« METALLICA『GARAGE INC.』(1998) | トップページ | MANIC STREET PREACHERS@赤坂BLITZ(1999年2月7日) »

1999/01/31

hide with Spread Beaver『ja,Zoo』(1988)

  本来なら99年7月には発売されていたこの「ja,Zoo」は、4月の時点で9月以降に発売延期になった。理由はレコーディングの遅れだそうだ。この頃完成していた曲には "Rocket Dive", "Doubt", "Pink Spider", "ever free" のシングル4曲の他に "Leather Face" と "Bleeding" の2曲も完成していたそうだ。これは当時のインタビューなどで確認できり。この時点で6曲しか完成していなかったというのが現実で、やはりこの倍近い曲が必要だったのだろう。しかし、11月にとうとうリリースされたアルバムには10曲、インストが2曲なので、実質的な新曲は2曲のみだ。しかもデモ音源を元に製作された楽曲。決してhideが望んだ形とは言えないだろうが、世に出たこと自体が奇跡みたいなものだろう。

  前にどこかの掲示板で俺はこのアルバムを「中途半端」と書いた。それは「もし生きてたら、もっと曲が入ったろうに、もっと長い作品になったろうに」という意味だった。(勿論長ければ良い作品か?とも思うが)やはり「PSYENCE」が好きだったから、短く感じたんだろう。前作は16曲入りで歌入りが12曲だったし。完璧な「完成品」を聴きたかったという我儘な欲求がリリース当時あったのは事実。ところが‥‥逆に10曲で正解だった、と最近では思うようになった。MDに楽曲部分のみ(最後のエキストラ・トラックを省く)落とすとこのアルバム、40分に満たない。逆に聴きやすい、短くて。考えてみれば、最近のアルバムって長すぎる。俺みたいに通勤時が音楽聴く時間の殆どを占めてしまう人間にとっては、長いと全部通して聴けない事が多い。大体片道40分。そう、この「Ja,Zoo」ってアルバムは正にジャストフィットしている。これくらいが丁度いい。古くからの名作も大体40~50分の作品が殆どだ。もっともその当時の技術では難しかったというのもまた事実。けれど‥‥長くても心に残らない作品より、短いながらも心に訴えかける、何度でも聴ける作品の方が誰だっていいに決まってる。

  音楽的な話を。知り合いの30代の方が言ってたのだが、俺が以前カラオケで hideの曲を唄った時、彼は「アルバム聴いて思ったんだけど、hideの音楽聴くと落ち着くんだよねぇ? 何だか昔、自分が聴いてきた歌謡曲とか洋楽‥‥KISSとかCHEAP TRICKみたいなバンドを思い出すんだよ。多分、彼と同世代だから聴いてきたものは一緒だろうから、だからなんだろうね?」と話してくれた。hide自身同じようなことをインタビューで言っていたことを知った時、ふとその彼の事を思い出した。

  以下はrockin'on JAPAN '98年6月号に掲載された、同年4月7日にロスにて行われた彼へのインタビューからの抜粋だ。

(インタビュアー、今回のアルバムのコンセプト・方向性について問うと)
「あのー、ほんと超仮タイトルがあるんですけど、『日本』ですね。(以下中略)~日本と動物園をくっつけた『JA-ZOO』っていう造語を作ったのね。そこにインスパイアされたりとか指針になったりとかしてるっつう。zilchやっててずっと英語の歌ばっかり歌ってたんだけど、僕が曲作って行くから仮歌は全部日本語なのね。で、メンバーに俺の日本語の詞を聴いて(英語)詞を書く奴がいるんだけど、どっち歌ってもあんま変わんないのね。そういうことから『日本語って素晴らしい!』とか『もしかしたら日本語ってこういうヘヴィーなロックに一番合うんじゃねえかなぁ』って思ったりとか。だからそういうところもありの日本語だったり日本だったり。あと、アメリカ、アフリカとかって似たり寄ったりのチャートだけど、日本だけ絶対的に違うチャートを持ってる国じゃない? そこが面白いなぁと思って。」

(oasisが世界中で1位の中、日本だけglobeが1位みたいな?)
「そうそうそうそう。なんかそれがカッコいいなぁとか思ってたりして(笑)。あと、zilchで一緒にやってる奴は歳が5つとか3つぐらいしか違わないんで、今好きなものとか昔好きなものとか結構一緒だったりするから俺のロックっていう部分はわかるんだけど、でも歌謡曲っていう部分は絶対にわかんないじゃない? 日本にいる時はわりと洋楽コンプレックスとかって言うけど、逆に『これ凄え強い武器!』とかって思ったりしたのね。そういうことかな。」

  多分、きっとこれがhideが一般の普通の人にも、洋楽オンリーの人にも受け入れられる理由なのだと思うが、如何だろうか? 事実そのzilchも、NINE INCH NAILSやMARILYN MANSONなどと同じ枠の中に入れられるのに、他のものとは違う独自性がある‥‥それがhideの持つ「メロディーセンス」なのだろう。あれは外国人には絶対に出せないものだ。

  結局、この「Ja,Zoo」ってアルバムはチャート上でも成功し、100万枚以上のセールスを記録した。もしhideの死の直後にこの作品がリリースされていたら‥‥恐らくこの2倍近いセールスを記録したのだろう。正直な話、そうならないで良かったと思ってる。もしそんなことになったら、尾崎豊の二の舞いだし、きっとこんなに素晴らしい作品も早く忘れ去られていたかもしれない。半年以上間が空いたから、みんな冷静に受け止めることができたのだろう。いや、ファンはまだ冷静に受け取れてないのかもしれないが‥‥少なくとも俺達「音楽ファン」は、彼の最後の作品をちゃんと受け止めたぞ!

  イメージや既成概念・先入観が邪魔をして、作品への本当の評価ができない場合がある。またそこまで辿り着かず、作品に触れることにも嫌悪感を示す人もいる。もしhideに対してこういう感情があるのなら、それはとても不幸なことだと思う。だって邦楽史上に残る名盤をみすみす見逃すことになるのだから‥‥。



▼hide with Spread Beaver『ja,Zoo』
(amazon:国内盤CD

投稿: 1999 01 31 01:24 午前 [1998年の作品, hide] | 固定リンク