーガンというポップセンスに改めて脱帽のバラード「By Starlight」「Farewell And Goodnight」(後者はジェームズ・イハとの共作)と、比較的落ち着いた作風の楽曲が並びます。ちゃんとスマパンに求められるもの(ヘヴィさやポップさ)を残しつつ、しかもそれらがしっかりブラッシュアップされ、なおかつ次作『ADORE』(1998年)への布石も至るところに散りばめられている。単に「できた曲を全部詰め込みました」的な内容ではなく、しっかり計算され尽くされているあたりが策士ビリー・コーガンらしいなと。じゃなきゃ、ここまで売れませんって。

情報量が多い作品ですし、数回聴いただけですべてを理解することは難しいアルバムかもしれません。実際、本作よりも『SIAMESE DREAM』のほうがわかりやすくて好き、というリスナーも少なくありません。しかし、だからこそリリースから20年以上経った今のような時代にフィットする作品なんじゃないかとも思うわけです。“グランジバンド”としての正解は『SIAMESE DREAM』かもしれませんが、僕は本作で示した作風/スタイルこそを支持します。



▼THE SMASHING PUMPKINS『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』
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投稿: 2018 03 03 12:00 午前 [1995年の作品, Smashing Pumpkins] | 固定リンク

2018年2月11日 (日)

VINCE NEIL『CARVED IN STONE』(1995)

1995年9月に発表された、ヴィンス・ニール通算2作目のソロアルバム。MOTLEY CRUEをクビになったあとにリリースした初ソロ作『EXPOSED』(1993年)は、モトリー時代の良質かつ“ファンが求める”部分を煮詰めたかのような、かなり優れたハードロックアルバムでした。スティーヴ・スティーヴンスという華のある凄腕ギタリストが参加したことも、成功の大きな要因だったでしょう。

しかし、同作を携えたツアー終了後にスティーヴは脱退。新たにブレント・ウッズを迎えて再度ツアーに出るも、今度はもうひとりのギタリストであるデイヴ・マーシャルも脱退してしまいます。そういった苦境の中、制作されたのが本作『CURVED IN STONE』です。

本作ではプロデューサーにTHE DUST BROTHERS(BEASTIE BOYSベックのプロデュースでおなじみの2人組ユニット)を迎えて制作。HR/HM畑以外の人と組むことがファンに不安要素となりましたが、その不安は見事的中。ポジティブな空気に満ち溢れていた前作とは相反し、ダークなテイストで統一された異色作に仕上げられています。

ヒップホップを得意とするプロデュースチームだけに、サンプリングを駆使した「Breakin' In The Gun」からスタートする本作に、きっとHR/HMファンなら誰もが動揺するはず。そこから“グランジ以降”のダークかつグルーヴィーな「The Crawl」や「Black Promises」「Writing On The Wall」のような曲が続くのですから、モトリーの『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)『DR. FEELGOOD』(1989年)路線を求めるリスナーは拒絶反応を起こすのも仕方ありません。

本家モトリーが『MOTLEY CRUE』(1994年)というダークな作品で業業的に失敗したにも関わらず、ヴィンスも同じ過ちを犯す……いや、ヴィンス的には「時代の最先端に乗れてる? 俺、イケてる?」と思ってのことだったのかもしれません。とはいえ、BLACK SABBATHのヴィンス流解釈と受け取れる「Make U Feel」、“テクニカルなグランジ”と受け取れば納得のいく「One Less Mouth To Feed」、泣きのヘヴィバラード「The Rift」など、意外と良い曲が多いのも本作の特徴。『EXPOSED』と比較してしまうからダメなのであって、1枚の「ダークなハードロックアルバム」として受け取ればそこまで悪くはないんですけどね。あ、そうなると序盤に含まれているヒップホップテイストの「Breakin' In The Gun」や「One Way」、陽気なイギー・ポップのカバー「Lust For Life」は邪魔になりますが(苦笑)。

ちなみに本作、日本盤と海外盤とでは収録曲順が一部異なるようです。日本盤初出時にアルバム中盤に「Lust For Life」、ラストにCHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が含まれており、「The Rift」の次に当時ガンに侵されていた(のちに逝去)愛娘スカイラーに捧げた美しいバラード「Skylar's Song」が収録されていました(このへんの事情も本作のダークな作風に少なからず影響を与えているのでしょうか)。しかし、のちの海外盤では「Skylar's Song」が5曲目に入っていたり、中盤の曲順が一部異なっていたりして、日本盤に慣れた耳で聴くとちょっとチグハグな印象を受けます。SpotifyやAppleMusicなどは海外盤と同じ曲順なので、初めて聴く人は特にそのへん意識しなくても大丈夫かと(笑)。

あ、最後に。CHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が非常に素晴らしい出来なので、ぜひこのへんのボーナストラックを何らかの形で正式再発してもらいたいところです。



▼VINCE NEIL『CARVED IN STONE』
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投稿: 2018 02 11 12:00 午前 [1995年の作品, Motley Crue, Vince Neil] | 固定リンク

2018年1月15日 (月)

FEAR FACTORY『DEMANUFACTURE』(1995)

FEAR FACTORYが1995年初夏にリリースした通算2枚目のスタジオアルバム。当時のHR/HMシーンはPANTERAを起点とするグルーヴメタルと、KORNなどのブレイクにより勃発したラップメタルに二分され、旧来のスラッシュメタルや王道スタイルは“オールドスークル”、あるいは時代遅れとして見放されていた時期した。

そんな中、そのどこにも属さないFEAR FACTORYはインダストリアルミュージックなどの要素を取り入れ、正確無比なビートの上でスラッシーなギターリフが刻まれ、さらに暴力的でどこか冷たさを持つボーカルが乗るという新たなスタイルを確立。その回答が、本作『DEMANUFACTURE』で示されていることは間違いないでしょう。

レイモンド・ヘレーラ(Dr)が生み出す機械的なドラミングはどこか打ち込み的で、どこか冷たさを感じさせる。なのに、聴いていると気持ち良くなってくる。そこにディーノ・カザレス(G)のヘヴィなギターリフが乗ることでモダンメタルの色合いが増すのですが、効果的に用いられるデジタルサウンドやシンセの音色、インダストリアルノイズなどの装飾により同時期に活躍したどのバンドとも違うカラーを打ち出すことに成功。バートン・C・ベル(Vo)のボーカルもただデスボイスでがなるだけでなく、淡々とメロディを歌ったりもする。そのどこか非人間的で感情を排除した歌唱法が先の機械的なビート&正確に刻まれるギターリフと相まって、より機械的な要素が強まるわけです。

この『DEMANUFACTURE』はコンセプトアルバムであり、機械文明に対する人間の怒りや闘争が描かれています。曲間がつながった大作志向ではないものの、歌詞で綴られている世界観はすべてひとつのテーマに沿って表現されているので、ぜひ国内盤(現在廃盤状態ですが)の対訳などを目にしつつ聴いてもらえるといいんじゃないかと。

本作の基盤となるのは、先にも書いたような機械的でひんやりしたモダンメタルなのですが、それ以外にも個性的な楽曲が多く含まれています。例えば「New Breed」あたりはのちのTHE MAD CAPSULE MARKETSに通ずるものが感じられるし(この曲名をバンド名にそのまま用いた国内バンドもいますし)、「Dog Day Sunrise」(80年代に活動したイギリスのメタルバンド、HEAD OF DAVIDのカバー)や「A Therapy For Pain」あたりからはゴシックメタルの香りもする。かと思えば「Body Hammer」のビートはエフェクトがかけられてマシンビートみたいで、MINISTRYとの共通点も見受けられる。いやいや、本当に面白い。

これが20数年前のアルバムなんだと考えると、いかに彼らが挑戦してきたサウンドが時代を先取りしたものだったかが伺えるのではないでしょうか。とにかく、今聴いても十分にカッコいいし、大きなブームは作れなかったかもしれないけど、いろんな形でフォロワーを生み出したという意味では、本作は90年代のメタルシーンを語る上で絶対に外せない1枚だと思います。



▼FEAR FACTORY『DEMANUFACTURE』
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投稿: 2018 01 15 12:00 午前 [1995年の作品, Fear Factory] | 固定リンク

2017年10月 6日 (金)

DOKKEN『DYSFUNCTIONAL』(1995)

1994年に再結成を果たしたDOKKENが、翌1995年春に海外で発表した通算5作目のスタジオアルバム。ここ日本では前年末に『DOKKEN』というアルバムタイトルで、曲順を変え一部の収録曲を差し替えてリリースされていた作品です。

もともとはドン・ドッケン(Vo)のソロアルバムとして制作を進めていた作品なのですが、契約の際に元Geffen Records、当時Columbia Recordsの名物A&Rだったジョン・カロドナーからジョージ・リンチ(G)にギターを弾かせたらどうか、そしてこのアルバムをDOKKEN名義で出したほうが売れるんじゃないかなどと言い寄られ、結果としてジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)、ジョージという黄金期メンバーが揃い、DOKKEN再結成が実現。“メタル冬の時代”だった1995年という時代にメジャーレーベルのColumbiaから晴れてリリースされたわけです。

このコラムでは日本のみでリリースされた『DOKKEN』ではなく、正式な5thアルバムとして発表された『DYSFUNCTIONAL』について触れていきたいと思います。

『DOKKEN』も『DYSFUNCTIONAL』も、名作『BREAKING THE CHAINS』(1981年)、『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に関わったマイケル・ワグナーがプロデュース。そう聞けば誰もが「往年のDOKKENよ、再び」と思うことでしょう。しかし、完成したアルバムはそのイメージとは程多いもの。もともとはドンのソロアルバムだったことを考えれば、まぁ頷けなくもないのですが……非常に内向的でダーク、モノトーンなサウンドとHR/HM的なハイトーンボーカルなしという……そうですね、時代的なものもあって、どこかグランジ風と言えると思います。

実際「What Price」なんて“HR版THE DOORS”みたいですし。先行発売された『DOKKEN』では1曲目だったこの曲を初めて聴いたときは、正直顔が“無”になったこと、今でもよく覚えています。

ところが、US版だとこの曲はラスト前の10曲目。このポジションで聴くと不思議と悪くない。とはいえ、US版はそもそも1曲目が「Inside Looking Out」という時点でDOKKENらしくないので、どっちもどっちなんですが。

至るところからPEARL JAMSOUNDGARDENあたりからの影響が感じられるオルタナHR/HM的作風に、突如飛び込んでくるジョージのフラッシーなギターソロ。この噛み合ってない感じがまた居心地の悪さを生み出していて、最高です(悪い意味で)。いかにもDOKKENらしいアコースティックバラード「Nothing Left To Say」もありますし、なぜかシングルヒットした7分以上もあるダークなロックンロール「Too High To Fly」、LED ZEPPELIN風ハードロック「Long Way Home」、サイケなミディアムバラード「The Maze」もある。1曲1曲はそこまで悪くないんだけど、アルバムとして並んだときに醸し出される違和感。なんだろう、やっぱり曲順が悪いんだろうか。

ミックスの途中みたいなサウンドだった日本限定アルバムより、僕はしっかり音が整理され、後から新しいソロなども加えられたUS版のほうがまだ幾分気に入っています。80年代のアルバムと比べれば聴く頻度は低いものの、それでも年に1、2回は引っ張り出して聴きたくなる。そんな珍味的な魅力を持つアルバムではないでしょうか。そこまで嫌いになれないんだよね、これ。



▼DOKKEN『DYSFUNCTIONAL』
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投稿: 2017 10 06 12:00 午前 [1995年の作品, Dokken, George Lynch] | 固定リンク

2017年10月 3日 (火)

MAD SEASON『ABOVE』(1995)

ALICE IN CHAINSのレイン・ステイリー(Vo)、PEARL JAMのマイク・マクレディ(G)、SCREAMING TREESのバレット・マーティン(Dr)、THE WALKABOUTSのジョン・ベイカー・サウンダーズ(B)により1994年に結成されたグランジ界のスーパーバンドMAD SEASON。その彼らが1995年春に発表した、唯一のスタジオアルバムが本作『ABOVE』(邦題は『生還』)です。

PEARL JAMのギタリスト&ソングライターのひとりと、ALICE IN CHAINSの空気感・世界観をその歌声で一気に作り上げるフロントマン。この2人の邂逅が一体何を生み出すのか、そりゃあ当時相当気になったものです。そもそも、ALICE IN CHAINS自体がその頃は活動が不安定な時期でしたから、余計にね(その不安定の原因はレインその人なんですけど)。

アルバムのオープニングを飾る「Wake Up」は、7分半にもわたるブルージーな1曲。これ1曲で、MAD SEASONがPEARL JAMでもALICE IN CHAINSでもないことが証明されるわけですが、劇的な展開をするでもなく、今にも消えそうな炎がゆらゆらと燃えるかのようなスタイルといえばいいのでしょうか。そのサウンドの上を、あの爬虫類的なレインの歌声がうごめき回るわけです。しかも、ALICE IN CHAISほど攻撃的ではなく、それでいて生き物なのか作り物なのか正体不明な存在感を醸し出しながら。

1曲、1曲と聴き進めるうちに、楽曲自体はPEARL JAMのメンバーが作っていることはなんとなく理解できるようになりました。しかし、レインという個性的なシンガーの声が乗ることにより、新たな何かがそこに誕生する。レインも自身のバンドより肩の力を抜いて、脱力気味で気持ち良さげに歌っており、時々力強く声を張り上げたりもしますが、それもあくまで味付け程度。決して音数が多くないバンドアンサンブルとともに、主旋律に被さるハーモニーが不協和音と美しい和音の間を行き来する。派手さは皆無ながらも、なぜか心のど真ん中を突いてくる。それがMAD SEASONが持つ不思議な魅力なんだと思います。

また、このバンドのサウンドを分析することで、改めてALICE IN CHAINSはジェリー・カントレル(G, Vo)が作る楽曲こそがバンドの骨格なんだという事実、そしてPEARL JAMはエディ・ヴェダー(Vo)という稀代のシンガーが歌うことでPEARL JAMとして成立するんだというごく当たり前のことに気づかされるわけです。

アルバム中盤、「Lifeless Dead」あたりから“いかにも”な曲が登場することで、ああそうだった、彼らはグランジシーンから登場したんだったということを思い出す。MAD SEASONはそれくらい、あのシーンの末期から誕生した異端児だったのです。本当はこのアルバムに続く新作を、このメンバーで聴きたかったけど、それも今では叶わぬ夢。1999年にはジョンが、2002年にはレインが亡くなっているため、オリジナル編成での復活は実現不可能に。2015年にはクリス・コーネルダフ・マッケイガンを迎えたスペシャル編成での復活がありましたが、そのクリスも……。つくづく不運な宿命を持ったバンドだったんですね。



▼MAD SEASON『ABOVE』
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投稿: 2017 10 03 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains, Mad Season, Pearl Jam] | 固定リンク

2017年8月15日 (火)

FOO FIGHTERS『FOO FIGHTERS』(1995)

1994年4月、カート・コバーン(Vo, G)の自殺によりNIRVANAは事実上の解散。メンバーのデイヴ・グロール(Dr)はNIRVANAのツアー中などに書き溜めた楽曲を同年秋からレコーディング。ドラムのみならずギター、ベース、そしてボーカルまですべてをデイヴ自身が手がけた純粋なソロアルバムを完成させました。そしてそれは、FOO FIGHTERSというバンド名のもと、1995年初夏に正式リリースされたのでした。

確かにデイヴはNIRVANA時代にもシングルのカップリングに曲を提供したり、歌ったりしていましたが、正直そこまで印象に残るものではなく。なので、こういったプロジェクトを立ち上げたと知り、ぶっちゃけ「大丈夫かよ?」と不安視したのをよく覚えています。

が、完成したアルバムは“NIRVANAのフォーマット”をうまく用いつつ、アメリカンハードロック的な“陽”の空気に満ちた作品集でした。冒頭2曲(「This Is A Call」「I'll Stick Around」)の突き抜け感、ポップでキャッチーな「Big Me」。正直、この3曲を聴いただけで完敗でした。「やるじゃん、デイヴ」と。

ただ、聴き進めるうちに、やはり心のどこかでNIRVANAと比較してしまう自分がいたのも事実。「カートならこんなアレンジにしないだろうな」とか「カートならこんなギターフレーズにしてたはず」とか「カートならここはこう歌てったんじゃ」とか。

いやいや、歌ってるのカートじゃないし。カートまったく関係ないから!

でも、当時は無理だったんですよ。亡くなってから1年ちょっとしか経っておらず、NIRVANAの時間が止まったのと相反して、SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』でバカ売れし、PEARL JAM『VITALOGY』という新たな傑作を世に放った1994年。いろんな場面でカートの不在を実感し、そのたびに遺作となった『IN UTERO』(1993年)ばかり聴いていたものです。

というわけで、FOO FIGHTERSのデビュー作を素直な気持ちで聴けるようになったのは、2ndアルバム『THE COLOUR AND THE SHAPE』(1997年)がリリースされてから。完全な“バンド”となった同作で、ようやく僕らもNIRVANAの呪縛から解き放たれた気がします。

今や完璧なスタジアムロックバンドにまで成長したFOO FIGHTERSですが、その原点は間違いなく本作。現在の質感とは異なるものの、デイヴ自身もNIRVANAの呪縛、グランジの呪縛から解き放たれようと必死で本作と向き合ったんでしょうね。完全には抜けきれてないこのアルバムを聴くと、なぜひとりで全部作らなくちゃいけなかったのかが、なんとなく理解できたりして。

実質1stアルバムではあるものの、その後の活動スタンスを考えたら本作は“プレデビュー盤”という位置付けがぴったりかもしれませんね。



▼FOO FIGHTERS『FOO FIGHTERS』
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投稿: 2017 08 15 12:00 午前 [1995年の作品, Foo Fighters, Nirvana] | 固定リンク

2017年8月10日 (木)

UFO『WALK ON WATER』(1995)

70年代から活躍する(途中二度の解散はありましたが)イギリスのハードロックバンド、UFOが1995年に発表した通算14枚目のスタジオアルバム。1978年に脱退したマイケル・シェンカー(G)が復帰し、フィル・モグ(Vo)、ピート・ウェイ(B)、アンディ・パーカー(Dr)、ポール・レイモンド(G, Key)、そしてマイケルという黄金期のメンバーが再集結して制作された1枚です。

プロデューサーは『LIGHTS OUT』(1977年)、『OBSESSION』(1978年)、ライブアルバム『STRANGERS IN THE NIGHT』(1979年)を手がけたロン・ネヴィソン。気心知れた布陣での制作、しかも1994年に実施したジャパンツアーの手応えなどもあり、比較的ポジティブな雰囲気の中制作されたことは、本作を聴けばご理解いただけるかと思います。

本作発表時点でフィルは47歳、ピートが43歳、マイケルも40歳と肉体的に全盛期を過ぎたと言われてもおかしくない年齢。もはや派手で前のめりなハードロックは期待できない……前年の来日公演を観ている自分ですら、そう感じていたのですから、古くからのファンなら本作にことをもっと期待してなかったんじゃないかと思います。

しかし、実際に完成したアルバムは……確かに若さは感じられないし、落ち着きまくった作風の1枚です。が、がっちりとタイトなリズムの上にフィルの味わい深い独特のボーカルと、ついこないだまでアコースティック路線を突き進んでいたとは思えないほどに攻めまくりなマイケルのギターワークがしっかりフィーチャーされている。古き良き時代の、地味だけどジワジワと客居さが伝わってくる王道ブリティッシュハードロックが全編にわたり展開されているのです。

もちろん、当時のマイケルらしくアコギを取り入れた楽曲もいくつか見受けられますが、それがメインになることはなく、あくまで楽曲の味付け程度で収まっている。これを「大人になったUFO」と捉えるか「枯れて日和ったUFO」と捉えるかで、本作の評価は大きく分かれるかもしれません。

1995年という時代のせいか、どこかヘヴィでグランジ寄りなオープニング曲「A Self Made Man」にはギョッとさせられるものの、続く哀愁のミディアムチューン「Venus」やアップテンポの「Pushed To The Limit」、ファンキーさと泣きメロが融合された「Running On Empty」など聴きどころ多数。

オリジナル新曲8曲のあとに、アルバム本編を締めくくるのが往年の名曲「Doctor, Doctor」の再録バージョンというのもまた泣かせるし、日本盤はさらに「Lights Out」再録バージョンも収録。この手の再録はほとんどがヌルくなるケースが多いですが、ここで聴ける2曲はあの頃のカッコよさはそのままに、渋みが加わった説得力の強いテイクに仕上がっています。新曲群と並んでも違和感なく楽しめるので、これはこれでアリだと思います。

残念ながら本作、現在は国内盤も海外盤(日本盤とはジャケ違い)も廃盤状態。すでにマイケルも脱退し、ピートも引退状態ですが、現在のUFOを語る上ではとても重要な1枚だと思っているので、ぜひとも再発していただきたいものです。



▼UFO『WALK ON WATER』
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投稿: 2017 08 10 12:00 午前 [1995年の作品, Michael Schenker, UFO] | 固定リンク

2017年7月21日 (金)

RED HOT CHILI PEPPERS『ONE HOT MINUTE』(1995)

1995年秋に発表された、RED HOT CHILI PEPPERS通算6枚目のスタジオアルバム。前作『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)がバカ売れ(全米3位、全世界でトータル1300万枚超)したものの、リリース翌年にジョン・フルシアンテ(G)が突如脱退。以降はサポートなどで数名のギタリストを入れ替えつつ活動していましたが、最終的に元JANE'S ADDICTIONのデイヴ・ナヴァロが加入するという衝撃の展開に。そうして約4年ぶりに発表されたのが、この『ONE HOT MINUTE』というアルバムです。

ジョンならではのメロウ&サイケデリックな側面が強く表れ、それがレッチリ本来のファンク+パンクなスタイルと融合したことで4thアルバム『MOTHER'S MILK』(1989年)よりも強靭な個性を確立。しかもそのアルバムがバカ売れしてしまったことで、バンドは成功した路線を踏襲するのかどうかに注目が集まりましたが、そこはレッチリのこと。『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』とは異なるハードな作品を提供してくれました。

とにかく、デイヴ・ナヴァロのギターが派手。JANE'S ADDICTION時代もその個性的なプレイでリスナーを楽しませてくれたデイヴですが、本作ではとにかくギターが暴れまくっている。で、必然的に楽曲もそれに見合った激しくて派手なファンクロックが満載。1曲目「Warped」での緊張感の強いサウンド&プレイは、この時期この編成ならではの奇跡的な好演ではないでしょうか。

その後も「Aeroplane」「Deep Kick」「Coffee Shop」「One Big Mob」「Shallow Be Thy Game」など、とにかくカッコいい曲が満載。かと思うと、前作における「Under The Bridge」ほどではないもののそれなりに聴き応えのある歌モノ「My Friends」「Tearjerker」もある。デイヴのギタープレイが好みというのも大きいですが、個人的にはレッチリの全作品中もっとも好きなアルバムが本作です。

ただ、デイヴが参加したのは本作のみ。1997年夏のフジロック初年度に嵐の中でのライブが話題となりましたが、その後デイヴはバンドを離れ、ジョンが再加入。1999年に『CALIFORNICATION』をリリースし、第2期黄金期の幕開けを飾ることになります。

そういう意味では、この『ONE HOT MINUTE』は非常に不憫なアルバムなんですよね。ジョン再加入後には本作からの楽曲もほぼ演奏されていないし、現在におけるまで黙殺状態が続いている。ジョンとフリー(B)はその後、再結成JANE'S ADDICTIONで共演しているので不仲ではないはずですが、できることならこの時代のレッチリも再び観てみたいものです(できれば、アンソニーが骨折してない状況で)。



▼RED HOT CHILI PEPPERS『ONE HOT MINUTE』
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投稿: 2017 07 21 12:00 午前 [1995年の作品, Jane's Addiction, Red Hot Chili Peppers] | 固定リンク

2017年2月18日 (土)

SKID ROW『SUBHUMAN RACE』(1995)

湾岸戦争勃発を機に世界的不況へと突入していくさなかに発表されたSKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』は、それでも全米初登場1位、トータルセールス200万枚という当時の状況から考えれば上出来の結果を残しました。特にここ日本では1991年、1992年と2年連続でのツアーが実現し、前者では日本武道館、後者では代々木第一体育館とアリーナ会場でライブを実施する盛況ぶりを見せます。また1992年秋にはカバー曲で構成されたEP『B-SIDE OURSELVES』 を発表して、『SLAVE TO THE GRIND』に伴うワールドツアーをひと段落させるのですが、バンドはすぐに次作の制作には入りませんでした。これはHR/HMに取って代わりNIRVANAやPEARL JAMといったグランジ勢がシーンを席巻していたことで、マネジメントから新作制作に「待った」がかかったとも言われています。

空白の1993年を経て、1994年からは新たにボブ・ロックをプロデューサーに迎え3rdアルバム制作を開始。こうして1995年3月にようやくリリースされたのが、本作『SUBHUMAN RACE』なのです。

まず聴いておわかりのとおり、怒りと勢いで制作された前作と打って変わって、本作は同じ怒りをモチーフにしながらも非常にコントロールされた内容です。だからこそ、アレンジ面においてもテクニカルな要素が目につき、セバスチャン・バックのボーカルも時に抑制を効かせ、時に感情を爆発させるというメリハリがついたことで、全体的にダイナミックさが目立つ。また疾走感よりもグルーヴを重視したテンポ感は、『SLAVE TO THE GRIND』以降に発表されたMETALLICAのブラックアルバム、PANTERA『VULGAR DISPLAY OF POWER』などの新世代メタル作品、そしてSOUNDGARDENやALICE IN CHAINSといったグランジバンドからの影響と言えるでしょう。このテンポ感が軸にあることで、全体のトーンが定まっているようにも感じられます。

セバスチャン・バックが当時このアルバムを語る際、JUDAS PRIESTの『BRITISH STEEL』を引き合いに出していましたが、リフに次ぐリフというアレンジ、アップテンポの曲を含むものの基本的にはミドルテンポが持つグルーヴでぐいぐい引っ張り、音の鋭さで聴き手を圧倒させる作風は確かに通ずるものがあるように思います。

本作が発表された頃にはグランジブームもひと段落した時期ではあったものの、SKID ROWのようなバンドは一世代前の存在として片づけられてしまったためか、またレーベルがこの手のバンドと真剣に向き合わなかったためか、チャート的には全米35位という結果で終わってしまいます。とはいえ、オープニングを飾るグルーヴィーな「My Enemy」、地を這うようなリズムが気持ちいい「Beat Yourself Blind」、変拍子を用いたサイケな「Eileen」、「Slave To The Grind」を整理して一段上へと昇華させたような「Subhuman Race」、ヘヴィなリフ&ビートが心地よい「Frozen」、ダイナミックな「Face Against My Soul」や「Medicine Jar」、SKID ROWらしい泣きのバラード「Into Another」、感情を抑えた適度な熱量が魅力の「Breakin' Down」など良曲満載で、決して数字がすべてではないことを証明する1枚ではないでしょうか。

この翌年の1996年にバズ(セバスチャン)がバンドを脱退。SKID ROWの黄金編成はたった3枚で幕を降ろすことになり、2017年現在まで彼の復帰は一度も実現していません。つい先日、新たなシンガーとして元DRAGONFORCEのZPサートが正式加入したばかり。レイチェル・ボラン(B)がイエスと言わない限りは、残念ですが今後もバズの復帰は絶望的なんでしょうね。



▼SKID ROW『SUBHUMAN RACE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 18 12:00 午前 [1995年の作品, Skid Row] | 固定リンク

2017年2月10日 (金)

RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW『STRANGER IN US ALL』(1995)

僕は年齢的にRAINBOWに間に合わなかった世代でした。中学に入ると同時にRAINBOW解散〜DEEP PURPLE再結成、秋には『PERFECT STRANGERS』リリース。結局リッチー・ブラックモアが在籍したDEEP PURPLEを観たのは1991年、ジョー・リン・ターナーが参加した『SLAVES AND MASTERS』を携えたツアーでのことでした。その後、リッチーは『THE BATTLE RAGES ON』(1993年)を提げたツアー中に突如脱退。すでに決定していた同年末の来日公演では、急遽ジョー・サトリアーニが助っ人参加するという異常事態となり、面白そうだからとついつい足を運んでしまったのでした。

それから2年後、リッチーは再びRAINBOWとしてシーンに復帰します。そもそもこれも、無名の新人アーティストたちと「パープルでもRAINBOWでもない」新バンドを結成してデビューするつもりだったのが、レコード会社の思惑で最終的に「RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW」名義で作品をリリースさせられてしまったのでした。リッチークラスでも、こういうコントロールが効かなかったりするんですね?

さて、念願の“リアルタイム”RAINBOW。個人的には『SLAVES AND MASTERS』も『THE BATTLE RAGES ON』も曲自体はそこまで悪くなかったけど、やはりどうしてもパープルでやろうとすると無理がある楽曲ばかりだったなと。しかもイアン・ギランをはじめとする一部のメンバーが完全にフィットしていなかった。本当に勿体ないことをしたと思うんです。

でも、この『STRANGER IN US ALL』ではそれがうまく機能している。1曲目の「Wolf To The Moon」から「そうそう、こういうのが聴きたかったんだよ!」と膝を叩きたくなるような曲なのだから、当時の自分がいかに興奮したかご理解いただけるかと思います。実際、リリースから20年以上経った今聴いてもなかなかな作品だと思います。「Hunting Humans (Insatiable)」みたいにヘヴィな曲もあれば“過去のRAINBOWにもあったような”軽快なR&R「Too Late For Tears」、ヘヴィながらも泣きの要素を持つ「Ariel」もあるし、極め付けは「Black Masquerade」! もうここでガッツポーズですよ。さらにそこから “様式美HR/HMとクラシックの融合”「Hall Of The Mountain King」、ロニー・ジェイムス・ディオ時代の“カバーのカバー”「Still I'm Sad」でクライマックスを迎えるんだから、文句のつけようがないわけです。

過去のRAINBOWと比べてああだこうだという声もありますし、実際僕も当時はそんなことを若干気にしたりもしました。しかし、メンバーも違えばリッチーも歳をとったんだから、変わって当然。むしろあの「パープル末期のやる気のなさ」からよくぞここまで持ち返してくれた!と拍手を送りたいです。

そういえばこのアルバムを携えた来日時(1995年11月)、代々木体育館で初めてRAINBOWのライブを観ることができました。このときにはレコーディングに参加したジョン・オライリー(Dr)がすでに脱退し、旧RAINBOWにも在籍したチャック・バーギが加わり古くからのファンを驚かせました。また、後にリッチーとBLACKMORE'S NIGHTを結成するほか、現在まで公私のパートナーであるキャンディス・ナイトもコーラスで参加したのも記憶に残っています。

にしても、このアルバムから約20年後、三たびRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWが復活するとは……そのへんはまた別の機会に話しましょう。



▼RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW『STRANGER IN US ALL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 10 12:00 午前 [1995年の作品, Rainbow] | 固定リンク

2016年1月10日 (日)

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon)(レビュー

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

Blur『The Great Escape』(Amazon

Bon Jovi『These Days』(Amazon)(レビュー

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』(Amazon

Fear Factory『Demanufacture』(Amazon)(レビュー

Foo Fighters『Foo Fighters』(Amazon)(レビュー

The Fugees『The Score』(Amazon

Garbage『Garbage』(Amazon

King Crimson『Thrak』(Amazon

Oasis『(What's the Story) Morning Glory?』(Amazon

Pulp『Different Class』(Amazon

Queen『Made in Heaven』(Amazon)(レビュー

Red Hot Chili Peppers『One Hot Minute』(Amazon)(レビュー

Reef『Replenish』(Amazon

Sepultura『Roots』(Amazon)(レビュー

The Smashing Pumpkins『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(Amazon)(レビュー

Teenage Fanclub『Grand Prix』(Amazon

The Wildhearts『P.H.U.Q.』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下ざっと候補を羅列します。

Alanis Morissette『Jagged Little Pill』
Anthrax『Stomp 442』
The Beatles『Anthology 1』
The Boo Radleys『Wake Up!』
Bruce Springsteen『The Ghost of Tom Joad』
The Charlatans『The Charlatans』
D'Angelo『Brown Sugar』
David Bowie『Outside』
In Flames『The Jester Race』
Michael Jackson『HIStory: Past, Present and Future, Book I』(レビュー
Nine Inch Nails『Further Down the Spiral』
Ozzy Osbourne『Ozzmosis』(レビュー
Paul Weller『Stanley Road』
The Rentals『Return of the Rentals』
Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Sonic Youth『Washing Machine』
Supergrass『I Should Coco』
Terence Trent D'Arby『Terence Trent D'Arby's Vibrator*』
Terrorvision『Regular Urban Survivors』
Underworld『Second Toughest in the Infants』(レビュー
White Zombie『Astro-Creep: 2000』

こうやって振り返ると、1995年から1996年初頭ってブリットポップの最盛期だったんですね。1995年3月にはElasticaやGeneのアルバムも発表されてるし、1996年後半になるとKula Shakerの1stもリリースされますし。やっぱり1995年夏のBlur vs Oasisの直接対決がピークでしたね、いろんな意味で。

あ、Underworldをあえて選外にしたのは、日本盤のリリースが1996年6月だったから。海外では3月発売ですが、その後の「Born Slippy」のヒットなど含めて考えると、このアルバムは1996年から1997年の作品かなと思いまして。来年はマストかな。

メタルの世界はグランジがひと段落したものの、ポストグランジ的サウンドのバンドが増えつつあり、前年からのMotley Crue、Dokkenの失敗など、あまり芳しくない状況でした。そんな中、1994年のKornデビューを機にグルーヴ感のあるヘヴィロックが台頭し始めます。前年デビューのMachine Headもその1つですね。Sepulturaは前作『Chaos A.D.』でのシフトチェンジから、ブラジル音楽のルーツを取り入れた傑作『Roots』で活動のピークを迎えるのも、1996年初頭のお話。Fear Factoryのようなデジタル要素を取り入れたヘヴィバンドも人気を集め始めたのも印象に残ってます。同時期に国内ではTHE MAD CAPSULE MARKETSが『4 PLUGS』をリリースしたのも、海外の動きとリンクしていて興味深いです。

ちなみに日本国内ではこの頃、ブルーハーツの解散(6月)やUP-BEATの解散(8月)、光GENJI(光GENJI SUPER5)の“卒業”(9月)、Winkの活動停止(96年3月)といった出来事がありました。いわゆるTKサウンドがチャートを席巻し、MY LITTLE LOVERやglobeがデビューしたのもこの頃でした。

投稿: 2016 01 10 12:00 午前 [1995年の作品, 1996年の作品, Alice in Chains, Ben Folds, Björk, Blur, Bon Jovi, Chemical Brothers, The, Fear Factory, Foo Fighters, Fugees, The, Garbage, King Crimson, Oasis, Pulp, Queen, Red Hot Chili Peppers, Reef, Sepultura, Smashing Pumpkins, Teenage Fanclub, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2015年10月 4日 (日)

MEGADETH『HIDDEN TREATURES』(1995)

1995年当初、日本のみでリリースされていた過去のカバー曲やアルバム未収録曲を集めたコンピレーションアルバム。アリス・クーパー「No More Mr. Nice Guy」やBLACK SABBATH「Paranoid」、再びSEX PISTOLSから「Problems」をカバーするなど、MEGADETHにしてはストレートな楽曲ばかりなのが面白味に欠けるかも。

その他には日本盤ボーナストラックとして既発の「Breakpoint」「New World Order」などもあり。個人的には、なかなかの出来なのにアルバム本編に収録されることのなかった映画サントラ提供曲(『ラスト・アクション・ヒーロー』の「Angry Again」、『ビルとテッドの地獄旅行』の「Go to Hell」など)をまとめて聴けるという意味で非常に重宝した1枚。

どうせなら「Anarchy In The U.K.」や「I Ain't Superstitious」といったアルバムに収録されたカバー曲も集めた、完璧なカバー&サントラ提供曲集にすればもっと価値が高まったのかも。

まあ今となってはコアなファン向けの1枚で、オリジナルアルバムを全部聴いた人が最後に揃えればいいかも(「Angry Again」あたりは後のベストアルバムにも収録されてるし)。



▼MEGADETH『HIDDEN TREATURES』
(amazon:輸入盤CD

投稿: 2015 10 04 12:30 午前 [1995年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2015年1月13日 (火)

祝ご成人(1994年4月〜1995年3月発売の洋楽アルバム20枚) ※改訂版

新成人の皆さん、おめでとうございます。というわけで今回は、新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1994年4月〜1995年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

あ、並びはすべてアルファベット順です。

Beastie Boys「Ill Communication」(Amazon

Blur「Parklife」(Amazon

Dinosaur Jr.「Without a Sound」(Amazon

Helmet「Betty」(Amazon

Jeff Buckley「Grace」(Amazon

Korn「Korn」(Amazon)(レビュー

Machine Head「Burn My Eyes」(Amazon)(レビュー

Madonna「Bedtime Stories」(Amazon

Manic Street Preachers「The Holy Bible」(Amazon)(レビュー

Nine Inch Nails「The Downward Spiral」(Amazon / 日本盤1994年4月発売)

Oasis「Definitely Maybe」(Amazon

Pearl Jam「Vitalogy」(Amazon)(レビュー

Pink Floyd「The Division Bell」(Amazon / 日本盤1994年4月発売)

Portishead「Dummy」(Amazon

The Prodigy「Music for the Jilted Generation」(Amazon

R.E.M.「Monster」(Amazon

Radiohead「The Bends」(Amazon)(レビュー

Slayer「Divine Intervention」(Amazon

Suede「Dog Man Star」(Amazon

Weezer「Weezer (The Blue Album)」(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。それこそThe Beatlesの「Live at the BBC」、The Rolling Stones「Voodoo Lounge」、Nirvana「MTV Unplugged in New York」、The Stone Roses「Second Coming」といったものから、Marilyn Mansonのデビュー作「Portrait of an American Family」、Sloan「Twice Removed」、Sick of It All「Scratch the Surface」、The The「Hanky Panky」、Bonston「Walk On」、TLC「CrazySexyCool」、Van Halen「Balance」、Beck「Mellow Gold」あたりまで。カート・コバーンが亡くなって20年なんですね。そう考えると20年なんてあっという間ですよ、本当に。

※1/13 17:40加筆修正
Nine Inch Nails「The Downward Spiral」という個人的に絶対に欠かせないアルバムの存在を思い出させてくれたいっしーさんに感謝。というわけで、セレクトを一部改訂しております。

投稿: 2015 01 13 12:06 午前 [1994年の作品, 1995年の作品, Beastie Boys, Blur, Dinosaur Jr., Helmet, Jeff Buckley, Korn, Machine Head, Madonna, Manic Street Preachers, Nine Inch Nails, Oasis, Pearl Jam, Pink Floyd, Portishead, Prodigy, The, R.E.M., Radiohead, Slayer, Suede, Weezer, 「20年前」] | 固定リンク

2005年8月16日 (火)

LOUDNESS『LOUD 'N' RAW』(1995)

『HEAVY METAL HIPPIES』リリース後に実施されたクラブツアーの模様を収めたライブアルバム。レコーディング時は不在だったベーシストの座には、(当時)元ANTHEMの柴田直人が着くことに。LOUDNESS、E.Z.O.、ANTHEMという80年代ジャパメタの縮図を、90年代半ばにこういう形で見せられるなんて、高校生だった自分に教えてあげたいよ……。

全9曲と彼らのライブアルバムにしてはもっとも曲数が少ないものの、収録時間は60分超え。これはただでさえ長い『HEAVY METAL HIPPIES』収録曲が、ライブを経てより長くなった表れでしょう。選曲はほぼ90年代からのもので、80年代の人気ナンバーは「S.D.I」のみ。しかもMASAKI、全然歌えてない。なぜこれを入れたのか。宝の持ち腐れだよ。

興味深いのは、DEEP PURPLEの名曲「Speed King」を演奏しているところ。当時のジャムスタイルやインプロビゼーション主体のスタイルに合ってたのかな。この曲を高崎&柴田が演奏しているというだけでも面白い。

積極的に聴くべき1枚ではないですが、MASAKI時代が好きなら聴いておいてもいいかも、程度の1枚。



▼LOUDNESS『LOUD 'N' RAW』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2005 08 16 04:00 午前 [1995年の作品, ANTHEM, E・Z・O, Loudness] | 固定リンク

2004年11月16日 (火)

とみぃ洋楽100番勝負(90)

●第90回:「Leave Home」 THE CHEMICAL BROTHERS ('95)

 こんな俺ですが、実はCHEMICAL BROTHERSの初来日と2度目の単独@リキッド、行ってるんですよね‥‥こんなロックバカの俺が、所謂テクノやダンス系の先物買いっぽく。いや、友達に誘われて行ったんですけど。あと、何故かavexの東京ドームのイベントとかも。あれでPRODIGYとか観てるしね(しかもそれが唯一観たことのある生PRODIGYという)。

 彼等は‥‥何だろ、最初はリミックスの方で知ったのかな。MANICSの "Faster" のリミックスとかやってたしね。ま、その頃はまだ「THE DUST BROTHERS」って名前だったんだけどね。同名のプロデュース・ユニットがいたから(ベックとか手掛けてたんだよね)結局改名したんだけど、よりによって「シャブ中兄弟」って‥‥笑(「CHEMICAL」っていうのは、化学生成された薬物を意味しますからね。覚せい剤とかヘロインとか)

 (一般的なロックファンへの)世間的な知名度は、このアルバム後にリリースされた "Setting Sun" やそれを含む2ndアルバム「DIG YOUR OWN HOLE」以降なんだけど、個人的な思い入れとなると、やっぱり1stかなぁ‥‥

 こういうのは何て言うんでしたっけ‥‥ブレイクビーツ? いや、カテゴリーとかよく判らないんだけど、単純にリズムがカッコ良く且つ気持ちよかったんだよね、初めて聴いた時。友人の車の中で、爆音で聴かせてもらったんだけど‥‥一発でハマったし。完全にロックしてるもんね、このビートは。テクノって感じでもないし、かといってヒップホップとは絶対に違うし。ロックの高揚感がキチンと備わってるし、それでいてダンスミュージックのフォーマットもしっかり持ち合わせている。このちょっと後辺り‥‥UNDERWORLDやPRODIGYがチャート的に大成功した辺りから「デジロック」なんていう訳の判んない呼び方まで登場したけど(マッドまでその枠に入れられた時には笑うしかなかったけど)、要するにロックサイドの人達はこれをどうしても「ロック」の枠の中で語りたかったんだよね。いや、それでしか語れなかったんだよ、彼等は。無理矢理自分達の土壌に持ち込んで語るしかなかった、と。その気持ちは痛い程判るけどね。

 結局さ、文系ロック的な人達は頭でロックを語るしか出来なかったから、この曲の本質‥‥爆音で聴いて「踊る」ということに気づいてなかったんだよな、まだこの曲が出た頃は。特に日本ではね、レイヴとかそういったものが一部でしか盛り上がらなかったから余計だよね(だってSTONE ROSESを『THE SMITHSの後はこれだ!』みたいな捉え方で盛り上げようとしてた国だからね、ここは)。



▼THE CHEMICAL BROTHERS「EXIT PLANET DUST」(amazon

投稿: 2004 11 16 12:04 午前 [1995年の作品, Chemical Brothers, The, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月15日 (月)

とみぃ洋楽100番勝負(89)

●第89回:「I Wanna Go Where The People Go」 THE WiLDHEARTS ('95)

 1995年。初めてTHE WiLDHEARTSが来日した年。そして解散騒動の繰り返しを始めた最初の頃‥‥いろんな意味でこの10年間、俺はこのバンド、そしてジンジャーに振り回されっぱなしなんだよね。けど‥‥明らかに現在、この頃と比べて彼等に対する熱は下がってると思う。仕方ないよね、それは‥‥ライヴにしろ、出す曲にしろ‥‥多くは語らないけど‥‥やはり1997年秋を境に、大きく変わってしまったよね、いろいろと。

 初来日の時、確かこの曲からライヴがスタートしたんだよね‥‥違ったっけ? なんかこの曲からライヴが始まることが多いからさ。やっぱりねぇ、この曲のイントロを聴くと‥‥体中の血液という血液が全部逆流し始めて、スネアの「ダカダカダカダカ、ジャーン!」ってところで一気に爆発する‥‥あの瞬間を味わいたくてね。CDの音源よりも、ライヴで味わう方がいいよね、この曲は。

 勿論他にも良い曲は沢山あるし、それらもライヴじゃすっげーカッコいいんだけど、どうしてもこの曲の場合は‥‥ライヴの1曲目にピッタリっつーか、そのイメージが強いからさ。無駄にテンションが上がっちゃうんだよね。もし未だに彼等のライヴを体験したことがないという人がいたら、それは不幸以外の何ものでもないよ。偶然サマソニとかで目撃して一発でハマッてしまったという声、沢山耳にしてます。今後もそういう機会が沢山あるだろうから‥‥また解散する前に、是非一度体験してみてください。一発でハマるから。

 それにしても‥‥今更だけど、この曲のタイトルって、ホント素晴らしいよね‥‥



▼THE WiLDHEARTS「P.H.U.Q.」(amazon

投稿: 2004 11 15 12:02 午前 [1995年の作品, Wildhearts, The, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年11月13日 (土)

とみぃ洋楽100番勝負(87)

●第87回:「Tonight, Tonight」 THE SMASHING PUMPKINS ('95)

 スマパンがずっと苦手で。前のPEARL JAMの場合は単純に「自分的に決定打に欠ける」ってだけで、別に嫌いじゃなかったんだけど。スマパンの場合は‥‥なんだろ‥‥あの世界観が‥‥1stの頃とかね‥‥無理してやってるんじゃないの?くらいに思えて。だから「GISH」って殆どリアルタイムでは通過してないし、2nd「SIAMESE DREAM」にしても一部の "Today" とか "Disarm" といった楽曲を除いて、どうにものめり込めなくて。

 そんな俺がスポッと彼等にハマってしまったのは、この「メロンコリーそして終わりのない悲しみ」というアルバムタイトルと、"Tonight, Tonight" という楽曲のお陰だったのかな。でもね、そこにたどり着くまでには、アルバムリリースから半年以上もの時間を要したんだけど。

 完全に聴かず嫌い‥‥ちゃんと聴いてこなかったんだなぁ、と。いや、それを抜きにしてもこの2枚組アルバムの音楽的成熟度はハンパじゃなかったんですよ。むしろ俺がこれまで感じていた「無理してる感」が皆無で、30曲以上あるもんだからいろんなタイプの曲があって。それこそビリー・コーガンがどういった音楽から影響を受けて来たかが伺えるような要素がそこら中に見え隠れしてるわけ。で、それらが自分とかなりオーバーラップしていた、と。

 "Zero" とかああった世界観を持つ楽曲にもすんなり入っていけたし、"1979" なんて思わず吹き出してしまうタイプの曲もあったり‥‥けど俺は、彼等にそれこそアルバムタイトル通りの「メロンコリー」と「終わりのない悲しみ」を求めてしまってね。"Tonight, Tonight" もそうだし、ディスク2後半の流れとかさ‥‥それは続くアルバム「ADORE」にまで続くんだけど。

 誰も彼もがあの時代、同時代に登場したことで、そして先に逝ってしまったことで、カート・コバーンがそれまで担ってきた役割を背負わされそうになっていた。だからこそ、あのムーブメントが崩壊することで、それぞれが本来持っていたものを曝け出す必要があった。そしてPJにしろスマパンにしろ、そういった時代を担うことを拒否し、いち抜け二抜けしていき、独自の個性を磨いていった。その結果、俺は彼等の本当の姿に出会うことができた。そして今がある、と。

 ビリー・コーガンには本当に頑張って欲しいのよ。ZWANがああいった形で終わってしまったこともあってね‥‥もう一度スマパンをやって欲しいとは思わないけど、これを超えることは可能なんじゃないかな‥‥と信じて疑わないんですけど。絶対にやれると思う、あの男なら。ブリトニーとか気にしてる場合じゃなしに、好き放題やった時の本当の凄さは、このアルバムで実証済みなんだからさ。



▼THE SMASHING PUMPKINS「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」(amazon

投稿: 2004 11 13 12:00 午前 [1995年の作品, Smashing Pumpkins, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年5月18日 (火)

BON JOVI『THESE DAYS』(1995)

いろいろ異論反論はあると思うけど、間違いなくBON JOVIの最高傑作は、1995年という時代にドロップされた6枚目のオリジナルアルバム『THESE DAYS』だと思う。世間的にはBON JOVIの第二のピークは『CRUSH』以降ってことになるんだろうけど、それってアメリカでの話ですよね? 確かにアメリカでの彼らは「KEEP THE FAITH」以降、失速していったように見えます。が、それって80年代と比べてってことでしょ? あの時代に、こんなメインストリームロックがチャートのトップ10内にアルバムを送り込んで、尚かつミリオン(=100万枚以上)セールスを、どれだけ記録した? せいぜいBON JOVIとDEF LEPPARDくらいじゃないの?(ま、そのLEPSもアメリカではドンドン苦戦を強いられていくわけですが)

94年秋にリリースされた初のベスト盤『CROSS ROAD』もチャート10位内にランキング、ミリオンセールスを記録。そこからのシングル「Always」はチャートのトップ5入りする大健闘を見せた。けど、時を同じくしてベーシストのアレック・ジョン・サッチが脱退・引退を表明。丁度新しいオリジナルアルバムの製作時期だったこともあり、バンドはそのまま活動がストップしてしまうのかと思いきや、ジョン・ボン・ジョヴィ含めメンバーと古い付き合いのベーシスト、ヒューイ・マクドナルドを準メンバーに迎え(BON JOVIは今後、4人として活動し、レコーディングとライヴにはサポートとしてヒューイが加わる形となった。ビル・ワイマンが抜けたROLLING STONESみたいなものですよ)、年末のチャリティー・ライヴで新生BON JOVIを初お披露目、そのまま6作目となるオリジナルアルバムのレコーディングに突入。そうして完成したのが、この『THESE DAYS』という傑作アルバム。逆境だったはずのメンバー脱退なんだけど、殆どバンドに影響しなかったのは、当時のジョンやリッチー・サンボラがソングライターとして如何に充実していたか、また久々の大ヒットが追い風となって、バンドとしていい波に乗れたというのも大きかったんでしょうね。

が、このアルバム。そんな勢いを感じさせるような作品かというとそうでもなく、実はBON JOVI史上最も地味な作品として挙げられることが多い1枚でもあるんですよね。ベスト盤収録の新曲群も手掛けたピーター・コリンズを共同プロデューサーに迎え、ジョンの自宅内にあるスタジオで制作されたこのアルバム、かなり「バンドのアルバム」としてのライヴ感を重視しているんですが、楽曲がとにかく地味。ボブ・ロックを迎えて制作した作品群と比べても、ハードロックとルーツロック、それくらいの違いが感じられる程なんですね‥‥音の触感という面でもそうだけど、やはりちょっとした曲のタッチやメロディ、歌詞の内容等、明らかに以前よりも高いハードルを目指しているのが伺えます。ただのパーティーロック、ティーンエイジャーの心の内を歌ったようなものではなく、30代を迎え父親となったジョンの、大人としての視点で描かれる物語‥‥既にそれはアメリカン・ハードロックといった枠で括れないような次元に達していると思います。言ってしまえば、「Livin' On A Prayer」で歌われたトミーとジーナの10年後‥‥そんな世界観でしょうか。英語が理解され難いここ日本で、果たしてそこまでの内容が認識されているかは疑問ですが、とにかくこのバンドの成長は、デビュー時から共に成長してきた俺にとっても非常に感慨深いものでした。

とにかくアルバム前半の流れは完璧。エリック・クラプトンばりに弾きまくるリッチーのフレーズが印象深い「Hey God」(アルバムからの5thシングル)、日本では自動車のCMソングに起用されたので記憶に残っている人も多いだろうBON JOVIらしいアメリカンロック「Something For The Pain」(アルバムからの2ndシングル)、R&Bの要素さえ感じさせる初のロッカバラード「This Ain't A Love Song」(アルバムからの先行シングル)、アルバムのタイトルトラックにしてBON JOVI史上三本指に入る名曲中の名曲「These Days」(アルバムからの4thシングル)、中盤のメロトロンの音が印象深いバラード「Lie To Me」(アルバムからの3rdシングル)、そしてライヴでも定評があるファンクロック「Damned」‥‥ここまでの6曲の流れ、本当に素晴らしいんだよね。特に頭5曲は全部シングル曲ということもあり、耳に残る名曲ばかり。ただノリの良さで攻めるのではなく、しっかり聴かせる曲も3~5曲目に並んでる辺りはさすがというか。

で、後半なんですが‥‥いきなりサイケで重々しい空気でスタートし、どんどんと展開していくグランジ調ヘヴィロック「My Guitar Lies Bleeding In My Arms」(これがもう本当に名曲!)、元々はジョンのソロ曲としてスタートした弾き語り風アコースティックナンバー「(It's Hard) Letting You Go」、BON JOVIらしいポップなメロディを持つロッカバラード「Hearts Breaking Even」、ダークな印象が斬新な新境地「Something To Believe In」、これまた彼ららしい大陸的なミディアムナンバー「If That's What It Takes」、そして『NEW JERSEY』時代から何度かレコーディングしてみたものの上手くいかず、最終的にこういう形で落ち着いたという曰く付きの「Diamond Ring」でアルバムは一旦幕を閉じます(この後、日本盤とEU盤ではボーナストラックとして「All I Want Is Everything」と「Bitter Wine」という2曲が収録されています。アルバム本編の12曲と比べるとちょっとだけ劣る気もするけど、まぁ悪くない佳曲だと思います)。

 アメリカではアルバムはかろうじてトップ10入りし、ギリギリ100万枚に達したようだけど、ヨーロッパで5枚リカットされたシングルはアメリカではたった3枚、しかもどれも思った程のヒットを記録することもなく、ツアーもアリーナクラスを数ヶ月回った程度で終わったようです。しかし、日本では初登場1位を記録するという異例事態が発生。またイギリスでも同時期にリリースされたマイケル・ジャクソンのアルバムを抑えて初登場1位を獲得、同時期には7万人以上も入るウェンブリー・スタジアムで数日間のソールドアウト公演を実現‥‥そう、確かにこのアルバムを発表した時期は、バンドにとって第二の世界的大ヒットを迎えたピークだったといえるでしょう。

後の『CRUSH』や『BOUNCE』とも違うヘヴィさ、ダークさ。世が世だったというのも大きいでしょうけど、やはりもとを正せば、メンバーチェンジだったりアメリカでの不遇が彼らに影を落としていたのかもしれません。実際、後にジョンもこのアルバムを「ダーク過ぎた」と認めていますしね。

けどさ‥‥だから何!? ダークだろうがヘヴィだろうが地味だろうが、名盤には違いないでしょ? 俺にとっても、そして多くのファンにとってもこのアルバムってとても大切な1枚なんですよ。耳障りが良い近年のアルバムや80年代の大ヒット作の間に挟まれて肩身の狭い思いをしているであろう1枚。中古盤屋でも1枚200円くらいで売られているのを見かけると、かなり切なくなってしまう1枚。内容が内容なだけにね‥‥いや、本当に名作なんだってば!

BON JOVIがデビューしてから今年で20年。彼らの20年の歴史の上で、現時点でこのアルバムはどういう風に位置付けされるのか‥‥非常に気になるところではあるんだけど‥‥きっと、もうこういう作風のアルバムって作らないんだろうなぁ‥‥何となくだけど、そう感じています。けど、だからこそこのアルバムが「オンリーワン」として燦然と輝いているってのもあるんだけど。うん、まぁあれだ‥‥BON JOVI好きって奴でこのアルバムを聴いてない若いファンがいたら、そいつはもぐりだ!ということですよ。今からでも遅くないから、早く聴きなさいって!



▼BON JOVI『THESE DAYS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 05 18 12:00 午前 [1995年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2004年5月 1日 (土)

MICHAEL JACKSON『HISTORY : PAST, PRESENT AND FUTURE BOOK 1』(1995)

今だからこそ語ってみたい、マイケル・ジャクソンの素晴らしさについて。

勿論、ここで話題にするのは最近のゴシップネタではなくて、純粋に『音楽』そのものについて。仮に今裁判で争われていることが事実だとしても‥‥これらの素晴らしい楽曲の数々を、我々から奪うことなんて、何者にも出来はしないよ。いや、出来てたまるか!ってぇんだ。

このアルバムは1995年6月にリリースされた、2枚組アルバム。「HISTORY」というそのタイトル、そして「PAST, PRESENT AND FUTURE」というサブタイトル通り、この2枚のディスクにはマイケルの過去、('95年当時の)現在、そして未来が約150分・30曲に渡って繰り広げられています。ディスク1には「HISTORY BEGINS」というタイトルがつけられ、彼がエピックからリリースした4枚のアルバム‥‥「OFF THE WALL」、「THRILLER」、「BAD」、「DANGEROUS」からの大ヒットナンバーが15曲選ばれています。当時の最新技術を用いたリマスター処理も施されていて、オリジナル アルバムを持っている人でもその音のクリアさに当時は驚いたものです。

曲目は可もなく不可もなく、といった印象。つうかどれも一度は耳にしたことがあるような曲ばかりだし、今更感は強いんだけど‥‥こうやって改めてこのディスクを聴いてみると、本当に優れたポップソングばかりで、一番古い音源‥‥ "Rock With You" や "Don't Stop 'Til You Get Enough" 辺りを2004年の今聴いても、全然古くさいと感じないんですよね。それは中学時代から数えてそれこそ20年近く聴き続けている「THRILLER」収録の楽曲群に関しても一緒。本当にこれらを聴いて、それを血や肉にしていって俺等は成長していったんだなぁ、と。特に自分と同じ世代の人達なら判ってもらえると思うけど、「THRILLER」や「BAD」といったアルバム、そしてそこから派生した "Billy Jean" や "Thriller"、"Bad" といった楽曲のPV。これらがあの頃の俺達にとって『全て』だったんだよね。後楽園球場での初来日公演とかさ、ペプシのCMとかさ、「キャプテンEO」とかさ‥‥

で、そんな『懐メロ』的要素だけで終わってないのがこの2枚組。残るもう1枚のディスク‥‥ディスク2には「HISTORY CONTINUES」というタイトルが付けられているのですが、もうね、そのまんま。15曲入りのニューアルバムなわけよ、これ。1曲既出曲(BEATLESのカバー "Come Together")があるけど、それ以外はこのベスト盤用に録音された新曲。これがね、とにかく凄いの何のって‥‥「THRILLER」や「BAD」といったアルバムは別格として‥‥'90年代以降にリリースされたマイケルのオリジナルアルバムの中では、もうダントツに1番好きですね、このディスクが。

とにかくね、挑発的/攻撃的な要素が強いんですよ、このディスク。確か当時も裁判で揉めてた時期だったのかな?(現在も続いている裁判の元となった事件ですよね確か)そういうこともあってか、とにかく攻めの要素が非常に強い作風で、尚かつ音楽的にも実験的なんですよね。

それ以外にも、脇を固めるゲスト陣の豪華さが過去最高。プロデュース陣はジャム&ルイス、ダラス・オースティン、R・ケリー、デヴィッド・フォスターといった大御所達が約半数を、残りをマイケル自身が手掛けていたりするし、ゲスト・ミュージシャンにも実の妹であるジャネット・ジャクソン、BOYZ II MEN、THE NOTORIOUS B.I.G.、シャキール・オニール、トレヴァー・ラビン(当時はYES)、ナイル・ロジャース(CHIC)、スラッシュ(当時はGUNS N'ROSES、現在はVELVET REVOLVER)、スティーヴ・ルカサー&デヴィッド・ペイチ(TOTO)等と、とにかく豪華。実際にはどの曲のどのパートを誰が弾いてるかまでは判らなかったりするんですが‥‥けどさ、別にその豪華さに気づかなくても、あるいは全然知らなくても平気なくらいに、本当に素晴らしいバックトラックで完成度が高い。勿論、そういった優れたプレイヤー達によって支えられてるからってのも大きいんだけどね。

兄同様、最近かなり話題になってしまった感のあるジャネットとのデュエット "Scream" からアルバムはスタートするんだけど、とにかくカッコいい。続く "They Don't Care About Us" もリズムがかなり強調されたアレンジで、イイ。その後も名曲が続くんだけど、最初の山場は5曲目 "Earth Song"。この壮大な楽曲がとにかく素晴らしい。マイケルのボーカルパフォーマンスも同様に素晴らしい。その後、また攻撃的なダンスチューンが続き、2度目の山場が‥‥9曲目 "You Are Not Alone" という名バラードからスタートする、スローチューン2連発。この後に、これまた素晴らしい "Childhood" という名曲が続くんですよ‥‥ここでメロメロになるね普通なら。前半の攻撃的で尖った空気をここで帳消しにしてくれるわけですよ。とはいってもその後にもヘヴィな "Tabloid Junkie" というまんまなタイトルの曲やら、もうカッコいいという以外の言葉が見つからないヒップホップチューン "2 Bad" を経て、最後の山場‥‥"History" 以降の流れね‥‥を迎えて、そのまま "Smile" で感動的なフィナーレを迎えるわけです。70分以上に及ぶ超大作なオリジナルアルバムとなってますが‥‥これがベスト盤のおまけ程度にしか思われてないのが残念でならないね。つうかさ、普通ディスク1のベスト盤の方がおまけだよね、ディスク2の新曲群を聴いてしまったら。そう思いませんこと??

‥‥と、かなり熱く力説してしまいましたが‥‥やはりこの人のミュージシャンとしての嗅覚って尋常じゃないよな‥‥と再認識。正直、ここ最近はスタッフやパートナーに恵まれてないように思いますが‥‥その気になったらもっと凄いアルバムを作ってくれるんじゃないか‥‥そう信じて疑わないよね、これ聴いちゃったら。

有罪か無罪か‥‥正直、そんなのどうでもいいよ。この2枚組をぶっ続けで聴いてたら本当にそう思えてきたよ。まぁ実際にはどうでもよくなかったりするんですが‥‥



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投稿: 2004 05 01 02:54 午前 [1995年の作品, Michael Jackson] | 固定リンク

2004年3月26日 (金)

ALICE IN CHAINS『ALICE IN CHAINS』(1995)

早いもので、レイン・ステイリーがこの世を去ってから2年近くも経ってしまった。いや、ことALICE IN CHAINSの不在という意味で考えれば、ベスト盤リリースから約5年、オリジナルアルバムでいえば約10年ということになるのかな‥‥え~っ、そんなに時間が経ったの!?って疑ってしまう程、俺の中での「ALICE IN CHAINSに対する想い」はずっと1994~5年頃で止まったまま。もっと言っちゃえば、唯一の来日公演となった93年秋から時間が止まったまま。あの時の衝撃は未だに忘れられないし、自分の中でのロック史上、歴史的瞬間だったことは改めて書くまでもないでしょう。

そんな3度目の春を迎える前に、改めてALICE IN CHAINSの功績について語っていきたいと思います。今回はサードアルバムにして、オリジナル作品としてはラスト作となった、このセルフタイトルのアルバムを紹介したいと思います。

前作『DIRT』(92年)リリース後、暫くしてベーシストが交代、最後まで在籍したマイク・アイネズ(元OZZY OSBOURNE)が加入し、93年秋には初来日を果たし、そのすぐ後にミニアルバム『JAR OF FLIES』(94年)をリリース。これがミニアルバムにも関わらず、全米初登場1位を記録。純粋たる新作というわけではなく、肩の力を抜いた、遊び心満載な1枚なのにも関わらず1位‥‥時代が彼らを求めていたということでしょうか?

その後、レインのドラッグ問題等が公になり、表立った活動が少なくなっていくのですが、秘密裏に新作制作は続いており、結局『JAR OF FLIES』から2年、『DIRT』から数えて3年という期間で完成~リリースとなったのが、このサードアルバムというわけ。当然ながら、このアルバムも初登場1位を記録、レインのドラッグ癖が原因でツアーらしいツアーがなかったものの、アルバムは見事に2~300万枚も売り上げたのでした。

このアルバムというと、やはりそのサウンド以上に「日本盤リリース遅延&ジャケット変更事件」が話題となり、そちらの方で覚えている人が多いんじゃないでしょうか? 理由はこう‥‥右のアメリカ盤ジャケットでは、3本足の犬が描かれていたり、アルバム・ブックレットや裏ジャケに「奇形」ばかりを集めた、正しく「フリークス」写真&イラスト満載なアートワークで、これに日本側が難色を示し、バンド側に「日本盤のジャケット変更」を依頼したものの、却下され続けた、というお話。結局、右下のようにシンプルな形ならOKということで、US盤リリースから約1年後にようやくリリースとなったのでした。

さてさて。続いてアルバム内容について。前2作にあったようなヘヴィメタリックで硬質な色合いが後退し、もっと生々しくてラフな印象が強くなりました。カッチリ作り込まれたかのようなサウンドだった『DIRT』との大きな違いは、その「ライヴっぽさ」に表れていると思います。これはプロデューサー/エンジニアが変わったことも大きいでしょうし、楽曲の質感や構成がそれまでと大きく変わったことも影響していると思います。

演奏自体も1曲1曲が長尺なものが多く、それらは計算した構成というよりも、もっと即興性を重視したジャム・セッション風のアレンジになっていて、その辺も「ライヴっぽさ」を強調してるのではないでしょうか? バンドがこういう方向に走ったのは、恐らく‥‥ドラッグによるレイン不在が大きく影響してるのではないでしょうか。歌えるような状態になかったとも言われていますし、実際歌のパート以上にインストパートが長い曲もありますし、ギタリストのジェリー・カントレルのボーカル比重もかなり増えています。彼がリードボーカルを取る曲すらありますからね。またそのレインのボーカルも、そのまま使えるようなテイクがなかったのか、電子的なエフェクトを掛けていたり、ワザとボリュームを絞っていたりして、「それらしく」聴こえるように工夫されています。これが却って「らしい」雰囲気を醸し出していて、アルバムに好影響を与えています。

そういったこともあって、前2作のような「一聴して判るような派手さ」はないものの、もっと精神世界に訴えかけてくるヘヴィさが特徴といえるでしょう。また、ただヘヴィ一辺倒というわけでもなく、『JAR OF FLIES』で得た要素‥‥メジャーキーを多用したポップでフォーキーな路線等も上手く取り込み、アルバムとしてのバランス感は全3作中一番なのでは?と個人的には思ってます。そういった意味では「ALICE IN CHAINSの完成型」がこのアルバムだったのかな、と‥‥なんて、ここで「止まって」しまったから、そういう風に言えるわけですが。

どの曲がヘヴィで、どの曲がポップで、どの曲がイチオシとか、そういった類のことは今回書きません。何故なら、このアルバムこそ頭からラストまで、ぶっ通しで聴いて欲しい「世界観」を持った作品集だから。あまりに(精神的に)ヘヴィ過ぎて、途中でストップボタンを押してしまう人もいるかもしれませんし、「日本盤のボーナストラック(「Agains」のリミックス2種類)、邪魔!」って思う人もいるでしょうし、「これよりも、もっとヘヴィな作品、いくらでもあるじゃん!」って不満をこぼす人もいるでしょう。けどね‥‥もしあなたが、このアルバムを日本盤で購入したのなら、まず1度通して聴いてもらい、その後歌詞(というよりも、対訳)を読みながらもう1度聴いてもらいたい‥‥ここで初めて「ALICE IN CHAINSの世界観」が完成するのですから。

今現在、若い子達……リアルタイムでの実働を知らない世代がALICE IN CHAINSに対してどういった評価をしているのか判りません。正直に言ってしまえば、知りたくもない……10年前、一部を除いて全くといっていい程盛り上がってなかった「シアトル」「グランジ」といったキーワード。単純に「ハードロック」「パンク」「オルタナ」といった括りで接することの多かった俺からすれば、正直どうでもいいんですよ、シアトルだのグランジだのは‥‥ただただ、ALICE IN CHAINSやNIRVANAPEARL JAMSOUNDGARDENSMASHING PUNPKINSといった最高にカッコいいバンドが、最高に素晴らしいアルバムをリリースしていた、と。ただそれだけなんですよ。



▼ALICE IN CHAINS『ALICE IN CHAINS』
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投稿: 2004 03 26 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2004年1月13日 (火)

QUEEN『MADE IN HEAVEN』(1995)

すでにいろんなところで話題になっているのでご存知の方が多いと思いますが、QUEENの名曲群がテレビドラマの主題歌や挿入歌として起用されました。いわゆる「月9」枠でのドラマ、しかも主演は……ってここで書くまでもないか。僕なんかよりも、皆さんのほうがよくご存知でしょうからね。

で、このドラマの主題歌に起用されたのが、今回紹介するQUEENのアルバム『MADE IN HEAVEN』に収録され、何度もCMソングに起用されている名曲中の名曲、「I Was Born To Love You」だったりするんですが……これってどうなの? 安直かな??という気がするんだけど。ベタとか言わないよ。けどさ……よりによってQUEENの、しかもこの曲なのな。個人的にはね、この『MADE IN HEAVEN』ってアルバムに関して、そしてそこに収録されている楽曲に関して、非常に「聖域」みたいに感じてるところがあるので、できるなら一番やってほしくなかったことなんだよね。まぁ今回のドラマによって、それまでQUEENを知らなかった層に対してもアピールして、どんどん消費されていくのもまた彼ららしいかな、という気もしないではないけど。

さてさて。知らない人のために、この作品について解説しておきますと……『INNUENDO』(1991年)のレビューで触れているとおり、QUEENのシンガー:フレディ・マーキュリーは1991年11月24日に亡くなっています。が、この『MADE IN HEAVEN』がリリースされたのはそれから4年後の1995年11月。ここに収められている楽曲の大半がその時点で未発表だった楽曲であり、また残りの楽曲は過去にフレディやブライアン・メイ、ロジャー・テイラーがソロ名義で発表してきた楽曲の、フレディが歌うQUEENバージョン。つまり、これは正真正銘の「『INNUENDO』に続く、QUEEN通算15作目のオリジナル・アルバム」なのです。

フレディは自身の健康状態が芳しくなく、そう長くは生きられないであろうことを察したのか、1986年リリースの『KIND OF MAGIC』に伴うツアー終了後、ライヴという表舞台から遠ざかり、ただひたすら作品作りに没頭するようになります。バンドのメンバーも彼の意向に添い、それに付き合うわけです。そうやって完成したのが1989年の『THE MIRACLE』であり1991年の『INNUENDO』だったのです。当初、1990年頃に『GREATEST HITS』の第2弾をリリースしたいとレコード会社から打診されたそうですが、どうしても先にオリジナル作品を出しておきたいというフレディの意向から、ベストが後回しにされ、先に『INNUENDO』がリリースされた、なんていう逸話もあるほど、晩年のフレディの創作意欲は半端じゃなかったと(のちにそのベスト盤は『INNUENDO』からのヒット曲も含んだ『GREATEST HITS II』として1991年11月上旬、つまりフレディが亡くなる数週間前にリリースされたのでした)。

『INNUENDO』リリース後のQUEENおよびフレディは、そこからのシングル用にMVも数本制作しつつ、さらに次作のレコーディングに挑んだようですが、結局アルバム1枚分には至らず。フレディの病状も悪化し、そのまま帰らぬ人となってしまったのです。

当時、恐らく誰もが「二度とQUEENのニューアルバムは聴けない」と思っていたはずです。事実、1992年4月に行われたフレディのトリビュートライヴ以後、残されたQUEENのメンバーはそれぞれにソロ活動を開始し、特にブライアン・メイは「Driven By You」といったヒット曲も連発し、順風満帆といった感じでしたしね。しかし、彼らは秘密裏にこの『MADE IN HEAVEN』のために追加レコーディングや編集作業を行っていた。そして、1995年に入る頃には「QUEENの未発表曲集が出るかも!?」という噂が飛び交うのです。

実際にリリースされたアルバムは、未発表音源集と呼ぶにはあまりにも「QUEENのアルバム」然としていて……しかも、こんなにもポジティブなアルバムが完成してしまうとは。誰もそんな作品が手元に届くとは思ってもみなかったでしょうね。『INNUENDO』が厳かで、どこか悲壮感が漂い、「終末感」が強い作風だったこともあり、その落差に驚いた人は多かったはず。けど、このポジティヴさこそがフレディ・マーキュリーであり、QUEENであった、と。この世を去ってから4年経ち、忘れた頃にいきなり届けられた、まるで生きているかのような語り口調の手紙。それがこの『MADE IN HEAVEN』なんです。

先に挙げた「I Was Born To Love You」や「Made In Heaven」といった楽曲はフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)に収録され、シングルとしても中ヒットを記録したナンバー。ソロアルバムの音源からボーカルだけを抜き取り、バンドとしてバックトラックを録音して差し替えたテイクです。また、「Heaven For Everyone」はロジャーのソロユニット・CROSSが過去に発表した楽曲で、その音源でもフレディがゲストボーカルとして参加していたことから、ボーカルを抜き出しバックトラックを再録音したテイク。さらに、「Too Much Love Will Kill You」はブライアンがフレディの没後にリリースしたソロシングルのQUEENバージョンで、当然ここで歌っているのはフレディ。この曲が公の場で初披露されたのは先のフレディ・トリビュートライヴで、ブライアンによるエレピでの弾き語りが印象的だったこの曲も、まさかQUEENバージョンが録音されていたとは誰が想像したでしょうか? 事実、僕も最初にトリビュートライヴでこの曲を聴いたとき、フレディのことを想って書いた曲かな?なんて思ったほど。あ、けどあの時のMCで「古い曲」ってブライアンが言ってたような記憶が……あとでビデオを観直してみよう。

とまぁ、全11曲中4曲が既発曲で、残りの7曲(別バージョンも含むので実際には6曲)が本邦初公開、正真正銘の新曲。アルバムはいきなりフレディのポジティヴな声明である「It's A Beautiful Day」からスタート。過去、「I don't wanna die~」と歌っていた男が、死を目前にして「It's a beautiful day~」と声高らかに歌うわけですよ……もうね、それだけで号泣モノ。このアルバムのテーマともいえる1曲ですね(事実、アルバムは最後にもう一度この曲が歌われて幕を閉じるのですから)。非常に「愛に満ちた」アルバム。それは愛する女性や男性に対してだけではなく、家族であったり、仲間であったり、そしてもっと大きく……世界中すべての人々に対してだったり。フレディは最後まで愛を送ることを惜しまなかった。それを証明したのがこの作品といえるでしょう。

そしてフレディだけではなく、彼を支えるほかの3人の、フレディに対する愛情もこれでもか!?というほどに堪能できる作品でもあるわけです。アルバム1枚に満たない程度のボーカルトラックしか残されなかった状態から、こうやって1枚のまとまりあるアルバムに仕立て上げた事実。1曲としてみた場合、あまりにフレディが歌うパートが少なかったことから、ロジャーやブライアンにもソロパートを設け、まるで本当に「QUEENが一丸となって作った楽曲」に聴こえる、いや、実際にそう仕上がった「Let Me Live」や「Mother Love」といった名曲たち。

優しく歌うフレディをさらにもり立てる演奏。個人的にツボなのが「A Winter's Tale」なんですよ。これ、どうってことのない曲なのかもしれないけど、ここでのブライアン・メイのギタープレイがね、ホントに良いんですよ。音数が少ないながらもちゃんと自己主張し、なおかつフレディの歌の領域までは侵さないという、絶妙なギターソロ。彼の派手なプレイは今までいくらでもあったし、味わい深い感動的なプレイも沢山あった。けど、こういったプレイは過去なかったんじゃないか?なんて思えたんですよ。なんかね、それだけでこう胸が熱くなるというか。うん、本当にフレディはメンバーに愛されていたんだな、というのが実感できる1曲です。

アルバムは再び「It's A Beautiful Day」で幕を閉じるのですが、オープニングと違い(オープニングではフレディのピアノ弾き語り風)、途中からバンドサウンドが被さるんですけど、それがね……過去の名曲群をサンプリングしたものだったりするのね。コラージュっていうんですか? で、そのまま20分近く続くシークレットトラックで余韻を引きずったまま、気づいたら終わっているという。まるで夢でも見ていたかのような錯覚に陥るわけですよ、この終わり方。そう、本当に夢を見たんです。このアルバムを聴いた人たちみんなが、目の前でフレディ・マーキュリーを含むQUEENが再び現れて、新曲を演奏していく夢をね。

このアルバムに対する評価ってホント分かれると思うんですが……個人的には『INNUENDO』が最終章であり最終回、そして『MADE IN HEAVEN』は後日談的なエピローグ、というふうに捉えています。いかがでしょう?

……ほらね? 本当に心底好きなアーティストについて書こうとすると、こんなに長くなっちゃうのよ。これでわったでしょ、何で僕が今までそんなにQUEENの作品を取り上げてこなかったかが。そして、いかにこのアルバムが自分にとって意味のある1枚か、ということも。だからこそ、キムタクごときに汚されたくなかったんだけどなぁ……まぁあのドラマを観てQUEENに少しでも興味を持ったなら、CCCDではないこのオリジナル盤をまず聴いてみてください。手っ取り早いベストには収まりきらない、彼らの本当の魅力がタップリ詰まってますから。



▼QUEEN『MADE IN HEAVEN』
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投稿: 2004 01 13 03:51 午前 [1995年の作品, Queen] | 固定リンク

2003年8月 3日 (日)

岡村靖幸『禁じられた生きがい』(1995)

  これを書いている時点からあと16時間後に、岡村靖幸が、本当に6~7年振りに我々の前に姿を現します。正直、本当にその時になってみないと、彼が我々の前に姿を現すのかは判りません。というか、未だに半分以上信じていない自分がいます。けど‥‥その残りの半分以下の思いを信じて、俺は「ROCK IN JAPAN FES.」のチケットを手にしました。準備は万端、あと数時間後にはひたちなかに向かう予定です。

  現時点における最新のオリジナルアルバムが、今回紹介する「禁じられた生きがい」というアルバム。リリースは'95年の12月ですから、早くも8年近くが経とうとしてるわけですね。それから8年近くの間に、4枚のシングル("ハレンチ"、"セックス"、"真夜中のサイクリング"、"マシュマロ ハネムーン")をリリースし、それら全てのシングル曲を収録した2枚組ベスト「OH!ベスト」をリリースしたのみ。後は他アーティストとのコラボレーションシングルが数枚と、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースのみ。ライヴは恐らく俺が最後に観た武道館公演以来、それこそ6~7年は行っていないはず。

  そんな、既に8年近くも前の最新アルバムですが(考えてみれば、このアルバムだって当時は『前作「家庭教師」から約5年振り』だったわけで。古くからの岡村ファンって本当に忍耐強いと思うよ。尊敬します!)、これが全然色褪せてないんですよね。基本的に岡村のアルバムって、そういうのが多い気がする。ベストアルバムを聴いてると、ある時期から急に時間が止まるというか、年を取るのを忘れてるような印象を受けるんですよね、岡村の楽曲から。

  んで、もしかしたらそういったことが葛藤となって、なかなか創作活動が上手くいかなかったり、人前に出れなくなっているのかなぁ‥‥と。10代特有に熱く香しい思いを歌にしてきた彼が、30代に突入することで、そしていろんな意味で変わり続けている世間とのズレがドンドン生じていく。そして、そういう世間と自分との間、あるいは移り変わりの速い音楽シーンと自分の生み出す楽曲との間の折り合いがつかなくなってきているんじゃないか‥‥なんて、ファンじゃなくても、ちょっと彼について知っている人なら考えそうなことですよね。まぁ今回はそういった分析は無視します。

  やっぱりね、何度も言うけどここに収められた9曲(歌モノは8曲)は、2003年における現代においても全然古びてないし、むしろメインストリートにある音だと思うんですよ。シングルとして発表された"ターザン・ボーイ"や"パラシュート★ガール"、"Peach X'mas"に"チャーム ポイント"といった楽曲は全然今でもアリだし、むしろこういうタイプの楽曲は今みたいな時代にこそ受け入れられやすいんじゃないでしょうか?

  当然、シングル曲だけでなく、アルバム曲も素晴らしい曲揃い。オープニングを飾るファンキーなインスト"あばれ太鼓"なんて和の心とプリンス的ドス黒ファンクの融合といった感じで、このアルバムでなにげに一番好きかも(って歌ないじゃんか!)。また歌詞が本気で深く、後の某アニメや某事件を彷彿させる"青年14歳"もサウンドはそれまでの彼の流れを組むものの、歌詞にはちょっとこれまでと違った「影」を感じてしまったり。滅茶苦茶ソウルフルで鳥肌立ちまくりの"妻になってよ"もホントに名曲。いやはや、全9曲ってアッという間で(時間にして約43分)、物足りなさも感じたりするんだけど‥‥これくらいが丁度いいのかもね。ヘタに長すぎて印象にあまり残らないアルバムが多い分、これはこれで潔いのかも。

  既に2度目のリピートに入ってるこのアルバム。ああ、やっぱり聴き始めちゃうと、何度も、何度もリピートしちゃうんだよねぇ‥‥このアルバムから、明日は何曲歌われるのか、正直なところ判りませんが‥‥ちゃんと我々の前に姿を現してくれよ、岡村ちゃん!



▼岡村靖幸『禁じられた生きがい』
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投稿: 2003 08 03 12:00 午前 [1995年の作品, 岡村靖幸] | 固定リンク

2003年4月 5日 (土)

RADIOHEAD『THE BENDS』(1995)

RADIOHEAD正真正銘のセカンドアルバム。1年間通して2回に分けてレコーディングされたことで、とても充実した内容となったこのセカンドアルバムで、RADIOHEADはいよいよ「イギリスを代表するロックバンド」として頭角を現します。既に「MY IRON LUNG」レビューで書いた通り、本来ならこのアルバムはサードアルバムとしてカウントされるべき内容なのですが‥‥ま、「MY IRON LUNG」はこのアルバムの為の習作ということにでもなるのかな(にしては贅沢な)。とにかく、未だに傑作として挙げられることの多いアルバムだと思います。「OK COMPUTER」以降の、ポストロック然とした路線・作風が苦手だという人にとっては、やはりこのアルバムまでが許容範囲ってことになるようで、『「THE BENDS」は好きな曲が多いんだけどなぁ‥‥』って声は実際によく耳にしました。まぁ確かにギターロック然とした曲もあれば、かなりプログレッシヴな作風の曲もあり、尚かつ歌モノもある。根底にあるものはその後の作品でも変わってはいないはずなんですが、タッチの違いなんでしょうね。

「PABLO HONEY」との大きな違いは、既に1曲目"Planet Telex"のイントロからして、強烈に表れています。ストレートなギターロックが多かったファーストと比べ、リズム的にも凝ったものが増えてきたのがセカンドの特徴かも。ミドルテンポで重厚感のあるリズムを持った"Planet Telex"を頭に持ってきたことは、象徴的かもしれませんね。そのまま比較的ファーストの路線に近い"The Bends"へと続くんですが、ここでの歌の力強さは前作の比ではありません。アレンジ的にもかなり凝った作りになっている辺りは、その辺のギターロック/UKロックバンドと一緒にすんじゃねぇよ!的な拘りを感じさせます。勢いに任せるのではなく、完全に作り込まれた‥‥という印象が全体的に感じられますよね(そしてそれはアルバムに限ったことではなく、ライヴにおいても完全再現されるという徹底振り。圧巻ですよね)。

そしてアルバム最初のハイライトとなるバラードナンバー"High And Dry"と"Fake Plastic Trees"の2曲。共にシングルとしてもヒットしたナンバーで、ファーストに足りなかった「何か」がここで完全に表現されたように感じます。それは「弱さは弱さとして認める潔さ」だったり「メランコリックさを堂々と表現することを恥じない心」だったり「歌本来の持つ力強さ」だったり‥‥とにかく "Creep" という楽曲の大成功によってどこか躊躇していた点をここで完全に克服したといっていいのかもしれません。勿論、ああいった「強弱法」を活用した手法ではなく、もっと違った表現方法を用いることによって、バンドとしては更にステップアップすることになったのです(ま、さすがに今現在、そういった "Creep" 的なものを彼等に求めるファンはいないでしょうけどね)。

最初の山場を迎えた後、独特な節回しを持った豪快なロックチューン"Bones"を経て、再びメランコリックな"(Nice Dream)"へと続きます。後半の展開がやはりプログレッシヴなのが、当時の彼等らしいというか‥‥こういったアコースティックを基調とした楽曲が増えたのも、このセカンドの特徴といえるでしょう。その後のアルバムでよりポストロック方面へと移行していくことを考えると、本当に「歌」を大切にした作品集だな、と今更ながらに実感します。

アルバム後半戦となる7曲目にはレコーディング初期に録音された、グランジ的でプログレチックで狂気すら感じさせる"Just (You Do It To Yourself)"が登場。イントロの天にも昇っていくかのようなコード進行が、かのKING CRIMSONの名曲 "Red" を彷彿させることからも、如何にプログレチックかが伺えると思います。とにかくこの曲はジョニー・グリーンウッドのギタープレイの強烈さでしょう。ここで一気に彼の個性が開花したといっていいでしょう。特にライヴではもっと凄いプレイを聴かせてくれるので、是非ライヴビデオやブートレッグで確かめてみてください(ま、夏の来日で確かめてもいいんですが、その際に演奏されなかったら困るので、とりあえず現存する音源でチェックを)。そのまま同じくヘヴィな"My Iron Lung"へと続き、ヘヴィ&プログレッシヴ2連発。RADIOHEADの新しい二面性(ハートウォーム・サイドとヘヴィサイド)が同居するという意味では、本当に優れた作品だと思いますよこのアルバムは。ここがアルバム第二のピークでしょうね。

激しい曲が続いた後を受けて、同じような空気感を持った穏やかなナンバー"Bullet Proof...I Wish I Was"で、後半戦はあるひとつの方向性が見つかります。前半の温かさと比べ、後半は火傷しそうな程の冷たさを感じます。そういう流れが一環しているかのようなこの曲に続いて、若干前半戦的な色合いの"Black Star"は途中豪快なギターが入るものの、やはり「歌」を大切にしたメランコリックナンバー。こういうRADIOHEADが好きって人、意外と多いんじゃないでしょうか? そのまま"Sulk"へ‥‥こういった曲を聴くと、一時期RADIOHEADをR.E.M.と比べたがる人がいましたが、それよりもU2に表現方法が近いんじゃないか‥‥という気がしてくるんですよね。それはトム・ヨークの歌声が所々、ボノと被る瞬間があるからかもしれませんね。演奏自体は全くの別物で、R.E.M.ともU2とも似てないんですけどね。

最後の曲となる"Street Spirit (Fade Out)"はアルバムを締め括るに相応しい、美しいメロディと、悲しくなるくらいにメランコリックな表現、そしてコンクリートのような冷たさを感じさせる演奏‥‥何なんだろう、この絶望感は!?と初めて聴いた時はよく思ったものですが、その後の路線を経た今聴くと、本当にメランコリックなメロディを持った、美しい曲だなぁと素直に思いますね。初めてライヴで聴いた時はマジ泣きしそうになる程胸を打たれた記憶があります。このアルバムがリリースされた'95年というと、それこそイギリスはOASISやBLURといったバンドが大ブレイクし、ブリットポップなる「姿なきブーム」に踊らされていた頃。と同時にアメリカではGREEN DAYやOFFSPRINGといったパンクバンドがチャートを席巻していた時代。そんな中、RADIOHEADはこういった異色作と呼べるアルバムで全英を制覇し、アメリカでもトップ40に入るヒットを飛ばしたのですから、如何に彼等がブリットポップ・ブームから離れた地点にいたかがご理解いただけるかと思います。大体、OASISなんかはその後、有象無象のフォロワーを生み出したのに、ことRADIOHEADに関しては‥‥ねぇ?

「I~」で歌われることの多かったファーストと比べ、二人称(「YOU」)や三人称で表現される楽曲が明らかに増えたのも、この作品の特徴。基本的なテーマは変わっていないけど、その表現方法がより多岐に渡るようになり、トム・ヨークのストーリーテラーとしての表現力が更に向上した結果、より多くの人に歌が届くようになった‥‥そしてその歌詞には、更に多くの人に届くようなメロディが付いた。ポップソングとしても、そしてロックとしても十分に機能し、更にオルタナティブであり、それでいて王道でもある。いろんな要素を飲み込むことによって、より混沌とした空気感を漂わせるようになったRADIOHEAD。「イギリス人はシェイクスピアの頃から狂ってる」なんて言った人もいましたが、本当にそんな気がします、彼等を見てると。

アルバムとして考えると、最も好みな音を出してるのがこの作品。とりあえずRADIOHEADを聴いてみようって人は、まずはこのアルバムから聴いてみるといいかと思います。それによってギターロック的な方向に進むか(「PABLO HONEY」)ポストロック的な方向へ進むか(「OK COMPUTER」や「KID A」)は、これを聴いたあなたの趣味趣向ってことで。個人的には「OK COMPUTER」と並んで、'90年代のロックを代表する作品だと思ってます。UKロック好きにも、昨今のヘヴィロック好きにも、ポストロックやプログレに興味を持っている人にも、そして歌を愛するあなたにも聴いて欲しい1枚。



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投稿: 2003 04 05 05:02 午前 [1995年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2002年11月 4日 (月)

OUTRAGE『LIFE UNTIL DEAF』(1995)

「日本のロック史に残る傑作」と書いたのは、現在でもHM/HR専門誌「BURRN!」にて記者をしている前田岳彦氏だったけど、この言葉に偽りなし。それがこのOUTRAGEが'95年に残した通算6作目のフルアルバム「LIFE UNTIL DEAF」。

このアルバム、ずっと前から紹介したかったんだよね。以前、余所のサイトの管理人さん達と3人で合評でこのアルバムを取り上げようとしたことあったんだけど、それが結局流れてしまって。その後、「猿メタル」でも『モダンヘヴィネス/ラウドロック好きにもアピールするアルバム』として紹介しようと考えたこともあったけど、それも何か違うような気がして。そんな枠を作って偏見を持たれてしまうには、本当に勿体ない作品だと常々思っていたので。

で、何故かここ最近になってまたこのアルバムや一連の作品群(傑作「THE FINAL DAY」や問題作扱いされることの多い「SPIT」等)を聴き返す機会が何度かありまして。何でかなぁ‥‥と思い返してみたら、そうか、伊藤政則のテレビ番組観たからだ、と。「BEAST FEAST 2002」の特集やってたんですよ。で、昨今のラウド系のPVをいろいろ観ていたら、急にOUTRAGEが聴きたくなってきて‥‥

OUTRAGEを知らない人の方が多いと思うので、ここで簡単に紹介を。'80年代前半に名古屋にて結成された4人組で、当初はスラッシュメタル・バンドとして紹介されていました(既に「スラッシュメタル」なんてジャンルすら死語のような気がしますが‥‥要するに、METALLICAやSLAYERといったバンドがその初期にやっていた、スピード感あるビートに切り刻むようなギターリフを持ったタイプのメタルのことを言います。それまでのメタルよりもパンク的要素が強いのも特徴)。中には「日本のMETALLICA」なんて声もあった程で、音楽的にもそれらのバンドが影響を受けたようなマイナーなブリティッシュメタルバンドからの影響を色濃く出していて、またボーカル・橋本直樹('99年9月に脱退)の歌唱法もMETALLICAのジェームズ・ヘッドフィールドのそれに似ていたことも大いに関係してまして。

バンドは'87年に自主制作EP「OUTRAGE」で話題を呼び、翌年メジャーから「BLACK CLOUDS」でデビュー。その後「BLIND TO REALITY」('89年)、「THE GREAT BLUE」('90年)と順調にリリースを重ねた後、'91年にリリースした4作目「THE FINAL DAY」でメタルファンの間でも大ブレイク(このアルバムは初の海外レコーディング/初の海外プロデューサーという初づくしの作品だった)。このアルバムはヨーロッパでもインディーレーベルからリリースされ、それを切っ掛けに初期の3作もリマスターされて再発。

'92年にはPANTERAの初来日公演のオープニングを勤めたり等して知名度を更に上げ、レコード会社もポリドールからイーストウエストに移籍。翌年にはミドルテンポ中心の異色ヘヴィ作「SPIT」を発表。今でいうモダンヘヴィネスを彼等流に解釈した内容だったんだけど、ファンからは問題視されることが多かった1枚でもあったりして(ちなみに俺、楽曲や演奏は凄く好きなんだけど、ミックスが‥‥)。

バンドは'95年に今回取り上げた「LIFE UNTIL DEAF」の後に同年末にポリドール時代のベスト盤「DAYS OF RAGE」、'97年にオリジナル7作目「WHO WE ARE」、同年7月にデビュー10周年を祝う企画盤「IT'S PACKED」(2枚組ミニアルバムで、1枚に最新ツアーの音源5曲、もう1枚に'87年にリリースされた自主制作盤「OUTRAGE」の初CD化音源という豪華盤)をリリース。そしてこれからという時期に‥‥'99年9月にボーカルの橋本脱退。これによって当時完成していたミニアルバムもお蔵入り。現在は新ボーカルを入れることなく、残された3人で活動している(ギターの阿部がシンガーを勤めている)。

‥‥とまぁ、こんか感じです。メタルの範疇で語られることの多かった彼等だけど、イーストウエストに移籍後の作品‥‥「SPIT」「LIFE UNTIL DEAF」「WHO WE ARE」の3枚は、メタルの枠に留まらない、今でいえばそれこそニューメタル/ラウドロック/モダンヘヴィネスとして扱われる音楽性なわけですよ。つまり、彼等の登場~成長が時代よりも早すぎたんだと思うんですよ。

確かにメロディやギターソロのフレージング、アレンジ等はよりメタリックだけど、例えばこれらの音って、今のMAD CAPSULE MARKETS辺りに大いに影響を与えているんじゃないでしょうか? 勿論、OUTRAGEもMADも同時代を生き抜いてきたバンド達であって、どちらがどちらをパクッたとか影響を与え合ったとか一概には言えないと思いますが、少なくとも昨今のMADのスラッシーでメタリックな楽曲を聴く度に、俺は「もしかしたらOUTRAGEがこのポジションにいたかも‥‥」なんて思ってましたし。橋本直樹という類い希なるシンガーが起こした奇跡、それがこの「LIFE UNTIL DEAF」だと思ってます。

勿論、橋本だけじゃありません。リズム隊のプレイも的確でグルーヴィーだし、何より特筆すべきなのは阿部のギターワークですよ。メタル好きの人にはたまらないツボを押さえたソロプレイは勿論、やっぱりこのバンドの要となるリフワークはかなりのものがあると思います。"Megalomania"でのコードを崩したようなプレイ(文字では上手く表現できないので、是非一聴を!)なんて当時は「おおっ!」と唸ったものです。

MADとの比較をしましたが、MADにあってOUTRAGEにないもの。それは「デジタル」と「ヒップホップ」の要素でしょう。逆に、それらふたつがあったからこそ今のMADがあるのであって、これらふたつのバンドがこれまで比較されることが殆どなかった理由となっているのでしょう。パンク的なものからスタートしたMAD、メタルからスタートしたOUTRAGE。双方出発点は違いますが、この時期('90年代半ば)にやっていたことには意外とクロスオーバーする点があるのではないでしょうか?

さて、話題をアルバムの方に戻しまして‥‥とにかく捨て曲なし、ファストでラウドでメロウでヘヴィ。確かにこれよりもラウドでヘヴィなアルバムはその後幾つも登場しましたが、歌詞の面においてもここまでヘヴィな作品はそうはないのでは? 勿論、全て英語詞で唄われているので全てを完全に理解することは出来ませんが、封入された英訳される前の原詞に目を通すと、かなり精神的にグググッとくる内容なのに気付きます。

そしてそれらの歌詞を更に重いものへと導くサウンド。こっちも凄いことになってます。HM/HR界での大御所プロデューサーであるマイケル・ワグナー(METALLICA「MASTER OF PUPPETS」のミックスやSKID ROWの1st & 2ndのプロデュースで有名)が手掛けたサウンドの素晴らしさは、当時の日本にはまだなかったような「音像」を作り出すことに成功しています。

楽曲の素晴らしさは言うまでもなく、特筆すべき曲は幾つもありますが、OUTRAGEを知らない若い世代に特に聴いて欲しいのは歴史的名曲である1曲目"Megalomania"、泣きのメロディが心を打つ"Vanishing Fully From The World"、日本の和太鼓集団「鬼太鼓座」のプレイをフューチャーした9分もあるヘヴィ大作"In Union With Earth"、サイケなパンクナンバー"Echo"、BLACK SABBATHや当時のPANTERAも真っ青なスロウヘヴィな"Draggin' Me Down (Fear Is)"、デビューから8年経っても基本は忘れない高速スラッシュナンバー"You Suck"等々。勿論、ここに名前を挙げなかった楽曲も特に劣るわけではないのでご心配なく。「ラウド系は嫌いじゃないけど、最近のラップっぽい歌が苦手」という人。大丈夫です。彼等はラップに逃げません。ちゃんとメロディを唄っています。しかも、かなり胸を打たれるようなメロもあるので、聴く人が聴いたらハマッたまま抜けられなくなるかも

厳密にいえば、確かにここに収められた音はヘヴィメタルのそれ、そのものかもしれません。しかし、今流行っている(流行ってるのかホントに?)ニューメタルというバンド達の音だって、この俺からすればOUTRAGEの音と何ら変わらないわけですよ。呼び名やジャンルこそ細分化されているものの、基本的に彼等がやっているのはハードロックでありヘヴィメタルなわけですよ。ならば、このOUTRAGEだってメタルであって、また逆にメタルでなくてもいいわけです。間違いなく「rockin'on」辺りでは取り上げられることのないタイプのバンドだと思いますが、'90年代の日本の音楽シーンを語る上で欠かすことのできないアルバムだと個人的にはずっと思っていました。

多分廃盤にはなっていないと思いますし、中古盤屋で見つけるのも難しくない作品だと思います。昨今のヘヴィ系好きも、メタルに縁が薄い人も、まずはこのアルバムから聴いてみて下さい。ホント、いいアルバムなんで!



▼OUTRAGE『LIFE UNTIL DEAF』
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投稿: 2002 11 04 03:06 午後 [1995年の作品, Outrage] | 固定リンク

2001年9月 8日 (土)

OZZY OSBOURNE『OZZMOSIS』(1995)

“HM/HR界の「サージェント・ペパーズ」”という大袈裟な表現が似合う程、これまでのオジー・オズボーンのイメージとは異なる楽曲が多く、幅広く収録された'95年発表のソロとしては7枚目のオリジナルアルバム(ライヴやベストを除く)であり、現時点(2001年9月)に於いての最新作。この10月にはいよいよ6年振りにオリジナルの新作が発表されるそうだから‥‥もうそんな前の作品になるのか。考えてみれば、この6年の間には「OZZFEST」開始もあったし、初のベスト盤リリースもあったし、BLACK SABBATHとしての復活もあった。ソロでのバンドメンバーも度々変わり、一体現在誰が在籍してるのか判らなくなる時期もあったが、結局この6年はサバスを中心に回っていた感もあるので、気にしないこととしよう。

この「OZZMOSIS」は'91年秋に発表された「NO MORE TEARS」から4年振りに発表されたオリジナル新作。だが、ちょっとこのアルバムリリースにはいろんな意味が隠されている。まずオジーは'91年に一度、ステージからの引退を発表しているのだ。よって「NO MORE TEARS」でのツアーが最後のツアーということで、世間を騒がした。アルバムリリース1ヶ月後にここ日本からスタートしたワールドツアー(勿論、俺も武道館に足を運んだ。2階席のかなり後方だったがいい想い出だ)は約1年続き、最終日には幻のオリジナルサバス再結成も含まれていた。それらの音源を含んだ、集大成的内容のライヴアルバム「LIVE & LOUD」を'93年に発表し、オジーはそのまま隠居するのかと思われた。翌年にはBLACK SABBATHトリビュートアルバムに(トリビュートされる側にも関わらず)ゲスト参加し、同時にこの頃から「アルバム制作開始」の噂が広がる。しかも、そのパートナーとしてスティーヴ・ヴァイの名前が挙がる‥‥オイオイ(苦笑)。ヴァイはメタル向きの人間ではない。アバンギャルドなそのプレイからミュージシャン受けが良く、グラハム・ボネットやデイヴ・リー・ロス、デヴィッド・カヴァデイルといったシンガー達と活動を共にした経験を持つが、やはりメタルの人とは言い難いプレイなのだ。そのヴァイとオジーは曲作りをしたそうだ。結局、アルバム参加にまでは到らず(当然のように周囲が猛反発したと聞く)、レコーディングには旧知の仲であるザック・ワイルド(Gt)、そしてサバスでの盟友であるギーザー・バトラー(Ba)、そしてヴァイから薦められた現JOURNEYのディーン・カストロノヴォ(Dr)が参加。プロデュースにはRED HOT CHILI PEPPERSやSOUNDGARDENでお馴染みのマイケル・ベインホーン、ミックスにはALICE IN CHAINSやCATHEDRALを手掛けるデヴィッド・ビアンコという、昨今のヘヴィ/ラウド・ロックには欠かせないエンジニア陣を起用。このメンツからして、どれだけヘヴィな音になるのかワクワクしたものだ。

さて、アルバムだが‥‥ヘヴィロック一辺倒という内容ではない。確かに1曲目 "Perry Mason" がスタートすると「これぞオジー流モダン・ヘヴィネス!」なんて唸ったりもしたが、アルバムが進むにつれいろんなタイプの曲が登場する。確かにヘヴィな音像をしており、ザックのギターもこれまでで一番ヘヴィだし、ギーザー&ディーンのリズム隊もモダンで重心の低い音を出す。けど、メロディーは相変わらずポップだし、サバスのヘヴィネスと比べるとどこか違う。よりモダンというのもあるが‥‥バックの演奏は確かに'95年当時のヘヴィロックなのだが、歌はいつものオジー。この絶妙な組み合わせが独特な味わいを出しているのだ。

このメンツじゃなきゃ作れなかったであろう超ヘヴィネスな "Thunder Underground" や "My Jekyll Doesn't Hide" のような曲もあれば、バラード "See You On The Other Side"、"Old L.A. Tonight" もある。サイケな "Ghost Behind My Eyes" や "Denial"、スティーヴ・ヴァイとの共作でやはりサイケテイストな "My Little Man"、歌モノポップスとしても通用しそうな(それでいてバックはHMな)"I Just Want You"‥‥これまでもHM/HR一辺倒というわけではなかったが、ここまでカラフルなアルバムは初めての事だ。前作「NO MORE TEARS」の時点でその前兆は見え隠れしていたが、ここまで本格的にやるとは‥‥本来はライヴなんて想定していなかったはずで、あくまで「スタジオ作品」として作られたはずなのだ。しかし、いつの間にか「ライヴからの引退、撤回」発言まで飛び出し、当然のようにこのアルバムでツアーにも出るわけだ(苦笑)。残念ながらというかやはりというか、ライヴではこのアルバムからの曲は数曲しか披露されなかったようだ。オジーのライヴは、基本的にはグレイテスト・ヒッツ的内容となっていて、新作からは2~3曲という事が多い。サバス時代~ソロまでの全作品から選ばれるわけだから、仕方ないと言われればそれまでだが‥‥個人的にはこのアルバムの楽曲の完全再現ライヴを観たかった。

オジーという人がBEATLESを好きだという事はファンの間では周知の事実で、実際これまでもそういう要素は所々に見受けられた。しかし、このアルバムのように本来は「ライヴを想定せずに作られた、スタジオワークの結集的」作品でその才能が開花するとは思ってもみなかっただろう、ファンも本人も。けど、やっぱりヘヴィメタルの人というか、その音像はメタル以外の何ものでもなく、バンドサウンドに拘っている。いや、もしかしたら楽曲作りの段階で、既にライヴを想定していたのかもしれない。ザック・ワイルドという類い希なるプレイヤー/コンポーザー/パフォーマーと共に曲作りを進め、そこに旧友ギーザー・バトラーが加わった時点で。個人的には、このメンツは最強だと思っていた、が‥‥ツアーに出れるのか出れないのかをザックに問いただすと、当時GUNS N'ROSESにも声をかけられていた彼は結局両天秤にかけ、それをオジーが激怒し、結局他のギタリスト(ジョー・ホルムズ)を起用する。そしていざツアーを開始すると、ディーンのドラムがうるさすぎるとの事でクビ(笑)、代わりに旧知のランディ・カスティロ(後にMOTLEY CRUE加入するも2002年5月、癌で死去)を起用することとなる。その後サバス復活の件もあってギーザーも抜け、ベスト盤('97年)に伴う日本ツアーでは何故かザック、ランディ、そして現ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズという、「NO MORE TEARS」ツアーのメンツでの来日となった。結局その後、再びジョーが復帰し、ドラムは元FAITH NO MOREのマイク・ボーディン、ベースには元SUICIDAL TENDENCIESのロバート・トゥルージロを起用する事となる。

そういえば、このアルバムはオジーの歴史上、最も高順位に位置したアルバムである(米・ビルボード紙のアルバムチャートで初登場4位)。これまでもトップ10入りは何度か果たしていたが、4年のブランク後にこの結果‥‥しかも時代はヘヴィ/ラウド・ロック全盛時代。如何にオジーがメタル界だけでなく、多くのロックファンに復活を願われていたかが伺える象徴のひとつかもしれない。そしてオジーは、このアルバムを引っ提げて翌年、オズ・フェストを開催するのである。

最初に書いたように、このアルバムはBEATLESにおける「サージェント・ペパーズ~」のような内容にしたかった、とオジー自身も当時のインタビューで確か発言している。同じ頃、AEROSMITHのスティーヴン・タイラーも「エアロ版『サージェント・ペパーズ~』」と「GET A GRIP」を比喩している。ロック界では'90年代前半、こういうサイケで楽曲の振り幅が大きい内容のアルバムが流行だったのか‥‥そう考えてみると、そうかもしれない。'80年代末にTEARS FOR FEARSがおもむろにBEATLESをコピーした「SEEDS OF LOVE」というアルバムからスタートし、その後のOASISに到るまで‥‥そして最後には当のBEATLESの、音源上での復活。世紀末に向かうに当たり、もしかしたらロック界は再びスタート地点に戻ろうとしていたのか、それともグランジといったシンプルな演奏スタイルを目の当たりにして、ロック自体が再びシンプルなものへと戻ろうとする反動として、「サージェント・ペパーズ~」を持ち出したのか。その答えは今も判らないが、時同じくしてエアロとオジーが同じような事を考えていた事実が非常に興味深い。

今年初め、オジーが久し振りにソロアルバムを作っているという噂が広がり、三度ザック・ワイルドと曲作りを進めているとの情報が伝わってくる。そして‥‥結局噂でしかなかったが‥‥ドラムにトミー・リー(元MOTLEY CRUE、当時はMETHODS OF MAYHEM。現在は再びMOTLEYに復帰という話)、ベースにギーザー・バトラー、ギターにザックという布陣でアルバムのレコーディングに入るという噂が広がる。結局ザック、マイク・ボーディン、ロバート・トゥルージロというメンバーでレコーディングされたという。既に1曲聴いているが、かなり「復活サバス」を意識した、デッドなサウンド感を持ったヘヴィロックという印象を受けた。この「OZZMOSIS」と全く違った音になる事は間違いない。非常に楽しみだ。



▼OZZY OSBOURNE『OZZMOSIS』
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投稿: 2001 09 08 04:22 午前 [1995年の作品, Ozzy Osbourne, Zakk Wylde] | 固定リンク

2000年12月19日 (火)

THE BOOM『手紙』(1995)

皆さんは音楽を聴く時、まず最初にどこに耳が(興味が)いくのだろうか? メロディ? リズム? ギターリフ? ボーカルの声質? コーラスの綺麗さ? それとも歌詞? やっぱりキャッチーなメロディに耳を奪われる事が多いのだろう。ちょっと前の事だが、とあるサイトの掲示板でこの辺の話題になった事があった。そこでの意見を総括すると、歌詞というのはそれ程重要視されないという意見が多かった。つまり「内容が如何に素晴らしいからといって、それがその楽曲の素晴らしさに直結するわけではない」という事だろう。特に洋楽(=日本語以外の言葉を歌詞に持つ音楽)の場合、やはり最初に印象に残るのはメロディであるのは間違いない。余程英語に精通しているか帰国子女でもない限り、歌詞がバーンと頭の中に入ってくる事はまずないだろう。

それでは、日本語で唄われている楽曲の場合はどうだろうか? 母国語‥‥普段の会話に用いられる言葉を歌詞に持つ音楽。それが我々が好む「ロック」というジャンルの場合、どれだけ重要視されているのだろうか? ちょっと疑問に‥‥いや、心配になってしまった、というのが掲示板を読んだ正直な感想だった。

ロック自体が日本国内でも成熟期を迎え、欧米のそれと大して差を感じられないレベルにまで達した‥‥アーティスト達もいる。海外でも活躍し、ここ日本でよりも知名度が高いアーティストもいる。しかし、そういう場合は大抵歌詞が英語だったりして、『我、日本人なり』という事実をアピールするのは、その独特なメロディにのみだったりする事が多い。いや、中にはその日本人的メロディすら感じさせない、国籍不明なアーティストもいる。つまり、母国語である日本語を中心に使いながら海外(ここでは欧米を指す)で成功を収める、というアーティストは殆どいないに等しい。

そうなると、日本語で唄うアーティストは国内に活動の重点を置く者達が大半を占めるわけだが‥‥どれだけ多くのアーティストが「言葉」を大切にしているのだろうか? そして我々はどれだけ「言葉」というものに意味合いや重要性を求めているのだろうか? 掲示板で見かけた人達の場合は「それ程重要視しない」という意見が多かったが、例えば今年後半最もヒットした国内アーティストである浜崎あゆみの場合、彼女のファンの多くは「歌詞に共感する」という。宇多田ヒカルしかり、グレイしかり。ジェネレーションリーダーとなりうるアーティストには、やはりしっかりとしたメッセージを持っている場合が多い。過去を振り返ってみても、佐野元春や浜田省吾、尾崎豊、ユーミン、中島みゆき、そして俺が取り上げる事が多いミスチルやゆず。メロディメーカーとしての才能にも優れているが、やはりこれらの人達には「詩人」という言葉がよく似合う。そうそう、エレカシ宮本もだった。

そして今回、もう一組(ひとり)のアーティストをこの中に入れておきたい。それがこれから紹介するTHE BOOMだ。今回取り上げるのは、5年前に発表されたシングル「手紙」。かなり画期的且つ衝撃的な作品である。エレカシ「ガストロンジャー」の4年前に、既に宮沢和史(THE BOOMのボーカリストであり、メインソングライター)はこんなに攻撃的なパンクソングをリリースしていたのだ。

THE BOOMといってイメージするのは、例えば「島唄」に代表されるような沖縄民謡だったり、「風になりたい」のようなサンバ等のブラジル音楽の要素をとりいれた、まさしくミクスチャーな存在だろう。そんな彼らが1994年に発表したアルバム『極東サンバ』にてブラジル音楽からの影響をある意味完成型にまで持っていった後に、次なる第一歩として発表されたのがこの楽曲だった。最初にこの曲が発表された(いや、演奏されたというべきか)のは、リリース(95年12月)の半年近くも前、テレビの歌番組でだった。バンド演奏というよりは寧ろサンプリング中心のバックトラックを相手に、ボーカルの宮沢は椅子に座り、足を組んでハードカバーの本を手に淡々と歌詞を読み上げる。感情を極力抑えているにも関わらず、そしてバックは機械相手にも関わらず、そこに存在したのは人間というものが持ち合わせる感情‥‥怒り、悲しみ、喜び、憤り‥‥の全てが渦巻く台風の目だった。所謂「ポエトリーリーディング」に近い形の楽曲なのだが、俺は背筋に嫌な汗をかきながらも、そこから目をそらせなかった。これまでもボブ・ディランやルー・リードといった先人達がこういうような事に挑戦してきた。日本でも有名なところでは佐野元春が何度かチャレンジしている(彼に関してはポエトリーリーディングで何度か作品をリリースしている)。ここでTHE BOOMが挑戦したのは、本当の意味でのポエトリーリーディングとは言えないかもしれない。しかし、この楽曲は紛れもなくロックンロールナンバーだ。

ビートが強烈で、ギターリフが格好良くて、メロディが素晴らしく、そこに誰をも魅了するカリスマ性が存在すればロック‥‥それはそれで正しいだろう。がしかし、このうちのメロディが存在せずに、歌詞が素晴らしかったとしよう。それはロックではないのだろうか? そんな事はないはずだ。これは決して特殊な形なんかじゃない。風変わりという表現で片づけるのは、単に自身の許容範囲の狭さをひけらかしているだけだし、ロックというものに先入観や固定観念を作ってしまっていて、非常に勿体ない。

確かに「俺はストーンズみたいなスタイルのバンドが好きなんだからいいだろ?」とあなたは言うだろう。ではそのストーンズの「スタイル」って何だろう? そのストーンズこそ、常に時代や流行と戦い続けてきたバンドの代表なのではないだろうか? 歴史は語っているはずだ。ディスコやダブ、ヒップホップにテクノ‥‥それを本流にはしなかったものの、常にストリートでの流行を取り入れてきたのは他でもない、彼ら自身なのだ。

俺はロックンロールを愛している。素晴らしいメロディにも感化されるし、カッコいいギターリフにも痺れる。ビートの複雑さに涙したり、シンガーの声を聴いただけでイきそうになる事もある。けど、こうやって過去を振り返ってみると、常に俺を突き動かしてきたのは、歌詞だった。自分にとって最もパンクなモノとは、実は「歌詞の非凡さ」だったりするのかもしれない。勿論、誰の心にも訴えかけるようなラヴソングも好きだし、ある時にはそういう歌詞も自分にとって「最もパンクなモノ」となる事がある。時々、誰が聴いても下らなくて幼稚な歌詞を持った、バカバカしい楽曲と出会う事もあるが、自分の感性に合えばそういう歌だって孤高なモノとなる事がある。

ロックの基準というものがもし存在するのなら、それは人それぞれ違うもののはずだ。寧ろそうでなくてはいけないと思う。ロックというものは楽曲そのもののスタイルではなく、演者/聴き手が最も信じるモノなのだ。だからここで俺が「俺にとっては歌詞が強烈なモノによりロックを感じるんだ」と言ったとしても、それは他者にとっては「ふざけんな!」という事になりかねない。先に登場した「歌詞の内容はあまり重要視しない」という方々にとってはたまたまそいいうモノがロックの基準から外れるだけなのであって、だからといってないならないで困ってしまうのも歌詞だったりする。

でも、もしあなたに少しでも他者を受け入れる余地があるのなら、悪いことは言わない。1度この曲‥‥歌詞に耳を傾けて欲しい。そして歌詞カードに目を向けて欲しい。そこにはまだあなたが出会った事のない「何か」が必ず存在する。文学作品に向かい合うのではない。ロックンロールと向き合うのだと思って欲しい。作者からの「手紙」だと思って、気軽に読んで欲しい。そして今一度、あなたにとってのロックとは?という命題と向き合ってみて欲しい。

結局、俺はこの「とみぃの宮殿」という場で如何にロックンロールの素晴らしさを伝えていくか?という命題と戦う事が使命なのかもしれない。そいうい意味で、俺は開設2周年を記念する月のオススメにこの楽曲を選んだ。これが俺の意思表明。去りたい者は去ればいい。ついてきたい奴だけついてきな。



▼THE BOOM『手紙』
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投稿: 2000 12 19 12:00 午前 [1995年の作品, BOOM, THE] | 固定リンク

2000年8月 2日 (水)

THE WiLDHEARTS『P.H.U.Q.』(1995)

'95年5月(日本は6月)にリリースされた、THE WiLDHEARTSのオリジナル・フル・アルバム2作目。恐らく彼等の人気を決定づける事となった、記念碑的作品ではないだろうか? 英国ではシングル"I Wanna Go Where The People Go"のトップ20入り(16位)の煽りを受け、アルバムは初登場6位という快挙を成し遂げた。また、この年の10月にはいよいよ初来日を果たし、今や伝説と化している。だって、解散を決意して乗り込んだ異国の地で、こんなにも大歓迎されるなんてメンバーは誰一人として思っていなかったはず。それを切っ掛けに再び彼等はバンドとして活動することを決意し、その日本に対しての感謝の気持ちともいえる"Weekend '96"をプレゼントした(この曲の中間部には、その日本公演でのシンガロングがそのまま収録されている。つまり俺の声が聴けるという訳だ/笑)。バンドとしては最も不安定な時期だったものの(考えてみれば、レコーディング直前にギターのCJをクビにして、3人編成で録音されたものだし)、音楽的には最も充実していた時期に作られた楽曲達がこのアルバムと、それと前後して発表された「FISHING FOR LUCKIES」に収められている。

「FISHING FOR LUCKIES」のレビューでは『大作や実験作を「FISHING~」に、ポップな小楽曲を「P.H.U.Q.」にと分けた』と書いたが、いざ改めて聴き直してみると、意外とそうでもないかな?という気がしてきた。「P.H.U.Q.」というアルバムには13曲収録されているが、クレジットやCDプレイヤーのカウンターを見ないで聴いていると、どこからどこまでが1曲なのか判らなくなる時がある。つまり、このアルバムは組曲形式を取った楽曲が数曲あるのだ。あるいは次の曲へのイントロダクションとでも言えばいいだろうか? "Baby Strange"~"Nita Nitro"の流れは正にそうだし、"Cold Patootie Tango"~"Caprice"もそうだろう。また、聴き方によっては"Jonesing For Jones"のエンディングから"Woah Shit, You Got Through"のイントロに繋がっているようにも聞こえる(まぁこれは組曲とは言い難いが)。「FISHING~」の楽曲を公式に発表する事をレコード会社に拒まれた件から想像するに、大作を嫌うレコード会社対策の為に、わざとイントロ部となる部分を1曲としてカウントしたのではないだろうか? けど、当時のライヴではそれぞれの曲を演奏する時、導入部を省いてたんだよなぁ‥‥やっぱり意味はないのか? 深読みし過ぎか? 何はともあれ、こういう形態の楽曲が収められているのはこのアルバムだけだし、時期的にもこの頃だけのようだ。非常に興味深い。

それにしても、"I Wanna Go Where The People Go"や"Just In Lust"といったポップなシングルナンバーや、BAY CITY ROLLERS meets METALLICAな印象の"V-Day"といったポップなナンバーが頭に並んでいるせいか、「ポップなWiLDHEARTSの代表作」というイメージがあるのだが、実はかなりヘヴィな楽曲が多い。恐らく「ENDLESS, NAMELESS」を別とすれば、最もヘヴィな内容ではないだろうか? 「FISHING~」と同時期に書かれ録音された楽曲が並んでいるので、これら2枚は対として考える事が出来るが、この時期というのが正にそういう「リフとリフとで組み上げられていく、ヘヴィな大作」を信条としていたのだろう。それまで以上にその点が強調されているように感じる。そう考えると、彼等は「更にヘヴィに、もっとヘヴィに」というのがエスカレートして、「ENDLESS, NAMELESS」までたどり着いたのかもしれない。あれがWiLDHEARTSの最終形だとは思わないが、この「P.H.U.Q.」や「FISHING~」はそのプロトタイプだったのかもしれない。

初来日公演や翌年の再来日では、このアルバムからの楽曲が中心となっていたので、やはり思い入れという点ではこのアルバムが一番強い。ジンジャーがステージ中央にあのレスポールを持って現れ、"I Wanna Go Where The People Go"のイントロを弾き始めた、あの鳥肌が立った瞬間は今でも忘れられない。あの瞬間に彼等は俺にとって大切なバンドに決定したのだから。

最後に余談だが、このアルバムタイトル、どうやって発音するのだろう?という声をよく耳にする。え~皆さん。「P.H.U.Q.」でしょ‥‥「PH」って「ファ」って読むでしょ? この際「U」は無視して最後の「Q」が「キュー」だから‥‥ねっ、判ったでしょ?(笑)タイトルなんて意味なくていいんですよ♪



▼THE WiLDHEARTS『P.H.U.Q.』
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投稿: 2000 08 02 06:24 午後 [1995年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2000年7月27日 (木)

THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』(1994)&『FISHING FOR MORE LUCKIES』(1995)

一見ニューアルバムのようだが、実はそうではないのがこの「FISHING FOR LUCKIES」だ。これがまた厄介というか、複雑なんだわ‥‥復習存在する本作について解説していきたいと思う。

①『FISHING FOR LUCKIES』(1994 / ファンクラブ限定バージョン)

'94年12月にファンクラブを通して発売された6曲入りミニアルバムとして最初に「FISHING FOR LUCKIES」というタイトルで通信販売された。当初、これらの楽曲はオリジナル・フル・アルバムとしては2作目にあたる「P.H.U.Q.」の為にレコーディングされたものだ。まず'94年6月に"Inglorious"と"Sky Babies"の2曲入りシングルをアルバム前にリリースする予定だったが、レコード会社が長い曲を嫌った為(この2曲だけで20分近くある/笑)、難色を示したそうだ。更にこの時期にレコーディングされたものは結局、1年後に日の目をみるわけだ(「P.H.U.Q.」自体はその1年後にリリースされた)。

収録曲は以下の通り。


1. Inglorious
2. If Life Is A Love Bank I Want An Overdraft
3. Schizophonic
4. Do The Channel Bop
5. Geordie In Wonderland
6. Sky Babies


'95年1月にはこのアルバムの中からM-2とM-5を収録したシングルがレコード会社を通してリリースされた。また、後に発売される「P.H.U.Q.」の英国初回盤にはボーナストラックとしてM-1とM-3の2曲が、同アルバム日本盤ボーナストラックとしてM-2とM-4がそれぞれ収録され、一般のルートでも聴く事が出来るようになった。


②『FISHING FOR MORE LUCKIES』(1995 / 9曲入りバージョン)

イギリスの音楽雑誌では通販版「FISHING FOR LUCKIES」が大絶賛されたことから、レコード会社は'95年夏頃に改めてこのアルバムに未発表曲2曲と"I Wanna Go Where The People Go"のデモバージョンを追加した形で、同じジャケットに『MORE』を赤字で追加しただけの形の「FISHING FOR MORE LUCKIES」をリリースしようとした。しかし「1度発表されたものにクズのようなデモを足しただけのアルバムなんか、リリースさせるか!」とジンジャーは怒り、リリース中止を呼び掛けた。ライヴでもお客に向かって頻繁に「あんなアルバム、買うなよ!」と訴えかけていた。

その後、カット盤として一般流通しているので、当時は簡単に手に入れることができた。ちなみに収録曲は上の6曲に


7. Underkill
8. Saddened
9. I Wanna Go Where The People Go (Early Version)


という9曲入りとなっている。

多分俺が持ってるのは、その流通してしまったものを複製したブートレッグだと思う。ジャケットの印刷が粗いし(恐らくカラーコピーで複写した2世、3世だろう)、背がカットされていないので。まぁファンならマスト!ってアルバムでもないし、本当に興味があるハードコアなマニア向けの作品でしょう。そういえば、最近はどこのCDショップでもこれ、見かけないなぁ‥‥


この頃の楽曲にはとにかく大作志向が目立った。どちらかというと短くて聴きやすい曲を「P.H.U.Q.」に集め、大作や実験的な曲を「FISHING FOR LUCKIES」に入れたのではないだろうか。後に発表される現行バージョンには「P.H.U.Q.」にも通ずるポップな小楽曲を中心に追加したことによって、より内容が充実しているが、初めて現行バージョンでこれらの大作を耳にした時は、とにかく驚いたのを覚えている。これら4曲はパンク版プログレというわけの判らないカテゴライズをしたくなる程(笑)、起伏が激しい。まるでローラーコースターに乗ってるかのように‥‥しかし、これらの曲がこのアルバムの中では1番好きだったりするのだから、少なくとも俺にとってはこのアルバムの曲をこのような形で発表した事に意義があったということだろう。

そういえば、これらの大作はライヴで披露されたと聞いた事がない。彼等のライヴがどういうものか知っている人なら、それらが何となく合わないんじゃないか?と思うことだろう。俺も同感だ。ジンジャーが最後まであれらの楽曲を完奏するするとは思えない(笑)。絶対に途中で飽きて、他の曲をやりそうな気がする。まぁそんな事はどうでもいいか。このアルバムの再発バージョン、ジンジャーは嫌いで1度も聴いていないらしいから。最初のバージョンは気に入っているらしい。そもそも、結果としては同じようなアルバムが3度発売されたわけだが、雑誌のレビューは再発を重ねる毎に評価が低くなっていったそうだ。何がどう悪かったのかは判らない。要するに「同じアルバムを何度も再リリースして、小金稼いでるんじゃねぇよ!」って事なのかもしれない。



▼THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』
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投稿: 2000 07 27 06:16 午後 [1994年の作品, 1995年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2000年5月 3日 (水)

BON JOVI『LIVE FROM LONDON』(1995)

BON JOVI初のライヴビデオといううたい文句で95年11月に発売されたこのビデオ。実はこれ、嘘だよ‥‥「オフィシャル初の~」という枕詞をつけるべきである。だって、初来日の「スーパーロック」@西武球場でのライヴも日本では発売されたし(20数分のものだが‥‥)、翌85年の初のジャパンツアーのビデオも日本オンリーで発売されていた。(現在は廃盤。ちなみに前者は数年前に再発されたはずだ)それに93年にもアンプラグドならぬMTV「半プラグド」ライヴがビデオでリリースされてるし‥‥まぁ純粋な意味での「普段通りのライヴ」を収めた作品としては初めてだし‥‥いいか?(笑)

俺が常々「BON JOVIはライヴだ!」って言ってきたその答えが、このビデオの中にある。残念ながらこの作品、90分程度の縮小編集版なのだが(実際のライヴはこの倍近く、あるいはそれ以上ある)これでも十分伝わってくる。如何に彼等が「ROLLING STONESやAEROSMITHの後継者」であるかが、この90分に凝縮されている。

以下にこのライヴの収録された95年6月25日のイギリス・ウェンブリースタジアムでのセットリストを記しておくので、御参考までに。(太字がビデオ収録曲)

01. Livin' On A Prayer
02. You Give Love A Bad Name

03. Wild In The Streets
04. Keep The Faith
05. Blood On Blood
06. Always
07. I'd Die For You
08. Blaze Of Glory
09. Runaway
10. Dry County
11. Lay Your Hands On Me
12. I'll Sleep When I'm Dead
  ~ Papa Was A Rolling Stone (TEMPTATIONS)

  ~ Jumpin' Jack Flash (ROLLING STONES)
  ~ I'll Sleep When I'm Dead
13. Bad Medicine
  ~ Shout (ISLEY BROTHERS)

—ENCORE—
14. Bed Of Roses
15. Hey God
16. These Days
17. Rockin' All Over The World (STATUS QUO)
18. I Don't Like Monday (BOOMTOWN RATS)
19. Wanted Dead Or Alive
20. Stranger In This Town (Vocal : Ritchie Sambora)
21. Someday I'll Be Saturday Night
22. This Ain't A Love Song

ねっ、半分カットされてるでしょ? しかも山場となる「Blood On Blood」や「These Days」、「Dry County」といった大作やゲストを交えたカヴァー曲(「Rockin' ~」にはブルース・スプリングスティーンのE.STREET BANDのギタリスト、リトル・スティーヴンスが、「I Don't Like Monday」には当の御本人、ボブ・ゲルドフがゲスト参加)までもがカットされている権利の関係とかいろいろあるだろうが、日本でそういう客演をあまり拝見した事がないので(せいぜいGN'Rでのロニー・ウッドくらいか?)豪華に完全収録して欲しかった。

このライヴは95年4月から始まったツアーのクライマックスといえる、ウェンブリースタジアムでの3日連続公演の内の3日目だ。当時の最新作『THESE DAYS』はツアースタート時はまだリリースされておらず、新曲も1~2曲程度で、どちらかといえばその半年前にリリースされ大ヒットしたベスト盤『CROSS ROAD』をフォローアップするツアーのようだった。実際に内容からそう言ってもおかしくない選曲だと思うし。その年の5月に彼等は日本で、福岡ドーム~西宮スタジアム~東京ドームという日程で来日し、上のセットリストとほぼ同じ選曲でライヴを行っている(もちろん日によって若干の違いもある)。日本ではこの数週後にシングル「This Ain't A Love Song」がリリースされるという状況で、新作からはその他にも「Hey God」「Diamond Ring」が披露されている。

アルバムは6月上旬に発売され、日本でもチャート誌の総合チャートで1位を記録し、同じくイギリスでもチャートの1位を記録した(マイケル・ジャクソンを蹴落として、である)。このライヴはその余韻に浸るメンバーを目にする事ができる。実際にビデオ内のMCでもジョンはファンに対して感謝の言葉を述べている。

それにしても‥‥本当にスケールがでかいバンドになったもんだな?と再確認したビデオだ。7万人だよ!?それを3日間‥‥前座には英国を代表するTHUNDERと、アメリカではBON JOVIよりも人気/セールス共に格が上のVAN HALENだよ? ある意味、屈辱的ともとれるこの行為‥‥でも実際に、ヨーロッパでのBON JOVIの人気を考えれば当たり前だし、VAN HALENはデイヴ・リー・ロスがいた頃以来、ヨーロッパではライヴはやっていなかったそうなので、これが妥当なのである。日本から見れば「うそぉ~!?」的な組み合わせだが(笑)。それにしても豪華な組み合わせだ。

改めてライヴの魅力を‥‥って、観れば判るって! とりあえず、観なさい!!!ロックは何も排他的な、アンチ的なイメージばかりではない。こういう肉感的な、ポジティヴで観ている人に希望と勇気を与えるのもロックのひとつのテーマなのではないだろうか?

「BON JOVIは売れてるから嫌い」「曲が売れ線だから嫌い」「日本に媚びているから嫌い」「ジョンの胸毛が嫌い」「ボーカルよりギターの方が歌上手いから嫌い」「産業ロックっぽくて嫌い」「80年代的バブルバンドだから嫌い」‥‥以上が彼等を嫌いという人達の、代表的な意見だろうか? 売れてて何が悪い? 曲が良くて何が悪い? 逆に言わせてもらえば、80年代以降、こういう「普段ロックを聴かない人にもアピールできる曲が書けて、何万人もを惹き付けるライヴをする事が出来る」当たり前のバンドが、どれだけいる? OASIS? 確かに彼等はそれに近い。しかし全世界で本当に同じ状況だろうか? ヨーロッパや日本を除けば‥‥どうなんだろうか。だがBON JOVI‥‥既に彼等は本国アメリカよりもヨーロッパで絶大な支持を得ており、ここ日本よりも他のアジア諸国‥‥韓国やタイやフィリピンなど‥‥で全盛期以上の人気を獲得している。そんなライヴできるバンドが他にどれだけいる? ROLLING STONES? AEROSMITH? KISS? 彼等は確かに凄い。しかし彼等は70年代、あるいはそれ以前から活動しているバンドである。そういうバンドに影響を受けて音楽を始めた人達が、彼等に追いついているか‥‥どれだけそういうバンドが現存するか? ガンズもモトリーも過去の遺物となりつつある2000年、再び彼等は大規模なツアーを始める。日本は4大ドームツアー、イギリスは再びウェンブリーだ。毎回毎回こんな事ができるバンド、他にはいねぇぞ‥‥

ライヴの醍醐味はやはりその場に行って「生で」体験することに限る。ビデオはただの「記録」であり、そのライヴへと誘う「促進資料」に過ぎない。彼等の曲に興味を持って、更に彼等のライヴ未体験の人、まずはこのビデオで予習をしてからドームに足を運んでいただきたい。そして「あ~、本当にビデオと一緒だ!!」と感激して欲しい。

作品の評価云々ではなく、今回は「BON JOVIのライヴをなめんじゃねぇ!」って内容で終始攻撃的に書いてきたが、それだけこのバンドはライヴを観なきゃ本当の凄みが理解できないのである。まぁ興味ない人間に8000円も払ってドームに足運べとは言えないから、せめてこのビデオでも観て考え改めて下さい。



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投稿: 2000 05 03 12:00 午前 [1995年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000年3月27日 (月)

THUNDER『THEIR FINEST HOUR (AND A BIT)』(1995)

ワールドワイドレベルという意味では唯一のオフィシャル・ベスト盤。収録されている楽曲は1st~3rdからのシングル既発曲(全てアルバムヴァージョン)ばかりだが、ここではそれ以外の曲‥‥このアルバムの為に用意された新曲・未発表曲を中心に紹介したい。

純粋な新曲は"Once In A Lifetime"のみで、他には1st収録"Higher Ground"新録ヴァージョン、後はカヴァー曲でROLLING STONES "Gimme Shelter"とPISON LEE JACKSON "In A Broken Dream"の2曲。つまり4曲の為にファンはこのアルバムを手にするわけだ。まぁ初心者にはもってこいのアルバムだろうけど、アルバム全部持ってるファンには‥‥全楽曲既発曲のみで構成されたベスト盤を連発する某アーティストよりは遥かにマシだが。(笑)

"Gimme Shelter"以外の曲のプロデューサーは、初起用のデヴィッド・ボスコム。TEARS FOR FEARSといった、どちらかといえばポップス系を手掛けてきた人。たまたま彼が空いていたからといった程度の理由だったらしい。最初この起用を知った時、「いよいよTHUNDERもブリットポップに便乗するのか?」と思ったが、単なる思い過ごしだったようだ。

新曲に関しては、可もなく不可もなくといったところか? このアルバムの為に書き下ろしたというより、3rdの時のアウトテイクというイメージが強い。確かに前作に収録していたら浮いていただろう。今思えばこの曲は、続く新作へのプロローグだったのかもしれない。それはリアレンジされた新録"Higher Ground"からも伺える。この辺のスマートな印象は、それまでのアルバムにはなかったものだ。

カヴァー2曲に関しては、既にシングルのC/Wで発表されていた"Gimme Shelter"はともかく、やはり"In A Broken Dream"だろう。この隠れた名曲をカヴァーするセンスに脱帽。当時謎のグループとしてこの曲をリリースしたPISON LEE JACKSON、実は唄っているのがかのロッド・スチュワートだと言われている。クレジットこそないものの、その声を聴けば明らかに彼のものだと判る。気になる方は映画「奇跡の海」サントラでオリジナルを聴くことができる。構成を若干自分達流に変えているので、THUNDERのオリジナルだと言われても何ら違和感はない。それくらいハマッてる名演だと思う。この1曲の為だけに買え!とは言えないものの、手っ取り早く彼らの代表曲を聴きたいという人には重宝されるアルバムではないだろうか。国内盤も1,800円で再発されていて且つ名曲のオンパレードなのだから、絶対に損はしないはずだ。まぁTHUNDERの場合はシングル曲以外にも名曲は数多くあるから、オリジナル盤に手を出す前にとりあえず‥‥って場合にはいいかもしれない。そうそう、"In A Broken Dream"はイギリスではシングルカットもされたので、探せば意外と簡単に見つかるかもしれない。



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投稿: 2000 03 27 02:07 午後 [1995年の作品, Thunder] | 固定リンク

THUNDER『BEHIND CLOSED DOORS』(1995)

'93~4年に渡って解散騒動(ルークとダニーの不仲が原因)の為、活動休止していたTHUNDER。気を取り直して'94年夏からレコーディングに入り、同年末にシングル"Stand Up"リリース後、翌年1月に発表されたのがこの3rd。全英初登場5位を記録し、4曲がシングルカットされている。(実はあまり知られていないが、後に登場するベスト盤リリース後暫くして"'Til The River Runs Dry"もリリースされている)プロデューサーには1stでミックスを担当したマイク・フレイザーとルーク自身が当たっている。このアルバムまで、アメリカではGEFFENからリリースされたが、大きなヒットには結びつかなかった。

THUNDERの凄さとは何か?という答えが、このアルバムに凝縮されている。それくらい濃度の高い名盤。普通1stが完成度が高い作品だと、そのプレッシャーに押し潰されたりして、続く作品はそれを越える事は少ないのだが、彼らの場合は1stより2nd、2ndより3rdという具合に、常に高いハードルをクリアーしてきた。人それぞれ趣味の違いはあるだろうが、特に1stとこの3rdを名盤と呼ぶファンは多いはずだ。作品的には1stからの延長上なのだけど、このアルバムから加わった新ベーシストのミカエル・ホグランドが持ち込んだ新たな要素がいい刺激となっている。

だって1曲目からいきなり固定観念を覆す"Moth To The Flame"だもん。このBLACK SABBATH的リフとRAINBOW "Gates Of Babylon"的メロディーを持ったへヴィなナンバーがいい導入部を作り、続くファンキーな"Fly On The Wall"、ここまでシンプルな泣きのブルーズは初めて"I'll Be Waiting"、そして超名曲"River Of Pain"、トラッド調~へヴィな流れがZEP的な"Future Train"、そして胸を締めつける"'Til The River Runs Dry"というアナログA面の流れは完璧である。勿論"Stand Up"から続く後半も名曲揃いで、正に捨て曲なし!といったところだろう。特にラスト2曲‥‥"Ball And Chain"~"It Happened In This Town"の流れは、アルバムを閉める上では最高のエンディングを飾っている。これを受け入れられない『自称・ブリティッシュロックファン』は即刻死刑! いや、マジで。

極論を言ってしまおう。このアルバム、"River Of Pain"1曲の為だけに買ってしまっても損はしない! 勿論、後のベスト盤やライヴ盤にもこの曲は収められているが、やはりこの一連の曲の流れで聴いてもらいたい。これ1曲でも感涙度150%なのに、アルバムの流れで聴くと378%までアップする。(笑)冗談抜きで、この曲が何故大ヒットに繋がらなかったのか? もうそれだけで不幸である、イギリス人は。結局こういう曲を受け入れなくなったのは、彼らが不在の間によりダンス指向に流れていった事と、やはりブリットポップが影響している。事実この事により、THUNDERは契約を失うわけだから。

そんな「当時BLURやOASISに夢中だった」音楽ファンは今このアルバムを聴いてどう思うのだろうか、是非その意見を聞いてみたい。いや、否定的な意味で言っているのではない。俺だって当時は両バンドを好んで聴いていたわけだし。ただ、切っ掛けがなかっただけで、こういう素晴らしいアルバムを見逃してしまっていた事を知って欲しい‥‥それだけなのだ。後は作品を聴いた本人が判断すればいい。自分にとって必要か、不必要かを‥‥



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投稿: 2000 03 27 02:02 午後 [1995年の作品, Thunder] | 固定リンク