THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』(1994)&『FISHING FOR MORE LUCKIES』(1995)
一見ニューアルバムのようだが、実はそうではないのがこの「FISHING FOR LUCKIES」だ。これがまた厄介というか、複雑なんだわ‥‥復習存在する本作について解説していきたいと思う。
①『FISHING FOR LUCKIES』(1994 / ファンクラブ限定バージョン)
'94年12月にファンクラブを通して発売された6曲入りミニアルバムとして最初に「FISHING FOR LUCKIES」というタイトルで通信販売された。当初、これらの楽曲はオリジナル・フル・アルバムとしては2作目にあたる「P.H.U.Q.」の為にレコーディングされたものだ。まず'94年6月に"Inglorious"と"Sky Babies"の2曲入りシングルをアルバム前にリリースする予定だったが、レコード会社が長い曲を嫌った為(この2曲だけで20分近くある/笑)、難色を示したそうだ。更にこの時期にレコーディングされたものは結局、1年後に日の目をみるわけだ(「P.H.U.Q.」自体はその1年後にリリースされた)。
収録曲は以下の通り。
1. Inglorious
2. If Life Is A Love Bank I Want An Overdraft
3. Schizophonic
4. Do The Channel Bop
5. Geordie In Wonderland
6. Sky Babies
'95年1月にはこのアルバムの中からM-2とM-5を収録したシングルがレコード会社を通してリリースされた。また、後に発売される「P.H.U.Q.」の英国初回盤にはボーナストラックとしてM-1とM-3の2曲が、同アルバム日本盤ボーナストラックとしてM-2とM-4がそれぞれ収録され、一般のルートでも聴く事が出来るようになった。
②『FISHING FOR MORE LUCKIES』(1995 / 9曲入りバージョン)
イギリスの音楽雑誌では通販版「FISHING FOR LUCKIES」が大絶賛されたことから、レコード会社は'95年夏頃に改めてこのアルバムに未発表曲2曲と"I Wanna Go Where The People Go"のデモバージョンを追加した形で、同じジャケットに『MORE』を赤字で追加しただけの形の「FISHING FOR MORE LUCKIES」をリリースしようとした。しかし「1度発表されたものにクズのようなデモを足しただけのアルバムなんか、リリースさせるか!」とジンジャーは怒り、リリース中止を呼び掛けた。ライヴでもお客に向かって頻繁に「あんなアルバム、買うなよ!」と訴えかけていた。
その後、カット盤として一般流通しているので、当時は簡単に手に入れることができた。ちなみに収録曲は上の6曲に
7. Underkill
8. Saddened
9. I Wanna Go Where The People Go (Early Version)
という9曲入りとなっている。
多分俺が持ってるのは、その流通してしまったものを複製したブートレッグだと思う。ジャケットの印刷が粗いし(恐らくカラーコピーで複写した2世、3世だろう)、背がカットされていないので。まぁファンならマスト!ってアルバムでもないし、本当に興味があるハードコアなマニア向けの作品でしょう。そういえば、最近はどこのCDショップでもこれ、見かけないなぁ‥‥
この頃の楽曲にはとにかく大作志向が目立った。どちらかというと短くて聴きやすい曲を「P.H.U.Q.」に集め、大作や実験的な曲を「FISHING FOR LUCKIES」に入れたのではないだろうか。後に発表される現行バージョンには「P.H.U.Q.」にも通ずるポップな小楽曲を中心に追加したことによって、より内容が充実しているが、初めて現行バージョンでこれらの大作を耳にした時は、とにかく驚いたのを覚えている。これら4曲はパンク版プログレというわけの判らないカテゴライズをしたくなる程(笑)、起伏が激しい。まるでローラーコースターに乗ってるかのように‥‥しかし、これらの曲がこのアルバムの中では1番好きだったりするのだから、少なくとも俺にとってはこのアルバムの曲をこのような形で発表した事に意義があったということだろう。
そういえば、これらの大作はライヴで披露されたと聞いた事がない。彼等のライヴがどういうものか知っている人なら、それらが何となく合わないんじゃないか?と思うことだろう。俺も同感だ。ジンジャーが最後まであれらの楽曲を完奏するするとは思えない(笑)。絶対に途中で飽きて、他の曲をやりそうな気がする。まぁそんな事はどうでもいいか。このアルバムの再発バージョン、ジンジャーは嫌いで1度も聴いていないらしいから。最初のバージョンは気に入っているらしい。そもそも、結果としては同じようなアルバムが3度発売されたわけだが、雑誌のレビューは再発を重ねる毎に評価が低くなっていったそうだ。何がどう悪かったのかは判らない。要するに「同じアルバムを何度も再リリースして、小金稼いでるんじゃねぇよ!」って事なのかもしれない。

▼THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES』
(amazon:海外盤CD)
« THE WiLDHEARTS『ENDLESS, NAMELESS』(1997) | トップページ | THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES (East West Version)』(1996) »
「Wildhearts, the」カテゴリの記事
- GINGER WiLDHEART『TEETH』(2023)(2023.02.03)
- GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』(2019)(2022.05.06)
- GINGER WILDHEART『THE PESSIMIST’S COMPANION』(2018/2022)(2022.05.06)
- GINGER (GINGER WILDHEART)『A BREAK IN THE WEATHER』(2005)(2022.04.20)
- THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(2022.02.14)
「Ginger Wildheart」カテゴリの記事
- GINGER WiLDHEART『TEETH』(2023)(2023.02.03)
- GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』(2019)(2022.05.06)
- GINGER WILDHEART『THE PESSIMIST’S COMPANION』(2018/2022)(2022.05.06)
- GINGER (GINGER WILDHEART)『A BREAK IN THE WEATHER』(2005)(2022.04.20)
- THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(2022.02.14)
「1994年の作品」カテゴリの記事
- サブスクに存在する音源を通して1980年〜1994年のHR/HM(およびそれに付随するハード&ヘヴィな音楽)の歴史的推移を見る(2024.11.10)
- TESLA『BUST A NUT』(1994)(2024.05.02)
- ZZ TOP『ANTENNA』(1994)(2024.04.20)
- GREEN DAY『DOOKIE』(1994)(2024.03.31)
- ACCEPT『DEATH ROW』(1994)(2024.04.04)
「1995年の作品」カテゴリの記事
- REEF『REPLENISH』(1995)(2022.04.06)
- THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(2022.02.14)
- OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995)(2021.03.28)
- BLUR『THE GREAT ESCAPE』(1995)(2021.03.27)
- AC/DC『BALLBREAKER』(1995)(2020.10.01)