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2000/08/21

LUNA SEA『LUNACY』(2000)

  インディー盤から数えて通算7作目(シングル・コレクション、ライヴ盤を除く)に当たるLUNA SEAの新作は、タイトルに結成当時のバンド名のスペルである「LUNACY」と銘打っている。これは結成10周年を過ぎ、改めて初心に戻る意味と、そして新たな第一歩という意味を掛けて決定されたそうだ。'97年の活動休止から復活し、翌年に「SHINE」というアルバムをリリースしたものの、まだ全力という感じではなかった。メンバーみんながツアー終了後に「次はもっと凄い」と口にしていた。そして彼等は再び'99年のその殆どを曲作りとレコーディングに費やした。そこから生まれたのが、このアルバムの楽曲11曲と、シングルに収められたカップリング曲の4曲、合計15曲であった。当初は「もの凄い内容のアルバムを、2枚作る!」と言っていたが、下手にいい曲が分散してしまうより、こうやって1枚に集めた方が集中して聴く事ができる。第一、2枚同時リリースして内容・セールス共に成功したアーティストなんてGUNS N'ROSESぐらいのもんじゃないか?

  とにかく1曲1曲が濃いアルバムである。聴き込めば聴き込む程、いろんな要素を感じ取れるし、いろんな味が染み出てくる。従来のファンも満足させられるだろうし、新しい挑戦も至る所に見受けられるので、新たなファンも開拓できるだろう。では、簡単ではあるが、以下に1曲毎に簡単な感想をつけていきたいと思う。


M-1. Be Awake (原曲:SUGIZO)
  ライヴを意識した歓声からスタートするこのアルバム。1曲目はSUGIZOの、典型的なLUNA SEAソングだ。曲調こそメジャー・キーで成り立っているが、曲構成は過去の代表曲"Believe"を準えたものだと思う。これを「二番煎じ」と取るか「原点回帰」と取るかで、このアルバム全体の印象も変わってくるのではないだろうか? 少なくとも俺は、'93年のあの曲と2000年のこの曲とでは雲泥の差だと思う。技術や表現力は比にならないし、やはり当時は「内に」向かっていたように感じた『何か』が、この曲では「外へ外へと」向かっているように感じる。とてもポジティヴな、ライヴのオープニングにうってつけの曲だ。そのポジティヴさはタイトルからも感じ取ってもらえる事だろう。今後、"Wish"にとって変わる代表曲のひとつになるかもしれない。

M-2. Sweetest Coma Again feat. DJ KRUSH (原曲:J)
  映画「007」最新作でお馴染みの、いかにもJが書きましたって感じのヘヴィ・ナンバー。俺はこれ1曲聴いただけで、「今度のアルバムは期待出来る!」って信じてたから。曲名にも記載されているが、この曲と4曲目にはかのDJ KRUSHが参加している。彼はINORANのソロにも参加していたから、その流れからルナの方にも絡む事になったのかもしれない。この「第3者の介入」も、新たな挑戦のひとつ。もっともライヴでは全てサンプリングで済ませてしまうだろうが、レコードではこういう新しい実験を幾つも試みている。LUNA SEA流ミクスチャー・ヘヴィロックといったところだろうか?

M-3. gravity (原曲:INORAN)
  シングルのレビューでも紹介してるので詳しい説明は避けるが、本当に実験的というか挑発的というか‥‥こういう曲を今の日本の歌謡界にぶつけてくる心意気が、嬉しかったりするのだ。他の「ビジュアル系」で括られているアーティストには真似出来ない事じゃないかな?(毎回似たり寄ったりの楽曲しか提供できない、某バンドとは大違いだ)こういう曲って今までありそうでなかったよね? 復活後の彼等にはこういう「ありそうでなかった曲」が結構ある。前作でも"Shine"とか"I For You"ってそういう感じだったし。逆に言えば、「これまで出来そうで出来なかった、やることを許されなかった」タイプの楽曲なのかもしれない。いや、本当に名曲。

M-4. KISS feat. DJ KRUSH (原曲:SUGIZO)
  やっぱりSUGIZOの曲ってのは独特な癖があるので、すぐに判る。まぁそれは他のメンバーにも言える事だけど。イントロのギターフレーズが何となく某リュシフェルのヒット曲と似てなくもないな?と最初に感じたのだけど‥‥あ、怒らない、そこそこ。(笑)この曲にもDJ KRUSHが参加。いろんな味付けをしている。ふとここで気づいたのだけど、このアルバムでのJのベースってやけに際だって聞こえる。いや、全ての楽器に対してそれは同じか。SUGIZOのソロも、INORANのアルペジオも、真矢のドラムも、そしてRYUICHIの歌も。全てがそれぞれのパートとバトルしている。自己主張とかそういう次元ではない、これはもう喧嘩だ。それでいて互いが互いをうち消しているのではなく、ぶつかり合う事で更に増長されている感じなのだ。こんなバンド、他にどれだけいる?

M-5. 4:00 AM (原曲:INORAN)
  この曲、ヘッドフォンで聴いてるとイントロの携帯の着信音でドキッとする。本当に側で鳴ってるように聞こえるから。ここで中盤戦突入という感じで、ちょっとクールダウン。これも如何にもINORANが書きそうな曲。ライヴ向きの曲とはいえないが、こうやってステレオの前で、そしてヘッドフォンで聴いてると気分が落ち着く。後ろで鳴ってる楽器は結構派手な事、やってるんだけどなぁ‥‥(笑)後半、いろんなエフェクト音が挿入されたりして(それこそドラムン・ベース的リズムまで)非常に興味深い、スタジオワークの結集的ナンバー。こういう曲が必ずアルバムに1曲はあるから、このバンドは面白いんだよなぁ。

M-6. VIRGIN MARY (原曲:SUGIZO, RYUICHI)
  珍しくSUGIZOとRYUICHIの共作ナンバー。必ずアルバム1枚に1曲はSUGIZOのバイオリンがフィーチャーされる曲が登場するが、これがその曲。
  彼等のアルバムには必ずアルバムのへそにあたる、中盤のど真ん中辺りに大作を持ってくる傾向がある。そしてその曲がそれぞれのアルバムでのツアーのハイライトとなる。きっとこの曲もそうなのだろう。パンキッシュな曲もやりながら、こういう大作指向の複雑な曲も演奏するには、やはりそれ相応のテクニックがなければならない。ギターのボリュームやトーンの微妙な大小が要求される事となるのだ。ライヴを見た事がある人なら判ると思うが、こういった曲を完璧に演奏してしまうから何というか‥‥畜生。(笑)きっとこれまでルナを聴いてこなかった(ヒット曲しか知らない)には、ちょっと意外で驚きのナンバーかもしれない。いや、そういう人にこそこういう曲を聴いて欲しい。

M-7. white out (原曲:INORAN, RYUICHI)
  珍しくINORANとRYUICHIの共作ナンバー。とてもライヴ受けするとは思わないが、アルバムの中の1曲と考えればとてもよく出来た、普遍的なポップ・ナンバー。そういえば前曲では「Maria」とか「Jesus Christ」なんて言葉が出てくるし、ここでも「メシア」って言葉が登場する。何となく‥‥個人的に名作「MOTHER」を意識したのかな、とか考えたりして‥‥それにしても、こういう曲もソロ活動を通過したからこそ出来るんだろうな‥‥最も「河村隆一」の色を感じる楽曲だ。

M-8. a Vision (原曲:J)
  一聴すればすぐに判る、J原曲ナンバー。ここまでの3曲の対比がまた面白いね? 普通のバンドなら並ばないようなタイプの曲が並ぶ‥‥ここがこのバンドの面白い所。中盤のJによる英語による台詞でファンはお判りでしょう‥‥これは間違いなく、Jがマイクスタンドをなぎ倒す為の曲だと。(笑)ドラムのリズムの刻み方がTHE POLICE的というか‥‥普通のパンクバンドには真似出来ない、テクニックを要するパンクナンバー。

M-9. FEEL (原曲:SUGIZO)
  SUGIZO原曲による、非常にムーディーな曲。ソロパートがギターではなく、エレクトリック・バイオリンを使用していて非常に興味深い。メインリフのザクザク感が昨今のヘヴィロックにも通ずるものがあるにも関わらず、メロディは臭すぎる程にメロディアス。結局、メロディーや根本にあるものは何ら変わっていないのだが、そこに向かうまでの気持ちや遊び心によって「新しい音」が加わっていく。いや、遊びというより喧嘩か。(笑)さっきからずっと「凄い」を連発してる気がするけど‥‥聴けば判るよ、俺の気持ちが。

M-10. TONIGHT (原曲:J)
  何も言う事はないでしょう‥‥Jによる、Jの為の曲。(笑)今回のアルバムをすんなり受け入れられたポイントとして、やっぱり「速い曲」の存在が大きいかもしれない。勿論前作にも存在したが、何か違うというか‥‥モッタリした印象を受けたんだわ。けど、ここにはそういうの、全くないし。ミディアムの曲にもモッタリ感は全くない、むしろ疾走感すら感じる。この違いって一体何なのだろうね?

M-11. Crazy About You (原曲:J)
  Jによる、感動的なバラードでこのアルバムは終わる。それにしても、こういうのを普遍的名曲と言うんだろうな? 時代とか流行とか関係ない、歌い継がれる為の名曲。それがこの曲だと思う。前作から彼等はこの手の曲にチャレンジしていたが、ここでひとつの完成型を見たといった印象を受ける。何かさ、BON JOVI的な、大陸的な大きさを感じさせるバラードだな、こりゃ。もしBON JOVIがこの曲プレイしたとしても、何ら違和感はないと思うよ。それくらい名曲。試しに聴いてみな、BON JOVIも? こんな曲でライヴ終わられた日にゃ、涙で目が曇って何も見えなくなっちまうよ‥‥名曲!


●総評
  傑作である。けど、「MOTHER」や「STYLE」を越えたか?と問われれば‥‥そこまでいってないかもしれない。いや、まだ答えを出すには早すぎるかも。まぁ間違いなくこれら2枚に肩を並べる辺りまではきてると思うけど。きっと前作を通過したからこそ、そしてそのツアーを経験したからこそこのアルバムにたどり着いたんだろう。2000年を迎えたLUNA SEAが送る、2度目のデビューアルバムといったところだろうか? ビジュアル系だの何だのって騒いで聴かず嫌いしてる人にこそ聴いて欲しい、アリーナロックとスタジオワークの凝縮された傑作だ。



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投稿: 2000 08 21 12:00 午前 [2000年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク