カテゴリー「1996年の作品」の51件の記事

2020年6月19日 (金)

CORROSION OF CONFORMITY『WISEBLOOD』(1996)

1996年10月リリースの、CORROSION OF CONFORMITYの5thアルバム。日本盤は1ヶ月前倒しの同年9月に発売されています。

もともとはハードコアやスラッシュメタルをベースにしたクロスオーバー・サウンドが武器のバンドでしたが、ペッパー・キーナン(Vo, G)加入以降は徐々にサウンドを土着的なストーナーロック路線へとシフト。今作ではついにハードコアの要素がほぼ払拭され、埃臭いハードロックを全編にわたり展開しています。

サザンロックとストーナーロック/スラッジメタルをミックスさせたスタイルのバンドは、今でこそ数多く存在しますが、本作はそれまでアングラだったそのスタイルをメジャーシーンで一般化させるために一役買った、非常に重要な1枚だと捉えています。もっとも、そのスタイルが以降のメジャーシーンでそこまで浸透しなかったので、表立った重要さは伝わらないかもしれません。が、この時期にMETALLICA『LOAD』(1996年)『RELOAD』(1997年)というアルバムでこの手のスタイルに果敢に挑んでいたことを考えると、その重要さはなんとなく伝わるのではないでしょうか。

実は本作、そのMETALLICAからジェームズ・ヘットフィールド(Vo, G)が「Man Or Ash」という楽曲にゲスト参加しています。しかし、契約の関係上、アルバムには一切クレジットされていません。それでも聴けばジェームズだと一瞬でわかる、豪快で男臭い歌声はさすがの一言。そういえば、のちにペッパー・キーナンはMETALLICAのベーシスト・オーディションにも呼ばれましたよね。そのへんのつながりを考えると、また見え方/聴こえ方も変わってくるんじゃないかな。

BLACK SABBATHをサザンロック的に表現するとなると、それこそのちにザック・ワイルドBLACK LABEL SOCIETYで実践していることとも重なりますが、意外とこのあたりのことをもっともわかりやすい形で届けてくれたのがこの『WISEBLOOD』だったと。当時はそんなこと微塵も考えずに、ただひたすら気持ちよく楽しめるハードロックアルバムとして接していましたが、実はそれくらい難しいことを考えずに楽しむのが一番なのかな。

後半から終盤にかけて「The Door」や「Wiseblood (Some Tomorrow)」のようなシャッフルビートの曲があったり、「Fuel」のような過去のハードコア路線を彷彿とさせるパンキッシュなナンバーもありますが、基本的にはヘヴィかつスローな楽曲が大半を占めます。全13曲、60分近くにわたりこの手のサウンドが続くと飽きがくるのでは?と若干不安になるものの、演奏面でのメリハリの付け方が功を奏し、意外と最後までスルスル聴き進められるのも本作の魅力。C.O.C.本来の“らしさ”という点ではかなり希薄な1枚かもしれませんが、それでも嫌いになれない、いやだからこそ大切に扱いたい名作だと個人的には思っています。

 


▼CORROSION OF CONFORMITY『WISEBLOOD』
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2020年4月19日 (日)

VAN HALEN『BEST OF VOLUME 1』(1996)

1996年10月にリリースされた、VAN HALEN初のベストアルバム。

デビューアルバム『VAN HALEN』(1978年)から直近の最新オリジナルアルバム『BALANCE』(1995年)までの10作から、厳選されたヒットシングルの数々とアルバム未収録のサントラ提供曲、そしてデヴィッド・リー・ロスと12年ぶりに制作した新曲2曲を含む全17曲で構成。「なんであの曲がないの?」とツッコミたく気持ちを抑えつつ、CD1枚に収めるならこれがベストかな?というコンパクトな1枚に仕上がっています。

デビュー作収録の衝撃的なインスト「Eruption」からスタートする構成は素晴らしいと思うのですが、本来ならそこに続くはずの「You Really Got Me」は未収録で、代わりに「Ain't Talkin' 'Bout Love」が並ぶという選曲には当時ひっくり返ったものですが、おそらくオリジナル曲にこだわった結果こういう選曲になったんでしょうね。なので、カバー曲ばかりがシングルカットされた5thアルバム『DIVER DOWN』(1982年)からは1曲もセレクトされておらず。そういった点では若干消化不良気味かもしれません。

また、基本的に各アルバムから代表的ヒット曲を1曲セレクトしている形ですが、アルバム自体がバカ売れした作品からは複数ピックアップしているのも、まあ納得の範疇。ちなみに『VAN HALEN』(「Eruption」含め3曲)、『1984』(1984年/「Jump」と「Panama」。日本盤はボートラとして「Hot For Teacher」追加の3曲)、『5150』(1986年/「Why Can't This Be Love」「Dreams」)、『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年/「Poundcake」「Right Now」)の4作品がそれで、デイヴ時代とサミー・ヘイガー時代半々といったところでしょうか(選曲的にはトータルでデイヴ歌唱曲が多めですけどね)。

気になる初収録曲3曲についても。サミー在籍時最後の楽曲となった「Humans Being」は映画『ツイスター』提供曲。1996年前半にシングルリリースもされましたが、楽曲としては『BALANCE』からの流れを組むモノトーンなヘヴィ路線。サビ以外はパッとしない印象で、アルバムの中に入っていたら“流して”しまいそうな1曲かもしれません。

で、デイヴが参加した新録2曲もその傾向が強い“普通の曲”。「Can't Get This Stuff No More」は初期デイヴ参加作にありそうなノリですが、5分以上もあると間延びした感が否めず。「Me Wise Magic」は序盤の低音ボーカルに違和感を覚えますが、サビでの“開ける”感はさすがかなと。「第1期VAN HALEN復活!」と過剰に期待しすぎたせいか、その期待を裏切られた感は否めません。とはいえ、彼らのヒット曲を手軽に楽しみたいという点においては、本作は非常に重宝する1枚ではないかと思います。入門編としても最適ですしね。

タイトルにあるとおり、本来ならこのあと『VOLUME 2』も計画していたんでしょうけど、ご存知のとおりバンドは本作のあとにオリジナルアルバムを2枚しか発表していませんし、ヒット曲にも恵まれず。結果、別の形でベストアルバムを制作することになるのでした。

 


▼VAN HALEN『BEST OF VOLUME 1』
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2019年10月 4日 (金)

SUEDE『COMING UP』(1996)

1996年9月にリリースされた、SUEDE通算3作目のオリジナルアルバム。

前作『DOG MAN STAR』(1994年)完成直前にバーナード・バトラー(G)が脱退し、同作のツアーには当時若干18歳のリチャード・オークスを起用。そのまま正式加入すると、バンドは新たにニール・コドリング(Key)を加えた5人編成でレコーディングに突入。過去2作を手がけたエド・ビューラーを迎えて完成されたのが、このキャリア最大ヒット作となった3rdアルバムです。

本作からは先行シングル「Trash」がまず全英3位と過去最高位を記録。これを受けて、アルバムもデビュー作『SUEDE』(1993年)に続く2作目の全英1位を獲得しました。その後も「Beautiful Ones」(同8位)、「Saturday Night」(同6位)、「Lazy」(同9位)、「Filmstar」(同9位)と計5曲ものTOP10ヒットを生み出し、アルバム自体もキャリア初となるプラチナムに認定されました。

過去2作にあったダークさや、淫らで危うい影の部分が払拭された本作は、突き抜け感がハンパなく、まばゆいほどの光を放っているポジティブな1枚。〈We're the trash you and me〉と歌われるリード曲「Trash」は、このフレーズを筆頭に歌われている内容は過去2作を踏襲したものと言えますが、今作ではそのネガティブさを肯定し、受け入れ、それでも前に進もうとするポジティブさが伝わってきます。

つまり、精神性は何ら変わっていないのに、それらを表現する手段がマニアックなものからポピュラリティの高いものへとシフトしたことで、それまで見向きもしなかった人までもを巻き込むことに成功した。これが彼らの大ブレイクの理由だったのかなと。確かにリリース当時、初期のいなたさを愛好するバーナード派からはそっぽを向かれました。しかし、そういったネガティブ要素を払拭するほどの勢いが当時に彼らに備わっていたのもまた事実です。

とにかく、どの曲もよく作り込まれていてキャッチー。そりゃあアルバム収録曲の半分がシングルカットされても不思議じゃないわ。しかも、時代はブリットポップ最盛期。彼らもその流行にうまく乗ることができたわけです。

初期2作の完成度も捨てがたいですが、本作の無敵感もまた何物にも変えがたいものがある。どれが一番好きかと問われると本当に悩みますし、日によって変わってくるとは思いますが、やっぱりアンセミックなロックチューン「Trash」から始まり、再びアンセミックなバラード「Saturday Night」で幕を下ろす本作はタイミングや心情を選ばず、いつ聴いてもベストだと思います。

そういった意味では、もっとも初心者にオススメしやすい1枚かもしれません。

 


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2019年9月22日 (日)

RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』(1996)

1996年4月にリリースされたRAGE AGAINST THE MACHINEの2ndアルバム。

デビュー作となったセルフタイトルアルバム(1992年)から3年半の歳月を経て届けられた本作ですが、彼らの人気・知名度を急激に上昇させる重要な役割を果たしました。というのも、前作が話題のわりに全米45位という数字で終わったのに対し、本作は初登場1位を獲得。イギリスでも最高4位を記録し、本国アメリカでは300万枚以上を売り上げる大ヒット作となったのです(1作目も最終的には300万枚以上のヒットとなりましたが)。

プロデューサーには新たにブレンダン・オブライエン(STONE TEMPLE PILOTSPEARL JAMAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSなど)、ミックスには前作から引き続きアンディ・ウォレス(NIRVANAHELMETSLAYERLIMP BIZKITなど)という豪華なメンツを迎えた今作は、RATMの持つ軽やかな躍動感が見事な形で凝縮された力作に仕上げられています。ヘヴィさであったり即効性の強い1音1音の重さは前作に譲りますが、この『EVIL EMPIRE』ではファンクミュージック直系のグルーヴ感が全キャリア中でもっとも強く打ち出されているように感じます。

正直、初めて聴いたときは冒頭3曲……「People Of The Sun」「Bulls On Parade」「Vietnow」のインパクトに全部持っていかれました。いや、特に頭2曲かな。リリース当時はこの2曲ばかりを狂ったようにリピートしていた記憶があります。前作は軽やかさよりも重さを重視した作風でしたが、今回はこの2曲からも伝わるようにファンク〜ヒップホップといったブラックミュージックのダンサブルな面がすべてと言ってしまいたくなるほど、気持ちグルーヴが全編を通して支配しているのです。

もちろん、その後の「Revolver」も(空耳アワーの「エッチをしているよ」でお馴染みの。笑)「Snakecharmer」もカッコいいし、アップテンポで攻める「Tire Me」も良い。前作の延長線上にあるサイケな音使いの「Down Rodeo」も、冒頭のトム・モレロ(G)のギターフレーズに驚かされる「Without A Face」もほかには真似できない個性を放っている。だけど、その後の2曲(「Wind Below」「Roll Right」)はちょっとインパクトが弱いかなという印象も。ラストの「Year Of The Boomerang」はエンディングとしては最適だと思いますけど、このへんの一部の弱い曲のせいで、リリース当時は「アルバム後半がイマイチ」と認識していたんです。ということもあり、しばらくは「全体としての完成度は前作に劣るかな」と思い込んでいました。

でも、上に挙げた2曲も今聴くとそこまで悪いとは思わないし、まあ確かに並の仕上がりかもしれないけど、決してアルバムの足を引っ張るほどではない。むしろトータルで聴いたときにRATM全キャリア中もっともよくできたアルバムは本作なんじゃないか、と思えるほど。ファーストインパクトのデビュー作と、人気加熱後の1枚だった3rdアルバム『THE BATTLE OF LOS ANGELES』(1999年)の間に挟まれると影が薄い気がしないでもないですが、実はもっともバランス感に優れた作品が本作ではないかと思っています。それに、1997年の初来日もこのアルバムあってこそですしね。

そうそう。やっぱり本作はフジロック初年度の記憶とペアになっているので、そういう意味でも個人的に重要な1枚なんです。思い入れでは一番かも。

 


▼RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』
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2019年7月 9日 (火)

DIZZY MIZZ LIZZY『ROTATOR』(1996)

1996年5月にリリースされたDIZZY MIZZ LIZZYの2ndアルバム。

本国デンマークで国民的大ヒットとなったデビューアルバム『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)は1995年初頭に日本でも発売され、「Glory」などが好意的に受け入れられ高セールスを上げました。

こうした予期せぬ成功により、続く今作では予算を大きくつぎ込むことができ、サウンドプロダクションが大幅に向上。レコーディングもメンバーの要望により、イギリス・Abbey Road Studioなどで実施されています。ビートル・マニアのティム・クリステンセン(Vo, G)、相当うれしかったんじゃないかな。

さて、それだけ大きな成功を収めたあとの2作目。よく“2枚目のアルバムは鬼門”なんて言われますが、DIZZY MIZZY LIZZYには当てはまらなかったようです。デビューアルバムで展開された世界観をよりポリッシュした、ポップで高品質なモダン・ロックがアルバム中に凝縮されています。

“グランジ以降”のシンプルなロック/ハードロックを軸にしながらも、RUSHなどをお手本にしたテクニカルなバンドアンサンブル、ビートルズ的なキャッチーさ、日本人の琴線に触れる“泣き”の要素を絶妙なバランスでミックスしたそのスタイルは本作でも健在。ただ、デビュー作にあった“いびつさ”が完全に消えて、そこが上手に交通整理されたせいで若干引っ掛かりが弱まった印象が無きにしも非ず。

とはいうものの、全体的な完成度は1stアルバムよりも上。1曲1曲の作り込みも尋常じゃないし、ノリの良さも前作以上。オープニングの「Thorn In My Pride」(前年の初来日公演でもひと足先に披露されていました)から勢いよくスタートすると、安定感と妙な不安定さが混在する「Run」、豪快なアップチューン「Rotator」、壮大なバラード「12:07 PM」と序盤から名曲が続きます。

とにかくメロディラインの作り込みがハンパないですよね。先の「12:07 PM」といい、中盤の山場と個人的には思っている「When The River Runs Dry」といい。

あと、なにげにティム・クリステンセンのギタープレイが尋常じゃなくテクニカルなんですよね。「Break」あたりを聴くと、ちょっとヌーノ・ベッテンコート(EXTREME)を思い浮かべるといいますか。リズム隊と息のあったシンコペーションなんかも、EXTREMEを彷彿とさせるし。いや、真似できないって。

「Back-Bone-Beat」終盤のアンサンブルといい、「Take It Or Leave It」オープニングで聴かせる何気ないアルペジオといい、その発想がすべて素晴らしい(後者はどこかKING CRIMSON的ですよね)。1stアルバムへの評価が高すぎて本作はあまりピックアップされる機会がないようですが、いやいや。1stアルバムにも匹敵する1枚だと思います。

本作リリース後、長期ツアーを終えたバンドは1997年に充電期間に突入しますが、そのまま1998年に解散を発表。2010年には正式に再結成を遂げ、ライブを中心にマイペースな活動を展開。2016年に実に20年ぶりとなる3rdアルバム『FORWARD IN REVERSE』をリリースしています。こちらについても、近いうちに紹介したいと思っています。

 


▼DIZZY MIZZ LIZZY『ROTATOR』
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2019年6月20日 (木)

THE BLACK CROWES『THREE SNAKES AND ONE CHARM』(1996)

1996年7月にリリースされたTHE BLACK CROWES通算4作目のスタジオアルバム。前作『AMORICA』(1994年)が全米1位を獲得した前々作『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)から順位(最高11位)もセールス(50万枚)も一気に落とす結果となりましたが、続く本作でもそういった状況を挽回することはできず。「Good Friday」や「Blackberry」などラジオヒットが生まれたものの、アルバム自体は最高15位止まり。初めてゴールドディスクに達しなかったアルバムとなりました。

『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』から続いたクリス(Vo)&リッチ(G)のロビンソン兄弟、マーク・フォード(G)、ジョニー・コルト(B)、スティーヴ・ゴーマン(Dr)、エディ・ハーシュ(Key)という編成はこのアルバムまで。リリースツアー後にマークとジョニーが脱退し、黄金期編成は崩壊することとなります。

その崩壊の影がこのアルバムから感じられるかと言われると、正直微妙なのですが……作風的には前作『AMORICA』の延長線上にあると言っていいでしょう。つまり、地味です。安定感があると言えば良く聞こえますが、悪い言い方をすればマンネリ気味と取ることもできるのかなと。

「One Mirror Too Many」ではサイケ色が若干濃くなっている印象もありますが、そのへんが実はこのアルバムの大きなフックになっていると思うのです。この曲とシングルカットもされた「Blackberry」のグルーヴィーさはアルバム前半のハイライトで、ゆらりと始まったアルバムに活気を与えてくれます。

が、ソウルフルなスローバラード「Girl From A Pawnshop」やTHE DIRTY DOZENのブラスをフィーチャーした「(Only) Halfway To Everywhere」といった意欲的な楽曲を経て始まる後半戦……これがいただけない。決して悪くはないのですよ。ただ、格別良くもない。なんというか……やっつけとまでは言わないけど、手グセで作っちゃいました的なユルさが随所から感じられて、完全に流し聴き態勢に入ってしまうんですよ。

もちろん、この手のバンドとしてはクオリティ高めだと思います。が、傑作との呼び声も高い『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』の完成度には及ばないし、いろいろ言われた『AMORICA』レベルにまでも達していないと思うんですよね。同じブラスを使った曲でも、中盤の「(Only) Halfway To Everywhere」と終盤に置かれた「Let Me Share The Ride」とでは力の入れ具合/抜け方が全然違う。後者のほうがユルすぎちゃうというか……ここはもう好みの問題かもしれませんね。

結局メンバーチェンジがこの後に控えているとなると、やはりバンドとして過渡期を迎えていたのかなと思わずにはいられません。だって、続く5thアルバム『BY YOUR SIDE』(1999年)で急に息を吹き返すわけですからね。

 


▼THE BLACK CROWES『THREE SNAKES AND ONE CHARM』
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2019年6月 4日 (火)

PRONG『RUDE AWAKENING』(1996)

1996年5月にリリースされたPRONGの5thアルバム(メジャー4作目のして最終作)。成功を収めた前作『CLEANSING』(1994年)から引き続きテリー・デイト(SOUNDGARDENPANTERADEFTONESなど)がプロデュースを手掛け、チャート的には前作の126位を上回る全米107位にランクインしました。

前作から加入のキーボーディストは早くも脱退し、トミー・ヴィクター(Vo, G)、ポール・レイヴン(B/KILLING JOKE)、テッド・パーソンズ(Dr)というトリオ編成で制作された本作。インダストリアル色はここでも健在で、プログラミングやキーボードをNINE INCH NAILSMARILYN MANSONとの仕事で知られるチャーリー・クラウザーが担当しています。

スラッシュメタル色が若干残っていた前作から完全に脱却し、本作ではグルーヴメタルやインダストリアルメタル、あるいはグランジ以降のダークなラウドロックに特化した作風へとシフト。前作の時点でその予兆はあったとはいえ、ここまで潔く変化したのはグランジブームも終焉を迎え、KORNやDEFTONESをはじめとする“ヒップホップ以降のヘヴィサウンド”に注目が集まり始めたのも大きかったのでしょう。もともとKILLING JOKEのポール・レイヴンが加入した時点で、こういった“スピードよりも重さを重視した、オルタナ以降のヘヴィロック”へと移行するのは時間の問題だったでしょうしね。

オープニングの「Controller」から絶妙なテンポ感のヘヴィチューンが続く構成は、ただただ気持ち良い。アルバム1枚の中でミドルテンポをベースに多少のアップダウン度で変化を付ける構成は、なかなかの難しさがあるとは思います。特に彼らのようにスラッシーなサウンドを下地にしていたバンドにとっては、スピードを殺すことは困難を極めるのではないでしょうか。しかし、段階を踏むことでこうした“ミドルテンポのグラデーション”が楽しめる作品集を完成させられたのは、ミュージシャンシップの賜物かもしれません。

とにかくドラム&ベースが生み出すグルーヴ感と、そこに絡み合うプログラミング=インダストリアルサウンド。絶妙な歪みで印象的なリフを刻み続けるギター。「Mansruin」のリフからはスラッシュメタルがルーツであることが垣間見えるし、決して彼らはルーツを葬ったわけではない。表現手段が増えた結果、スラッシュ色をメインにしなくてもよくなっただけの話なんですよね。

評価的には前作のほうが上かもしれませんが、前作での試みがひとつの完成を見たという意味では、本作も見過ごせない1枚だと思います。いやはや、2019年の今聴いてもめちゃめちゃカッコいいですから!

 


▼PRONG『RUDE AWAKENING』
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2019年4月 6日 (土)

ALICE IN CHAINS『MTV UNPLUGGED』(1996)

1996年7月(日本では同年8月)にリリースされた、ALICE IN CHAINS初のアコースティックライブアルバム。

同年4月10日にニューヨークで収録された『MTV UNPLUGGED』出演時のライブを収めたもので、アルバムは放送時にカットされた3曲(「 Angry Chair」「Frogs」「Killer Is Me」)を含む全13曲で構成されています。

デビュー時こそヘヴィなギターリフとレイン・ステイリー(Vo)&ジェリー・カントレル(G, Vo)による不穏なハーモニーのイメージが強かった彼らですが、『SAP』(1992年)や『JAR OF FLIES』(1994年)といったEP、3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)にはアコースティックサウンドを軸にした穏やかな楽曲も多く、こういったアーシーな作風も彼らの持ち味となっていきます。なので、彼らアンプラグドに出演すると知ったときは「ようやく」という気持ちが強かったことを今でもよく覚えています。

とはいえ、この頃のALICE IN CHAINSはかなり不安定な時期で、直前の『ALICE IN CHAINS』リリース時などはレインのドラッグ癖による体調不良も重なって「本当にやるの?」と疑問に思ったのもまた事実。当時ケーブルテレビで放送されたものも観ましたし、のちにビデオ作品として発売された映像版も観てますけど……そこまで病んだ雰囲気を感じさせないレインの姿に、ちょっとだけホッとしたものです。

ジェリーによる派手なギターサウンドが皆無なぶん、バンドの軸になるキャッチーなメロディがより際立つアコースティックアレンジですが、ヘヴィな楽曲をこのスタイルで表現してもしっかりヘヴィになるんだと驚かされたりもしました。「Sludge Factory」「Frogs」あたりなんてまさにその真骨頂で、音が簡素になったぶんダークさがより強調されているように思いますし(とはいえ、ベースが意外とゴリゴリしているので、それによるものも大きいのかな)。

と同時に、「Sludge Factory」の直前にMETALLICA「Enter Sandman」を演奏するお遊び感からは、意外とバンドがリラックスしてこのライブに臨んでいたことも伺えます。それもあってか、レインのボーカルからはスタジオ作品から伝わる鬼気迫る感覚や狂気的な空気感がここでは皆無。これがアンプラグド特有の雰囲気によるものなのか、それとも当時の体調によるものなのかはわかりませんが、もし彼がまだ生き延びていてバンドに在籍していたら、きっとこういう表現も普通にできていたんじゃないか……なんて想像してしまいます。

『JAR OF FLIES』や『ALICE IN CHAINS』で聴くことができるソフトサイドも愛せるという人なら絶対に気に入るはずの内容ですし、レイン在籍時の貴重な音源のひとつでもあるので、グランジ時代をリアルタイムで通過していない人にこそ触れてほしい1枚。これもグランジのひとつの側面だったんだぞ、という意味でも知っておいてもらいたいです。

 


▼ALICE IN CHAINS『MTV UNPLUGGED』
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2019年1月 1日 (火)

SLAYER『UNDISPUTED ATTITUDE』(1996)

1996年5月に発表された、SLAYER初のカバーアルバム。スタジオ作品としては『DIVINE INTERVENTION』(1994年)から約2年ぶり、通算7枚目のアルバムとなります。チャート的には全米34位と前作の8位には及びませんでしたが、この内容のわりにアメリカだけで20万枚以上も売り上げているので成功した部類に入るのではないでしょうか。

内容はハードコアパンクを中心としたもので、全14曲(日本盤初出時はボーナストラック2曲を含む16曲)中VERBAL ABUSEが3曲、T.S.O.L.が1曲、PAP SMEARが2曲、MINOR THREATが2曲、D.I.が2曲、DR. KNOWが1曲、D.R.I.が1曲、THE STOOGESが1曲、そしてSLAYERのオリジナル曲が1曲となっています(先の日本盤ボーナストラックはG.B.H.とSUICIDAL TENDENCIESのカバー)。しかも、曲によっては2曲を1曲にまとめたメドレー形式になっており、実質的にはプラス4曲くらいの感覚なんですけどね。

そう考えると「曲多すぎ!」と思われるかもしれませんが、そこはほら、ハードコアですから。どのトラックも1曲1〜2分台ですし。トータルで33分ちょっと(日本盤ですら36分程度)ですから。大丈夫、あっという間ですよ(笑)。

あ、補足を。先のカバーしたバンドのうち、PAP SMEARはジェフ・ハンネマン(G)が80年代前半にやってたサイドプロジェクトのこと。そう考えると、実はSLAYERみたいなもんなんです。だから、3曲はSLAYERって捉えることもできるかも。無理やりですが。

SLAYERというバンドにハードコアなどエクストリームミュージックの側面を感じており、そちら方面も愛好しているリスナーなら間違いなく楽しめる1枚でしょう。が、メタルしか聴かねえよ!っていう輩には若干厳しい内容かもしれません。だって様式美もへったくれもないですからね。ただ、前作『DIVINE INTERVENTION』からの流れであったり、それ以前の、『REIGN IN BLOOD』(1986年)をはじめとする80年代のSLAYERにあった残虐性や無軌道さを追体験したい人、そのルーツはどこにあるのかを知りたい人にはうってつけの1枚だと思います。まあ、頭を固くして接するのは違うかなと。もっと気楽に楽しみたい作品集です。

ちなみに、SLAYER名義で唯一の新曲「Gemini」ですが、全然ハードコアでもパンクでもありません。ヘヴィなミディアムナンバーで、『SOUTH OF HEAVEN』(1988年)以降、『DIVINE INTERVENTION』未満といった作風でしょうか。イントロのギターフレーズやボーカルのエフェクトからは、次作『DIABOLUS IN MUSICA』(1998年)の香りがすでに感じられるあたりも、今振り返ると興味深いものがあります。



▼SLAYER『UNDISPUTED ATTITUDE』
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2018年8月13日 (月)

GOTTHARD『G.』(1996)

スイスの4人組ハードロックバンド、GOTTHARDが1996年初夏にリリースした3rdアルバム。日本ではデビューアルバム『GOTTHARD』(1992年)の時点でそこそこ人気を集めていましたが、個人的にどハマりしたのがこの3作目から。単にアルバム発売後のツアーから元KATMANDUのマンディ・メイヤー(G)が加入したから、というのも大きかったのかもしれませんね。

オープニングの「Sister Moon」のブルージーなハードロックサウンドが特にツボで、かと思えば「Mighty Quinn」(ボブ・ディランのカバー)みたいなスタジアムロック的なアレンジの楽曲もある。そして「Let It Be」みたいにしっかり聴かせるミディアムバラードや、「Father Is That Enough?」のようなスローバラード、「One Life, One Soul」みたいなアコースティックナンバーもある。

当然それだけじゃなくて、ハードロックバンドらしいガッツにあふれた「Fist In Your Face」や、疾走感に満ちたマイナーコードの「Ride On」、ブギーのリズムが心地よい「Lay Down The Law」、VAN HALEN的なハードブギー「Hole In One」もある。そう、アルバムとしてのバランス感が非常に優れているんです。

ただハードなだけではなく、しっかり聴かせる要素も強い。その“聴かせる”側の比重が急激に大きくなり出したのが、このアルバムなのかなと。1曲1曲がしっかり練られていて、B級っぽさ皆無。スティーヴ・リー(Vo)というシンガーの力量も幅広い楽曲群によってより発揮される結果となったし、ソングライターにしてギタリストのレオ・レオーニの才能も突出していることが伺える。貶すところが一切ないんですよね。

ちょうどWHITESNAKEタイプのバンドに飢えていた時期でもあったので、そこにこのアルバムが飛び込んできたらストライクだった……たったそれだけの理由かもしれませんが、あのタイミングに出会ってなかったら気に入っていなかったかもしれない。正直、彼らの作品でここまでどハマりしたのはこれ1枚のみ。そこが不思議なんですよね。そう思うと、出会いのタイミングって本当に大切なんだなと思うわけです。

スティーヴ・リーは2010年、交通事故で帰らぬ人となってしまいましたが、バンドはオーディションの末、新ボーカリストを迎えて活動を継続中。機会があったら近作にも手を出してみようと思います。もしかしたら、タイミング的に再びどハマりすることもあるかもしれませんしね。

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▼GOTTHARD『G.』
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