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1999/07/10

KISS『PSYCHO CIRCUS』(1998)

オリジナルメンバーに戻り、96~97年にツアーをした後にいよいよ制作されたのが、この「PSYCHO CIRCUS」って訳です。メンバーはポール、ジーン、エース、ピーターの最強の布陣。演奏力ではブルース&エリックに劣る訳ですが、このアルバムでは彼等が実際にプレイしていないのでは?なんて囁かれた程、マトモな演奏を聴かせてくれます。(笑)ちなみにチャート上での成績ですが、それだけ多くの人間が期待していたって事でしょうか、過去最高の全米第3位を記録しています。面白い事にこの時期、MARILYN MANSONが「MECHANICAL ANIMALS」をやはり全米1位に送り込んでいるんですよ。奇遇といえば奇遇ですが、何か勝手に運命めいたものを感じています。(笑)

プロデューサーは先頃お亡くなりになった名プロデューサー、ブルース・フェアバーン。(BON JOVI「SLIPPERY WHEN WET」「NEW JERSEY」、AEROSMITH「PERMANENT VACATION」「PUMP」「GET A GRIP」、AC/DC「THE RAZORS EDGE」、POISON「FLESH & BLOOD」など)本来、彼等は「REVENGE」同様、ボブ・エズリンとの仕事を望んだが、多忙の為(恐らくKULA SHAKERとの仕事が入った為でしょう)彼が代わりに推薦したのがブルースだった。この時点で新作が「ハイ・クオリティーでポップなアルバムになるのでは‥‥」という微かな期待が湧くのだけど‥‥しかもボブは作曲には参加するというから、尚更「も、もしや最高傑作になるのでは‥‥!?」って、そりゃ嫌が応でも盛り上がるちゅうねん♪(笑)そう、既に「CARNIVAL OF SOULS」リリースの時点で。(爆)

その「PSYCHO CIRCUS」、リリース前の噂では『「DESTROYER(邦題/地獄の軍団)」や「LOVE GUN」のような作風になる』というのがあったと思うんですが(いや、『「LOVE GUN」のようなサウンド・プロダクションで「DESTROYER」のようなバラエティーに富んだ作品を作る』だったかな?)いざ出来上がった作品は‥‥いい意味で『過去の集大成的作品』でした。そう、70年代の彼等だけでなく、80年代のメタル時代も90年代のハードコア時代をも包括した、集大成だったのです。何故そんな作品群をこのメンバーでやったのか?そこがこの「PSYCHO CIRCUS」のキーポイントとなるような気がします。

KISSにはヒット曲が沢山あります。それこそアルバム1枚に収まらない程に。初期の集大成ともいえる「DOUBLE PLATINUM」(最初に聴くならここからが手っ取り早い!)以降にも "I Was Made For Lovin' You" といったトップ10ヒット、80年代にも "I Love It Loud", "Lick It Up", "Heaven's On Fire", "Tears Are Falling", "Crazy, Crazy Night", "Forever"といった名曲が目白押しだし、90年代の「REVENGE」アルバムにもポップでハードな名曲が沢山あります。が、残念ながら96~97年のリユニオンツアーではこれらの楽曲は演奏される事もなく、ひたすら「ALIVE」~「ALIVE 2」をイメージさせる『メイク時代の』オンパレードでした。辛うじて "I Was Made For Lovin' You" が披露される日があったり、それ以外だとエースのソロアルバムからの大ヒット曲 "New York Groove" が毎回演奏されるくらいでした。確かにこれでも往年のファンやまだ彼等を知らなかった初心者でも楽しめることでしょう。が、あくまで彼等を今まで支えてきたのは、僕ら20代半ばの中堅ファンなのですよ! 80年代のノーメイク時代、L.A.メタルブームに便乗してメタル路線に鞍替えしても、健気に着いていき、レコードを買い、来日を懇願したのはこの僕らの世代なんですよ! そういう意味で初めて観た1995年1月のライヴは新旧オンパレードで、例えジーンがインフルエンザで声が出なくても僕は非常に楽しんだものです。そう、例え2日間同じ内容でも。(笑)そういう『80年代以降のKISSアーミー』達に上手く答えたアルバム、それが「PSYCHO CIRCUS」なのです。

もうひとつ、その時代の名曲達をこのラインアップで今後演奏する機会がなくなった今、もっともがっかりしているのは何を隠そう、当の本人(この場合、ポールとジーンね)なのかもしれません。演奏したい、でもイメージを大切にしなくてはいけない(「あくまで70年代にこだわる」「メイクして80~90年代の演奏をしてはいけない」というイメージ)、だけど沢山の名曲が可哀想、けれどエースやピーターが演奏するには高度な技術を要する演奏が殆どだし‥‥こうしたジレンマの中、出来上がった楽曲郡はとても『「DESTROYER」や「LOVE GUN」のような作風』のアルバムではありませんでした。辛うじて、楽曲のバリエーションが「DESTROYER」的とも言えなくはないですが‥‥1曲目の "Psycho Circus" から全開で80年代の作風だし。(笑)続くジーン作曲の "Within" なんて「CARNIVAL OF SOULS」用に書いた曲だって言われても不思議じゃないし、エースの唄う "Into The Void" は「LOVE GUN」に入ってても何ら違和感はないし、ピーターのソロ "I Finally Found My Way" なんて名曲 "Beth" の焼き直しだし、ポールがこれを唄えば絶対に80年代風になるはずだし‥‥つまり彼等(ポールとジーン)は新曲に80~90年代の作風を生かし、敢えて70年代にこだわらずに『集大成的な作品』に仕上げた訳です。その為にはソングライターとしてボブ・エズリンの力を借り、プロデューサーにはこの手のロックをやらせたら右に出る者はいないっていうブルース・フェアバーンを迎え入れた訳です。実際、昨年末から始まった最新ツアーでは上に挙げた楽曲が演奏されているみたいだし。現在のエースやピーターの年齢/演奏力を考えた場合(ポールやジーンのように20年以上最前線にいた人とは明らかに違う)こうする事が最善策だったのです。まぁこれは僕の想像でしかありませんが。

ジーンは「PSYCHO CIRCUS」の制作にあたり、「この顔ぶれでアルバムを作るとなれば、それはKISS史上最高のものにしなければならない」というコメントを残しています。『KISS史上最高のもの』つまりそれは、『KISSのエキスを凝縮した集大成的作品』ということだったのでしょうか? さて、比較ということになると非常に難しいです‥‥だって「PSYCHO CIRCUS」は最初から最後まで全力で作られたアルバムだったけど、少なくとも「CARNIVAL OF SOULS」は途中でさじを投げられた作品なわけですからねぇ?

ただ、これだけは言えます。まずメンバーが変われば作風も変わる。次に時代背景。僕は以前、某雑誌にKISSで投稿したことがあるのですが(もちろんボツ。その原稿が残ってたら、そのうちにアップしますね?/笑)そこで彼等を『時代と添い寝する男達』と表現しました。つまり、変わり身が早い、嗅覚が冴えている(年齢の割に/笑)、商売上手だと。90年代前半は明らかに『TOO MUCHな音楽』が受けた時代です。ある意味彼等のような歴史のあるバンドがこういう事をするにはリスクがありすぎます。それでもやるのがKISS。そこに商売の臭いがプンプンしようが「しょうがねぇなぁ~」となってしまうのが、このオヤジ達。(笑)常に時代に追いつこうとする彼等が、メイクアップすることでとうとう時代に追いついてしまったのです。そう、幸か不幸か。(笑)こうなった以上、今までのイメージは捨てなければ(封印しなければ)ならない、その為には既に完成しているアルバムだって犠牲にする、今売れるのはあくまで『70年代風』なのだから。でも、元は取らなきゃね?って事で波が引きつつある時点で「CARNIVAL OF SOULS」発表。ファンの度胆を抜く。と同時に「今のメンバーでも新作作るよ!」とさり気なくアピール。(笑)で、完成した作品は過去の集大成的作品を今のメンバーでやるというあざとさ。素晴らしい、計算され尽くされている。

そう、これって今に始まった事じゃないです。彼等は70年代からこういう計算尽くの戦略を立ててきた『前科者』なんですから。(笑)4人同時にソロアルバムリリースとか、メイクを取るような予感を臭わせるアルバムタイトルや、実際にメイクを取ってしまったりとか‥‥確かにエリック・カー(ピーター脱退後加入した2代目ドラマー。癌の為に91年11月24日亡くなる。その後任がエリック・シンガー)を失うというアクシデントはあったものの、常に彼等は時代を読んで戦略を立ててきたバンドなんだということは、20年以上も前から何ら変わっていないのです! 最初に述べた「いつになってもKISSはKISSのまま」とは、こういう事なのです。そして、未だに快く騙され続ける僕達‥‥「しょ~がねぇなぁ~」と口にしながらも、心の底ではワクワクして仕方ない、そういうバンドなんですよ、KISSって。いくら僕らが歳を重ねようが、童心を忘れさせない。きっと今の若い音楽ファンには「子供騙し」としか見えないでしょうが、ロックって本来そういうものでしょ!?(笑)あら、最後はおいらが開き直っちゃったよ、オイ。



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投稿: 1999 07 10 04:25 午前 [1998年の作品, KISS] | 固定リンク