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2000/07/22

DEAD END『ZERO』(1989)

今回のテーマは「ヴィジュアル系好きにもアピールするHM/HR」ということで、その元祖的存在ともいえるDEAD ENDのラストアルバム(通算4枚目)「ZERO」('89年)を紹介しよう。まず最初にお断りしておきたいのは、DEAD ENDはデビュー時こそメタルバンドとして取り上げられ、実際にそのようなスタイルだったが、彼等はいい意味でアルバム毎に変化していき、このラストアルバムではついにHM/HRとは呼び難い音楽スタイルを作り上げた。今の時代だったら音を聴いて「ヴィジュアル系」の一言で片づけられてしまうかもしれない。が、これがリリースされた1989年当時は問題作として取り上げられたのをよく覚えている。つまり「これはメタルか否か?」と‥‥

まずアルバムを聴いて驚くのは、あるバンドにそっくりだということだろう。とにかく1曲目"I Want Your Love"のドラムパターン、イントロのギターフレーズ、コード進行、ボーカルの低いトーンから入ってサビで爆発するパターン‥‥まるでL'Arc~en~Cielじゃん!?(笑)いや、これの場合ラルクが似ているのだが。この曲以外にも現在のラルクの楽曲に通ずるスタイルを見出す事が出来るし、聴く人が聴けばLUNA SEAにも共通するところもある。ヴィジュアル・イメージも初期のLUNA SEAに似てるし‥‥って別にヴィジュアル系のネタばらし大会をするつもりはない。ぶっちゃけた話、今のヴィジュアル系のルーツにはX JAPANとDEAD ENDの影響が大きいと言いたかったのだ(勿論その他にも沢山の先人達がいたのだが、代表的なという意味でこの2つを挙げてみた)。

DEAD ENDはインディーズからの「DEAD LINE」('86年)、メジャー1枚目「GHOST OF ROMANCE」('87年)ではメタル以外の何者でもない音楽を提供している。アクが強くて聴く者を選んでしまうような「魑魅魍魎」な詞の世界などは、初期のLUNA SEAやラルクにも共通するものがある。実際にラルクはインディーズ時代に黒夢と共演した際に、自らのルーツを紹介する意味でDEAD ENDの曲を何曲かカヴァーしている。その後メジャーデビューしてからも度々DEAD ENDの曲を取り上げ、あろう事か初の武道館公演でも1曲演奏しているのだ(その模様はセル・ビデオとして流通している)。

メンバーがDEAD ENDが大好きだったという事実以外にも、ラルクとDEAD ENDには共通の人物が2人いる。ひとりはラルクのアルバム「TRUE」('96年)まで在籍していたドラマーのSAKURA(翌年春、麻薬所持の為逮捕、脱退となり、昨年ZIGZOというバンドでシーンに復帰している)。彼はラルク加入前、DEAD ENDのドラマー、MINATO(湊雅史)のローディーをしていた経験がある。DEAD END事実上のラストライヴとなってしまった日比谷野音でのライヴを収めた2枚組アルバム「DEAD END」('90年/現在は2枚別々に売られている)のブックレット内のスペシャルサンクス欄の中には彼の名前が載っているので、興味がある人は探してみるといいだろう(勿論、本名でだが)。まぁこの手の事実は、よくある「ラルクの謎」みたいな下世話な本を探せばよく載っているはずだが。

ふたり目は『ラルク第5のメンバー』ともいえる、プロデューサーの岡野ハジメだ。彼は'80年代にPINKというバンドでベースを弾いていた(このバンドには当時布袋寅泰とも活動を共にし、現在はPUGS等で活躍する、ホッピー神山も在籍)。その彼がDEAD ENDのメジャー第2弾(通算3作目)「SHAMBARA」('88年)のプロデュースを手掛ける事によって、DEAD ENDの音楽の幅はどんどん広がっていった。この「ZERO」も岡野のプロデュース作品で、ここではプロデューサー以上の仕事をしていて、作曲陣にも加わっているのだ("I Want Your Love"や"Crash 49"、そしてシングルナンバーでもあった"So Sweet So Lonely"にメンバーとの連名としてクレジットされている)。その結果、このラスト作は前作以上にHM/HRとはかけ離れたスタイルを築き上げた。当時こういう音を出していたバンドは他にはいなかったという意味で彼等は先駆者であり、残された作品は今も色褪せていない。特にこのアルバムは2000年という現在にも通用すると思う(事実、知り合いに何も言わずに聴かせたら、ラルクの未発表曲だと思ったそうだ)。

さて、最初に述べた「これはメタルか否か?」の問いだが‥‥リリース当時、俺はこのアルバムを聴いて絶望したのをよく覚えている。「SHAMBARA」まではギリギリ耐えられた。が、これはもはやHM/HRではない。そう思ったのだ。結局、レンタルでダビングしたテープを殆ど聴かないまま、この作品は忘れ去られていた。

それから10年近く経ってから彼等のベスト盤に手を出して改めてそれらの楽曲に触れ、何ら違和感を感じなかったのだ。初期の曲は今聴くとちょっと辛いかもしれないが、「SHAMBARA」や「ZERO」の楽曲は今の時代にもアピールするんじゃないか? いや、下手なB級ヴィジュアル系より比べ物にならない位にいい。そして、ラルクやLUNA SEAとの共通点を見つけだした‥‥10年前の俺には「メタルじゃない」という偏見があったからこのアルバムを嫌ったけど、それは間違いだった。これは名盤だ。もし日本のロックの歴史を振り返る企画があったら、是非挙げたい1枚である。

「猿にも解るメタル講座」という観点から考えれば、「SHAMBARA」の方がコンセプトに適合しているのかもしれない。しかし、取っつき易さや切っ掛けとしてはこの「ZERO」の方が効果絶大である。現在DEAD ENDのアルバムはどれも2,000円前後で手に入れる事が出来るし、'97年にはベスト盤「ALL IN ONE」もリリースされた。解散してから7年後にである。これが何を意味するか、判ってもらえるだろう。あの頃('89年前後)、BUCK-TICKといったバンド達がブレイクしていく中、結局最後まで外野からは「メタルだ」と呼ばれ、メタル村からは「もうメタルじゃない」と敬遠された。スタイル/音楽性が新しかった、ただそれだけの為に。何かこれって、今回のテーマにピッタリじゃないか?

今からでも遅くない。このアルバムで興味を持ったら「SHAMBARA」も気に入るはずだし、心配ならベスト盤に手を出せばいい。とにかくこの企画にはうってつけの『入り口』だと思うから‥‥



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投稿: 2000 07 22 07:50 午前 [1989年の作品, DEAD END] | 固定リンク