BON JOVI『KEEP THE FAITH』(1992)
90年にツアー終了後、バンドは長期休暇に突入した。その間にジョンは『BLAZE OF GLORY』(90年)を、リッチーは『STRANGER IN THIS TOWN』(91年)をそれぞれ発表。それなりの成功を収めた。ソロ活動の最中、90年末には再びバンドとして日本の地を踏み、カウントダウン形式のフェスティヴァルを行った。(CINDERELLA、SKID ROW、QUIREBOYSが出演)しかし、いざツアーを行ったものの、やはり休養前と状況が何も変わっていないことが判明し、再び彼らは沈黙を守ることに。
そんな彼らが再び結集したのが、92年に入ってからだった。ジョンは存続をかけてメンバーとミーティングを重ね、その結果当時のマネージメントを離れ、新たに独立。またジョンがそれまで書き溜めていた楽曲を元に、そのままレコーディングに突入した。プロデューサーにはそれまでミックスを担当していたボブ・ロックが担当。当時彼は既にMOTLEY CRUEやMETALLICAで売れっ子となっていたので、当然の組み合わせと言える。4年の沈黙にも関わらずアルバムはトップ5入りし、プラチナディスクを獲得。アメリカでは4曲がシングルカットされ(「Keep The Faith」「Bed Of Roses」「In These Arms」「I'll Sleep When I'm Dead」)、特に「Bed Of Roses」はトップ10入りを果たした。またアメリカ以外のヨーロッパ諸国や日本ではその他にも「I Believe」と「Dry County」がシングルカットされ、大ヒットしている。
バンドはこのアルバムの為に30曲以上を用意したという。当時ブートレッグでもそれらのデモ曲が出回っていたが、どうも迷いが伺えた。この頃は既にNIRVANAやPEARL JAM、METALLICAが一時代を築いていた頃で、80年代を支えてきたDEF LEPPARDやBON JOVI のようなバンドには風当たりが強かった。そう考えると、LEPS『ADRENALIZE』の初登場1位やこの『KEEP THE FAITH』の第4位というのは1位以上の意味を持つといえる。だって、いろいろ迷いながらもアルバムとして発表された楽曲群はこれでもか!?って位に前向きな内容だったのだから。方や「I Hate Myself And I Want To Die」(NIRVANA)と唄っているのに対し、「I Believe」や「Keep The Faith」という前向きなメッセージを掲げて戻ってきたのだ。これが4年もブランクがあるバンドか!?っていうポテンシャルの高い楽曲が詰まった、隠れた名盤だろう。
ちなみにこのアルバム、古くからのファンにはいまいち印象が薄いらしい。当時俺の周りではそういう声が多かったのを覚えている。それと同様に、「バンドというより、ジョンのソロアルバムみたい」という声も多かった。確かにジョン単独で書いた楽曲が多いのもその理由のひとつだろう。実際にジョンは後にこのアルバムを「“I”的(私的)なアルバム」と表現している。まぁバンドとしてのミーティングで解散が決定していれば、これらの楽曲はジョンのソロとして発表されていたのだろうから、あながち間違いでもないのかもしれない。「Bed Of Roses」のような6/8拍子のバラードも、ソロを通過していなければ出来ていなかったかもしれないし。
それにしてもこのアルバム、ダンスビートにU2のエッジ(ギタリスト)を思わせるストロークギター(カッティング)を導入した新境地「Keep The Faith」や、「どうしてこれが当時大ヒットしなかったの?」って思わせる名曲中の名曲「In These Arms」、METALLICAも真っ青なヘヴィ路線「If I Was Your Mother」、プログレッシヴな大作「Dry County」等名曲目白押しな前半の充実振りに比べると、後半テンションが落ちるのが惜しい。まぁ名バラード「I Want You」のような曲もあるが‥‥確かライヴでもアルバム前半の曲ばかりが演奏されていたように記憶している。
こうやって曲名を読んでいくと、時代に合わせてなのか、非常にシンプル且つ短いタイトルが多い。上に挙げたものの他にも"Fear"なんてのもあるし。そう考えていくと、従来のBON JOVI らしさを基本に、時代に合わせて変化しようとしているのが伺えるように思う。BON JOVI なりの90年代スタイルを見つけ出そうとするかのように‥‥それがまだ完成しきっていない、過渡期的作品集なのかもしれない。そういえば、当時の雑誌レビューで「ジョンの書く曲とリッチーのギターソロがかみ合っていない」なんて声もあったっけ‥‥。
このときのツアーは93年に入ってから開始され、アメリカを回った後に6月来日。ジョンの第1子が生まれたため来日が遅れ、初日のみ延期という形をとったものの、続く2日目は3時間を越えるボリュームでファンを魅了させた。この頃から「BON JOVI のライヴは2時間以上やる」というのが常識になったような気がする‥‥また、1曲目もフレキシブルに変えていったようで、アルバム通り「I Believe」から始まることが殆どだったが、たまに「With A Little Help From My Friends」(BEATLESのカヴァー。ジョー・コッカーのカヴァーバージョンで演奏)から始まったり、「Livin' On A Prayer」のアコースティック・バージョン(後の「Prayer 94」の原型)から始めるなんて意表を突いたオープニングもあった。ちなみに俺はその3つを体験している。
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