« Mr.Children『DISCOVERY』(1999) | トップページ | UNDERWORLD『BEAUCOUP FISH』(1999) »

1999/03/06

KULA SHAKER『PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS』(1999)

今回は先月発売されたばかりのKULA SHAKERの2ndアルバム「PEASANTS,PIGS & ASTRONAUTS」を取り上げます。既にいろいろなHPでもレビューされてますが、あえてこれを書き上げるまで読まない事にしてました。だから掲示板などでの「よかった!」とかの簡単な感想しか目にしてませんし、雑誌での評価もrockin'onでのものしか知りませんし。(しかもアルバム発売前のものだし)ただ、インタビューはアルバムを聴いてから改めて読みました。「なるへそ~」と思いましたが。(笑)

さてさて、それではこの『ある意味難解な』アルバムの素晴らしさについて、いろいろと語っていきましょう。そして、このアルバムに隠された『メッセージ』についても‥‥


それにしても、長かったですね。このアルバムが発売されるまでが‥‥1stアルバム「K」が発売されたのが96年9月ですか?しかもあれ、日本先行発売だったんですよね?イギリスは10月?日本盤の初回版はジャケットが違うんですよね?("TATTVA"の英国盤シングル・ジャケットをモチーフにしたもの)いや~、本当に長く感じた。初来日が96年12月、翌年2月にシングル"HUSH"がリリースされてから98年春のシングル"SOUND OF DRUMS"までこれといった情報なし‥‥しかも"SOUND OF DRUMS"って日本盤出なかったし。(涙)それでもその間は「K」や"HUSH"などを聴きまくっていたのですが。

自己紹介のページでのKULA SHAKERの欄に『ここ数年で最も聴きまくったデビューアルバム』というような事を書いたことがあります。NIRVANAの「NEVERMIND」を2ndアルバムとカウントすれば、間違いなく『GN'R以来、最も聴きまくったデビューアルバム』だと思います。そう、OASISよりも。それ位、俺にとってこのバンドの出現は衝撃でした。

OASISの登場以降、所謂『ギターロックバンド』が多く出現しましたが、どれも本家を超えるような代物ではありませんでした。中には結構いいな、位に思ったものもありましたが、このKULA SHAKERはそれらとは比べ物にならない位、完成度の高い新人でした。何が抜きん出ていたかというと、そう、明らかに『グルーヴ感/ドライヴ感』、そして『神秘性』でしょう!これについてはまた改めて1st「K」を取り上げる時に(そう、絶対に取り上げます!)書きますが、このふたつが他のバンドはおろか、OASISよりも優れていたと思ったのです。

そして"SOUND OF DRUMS"から再び1年‥‥とうとう先行シングル"MYSTICAL MACHINE GUN"と2ndアルバム「PEASANTS~」が到着したのです。デビューアルバムから2年半、新人としては決して早い方ではありません。むしろ『やっぱり消えたか‥』位に思ってた輩が多かったのではないのでしょうか?で、そういう奴に限ってこの最新作を絶賛してたりする‥‥世の中、そんなもんか?(苦笑)

まぁ皮肉はさておき(笑)僕が最初にこの"MYSTICAL MACHINE GUN"を耳にしたのは、ネット上で30秒程試聴した2月上旬のことでした。第1印象は『"GOVINDA"や"TATTVA"タイプだけど、あれよりもかったるい感じの曲だなぁ。全体を聴いてみない事には何とも言えないけど、どうだろう‥‥まぁサビ?の「~MYSTICAL MACHINE GUN!♪」ってシャウトするところはカッコイイけど‥』といった程度のものでした。これが2年半待ったバンドの新曲に対する感想か?って位、地味なものでした。(笑)

そうそう、その前の"SOUND OF DRUMS"についてもコメントしときましょう。最初に聴いたのは‥‥かなり遅くて、昨年12月の「CLUB K」ででした。既に4月にはリリースされていたシングルですが、すぐにアルバムが出ると思っていたので、あえて買わなかったのです。新作への楽しみも半減しそうな気がして。ところが、待てど暮らせどリリース情報は届きませんでした。で、気がつけば年末‥‥Kで初めて聴いた時、何のアナウンスもありませんでしたが、さすがにすぐに判りました。あのイントロの(ZEPの"NOBODY FAULT BUT MINE"みたいですよね?)コーラスを聴いた瞬間に、『あ、KULA SHAKERだ!』って。さすがに彼等の音楽が体に染み付いていたようですね?(笑)で、素直にカッコイイと思いましたよ。『こりゃあ、新作が楽しみだ!』って。

そして"MYSTICAL MACHIN GUN"を初めてフル・コーラス聴いたのも、先月のKででした。これも何のアナウンスもなし。確かアルバムの1~2曲目をアドバンス・テープで流してたのかな?(後で「テープなので音悪くてゴメン!」とKAKEさんが言ってたので)すぐに判ったよ。『お、KULA SHAKERだ!』って。(笑;あんた、そんなんばっかじゃん!)すぐさま曲に身を委ねて踊ってた‥‥かったるいと感じたあのテンポ/リズム感が逆に心地よかったです。特に"MYSTICAL~"はサビ?に入ってからラウドになるので、結構暴れてたし。(笑)あの時点で、『新作は凄い事になるぞ!』と実感したのでした。

さて、そろそろ新作についていろいろと語ってみましょうか。まず‥‥KULA SHAKER初心者の皆さん。このアルバム、難しくありません?かったるくありませんでした?地味じゃないですか?‥‥そう感じたなら、元気のよいSTEREOPHONICSあたりを聴いて下さい。(笑;たまたま同じ日に発売したので)

そう、間違いなく『地味な』作品です。1stも比較的地味ではありましたが(決して派手ではなかったですよね?)更に輪を掛けて地味ですよね?だから普段OASISみたいなバンド聴いてる人がいきなりこの2ndから入ったら、どう思うかな?って‥‥ただ、『ものすごく「濃い」作品』でもあります。1曲1曲をとってみても、いろいろな音が凝縮されてます。これはプロデューサーがボブ・エズリンに変わったためでしょう。

ボブ・エズリン‥‥古くはアリス・クーパーやKISSを手掛け、「THE WALL」等のPINK FLOYDの一連の作品、HANOI ROCKS「TWO STEPS FROM THE MOVE」、VOW WOW「MOUNTEN TOP」等、一風変わった作品を手掛けている。代表作といえば、やはりPINK FLOYDの一連の作品とKISS「DESTROYER(邦題「地獄の軍団」;爆)」となるのでしょう。そういうプロデューサーを向かい入れた事もあってか、このアルバム、めちゃくちゃ『プログレ色』が強いと感じます。いえ、音楽性がではなく、アルバムの流れ/構成が。むっちゃ乱暴な例えですが、PINK FLOYDの「THE WALL」に似てるな、と思いましたもん。

このアルバム、実は『ダンス・アルバム』ではないかと思うのです。(これもちょっと強引?)そう、『21世紀のダンス・ミュージック』ではないのでしょうか‥‥確かにCLUB Kで聴いた時、踊ってて楽しかったし、凄く『重心が低い曲』だと思ったし。で、これってアルバム全体を通して感じたのですが、『重心が低く、腰にクるアルバム』だと‥‥これは1stの時も感じた事ですが、更に重心が低くなってると思います。装飾部分(オルガンやブラスなど)は非常にサイケですが、僕にはこれが『ダンス・ミュージック』に思えるのです。

元来音楽というのは、古く遡れば祝いの時などに踊るためのものだったと言われています。豊作の祝い、結婚の祝い、出生の祝いなど‥‥その度に人々は集まり、歌い、踊ったと言われています。ひょっとして、このアルバムは来るべき21世紀を『祝う』ための音楽ではないのか?という気がしてきたのです。

1曲目"GREAT HOSANNAH"の歌い出しはこうです。『ここに一堂に会して立ち/世界をひとつのものとして見てみれば/未来などないように思えるかもしれない/それは誰にとっても同じこと/世界は狂気に包まれてしまった/予言者たちの告げたとおりに/でも、僕たちは復活するだろう/新しい世界に』このタイトルにある"HOSANNAH"には『神またはキリストを賛美する言葉、ホサナという叫び声、賛美の熱叫』という意味があるそうです。一歩間違えば某新興宗教団体の勧誘ソングになりかねないこの曲、1999年という世紀末にリリースされることに意味があるのかもしれません。

が、しかし。果してクリスピアン・ミルズ(Vo. & Gt.)という男は、本当に21世紀を祝う事を望んでいるのでしょうか?KULA SHAKERというバンドは比較的、ポジティヴシンキングな曲を書いてきました。それは新作でも同じです。しかし‥‥この辺に今回の『謎』が隠されているような気がします。

CDをお持ちの皆さんの中で、どれだけの方が気付いたか判りませんが、CDを手元にこれをお読み下さい。まず、CD側面(タイトルが書いてある背の部分)両側に書いてある『KULA SHAKER/PEASANTS,PIGS & ASTRONAUTS』を挿むように、アルファベット『H/E』『L/P』とあります。続けて読むと‥‥そう、『HELP』です!気付いてましたか?助けてですよ?何故クリスピアンはこんな手の込んだ事をしたのでしょうか?何を危惧しているのでしょうか?

歌詞にも『助けて』という言葉が出てきます。まず3曲目の"S.O.S."。但しこの曲の"S.O.S."何かの略らしいです。それが何なのかは判りません。(だから、雑誌のインタビューとか余り読んでないし)そして6曲目の"SHOWER YOUR LOVE"でも『だから今、助けて/僕が終わってしまう前に』という歌詞があります。他にも、取りようによっては間接的にそう受け取れる歌詞もあります。(但し深読みの可能性大)

最後にアルバムジャケット。森林の中にエスカレーター(上り)、そこに乗っている宇宙服らしきものを着た人間。ヒプノシスが手掛けそうなこのジャケットが何を意味するのでしょうか?これは僕の想像ですが‥‥森林は『過去/現在の地球/現在の我々』を、宇宙服らしきものを着た人間は『未来/来るべき21世紀』を、そして上りのエスカレーターは『世紀末へのカウントダウン』を比喩しているのではないでしょうか?こう解釈すると、エスカレーターがもうすぐ上に到着する=現在1999年を意味していると受け取れます。そして、歌詞カードの裏ジャケット。自然の中でボロボロになった傘をさす宇宙服を着た人間が空を見つめています。これは21世紀の人々が過去(=自然等)を懐かしんでいるようにも受け取れます。ボロボロになった傘は酸性雨の為でしょうか?もうひとつ、CDケース裏面。森林の中で木の根っこに腰掛けて新聞を読む宇宙服を着た人間。これは‥‥判りません。(爆)ただ、気になるのはジャケット表の森林といい、この裏面の森林といい、木に葉がついていない事が気になります。たまたま秋~冬に撮影したからかもしれません。(確かにこのアルバムの発売が遅れた理由のひとつに『アートワークの変更』というのもありましたが)だけど、CDケース裏面の、地面に積もった枯葉‥‥御丁寧にも赤く色が付けられています。これ、後から合成したものですよね、きっと。だとしたら、何故そんな事をするのか‥‥自然崩壊への危機感?我々への警告?

多分クリスピアンは正解を教えてくれないかもしれません。70年代のアルバムにはこういう『想像力を掻き立てる』アルバムジャケットが沢山ありました。それこそPINK FLOYDやLED ZEPPELINなど‥‥ただそれだけなのかもしれませんが、これらの『謎』にクリスピアンが言いたい事が隠されてる気がしてなりません。

何だか最後は音楽とは関係のない話になってしまいましたが、要するにそれだけこのアルバムが興味深いものだということです。これだけイマジネーションを掻き立てるアルバムは久し振りです。最近、家でじっくりと腰を据えて音楽を聴く機会がなかったので、こういうアルバムに出会えた事が非常に嬉しくあります。これを切っ掛けに再び、ステレオの前で歌詞カードを読みながら、じっくりと音楽を聴いてみたいと思います。

最後に‥‥このアルバムを聴いてから、『これ聴いちゃうと、1stなんてどうって事ないね?』なんて言い回ってる人間を、俺は信用しません!あのアルバムがなかったら新作もここまでのものにはならなかったはずだし、第一、当時あんなにもてはやされたのは何だったの?って思います。そういう『情報に左右される人間』を信用したくありません。ただ‥‥純粋に『好き』。これでいいと思うのです。



▼KULA SHAKER『PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 1999 03 06 05:32 午前 [1999年の作品, Kula Shaker] | 固定リンク