カテゴリー「1998年の作品」の51件の記事

2019年5月 6日 (月)

THERAPY?『SEMI-DETACHED』(1998)

1998年3月(日本では4月)に発売された、THERAPY?の4thフルアルバム。実験的な作風の前作『INFERNAL LOVE』(1995年)にチェロでゲスト参加していたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)が、本作からギター&チェロで正式参加。新たに4人編成のバンドとして再スタートを切ることになりました。

プロデューサーは名作『TROUBLEGUM』(1994年)を手がけたクリス・シェルドンが再び担当。サウンドのタッチ的には同作ほど冷たさはないものの、『INFERNAL LOVE』で落胆したファンを再び納得させるだけの“あの”テイストは若干復調しているように思います。

が、オープニングを飾る「Church Of Noise」には当時誰もが驚いたのではないでしょうか。メロディの“ひねくれているけどキャッチー”なところは従来のTHERAPY?らしいのですが、全体的に能天気さが漂っている。電話のプッシュ音をフィーチャーしていたり、エンディングのオルガンの牧歌的な音あったりと、とても『TROUBLEGUM』や『INFERNAL LOVE』と作ったバンドと同じものとは思えないほど。2曲目「Tightrope Walker」の曲調や、中盤に登場するツインリードも然り、ですよね。

かと思えば、THE WiLDHEARTSを彷彿とさせる疾走感の強いパワーポップ「Lonely, Cryin', Only」があったりと、メジャーキーのインパクトが強い楽曲がいくつか含まれており、最初に聴いたときは面食らったことを今でもよく覚えています。で、それら2曲がシングルカットされているという事実。ブリットポップも終わり、パンキッシュなバンドもひと段落したこのタイミングに彼らがどこへ向かおうとしていたのか、不安を感じずじはいられませんでした。

とはいえ、それ以外の楽曲は従来のTHERAPY?らしさを踏襲している。「Black Eye, Purple Sky」や「Born Too Soon」のダーク&ヘヴィさは前作までの彼らのまんまだし、「Stay Happy」あたりからは90年前後のオルタナティヴロックやグランジからの影響が見え隠れする。ああ、基本的にやりたいことは変わってないんだな……とここでちょっとだけ安心するわけです。

思えば『TROUBLEGUM』にも「Nowhere」のようなキャッチーでポップな楽曲は含まれていましたし、その路線を別のテイストで表現したと思えば先のメジャー路線も納得できるんですけど、いかんせんインパクトが強すぎた(笑)。しかも推し曲としてシングル化するわけですから、「今後そっちで行きたいの?」と勘違いしてしまったわけです。ごめんよ、アンディ・ケアンズ(Vo, G)。

確かに、もうここには『NURSE』(1992年)までの尖りきった彼らは存在しないのかもしれません。けど、要所要所にその鋭さは残されている。要は表現の仕方や整理の仕方が上手になったということなのでしょう。そういう意味では、『NURSE』以前の彼らとも地続きでつながっていることが理解できる、そんな集大成的な1枚が本作なのかもしれませんね。

あ、本作は国内サブスクリプションサービスでは聴くことができません。日本盤は廃盤状態ですが中古ショップをこまめに回れば見つけることができるはずなので、ぜひチェックしてみてください。

 


▼THERAPY?『SEMI-DETACHED』
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2019年1月18日 (金)

VAN HALEN『VAN HALEN III』(1998)

1998年3月にリリースされた、VAN HALEN通算11枚目のオリジナルアルバム。新曲を含む作品としてはデヴィッド・リー・ロスが復帰して制作した新曲2曲を含むベストアルバム『BEST OF VOLUME I』(1996年)以来1年半ぶりとなりますが、フルアルバムとしてはサミー・ヘイガー参加ラスト作となった『BALANCE』(1995年)以来まる3年ぶりのこと。「Without You」や「Fire In The Hole」のラジオヒット(後者は映画『リーサル・ウェポン4』にて使用)こそあったものの、アルバム自体はサミー加入後の『5150』(1986年)から4作続いた全米1位記録は途絶えてしまい、最高4位止まり。セールスもマルチプラチナムには程遠い50万枚程度で幕を下ろしています。

ちょうど1996〜7年頃はサミーの脱退やデイヴの復帰などで、フロントマンが落ち着かなかった不安定な時期。そんな中、バンドがシンガーとして選んだのはデイヴでもサミーでもない、“第3の男”ゲイリー・シェローンでした。ちょうどEXTREMEからヌーノ・ベッテンコート(G)が脱退し、こちらもバンドが傾いていたタイミング。そこでゲイリーがVAN HALENに移籍したことで、EXTREMEは一度自然消滅するのでした。

さて、タイプ的にはサミーよりもデイヴ寄りの、決して多彩さを持つ表現者ではないゲイリーですので、VAN HALENのサウンド的にも初期や『BEST OF VOLUME I』での新曲に近い方向性になるのかと思いきや、半分正解といったところでしょうか。初期っぽくはならず、『BEST OF VOLUME I』での新曲の延長線上。つまり、サミー時代の方向性の延長線上にある、従来の流れにある1枚なのです。また、サミーよりも陰なイメージの強いゲイリーの声/声質に合わせた曲作りがなされており、それもあってか若干ダークな印象も受けるアルバムでもあります。

ピアノとアコギからなるインスト「Neworld」を経てスタートするオープニングナンバー「Without You」こそ、前作『BALANCE』までの流れを汲むダイナミックなハードロックですが、続く「One I Want」には若干初期VAN HALENの香りも。かと思えば、非常にダークな「From Afar」や「Dirty Water Dog」があったり、新境地的なミディアムバラード「Once」もあり、バンドとして守りに入らず前進していることもアピールする。このへんは個人的にも好意的に受け入れています。

が、どの曲もコンパクトさに欠けるのもまた事実。インストの短尺曲以外は5分を下回る楽曲が皆無で、「Without You」は6分半、「Once」は7分半ですし、泣きのバラード「Year To The Day」は8分半もある。これは曲によってイントロが長かったり、曲中にギターソロや楽器隊のインタープレイが含まれていたりといろんな理由があるのですが、おそらくそれ以前との曲作りのスタンスの違いが大きいのかなと。明らかにジャムセッションの延長線上ですものね、このアルバム。シングルヒット量産型だった80年代後半から90年代前半の楽曲はもっとブラッシュアップされていたような気もするのですが、そこはボーカリストが変わったことによる意識の変化の表れなのかもしれません。

じゃあ、これだけソロのために時間が割かれているんだから、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)の華麗なプレイが楽しめるのか?と言われると、答えはイエスでもありノーでもあると。正直、そこまで印象に残るプレイは多くなく、70〜80年代の彼と比較したら衝撃度も低い。手癖っぽいフレーズも多いですし……そういう点においても、彼らのキャリアにおいて評価は低い部類に入る1枚と言えるでしょう。

実は本作、リリース当時に購入したあと、数回聴いたのみで放置。これを書くにあたって20年ぶりに引っ張り出したのですが、思っていたよりも良いと思えたことだけは書き残しておきます。それでも、12曲で65分は長すぎですけどね。



▼VAN HALEN『VAN HALEN III』
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2019年1月14日 (月)

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998)

1998年夏にリリースされた、AT THE DRIVE-INの2ndアルバム。続く3作目『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000年)がGrand Royalを通じてメジャー流通されたことで一気に知名度が増し、僕のようなにわかファンがそこで“これ1枚だけのバンド!”みたいな勘違いをしてしまいがちですが、いやいや、まったくそんなことはなく、この『IN/CASINO/OUT』の時点でそのオリジナリティはしっかり確立されていることに気づかされます。

僕自身、本作を聴いたのは『RELATIONSHIP OF COMMAND』発売からだいぶ遅れてのことですが、最初は『RELATIONSHIP OF COMMAND』にあったはちきれんばかりのエネルギーの塊がここにはないと、そこまでのめり込めなかったことをよく覚えています。が、実は本作『IN/CASINO/OUT』のほうがバランス感に優れていて、“コントロールされた爆発”を思う存分楽しめる1枚なのではないかと、あとになって気づくわけです。

ロス・ロビンソンが手がけた『RELATIONSHIP OF COMMAND』とは異なり、ここではFUDGE TUNNELやNAILBOMBなどで知られるアレックス・ニューポート(THE MARS VOLTABLOC PARTY、DEATH CAB FOR CUTIE)がプロデュースを担当。全体を覆う“熱に満ちているのにどこかヒンヤリとしている”感覚は、もともとこのバンドが持ち合わせている個性ではあるものの、アレックスはそこをより強化させることに成功したのではないかと。冷たいのにカラッとしたサウンドの質感と合わせ、本当に気持ちいい“音”を鳴らしているのですね。

それは、例えが正しいかわかりませんが、80年代前半までのU2が持っていた要素に近いものを感じます。ただ、AT THE DRIVE-INの場合はそれをよりモダンなオルタナティヴロックスタイルで鳴らそうとし、そこにオマー・ロドリゲス(G)の変態的ギターが加わることで独自なものへと昇華した。そして、次作ではそこにロス・ロビンソンの手が加わることで、もう誰にも追いつけないくらい特殊な存在へと急激に進化した。そう捉えることはできないでしょうか。

楽曲のスタイルには確実に“グランジ以降”で90年代的だし、中にはパワーポップ的な要素も見え隠れする。だけど、特別誰かに似ているわけでもない。そこがこのバンドの凄さなんだなと、リリースから20年経った今、改めて思うわけです。

AT THE DRIVE-INは昨年末に三度目の解散を発表してしまいましたが、もう役目はすべて果たしたのかな……最近のライブを観ると、特にそう思うこともあります。正しい幕の降ろし方だったのかもしれません。今は残されたこの名盤を聴きつつ、彼らに思いを馳せようかなと。



▼AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』
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2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年12月15日 (土)

SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』(1998)

1998年6月にリリースされた、SLAYER通算7枚目のオリジナルアルバム(カバーアルバム『UNDISPUTED ATTITUDE』を含めたら8枚目のスタジオアルバム)。トム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、ポール・ボスタフ(Dr)の布陣では2作目のオリジナル作となり、初の全米TOP10入り(8位)を記録した6thアルバム『DIVINE INTERVENTION』(1994年)と比べると最高31位と近作の中では低調で終わっています。

アルバムタイトル『DIABOLUS IN MUSICA』はラテン語の音楽用語で「音楽の中の悪魔」と呼ばれる不協和音から取られているとのこと(Wikipedia情報)。ジャケットの不安を掻き立てるホラー映画感といい、これまでの直接的な邪悪さとはちょっと異なる恐怖感が演出されているような気がします。

というのも本作、これまでの残虐性の高い無慈悲なスラッシュメタルとは一線を画する、当時流行し始めていたニューメタルやヘヴィロック、ラップメタル的なテイストが導入されているのです。引きずるようなヘヴィさにヒップホップ的な“跳ね感”が加わったことで従来のサウンドよりもモダンさが際立っていますが、そこはSLAYERのこと。要所要所で“らしさ”をしっかり演出しているのでちゃんと「SLAYER」のアルバムとして成立していますのでご安心を。

とはいえ、ここまでのキャリアを総括すると、やっぱり異色の1枚なんですよね。例えば『DIVINE INTERVENTION』がケリー・キングの楽曲中心だったのに対し、今作は全11曲10曲がジェフ・ハンネマンの楽曲(日本盤ボーナストラック除く)。音楽的には上に述べたとおりで、さらに邪悪さをこれまでとは違った形で表現するためにトム・アラヤのボーカルを機械的にエフェクトしたり、SLAYERとしては初めてダウンチューニング(C#)も導入したりしています。そのへんの実験的要素の強さが、従来の正統派スラッシュメタルスタイルを愛するハードコアなリスナーから敬遠される理由なのかもしれません。

今となってはこういうヘヴィさも新鮮ですし、これがあったから続く『GOD HATES US ALL』(2001年)を生み出すことができたと捉えることもできるでしょう。しかし、1998年当時はかなりショッキングな内容に感じたことを、今でも昨日のことのように覚えています。ジャケット同様に、その音からも(別の意味で)不安をかきたてられるとは。

でもね。下手なヘヴィロックバンドやニューメタルバンド以上にヘヴィですし、内容も充実している。オープニングの「Bitter Peace」やエンディングの「Point」の、モダンさとSLAYERらしさを掛け合わせた独自性は、今こそ再評価されるべきではないでしょうか。そこに関しては太鼓判を押しておきます。まあ僕が言うまでもないでしょうけどね。



▼SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』
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2018年12月10日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)

MANIC STREET PREACHERSが1998年9月にリリースした、通算5作目のスタジオアルバム『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』。同作のリリース20周年を記念して、2018年12月にCD 3枚組ボックスエディションとアナログ2枚組エディションが発売されました。どちらも新たにリマスタリングが施されておりますが、もともとダイナミックなバンドサウンドを堪能できる良作だったので、音質的にはそこまで大きく変化していないような気がします。

さて、このアルバムに関しては非常に個人的思い入れが強く、当ブログの前身サイトが20年前にスタートしたとき、最初に書いたディスクレビューが本作に関してでした。あそこには書いていませんが……要は、長年付き合った彼女と別れ話をしてる間、ずっと車の中で流れていたのがこのアルバムなんですよ(苦笑)。

……重い。重いでしょ?(笑)

そんなわけで、好きなアルバムではあるものの、聴いていると必要以上に感傷的な気持ちになってしまう。なので、一時期まったく手をつけられない時期もありました。作品の良し悪しとは全然関係ない理由なんですけどね。

あれから20年。それ以上にいろんなヘヴィな出来事があったり、こうやって音楽について趣味で書き連ねていたことが、いつの間にか仕事になっていたり。本当にいろんなことがありました。そう思うと、このアルバムの背景にある個人的な出来事がいかにちっぽけなことか。おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(笑)。

さてさて。このリマスター盤について書いていきましょうか。

前作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)での成功を踏まえた上で制作された本作は、ミディアム〜スロウナンバーを軸とした極上のメロディックロックアルバムです。『EVERYTHING MUST GO』には若干の歪さが残っており、そこがまたマニックスらしくて良かったのですが、本作ではそういった要素が完全に払拭され、非常に完成度の高い内容に仕上げられています。スロウナンバーが多いせいか、全13曲で63分というトータルランニングには多少過剰さを感じたものの、ぶっちゃけ捨て曲がないので有無を言わせぬまま最後まで聴かされてしまう。そんな“静なる暴力性”すら感じさせる傑作だと、今でも信じています。

が……。

このリマスター盤、昨年発売された『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)の10周年盤同様に、収録曲が一部差し替えられるという改悪が加えられています。日本のファンにとっては思い入れの強いであろう12曲目「Nobody Loved You」が、シングル「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」のカップリング曲およびカップリング曲集『LIPSTICK TRACES』(2003年)収録曲「Prologue To History」に変更されているのですよ! この曲自体は特に嫌いではないし、むしろ好きな部類に入る1曲ですが、どうしても「Nobody Loved You」のインパクトが強かっただけに、また終盤をドラマチックに盛り立てる上で重要な役割を果たすだけに、「Prologue To History」がラス前に置かれてそこから「S.Y.M.M.」へと続く構成がどうにも馴染めないのです。

何度か聴き返しました。なんなら、M11「Black Dog On My Shoulder」からM13「S.Y.M.M.」の3曲だけを何度か続けて聴き返したりもしました。が、どうしても「Prologue To History」だけ軽く聴こえてしまう。ミディアム〜スロウのメロウな楽曲中心とはいえ重厚さが全体を支配する構成だけに、やっぱり「Prologue To History」は浮くんですよ。だからこの曲をカップリングに回したんじゃなかったの? そうしてそんな気の迷いを見せる? 本当にこの改悪、理解に苦しみます(しかも、ストリーミングバージョンだと「S.Y.M.M.」のあとに「Nobody Loved You」が置かれているという。なんなのまったく!)。

ジャケットのアートワーク変更は全然いいんですよ。同じフォトセッションの中から、別テイクを選んでいるわけですから。新しいアートワークも嫌いじゃありません。ただ、安っぽくなってしまったのも事実。ああ、勿体ない。こんな傑作が……。

せっかくなのでCDのディスク2、ディスク3にも触れておきましょう。ディスク2は改変されたディスク1『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』の収録曲のホームデモ音源/スタジオデモ音源/ライブリハーサルデモ音源/テイク違いが、本編と同じ曲順で並べられています。完成バージョンとは異なるアレンジやテンポ感、特に「The Everlasting」のライブリハデモは嫌いじゃないなあ。「Nobody Loved You」が原曲よりもテンポが遅く、ヘヴィさが際立っている印象なのも良いなあ。まあ、こちらは完全にマニア向けですね。

ディスク3は1998〜99年にリリースされた本作からのシングルに収められたカップリング曲を1枚にまとめたもの。MASSIVE ATTACKやデヴィッド・ホルムス、デーモン・バクスター、STEALTH SONIC ORCHESTRA(APOLLO 440)、MOGWAICornelius、STEREOLABによるシングル表題曲のリミックス、アルバム未収録の「Montana/Autumn/78」「Black Holes For The Young」「Valley Boy」「Socialist Serenade」「Buildings For Dead People」といったオリジナル曲が楽しめます。THE CLASHのカバー「Train In Vain」などライブテイク以外のオリジナル曲とリミックスは網羅されているはずなので、当時シングルやカセットを集めるのに苦労した人にはありがたい1枚じゃないでしょうか。

僕にとっても、そして本サイトにとっても思い出の1枚なだけに、いろいろ厳しいことを連ねましたが、それでも本作の魅力は変わらない(と思いたい)。この20周年盤を聴いて興味を持った人は、ぜひオリジナルバージョンも聴いてみてください。もしかしたら、僕とまったく逆のリアクション(逆に「Nobody Loved You」が入っているほうを受け付けない)をするかもしれませんしね。



▼MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』
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2018年10月 6日 (土)

ROB ZOMBIE『HELLBILLY DELUXE』(1998)

1998年8月にリリースされた、WHITE ZOMBIEのフロントマンであるロブ・ゾンビの1stアルバム。1995年発売の『ASTRO CREEP: 2000』(1995年)を最後に、オリジナルアルバムの発売がなかったWHITE ZOMBIEはこの『HELLBILLY DELUXE』発売直後に解散発表。ロブは『ASTRO CREEP: 2000』で築き上げたスタイルを、ソロ活動で引き継ぐことになります。

当時のバンドメンバーは、WHITE ZOMBIE後期に参加したジョン・テンペスタ(Dr)、のちにオジー・オズボーンのバンドに加わるブラスコ(B)、そしてマイク・リッグス(G)という面々。プロデュースはスコット・ハンフリー(MOTLEY CRUEANDREW W.K.MONSTER MAGNETなど)が担当し、そういった繋がりからダニー・ローナー(NINE INCH NAILSMARILYN MANSONなど)やトミー・リー(MOTLEY CRUE)もゲスト参加しています。

聴けばわかるように、とにかくモダンなヘヴィロックナンバーをザクザクしたギターリフと適度なデジタル加工で表現しており、抑揚がないようで実はキャッチーというロブのメロディ/ボーカルラインと合わさることで不思議と親やすい仕上がり。これはWHITE ZOMBIE時代から引き継がれている重要な要素なのですが、ソロになってからバンド形態にこだわる必要もなくなったためか、そこの入っていきやすさがより増しているような気がします。

ヘヴィロックなのにキャッチーで聴きやすい。それってどうなの?と思われそうですが、それっておどろおどろしいMARILYN MANSONにも共通して言えることで、そのへんは彼らのルーツのひとつであるKISSアリス・クーパーあたりに通ずるものがあるのではないでしょうか。そういう意味では、僕はマンソンの時代に敏感なショックロックはアリス・クーパーの後継者、ロブ・ゾンビの良くも悪くも金太郎飴的スタイルはKISSの後継者だと思っているのですが、いかがでしょう?

一歩間違えばアングラなデジロック/インダストリアルメタルで括られてしまっても不思議じゃないのに、しっかりメジャーのど真ん中で活躍できるだけのポテンシャルも備わっている。しかも、1曲1曲が2〜3分台と非常にコンパクトなのも好感が持てるポイント。トータルで38分程度というトータルランニングも古き良き時代のロックのスタンダードに通ずるものがあるし、しかもこのスタンス、現在まで見事に踏襲されている。最長でも『HELLBILLY DELUXE 2』(2010年)の46分ですから。最新作『THE ELECTRIC WARLOCK ACID WITCH SATANIC ORGY CELEBRATION DISPENSER』(2016年)に至っては過去最短の31分ですからね(笑)。恐れ入ります。

ソロキャリア20年を迎えた今、どの作品から手を出せばいいのか迷っている方。キャリア総括的なライブアルバムやWHITE ZOMBIE時代からソロまでを総括したベストアルバム『PAST, PRESENT & FUTURE』(2003年)も良いですが、まずはソロの原点でもある本作『HELLBILLY DELUXE』から聴くことをオススメします。一応キャリア的にも全米5位、300万枚以上を売り上げた最大のヒット作ですから。



▼ROB ZOMBIE『HELLBILLY DELUXE』
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2018年9月 9日 (日)

ELLIOTT SMITH『XO』(1998)

自分と誕生日が同じ(8月6日)こともあり、昔から親近感を持っていたエリオット・スミス。残念ながら2003年に自ら命を絶ってしまいましたが、彼が残した作品の数々は今も“後追いリスナー”含め多くのファンに愛され続けています。

本作は1998年8月にリリースされた、通算4作目のオリジナルアルバムにしてメジャー1作目のアルバム。前年に公開された映画『グッド・ウィル・ハンティング』に「Miss Misery」を提供し、この曲がアカデミー賞にノミネートされるなど、同年2月に発表された『EITHER/OR』(1997年)含め、エリオットはメジャー移籍前から高く評価されてきました。

そんな中発表された本作『XO』。バンドサウンドを取り入れたポップな楽曲も含まれているものの、ベースになるのはアコースティックギターで表現される内省的な世界観。美しいメロディラインや随所に登場するハーモニーは、確かにビートルズを彷彿とさせるものがあります。シングルカットされた「Baby Britain」なんてまさに中期ビートルズのそれでしょうし、多重録音を多用したスタイルはある種60年代後期のTHE BEACH BOYSにも通ずるものがあります。

かと思えば、アメリカの古き良き時代のカントリーやフォークもしっかり引き継いでおり、それを90年代的感覚でオルタナティヴロック風に昇華させている。ベックのようなエンタメ色を兼ね備えたシンガーソングライターとはまた異なる、この人にしか作り得ないサウンドスケープが終始展開されています。

「Independence Day」のようなモダンさもあれば、「Bled White」みたいにサイケデリック感を併せ持つロックナンバーもある。「Amity」なんてジョン・レノンだし、「A Question Mark」は中期ビートルズとグランジの融合だもん。悪いわけがない。自分は最初に聴いたのが本作だったので、エリオット・スミスといえばここで聴ける楽曲こそがすべてなんです。

リスナーによっては『EITHER/OR』のほうが優れていると断言するでしょうし、実際素晴らしいアルバムだと思います。が、思い入れでは本作なんですよね。このアルバムを制作した頃にはすでにうつ病だったエリオットですが、少なからずそういった病状もこの質感に影響を与えているのかもしれません。そこも含めて、彼を語る上ではやはり重要な1枚と言わざるを得ません。

なお、日本盤には先の「Miss Misery」がボーナストラックとして追加収録されているので、ぜひこちらを購入してみてはいかがでしょう。



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2018年9月 8日 (土)

BRYAN ADAMS『ON A DAY LIKE TODAY』(1998)

1998年10月発売の、ブライアン・アダムス通算8枚目のスタジオアルバム。プロデューサーにブライアン本人のほか、ボブ・ロック(METALLICAMOTLEY CRUEBON JOVIなど)、フィル・ソーナリー(元THE CURE、元JOHNNY HATES JAZZ。ナタリー・インブルーリアなどをプロデュース)、フィル・ウェスターン(バンクーバー出身のミュージシャン)と複数迎えて制作された意欲作です。

前作『18 TIL I DIE』(1996年)で“死ぬまで青春”を宣言したブライアン。実際、大ヒット作『RECKLESS』(1984年)以降の作品は『INTO THE FIRE』(1987年)を除き、ほぼすべて“死ぬまで青春”を地でいくスタイルを貫いてきました。が、この『ON A DAY LIKE TODAY』はそこから一転し、非常に内省的な作風を貫いています。

そう、上に挙げたボブ・ロックやフィル・ソーナリーといった大御所が携わっているのに、地味で静かなんです。思わず「どうした、何かあった? 疲れたの?」と聞きたくなるくらいに。

オープニングの「How Do Ya Feel Tonight」からして、声を張り上げることなく、囁くように歌うブライアン。それは続く「C'mon C'mon C'mon」やタイトルトラック「On A Day Like Today」まで変わらず、アコースティックベースのゆったりとしたミディアムテンポが続くわけです。

これ、1998年という時代性を考えると非常に納得いくと思うんですが、当時ブライアンが活動の基盤を置いていたのはカナダではなくイギリス。そう、OASISRADIOHEADといったバンドがメガヒットを飛ばしていたタイミングなんですね。それこそ、THE VERVEもそうだし、BLURもそう。なんて考えると、ブライアンがこのスタイルに挑んだとしても不思議ではないわけです。

ただ、個人的にはボブ・ロックとの組み合わせからBON JOVIの『KEEP THE FAITH』(1992年)的な作品を期待していたんですが……(苦笑)。

ミディアムテンポの5曲目「Fearless」あたりでようやくシャウトが飛び出したりするものの、彼らしい溌剌としたロックナンバーは11曲目「Before The Night Is Over」まで登場しません。続く「I Don't Wanna Live Forever」もアップテンポのポップロックですし、中盤には軽やかな「When You're Gone」(SPICE GIRLSのメラニー・Cとのデュエット曲)もありますが、こういったロックチューンはこの程度。あとはひたすら地味で、ひっそり楽しむのがお似合いな楽曲ばかり。『INTO THE FIRE』ともまた違った“大人の雰囲気”を漂わせていますが、10年周期でこういう作品って作りたくなるものなんですかね?

ここまでネガティブなことも書いてきましたが、ただアルバムのクオリティは非常に高いものだと思います。曲順にやや難あり(似たようなテンポが続く、アップテンポが終盤に固まっている、など)ですが、ブライアン・アダムスのバラードサイドが大好物というリスナーなら間違いなくハマる1枚だと思います。

ちなみに本作、アメリカでは最高103位と大コケ。本国カナダでは3位、イギリスでも過去2作の1位には及ばない11位止まり。ただ、イギリスでは「When You're Gone」が3位のヒットを記録しています。



▼BRYAN ADAMS『ON A DAY LIKE TODAY』
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2018年9月 7日 (金)

THE OFFSPRING『AMERICANA』(1998)

1998年11月にリリースされた、THE OFFSPRING通算5作目のスタジオアルバム。3rdアルバム『SMASH』(1994年)が全米4位、アメリカだけで600万枚を超え、全世界でトータル1000万枚を突破するセールスで、GREEN DAYとともに一躍トップバンドの仲間入りを果たしましたが、この『AMERICANA』もそれに匹敵する全米2位、アメリカのみで500万枚、全世界では1000万枚も売り上げるメガヒット作になりました。特に本作からは「Pretty Fly (For A White Guy)」(全米53位)、「Why Don't You Get A Job?」(同74位)というシングルヒットも生まれ、パンクの域を超えた国民的バンドへと登りつめたのでした。

日本で言うところのメロディック・ハードコア(いわゆるメロコア)的スタイルのバンドだった彼らですが、前作『IXNAY ON THE HOMBRE』(1997年)から引き続きデイヴ・ジャーデン(JANE'S ADDICTIONALICE IN CHAINSANTHRAXなど)をプロデューサーに起用した本作は、非常に芯の太いリズムとメタリックなバンドアレンジを取り入れたことで、メロディックパンクやポップパンクの枠をはみ出し、メタル寄りのリスナーにも親しみやすいサウンドに仕上げられています。

そこにメロコア特有のキャッチーなメロディが乗り、さらにHR/HMファンには馴染み深いDEF LEPPARD「Rock Of Ages」冒頭のセリフがサンプリングされた「Pretty Fly (For A White Guy)」があったりと、何かと入口がたくさん用意されているんですよね。

リフの刻み方やギターソロの運び、メロディラインは確かにメタルのそれとは異なるものの、似て非なるものとして楽しめるだけの“遊び”がたくさん用意されているし、「The Kids Aren't Alright」みたいな曲はIRON MAIDENライクで入っていきやすいのでは。それ以外の楽曲も適度に力が入っていたり、かと思えば抜けていたりと、L.A.メタル以降のバカロックが好きな人なら文句なしに楽しめると思うんですよ。

あと、メタルファンにはお約束の“スタンダード曲のカバー”も本作には含まれています。それがモーリス・アルバートの名曲「Feelings」のメロコアカバー。このドラマチックさはもともとメタルのそれなので、パンクならではの疾走感と合間ってより親しみやすくなっているはずです。

本作での大ヒットを機に、以降の彼らの作品はメタリックな色合いを常に備えたものになってるので(ボブ・ロックをプロデューサーに迎えたりしてるしね)、このアルバムを起点にいろいろ聴いてるのもいいかもしれません。



▼THE OFFSPRING『AMERICANA』
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