2018/01/16

THE HAUNTED『THE HAUNTED』(1998)

スウェーデンのメロディックデスメタルバンド、AT THE GATESが1996年に解散したあと、元メンバーのアンダース・ビョーラー(G)、ヨナス・ビョーラー(B)、エイドリアン・アーランドソン(Dr)を中心に結成されたデスラッシュ(デスメタル+スラッシュメタル)バンドTHE HAUNTED。彼らが1998年初夏に発表したデビューアルバムが、本作『THE HAUNTED』。

デスラッシュというカテゴリーからもわかるように、本作で表現されているのは直線的なスラッシュメタルサウンドをデスメタル的解釈で表現したもの。ところどころでAT THE GATES時代の香りもするのですが、むしろあそこまでメロウな要素は薄く、SLYAERあたりの疾走ショートチューンに近い印象を受けます。

ボーカル(本作では初代シンガーのピータードルヴィングが担当)もデスメタルというよりもスラッシュメタルやハードコア的な歌唱法で、要所要所にメロディを感じさせる部分もある(とはいえ、メロディックデスメタルのそれとはまったく異なるもの)。そういった点もSLAYERに似てるのかな。

スラッシュメタルがオールドスクールとして捉えられ、メタルといえばヘヴィさとグルーヴ重視だった90年代後半にこういったスタイルのバンドが登場したことに当時驚かされたし、そこで展開されている内容も単なる焼き直しじゃなくてスラッシュ+デスという進化形だった。ああ、またメタルが新たな形で再編されていくんだなと感じさせられた1枚が本作でした。

とにかく1曲目「Hate Song」から、難しいことを考えずに頭を振れる(この曲、タイトルが最高じゃないですか)。アレンジもシンプルで、リズムチェンジなどの展開が変に加えられていない。もうバカみたいに突っ走るのみ。1曲1曲が2分台後半から4分台前半と、曲の長さからもその内容が想像できるというものです。

ちなみに本バンドのもうひとりのギタリスト、パトリック・ヤンセンはこのTHE HAUNTEDと同時期にWITCHERYというバンドも結成。こちらもTHE HAUNTEDに負けず劣らずのデスラッシュサウンドが展開されており、今日まで活動を続けております。WITCHERYに関しても後日、改めて紹介したいと思っているのでお楽しみに。

いやあ、こういうシンプルに楽しめるアルバムは頭をリセットするのに最適ですね。大音量で楽しみたい1枚です。



▼THE HAUNTED『THE HAUNTED』
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投稿: 2018 01 16 12:00 午前 [1998年の作品, Haunted, The] | 固定リンク

2018/01/14

SOULFLY『SOULFLY』(1998)

1998年春にリリースされた、マックス・カヴァレラ(元SEPULTURA)による新バンドSOULFLYのデビューアルバム。SEPULTURAを実質追い出されたマックスは、そのSEPULTURAの直近作『ROOTS』(1996年)で試みたトライバルなヘヴィロックをさらに進化させた音楽をこのバンドで表現。つまり、傑作と言われる『ROOTS』の直系の続編と呼べる内容が本作ということができるわけです。

プロデュースは『ROOTS』と同じくロス・ロビンソンが担当。この頃にはKORNでひと山当て、さらにLIMP BIZKITのデビュー作なども当てて知名度を高めたあと。そのロス・ロビンソンとマックス本人の人脈もあり、本作にはFEAR FACTORYのバートン・C・ベル&ディノ・カザレス、LIMP BIZKITのフレッド・ダースト&DJリーサル、DEFTONESのチノ・モレノ、SKINDREDのベンジー・ウェッブなどヘヴィ/ラウドロックシーンの著名アーティストたちがゲスト参加しています。

オープニングの「Eye For And Eye」のアグレッシヴさに、本作は『ROOTS』以上に激しいアルバムになるんじゃないか?とワクワクすることでしょう。「Tribe」「Bumba」のようなトライバルなビートを用いた楽曲もあれば、「First Commandment」のようにダンサブルな楽曲もある。そしてバンド名を冠した「Soulfly」では民族音楽に接近したインストゥルメンタルナンバーを楽しめる。確実に『ROOTS』の延長線上にあるのですが、そことは違う香りもする。

例えば『ROOTS』がヘヴィさという点に重きを置いたとするならば、この『SOULFLY』はもうちょっと軽やかさが重視されているように感じます。それはテンポ的なこともそうだし、リズムの取り方ひとつにしても『ROOTS』にはないものを感じる。もちろんマックス以外のメンバーが違うんだから、そのへんが変わってくるのは当たり前の話なのですが、ここからまた新しい何かが始まる。そういう変化の兆しを強く実感させる序章的作品集なのかもしれません。

事実、本作を起点にSOULFLYはさらなる変化を遂げていきますし、気づけばSEPULTURAとは異なる道を進み始めていた。一方のSEPULTURAも新たなシンガーを得たことで以前とは異なる道を歩み始める。良い意味で、誰ひとりとして『ROOTS』を引き継ごうとしていない。つまり視点を変えると、マックスにとって本作は『ROOTS』を引きずりつつも決別しようとしている、そんな転換期の1枚とも受け取ることができるわけです。

『ROOTS』が出来すぎたアルバムだっただけに、そこからどう進化させていくか。その問いかけとひとつの回答が、このアルバムの中に示されているのではないでしょうか。リリースから20年経った今、このアルバムを聴くと改めてそんなことを考えてしまいます。



▼SOULFLY『SOULFLY』
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投稿: 2018 01 14 12:00 午前 [1998年の作品, Deftones, Fear Factory, Limp Bizkit, Sepultura, Soulfly] | 固定リンク

2018/01/09

BERNARD BUTLER『PEOPLE MOVE ON』(1998)

SUEDEのギタリスト、バーナード・バトラーが1998年春にリリースした初のソロアルバム。本作ではギター、ソングライティグのみならずボーカルやプロデュースも手がけており、マルチアーティストぶりが存分に発揮された力作に仕上がっています。

SUEDEで2枚のアルバム(1993年の『SUEDE』、1994年の『DOG MAN STAR』)に携わったあと、1995年にMcALMONT AND BUTLER名義でも活動を行うものの、シングル2枚を発表したあとに分裂(解散後にアルバム発売)。しばらく音沙汰がなかったものの、1998年に入ると1月にシングル「Stay」(全英12位)、3月に「Not Alone」(全英27位)を連続リリースし、4月にこのアルバムを発表。アルバムは全英11位とまずまずの成果を残しました。

楽曲的はSUEDEなどで聴けたエモーショナルさが凝縮されたものが多く、ギタープレイは“あの”バーナード・バトラーそのもの。時に泣きまくり、時にのたうち回る。けど、楽曲のトーンが全体的に抑えめであることから、派手に暴れることはなく、あくまでこの世界観の中でできる最大限の派手なプレイを聴かせてくれます。中でも9分近い「Autograph」は圧巻の一言。緩急を効かせたアレンジの上で、ボリュームを巧みにコントロールしたギタープレイを聴かせるバーニー、最高です。

一方のボーカルですが、これが意外と悪くない。抑揚を抑えることで無駄にエモくなりすぎず、落ち着いて楽しむことができる。むしろ、ギターが泣きまくっているので、歌まで感情的になることがない……そこでバランスを取っているんでしょうかね。

とにかく、曲が良い。先行シングル「Stay」「Not Alone」がともに名曲すぎるのです。ストリングスを効果的に取り入れた「Not Alone」なんて、時代を超えたスタンダードナンバーとして愛されるべき1曲だと思いますし、歌メロのみならずスライドギターも泣きまくりな「A Change Of Heart」(本作からの第3弾シングル)も良いし。この人、本当にすごいソングライターですね。

ということで、本作はいわゆるギタリストのソロアルバムとしてではなく、ギターのうまいブリットポップ寄りシンガーソングライターの作品として楽しんでもらいたい1枚です。

ちなみに彼のソロステージは1999年夏のフジロックと、翌2000年2月の単独公演を観ているのですが、どちらも素晴らしかった記憶が残っています。また、1999年秋にリリースした2ndソロアルバム『FRIENDS AND LOVERS』も本作に負けず劣らずの内容。こちらも機会があったらチェックしてみてください。



▼BERNARD BUTLER『PEOPLE MOVE ON』
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投稿: 2018 01 09 12:00 午前 [1998年の作品, Bernard Butler] | 固定リンク

2018/01/08

祝ご成人(1997年4月〜1998年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で4回目を迎えます。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1997年4月〜1998年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやAppleMusicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちらです)


Björk『HOMOGENIC』(Amazon

THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』(Amazon

CORNERSHOP『WHEN I WAS BORN FOR THE 7TH TIME』(Amazon

DEFTONES『AROUND THE FUR』(Amazon

EMPEROR『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』(Amazon)(レビュー

FAITH NO MORE『ALBUM OF THE YEAR』(Amazon

FOO FIGHTERS『THE COLOUR AND THE SHAPE』(Amazon)(レビュー

LIMP BIZKIT『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(Amazon)(レビュー

MADONNA『RAY OF LIGHT』(Amazon

METALLICA『RELOAD』(Amazon)(レビュー

MOGWAI『YOUNG TEAM』(Amazon

OASIS『BE HERE NOW』(Amazon)(レビュー

PORTISHEAD『PORTISHEAD』(Amazon

PRIMAL SCREAM『VANISHING POINT』(Amazon

THE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』(Amazon

RADIOHEAD『OK COMPUTER』(Amazon)(レビュー

RAMMSTEIN『SEHNSUCHT』(Amazon

SPIRITUALIZED『LADIES AND GENTLEMEN WE ARE FLOATING IN SPACE』(Amazon

THE VERVE『URBAN HYMNS』(Amazon)(レビュー

THE WiLDHEARTS『ENDLESS, NAMELESS』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下、主だった作品をざっと羅列します。

ARTENSION『PHOENIX RISING』
BLACK GRAPE『STUPID STUPID STUPID』
THE BRIAN JONESTOWN MASSACRE『GIVE IT BACK!』
BRUCE DICKINSON『ACCIDENT OF BIRTH』
THE CHARLATANS『TELLIN' STORIES』
CHEAP TRICK『CHEAT TRICK』
CHUMBAWAMBA『TUBTHUMBER』
COAL CHAMBER『COAL CHAMBER』
CURSIVE『SUCH BLINDING STARS FOR STARVING EYES』
DEPECHE MODE『ULTRA』
DEVIN TOWNSEND『OCEAN MACHINE: BIOMECH』
DREAM THEATER『FALLING INTO INFINITY』
DURAN DURAN『MEDAZZALAND』
ERIC CLAPTON『PILGRIM』
FEEDER『POLYTHENE』
GAMMA RAY『SOMEWHERE OUT IN SPACE』
THE GET UP KIDS『FOUR MINUTE MILE』
GREEN DAY『NIMROD』
THE HELLACOPTERS『PAYIN' THE DUES』(レビュー
THE HIVES『BARELY LEGAL』
IN FLAMES『WHORACLE』
INCUBUS『S.C.I.E.N.C.E.』
INXS『ELEGANTLY WASTED』
JANET JACKSON『THE VELVET ROPE』
JESUS JONES『ALREADY』
JON BON JOVI『DESTINATION ANYWHERE』
JUDAS PRIEST『JUGULATOR』
KISS『CARNIVAL OF SOULS』(レビュー
KMFDM『SYMBOLS』
LED ZEPPELIN 『BBC SESSIONS』
MEGADETH『CRYPTIC WRITINGS』(レビュー
MORRISSEY『MALADUSTED』
MOTLEY CRUE『GENERATION SWINE』(レビュー
NAPALM DEATH『INSIDE THE TORN APART』
NASHVILLE PUSSY『LET THEM EAT PUSSY』(レビュー
OCEAN COLOUR SCENE『MARCHIN' ALREADY』
PARADISE LOST『ONE SECOND』
PAUL McCARTNEY『FLAMING PIE』
PRIMUS『BROWN ALBUM』
PULP『THIS IS HARDCORE』
THE ROLLING STONES『BRIDGES TO BABYLON』
THE SEAHORSES『DO IT YOURSELF』
STEREOPHONICS『WORD GETS AROUND』
SUPER FURRY ANIMALS『RADIATOR』
SUPERGRASS『IN IT FOR THE MONEY』
THE TEA PARTY『TRANSMISSION』
TEENAGE FANCLUB『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』
TESTAMENT『DEMONIC』
THIRD EYE BLIND『THIRD EYE BLIND』
TRAVIS『GOOD FEELING』
VAN HALEN『VAN HALEN III』
VOIVOD『PHOBOS』
W.A.S.P.『KILL.FUCK.DIE』
WHITESNAKE『RESTLESS HEART』
YNGWIE MALMSTEEN『FACING THE ANIMAL』


1995年から1996年初頭がブリットプップの最盛期と一昨年のブログに書き、続く1996年から1997年にかけてはその最盛期から末期に向かっていく過程と昨年のブログに書きました。では1997年から1998年にかけてはどういう年だったかといいますと、イギリスに関してはその末期の中からいくつもの名盤が誕生した“ギリギリ”のタイミングだったのかなと。OASISが『BE HERE NOW』で最大瞬間風速を見せたり、THE VERVEが国民的メガヒット作『URBAN HYMNS』を、THE CHARLATANSが起死回生の1枚『TELLIN' STORIES』をそれぞれドロップしたのが1997年でした。

そうそう、忘れてはいけないのがRADIOHEAD『OK COMPUTER』の存在ですね。この1枚の誕生が、それ以降のロックシーンを大きく変えたのは間違いない事実です。同じように、アルバムごとに変化を繰り返すPRIMAL SCREAMも『VANISHING POINT』でダブに接近したのは、非常に興味深い事象でした。そんなタイミングにSPIRITUALIZEDが『LADIES AND GENTLEMEN WE ARE FLOATING IN SPACE』で大注目を集めたり……なんだかんだけ、豊作の1年なんですよね。

さらにTHE CHEMICAL BROTHERSやTHE PRODIGYといったデジタル系アーティストが頭角を現し、特に後者は全米1位を獲得するという最大のハプニングまで引き起こすわけですから。そのTHE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』、アメリカではマドンナのレーベルからのリリースでしたね。さらにマドンナは『RAY OF LIGHT』という名盤を発表して、何度目かの黄金期を迎えたり……このへんも改めて振り返ると、いろいろ面白かったりします。

アメリカではLIMP BIZKITやINCUBUS、DEFTONESによってラウドロック/ヘヴィロックに新たな潮流が見え始めたタイミング。ドイツからはRAMMSTEINが全米進出を果たすなど、2000年代に向けてヘヴィ系が再編されていくきっかけの1年だったように思います。

方やHR/HMシーンに目を移すと、JUDAS PRIESTやVAN HALENといった大御所バンドが新たなフロントマンを迎えた新作を発表。選外でしたが、IRON MAIDENも新ボーカリストを含む編成で2作目を発表した時期でもありました。かと思えば、MOTLEY CRUEはヴィンス・ニールが復帰してオリジナル編成で8年ぶりのアルバム『GENERATION SWINE』をリリースしたり、W.A.S.P.もクリス・ホルムズが復帰して『KILL.FUCK.DIE』を発表したり、WHITESNAKEも8年ぶりの新作『RESTLESS HEART』を発表するも解散を宣言したり……あ、そうそう。KISSがオリジナル編成で復活したのもこの頃でしたね。こちらもこちらで、次のフェーズに突入するための過渡期だったと言えます。

そういえば、ミュージシャンの訃報が続いたのもこの時期でしたね。1997年は3月にノトーリアス・B.I.G.が射殺されたのを筆頭に、5月にジェフ・バックリー、6月にロニー・レーン、8月にフェラ・クティ、11月にINXSのマイケル・ハッチェンス、年明け1998年2月にはTHE BEACH BOYSのカール・ウィルソン、同じく2月にファルコが亡くなっております。個人的にはノトーリアス・B.I.G.とジェフ・バックリー、マイケル・ハッチェンス、ファルコの死が特に印象に残っています。

ちなみに日本の音楽シーンにおける1997年4月〜1998年3月といいますと、ちょうどCDの売り上げがピークに達したタイミング。引き続きTK(小室哲哉)プロデュース作品のヒット連発に加え、SPEEDやGLAYがメガヒットを飛ばし、KinKi KidsがCDデビュー。LUNA SEAの1年間活動休止に伴い、RYUICHIが河村隆一名義でソロヒットを連発させ、T.M.Revolutionが「HIGH PRESSURE」で本格的ブレイク。1997年末にはX JAPANの解散もありましたが、年明け1998年1月にはモーニング娘。、2月にはMISIAがメジャーデビューを果たしました。さらに、1997年7月には日本で最初の本格的ロックフェス『FUJI ROCK FESTIVAL』がスタートしています。

最後に。ここではピックアップしませんでしたが、1997年で特に印象に残っている1曲を紹介して、この記事を締めくくりたいと思います。



▼HANSON『MIDDLE OF NOWHERE』
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投稿: 2018 01 08 12:00 午後 [1997年の作品, 1998年の作品, Björk, Chemical Brothers, The, Cornershop, Deftones, Emperor, Faith No More, Foo Fighters, Hanson, Limp Bizkit, Madonna, Metallica, Mogwai, Oasis, Portishead, Prodigy, The, Radiohead, Rammstein, Spiritualized, Verve, The, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2018/01/04

REFUSED『THE SHAPE OF PUNK TO COME: A CHIMERICAL BOMBINATION IN 12 BURSTS』(1998)

1998年秋にリリースされた、REFUSEDの3rdアルバムにして(当時の)ラストアルバム。「来るべきパンクの形」、つまり「パンクの未来」という強烈なタイトルに負けないぐらい、その内容もインパクトの強いもので、リリースから20年経った今聴いてもまったく色褪せていない世紀の傑作だと思います。

いわゆるポストハードコアバンドとしてスタートしたREFUSEDですが、作品を重ねるごとに進化を続け、本作ではジャズやエレクトロの要素を随所に取り入れています。また、アルバムの曲間にはラジオ風のSEを挟むことにより、妙なリアリティを感じさせる。パンクやハードコアをある種アートの域にまで昇華させてしまったという意味においては、これを最後に解散を選んだといのも頷ける話です(もちろん、それも結果論でしかないですが)。

オープニングナンバー「Worms Of The Senses / Faculties Of The Skull」で見せる緊張感、そこから続く「Liberation Frequency」での緩急の効いたアレンジ。これがハードコアなのかと問われれば正直答えに困ってしまいますが、その後のこのジャンルの枝分かれを考えると、本作は大きな分岐点だったのかもしれません。

かと思えば、テンションの高い演奏を聴かせる「The Deadly Rhythm」、エモっぽい「Summerholidays Vs. Punkroutine」、エレクトロ+ジャジーなインスト「Bruitist Pome #5」から名曲「New Noise」へと続く流れ……本当、どれひとつ取っても同じものが存在しない。そこから再び血気盛んな「The Refused Party Program」「Protest Song '68」へと続くのですが、曲間にあるSEのおかげで冷静さだけは保っていられる。本当に不思議な感覚を味わせてくれます。

しかも、終盤を飾る8分超の大作「Tannhäuser / Derivè」ではバイオリンまでフィーチャー。ラストの「The Apollo Programme Was a Hoax」なんて完全なるアコースティックナンバーで、もはやハードコアでもなんでもないですからね。この流れでラストナンバーにたどり着くと、本当にすごいところにまで到達してしまったんだなと感慨深さすら感じます。

2018年の耳で聴くと、こういったミクスチャー感は特に新しいものでもないし、普通に楽しめてしまうわけで。改めてこの20年の流れを考えると、そこにも感慨深さを覚えます。

なお、本作は2010年にライブCD+ドキュメンタリーDVD付きの3枚組仕様で再発されていますので、購入の際にはぜひこちらをオススメします。ライブアルバムは解散前の1998年4月のライブ。とにかく生々しくて最高。すでに本作からの楽曲も多数披露されているので、まさに90年代のベスト選曲。そして、ドキュメンタリーは日本語字幕なしですが(英語字幕あり)、バンドが解散に至った経緯を知ることができます。これを観た時点では再結成なんて想像できなかったんですけどね……。世の中、何か起きても不思議じゃないんだなと。



▼REFUSED『TTHE SHAPE OF PUNK TO COME: A CHIMERICAL BOMBINATION IN 12 BURSTS』
(amazon:海外盤2CD+DVD / MP3

投稿: 2018 01 04 12:00 午前 [1998年の作品, Refused] | 固定リンク

2018/01/03

AEROSMITH『A LITTLE SOUTH OF SANITY』(1998)

1988年秋に古巣Geffen Recordsからリリースされた、AEROSMITHの2枚組ライブアルバム。当時はすでにColumbia / Sonyに移籍しており、前年1997年にスタジオアルバム『NINE LIVES』を発表したばかり。そんなタイミングのライブ作品ではあるものの、本作には最新作からの楽曲も含まれた、当時のグレイテストヒッツ的内容となっています。

本作の大半を占めるのは、1993〜94年に実施された『GET A GRIP TOUR』の模様。第2期黄金期のピークとなったアルバム『GET A GRIP』(1993年)を携えた時期のツアーで、ここ日本でも1994年春に武道館7公演という偉業を含む大々的なジャパンツアーが実現したタイミングでした(自分もこのときは武道館2公演、横浜アリーナ1公演に足を運びました)。

なので、オープニングを飾るのは「Eat A Rich」。そこから「Love In An Elevator」へと流れる構成は圧巻の一言で、脂の乗り切った当時のエアロの姿が目に浮かびます。

で、そこに当時の最新ツアー『NINE LIVES TOUR』(1997〜98年)から「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」「Hole In My Soul」といった、シングルヒットナンバーを追加しているのですが……これが意外と違和感がない。80年代後半以降の第2期黄金期の楽曲が中心のセットリストだから、当たり前っちゃあたり前なんですが。

では、そこに70年代のドス黒さ満載のヘヴィロックが加わっても違和感ないのかといいますと……うん、ないんですよ。「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」と「Hole In My Soul」の間に「Same Old Song And Dance」が入っても自然と楽しめる。DISC 1には70年代の楽曲はこれだけなんですよね。で、DISC 2は70年代の楽曲メインで、そこにジョー・ペリーが歌う「Walk On Down」や、80年代のヒットナンバー「The Other Side」「Dude (Looks Like A Lady)」、90年代の「Crazy」などが含まれるのですが、こちらも違和感ない。いや、違和感ないんじゃなくて、もう耳が慣れてしまっているんでしょうね。初めて『PERMANENT VACATION』(1987年)を聴いてから10年、そりゃあもう慣れてしまって当たり前ですよね。

『LIVE! BOOTLEG』(1978年)から20年、バンドが進んだ道は正しいとも間違っているとも言い切れませんが、これはこれでバンドの歴史を語る上で重要な1枚。『LIVE! BOOTLEG』と対でオススメしたいライブ作品です。音の良くない、かつ録音時期もボリュームも選曲も微妙な『CLASSIC LIVE!』(1986年)および『CLASSIC LIVE! II』(1987年)を聴くより(あれはあれで嫌いじゃないけど)真っ先に手にしてほしいライブ作品です。



▼AEROSMITH『A LITTLE SOUTH OF SANITY』
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投稿: 2018 01 03 12:00 午前 [1998年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/08/27

MANSUN『SIX』(1998)

ポール・ドレイパーのソロアルバムが日本でもようやく9月6日にリリースされるということで(すでに聴きましたが、“あの”ポール・ドレイパーでした。後日改めて紹介します)、このへんで改めて彼が在籍したバンド、MANSUNを振り返ってみたいと思います。デビューアルバム『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(1997年)については過去に紹介しているので、今回はそれに続く傑作(にして問題作)『SIX』を取り上げてみたいと思います。

ブリットポップ末期の1997年2月に発表されたMANSUNの1stアルバム『ATTACK OF THE GREY LANTERN』は全英1位を獲得。80年代初頭に流行った“ニューロマンティック”の90年代版として“ROMO”なんてレッテルを貼られた彼らでしたが、それも納得というか頷いてしまうようなサウンドだったんですよね。うん、仕方ない。

ところが、彼らは2枚目のアルバムを発表するまでの1年半で急激に“化ける”のです。まず本作1曲目のアルバムタイトルトラック「Six」のイカれっぷりといったら……約8分におよぶこの大作の中には数曲分のアイデアが詰め込まれていて、曲調も起承転結を無視した無理やりな展開を繰り広げる(シングルやMVでは半分の4分にエディットされて魅力半減ですが)。プログレッシヴロック的なんだけど、そこまでの美意識を感じさせないいびつさが気持ち良いような悪いような。けど、間違いなくクセになる。

そこから2曲目「Negative」を筆頭に、ストレートだけどどこかフックが仕込まれた楽曲、本当にジェットコースターみたいに目まぐるしい展開を繰り返す楽曲、具体的に例えようがなくて不思議としかいいようがない楽曲が続くのです。で、気づいたらラストの「Being A Girl」で締めくくられる(この曲も8分もある相当変態チック)。70分もある超大作ですけど、不思議と長く感じない。ただ、情報量だけは通常の70分もあるアルバムの数倍、いや数十倍ですけどね。

全体的に言えるのは、“Very British”。アメリカじゃ絶対にウケないであろう、英国人ならではのヒネクレ加減が最高潮な1枚です。彼ら自身はもともとそういう傾向にあったわけで、それはこれまでに発表してきたシングルやアルバムからもうっすら感じられたのですが、ここで一気に爆発したという。きっと時代がそうさせたんでしょうね。いや、投げやりに言ってるわけじゃなくて、本当にそう思うんです。

ブリットポップ晩年と言われる1997年にはBLURが無題アルバム(『BLUR』)を発表してブリットポップを殺し、RADIOHEADがその後のシーンの指針となる『OK COMPUTER』をドロップし、OASISはラディズムを強めながらも大作志向へと移行した『BE HERE NOW』で格の違いを見せつけた。そうなったとき、若手は何をすればいいのかといったら己の個性を爆発させるしかない。それすらできないバンドはすぐ消え去っていったわけですから、このMANSUNの変貌は間違ってなかったと言えるんじゃないかな。

がしかし、ここでやりすぎてしまったが故に彼らはその後の作品で方向性を見失い、バンド自体が短命に終わってしまった。それだけが残念というか心残りです。

にしても、リリースから19年経った今聴いても本当に無茶苦茶なアルバムだと思いますよ(もちろん褒め言葉)。初期のMUSEが好きで、まだMANSUNを聴いたことがない人がいたら、ぜひ本作を手始めにチェックしてみてほしいな。で、そこからポールのソロ作にも触れてもらえたら嬉しいです。



▼MANSUN『SIX』
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投稿: 2017 08 27 12:00 午前 [1998年の作品, Mansun] | 固定リンク

2017/07/18

KORN『FOLLOW THE LEADER』(1998)

1998年晩夏に発表された、KORN通算3作目のオリジナルアルバムにして最大のヒット作。前作『LIFE IS PEACHY』(1996年)の全米3位、200万枚以上の売り上げに続き、本作は全米1位、500万枚以上ものセールスを記録しています。

最大のヒット作へと導いた最大の要因は、初期2作にあった難解さが後退し、よりわかりやすいメロディとビートを前面に打ち出したこと。「Got The Life」(全米オルタナチャート17位)、「Freak On A Leash」(同チャート6位)といったシングルヒットが生まれたことも大きく影響しているはずです。

LIMP BIZKITも2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)を最初に聴いたときに「ああ、こりゃ売れるわ」と直感で理解しましたが(結果、本当に全米1位に)、この『FOLLOW THE LEADER』も最初に聴いたときにまったく同じことを感じましたし、「垢抜けたなぁ。こりゃあ前作までのファンに叩かれるだろうな」とも思いました。事実、過去2作が好きだったファンからは総スカンを食らったものの、それ以上の新規ファンを獲得したことで大成功を収めるのですから、それはそれで間違ってなかったと言えるかもしれません。

とにかく、歌メロがわかりやすくなり、先に挙げたようなシングル曲など口ずさめるようなポップな楽曲(とはいえ、そのサウンドや音像は非常にヘヴィなのですが)が急増したことはバンドにとってかなりの挑戦だったと言えるはず。演奏面ではところどころで複雑怪奇なプレイを聴かせてくれますが、それがメインとなることはなく、あくまで歌に対する味付けといった程度に収められています。

「Blind」(1stアルバム収録)も「Good God」(2ndアルバム)もここにはないけれど、それでも「It's On!」や「Dead Bodies Everywhere」もあるし、ラストを締めくくるにふさわしい「My Gift To You」もある。ヒップホップファンにはアイス・キューブをフィーチャーした「Children Of The Korn」もあるし、LIMP BIZKITのフレッド・ダーストが参加した「All In The Family」、THE PHARCYDEやSLIMKID3で知られるトレ・ハードソンをゲストに迎えた「Cameltosis」もある。つまりヘヴィロックファン、ヒップホップファン、そしてライト層の全方位に向けた冒険的、かつ「これが売れなきゃウソ!」と断言できるような1枚なわけです。

KORNはその後、本作を下地にした作品創りを繰り返しています。初期に原点回帰!なんていわれても、やはり1stや2ndにあった狂気性を取り戻すまでには至らず……そういう点においては、この『FOLLOW THE LEADER』はバンドにとって“パンドラの箱”だったのかもしれませんね。



▼KORN『FOLLOW THE LEADER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 07 18 12:00 午前 [1998年の作品, Korn, Limp Bizkit] | 固定リンク

2017/07/17

ORGY『CANDYASS』(1998)

1998年晩夏にリリースされたLA出身のヘヴィロックバンド、ORGYのメジャーデビューアルバム。インダストリアルの要素を取り入れたそのサウンドについて、本人たちは“デス・ポップ”と呼んでいたようですが、正直どこまで定着していたかは不明です。ただ、“乱行パーティ”を意味するそのバンド名、KORN主宰レーベル「Elementree Records」からのデビュー、そしてNEW ORDERの名曲中の名曲「Blue Monday」をカバーしたことが大きな話題となり、本作は全米32位、100万枚を超えるヒット作になりました。

インダストリアル調のリズムとデジタルを同期させたバンドサウンドはどこかNINE INCH NAILSを彷彿とさせるものの、あそこまでのカリスマ性が感じられないのも事実。とはいえ、ところどころに引っかかりのあるメロディが散りばめられており、決して駄作とは言い切れない。陰鬱だけど耽美さも感じられる空気感は、同年に発表され大ヒットしたMARILYN MANSON『MECHANICAL ANIMALS』にも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。そう考えると1994年頃を起点にスタートした新世代ヘヴィロックの波が、この1998年を境に新たな方向に進み始めたと言えなくもありません。

ちなみにこのバンド、元ROUGH CUTTのアミア・デラク(G)が参加しているというのも興味深いところ。L.A.メタルが生き絶え、グランジが世の中を席巻していた時期に、アミアは時代の波に乗ってこういうことを始めたんだなと思うと、なんとも涙ぐましいものを感じてしまいます。

そんなL.A.メタル界隈の人間が絡むバンドが、NEW ORDERの「Blue Monday」をカバーしているのも、非常に味わい深いものがあります。この時期、ヘヴィロックバンドが80年代のヒット曲をカバーするのは一種の流行りみたいなものでしたが、ORGYもその流れに乗ってヒットを手にするのですから、賢いというかなんというか。このカバーがまたド直球で、嫌いになれないんだよね(アルバムの中では比較的浮いている存在なんだけど)……。

アルバムにはこのほか、KORNのジョナサン・デイヴィス(Vo)も「Revival」で共作&ゲストボーカルで参加しています。かといって作品自体はKORN界隈の一派というよりも、「NINE INCH NAILSやFILTERといったバンドが好きな人なら気にいるかも」といった内容かも。当時はハイプ的存在だったかもしれないけど、今となっては悪くないんじゃないかな。10数年ぶりに聴きましたが、リリース当時よりも素直に楽しめましたよ。



▼ORGY『CANDYASS』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD

投稿: 2017 07 17 12:00 午前 [1998年の作品, Korn, New Order, Orgy] | 固定リンク

2017/07/16

MARILYN MANSON『MECHANICAL ANIMALS』(1998)

1998年初秋にリリースされた、MARILYN MANSON通算3作目のオリジナルフルアルバム。前作『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)が全米3位、全世界トータルで700万枚もの売り上げを記録する大ヒット作となりましたが、続く今作ではついに全米No.1を獲得します。

しかし、その内容はというと『ANTICHRIST SUPERSTAR』までの暴力的でメタリックなサウンドから一転、よりメロウでグラマラスでデカダンな世界観を展開。アルバムジャケットからもわかるように、ヴィジュアル面でも変化を遂げており、ここからアルバムごとに趣向の異なるサウンド/ヴィジュアルが提示されていくことになります。それはまるで、全盛期のデヴィッド・ボウイのごとく……。

また本作は、前作のように明確なコンセプトアルバム的作風ではないものの、オープニングの「Great Big White World」からラストの「Coma White」までの流れやストーリーが数珠つなぎのように感じられる構成になっています。ヘヴィな曲はあるにはあるけど、それは決してメタリックではなく、陰鬱さと耽美さを兼ね備えた“重さ”であり、同時にどこか物悲しさも漂わせている。その“哀”の部分が強く提示されているところが、前作との大きな違いでしょうか。

スローテンポ感ながらも不思議とキャッチーさと躍動感が味わえる「The Dope Show」やシャッフルビートが心地よい「Rock Is Dead」(映画『マトリックス』にも使用されたことでおなじみ)、70年代半ばのボウイにも通ずるファンキーな「I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)」などのシングル曲に加え、先のオープニング&エンディング曲やアルバムタイトル曲「Mechanical Animals」など強弱を強調したミドルチューン、初期ボウイを彷彿とさせるアコースティックナンバー「The Speed Of Pain」、メタルというよりもインダストリアル色が強いアップチューン「Posthuman」「I Want To Disappear」「New Model, No. 15」、ジャズの香りを漂わせるスローナンバー「Fundamentally Loathsome」、のちに発表されるライブアルバムのタイトルのモチーフ(『THE LAST TOUR ON
EARTH』)にも用いられたニューウェイブ色の強い「The Last Day On Earth」と……とにかく、全曲粒ぞろい。おどろおどろしさで押し通した前作までは異なり、あくまで音楽で押し通そうとするその姿勢に、マリリン・マンソン氏の強い意志が打ち出されているように感じます。

個人的な推し曲はオープニングの「Great Big White World」、タイトルトラック「Mechanical Animals」、そしてアルバムを締めくくる「Coma White」の3曲。特に「Coma White」はマンソン史上ベスト3に入る名曲だと断言したい。MARILYN MANSONというバンドが単なるキワモノやトリックスターではないことを証明した、『ANTICHRIST SUPERSTAR』以上の名作だと確信しております。



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投稿: 2017 07 16 12:00 午前 [1998年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2016/12/25

SYSTEM OF A DOWN『SYSTEM OF A DOWN』(1998)

2017年、ついにニューアルバムをリリースか?と噂されるSYSTEM OF A DOWN。セルフタイトルとなる彼らの1stアルバムは今から約18年前の1998年6月(日本では同年10月)にリリースされました。

1998年というと、KORNが『FOLLOW THE LEADER』、マリリン・マンソンが『MECHANICAL ANIMALS』でそれぞれ全米1位を獲得し、AT THE DRIVE-INが『IN/CASINO/OUT』、THE OFFSPRINGが『AMERICANA』、ロブ・ゾンビが『HELLBILLY DELUXE』をそれぞれ発表し、マックス・カヴァレラ率いるSOULFLYが『SOULFLY』で、ZEBRAHEADが『WASTE OF MIND』でそれぞれデビュー(ZEBRAHEADはメジャーデビュー)を飾ったタイミング。REFUSEDの(この時点での)ラストアルバム『THE SHAPE OF PUNK TO COME』がリリースされたのもこの年でした。

そんな年にSYSTEM OF A DOWNもシーンに颯爽と登場したのですが、最初聴いたときは「??」というのが素直な感想でした。メタルなのかパンクなのかカテゴライズが難しく、どこかコミカルさが漂うサウンド。そこに乗るボーカルもヒステリックだったりデスメタル調だったり、あるいはオペラ調だったりと一筋縄でいかない感じだし。正直、最初は1、2回聴いただけで理解できず、しばらく放置していました。

その後、半年ぐらい経ってから(確か2000年前半頃)ふと思い立って聴いてみると、「あれ、これいいかも……」と感じるようになり、その後数回聴き返しているうちに「前半のコミカルな調子から、後半に進むにつれてシリアスになったり、ちょっと劇的になったりと、これはこれで面白いぞ?」と気づき。気がついたら、この掴みどころのない奇妙なサウンドの虜になっていたのでした。

このアルバム、そして続く2001年発売の2ndアルバム『TOXICITY』が当時のUSラウドシーン、そして日本国内のラウドシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。2000年代前半以降に登場した数多くのバンドたちは、SYSTEM OF A DOWNから少なからず影響を受けているはずです。特定の名前はここでは挙げませんが、このアルバムを聴いてなんとなく思い浮かべる日本国内のバンドもちらほらいるのではないでしょうか。

カリフォルニア出身のバンドではあるものの、メンバーが皆アルメニア系アメリカ人ということも、その音楽性のルーツになっているのかもしれませんし、そういった生活環境が歌詞に与えた影響も大きいものがあるはずです。日本人がストレートに解釈するには難しい側面も多いですが、そのへんも含めて理解しようとすることで、このバンドの真の魅力が見えてくることでしょう。



▼SYSTEM OF A DOWN『SYSTEM OF A DOWN』
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投稿: 2016 12 25 12:00 午後 [1998年の作品, System of a Down] | 固定リンク

2005/10/12

La'cryma Christi『Lhasa』(1998)

 La'cryma Christiといえば、ヴィジュアル系ブームの後期‥‥あの悪しき番組「Break Out」から登場した、というイメージが非常に強い、あまり印象が良くないバンドのひとつだったわけですね。勿論、テレビの歌番組によく出てた頃のヒット曲は耳にしてたし、そういった深夜番組でPVなんかも目にしたことあったわけですが‥‥所謂「シングル曲」のみで判断してしまっていて、その本質部分にまで目が(耳が)向かなかったというのが正直なところでして。ま、俺に限らず多くの人があの『ブーム』に否定的だっただろうし、そういったバンドを軽視してたと思うんですよ。

 ところがね、親しい友人から「La'cryma Christiはお前、意外と気に入るかもよ?」とずっと前から言われ続けててね。もうかれこれ5年以上前かな‥‥アルバムは完全にハードロックだ、プログレの要素もある、アルバム1曲目がいきなり11分もある大作でスタートする、等々‥‥確かに興味はあったんだけど、時期的に‥‥LUNA SEAの終幕とかあって、俺の中でその手のバンドにひと区切りつけた時期だったのかなぁ。だから敢えて手を出さなかったのかもね。いや、よく覚えてないんだけど。

 つい先日、よく通う中古盤屋のワゴンセールで、1枚50円という安さの邦楽中古盤を何枚も購入しまして。その中に先のLa'cryma Christiのアルバムも2枚程ありまして‥‥実は時を同じくして、彼等のニューアルバム「ZEUS」をちょっと前に購入してまして。これがね、非常に優れモノなハードロックアルバムだったもんで。しかも結構気に入っていて、かなりの頻度で聴き込んでたんですよ。そういうこともあって、旧譜にも興味を持ちまして‥‥

 今回取り上げるのは、1998年末にリリースされた彼等のメジャー2ndアルバム「Lhasa」という作品。1998年というと、先の「Break Out」って番組の最盛期じゃないでしょうか‥‥前年にSHAZNAもデビューして大ヒットを飛ばしてる頃だし、このLa'cryma Christiも "With-you" や "未来航路" といったトップ10ヒットを飛ばしてた時期ですからね(2曲共このアルバムに収録)。

 そういったシングルヒットやポップなナンバーをアルバム前半の「yours side」に集め、プログレッシヴで濃密な楽曲の揃ったアルバム後半「ours side」‥‥そう、このアルバムの肝はこの後半なんですよ。ビックリしたよ、マジメに。勿論ハードロックの要素も感じられるんだけど、もっとこう‥‥QUEENを更にプログレッシヴにしたような、あるいはYES辺りからの影響も見え隠れしてたりして。とにかく聴き応え十分なわけ。勿論アルバム前半の出来も非常に完成度高いし、十分にハードロックとしても機能してる。でも、俺的にはやはりアルバム後半だなぁ‥‥スゲエわ、これは。

 ヴィジュアル系という枠に括られてしまい、あるいはそういったブームに便乗してデビューしてしまったがために、本質とは違った面を強調していかなければならない現実。いろんな葛藤があったはずだろうけど、最も売れてた時期にこういったことを好き放題出来てたんだね。ま、もっともアルバム前半のポップ小楽曲は意図したものとは違うのかもしれないけど(いや、アルバム後半の楽曲だって十分にポップだしな)。それでも、メジャーシーンでここまでやれば十分でしょう。

 正直、あの時期にこれらの楽曲がちゃんとファンに理解されていたのかは疑問なんだけど‥‥リリースから7年経った今聴いても、十分にカッコいいと思えるし、色褪せてないんだよなぁ。新作の作風とは明らかに違うんだけど、確かに共通するもの、未だに引きずって続いているものは十分に感じられる。あの時期に登場したバンドの大半が消えてしまった現在においてこうやって未だにメジャーシーンで活躍できているということは(セールス的には散々たるものだろうけど)、やはりそれなりに支持されているってことなんだろうね。今回こうやって様々な音源を聴いてみて、改めてその魅力を再認識しましたよ。

 パブリックイメージに惑わされて、結局聴かず嫌いしてた自分がちょっと恥ずかしい‥‥でも、今だからこそ、こういう風に好意的に接することができるようになったというのもあるかもしれないし、要はタイミングなんだろうね。俺にとってLa'cryma Christiは間違いなく『ジャパニーズ・ハードロック・バンド』のひとつだし、世が世ならヴィジュアル系としてでなくジャパメタ系から派生したバンドと捉えられてたかもしれない‥‥これも全てタイミングなんだろうね。

 暫くは彼等の旧譜を漁る日々が続きそうな予感。まさか2005年になってからLa'cryma Christiにハマる日が来ようとはねぇ‥‥



▼La'cryma Christi「Lhasa」(amazon

投稿: 2005 10 12 12:33 午前 [1998年の作品, La'cryma Christi] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/07

THE WiLDHEARTS『ANTHEM - THE SINGLE TRACKS』(1998)

 あ、そうか。12/8発売だったね、「THE WiLDHEARTS STRIKE BACK」日本盤。輸入盤は既に先月から出回ってたから、既に買った気になってたけど、実は外盤すらまだ買ってなかった(だってジャケが日本盤以上に微妙なんだもん)。

 けど、外盤(UK盤)がCD-EXTRAで再結成後のPVを全て収録していて、日本盤は権利の関係でこれらの収録ができず、代わりに去年のサマソニから2曲("I Wanna Go Where The People Go" と "Vanilla Radio")ライヴ映像がEXTRAで収録されてるってことで‥‥結局両方買うはめになりそうです。ファンって悲しいね。

 というわけで、初の公式ライヴ盤(全世界共通版って意味でな)リリース記念、夏頃に書いていたワイハーのアルバム&シングルレビュー(とみ宮にアップしてない分)を徐々にアップしていきたいと思います。

 まずは手始めに、既に在庫もなく、廃盤状態らしいこの日本企画盤から‥‥

 '98年3月に日本限定でリリースされた編集盤。UKにて'97年8月にリリースされたシングル「ANTHEM」と、同9月にリリースされたシングル「URGE」の各3フォーマット(CD1&2&7インチEP)に収録された全楽曲(12曲)を収めたもの。'97年9月末にバンドは当時リリース前の新作「ENDLESS, NAMELESS」プロモートのためのツアーで来日するものの、同年10月上旬に「メンバーの "OUT OF CONTROL"(=要するにベースのダニーのドラッグ癖悪化)」を理由に無期限の活動休止を発表。アルバムは無事11月にリリースされたものの、その後のツアーは勿論全て中止。バンドとして新機軸を打ち出した意欲作だっただけに、中途半端な結果しか出せず‥‥当然アルバムはヒットせず(かろうじてトップ30入りはしたのかな?)。

 実はこの頃のワイハーってファンからの批判の声が多い頃でね。それまでジンジャーは「マルチフォーマット(CD1とか2とか、同じタイトルで複数フォーマットを一度にリリースすること)シングルをリリースするのは、ファンに対して誠実じゃない。単なる金儲け主義だ」とOASISやBLURのヒットを批判してたわけですよ。「単なる水増しリミックスや糞みたいなカバーやアウトテイクで金のないガキどもから搾取しやがって」みたいな感じで。

 なのにこの時期(「MUSHROOM RECORDS」移籍後)の彼等はそのマルチフォーマットでシングルを連発するんですね。しかも収録曲の大半がカバーばかりという、最悪な形で。これまでワイハーってカバー曲を正式音源として残してきてないので、ファンとしてはある意味有り難いともいえるんですが‥‥やっぱり彼等を信じて応援してきた初期からのファンとしては複雑な心境だったわけですよ。しかもこの辺りで音楽性が大きく変化してきたわけですから、余計にね。

 各シングル表題曲を除くと、ここに収録されている未発表曲は10曲。内カバー曲は5曲。TOURIST、ENUFF Z'NUFF、JASON & THE SCORCHERS、CHEAP TRICK、EDDIE & THE HOT RODSという、とにかく幅広いジャンルからピックアップされてます。この他にも同時期にレコーディングされながらもここに未収録のカバー曲としてエルヴィス・コステロの "Pump It Up" なんてのもあります(UKではNMEの付録に、日本ではアルバム「NAMELESS〜」のボーナストラックとして収録)。全ての楽曲が激しいノイズに包まれているため、万人向けとは言い難いですが、それぞれが彼等らしい味付けで興味深いですよね。ま、コアなファン向けですが。

 それ以外の新曲‥‥これも面白いんですよ。何せ初めてジンジャー以外のメンバーのペンによる楽曲がありますから。"Anthem" はメンバー4人の連名で、ボーカルはベースのダニー。"The Song Formally Known As?" はドラムのリッチとジンジャーの連名で、ボーカルはリッチ。"Genius Penis" はリッチ単独作品、ボーカルもジンジャーと分け合ってます。"Urge" はジンジャーのペンによるものですが、ボーカルの大半を当時のギタリスト、ジェフが取ってます。ジンジャー単独体勢から「本当のバンド」に移行していった、非常に興味深い時期だったんですよね。結局その後空中分解してしまうわけですが‥‥

 ジンジャー単独楽曲も過去の楽曲とは色合いが違ったものが多くて、これまた興味深いというか。"Fugazi " はグラムロックっぽいNIRVANAみたいだし、"Kill Me To Death" もグランジ的な強弱法を用いた爆裂ナンバーだし、"Zomboid" は当時ジンジャーが最も影響を受けていたデヴィン・タンゼンド(SYL)的轟音ナンバーだし。ま、この「ENDLESS〜」周辺のセッション自体がそのSLYへのオマージュと言える訳ですが。

 その後何度かの一時的再結成を繰り返しながらも'01年には本格的再始動を果たしたワイハー。その後この周辺の楽曲は殆ど演奏されることはないわけですが("Anthem" はダニー在籍時、たまに演奏されてましたが)、激烈/轟音チューンやノイズまじりでメロディアスな要素が少ないと思われがちなこの時期の楽曲、やはり今聴くと本当に興味深いな、と。特に積極的にカバー曲を録音したのもこの頃くらいだし(その後は "Cheers" くらいじゃね、カバー曲って?)。

 オリジナル編成(ジンジャー、ダニー、CJ、スティディ)と比べればやはり印象が薄いと言わざるを得ないオリジナル最終期編成(ジンジャー、ダニー、リッチ、ジェフ)ですが、古いファンには思い出深い編成ですよね。だって、初来日から'99年の富士急での再編成まで、ずっとこの編成での来日だったわけですから。最近ファンになった子達には「?」な編成かもしれないけどさ、間違いなくこれも『THE WiLDHEARTS』なわけですからね。



▼THE WiLDHEARTS『ANTHEM - THE SINGLE TRACKS』
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投稿: 2004 12 07 08:24 午後 [1998年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/06/11

TODOS TUS MUERTOS『EL CAMINO REAL』(1998)

恐らく殆どの人が知らないかもしれないバンドについて書いてみようかと思います。いや、一部の人は覚えてるかな‥‥特に苗場でのフジロック初年度('99年)に参加した人なら‥‥そう、その年のクロージングバンド(最終日の大トリ終了後に演奏するバンド。過去にSOUL FLOWER UNION等がその大役を務めている)として一部で話題になった「アルゼンチンのRAGE AGAINST THE MACHINE」こと、TODOS TUS MUERTOSです。今回紹介するのは、彼らの5作目にして日本デビュー盤として紹介された(実際には4作目も'97年頃に日本発売されている。が、すぐに廃盤。それでなかったことにされてるのか?)「EL CAMINO REAL」。丁度フジロックの直前にリリースされたため、殆どプロモーションらしいプロモーションもされず、俺も何も知らずに彼らのライヴに遭遇したのでした(この年のフジで俺は彼らを2回観てます。最初は当のRATM終了後、そして2度目が先のクロージング時)。で、一発でやられてしまったと。フジから帰宅し、都内のCDショップで彼らの作品探しまわったよなぁ‥‥置いてる店が少なくてさ。今となってはいい思い出です。

「アルゼンチンのレイジ」なんていう例えから、きっとゴリゴリのラップメタル的なサウンドを想像するかもしれませんが、それはちょっと違うかもね。いや、歌詞やバンドのスタイルが政治的だという意味ではレイジと共通するんだけど(だからそう呼ばれてるんだろうけど)、音楽的にはもっとこう、ミクスチャーというか(ミクスチャーなんてカテゴリーも今や懐かしいですが)。しかも微妙にミクスチャーされてないという‥‥普通ミクスチャーというと、1曲の中にロック的なサウンドと、それとは別の非ロック的なサウンドが融合された別の種類の音楽、というような認識がありますが(って合ってるよね?)、彼らの場合はこう‥‥1曲1曲毎に独立してるというか。例えばパンキッシュな曲はひたすら疾走するし、ハードロッキンな硬質曲はまんまハードロックのままだし、レゲエの曲ではレゲエ、サルサではサルサ、というようにごく当たり前に1曲1曲を演奏していくという‥‥そう、1曲にいろんなジャンルのサウンドを詰め込むのではなくて、いろんなタイプの曲/いろんなタイプのサウンドが1枚のアルバムの中に存在する、そんなバンドスタイルなんですね。これをミクスチャーと呼ぶべきかどうかはちょっと悩みどころですが、まぁある意味ミクスチャーですかね(って自分で書いてて訳判らなくなってますが)。

言語はスペイン語なので、本当に何を歌ってるか判りません。そもそも歌詞カードも読めないし。まぁ日本盤を買ったお陰で対訳が付いてたのでそれを読んで内容を理解したんですが‥‥政治/宗教/闘争/貧困‥‥そういった彼らなりのストリートレベルを歌ったものばかり。非常に直接的な表現が殆どで、日本語にしてしまうと青臭く感じたり、ちょっと退いてしまうかなぁという気がしないでもないけど、結局それって自分にとって「リアルに感じられない」からなんだろうなぁ‥‥と。現在の世界情勢もかなり酷いもんだけど、結局それって自分の生活内においては「外での出来事」であって、完全に理解することはできない。それを文字や映像で理解しようとしても、認識できるのは数十パーセントといったところでしょう。そういう意味では我々日本人には伝わり難い面があるのも確か。勿論、俺よりももっと真剣に南米やその他の世界情勢に目を向け理解しようとしてる人からすれば、ここで歌われていることは常識的な内容であって、俺みたいな人間は責められるべき対象なのかもしれません。けど、ここではあくまで「音楽」を対象にしてますから‥‥と言い訳して逃げてみたりして(茶化してるわけじゃないですよ。本当に自分には想像し難い世界観ですから。勿論もっと勉強しようとは思いますけどね)

しかしながら、そういった歌詞の面での難解さを省いたとしても、十分にロックとして機能しているし、俺は十分楽しめた。残念ながらスタジオ盤ではライヴの素晴らしさが十分に活かし切れてませんが、それでも純粋に音楽として優れてると思うし、踊れるし、気持ちいい。何よりも自分にとって、二度とは戻らない'99年の夏を再び体験させてくれる貴重な1枚なわけですから、大切なんですね‥‥あの夏はジョー・ストラマーもいたしね。

攻撃性という意味ではMANO NEGRAのようなバンドの方が上かもしれませんが、TODOSの場合はエンターテイメント性が強いステージングが魅力でしたから、まぁアプローチ的にはまた違っていて、それぞれにそれぞれの良さがあったよなぁと思うわけでして。こういった欧米以外の国からのバンド/サウンドと出会えるのもフジロックの魅力なわけでして、勿論これまでに幾つもの欧米以外のバンドに触れてきました(で、その度に帰宅してからCD探してね)。

聞くところによると、TODOSはこの数年後に解散してしまったみたいです。'8O年代半ばからの活動ですから、約20年近くに渡って政治と戦っていたんですね。感服いたします。もしかしたら今でも別のバンドで音楽活動をしてるのかもしれませんが、ここ日本にいるとなかなか情報が入ってこないもので‥‥熱心なファンではないけども、また観てみたかったですね、彼らの楽しいステージを。



▼TODOS TUS MUERTOS『EL CAMINO REAL』
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投稿: 2004 06 11 05:17 午後 [1998年の作品, Todos Tus Muertos] | 固定リンク

2004/02/07

HOLE『CELEBRITY SKIN』(1998)

コートニー・ラヴ率いるHOLEの、3作目にしてラストアルバムとなってしまった「CELEBRITY SKIN」。リリース当時(1998~9年頃)ロック系クラブイベントに行くと必ず耳にした名曲 "Celebrity Skin" を筆頭に、とにかく「ポップ」で前向きな楽曲が詰まった1枚で、俺もよく愛聴したものです。というか、HOLEのアルバムの中で一番好きなアルバムですね。

夫であるカート・コバーンの死後、このアルバムが完成するまでに4年半という月日を要したわけですが、ここには「影/陰」を感じることはできても、「悲壮感」みたいな要素はあまり感じられないんですよね。これが月日によるものなのか、それともミュージシャン・コートニーとしての成長なのか、はたまたバンドメンバーとのケミストリーなのか、それとも一時期恋仲とも噂されたビリー・コーガン(当時はSMASHING PUMPKINS)とのコラボレートがもたらしたものなのか‥‥とにかく、前作「LIVE THROUGH THIS」とは異なっていたのは確か(っていうか、HOLEって三者三様な感じなんですよね、同じアルバムが存在しないというか)。カートがプロデュースした前作はいろんな意味で「名盤」だったけど、時期が悪かっただけに(カートの自殺とリリース時期が重なってしまった)どうしても色眼鏡で見られがち。良い意味でも、そして悪い意味でも‥‥だからこそ、全てをフラットな状態に戻すには4年半もの月日が必要だった。いや、フラットになんか戻ってない、戻れっこないんだから。

思えばコートニーって人は、つくづく不幸な人だと思う。それに拍車を掛けたのがカートとの結婚でしょう。気づけば「グランジ/オルタナの女王」みたいに祭り上げられて‥‥どこまでが「素」で、どこからが「演技」なのか。ある意味リアルであり、そしてある意味エンターテイメント。最近のオジー・オズボーン程日和っておらず、かといってマドンナ程賢くもない。正直、何考えてるか判らない。その「行き当たりばったり」的なところがコートニーがコートニーたる所以なのでしょう。そして多くの人はそういったところに魅力を感じ、と同時にそういったところを嫌悪する。それがコートニー・ラヴという人。

このアルバムが出た時、多くの人が驚いたことでしょう。その「グランジ/オルタナの女王」がここまでストレートな「アメリカン・ロック」を嬉々として鳴らしたのだから。やれ「魂売った」とか「終わった」とか‥‥そんなのはどうでもいいよ。俺はこの音にこの歌詞だったからこそ、今までで一番「リアル」に感じられたんだから。

カートを失い、そして同時期にベーシストだったクリスティン・プファーフもドラッグが原因で死亡。クリスティンの穴埋めは、このアルバムでもベースを弾いているメリッサ・アウフ・デル・マール('99年にHOLE脱退後、スマパンに加入。この辺も因縁めいてますね)が加入することでことなきを得て、更にバンドとしてはパワーアップ。上にも書いたように、ビリー・コーガンがソングライティングで参加してるのは、当初このアルバムのプロデュースをビリーが担当していたから。が、途中で喧嘩別れ。結局SOUNDGARDENやSOUL ASYLUM、RED HOT CHILI PEPPERSで有名なマイケル・ベインホーンを起用、太くてゴージャスな装飾をまとい、メロディはきらびやか。そして歌詞も前進することを選んだコートニーらしさ満載。カリフォルニアの、どこまでも続いて行く青い空をイメージさせる広大さ。大味なようでかなり繊細なメロディ(これはビリーによるものが大きいのかな?)。どこがいけないの? こんなに力強い「肯定」のアルバムを、その「グランジ/オルタナの女王」が世に出したから? それによって全てのいざこざに終止符を打ったから? 俺には判らない‥‥グランジというムーブメントを愛してもいたし、同時に憎んでもいたから。けど、ここで鳴らされている音は否定できない。いや、むしろ俺は両手を広げて大歓迎したよ。

「ディーヴァ」っていうのが、もしソウルやR&B以外のジャンル‥‥ロックだとかポップスだとか、そういった「音楽」の世界全部をひっくるめての中から選べるとしたら‥‥本当の意味で、酸いも甘いも味わったコートニーこそ、真の意味でのディーヴァなんじゃないかな?と思うんだけど‥‥そしてディーヴァはいよいよ帰ってきますよ。最高にカッコいいロックナンバーが沢山詰まったアルバムと共に‥‥



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投稿: 2004 02 07 04:39 午前 [1998年の作品, Courtney Love, Hole] | 固定リンク

2004/01/16

BACKYARD BABIES『TOTAL 13』(1998)

例えば普段「BURRN!」を読んでたりとか、THE WiLDHEARTS系統のバンドに興味を持っている人なら間違いなく知っているバンドなんだけど、逆に「rockin'on」しか読んでないようなUKロック中心に音楽を聴いてるような人には殆ど無名な存在。それが今のBACKYARD BABIESの立ち位置なのかな?なんていう気がしますが、どうでしょうか? 間もなく日本でも4枚目のアルバムをリリースする彼らが、ここ日本でその名前を知らしめることになる第一歩、日本デビュー作(通算2作目)となったのがこの『TOTAL 13』というアルバム。

彼らはスウェーデンの4人組バンドで、既にスウェーデン国内では知らない人はいないと言われる程の知名度。初期のTHE HELLACOPTERSのメンバーでもあったドレゲン(このアルバムリリース前後まで2バンドを掛け持ち)が同じスウェーデンの人気者、THE CARDIGANSのメンバーと共にユニットをやったりしたこともあり、その辺で名前を耳にしたことがあるかもしれませんが、実際にこいつらがどんなバンドなのかを知ってる人‥‥正直、どれくらいいるんでしょうね?

上にも書いたように、THE WiLDHEARTSやTHE HELLACOPTERS辺りと同じ枠に括られることの多いバンドですが、まぁ早い話がパンキッシュだけどポップな要素も存分に備わった暴走ロックンロール・バンドといったところでしょうか。元々はGUNS N'ROSESみたいになりたかったようですが、このセカンドアルバムを聴いていると上記のバンド以外にもMOTORHEADだったりHANOI ROCKSだったりイギー・ポップだったり‥‥そういったバッドボーイズ・ロックンロールの系譜にあるサウンドが爆音で詰め込まれています。疾走感があって、それでいてヘヴィで、だけどメロディアスでポップ。LAのバンドともUKのバンドとも、勿論日本のバンドとも違う。これが「北欧らしさ」なのかどうかは判りませんが、とにかく独特な色を持ったバンドなのは確かで、そのセンスは意外と我々日本人に共通するものがあったりで、何故彼らがここ日本でいち早く受け入れられたかが何となく理解できます。勿論、彼らの成功の陰にはジンジャー(THE WiLDHEARTS)の口コミ等があったのも事実ですが。

THE HELLACOPTERS程ガレージ色が強くなく、THE WiLDHEARTSよりもストレート。そういった意味では、これらのバンドの中で最も成功に近い位置にいるバンドなのも確か。実際、このアルバムの後にメジャーレーベルに移籍、『MAKING ENEMIES IS GOOD』という非常にアメリカナイズされたアルバムも製作された程ですしね(ま、結局現時点においても大成功は収めていないわけですが)。

とにかく。上記に挙げたようなバンドを普段聴いてる人は間違いなくBACKYARD BABIESも聴いてるはずでしょうから、今回はこれまで縁のなかった人に対してオススメしたいと思います。

US産のメロコアに飽き飽きしている人、湿っぽくて暗いUKロックに我慢ならない人、THE HIVESに続く北欧の新星を探している人、「自分世代のGUNS N'ROSESやNIRVANA」を求める10代の子達。そういった人達を満足させる可能性を十分に秘めた存在。それがこのBACKYARD BABIESだと俺は思っています。限られたコミュニティーの中だけでしか話題にされず、これまで日の目を見なかっただけで、今このアルバムを手にしたらきっと‥‥ハマると思うんですよ。ミドルテンポの楽曲中心だった『MAKING ENEMIES IS GOOD』よりも、パンキッシュで疾走感あるこのセカンドの方が伝わりやすいと思うし、実際にここ日本でもこのアルバムを聴いてファンになったっていうミュージシャンも多いようですよ。SADSの清春もこのバンドが好きだと公言してるし(サードでは推薦文も書いてたしね)、元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケも好きみたいで、自身のDJプレイでもこのアルバムからかけたりしてますしね(ってミッシェルは99年に富士急で行われた「OUT OF HELL」で共演してるんだっけ!?)

海外でもそれは同様で、上に挙げたジンジャーやTHE HELLACOPTERSの面々、このアルバムの日本盤やUS盤にもボーナストラックとして収録された「Rocker」という曲でデュエットも果たしたHANOI ROCKSのマイケル・モンローも気に入っているそうだし、生前ジョーイ・ラモーンも何かで彼らに対してコメントしてましたよね。アンダーグラウンドで有名、HM/HR界で有名‥‥そんな狭いカテゴリーの中に収めておくには勿体ない存在。それがBACKYARD BABIESなのですよ。

幸運にもこの1月末~2月頭にかけて幕張と大阪で行われる「SONIC MANIA」への出演も決まり、後は来場した未知の音楽ファンに対していつも通りカッコいいステージをやってくれさえすればいいんです‥‥要は切っ掛けさえさればいいんだから。もしソニマニに行こうと思ってる人で、これを読んで彼らに興味を持ったら、まずはこの『TOTAL 13』を手に取ってみてください。そこで気に入ったら間もなくリリースされる4作目『STOCKHOLM SYNDROME』を聴けばいいんですから‥‥。

とにかく聴けや!



▼BACKYARD BABIES『TOTAL 13』
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投稿: 2004 01 16 12:00 午前 [1998年の作品, Backyard Babies] | 固定リンク

2003/10/10

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『GEAR BLUES』(1998)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが1998年11月にリリースした、通算4作目のフルアルバム「GEAR BLUES」。リリース当時、このサイトを始める直線だったんだけど、もうね、このアルバムの話題ばかりだったよ。ミッシェルがとんでもないアルバムを作っちまった、って。本当にギリギリのところまで到達しちゃった感が強い、速さやフットワークの軽さよりも重心の低さ、縦ノリよりも横ノリ、そういった要素を重視した14曲、55分の快楽。なんて言い方はカッコつけ過ぎか。

  前作「chicken zombies」のところでも書いたように、あのアルバムが出た頃、そしてそれから暫くは「このアルバムを越えるのは正直難しいだろうなぁ‥‥」とずっと思ってたのね。ところがさ、それから1年近く経ってリリースされた2枚のシングル、"G.W.G" と "アウト・ブルース"。これが「chicken zombies」の楽曲群よりも遙か先に行っちゃってたのね。特に "G.W.G"‥‥ワザとそんなにいい録音状態じゃなくして、いかにもなガレージ臭をプンプンさせる全体像。正直あれを初めて聴いた時は「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」って思ったもんね。そして "アウト・ブルース" に至っては、初のオリコン・トップ10入りを果たしてしまうんだから。とうとう時代がミッシェルに追いついた‥‥そんな気さえした程、この頃の彼等は上へ上へと昇りっぱなし。そして豊洲でのフジロック‥‥もはや伝説でしょ。マジに時代が追いつく瞬間ですよ、この辺の事象は。

  そういう環境の中で制作され、完成したのがこの「GEAR BLUES」。悪いわけがない‥‥っていうか、言葉にならない程に素晴らし過ぎるのさ。理想的なロックアルバムとか、日本のロックの宝とか、そんな豪勢な比喩はどうでもいいよ。頭からケツまで、ただひたすらカッコイイ。ブッチギリの1枚。

  このアルバムの凄さはズバリ上に書いたように「スピードよりも重さやグルーヴ感」を前面に打ち出したヘヴィサウンドでしょう。ヘヴィといっても昨今のラウドロックのそれではなくて(当たり前でしょ!)、もう全て‥‥彼等が持つ空気感から世界観、表現される一音一音、それによって構成される演奏・楽曲‥‥全てがヘヴィなわけ。「chicken zombies」がどんなものでも簡単に、スパッと綺麗に切れるナイフだとすると、この「GEAR BLUES」は何百キロもありそうなデカい斧。そんな気がしない?

  1曲1曲の素晴らしさについては敢えてここでは書きません。それは聴けば簡単に判ることだから。つうかさ、俺にとってはこのアルバムって "ウエスト・キャバレー・ドライブ" から "ダニー・ゴー" までの14曲が並んだ構成で1曲といった感じなんだよね。「GEAR BLUES」っていう、人間の狂気を切り取ったかのようなサウンドトラック。今でもムシャクシャした時や仕事で疲れて頭空っぽにしたい時は、このアルバムを大音量でかけて車飛ばすもんな。

  このアルバムの頃からつい最近まで、俺は彼等のライヴに足を運ぶことがなかったわけだけど‥‥後悔? そりゃね、観たかったよ。けどチャンスがなかっただけ。そして明日、俺はもう1回だけこの目に焼き付けてくるわけだ‥‥

  これより上はないってくらいの高みまで達し、臨界点を突破するかしないかの状態だったミッシェル。それより上に行ってしまうと、どうなるんだろう‥‥これよりも「良い」アルバムは作れるかもしれないけど、本当にこれより「凄い」アルバムが生まれることがもう一度あるのか。俺にとっての、この長い旅は結局その後4年以上もかかるわけです‥‥。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『GEAR BLUES』
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投稿: 2003 10 10 12:00 午前 [1998年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/08/28

PENPALS『AMERICAMAN』(1998)

  最高にカッコ良かった時代。いや、勿論今がカッコ悪いとか言いたいわけじゃないんだけど、どうしてもPENPALSというと、この頃‥‥デビュー当時からサードアルバム「RIGHT NOW」の頃までが一番ツボだったんですよ、個人的に。なんつーか、段々スマートになってっちゃって‥‥それが決して悪いわけじゃないけど、俺としてはこの「AMERICAMAN」に代表されるような、良い意味でも悪い意味でも「脱力しまくり」なスタイルが好きだったもんだからさ。

  というわけで今回紹介するのは、先頃4人編成として再スタートを切ったPENPALSの、まだ3人時代にリリースしたセカンドアルバム、「AMERICAMAN」。俺が知ったのが正にこのアルバムからで、最初はこのアルバムにも入ってる曲で、シングルとしてもリリースされていた"Tell me why"が、'98年当時深夜に放送されていた某アニメの主題歌に起用されていたことからだったんだよね。歌詞が英語で、非常にアメリカのガレージ/オルタナっぽいスカスカな音で、微妙に脱力してて、それでいて芯がしっかりしてるみたいな。たった1曲聴いただけでそういう風に感じてたんだけど、その後このサイトを立ち上げる前にネットで知り合った人に再度勧められて、重い腰を上げて買いに出かけたわけ。

  ここ最近‥‥日本語詞で歌うようになってからの彼等しか知らない人にとっては、このアルバムやファーストアルバム「PENPALS」のサウンドっていうのは、意外とショックを受けるんじゃないかな? というのも、ポップであることには違いないんだけど、最近の彼等程「甘く」なくて、もっとカラッとしてて、しかも全部英語詞。脱力って意味では今に共通する要素もあるんだけど、こっちの方が重度というか。

  そもそも、アルバムタイトルからしてふざけてる。「AMERICAN MAN」じゃなくて、「AMERICAMAN」。どこかのヒーローの名前かよ!って突っ込み入れたくなるようなタイトル。で、そのタイトル曲"Americaman"からアルバムはスタートするんだけど‥‥何とも言いようがない怠さを感じつつ、それでいて気持ちいいサウンドとでもいいましょうか、とにかく飽きることなく最後まで一気に聴けちゃうんだわ。怠いようでそうでもなく、かといってタイトかというとそこまでタイトというわけでもなく、この微妙な感じが初期の彼等の魅力とでも申しましょうか。しかもふたりのシンガーもそれとなくそれぞれの個性を感じさせつつ、それでいて強烈な「必要性」が感じられるわけでもなく‥‥ってあんまいい事言ってないよな、これじゃ。でもね、そういった「一見マイナスと取られそうな面」もこのバンドの場合、良い意味での個性として受け取れたりするんだから、あら不思議。

  1分にも満たないような疾走バカパンクあり、スローで埃っぽいナンバーあり、ポップで勢いあるロックンロールあり。1曲1曲が非常にコンパクトで、演奏のアレンジもかなり考えられてるような。そういう意味では非常に「理想的なトリオバンド」だったんだよな、当時のPENPALSって。

  「PENPALSで一番好きなアルバムは?」って尋ねられたら、やっぱり俺、この「AMERICAMAN」を挙げるわ。洋楽インディーロック好きにも絶対に引っかかりを持つ、非常に優れ物の1枚。



▼PENPALS『AMERICAMAN』
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投稿: 2003 08 28 12:00 午前 [1998年の作品, PENPALS] | 固定リンク

2003/07/11

AIR『Usual tone of voice』(1998)

先日、AIRのベストアルバム「Best Not Best」を買ったんですよ。で、久し振りに過去のAIR曲をまとめて聴きまして。懐かしい初期の頃から、最近のラウドな感じのやつまで、全20曲。で、その中で気になる曲が数曲あったんですね。それが"Yawn"、"Honey Cow"、"Heavenly"、"Hello"の4曲‥‥つまりこの「Usual tone of voice」収録曲でして。このアルバム、俺の中では一番印象が薄いはずなんですよ。つうのも、最も聴き込んだであろう「MY LIFE AS AIR」の後ということもあって期待してただけに、ちょっと肩透かしを食らった記憶があるんですよね、リリース当時。それと‥‥多分、このアルバムが出た頃、自分がちょっと失恋した時期と重なってるので、ネガなイメージが強いんですよね。アルバムの作風もかなり落ち着いたものですし、だから否が応でも思い出しちゃってたのね、暫く。

このアルバムの後、いきなり "Liberal" って曲で後の「ラウド路線」が決定づけられちゃったような気がするんだけど、勿論そっちの路線も好きなのよ。つうかこの人の場合、両極端なふたつの要素が同居するから面白いんだけどね。ま、その辺は後々ベスト盤のレビューにでも書くつもりでいますが。

で、久し振りにこのアルバムを引っ張り出して聴いてるんですよ、ここ数日。で、いろんな発見が俺の中でありまして‥‥あれっ、このアルバムってこんなに良かったっけ!?って。

基本的には穏やかなトーンで統一されてますよね。前作にあったようなパンキッシュな曲もなければ、エレクトロを駆使したようなものもなし。後のラウド路線の片鱗も全く見当たらず。もしかしたらSPIRAL LIFE時代に最も近いんじゃないか、なんて思える程(ってコアなファンは決してそうは思わないだろうね。あくまで素人目にはそう映るってことでご理解ください)。勿論、焼き直しとか原点回帰とかそういった意味ではなくて、元々持っていた資質を改めて持ち出してみた、って感じじゃないでしょうか?

AIRとしては初めてブラスを導入したであろう"Sunrise"とか、一定のフレーズを繰り返すピアノと徐々に盛り上がっていくリズム隊との対比が面白いインスト曲"I hate Chopin"とか、ヘヴィでグルーヴィーなんだけどそれまでのヘヴィ路線とはちょっと色合いが違う"I hope not"とか、"Welcome lunch"以降エンディングまでの流れとか、とにかく面白いんですよね。前作までのAIRの色合いを残しつつ、いろんな引き出しを引っ張ってきて、それまでとは多少違ったことにチャレンジしようという姿勢、全体的に統一感のあるアルバムカラー、それ以前/その後に多く登場する「ある方面」を歌った歌詞が皆無だったり、何よりも「借り物的な要素」が一切感じられない点が非常に好感持てるんですよね。

いや、AIRはパ●ってナンボでしょ!?とも思うんだけど(失礼な話だな)、何だか改めてこのアルバムを聴くと‥‥ああ、俺が好きなAIRの側面って結局こういうものなのかもしれないな、という気がしてきたんですね。他のアルバムがダメとかこれより劣るって意味ではなくて、全部いいと思うけど中でもこれが一番しっくり来る、という。やっぱりね、"Dancing in the sheets"とか"I never wanna hear again"みたいな曲とか、上に挙げたような楽曲群が好きなわけですよ。たまたま今の心境とピッタリ一致しただけかもしれないけど、とにかく現時点で一番好きなAIRのアルバムは?と聞かれたら、胸を張ってこれの名前を挙げると思います。来月になったら判らないけどさ。

昨年リリースされた "Last Dance" なんかも、比較的このアルバムの色に近いものを持ってますよね? 実はまだあの曲が収録されたアルバム、聴いてないんですよ‥‥ベスト盤買う前にそっち聴けって話ですよね、ったく。何か久し振りに彼のライヴが観たくなってきたなぁ‥‥



▼AIR『Usual tone of voice』
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投稿: 2003 07 11 06:17 午前 [1998年の作品, AIR (Japan)] | 固定リンク

2003/06/15

モーニング娘。『ファーストタイム』(1998)

  1997年晩夏結成、1998年1月にメジャーデビューを果たしたモーニング娘。が、同年7月にリリースした記念すべきファーストアルバム「ファーストタイム」。この時点でシングルが2枚("モーニングコーヒー"と"サマーナイトタウン")。アイドルとしては早過ぎるアルバムリリースかもしれないけど、その内容が非常に優れていて、正直「アイドルポップ」というよりも「普通のお洒落なJ-POP」としても十分通用する作品に仕上がっています。如何に当時のつんく♂がこのアルバムに力を入れていたかが伺えるのではないでしょうか。

  アルバムリリース時点でのメンバーはオリジナルメンバー(中澤・石黒・飯田・安倍・福田)と2期メンバー(保田・矢口・市井)の8人。この編成でのアルバムリリースは結局これ1枚となってしまうわけですから(福田が全面的に参加したのがこれのみというのも、ちょっと勿体ない話)、ある意味「貴重な歴史の断片」としても評価に値すると思います。また、今現在では飯田・安倍・矢口しか残っていない(他メンバー5人が卒業済)というのも興味深いのではないでしょうか。

  それでは、既にお約束となっている全曲解説を簡単に行っていきたいと思います。


M-1. Good Morning
  アルバムのトップナンバーは、その曲名からもお判りの通り、初期の彼女達にとってのテーマ曲のような1曲。アレンジには初期ではお馴染みの前嶋康明。ブックレットのクレジットによると、リードを取るのが安倍・石黒・福田・保田・市井で、ハーモニーが飯田・中澤・矢口とのこと。この時点ではまだ保田と市井の個性というのが全く見えず、むしろ安倍&福田のツートップに絡んでくる重心の低い石黒、高音が気持ちいい中澤&矢口の声が印象的。イントロのピアノを聴くと、ああこれから何かがスタートするぞ‥‥という高揚感が。昨年の中澤ソロツアーでも日替わりでこの曲が歌われていたそうですね。今やファーストアルバムの曲は完全に無視されているので、こうやって卒業メンバーによって歌い継がれるのは良い傾向ではないでしょうか。

M-2. サマーナイトタウン
  '98年5月リリースのセカンドシングル。詳しくはシングルレビューを参照のこと。お洒落なポップスから一転、如何にもつんく♂らしい下世話なダンス歌謡の世界へ‥‥ま、楽曲として優れているからいいんですけどね。

M-3. どうにかして土曜日
  当時放送されていた「ASAYAN」をご覧になっていた人ならご存じでしょうけど、彼女達のデビューに関しては、3曲の候補曲がありました。最終的には"モーニングコーヒー"に決定するわけですが、これはその候補曲の内のひとつとして当時紹介されていた楽曲。アレンジは高橋諭一、ブラスアレンジを森宣之が担当。バンドサウンドを基調としていて、ソウルフルなメロディに絡む生ブラスが非常に気持ちいいアレンジになっています。シングルとしては弱いけど、こうやってアルバムで聴くにはいい感じですね。リードボーカルはオリジナルメンバーの5人、ハーモニーは飯田・石黒、コーラスを全員で担当。恐らくデビュー曲用にレコーディングしたテイクをそのまま残したのでは‥‥この曲が後の "LOVEマシーン" に繋がっている、とつんく♂本人も言ってるような、その後のソウル/ファンク歌謡路線の試作的1曲。

M-4. モーニングコーヒー
  '98年1月リリースのデビュー曲。詳しくはシングルレビューを参照のこと。もはや言うまでもなく、名曲。時が経てば経つ程に、この曲に対する愛情が高まっていきます。

M-5. 夢の中
  しっとりとしたミディアムスローナンバー。アレンジは前嶋康明。リードは飯田・福田・保田、ハーモニーは中澤・矢口・石黒・安倍、コーラスを中澤・市井が担当。初期タンポポといい、後のソロアルバム「オサヴリオ」といい、こういったタイプの楽曲には飯田の声が非常に合ってますよね。そしてそこに絡む中澤&矢口のハーモニーが絶妙。飯田のリードに絡む矢口のハーモニー‥‥その後の片鱗がちょっとだけ見え隠れします。リードのメンバーの中に保田の名前もあるんだけど、その後の彼女を考えると‥‥全然目立ってないんですよね、残念ながら。仕方ないっていえば仕方ないけど(恐らく加入後1~2ヶ月でレコーディングしたものだろうからね)。名曲。今だからこそ聴きたい1曲。

M-6. 愛の種
  言うまでもなく、この曲からモーニング娘。が始まったわけですね。インディーズでリリースされたシングルナンバーであり、後の"モーニングコーヒー"カップリング曲。詳しくはシングルレビューを参照のこと。2期メンバーは一切参加していない、オリジナルテイクのまま。

M-7. ワガママ
  石黒の他に保田&市井をリードに迎えるという冒険に出た、ミディアムギターポップ。この曲、作詞はつんく♂ではなくて狩野亜希子という人が手掛け、アレンジには黒尾俊介という人が当たっています。リードは先の通り、ハーモニーが飯田・安倍、コーラスを福田・矢口・中澤という一風変わったメンツで担当してます。間違いなくこの当時でなければ有り得ないパート分け。当時のつんく♂の冴えが遺憾なく発揮されていると感じるのは俺だけ? 個人的にはファーストの中でも1、2を争う程好きな曲。

M-8. 未来の扉
  ちょっとヒップホップ的要素を強調したパーティーチューン。アレンジは今井了介。リードは福田・安倍・石黒・飯田・市井・保田、ハーモニーが中澤・矢口。その後のつんく♂のR&Bやヒップホップへの傾倒を考えると、この曲程度だとまだまだカワイイもんですね。それにしても、市井‥‥楽しくなさそうに「楽しんじゃえっ」って歌われても‥‥ねぇ? 意外と4期が加わった頃の10人編成で歌っても違和感ない内容じゃないですかね。いや、あのメンバーでのバージョンも聴いてみたかったなぁ。

M-9. ウソつきあんた
  先に書いたデビュー曲候補の3つの内のひとつ。アレンジは高橋諭一。リードは中澤・石黒・福田、ハーモニーは安倍、飯田、コーラスを矢口・保田・市井で担当。やはり初期の楽曲アレンジは時間とお金がしっかりかかってますよね。通して聴くとこぢんまりとした印象なんですが、ちゃんとひとつひとつの楽器が自己主張してるというか、とにかくバンドサウンドが気持ちいい。初期のライヴはカラオケではなくて生バンドを導入してたってのも、やはりこのアルバムで表現したものを再現するためには必要だったのかもしれませんね。非常に好きな1曲。

M-10. さみしい日
  アルバム最後を飾る、切ないバラード。アレンジは前嶋康明。8人全員が代わる代わるソロを取り、残りはユニゾンで歌っています。そして、後半に登場するつんく♂のフェイクはちょっと鳥肌モノ(いろんな意味で)。彼がコーラスで参加するのはこれ1曲のみ。今現在の「間違った自己主張振り」を考えると、ちょっと泣けてくる。いや、それがなくても切なすぎて泣ける1曲。アコースティックピアノだけをバックに歌う娘。なんて、今のメンバーじゃ考えられないですからねぇ。初期だからこそ成し得た奇跡とでもいいましょうか(それは言い過ぎか)。


◎総評
  当初、このアルバムに対する評価は俺内では非常に低かったんですよ。いや、単純に4期メンバー加入後以降の路線が好きだったというのもあるんですが、一旦距離を置いて客観的に見てみると非常に優れた作品だということに気づくんですよね。ファーストアルバムの時点でこれだけ高度なことをやってたのか、と。そして如何にこの当時のつんく♂が冴えまくっていたか、と‥‥これを聴きながら現状を考えると絶望的な気分になりますが、それはまぁ置いといて‥‥各メンバーの歌がまだぎこちないし、その後を考えると「個性」が弱いと言わざるを得ませんが、それを補って余る程の楽曲及びアレンジだと思います。

  もし "LOVEマシーン" 以降、あるいは "ザ☆ピ~ス!" 以降の彼女達しか知らない、あるいは興味がないという人がいたら、悪いことは言わないから無理してでも聴いてみて。もしあなたが「純粋な音楽好き」だったら絶対に気に入る1枚だから。



▼モーニング娘。『ファーストタイム』
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投稿: 2003 06 15 10:08 午後 [1998年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2003/06/09

モーニング娘。『抱いてHOLD ON ME!』(1998)

  「ファーストシングルよりも順位が上に行かなかったら即解散」という如何にもテレビ企画らしい難題をぶつけられたモーニング娘。無事目標は達成され、この年の7月にはファーストアルバム「ファーストタイム」もリリースしています。そしていよいよ彼女達の人気を決定づける1曲が誕生します。そう、"抱いてHOLD ON ME!"ですね。9月に発表されたこの曲はチャート初登場1位を記録するだけではなく、年末のレコード大賞最優秀新人賞受賞、そして紅白歌合戦にも出演することになります。そういう意味では初期の代表曲と呼んで差し支えないと思います。

  実際作品の出来も素晴らしく、前作"サマーナイトタウン"の延長線上にある歌謡ダンスミュージックなのですが、メロディは更に磨きがかかり、バックトラックもハウス色が強いものになっているし(アレンジは前作同様、前嶋康明)、何よりも彼女達の歌がとても成長しているんですね。安倍と福田のツートップなんですが、それぞれに個性のようなものが見え始め、表現力も1年前の"愛の種"とは比べものにならない程成長しているんです。また、前作ではコーラスのみという屈辱を味わった2期の3人‥‥特に矢口が高音ハーモニーで良い仕事をしていて、もはやなくてはならない存在になりつつあります。そうそう、この曲といえば中盤で初挑戦したラップや、飯田の決めセリフ「ねぇ笑って」ですよね。これを欠かすことはできませんよね?

  一方カップリング"例えば"は、"モーニングコーヒー"路線のポップソング。アレンジには須藤豪&LH Projectというユニットが当たっています。如何にもつんくらしい泣きのメロディが心地よく、思わず鼻歌を歌ってしまいたくなる1曲。イントロ等で鳴っているラップスチールが気持ち良いんですが、地味といえば地味かもしれません。けれどアッパーなタイトルトラックの影でこういった「聴かせる」曲をちゃんとやっている事が評価に値すると思うのですが。その後、こういったタイプの曲は減る一方ですし、そういう意味では「ごく初期の集大成的作品」と呼べるかもしれませんね。



▼モーニング娘。『抱いてHOLD ON ME!』
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投稿: 2003 06 09 10:41 午後 [1998年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

モーニング娘。『サマーナイトタウン』(1998)

  デビューシングルがトップ10入りし、その風変わりなグループ名と相俟って世間的にも若干注目を受けたモーニングコ娘。しかしデビューして間もなく、今や恒例となった「メンバー増員」がつんくから言い渡されます。1998年4月に第2期メンバーとして保田圭、矢口真里、市井紗耶香の3人が加わり、このセカンドシングルからは8人編成へと進化します。

  前作の爽やかなポップス路線から一変し、今回の"サマーナイトタウン"は非常にシャ乱Qな、人工的なダンスミュージックで勝負に出ます。アレンジには初期のモーニング娘。ワークスではお馴染みの前嶋康明。ダンスミュージックとはいってもR&B的なものではなく、歌謡曲にラテンテイストを加味し、ハウスっぽい打ち込みで処理しただけなんですが。メインボーカルは主に安倍と福田が取っていて、その後暫く続くツートップ体制がここで初めて完成します。所々に飯田・中澤・石黒が加わり、いいアクセントを効かせています。当時加入したばかりの保田・矢口・市井はコーラスのみの参加でした。

  カップリング"A MEMORY OF SUMMER '98"は、アルバム未収録曲。アレンジはお馴染み高橋諭一。ストリングスを全面に打ち出したバラードナンバーで、特に誰がメインといった感じではない、各メンバーが順々に数小節ずつ歌っていく構成(第2期メンバーはここでもソロは与えられず)。その後誕生する「LOVEマシーン」のカップリング曲 "21世紀" のプロトタイプと呼べなくもないけど、あっちよりも温かみのある優しい曲に仕上がってます。

  こうやって2曲を改めて聴いていると、メロディが新鮮なんですよね。決してこの頃に戻れとは言わないけど、やはりこのレベルは保って欲しいよなぁ‥‥と難しい注文のひとつも出てきちゃいますよね、これ聴いちゃったら。



▼モーニング娘。『サマーナイトタウン』
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投稿: 2003 06 09 10:40 午後 [1998年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

モーニング娘。『モーニングコーヒー』(1998)

  記念すべきモーニング娘。のデビューシングル。当時のメンバーは中澤裕子、石黒彩、安倍なつみ、飯田圭織、福田明日香の5人。所謂オリジナルメンバーですね。テレビ番組のオーディション企画の最終選考に残ったものの、結局落選してしまった中から選ばれた5人で「CDを5日間手売りで5万枚売ったら即デビュー」という難題を見事クリアしてメジャーデビューに至った経緯は、今や風化されつつありますが、やはりこのハングリーさがモーニング娘。イズムの基本なわけですよ。

  その手売りで売られたのが、このシングルのカップリングに収録されている"愛の種"。以外にもこの曲のみ、つんく♂が関わっておらず(一応プロデュースはつんく名義になってますが)、作詞にサエキけんぞう、作曲&アレンジに桜井鉄太郎という意外なメンツで制作されています。サエキ氏はパール兄弟として、桜井氏はCOSA NOSTRA等で活躍してきた、その筋では有名なアーティスト。そういった人達が手掛けたこの曲は、非常に爽やかなポップソングに仕上がっていて、正直「手売り企画」用に作ったにしては豪華過ぎるんですよ。5人の歌もまだ素人のそれだし、ホントに普通に歌の上手い子が歌ってるだけといった印象。それにしても、本当によく出来た楽曲ですよね。この曲ももう歌われることなんてないんだろうなぁ‥‥勿体ない。

  そうしてデビューが決まった彼女達、数ある候補曲の中からデビュー曲に選ばれたのが"モーニングコーヒー"という曲。ここでようやくつんくが作詞・作曲を手掛けます。アレンジには"愛の種"を手掛けた桜井鉄太郎が引き続き当たっています。"愛の種"が生音を大切にした作風だったのに対し、この"モーニングコーヒー"は打ち込み中心といった印象が強く、生ギターやエレピといった楽器が入っているにも関わらず、どこか人工的な匂いがします。また前曲では特に誰がメインを取るといったことはなく全員で歌い分けていただけでしたが、ここからはメインボーカル争奪戦が始まります。この曲では安倍と飯田のツートップがメインで、他メンバーもソロパートがあるものの、基本的にはハーモニー&コーラスが中心。ただ、そのお陰で「歌を聴かせる」という点においてはかなり強い個性が感じられます。各メンバーの歌もだいぶ良くなっているし、歌割りも非常に凝ってます。だからか、最初にこの曲を聴いた時「これ、アイドルにしては高度じゃねぇか?」と『ASAYAN』を観ながら思ったものです。

  今となっては懐かしい2曲ですが、やはりデビュー時からその音楽性の高さは折り紙付きだったことが伺えると思います。



▼モーニング娘。『モーニングコーヒー』
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投稿: 2003 06 09 10:38 午後 [1998年の作品, ハロー!プロジェクト, モーニング娘。] | 固定リンク

2003/05/23

NASHVILLE PUSSY『LET THEM EAT PUSSY』(1998)

もうこのジャケット観ただけで「バカ度」の高さは保証済み! アメリカが誇る最高で最悪で最強で最狂なハイパーロックンロールバンド、NASHVILLE PUSSYが'98年にリリースした、記念すべきファーストアルバム。しかもこれ、メジャーの「MERCURY」(現在の「ISLAND」)からリリースされ、翌'99年のグラミー賞にノミネートされたんですよね!(「BEST METAL PERFORMANCE」部門だったかな?)更にこいつら、そのグラミー賞の会場にもこの小汚くて猥雑な衣装で出かけたってんだから、もう‥‥尊敬に値するね!

そんな、来月には待望の初来日を果たす彼等。現在までに3枚のアルバムをリリースしてるんですが、俺が所有してるのは今現在これのみ。多分‥‥聴くまでもないと思うんだけど‥‥全部同じだと思うよ。基本的にはMOTORHEAD直系のハイエナジー爆走ロケンロー。1曲が短くて、全12曲で27分っていうランニングタイムが全てを物語ってると思います。その筋のファンにはカルト的人気を得ていた彼等、活動歴はとても長いようで、既に10年以上ものキャリアがあるそうですよ。そんな彼等が何故メジャーからアルバムを出すことが出来たのか‥‥実は彼等と契約したのが、かのトム・ズータウだというのですよ。AC/DCのアメリカでのブレイクに一役買い、MOTLEY CRUEやGUNS N'ROSESと契約した男。その彼が口コミで彼等の噂を聞き、実際にライヴ観て一発で気に入ったのがこのバンド。なるほどなぁ‥‥何か判る気が。時代錯誤だったはずのモトリーやガンズに理解を示し、結果数年で彼等は世界一になっていったんだから‥‥ま、残念なことにNASHVILLE PUSSYの場合はこのアルバム1枚で契約を切られたようですが‥‥

もうね、ここで語るまでもない、大音量で聴いてナンボの音。頭で感じるのではなく、身体で、腰で感じて欲しい音。ま、ジャケット観て視覚的に感じてもらってもいいけど。とにかくそういう音。今上に挙げたようなバンド達の要素がそこら中に溢れてるし、実際彼等もそういったバンド達をリスペクトしてるようだし。難しさなんて皆無、全曲判りやすいメロディに品のない歌詞(歌詞カードがないので聞き取った感じでの印象と曲名から判断しますが、ホントお下劣で下らないこと歌ってます)、考えるだけバカバカしいですよ。つうか、考えてる内に27分なんてアッという間に経っちゃいますからね。

その曲名にしても"Go Motherfucker Go"とか"All Fucked Up"、"Blowin' Smoke"なんていうストレートなものばかり。歌詞にも30秒に1回くらいの割合で「FUCK」が出てくるし。ボーカルの荒々しくてハスキーな歌声(ちなみにこのバンド、男2人女2人の4人組。シンガー&リズムギターとドラムが男性、リードギターとベースが女性。しかもベースの彼女はジャケットで乳首はみ出すし、ライヴでは火を吹くとのこと‥‥w)がこの品性が欠如した歌詞とサウンドにピッタリなんだわ。で、所々に入る女性のヒステリックなコーラス(というか叫び声)もまたピッタリだし。あーバカバカしくて最高!

何か最近の「リフロック」って、クールなバンドが多いじゃない? つうかさ、本来「リフロック」ってこういうバカっぽいのが当たり前だったじゃない? MOTORHEADのレミー然り、AC/DCのアンガス・ヤング然り。こんな時代なんだから、本来NASHVILLE PUSSYのようなバンドこそもっとリスペクトされるべきなんじゃないの?

つうか何気取ってんだよ、お前ら! 童貞気取りも程々にしろよな! もっとこういう聴いて、頭空っぽにしなきゃ! バカサイコー!!!

‥‥って俺に言わすくらいの内容なわけですよ、これ。ホント、好き者にはたまらない1枚。初来日公演には是非足を運ぶ方向で。



▼NASHVILLE PUSSY『LET THEM EAT PUSSY』
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投稿: 2003 05 23 02:27 午前 [1998年の作品, Nashville Pussy] | 固定リンク

2001/10/31

BLACK SABBATH『REUNION』(1998)

オジー・オズボーン在籍期BLACK SABBATHとしては過去にも非公式ながら『LIVE AT LAST』があるし、ディオ時代には『LIVE EVIL』があるし、トニー・マーティン期も(日本盤は出なかったが)ライヴビデオ+ライヴCDのボックスが出ていた。そう考えると、約30年のキャリアでライヴ盤4枚というのは、決して少ない方ではない。ツェッペリンなんて映画のサントラとはいえ、約10年のキャリアでたった1枚しか出ていないわけで、DEEP PURPLEは‥‥どれだけ出てるのか知らない(苦笑)。とにかく、オジー在籍時の、ちゃんとしたライヴ盤はこれまで正式にはリリースされていなかったし、97年の復活以後唯一の音源(2001年10月現在)としてだけでなく、初期のベスト盤としても手軽に聴ける構成となっている2枚組ライヴアルバム。

収録は1997年12月5日、イギリスはバーミンガムにあるNECシアター。曲数や収録時間(16曲、約2時間)から、ほぼノーカット状態と思われる。収録曲に関しては、ファースト~5作目がメインになっていて、そこに「Dirty Women」なんて意外な曲も含まれている辺りに、彼らの本気振りが伺える‥‥かも(笑)。

ちょっとしたプレイのミスは修正されているかもしれない。更に、知っている方も多いと思うが‥‥オジーはスタジオ盤だろうがライヴ盤だろうが、必ず「ダブル・ボーカル」方式で録音する。つまり、一度唄ったモノに、更にもう一度同じモノを唄って被せる事を指す。これによってボーカルに自然と厚みが加わったり、また同じ事を二度唄っても微妙にズレるので、自然なコーラス/ディレイが得られたりする。スタジオ盤のみならず、ライヴ盤でもライヴ音源にスタジオで更にボーカルを重ねるわけだ。つうわけで、オジーのライヴ盤ってのはある意味、正真正銘の「実況中継盤」ではなく、ひとつの「作品」として語られるべきなのかもしれない(試しにMC部分と歌の部分の声を聴いてもらいたい。声の厚みや録音の違いが明らかだろう)。けどまぁ、今時修正のないライヴ盤の方が少ないのだし、そこまで気にして聴く人も少ないのかもしれない。余談だが、KISSなんてギターは全部スタジオで弾き直したものと差し替える、なんて話もある程だし(ステージで動き回る分、ミスや余計な音が入っている事が多いので、キチンとした作品として仕上げるために修正するそうだ)。

まずアルバムを聴いて驚くのが、歓声の大きさだろう。まぁこれはスタジオで調整して大きくしてるんだろうけど‥‥それにしても、この大合唱は何だろう? 1曲目「War Pigs」でのオジーと観客の掛け合いときたら‥‥まず間違いなく、ここ日本ではこんなの、無理だろう。一体「War Pigs」や「Iron Man」の歌詞をそらで唄えるファンがどれだけいるだろうか? 間違いなく1万人もいないはずだ。逆に武道館や横浜アリーナで大合唱が起きたら、俺は号泣+糞尿垂れ流し状態で感動するだろうね、きっと(爆)。まぁ冗談はさておき、この事実だけでも如何にBLACK SABBATHというバンドが欧米で認知されているか?がお判りいただけるだろう。途中のMCで熱狂的なファン?の叫びをそのまま収録しているが、これが全てなんだろう。単純にサバスとしての人気、それにプラスしてオジー・オズボーンとしての人気。最強じゃない?

そして、新曲‥‥オリジナルサバスとしては‥‥約20年振りの新曲ということになるのだが‥‥これが‥‥別にオジー名義でも何ら問題がない程度の楽曲とでもいうか‥‥確かに「サバスらしい」楽曲と見ることもできる。が、オジーがサバス脱退後、如何にサバスから離れたサウンドを繰り広げるか、如何に幅広いロックを聴かせるかという命題と戦ってきた結果、オジーが唄えば全て「OZZY OSBOURNEのサウンド」となってしまうわけで、今更「BLACK SABBATHとしての純粋な新曲です」と言われても、単純にバックトラックが変わっただけ、サウンドが変わっただけというようにしか思えない自分がいたりする。勿論、約20年振りにサバスとしての新曲を発表という事実には興奮したりもしたが、実際にその楽曲を前にすると、先に感じたような興奮を感じないのもまた事実だったりする。それだけ自分自身にとって「BLACK SABBATHの新曲」というのはハードルが高いものなのかもしれない。ただ、フォローする訳ではないが、単純に「オジーが唄う新曲」と考えれば、かなり高水準の楽曲であることには間違いない。

先にも書いた通り、選曲はファーストから5作目『SABBATH BLOODY SABBATH』までのベスト選曲(という表現には語弊があるだろうが、とりあえずこう言わせてもらう)ということになっている。先日、「サバスは『REUNION』1枚で十分」というような声を聞き、これに反論してる方がいた。確かに、深追いせずに手っ取り早く聴く分にはこの1枚で十分だろう。が、これ1枚でサバスの全てを解り切ったつもりになられては困る。ツェッペリンならベスト盤やBBCライヴを聴けば事足りるだろう、なんてしたり顔で言われた日にゃ、確かに俺も怒るだろう。サバスやツェッペリンというアーティストは、アルバム・オリエンテッド・アーティストなのだ。1枚のアルバムの流れ、ジャケットの神秘性等を大切にしてきたバンドなのであり、本来ベスト盤なんてものは邪道なのだ。もし上のように『REUNION』しか聴いたことがなく「サバスなんてあんなもんでしょ!?」としか思ってない方がいたとしたら、是非ファーストから5作目までのスタジオ盤をちゃんと聴いて欲しい。バンドのアーティスティックな面を本当に理解してもらうには、それが一番なのだ。

そう、あくまでこの作品は「ライヴバンドとしてのBLACK SABBATH」を伝えるのがメインであり、ベスト盤的カタログというのは二の次なのだから。



▼BLACK SABBATH『REUNION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 10 31 12:00 午前 [1998年の作品, Black Sabbath, Ozzy Osbourne] | 固定リンク

2001/06/04

BRAHMAN『A MAN OF THE WORLD』(1998)

  日本が誇るバンド、BRAHMANが1998年9月にリリースした初のフル・アルバム。インディーズからのリリースながら長い間売れ続け、確かオリコンの「インディーズ・チャート」で1年以上1位だったのでは、と記憶している。このアルバムを契機に彼らは大躍進し、翌年秋にはメジャー配給のマキシシングル「Deep / Arrival Time」を発表し、これはオリコン・シングルチャートのトップ10入りを果たす。彼らのブレイクを決定づけたのが、まさしくこのアルバムなのだ。

  勿論、ブレイクにはその他にも様々な要因がある。地道に行われたライヴだったり、大きなイベントやAIR JAM、フジロック等野外フェスティバルへの出演。こういう人目に出る機会が増えた結果、人伝いに噂は広がり、'99年最も注目されるバンドとなったわけだ。

  では、彼らは何故ここまで注目され、そして人気を得たのだろうか?

  彼らの魅力のひとつに、「親しみやすい、純日本風メロディー」がある。これは俺自身、過去のライヴレポートの中にも書いているが、初期のシングルからも伺うことができたその要素が、このアルバムでいよいよ完成型に近付いているのである。まだ荒削りながらも、やろうとしていることの輪郭は既にハッキリしている。後に出た「Deep / Arrival Time」は、この延長上にある楽曲であり、サウンドプロダクションが更に良質なものになり(これはメジャー経由のため、お金をかけることができたのだろう)、より判りやすくなった。

  「純日本風~」とはいうものの、それは演歌や歌謡曲のような下世話なものではなく、もっと古くから存在する日本古来の音楽‥‥民謡的なメロディーといえるのではないだろうか? 特に沖縄からの影響を強く感じさせる"Tongfarr"がその代表といえるだろう。

  当然、その他の曲も親しみやすいメロディーを兼ね備えていて、頭からお尻までの11曲、アッという間に聴き終えてしまう。1曲1曲が短く、そして聴きやすいからアッという間に終わり、そして何度も聴き返してしまう。ただうるさいだけじゃなく、しっかり聴かせる要素を兼ね備えている。この手の音を「暴れ系」と大きく括ることもできるだろうけど、それだけじゃ終わらない、独特な「色」と「味」を持っている、それがこのバンドの特徴であり、魅力なんだと思う。じゃなきゃ、既にリリースから3年近く経ってるのに、まだ売れ続けているっていう事実をどう説明すればいい?

  カヴァー曲も同じ日本のゴダイゴの曲("Cherries Were Made For Eating")を取り上げている点に共感が持てるし、英語曲に拘らず、美しい古来の日本語を用いた曲("Answer For...", "Toki No Kane")もいいスパイスとなっている。これからもこういう曲を削ることなく、バランスの取れた作品を作り続けてもらいたいものだ。

  近くこのアルバムに続く作品がやっと発表されるが(「A FORLORN HOPE」というタイトルで、6月下旬リリース。勿論メジャー配給なので、サウンド的にも期待できるはずだ)‥‥この人達、曲作りが遅いのか、それともツアーの方が好きなのか‥‥1枚のアルバムで3年も引っ張るのは、ここ日本ではかなりリスクを強いられると思うのだが‥‥まぁ見方を変えれば、それだけこのアルバムが徐々にブレイクしていき、そして彼らを求める声がそれだけ長い間続いたということなのだろう。果たして次のアルバムはこの名盤を越えることができるのか、それとも全く違った側面を見せつけるのか、非常に興味深い。また今年も彼らから目が離せなさそうだ。



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投稿: 2001 06 04 12:00 午前 [1998年の作品, BRAHMAN] | 固定リンク

2001/05/13

DURAN DURAN『GREATEST』(1998)

過去に一時代を築いたバンドの再結成というのは、今に始まったことでもないし、最近では別段驚くような再結成も多くない。最近の活動が停滞していた為にオリジナルで復活‥‥となると、やはり「要は金でしょ?」と穿った見方をしてしまう。ここ数年ではやはりKISSのオリジナルメイク時代の復活が一番の衝撃だったが、あれだってそれ以前から伏線がいろいろあった訳だから、誰でも予測出来ただろう。しかし、時々思いもしないような再結成もあり、本当に驚かされる時がある。最近では、例の頭脳警察の3ヶ月期間限定再結成が記憶に新しい。この俺もさすがに唸ったし。

しかし、本当の意味で、絶対にないだろうと思っていた再結成がここに実現してしまった。それが今回取り上げるDURAN DURANだ。何を今更!?って言われるのは承知の上で言う。

やっぱりさぁ、好きなもんは好きだしさ!

俺の小学校高学年~中学時代は、正にニューロマンティック‥‥今でいうところのヴィジュアル系のはしりか?‥‥全盛の時期だった。そのちょっと前にかのJAPANがブレイクし、その土壌は完全に出来ていた。そこへMTVの登場。これらふたつを手玉に取って大成功を収めたのがこのデュランなのだ。

初期はメンバー全員バリバリにメイクし(とはいっても初期のデヴィシルには負けるが‥‥)、ファンクとパンクを融合させたような中途半端なポップロックを繰り広げてきた彼らが、本格的に「黒く」なったのは、かのナイル・ロジャース(CHICのギタリスト)をプロデュースに迎えてからだろう。その第1歩となったのが、俺と同じ世代なら覚えているだろう大ヒット曲、"The Reflex"である。アルバムでは当時のUKポップ/ニューロマンティックを支えた名プロデューサー、アレックス・サドキンが制作に携わったものの、シングルカットに際しナイルがリミックスした結果、初の全米ナンバー1を記録する事となる。その後もナイルはシングル"Wild Boys"やアルバム「NOTORIOUS」を手掛けている。また、そのナイルのバンドメイトであるバーナード・エドワーズをプロデュースに迎えての映画007主題歌"A View To A Kill"(2曲目の全米ナンバー1に。現在までにこの2曲のみ)や、ジョン・テイラー(Ba)とアンディ・テイラー(Gt)の別プロジェクト、THE POWER STATIONのプロデュースに迎えたり等して、ますます「黒さ」を追求していった。そんな中でドラマーのロジャー・テイラーのリタイヤ、そして「よりロックを追求する」という音楽性の相違によってアンディーが脱退する。

'86年のアルバム「NOTORIOUS」からサイモン・ル・ボン(Vo)、ニック・ローズ(Key)、ジョンの3人にサポートを加えた形で活動を続けていくデュラン。続くアルバム「BIG THING」('88年)では初期のエレクトロポップ路線が復活。ここでは「黒さ」は影を潜め、初期3枚に漂っていたヨーロピアン・エレクトロポップ風味を再び全面に打ち出した。当時日本で幅を利かせていたTM NETWORK(当時の小室哲哉は間違いなく彼らのフォロワーだった)に共通する音楽性で、東京ドーム公演まで果たした。当時からサポートとしてウォーレン・ククロロ(Gt)やスターリング・キャンベル(Dr)といった超一流どころのミュージシャンがライヴやアルバムに参加していたが、'90年のアルバム「LIBERTY」を機にウォーレンとスターリングが正式メンバーとして迎えられ、再び5人編成となるものの、すぐにスターリングは脱退(その後、SOUL ASYLUMやエリック・クラプトンのレコーディング等に参加)、4人のままで'93年に「THE WEDDING ALBUM」、'95年にはカヴァー集「THANK YOU」を発表。それなりに成功を収めていた。

しかし、その頃からジョンのソロ活動が目立つようになる。元SEX PISTOLSのスティーヴ・ジョーンズ、当時GUNS N'ROSESのメンバーだったダフ・マッケイガンとマット・ソーラムと共にNEUROTIC OUTSIDERSを結成、アルバムを発表しライヴも行う。その頃、時同じくしてTHE POWER STATIONの再結成も企てられていたが、結局ジョンは初期の曲作りに参加したのみで、「もっとロック(パンク)をっ!」という理由で離脱。結果、デュランをも脱退することとなる。

その後のデュランはサイモン、ニック、ウォーレンの3人で2枚のオリジナルアルバムを発表するものの、以前程の結果を上げられずにいる。そこへこの6月に久し振りの来日決定。更にこの日本公演はウォーレン在籍最後のライヴとなるという‥‥

果たしてサイモン、ニック、ジョン、アンディ、ロジャーのオリジナル5人での再結成が上手くいく保証はどこにもない。逆に遅すぎたくらいだ。もう5年早かったら、もしかしたら成功していた可能性もある。今回の場合、再結成とはいってもバンド自体は常に存続していたわけで、ケースとしてはKISSのそれに非常に近い。アルバムは2002年中に発表されるというが、果たして‥‥

バンドの歴史や再結成に至る流れは、ざっとこんな感じで。さて、肝心のアルバム。このアルバムは1998年秋という非常に曖昧な時期に発表された、バンドの歴史上2枚目のベスト盤だ(前は1990年始めに発表された「DECADE」)。確かに'90年代初頭に第二のピークを迎えたバンドだが、この時期は非常に微妙だ。考えられるとしたら、契約消化だろう。バンドは「THANK YOU」を最後にキャピトル・レコードを離れている。その後、ヴァージンと契約するものの、たった1枚で契約終了となっている。このベストは丁度その時期にリリースされたものなのだ。

バンドは最終的にハリウッド・レコード(米でのQUEENのレーベル)と契約するのだが、約20年近く在籍したEMI系列を離れるに際しての置き土産といったところだろう。ここには'80年代のヒット曲は勿論、'90年代初頭のヒット曲や、ヴァージン時代の曲も収められている。19曲で79分というボリュームのため、何曲かはシングル用にエディットしたバージョンが収められているが、個人的にはアルバムバージョンの方に思い入れがある曲が殆どなので(特に"Save A Prayer"はライヴアルバム「ARENA」のライヴテイクを入れて欲しかった。実際、アメリカでヒットを飛ばしたのはこのライヴヴァージョンの方だし)多少違和感はあるものの、バンドの歴史を総括する意味では手っ取り早い1枚だろう。

実はこのCD、この「とみぃの宮殿」をスタートする直前に買った1枚で、デュランというバンドは間違いなくこの俺のルーツのひとつなので、必ず取り上げようと思っていたら‥‥気づけばもう2年半。時の流れは早いものだ。何故かここ1~2ヶ月、このベストを取り出す機会が多く、先の来日公演にも行こうかどうか悩んでいた矢先に飛び込んできたニュースだった。まぁ6月のライヴにはジョンもアンディも参加しないので、個人的にはあまり興味を惹かれるメンバーではないが‥‥

昨今のヴィジュアル系バンドに直接/間接的に、間違いなく影響を与えているのがこのDURAN DURAN。かのラルクもニューロマンティック時代の彼らからの影響を認めているだけに、全盛期のデュランを知らない10代の音楽ファンにこそ聴いてもらいたい。ゴスだけがヴィジュアル系のルーツではない。お水っぽいイメージもあるが(笑)、曲は滅茶苦茶ポップで聴きやすいので、是非一家に1枚。「けっ、こいつらアイドルバンドだろ!?」と敬遠するあなたには、'84年のライヴあるアルバム「ARENA」をオススメする。彼らの初期のコンセプト、「CHIC(ファンク)とSEX PISTOLS(パンク)の融合」を思う存分味わう事が出来る名ライヴアルバムだ。

あ‥‥ファンクとパンクとファンを掛け合わせて「ファンクス」なんて謳っていたユニットが、ここ日本にもいたっけ‥‥パクリはこの頃から始まっていたわけですね?(笑/さて、誰のことでしょう?)



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投稿: 2001 05 13 12:00 午前 [1998年の作品, Duran Duran] | 固定リンク

2001/05/06

Cocco『雲路の果て』(1998)

  セカンドアルバム発表後、初の武道館公演を含んだツアー終了後に発表したシングル。既にツアーラストの武道館公演でも披露されていたので、ライヴに足を運んでいた人間には馴染み深い曲かも知れない。収録曲は表題曲の他に、セカンドアルバム収録の"あなたへの月"のリミックスバージョンが収められている。

  表題曲は、打ち込みとバンドサウンドを融合した、いわば"強く儚い者たち"等で実験されていた要素の完成型ともいえるスタイルで、ファースト時のヘヴィな要素を持ちながら、もっと大きな、よりうねりを持ったノリを放っている。既にセカンドアルバムでその片鱗は見せていたものの、この新境地が続くサードアルバムへの期待を膨らませたのは言うまでもない。

  カップリングのニューミックスも、唄い出しを歌とアコースティックギターのみにし、その後のアレンジをよりヘヴィにした事によって、よりダイナミックさを感じさせている。リミックスとしては大成功だろう。

  あまり語られる機会がないようなので、ここで改めて書いておきたい。Coccoのスタジオ作品やライヴでバックを支えてきたメンバー(基本的にはほぼ一緒)、彼らはそれぞれスタジオミュージシャンだったりバンドに所属していたりするのだが、個々の力量はハンパなもんじゃない。ただ、そのパンパじゃない力量の持ち主が多く集まったからといって、決して機能的に作用するとは限らない。しかし、彼女のアルバムやライヴでは常に奇跡が起きた。これもひとえにCoccoという、類い希なる存在がもたらす影響力なのだろう。これだけは決して忘れないで欲しい。



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投稿: 2001 05 06 01:18 午前 [1998年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『Raining』(1998)

  セカンドアルバムからの先行シングルとして'98年3月に発表されたシングル。収録曲は表題曲の他に、セカンドアルバムにも収録される事となる"裸体"。アルバムが発表されてしまった後となっては、それほど希少価値の高くないアイテムだが、これをシングルとして発表した事、そしてテレビの歌番組で唄った事。そこに意義があるのではないだろうか?

  昨年のツアーでは結局1度も披露されることのなかった曲ではあるが、やはり俺にとっては彼女のシングルナンバーの中では一番印象深い、そして一番思い入れの強い曲である。これらの曲に関しての感想は、アルバムレビューの方にも書かれているので、詳しくはそちらを参考願いたい。



▼Cocco『Raining』
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投稿: 2001 05 06 01:16 午前 [1998年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/04/29

Cocco『クムイウタ』(1998)

  Coccoの人気/セールスを一気に加速させたのが、このセカンドアルバム。前作リリース後、'97年末にシングルとして"強く儚い者たち"をリリース。当時CMソングとしてタイアップされた事もあり、また耳に馴染みやすいレゲエ・サウンドも好評だったのか、チャートのトップ10入りを果たす。そして、テレビの歌番組への出演。ここで我々は更に衝撃を受けるのだった。

  続くシングル"Raining"のヒットも手伝い、アルバムはチャート初登場1位を記録する事となる。アーティストとしては純粋に喜ぶべき事だろうが、俺は当初「何か違うんじゃないか?」とずっと思っていた。みんな、そんなに彼女の歌を欲しているのだろうか? そんなに満たされない人間が多いのだろうか?、と。

  Cocco自身の「Special Thanks To」の欄、このアルバムでは以下の言葉が綴られている。


消えない過去たちへ
消したい記憶たちへ
消せない想い出たちへ
限りない憎しみと
おびただしいほどの愛と
おやすみのキスを込めて


  このアルバムでも彼女は「憎しみ」を初期衝動として唄っている。しかし、ここではそれだけではなく、もっと彼女の根本的な、正しく「消えない/消せない過去の記憶」を吐露している。その代表例として、ヒット曲"Raining"が挙げられる。既にインタビュー等でも語られているが、この曲の歌詞は全て実話だそうだ。勿論彼女の歌というのは、全て事実に基づいて書かれているが、特にこの曲に関しては衝撃的だった。


「ママ譲りの赤毛を/2つに束ねて/みつあみ 揺れてた/(中略)/静かに席を立って/ハサミを握りしめて/おさげを切り落とした」「髪がなくて今度は/腕を切ってみた/切れるだけ切った/温かさを感じた/血にまみれた腕で/踊っていたんだ」「それは とても晴れた日で/未来なんて いらないと想ってた/私は無力で/言葉も選べずに/帰り道のにおいだけ/優しかった/生きていける/そんな気がしていた」「教室で誰かが笑ってた/それは とても晴れた日で」


  何故彼女が教室で手首を切る事になったのか、本当のところ俺は判らない。憶測で書くのは気が引けるのでやめておくが、それだけの事があったのか、衝動的なものだったのか誰にも判らない。ここで問題にすべき点はそういう事ではない。"強く儚い者たち"という最初のヒットシングルを生み出した後の楽曲が、実はこの曲なのだ。正直、ラジオやテレビでのオンエアさえ危うい歌詞が含まれている(事実、この曲で二度目のテレビ出演となった時、腕を切った~が含まれる2コーラス目はカットされた)。何故そんなリスクを犯してまで、彼女を取り巻くスタッフ達はこの曲をシングルとしてリリースしようとしたのだろうか? この曲を選んだのはCoccoだったのかもしれないし、或いはスタッフだったのかもしれない。俺は事実を知らないが、これはアーティストとしてはかなりの冒険だったはずだ。しかも両A面となる"裸体"という曲も、どことなく近親相姦を思わせる歌詞だし。まぁCoccoというアーティストがセールスに無頓着なのは理解出来るが、それを取り巻くスタッフまでもがそうだとは到底思えない。売ってなんぼの世界なのだから。いくら「アーティストの世界観を大切にする」だの言っても、結局売れなければ次のCDは発表できないかもしれない。話題性だけでは生き残れないのだ。そういう意味で、本当に恵まれた環境にいたアーティストだったんだな、とつくづく思う。

  このアルバムで、いよいよ彼女は沖縄への想いのようなものを唄い始める。その一例として、沖縄現地の言葉を多用している点が挙げられる。アルバムタイトルである「クムイウタ(=子守歌)」「ゴーヤ」「ウージ(=さとうきび)」「デイゴ(=沖縄の県花)」「ウナイ(=姉妹)」といった言葉が、当たり前のように登場する。沖縄での想い出、それが先の「Special Thanks To」欄の「消えない/消せない過去の記憶」なのだろう。それが"Raining"なのだろう。しかし、そこには憎しみ以上に、それをも包み込む優しさを、何となくだが感じる。前作に引き続き、怒りや憎しみをテーマにした楽曲は多いものの、それ以上に耳につくのは「やさしさ」だった。この「やさしさ」こそが、Coccoという人間/アーティストをひと回りもふた回りも大きくさせた要因なのだと、今はそう思えるのだ。

  その「やさしさ」を更に判りやすく表現する楽曲群。前作よりも激しさは影を潜め(勿論、前作同様ヘヴィな"濡れた揺籃"といった楽曲も収録されているが)、先のシングル2曲を含め、非常に大らか且つムーディーな楽曲が増えている。個人的にはかの有名な作曲家サティの"月光"をイメージさせる"SATIE"が、シンプルながらも気に入っている。やはりアルバムタイトル(子守歌)が全てを物語っているように思う。

  サポート陣も前作のメンツに加え、最近ではHALというプロデュース・チーム/ユニットとして浜崎あゆみに楽曲提供したり、自身も女性ボーカルをフューチャーしてデビューした梅崎俊春が新たに加わっている。Coccoとエイベックス、全く繋がりは感じさせないが、この後彼女の最後の作品までの付き合いとなるのだから、やはりプロとして的確な仕事をしている証拠だろう。

  聴き易さの点では、4作目「サングローズ」に匹敵する作品だ。初期の過激な歌詞/作風と、後期の癒される空気との橋渡し的作品とも言えるだろう。"強く儚い者たち"や"Raining"等、楽曲単位では思い入れが強いものが多いのだが、アルバムとしては実は最も思い入れが薄い作品だったりする、個人的には。やはり当時の「ネコも杓子もCocco」みたいな空気に嫌気がさしていたのも大きく影響している。現に、普段はドリカムやエイベックス系しか聴かないような普通の女性までもが、カラオケでそれらの楽曲を唄っている姿を目にした時‥‥強烈な違和感を感じたのだ。そしてCoccoは、そういう流れを断ち切るかの如く、次のアルバムまでに2年を要する事となるのであった。



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投稿: 2001 04 29 12:00 午前 [1998年の作品, Cocco] | 固定リンク

2000/12/27

LUNA SEA『SHINE』(1998)

  1997年秋の活動再開からそのままリハーサルに入り、曲作り~レコーディングに約半年を費やしたLUNA SEA。その結果完成したのがこの通算6枚目のアルバム。前作「STYLE」から2年3ヶ月後の事だった。ソロ活動を通過した彼らがどういう音を出すのか?興味はそこに集中したように思う。それに対する第1の答えとして4月に第1弾シングル"Storm"をリリース。当然チャート1位、セールスも過去最高を記録した。続く6月には第2弾"Shine"、更に7月には第3弾"I For You"と立て続けにリリース。全て好セールス記録した。

  SUGIZOはこのアルバムのレコーディングに対して「俺達は『河村隆一』という、新しい武器を手に入れた。どんなにアバンギャルドでうるさい曲を用意しようが、それを奴という日本一ポップなシンガーが唄う事によって、俺達は新境地に達する」というような発言をしていたと思う。内容はその言葉通り、これまでのLUNA SEAには見られなかった面が多々伺える。だが、基本的には『河村隆一を生かす普遍的メロディーのポップな楽曲』と『これまで以上に斬新でプログレッシヴな楽曲』のように、2つに大別できると思う。例えば"Shine"や"I For You"といった楽曲は前者の代表だし、「アルバムのへそ」である"Another"や"No Pain"は後者の代表例だろう。特にシングル曲はRYUICHIが作曲していないのに(それぞれJ、SUGIZOの曲)、河村隆一としてリリースしても特に違和感がないポップな楽曲だった事。古くからのファンはそこに衝撃を受ける。これを「成長/進化」ととるか「日和った」と解釈するかで、このアルバムに対する評価は大きく分かれると思う。このように、ミリオンセールスに達したものの、これまでで最も賛否両論分かれたのがこの作品だ。

  で、俺はこのアルバムが一番好きではない。好きな楽曲は多いのだが、アルバムとしてみると中途半端な印象を受けるのだ。例えばドラムの音が軽い事。確かにここにはポップな楽曲が多い。そこに「MOTHER」や「STYLE」で聴かれたサウンドプロダクションは似合わないのかもしれない。しかし、先の"No Pain"や、これまでのようなファストナンバー‥‥"Unlikelihood"や"Millennium"、"Love Me"がすごく軽く聞こえてしまうのだ。せめて各楽曲毎にドラムのチューニングを変える等の配慮が欲しかった。

  更に、そのファストナンバーがうまく機能していない。前作のそれとは別物になってしまっているのだ。パンク色が後退したことも大きいが、それ以上にこう‥‥もったりとした印象を受けるのだ。実際にライヴで聴けば疾走感溢れる佳曲なのだろうが、アルバムで聴く分にはどうも‥‥となってしまう。新しい面にばかり気を取られて、従来の色を忘れてしまったのだろうか?と当時は勘ぐったものだ。

  しかし、決して悪い作品ではない。シングルナンバーはどれも素晴らしいし、1曲目"Time Has Come"でのメッセージや、後半に多く固まるバラードタイプの楽曲‥‥"Broken"や"Breathe"も味わい深いものがあるし、ドラムフレーズがどことなくU2の"Sunday Bloody Sunday"を彷彿させる"Velvet"等、聴き所が多いのも確か。そしてラストを飾る"Up To You"‥‥互いのソロ活動があったからこそ生まれた名曲ではないだろうか?

  何故彼らが活動再開第1弾アルバムに「Shine」というタイトルをつけたのだろうか。前作「STYLE」は『闇』だった。が、その闇から眩いばかりの光を放っていたのも確か。彼らはバンドとしての2年の不在を埋める為に「今以上すべてが/輝けばいいね」と唄った彼ら。LUNA SEAが求めたのは、もっと眩い光だったのだ。更に強い刺激を求め、彼らは初のドーム2日公演やアジアツアーを実現させる。そして‥‥。



▼LUNA SEA『SHINE』
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投稿: 2000 12 27 12:00 午前 [1998年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/03/27

THUNDER『LIVE』(1998)

公式盤としては、初のライヴアルバム。しかも2枚組でボリューム満点。「THEIR FINEST HOUR」よりもこっちの方が遥かにベスト盤的役割を果たしている。シングルヒットは勿論の事、アルバム中の名曲やカヴァー曲、当時未発表だった新曲まで収録している。ミックスも旧知のマイク・フレイザーが担当しているので、音質の抜けの良さは抜群である。それ以上にこのアルバムは、如何にTHUNDERというバンドがライヴでその実力を発揮するバンドか?を完全網羅した内容になっている。この年('98年)にはAEROSMITHやJUDAS PRIEST、BLACK SABBATHがライヴアルバムをリリースしているが、それらに引けをとらない、「メジャーだろうがインディーだろうが関係あるか!」ってパワー炸裂の傑作である。

このアルバムの為に録音された公演は都合4日間。それぞれ演奏された曲が日替わりで、毎日観なきゃって気分にさせる素晴らしい内容のライヴだったと聞く。その中から演奏された全楽曲(重複演奏曲やカヴァーは除く)を収録したと言われている。特に日本盤にはボーナストラックで更に3曲追加収録されているので、もう完全版と言っても差し支えないと思う。どれも素晴らしい演奏に素晴らしい歌、素晴らしい楽曲に‥‥そして素晴らしいオーディエンス。これがTHUNDERのライヴの全てである。

これ以上、何を言えばいいんだ!? 下手な言葉はいらない。AEROSMITHの言葉を借りるまでもなく、『Let The Music Do The Talking』‥‥音が全てを語ってくれるはずだ。こんな名ライヴ盤、そうはお目にかかれない。これを読んで「LIVE」に手を出す事になった方には申し訳ないが‥‥THUNDERってこんなに凄いライヴバンドだったんだよ? 生体験できなかった事を後悔しなさい!



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投稿: 2000 03 27 02:14 午後 [1998年の作品, Thunder] | 固定リンク

1999/07/10

KISS『PSYCHO CIRCUS』(1998)

オリジナルメンバーに戻り、96~97年にツアーをした後にいよいよ制作されたのが、この「PSYCHO CIRCUS」って訳です。メンバーはポール、ジーン、エース、ピーターの最強の布陣。演奏力ではブルース&エリックに劣る訳ですが、このアルバムでは彼等が実際にプレイしていないのでは?なんて囁かれた程、マトモな演奏を聴かせてくれます。(笑)ちなみにチャート上での成績ですが、それだけ多くの人間が期待していたって事でしょうか、過去最高の全米第3位を記録しています。面白い事にこの時期、MARILYN MANSONが「MECHANICAL ANIMALS」をやはり全米1位に送り込んでいるんですよ。奇遇といえば奇遇ですが、何か勝手に運命めいたものを感じています。(笑)

プロデューサーは先頃お亡くなりになった名プロデューサー、ブルース・フェアバーン。(BON JOVI「SLIPPERY WHEN WET」「NEW JERSEY」、AEROSMITH「PERMANENT VACATION」「PUMP」「GET A GRIP」、AC/DC「THE RAZORS EDGE」、POISON「FLESH & BLOOD」など)本来、彼等は「REVENGE」同様、ボブ・エズリンとの仕事を望んだが、多忙の為(恐らくKULA SHAKERとの仕事が入った為でしょう)彼が代わりに推薦したのがブルースだった。この時点で新作が「ハイ・クオリティーでポップなアルバムになるのでは‥‥」という微かな期待が湧くのだけど‥‥しかもボブは作曲には参加するというから、尚更「も、もしや最高傑作になるのでは‥‥!?」って、そりゃ嫌が応でも盛り上がるちゅうねん♪(笑)そう、既に「CARNIVAL OF SOULS」リリースの時点で。(爆)

その「PSYCHO CIRCUS」、リリース前の噂では『「DESTROYER(邦題/地獄の軍団)」や「LOVE GUN」のような作風になる』というのがあったと思うんですが(いや、『「LOVE GUN」のようなサウンド・プロダクションで「DESTROYER」のようなバラエティーに富んだ作品を作る』だったかな?)いざ出来上がった作品は‥‥いい意味で『過去の集大成的作品』でした。そう、70年代の彼等だけでなく、80年代のメタル時代も90年代のハードコア時代をも包括した、集大成だったのです。何故そんな作品群をこのメンバーでやったのか?そこがこの「PSYCHO CIRCUS」のキーポイントとなるような気がします。

KISSにはヒット曲が沢山あります。それこそアルバム1枚に収まらない程に。初期の集大成ともいえる「DOUBLE PLATINUM」(最初に聴くならここからが手っ取り早い!)以降にも "I Was Made For Lovin' You" といったトップ10ヒット、80年代にも "I Love It Loud", "Lick It Up", "Heaven's On Fire", "Tears Are Falling", "Crazy, Crazy Night", "Forever"といった名曲が目白押しだし、90年代の「REVENGE」アルバムにもポップでハードな名曲が沢山あります。が、残念ながら96~97年のリユニオンツアーではこれらの楽曲は演奏される事もなく、ひたすら「ALIVE」~「ALIVE 2」をイメージさせる『メイク時代の』オンパレードでした。辛うじて "I Was Made For Lovin' You" が披露される日があったり、それ以外だとエースのソロアルバムからの大ヒット曲 "New York Groove" が毎回演奏されるくらいでした。確かにこれでも往年のファンやまだ彼等を知らなかった初心者でも楽しめることでしょう。が、あくまで彼等を今まで支えてきたのは、僕ら20代半ばの中堅ファンなのですよ! 80年代のノーメイク時代、L.A.メタルブームに便乗してメタル路線に鞍替えしても、健気に着いていき、レコードを買い、来日を懇願したのはこの僕らの世代なんですよ! そういう意味で初めて観た1995年1月のライヴは新旧オンパレードで、例えジーンがインフルエンザで声が出なくても僕は非常に楽しんだものです。そう、例え2日間同じ内容でも。(笑)そういう『80年代以降のKISSアーミー』達に上手く答えたアルバム、それが「PSYCHO CIRCUS」なのです。

もうひとつ、その時代の名曲達をこのラインアップで今後演奏する機会がなくなった今、もっともがっかりしているのは何を隠そう、当の本人(この場合、ポールとジーンね)なのかもしれません。演奏したい、でもイメージを大切にしなくてはいけない(「あくまで70年代にこだわる」「メイクして80~90年代の演奏をしてはいけない」というイメージ)、だけど沢山の名曲が可哀想、けれどエースやピーターが演奏するには高度な技術を要する演奏が殆どだし‥‥こうしたジレンマの中、出来上がった楽曲郡はとても『「DESTROYER」や「LOVE GUN」のような作風』のアルバムではありませんでした。辛うじて、楽曲のバリエーションが「DESTROYER」的とも言えなくはないですが‥‥1曲目の "Psycho Circus" から全開で80年代の作風だし。(笑)続くジーン作曲の "Within" なんて「CARNIVAL OF SOULS」用に書いた曲だって言われても不思議じゃないし、エースの唄う "Into The Void" は「LOVE GUN」に入ってても何ら違和感はないし、ピーターのソロ "I Finally Found My Way" なんて名曲 "Beth" の焼き直しだし、ポールがこれを唄えば絶対に80年代風になるはずだし‥‥つまり彼等(ポールとジーン)は新曲に80~90年代の作風を生かし、敢えて70年代にこだわらずに『集大成的な作品』に仕上げた訳です。その為にはソングライターとしてボブ・エズリンの力を借り、プロデューサーにはこの手のロックをやらせたら右に出る者はいないっていうブルース・フェアバーンを迎え入れた訳です。実際、昨年末から始まった最新ツアーでは上に挙げた楽曲が演奏されているみたいだし。現在のエースやピーターの年齢/演奏力を考えた場合(ポールやジーンのように20年以上最前線にいた人とは明らかに違う)こうする事が最善策だったのです。まぁこれは僕の想像でしかありませんが。

ジーンは「PSYCHO CIRCUS」の制作にあたり、「この顔ぶれでアルバムを作るとなれば、それはKISS史上最高のものにしなければならない」というコメントを残しています。『KISS史上最高のもの』つまりそれは、『KISSのエキスを凝縮した集大成的作品』ということだったのでしょうか? さて、比較ということになると非常に難しいです‥‥だって「PSYCHO CIRCUS」は最初から最後まで全力で作られたアルバムだったけど、少なくとも「CARNIVAL OF SOULS」は途中でさじを投げられた作品なわけですからねぇ?

ただ、これだけは言えます。まずメンバーが変われば作風も変わる。次に時代背景。僕は以前、某雑誌にKISSで投稿したことがあるのですが(もちろんボツ。その原稿が残ってたら、そのうちにアップしますね?/笑)そこで彼等を『時代と添い寝する男達』と表現しました。つまり、変わり身が早い、嗅覚が冴えている(年齢の割に/笑)、商売上手だと。90年代前半は明らかに『TOO MUCHな音楽』が受けた時代です。ある意味彼等のような歴史のあるバンドがこういう事をするにはリスクがありすぎます。それでもやるのがKISS。そこに商売の臭いがプンプンしようが「しょうがねぇなぁ~」となってしまうのが、このオヤジ達。(笑)常に時代に追いつこうとする彼等が、メイクアップすることでとうとう時代に追いついてしまったのです。そう、幸か不幸か。(笑)こうなった以上、今までのイメージは捨てなければ(封印しなければ)ならない、その為には既に完成しているアルバムだって犠牲にする、今売れるのはあくまで『70年代風』なのだから。でも、元は取らなきゃね?って事で波が引きつつある時点で「CARNIVAL OF SOULS」発表。ファンの度胆を抜く。と同時に「今のメンバーでも新作作るよ!」とさり気なくアピール。(笑)で、完成した作品は過去の集大成的作品を今のメンバーでやるというあざとさ。素晴らしい、計算され尽くされている。

そう、これって今に始まった事じゃないです。彼等は70年代からこういう計算尽くの戦略を立ててきた『前科者』なんですから。(笑)4人同時にソロアルバムリリースとか、メイクを取るような予感を臭わせるアルバムタイトルや、実際にメイクを取ってしまったりとか‥‥確かにエリック・カー(ピーター脱退後加入した2代目ドラマー。癌の為に91年11月24日亡くなる。その後任がエリック・シンガー)を失うというアクシデントはあったものの、常に彼等は時代を読んで戦略を立ててきたバンドなんだということは、20年以上も前から何ら変わっていないのです! 最初に述べた「いつになってもKISSはKISSのまま」とは、こういう事なのです。そして、未だに快く騙され続ける僕達‥‥「しょ~がねぇなぁ~」と口にしながらも、心の底ではワクワクして仕方ない、そういうバンドなんですよ、KISSって。いくら僕らが歳を重ねようが、童心を忘れさせない。きっと今の若い音楽ファンには「子供騙し」としか見えないでしょうが、ロックって本来そういうものでしょ!?(笑)あら、最後はおいらが開き直っちゃったよ、オイ。



▼KISS『PSYCHO CIRCUS』
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投稿: 1999 07 10 04:25 午前 [1998年の作品, KISS] | 固定リンク

1999/01/31

hide with Spread Beaver『ja,Zoo』(1988)

  本来なら99年7月には発売されていたこの「ja,Zoo」は、4月の時点で9月以降に発売延期になった。理由はレコーディングの遅れだそうだ。この頃完成していた曲には "Rocket Dive", "Doubt", "Pink Spider", "ever free" のシングル4曲の他に "Leather Face" と "Bleeding" の2曲も完成していたそうだ。これは当時のインタビューなどで確認できり。この時点で6曲しか完成していなかったというのが現実で、やはりこの倍近い曲が必要だったのだろう。しかし、11月にとうとうリリースされたアルバムには10曲、インストが2曲なので、実質的な新曲は2曲のみだ。しかもデモ音源を元に製作された楽曲。決してhideが望んだ形とは言えないだろうが、世に出たこと自体が奇跡みたいなものだろう。

  前にどこかの掲示板で俺はこのアルバムを「中途半端」と書いた。それは「もし生きてたら、もっと曲が入ったろうに、もっと長い作品になったろうに」という意味だった。(勿論長ければ良い作品か?とも思うが)やはり「PSYENCE」が好きだったから、短く感じたんだろう。前作は16曲入りで歌入りが12曲だったし。完璧な「完成品」を聴きたかったという我儘な欲求がリリース当時あったのは事実。ところが‥‥逆に10曲で正解だった、と最近では思うようになった。MDに楽曲部分のみ(最後のエキストラ・トラックを省く)落とすとこのアルバム、40分に満たない。逆に聴きやすい、短くて。考えてみれば、最近のアルバムって長すぎる。俺みたいに通勤時が音楽聴く時間の殆どを占めてしまう人間にとっては、長いと全部通して聴けない事が多い。大体片道40分。そう、この「Ja,Zoo」ってアルバムは正にジャストフィットしている。これくらいが丁度いい。古くからの名作も大体40~50分の作品が殆どだ。もっともその当時の技術では難しかったというのもまた事実。けれど‥‥長くても心に残らない作品より、短いながらも心に訴えかける、何度でも聴ける作品の方が誰だっていいに決まってる。

  音楽的な話を。知り合いの30代の方が言ってたのだが、俺が以前カラオケで hideの曲を唄った時、彼は「アルバム聴いて思ったんだけど、hideの音楽聴くと落ち着くんだよねぇ? 何だか昔、自分が聴いてきた歌謡曲とか洋楽‥‥KISSとかCHEAP TRICKみたいなバンドを思い出すんだよ。多分、彼と同世代だから聴いてきたものは一緒だろうから、だからなんだろうね?」と話してくれた。hide自身同じようなことをインタビューで言っていたことを知った時、ふとその彼の事を思い出した。

  以下はrockin'on JAPAN '98年6月号に掲載された、同年4月7日にロスにて行われた彼へのインタビューからの抜粋だ。

(インタビュアー、今回のアルバムのコンセプト・方向性について問うと)
「あのー、ほんと超仮タイトルがあるんですけど、『日本』ですね。(以下中略)~日本と動物園をくっつけた『JA-ZOO』っていう造語を作ったのね。そこにインスパイアされたりとか指針になったりとかしてるっつう。zilchやっててずっと英語の歌ばっかり歌ってたんだけど、僕が曲作って行くから仮歌は全部日本語なのね。で、メンバーに俺の日本語の詞を聴いて(英語)詞を書く奴がいるんだけど、どっち歌ってもあんま変わんないのね。そういうことから『日本語って素晴らしい!』とか『もしかしたら日本語ってこういうヘヴィーなロックに一番合うんじゃねえかなぁ』って思ったりとか。だからそういうところもありの日本語だったり日本だったり。あと、アメリカ、アフリカとかって似たり寄ったりのチャートだけど、日本だけ絶対的に違うチャートを持ってる国じゃない? そこが面白いなぁと思って。」

(oasisが世界中で1位の中、日本だけglobeが1位みたいな?)
「そうそうそうそう。なんかそれがカッコいいなぁとか思ってたりして(笑)。あと、zilchで一緒にやってる奴は歳が5つとか3つぐらいしか違わないんで、今好きなものとか昔好きなものとか結構一緒だったりするから俺のロックっていう部分はわかるんだけど、でも歌謡曲っていう部分は絶対にわかんないじゃない? 日本にいる時はわりと洋楽コンプレックスとかって言うけど、逆に『これ凄え強い武器!』とかって思ったりしたのね。そういうことかな。」

  多分、きっとこれがhideが一般の普通の人にも、洋楽オンリーの人にも受け入れられる理由なのだと思うが、如何だろうか? 事実そのzilchも、NINE INCH NAILSやMARILYN MANSONなどと同じ枠の中に入れられるのに、他のものとは違う独自性がある‥‥それがhideの持つ「メロディーセンス」なのだろう。あれは外国人には絶対に出せないものだ。

  結局、この「Ja,Zoo」ってアルバムはチャート上でも成功し、100万枚以上のセールスを記録した。もしhideの死の直後にこの作品がリリースされていたら‥‥恐らくこの2倍近いセールスを記録したのだろう。正直な話、そうならないで良かったと思ってる。もしそんなことになったら、尾崎豊の二の舞いだし、きっとこんなに素晴らしい作品も早く忘れ去られていたかもしれない。半年以上間が空いたから、みんな冷静に受け止めることができたのだろう。いや、ファンはまだ冷静に受け取れてないのかもしれないが‥‥少なくとも俺達「音楽ファン」は、彼の最後の作品をちゃんと受け止めたぞ!

  イメージや既成概念・先入観が邪魔をして、作品への本当の評価ができない場合がある。またそこまで辿り着かず、作品に触れることにも嫌悪感を示す人もいる。もしhideに対してこういう感情があるのなら、それはとても不幸なことだと思う。だって邦楽史上に残る名盤をみすみす見逃すことになるのだから‥‥。



▼hide with Spread Beaver『ja,Zoo』
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投稿: 1999 01 31 01:24 午前 [1998年の作品, hide] | 固定リンク

1998/12/21

METALLICA『GARAGE INC.』(1998)

さて、今回はこの問題作(?)を取り上げたいと思います。まず作品に触れる前に、この『GARAGE INC.』に至る経緯を俺の言葉で説明させて下さい。何故俺が彼らを「好きでなくなった」のか、そしてこの新作で何を「再発見」したのか、全てを知るにはここから始めなければならないのです。

90年代に入ってからのMETALLICAの変化についていけないオールド・ファンはこのサイトをご覧の人にも多いと思うけど、俺に関して言うと、1991年の『METALLICA』(通称「ブラック・アルバム」)はついていけた。というよりも、このアルバムは名作だと今でも思ってます。確かに80年代の『RIDE THE LIGHTNING』や『MASTER OF PUPPETS』と比べると別のバンドの音だけど、これは1st『KILL'EM ALL』発表前後から繰り返してきたメンバー・チェンジ(デイヴ・ムステイン→カーク・ハメット、クリフ・バートン→ジェイソン・ニューステッド)が多少なりとも影響してるのでは? 少なくとも1stや2ndの楽曲にはデイヴがタッチした楽曲が多いし、3rdまでの楽曲と『…AND JUSTICE FOR ALL』の一部には、亡くなったクリフが中心となってソングライティング(特に作詞面)を行ってきたと聞くし。つまり4thでネタが尽きた(悪い言い方ですね)彼らは、ジェイソンという新しい血を交え、『…AND JUSTICE FOR ALL』から3年、クリフの死から5年かけて新しい「音」を手に入れたのです。確かに『METALLICA』アルバムには当時台頭してきたシアトル勢/オルタナ勢の影響が多少なりとも見え隠れするけど、それでも“METALLICAの音”を鳴らしているし。しかし不幸なことにこのアルバムが、その後のミュージックシーン及びMETALLICA自身を変えてしまったのです。

1991~92年というのは、その後のミュージックシーンをガラリと変えてしまった、歴史的名盤が数多くリリースされています。NIRVANA『NEVER MIND』、PEARL JAM『TEN』、PANTERA『VALGAR DISPLAY OF POWER』、そして『METALLICA』。80年代中盤から続いていたメタル・バブルに終止符を打ったのが、この4枚ではないかと今でも確信しています。否、今だからこそ言えるのかもしれないですね。オルタナ/ガレージ勢はNIRVANAやPEARL JAMを目指し、多くのメタルバンドはPANTERA風なギターサウンドを模写し、METALLICAみたいなミドル・テンポの楽曲ばかりの退屈なアルバムを量産。最近までこの傾向は続いてました。多くのバンドが上の4枚を模写しようとして失敗し、消えていった。しかし、良い面もない訳ではありません。彼らの成功によって、数多くのへヴィロックバンドがメインストリームにのし上がってきました。NINE INCH NAILSやRAGE AGAINST THE MACHINE、KORN、TOOL、MARILYN MANSON……ある意味、RADIOHEADのアメリカでの成功もこの恩恵を受けているのかもしれませんね?(事実、RADIOHEADは数多くのヘヴィロック・バンドに好かれているし。ANTHRAXやSLAYER、METALLICAなど)

このアルバムまでは常に「ジェネレーション・リーダー」だったMETALLICA。しかし、不幸はこの5年後に起こるのです。1996年の『LOAD』。80分近い大作。しかし……5年という月日は長すぎました。ラーズ・ウルリッヒ曰く「この5年という月日はあまりに大きい。1991年に俺達がアルバムをリリースした頃は、まだカート・コバーンはアンダーグラウンドの路地にいたよ」と。

このアルバムで彼らがとった方法。それは「ジェネレーション・フォロワー」に成り下がることでした(少なくとも、僕はこう感じた)。前作リリース後、約3年続いたツアー。その後1年の休暇をとり、再び1年かけて作品作り……なのに提示された楽曲郡は、中途半端なものばかりだった。全てが「~風」と特定のバンド名が思い浮かびそうな2流の、へヴィとも言い難い楽曲。酷いものになると、前作のヒット曲の焼き直し的ナンバーまである始末。そして当時のインタビューでの、へヴィメタルへのネガティヴな発言……「俺達は、もうメタルバンドと呼べないよ。そう、“メタリカ”ってジャンルの音楽をやってると思ってくれ」……こういう発言をして消えていった、多くの80年代のバンド達を忘れたのかい、君達は?

余談ですが、実はこの『LOAD』がここ日本で最も好セールスを記録した作品なのです。1996年当時で約20万枚を越えたそう。これはメタル勢としては異例の記録。それより上となると、ロック勢でもAEROSMITHやOASISクラスになるらしい。それだけこのアルバムが、メタルファン以外の一般層にもアピールしたということなのだろうけど……車のCMに「Until It Sleeps」が使われたのも、ヒットに影響したそうだし。確かに良い曲だけど。

続いて翌1997年には、早くも新作『RELOAD』をリリース。前作レコーディング時にストックされた楽曲を全てここで使い切る。前作で言われた「速い曲がない」という苦言を参考にしたのかどうかは知らないけど、『RELOAD』には速めの曲が数曲混じっている。とはいっても、ここではオールドファンが言う「速い曲」ではなく、一般的に「速い曲」。正直に言います。前作とどっちが好きか?と問われれば……トータル面では『RELOAD』だけど、楽曲の粒・実験度では『LOAD』に軍配を挙げたい。当初、2枚組としてリリースされる予定だったこの2枚だけど、そういうことをするくらいなら、良質の曲だけを1枚にまとめて欲しかった。実際、俺はMDに落とす際にそうしたけど。

この2作で、俺は完全に彼らから離れた。初来日から毎回足を運んだライヴにも90年代に入ってから行っていないし。アティチュードの変化を上で述べたけど、変わってしまったのはそれだけではなかったのです。彼らの、ライヴへの接し方も『METALLICA』アルバム以降、変わってきたのは確か。それは明らかに「音」に出ているし。ライヴアルバムとビデオがセットになったボックスセット『LIVE SHIT…』を聴く機会があったら、是非'88年のライヴと最新のライヴとを聴き比べて欲しいです。明らかに違うのです、出す「音」が……うまく口では説明できないけど。良く言えば「演奏が上手くなった」、悪く言えば「タイトさがなくなった/ルーズになった」。こればかりは個人の感覚だから、「へっ、そんな事ないでしょ?」と言われてしまえばそれまでだけど。

さて、ここからがやっと新作のレヴュー。個人的に言えば、METALLICAというバンドは自己紹介でも書いているとおり、「俺の人生を変えてしまった」バンドなのです。そのバンドの落ちぶれていく姿だけは見たくない。だからこの『GARAGE INC.』に対しても慎重に接してきました。

まず対象になるのがDISC-1の新録の方。選曲のセンス……90年代、特にここ2作の作風を考えれば、納得のいく選曲。逆に、今更DIAMOND HEADをやるあたりに作為を感じた。意外だったのは、MERCYFUL FATEとTHIN LIZZY。METALLICAがDISCHARGEをやるのも意外だった(DISCHARGEといえば、ANTHRAXのオハコでしょう!)。

実際に聴いてみた感触。音は90年代の彼らそのもの。オリジナルアルバムと同じプロダクションでレコーディングされている。ちょっと残念。何故なら……『GARAGE~』と名のつく以上、『THE $5.98 E.P.- GARAGE DAYS RE-REVISITED』と同様に一発録り、もしくは「NON-PRODUCED」とか言って欲しかったのだ。この名前を使う以上は、オールドファンはそこに拘ると思う。でも、正式なアルバムとして出す以上、今の彼らはそれを許さないのだろう。完璧主義……ラーズらしい。楽曲は殆どが完コピに近い。が、「Whiskey In The Jar」みたいに完全にオリジナルと化してる曲もあるし、「Sabbra Cadabra」や「MERCYFUL FATE」みたいにメドレー形式になってる曲もある。かなり考えて作られてる。遊びで作った以前のカバー集と違い、今回は正式なアルバムと同等の作品のようだ(実際、「Turn The Page」のビデオクリップまで作られてるし)。

正直な感想……カッコイイ、と思った。いや、素直に。METALLICAの新作聴いて、素直に「カッコイイ」と思えたのはほぼ10年振り。1曲目の「Free Speech For The Dumb」のイントロのギターでやられた! そして「It's Electric」! 「今更DIAMOND HEAD」と馬鹿にしていたが、さすがMETALLICA、やっぱりこういう曲やらしたら上手いわ。でも次の「Sabbra Cadabra」は蛇足かな? だって、ネタばらしでしょう、「2×4」の。中盤の「National Acrobat」に移ってからがカッコイイ。次、「Turn The Page」。これ、彼らのオリジナル新曲と言われても違和感がない位、ハマってる。この辺は『LOAD』~『RELOAD』路線だね。

「Die Die My Darling」、このアルバムで1番好き! MISFITSも既に3回目のカバーだけど、今この曲を選んだのは正解。もし10年前にやってたら、似合ってなかったと思う。6曲目「Loverman」。ニック・ヶイヴのカバー。これも『LOAD』~『RELOAD』路線だけど、俺にとってはちょっと退屈。1曲だけでよかった。さぁ、次はこのアルバム最大の見せ場、「MERCYFUL FATE」メドレー! これ、これなのですよ! 俺が好きになったMETALLICAは! このタイトさが最近の作品に欠けていたのだと思うのだけど、如何だろう? 最近の作品から入った若いファンには解らないと思うけど。確かにこのメドレーは数曲を1つにまとめているわけだけど、少なくとも初期のMETALLICAにはこういう曲が多かったような気がする。つまり、転調・展開の激しい楽曲が。今だから言うが、『METALLICA』アルバムを初めて聴いたとき、1曲目の「Enter Sandman」イントロのアルペジオを聴いて、「いつ展開するんだ? いつ速くなるんだ?」と期待したのだが。そうじゃありませんでした、オールドファンの皆さん?

8曲目「Astronomy」って選曲はどうなのかなぁ? 彼ら的に言えば「Godzilla」あたりが一番ハマルと思うのだけど。次が問題のTHIN LIZZYのカバー、「Whiskey In The Jar」。これはやり過ぎ!って位にいじってる。でも、原曲のイメージは残しつつ、彼ららしく「ドカドカうるさい」ヴァージョンになってる。10曲目「Tuesday's Gone」はアンプラグド・ライブから。ゲストにALICE IN CHAINSのメンバーも参加してるけど、まぁご愛嬌といった所か? ライブではやって欲しくないけど。そして最後がDISCHARGEの「The More I See」。2曲もやるんだ、と思った。何を意図してるのかは知らないけど。多分、SLAYERが数年前にハードコア/パンクのカバーアルバム出したから、それに対する返答かも?……なんてね。

長くなったけど、このアルバム、大好きだ。購入から約1ヶ月、今でもよく聴いてる。あえてDISC-2の内容には触れなかったけど、ここでこの2枚を比べても意味がないと思う。最初通して聴いたときは、明らかに「2枚の間にあるもの」が見え隠れしていた。それは、今の彼らが失ったもの、そして今の彼らが得たものだった。それをここで書くのはやめにしよう。何故なら、2000年に活動再開するというMETALLICAに期待しているから。この『GARAGE INC.』でこの路線(『METALLICA』~『LOAD』~『RELOAD』)はひとまず落ち着くそうだ。'80年代の彼らは攻撃の10年。90年代は成長・円熟・実験の10年。そして2000年からの10年(=Decade)にはどういう「音」を聴かせてくれるのだろう? このカバー集を聴く限りでは、まだまだMETALLICAは終わっていない。そう思いたい。



▼METALLICA『GARAGE INC.』
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投稿: 1998 12 21 04:41 午前 [1998年の作品, Metallica] | 固定リンク

1998/12/06

MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998)

リッチーを欠いた3人での最初のアルバム「EVERYTHING MUST GO」が初の全英第1位、そして英国のレコード大賞とも言える「BRIT AWARDS」で、「ベスト・ブリティッシュ・アーティスト」と「ベスト・アルバム」を受賞し、それまでの「英国の嫌われ者」的ポジションから一気に逆転し、「国民的バンド」へと祭り上げられてしまったマニックス。その成功を更に後押しする結果となったのが、この通算5枚目のアルバム「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」だ。当然ながら、このアルバムも1位を獲得し、更には初のナンバー1シングル"If You Tolerate This Your Children Will Be Next"まで生み出してしまうのである。そして'99年2月には実に5年振りの再来日が実現し、ここ暫く日本での人気は低調気味だったが、一気に巻き返すこととなった。

リリース前の情報として、雑誌インタビューで「前作の延長」というようなことをメンバーが言ってたので、正直不安がよぎった。「また日和ってしまうのか」‥‥リッチーを欠いたマニックスは、このままパンク精神を捨て、QUEENやSTATUS QUEのような道を進むのか、と。

しかし、いざ手にしたアルバムは、そういう不安をも打ち消すような、およそマニックスのアルバムとは信じがたい美しいものだった。これを前にしたら、もう何も言えなくなってしまった。それだけ個々の楽曲の完成度は素晴らしいし、空気感もウェールズの澄み切った空を想像させるものだった。

前作同様、青を基調としたジャケット。果てしなく広大な大地に、果てしなく青い空。そこに佇む3人。かのGENESISのアルバムに「そして3人が残った‥‥」というタイトルがあるが、正にそれを思い出させるようなジャケット。特に空に向かって何か叫びだしそうなジェームズ‥‥非常に印象的だ。この「青」が、今回のアルバムの全てを物語っているような気がする。

アルバムを1回通して聴いた時の、あの何とも言えない気持ち‥‥それまでどこかしらにあった居心地の悪さは、ここには存在しない。もしかしたら、それが「リッチーの色」だったのかもしれない。前作は残されたリッチーの詞を使って何曲か作っているが、今回からは白紙から‥‥ゼロからのスタート‥‥これが新作を聴いたときに思い浮かべた、第一印象。決して「今までをなかったことにしよう」というのではなく、「今までを踏まえたうえで、俺達は大人になっていく」的な決意表明にも受け取れた。それは前作以上に壮大な楽曲、シンプルになった歌詞からも伺えるだろう。

「これが俺自身の真実ってやつさ。さぁ、お前の話を聞かせてくれよ」と優しく問いかけるように、アルバムは"The Everlasting"からスタートする。それまでの威圧的な問いかけではなく、優しく問いかけることによって、更に重みを増す‥‥これが新しいマニックスの武器なのだ。リッチー不在の3年を経て、彼らは一回りも二回りも大きく成長したのだ。

そして、何よりも大きく成長しているのがジェームズのヴォーカル。新作をレビューしている雑誌に「ジェームズの“叫び”がなくなって残念」という声があったが、俺はそう思わない。ここでもしっかり叫んでいるのだ、ジェームズは。ただ、前作までにあった「尖ったもの」が薄らいだだけなのだ。先にも書いたように、「優しく問いかけることによって、更に重みを増す」手法。これが今のジェームズの叫びなのだ。例えて言うなら、前作までを「ロック的な叫び」、新作を「よりソウルフルな叫び」とすると、どうだろう? 正直、ここまで彼のヴォーカルに胸を打たれるとは思ってもみなかった。そこまでシンガーとして成長したのだなぁ、と感動すらした。

こう言い切ってしまったら、ファンの方に怒られそうだが、1~3枚目を「第1期」とすると、前作からが「第2期」ということになるのだろうが、俺は新作からを「純然たる第2期」と呼びたい。前作は、残されたマテリアルを元に組み立てられたことや、ある種「作る義務感」を感じながら作ったのでは?という疑問から、勝手に「第2期に移るために、必要だった過渡期」と呼ばせてもらう。当然、決して悪い意味はない、「過渡期」という言葉には。

ギターサウンドもこれまで以上に凝っている。前作ではこれまで程ギターに惹かれなかったのだが、新作はマジでカッコイイフレーズやソロを連発する。落ち着いた中にも激しさがある‥‥多分、「事故」から時間を置いて、より自分自身を出すことに自信が持てたのだろう。特に"The Everlasting" は詞も、メロディーも、アコギのアルペジオも、ギターソロも、ヴォーカルも非の打ち所がない傑作だ。「1曲目にバラード?」と最初は思ったものだが、いざ聴き終えてみれば、ただ涙するばかり。間違いなく、今年の俺の中でのベスト・トラック。羨ましいよ、こんな曲書けて。この曲が1stシングルだとばかり思ってたくらい。

前作のツアーから、3人+サポートのキーボーディストが参加しているので、ステージ上でのギターの「音の厚みの問題」は解消されているようだ。でもビデオでライブの様子を観たが、結構ジェームズが大変だった。前作はいろんなギターフレーズを重ねてる曲が多いからから、(恐らくリッチーのパートを想定してレコーディングしたのでは?)どれを弾くかで結構曲の印象が変わってくるし。ところが今回のギターは、なかなかシンプルなものが多い。その上、キーボードから始まる曲も多々ある。曲作りの時点からキーボーディストは参加していたようなので、こういう形になったようだが、新しいマニックスを提示するためには必要な手法だったのだと思う。決してリッチーのことを忘れたわけじゃない。だって今作も必ず「ギターが2本」入ってる曲が多いし‥‥今更マニックスに対して「ギターバンド云々」なんて語る人もいないだろうし。むしろ、楽曲で勝負するバンドになったのだ、彼らは。リッチーという「精神的支柱」を欠いた今となっては、こういう道に進まざるを得ないのも、致し方ない。

とにかく、どれだけページがあっても足らない位、絶賛に値するアルバムだと、自信をもってお薦めする。事実、数名の友人に薦めたが、全員から「すっげ~良かったよ!!」と絶賛の嵐だ。また、かなりの音楽通からも「マニックスの新譜にはビックリしたよ!いいねぇ、ライブ行きたいねぇ」との便りも届いた。これまでの「ロック馬鹿」的イメージを完全に覆した、恐るべき名盤。それがこの「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」なのだ。



▼MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』
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投稿: 1998 12 06 10:08 午後 [1998年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク