SMASHING PUMPKINS@東京国際フォーラム ホールA(2000年7月2日)
それ程思い入れもなかったSMASHING PUMPKINSだが、解散するということを知って、今回の日本最終公演に足を運ぶ事にした。コアなファンからすれば俺は邪道だろう。「解散する前に一目この目で観ておきたい」その程度の理由だった。勿論、嫌いだったらチケットに7,000円、交通費に5,000円も払ったりはしないだろう。ファーストアルバムからリアルタイムで常に聴いてきたものの、どうにものめり込む事が出来ず、ちゃんと評価するようになったのは3rd「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」('95)から、自分の趣味に近い音を出すようになった「ADORE」('98)に関しては、その年のベストアルバムの1枚に選んでいる。新作も勿論気に入っている。単に「いい曲だな」としか思ってこなかったし、ビリー・コーガンに対しても憧れとか好きとか、そういうのはなかった。その程度の人間が書くレビューである。コアなファンは目くじら立てずに最後までお付き合いいただきたい。
東京国際フォーラム自体が初めてということもあり、俺なりにいろいろ感慨深いものがあった。(詳しくは、去年の5月末あたりの日記「ジェフ・ベックと私」を御参照いただきたい)東京駅から徒歩数分という事もあって、地方からライヴに来たお客にとってはアクセスに便利なのではないだろうか? 少なくとも俺にとってはかなりポイント高いが。(笑)
会場となるのは、国際フォーラムの中のホールAという、一番キャパの大きな会場だった。およそ6,000人近く入ると聞いたが(間違ってたらごめんなさい)、俺の席が1階のかなり前(20列目)だった事も関係してくるのかもしれないが、見渡したところ、中野サンプラザをふた回り程大きくしたような感じだった。勿論あれよりも近代的な造りだし、特に2階などはどことなくオペラハウスをイメージさせる造りだった。(ってオペラハウスにも行ったことはないのだけど/苦笑)
ウドー音楽事務所お得意の「土日祝日の開演時間17時」という、わけの判らない時間組みのお陰で、今日は終バスより前に帰れるだろう‥‥そう思っていた。ところが席について開演時間が近付くと「本日はSMASHING PUMPKINS日本最後の公演ということで、特別に休憩15分を挟んだ2部構成になっております‥‥」というアナウンスがあった。会場ドッと湧く。凄い歓声だ。本当に好きな奴らが集まってきたんだろうな‥‥何かそう思ったら、自分がこの場所にいる事が場違いのような気がしてきた。(苦笑)しかし、ロビーに出てビールを飲んでいると「スマパンよく知らないけど、もう観れないっていうから来ちゃった」というような会話を何度か耳にした。そうか、俺だけじゃないんだ。(笑)そう思うと少し気が楽になった。今日はニュートラルな状態で、純粋に楽しもう‥‥そう心に決めた。解散を抜きにして、どれだけ楽しめるステージを見せてくれるのか? 俺にとってはそれがポイントとなった。
●第1部
何の前触れもなく、いきなり照明が落ち、暗闇の中から異様な物体が‥‥いや、ビリーの頭だった。(苦笑)アコースティックギターを持ったビリーが無言でステージに立ち、いきなり弾き語りを始めた。そうか、第1部はアコースティック・セットで行くんだな? そう理解した観客は大歓声で応える。今回のツアーでは中盤にアコースティックを2~3曲やっていたそうだが、かなりの曲数で特別な内容のステージが観れるなんて、得した気分だ。
6弦や12弦ギターを駆使して、名曲の数々をアコースティック・アレンジで聴かせる。"Today"のような代表曲も含まれていた。ビリーのあの独特な声が逆に際立って、不快感に思うのではないか?なんて最初は思ったが、それは最後まで感じなかった。むしろ、あの声があるからこれらの楽曲が成り立つのかも‥‥そう思えてきた。そして演奏がギター1本だったお陰で、一番大切な事を再認識させてくれた‥‥スマパンが、ビリー・コーガンが作ってきた楽曲が、如何に優れた楽曲であったか、を。スマパンというと意外と「轟音ギター」をイメージするかもしれないが(俺も最初そういうイメージを持っていた)アルバムを聴くと実にバラエティーに富んだ内容だという事が判る。そして、ただバラエティーに富んでいるだけでなく、それらの楽曲がかなり高品質である事。当たり前のようなそんな事実を、目の前にいるビリーは最後の最後で教えてくれた気がした。
途中お客とのコミュニケーションを取りつつも、ライヴは淡々と進み、5曲を終えたところで、エレキギターを持ったジェームズ・イハが登場。上下白のスーツである。そうそう、これとは対照的にビリーは上下黒、上はレザーで下はスカート。長身でガッチリした体形のせいで、物凄い威圧感がある。最近私生活でお坊さんを見る機会が多かった為、どうにもステージ上のビリーが住職に見えて仕方なかった。(爆)
話を元に戻そう。イハが加わり二人でメドレー形式にしたアレンジで何曲かを演奏。イハはソロを弾くというよりは、スライドバー等を駆使して効果音的にギターを奏でていた。プレイされたのが「ADORE」収録の曲ばかりだったため、幻想的な空気が会場を包んだ。
続いてステージには白いドレスを纏ったメリッサと、黒のベストを着たジミーが登場。いよいよバンド形態でのプレイとなった。メリッサは普通のプレシジョン・ベースを弾いたが、ジミーはスティックを鳴りの弱いものに代えてプレイしていた。ここでは新作からの曲がメインとなったが、何やらメリッサがプレイを間違えたらしく、ビリーがメリッサをいじめる?シーンにも遭遇した。それは陰険なものではなく、どこか微笑ましいものだった。客席からも笑みがこぼれる。これが解散を決意したバンドの、異国での最後のステージか?と思わせるくらいに和んだ空気だった。更にビリーは曲の合間にアコギでLED ZEPPELIN "Whole Lotta Love", DEEP PURPLE "Smoke On The Water", RAINBOW "All Night Long"のリフを披露。何だかメリッサをからかう姿といい、小学生のガキ大将的な姿を見た気がした。前回の来日でも初の武道館を意識してか、CHEAP TRICK "I Want You To Want Me"の「AT BUDOKAN」バージョンをカヴァーしていたし‥‥バンドを、ギターを始めた頃の初心をこの異国の地で思い出していたのだろうか。それとも単に気まぐれなのだろうか? どっちにしろ、とても貴重なものを目に/耳に出来たような気がした。
盛り上がっていく中、第1部は名曲"Disarm"で閉められた。約1時間に及ぶ、素晴らしい、そして貴重な体験であった。
●第2部
15分後に再び会場が暗転し、今度は最初からメンバー4人がステージに登場。ビリーもイハもエレキを持っている。そして真っ暗なステージの上でおもむろにビリーが独特なヘヴィリフを叩き出した。そう、第2部は新作の1曲目"The Everlasting Gaze"からスタートだ。噂には聞いていたが、こんなにもハイテンションでプレイされるとは‥‥スマパンのライヴで印象的なのは、アップテンポなナンバーも、ライヴではアルバムよりも更にテンポアップされる。それはドラムが走り気味だとかそういう理由からではない。とにかくミドルテンポ以下の曲以外は概ねテンポアップされた、ハイパーバージョンでプレイされる。ただでさえ速い曲なのに、更に速く‥‥第1部の時も思っていたが、ジミーのドラムの音がデカい。PAの問題ではなく、生音がデカいのだ。これはステージから近かったから判った事実だが、あれだけギターが大きな音で鳴らされているにも関わらず、ドラムの生音が客席まで届く‥‥如何にジミー・チェンバレンというドラマーがハードヒットを信条とするドラマーかがよく判った。そして何故ビリーが最後まで「オリジナルメンバー」にこだわったかが、これで理解できた。ただ単に「オリジナルメンバーで終わりたかった」だけではないだろう。ドラムに関して言えば、やはりジミーを差し置いては他にはいなかったのだろう。
続く2曲目"Heavy Metal Machine"でもヘヴィなプレイが続く。スマパン流HMとでも言えばいいのだろうか? 終盤ドラムのみをバックに、ビリーは客席に向かって「Heavy Metal!」と何度も叫び、そして絶叫を繰り返した。もしかしたら俺達に唄わせたかったのかもしれない。この御時世にHMという言葉にこだわるビリー‥‥グランジという言葉で片付けられてきた彼等だが、もしかしたら純粋にHM/HRがやりたかったのかもしれない。田舎のHR少年だったビリーは、他に漏れずツェッペリンやパープル、エアロやKISSやCHEAP TRICKを愛し、そして自らがバンドを率いた時、「自分流のHR」を作りたかったのかもしれない。それが1990年代に登場したが為に、ガレージだ、グランジだ、といったジャンルで括られてしまった。もしかしたら、それは不幸な事だったのかもしれない。自分達が既にオルタナティヴな存在ではない事を認識しつつ、「メインストリームの中で以下にオルタナティヴでいるか?」といった命題と戦う宿命にあった、「ADORE」以降のスマパン。それは傍目には成功しているように見えた。しかし、内部では悲鳴を上げながら終焉に向かっていたのかもしれない。
イハがヴォーカルをとる曲等も含んだ第2部は、それこそ新作からの名曲群と代表曲のオンパレードだった。ビリーは曲の途中で何度も絶叫を繰り返し、それは思い入れのない俺の胸にも突き刺さった。痛い。曲のタイプのせいもあるだろうが、とにかく胸に沁みる。エンターテイメント性を打ち出しながらも、どこか切ない。これがSMASHING PUMPKINSというバンドなのだろうか? 今回のツアーはキーボーディストがいない、純粋に4人で演奏されている為、どの曲もハードに響くが、それでも楽曲にある哀愁の色は決して色褪せていない。完成された楽曲の凄み。そしてそれを怒濤の演奏で我々に叩き付ける4人の凄み。空気的には解散を感じさせなかったが、やはりこの「凄み」は「解散」という現実に向けられたものなのだろうか? そう感じずにはいられなかった。
2度のアンコールに応え、最後の最後に彼等が選んだ曲は"1979"だった。リズムボックスをバックに、ジミーまでもがアコギを持って前に出てきて、予めライヴの最後を想定して作られたかのような形となった。ビリーやジミーの顔からは笑顔がこぼれる。客席もそれに応える。しかし、ぽつぽつと泣いてる女性もいた。ビリーの「Next...maybe last song」という言葉が頭から離れなかった。そして曲の終わりと共に、ライヴも終了した。ジミーを除いたメンバーが意外とあっさりとしているのに対し、ビリーは名残り惜しむかのように、ステージの右から左まで、お客ひとりひとりと握手を交わしていた。途中、アンパンマンのぬいぐるみをファンからプレゼントされ、その生き写しともいえる姿(爆)に観客は最後の最後で大爆笑した。誰だ!ビリーにアンパンマン渡したのは? お前、オイシすぎるぞ!!!(笑)ビリーがステージから去った後も、スマパンを求める観客の拍手は止まなかった。しかし、無情にも会場に明かりが灯る。そして終わりを告げるアナウンス‥‥完全に、全てが終わった。
本当ならこの"1979"の後にもう1曲、"Mayonaise"が用意されていた事を後で知った。しかしメンバーのファンサービスのお陰で会場を使用できる時間ギリギリになっていた為、あそこで終わったのだという。(実際、全て終わった時点で20時5分前だった。音を出せるのが20時まで、という契約だったのかもしれない)しかし、俺としてはああいう終わり方でよかったと思っている。あの形で終わった事で、SMASHING PUMPKINSは最後の最後まで「4人組のバンド」だったことを我々ファンの胸に焼きつけたのだから。
それ程ファンでもなかった俺でもこれだけ楽しめたのだ。本当のファンはどういう心境であのステージを観ていたのだろうか‥‥是非伺ってみたい。
そして最後に。こんな最後の最後でSMASHING PUMPKINSにハマッてしまうとは‥‥残念というか、不覚というか。とにかく楽曲・ライヴ共に素晴らしいバンドだったという事が最後の最後に確認できただけでも、俺にとっては収穫だった。
[SETLIST]
[First Set : Acoustic Set]
01. Speed Kills
02. Today
03. Muzzle
04. Once Upon A Time
05. Improding Voice
06. To Sheila ~ Shame ~ Drown ~ To Sheila
07. Glass And The Ghost Children
08. This Time
09. Stand Inside Your Love
10. Disarm
-----interval ; 15min.-----
[Second Set]
11. The Everlasting Gaze
12. Heavy Metal Machine
13. Blue Skies Bring Tears
14. I Am One
15. Raindrops + Sunshowers
16. Blew Away (Vocal : James Iha)
17. Tonight Tonight
18. I Of The Mourning
19. Rock On
20. Bullet With Butterfly Wings
21. Once In A Life Time
[encore-1]
22. Perfect
23. Cherub Rock
[encore-2]
24. 1979

▼SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』
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