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1998/12/21

METALLICA『GARAGE INC.』(1998)

さて、今回はこの問題作(?)を取り上げたいと思います。まず作品に触れる前に、この『GARAGE INC.』に至る経緯を俺の言葉で説明させて下さい。何故俺が彼らを「好きでなくなった」のか、そしてこの新作で何を「再発見」したのか、全てを知るにはここから始めなければならないのです。

90年代に入ってからのMETALLICAの変化についていけないオールド・ファンはこのサイトをご覧の人にも多いと思うけど、俺に関して言うと、1991年の『METALLICA』(通称「ブラック・アルバム」)はついていけた。というよりも、このアルバムは名作だと今でも思ってます。確かに80年代の『RIDE THE LIGHTNING』や『MASTER OF PUPPETS』と比べると別のバンドの音だけど、これは1st『KILL'EM ALL』発表前後から繰り返してきたメンバー・チェンジ(デイヴ・ムステイン→カーク・ハメット、クリフ・バートン→ジェイソン・ニューステッド)が多少なりとも影響してるのでは? 少なくとも1stや2ndの楽曲にはデイヴがタッチした楽曲が多いし、3rdまでの楽曲と『…AND JUSTICE FOR ALL』の一部には、亡くなったクリフが中心となってソングライティング(特に作詞面)を行ってきたと聞くし。つまり4thでネタが尽きた(悪い言い方ですね)彼らは、ジェイソンという新しい血を交え、『…AND JUSTICE FOR ALL』から3年、クリフの死から5年かけて新しい「音」を手に入れたのです。確かに『METALLICA』アルバムには当時台頭してきたシアトル勢/オルタナ勢の影響が多少なりとも見え隠れするけど、それでも“METALLICAの音”を鳴らしているし。しかし不幸なことにこのアルバムが、その後のミュージックシーン及びMETALLICA自身を変えてしまったのです。

1991~92年というのは、その後のミュージックシーンをガラリと変えてしまった、歴史的名盤が数多くリリースされています。NIRVANA『NEVER MIND』、PEARL JAM『TEN』、PANTERA『VALGAR DISPLAY OF POWER』、そして『METALLICA』。80年代中盤から続いていたメタル・バブルに終止符を打ったのが、この4枚ではないかと今でも確信しています。否、今だからこそ言えるのかもしれないですね。オルタナ/ガレージ勢はNIRVANAやPEARL JAMを目指し、多くのメタルバンドはPANTERA風なギターサウンドを模写し、METALLICAみたいなミドル・テンポの楽曲ばかりの退屈なアルバムを量産。最近までこの傾向は続いてました。多くのバンドが上の4枚を模写しようとして失敗し、消えていった。しかし、良い面もない訳ではありません。彼らの成功によって、数多くのへヴィロックバンドがメインストリームにのし上がってきました。NINE INCH NAILSやRAGE AGAINST THE MACHINE、KORN、TOOL、MARILYN MANSON……ある意味、RADIOHEADのアメリカでの成功もこの恩恵を受けているのかもしれませんね?(事実、RADIOHEADは数多くのヘヴィロック・バンドに好かれているし。ANTHRAXやSLAYER、METALLICAなど)

このアルバムまでは常に「ジェネレーション・リーダー」だったMETALLICA。しかし、不幸はこの5年後に起こるのです。1996年の『LOAD』。80分近い大作。しかし……5年という月日は長すぎました。ラーズ・ウルリッヒ曰く「この5年という月日はあまりに大きい。1991年に俺達がアルバムをリリースした頃は、まだカート・コバーンはアンダーグラウンドの路地にいたよ」と。

このアルバムで彼らがとった方法。それは「ジェネレーション・フォロワー」に成り下がることでした(少なくとも、僕はこう感じた)。前作リリース後、約3年続いたツアー。その後1年の休暇をとり、再び1年かけて作品作り……なのに提示された楽曲郡は、中途半端なものばかりだった。全てが「~風」と特定のバンド名が思い浮かびそうな2流の、へヴィとも言い難い楽曲。酷いものになると、前作のヒット曲の焼き直し的ナンバーまである始末。そして当時のインタビューでの、へヴィメタルへのネガティヴな発言……「俺達は、もうメタルバンドと呼べないよ。そう、“メタリカ”ってジャンルの音楽をやってると思ってくれ」……こういう発言をして消えていった、多くの80年代のバンド達を忘れたのかい、君達は?

余談ですが、実はこの『LOAD』がここ日本で最も好セールスを記録した作品なのです。1996年当時で約20万枚を越えたそう。これはメタル勢としては異例の記録。それより上となると、ロック勢でもAEROSMITHやOASISクラスになるらしい。それだけこのアルバムが、メタルファン以外の一般層にもアピールしたということなのだろうけど……車のCMに「Until It Sleeps」が使われたのも、ヒットに影響したそうだし。確かに良い曲だけど。

続いて翌1997年には、早くも新作『RELOAD』をリリース。前作レコーディング時にストックされた楽曲を全てここで使い切る。前作で言われた「速い曲がない」という苦言を参考にしたのかどうかは知らないけど、『RELOAD』には速めの曲が数曲混じっている。とはいっても、ここではオールドファンが言う「速い曲」ではなく、一般的に「速い曲」。正直に言います。前作とどっちが好きか?と問われれば……トータル面では『RELOAD』だけど、楽曲の粒・実験度では『LOAD』に軍配を挙げたい。当初、2枚組としてリリースされる予定だったこの2枚だけど、そういうことをするくらいなら、良質の曲だけを1枚にまとめて欲しかった。実際、俺はMDに落とす際にそうしたけど。

この2作で、俺は完全に彼らから離れた。初来日から毎回足を運んだライヴにも90年代に入ってから行っていないし。アティチュードの変化を上で述べたけど、変わってしまったのはそれだけではなかったのです。彼らの、ライヴへの接し方も『METALLICA』アルバム以降、変わってきたのは確か。それは明らかに「音」に出ているし。ライヴアルバムとビデオがセットになったボックスセット『LIVE SHIT…』を聴く機会があったら、是非'88年のライヴと最新のライヴとを聴き比べて欲しいです。明らかに違うのです、出す「音」が……うまく口では説明できないけど。良く言えば「演奏が上手くなった」、悪く言えば「タイトさがなくなった/ルーズになった」。こればかりは個人の感覚だから、「へっ、そんな事ないでしょ?」と言われてしまえばそれまでだけど。

さて、ここからがやっと新作のレヴュー。個人的に言えば、METALLICAというバンドは自己紹介でも書いているとおり、「俺の人生を変えてしまった」バンドなのです。そのバンドの落ちぶれていく姿だけは見たくない。だからこの『GARAGE INC.』に対しても慎重に接してきました。

まず対象になるのがDISC-1の新録の方。選曲のセンス……90年代、特にここ2作の作風を考えれば、納得のいく選曲。逆に、今更DIAMOND HEADをやるあたりに作為を感じた。意外だったのは、MERCYFUL FATEとTHIN LIZZY。METALLICAがDISCHARGEをやるのも意外だった(DISCHARGEといえば、ANTHRAXのオハコでしょう!)。

実際に聴いてみた感触。音は90年代の彼らそのもの。オリジナルアルバムと同じプロダクションでレコーディングされている。ちょっと残念。何故なら……『GARAGE~』と名のつく以上、『THE $5.98 E.P.- GARAGE DAYS RE-REVISITED』と同様に一発録り、もしくは「NON-PRODUCED」とか言って欲しかったのだ。この名前を使う以上は、オールドファンはそこに拘ると思う。でも、正式なアルバムとして出す以上、今の彼らはそれを許さないのだろう。完璧主義……ラーズらしい。楽曲は殆どが完コピに近い。が、「Whiskey In The Jar」みたいに完全にオリジナルと化してる曲もあるし、「Sabbra Cadabra」や「MERCYFUL FATE」みたいにメドレー形式になってる曲もある。かなり考えて作られてる。遊びで作った以前のカバー集と違い、今回は正式なアルバムと同等の作品のようだ(実際、「Turn The Page」のビデオクリップまで作られてるし)。

正直な感想……カッコイイ、と思った。いや、素直に。METALLICAの新作聴いて、素直に「カッコイイ」と思えたのはほぼ10年振り。1曲目の「Free Speech For The Dumb」のイントロのギターでやられた! そして「It's Electric」! 「今更DIAMOND HEAD」と馬鹿にしていたが、さすがMETALLICA、やっぱりこういう曲やらしたら上手いわ。でも次の「Sabbra Cadabra」は蛇足かな? だって、ネタばらしでしょう、「2×4」の。中盤の「National Acrobat」に移ってからがカッコイイ。次、「Turn The Page」。これ、彼らのオリジナル新曲と言われても違和感がない位、ハマってる。この辺は『LOAD』~『RELOAD』路線だね。

「Die Die My Darling」、このアルバムで1番好き! MISFITSも既に3回目のカバーだけど、今この曲を選んだのは正解。もし10年前にやってたら、似合ってなかったと思う。6曲目「Loverman」。ニック・ヶイヴのカバー。これも『LOAD』~『RELOAD』路線だけど、俺にとってはちょっと退屈。1曲だけでよかった。さぁ、次はこのアルバム最大の見せ場、「MERCYFUL FATE」メドレー! これ、これなのですよ! 俺が好きになったMETALLICAは! このタイトさが最近の作品に欠けていたのだと思うのだけど、如何だろう? 最近の作品から入った若いファンには解らないと思うけど。確かにこのメドレーは数曲を1つにまとめているわけだけど、少なくとも初期のMETALLICAにはこういう曲が多かったような気がする。つまり、転調・展開の激しい楽曲が。今だから言うが、『METALLICA』アルバムを初めて聴いたとき、1曲目の「Enter Sandman」イントロのアルペジオを聴いて、「いつ展開するんだ? いつ速くなるんだ?」と期待したのだが。そうじゃありませんでした、オールドファンの皆さん?

8曲目「Astronomy」って選曲はどうなのかなぁ? 彼ら的に言えば「Godzilla」あたりが一番ハマルと思うのだけど。次が問題のTHIN LIZZYのカバー、「Whiskey In The Jar」。これはやり過ぎ!って位にいじってる。でも、原曲のイメージは残しつつ、彼ららしく「ドカドカうるさい」ヴァージョンになってる。10曲目「Tuesday's Gone」はアンプラグド・ライブから。ゲストにALICE IN CHAINSのメンバーも参加してるけど、まぁご愛嬌といった所か? ライブではやって欲しくないけど。そして最後がDISCHARGEの「The More I See」。2曲もやるんだ、と思った。何を意図してるのかは知らないけど。多分、SLAYERが数年前にハードコア/パンクのカバーアルバム出したから、それに対する返答かも?……なんてね。

長くなったけど、このアルバム、大好きだ。購入から約1ヶ月、今でもよく聴いてる。あえてDISC-2の内容には触れなかったけど、ここでこの2枚を比べても意味がないと思う。最初通して聴いたときは、明らかに「2枚の間にあるもの」が見え隠れしていた。それは、今の彼らが失ったもの、そして今の彼らが得たものだった。それをここで書くのはやめにしよう。何故なら、2000年に活動再開するというMETALLICAに期待しているから。この『GARAGE INC.』でこの路線(『METALLICA』~『LOAD』~『RELOAD』)はひとまず落ち着くそうだ。'80年代の彼らは攻撃の10年。90年代は成長・円熟・実験の10年。そして2000年からの10年(=Decade)にはどういう「音」を聴かせてくれるのだろう? このカバー集を聴く限りでは、まだまだMETALLICAは終わっていない。そう思いたい。



▼METALLICA『GARAGE INC.』
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投稿: 1998 12 21 04:41 午前 [1998年の作品, Metallica] | 固定リンク