MOTLEY CRUE『NEW TATTOO』(2000)
'90年代のMOTLEY CRUEは、アルバム発表毎にメンバーが入れ替わっている。例えば'91年発表のデビュー10周年を記念したコンピレーション盤「DECADE OF DECADENCE」(既に廃盤)ではオリジナルメンバーの4人(ヴィンス・ニール、ニッキー・シックス、トミー・リー、ミック・マーズ)、翌年ヴィンスが事実上クビとなり、代わりに元SCREAMのジョン・コラビが加入、'94年3月にファンの間では悪名高い(俺は今でも名盤だと思っているが)「MOTLEY CRUE」を発表、'96年末にはヴィンス復帰の噂が囁かれ、翌年1月に再びオリジナルメンバーに戻り、6月に「GENERATION SWINE」をリリース。'98年秋には新曲を含むベスト盤「GREATEST HITS」の発売こそあったものの、'99年春にドラマーのトミーが脱退し、マット・ソーラム(元GUNS N'ROSES)等の名前が挙がりながらも、結局後任には元OZZY OSBOURNE BANDのランディ・カスティロが決定。その面子で作られたのが、オリジナルアルバムとしては8作目にあたる「NEW TATTOO」である。
前々作での近代ヘヴィロックへの歩み寄り、そして前作でのテクノロジーを駆使したダーク且つヘヴィは作風を経た今作でのコンセプトについてニッキーは「原点回帰」だとか「本来の姿」とかよく語っている。だが、待って欲しい。本来、MOTLEY CRUEに「本当の姿」なんてあったか? いい意味で、彼等は作品毎にコンセプトを変え、新たなシーンを築き上げてきた。そんな彼等が'90年代に入り、急にフォロワーに回った。確かに提示された作品はMOTLEY CRUE以外の何者でもなかったが、やはりそれまでジェネレーション・リーダーとして君臨してきた者としては、何やら物足りない内容だったのも事実だ。「MOTLEY CRUE」ではジェラシーさえ感じたというMETALLICAのブラック・アルバム(「METALLICA」)やPANTERA、SOUNDGARDENといった、当時を代表するトップアーティスト達からの影響を伺わせ、「GENERATION SWINE」に至ってはMARILYN MANSONやWHITE ZOMBIE(及びROB ZOMBIE)といったアーティスト達を思い浮かばせた。勿論それまでのMOTLEY CRUEは、決してゼロから新しい音楽を作ってきたわけではない。しかし、それぞれのアルバム・リリース当時、彼等と同じような音を出していたバンドは他にはいなかったはずだ。他人が真似するようになれば、新しいコンセプト・新しい音へと移行する‥‥彼等は'80年代、常にそれをやり遂げてきた。
そんな彼等が「原点回帰」と謳った新作は、一体どういう音になるのだろうか?‥‥ニッキー曰く、『「SHOUT AT THE DEVIL」と「DR.FEELGOOD」の中間的内容』だそうだが‥‥原点というよりは、代表作といったところだろうか? 「DR.FEELGOOD」が発表されるまで、「SHOUT AT THE DEVIL」こそが彼等の代表作であるというのはファンのみならず、普通のHRファンにとっても定説であった。しかし、それを超えるような内容・セールスを記録した「DR.FEELGOOD」が登場した結果、それ以後のファンにとってはこのアルバムこそがMOTLEY CRUEの最高傑作という風に捉えているはずだ。事実、今でも古いファンは「SHOUT AT THE DEVIL」に拘っている(俺も含めて)。そんな彼等を代表する2枚を、ニッキーは自らの「原点」と捉えていたのだ。
この発言により、'90年代の彼等しか知らない「全盛期をリアルタイムで体験していない」新参者は新作に期待を寄せ、その「原点」2枚をリアルタイムで通過してきたオールドファンは「過去の焼き直しになるのか‥‥」と不安を覚えた。少なくとも、俺は後者だった。だから、このアルバムには一切期待もしていなかった。彼等の新作に対して、こんなにも冷たい態度で挑んだのはこれが初めてだ。既にトミー・リーがいないという時点で興味が半減していたし、ランディという、大して上手くもない、そつなくこなすドラマーを迎えた事で、更に興味が後退していたから‥‥アルバムが出れば必ずリリース日に手に入れる、企画盤でさえもそうだったこの俺が、昨年出たライヴ盤「LIVE : ENTERTAINMENT OR DEATH」を未だに持っていないこの事実が、全てを物語っているように思う。
では、聴いた率直な感想を‥‥1曲目であるシングル曲"Hell On High Heels"は既に耳にしていたから、大体の感じは掴めていた。そしてそれは間違いではなかった。先に挙げた名作2枚のイメージは確かに顔を出す。しかし、俺が思い浮かべたのは‥‥'87年の4作目「GIRLS, GIRLS, GIRLS」だった。いい意味でも悪い意味でも「シンプルでストレートなR&R」を目指したこのアルバムに、非常に似ているような気がした。サウンド・プロダクションの生々しさがそれに近いのもあるだろう‥‥しかし、俺はこの新作のキーワードとして、あるバンド名を挙げたいと思う‥‥それは、AC/DCだ。この「NEW TATTOO」と「GIRLS, GIRLS, GIRLS」にはAC/DCという共通項があると思うのだ。
とにかく通して聴いた後の第一印象が「モトリーを聴いてる気がせず、何だかAC/DCの出来の悪いのを聴いてるようだ」だった。それは楽曲のタイプ(バラエティー)の幅が非常に狭い事や、ミドルテンポ~ミドルよりちょっとアップテンポ程度の楽曲が大半を占めている事にも起因する。メロディがそれ程頭の中に残る曲も少ないし‥‥例えばバラードひとつ取ってみても、「DR.FEELGOOD」には"Without You"と"Time For Change"という、タイプの違う2曲が収められていたのに対し、新作の"New Tattoo"と"Hollywood Ending"は共に同系統の楽曲だ。まぁこれまでピアノも受け持ってきたトミーがいないという事もあり、アコギ中心の作りとなるのは致し方ないが、もうちょっと煮詰めて欲しかった‥‥と思う。
ところで、何故俺が「GIRLS, GIRLS, GIRLS」をAC/DCと関連づけるのかというと‥‥作風は決してAC/DC的とは言えないものの、当時彼等はこのアルバムをよくAC/DCと関連づけて語っていたし、実際にこのアルバムのツアーではAC/DCの"Highway To Hell"をアンコールでカヴァーしていた。AC/DC再評価が高まったのも丁度この頃で、実際にその後('88年)にAC/DCは「BLOW UP YOUR VIDEO」で人気・セールス共に盛り返している。何となく、'85年頃にMOTLEY CRUEが「THEATER OF PAIN」をリリースした時にAEROSMITHの名をよく口にしていたのと共通する。(その翌年、エアロはRUN D.M.C.との"Walk This Way"共演で復活する)
また、ただ単にAC/DCという共通項を持ち出さなくても、先に挙げたようにシンプルなR&Rを中心とした内容に非常に共通点があるし、アルバムラスト(ボーナス・トラック除く)を飾るのがそれぞれカヴァー曲だというのも興味深い。(「GIRLS, GIRLS, GIRLS」ではエルヴィス・プレスリーの"Jailhouse Rock"を、「NEW TATTOO」ではTHE TUBESの"White Punks On Dope"をそれぞれカヴァーしている)
そしてこのアルバムでは、11曲(本編のみ)収録で40分少々というトータルタイムも非常に興味深い。MOTLEY CRUEの'80年代の作品は皆9~11曲で35~45分の間で収まっていた。人間が1日に音楽を聴くのに費やす時間を考えれば、アルバム1枚を通して聴くには丁度いい時間だ。逆に言えば、今の時代にこういうトータルタイムの作品を(しかもシンプルな内容で)世に出すという事は、すぐに飽きられる可能性もある。これだけ多くの名盤が出回っていれば(しかも最近は捨て曲一切なしな内容が多い中)その可能性は非常に高い。
ぶっちゃけた話をしてしまえば‥‥このアルバムには「キメ」となる1曲が存在しない。少なくとも、駄作扱いされた前作にもタイトルトラック"Generation Swine"という、非常にパンキッシュで耳に残る曲があった(決して「名曲」とまでは言わないが)。MOTLEY CRUEの中でも自他認める「印象が薄い」アルバムである「THEATER OF PAIN」にさえも、"Home Sweet Home"という歴史的名曲が存在する(この際カヴァーである"Smokin' In The Boys Room"はなしって事で)そういう意味でも、このアルバムはダラダラ聴き流される可能性を持っている。せめて1曲、「そうそう、コレ!」って皆が納得するような曲、ハイライトが欲しかった‥‥"Hell On High Heels"はそれに近い存在だが、正直ちと弱い気も‥‥
多分、このアルバムは‥‥俺達が思っている以上に何も考えないで作られたような気がする。決して「やっつけ仕事」ではないものの、ニッキーやミックがアイディアを持ち寄り、それをバンドでジャムり、大して煮詰めないで「こんな感じでいいや」で完成させてしまった‥‥いい意味で「ラフで生々しい」、悪い意味で「出来たものをそのまま詰め込んだだけ」‥‥ここには、あの頭脳明晰で計算高いニッキー・シックスの姿はない。どのアルバムにも必ず存在した「怒り」や「緊張感」がここには存在しないのだ。何だか微温湯に浸かってるような感覚‥‥決して悪くはないのだけど、どこか物足りない‥‥俺の中ではこのアルバム、「THEATER OF PAIN」とどっこいどっこいなポジションだわ、悪いけど(つうことは、一番下のラインって事か)。正直な話、これなら前作「GENERATION SWINE」の方が面白かったなぁ、と。
まさかMOTLEY CRUEのアルバムに対してこんな酷評をするとは思ってもみなかった。俺、何だかんだ言っても前作、よく聴くし。まぁヴィンスのハイトーンとスクリームにはちとばかし安心したものの‥‥それと作品の評価は別だから。たださぁ、やっぱりかつて愛して心の支えとした存在だからこそ、こんな苦言になっちゃうんだよなぁ。ニッキーはまだ終わってないし、少なくとも他のメンバー(この際ランディは除く/笑)もまだやれると思うんだけど‥‥年末あたりにアルバムに間に合わなかった/収録しきれなかった未発表曲を集めたEPをリリースするというし‥‥あ、所詮この程度の楽曲に負けたレベルの寄せ集めか‥‥(苦笑)ニッキー、ジンジャーと活動を共にすればいいのにねぇ‥‥
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