カテゴリー「2000年の作品」の87件の記事

2020年9月15日 (火)

KITTIE『SPIT』(2000)

2000年1月にリリースされたKITTIEの1stフルアルバム。日本盤は同年7月に発売されました。

KITTIEは1996年にカナダ・オンタリオ州で結成された女性4人組ニューメタルバンド。メジャーのEpic Records傘下のArtemis Recordsと契約し、この『SPIT』というアルバムでメジャーデビューを果たしています。当時は平均年齢17歳というトピックと、女性ながらもKORNや同時期にシーンを席巻したSLIPKNOTに通ずるグルーヴメタルサウンドで注目を集め、アルバムは全米79位を記録(50万枚以上売り上げ)。『OZZFEST 2000』ではSOULFLYDISTURBEDらとともにセカンドステージに立ち、翌2001年には国内メタル系フェス『BEAST FEAST 2001』で初来日も果たしています。

ガース・リチャードソン(MUDVAYNERAGE AGAINST THE MACHINESICK OF IT ALLなど)をプロデューサーに迎えたそのサウンドは、まさに2000年前後のモダンメタル/ラウドシーンらしいゴリゴリかつグルーヴィーなもので、適度な浮遊感は初期KORNやCOAL CHAMBER、DEFTONES、SOULFLYあたりに通ずるものがあるような気がします。ただ、楽曲自体は今聴くとそこまで個性的というわけでもなく、上記バンドの亜流、もしくは影響下にあるもののまだオリジナリティを確立するまでには至っていないというところでしょうか。

しかし、そんなKITTIEの存在感を唯一無二のものにしているのは、女性ボーカルという点でしょう。クリーンパートでは線の細さが気になるものの、男性ボーカルにはない色気や妖しさ、華やかさは間違いなく大きな武器になっているし、この声で念仏調のラップボーカルやデスボイスなんてやられた日にゃ、最初こそ「おお、頑張ってるじゃん!」と生暖かい目で見守っているものの、何度か聴いているうちに「あれ……これ、カッコいいんじゃない?」と気づかされるはずです。

2020年の耳で聴くと、若干の古臭さは否めませんし、突出した個性はそこまで感じられない作品かもしれません。が、本作を当時17歳前後の女の子たちが魂削って作り上げたと考えただけで、オジさんは胸が熱くなるわけです(完全に親目線ですね、これ。苦笑)。まあ、そういう事実を抜きにしても、デカイ音で聴いたら意外とカッコいいんですよ、マジで。

あと、改めて聴くとニューメタルというよりはハードコアの色が強いのかな?という気がしてきました。どことなく初期RATMっぽい色合いも見え隠れしますし、90年代半ばのSEPULTURA的パーカッシヴさも含まれているし。10代の子たちがカッコいいと思ったものを全部詰め込んだミクスチャー感こそ、実は一番の初期衝動だったりするんですよね。そういう意味では2度と真似できない(したら怒られる)、奇跡の1枚なんじゃないでしょうか。

僕は当時、アルバムから入ったわけではなく、コンピ盤に収録されていた「Brackish」を聴いてハマったクチでして。そこから「Charlotte」のMVを観て「ああ、これはアリだわ」と気づき、慌ててアルバムに手を出したわけです。その頃にはもう、日本盤も出ていたんじゃないかな。よく足を運んでいたロック系クラブイベントでも彼女たちの曲が何度かかかっていましたし、当時局地的に盛り上がっていた記憶があります。

上に書いたように、女性ボーカルという点以外ではまだまだ未成熟ですが、続く2ndアルバム『ORACLE』(2001年)では「らしさ」を掴み始めているので、本作をチェックして気になった方はあわせて聴いてみることをオススメします(2作目も時間があったら取り上げようかな)。

 


▼KITTIE『SPIT』
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2020年7月27日 (月)

THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』(2000)

2000年2月末にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの5thアルバム。

ジミー・チェンバレン(Dr)の脱退を経て、打ち込み主体のダークな前作『ADORE』(1998年)が賛否両論を巻き起こしたスマパン。その後、ジミーがバンドに復帰し、ビリー・コーガン(Vo, G)、ジェイムズ・イハ(G)、ダーシー(B)とのオリメンで早くも新作制作へと突入しますが、今度はレコーディング終了後にダーシーが脱退。後任として元HOLEのメリッサ・オフ・ダ・マーを迎えて、ツアーへと臨みます。

アルバムはジミーのダイナミックなドラミングを活かしたハードロックナンバー「The Everlasting Gaze」からスタート。全編この調子で進むのかと思いきや、続く「Raindrops + Sunshowers」は前作での経験が見事に反映されたデジタル色を散りばめたロックチューンだし、シングル向きなポップロック「Stand Inside Your Love」や「Try, Try, Try」のような楽曲も用意されている。穏やかなニューウェイヴ感が心地よい「I Of The Mourning」、打ち込みリズムを同期させたキャッチーな「The Sacred And Profane」、ヘヴィなギターリフと重々しいリズムがタイトルまんまな「Heavy Metal Machine」、『GISH』(1991年)の頃のフリーキーさを存分に堪能できる約10分もの大作「Glass And The Ghost Children」など、全体を通してこれまでの“メジャー感が強いスマパン”の魅力が凝縮された集大成的内容に仕上がっています。全15曲で約73分という長尺なトータルランニングも、アナログなら2枚組になるところをCD1枚にギリギリ収めようとするあたりに、超大作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)よりも気軽に楽しんでほしいという意思が感じられます。

ですが、ここまでがっつり作り込んだものの、不思議なもので過去作ほど強く印象に残らないのが本作唯一の欠点かもしれません。1曲1曲は非常によく作り込まれているものの、アルバムとして並んだときのストーリーがそこまで強く感じられない。CD1枚にまとめてしまったことで、逆に全体像がぼんやりしてしまった(『メロンコリー』のようにディスク2枚に分けていれば、また印象も変わったのかも)。いろんなことが裏目でに出てしまった、残念な1枚と言えるかもしれませんね。

本作からは1曲もシングルヒットが生まれることなく、アルバム自体も全米3位まで上昇。セールス面では前作のミリオンにまで達しない、50万枚程度という惨敗ぶり……チャートの上位にはブリトニー・スピアーズやBACKSTREET BOYSのようなポップ・アイコンたちが名を連ねる現状を前に、スマパンは2000年末のツアー終了を持ってバンド解散を決意します。このラストツアーの一環で行われた日本公演については、当時このサイトでもレポートを残していますので、よろしければご参考まで。

オフィシャルな形ではラストアルバムとなってしまった本作。実は、アンオフィシャルな形でもう1枚(「枚」という概念はないかな。笑)、『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』(2000年)という作品を同年9月にネット配信することになるのですが、それについてはまた別の機会に。

 


▼THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』
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2020年7月25日 (土)

3 DOORS DOWN『THE BETTER LIFE』(2000)

2000年2月にリリースされた3 DOORS DOWNのデビューアルバム。日本盤は海外から少々遅れ、同年6月末に発売されました。

アメリカ・ミシシッピー州エスカタウパで1996年に結成された5人組バンドの彼らは、2000年1月に先行リリースされたデビューシングル「Kryptonite」が全米3位まで上昇する大ヒットを記録し、続いて発売された本アルバムも全米7位、現在までに700万枚ものセールスに達するメガヒット作となりました。なお、本作からはほかにも「Loser」(全米55位)、「Be Like That」(同24位)、「Duck And Run」といったシングルが生まれています。

いわゆるポスト・グランジの枠から登場した3 DOORS DOWNですが、聴けばわかるように特段新しいことをしているわけではありません。むしろ、90年代半ばから脈々と続く「土着的なアメリカン・ロックとグランジ以降のオルタナティヴ・ロックの融合」をセオリー通りに形にした、非常に優等生的なサウンド/楽曲がずらりと並ぶアルバムで、だからこそキャッチーでラジオ・ライクな「Kryptonite」がバカ売れしたんでしょう。

2000年というとUSロックシーン的にはLINKIN PARKDISTURBEDPAPA ROACHといったニューメタルバンドが次々とメジャーデビューを果たしたタイミング。そのラインで捉えようとすると、3 DOORS DOWNはちょっと異質な印象を受けます。むしろこのバンドは、90年代のUSロックシーンを牽引し続けたPEARL JAMCREEDの正統的後継者であり、『SILVER SIDE UP』(2001年)で爆発的ブレイクを迎えるNICKELBACK、のちに『LEAVE A WHISPER』(2003年)でデビューヒットを果たすSHINEDOWNらをオーバーグラウンドへと導いた次世代の先駆者だったのではないか?と捉えることができます。

先の「Kryptonite」の完璧なまでのポップネスは言うに及ばず、グランジ世代にはたまらない「Loser」や「Down Poison」、そのキャッチーなメロディが耳に残る「Be Like That」、90年代のUSロックのイメージを見事に引き継ぐ「Life Of My Own」や「So I Need You」、印象的なギターリフを持つ「The Better Life」や「By My Side」など、とにかく1曲1曲がしっかり作り込まれており、とてもデビュー作とは思えない完成度。だからこそ、本作がリリースされた当時は「出来過ぎ!」と若干敬遠気味だったことも、良くも悪くも本作らしさを物語っているのではないでしょうか。

海外と比べ、日本では決して知名度の高いバンドとは言えませんが、だからこそ本作がなぜいきなりメガヒットを果たしたのか、実際に聴いてその理由を確認してもらいたいところです。

 


▼3 DOORS DOWN『THE BETTER LIFE』
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2020年7月13日 (月)

PAPA ROACH『INFEST』(2000)

2000年4月にリリースされたPAPA ROACHのメジャーデビューアルバム(通算2作目)。日本盤は少々遅れ、同年9月にジャケットを変えて発売されました。

20年経った2020年に振り返ってみると、2000年というのは単にミレニアムイヤーという節目だけでなく、海外メタルシーンにとって大きな転換期だったことは疑いのない事実です。例えば、同年3月にDISTURBED『THE SICKNESS』でメジャーデビューしたほか、10月にはLINKIN PARK『HYBRID THEORY』でデビュー。さらに、PAPA ROACHもこの『INFEST』でメジャーシーンに進出と、2001年以降のブレイクぶりを考えるとすごく大きな1年だったことが伺えます。

ゴキブリをドアップにした海外盤ジャケットに嫌悪感を覚えるリスナーも少なくないでしょう。事実、僕も最初はこのジャケで退いた記憶がありますから。それで本作を手に取るまでに時間を要してしまったんですよね。今思えば勿体ないことをしたなと。

DISTURBEDは正統派メタルをモダンな形にバージョンアップし、リズムも歌唱も跳ね気味。LINKIN PARKはヘヴィなロックとヒップホップのマッシュアップと、どちらも90年代のラップメタル以降というイメージを受けますが、PAPA ROACHはというと……その影響はもちろん随所に散りばめられているのですが、むしろ本作で聴ける楽曲は王道のメロディアスHR/HMという印象を受けます。アメリカよりもイギリスで大ヒットした「Last Resort」(全米57位/全英3位)なんて、そのギターリフからしてHR/HM以外の何者でもないですからね。

かつ、ボーカルもスクリームに逃げたりすることもなく、しっかりメロディを聴かせる。ラップ調ボーカルはあくまで味付け要素のひとつ。それは「Broken Home」や「Between Angels And Insects」(全英17位)といったヒットシングルも同様で、「Revenge」や「Snakes」のようなスクラッチが加わったラップメタル色の強い曲もあるものの、アルバムを通して印象に残るのは上記に挙げたようなメロウなHR/HMチューンなんですよ。リリース当時、ニューメタルとかそういった表現は一切気にせず、単に90年代以降の流れを汲む、カッコよくて親しみやすいメタルだと認識していたくらいですから。

このバンド、本作以降はオルタナティヴロックやストレートなギターロックなどさまざまな変遷を繰り返し、最終的にはそのすべてを飲み込んだミクスチャーロックを軸に、シーンに健在し続けている。ある意味賢くて、ある意味節操がない。本作の優等生的仕上がりを聴けば、それも納得いくといいますか(良い意味で言ってます)。リリースから20年経った今聴いても純粋に良い作品と断言できる、「モダンHR/HMリスナーなら絶対に聴いておくべき」1枚です。

 


▼PAPA ROACH『INFEST』
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2020年6月12日 (金)

IN FLAMES『CLAYMAN』(2000)

2000年7月にリリースれたIN FLAMESの5thアルバム。

作品ごとにメンバーチェンジの多かった彼らが、本国スウェーデンのみならず日本でも成功を収めた前作『COLONY』(1999年)に続き、初めて同じ布陣で制作に臨んだ1枚。アンダース・フリーデン(Vo)、イェスパー・ストロムブラード(G)、ビョーン・イエロッテ(G)、ピーター・イワース(B)、ダニエル・スヴェンソン(Dr)というゴールデン・ラインナップによる充実期は、まさにここから始まったと言っても過言ではありません。

前作で試みたクリーントーン・ボーカルは今作でより効果的に用いられるようになり、またグロウル・パートもデス声というよりはスクリームに近づいているような印象を受ける。ソングライティング面のみならずこういった表現からも、デスメタルを起点にしたメロディック・デスメタルが派生ジャンルではなく新たな大枠へと進化しつつあることが伺える、興味深い仕上がりとなっています。

オープニングの「Bullet Ride」の作風に一瞬ギョッとしつつも、すぐにそのキラーチューンぷりに心を惹きつけられ、続く王道メロデス・チューン「Pinball Map」でガッツポーズを取る自分に気づく……冒頭2曲で完全にノックアウトさせられる仕上がりで、その後もミディアムテンポのメロウなメタルチューン「Only For The Weak」、90年代後半のCARCASSを彷彿とさせる「...As The Future Repeats Today」、緩急をうまく使い分けたグルーヴィーな「Square Nothing」、疾走感の強い王道ナンバー「Clayman」と、ヘヴィながらもキャッチーな楽曲がずらりと並ぶ構成はさすがの一言。楽曲のバラエティという点においては、前作『COLONY』以上の広がりを見せているのではないでしょうか。

こうやって久しぶりに聴いてみると、メロデスの教科書的な側面を持ちつつも、実は2000年代前半に台頭し始めるUSメタルコアの雛形と呼べる要素もたくさん見受けられるんですよね。というか、むしろメロディック・デスメタルをルーツにモダン・メタルコアが派生していったと解釈するほうが正解なのかな。そのへんは90年代までのメタルコア(と呼ばれるジャンル)とは一線を画するものがあり、改めて同じジャンル名でも別枠なんだと実感させられます。

アルバム後半も緩急の落差が気持ち良い(むしろIN FLAMES流バラードと断言したい)「Satellites And Astronauts」を筆頭に、どの曲も粒揃い。なぜこのアルバムがアメリカで評価されたのかも納得の内容です(本作を携えたUSツアーをSLIPKNOTと一緒に回ったのも大きかったのかな)。

2020年8月には本作リリース20周年を記念したアニバーサリー・エディションも発売予定。すでに「Clayman」の再録バージョンが公開済みですが、そういった現編成でのリテイクも気になるところです。

 


▼IN FLAMES『CLAYMAN』
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2020年5月25日 (月)

SR-71『NOW YOU SEE INSIDE』(2000)

2000年6月にリリースされたSR-71の1stアルバム。日本盤は同年10月に発売。

SR-17はアメリカ・メリーランド州バルティモア出身の4人組バンド。ミッチ・アラン(Vo, G)を中心に1998年に結成され、2005年の解散までに3枚のアルバムを残しています。

プロデュースを手がけたのはギル・ノートン(PIXIESFOO FIGHTERSFEEDERなど)。彼はHONEYCRACKTERRORVISIONのようなバンドも手がけていますし、それを思えば適任かな。また、「Right Now」のみデヴィッド・ベンデス(BRING ME THE HORIZONBEARTOOTHCrossfaithなど)、「Empty Spaces」のみジョン・シャンクス(BON JOVI、GOO GOO DOLLS、WESTLIFEなど)がプロデュースを担当。メジャー(RCA Records)なりにお金も期待もかけて制作していたことがわかります。

また、本作は海外盤と日本盤(初出時)とではジャケットが異なります。海外盤は黒地に黄色いバンドロゴ、おもちゃのロボットをあしらったモノクロのアートワークですが、日本盤はメンバー4人をフィーチャーした明るめのデザインで、どこかBACKSTREET BOYSなどの男性アイドルを彷彿とさせるものがあります。そういう打ち出し方をしたかったんだろうな、そっち側の層も掴みたかったんだろうなというのが伺えますね。

とはいえ、サウンドそのものはオルタナティヴロック経由のポップパンク。シンプルなギターリフとキャッチーな歌メロ&シンガロングという、この頃には日本でも定着していたメロコア層にもアピールする楽曲は、確かに日本の洋邦ロックリスナーには十分にアピールするものがあります。曲によってはパワーポップと言えなくもないですが、どちらかといえばハードロック寄りと言えるかもしれません。なので、当時は僕のようなHR/HM側の人間も普通に楽しんでおりました(まあHi-STANDARDGREEN DAYに対して耐性のあるリスナーなら問題ないと思いますが)。

このアルバムからは「Right Now」(全米102位)というヒットが生まれており、この曲は日本でもタイアップが付いたりしたので覚えているという人もいるのでは。この曲のみ、メンバーのミッチとかのブッチ・ウォーカーとの共作。楽曲の大半はミッチが中心となり制作されていますが、クレジットでは他の3人の名前も見つけることができ、それぞれ単独で書いた楽曲も1曲ずつ用意されています。個人的には先の「Right Now」以上に、アルバム後半に用意された「Alive」や「Go Away」「Paul McCartney」といったじっくり聴かせるナンバーや、「Fame (What She's Wanting)」のような豪快なパワーポップチューンがお気に入りです。

今聴くと、以降のJ-ROCKに与えた影響も見つけられます。それくらいしっかり作り込まれた良質の作品であり、あまり時代の経過を感じさせない内容だと思いました。そこまで派手ではないけどギターソロもしっかりフィーチャーされているし、ハードロック寄りリスナーも存分に楽しめる1枚だと断言できます。

 


▼SR-71『NOW YOU SEE INSIDE』
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2020年5月16日 (土)

GREEN DAY『WARNING』(2000)

2000年10月初頭発売の、GREEN DAY通算6作目のオリジナルアルバム(メジャー通算4作目)。日本盤は海外に先駆け、同年9月下旬にリリースされています。

メジャーデビュー作『DOOKIE』(1994年)から3作続けてロブ・カヴァロをプロデューサーに迎えアルバム作りを行ってきたバンドが、本作では初めてセルフプロデュースに挑戦(ロブもエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジット)。直近の『NIMROD』(1997年)では単なるアメリカン・パンクロックから外に一歩踏み出し、ロカビリーやアコースティックバラードなどに挑戦することで音楽の幅を広げ始めましたが、本作ではその変化がさらに大きな形で表現されています。

ポップパンクをベースにしつつもテンポを落とすことで、全体的に落ち着いた印象を作り出している。また、ギターの歪みも比較的抑えられ、要所要所にアコースティックギターを被せることでサウンドに柔らかさやしなやかさを与えている。悪く言ってしまえば「角が取れた」と否定的な声が聞こえてきそうですが、いえいえ。ちゃんと歌詞を読んでみてよ、と。しっかりパンクロック・バンドとしての主張に変化がないことに気づかされるはずです。むしろ、改めて歌詞を読み返すと、続く次作『AMERICAN IDIOT』(2004年)への布石が見つけられるんですよ。そもそも、『WARNING』(=警告)というアルバムタイトル自体が、その一端を担っているわけですからね。

だけど、「Basket Case」や「Welcome To Paradise」「Stuck With Me」のようなアップチューンを期待する層には、本作はおとなしすぎたのかな? 当時は自分の周りからあまり良い声を聞かなかった記憶があります。

でもね、あの頃のロック系クラブイベントでは「Minority」がヘヴィローテーションされていたし、みんなこの曲で楽しく踊っていたんですよ。これ以外にも「Warning」や「Waiting」といったシングル曲、「Church On Sunday」に「Castaway」「Macy's Day Parade」など完成度の高い楽曲群、次作で迎える転換期の序章とも言える異色作「Misery」など1曲1曲の個性は過去イチ。もし『AMERICAN IDIOT』をGREEN DAY第2章の幕開けと捉えるなら、この『WARNING』は第1期の集大成であり、ストレートなポップパンクから社会派パンクロックへと移行する上での過渡期でもあるのかな。

決して派手な内容ではないですし、セールス的にも過去3作と続くメガヒット作(『AMERICAN IDIOT』)に挟まれ低迷した印象を与えますが(全米4位とチャート的には良好でしたが、セールスは初めてミリオンを下回ってしまう)、彼らのファンの中では「隠れた名盤」「実は一番好き」という声も少なくないのでは。

自分の中ではGREEN DAYのことを初めて「パワーポップバンド」として認識することとなった大切な作品であると同時に、40分程度でコンパクトというのも手伝って『AMERICAN IDIOT』よりも聴く頻度の高い一番好きな1枚です。

 


▼GREEN DAY『WARNING』
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2020年5月 1日 (金)

MARILYN MANSON『HOLY WOOD (IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』(2000)

2000年11月にリリースされた、MARILYN MANSONの4thフルアルバム。

グラムロック路線へとシフトし全米1位を獲得した前作『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)から2年ぶり、同作を携えたツアーの模様を収めたライブアルバム『THE LAST TOUR ON EARTH』(1999年)から数えても1年ぶりと、この時期のマンソンはかなり精力的なイメージがあります。

ただ、1999年4月にアメリカで起こったコロンバイン高校銃乱射事件の影響(犯人の2人がマンソンのファンだったというデマ)もあり、さまざまなメディアやキリスト教保守派から糾弾されるというネガティブキャンペーンもあり、その音楽が正当な評価をされなかったのもこの時期の特徴かなと。

そんな時期に制作された本作は、『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)から始まった三部作構想のラストを飾る1枚。物語的には本作を起点にさかのぼっていく形になりますが、サウンド的には過去2作(『ANTICHRIST SUPERSTAR』『MECHANICAL ANIMALS』)のいいとこ取りという、おどろおどろしさを残しつつも全体的にはキャッチーという仕上がりです。

元々はアルバムに基づき、サブタイトルにある『IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH』と題した映画を制作する予定もあったようですが、上記のようなトラブルに巻き込まれたこともあり、映像化は断念。とはいえ、トゥイギー・ラミレズ(B)やジョン5(G)といったメンバーの尽力もあり、1曲1曲がコンパクトな仕上がりで親しみやすく、楽曲面ではかなり恵まれていた印象があります。事実、シングルカットされた「Disposable Teens」(映画『ブレアウィッチ2』主題歌)や「The Fight Song」、「The Nobodies」はどれもキャッチーで、現在までライブの定番曲として親しまれているものばかりですしね。

アルバムは4つのパートから構成されているのですが、個人的にはディープさを増していく第2パート「D: The Androgyne」(M-5「Target Audience (Narcissus Narcosis)」〜M9「A Place In The Dirt」)、そして第3パート「A: Of Red Earth」(M-10「The Nobodies」〜M-14「Burning Flag」)あたりが本作のキモかなと思っており、『MECHANICAL ANIMALS』大好きマンとしては同作の流れを良い形で引き継いだこのあたりのパートは大好物だったりします。

本作をキャリア最高峰のひとつに挙げるリスナーも多いようですが、過去2作の良い部分をバランスよく内包するという意味では確かにそのとおりかと。個人的には好みの問題で、前作のほうが一歩上だったりするものの、この三部作は3枚まとめて楽しむことで見えてくるものも多いので、ぜひマストで聴いていただきたいところです。

ちなみに、本作は最初に書いたネガティブな流れもあってか、全米13位とチャート的にはかなり数字を落とす結果に。続く5thアルバム『THE GOLDEN AGE OF GROTESQUE』(2003年)では再び全米1位を獲得していることを考えると、つくづく不憫なアルバムだなと悲しくなってしまいます。

 


▼MARILYN MANSON『HOLY WOOD (IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』
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2020年4月29日 (水)

SLASH'S SNAKEPIT『AIN'T LIFE GRAND』(2000)

2000年10月にリリースされたSLASH'S SNAKEPITの2ndアルバムにしてラスト作。日本盤は海外より1ヶ月前倒しの同年9月に発表されています。

SLASH'S SNAKEPIT名義の1作目となる『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』(1995年)は、GUNS N' ROSESの長い休暇期間にしびれを切らしたスラッシュが制作したサイドプロジェクト的な作品でしたが、続く今作はガンズ脱退を経て最初に作られたメインバンドとしての1枚。また、前作には当時のガンズメンバー(マット・ソーラムやギルビー・クラークなど)が参加していましたが、今回はスラッシュ以外のメンバーを一新しており、ここから新しいスタートを切るぞという意気込みが感じられます。

ロッド・ジャクソン(Vo)、ライアン・ロキシー(G)、ジョニー・グリパリック(B)、マット・ローグ(Dr)という比較的無名/これまでのキャリアと無関係なメンツを迎えたあたりに、スラッシュの「裸一貫、一から再スタート」という気概が伝わってきます(ライアンはギルビーの1stアルバム『PAWNSHOP GUITARS』にも参加していたり、アリス・クーパーのツアーメンバーでもあったので、唯一ガンズ絡みと言えなくもないですが)。AEROSMITHCHEAP TRICKNEW YORK DOLLSなどで知られるジャック・ダグラスがプロデュースを務めた本作は、前作でのブルースフィーリング濃厚な作風から一転、ソウルフルさこそ漂うものの根本には「パンキッシュでグラマラスな豪快ハードロック」という原点回帰な1枚に仕上がっています。

前任のエリック・ドーヴァーがアクセル・ローズ的テイストの声/ボーカルスタイルの持ち主だったこともあり、前作には「ガンズが今、スラッシュ主導で新作を作ったらこうなるのかな?」という側面もありましたが、今作で歌うロッドの声質は前任ともアクセルとも異なる野太いものだからか、ギタープレイこそガンズっぽいのの曲自体は「ポップさ濃厚な、モダンテイストのハードロック」という印象が強いかな(とはいえ、一部でアクセル的歌唱を意識した歌い回しも登場しますが)。楽曲のバリエーションも前作以上の幅広さがあり、全体的にモノトーンのイメージが強かった前作と比べるとかなり聴きやすいかもしれません。

そういう意味では、本作は「スラッシュの新バンド」とか「ガンズ関連作品」という観点で触れるのではなく、当時台頭し始めたBUCKCHERRYHARDCORE SUPERSTARBACKYARD BABIESあたりと同じ視点で楽しむ1枚ではないかと。要は、スラッシュなりに当時の時流を考えた結果がこれだったと。

でも、世間が求める音はこれでなかったんですよね、残念ながら。そして、SNAKEPITは短命で終わり、スラッシュは再びダフ・マッケイガンやマット・ソーラムと合流し、VELVET REVOLVERを結成するのでした。

……って、こう書くと本作は失敗そのものみたいな受け取られ方をしてしまいそうですが(だってそう書いているじゃん自分)、そのVELVET REVOLVERへの布石も至るところに散りばめられた本作、意外と侮れない重要作なんじゃないかな。『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』から本作に至る流れ、そしてここからVELVET REVOLVERへとつながっていく流れ。点と点がすべてつながっているだってことを、本作を聴き込めばより深く理解できるはずです。

 


▼SLASH'S SNAKEPIT『AIN'T LIFE GRAND』
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2020年4月14日 (火)

IRON MAIDEN『BRAVE NEW WORLD』(2000)

IRON MAIDEN、来日中止になっちゃいましたね……前回の両国国技館はいろいろあって行けなかったので、今回は……と楽しみにしていただけに、残念でなりません。まあ、こんなご時世ですから素直にライブを楽しめるのか?と問われると、確かに疑問なんですけどね。とにかく今は、早く健康な世の中になって再来日が決まることを願っております。

というわけで、今回紹介するのは2000年5月末にリリースされたIRON MAIDENの12thアルバムです。

1999年に3代目シンガーのブレイズ・ベイリーが脱退。これと代わるように先代のブルース・ディッキンソンがバンドに再加入し、さらにやニック・ガース(G)の前に在籍したエイドリアン・スミス(G)までもが再加入。ギタリストの誰か1人が抜けるのではなく、トリプル・ギター編成の6人組バンドとしてIRON MAIDENは新たなディケイドへと突入することになります。

アルバムデビュー20周年という節目に発表された本作は、ケヴィン・シャーリー(AEROSMITHDREAM THEATERJOURNEYなど)という若手エンジニアを共同プロデューサーに迎えパリでレコーディングを敢行。ライブ・レコーディングに近い形で、トラックごとにではなく一斉に演奏した音を録っていったそうで、これは現編成になってまず行われたツアー「The Ed Hunter Tour」での勢いをそのまま残す意味もあったのかなと(楽曲自体はツアー前から書かれていたようですが)。

いくつかの楽曲(「The Nomad」「Dream of Mirrors」「The Mercenary」)はブレイズ在籍時の前作『VIRTUAL XI』(1998年)から存在したようで、本作収録にあたりブラッシュアップされたとのこと。そういえば、ブレイズ加入後の2作(『VIRTUAL XI』と1995年の『THE X FACTOR』)はスティーヴ・ハリス(B)のカラーが強すぎたのか、長尺だけどモノトーンという印象の楽曲が多かったように思います。本作にもそういったタイプの楽曲(特に「The Nomad」あたり)は存在するものの、いくぶん彩り豊かになった印象も受けます。

それは、ブルースという“歌える”シンガーが歌っていることも大きいのかなと。ブレイズはどこか一本調子なところがありましたからね。あれはあれでよかったんだけど、曲によっては合わなかったですし。また、オープニングを飾る「The Wicker Man」のキャッチーさ(エイドリアン、スティーヴ、ブルース共作)や、続く「Ghost Of The Navigator」「Brave New World」などが持つ“複雑なのに親しみやすい”要素は、過去2作には確実になかったもの。なんというか、1曲1曲の作りが丁寧な印象を受けるんです。それはクリアなサウンドのせいもあるでしょうけど、なによりも曲作りにいろんな声や意見がしっかり反映されたのかなと。そこの違いが形となって表れた1枚なんじゃないかと思います。

全10曲で70分近い作風は相変わらずですが、それでも先の3曲や「Blood Brothers」「The Fallen Angel」「Out Of The Silent Planet」など印象に残る楽曲は多数存在します。長めの曲を1曲削って、コンパクトな疾走チューンを加えただけでだいぶ印象は違ったと思いますが、現在までの“メイデンらしさ”を決定づけたという点においてはひとつの雛形となる、メイデン史を語る上で欠かせない1枚です。

 


▼IRON MAIDEN『BRAVE NEW WORLD』
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