カテゴリー「1999年の作品」の79件の記事

2024年6月 1日 (土)

BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』(1999)

1999年10月25日にリリースされたバーナード・バトラーの2ndアルバム。日本盤は同年10月20日発売。

SUEDE、McALMONT AND BUTLERでの活動を経て届けられた初ソロアルバム『PEOPLE MOVE ON』(1998年)から1年半ぶりと、比較的短いスパンで届けられたソロ2作目。前作からは「Stay」(全英12位)、「Not Alone」(同27位)、「A Change Of Heart」(同45位)とヒットシングルも生まれ、アルバム自体も最高11位という好成績を残しました。また、アルバム発売後には1998年の単独公演、1999年夏にはHOLEの代役で『FUJI ROCK FESTIVAL '99』へ出演するなど来日も複数回実現し、SUEDE時代からのファンには健在ぶりを存分にアピールすることに成功しています。

前作ではドラム以外の楽器をほぼバーニーひとりで担当したほか、ストリングス隊を大々的にフィーチャーすることでゴージャスさ、豪快さを体現することにも成功しましたが、今作では先の『PEOPLE MOVE ON』を携えたツアーでまとまったバンド編成を軸に制作。プロデュースは前作同様にバーニー自身が担当し、ミキシングをアンディ・ウォレスが手がけています。アンディの起用は、バーニーがNIRVANA『NEVERMIND』(1991年)での仕事ぶりを気に入り、ダメ元でオファーしたんだとか。

さて、作風的には前作の延長線上にある、歌ものギターロックやフォーキー&サイケデリックな楽曲を中心に構成。サイケなタイトルトラックからスタートし、SUEDE時代を彷彿とさせる豪快な「I'd Do It Again If I Could」、前作でのシングル曲路線を引き継ぐポップ&キャッチーな「You Must Go On」(全英44位)や「Cocoon」、バーニーの魅力が完璧な形で凝縮された「No Easy Way Out」、20代後半にしてここまで老成するか?と驚かせるジャジーな「Everyone I Know Is Falling Apart」、クライマックスに相応しい8分超の対策「Has Your Mind Got Away?」など、前作を気に入っている方なら間違いなく両手を上げて受け入れられる良曲ばかり。バーニーの歌もだいぶ板に付いてきた感が強く、ソロアーティストとしての方向性、スタイルがここでひとつ固まった感があります。

良く言えば、早くも“極まった”感が強い。ただ、悪く言えば新鮮さに欠ける。もともと斬新さを追求するようなタイプのアーティストではなく、ソングライターとして、ギタリストとして自身の技術や才能を極め続ける職人気質なだけに、このスタイルは一寸たりともブレていない。ただ、リリース当時が“世紀末”という時代の変わり目だったこともあって、前作よりも注目されなかったのはちょっと不幸だったかな。

チャート的には全英43位と前作ほどの成功を収めることができず、また所属レーベルCreation Recordsの閉鎖も重なり、2000年2月の再来日公演を最後にバーニーはしばらくソロ活動から離れることに。2002年にはMcALMONT AND BUTLERの2ndアルバム『BRING IT BACK』を発表し、2004年にはSUEDE時代の盟友ブレット・アンダーソン(Vo)と新プロジェクトTHE TEARSを立ち上げ、セルフタイトルのアルバム(2005年)を1枚制作。と同時に、THE LIBERTINESTHE CRIBS、ダフィーなどとのコラボレーションで、プロデューサーとして実績を積み重ねていくことになるのでした。

 


▼BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』
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2024年3月17日 (日)

THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』(2024)

2024年2月16日にリリースされたTHE HELLACOPTERSのリイシュー作品。

本作は1999年5月に発売された3rdアルバム『GRANDE ROCK』のリマスター盤(フィジカルではDISC 1、配信ではDISC 2)と、本作制作前に脱退し現在バンドに復帰しているドレゲン(G/BACKYARD BABIES)のプレイを追加し、パーカッションとピアノ。新しいバッキングボーカルを加えたリミックス盤(フィジカルではDISC 2、配信ではDISC 1)からなる2枚組作品。旧譜の復刻盤ではあるものの、ある意味では再結成後に制作された8thアルバム『EYES OF OBLIVION』(2022年)に続く“準”新作と受け取ることもできます。

思えば『GRANDE ROCK』制作時はニッケ・アンダーソン(Vo, G)以外のパーマネントギタリストが加入前で、本作の大半でニッケがギター演奏を担っていました(一部でキーボーディストの“ボバ・フェット”ことアンダース・ボバ・リンドストロームもプレイ)。その後、本作を携えたツアーからロバート・ストリングことロバート・ダールクヴィストが正式加入し、2008年の解散までのラインナップが完成することとなります。

ドレゲン在籍時の初期2作(1stアルバム『SUPERSHITTY TO THE MAX!』、2ndアルバム『PAYIN' THE DUES』)とカバー曲のみで構成された7thアルバム『HEAD OFF』(2008年)は現在まで国内ストリーミング未配信。実は本作『GRANDE ROCK』のオリジナル盤も2022年頃までストリーミング未配信および廃盤状態でした。しかし、新作『EYES OF OBLIVION』のリリースを機に『GRANDE ROCK』は現在の所属レーベルであるNuclear Blast Recordsから再発、同時にストリーミング配信も開始されました。

さて、補足はこれくらいにして。本作をこういう形でリイシューした理由に、「もっとギターがヘヴィなミックスにしたかった」というニッケやメンバーの意思があったとのこと(上記のドキュメンタリー映像参照)。確かに、オリジナル盤は前2枚の荒々しさからすると少々落ち着いた、品の良い形にまとめられている印象があります。それが当時の彼らにとってはある意味では正解だったのかもしれませんが、リスナー視点でも以降の作品と比べて本作が若干“弱く”感じてしまう瞬間も多々あり、そういった意味では「曲は良いのにどこか物足りない」1枚だったとも言えます。

そんな問題を解消したのが、本作のリミックス盤ではないでしょうか。ドレゲン自身も過去に自伝で「俺があのアルバムでギターを弾いていたらどうなっていたのか」と発言していたようですし、ゼロから関われてはいないものの多少はそうした夢も実現できているのかなと。ギターの厚みや荒々しさに関しては、新たに制作されたリミックス盤はオリジナル盤とは比にならないほどのカッコよさで、「そうそう、『PAYIN' THE DUES』の“次”ってこれだよね!」と納得できる仕上がり。ギターのみならずボーカルの厚みにも変化が生じており、全体的な“装飾”もより派手になっている。そういう点では「1999年の音」ではなく「2020年代の音」なのかもしれませんが、誰もが夢想した“IFの世界”を“準”新作として楽しめるという意味では、ファンやロックリスナーに幸せを与えてくれる1枚だと思います。

オリジナル盤よりもきめ細やかにバージョンアップされたリマスター盤と、新たに制作されたリミックス盤をこういう形で聴き比べることができるのも非常に興味深いですし、これはなかなかの好企画ではないでしょうか。この調子で『SUPERSHITTY TO THE MAX!』や『PAYIN' THE DUES』も再発していただけないかな……あ、下手なリミックスやリマスターは大丈夫なので(むしろあの2枚はオリジナル盤が完璧すぎますからね)。

 


▼THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』
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2022年3月12日 (土)

ブライアン・アダムスのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスの最新オリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)、素晴らしい内容でしたね。この新作を機に、ぜひ若い世代にも彼の名作たちに触れていただきたい(そのためのサブスクリプションサービスですしね)。しかし、数あるオリジナルアルバムのどれから手を出したらいいのか、せっかくならオイシイとこ取りして手軽に楽しみたい! そういう方のために、このエントリーでは複数制作されている彼のベストアルバム/グレイテストヒッツアルバムを簡単に紹介していきたいと思います。

紹介するのは、アーティスト主導で制作された4作品。レーベル主導で販売された『ICON』(2010年)は除外しています。このエントリーを頼りに、どの時代のどの作品が自分に適しているか、吟味してみてください(もちろん、ヒット曲/代表曲の被りが多いので、全部手を出す必要はありません)。

 

 

『SO FAR SO GOOD』(1993)

 

1993年11月2日発売の、ブライアン・アダムス初の公式ベストアルバム(日本盤は同年11月8日発売)。CD1枚モノ。

過去には日本限定で『HITS ON FIRE』(1988年)という2枚組作品(DISC 1が当時の最新作『INTO THE FIRE』、DISC 2に『CUTS LIKE A KNIFE』『RECKLESS』からのヒットシングルに加え、アルバム未収録のシングルB面曲やライブテイクをコンパイル)が限定販売されましたが、ワールドワイドでのベストアルバムは今作が初めて。全米ブレイクのきっかけとなった3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)からシングル3曲、メガヒットとなった4thアルバム『RECKLESS』(1984年)からは全米1位を記録した「Heaven」を含む6曲、5thアルバム『INTO THE FIRE』(1987年)からは「Heat Of The Night」1曲のみ、そして当時の最新オリジナルアルバムである6thアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)からは世界的大ヒット曲「(Everything I Do) I Do It For You」を含む3曲をピックアップ。さらに、本作のみの新曲としてシングルヒット(全米7位/全英2位)もした「Please Forgive Me」が用意されています。

『CUTS LIKE A KNIFE』『RECKLESS』からのヒットシングルは網羅されていますが、『INTO THE FIRE』からは「Hearts On Fire」(全米26位/全英57位)、「Victim Of Love」(全米32位/全英68位)の2曲、『WAKING UP THE NEIGHBOURS』からは「There Will Never Be Another Tonight」(全米31位/全英32位)、「Thought I'd Died And Gone To Heaven」(全米13位/全英8位)、「All I Want Is You」(全英22位)あたりのシングル曲が選外に。かつ、このアルバムと同時期にリリースされ大ヒット中だった、映画『三銃士』の主題歌として制作されたロッド・スチュワートスティングとのコラボ曲「All For Love」(全米1位/全英2位)も未収録となっています。

『WAKING UP THE NEIGHBOURS』が引き続きロングヒット中だった時期の1枚ということもあり、80年代のブライアンをおさらいするに最適な内容。ブレイク前の1stアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)、2ndアルバム『YOU WANT IT YOU GOT IT』(1981年)は気持ち良いくらいにスルーされているのも納得です。非シングル曲の「Kids Wanna Rock」(『RECKLESS』収録曲)も選ばれていることもあり、本作と『WAKING UP THE NEIGHBOURS』を持っていれば、この時点でのブライアン・アダムズはほぼ網羅できるといったところでしょうか。

実は、このテキストを書き始めて初めて気づいたのですが、先月まで配信されていた本ベストアルバム。いつの間にかサブスクから消えてます。あれ、もしかしてこの時点で企画倒れでは……(汗)。

 


▼BRYAN ADAMS『SO FAR SO GOOD』
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『THE BEST OF ME』(1999)

 

1999年11月15日発売の、ブライアン・アダムス2作目のベストアルバム(日本盤は同年11月17日発売)。CD1枚モノ。

『SO FAR SO GOOD』から6年のスパンを経て制作された本作ですが、その間にオリジナルアルバムは『18 'TIL I DIE』(1996年)『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)の2枚しか出ておらず、かつ両作ともアメリカではかつてのようなヒットにはつながっていないこともあってか、本ベストアルバムが全米リリースされるのは2001年になってからでした。

全16曲の収録曲のうち『SO FAR SO GOOD』との被りは5曲と意外に少なめで、その内訳は4thアルバム『RECKLESS』から2曲(「Summer Of '69」「Run To You」と地味なセレクト)、6thアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』から2曲(「Can't Stop This Thing We Started」「(Everything I Do) I Do It For You」)、1stベストアルバム『SO FAR SO GOOD』から当時の新曲「Please Forgive Me」、アルバム未収録だったブライアン&ロッド・スチュワート&スティングによる「All For Love」(1993年)、7thアルバム『18 'TIL I DIE』から4曲、8thアルバム『ON A DAY LIKE TODAY』から3曲(うち「Cloud Number Nine」は未発表リミックスバージョン)、そして1997年に発表されたライブアルバム『MTV UNPLUGGED』のみ収録の新曲2曲(「I'm Ready」「Back To You」)と、本作のために制作された新曲「The Best Of Me」。『SO FAR SO GOOD』が80年代のUSヒットに寄せたものだとしたら、本作は90年代以降のUKヒットを総括した内容といったところでしょうか。

上記のように『SO FAR SO GOOD』との被りが比較的少ないこともあり、1993年以降の90年代を振り返る意味では非常に手軽な内容と言えます。とはいえ、本作も泣く泣くカットされた90年代のヒット曲が少なくないので、『SO FAR SO GOOD』同様にあくまでビギナー向けの1枚といったところでしょうか。

なお、本作も2022年2月までサブスク上で確認できたものの、気づけば『SO FAR SO GOOD』とともに消えてしまいました。

 


▼BRYAN ADAMS『THE BEST OF ME』
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2022年3月 2日 (水)

SCORPIONS『EYE II EYE』(1999)

1999年3月9日にリリースされたSCORPIONSの14thアルバム。日本盤は同年4月21日発売。

前作『PURE INSTINCT』(1996年)完成後に新ドラマーとしてジェイムズ・コタック(Dr)が加入し、新たな体制でレコーディングに臨んだ約3年ぶりの新作。ヨーロッパや日本では引き続きEast West RecordsなどWarner系からのリリースでしたが、アメリカのみインディーズのKoch Recordsからの発売となりました。

新たなプロデューサーにオーストリア出身のピーター・ウルフ(CHICAGO、STARSHIP、HEARTなど)を迎えた本作は、ポップサイドに振り切った前作以上の異色作/問題作。オープニングを飾る「Mysterious」の、コンピューターによる同期(シーケンサーサウンド)を多用したアレンジに度肝を抜かれ、続く「To Be No. 1」もブラックコンテンポラリーからの影響が強いテクノポップ風アレンジに、多くのファンが“コレジャナイ”感を覚えたことでしょう。

もちろん、従来の彼ららしいバラード「Obsession」なども用意されているのですが、それすらも同期サウンドが用いられており、さらにはQUEEN風の多重録音コーラスなども付け加えられている。バンド結成から25年以上を経て、さらにはロックバンドとして次のフェーズへと向かおうとする貪欲さは素晴らしいと思うのですが、バンドが目指すものとファンが求めるものの乖離が大きすぎ、最初は面食らうのではないでしょうか。

しかし、楽曲自体のクオリティは非常に高く(これも前作同様)、超一流のロック/ポップスとして通用するものばかり。先に挙げたアルバム冒頭の3曲(「Mysterious」「To Be No. 1」「Obsession」)は過去のSCORPIONSと比較さえしなければ、この時代にリリースされた楽曲群の中でもトップクラスの仕上がりだと断言できます。

それに、「Mind Like A Tree」や「Yellow Butterfly」みたいなヘヴィなナンバーもしっかり用意されているし、レゲエタッチの「Eye To Eye」もHR/HMではないものの悪くない。とはいえ、ドイツ語で歌われる「Du bist so schmutzig」のグルーヴィーさは当時流行したニューメタルやラップメタルへ迎合したみたいな仕上がりで、悪くはないんだけどどうかと思いますよ(ちなみにこの曲、ジェイムズ・コタックもボーカルで参加しています)。

彼ら自身がクラブミュージック愛好家であったり普段からクラブに出入りしているならまだしも、このアレンジは確実にプロデューサー自身のテイストなわけで、そこに取って付けた感を覚えてしまう。そういった意味では非常に勿体ない1枚なんですよね。これも前作同様、BGMとして流しっぱなしにしておけば楽しめる良作ではありますが、いざ「SCORPIONSを聴くぞ!」というマインドで接するにはちょっと酷な迷作かも。90年代初頭の「Wind Of Change」での世界的成功を経て、バンドが“らしさ”をもう一度掴み取るまでの迷走期ならではの1枚ではないでしょうか。

なお、本作は一時期Spotifyで国内配信もされていましたが、現在は日本のストリーミングサービスでは聴くことができません。50年のキャリア中もっとも問題となったWarner時代の2作品も、7年ぶり新作『ROCK BELIEVER』(2022年)リリースのこのタイミングにしっかり聴けるようにしてもらいたいものです。だって、楽曲自体は良い出来なんですから。

 


▼SCORPIONS『EYE II EYE』
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2021年9月25日 (土)

GUNS N' ROSES『OH MY GOD』(1999)

1999年11月2日にリリースされた、当時のGUNS N' ROSESにとって『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』(ともに1991年)以来8年ぶりとなるオリジナル新曲。同年公開された映画『エンド・オブ・デイズ』のサウンドトラックアルバムのみに収録された、今となってはレアな1曲です。

スタジオ音源としては1994年末に発表された、映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』サウンドトラック提供曲「Sympathy For The Devil」(THE ROLLING STONES「悪魔を憐れむ歌」カバー)以来5年ぶり。しかし、その5年の間にスラッシュ(G)、ダフ・マッケイガン(B)、マット・ソーラム(Dr)が脱退し、この「Oh My God」のレコーディングにはアクセル・ローズ(Vo)のほかロビン・フィンク(G/NINE INCH NAILS)、スラッシュ脱退の引き金となったポール・トビアス(G)、トミー・スティンソン(B/THE REPLACEMENTS)、ディジー・リード(Key)、クリス・ピットマン(Key)、ジョシュ・フリース(Dr/THE VANDALS、DEVOなど)という布陣で制作に臨んでいます。さらに、ゲストギタリストとしてデイヴ・ナヴァロ(G/JANE'S ADDICTION、ex. RED HOT CHILI PEPPERS)も参加。ナヴァロはスラッシュ脱退後にガンズ加入が噂れていましたが、結局この1曲のみゲスト参加にとどまっています。

プロデューサーに初めてシーン・ビーヴァン(NINE INCH NAILS、MARILYN MANSONA PERFECT CIRCLEなど)を迎えて制作された本曲は、当時の空気感を切り取ったオルタナ色の強いハードロック仕様。アクセルのボーカルにはデジタルエフェクトが施されており、以前のようなスリージーなバッドボイーイズロックンロールを期待していたリスナーは肩透かしを喰らったのではないでしょうか。

事実、僕も当時「……えっ?」と最初は動揺しましたから。ただ、楽曲自体は非常にキャッチーで、アクセルらしいヒステリックなボーカルとトライバルなリズムセクション、デジロックを通過したサウンドとオルタナ以降のギタープレイなどの組み合わせに対し、徐々に新鮮さを感じるようになり、気づいたらクセになっていた(=何度もリピートしていた)わけです。言うほど悪くないじゃん、と。

そもそも僕自身1stアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)は大好きだけど信者というほどではなく、『USE YOUR ILLUSION』に対して好意的であり、進化していくガンズの姿に好印象を抱いていたリスナーなので、この変化には肯定的でした。むしろ、このテイストでアルバム1枚聴きたいと思ったくらい(笑)。

この曲はシングルカットされたわけではないですが、2000年からライブ活動を再開させたバンドはこの曲を演奏していた記録もあります(ライブ映像もYouTubeで探せばすぐに見つかるはず)。しかし、すぐに演奏されなくなり、レコード会社主導で制作されたベストアルバム『GREATEST HITS』(2004年)にも未選出。現在まで、国内ではストリーミングサービスでも未配信の1曲です。「ABSUЯD」(2021年)が新曲として発表された今だからこそ、たまには思い出してあげてください……(涙)。

というわけで、この曲を聴くには先の『エンド・オブ・デイズ』サウンドトラックアルバムを入手するのが一番。このサントラ、KORNLIMP BIZKITのアルバム未収録曲に加え、EVERLAST、THE PRODIGYロブ・ゾンビエミネムPOWERMAN 5000、SONIC YOUTH、CREEDなどの新録曲/既発曲満載の、オルタナ色の強い1枚。本作から生まれたヒット曲はひとつもありませんが、これはこれで(当時の空気を追体験できて)面白い内容だと思います。中古でも安価で見つけられるはずなので、ぜひ手に取ってみてほしいと思います。

 


▼V.A.『END OF DAYS: MUSIC FROM AND INSPIRED BY MOTION PICTURE』
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2021年7月26日 (月)

HURRICANE #1『ONLY THE STRONGEST WILL SURVIVE』(1999)

1999年4月21日にリリースされたHURRICANE #1の2ndアルバム。

アンディ・ベル(Vo, G)がRIDE脱退後、アレックス・ロウ(Vo, G)らと結成したHURRICANE #1はブリットポップ末期の流れに乗って、デビューアルバム『HURRICANE #1』(1997年)は全英22位まで上昇。同作からは「Step Into My World」(同29位)、「Just Another Illusion」(同35位)、「Chain Reaction」(同30位)というヒットシングルも生まれました。

1998年には2ndアルバムに先駆けて新曲「Only The Strongest Will Survive」(同19位)、「Rising Sun」(同47位)をシングル発売。1999年に入ると来たる2ndアルバムからのリードトラックとして「The Greatest High」(同43位)が中ヒットし、続いて本作が待望のリリース。しかし、最高55位と前作ほどの成功を得ることができず、アンディの脱退とともにバンドは解散。アンディはその後、OASISにベーシストとして加入することになります。

これだけ聞くと失敗作のように思えるこの2ndアルバムですが、実際の内容は新基軸も見え隠れする意欲作に仕上がっており、完成度という点においては前作以上ではないかと思っています。イントロダクション&アウトロが用意された作風は若干コンセプチュアルでもありますが、そこまで明確なものがあるわけでもなく。ストレートなロックチューン「N.Y.C.」があったかと思えば、ブラスセクションを導入したエモーショナルなバラード「The Greatest High」、サプリングを大々的に導入したテイストは中期OASIS的でもある「Remote Control」、サイケデリックなダンストラック「Rising Sun」、多幸感に満ち溢れた「Only The Strongest Will Survive」など、1曲1曲のクセが強く、言ってしまえばアルバムとしてのトータル性は弱いかもしれません。

しかし、どの曲もしっかり練り込まれている(かつ、良い意味で遊び心に満ちている)からコンピレーションアルバム感覚で聴くことができる。トータルで70分超えという長尺さが唯一の難点ですが、それすらも2021年の耳で聴くとプレイリストのように楽しめるのではないでしょうか。

確かにここから10曲程度に絞って、50分程度にまとめていたら、もうちょっと聴きやすい1枚だったかもしれません。しかし、RIDEのラスト作『TARANLULA』(1996年)同様ここでもアンディの悪いクセが炸裂してしまい、結果としてバンドを終焉へと導いてしまったのかなと。ただ、RIDEのときと違うのは、今作のほうが1曲1曲のクオリティが上ということ。そこだけがせめてもの救いです。

にしても、このあとOASISにサポート扱いで加入することになるとは、当時はまったく予想もしていなかったので、最初にその事実を知ったときはひっくり返りました(誇張ではなく)。けど、彼があの当時やりたかったことを考えると、意外と納得できる選択だったんだなと、今なら理解できるんですけどね。

 


▼HURRICANE #1『ONLY THE STRONGEST WILL SURVIVE』
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2021年4月 3日 (土)

ALICE IN CHAINS『MUSIC BANK』(1999)

1999年10月26日にリリースされたALICE IN CHAINSのボックスセット。日本盤未発売。

本作は同年6月に発売されたバンド初のコンピレーションアルバム『NOTHING SAFE: BEST OF THE BOX』(1999年)に続く、ALICE IN CHAINSのキャリアを総括するCD3枚組(+CD-ROM)作品。『FACELIFT』(1990年)でメジャーデビューする前のデモ音源から、アルバム収録曲の未発表バーションやアウトテイク、さらには3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)以来となる新曲「Get Born Again」(先のコンピにも収録)と「Died」を含む盛りだくさんの内容となっています。

3枚のCDをそれぞれ時期的にざっくり区切るとするなら、DISC 1は「インディーズ期〜メジャーデビュー2年目まで」、DISC 2は「2ndアルバム『DIRT』(1992年)での大ブレイク」、DISC 3は「『DIRT』の余波とレイン・ステイリー(Vo)破滅へのカウントダウン」といったところでしょうか。

本作でももっとも注目すべきなのが、DISC 1にたっぷり収められたデビュー前の音源。具体的にはM-2「I Can’t Have You Blues」からM-7「Killing Yourself」までの6曲でしょう。過去にSOUNDGARDENのメンバーから「80年代後半のALICE IN CHAINSは単なるヘアメタルバンドだった」とバラされておりましたが、それを証明するような楽曲群を確認することができるわけです。「I Can't Have You Blues」なんて冒頭はヘアメタル期のWHITESNAKEかと思いきや、その後GUNS N' ROSES的なアレンジへと展開していくという。以降の楽曲も(良くも悪くも)GN'Rフォロワー的な香りがし、本当に好きだったんだなあということが伺えます(ボックスセット封入のブックレットでは、当時の“ヘアメタルバンドらしい”ビジュアルも公開されているので、ぜひチェックしてもらいたいです)。

上記6曲は1988年の録音とのことですが、これが1989年になるといきなり『FACELIFT』のスタイルへと進化していることに驚かされます。M-10「Sea Of Sorrow」のデモテイクは1989年の録音ですが、アレンジはほぼスタジオテイクと一緒。一体何があったんだ!?と驚かされます。ただ、よくよく1988年の音源を聴き込めば、すでに『FACELIFT』の片鱗は散りばめられていたことにも気づくはず。この進化は必然だったのかもしれません。

DISC 2には『DIRT』のセッションから生まれた2曲の未発表曲(M-2「Fear The Voices」、M-12「Lying Season」)を収録。前者は本ボックスセットからシングルカットもされており、結果としてレイン在籍時最後のシングルとなっています。『DIRT』の流れを汲むドライヴ感の強いアレンジは非常にカッコいいものがありますが、確かにアルバム収録曲と比べたら若干地味な印象も。後者に関しては完全にほかのアルバム収録曲より劣る仕上がりなので、まあアウトテイクになるのも致し方ないわな。

DISC 3には未発表曲の類は(「Died」を除けば)皆無。この時期(1994年以降)は無駄な音源を残せないくらい、レインがギリギリの状態だったのかなと想像してしまいます。クラブリミックスが突如増え始めたのもこの時期ですが、そういったシングル用の水増しが必要だったのも理解できます。

で、肝心な新曲について。「Get Born Again」はアルバム『ALICE IN CHAINS』の流れを汲む、カオティックな側面を持つ王道グランジロック。もはや初期のキャッチーさは薄まっていますが、この混沌さもまた良し。一方、「Died」のほうは逆に初期の彼らを思わせるメロディ運びが復調している印象も。サウンドプロダクションやアレンジは確かに『ALICE IN CHAINS』の延長線上なんだけど、リフワークなどはBLACK SABBATH直系で、初期を思わせるシンプルさもある。もしこのスタイルでもう1枚くらいアルバムを作っていたら……なんて、ないものねだりをしてしまいたくなります。

どちらもオリジナルアルバム3作には匹敵するクオリティとは言い難い。でも、バンドをどうにか続けようという意思がこの時点では感じられるんですよね。残念ながら、その数年後にはレインが命を落とし、バンドは一度終焉を迎えることにあるのですが。

ALICE IN CHAINSのことを手軽に知りたいのならば、コンパクトに『NOTHING SAFE: BEST OF THE BOX』を聴けばいいし、ALICE IN CHAINSというバンドのキャリアをもっと深掘りしたければこのボックスセットに手を出せばいい。今やストリーミングでほぼすべての音源を聴くことができる世の中ですが、こういう形でバンドの歴史に触れてみるのも、たまにはいいものですよ?

 


▼ALICE IN CHAINS『MUSIC BANK』
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2020年12月 3日 (木)

DREAM THEATER『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999)

1999年10月26日にリリースされたDREAM THEATERの5thアルバム。

デレク・シェリニアン(Key)を迎えたフルアルバムとしては唯一の作品となった前作『FALLING INTO INFINITY』(1997年)にて、(ヘヴィネス的な意味でも、ポップネス的な意味でも)モダンさに特化した作品作りに注力するものの、チャート/セールス面で前々作『AWAKE』(1994年)より劣る結果しか残せなかった彼ら。また、デレクも早々にバンドを脱退してしまい、バンドとして新たなターニングポイントを迎えることとなります。

デレクに代わり、現在までバンドに在籍することになるジョーダン・ルーデスが新たに加入。そしてここ数作での迷いを断ち切るかのように、バンドはマイク・ポートノイ(Dr)&ジョン・ペトルーシ(G)のセルフプロデュース体制に移行し、初の本格的コンセプトアルバム制作へと着手します。

ラップメタルやグルーヴメタルといった新世代ヘヴィロックがシーンを席巻する1999年に、このバンドの持ち味がもっとも活かされた大作志向でのアルバム制作は、ある意味では時代と逆行したものと言えるかもしれません。しかし、どんな新しいことに挑戦してもそれが受け入れられないのなら、原点に立ち返り好き放題やるのがもっとも正しい在り方なのではないか。結果としてはこの開き直りが功を奏し、過去2作での“迷い”がまったく感じられない王道プログレッシヴメタルアルバムが完成するわけです。

ご存知のとおり、本作はスマッシュヒットを記録した2ndアルバム『IMAGES AND WORDS』(1992年)に収録された10分におよぶ長編楽曲「Metropolis Pt.1: The Miracle And The Sleepr」の続編で、「悪夢に悩まされるニコラス青年の前世をめぐるストーリー」が9つのシーンから構成された全2幕/計78分にわたり表現されています。第1幕(Act I)はM-1「Scene One: Regression」からM-7「Scene Five: Through Her Eyes」まで、第2幕(Act II)がM-8「Scene Six: Home」からM-12「Scene Nine: Finally Free」まで。シーンによっては複数の楽曲に分割されているケースがあり(例:Scene Two、Scene Three、Scene Sevenはそれぞれ2つの楽曲で構成)、トラックごとにタイトルがつけられています。まあ、アナログだったらこのへん、そこまで気になりませんけどね。

『IMAGES AND WORDS』収録曲の続編ということで、同アルバムの延長線上にある作風をイメージされるかもしれませんが、本作はあくまで『AWAKE』〜『FALLING INTO INFINITY』を経てのアルバムであるという事実が重要になってきます。ですので、サウンドのタッチやテイストは過去2作の延長線上にありますし、派手さを伴う『IMAGES AND WORDS』とは相反する陰鬱さは『AWAKE』以降のそれと共通するものがあります。なので、“『IMAGES AND WORDS』の続き”を意識しすぎると肩透かしを食らうことでしょう。

ですが、本作における楽曲単位の作り込み具合や、それらをつなぐ構成力はデビュー以降もっとも高いものと言えるのではないでしょうか。ジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルも前作で見せた穏やかなトーンが本作でも随所で発揮されており、中でも「Through Her Eyes」のようなポップなバラードは前作での経験がなければここまでの仕上がりにならなかったと思います。

キーボーディストが交代したことで、最初こそシンセの音色に若干の違和感を覚える箇所もありますが、何度か聴き返しているうちに慣れてしまうと思います。逆に、前任2名と比較するとクセの強い(前衛性の高い?)フレーズなども飛び出しますが、この長尺のコンセプトアルバムにおいてはそういったポイントも良いフックに感じられるはずです。

前半の空気感も嫌いじゃないですが、やはり「Scene Six: Home」以降、特に「Scene Seven: I. The Dance Of Eternity」からのスリリングな展開がお気に入り。サブスク全盛、曲単位で音楽を聴く傾向が強い2020年という時代においても流行に逆行するようなアルバムではありますが、やはり今作は78分フルで楽しむことに意味がある作品だと思います。

チャート的には前作をさらに下回る全米73位止まりでしたが、ここ日本ではリリース当時から高く評価され、本作で得た自身は以降の作風に強く反映されることになります。そういった意味でも、“2000年代以降のDT”の基盤となった重要作とも言えるでしょう。彼らが昨年から今年初頭にかけて、本作のリリース20周年を祝して完全再現ライブを行ってきたことからも、そういった強い意思が伝わってきますよね。

 


▼DREAM THEATER『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』
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2020年8月23日 (日)

SUEDE『HEAD MUSIC』(1999)

1999年5月初頭にリリースされたSUEDEの4thアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年4月下旬に発売されました。

ブレット・アンダーソン(Vo)、マット・オズマン(B)、サイモン・ギルバート(Dr)にリチャード・オークス(G)、ニール・コドリング(Key, G)を加えた新編成で制作した前作『COMING UP』(1996年)がデビュー作『SUEDE』(1993年)以来の全英1位を獲得し、本国では初のプラチナアルバムに。さらに同作からは「Trash」(全英3位)や「Saturday Night」(同6位)など5曲ものTOP10ヒットを生み出し、バンド史上最大のヒットを飛ばすことになりました。

前作と同じ編成で再びスタジオ入りしたSUEDEは、それまでのエド・ビューラーからスティーヴ・オズボーン(NEW ORDERPLACEBOU2など)へとプロデューサーを変更し、そのサウンドにもテコ入れ。グラムロックの影響下にあったタフでポップなバンドサウンドに、ダンスミュージック的エレクトロニクスの要素を加えた新機軸を打ち出します。

ヒットした「Electricity」(全英5位)や「Everything Will Flow」(同24位)、あるいは「She's In Fashon」(同13位)など前作の延長線上にあるポップロックをベースにしつつ、そこに「Savoir Faire」や「Down」、「Head Music」のようにエレクトロの色合いを強めた楽曲が並ぶ。かと思えば、「Can't Get Enough」(同23位)や「Elephant Man」のようなドギツいグラムロックもしっかり用意されていて、楽曲単位では非常に“SUEDEらしい”ナンバーばかりなのです。

しかし、それなのに不思議と“らしくない”という批判の声が多かったアルバムでもある。きっと、『COMING UP』に当時の“らしさ”を求めたブリットポップ・リスナーからしたらクラブミュージックに片足突っ込んだ“脱ロック”的な姿勢が気に入らなかったんでしょうね。

ちゃんと聴けば、「Down」のような楽曲は前作までにも存在したし、メロディそのものは非常に素晴らしいものがあるはず。なのに、その表現方法がこれまでと違ったものだから……悲しいですね。

確かに全体的なクオリティとしては、中途半端さは否めません。もっとエレクトロの色を強めて舵を切ったほうが潔かったのかもしれない。けど、それをやれない(やらない)のもSUEDEの信念であり、同時に弱点でもあったわけですが。

本当にね、1曲1曲は非常に素晴らしいんですよ。シングルカットされた楽曲はどれも高品質ですし、「He's Gone」や「Crack In The Union Jack」みたいに刺さる曲もあるし。前作の完成度が高すぎたばかりに、ちょっと割りに合わないグレーな評価が下されてしまった、非常に残念な1枚。でも、キャリア3作目となる全英1位はしっかり獲得しているんですけどね。

にしても、『HEAD MUSIC』というタイトルでこういうサウンドを提供するセンス、好きだなあ。

 


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2020年6月18日 (木)

THE BLACK CROWES『BY YOUR SIDE』(1999)

1999年1月に発表された、THE BLACK CROWESの5thアルバム。

デビュー時から所属していたAmerican Recordsを離れ、新たにColumbia Recordsと契約しての1作目。メンバーにも変化が生じ、デビュー時からのメンバーであるジョン・コルト(B)、2作目『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)から参加したマーク・フォード(G)が脱退。レコーディングではリッチ・ロビンソン(G)がすべてのギターを担当し(ツアーには元CRY OF LOVEのオードリー・フリードが参加)、ベースには新たにスヴェン・パイピーン(B)が加わりました。

また、プロデューサーもジョージ・ドラキュリアス(PRIMAL SCREAMREEFなど)やジャック・ジョセフ・プイグ(JELLYFISHWEEZERCLUTCHなど)といった布陣から離れ、新たに気鋭のエンジニア、ケヴィン・シャーリー(AEROSMITHJOURNEYIRON MAIDENなど)を起用。この手のバンドの作品にしては抜けの良い、非常にクリアな音像の1枚に仕上がっいます。

直近の2作……3作目の『AMORICA』(1994年)や4作目『THREE SNAKES AND ONE CHARM』(1996年)がマニアックな作風だったこともあり、どんどんジャム色の強いフリーキーな存在になっていくのかと思いきや、この新作では初期の彼らが持ち合わせていた派手さ、華やかさが復調。サザンロック寄りだった近作よりも、スタジアム級バンドへと成長したTHE ROLLING STONESを思わせる、コンパクトでわかりやすいロックンロール/ソウルナンバーを次々に展開していきます。うん、とにかくスルスル聴き進められるんですよね。そういった意味では、デビューアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)にもっとも近い位置にある内容かもしれません。

また、オープニングを飾る「Go Faster」や続く「Kickin' My Heart Around」あたりは、ストーンズというよりもAEROSMITHにも通ずる勢いや覇気が感じられ、このへんはプロデューサーが一緒という共通点も影響しているのかな。なんにせよ、即効性は非常に高いアルバムだと思いますし、これまでTHE BLACK CROWESを敬遠していたリスナーにもとっつきやすい1枚かなと思います。もしこのバンドのビギナーや、この手の枯れたロックンロールが苦手なリスナーに真っ先に勧めるなら、本作と1stアルバムを手渡すといいのではないでしょうか。

ただ、2ndアルバムから前作で展開された濃厚なスタイルに慣れ親しんだディープなリスナーには、本作は若干薄味に映るかもしれません。いや、薄味っていうか「普通のロックアルバム」くらいに思えちゃうのでは? そのへんも一長一短あるものの、純粋にロックンロールアルバムとしては非常に完成度が高いので、小難しいことを考えずに気軽に触れてほしいですね。

チャート的には初めて全米TOP20入りを逃し(最高26位)、セールス的に大成功したとは言えない1枚ですが、この前後にジミー・ペイジと共演してLED ZEPPELINナンバーの数々を演奏し続けたので、バンドの人気的には再び上昇の兆しを見せていた時期だったのかな。ちょうど1999年7月には、苗場スキー場で初開催の『FUJI ROCK FESTIVAL '99』で久しぶりの来日も果たしましたしね。

 


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