カテゴリー「1998年の作品」の60件の記事

2024年8月13日 (火)

ARCH ENEMY『STIGMATA』(1998)

1998年5月5日にリリースされたARCH ENEMYの2ndアルバム。日本盤は同年3月21日発売。

1枚限りのプロジェクト形態で制作されたデビューアルバム『BLACK EARTH』(1996年)から約1年半という短いスパンを経て、マイケル・アモット(G)を中心にヨハン・リーヴァ(Vo)、クリストファー・アモット(G)、マーティン・ベンソン(B)、ダニエル・アーランドソン(Dr)というバンド形態で制作された真の意味での1stアルバム。レコーディングにはダニエルが2曲しか参加できず、クリストファーの別プロジェクトARMAGEDDONのメンバーでありのちにDARKANEに参加するピーター・ウィルドアーが大半の楽曲でプレイすることとなります(ダニエルはアルバム完成後に行われたツアーから復帰)。

日本盤リリースが海外より1ヶ月以上早いことからも伺えるかもしれませんが、彼らは1997年の初来日時(CATHEDRALジャパンツアーのゲスト)に日本のファンから熱狂的な歓迎を受けたこともあり(それを理由に活動継続が決定)、日本のレーベルTOY'S FACTORYと独自契約を果たしており、そこで日本のスタッフからの声を反映しながらアルバムを完成させたといいます。それもあってか、当初発売された日本盤が全12曲入りだったのに対し、のちに海外でリリースされたものは全9曲入りとコンパクトな仕上がり(「Hydra」「Diva Satanica」「Damnation's Way」がカット)。日本盤に関しては、当初ミディアムテンポ中心だった作風に対して日本側から「もっと速い曲も欲しい」とリクエストしたことから2曲追加が決まったという話もあり(「Hydra」は1分欠ける程度のインストなので、歌モノということで)「Diva Satanica」「Damnation's Way」が追加されたのかもしれませんね。

とはいえ、そのミディアムヘヴィな楽曲中心の作風は決して前作より劣っているとは感じられず、むしろテクニカルで複雑な展開というARCH ENEMYらしい個性がここでようやく確立し始めたと、ポジティブに受け取ることができます。オープニングを飾る名曲「Beast Of Man」はアルバムスタートの景気付けとしては見事な役割を果たしているものの、本作の魅力が本格的に発揮されるのは続く2分強のインスト「Stigmata」からアグレッシヴな「Sinister Mephisto」へとつなぐこのパートから。そこまでミドル中心という印象は個人的にはなく、適度なスピード感と重さで聴き手をグイグイ引き込む説得力は前作以上だと思いました。

ヨハンのボーカルはデスメタルのそれとは異なる、ハードコアパンク的な咆哮歌唱。メロディアスなツインリードギターが活かされたアレンジとの相性もなかなかのもので、メロディックデスメタルというよりは“メロウな要素を強めたテクニカルスラッシュメタル”と呼ぶほうが合っている気がしないでもない。ただ、確かにこのボーカルスタイルだと表現の幅も限定されてしまうので、この形が長続きしなかったのも頷けるといいますか……。

マイケル・アモットは本作に対してネガティブな印象を持っているようですが(当時のベーシストの出来に不満があり、来日中に喧嘩したことも影響しているとのこと)、ファン目線では前作以上にもっと評価されるべき1枚だと断言したいです。

 


▼ARCH ENEMY『STIGMATA』
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2023年2月 1日 (水)

SLY『VULCAN WIND』(1998)

1998年6月25日にリリースされたSLYの4thアルバム。

初期2作のモダンヘヴィネスを取り込んだスタイルから一転、前作『KEY』(1996年)ではプログロック的側面を強調させつつ、80年代のジャパメタ的テイストをより強めることで旧来のファンはもちろんのこと、新たなファン層を拡大する可能性を秘めた新たなスタイルを確立させました。そんなSLYが前レーベルのBMGビクターから、新たにワーナーミュージック系列のEast West Japanへと移籍。同レーベルから最初で最後となる1枚を完成させます。

アルバムを重ねるごとに、そのアレンジがよりシンプルでソリッドなものへとシフトしているSLYですが、本作はそのスタイルの究極形といえる仕上がりで、その片鱗は全10曲で40分というコンパクトな作風からも感じ取ることができます。どの曲も3〜4分台でまとめ上げられており、二井原実(Vo)によるメロウなボーカルを軸にしつつ、石原慎一郎(G)、寺沢功一(B)、樋口宗孝(Dr)によるテクニカルなバンドアンサンブルを存分に楽しめる。前作はあからさまにプログロックからの影響が見え隠れしましたが、今作はそのへんのテイストはあくまで味付け程度。むしろ徐々に強まり始めている80'sメタルの色合いが、より濃厚に表出したことで、彼らの作品の中でもっとも聴きやすい1枚に仕上がった印象を受けます。

メンバーが影響を受けた70年代のオーソドックスなハードロックを下地にしつつ、それぞれがプロデビューして以降に表現してきた80'sジャパニーズメタル、そして90年代以降のモダンメタルを咀嚼しつつ、独自の解釈を経て到達した原点回帰的な内容は、1998年というニューメタル全盛の時代においては数周も時代遅れなものだった。しかし、これが彼らにできる最大限の譲歩であり、かつ「譲れないもの」が詰め込まれた作品だった。プログもサイケデリックもポップも飲み込み、モダンヘヴィネス側に振り切ることなく信念を突き通した結果がこれなのですから、もはやこれ以上は望めない。そういった意味でも本作は、SLYという短命に終わったバンドにとっての終着点であり臨界点だったのかもしれません。

初期2作が良くも悪くもガチャガチャしすぎていて、旧来のジャパメタリスナーにはなかなか馴染みにくかったかもしれません。そんな中、突如変化を遂げた前作『KEY』と今作『VULCAN WIND』は年寄り(笑)にも優しい、1998年時点での最新型ジャパメタだった。そりゃあ良いに決まってる。と同時に、本当にそれは1998年という時代に則したものだったのかという疑問もあり、リリース当時は正直「?」と感じたことも付け加えておきます。あれから25年もの歳月を経て、余計な邪念なしに本作と向き合うことができるようになった今、改めてリリースタイミングが悪かった1枚だなと感じています。前作以上にめっちゃ良質なハードロックアルバムですもんね。

前作『KEY』からの流れを汲むだけでなく、ちゃんと1stアルバム『SLY』(1994年)や2ndアルバアルバム『DREAMS OF DUST』(1995年)でのグルーヴメタルの経験も反映されており、「Hypocratic Oaf」のようなファストナンバーもしっかり用意されている。これが受け入れられなかったら、もうあとがない……その結果、バンドは本作を携えた全国ツアー終了後に活動停止。二井原はこの頃、「自分のような歌い手は、今のこの「時代には居場所がないのでは」と考え、引退も意識したそうです。それくらい90年代、特に90年代後半は「メタル冬の時代」だったのです(このへんは、陰陽座の瞬火さんとお話したときにも、ご本人の口から語られていましたし、当の二井原さんとお話したときもそのようなことをおっしゃられていましたしね)。

先日、このアルバムのみサブスクで数ヶ月前に解禁されていたことに気づき、2023年という本作発売から25年経ったタイミングに紹介することにしました。追って『DREAMS OF DUST』と『KEY』についても取り上げる予定です。BMGビクター時代の3作品に関しても、正式にサブスク解禁されることを心待ちにしております。

 


▼SLY『VULCAN WIND』
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2022年10月25日 (火)

SKID ROW『40 SEASONS: THE BEST OF SKID ROW』(1998)

1998年11月3日にリリースされたSKID ROWのベスト(コンピレーション)アルバム。日本盤は海外とは異なるオリジナルアートワークで、同年5月13日に先行発売(のちに海外リリースに合わせて、現行のジャケットに変更)。

セバスチャン・バック(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)、ロブ・アフューソ(Dr)という初期の黄金期メンバー時代の音源をまとめたもので、タイトルの『40 SEASONS』は1stアルバム『SKID ROW』(1989年)リリースから10年経った(=40の季節が過ぎた)ことを表現しています。

内訳的には1stアルバム『SKID ROW』から4曲(「Youth Gone Wild」「18 And Life」「Piece Of Me」「I Remenber You」)、全米1位を獲得した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)から5曲(「The Threat」「Psycho Love」「Monkey Business」「Quicksand Jesus」「Slave To The Grind」)、3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)から4曲(「Into Another」「Frozen」「My Enemy」「Breakin' Down」)、そして日本のみでリリースされたライブEP『SUBHUMAN BEINGS OF TOUR』(1995年)から「Beat Yourself Blind」(『SUBHUMAN RACE』収録曲)、未発表テイク2曲(「Forever」「Fire In The Hole」)というもの。このうち、「Frozen」はアルバムバージョンとは異なる1994年のデモテイク(『SUBHUMAN RACE』日本盤ボーナストラック)、「Into Another」「My Enemy」「Breakin' Down」は新たなリミックステイクで収録されています。

『SKID ROW』からの4曲はMVが制作されたシングル4曲がセレクトされていますが、まあ妥当な線ですよね。「Youth Gone Wild」からスタートするのはさすがにアガりますが、その次に「18 And Life」というのがいかにもUS制作のやっつけベスト盤っぽい(苦笑)。で、問題は『SLAVE TO THE GRIND』からの5曲。「Monkey Business」「Slave To The Grind」「Quicksand Jesus」といったシングル/MV制作曲が選ばれるのはわかりますが、なぜに「The Threat」「Psycho Love」なのか。まあどちらもヘヴィ&グルーヴィーで、当時のSKID ROWを表すに最適な2曲ではありますが、個人的には「Wasted Time」がスルーされてしまったのが残念(この曲や「In A Darkened Room」といったシングル曲をすべて収録すると、全体的にバラードばかりになって、バンドの本質とは異なる作風になってしまいますしね)。

『SUBHUMAN RACE』からの4曲(ライブテイクを含めると5曲か)も、「The Threat」「Psycho Love」を経ての方向性的にはまあ妥当かな。個人的にはリミックスと原曲の違いがそこまで感じられないのですが……。

ここで気になるのは、こうした既存曲ではなく、本坊初公開となった未発表テイクですよね。「Forever」は1988年にレコーディングされた『SKID ROW』のアウトテイク。初期らしいポップでキャッチーなアップチューンなのですが、メロディの運び的には既存の『SKID ROW』収録曲と比べると若干弱いかな。何となく漏れたのも納得です。で、もうひとつの「Fire In The Hole」は1991年録音の『SLAVE TO THE GRIND』とのこと。こちらは録音的にはデモ音源らしいのですが、曲調的には『SKID ROW』から『SLAVE TO THE GRIND』への過渡期にあるものかな。やはりこちらのメロが弱く、インパクトに欠ける。特に振り切れっぷりが尋常じゃない『SLAVE TO THE GRIND』の中に入れるには影が薄すぎるので、納得のオミットです。

すバンドとしては大きな動きがない時期に突如リリースされた作品でしたが、この頃にはバズもバンドを抜けるということもあり、「節目にお送りする総決算的な代物」だったのかな。SKID ROWというバンドの入門編として最初に手に取るアルバムというよりは、「こんなアウトテイクや別テイクもあるよ」というファンアイテムの側面が強い気がします。

 


▼SKID ROW『40 SEASONS: THE BEST OF SKID ROW』
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2022年5月 5日 (木)

HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998)

1998年10月にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの1stアルバム。日本盤未発売。

本作は本国スウェーデンのみで発表されたデビュー作で、現在はサブスク配信なども行われていない貴重な1枚。バンドのセルフプロデュースで制作された10曲(ラストナンバー「So Deep Inside」のあとにシークレットトラック「Fly Away」が含まれているので、正式には全11曲)が収録されており、チープで生々しい音像が初期衝動の塊のようなラフでアグレッシヴな演奏にマッチしています。

本作収録曲のうち6曲(「Hello/Goodbye」「Bubblecum Ride」「Rock 'N' Roll Star」「Someone Special」「Punk Rock Song」「So Deep Inside」)がワールドワイドデビュー作にあたる次作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)で再録されているのですが、さすがに一度録音した楽曲(およびライブで幾度にわたり披露してきた)だけあって、再録バージョンは実に“整理された”形に整えられています。大手レーベルのMusic For Nationsと契約したこともあり、レコーディングにかける費用もデビュー作の比ではなかったんでしょうね。うん、わかります。

僕はこちらの1stアルバムは完全後追いで、なんならちゃんと聴いたのはここ数年の話。そこそこ手頃な値段で中古盤を手に入れたのですが、買って後悔のない1枚だと今でも思っています。「Hello/Goodbye」や「Rock 'N' Roll Star」の完成度は次作に譲るものの、無軌道なラフさが際立つ今作のバージョンも決して嫌いになれない。それは名曲「Someone Special」も同様で、同系統で2ndアルバム未収録の「Right Here, Right Now」などには3rdアルバム『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)以降の片鱗を感じ取ることができ、改めて原石以上の可能性が伝わることも確認できます。

にしても、ありきたりのフレーズである「たかがロックンロール」を デビュー作のタイトルに用いた彼らが、そこから20年後に『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018年)で「俺のロックンロールを殺せやしねえよ」と再宣言するカッコよさといったら。そういう意味では、ぜひどこかのタイミングで万人が聴けるような環境を整えてもらいたいものです。

 


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2021年3月29日 (月)

OASIS『THE MASTERPLAN』(1998)

1998年11月3日にリリースされたOASISのコンピレーションアルバム。日本盤は同年10月28日に先行発売。

全英1位/全米2位/日本3位(オリコン総合チャート)という好成績を残した3rdアルバム『BE HERE NOW』(1997年)を経て、続く4thアルバムまでのつなぎ且つ1998年のクリスマス商戦に向けたアイテムとして制作された、既出のシングルBサイド曲で構成された内容。ファン投票の結果を踏まえ、ノエル・ギャラガー(G, Vo)によって決定した14曲が収められており、「隠れた名曲が多いアルバム未収録曲」による“裏ベスト”的1枚となっています。

本作にはライブでの定番曲だった「Acquiesce」や「Talk Tonight」、ビートルズのカバー「I Am The Walrus」のライブテイクなど、耳馴染みのある楽曲も多数収録されています。当時のOASISファンにとって、毎回アルバム未収録の新曲が複数用意されたシングルはマストアイテム。なので、新曲や未発表曲皆無の本作はある意味スルー案件ではあったものの、こうやってアルバム1枚にまとめられると手軽に楽しめるので重宝した、なんてファンも少なくないはずです。

録音時期や録音環境(スタジオ/ライブテイク)、録音メンバーも異なるため、アルバムとしてのトータルクオリティはオリジナルアルバムには及びませんが、それでも捨て曲なしの本作はOASISに多少なりとも興味があるリスナーなら、避けては通れない1枚。上記のような楽曲に加え、「Underneath The Sky」「Going Nowhere」「Rockin' Chair」「Stay Young」「Headshrinker」、そしてタイトルトラック「The Masterplan」とノエル・ギャラガーの才能が遺憾無く発揮された名曲がたっぷり用意されているのですから。このクオリティでアルバムから漏れるんだ……と当時は驚かされたものです。

あと、ノエルVo曲が多いのも本作の特徴かな。この当時はまだ、アルバム本編では抑え気味だったノエルのシンガーとしての側面は、シングルのBサイドナンバーで発揮されていたわけで、本作では全14曲中5曲(うち「Acquiesce」はリアム・ギャラガーとのツインVo)でノエルの歌を楽しめます。その中でも特筆すべき1曲が、先にも挙げた「The Masterplan」。これ、なんで『BE HERE NOW』から漏れたんだろうと頭を抱えるほど出色の完成度で、あの時期の創作意欲はバンドとしてもピークに達しつつあったことが理解できるんじゃないかと。それこそ「Stay Young」も『BE HERE NOW』期のBサイド曲ですしね。

本作りリースからしばらくして、初期メンバーのボーンヘッド(G)とギグジー(B)が相次いで脱退。残されたリアム&ノエルと、1995年に加入したアラン・ホワイト(Dr)の3人で4thアルバム『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000年)を完成させることになります。結果として本作は、初期OASISの節目を飾る1枚となってしまいましたが、ありきたりなシングルコレクションではなく、こうした裏ベストで第1期を締めくくったのも実にOASISらしかったのではないでしょうか。

 


▼OASIS『THE MASTERPLAN』
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2020年4月23日 (木)

FEAR FACTORY『OBSOLETE』(1998)

FEAR FACTORYが1998年7月にリリースした3rdアルバム。

インダストリアル風味のモダンヘヴィネス・サウンドが展開された前作『DEMANUFACTURE』(1995年)が、ここ日本を含む世界中のHR/HMシーンで高く評価され、さらに『Ozzfest』出演(1996年)などを経て一気に知名度を高めることに成功したFEAR FACTORY。続く本作は全米77位と、初めてBillboard 200にチャートインを果たし、現在までに50万枚以上を売り上げる人気作に。バンドの人気を確実に決定づけた“ダメ押し”の1枚です。

“機械文明 vs 人間”をテーマにした前作から引き続き、本作も同様のモチーフでSF的側面を描いたコンセプチュアルな作品。とはいえ、よくある「曲間をセリフなどのインタールードでつなぐ」的作りとは異なり、(要所要所でSE的なものは挿入されるものの、怒涛の構成をぶった切るようなことは一切ない)ひたすらモノトーンで冷徹な轟音で、時に無感情に、時にエモーショナルに各曲が表現されていきます。

いわゆるスラッシュメタル的なスピード感は前作よりも劣るものの、1998年というラップメタル/グルーヴメタル主流の時代にフィットしたミドルテンポの楽曲を軸にした作風は、アルバムのトーンをひとつにまとめるという点において見事に成功しているのでは。そこにアップライト・ベースを用いることでヒップホップ的テイストが加わった「Edgecrusher」や、いかにも彼ららしいスペーシーなメロディ&ボーカルが乗った「Securitron (Police State 2000)」、跳ね気味のリズムとキャッチーなメロディの融合が不思議な浮遊感を醸し出す「Descent」など、1曲1曲が異なる個性を放つことでモノトーンの中にもグラデーションを生み出だしています。

バートン・C・ベル(Vo)のデスボイスを用いたスクリームとクリーントーンによるメロウパートの対比は前作以上にくっきり際立つような作りですし、ディーノ・カザレス(G)&レイモンド・ヘレーラ(Dr)、そしてクリスチャン・オールド・ウォルバース(B)が繰り出すゴリゴリでヘヴィなリフ、かつ機械のように息の合ったシンコペーションも前作以上のノリを醸し出している。ですが、ひたすら機械的な印象が強かった『DEMANUFACTURE』と比べると、同じひんやりした演奏の中からも不思議と人間味が感じられる。「Freedom Or Fire」での打ち込みを同期させながらも躍動感の強さを感じさせるビートはまさにそれで、そのへんの対比含めて実は前作と合わせて語るべき1枚なのかもしれません。

昔は「FEAR FACTORYといえば『DEMANUFACTURE』!」というイメージを強く持っていて、一番好きなアルバムも同作だったりしたのですが、現在は何気に今作こそがFEAR FACTORYの入門編に最適なアルバムでは?と思っています。というか、この時期のFEAR FACTORYにはハズレなしなので、どっちから入ったとしても絶対にハマってもらえるはずです。

 


▼FEAR FACTORY『OBSOLETE』
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2019年11月22日 (金)

MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』(1998 / 2009)

MOTLEY CRUE、約4年ぶりにライブ活動再開。オフィシャルにて正式に、過去のツアー活動停止に関する契約書を“爆破にて破棄”したことがアナウンスされています(笑)。噂によると、2020年にDEF LEPPARDPOISONとともに北米ツアーを行うんだとか。

はい、予想通りの展開ですね(笑)。HR/HM系とプロレスの“辞めた/解散した/引退した”を真に受けてはいけません。特にこのオッさんたちの場合は、余計にね。

そもそも、2019年の流れ(自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』公開と、それに伴う新曲4曲入りサウンドトラックアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』リリース、1989年の大ヒット作『DR. FEELGOOD』のリリース30周年エディション発売など)を考えれば、いずれライブ活動も再開させるだろうことは予想の範疇内。そもそも、映画と新曲を制作している時点で、ライブのスケジュールも調整していただろうしね。わかります。

たぶんこの映画経由で初めてMOTLEY CRUEに触れたというビギナーも少なくないと思うんです。そんな人たちが今、ストリーミングサービス経由でまず最初にどのアルバムから手を出せばいいのか。もちろん、映画のサウンドトラックから入るのが筋でしょう。そこから、1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)から順々に聴くのか、あるいは最大のヒット作『DR. FEELGOOD』から入るのか、聴き方はそれぞれだと思います。

ただ、このバンドの場合、アルバムごとにスタイルを変えていますし、90年代に入ってからはその方向性がさらに激化していると思うのです。あれです、デヴィッド・ボウイQUEENでまず最初に聴くべきオリジナルアルバムで迷うのと一緒。だったら、最初にベストアルバムから入っていこう……そう思われる方も少なくないと思います。

MOTLEY CRUEは現在までに、ベストアルバムを3タイトル“正式”リリースしています。“正式”と付けたのは、バンド側が意図して発表したという意味で、レーベル側がバンドの意図せぬところで発表したタイトルも複数あるので、ここではそれらは省くことにします。

その3タイトルというのが、1988年リリースの初のグレイテストヒッツ・アルバム『GREATEST HITS』と、“オリジナル4”の再々結成を記念した2枚組ベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』(2005年)、そして2009年に発表された『GREATEST HITS』。このうち現在ストリーミングサービスで試聴できるのは2009年版の『GREATEST HITS』となっています。

『RED, WHITE & CRUE』に関しては過去に本サイトで取り上げているので、今回は『GREATEST HITS』と題した“内容の異なる”2つのグレイテストヒッツ・アルバムについて紹介したいと思います。

 

 

①1998年バージョン

モトリーはそれ以前、結成10周年を記念したコンピレーションアルバム『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991年)を発表していますが、これは純粋なベストアルバムではないので、Elektra Recordsを離脱した1998年の時点で廃盤扱いになっています。それに代わるように同年秋、新たに設立された自主レーベルMötley Recordsからの第1弾アイテムとしてリリースされたのがこのベストアルバム。ヴィンス・ニール(Vo)在籍時(『TOO FAST FOR LOVE』から『DR. FEELGOOD』までの5作と、『DECADE OF DECADENCE '81-'91』収録の新録曲、1997年の最新作『GENERATION SWINE』)の既発曲に、ボブ・ロックがプロデュースを手がけた新曲2曲「Bitter Pill」「Enslaved」を追加した全17曲入りとなっています。

ただ、グレイテストヒッツと謳いながらも「Live Wire」や「Too Young To Fall In Love」といった初期のMV制作楽曲は含まれておらず、代わりに当時からライブで再び演奏するようになった「Too Fast For Love」、インダストリアル調にリテイクした「Shout At The Devil '97」、『GENERATION SWINE』収録曲「Glitter」のリミックスバージョンなどを聴くことができます。

正直、当時はこの選曲に「いかにもアメリカ人が作った感覚」と思った記憶があります。それは新曲2曲から始まり、その後は年代などめちゃくちゃで、構成とか考えてるのかな?と感性を疑いたくなるような曲順にも表れているんじゃないかな。まあ、慣れるとこれはこれで嫌いじゃないんだけどね。

肝心の新曲2曲は、直前に『GENERATION SWINE』みたいにインダストリアル風アレンジなしの、どストレートなハードロック。ボブ・ロックを交えて制作したということは『DR. FEELGOOD』よ再び、という気持ちがあったのかもしれないけど、『GENERATION SWINE』を通過した当時のモトリーにはすでに戻れない過去となっていたようで。若干ダークさを残しつつも適度な爽快感を表現した「Bitter Pill」も、いかにも彼ららしいグルーヴィーなミドルチューン「Enslaved」も決して悪くはないけど、特別素晴らしいとも言い難い“アルバムの中の1曲”というつなぎ曲の印象。今思えば、このスタイルが10年後の『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)につながっていたのですね(この際『NEW TATTOO』のことは忘れよう)。

 


▼MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』
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2019年10月19日 (土)

ANTHRAX『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』(1998)

1998年7月に発表された、ANTHRAX通算8作目のオリジナルアルバム。日本盤は海外よりも1ヶ月早い、同年6月初旬にリリースされています。

ジョン・ブッシュ(Vo/当時ex. ARMORED SAINT)加入後3作目となりますが、前作『STOMP 442』(1995年)まで所属していたElektra Recordsとの契約は2作で終了。今作はインディーズレーベルのIgnition Recordsから発表されました(日本盤はビクターからの初リリース作品)。

プロデュースを手がけたのは、前作でゲストプレイヤーとして参加したポール・クルック(G)とバンド自身。ポールは本作でも「Killing Box」など4曲でソロを披露しています。また、前作にも参加したPANTERAのダイムバッグ・ダレル(G)が「Inside Out」「Born Again Idiot」の2曲でソロを弾いたほか、同じくPANTERAのフィル・アンセルモ(Vo)も「Killing Box」でバッキング・ボーカルとしてゲスト参加しています。

作風としては、前作『STOMP 442』の延長線上にあるモダンヘヴィネス路線+ストレートなスラッシュ路線を推し進めたもの。ただ、前作にあった地味な印象が若干払拭されており、オープニングの「Crush」から派手さが目立つプレイを聴かせてくれます。

とにかく「Crush」のトライバルなリズムがカッコいいったらありゃしない。これ1曲でKOされたというリスナー、当時も少なくなかったはずです。かと思えば、いかにもANTHRAXなド直球疾走チューン「Catharsis」や、モダンヘヴィネスに特化した「Inside Out」とバラエティに富んだ3曲が冒頭を飾るわけですから、そりゃあ派手ですわな。

そこからロックンロール調の「P & V」や30秒程度のハードコア・ショートチューン「604」、カントリー風の朗らかさが際立つ異色作「Toast To The Extras」、軽快なスラッシュチューン「Born Against Idiot」、トライバルなリズムとモダンなアレンジが新鮮な「Killing Box」、枯れたアメリカンロック風な序盤からダイナミックなアレンジへと変化する「Harms Way」、グルーヴィーな「Big Fat」、グラインドコアと呼ぶにふさわしい「Cupajoe」などなど……良くも悪くもANTHRAXらしい無秩序さが際立つ内容なのです。そりゃ派手になりますわ。

統一感という点においては、オリジナルアルバムの中では一番薄いですし、ちょっと企画盤っぽくも思えてしまうくらい“非メタル”な楽曲も含まれています。が、この悪ノリ感もANTHRAXなわけでして。全14曲(ベースのフランク・ベロが歌うシークレットトラック「Pieces」を含めると15曲)で60分を超える内容は散漫とも受け取れますが、ここまでいろいろやれたのもジョン・ブッシュというシンガーありきな気も。賛否分かれるところかと思いますが、印象が薄いよりはマシなんじゃないかな。諸手を挙げて絶賛する気にはなれないけど、そこまで嫌いになれない1枚でもあります。

 


▼ANTHRAX『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』
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2019年5月 6日 (月)

THERAPY?『SEMI-DETACHED』(1998)

1998年3月(日本では4月)に発売された、THERAPY?の4thフルアルバム(インディーズ盤を含めると6作目)。実験的な作風の前作『INFERNAL LOVE』(1995年)にチェロでゲスト参加していたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)が、本作からギター&チェロで正式参加。新たに4人編成のバンドとして再スタートを切ることになりました。

プロデューサーは名作『TROUBLEGUM』(1994年)を手がけたクリス・シェルドンが再び担当。サウンドのタッチ的には同作ほど冷たさはないものの、『INFERNAL LOVE』で落胆したファンを再び納得させるだけの“あの”テイストは若干復調しているように思います。

が、オープニングを飾る「Church Of Noise」には当時誰もが驚いたのではないでしょうか。メロディの“ひねくれているけどキャッチー”なところは従来のTHERAPY?らしいのですが、全体的に能天気さが漂っている。電話のプッシュ音をフィーチャーしていたり、エンディングのオルガンの牧歌的な音あったりと、とても『TROUBLEGUM』や『INFERNAL LOVE』と作ったバンドと同じものとは思えないほど。2曲目「Tightrope Walker」の曲調や、中盤に登場するツインリードも然り、ですよね。

かと思えば、THE WiLDHEARTSを彷彿とさせる疾走感の強いパワーポップ「Lonely, Cryin', Only」があったりと、メジャーキーのインパクトが強い楽曲がいくつか含まれており、最初に聴いたときは面食らったことを今でもよく覚えています。で、それら2曲がシングルカットされているという事実。ブリットポップも終わり、パンキッシュなバンドもひと段落したこのタイミングに彼らがどこへ向かおうとしていたのか、不安を感じずじはいられませんでした。

とはいえ、それ以外の楽曲は従来のTHERAPY?らしさを踏襲している。「Black Eye, Purple Sky」や「Born Too Soon」のダーク&ヘヴィさは前作までの彼らのまんまだし、「Stay Happy」あたりからは90年前後のオルタナティヴロックやグランジからの影響が見え隠れする。ああ、基本的にやりたいことは変わってないんだな……とここでちょっとだけ安心するわけです。

思えば『TROUBLEGUM』にも「Nowhere」のようなキャッチーでポップな楽曲は含まれていましたし、その路線を別のテイストで表現したと思えば先のメジャー路線も納得できるんですけど、いかんせんインパクトが強すぎた(笑)。しかも推し曲としてシングル化するわけですから、「今後そっちで行きたいの?」と勘違いしてしまったわけです。ごめんよ、アンディ・ケアンズ(Vo, G)。

確かに、もうここには『NURSE』(1992年)までの尖りきった彼らは存在しないのかもしれません。けど、要所要所にその鋭さは残されている。要は表現の仕方や整理の仕方が上手になったということなのでしょう。そういう意味では、『NURSE』以前の彼らとも地続きでつながっていることが理解できる、そんな集大成的な1枚が本作なのかもしれませんね。

あ、本作は国内サブスクリプションサービスでは聴くことができません。日本盤は廃盤状態ですが中古ショップをこまめに回れば見つけることができるはずなので、ぜひチェックしてみてください。

(※追記)
2020年3月現在、Spotifyでは本作のストリーミング配信が日本国内でもスタートしていました。

 


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2019年1月18日 (金)

VAN HALEN『VAN HALEN III』(1998)

1998年3月にリリースされた、VAN HALEN通算11枚目のオリジナルアルバム。新曲を含む作品としてはデヴィッド・リー・ロスが復帰して制作した新曲2曲を含むベストアルバム『BEST OF VOLUME I』(1996年)以来1年半ぶりとなりますが、フルアルバムとしてはサミー・ヘイガー参加ラスト作となった『BALANCE』(1995年)以来まる3年ぶりのこと。「Without You」や「Fire In The Hole」のラジオヒット(後者は映画『リーサル・ウェポン4』にて使用)こそあったものの、アルバム自体はサミー加入後の『5150』(1986年)から4作続いた全米1位記録は途絶えてしまい、最高4位止まり。セールスもマルチプラチナムには程遠い50万枚程度で幕を下ろしています。

ちょうど1996〜7年頃はサミーの脱退やデイヴの復帰などで、フロントマンが落ち着かなかった不安定な時期。そんな中、バンドがシンガーとして選んだのはデイヴでもサミーでもない、“第3の男”ゲイリー・シェローンでした。ちょうどEXTREMEからヌーノ・ベッテンコート(G)が脱退し、こちらもバンドが傾いていたタイミング。そこでゲイリーがVAN HALENに移籍したことで、EXTREMEは一度自然消滅するのでした。

さて、タイプ的にはサミーよりもデイヴ寄りの、決して多彩さを持つ表現者ではないゲイリーですので、VAN HALENのサウンド的にも初期や『BEST OF VOLUME I』での新曲に近い方向性になるのかと思いきや、半分正解といったところでしょうか。初期っぽくはならず、『BEST OF VOLUME I』での新曲の延長線上。つまり、サミー時代の方向性の延長線上にある、従来の流れにある1枚なのです。また、サミーよりも陰なイメージの強いゲイリーの声/声質に合わせた曲作りがなされており、それもあってか若干ダークな印象も受けるアルバムでもあります。

ピアノとアコギからなるインスト「Neworld」を経てスタートするオープニングナンバー「Without You」こそ、前作『BALANCE』までの流れを汲むダイナミックなハードロックですが、続く「One I Want」には若干初期VAN HALENの香りも。かと思えば、非常にダークな「From Afar」や「Dirty Water Dog」があったり、新境地的なミディアムバラード「Once」もあり、バンドとして守りに入らず前進していることもアピールする。このへんは個人的にも好意的に受け入れています。

が、どの曲もコンパクトさに欠けるのもまた事実。インストの短尺曲以外は5分を下回る楽曲が皆無で、「Without You」は6分半、「Once」は7分半ですし、泣きのバラード「Year To The Day」は8分半もある。これは曲によってイントロが長かったり、曲中にギターソロや楽器隊のインタープレイが含まれていたりといろんな理由があるのですが、おそらくそれ以前との曲作りのスタンスの違いが大きいのかなと。明らかにジャムセッションの延長線上ですものね、このアルバム。シングルヒット量産型だった80年代後半から90年代前半の楽曲はもっとブラッシュアップされていたような気もするのですが、そこはボーカリストが変わったことによる意識の変化の表れなのかもしれません。

じゃあ、これだけソロのために時間が割かれているんだから、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)の華麗なプレイが楽しめるのか?と言われると、答えはイエスでもありノーでもあると。正直、そこまで印象に残るプレイは多くなく、70〜80年代の彼と比較したら衝撃度も低い。手癖っぽいフレーズも多いですし……そういう点においても、彼らのキャリアにおいて評価は低い部類に入る1枚と言えるでしょう。

実は本作、リリース当時に購入したあと、数回聴いたのみで放置。これを書くにあたって20年ぶりに引っ張り出したのですが、思っていたよりも良いと思えたことだけは書き残しておきます。それでも、12曲で65分は長すぎですけどね。

 


▼VAN HALEN『VAN HALEN III』
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