カテゴリー「1999年の作品」の70件の記事

2020年6月18日 (木)

THE BLACK CROWES『BY YOUR SIDE』(1999)

1999年1月に発表された、THE BLACK CROWESの5thアルバム。

デビュー時から所属していたAmerican Recordsを離れ、新たにColumbia Recordsと契約しての1作目。メンバーにも変化が生じ、デビュー時からのメンバーであるジョン・コルト(B)、2作目『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)から参加したマーク・フォード(G)が脱退。レコーディングではリッチ・ロビンソン(G)がすべてのギターを担当し(ツアーには元CRY OF LOVEのオードリー・フリードが参加)、ベースには新たにスヴェン・パイピーン(B)が加わりました。

また、プロデューサーもジョージ・ドラキュリアス(PRIMAL SCREAMREEFなど)やジャック・ジョセフ・プイグ(JELLYFISHWEEZERCLUTCHなど)といった布陣から離れ、新たに気鋭のエンジニア、ケヴィン・シャーリー(AEROSMITHJOURNEYIRON MAIDENなど)を起用。この手のバンドの作品にしては抜けの良い、非常にクリアな音像の1枚に仕上がっいます。

直近の2作……3作目の『AMORICA』(1994年)や4作目『THREE SNAKES AND ONE CHARM』(1996年)がマニアックな作風だったこともあり、どんどんジャム色の強いフリーキーな存在になっていくのかと思いきや、この新作では初期の彼らが持ち合わせていた派手さ、華やかさが復調。サザンロック寄りだった近作よりも、スタジアム級バンドへと成長したTHE ROLLING STONESを思わせる、コンパクトでわかりやすいロックンロール/ソウルナンバーを次々に展開していきます。うん、とにかくスルスル聴き進められるんですよね。そういった意味では、デビューアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)にもっとも近い位置にある内容かもしれません。

また、オープニングを飾る「Go Faster」や続く「Kickin' My Heart Around」あたりは、ストーンズというよりもAEROSMITHにも通ずる勢いや覇気が感じられ、このへんはプロデューサーが一緒という共通点も影響しているのかな。なんにせよ、即効性は非常に高いアルバムだと思いますし、これまでTHE BLACK CROWESを敬遠していたリスナーにもとっつきやすい1枚かなと思います。もしこのバンドのビギナーや、この手の枯れたロックンロールが苦手なリスナーに真っ先に勧めるなら、本作と1stアルバムを手渡すといいのではないでしょうか。

ただ、2ndアルバムから前作で展開された濃厚なスタイルに慣れ親しんだディープなリスナーには、本作は若干薄味に映るかもしれません。いや、薄味っていうか「普通のロックアルバム」くらいに思えちゃうのでは? そのへんも一長一短あるものの、純粋にロックンロールアルバムとしては非常に完成度が高いので、小難しいことを考えずに気軽に触れてほしいですね。

チャート的には初めて全米TOP20入りを逃し(最高26位)、セールス的に大成功したとは言えない1枚ですが、この前後にジミー・ペイジと共演してLED ZEPPELINナンバーの数々を演奏し続けたので、バンドの人気的には再び上昇の兆しを見せていた時期だったのかな。ちょうど1999年7月には、苗場スキー場で初開催の『FUJI ROCK FESTIVAL '99』で久しぶりの来日も果たしましたしね。

 


▼THE BLACK CROWES『BY YOUR SIDE』
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2020年1月12日 (日)

祝ご成人(1999年4月〜2000年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今年で6回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、前回(1998年4月〜1999年3月)から当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)と被っていることもあり、選出時いろいろ感慨深いものがあったりするのですから、長く続けてみるものですね。

さて、企画説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1999年4月〜2000年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちらです)

 

AC/DC『STIFF UPPER LIP』(2000年2月発売)(Spotify)(レビュー

ATARI TEENAGE RIOT『60 SECOND WIPE OUT』(1999年5月発売)(Spotify)(レビュー

BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999年6月発売)(Spotify)(レビュー

CIBO MATTO『STEREO☆TYPE A』(1999年6月発売)(Spotify

D'ANGELO『VOODOO』(2000年1月発売)(Spotify

THE DILLINGER ESCAPE PLAN『CALCULATING INFINITY』(1999年9月発売)(Spotify

DISTURBED『THE SICKNESS』(2000年3月発売/US)(Spotify)(レビュー

THE FLAMING LIPS『THE SOFT BULLETIN』(1999年5月発売)(Spotify

FOUNTAINS OF WAYNE『UTOPIA PARKWAY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

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2020年1月 3日 (金)

EMINEM『THE SLIM SHADY LP』(1999)

1999年2月にリリースされたエミネムのメジャー1stアルバム(通算2作目)。日本盤は同年4月に発売。

リードシングル「My Name Is」が全米36位/全英2位というヒットを記録し、アルバム自体も全米2位/全英10位まで到達。アメリカのみで400万枚を超える大ヒット作となりました。

のちのエミネムのアルバム、特に次作『THE MARSHALL MATHERS LP』(2000年)以降って負の感情や怒りを前面に打ち出した作風という印象が強く、僕のようなヒップホップ・ライト層にはアルバムによっては1枚聴くのにかなり体力を使うものも少なくありません。そんな中で、本作『THE SLIM SHADY LP』って意外と気軽に聴ける1枚なんですよね。

もちろん本作にも怒りの要素は含まれているし、全体的にも(ポジティブというよりは)ネガティブな要素が強めです。が、オープニングを飾る「My Name Is」のシニカルさ、その後続いていく“どこか哀愁味の漂う”楽曲群と、中二(というよりも厨二かな)感覚で楽しめる世界観がとても気持ちよく響く。だから、僕のような「ヒップホップをメインで聴く」というよりは「ラップメタルの延長で触れる」リスナーにも優しいのかもしれません。

最初の出会いは、1999年春にクラブイベントで耳にした「My Name Is」でした。ラップメタルやBEASTIE BOYSなどの合間に流れたこの曲に一気に惹きつけられた自分は、その後アルバムを購入するわけです。

エミネムのラップが技術的に非常に優れていることは、素人の僕にも「My Name Is」1曲を聴いただけで一“耳”瞭然でした。アルバムを通しても強弱の効いたすごく聴きやすいフロウはすごく耳に残ったし、何よりも聴いていて気持ちいい。そのバックで鳴るシンプルなトラックも、適度にメロウで低音の効いた気持ち良いものが多く、そりゃ聴きやすいわけだと納得するわけです。

特にクラブのような爆音で、しかも低音を強調した環境でこのアルバムの楽曲を聴くと、改めてそのすごさが理解できるわけです。そういう意味では、CDやネットからではなく、クラブという特殊な環境でエミネムに出会ったことが自分にとって非常に大きかったのかもしれません。そうじゃなければ、毎回アルバムを楽しみにしていたり、初来日となった2001年のフジロックを心待ちにしませんから。

最近、仕事の関係で改めてこのへんのヒップホップをよく聴くのですが、リリースから20年経った今聴いても本当に素晴らしい、後世に伝えたい傑作のひとつです。

 


▼EMINEM『THE SLIM SHADY LP』
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2020年1月 2日 (木)

METHODS OF MAYHEM『METHODS OF MAYHEM』(1999)

1999年12月にリリースされたMETHODS OF MAYHEMの1stアルバム。

METHODS OF MAYHEMはMOTLEY CRUEトミー・リー(Dr)が1999年春、バンド脱退後にスタートさせたプロジェクト。トミーはドラムのみならず、ボーカルやギターなども披露しており、現BON JOVIのフィル・X(G)やNINE INCH NAILSとの仕事で知られるダニー・ローナー(G)、元JANE'S ADDICTIONのクリス・チェイニー(B)などそうそうたるメンバーがレコーディングに参加しております。

当時のトミーの趣味が全面的に反映された本作は、いわゆるラップメタルをヒップホップ側により近づけた内容となっており、当時は「こんなことがやりたいがためにモトリーを辞めたのかよ!」と総スカンを食らったことをよく覚えております。けど、もともと時代の流れを読むのがうまかったトミーのこと、当時の主流を考えれば彼がこういったサウンドに惹かれていくのは至極自然な流れ。それに、この頃のトミーは私生活での離婚やら何やらでかなり荒れていましたし、派手にロックスターを気取るよりは身内と一緒にミニマムな音楽を作っていくことで癒されたのかもしれませんしね。

プロデュースを手がけたのはトミー自身と、直近のモトリーのアルバム『GENERATION SWINE』(1997年)にも携わったスコット・ハンフリー(ロブ・ゾンビPOWERMAN 5000ANDREW W.K.など)。スコットはその後もMETHODS OF MAYHEMの2作目『A PUBLIC DISSERVICE ANNOUNCEMENT』(2010年)やトミーのソロアルバム『NEVER A DULL MOMENT』(2011年)、『TOMMYLAND: THE RIDE』(2005年)にも関わっているので、モトリーにスコットを連れてきたのってトミーだったのかもしれませんね。

1999年というと、LIMP BIZKITの2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)が全米1位を獲得し、RAGE AGAINST THE MACHINEが待望のニューアルバム『THE BATTLE OF LOS ANGELES』(1999年)をドロップ、さらにはエミネム「My Name Is」および『THE SLIM SHADY LP』(1999年)でいきなり大ブレイクを果たしたタイミング。ラップ(およびラップメタル)やヒップホップがシーンのど真ん中にあった時代であり、80年代に一斉を風靡したHR/HMシーンはニューメタルに取って代わられてしまっていた時期。そりゃあモトリーやっているよりもヒップホップやったほうが楽しいわな。

今聴くと若干古臭く感じるテイストですが、だからといって当時もこれが最新かといったらまったくそんなことはなく(苦笑)。けど、素直にカッコいいとも思えたんですよ。トミーのボーカルも古典的なHR/HMよりはモダンなラウドロックのほうが似合っているし。そういった意味では、事情に己のことがわかっていたのかもしれません。

本作はゲストも豪華でして、フレッド・ダースト(LIMP BIZKIT)やキッド・ロック、スヌープ・ドッグ、リル・キム、ジョージ・クリントン、マイク・マスター・マイク、スコット・カークランド(THE CRYSTAL METHOD)など、“いかにも”なメンツが名を連ねております。そんな中でも、フレッド、リル・キム、ジョージ・クリントンがボーカルでフィーチャーされた「Get Naked」は今聴いても本当にゾクゾクする。たまらんですね。

どうやらトミー、昨年のモトリー復活にあわせてなのかMETHODS OF MAYHEMのほうも復活させ、この春には10年ぶりとなる3rdアルバムをリリース予定なんだとか。オルタナ・メタル側にすり寄った前作『A PUBLIC DISSERVICE ANNOUNCEMENT』を経て一体どんなサウンドを聴かせてくれるのか、楽しみなような怖いような……。

 


▼METHODS OF MAYHEM『METHODS OF MAYHEM』
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2019年11月 5日 (火)

IN FLAMES『COLONY』(1999)

IN FLAMESが1999年5月に発表した、通算4作目のオリジナルアルバム。自国スウェーデンで初めてチャートイン(最高34位)した記念すべき1枚で、アメリカでも当時2万枚以上のセールスを残しています。

前作『WHORACLE』(1997年)がここ日本でも成功を収めた彼ら(僕も同作から本格的に彼らを聴くようになりました)。同作発表後にはその後長きにわたり在籍することになるピーター・イワース(B)が加入し、1998年初頭には念願の初来日公演も実現しましたが、帰国後にニクラス・エンゲリン(G)が解雇され、結成時からドラムを務めてきたビョーン・イエロッテがリードギタリストに転向。代わりにダニエル・スヴェンソンが加わり、アンダース・フリーデン(Vo)、イェスパー・ストロムブラード(G)、ビョーン(G)、ピーター(B)、ダニエル(Dr)という黄金期ラインナップが完成します。

基本的には前作『WHORACLE』で掴んだひとつのスタイルをさらに推し進めたものですが、次作以降につながっていく「メロディック・デスメタルという枠からの離脱」の幕開けを飾った1枚とも言えます。もちろん、オープニングトラック「Embody The Invisible」などからもおわかりのように、メロディアスなツインリードギターを多用し、正統派ヘヴィメタル的な“わかりやすさ”を基盤に置いたアレンジはメロデスのそれなのですが、本作の楽曲はその“わかりやすさ”に拍車がかかり、当時我々がイメージしたメロデスの枠から少しはみ出し始めたのではないか……そんなことも思ったりしました。

その理由として、いわゆるクリーントーンで歌うパートが効果的に、かつ自然な形で取り入れられていることも大きいのではないでしょうか。前作ではDEPECHE MODEのカバーをしていましたが、その影響ではないでしょうけどちょっとゴシック調な「Ordinary Story」での感情を押し殺したような低音ボーカルや、「Coerced Coexistence」でのエモさが際立つクリーンボイス、さらには「Insipid 2000」のサビで飛び込んでくるメロウなボーカル……もうこれ、普通に歌っちゃえばいいじゃん!とツッコミを入れたくなるほど、自然と溶け込んでいるんです。

あとね、結果論になってしまいますが、本作での試みは多くのフォロワーたちを生み立つ結果につながったのではないでしょうか。それは、メロデス界隈への影響ではなく、そこを起点とした新たな波……ニューメタル以降のNew Wave Of American Heavy Metalへと脈々と受け継がれていくわけです。そして、当のIN FLAMES自身も『CLAYMAN』(2000年)を挟んで、続く『REROUTE TO REMAIN』(2002年)や『SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE』(2004年)でNWOAHMへと接近し、その完成形として『COME CLARITY』(2006年)を生み出すまでに至ります。

そういった意味での“産声”の1枚がこのアルバムなんじゃないかなと。過渡期の1枚と言えなくもないですが、この完成度は過渡期で済ませるには高すぎ。今の彼らみたいな終始歌メロ豊かな内容ではありませんが、2000年代中盤のUSメタルコアやモダン・ヘヴィメタルにこそ改めて触れていただきたい傑作です。

 


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2019年9月 3日 (火)

REEF『RIDES』(1999)

1999年4月にリリースされた、REEFの3rdアルバム。

前作『GLOW』(1997年)が全英1位とバカ売れし、同作から「Place Your Hands」(同6位)、「Come Back Brighter」(同8位)、「Consideration」(同13位)、「Yer Old」(同21位)とヒットシングルが連発。サウンドそのものはオールドスークルなブリティッシュロックでしたが、ブリットポップ末期の波にうまく乗ることができた結果、トップバンドの仲間入りを果たすことができました。

続く本作は、ブレイクした前作の延長線上にありながらもより無駄を削ぎ落とした、“バンドの芯”のみで勝負する意欲作。ポップさよりもハードさが際立つぶん、全キャリア中もっともハードロック色の強い内容に仕上がっています。

まず、オープニングの「New Bird」(全英73位)のヘヴィ&グルーヴィー、かつスリリングな演奏&アレンジからしてハードロック以外の何者でもありませんよね。ゲイリー・ストリンガー(Vo)のボーカルも冴え渡っているし、散々ヘタだと言われてきた(一部でね)ジャック・ベサント(B)のベースもゴリゴリいいながらキラリと光るプレイを聴かせてくれる。ケンウィン・ハウス(G)のギタープレイ/フレージング、ドミニク・グリーンスミス(Dr)のドラミングも文句なしのカッコよさですしね。

かと思えば、2曲目でいきなりレイドバックした「I've Got Something To Say」(全英15位)が飛び出したり、地味ながらもボディブローのようにじわじわ効いてくるミドルチューン「Wandering」「Metro」などがあり、グルーヴィーなドラッドポップ「Sweety」(全英46位)やじっくり聴かせるフォーキーなバラード「Locked Inside」もある。

後半でも「New Bird」にも匹敵するヘヴィな「Back In My Place」に再びノックアウトされ、REEF流ブルースハードロック「Undone And Sober」、本作では珍しいストレートなロックチューン「Who You Are」、じっくり歌を聴かせる「Love Feeder」やファンキーな「Moaner Snap」、ゲイリーのファルセットが心地よい壮大な「Funny Feeling」、アルバムを静かに締めくくるアコースティックナンバー「Electric Sunday」と、とにかくバラエティ豊かな楽曲がずらり。内容の多彩さでいえば前作以上なのですが、トーンが調整されているため統一感が強まっています。そういう意味では、なぜか前作よりも地味なんですよね。

その地味さが災いしてか、大きなシングルヒットが生まれることはなく、アルバム自体も前作の1位には届かず、最高3位止まりでした。それでもヒット作には違いないんだけどね。

ちょうどブリットポップが終焉を迎えたこともあり、その枠で括られていたバンドたちの動向が注目されていましたが、REEFはその翌年に早くも4thアルバム『GETAWAY』(2000年)を発表。2003年初頭(日本では2002年末)には5thアルバム用に制作された新録曲を含むベストアルバム『TOGETHER, THE BEST OF…』を発表してバンドは解散してしまいます。

悪いアルバムではないのですが、“芯”をむき出しにしたことでバンドが傾き始めてしまったという。タイミングも悪かったですけどね。とはいえ、(ブリットポップではなく)ブリティッシュロック/ブリティッシュハードロックとしては非常に優れた作品ですので、クラシックロックファンやハードロックファンに触れてほしい1枚です。

 


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2019年8月20日 (火)

MICHAEL MONROE『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999)

1999年10月にリリースされた、マイケル・モンロー通算4作目のソロアルバム。当初日本のみで発売されたJERUSALEM SLIM唯一のアルバム『JERUSALEM SLIM』(1992年)DEMOLITION 23.名義でのアルバム『DEMOLITION 23.』(1994年)を含めると通算6作目ということになります。

前作『PEACE OF MIND』(1996年)前後でニューヨークから故郷フィンランドへと帰国し、音楽の拠点を地元に移したマイケル。前作はドラム以外のパートをほぼマイケルひとりで担当するというセルフ・メイド感の強い、ある種“閉じた”作品でしたが、続く本作は非常に豪快な“開けた”1枚に仕上がっています。

リズム隊のみ地元のプレイヤーに担当させ、自身はボーカルのほかギター、ハーモニカ、サックス、ピアノなど相変わらず多才ぶりを発揮。楽曲に関しても全13曲中、カバー2曲を除く11曲を(公私ともに当時のパートナーだった)ジュード・ワイルダーと共作しています。

ぶっちゃけ、楽曲のタイプ的には前作の延長線上にあるシンプルでパンキッシュなハードロックなのですが、前作を覆っていた“緩さ”が完全に払拭され、非常にタイトな印象を受けるのが本作の特徴。「Life Gets You Dirty」から「Just Because You're Paranoid」へと続く冒頭の構成からは、絶妙な緊張感も感じられ、良い意味で“怒っている”なと。正直、90年代前半のマイケルはいろんなゴタゴタに巻き込まれ、本来なら怒るべきだと思っていたんです。なのに、パンクバンドであるDEMOLITION 23.は怒りよりも享楽的な雰囲気が強いし、すべてを捨てて故郷に戻って制作した『PEACE OF MIND』からはある種の“諦め”すら感じられた。

おいおい、こっちはそんなマイケル・モンローを求めてねぇぞ、と。

もちろん、前作での原点回帰が本作の完成に必要な要素だったことは間違いありません。すべては結果論でしかないですが。

良くも悪くもアメリカナイズされた2ndアルバム『NOT FAKIN' IT』(1989年)から10年を経て、ようやくマイケルは“自分らしさ”を手に入れたんだ。当時はそう思いました。しかし、その後ジュードとの死別が訪れるとは、この頃は思ってもみませんでしたが……。

あ、あと当時はBACKYARD BABIESといったフォロワーたちがマイケルと共演したりすることで、マイケルに対する再評価が始まった時期でもあったんでしたっけ。そういう意味では、本作の登場は必然だったのかもしれません。

ちなみに、本作に収録されているカバー曲のひとつに、HANOI ROCKS「Self Destruction Blues」が含まれています。のちに再結成するハノイもこちらのバージョンを再カバーしていましたね(ハノイ・バージョンは2007年のアルバム『STREET POETRY』収録)。タイトさではハノイ・バージョンが優っていますが、荒々しさはソロ・バージョンのほうが格段に上なので、機会があったら聴き比べてみてください。

 


▼MICHAEL MONROE『LIFE GETS YOU DIRTY』
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2019年7月19日 (金)

MOGWAI『COME ON DIE YOUNG』(1999)

1999年3月にリリースされた、MOGWAIの2ndアルバム。日本でも同年同月に、当時存在したレーベル「バンダイ・ミュージックエンタテインメント(旧・アポロン)」から発売されましたが、2000年5月に閉鎖されたため、2000年8月にTOY'S FACTORYから再発されています(現在はHostess流通のようです)。

僕自身、初めてMOGWAIに触れたのがこのアルバムからで、まずはそのジャケットのインパクトに一歩後ずさりしたことをよく覚えています(笑)。「どんなブラックメタルだよ!」とツッコミ入れずにはいられなかったなあ(これ自体は映画『エクソシスト』からの引用なので、あながち間違ってはいないんだけど)。

ですが、そのサウンドはブラックメタルとはおよそ結びつかない、ポストロック/オルタナティヴロック。インストゥルメンタルナンバーが中心で(「Cody」のみさらりと歌がフィチャーされています)、“静”の中に時折訪れるノイジーな“動”、その対比であったりバランス感だったりが非常に心地よく、70分近くもある本作ですが歌がなくても終始そのサウンドに身を委ねて堪能することができるはずです。

楽曲自体は2分台から10分台までさまざまですが、前の曲とつながっていたりと組曲風だったりもするので、2分台の短尺だからといって安心していると、気づいたときには次の曲になだれ込んでいるなんてことも。特にボーカルなしの楽曲が多いだけに、CDやデジタルではなくアナログやカセットで聴いていたらそのへん気づかないかも。それくらい、曲と曲の切れ目を感じさせないし、むしろ曲のつなぎ目に入る空白でさえもアルバムの演出のように感じられる。すべてが計算なんじゃないかと錯覚してしまうほど、静と動を巧みに使い分けるアンサンブルはさすがの一言です。

序盤〜中盤こそ“静”を中心にアルバムが展開していきますが、終盤の「Ex-Cowboy」あたりから事態が一変。攻撃的なディストーションギターの嵐が訪れたかと思うと、「Chocky」では感情抑え目の演奏にフィードバックノイズがかぶさり、10分半の大作「Christmas Steps」ではメタリックさが目立つバンドアンサンブルで聴き手をクライマックスへと導く。いやいや、この流れは圧巻の一言です。

個人的には後追いだった1stアルバム『YOUNG TEAM』(1997年)のほうが“動”を基盤にしたものだったの対し、今作ではその比率が逆転。だからこそ、「Ex-Cowboy」や「Christmas Steps」で展開される『YOUNG TEAM』で確立させたスタイルがより際立つ。この緩急を巧みに使い分ける技術、お見事としか言いようがありません。

MOGWAIは1st派と2nd派に分かれそうな気がしないでもありませんが、最終的には2枚ひとまとめで「MOGWAIらしさ」なのかなと。この2枚が後世に与えた影響はハンパないですからね。

 


▼MOGWAI『COME ON DIE YOUNG』
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2019年5月25日 (土)

BLACK LABEL SOCIETY『SONIC BREW』(1999)

1999年5月にリリースされた、ザック・ワイルド(Vo, G)率いるBLACK LABEL SOCIETYのデビューアルバム。本作は日本で前年1998年秋に先行リリースされていますが、アメリカではその日本盤に1曲追加した全14曲入りで正式リリース。が、そのジャケットにクレームが付き、現行のジャケットに変更した形で同年秋に再発売されました。その際に、オジー・オズボーン「No More Tears」の(ある意味)セルフカバーが再追加され、全15曲入りで流通されています。

PRIDE & GLORY、ソロと渡り歩き、その合間にはオジーの『OZZMOSIS』(1995年)のソングライティング&レコーディングに参加(ツアーには参加せず)。紆余曲折あり、ようやくたどり着いたのがこのBLACK LABEL SOCIETYであり、現在まで20年にわたり彼のメインバンドとして活動が継続しています。

レコーディングメンバーはザック(Vo, G, B, Pianoなど)とフィル・オンディッチ(Dr)の2名(再追加された「No More Tears」のみ、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)がプレイ)。その後、ザック&フィルの2人にニック・カタニース(G)とジョン・ディサルヴォ(B)が加わる形で正式にバンド化します。

基本的にはPRIDE & GLORYで展開した“カントリー・メタル”を進化させたスタイルで、『OZZMOSIS』で聴かせた低音重視のヘヴィなギターサウンドと、ソロ名義でのアコースティック作『BOOK OF SHADOWS』(1996年)での繊細さも含む、ザックという男の“豪快さ&強さ”と“繊細さ&優しさ”が混在したメタルアルバムに仕上がっています。とはいえ、本作では比率的に“豪快さ&強さ”のほうが優っており、“繊細さ&優しさ”は味付け程度といった具合。そのへんのバランスは以降、アルバムごとに変化していくことになります。

とにかくギターとベースの音圧が尋常じゃない(笑)。今でこそスピーカーで処理し切れないほどの低音を出すダンスミュージックやヒップホップは多いですが、そういった低音を効かせたサウンドってメタルの十八番だったはずなんです。それを20年前に、オジーのもとで活躍したギタリストが率先してやっていた事実。忘れてはなりません。

正直、全体的にはポップとは言い難い作風です。実際、分厚い楽器隊の音に耳が行きがちなのですが、意外とメロディはしっかり存在する。けれど、どちらかというとブルースフィーリングで構築された“ノリ”一発のメロディといった印象かな。で、「Beneath The Tree」「Black Pearl」「Spoken In The Wheel」のように音の薄い楽曲で、そのメロディがようやくあらわになるという。まあ、この作品にはこういう“ノリ”一発のメロのほうが合っているんですけどね。

まあ、あれです。「No More Tears」のカバーを聴けば、ザックがこのバンドで何をやりたいのかが一耳瞭然かと。オリジナルのサイケデリックさ、皆無ですからね(笑)。

なお、本作は今年でUSリリース20周年ということで、現メンバーで再レコーディングしたアニバーサリー盤『SONIC BREW (20TH ANNIVERSARY BLEND 5.99 - 5.19)』もリリースされたばかり。こちらについても後日、改めて触れてみたいと思います。

 


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2019年4月24日 (水)

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999)

本国イギリスで1位、アメリカでも最高14位という好記録を残した前作『DIG YOUR OWN HOLE』(1997年)に続いて、1999年6月にリリースされたTHE CHEMICAL BROTHERSの3rdアルバム。本国では引き続き1位、セールス的にも前作の倍近いダブルプラチナムを記録する大ヒット作となりました。

基本的には前作の延長線上にある作風といっていいかもしれません。が、いわゆる“デジロック”的なゴリっとしたテイスト(ビッグビート的スタイル)は後退し、より(広い意味での)テクノに接近した1枚なのかなと。それが1999年という世紀末感にフィットしたのでしょうかね、今振り返ると。

少ない音数とチープな電子音で構築されたオープニングトラック「Music:Response」は当時TV CMにも起用されたので覚えている方も少なくないかも。この曲からアッパーな「Under The Influence」、バーナード・サムナー(NEW ORDER)のボーカル(バックボーカルではPRIMAL SCREAMのボビー・ギレスピーも参加)をフィーチャーした「Out Of Control」へと切れ目なく続く3曲の流れは圧巻。これだけでも、本作は“勝った”と実感できる内容かもしれません。

そこからブレイクビーツ/ヒップホップ色濃厚な「Orange Wedge」を経て、ノエル・ギャラガー(当時OASIS)が前作の「Setting Sun」に続いて参加したキャッチーな「Let Forever Be」、8分半にも及ぶ一大抒情詩「The Sunshine Underground」とサイケデリックゾーンへ。前者は二匹目のドジョウを狙ったらより濃いものが生まれてしまったある種偶然の産物(?)でもあり、後者は「俺らが本気出せばこんなもんよ?」的な気合いが感じられる。オープニングからピークの連続みたいな作品ですが、間違いなくこの中盤はこのアルバムのクライマックスと言えるでしょう。

ホープ・サンドヴァル(MAZZY STAR)の気怠い歌声がチルな空気にぴったりな「Asleep From Day」、ブラックミュージックと同じくらいYMOからの影響も見え隠れする「Got Glint?」で少し落ち着いたところで、アゲアゲ(死語)のクラムアンセム「Hey Boy Hey Girl」で再び潮目が変わると、ポップさが際立つ「Surrender」、ジョナサン・ドナヒュー(MERCURY REV)のボーカル/アコギ/ピアノを前面に打ち出した“涅槃からのささやき”的エンドロールナンバー「Dream On」という豪華な構成でアルバムを締めくくります。

久しぶりに聴いても、やっぱりその内容/完成度は随一。ロックサイドからの入門編的には前作『DIG YOUR OWN HOLE』がとっつきやすいかもしれませんが、THE CHEMICAL BROTHERSの本質を知る上では本作から入るのがベストではないでしょうか。リリースから20年経った今も、最強のダンスミュージックアルバムです。

 


▼THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』
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