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2000/05/17

BON JOVI『CRUSH』(2000)

どんなアーティストにも「代表作」といえるアルバム、または楽曲が1枚(1曲)はあるはずだ。10年20年と活動を続けるアーティストになると、何時まで経っても「古いイメージ」、つまり代表作のイメージが固定されてしまう事が多い。特に一般的な音楽ファンや、ごく一般の、普段ヒットチャートものしか聴かないような‥‥方々になると、尚更だ。ビートルズといえば「Yesterday」「Let It Be」、ROLLING STONESなら「Satisfaction」‥‥極端な例だが。小田和正が昔、「どんな凡人(ミュージシャン)でも、一生の内に3曲は名曲を書く事ができる」というような事を言ったと記憶している。どんな奴にでも一生の内に3度はチャンスがあるはずだって事ではないだろうか? 俺はそう解釈している。逆に、誰でも知ってるような曲を3曲も持つ事ができたら、それはミュージシャンとして大成功した証ではないだろうか?

中にはアルバムを出す毎に、必ず1曲はアンセムソングとなるような代表曲を生み続けているアーティストも少なくない。例えばBLUR。例えばRADIOHEAD。例えばMANIC STREET PREACHERS。みんな地道に頑張っている。ところがここに、アルバムを出す毎に世界レベルでの成功の度合いがアップし、必ず毎アルバムに代表曲が3曲以上収録しているバンドがいる。音楽に疎い人にも知られている存在だ。それがBON JOVIである。そして今回紹介するこの最新作(オリジナルアルバムとしては通算7作目)『CRUSH』である。

普通の観点から語れば、BON JOVIの代表作と言えるアルバムは86年にリリースされ、彼等を一躍有名にした『SLIPPERY WHEN WET』(邦題『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』)だろう。そして代表曲と言えば、そのアルバムに収められ全米で4週連続1位を記録し、日本ではカセットテープのCMソングとしてもお馴染みの「Livin' On A Prayer」だったり、同じくCMに使われた「Bad Medicine」なのかもしれない。または日本人アーティストにもカヴァーされたデビュー曲「Runaway」かもしれない‥‥これだけで3曲だ。

ところが彼等はその後もアルバムをリリースする毎に成功のレベルがスケールアップし、多くの代表的ナンバーを生み出している。アルバムに関して言えば、普通頂点を極めた作品をリリースした後は、それに甘んじたレベルの作品を量産し続けるか落ち目になるか、そのどちらかだ。ところが彼等は毎作少しずつレベルアップし、現時点で多くの人間がイメージするBON JOVI像から掛け離れたところまで成長した。

そしてこの『CRUSH』というアルバム‥‥とうとうやってしまったというか‥‥既にその代表作『SLIPPERY WHEN WET』さえも軽く越えてしまう作品を生み出してしまったのだ。あれから14年、彼等は前進し続けここまで辿り着いた。感動というよりも、驚愕である。

BON JOVIを嫌う、良識的な「ロックファン」は数多くいる。それだけでなく、未だに彼等を「HM/HRの範疇」にカテゴライズし、毛嫌いする輩も多い。まずこの誤解を解かない限り話は進まない。みんなが思い描くBON JOVIは、やはり「Livin' On A Prayer」の彼等なのだろう。ところが90年代の彼等はどんどん祖先帰りし、現在では「アレンジとしてのHM/HR色」は感じさせるが、楽曲自体はシンプルな、古くからあるアメリカン・ロックなのである。ジョン・ボン・ジョヴィが影響を受けたブルース・スプリングスティーン、サウスサイド・ジョニーやジョン・メレンキャンプ、そしてトム・ペティー辺りに近い存在なのだ。そこをまず知って欲しい。

そして次に、楽曲のイメージ。メロディーを追えば判るかもしれないが、彼等の曲はR&Bの影響が強い。「You Give Love A Bad Name」でもいいし、新曲「It's My Life」でもいい。これは間違いなくソウルである。勿論、スプリングスティーンが唄っても違和感がない。が、例えばサム・クックが唄ったら‥‥俺は全く違和感がないと思う。これは先にも挙げたアレンジの問題なのであって、アレンジというのはその時代時代に合わせて変わっていくものだから、仕方ないと思う。けど、根本にあるものにもっと目を向けていいのではないだろうか? そういう意味では彼等は現在のAEROSMITHに非常に近い存在なのかもしれない。

新作の話題に戻ろう。1曲目から話題の最新シングル「It's My Life」である。ライヴもこの曲から始まるのだろうか‥‥だとしたら、俺は悶絶死するだろう。なんで‥‥何でデビュー20年近い大物クラスのバンドが、今でもこうやって過去の楽曲を軽く越えてしまうような名曲を作る事が出来るのだろう!? これが出来るアーティストの少ないこと、少ないこと‥‥外部のソングライターとの共作だからダメ!? ふざけるな! 曲が良ければ何やったって構わないだろうが! AEROSMITHだってKISSだってやってる事だろ? 嫌いだからって、それは理由にはならない。

 それにしても‥‥前作「THESE DAYS」も素晴らしかったが、これはどうだろう! 捨て曲が1曲もないアルバムなんて、AEROSMITH「GET A GRIP」以来じゃないだろうか!?正直な話、俺は90年代に入ってからのBON JOVI(ジョンのソロも含む)のアルバム‥‥前半に名曲が固まり過ぎたせいか、後半に入るとテンションが下がったり、楽曲の質が下がったりしているように感じていた。ところが今回の新作は前半は今まで以上に名曲のオンパレードだし、後半に入ると新境地を伝える楽曲が続いたり、ラスト2曲にアップテンポの曲を持ってきたりと、全くダレる事がない。トータルで60分近い作品だが(ボーナストラックを除く)、全く飽きがこない、最後まで緊張感を保った内容になっている。CDの時代になり、60分を超える作品が殆どとなってきたが、これは異例の事じゃないだろうか?

従来のタイプの楽曲が今までの2番煎じになっていない事も凄いが、ここにきて新境地を伝える楽曲が数多くある事も特筆すべき点だろう。「Say It Isn't So」のような風変わりなリフをもったサイケなナンバー‥‥これはBON JOVI流ブリット・ポップへの答えと受け取れるが、如何だろうか? そしてメンバー自らが「THIN LIZZYとグラムロックの融合」と言う「Captain Crash & The Beauty Queen From Mars」。ラジオで初めて聴いた時、一瞬彼等の曲だとは気づかなかった‥‥何のアナウンスもなかったし。地中海的な香りさえ漂う「She's A Mystery」もAORの一言で片付けられてしまう可能性もあるが、聴き流してしまうには存在感がありすぎる名曲だ。

そしてジャニーズファミリーのJ-FRIENDSに提供した楽曲のセルフカヴァーとなる「Next 100 Years」‥‥ここで初めての試みを実行している。それはリッチー・サンボラの3分近くもあるギターソロだ! これには正直腰を抜かした。リッチーは決して上手いギタリストではない。カッティングも下手くそだし、テクニック的にはもっと上手い奴は山程いる。けど彼がここまで残ってこれたのは、例えばKISSのエース・フレーリーのように「楽曲あってのギターソロ」「楽曲の一部としての、口づさめるギターソロ」を心掛けてきたからである。ギターヒーローになる必要はない。あくまでバックに徹すればいい。そのリッチーが今回、いたるところで自己主張しまくっている。前作でもそれは感じられたが、ソロアルバムを通過した今、それが明確になったのかもしれない。もし「Next 100 Years」という曲に軟弱なイメージを持っているなら、一度BON JOVIヴァージョンを耳にして欲しい。これこそこのアルバムからのアンセムナンバーとなるべき曲である。ライヴで盛り上がる事うけあいだ。

そして最後の2曲‥‥珍しくアップテンポのロックナンバーを2曲も続けて収録しているが、これがまたよい。ここまでルーツ的ナンバーをBON JOVI流に料理し、オリジナルとして確立させてしまう実力。さすがである。その2曲‥‥「I Got The Girl」「One Wild Night」‥‥前者はゴスペル、後者はソウルだ。俺は常々言ってきているが、ジョンとリッチーが書く曲には“黒さ”を感じさせる。R&Bというのは、日本で例えれば演歌なのかもしれない。だから浪花節的な「Livin' On A Prayer」や「Born To Be My Baby」のようなベタな曲が日本でウケるのかもしれない。今回の新曲をオーティスやTEMPTATIONSがカヴァーしたら‥‥滅茶苦茶カッコイイはずだ。

THUNDERやOASIS、REEFといったバンドはイギリスの伝統的な音楽を現代的に表現して人気を得た。だったらBON JOVIにも同じ事が言えないだろうか? 彼等は幼い頃から耳にしてきたR&Bやカントリーやポップソングを消化して今風に演奏するバンド‥‥何でこんな簡単な事にみんな気付いてくれないのだろうか? やれ産業ロックだのハードロックだのポップ・メタルだの‥‥くだらないカテゴライズで自分の周りに壁を作る前に、一度ちゃんとアルバム1枚通して聴いてみたらどうだろうか? もう「BON JOVIだから嫌い」という次元ではすまないレベルまで来ている。俺達BON JOVIファンが笑うか、アンチ的存在な「rockin'on」的一般“自称”ロック・ファンが笑うか‥‥答えはじきに判るはずだ。



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投稿: 2000 05 17 12:00 午前 [2000年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク