THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』(2000)
2000年9月5日に発表された、THE SMASHING PUMPKINSの6thアルバム。日本盤未発売(というか、一般発売されていない代物です)。
このアルバムは本来、同年2月に発売された『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』(2000年。以下、『MACHINA I』と記す)と同じセッションから生まれた楽曲を収めたもので(一部『ADORE』期のアウトテイクあり)、ビリー・コーガン(Vo, G)はダブルアルバムとしてのリリースを画策していたんだとか。しかし、レーベル側が難色を示したことで、単独アルバムの『MACHINA I』(とはいっても、このアルバム自体全16曲/77分とかなり長尺ですが)として発売。それでもビリーは『MACHINA I』の続編の正式リリースを渇望していたのですが、同作が前作『ADORE』(1998年)を大きく下回るセールスしか記録できなかったことで、最終的には続編の正式リリースは却下されてしまいます。
ところが、ビリーはこの音源を2LP(アルバム本編14曲)+3EP(計11曲)としてアナログ盤を25セットのみプレスし、自主レーベルConstantinople Records経由でラジオ局や身近な友人たち、著名なファンコミュニティに無料配布。ここからリッピングした音源をネット上で無料配布することを推奨したのです。今だったらサブスク経由で拡散できるんだろうけど、24年前はそうもいかなかったわけです。
現在もウェブ・アーカイブ経由でダウンロード可能なこのアルバム。アナログ盤からのリッピングということで音質的にはやや難ありですが、『MACHINA I』と同系統のハードロックやゴシックロック、シューゲイザー/ドリームポップ的な佳曲をたっぷり楽しめる、貴重な作品集となっています。
詳しい内容に関してはWikipediaを参考にしていただくとして……楽曲のバラエティ豊かさは『MACHINA II』のほうが一歩上ということもあり、個人的にはこちらのほうが好みだったりします。なにせ、冒頭3曲の飛ばしっぷりはキャリア随一ですしね。かと思えば、中盤にはドリームポップの流れを汲むキャッチーな楽曲や、ジェイムズ・イハ(G, Vo)がボーカルを執る楽曲もある(その後のソロの延長線上にある「Go」)。『MACHINA I』収録の「Blue Skies Bring Tears」の別バージョン(『MACHINA I』ではスローテンポでゴシック調、『MACHINA II』では前のめりなパンク/オルタナロック調)もあり、なかなか味わい深い内容ではないでしょうか。ですが、アルバムのまとまり/完成度は商品化された『MACHINA I』のほうが数歩上かな。そういう意味でも、ダブルアルバムとして出すことがやっぱり正解だったような気がします。
EP3枚のほうはアルバム本編から漏れた楽曲や、別バージョンなどで構成されており、あくまでアウトテイク集といったもの。しかし、本編から外すには惜しい良曲も少なくないので、こちらはこちらで楽しめるはずです。
本作収録曲はその後、ベストアルバム『ROTTEN APPLES: GREATEST HITS』(2001年)本編に「Real Love」が、同作初回盤に同梱されたボーナスディスク『JUDAS O』に「Lucky 13」「Slow Dawn」「Here's To The Atoic Bomb」「Saturnine」に収録。よりクリアな音質で貴重な良曲たちを耳にすることができるので、まずはこちらからチェックしてみてはいかがでしょう(とはいっても、『JUDAS O』はサブスク未配信なので中古ショップでCDを買わねばなりませんが。安価で入手可能なので、DISC 1の名曲群とともにお楽しみいただきたいところです)。
2018年頃、ビリーは『MACHINA』セッションで制作した作品群をリイシュー&ボックス化する計画がある、そこで『MACHINA II』も正式にCD化&サブスク配信される予定だと発言していましたが、あれから6年近く経った今もその予定は白紙のまま。『ADORE』まではリイシュー&ボックス化されているので、発売から25周年を迎える2025年あたりにはぜひ実現させていただきたいものです。
▼THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』
(Free Download:smashingpumpkins.com [web.archive.org])