2017/04/30

MACHINE HEAD『THE BURNING RED』(1999)

MACHINE HEADで最初に取り上げる作品がこの3rdアルバムでいいのか、正直悩むところですが、僕個人としてとても好きなアルバムなので……まぁ昨日のSEVENDUSTからの流れで、当時のシーンの雰囲気をここらへんから感じ取ってもらえたらということで。

1994年にアルバム『BURN MY EYES』でデビューを果たし、PANTERAらとともにその後のヘヴィメタル、ラウドロックシーンのスタンダードとなったMACHINE HEAD。グルーヴ感の強いミドルテンポのリズムに乗せてスラッシーなギターリフを刻むスタイルが、その後のシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。そうやって時代の寵児となった彼らがそこから一転、ニューメタルやラップメタルなど流行にあえて乗ることで完成させたのが、1999年夏発売の本作『THE BURNING RED』です。

前2作を手がけたコリン・リチャードソンから、KORN、SEPULTURA、SLIPKNOTなどで知られるロス・ロビンソンにプロデューサーを替えて制作された本作は、同じミドルテンポでも若干跳ね気味のリズムとロブ・フリン(Vo, G)によるラップ調ボーカルが導入され、初期からのファンの反感を買うことに。特に「From This Day」あたりはそのカラーが顕著で、「なにもこれをMACHINE HEADがやらなくても……」という落胆の声を当時よく耳にしたものです。

しかし、どの曲も比較的コンパクトでキャッチー、アルバムとしてもスルスル聴けてしまうのです。KORNかよ!と突っ込みたくなる「Desire To Fire」、パーカッシブな要素がSEPULTURA『ROOTS』にも通ずる「Exhale The Vile」、THE POLICEの代表曲をサイケデリックなスローアレンジでカバーした「Message In The Bottle」、エンディングのダブ感が異色のバラード「The Burning Red」などもありますが、前のめりなアップチューン「The Blood, The Sweat, The Tears」、攻めの「I Defy」「Five」などもあり、実は完全にニューメタル側に寄ったわけではないことも伺える。その後の彼らのスタイルを考えれば、このタイミングにこういった新しいチャレンジをしたことはとても大きかったのではないかと思うわけです。

じゃあ、MACHINE HEADで真っ先に聴くべき作品かと問われると、決してそんなこともなく。素直に最新作『BLOODSTONE & DIAMONDS』(2014年)もしくはデビュー作『BURN MY EYES』から聴けばいいと思うわけですが、これはこれで好きだっていう人、絶対にいるはずなんですよね。

今でも「The Blood, The Sweat, The Tears」「From This Day」あたりはライブで披露される機会も多いですし、もしMACHINE HEADに興味があって3、4枚目に何を聴こうかと悩んだときに手を出してみてはどうでしょう。聴く人を多少選ぶかもしれませんが、これはこれで優れたヘヴィメタルアルバムだと思いますよ。



▼MACHINE HEAD『THE BURNING RED』
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投稿: 2017 04 30 12:00 午前 [1999年の作品, Machine Head] | 固定リンク

2017/04/29

SEVENDUST『HOME』(1999)

アメリカ・アトランタ出身の5人組バンドSEVENDUSTが、1999年に発表した通算2枚目のオリジナルアルバム。ちなみに彼らは、翌2000年夏に同作で日本デビューも果たしています。

90年代後半にKORNやTOOL、DEFTONESなどといったバンドがヒットチャートを賑わし始め、一部リスナーから“ニューメタル”という括りで揶揄し始めた頃、このSEVENDUSTもデビュー(1997年)しています。確かに彼らのサウンドは、世間的に言うニューメタルそのもの。というか、個人的にはニューメタルという単語を耳にすると、真っ先に思い出すのがSEVENDUSTだったりします。

それは決して悪い意味ではなく、90年代末のラウドシーンを代表するバンドのひとつとして認識しているから。ミドルテンポをベースにした楽曲に、ザクザクしたギターリフ、グルーヴィーで間をうまく生かしたリズム隊(特にドラムはスコーンと抜けが良いスネアで、ベースはフィンガーピッキングで弦をバキバキ弾く音が基本)、ボーカルはメロウなんだけど要所要所でシャウト(スクリーム)する……いわゆる“ニューメタルのスタンダード”と呼んでしまいたくなるスタイル、サウンドがこの『HOME』という作品で展開されているのです。

でも、この『HOME』という作品にはそれだけでは終わらない、リリースから15年以上経った今も存分に楽しめるだけの魅力が詰まっているのです。特にこのSEVENDUSTというバンド、フロントマンのラジョン・ウィザースプーン(Vo)が黒人ということが他のバンドとは一線を画する個性となっており、その他の“ヘタウマニューメタル”勢とは異なる本格派な歌を聴くことができる。その個性はどの曲からも感じ取ることができますが、特にスキン(SKUNK ANANSIE)とのデュエット「Licking Cream」では両者の魅力と実力が遺憾なく発揮されております。単なるヘヴィメタルとは違う、ソウルの血が混じった(それでいてファンクメタル的な方向に進まない)独自のスタンスは、“ニューメタルのスタンダード”だけど「その他のフォロワーやポーザーには負けない」だけのオリジナリティなんじゃないでしょうか(ちなみに、あるラストの「Bender」みはDEFTONESのチノ・モレノもゲスト参加しています)。

一時はギタリストの交代などもありましたが、現在はオリジナルメンバーで活動を継続中の彼ら。新作を出せば常に全米トップ20入りをするなど、安定した人気を保っています。これからSEVENDUSTに触れてみようという人にはベストアルバムもあるけど、まずは初の全米トップ20入り(19位)を記録した出世作であるこの『HOME』から聴いてみてはいかがでしょう。



▼SEVENDUST『HOME』
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投稿: 2017 04 29 12:00 午前 [1999年の作品, Sevendust] | 固定リンク

2015/10/05

Megadeth全アルバム私的レビュー(3/5)

思いつきで急遽始めたこの「Megadeth全アルバム私的レビュー」。第1回は80年代の3作品(1st〜3rd)第2回はマーティ・フリードマン&ニック・メンザ加入後の黄金期3作品(4th〜6th)についてでしたが、続く第3回は黄金期崩壊〜マーティ脱退〜そして解散へという下り坂期の3枚(7th〜9th)です。ここに、8th後にリリースされたベストアルバム『Capitol Punishment: The Megadeth Years』を加えたレビューとなります。

正直、この時期のMegadethにはあまりいい思い出がないのですが、唯一のめり込んだ『Risk』という異色作があるので、まだモチベーション的には高かったほうかもしれません。でもこの機会にあの時期の作品を聴き返してみたら当時の記憶以上には悪く思えなかったし、逆に「あれ、そこそこいいじゃん」とも思えてきたので、この企画やってみてよかったと思いました(個人的に)。


■7th『Cryptic Writings』(1997年)

ムステイン、エルフソン、マーティ、ニックの黄金期布陣としては最後のアルバムとなった7枚目。前作での過渡期的不調が嘘のような、ある種開き直ったと思えるほど清々しい「ポップでキャッチーなHR/HM」を聞かせる1枚。5thから彼らが挑んできた「コンパクトでキャッチーなミドルテンポ」な作風の究極型と言えるような内容で、前作に足りなかった「She-Wolf」をはじめとするファストチューンが加わったことでそのバランス感はより際立ったものとなっている。Metallica「Enter Sandman」をポップにしたような1曲目「Trust」、サビの軽快なノリに思わずツッコミを入れたくなるほどドポップな「Almost Honest」など、それまでの活動を踏まえれば首を傾げたくなるような楽曲もあったりするので、個人的にはそこまでのめりこめなかった作品かも。とはいえラスト3曲の攻めまくる構成は(曲調、構成の違いはあれど)80年代の尖った頃を彷彿とさせ、やっぱりMegadethだな!と納得させられてしまう部分もある。ごく私的ツボ楽曲はアグレッシヴな展開の「Use The Man」と泣きの「A Secret Place」。


▼Megadeth『Cryptic Writings』
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■8th『Risk』(1999年)

ニック・メンザが脱退し、ジミー・デグラッソが加入して制作された本作は、インダストリアルノイズなどの打ち込み要素を積極的に取り入れ、ポップな曲はよりポップさを追求したという意味でMegadeth史上最大の問題作と呼ばれることの多い1枚。1曲目の「Insomnia」で一瞬たじろぐも、続く「Prince of Darkness」「Crush 'Em」は前作までの流れを汲むミドルヘヴィチューンなので一瞬安心。しかし5曲目「Breadline」で他のアーティストとCDを間違えたんじゃないかと確認したくなることだろう。とはいえ「I'll Be There」のような不思議な魅力を放つ楽曲もあり、決して駄作とは言い切れないところも。個人的には「MegadethであってMegadethではない」アルバムという位置付けで、非常に気に入っているアルバムでもある。実は本作、オリジナル盤と2002年のリミックス&リマスター盤とではかなり印象が異なる。もしかしたら再発盤のミックスのほうが従来のファンには入りやすい1枚かもしれない。そしてこのアルバムをもってマーティも脱退。彼がもたらそうとした変革は続くアルバムですべてひっくり返されるのだった。


▼Megadeth『Risk』
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■ベスト盤『Capitol Punishment: The Megadeth Years』(2000年)

マーティ・フリードマン脱退後、アル・ピトレリが加入。しかし2ndから在籍していたCapitol Recordsから離れることになり、それまでの総括として発表されることとなった初のベストアルバム。2nd『Peace Sells... But Who's Buying?』から最新作『Risk』までのシングル曲/リード曲/MVが制作された楽曲から選ばれており、各アルバムから1〜3曲というバランス感。なぜか7th『Cryptic Writings』のみ3曲というのが謎の選曲だが、まあこんなもんだろうと。本作の聴きどころはピトレリ加入後初の新曲「Kill The King」「Dread & The Fugitive Mind」が収められているところだろう。後者は続くオリジナルアルバム『The World Need A Hero』にも収録されることになるが、ここでしか聴けない(その後、2005年発売の新ベスト盤『Greatest Hits: Back to the Start』にも再収録)前者も5thに入ってそうな普通の曲なので無理に手を出さなくてもいいかと。ちなみに輸入盤にはシークレットトラックとして「Capitol Punishment」という曲が入ってますが、なんてことはない、単なるメドレー曲。


▼Megadeth『Capitol Punishment: The Megadeth Years』
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■9th『The World Need A Hero』(2001年)

ムステイン、エルフソン、アル・ピトレリ、ジミー・デグラッソという新体制で制作された9thアルバム。インディーズのSanctuary(流通はメジャーのBGM系列)からのリリースで、チャート的には前作と同じ16位だったもののセールス的には落ちる結果に。音楽的には5th以降で目指した作風に再チャレンジしつつも若干初期のひんやりした“らしさ”が復活し、ポップさが減退したことで硬派な印象を与える。タイトルとは関係ないように思えるえげつないアルバムジャケットからも、「尖ったMegadethよ、再び」といった姿勢が見え隠れする。アルバムタイトル曲をはじめ「1000 Times Goodbye」「Return To Hangar」、前年発売のベストアルバムにも収録された「Dread & The Fugitive Mind」など今聴くとなかなかな楽曲も含まれている。「MegadethであってMegadethではない」から「尖ったMegadethよ、再び」の姿勢は評価するがどこか守りすぎという印象もあり、アルバム全体のインパクトは過去8作品ほどではない。本作リリース後の2002年、ムステインが腕の故障を理由に音楽活動休止を発表し、バンドは解散。結果としてなんともいえない結末を迎えるのであった。


▼Megadeth『The World Need A Hero』
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投稿: 2015 10 05 12:05 午前 [1997年の作品, 1999年の作品, 2000年の作品, 2001年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2005/10/21

PENPALS解散に寄せて/PENPALS『RIGHT NOW』(1999)

 PENPALSがとうとう解散を発表しました。一昨年に4人組として再スタートを切り、どうにか舵を取り直して前進しようとしてたのですが昨年の活動休止以降、各メンバーのソロ活動が目立つようになり、結局今年の年末にたった1本、しかもイベントの中のひとつとしてラストライヴを行うという‥‥確かに俺もファンの方々同様、何でいろんなバンドが出るフェスの中で、たった1本のラストライヴを行うのか、昨日から疑問に思ってたんですが‥‥ハヤシの日記を読んだら、何かもう‥‥言葉にならなくなって‥‥

 上手い言葉がみつからないんだけど、彼等がそういう場所でのラストを選んだのなら、俺はそれを受け入れてあげようと思う。すごい上から目線の言葉でちょっと嫌だけどさ‥‥

 バンドを長く、同じメンバーで続けていくってのは、もうそれだけでパワーを必要とすることじゃないですか。俺なんて2年間毎日同じメンバーと顔を合わすバンドをやってたけど、やっぱり音楽の趣味だって完全に一致するわけじゃないし、ましてや日々音楽の趣味も少しずつ変化していくわけだし、表現したい音も年齢と共に変わっていくわけだし。そして人間だもん、機嫌の悪い時もあるし喧嘩する時もある。もう二度と顔を合わせたくないと思う瞬間もあるし、その場で同じ空気を共有することさえ拒絶したくなる時だってある。いろんな契約があって、いろんなしがらみがあって、簡単に辞められなくなって。一方では「次」を楽しみにしてるファンがいる。CDを買ってくれるファンであり、ライヴに足繁く通ってくれるファンであり、BBSに書き込んだりファンメールを送ってくれるファンであり‥‥そういうファンの気持ちを裏切らない、がっかりさせないために無理をする時さえある。それが正しいのか間違っているのか、正直誰も責めることはできないはず。

 バンドを無理矢理続けることで、ファンを喜ばすことは可能だってでしょう。1年とは言わずに2年、3年と活動を休止することもできたはず。けど、彼等は正直に、そして誠実なまでに、こんなにも早く「解散」という手段を選んだ。そしてハヤシは正直に今の気持ちを綴った。上条兄弟のコメントはまだだけど、やっぱりオフィシャルでのコメントが全てなんだろうな‥‥

 ぶっちゃけて書かせてもらうと。彼等の活動‥‥CDセールスなりライヴの動員なり‥‥が大きな成功(勿論、「成功」にはいろんなレベルがあるし人それぞれなのは承知してるけど、敢えてここでは金銭的な意味合いで書きます)をもたらしていれば、もしかしたら周りが辞めさせなかったんじゃないか、もっと強引に止めたんじゃないか、なんて思うんだけど‥‥何アホなこと書いてるんだろうな(苦笑)。

 正直は話、俺は4人になってからのPENPALSをライヴで観たことも、そして音源を聴いたこともないような人間です。東芝に移籍した後の「2nd coming」を最後に、新しい音源には手を出してませんでした。そこにはCCCDでのリリースというのも大いに関係してるんですが‥‥やはりこのアルバムでひとつ、自分の中で何かが終ったような気がしてたんですよね。「とみぃの宮殿」時代のレビューでも書きましたが、やはり自分にとってのPENPALSって‥‥英語歌詞時代の、「AMERICAMAN」や「RIGHT NOW」辺りまでなんですよね。嫌いじゃないけど「PAST LAST SUMMER」辺りで「ん、ちょっと違うんじゃ‥‥」という違和感を感じつつ勢いにやられて‥‥「2nd coming」で完全に抜け切っちゃったんだな、と。ま、それは俺の趣味の問題であって、個人の勝手な理由でしかないですけどね。

 久し振りに「RIGHT NOW」を引っ張り出して聴いてるんだけど‥‥やっぱりいいアルバムだなぁ、と。全部英語だからとかそういう理由ではなく、なんだろう‥‥パンクでもガレージでもオルタナでもない、『PENPALSらしさ』を完全に確立した作品だと思うんですよね。で、そこから更に1歩先に進んだのが「PAST LAST SUMMER」であり、更に突き抜けちゃったのが「2nd coming」以降だったのかな、と。そういう意味じゃ、初期2枚の(良い意味での)アングラ感を薄めていき、程よいメジャー感が全体を包む「RIGHT NOW」ってのは絶妙なバランス感なんですね。だから好きなのかも知れないな。勿論1stも「AMERICAMAN」も大好きなんだけどね。

 ラストステージの12/30‥‥やはり観ないわけにはいかないと思う。決して今でも1番好きとか特別視してたバンドではないけど、やはり一時でも「このアルバムスゲーなぁおい!」と思ったことのある人間として、落としまえつけに行かないと。



▼PENPALS「RIGHT NOW」(amazon

投稿: 2005 10 21 01:30 午前 [1999年の作品, PENPALS] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/04/02

ギターウルフ『ジェットジェネレーション』(1999)

 ギターウルフ、メジャーから2枚目のアルバムとなる「ジェットジェネレーション」。数ある彼等のアルバムの中で一番オススメなのは?と問われると‥‥非常に困るわけですよ。だってRAMONESと一緒で、俺にとってはどれも素晴らしいし、どれもカッコいい‥‥いや、どれも一緒とか言うなやそこ! いいんだよ、RAMONESとMOTORHEADとAC/DCとギターウルフは、毎回内容一緒で曲名だけ変えてアルバム出しても!(いや、実際には違いますよ。それとこれ、バカにしてるわけじゃないからね、最高の褒め言葉だからね!)

 一番のオススメは?と問われたら「全部!」と答えるだろうけど、一方「一番好きなアルバムは?」と問われたら‥‥そりゃもう、この「ジェットジェネレーション」と答えるわけですよ。理由? そんなのない! 好きに理屈はいらないでしょ?

 ‥‥いやゴメン。それはちょっとあんまりだな。理由は‥‥というか、単に思い入れとか、聴いたタイミングとかですね。うん、よく行くクラブで "ジェットジェネレーション" や "カミナリワン"、"環七フィーバー" あたりがよくかかってたから、かな‥‥それまでアルバムを自分で買ってまで聴くタイプのバンドではなかったんだけど、妙にね‥‥惹かれたんだわ。ホント、タイミング的なものだよね。

 思えば先日のソニマニでもこのアルバムからは "ジェットジェネレーション" やら "環七フィーバー" やら "冷蔵庫ゼロ" なんてやってたんだよね。アルバムは随分と聴いてなかったし、最近の作品は日本ではCCCDだったんで手にすることもなかったんだけど、やっぱりライヴでの彼等は爆音を超えた爆音で我々を魅了し、そして我々の耳をぶっ壊して、次に登場するバンドを聴く態勢にさせてくれないという‥‥ホント、嬉しいやら迷惑やら。カッコいいんだけどね‥‥数日耳がヤラレっぱなしだったもんね。レイプだよレイプ! 俺の耳がレイプされてるよ!‥‥ってな感じ。それがギターウルフのライヴであり、サウンドであり、バンドそのものなわけですよ。

 けどね‥‥気持ちいいのよ。曲はメロウでポップだし(ライヴじゃ耳がヤラレてそれすら判らなくなっちゃうんだけど)、ステージでの3人の佇まいは最高だし。ロケンロールに必要な要素全てがあるじゃないですか! 男臭いけどさ、美しいのよこれが!!

 今、このアルバムを爆音で聴きながら、二度と観る事ができないであろう「あの3人の」ギターウルフの在りし日を思い浮かべてます。本当なら今日、渋谷でまた観れる可能性があったのにね‥‥

 合掌なんてしないよ。ご冥福をお祈りしますなんてことも言わないよ。俺等らしいお別れの挨拶をしようじゃないか‥‥

 ロケンローッ!



▼ギターウルフ「ジェットジェネレーション」(amazon

投稿: 2005 04 02 12:30 午前 [1999年の作品, ギターウルフ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/21

とみぃ洋楽100番勝負(95)

●第95回:「My Name Is」 EMINEM ('99)

 まさかエミネムが音楽業界的に、こんなにも大きな存在になるなんて‥‥この曲が出始めた頃は想像も出来なかったよね。単純に、白人で面白いラッパーが出て来たなぁ‥‥くらいにしか思ってなかったのに。デビューから約5年。4枚のアルバムと1枚の映画サントラ、そして主演映画‥‥アメリカでは社会現象にまでなって、日本でも'01年のフジロックの大トリを務めちゃったりしたんだからさ。あの時点でそこまで大きくなるって信じてた人がいたら、是非会ってみたいよ。

 最初は誰が歌ってるとか、どんなキャラクターの男だとか全然知らなかったんだよね。よく行くクラブイベントでこの "My Name Is" っていう曲がよくかかってて。面白い曲だなぁ、ポップな曲でいい感じだなぁ、これなら俺にも馴染めるな‥‥とか好意的に感じてたのよ。で、暫くしたらビルボードのシングルチャートでトップ10入りしてて。2位まで上がったんだっけ? そりゃビックリですよ。普段ヒップホップとかそんなにかかるイベントじゃなかったし(ロック系だったからね)、そんな中でしょっちゅうかかってたから、DJがよっぽど気に入ってるか、あるいは何か理由があってかけ続けてるのか‥‥ま、普段ロックしか聴かないような奴らはこの曲になるとフロアから離れてって、新しい音に敏感な奴らだけがこの曲に合わせて踊ってたんだけどさ。俺は‥‥その状況を眺めてた、というか。まだ自信がなかったんだよね、これが「クる」かどうか‥‥いや、そういう問題じゃなかったんだけど。

 その後の彼の曲と比べればかなりシンプルなバックトラックでかなりスカスカなんだけど、逆にそこが良かったのかな。何だろ‥‥それまで白人ラップというと、俺の中ではBEASTIE BOYSとHOUSE OF PAINくらいしか思いつかなかったし、それくらいしか通過してないんだけど‥‥これなら楽しめる。そう直感で思ったんだよね。事実、後でこれが誰の何という曲なのか、DJに聞いて、後日CDショップでアルバム買ってるしね。

 今となっては別に珍しいことじゃないけど、やはりあの頃はロックファンが「エミネムっていう奴、面白いよね?」と声を大にして言えるような空気じゃなかったよね。どっちかっていうと、ラップメタル的なLIMPBIZKITとかの方が好意的に受け入れられてたし。んでそのLIMPとエミネムが共にツアーとかするようになって、ロックファンにも認知されるようになったのかな(んで、その後両者は犬猿の仲になるんだけど)。

 久し振りにアルバム引っ張り出して聴いてみたけど、うん、これはやっぱりカッコ良いよ。聴きやすさとか親しみやすさは次作以降に譲るけど、これはこれで素晴らしいな、と。そこは譲れないよな、うん。



▼EMINEM「THE SLIM SHADY LP」(amazon

投稿: 2004 11 21 12:00 午前 [1999年の作品, Eminem, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/20

とみぃ洋楽100番勝負(94)

●第94回:「Eyeless」 SLIPKNOT ('99)

 RAGE AGAINST THE MACHINEの大成功以降、いろんなヘヴィロックバンドが世に現れ、そしてチャート的に成功を収めるわけじゃないですか。KORNにしろ、LIMPBIZKITにしろ、あるいはジャンルこそ異なるもののTOOLであったりMARILYN MANSONであったり。ひとつが当たると、また別のものといった具合に。さすがに胸焼けがしてもう受け付けなくなりつつあった中、'99年にもの凄いバンドが登場してシーンにトドメを射すわけですよ。エンターテイメントとハードボイルドな世界観を両立させた、もの凄くカッコ良くて、もの凄くアホな存在。それが俺にとってのSLIPKNOT。

 最初はNMEか「ケラング!」に付いてたサンプラーCDに入ってた音源が切っ掛けで。ルックスもさることながら(9人全員がオレンジの繋ぎとひとりひとり異なるマスクというコスチューム)、その音‥‥判りやすいようで、それでいて殺傷力抜群のサウンド。ただ叫んでるだけかと思うと、急にメロディアスになって歌い上げる展開。曲によって完全にメロコア調だったり、ドラムンベースっぽい要素があったり、ただのハードコアだったりデスメタルだったり。それまでのバンドにありそうでなかった音。それがSLIPKNOTだったわけですよ。

 判りやすいキャラ作りはKISS等から受け継いだものだし、ライヴでのアトラクション(ドラムセットが回転したり、パーカッションがせり上がったり等)はMOTLEY CRUE譲り。そして音はスラッシュやデスメタル、ハードコアやグラインドコア‥‥重さやグルーヴ感を重視したそれまでのヘヴィロック勢とは一線を画するわけですよ。だからこそインパクト絶大だったわけで。もうその登場の時点で勝利は決まったようなもんですよ。

 紆余曲折ありながらも現在まで第一線で活躍している。それ自体が凄いことだと思うし、その上ハイクオリティを維持している。音楽性は徐々に変化を見せているものの、それは単に彼等が企画ものではなく、真のミュージシャンであったことを表しているだけなんですよね。もう1stの頃みたいな初期衝動性を体験することはあり得ないだろうけど、それでも俺は彼等を支持し続けますよ。



▼SLIPKNOT「SLIPKNOT」(amazon:通常盤DVD付限定盤

投稿: 2004 11 20 12:00 午前 [1999年の作品, Slipknot, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/03/08

DAVID BOWIE『'hours…’』(1999)

'90年代の、いや、'80年代後半からのデヴィッド・ボウイは、とことんツイてなかったと思う。'80年代前半、特にアルバム「LET'S DANCE」とそのツアー、映画「戦場のメリークリスマス」での成功がもたらしたもの、それはボウイをスーパースターの座に押し上げたのと同時に、'70年代に自分がしてきたことと対峙すること、そして新しい「ボウイ像」を作り上げる為の葛藤との戦いだったように思います。「TONIGHT」や「NEVER LET ME DOWN」といったアルバムが思った以上のセールスを挙げられなかったこと、TIN MACHINEというロックバンドを組んで初期衝動を取り戻そうとしたものの短命だったこと、新しいレーベルに移籍して「BLACK TIE WHITE NOISE」というアルバムをリリースするもののレーベルが倒産してしまったこと、「OUTSIDE」や「EARTHLING」という「攻め」の作品を発表したものの古くからのファンには好意的に受け入れられなかったこと、等々。そして映画の世界でも大成功を収めるような作品には巡り会えず、とにかく「自分vs自分」というあり得ない戦いを10年以上に渡って繰り広げてきたのでした。

しかし、時代が彼に再び傾き始めます。「ヴェルヴェット・ゴールドマイン」という'70年代のグラムロックをテーマにしたセミ・ドキュメンタリー映画にボウイの楽曲を使わせて欲しいという依頼があったのです。この映画は明らかに'70年代前半のボウイとイギー・ポップのことを題材にした映画でした(その映画タイトルからしてモロですしね)。が、ボウイはこれを拒否しました。自身が過去の自分を切り売り(=過去の作品のリイシューや度重なるベスト盤の連発)する分にはいい、けど他人がそれを食い物にするのは断固として拒否する‥‥真実はどうだったのか判りませんが、とにかくこの映画にボウイの楽曲が使われることはありませんでした。

その映画が公開された頃、ボウイはこの「'hours...'」という作品作りに没頭していたようです。一部では「トニー・ヴィスコンティ(初期ボウイの作品を手掛けた名プロデューサー)がプロデュースする」「「HUNKY DORY」の頃のような作品になる」といった噂が出回り、かなり期待されていたこの作品、いざ世に出てみると一部噂とは違っていたものの、ある意味期待以上のアルバムだったのでした。

とはいっても俺、このアルバムをちゃんと聴いたの、つい最近なんですよ‥‥自称「ボウイ大好き」なくせに‥‥どうにも印象が薄かったんですよね、当時聴いたシングル曲が(多分 "Survive" だったのかな。よく覚えてないや)メチャクチャ地味で、本当に記憶に残らないような曲で‥‥それまでの'90年代の作品集3枚が非常に個性的で、現役感であったり同時代性なんかをヒシヒシと感じる傑作だと個人的に思っていたので、この酷く地味なアルバムは「多分、駄作とまではいかないけど、評判悪いんだろうなぁ‥‥」と勝手に判断して、4年近く手にすることはありませんでした。つうかそもそも、その後彼の「新作」を手にするまで本当に4年以上もの歳月を要することになるんですが‥‥

'03年秋に「REALITY」という「新作」がリリースされ、また久し振りの来日公演もあるってことで、思い切って買ってみたらこれがかなり良くてビックリで。思わず「HEATHEN」とこの「'hours...'」を買い揃えちゃいましたからね。特にこの後者(このアルバム)なんて、近所の中古屋で50円で売られてた程でして‥‥まぁどんなに酷くても、50円なら許せるか、ボウイだしな‥‥って納得して。

ところがね、これが50円どころじゃないんですよ。ちゃんと定価相応の内容だったと。確かに1曲目 "Thursday's Child" の歌い出しでの、完全に枯れ切ったボウイの声にはちょっとショックを受けましたが(その後の作品が生き生きとしてるだけに、余計ね)、ここに収められている楽曲には合ってるんですよね、この感じが。

「'hours...'」という時間をテーマにしたタイトル、若き日のボウイが年老いたボウイを優しく抱きかかえているかのようなジャケット、別れや旅立ちといった「区切り」についての内容が多い楽曲達。かつて、何度も過去と決別しようとしたボウイ。今までのボウイはそれを皮肉っぽく、そして時には苛立ちながら実行してきたけど、このアルバムではそういった自虐さは感じられる、むしろそれを全面的に、体全体で受け止めようとしているような印象が強く、更に楽曲のタイプが前述の「HUNKY DORY」期‥‥グラム前夜‥‥を思わせるような作風のため、余計に温かみを感じるんですね。

当初はゲームのサントラとなるはずだった楽曲群が、作っていくうちにドンドンいい曲が出来上がっていったため、急遽オリジナルアルバムへと変更になった、というのがこのアルバム制作のいきさつらしく(実際、同時期にヴィスコンティとも仕事をしていたという話だし)、その割りには想像以上にオーガニックなサウンドで構成されているんだよね。中には前作までのテクノロジー路線を彷彿させる "The Pretty Things Are Going To Hell" なんて曲もあるんだけど、基本はミドルテンポでじっくりと歌を聴かすタイプがメイン。頭2曲("Thursday's Child" と "Something In The Air")が非常にムーディーでどことなくソウルフルな印象だったり、"Survive" や "Seven" といった楽曲ではアコースティックを基調としながらも力強くロックしているイメージがあったり、7分もある "If I'm Dreaming My Life" はムーディーなスタートを切りながらも途中でストレートなロックチューンへと展開していったり、"The Man Who Sold The World" を現代的にしたかのような "What's Really Happening?"、オリエンタルな雰囲気のインスト "Brilliant Adventure"、どことなく前作までのイメージを引きずってるかのようなストレートなロックチューン "The Dreamers" 等。全体的にストレートな印象が強くて、そこがイマイチって人が多いらしく、まぁ確かにこれまで‥‥特に前作までの作り込みを考えれば、ここにある楽曲はシンプル且つストレート、聴く人によってはそのまま聴き流してしまいそうな作風であるのも確か。けど、ここで自分を見つめ直したからこそ、続く「HEATHEN」や「REALITY」があるんだよな、とさえ思える今日この頃。いやいや、このアルバムは「'90年代のデヴィッド・ボウイ」を語る上で、なくてはならない1枚ですよ。むしろ、「OUTSIDE」や「EARTHLING」以上にね。

個人的には "Seven" という1曲のためだけに買っても損はしない1枚だと思ってます。歌詞のテーマといい、シンプルな構成といい、全体の雰囲気といい、全てが特別なものであり、聴く人によっては「最高に輝いている1曲」であり、またある人にとっては「あるアーティストの『本当の』死を実感させる1曲」なんだろうな、と‥‥残念ながら現在行われているツアーでは、このアルバムからは1曲も演奏されていないようですが‥‥それでいいんだと思います。多分、二度と演奏されることのない楽曲ばかりだと思いますが、だからこそ意味を持つんですからね‥‥



▼DAVID BOWIE『'hours…’』
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投稿: 2004 03 08 07:35 午前 [1999年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2004/02/09

SKUNK ANANSIE『POST ORGASMIC CHILL』(1999)

今回紹介するこのSKUNK ANANSIE。既に2001年春に解散しているバンドで、この「POST ORGASMIC CHILL」というアルバムは'99年春に日英で(アメリカは夏)リリースされた通算3作目にしてラスト作となってしまった1枚。当時、殆ど話題にならなかったように記憶してるんだけど‥‥悪いけどこれ、名盤よ? もし彼らの存在すら知らなかったって人がいたなら、まず無知な自分を恥じないと。それくらいいいバンドだったんだから。

所謂「ラウドロック」「オルタナティヴ」の範疇に入るバンドなんだろうけど、このバンドが異色だったのは‥‥文字通りスキンヘッドという出で立ちで我々を威嚇/魅了した紅一点・スキンというシンガーの存在でしょう。見た目完全に強面なのに、話すと非常に女の子らしい繊細さを見せる。喧嘩強そうなルックスに相反して実はかなり知的。そういった二面性を持ったフロントマン。しかも彼女の歌が凄い。まずはこのアルバムを黙って聴いて欲しいな‥‥俺が言いたいこと、嫌という程判ってもらえると思うから。

1曲目の "Charlie Big Potato" は、イントロのインダストリアル調SEだけ聴くと「ラガマフィン風?」とか「ドラムンベース??」なんて声が聞こえてきそうだけど、その先に待ち構えてるのは、戦車の如く重厚なヘヴィサウンド。更にその上を滑らかに這いずり回るスキンのボーカル。時にエロティックに、そして時にヘヴィメタルばりのハイトーンで圧倒する。この1曲でノックアウトされなかったら嘘だと思う。実際、このアルバムがリリースされた年のフジロックに彼らは出演してるんだけど、殆どがノーマークだった彼らのステージ、この曲でオープニングを迎えると‥‥曲がドラマチックな展開を見せるに連れて、客が後ろの方からどんどん前へと駆け寄ってくのね。あれを目撃した者としては本当に圧巻でしたよ。

でね、ただヘヴィなだけじゃない。完全な歌モノといっていいポップな "Lately"、ストリングスがドラマチックな展開をサポートするスローな "Tracy's Flaw"、ちょっとインダストリアル風な "Secretly"、アコースティックやストリングスを導入したことでよりスキンの歌の繊細な部分が浮き上がった名バラード "You'll Follow Me Down" や "I'm Not Afraid"。こういった「歌」を中心に据えた楽曲と、先のヘヴィでラウドな楽曲が半々で存在している。しかもどちらか一方に偏ることなく、またどちらか一方がもう一方の邪魔をすることもなく、非常に良いバランスでアルバムが構成されている。楽器隊の頑張りも凄いんだけど、やはりここはスキンというシンガーの存在感が全てなんでしょうね。彼女以外のシンガー‥‥男性でもいいし女性でもいい‥‥が同じことをやってたとしても、ここまで上手く機能してなかったんじゃないか‥‥そう思わせる程の内容なのですね。

決して気軽に聴けるタイプの音楽じゃないと思います。特に頭3曲("Charlie Big Potato"、"On My Hotel T.V."、"We Don't Need Who You Think You Are")の怒濤の攻めは呼吸するのを忘れてしまう程の威圧感ですしね。アメリカの同系統のヘヴィロックバンドと比べても何ら劣る部分はないし、むしろ当時こういうタイプのバンドってアメリカには少なかったと思うんですね。みんなKORNやlimpbizkitといったデスやヒップホップの方向に走ってたじゃないですか。RAGE AGAINST THE MACHINEからアイディアを拝借してる部分も少しはあるでしょうけど、根本にあるのはスキンという類い稀なるシンガーの存在ですから。アメリカでも若干遅れてこういった「ラウドロックにメロディアスな歌モノ」という方向性が登場し、この1年でEVANESCENCEのようなタイプまで登場しています。残念ながらSKUNK ANANSIEはアメリカで大成功を収めることはありませんでした。アルバムの知名度もイマイチでしょうし‥‥だからこそ、俺みたいな奴が忘れ去られないように、ここでこうやって紹介する‥‥もしこれを読んで「じゃあ聴いてみるかな‥‥」って思ってくれる人がひとりでもいたなら‥‥

最後に解散後のメンバーの近況など。スキンは昨年ソロアルバムをリリース、8月には「SUMMER SONIC」でソロとしての初来日公演を行うはずでしたが、直前になってキャンセル。その後影を潜めています。アルバムも日本/英国共にCCCDだったお陰で未だに聴けずにいます。サウンドの要だったギターのエースはプロデュースやセッション等を行いながら、昨年「STILL HUNGRY」というソロアルバムをリリースしました。これは各曲にいろんなシンガーをフィーチャリングした、如何にもギタリストらしい1枚となっています。

今後、再結成することなないと思いますが‥‥やっぱりロックンロールするスキンが観たいよなぁ、もう1回。



▼SKUNK ANANSIE『POST ORGASMIC CHILL』
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投稿: 2004 02 09 04:27 午後 [1999年の作品, Skunk Anansie] | 固定リンク

2004/02/03

宇多田ヒカル『First Love』(1999)

宇多田ヒカルのデビューアルバムにして、約800万枚という天文学的な大ヒットを記録した「First Love」という作品について今更何かを書いてみるというのは、なんだか変な気がするんだけど、彼女のライヴをこれから初体験する身としては、ここで改めて彼女の音楽について冷静に見つめ直すいい機会なのかもしれない‥‥そう思い、2/10までの間に「宇多田ヒカル」名義でリリースされた3枚のアルバムについて、順を追って書いていきたいと思います。

というわけで、まずはこのファーストから。ご存知の通り、ここに収録されている殆どの楽曲が宇多田が15才の頃に制作されたもので(リリース時には16才になっていた)、全楽曲の作詞作曲は全て彼女自身の手によるもの。アレンジ的にも当時主流だった(って今でもか)「本格的R&B路線」と呼べるような流れにあるもの。だけど、一筋縄ではいかない感じ‥‥例えば当時大ヒットを記録していたMISIA辺りと比べても(いや、比べること事態がおかしいとは思うけど、敢えてってことで)ストレートな「R&B路線」を突き進んでいたMISIAに相反し、宇多田の方はもっと柔軟性を持ったポップス寄りかな‥‥という気が。どっちが勝っていてどっちが劣っているという問題ではなく、同じ「R&B」をテーマにしながらもそれだけ両者の音楽性には開きがあるということ。よく「ディーヴァ」とかいうのが大勢蔓延ることが多いその筋の世界ですが、如何に宇多田の音楽が独特なものだったかが伺えるポイントかもしれませんね。

例えば彼女がよく名前を挙げる尾崎豊であったり、ライヴでもカバーする機会があったU2等、そういった国内外のロック/ポップスからの影響が強いのも、彼女の強みかもしれません。歌詞‥‥まだここでは15才という年齢通りの「幼さ」が残るものではありますが‥‥に見られる独自性も、同じく15才でデビューした尾崎を彷彿させるものがあるし(表現方法や内容は全く別ものですけどね)、恐らくは制作スタッフの大人達によるものだろうけど、ROLLING STONESやスティングを引用したアレンジを用いたり等、確かに当時他のR&B系女性シンガーにはない要素を沢山持っていたんですよね。そしてこれより後、このアルバムがひとつの「グローバル・スタンダード」となったのも確か。「First Love」以前/以後とでは、やはりJ-POPでの女性ボーカルものの流れやスタイルが変化していったのは紛れもない事実。そりゃ800万枚も売れたんだもん、それだけ多くの人間が注目するわな普通。

上にも書いたように、音楽的にはR&Bの要素が強いデビュー曲 "Automatic" や "Movin' on without you" といったシングルナンバーを軸とした流れの中に、尾崎の "I LOVE YOU" にも匹敵する名バラード "First Love"、ロック色を強く感じさせる "甘いワナ ~Paint It, Black"、ポップで切ないメロディを持つ "Give Me A Reason" 等、R&Bという軸を中心に持ちながらもいろんな装飾を纏おうとしてる辺りに、その後の片鱗を伺うことができるでしょう。正直な話、このレベルのアルバムがその後の5年程で、一体どれだけ世に出たでしょう‥‥彼女のアルバム「Distance」や「DEEP RIVER」以外でですよ? そういう意味では、それだけレベルが高い「グローバル・スタンダード」だったんだな、と今更ながらに思うわけです。

しかしながら、こうとも思うわけですよ‥‥これ、800万枚も売れるような内容かな、と。勿論、今聴いても素晴らしいと思うし、それに対しては疑いの余地はないと思うんですが‥‥多少、いやかなりメディアに踊らされたかな‥‥という気がしますね。いろんな要素が重なって、メディアに取り上げられることによって話題となり、更に「○○万枚突破!」とかテレビや新聞で煽れば、そりゃ「聴いてないとマズい!」くらいに思っちゃうでしょうね、普通の人達は。その積み重ねが800万枚だったんだろうなぁ‥‥ベスト盤でもない、ポッと出の新人のアルバムが、こんな短期間でこれだけ売れちゃうという事実は、やはり異常だと思いますね。その結果が次作での浜崎あゆみとの一騎打ちであり、そして「一人勝ち」という非常にマズい状態を引き起こすことになるんですからね‥‥業界の自業自得、といってしまえばそれまでですけどね。

まぁ800万枚に値する内容かどうかは別として、やっぱりいいもんはいい。それで十分ですわ。だってリリースから5年経った今聴いても全然「アリ」ですからね!



▼宇多田ヒカル『First Love』
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投稿: 2004 02 03 12:00 午前 [1999年の作品, 宇多田ヒカル] | 固定リンク

2003/11/02

STATIC-X『WISCONSIN DEATH TRIP』(1999)

アメリカ出身の(多分)ラウドロック(で括られるであろう)バンド、STATIC-X。その彼等が'99年春にリリースしたファーストアルバム「WISCONSIN DEATH TRIP」。日本でのリリースが同年8月末ということから、如何にこのバンドが当時のレコード会社から優遇されていなかったかが伺えるんじゃないかと‥‥実際、俺もこのバンドのことを知ったのは'00年に入ってから。よくCSや地上波のPVを流す番組で、このアルバムに収録されている "Push It" と "I'm With Stupid" のPVを目にするようになったからなんですが。勿論、バンドの存在自体は知ってましたし、このアルバムジャケットも何度か目にしたこともあります。けど音を聴いたのはそのPVを観た時が最初で。またlimpbizkitやKORNの亜流が出てきたよ‥‥と最初は思ったんですが、何度か曲を耳にするうちに、気づくとハマッてる自分がいたんですね。特にこの2曲、妙な常習性を持ってるんですよ。

音だけでなくバンドのビジュアルもまた「おおっ!」と唸らせるものを持ってまして‥‥如何にもデスメタルバンド出身って感じのむさ苦しくて小汚いルックスの奴(実際、STATIC-X加入前はデスメタルやってたらしい‥‥)から、ちょっと日本のビジュアル系を彷彿させる髪型のボーカル(‥‥けど小汚さそう)、日系人ぽいルックスの奴‥‥って思ってたら、このギタリストが本当に純粋な日本人でして。福田耕一という方で、'90年頃にボストンの「バークレー音楽学校」入学の為に渡米、その後現地で音楽活動を続け、最終的にSTATIC-Xに加入、それが'96年のことだそうです。

もうね、そういうの知っちゃうと俄然応援したくなっちゃうのが日本人気質っていうか‥‥実際このアルバム、アメリカでも100万枚に届きそうな程売れたし、かの「OZZ-fest」にも2年連続で出演してるんですね(しかも2年目はメインステージ!)。そして'00年9月には福田氏にとって初の凱旋となる来日公演をPOWERMAN 5000と行ったりして。確実にバンドとしての成功を手にしたと思ったのも束の間、帰国後すぐにその福田氏が脱退。現在もアメリカで音楽活動を続けているそうです。

まぁそういった話はここまでにしといて、ここからは音楽の話を。上のサブタイトルにも書いたように、彼等のサウンドを判りやすく表現するとああいう公式になるんですが‥‥聴く人によってラウドロックにしか聞こえなかったり、またある人が聴けば「テクノっぽい反復が多い、PRODIGYとかMINISTRY辺りの流れを組むデジロック」とカテゴライズするだろうし、またある人には「‥‥ゴスじゃん、ゴス!」ってことになったり。勿論そういった要素そのものっていうわけではないんですが、それぞれの面を十分に持ちつつも、何か新しいことにチャレンジしようとしてる。所謂ラウドロックが皆ヒップホップからの流れを重視してるのに対し、STATIC-Xはデジタル面(打ち込みと同期させたバンドサウンド)を強調し、尚かつゴシック調要素もメロディに取り入れ、しかしギターはラウドという。確かにそれまでのラウドロックと比べれば違った匂い・色合いを感じさせる存在だったわけですよ。勿論、彼等の前にはNINE INCH NAILSという先駆者がいたわけで(まぁNINをラウドロックの括りに入れるつもりはないですが、あくまでルーツのひとつってことで)、まだまだそういった「オリジネーター」の足下にも及ばないとは思うんですが、それでも十分に魅力的なサウンドと楽曲を持った個性的なバンドだと思いますよ。

そういえばメンバーは昔、デビュー前のSMASHING PUMPKINSとも親しかったという話もあるので、最終的に進んだ道は全くの別物になってしまったものの、そのルーツはスマパンもこのSTATIC-Xも一緒なのかな‥‥って気もしたりして。共にゴシックの要素が強いバンドですしね。

このアルバムのクレジットの中に「Bands we play with and love」という項目があって(一緒にライヴをやったりしたバンド、そして愛してやまないバンド、という意味でしょう)、そこには同業者と呼べるであろうPANTERAやSYSTEM OF A DOWNの名と共に先のPRODIGYやMINISTRY、CHEMICAL BROTHERSといった同時代のテクノ系アーティストの他にJOY DIVISION、SISTERS OF MERCY、そしてBLACK FLAG、JANE'S ADDICTION、PRONGといったアーティストの名前も挙がってるんですね。ほら、何となく見えてきません、STATIC-Xのアルバムを聴いてるとこういった先陣達との繋がりが‥‥



▼STATIC-X『WISCONSIN DEATH TRIP』
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投稿: 2003 11 02 04:42 午後 [1999年の作品, Static-X] | 固定リンク

2003/09/02

太陽とシスコムーン『Taiyo & Ciscomoon 1』(1999)

  今現在どれくらいのユニット/グループがハロー!プロジェクトにあるのか正直数えてみようなんて思えない程、拡散への道を突き進む現在。モーニング娘。がデビューして1年くらい経つまで、ハロプロには平家みちよ('02年秋にハロプロ卒業)とモーニング娘。しかいない状態。グループ内ユニットとしてタンポポや中澤ゆう子のソロ活動はあったものの、基本的には「モーニング娘。ありきの団体」というのが通説でした。が‥‥今では考えられないかもしれませんが、そんなモーニング娘。に肉迫する勢いとセールスを持つグループが'99年初頭、ハロプロ内に誕生します。それが今回紹介する太陽とシスコムーン(後のT&Cボンバー)です。そう、まだ松浦亜弥も、そして後藤真希も加わる前のことです。

  デビュー後、立て続けにシングルを5枚("月と太陽"、"ガタメキラ"、"宇宙でLa Ta Ta"、"Everyday Everywhere"、"Magic of Love")をリリース、特に最初の3曲は全てチャートのトップ10にたたき込んでいます。そして'99年10月末、そう、"LOVEマシーン" バブルが弾けまくっている真っ直中に満を持してリリースされたのが、この「Taiyo & Ciscomoon 1」というアルバム。こっちもチャート初登場3位を記録、約20万枚ものセールスを記録してます。

  太シスは当初、モーニング娘。では表現しきれないような「大人の女性」をイメージして、社会経験のある‥‥芸能人崩れだったり民謡の師範だったり元オリンピック選手だったり外国人だったりする20代の女性4人を集めて結成されたグループ。歌も今のハロプロとは比べものにならない程レベルが高いし、何よりも楽曲のクオリティーなりコンセプトなりがしっかりしてるんですね。例えばモーニング娘。みたいにシングル毎に路線を変えたりしないし、誰かがセンターになるというようなこともない。言い方を変えれば「常にセンターの取り合いバトル」を1曲の中で繰り広げてるような。そんなイメージが強いんですね。

  このアルバムと同じ頃、モーニング娘。は所謂ダンス☆マン路線に移行していくわけですが、こちらはファンクというよりもディープでアーバンなR&Bといった印象。シングル曲を聴いてもらえば判りますが、とにかく「歌」ありき。アレンジは今聴くとちょっと安っぽいものもありますが、例えば‥‥この半年後にリリースされるモーニング娘。のアルバム曲の、プロトタイプと呼べるような楽曲が見受けられたりします。しかし、こっちの方が表現的により極太といった印象を受けます。とにかく強い。そんなイメージがありますね、太シスには。

  シングル曲のクオリティーは言うまでもなく、ちゃんとアルバム曲のクオリティーも高い。アルバム全体としてはシングルの5曲を軸にしながら、その隙間を拭うように‥‥シングルで与えたイメージとは違った面をいろいろ感じさせられるような新曲を用意し、更にオープニングとエンディング、更に曲間に幾つかインタールードを挿入(この辺もモーニング娘。の次作で再チャレンジしてますしね)等、とにかく「ひとつの作品」として徹底的にトータルクオリティの高いものを作ろうとする気合いが強く感じられるんですね。悪い言い方になっちゃいますが‥‥今みたいな「ベルトコンベアー式に毎週毎週新曲を量産する」態勢になる前の、ひとつの奇跡‥‥とは言いすぎでしょうか? それくらい、このアルバムは優れていると思ってます。

  当時、「ASAYAN」や歌番組で彼女達を観ていたし、また歌も聴いていたわけですが、今ほど真剣に聴いていなかったからか‥‥そこまでいいとは思ってなかったんですよ。ところがこの1年くらい、このアルバムと続くセカンドアルバム「2ND STAGE」を聴く頻度が非常に高いんですね。下手するとモーニング娘。のオリジナルアルバムや他のユニットのアルバム以上に。アイドルとかハロプロとかそういった枠組みで語るべき作品ではなく、もっとこう‥‥例えば最近の「R&B的ガールズポップ」の枠で語っても十分に機能する1枚だと断言できます。とにかく一度聴いて! 話はそれから。

  最近ZYXのシングルが気に入った人。ああいうタイプの楽曲が好みの人。絶対に気に入ると言い切れます。だってあそこで歌ってる"ガタメキラ"、太シスがオリジナルだよ!?

  それにしても‥‥'99年ってつんく♂にとって、本当に充実且つ激動の年だったんだなぁ。だって、ハロプロの歴史の中でも特に名盤として挙げられることが多いアルバム3枚(タンポポ「TANPOPO 1」、モーニング娘。「セカンドモーニング」、そしてこのアルバム)や "真夏の光線" や "LOVEマシーン"、"ちょこっとLOVE" といった楽曲を世に発表し続けてたんだから‥‥昔は良かったとか死んだ子供の歳を数えるような真似をしたくないんだけど‥‥やっぱりこれを聴いちゃうと‥‥ねぇ?



▼太陽とシスコムーン『Taiyo & Ciscomoon 1』
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投稿: 2003 09 02 12:00 午前 [1999年の作品, ハロー!プロジェクト, 太陽とシスコムーン(T&Cボンバー)] | 固定リンク

2003/08/11

JEFF BECK『WHO ELSE!』(1999)

'60~'70年代に所謂「三大ギタリスト」と呼ばれた、現在ではもやは大御所といえるエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、そして今回の主役ジェフ・ベック。彼等は'60年代にYARDBIRDSというバンドに在籍していたことから(また、その後の独特な活躍から)そのように呼ばれることになったわけですが‥‥クラプトンはここ日本では今や何も説明は要らない程有名ですし、ジミー・ペイジは最近またまたLED ZEPPELINの蔵出し音源&映像集リリースで話題になったばかり。そのプレイの非凡さとかアイディアとか、確かに有無を言わさぬ説得力がありますよね(ま、現在の技量云々はこの際無視します。じゃないと可哀想過ぎる人が若干名いるんで‥‥)。

ところが‥‥このジェフ・ベックって、今10代のギターキッズ(なんて言葉、今時浜田省吾やB'zくらいしか使わないような死語になったなぁ‥‥)にとってどういう存在なんでしょうかね? というのも数年前、とある高校生のロック好き少年に「三大ギタリストって知ってる?」と尋ねたところ、「クラプトン、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモア」という、ちょっと悲しくなるような答えをされたもので‥‥いや、リッチーでもいいんですけどね、個人的には(いやよくないか)。

かくいう自分も、中学~高校生の頃にはジェフ・ベックの良さってイマイチ判ってなかったんですよね。丁度自分が高校3年の頃、「GUITAR SHOP」というアルバムを出し、それを聴いてちょっと「あ、いいかも」と思えて、丁度来日公演があったんで観に行ったんですよ‥‥その時のメンツというのがベックの他に、かのテリー・ボジオ(フランク・ザッパ・ファミリーで、後にスティーヴ・ヴァイやかのhideと共に活動したりレコーディングしたり等する程の名ドラマー)と旧友トニー・ハイマス(Key)というトリオ編成だったんですが‥‥本当に凄くて、文字通りカルチャーショックを受けたんですよね。後にクラプトンやペイジ、リッチーのプレイも実際に観ることになるんですが、ベックの時以上の衝撃は受けなかったですからね。

そんなベック、その'89年以降オリジナルアルバムってずっと出してなかったんですよ。ジョン・ボン・ジョヴィの初ソロに参加したりとか、企画モノのカバーアルバムを作ったりとかはあったんですが、自身がメインとなってオリジナル曲をプレイするアルバムというのは、結局その10年後‥‥'99年までお預けになるわけです。

というわけで、今回紹介するのがその'99年リリースのオリジナルアルバム、「WHO ELSE!」。恐らくこのアルバムも、当時通っていたロック系クラブイベント「CLUB K」でアルバム1曲目"What Mama Said"に出会ってなければスルーしてたと思うんですよ。

だってね‥‥俺、クラブ系のダンスミュージックは別にインストでも全然平気なんだけど、フュージョン等のインストものってメッチャ苦手なんですよ。一時期、バイト先でそういった音楽ばかり聴かされてた時期があったんですが、絶対にダメでしたもんね。元来歌モノが好きってのもあるんだけど、あと「踊れるか否か」ってのも結構重要になってくるんですよ。だからテクノOK、P-FUNKみたいな延々インストパートがインプロで続くソウルやファンクもOK、みたいな。

そういった観点からすると、ジェフ・ベックのアルバムってのもギター・インストだしダメなんじゃ‥‥って思われるでしょうけど、これがね、違うんですよ。基本的にベックのアルバムって「踊れる」のよ。いや、例外も勿論ありますよ。けどね‥‥第2期JEFF BECK GROUPとか、滅茶苦茶ファンキーだし、クラブとかで "Got The Feeling" がかかっても、気持ちよく踊れるわけですよ。何ならマッドチェスター辺りの曲と並べても、多分全然違和感ないと思うのね。

そんな「踊る/踊らせる」という感覚が無意識の内に備わっていると思われる彼のプレイ(敢えて『楽曲』ではなく、彼の『ギタープレイ』)が、現代的な表現方法と旧来の表現方法とが見事に融合して1枚の作品として完成されているのが、このアルバム。例えばアルバム1~2曲目("What Mama Said"と"Psycho Sam")や7曲目"THX138"なんて、モロに昨今のテクノ系ダンスミュージックを意識した作風になってるし、しかも単なる「オヤジが若ぶってる」ような代物ではなくてちゃんと「ジェフ・ベックらしさ」を堪能できる楽曲として完成されてるんですよね。かと思うとライヴテイクをそのまま収録してしまったスローブルーズ"Brush With The Blues"なんてのもあれば、変拍子が入ってるんだけど気持ちよく踊れそうな"Blast From The East"や"Hip-Notica"、ちょっとレゲエっぽいリズムを持ったムーディーな"Angel (Footsteps)"、ヘヴィでグルーヴィーなリフがカッコいいロックチューン"Even Odds"、男臭い優しさを存分に味わえるラストのスローナンバー2連発("Declan"と"Another Place")等々‥‥非常に緩急に富んだアルバムになってるんですよ。

ダンス系でもこういった作風のアルバムってあると思うんですよ。俺ね、このアルバムってそういったアルバム達にも引けを取らない、滅茶苦茶優れた1枚だと思うんですね。だってさ、曲の大半を作ってるのとかアレンジのアイディアなんかの殆どは共同プロデューサーや参加した若手ミュージシャンによるものだと思うんですが、それに無理なく対応出来て、しかもそういった楽曲にしっかり自分の『色』を加え、違和感なく聴かせてしまう‥‥リリース当時54才のオッサン(というよりも、下手すりゃおじいちゃんの領域ですよ!?)の作品ですよ、これ!

しかもね、これに続くアルバム(翌'00年リリースの「YOU HAD IT COMING」と、先日リリースされたばかりの新作「JEFF」)でも、更に現代的な音楽にチャレンジしてるんですから‥‥ブルージーな曲を弾かせれば勿論それなりに枯れた「ベックらしい」プレイを聴けるわけですが、敢えてそっちに行かずに時代と対峙していこうという心構え‥‥是非「過去の遺産を食い潰すことしか脳のない」薄らハゲのオッサンにも見習って欲しいものですね♪

最後に‥‥このアルバムとの出会いを与えてくれた、梯一郎氏に最上級の感謝を。



▼JEFF BECK『WHO ELSE!』
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投稿: 2003 08 11 02:55 午前 [1999年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク

2003/07/13

OBLIVION DUST『REBORN』(1999)

  OBLIVION DUSTが'99年12月にリリースしたサードアルバム、「REBORN」。KEN LLOYD(Vo)、KAZ(G)、RIKIJI(B)、FURUTON(Dr)という黄金期メンバーによる第1作目でもあるこのアルバムは、それまでの2枚(ファースト「LOOKING FOR ELVIS」とセカンド「MISERY DAYS」)以上に攻撃的であると同時に、過去最高にポップな作品集でもある、彼等の個性を決定づけた1枚になっています。

  OBLIVION DUSTというと、ギターのKAZがhide with Spread Beaverに参加していたこともあり、また元LUNA SEAのJがお気に入りとして名前を挙げる等、ビジュアル系の範疇で語られることの多かったバンドですが、実はかなりハード&ヘヴィなバンドだったわけですよ。聴かず嫌いで敬遠してきた人も多かったんじゃないでしょうか? このバンド、実は洋楽指向の人にこそ聴いて欲しかったバンドなんですよね。

  例えば、ボーカルのKENはハーフということもあり、英語が堪能。ファーストアルバムの殆ど、及びセカンドアルバムの全曲を英語詞で歌っており、発音に関しては当然文句なし。「ロックは英語じゃなきゃ!」と拘る方々には打って付けですよね。

  しかもサウンドの方も、'90年代後半以降に登場したラウド系の影響を良い意味で受けつつ、殆どの楽曲を手掛けるKAZの日本人的繊細さを強く感じさせるポップなメロディセンスとの組み合わせは、他に類を見ません。ギターソロが全くない、という点に於いても独特な個性を感じるし、バラエティ豊かな楽曲群からも「ヴィジュアル系」にも「ラウド系」にも属さない、唯一無二な存在感を感じ取ることができます。

  特にこのサードアルバムは、シングルヒットというものに積極的になっていた時期だったようで、ここに収められた3枚のシングル曲("YOU"、"GOODBYE"、"CRAZY")は全て日本語詞で歌われています。アルバム全12曲中、日本語詞で歌われているのはこの3曲のみで、他の9曲はそれまで同様全て英語詞で歌われています。この試みはある意味成功したといっていいでしょう。

  サウンド的にも前作にあったニューウェーブ的要素を押し進めつつ、当時主流だったKORN辺りからの影響を感じさせつつ、上手い具合にラウドロックの要素を取り入れています。が、完全にそっち側に行ってしまうのではなく、例えばグラムロックだったり、ストレートなハードロックだったり、それこそ日本のヴィジュアル系的な要素だったり‥‥とにかく、ありとあらゆる要素を全て飲み込んで、それを上手く消化し、完全に「OBLIVION DUSTの音」にしてしまっているのはさすがと言うべきでしょうね。静と動とのコントラストが素晴らしい"COME ALIVE"のような楽曲にしろ、非常にポップで判りやすいメロディが備わっているのですから。

  解散してしまった今、改めて振り返ってみると、バンドとしてはこのアルバムで完成してしまったように感じます。その後、メンバー間の「色」や「主張」がどんどん強くなっていき、ぶつかり合いが多くなっていき、そんな中からもう1枚、「BUTTERFLY HEAD」という奇跡的なアルバムをひねり出すと同時にRIKIJIが脱退。そういう意味からも、この「REBORN」というアルバムがひとつのピークだったと言い切ってしまっても、決して間違いではないように思います。

  それにしても、今こうやって聴くと‥‥本当にポップなバンドだったんだなぁ、と再認識。もっとヘヴィだと感じてたんだけど、それって結局ライヴでのイメージが強かったのね。その後、フォロワー的存在も現れないし、解散後の各メンバーがやってるバンドもOBLIVION DUSTと似て非なる存在ばかりだし、やはりとてつもなく「オリジナル」な存在だったんだなぁ、と思うわけです。今だからこそ、改めてちゃんと聴いて欲しいアルバムですね。



▼OBLIVION DUST『REBORN』
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投稿: 2003 07 13 12:00 午前 [1999年の作品, Oblivion Dust] | 固定リンク

2003/06/15

FOUNTAINS OF WAYNE『UTOPIA PARKWAY』(1999)

アメリカの4人組ギターポップ/パワーポップ・バンド、FOUNTAINS OF WAYNEが'99年4月にリリースしたセカンドアルバム「UTOPIA PARKWAY」。4人組とはいっても基本的にはこのバンド、メインソングライターであるクリス(リードボーカル&ギター)とアダム(ベース&コーラス)の2人が中心人物なんですわ。実際プロデュースもこのふたりが手掛けてますし、課外活動として余所のバンドやアーティストを手掛けたり、元SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハ(ギター)のソロアルバムにも参加したり、一緒にレーベルを立ち上げたり等、いろいろやってますしね。あとアダムはフランス人女性をボーカルに迎えたバンド、IVYも並行してやってるんで、知ってる人は多いんじゃないでしょうか。と、そういう課外活動がいろいろ忙しいこともあってか、このアルバムから次のアルバムまで4年以上も空いちゃったんだから‥‥ファンにしてみれば有り難迷惑というか。

俺が彼等と出会ったのが正しくこのアルバムからで、当時毎月行ってたロック系クラブイベント「CLUB K」で、シングルにもなった"Denise"が頻繁にかかってたんですよ。特徴のあるギターのリフはグランジっぽくもあるんだけど、サビ前後になると途端にファルセットによるコーラスが入ったり、サビの甘美な世界観といったらもう、とろけそうになる程。この曲にノックアウトされない人がいたとしたら、きっとその人はロックをちゃんと聴いてない、表面的な格好良さにしか惹かれてない人なんじゃないか‥‥なんて思える程、クラブにて大音量で聴くこの曲はホントに素敵だったわけ。チープなシンセサウンドも雰囲気モノで、ダサ格好良さ満点。リリースから4年経った今聴いても、全然古くなってないんだからさすが。

ポップなメロディにハーモニー、それを包み込むようなギターサウンドや優しいアコースティックサウンド、そして要所要所に使われているアナログっぽいシンセ。一歩間違えば本当にダサくなってしまうのに、何故か抜群にカッコイイ。何故か。やっぱり楽曲がしっかりしてて、ユーモアに溢れてて、センスがあるってのが大きいんだろうね。

このアルバムを聴いてると、先の"Denise"や"It Must Be Summer"のような直接的なギターポップ/パワーポップ的な楽曲もあるんだけど、それだけに留まらず、例えば1曲目に"Utopia Parkway"みたいなユルユルのミディアムポップをいきなり持ってきたり、ちょっとWINGSっぽい"Red Dragon Tattoo"だったり、アコースティック色の強い名曲"Troubled Times"だったり、思いっきりサウンドや歌い方がOASISしてる"Go, Hippie"だったり(ってこれ、ある種パロディだよね!?)‥‥その他にも所々にELOやエルトン・ジョン、当然BEATLESといった先代達からの影響を感じさせます。同世代であろうWEEZERっぽくもあり、かといってあそこまで一辺倒でもなく、非常に引き出しの多いバンドだなという印象。そしてそういったバンドが精魂込めて作った、ポップの玉手箱がこのアルバム。ホントにいろんなタイプの楽曲が入ってて、しかも14曲(日本盤は15曲)もあるのに長く感じさせないし(実際15曲で50分にも満たないですからね)。

多分、自分達が聴いてきたものを1枚にまとめた感じなんでしょうか。「自分が聴きたいアルバムを作ったら、こうなった」といったところでしょうか。ホント羨ましい。才能って凄いね。

それにしてもさぁ‥‥WEEZERにしろ、'90年代以降に登場したアメリカのギターポップ/パワーポップ勢の多くに言えることなんだけど、何でこの手のバンドって歌詞が女々しいというか、情けなさ満載なんですかね? どうしてもアメリカというと強いとかマッチョといったイメージが強いから、余計にそう感じちゃうんですが‥‥だからこそ、多くの人達から共感を得たんでしょうか? このアルバムの曲も、「赤い龍の刺青 僕の肌にそれが 君のために彫ったんだ これで君は僕を欲しがってくれるかな」「今の僕はちょっとKORNみたいでしょ」("Red Dragon Tattoo")とか、「とうとうこの日が来てしまったね 僕らはガス欠になり 空気はだんだん濁ってきて 女の子達は気分が悪くなってきて 僕らは浜辺で気を失って 車の鍵もなくしちゃって すぐに僕らはサヨナラを言う それから後は死ぬまで働くだけ」("Prom Theme")とか‥‥ああ、書いててこっちまで凹んできた。いや、断片的に取り上げると凹みそうなんだけど、全体像としてはやりきれなくて切ない青春時代を歌ったものが多い‥‥のかな? そうい意味では10代の子達が読んだら、もしかしたら共感できるのかもしれないね? いや、30代の俺が読んでも「うんうん、判る判る」っていう歌詞ですけどね。誰もが通過する時代や出来事、日常を切り取った内容になってるんじゃないですかね。

とにかく、一度は聴いて欲しい作品ですね。もしアナタがUKギターポップとかを好んで聴くなら、間違いなく気に入るはず。WEEZER程ギターが激しくはないけど、この手のバンドが好きな人でも絶対に気に入るはずなんで、ファーストアルバム(これも名盤!)と合わせて聴くことをオススメします。



▼FOUNTAINS OF WAYNE『UTOPIA PARKWAY』
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投稿: 2003 06 15 07:23 午後 [1999年の作品, Fountains of Wayne] | 固定リンク

2003/06/06

METALLICA『S&M』(1999)

1999年11月(日本盤は12月)にリリースされた、METALLICA初の公式ライヴアルバム。なんだけど……ちょっと異色作でもあります。『S&M』なんていう思わせ振りなタイトルなんですが、まぁ単純に『Symphony & METALLICA』って意味ですね。決してサドマゾとは関係ないわけで(ま、ある意味サドマゾ的要素もあるんですが)。1999年4月21~22日に地元サンフランシスコにて行われた「ある企画ライヴ」を完全収録した2枚組作品となっています。

で、どういう「企画」だったかというと、METALLICAとオーケストラとの合体。104人にも及ぶ「サンフランシスコ交響楽団(SAN FRANCISCO SYMPHONY)」がMETALLICAに合わせて演奏するという企画なわけ。そのコンダクターに選ばれたのが、奇才マイケル・ケイメン。映画のサウンドトラックやロックバンドのオーケストラ・アレンジ等でよく名前を見かける、その筋ではかなり有名な人。彼との出会い(『METALLICA』での「Nothing Else Matter」オーケストラ・アレンジが初顔合わせ。当然今回も再演しています)から10年近く経ち、『LOAD』『RELOAD』『GARAGE INC.』とある程度「90年代のMETALLICA」に区切りがついたこともあり、また「よりアートな方向」へと移行しつつあった当時のMETALLICAのひとつの到達点として、過去DEEP PURPLEやイングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイ等が実験してきた「HM/HRとオーケストラとの融合/合体」をMETALLICAなりのやり方で試す。それが今回の試みだったようです。

アルバムには全21曲が収録されていますが、1曲目の「The Ecstasy Of Gold」はオーケストラのみなので、実質20曲ということになります。当日のライヴは第1部(ディスク1)、第2部(ディスク2)の2部構成で、途中に休憩が入る「クラシックのライヴらしい」構成。全体的に90年代の楽曲が多く(20曲中12曲)、それ以外は『RIDE THE LIGHTNING』から2曲(「For Whom The Bell Tolls」とインスト「The Call Of The Ktulu」)、『MASTER OF PUPPETS』から3曲(「Battery」「Master Of Puppets」「The Thing That Should Not Be」)、『…AND JUSTICE FOR ALL』からは「One」のみ。まぁこの時期の彼等らしい選曲ですよね。特に「For Whom The Bell Tolls」と「The Thing That Should Not Be」が。「90年代のMETALLICA」のプロトタイプとなった楽曲ですからね(ここに「Harvester Of Sorrow」が加わったら完璧ですね)。

これらの楽曲は、特にオーケストラとの共演だからといって新たにアレンジされているわけでもなく、METALLICA自体はこれまでのライヴ同様のプレイをしています。単純にオーケストラ側がそれに合わせて演奏し、音に厚みを加えるという、文字通りの共演のみ。特別なことは一切なし、というわけでもないか。このライヴ用に完全未発表の新曲が2曲演奏されてますしね。「No Leaf Clover」と「- Human」がそれ。共にミドルテンポでマイナーキーという「90年代のMETALLICA」にありがちなタイプ。が、個人的にはそんなに悪くないと思ってます。恐らくオーケストラとの共演を想定して書かれたものだと思うのですが、別にMETALLICA単体で演奏しても何ら問題のない楽曲ですよね。ということは、結局METALLICAはどこまでいってもMETALLICAのままなんだ、と。それが判っただけでも収穫だったんじゃないでしょうか?

純粋にライヴアルバムとして楽しむもよし、一風変わった企画盤(メタルとオーケストラとの合体)として楽しむもよし。これまでMETALLICAを避けて通ってきた人の入門編として手を出すもよし。意外と楽しめるアルバムだと思いますよ。実際俺も普通にライヴ盤として楽しんでますし。ディスク1の頭数曲の流れや、ディスク2のエンディング周辺(「Sad But True」「One」「Enter Sandman」「Battery」)の流れも圧巻ですしね。ホントにこんな曲順でライヴやられたら、卒倒しますね俺。

この時期……1996年の『LOAD』以降、彼等は毎年アルバムを出してるんですよね。1997年に『RELOAD』、1998年は『GARAGE INC.』、そして1999年はこの『S&M』。オリジナルアルバムとしては『RELOAD』以降、2003年6月になるまで新作が出なかったわけですが、音源としてはジェイソンが脱退するまで結構頻繁に出してるんですよね。2000年春には悪しき「I Disappear」(映画『MISSION:IMPOSSIBLE 2』サントラ収録)を発表してるし。結局90年代の彼等ってのは「如何に『よりメジャーな音』を自分達流に表現するか」という命題との戦いだったのかなぁ、という気がします。変にアーティスティックでありながらも、実は非常に判りやすい、悪く言えば単純な楽曲が多い90年代のMETALLICA。しかしそういった挑戦が結果として一般層への定着へと繋がったのですから、これはこれでよかったのかもしれません。じゃなかったら、単なるカバー集やこんなライヴ盤がアメリカで初登場2位(共に)、数百万セットも売れないでしょうし。完全にMETALLICAが受け入れられたってことでしょうから。

21世紀に入っていきなりジェイソン・ニューステッドが脱退、ジェームズ・ヘットフィールドがアル中でリハビリ施設に入る等、ネガが話題が続きました。しかし、2003年に入り6年振りのオリジナルアルバムも完成し、新メンバー(ロバート・トゥルージロ)も決まり、更に新しい「音」も手に入れた。さてさて、これからのMETALLICAはどういう道を歩んでいくんでしょうねぇ‥‥非常に楽しみです。



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投稿: 2003 06 06 04:51 午前 [1999年の作品, Metallica] | 固定リンク

2003/04/02

THE YELLOW MONKEY『SO ALIVE』(1999)

  THE YELLOW MONKEYが活動休止に突入してから早くも2年もの月日が経ちました。2000年夏に8枚目のオリジナルアルバム「8」をリリースし、翌年1月の東京ドーム公演をもって活動休止期間に突入したわけですが、この2年の間に各メンバーの表だったソロ活動はというと‥‥吉井和哉が2001年10月のジョン・レノン・トリビュート・ライヴに出演と、今年に入ってベースの広瀬洋一がHEESEY WITH THE DUDESとしてシングルとアルバムをリリース、ライヴもやっと行った程度で、菊地兄弟に関しては何の音沙汰もなし(あ、兄の方は本出したか)。一体何をやっているんだよ、イエモンの面々よ! 俺はマジで悲しいよ。確かに「8」を聴いた時は「‥‥煮詰まってきてるのかなぁ‥‥」と感じたよ。実際そうだったのかもしれない。もしかしたら「SICKS」、「PUNCH DRUNKARD」の2枚、そしてそれらのアルバムに伴う長期ツアー(特に「PUNCH DRUNKARD」での100本以上に及ぶロングツアーは未だに記憶に残ってることと思います)でバンドとしてのひとつのピークを迎えてしまったのか、そしてそれを超えるような新しい道を模索するために、一旦バンド活動をリセットしたのか‥‥正直に言うと、俺はどんなにつまらない作品を連発しようが、それが実験的すぎてファンが離れようが、ミュージシャンとしてその軌跡を我々の胸に刻んで欲しかったな、と。凄く好きな、そしてリスペクトするバンドなだけにとても残念でなりません。

  今回紹介するライヴ盤は、その100本以上もやったロングツアー(1998年4月~1999年3月)の中から、ベストテイクといえるようなライヴ録音を編集した作品。ライヴビデオが主流の昨今、何故彼等がこういったライヴ盤に拘ったのか、イエモンをよく知るファンなら何となく察しがつくんじゃないでしょうか。彼等の愛したKISSやAEROSMITHは、その活動の節目節目に素晴らしいライヴアルバムをリリースしてるんですね。そしてそういったライヴ盤の方がスタジオ作品よりも愛着があるって人も多い。実際、イエモンの4人もそうなんじゃないかな。じゃなきゃツアーファイナルを完全収録したビデオ出しながらも、こういったライヴ盤まで出さないよね普通。単純に自分で聴きたかった‥‥あるいは各地のライヴ会場に足を運んでくれたファンに対する感謝の気持ちなのか‥‥ロビンの煽りにやたらと地名が入ったテイクが多いのも、もしかしたらその表れなのかもね。

  約70分、全12曲(シークレットトラックがあるので、実際には13曲)というのは、彼等のライヴからすれば恐らく半分程度の内容だと思うんですが、それでも要所要所のハイライトを抑えつつ‥‥というより、前半のノセる曲の連発な、アナログでいうA面‥‥"パンチドランカー"でスタートして、そのまま"ROCK STAR"へと流れていくライヴ頭の流れ。そしてヘヴィな"TVのシンガー"、ノリのいいストレートな"ゴージャス"、イエモンの定番リズムを持った"Tactics"。そのまま"見して 見して"へと続くかと思わせてフェードアウト‥‥の後、いきなりクライマックスが連発するんですよね‥‥静と動の対比が素晴らしい名曲"球根"から、情熱的な"BURN"へ、そのまま静かに、そして徐々に、徐々にと熱く燃え上がる"JAM"、ライヴ終盤の盛り上げ隊長"LOVE LOVE SHOW"、そして本編ラストを飾ることが多い"悲しきASIAN BOY"。どうよ、この怒濤の名曲オンパレードは!? 本当のライヴでこんな並びで連発された日にゃ、俺は間違いなく鼻血吹くね。そう、多分実際のライヴではあり得ない並びだからこそのライヴ盤なのかも。曲順に関しては実際の(当時の)ライヴとは違うんだろうけど、俺はこういうファンサービス、ありだと思う。しかもバンドが一番脂の乗った時期だっただけに、こういう音源を残せたってのは今となっては良かったのかもしれないね。

  個人的には、所謂B面‥‥怒濤のヒットメドレーね‥‥の後に続く、アンコール的な"SO YOUNG"を聴くとマジ泣きしそうになるのね。この曲って歌詞を含めて、彼等が影響を受けたAEROSMITHでありLED ZEPPELINでありデヴィッド・ボウイといったアーティスト達からの影響がストレートに見え隠れして、そしてそれが全然嫌味じゃなく、ちゃんとイエモンの楽曲として成立してる。そう、ここで一旦完成しちゃったんだよね。到達しちゃったんだよな‥‥だからこそ、その続きが見たかったのに。それが我々が望むものであろうがなかろうが‥‥ショーを続けて欲しかったよマジで。

  そして、ホントのボーナストラックといえるであろう"真珠色の革命時代(Pearl Light Of Revolution)"の、生ストリングスとの共演バージョンがまた泣かせる(恐らく年末の「メカラウロコ」武道館公演からだよね?)。バンドとしての集大成という印象。ここまで完成され尽くしたライヴを聴かせておきながら、最後の最後に‥‥シークレットトラックとして録音状態も悪い、正しくインディーズ時代に戻ったかのような"WELCOME TO MY DOG HOUSE"が登場するんだから。エアロの「LIVE BOOTLEG」における "Draw The Line" みたいだよね(エアロのライヴ盤では、この曲はホンモノのブートらしくクレジットされていないのに、とある曲の後にいきなり登場するという仕組み。ま、日本盤にはしっかりクレジットされちゃってるんですが)。こういうの、ホント好きね、この人達。

  今30代以上の人達って、洋楽の教科書として今は亡き雑誌「ミュージックライフ」に頼ってませんでした? 勿論俺も。それとか「ロックショウ」とかね。まだまだロックが煌びやかなイメージを持っていた'70年代~'80年代の洋楽ロック。それを当の欧米人以上にリアルに且つ胡散臭く再現してくれたのが、自称「ジャパニーズ・ナンバーワン・ロックンロール・バンド」THE YELLOW MONKEY。活動期間中、結局どこにも属さずに独特な空気を醸しだしていた彼等が、今は恋しくて仕方ないです。「ソロは失敗でした」と素直に言ってくれてもいいし、ひねくれて「お前らが俺達を忘れた今、また悪夢を見せてやるよ」とか言ってくれてもいい。こんな時代だからこそ、彼等のロックンロールが必要なんです。バンドブームの嵐の中結成されたイエモンだからこそ、こんな今の日本の音楽シーンに風穴をブチ開けてくれるんじゃないかと‥‥みんなもそう思わないかい?



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投稿: 2003 04 02 04:10 午後 [1999年の作品, YELLOW MONKEY, THE] | 固定リンク

2001/11/12

CLAM ABUSE『STOP THINKING』(1999)

さてさて、一体この作品をどう取り上げようかと悩み、早2年‥‥THE WiLDHEARTSのジンジャー作品として、どのように評価すればいいのか。ファンとして語るべきか、それとも「1枚の変態ポップアルバム」として評価すべきか、非常に悩むところだ。

というわけで、このCLAM ABUSEというユニットは1999年‥‥THE WiLDHEARTSが当時、たった1度だけの再結成を8月に行った後にリリースされた、謎の作品「STOP THINKING」1枚を残し、ライヴを何度か行った後に自然消滅している。最初っから1枚こっきりの限定ユニットだったのか、それとも2人のメンバー、クラム・サヴェージとクリント・アビューズ‥‥何のことはない、ジンジャーと現ANTI-PRODUCTSのアレックス・ケインのことなのだが(笑)‥‥がそれぞれの活動に忙しくなったから続かなくなったのか‥‥

一応、このアルバムの音楽性を語る時にジンジャーは「アコースティック・アルバム」と表現している‥‥え~っとですねぇ‥‥どこがですか?(苦笑)思わず「ブッ壊れた」って枕詞を付けたくなるくらい、壊れたポップソングが詰め込まれているのだ。基本的には打ち込みバックにオモチャみたいなシンセを被せたり、ギターノイズが乗ったり、たまにアコギが聞こえたり(笑)する中、時にヒステリックに、時にオペラチックに、時に愛を奏でるように(笑)唄うジンジャーとアレックス。どちらも天才肌。天才ふたりが揃えば‥‥歯止めが効かなくなる(苦笑)。そう、誰か、誰か止めなかったのかよ!?(爆)どこからがマジで、どこからが冗談なのかが非常に判りにくい、きっと天才にしか理解でき得ないであろう名作に違いと思うのだが‥‥残念なことに(苦笑)俺にはその良さを半分も理解できずにいる。勿論、悪いわけがない。如何にもジンジャーが書きそうなメロディーもちらほらと現れる。名曲"Be My Baby"をパクッた!?ような".Com Together"や、SILVER GINGER 5名義でやっても何ら違和感のない"She's So Taboo"みたいなポップソングもあるし、女性がリードボーカルを取る曲やマジなオペラまで登場する(苦笑)。

このおフザケ感覚というのは、イギリス人特有のブラックユーモア‥‥「モンティパイソン」辺りに共通するモノを感じる。絶対にアメリカ人には理解できないであろう感覚。いや、一部のアメリカ人アーティスト(MOTLEY CRUEのニッキー・シックスとかデヴィン・タウンゼントとか‥‥ってデヴィンは厳密にはカナダ人だっけ?)はきっと羨ましがるに違いない。そんなギャグセンス‥‥ってこれってやっぱりセンスある方なのかな?(苦笑)とにかく、これまでのジンジャーなら躊躇したであろうことを全部ここでやってしまった感があるのだが‥‥それを引き出したのが、もう一方の天才アレックス・ケインだった。その後もアレックスとジンジャーは再結成WiLDHEARTSとANTI-PRODUCTSとで2001年夏にイギリス~日本をツアーしてる程の仲だ。アレックスはワイハー時代のジンジャーをそれ程評価していなかったようだが、このツアーで「WiLDHEARTSの」ジンジャーを何度も目撃して、その考えを改めたそうだ。天才に見初められた天才。ジンジャーがデヴィン・タウンゼントに憧れたあの一件をふと思い出すが‥‥あのコラボレーションがマジな路線だったのと一転して、ここでは正反対な路線を繰り広げている。けど、決してそのふたつが全く繋がらないわけではない。双方に散りばめられた「溢れんばかりのポップ色」は間違いなくジンジャーにしか作り得ないものだ。

ワイハーのジンジャー、SG5のジンジャーを期待してこのアルバムに手を出すと、きっと聴き終えた時にCDを床に叩きつけたくなるか、盤をへし折りたくなるに違いない(笑)。それくらい聴き手を舐めきった、異色「壊れポップ」アルバムなのだから。



▼CLAM ABUSE『STOP THINKING』
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投稿: 2001 11 12 07:42 午後 [1999年の作品, Clam Abuse, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2001/09/16

PARADISE LOST『HOST』(1999)

今回のテーマは「DEPECHE MODE や初期NINE INCH NAILS等エレポップ/ゴス好きにもアピールするHM/HR」ということで、イギリスのバンドPARADISE LOSTの'99年作品「HOST」を取り上げたい。

イギリス出身の、元はデスメタルバンドだったPARADISE LOSTはイギリス/ヨーロッパのメタルシーンで絶大な人気を保持している。それはインディーバンドだった彼らのトリビュートアルバムまでもがリリースされていることが物語っている。彼らはアルバムをリリースし続けるうちに、次第とゴスの要素を取り入れるようになり、そこから派生した「ゴシック・メタル」なんて呼び名のジャンルの第一人者となる。いまいちその意味が判らないんだけど、要するにゴスの要素を持ちながら、その表現方法はデスメタルってことなのだろう(ってまんまだが/笑)。で、そのデスメタルからも脱却したのが'97年リリースの「ONE SECOND」という作品。HM/HRの範疇にありながら、そのサウンドは初期のTHE CULTやSISTERS OF MERCYをも彷彿とさせるゴシックサウンド。本来なら「猿メタル」的にはこっちなんだろうけど‥‥今回は賛否両論も多かったメジャー進出第1弾「HOST」を敢えて選んだ。

このアルバムの特徴は‥‥もう既にHM/HRではない点だろう(笑)。アルバムトップの"So Much Is Lost"を聴いて、多くのファンが驚いたように、メタルに疎い人でも驚くに違いない‥‥「これってメタルなんですか?」と。打ち込みリズムに耽美なシンセサウンド、エフェクトかけまくったギター。デヴィッド・シルヴィアン(JAPAN)やデイヴ・ガーン(DEPECHE MODE)ばりの囁くような低音ボーカル。DEPECHE MODEの新曲とか言われても信じてしまう程、そのサウンドにはHM/HRの欠片もない。エレポップの要素を前面に打ち出し、尚かつバンドが愛して止まないゴスのテイストを嫌味にならない程度に撒き散らす。これもある意味、HM/HRの進化したひとつの姿なのだ。

ボーカルにギター2人(ひとりはキーボード兼務)、ベースにドラムというありがちな編成にも関わらず、アルバムではこの編成をも無視したアレンジを施したり(ドラムが完全に打ち込みだったり、ギターが1本だけだったり、ベースさえも打ち込みだったり、女性ボーカルやバイオリンが入ったり)、プロデューサーにメタル系以外の人(初期DEPECHE MODEを手掛けたスティーヴ・ライオン)を起用したり、メタル的シャウトやデス声がなかったり、と‥‥多くのメタルファンにとっては、もはやこれは「あちら側」の音なのだろう。保守的なものにも素晴らしい作品は沢山ある。しかし、そんなのはほんの一握りだ。多くのバンドが同じスタートラインから出発し、途中で挫折していく。そんな中、独自の路線や方法論を手にしたバンドこそが生き残る。このPARADISE LOSTの変化は必然だったのだ。確かにこの作品の受けが良くないのは知っている。しかし、時代もこのアルバムの音を必要としていたのではないだろうか?

'90年代に登場した多くのデスメタルバンドは、その後必ずといっていい程、転換期を迎えている。スタート時こそコアなデスメタルサウンドだったSEPULTURAもその後、モダンヘヴィネスや自国ブラジルのトライバルサウンドを取り入れる事によって「ROOTS」というアルバムで頂点を迎える。イギリスのCARCASSも残虐なサウンドから一転し、IRON MAIDENやHELLOWEENといったバンドが得意とするツインリードを取り入れた様式的サウンドを構築し、「メロディック・デス」なるジャンルを築く第一人者となる。このPARADISE LOSTもゴスとデスメタルを融合させた「ゴシック・デスメタル」を経て、その本質にどんどんと迫り、結果自身のルーツといえるDEPECHE MODEやSISTERS OF MERCYを彷彿とさせるサウンドを手に入れる。時代が時代だったからこそ可能だった変化。'90年代末という混沌の時代だったからこそ成せた技なのかもしれない。俺はこのアルバム、上のようなゴス好き、エレポップ好き、そして更にはヴィジュアル系(特に元LUNA SEAのSUGIZOやラルク)を愛する人にこそ聴いてもらいたい。変化球的内容かもしれないが、絶対にオススメの1枚である。

最後に。PARADISE LOSTはこのアルバムリリース後、今年(2001年)春に新作「BELIEVE IN NOTHING」という作品をリリースしている。プロデューサーにNINE INCH NAILSのファースト「PRETTY HATE MACHINE」やDEPECHE MODEの初期作品を手掛けたジョン・フライヤーを迎えたこの新作は、サウンド的には打ち込みよりもバンドサウンドをメインとしたものになっていて、「HOST」よりもゴシック色は薄いかもしれない。シンセサウンドも所々登場するが、メインというよりは飾り程度で、ゴリゴリのディストーションギターが復活している。この「HOST」が旧来のファンに拒絶されたが故の変化なのか、「HOST」を経たからこその進化なのか‥‥それはメンバー自身にしか判らない。けど、俺は「HOST」は駄作だと思わないし、むしろメタルバンドが作り出した1枚としては最高にイカしてると信じている。



▼PARADISE LOST『HOST』
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投稿: 2001 09 16 03:15 午後 [1999年の作品, Paradise Lost] | 固定リンク

2001/06/14

SOUL FLOWER UNION『HIGH TIDE & MOONLIGHT BASH』(1999)

  1999年末に発表された、ソウル・フラワー・ユニオン(以下SFUと略)初のライヴアルバムにして、現時点での最高傑作。ベスト盤的内容のライヴアルバムが最高傑作というと「ベスト選曲なんだから、当たり前じゃん?」とか「ニューエスト・モデルやメスカリン・ドライヴ時代の曲も入ってるんだから、いいに決まってるでしょ?」と反論されそうだが、そういう意味で言っているのではない。確かに楽曲に関していえば、前に出ていたベスト盤よりも、遙かに素晴らしい選曲だ。しかし、ここで俺が言っているのは、SFUというバンドのポテンシャルを最大限に発揮しているという意味でなのだ。

  正直このアルバムを聴くまで、俺はSFUというバンドに対して懐疑的だったところがある。"杓子定規" という曲でニューエスト・モデルに出会い、その後ある程度の距離を保ちながら彼らの音楽に接していたのだが、それがSFUになった途端、いや、「カムイ・イピリマ」というアルバムを聴いて、それまで持っていた興味が失せてしまったのだ。理由は何となく判ってもらえるだろう‥‥当時20才そこそこだった俺には、ああいうものを「ロック」として受け入れるだけの許容量や理解力がなかったのだ。それだけでなく‥‥ごく個人的に、俺にはメスカリン・ドライヴが‥‥内海洋子の声が苦手だった。今思うと「何故に!?」と思うのだが(当然、今は好んで聴いてる程だ)‥‥

  その後のSFUはソウル・フラワー・モノノケ・サミットや中川敬のソロ、民謡やチンドンだけでなくアイリッシュ・トラッドや朝鮮等の音楽も取り入れ、ますます俺の興味から外れていった。そして気づけば内海が抜け、SFUは4人となっていた。

  雑誌等で「SFU最高傑作!」と謳われていたこのライヴアルバム「HIGH TIDE & MOONLIGHT BASH」を手にする前に、SFUの原点ともいうべきニューエストやメスカリンの歴史を3枚のCDに収めた「SOUL FLOWER BOX」というボックスセットを購入したこともあって、以前よりも彼らに対して興味を持つようになっていた。だから「カムイ・イピリマ」を聴いた頃よりもフラットな状態でライヴ盤にも素直に手を出してみた。

  正直、頭が下がる思いがした。こんなに凄いロックバンドが日本にいたとは‥‥声を大にして言う。

「土着的な音楽(民謡や戦前戦後歌謡、チンドン等)や他国のトラッドミュージックの要素を取り入れようが、このバンドは間違いなくロックンロールバンドなのだ」

確かにこのライヴ盤でも三線やらチャンゴやら囃子やらチンドン太鼓が登場するが、逆にそれらが存在することによって、SFUのロックをより力強いものにしている。お祭りみたいな「合いの手」が入ろうが、演歌みたいな節回ししようが、どこからどう聴いてもこれはロックンロール以外の何ものでもない。つうか、こんなにオリジナリティーにあふれたミクスチャー・バンド‥‥いや、こんなに凄いジャパニーズ・ロックンロールバンド、他にどれだけいる?

  それと、これは誰もが思うことかもしれないが、これまでのSFUのスタジオ盤には、彼らの最高の持ち味である「ライヴ感」が上手く活かされていなかったと思うのだ(勿論、そんなことはないという反論もあるのは承知してるが、あえてこう言わせてもらった)。ニューエスト時代に遡っても、素晴らしい作品はあるのだが、やっぱりこのライヴ盤を聴いてしまうと「今まで何だったんだ?」って考えてしまう程なのだ。ニューエストやメスカリンで出発してから15年近く経ったが、これだけ長い間同じメンツ(多少のメンバーチェンジはあったものの)で活動を続けると、馴れ合いがあったり、変な落ち着きが現れてもおかしくはない。しかし、このアルバムにはそんな「ベテランの色」よりも、もっと‥‥勢いのようなものを感じるのだ。それはもしかしたら、メジャーから契約を切られてインディーズ落ちしてしまったことも多少は関係あるのかもしれない(中川は「それは全く気にしていない」と言ってはいるが)。逆境の中から一筋の光を目指して突っ走る、そんな勢いを感じるのだ。

  楽曲に関しては何も言うことはないだろう。俺が苦手だったファーストからの曲は1曲もない。セカンド「ワタツミ・ヤマツミ」からも1曲のみ("もののけと遊ぶ庭")で、大半は当時の最新作「WINDS FAIRGROUND」とその前作「ELECTRO ASYL BOP」からのものだ。更に最初に書いたようにニューエスト時代の "雑種天国" と "こたつ内紛争"、メスカリンの曲を英坊(伊丹英子)が唄った "マウンテンバイク・フロム・ヘブン" が加わっている。これらがあることで、更にロックンロール色が強く感じられるのかもしれないが、逆に俺はもっと土着型の曲‥‥例えば "潮の路" や "満月の夕"、そしてチンドン・ロックンロールと表現できる "エエジャナイカ" や "海行かば 山行かば 踊るかばね" といった曲の方に、よりロックを感じる。特に "満月の夕"。これは'90年代の日本のロックを代表する名曲のひとつとして認識されるべきなのだ。これ聴いて泣けない奴は日本人じゃない、いや、人間じゃない!とまで豪語させてしまうくらいに、本当に素晴らしい旋律/歌詞なのだ。先日のライヴでもやはり聴くことができたが、本気で泣きそうになったもの。これはもっと多くの人間に聴かれるべき名曲だ。

  そしてアルバムラストを飾る3曲‥‥ "海行かば 山行かば 踊るかばね" ~ "エエジャナイカ" ~ "もののけと遊ぶ庭"。これで踊れない奴は日本人じゃ(‥‥以下、上と同じなので省略)とにかく、本当に凄いんだってば! ただ、残念なのが‥‥客席からの「合いの手」の録音レベルが小さいこと。これがもっと大きな音で入っていたら、もう完璧だったんだろうに。

  音楽は元々、祝いの席や祭りで「踊る」為のものだった。ロックは元々、フロアで「ダンス」する為のアイテムだった。いつから人はロックを「頭」で聴くようになってしまったのだろう。確かにそういうジャンルもあるし、それが楽しいのも判る。しかし本来我々は踊り、唄い、共有することで、ロックの素晴らしさを肌で感じてきたのではないのだろうか? いや、もっと言えば、そうすることで音楽の素晴らしさを知ったのではないだろうか? 子供の頃、夏祭りでワクワクした記憶はないだろうか? 運動会や文化祭のフォークダンスに胸躍らせたことはないだろうか?

  SFUの音楽には、そういった懐かしい、音楽本来が持つ快楽を改めて感じさせてくれる素晴らしさがある。それはニューエストやメスカリンではなく、SFUにしか出来ないものなのかもしれない。「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損、損」なんて言葉があるが、俺は「見る阿呆」よりも「踊る阿呆」になりたい。そんなことを思わせる、本当に素晴らしいバンドであり、素晴らしいライヴアルバムなのだ。

  これまでちゃんとSFUを聴いて来なかったことを、今更ながらに悔やんでいる。先日初めて彼らのライヴをちゃんと観て、その思いは更に強いものとなった。来月には「WINDS FAIRGROUND」以来、2年半振りのオリジナルアルバムが発表される。当然ながら、「とみ宮」ではその新作「SCREWBALL COMEDY」を大々的にフューチャーする予定だ。



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投稿: 2001 06 14 12:00 午前 [1999年の作品, Soul Flower Union] | 固定リンク

2001/06/04

THE WiLDHEARTS『TOKYO SUITS ME』(1999)

「ジンジャー公認」という意味では、現在唯一の「公式ライヴアルバム」なのが、この「TOKYO SUITS ME」という作品。公認も何も、ジンジャー本人が'98年10月のジャパン・ツアー終了後もここ日本に残って、このアルバムのための作業をしたんだから、そりゃバンド側にとってもファンにとっても納得の1枚だろう。リリースは翌'99年1月、残念ながらここ日本でしか手に入りません。初回盤は2枚組仕様で、メインのディスク1のエンディングがセカンドプレス以降とは若干違うという表記がされている(が、そのセカンドプレス現物を未だに見たことないのは、どういうこと!?)、25分で1曲表記のディスク2は、バンドでのツアー終了後に三軒茶屋・HEAVEN'S DOORで行われたジンジャーのソロ・アコースティック・ライヴの模様や(ダニーが飛び入りした"Caffeine Bomb"も収録)、惜しくも漏れてしまった日本公演の模様を繋ぎ合わせた、まさしく「ボーナス」な代物。2枚組仕様は今でも必ず店頭に残っているはずなので、ベスト盤的意味合いも持ったこの1枚、是非手にとってみて欲しい。

THE WiLDHEARTSの魅力のひとつとして必ず挙げられるのが、ライヴである。彼らのライヴに1度でも足を運んだことのある人間なら納得してもらえると思うが、スタジオ盤にはない「魅力」が彼らのライヴにはある。気まぐれなジンジャー、毎日全く違うセットリスト、彼らのルーツを垣間見ることができるカヴァー曲、日によっての出来具合が全く違う「生モノ性」、オーディエンスとのコール・アンド・レスポンス、そしてそのやり取りによって生み出される相乗効果。本来、ロックバンドのライヴに求められるべきもの全てが、彼らのライヴにはある。男も女も、子供も大人も、体験すればハッピーになれるのが、THE WiLDHEARTSのライヴなのだ。

それを、音質も含めて(笑)「完全真空パック」状態で保存されてるのが、このアルバムなのだ。'98年10月24日の赤坂ブリッツでの模様を収録したもので、曲順こそ入れ替わっているものの、ちゃんと流れが計算されていて、途中でトーンダウンすることもなく、まさに「熱狂の1時間」を味わうことができる。更に、ちゃんとオーディエンスの歓声や掛け声まで収録されているので、臨場感はこれでもか!?って位にタップリだ。

ご存じの通り、この日のライヴを俺は体験している。ライヴレビューを読んでもらえば判ると思うが、あのレビューは途中までは当時書いたものだが、後半は今年(2001年)1月に加筆したものだ。何故あそこまでハッキリと覚えていたのかというと、それは当日のセットリストとこのアルバムがあったからだ。だからあそこまで書けたのだ。

THE WiLDHEARTSには、'98年春に勝手にリリースされた「ANARCHIC AIRWAVES」という、BBCで放送されたライヴ音源をまとめた「ジンジャー非公認」ライヴ盤がリリースされていたが、そこでは味わえないものを、この「TOKYO SUITS ME」では味わうことができる。それはバンドを大歓迎する日本での録音というのも大いに関係しているし、このツアーがある意味「最後」(当時の時点で)だったこともあるだろう。当然、それ以前の来日公演もこれに匹敵する内容だったが、やはりこの10月24日のライヴは多くのファンの記憶に残るものだったと思う。翌25日の最後の公演も素晴らしいものだったと聞くが、やはり「打ち上げ的」印象は拭えなかったようだ(セットリスト的にも、アンコールではカヴァーが多く、HELLACOPTERSのメンバー等の飛び入りもあったから、余計そう感じる)。そいういう意味では、THE WiLDHEARTSというバンドが本当に「最後」を意識して全力で突進した記録、それがこの「TOKYO SUITS ME」なのだと断言できる。

まぁ確かにアルバムを聴けば、ジンジャーはお茶目な日本語で場を和ませているが、演奏は鬼気迫るものを感じることができる。特に"Everlone"といった複雑な展開をする曲や、コーラスが決めての"Coffeine Bomb"などは、完璧というしかないだろう演奏を披露している。確かにジンジャーはいつも通り声が出ていないが(苦笑)、それが何だっていうのだ!?(いや、それが嫌って人も多いだろうけど)ライヴを体験できなかった人間(チケットが手に入らなかった、当日予定があって観れなかった、当時まだ彼らを知らなかった、等)にとって、これ程重宝する1枚はないのでは!? 勿論、当日足を運んだ人も、他の日観た人にも大切な1枚なのは言うまでもない。


ご存じの通り、現在(2001年6月)「とみ宮」では「決定!史上最強のライヴアルバム」という、皆さんオススメのライヴ盤を投票してもらうというアンケート企画を実施している。これは、俺自身がライヴ盤というものが大好きだというのがある。

俺は千葉県銚子市という、首都圏からちょっと外れた、ある意味「不便な」町で高校卒業までを過ごし、ここ3年程またここで生活している。東京在住の人みたいに「学校や会社の帰りにライヴ」なんて観れないし、行ったとしても、ちょっと終演が長引けば終電を意識して時計とにらめっこだ。だから初ライヴも中学2年の時で、その時も初めて中野サンプラザまでひとりで行ってドキドキしたものだ。当然、ライヴなんて年に1回行ければいい方だった。

そんな俺を楽しませてくれたのが、ライヴアルバムだった。未だ目にすることのないバンドの、ある意味架空のライヴ。それを毎日自分の家で疑似体験することができる。ライヴビデオなるものが主流になる前までは、これが俺の楽しみのひとつだったのは間違いない。当然、そうなると大切なアルバムも増えていく。エアロの「LIVE BOOTLEG」だったり、ハノイの「FOR THOSE WASTED YEARS...」だったり、KISS「KISS ALIVE!」やCHEAP TRICK「AT BUDOKAN」、DURAN DURAN「ARENA」、ツェッペリン「THE SONG REMAINS THE SAME」、BOφWY「GIGS」等々。とにかく挙げればきりがない。ロックにとって「ライヴ」は切っても切り離せないファクターだ。そのライヴが体験できないとなると、それを疑似体験するしかない。多くの人間にとってのライヴ盤というのは、そういう「大切な存在」なのではなかったのだろうか?

時代が進み、交通の便がよくなったり、ライヴ会場が増えたり、来日するアーティストの絶対数が激増したりして、何かしらのライヴが毎日首都圏はじめ、いろいろな場所で行われる。昔はビデオコンサートというものもあったのに、今では家で手軽にライヴを映像付きで疑似体験でき、ブートビデオも当たり前のように流通し、更にはDVDなる便利なものまで登場する。しかし、だからこそ俺は「ライヴアルバム」というものを大切にしたいのだ。その思いもあって、俺はあのアンケートを開始したのだ。

けど、そういうのを抜きにしても、先に挙げたようなライヴアルバム達は絶対に聴いて欲しい「名盤」だし、下手すりゃスタジオ盤よりも優れた作品もある。このTHE WiLDHEARTSの「TOKYO SUITS ME」もそこに加えることができる、優れものの1枚だと胸を張ってオススメしたい。とにかく「ドカドカうるさいロックンロールバンド」が好きな人なら、絶対に引っかかりのある1枚だと思うので。


‥‥なんか、WiLDHEARTSを絶賛するというよりも、「如何にライヴ盤は素晴らしいか」を説く文章になっちまったなぁ‥‥まぁいいか?(苦笑)



▼THE WiLDHEARTS『TOKYO SUITS ME』
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投稿: 2001 06 04 06:32 午後 [1999年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2001/05/13

Cocco『ポロメリア』(1999)

  前シングルより丁度半年後に発表された、通算6作目のシングル。収録曲は表題曲の他に、やはり英語詞の未発表曲"Sweet Berry Kiss"。2曲共、昨年のツアーで披露されていたので、覚えている人も多いのではないだろうか?

  この頃から、メディアへの露出が皆無の状態が丁度1年続いた事もあり、その影響が少しずつだがセールスにも影響を与え始める。また楽曲の作風も、初期のハードコアなイメージを覆すような穏やかなタイプが2作続いた事もあって、聴き手の中からも疑問を唱える声が少しずつだが聞こえてきた。

  完全にCoccoの歌中心で作り上げられているが、これが続くサードアルバムへの伏線となることは、誰の目から見ても明らかだった。歌詞に目をやると‥‥唄い出しである「金網の向こう~」という出だしでハッと我に返る。この曲は「沖縄」や「家族」の想い出を唄ったものではないだろうか?と。

  カップリング曲はCocco以外の人間が書いた曲。"強く儚い者たち"のC/W曲と同作曲者だ。英語で唄われているものの、実はこの歌詞も両親について唄ったものだ。詳しい事は知らないのだが、彼女の家族はある時期を境に離散してしまったらしい。そういう事を踏まえてから、改めて歌詞を読んでみると、より深みを増し、感慨深いものとなるだろう。勿論、聴き手はそんな事実まで知る必要はないだろう。しかし、それらの楽曲がどういう意図の元、どういう想いで書かれたかを探るのも(決してワイドショー的観点からではなく)、また音楽の楽しみ方のひとつではないだろうか。



▼Cocco『ポロメリア』
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投稿: 2001 05 13 01:22 午前 [1999年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『樹海の糸』(1999)

  1999年は結局、アルバムをリリースする事はなかった(その理由はアルバム「ラプンツェル」レビューに書かれているので、それを参照いただきたい)。そんな中、シングルだけは定期的に発表され続けた。このシングルは前作より半年後の'99年4月に発表された、通算5枚目。収録曲は表題曲の他に、英語詞曲となる未発表曲"Again"。メディアへの露出もなく、特に強力なプロモーションをされなかったにも関わらず、この曲はトップ10入りを果たした。既にCoccoの歌が定着した証拠だろう。

  表題曲は、"遺書。"や"強く儚い者たち"の流れを組む、大らかなノリを持ったメロディアスナンバーだが、ここではもっと穏やかな空気を持ち、前出の2曲にあったようなフィードバックノイズ等の「壊し」系ギミックは一切登場しない。あくまで彼女の歌と歌詞をメインに持ってきた曲だ。そういう意味では、これまでのバンドと一丸となって聴き手の心臓を鷲掴みするというスタイルとは、一線を画する。

  それにしても、こういう穏やかな曲の中だからこそ耳に飛び込んでくるのが、歌詞なのだ。「わたしさえ いなければ/その夢を 守れるわ/溢れ出る憎しみを 織りあげ/わたしを奏でればいい」というサビのフレーズや、一番最後に飛び込んでくる「やさしく殺めるように」という一節にドキリとさせられる。

  カップリング曲も同様に穏やかな空気を持っており、こちらはもっとアコースティック色を濃くした、どことなくカントリー的な楽曲。ドラムやベースが入っておらず、マンドリンやラップスティール等の楽器が彼女の英語詞と上手くマッチしている。2曲通して聴くと、非常に肩の力の抜けた、ある意味「癒し系」作品集となっている。



▼Cocco『樹海の糸』
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投稿: 2001 05 13 01:20 午前 [1999年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/04/29

THE MAD CAPSULE MARKETS『OSC-DIS』(1999)

  THE MAD CAPSULE MARKETSの、現時点で最新作となるアルバム。リリースされたのが'99年8月だから、既に2年前の作品になるのだが、全く古さを感じさせない。流れの速い音楽業界の中で、特にこういったテクノロジーを駆使した音楽において2年というのは結構長い時間だ。例えばこのアルバムが発表された年に前作「DIGIDOGHEADLOCK」('97年)を聴いた時、録音やテクノロジーに若干の時代の流れを感じたものだったが、現時点(2001年4月)において、このアルバムを聴いてもそれは皆無だ。よい作品というのは、時間や時代や流行をも超越するものなのだ。

  それにしても、何故この時期にこのアルバムを取り上げるのかというと‥‥まず第1に、5月にはいよいよ新曲がリリースされるという事。既に耳にしているが、このアルバムの延長線上にある音だ。更に6月にももう1枚シングルをリリースし、夏にはいよいよニューアルバムが発表される。
  更に、この「OSC-DIS」が7月にアメリカの新興メジャーレーベルから世界的にリリースされる事になったのだ。過去にもマッドのアルバムは前作がやはり欧米のインディーレーベルから単発で発表されたが、今回はアイランド・レコード(U2やボブ・マーリー等が所属)の創始者が新たにスタートしたレーベルと、正式に契約したという話なのだ。来年の早い時期には「OSC-DIS」に続く新作も世界的にリリースされると耳にしているので、今後いよいよ本格的な海外での活躍も期待できるだろう。勿論、それだけの魅力と実力を兼ね備えたバンドなだけに、期待は大きい。

  このアルバムの大きな魅力。それは「テクノロジーを駆使した、テクノにも匹敵する緻密さ」「欧米のヘヴィロックにも匹敵する殺傷力」だろう。テクノチックなシーケンスを取り入れたヘヴィバンドといえば、欧米では10年程前からNINE INCH NAILSやMINISTRYといった大御所がいるわけだが、ここ5年くらいの間にそれすら特に目新しいというわけでもなく、いろんなバンドがその要素を「ごく当たり前に」取り入れるようになった。が、それを完全にモノにしているかと問われれば、全てが全てそうとは限らなかった。かなりテクノ寄りに進んだバンドというのは、やはりそれだけの知識とテクニックを持っていた人間だったという事なのだろう、意外と成功を収めているバンドが多いのだが、特にヘヴィ系となるとそう多くはない。大概はヒップホップ寄りに進んだりする(しかも旬だったし)。
  前作でのマッドの仕事振りは、やはりまだ中途半端だったと言っていいだろう。全ての曲のその要素が、完全にマッチしていたとは言い難かった。アレック・エンパイア等が関わったリミックスものに関しては、かなり良かったのだが‥‥

  しかし、そんなモヤモヤした思いをブチ壊してくれたのが、アルバムからの先行シングル"MIDI SURF"であり"PULSE"であった。これまでは「別にバックトラックのシーケンスがなくても、曲として機能してるじゃん?」と思わせていた空気が、ここにはなかった。バックトラックは完全に必要不可欠な要素のひとつとして、我々の耳を捉え、掴んで離さない。アルバムで言えば、特に1曲目"TRIBE"から3曲目までの流れ。最強の、最狂の流れじゃないだろうか? 何故俺が1999年度のベストアルバムにこの作品を選んだかが、よ~くお判りいただける流れだと思う。

  とにかく、全ての曲がポップなのだ。ピコピコしたシーケンス音やドラムンベースのバックトラックが入っていたり、ついていけない位に速いテンポの曲があったり、剃刀で切られたかの如くな殺傷リフがあったりするのだけど、歌は滅茶苦茶ポップなのだ。実はこれがかなり重要だ。特にサビのパートでは、オーディエンスが一体となって大合唱できるものが多い。モッシュし、大合唱する。これは今のコアなロックには必要不可欠な要素だ。何故Hi-STANDARDがあれだけの人気/セールスを維持しているのか、何故欧米ではLIMP BIZKITのようなバンドが人気を得ているのか、改めて考えてみて欲しい。細かなジャンルこそ違うものの、その根本にあるものは一緒なのだ。某ジャニーズの曲じゃないが「輪になって踊ろう」、これが全てなのだ。
  ロックは「個」で楽しむものなんかじゃない。「和」を、そして「輪」を楽しむものなのだ。それを改めて知らしめてくれたのが'90年代中盤にGREEN DAYやOFFSPRINGが、そしてHi-STANDARDが先頭になって繰り広げたパンク・ムーブメントだったんじゃないだろうか? 俺個人の感想だが、マッドの初期には「和」よりも「個」をイメージさせた。ファン同士の繋がりは深かったのだろうが、俺達のような一見さんが入っていける空気ではなかった。しかし、ここ数年のマッドからはそういったものは一切感じられない。むしろ「来る者は拒まず」な空気なのだ。それは楽曲からも感じるし、昨年体験したライヴからも感じ取れた。多くの海外のアーティストとの共演(RAGE AGAINST THE MACHINE, HELMET, FEAR FACTORY等)や、多くのイベントやフェスへの出演が切っ掛けのひとつになっているのは間違いないだろう。オーディエンスとの相乗効果が生んだ、「和/輪」の音楽。それがこのアルバムなのでは?

  昨年にはこのアルバムからシングルカットされた"GOOD GIRL"が某スポーツ飲料水のCMソングに起用され、更に一般への知名度を増した今、次に発表される作品では更なる爆発を期待できるはずだ。それまではひとまず、このアルバムを聴いて改めて彼らの魅力を再認識してもらいたい。



▼THE MAD CAPSULE MARKETS『OSC-DIS』
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投稿: 2001 04 29 12:00 午前 [1999年の作品, Mad Capsule Markets, The] | 固定リンク

2000/12/27

LUNA SEA『NEVER SOLD OUT』(1999)

  1999年5月29日、バンドは結成10周年を迎え、その記念として10年の間にライヴレコーディングされてきた楽曲を収めた2枚組ライヴアルバムをこの日に発表する。更にその翌日にはお台場にて「キャパシティー∞」を唱った10万人ライヴを実現させる。

  ディスク1、2共に、ひとつのライヴを聴いてるような選曲・曲順で攻勢されている。例えばディスク1は"Loveless"から始まり、"Rosier"~"Mother"で終わる。ディスク2は"Time Has Come"で幕を開け、"Wish"~"Up To You"という流れで幕を閉じるのだ。実際にはこういう曲順でのライヴが実現することはなかったが、疑似ライヴとして楽しむ分には申し分ない選曲だ。

  録音は、古くはインディーズ時代の'91年12月のもの("Shade")に始まり、最新では'98年12月のドーム公演のもの("Providence"他)まで、アルバム「LUNA SEA」から最新作までの成長振りを堪能する事が出来る。東京ドームでの"I For You"の後に'92年のRYUICHIが唄う"Precious..."がくると何だか笑ってしまうが、その落差から‥‥今の彼らが得たモノ、そして失ったモノを知る事が出来る。今となってはライヴアルバムはこれだけなので、もうライヴを観れない身としては貴重な音源集と言えるだろう。

  この10万人ライヴの後、彼らは再び沈黙を守ることになる。そう、次作の為の創作期間に突入するのだった。まさかその期間が1年にも及ぶとは夢にも思わなかったが‥‥彼らが次のアクションを起こすのは1999年12月23日、東京ドームでのGLAYとの競演、そして翌年元旦のカウントアップ・ライヴでだった。



▼LUNA SEA『NEVER SOLD OUT』
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投稿: 2000 12 27 01:00 午前 [1999年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/09/24

HAREM SCAREM『RUBBER』(1999)

今回のテーマは「ギターポップ系好きにもアピールするHM/HR」ということで、(ある意味)今は亡きHAREM SCAREM「RUBBER」('99)を取り上げたい。今は亡き、というのは最後に説明するとして‥‥このバンドの簡単な歴史から。

カナダで結成されたHAREM SCAREMはセカンドアルバム「MOOD SWING」で日本デビューを果たした。ファースト~セカンドの彼等の音楽性は、DEF LEPPARDから影響を受けた、何重ものコーラスを重ねたメロディアスな楽曲に、全盛期のDOKKENを意識したガッツィーなサウンド(特にジョージ・リンチを彷彿とさせるピート・レスペランスのギタープレイ)が特徴で、それが日本でウケたというわけ。ところが彼等は続くサード「VOICE OF REASON」でその音楽性を変えてしまう。当時流行のオルタナ/ヘヴィロックの色を取り入れるのだ。が、そこはメロディアス指向の彼等。やっぱ歌メロやコーラスは健在。けど、評価は散々。このアルバムで初来日を果たす。そして4作目「BELIEVE」では初期の音楽性に戻ったかのような楽曲を用意し、5作目「BIG BANG THEORY」ではハードさを若干後退させた、CHEAP TRICKやFOO FIGHTERSにも通ずるようなポップでパンキッシュな楽曲を披露する。そしてこの6作目「RUBBER」にたどり着くわけだが‥‥ここでも彼等は大冒険というか、大きな賭けに出る。その大きな賭けについて説明しよう。

現在の彼等はここ日本でのみ大人気、といっても過言ではない。カナダではセカンド当時は爆発的に売れたと聞いているが、サードでのセールス的失敗辺りからカナダ国内での人気も失速していく。「HAREM SCAREMってメタルでしょ? もう流行んないよ」てな理由で。さぁ、ここからが本題。(笑)何故俺がこのアルバムを選んだかがよくご理解いただけると思う。

アーティストとして、彼等は自分達のやりたい音楽をやる。長年続けていけば、趣味やその時やりたい事なんて変わっていくのは当たり前だ。ところが1度あるスタイルで成功してしまうと、それ以外の新しい事を始めると「ああ、あなた達は変わってしまった。ファンなんてもうどうでもいいんですね?」と言って離れていくファン。当然レコードセールスも落ち、ライヴの観客動員も減るわけだ。下手をすりゃ契約さえも切られてしまう‥‥ん、どこかで似たような事書いたなぁ、俺。どのアーティストの時だったっけ?(笑)

要するに、彼等は「VOICE OF REASON」での失敗によって、周りからプレッシャーをかけられたわけだ。そこで彼等は日本のファンを意識した作りの「BELIEVE」を意に反して(?)作り、そしてそれがまたバカ売れしてしまうわけだ(とは言っても、ここ日本でだけね)。しかし彼等に拘りがなかったわけではない。前作での音楽性を持った実験的楽曲を日本盤シングルのC/W楽曲として収録、本国カナダ盤ではアルバムの2曲と差し替えてこれらの実験的楽曲を収録している。如何に彼等が日本贔屓にしてるかがお判りいただけるだろうか?

さて、そうやって紆余曲折しながら、彼等はひとつの結論に達する。日本ではある程度の変化も認めてもらえた。しかし本国カナダやアメリカでは「HAREM SCAREMはHM/HRバンド」というイメージが定着してしまい、そこから如何に離れた音楽を提供しても、聴いてくれさえしない。だったらいっそのこと、バンド名を変えて1から出直してみよう、と‥‥つまり、彼等はHAREM SCAREMという成功を収めたバンド名を捨ててまで、音楽的に成長したかったし、セールス的にも成功したかったのだ。その新しいバンド名こそが、今回紹介したアルバムのタイトルにもなっているRUBBERなのだ。

この「RUBBER」というアルバムは'99年秋にここ日本で先行発売された。但しこの時点では、日本でのみ今後もHAREM SCAREMという名で活動していく、と宣言していたはずだ。実際にアルバムのライナーノーツにもそう書かれている。同年12月には初のホール公演も含んだジャパン・ツアーも大成功を収めた。この時のライヴ写真を見て驚いた人も多いだろう。既に彼等のステージ衣装には、メタルの「メ」の字も存在しない。非常にファッショナブル‥‥5年前だったらブリット・ポップ系に括られたはずだ。そして今年、日本以外ではRUBBERとしてアルバムをリリースしたようだ。アルバムリリースに際して、日本盤を更にリミックスしているようだ。ところが、ここでドラマーであり最後の「メタル者」(唯一の長髪であり、ライヴでは裸でプレイしていた)のダレン・スミスが脱退してしまう。脱退理由は判らないが、恐らく今後の活動や音楽性で意見が分かれたのではないだろうか? 他のメンバーとの違いを見れば一目瞭然のような気もするが‥‥

この夏には昨年の日本公演を収めた「LAST LIVE IN JAPAN」という意味深なタイトルのライヴ盤もリリースされた。何故ラストライヴなのか‥‥そう、いよいよ彼等はここ日本でもバンド名をRUBBERと名乗り変える事にしたのだ。ある意味これはダレンの脱退も影響しているのかもしれない。このライヴ盤には音楽性を今のようなギターポップ系の音に変えてからの楽曲‥‥アルバムで言えば「BIG BANG THEORY」「RUBBER」の2枚‥‥しか収められていない。ボーナストラックとして新録の新曲とSQUEEZEのカバーが収録されている辺りにも、今後の彼等の決意のようなものが感じられる。

正直、「猿メタル」というコーナー的には前作「BIG BANG THEORY」の方が向いていると思う。適度にハードでパンキッシュ、時々登場するHR的アプローチも全く嫌みがない。昔からのファンからすれば物足りないのかもしれないが、俺はよく聴いたアルバムだ。しかし、上のような複雑な事情を知ってしまうと、やはり「どこまで行ってもメタルはのけ者なのかな‥‥」と感じてしまうわけだ。この「RUBBER」というアルバム、なかりの意欲作だ。いつかは取り上げたいと思っていた作品だが、こういう形で取り上げる事になるとは‥‥音的には前作よりもハードさを抑え、カントリー色なんかも取り入れはじめている。ある意味NELSONの最新作にも通ずるものがあるし(このアルバムもギターポップ系好きにはお薦めした作品だ)、TFCの最近のアルバムを好む人にもアピールすると思っている。

確かに「rockin'on」あたりを愛読しているコアなギターポップ/ハードポップ好きには「ひねくれ具合が足りない」と拒絶されるかもしれない。パンク色も弱いし。けど、純粋によい楽曲が詰まったアルバムと考えればTFC「GRAND PRIX」「SONGS FROM NORTHERN BRITAIN」にも共通する空気があるはずだ。

未だにBURRN!でしか取り上げられる事のない彼等だが、心機一転した今、「RUBBER」というバンド名は覚えていた方がいいかもしれない。来年以降の注目株だと俺は確信している。そして、彼等はQUEENのように今後もどんどん成長していって欲しい。「あの彼等にもこんな時代が~」とか言われるような存在になって欲しい。その為には、まず皆さんがこのアルバムを手に取ること。全てはここから始まるわけだから‥‥



▼HAREM SCAREM『RUBBER』
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投稿: 2000 09 24 04:13 午前 [1999年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2000/03/27

THUNDER『GIVING THE GAME AWAY』(1999)

最新作にしてラストアルバムになってしまったオリジナル5作目。とはいっても現時点で既に最後の日本公演を収めたライヴ盤が6月にリリースされる事が決まっているので、オリジナル楽曲としては最後作品という事か。その最後の作品がこんなに意欲的な作品だった事が皮肉というか‥‥悔やまれてならない。プロデュースは前作同様ルークが担当。シングルは"Play That Funky Music"(アメリカの白人ファンクバンドWILD CHERRYのカヴァー)と"Just Another Suicide"。(日本盤には英国でシングルオンリーでリリースされた"The Only One"もボーナストラックとして収録)実は"It Could Be Tonight"のCDシングルを見かけたことがあるのだが、あれはプロモーション盤だったのだろうか? オフィシャルHPにも載っていないことから、その可能性は高い。詳しい情報を求む!

何故にこのアルバムが意欲作か? 勿論従来の延長線上ナンバーも収録されているのだが、それ以上に耳につくのがアルバム1曲目の"Just Another Suicide"や"Giving The Game Away"といった異色作なのである。"Just Another Suicide"なんてコード進行だけみればBON JOVIがやってもおかしくない曲。いい意味で「THUNDERらしくない」のだ。勿論、いい曲には変わりない。末期ライヴでも必ず終盤に(メンバー紹介を挟んで)プレイされていた程だから。そしてアルバムタイトル曲だが‥‥これは、明らかにOASISを意識している。言ってしまえばBEATLESの"I Am The Walrus"そのものだ。OASISのカヴァーでも有名なこの曲を雛形にした"Giving The Game Away"、ある意味異様である。ライヴで披露されれば浮くかもしれない。しかし、もうアルバムを5枚も出しているアーティストがここで冒険をしなかったら‥‥これはTHUNDERの最後の賭けだったのかもしれない。

その冒険はアートワークにも顕著に表れている。それまでのチープなブリティッシュジョークをあしらったものから、いきなりアーティスティックな写真へ‥‥この辺もOASISやVERVEといったバンドのアートワークを参考にしていると思われる。つまり、彼らはそれまでの「固定観念」からの脱却を図ろうとしたのだ。しかし結果は‥‥母国イギリスでもライヴ会場を訪れたファンに「まだやってたんですね?」「へっ、アルバム出てるの?」って質問されたという。それを聞くと、日本はつくづく恵まれているのだなと実感する。

前作まではほんのり匂わせるだけに留まった都会的スパイスも、ここでは全開だ。ムーディーな曲が大半を占めていることからも伺える。"'Til It Shines"や"It Could Be Tonight"のような曲もいよいよここで完成度を増し、最後の最後まで彼らは代表曲を発表し続けた‥‥これはある意味、真似できない事だと思う。落ち目になって消えていくアーティストとして彼らも記憶されるのかもしれない。しかし、このアルバムを前にしてそんな事、言えるか? 確かに初期の3枚程「傑作!」とは言い切れないものの、これをZEPでいうところの「IN THROUGH THE OUT DOOR」的ポジションと捉えると‥‥これに続くアルバムが聴きたかった。もっとも、あのアルバムよりも楽曲の質は上だと思うが。

このアルバムでいいスパイスになっているのは何も上のようなオリジナル曲だけではない。シングルカットもされた"Play That Funky Music"の名演、これはどうだ! 昔、EXTREMEもライヴでカヴァーしていたが、こういう曲をTHUNDERのようなバンドにやらせるのは反則だ! ずっぱまりの名カヴァーのひとつだ。こんな素晴らしいバンドが存続できる環境にない今のイギリスなんて‥‥糞食らえだ!(怒)



▼THUNDER『GIVING THE GAME AWAY』
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投稿: 2000 03 27 02:17 午後 [1999年の作品, Thunder] | 固定リンク

1999/12/01

Mr.Children『1/42』(1999)

  『邦楽史上、最強のライヴ実況盤』これが全て。これ以上何を言えばいい!?(苦笑)けど、これで終わってしまうのもなんだしなぁ‥‥そうだ、何故ミスチルが今回、ライヴアルバムをリリースすることになったのか?その経緯でも書けばいいか?

  まず、今年2月にリリースされたアルバム「DISCOVERY」に伴なるプロモーションツアーは2/13、幕張メッセイベントホールからスタートし、7/11沖縄で終了した。今回のツアー後半戦にあたる5/8&9の代々木体育館ではビデオシューティングされており、6月末の北海道・真駒内アイスアリーナでの2公演(6/25&26)はライヴレコーディングされた。今回リリースされたアルバムはこの真駒内アイスアリーナでの、2日目(6/26)の音源と思われる。また、先にビデオシューティングされた映像は既に「ニシエヒガシエ」のライヴPVとして、音楽番組でオンエアされている。今のところ、このライヴ映像の商品化の予定はないとのこと。

  前回の「深海」のツアーは映像化されているが(東京ドーム公演最終日)、何故今回は「ライヴアルバム」にこだわったのだろう? 答えは今回のツアーに足を運んだ方なら判ってもらえるはずだ。前回のツアーは映像(ビジュアル)を駆使した、『見せる』ライヴだった。が、今回のツアーはセット自体もこじんまりしていたし、下手な細工もなかった。そう、あのライヴレポートで俺が書いたように、桜井が何度も口にした『聴かせる』ライヴ‥‥それが今回のテーマだったのではないだろうか? これは「DISCOVERY」というアルバムの、一貫したテーマなのかもしれない。

  ここに、如何に今回のライヴアルバムに力を入れているかが伺える文章を転載したいと思う。ライヴアルバムに封入されている写真集の最後の方に載っている、ミスチルのプロデューサーでありMY LITTLE LOVERのメンバーでもある小林武史氏のコメントである。


  今回のツアーをライヴアルバムにすることを決めて、2日間ある収録を、僕は初めて録音車の中で過ごしたのだが、視覚に頼らないライヴの醍醐味を1日目の段階で僕はしっかりと感じることができた。と同時に、多少のミスもちょっとした固さも残る1日目のライヴにも、何か尊さの様なものを感じて、ベストなライヴアルバムとはどういったものなのかと、少し考え込んだりもした。

  2日目のリハーサルの後、桜井君と楽屋にいて、例えばツアーが42本あったのなら、その42分の1というものにこだわる潔さ、そして残りの41本をこのアルバムの時間軸の奥に込めるような、そんなイメージの持ち方がミスチルらしいのではないか、といった話をした。ただ、その時は視覚抜きの音楽だけのパワーでベストといえるライヴを作れる集中力が持続できるか、という話にもなり、まあ今日も気楽にやろうか、ということで本番を向かえることになった。

  その日のライヴ中、録音車の中で、僕はこのアルバムに収められている全てのプレイを聞く事ができた。僕だけじゃなく、長い間彼等の音を録音しているエンジニアの平沼君も、他の人も含めて、完全試合に向かっている野球に立ち合っているような興奮を感じた。本番前に言っていた事とは裏腹な、桜井君の狙ってくる負けず嫌いな感じに、何だか笑いが込み上げてきていた。彼等のプレイは自由で、常に音楽を感じ続けながら進み、みんな心が開かれ、そして終わった。僕は中盤以降、鳥肌が立ちっぱなしだった。ウソみたいな話だけど。

  一本のライヴとしてこれだけ充実したプレイを完全収録できたことは、僕にとってちょっと不思議な体験でもあった42分の1だが、やっぱり、このアルバムの向こう側に、残りの41が、それぞれの会場で、毎日違うグルーヴを起こしていたことも想像してもらえたら、などと欲張りな願いも持ってしまう。


  まぁ、そういう事ですわ。(笑)とにかく聴いて欲しいなぁ‥‥ってこれ、完全限定盤(50万枚)だったんだ‥‥。(苦笑)確かにリリースされてからもう2ヶ月、市場では殆ど見かけません。でも、もし見かけたら‥‥即、買いです。これはライヴアルバムとしても絶品だけど、ミスチルのベストアルバムとしても機能するので、初心者にもうってつけの作品ですから。ミスチル3大ヒット曲、「innocent world」も「名もなき詩」も「Tomorrow never knows」も収録されているし、ボーナストラックとして沖縄公演から「抱きしめたい」までもが収録されているんだから‥‥

  結局、うまい事言えなかったレビューだけど(笑)まぁ、全てはプロデューサーの小林氏が的確に語ってくれてるから、これでヨシとしよう。(爆)こういうレビューもたまには如何!?(笑)



▼Mr.Children『1/42』
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投稿: 1999 12 01 11:30 午後 [1999年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

1999/07/10

LIMP BIZKIT『SIGNIFICANT OTHER』(1999)

『断言します‥‥これ、全米チャートのトップ3入りする! 下手したら1位だってありえる。そんくらい良く出来た作品です♪』


上の発言は、僕がこのアルバムを購入後、最初に聴いた後の感想。6/23頃の発言じゃないかな? うちの掲示板の過去ログを検索すれば載っているはずです。そう直感させ、公の場で発言させてしまう程のパワーをこのアルバムから感じ取ったのです。これはヘヴィーロック界久々の傑作ですよ! K0ЯNの「FOLLOW THE LEADER」を初めて聴いた時と似たような感触でした。それは‥‥『ポップ』『聴きやすく/とっつきやすくなった』点がポイントになってくると思います。今回この全米ナンバー1アルバムをお薦めするにあたり、この辺をポイントに語っていこうと思ってます。

LIMP BIZKITが今何故、旬なのか?‥‥知っての通り、このバンドがデビューした切っ掛けとなったのはK0ЯNとの交流からでした。そのK0ЯNが新作「FOLLOW THE LEADER」で1位を取り、この日本でもフジロックを境に市民権を得た後、彼等がしたことといえば「FAMILY VALUES TOUR '98」という2ヶ月に及ぶパッケージツアー。これは「K0ЯN自らが主催し、彼等のファミリーとも言えるバンド達(INCUBUS, ORGY, LIMP BIZKIT, ICE CUBE, RAMMSTEIN)を引き連れて約2ヶ月(98年9月から11月まで)に渡り全米をツアーしたもの」(ライヴアルバム「FAMILY VALUES TOUR '98」の帯たたきより引用)で、全公演アリーナクラスがソールドアウトだったそうです。まぁ今のK0ЯNの人気を考えれば当たり前ですが、このツアーの大成功がもたらした福音‥‥それはORGY, LIMP BIZKIT, RAMMSTEINといったバンドのチャート上での成功でした。デビュー間もないORGYはおろか、LIMP BIZKITに限ってはアルバム発表後1年半経ってからの事でした。それが今現在に至っても続いているわけです。(ちなみにORGYのデビュー盤は50万枚以上、LIMP BIZKITのファーストは100万枚以上のセールスを記録してます)そして、このパッケージツアーを1枚のCDに凝縮したライヴアルバムはビルボードのアルバムチャート初登場7位を記録し、100万枚以上の売り上げを記録しました。K0ЯNというモンスターバンドがもたらした成功。そして、そこから派生したいくつかのムーブメント‥‥確かに山は動いたのです。

K0ЯNの成功の理由については敢えてここでは書きません。また別の機会の為にとっておきます。(笑)でも、「FOLLOW THE LEADER」が一般的に浸透したのにはやはり『ポップになった』『聴きやすく/とっつきやすくなった』のは大きいでしょう。ここが今回のLIMP BIZKITの新作と共通すると思うのです。

LIMP BIZKITというバンド名から思い浮かべる事といえば‥‥『バカ(爆)』『とっつき難い』というイメージがありました。RAGE AGAINST THE MACHINEほど知的さを感じないし、K0ЯNほどキャッチーさを感じない、そういうバンドでした。まぁ確かにジョージ・マイケルのカバー "Faith" は名(迷?)カバーでしたが。(笑)多くの人がこの1曲の印象でLIMP BIZKITをこうイメージする訳ですが、アルバムを聴いて更に訳が判らなくなりませんでした?(苦笑)どこまでマジでどっからがバカなのか?その線引きに非常に苦しむ存在でした。確か一昨年の初来日公演では先に挙げたようなバンドのカバーとか披露してたりしたんでしょ?う~ん‥‥(爆)

ただ、僕自身はこのファーストアルバム「THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$」はとてもよく聴いたアルバムでした。気持ちいい、っつのが先行して、実はK0ЯNのファーストや「LIFE IS PEACHY」よりもよく聴き込んだ想い出があります。ただ残念なのはこのバンドのファーストもK0ЯN同様、歌詞カードがなかったこと。どこまでがバカなのか、その物差さえなかったという。(爆)

で、セカンド。すっごい期待してたら、それ以上のものが返ってきた気がして、とても嬉しかったなぁ。まず『聴きやすく/とっつきやすくなった』‥‥これはアルバムのサウンド・プロダクションが整理されたせいもあるでしょう。ファーストのプロデューサーはK0ЯNのファースト&セカンドを手掛けたロス・ロビンソン(他にもSEPALTULA, SOULFLYなどで有名)、ミキサーにはこの手の音を手掛けさせたら右に出る者はいないって位に有名なアンディー・ウォラス(SLAYERの一連の作品やNIRVANA「NEVER MIND」で有名)という超一流エンジニア陣を採用。これが誰のアイデアだったのかは知らないけど(多分K0ЯNのメンバーがロスを薦めたんでしょう)、こんなに豪華なファーストってそうはお目にかかれない。ところがこれだけ成功したファーストにも関わらず、彼等は製作陣を変えてきた。プロデューサーには『KIGN OF HEAVY ROCK』テリー・デイト(BUCKCHERRYでもお馴染み、PANTERAの全作品やSOUNDGARDEN「BADMOTORFINGER」で有名)、ミックスにはブレンダン・オブライエン(RATM「EVIL EMPIRE」やPEARL JAM「VS」以降の全作品、STONE TEMPLE PILOTSの全作品やAEROSMITH「GET A GRIP」で有名)を採用するという豪華さ。以前エンジニアの仕事に携わった事のある僕にはこの面子、生唾ものなんです!(笑)この面子を見ただけでも「おぉ、力入れてるなぁ!」ってのが伺えるし。実際に出来上がってきたセカンドは、この2人(テリー&ブレンダン)ならではの音作り。テリーならではのクリアーな音質。けど、彼が手掛ける作品は中音域は素晴らしいけど低音がちと弱い、っいう弱点をブレンダンの名ミックス振りでカバー。史上最強のサウンド・プロダクションがここに完成したわけです。確かにファーストで聴かれたあの「混沌としていて生々しい」サウンドも捨て難いですが、『聴きやすさ』って意味では今度の布陣で大正解。しかも今度の『ポップ』『とっつきやすい』っつう項目にもグッとマッチするし。

この『ポップ』『とっつきやすさ』を生かす為には、ヘヴィー度を増すよりはヒップホップ度を増す事で、LIMP BIZKITは成功を収めた訳です。だってRATMやK0ЯNと違って、LIMP BIZKITには実際にDJリーサルっていう有名DJ(90年代前半に "Jump Around" で全米1位を獲得したHOUSE OF PAINの元メンバー)がメンバーにいるわけですから、彼を生かさない手はないでしょう!実際新作には "n 2 gether now" っていうモロヒップホップ・ナンバーもあるくらいだし。メンバーにターンテーブル担当がいるってだけで、先の2バンドとは違う色が当たり前のように出せる。その強みを今回の作品で全面に出したかな、って気がします。ボーカルの絶叫を抑えたのも『とっつきやすさ』の理由のひとつかな。叫ぶというより、「ヒップホップ的間の手(?)」が非常に増えてますし。これ、絶対にライヴで盛り上がるって! その代表例と言えるのがビデオクリップにもなった名曲 "Nookie" でしょう。これをクラブで初めて聴いた時の感動&興奮といったら‥‥言葉に出来ずに踊りまくった、というのがこのアルバムの楽曲の特徴を顕著に示していると思うのです。つまり『暴れる/モッシュする』というよりも『踊る/ダンスする』方があっている、と。

ここで気付かれたでしょうか? 最初に例に出したK0ЯN「FOLLOW THE LEADER」もこういう要素を含んだアルバムだったという事を。僕の中ではある種プログレ的でもあったファースト&セカンド(楽器隊の組み立て方が一時期のKING CRIMSONに共通するものを感じていました。同様の意見をBURRN!誌で目にした時には感涙ものでした)。そこが『とっつき難さ』のひとつだったわけですが、新作ではヘヴィーロック色 /プログレ色が幾分後退し、その代わりにヒップホップ色が全面に出たという。そして "Got The Life" のような、今までにはなかったポップなナンバーが増えた事も驚きのひとつでした。「これが1位になっても驚きに値しない」と聴き終えた時、思いました。まぁK0ЯNの場合は前作「LIFE IS PEACHY」が3位まで上がってるので、何となく想像は出来たのですが‥‥LIMP BIZKITの場合はファースト、最高22位ですからねぇ‥‥それも最近。1位は想像以上に驚きでしたよ。

それにしても最近、この手のヘヴィーロック勢のチャート1位ってなかったよね? MARILYN MANSONが最後か?っつうことは今年最初のヘヴィーロック勢の1位か‥‥あとは今年1位取りそうな新作っていうと、9月に予定されてるRATMとNINE INCH NAILS、何時出るか想像も出来ないTOOLのサードってとこでしょうかねぇ?(あ、TOOLもKING CRIMSON的で面白いバンドですよね?LIMP BIZKIT以上に理解に苦しむ音ですが/苦笑)

‥‥というわけで、僕なりに分析してみました。本来、こんな分析なんていらないんですよ。「いいものはいい、悪いものは悪い」それでいいわけだし。(笑)ただ、ある意味「穴馬的存在(爆)」だった彼等がこういう爆発的成功(尚、今現在もビルボードアルバムチャートで1位ばく進中。発売2週目にして既にアメリカ国内で100万枚突破したらしいです)をした背景を考えてみた、ってとこでしょうか? そう考えると意外と成功にはそれなりの理由があるって事が見えてきますよね?

まぁ何だかんだ言いながら、未だによく聴くアルバムなのです。フジロック2日目の台風の目的存在になるのは確実ですね? 97年のRATM、98年のK0ЯNと「未だに日本の地を踏んでいなかった、まだ見ぬ驚異の存在」がフジロックでのカギを握っていたわけですが、前評判ではLIMP BIZKITってあんまり期待されてなかったとうか。(涙)まぁ初物じゃないしねぇ。ところが、この新作の出来と評価によって、状況は一転したわけです‥‥さて、どういうステージングを見せてくれるのか、どうやって僕を楽しませてくれるのか。今から考えると、もう‥‥既に興奮して眠れません。(笑)その運命の夜まで、あと3週間を切りました‥‥



▼LIMP BIZKIT『SIGNIFICANT OTHER』
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投稿: 1999 07 10 12:07 午前 [1999年の作品, Limp Bizkit] | 固定リンク

1999/06/13

DEF LEPPARD『EUPHORIA』(1999)

「EUPHORIA」、買ってなくても試聴機などでもう耳にしたのでしょうか? それともラジオで耳にしたとか‥‥シングル曲 "Promises" は一般のラジオでもかかりまくってますからねぇ? その "Promises"、初めて耳にした時の感動‥‥あれはどうやって表現すればいいのでしょうか‥‥そう、初めて彼等の曲を聴いた時のあの感動。初めて "Photograph" をラジオで耳にした時の、あのドキドキ感‥‥そして、スティーヴ・クラーク亡き後の復活第1弾としてのシングル "Let's Get Rocked" を聴いた時の高揚感、あれに近かった気がします‥‥いや、それ以上だったかもしれないっス。最近でいうと、BON JOVIの新曲 "Real Life" を初めて聴いた時の爽快感‥‥別にハードロックにこだわるつもりはないけど、それでも「歌らしい歌」を聴いたのは、随分久し振りのことだったから‥‥最近のUKロックやオルタナバンドにはない『熱』や『熱さ』が存在するバンド‥‥AEROSMITHばかりに期待を背負わせてはいけないですよ!(もう歳なんだし!?おっと、失言) GUNS N'ROSESは、ああいう状態だし‥‥

それにしても、いいのか?こんなにいい曲書いちゃって!?ってくらいに感動したのは言うまでもない‥‥最近、毎朝このアルバムを(特に "Promises" を重点的に)聴きながら会社に通勤しているのだけど、いやぁ~この季節にはピッタリっすね? 本当に聴いてて気持ちいい。暑苦しくなく、それでいて軽すぎず‥‥どこを切っても金太郎飴のような『LEPPS印』の名曲揃い。さて、今回はロック史上稀に見る超ヒットアルバム「HYSTERIA」より後の作品、「ADRENALIZE」と「SLANG」が無視されて何故このアルバムが「HYSTERIA」に続く『3部作の完結編』と言われるのか? そして、本当に「ADRENALIZE」と「SLANG」は無視されるような作品だったのか?を踏まえながら、この「EUPHORIA」の素晴らしさを皆さんにお伝えしたいと思っております。

まず、僕自身はこの「EUPHORIA」を「HYSTERIA」に続く『3部作の完結編』、つまり「HYSTERIA」の続編だとは思っていません。むしろ「ADRENALIZE」と「SLANG」の続編だと考えています。至極当たり前の事ですが。音楽的に考えても、この2枚があったからこそ「EUPHORIA」は今の形に落ち着いたんだと思います。「ADRENALIZE」がメンバー達や最近のファンの間ではどのように評価されてるのか知りませんが、僕はあの当時も今も傑作の1枚だと考えています。確かに「PYROMANIA」や「HYSTERIA」と比べると質的に少し劣るかもしれません。ただ、あの当時の状況を考えてみると‥‥このアルバムがリリースされた'92年って、グランジ/ヘヴィロック1色だった頃ですよね? NIRVANAやPEARL JAMの大ブレイク、METALLICAが1,000万枚もアルバムを売ってしまう時代。それまで天下だったBON JOVIやDEF LEPPARDが大苦戦を強いられたのは言うまでもありません。この年の秋にリリースされたBON JOVIの4年振りの新作「KEEP THE FAITH」は結局、4位までしか上がらず、セールス的にも100万枚(当時)だったと記憶してます。ところが、このDEF LEPPARDの「ADRENALIZE」は何と初登場1位、セールス的にも300万枚近くを記録したのです。確かに前作と比べれば700万枚もの開きがあるわけですが、あれは別格ですから。マイナス材料の方が多かったのに(時代性、メインソングライターのスティーヴ・クラークの死など)これだけの記録を残した事は、驚きに値します。

「ADRENALIZE」の良かったところは、1曲1曲がコンパクトになったこと。3~4分台の曲が殆どで、日本盤を除く外盤では10曲入りで40分ちょっとだったのです。この辺りはちょっと時代を意識したかな?とも思いますが。ただ、短くなったからといってつまらなくなったのではなく、その分いろんな要素が1曲1曲に凝縮されるようになった気がします。そしてサウンド・プロダクション(音の作り/組み立て方)も少しづつラフ/シンプルになってきました。この辺も時代を意識してのことなのか、それともスティーヴの死を期に、何かを変えていこうと考えたのか‥‥

その後、'93年に過去の未発表曲とC/W曲で構成された企画盤「RETRO-ACTIVE」(全米8位)、'95年には初のグレイテストヒッツ・アルバム(新曲入り)「VAULT」(全米10位)という『過去の精算』を4年かけて行ったわけです。その間にも「ADRENALIZE」リリース直後にスティーヴの穴を埋める形でヴィヴィアン・キャンベルが加入し、'93年には現メンバーでの初来日公演もありました(僕が初めて観た生LEPPSはこの時でした)。過去にケリをつけるために、スティーヴ時代の音源‥‥音楽性を形として残し、その間に彼等は新メンバーと共に新たな道を模索していたのです。

そうして完成したのが「SLANG」('96年。全米13位)でした。これはかなりの実験作で、当時も今も問題作としてファンの間では語り継がれています。が、そんなに目くじらをたてる程、酷い代物ではなかったですよ? むしろ、このアルバムがなかったら今回の「EUPHORIA」はこういう形にならなかったし。つまり「SLANG」の実験性は今作にも受け継がれているのです。「SLANG」の特徴は、「ADRENALIZE」から始まった『曲のコンパクト化』に更に拍車がかかったこと。そして『同時代性』を更に音楽に取り入れ、それをLEPPSなりに消化してること。ドラムが機械的なサウンドから、より生に近い音に移ったこと。さらに、この辺からメンバーが個人で書いた楽曲が増えてきたこと。「ADRENALIZE」までは『チーム』として『バンド』として1曲を作り上げていったけど、「SLANG」以降、いや、「ADRENALIZE」からのシングルC/W曲以降、こういうメンバーが単独で書いた曲が増えていったと思うのです。これによって、メンバーひとりひとりの色が更に濃く浮き上がるようになりましたね? そういう意味でも新加入のヴィヴィアンが単独で書いた "Work It Out" が「SLANG」からの第1弾シングルになったのは、『新しいDEF LEPPARD』を全面に出しているな、って気がします(しかもかなりの冒険作だったし)。

けど、この実験はセールス的には大失敗に終わったんですよ。アルバムはアメリカでは当時50万枚。ツアーも5月末からアジア地区から始まるも、その年のクリスマスで終わっているはずです。つまり、これ以上プロモーション活動しても意味がない、とレコード会社やマネージメントは考えたわけです。悲しいかな、これが現実‥‥これは噂ですが、この音楽的実験の失敗によって、レコード会社は「次作は是非、従来の路線で‥‥」と迫ったそうです。大いにあり得る話ですが。多分、この新作「EUPHORIA」が『3部作の完結編』と呼ばれるのは、そうしたレコード会社の策略から始まったことだったのではないでしょうか? 確かにここ数年、'80年代を席巻したメロディアスなロックの復活が望まれているようです。例えば数年前に全盛期のメンバーで再結成されたJOURNEYのアルバム「TRIAL BY FIRE」はアメリカでいきなり3位まで上がるし、シングルもトップ20に入る大ヒットだったし。アメリカでは近年、'80'sハードロックバンドのCDがまた売れているようですし、ラジオでもそういうのを中心にかける専門局が大当たりしてるそうです。これを聞いたLEPPSのメンバーは大いに燃えたそうです。「俺達がやらずに誰がやる!?」と‥‥時代がそういうものを求めるなら、開き直ってやろうじゃねぇか? でも、俺達なりに'90年代の解釈でやらせてもらうぜ!って感じで‥‥

さて、この「EUPHORIA」ですが、最初に言った通り、あくまで「ADRENALIZE」「SLANG」の流れをくむ作品なのです。勿論、作曲チームに'80年代の名パートナー、マット・ラングを迎えたこともあり、『~3部作』を彷佛させる楽曲が多いのも確かです。特に "Promises" なんてその最も顕著な例ですし。でも、あの頃と違うのは、やっぱり『楽曲がコンパクト』だという事。本当に3分台前半の曲が多くて、日本盤でもボーナストラック入れて14曲で53分だよ!? 「HYSTERIA」なんて12曲で62分だよ!? あれはあれであの時代に合ってたんだよね?

嬉しかったのは、ハードな叙情詩的ナンバーの復活。そう、 "Paper Sun" のこと。このナンバーのある/なしで、僕的には受け止め方が変わってきます。嬉しかったですよ、この曲聴いたときは。こういうのってある種、スティーヴの色だったはずなのに、『引き出しのひとつ』として今回改めて披露してくれたこと。しかも過去の亜流になってないです‥‥"Promises" と "Paper Sun" 、この2曲だけで僕はノックアウトされましたが。そして実験的要素‥‥ "All Night" におけるブラックテイストを臭わせるダンスチューン、 "Goodbye" みたいなバラードも「SLANG」を通過しなけらば書けなかったでしょう。こういう曲が「PYROMANIA」や「HYSTERIA」に入ってたら、間違いなく浮いてたでしょう。これらの曲が全く浮く事なく収まっているのは、その他の曲も間違いなく「ADRENALIZE」~「SLANG」の流れをくんでいるからです。そう、「SLANG」での実験は決して失敗ではなかったのです。今となっては『過渡期』だったのかもしれません。サウンド・プロダクション的にも『~3部作』よりも「ADRENALIZE」に近い、いや、それ以後ってことなんでしょうね? とにかく、僕には『後ろ向き』とか『過去の焼き直し』には思えないんです。'90年代最後にきていよいよ、集大成的作品が完成したかな?と思っています。

僕らのようにブレイク時からLEPPSを知る人間にとっては、このアルバムは『ちょっと(掴みが)弱いかな?』と感じるアルバムかもしれません。確かに思春期に聴いたアルバムの方が印象は強いでしょうから‥‥でも、判っててもあえて声を大にして言いたいです‥‥


最高傑作だぜ!? てめぇら、聴きやがれ!!



▼DEF LEPPARD『EUPHORIA』
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投稿: 1999 06 13 08:07 午前 [1999年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

1999/05/11

BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』(1999)

さてさて、今回はさんざん盛り上げておいて「お前の感想はまだかよ!?」ってなツッコミをもらう前に、僕なりの感想をきっちり形にしとこうと思いまして‥‥BUCKCHERRYっすよ、BUCKCHERRY!!(爆)‥‥完全に失語症以下の表現だな、これじゃ。

まず、何故ここまで彼等が話題になっているのか? そりゃBUCKCHERRYがアメリカはロス出身のバンドだからでしょう♪ 考えてみて下さい。僕ら日本人は幸運にも日本にいて、アメリカやイギリスのみならず、ヨーロッパ諸国からブラジル、東南アジアにロシア……とにかく、世界中の音楽を日本にいながらして聴く事が、手に入れる事ができるのです。その幸せさを忘れてしまって……よ~く思い浮かべて下さい。僕らが普段耳にする、BUCKCHERRYのようなワイルドなロックンロールバンドはどこの国出身ですか? WiLDHEARTS? イギリス。BACKYARD BABIES? スウェーデン。HELLACOPTERS? スウェーデン……みんなアメリカ以外の国の出身。まぁこれらのバンドはBUCKCHERRYとも色が違うし、これらのバンド自体にも「ワイルドなロックンロールバンド」っていう共通項しかなく、音楽性は皆それぞれに違うし。そしてこれが決定的‥‥皆、インディーバンドだということ。確かにWiLDHEARTSは過去、メジャーレーベルに所属していたけど。日本にいるとあまり感じない事かもしれないが、現在アメリカにこの手のバンドがどれくらいメジャーに残っているだろう? AEROSMITH? まぁいい。これは特例。GUNS N'ROSES? つうか、本当に存続してるの? さて、他に誰がいる? 確かにグランジあがりのシアトルバンドなどはいるが、80年代を席巻したようなバンドは今、見当たらない。いても弱小インディーズ・レーベルに所属して、日本ではメジャーでリリースされてるごく一部のバンドのみ。そう、大袈裟かもしれないが、GUNS N'ROSES以来の10年間、この手のメジャーバンドの不在。インディーロックの席巻、シアトル勢、ヘヴィロック、メジャーバンドのレーベルからのドロップ‥‥10年は長すぎた。そして、僕らは待った。何時の日か、再びメジャーレーベルから、何かを変えてくれるバンドが現れるのを。

BUCKCHERRYが所属するレコード会社は、新興レーベルの「DREAMWORKS RECORDS」。ディズニーとスピルバーグとゲフィン(アメリカの大手レコード会社。音楽活動復帰後のジョン・レノン、復活後のAEROSMITH、GUNS N'ROSESやNIRVANAが所属)の共同出資会社。この会社が送る、今世紀最後の大物新人として鳴り物入りで登場したのが、彼等BUCKCHERRYなのです。このライヴハウス上がりのバンドがまず手始めにしたことといえば、大物バンドのオープニングアクト。KISSとKORNという、ある意味対極にいるバンドの。けど、この2つのバンドにもちゃんとした共通点がある。それは「エンターテイメント性を重視した、アリーナショウ」を繰り広げるアーティストだということ。かたや全盛期のメークを施し、昨年リリースした復活オリジナルアルバムは全米第3位を記録した、「アリーナロックの親玉」KISS。かたや「90年代のアメリカ」そのものともいえる、全米ナンバー1バンド、KORN。両方ともアリーナを満員にし、あくまで(その方法論は全く違うものであっても)お客を楽しませる事に徹底してるという意味では、この2つのバンドは共通したことをやってるのです。

新人にしていきなりアメリカの頂点にいるバンドのオープニングアクト。しかもKISSとはヨーロッパ諸国、KORNとはアメリカを回るわけなのです。こんなに恵まれた状況。そして最も驚いた事のひとつに、今年の6月第1週のビルボード誌で約10年振りに「HR/HM特集」を組む事が決定したという事があります。何故これがBUCKCHERRYと関係あるのかというと、理由その1;10年前もビッグだったMETALLICAやMOTLEY CRUEが未だに現役で、しかも音楽的に飽くなき挑戦をしている事、理由その2;KORN, MARILYN MANSONなどといった新勢力(新しい形態のHR/HMを体現している)の活躍、そして理由その3;BUCKCHERRYという10年にひとつの逸材のデビュー。いや、本気で。既にここまで影響を与えてしまっているわけですよ、アメリカでも。こんなこと、本当に10年振りなのですよ。

アメリカはもとより、ここ日本でも既に盛り上がりが過熱していて、デビュー前から「BURRN!」誌や伊藤政則氏のラジオなどで取り上げられ、国内盤発売当初は品切れが続出する地方もあった程だそうです。デビュー後には「rockin'on」誌などの総合音楽誌にもインタビューが取り上げられています。アルバムレビューも好意的でしたし。

もうひとつ、デビューアルバムの扱い。プロデューサーがテリー・デイトとスティーヴ・ジョーンズ。スティーヴはかの有名なSEX PISTOLSのギタリスト。テリーはPANTERAやSOUNDGARDENのプロデューサーとして有名ですね? スティーヴはまだしも、テリーは意外な人選のような気がします。どちらかというとヘヴィロック系を多く手掛ける人物だけに、こういうストレートな音楽はどうなのかなぁ‥‥って、よくよく考えてみたらこの人、昔にWiLDHEARTSの『DON'T BE HAPPY...JUST WORRY』のリミックスを手掛けているのですよね? そうか、ロックンロール系、初めてじゃないんだ。しかし、こんな有名どころをいきなり使うか? いかにレコード会社が金かけてるかがよ~く判るわ。

さて、事前の情報はこんなもんで如何でしょうか? これで何故彼等がここまで話題になっているかが判ってもらえたでしょうか? それを踏まえた上で、以下の僕の感想を読んで下さい。それだけこのバンドに入れ込んでいる。いえ、賭けているのですから。

まず最初に言ってしまえば……BUCKCHERRYのやっている音楽は決して新しいタイプの音楽ではないです。80年代末期にこういうバンドはロスに腐る程いましたから。ブレイクこそしなかったものの、ゲフィン・レコードは「第2のGUNS N'ROSES」と称して88年にLITTLE CITY ANGELSを、90年にはLITTLE CEASERをデビューさせました。共にGN'Rというよりは……BUCKCHERRYに近いタイプのバンドでした。つまり、ゲフィンでさえも判っていたのです。「第2のGN'R」と唱いながら、同じではダメだと。だからこそ、GN'Rに足りなかった部分(ブラックテイスト、ブルーズフィーリング、マッチョ的な男臭さ)を持ったバンドを求めたのでしょう。が、結局このふたつのバンドは成功を収める事なく消えていったのでした‥‥ちなみにLITTLE CEASERはプロデュースにあのボブ・ロックを迎え、デビュー曲はかのアレサ・フランクリンの名曲「Chain Of Fool」でした。同じ頃、BLACK CROWESがデビューし、オーティス・レディングの「Hard To Handle」でブレイクしたのは、今となっては皮肉でしかありません。

BUCKCHERRYとGN'Rとをその登場の仕方で比較してしまいましたが、音楽性に関しては全く別、と思ってもらっていいと思います。何故なら、彼等は先の2つの消えていったバンドの音楽性に近いからです。けどそれだけで終わってないのは、GN'R同様、パンクの洗礼を受けているという点でしょうか? そしてあくまでタテノリ‥‥イギリスのバンドと違うのはこの点なのかも。このタテノリにリフ中心‥‥思わずAC/DCを思い浮かべますね? 実際、ボーカルのジョシュア・トッドは最も影響を受けたバンドとしてAC/DCの名前を挙げていますが。

以上の事から、僕は最初にこのバンドを紹介した時、GUNS N'ROSES + BLACK CROWES + AC/DCのような書き方をしたと記憶してます。そして、ルックスの面(全身に入ったタトゥー)からMOTLEY CRUEの名前も挙げたような記憶があります。あの時、僕が言いたかった事、理解していただけたでしょうか?

楽曲に関してですが、最初に「WiLDHEARTS的」と言っていたような‥‥これは完全に僕の勘違いです。ラジオで "Dead Again" 1曲を聴いた感想でこのように言ってしまいました。けど、アルバムをちゃんと聴くと、おもいっきりアメリカのバンドですよね? 正直、最初に挙げたヨーロッパ勢にはこれは出来ないでしょう。こんなアメリカンロック、何年振りに聴いたかなぁ? 試しにこのアルバム聴いた後にBLACK CROWESの『BY YOUR SIDE』を聴いてみたのですが‥‥決定的に違う「何か」を持ってますよね、BUCKCHERRYは。(言っとくけど、『BY YOUR SIDE』はお気に入りのアルバムだよ!)決して否定的な意味ではないのでBLACK CROWESファンに怒って欲しくないのだけど、いい意味でBLACK CROWESは「止まって」るバンドですよね? それに対し、BUCKCHERRYの方は古いながらも「同時代性」を持ったバンドだと思うのです。例えばBUCKCHERRYの「For The Movies」という曲。ブルージーなバラードですが、BLACK CROWESがやったらもっと泥臭くなると思うのです。が、BUCKCHERRYの方はというと、ちょっと都会的……MICHAEL MONROEあたりがやりそうなアレンジ、しかもギターソロはツインリード……そして同じ疾走系の楽曲でも、かたや「Go Faster」のようなROLLING STONES, FACESあたりがやりそうなタイプ、かたや「Dead Again」のようなただのパンクソング。この辺の違いも大きいですよね? 両者のボーカリストは共に渋い声をしてますが、唄い上げるクリス・ロビンソンに対し、吐き捨てるジョシュア・トッド。何だか、比べるだけ無駄のような気がしてきた。結局、両者は全く別のバンドだ、と。ただ、「rockin'on」誌がインタビューで「BLACK CROWESの事をどう思うか?」なんて聞いてたもんだから、つい‥‥きっとこの先も、この手の質問はされ続けるんだろうなぁ、REEFと一緒で。

と、ここまで書いてみて改めて思った事。この手のロックって、結局は肌に合うか、合わないか、なんですよね? 意味ないじゃん! これじゃ「お薦め文」というよりは「釈明文(みんなの誤解を解く為の解説)」だな、これ。まぁそれもいいか。とにかく、僕は好きで好きで仕方ないのだから。(これを「開き直り」ともいう;爆)ただね、巷でここまで騒がれていると必ず出てくると思うんですよ。「売れてるバンドは聴かん!」とか「話題だけのバンドは好かん!」っていう『自称:ロックファン』が。この文は、そういう人達が心を改める切っ掛けになってくれればなぁ、誤解を解いてくれればなぁ‥‥そういう起爆剤になってくれれば、こちらとしては万々歳です。千の言葉よりも、たったひとつの音‥‥この方が説得力があるのだから、ちょっとでも気にかかったら買ってみて下さい。いえ、持ってる友人に借りてでも聴いて下さい! そうなってくれれば、こっちの作戦、大成功なのですから。

最後に。このバンドの魅力のひとつはライヴだと確信してます。実際に生でまだ見た事はないのですが、TVにてそのライヴ映像(KISSのオープニング時のもの)を見ました‥‥ちょっとキますよ、これは! アクセル・ローズやペリー・ファレル以来かもしれない、あんな変なボーカリストは。だって常に動きっぱなし、踊りっぱなし、飛び跳ねっぱなし! 1曲中ピョンピョン飛び跳ねながら「Lit Up」を唄うジョシュア。これは衝撃でした。彼等は小さいハコでなく、是非アリーナクラス、それも野外で見たいです。東京だったら日比谷野音とか。フジロックで呼んじゃえばいいのに。

ヨーロッパでは4月上旬、日本では下旬にデビューしたBUCKCHERRY。いよいよアメリカでは今月末にそのデビューアルバムがリリースされるようです。そしてKORNと一緒にアメリカ中をサーキットする……売れるか、否か。結局、彼等には「売れて当たり前」みたいな義務感が大前提としてあるのです。さて、一体どうなることやら……今のアメリカの音楽シーンを変える事ができるか、非常に楽しみでなりません。



▼BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』
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投稿: 1999 05 11 11:05 午前 [1999年の作品, Buckcherry] | 固定リンク

1999/05/02

『hide TRIBUTE : SPIRITS』(1999)

  1998年5月2日。まだ1年しか経っていないのか‥‥hideがこの世を去ってから。たった1年。もう1年。人によっていろいろ違うのだろう。hideの不在がもたらしたものって一体なんだったのだろう、とこのトリビュート・アルバムを聴きながら考えてみた。答えはまだ見つからない。みんなはもう見つかったかい?
  このトリビュート・アルバムには、hideの身近にいた人間、hideに影響を受けた人間、hideとは接点がなかった人間と、いろいろ参加している。それぞれがそれぞれの解釈でhideの楽曲をカヴァーしている。今回は久し振りの「全曲解説」を通して、それぞれのアーティストの解釈についていろいろ感想を述べてみたいと思う。最後までお付き合い願いたい。

M-1. 布袋寅泰「ROCKET DIVE」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  「HOTEI」ではなく、「布袋寅泰」として発表したこの曲。ハマリ過ぎ。(爆)布袋の為に作られたような名曲だな、これ。最初に布袋がこの「ROCKET DIVE」を選んだことを知った時、爆笑した。「自分の事がよく判ってるじゃん♪」って。ただ、実際に出来上がったアレンジは、ちょっと考え過ぎの部分もあるかな?と思ったのも事実。が、あえて打ち込み中心の「布袋流テクノ・ロック」に仕上げたのには‥‥やっぱり(笑)
  布袋自身はhideとは交流がなかったようだが、自分とhideとの共通項をうまいこと見つけたな、というのが正直な感想。バンド出身、解散後ソロアーティスト、ギタリスト兼ボーカリスト、時代に敏感、よき兄貴分‥‥等々共通点はいくらでもある。だけど布袋は布袋、hideはhide。全く違うアーティストだ。なのに‥‥不思議だ。これこそ「名カヴァー」と言えるのではないだろうか?

M-2. 清春・SHOJI「Beauty & Stupid」(from ALBUM「PSYENCE」)
  元「黒夢」のボーカル、清春の解散後初の仕事がこれ。清春自身もhideとは交流はなかったそうだ。聴く限りでは原曲に忠実な出来。リズムは打ち込みなんだね? あくまで「ロックンロール」にこだわる(?)清春らしからぬアレンジかな?と最初は思ったのだけど‥‥まぁアリ、かな? でも、「カヴァー」というよりは「コピー」に近いような‥‥原曲ではhideの癖の強い唄い方が特徴だったこの曲も清春が唄う事によって、幾分「黒夢」っぽいイメージを与えてくれる。何故彼がこの曲を選んだのか(あるいは与えられたのかもしれない)、彼がこの曲を通して何を伝えたいか?が全く伝わってこない。トリビュートは故人のよいところを新たな解釈で伝えるのがひとつの目的なわけで、これではただ「僕、ソロになったんで、手始めに他人の曲から始めてみました」と取られる可能性もあるわけだ。実際はどうだか知らないが‥‥

M-3. kyo & TETSU「TELL ME」(from ALBUM 「HIDE YOUR FACE」)
  hideとはSABER TIGER時代一緒だったkyoがボーカルを取るこの曲、イントロの走りぎみなTETSUのドラムが印象的。これも基本的には「コピー」だが、kyoが一音一句をとても丁寧に、心を込めて唄っているのが伝わってくる好演だと思う。こういう「元メンバー」といった身内の人間がカヴァーする場合、感傷的になってポシャって終わる事も考えられるのだけど、やはり昨年末のSpread Beaverとの共演が先にあったからよかったのかもしれない。(ちなみにその時、kyoは「Beauty & Stupid」を唄っている)

M-4. SIAM SHADE「ピンクスパイダー」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  彼等はhideというより、LUNA SEA側の人間なわけで、やはりhideとの直接交流はなかったようだ。それにしても‥‥ファンには悪いが、このアルバム中最悪のケースだと思う。最も悪い「カヴァー/トリビュート参加」のケース。まず、この録音の悪さはどうにかならなかったのだろうか? スタジオ・デモ並である。この程度の録音、現在ならアマチュアでも可能だ。それからロックらしからぬミックス。ボーカルが前に出てリズムが引っ込んでるパターン。歌謡曲じゃないんだから。
  録音技術の事ばかりではない。完全に「コピー」だ、これでは。唯一、ギターが好き放題暴れているといった程度。今回の各曲のクレジットを見て思った事は、今までプロデューサーを立てて作品を作ってきたバンド(GLAY, SIAM SHADEなど)がセルフ・プロデュースを行っている事‥‥つまり、「たった1曲に金かけて(プロデューサーに払う金)らんないでしょ?君らでどうにかしなさい♪」とでもレコード会社から言われたのか? にしても‥‥これは最悪。自分らの曲より酷いよ。ボーカルも自身の曲だと生き生きしてるのに、ここじゃ‥‥と俺は感じたのです。

M-5. shame「LEMONed I Scream」(from ALBUM「PSYENCE」)
  このバンドに関して僕はそれ程知識がないが、hideが主催するレーベル「LEMONed」のバンドだそうだ。ということは、hideが見つけてきたって事? アルバム内のアーティストのコメントを見る限りでは、そう取れるのだけど‥‥いいんじゃない? このアルバムからは唯一の英語曲だけど、気負ってなくていい仕上がりだと思おう。原曲にあった浮遊感・アップテンポ感を、ネオアコっぽい始まり~徐々に盛り上がる持ってき方へとアレンジしたのは正解かも。おそらくこれがこのバンドの色なのだろう。ちょっとオリジナルアルバムの方も聴いてみたくなった。本来カヴァーソングってそういう効力を持ったものなのでは?

M-6. CORNELIUS「ピンクスパイダー」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  この組み合わせが一番難解かつ厄介だった。(爆)hideと小山田くんとの接点が‥‥まぁ面白い仕事するとは思ってたけど、ここまでやってしまうとは‥‥小山田が参加すると知った時点で、俺は2通りのパターンを考えた。ひとつは「バンドで演奏して、滅茶苦茶に解体するカヴァー」、もうひとつが最近依頼の多い「解体かつリミックス」作業‥‥前者なら、「69/96」アルバムで見せたハードロックへのアプローチが再び見れたのかもしれない。でも、そこは小山田。結局は後者を取ったわけだ。(笑)彼らしい手段だと思う。
  で、これがまた傑作。このアルバム中、確かに異色の出来だが、本来ここまでやらなくてはならないのでは? hideに対する敬意を込めつつ、自分の色を出す‥‥hideの癖の強い楽曲を前にこれすら忘れてしまうアーティストも多いのでは? しかし布袋といい小山田といい‥‥ソロアーティストの方が動きやすいのかもしれない。自身のイメージもひとつというわけではないしね。(バンドだとそうもいかない場合もあるしね)敢えて唄わなかったのも正解かも。しかし‥‥小山田に「ピンクスパイダー」って言葉、合ってない?(笑)

M-7. ZEPPET STORE「FLAME」(from ALBUM「PSYENCE」)
  hide自身が生前「この曲はZEPPET STOREに影響されて書いた曲だ」と言っていたのが印象的なナンバーを、当の御本家ZEPPET STOREがカヴァーすることになるとは。しかもこういう形で‥‥原曲はZEPPET STOREっぽいリズミカルでヘヴィーで繊細な曲を、彼等は違った解釈でカヴァーした。原曲のまま再現してもZEPPET STOREらしい曲には仕上がっただろうが、「それじゃhideが許してくれないだろう」と感じたのか、今現在のZEPPET STOREらしいアレンジで挑んできた。アコースティックギターを軸にして、大陸的な大きなノリ‥‥このまま彼等のオリジナルアルバムに入っていても何ら違和感がない出来だ。原曲に助けられてる部分も多少あるが、それでもここまで説得力があるのは、やはり彼等ZEPPET STOREの底力ではないだろうか? 個人的には、昨年末のSpread Beaverで聴かせてくれたあのピアノアレンジをもう一度聴きたいなぁ‥‥

M-8. LUNA SEA「SCANNER」(from ALBUM 「HIDE YOUR FACE」)
  hideとLUNA SEA(いや、JとSUGIZOと言った方がいいか?)との関係は今さらここで語ることもないだろう。よき兄貴分、よきライバルとして彼等をお互いを意識していたようだ。そして彼等は「無言で」このアルバムに挑んだ(彼等のみ、ライナーノーツにはコメントを載せていない)‥‥「Let the music do the talking」って事だろうか‥‥
  やはりLUNA SEAのカヴァーを聴いても感じる事だが、実力・オリジナリティーを既に持ち合わせたアーティストというのは、誰の曲をカヴァーしても「自分達の曲」にねじ曲げてしまう力量を持っているな、という事。長く活動してればいい、って訳じゃない。結局はいかに「myself」でいられるか‥‥このアレンジなんて、LUNA SEAのオリジナルと言われても信じてしまうんじゃないだろうか? 近年の彼等らしい曲調だし(歌詞はともかく;笑)‥‥が、後半のアップテンポになる展開‥‥久し振りにこんなに激しいLUNA SEAを聴いた気がする。改めてLUNA SEAに惚れ直した。(笑)

M-9. BUCK-TICK「DOUBT '99」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  hideとBUCK-TICK‥‥繋がりそうで繋がらない。まぁXとBUCK-TICK、と考えればなんとなく繋がるが。布袋同様、まさにハマりまくった選曲・名カヴァーではないか? BUCK-TICKは最近の所謂「ヴィジュアル系」ファンにはそれ程好かれてはいないようだが、LUNA SEA同様ゴス(ゴシック系バンド。BAUHAUSや初期のTHE CURE, JAPANなどがこう呼ばれた。最近ではMARILYN MANSONなども再びこう呼ばれているようだが)に影響を受けたバンドとして、彼等こそが真の意味での「ヴィジュアル系」であり「オルタナ」ではないだろうか? しかしなぁ‥‥「人間ドラムンベース」(笑)‥‥どこまでこの路線を続けるのかが興味深い。

M-10. TRANSTIC NERVE「ever free」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  確かhideが生前、最後に関わったのがこのバンドだと聞いている。hideとは会った事がなかったようだが‥‥新手のヴィジュアル系、というわけでもなさそうだ。オリジナル作ではラルクを手掛ける岡野ハジメ氏をプロデューサーに迎えているようだが、このカヴァーは自分達で手掛けている。このアルバムに参加してるアーティストの中では最もキャリアが短いだけに、一体どういう解釈で挑んでくるのかが気になったが‥‥これから、といったとこだろうか? 原曲のストレートさをそのままに、音数を多くし、一部16ビートを持ち込んでいる、という至極そつないアレンジだ。新人という事を差し引いて‥‥今後に期待、というところだろうか? だが、改めて「影響を受けたフォロワー」としてのカヴァーが聴きたかった。(本人達はそのつもりかもしれないが、俺にはそれは伝わらなかった。ハードルが高すぎたのか?)

M-11. OBLIVION DUST「限界破裂」(from ALBUM「PSYENCE」)
  Spread Beaverにも参加したギタリストKAZが所属するバンド。元がかなりオルタナ色の強いバンドなだけに、どういう選曲でどういうアレンジになるのかが気になるところだった。選んだのは「限界破裂」。原曲はアップテンポのhideらしい曲だが、オブリのアレンジが‥‥これ、傑作だ! このアルバムの中でも1、2を争う出色の解体振りだと思う。ゴシック調に始まり、サビにくるとドカーンと爆発するグランジ調アレンジ。自分自身を常に持っているバンドのアレンジはこうも違うのだろうか? 原曲にあった「切なさ」が、このアレンジで聴くと「ストーカー的圧迫感」(笑)を感じる。この力技、半端じゃないと思う。OBLIVION DUST、やはり侮れないバンドだ。

M-12. GLAY「MISERY」(from ALBUM「PSYENCE」)
  GLAY、レコード会社移籍第1弾の仕事がこれ。彼等もこの曲には自らがプロデュースに当っている。それにしても‥‥好き放題やってるなぁ、というのが第1印象。こんなにテンポアップにして、原曲のメロディアスさを殺してないか?と思ったのだが‥‥スタッフは誰も何も言わなかったのだろうか?(笑)GLAYにとってもhideという存在は特別だったようだ。それにしても‥‥このパンキッシュなアレンジに、ファン以外の人間はGLAYらしさを感じる事が出来るのだろうか? かなり疑問が残るアレンジだ。中盤のアコースティックによる「和み」の部分に「GLAYらしさ」を垣間見る事は出来るのだけど‥‥

M-13. I.N.A.・Pata・heath「CELEBRATION featuring hide」(from ALBUM「BLUE BLOOD」)
  最後の2曲は完全な「身内」の参加作品。hideがソロ活動の際には常に活動を共にしてきたI.N.A.、X JAPANのメンバーPataとheathが参加したこの曲は‥‥なんとX時代の名曲のリアレンジ曲。しかもボーカルトラックにhideの未発表音源を使用している。ということは‥‥いずれこの曲をX時代とは別のアレンジで発表する計画があったという事か? となると「JOKER」や「SCARS」なんかのデモ音源も残っているのでは?‥‥なんて考えてしまった。それにしてもこれは‥‥もう反則です!(笑)冷静に判断を下せ、という方が難しい。hideが参加してるんだぜ!? これ以上何を言えばいいっていうんだ? 「Ja,Zoo」に入っていてもおかしくないアレンジだし、やはりこれは「hide以上」でも「hide以下」でもない、正真正銘のhideの作品だ、と言いたい。彼がアレンジに関わっていなくても、これはhide以外の何ものでもない。これは嬉しいボーナスだった。

M-14. YOSHIKI「GOOD-BYE」(from ALBUM「PSYENCE」)
  最後まで参加があやふやだったYOSHIKIが選んだのが、この曲‥‥何も言う事はないと思う。僕自身の感情とは別に‥‥あのイントロダクションのピアノソロも彼によるものだろう。あのイントロに、このアウトロ‥‥感傷的になってしまうが、ひとつの作品という意味ではこれで正解かも。


  こうやって通して聴いてみて改めて思った事‥‥hideという「ソングライター/表現者」の非凡さ。こんなにポップで判りやすく、それでいてロック然としている。いろいろなジャンル/新しい表現に常に興味を持ち、それを自己流の消化をしてみんなの前に提示する。何度も言うが、日本のヒットチャートに「ピンクスパイダー」のような楽曲を送り続けた彼は、やはり偉大すぎる。
  hideの不在‥‥それは、こういうイノベィティングなソングライター/表現者を失ったという事。こういうジャンルでこういう事をやるアーティスト。しかもヒットチャートの上位に君臨する「ポップスター」としても機能する存在‥‥確かにLUNA SEAやラルクといった後輩達がそれに追いつけ追いこせと頑張っているが‥‥今世紀、という意味では彼が最後なのかもしれない。今後、「最も影響を受けたアーティストはhideです」という若手が多く出現するだろう。そして、その度に思い出して欲しい。hideが如何に素晴らしいアーティストだったかという事を。忘れないで欲しい。本来、「アーティスト」とはこういう人の事を言うのだという事を‥‥ありきたりの言葉しか言えないが、1年前に言えなかった事を今、言いたい。

‥‥‥‥‥Thank you, and.....I love you.



▼『hide TRIBUTE : SPIRITS』
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投稿: 1999 05 02 12:00 午前 [1999年の作品, BUCK-TICK, Compilation Album, D'ERLANGER, GLAY, hide, LUNA SEA, Oblivion Dust, X JAPAN, Zeppet Store] | 固定リンク

1999/03/23

椎名林檎『無罪モラトリアム』(1999)

  今回はレビューなんて大それた代物ではありません。そう、椎名林檎嬢へのラブレターだと思ってもらって結構です。僕もそのつもりで書きますので。(照笑)

  しっかし、ラブレター書くのなんて何年ぶりだろう‥‥いや、何十年ぶり?(笑)歌うたいの僕としては、ラヴソングを書く時って大体それを唄って聴かせたい対象(相手)がいるので、それも一種のラブレターだけどねぇ~。ただ、これだけは先に言っておきます。別に林檎姫が『女性』だから惚れた(笑)訳ではなくて、最初は純粋に『シンガー/表現者』としての彼女に惚れたのですよ。これは声を大にして言いたい! で、それが切っ掛けで音聴いてビジュアル見て‥‥まぁ、後は皆さんが知ってる通りですわ。(爆)

  それからもうひとつ。よく彼女を『アラニス・モリセットのフォロワー』って言う人がいますが‥‥ひとり突出して売れた人間がいると、必ず後から出てきた個性的な人間はこのように言われる訳で‥‥シングル1,2枚しか出してない某H・B(笑)みたいなバンドならまだしも、彼女はシングル3枚にアルバムまで出してる訳だから、比べようがない訳で‥手ンそれって、自分の無知(叉は許容量の狭さ)をひけらかしてるだけでみっともないですよ? せめてアルバムちゃんと聴いてから判断して欲しいものです。考えてみれば、アラニスだってまだ2枚しかアルバム出してない訳だし。ず~っと心の中にしまってた事ですが、この際なので言っておきました。はぁ~っ、スッキリした。(笑)

  では、皆様お待たせ致しました。今回のお題目、椎名林檎嬢の「無罪モラトリアム」です。参考にはならないかもしれませんが、まぁ面白がって読んでやって下さいまし。


拝啓、椎名林檎様。

  僕があたなを初めて知ったのは、雑誌での新譜コーナーででした。あなたのデビューシングル「幸福論』のレビューだったのでしょう。ところが僕はといえば、斜読みした挙げ句、あなたの存在を無視してしまったのです。ゴメンなさい。もし、もっと早くあなたに出逢っていたなら‥そう考えると残念でなりません。でも、あそこで無視したからこそ、あの運命的な出合いがあったのかもしれませんね? 次にあなたがリリースした「歌舞伎町の女王」も名前だけ知ってるのみで、耳にしてはいませんでした。これまたゴメンなさい。(笑)あんなタイトルだから、バッタもんだと思ってたのですよ、あなたのことを。許して下さいね?

  そして今年に入って‥‥ネット上の掲示板ではあなたの話題で持ち切りでした。「椎名林檎って、あの変な曲名の奴か?」その程度の認識しかなかったのです。そして1月末に3枚目のシングル「ここでキスして。」が発売されるのですね‥‥ここで僕はあなたと、やっと巡り逢うことが出来たのでした。(笑)

  あの印象的なプロモーション・ビデオを使ったTVCM。唄い出しアカペラ部分の

    ♪I'll never be albe to give up on you,
     So never say good bye and kiss me once again.

を唄うあなたの表情に「ビビッ!」っとキてしまったのです。正直な話、いつ以来でしょうか? 唄う姿だけでノックアウトされてしまったのって‥‥よく中学生が、TVの向こうでギターを弾きまくるギターヒーローを見て、それを切っ掛けにギターを始めるのと同じように‥‥そう、もし僕がまだバンドを始める前の中高校生だったら、もし僕が女性だったら‥‥間違いなくあなたに憧れて音楽を始めたことでしょう。それ位の衝撃を、何年かぶりに受けたのは事実です。

  そして僕はあなたのシングルを求めて何件ものCDショップを駆け回りました。どこも売れ切れでした。1週間後にようやく手に出来た「ここでキスして。」‥‥今度はあなたの音楽性の高さにショックを受けました。確かに僕も、あなたに否定的な奴ら同様、『アラニス・モリセットのフォロワー』だと感じていました、1曲目の "ここでキスして。" を聴き終えた時までは‥‥が、2曲目、3曲目と続き‥‥「な、何なんだ、こいつは!?」ショックでした。しかもあなた、昨年の11月に20歳になったばかりだとか。これらの曲って19歳の時に書かれたってことですよね? 真剣に「才能って恐いな‥」って思いましたよ。音楽辞めようかって考えちゃいましたもん。末恐ろしいっていうか‥‥宇多田ヒカルには感じない、何か別の『才能』を感じました。それは『年の功』なのかもしれないし‥‥(笑)。

  そして、この曲がまた売れちゃった訳ですね‥‥オリコン初登場11位、最終的には10位まで上がったそうで。おめでとうございます。『ミュージック・ステーション』にも出演しちゃいましたもんね!(笑)見ましたよ、勿論。あれ見てあなたの事、本気で惚れちゃったんですから‥‥(照笑)その後、インフルエンザで倒れて、他のTV出演を全てキャンセルなさったようですが、もう大丈夫ですか? 5月には新曲が出るそうですが、その時にはきっといろいろなTV番組であなたに逢えますよね?

  2/24。待望のあなたの1stアルバム「無罪モラトリアム」が発売されました。そうですよ、今回のこの手紙はあなたへのラブレター兼このアルバムの推薦文なのですから。(笑)すっごい売れてしまいましたね? うちみたいな田舎でも発売数日で完売してしまいましたから。オリコンのデイリーチャートではダントツの1位でしたが‥‥チャート操作があったのでしょうか?(爆)週間チャートではhitomiのベストアルバムが1位でしたね? たった2万枚の差という事でしたが‥‥とにかく、初動で20万枚というのは、デビューアルバムとしては上出来ではないでしょうか?(この際、宇多田ヒカルの事は忘れましょう!;笑)

  まず、このアルバムを聴いて驚いたのは、あなたの音楽の引き出しの多さです。この年齢でこれだけいろいろな曲が書けるとは、正直驚きました。やれアラニスだ!って言ってる心の狭い方々はこのアルバムを聴いたのでしょうか? CHARAなんて言ってるおバカさんもいましたが。(爆)これだけいろいろなタイプの曲があるのだから、多くの人にアピール出来ると思うのですが‥‥要するに切っ掛けなのでしょうね、僕の時みたいに。

  そして音以上に驚いたのが、あなたの書く歌詞でした。まず、1曲目の "正しい街" でノックアウト! 何なんですか、この素晴らしい韻の踏み方は!!! これ、歌詞カードを見る限りでは判らないかもしれないのでここには書きませんが‥‥とにかく、1度聴いてみて下さいね!?って誰に言ってるんでしょうね?(笑)ラブレターなのに‥‥この曲のある一節に、グサって胸を刺されました。

   ♪可愛いひとなら捨てる程居るなんて云うくせに
    どうして未だに君の横には誰一人居ないのかな

女性の視点から唄われてるはずのこの曲のこの一節に、切なくなって‥‥キュンとしてしまいました。正直に告白しておきます。こう感じる男性なんて僕だけだろうと思っていたら‥‥いました、他にも。(笑)某掲示板で同じ事書き込んでる方が。安心しました。ただ、その書き込んだ方はあなたと同世代なのに、僕はあなたよりも‥‥いや、歳の話はやめておきましょう。(苦笑)

  どの曲にも必ず、心に引っ掛かるフレーズ/歌詞があるんですよね、あなたの歌には。 "幸福論" の歌詞全てに共感してしまったり、"丸の内サディスティック" みたいに音楽用語が沢山出てくる歌詞にニヤニヤしてしまったり、"茜さす 帰路照らされど・・・" で歌っているアイルランドの少女って誰の事だろう、とか‥‥

  最後になりますが、今の僕の気持ち、あなたに逢えた喜びをあなたの歌詞から引用させていただいて、このラブレターを閉めたいと思います。(ってこんな終わり方のラブレターなんてないよね?;爆)これからも素晴らしい楽曲の誕生を心から楽しみにしています。そして、あなたの素晴らしさを多くの人々に布教していきたいと思う次第です。最後まで読んでいただいてありがとうございました。愛してますよ!(爆)

    時の流れと空の色に
    何も望みはしない様に
    素顔で泣いて笑う君のそのままを愛している故に
    あたしは君のメロディーやその
    哲学や言葉 全てを守り通します
    君が其処に生きているという真実だけで幸福なのです

(「幸福論」/椎名林檎)


敬具。



▼椎名林檎『無罪モラトリアム』
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投稿: 1999 03 23 12:00 午前 [1999年の作品, 椎名林檎] | 固定リンク

1999/03/22

BLUR『13』(1999)

いろいろ擦った揉んだありましたが、ようやくこうしてアップする事ができました。発売以来約2週間が経ちましたが、今では毎日のように聴いてる作品ですし、胸を張って「名盤」とお薦めする事が出来ます。それに、これを書き上げる前に是非体験したかった「クラブで『13』の曲を聴くとどうなるか?」という事も先週末に体験できたので、それについても書けますしね?

というわけで、お待たせしました! ご心配おかけしましたが、いよいよBLURの新作「13」の登場です!

早くもあの問題作「無題アルバム」から2年が経ちました。その間、デーモンがコーネリアスやMASSIVE ATTACKのリミックスをやったり、グレアムのソロアルバムが出たりと、何かと話題は作っていたBLUR。ああいいう音楽性のアルバムを作った以上、次はどういう音で攻めるのかが心配されましたが‥‥これは思った以上に衝撃作です。根っからのファンの皆さんはどう思うか判りませんが、僕にとってはこれは衝撃作でした。勿論、いい意味でですが。

ある掲示板で、僕はこのアルバムの第1印象を良くも悪くも「ここ数年聴いた中で、最も“難しい”アルバム」と書きました。それは今でも変わりません。かなり強引ですが、一昨年のRADIOHEAD『OK COMPUTER』、昨年のMANSUN『SIX』のようなポジションのアルバムという例えもしました。あえて“難解な”という意味でこれらのアルバムを引き合いに出したのですが、勿論これら2枚のアルバムは僕にとって名盤ですし、大切なアルバムですし、今でもよく聴いている定番アルバムです。そう、この『13』というアルバムはそういう存在になりうる作品なのです。が、そこに到達するまでにはもう少々聴き込みが必要かもしれません。そう、一聴しただけでは判らない良さもあるし、何よりそういう派手さに欠けるアルバムなのは確かです。これは最近のどの名盤にも言える事だと思います。先日のKULA SHAKERの新譜もそうですし。MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』も派手ではありませんでした。が、どのアルバムにも言える事は、その音がカラフルだったということです。これはBLURも同様です。

これは持論でしかないので皆さん全員が同意してくれるとは思いませんが、“カラフル”には2通りあると思うのです。ひとつは文字どおり、いろいろな色の集合体。一般的に言われるのはこちらですよね? ところが、僕が言いたいのは例えば「グレー/灰色」だけなのに非常にカラフル‥‥グラデーションが鮮やかなグレー。グレーで判り難かったら赤でも緑でもいいです。そういうのも“カラフル”って‥‥言わないのかなぁ、普通? 前者はいろいろな色の集合体としての“カラフル”、後者は単色(あるいは2色)が生み出す“カラフル”。どうですか? これを音楽に置き換える事、出来ません? 例えば‥‥BECKのアルバムなんて前者の“カラフル”だと思いませんか? 邦楽ならPUFFYの『JET CD』とか。(例えが判り難かった?)そうです、僕が言いたいのはこの『13』が後者の“カラフル”に当てはまるアルバムではないかという事です。

では今までのBLURのアルバムはそうではなかったか?というと‥‥これも僕個人の感じ方ですが、所謂「ライフ3部作」と言われる『MODERN LIFE IS RUBBISH』~『THE GREAT ESCAPE』の3枚は、どちらかと言えば前者の“カラフル”のように思います。が、前作は‥‥これ、非常に難しいです。どっちとも取れますよね? まぁこの辺は聴き手の判断に任せるとして‥‥(笑)僕は前作は音楽性のとっ散らかり方が、前者の“カラフル”だと感じているのですが。

で、統一感/トータル性から『13』を後者の“カラフル”と唱えている訳ですが‥‥

今回のアルバム、すごく実験的ですよね? それは聴いた音からも判断できると思うのですが、それ以前にレコーディングの段階から実験的だったようです。普通バンドのレコーディングってスタジオで「せーの!」で楽器隊が合わせて演奏したものにヴォーカルやリードギターを被せるやり方か、リズム隊を先に録って徐々に上物(ギターやキーボードやヴォーカル等)をオーバーダビングしてく2通りが主流なのですよ。ところが今回のBLURは、スタジオで1日中ジャムったテープ(ハードディスク)をプロデューサーのウィリアム・オービットが家に持ち帰ってテープ編集(ハードディスク編集ですね、きっと)し、翌日にはひとつの楽曲として完成するというパターンだったようです。つまり、メンバーですら後になってみないとどんな曲が出来上がるのか判らないという‥‥実験以外の何ものでもないですよね?

この話を聞いた時、やはり先に挙げた『OK COMPUTER』や『SIX』を思い浮かべました。例えばRADIOHEADの「PARANOID ANDROID」なんて90年代の「HAPPINESS IS A WARM GUN」(BEATLESの曲)だし、ハードディスク・レコーダーがここまで普及していなければこの曲は生まれなかったかもしれない。(いや、少なくとも今のような形にはならなかったでしょう)この『13』の楽曲郡もある意味、「時代の産物」なのかもしれない‥‥そう考えると、非常に感慨深いものがあります。

音について少し触れてみましょう。インタビューなどでも明らかですが、今作のレコーディングにあたり、デーモンやグレアムがCANといったアバンギャルドなバンドを聴いていたそうです。CANは名前しかしらないので何とも言えませんが、僕自身『13』を聴いた時に思い浮かべたあるバンドがあります‥‥THE POP GROUPです。パンクの黎明期に現れた所謂ニューウェーブバンドなのですが、1st『XYZ』のアバンギャルドさといったら‥‥恐らく多くのBLURファンが聴いたら引いてしまうかもしれません。が、僕は‥‥最初ダメでした。(笑)が、今聴くと、意外とカッコイイのですよ、これが。THE POP GROUPっていうとダブのイメージがありますが、この『13』もダブ的な事を中盤からやってますよね? 「BATTLE」 から。僕、「B.L.U.R.E.M.I.」から「BATTLE」の流れ、大好きです。特に「B.L.U.R.E.M.I.」が終わった後に短いインタールードが入って「BATTLE」にいく辺りが‥‥鳥肌立ちませんか?

音楽性が全く違うので同意してもらえるか判りませんが、この『BLUR』~『13』に到る流れって、PRIMAL SCREAMが『SCREAMADELICA』~『VANISHING POINT』に到る流れに似てませんか? 確かにPRIMALSの場合、その間に『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』という灰汁抜きが入る訳ですが。BLURの場合、バンド内の灰汁抜きを『BLUR』アルバム製作前にやってしまっているので、すんなり進む事が出来たのではないでしょうか? 最近、『13』を聴いた後に『VANISHING POINT』を聴きたくなるのは、こういう理由からかもしれません。

それから、これは多くの人が言っていましたが、DAVID BOWIEの「ベルリン3部作」にも通じるものもあると思います。またデーモンの歌唱方(低音域~中音域)がBOWIEに似ているのも確かですし。

こうやって例を挙げたアーティストを見てみると、皆ヨーロッパのアーティストばかりなのですよね? 『BLUR』が「アメリカへのすり寄り」なんて言われてましたが(今聴くと全然そんな事ないんだけどね?)、この『13』ってアルバム、おもいっきりヨーロピアンなアルバムですよね? アメリカ人には作れないアルバムだと思います。あ、いまステレオからは「CARAMEL」が流れてるのですが、この曲ってU2っぽくないですか?(笑)特に90年代の「テクノロジー3部作」。『POP』に入っててもおかしくない曲ですよね?

 ただ、これだけは言っておきます。こうやっていろいろなアーティストの名前を挙げましたが、この『13』の楽曲はパクりの集合体なんかじゃないですよ! 明らかにBLURのオリジナルな音楽を奏でてます。そこがすごいところです。前作ではその辺のアイディアの拝借も見受けられましたが、このアルバムで一歩抜きん出ましたね? これ、どの位売れるんだろう‥‥いや、売れないって意味じゃなくて、バカ売れして欲しいのです。特にアメリカで‥‥あの国、こういう音に絶対に飢えてるはずだから。まぁOASISみたいな売れ方じゃなくて、RADIOHEADみたいな売れ方‥‥アルバムチャートの20位前後に長居するような。で、来年のグラミー賞で受賞しちゃって、それからトップ10に入っちゃうような‥‥そう、BECKの時みたいに。(笑)

最後に、このアルバムの曲を先日の「CLUB K」で聴く機会を得ました。かかったのは「TENDER」と「BUGMAN」でした。その他にもBLURの曲は「SONG 2」がかかってました。(これは毎回かかってます)感想はといいますと‥‥「BUGMAN」は踊りやすいです。巷で「"SONG 2" のパート2(笑)」と言われる訳がよ~く判りました。ただ、後半のブレイクで踊り手の緊張感が途切れるのも確かです。「TENDER」は‥‥正直踊り難いだろうと思ってたのですが、フロアにびっしり詰まった人達がみな、気持ちよさそうに体を揺すってました。踊るというよりは、音に身を委ねるっていう方が正解かも。誰も引いてる人、いないし‥‥感心してしまいました。そして確信しました。「"TENDER" は再び代表曲のひとつとなるだろう!」って。アルバム出すごとに代表曲が増えるバンドって、今どき珍しくないですか? あのOASISでさえそれを成し遂げていないのに。これがアルバム6枚出したバンドなのかな?って驚きでいっぱいです。

今日もこの『13』、既に4回目です。車の中で2回、家で2回。夜のドライブにぴったりのアルバムです。恐らくこのアルバム、僕にとっては『BLUR』以上に‥‥もしかしたら『MODERN LIFE IS RUBBISH』以上に大切なアルバムになるかもしれません。それだけの価値がある音楽の詰まったアルバムだと、断言できます!


<1999年4月6日:追記>

 以下の文は、うちにいらっしゃるある方からいただいたメールに対して、僕が書いた返事の一部です。これはこの『13』感想文に対して多くのBLURファンの方から苦情や中傷のメールをいただいた事に対する、僕なりの返答です。上の文章を書き直す事をせずに、僕は新たに加筆する事で答えを出しました。


*「13」はどこが難しかったのか明確に書かれていないが?

う~ん、実は未だに判らないんです。(苦笑)確かに僕が書いたこの文を読む限りでは、明確に「難しかった理由」が書かれてませんよね? これは僕の大失態です。すみません、中途半端な文章を公にしてしまって。今読んでみても、やっぱり「苦しい」ですねぇ‥‥これを書く過程が結構自分にとってヘヴィな状況だったのと、周りに対しての不信感?みたいなのも募ってて‥‥何の事だか判りませんね?

この文の中で、僕は「良くも悪くも、ここ数年聴いた中で、最も“難しい”アルバム」って書いてます。じゃあここから説明します。良い意味で“難しい”‥‥これは、僕の本音です。多くのBLURファンにはすんなり受け入れられたようですが、僕はショックだったんです。勿論良い意味で。だって『TENDER』EPとのギャップが余りに大きすぎたので‥‥EPを聴いた印象でアルバムを想像していたから。もっとオーソドック スな、バンドサウンドを中心に置いた、それでいて新しい局面に向っている事がシングルの4曲から感じられたのです。だからアルバムを最初に聴いた時、2曲目、3曲目で「おおっ!」となり、僕が大好きだと言った「BATTLE」以降の流れにフリーズしてしまったのです。勿論、BLURのファンからしてみれば大した変化ではないのかも知れません。でも、僕にはショックに値する位の衝撃を受けた、という事です。

ちなみに僕は「ライフ3部作」にはそれ程実験的要素は感じ取れません。勿論これは僕個人の意見ですので、BLURファンがこの発言に対して目くじらを立てたとしても単なる「個人の感想」ですので受け流して欲しいと思うのですが‥‥そうもいかない人も多い様です。だから僕にとってBLURは2ndで止まっていたし、初めて「BLUR」アルバムを聴いた時は再びショックを受けたのです。そういう意味では僕は「純粋な」BLURファンではないと思います。単に楽曲に興味がある、グレアムというギタリストに魅かれる、その程度のフ ァンなのです。

話が逸れましたが、そういう意味で「BLURから距離をおいて聴いてる音楽ファン」の立場として、「ライフ3部作」にあった分かりやすさが後退した、と最初に感じたのです。勿論、これは裏を返せば「より深みが増した」という事なのですが‥‥。

悪い意味で“難しい”と言ったのは、もしこのアルバムからBLURを聴き始めた人がいたら、彼等をどのように理解するのだろうか?と思ったのです。(って余計なお世話ですね、純粋なファンでもないのに)とっかかりとしてのアルバムとして、この『13』はうまく機能するのだろうか?と考えたのです。確かに「TENDER」のような名曲目白押しですが‥‥「地味」ですよね? これだけは拭いようがないと思うのです。勿論バンドのメンバーでもないのにこんな事考えるなんて、余計なお世話ですが‥‥この手の音が好きな人には絶賛されてますしね、『13』は。(事実、レコーディング関係の業界誌ではこの『13』が大絶賛されてました。けど、それは音楽性についてではなく、レコーディング技術についてと、プロデューサーの仕事振りについてでしたが)

以上の意味で、僕は最初“難しい”という言葉を発しました。御理解いただけましたでしょうか? でも、これは「苦手」とか「嫌い」といった意味とは違いますよ。そこだけは判って下さい。第一、ここで取り上げるアルバムは皆、僕が大好きで皆さんにお薦めしたいアルバムを、愛情を持って語るコーナーですから。僕自身、ありきたりな「レビュー」だけはやりたくなかったので。大体「レビュー」って言葉自体、あまり好きではないです。たまに勢い余って文章中に「レビューしましょう」なんて書いてますが、うちにリンクを張ってる多くの方のそれらと比べると、如何に僕の書く文章がただの「感想文」でしかないか?ってのが一目瞭然ですし。(笑)まぁ、そうでなければ困るんですが。

* BLURは既に「BLURにしか出来ない音楽」をやってます!

これだけはちゃんと言っておきます。彼等はデビュー当時からオリジナルでした。僕の友人のまわりでは「マンチェスターのおこぼれを貰おうとしてる」とか言ってましたが、明らかに2ndは彼等にしか出来ない音楽でした。それ以後だってそうです。よくXTCというバンドと比較されてるようですが(何故かBLURファンにはXTCが好き、って人も多い様です。僕の友人がXTC大好きなのですが、「絶対に気に入るから」といって『THE GREAT ESCAPE』をダビングしたところ、大絶賛でした)明らかに別物です。

確かにああやって例としていろいろバンド名を挙げましたが、あれは別に「BLURはこういうバンドをパクって~」とか言いたいからではないです。(勿論その辺は理解してくれてると思いますが)僕のHPは特定のバンドのファンページではありません。僕自身がいろいろな物に興味を持つので、HPまでとっ散らかっています。(笑)だからそれこそMANICSのファンからLUNA SEAのファンまでいろいろ集まってくるわけです。で、そういう人達にも判ってもらえるようにするには、ああいう例えも時には必要だと思うのです。確かに『13』を聴いた時、この文に出てくるいろいろなバンド名を思い浮かべたのは事実です。だから思ったままに書いたわけです。

多分、僕自身の音楽の聴き方が他の多くの方と違うのかもしれません。僕は音楽製作に携わっていたので(自分で曲を書くのもそうだし、また他者のレコーディングにも関わるアシスタントエンジニアの経験もあるし、ある時は通信カラオケの製作にも関わっていました)、一般の「音楽ファン」とは違った聴き方をするのかもしれません。ある方にも指摘されましたが、僕のMANICSのライブレポートを読んで「視点がミュージシャンの視点ですよね?よく冷静に観察してましたね?」と言われました。僕自身はそんな感覚は全くないのですが、どうやら他人から見るとそのようです。ライブの最中は頭真っ白になる位暴れてるのですが、終わって冷静になった時、結構曲順とかステージの状況を記憶してるんですね、僕。自分自身もステージに立つ人間だったから、かもしれません。

今回のBLURの場合は、既にメンバーがインタビューでCANやPINK FLOYD(シド・バレット在籍時)からの影響を語っていたので、まぁそういう事なんでしょう。この辺は僕の書く文より、うちにいらっしゃるのえるんさんのHP「LEISUREDOME」の掲示板にいらっしゃる方々のほうが、僕なんかよりももっと詳しいです。

僕自身、好きなバンドができると、そのバンドのバックボーンや影響されたバンドなんかにも興味を持つ人間なので、よくこういう例えをするのかもしれません。だから今後もこういう例えが頻繁に出てくるかもしれませんが、決して悪意はないですよ。



▼BLUR『13』
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投稿: 1999 03 22 12:00 午前 [1999年の作品, Blur] | 固定リンク

1999/03/14

UNDERWORLD『BEAUCOUP FISH』(1999)

この2月~3月というのは洋/邦久々の新譜ラッシュで、かなり散財してます。(爆)で、これが名作揃いで困ってるのです。どのアルバムをここで取り上げたらいいものか‥‥書けば絶対に長くなるし(笑)簡単なレビューってのは出来ないです。「愛情を持って紹介する」、それがこのページの掟ですから。だから2~3月は結構更新されると思いますよ。

御存じの通り、先日BLURの「13」についてここで書こうとしたわけですが、書けなくなりました。いえ、それ以前に「書く為に聴く」ようで嫌になったのです。「書きたいから書く」と言われましたが、音楽も「聴きたいものを、聴きたいから聴く」のであって、義務付けて聴く事はないのです。だから、暫くは「13」については書かないつもりです。トラウマとなって、一生聴けなくなるのは嫌ですから。あ、でも昨日からその「13」、聴いてたりしますが。(笑)やっぱ、いいアルバムですわ。

って、今日は違うアルバムなのです。1回目以降全くバラバラな音楽性を見せてきたこの「Joining A Fan Club」(注釈;以前のコーナー名。アルバムを取り上げる項目だった)、ますますエスカレートしてきます。(爆)「You Love Us」(注釈;以前のコーナー名。アーティストの魅力に迫る項目)ではLUNA SEAの後にRAGE AGAINST THE MACHINEだし(笑)、こっちではミスチルときてKULA SHAKER、そしてこのUNDERWORLDの新作「BEAUCOUP FISH」と続くわけですから。まぁ普通の感覚の人ならついてこれないかもしれません。「君にはついてけないわ。」と言われた事も多々あるし。(笑)

冗談はさておき、このアルバム。一般的にUNDERWORLDはテクノ、と定義づけられていますが、どうなのでしょう? 正直な話、もうそういうレベルで語るの、止めません? そう、UNDERWORLDはロックじゃ!と言いたいのです。大きな意味で、彼等もロックだと思います。(まぁ、ここで取り上げてるアルバム全てが、俺にとっては『ロック』なのだけど)

UNDERWORLDを知ったのは多くの方と一緒で、あの映画『トレインスポッティング』での"BORN SLIPPY"ででした。心底「かっこいい!」って思ったし。サントラ盤の中でも、俺にとってはBLURの"SING"といい勝負してます。(まぁ"SING"は既発曲だけど)で、それを切っ掛けに彼等のアルバム「SECOND TOUGHEST IN THE INFANTS」(邦題;2番目のタフガキ(爆))を手にするのです。いやぁ、人生観変わりましたよ。「You Love Us」のRAGE AGAINST THE MACHINEのとこでも書いてますが、この頃はギターロックに疑問を感じてた頃だったのです。そこへスト~ンとUNDERWORLD。絶妙でした。

最初は俺も、彼等を『テクノ』として捉えてました。俺の中では5年周期くらいで所謂「テクノブーム」がやってきます。前回は渡英時。現地で生のレイヴを体験したのが切っ掛けでした。そして今回もイギリスものが切っ掛け。何だかんだ言っても俺は英国好きなのです。(笑)

彼等をロックと捉えるようになったのは、きっと俺自身が更にいろんなジャンルの音楽を聴くようになったのと、メディアが『デジ・ロック』なる言葉を使うようになった反動でしょう。何だ、『デジ・ロック』って?ロックはロックだろ!?って思ったりして‥‥早い話が、「楽器に何使ってようが、精神性がロックしてれば、それはロックでしょ!」と思うのです。そして「腰にこなきゃロックじゃないでしょ!」とも思うし。UNDERWORLDはこのふたつを軽くクリアーしてると思うのですが、如何ですか?

◎ところで、「BEAUCOUP FISH」って何て読むの?(爆)

これ、英語じゃないですよね? 辞書引いても載ってないんですよ。これ書く前にあるHPでこの事に触れられていたのですが、さっぱり。ただ、これってフランス語のような気もするのですが‥‥英和辞典では「beau」を[bou]と発音し、「伊達男」ってな意味があるそうで、「coup」は[ku:]と発音、「予期しないこと;大当たり、大成功」ってな意味だそうです。敢えてカタカナ書きすると「ボウクー・フィッシュ」‥‥う~ん、判らん。(笑)まぁ要するに、この「BEAUCOUP FISH」って何か魚の名前?なのかと思いますが。それは収録曲"JUMBO"の歌詞「♪I've caught beaucoup fish in reverend burton」からも伺える‥‥あれ、何かの例えか?「伊達男」に「大当たり」‥‥「いい男が引っ掛かる」って意味?とすると、「FISH」は‥‥あっ、「大漁」って意味か!?

‥‥え~、ですね? 今、rockin'on3月号を開いたのですが、そこでのUNDERWORLDインタビューで語られてました、アルバムタイトルの意味。抜粋すると、「~タイトルつけるとき、ケイジャン人(ルイジアナのフランス系移民)の友達が釣りをしてたのを思い出してね。そいつが湖を指して『ボクー・フィッシュ(魚、たくさん捕れる)!』って繰り返してたんだ。それを思い出して、『おー、それでいこ!』で決まり、ははははは!! そこに辿り着くまでに何週間もかかったけどね。(笑)曲が充分マジなんだから、テキトーな部分があってもいいんだよ。(笑)」‥‥おそれいりました!(爆)

◎ロックサイドから見た「BEAUCOUP FISH」

どうなんでしょうねぇ、このアルバムを聴いて。是非感想を伺ってみたいものです。特に普段「UKロック、サイコー!」って言ってる、特定のギターロックしか聴かない人達に。やはり彼等はUNDERWORLDを『テクノ』だからといって聴かないのでしょうか?

『テクノ』と呼ばれる音楽は、2種類に大別できると思います。ひとつは所謂『ヒーリング系』。聴いてて心休まるタイプ。俺はこっちはダメです。で、もうひとつがUNDERWORLDを代表とする『暴力的な/攻撃的なサウンド』を持つタイプ。そう、そういう意味でも彼等がロックだと言い切れると思うのです。俺が彼等に求めるものもそれだし。踊ってて気持ちいい、暴れたくなる‥‥ロックとしても一級品だし、ダンスミュージックとしても一級品だと思いますよ、そう思わせるのなら。

初めてこのアルバムの中の曲"KING OF SNAKE"をCLUB Kで聴いた時(勿論発売の1ヶ月も前に)、鳥肌が立ちました。「すっげーカッコイイ!」‥‥これじゃ「GLAYサイコー!」って言ってる女子高生と変わらないか?(笑)いや、それくらい俺を失語症状態にまで引きずり込んだのですよ、その"KING OF SNAKE"は!恐らくこのアルバムの中でもハイライトのひとつでしょう。頭が真っ白になるまで踊りました。

厳密に言えば、このアルバムから最初に聴いた曲、"KING OF SNAKE"じゃないのです。そう、"MOANER"でした。(笑)反則? え~判らない人の為に説明しますと、この"MOANER"という曲は既発曲でして、'97年夏に公開された映画『BATMAN & ROBIN』のサントラ盤に収録されてたのでした。初めてこの曲聴いた時の衝撃‥‥"BORN SLIPPY"以上だった、と告白しておきましょう。頭がイカれそうになる位に暴力的なサウンド、機械(シンセ類)だからこそ出来る「冷たいサウンド」‥‥いえ、決して冷たいわけじゃないのですよ、UNDERWORLDのサウンドは。自分で言っといて何ですが、機械に頼った彼等のサウンドからも充分に暖かみを感じる事が出来ます。まぁ、曲によりけりですが。

「'90年代の“ロック史”に残る名盤」はいろいろあるでしょうが、この「BEAUCOUP FISH」も十分にその素質を持ったアルバムだと言えると思うのです。'90年代のロックに言える事は『踊る為のロック』がキーワードだったような気がします。STONE ROSESを始めとするマッドチェスター・ムーブメントから始まり、特にイギリスでは『グルーヴ感』を大切にしたバンドが数多く現れています。前回のKULA SHAKERもそのひとつだし。このUNDERWORLDだってその中に入れてもおかしくはないと思うのです!

このアルバムの凄みって、実は『作り手と聴き手のアンバランスさ』にあると思うのです。密室でかなり緻密に作り込まれたこのアルバムを、聴き手は開放的な気分で踊る‥‥『静』と『動』、『閉鎖的』と『開放的』‥‥この相反するふたつの融合こそが、このアルバムの凄みだと思うのです。僕にとって、ビッグビート(FATBOY SLIMなど)はこのふたつが繋がっていないように感じるのです。確かにフロアーで踊りやすい曲もあるにはあるのですが、俺には作り手の『緻密さ』も感じられなければ『グルーヴ感』も感じない‥‥まぁ、「ビビっとこない」のです。(笑)この「BEAUCOUP FISH」に対するコメントで最高だったのが、某DJの「これがビッグビートを気散らかしてくれるわ!」っていうような言葉でした。(あれ、違ったっけ?;笑)同感、同感。最後に残るのは『本物』だけなのですよ!

正直、このアルバムに関しては多くの言葉は必要ないです。『踊れるか、否か』‥‥これが全てだと思うのです。これを聴いても何も感じない人は、俺から見れば「人生、無駄にしてるなぁ」とまで言わせてしまう位なのです。または幸せな、何不自由なく生活してる善人‥‥じゃあ俺は悪人か!?(爆)いや、悪人でいいです。これを『素晴らしい』と感じられるなら‥‥



▼UNDERWORLD『BEAUCOUP FISH』
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投稿: 1999 03 14 02:54 午後 [1999年の作品, Underworld] | 固定リンク

1999/03/06

KULA SHAKER『PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS』(1999)

今回は先月発売されたばかりのKULA SHAKERの2ndアルバム「PEASANTS,PIGS & ASTRONAUTS」を取り上げます。既にいろいろなHPでもレビューされてますが、あえてこれを書き上げるまで読まない事にしてました。だから掲示板などでの「よかった!」とかの簡単な感想しか目にしてませんし、雑誌での評価もrockin'onでのものしか知りませんし。(しかもアルバム発売前のものだし)ただ、インタビューはアルバムを聴いてから改めて読みました。「なるへそ~」と思いましたが。(笑)

さてさて、それではこの『ある意味難解な』アルバムの素晴らしさについて、いろいろと語っていきましょう。そして、このアルバムに隠された『メッセージ』についても‥‥


それにしても、長かったですね。このアルバムが発売されるまでが‥‥1stアルバム「K」が発売されたのが96年9月ですか?しかもあれ、日本先行発売だったんですよね?イギリスは10月?日本盤の初回版はジャケットが違うんですよね?("TATTVA"の英国盤シングル・ジャケットをモチーフにしたもの)いや~、本当に長く感じた。初来日が96年12月、翌年2月にシングル"HUSH"がリリースされてから98年春のシングル"SOUND OF DRUMS"までこれといった情報なし‥‥しかも"SOUND OF DRUMS"って日本盤出なかったし。(涙)それでもその間は「K」や"HUSH"などを聴きまくっていたのですが。

自己紹介のページでのKULA SHAKERの欄に『ここ数年で最も聴きまくったデビューアルバム』というような事を書いたことがあります。NIRVANAの「NEVERMIND」を2ndアルバムとカウントすれば、間違いなく『GN'R以来、最も聴きまくったデビューアルバム』だと思います。そう、OASISよりも。それ位、俺にとってこのバンドの出現は衝撃でした。

OASISの登場以降、所謂『ギターロックバンド』が多く出現しましたが、どれも本家を超えるような代物ではありませんでした。中には結構いいな、位に思ったものもありましたが、このKULA SHAKERはそれらとは比べ物にならない位、完成度の高い新人でした。何が抜きん出ていたかというと、そう、明らかに『グルーヴ感/ドライヴ感』、そして『神秘性』でしょう!これについてはまた改めて1st「K」を取り上げる時に(そう、絶対に取り上げます!)書きますが、このふたつが他のバンドはおろか、OASISよりも優れていたと思ったのです。

そして"SOUND OF DRUMS"から再び1年‥‥とうとう先行シングル"MYSTICAL MACHINE GUN"と2ndアルバム「PEASANTS~」が到着したのです。デビューアルバムから2年半、新人としては決して早い方ではありません。むしろ『やっぱり消えたか‥』位に思ってた輩が多かったのではないのでしょうか?で、そういう奴に限ってこの最新作を絶賛してたりする‥‥世の中、そんなもんか?(苦笑)

まぁ皮肉はさておき(笑)僕が最初にこの"MYSTICAL MACHINE GUN"を耳にしたのは、ネット上で30秒程試聴した2月上旬のことでした。第1印象は『"GOVINDA"や"TATTVA"タイプだけど、あれよりもかったるい感じの曲だなぁ。全体を聴いてみない事には何とも言えないけど、どうだろう‥‥まぁサビ?の「~MYSTICAL MACHINE GUN!♪」ってシャウトするところはカッコイイけど‥』といった程度のものでした。これが2年半待ったバンドの新曲に対する感想か?って位、地味なものでした。(笑)

そうそう、その前の"SOUND OF DRUMS"についてもコメントしときましょう。最初に聴いたのは‥‥かなり遅くて、昨年12月の「CLUB K」ででした。既に4月にはリリースされていたシングルですが、すぐにアルバムが出ると思っていたので、あえて買わなかったのです。新作への楽しみも半減しそうな気がして。ところが、待てど暮らせどリリース情報は届きませんでした。で、気がつけば年末‥‥Kで初めて聴いた時、何のアナウンスもありませんでしたが、さすがにすぐに判りました。あのイントロの(ZEPの"NOBODY FAULT BUT MINE"みたいですよね?)コーラスを聴いた瞬間に、『あ、KULA SHAKERだ!』って。さすがに彼等の音楽が体に染み付いていたようですね?(笑)で、素直にカッコイイと思いましたよ。『こりゃあ、新作が楽しみだ!』って。

そして"MYSTICAL MACHIN GUN"を初めてフル・コーラス聴いたのも、先月のKででした。これも何のアナウンスもなし。確かアルバムの1~2曲目をアドバンス・テープで流してたのかな?(後で「テープなので音悪くてゴメン!」とKAKEさんが言ってたので)すぐに判ったよ。『お、KULA SHAKERだ!』って。(笑;あんた、そんなんばっかじゃん!)すぐさま曲に身を委ねて踊ってた‥‥かったるいと感じたあのテンポ/リズム感が逆に心地よかったです。特に"MYSTICAL~"はサビ?に入ってからラウドになるので、結構暴れてたし。(笑)あの時点で、『新作は凄い事になるぞ!』と実感したのでした。

さて、そろそろ新作についていろいろと語ってみましょうか。まず‥‥KULA SHAKER初心者の皆さん。このアルバム、難しくありません?かったるくありませんでした?地味じゃないですか?‥‥そう感じたなら、元気のよいSTEREOPHONICSあたりを聴いて下さい。(笑;たまたま同じ日に発売したので)

そう、間違いなく『地味な』作品です。1stも比較的地味ではありましたが(決して派手ではなかったですよね?)更に輪を掛けて地味ですよね?だから普段OASISみたいなバンド聴いてる人がいきなりこの2ndから入ったら、どう思うかな?って‥‥ただ、『ものすごく「濃い」作品』でもあります。1曲1曲をとってみても、いろいろな音が凝縮されてます。これはプロデューサーがボブ・エズリンに変わったためでしょう。

ボブ・エズリン‥‥古くはアリス・クーパーやKISSを手掛け、「THE WALL」等のPINK FLOYDの一連の作品、HANOI ROCKS「TWO STEPS FROM THE MOVE」、VOW WOW「MOUNTEN TOP」等、一風変わった作品を手掛けている。代表作といえば、やはりPINK FLOYDの一連の作品とKISS「DESTROYER(邦題「地獄の軍団」;爆)」となるのでしょう。そういうプロデューサーを向かい入れた事もあってか、このアルバム、めちゃくちゃ『プログレ色』が強いと感じます。いえ、音楽性がではなく、アルバムの流れ/構成が。むっちゃ乱暴な例えですが、PINK FLOYDの「THE WALL」に似てるな、と思いましたもん。

このアルバム、実は『ダンス・アルバム』ではないかと思うのです。(これもちょっと強引?)そう、『21世紀のダンス・ミュージック』ではないのでしょうか‥‥確かにCLUB Kで聴いた時、踊ってて楽しかったし、凄く『重心が低い曲』だと思ったし。で、これってアルバム全体を通して感じたのですが、『重心が低く、腰にクるアルバム』だと‥‥これは1stの時も感じた事ですが、更に重心が低くなってると思います。装飾部分(オルガンやブラスなど)は非常にサイケですが、僕にはこれが『ダンス・ミュージック』に思えるのです。

元来音楽というのは、古く遡れば祝いの時などに踊るためのものだったと言われています。豊作の祝い、結婚の祝い、出生の祝いなど‥‥その度に人々は集まり、歌い、踊ったと言われています。ひょっとして、このアルバムは来るべき21世紀を『祝う』ための音楽ではないのか?という気がしてきたのです。

1曲目"GREAT HOSANNAH"の歌い出しはこうです。『ここに一堂に会して立ち/世界をひとつのものとして見てみれば/未来などないように思えるかもしれない/それは誰にとっても同じこと/世界は狂気に包まれてしまった/予言者たちの告げたとおりに/でも、僕たちは復活するだろう/新しい世界に』このタイトルにある"HOSANNAH"には『神またはキリストを賛美する言葉、ホサナという叫び声、賛美の熱叫』という意味があるそうです。一歩間違えば某新興宗教団体の勧誘ソングになりかねないこの曲、1999年という世紀末にリリースされることに意味があるのかもしれません。

が、しかし。果してクリスピアン・ミルズ(Vo. & Gt.)という男は、本当に21世紀を祝う事を望んでいるのでしょうか?KULA SHAKERというバンドは比較的、ポジティヴシンキングな曲を書いてきました。それは新作でも同じです。しかし‥‥この辺に今回の『謎』が隠されているような気がします。

CDをお持ちの皆さんの中で、どれだけの方が気付いたか判りませんが、CDを手元にこれをお読み下さい。まず、CD側面(タイトルが書いてある背の部分)両側に書いてある『KULA SHAKER/PEASANTS,PIGS & ASTRONAUTS』を挿むように、アルファベット『H/E』『L/P』とあります。続けて読むと‥‥そう、『HELP』です!気付いてましたか?助けてですよ?何故クリスピアンはこんな手の込んだ事をしたのでしょうか?何を危惧しているのでしょうか?

歌詞にも『助けて』という言葉が出てきます。まず3曲目の"S.O.S."。但しこの曲の"S.O.S."何かの略らしいです。それが何なのかは判りません。(だから、雑誌のインタビューとか余り読んでないし)そして6曲目の"SHOWER YOUR LOVE"でも『だから今、助けて/僕が終わってしまう前に』という歌詞があります。他にも、取りようによっては間接的にそう受け取れる歌詞もあります。(但し深読みの可能性大)

最後にアルバムジャケット。森林の中にエスカレーター(上り)、そこに乗っている宇宙服らしきものを着た人間。ヒプノシスが手掛けそうなこのジャケットが何を意味するのでしょうか?これは僕の想像ですが‥‥森林は『過去/現在の地球/現在の我々』を、宇宙服らしきものを着た人間は『未来/来るべき21世紀』を、そして上りのエスカレーターは『世紀末へのカウントダウン』を比喩しているのではないでしょうか?こう解釈すると、エスカレーターがもうすぐ上に到着する=現在1999年を意味していると受け取れます。そして、歌詞カードの裏ジャケット。自然の中でボロボロになった傘をさす宇宙服を着た人間が空を見つめています。これは21世紀の人々が過去(=自然等)を懐かしんでいるようにも受け取れます。ボロボロになった傘は酸性雨の為でしょうか?もうひとつ、CDケース裏面。森林の中で木の根っこに腰掛けて新聞を読む宇宙服を着た人間。これは‥‥判りません。(爆)ただ、気になるのはジャケット表の森林といい、この裏面の森林といい、木に葉がついていない事が気になります。たまたま秋~冬に撮影したからかもしれません。(確かにこのアルバムの発売が遅れた理由のひとつに『アートワークの変更』というのもありましたが)だけど、CDケース裏面の、地面に積もった枯葉‥‥御丁寧にも赤く色が付けられています。これ、後から合成したものですよね、きっと。だとしたら、何故そんな事をするのか‥‥自然崩壊への危機感?我々への警告?

多分クリスピアンは正解を教えてくれないかもしれません。70年代のアルバムにはこういう『想像力を掻き立てる』アルバムジャケットが沢山ありました。それこそPINK FLOYDやLED ZEPPELINなど‥‥ただそれだけなのかもしれませんが、これらの『謎』にクリスピアンが言いたい事が隠されてる気がしてなりません。

何だか最後は音楽とは関係のない話になってしまいましたが、要するにそれだけこのアルバムが興味深いものだということです。これだけイマジネーションを掻き立てるアルバムは久し振りです。最近、家でじっくりと腰を据えて音楽を聴く機会がなかったので、こういうアルバムに出会えた事が非常に嬉しくあります。これを切っ掛けに再び、ステレオの前で歌詞カードを読みながら、じっくりと音楽を聴いてみたいと思います。

最後に‥‥このアルバムを聴いてから、『これ聴いちゃうと、1stなんてどうって事ないね?』なんて言い回ってる人間を、俺は信用しません!あのアルバムがなかったら新作もここまでのものにはならなかったはずだし、第一、当時あんなにもてはやされたのは何だったの?って思います。そういう『情報に左右される人間』を信用したくありません。ただ‥‥純粋に『好き』。これでいいと思うのです。



▼KULA SHAKER『PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS』
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投稿: 1999 03 06 05:32 午前 [1999年の作品, Kula Shaker] | 固定リンク

1999/02/12

Mr.Children『DISCOVERY』(1999)

  このアルバムをこういう形で取り上げる事が出来る事、そしてこのアルバムに出会えた事を大変喜ばしく思います。Mr.Childrenというバンドは現在、俺がここ日本で(バンドをやる上で)目標とするバンドです。いわば「敵」となる訳ですが、そんな事この際どうでもいいです。この「日本を代表する名盤」を目の前にしてそんなちっぽけな事でウダウダ言う程、俺は心の狭い人間ではないので。

  いつもならここで「俺がそのアーティストを好きになった過程」やその他の分析などをするのですが、それはまた別の機会に‥‥このバンドについてはまだまだ書くべき事、紹介すべきアルバムが山程あるので。という事で、今回は純粋に『アルバム全曲解説』をしてみようと思います。前回のhide「Ja,Zoo」同様、偏見を持った洋楽ファンにこのアルバムを聴く切っ掛けになってくれれば、これを書いた意味があるというもんです。


◎「DISCOVERY」発売までの経緯

  96年6月に約2年ぶりの5thアルバム「深海」を発表後、同年8月より翌年3月まで50本以上のアリーナツアー(福岡/東京ドーム公演を含む)「Progress or Regress」を敢行。ツアー終了後にMr.Childrenは活動休止、1年以上に及ぶ初の長期休暇に突入した。勿論、その前には97年3月に6th「BOLERO」を発表。両作品共に300万枚を超えるセールスを記録した。文字どおり「モンスターバンド」となった彼等にはしばしの休息が必要だったのだ。

  活動休止中の97年に3本のビデオが発売された。1本目は「深海」以降のビデオクリップ集「ALIVE」、2本目はツアードキュメントビデオ、最後がそのツアー最終日の東京ドーム公演を完全収録したライヴビデオ。「このまま解散してしまうのでは‥」などと噂されたりしたが、翌98年2月には新曲「ニシエヒガシエ」を発表。が、ドラマとのタイアップ以外はノンプロモーション。まだまだ復活には時間が掛かりそうな予感がしたが、実は水面下ではレコーディングが進められていた。

  同年10月に再びドラマ主題歌として「終わりなき旅」リリース。この曲より本格的に活動再開。雑誌・テレビやラジオへの出演など、今までを取り返すかのようにメディアへの露出が多くなった。そしてとうとう「来年始めにはアルバムも出るし、ツアーも始めます!」と宣言。99年1月にはアルバムからの先行カット「光の射す方へ」リリース。そして同2月に約2年振りとなる7th「DISCOVERY」がいよいよリリースとなった‥‥


★アルバム「DISCOVERY」全曲解説★

◎M-1:DISCOVERY
  記念すべき1曲目はミスチル史上ここまで「ヘヴィ&ダーク」な曲があったか?ってなナンバー。テレビCMで流れている印象的なギターフレーズの曲がこれだ。4thアルバム「Atomic Heart」以降、アルバム1曲目は1,2分のインストナンバーが収録されるのが定番だったので、正直収録曲が発表になった時、アルバムタイトルと同名のこの曲を見た時はまたインストだと勘違いしていた。が‥‥これが噂に聞いていた「RADIOHEADに影響受けまくった曲」か?と、一聴して判った。(笑)まんま、RADIOHEADの「OK COMPUTER」1曲目の "AIRBAG" である。特にリズムの取り方(ドラムパターンとベースの入り方)が酷似している。
  そもそも彼等のアルバム1曲目には他アーティストからの影響受けまくりの曲が多く見受けられる。3rd「versus」の "Another Mind" はどことなく初期のU2の香りがするし、「Atomic Heart」の"Dance Dance Dance" は明らかにU2「ACHTUNG BABY」収録の "Zoo Station" を模写してるし、「深海」の "シーラカンス" はレニー・クラヴィッツ、「BOLERO」の "Everything (It's you)" はAEROSMITHのバラード‥‥こういう風に書くと「何だ、ミスチルってパクりバンドじゃん」って思われるだろうが、飽くまで「~風」というだけで、パクリのレベルには達してないと思う。寧ろ「ミスチル印」のメロディーが乗ってしまえば、それはもう彼等のオリジナルでしかない。それだけの説得力があるしオリジナリティーもあるバンドだと思うし。騙されたと思って聴いてみて欲しい。
  ところで、今作のキーワードとなる「DISCOVERY」という言葉に、彼等、いや桜井和寿という男はどういう意味を持たせたかったのだろうか?‥‥ジャケットを見てもらうと判るが、メンバーの前には白い鳩が、バックには油田を掘り当てる掘削機。文字どおりの『開拓/発見』、それとも『自由を見つけた』という意味か‥‥歌詞を読む分には、何となくだが「前向きな」イメージを受ける。そう、曲調とは相異なって。

◎M-2:光の射す方へ
  続く曲は先行シングルナンバー。ノンタイアップ/約7分もあるこの曲がヒットチャートの1位を取った事を大変嬉しく思う。この曲も彼等の新境地と言えるだろう。実はこの曲と前の "DISCOVERY" は一番最後に書かれた曲だそうだ。そして出来上がった曲を前に「これはアルバムの1,2曲目を飾る、代表的なナンバーになる」と確信したそうだ。こういう曲をシングルに切る事自体が現在の日本では冒険な訳だが、それをやりのけてしまう今の彼等には迷いなどないようだ。
  イントロから流れるメインリフがどことなく「POP」アルバムでのU2を思い浮かべるが、そこにアコギが絡むあたりがいかにもキース・リチャーズ好きの桜井らしくて、逆に微笑ましい。Aメロ、Bメロが今までのミスチルらしくない、という声もちらほら聞かれたが、サビに入ると一転してポップになる辺りに僕は「今のミスチルの充実度」を感じてしまう。ライヴでも盛り上がるナンバーとなるだろう。

◎M-3:Prism
  昨年のシングル「終わりなき旅」のc/w曲として既に発表済み。実は俺、この曲がアルバム中で1,2を争う位に好きだ。リリース当時の俺の心境とピッタリだったのだ。「転んだ時だけ気付く混凝土の固さ」だとか「自分に嘘をつくのがだんだん上手くなってゆく」‥‥聴いてて凄く胸を絞めつけられる思いがしたのも事実。聴いてて自然と涙が流れそうになる‥‥勿論今でも。これを書いてる今、アルバムを何度も通して聴いてるのだが、やっぱりこの曲になると辛く悲しい昨年の出来事を思い出してしまう‥‥なんて書いたら、レヴューにならないか。(苦笑)
  アルバムの中でも地味な部類の楽曲に入るが、実はこの曲が復活第1弾シングルになる予定だったそう。だがプロデューサーの小林武史氏が「復活1発目にしては地味だ。やっぱり1曲目は『いかにもミスチル』な曲‥‥"Innocent World" や "Tomorrow never knows" みたいな曲がいいのでは?」と忠告し、結局c/wに落ち着いたそうだ。これをシングルに持ってこようとした桜井の意図‥‥ここに復活後のミスチルのスタンスを垣間見る事が出来るのでは?

◎M-4:アンダーシャツ
  珍しくファンク色が強い、ソウルフルなナンバー。どちらかと言えば「BOLERO」の流れに近い気がする。「DISCOVERY」には「深海」や「BOLERO」にあったダークサイドの曲も数曲収録されているが、アルバムを通して聴くと、2年前に感じた「圧迫感」は感じられない。
  この曲の一節「"高価い物がいいもん"の理論」の韻の踏み方には感動すらした。桜井の書く歌詞にはよくこういった「日本語での韻」を踏んだものが多いが、やっぱりこの一節は過去最高の出来だと個人的には思うのだが‥‥(笑)

◎M-5:ニシエヒガシエ
  昨年2月にリリースされたシングル曲。ドラマ「きらきらひかる」の主題歌として耳にした方も多いのでは? 実はこの曲、アルバムの為に書かれた曲ではない。「Monthly Pick-Up Artist」のコーナーでも書いたが、最初のアルバム収録予定にこの曲は入っていなかった。桜井が意図したことなのか、手違いなのかは知らない。でも、入れて大正解だと思う。
  最初、この曲のリリース当時に聴いた時、俺は「あぁ、復活はまだまだ先だなぁ」と実感した。それはこの曲の歌詞を読んでそう思ったのだ。歌詞の内容がいまいちピンとこなかったし、何より「深海」~「BOLERO」の流れのような気がして‥‥ダークなミスチルではなく、"Innocent~" や "Tomorrow~" の流れを組む、これらを超えるような名曲を待っていたのに‥‥まだ桜井は「何かにせかされるように」生きてるのだろうか? そんなに「こんなやっかいな人生」を休養中にも送ってるのだろうか?と。曲調がヘヴィな分、余計にそんな事を考えさせる楽曲である。ところが、アルバムを通して聴くと、そこまでネガティヴなイメージが薄らいでいるのに気付く。寧ろ「必死で猛ダッシュです」という歌詞ですら前向きさを感じてしまうのは僕だけ?

◎M-6:Simple
  ここで今までの流れを変える曲が登場。小休止ともとれるが、そうとも言い切れないこの曲‥‥何と、「Atomic Heart」以前の彼等らしいアコースティックナンバーなのだ! こういう曲を今書けるという事自体が驚き。だけど、歌詞は今のミスチル。(笑)「マイナス思考で悩みまくった結果 この命さえも無意味だと思う日があるけど」って歌い出しが既に重い。(苦笑)でも、基本的にはラヴソング。「『考え過ぎね』って君が笑うと もう10代の様な無邪気さがふっと戻るんだ」って続きにホッとする。(笑)
  この曲から「アナログでいうB面になる」と桜井が言っていたが、本当にここでイメージがガラッと変わる。A面での「やっかいな人生」を「必死で猛ダッシュ」して、辿り着いたのが「探してたものは こんなにシンプルなものだったんだ」と気付く‥‥これもひとつの『DISCOVERY』なのだろう。桜井、ここまで辿り着くのに時間がかかったけど、よかったな‥‥

◎M-7:I'll be
  アルバム中盤を代表する名曲。9分を超える超大作だが、全くだれる事なく時間を忘れさせてくれる。本当の名曲とはこういう曲を指すのだよ。
  この曲には別バージョンが多数ある事が知られているが、実は僕は「DISCOVERY」発売前にこのアルバムのデモテープを聴く機会を得た。そこにはこの曲の別バージョンが収録されていた。この曲も元来、シングル用として書かれた曲で、デモに入っていたのは過去の彼等のイメージ通りの曲調‥‥例えれば "名もなき詩" や "Tomorrow~" の流れを組むアレンジだった。「あれでも十分にいけるのに」と思ってたら、何とこっちのシングルバージョンがこの春にシングルとしてリリース決定したそうだ。機会があったら是非聴き比べて欲しい。
  実はこの曲が僕の1番好きな曲。この曲に関しては‥‥とにかく歌詞を読んでいただきたい。その為には買っていただくのが1番なのだが、そうもいかないだろう。(笑)別室に歌詞を用意したのでここをクリックしてもらえば読めるようになってる。彼の詩の世界を是非堪能してもらいたい。

◎M-8:#2601
  もう、ここまであからさまにハードロックした曲は初めてだろう。これも「吹っ切れた」からこそ出来る技なのかも? まぁ、これを初期のミスチルファンが聴いたらどう思うのだろうか‥‥1度ちゃんと聞いてみたいものだ。
  久しぶりにJen(Dr.)が作曲に参加した楽曲。AメロをJen、残りを桜井が書くという初の共作。サビなどはもうメロディーを無視して叫びまくる桜井を堪能して欲しい。(爆)この曲のゾクゾクする箇所、それはAメロからメインリフに入る直前のギターのカッティング音‥‥是非聴いて下さい。で、これ、何かに似てると思ったのですよ。あの入り方、何だっけ?‥‥‥あっ、RADIOHEAD "Creep"だ!(笑)やっぱりRADIOHEADかい? でも曲調は全くの別物ですのであしからず。
  歌詞がまた‥‥しもネタ?(笑)Jenのツアー中のプライベートを歌った(笑)と桜井は言っていたが、ミッシェル・ファイファーを「ずりネタ」(爆)にするというのは‥‥と思ったら、実はAVだったらしい。(爆)品よくミッシェル・ファイファーにしたそうな。ま、まぁねぇ。よい子の皆さんも聴いてる訳だし‥‥
  「だって僕、AV女優詳しくないですから」(桜井;談)

◎M-9:ラララ
  一転してまたまたフォーキーなナンバー。この曲が好きだというミスチルファンが多いみたいだ。エンディングに向けての小休止的意味合いも感じられる。
  最初この曲を聴いた時、思い浮かべたのが「ゆず」だった。(笑)そう、ミスチルと同じレコード会社の、あの2人組のフォークデュオ。イメージ的なもんだけど‥‥歌詞も「日常にある、日頃気付かないような幸せ」を歌っている。「そんなラララ~探してる」これも所謂ひとつの『DISCOVERY』なのかも。

M-10:終わりなき旅
  いよいよエンディングに向けて盛り上がる。この曲、俺の中では "Innocent~" や "Tomorrow~" に初めて並んだ名曲だと確信している。これ以上、何を言えというのだ? とにかく聴いて欲しい。言葉では伝わりにくい曲のイメージ‥‥転調に次ぐ転調、流れるようなメロディー、そして「素晴らしいはずの自分を探す」終わりなき旅‥‥最後の『DISCOVERY』はもうすぐ、そこに近付いている‥‥

◎M-11:Image
  「混乱した時代」を駆け抜け、最後に辿り着いたのは「楽しく生きて行くImageを 膨らまして暮らそうよ さぁ目に写る全てのことを抱きしめながら」‥‥この一言を言えるようになるまでに、人間はどれくらい回り道をしなければならないのだろうか?なんて事を真剣に考えた。桜井和寿という男はここに辿り着くのに何年もの月日を費やした。自分を犠牲にし、家族を犠牲にし、大切なものが何なのか見えなくなり‥‥やがて「大切なものいつだって 目の前に転がっている」ことを悟り、「全ては自分自身なのだ」と気付く。彼と同世代(余談だが、マニックスのメンバーとミスチルのメンバーは同級生(笑)だったりする。この2組を比較してみるのもまた面白いのでは?)の僕らなら、このアルバムを聴いた時に何か「指針」となるものが見えてくるような気がするのでは‥‥そんな事を考えさせながら、このアルバムは終了を迎える。


◎最後に

  私情を挿みつつ各楽曲の感想を述べていったけど、やっぱり1番よいのは、これを読んだあなたが自らこのアルバムを手にする事だと思います。全ては聴く事から‥‥批判/批評はその後で。若い方よりも寧ろ、俺と同世代の20代後半以上の方に、是非このアルバムを聴いてもらいたいと思っています。勿論、それ以外の世代の方にも、純粋に「邦楽史上に残る名盤」を堪能して欲しいと思ってますが。

  これを切っ掛けに、洋楽ファンが邦楽に興味を持ち、邦楽オンリーの方が洋楽に興味を持つ切っ掛けになれば‥‥「DISCOVERY」と「ja,Zoo」というのはそういうアルバムになりうると確信しています。



▼Mr.Children『DISCOVERY』
(amazon:国内盤CD

投稿: 1999 02 12 12:00 午前 [1999年の作品, Mr.Children] | 固定リンク