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2000/09/24

HAREM SCAREM『RUBBER』(1999)

今回のテーマは「ギターポップ系好きにもアピールするHM/HR」ということで、(ある意味)今は亡きHAREM SCAREM「RUBBER」('99)を取り上げたい。今は亡き、というのは最後に説明するとして‥‥このバンドの簡単な歴史から。

カナダで結成されたHAREM SCAREMはセカンドアルバム「MOOD SWING」で日本デビューを果たした。ファースト~セカンドの彼等の音楽性は、DEF LEPPARDから影響を受けた、何重ものコーラスを重ねたメロディアスな楽曲に、全盛期のDOKKENを意識したガッツィーなサウンド(特にジョージ・リンチを彷彿とさせるピート・レスペランスのギタープレイ)が特徴で、それが日本でウケたというわけ。ところが彼等は続くサード「VOICE OF REASON」でその音楽性を変えてしまう。当時流行のオルタナ/ヘヴィロックの色を取り入れるのだ。が、そこはメロディアス指向の彼等。やっぱ歌メロやコーラスは健在。けど、評価は散々。このアルバムで初来日を果たす。そして4作目「BELIEVE」では初期の音楽性に戻ったかのような楽曲を用意し、5作目「BIG BANG THEORY」ではハードさを若干後退させた、CHEAP TRICKやFOO FIGHTERSにも通ずるようなポップでパンキッシュな楽曲を披露する。そしてこの6作目「RUBBER」にたどり着くわけだが‥‥ここでも彼等は大冒険というか、大きな賭けに出る。その大きな賭けについて説明しよう。

現在の彼等はここ日本でのみ大人気、といっても過言ではない。カナダではセカンド当時は爆発的に売れたと聞いているが、サードでのセールス的失敗辺りからカナダ国内での人気も失速していく。「HAREM SCAREMってメタルでしょ? もう流行んないよ」てな理由で。さぁ、ここからが本題。(笑)何故俺がこのアルバムを選んだかがよくご理解いただけると思う。

アーティストとして、彼等は自分達のやりたい音楽をやる。長年続けていけば、趣味やその時やりたい事なんて変わっていくのは当たり前だ。ところが1度あるスタイルで成功してしまうと、それ以外の新しい事を始めると「ああ、あなた達は変わってしまった。ファンなんてもうどうでもいいんですね?」と言って離れていくファン。当然レコードセールスも落ち、ライヴの観客動員も減るわけだ。下手をすりゃ契約さえも切られてしまう‥‥ん、どこかで似たような事書いたなぁ、俺。どのアーティストの時だったっけ?(笑)

要するに、彼等は「VOICE OF REASON」での失敗によって、周りからプレッシャーをかけられたわけだ。そこで彼等は日本のファンを意識した作りの「BELIEVE」を意に反して(?)作り、そしてそれがまたバカ売れしてしまうわけだ(とは言っても、ここ日本でだけね)。しかし彼等に拘りがなかったわけではない。前作での音楽性を持った実験的楽曲を日本盤シングルのC/W楽曲として収録、本国カナダ盤ではアルバムの2曲と差し替えてこれらの実験的楽曲を収録している。如何に彼等が日本贔屓にしてるかがお判りいただけるだろうか?

さて、そうやって紆余曲折しながら、彼等はひとつの結論に達する。日本ではある程度の変化も認めてもらえた。しかし本国カナダやアメリカでは「HAREM SCAREMはHM/HRバンド」というイメージが定着してしまい、そこから如何に離れた音楽を提供しても、聴いてくれさえしない。だったらいっそのこと、バンド名を変えて1から出直してみよう、と‥‥つまり、彼等はHAREM SCAREMという成功を収めたバンド名を捨ててまで、音楽的に成長したかったし、セールス的にも成功したかったのだ。その新しいバンド名こそが、今回紹介したアルバムのタイトルにもなっているRUBBERなのだ。

この「RUBBER」というアルバムは'99年秋にここ日本で先行発売された。但しこの時点では、日本でのみ今後もHAREM SCAREMという名で活動していく、と宣言していたはずだ。実際にアルバムのライナーノーツにもそう書かれている。同年12月には初のホール公演も含んだジャパン・ツアーも大成功を収めた。この時のライヴ写真を見て驚いた人も多いだろう。既に彼等のステージ衣装には、メタルの「メ」の字も存在しない。非常にファッショナブル‥‥5年前だったらブリット・ポップ系に括られたはずだ。そして今年、日本以外ではRUBBERとしてアルバムをリリースしたようだ。アルバムリリースに際して、日本盤を更にリミックスしているようだ。ところが、ここでドラマーであり最後の「メタル者」(唯一の長髪であり、ライヴでは裸でプレイしていた)のダレン・スミスが脱退してしまう。脱退理由は判らないが、恐らく今後の活動や音楽性で意見が分かれたのではないだろうか? 他のメンバーとの違いを見れば一目瞭然のような気もするが‥‥

この夏には昨年の日本公演を収めた「LAST LIVE IN JAPAN」という意味深なタイトルのライヴ盤もリリースされた。何故ラストライヴなのか‥‥そう、いよいよ彼等はここ日本でもバンド名をRUBBERと名乗り変える事にしたのだ。ある意味これはダレンの脱退も影響しているのかもしれない。このライヴ盤には音楽性を今のようなギターポップ系の音に変えてからの楽曲‥‥アルバムで言えば「BIG BANG THEORY」「RUBBER」の2枚‥‥しか収められていない。ボーナストラックとして新録の新曲とSQUEEZEのカバーが収録されている辺りにも、今後の彼等の決意のようなものが感じられる。

正直、「猿メタル」というコーナー的には前作「BIG BANG THEORY」の方が向いていると思う。適度にハードでパンキッシュ、時々登場するHR的アプローチも全く嫌みがない。昔からのファンからすれば物足りないのかもしれないが、俺はよく聴いたアルバムだ。しかし、上のような複雑な事情を知ってしまうと、やはり「どこまで行ってもメタルはのけ者なのかな‥‥」と感じてしまうわけだ。この「RUBBER」というアルバム、なかりの意欲作だ。いつかは取り上げたいと思っていた作品だが、こういう形で取り上げる事になるとは‥‥音的には前作よりもハードさを抑え、カントリー色なんかも取り入れはじめている。ある意味NELSONの最新作にも通ずるものがあるし(このアルバムもギターポップ系好きにはお薦めした作品だ)、TFCの最近のアルバムを好む人にもアピールすると思っている。

確かに「rockin'on」あたりを愛読しているコアなギターポップ/ハードポップ好きには「ひねくれ具合が足りない」と拒絶されるかもしれない。パンク色も弱いし。けど、純粋によい楽曲が詰まったアルバムと考えればTFC「GRAND PRIX」「SONGS FROM NORTHERN BRITAIN」にも共通する空気があるはずだ。

未だにBURRN!でしか取り上げられる事のない彼等だが、心機一転した今、「RUBBER」というバンド名は覚えていた方がいいかもしれない。来年以降の注目株だと俺は確信している。そして、彼等はQUEENのように今後もどんどん成長していって欲しい。「あの彼等にもこんな時代が~」とか言われるような存在になって欲しい。その為には、まず皆さんがこのアルバムを手に取ること。全てはここから始まるわけだから‥‥



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投稿: 2000 09 24 04:13 午前 [1999年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク