2017/04/18

THE ALMIGHTY『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』(1996)

THE ALMIGHTYが1996年に日本限定で発表したライブアルバム。当初本作は同年3月にリリースされた5thアルバム『JUST ADD LIFE』の日本盤ボーナスディスクとして発表されましたが、同作リリースからしばらくしてレーベルとの契約解除などがありバンドは解散を発表。それと前後して東芝EMI(当時)から発表された2枚のオリジナルアルバム『CRANK』(1994年)と『JUST ADD LIFE』の日本盤は廃盤となり、改めてビクターから、ボーナストラックを新たに追加して再発されるのです。その際、『JUST ADD LIFE』とこのライブアルバム『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』は切り離され、別売りとなったのでした。この『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』というタイトルも、この単独リリースの際に改めて付けられたものです。

さて、本作はタイトルからもおわかりのように、ここ日本で収録されたもの。『CRANK』を携えて1995年7月に敢行した二度目の来日公演から、大阪での単独ライブが収録されています。私自身は当時、日比谷野音で行われたDIZZY MIZZ LIZZYとのライブを観ているのですが、“90年代のMOTORHEAD”と例えられた彼らが3rdアルバム『POWERTRIPPIN'』(1993年)でグランジ/ヘヴィロックへと傾倒し、そこからさらにパンク度を増量させ最高の形態となった『CRANK』を携えてのライブということで……もう最高以外の表現がないくらい、本当に素晴らしいライブだったと記憶しています。

このライブアルバムには、その来日時の様子を生々しいサウンドで追体験できる貴重な音源が詰まっています。『CRANK』からの楽曲が中心なのは当然として、その前作『POWERTRIPPIN'』からの楽曲も『CRANK』を経たことでより“タメ”を生かしたダイナミックな演奏で聴くことができるし、1st『BLOOD, FIRE AND LOVE』(1989年)、2nd『SOUL DESTRUCTION』(1991年)からの楽曲もスタジオ音源よりもラフでパンキッシュ、それでいて濃厚なサウンドで表現されています。ぶっちゃけ悪いわけがないんですよ。

しかも、本作には当時発売前だった『JUST ADD LIFE』から、いち早く新曲「360」も披露されています。この曲を初めて生で聴いたときは、次のアルバムも『CRANK』の流れにある1枚だと思ってたんだけどなぁ……いや、『JUST ADD LIFE』は『JUST ADD LIFE』で大好きなのでまったく問題ないですが。

THE ALMIGHTYはこの解散後、2000年に再結成して2枚のアルバムを発表しますが、2002年に再解散。2006年に最初の解散時の布陣で再々結成し、新作を制作することなくライブ活動だけ行い、2009年には3度目の活動停止。フロントマンのリッキー・ウォリックはその後、THIN LIZZY参加を経てBLACK STAR RIDERSのボーカリストとして活躍中です。


Almighty_crankanddeceit
▼THE ALMIGHTY『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』
(amazon:国内盤CD


投稿: 2017 04 18 12:00 午前 [1996年の作品, Almighty, The] | 固定リンク

2017/01/09

祝ご成人(1996年4月〜1997年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて実施したこの企画、今回で3回目を迎えます。今年も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1996年4月〜1997年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちらです)


ATARI TEENAGE RIOT『THE FUTURE OF WAR』(Amazon

BECK『ODELAY』(Amazon

BLUR『BLUR』(Amazon

DEF LEPPARD『SLANG』(Amazon

THE HELLACOPTERS『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(Amazon)(レビュー

HONEYCRACK『PROZAIC』(Amazon)(レビュー

KORN『LIFE IS PEACHY』(Amazon)(レビュー

KULA SHAKER『K』(Amazon

MANIC STREET PREACHERS『EVERYTHING MUST GO』(Amazon)(レビュー

MANSUN『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(Amazon)(レビュー

MARILYN MANSON『ANTICHRIST SUPERSTAR』(Amazon)(レビュー

METALLICA『LOAD』(Amazon)(レビュー

OCEAN COLOUR SCENE『MOSELEY SHOALS』(Amazon

PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(Amazon)(レビュー

RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』(Amazon

REEF『GLOW』(Amazon

SUEDE『COMING UP』(Amazon

TOOL『AENIMA』(Amazon)(レビュー

U2『POP』(Amazon)(レビュー

WEEZER『PINKERTON』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下、主だった作品をざっと羅列します。

AEROSMITH『NINE LIVES』
ALICE IN CHAINS『UNPLUGGED』
ARCH ENEMY『BLACK EARTH』
ASH『1977』
BEN FOLDS FIVE『WHATEVER AND EVER AMEN』
THE BLACK CROWES『THREE SNAKES AND ONE CHARM』
THE BOO RADLEYS『C'MON KIDS』
BJORK『TELEGRAM』
BRYAN ADAMS『18 TIL I DIE』
BUSH『RAZORBLADE SUITCASE』
CARCASS『SWANSONG』
THE CARDIGANS『FIRST BAND ON THE MOON』
THE CURE『WILD MOOD SWINGS』
DAFT PUNK『HOMEWORK』
DAVID BOWIE『EARTHLING』
DINOSAUR JR.『HAND IT OVER』
ELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS『ALL THIS USELESS BEAUTY』
FIONA APPLE『TIDAL』
FOUNTAINS OF WAYNE『FOUNTAINS OF WAYNE』
GEORGE MICHAEL『OLDER』
HELMET『AFTERTASTE』
IMPERIAL DRAG『IMPERIAL DRAG』
JAMIROQUAI『TRAVELLING WITHOUT MOVING』
JOURNEY『TRIAL BY FIRE』
LUSCIOUS JACKSON『FEVER IN FEVER OUT』
MACHINE HEAD『THE MORE THINGS CHANGE…』
MANOWAR『LOUDER THAN HELL』
MATTHEW SWEET『BLUE SKY ON MARS』
MICHAEL SCHENKER GROUP『WRITTEN IN THE SAND』
NIRVANA『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』
PATTI SMITH『GONE AGAIN』
PEARL JAM『NO CODE』
PET SHOP BOYS『BILINGUAL』
PRINCE『EMANCIPATION』
R.E.M.『NEW ADVENTURES IN HI-FI』
ROLLINS BAND『COME IN AND BURN』
RUSH『TEST FOR ECHO』
SCORPIONS『PURE INSTINCT』
SLAYER『UNDISPUTED ATTITUDE』
SLOAN『ONE CHORD TO ANOTHER』
SOUNDGARDEN『DOWN ON THE UPSIDE』
STEVE VAI『FIRE GARDEN』
STRAPPING YOUNG LAD『CITY』
SUPER FURRY ANIMALS『FUZZY LOGIC』
VERUCA SALT『EIGHT ARMS TO HOLD YOU』
ZAKK WYLDE『BOOK OF SHADOWS』
THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES (East West Version)』
ZZ TOP『RHYTHMEEN』


1995年から1996年初頭がブリットプップの最盛期と昨年のブログに書きましたが、続く1996年から1997年にかけてはその最盛期から末期に向かっていく過程。BLURが1997年初頭に発表したセルフタイトルアルバムが「ブリットポップの終焉」を決定づけたのは間違いないでしょう。KULA SHAKERやMANSUNのデビュー作、MANICS、OCS、REEFの諸作、そして選外でしたがASHのデビュー作などはその末期に輝いた傑作だと思っております。

そして、アメリカではRATM、KORN、TOOL、MARILYN MANSONのブレイクにより新たなヘヴィロックシーンが確立されるタイミング。と同時に、ベックやWEEZERといったアーティストたちも新たなオルタナシーンを築き上げておりました。その一方で、METALLICAやDEF LEPPARDといった大御所たちが迷走していたのも、このタイミングの面白いところ。それぞれピックアップした作品は、各バンドのキャリアの中でも迷作扱いされることの多いものですが、今聴くと意外と悪くないから不思議。今回選出した動画20曲の中に混じっても、実はあまり違和感がない音楽性だったりします。面白いもんですね。

あ、1997年に入ると同時にU2が『POP』を出したり、ATRの2ndアルバムが話題になったりと、新たな可能性が見え始めたのも興味深いですね。

ちなみに日本での1996年4月〜1997年3月といいますと、TK作品のチャート独占やプリンセス・プリンセスの解散、米米CLUBの解散発表(ラストライブは翌年)、TMRやPUFFY、ELT、SPEEDのデビューなど、音楽産業的にもピークを迎えつつあった時期でした。

最後に。ここではピックアップしませんでしたが、1996年で特に印象に残っているのは「恋のマカレナ」と「Wannabe」です。



▼SPICE GIRLS『SPICE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 09 12:00 午前 [1996年の作品, 1997年の作品, Atari Teenage Riot, Beck, Blur, Def Leppard, Hellacopters, The, Honeycrack, Korn, Kula Shaker, Manic Street Preachers, Mansun, Marilyn Manson, Metallica, Ocean Colour Scene, Pantera, Rage Against The Machine, Reef, Suede, Tool, U2, Weezer] | 固定リンク

2016/12/24

PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION(1996 / 2016)

1996年5月に発表された、PANTERA通算8枚目(メジャー移籍後4枚目)となるオリジナルアルバム。前作『FAR BEYOND DRIVEN』が初の全米1位を獲得したものの、バンドを取り巻く環境が悪化し(フィルの暴行による裁判およびドラッグ癖)、決してベストとは言い難いなかで制作されたのがこの『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(邦題『鎌首』。意訳でもなんでもなく、たたジャケット写真を観て思いついただけでしょ、これ)でした。しかし、そのアグレッシヴな主張が際立つタイトル同様、内容は非常に攻撃的で、オープニング曲「The Great Southern Trendkill」冒頭のフィルによるシャウトでいきなりノックアウトされること間違いなしな1枚。

前作が出世作『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)をよりハードコアにした作風だったのに対し、今作ではハードコアさはそのままに、全体としてより整理された印象が強い。なもんで、前作で途中からダレ気味だったミドルテンポの楽曲も、今作ではギタープレイによる惹きつけ方や聴き手を飽きさせない工夫したアレンジが施されています。と同時に、かなり実験的なサウンド&楽曲も含まれており、アルバム中盤の(なかば組曲と言える)「Suicide Note, Pt.1」「Suicide Note, Pt.2」の緩急のつけ方はさすがと言わざるをえません。特に「Suicide Note, Pt.1」は、LED ZEPPELIN「Going To California」のカントリーやサザンロックに寄せたような不思議な魅力があり、そこからひたすらアグレッシヴな「Suicide Note, Pt.2」に切れ目なく突入する構成には鳥肌が。そのほかにもサイケデリックな色合いの「Flood」では、過去の「This Love」を深化させつつ新たなチャレンジにトライしており、世の「PANTERAフォロワー」とは格が違うことを見せつけます。

リリース当時は衝撃作『VULGAR DISPLAY OF POWER』、そしてNo.1アルバム『FAR BEYOND DRIVEN』の後だけに、ちょっと分が悪いというか、そこまで高く評価されていなかったような記憶がありますが、今聴くと先の2枚に負けないだけのパワーと深みがある1枚だと思います。今なら素直に『VULGAR DISPLAY OF POWER』の次に好きなアルバムと断言できます。


「20TH ANNIVERSARY EDITION」解説

で、今回このタイミングで取り上げたのには理由が。ご存知のとおり、本作は今年でリリース20周年を迎えたことから、10月にリマスタリング&ボーナスディスク付きのアニバーサリーエディションが発売されました。アルバム本編のリマスター盤となるDISC 1に関しては、なんとなく全体的に聴きやすくなった印象が。それはソフトになったということではなく、全体のバランスや音のメリハリが以前よりもわかりやすくなったというか(気のせいかもしれないけど)。

そして、もっとも気になるのが『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』と題されたDISC 2のほうですよね。こちらは基本的にアルバム本編と同じ曲順でテイク違い(ミックス違いやインストバージョン、1998年の『DYNAMO OPEN AIR』でのライブ音源)が収められています。ライブ音源は音質的にはまぁこんなもんかな、と。ちょっと全体的にモコっとした印象があります。で、インストバージョンについては割愛して(笑)、ミックス違い……こちらは2種類あって、ひとつは「2016 Mix」と題されたもので、これは「The Great Southern Trendkill」1曲のみ。残りは「Early Mix」と、その名のとおり初期段階でのミックス。どのミックスも曲冒頭にフィルの話し声やドラムのカウントなどが残されており、ミックス自体も完全に整理されたDISC 1の音源よりも生々しさが残されています。

最新ミックスとなる「The Great Southern Trendkill」は……正直、そこまで音が良くないような。リミックスの類というよりは、他の「Early Mix」と同じ扱いと思ってもらったほうがいいかもしれません。エンディングの締まりのなさもカッコ悪いし。これを聴くと、いかにアルバム本編のバージョンが優れているかに気づかされます。

ということで、DISC 2は1枚のアルバムとして楽しむというよりは、『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』本編を堪能した後に別の解釈をするための副読本的内容と言ったほうがいいかもしれませんね。あくまでおまけと解釈して接するのが無難です。

思えば『COWBOYS FROM HELL』(1990年)以降、メジャーから発売されたアルバムは今のところ4作品が20周年アニバーサリーエディションとしてリイシューされています。このまま進めるなら、次の2020年に『REINVENTING THE STEEL』(2000年)のアニバーサリーエディションが発売されることになるのかな。そもそも何か発表できそうな貴重音源が残っているのでしょうか。もしできることなら、フルライブをまるまる1本収めた未発表ライブ音源/映像があると……いいなぁ。



▼PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD

投稿: 2016 12 24 12:00 午後 [1996年の作品, 2016年の作品, Pantera] | 固定リンク

2016/01/10

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

Blur『The Great Escape』(Amazon

Bon Jovi『These Days』(Amazon

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』(Amazon

Fear Factory『Demanufacture』(Amazon

Foo Fighters『Foo Fighters』(Amazon

The Fugees『The Score』(Amazon

Garbage『Garbage』(Amazon

King Crimson『Thrak』(Amazon

Oasis『(What's the Story) Morning Glory?』(Amazon

Pulp『Different Class』(Amazon

Queen『Made in Heaven』(Amazon

Red Hot Chili Peppers『One Hot Minute』(Amazon

Reef『Replenish』(Amazon

The Smashing Pumpkins『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(Amazon

Sepultura『Roots』(Amazon

Teenage Fanclub『Grand Prix』(Amazon

The Wildhearts『P.H.U.Q.』(Amazon


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下ざっと候補を羅列します。

Alanis Morissette『Jagged Little Pill』
Anthrax『Stomp 442』
The Beatles『Anthology 1』
The Boo Radleys『Wake Up!』
Bruce Springsteen『The Ghost of Tom Joad』
The Charlatans『The Charlatans』
D'Angelo『Brown Sugar』
David Bowie『Outside』
In Flames『The Jester Race』
Michael Jackson『HIStory: Past, Present and Future, Book I』
Nine Inch Nails『Further Down the Spiral』
Ozzy Osbourne『Ozzmosis』
Paul Weller『Stanley Road』
The Rentals『Return of the Rentals』
Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Sonic Youth『Washing Machine』
Supergrass『I Should Coco』
Terence Trent D'Arby『Terence Trent D'Arby's Vibrator*』
Terrorvision『Regular Urban Survivors』
Underworld『Second Toughest in the Infants』
White Zombie『Astro-Creep: 2000』

こうやって振り返ると、1995年から1996年初頭ってブリットポップの最盛期だったんですね。1995年3月にはElasticaやGeneのアルバムも発表されてるし、1996年後半になるとKula Shakerの1stもリリースされますし。やっぱり1995年夏のBlur vs Oasisの直接対決がピークでしたね、いろんな意味で。

あ、Underworldをあえて選外にしたのは、日本盤のリリースが1996年6月だったから。海外では3月発売ですが、その後の「Born Slippy」のヒットなど含めて考えると、このアルバムは1996年から1997年の作品かなと思いまして。来年はマストかな。

メタルの世界はグランジがひと段落したものの、ポストグランジ的サウンドのバンドが増えつつあり、前年からのMotley Crue、Dokkenの失敗など、あまり芳しくない状況でした。そんな中、1994年のKornデビューを機にグルーヴ感のあるヘヴィロックが台頭し始めます。前年デビューのMachine Headもその1つですね。Sepulturaは前作『Chaos A.D.』でのシフトチェンジから、ブラジル音楽のルーツを取り入れた傑作『Roots』で活動のピークを迎えるのも、1996年初頭のお話。Fear Factoryのようなデジタル要素を取り入れたヘヴィバンドも人気を集め始めたのも印象に残ってます。同時期に国内ではTHE MAD CAPSULE MARKETSが『4 PLUGS』をリリースしたのも、海外の動きとリンクしていて興味深いです。

ちなみに日本国内ではこの頃、ブルーハーツの解散(6月)やUP-BEATの解散(8月)、光GENJI(光GENJI SUPER5)の“卒業”(9月)、Winkの活動停止(96年3月)といった出来事がありました。いわゆるTKサウンドがチャートを席巻し、MY LITTLE LOVERやglobeがデビューしたのもこの頃でした。

投稿: 2016 01 10 12:00 午前 [1995年の作品, 1996年の作品, Ben Folds, Bon Jovi, Foo Fighters, Queen, Smashing Pumpkins, Teenage Fanclub, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2015/10/07

Megadeth全アルバム私的レビュー(5/5)

さあ、いよいよ最終回です。今回はゼロ年代に発表した2作品(13th、14th)に加え、ムステインの課外活動として結成されたバンド・MD.45唯一のアルバム『The Craving』についても触れてみたいと思います。2年半ぶりのニューアルバムとなる15thアルバム『Dystopia』(ジャケットがHelloweenの新作みたい)は2016年1月発売。今週末に迫った「LOUD PARK 15」ではこのアルバムからの新曲もいち早く聴けるかもしれませんね。というわけで、最後の最後に新作に対する予想&期待も記しておきたいと思います。


■13th『Th1rt3en』(2011年)

エルフソン復帰後初のアルバムは、13枚目のアルバムということで『Th1rt3en(=Thirteen)』という安直なタイトル。さらに曲数もこれにちなんで13曲入りという、ここ最近のアルバムではかなり多いトータルランニング(60分近く)。この中には既発曲のリメイク(「New World Order」「Black Sawn」「Millennium Of The Blind」)も含まれており、これによって内容が若干散漫になった気がしないでもない。何も今さらマーティ&ニック時代の曲を引っ張り出さなくても。とはいえ、冒頭3曲で連発されるスピードメタルチューンの並びは圧巻。全体的な雰囲気は前作『Endgame』の延長線上という印象。ここ数作はアルバムごとに若干違った作風にチャレンジするというよりは、前作をアップデートさせてMegadeth道を極める的なイメージがあるが、先のリメイク曲での水増しによりちょっと勿体無い印象の強いアルバムになってしまったかな。とはいえ、先のリメイク3曲も決して悪い曲ではないんだけど……。「Never Dead」みたいなガッツのある曲の後に聴き覚えのある「New World Order」が来ると、ちょっとだけ萎えるのも本音。全体的に「あと一歩」な1枚。


▼Megadeth『Th1rt3en』
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■14th『Super Collider』(2013年)

ムステイン、エルフソン、クリス・ブロデック、ショーン・ドローヴァー編成では2作目にして最後のアルバム。再結成後はアルバムごとに編成が変わっていたけど、ここでようやく安定したかに見えたものの、後にクリスとショーンが脱退(後にAct Of Defianceを結成)。レーベルもUniversalに移籍して心機一転、かと思いきや……個人的には久しぶりの問題作という印象の1枚。彼らの新作を聴くときは毎回それなりに高いハードルを設けるという非常に意地悪な聴き方をしているのだが、その中でも本作を初めて聴いたときにやるせなさといったら。ムステインのボーカルキーが(徐々に落ちつつあったが)全体的に低くなり、これまでだったらもっとカッコよくなっていたはずの1曲目「Kingmaker」も尻切れトンボ感強し。続くタイトルトラックのポップソング感……ゴメンなさい、これにはさすがに拒否反応示した。その他の曲も演奏はそれなりに良いもののボーカルが低いキーでがなってるだけ。カントリー&スワンプの要素を取り入れた「The Blackest Crow」、ブルーステイストのイントロを持つ「Don't Turn Your Back...」みたいな遊び要素のみが悪目立ちしてしまい、本編最後をカバー曲(Thin Lizzyの「Cold Sweat」)で締めくくるという始末。さらにボーナストラックと称して2曲水増し。この2曲のおかげで、さらにアルバムの印象が薄まるという……本作後にクリス&ショーンが脱退してWデイヴが残り、新たにキコ・ルーレイロ(G / Angra)、クリス・アドラー(ゲストDr / Lamb Of God)とアルバムを制作。本作が単なる“二度目の過渡期”であり、続く15thアルバム『Dystopia』で再び完全復活することを願いたい。


▼Megadeth『Super Collider』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD


■MD.45『The Craving』(1996年/2004年)

6thアルバム『Youthanasia』(1994年)と7thアルバム『Cryptic Writings』(1997年)の間に、ムステインのガス抜きとして結成されたサイドプロジェクト唯一のアルバム。ムステインはギタリスト&プロデューサーに徹し、ボーカルにハードコアバンドFearのリー・ヴィング、ベースには後にGoldfingerに参加するケリー・ルミュー、ドラムにはこの数年後にMegadethに加入することになるジミー・デグラッソ(Suicidal Tendencies、Y&Tなど)を迎え、メタルとパンクの中間と呼べるような肩の力を抜いた音楽を作り上げている。ファストチューン皆無だった『Youthanasia』を考えれば、ムステインが外でこういう方向性の音楽を鳴らしていたのも多少納得がいく。が、だったらMegadethでやれよと思うのだが……。ムステインがプロデュースしたリー・ヴィングのソロアルバムと考えれば楽しめる1枚。ところでこのアルバム、2004年にMegadethのCapitol Records時代の諸作品と共にリミックス&リマスタリングが施され再発されているのだが、こちらではボーカルをムステインの歌ったものに差し替えられている。これがもう……Megadethそのもの(当たり前か)。まあMegadethにしてはパンキッシュで軽い曲もあるので、まんまMegadethというわけにはいかないのだけど。ロックンロール版 or パンクメタル版Megadethというか、番外編として接すればそれなりに味わい深い1枚。ちなみにボーナストラックとしてMegadeth版「The Creed」(本編5曲目収録)のデモトラックも追加されており(もちろんムステイン、エルフソン、マーティ、ニックの黄金期布陣によるテイク)、こちらも「Sweating Bullets」に通ずるものがあり興味深い仕上がり。なぜこれを『Youthanasia』に入れなかった?


▼MD.45『The Craving』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD / 輸入盤CD(リマスター版)


■15th『Dystopia』(2016年)

現時点ではアルバム3曲目に収録される「Fatal Illusion」の音源のみ公開中。これ1曲では判断が難しいが、やはりメロディの雰囲気が前作に多少近いかなと。しかし演奏やアレンジ的には合格ライン。そういえば今回も本編ラストをカバー(Fearの「Foreign Policy」)で締めくくるらしい。さらに2曲のボーナストラック付きバージョンもあり(今回は本編終盤に振り分けられるようだが)。前作からの課題であるムステインが以前ほど歌えなくなってきてる問題 or メロディセンスが落ちてきてる問題をどうフォローするのか、そしてカッコよく聴かせるかがポイントになってくるのかなと。ハードルは高くしつつ、心配しながらリリースを待つことにしよう……。


▼Megadeth『Dystopia』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD

投稿: 2015 10 07 12:05 午前 [1996年の作品, 2004年の作品, 2011年の作品, 2013年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2005/06/15

POISON『POISON'S GREATEST HITS 1986-1996』(1996)

 元々『LAメタル』は大好きだったわけですよ。だって根がグラマラスで派手な見た目のバンド、大好き人間だから‥‥JAPANだのDURAN DURANみたいなのにハマりつつ、片方ではMOTLEY CRUEとかHANOI ROCKSを聴いてた中学時代。次第にW.A.S.P.だのDOKKENだのRATTだのROUGH CUTだのGREAT WHITEだのQUIET RIOTだのTWISTED SISTERだの‥‥暴走し過ぎた。とにかく、派手な衣装や化粧を施したファッションに、メロウでポップで小気味いいロックンロールを主体としたサウンド‥‥LAメタルもいろいろ細分化されるんだけど、特に俺はそういう路線が大好きだったのね。

 POISONがLAメタルに含まれるのか否か、正直俺には判らなくて。というのも、デビュー当時って何か日本先行で盛り上げようみたいな印象が残ってて。当時の音楽雑誌「ミュージックライフ」でも派手な広告打ったり、アルバムリリース後にショーケースで来日したり。勿論、その頃は本国アメリカでは鳴かず飛ばずだったんだけどね(丁度HR/HMの大きな波がくる直前でさ)。リリースから1年近く経った1987年春。多分前年末からのBON JOVI大ヒットも大きいとは思うんだけど、セカンドシングルの "Talk Dirty To Me" がいきなりチャートを急上昇して、気づけばシングルチャートのトップ10入り。当時の「MTV」や「ベストヒットUSA」でもこのPVはよくかかってた記憶があります。

 POISONのデビューアルバム「LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN」はレンタルでアナログを借りて、よくテープを聴いてたかな。けど、あんまり印象に残らなかったんだよね。なんだろ、凄くB級ぽい‥‥HANOI ROCKSともまた違うB級っぽさというか。けどそんな中にダイヤの原石的な名曲("Talk Dirty To Me" であったり "I Won't Forget You" であったり)が幾つか散りばめられていて。でも‥‥勢いとはいえ、全米3位ってのは出来過ぎですよ。

 続く「OPEN UP AND SAY...AHH!」('88年)ではかなり洗練されて、ちょっとタフになって、更に大きなヒットも飛ばして。全米ナンバー1ヒット("Every Rose Has Its Thorn")まで出しちゃって。世が世だったことも大きいとはいえ、ここまでくるとね‥‥いや、ホントよく出来たアルバムだったんですよ。良い意味で『ブレイク前夜のMOTLEY CRUEフォロワー』的な側面も持ちつつ、それをもっと判りやすい形で表現してるような(実際、MOTLEYをプロデュースしてた、トム・ワーマンが手掛けてたしね)‥‥ねじれてないのね。もうホント、KISSとか大好きなんだろうなーって。実際、映画のサントラでKISSの "Rock And Roll All Nite" をカバーしてたもんね。しかもライヴ盤「KISS ALIVE!」でのバージョンで。完コピだし。

 1990年の3rd「FLESH & BLOOD」までくると、さすがに全米ナンバー1を記録しちゃったからか、妙な貫禄がついちゃってね‥‥演奏大して上手くないのに。ま、その勘違いっぷりが彼等の良い点でもあるんだけど。ここではBON JOVIやAEROSMITHを手掛けたブルース・フェアバーンがプロデュースを担当、骨太でヘヴィなサウンドなんだけど、曲自体は非常にポップという、最も整合感のある完成度の高い1枚に仕上がってるのね。何だろ、1stから3rdまで続けて聴くと、さすがに「おいおい、同じバンドかよ!?」って驚く反面、結局1stからやってることはそんなに変わってないことに気づかされて。

 だからこそ、ギタリストのC.C.デヴィル脱退後にリリースした「NATIVE TONGUE」はちょっと頑張り過ぎちゃったかなーと思うわけで。曲自体はホント良いものが多いし、リッチー・コッツェン(後にポール・ギルバートの後任としてMR.BIGに加入)の安定感あるプレイのお陰でバンド全体がレベルアップしたように感じられるんだけどね。世が世だったからねぇ(1993年といったらグランジ全盛ですしね)‥‥そろそろ再評価してもいい頃かも‥‥いや‥‥しなくてもいいか‥‥

 その後、リッチーがすぐ抜けて、ブルース・サラセノが加入して作った5th「CRACK A SMILE」がレーベルの方針変更によってお蔵入りになったり(後、2000年に無事リリース)、レーベルから切られてインディー落ちしたり、かと思ったらC.C.デヴィルが復帰したり‥‥なんてことをこの2005年の現在においてもやってるわけですよ、POISONは!

 最近はちょっと停滞気味みたいですが(ブレット・マイケルズがソロ活動をするらしい)、ちゃんとツアーもやって音源もリリースしてるらしいPOISON。このベスト盤はレーベルからドロップする際にリリースされた、全盛期を収めたベスト盤。所謂シングルヒットは全て網羅されてますし、先のお蔵アルバムからも2曲先行収録されてます。残念なのは、例のKISSカバー "Rock And Roll All Nite" が収録されてない点くらいかな。その辺の、レーベルのやっつけ仕事具合が見え隠れしますが‥‥

 ホント、良い曲を書くバンドだったんだなぁ、と。そして後期にいけばいく程、妙にソウルやゴスペル辺りからの影響がどんどん色濃く表れていって、「NATIVE TONGUE」でやりすぎちゃうんだよね。バンドが波に乗ってどんどんと洗練されていく様子、そしてやりすぎて破滅していく様がこの1枚に完全収録されてます。まぁPOISONは他のLAメタルバンドと比べれば成功していた期間が長い方なので、そんなに悲壮感は感じませんけどね‥‥スタイルがスタイルだし!

 このベストを引っ張り出した後、ホント5〜6年振りくらいに1st「LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN」のCDを引っ張り出してみたんだけど‥‥実は俺、このアルバムが一番しっくりくるかもしれない、現在なら。結局、1周して原点にたどり着いてしまったんでしょうか‥‥



▼POISON『POISON'S GREATEST HITS 1986-1996』
(amazon:日本盤US盤US盤+DVD

投稿: 2005 06 15 12:00 午前 [1996年の作品, Poison] | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック

2004/11/19

とみぃ洋楽100番勝負(93)

●第93回:「Bulls On Parade」 RAGE AGAINST THE MACHINE ('96)

 

RAGE AGAINST THE MACHINEと最初に出会ったのは‥‥多分1stが出て間もない頃だから‥‥'92〜3年頃かな? 友人が「BURRN!」のディスクレビューに釣られて買ってしまって。「よく理解出来ない」って言っててさ。で俺もしたり顔で「レビューにいいこと書いてなかったじゃん? 所詮メタルじゃないし、中途半端な感じなんじゃない??」とか言って無視してたんだよね。んで、この時点で彼等の音、全く耳にしてないのね‥‥アホでしょ?

 で、その後俺が彼等の音に出会うまで、約5年近くの歳月を要するんですわ‥‥そう、第1回目のフジロック直前に偶然耳にしてしまってね。いや、耳というよりは「目撃してしまった」といった方が正しいかな。WOWOWで'97年春に放送されたライヴ映像‥‥多分前年のレディングフェスの映像だと思うけど‥‥このインパクトが強烈でね。これやヤバい、と。フジロックはレッチリだ、フーファイだ、とか言ってる場合じゃねぇぞ、と。これを生で、野外で体験できるんだから‥‥本気でこれは日本に革命が起きるんじゃないか‥‥そう思ってたのよ。

 んで、このコラムにも何度も書いてるけど俺、その年のフジロック直前に肺炎になって行けなくて。悔し涙で枕を濡らす日々ですよ。あれほど夢に見たレイジのライヴが体験出来ないなんて‥‥実際に観た友人の話だと「雨で気温が下がってる中、みんな暴れるもんだから、始まった途端に人の湯気が舞って、後方からじゃステージが全く見えなかった」と‥‥それだけ聴いて鳥肌立ったけどね、俺。んで後日、WOWOWで放送された映像を観て、更に衝撃受けて‥‥これは本気でヤバいぞ、と。

 俺が観たレディングのライヴは確かこの曲だか "People Of The Sun" で始まってたんだよね。そう、2nd「EVIL EMPIRE」の頭2曲ね。このアルバム、それ以外にはあんまり印象的な曲はないんだけど、だからこそこの2曲のインパクトは絶大だよね。グルーヴ感だけならLED ZEPPELINにも負けないし、ギターはKING CRIMSONみたいだし、ボーカルは完全にヒップホップしてるし。既にカテゴライズ不能。いやむしろオレ等が法律だ!みたいな力強さが爽快。政治的な歌詞とか日本人の俺等には完全に理解するのは難しい面も多々あるんだけど、そういうところも含めて唯一無二だったな、と。

 結局彼等は'99年のフジロックで体験したのみ。翌年の単独来日は祖母の葬儀と重なって行けず、その数ヶ月後にはザック脱退という大事件が勃発して、事実上解散してしまうわけですが‥‥だからこそ'99年、苗場でのステージが鮮明に記憶に残ってるんだよね。あれは絶対に忘れないと思うよ‥‥



▼RAGE AGAINST THE MACHINE「EVIL EMPIRE」(amazon

投稿: 2004 11 19 12:00 午前 [1996年の作品, Rage Against The Machine, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/18

とみぃ洋楽100番勝負(92)

●第92回:「Govinda」 KULA SHAKER ('96)

 

STONE ROSESにはリアルタイムでハマらなかった俺が、何故かKULA SHAKERに関しては "Grateful When You're Dead" がリリースされてすぐに虜になっちゃったんだよね。「やっぱりこのグルーヴ感がたまらねーよな!」とか判った風なこと言って。笑っちゃうよね。けどホントのことだから仕方ないよ。

 何だろ‥‥ROSESも胡散臭いといえば胡散臭かったんだけど、KULAの場合はもっとこう、インチキ度が上でしょ? インド気触れというか‥‥ジョージ・ハリスンがBEATLES時代にインドに気触れたことあったけど、あれとはまた違うんだよね。だってさ、サンスクリット語なんてKULAに出会ってなかったら、まず実生活では知らないからね。インドの言葉で歌覚えたのもこれが最初で最後だし。まぁ‥‥最終的にはルックスの良いフロントマンがいて、凄腕のギタリストがいる、と。それが決定打だったんですけどね!(結局そこかよ)

 KULAといえば先の "Grateful〜" であったり "Hey Dude" といったグルーヴィーなロックンロールが特徴といえるんだけど、それとは別に "Tattva" や "Shower Of Your Love" みたいなドリーミーなポップソングを作る才能にも長けてて、そのバランス感がまた絶妙だったんだよね。ま、ラスト作となった2ndではそれが行き過ぎちゃった感が強いけど(だからこそ俺は凄く気に入ったんですが)。

 で、そんなグルーヴィーな面とドリーミーな面を両方持ち合わせた代表曲のひとつに挙げられるであろう、サンスクリット語による楽曲 "Govinda"。これ、シングルカットされて、トップ3入りしてるんだよね‥‥勢いって怖いね。若いって怖いね。けど、ホントいい曲。KULAで一番好きな曲、これだもん。なんつーか、もうこの時点で彼等のスタイルって、完成しちゃってるんだよね。後はそれをどう壊しつつ先に進むか‥‥だったんだけど、スタイルを壊す前に、自分達が壊れてしまったという。ホント残念な終わり方だったよね。あんまりバンドの解散でショックとか受ける方じゃないけど、この時(クリスピアンが脱退表明→解散)ばかりは正直動揺しまくったもん。急な出来事だったしね‥‥

 今のクリスピアンを責める気はないけどさ‥‥やはり本気でKULAの亡霊を断ち切って欲しいし、それを乗り越えて欲しいな、と。KULA時代の曲を封印しろとは言わないけど、それに頼るのだけは止めて欲しいよね。だって「THE JEEVASとしてのスタイル」すら中途半端で確立し切ってないんだからさぁ‥‥



▼KULA SHAKER「K」(amazon

投稿: 2004 11 18 12:00 午前 [1996年の作品, Kula Shaker, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/17

とみぃ洋楽100番勝負(91)

●第91回:「Born Slippy」 UNDERWORLD ('96)

 この曲はあれですよね、最初は'96年の夏頃に出てヒットして。当時「BEAT UK」観てて、一発で気に入りましたもん。当然シングルを外盤屋で買って。「弐番目のタフガキ」が出た後だったかな? この曲が出た後に日本盤は2枚組仕様で限定版が出て。当然 "Born Slippy" も入ってて。当然そっちを買うわけですが。当時イギリスでは既に公開されていた映画「トレインスポッティング」に起用されたことで大ヒット。けどそれが飛び火するのは、ここ日本では更に1年後のことなんですよね‥‥俺も観に行ったもの、あの映画は。いろんな意味で泣いた、うん。

 このUNDERWORLDもロックの範疇で語られることの多いグループだけど‥‥やはりそれだけでは見えてこないものも多い気がするのね。んで、やはりこの曲に関しては、あの映画抜きでは語れないよな、と。いや、あの映画自体‥‥あの当時のイギリスを端的に(時にコミカルに、そして時にシリアス過ぎるくらいに)表した、あの映画と込みで語りたいな、と。実際、あの映画を通過する前と後とでは、また曲の聞こえ方/感じ方も変わってしね、俺的に。

 クラブのDJイベントとかで、この曲さえかければ嫌でも盛り上がるみたいな時期があったでしょ。俺、あれがある時からすっげー嫌になって。むしろ盛り下がって踊るの止めてたくらいなのね。なんだろ‥‥凄く滑稽に見えてきてさ、周りが。ま、早い話が「お前等、判って踊ってんのかよ?」みたいに斜に構えてたのね。つーか俺が一番判ってなかったんだけど。違うんだよね、この曲こそむしろ無心になって踊らなきゃいけないんだよ。いや、踊らされなきゃいけないんだよな。凄く頭デッカチな紙媒体を信用するロックファンみたいで今思えば凄くバカっぽいんだけど、けどそういう時期もあったなーと。いや、今でも時々この曲かかって喜んでる「純粋な」人達を見ると、ほんの一瞬だけ、鼻で笑ってしまいそうになる瞬間がね‥‥ないとは言わないよ。

 俺がこの曲で一番感動したのは‥‥多分去年('03年)の、大雨のフジロックでのUNDERWORLDライヴの時、この曲のイントロが聞こえた瞬間、そしてこの曲で長靴履いてるのにダイヴしてるアホを目撃した時かな。あれこそこの曲の本質を捉えてるんじゃないかな。そして、あの場を共有した奴らこそ、本当の意味での「Born Slippy」なんじゃなかろうか、と‥‥



▼O.S.T.「TRAINSPOTTING」(amazon

投稿: 2004 11 17 12:00 午前 [1996年の作品, Underworld, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/07/07

TOOL『AENIMA』(1996)

全米アルバムチャート初登場2位を記録した、TOOLのセカンド・フルアルバムにして出世作である「AENIMA」。多くの方々と同じように、俺もこのアルバムで彼らに注目するようになり、そしてこのアルバムで彼らの音に初めて触れました。聴く前から「ちょっとKING CRIMSONっぽいかも」とか「暗くて宗教的な色合いが強い」なんていう話を友人から聞かされ、「じゃあ俺のストライクゾーンじゃんか!」と嬉々としてCDショップの試聴コーナーへ走ったことを、今でもよく覚えています。

そしてそんな軽はずみは行動が後々命取りになったことも、よく覚えていますよ。

このアルバムリリース当時('96年頃)、まだTOOLは日本での知名度が極端に低く、音楽雑誌等でも殆どインタビューが載ることもなく、せいぜいアルバムレビューコーナーで彼らの名前を見かけるくらいでした。そんななので、一部のコアなファンのみ知っているカルト的存在と思われていたのもまた事実。当時はまだ「ラウドロック」なんて呼称はそれ程使われておらず、KORNやNINE INCH NAILS、MARILYN MANSON辺りと一括りで「オルタナ」とシンプルに呼ばれていたように記憶してます。もっとも、SONIC YOUTHもオルタナならTOOLもオルタナ、非常に幅が広く、それでいて実態が存在しないのがこの「オルタナ」という呼称でした。というよりも、TOOLのようなバンドの音を指して、どう既存のジャンルの中から例えを見つければいいのか‥‥多分レコード会社も雑誌メディアも困ってたんじゃないでしょうか?(そういえば'90年代初頭、ALICE IN CHAINSやNIRVANAのようなバンドが登場した時も、日本のレコード会社はプロモーションの仕方に困ったようですね)

ごくシンプルに言ってしまえば、ハードロックですよね。ムーディー且つドゥーミー、そしてプログレッシヴ。「BURRN!」辺りが率先して彼らを取り上げていれば、きっとそちら方面で認識されていたのかもしれません。が、そちら側の人からすればTOOLの音楽は彼らが知る「HM/HR」とは異なるジャンルのようで、積極的に取り上げられることはありませんでした(好反応を示したのはせいぜい伊藤政則くらいでしたしね)。

で、「rockin'on」辺りはどうだったかというと‥‥一部の記者からは好意的に受け入れられていたようですが、雑誌全体として彼らをプッシュする空気は全く感じられず、結局は「早過ぎたバンド/サウンド」として数年後に改めて取り上げられることになるのでした‥‥見る目がないっつうか、なんと言うか‥‥

結局、ここ日本では明確なジャンル分けによってプロモーション方法がハッキリしていくわけで、曖昧なサウンドだったり多方面にアピールするような唯一無二な存在が登場すると、てんでダメなんですよね‥‥アメリカやヨーロッパでは爆発的にヒットしてるってぇのに、これで損したバンド、腐る程いますよね?

とまぁ、そんなこともありつつ‥‥やっぱり今聴いても素晴らしい内容なわけですよ。何故彼らがあの当時、このアルバムをちゃんと聴いて、そして内容で判断しなかったのかが不思議に思える程、完成された音楽性じゃないですか、これ。今でこそこの手のサウンドや方法論を取るバンドは山程いますが、間違いなくTOOLは先駆者であり、そして今現在においても数歩抜きん出た存在であり、唯一無二のバンドなわけですよ。

"Stinkfist" のポピュラリティ、"Hooker With A Penis" のヘヴィさ、"Pushit" の叙情性、そして "Aenima" のトライバルなグルーヴ。まるで短編オムニバス映画を何本も続けて観ているかのような、それでいて1本1本がひとつの同じ方向に向かっているような共通点を持っていて、聴き終えた後にそれらが全て地続きだったことに気づかされる。それがTOOLサウンドの素晴らしさであり、このアルバムの魅力ではないでしょうかね。ホント、ライヴでもそうだったけど、サウンドを聴いてると絵が自然と頭に浮かんでくる、そんなバンドなんだよね、TOOLって。

彼らのサウンドに最初に触れるなら、個人的にはこのアルバムから入るのがいいのでは?と思います。勿論サードアルバム「LATERALUS」も「AENIMA」と引けを取らない名作ですけどね。単純に好みの問題ですよ。ま、手っ取り早く両方買っちゃうのが一番かと思いますが。

「LATERALUS」のリリース、そして衝撃的だったフジロックでの初来日から数えても早3年。バンドはそろそろ新作のためのレコーディング準備に入るようです。リリースは来年2005年以降になりそうですが‥‥ま、レコード会社とのイザコザも終わったことですし、今度はすんなりと聴けますよ‥‥ね?



▼TOOL『AENIMA』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2004 07 07 02:40 午後 [1996年の作品, Tool] | 固定リンク

2004/01/30

THE HELLACOPTERS『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(1996)

スウェーデンが誇る暴走ロックンロールバンド、THE HELLACOPTERSが'96年6月に本国でリリースした記念すべきファーストアルバム、「SUPERSHITTY TO THE MAX!」。メンバー全員が「HELLACOPTER」姓を名乗り、'60~'70年代のパンクやハードロック、'80~'90年代のガレージシーンに影響を受けた直球一筋なそのサウンドに、当時は誰もが驚いたことでしょう‥‥とか書いてますが、ここ日本に彼らが登場したのは'98年に入ってから。セカンドアルバム「PAYIN' THE DUES」と同時期('98年に入ってから)で、更に初来日となると同'98年10月、THE WiLDHEARTS来日公演のサポートとして初見参(当時のレポートがこちらで読めます)。それも「ワイハーのジンジャーお気に入りのバンド」としてHR/HM系雑誌で取り上げられたのが最初ですから‥‥ああ、その出だしから少し躓いていませんか?

ここで聴けるサウンドは、その後メジャー展開してからの「哀愁味溢れる北欧特有の潤ったメロディーを持った男臭いバンド」というイメージとはちょっと異なる、それこそ上に挙げたような傾向‥‥MC5やIGGY & THE STOOGES、MOTORHEAD、KISSといったバンドからの影響をストレートに表現した、ハードロック色が多少強めのサウンドに仕上がってます。しかも音が極端に太く、尚かつ歪みまくっている。後にHELLACOPTERSやBACKYARD BABIES(ここのドレゲンもセカンドリリース後までHELLACOPTERSに在籍、掛け持ちで活動してたのでした)やジンジャーが中心となって制作されたSUPERSHIT666のアルバムに近い印象を受けます。ま、プロデューサーとか全部一緒だし、似るのも当たり前というか。とにかく、必要以上にうるさい。そこがいいんですけどね。

もうね、アルバム1曲目 "(Gotta Get Some Action) Now!" イントロでの、ギター2本によるユニゾンプレイ。ここであまりのカッコ良さに失禁しそうになるのよ。ド頭からこれよ? 何、このカッコ良さ!? しかも間髪入れずに続く "24h Hell" なんてまんまMOTORHEADな疾走チューンだし。イントロのベースラインが "Ace Of Spades" かと思うと、曲調自体は "Overkill" を彷彿させるし。勿論、パクリとかそんな次元で終わってませんよ。ちゃんと「HELLACOPTERSらしく」仕上がってますから。そこが単なる「全員が同じ姓を名乗る、RAMONESの物真似バンド」的なその辺のB級バンドと違うところね。勿論、HELLACOPTERSを一流のバンドだとは思わないけど‥‥いや、ある意味一流か。こんなにうるさくてカッコいい暴走ロケンローを爆音でやらせたら天下一品だし。ホント凄い。

1分半くらいで終わる疾走チューンが何曲も続くかと思えば、メロウで渋いミドルチューン "Born Broke" みたいな曲もある。'70年代のKISSをラウドにしたような "How Could I Care" みたいなポップなメロディを持った曲もあるし、ヘヴィブルーズといえる "Spock In My Pocket" もある。ただ速くてうるさいだけのバンドじゃないことが、既にこのファーストの時点で証明されてるわけ。で、その辺の路線を追求し始めたのが、次作以降‥‥ま、その辺はまたの機会に。

それにしても‥‥本当にノイズやフィードバック音に溢れたアルバムだよね。彼らの全作品中、ここまで徹底的にやったアルバムはこれ1枚だけなんだよね。その後はどんどん洗練されていき、今ではその辺の「リバイバル・ロック」系や「リフロック」系と一緒に括られても全然違和感ないもんね。けどさ‥‥夕べ、同郷のTHE HIVESのアルバムを聴いてから、このHELLACOPTERSのファースト、「BY THE GRCE OF GOD」という3枚を続けて聴いたんだけど‥‥如何にこのHELLACOPTERSのファーストが異質かを思い知らされましたね。勿論、表面的に「ハードロックスタイルを持っている(このアルバムのシークレットトラックで、JUDAS PRIESTのコピーとかやってるしね。ってニッケ自身がこのバンドと同時にENTOMBEDというデスメタル/暴走ロックバンドやってたしね)」とか「ピアノ/エレピのメンバーがいる」といった特徴・ユニークさも挙げられるんだけど、もっと違う「何か」を強く感じるんですよ。じゃあその『違う「何か」』とはなんなのか?という話になりますが‥‥それは俺が言葉で説明するまでもなく、皆さんが実際にこのアルバムを聴いて判断してみてください。アルバム出だしの、"(Gotta Get Some Action) Now!" イントロでの、ギター2本によるユニゾンプレイ‥‥これを聴いた瞬間に体中に電気が走り回り、そして自ずと判ってくるはずですから‥‥



▼THE HELLACOPTERS『SUPERSHITTY TO THE MAX!』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 01 30 04:16 午前 [1996年の作品, Hellacopters, The] | 固定リンク

2003/12/04

『a tribute to JAPAN : Life in Tokyo』(1996)

  世代的にいうと、俺の年代って微妙なんですよね、JAPANって。多分末期の頃が小学生高学年~中学入学の頃だったんじゃないかな。辛うじて末期をリアルタイムで通過してる俺ですが、正直あの当時はその良さが全く判りませんでした。むしろ彼等と入れ替わるように登場したDURAN DURANの方が判りやすいし親しみやすかったので、そっちに夢中だったんですけどね。その後、デヴィッド・シルヴィアンが坂本龍一と絡むようになって彼のソロ・キャリアを追うようになって、中学高学年~高校くらいでようやくJAPANの良さが判ってきたという。で、俺の場合は末期から遡って聴いていったので、初期を聴いて更に衝撃を受けるわけですよ。なんだ、こんなにカッコ良かったのかよ!って。

  このJAPANトリビュートに参加してる面々の殆どが、俺よりも4~5歳以上年上の方々ばかり。中にはSUGIZOやRYUICHI(河村隆一。当時は共にLUNA SEA)みたいなほぼ同年代もいるんですが‥‥やっぱり今30代後半~40歳間近な方々がモロに通過してたでしょうから、こういう参加メンツになったんでしょうね。

  アルバムに参加しているアーティストはKyo(当時はDIE IN CRIESを解散させたばかりかな?現在はBugで活躍中)、Scudelia Electro、森岡賢・藤井麻輝(共にSOFT BALLET)、SUGIZO・RYUICHI(共にLUNA SEA)、ISSAY(DER ZIBET)、田村直美、土屋昌巳等‥‥所謂「ヴィジュアル系」と当時括られることの多かったバンドのメンバーが大半を占めるわけだけど、こういったバンドにどの程度JAPANが影響を与えたのか、あるいは「単にお仕事」として参加しただけなのか、人によってその辺の趣旨は異なるでしょうけど‥‥個人的には面白いなぁ、とリリース当時感じてました。

  原曲の良さについては敢えて触れません。だって「当たり前」だもん。勿論ここに選曲されなかった楽曲にも沢山名曲はあるし、微妙かなと思う選曲もあるわけなんだけど‥‥まぁその辺はこの手の企画盤に常に付きまとうものなので、無視します。

  確実にルーツだろうな、と言えるのはSUGIZOやSOFT BALLETの面々でしょう。特にSUGIZOと藤井麻輝は共に2曲も参加曲がある程だし。しかも彼等は単なるコピーに終わらず、完全なるカバー‥‥自分のスタイルにしてしまってますよね。LUNA SEA、SOFT BALLET両バンドのファンが聴いたら、思わずニヤリとするフレーズ連発で、聴いてて唸ってしまうんじゃないですかね?

  逆に全くJAPANを通過してないだろうメンツもいるわけで。RYUICHIや田村直美がその尤もたる例でしょう。RYUICHIなんて歌詞を自分で日本語に書き換えちゃってますしね。これはこれで面白いとは思うんですが‥‥やっぱり「そこまでしなくても‥‥」感は今聴いても付きまといますね。しかもまんま中期LUNA SEAしちゃってるし。決してこれやったから、その後ソロに目覚めた‥‥といえるような代物ではありませんが(逆にSUGIZOの場合は後のソロ活動との共通点も多く見受けられるんですよね)、ま、ファンアイテムとしては面白いんじゃないですかね。

  石田小吉(現在は「石田ショーキチ」でしたっけ?)もJAPANから影響を受けてるなんていう話、聞いたことなかったんでビックリしたんですが‥‥思いっきりT-REX風アレンジなのを聴いて、妙に納得してしまった記憶があります。力業だよな。

  あと、土屋昌巳‥‥末期ツアーに参加してた経緯からこのアルバムにも参加したんでしょうけど‥‥これってある意味セルフカバーですよね? ま、これはこれで面白いんだけど。愛に溢れてるっていうか。

  どの曲にも言えることですが、JAPANの場合、個人的にはどうしてもミック・カーンのベースが肝なわけですよ。しかしこのアルバムで聴けるカバー曲のベース、どれも普通に「ベース」しちゃってるんですよ。そこが面白味に欠けるかな、と。アレンジやその他の演奏自体には非常に熱を感じたり愛を感じたりするんですが‥‥media youthのHIROKIが弾いた "Sons Of Pioneersは頑張ってるかな、って気がしないでもないけど‥‥そこが一番残念(あ、土屋昌巳のトラックは除外。一番判ってるものこの人)。ま、真似すればいいってもんでもないんだけど、やっぱり重要なポイントじゃないの、JAPANを語る上での。

  そういう意味では‥‥リリースから7年以上経ったこのアルバムを久し振りに聴いてみて、ちょっと物足りなさも感じるんですが‥‥ま、これはこれでアリなのかな、と。昨今いろんな洋邦アーティストのトリビュート盤が出てますが、その殆どが「巷で人気の若手バンドが参加」とか「これからブレイクが期待されるインディーズ・バンド参加」みたいなのが売りになっちゃってて、肝心の「カバー」という行為が疎かになってるんだよね。お前らのやってることは「カバー」じゃなくて「コピー」だろ、と。愛情があればノー問題とかそういう次元じゃないから。単なる焼き直しになってる時点で、カバーされたバンドをバカにしてるんだからな、気づけよなっ!

  と、昨今のトリビュート事情について述べたところで‥‥久し振りにLUNA SEAの初期作品でも聴いてみようかなっ?(オイオイ、JAPANじゃねぇのかよ!)



▼『a tribute to JAPAN : Life in Tokyo』
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投稿: 2003 12 04 03:40 午後 [1996年の作品, Compilation Album, D'ERLANGER, LUNA SEA, SOFT BALLET] | 固定リンク

2003/11/28

UNDERWORLD『SECOND TOUGHEST IN THE INFANTS』(1996)

言わずと知れた名盤。それがUNDERWORLDが'96年にリリースした(テクノに移行してからの)セカンドアルバム「SECOND TOUGHEST IN THE INFANTS」に対する評価でしょうか。このアルバムがリリースされた当時、それまで全くテクノやダンスミュージックに興味がなかった友人達がこぞって「UNDERWORLDがスゴイ!」と声高に叫んでたんですよ。そんなの知ってるっちゅうねん、って話ですよ。いや、俺自身もまだこの頃はそこまでクラブミュージックにドップリ浸かってたわけではなく、単に「イギリスで売れてるダンスユニットのひとつ」程度にしか認識してなかったんですけどね。でも、この頃はまだ彼等に対する評価が高かったのは一部の層のみでしたよね。ロック系のファンが大騒ぎし始めるのは、それから1年近く経った映画「トレインスポッティング」に "Born Sliipy" が起用されてからですから。

自分が彼等に出会う切っ掛けは、当時深夜に放送されていた英国のチャートを紹介する音楽番組「BEAT UK」でチラッと放送された "Born Sliipy" でした。純粋にこの曲のトランシーなリフにやられたんですわ。で、その時はいいなぁって思ったもののCD買いには行かず、また暫くして今度は "Pearls Girl" が流れて、またそれ聴いて気に入って。で、今度はちゃんと買おうと思ってて、暫くしてCD屋でこの "Pearls Girl" が収録されたセカンドアルバムを見つけて購入したという。で、その時見つけた日本盤は初回限定盤2枚組仕様で、オマケとして "Born Sliipy" も、そして "Rez" まで入ってたんですよ。この2枚組に俺が彼等にハマる要素、全部入ってましたからね。

まだこの頃のUNDERWORLDには'80年代的なニューウェーブの要素も若干見られ(思えばこのユニット、最初はそういった音楽性のバンドだったしねぇ)、シンセの印象的なトランシーなリフが気持ちいいダンスナンバーが中心なんだけども、1曲目 "Juanita : Kiteless : To Dream Of Love" は16分半もある、完全にプログレしてる大作だし、それは続く2曲目 "Banstyle / Sappys Curry" もそうだったりするんだけど、とにかくロックファンにも十分にアピールするような作風だったわけですよ。彼等の楽曲には所々にギターをサンプリングしたフレーズが登場するんですが、それがまたロックファンには余計に気持ちよく響くんですよね。後にライヴを観るようになって、実際にライヴではギターを弾いてる姿を観て感動したりもしましたが、まぁ味付け程度に挿入されるからハッとするし、そして余計に気持ちいいんですよね。

同様に、UNDERWORLDは他のインスト重視のテクノ系アーティストと違いカール・ハイドというシンガー/パフォーマーが在籍する点も興味深いですよね。上の "Juanita : Kiteless : To Dream Of Love" にしろただの長編組曲に終わってないのは、そういったカールのメロウなボーカルが入っているからなんですよね。それは "Born Sliipy" にしても同様。だからこそ "Rez" のような曲(完全なインスト)も映えるわけですし。かと思えばラップスティールでの弾き語りっぽい印象の "Blueski" みないたブルージーな小曲があったり、エレピによる弾き語り風ゴシックナンバー "Stagger" まである。確かにこういった楽曲はトランシーで上げ上げなダンスチューンを好む方々からは敬遠されてるようだけど、逆にこういった要素が見つけられたからこそロックファンはこのアルバムに愛着を感じることができたんじゃないでしょうか?

このアルバムリリース時、とある英国雑誌は彼等のことを「ロックンロール・テクノ・バンド」と称したそうです。成る程、納得のいく例えですよね。それとよくUNDERWORLDをSTONE ROSESやPRIMAL SCREAMといったバンド達と同じ枠で括ろうとする動きもありますが、それも十分に納得のいく話。日本ではローゼズやプライマルは「THE SMITHS亡き後のイギリスから誕生した、最新ギターロックバンド」みたいな括りで当時は語られてましたが、やはりそれは合っているようで思いっきり間違ってると思うんですよね。「パンク」「ダンス(レイヴ)」「アシッド」‥‥彼等に共通する要素はここなんですよ。ま、UNDERWORLDは「テクノシーンにおけるパンク」でしょうけど、音楽的には最も程遠いわけですが‥‥

過去に彼等がリリースした作品の中で、実は一番丁寧に作り込まれている印象が強いのが、俺はこのセカンドアルバムだと思ってます。良い意味で慎重に作り込まれている、悪い意味では‥‥考えすぎ。ま、そこが時代にフィットしてたんですけどね。

"Born Sliipy" 1曲で語られてしまうことの多い彼等。ベスト盤がリリースされたこの時期だからこそ、改めてオリジナルアルバムにも手を伸ばし、そして彼等の神髄にドップリ浸かってみては如何でしょうか?



▼UNDERWORLD『SECOND TOUGHEST IN THE INFANTS』
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投稿: 2003 11 28 02:49 午後 [1996年の作品, Underworld] | 固定リンク

2003/10/23

KORN『LIFE IS PEACHY』(1996)

前2回が既に解散してしまっている、あるいは一旦解散し最近再結成したバンドの、10数年前の作品だったわけですが、今回は比較的最近‥‥といっても既に7年も前なんですけどね‥‥やっぱり俺にとっては「最近」だわ、悪いけど。そんな今でも現役で活躍するKORNのセカンドアルバム、「LIFE IS PEACHY」を取り上げたいと思います。

正直な話、今回の企画で取り上げるバンド/アルバムはどの時期からどの時期までのものにするか、これに非常に悩むわけです。当初考えていたのは「'80年代末~'90年代初頭のオルタナ/クロスオーバーに括られたバンド達、そしてその後に現れたシアトル勢」を中心に、最後はRAGE AGAINST THE MACHINEが登場する辺り(それでも'92年頃ですからね、彼等のデビューは)とカート・コバーンの死('94年)辺りまでにしようかと考えてたんですよ。だってさ、誰もKORNのことをオルタナなんて呼ばないでしょ? アルバム出せば常にチャートのトップ3に入るような「メインストリーム」的存在なわけですから。けど、彼等だって最初からヒットチャートの上位組だったわけじゃない。そんな彼等にも切っ掛けとなる作品があったわけで。それがこのアルバムなわけですが(ま、切っ掛けとかいいながらも全米初登場3位を記録したヒット作なんですけどね)。そういった意味で、文字通りの「オルタナティヴ」だった時期‥‥ま、ほんの一瞬ですけどね‥‥を紹介するって意味で、敢えてKORNのこの作品を「オルタナティヴ」で括ってみようと思ったわけです。勿論この辺の解釈は人によって全然違うでしょうから、ツッコミはナシの方向で。ひとつヨロシクです。

このアルバムを、当時付き合いのあったとあるバンド(一時期メジャーでも活躍し、現在もインディーシーンで活躍し続ける某ラウド系バンド)のギタリストから教えてもらって買ってみたわけですが‥‥やっぱりね、いきなり頭の理解不能な言語的歌唱法で度肝を抜く "Twist" にやられるわけですよ。そして組曲的に流れている "Chi" にノックアウト。この2曲で購入するに十分なインパクトを与えられたわけです。CDショップの視聴機の前で固まりましたもん、あまりの衝撃に。

所謂「KORNタイプのバンド」なんて表現は、このアルバムから生まれたといっていいでしょう。プロデュースを手掛けるロス・ロビンソンが得意とする生々しいミックスが功を奏して生まれた「KORNサウンド」は、ロビンソンが関わらなくなったその後の2作でも引き継がれたりしましたが、現在ではちょっと変わった、好き嫌いが分かれるサウンドに変化しています。

スカスカなスネアドラムのサウンド('02年の5作目「UNTOUCHABLES」から厚みのある太いスネアサウンドに変化してます)、ゴリゴリでパキパキする5弦ベースの音、不協和音的なハーモニクス音を奏で、絶妙にリフとリフが絡み合う2本の7弦ギター。そしてジョナサン・デイヴィスによる、時に人間離れした歌唱法、時に感極まりすぎて本当に泣いてしまうそのボーカルスタイル‥‥全て'90年代半ばにおいて新鮮であり強烈なインパクトを持っていたわけです。

このアルバムにはその後も代表曲として演奏し続けられている "Good God" や "Wicked"(ラッパー、アイス・キューブのカバー)、"A.D.I.D.A.S."、上記の "Twist" ~ "Chi" の他に、WARのカバーである "Lowrider"('80年代にスラッシュメタル・バンドのEXODUSもカバーしてました)や不気味な "Kill You" といった人気曲が幾つも収録されています。一聴して取っつき難いようなイメージがあるんですが、実は曲自体は意外とポップなんですよね。ヒップホップ的なスカスカのリズムを取り入れたり、ラップなのか歌ってるのか判らなくなるような歌メロがサビに入ると急にポップでメロウになったり(あるいはその反対に、デスメタル調に絶叫するだけの轟音になったり)、とにかく変化自在。先駆者としてFAITH NO MOREという偉大なバンドがいましたが、彼等がもっとプログレチックなのに対し、KORNはもっとユルユルなんですよね。リズムの取り方の違いってのも大きいでしょうけど、やっぱりこの人達が元々はヘヴィメタルが大好きだった、その後ヒップホップ等の洗礼を受けるという、正に俺なんかの世代と同じ流れなんですよね。確か年齢的にも近いし。聴いてきたものが恐らく似てるんだと思いますよ(ガキの頃に流行った、あるいは人気があった音楽を共に聴いてきてるでしょうし)。世代的にはひとつ上になるFNMとはそういった点で相違点が出てくるんでしょうね。

とまぁ、他のアーティストとの比較はさておいて‥‥所謂「レイジ以降のラップメタル/ラウドロック」と呼ばれるようなバンド群の中で最初に数歩リードしたのがKORNであり、それを自ら「FOLLOW THE LEADER」なんてアルバムタイトルに引っ掛けたりする程、'96~'99年頃のKORNは神がかっていたといっていいでしょう。'98年のサードアルバム・リリース直前のフジロック@豊洲、そして'99年初頭の単独来日‥‥これ以降彼等は日本の地を踏んでいないわけですが‥‥やっと、5年振りに帰ってきます、6作目のアルバム「TAKE A LOOK IN THE MIRROR」と共に。

そうそう、KORNといえば「ファミリー・ヴァリューズ・ツアー」についても書いておかなければいけませんね。KORNが中心となって、彼等と親しいバンドや注目のバンド数組を引き連れて行うパッケージ・ツアーのことで、'98年からスタートしていて、当時はまだ無名だったINCUBUBやブレイク前夜のlimpbizkitも出演していました。その後、親バンドがリンプになったり等して数年続きました。所謂「ロラパルーザ」の縮小版みたいなもんでしょうか。如何に当時のKORNがシーンを率先していたかが伺えるエピソードなのではないでしょうか。



▼KORN『LIFE IS PEACHY』
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投稿: 2003 10 23 11:53 午後 [1996年の作品, Korn] | 固定リンク

2003/10/02

BABY CHAOS『LOVE YOUR SELF ABUSE』(1996)

先日紹介したDECKARDというバンドが以前、BABY CHAOSという名前でイギリスにて活動してた時代のセカンドアルバムに当たるのが、この「LOVE YOUR SELF ABUSE」という作品集なんですが‥‥これがちと厄介な作品でして。最初は96年春に同タイトルでリリースされたこのアルバム、翌97年にはアメリカの「Atlantic Records」とのワールドワイド契約も決まり(それ以前は「East West UK」。レーベルメイトはTHE WiLDHEARTSでした)、収録曲を若干変更してアメリカやここ日本で再リリースされたのが今回紹介するフォーマット。とりあえず一番手に入れやすいのがこの再発盤だと思うので、まずはこっちから紹介してみようかと思ってます(ま、基本的にはどれも素晴らしいアルバムだと思うので、どれから聴いてもいいんですけどね)。

このアルバムは彼等が唯一ここ日本で発表することのできた作品で、結局DECKARD『STEREODREAMSCENE』に関しては日本はおろか本国イギリスでさえもリリースされなかったんだから‥‥そう考えるとこの『LOVE YOUR SELF ABUSE』という作品、非常に貴重なものとなるわけですが‥‥何でこれが当時大騒ぎされなかったのかが不思議で仕方ないんですよ。俺は彼等がTHE WiLDHEARTSと当時(97年頃)ツアーをしていたことからその名前を知ったんですが‥‥実はその音と接することになるのはもっと後で、彼等がDECKARDに改名してから暫く経った後。ずっとアルバムを探してはいたんだけど、なかなか見つからなくて。いや、俺の見つけ方が悪かっただけなんですが。唯一リリースされていたこの日本盤の中古を地元のCDショップで見つけた時の歓喜といったら。と同時に「こんな片田舎にも、俺と同じような音を求めてる奴が、少なくともひとりはいるんだ」と判ったのが大きな収穫だったわけで。ま、その辺の話はこっちの置いといて‥‥

DECKARDで彼等に魅了された人がそれと同じモノを期待するとちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、そのポップセンスは間違いなくDECKARDのそれと同等、あるいはそれ以上ではないかと個人的には思ってます。単純に趣味の問題になりますが、DECKARD以上にハードでパンキッシュな要素も含まれたBABY CHAOS時代の方が好みなんですね。特にこのセカンドアルバムではTHE WiLDHEARTSやTERRORVISIONといった同系統で括られることの多いバンド達とのツアー経験が良い方向に作用し、それらのバンドにも匹敵する内容になったのではないかと思っています。テンポ的にもアッパーな「She's In Pain」からスタートする点、そしてそれぞれの楽曲のエンディングと次の曲の頭の音がクロスフェードするという連続性、それによって伴う小気味良さ、DECKARDとは方向性の違った「モダンさ」等々、特筆すべき点は多いと思うんですが、やはり何よりも優れたメロディセンスと、それに乗せるボーカルの荒々しさ、ギターもDECKARD以上に暴れまくっている等、とにかく飽きさせずにガガーッと最後まで聴けてしまう内容。DECKARDがどこかじっくりと聴き込む的な要素を強く感じさせていたのと対照的に、こっちはより大音量で、大勢で騒ぐ為のアルバムといった印象を受けます。いや、だからこっちの方が荒くて劣るという意味ではなくて、より若々しいというか‥‥ま、THE WiLDHEARTS好きやパンキッシュなパワーポップ好きに大いにアピールする作品という意味ですよ。

このアルバムのリリースから既に6年、オリジナルバージョンから7年以上もの月日が経つわけですが、あの当時冷遇されたこの作品、THE WiLDHEARTSが再結成してウケる現在ならもっと高く評価されるんじゃないでしょうか。もし今、DECKARDがこのタイプのアルバムを発表したなら‥‥その彼等が今、この頃に比較的近い作風のアルバムを作っているという噂があります。この波に乗り遅れない内にリリースにこぎ着けて欲しいなぁ。だってこれだけの作品を作れる才能を持ったバンドなんだからさ。



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投稿: 2003 10 02 12:00 午前 [1996年の作品, Baby Chaos, Deckard] | 固定リンク

2003/06/02

METALLICA『LOAD』(1996)

1996年6月に前作『METALLICA』アルバムから約5年振りにリリースされた通算6枚目のオリジナルアルバム『LOAD』。天文学的ヒットを飛ばした後に発表する新作ということで、作る方も聴く方も相当緊張した1枚でしたね、当時は。

前作とほぼ同じような布陣(プロデューサーは同じくボブ・ロック)で、長期間に渡ってレコーディングされた楽曲は当時20数曲と言われていました。実際「2枚組アルバムとしてリリースすることも考えた」という発言があった程、多くの楽曲を制作したわけです。が、結局は1枚のアルバムとして発表。その中身も「CDというフォーマットの限界ギリギリまで収録した」14曲、79分にも及ぶ大作。アナログ時代だったら間違いなく2枚組でしたけどね。

このアルバムのテーマは“ルーズ”ということらしく、それまでの「ジャストのリズムでカッチリと作り込まれたMETALLICAサウンド」を解体することから始まります。それまでのアルバムは、まずラーズのドラムとジェームズのギターを先に録音し、その上にジェイソンのベースとカークのギターソロをダビングしていたそうで、カークに至っては「リズムギターは弾いていなかった」とのこと。これがあのカッチリしたMETALLICAサウンドの秘密だったのです(それはシングルに収録されてきたデモテイクからも伺えた事実でしょう。「One」のデモなんてラーズとジェームズの二人で作ったものですしね)。しかし、前作と同じことをやっても意味がないと感じたボブ・ロックは、メンバーに「バンドとして演奏」することを勧めます。また、同時にジェイソンからもバンドに対してサジェスチョンがあったそうで、それらを切っ掛けに心機一転、レコーディング方法を改めるのです。

このアルバムで聴かれる楽曲の殆どがミドルテンポからスローテンポ。リズムも以前のようにカクカクしたものではなく、どこかラフで肩の力が抜けたような印象を受けます。実際、アルバムトップの「Ain't My Bitch」からして以前の彼等とはかなり違った側面が伺えます。それまでのヘヴィメタル特有の楽曲構成に代わり、どことなくブルーズ/ロックンロール特有のコード進行を取り入れ始めたり、ギターソロではスライドバーを用いたり等、これ1曲だけでも「それまでとは違うんだぞ」という無言の主張が所々に散りばめられています。また、前作にあったようなミドルヘヴィの「2 x 4」もどこかリズムが引きずるような感じで、良く言えばブルージー、悪く言えば怠い印象を受けます。

そう、このアルバムのテーマである“ルーズ”なんですが……個人的にはこれが良い方向に機能しているとは思えないんですよね。確かに楽曲としては優れたものもあるんですが、アルバム全体を覆う空気感が‥‥バンド間の空気感に非常に似通ったものだったのではないでしょうか? そういえば、この当時のメンバー(特にラーズ)が聴いていた音楽が、これまたOASISやらBLACK GRAPEといったブリットポップだったというのも、何となくその空気感に影響してるのでは、と勘ぐりたくなったりします。

で、そういった怠いと感じさせてしまう要因のひとつに、楽曲の完成度の低さもあると思うんですね。いや、悪いとは言い切れないものの……やはり大成功を収めた『METALLICA』収録曲の二番煎じ的楽曲、悪く言えば「二次使用品」「アウトテイク」で大半を構成されたアルバムというイメージ。「The House Jack Built」にしろ「Cure」にしろ、唯一のファストナンバー「Wasting My Hate」にしろ、もっと上手くまとめることが出来たんじゃないか?という気がしますし、「King Nothing」に至っては前作からのシングルヒット「『Enter Sandman』パート2」といった作風ですからね。それが悪いとは言わないけど、やるならもっと徹底して作り込んで欲しかったな、と。更にそれらをラフでルーズに演奏するんだから、ねぇ? アルバムラストの「The Outlaw Torn」なんて10分近くもあるのに、本当にダラダラやってるって印象が強いんですよ。しかも全然耳に残らないし。しかもこの曲、本来はもっと長くて、79分というCDの収録時間に収める為に編集&フェードアウトして無理矢理10分以内に収めたという曰く付き。何だかなぁ。

……と、ここまで書いて悪いことしか書いてないことに気づいたので、良い点も幾つか挙げてみますね。

新境地と呼べるような楽曲も幾つかあるんですよね。まず、このアルバムからのファーストシングルとなった「Until It Sleeps」。これまでのMETALLICAからは考えられないタイプの楽曲ですよね。日本では某自動車のCMソングに起用されていたので、この曲なら知ってるっていう人も多いんじゃないでしょうか。良い意味でオルタナ系からの影響を上手く反映させたポップチューンになっていて、それが幸いしてかこの曲、初のシングルチャート・トップ10入りを果たしています。またこの曲ではジェイソン、フレットレスベースに初挑戦しています。ギターもレズリースピーカーを通したクリーントーン等、非常に工夫されています。

更にセカンドシングルとなった「Hero Of The Day」も新境地と言えるでしょう。メジャーキー進行の軽快なポップソングは、これがMETALLICAか!?と思わせるに十分な内容。初期の彼等を愛したファンはこれらを聴いてどう思ったんでしょうか。ちなみに俺は上記の2曲、非常に気に入っております。やるならここまで徹底してやって欲しかったのに、ねぇ?

そして唯一のバラードにしてサードシングルとなった「Mama Said」も異色作といえるでしょう。カントリーフレーバー&アコースティック色が強く表れていて、ギターもアコースティックギターやペダルスチールを用いたり、またチキンピッキングを多用したり等、とにかく徹底して作り込まれているんですね。何なんでしょう、この落差は!? 日本盤アルバムの帯に「『METALLICA』を超えるのは、メタリカだけだ。」というキャッチコピーがあるんですが、全曲こんな感じで作り込まれていたら、ホントの意味で『METALLICA』を超えたMETALLICAになっていたのにねぇ。

個人的にルーズ系の曲で一番好きなのが、7曲目の「Bleeding Me」。8分以上あるジャムセッション風のスローブルーズなんですが、これはこれで結構緊張感を持続させたプレイと歌を堪能できるんですよねぇ。そういう意味では、ホントに成功してる曲と失敗してる曲の落差が激しいアルバムです。

久し振りに何度か通して聴いてみたんですが、以前よりはポジティブに聴くことが出来たんだけど、やっぱり最高とは言い難いですね。これが当時1位と取ったのにも驚いたけど、それ以上にこのアルバムが日本で最も売れたMETALLICAのアルバムというのもねぇ。先のタイアップが影響してるのは見え見えなんですが……。

アーティストとしてのエゴが非常に強く表れたアルバムと呼べるのかもしれませんね。GUNS N'ROSESが『USE YOUR ILLUSION 1&2』を作ってしまったみたいに。あるいは続くアルバム『RELOAD』と合わせて考えると、METALLICA版『PHYSICAL GRAFFITI』(LED ZEPPELINの2枚組アルバム。新曲とそれまでのアウトテイクをひとまとめにした、ある種エゴの塊のような作品集。アルバムとしてのまとまりはなし)と呼べなくもない作品集というか。ま、これがあったから今があるというか……つうかこのアルバムが何よりも一番好き!って人に未だ会ったことないよなぁ……。



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投稿: 2003 06 02 04:15 午前 [1996年の作品, Metallica] | 固定リンク

2003/04/13

SEPULTURA『ROOTS』(1996)

1996年というのはその後のヘヴィミュージックにとってとても歴史に残る1年でした。RAGE AGAINST THE MACHINEが「EVIL EMPIRE」で全米1位を取ってしまったり、KORNやTOOL、MARILYN MANSONといった新世代ヘヴィバンドが次々とアルバムをチャート上位入りさせた、正しく「新しい時代」を予感させる1年。そしてそんな中、チャート上位入りは果たせなかったものの、ここにもう1枚どうしてもその仲間に入れたい歴史的名盤があります。それが今回紹介するSEPULTURAの6枚目のアルバム「ROOTS」です。

ブラジル出身の4人組、元々はデスメタル/スラッシュメタルバンドだったという過去を持つ彼等は、ここ日本でも'91年にリリースされた4作目「ARISE」で一気にブレイクしました。俺も当時、このアルバムで彼等を知ったのですが、その頃は別に特別な存在とも思わず、単純に「SLAYER直系のデスメタル」くらいにしか感じてなかったんですね。そんな彼等に対して特別な視線を向けるようになったのは、'93年リリースの5作目「CHAOS A.D.」からでした。もうね、完全に別のバンドに化けちゃってるの。METALLICAの変化よりも驚いたもん、あの「スピードを徹底的に抑えた、リズムに力を入れたアレンジ」に。サウンドも飛躍的に向上したし、かなりメジャー色が強くなったとも感じたし(とはいっても、ボーカルは相変わらずのデスボイスなんですが)。さすがにこの時は来日公演行ったもんなぁ。

んで、そこから約2年数ヶ月振りにリリースされたこの「ROOTS」は、前作を更に押し進めたかのようなリズム/グルーヴを強調した、それでいて他のヘヴィミュージックとは一線を画する要素を持った非常に個性的で(当時は)他にはないヘヴィサウンドを聴かせてくれる名盤なわけですよ。その「他のヘヴィミュージックとは一線を画する要素」というのが、今ではどうってことないかもしれませんが‥‥所謂「ブラジル・ルーツミュージックとの接近」だったわけで。自身のブラジリアンとしての「ルーツ」に今一度目を向けた、彼等にしか作れなかったアルバム。当時、ヘヴィミュージックといえばアメリカ主流だったわけで、上に挙げたようなバンドは皆アメリカのバンドでした。そんな中、デスメタルバンドだったSEPULTURAがブラジル人にしか出来ない、ブラジル人だからこそ成し得たサウンドを新たに構築した。まだ前例がなかっただけに全面的に受け入れられたとは言い難い状況でしたが、彼等がいなければその後のヘヴィロックの発展はなかったと言い切ってもいいでしょう。

その特異性はまず4曲目"Ratamahatta"を聴いてもらうと判るでしょう。現地では有名らしいブラジル人パーカッショニスト、カルリーニョス・ブラウンが参加したこの曲。ラテン・パーカッションだけでなくボーカルでも参加しているカルリーニョスといい、完全に現地の言葉で歌われるその歌詞といい、ヘヴィなラテンロックというか‥‥それだけでは表現しきれない特異性を感じます。また、2曲目"Attitude"のイントロで聴ける民族楽器「BERIMBAU」を導入したり(この楽器は所々で用いられています)、更には12曲目"Itsari"。これはブラジル国境付近に暮らす原住民サヴァンテ族と、現地まで足を運んだSEPULTURAの4人が共演し、それをライヴ録音した音源(アルバムラストにもシークレットトラックとして、その時のセッションが収められています)。所謂インストナンバーなんですが‥‥真の意味での「ルーツ・ミュージック」を、現在ヘヴィロックバンドをやってる若者4人がヘヴィロック・アルバムの中に入れてしまったという事実。確かにその前作「CHAOS A.D.」の中にもそれに近いナンバー "Kaiowas" がありましたが、この"Itsari"はその比じゃありません。ラテンミュージックの原点という意味合いだけでなく、こういったリズムを重視する音楽の原点とも呼べる地点まで立ち返ることで、彼等は更に何歩も前進したわけです。しかし、その「飛躍的前進」がたまたま「バンド内の不和」と重なり、その路線での更なる進化を見ることなく(マックスの脱退→黒人シンガーの加入)、バンドは新しい道を模索せねばならなくなります。

そうそう。もう1曲、このアルバムには特筆すべき楽曲があります。8曲目"Lookaway"です。何せ作曲を現LIMP BIZKITのDJリーサル(当時はまだヒップホップ・ユニットHOUSE OF PAINに在籍)との共作、作詞はKORNのジョナサン・デイヴィス、ボーカルをマックスとジョナサン、そして当時FAITH NO MOREのマイク・パットンの3人で務めるという豪華作。リンプのようなハネたリズムというわけではなく、引きずるようなヘヴィサウンドにスクラッチが入り、マックス、ジョナサン、マイクの3人がこれでもか!?という程に絶叫しまくるんですよ‥‥当時日本ではKORNはまだ無名に近い存在。今でこそ全米チャートを席巻する程にまでビッグになりましたが、現在でもヘヴィロック界を代表する3人(マックスはSOULFLYで、マイクは現在DILLINGER ESCAPE PLANということでいいのでしょうか?)の共演。その後DJリーサルがLIMP BIZKITへと進んでいったこと等を考えると、非常に興味深い1曲であり、ある意味その後の歴史を決めたかのような革新的な1曲なのではないでしょうか?(ってのは言い過ぎですか?)

勿論、その他の楽曲も文句なしにヘヴィでカッコイイ。もう1曲目"Roots Bloody Roots"が始まった瞬間に名盤決定してしまうもの。あの雪崩のようなヘヴィサウンドは今聴いてもメチャクチャ重いし、ググッとくる。かと思えば、最後に"Dictatorshit"みたいな1分半にも満たない爆走ハードコア・チューンを持ってくる。明らかに初期のスラッシュ・サウンドとは別物になってしまってますが、そのカッコ良さはハンパじゃないし、こういうヘヴィロックの中でも比較的「幅広い」事をやれるのはやはりメタル出身の彼等だからこそ、とは思いませんか?

'96年以降、特に'98年頃を境にヘヴィロックは世界的にブレイクし、その後もメタルやパンク/ハードコア以外の要素を取り入れたバンドが数多く登場しています。現在では飽和状態に陥っているシーンの中で、やはりこの「ROOTS」を超えるような「ヘヴィ」なアルバムはその後、数枚しか登場していないと個人的には思ってます(ぶっちゃけ、SLIPKNOTが登場するまで、自分の中ではこのアルバムが最もヘヴィなアルバムに君臨していたわけです)。何をもって「ヘヴィ」と呼ぶのか。表面的なサウンドを指してか、それともその歌詞を指してか‥‥勿論その両方を有するのは当然なのですが、俺はもっとこう‥‥内面から湧き出る「ヘヴィさ」を求めているわけで、だからこそ初期のKORNやSLIPKNOTのアルバム2枚は素晴らしかったのですよ。そして、SEPULTURAがアメリカ人でも日本人でもない、ブラジル人だからこそ表現できた「ヘヴィさ」。ブラジルという国でロックすること、そしてブラジルの情勢、彼等のルーツ‥‥そういった『彼等が「ネガティヴ」と感じてきた要素』を全面的に出したからこそ成し得た「ヘヴィさ」。だからこそ誰にも真似できなかったわけで、唯一無二のサウンドとなった。そう考えると、本当に凄いアルバムだよなぁ‥‥と今更ながらに感じています。

残念なのは、このアルバムに伴う来日公演が中止になり、このラインナップはその後崩壊してしまったこと。昨年だったか、このアルバムでのツアーを収めたライヴアルバムがリリースされましたが、かなり凄いことになってるし、それまでのベスト盤的内容にもなってるので、この「ROOTS」でSEPULTURAに興味を持った人は是非聴いてみるといいでしょう。ま、SOULFLYを聴いている人はちゃんとこのアルバムを聴いてるとは思いますが。これまでSOULFLY及びSEPULTURAをスルーしてきて、このアルバムで彼等にハマッた人は是非SOULFLYのファースト~「PRIMITIVE」も聴くことをオススメします。



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投稿: 2003 04 13 04:22 午後 [1996年の作品, Sepultura] | 固定リンク

2003/04/12

MARILYN MANSON『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996)

言わずと知れた、MARILYN MANSONの出世作となった'96年リリースのセカンド・フルアルバム。'95年に「SMELLS LIKE CHILDREN」というCDを出していますが、あれはアルバムではなくてあくまで「EP」扱いらしいですから、フルアルバムという意味ではこの「ANTICHRIST SUPERSTAR」が本来の意味でのセカンドアルバムということになります。プロデュースには過去2作同様、NINE INCH NAILSのトレント・レズナーが当たっていて、NINで養ったノウハウを見事に活かし、またマンソン自体の個性や特異性を見事に表現し切った傑作になっています。実際、このアルバムが切っ掛けで全米でも大ブレイクし(全米アルバムチャート初登場3位を記録)、翌'97年3月には初来日公演も実現させました。今や伝説となっているクラブ・クラスでの公演で、俺も最前列にかぶりつきで堪能した程です(トゥイギーに水かけられたりしましたが)。

このアルバムのリリース当時、俺の友人('70年代の王道ハードロック好き)が別の友人にマンソンを勧められたそうで、その時の例えが「NINがKISSやALICE COOPERをリミックスした感じ」だったそうで、あーなるほど、上手いこと言ったなぁその人と素直に思いましたね。「カバーした」ではなく「リミックスした」感じ。ちょっとしたニュアンスの違いのようで、実は全く違うんですよね。あくまでKISSやALICE COOPERは素材であって、それを独自の方法で料理した‥‥模倣したのではなくて、素材や部品を使って別の新しいものを作り上げる感覚‥‥この違いが判らないと、上の例えを信じて買っても「全然KISSやALICE COOPERっぽくないじゃないかよ!」って怒り心頭なんでしょうね(ってその友人が正しくそうだったんですが)。

このアルバムはそういった'70~'80年代の王道ハードロックと、'80年代末以降のオルタナロックを見事に掛け合わせ、王道とキワモノの狭間を行ったり来たりする、とても個性的な作品といえるでしょう。同じ頃、KORNやTOOLといったバンドのアルバムが軒並み全米トップ3入りをする中、この作品も同様に第3位を記録したんですが、それは決して物珍しさから生まれたヒットではなくて、ちゃんと内容の伴った作品だったからこその結果だったのです。そして、上に挙げた2組との大きな違いは、取っつきにくいビジュアル要素に反して、意外に親しみやすいメロディとサウンドを持っている点でしょうか。上記2組よりもポップ的要素が強調されているというか‥‥おいおい、これのどこがポップなんだよ!?って突っ込む人、絶対にいると思うんですが、いやいやかなりポップじゃないですか! 俺の中ではNIN同様のポップさを感じさせるバンドですよ。そしてそれを計算尽くでやってる点。既にエンターテイメントとして割り切ってやってる辺りには最初に名前を挙げたKISSやALICE COOPERとイメージがダブりますよね。きっとその例えをした人はそういった点からも、KISSやALICE COOPERとイメージが重なったんでしょうね。

例えば今やMARILYN MANSONの代表曲といえる"The Beautiful People"ひとつをとっても、あのリズム感といい、ギターリフといい、メロディらしいメロのない歌といい‥‥全てにおいて非常にポップではないですか? 勿論、ロック特有の躍動感は十分備わっているし、大音量でかかればクラブでもフロアを盛り上げるに十分だし。そりゃ、一緒になって口ずさむというタイプの曲ではないですが‥‥俺にとってはポップ。決してマニアックになりすぎず、それでいて消費される為のポップソングにもなり下がらず、ギリギリのラインでドシンと構える1曲。それが俺にとっての"The Beautiful People"という曲。ハードロックでもヘヴィメタルでもオルタナでもポップソングでもなく、単純に「ポップ」な存在。何かそれって"The Beautiful People"に限らず、このバンドを象徴する例えのような気がしますが、どうでしょうか?

KISSやALICE COOPERにも影響を受けていることは間違いないでしょうけど、それだけではなく'80年代のハードロックやヘヴィメタルの影響を受けていますよね。と同時に、同時期のニューウェーブやゴス、オルタナロックの影響も見え隠れする。俺と同年代のマリリン・マンソンことブライアン・ワーナーは、そういった音楽をリアルタイムで10代の頃に聴いてきてるはずなんです。IRON MAIDENが好きで、以前 "Number Of The Beast" をカバーしたい‥‥みたいな発言をしてたことがあったかと思うんですが、そういった影響をちゃんと出しつつも、'90年代に誕生したバンドとしての同時代性をちゃんと主張している、単なる過去の焼き直しに終わってない辺りはさすがかと。アルバムトップを飾るスラッシーな疾走チューン"Irresponsible Hate Anthem"といい、メロディが印象的なシングル曲"Tourniquet"といい、ライヴでのあのパフォーマンスが強烈に印象に残っているアルバムタイトル曲"Antichrist Superstar"といい、静と動のコントラストが素晴らしい"Angel With The Scabbed Wings"や"The Reflecting God"といい、インダストリアル色の強い"Cryptorchild"といい(この曲なんて次作への序章といったイメージがありますね今となっては)、ニューウェーブっぽい香りを持つ"Wormboy"といい、とにかく全てにおいて強烈な色を放っているし、印象深い曲ばかり。勿論、今挙げなかった曲も素晴らしいですし、所謂コンセプトアルバム的な壮大なテーマを持った作品集としても十分に楽しめるアルバム。そう、このアルバムから続く3枚のアルバムはひとつのコンセプト/テーマの元に作られた作品集で、時間軸はアルバムを追う毎に遡っていくようですが(つまり、このアルバムが所謂最終章的役割)‥‥って、その辺は後々のアルバムレビューで述べるでしょうから、その時まで取っておきましょう。

全体的なポップ度でいえば、後にリリースされる「MECHANICAL ANIMALS」や「HOLY WOOD」の方がより親しみやすいポップさなのですが、それでも「ANTICHRIST SUPERSTAR」はリリース当時、十分にポップな作品でした。そしてアルバムを重ねる毎に更に洗練されポップになっていき、それでいてロック純度も落ちていない点はさすがだと思いますね。このアルバムを聴いてMARILYN MANSONに対し苦手意識を持ってしまった人って多いようですが、そういう人が「MECHANICAL ANIMALS」や「HOLY WOOD」を聴いて、あまりの親しみやすさに驚いたという場面に何度か立ち会っています。自分にとってはこのバンドは常に‥‥そう、ファーストアルバムの時点から既にポップな存在だったわけでですよ(と同時にキワモノ的でもあったりしたんですが)。そんなバンドがこういうアルバムを作った。そりゃブレイクするでしょう普通。聴く人が聴けばちゃんと評価される。新しモノ好きが飛びついてブレイクしたんじゃなく、単純に音楽が評価された。俺はそう信じたいですね。

バンドにとってはこのアルバムこそが「3大コンセプトアルバム」の最終章であり、と同時にビッグネームへの仲間入りを果たした入り口でもある。そして、この先に待ち受けている受難への序章でもあったわけですね‥‥イメージ先行型なだけに、もっと音楽面で評価されてもいいはずなんですが。こんなにカッコいいハードロックアルバム、当時はあまり見かけなかっただけに無条件で飛びついたのが、つい昨日のことのように思い出されます。



▼MARILYN MANSON『ANTICHRIST SUPERSTAR』
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投稿: 2003 04 12 09:22 午後 [1996年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2003/04/08

APHEX TWIN『RICHARD D. JAMES ALBUM』(1996)

このジャケット、一度見たら絶対に忘れないよね。ある意味、KING CRIMSON『クリムゾン・キングの宮殿』に匹敵するインパクト大の顔ジャケ。いや、あっちは絵なのに対し、こっちはアルバムの主であるリチャードD・ジェイムズことAPHEX TWINの素顔なんだから。この悪意に満ちた笑顔。そして(ある意味)そのジャケット同様の内容。この音にして、このジャケットあり、みたいな。ホント、絵と音がピッタリ一致したアルバムだと思います。

APHEX TWINが1996年秋にリリースしたこのアルバム。APHEX TWINにおける名盤はそれまで(いや、今でもか?)「SELECTED AMBIENT WORKS」シリーズだ、みたいに言われてた(る?)んだけど、確かにそれらのアルバムも今聴いてもホントに素晴らしいし、その後のテクノ・シーンに大きな影響を与えたと思うんだけど‥‥個人的に一番好きなのが、実はこのアルバム前後‥‥つまりこの『RICHARD D. JAMES ALBUM』の前作にあたる『…I CARE BECAUSE YOU DO』(95年)以降のアルバムなんですよね。リスニング系というか音響系的なアンビエントものよりも、単純にこの「知的さとキチガイさとの紙一重」な感じが好きなんですね。もっと言っちゃえば、このアルバムで聴けるドリルンベース・サウンドや、そこに乗る美しいメロディであったり、所々に挿入されるオーケストレーションだったり、そういう「美」的なものと「汚物」的なものとを融合させた独自の音楽性が個人的にツボだったりするわけです。ま、このアルバムが好きって人は大体そういった点が好きだ、と言うと思うんですが。そして何よりも、俺がこのアルバムで初めてAPHEX TWINを知ったってのも大きいのかもしれませんね。しかも第一印象、今とは正反対でかなり悪かったんですけどね‥‥

アルバムがリリースされてから半年以上経った97年初夏。当時俺は仕事もしないでプー生活を送っていて、しかもほぼ引き篭もり気味な毎日。そんな中、ある1通のダイレクトメールが届きます。それが「FUJI ROCK FESTIVAL」初年度の告知。レッチリやレイジといった中にMAD CAPSULE MARKETSやGREEN DAY、WEEZER、FOO FIGHTERS、そして何故か当時LUNA SEAだったSUGIZOの名前もあったりして‥‥気づけば友人と共にチケットを申し込んでたんですね、プーにも関わらず。

で、その出演者の中にAPHEX TWINの名前もあったわけ。俺は名前しか知らなくて、一緒に行く予定だった友人がたまたまテクノ系強くて「これ、絶対に気に入るから聴いてみ」といって貸してくれたのが、この『RICHARD D. JAMES ALBUM』だったんですよ。んで、聴いてみるんですが‥‥何故か受け付けなかったんですね。同じく出演が決まっていたAPHEX TWINの盟友SQUAREPUSHERの方は一発で気に入ったのに‥‥今でも何故あの時受け付けなかったのか、正直判りません。

その後、APHEX TWINとはシングル『COME TO DADDY』や『WINDOWLICKER』といったシングルとの付き合いはあったものの、アルバムに手を出すのはもっと時間が経ってから‥‥多分00年頃だったかな。近所のCD屋のワゴンセールでこの『RICHARD D. JAMES ALBUM』が売られていたわけですね。で、何故か買ってしまったんですよ、聴いた当時は気に入らなかったくせして。300円だったから、ってのもあると思うんですが‥‥急にこのジャケットに惹かれてしまったんですね。そして、その内容すら全く覚えていなかった俺は、再びこのアルバムをプレイヤーに載せる訳ですが‥‥まんまとハマってしまうわけです。その後は上記の通り、一通りのアルバムを揃えるに至るわけです。当然、現時点での新作『DRUKQS』(01年)や、先日リリースされたリミックス・ワーク集『26 MIXES FOR CASH』(03年)も買いましたし、01年のエレクトラグライドや02年の朝霧JAMでもリチャードのDJプレイを生体験し、その訳判らなさに更に惹かれていったわけです。

しかし、俺が一番この人に興味を持った切っ掛けが、実は音そのもの以上に‥‥俺と同い年(1971年生まれ)という点だったということは、ここだけの話にしておいてくださいね?

再びアルバムの話に戻りますが‥‥正直、このアルバムでストレートに踊り狂うことは難しいと思うんですよ。踊り難いリズムパターン、所々分断されるリズム‥‥テクノというと規則的なビートがまずあって、そこにシンセのメロディやら何やらのウワモノが載るというイメージがあると思うんですが、そういう既成概念を覆すのがAPHEX TWINの音楽‥‥というか、既にAPHEX TWINというひとつのジャンルが出来上がってしまってると言っていいと思います。そしてそういったデタラメなリズムの上に載るウワモノ‥‥シンセのメロディだったり児童コーラスだったりオーケストレーションだったり‥‥の美しさ。その対比が常にこの人の中には存在する。「Peek 824545201」のような暴力的なリズムを持った曲の後に「Fingerbib」みたいな美しいメロディを持った曲が登場する、この辺りに惹かれるわけですよ。どっちか一方だけではダメなんですね。いや、そういう両極端なのも好きなんですが(ある意味、リチャードのDJプレイは極端過ぎですからね)‥‥とにかく、このアルバムを聴いて判断してもらうのが一番ですね。テクノのひとつの流れをまたしても作ってしまった重要作品ですからね(そしてその流れは、エレクトロニカと繋がっていくわけで)。

リチャードの曲に合わせてフロアで踊るのも好きなんですが‥‥やっぱりどうしても「ベッドルーム・テクノ」っていうイメージが強いですよね。密室で、ヘッドフォン使って聴く方がこのアルバムには合ってるんじゃないか、と‥‥そういう意味では、実はこの人のやってることって『SELECTED AMBIENT WORKS』シリーズ時代から一貫してるのかな?なんて思ったりして‥‥。



▼APHEX TWIN『RICHARD D. JAMES ALBUM』
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投稿: 2003 04 08 12:00 午前 [1996年の作品, Aphex Twin] | 固定リンク

2003/03/27

HONEYCRACK『PROZAIC』(1996)

現THE WiLDHEARTSのギタリスト/ボーカリストとして活躍しているCJ。彼は勿論初期のワイハーのメンバーでもあるわけですが、基本的に解散前のワイハーはジンジャーが全ての曲を書き、彼が中心となってバンドを突き動かしてきた、と言っても過言ではないでしょう。それくらい'90年代のワイハーはジンジャーのイメージが強いバンドだったわけです。が、今のワイハーはどうでしょう。ジンジャー、ダニー、スティディ、そしてCJ‥‥そのどれもが強いキャラクターと的確な演奏力、そしてミュージシャンとしてのアビリティを備えています。そして現在ではジンジャーのワンマンバンドというイメージは覆され、バンドとして作曲したり、ツインボーカル的な楽曲があったり等、それぞれのメンバーがバンドの外での活動で得てきたものを血と化し肉と化し、それをワイハーに貢献しているといえます。

現在のワイハーにて、ジンジャーの次にソングライティングの貢献度が高いのは、間違いなくCJでしょう。その彼がワイハー脱退('94年7月)後に結成したのが、今回紹介するHONEYCRACKというバンド。そのHONEYCRACKが存命中唯一リリースした公式アルバムが、この「PROZAIC」です。

同じくTHE WiLDHEARTSにキーボーディストとして参加した経験を持つウィリーを迎えたことによって、「元WiLDHEARTS組」というレッテルを貼られることも多かったと思うんですが、ワイハー時代はCJもウィリーもソングライティングには殆どタッチしていなかったので、ここで聴けるのは「ワイハーにいたメンバーが新たに作った全く別のバンド」といったタイプの音楽。勿論、所々には如何にも彼ららしいフレーズが出てくるし、ジンジャーが歌ったら面白いだろうなぁ‥‥と思える曲も見受けられますが、ここはちょっと視点を変えて話を進めていきたいと思います。

このアルバムがリリースされたのが'96年初夏。イギリスではブリットポップ・ムーブメントが下火になりつつある頃。HONEYCRACK自体は'95年6月にはシングルデビューしており、その直前にはWEEZERの英国ツアーにてサポートアクトを務めています。そう、このバンドはイギリスから登場したものの、そういったブリットポップという表現よりも、むしろWEEZER的なパワーポップという表現の方がしっくりくるのです。元々ワイハーにもそういった要素はあるわけですが、HONEYCRACKのそれはもっとシュガーコーティングされた、アクが強過ぎなくて耳に馴染みやすい色を持っています。ボーカルはCJとウィリーのツインボーカルが殆どで、ギターが3本も入っていながらうるさすぎず、それでいて軽すぎない。パンキッシュでザクザクしたヘヴィな側面も持ちつつ、バブルガムポップ的な甘さが全体を包む。ワイハーのガッツィーな路線が好みの人にはちょっと物足りないかもしれませんが、GREEN DAYやWEEZERといったバンド、そしてパワーポップといったキーワードにピクリときた人にはピンとくるアルバムでしょうね。

1曲1曲が非常にコンパクトで(その殆どの曲が2~3分)、パンキッシュでストレートな疾走ナンバーもあれば、ポップでいて複雑怪奇な展開をする曲まであるという点は、ワイハーに近いものを感じますが、あのバンドみたいにハードロックやモダンロックの色を感じさせるものではなく、どちらかというともっとパンキッシュな色が強いですね。ワイハーがそういったモダンなアレンジを取り入れつつも、実はかなり伝統的なサウンドを持った王道路線なのに、HONEYCRACKの方がもっと現代的でモダンなんですよ。例えばワイハーは「BURRN!」的だけど、HONEYCRACKはもっと「rockin'on」寄りというような感じ。何となく伝わるでしょうか?

常にハーモニーが綺麗なツインボーカルは後にCJが結成したTHE JELLYSでも引き継がれ、最近のワイハーでもその要素を用いています。CJがここまで歌えるギタリストだとは正直思ってもみなかったし(まぁあれだけ素晴らしいコーラスが取れたんだから、歌えて当たり前なんですけど)、更にウィリーもこれだけの実力を持ったシンガーだとは思ってもみなかったですよね。しかも、これだけ優れた楽曲を作れるだけの能力まで持っていたとは‥‥全てがワイハー時代にスタートしていたわけですが、あのバンドでは開花することはなく、その後こういう形でブレイクするとは‥‥皮肉なもんですね。

全英チャートでもそこそこの成功を果たし、アルバムリリース後には来日公演も果たしたにも関わらず、その後あっけなく解散してしまう辺りは、さすが元ワイハー一派というか‥‥解散後、ウィリーが未発表曲やデモを編集した企画盤をインディーズからリリースしていますが、基本的にはこのアルバム1枚と数枚のシングルをメジャーのエピックからしただけで、実質3年程度しか活動していない、ある意味幻のバンド。それがこのHONEYCRACKです。

とにかく、名曲中の名曲"Go Away"を聴いて涙してください。ワイハーでの "I Wanna Go Where The People Go" 、WEEZERの "Buddy Holy" や "Across The Sea"、"The Good Life" にも匹敵する程の、出色の出来ですから。更に"Sitting At Home"なんてGREEN DAYの "Basket Case" 級の名曲ですからね。勿論、その他の曲も全て素晴らしい、捨て曲なしの「パワーポップの名盤」ですからね(決して「ブリットポップの隠れた名盤」ではないでしょうね)。一時はブリットポップの文脈で語られることも多かったようですが、「ああ、その辺のバンドかぁ~」といって切り捨ててしまうと痛い目を見ますよ?

先にも書いたように、CJはこのバンドをポシャッた後に、同じく元WiLDHEARTSのドラマー、スティディらと共にTHE JELLYSというトリオバンドを結成し、オリジナルアルバム2枚とライヴ盤1枚をリリースした後に、再結成ワイハーに加わることとなります。で、その後の活躍は皆さんご存じの通り。CJのミュージシャンとしてのキャリアはワイハー以前からあるわけですが、真の意味でのスタート地点はこのアルバムからだった、と言っても間違いじゃないでしょうね。ま、スタートが一番大きなブレイクだったという、実に皮肉なオチまで付いて回りましたけどね。



▼HONEYCRACK『PROZAIC』
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投稿: 2003 03 27 04:43 午前 [1996年の作品, Honeycrack, Wildhearts, The] | 固定リンク

2003/02/05

Theピーズ『どこへも帰らない』(1996)

  '93年7月に4枚目のアルバム「とどめをハデにくれ」をリリースした後、ドラムのウガンダが脱退というアクシデントにより、その後思うような活動ができなくなってしまったピーズ。とりあえず'93年後半のツアーははるがエレアコ、アビさんがエレキという2人でのピーズで乗り切り、翌'94年にはサポートメンバーとして岩城新を迎え、再びトリオ編成でツアーを再開。この頃から各メンバーが別ユニットでのソロ活動(MTハピネス、SGS、ストリップティーズ等)も始めました。
  '95年には岩城に代わって坂巻聰(ザ・チャイナボウルズ)をサポートに迎えツアー。その合間に坂巻を加えた3人でレコーディング開始。8月には一時的にウガンダが復帰し、新たにベーシストにアキラ(ラフボーイズ)を迎えた4人編成でのピーズでツアー。しかしこのメンツはツアーのみで、その後10月にはthe pillowsのシンイチロウをドラムに迎えてレコーディング再開。しかし彼もレコーディングのみの参加で(その後、シンイチロウは復活に際してかなり重要な役回りを果たすわけですが)、12月になりようやく正式メンバーとして吉田武彦が加入。固定メンバーとなり、またレコード会社もそれまでのビクターからキングに移籍し、'96年3月に移籍第一弾、前作から2年8ヶ月振りとなる5作目「どこへも帰らない」が紆余曲折の後、ようやくリリースされたのでした(やけに長い前説になっちゃったな、これ)。

  アルバムリリース時は何とか固定メンバーになっていたものの、レコーディング時期ははるとアビさんのみ、ドラムに関しては流動的で、実際に坂巻が4曲、シンイチロウが残りの8曲に参加という変則的なレコーディングとなったのですが、これが逆にレコーディングに新鮮な空気を与えたのか、前作とは打って変わってかなりアッパーで攻撃的なサウンドになっています。ここまで直線的且つ攻撃的なナンバーは久し振りでは!?なオープニング"脳ミソ"でいきなりノックアウトされてしまうこと必至。続くシングルナンバー"底なし"もそれまでとは違ったテンションを持ち合わせているし、その後続く"どこへも帰らない"、"ザーメン"、"とどめをハデにくれ"、"負け犬"‥‥前作にあったシリアスさと初期の勢いが上手くミックスされ、尚かつ過去ない程のテンションを持ってこれらの楽曲が表現されています。

  勿論、前作に顕著だった楽曲至上主義も健在で、特にその最高峰といえるだろう"Hey君に何をあげよー"と"やっとハッピー"という名曲中の名曲も収められています。そういう意味ではピーズ史上、非常にバランス感覚に優れたアルバムなのではないでしょうか? 特に"Hey君に何をあげよー"における転調に次ぐ転調はかなり計算されたもので、その辺のB級ガレージバンドには真似できない表現力・技術だと思います。個人的にはこの辺りは、キャロルからソロへと流れる時期の矢沢永吉やRCサクセション全盛期の清志郎に匹敵するものを感じます。

  そして賞賛されるべきなのは作曲に関してだけではなく、その意味深でダブルミーニングを多く含んだ歌詞も同様なのです。前作で顕著になった自分と対峙したり、諦めてしまったりする傾向が更に強まり、それがハイテンションな演奏と上手く融合し、強烈な説得力とインパクトを我々に与えます。一見お約束のエロ路線にも取れる"ザーメン"にしろ、かなり深読みができるし、"底なし"、"とどめをハデにくれ"、"負け犬"の歌詞なんて‥‥曲調のせいでそこまで重く感じませんが、歌詞だけ読めば‥‥既に日記の域を超えてます。それはなかなか軌道に乗らず成功を収められないバンドに対する苛つきや諦めの表れなのかもしれないし、あるいは‥‥

  かと思えば"Hey君に何をあげよー"、"やっとハッピー"、"ハニー"みたいな曲もあるんだから、一筋縄でいかない‥‥この辺がはるらしさというか、ピーズらしさというか。こういう面に惹かれる人が多いってことですよね‥‥納得です(そして俺もそういった面に惹かれた一人ですし)。

  個人的には、このアルバムが一番好きなんですよね。それはサウンド面もそうだし、楽曲のスタイル的にもそうだし、歌詞の面でもそうなんだけど‥‥個人的に一番しっくりくるのがこの「どこへも帰らない」なんですよね。もしこのアルバムを'96年当時聴いていたら‥‥ここまでしっくりきたのかなぁ?なんて考えることもありますが‥‥逆に30歳を超えた今だったからよかったのかな?と最近では思うようになりました。勿論、今の10代、20代の子達が聴いても文句なしに共感できるアルバムだろうけど‥‥10代にしかできない感じ方、20代にしかできない感じ方があるように、30代の今しかできないような感じ方もあると思うんですよ。多分、はるがこのアルバムをリリースした頃って、今の俺と同い年くらいだったと思うんですよ(2002年12月14日で37歳だから‥‥リリース時は30歳か。ほぼ一緒だな)。だからこそ共感できるっていう部分がかなりあるんですよね‥‥これとか「リハビリ中断」って(共感できすぎるからこそ、逆に痛々しくもあるんですが)。

  約3年振りにアルバムをリリース、さてこれから‥‥って時なのに、まだまだバンドには不運が続きます。そしてピーズ、そしてはるは、いよいよ混迷の時へと突入していくのでした‥‥



▼Theピーズ『どこへも帰らない』
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投稿: 2003 02 05 03:47 午前 [1996年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

2002/04/05

NIRVANA『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』(1996)

カート・コバーンの死後2年半経ってようやくリリースされたのが、このライヴアルバム。これまでもNIRVANAのライヴ音源はシングルのカップリングとして数曲、そして死後発表されたアンプラグド盤等があったわけだが、まるまる1枚バンド形態でのライヴというのは、今のところこれが最初で最後の作品となっている。そういう意味では初来日を体験した者にとってはあの衝撃を思い出すのにいいサンプルとなるし、結局実現しなかったサードアルバムでの来日公演を疑似体験したり、あるいは彼等を知った時には既に存在しなかったという新参者にとってもその凄みを体験するのにいい内容になっていると思う。

録音は1本のライヴをまるまる収録したものではなく、古いものは'89年12月の音源から、最新のものは'94年1月5日‥‥亡くなる3ヶ月前の音源まで、幅広く収録されている。楽曲もメジャーデビュー後の2枚(「NEVERMIND」、「IN UTERO」)からの曲がメインとなっているが、要所要所でファースト「BLEACH」やその前後のシングル曲が登場する辺りに、実際のライヴ・セットリストと同じような流れを感じる。これは編集に参加したベースのクリス・ノヴォゼリックのアイデアだったのだろう。だからこそ、頭の方で最大のヒット曲となってしまった "Smells Like Teen Spirit" が早々と登場してしまうし、最後はファーストアルバムのトップを飾った "Blew" で終わる。ありがちなロックバンドだったら、最大のヒット曲は最後の最後に取っておくだろうし、ライヴの一番盛り上がるエンディングにインディーズ時代の曲なんて持ってこないだろう。まぁそういう姿勢こそがNIRVANAが支持された要因のひとつだったのだろう(俺は別にその辺は拘らないが)。

サブタイトル通り、俺は結局一度も彼等のライヴに足を運ぶことが出来なかった。チケットは確保出来ていたのだ、クラブチッタでの公演のものを。しかし、チケットを確保した数日後に、彼等の来日時期('92年2月)に俺は日本にいない事が決まったのだった‥‥結局、「次があるさ」と素直に諦めて友人にチケットを譲ったのだった。その時は「NIRVANAはまた観れるだろうけど、間違いなくイギリスやドイツに行く機会は二度あるか判らない」と思い、素直に英国短期留学を選んだのだが‥‥世の中には「絶対」なんてことはあり得ないということを、その2年後に嫌と言うほど味わった。まさかあんなことになるなんて、誰に想像できる!?

そういう事があったから、それ以後シングルやブートで彼等のライヴ音源に接すると、嫌な気分になったりしたもんだった‥‥所謂トラウマだったのだろうか? しかし、死後半年経って発表されたアンプラグド盤を聴く頃には気持ちの整理もつき、素直に楽しむことが出来るようになっていた(変に湿っぽくなることもなく、だ)。そしてそれから2年経ってから我々の元へ届けられたのが、このライヴ盤だったというわけだ。

NIRVANAのライヴの魅力は俺が言葉で説明するよりも、実際に音を聴いてもらった方が判りやすいと思うし、その方が一番説得力があるだろう。「それじゃあ書いてる意味ないじゃん?」と思われるだろうが‥‥俺が今回言いたかったのは‥‥俺はこのアルバム最大の魅力は、52秒に渡る冒頭のイントロでの、カートの生々しいまでの叫びだと思っている。アンプラグドのところでも書いたが、俺は結局カートの声に惹かれたようなものなのだ。だからこそ、その彼が身体の底から絞り出すようにシャウトするあのイントロこそが、俺にとってはこのアルバムの「全て」だったりする。日本のAIRがそのデビューアルバムの冒頭でこれに似たようなことをやっていたが、そもそも根本的にコンセプトが違うのだがら追いつくわけがない(てゆうか、比べる事自体が間違っているのだが。ちなみに俺は車谷を貶しているわけではない。NIRVANAもAIRも大好きなのだから)。

NIRVANAはカート・コバーンという「才能」と「カリスマ性」、クリスとデイヴ・グロールの強靱なリズム隊、そしてあの「声」があったから最強だったのだ。この声がなかったなら、きっと俺にとってNIRVANAは特別な存在にはならなかっただろう。

この文を読んで、久し振りにNIRVANAを聴いてみようかなぁと思ったそこのあなた。是非これまで聴いてきた中で最大級のボリュームで聴いてみて欲しい。もし深夜で近所迷惑だというのなら、ヘッドフォンを付けて割れんばかりの爆音で聴いて欲しい。このライヴ盤でのカートの歌は、そしてNIRVANAのライヴはそうやって消費されるべきだと思うから。



▼NIRVANA『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』
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投稿: 2002 04 05 02:23 午前 [1996年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2001/06/05

MANIC STREET PREACHERS『EVERYTHING MUST GO』(1996)

1995年2月1日、リッチー・エドワーズはウエスト・ロンドンにある滞在先のホテルから突然姿を消した。それによって残されたジェームズ、ニッキー、ショーンの3人は、マニックスとしての活動を休止せざるを得なかった。3人は捜索にも協力するものの、「バンドのメンバー」としてではなく、「ひとりの友人」としてリッチーを待ち続けた。しかし、結果はご存じの通り。3人は再びMANIC STREET PREACHERSの活動を再開させることを迫られる。バンドはまずチャリティーアルバム「HELP」に、バート・バカラックの名曲"Raindrops Keep Falling On My Head"を提供。3人マニックスとしての、正真正銘の初レコーディング曲は、意外なことにカヴァー曲であった。そして1995年暮れと1996年春に、彼らはSTONE ROSESとOASISのオープニングアクトとして再び観衆の前に姿を現した。そこには「THE HOLY BIBLE」の頃のような尖った印象はなく、極力感情を排除し、ひたすら演奏に集中する3人の男の姿があるのみだった。

そして程なくリリースされたのが、この通算4作目、3人となってからは初めてのアルバムとなる、「EVERYTHING MUST GO」である。象徴的なタイトルからも判る通り、彼らは前進することを選んだのだ。アルバムからの先行シングルとして発表された"A Design For Life"は大歓迎され、全英チャート第2位を記録、(当時の時点で)過去最高のヒット曲となり、その後のマニックスの代表曲として認識されるだけにとどまらず、この年のイギリスを代表するヒット曲となったのだ。当然のようにアルバムは1位を記録し(勿論、彼らにとって初のトップだ)、その後"Everything Must Go", "Kevin Carter", "Australia"と次々にトップ20ヒットを連発する。「ブリットポップ以後」を象徴する1枚といっていいだろう。

叙情的なハープとアコギの音に導かれてスタートする"Elvis Impersonator : Blackpool Pier"。途中から力強いサウンドを聴かせるものの、やはりメインになるのは叙情性。続くシングル"A Design For Life"にしろ"Kevin Carter"にしろ、そこには必要以上に盛り上げようとする「意図」を感じる。何故「意図」的に、リッチーを欠いた後の1枚目にこういう装飾が必要だったのだろうか? 今でも時々疑問に思う。これはプロデューサーに起用したマイク・ヘッジスが得意とする手法だったから、単純にそれだけの理由かもしれないが。勿論、楽曲はファーストやセカンド辺りにあったメロディアスな曲を、更に一歩押し進めたようなものなのだが‥‥当時はどうしても違和感を感じざるを得なかった。

今でこそこのアルバムは楽しんで聴けるが、実は当時何度も聴いたという記憶がない。つまらないアルバムではなかったが、前作までのイメージとかけ離れていたのも原因だろうし、「リッチーがいないのに、果たしてこれをマニックスの純然たる新譜と呼べるのか?」なんて疑問があったのも確かだ。今思えば馬鹿馬鹿しい話だが、当時はポップになった(いや、彼らは初めからポップだったのだ)"A Design For Life" のシングルを買った時点で不安が高まり、「アルバム、大丈夫か?」とドキドキする毎日を送っていた程だ。

1年程経ち、俺も成長したのか、偶然耳にした"Everythig Must Go" を聴いて「おぉ、いい曲だねぇ。マニックスの新曲か?」なんて言ってたら、友人に「アホ!アルバムに入っとるやんけ!」と突っ込みを入れられた。その位、ちゃんと聴いてなかったのだ。当然家に帰ってすぐにアルバム聴き返した‥‥いい曲が沢山詰まった、純粋にいいアルバムだなぁ、というのがその時の感想。以後、数ヶ月においてへヴィ・ローテーションになったのは言うまでもない。その位、初期からマニックスを追っている人間にとって、このアルバムは衝撃的であり、ある種「踏み絵」のような存在だったのだ。

しかし、このアルバム以降しか知らないような方々にとっては、これも間違いなくマニックスなのだ。しかも現在では、こういう音こそがマニックスの本流というような捉え方さえもされている。勿論、こういうメロディアスでポップな音楽性はマニックスが本来持っているものなので、決して間違ってはいないのだが‥‥

後々になってメンバーが語ったところによると、「EVERYTHING MUST GO」という前向きなタイトルをつけてはいるものの、当時のメンバーはやはりどこか消極的な、それでいて周りに対しての猜疑心が強かったようだ。それまでの「4人vs世界」という立ち位置はリッチーという「象徴」を失うことによって変化し、それ以前と対局にある「国民的バンド」という歓迎を受ける。その違和感は常に残り、更に残された3人を疑心暗鬼にさせたという。大ヒットしたものの、やはりその代償は大きかったといえるだろう。

が、そういう不信感とは別に、やはりこのアルバムは優れている。アルバムの流れも素晴らしいし、それまでシングルのカップリングでは披露してきたジェームズの弾き語り的ナンバーもあるし、初期を思わせるパワフルなロックチューンもあるし、そして最後の最後に登場する感動的名曲"No Surface All Feeling"。この曲なくして「EVERYTHING MUST GO」は語れないだろう。比較的シングルナンバーに代表曲が偏りつつあるが、現在でもライヴで演奏されていることからも、この曲に対してバンドが自信を持っていることが伺えるのではないだろうか? 楽曲単体の完成度も素晴らしいが、アルバムとしても素晴らしい。多少の疑問は確かにあるが、それをも超越する普遍性を持った、正に'90年代後半を代表するロックアルバムだと断言できる。



▼MANIC STREET PREACHERS『EVERYTHING MUST GO』
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投稿: 2001 06 05 10:04 午後 [1996年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2001/05/28

WEEZER『PINKERTON』(1996)

1stが予想以上の大ヒット(アメリカだけで200万枚以上)を記録し、波に乗ったバンドはセカンドアルバムの制作に突入。そしてアメリカでは約2年振り、ここ日本ではファーストから1年ちょっとしてから発表されたのが、この「PINKERTON」。ファーストと製作陣を一新し、プロデュースにはバンド自身が当たり、ミックスに当時売り出し中だったJACK JOSEPH PUIG(JELLYFISHや後にLUNA SEAのベーシスト、Jのソロアルバムをプロデュースする)を起用と、成功におごることなく完全に新たな気持ちで制作に挑んだ意欲作だ。

個人的な話になるが、前作のノリが肌に合わなかったため、それ程期待していなかったのだが、このアルバムを初めて視聴した時にはビックリした。背中に変な汗かきそうになったもん‥‥34分があっという間で、結局アルバム最後まで視聴してしまうという暴挙に出てしまい、結局買うはめに。更に、このアルバムで初来日を果たしたこともあって、思い入れの面では一番かもしれない。チケット、持っていたものの、仕事の都合で行けなかったんだよなぁ‥‥嗚呼‥‥

音を聴いてもらえば判るように、ファーストよりも無骨なヘヴィサウンド、そして時にヒステリックに、時に囁くように唄うリバース、より自由自在に暴れ回る楽器陣。ファーストの成功が如何に彼らに自信を与えたかが伺える。

とにかく、ファーストが個人的には「ヘロヘロ」したイメージで、悪い第一印象を受けていたので、最初にこのアルバムを聴いた時は、思わず握り拳を作ってガッツポーズしてしまった。1曲目"Tired Of Sex"の、イントロのシンバル~ドラム~ぶっといベース~ギター爆発という、パワーポップというよりはむしろHM/HR的な楽曲構成やアレンジに、彼らのルーツを垣間見る事ができる。そういえば、リバースは当時のインタビューで「最初はMOTLEY CRUEみたいなバンドをやっていて、そこからギターロック/パワーポップやガレージ系に流れていった」と発言している。ファーストのブックレットの中にもQUIET RIOT(しかもランディ・ローズ在籍時!)の写真があったり、ロゴマークがVAN HALENのパクリだったりと、その片鱗はこれまでも伺わせていたのだが、ここまであからさまに表現したことに俺は嬉しくなったりしたもんだ、当時は。この頃は「メタル」と口にするだけで非難されるような時代だったので、第一線にいるアーティスト達が「'80年代のLAメタルから影響を受けた」と発言するたびに、目頭が熱くなった。

全体的にこういったヘヴィサウンドで構成されているのだが、勿論そこはWEEZER、歌メロは前作以上に起伏のあるポップなメロディーラインを持っている。個人的には頭2曲にノリのいいヘヴィチューンを持ってきて、3曲目"No Other One"から畳み掛けるようなヘヴィ&スウィートな楽曲が続く流れに悶絶したもんだ(当然、これを書いている今もこのアルバムを聴いているのだが、やっぱりいつ聴いても痺れてしまう)。

歌詞の面ではリバースのごく個人的な、すごくプライベートなことを唄っている。残念ながら俺が持っているのは輸入盤なので、対訳はもちろん、歌詞カードも付いていないので、その歌詞を理解することができない。当時のインタビューでその辺のことを沢山語っていたな、と記憶している程度で、実際の内容は判らない。まぁ曲名を見ただけでも、その辺のことは何となく理解できそうな気もしないでもないが‥‥

前作での大成功とは裏腹に、このアルバムはヒットには恵まれなかった。ファーストとは違った作風だったためか、前作では大プッシュしたMTVも今回はプロモーションに消極的で、ラジオヒットにも恵まれなかった。最終的には50万枚以上もの売り上げを記録したものの、ツアーはファースト時よりも小規模、短期間で終了した。その後、バンドはレコード会社の吸収合併問題に巻き込まれ、契約を切られたとか再契約したとか、噂だけが先行してファンを心配させた。更にリバースはバンド活動を休止させ、ハーバード大学へと復学、ベースのマット・シャープはソロ活動の場だったRENTALSに本腰を入れるために脱退と、「このままWEEZERは解散してしまうのか‥‥!?」てな感じでファンをがっかりさせたのだった。

しかし、どういうわけか、新譜を出さないもののバンドの人気は(特にここ日本では)変わらぬまま、復活を望む声が絶えないどころか、噂が噂を呼んで新しいファンまでもを獲得していくのであった。



▼WEEZER『PINKERTON』
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投稿: 2001 05 28 05:52 午後 [1996年の作品, Weezer] | 固定リンク

2001/05/06

Cocko『Cocko』(1996)

  '96年11月にタワーレコード内のbounceレーベルより「Cocko」名義でリリースされた、唯一のインディーズ盤シングル。収録曲は後にメジャーファーストアルバムにも収録される事になる"首。"、"眠れる森の王子様~春・夏・秋・冬~"、"SING A SONG ~NO MUSIC, NO LIFE~"の3曲。プロデュースには元スパイラル・ライフ、現スクーデリア・エレクトロの石田小吉が当たっている。

  このシングルには2種類のジャケットが存在し、ひとつはbounceレーベルより発表された国内盤。ピンクをあしらったものだ。そしてもうひとつが右の白黒写真を使用した、海外レーベルからリリースされた盤。曲順も若干変わっていて、国内盤は先の順番通りだが、輸入盤は1曲目と3曲目が入れ替わっている。勿論、曲のバージョンや内容は全く一緒だ。

  石田がプロデュースという事もあってか、若干打ち込みに比重が置かれたバックトラックとなっているが、基本的な構成はメジャーで発表された再レコーディングバージョンとほぼ一緒だ。特に"眠れる森の王子様~春・夏・秋・冬~"などは全くといっていい程そのままだ(メジャー盤でもこの曲のみ石田プロデュースのままなので、恐らく若干の手直しをしたのみで、そのまま音源を使用したのでは?)

  Coccoの歌も若干危うさを感じさせる歌唱だが(特に"首。")、既に貫禄に近いものも漂っている。このシングルを聴いたのはファーストアルバムを聴いた後だったが、もし先にこっちを聴いていたとしても、彼女に対する印象は変わらなかったはずだ。インディーズでも、そしてメジャーファーストアルバムでも、この印象的且つ強烈な"首。"からスタートする。既にここで彼女のイメージが完成してしまったと言っても過言ではない。

  ちなみにこのシングル。国内盤及び外盤共に廃盤だ。某オークションでは1万以上で取引されているが、楽曲自体はファーストにも入っているものなので、マニア以外は手を出さなくてもいいと思う。



▼Cocko『Cocko』
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投稿: 2001 05 06 01:09 午前 [1996年の作品, Cocco] | 固定リンク

2000/12/26

LUNA SEA『STYLE』(1996)

  大成功を収めた前作から1年半後に発表された通算5作目。この間には先行シングルという形で"Desire"と"End Of Sorrow"をリリースし、共に1位を記録している。更にはライヴバンドの頂点ともいえる会場、東京ドームでのライヴも実現した('95年12月23日)。そういう状況を通過して作られたこのアルバムは、そのテンションを見事に詰め込んだ傑作だ。幸か不幸か、バンドの最高に輝いた瞬間を完全密封してしまっている。'90年代の日本のロック史を語るときに、決して外す事の出来ない素晴らしいロックアルバムなのだ。ここでの彼らは、既にヴィジュアル系だとかそういう枠では括れないレベルにまで達してしまったのだ。

  アルバムはインダストリアル・ノイズ混じりのバラード"With Love"からスタートする。前作では「Loveless」と唄い「愛が欲しい」と叫んだ男達が選んだ第一声、それは「せめて抱き締めて/思いが届いたなら」だったというのが、なんだか劇的じゃないか? この美しい曲を覆うノイズの嵐。これが当時のLUNA SEAというバンドの状態を端的に表しているように感じた。続く"G."の「G」とは「God=神」の事だ。「罪深き二人なら/愛し合える」事を神に許しを請う。そんな二人の激しさを表現するビートが胸に突き刺さる。そして次の"Hurt"では「満たされないなら/壊してしまえ/すべてを」「たとえすべて/失っても」と唄う。それにしてもこの頭3曲は、前作での成功がいい方向に作用した名曲ではないだろうか?

  4曲目"Ra-Se-N"では、新境地である変拍子(5/4拍子)に挑戦している。テクニカルで難解な曲も彼らにとってはお手の物だ。続く"Luv U"も新しい要素を含でいて、ブラックテイストなベースラインが印象的な佳曲だ。そして「アルバムのへそ」には10分を越える大作"Forever & Ever"が。当時のツアーでのラストに演奏されていた事でも、そして活動休止前の最後の曲としても知られている人気曲。J作曲らしいが、中間部でのJの英詩が素晴らしい。ふと、彼が口にする「俺とおまえたちは永遠だ」という台詞を思い出した。この文章がアップされる頃には、本当にLUNA SEAというバンドはその活動を停止させる。この曲で唄われているように「このメロディーは/きっと永遠さ」‥‥そう、21世紀だろうが何だろうが、永遠なのだ。

  後半は怒濤の攻勢に出る。いかにもLUNA SEAな"1999"、2大ヒット曲"Desire"、"End Of Sorrow"、後にシングルカットされる異色ポップナンバー"In Silence"へと流れる。特にこの曲、過去の彼らと今現在の彼らとを繋ぐ橋渡し的存在だと思うのだが、如何だろうか? 最近はライヴで披露される機会がないようだが、是非最後にまた唄って欲しいと思う。

  最後の最後はこれまた異色のレゲエナンバー"Selves"で終わる。彼らは最後の最後に「時代に刻まれた愛を/伝えたい/ぬくもりが/消えないように/いつまでも/この熱を/いつまでも」と唄う。彼らの愛は実り、そしてその愛は永遠だという。まさに「俺とおまえたちは永遠だ」の言葉通りに‥‥。

  音楽的には何も言うことはない。前作の延長以上のものを作ってしまったのだ。彼らは産みの苦しみを嫌という程味わったはずなのだ。しかし実際に出来上がった作品は、そんなプレッシャーをもはね返す輝きを持っていた。しかし、その輝きが強すぎた為に彼らはその後、自分達自身と戦う事になるのだった。1996年12月23日、横浜スタジアム「真冬の野外」という特殊な舞台で、彼らは1年間の期限付き活動休止を宣言する。もっと大きくなる為に、もっと輝く為に。



▼LUNA SEA『STYLE』
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投稿: 2000 12 26 01:00 午前 [1996年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/07/27

THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES (East West Version)』(1996)

「FISHING FOR MORE LUCKIES」の発売を阻止したジンジャー達は、このアルバム収録曲に'96年に入って新たに録音された新曲6曲を足し、既にシングルで発表された2曲を除いた4曲のオリジナル・バージョン収録曲との合計10曲で、完全なるアルバムとして再リリースすることとなった。それが現在右のジャケットで流通しているバージョンだ。収録曲は


01. Inglorious
02. Sick Of Drugs
03. Red Light - Green Light
04. Schitzophonic
05. Soul Searching On The Planet Earth (Different Kind Of Love)
06. Do The Channel Bop
07. Mood Swing & Roundabouts
08. In Like Flynn
09. Sky Babies
10. Nite Songs


の10曲が英国盤のオリジナル。日本盤はそこに


11. Weekend 96
12. 29x The Pain (Richy James Version)
13. Beautiful Me...Beautiful You
14. Caffeine Bomb


の4曲がボーナストラックとして追加収録された形。既にシングルとして発表されていたM-14以外の3曲は新たにレコーディングされたものらしく、特にM-11とM-12はこのために再録音されたものである。

このアルバムから"Sick Of Drugs"と"Red Light - Green Light"がシングルカットされていて、前者には「FISHING FOR MORE LUCKIES」に収録されていた"Underkill"が再収録されている(バージョン違いということらしいが、聴いた限りではその違いは判らない)。また後者もシングルカットに際してリミックスされている。

俺は最初"Sick Of Drugs"をシングルで聴いた時、がっかりした。何か、とうとうWiLDHEARTSもセルフ・パロディをするようになってしまったか、と。「ワイハーの王道パターン健在!」てなポップで当時レコード店に並んだこのシングルに対して、「王道パターンとか言うようになったら、過去の焼き直しをしてるってことだろ?」とひねくれた答えを返した俺。当時のパンクシーン(GREEN DAYだとかOFFSPRINGとか)が大嫌いだった俺は、このアメリカンな音に拒否反応をを起こしたのだった。そしてアルバムを聴くと更にもう1曲、同じパターンの曲が‥‥何か、ストレート過ぎるんだよね、彼等がやるには。勿論いい曲なんだけど、いまいちハマれなかった(最近はそうでもないけど)。ライヴでも盛り上がるこの2曲だけど、まぁ"Sick Of Drugs"はチャート上で最も成功した曲だから、ライヴでやらないわけないしなぁ(その後インタビューでジンジャー自身もこのセルフ・パロディについて認めていた。けど、その後の来日公演では必ずやっているのもこの曲/笑)。じゃあライヴでは冷めてるのか?いや、それどころじゃないから。彼等のライヴではいつも最前列近くで、自分の身を守るので精一杯だから。(爆)

オリジナル・フル・アルバムとしてはカウントされない、コンピレーション盤となるわけだが、意外と俺はこのアルバムが好きで、頻繁に引っ張り出して聴いている。というか、「P.H.U.Q.」を中心とした一連の作品群には、はっきりいってハズレはないから。バンド内は解散か存続 かで揺れていた不安定な時期だけど、音楽的には最も充実した、まさにジンジャーの才能が開花した時期なんじゃないだろうか? 今だからこそ、改めてそう思う。



▼THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』
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投稿: 2000 07 27 06:21 午後 [1996年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2000/03/27

THUNDER『THE THRILL OF IT ALL』(1996)

EMIからドロップしたTHUNDERが再契約したのは、メジャーレーベルではなくインディーズだった。当時の状況を考えるとそれが如何に困難な事か理解してもらえると思う。その年どういうアーティストが登場し、どういうアルバムがヒットしていたかを‥‥そんな中、彼らはヨーロッパではRAW POWERというインディーレーベル、日本ではビクターに移籍して'96年9月というハイペースで(3rdは'95年1月、ベストが同年9月)リリースされたのが、このアルバム。(但し英国では'97年1月リリース)この辺から彼らのやる気が伺える。プロデュースにはいよいよルークのみのクレジット。シングルは"Don't Wait Up"と"Love Worth Dying For"の2曲。ただでさえそういう時代(ブリットポップの終焉とテクノの台頭)なのに、マイナーレーベルからのリリースという事で、ヒットには至らなかった。

メジャーからの最後のアルバムとなったベスト盤に収録された"Once In A Lifetime"がそれまでの楽曲より落ち着いた、都会的な大人のイメージだった事からある程度新作を勝手にイメージしていたが、実際に出来上がったものは‥‥確かにそういう楽曲もあるが‥‥思っていたよりも従来の路線だった。どことなく"Higher Ground"を彷彿とさせる佳曲"Pilot Of My Dreams"からアルバムはスタートする。シンガロングを念頭に置いて作られたコーラスパートが印象的で、ライヴでも人気がある曲だ。こんな感じで、1stや3rdでの代表的ナンバーをなぞった曲が多い事から「それまでの延長線上作品」と捉えられている。事実、オリジナル盤の中では一番影が薄いアルバムだと感じているファンも多い。それでもこの手のバンドの中ではトップクラスなのだが。(焼き直しだろうが何だろうが、このレベルの楽曲を書ける若手がどれだけいる?)

印象的なのは、2曲目の"Living For Today"。イントロのかき鳴らされたアコギに続く聴き慣れない歌声‥‥ライヴでコーラスの要となる、ルークがVo.を取っている貴重なナンバーだ。後半にはダニーとハーモニーをとりながら唄っている。ドラムのビートをとってみても、それまであったようでなかったパターンで、なかなか面白い曲だと思う。更にこのアルバムでは2nd以降増してきたブラック/ファンク度がいよいよ色濃くなっている。象徴的なのが"Hotter Than The Sun"だろう。先に挙げた都会的雰囲気と従来の伝統的要素が上手く噛み合った好例だと思う。それにしてもこの曲、このアルバムのツアーでしか披露されなかったのが惜しい。個人的願望だが、是非この曲をポール・ロジャースにカヴァーして欲しい。このまま葬り去られてしまうには勿体ない。

そういえば、このアルバムのツアーからライヴの1曲目はずっと”Welcome To The Party"だったな‥‥それまでは"Backstreet Symphony"だったり"Dirty Love"だったりと、いろいろヴァリエーションがあったのだけど‥‥変な意味で予定調和の定番になってしまったな? 悪い曲ではないものの、それ程いい曲だとも思わない‥‥まぁライヴを盛り上げるにはうってつけなのだが‥‥ただ、当時何となく「これじゃダメだわ‥‥」と思ったのも事実。何が「ダメ」だと思ったのか‥‥それは各自が聴いて考えるように(苦笑)。



▼THUNDER『THE THRILL OF IT ALL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 03 27 02:10 午後 [1996年の作品, Thunder] | 固定リンク