« BON JOVI『CRUSH』(2000) | トップページ | DEFTONES『WHITE PONY』(2000) »

2000年6月 7日 (水)

エレファントカシマシ『GOOD MORNING』(2000)

リリースから既に1ヶ月以上経ったが、未だによく聴くアルバムだ。今年の邦楽は豊作である。あまり絶賛されていないようだが、ミッシェル「CASANOVA SNAKE」は名盤だと思うし、椎名林檎やブランキー等目白押しだ。その中でも特に抜きん出ているのがこのエレカシ「GOOD MORNING」だと、個人的には思っている。

そもそも前作「愛と夢」は殆ど聴かなかった。今でも聴く機会は殆どない。決して悪いアルバムではないし、曲も優れていると思う。では何故? 俺の感想だが、結局復活後の『良い歌を届ける』という意味でのエレカシは既に復活第1弾であった「ココロに花を」で完成していたのだ。あのアルバムの楽曲は、レコード会社から契約を切られた後の1~2年の間に、ライヴハウスでの活動の中で生まれ、そして最初にライヴという『第三者を意識した』形で披露されてきた楽曲ばかりである。そういう意味では『第2期エレファントカシマシ』のデビューアルバムとも言える。そう、だからこそ目的意識‥‥如何にエレカシの楽曲をみんなの心に届けるか?というテーマ‥‥を持って書かれた楽曲は、常に大衆を意識していたのだ。そして練りに練られた楽曲達は日の目を見る‥‥その時点で完成されていたし、目的は達成されていたのだが。彼等が“悲しみの果て”をはじき出した瞬間に、勝負は決まっていたのだ。

続く「明日に向かって走れ」はそのダメ押しともいえる内容だった。これまでの活動を後押しする形で“悲しみの果て”がCMソングに起用され、その後のシングルもタイアップを得るという形で彼等の歌はお茶の間に届き、浸透していった。その決定打となったのは、初のドラマ主題歌“今宵の月のように”だろう。多くの人間が今、エレカシといってイメージする1曲ではないだろうか? そう、この時点で目的は完全に達成され、不動の地位を手に入れたはずなのだ。

だからこそ、更にこの路線を突き詰めようとした「愛と夢」という作品に、俺は違和感を感じたのだ。前2作で得た成功から宮本が出した答え‥‥それは何だったのだろう? 果たして楽曲至上主義の中で、『バンド』という運命共同体を無視してまで打ち込みに走る理由があったのだろうか? 以前から宮本は打ち込みに興味を持っていたようだが、何故それをこの時期に、こういう楽曲の中で試そうとしたのだろうか?

エレカシが再びレコード会社を移籍した、と最初に耳にしたのは昨年暮れ近くだった。と同時に久し振りのシングルが出る事も知った。そしてそれが初期のような攻撃的な楽曲だと聞いてワクワクしたのを、今でも覚えている。その楽曲こそが“ガストロンジャー”であった。これには多くの音楽ファンが衝撃を受けたはずだ。LED ZEPPELIN級のヘヴィ路線の楽曲に載るのは、我々のような古くからエレカシを応援し続けたファンが唸るような内容の、攻撃的な歌詞だった。しかも、もはや『歌』としては機能していない、ラップとも違う、宮本にしか出来ないであろう『叫び』。「今エレカシを聴かないとヤバい」そんな空気さえ流れた。「日本のRAGE AGAINST THE MACHINE」なんて賛辞も挙がった程だ。

それに続くシングルは、久し振りのドラマ主題歌である“so many people”だった。路線としては“悲しみの果て”以降の流れなのだけど‥‥ポップだけど、やはり以前とはどこか違う。特にエンディング近くのサビのリフレイン、俺はここで2作連続で鳥肌が立った。

更に追い打ちをかけるかの如く、彼等はアルバムと同時に“コール アンド レスポンス”という名曲を発表する。既にリリース前からTV番組のテーマ曲として耳にしていたが、最初にフルコーラス‥‥特に後半の、宮本のあのセリフ‥‥


えーご承知のこととは思いますけれども ここで神の意志を発表させて頂きます。
えー発表します。全員死刑です。


に三度鳥肌が立つ。そして泣く。嗚呼、とうとう行き着くとこまで行っちまったなぁ‥‥そんな気持ちでいっぱいだった。この3曲だけで、俺はアルバムが過去最高の、素晴らしい作品になる事は予想出来た。そしてその予想は見事に的中したというわけだ。

アルバムのハイライトとなるのは、やはり先に挙げたシングル3曲だろう。オープニングを“ガストロンジャー”が飾り、エンディングを“so many~”“コール~”で閉めるわけだから。勿論、その間に入った残りの楽曲もそれに引けを取らない、素晴らしい楽曲ばかりである。

ある意味、前作は宮本の『迷い』をそのまま形にしてしまった過渡期だったのかもしれない。何が切っ掛けで現在のような心境になったのかは判らない。詳しい事は最近のインタビューでも読めば判るだろう。決して「ココロに花を」以降のエレカシが、それまでの彼等と違っていたわけでもないし、今のエレカシが前作までの彼等と変わってしまったわけでもない。今やっている事をやり遂げられる環境や精神状態を得ただけで、ここまでビルドアップしてしまったのかもしれない。結果、アルバムでは形だけのバンド体制となってしまったが、それは宮本の才能を認めた他のメンバーの理解があったからなのだ。

「(メンバーが)幼馴染みでなかったら、今頃解散していただろう」という言葉通り、宮本という人間を知り尽くしていたからこそ成し得た産物なのだ、このアルバムは。そう考えれば、全ての楽曲を作り出した人間が全ての楽器、アレンジを受け持った事も納得できるかもしれない。他のメンバーは宮本のアイディアを具体化するための助っ人要員‥‥これではちょっと悲しいが(苦笑)、これも理解あっての事だろう。



▼エレファントカシマシ『GOOD MORNING』
(amazon:国内盤CD

« BON JOVI『CRUSH』(2000) | トップページ | DEFTONES『WHITE PONY』(2000) »

エレファントカシマシ」カテゴリの記事

2000年の作品」カテゴリの記事

カテゴリー