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2000/10/09

BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』(1986)

このアルバムを切っ掛けに彼等を好きになったという20代後半以上の人は多いのではないだろうか? 当時洋楽を聴いていた人のみならず、普通の邦楽しか聴かないような人をも巻き込んで大ヒットした、名作中の名作。86年8月リリース。再びここ日本からツアーがスタートしたために、またしても他国より1ヶ月先行で発売された。プロデューサーには当時LOVERBOYやBLACK'N'BLUEを手掛けていたブルース・フェアバーン、ミックスにはその門下生のボブ・ロックという、このアルバムを切っ掛けに超一流になったスタッフを起用。またソングライターチームもバンドメンバーだけにとどまらず、デズモンド・チャイルドという職業ソングライター(KISS「I Was Made For Loving You」等で既に有名だった)との共作を開始し、「純粋にいい曲」という1stアルバムの課題と「ロック比重」という2ndアルバムの課題を見事にクリアした、完全無欠のアルバムが完成した。シングルとして「You Give Love A Bad Name」(米1位)、「Livin' On A Prayer」(米4週1位)、「Wanted Dead Or Alive」(米3週7位)、「Never Say Goodbye」(米以外でシングルカット。英21位)をリカット、アルバムも発売3ヶ月で1位を記録し、その後8週間1位に居座った。当時だけでも800万枚という、ロックとしては(勿論HM/HRとしても)異例のモンスターヒットを記録した。

ちにみにこのアルバム、日本と欧米とではジャケットが違う事でも有名だ。現在の日本盤ジャケットは本来正式なジャケットとして採用されるはずだったが、「エロティックすぎないか?」という事でアメリカやイギリス等では別のジャケットに差し替えられた。ちなみに本来のジャケットが採用されたのは、日本とフランス、その他数カ国のみと聞いている。差し替えジャケットは、ジョンが濡れた車のボンネットにアルバムタイトルを指でなぞっただけという代物。けどこっちのが格好よくねぇか?

純粋にいい曲が10曲詰まったいいアルバム‥‥これ以上何を言えばいい? BON JOVIがこのアルバムで歴史を、全ての流れを変えてしまったのは紛れもない事実だ。折からのLAメタルブームが一段落しようとした時に、彼等はこのアルバムで勝負に出た。当時アルバムを聴いたレコード会社スタッフが「これは凄い! トッププライオリティ(レコード会社が世界的に売り出すためにイチ押しする事)に押そう!」と考えたのも納得がいく。しかしそれまでの流れを考えると、誰もBON JOVIごときがトップを取るなんて考えてもみなかっただろう。そういう意味では躊躇した、とも聞いている。

しかし、たった1曲のビデオクリップが全てを変えたのだ‥‥「You Give Love A Bad Name」である。このビデオとDAVID LEE ROTH「Yankee Rose」のPVがその後のPVの作りを根本から変えてしまったのだ。派手なステージセットを使った疑似ライヴを収めた内容。これを観た多くのキッズがライヴ会場に足を運びたくなるような、レコードを欲しがるような内容。まだBON JOVIは前座で回る事が多かったので、自分達のセットなど持っていない。そう、全てはビデオのためだけのものなのだ。これはある意味賭けだったとも言える。しかし彼等はその勝負に勝ったのだった。

興味深い話をひとつ。このアルバムに収録された「Wanted Dead Or Alive」は、その後のHM/HRシーンのみならず、音楽の流行さえをも決定づけてしまった1曲だ。この曲の大成功により、「HM/HRでのアコースティック・ギターの導入」「カウボーイ的イメージ」というひとつの成功への鍵みたいなものを生みだした。その結果、多くのバンドがこの点を踏まえた上で成功を収めた。POISON、CINDERELLA、WARRANT等々。HM/HRバンドがバラードでヒットするということは一種貧弱なイメージを与えかねない。しかし、成功を目標とするバンドとしては背に腹は代えられない。

そうこうしてるうちに、これに目を付けた業界人もいる。BON JOVIの成功によってアコースティック・ギターが再び脚光を浴びた結果、アコギが再び売れるようになった。そしてMTVは89年に「アンプラグド」という番組を始めた。一流人気アーティストにアコースティック・ライヴをやってもらうのだ。この番組からエリック・クラプトンの大ヒットアルバムも生まれた。事実、この番組のプロデューサーは番組のアイディアとして「Wanted Dead Or Alive」の成功を挙げ、番組第1回目のゲストとしてBON JOVIに出演をオファーしている。しかし彼等が実際に出演するまでには、その後3年を要する事となった。

内容に関しては多くを言うまい。未だにライヴで半数近くの曲が演奏されている事からも判るだろう。あくまでギターを中心に置き、それを見事にフォローアップするキーボード。とにかくギターが前2作とは比べものにならないくらい、いい。音質もクリアだし、適度にヘヴィ。軽すぎず、重すぎず。当時大ヒットしていたブルース・スプリングスティーンの『BORN IN THE USA』やブライアン・アダムス『RECKLESS』をもっとハードにしたような内容で、HRに疎い人にも取っ付きやすい作りとなっている。



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投稿: 2000 10 09 12:00 午前 [1986年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク