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1998/12/06

MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998)

リッチーを欠いた3人での最初のアルバム「EVERYTHING MUST GO」が初の全英第1位、そして英国のレコード大賞とも言える「BRIT AWARDS」で、「ベスト・ブリティッシュ・アーティスト」と「ベスト・アルバム」を受賞し、それまでの「英国の嫌われ者」的ポジションから一気に逆転し、「国民的バンド」へと祭り上げられてしまったマニックス。その成功を更に後押しする結果となったのが、この通算5枚目のアルバム「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」だ。当然ながら、このアルバムも1位を獲得し、更には初のナンバー1シングル"If You Tolerate This Your Children Will Be Next"まで生み出してしまうのである。そして'99年2月には実に5年振りの再来日が実現し、ここ暫く日本での人気は低調気味だったが、一気に巻き返すこととなった。

リリース前の情報として、雑誌インタビューで「前作の延長」というようなことをメンバーが言ってたので、正直不安がよぎった。「また日和ってしまうのか」‥‥リッチーを欠いたマニックスは、このままパンク精神を捨て、QUEENやSTATUS QUEのような道を進むのか、と。

しかし、いざ手にしたアルバムは、そういう不安をも打ち消すような、およそマニックスのアルバムとは信じがたい美しいものだった。これを前にしたら、もう何も言えなくなってしまった。それだけ個々の楽曲の完成度は素晴らしいし、空気感もウェールズの澄み切った空を想像させるものだった。

前作同様、青を基調としたジャケット。果てしなく広大な大地に、果てしなく青い空。そこに佇む3人。かのGENESISのアルバムに「そして3人が残った‥‥」というタイトルがあるが、正にそれを思い出させるようなジャケット。特に空に向かって何か叫びだしそうなジェームズ‥‥非常に印象的だ。この「青」が、今回のアルバムの全てを物語っているような気がする。

アルバムを1回通して聴いた時の、あの何とも言えない気持ち‥‥それまでどこかしらにあった居心地の悪さは、ここには存在しない。もしかしたら、それが「リッチーの色」だったのかもしれない。前作は残されたリッチーの詞を使って何曲か作っているが、今回からは白紙から‥‥ゼロからのスタート‥‥これが新作を聴いたときに思い浮かべた、第一印象。決して「今までをなかったことにしよう」というのではなく、「今までを踏まえたうえで、俺達は大人になっていく」的な決意表明にも受け取れた。それは前作以上に壮大な楽曲、シンプルになった歌詞からも伺えるだろう。

「これが俺自身の真実ってやつさ。さぁ、お前の話を聞かせてくれよ」と優しく問いかけるように、アルバムは"The Everlasting"からスタートする。それまでの威圧的な問いかけではなく、優しく問いかけることによって、更に重みを増す‥‥これが新しいマニックスの武器なのだ。リッチー不在の3年を経て、彼らは一回りも二回りも大きく成長したのだ。

そして、何よりも大きく成長しているのがジェームズのヴォーカル。新作をレビューしている雑誌に「ジェームズの“叫び”がなくなって残念」という声があったが、俺はそう思わない。ここでもしっかり叫んでいるのだ、ジェームズは。ただ、前作までにあった「尖ったもの」が薄らいだだけなのだ。先にも書いたように、「優しく問いかけることによって、更に重みを増す」手法。これが今のジェームズの叫びなのだ。例えて言うなら、前作までを「ロック的な叫び」、新作を「よりソウルフルな叫び」とすると、どうだろう? 正直、ここまで彼のヴォーカルに胸を打たれるとは思ってもみなかった。そこまでシンガーとして成長したのだなぁ、と感動すらした。

こう言い切ってしまったら、ファンの方に怒られそうだが、1~3枚目を「第1期」とすると、前作からが「第2期」ということになるのだろうが、俺は新作からを「純然たる第2期」と呼びたい。前作は、残されたマテリアルを元に組み立てられたことや、ある種「作る義務感」を感じながら作ったのでは?という疑問から、勝手に「第2期に移るために、必要だった過渡期」と呼ばせてもらう。当然、決して悪い意味はない、「過渡期」という言葉には。

ギターサウンドもこれまで以上に凝っている。前作ではこれまで程ギターに惹かれなかったのだが、新作はマジでカッコイイフレーズやソロを連発する。落ち着いた中にも激しさがある‥‥多分、「事故」から時間を置いて、より自分自身を出すことに自信が持てたのだろう。特に"The Everlasting" は詞も、メロディーも、アコギのアルペジオも、ギターソロも、ヴォーカルも非の打ち所がない傑作だ。「1曲目にバラード?」と最初は思ったものだが、いざ聴き終えてみれば、ただ涙するばかり。間違いなく、今年の俺の中でのベスト・トラック。羨ましいよ、こんな曲書けて。この曲が1stシングルだとばかり思ってたくらい。

前作のツアーから、3人+サポートのキーボーディストが参加しているので、ステージ上でのギターの「音の厚みの問題」は解消されているようだ。でもビデオでライブの様子を観たが、結構ジェームズが大変だった。前作はいろんなギターフレーズを重ねてる曲が多いからから、(恐らくリッチーのパートを想定してレコーディングしたのでは?)どれを弾くかで結構曲の印象が変わってくるし。ところが今回のギターは、なかなかシンプルなものが多い。その上、キーボードから始まる曲も多々ある。曲作りの時点からキーボーディストは参加していたようなので、こういう形になったようだが、新しいマニックスを提示するためには必要な手法だったのだと思う。決してリッチーのことを忘れたわけじゃない。だって今作も必ず「ギターが2本」入ってる曲が多いし‥‥今更マニックスに対して「ギターバンド云々」なんて語る人もいないだろうし。むしろ、楽曲で勝負するバンドになったのだ、彼らは。リッチーという「精神的支柱」を欠いた今となっては、こういう道に進まざるを得ないのも、致し方ない。

とにかく、どれだけページがあっても足らない位、絶賛に値するアルバムだと、自信をもってお薦めする。事実、数名の友人に薦めたが、全員から「すっげ~良かったよ!!」と絶賛の嵐だ。また、かなりの音楽通からも「マニックスの新譜にはビックリしたよ!いいねぇ、ライブ行きたいねぇ」との便りも届いた。これまでの「ロック馬鹿」的イメージを完全に覆した、恐るべき名盤。それがこの「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」なのだ。



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投稿: 1998 12 06 10:08 午後 [1998年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク