2017/08/30

FOO FIGHTERS『THE COLOUR AND THE SHAPE』(1997)

デイヴ・グロールのソロ作としてスタートした前作『FOO FIGHTERS』(1995年)完成後、ツアーのためにNIRVANA後期のライブメンバーだったパット・スメア(G)、SUNNY DAY REAL ESTATEのネイト・メンデル(B)&ウィリアム・ゴールドスミス(Dr)を迎えてバンド編成で活動開始。この編成のまま、FOO FIGHTERSは次作のレコーディングに突入します。しかし、ウィリアムのプレイに納得できなかったことから、制作では大半の楽曲でデイヴがドラムを叩くことに。これによりウィリアムが脱退し、アルバム完成後には現在もバンドの屋台骨を支えるテイラー・ホーキンスが加入します。

こういいう困難を経て完成したのが、1997年5月発売の2ndアルバム『THE COLOUR AND THE SHAPE』。前作の全米23位を軽く超え、全米10位まで到達し、200万枚近いセールスを記録しました。

全体の作風としては前作の流れを引き継いでいるものの、“ひとりバンド”形態だった前作よりもはるかにバンド感が強まり、サウンドのダイナミックさも格段と高まっています。このへんは、プロデューサーにギル・ノートン(PIXIESなど)、ミックスにクリス・シェルドン(FEEDERTHERAPY?THE ALMIGHTYなど)を起用したことも大きいと思います。

グランジ的な手法を残しつつも、新たな可能性が見え隠れしているのも本作の特徴。例えば代表曲「Monkey Wrench」には当時ブレイクしていたGREEN DAYなどのポップパンクからの影響が感じられるし、「Hey, Johnny Park!」や「My Hero」のダイナミズムはスタジアムロックのそれだし、「Everlong」の構築感からはパンクやハードコアとも違うカラーが感じられます。つまり、前作『FOO FIGHTERS』で自らグランジブームに終止符を打ったデイヴが、自身のルーツにある音楽を新たな仲間たちと鳴らし始めた、“バンドFOO FIGHTERSとしての原点”がこの2作目なのかもしれません。

ドラマーが2人参加していたり、本作のツアー中にパット・スメアが脱退してしまったりと、時期的には非常に不安定なタイミングなのかもしれませんが、ここ日本ではアルバム発売から2ヶ月後の1997年7月、初開催となった『FUJI ROCK FESTIVAL '97』に出演し熱演を繰り広げた印象が強い、意外とポジティブな印象のある時期。そういった点においても、本作をお気に入りに挙げるリスナーは多いのではないでしょうか。



▼FOO FIGHTERS『THE COLOUR AND THE SHAPE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 08 30 12:00 午前 [1997年の作品, Foo Fighters] | 固定リンク

2017/08/23

REEF『GLOW』(1997)

ブリットポップ全盛のイギリスで、無骨でオールドスクールなハードロックとダンサブルなビートを取り入れたデビュー作『REPLENISH』(1995年)が全英トップ10入りを果たすなど、いきなり好成績を残したREEF。彼らが1997年1月に発表したのが、今回紹介する2ndアルバム『GLOW』です。

デビューアルバムでは古臭さとモダンさがミックスされた、非常に“イマドキ”感を匂わせた存在で、当時は音源自体は好きだったけどそこまでのめり込むほどではなかったんですが……この2ndアルバムに先駆けてリリースされたシングル「Place Your Hands」によって、それまでの印象を一新されてしまったのでした。

本作のプロデュースを手がけたのは、THE BLACK CROWESの諸作品やPRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』(1994年)、RIDE『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)などで知られるジョージ・ドラクリアス。アルバム全体はこれらのアーティスト、作品から想像できるアーシーで生々しい、ストロングスタイルのロックアルバムに仕上げられています。

デビューアルバムではどこか線の細さが感じられたゲイリー・ストリンガー(Vo)の歌声も、「Place Your Hands」を聴けばわかるように非常に骨太に進化しているし、「Consideration」のようなゴスペルバラードではファルセットを駆使した艶やかな声も聞かせてくれる。楽曲自体もどれもよく練り込まれたものばかりで、「Yer Old」みたいな高速ナンバーから、『STICKY FINGERS』(1971年)期のROLLING STONESを彷彿とさせる「Summer's In Bloom」、モダンなダンスミュージック色を導入した「Robot Riff」など単なるロックンロールアルバムでは済まされない、バラエティ豊かな1枚となっています。このへんはうまく時流に乗った、と受け取ることもできるでしょうけど、デビュー作の時点で持ち合わせていたモダンさが単に後退しただけでなく、見えないところでエッセンスとして効いていると理解するのが正解かもしれません。

「Place Your Hands」(全英6位)や「Come Back Brighter」(全英8位)など4曲のシングルヒットを生み出した本作は、アルバム自体も初の全英1位を獲得。当時のムーブメントの影響もあるとはいえ、こういう土着的なロックは90年代後半のイギリスで受け入れられたという事実は今考えると、非常に興味深いものがありますね。



▼REEF『GLOW』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / iTunes

投稿: 2017 08 23 12:00 午前 [1997年の作品, Reef] | 固定リンク

2017/08/22

BLUR『BLUR』(1997)

昨日のOASIS『BE HERE NOW』発売に先駆けること半年、1997年2月に発表されたのがBLURの通算5作目となるオリジナルアルバム『BLUR』。セルフタイトルであると同時に“無題アルバム”でもある本作は、過去4作、特に2ndアルバム『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)から3作続いた“ブリットポップ3部作”から打って変わり、USオルタナロック寄りに振り切れたローファイサウンド満載の1枚となっています。

前作までにあったイギリス人らしいひねくれたポップ感、ピアノやストリングス、ブラスなどを大々的に導入したゴージャスなサウンドはここには皆無。1曲目「Beetlebum」はシーケンスされるシンプルかつ風変わりなギターリフの上で、デーモン・アルバーン(Vo)の内向的なボーカル&歌詞が乗る、ある種“グランジ以降”のサイケなオルタナロックに仕上げられています。最初に聴いたときの驚き、異物感はハンパなかったけど、よく聴けば間違いなくBLURの楽曲そのもの。そこから強烈な爆発力を持つ「Song 2」へと続く構成には、過去のBLURのイメージは一切感じられない。デーモンが本作の発売をもって「ブリットポップは死んだ」と宣言したのもうなずける内容かもしれません。

その後もユルくてダウナー、時々ラフでアッパーな楽曲が続いていきます。「Country Sad Ballad Man」や「On Your Own」あたりからはPAVEMENTやベックからの影響がところどころに感じられるし、こういった作風は前作『THE GREAT ESCAPE』(1995年)とは完全に別モノだし、同じバンドの作品とは思えないほど。前作では存在感が希薄だったグレアム・コクソン(G)のギタープレイも前面に押し出され、デーモンのセンスとグレアムの90年代後半ならではのセンスが存分に発揮された奇跡的な1枚と言えるでしょう。

とはいえ、完全にブリティッシュテイストを捨ててしまったかといえば、そうでもなく。「M.O.R.」あたりにはデヴィッド・ボウイやブライアン・イーノといった諸先輩方からの影響も見え隠れするし(実際、影響という意味でか、クレジットには2人の名前も)、「Look Inside America」の節回しは“ブリットポップ期”のBLURそのもの。散々“別モノ”と書いてきたものの、実はしっかりつながっていたんですね。冒頭2曲のインパクトが強すぎるがゆえに、そこを見逃してしまいがちなリスナーも実は多かったりするんじゃないでしょうか。

ここでの変化が、のちにデーモンをGORILLAZまで導いた……というのは言い過ぎかもしれませんが、間違いなくその導火線のひとつとなった、デーモン的にも、BLURというバンド的にも、そして90年代後半の音楽シーン的にも非常に重要な作品の1枚と言えるはずです。



▼BLUR『BLUR』
(amazon:国内盤CD / 国内盤紙ジャケCD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

投稿: 2017 08 22 12:00 午前 [1997年の作品, Blur] | 固定リンク

2017/08/21

OASIS『BE HERE NOW』(1997)

1997年8月21日に世界同時リリースされた、OASIS通算3作目のオリジナルアルバム。前作『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995年)が本国イギリスのみならず、アメリカでも大ヒット。これを受けて制作された本作もイギリスで1位、アメリカでも2位という好成績を残しています。全世界待望の新作は、ここ日本でもバカ売れ。当初こそ前作を超えるセールスを記録しましたが、実際のアルバムは前作のメガヒットに対するプレッシャーが見え隠れする、非常に“Too Much”な1枚なのでした。

なにせ本作は、全12トラックで71分という超大作。先行シングル「D'You Know What I Mean?」は大ヒット曲「Wonderwall」に似たコード進行のミディアムヘヴィナンバーなのですが、これが約8分という長尺曲。ちなみにこの曲が本アルバムのオープニングトラックなのですから、初めて聴いたときはちょっと面食らってしまうわけです。

かと思うと、続く「My Big Mouth」は攻撃的なハードロックだし、ノエルが歌う「Magic Pie」はサイケデリックなミディアムナンバー(この曲も7分超え)だし。メガヒットした前作とは傾向が異なると同様していると、4曲目にいかにもOASISらしいメジャーバラード「Stand By Me」(約6分)が登場して、若干安心するという。

その後も5〜6分と若干長めの曲がずらりと並び、ジョニー・デップがスライドギターでゲスト参加したヘヴィブルース「Fade In-Out」、1stアルバム『DEFINITELY MABYE』(1994年)収録の「Slide Away」にも匹敵する泣きのバラード「Don't Go Away」、軽快というよりも能天気なタイトルトラック「Be Here Now」、OASIS版「All You Need Is Love」+「Hey Jude」な9分超の大作「All Around The World」(アルバムラストのリプライズを付け加えれば11分超え)など、1曲1曲を取り上げれば魅力的な楽曲が多いのですが……とにかく全体的に長すぎて、1曲目からラストまで通して聴こうという気になかなかなれないのが難点。最初から「アナログでいうところの2枚組」アルバムと納得ずくで聴けばいいのかもしれないけど、にしても……1曲が長いからなぁ。

というわけで、リリース当時は最初こそ「OASISの新作!」と喜んで何度も聴き返しましたが、半年もすれば自然と手が伸びなくなったのは言うまでもありません。

で、あれから20年経った今。現在来日中のリアム・ギャラガーは自身のライブで本作から「D'You Know What I Mean?」と「Be Here Now」の2曲を取り上げているんです。非常に謎な選曲ですが、リリース20周年って意味合いもあるんでしょうか。本当に謎すぎます。

それで、久しぶりに聴き返した本作。1曲の中にあれこれ詰め込もうとした結果、どんどん長くなっていったということなんでしょうね。その諦めの悪さがよろしくない方向に作用してしまった惜しいアルバムだなと、再認識しました。

が、先に書いたように曲単位では印象的なものも多いので、このタイミングにじっくり聴き込んでみるのもいいかもしれませんね。

なお、本作は昨年リマスタリング&3枚組仕様で再発されています。本編がただでさえ長いのに、ボーナスディスク2枚て……まぁこちらはマニア向けってことで(ただ、「Stay Young」などシングルカップリング曲に魅力的なナンバーも多いので、気が向いたらチェックしてみるとよいかも)。



▼OASIS『BE HERE NOW』
(amazon:国内盤CD / 国内盤リマスターCD / 国内盤リマスター3CD / 海外盤CD / 海外盤リマスターCD / 海外盤リマスター3CD / MP3

投稿: 2017 08 21 12:00 午前 [1997年の作品, Oasis] | 固定リンク

2017/08/18

THE VERVE『URBAN HYMNS』(1997)

THE VERVEが1997年9月に発表した、通算3作目のオリジナルアルバム。1995年に一度解散しながらも、1997年に4人編成→5人編成で再結成。先行シングル「Bittersweet Symphony」の大ヒット(全英2位)に続いて、アルバム自体も初の全英1位獲得。続く2ndシングル「The Drugs Don't Work」は初のシングル全英1位に輝き、アルバム12週連続1位に。イギリス本国だけでも300万枚以上、全世界でトータル1000万枚以上を売り上げる最大のヒット作になりました。

サイケデリックな色合いが強かった1stアルバム『A STORM IN HEAVEN』(1993年)、当時主流だったブリットポップの流れにありながらも初期のサイケさとのちに通ずるディープさを提示し始めた2nd『A NORTHERN SOUL』(1995年)に続く今作では、「The Rolling People」「Catching The Butterfly」のようにサイケ路線の楽曲を残しつつも、OASIS以降の流れを感じさせる歌モノバラード「Sonnet」「The Drugs Don't Work」、そして壮大なストリングス(ROLLING STONES「The Last Time」のアンドリュー・オールダムによるオケストラカバーからのサンプリング)とシンプルな打ち込みリズムからなる「Bittersweet Symphony」など、とにかく“聴かせる”“歌わせる”要素が極限まで高まった、時代に求められた1枚に仕上がっています。

「人生とは“ほろ苦い”交響曲なんだ」と冒頭で掲げ、決まりきった枠になんかはまるなと歌う「Bittersweet Symphony」は発表から20年経った今もまったく色褪せてないし、むしろ2017年という今聴いたほうが歌詞の意味に重みを感じるのではないでしょうか。リチャード・アシュクロフト(Vo)がいろんな障害にぶつかりながらもまっすぐ歩き続けるMVは、まさにそのまんまの内容ですね。

「Bittersweet Symphony」のみならず、自身のドラッグ体験だけでなく実父が薬を使って延命したものの結局治ることなく死んでしまった経験などを綴った(と、当時のインタビューなどを読んで解釈しています)「The Drugs Don't Work」、リチャードが生きる上での信条が伺える「Lucky Man」など、曲の美しさ以上に歌詞にもこのバンドの哲学が至るところから感じられ、そこも彼らが単なる“流行りのブリットポップ”とは一線を画するバンドだったことが理解できるのではないでしょうか。

彼らは1999年に二度目の解散をし、2000年代後半にオリジナルメンバー4人で再々結成。2008年夏に4thアルバム『FORTH』を発表し、それと前後するように『SUMMER SONIC』で、最初で最後の来日公演が実現しました。そして2009年には3度目の解散。現在はリチャードがソロアーティストとして活動しており、昨年も久しぶりに来日公演を行ったばかりです。

何度聴いても、「Bittersweet Symphony」「Sonnet」の冒頭2曲で泣きそうになってしまうのは、20年前このアルバムを聴いていたタイミングに経験した負の出来事を思い出してしまうからでしょうか。音楽にはそういう力があるといいますが、と同時に音楽にはそういった悲しみを癒してくれる力もあるはず。最初こそ涙腺が緩むものの、アルバムを聴き終えた頃にはすっきりした気持ちになっている。“都会の賛美歌”を意味する『URBAN HYMNS』は自分にとってそういう1枚です。

なお、今年9月には本作のリリース20周年を記念したスペシャルエディションが発売に。アルバム本編がリマスタリングされるほか、当時の貴重なライブ音源をまとめたボーナスディスク付き2枚組仕様や、シングルB面曲など貴重な音源とMVやレア映像をまとめたボックスセットなどもリリースされるようです。これから購入を考えているという人は、そちらをチェックしてみてはいかがでしょう。



▼THE VERVE『URBAN HYMNS』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD(リマスター) / 海外盤CD / 海外盤CD(リマスター) / 海外盤2CD(リマスター) / 海外盤5CD+DVD(リマスター) / MP3

投稿: 2017 08 18 12:00 午前 [1997年の作品, Verve, The] | 固定リンク

2017/07/07

RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』(2017)

今から20年前の1997年6月(本国イギリスで。日本では5月末に先行リリースされています)、RADIOEHADが『OK COMPUTER』というアルバムを発表してから今年で20年。おそらくこの20年間で、自分がもっとも再生したアルバムが本作であることは間違いないと思います(次点がMANIC STREET PREACHERSの『EVERYTHING MUST GO』かな。まぁこちらは前年1996年発売だけど、リリース当初は親しめず、しばらく経ってからドハマりしたので)。

『OK COMPUTER』については今から16年前、2001年6月にすでに紹介しているので、改めて書くまでもないかなと。あのとき、散々悩みながら「どうしてこのアルバムがすごいのか?」について書いたので。

で、今回紹介するのは、20周年を記念して先月発売された2枚組アルバム『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』について。これは『OK COMPUTER』をリマスタリングしたディスク1と、当時のシングルにバラして収められた『OK COMPUTER』制作時のアウトテイクと、音源としては初収録となる「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲を含む11曲入りのディスク2から構成されています。

ディスク1の内容については改めて書くまでもないですが……そう、書くまでもないのに、そしてこれまでに何百回と聴いてきたのに、バカ正直に再生してしまうという(しかも「Airbag」から「The Tourist」までじっくり聴き入ってしまうという)。久しぶりに大音量で聴いてみたら……やっぱり良いアルバムでした。と同時に、このリマスター盤がとてもえげつない。音の分離がかなり良くなっているためか、オリジナル盤よりもきめ細やか。言い方は悪いけど、見たくなかったものまで見えてしまうくらいの生々しさを感じさせる仕上がりなのです。恐ろしい。

で、問題のディスク2。当時のライブでも披露されていた「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲は、ファンならご存知のナンバー。特に「Lift」に関しては何度も「ついに正式レコーディングされるか?」という噂が上がり、昨年の最新作『A MOON SHAPED POOL』の際にもそんな噂が出たくらい、ファンの間では音源化が熱望されていた1曲なのです。

『OK COMPUTER』という完成され尽くした傑作のあとに、これらの未発表曲やアウトテイクをがっつり聴くと……このディスク2の方向性って、要はその前の2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)からの単なるステップアップ作だったんだなと実感させられるわけです。

そういえばRADIOHEADは1枚目のアルバム『PABLO HONEY』(1993年)から『THE BENDS』に取り掛かった際にも、一度作った多くの新曲を“破棄”して新たに作り直しているんですよね。そこで“破棄”された楽曲群が『MY IRON LUNG EP』(1994年)や、『THE BENDS』からのシングルのカップリングに収められたわけです。ただ、『THE BENDS』のときと『OK COMPUTER』が違ったのは、『THE BENDS』の頃はツアーなどで時間がない中で納得にいかないものを作ってしまったからであって、『OK COMPUTER』の頃はある程度納得できるものを一度作ってから「もっといけるんじゃないの?」とさらに一歩踏み込んだ。その違いはすごく大きいと思うんです。

「I Promise」も「Man Of War」も「Lift」も、RADIOHEADが好きな人なら絶対に気にいる、彼ら以外の何者でもない良曲だけど、やっぱり『OK COMPUTER』という閉鎖的で神経症気味な作品集には似合わないんですよ。こういう形で聴かされると、それはより強く実感させられるわけで、やっぱり当時の彼らのジャッジは正しかったんだなと納得してしまいます。もし、ディスク2側の方向で進めていたら、きっとここまで大きくなってなかっただろうし、バンド自体もここまで長く続いていたかどうか……。

それにしても、ディスク2を聴くとTHE BEATLESからの影響がいかに強いかが伺えますね。本編における「Paranoid Android」における「Happiness Is A Warm Gun」リスペクトぶりだけじゃなく、アウトテイクからもポール・マッカートニー的センスが伺えたりしますし。そこからPINK FLOYD的方向が加わったことで今の『OK COMPUTER』が完成した……なんていうのは大袈裟かしら。

というわけで本作。『OK COMPUTER』が大好物な方なら間違いなく楽しめる、歴史的価値の高い作品集だと思います。またライト層は、ディスク2を「『THE BENDS』と『OK COMPUTER』の間に、本来発売されるはずだった幻の2.5枚目アルバム」という位置付けで聴くと、スッと入っていけるのではないでしょうか。なんにせよ、『OK COMPUTER』とあわせて聴いておくべき1枚だと思います。だって、ミュージックビデオまでしっかり制作されちゃってるんだから(しかも2本も)。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤BOX / 海外盤2CD

投稿: 2017 07 07 12:00 午前 [1997年の作品, 2017年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2017/03/30

WHITESNAKE『STARKERS IN TOKYO』(1997)

1997年に約8年ぶりとなるスタジオアルバム『RESTLESS HEART』をリリースしたWHITESNAKE。1990年の活動休止、1994年のライブ活動再開を経て、デヴィッド・カヴァーデイル(Vo)はエイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)と本腰を入れて新作制作に取り掛かるものの、当初はデヴィッドのソロアルバムとして発売されるはずだった『RESTLESS HEART』が、レコード会社の要請によりWHITESNAKE名義で発表されることに。それ以前の数作と比べれば非常に地味で、HR/HMというよりはリズム&ブルースやソウルの色合いが強い作風だったことで従来のファンからは酷評する声が上がったりもしました。

本作のプロモーションで来日したデヴィッドとエイドリアンは、日本のファンのために限定100名にも満たない少人数のファン&関係者を前に、過去に経験のないアンプラグドライブを実施します。それが、本作『STARKERS IN TOKYO』に収録されている音源です。

アルバムには10曲が収録されていますが、当日13曲を演奏。しかし即興で演奏した「Only My Soul」、観客からのリクエストで演奏した「Fool For Your Loving」と「Burning Heart」の3曲は完奏されていないことから、アルバム収録は見送られたようです。また、曲順も実際のセットリストとは異なり、『RESTLESS HEART』からの新曲と過去の代表曲がバランス良く散るように並び替えられています。

金切り声を張り上げて歌わないデヴィッド、アコースティックギター1本で自身の楽曲、過去の名曲をリアレンジして演奏するエイドリアン。2人にとってすべてが初めての経験かもしれませんが、これが非常に素晴らしい出来で感心してしまいます。いわゆる“アンプラグド”ブームからはかなり遅れてのトライとなりますが、1曲目の「Sailing Ships」からして「腕の不調で『SLIP OF THE TONGUE』のレコーディングに参加できなかった作曲者のエイドリアンが、本来こうしたかったというアレンジで表現したかのような」ブルージーさ漂うプレイと、デヴィッドの「どこか70年代のWHITESNAKEを思い出させるトーンで歌う」パフォーマンスは圧巻。落ち着いたトーンの「The Deeper The Love」も悪くないし、装飾を取り払ったことで“実は単なるブルースだった”ことが明白となった「Give Me All Your Love」、バンドアレンジではAOR色が強かったものの、こちらもシンプルなブルースに生れ変わった「Is This Love」など、過去の楽曲と新鮮な気持ちで接することができるのは本当に大きな収穫です。

もちろん、「Too Many Tears」「Can't Go On」「Don't Fade Away」といった『RESTLESS HEART』からの楽曲も、よりシンプルになったことで芯にあるメロディの良さを再確認することができたし、落ち着いたトーンで歌われた「Love Ain't No Stranger」も悪くないなと。そして、本作最大の収穫は、DEEP PURPLE時代の名曲「Soldier Of Fortune」を、大人になったデヴィッドの歌声で聴くことができたこと。歌詞の意味・内容を踏まえてから聴き返すと、改めてこの曲をこのタイミングに歌うことの重要さに気づかされるのではないでしょうか。ホント、泣けるよこのアレンジ。

40分程度の、今となっては決して長くはないライブアルバムですが、リラックスしながら楽しむには十分な1枚かなと。2000年代に入ってからライブ盤は結構な数発表されてますが、どれも“HR/HMバンドWHITESNAKE”を表現したものなので、“ブルースバンドWHITESNAKE”をどっぷりと楽しめる本作は非常に貴重ではないでしょうか。

ちなみに本作、当初は1997年9月に日本限定でリリースされたのですが、翌1998年には一部の国でリリースされたようです。そうだよね、勿体ないものの、こんなにいい作品が日本だけで埋もれてしまうのは。



▼WHITESNAKE『STARKERS IN TOKYO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 30 12:00 午前 [1997年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2017/01/09

祝ご成人(1996年4月〜1997年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて実施したこの企画、今回で3回目を迎えます。今年も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1996年4月〜1997年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちらです)


ATARI TEENAGE RIOT『THE FUTURE OF WAR』(Amazon

BECK『ODELAY』(Amazon

BLUR『BLUR』(Amazon

DEF LEPPARD『SLANG』(Amazon

THE HELLACOPTERS『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(Amazon)(レビュー

HONEYCRACK『PROZAIC』(Amazon)(レビュー

KORN『LIFE IS PEACHY』(Amazon)(レビュー

KULA SHAKER『K』(Amazon

MANIC STREET PREACHERS『EVERYTHING MUST GO』(Amazon)(レビュー

MANSUN『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(Amazon)(レビュー

MARILYN MANSON『ANTICHRIST SUPERSTAR』(Amazon)(レビュー

METALLICA『LOAD』(Amazon)(レビュー

OCEAN COLOUR SCENE『MOSELEY SHOALS』(Amazon

PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(Amazon)(レビュー

RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』(Amazon

REEF『GLOW』(Amazon

SUEDE『COMING UP』(Amazon

TOOL『AENIMA』(Amazon)(レビュー

U2『POP』(Amazon)(レビュー

WEEZER『PINKERTON』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下、主だった作品をざっと羅列します。

AEROSMITH『NINE LIVES』
ALICE IN CHAINS『UNPLUGGED』
ARCH ENEMY『BLACK EARTH』
ASH『1977』
BEN FOLDS FIVE『WHATEVER AND EVER AMEN』
THE BLACK CROWES『THREE SNAKES AND ONE CHARM』
THE BOO RADLEYS『C'MON KIDS』
BJORK『TELEGRAM』
BRYAN ADAMS『18 TIL I DIE』
BUSH『RAZORBLADE SUITCASE』
CARCASS『SWANSONG』
THE CARDIGANS『FIRST BAND ON THE MOON』
THE CURE『WILD MOOD SWINGS』
DAFT PUNK『HOMEWORK』
DAVID BOWIE『EARTHLING』
DINOSAUR JR.『HAND IT OVER』
ELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS『ALL THIS USELESS BEAUTY』
FIONA APPLE『TIDAL』
FOUNTAINS OF WAYNE『FOUNTAINS OF WAYNE』
GEORGE MICHAEL『OLDER』
HELMET『AFTERTASTE』
IMPERIAL DRAG『IMPERIAL DRAG』
JAMIROQUAI『TRAVELLING WITHOUT MOVING』
JOURNEY『TRIAL BY FIRE』
LUSCIOUS JACKSON『FEVER IN FEVER OUT』
MACHINE HEAD『THE MORE THINGS CHANGE…』
MANOWAR『LOUDER THAN HELL』
MATTHEW SWEET『BLUE SKY ON MARS』
MICHAEL SCHENKER GROUP『WRITTEN IN THE SAND』
NIRVANA『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』
PATTI SMITH『GONE AGAIN』
PEARL JAM『NO CODE』
PET SHOP BOYS『BILINGUAL』
PRINCE『EMANCIPATION』
R.E.M.『NEW ADVENTURES IN HI-FI』
ROLLINS BAND『COME IN AND BURN』
RUSH『TEST FOR ECHO』
SCORPIONS『PURE INSTINCT』
SLAYER『UNDISPUTED ATTITUDE』
SLOAN『ONE CHORD TO ANOTHER』
SOUNDGARDEN『DOWN ON THE UPSIDE』
STEVE VAI『FIRE GARDEN』
STRAPPING YOUNG LAD『CITY』
SUPER FURRY ANIMALS『FUZZY LOGIC』
VERUCA SALT『EIGHT ARMS TO HOLD YOU』
ZAKK WYLDE『BOOK OF SHADOWS』
THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES (East West Version)』
ZZ TOP『RHYTHMEEN』


1995年から1996年初頭がブリットプップの最盛期と昨年のブログに書きましたが、続く1996年から1997年にかけてはその最盛期から末期に向かっていく過程。BLURが1997年初頭に発表したセルフタイトルアルバムが「ブリットポップの終焉」を決定づけたのは間違いないでしょう。KULA SHAKERやMANSUNのデビュー作、MANICS、OCS、REEFの諸作、そして選外でしたがASHのデビュー作などはその末期に輝いた傑作だと思っております。

そして、アメリカではRATM、KORN、TOOL、MARILYN MANSONのブレイクにより新たなヘヴィロックシーンが確立されるタイミング。と同時に、ベックやWEEZERといったアーティストたちも新たなオルタナシーンを築き上げておりました。その一方で、METALLICAやDEF LEPPARDといった大御所たちが迷走していたのも、このタイミングの面白いところ。それぞれピックアップした作品は、各バンドのキャリアの中でも迷作扱いされることの多いものですが、今聴くと意外と悪くないから不思議。今回選出した動画20曲の中に混じっても、実はあまり違和感がない音楽性だったりします。面白いもんですね。

あ、1997年に入ると同時にU2が『POP』を出したり、ATRの2ndアルバムが話題になったりと、新たな可能性が見え始めたのも興味深いですね。

ちなみに日本での1996年4月〜1997年3月といいますと、TK作品のチャート独占やプリンセス・プリンセスの解散、米米CLUBの解散発表(ラストライブは翌年)、TMRやPUFFY、ELT、SPEEDのデビューなど、音楽産業的にもピークを迎えつつあった時期でした。

最後に。ここではピックアップしませんでしたが、1996年で特に印象に残っているのは「恋のマカレナ」と「Wannabe」です。



▼SPICE GIRLS『SPICE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 09 12:00 午前 [1996年の作品, 1997年の作品, Atari Teenage Riot, Beck, Blur, Def Leppard, Hellacopters, The, Honeycrack, Korn, Kula Shaker, Manic Street Preachers, Mansun, Marilyn Manson, Metallica, Ocean Colour Scene, Pantera, Rage Against The Machine, Reef, Suede, Tool, U2, Weezer, 「20年前」] | 固定リンク

2015/10/05

MEGADETH『CRYPTIC WRITINGS』(1997)

思いつきで急遽始めたこの「MEGADETH全アルバム私的レビュー」。第1回は80年代の3作品(1st〜3rd)第2回はマーティ・フリードマン&ニック・メンザ加入後の黄金期3作品(4th〜6th)についてでしたが、続く第3回は黄金期崩壊〜マーティ脱退〜そして解散へという下り坂期の3枚(7th〜9th)です。ここに、8th後にリリースされたベストアルバム『CAPITOL PUNISHMENT: THE MEGADETH YEARS』を加えたレビューとなります。

正直、この時期のMEGADETHにはあまりいい思い出がないのですが、唯一のめり込んだ『RISK』という異色作があるので、まだモチベーション的には高かったほうかもしれません。でもこの機会にあの時期の作品を聴き返してみたら当時の記憶以上には悪く思えなかったし、逆に「あれ、そこそこいいじゃん」とも思えてきたので、この企画やってみてよかったと思いました(個人的に)。

まずは1997年春に発表された、ムステイン、エルフソン、マーティ、ニックの黄金期布陣としては最後のアルバムとなった7枚目。前作での過渡期的不調が嘘のような、ある種開き直ったと思えるほど清々しい「ポップでキャッチーなHR/HM」を聞かせる1枚。

5th『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992年)から彼らが挑んできた「コンパクトでキャッチーなミドルテンポ」な作風の究極型と言えるような内容で、前作に足りなかった「She-Wolf」をはじめとするファストチューンが加わったことでそのバランス感はより際立ったものとなっている。

METALLICA「Enter Sandman」をポップにしたような1曲目「Trust」、サビの軽快なノリに思わずツッコミを入れたくなるほどドポップな「Almost Honest」など、それまでの活動を踏まえれば首を傾げたくなるような楽曲もあったりするので、個人的にはそこまでのめりこめなかった作品かも。

とはいえラスト3曲の攻めまくる構成は(曲調、構成の違いはあれど)80年代の尖った頃を彷彿とさせ、やっぱりMEGADETHだな!と納得させられてしまう部分もある。ごく私的ツボ楽曲はアグレッシヴな展開の「Use The Man」と泣きの「A Secret Place」。



▼MEGADETH『CRYPTIC WRITINGS』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD

投稿: 2015 10 05 12:00 午前 [1997年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2006/02/18

3 COLOURS RED『PURE』(1997)

 先月辺りから、急に俺内で「3 COLOURS RED」が再評価ブームなんですよ。いや、切っ掛けは1ヶ月前に彼等の2ndアルバム「REVOLT」を中古で見つけて、それを聴いてからなんですが‥‥実は発売当時、この2ndを何故か敬遠してたんですよね。一番好きそうな音なのにさ。勿論、1stの頃は大好きだったし、実際初来日公演にも行く予定だったんですよね(後に、中止に)。

 俺がこのバンドを好きになった理由は、もうすごく単純で。「THE WiLDHEARTS絡み」ですよ。多分あの当時彼等に興味を持ったファンの大半が、ワイハーから流れていったんじゃないかな?

 3CRのギタリスト、クリス・マコーマックがワイハーのベーシスト、ダニー・マコーマックの実弟ってことで当時話題になって。1stシングル「This Is My Hollywood」がインディーレーベルからリリースされて、当然ながら俺も入手しまして。ワイハーももっとストレートにして、ちょっとマイナーチックにした印象‥‥良い意味で「抜けの悪い」イメージがあって(褒めてないような表現だけど、一応褒め言葉だからね)。ワイハーみたいなカラッとしたイメージとは違うんだよね。ま、収録されてる曲がそういったマイナー調のものが多かったから、余計にそう感じたのかもね。

 その後、彼等はかの「Creation」と契約。あのアラン・マッギーが気に入ったってのが何とも解せないんですが‥‥OASIS全盛、ブリットポップ全盛の時代に、こういう前時代的なバンド(しかもパンクとハードロックを掛け合わせたようなサウンドとルックス)を気に入るとは‥‥全然信用してなかった。でも、シングルをバンバンとリリースしていき‥‥「Nuclear Holiday」や「Sixty Mile Smile」や「Copper Girl」‥‥どれも1stシングルとはまた違った色合いを持った曲で、全部好きだったなぁ。

 1stシングルがリリースされてから約1年後の1997年春。ようやくリリースされたのが、今回紹介する「PURE」というアルバム。日本でもイギリスとほぼ同時期にリリースされて、B!誌以外にもro誌にも取り上げられてた‥‥記憶が。一応「Creation」から鳴りもの入りでデビュー、みたいな感じだったしね。

 アルバムはイギリスでもトップ20入りしたし、シングルも出す曲出す曲トップ30入りして、そこそこのヒットを飛ばしたんだよね。

 アラン・マッギーがどういうつもりでこのバンドと契約して、どういう風に売り出したかったのかは今となっては判らないけど(いや、知りたいとも思わないけど)‥‥例えばね、その後ブレイクするFEEDER辺りに共通する要素があったんだよね、3CRには。1stはまぁ、良くも悪くも「ポスト・ワイハー」とか「ポスト・USパンク」的要素があったりするんだけど(そういうバンドが多かったしね、当時)、後日紹介する予定の2ndなんて‥‥もし今リリースしたなら、確実にFEEDER辺りと比較されそうな音出してるしね。

 でも、そうはならなかった。1999年後半に解散して、2002年に再結成したけど、そうはならなかった。何故か。それは順を追って書いていきますからね。今回はここまでってことで。

 改めて。久し振りに引っ張り出した1stは、やっぱり良いですね。適度にパンキッシュで、適度にハードロッキンしてて。メロも当然しっかりしてるし。彼等のポップさは、例えばワイハー辺りが持つ「古き良き時代のブリティッシュロック/ポップ」の要素とはまた違う、もっと後世の音‥‥'80年代以降の音なんじゃないかな。その辺は、例えばレーベルメイト達に通ずるものがあったのかな、と。時代的にこういう「適度なハードさ」は求められてたし(軟弱なブリットポップが増え始めた頃で、聴き手も飽き飽きしてたのは確かだし)、かといってそれがハードロックバンドに向けられたかというと、それも違うし。3CRやBABY CHAOSのような「程良さ」を持ち合わせた若手を、送り手(=レーベル)は求めてたんでしょうね。ワイハーくらいまで行っちゃうと、逆に層が限定される可能性が高いし、既にキャリアがあったからね。

 なんていうことを、あれから10年近く経った今、考えてみたりして。ま、そんなこと考えるだけ無駄なんですが。

 でも‥‥10年後の今聴いても、これは全然「アリ」な音だよね。後に彼等は初来日(2004年)を果たすんだけど(DONOTSの前座として。彼等は3CRをリスペクトしてるんだそうな)、その時も好意的に受け入れられてたようだしね(ちなみに俺はその来日を、後日知ったので行けなかったわけだが)。

 というわけで、これから暫くの間、彼等の歴史を追いながら、現在入手可能なアルバムを紹介していきたいと思います(とかいって、実は「Creation」時代のアルバム2枚って廃盤なんですけどね。中古でも手に入るから、店頭でお安くお買い求めできるかと思います)。



▼3 COLOURS RED「PURE」(amazon:日本盤UK盤US盤

投稿: 2006 02 18 10:57 午後 [1997年の作品, 3 Colours Red] | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック

2005/09/16

MOTLEY CRUE『GENERATION SWINE』(1997)

 さて、9/18に「Motley Crue Night」というDJイベントをやる関係で過去のモトリー諸作品を聴く頻度が増えてるんだけど、そんな中でも特に聴いてるのが今回紹介する「GENERATION SWINE」なのです。このアルバム、ファンの間では非常に評判の悪い、いわば「失敗作」扱いされている1枚で、実はつい最近までこの俺もずーっと「そんなに好きではない」部類に入れてたわけ、このアルバム。よくファンの間では『ヴィンスが抜けた後の作品(ジョン・コラビが歌った「MOTLEY CRUE」、この「GENARATION SWINE」、そしてトミー・リー脱退後の「NEW TATTOO」)はどれも駄作』みたいに呼ばれてるんだけど、その中でもとりわけ「MOTLEY CRUE」と「GENERATION SWINE」は評価が低いのね(あ、俺はリリース当時から「MOTLEY CRUE」は大傑作だと常に主張してきてますからね)。

 この「GENERATION SWINE」、1992年初頭に脱退したヴィンス・ニールが1996年に復帰して最初のアルバムだったわけ(リリースは1997年。全米4位まで上昇)。1997年初頭でしょうか、「American Music Awards」にいきなりこの4人がゲスト出演して、当時まだ未発表だった "Shout At The Devil '97"(2ndアルバム「SHOUT AT THE DEVIL」収録曲を、NINE INCH NAILSやMARILYN MANSONでお馴染みのエンジニア、デイヴ・オギルヴィがリミックスしたテイク。「GENERATION SWINE」収録)を披露して話題を独り占めしたんだよね‥‥俺、あの時WOWOWで放送されたそのライヴ(当て振り/リップシンクだったけど)映像を観て、どんだけ鳥肌立てたか。どんだけこの日を待ち望んだか‥‥イギリス留学中、現地のMTVで知った『ヴィンす解雇(当時の第一報ではこう発表されたはず)』にどれだけ打ちのめされたことか‥‥それを思うと(ジョン・コラビ時代もそれなりに満足してたものの)どれだけこの5年という月日が長く感じたことか。そこにきて、このカッコいい、同時代性すら感じさせるリミックステイクですよ。そりゃ新作に期待しちゃうわけですよ。「今度のモトリーは、ヴィンスも戻ったし、どんだけ凄いことになるんだよ!?」、と‥‥

 ところがね、出来たアルバムがこれでしょ? インダストリアルというか、悪い意味で時代に迎合しちゃった音作り‥‥フォロワーだったMARILYN MANSON辺りの作風をまんま取り入れちゃったアレンジ‥‥以前のようにハイトーンでは歌えないヴィンス、そして何故かアルバム冒頭でいきなり聴こえてくるのはそのヴィンスの歌声ではなくてニッキーの歌声だという事実。しかもヴィンス復活作なのに、ニッキーとトミーのソロ曲がそれぞれ入ってる始末。なんじゃそりゃ!?って普通は思うわけですよ、とりわけ思い入れの強いファンになればなる程。

 このアルバムの時は1997年8月にお台場で「ROCK AROUND THE BAY」なんていうフェスの先駆け的イベントで2日間ライヴをやったんですよね(共演はスティーヴ・ヴァイとザック・ワイルド)。俺、初日に行って、まぁ1日だけ行けばいいよな‥‥って思ってたら、ライヴじゃ意外な(今じゃ毎回やってるけど) "Too Fast For Love" とかやっちゃってね‥‥気づいたら次の日のチケットも買っちゃって。結局ほぼ同内容だったんだけどさ。まぁそれでも久し振りに観た『オリジナル・フォー』は‥‥外見こそ変わっちゃったけど‥‥やはりモトリーそのものでしたよ。

 でもなぁ‥‥アルバムはなぁ‥‥と、実はリリースから約8年、ずーっと敬遠してた1枚なんですよ。

 しかし、最近になってフラットな気持ちで改めて聴いてみること数日‥‥意外といいじゃない?、と。確かに曲の出来にはバラツキがあるし、アルバムとしてのトータル性も散漫なものになってるけど、これはこれでアリだよなーと。前作「MOTLEY CRUE」で‥‥BEATLESでいえば「REVOLVER」や「SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、PINK FLOYDでいえば「THE WALL」みたいなアルバムを作っちゃったわけですよ。そしてそれに続く今回‥‥「ホワイト・アルバム」であり、「THE FINAL CUT」的な1枚を作ってしまったんじゃないかな、と。まぁ「THE FINAL CUT」は多少こじつけですが、作風的には「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」っていうのは言い当ててるような気がしますが、どうでしょう?

 非常にスタジオワークやテクノロジーに気を遣い、それぞれのメンバーが個々で作り歌った楽曲があり(ニッキーの "Rocketship" であり、トミーの "Brandon")、過去の楽曲のリミックスもある(何となく "Revolution #9" を思い浮かべたのは俺だけ?)。"Helter Skelter" を彷彿させるヘヴィ級ナンバーあり(ま、既に彼等はこの曲カバーしちゃってますけどね)、パンクあり、サイケあり、バラードあり‥‥過去のモトリーの諸作品といえば、どのアルバムも確たるテーマみたいなものがあって、それに沿ってアルバムが進んでいくトータル性を重視してたように思うんですが、このアルバムに関してはそういったものは皆無に等しく、ただひたすらメンバーが好きなことをやったらアルバム1枚できました、みたいな内容になってる。それまではフロントマン=ヴィンスを立てつつ、地味ながらもステージやヴィジュアルで自己主張していた他のメンバーが、自ら歌って自己主張する。曲によってはヴィンスとのデュエット、あるいは完全なソロ曲として。

 あとこのアルバムって、制作途中段階までジョン・コラビがいたわけでしょ。曲のクレジットを見てもジョンの名前がある曲があるし("Flush"、"Let Us Prey" 等。アルバム・アウトテイクにも幾つか見受けられるよね)、作風的にも前作「MOTLEY CRUE」の延長線上にある作品として作られてたんだろうな、っていうのは一聴瞭然だしね。ある意味じゃ、『「MOTLEY CRUE」っていうアルバムをヴィンスが歌ってたら、もっと受け入れられてたんだろうな』っていう思いが遂にここで実現する‥‥はずだったんだけどね‥‥う〜ん、ちょっと違うんだよね。

 とまぁ‥‥長くなっちゃいましたが、それだけ俺はこのアルバムに対して複雑な思いがずーっとあったわけですよ。でも、今やその複雑な感情もだいぶ和らいできてるのね。まぁね、もうこのアルバムの中からライヴでは演奏される機会のある曲、数える程しかないだろうけど(今のツアーでは "Shout At The Devil '97" と、メドレーの一部として "Glitter" が演奏されてるのみ)、それでも‥‥これもMOTLEY CRUEの歴史の一部なんだよね。うん。



▼MOTLEY CRUE「GENERATION SWINE」(amazon:日本盤US盤

投稿: 2005 09 16 12:10 午前 [1997年の作品, Motley Crue] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/03

CINDERELLA『ONCE UPON A...』(1997)

というコーナーが「RADIO TMQ」にはあるんですが、これは「洋楽初心者に向けて、初めて聴くアーティストはとりあえずまぁベスト盤から手軽に入門して、活動歴の長いアーティストだとベスト盤が複数出てるので、どれから聴けばいいのかの手解きをしつつ、そこから続いてどのオリジナルアルバムに手を出せばいいか等のアドバイスをする、お節介な」企画でして。最初の頃は月イチ企画でアルファベット順にアーティストを紹介してたんですが(「A」はAEROSMITH、「B」はボブ・マーリー、「C」はCHEAP TRICK、みたいな)、10月からは番組が90分化したことで、毎回やれるようになったんですね。

 そこで、10月からはベスト盤の中から1曲と、続いてそのアーティストのその後(近況や、解散してるバンドの場合は解散後の各メンバーの動向)を紹介しながら最近の楽曲を流す等いろいろ工夫を加えて、どうにか「RADIO TMQ」の目玉コーナーのひとつにならないか?と試行錯誤を繰り返してる最中だったりします。

 でね。折角このブログが始まったことだし、ラジオも明日から再開するってことで、いっそのこと「ラジオで紹介したベスト盤を文字でも紹介したらどうか?」なんて思いつきましてね‥‥ま、まだ紹介してないアーティストでもいいわけですが。要するに、新コーナーですよ、「TMQ-WEB」の。スタートしていきなり完結してる企画(「とみぃ洋楽100番勝負」)とかあるんで、これから始める企画とかあってもいいじゃないか、と。まぁ「10年前」ってカテゴリも厳密には企画モノなんですけどね。

 さて。早速本日から不定期で始めるこのブログ版「ベスト盤イイヨネー!」。最初はいきなりCINDERELLAですよ。けどこれ、明日取り上げるわけじゃないのでご了承を。じゃあ何でいきなりCINDERELLAなのかといいますと、数日前にこのベスト盤「ONCE UPON A...」を購入してしまったからなんですよ。中古で。つい懐かしくなって。



▼CINDERELLA『ONCE UPON A...』(amazon


 俺が買ったのは海外盤よりも2曲(1st「NIGHT SONGS」からの "Night Songs" と "Push, Push")多く収録された日本盤なんですが、残念ながら現在廃盤みたいなので、上で紹介するのはUS盤です。まぁ基本的な代表曲はUS盤でも何ら問題ないので、これから聴こうって人はひとまずこれから手に取ってみてください。

 内容的には1st「NIGHT SONGS」から解散前の4th「STILL CLIBMING」まで、それぞれシングルカットされたりPVになった有名曲ばかりなので、ほぼ代表曲が揃ってるといえるでしょう。その他、映画「ウェインズ・ワールド」のサントラのみに収録された曲や、コンピ盤に収録されたジャニス・ジョプリンのカバー "Move Over" も入ってるし、更にはこのベスト盤前後に再結成したことによって実現した新曲 "War Stories" まで入ってるんだから、ホントこれ1枚聴けば問題ないかと、初心者は。

 けどね‥‥このバンドの本質を掴みたいなら、絶対にこの後に「LONG COLD WINTER」と、そして大ヒットには及ばなかったけど隠れた名盤の3rd「HEARTBREAK STATION」は聴いて欲しいなと。1stは時代の流れに合わせたHM/HR路線がメインになってるけど、やはりその後に「本当にやりたかった」ブルーズロック路線へと移行した2nd、そしてバックトラックだけ聴いたら単なるエアロやROLLING STONESフォロワーじゃねぇの?って程に激渋な3rdこそが、このバンドの本質なんですよね。ここに収録されてない2ndの曲にしろ3rdの曲にしろ、モロなブルーズも入ってたり、カントリーじゃねぇのそれ?みたいな曲まであるから、是非興味を持ったなら聴いて欲しい名盤の数々ですな。

 あ。最後に追記。2ndにはドラマーとしてかのコージー・パウエル先生が数曲参加しています。聴けば何となく判りますから、是非それ込みで聴いてみてくださいまし。



▼CINDERELLA『LONG COLD WINTER』(amazon

投稿: 2004 12 03 08:32 午後 [1997年の作品, Cinderella] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/07/05

BLANKEY JET CITY『LOVE FLASH FEVER』(1997)

掲示板の方で「とみぃさんってブランキーってあんまり好きじゃないんですか? レビューにもブランキーは一枚もないですし……」という声があったので、思わず取り上げることにしてみました、BLANKEY JET CITY。とりあえずどれを最初に取り上げようかと考えてみたんですが‥‥そりゃね、各アルバムを聴くと、それらがリリースされた当時のいろんな思い出が蘇ってきて、いろいろ浸っちゃうんですけどね‥‥そういうの抜きに考えても、個人的にはこれがベストなんじゃないかな?と思えるのが、97年にリリースされた通算7作目(ベスト盤『SIX』を除く)のオリジナルアルバム『LOVE FLASH FEVER』。

えーっと、ブランキーに対してそれほど強い思い入れとか持たない俺なんですが、それでも言わせてもらえば‥‥。


このアルバムがリリースされた97年当時、これを越えるような日本のロックアルバムって後はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『chicken zombies』くらいしかなかったんじゃないの?


とね。本気で当時は思ってたんですよ。そのくらい「開けた」アルバムだったんじゃないかな、と。

この「開けた」っていう言葉、取りようによってはいろいろ解釈できると思いますが、別に彼らがこのアルバムによって一気にメジャーになったとか売れ線になったとか、そういった類の意味じゃないですよ?(ってそんなのは音を聴けば判ると思いますけどね)

それまで‥‥セカンド『BANG!』から土屋昌巳(元・一風堂/元JAPAN)をプロデューサーに向かえ二人三脚でアルバム制作を行ってきた彼らが、各種ソロ活動を経てレコード会社を移籍、心機一転の状況下で初のセルフプロデュースで制作されたのがこのアルバム。けどね、だからといって何が変わったとか、そいういった要素はこれといって感じられる、ある意味で「ブランキーのまま」なんだけど、1曲1曲の純度がより高まり、より濃くなってるのは過去のアルバムと比べても大きな特徴と呼べるかも。例えば先行シングルとなった名曲「ガソリンの揺れかた」ひとつをとってみても‥‥歌/演奏、全てにおいて尋常じゃないテンションで表現されてるじゃない? でさ、当時のブランキーって意図的か否かは知らないけど、よくテレビの音楽番組にも顔を出すようになったじゃない、移籍を機に。ま、このアルバム以降にはよりポップな作風も取り入れていったから、それはそれでアリなんだけど‥‥正直、お茶の間に「ガソリンの揺れかた」がいきなり流れ出した時の衝撃といったら‥‥同じく、ミッシェルも同時期にテレビ出演が増えてるんだよね、97年頃から。で、この97年ってのが曲者なのかもね‥‥フジロックが始まったのもこの年だし。後に同フェスで同年(00年)に日本人アーティストとしては現時点においても唯一(唯二?)一番大きいステージでヘッドライナーを経験してるのもこのふたつのバンドのみ。興味深くないですか?

ちょっと脱線しちゃったけど‥‥非常に「深化」した楽曲が10曲詰まった作品集であり、どれか1曲が欠けても成り立たない、ギリギリのラインに立つアルバムという印象が強いのね。1曲を取り出して聴くということがあまりない(いや、シングル曲に関しては別だけど)のも、個人的にはこのアルバムの特徴というか特色というか。俺にしてみると、この曲目で、この曲順で聴かないとダメなのね。思い入れが殆どないとか言ってたけど、それはアーティストに関してであって、「優れたロックアルバム」という観点で語ると、やっぱりこれは重要な作品だったよなぁ、と今更ながらに思うわけでして。

久し振りに引っ張り出して聴いてみたけど、やっぱりカッコいい。このヒンヤリした刺々しさが時々痛々しくもあるんだけど、でもそれが次第に病みつきになる。そんなアルバムですよね。

と同時に‥‥これと同等、あるいは同レベルのものを今の3人に求めてしまうのは酷かもな‥‥とも思ってしまうわけで。特にベンジーはね‥‥ソングライターでありフロントマンだっただけに、余計ね。



▼BLANKEY JET CITY『LOVE FLASH FEVER』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2004 07 05 12:00 午前 [1997年の作品, BLANKEY JET CITY] | 固定リンク

2004/01/31

THE HELLACOPTERS『PAYIN' THE DUES』(1997)

スウェーデンの暴走ロケンローバンド、THE HELLACOPTERSが1997年秋に発表したセカンドアルバム「PAYIN' THE DUES」。このアルバムで彼らは日本デビューしたのだけど(リリースは3ヶ月遅れて'98年1月)、当時は思った程話題にならなくてね‥‥雑誌での評判は良かったのに、何故か周りがね‥‥全然盛り上がらない。けど、それも半年以上経った頃には「噂のバンド」として一部のファンには知る人ぞ知る存在としてにわかに騒がれ始めてたんだよね‥‥HM/HR界だけの話だけど。

ファースト「SUPERSHITTY TO THE MAX!」から1年4ヶ月の間隔で発表されたこのセカンド。当時はボーカル&ギターのニッケが元々やってたデスメタル/暴走ロケンローバンド・ENTOMBEDも、そしてギター&ボーカルのドレゲンが在籍していたBACKYARD BABIESも表立った活動をしてなかった頃。だからこうやって短いスパンでアルバムを連発できたんだろうね。しかもこの頃はめちゃめちゃツアーとかしてたみたいだしね(憧れだったKISSの北欧ツアーの一部では、彼らがオープニングアクトを務めたことも!)。

で、そんな勢いある状態の中で作られたセカンドアルバム。悪いわけがない。思いのままに作り上げたファーストと違い、成長株のバンドがぶち当たるであろう『壁』を、普通は飛び越えるんだろうけどさ‥‥このバンドの場合、その壁をも力技でぶち壊して直進し続けたような作風の1枚に仕上がってます。しかも、ちゃんと考えられてるし‥‥そう、他のガレージ/暴走バンドにはないであろう「HELLACOPTERSなりの魅力」を、いよいよこの辺りから前面に打ち出し始めます。

所謂『北欧のバンド的な哀愁味漂う』メロディセンス。その後、これがこのバンド最大の武器となっていくのですが、ここではファーストにあった『気が触れたかのような爆音』と、後の『男臭い/男泣きメロディアス路線』との中間に位置する、所謂過渡期的な姿を見ることができます。ま、過渡期とかいいながらも、しっかりと高い完成度とオリジナリティを保っている辺りは、さすがと言わざるを得ないでしょう。『過渡期』っていうと言い方が悪いんだろうけど、少なくとも現在の彼らの持ち味が大好きだという人にとっては、やはりサードアルバム「GRANDE ROCK」以降の路線こそがHELLACOPTERSの魅力!と思っているのかもしれませんし、そういう人にとっては初期の2枚というのは「メロウだけどうるさすぎ!」と評価されてるかもしれないし‥‥

それとは逆に、「この暴走路線にメロウな歌が乗った初期の2枚こそ、HELLACOPTERSが最もHELLACOPTERSらしかった時代だ」と信じて疑わない人も多いのかもしれません。どちらにしろ、これは名盤だといっていいと思います。初期衝動をそのまま具体化してしまった「SUPERSHITTY TO THE MAX!」を更に数歩押し進めた作品。サウンド的にも洗練され、楽曲やメロディもスキルアップしている。何よりも10曲(日本盤は11曲)で30分に満たない(日本盤は30分ちょっと)というトータルランニングが、このアルバムの勢いを物語ってるんじゃないでしょうか? 全体的に似たトーンの楽曲で占められていることも、このアルバムが成功を収めた理由のひとつかもしれません。ファーストではスローというかミドルヘヴィ曲も幾つかあり、人によってはあれが苦手なんて声もあったので、そういう意味では「ただひたすら走る&攻める」セカンドは、正に「こういうのを待ってたんだよ!」と言わんばかりの1枚なのでしょう。俺はこのアルバムからHELLACOPTERSに入ったので(しかもファーストを聴いたのは、更に数ヶ月経った後だし)ファーストと比較することなく、まんま「うわぁ~っ、KISSのガレージパンク版だな!?」と思ったものです。が、何故か最初はそこまで良いと思えなくて‥‥あっという間に終わってしまうというのも「吟味する前に終わっちゃう」と勘違い甚だしい評価を下して、暫く聴かなくなっちゃったんですよね。更に初来日公演も、何故か気に入らなくてね‥‥結局、サードアルバム「GRANDE ROCK」を聴くまで、俺は彼らの『本当の魅力』に気づかずにいたという、ね。勿体ないことしてるな俺。

この曲も頭の "You Are Nothin" という如何にもKISSな1曲で心臓鷲掴みにされ、続く "Like No Other Man" という疾走ナンバーで失禁という、お決まりのコースでやられまくりなわけ。中盤も名曲 "Soulseller" があったり、ラストはちょっとテンポダウンして、ヘヴィな "Colapso Nervioso"、ジーン・シモンズ・ナンバー的な色合いを持つ "Psyched Out & Furious" で終わるというね(しかもエンディングはちょっとだけAC/DC的派手さを演出するという、ね!)。とにかく全曲ポップで哀愁感漂うメロディを持っていて、それが疾走すればする程哀愁感が増すという‥‥例えばTHIN LIZZY辺りと同質の魅力をHELLACOPTERSには感じるわけ。ホント、『男の中の男』バンドですよ彼らは。

'97年に本国でヒットを飛ばし、'98年に日本デビュー、同年秋には初来日をし、同じ頃にUKでもアルバムリリース。そして翌'99年秋にはとうとうアメリカに本格的進出を図るんですが、これがね、いきなり有名インディーズ・レーベル「Sub Pop Records」からのリリースだったんで、それまで彼らを無視していた連中が腰を抜かす程驚いたというね。ご存知の通り、NIRVANAやSOUNDGARDENといったシアトル系バンドを多く抱えていたことで有名なわけですが、そのレーベルから独自ジャケット&ボーナスディスクを付属した2枚組でこのアルバムをリリースしたのです。しかもボーナスディスクは8曲入りのライヴアルバム!(アナログ盤は9曲入り!!) 既に本国や日本ではサードが出た後だったこともあり、このライヴテイク自体はそのサードリリース後のツアーを収録したもの('99年5月のカナダ公演)。なので収録曲もファースト~サードの曲がメインとなっております。とにかくこれ聴いちゃうと、ライヴ観たことがない人は絶対に「あーライヴ観たい!」って悔しい思いをするはず。これからこのセカンドを買おうと思ってる人は、ボーナストラックが1曲入った日本盤よりも、この「Sub Pop」2枚組限定盤をオススメします。歌詞カードとか入ってないけど、スタジオ盤での意欲的な作風雨と、ライヴ盤ならではの臨場感溢れるサウンドの2種類‥‥正しく「一粒で二度美味しい」作品になってますからね! そして、このアルバムが気に入ったなら、間違いなくあなたはHELLACOPTERSのことが大好きになるはずだから、そのままサード、4作目‥‥という具合にドンドン聴きまくっていってください!



▼THE HELLACOPTERS『PAYIN' THE DUES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 01 31 04:20 午前 [1997年の作品, Hellacopters, The] | 固定リンク

2004/01/19

AEROSMITH『NINE LIVES』(1997)

AEROSMITHが97年3月に発表した、通算12作目のオリジナルアルバム『NINE LIVES』。前作『GET A GRIP』から約4年振りだったんだけど、この間に大規模なワールドツアーがあったり(ここ日本だけでも武道館クラスを10回近く埋めたんだからね)、Geffen Records移籍以降のヒット曲を収めたベスト盤『BIG ONES』(1994年)があったり、それなりに話題は欠かなかったわけです。しかも、この『NINE LIVES』というアルバムは、古巣であるColumbia/Sonyへの再移籍後第一作目となる記念すべき1枚。当然大掛かりなプロモーションが行われ(アルバムのリスニング・パーティーのためだけに来日したり、生放送の歌番組に出演したり等、以前では考えられなかったような展開が繰り広げられたのでした)、アルバムは前作に続き全米ナンバー1を記録。ここ日本でもCMソングとして収録曲の「Nine Lives」が起用されたり等の効果もあり、50万枚近いヒットを記録しました。

けどね、このアルバム最大のヒット理由‥‥それはこのアルバムの数ヶ月後に発表された「I Don't Want To Miss A Thing」という楽曲によるものが大きいのです。ご存知の通り、映画「アルマゲドン」の為に録音されたこの曲、『NINE LIVES』には収録されていません。が、この曲はあれよあれよという間にチャートを駆け上り、同年夏には遂に全米ナンバー1を獲得してしまうのです。アルバムからのシングルだった「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」や「Hole In My Soul」、「Pink」等はトップ10にも届かなかったのにね‥‥皮肉といえば皮肉です。けど、そういった思わぬシングルヒットのお陰で、ここ日本でもアルバムは大ヒットしたわけですから、ありがたや「アルマゲドン」様‥‥といったところでしょうか?

プロデューサーは、後にTHE BLACK CROWESやDREAM THEATER、IRON MAIDEN等を手掛けることになる新鋭エンジニア、ケヴィン・シャーリーが初めて手掛けています。最初はグレン・バラッド(アラニス・モリセットを手掛けたことで一躍有名になったソングライター兼プロデューサー)と作業していたものの、メンバーが納得いかなかったため、新たにケヴィンを迎えて作り直されたという話があります(実際「Pink」等はグレンのテイクをそのまま使用していますしね)。また、陰度のドンと言われるジョン・カロドナーとの確執、マネージメントとの不和等、とにかく音楽的な不安要素以上に外的不安要素が多かった、難産の末に生まれた1枚だったようです。

いろいろなところで「『GET A GRIP』程の作品じゃない」とか「『PERMANENT VACATION』以降のアルバムでは一番の駄作」なんて声も聞こえてくるこのアルバム、果たして本当にそんなに酷い作品なのか‥‥全曲解説しながら追っていきましょうか‥‥


●M-1:Nine Lives
スティーヴン・タイラーとジョー・ペリー、そして職業ライターとしても有名なマーティ・フレデリクセンとの共作。アルバム1曲目を飾るに相応しいストレートなアッパーチューン。イントロでのジョーのギターと猫の鳴き声のようなスティーヴンのスクリームに鳥肌を立て、そこから雪崩のように突入するバンドサウンドは圧巻。エレクトリック・シタールのような音色のインドっぽいフレーズが挿入されたりするのが印象的。とにかく「4年間待たせたな!」と言わんばかりの攻撃的な1曲。

●M-2:Falling In Love (Is Hard On The Knees)
アルバムからの第1弾シングルとなった、80年代「復活後」エアロの延長線上にある1曲。スティーヴンとジョー、そしてグレン・バラッドによる共作。ブラスやピアノの音が気持ちいい1曲で、途中で訪れる転調等はさすがと言わざるを得ないでしょう。ギター2本の組み合わせ(違ったバッキングが被さる)もさすがだし。けどこの曲の良さはそのものズバリ、歌メロにあるのではないでしょうか。大したことないと思われがちの曲ですが、50~60年代のポップスにも通ずるポップセンスは、前作での「Cryin'」や「Crazy」等でも伺えましたが、ここで一気に開花したといった印象。そしてその究極の形が、後に誕生する「Jaded」なんですよね‥‥

●M-3:Hole In My Soul
アルバムからの第2弾シングルとしてリカットされた、パワーバラード系の1曲。スティーヴン&ジョー、そしてお馴染みデズモンド・チャイルド(エアロ復活後の一連のヒット曲や、BON JOVIの大ヒット曲等を手掛けてきたソングライター/プロデューサー)との共作。ジョーのスライドギターがとにかく印象的な曲で、イントロやアウトロ、中盤のソロで聴けるプレイは一聴の価値あり。ストリングスも導入された過剰な演出は、後の「I Don't Want To Miss A Thing」にも通ずるものがあります。が‥‥こっちは大きなヒットにはならず。この曲を聴くと‥‥特にBメロからサビにかけての盛り上げ方/メロディの運び方が80年代的‥‥例えばNIGHT RANGERやBAD ENGLISHといった産業ロック系のパワーバラードに共通する色を感じるんですが、如何でしょうか?

●M-4:Taste Of India
スティーヴン&ジョーとグレン・バラッドによる共作。タイトル通り、インドテイストを強く表現したヘヴィチューン。シタールっぽい音色やストリングスが効果的に使われていて、ちょっとLED ZEPPELINの「Kashmir」を彷彿させますが、単なる亜流に終わっておらずちゃんと「エアロ流」になってます。というか、どこからどう聴いてもエアロ以外の何者でもないんですけどね。実は曲としては単調なんですけど、演奏でそこを見事にカバーしてる感が強いですね。そういえばこの曲、アルバムにはケヴィン・シャーリー版が収録されていますが、以前何かのシングルに収録されたものなのか、ラジオでグレン・バラードのプロデュース版を聴いたことがあります。こっちのバージョンはドラムがジョーイ・クレイマーではなくて、セッション・ドラマーが叩いたテイクなんですが‥‥正直、マニア以外は聴かない方がいいと思いますよ。全然覇気が感じられないテイクでしたから。

●M-5:Full Circle
アルバムからの第4弾シングルとしてリカットされた、カントリーテイストの強いバラード系ナンバー。スティーヴンと職業ライターのテイラー・ローズとの共作。タイプとしては「What It Takes」(アルバム『PUMP』収録)の流れにある1曲なのですが、もっとポップス色が強く、はっきりと「GET A GRIP」からの流れを意識してるのが読み取れます。悪い曲ではないですが、『NINE LIVES』にはこのタイプの楽曲が他にも沢山入ってるので、正直‥‥ただ、バンドとしてのパフォーマンスはさすがとしか言いようがありません。

●M-6:Something's Gotta Give
スティーヴン&ジョーとマーティ・フレデリクセンによる共作。「Nine Lives」にも通ずるストレートなアッパーチューン。イントロでのインダストリアル・ノイズに一瞬ハッとさせられますが、その後は良く言えば「いつものエアロらしい」、悪く言えば「何の代わり映えもしない」1曲。このアルバムの弱点を挙げるとするならば、それは楽曲のバリエーションがそんなに広くなく(=『GET A GRIP』のラインを狙い過ぎ)、尚かつ似たり寄ったりなアレンジの曲が多過ぎるということ。アッパー系の2曲が同じようなタイプだったり(ハーモニカを用いるところまで一緒だし)、バラード系もね‥‥多過ぎるんですよね。勿論、楽曲自体は悪いとは思わないし、演奏は素晴らしいものなんですが‥‥。

●M-7:Ain't That A Bitch
METALLICAにも似たようなタイトルの楽曲がありますが、全く別の曲。スティーヴン&ジョーとデズモンドによる共作。ここで初めてこれまでになかったタイプの楽曲が登場。ちょっとブルージー且つジャズっぽいテイストのスローチューンで、まぁバラードとも呼べなくもないけど、ちょっと違うかな。スティーヴンのボーカルがとにかくセクシー。あまり指摘されないけど、この曲でのリズム隊による「歌を盛り上げる」ためのプレイは圧巻だと思います。後半に登場するストリングスが個人的には余計かな?という気もするんですが‥‥シングルやライヴには向かないけど、アルバム用としては十分に機能するアクセント的1曲。

●M-8:The Farm
ちょっとBEATLESの「I Am The Walrus」に似たイメージのへヴィチューン。スティーヴン&ジョーとマーク・ハドソン他による共作。「不思議の国のアリス」をモチーフにした楽曲で、実際同名映画でのセリフをそのまま挿入したりして、「I Am The Walrus」っぽいサイケさを強調しています。ストリングスやブラスが被さって更に重厚なイメージを作っていますが、メロディ自体は如何にもBEATLES好きなエアロらしいシンプルなもの。アイディアの割には曲が‥‥という印象もなきにしもあらず。ちょっと空回りし過ぎかな? ま、この辺の課題は次作にまで持ち越されるわけですが‥‥。

●M-9:Crash
エアロ版パンクソングといったイメージの強いファストチューン。スティーヴン&ジョーとマーク・ハドソン他による共作。イントロ部分でうっすらと「Toys In The Attic」が聞こえていたり、曲全体の印象が「Rats In The Celler」に似ていたり等、過去の名曲の路線を踏まえた内容なのですが、演奏が若々しいこともあってか、非常にパンキッシュな印象を受けます。考えてみればこのアルバム自体、時代に逆行したという意味ではパンキッシュな1枚なんですけどね(ヒップホップやヘヴィロックが蔓延する中、従来のエアロらしさを固持している点はさすがとしか言いようがないですしね)。ギターの暴れ具合も素晴らしく、そこに絡んでくるハーモニカといい、ボトムをしっかり支えるリズム隊といい、とにかく文句なし。まるでガレージに集まって「いっせーのーせー」で演奏してるかのようですね。

●M-10:Kiss Your Past Good-Bye
スティーヴンとマーク・ハドソンによる共作。カントリーやサイケの色合いを持つミドルチューン。BEATLESっぽさを感じさせるという意味では、前作での「Livin' On The Edge」等の流れにあるといっていいでしょう。演奏は意外とヘヴィなんですけど‥‥あまり印象に残らないのも確か。悪い曲ではないんですが‥‥途中、歌詞が「Kiss your past good-bye」から「Kiss your ass good-bye」に変わってる辺りはさすがと思いますけどね。

●M-11:Pink
スティーヴンとグレン・バラード、そしてリッチー・スパによる共作。アルバムからの第3弾シングルとしてリカットされ、何故かその後のライヴでもずっと演奏されている謎の1曲。正直、ライヴで聴くと退屈極まりない曲なんですけどね‥‥ラジオ向けという印象の、アコースティック色の強いカントリー調ポップソング。

●M-12:Falling Off
日本盤及びヨーロッパ盤にボーナストラックとして追加収録された1曲。ジョー&スティーヴンとマーティによる共作で、ジョーがリードボーカルを取るROLLING STONES風のアーシーなロックンロール。イントロでのリフを聴くと、70年代の‥‥『DRAW THE LINE』辺りの彼らを思い出します。けど歌メロやアレンジは「80年代復活後」の彼らなんですよね。個人的には悪い曲だとは思わないし、まぁアルバムに1曲はあってもいいかな?というタイプ。ただ、完成度だけでいうなら前作の「Walk On Down」(同じくジョーがボーカルを取る曲)の方が上だったけどね。

●M-13:Fall Together
日本盤のみに追加収録されたボーナストラック。スティーヴンとマーク・ハドソン等による共作。これもちょっと70年代的な色合いを持つ、シンプルなミドルテンポのロックンロール。悪い曲ではないけど、正直このアルバムの色には合わない気が。ま、だから本編から外されたわけだけど(だったらそんな曲をボーナストラックとはいえ、アルバム本編の中に挿入するな!って話もありますが)。こういう曲を喜んで聴くのは、多分ハードコアなエアロのファンか、初期のシンプルなロックンロールをやってた頃のエアロが好きだったオールドファンか、単純に今のエアロが気に食わない人達くらいじゃないでしょうか。ま、あってもなくてもいい曲ですね。嫌いじゃないけどさ。

●M-14:Attitude Adjustment
スティーヴン&ジョーとマーティによる共作。ヘヴィ且つグルーヴィーなミドルチューンで、個人的にはアルバムの中でも1,2を争う程好きな曲。シングル向きではないけど、アルバムの中ではいいアクセントになるナンバー。多分ライヴでやっても盛り上がらないだろうけどさ‥‥適度なポップさを保ちつつしっかりヘヴィ。当時多くのバンドがヘヴィの意味を履き違えていた中、本家といえる彼らは何らスタイルを変えることなく、平然とこういうことをやってのけたのだから‥‥さすがだね。

●M-15:Fallen Angels
アルバムラストを飾るサイケなバラードナンバーは、スティーヴン&ジョーとリッチー・スパによる共作。前作でいうところの「Amazing」のラインを狙ったんだろうけど、完全に違ったものとして完成しましたね。前作では悲壮感の中にも一筋の光が見えるような希望を持った1曲でしたが、今回は‥‥アルバム全体がどことなく「ダーク」で「サイケ」な色合いを持っているためか、ちょっとひねくれた印象を受けます。何もない所にお花畑が見えちゃうような‥‥ズバリ言っちゃえば「トリップ感」を味わえる1曲とでもいいましょうか。そういえばこの頃、以前所属していたマネージメントから「彼ら(エアロのメンバー)は再びドラッグに手を出し始めた」なんて難癖を付けられましたが、それはこの作風を指して言っていたのかもしれませんね。もしかしたら‥‥実際にやってたのかもしれませんけど。まぁ個人的にはドラッグやろうがやるまいがそんなに気にしないんですが‥‥このアルバム全体を覆う「一枚幕を被せたかのようなこもり具合」が、確かにそれっぽいんですよねぇ‥‥真相は本人達にしか判らないわけですが‥‥エンディングで延々続くアシッドテイストの演奏も、如何にもそれっぽいし。ま、個人的にはラスト2曲の流れは大好きなんですけどね。エアロのアルバム中、最も好きな流れかも。


●総評
とまぁ長々と解説してきましたが‥‥何故このアルバムが駄作呼ばわりされるのか、途中で何度か欠点を挙げていますが‥‥とにかくね、曲数が多い(日本盤はオリジナルよりも2曲多い)/収録時間が長い(日本盤はトータルで70分超)/似たようなタイプの楽曲が多い(特にバラード系ね)等々。楽曲単位でいえば前作よりも平均的に完成度が高いと思うんですが、例えば前作にあったような決定的名曲が存在しない。「Livin' On The Edge」や「Eat The Rich」、「Amazing」みたいなのがね。あと、タイミングも悪かった。「I Don't Want To Miss A Thing」がすぐ後に出て、そっちが爆発的にヒットしちゃったでしょ。その影響で印象が薄らいだってのもあるよね、残念ながら‥‥だからなのか、このアルバムからシングルカットされた楽曲ってバラードタイプばかりで、ロック色の強い曲ってリカットされてないんですよね。その辺りが、従来のエアロを愛するファンから敬遠された理由なのかもしれません。ま、シングル云々は蛇足ですけどね。

個人的にもこのアルバム、そんなに好きな作品ではなかったんですが‥‥改めて聴いてみたら、意外といいと思えたんですよ。少なくとも、リリース当時よりも好きですよ。でね、俺はこう解釈します。前作「GET A GRIP」リリース時のインタビューで、スティーヴンは「これこそエアロ版『SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』だ!」と発言してるんですよ。というのを受けて‥‥俺はこの『NINE LIVES』を「エアロ版『MAGICAL MYSTERY TOUR』」と呼びたいと思います。じゃあ『JUST PUSH PLAY』は『ホワイト・アルバム』か!?と突っ込まれそうですが‥‥とにかく『GET A GRIP』から『JUST PUSH PLAY』の3枚は、一直線上に並ぶ作品だという事実だけは、間違いないと思います。



▼AEROSMITH『NINE LIVES』
(amazon:国内盤CD海外盤CD

投稿: 2004 01 19 12:00 午前 [1997年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2003/11/03

U2『POP』(1997)

'97年初めにリリースされた、U2通算9作目のオリジナルアルバム(ライヴ盤を除く)、「POP」は古いファンの間では酷評されることの多い1枚なのではないでしょうか? その大きな理由として「テクノロジーを前面に打ち出して、初期の頃にあった熱さ(良さ)が薄れた」というのがあると思うのですが‥‥本当にそうなんでしょうかね? テクノロジーを前面に出す、イコール、熱さが薄れるとは個人的に思ってませんし、実はこのアルバムこそが'90年代の作品で最も「初期3部作(「BOY」「OCTOBER」「WAR」)」に近い色合いを持った作品集だと思ってるんですけどね。

けど、やっぱり一聴してその変化に驚かされた、ってのには同意しますよ。特にこのアルバムの場合はファーストシングルにもなった1曲目 "Discotheque" のインパクトが強烈でしたしね。PVを観たら更にビックリでしょうね。サウンドだけ聴いてれば確かにあのU2なんですよ。ドラムサウンドといい、あのキラキラしたギターフレーズといいカッティングといい、ボノのファルセット混じりの歌唱法といい‥‥けど何かが決定的に違う。サウンド・アレンジのせいなのか、妙な軽薄感が漂ってるんですよね。だからでしょうね、初期のディープなU2を愛する方々から敬遠されたのは。

でもね、楽曲としては本当によく出来たものばかりなんですよね。所謂「テクノ」の要素を見事に取り入れたダンサブルな "Do You Feel Loved" であったり "Mofo" であったり。特にこの頭3曲の並びは、過去のU2のどの作品と比べてもインパクトの面では1、2を争う出色の出来ではないでしょうか? 個人的には「THE JOSHUA TREE」に並ぶ出来だと思ってますよ。

その後もトリップホップ的、あるいはエレクトロニカなんかの影響すら感じさせる色合いを持つアレンジ曲が続々登場。勿論、従来のU2的な歌を聴かせる楽曲もある。前半の派手さと比べれば、後半‥‥特に "Miami" 以降の流れってかなり地味ですよね。この辺もこのアルバムが嫌われる要因のひとつかな、という気がしないでもないですが‥‥実は個人的に、この後半こそが「'90年代のU2の集大成・真骨頂」だと信じて疑わないわけです。ビョークだったりRADIOHEADだったりblurだったり‥‥そういった先鋭的なアーティスト達が21世紀に向けて試行錯誤していく中、U2は'97年初頭の時点でひとつの流れ/答えを導き出してるんですよ。テクノ/デジロック/ブレイクビーツ/トリップホップ/エレクトロニカ‥‥そういったダンスミュージックのフォーマットを流用して、尚かつ「そのもの」を模倣するわけではなく、あくまで「一聴してU2と判る楽曲」として完成させている点。初めて仕事をする外部のアーティスト/プロデューサーとの共同作業ながらも、決して「U2らしさ」を損なっていない(と、俺は感じている)。単なる「リミックス・アルバム」にはならずに、あくまで「U2としてのオリジナル・アルバム」として完成されているのは、正直さすがだと思いますね。

ダンスミュージックのフォーマットを流用して、と書きましたが‥‥決して「踊れる」アルバムとは言い難いのも、U2らしいというか。どちらかというとこのアルバム、リスニング向けかなという気がしないでもないですよね。前半にはクラブ仕様のアッパーな曲も幾つか用意されてますが、上にも書いたように "Miami" 以降の流れは確実に「フロア」という「ダンスに必要不可欠」な要素を無視したかのような作り/アレンジになってますし。この辺もまぁその後の「リスニング重視のテクノ」というひとつの流れを酌み取っているようにも思えるし、単に「ディープなU2」を重視したらそうなっただけなのかもしれないし‥‥まぁだからこそ俺は信用できたわけですよ、このアルバムを。特に本編ラスト3曲の並び‥‥ "If You Wear That Velvet dress" ~ "Please" ~ "Wake Up Dead Man" の流れは強烈ですよね。頭3曲の構成といい、ラスト3曲の構成といい、本当にこのアルバムの構成って考えて作られてるよな、と個人的に思うわけです。派手さと地味さ。けどそれらが全部地続きだという事実。「テクノ3部作」と呼ばれる'90年代のアルバム‥‥「ACHTUNG BABY」や「ZOOROPA」から地続きなのは当然として、実はファーストアルバム「BOY」からずっと地続きだという事実。このアルバムの本当の凄みは実は「古くから彼等を知っているファン」にこそ判り得るものなんじゃないか‥‥っていう気がするんですけどね。だからこそ、そういったファンからの評価が低いというのはとても残念でなりません。

U2は結局、続くアルバムではここで試したフォーマットを引き継ぐことはありませんでした。だからこそファンはこのアルバムを重要視してないんですよね‥‥今だからこそ、再評価の季節に来てるんじゃないのかな、と個人的には思うんですけどね‥‥



▼U2『POP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 11 03 05:23 午後 [1997年の作品, U2] | 固定リンク

2003/10/09

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『chicken zombies』(1997)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが1997年11月にリリースした、通算3作目のフルアルバム「chicken zombies」。リリース当時、これ程衝撃を受けたロックアルバムはあの時代にはなかったよね。いや、俺だけか。あの頃、ギターロックに対して見切りをつけそうになってた俺を再び振り向かせてくれたのが、このアルバムでした。

  ミッシェルはデビュー後間もなくに、深夜番組でよく "世界の終わり" や "ブラック・タンバリン" のPVが流れてたので、それを切っ掛けにファーストアルバム「cult grass star」に手を出したんですが、そんなにハマらなかったんですよね。上記の曲は勿論気に入っていたんですが、そこまでのめり込む程じゃねぇじゃん、と。続くセカンド「high time」に関しても、印象は前よりもかなりいいんですが、本気で気に入る程じゃないな、と。この頃、初めて彼等のライヴに行ったんですが、もう音源よりもライヴの方が数万倍いいのね。何でこの勢いがCDで再現できないのかなぁ‥‥ってずっと思ってて。

  そんな思いでちょっと離れたところから彼等の動向を伺っていた俺ですが、シングル "カルチャー" や "ゲット・アップ・ルーシー" でガツーンとやられて。「ああ、段々『あの感じ』に近づいてるじゃんか」って。そして決定打となった "バードメン" と、このアルバム。もうね、最初から瞳孔開きっぱなし、アクセルは全開で踏みっぱなし、みたいなそんな世界を両肩掴まれて身動き取れない状態にされて無理矢理見せられてる、そんなアルバム。

  ホント、1曲目の "ロシアン・ハスキー" から最後の "アイブ・ネバー・ビーン・ユー (King Time)" までのトータル45分がアッという間。例えばファーストアルバムはいい曲が多かったけど、デビューアルバムとしては大人しすぎたし、セカンドは前半までそういった空気を引きずり、後半になってドンドン盛り上がっていくという、ちょっと勿体ない作風だったのに対し、このサードアルバムではとにかく走りまくり。勿論全曲アッパーな曲ばかりじゃないんだけど、全体の空気としてそういう殺伐さがあるのね。そう、だからこそ中盤最大のハイライトである "ブギー" が映えるわけさ。

  とにかく前半の畳み掛けは圧巻。 "ロシアン・ハスキー" で飛ばして、"ハイ!チャイナ!" で一体感を得て、"マングース" に身を委ねて、"ゲット・アップ・ルーシー" の再録音バージョンで身体中の血液が逆流し出して、"バードメン" で最初のピークを迎える。そしてその先に "ブギー" があるから余計に泣けるんだよね。ここでやっとミッシェルがただのロックンロールバンドじゃないことに気づくわけ。いや、気づくの遅すぎ!とか言わないそこ。

  リリースから6年経った今聴くと、そんな前半よりも後半部はちょっとテンションが落ちるような気がしないでもないけど、多分それは前半の流れがカッチリし過ぎてるからでしょう。雰囲気モノのインスト "COW 5" といい、アルバム用に勢いが良くなった "カルチャー" といい、意外とシングル曲よりも好きな "サニー・サイド・リバー" といい、リフが好みな "ブロンズ・マスター" といい、これまた6分以上もあるミディアムヘヴィ~後半の盛り上がりが凄まじい "ロマンチック" といい‥‥そうそう、ふたつの "アイブ・ネバー・ビーン・ユー" もね。全てのクオリティは前作以上。今聴いても全然色褪せてないしね。

  音楽的にも過去2作の集大成的な作品でありつつ、新しい領域にも踏み込みつつあるホントにいいアルバム。多分「1990年代を代表するロックアルバム100選」とかいう企画があったら、洋楽/邦楽関係なしにみんなが選ぶアルバムなんじゃないでしょうか。そんな気がします。

  当時は興奮しつつも「ああ、音楽的に完成されちゃったかな。この手のバンドって後は結局これの焼き直しになっちゃうしなぁ‥‥」なんて醒めてみたりもしたんですが‥‥まさかその1年後に、これをも軽く上回ってしまうモンスターアルバムを完成させてしまうとはね‥‥当時誰も考えなかったでしょうね。

  解散しても、音楽はずっと残る。5年後、10年後、20年後。彼等の音楽が風化しないためにも、我々は語り継いでいかなくちゃならない。その為にも、誰に何と言われようと俺は書き続けますよ。「chicken zombies」はすっげーアルバムだ、って。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『chicken zombies』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 10 09 12:00 午前 [1997年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/06/03

METALLICA『RELOAD』(1997)

1997年11月にリリースされた、METALLICA通算7枚目のオリジナルアルバム『RELOAD』。そのタイトルの通り、前作『LOAD』とほぼ同時期にレコーディングされたアルバム未収録曲と新たに書き下ろした数曲の新曲をまとめた、正しく「対」となる作品集。前作のレビューにも書いたように、本来は2枚組を想定してレコーディングされたもので、単純に「久しくレコーディングしていなかった為、肩慣らしとしてミドル~スローテンポの曲から録音し始めた」為、『LOAD』はああいう作風になった、とこの『RELOAD』リリース時のインタビューでは語られています。しかし、実際には「ライヴで映えるような速い曲が少ない」「思ったよりも個々の楽曲のパンチが弱い」等といった不評が耳に届いたのか、このアルバムは更に音楽的に拡散方向へ向かい、尚かつ個々の楽曲の完成度が高まっています。

そういえば、このアルバムが発表になる前、ネット上に「新作では久し振りにスラッシュチューンが復活している」なんて噂も上がったのですが、実際にはそういった曲は見当たらず、まぁここ数作ではかなり速い方に入るアルバムトップの「Fuel」がある程度。ファンの願望がこういった噂に繋がったんでしょうね。

当然ながら製作陣は『METALLICA』や『LOAD』とほぼ一緒。そりゃそうか。しかし、これら2作と決定的に違う点があります。それはゲストプレイヤーが参加してる点でしょう。まず、このアルバムからのファーストシングルとなった「The Memory Remains」にコーラスで参加したマリアンヌ・フェイスフル。当初はパティ・スミスに依頼しようと思ってたなんて声もあったようですが、そういう枯れた声を求めていたんでしょうね。で、結果としては見事にマッチしてるし、METALLICA特有の「もの悲しさ」を更に増長させ、成功だったといえるでしょう。楽曲もただのミドルヘヴィに終わらず、非常に練られたメロディが耳に残り、全体的にコンパクトにまとまっています。ただ長いだけでダラダラやってる感が強かった前作とは大違い。

更に異色作「Low Man's Lyric」にはバイオリンやハーディ・ガーディ奏者が参加しています。この曲自体、これまでのMETALLICAからは考えられないようなアイリッシュ・トラッド調の1曲で、インパクトの点では間違いなくこのアルバムの中で一番です(それが良いかどうかは別として)。ここまで来るともはや「世界で一番ヘヴィなバンド」の代名詞だったバンド名すら邪魔に思えてきますよね。

全体的にはミドルヘヴィ、スロー、ヘヴィブルーズ、ファストナンバーがバランス良く絶妙に配置されていて、少なくとも前作みたいに「途中でダレる」「同じような曲調が続く」といったマイナスポイントは目につきません。個々の楽曲もちゃんと練られているし。アルバムリリース前から既にライヴでは演奏され、駄曲のイメージが強かった「Devil's Dance」もスタジオテイクはそんなに悪いと感じないし。構成自体は全く同じはずなのにね。レコーディング時期の違いなのか、それともミックス等の技術的な違いなのかは判りませんが、本当にそんなに悪く感じない。

「過去の二番煎じ」が多かった前作ですが、今作でもおおっぴらにそれを実行しています。いや、むしろ開き直ってる節すらあるし。「The Unforgiven II」が正にそれで、タイトルからお判りの通り『METALLICA』収録のヒット曲「The Unforgiven」の続編なのです。たまたま作ったギターフレーズにメロディを載せて歌ってみて、後で聴き返したら「The Unforgiven」にそっくりだった、だったらいっそのことイントロとサビの歌詞はそのまま残して続編的な内容となる楽曲にしよう、ということになったらしいです。ま、悪い表現だと二番煎じになりますが、個人的にはそんなに酷い出来じゃないし、むしろ普通に聴ける楽曲なのでノー問題。こういうお遊びもアルバム2枚分もの楽曲を作ったからこそ許されるわけで。要するに「肝心の曲が良ければノー問題」なんですよ。

また、ジェイソンが作曲に絡んだ曲も今回は無事収録(『LOAD』には入ってなかった)。「Where The Wild Thing Are」がそれで、これも非常に風変わりな1曲。ニューウェーブっぽい浮遊感のあるメロディが印象的な前半部と、如何にも彼等らしいヘヴィな後半部との対比が非常にユニークで、ボーカルにかけたエフェクトも個性的。それにしても、ジェイソン在籍時に彼が関わった楽曲がたったの2曲だけっていうのも……そりゃ不満もたまるわな?

アッパーな曲も「Fuel」や「Prince Charming」等、非常に充実しています。もうちょっとテンポは落ちるものの、「Better Than You」と「Attitude」もこの部類に含めても問題ないでしょう。特に前者2曲は決してヘヴィメタリックではないものの、非常に優れもののハードロックチューン。最近(2003年5月)のウォームアップギグでも「Fuel」だけは何度か披露してるようです。初期のガムシャラな疾走チューンとは一線を画するものの、これはこれでいい曲ではないでしょうか?

当然のようにこのアルバムもリリースと同時にアメリカで1位を獲得し、短期間で数百万枚ものセールスを記録したようです。そしてMETALLICAはこのアルバムのリリース後である1998年5月に、ようやく来日を果たします(1993年春以来の来日。『LOAD』に伴うツアーでは来日は実現せず)。

改めて『LOAD』と『RELOAD』を振り返ってみると、2枚同時発売や2枚組としてリリースしないで正解だったな、と思うわけです。というのも、『LOAD』での失敗・不評を前にして、体制を立て直して『RELOAD』に向かったわけですから、後者が悪くなるはずがないのです。そりゃ確かに初期の作品群とは方向性も作品の質も全く違うし、それどころか『METALLICA』という壁を超えられずにいるのですが、今こうして聴いていると……これはこれで良かったかなぁ、と思うわけで。個人的にはモダンヘヴィネスやラップメタル方向に行かなかっただけでも感心というか(だからこそ、後の「I Disappear」には失望したわけですが)。

ただね、やっぱり意図的に「ヘヴィメタル」から遠ざかろうとし、「アート」に拘った作品作り(変に凝った曲作りや音楽性の拡散。CDブックレット内の写真をアントン・コービンが撮影していたり、PVが意味不明な不条理アート作品になっていたり、等々)には、正直疑問を感じていました。何気取ってんだよ!って。お前らがU2やR.E.M.、RADIOHEADになる必要はないんだよ。だって彼等は既に存在するんだから。そりゃね、メタルを新たな次元へと引っ張っていこうってのも判らないでもないけど(ってそういう意識は薄かったか、当時は)……もっと違った方法があったのではないか?と思うわけです。

ま、そういう試行錯誤があったからこそ、6年後に『ST.ANGER』という名盤を生み出すことになったんだから、良しとするか。その代償はかなり大きかったけどね。



▼METALLICA『RELOAD』
(amazon:国内盤

投稿: 2003 06 03 04:24 午前 [1997年の作品, Metallica] | 固定リンク

2003/05/08

MANSUN『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(1997)

先頃解散を発表した、イギリスのMANSUN。この3年くらい新譜が出てないんで、そろそろアルバムが出るんかな‥‥なんて思ってたら解散発表って。確か昨年の夏頃、レコーディングの合間にツアーとかやってましたよね? てっきり今年の夏はどこぞのフェスに出演してくれるとばかり思ってたのに‥‥非常に残念であります。そして既にレコーディングが完了している、夏リリース予定だった4枚目のアルバムの行方は? とにかくポール・ドレイパーという男のことですから、きっと何か企んでるに違いないでしょうね。

そんな彼等が'97年初頭に発表したファーストアルバムがこの「ATTACK OF THE GREY LANTERN」。俺はこのバンドを前年夏頃に、このアルバムにも収録されているシングル曲"Stripper Vicar"のPVで知ったわけなんですが‥‥とにかくね、自分が'80年代に愛したUKロックのエッセンスがいろいろ詰まった音を発するバンドだなぁってのが第一印象。特にボーカル、ポール・ドレイパーの声や歌い方がDURAN DURANのサイモン・ル・ボンに似てたりする辺りが非常に好みでして。んで、いろいろ調べてみるとこのバンド、「ROMO(ロモ)」とか呼ばれてたみたいで。ブリットポップ崩壊後、いろいろ新しい形でUKロックを持ち上げようとメディアが作り上げた造語だそうですが、まぁ早い話が'80年代初頭に流行ったニューロマンティックの'90年代版みたいなもんですかね。だからあながち間違ってなかったわけですよ、俺の印象も。

所謂ギターロックとはちょっと一線を画する音楽性を持ったバンドなだけに、意外と苦手意識を持ってる人が多いようですが、恐らく'80年代通過組‥‥中でも上に挙げたDURAN DURAN等のニューロマ関係通過組は問題なく受け入れられるサウンドだと思うんですよね。逆に、OASISだ、STONE ROSESだ、って騒いでる若いロックファンはこういうサウンドをどう受け取るんでしょうか‥‥って当時、自分の回りにMANSUN好きって人が殆どいなかったので(知らないから聴かせてみたら無反応、ってのが多かった)実際のところどうだったのか判りませんが。

今聴いても全然古くさくないし、逆にイケてると思うんですよね。シンセや打ち込みを多用し、甘ったるいメロディやムーディーな音像。そしてポップな歌メロ、クセの強いボーカル等々、とにかく個性的ですよね。ということは、逆にそういった要素が苦手だという人も多いんでしょうね。うん、何となく理解できますよ、その気持ち。けどね、その苦手意識を克服した時に訪れる快楽‥‥それが堪らないんですよ、このバンドの場合は。

明るくなり過ぎず、どちらかというと暗いイメージのあるメロディ。これ、如何にも日本人好みだと思うんだけど、どうでしょう? "Wide Open Space"や"She Makes My Nose Bleed"、それに続く"Naked Twister"のメロディ運びは絶対に日本人好みだと思いませんか? で、こういうメロディ運びを得意とするバンドって結構日本にいませんか? そう、所謂ビジュアル系に多いんですよね、こういった耽美なイメージ。そういえば、L'Arc-en-CielのメンバーがMANSUNを好きと発言したことがあったらしく、その後ラルクとMANSUNを比較する人も結構現れたとか。MANSUNからラルクへと流れていった人を俺は何人か知ってますよ。その逆もいたんではないでしょうか?

とにかく、シングルヒット曲が数多く収録されていて(5曲。"Egg Shaped Fred"、"Stripper Vicar"、"Wide Open Space"、"She Makes My Nose Bleed"、"Taxloss"の順にリリース)初期のベスト盤的役割も果たしているこのアルバム。残念なのは同じシングル曲でも初期の名曲"Take It Easy Chicken"が未収録なこと。これ、本当にカッコイイ名曲なんで、ボーナストラックとしてでも入れて欲しかったなぁ(ま、日本ではファーストが出る半年前にミニアルバム「JAPAN ONLY EP」がリリースされていて、そこには収録されてるんですよね)。

ムーディーな"The Chad Who Loved Me"~"Mansun's Only Love Song"という流れでスタートするこのアルバム、サウンドで直接的な激しさを表現するのではなく、あくまで歌やちょっとしたフレーズによって、もっと根底にある情念をアルバム全体で表現してるように感じられます。その後の彼等と比べれば非常におとなしい印象を受けますが、これはこれでひとつの完成型なのではないでしょうか。つうか新人のくせにこの「出来上がり感」って、正直どうなのよ!? ま、だから賛否が激しかったのかもしれないよね(あとはポールの数々の発言が反感を買ったりしたのも大きいよね)。

例えばMANIC STREET PREACHERSが持つ過剰なまでのメロディアスさを好む人には間違いなく受け入れられるでしょうね。ある種、MANICSとMANSUNって似たもの同士っていうイメージがあるし。「UKギターロックとはこうあるべき!」といった頭デッカチの方々にはお勧めしませんが、まだMANSUNを聴いたことのないって人は、とりあえずこのファーストから聴いてみることをオススメします。んで、続くセカンド「SIX」での変貌振りに腰を抜かしてくださいね!(この辺の流れもある種、MANICSに通ずるものがあるよなぁ)



▼MANSUN『ATTACK OF THE GREY LANTERN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 05 08 09:16 午後 [1997年の作品, Mansun] | 固定リンク

2003/02/05

Theピーズ『リハビリ中断』(1997)

  '96年3月に2年8ヶ月振り、5枚目のアルバムとなる「どこへも帰らない」をリリースしたピーズ。5月にはアルバムから久し振りのシングルとして"底なし"を、カップリングにアルバム未収録の"Yeah(江戸川橋セッション)"(正式メンバーとして加入した吉田武彦、初のレコーディング参加曲)を加えてリカット。その後ツアーを開始するものの、ピーズ史上最大のアクシデントに遭遇します。ツアー終了と共に、長年連れ添ったギターのアビさんが脱退してしまうのです。しかも同時に、加入したばかりの吉田も脱退、はるはたったひとりになってしまうのです。
  夏にはギターに土田小五郎、ドラムに石原弘一を起用してツアー再開、11月にドラムがヨッちゃんにチェンジした後、再びツアー。そしてはる、小五郎、ヨッちゃんのメンツで翌'97年1月にレコーディングに突入し、その年の5月には6枚目のオリジナルアルバム「リハビリ中断」をリリースします。

  とにかくウガンダ脱退後からメンバーチェンジの激しかったピーズですが、いよいよこのアルバムでは初期を支えたメンバーははるひとりになってしまいます。基本的にはこれまでの楽曲のほぼ全部をはるが手掛けてきたわけなので、そこまで劇的な変化というのは感じられないのですが、やはりここには前作にあった「波に乗った勢い」や「攻めの姿勢」は感じられず、またピーズ・サウンドの要ともいうべきアビさんの暴れギターがどこを探しても見当たらないという寂しさ、というか違和感があります。勿論、加入したての小五郎もヨッちゃんもピーズ・サウンドを再現しようと(あるいは新たに作り出そうと)頑張っているのですが‥‥

  とはいうものの、やはり楽曲は素晴らしいの一言に尽きます。「とどめをハデにくれ」辺りから顕著になった「楽曲至上主義」の完成型ともいえる内容であり、個々の楽曲の完成度は非常に高いと思います。悪く言えば「以前みたいな強い個性が感じられない演奏」も、楽曲的側面からみれば、その既に完璧ともいえる楽曲(メロディ)を邪魔しないような、地味ながらも的確なプレイをして盛り上げています。BEATLESから始まり、ここ日本ではキャロル~RCサクセションへと続いていった「ニッポンのロックンロール」の、ひとつの完成型だといえるでしょう。この頃には既にシーンには奥田民生やウルフルズといった「土着的なニッポンのロックンロール」を鳴らすアーティストがポツポツと活躍し出していましたが、セールス的には大成功とはいえなかったものの、このピーズの「リハビリ中断」も間違いなくそのひとつに入る作品だと思うし、むしろ真っ先に名を挙げるべき1枚だと個人的には感じています。

  メロディや楽曲の構成もさることながら、やはりこのアルバムは歌詞の深さが大きなポイントともいえるでしょう。前作以上に更に「諦め」や「自己嫌悪」が強く感じられ、また前作ではそれをヤケクソ気味に表現することで「生への執着」を力強く感じさせていたのですが、今回は比較的ミディアムテンポの曲が多いということもあって、表面的には穏やかな印象を受けます。そういった面からすると、「自己嫌悪」がかなりネガなものに受け取れたりするのですが‥‥ちょっと待て、と。本当にそうなのかな、と。確かに俺は負けた、そしてある意味未来に対して何の夢も希望も感じられない、好きな子も離れていったし、大切な友人も離れていってしまった、そんな最悪な人生をこのまま消去したい、けどまだ傍には2人の仲間(小五郎とヨッちゃん)がいる、ダラダラと人生は続いてく、まだ進まなきゃならい、生き延びていかなきゃ‥‥という覚悟を俺は感じるんですよね。ま、その辺は特に頭3曲("線香花火大会"、"鉄道6号"、そしてアビさんとの別れを歌ったとされる"実験4号")の歌詞を読んでもらって、各々の思うがまま、感じるがままでいいんですけどね‥‥俺が「これはこうです!」と断定してしまうんじゃなくて、聴いた人それぞれの感じ方があると思うんで。それがピーズに対する正しい接し方ですから。

  とにかくね、ここでどの曲が特に素晴らしいとか、そういうのはやめようと思います。だって、10曲全部が名曲ですからね。この10曲でひとつの物語、ピーズ末期の、当時31歳(奇しくも今の俺と同い年)だった大木温之という男の「日常」を綴った物語なわけですから。"線香花火大会"から始まって"反応ゼロ"で終わる、約30分のショートムービーみたいなもんですよ、これは‥‥

  確か当時も「名盤!」みたいに騒がれたと記憶してるんですが(実際、数年振りにこのアルバムでピーズと再会したわけですし、俺)、このアルバムのリリースから約3ヶ月後、ピーズはひとつのポイントに到達します‥‥「活動停止」。'97年8月にピーズは一旦ここで終了するのです。「リハビリ中断」なんてもっともらしいタイトルのアルバムをリリースした後に‥‥はるは活動停止と共に、表舞台からも姿を消すのでした‥‥そんな彼が再び公の場に大々的に復帰するのはそれから約3年後、旧友の真心ブラザーズのバンドメンバーとしてでした。そしてそれが切っ掛けとなり、ピーズ復活を熱望する声が徐々に高まっていくのでした。



▼Theピーズ『リハビリ中断』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 02 05 03:49 午前 [1997年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク

2001/09/09

OZZY OSBOURNE『THE OZZMAN COMETH』(1997)

1997年11月に発表された、BLACK SABBATHから現在までのオジー・オズボーンの歴史を総括するような内容のベストアルバム。普通ベストアルバムというと「興味はあるけど聴いたことがない初心者向け」というお手軽さがあって、コアなファンには必要のない代物の場合が多いが、これはちょっと違う‥‥マニアをも唸らす音源入りなのだ。「ベースメント・テープス」と銘打たれたそれらの音源は、当時流行っていた「BBCラジオ・スタジオライヴ音源」に匹敵する、或いはそれ以上のお宝で、音は悪いものの資料価値としてはかなりのものなのでは‥‥なんて騒がれた程だ。

'70年のBLACK SABBATHのリハーサルテープだという4曲(本編のディスク1に "Black Sabbath" と "War Pigs" が、ボーナスディスクには "Fairies Wear Boots" と "Behind The Wall Of Sleep" の計4曲)が収録されているこのベスト盤。コアなサバスファンをも唸らすそれら4曲は確かに衝撃だ‥‥10分近くもある "Black Sabbath" は勿論なのだが、何よりも驚いたのが‥‥恐らくまだセカンドアルバムをレコーディングする前のリハのものだと思われる "War Pigs" だ。何せ歌詞が現存のものと全く違うのだから。国内盤には歌詞が付いているがオリジナル音源のものなので、これ程意味をなさないものもなかろう。アレンジ自体はほぼ完成型に近いのだが、唄われている内容は‥‥聞き取り難いのだけど‥‥多分当初は「War Pigs」ってタイトルではなかったのでは?と思わせる節もある。所々現在の歌詞を思わせるフレーズがあるものの、やはりどこかぎこちなさを感じさせる。非常に面白い代物だろう。

4曲全てに共通する事なのだが、演奏がスタジオテイクと比べてスローで、かなりドゥーミーな雰囲気を醸し出している。もしかしたらマリファナでラリってる状態で演奏されたものかもしれない。それとチューニングの問題。ライヴでのサバスは既に当時からチューニングをスタジオテイクよりも1音下げていたという。これは'80年に急遽リリースされたライヴ盤「LIVE AT LAST」でも確認できる。ということは、やはりこれらの音源はライヴではなく、リハーサルの音源という事になるのだろうか‥‥当のオジーでさえもこれらの音源が何時・何処で録音されたものなのか、正確には判らないという位、いい加減に録音されたものなのかもしれない。モノラルでかなりこもった音をしてるが、当時の雰囲気だけは掴めると思う。いや、ある意味この録音状態がBLACK SABBATHというバンドの体質にピッタリなのかも。

というわけで、貴重音源を含むこのベスト盤。メインディッシュはなにもこれだけではない。新曲(いや、正確には未発表曲)も含まれている。ディスク1最後に収録されている "Back On Earth" がそれで、録音自体は'95年にリリースされたアルバム「OZZMOSIS」当時のものだ。所謂アウトテイクなのだが‥‥本来は当時('97年)のバンドメンバー(ジョー・ホルムズ、ロバート・トゥルージロ、マイク・ボーディン)と共に作った曲を収録する予定だったが、時間の都合で完成にまで到らなかったらしい。しかし一説によると、ジョーの書く曲にオジーが満足しなかったという噂もある。これが結局、現在のザック・ワイルド出戻りに関係してくるのかもしれない。

で、この未発表曲だが‥‥特に可もなく不可もなくといった出来の、「OZZMOSIS」にそのまま入っていても不思議ではない、メロウな楽曲。けど特に印象に残るような曲でもないという事も付け加えておこう。これだったらボーナスディスクに日本盤のみ追加収録されている "Walk On Water" の方がいい曲のように思えるのだが(アメリカで当時流行っていたアニメ「ビーヴィス&バットヘッド」のサントラ盤に収録されていた曲)‥‥他にもこのボーナスディスクには映画「HOWARD STEIN : PRIVATE PARTS」のサントラに収録されていたTYPE O NEGATIVEとの共演曲である "Picture Of Matchstick Men" (STATUS QUOの'68年のヒット曲のカヴァー)も収録されていて、お得だ。更には'88年に行われたオジーとRED HOT CHILI PEPPERSのベース、フリーとの対談(17分)も収録されているが‥‥英語に自信のある方のみ聴いていただきたい。

以上のように、既に全アルバム持っている人に向けてはそれなりの価値がある音源が幾つか入っているので、まぁ通勤通学時に気軽に聴くには(サバスのリハテイクは気軽に聴けるような代物とは思えないが)いい1枚かもしれない。では、これからオジーを聴いてみようと思ってる人には‥‥確かに代表曲が殆ど収録されているし、コアなファンからすれば疑問の残る曲もあるにはあるが‥‥まぁオジーの歴史をかいつまんで知りたいあなたには打って付けの1枚かもしれない。ランディ・ローズ(初期オジー・ソロの立て役者であり、メタル界屈指の名ギタリスト。'82年3月に飛行機事故で亡くなっている)在籍時の音源もサバス "Paranoid" のライヴテイクも含めて5曲も収められているし(最も在籍期間の長いザック時代の6曲に次ぐ多さ)。逆にジェイク・E・リー時代が少ない気もしないではないが‥‥これから聴くって人には、約30年近い歴史を15曲で追うのだからこれでいいのかもしれない。逆に興味を持ったなら、ライヴ盤(「LIVE & LOUD」か、ランディ在籍時の名ライヴ盤「TRIBUTE」)に手を出せばいいわけだし、更にサバスに手を出せばいいだけの事だ。

最後に‥‥このレビューを書くに当たって、既に中古盤屋に売ってしまっていたこのアルバムを買い直したのだが‥‥やっぱりオジーは、俺の十代を象徴する曲ばかりで‥‥青春って感じなんだな。ドロドロしたイメージがあるかもしれないが、"Goodbye To Romance" のようなメロウなバラードもあるし(リサ・ローブがカバーしたバージョンも素敵です)、"Mr.Crowley" みたいな泣きの曲もあるし‥‥高校時代 "Crazy Train" とかバンドでコピーしたり、自身のギターの課題曲として "Bark At The Moon" のリフやソロをコピーしたのも、今となっては懐かしい思い出。聴いた事がない人。とにかく思った以上にポップだという事に驚かされると思うので、気楽に手を伸ばしてみては如何だろうか?


(2004年5月23日追記)
今回このレビューを再構築するに当たってAmazon.co.jpで現在流通しているこのアルバムを調べたら、2002年のリマスター化の際に収録曲目が見直しされてたのね。ジェイク時代の "Shot In The Dark" が削られて、代わりにザック加入後最初の "Miracle Man" に差し替えられてます。個人的には "Shot In The Dark" って大好きな曲なので、どうせならライヴでもあんまり演奏する機会のない "Crazy Babies" を削ればよかったのにね。ってそれって偏見?



▼OZZY OSBOURNE『THE OZZMAN COMETH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 09 09 04:25 午前 [1997年の作品, Black Sabbath, Ozzy Osbourne, Zakk Wylde] | 固定リンク

2001/06/16

RADIOHEAD『OK COMPUTER』(1997)

RADIOHEADの通算3作目であり、現在の彼らの基盤となったのがこの「OK COMPUTER」という怪作だという事実は、誰もが認めるところだろう。と同時に、このアルバムでRADIOHEADに対して「好き」「嫌い」という感情がハッキリしてしまったのもまた事実。「PABLO HONEY」や「THE BENDS」でのギターロック・スタイルが好きだった人にとって、このアルバムは「裏切り」だったのかもしれない。しかし、この「OK COMPUTER」への流れは、既に「THE BENDS」の頃から表出していたし、習作をこの時期のシングルのカップリングで発表していた。今でもライヴで必ず演奏される"Talk Show Host"なんて、その代表例だろう。

にも関わらず、彼らは言う。「これは俺達の好きだったRADIOHEADではない」と。そしてメディアは神経を逆撫でする程、声高に叫ぶ。「ロック史上に残る大傑作だ!」「このアルバムが歴史を変えた」と。それを鵜呑みにして、大して聴き込んでもいないのに「やっぱ時代はRADIOHEADだよ!」と知ったかぶりする、なんちゃってロックファン。「これからはRADIOHEADだ」といって散々パクッた二流アーティスト達。そして、今これを書いている俺。更に今、これを読んでいるあなた。俺は全員に問いたい。


・「RADIOHEADらしさって、一体何?」

・「このアルバムの、どこがそんなに凄いの?」


このアルバムを語る時に、俺はどうしてもこの2つの命題とぶつかる。そしてその度に悩み、苦しみ、結局答えを出せずにいた。リリースされたのが'97年5月だったから、既に4年以上もの月日が流れているのだが、このアルバムは未だに輝きを失うことなく、俺の前に立ちはだかる。きっと「20世紀のロック名盤100選」とかやったら、必ず上位5枚に入るんだろう。


本題に入る前に、簡単なデータだけ。'95年3月のセカンドアルバム「THE BENDS」から約2年振りに発表されたこの「OK COMPUTER」は、英国では勿論1位を記録し、更にはアメリカでもトップ20入りしたはずだ(いや、もしかしたら入っていないかもしれない)。そう、今でこそアメリカでも「KID A」や「AMNESIAC」が1位や2位を取っているが、まだあの頃はそこまでブレイクしていなかった。RADIOHEADはデビュー時からアメリカでは恵まれていて、シングル"Creep"がいきなりトップ40入りしたり、ファーストもセカンドもそこそこヒットはしていたのだ。あの時期にデビューした英国勢では、一番最初に。

当時からアーティスト受けや評論家受けはよかったので、当然「ROLLING STONE」誌等でも大絶賛され、翌年のグラミー賞では「BEST ALTERNATIVE ROCK」部門か何かを受賞している。「アメリカのBECK、イギリスのRADIOHEAD」てな例えをされるくらい、評価だけは高かった。

当然、ここ日本でも人気はうなぎ登りで、アルバムはイギリスやアメリカよりも1ヶ月先行という、異例の先行リリース。タナ○ウ大絶賛(苦笑)。'98年1月には3度目の来日も果たし、追加公演も発表される程の大盛況振りだった(当時は国際フォーラムとブリッツ数回、その他地方公演)。

‥‥こんなもんでいい?(笑)まぁこういうのはファンサイトでも読めるし、アルバムのライナーノートでタ○ソウも書いてるだろうから(いや、書いてねぇか?)、そっちもご参考に。


・「RADIOHEADらしさって、一体何?」

一体何でしょう?(笑)こういうのって、聴き手それぞれ感じ方も違うから、個人によって変わってくるものだと思うのだが。だからいち個人が「これはもう、俺が好きだったRADIOHEADじゃないよ」と言ったとしても、それはその人の興味の範疇から外れただけであって、必ずしも俺の興味からも外れるとは限らない。むしろ、この路線に進んだことによって更に好きになった人もいる程だ。いや、俺のことだが‥‥

で、ここで言う「らしさ」ってのを、いち個人の感じ方というよりも、メディアでの「固定観念」として語ってみたい。要するにその「らしさ」って、「NIRVANA以降のギターロック」を意味するんじゃないの? "Creep"を基本として「THE BENDS」へと進んでいった、あの流れを「らしさ」と捉えているんじゃないだろうか? グランジをも、ブリットポップをも巻き込んだスタイル。セカンドの国内盤帯にはTHE SMITHSやQUEEN、STONE ROSESやKING CRIMSONなんかの名前が挙がっていたが、正にそういう「ロック」のいろいろな要素を消化し、再構築したのが「RADIOHEADのロック」だった、と。

きっと多くの人にとっては"Creep"や"Just"や"Fake Plastic Tree"、"Street Spirits (Fade Out)"こそが真のRADIOHEADの姿なのだろう。けどね、俺は思うのよ‥‥


「そもそも、彼らには『らしさ』なんてもの、最初からなかったんじゃないの?」


と。っていうか、固定したスタイルを持たないバンドなのでは? ファーストは確かに未完成な部分もあるが、セカンドではそこから何十歩も何百歩も離れた立ち位置にいた。そしてこのサードでは更に何百キロも離れた場所にいる。路線変更なんて簡単な言葉では片づけられない程、この数年で彼らは急激に成長している。何故こんなに短期間で変化していったのか? それはトム・ヨークを始めとするバンドの5人が、現状維持することを極端に嫌うからだ。覚えているだろう、"Creep"大ヒット後にファンが「第2の"Creep"」を求めたことを。そしてトムはそのことを"My Iron Lung"の轟音の中「これが俺達の新しい曲だよ。前のと同じだろ?」と皮肉混じりに唄っている。

彼らにとって、前と同じスタイルを続けることや現状維持をすることは、恐らく「屈辱」であり「負け」を意味するのではないだろうか? だからトムが「KID A」リリース時のインタビューで「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」と発言したのは、きっと本心なんだろう。多くのロックバンドは延々同じことを繰り返し、前の水増しバージョンを「最新型ロック」と銘打って市場に垂れ流す。トムにはこれは耐えられないことなんだろう。

そう考えると、彼らにとっては「成長」よりも「どうやって変化していくか?」の方が、バンドのモチベーションを上げる大切な要素のように思える。音楽性としてのプログレではなく、精神性としてのプログレッシヴ・ロック。「KID A」レビューでも書いたが、本気で彼らはその姿勢を貫き通しているのだ(「AMNESIAC」は「KID A」と同じようなスタイルでは?という問いが返ってきそうだが、あの2枚はレコーディング時期が一緒なので、俺にとって双子のような存在だということをここで答えておく。詳しくは「AMNESIAC」レビューを参照のこと)。

何度も言う。RADIOHEADには固定されたスタイルなんてものは最初からないのだ。ただ、バンドが曲を作り演奏し、トムが唄えばそれがRADIOHEADの曲として成立する。同じ人間が書いているのだから、曲そのものが180度大変化するとは考えられない。要は装飾の部分なのだ。ギターロックに拘る人にとっては、「OK COMPUTER」以降の作品は辛い内容かもしれない。が、きっと10年も経てばRADIOHEADにとって、ファーストやセカンドの路線こそが「異色だった」ということになってしまうに違いない。逆パターンだが、U2でいえば「POP」の路線が希だったように‥‥


・「このアルバムの、どこがそんなに凄いの?」

このアルバムが苦手だという人の多くは、必ずこう発言する。逆に、このアルバムを絶賛する人間にこの質問をしてみても、答えられないことが多い。実は、俺もずっと答えられずにいた。

雑誌が「凄い」を連発すれば、それを読むことで脳に刷り込まれてしまうことが多い。そしてそれが商業的に失敗してしまうと、数年後に「前作は失敗作だったが‥‥」なんて手のひらを返すんだから、たちが悪い。有名なところでは、ここ2作のOASISがいい例だろう。決して最高傑作とは言わないが、俺はあの2枚はいい作品だと今でも信じているし、実際4作目などは最近になってまたよく聴いてる程だ。

この「OK COMPUTER」に関しても、発売前から「異色作にして大傑作」と各方面で絶賛されていた。時々「これのどこがいいの?」という、どこからどう読んでも見当外れなレビューもあったが、4年経った今でも基本的に「OK COMPUTER」は名作ということになっている。

音楽的に分析すれば、それはもう本当によくできた作品で、ミュージシャン受けがいいのもよく理解できる。特にハードロック系アーティストからそういう声が多く聞こえてきた。実際にこのアルバムから影響を受けているであろうアルバムも何枚か登場した。

勿論、UKロックにも多大な影響を与え、後に「RADIOHEAD型」とまで言われてしまったMUSEなんてバンドも登場した(今思えば、このバンドはまた違う道筋を辿ってきたと思うのだが、それはまた別の頁で)。日本のバンドも少なからず影響を受けているはずだ。

影響力の面で言えば、'90年代に入ってからリリースされたアルバムで、こんなに多方面に影響を与えた1枚は少ないだろう。「rockin'on」方面や「BUURN!」方面両方に影響を与えたという意味では、NIRVANA「NEVER MIND」以来かもしれない。間違いなく、今後もひとつの指針となる作品だろう。

メディアでも未だに傑作扱いされ、ミュージシャンからも支持されているという事実は判った。がしかし、リスナーの立場として考えた時に、このアルバムはどの程度凄いものなのだろうか? いや、どこがそんなに凄いのだろうか??

これを入力しながら聴き始めた「OK COMPUTER」も、既に5順目に入った。で、思ったのだ。


「実はこれ、そんなに凄くないんじゃないの?」


と‥‥って身も蓋もない答えだが(苦笑)。いや、決して「OK COMPUTER」が駄作だとか、過大評価だとか、そういう意味で言っているのではない。肩の力を入れる程凄みのあるアルバムなんかじゃない、聴き流そうとすればできないこともないイージーリスニング的作品でもあるのだが、いざ歌詞を読んでしまうと次からは聴き流すことなんでできなくなる、聴き手を選ぶ作品ではないだろうか?という意味で、俺はこれを凄いアルバムだと思うようになったのだ。だから多くの人間が「RADIOHEAD、凄いよね?」というのとはちょっと違う。その観点からすれば「そんなに凄くないんじゃない?」ってことになるのだが‥‥読み方によってはかなり矛盾した文章になっているが(苦笑)。

現時点で、既にRADIOHEADは「KID A」と「AMNESIAC」という、更に聴き手を選ぶ作品を発表している。実験的作風というのもあるだろうが、多くの場合は「俺的ロック論」から大きく外れていることが「つまらない」とか「興味ない」に繋がっているような気がする。逆に「OK COMPUTER」を当時から気に入っていたファンは、この2枚も好意的に受け入れたようだ(勿論、そうでない人が多いことも知っている)。そういうスタイルの音楽に好意的ではなくても、万人に愛されるアルバムというのは存在する。けど、傑作扱いされながらここまで評価が二分する作品も珍しいのではないだろうか(メディアの評価ではなく、あくまでリスナーの評価という意味で)。そしてそれまでの固定ファンを「ある意味」裏切った作品が、ここまで大絶賛されるのも珍しい。そういう意味でも「凄い」とは思うが‥‥

4年経ったが、未だに俺が納得のいく「理由」には出会っていない。何度か雑誌でも「何故あのアルバムは凄かったのか?」という特集が組まれたが、そこには「答え」は載っていなかった。結局、未だに多くの謎を残したアルバム。それがこの「OK COMPUTER」なのだ。


個人それぞれの「凄い」理由はあるだろう。個人的感情を排除した視点で上のように書いてきたが、個人的にはその他にもごく普通に「"Let Down"や"No Surprises"の、癒されるようなメロディー」とか「自分と向き合うことを迫られる歌詞」だとか「人間本来の情けなさ」だとか挙げることができる。けど、そんな理由を幾つ挙げても、「どこが凄いの?」と聞いてくる人を納得させることはできないだろう。ここまで延々と書いてきたことも、実は大した答えにはなっていないと思う。けど、今一度この作品と向き合うために、こうやって文章としてまとめることが俺には必要だったのだ。

最後に‥‥個人的に俺はこのアルバムを「生涯のベスト3」に入れている。どのくらいこのアルバムが好きかと問われれば‥‥自殺だろうが病気だろうが、俺が死ぬ時はこのアルバムを聴きながら息絶えたい、そう思ってるくらいなのだ。俺にとってはこの「事実」が最も凄みの理由となっているのだが。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 06 16 05:07 午前 [1997年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2001/05/06

Cocco『強く儚い者たち』(1997)

  Coccoをメジャーシーンへと押し上げた、記念すべきヒット曲。当時、某航空会社のCMソングに起用されていたので、記憶に残っている人も多いだろう。こうやって考えると、彼女のような特異なアーティストがデビュー後1年も経たぬ内に、ヒットチャートのトップ10内にランクするという事は、少々意外な気がする。メロディーだけ耳にすれば、とても馴染みやすいポップなメロディーにレゲエサウンドという爽やかなイメージと対照的な、「あなたのお姫様は/誰かと腰を振ってるわ」という身も蓋もない歌詞。当然、テレビで唄う時やCMではカットされるわけだが‥‥。

  そんな大ヒットを記録するこのシングル。収録曲は表題曲の他に、アルバム未収録の"晴れすぎた空"。ここから暫く、マキシ形式をとりながら2曲収録という形が続く。このシングルではある意味、新しい実験的要素を感じる。例えば表題曲の、レゲエテイストにグランジ的なフィードバックギターが加わったりとか、作曲に彼女以外のソングライターを起用したりとか。しかもカップリング曲では、作曲も彼女ではないが、サウンドプロデュースも根岸以外の人間が携わっている。実はこの事実、このレビューを書く為にシングルを取り出して、クレジットに目を通して初めて気づいたのだが。

  こうやって考えると、デビュー曲でコアな音楽ファンに衝撃を与え、このセカンドシングルでタイアップやテレビ出演等、メディアへの露出、そしてポップで親しみやすい曲で一般的な音楽ファン層に印象づけるという戦略だったのかな、と思えてくる。



▼Cocco『強く儚い者たち』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 05 06 01:14 午前 [1997年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『カウントダウン』(1997)

  '97年3月に発表された、記念すべきメジャーファーストシングル。収録曲はアルバムにも収められている"カウントダウン"、"遺書。"、そしてアルバム未収録の"Way out"の3曲。アルバムを持っている人にとっては3曲目に商品価値があるかないかが決め手になると思うが‥‥買いだ。ギターのフィードバックをバックにCoccoの大絶叫からスタートする、滅茶苦茶ヘヴィで血生臭いこの曲、アルバム収録曲に引けを取らない。ブレイク部分がNIRVANAの某ヒット曲を彷彿とさせる辺りから、当時の根岸孝旨(プロデューサー)がどういう方向を目指していたかが伺える。とにかくこれ1曲の為に買っても損はしないと思う。

  当然、その他の2曲も名曲なわけで、あえてここで説明するまでもないだろう。彼女の初期衝動の代表的ナンバーといえる表題曲、そして大陸的な大らかなノリを持ったメロディアスナンバー"遺書。"は、最後のステージとなった昨年10月の武道館公演でも演奏された、Cocco自身にとっても大切な、そして彼女のその後のパブリックイメージとなった2曲なのだ。それにしても、この2曲がデビューシングルってのも、当時衝撃的だった。深夜の高速道路で俺は初めてこれらの楽曲と出会うのだが‥‥今でもあの時の衝撃は忘れられない。



▼Cocco『カウントダウン』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 05 06 01:12 午前 [1997年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/04/28

Cocco『ブーゲンビリア』(1997)

  Coccoというアーティストのイメージを決定付けた、歴史的デビューアルバム。リリースからまだ4年しか経っていないという事実‥‥如何に彼女が短い活動期間の間に、記憶に残る作品を残してきたかが伺える。

  彼女のアルバムを毎回買っている人にはお馴染みだと思うが、アルバムブックレットの一番最後のページ、所謂クレジット類の一番最後に、毎回必ずCocco自身の「Special Thanks To」の欄がある。そこを読むと、毎回そのアルバムのテーマというか、彼女がどういう心境/姿勢でそのアルバムの制作に向かったかが、何となく伺える。例えばこのファーストアルバムでは、こうだ。


私を捨てた人へ、私が捨てた人へ、私を残して死んだ人へ、
私を愛した人へ、私が愛した人へ、私の愛した美しい島へ、
心からのキスを込めて。


  彼女はこのアルバムリリース当時のインタビューで「唄う事は、私を捨てた人への復讐」と言ったという。その言葉通りの歌が、このアルバムから聞こえてくる。その代表といえる"首。"で唄われる「抱きよせて 絡まって/引き裂いて 壊したい。/悩ましく 誘って/蹴落として 潰したい。/あなたと見た海に/その首を 沈めたい。」という印象的な歌詞。しかもこの唄い出しからアルバムはスタートするのだ。

  しかし、決して憎しみだけではない。愛する人に対して「私が前触れもなく/ある日突然死んでしまったら/あなたは悲しみに暮れては/毎晩 泣くでしょう。」「私の誕生日だけは/独り、あの丘で泣いて。/裸のまま泳いだ海。/私を 想って。」と語りかけるような歌詞に、異性ながらも涙ぐんでしまう"遺書。"。いつかは自分から離れていく、又は自分が離れていってしまうと直感的に感じながら、離れていった相手に対して復讐の感情を持ちながらも、それと相反する想いも同時に存在する。そういう経験って誰にでもあるはずだ。相手に裏切られ、絶対に許せないと思いながらも、相手から電話やメールが入ればちょっとホッとしてしまうような‥‥憎しみと愛情は紙一重のようなものだ。このアルバムには、愛するが故、愛しすぎてしまうが故に感じる憎しみ。そんな感情の塊を感じるのだ。

  彼女の詞の世界というのは、リリース当時衝撃的ですらあった。事実、俺の周りの女性リスナーには「生々し過ぎる」という批判の声が多かった。逆に男性からの評価が高かったのが意外だった。実際にここで唄われているような事を自分の恋人に言われたら、どう思うんだろう!?と思ったけど。実際俺も、もし相手にこんな事言われたら‥‥

  こういった激しい感情を、ヘヴィロックともグランジとも取れるようなヘヴィサウンドに乗せているのだから、これもまた衝撃だった。この当時というのは、アメリカではアラニス・モリセットがヒットしていた頃だ。実際、Coccoのサウンドや唄い方(特に独特な節回し)から、時々アラニスからの影響も伺う事ができる。けど、決してコピーにはなっておらず、あくまでオリジナルだと断言できる。これにはプロデューサーである根岸孝旨(奥田民生のバックでお馴染み、Dr.Strangeloveのベーシスト)の才能も大きく影響している。正に二人三脚で制作されたと言っていいだろう。他にもムーンライダーズの白井良明やRed Warriorsの向山テツ、SCUDELIA ELECTROの石田小吉といった個性的なミュージシャンが参加している事も、特筆すべき点だろう。勿論、そういったヘヴィロックだけに拘らず、優しさや大らかさを表現した楽曲も収められているが、そういう緩急は他のアルバムと比べればそれ程大きくはない。やはり「激しさ」。彼女の表現衝動の全てとなったのは、それなのだろう。

  男性からの評価という事でもうひとつ。デビュー当時最初に食い付いたのが、同性アーティストではなく、異性である男性アーティストだったのも面白い。表現に対して貪欲なアーティストはすぐに彼女の歌に惹かれた。その例が佐野元春であったり、hideであった。事実、リリース当時、彼らのオフィシャルサイトで既に彼女について触れられていたし、佐野は自身のイベントにも声を掛けた程だ。雑誌等のメディアでは女性記者受けがよかったようだが、やはり同じ表現者となると、彼女の歌はある意味「タブー」なものに触れてしまったのか、本当の意味で評価されるまでにはもうちょっと時間を要する事となった。

  どうしても奇抜なイメージのあるCocco。異性の俺が言うのも何だが、女性なら誰もが一度は通過するような感情がここには詰め込まれているのではないだろうか? 昨今、こういった「独白系」アーティストが増えているが、やはり彼女を越えるアーティストは現れていない。オリジナルという意味でも、そして純粋に作品としても優れたアルバムなので、もし彼女に興味を持ったのなら一番最初に手にして欲しい作品である。

  最後に、アルバムタイトルになっている「ブーゲンビリア」とは、アルバムブックレット内にもその写真が添えられている、沖縄に咲く花の事だ。ジャケットの絵もそのブーゲンビリアの花を描いたものだ。この絵はCocco自身によるもので、ジャケットは毎回必ず彼女の作品が使われている。絵のタッチからも、アルバムそれぞれの作風が、何となく伺えるのではないだろうか?



▼Cocco『ブーゲンビリア』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 04 28 12:00 午前 [1997年の作品, Cocco] | 固定リンク

2000/12/26

LUNA SEA『SINGLES』(1997)

  1997年の1年間をそれぞれソロ活動に費やしたLUNA SEAの面々。各々大成功を収める中、その年の10月には再びバンドとしてやっていけるのかを確かめる為に、リハーサルに入る。そこで出された結論‥‥1998年を攻めの年にする為に、彼らはこれまでの作品達をひとつの形として残す。それはソロ活動を通して出会った新しいファンに向けた入門書みたいなものでもあった。それがこのシングルコレクションだ。

  2枚組だが、各ディスク共に40分程度、7~8曲という内容になっていて、トータルでも80分に満たないはずだ。ディスク1枚でも発表できたものを敢えて2枚に分けたのには理由がある。ディスク1には活動休止前までにリリースされた全シングルのタイトル曲(所謂A面曲)を、ディスク2にはそのカップリングとして発表されたオリジナル楽曲という風に分かれているのだ。シングルタイトル曲に関しては既に語っているので、ここではそのカップリング曲を集めたディスク2を中心に話を進めていきたい。

  それぞれ発表された時期も録音も全く別々のものなのだが、変な違和感のようなものは感じない。パンキッシュな"Slave"もあれば既に「STYLE」に収録済の"Luv U"もある。プログレッシヴな"Fallout"等はアルバムに入っていてもおかしくないのに、結局コンセプトにそぐわないという理由からシングルのカップリングに落ち着いている。そういえば"Luv U"以外の曲が全てアルバム未収録曲というのもおもしろい。彼らはその後もシングルカップリング曲をオリジナルアルバムに収録する事はなかった。アルバムに入っていてもおかしくない曲もあれば、シングルだからこその実験作もあった。そういう意味では彼らにとってシングルとは、「一般ファンを意識した普遍的楽曲」と「今後を占う実験的楽曲」とを試す場だったのかもしれない。

  それにしてもこのアルバムが最も高セールスを記録したというのも、おもしろい話だ。ただのシングルコレクションでは終わってない、実験作も収められているのに。丁度このアルバムが発売される1ヶ月前には、後に300万枚もの売り上げを記録する河村隆一のソロ「LOVE」がリリースされたので、そこで興味を持ったファンが流れたという事だろう。商売として考えれば完璧だ。

  活動再開を機に、過去の活動に一区切りをつけたLUNA SEAは、このアルバムの発売日に赤坂ブリッツにてシングル曲オンリーのスペシャルライヴを行う。そして彼らはそのまま『第2期LUAN SEA』の幕開けとなる作品を生み出すべく、創作期間に突入する。



▼LUNA SEA『SINGLES』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 26 02:00 午前 [1997年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/11/21

Mr.Children『BOLERO』(1997)

  前作「深海」から約8ヶ月後というハイペースでリリースされた6作目のアルバム。内容的には4作目「Atomic Heart」('94)以降に発表されたにも関わらず、コンセプトから外れるという理由で「深海」からオミットされたシングル曲4曲と、「深海」の楽曲と同時期に書かれた曲を1枚にまとめたもので、考えようによってはバラバラの内容になってもおかしくないのだが、これが意外といい流れをつくっている。新曲群のレコーディングは前年('96)8月から「深海」のツアーが続く中、その小休止ともいえる11月末~12月にあったオフのほんの数週間を使って、ビートルズで有名なイギリスの「アビーロード・スタジオ」でその骨格部分を録音、残りは続くツアーの合間に日本国内で作業されたようだ。

  この「BOLERO」は内容的に、前作「深海」と正反対でありながら「対」のような存在である。「深海」がアナログ録音なのに対して、「BOLERO」はデジタルを駆使している点。前者がアメリカで制作されたのに対して、後者はイギリス。前者はコンセプトアルバムとしての流れを持っているのに対して、後者はナンバー1ヒットを5曲も収録したポピュラーな作り、等々。桜井は当時のインタビューで「本来は2枚組としてリリースされるべき2枚だった」と発言していて、「『深海』というのは『BOLERO』というアルバムの中の、1曲として考えている」とも表現していた。こういう事からも、「BOLERO」というアルバムが決して"Tomorrow never knows"や"シーソーゲーム"を収録するだけの為に作られた『やっつけ仕事』ではない事が判る。楽曲が作られた時期はほぼ同時期であり、たまたま「深海」の流れにはそぐわなかっただけで、捨て曲でもアウトテイクでもない。残念ながら現在(2000年11月現在)ではこのアルバムからはこれらのシングルナンバーしか演奏される機会がないが、決して侮れない、ある意味『今のミスチル』を知る為には通過せねばならぬ「踏み絵」のような存在なのだ。


★アルバム「BOLERO」全曲解説★

◎M-1:prologue
  そのタイトル通り、このアルバムのプロローグともいえるインタールード。オーチャードホールで収録されたオーケストラパートの、ほんの一コマなのだがアルバムタイトルの如く、徐々に、徐々にと盛り上がっていくのが印象的。次の曲への期待感を、いや、このアルバムへの期待感を膨らますに十分な役割を果たしている。

◎M-2:Everything (It's you)
  このアルバムの為の新曲群の中から、唯一シングルとしてリリースされたバラードナンバー。ドラマ主題歌に起用されていたので、ご存知の方も多いだろう。この曲に関しては逸話があって、当時のインタビューで桜井は「AEROSMITH辺りがやりそうな、男っぽいアメリカンHR的バラードをイメージしてアレンジした。レコーディングでも(ギターの)バッキングにVAN HALENモデルのギターを使ってそういう質感を出そうとした」と語っていた。桜井のイメージからは想像も出来ないバンド名が登場したが(笑)、なる程、そうイメージして聴いてみると、そう聞こえなくもない。ギターソロの枯れた感じ(最初の4小節が田原、残りは桜井が弾いているそうだ)がどことなくジョー・ペリーを思わせる、かな?(笑)
  そういえばこの曲の歌詞に関しても、いろいろな憶測がある。何故「愛する人よ」ではなく「愛すべき人よ」なのだろうか? 「~すべき」という表現は「~しなくてはならない」という義務感を感じさせる。つまり「愛さなくてはならない存在」に対してこの歌は唄われているのか? この曲の歌詞にはそういう義務感のようなものが多々見受けられる。その象徴ともいえるのが、サビの「自分を犠牲にしても/いつでも/守るべきものは/ただ一つ/君なんだよ」という表現。当時の桜井の状況を考えるといろいろ深読みも出来るのだが‥‥さて、みんなにとっては「愛する人」=「愛すべき人」なのだろうか? そしてあなたの「何を犠牲にしても、守るべきもの」とは何?

◎M-3:タイムマシーンに乗って
  滑り落ちるようなコード進行のギターリフからスタートする攻撃的なロックナンバー。何が攻撃的か? そのサウンドもさることながら、やはり歌詞‥‥何処に向かって発しているのか理解に苦しむ、自暴自棄な内容にギョッとする。「時が苦痛ってのを/洗い流すなら/タイムマシーンに乗って/未来にワープしたい」現状への不満・疑問、そしてそこからの逃避。逃避した「僕」は現代の「僕」に対して「この世に生まれた気分はどんなんだい?」と問いかける。しかし最後に逃避した「僕」は「どうか水に流してくれ/愚かなるこのシンガーのぼやきを」と呟く。ぶっちゃけた話、これはシンガー・桜井の愚痴で成り立っているようなもんだ。しかし、そんな中にもいろいろなひねりがある。「タイムマシーン」という事もあって、問いかけの対象は過去の偉人にも及ぶ。宮沢賢治、ルイ・アームストロング。そして恐らく、サビの「How do you feel?」「どんなんだい?」というフレーズは、ボブ・ディランの名曲"Like A Rolling Stone"の一節「How does it feel?」から派生しているのではなかろうか?
  正直、このからは「諦め」しか感じられない。それが衝撃だった。「管理下の教室(こや)で/教科書を広げ/平均的をこよなく愛し/わずかにあるマネーで/だれかの猿真似」「恋の名の元に/少女は身を売り/プライドを捨てブランドを纏った」といった事を「それが僕たちの世代です」と言い切ってしまう。それに対して逃避した「僕」は「どんなんだい?」と問いかける。「君に幸あれ/きっと明日は晴れ/本心で言えるならいいですね」と言いながらも「どうか水に流してくれ」と前言を打ち消す。俺が言った(唄った)ところで何も変わらないよ、とでも言いたいのだろうか? 桜井はどういう気持ちでこの歌詞を書いたのだろうか? そしてどういう気持ちでこの歌を唄ったのだろう? 是非とも伺ってみたいもんだ。「気分はどんなんだい?」って。

◎M-4:Brandnew my lover
  アルバム冒頭からネガティヴ2連発。これまたエフェクトかけまくったギターが印象的。Aメロの静かに流れるパートとサビでの爆発振りが対照的で、ふとNIRVANAでいう「強弱法」を思い浮かべた。間違いなくこのアルバムの核となる楽曲の1つであるのだけど‥‥もう間違いなく、この曲はミスチルの歴史の中で最もネガティヴな内容の歌だ。何せ「Fuckする豚だ」なんてフレーズまで登場してしまうのだから‥‥
  この曲といい、前の"タイムマシーン~"といい、ちょっと内容や背景を説明するのが難しい。勿論、歌詞というのは聴き手それぞれのイマジネーションによっていろんな解釈が出来る。仮に作者が唱える「正解」のようなものがあったとしても、それは聴き手にとっては無効だったりする事もある。所謂「歌詞の一人歩き」だ。ある歌詞は曲解され、ある歌詞は深読みされる。ではこの曲はどうだ? 今の桜井なら何て答えるだろうか。「“答え”なんてどこにも見当たらない」とでも言うのだろうか‥‥と、上手いこと次の曲へと繋いだな?(笑)

◎M-5:[es] ~Theme of es~
  '95年5月にシングルとしてリリースされた、同名のドキュメント映画の主題歌。ドキュメントとは勿論、ミスチルが成功を収めたアルバム「Atomic Heart」と、それに伴う2本のツアーを収録し、更にメンバーがコメントしていくというもの。この手のロック・ドキュメント映画としては'88年のU2「魂の叫び」が記憶に新しいが‥‥といっても12年前か。(苦笑)それだけこの手の映画というのが興行的に成り立ち難いかもしれない。過去にもTHE BANDやニール・ヤング、ツェッペリンがこの手のツアードキュメントを「映画として」発表しているが、大きな成功を収めたなんて話、聞いたことないし。特に現在のようにビデオやDVDなんて便利なものが流通していると、実際にライヴに足を運ぶよりも面白い、なんて事にもなりかねない。そういう意味ではあの絶頂期にああいうドキュメントを「映画で」発表したという事実に、拍手を送りたい。
  さて、楽曲について。一時期のポール・マッカートニーに通ずる壮大なバラード。「“答え”なんてどこにも見当たらない」この世の中、「何が起きても変じゃないそんな時代」だからこそ「流れるまま進もう」‥‥結局「栄冠も成功も地位も名誉も/たいしてさ/意味ない」んだし、単純に僕は「よろこびに触れたくて明日へ」走っていく。一転してここでは前向きさを感じ取る事が出来る。まぁ書かれた時期が違うというのも大きいが、実はこの歌詞を書いている時('95年1月頃)にあの「阪神大震災」があったというのも大きく関係していると思う。その頃、バンドはツアーで札幌にいたそうだ。歌詞を書きながら目にしたあの惨事。「何が起きても変じゃない」というのは桜井の正直な気持ちなのだ。そして「そんな時代さ覚悟はできてる」と決意表明。この曲辺りからミスチルが変わった、という声も少なくないが、果たして本当にそうなのだろうか? 苦悩の時代である中期ミスチルへの過渡期的作品と俺は解釈している。

◎M-6:シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
  '95年8月にシングルとしてリリースされた大ヒットナンバー。つうかさ‥‥これってハッキリ言って、セルフパロディーだよね?(苦笑)過渡期の中、いろいろ進むべき道を模索してるっていうのがひしひしと伝わってくる。自分達がやりたい事とファンが求めるモノとの間で揉まれた結果が、この自らをパロったようなナンバーなのでは?
  それとこの曲、ビデオクリップでもお判りの通り、モロにエルヴィス・コステロをパクってるって。それは本人(桜井)もインタビューの中で言ってたしね。ただ、この頃から「プロデューサーやエンジニアに『○×風のアレンジで~』っていう表現はいい加減に止めたい」といろんな所で発言し出してた気がする。ここまであからさまにやっておいて、そりゃないだろう‥‥(笑)

◎M-7:傘の下の君に告ぐ
  THE SMITHSの"This Charming Man"をマイナーコードに転調したようなイントロが印象的な、アップテンポな小楽曲。ボーカルに絡みつくようなサックスのメロディーが気持ちいい。意外と今までなかったタイプの楽曲かも。
  ずっと気になってたのだけど、このタイトルの『傘の下の君』って誰なんだろう? 明らかにその『君』に向かって唄っているのだけど、その内容はと言えば消費社会(昨今の音楽業界も含む)に対する警告のようなもの。いざ頂点に立ってみたものの、そこには何もなかった、ただ真っ白な世界だった。過去に桜井はインタビューで、自身の成功についてこう表現した事があった。「100万枚売れたらどうなるんだろう?そこには何があるんだろう?」と。そしてその答えは『虚無』だった。その空しさを唄った楽曲群を収録したアルバムがまた350万枚近くものセールスを記録してしまうのだから、世の中皮肉というか何というか‥‥1年間の活動休止が既に決まっていたとはいえ、このアルバムの楽曲を前にした当時は「やっぱり解散なのかな‥‥」と感じたものだった。そう、誰もが二度と戻って来ないと思ってたのだ。"終わりなき旅"に出会うまでは‥‥
  そう考えると、ここで唄われている『傘の下の君』って、「100万枚売れたら~」って期待に胸膨らませていた頃の桜井自身なんじゃないだろうか?

◎M-8:ALIVE
  このアルバムの中で最も好きな曲は?と問われれば、真っ先にこの曲を挙げるだろう。それくらい好きな曲。恐らくミスチル全楽曲の中でもベスト3に入ると思う。きっと二度と唄われる事はないかもしれないが、これはあのネガティヴモードの中にあったミスチルが、間違いなく'90年代後半を突っ走って生き抜いたという『証』なのだ。
  この曲は何も俺にとってだけではなく、桜井にとっても意味のある楽曲のようだ。最後のテレビ出演での、一番最後に唄ったのはこの曲だったし、後に発売されたビデオクリップ集のタイトルもこの曲から取られた。活動休止前のドームツアーでも、クライマックスとなるパートで唄われたのがこの曲だ。サウンド的にはベースの和音をサンプリングしてループに使い、後半にいくにつれて大きな盛り上がりをみせる。どことなくU2を思わせるリズム隊や田原のギターワークが抜群だ。
  「自分を押し殺したはずなのに」「全部おりたい/寝転んでたい」なんてネガティヴな言葉が目立つが、俺はこの曲の中に微かな希望を見出したのを今でも覚えている。とはいってもそれに気付いたのはリリース後暫く経ってからだが。それに気付いた時、俺は「あぁ、大丈夫。ミスチルはちゃんと戻ってくるわ」と直感で感じた。確かにこの曲を唄っている今('96~7年当時)は「夢も希望もない」し「報いも救いもない」けど、「目の前の遙かな道を」ただ突き進んでいれば「やがて何処かで/光は射すだろう/その日まで魂は燃」やし続けていなくちゃ‥‥そして彼等は光を見出し、『光の射す方へ』目一杯走っていったのだ。そう、桜井は既にこの時点で『光は射す』という表現を使っているのだ。つまりあの"光の射す方へ"というのは、まさしくこの"ALIVE"に対する回答なのだ‥‥と俺は信じたい。

◎M-9:幸せのカテゴリー
  従来のミスチル的楽曲でありながらも、歌詞が結構痛烈だったりする。"シーソーゲーム"が単なるセルフパロディーに終わったのに対して、ここでは初期ミスチル的ナンバーに皮肉混じりの歌詞を乗せるという荒技に出ている。このアンバランスさというかぎこちなさが、当時は気持ち悪かったりした。投げやりな内容の歌詞が多い新曲群の中で、これもそのひとつかと思って歌詞に目をやると‥‥桜井的『男の弱さ』が最後に溢れんばかりに爆発してたりするところに、ちょっと安心。(笑)男の弱さって意味では「Atomic Heart」における"Over"をふと思い出すが、あっちが恋人同士の別れだったのに対し、こっちの"幸せのカテゴリー"には‥‥別に桜井と重ね合わせている訳じゃないが(苦笑)‥‥もっと深い関係、例えば同棲していたカップルとか、あるいは結婚していた夫婦だったり、そういうものを感じる。『重み』を感じるのだ、言葉のひとつひとつに‥‥まぁその辺の解釈は、あなた方自身の私生活と重ね合わせてみると、また変わってくるのだろうけどね。(笑)

M-10:everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-
  '94年12月にリリースされたシングルナンバー。当時桜井は「サザンでいう"勝手にシンドバッド"的お祭りバカナンバーが欲しかった」とこの曲を表現していた。プロデューサーの小林武史氏は「サウンド的には桜井から『ストーンズ的ロックンロールをJESUS JONESみたいなデジタルでダンサブルなアレンジでやりたい』という注文があったが、出来上がったものはそれとはまた違った形だった」と後にインタビューで発言している。ライヴでも必ずエンディングの山場で演奏される事の多い、まさしくバカ騒ぎナンバー。
  本来この曲って"Tomorrow never knows"のカップリングとしてレコーディングされたのだが、桜井の思い入れが"Tomorrow~"より勝ってしまい、カップリングから両A面に、そして終いには単独のシングルとしてリリースする事になってしまったのだった。それ位彼はこの曲に思い入れがあるらしい。「ノンタイアップでこういうストレートなロックナンバーがナンバー1になったら爽快じゃない?それこそ『退屈なヒットチャートにドロップキック』してるようなもんだよね?(笑)」なんて当時も言ってた程だ。
  やっぱり歌詞なんでしょうな。ミスチルが今のような路線にシフトチェンジする為の、記念すべき第1歩だったように思う、今となっては。だって「秩序のない現代に水平チョップ」だもん。(笑)

◎M-11:ボレロ
  そもそも「ボレロ」というのはスペインの民族舞曲のひとつで、同じ単調なリズムの繰り返しの中から静かに始まり、徐々に盛り上がっていく種類の音楽だ。「愛と哀しみのボレロ」という映画があったが、あそこでのメインテーマを思い浮かべてもらえば、それがどういったものかお判りいただけると思う。
  さて、ミスチル流ボレロは‥‥このアルバムの(ある意味)最後を飾る、そして当時のライヴでもアンコールの1番最後に唄われた曲だ。「もう神も仏もない」「君しかいない/君こそ未来」「いつだって年中無休で/君を愛してゆく/七転八倒の人生も/笑い飛ばしてゆく/感情をむき出しにして/朝から晩まで/裸のまんまで/暮らしたい」「本能のまんま自由にして」‥‥何か、最後にこの曲を聴くととても空しくなるのは何故だろう? 普通に唄われたらきっと、凄く熱いラヴソングだな?位にしか感じないのだろうけど‥‥何故だろう。ある意味このアルバムのテーマともいえる楽曲のはずなのに、ここにあるのは‥‥自らの『迷い』とか『憤り』『怒り』『諦め』。そういったものを必死で『他者を愛する』事で拭い去ろうとしている、ひとりの男の情けない呟きのようなもの。「結局さ、俺にはお前しかいないし。もういいよ、全部どうでも。ただお前が傍にずっといてくれてさ、ずっと抱き合っていれればいいよ‥‥」的ムードを感じてしまうのだ。これってきっと深読みなのは判ってる。けど、この流れで聴いていると、俺にはどうしてもそう感じてしまうのだ。何故なら‥‥当時の自分も、正にそういうモードだったから‥‥という独白をしてどうする、俺!?(苦笑)

◎M-12:Tomorrow never knows (remix)
  桜井自身が「この曲はここに入れるしか収まりがつかなかった。まっ、ボーナストラックだと思って下さい。アルバムは一旦"ボレロ"で終わるけど」と言っているように、確かにこの楽曲群の中ではここしかないわな? '94年11月にリリースされた、ミスチル史上最大のヒット曲。ドラマ主題歌としても有名。このバージョンはアルバム用に一部再録音・リミックスされている。シングルではドラムが打ち込みだった事、もっと深いリバーブが全体にかかっていた事が特徴として挙げられるが、ここではライヴで培われた経験から、ドラムを生ドラムに、そしてアルバムのトータル性を考えてリバーブを極力抑えて生々しさを全面に打ち出している。
  『痛み』を唄ったこの曲がこれだけ支持されたのは、なにも当時のミスチル人気だけがその理由ではなさそうだ。これだけ多くの人間に共感を与えた歌詞、そして耳に馴染みやすいメロディが一体となった時に生み出すパワーが、正にピークに達したのだと思う。"innocent world"がピークだと思っていた我々は、正直腰を抜かした。そしてこの時点で「桜井は本物」と認識したのだった。


◎最後に

  桜井和寿という男は、常に前だけを見据えてきた。どんな窮地に追い込まれようと『明日』を信じてきた。しかし、ここにいる男は『明日』を待つのではなく、『今日』が行き過ぎる事を待っている。しがらみに足を取られている、そんなイメージを受ける。確かに『希望』や『光』を少しだけ見出すことは出来るが、それもほんの一瞬の事で、気がつくとネガな自分がいる。とにかく今は待つしかない‥‥そんな『受け身』な桜井を垣間見る事ができるような気がする。今となっては「深海」と共に闇に葬り去られそうな作品だが、決して恥じる事はないと思う。これだけ振り幅の大きい作品が作れるという事は、それだけ人間として色々な経験をしてきたって事だし、それが血となり肉となって今の『再び前向きくん』モードを作っているのだから。

  俺は前に「『Atomic Heart』以降のアルバムは、全部名盤・名作」と言ったが、それは全てが特徴の違う、その時代時代を象徴する個性的なアルバムだからだ。しかもそれらが全く古くさくなっていない。現にもう4年近くも前にリリースされたこの「BOLERO」というアルバムも、今こうやって聴いていても非常に興味深い内容だと思う。ミスチルの歴史を考えると「最もネガティヴモード」な、重要な1枚と言えるんじゃないだろうか?



▼Mr.Children『BOLERO』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 11 21 12:00 午前 [1997年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2000/07/26

THE WiLDHEARTS『ENDLESS, NAMELESS』(1997)

THE WiLDHEARTSのオリジナル・フル・アルバムとしては3作目にしてラストアルバムとなったこの「ENDLESS, NAMELESS」。彼等はこのアルバムの発売を待たずに'97年10月に活動停止(事実上の解散)をしてしまったため、期待された程の成功を収める事は出来なかった。

またセールスとは別に、このアルバムの内容についても当時(いや、今もか)議論になった。それまでの彼等のトレードマークともいえる「覚えやすいポップな歌メロに、心地よいコーラス、ヘヴィなリフ」のうちの最初の2つがこのアルバムには見当たらないというのだ。強調されたヘヴィ・リフ、そして出来上がったアルバムをオンボロ・ラジオを通して聴いているかのような、全体を覆うディストーション・サウンド。ドラムサウンドもエフェクトされているし、ギターは歪みまくり、ボーカルも歌詞が聞き取れないくらい『音の壁』と同化してしまっている。こりゃ、驚くわな普通。もし彼等の噂を耳にして「アルバムを聴いてみよう」と思ったワイハー初心者がいきなりこのアルバムから買ってしまったとしたら、取り返しがつかないかもしれない。(苦笑)「話が違うじゃないか! う~、訴えてやるっ!」ってダチョウ倶楽部の竜ちゃん並に怒るかもしれない。(笑)でも、好きな人にはこれ以上のものはないんだよね、本当に。

このアルバムが完成する半年以上も前に、ジンジャーはインタビューで「次のアルバムは音的な面で挑戦的なものになる。凄く聴き辛いものになる」と既に言っていた。この時点で内容をある程度想像する事も出来た。それでは、何故彼はこの時期にこういう作風のアルバムを作ったのか、いや、作らなければならなかったのか?

まずひとつ考えられるのは、彼の親友のひとりであるSTRAPPING YOUNG LAD(以下S.Y.L.と略)のリーダー、デヴィン・タウンゼントからの影響、そして憧れ。デヴィンは一時期THE WiLDHEARTSに助っ人ギタリストとして参加した事があり、この時を切っ掛けにジンジャーはデヴィンに入れ込むようになった。デヴィンはS.Y.L.だけでなく、OCEAN MACHINEやPUNKY BRUSTER、そしてINFINITY(その後、彼のソロプロジェクトに移行)等、曲のタイプやコンセプトによってユニットを使い分けている。それだけ多才な人間なのだ。そんな超天才に対して、天才はジェラシーを覚えたのだ。実際、S.Y.L.のセカンドアルバム「CITY」('97)を聴くといい。その音像・音圧はまさに「ENDLESS, NAMELESS」と紙一重である。俺は自分の中でこれら2枚を『兄弟作』と捉えるようにしている(そしてそれに続く、一部ジンジャーとデヴィンとの共同作業で作られたデヴィンのソロも)。

第2の切っ掛けは、'96~7年にかけて、WiLDHEARTSの兄弟的バンドや元メンバーの作ったバンドが乱立するようになったこと。元ドラマーのスティディはWHATEVERを、元ギターのCJと(今でもつるんでいるようだが)元サポートキーボーディストのウィリーは一緒にHONEYCRACKというバンドをそれぞれ結成し、この頃デビューしている。また、ベースのダニーの弟、クリスが在籍するバンド、3 COULORS REDもこの頃のデビューだ。それぞれWiLDHEARTSを通過した、ポップな歌メロに心地よいコーラスワーク、適度にヘヴィで疾走感のあるサウンドを持ち合わせていた。更にこの他にも「WiLDHEARTSに影響を受けました」というようなバンドが数多く登場している。実際、'97年の来日時にはSTRAWBERRY SLAUGHTERHOUSEやHYBRID CHILDRENといったフォロワー達を引き連れてライヴを行っている。また、よく共演する機会が多かったレーベルメイトのBABY CHAOS(現在のDECKARD)もそのひとつといえる。これだけ多くの「似たり寄ったり」のバンドが登場すれば、シーンは必ず飽和状態に達する。いくら「俺達がオリジナルだ!」と叫んでも、聴き手にはそれは通用しない。自分が気に入ってしまえば、オリジナルだろうがフォロワーだろうが関係ないのだ。そこでジンジャーは更に一歩踏み込んだ音楽を作ろうとしたのではないだろうか?

そして更に、レコード会社との関係悪化によるストレスもあると思う。それまで在籍したEAST WEST U.K.を前年('96年)に離れ、本気で解散を考えた時にMUSHROOMというオーストラリアを拠点とするレーベルと出会うことになる。GARBAGE等が在籍する、現在ではBMGと提携しているレーベルである。ここと契約するまでの間に書いた曲には、それ相当の怒りや憤りを詰め込んだ楽曲が多かったのではないだろうか? このレーベルとの契約には、音楽面での干渉はしないというのがあったようなので、ここまでの実験が許されたのだと思う。

さて、これだけの必然性の中から生まれたアルバム、本当にそんなに酷いものなのか? 俺がジンジャーを愛するが故、贔屓目で見てしまうのは仕方ないとしても‥‥当時、やはり最初は面喰らった。既にライヴで"Anthem", "Nurse Maximum", "Urge"等は耳にしていたので、それなりの覚悟は出来ていたのだが、内容はそれを絶するものだった。まず、音の録音レベルが1曲1曲違う。特に1曲目"Junkenstein"なんて、最初すごく小さい音なのでボリュームを上げると、1コーラス毎に少しずつレベルが上がっていき、1分少々のその曲が終ると、更に音のデカい2曲目"Nurse Maximum"に突入する。(笑)決して聞き流せないつくりになっている(もっとも、こんな音の壁を聞き流す方が困難だが/苦笑)。1回目通して聴き終えた後、もの凄く疲れたのをよ~く覚えている。しかも夜中にヘッドフォンで聴いたもんだから、耳鳴りと頭痛を伴った。しかし、何度も聴きたくなる。(笑)そして繰り返し聴いているうちに‥‥巷で騒がれている程、ポップ度が低いとは思わなくなった。バックの音像に潰されがちだが、やはり歌メロはポップなのだ。綺麗なコーラスはここにはないが、ジンジャーが言っていた程にはヘヴィだとは思わなかった(後にジンジャーは「今の俺は、できるだけメロディックじゃない曲を書こうと努力してる。でもどうやらそれを完璧にやろうとするのは俺には無理らしい。このアルバムが俺の"non-melodic"、非メロディの限界だ」とこぼしている)。

たしかにここにはみんなの求めるWiLDHEARTSの姿はない。しかし、ミュージシャンとして、バンドとして前進しようとしたWiLDHEARTSの‥‥ほんの一瞬ではあったが‥‥底力をこれでもか?って程に見せつけられた、それが「ENDLESS, NAMELESS」というアルバムではなかったのではないだろうか? 事実、このアルバムにはダニーやジェフの唄う曲もあるし、シングルのカップリングではリッチもボーカルを取っている。それまでジンジャーが全楽曲を手掛けてきたのに対し、彼はこの時期他のメンバーにチャンスを与え、結果バンドとして作った曲やリッチの曲等が作品として発表されている。バンドは間違いなく充実期に突入しようとしていたのだ。しかし、彼等のような「力vs力」「個性vs個性」でメンバー同士を刺激するバンドには、結局それは長続きしなかったのだ。燃え尽きる前に‥‥誰かが取り返しがつかなくなる前に、戻れなくなる前に、ジンジャーはストップをかけた。もしかしたら、この状態を維持できれば次はもっと凄い楽曲/アルバムが生まれていたかもしれない。けど、このバンドに「もし~」なんて言葉は似合わない。何時だって、我々ファンの期待とは逆の方向に進んできたバンドなのだから。(笑)

これを読んで、バンドには興味がなくてもこういう音に興味がある人なら、意外と気に入ってくれるだろう。ただ、やはりバンドに興味を持った人間‥‥アルバムとしては最後の頃に手を出してもらいたい。ハードコアなファン向けの、「表面的には」本当に聴く人を選ぶ作りだから。きっと、暫くこれらの曲はジンジャーのソロでは演奏される事はないだろうが、それでも彼等が最後にこれを残した事に意味があるのだ。



▼THE WiLDHEARTS『ENDLESS, NAMELESS』
(amazon:国内盤CD /
海外盤CD

投稿: 2000 07 26 06:28 午後 [1997年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

1999/07/10

KISS『CARNIVAL OF SOULS』(1997)

メイクアップ時代に戻る前の遺産ともいえる(?)「グランジ/ハードコア路線」の究極の形ともとれる「CARNIVAL OF SOULS」。このアルバムでのメンバーは92年からのメンバーで、ポール・スタンレー(Gt & Vo)、ジーン・シモンズ(Ba & Vo)、84年より加入のブルース・キューリック(Gt & Vo)、92年加入のエリック・シンガー(Dr & Vo)という、92年作のアルバム「REVENGE」からおなじみの布陣。

実はこのアルバム、95年には完成していました。既にこの時点で92年5月の「REVENGE」から3年。このアルバムが久々の全米トップ10入りしたお陰でツアーも大成功、その音源を集めた久々のライヴアルバム「ALIVE 3」も全米第6位と大成功。時代の流れに再び乗った彼等の今後は安泰かと思われました。が、従来のファン(70年代のメイク/ポップロック時代を愛する者、80年代のアホ・バカ/メタル路線を愛する者両方)からは不満/不安の声が聞こえてきたのもこの頃でした。そして、恒例のごとく『オリジナルメンバーでのKISS、メイクアップKISSを再び』という話が再び浮上し、昔からの噂が段々と真実味を帯びていく幾つかの事件が‥‥そう、御存知の「MTV UNPLUGGED」におけるエース・フレーリー(メイク時代のGt & Vo)、ピーター・クリス(同じくDr & Vo)との共演。これが何を意味するのか‥‥再び噂が過熱し、ネット上では「96年に大々的に再結成!」なんて噂が飛び交いました。この頃、会社からネットをしていた僕が心ときめかせたのは言うまでもありません。(笑)ちなみに僕が最初に生KISSを体験したのは比較的遅く、95年1月の4度目の来日@武道館×2でした。考えてみればその前って88年4月だし、この時は確か高校の行事と重なって行けなかったと記憶してます。で、その前は78年だし。(爆)まぁ順当といえば順当だけどね。

さて、つうわけで結局96年春にオリジナルメンバー&メイクアップ時代に戻り、大々的なワールドツアーを行う事を記者会見にて発表した彼等。(つうかオリジナルの4人)この時点で既に録音済みのこのアルバムは発売延期になりました。「いずれ何らかの形で発表する」(ジーン・談)とのことでしたが、それがアルバムとしてなのか、ボックスセットの中のボーナストラックとしてなのかは、その時点(少なくとも97年1月の来日時まで)では公言していませんでした。そして97年秋、いよいろオリジナルメンバーでスタジオ入りした事を発表した時点で、妙なタイミングでこの「CARNIVAL OF SOULS」は発表される訳です。既にブルース、エリック両者はバンドを脱退(実際は強制的だったらしい)した後の事でした。オリジナルKISS熱のお陰か、このアルバムはそれなりの成功を得る事が出来ました。(全米第21位)そう、巷の評価とは逆に‥‥

軽い前振りはこの辺にして、内容について。それにしても中途半端な作品なんですよ、これ。アルバムには必要最低限のクレジットしか載ってないし、国内盤以外には歌詞カードすら付いてない。近年の作品と比べても「やっつけ仕事」的なのが見え見えっつうか。ジャケット写真もこれじゃぁ、ねぇ?KISSらしくねぇよなぁ?これより彼等らしいブートレッグ(海賊盤)、沢山あるぜ!?そうそう、このアルバム、97年秋の正式リリースの1年以上も前から既にブートが出回ってました。(爆)僕もその音源を持っていますが、収録曲/曲順共に大した変わりなし。(笑)この点でも彼等の「やっつけ仕事」振りが伺えます!?

プロデューサーという記述はなく、コ・プロデューサーとしてポール&ジーンの他にトビー・ライトっつう人物が兼エンジニアとしてクレジットされてます。この人、90年代前半のヘヴィロック/グランジの作品の多くを手掛けている有名プロデューサー/エンジニアで、ALICE IN CHAINS「JAR OF FLIES」以降の作品、SLAYER「DIVINE INTERVENTION」などを手掛けています。とっても生々しいミックスをする事で定評がある方です。このアルバムも他に漏れず、そういう音の作品になっています。が、悪く言えば「スタジオ・デモ並みの音質」とも表現できるあたりが紙一重というか‥‥ミックスさえしっかりしてれば、と思うんですがねぇ?そういえば、この 「CARNIVAL OF SOULS」って端っからプロデューサー選びで揉めた作品なんですよ。本来、彼等はマイケル・ベインホーン(R.H.C.P.「MOTHER'S MILK」、SOUNDGARDEN「SUPERUNKNOWN」、HOLEやMARILYN MANSONの最新作で有名)にこのアルバムをプロデュースして欲しかったそうで、彼の手が空くまで2年近く待ったそうです。が、何故彼が手掛けなかったのか、非常に気になるところです‥‥案外、KISSの方が痺れを切らしたのかも知れません。ベインホーンが手掛けていたら、もっとヘヴィーで音の太い作品になっていたことでしょう。それはそれで聴いてみたい♪

では、曲について‥‥俺に何を言えってか!?(苦笑)オリジナル作品としては5年半待ったのに、出来上がったのがこれだったら‥‥ファンは怒るわなぁ、普通。まぁ僕の場合はブートを先に聴いていたので免疫は出来てたけど。それでもやっぱり実際に正式リリースされたとなると、気持ち的にもちょっと違う。最初通して聴いた時、非常にがっかりした事をよ~く覚えています。既にメイクKISSとして前進し始めているのにもかかわらず、『THE FINAL SESSION』と銘打って「過去の遺産」(それすらも謎だが)で食いつぶす姿勢が気に入らん。って、考えてみりゃあ90年代の彼等はこれの繰り返しだったから、今に始まった事じゃないんだけど。(爆)とにかくねぇ‥‥暗い。ヘヴィーか?と問われれば‥‥確かに過去の彼等の作品中最もヘヴィーだけど、歌メロがしっかりしてる為に中途半端にヘヴィー。その中途半端さがKISSらしいんだけど。「ある意味KISSらしいんだけど、実は最もKISSらしくない作品」という意味では、超迷盤(笑)「THE ELDER(邦題/魔界大決戦)」や一番中途半端な時期に作られた「UNMASKED(邦題/仮面の正体)」の次くらいに嫌いな作品でした。

リリース当時、多分3回くらしか聴いてなかったこのアルバム、実は昨年末あたりから結構聴いてる。理由は勿論、次のアルバムを聴いた事が切っ掛けなのですが‥‥(以下、「PSYCHO CIRCUS」に続く)



▼KISS『CARNIVAL OF SOULS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 1999 07 10 04:19 午前 [1997年の作品, KISS] | 固定リンク