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2000年10月 2日 (月)

Mr.Children『Q』(2000)

  前作「DISCOVERY」から約1年8ヶ月振りとなる新作(限定ライヴ盤「1/42」を含めると通算9作目)。その間の彼等と言えば、前作発表後に42本4ヶ月半に及ぶアリーナツアーに挑み、全公演ソールドアウトを記録。内容も「歌」と「演奏」に再び焦点を当てた素晴らしいものだった。その内の1公演を完全収録した初のライヴアルバムを'99年9月にリリースし、彼等は10月よりニューヨークに完成した小林武史のスタジオにて長期レコーディングを開始した。そこでのセッションを収めたシングル「口笛」を'00年1月にリリース。多くのファンを驚かせた。そこから溢れ出すピースフルな音には、ここ数年の殺伐とした彼等の姿はなかったのだ。初期の作風を思わせる新曲は、多くのファンに「今度のアルバムは凄い‥‥」と期待させる事となる。レコーディングはそのまま6月末にまで及び、7月には完成。8月にはドラマ主題歌となるシングル「NOT FOUND」を発表。桜井曰く「過去最高の楽曲」というこの曲は、久し振りのミリオンセールスに達する勢いだ。

  そして発表されたこの「Q」。「最高傑作」とも「問題作」とも言われるこの新作、皆さんはもう聴かれただろうか? 何故問題作と呼ばれるのか、俺には何となく判るが、楽曲の出来や開放感は過去数作にはないものばかりだ。一聴して思ったのは、前作よりも地味ではないか?という事。前作はモノトーン調の中に初期を思わせる曲が登場したり、デジロックやらファンクやらグランジやら、復活に賭ける彼等の意気込みみたいなものを感じさせる力作だった。しかし今度のはどうだ? 肩の力が抜け、いい意味で自由度/セッション度が高い内容になっている。メジャーキーのポップな楽曲が多い事もあってカラフルな印象を与えているのに、聴き終えた第一印象が「地味」というのも、何だかなぁ‥‥

  まずこのアルバムの前情報として桜井の「rockin'on JAPAN」でのインタビューを目にしたのだが、そこでの発言にギョッとした。「ダーツを投げた合計点で曲のテンポを決めてきました。あ、コード進行もくじ引きでね(笑)」「バンドを生かしながら僕のソングライティングを成熟させてくってのは、非常に難しいバランスになってると感じてた」ど、どうしたんだ!?とも思ったが、逆に考えればそれだけ今の桜井自身がアーティストとして充実しているという事なんだろう。いや、私生活が充実してると言った方がいいか?(苦笑)まぁ冗談はさておき‥‥ある意味楽観的に物事に向き合えるようになった結果、これだけ自由度が高い作品が産まれたのなら、万々歳ではないだろうか?

  更に‥‥前回の同誌でのインタビュー(「DISCOVERY」完成時)の最後に、"Image"や"Simple"みたいな曲が書けるようになったなら、今度は"君がいた夏"(ミスチルのファースト・シングル)みたいなピュアなラブソングが出てくるんじゃない?なんて聞かれて笑っていた桜井だが、ここにはそれに匹敵する"口笛"がある。それだけでも大きな違いだ。ここ最近のシングル曲はどちらかというと「等身大の桜井和寿」を唄った曲を聴き手が受け入れる、というパターンが多かったが、"口笛"は匿名性の高い、ピュアな曲だ。だからこそ、聴き手が自分を重ねやすいのかもしれない。そういう初期の彼等のスタイルがここにはある。意識したわけではないだろうが、これは大きい。俺はこの曲を初めて聴いた時の衝撃を今でも覚えている。

  さて、それでは手っ取り早く‥‥恒例の「全曲解説」に入りますか‥‥簡単に、そう、至極簡単に、ね?


★アルバム「Q」全曲解説★

◎M-1:CENTER OF UNIVERSE
  やけに落ち着いたムードで始まるんだな、新作は?と思わせた曲。どことなく彼等がよく流用する(笑)レニー・クラヴィッツを思わせるサイケなムードがあるけど、2コーラス目で一変。派手なドラムが入り、テンポアップ。ドラムの細かいフレーズと打ち込みの混ざり合ったバックトラックが、どことなくドラムンベース調に聞こえなくもない。狙ったな?と最初からニヤリとさせられる。曲全体のイメージが初期の熱かった頃のU2を思わせる。こういう実験性、前作にもあるにはあったけど、ちょっと質が違うように思う‥‥どっちかっていうと、今回のには「Atomic Heart」の頃の、波に乗った絶頂期と同質のものを感じるのだが‥‥
  それにしても何なんだ、この幸福に満ちた音は?「総てはそう/僕の捕らえ方次第だ」という歌詞といい、最後の「僕こそが中心です/あぁ世界は素晴らしい」といい‥‥言葉遊び(韻の踏み方)も更に磨きがかかっているし。音楽的には前作の成功とツアーの大成功がもたらしたモノが大きかったのだろうが、そこにプラスして私生活の充実振り(ってしつこいか?/苦笑)が大きいんだと思う。こんな前しか見てないような曲、前作にはまだなかったしな‥‥思い出した。このアルバムのタイトル、最初は「Hallelujah」だったんだっけ。それが総てを物語ってるわな?(結局その後に生まれてくる楽曲群にはそのタイトルに当てはまらないものも増えたので、意味性を持たせない為に「Q」というタイトルに変更になった)

◎M-2:その向こうへ行こう
  これまた今までにないようなタイプの楽曲。こういう曲を2曲目に持ってくるから「落ち着いてる」とか「地味」なんて印象を与えちゃうんだよな?(なんて言ってるのは、俺だけか?/笑)珍しくこの曲、作曲クレジットが「Mr.Children」名義になってる事から、セッションで生まれた楽曲なのだと推察できる。それにしても‥‥バンドがセッションして生み出すような楽曲か、これ!? どっちかっていうと、スタジオワークを結集して作り上げたようなイメージの曲なのだけど‥‥サビで一転する、あのゴージャスなパートが大好き。曲の感じとしては前作に入ってても違和感はないような気もするけど、どうだろう?
  それにしても、この新作に伴うツアーではこういう楽曲をどうやって演奏するのかが非常に気になるところ。アルバムではミスチルの4人にプロデューサーの小林氏がキーボーディストとして参加、基本的にはこの5人でのセッションで作られているわけだけど‥‥そうか、小林武史がセッションから絡んでるから、初期の作風(音使い)に近いのか‥‥!?
  あ、この曲での「ギター・田原健一」(笑)と中川のベースはなかなかのもんだと思うのだが‥‥

◎M-3:NOT FOUND
  アルバム3曲目に持ってきたか、この曲を。しっかし‥‥地味に持っていく流れだなぁ。(笑)いや、純粋に「歌と楽曲と演奏」で勝負っていう意気込みが感じられて、俺は嬉しいんだけどね?
  この曲に関しては別項でシングル・レビューやってるので、今回はパス。あれから何十回、何百回聴いたけど、やっぱ名曲中の名曲。そして、カラオケでの難易度高し。(爆)

◎M-4:スロースターター
  またもや地味渋なロックナンバー。ギターの歪み具合やドラムのリズムの引きずり具合が、まんまストーンズ。いや、キースのソロ。(笑)そして歌が入ると‥‥まんま(奥田)民生!(爆)これ、是非民生にカバーして欲しいんだけど‥‥そういえば5~6年前に、民生と桜井が某誌で対談した事があったけど、その後も桜井は「もし今後ソロをやることがあったら/やることになったら、是非一度民生さんとやってみたい」って言ってたっけ。
  それにしても‥‥桜井のストーンズ好きは今に始まった事ではないが、こんなに「まんま」な曲って少なかった、いや、なかったよなぁ‥‥無駄に作り込んだり、考え込んだりしてないんだろうな、きっと。いや、考えてないように計算し尽くされてるのかも‥‥それは俺が考えすぎなのか?(苦笑)とにかく、是非ストーンズの次のジャパンツアーではミスチルに前座を‥‥(爆)

◎M-5:Surrender
  一番古い音源がこれ。レコーディング自体は前作でのセッションでのアウトテイクらしく、昨年5月のシングル「I'LL BE」にカップリングとして収録されている。"I'LL BE"はさすがに前作に別バージョンで収録されてるから、こっちには入れられないだろうし。だったらカップリングだけでも入れておくか、いい曲だし‥‥っていう流れで決まった、のかどうかは知らないが(笑)、非常にいいスパイスとなってる曲だと思う。イントロを聴いた瞬間、ビリー・ジョエルの"Stranger"を思い出す。口笛のせいか?
  そうそう、この曲のタイトル。「I surrender」と「愛されんだ」を引っかけてるの、知ってましたか?(笑)

◎M-6:つよがり
  超名曲、マジで。俺の中では"抱きしめたい"を越えた。何でこれをシングルカットしない!?って思わせるような素晴らしいバラード。多くのファンがきっと、こういう曲を彼等に望んでいたのに、彼等は出来るだけそこから離れようとしてきた。けど、肩の力を抜いた今、ようやくここにたどり着いたわけだ。
  内容的にも"抱きしめたい"のその後みたいなイメージを受けるし、ここは是非、シングルとしてリリースしてもらいたいものだ。絶対に大ヒットするだろうから(いや、だから彼等はそうしないのかも?)。とにかく一度、何も言わずに聴いて欲しい。純粋にいい曲。それ以上でもそれ以下でもないから。

◎M-7:十二月のセントラルパークブルース
  "スロースターター"よりもこっちの方がモロにストーンズだわ。あっちはストーンズっていうよりも、キースのソロに近いかも。こっちは桜井の唄いっぷりもミック・ジャガーに近いし。小林氏のアーシーなホンキートンク調ピアノがまたいい味出してる。
  歌詞の内容は、レコーディングの為に滞在していたニューヨークでの、どうでもいい日常の出来事を唄っているらしい。こういう風に「どうでもいい事」を歌にして唄ってしまう姿勢に、今の彼等の楽観振りっていうか、力の抜け具合が伝わってくる。この楽曲を境に、アルバムの色合いが少しずつ変わってくる。

◎M-8:友とコーヒーと嘘と胃袋
  一種のおふざけソングなのだが‥‥こういうコミカルな曲も、「Atomic Heart」での"雨のち晴れ"かもしれない。中盤に挿入される桜井の語り‥‥というか、セリフ!? これには爆笑させてもらった。(笑)そういえば彼、落研だったんだよな?(爆)歌い方も他の曲とは意図的に変えてるのがよく判る。ラストのシンセの音がどことなく、クリスマスシーズンになると必ず耳にする「例の曲」(笑)を彷彿とさせるのはいいとして、それに絡むコーラスが初期のミスチルっぽくて、ちょっと嬉しかったりする。

◎M-9:ロードムービー
  イントロを聴いて、顎が外れそうな程に驚いた。こ、これは‥‥正しく"君がいた夏"じゃないか!? 小林が製作段階から絡んだ事が大きく影響してるように思うのだが‥‥ちょっとホロリとさせられてしまった。
  曲の内容は大陸的な、いかにもアメリカをイメージさせる曲。浜田省吾にもありそうだな、こういう曲。きっとこういう小楽曲、ライヴじゃ受けるんだろうな‥‥って思わせる、本当にイイ曲。

M-10:Everything is made from a dream
  これまた、バンド名義での作曲。セッションというよりも、先の「ダーツでテンポ」「くじ引きでコード」で作られたような‥‥前半の実験的な曲調から一転して、サビで大爆発。っていっても爆走ロックではない。これこそ初期の彼等が持っていた「甘いポップ感」っていうようなメロディ。ファーストの彼等的とも言えなくもない。中間部にはまたセリフが挿入されるが、これはメンバー全員と女性の声をごちゃ混ぜにしている。ライヴでは間違いなく盛り上がる曲だ。
  このアルバムには昔の彼等が持っていた「純粋にいい曲」という楽曲が沢山入っている。勿論あの頃よりも成長している桜井が歌詞を書いているので、あれと同じものは期待出来ないが、それでも‥‥ここ数作で離れていったファンは、これらの楽曲を聴いてどう思うのだろうか?

◎M-11:口笛
  問題の楽曲。(笑)何故この時期に彼等はこういうピュアなラブソングを送り込んだのだろう? これはミスチルがミッシェルみたいなガレージロックをやるよりも衝撃だった。(爆)
  最初にこの曲を聴いた時、最初に書いた「~JAPAN」での行を思い浮かべた。そうか、桜井はとうとうそこまで行き着いたか、とうとう一周したんだ、と。こういう個人の思想が入らない、匿名性の高い曲ってのは、意外と書くのが難しい。もしかしたら今、こういう時期だったからこそ、今の桜井だからこそ書けた曲なのかもしれない。そして小林氏はプロデューサーという立場から「何故復帰第一弾にこういう曲を持ってこれなかった?」と思った事だろう。(笑)下らないポップロックが乱立する中、どれだけの曲が1年後、5年後、10年後に俺達の心に残っているのだろう? そう考えた時、こういう曲こそが「エヴァーグリーン」と成り得るのではないだろうか? そう、"Innocent World"での「いつの日もこの胸に流れてるメロディー」という行のように‥‥

◎M-12:Hallelujah
  アルバムを象徴する1曲ではないだろうか? ハレルヤ。中村一義にも同名曲があるが、どっちも名曲だわ、こりゃ。きっとライヴでは1番最後に演奏されるのではなかろうか? そんな気がする。
  当初、このタイトルがアルバムタイトルにもなるはずだった。という事は、当初このアルバムには「喜び」が沢山詰まっていたはずなのだ。それが何故桜井は「それだけじゃない」って思ったのだろうか? 「それだけじゃない」ってのは、多分彼が「喜び」だけでは今の自分を表現しきれなかったからだろう。"Everything is made from a dream"からはほんの一握りの危機感をも感じさせるし。これまでのネガ・モードのミスチルが好きだった人には、ただ「ハレルヤ」だけだったらきっと退屈なアルバムになっていたのかもしれない。けど、ここにはプラスの方向へと向かっている人間の感情の動きが、総て詰まっているように感じる。だから人生って面白いんだよ、愛するって事は楽しいんだよ、幸せっていいもんなんだよ?って。

◎M-13:安らげる場所
  うわっ、この流れってセカンド「KIND OF LOVE」における"いつの日にか二人で"じゃねぇか!? 感動的に終わらせるなぁ、今回も。ここにもピュアなラブソング。「孤独とゆう暗い海に/ひとつの灯台を築こう/君はただそれを見ていればいい/一番安らげる場所で」なんて歌詞‥‥キィ~ッ!(笑)まぁ‥‥そういう心境なんでしょう、きっと。けど、こういう詞が素直に出てきて、それを歌として表現出来るというのは、これまでとの大きな違いだろう。今までだったら、きっと却下されていた歌詞だと思うから。
  このアルバムには禁じ手なんて存在しない。これまでなら「こういうピュアな歌詞は今の僕には‥‥」といって却下していた。ところが、今は違う。ダメでもともと、とりあえずやってみようとなる。だから彼等は今度のツアーで、ここ5年くらいやってない‥‥"Cross Road"や"Love"のような初期の楽曲を進んで演奏しようとしてるのかもしれない。つまり、今の彼等は無敵なのだ。失うものは何もない、怖いものなんて何もない‥‥


◎最後に

  ざっと簡単に感想を書いてきたけど、如何だっただろうか? 掲示板にも書いたが、俺はこのアルバムを「桜井和寿のソロアルバム的内容」と表現した。そして「ソングライター桜井VSミスチルというバンド」としての限界が見え隠れしてるとも書いた。もしかしたら、これがバンドとしては臨界点なのかもしれない。桜井自身はどんどん成長している。それに対して他のメンバーは「今までは割と曲に対して、それを支えるポジションを捜す作業が多かったが、今回は強い曲に対してはドラムやベースがなくても成り立つ事を再確認したし、その反対の要素の曲もあった。いちプレイヤーとしては考えさせられる事が多かった」(中川)というように、相当苦労したらしい。これまでは桜井が雛形となる楽曲を持っていき、それにアレンジという形でバンドで肉付けしていったのに、今回は小林を含めた5人でゼロからスタートする事が多かったのだから、面食らったのだろう。しかも、セッションを繰り返して行く中で「別にこの曲、ドラムなくてもいいじゃん」って思うようになったり‥‥バンドとして順調に流れてきただけに、今が過渡期なのは一目瞭然だ。そうなると、今度のツアーで何かを得ない限り、バンドとしては非常に辛いのではないだろうか? きっと桜井は今後暫くは枯れる事はないだろう。この人はある意味天才だし。けど、ひとりの突出したメンバーを含むバンドの行く末を俺達は幾つも目にしている。ミスチルだってそうならないとは限らない。更に前進する為には、ここで再び休止した方がいいのではないだろうか? そう思えて仕方ない。

  もっとも、そういう危惧と作品の評価とは別物だ。一聴した時は「最高傑作?う~ん‥‥」と考え込んでしまったが、これはスルメ的アルバムだ。聴けば聴く程味が出る。うん、今なら言えるわ。これは最高傑作だって。きっと同じ日にリリースされた浜崎あゆみに1位の座は獲られてしまうんだろうけど(笑)、純粋に作品として評価される事を望む。J-POPの歴史に残したい名盤の1枚。いや、4枚目以降のアルバムは全部、歴史的名盤だからね?(笑)



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