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2000/07/11

SiLVER GiNGER 5『BLACK LEATHER MOJO』(2000)

「とみ宮」開設以来約1年7ヶ月、ようやく我愛するジンジャーの作品を取り上げることとなった。御存知の通り、俺のここ数年の心の支えともいえるアーティスト‥‥MANIC STREET PREACHERS, RADIOHEAD, WiLDHEARTS。MANICSに関しては開設第1発目に「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」を取り上げた。今後、旧譜やシングルについても続々と取り上げるだろう。RADIOHEADは「OK COMPUTER」を取り上げるつもりでいたが、つい後回しにしてしまい、気付けば10月には新作が出るというところまで来てしまった。まぁ秋には大々的に取り上げる事になるだろう。そして、我らがジンジャー率いるWiLDHEARTS‥‥正直、取り上げるのがこんなに遅くなるとは思ってもみなかった。最初に取り上げるならバンドとしての新作か、ジンジャーのソロを取り上げたかったのだ。旧譜をどんどん取り上げるというのも、何か解散してしまった「過去の遺物」みたいだし。(とはいうもののWiLDHEARTSは既に事実上解散しているわけだが‥‥)

バンドとしてのラストアルバム「ENDLESS, NAMELESS」を発表したのが'97年秋だったから、気付いてみれば3年近くもの歳月が経とうとしている。その間にもWiLDHEARTS関連としてはベスト盤やらボックスセットやらの編集盤、ライヴ盤や未発表曲集がリリースされた。'98年10月にはバンド活動を完結させる為に最後の日本ツアーを行い、その模様を収めたライヴアルバム「TOKYO SUITS ME」も発表された。(そして'99年8月には、イベントの為に日本でのみ「1回こっきりの再結成」も果たしている)

ではこの3年間新曲は一切発表されなかったのかというと‥‥「一切」ということはない。デヴィン・タウンゼントとの共作を始め、CLAM ABUSEとしてのアルバム「STOP THINKING」(これもいずれ取り上げる事になるだろう。評価に困る内容だが/苦笑)、そしてHELLACOPTERSのニッケ、BACKYARD BABIESのドレゲンとのプロジェクト、SUPER$HIT 666のミニアルバム。最後にジンジャーの初ソロ楽曲となる"Motorvate"(オムニバス盤「UP IN FLAMES」収録)。最後のソロを除けば、どれも他の個性の強いアーティストとの共作となっている。つまり、純粋にジンジャーの色が濃く出た内容というわけではなかった。だから、ジンジャーがWiLDHEARTS後の第一手としてどういう音で勝負してくるのかが、いまいち見えていなかった。"Motorvate"にしろ、これ1曲で今後を占うには難しかったし。(ジンジャーという多才なアーティストを前にすれば、たった1曲で判断してしまう事がどれだけ馬鹿馬鹿しい事か)そういう意味で、正当な評価を下すにはこのフルアルバムを待つしかなかった。そして、噂を聞きつけてから早半年、ようやくこうして耳にする事が出来たわけだ。

正直な感想を書こう。最初に一通り聴いた時、肩透かしを食らった。意外とあっさりと聴けてしまったからだ。もっとWiLDHEARTS的な、引っ掛かりのある内容になるものだとばかり思っていた‥‥これは過剰な期待だったのか、それとも単に俺がまだ「ジンジャー」という男のことを解っていなかっただけなのか。とにかくバンド時代よりも、もっとストレートな内容になっていたのだ。そう、とても聴きやすい‥‥

このアルバムに対して、ジンジャーはこう語っている。

「俺がこのアルバムで伝えたいのはエンターテイメント、ただそれだけさ。人を考え込ませるんじゃなくて、お楽しみの時間のサウンドトラックとなるものだよ。ロックンロールには信憑性なんてものはなくていい。ロックンロールは元々バカげたものだし、みんなが楽しんで大騒ぎする時間を過ごすためにある。このアルバムは、アリーナ・クラスの巨大なロックンロール・ショウをアルバムにしたもの、バラードやスケールのデカい曲や最後に爆発音でもってステージを終わるような曲の入ったアルバムを出すバンドを恋しく思うようなロック・リスナーに向けた『経験』なのさ。」
(アルバム・ライナーノーツより引用)

WiLDHEARTS程ひねくれ度が低いのは、こういう理由からだ。つまり、何か新しい音を作り出そうとか、2000年的サウンドをひねり出そうとか、そういったものではない。ジンジャーが子供の頃に慣れ親しんだロックンロール‥‥KISSであったりAEROSMITHであったり、それこそイギリスならSLADEやSWEETやゲイリー・グリッターのようなポップで判りやすく、それでいて聴いてて興奮するような。エンターテイメント性を前面に打ち出した、純粋に楽しむためだけのパーティーロック。今、こういう音が少ないと嘆いていたジンジャーは、だったら自分がやればいい、どうせKISSは今年で引退するんだろ?その座を俺が受け継いでやるよ、というコンセプトの元にこのアルバムを制作したのだった。

そのコンセプトはいきなり1曲目から爆発しまくっている。"Sonic Shake"、これはもう名曲だろう! メロディだけたどれば、どことなくWiLDHEARTSを連想させるが、所々に挿入された新機軸、そしてKISSのライヴを思い出させるようなハイパーロックンロール。OASISが何だって? BLURがどうしたって? 俺はここにいるぜ?と言わんばかりの主張が、それこそ1曲目からボーナストラックの最後の最後までぎっしり詰め込まれている。

音の感触がどことなくボブ・ロックが手掛けた作品に共通するものがあると思う。しかも最近のではなく、'80年代の、BON JOVI「NEW JERSEY」だったり、AEROSMITH「PERMANENT VACATION」だったり、MOTLEY CRUE「DR.FEELGOOD」だったり。とてもゴージャスなのだ。つまり、自分が慣れ親しんだ'70年代のロックンロール、常にエンターテイメント性を重視してきた'80年代のロックバンド、そして自分達が築き上げた'90年代。これらをうまくミックスして消化したものに自然となっているように感じる。ジンジャーが意図しなくても、自然と形として表れる‥‥天才というか、天然というか‥‥(笑)

確かにこれは新しい音楽ではないし、ある意味やり尽くされたタイプの音だろう。2000年を代表する音にはならないかもしれない。それでもこれをやる意味が、今のジンジャーにはあったのだ。そしてリスナーにも‥‥少なくとも、この俺にも意味のあるものだ。

WiLDHEARTS時代の作品と比べて、内容的にパーフェクトまでいっていないのは判ってる。しかし、このアルバムには完全試合は必要ないと思う‥‥言うならば、1発逆転サヨナラを狙った大振り連発‥‥こんなとこだろうか? 決してつまらない曲はないし、どれも標準以上だと思っている。しかし、WiLDHEARTSという「比較対象」が常に存在する限り、今後どんなアルバムを作っても「WiLDHEARTS時代と比べて~」と言われ続けるだろう(それがお門違いな愚問であっても)。KISSのアルバムには必ず1曲は「惜しいなぁ」と思わせる曲があった。作品として考えれば詰めが甘いのかもしれない。けど、KISSにとってアルバムは「新しいライヴをするための、新しい仕掛けを披露するための道具/手段」に過ぎなかった(勿論それらは標準をクリアしている、という最低条件はあったが)。MOTLEY CRUEだって、アルバム毎にコンセプトを変えてそれをライヴに反映してきた。もし今後ジンジャーがSiLVER GiNGER 5を続けているというなら、きっとそういう作品を連発し続けるだろう。

ライヴに関してはまだ何も見えてこないが、やっぱりこのアルバムはライヴと対で評価したいと考えている。これだけのアルバムを作っておきながら、ライヴがバンド時代と何ら変わらないものだったら‥‥俺はちょっと許さないよ。(笑)勿論、WiLDHEARTSのライヴが悪いというわけではない。あのライヴに惹かれたから、今の俺がいるわけだし。けどこのアルバム、このコンセプトに関してはジンジャーには初心を貫いて欲しい。ワールドワイドレベルで成功しているアーティストとは言えないので、セット等にお金をかけられないだろう。しかし、そこは持ち前のアイディアで乗り切って欲しい。そして今回はブリッツよりもデカい会場‥‥日比谷野音だったり渋公だったり‥‥可能なら、武道館で、こんじょ音を再現するスペクタル・エンターテイメント・ショウを俺達に見せて欲しい。

最後に我が儘放題言ってしまったが、ジンジャーならそれが出来ると信じているから。そしてそれをやる義務があると思うから。KISSの後を引き受けるなら、もうそれこそ本当にニッキー・シックスまでをも巻き込んで、何ならMOTLEY CRUEの前座としてワールドツアーに同行すればいい。このアルバムの音は、今必要とされている音だと思う。必要としている人間が沢山いると思う。だから、それを世に知らしめるために、出来る限りの活動をして欲しい。WiLDHEARTSで果たせなかった夢が、今なら実現出来るはずだから。今なら誰も邪魔する人間はいないし、やれない事は何もないはずだから。

今一度言う。俺はエンターテイメント性を重視したこのロックンロールを、断固支持する。「とみぃの宮殿」は今後もジンジャーを全面的に支持していく!!!



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投稿: 2000 07 11 07:47 午後 [2000年の作品, Ginger Wildheart, Silver Ginger 5, Wildhearts, The] | 固定リンク