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1999/03/22

BLUR『13』(1999)

いろいろ擦った揉んだありましたが、ようやくこうしてアップする事ができました。発売以来約2週間が経ちましたが、今では毎日のように聴いてる作品ですし、胸を張って「名盤」とお薦めする事が出来ます。それに、これを書き上げる前に是非体験したかった「クラブで『13』の曲を聴くとどうなるか?」という事も先週末に体験できたので、それについても書けますしね?

というわけで、お待たせしました! ご心配おかけしましたが、いよいよBLURの新作「13」の登場です!

早くもあの問題作「無題アルバム」から2年が経ちました。その間、デーモンがコーネリアスやMASSIVE ATTACKのリミックスをやったり、グレアムのソロアルバムが出たりと、何かと話題は作っていたBLUR。ああいいう音楽性のアルバムを作った以上、次はどういう音で攻めるのかが心配されましたが‥‥これは思った以上に衝撃作です。根っからのファンの皆さんはどう思うか判りませんが、僕にとってはこれは衝撃作でした。勿論、いい意味でですが。

ある掲示板で、僕はこのアルバムの第1印象を良くも悪くも「ここ数年聴いた中で、最も“難しい”アルバム」と書きました。それは今でも変わりません。かなり強引ですが、一昨年のRADIOHEAD『OK COMPUTER』、昨年のMANSUN『SIX』のようなポジションのアルバムという例えもしました。あえて“難解な”という意味でこれらのアルバムを引き合いに出したのですが、勿論これら2枚のアルバムは僕にとって名盤ですし、大切なアルバムですし、今でもよく聴いている定番アルバムです。そう、この『13』というアルバムはそういう存在になりうる作品なのです。が、そこに到達するまでにはもう少々聴き込みが必要かもしれません。そう、一聴しただけでは判らない良さもあるし、何よりそういう派手さに欠けるアルバムなのは確かです。これは最近のどの名盤にも言える事だと思います。先日のKULA SHAKERの新譜もそうですし。MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』も派手ではありませんでした。が、どのアルバムにも言える事は、その音がカラフルだったということです。これはBLURも同様です。

これは持論でしかないので皆さん全員が同意してくれるとは思いませんが、“カラフル”には2通りあると思うのです。ひとつは文字どおり、いろいろな色の集合体。一般的に言われるのはこちらですよね? ところが、僕が言いたいのは例えば「グレー/灰色」だけなのに非常にカラフル‥‥グラデーションが鮮やかなグレー。グレーで判り難かったら赤でも緑でもいいです。そういうのも“カラフル”って‥‥言わないのかなぁ、普通? 前者はいろいろな色の集合体としての“カラフル”、後者は単色(あるいは2色)が生み出す“カラフル”。どうですか? これを音楽に置き換える事、出来ません? 例えば‥‥BECKのアルバムなんて前者の“カラフル”だと思いませんか? 邦楽ならPUFFYの『JET CD』とか。(例えが判り難かった?)そうです、僕が言いたいのはこの『13』が後者の“カラフル”に当てはまるアルバムではないかという事です。

では今までのBLURのアルバムはそうではなかったか?というと‥‥これも僕個人の感じ方ですが、所謂「ライフ3部作」と言われる『MODERN LIFE IS RUBBISH』~『THE GREAT ESCAPE』の3枚は、どちらかと言えば前者の“カラフル”のように思います。が、前作は‥‥これ、非常に難しいです。どっちとも取れますよね? まぁこの辺は聴き手の判断に任せるとして‥‥(笑)僕は前作は音楽性のとっ散らかり方が、前者の“カラフル”だと感じているのですが。

で、統一感/トータル性から『13』を後者の“カラフル”と唱えている訳ですが‥‥

今回のアルバム、すごく実験的ですよね? それは聴いた音からも判断できると思うのですが、それ以前にレコーディングの段階から実験的だったようです。普通バンドのレコーディングってスタジオで「せーの!」で楽器隊が合わせて演奏したものにヴォーカルやリードギターを被せるやり方か、リズム隊を先に録って徐々に上物(ギターやキーボードやヴォーカル等)をオーバーダビングしてく2通りが主流なのですよ。ところが今回のBLURは、スタジオで1日中ジャムったテープ(ハードディスク)をプロデューサーのウィリアム・オービットが家に持ち帰ってテープ編集(ハードディスク編集ですね、きっと)し、翌日にはひとつの楽曲として完成するというパターンだったようです。つまり、メンバーですら後になってみないとどんな曲が出来上がるのか判らないという‥‥実験以外の何ものでもないですよね?

この話を聞いた時、やはり先に挙げた『OK COMPUTER』や『SIX』を思い浮かべました。例えばRADIOHEADの「PARANOID ANDROID」なんて90年代の「HAPPINESS IS A WARM GUN」(BEATLESの曲)だし、ハードディスク・レコーダーがここまで普及していなければこの曲は生まれなかったかもしれない。(いや、少なくとも今のような形にはならなかったでしょう)この『13』の楽曲郡もある意味、「時代の産物」なのかもしれない‥‥そう考えると、非常に感慨深いものがあります。

音について少し触れてみましょう。インタビューなどでも明らかですが、今作のレコーディングにあたり、デーモンやグレアムがCANといったアバンギャルドなバンドを聴いていたそうです。CANは名前しかしらないので何とも言えませんが、僕自身『13』を聴いた時に思い浮かべたあるバンドがあります‥‥THE POP GROUPです。パンクの黎明期に現れた所謂ニューウェーブバンドなのですが、1st『XYZ』のアバンギャルドさといったら‥‥恐らく多くのBLURファンが聴いたら引いてしまうかもしれません。が、僕は‥‥最初ダメでした。(笑)が、今聴くと、意外とカッコイイのですよ、これが。THE POP GROUPっていうとダブのイメージがありますが、この『13』もダブ的な事を中盤からやってますよね? 「BATTLE」 から。僕、「B.L.U.R.E.M.I.」から「BATTLE」の流れ、大好きです。特に「B.L.U.R.E.M.I.」が終わった後に短いインタールードが入って「BATTLE」にいく辺りが‥‥鳥肌立ちませんか?

音楽性が全く違うので同意してもらえるか判りませんが、この『BLUR』~『13』に到る流れって、PRIMAL SCREAMが『SCREAMADELICA』~『VANISHING POINT』に到る流れに似てませんか? 確かにPRIMALSの場合、その間に『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』という灰汁抜きが入る訳ですが。BLURの場合、バンド内の灰汁抜きを『BLUR』アルバム製作前にやってしまっているので、すんなり進む事が出来たのではないでしょうか? 最近、『13』を聴いた後に『VANISHING POINT』を聴きたくなるのは、こういう理由からかもしれません。

それから、これは多くの人が言っていましたが、DAVID BOWIEの「ベルリン3部作」にも通じるものもあると思います。またデーモンの歌唱方(低音域~中音域)がBOWIEに似ているのも確かですし。

こうやって例を挙げたアーティストを見てみると、皆ヨーロッパのアーティストばかりなのですよね? 『BLUR』が「アメリカへのすり寄り」なんて言われてましたが(今聴くと全然そんな事ないんだけどね?)、この『13』ってアルバム、おもいっきりヨーロピアンなアルバムですよね? アメリカ人には作れないアルバムだと思います。あ、いまステレオからは「CARAMEL」が流れてるのですが、この曲ってU2っぽくないですか?(笑)特に90年代の「テクノロジー3部作」。『POP』に入っててもおかしくない曲ですよね?

 ただ、これだけは言っておきます。こうやっていろいろなアーティストの名前を挙げましたが、この『13』の楽曲はパクりの集合体なんかじゃないですよ! 明らかにBLURのオリジナルな音楽を奏でてます。そこがすごいところです。前作ではその辺のアイディアの拝借も見受けられましたが、このアルバムで一歩抜きん出ましたね? これ、どの位売れるんだろう‥‥いや、売れないって意味じゃなくて、バカ売れして欲しいのです。特にアメリカで‥‥あの国、こういう音に絶対に飢えてるはずだから。まぁOASISみたいな売れ方じゃなくて、RADIOHEADみたいな売れ方‥‥アルバムチャートの20位前後に長居するような。で、来年のグラミー賞で受賞しちゃって、それからトップ10に入っちゃうような‥‥そう、BECKの時みたいに。(笑)

最後に、このアルバムの曲を先日の「CLUB K」で聴く機会を得ました。かかったのは「TENDER」と「BUGMAN」でした。その他にもBLURの曲は「SONG 2」がかかってました。(これは毎回かかってます)感想はといいますと‥‥「BUGMAN」は踊りやすいです。巷で「"SONG 2" のパート2(笑)」と言われる訳がよ~く判りました。ただ、後半のブレイクで踊り手の緊張感が途切れるのも確かです。「TENDER」は‥‥正直踊り難いだろうと思ってたのですが、フロアにびっしり詰まった人達がみな、気持ちよさそうに体を揺すってました。踊るというよりは、音に身を委ねるっていう方が正解かも。誰も引いてる人、いないし‥‥感心してしまいました。そして確信しました。「"TENDER" は再び代表曲のひとつとなるだろう!」って。アルバム出すごとに代表曲が増えるバンドって、今どき珍しくないですか? あのOASISでさえそれを成し遂げていないのに。これがアルバム6枚出したバンドなのかな?って驚きでいっぱいです。

今日もこの『13』、既に4回目です。車の中で2回、家で2回。夜のドライブにぴったりのアルバムです。恐らくこのアルバム、僕にとっては『BLUR』以上に‥‥もしかしたら『MODERN LIFE IS RUBBISH』以上に大切なアルバムになるかもしれません。それだけの価値がある音楽の詰まったアルバムだと、断言できます!


<1999年4月6日:追記>

 以下の文は、うちにいらっしゃるある方からいただいたメールに対して、僕が書いた返事の一部です。これはこの『13』感想文に対して多くのBLURファンの方から苦情や中傷のメールをいただいた事に対する、僕なりの返答です。上の文章を書き直す事をせずに、僕は新たに加筆する事で答えを出しました。


*「13」はどこが難しかったのか明確に書かれていないが?

う~ん、実は未だに判らないんです。(苦笑)確かに僕が書いたこの文を読む限りでは、明確に「難しかった理由」が書かれてませんよね? これは僕の大失態です。すみません、中途半端な文章を公にしてしまって。今読んでみても、やっぱり「苦しい」ですねぇ‥‥これを書く過程が結構自分にとってヘヴィな状況だったのと、周りに対しての不信感?みたいなのも募ってて‥‥何の事だか判りませんね?

この文の中で、僕は「良くも悪くも、ここ数年聴いた中で、最も“難しい”アルバム」って書いてます。じゃあここから説明します。良い意味で“難しい”‥‥これは、僕の本音です。多くのBLURファンにはすんなり受け入れられたようですが、僕はショックだったんです。勿論良い意味で。だって『TENDER』EPとのギャップが余りに大きすぎたので‥‥EPを聴いた印象でアルバムを想像していたから。もっとオーソドック スな、バンドサウンドを中心に置いた、それでいて新しい局面に向っている事がシングルの4曲から感じられたのです。だからアルバムを最初に聴いた時、2曲目、3曲目で「おおっ!」となり、僕が大好きだと言った「BATTLE」以降の流れにフリーズしてしまったのです。勿論、BLURのファンからしてみれば大した変化ではないのかも知れません。でも、僕にはショックに値する位の衝撃を受けた、という事です。

ちなみに僕は「ライフ3部作」にはそれ程実験的要素は感じ取れません。勿論これは僕個人の意見ですので、BLURファンがこの発言に対して目くじらを立てたとしても単なる「個人の感想」ですので受け流して欲しいと思うのですが‥‥そうもいかない人も多い様です。だから僕にとってBLURは2ndで止まっていたし、初めて「BLUR」アルバムを聴いた時は再びショックを受けたのです。そういう意味では僕は「純粋な」BLURファンではないと思います。単に楽曲に興味がある、グレアムというギタリストに魅かれる、その程度のフ ァンなのです。

話が逸れましたが、そういう意味で「BLURから距離をおいて聴いてる音楽ファン」の立場として、「ライフ3部作」にあった分かりやすさが後退した、と最初に感じたのです。勿論、これは裏を返せば「より深みが増した」という事なのですが‥‥。

悪い意味で“難しい”と言ったのは、もしこのアルバムからBLURを聴き始めた人がいたら、彼等をどのように理解するのだろうか?と思ったのです。(って余計なお世話ですね、純粋なファンでもないのに)とっかかりとしてのアルバムとして、この『13』はうまく機能するのだろうか?と考えたのです。確かに「TENDER」のような名曲目白押しですが‥‥「地味」ですよね? これだけは拭いようがないと思うのです。勿論バンドのメンバーでもないのにこんな事考えるなんて、余計なお世話ですが‥‥この手の音が好きな人には絶賛されてますしね、『13』は。(事実、レコーディング関係の業界誌ではこの『13』が大絶賛されてました。けど、それは音楽性についてではなく、レコーディング技術についてと、プロデューサーの仕事振りについてでしたが)

以上の意味で、僕は最初“難しい”という言葉を発しました。御理解いただけましたでしょうか? でも、これは「苦手」とか「嫌い」といった意味とは違いますよ。そこだけは判って下さい。第一、ここで取り上げるアルバムは皆、僕が大好きで皆さんにお薦めしたいアルバムを、愛情を持って語るコーナーですから。僕自身、ありきたりな「レビュー」だけはやりたくなかったので。大体「レビュー」って言葉自体、あまり好きではないです。たまに勢い余って文章中に「レビューしましょう」なんて書いてますが、うちにリンクを張ってる多くの方のそれらと比べると、如何に僕の書く文章がただの「感想文」でしかないか?ってのが一目瞭然ですし。(笑)まぁ、そうでなければ困るんですが。

* BLURは既に「BLURにしか出来ない音楽」をやってます!

これだけはちゃんと言っておきます。彼等はデビュー当時からオリジナルでした。僕の友人のまわりでは「マンチェスターのおこぼれを貰おうとしてる」とか言ってましたが、明らかに2ndは彼等にしか出来ない音楽でした。それ以後だってそうです。よくXTCというバンドと比較されてるようですが(何故かBLURファンにはXTCが好き、って人も多い様です。僕の友人がXTC大好きなのですが、「絶対に気に入るから」といって『THE GREAT ESCAPE』をダビングしたところ、大絶賛でした)明らかに別物です。

確かにああやって例としていろいろバンド名を挙げましたが、あれは別に「BLURはこういうバンドをパクって~」とか言いたいからではないです。(勿論その辺は理解してくれてると思いますが)僕のHPは特定のバンドのファンページではありません。僕自身がいろいろな物に興味を持つので、HPまでとっ散らかっています。(笑)だからそれこそMANICSのファンからLUNA SEAのファンまでいろいろ集まってくるわけです。で、そういう人達にも判ってもらえるようにするには、ああいう例えも時には必要だと思うのです。確かに『13』を聴いた時、この文に出てくるいろいろなバンド名を思い浮かべたのは事実です。だから思ったままに書いたわけです。

多分、僕自身の音楽の聴き方が他の多くの方と違うのかもしれません。僕は音楽製作に携わっていたので(自分で曲を書くのもそうだし、また他者のレコーディングにも関わるアシスタントエンジニアの経験もあるし、ある時は通信カラオケの製作にも関わっていました)、一般の「音楽ファン」とは違った聴き方をするのかもしれません。ある方にも指摘されましたが、僕のMANICSのライブレポートを読んで「視点がミュージシャンの視点ですよね?よく冷静に観察してましたね?」と言われました。僕自身はそんな感覚は全くないのですが、どうやら他人から見るとそのようです。ライブの最中は頭真っ白になる位暴れてるのですが、終わって冷静になった時、結構曲順とかステージの状況を記憶してるんですね、僕。自分自身もステージに立つ人間だったから、かもしれません。

今回のBLURの場合は、既にメンバーがインタビューでCANやPINK FLOYD(シド・バレット在籍時)からの影響を語っていたので、まぁそういう事なんでしょう。この辺は僕の書く文より、うちにいらっしゃるのえるんさんのHP「LEISUREDOME」の掲示板にいらっしゃる方々のほうが、僕なんかよりももっと詳しいです。

僕自身、好きなバンドができると、そのバンドのバックボーンや影響されたバンドなんかにも興味を持つ人間なので、よくこういう例えをするのかもしれません。だから今後もこういう例えが頻繁に出てくるかもしれませんが、決して悪意はないですよ。



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投稿: 1999 03 22 12:00 午前 [1999年の作品, Blur] | 固定リンク