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カテゴリー「1998年の作品」の57件の記事

2022年5月 5日 (木)

HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998)

1998年10月にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの1stアルバム。日本盤未発売。

本作は本国スウェーデンのみで発表されたデビュー作で、現在はサブスク配信なども行われていない貴重な1枚。バンドのセルフプロデュースで制作された10曲(ラストナンバー「So Deep Inside」のあとにシークレットトラック「Fly Away」が含まれているので、正式には全11曲)が収録されており、チープで生々しい音像が初期衝動の塊のようなラフでアグレッシヴな演奏にマッチしています。

本作収録曲のうち6曲(「Hello/Goodbye」「Bubblecum Ride」「Rock 'N' Roll Star」「Someone Special」「Punk Rock Song」「So Deep Inside」)がワールドワイドデビュー作にあたる次作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)で再録されているのですが、さすがに一度録音した楽曲(およびライブで幾度にわたり披露してきた)だけあって、再録バージョンは実に“整理された”形に整えられています。大手レーベルのMusic For Nationsと契約したこともあり、レコーディングにかける費用もデビュー作の比ではなかったんでしょうね。うん、わかります。

僕はこちらの1stアルバムは完全後追いで、なんならちゃんと聴いたのはここ数年の話。そこそこ手頃な値段で中古盤を手に入れたのですが、買って後悔のない1枚だと今でも思っています。「Hello/Goodbye」や「Rock 'N' Roll Star」の完成度は次作に譲るものの、無軌道なラフさが際立つ今作のバージョンも決して嫌いになれない。それは名曲「Someone Special」も同様で、同系統で2ndアルバム未収録の「Right Here, Right Now」などには3rdアルバム『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)以降の片鱗を感じ取ることができ、改めて原石以上の可能性が伝わることも確認できます。

にしても、ありきたりのフレーズである「たかがロックンロール」を デビュー作のタイトルに用いた彼らが、そこから20年後に『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018年)で「俺のロックンロールを殺せやしねえよ」と再宣言するカッコよさといったら。そういう意味では、ぜひどこかのタイミングで万人が聴けるような環境を整えてもらいたいものです。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』
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2021年3月29日 (月)

OASIS『THE MASTERPLAN』(1998)

1998年11月3日にリリースされたOASISのコンピレーションアルバム。日本盤は同年10月28日に先行発売。

全英1位/全米2位/日本3位(オリコン総合チャート)という好成績を残した3rdアルバム『BE HERE NOW』(1997年)を経て、続く4thアルバムまでのつなぎ且つ1998年のクリスマス商戦に向けたアイテムとして制作された、既出のシングルBサイド曲で構成された内容。ファン投票の結果を踏まえ、ノエル・ギャラガー(G, Vo)によって決定した14曲が収められており、「隠れた名曲が多いアルバム未収録曲」による“裏ベスト”的1枚となっています。

本作にはライブでの定番曲だった「Acquiesce」や「Talk Tonight」、ビートルズのカバー「I Am The Walrus」のライブテイクなど、耳馴染みのある楽曲も多数収録されています。当時のOASISファンにとって、毎回アルバム未収録の新曲が複数用意されたシングルはマストアイテム。なので、新曲や未発表曲皆無の本作はある意味スルー案件ではあったものの、こうやってアルバム1枚にまとめられると手軽に楽しめるので重宝した、なんてファンも少なくないはずです。

録音時期や録音環境(スタジオ/ライブテイク)、録音メンバーも異なるため、アルバムとしてのトータルクオリティはオリジナルアルバムには及びませんが、それでも捨て曲なしの本作はOASISに多少なりとも興味があるリスナーなら、避けては通れない1枚。上記のような楽曲に加え、「Underneath The Sky」「Going Nowhere」「Rockin' Chair」「Stay Young」「Headshrinker」、そしてタイトルトラック「The Masterplan」とノエル・ギャラガーの才能が遺憾無く発揮された名曲がたっぷり用意されているのですから。このクオリティでアルバムから漏れるんだ……と当時は驚かされたものです。

あと、ノエルVo曲が多いのも本作の特徴かな。この当時はまだ、アルバム本編では抑え気味だったノエルのシンガーとしての側面は、シングルのBサイドナンバーで発揮されていたわけで、本作では全14曲中5曲(うち「Acquiesce」はリアム・ギャラガーとのツインVo)でノエルの歌を楽しめます。その中でも特筆すべき1曲が、先にも挙げた「The Masterplan」。これ、なんで『BE HERE NOW』から漏れたんだろうと頭を抱えるほど出色の完成度で、あの時期の創作意欲はバンドとしてもピークに達しつつあったことが理解できるんじゃないかと。それこそ「Stay Young」も『BE HERE NOW』期のBサイド曲ですしね。

本作りリースからしばらくして、初期メンバーのボーンヘッド(G)とギグジー(B)が相次いで脱退。残されたリアム&ノエルと、1995年に加入したアラン・ホワイト(Dr)の3人で4thアルバム『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000年)を完成させることになります。結果として本作は、初期OASISの節目を飾る1枚となってしまいましたが、ありきたりなシングルコレクションではなく、こうした裏ベストで第1期を締めくくったのも実にOASISらしかったのではないでしょうか。

 


▼OASIS『THE MASTERPLAN』
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2020年4月23日 (木)

FEAR FACTORY『OBSOLETE』(1998)

FEAR FACTORYが1998年7月にリリースした3rdアルバム。

インダストリアル風味のモダンヘヴィネス・サウンドが展開された前作『DEMANUFACTURE』(1995年)が、ここ日本を含む世界中のHR/HMシーンで高く評価され、さらに『Ozzfest』出演(1996年)などを経て一気に知名度を高めることに成功したFEAR FACTORY。続く本作は全米77位と、初めてBillboard 200にチャートインを果たし、現在までに50万枚以上を売り上げる人気作に。バンドの人気を確実に決定づけた“ダメ押し”の1枚です。

“機械文明 vs 人間”をテーマにした前作から引き続き、本作も同様のモチーフでSF的側面を描いたコンセプチュアルな作品。とはいえ、よくある「曲間をセリフなどのインタールードでつなぐ」的作りとは異なり、(要所要所でSE的なものは挿入されるものの、怒涛の構成をぶった切るようなことは一切ない)ひたすらモノトーンで冷徹な轟音で、時に無感情に、時にエモーショナルに各曲が表現されていきます。

いわゆるスラッシュメタル的なスピード感は前作よりも劣るものの、1998年というラップメタル/グルーヴメタル主流の時代にフィットしたミドルテンポの楽曲を軸にした作風は、アルバムのトーンをひとつにまとめるという点において見事に成功しているのでは。そこにアップライト・ベースを用いることでヒップホップ的テイストが加わった「Edgecrusher」や、いかにも彼ららしいスペーシーなメロディ&ボーカルが乗った「Securitron (Police State 2000)」、跳ね気味のリズムとキャッチーなメロディの融合が不思議な浮遊感を醸し出す「Descent」など、1曲1曲が異なる個性を放つことでモノトーンの中にもグラデーションを生み出だしています。

バートン・C・ベル(Vo)のデスボイスを用いたスクリームとクリーントーンによるメロウパートの対比は前作以上にくっきり際立つような作りですし、ディーノ・カザレス(G)&レイモンド・ヘレーラ(Dr)、そしてクリスチャン・オールド・ウォルバース(B)が繰り出すゴリゴリでヘヴィなリフ、かつ機械のように息の合ったシンコペーションも前作以上のノリを醸し出している。ですが、ひたすら機械的な印象が強かった『DEMANUFACTURE』と比べると、同じひんやりした演奏の中からも不思議と人間味が感じられる。「Freedom Or Fire」での打ち込みを同期させながらも躍動感の強さを感じさせるビートはまさにそれで、そのへんの対比含めて実は前作と合わせて語るべき1枚なのかもしれません。

昔は「FEAR FACTORYといえば『DEMANUFACTURE』!」というイメージを強く持っていて、一番好きなアルバムも同作だったりしたのですが、現在は何気に今作こそがFEAR FACTORYの入門編に最適なアルバムでは?と思っています。というか、この時期のFEAR FACTORYにはハズレなしなので、どっちから入ったとしても絶対にハマってもらえるはずです。

 


▼FEAR FACTORY『OBSOLETE』
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2019年11月22日 (金)

MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』(1998 / 2009)

MOTLEY CRUE、約4年ぶりにライブ活動再開。オフィシャルにて正式に、過去のツアー活動停止に関する契約書を“爆破にて破棄”したことがアナウンスされています(笑)。噂によると、2020年にDEF LEPPARDPOISONとともに北米ツアーを行うんだとか。

はい、予想通りの展開ですね(笑)。HR/HM系とプロレスの“辞めた/解散した/引退した”を真に受けてはいけません。特にこのオッさんたちの場合は、余計にね。

そもそも、2019年の流れ(自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』公開と、それに伴う新曲4曲入りサウンドトラックアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』リリース、1989年の大ヒット作『DR. FEELGOOD』のリリース30周年エディション発売など)を考えれば、いずれライブ活動も再開させるだろうことは予想の範疇内。そもそも、映画と新曲を制作している時点で、ライブのスケジュールも調整していただろうしね。わかります。

たぶんこの映画経由で初めてMOTLEY CRUEに触れたというビギナーも少なくないと思うんです。そんな人たちが今、ストリーミングサービス経由でまず最初にどのアルバムから手を出せばいいのか。もちろん、映画のサウンドトラックから入るのが筋でしょう。そこから、1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)から順々に聴くのか、あるいは最大のヒット作『DR. FEELGOOD』から入るのか、聴き方はそれぞれだと思います。

ただ、このバンドの場合、アルバムごとにスタイルを変えていますし、90年代に入ってからはその方向性がさらに激化していると思うのです。あれです、デヴィッド・ボウイQUEENでまず最初に聴くべきオリジナルアルバムで迷うのと一緒。だったら、最初にベストアルバムから入っていこう……そう思われる方も少なくないと思います。

MOTLEY CRUEは現在までに、ベストアルバムを3タイトル“正式”リリースしています。“正式”と付けたのは、バンド側が意図して発表したという意味で、レーベル側がバンドの意図せぬところで発表したタイトルも複数あるので、ここではそれらは省くことにします。

その3タイトルというのが、1988年リリースの初のグレイテストヒッツ・アルバム『GREATEST HITS』と、“オリジナル4”の再々結成を記念した2枚組ベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』(2005年)、そして2009年に発表された『GREATEST HITS』。このうち現在ストリーミングサービスで試聴できるのは2009年版の『GREATEST HITS』となっています。

『RED, WHITE & CRUE』に関しては過去に本サイトで取り上げているので、今回は『GREATEST HITS』と題した“内容の異なる”2つのグレイテストヒッツ・アルバムについて紹介したいと思います。

 

 

①1998年バージョン

モトリーはそれ以前、結成10周年を記念したコンピレーションアルバム『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991年)を発表していますが、これは純粋なベストアルバムではないので、Elektra Recordsを離脱した1998年の時点で廃盤扱いになっています。それに代わるように同年秋、新たに設立された自主レーベルMötley Recordsからの第1弾アイテムとしてリリースされたのがこのベストアルバム。ヴィンス・ニール(Vo)在籍時(『TOO FAST FOR LOVE』から『DR. FEELGOOD』までの5作と、『DECADE OF DECADENCE '81-'91』収録の新録曲、1997年の最新作『GENERATION SWINE』)の既発曲に、ボブ・ロックがプロデュースを手がけた新曲2曲「Bitter Pill」「Enslaved」を追加した全17曲入りとなっています。

ただ、グレイテストヒッツと謳いながらも「Live Wire」や「Too Young To Fall In Love」といった初期のMV制作楽曲は含まれておらず、代わりに当時からライブで再び演奏するようになった「Too Fast For Love」、インダストリアル調にリテイクした「Shout At The Devil '97」、『GENERATION SWINE』収録曲「Glitter」のリミックスバージョンなどを聴くことができます。

正直、当時はこの選曲に「いかにもアメリカ人が作った感覚」と思った記憶があります。それは新曲2曲から始まり、その後は年代などめちゃくちゃで、構成とか考えてるのかな?と感性を疑いたくなるような曲順にも表れているんじゃないかな。まあ、慣れるとこれはこれで嫌いじゃないんだけどね。

肝心の新曲2曲は、直前に『GENERATION SWINE』みたいにインダストリアル風アレンジなしの、どストレートなハードロック。ボブ・ロックを交えて制作したということは『DR. FEELGOOD』よ再び、という気持ちがあったのかもしれないけど、『GENERATION SWINE』を通過した当時のモトリーにはすでに戻れない過去となっていたようで。若干ダークさを残しつつも適度な爽快感を表現した「Bitter Pill」も、いかにも彼ららしいグルーヴィーなミドルチューン「Enslaved」も決して悪くはないけど、特別素晴らしいとも言い難い“アルバムの中の1曲”というつなぎ曲の印象。今思えば、このスタイルが10年後の『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)につながっていたのですね(この際『NEW TATTOO』のことは忘れよう)。

 


▼MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』
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2019年10月19日 (土)

ANTHRAX『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』(1998)

1998年7月に発表された、ANTHRAX通算8作目のオリジナルアルバム。日本盤は海外よりも1ヶ月早い、同年6月初旬にリリースされています。

ジョン・ブッシュ(Vo/当時ex. ARMORED SAINT)加入後3作目となりますが、前作『STOMP 442』(1995年)まで所属していたElektra Recordsとの契約は2作で終了。今作はインディーズレーベルのIgnition Recordsから発表されました(日本盤はビクターからの初リリース作品)。

プロデュースを手がけたのは、前作でゲストプレイヤーとして参加したポール・クルック(G)とバンド自身。ポールは本作でも「Killing Box」など4曲でソロを披露しています。また、前作にも参加したPANTERAのダイムバッグ・ダレル(G)が「Inside Out」「Born Again Idiot」の2曲でソロを弾いたほか、同じくPANTERAのフィル・アンセルモ(Vo)も「Killing Box」でバッキング・ボーカルとしてゲスト参加しています。

作風としては、前作『STOMP 442』の延長線上にあるモダンヘヴィネス路線+ストレートなスラッシュ路線を推し進めたもの。ただ、前作にあった地味な印象が若干払拭されており、オープニングの「Crush」から派手さが目立つプレイを聴かせてくれます。

とにかく「Crush」のトライバルなリズムがカッコいいったらありゃしない。これ1曲でKOされたというリスナー、当時も少なくなかったはずです。かと思えば、いかにもANTHRAXなド直球疾走チューン「Catharsis」や、モダンヘヴィネスに特化した「Inside Out」とバラエティに富んだ3曲が冒頭を飾るわけですから、そりゃあ派手ですわな。

そこからロックンロール調の「P & V」や30秒程度のハードコア・ショートチューン「604」、カントリー風の朗らかさが際立つ異色作「Toast To The Extras」、軽快なスラッシュチューン「Born Against Idiot」、トライバルなリズムとモダンなアレンジが新鮮な「Killing Box」、枯れたアメリカンロック風な序盤からダイナミックなアレンジへと変化する「Harms Way」、グルーヴィーな「Big Fat」、グラインドコアと呼ぶにふさわしい「Cupajoe」などなど……良くも悪くもANTHRAXらしい無秩序さが際立つ内容なのです。そりゃ派手になりますわ。

統一感という点においては、オリジナルアルバムの中では一番薄いですし、ちょっと企画盤っぽくも思えてしまうくらい“非メタル”な楽曲も含まれています。が、この悪ノリ感もANTHRAXなわけでして。全14曲(ベースのフランク・ベロが歌うシークレットトラック「Pieces」を含めると15曲)で60分を超える内容は散漫とも受け取れますが、ここまでいろいろやれたのもジョン・ブッシュというシンガーありきな気も。賛否分かれるところかと思いますが、印象が薄いよりはマシなんじゃないかな。諸手を挙げて絶賛する気にはなれないけど、そこまで嫌いになれない1枚でもあります。

 


▼ANTHRAX『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』
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2019年5月 6日 (月)

THERAPY?『SEMI-DETACHED』(1998)

1998年3月(日本では4月)に発売された、THERAPY?の4thフルアルバム(インディーズ盤を含めると6作目)。実験的な作風の前作『INFERNAL LOVE』(1995年)にチェロでゲスト参加していたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)が、本作からギター&チェロで正式参加。新たに4人編成のバンドとして再スタートを切ることになりました。

プロデューサーは名作『TROUBLEGUM』(1994年)を手がけたクリス・シェルドンが再び担当。サウンドのタッチ的には同作ほど冷たさはないものの、『INFERNAL LOVE』で落胆したファンを再び納得させるだけの“あの”テイストは若干復調しているように思います。

が、オープニングを飾る「Church Of Noise」には当時誰もが驚いたのではないでしょうか。メロディの“ひねくれているけどキャッチー”なところは従来のTHERAPY?らしいのですが、全体的に能天気さが漂っている。電話のプッシュ音をフィーチャーしていたり、エンディングのオルガンの牧歌的な音あったりと、とても『TROUBLEGUM』や『INFERNAL LOVE』と作ったバンドと同じものとは思えないほど。2曲目「Tightrope Walker」の曲調や、中盤に登場するツインリードも然り、ですよね。

かと思えば、THE WiLDHEARTSを彷彿とさせる疾走感の強いパワーポップ「Lonely, Cryin', Only」があったりと、メジャーキーのインパクトが強い楽曲がいくつか含まれており、最初に聴いたときは面食らったことを今でもよく覚えています。で、それら2曲がシングルカットされているという事実。ブリットポップも終わり、パンキッシュなバンドもひと段落したこのタイミングに彼らがどこへ向かおうとしていたのか、不安を感じずじはいられませんでした。

とはいえ、それ以外の楽曲は従来のTHERAPY?らしさを踏襲している。「Black Eye, Purple Sky」や「Born Too Soon」のダーク&ヘヴィさは前作までの彼らのまんまだし、「Stay Happy」あたりからは90年前後のオルタナティヴロックやグランジからの影響が見え隠れする。ああ、基本的にやりたいことは変わってないんだな……とここでちょっとだけ安心するわけです。

思えば『TROUBLEGUM』にも「Nowhere」のようなキャッチーでポップな楽曲は含まれていましたし、その路線を別のテイストで表現したと思えば先のメジャー路線も納得できるんですけど、いかんせんインパクトが強すぎた(笑)。しかも推し曲としてシングル化するわけですから、「今後そっちで行きたいの?」と勘違いしてしまったわけです。ごめんよ、アンディ・ケアンズ(Vo, G)。

確かに、もうここには『NURSE』(1992年)までの尖りきった彼らは存在しないのかもしれません。けど、要所要所にその鋭さは残されている。要は表現の仕方や整理の仕方が上手になったということなのでしょう。そういう意味では、『NURSE』以前の彼らとも地続きでつながっていることが理解できる、そんな集大成的な1枚が本作なのかもしれませんね。

あ、本作は国内サブスクリプションサービスでは聴くことができません。日本盤は廃盤状態ですが中古ショップをこまめに回れば見つけることができるはずなので、ぜひチェックしてみてください。

(※追記)
2020年3月現在、Spotifyでは本作のストリーミング配信が日本国内でもスタートしていました。

 


▼THERAPY?『SEMI-DETACHED』
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2019年1月18日 (金)

VAN HALEN『VAN HALEN III』(1998)

1998年3月にリリースされた、VAN HALEN通算11枚目のオリジナルアルバム。新曲を含む作品としてはデヴィッド・リー・ロスが復帰して制作した新曲2曲を含むベストアルバム『BEST OF VOLUME I』(1996年)以来1年半ぶりとなりますが、フルアルバムとしてはサミー・ヘイガー参加ラスト作となった『BALANCE』(1995年)以来まる3年ぶりのこと。「Without You」や「Fire In The Hole」のラジオヒット(後者は映画『リーサル・ウェポン4』にて使用)こそあったものの、アルバム自体はサミー加入後の『5150』(1986年)から4作続いた全米1位記録は途絶えてしまい、最高4位止まり。セールスもマルチプラチナムには程遠い50万枚程度で幕を下ろしています。

ちょうど1996〜7年頃はサミーの脱退やデイヴの復帰などで、フロントマンが落ち着かなかった不安定な時期。そんな中、バンドがシンガーとして選んだのはデイヴでもサミーでもない、“第3の男”ゲイリー・シェローンでした。ちょうどEXTREMEからヌーノ・ベッテンコート(G)が脱退し、こちらもバンドが傾いていたタイミング。そこでゲイリーがVAN HALENに移籍したことで、EXTREMEは一度自然消滅するのでした。

さて、タイプ的にはサミーよりもデイヴ寄りの、決して多彩さを持つ表現者ではないゲイリーですので、VAN HALENのサウンド的にも初期や『BEST OF VOLUME I』での新曲に近い方向性になるのかと思いきや、半分正解といったところでしょうか。初期っぽくはならず、『BEST OF VOLUME I』での新曲の延長線上。つまり、サミー時代の方向性の延長線上にある、従来の流れにある1枚なのです。また、サミーよりも陰なイメージの強いゲイリーの声/声質に合わせた曲作りがなされており、それもあってか若干ダークな印象も受けるアルバムでもあります。

ピアノとアコギからなるインスト「Neworld」を経てスタートするオープニングナンバー「Without You」こそ、前作『BALANCE』までの流れを汲むダイナミックなハードロックですが、続く「One I Want」には若干初期VAN HALENの香りも。かと思えば、非常にダークな「From Afar」や「Dirty Water Dog」があったり、新境地的なミディアムバラード「Once」もあり、バンドとして守りに入らず前進していることもアピールする。このへんは個人的にも好意的に受け入れています。

が、どの曲もコンパクトさに欠けるのもまた事実。インストの短尺曲以外は5分を下回る楽曲が皆無で、「Without You」は6分半、「Once」は7分半ですし、泣きのバラード「Year To The Day」は8分半もある。これは曲によってイントロが長かったり、曲中にギターソロや楽器隊のインタープレイが含まれていたりといろんな理由があるのですが、おそらくそれ以前との曲作りのスタンスの違いが大きいのかなと。明らかにジャムセッションの延長線上ですものね、このアルバム。シングルヒット量産型だった80年代後半から90年代前半の楽曲はもっとブラッシュアップされていたような気もするのですが、そこはボーカリストが変わったことによる意識の変化の表れなのかもしれません。

じゃあ、これだけソロのために時間が割かれているんだから、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)の華麗なプレイが楽しめるのか?と言われると、答えはイエスでもありノーでもあると。正直、そこまで印象に残るプレイは多くなく、70〜80年代の彼と比較したら衝撃度も低い。手癖っぽいフレーズも多いですし……そういう点においても、彼らのキャリアにおいて評価は低い部類に入る1枚と言えるでしょう。

実は本作、リリース当時に購入したあと、数回聴いたのみで放置。これを書くにあたって20年ぶりに引っ張り出したのですが、思っていたよりも良いと思えたことだけは書き残しておきます。それでも、12曲で65分は長すぎですけどね。

 


▼VAN HALEN『VAN HALEN III』
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2019年1月14日 (月)

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998)

1998年夏にリリースされた、AT THE DRIVE-INの2ndアルバム。続く3作目『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000年)がGrand Royalを通じてメジャー流通されたことで一気に知名度が増し、僕のようなにわかファンがそこで“これ1枚だけのバンド!”みたいな勘違いをしてしまいがちですが、いやいや、まったくそんなことはなく、この『IN/CASINO/OUT』の時点でそのオリジナリティはしっかり確立されていることに気づかされます。

僕自身、本作を聴いたのは『RELATIONSHIP OF COMMAND』発売からだいぶ遅れてのことですが、最初は『RELATIONSHIP OF COMMAND』にあったはちきれんばかりのエネルギーの塊がここにはないと、そこまでのめり込めなかったことをよく覚えています。が、実は本作『IN/CASINO/OUT』のほうがバランス感に優れていて、“コントロールされた爆発”を思う存分楽しめる1枚なのではないかと、あとになって気づくわけです。

ロス・ロビンソンが手がけた『RELATIONSHIP OF COMMAND』とは異なり、ここではFUDGE TUNNELやNAILBOMBなどで知られるアレックス・ニューポート(THE MARS VOLTABLOC PARTY、DEATH CAB FOR CUTIE)がプロデュースを担当。全体を覆う“熱に満ちているのにどこかヒンヤリとしている”感覚は、もともとこのバンドが持ち合わせている個性ではあるものの、アレックスはそこをより強化させることに成功したのではないかと。冷たいのにカラッとしたサウンドの質感と合わせ、本当に気持ちいい“音”を鳴らしているのですね。

それは、例えが正しいかわかりませんが、80年代前半までのU2が持っていた要素に近いものを感じます。ただ、AT THE DRIVE-INの場合はそれをよりモダンなオルタナティヴロックスタイルで鳴らそうとし、そこにオマー・ロドリゲス(G)の変態的ギターが加わることで独自なものへと昇華した。そして、次作ではそこにロス・ロビンソンの手が加わることで、もう誰にも追いつけないくらい特殊な存在へと急激に進化した。そう捉えることはできないでしょうか。

楽曲のスタイルには確実に“グランジ以降”で90年代的だし、中にはパワーポップ的な要素も見え隠れする。だけど、特別誰かに似ているわけでもない。そこがこのバンドの凄さなんだなと、リリースから20年経った今、改めて思うわけです。

AT THE DRIVE-INは昨年末に三度目の解散を発表してしまいましたが、もう役目はすべて果たしたのかな……最近のライブを観ると、特にそう思うこともあります。正しい幕の降ろし方だったのかもしれません。今は残されたこの名盤を聴きつつ、彼らに思いを馳せようかなと。



▼AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』
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2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年12月15日 (土)

SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』(1998)

1998年6月にリリースされた、SLAYER通算7枚目のオリジナルアルバム(カバーアルバム『UNDISPUTED ATTITUDE』を含めたら8枚目のスタジオアルバム)。トム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、ポール・ボスタフ(Dr)の布陣では2作目のオリジナル作となり、初の全米TOP10入り(8位)を記録した6thアルバム『DIVINE INTERVENTION』(1994年)と比べると最高31位と近作の中では低調で終わっています。

アルバムタイトル『DIABOLUS IN MUSICA』はラテン語の音楽用語で「音楽の中の悪魔」と呼ばれる不協和音から取られているとのこと(Wikipedia情報)。ジャケットの不安を掻き立てるホラー映画感といい、これまでの直接的な邪悪さとはちょっと異なる恐怖感が演出されているような気がします。

というのも本作、これまでの残虐性の高い無慈悲なスラッシュメタルとは一線を画する、当時流行し始めていたニューメタルやヘヴィロック、ラップメタル的なテイストが導入されているのです。引きずるようなヘヴィさにヒップホップ的な“跳ね感”が加わったことで従来のサウンドよりもモダンさが際立っていますが、そこはSLAYERのこと。要所要所で“らしさ”をしっかり演出しているのでちゃんと「SLAYER」のアルバムとして成立していますのでご安心を。

とはいえ、ここまでのキャリアを総括すると、やっぱり異色の1枚なんですよね。例えば『DIVINE INTERVENTION』がケリー・キングの楽曲中心だったのに対し、今作は全11曲10曲がジェフ・ハンネマンの楽曲(日本盤ボーナストラック除く)。音楽的には上に述べたとおりで、さらに邪悪さをこれまでとは違った形で表現するためにトム・アラヤのボーカルを機械的にエフェクトしたり、SLAYERとしては初めてダウンチューニング(C#)も導入したりしています。そのへんの実験的要素の強さが、従来の正統派スラッシュメタルスタイルを愛するハードコアなリスナーから敬遠される理由なのかもしれません。

今となってはこういうヘヴィさも新鮮ですし、これがあったから続く『GOD HATES US ALL』(2001年)を生み出すことができたと捉えることもできるでしょう。しかし、1998年当時はかなりショッキングな内容に感じたことを、今でも昨日のことのように覚えています。ジャケット同様に、その音からも(別の意味で)不安をかきたてられるとは。

でもね。下手なヘヴィロックバンドやニューメタルバンド以上にヘヴィですし、内容も充実している。オープニングの「Bitter Peace」やエンディングの「Point」の、モダンさとSLAYERらしさを掛け合わせた独自性は、今こそ再評価されるべきではないでしょうか。そこに関しては太鼓判を押しておきます。まあ僕が言うまでもないでしょうけどね。



▼SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』
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