2017/02/07

THE HELLACOPTERS『HIGH VISIBILITY』(2000)

2015年末から本当にたくさんの、一時代を築き上げたアーティストたちの訃報が続いています。そんななか、つい数日前に元THE HELLACOPTERSのギタリスト、ロバート・ダールクヴィストが亡くなったことを知りました(ソースはこちら)。この名前だとなんとなくピンとこないけど、ロバート・ストリングスといえば「ああ!」と腑に落ちる方も多いのではないでしょうか。

ストリングスを生で観たのはたった1回きり、3度目にして結局最後の来日となってしまった2001年1月の渋谷CLUB QUATTRO公演(当時のレポートはこちら)。ちょうど4thアルバム『HIGH VISIBILITY』を携えて実施されたものでした。最前列で観たというのもあるけど、そのときの熱気や興奮は今でも昨日のことのように覚えています。

ドレゲン(BACKYARD BABIES)が在籍した初期2作にあったパンキッシュなガレージロック色からスピードを若干落とし、よりソウルフルな方向へと移行しはじめた3rdアルバム『GRANDE ROCK』(1999年)を経て、メジャーレーベルへと移籍して制作されたのが2000年リリースの『HIGH VISIBILITY』。作風的には『GRANDE ROCK』で表現した方向性をより突き詰めたもので、シングルカットもされた「Toys And Flavors」「No Song Unheard」で聴ける“エモみの強いブラックテイストのロックンロール”は初期とは異なる魅力に満ち溢れています。

かと思うと、適度な疾走感を持つ「Baby Borderline」「Sometimes I Don't Know」「I Wanna Touch」「Hurtin' Time」のような従来のアップチューンも豊富にあるし、壮大さが加わったことでオープニングにふさわしい1曲に仕上がった名曲「Hopeless Case Of A Kid In Denial」、70年代のKISSがよりソウルフルになったような「You're Too Good」「A Heart Without Home」(特に後者は、終盤にアップテンポに展開するアレンジがいかにもで最高すぎ)、どこか怪しげなフレーズ&メロディがクールな「No One's Gonna Do It For You」もある。『GRANDE ROCK』と同時期にリリースされたミニアルバム『DISSAPOINTMENT BLUES』という習作を経て、その個性を完全に確立させたのが『HIGH VISIBILITY』だったんだなと、本作以降のアルバムを聴くと改めて実感させられます。

初期2作を別モノとして捉えると、THE HELLACOPTERSのアルバムでもっとも好きなのがこの『HIGH VISIBILITY』。もちろんそれ以外のアルバムが本作よりも劣っているという意味ではありませんので、誤解なきよう。どのアルバムもそれぞれの良さがあって好きなのですが、個人的に作品が持つガレージロック度、ポップ度、ソウル度のバランス感が一番絶妙なのが本作なんじゃないかと思うのです。それに加えて、やはり2001年の来日公演が非常に思い出深いものになったことも大きな要因。きっとその後のアルバムでも来日が実現していたら、思い入れや感じ方も変わったのかもしれませんね。

ああ、もう一度ニッケとストリングスのステージ上での絡み、見たかったなぁ……。



▼THE HELLACOPTERS『HIGH VISIBILITY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 07 12:00 午後 [2000年の作品, Hellacopters, The, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2015/10/05

Megadeth全アルバム私的レビュー(3/5)

思いつきで急遽始めたこの「Megadeth全アルバム私的レビュー」。第1回は80年代の3作品(1st〜3rd)第2回はマーティ・フリードマン&ニック・メンザ加入後の黄金期3作品(4th〜6th)についてでしたが、続く第3回は黄金期崩壊〜マーティ脱退〜そして解散へという下り坂期の3枚(7th〜9th)です。ここに、8th後にリリースされたベストアルバム『Capitol Punishment: The Megadeth Years』を加えたレビューとなります。

正直、この時期のMegadethにはあまりいい思い出がないのですが、唯一のめり込んだ『Risk』という異色作があるので、まだモチベーション的には高かったほうかもしれません。でもこの機会にあの時期の作品を聴き返してみたら当時の記憶以上には悪く思えなかったし、逆に「あれ、そこそこいいじゃん」とも思えてきたので、この企画やってみてよかったと思いました(個人的に)。


■7th『Cryptic Writings』(1997年)

ムステイン、エルフソン、マーティ、ニックの黄金期布陣としては最後のアルバムとなった7枚目。前作での過渡期的不調が嘘のような、ある種開き直ったと思えるほど清々しい「ポップでキャッチーなHR/HM」を聞かせる1枚。5thから彼らが挑んできた「コンパクトでキャッチーなミドルテンポ」な作風の究極型と言えるような内容で、前作に足りなかった「She-Wolf」をはじめとするファストチューンが加わったことでそのバランス感はより際立ったものとなっている。Metallica「Enter Sandman」をポップにしたような1曲目「Trust」、サビの軽快なノリに思わずツッコミを入れたくなるほどドポップな「Almost Honest」など、それまでの活動を踏まえれば首を傾げたくなるような楽曲もあったりするので、個人的にはそこまでのめりこめなかった作品かも。とはいえラスト3曲の攻めまくる構成は(曲調、構成の違いはあれど)80年代の尖った頃を彷彿とさせ、やっぱりMegadethだな!と納得させられてしまう部分もある。ごく私的ツボ楽曲はアグレッシヴな展開の「Use The Man」と泣きの「A Secret Place」。


▼Megadeth『Cryptic Writings』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD

■8th『Risk』(1999年)

ニック・メンザが脱退し、ジミー・デグラッソが加入して制作された本作は、インダストリアルノイズなどの打ち込み要素を積極的に取り入れ、ポップな曲はよりポップさを追求したという意味でMegadeth史上最大の問題作と呼ばれることの多い1枚。1曲目の「Insomnia」で一瞬たじろぐも、続く「Prince of Darkness」「Crush 'Em」は前作までの流れを汲むミドルヘヴィチューンなので一瞬安心。しかし5曲目「Breadline」で他のアーティストとCDを間違えたんじゃないかと確認したくなることだろう。とはいえ「I'll Be There」のような不思議な魅力を放つ楽曲もあり、決して駄作とは言い切れないところも。個人的には「MegadethであってMegadethではない」アルバムという位置付けで、非常に気に入っているアルバムでもある。実は本作、オリジナル盤と2002年のリミックス&リマスター盤とではかなり印象が異なる。もしかしたら再発盤のミックスのほうが従来のファンには入りやすい1枚かもしれない。そしてこのアルバムをもってマーティも脱退。彼がもたらそうとした変革は続くアルバムですべてひっくり返されるのだった。


▼Megadeth『Risk』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD


■ベスト盤『Capitol Punishment: The Megadeth Years』(2000年)

マーティ・フリードマン脱退後、アル・ピトレリが加入。しかし2ndから在籍していたCapitol Recordsから離れることになり、それまでの総括として発表されることとなった初のベストアルバム。2nd『Peace Sells... But Who's Buying?』から最新作『Risk』までのシングル曲/リード曲/MVが制作された楽曲から選ばれており、各アルバムから1〜3曲というバランス感。なぜか7th『Cryptic Writings』のみ3曲というのが謎の選曲だが、まあこんなもんだろうと。本作の聴きどころはピトレリ加入後初の新曲「Kill The King」「Dread & The Fugitive Mind」が収められているところだろう。後者は続くオリジナルアルバム『The World Need A Hero』にも収録されることになるが、ここでしか聴けない(その後、2005年発売の新ベスト盤『Greatest Hits: Back to the Start』にも再収録)前者も5thに入ってそうな普通の曲なので無理に手を出さなくてもいいかと。ちなみに輸入盤にはシークレットトラックとして「Capitol Punishment」という曲が入ってますが、なんてことはない、単なるメドレー曲。


▼Megadeth『Capitol Punishment: The Megadeth Years』
(amazon:輸入盤CD


■9th『The World Need A Hero』(2001年)

ムステイン、エルフソン、アル・ピトレリ、ジミー・デグラッソという新体制で制作された9thアルバム。インディーズのSanctuary(流通はメジャーのBGM系列)からのリリースで、チャート的には前作と同じ16位だったもののセールス的には落ちる結果に。音楽的には5th以降で目指した作風に再チャレンジしつつも若干初期のひんやりした“らしさ”が復活し、ポップさが減退したことで硬派な印象を与える。タイトルとは関係ないように思えるえげつないアルバムジャケットからも、「尖ったMegadethよ、再び」といった姿勢が見え隠れする。アルバムタイトル曲をはじめ「1000 Times Goodbye」「Return To Hangar」、前年発売のベストアルバムにも収録された「Dread & The Fugitive Mind」など今聴くとなかなかな楽曲も含まれている。「MegadethであってMegadethではない」から「尖ったMegadethよ、再び」の姿勢は評価するがどこか守りすぎという印象もあり、アルバム全体のインパクトは過去8作品ほどではない。本作リリース後の2002年、ムステインが腕の故障を理由に音楽活動休止を発表し、バンドは解散。結果としてなんともいえない結末を迎えるのであった。


▼Megadeth『The World Need A Hero』
(amazon:輸入盤CD

投稿: 2015 10 05 12:05 午前 [1997年の作品, 1999年の作品, 2000年の作品, 2001年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2005/10/28

AC/DC『STIFF UPPER LIP』(2000)

 昨日BUCKCHERRYを取り上げたせいか、その後急にAC/DCが聴きたくなって。特に古い作品じゃなくて、ここ最近‥‥'90年代以降のスタジオ作ばかり聴いてて。とはいっても1990年の「THE RAZOR'S EDGE」以降は1995年の「BALLBREAKER」と2000年の「STIFF UPPER LIP」の3枚しかリリースしてないんですけどね。5年に1枚の計算か‥‥そうこうしてるうちにみんなドンドン老いていくというのに‥‥

 2000年に「STIFF UPPER LIP」をリリースして以降、ツアーや単発のライヴは結構やってたんですよね。チャリティーだったり、ホールクラスでの限定ライヴだったり、ROLLING STONESのオープニングアクト(!!)だったり、と。んでその時のツアーにはそれこそ約20年振りの来日公演(2001年2月)も含まれていたわけですが。勿論俺も行きましたし、その時の模様はとみ宮にライヴレポ書きましたしね。自分の中でも生涯忘れられないライヴの1本となったあの日から、早くも5年近く経とうとしてます。アルバムリリースから数えれば、来年の3月で丸6年‥‥なのに一向に「新作完成!」の知らせが届かないのはどういうことなんでしょう?

 AC/DCはこの5年の間にそれまで所属した「Elecktra / eastwest」から新たに「Sony」へと移籍してます。過去のアルバムやビデオ(DVD)の大半が再発され、店頭で彼等の作品にお目にかかる機会は確かに増えたものの、それら全部持ってる身からすると‥‥う〜ん‥‥あ、「FAMILY JEWELS」DVDは良かったですけどね、うん。

 ま、そんなわけでこの「STIFF UPPER LIP」が現時点での最新作となるわけですが‥‥久し振りに聴いたけど、やっぱりいいね。いや、基本的に俺はAC/DC全作品肯定派だけどさ、それにしてもその前の「BALLBREAKER」はちょっと厳しかったから。悪い作品ではないんだけど、総じてミドルチューン中心、しかもユルいまま進むのがね、さすがにリピートする機会は少ないですね未だに。'90年代以降の作品は時代を象徴するようなプロデューサーを迎えて制作していたこともあって(「THE RAZOR'S EDGE」はBON JOVIやAEROSMITHでお馴染みブルース・フェアバーン、「BALLBREAKER」はかのリック・ルービン)まぁ悪くはないけどちょっと欲張り過ぎ?みたいな印象も受けたりしたんですが、昔馴染みのジョージ・ヤングがプロデュースしたこの「STIFF UPPER LIP」は適度な緊張感とユルさがバランスよく詰め込まれていて、非常に聴きやすいんですね。あと、作風的にも'70年代後期から'80年代の、所謂往年の時代を再現しようとしてる風にも受け取れるし。年齢的にはかなり厳しいはずのブライアン・ジョンソン(Vo)もかなり頑張ってるし、アンガス・ヤングのギターも相変わらず唸りまくってるし、復帰2作目となるフィル・ラッドのドラムも前作以上にタイトだし、ボトムを支えるクリフ・ウィリアムズ(Ba)とマルコム・ヤング(Gt)のコンビネーションも相変わらず気持ちいいし。要するに、いつも通りのAC/DC節がこのアルバムでも全開だ、と。ホントそれ以上の言葉は要らないですよね。

 多分‥‥来年前半にはリリースされるだろう新作も、きっとこの延長線上にあるはずだし、変わりようがないはずだし。最高にイカすリフとカミソリみたいなシャウト、タイトなリズム隊とザクザクしたリズムギター、そして唸りまくるギターソロ‥‥それさえあれば、AC/CDは安泰なのです。RAMONES亡き今、もはや『ワンパターンの良心』はAC/CDだけなのですよ。だからこそ、頑張って欲しいのです、新作が楽しみで楽しみで仕方ないのです。

 ま‥‥聴いたら聴いたで、「うわっ、また同じリフ使ってる!」とか「この曲、前にも聴いたことあるような‥‥」って呟きまくるんですけどね、恐らく。それでもオッケーなのがAC/DC。もはや国宝ですよ、ロックンロールの。



▼AC/DC「STIFF UPPER LIP」(amazon:日本盤US盤UK盤

投稿: 2005 10 28 09:24 午後 [2000年の作品, AC/DC] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/05/07

MARVELOUS 3『READY SEX GO』(2000)

現在はソロで活躍するブッチ・ウォーカーが以前在籍していたバンドとして知られるMARVELOUS 3。バンド活動時期には一部のHR系雑誌でのみ話題になるだけで、特にここ日本では騒がれることのなかった彼らだけど、少なくとも自分の周りだけは異様に盛り上がっていたのを今でも覚えています。メジャーでのファーストアルバムとなった「HEY! ALBUM」の完成度の高さにヤラれ、満を持してリリースされたこのセカンドアルバム「READY SEX GO」では、まずそのジャケットにヤラれて‥‥今時、こんな絵面のジャケ、ないってば! 売れないし、絶対に売れないし! しかも微妙に彼らの音楽性に合ってるのか、合ってないのかも‥‥何とも言えないし。ホント、凄いことしでかす奴らだなぁと。

内容は、ファーストを更にハードにしたようなハードポップ/パワーポップ/ハードロック・チューン満載で、それこそ「あと10年早かったら‥‥」と思わせるような内容なわけですよ。つうかこれがリリースされたの、2000年ですからね!? 巷ではラップメタルだのラウドロックだのがもてはやされてた時期に、この音ですよ! その潔さがもうね、素晴らし過ぎ。

1曲目 "Little Head" を聴いた時点で、自分の中で大きくガッツポーツ。初期のNELSONにも通ずるメロディアスでポップなハードチューンは、今でいうところのSR-71(そういえばこのアルバムの頃、一緒にツアーとかしてたっけ)とかDIFFUSER、LIT等のポップロック/パンクポップ系バンド、ENUFF Z'NUFF等のハードロック系パワポバンドに通ずるものがあるし、その後飛び出す楽曲からもCHEAP TRICKやQUEEN、KISS、DEF LEPPARD辺りからの影響を強く感じるわけですよ。特にこのアルバムのハイライトといえる名曲中の名曲 "Radio Tokyo" なんて上記のバンドからの影響を感じさせつつ、ブッチ・ウォーカーのソングライターとしての才能が遺憾なく発揮されているから、もうね‥‥本当にいいのよ。俺内では『2000年の "All The Young Dudes"(ご存知MOTT THE HOOPLEの名曲。デヴィッド・ボウイ作)』ってくらいに高い評価ですから。

プロデューサーにジェリー・フィンを迎えているという点だけでも評価が高いのに、ゲストに目をやってもこれが面白いことになってるわけよ。当時BUCKCHERRYに在籍していたヨギや元JELLYFISHのロジャー・マニング、LITのジェレミーがギターやキーボードで参加していたり、留守電メッセージでMOTLEY CRUEのニッキー・シックスが参加したり(ニッキーはこの後、ブッチのソロアルバムでも1曲ベースを弾いてますしね)、コーラス要員(「a big DEF LEPPARD sounding gang vocal」というまんまな表記がGood!)としてポール・スタンレー(KISS)、ブラッド・ピット、ジェニファー・ロペス、ジャック・ブラックというミュージシャンから役者まで非常に幅広い人達が参加してるんですよね。どういう経緯で参加したのか判りませんが、ま、一聴しただけでは誰の声ってのは全然判らないのでどうでもいいんですが!

上に挙げたようなロックバンドを好む人、パワーポップでもよりハードロック寄りのサウンドを好む人には間違いなくストライクゾーンなバンドでしょう。つうかこれ聴いて気に入ったなら、前作「HEY! ALBUM」はもっと気に入るはずだし、ブッチのソロも間違いなく気に入るはず。もうね、ブッチ・ウォーカーというソングライターの魅力一人勝ちですよ。

そんな彼、最近ではアヴリル・ラヴィーンの新作で曲を書いたりプロデュースしたり、更にはAMERICAN HI-FIの新作のプロデュースまで手掛けているという(何というピッタリな組み合わせ!)‥‥今後はそういった裏方の仕事も増えていくんだろうな‥‥だって、それだけの才能を持った人だしね。そうやって裏方の仕事で話題作ったり実力を発揮して、その注目をそのままブッチのソロアルバムにまで惹き付けられたら‥‥最高なんだけどね。そして最終的にはMARVELOUS 3再評価へと続いていくというね。まぁそこまでの道程は果てしないだろうけどさ‥‥とりあえずはこれ読んで気になったって人はチェックしてみてね。



▼MARVELOUS 3『READY SEX GO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 05 07 09:09 午後 [2000年の作品, Marvelous 3] | 固定リンク

2004/03/09

DAVID BOWIE『BOWIE AT THE BEEB』(2000)

'90年代の、いや、'80年代後半からのデヴィッド・ボウイがとことんツイてなかったということを「'hours...'」のレビューで書きましたが、そのアルバムを境にボウイは再び上向きになります。過去の貴重なBBCラジオでのスタジオライヴ音源をCD2枚にタップリと収めた「BOWIE AT THE BEEB」の発表により、ボウイの現在/過去/そして未来に注目が集まるようになります。トニー・ヴィスコンティとの新作製作の話題で持ち切りだったのも、その一環でしょう。

今回紹介するライヴアルバム「BBC RADIO THEATRE, LONDON, JUNE 27, 2000」はそのタイトル通り、2000年6月27日、ロンドンにあるBBCラジオの劇場にて、ほんの一握りのファンを前にして、非常にリラックスした雰囲気の中行われたスペシャルライヴを収録したものです。当時、日本でもWOWOWでその模様が放送されたので、映像で観たという人もいるかもしれませんが、正式な単独作品としてリリースされたことはなく、実は先述の「BOWIE AT THE BEEB」初回限定盤にボーナスディスクとして付属していた1枚なんですね。だから、このアルバムを聴きたかったら「BOWIE AT THE BEEB」初回盤を探さなければならい。が、ここからが厄介でして‥‥このアルバム、リリース後暫くして「予定していた楽曲("Ziggy Stardust")のふたつの別テイクが、実は同一テイクだった」という凡ミスが発覚し、回収~生産一時中止になっているんですね。翌2001年初頭に再びボーナスディスクを含む形で再発されたようですが、海外盤を含めてもプレス数がそんなに多くないようで、更に現在ではこの「BOWIE AT THE BEEB」自体が日本盤は生産中止状態なようで‥‥とにかく見つけたら即買いの1枚(ボックスセット)です。

「'hours...'」リリース後のライヴということで、ボウイの「老い」「枯れ」具合が気になるところですが、ここで聴けるボウイのパフォーマンスは‥‥往年のベストには及ばないものの、それでもかなりいい状態であることが伺えます。まずボウイ自身が肩の力が抜けていて、いい具合に「楽しんで」歌っているんですね。アルバム全体の三分の一以上が'90年代の楽曲ということで「どうなのよ!?」という不安もあるかと思うんですが、なんのなんの、下手したら'70年代の楽曲以上にハマっていてカッコいいテイクすらあるんですから、この辺が「蘇生」しつつあるな、というのが伺えて嬉しいですよね。

'70年代初期、中後期、'80年代、そして'90年代の楽曲をランダムに演奏しているんですが、意外と違和感がないのが不思議というか。以前‥‥'90年代半ばに来日した時も感じたことですけど、特にその特色が顕著になってますね。当時の新作「'hours...'」からも "Survive" や "Seven" といった名曲の予備軍が選曲されている他、"Hallo Spaceboy"、"Little Wonder"、"I'm Afraid Of America" といった'90年代の代表曲達、"Let's Dance"、"Ashes To Ashes" といった'80年代の代表曲達、更には "This Is Not America" や "Absolute Beginners" といった'80年代に埋もれた地味渋な楽曲達、そして "Man Who Sold The World" から "Cracked Actor"、"Fame" や "Wild Is The Wind"、"Stay"、"Always Crashing In The Same Car" といった'70年代の代表曲/隠れた名曲達。最近でこそヒットメドレーが復活してますが、この頃はまだこだわりを捨てきれなかった時期なんですよね‥‥けど悪くない。いや、彼が過去残してきたどのライヴ盤よりも素晴らしいと思います。音質的なことはさておき、とにかく演奏のクオリティーも高いし。実はこの時のバンドメンバーと今現在のバンドメンバーって殆ど一緒なんですよね。だからってこともあるのかな‥‥最近のライヴ、非常に評判が良いですよね? そりゃレコーディングにも参加させたくなるわな、うん。

ROLLING STONESやAEROSMITHのような生き方も素晴らしいと思うし、実際尊敬している。KISSみたいにはなりたくないとは思いながらも、やはり一度心を許した弱みか、最終的には憎めない。けど、やっぱり俺はボウイみたいな生き方を支持したいな‥‥矛盾しててもいいから。だってそれこそが最も「人間らしい」と感じられるんだからさ。ま、最も「人間らしくない」存在だったあのボウイが、その後こういう生き方をするとは、当時のファンは思ってもみなかっただろうけどね。



▼DAVID BOWIE『BOWIE AT THE BEEB』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 03 09 07:40 午前 [2000年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2003/10/18

KOOK『the beautiful scum』(2000)

  KOOKという名前を挙げてみても、多分誰も知らないでしょうね‥‥一時期、そう、今から3年前に当サイトの旧掲示板でちょっとだけ話題になったアーティスト。俺もこの年‥‥2000年1月にリリースしたシングル "junk" と "lady lay" は当時ラジオで耳にしていたので、その存在自体は知っていました。と同時に、非常に気になるアーティストのひとりであったわけですが‥‥

  日本人です。ソロアーティストです。所謂「自作自演系」です。楽曲からプロデュース、殆どの楽器演奏等も含め、全てひとりでこなしています。しかもそのサウンドがド直球ストレートのグラムロック。どの程度グラムかというと‥‥'70年代のデヴィッド・ボウイやデビュー当時のsuedeくらいグラマラスなサウンドを聴かせてくれるわけです。ねっ、これだけで気になったって人、多いんじゃないの?

  ギターが思ってた以上に歪んでてラウド。リズムもズッシリくるし(ま、殆どのドラムはスタジオミュージシャンが叩いてるわけですが)、何よりもこの人の特徴は‥‥霧がかかってるかのような夢見心地なエフェクト(深めのディレイ&リバーブ)と、そこにのる歌声‥‥全部日本語で歌ってるはずなのに、どう聴いても英語にしか聞こえない歌い方。声もボウイやブレット・アンダーソンよりも線が細い印象ですが、逆にこの無骨なサウンドに合ってるんじゃないかって気さえします。セクシーでドリーミー。正にそんな感じです。

  楽曲がポップなのがいいですね、この人。決してマニアック過ぎず、そのサウンドは何度も言うけど直球で正統派。'70年代的ともいえるけど、個人的には'90年代のブリットポップ以降の流れを組んだサウンドだと思います。抽象的且つ耽美な世界を歌った歌詞はちょっと難解でもあるわけですが、それはまぁ雰囲気モノってことで。大体歌詞カード見なかったら本当に何歌ってるか判らないもん。ラジオで初めて聴いた時も、絶対に英語詞の楽曲だと思ってたし(でその後にDJが「今のは全部日本語で歌われてますのでお間違いなく!」と注釈入れたので、軽くショック受けました)、歌詞カードを目にした今でも‥‥全然日本語っぽく聞こえないんだから。そりゃ意識すりゃ日本語に聞こえますよ。けどこれはもう、完全にKOOKの勝利ですね。

  これまでも日本からはボウイ's チルドレンなアーティスト/バンドは沢山登場しました。しかしここまで本家を超えて、ある意味独自性を確立してしまった日本人アーティストは他にはいないんじゃないですかね?

  クセは強いです。けど、一度ハマってしまえば二度と抜け出せなくなる世界。ロックンロールをよくセックスに例える人がいますが、確かに近いものがありますよね。どちらも自己主張が強すぎてひとりで突っ走り過ぎると、ただのオナニーになってしまう。このアルバムで披露されている世界も、ある種公開オナニーなのであって、けどただ傍観するだけに終わらず、気づくと観ていた(聴いていた)自分も抜け出せなくなる程ドップリとハマッてる。それが現実なのか幻想なのか、判断がつかなくなる程に。強烈に愛聴するか、強烈に否定するか。ボウイにしろsuedeのファーストにしろ、そして初期のROXY MUSICにしろ、本当にグラマラスなロックンロールってそういう危険を孕んでいるものなのではないでしょうか?

  '97年に東芝EMIから一度デビューし、シングルとアルバムをそれぞれ1枚ずつリリースした後メジャーシーンから姿を消し、'00年に2枚のシングル("junk" と "lady lay")で再びシーンに返り咲いたものの、同年9月にこのアルバムを発表と同時にエピックとの契約を終了。その後、元BLANKEY JET CITYの照井利幸のユニットに参加したりもしましたが、この11月にようやくKOOKはシーンに戻ってきます。enamel the evening callsという新しいバンドを引っ提げて。しかもボーカル&ギターとパーカッションという2人組編成という辺りに、思わずニヤリとしてしまったりして‥‥11月に戻ってきますよ。それまではこのアルバム聴いてドップリあっち側の世界に浸かっちゃっててください!



▼KOOK『the beautiful scum』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 10 18 12:00 午前 [2000年の作品, KOOK] | 固定リンク

2003/10/13

A PERFECT CIRCLE『Mer de Noms』(2000)

TOOLのシンガーであるメイナード・キーナンが、そのTOOLのギターテクだったビリー・ハワーデルと結成したバンド、それがこのA PERFECT CIRCLE。メイナードの知名度からどうしても「メイナードのサイドプロジェクト」と見られがちだけど、元々はビリーが作っていたデモテープを聴いたメイナードが「これを一緒にやりたい」と便乗したことからスタートしています。このアルバム『Mer de Noms』に収録されている全楽曲、メイナードとビリーの共作ですしね。そこからスタートしていろんな人間を巻き込んで、最終的にトロイ・ヴァン・リーウェン(Gt)、パズ・レンチャンチン(Ba & Violin)、ジョシュ・フリース(Dr / VANDALS)の3人を迎えバンドとして活動開始。親交の深いNINE INCHE NAILSの1999年のツアーに同行する等、まずライヴにてその正体を露わにするわけですが、ここ日本ではやはりアルバムリリース後のフジロック('00年7月)でのライヴでしょうね。残念ながら俺はこの年の苗場には行けなかったんですが、もの凄い衝撃的なライヴだったようですね。

さてさて、そんなこのアルバム。TOOLのレコード会社との訴訟問題、それに伴う活動停止の副産物と言われていますが、ハッキリ言ってTOOLとは別物と考えた方が正解です。勿論、歌っているのはメイナード本人ですし曲作りにも携わっていますが、表現しようとしてるものやその方法等が違っているわけですし。TOOLではひとつひとつの楽器と声、個々が独自の主張をし、それがぶつかり合うことで共鳴し、独特な世界観を生みだしていると考えているんですが、APCの場合は全く逆‥‥ぶつかり合うというよりは「退きの美学」みたいなものを強く感じるんですね。例えばボーカルやギターが力強く鳴っている時は、他の楽器はそれをバックアップするような役目を果たしているし、バイオリンみたいな繊細な楽器がリードを取っている時は、歌でさえもそれを邪魔しないように盛り立てている。TOOLが結果論の音楽(完成するまでどういったものになるのか見えない)なのに対し、APCは先に提示されているものに対して全員で取り組み再現する‥‥それくらいの違いを感じるわけです。

1曲1曲がコンパクト且つポップなのもAPCの特徴でしょう。特にこのアルバムの楽曲は大半が3~4分台で、5分を超える曲はひとつもないし、逆に2分ちょっとの曲が2~3曲あるのもTOOLと比べると大きな違いですよね。TOOLの場合もそういう短い曲はありますが、あくまで続く次の曲へのインタールード的インストだったりするので、ちょっと意味合いが違ってきますしね。それとメイナードのメロディもヘヴィロックのそれとは違う、むしろゴシック調のイメージが強いものが多く、例えばジャンルは違いますがDEPECHE MODEといったタイプのバンドに近い色合いを見出すことができます。最近ではこういったゴシック調のヘヴィロックも幾つか登場していますが(EVANESCENCE等)、やはりそういったバンド達とは根本的に違う何かを持っているんですよね、APCって。それがビリー・ハワーデルというギタリスト/ソングライターの才能なのか、はたまたメイナードの才能なのか、あるいは参加しているミュージシャン達によるものなのか。恐らくその全部でしょうね。それぞれがそれぞれの仕事を的確にこなした結果、それがこのアルバムを高水準なものにした要因でしょう。

TOOLよりも聴きやすいし、どうしてもTOOLには取っつき難さを持ってる人が多いと思うんですね。やれ「プログレチック」だの「変態系オルタナ」だの。確かにそういった先入観が邪魔して手を出すまでに至らないのは理解できます。だから尚更、そういった人にはこのアルバムをまず聴いて欲しいと思うわけです。ヘヴィ過ぎず、それでいてポップ過ぎず(過剰なまでにポップさは皆無ですね。あくまでTOOLと比べて‥‥って意味)、独自のハーモニーと世界観を持つバンド。これはサイドプロジェクトなんかじゃなくて、今後もずっと続いていくバンドでしょうね。現にTOOLの活動が一段落した2002年当たりから、再びメイナードとビリーはこのバンドのセカンドアルバムに着手し始めたわけですから。

残念ながらこのアルバムとそのツアーに参加していたトロイとパズが脱退(トロイはQUEENS OF STONE AGEに、パズはZWANに加入するも、それぞれ現在は脱退済)、一時期レコーディングにはNINE INCH NAILSのダニー・ローナーが参加していたようですが、最終的には元MARILYN MANSONのトゥイギー・ラミレズと元SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハが加入。2003年夏からツアーを開始し、9月にはセカンドアルバムもリリースしたばかり。いよいよ単独来日も控えています。

最近ではこういったタイプの音の人気はどんどん衰退しているのかもしれませんが、リリースから3年経った今聴いても全然色褪せていないし、むしろ時間が経ってみて改めて「素晴らしいアルバムだったなぁ」と再認識した程です(いや、リリース当時も良いと思ってましたけど、まさかこんなに素晴らしかったとは‥‥ってことで)。ゴスや「グランジ以降」に興味を持つ人、各メンバーが参加していたバンドが好きだった人、そのどれにも当てはまらないけど独特な世界観を持ったロックバンドが好きな人、まだ聴いたことがないのならこれを機に是非。



▼A PERFECT CIRCLE『Mer de Noms』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 10 13 12:00 午前 [2000年の作品, A Perfect Circle, Tool] | 固定リンク

2003/09/22

DECKARD『STEREODREAMSCENE』(2000)

イギリスのギターロック/パワーポップ・バンド、DECKARDが00年夏にアメリカでリリースしたファーストアルバム、それが今回紹介する『STEREODREAMSCENE』という作品。何故「アメリカでリリース」と書いたかというと、このバンドの当時の活動状況が影響してるんですね‥‥

元々はこのバンド、90年代中盤にBABY CHAOSという名前で活動していたんですよ。インディーズからアルバムを1枚リリースした後にドラムが現在のGEN(元JESUS JONES)に交代、その後メジャーから1枚アルバムをリリース後、バンド名を今のDECKARDに変えて渡米、活動の拠点をイギリスからアメリカへと移すわけです。本国イギリスでもそんなに売れていたというわけでもなく、THE WiLDHEARTSなんかと一緒にツアーしてたので俺もこのバンドのことを知ったわけです。

イギリスでのレコード契約を破棄され、渡米後にインディーレーベルからEP『DECKARD EP』を発表、そこに収録された「What Reason」という曲がアメリカで大人気のテレビドラマ「フレンズ」劇中歌に起用され、サントラ第二弾にも収録され、それが切っ掛けだったのか現地のメジャーレーベル「Reprise」と契約、00年夏にこのアルバムをアメリカでリリースしたのでした。

しかし、このアルバムは日本はおろか本国イギリスでもリリースされることはありませんでした。何故なら、リリースから数ヶ月後には早くもバンドは契約解消されてしまうのです。

BABY CHAOSがバンド名を変え、DECKARDという名前で活動していたことは事前に知っていましたが、何時アルバムがリリースされるなんて情報、全く知らなかったんですね。だって日本盤が出る予定もないアーティストだもん、雑誌メディアにも取り上げれれる機会なんて皆無でしたしね。しかし00年夏頃、たまたま入ったCDショップでこのアルバムを見つけたんですよ。銀座のHMVだったかと記憶してます。しかもかなりプッシュされてたんですよ。「パワーポップの隠れた名盤」なんてポップが付けられて。当然このバンド名にピンときた俺は、試聴もせずにCDを手にレジへ進んだのでした。

内容的には文句なし。BABY CHAOSにあったパンク色や疾走感は完全に後退し、よりモダンな味付けが強調された完成度の高い作品に仕上がってます。上記のEPに収録されていた曲も4曲中3曲(「What Reason」「Still」「Sycamore」)が再収録され、その他の新曲8曲もいろんな要素を含んだ、非常に興味深い楽曲ばかり。例えばFOO FIGHTERSが持つパワフルさ、SMASHING PUMPKINSが持つモダンなポピュラリティ等、このアルバムでの彼等がそういったバンド達と肩を並べるべき存在であったことが伺えます。

個人的には特に「What Reason」をまず聴いて欲しいんですよ。これ1曲で完全にノックアウトされるはずですから。例えばこの曲には上記のTHE WiLDHEARTSにも通ずるようなモダンなパワーポップの要素を持ちつつ、QUEENの名曲「Under Pressure」にも通ずる美しいメロディの上にCHEAP TRICKのロビン・ザンダーにも匹敵するボーカルが乗るんですね。もうこれだけで文句なしでしょ?

勿論、それ以外の10曲も全てどこか引っかかる箇所のある素晴らしい楽曲ばかり。滅茶苦茶ポップなメロディを盛った楽曲なんだけど、演奏自体は意外と重かったり、また所々にデジタルな要素があったり(そういえばボーカルのクリス・ゴードンはDECKARDとは別に、ディスコ/ダンスミュージック・ユニット・REGENCY BUCKなんてのもやってたっけ)、聴かせる長いギターソロがあったり。ストレートなロック・チューンあり、ヘヴィなバラードあり‥‥という点では大先輩であるCHEAP TRICKに通ずる点も非常に多いバンド。ラストのバラード2曲("Sycamore"と"Bear")、特にエンディング間際の「Sycamore」での盛り上がり方は尋常じゃないですからね。ある種、セカンド辺りのRADIOHEADすら彷彿させますからね!

以上、ここまで読んで興味を持った人、絶対に損はしないはずだから‥‥まずはCD探して聴いてみて! 絶対に名盤だから。特にパワーポップ系が好きでまだこのバンドを知らなかった人は、これを聴いた後にBABY CHAOSのセカンド(アメリカ盤と日本盤は内容一緒ですが、イギリス盤は収録曲が若干異なります。オススメはイギリス盤!)も聴いてね。ファーストは現在品薄で見つかり難いと思いますが、可能なら探し出してください。とにかくまずは聴いて!絶対に!気に入る!から!

最後に。現在はイギリスに戻り、未だに契約先を探しているDECKARD。オフィシャルサイトでは完全未発表に新曲が2曲、ダウンロードできます。音質的にはデモ段階ですが、更に魅力に磨きがかかってるように感じました。この夏には本国でのフェス(T IN THE PARK)にも出演したようですし‥‥リリースから早3年、そろそろ大きな二発目を期待したいところです。



▼DECKARD『STEREODREAMSCENE』
(amazon:MP3

投稿: 2003 09 22 12:00 午前 [2000年の作品, Baby Chaos, Deckard] | 固定リンク

2003/09/14

ANTHEM『HEAVY METAL ANTHEM』(2000)

メタル離れして久しいけど、そんな俺でもこの数年結構な頻度で聴いてるのがこのアルバム。いや、ベスト盤的内容ってのも大きいんだけど、なによりもその参加メンバーであったり、新しい解釈でプレイされた(特にギターね)楽曲の数々の素晴らしさに心打たれるわけで。今でもこういうタイプの音楽が楽しめるってことは、心底メタルを嫌いになれないってことなのか、それとも単に「楽しかった10代の頃」を懐かしんでるだけなのか‥‥。

日本が世界に誇る(と言い切っても過言ではない)パワーメタルバンドANTHEM。彼等は92年に解散してるわけですが(そのラストライヴとなった日清パワーステーションでの公演には自分も足を運びました)、その後各メンバーはアニメタルでANTHEM時代以上の成功を手中にしてしまったり、あるいは'80年代はライバルだったLOUDNESSに加入してしまったり等、とにかく誰ひとりとして「ANTHEMを引き継」ごうとしなかったわけです。俺ね、80年代の日本のヘヴィメタルバンド(所謂「ジャパメタ」バンド)の中で一番好きだったのが、このANTHEMだったんですよ。特にボーカルが坂本英三だった初期の3枚の頃ね。この頃への思い入れの強さはハンパじゃなかったですよ。その後、森川之雄という素晴らしい才能を迎えてリリースされた名盤の数々も捨てがたいんですが、やはり初期の野暮ったい程のパワーメタルが好きだったんですよ。ジャーマンメタルに通ずる野暮ったさ? ACCEPT辺りを彷彿させるね。ああいうのが格好良かったんですよ。

そんな彼等が00年、奇跡的な復活をするわけですよ。ま、最初はアルバム1枚のプロジェクトとしてですけどね。それがこの『HEAVY METAL ANTHEM』というアルバムでして。所謂企画モノとしてスタートしたんですが、企画モノ故の豪華さがとにかくスゴイわけで。

ベースは勿論この人、柴田直人。当たり前です、この人のバンドですから。IRON MAIDENでいうところのスティーヴ・ハリスですからね、全てにおいて。ドラムも同じく大内 'MAD' 貴雅。最近じゃTHE YELLOW MONKEYのヒーセのバンドでも叩いてますよね。ギターは末期ANTHEMを支えた若き才能(って俺と同い年だっけ?)、清水昭男。解散後はSHY BLUEってバンドやったり、TOKIOとかに曲書いたりして生計を立ててたようです。そしてシンガー‥‥これこそ夢のような組み合わせなわけでして‥‥RAINBOW等で活躍したHM/HR界の大御所、グラハム・ボネットなんですよ。これがどういう意味か判りますか?

勿論「HM/HR界の大御所が、日本の伝説的メタルバンドで歌う」という驚きもあるわけですが、それ以上に‥‥古いファンからすると‥‥ANTHEMの、そして柴田のルーツのひとつであるRAINBOW。その「オリジナルの血」が混入するわけですよ。元々後期ANTHEMの楽曲ってのは、森川という「和製グラハム」の歌を活かす為にワザと憧れのRAINBOW的スタイルを取っていたこともあるんですね。そう、意識的にルーツを表出させていたという。つまりですよ、そういう楽曲を本家本元が歌うわけですよ!? どういうことになるか判りますよね??

選曲はほぼ森川時代のグレイテストヒッツ的なもので、坂本時代が好きな俺としてはたった1曲(「Show Must Go On!」)しか選ばれていないことに不満を覚えたりもしたわけですが、やっぱりこの組み合わせでこの選曲、納得しなきゃなりませんよ、これ聴いちゃったらさ。ちなみにオリジナルの歌詞は殆どが日本語なわけですが、グラハムが歌うに当たって全て英語詞に直されてるので、洋楽メタルしかダメって人にもオススメです。

グラハムは終わったと言われて早10年以上。確かに80年代前半までの輝きや艶やかさは今の彼からは強く感じられません。しかし、このアルバムでのグラハムは最も得意とするジャンルの音楽を、最も得意とする歌い方で表現している。そりゃRAINBOW時代やMSG時代と比べれば劣るかもしれませんが、少なくともこの10数年の中では最も素晴らしい仕事をしてるんじゃないでしょうか? ま、その10数年まともに彼の仕事ぶりを追ってきたわけではないので、コアなファンから「全然ダメじゃんか!」と反論されてしまうと、ちょっと‥‥少なくとも俺はイケてると思うんだけど。

曲の素晴らしさは言うまでもなく。日本人らしいワビサビが感じられる繊細な様式美の世界観を、欧米人が力でねじ伏せるかのような表現をする。大味のパワーメタルのようで、実は奥が深い。坂本や森川が歌うANTHEMとも違う、ちょっとだけ「世界に肩を並べた」と錯覚してしまう1枚に仕上がってます。いや、これをこのまま海外に輸出しても全然大丈夫だと思うけど。言語の問題もないわけだし、音楽的にも需要があるはずだし。これ、このまま向こうでリリースすれば良かったのにね?

ま、結局このメンツではライヴを数回やったのみで終わり、柴田は再びバンドを本格的に再始動させることを考え、結果として柴田と清水に加え、坂本が復帰し、大内の代わりに元E.Z.O.~LOUDNESSの本間大嗣が加わった形でパーマネントな活動を再開するわけです。

海外のメタルは好きなのにジャパメタとか嫌ってる人、X JAPAN以降の日本のハードロックに興味を失ってしまった人、偏見捨てて聴いてみ。そんなの吹っ飛ぶから。「Gypsy Ways (Win, Lose Or Draw)」とか「Cryin' Heart」とか「Hunting Time」の素晴らしさに泣くからさ。けどね‥‥上記3曲に関しては、その後に必ずオリジナル版も聴いて欲しいんだな。森川による日本語版の方も。グラハム以上だからさ、全てにおいて。



▼ANTHEM『HEAVY METAL ANTHEM』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 09 14 12:00 午前 [2000年の作品, ANTHEM, Graham Bonnet] | 固定リンク

2003/06/15

WHEATUS『WHEATUS』(2000)

アメリカはニューヨーク出身の4人組バンド、WHEATUSが2000年秋に発表したファーストアルバム。一応メジャーのソニー系列からのリリースという、いきなり恵まれた環境から登場した新人なんですが‥‥殆ど話題になりませんでしたね、当時。この頃から音楽雑誌とか全く買わなくなったので、実際には小さいながらもインタビューとかあったのかもしれませんが‥‥勿体ない、というのが正直なところ。いやこれ、非常に優れたギターポップ/パワーポップ・アルバムですよ。

かくいう俺も、このアルバムを手にしたのはリリースされてから1年近く経った2001年の夏。当時自分が参加していたDJイベントで、他のDJがこのアルバムに収録されている"Teenage Dirtbag"と"Leroy"を回してたんですよ。前者はヒップホップ的要素を取り入れたバックトラックにアコギを取り入れた、WEEZERを更に情けなくしたようなミドルテンポのパワーソング、後者はハーモニカの音色が心地よいストレートなギターロックといった印象で、大音量で鳴らすと非常に気持ちいい楽曲だったんですね。で、フロアで踊ってた俺はすぐさまそのDJにアーティスト名を教えてもらってアルバムを探したという。それが俺とWHEATUSとの出会い。

アルバム全体を覆う脳天気さ、おバカさはさすがアメリカのバンドといった印象。ちょっとSUGAR RAYとかを彷彿させる瞬間もあるんだけど、基本的には全然別物なので彼等のファンが聴いても気に入るとは限りません。あしからず。そういう意味ではカリフォルニアのバンド程バカ度は高くないけど、かといってニューヨーカー的な知的さ・クールさも殆ど感じられないという、いかんともしがたいロックバンド。きっとカテゴライズの好きな日本のメディアは、このバンドに対して「どういう方向で売ればいいのか‥‥」と手を焼いたんじゃないですかね。その結果、殆どメディアでの露出もなく、リリースから3年も経ってしまったという‥‥ああ勿体ない。

先に挙げた"Teenage Dirtbag"はホントいい曲で、パワーポップやアメリカ的なギターポップが好きな人には絶対に受け入れられるはず。歌詞の中にIRON MAIDENなんていうバンド名まで登場しますが、基本的にはこのバンド、雑食という印象を受けます。このアルバムでも1曲カバーを収録してるんですが、それがよりによって'80年代後半~'90年代初頭に活躍したイギリスのエレポップユニット、ERASUREのヒット曲"A Little Respect"なんですから。これってアメリカでもヒットしたっけか? ここ5~6年の間にパンク/ラウドロック勢がこういった'80年代のヒット曲を独自の手法でカバーすることで「'80年代再評価」みたいな小ブームが起こりましたが、それに便乗するにもこの選択って‥‥この辺のセンスが信用できるというか。このセンスも俺が気に入ったポイントのひとつですね。

基本的にギター・ベース・ドラムのトリオ編成なんですが、もうひとりのメンバーはプロデューサー的役割で、ステージやレコーディングではパーカッションやキーボード、ハーモニカ、サンプリングやプログラム等を手掛けているマルチプレイヤーだそう。この辺も他のパワーポップ/ギターポップ・バンドとはちょっと違う色を感じさせますよね。そしてサウンド的にもアコースティックギターやパーカッションが多用されていて、パワーコード一発!っていう感じのギターロックとは一線を画する、ねじれ/ひねくれ具合を強く感じさせます。

このバンドの歌詞ってのが、初期のWEEZERにも匹敵するような女々しさというか、非常にマイノリティー的な色合いを感じさせるものでして。ま、ハッキリ言っちゃえば「オタク」なわけですよ。例えば「鉛筆みたいなお前の首が折れて お前の鳩胸が凹んだなら 僕は勝つ」("Truffles")とか「まるで銅像になったような気がする 今夜はプロムナイト(卒業パーティ)なのに僕は孤独」("Teenage Dirtbag")、「僕の近くにいる時は気を付けた方がいいよ/僕はギャングスターになりたい」("Wannabe Gangstar")等々‥‥ぶっちゃけ『ヲタの脳内妄想』をそのまま歌にしてしまったような、共感できそうでちょっとキモい、ギリギリなラインなんですね。英語圏ではない日本人の我々からすれば、サウンドだけ聴いてれば非常にカッコイイんですが‥‥実際は‥‥ま、このアンバランスさがこの手のバンドの「味」だったりするわけですが。個人的にはこういうダメダメっぷり、大好きです。

そういえば彼等、昨年頭にこのアルバムのラストナンバー(ボーナストラックを除く)である"Wannabe Gangstar"を再レコーディングしてシングルカットしてるんですね。で、そのリ・レコーディング・バージョンは、度々歌詞にも登場したIRON MAIDENのシンガー、ブルース・ディッキンソンとのデュエット(?)になっているという(しかもPVにまで登場してるとのこと)。これ、まだ未聴なんですが‥‥一体このアコースティック色の強い曲を、どのような感じでブルースと歌っているのか‥‥彼等と同じような10代を過ごした元メタルファンの俺としても、非常に気になるところです。



▼WHEATUS『WHEATUS』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2003 06 15 09:02 午後 [2000年の作品, Wheatus] | 固定リンク

2003/05/24

PEALOUT『原始進化』(2000)

  日本が誇る独特な個性を持つトリオバンド、PEALOUTが'00年4月にリリースした5枚目のアルバム。このアルバムから現在所属するビクターに移籍したわけですが、ただ移籍したから心機一転といった簡単なものではない、もっと興味深くて恐ろしい程の変化を味わえる1枚になってます。というよりも、恐らく現在の彼等を支えているであろう多くのファンは、このアルバムからPEALOUTに入っていった人が多いんじゃないでしょうか? かくいう俺もこのアルバムで彼等にハマッたひとりですしね。

  現在も頻繁に行われている「激ロック」という対バン・イベントがスタートしたのも、この前後から。正しくその「激ロック」という言葉に相応しい「轟音の壁」を堪能できる作品集で、けど、だからといってウルサイだけなのかというと、実はそんなことはなく、初めて近藤のピアノをフィーチャーした楽曲を全面導入したのもこの作品からなんですね。まず先行シングル"爆裂世界~世界に追い越されても~"の存在があるわけですが、これがもうこのバンドにとってはエポックメイキングな作品となり、実際この曲で彼等に興味を持ったって人も多いようですね。ベース&ボーカルの近藤がピアノに、ギターの岡崎がベースにシフトチェンジするギターレス編成になるわけですが、まぁこういう編成自体が別にロック界では特別なことではなく、数年前にもBEN FOLDS FIVEがこういうスタイルで大成功を収めているので(実際、このアルバムの歌詞にも彼等の名前が登場するしね)、「何だよ、パクリかよ‥‥」って思うかもしれないけど‥‥これがね、全然違うのよ。メロディアスだけど激しい。ギターレスなんだけど、全然そのデメリットを感じさせない音圧。そして日本語詞‥‥それまで英語詞だった彼等が、この辺りから積極的に日本語詞に取り組み始めます。実際、アルバム収録曲8曲中6曲が日本語ですからね。この辺の意識革命もその後の彼等の人気に大きく影響するわけですし。

  ピアノ導入だけが大きな出来事ではなく、先にも書いたように「轟音の壁」ともいうべき激しいサウンド、そしてハードコアにも近い暴走ナンバー‥‥アルバム1曲目"瞬間のカーニバル"でゆらゆらと始まりながら、それをぶち破るかの如く走りまくる"心臓が動き出すとき"でのハードコアサウンド、続くピアノ曲4連発("爆裂世界~世界に追い越されても~"、"BEAT FOR YOUR RIGHT"、"PIANOMAN R&R SHAKE, SHAKE, SHAKES"、"あてのない手紙")のバラエティ豊かさ。特に"BEAT FOR YOUR RIGHT"でのテンションの高さ、ピアノバラード"あてのない手紙"の切なさ。この曲はストリングスまで導入してますからね。如何にこのバンドが当時「変化」を求めていたかが、こんなナンバーからも伺えるんじゃないでしょうか。そして再び疾走ギターロックチューン"BEFORE TODAY"で盛り上がり、最後にシングル曲"YOU"で爆裂したまま終わるという、非常に素晴らしい、ロックバンドとしては理想的な構成になってるんですよね。

  未だにライヴでの定番となっている"心臓が動き出すとき"や"爆裂世界~世界に追い越されても~"、"BEAT FOR YOUR RIGHT"といった人気曲が多く収録されていることから、このアルバムが一番好きという人も多いみたいですね。確かにその後の2枚のアルバムはちょっと‥‥って声、たまに耳にしますし。このアルバム、セルフプロデュース曲と上田ケンジプロデュース曲が半々で収録されてることも、作品のバランスに大きく影響してるんじゃないかと思いますね。最近の作品は完全にセルフプロデュース作みたいだし。もうひとりくらい「客観的に物事を見れる人」がいたら、また面白い方向に行くんじゃないかなぁ‥‥と個人的には感じているのですが‥‥

  そういう意味で、このアルバムは本当によく出来た作品集だなと思うわけです。勿論その後のアルバムも素晴らしいですし、その辺のバンドの数倍素晴らしい内容になってるわけですが‥‥8曲で35分程度というトータルランニングが全く短く感じさせない、本当に濃い作品になってるんですね。こういうバランス感覚に優れた作品を作れるというのは、ある種ロックバンドにとっては理想的なことですよね。ホント、完璧ですわ。最強。この時期のライヴ、是非観たかったなぁ‥‥

  このアルバムを「第二期PEALOUT」の始まりとするのならば、今現在の4人編成(サポートベーシストを入れ、近藤はギターやピアノに専念している)は「第三期」になるんだろうから、また新たな展開が見れるのかもしれませんね。好きなバンドだけに今後の動向から目が離せませんね。



▼PEALOUT『原始進化』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 05 24 12:00 午前 [2000年の作品, PEALOUT] | 固定リンク

2003/04/21

SUPER$HiT 666『SUPER$HiT 666』(2000)

もしあなたがロックンロール大好きっ子だったなら。そしてそんなロックンロールの中でも疾走感があってノイジーでそれでいてメロディアスでけど最終的には暴力的な、そんなロックンロールを求めているのなら、迷わずこのアルバムを手にすればいいと思います。この6曲入り、約18分に及ぶ爆音の嵐のようなミニアルバムを聴いても何も感じないのなら、きっとあなたは‥‥本当はロックンロールが好きじゃなかったんですよ。ええ、間違いなく。そんなセリフすら出てきてしまう程、とにかく凄いアルバム。

だってね、メンツがハンパじゃないもの。爆走ロックンロールに精通している人なら勿論このバンド(というかユニットですかね)のことはご存じでしょうけど、知らない人の為に紹介しておきますと‥‥ギター&ボーカルにジンジャー(THE WiLDHEARTS / SiLVER GiNGER 5)、同じくギター&ボーカルにドレゲン(BACKYARD BABIES / 初期のTHE HELLACOPTERSのメンバーとしても知られている)、ドラム&ボーカルにニッケ・ロイヤル(THE HELLACOPTERS)、そしてベースにトーマス・スコグスバーグ(BACKYARD BABIESやTHE HELLACOPTERS等を手掛ける、北欧爆走ロック界では有名なプロデューサー)‥‥この4人によって形成されているのが、このバンドSUPERSHIT 666。なんて馬鹿馬鹿しいバンド名だろう。「SHIT」に「SUPER」がついて、更に西洋では不吉な数字といわれる「666(獣の数字とか言ってたな)」まで付けるタチの悪さ。これほどバンド名と音とが一致してることも少ないよね。

元々はTHE WiLDHEARTSを解散したジンジャーが、ドレゲンと共に何かやろうってことになり、だったらニッケも誘おう、そしてどうせなら「ニッケがドラムを叩く姿を見たい」というリクエストから、ENTOMBED(ニッケが'90年代中盤まで在籍していたデスメタル・バンド。途中からTHE HELLACOPTERSをサイドバンドとして結成し、掛け持ちで活動していたが、後に脱退。その後ENTOMBEDは爆走系バンドへと進化していく)時代は素晴らしいドラマーだったことを我々に再認識させるいい切っ掛け作りとなったのでした‥‥こんなイージーな流れで結成され、ほんの短期間で録音され、まず'99年末に日英でリリースされたオムニバス盤「UP IN FLAMES」に"You Smell Canadian"が先行収録され、話題を呼び、'00年初頭にいよいよこのアルバムがリリースされました。

たった6曲しか入っていないと思うかもしれませんが、この6曲がもうメチャクチャ魅力的な曲ばかり。1曲目"Wire Out"の疾走感からしてググッとくるし、2曲目の"Fast One"なんてまんまMOTORHEADの "Overkill" だし(特にエンディングで、まんまのフレーズまで登場する程)、3曲目"Dangermind"はIGGY POPのSTOOGESを彷彿させるノリだし、先述の"You Smell Canadian"なんて、まんまジーン・シモンズが歌ってそうなKISSナンバーだし、後にBACKYARD BABIESによってセルフカバーされた"Star War Jr."もメロディが素晴らしい名曲中の名曲だし、最後の"Crank It Up!"はニューヨークの爆走バンドTHE RODSの爆走カバー。たった18分、アッという間なんだけど、異常に密度の濃い瞬間を味わうことができます。

基本的にはジンジャー、ドレゲン、ニッケの3人がそれぞれボーカルを取り、あるはツインボーカルだったりするんですが、ボーカル自体にかなりディストーション気味のエフェクトがかかっている為、コアなファン以外はなかなか区別がつかないかもしれませんが‥‥聴いてるうちにその違いが見えてくるはずです。ですのでここでは誰がどの曲を歌ってるという解説まではしません(単に俺が面倒なだけ/笑)。けど‥‥THE WiLDHEARTS、BACKYARD BABIES、THE HELLACOPTERSをそれぞれ聴いてきている人なら判るはず。

そうそう、ゲストコーラスで同じくBACKYARD BABIESからボーカルのニッケ・ボルグと、先頃再結成した3 COLOURS REDのクリス・マコーマック(WiLDHEATSのベース、ダニーの実弟)が参加してる点も、爆走系好きにはたまらない要素ではないでしょうか?(ま、一聴しただけでは、ホントにニッケとクリスが歌ってるのか判断出来ませんけどね)

ジンジャーに関して言えば、THE WiLDHEATSの1回目の解散('98年秋)から正式な再結成('01年春)までの数年間に、ソロやSiLVER GiNGER 5のようなバンドを結成して活動してきましたが、結局このSUPERSHIT666での仕事が一番優れた内容だったというのは、何だか皮肉というか‥‥ま、脇を固める(というか、ここではあくまでジンジャーが脇役なんですが)ニッケ・ロイヤルもドレゲンもクセの強いシンガー/ソングライターですからね。それが見事に化学反応を起こした成功例といえるでしょう。ジンジャー自身は今後もSUPERSHIT 666としてフルアルバムを作りたいという構想があるようですが、なかなか全員のスケジュールが揃わないのと、興味をそれ程持ってないメンバーがいる(苦笑)点等でなかなか上手くいかないようですね(だってグラマラスなハードロックを嫌うニッケがいるのに、ジンジャーは「ベースにニッキー・シックス(MOTLEY CRUE)を起用したい」とか宣ってるんだからさぁ)。ま、今後また新しい音源が聴けるようなことがあれば、それはそれで万々歳ですけどね!

たった6曲入り、20分にも満たない作品集なのに、2000年の10枚に選んでしまう程、このアルバムには「ロックの何たるか」が濃縮されて詰まってます。傑作。つうかこれ以上の解説はいいから、みんなCD屋に走りなってば!



▼SUPER$HiT 666『SUPER$HiT 666』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 04 21 04:57 午後 [2000年の作品, Backyard Babies, Ginger Wildheart, Hellacopters, The, Super$hit 666, Wildhearts, The] | 固定リンク

2003/03/10

メロン記念日『告白記念日』(2000)

  デビューシングル「甘いあなたの味」から約4ヶ月後にリリースされた、メロン記念日2枚目のシングル。タイトル曲"告白記念日"は既に2000年5月のモーニング娘。武道館公演にて披露されていたんですよね(同公演のDVDで確認できます)。本体モーニング娘。がダンス☆マン路線を突っ走る中、メロン記念日はよりアイドル的な、それでいて更にB級チックな道を進み始めていたのでした‥‥それがいいことなのか、悪いことなのかは別として。

  タイトル曲"告白記念日"は勿論つんく作詞作曲で、アレンジは河野伸。彼らしいブラスの音が耳に残る、ちょっとファンキーで、それでいて可愛らしいポップチューン。バックで鳴ってるパーカッションの音も心地いいし、ちゃんとコーラスを取ってる点にも好感が持てます。しかし、前作とは大きく異なる点がひとつあります。それはこの曲でのセンターポジション的存在が大谷や斎藤ではなく、柴田だという点です。前シングルで柴田の実力について少し書きましたが、確かにここで聴ける彼女の歌は前シングルよりは聴けるようになってるんですが、それでもまだまだといった印象。ま、前のがかなり酷かったので、ここで進歩したような錯覚に陥りますが、アイドルとしては並のレベル、あるいはそれ以下ってことになるのかなぁ‥‥何となくプロデューサー的にも、そして事務所的にも、このグループをどういう方向性で、そしてどういった形で売り出していきたいのか、まだ試行錯誤してるような印象を受けます。モーニング娘。が "モーニングコーヒー" から "サマーナイトタウン" へと大きな変化/進歩を遂げたのと比べると、まだ確信めいたものは感じられませんね。ただ、楽曲はホントにいい曲なんで、埋もれてしまうには勿体ない気がします。

  カップリング曲"ふわふわふー"は、これまたお馴染み鈴木俊介による、ちょっとエッチっぽいフレンチ歌謡。全員鼻歌っぽい、かなり肩の力が抜けた雰囲気モノの歌い方で、この曲を演出しています。河野伸/鈴木俊介といった実力者をアレンジャーに迎え、しかも両楽曲共しっかりとした作品として完成されている点から、とにかくこの頃は個性やイメージ云々の前に「楽曲で勝負」って気持ちが強かったのかもしれませんね。そういえば同時期につんく♂、タンポポで "乙女 パスタに感動" という、彼自身にとっても、そしてハロプロにとってもターニングポイントといえる楽曲が発表されているんですよね。何となく、楽曲至上主義、そしていろんな実験を試してみたいという冒険心、このふたつが当時のつんく♂の中で大きかったんじゃないでしょうか?

  それにしてもなぁ‥‥ジャケット見てもらえば判る通り、この格好で歌ってたわけですよ。猫耳ですよ!? 一部の属性の方々にしかアピールしないんじゃないかという(いや、そういう人達ですら引きそうな気が‥‥)。ま、売り方がちょっと(いやかなり)ずれてるのは、当時に限ったことじゃないですけどね。

  チャート的には42位、8万枚強を売り上げるというまずまずの結果を打ち出したわけですが、その後メロン記念日が次作をリリースするまでには、約9ヶ月もの月日を要することになるのでした。



▼メロン記念日『告白記念日』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 03 10 07:26 午後 [2000年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

メロン記念日『甘いあなたの味』(2000)

  1999年初夏にモーニング娘。の妹分としてオーディションに合格した村田めぐみ・斎藤瞳・大谷雅恵・柴田あゆみの4人。その年夏のハロー!プロジェクト・コンサートにて初の顔見せ後、レッスンの日々を経て、2000年正月のハロコンより「メロン記念日」としてステージに立ち、同年2月19日にデビューシングルであるこの「甘いあなたの味」をリリース‥‥という、デビューまでそれなりに苦労してきた彼女達なんだけど、正直その後の3年間の方がよっぽど凄い苦労だったような気がしないでもないですね。正直な話、この俺でさえ初めてハロモニで彼女達を観た時(確か「バレリーナ戦隊メロン」とかいうシュールな寸劇をやってたような‥‥)「ああ、モー娘。のヒットで稼いだ金で、こんな売れそうもないアイドルまでデビューさせちゃったよ」くらいに思ってましたからね。それが、どこでどう道を間違えたのか‥‥

  というわけで、記念すべきメロン記念日のデビューシングル「甘いあなたの味」。一応当時はタイアップも付いたんですよね、この曲。何かシャ乱Qのはたけが音楽担当をしてたアニメのエンディング曲がこの"甘いあなたの味"だったそうな(同番組の主題歌をシャ乱Qが、そして以前にはタンポポが同エンディング曲を担当したことのある、所謂UFA枠だったわけですね)。で、そんな"甘いあなたの味"はつんく作詞作曲、棚橋UNA信仁という人がアレンジ。この頃(1999年後半~2000年前半)はハロー!プロジェクト内でもモーニング娘。が "LOVEマシーン" や "恋のダンスサイト" というダンス☆マン路線で大ブレイク、派生ユニットのプッチモニも "ちょこっとLOVE" というスカテイストのポップソングでミリオンを達成した時期。そんな中でのデビューなのですが、楽曲の路線的にはもっと前時代的なサウンド。ミディアムテンポの、ロック色が強いダンスチューンといった感じ、かな。ディストーションの利いたギターサウンドやちょっと強めのビートにその後の片鱗を感じさせなくもないですが、あくまでここでは「B級臭さ」が強いので、まぁ別物ですよね。但し、2003年の今、こうやって聴いても全然悪いと思わないし、むしろいい曲だなぁと思うわけで。決して俺がメロンヲタだからというわけでもないですが、明らかに今のつんく♂ワークスとは一線を画する流れですよね。

  しかしながら、まだこの当時のメロンには、この楽曲を歌いこなすだけの技量・表現力が乏しかったこともあり、更にB級色が色濃くなってしまってるんですよね。メインのセリフがかなり感情のこもった感じで女性らしい大谷や斎藤が基本的にはリードを取っている点も今とは違う点かな。即戦力となるのがこのふたりだったというのが、今となっては‥‥いや、村田も頑張ってるんだけど、とにかく柴田が‥‥素人以下というか‥‥大谷や斎藤と比べれば、明らかに2ランクくらい落ちるんですよね、実力が(だからこそ、アルバムではボーカルパートを再録音して欲しかったんですが‥‥)。実力の大谷・斎藤、ルックスの村田・斎藤という公式は既にこの時点で出来上がっていたんですね。何かこの区分け、CHEAP TRICKみたいだな。そうか、メロン記念日は「アイドル界のCHEAP TRICK」だったのか!!!

  一方、カップリングの"スキップ!"はお馴染み高橋諭一による、軽快なアイドルポップといった印象。タイトル通り、聴いてるとホントにスキップしたくなるようなリズムとポップなメロディを持ったいい曲で、全員ユニゾンで歌ってる点も今となっては珍しいかも。ライヴで聴いたらホントにいいんですよね、メロン記念日というユニットの一体感をまんま表したかのようなスタイルで。こういうタイプの曲を、改めて今やってみてもいいんじゃないかな?なんて、これを書いてる今ふと思ってしまいました。

  デビュー曲ってこともあり、露出もそれ程多くなかったこともあり、この曲は初登場60位、8千枚弱の売上げという結果に。これをまずまずの結果と取るか、大失敗と取るか‥‥



▼メロン記念日『甘いあなたの味』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 03 10 07:24 午後 [2000年の作品, ハロー!プロジェクト, メロン記念日] | 固定リンク

2003/01/23

FUZZBUBBLE『FUZZBUBBLE』(2000)

日本盤すら出てないこのバンドのことを知ってる人は、よっぽどのパワーポップマニアか、REDD KROSSのコアなファンか、あるいはバンドの関係者か何かでしょうね‥‥って位、ここ日本では無名に等しいバンド、それがこのFUZZBUBBLEなのではないでしょうか?

アメリカはロングアイランド出身の4人組。'90年代中盤から活動していたそうで(当初は3人組だった)、実は彼等、ここ日本では'98年に一度、大ヒットしたサントラアルバムで紹介されてるんですよ。ハリウッド版「ゴジラ」を覚えていますか? あのサントラ盤にFUZZBUBBLEの"Out There"(今回紹介するファーストアルバムにも収録)が収録されているんですね。確か当時も俺、「おっ、FOO FIGHTERSみたいなイキのいいバンドが現れたなぁ」って思ったはずなんですよ。けど、当時の彼等‥‥かのショーン・パフィ・コムズ(所謂「パフ・ダディ」ですね)のレーベル所属で、しかもエグゼクティブ・プロデューサーにはそのパフィの名前がしっかりと載ってるし。当初、パフィのレーベル「BAD BOY ENTERTAINMENT」が最初に契約したロックバンドという触れ込みだったのですが(実際、そのサントラのライナーノーツにもそう書かれているし)、その後彼等が同レーベル(配給はアリスタなので‥‥BMG系列ですね)から音源をリリースした、という話は伝わってきていません。ま、早い話が契約解除されたんでしょうね‥‥その後、ますますヒップホップやR&Bがチャート上で幅を効かせ、ロックは肩身の狭い身分に成り下がってしまいましたからね、ことアメリカでは‥‥

丁度去年の今頃でしょうか、よく利用する某WiLDHEARTS系バンドをメインに扱うCD屋さんでこのアルバムが紹介されていたんですね。で、その時はまさかそのゴジラに参加してたバンドだとは思いもしませんで‥‥俺の心を惹いたのは、「WiLDHEATSばりの爆走振り、ENUFF Z'NUFFばりのバブルガム・パワーポップ、そして豪華なゲスト&制作陣」というようなポップ‥‥で、音聴かずに迷わず購入。そしたら大当たりだった、と。とにかくね、パワーポップファン、FOO FIGHTERS辺りのギターロックが好きな人なら買って間違いなし。パワフルで、そのくせ甘い。コーラスもしっかりしてるし、ボーカルの声質もハスキーでモロ好み。曲のタイプも疾走系パワーチューンからBEATLES系のバブルガムポップ、CHEAP TRICK辺りがやるサイケなアコースティック調ナンバーとか、ファーストの頃のJELLYFISHが好きな人なんかも気に入ると思います。

製作陣の豪華さ‥‥ま、ここにはパフィは参加してませんが(当たり前です、無名のインディーレーベルからのリリースですから)、プロデュースにはかのMIKE CLINK(GUNS N'ROSESの諸作プロデュースで超有名ですね)、ミックスにはそのJELLYFISHやWEEZERを手掛けたJACK JOSEPH PUIGが当たっています。もうこれだけでアメリカンロックファン、そしてパワーポップファンには生唾モノなんじゃないですか? 更にゲストなんですが‥‥近年再結成し、5月には初来日も果たす(是非行きたいです!)BANGLESのスザンナ・ホフス、'99年に亡くなったREDD KROSSのエディ・カーゼル、元JELLYFISHのロジャー・マニングといったパワポマニアにはたまらないメンツがギターやキーボードやそれと判るコーラスで参加しちゃってます。ねっ、これだけでもかなり興味深いでしょ?

肝心の曲ですが、これが全然B級っぽくなく、逆に「何でこれがインディークラスなの?」って程のメジャー感たっぷりな音。ま、元々これをそのまま先のパフィのレーベルから出す予定だったらしいんだけど、やはり契約切られたか何かで、結局インディーズからのリリースになったみたい。サウンドプロダクションにメチャクチャ金がかかってるのは聴いてもらえば判ると思いますが‥‥多分これ、あと5年早かったらもっと違った評価を受けてたんだろうね。ここ日本でも「FOO FIGHTERSに続け!」とか「アメリカから現れたポストWiLDHEARTS」といった触れ込みで「BURRN!」辺りで紹介されてたかも。いや、「rockin'on」でも何ら問題ないけど。'00年のDECKARDもそうだったけど(ま、彼等は元々イギリスのバンドで、アルバムもメジャーからのリリースだったけどね)、日本未発売だったがために、完全に無視されてしまった良質なバンド、まだまだいるはずなんですよね‥‥勿論、このFUZZBUBBLEもそのうちのひとつ。絶対にもっと知られるべきバンドですよ。

疾走感ある"Bliss"で幕を開け、続く"Boomerang"は初期のハードロック調だった頃のENUFF Z'NUFFみたいだし、3曲目"Don't Let It Get You Down"はBEATLES調のバブルガムポップ、アコースティックナンバー"Ordinary"は他のパワポバンドにも退けを取らない程の独特さを持ったナンバーだし、"Zero Superstar"はCHEAP TRICKやワイハー系辺りの疾走パワーポップチューンを彷彿させるし、"Big Time Nowhere"や"Out There"はポップでヘヴィでアッパーな、文句なしにかっけーナンバーだし、スザンナ・ホフスがコーラスで参加した"When It Stops Raining"もホント切なくて、それでいて風変わりなバラードナンバーだし、"Wonderwoman"は決してFOO FIGHTERSに負けてない疾走パワーチューンだし、最後の"Real World"なんて彼等が何から影響を受けたのかがよ~く判る感動的な1曲だし‥‥って、全曲紹介しちゃったよ。ねっ、捨て曲なさそうでしょ? とにかく全10曲、曲順にしろバランスにしろバラエティさにしろ文句なし。サウンドのクオリティも悪くないし、演奏や歌・コーラスも絶品。これでジャケットさえセンス良ければねぇ‥‥いや、これ以上多くは望めまい。肝心の中身が最高なんだからさ。

実はこのアルバム、2000年にリリースされたものなんですよね。レコーディング自体は'98~'99年に行われたらしいんですが‥‥ってことは、REDD KROSSのエディが最後に参加したレコーディングらしいんですよ‥‥いやよく判らないけど。1曲目"Bliss"でリードギターを弾いてるそうなんですが‥‥それと判る人、いますか? さすがに俺、そこまでコアなREDD KROSSファンじゃねぇしなぁ‥‥

そういやぁ、先のゴジラのサントラ、FOO FIGHTERSも参加してたんですよねぇ。他にも今は亡きBEN FOLDS FIVEとかGREEN DAYとか。SILVERCHAIRもか。この辺が好きな人も文句なしで気に入ってもらえると思いますよ。CD屋で見かけたら、是非手にしてみてください。で、余裕があったら買ってみてくださいね。あ、パワポファンで未聴の人は無条件で購入すること!

最後に‥‥10曲目が終わった後にシークレットトラックが入ってるんですが‥‥何やらパフ・ダディ云々って歌ってるような気がしないでも‥‥これ、何て歌ってるんですかね? 是非聞き取りたいもんだわ。



▼FUZZBUBBLE『FUZZBUBBLE』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2003 01 23 07:35 午後 [2000年の作品, Fuzzbubble] | 固定リンク

2003/01/11

L'Arc-en-Ciel『REAL』(2000)

  2000年8月にリリースされた、L'Arc-en-Cielの通算8枚目(インディーズ盤「DUNE」含む)のアルバム「REAL」。この前年夏には、かのアルバム2枚同時リリース(「ark」「ray」)があったわけですが、そこから約1年2ヶ月でもうアルバムですから、当時(1997年秋の活動再開以降)の多作振り・活動の順調振りが如何に凄かったかがお判りいただけるかと思います。そんなラルク、このアルバムを最後にオリジナルアルバムを一切リリースしていません。それどころか、この後にシングル1枚(映画「ファイナルファンタジー」主題歌)とベスト盤をリリース後、一切の新曲がリリースされていません。ベスト盤が2001年3月ですから、早くも2年近くもの「不在」となるわけです。

  この2年というのは、かなり大きいと思います。その間に日本の音楽シーンの流れもだいぶ変わり、今やチャート上には彼等のような「ビジュアル系上がり」や「ビジュアル重視のロックバンド」の姿は殆ど見当たりません。時々、そういったバンドがチャート上位に食い込んできたりしますが、個人的には殆ど興味を持てないようなバンドばかり。

  そんな中、昨年辺りからラルクのメンバー達がそれぞれソロ活動を開始しています。ボーカルのhydeはソロシンガーとして2001年後半から活動、現在までにシングル数枚とアルバム1枚をリリース。また海外向けに、同アルバムの英語バージョンも制作されました。ベースのtetsuも「tetsu69」としてソロ活動開始、昨年暮れにはアルバムもリリースしたばかり。ドラムのyukihiroもソロシングルを1枚リリースしています。そして、最後の最後にギターのkenまでもが近々新バンドでデビュー。そのドラムにはラルクの元メンバー・sakuraが迎えられています。こういった事情から、このままラルクが再びhyde・tetsu・ken・yukihiroの4人で揃うことはないのでは‥‥なんて憶測まで流れる程。先日、tetsuもインタビューか何かで「今年の(ラルク)活動再開の予定はまだない」というような発言もしたばかり。このまま静かに幕を閉じてしまうのでしょうか?

  2枚同時アルバム「ark」「ray」辺りから徐々に実験的要素が目立つようになり、確実に音楽性の幅も広がったラルク。当初は'80年代前半イギリスのニューロマンティックや、GASTANKやDEAD ENDといったゴステイストのパンク/メタルから影響を受けた音楽性だったものの、成功と共に更に幅広く親しみやすい要素を身に付けていきました。そして(現時点での)その究極形ともいえる作品が「REAL」だった、と俺は認識しています。例えばここに収録されたシングルナンバー4曲にしても、タイプがてんでバラバラ。"NEO UNIVERSE" にはどことなくピコピコしたテクノポップ色が感じられるし、"LOVE FLIES" はROLLING STONESをダークにしたようなダルなロックンロールだし、"finale" は初期から持っているゴシックテイストを更に押し進めて、ポップで届きやすく工夫されているし、"STAY AWAY" は疾走感あるパンクポップ的ナンバーだし。これだけカラフルな楽曲を短期間に連続してリリースし続けられたというのは、バンドのポテンシャルの高さもあるだろうけど、それぞれの楽曲のソングライター(基本的に4人全員が独立した作曲者としてクレジットされている)の能力も相次ぐリリースを経て、更に磨かれていった結果だったのでしょう。それまで曲調や曲の雰囲気で大体誰が作曲者か想像がついたのに、実際この頃になるとそれすら判らなくなる程でしたし(俺、hyde作曲は大体外れたことないけど、このアルバムの頃初めてkenが "finale" を、tetsuが "NEO UNIVERSE" を作曲したと間違えたし。実際には逆なんですね)。それだけ個々のソングライターの引き出しも増えていったってことでしょうね。

  シングル曲だけでなく、アルバムには更にいろんなタイプの曲が入っていて、如何にもyukihiroな "get out from the shell" はちょっとドラムンベースの要素を感じることができる打ち込みモノ。hydeによる英詞も曲の雰囲気にピッタリ。続く "THE NEPENTHES" は変拍子を用いたヘヴィロック風。当時海外で主流だったラウドロックというよりも、例えばUK勢‥‥MUSEやMANSUNといったバンドに近い印象を受けます。アルバム中、最も「名曲」との声が高かった "bravery" はミディアムテンポのポップチューン。過去の彼等の楽曲と比べれば引っかかりやクセが殆どない、いわば本気で「狙った」楽曲と呼ぶこともできるのでは? "ROUTE 666" は8曲目にしてようやく登場するhyde作の曲。アルバム中、最も過去の彼等に近いタイプだけど、演奏自体は完全に過去の彼等とは別物。ロカビリーっぽいですよね。なんかhydeのイメージにないタイプだなぁ‥‥とか当時思ってたんですが、hyde云々というよりもバンドとしての新境地を狙ったってことなんでしょうか。その後、地味なポップロック "TIME SLIP"、バラード "a silent letter"、再びhyde作の壮大なポップチューン "ALL YEAR AROUND FALLING IN LOVE" でアルバムは幕を閉じます。

  「TRUE」で大成功を手にしたラルクは、続く「HEART」で更にポップ色を強めた作風にシフトチェンジしていき、2枚同時アルバム「ark」「ray」では大衆性とマニアックさという相反するふたつの要素を見事に両立させていました(アルバムとしてのまとまりはイマふたつくらいでしたが)。しかし、この「REAL」というアルバムでは個々の楽曲は光っているものも多いけど、同時に地味な楽曲も数曲含まれています。特にラストにいくに従って、その印象は強まっていきます。前半に魅力的なナンバーやシングルヒット曲を固めたことによって、更に後半4曲の印象が薄いものとなってしまってる気がします。地味ながらも、個々の楽曲の完成度は他のバンドとは比べものにならないのですが‥‥

  そうはいってもこのアルバム、駄作なんかではなくてよく出来たアルバムだと思いますよ。個人的には8曲目まで聴いたら止めてしまう、なんてこともよくありましたが、最近聴き直すと9曲目以降の3曲も決して悪い曲じゃないんですよね。ただ、カッコつけた言い方をさせてもらうと‥‥アルバムタイトル通り「リアル過ぎる」っつうか、生々し過ぎる気がするんですね、いろんな意味で。メンバー個々のエゴ(ソングライターやアーティストとしてのエゴ)、バンドの上手く機能してる面とそうでない面が赤裸々に語られたアルバムだったのかなぁ、と今になって思うわけです。表現はよくないですが‥‥これは当時のラルクの「膿」だったのかなぁ、と。当時の創作サイクルや連続リリース(シングル3枚同時発売とか、2週連続リリースとかアルバム2枚同時発売とか)等から生まれるストレスとかメンバー間のすれ違いとか、そういったものが全部表出してしまったのがこのアルバムだったのかなぁ、と。そういう意味では、本当に「リアルなL'Arc-en-Ciel」を表現したアルバム、それがそのままタイトルになった「REAL」というアルバムでバンドを活動休止させてしまったのは、ある意味正解だったのかもしれないし、だからこそ、あれからかなりの時間が経った今だからこそ、そういう意味での「リアルさ」ではなくて、現在個々のメンバーが見せている「等身大さ」をラルクとして表現してみてもいいのではないか?と俺は思うのです。勿論、そういった面がバンドのコンセプトとはずれるものであろうことは簡単に想像できますし、だからこうやって未だに活動再開に漕ぎ着けられないのかもしれません。

  確かに過去の路線をトレースした「如何にもラルク」な音も魅力的かもしれませんが、バンドを続けるにしろ終わらせるにしろ、ここで更に大きな方向転換をしてみるのもいいのではないでしょうか? 「ラルクとして活動するってことは、沢山の船員(=創作活動やライヴ等、全てに関わる全スタッフ)が乗った巨大船を運転するようなもの」とhydeは言いました。その船が再び出航するためには、途中で遭難したり沈没しないように、細心の注意を払うべきでしょう。しかし、あまりに神経質過ぎて、逆に出航を躊躇ってしまうと、いつまで経っても海に出ることは出来ないでしょう。何となく、今のラルクはそういう状況に陥っているのかなぁ、と感じています。それは「失敗は出来ない」という大きなプレッシャーとなって、個々のメンバーを苦しめているのかもしれないし。

  昨今、ロックにしろヒップホップにしろ、かなり「現実的」で「地に足の着いた」アーティスト達がシーンを席巻しています。そういう時代だからこそ、俺は2003年という今年こそ、L'Arc-en-Cielの活動再開を願っているのです。「浮世離れ」したイメージのあった彼等が、どんどん我々に身近な存在となっていき、現在ではソロアーティストとして更に「地に足の着いた」かのような活動をしている4人。けどね‥‥等身大ながらも、彼等には常に「ロックスター」であって欲しいと、そう思うわけです。アマチュア時代から彼等を見てきた身として、切にそう願うわけです。

  いろいろ矛盾したことを書き綴ってきましたが、それだけ俺はラルクというバンドが今必要だと思っているし、必要としている人達も多いんじゃないか?とも思うわけです。DEAD ENDと重ねるわけじゃないですが、彼等の二の舞にはなって欲しくない‥‥「その先」にあるものを是非彼等なりに表現して、我々に見せて・聴かせて欲しい‥‥そう願って、彼等の復活を静かに待ちたいと思います。



▼L'Arc-en-Ciel『REAL』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 01 11 12:00 午前 [2000年の作品, L'Arc-en-Ciel] | 固定リンク

2001/11/24

FREDDIE MERCURY『FREDDIE MERCURY SOLO』(2000)

自分がロックというものと出会ってから、既に20年以上もの月日が流れた。その間、有名・無名を含めても何百人というアーティスト達がこの世を去っていった。一番古い記憶だと、やはりジョン・レノンだろうか。ジョンの死は自分の人生の中でもかなり鮮烈な記憶として残っている。そして、それに匹敵する程の衝撃を与えたアーティストの死。それは1991年1月のスティーヴ・クラーク(DEF LEPPARD)であり、今回紹介するQUEENのフレディ・マーキュリーであった。特にフレディが亡くなった1991年11月24日は、別の意味でも忘れられない日となった。

今回は彼の死について語るのではなく、彼のバンドを離れてのソロ・ワークについて、昨(2000)年10月にリリースされた『FREDDIE MERCURY SOLO』という3枚組ボックスセットを通して紹介していきたいと思う。

このボックスセットはフレディが生前残した2枚のオリジナル・ソロアルバムと、幻のテイクやシングル・オンリーの曲、フレディの死後に発表されたリミックス曲を収録したボーナスディスクの計3枚から構成されている。最大の売りは、暫く廃盤となり手に入らなかった初のソロアルバム『MR.BAD GUY』(1985年)がここで楽に聴けるようになったことだろうか。フレディの死後にQUEEN名義で発表された『MADE IN HEAVEN』というアルバムには、このソロアルバムから数曲、ボーカルトラックのみを残してバックをブライアン・メイ、ジョン・ディーコン、ロジャー・テイラーの演奏に差し替えて「QUEENの新曲」として発表されているが、ここではそのオリジナルを聴くことができる。まぁ自分と同世代やそれ以上の年代の方にとってはこっちのオリジナルの方に愛着があって、QUEENヴァージョンにはちょっと違和感が‥‥なんて人が多いかもしれない(実は最初、自分もそのひとりだったりしたのだが)。

そしてこのボックスのリリース前に急に廃盤になった、1988年発表のクラシック作品『BERCELONA』もリマスターされ、再びここで聴けるようになった。オペラ界の大御所、モンセラ・カバリエとのデュエット作とも呼べるこの1枚は、ロック/ポップサイドを求めるファンには少々辛い作品かもしれないが、QUEENというバンドの根底にあるものを改めて再確認することができる、非常に興味深い1枚なのではないだろうか? 特にリリース当時よりも、フレディの死後の1992年にバルセロナで行われた夏季オリンピックのテーマ曲として話題になった事の方が記憶に残っているかもしれない。

さらに、今回のボックスセットにボーナスディスクと称され追加された7曲入りディスク。これはちょっと貴重な音源も含んでいるので、上の2枚を既に持っている人にもオススメだ。

まず1曲目の「I Can Heare Music」。これは名義としては「ラリー・ルーレックス」という偽名でリリースされているものの、間違いなくフレディ・マーキュリーのボーカルである。1972年頃、当時QUEENのファーストアルバムをレコーディングしてる最中に録音されたものだそうで、楽曲自体はBEACH BOYSのカヴァー。聴いてお判りの通り、フィル・スペクターを彷彿とさせる「ウォール・オブ・サウンド」を再現したオールディーズっぽさが新鮮だ。更にブライアン・メイもそれと判るギターでゲスト参加、ロジャー・テイラーもパーカッションで参加している。QUEENではここまでオールディーズっぽい要素が表出することもなく、またソロでもこういった要素はあまり見受けられなかったので、今回のリリースによるCD化は正直有り難い。これはかなり面白い。

続く「Love Kills」は、正真正銘のフレディ・マーキュリー初のソロシングルとなった1曲。映画『メトロポリス』の主題歌としてリリースされたもの。後のファーストソロと同系統のエレポップ。元々は1984年のQUEENの『THE WORKS』の際に書かれた楽曲で、当時は使用されず後にこの映画の為に録音され、1984年10月にリリースされることとなった。古臭さは拭えないが、意外と今聴くと新鮮なのも確か。メロディは如何にもフレディらしいもので、潤いのあるポップな佳曲。ギターレスな点に違和感を感じるQUEENファンの気持ちもよく判るのだが。

3曲目「The Great Pretender」は1992年にリリースされた編集盤『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』の1曲目にも収録された、プラターズの名曲カヴァー。これはマジで素晴らしいアレンジ&パフォーマンスだと思うのだが、如何だろうか? 我々がイメージする「ゴージャスなフレディ・マーキュリー」を見事に演じきった、快心の1曲。1987年2月にシングル化、トップ5入りするヒットとなった。

4曲目「Living On My Own」はファーストソロ『MR.BAD GUY』に収録された同曲を、フレディの死後新たにリミックスしたバージョン。前述の編集盤『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』からのシングルという形でカットされ、このリミックスバージョンは当時のクラブシーンでもヒットを記録した結果、ソロとしては初のナンバー1ヒットとなる(皮肉なことに、彼の死後に)。サウンド的にはオリジナルよりもかなり現代的なリアレンジがなされていて、リミックスバージョンの発表から8年経った今聴いても、古臭さを感じさせない。意外と今のクラブでかけても違和感なく踊れるかも。

5曲目「In My Defence」は1985年にミュージカル『タイム』の為にデイヴ・クラークが書き下ろした楽曲。発表当時はサントラの1曲として登場したものの、フレディの死後、先の編集盤『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』リリースの際に先行シングルとしてカットされ、4位まで上昇するヒットとなっている。そのままQUEENの1曲としても通じるほどの普遍性を持った名バラードで、特にボーカルパフォーマンスの凄まじさに鳥肌が立つ。ちなみにこのボーカルトラック。一発撮り即OKだったそうだ。感動的な超名曲。ファン以外をも唸らす1曲ではないだろうか?(ちなみにこのボーナスディスクの音源は、今回のリリースに際してリミックスされたものだ)

6曲目「Time」も同じくミュージカル『タイム』の為の楽曲。当初この曲はフレディ以外の人間が歌う予定だったが、先の"In My Defence"のボーカルパフォーマンスにデイヴ・クラークがノックアウトされ、急遽唄うことになったそうだ。この曲も今回新たにリミックスされている。

最後は「Love Kills」のロック・ミックス・バージョン。ライヴでの歓声を被せ、シンセの代わりにギターをメインにしたアレンジがより「QUEENのフレディ」を色濃く表現してるように思う。ピコピコしたエレポップバージョンもいい味出していたが、こっちのバージョンもより大きなノリを持った好バージョンだ。

ちなみに以上7曲の内、1曲目と4曲目、7曲目以外は先の編集盤『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』に収録済みだったので、既に持ってる人にとってはダブりが生じて新鮮さが余り感じられないのかもしれないが、全音源新たにリマスターされているので、音質的には飛躍的に向上している。オマケにしても豪華な選曲なので、これはこれでお得感が強いと思うのだが。特に1曲目「I Can Heare Music」はここでしか聴けない音源なわけだし。

こうやって3枚のディスクを通してフレディ・マーキュリーというシンガー/ミュージシャンを改めて考察してみたわけだが、勿論ソロだけでなくQUEENというバンドも理解しないことには彼の本来の姿は見えてこないだろう。しかし、逆に言えばQUEENだけでは見えてこない面というがあるのも事実。現にモンセラ・カバリエの事なんて、あの共演がなければ我々は知りもしなかったわけだし。映画音楽に数多く携わっている点も興味深いし(そういえば、QUEENでも映画音楽に数多く関わっているし)。

既に彼がこの世を去ってから10年が経った。自分にとってはあっという間の10年だったような気がする。彼が亡くなる前の10年と亡くなった後の10年を比べた場合、残念ながら亡くなってからの方が評価が高いような気がする。それは仕方ないことなのかもしれない。と同時に、「ああ、エイズで死んだバイ(セクシャル)ね?」と彼を軽視する音楽ファンも未だに多い。如何に彼が類い希なる才能を持ち合わせたミュージシャン/シンガーだったか、この3枚組からだけでも相当な収穫があると思うのだが‥‥俺がここまで言うんだから、レンタルでもいいんで、ちょっと手を伸ばして欲しいな。俺の音楽感とか人生観とか歌に対する姿勢とか、そういう価値観を全て変えてくれたのがこの人だったのだから(残念ながら、それも彼の死後のことだったのだが)。



▼FREDDIE MERCURY『FREDDIE MERCURY SOLO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 11 24 02:00 午前 [2000年の作品, Freddie Mercury, Queen] | 固定リンク

2001/11/18

RIZE『ROOKEY』(2000)

  昨年登場した日本のバンドには、本当に活きがいい奴らが多かった。特にインディーリリースなしにいきなりメジャーからデビューした新人‥‥RIZEだったりGO!GO!7188といった奴らは、今を生きるあの年代の子達にしか出せない音・言葉を発していたと思う。時にそれが「先陣からの借り物」と非難される事が多かろうが、俺は間違いなく「絶対に成長する、化けるバンド」だと確信していた。特に上の2バンドに関しては本気でそう思っている(実際に今年に入ってライヴを観たGO!GO!7188はもの凄いスピードで化けていたし、先頃リリースされたセカンドも凄いことになっていた)。

  で、今回紹介するのはRIZEの方。そのRIZEも数週間後には同年代のメンバーを集めて再編成された後初のアルバムが発表される。先行シングル"LIGHT YOUR FIRE"や"DREAM CHATCHER"を聴けば、その充実振り/爆裂振りは十分すぎる程に伝わってくる。もう今から楽しみで楽しみで‥‥

  で、本来なら昨年末に発表されたこのファーストアルバムをもっと前にレビューしておくべきだったのだろうけど‥‥気付けば後回しにしてて(苦笑)。本当に申し訳ない。しかも現時点においても未だに彼らのライヴを観れてないし‥‥是非今度のツアーでは目にしたいと思っているのだが(「ひたちなか」やサマソニで観るチャンスがありながら、それを逃してしまったのは大きかったなぁ)

  では、このアルバムについて‥‥まず現在とは編成が違っているのはご存じの通り。ボーカル&ギターのJesseとドラムの金子に加え、その後AJICO等で活躍することとなるTokieさんがベースで参加している。まずファーストとそれ以後‥‥4人編成になってからの音の違い。ファーストはTokieさんのベースを軸にアンサンブルを組んでるような面が見受けられる。いい意味で「セッション」色が強い曲が幾つか見受けられる。Tokieさんのベースもシングルギターの隙間を埋めるようなフレーズやプレイが多いし。また、そういった事が影響してるのかどうか判らないが、ゴリゴリしていながらもしなやか‥‥スマートさが感じられる。これはTokieさんが女性だからとか、そういう事とは関係ないとは思うのだが、この辺は他の日本のラウド系には感じられない特徴だ。そういう意味では、よく比較されるDragon Ashや、欧米のラウドロック系とも一線を画するような気がする。

  で、そのDragon Ashとの比較だが。確かにざっと聴いた感じでは「昨今のラウドロックにラップボーカル」という点での共通点しか感じられない。むしろ、もっと最近の‥‥所謂B級ラウドロック‥‥ZEBRAHEADやMACHINE HEAD辺りからの影響を感じるのだが、如何だろうか? Dragon Ashがどの辺のラウド系と比較されているのか判らないが、俺にはRIZEの方がもっと「ロック」に拘っているように感じる。もしかしたらRIZE自身も今後作品を重ねていく内に、Dragon Ashのようにヒップホップ・ユニットのように変化していくのかもしれない。けど、少なくとも今のメンバー(4人編成)でいる限りは大丈夫なような気がするのだが。逆に、ファースト時のようなトリオ編成のままだったら、もしかしたらDragon Ashのような道を辿っていたかも‥‥とも思う。まぁそんな事は俺が心配することではないが。とにかく、ルーツ面では共通するものが被ってるのだろうけど、降谷とJesseは全く別のパーソナリティーを持った表現者なのだから、もっと長い目で見てやってもいいのではないだろうか?(確かに唄い方なんかが似てるという意見も判るのだが、これも降谷やJesseが直接ZEEBRAから影響を受けている事が大きいのではないのだろうか?)

  Tokieさんはともかく、ドラムの金子のプレイがマジで凄まじい‥‥というか、激上手だと思う。よくパンクはテクがなくても出来るなんていう固定観念があるけど、少なくても現代のパンクと呼ばれる機会の多いラウド系バンドには非常に卓越したテクニックを持った人間が多い。RAGE AGAINST THE MACHINEの楽器隊やKORNの面々、LIMP BIZKITのリズム隊なんてかなりテクニシャンだし。それぞれにジャズやファンク、メタル等といったテクニックを要するジャンルを通過している事も大いに関係しているのだろうけど、RIZEの場合もJesseや金子には尋常じゃないテクニックが備わっているように感じる。その辺は先の欧米バンドと同様、Jesseや金子もRIZEの前身バンドではPANTERAやレッチリタイプのバンドをやっていた事も関係してるのかもしれない。そしてヒップホップにありがちなサンプリングに頼ることなく、あくまで自身がプレイしたものをそのまま残す。サンプリングに頼る事の多いDragon Ashとも、この辺が大きく違うように思う。勿論、どちらが悪いという問題ではない。表現の仕方の違いなのだから。

  歌詞に目をやると‥‥非常に青臭いことを語っている。目線の位置がJesseやメンバーと同じ高さ、あるいはもっと低い位置‥‥それこそ尾崎豊のように地べたから睨みつけるような、そういうモノの見方を感じる。時にマジになり、時におちゃらけてみせる。この辺の感覚はDragon Ash以降のバンドに多く見られるものだ。勿論、ヒップホップからの影響だ。
  これは俺個人の感じ方なのだけど‥‥日本語で判りやすく唄っている点から、欧米からの二束三文のラウドロックバンドよりも信頼できる。10年前はガンズみたいなバンドやってました、5年前はグランジやってました、そして今は‥‥っていう奴らが多い中、どれだけの奴らが今やってる事をモノに出来てるのだろうか? それはここ日本においても同じことで、Hi-STANDARDが流行ればみんな3ピースのパンクに走り、BRAHMANがブレイクすれば和・沖縄テイストを含んだパンクに走る。物真似やパクリを非難してるのではない。要はそこからどれだけ「自分らしさ」や「オリジナリティー」を表現することができるか‥‥じゃなきゃやってる意味がないのでは? よくRIZEを非難する人は必ず「Dragon Ash云々」といって貶しているが、こういうロックが嫌いならまだしも、もっと本質的な部分に目を向けてみたらどうだろうか? 確かにパッと見/聴きの印象というのは大切だ。けど、それだけじゃ判断しにくい面だってあるだろ?

  まぁもっとも、こんな俺の戯言も12/5リリースのセカンドアルバム「FOREPLAY」が世に出ればどうでもいいものとなるだろう。同年代の4人の男達が生み出す「新しい音/言葉」によって少しは何かが変わるはずだから。



▼RIZE『ROOKEY』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 11 18 12:00 午前 [2000年の作品, RIZE] | 固定リンク

2001/11/11

GiNGER『GRIEVOUS ACOUSTIC BEHAVIOUR』(2000)

ジンジャー初のソロシングルとほぼ同時期にいきなり発表された、'98年8月24日にイギリスのクラブにて録音された、アコースティックライヴの模様を収めた2枚組ライヴ盤。SILVER GINGER 5やWiLDHEARTSとしても順調に活動していたように見えたジンジャー、何故にこの時期にこんな代物を発表しようと思ったのだろうか?

当時('98年夏)WiLDHEARTSは前年秋の無期限活動休止(事実上の解散)状態で、その2ヶ月後にここ日本でワイハーとして最後の日本公演を行うこととなっていた。そう、ご存じの通り、ジンジャーはそのワイハー来日公演終了翌日、ここ日本でもソロ・アコースティックライヴをこのアルバム同様、元HONEYCRACKのウィリーと共に行っている(その模様は断片としてライヴ盤「TOKYO SUITS ME」ボーナスディスクに収録されている)。この「GRIEVOUS ACOUSTIC BEHAVIOUR」の内容は、その日本でのソロライヴの前哨戦といったところだろうか?

ハッキリ言ってしまえば、ただの「酒飲みの宴会芸」だ。名ライヴアルバムとか「ジンジャーが放つ初のソロアコースティックアルバム!」なんて太鼓判の押せるような代物ではない。が、何故か憎めないんだよな‥‥単に自分がファンだからかもしれないけど(苦笑)。ジンジャーの歌は普段のライヴ以上にヘロヘロだ。轟音がない分、その「酔っぱらいの声」が前面に出る。そしてその歌を補うかのような、MCの完全収録‥‥殆ど聞き取れませんが(苦笑)オーディエンスの笑い声からすれば、きっとオモロイこと言ってるんだろうけどさ(ん、今エルヴィス・コステロが何とかって言って客が笑ってるぞ‥‥)。

楽曲はワイハーが7割、当時未発表でその後SILVER GINGER 5名義で発表された曲や、ワイハー時代の未発表曲の他にKISSの"Hard Luck Woman"も収録されている。更に、その曲名こそ所々で名前が挙がるものの、その後正式には発表されることのなかった未発表曲"Re-inventing The Wheel"や"If I Had You"も収録されている。ワイハー時代の未発表曲も「LANDMINES & PANTOMIMES」に収録された"Tom, Take The Money"はともかく、その後発表されることのなかった"Where Did Everyone Go?"はかなり貴重かも。考えてみりゃ、その後SILVER GINGER 5で発表されることとなる"Church Of The Broken Hearted"だって、初期ワイハーの未発表曲だしな。

アコースティックとなると、大切になるのは(勿論演奏力もそうだが)核となる楽曲だろう。装飾のなくなった形で、如何にメロディーが引っ掛かるか‥‥そういう意味では、この企画は大成功だろう。ジンジャーのソングライターとしての才能は、ギターだけになろうがやはり素晴らしい。これはファンだからとか、そういった次元の話ではない。CLAM ABUSEのような変態ユニットだろうが、アリーナロック全開のSILVER GINGER 5だろうが、ソロやワイハーだろうが、結局ジンジャーという男の書くメロディーはスウィートでポップなのだ。

ジンジャー初心者は、いきなりこの作品からジンジャーに入ることだけはお薦めしない。まずワイハーであり、SS5だ。そこで引っ掛かりがあったなら、これを聴けばいい。そうすると、また新たな発見があるだろうから。更に深みにハマることうけあいの1枚だ。



▼GiNGER『GRIEVOUS ACOUSTIC BEHAVIOUR』
(amazon:MP3

投稿: 2001 11 11 07:51 午後 [2000年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2001/09/16

IOMMI『IOMMI』(2000)

BLACK SABBATHのアックスマン、トニー・アイオミの事実上初のソロアルバム。'80年代前半、イアン・ギラン(DEEP PURPLE)を迎えたサバスが失敗し、サバスとしてではなくトニーのソロとして最初は制作された「SEVENTH STAR」というアルバムがあるが、あれはレコード会社の圧力により『BLACK SABBATH featuring TONY IOMMI』という訳の判らない名義でリリースされいる。あのアルバムはボーカルにグレン・ヒューズ(元DEEP PURPLE)、ドラムにエリック・シンガー(現KISS)、ベースにデイヴ・スピッツ(元WHITE LION。元ANTHRAXのダン・スピッツの実兄)他を迎えたバンド編成での作品となっていたが、この2000年秋にリリースされた本格的なソロアルバムは、楽曲毎にリズム隊やシンガーを取っ替え引っ替えして、単純に全てのギターとソングライティングにトニーが絡むのみという、非常に面白い作りとなっている。最初このアルバムがリリースされた時、てっきりサバスとしての活動が終了したからのソロアルバムだと思っていたのだが‥‥

プロデュースには復活サバスでのライヴ盤「REUNION」を手掛けたボブ・マーレットを起用。彼は'90年代後半のアリス・クーパーの作品や元JUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードが一時期やってたバンド、TWO(NINE INCH NAILSのトレント・レズナーのレーベルからアルバムを発表している)を手掛けたりしている。どちらかというと、伝統的なメタル愛好者というよりは昨今のラウド系やインダストリアル系の人ってイメージなのだが‥‥さて、その「伝統継承者」と「今時のプロデューサー」とのコンビネーションはどんなもんなのだろうか??

以下に各楽曲毎の参加メンバー及び簡単な感想を紹介することとするので、ご参考までに。

M-1. Laughing Man (In The Devil Mask)
シンガーにROLLINS BANDのヘンリー・ロリンズ、ベースにテリー・フィリップス(この人、知りません。スタジオミュージシャン?)、ドラムにジム・コプリー(再結成MONKEESやPRETENDERSに参加)。リズムがサバスというよりも、昨今のラウド系っぽい跳ね気味なので、アイオミっぽくないかな?なんて思ったりして。ボーカルがロリンズってこともあって、独特な雰囲気を醸し出している。かなりのダウンチューニング(1音下げ?)の為、サバスよりも重い。リフとリフの隙間に効果音のように入るハーモニクス音がまた雰囲気を盛り上げる。ギターソロも暴れまくってるし‥‥でもよく聴くと、やっぱり(特にディオ期サバス以降の)トニーが弾くソロって感じかな? 非常に'90年代後半のラウド系を研究してるかなって感じ。

M-2. Meat
ボーカルに先頃解散したSKUNK ANANSIEのスキン、ベースはこのアルバムのプロデューサーであるボブ・マーレット、ドラムは元TESTAMENT~WHITE ZOMBIE~現ロブ・ゾンビのドラマー、ジョン・テンペスタ。一部ギターでそのSKUNK ANANSIEのギタリスト、エースが参加。ということもあってか、まんまSKUNK ANANSIEの曲として通用する内容となってる。確かにリフはトニーっぽいんだけど、スキンのような個性的なシンガーが唄うと、どの曲もSKUNK ANANSIEのようになってしまうという‥‥ってこれは、どのシンガーの曲にも言えるんだけど、このアルバムに参加したシンガーはどれも個性が強い人ばかりなので、どの曲もサバスというよりはそのシンガーが在籍するバンドの曲のようになってしまってる点が面白い。個人的にはアルバム中で好きな部類の曲。つうかマジ残念、解散は‥‥

M-3. Goodbye Lament
ボーカル&ドラムに元NIRVANA~現FOO FIGHTERSのデイヴ・グロール、ベースにはサバス「SEVENTH STAR」でも弾いてたローレンス・コットル(フュージョン系のアルバムにも参加してることから、どうやらスタジオミュージシャンのよう)、一部ギターにQUEENのブライアン・メイが参加。って聴けば判るよね、あのギターオーケストレーション(笑)。FOO FIGHTERSとブライアン・メイの共演は過去にも何度かあるので、その流れからかなぁと思うのだけど、実はトニーとブライアンは旧知の仲で、以前にもサバスの'89年のアルバム「HEADLESS CROSS」で1曲("When Death Calls")、ブライアンはギターソロを披露しているし、逆にトニーは'92年4月のフレディ・マーキュリー追悼ライヴにゲスト参加している。さて肝心の曲だが‥‥FOO FIGHTERSともサバスとも違う、別物‥‥サビでのギターオーケストレーションのせいでQUEENみたいっつうか(笑)。まぁグロールが叫ぶ箇所になると、あぁフーファイかなぁって感じがして。特にアルバム中、印象に残るタイプの曲でもないかな‥‥最もポップではあるけど。異色作ってとこかな?

M-4. Time Is Mine
ボーカルにPANTERAのフィル・アンセルモ、ベースにローレンス・コットル、ドラムに元SOUNDGARDEN~現PEARL JAMのマット・キャメロン。まんまサバス(笑)。フィル・アンセルモのサバス好きはご承知の通り。自身でDOWNなんていう、まんまサバスなストーナーロックバンドをソロでやってた程だから。このアルバム中、最もサバス及びトニーに敬意を表した曲では? ボーカルはPANTERA以外の何ものでもなく、それでいてバックはサバス以外の何ものでもない。普通の出来と言ってしまえばそれまでだが、個人的には「やるべき人間がやるべき仕事をやった」って感じで好感が持てる。

M-5. Patterns
ボーカルにSYSTEM OF A DOWNのサージ・タンキアン、ベースにローレンス・コットル、ドラムにジミー・コプリー。何かサバスの"Electric Funeral"と"Iron Man"をくっつけたみたい(笑)。サージのあの独特な唄い方はここでは希薄で、どっちかっていうとありがちな出来。もっとハードコアでSYSTEM OF A DOWNも真っ青な曲を期待したんだけど、残念。まともなヘヴィロックかストーナーロックといったところだろうか?

M-6. Black Oblivion
アルバムのハイライトとなる1曲。ボーカル、ベース、そしてギターの一部を元SMASHING PUMPKINSのビリー・コーガン、ドラムにはジョン・メレンキャンプ・バンドの一員としてだけでなく、多くのセッションでお馴染みのケニー・アロノフ。8分以上もある大作で、ある意味で末期スマパン的アプローチとも取れる内容。つうか、「MACHINA」でのスマパンがサバス的アプローチを取り入れていたとも言えるが。途中何度も曲調が変わる展開が入る点が非常に初期サバスっぽいというか。まぁビリーの声質のせいもあって、トニーの色が希薄かなぁ、と。スマパンの未発表曲と言われたらそのまま信じてしまいそうな1曲(つうか以前、この曲をスマパン好きの友人に聴かせたら「何、未発表曲?」と言ってたし)。アルバム中最も好きな曲。

M-7. Flame On
ボーカルにTHE CULTのイアン・アストベリー、ベースにローレンス・コットル、ドラムにマット・キャメロン、一部ギターにブライアン・メイが参加。これも曲調&イアンの歌唱のせいあって、非常にTHE CULTっぽくなっている(特にサビの掛け合いっぽいとこなんて、モロCULTだし)。確かにリフ等はサバスのそれっぽいとも言えるのだが、いざイアンが加わると‥‥世界観が一気に変わるという‥‥けど、まぁ‥‥普通の曲だな、これも。インダストリアル的S.E.が所々に組み込まれているが、それも空回りかな?って気も。つうかブライアン・メイ、どこに参加してるの?(苦笑)もしかして、ギターソロ!? とにかくイアンのカラーのみが色濃く表れた、中途半端な出来。

M-8. Just Say No To Love
ボーカルとベースにTYPE O NEGATIVEのピーター・スティール、一部ベースでローレンス・コットル、ドラムにマット・キャメロン。歌に入った途端に別世界へと導かれてしまう‥‥好きです、ピーター・スティールの歌声(笑)。TYPE O NEGATIVEとはまた違った世界観なんだけど、非常にサバスとマッチしてるような気がする。サバス・トリビュートアルバムでもTYPE O NEGATIVEがカヴァーした"Black Sabbath"は最も異様な色を醸し出してたしなぁ。サバスでもTYPE O NEGATIVEでもない世界を新たに作り出してるよ、これ。これもかなり好きな部類の曲。

M-9. Who's Fooling Who
サバスの新曲です、ハイ(笑)。ボーカルにオジー・オズボーン、ドラムにビル・ワードという現サバス組。ベースもローレンス・コットルということで元サバス組なので‥‥サバス新曲と言い切っても間違いではないでしょう。まぁギーザー・バトラーのあのベキベキ・ランニングベースがなくちゃ今のサバスとは言い難いけど‥‥イントロの鐘の音の時点でもう雰囲気バッチリ。ただ、思いっきりダウンチューニングで尚かつキーが低いことから、オジーが持ち味を発揮し切ってないかなぁ‥‥と。オジーは中~高音域が特徴なわけで、低音で凄まれても、ちょっと‥‥(笑)このメンツ、プロデューサーも復活サバスと一緒ということもあり、かなり再結成後の新曲に近い作風なのだけど‥‥まぁ普通の曲かなぁ、と。オジーとトニーが組むんだから、かなりハイレベルな楽曲を勝手に期待してしまってるのだよ、こっちは。中盤の"Children Of The Grave"みたいな展開は好きだけどね。それよりも、もっとかっこいいリフ&メロディーに期待(もしかしたらこの曲、ノーマルチューニングで演奏したらカッコイイのかも‥‥)。

M-10. Into The Night
ボーカルにビリー・アイドル、ベースに元SOUNDGARDENのベン・シェパード、ドラムにマット・キャメロン、って‥‥リズム隊、SOUNDGARDENかよ!!(笑)それにギターがトニーって‥‥これこそまんま、サバスじゃんか! どうせなら、ボーカルにクリス・コーネルを‥‥レイジと一緒にやってる場合じゃねぇってば(苦笑)。この曲も必要以上にキーが低いせいで、ビリー・アイドルの持ち味を生かし切れてないかなぁ、と。ビリー・アイドルは'80年代、大好きなシンガーのひとりだったので、この声の枯れ具合にちょっと悲しくなったりして‥‥途中途中、無駄に入る「ア゛~ォ!」っていうシャウトに彼の拘りを感じた(笑)。勝手に「もしこの曲でクリス・コーネルが唄ってたらなぁ‥‥」とか思ってら、途中でアップテンポに展開して、もろビリー・アイドルな曲調に(笑)。好きです、やっぱりこれでも。あと、7曲目にブライアン・メイってクレジットされてて、どこに参加してるのか不明だったんだけど‥‥こっちの曲には、如何にもブライアンなギターオーケストレーションのパートがあるんですが‥‥(苦笑)手違いでしょうか? まぁ何はともあれ、最近‥‥映画「スピード」以来‥‥全く音沙汰のなかったビリー・アイドルの生存が確認できただけでも、ヨシとしよう(苦笑)。


つうわけで、以上が全曲。ビリー・アイドルやイアン・アストベリー(THE CULT)といった、ヘヴィロックとは言い難いジャンルの人達も含まれているが(ある意味、現在のデイヴ・グロールもこっち側の人かな? OZZ FEST出演経験者とはいえ)、基本的には最近のアメリカン・ラウド系を代表するシンガーを中心に置いて作られた感がある。ただ、ラウド一本というわけでもなく、そのビリー・アイドルやイアン・アストベリー、そしてスキンといった異色を混入することで、トニー・アイオミのソングライター/リフメイカーとしての才能を改めて伺い知る事ができる。サバスではどちらかというと一本調子なイメージがあるが、こうやっていろんな曲調/作風の曲に対応出来ることからも、その事実は歴然としている。

今後、オジーと活動することで、初期サバスのような作風を求められるだろう。そうなれば、更に限定された音楽性での活動を強いられる。そのガス抜きとして、またこういうソロアルバムが作られることと思う。個人的には固定のバンド編成ではなく、こういうアプローチでまた作って欲しいと切に願う。面白かったよ、マジで。メタルにちょっと興味があるって人、ドンズバのラウド系が好みの人、普段メタルしか聴かない人、どの層にもアピールする内容じゃないかな? オムニバス・アルバムを聴くような手軽な1枚。昨今のラウド系オムニバスとしても機能する出来となってるので、サバス云々抜きで語られてもいいと思うよ?



▼IOMMI『IOMMI』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 09 16 11:44 午後 [2000年の作品, Black Sabbath] | 固定リンク

2001/07/25

EMINEM『THE MARSHALL MATHERS LP』(2000)

さて、2001年のフジロックを目前にして、いよいよ「とみ宮」でも問題児・EMINEMを取り上げようと思う。実は昨年からずっと、やろう/やりたいとは思っていたのだけど‥‥意外とうちでは話題に上ることが少ないじゃない? 確かにこのアルバム「THE MARSHALL MATHERS LP」を昨年(2000年)のベストアルバムに挙げてくれた方もいたんだけど‥‥これだけ売れても騒がれもしない。まぁ管理人がヒップホップに弱いから、掲示板等でも話題にする機会もなかったし。

EMINEMとの出会いは、確か一昨年のクラブKで、当時ヒットし出していた"My Name Is"を聴いたのが最初。まぁその頃はそれ程ヒップホップに惹かれることもなかったので、何なる「踊りやすい」1曲として流していた。その後、LIMP BIZKIT等のヒップホップ・メタルを通過することによって、ヒップホップはより身近な存在となっていき、そんな中昨年リリースされたこのアルバムが大ヒットを記録し、EMINEMは一躍時の人となる。今年のグラミー賞でも何か受賞してたしね?(よくこんなお下劣なアルバムが受賞したもんだ/笑)

このアルバムは、まぁヒットしてたってこともあって何となく手を出したんだけど‥‥買ってから暫くは封すら開けず手付かず状態が続いて‥‥2ヶ月程経ってから?(笑)やっと聴いてないことに気づいて。そこからはもう、頻繁に聴いてた。昨年自分が参加してた地元のDJイベントでもよく回されてたし、このアルバムからのシングル"Stan"も大ヒットを記録したから、自分から進んで聴こうとしなくても、どこからともなく耳に入ってくるって感じだった。で、ここ数ヶ月は、フジロック出演/初来日が決まったこともあって、改めて自分の意志で聴いている。

ロックファンと公言する人の中には、ヒップホップが苦手だとか、ヒップホップとロックを別モノとして語ったりする人が多い。俺は何度も言うけど、「ヒップホップやテクノも、ロックの中のいちジャンルにすぎない」と思っている。十代前半でRUN DMCやBEASTIE BOYSと出会ってからずっと、ヒップホップはロックに含まれると思い続けてきた(RUN DMCがAEROSMITHと共演した"Walk This Way"やBEASTIESの"Fight For Your Right"といった曲はロックそのものと言っても過言ではない)。その後、ヒップホップは確立したひとつのジャンルとして成長していったが、俺は今でも「ストリートレベルのロックンロール」だと信じている。

このEMINEMには、そういう「ストリートレベル」のいい意味でのくだらなさを感じる。お下劣で暴力的で俺様節全開のライム(歌詞)から受ける印象は、例えば'70年代前半のストーンズやピストルズ、ビッグになる過程のGUNS N'ROSESと同様なものだと言える(アクセル・ローズがカミさんの鼻をへし折ってやる程度だったのが、このEMINEMさんは殺しちゃいますから/苦笑)。さしずめ最近のアーティストで言えば、そのEMINEMが大いに嫌う(笑)LIMP BIZKIT辺りと共通するものさえある。但し、ここでいうLIMPはセカンドでの大ブレイク前夜まで。LIMPは最新作でそれまでストリートレベルだった視点が、完全にエンターテイメントの方向へ向いている。一方EMINEMの方もライヴでは完全にエンターテイメント路線のようだ。つまり、このEMINEMのセカンドアルバムとLIMPのセカンドは、ある意味同じ方向性だと言える。と同時に、実は全く正反対な性質を持ってるとも言えるのだが‥‥どっちつかずだって? ほっとけ(笑)。

全く正反対な性質‥‥つまり、LIMPが「外へ、外へ」‥‥オーディエンス側へ向けてライムを放っていたのに対し、ここで放たれるEMINEMのライムは私小説的‥‥「内へ」と向いているように受け取れるのだ。いや、その内を通り越して一周して、実は外を向いていたりするのだが(って実際どっち向いてるんだよ!?/苦笑)。何故EMINEMがフレッド・ダースト(LIMP BIZKITのVo/MC)のことをボロカスに言うのかが、何となく理解してもらえたのではないだろうか?

EMINEMは言いたい放題言って「攻め」続けた結果、勝ち組の仲間入りをした。今では大嫌いなLIMP BIZKITと同じ土場で戦うことを強いられている。LIMPは最新作で、前作を踏まえた上でのエンターテイメント路線を展開した。さて、EMINEMはどうだろう‥‥とりあえず現時点(2001年7月)では、D12という6人のMCから成り立つユニットとして活動を平行している。どっちがどうで、という違いはあまり感じられないのだが、自身のバランス感覚を保つためにも必要なユニットなのだろうと俺は考えている。まぁ音楽的に言えば、EMINEMソロの方がよりロックテイスト(バックトラックが多彩で、ギターの音も効いている)を強く感じさせるが、攻撃性だけみたら甲乙付けがたい。まぁパンチが効いてるのがD12で、色とりどりなのがソロだと言えるかもしれない。

今後、EMINEMがどういう方向性のアルバムを作るのかは本人にしか判らない。彼も日和ってLIMPのサードのような作品を作るのかもしれないし、あるいはここまで売れてしまっても尚、内面にえぐり込むような攻撃を仕掛けてくるかもしれない。その結果はすぐには出ないだろうが、とりあえず今は、数日後に控えたフジロック3日目大トリという「歴史的瞬間」に備えて、意味もなく腕立て伏せなどをしてみたりして‥‥体力使いそうだもんな、何かライヴは(苦笑)。



▼EMINEM『THE MARSHALL MATHERS LP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 07 25 06:14 午後 [2000年の作品, Eminem] | 固定リンク

2001/05/13

Cocco『星に願いを』(2000)

  そして更に、前シングルから1ヶ月後に完全なる新曲を発表する。矢継ぎ早にリリースされる今回の攻勢に、ファンは正直財布の中身がついていかないのでは‥‥丁度ツアーも発表になっただけに。この曲は前作が「ラプンツェル完結編」と銘打たれていただけあって、早くも次作への布石となるのでは?なんて深読みもされた程だった。ツアーでも終盤のオイシイ位置で披露されていたし、シングルとしてもここ最近でも最もセールス的に成功を収めたようだし。その収録曲だが、表題曲の他に、サード収録の"かがり火"の計2曲。作曲はCoccoではなく、これまでも彼女の作品を幾つも手掛けてきた柴草玲のものである。印象的なメロディーは、Cocco作曲のものとはまた違った旨みがあって、個人的には信頼している作家のひとりだ。最近、柴草は都内でライヴ活動をしているようなので、興味がある人はチェックしてみるといいだろう。

  さて、正直な話、この1曲("星に願いを")のみで次のアルバムを占えるかといえば、正直嘘になるだろう。なぜならこの曲もまた、「ラプンツェル」のセッションの中からのものだし、Cocco作曲の作品ではないからだ。実際にアルバムに収録されていても違和感はないわけだし。だからこそ、この曲が次の「サングローズ」への追加収録が決まったのを聞いた時、違和感を感じてしまった。勿論いい曲なのだが、何が違うのではないだろうか?という疑問は、「サングローズ」が発表された今でも消えないままでいる。



▼Cocco『星に願いを』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 05 13 01:30 午前 [2000年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『けもの道』(2000)

  サードアルバムの発売から2週間後にリカットされたマキシシングル。収録曲は表題曲の他に、完全未発表曲の"真冬の西瓜"と"つめたい手"の合計3曲。デビューマキシ以来の3曲収録だ。この時期のリリース攻勢といい、未発表曲の多さといい、如何にこの1年間のレコーディングが充実したものだったかが伺える。しかもどの曲がアルバムに入っていても違和感がないような、決して捨て曲ではないのが驚きだ。

  表題曲はアルバムのヘヴィサイドを象徴する1曲であり、アルバムのトップに収められている「顔」ともいうべき存在。だが「ラプンツェル」という作品は決してヘヴィなだけではない、緩急の幅がこれまでで一番激しい作品であるという事を思いだして欲しい。特に"雲路の果て"以降のシングルが全て収められている点、更に今後の彼女を占うような楽曲の登場など、いろんな意味で興味深い作品なのだ。そんな勝負作をフォローアップするようにこのシングルが「ラプンツェル完結編」としてリリースされたのには、ちゃんと意味があったのだ。当然アルバムはこれまでで一番のヒットを記録したのだから、このリリース攻勢は大成功だったといえるだろう。

  カップリング2曲は、アカペラ"真冬の西瓜"は1分少々で終わる小楽曲。これまでもセカンドで"小さな雨の日のクワァームイ"という同じタイプの曲があったが、これはまた違った印象を与える。特にヘヴィヘスを追求した1曲目と、冷たい感触を持った3曲目"つめたい手"の間に挟まれているからこそ、その温かさがやけに身にしみる。マキシシングルとしては、非常に流れを大切にした作品ではないだろうか?(シングルに関しても、Cocco自身が選曲や曲順を決めているそうだ)



▼Cocco『けもの道』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 05 13 01:27 午前 [2000年の作品, Cocco] | 固定リンク

Cocco『水鏡』(2000)

  2000年に突入し、我々は彼女の存在を、少しずつだが忘れかけていた。そんな中発表されたのが、このシングル。来るべきサードアルバムからの先行シングルであり、1年半振りにテレビ出演も果たす。このシングルの収録曲は表題曲の他に、アルバム未収録の"寓話。"。彼女が積極的に動き出したことも影響し、セールスは前作以上を記録した。

  久し振りのロックチューンといった感じだが、曲のタイプとしては"雲路の果て"に非常に近いのではないだろうか? イントロとエンディングでのスキャットに独特な冷たさを感じ、それがまた独特な雰囲気を醸し出している。最初聴いた時、LUNA SEA辺りの楽曲との共通性を感じたものだが、如何だろうか?

  そうえいば、この「水鏡」というタイトルも、あまり耳慣れない言葉だ。こういう表現を使うのもまた彼女らしい。この楽曲にはCocco自身、相当な思い入れがあるらしく、リリース時期についてスタッフと相当揉めたそうだ。「これは売れない曲だ」とは彼女の発言だが、もしかしたら「売れない」曲ではなく「売れてはいけない」曲だったのではないだろうか?

  カップリング曲は一転して、穏やかな空気を持つポップな曲。彼女の唄い方も前曲とは全く違い、声を張り上げるのではなく、最後まで同じトーンで通している。これもある意味新たな実験だろうし、成長だろう。



▼Cocco『水鏡』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 05 13 01:25 午前 [2000年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/05/06

Cocco『ラプンツェル』(2000)

  前作「クムイウタ」から2年振りに発表された、Coccoの3作目のアルバム。ここまで順調に来ていただけに、この2年の空白というのはちょっと長く感じた。確かに'98年10月にはシングル"雲路の果て"、'99年4月に"樹海の糸"、同10月に"ポロメリア"、'00年4月に"水鏡"とシングルが半年置きに発表されてきたものの、その度にメディアに登場していたわけではないし、アルバムやツアーへの期待を単に煽るに過ぎなかった。今年の"水鏡"発表後にようやく6月にアルバムリリースの吉報、そして同時に9月から全国ツアーがスタートするという知らせまで届いた。ようやく長いスタジオ籠もりから解放されたわけだ。
  待たされただけあってか、セールス的には過去最高の約100万枚近い売り上げを記録、チャートも前作同様1位を獲得した。サイクルの早い音楽業界の中で、年にシングル2枚のみ、メディアへの露出は一切なしといった状況の中、このセールスは快挙といっていいだろう。Coccoフォロワーと呼ばれる女性アーティストが続々と登場していく中、やはり本家はひと味違うと思わせた作品だった。

  Cocco自身の「Special Thanks To」の欄、このアルバムでは以下の言葉が綴られている。


亡き想いへ
生まれくる想いへ
降り続く想いへ
大潮の夜明けを待つ
わたしの海へ
終りのないキスを込めて


  アルバムに込められたこの言葉からも伝わってくるが、ここには「先へ進もう」という『生への想い』が綴られているように思う。勿論、これまで同様に"けもの道"のような楽曲もあるにはある。音楽的なスタイルとしても、前作よりも若干ファーストに立ち返ったかのようなヘヴィネスが耳につく。"かがり火"のような曲だけでなく、"熟れた罪"のようなジャジーなタイプの楽曲にも重さを感じる。
  実は俺が感じた『生への想い』とは、最後に収録された"しなやかな腕の祈り"という曲だった。しかし、最近知ったのだが、この曲はデビュー前からあった曲だそうだ。今回のアルバムというのは、リリース1年前の1999年夏からレコーディングを開始し、約1年をかけて制作されたそうだ。その時期にあった曲はといえば、デビュー前からあった2曲("しなやかな腕の祈り"と"白い狂気")と、既にシングルとして発表されていた2曲("雲路の果て"と"樹海の糸")の4曲のみで、正にゼロからの出発といってもいい状態だった。しかし、徐々に浮かんでくる楽曲を1曲ずつ、丁寧に仕上げていった結果、1年という製作期間を必要としたわけだ。
  この製作方法というのは、彼女自身が望んだ方法で、ずっと前から「こうやって作れたらいいね?」とスタッフと語っていたらしい。前作がヒットしたお陰でこういう方法が受け入れられたのだろうが、ある意味2年という空白は(シングルリリースはあったものの)危険だったはずだ。にも関わらず、レコード会社やスタッフがそれを受け入れたというのは、如何に彼女が書く曲に自身を持っていたか?という事実を証明する結果となった。

  何度も言うが、スタイル的にはこれまでの延長線上なのだが、明らかに「前向きさ」が高まっている。「生への想い」‥‥それは彼女自身が進んでアルバム制作に参加し、自分が納得いくまで録音し直し、そしてそれまで消極的だったライヴも、自ら「やりたい」と思うようになる‥‥更にこのアルバムの制作終了時にもう「次に進みたい」‥‥つまり、次のアルバムを作りたいと発言しているのだ。彼女は楽曲を生み出すことを、排泄と例えた事がある。アルバムは彼女にとっては「でっかいウンコ」なのだ。しかし、今は違う。彼女には「吐き出す」のではなく、「伝えたい」ことが出来たのだ。俺はそう信じたい。

  音楽的には、先にも書いた通りファースト寄りの、ヘヴィネスさを幾分強調した作りになっている。しかし、セカンドを通過したことにより、またセカンドとこのアルバムの間に発表されたシングル‥‥特に"樹海の糸"や"ポロメリア"といったソフト/メロウ・サイドを強調する楽曲や、先の"しなやかな腕の祈り"等の大らかさが加わることによって、アルバムとして更に深みを増した作りになったと思う。作品トータルとして考えれば、恐らくこれが最高傑作なのでは?と受け取ることも出来る。正直、こんな凄いアルバムを前にしたら、「次はどうなるんだよ!?」とさえ思えてくる。

  最後に‥‥個人的な話をひとつ。このアルバムがリリースされた時期、俺の祖母が亡くなった。この前後1ヶ月は病院に24時間付きっきりで、本当に生と死を彷徨う毎日だった。仕事が終わったら病院へ行き、一旦家に帰って飯食って風呂入って再び病院へ。そのまま朝まで付き添って、そこから会社へ‥‥そんな毎日が続いた。音楽を聴く気力さえ残っていなかった中、それでもこのアルバムを買いにCDショップへ立ち寄った。そしてこのアルバムは2000年6月の、この俺のサウンドトラックとなった。『生への想い』、何もそれはCoccoだけではない。この俺も、そして俺の家族も、そして祖母も‥‥このアルバムを聴く度に、あの日々が蘇ってくる。俺にとって生涯忘れられない1枚となった。



▼Cocco『ラプンツェル』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 05 06 12:00 午前 [2000年の作品, Cocco] | 固定リンク

2001/04/30

SNAKE HIP SHAKES『NO DOUBT : ZIGGY SONGS played by SNAKE HIP SHAKES』(2000)

  SNAKE HIP SHAKESという名前に馴染みがないかもしれない。しかし、このアルバムに収録されている曲名を耳にしたら、「あ、これ知ってる!」って人は結構いるかもしれない。"GLORIA" や "I'M GETTIN' BLUE" といった、'80年代後期の日本のロックシーンをリアルタイムで通過している人、覚えていますか、これらの名曲の数々を‥‥

  つまり、SHSというのは、ZIGGYの事だ。いろいろ事情があって現在は名前を変えて活動しているが、基本的な音楽性はZIGGY時代と全く変わらない、ポップでパワフルなロックンロールを聴かせてくれる、優れたバンドだ。

  ZIGGYは'99年に森重(Vo)、戸城(B)のオリジナルメンバーに、ここ5年程正式メンバーとして活躍しているドラムのJOE(元44 MAGNUM、hide with spread beaver他)、そして6年振りに復帰したオリジナルメンバーの松尾の4人で1枚アルバムをリリースするものの、思った以上の成果をあげる事が出来ずに、レコード契約を失う。そこへ「独自の道を追求したい」という音楽性の不一致が原因でベースの戸城が脱退(現在BAD SiX BABiESとして活躍中)。解散か、継続かの瀬戸際で悩んだ残りの3人は、変名バンドとしての活動を選ぶ事となる。それがこのSHSなのだ。

  それからの活躍は目覚ましいものがあり、2000年夏にはシングル&アルバムをリリース、数ヶ月後には早くもこのセルフ・カヴァー集を発表。更に2001年春には早くもシングル&アルバムを発表するのである。それぞれの作品がZIGGY時代以上にハイパーで、ポップな親しみやすい作品となっている。そこで今回は、SHSの紹介と、ZIGGY再検証の意味も込めてこの作品を取り上げる事にした。

  恐らく多くの人が「けっ、今更ZIGGYかよ!?」って軽く見てるのかもしれない。しかし、しかしである。今そこ、今だからそこZIGGYなのである! 彼らはこの5~6年の間に、何度か復活の機会を得ているが、残念ながらモノにする事が出来なかった。まず、'90年代半ばのヴィジュアル系ブーム。決してルックス面の事ではない。その音楽性なのだ。如何にZIGGYが現在のヴィジュアル系バンドの音楽性に影響を与えているか、ご存じだろうか? 例えば、ファナティック・クライシスというバンドがいる。彼らの楽曲を聴くと、ここにも、ほらそこにも、って感じでZIGGYの影響が伺える。代表的なところで言えば、ファナティックの "MABYE BLUE" というヒット曲、これなんて正しく "GLORIA" ではないだろうか? 他にもSIAM SHADE辺りからもその影響が感じられるし、それこそ探せばいくらでも見つかるはずだ。

  そして今。時代はパワーポップ再びの兆しを見せている(って俺だけか!?)WEEZERが復活し、毛色は違うもののTHE WiLDHEARTSも復活した。ここ日本でもそういったバンドがメキメキと頭角を現している。そんな中、「俺達こそがその元祖だろ!?」っていう底力を見せたのが、このSHSなのだ。ZIGGY時代、HANOI ROCKS的スリージーなイメージと同時に、楽曲自体は歌謡曲にも通ずる甘さを兼ね備えた存在。そんな無敵なバンドだったのだ。'90年代中盤、幾分パワーダウンした感があった彼ら。音楽性もハードな面よりもポップな面をより強調し、コアなファンからは「ヤワになった」と貶され、ヴィジュアル系ファンからは「オヤジ」だの「古い」だの言われて無視され続けた彼ら。しかし、そんな不遇の時代もひたすら耐え続けてきたZIGGY。2000年を迎え、気持ちも新たにSHSとして新たな一歩を踏み出したのだ。

  このアルバムには脱退した戸城が作曲した楽曲は収められていない為(最近のライヴでも森重作曲の楽曲しか演奏されていないようだ)、超名曲 "SING MY SONG" は収められていないが、それでも先の超有名曲2曲や"DON'T STOP BELIEVING"、"ONE NIGHT STAND" といった代表曲、ひたすらアグレッシヴで突っ走る "EASTSIDE WESTSIDE" や "WHISKY, R&R AND WOMEN"、そして隠れた名曲と言える "眠らない25時の街で" や "蒼ざめた夜"、そしてZIGGY名義でのラストアルバムに収められシングルカットまでされたものの、全くヒットしなかった隠れた名曲中の名曲 "Without..." といった新旧の名曲が10曲、現在のメンバーで、現在の空気で、現在のテンションでセルフカヴァーされているのだ。そのテンションの高さは全10曲で37分というトータルランニングからも伺えるだろう。全ての楽曲がオリジナルバージョンよりも遙かにテンポアップしていて「おいおい、本当にライヴで演奏出来るのか!?」って思わせる "EASTSIDE WESTSIDE" のような曲もある。これなんて、パワーポップ以上にハードコアパンクって感じだし。

  曲は悪いはずがない。古くは15年以上も前の曲なのだが、全く古さを感じさせない。如何に彼らがよい曲を書く事に拘ってきたかがご理解いただけるはずだ。偏見を持たずに、是非聴いて欲しい1枚だ。これで興味を持った人は、是非オリジナルアルバムの方にも手を伸ばしてもらいたい。更にハイパーアクティヴでメロディアスなパワーポップを体験できるはずだから。

  特にこのアルバム、THE WiLDHEARTSファンにこそ聴いてもらいたい作品なのだ。ここ5~6年の森重は「ハノイやエアロは今でも好きだけど、ここ数年はジンジャーから目が離せない」という風に、THE WiLDHEARTS及びジンジャーに興味を持っているそうだ。なる程、ZIGGY時代の後期作品にはそれを感じされるアルバムがあったな‥‥この手のロックが好きな人には、間違いなく「手放せない」アルバムになるはずだ。買って後悔はさせない、入門編としてはもってこいのアルバムなのだ。



▼SNAKE HIP SHAKES『NO DOUBT : ZIGGY SONGS played by SNAKE HIP SHAKES』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 04 30 12:44 午前 [2000年の作品, SNAKE HIP SHAKES, ZIGGY] | 固定リンク

2001/01/16

ロマンポルシェ。『暴力大将』(2000)

  はい、マジです。新年、そして新世紀一発目のオススメ盤は、2000年2月20日(長島茂雄とアントニオ猪木の誕生日)にリリースされた、ロマンポルシェ。(当時は「。」はなし/笑)のセカンド(ミニ)アルバム。全7曲、30分にも満たない作品だけど、内容の濃さだけで言ったら、レイジのアルバムやビートルズのホワイトアルバム位の濃さを持ってるという‥‥だってさ、全体の比率でいったら、説教:7、楽曲:3だぜ?(爆)こんな音楽、他にどこにある!?(「これを音楽と呼ぶのか?」「こんなの、音楽といえるか!」という物言いは却下)

  実はこのアルバム、早くも9月には別の会社からファーストと一緒に再発されたらしく、俺が持ってるのは初版のもの。だって買ったの、去年の初夏だったから。で、10月には3インチCD2枚組で、それぞれに説教サイド、歌サイドと分かれた「男峠」という、メジャー流通のアルバムをリリースしている。そっちも凄い事になってるんだけど、今回はこのセカンドを新世紀一発目にススメてみたいと思う。何故セカンドから?って、そりゃ最初に買ったから/聴いたからに決まってるでしょ。ファースト・インパクトの大きかったことといったら‥‥それこそ、初めてスレイヤーを聴いた時、初めてナパーム・デスを聴いた時、初めてスネークマンショーを聴いた時以上の衝撃を受けた。いきなり車の中で聴いたというのがまずかった。爆笑の渦で、そのまま海に突っ込むとこだったよ。(爆)

  ニューウェーブ歌謡とか言われてるらしいけど、音楽的には‥‥テクノポップ?ピコピコした‥‥最近でいえばポリシックス?古くはディーヴォか。う~ん、ボキャブラリーなさすぎ。(爆)つうかさ、今回は解説らしい解説にならないと思うので、期待しないでくれ!(苦笑)

  収録された歌もの3曲はどれも素晴らしい(但し俺的に)。懐かしのジグ・ジグ・スパトニック並の胡散臭さを醸し出す"暴力大将"は、知らないうちに口ずさんでしまう程、俺的にはポップ。"MTR baby"は先に名を挙げたポリシックス辺りを彷彿とさせるテクノポップ。聴いてるうちにトランスしそうな"新宿スキャット・ふたたび"。たった3曲という事で、また説教も数回も聞けば耳に馴染んでしまうので、すぐに飽きてしまう可能性もあるが‥‥久し振りに聴くと、やっぱ笑えるんだわ‥‥いや、マジで考えさせられるんだわ。(笑)

  ロマンポルシェ。は自らの事を「男道コーチ屋家業」と言い表してるように、説教の中では「本当の男とは?」と説いている。それが例え犯罪スレスレだろうが(いや、実際には犯罪だが/爆)、聞いてて妙に納得してしまうんだな、俺。説得力? いや、違う。何かあながち間違ってないように思えるんだわ。

  あと、歌もの聴いてて引っかかるのは、やっぱり「言葉の響き」を非常に大切にしているという点。もっとも、その内容には意味らしい意味はないのだけど。だからこそ、韻とか響きを重視した作詞(といっていいのか?)が可能なんだな、と。ネタバレしそうなんで歌詞の細かい内容とか説教の内容については明記しないけどね、あえて。

  まぁね、真面目にレビューしても滑稽に見えるだろうから(笑)、この辺にしておく。とにかく聴いて欲しい。好き嫌いハッキリするだろうけど。生理的にダメってのが多そう。俺的には、これもロックなり。



▼ロマンポルシェ。『暴力大将』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 01 16 12:00 午前 [2000年の作品, ロマンポルシェ。] | 固定リンク

2000/12/27

LUNA SEA『PERIOD』(2000)

  本当に最後だ。LUNA SEAにとって最も思い出深い日、12月23日にこのアルバムはリリースされた。それはあたかもファンへのクリスマスプレゼントのように‥‥

  12月23日。'95年、初めての東京ドーム公演。'96年、真冬の野外@横浜スタジアム。一昨年もドーム公演だったし、去年は同じ東京ドームでGLAYと競演を果たした。そんな記念すべき日に、彼らは最後の音源をリリースした。ファンクラブやオフィシャルサイトで集った「あなたの選ぶLUNA SEAの10曲」というようなアンケート企画で選ばれた楽曲を収めたベスト盤という事になってるが‥‥サブタイトルは「THE BEST SELECTION」となってるものの、実は単なるシングルコレクション・パート2じゃねぇか!という声も聞こえてきそうな選曲だ。全15曲中シングル曲が11曲。残りの4曲もシングルカットこそされていないものの、ライヴでの定番曲ばかり。本当にこれがファンの選んだ15曲なのだろうか? だとしたら、あまりにも‥‥どうしても作り手(この場合選曲者)の作為を感じてしまうのは、俺だけだろうか?

  最後の最後にベストで前作「LUNACY」の負債(セールスは30万枚にも満たなかったそうだ)を回収しようとでもいうのだろうか? そんな穿った見方さえしてしまう自分が許せなかったりもするのだが‥‥何故"Jesus"が、何故"Time Is Dead"が、何故"Forever & Ever"や"Feel"や"Up To You"が選ばれなかったのだろう。ファンが選ぶ10曲となると、やっぱりシングル曲以外になってしまうのだろうか。

  確かにここには復活後の大ヒット曲が6曲入っている。それに初期(1st~3rd)の楽曲は再レコーディングされている。完全に「今のLUNA SEA」の音になってしまっているこれらの4曲を含めて10曲。残りが「MOTHER」「STYLE」の楽曲だから、これでバランスが取れているという見方も出来る。

  大ヒット曲についてはそれぞれの収録されたアルバムやシングルのレビューで語っているので、今回は割愛して‥‥ここでは、本当の最後の録音となってしまった再録音の4曲("Precious..."、"Dejavu"、"Wish"、"Believe")について語ってみよう。当時の録音('91~'93年)のままでは今の楽曲との釣り合いが合わない。特にファーストはインディーズでの作品だ。リマスターではまかないきれないのだろう。その結果が再レコーディングなのかもしれない。

  あるいは、終幕を選んだ彼らの「今」を形として残すため、12年後の自分達を最後に披露する具体的な方法として再録音を選んだとも考えられる。実際、これらの曲‥‥全部がかなりアップテンポの曲なのだが、当時のものと比べるとどうしてもテンポがもったりとしていて、落ち着いた印象を受ける。ドラムもスネアの音が軽すぎる。オリジナルラスト作「LUNACY」の音ではなく、その前の「SHINE」の音に近いような気がする。唄い方もアクの強さが抜け、やはり「SHINE」のそれに近い。アレンジはオリジナルバージョンに忠実というよりも、10年12年の長きに渡って演奏され続けてきた成長をそのまま形にしたような‥‥つまり、ライヴでのアレンジなのだ。"Dejavu"のエンディングがそうだし、"Wish"のイントロと、ギターソロの後のアレンジ‥‥ライヴを観たことがある人ならドキリとするはずだ。

  最近の彼らしか知らないという人には、これらの初期の楽曲は新鮮に映るかもしれない。逆に「こっちの方がいいじゃん!」となるかもしれない。また古くからのファンにとっては「こういう解釈もあるのか」とか「人間としての温かみを感じる」とか「やっぱり昔の方がよかった」という比較材料になるはずだ。いろんな意味で、これら4曲は本当に興味深い。

  さて‥‥この"Love Song"から始まり"Wish"で終わるという選曲‥‥クライマックスから始まってクライマックスで終わるという構成。泣かせる、マジで。実際のライヴではこの逆パターンでライヴが始まり終わったそうだ。そうか、意識的にやってるのか‥‥

  特に目新しい新曲があるわけでもなく、ライヴバージョンを再現したスタジオライヴ的な再録音はあるにしても、はやり企画盤の色は隠せない。こうやって改めて考えてみると、俺の中でのLUNA SEAというバンドは「LUNACY」というアルバムで完成されてしまったし、「LOVE SONG」というシングルで終わったしまったのだな、と感じずにはいられない。そう、このアルバムはボーナスみたいなものだ、俺にとっては。まさしく「終幕」を見届ける事の出来なかった俺に対する、5人のサンタからのクリスマスプレゼントなのだ、と。



▼LUNA SEA『PERIOD』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 27 12:00 午後 [2000年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

LUNA SEA『LOVE SONG』(2000)

  2000年11月8日。LUNA SEAは「終幕」‥‥事実上の解散宣言をした。最後の新曲となるこのシングルの発売日をわざと選んだのだろう。このマキシシングルには3曲が収録され、それぞれSUGIZO, J, RYUICHIが原曲作者だということをインタビューで公言している。それぞれの曲の歌詞も、今回は原曲作者が責任を持って書いたらしい。あらかじめ終幕を想定して書かれたものではなかったものの、最終的にはそこへ向かう過程の中で「終わり」と「始まり」を意識させる内容へと変わっていった‥‥残されたファンに対してのメッセージであり、メンバーお互いへのメッセージなのだ、これらの楽曲は。


M-1. LOVE SONG (原曲:SUGIZO)

  7分以上もあるタイトルトラックは、壮大なバラード。大ヒット曲"I for You"にも通ずる、シンプルながらも心に残る切ない曲。後半部の「ラララ」コーラスは、ライヴでの大合唱を想定して作られている(ちなみに、珍しくメンバー5人全員がコーラスに参加しているそうだ)。SUGIZOなりのファンに対する想い、そしてメンバーに対する想いを形にしたのがこの曲のような気がする。ファンへの最後の贈り物。「一人きりじゃない/信じていたい/離れていても/ねぇ/逢いたい時は/この歌を/抱きしめて」という歌詞がそれを端的に表しているように思う。

  2分も3分も続くエンディング。途中から子供のコーラス隊が加わる。まるでライヴでファンが加わったような錯覚に陥る。ライヴのエンディングに演奏されたら、きっと涙モノだろう‥‥と思っていたら、12月26日の東京ドームでは本当のラストにこの曲を演奏したそうだ。ラストのコーラスがいつまでも、いつまでも続いていたという‥‥


M-2. INTO THE SUN (原曲:J)

  SUGIZOの曲がどちらかというと感傷的なのに対して、Jはいつも通り、いや、いつも以上に激しくグルーヴィーな曲で、Jなりのけじめをつけたような気がする。これも7分を越える大作で、ドラムのリズムパターンがかっこよく、そこに絡みつくようなベースラインがまたいい。「Into the sun/消えるまで/舞い上がれ/もっと高く/果てるまで/燃え上がれ/もっと強く」という前向きな歌詞が彼らしくて、頼もしい。正直、こういうラストシングルってどこか感傷的な雰囲気に包まれている事が多いだけに、この曲を聴いた時にはちょっとだけ救われたような気がした。


M-3. UNTIL THE DAY I DIE (原曲:RYUICHI)

  LUNA SEAとしては、初の単独作。いかにもRYUICHI‥‥いや、河村隆一的楽曲だ。「これじゃ、ソロの時の"Cello"と同じじゃねぇか!?」という批判の声も耳にしたが、これが一番彼らしいやり方だったのだろう。今回の3曲は原曲に対して全員が肉付けしていくのではなく、原曲作者のアイディアにより忠実に再現されているという。だとすると、このSUGIZOのバイオリンも、INORANのアコースティックギターも、RYUICHIが望んだものなのだろう。何故バンドとしての最後の、一番最後にこの曲を選んだのか‥‥「どうして/涙が出るの/素直すぎたから/みんな/きっと/どうして/求め続けて/でも終わりにしよう」という、一番ストレートな表現をしているのが、実はRYUICHIだったりする。これだけ読んでしまうと、彼がソロとしてやっていきたいが為に脱退を希望→解散という噂がふと頭に浮かぶが‥‥まぁそれはいいだろう。


  正直、このレビューは1度、発売当時にチャレンジしたのだが‥‥どうしてもうまく考えをまとめる事が出来なかった。それは今でも‥‥全てのアルバムをレビューしてみたが、正直このシングルに対するレビューが一番辛い。出来ればなかった事にしたいのだが、そうもいかない。このまま蔑ろにされるには勿体ない曲達なのだから。

  これらの3曲から、今後の3人の進むべき道は見えてこない。そして残りの2人の道も。これをアップする頃にはもう存在しないバンドなのだが‥‥何だかこうやってこのシングルを聴きながらこの文章を書いていると、また明日もライヴやるんじゃないか、大晦日にいきなりシークレットギグでもやるんじゃないか、とか考えてしまう。どうしても実感が湧かない。これだけ決別の言葉をならべられても‥‥。



▼LUNA SEA『LOVE SONG』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 27 12:00 午前 [2000年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/12/20

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『LIVE IN TOKYO : CASANOVA SAID "LIVE OR DIE"』(2000)

  デビューの数年前に1度、ライヴアルバム(というか、スタジオ録音よりライヴ録音の方がらしさが出るんでそうしたんだろうけど)をリリースしているTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTだが、メジャーデビュー後としては初の、しかも完全実況中継としてのライヴアルバム。アルバム1枚にライヴ本編を丸ごと80分収めた内容になっていて、更に初回限定盤には当日のアンコール分の4曲を収録したボーナスディスクがおまけとして付いている。しかもアルバムにはこれまでの彼らの歴史(全ライヴ日程とリリース日程)の記録が封入されていて、先のベスト盤と両方買うと「COMPLETE BEST OF THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」になるわけだ。しかもこのアルバム、2,100円とお買い得(但し歌詞カードは封入されていないので、初心者は注意!)

  録音されたのは2000年7月26日、赤坂ブリッツ。「WORLD CASANOVA SNAKE TOUR」の43本目、最終日に当たるこの日の模様は、WOWOWでも当日の内に編集・放送された。更にこの3日後にはフジロックの2日目トリとして大役を務めるという、正にピークともいえる時期の音源だ。聴いてもらえば判る通り、頭から最後まで、間髪入れずに次の曲へとなだれ込む。観客に、そして自らに休む暇を与えないライヴ。下手なハードコア系のライヴよりも集中力・体力が必要なのが、ミッシェルのライヴなのだ。残念ながら俺はここ数年(というか、ブレイク後)の彼らのライヴを体験した事がないので、音のみで比較するしかないのだが‥‥少なくとも自分が最後に体験した「WORLD CHICKEN ZOMBIES TOUR」の初日@千葉ルックでの印象よりも、更に激しさが増している。というよりも、より凄みが加わったとでも言うべきだろうか。荒々しい録音のせいもあるだろうが(一聴してブートレッグのオーディエンス録音的な印象を与える音像だが、実は計算されたものではないだろうか? ライン録音にマイクから拾った音も大きめに被せているような印象を受ける)、とにかく臨場感のある雰囲気を与える。2,000人以上収容するブリッツというよりも、もっと小さい‥‥それこそ千葉ルックで観てるかのような錯覚に陥るアルバムだ。なのに決して音は軽くなく、リズムは地を這うような重さを持ってるし、カオティックなシャウトに背筋がゾッとするし。ビデオではなくCDでリリースした意味が、何となく理解できたような気がした。

  当日の演奏曲は、アルバム「CASANOVA SNAKE」をフォローするツアーという事もあって、アルバムのほぼ全曲(15曲中14曲)を披露し、残りは前作「GEAR BLUES」のナンバーとシングルのC/W曲という、かなり拘った選曲。だって大ヒットした「GEAR BLUES」からは"G.W.D"や"スモーキン・ビリー"といった代表曲さえもカットされているのだから。もっともそれらがなくてもこれだけ盛り上げてしまうというのは‥‥半ばヤケクソなのか、それとも底力なのか。そうそう、既に"Baby Stardust"といった(この時点では)新曲もバンバンプレイされているのね。

  一番印象に残ったのは、"アウト・ブルーズ"中盤でのチバのシャウトする「Break on through to the other side」というフレーズ。これは勿論、かのDOORSの代表曲 "Break On Through"の一節だ。DOORSのテーマでもあった『向こう側に突き抜けろ(=イっちまえ)』というフレーズを多様する辺りに、最近のミッシェルの姿勢のよなものさえ感じる。『突き抜けるんだ』というメッセージはオーディエンスへ向けたものでもあり、そして自らに向けたものでもあるわけだ。そして彼らはこのツアーで本当に『突き抜けて』しまうわけだ。

  2000年12月現在、ミッシェルは幾つかのイベントを除いてツアーらしいツアーを行っていない。特に短期ツアーをするという話も聞かない。先週は大貫憲章氏主催の「LONDON NITE 20th ANIVERSERY」イベントに出演したところだ。ツアー終了後にリリースされたシングル"Baby Stardust"はツアー中には既に演奏されていたので、この曲から次作を占う事は出来ないだろう。だからこそ、次に発表される新曲によって彼らの今後が左右されるような気がしてならない。

‥‥とは言っても、特に大きく変化するとも思えないし、活動のスタンスもそうは変わらないだろう。ただ、このアルバムに収められた『瞬間』が、ひとつのピークであったのは紛れもない事実だ。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『LIVE IN TOKYO : CASANOVA SAID "LIVE OR DIE"』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 20 12:30 午前 [2000年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『TMGE 106』(2000)

  THE MICHELLE GUN ELEPHANT初のベストアルバム。タイトルの「106」、最初は意味が判らなかったが、いざ購入して紙ジャケの内側を見て納得。先日('00年9月)リリースされたシングル"Baby Stardust"までの、ミッシェルとして発表された楽曲が106曲という意味なのだ。しかしこの場合は別バージョンも含むらしい。例えばここにも収録されている"G.W.D"はシングルとアルバムとでは別録音だ。で、このリストを見ていてふと気付いた。「あれ、ルースターズ・トリビュートでの"Do The Boogie"が入ってない‥‥」更に「インディーズでリリースされたライヴ盤の楽曲も無視なのか‥‥」とまぁ、いろいろ不透明な部分も気になるものの(笑)それでもこの約6年間にこれだけハイテンション且つイカすロックンロールアンセムを作ってきたという意味では、尊敬に値する。

  サブタイトルに「THE BEST OF~」と銘打っている以上、これまでのシングルヒットは勿論、ライヴでも定番のアルバムチューン、アルバム未収録のシングルC/Wナンバーや別バージョン等、これまで彼らに接した事のなかった人にとってはとても取っ付きやすい内容となっている。ただ、昨年夏にマキシシングル・コレクションアルバム「RUMBLE」に"Candy House", "Culture", "Get Up Lucy"を収録している為、今回この3曲はオミットされているので、完全な意味での「シングルコレクション」にはならなかった。まぁ彼らの場合はシングル曲以上に人気のあるアルバム収録曲が多いので、そういうのは全く気にならない。寧ろその「RUMBLE」収録の"Cisco"(本来はマキシシングル"Culture"のC/W曲)なんて、そういうシングル曲以上の人気を得ている定番曲だし。
  選曲の基準となっているのは、シングルナンバーを軸として、アルバム未収録曲‥‥これまでアナログでしか聴けなかった曲やシングルのC/W曲、更にブレイクの切っ掛けとなったアルバム「CHICKEN ZOMBIES」以降の3枚のアルバムからライヴ定番曲を各1~2曲ずつという、正に「初心者の為のミッシェル」といえる作りになっている。全て既発曲だが、アナログ盤にまで手が出ない(或いは限定盤だった為に入手出来ない曲がある)という中級ファンにもアピールする作りとなっている。このベスト盤と同時リリースされたライヴ盤がマニア心をくすぐる内容(録音を含む)になっているのも、これで何となく理解できる。

  さて、ミッシェルというロックンロールバンドを語る時、やはりシングルは切っても切り離せない存在だろう。他のガレージバンド同様、彼らはその初期の頃からマキシシングル形式で4曲収録してきた(先の「RUMBLE」収録の3タイトルがそれだ)。その後、マキシ形式は採用するものの、何故か中身は8cmシングルだったりとか、2曲しか入ってなかったりとかいろいろあるものの、そこは彼らのこと、カップリング曲は常にアルバム未収録曲/別バージョンだったり、CDシングルとアナログ盤とではミックスやバージョンを変えたりと、自身が影響を受けた先人達同様、遊び心だけは忘れなかった。この手のアーティストはアルバムを大事にする余り、シングルにまで気を遣わなかったり、アルバムの前振りとしてのシングルカットという感じで蔑ろにする傾向が強いのだが、先日のマキシシングル"Baby Stardust"でもお判りの通り、手を抜くという事を知らない。アルバムもシングルも同じ、テンパった状態を維持しているのだ。こんなバンド、他に知らないってば。

  初期の楽曲(「WONDER STYLE」~「HIGH TIME」)と「GEAR BLUES」以降の楽曲とでは多少色が異なると思っていた(初期はガレージ色の強いパブロック的イメージ、ここ数年は爆走ロケンロー以上にパワフル且つテンパってるイメージ)が、こうやって1枚にまとめられて通して聴いてみても、それ程違和感がなかったのには正直驚いた。"リボルバー・ジャンキーズ"の後に"世界の終わり"が来ても、そしてそれに"GT400"が続いてもすんなり聴けて、気持ちいいのだ。これはちょっと嬉しい誤算だった。先日、掲示板で初期と最近とではちょっと違和感があるのでは?みたいな話題になったばかりだったので‥‥つまり、ミッシェルはデビューしてから一貫としたスタイルを維持しているという事になる。たまたまここ数年、爆走ロケンローが盛り上がり、このミッシェルもその括りに入れても違和感ない存在と認識されるようになったが、別に急にスタイルが変わった訳ではないのだ。変化というよりは成長、または深化といったところだろうか。

  ベスト盤、ライヴ盤でこれまでの活動に区切りをつけたミッシェル。先日、CMJサイトにてニューヨークでのショーケースギグが大好評・大絶賛だった事が伝えられた。今後の活動の拠点を海外に移すのでは?なんて危惧する声も聞こえるが、そんな心配は無用だろう。彼らが日本語で唄う以上、彼らの勝負の場はここ日本に間違いない。アルバムを出して、小さなライヴハウスを隈無く回る。夏にはフェスティバルやイベントに出演し、海外のバンドと肩を並べる。気が向いたらロンドンやニューヨークでショートツアーを行う。きっと彼らは今後もこのスタイルで、このペースで活動を続けていくに違いない。正直、彼らが中~後期ルースターズのような実験的音楽に目覚めるとは思えないし(笑)。ただ、前作「CASANOVA SNAKE」を聴く限りでは「出尽くしたかな?」なんて気もする。だからこそ、来年以降に出す『次の1手』に期待して止まない。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『TMGE 106』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 20 12:00 午前 [2000年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2000/12/17

GLAY『DRIVE -GLAY complete BEST』(2000)

GLAYが放つ「究極のベスト盤」が謳い文句の、2枚組アルバム。ファンクラブやインターネットでの人気投票の結果を参考に、メンバーが選んだ24曲。シングル全22曲中17曲を収録という、正にファンならずとも「買い」の1枚。彼等は3年前にも「REVIEW」という12曲入りのベスト盤を発表しているが、今回のベスト盤とも6曲の重複曲があって、実際「何だかなぁ~」とも思ったが(だってディスク1の方なんて、約半数がその重複分だし)、俺自身が真剣に聴いていなかったここ1~2年の楽曲が中心のディスク2が楽しめそうだったので、ちゃんとお金を払って買ってみた。
 
全楽曲リマスタリングされているとの事で、実際にオリジナルと聴き比べてみて‥‥どうなんでしょうね?(笑)いや、そこまで暇じゃないんで。でも、全体的にリバーブが押さえられて、全体に丸みがかった音像のような気がする。ミディアム~バラードはより耳に馴染みやすく、ロック色の強い曲では幾分シャープになった印象を受けるが、実際どうなんだろう? "口唇"や"ビリビリクラッシュメン"におけるシーケンス音が全面に出てやたらと耳に残るのも、リマスタリングの影響なのだろうか。どっちにしろ、6年前の録音と現在の録音を違和感なく聴かせ、統一感を出すことには成功していると思う。

選曲に関しては‥‥収録時間の関係もあるのだろうが、どうせなら24曲なんて中途半端な数にしないで、30曲と太っ腹な内容にすればよかったのに。「全シングル曲、完全網羅!」とかさ。今回漏れたシングル曲はデビュー曲"RAIN"や初期の名曲"真夏の扉"、前出の「REVIEW」収録の"Freeze My Love"といった曲や、最近の"ここではない、どこかへ"、今年発表の"Mermaid"の5曲。単に人気投票で上位に食い込まなかっただけなのかもしれないが、「complete BEST」を銘打つならば、頑張って欲しかったなぁ‥‥ってただ単に俺がこれらの曲を聴きたいだけなんだけどさ(笑)。まぁそれ以外のアルバム収録曲は妥当な線じゃないかな? あれ、インディー盤(実質上の1st)「灰とダイヤモンド」からの曲はなし? 「REVIEW」では2曲再レコーディングしてたけど、今回もそういう企画やってもよかったんじゃないの? ライヴの終盤ではお約束の"BURST"とかさ‥‥浮くか、これだけ?

って、内容についてはここまで。さて、ここから何を語るかというと、普段あまり話す切っ掛けがなかったので、今回この場を使って力説したいと思う。

どうしても「ヴィジュアル系」の括りで語られる事の多い彼らだが、果たして本当にそれで済ませてしまってよいのだろうか。というのも、どうも音楽的には他のバンド‥‥例えばLUNA SEAやL'Arc-en-Cielといったバンドや、それに続く後続達‥‥とは一線を画すのではないだろうか?

ここで力説したい、「GLAYは生粋の日本のバンド、それもフォークロックバンドだ!」と。みんなも薄々気づいてたんじゃないだろうか。よくOASISと、その存在や影響力を比較される事の多い彼らだが、双方に共通するのは「それぞれの国の、どこにでもいそうなアンチャン達」が「普遍的メロディを唄う」という点。そしてこれだけビッグなポジションを数年に渡って維持している点。このベスト盤もまた強烈な数を売り上げていると聴く。何故これだけ支持されるのだろうか? この辺りが先の「普遍的メロディ」と「フォーク」というポイントに絡んでくるのだが。

この2枚組を聴いても判る通り、それぞれの曲は馴染みやすいメロディを持っている。それは洋楽に影響を受けたものというよりは、寧ろ邦楽‥‥BOφWY以降のビートロックだったり、'70年代に流行ったフォークソングのそれに近い印象を受ける。具体的な例を挙げると、代表曲のひとつ"BELOVED"のサビメロの最後「AH 夢から覚めた/これからもあなたを愛してる」というところを「あの素晴らしい愛をもう一度」に変えて唄ってみてもらいたい。これは多少意地悪なやり方だが、その他の楽曲にもそういう要素は感じてもらえると思う。それがアップテンポの曲でも、メロディだけ聴けばしっかりしているものだと思うし。

丁度彼らがブレイクしかけていた頃、泉谷しげるがGLAYをこう表現した事があった。「こいつら、化粧して気張ってるけど、結局はフォークロックじゃねぇか? (吉田)拓郎なんだよな、メロや歌詞が」これを耳にした時、「あぁ、俺と同じように感じてる人っていたんだ」と素直に喜んだ。実際にメインソングライターのTAKUROも尾崎豊や佐野元春、そして井上揚水や吉田拓郎といった人達に直接/間接的に影響を受けている。カッコつけて「ガンズやモトリーに影響を受けました」「バウハウスやキュアーみたいになりたかった」と言われるより、素直に「BOφWYみたいなバンドをやりたかった。尾崎や元春みたいな影響力を持つ、普遍的な楽曲を世に送り出したかった」って言われた方が説得力があると思う。つうか、もうそういう世代が育ってる時代なんだよね。いつまでも洋楽コンプレックスみたいな事言ってる場合じゃないんだよな。そういう意味では「純粋な意味でのジャパニーズ・ロックバンド」なのかもしれない、GLAYという存在は。

もうひとつ。OASISとの比較は先に書いた通りだが‥‥しいてもうひとつ挙げるならば、「馴染みやすいメロディに乗る、耳障りのよい声質」というのも大きく関係してるような気がする。リアムの声とTERUの声っていうのは相反する声質だと思うが、それぞれの国民性(イギリスと日本)を考えると納得できるものがあると思うのだが‥‥リアムの場合は、過去の偉大なる先輩達に影響を受けた歌唱法も大きく影響してると思うが、TERUの場合はどうだろう。ああいうハスキーな声というのは、意外と受け入れられやすいような気がするのだが‥‥BOφWYの氷室京介にしろ、昨今の男性ボーカリストにしろ、こういうハスキーな声の持ち主が多い。そしてそういう人達が支持されているという事実。詳しい事は判らないが、以前雑誌で声の周波数について研究している特集みたいなのがあったが、そこでもTERUの声ってのは「ハスキーな割には耳障りではなく、温かみを感じさせる心地よさを持っている」と評価されていた(と思う)。意外と気にしない人が多いと思うが、実はこういう事も大きく関係しているのだろう。この心地よさのようなものが、飽きさせずに聴き手をアーティスト側に引き込む要素のひとつなのかもしれない。

最後にもうひとつ。歌詞の点で。OASISの歌詞というのも、実はこれといって革新的な事を唄っているわけではない。至極当たり前の事なのだ。しかし、それが'90年代の若者に支持されてしまったのだ。シンプル且つストレートな表現。NIRVANA以降の我々が最も欲していたのが、実はこういうものだったのかもしれない。

これを日本に移し替えるとどうだろう。昨今のヴィジュアル系の歌詞には呆れるほどの幼稚な歌詞も多く見受けられる。しかし、GLAYの場合、ありがちなラヴソングを唄いながらも聴き手の心を掴んできた。特にここ数年の彼らの楽曲には、自身の人生観や生き方を問う内容の歌詞が増えている。これらは尾崎の影響だと思うのだが(字余り且つ言葉を詰め込むスタイルに、その影響を垣間見る事が出来る)、そういう聴き手と共に「成長」しているという点も見逃せない。最近ではミスチルなんかにもそういう面があったが、GLAYの方がより我々寄りであり、等身大なイメージを感じるのだ。

下手をすれば「別にスターにならなくてもいい、その辺のアンチャン」と切り捨てられる事も多い彼らだが、やはりそれらも含めて全てが才能なのだと思う。我々と同じような感性を持ちながら、それを具体的な形として提供する事ができる。それが「才能」なのだよ。ロックはもっと売れなきゃならないと思う。最近ではCDそのものが売れていないと耳にする。売れているのはごく限られた作品のみ‥‥例えばこのアルバムとか‥‥そんなのじゃダメなのだ。R&B的なものが売れる時代になりつつある。アメリカやイギリスと同じ傾向を感じる‥‥それじゃダメだ、絶対に。ロックはもっと売れるべきなのだ。「ロックとは誰もが最も安値で、最も簡単に手に出来る快楽」なのだから。

こんな駄文で彼らに興味を持ってもらおうとは思わない。が、彼らに対する偏見や誤解を解く第一歩にでもなってくれればとは思う。売れてるからダメみたいな風潮の中だからこそ、今一度このアルバムを聴いて欲しい。何も感じなければそれでいい。でも、やはり一度は聴いて欲しい。同じ日本人として‥‥



▼GLAY『DRIVE -GLAY complete BEST』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 12 17 03:58 午前 [2000年の作品, GLAY] | 固定リンク

2000/11/15

REEF『GETAWAY』(2000)

前作「RIDES」('99) からたったの1年4ヶ月で届けられた、REEFの4作目となるアルバム。プロデューサーを2作目「GLOW」('97)と前作を手掛けたジョージ・ドラキュリアスからアル・クレイ(STEREOPHONICS, THERAPY?, WiLDHEARTS等)に変え、スタイル的にもこれまでよりも一歩前進させた、意欲作となっている。それにしてもこいつら、今年の2月には前作のツアーで来日し、こないだ(8月)にはサマーソニックで再来日してるのに、一体いつの間にアルバムなんて作ったんだよ!?(って3月から7月の間ですね、ハイ/笑)前作のセールス的失速が原因なのか、こんなハイペースでのリリースは? まぁファンとしては素晴らしいバンドの素晴らしいアルバムがもう1枚、こんなに早く聴けるんだから嬉しいけどね?

意欲作って事で、これまでとはちょっと違う面を打ち出しているこのアルバム。まず、聴いて貰えば判る通り、楽曲のテンポアップを図っている。サマーソニックでも披露されたM-1~3("Set The Record Straight", "Superhero", "Getaway")のハイパー振りには、当日のライヴを体験した俺も驚いた。特に"Superhero"なんてツェッペリンの"The Song Remains The Same"みたいなリフを持った、素晴らしいロック・アンセムだ。楽曲の良さに関しては文句なし。前作でのグルーヴィーな曲とアコースティカルな曲を全面に出した作りから更に新たな地点にたどり着いた印象を受ける。勿 論、従来通りのグルーヴィーな楽曲もあれば、男泣きのバラードもある。この手のロックが好きな人間にはたまらない内容だ。

さて、ここで改めて彼等の素晴らしさを説くのも面白みに欠けるので、ちょっと視点を変えて‥‥「逆猿メタル」的お薦めをしてみようかと思う。逆猿メタル‥‥つまり、メタル・オンリーの方々にもお薦め出来る作品という視点で語っていこうかと ‥‥

まず‥‥REEFというバンド。俺は彼等を「現代のHUMBLE PIE」だと思っている。よく俺はTHUNDERとREEFを比較してきた。オールドスタイルのブリティッシュロックを伝承するバンドとして、常にに注目していた。世間がブリットポップだ何だと大騒ぎしてた中、これらのバンドは「周りなんて関係ねぇぜ」てな感じで独走してきた。特にブームの真っ直中にデビューしたREEFはその煽りを受けてもいいものの、全く無関係な立ち位置を取り、成功を勝ち取ってきた。

THUNDERを俺は「現代のFREE/BAD COMPANY」と表現した事がある。ブルーズ寄りのFREEと比べると、HUMBLE PIEにはソウルやゴスペルの要素を感じる事ができる(勿論、ブルーズの要素だってあるだろう)。ただここで言っておきたいのは、両バンド共にブルーズやゴスペルの影響は受けているだろうという事。特にその色が濃く現れているという意味で、それぞれを「現代の~」と表現しているので、勘違いなさらないように‥‥

これまでのREEFというと、特にセカンドの音の感触が「STICKY FINGERS」(ROLLING STONESが1971年に発表した名作)みたいだという事からROLLING STONESと比較される事があった。実際にREEFはストーンズの前座もやったしね。まぁ伝統的なブルーズロックを体現しているという意味では、ストーンズと比較されるのも判らんでもないけど‥‥1枚目の頃はFREEとか言われてなかったっけ?(笑)で、そんな彼 らがよりアーシーなサウンドにシフトチェンジしようとしたのが前作「RIDES」だったように思う。そしてその完成型により近づいた(よりナチュラルになった)のが、今回の「GETAWAY」なのではないだろうか?

さて、そのHAMBLE PIEというと、HM/HRファンはあるバンドを思い浮かべないだろうか?‥‥ちょっと強引だけど、彼らの曲"30 Days In A Hole"をカバーした、あのMR.BIG。今回の「GETAWAY」を最初に聴いた時、MR.BIG(ファーストの頃や、リッチー・コッツェン加入後の最近に限定)をまず思い浮かべた。もっと金属的なサウンドだったら、間違いなくMR.BIGだ。特に今作のM-5バラード"All I Want"なんてMR.BIGの"Just Take My Heart"みたいだし(特にサビメロがかなりいい感じに似てる)。他にも共通点は山程ある。REEFのギタリスト、ケンウィンがテレキャスターをよく使っているが、MR.BIGの2代目ギタリスト、リッチー・コッツェンもテレキャスターをメインに使っている。ベーシストが両バンド共よく暴れる(笑)、等々。多少こじつけているが‥‥それでもエリック・マーティンとゲイリー・ストリンガーが共にソウルフルな歌い手だという点は間違いなく共通しているし、その歌をバンドの軸としている点、楽器隊が個々を主張しながら歌を見事にバックアップしている点、楽曲に独特なグルーヴ感が存在する点‥‥もし、互いのバンドの曲を交換して演奏したら(例えばREEFがMR.BIGの"Superfantastic"を、MR.BIGがREEFの"Place Your Hands"を)意外とハマるんじゃないだろうか? もし機会があったら、シングルのカップリングにでも如何だろうか?

てなわけで、意外な共通点を今回は紹介してみたが、もしMR.BIGとかあの辺のブルージーなロックが好きなHM/HRファンがこれを読んでいたら、騙されたと思って一度、REEFの「GETAWAY」に手をだしてもらいたい。こういう音が好きなら、どこかしらリンクするところがあるはずだ。



▼REEF『GETAWAY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 11 15 04:01 午後 [2000年の作品, Reef] | 固定リンク

2000/11/02

ゆず『トビラ』(2000)

  まず最初に言っておく。俺は「ゆず」が大嫌いだった。俺のことを古くからご存知の方なら覚えていると思うし、掲示板にも何度か書いたかもしれない。そもそも最初に「夏色」で出てきた時から拒絶反応を示していた。生理的に岩沢厚治(声の通る、高い方)の歌声がダメだった。そしてあの爽やかなイメージ‥‥俺がロック/ポップスに求めるモノが感じられなかった。それはその後の「サヨナラバス」だの「友達の歌」だのに対しても同じだった。だから俺にとってはゆずというユニットは『一生必要のない存在』だったのだ。

  そもそも、俺がロックに求めるもの‥‥それは過去2回のオススメ盤(UNDERWORLDとRADIOHEAD)の時にも書いたが‥‥楽曲的に更に突っ込んで書くと『5割の幸福感、4割の悲壮感、そして1割の毒』。このパーセンテージが全体から感じられなければダメ。勿論毒の割合が高ければ高い程尚良いのだけど。ところが、このゆずにはその毒の要素を感じる事が出来なかった。少なくともシングルヒット曲からは。だからアルバムまで手を伸ばす事はなかった。当然といえば当然だが。

  話は変わるが、ミスチル好きの俺がゆずは大嫌いと言うと、大概の人からは不思議な顔をされる。音楽解らない人からすれば「ミスチルもゆずも一緒じゃん?」という事になるらしい。確かに、双方から共通項を見出す事もできるし、実際にゆずはミスチルをリスペクトしているし、彼等のプロデューサーである寺岡呼人がミスチルと仲がよいというのも関係あるだろう。実際にゆずファンにはミスチル好きって人が多いと聞く。その反対にミスチルファンの中にもゆず好きは多い。aiko同様、このゆずもミスチル・フォロワーと唱える事も出来る。けど、何で俺がミスチル好きなのかは、先に書いた通り‥‥毒の要素なのだ。その毒が8割増しとなった「深海」や「BOLERO」も、毒が薄らいだ「Q」も含めて。

  では何故、俺は今回ゆずの最新作を購入してまでこうやって取り上げ、オススメしようとしているのだろう? まず俺が彼等に注目し、アルバムを買ってみようとまで思わせるに到った3つの理由を書いてみよう。


①この春にリリースされ、初のオリコン・シングルチャート1位を記録した"嗚呼、青春の日々"を初めて聴いた。今までのゆずからは想像できない硬派な楽曲で北川悠仁(ハスキーな声の方)の男臭い歌声が好印象だったのもあり、ストーンと俺の中に入ってきた。初めてこの曲のイントロを聴いた時、マジでエレファントカシマシかeastern youthかと思った。そのくらい硬派でカッコイイ曲。歌詞もまたいいし。

②その"嗚呼、青春の日々"がリリースされる数ヶ月前にゆずは忌野清志郎デビュー30周年記念イベント「RESPECT!」に出演。ここで彼等は"金もうけのために生まれてきたんじゃない"を熱唱。この模様を先日、某友人から借りたビデオで目撃。普段テレビの歌番組に出演しないゆずの、初めて観る生歌。正直な話、ここでかなり彼等に対して好印象を抱くようになっていた俺。

③そして決定打となったのが、最新シングル"飛べない鳥"。俺が生理的にダメだと言った岩沢が作詞作曲/リードボーカルの楽曲だが‥‥毒こそ感じないものの、そこにはこれまでの幸福感と同等の悲壮感のようなものを感じ取る事が出来た。いろいろ酷評されているが、俺はマジでこの曲、素晴らしいと思う。楽曲/歌詞/ボーカルパフォーマンス全てが。


  そして俺はこれら"嗚呼、青春の日々"、"飛べない鳥"、そして最近聴いて気に入っていた"心のままに"を含む最新アルバム「トビラ」を購入する事を決心したのだった。

  さて‥‥初めてアルバムを通してゆずを聴いた印象だが‥‥ヤバイ、マジでヤバイと思う。爆裂しまくっているのだ、北川が。数ヶ月前にrockin'on JAPANでの彼のインタビューを読んだのだが、そこからも彼が前作「ゆずえん」を境に益々爆裂モードに突入している事が伺える。

  ぶっちゃけた話、俺が気に入ったゆずの要素というのは、この北川の色だった。彼は今、ゆずという「至極脳天気」と思われがちなユニットの中で「毒」のパートを受け持っている。これがいい具合に岩沢の色と混ざり合っているのだ。恐らく今の北川は、ミスチル桜井が「深海」で突入した爆裂モードに近い精神状態なのかもしれない(スキャンダルこそないだけで/苦笑)。しかしミスチル程毒が大半を占めないのは、ミスチルが桜井がメインソングライターであるのに対し、ゆずは北川と岩沢が50/50で役割を分担している。自分が書いた曲は基本的に自分がメインで唄う。相手の手の内が読める分、どんどん自分を磨く。それがこの爆裂モードなのかもしれない。

  岩沢が書く楽曲がポップで親しみやすいのに対して、北川の楽曲というのはブルージーで男臭いものが多い。それは歌詞にも表れている。マジな話、このアルバムに収められている"仮面ライター"や"何処"といった曲だけを取り上げて聴かせたら、きっと多くの人がゆずだと気付かないだろう。そう、例えば前者は山崎まさよしあたりがやりそうな感じだし、後者は「BOLERO」期の桜井が書きそうな楽曲だ。全13曲中、北川の楽曲が8曲と大半を占めているこのアルバム、そういう事もあってか、非常に攻撃的な印象を受ける。

  勿論、これまでのゆずをイメージさせる楽曲もあるにはある。しかし、既にそこには脳天気さというものはなく、哀愁や悲壮感のようなものすら感じさせる。それは北川の楽曲だけではなく、岩沢の楽曲にもだ。ユニット全体にそういう重い空気のようなものが立ちこめているのかもしれない。

  そうそう、多くの人がイメージする「ゆず」のイメージ。きっとアルバムもそういうので満載なのだろうと思っていたが、爆裂‥‥バラエティ豊かなのだ、楽曲のタイプが。いかにもゆずなフォークソングもあれば、泉谷しげるみたいな攻撃的フォークソング、デルタブルーズ的ナンバー、6/8拍子の男臭いロッカバラード、プログレッシヴ且つアグレッシヴなロックアンセム、清々しいポップナンバー、尾崎豊の如く字余り連発のシャウト‥‥これらが全て詰め込まれている。重苦しいタイプの曲の印象が強いせいか、従来のゆず的フォークソングが突然登場すると、妙な違和感を感じてしまうのもこのアルバム。しかし聴き終えた時の印象は、やはりどんよりとしている。

  多分、今の北川には吐き出さなければならないモノが沢山あるのだろう。成功を得て、名声を手にしたにも関わらず、心の中は淀んでいく。「Atomic Heart」が空前の大ヒットを記録した頃の桜井がそうだったように、北川もそういうモードのようだ。じゃなかったら「心ない言葉達が行きかう腐った世界/たれ流しのメディアにでも相手に踊らされてな」だとか「現実というデカい壁にブチのめされて/また優しさを捨てなければならないの/それを生きる術というなら僕はそんな事信じない」なんて歌詞、書かないでしょ? 更に、このアルバムではないが、この夏に出た限定ミニアルバム「ゆずマンの夏」に収められている"真夏の太陽"という曲の歌詞には「魂の声いわば真実/摩り替えられた偽りに嘆くとも/人知れず泪/刻まれた孤独すら飲み込んでしまえるのは愛だけ?」とある‥‥今、彼が何を思い、何処に進もうとしているのかは判らないが、少なくとも今後注目に値するだけの仕事をすると確信している。

  北川の話ばかりになってしまったが、一方の岩沢。先の"飛べない鳥"を筆頭に、北川的哀愁ナンバー"ガソリンスタンド"や、その北川と交互に唄う、本来のゆずらしさを主張する"日だまりにて"や"新しい朝"、そしてみんながイメージするゆずらしさを維持した"気になる木"等、それまでの自分の持ち味に更に磨きをかけている。元々北川にとってソングライターとしては先輩格であった岩沢は、ここで北川の爆走に対して一歩引いたポジションで、自分の役割を的確にこなしているように見える。けど、それがコンビとして上手くやっていく秘訣だと思う。片方が波に乗っている時は、もう一方はそれを邪魔することなく裏方に回ってサポートする。岩沢にはそれが理解できているのだ。

  そういうわけで、今のゆずは我々がイメージするところの「ゆず」よりも、2歩も3歩も先に進んでいる。恐らくこれまで彼等の事が好きだった女子供は、このアルバムを聴いて離れていくかもしれない。一時期のミスチルのように。一方のゆずはゆずで、路上からスタートし、基本的には2人でギターとハーモニカさえあればプレイできた楽曲が、「路上で歌えない曲がいっぱいあるかな、という感じはする。多分そのまま表現できないだろうな、それなりの路上アレンジを施さないと」(岩沢)というレベルにまで到達している。「ゆず」としての第2章がここから始まるような気がする‥‥このアルバムをスタート地点として、このユニットはどんどん俺達のイメージをぶち破ってくれる事だろう。後追いで旧譜にまで手を出すようなファンではない俺だが、きっと次の作品はすすんで聴く事だろう。いや、マジで今後が楽しみだ。

  下らない価値観に縛られたままじゃ、本質を見逃してしまう。本当の良さに気付かないまま通り過ぎてしまう。みんなも気を付けた方がいいんじゃないかな?



▼ゆず『トビラ』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 11 02 12:00 午前 [2000年の作品, ゆず] | 固定リンク

2000/10/14

AT THE DRIVE-IN『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000)

実はちょっとフライング気味のレビューだったりするのだけど‥‥このアルバムを手にしたのは丁度1ヶ月前(9月中旬)だった。その時点で輸入盤のみで、国内盤は11月発売との事だった‥‥で、それまで待つのも勿体ないくらいに素晴らしいアルバムだと思ったので、こうやってレビューしているわけで‥‥。

ヘヴィロックというジャンルが一段落着き、そろそろ出揃ったかなぁという空気が漂っている。そういう中でSOULFLYのようにレゲエを取り入れたり、DEFTONESみたいに昨今のトリップ系の空気を取り入れたりと、新しい要素をどんどん取り入れ始め独自の個性を生み出そうと日々精進している。かと思えば、どのジャンルでも一緒だがひとつが成功を収めると雨後のタケノコのように水で薄めたような「第2の~」といった新人が登場する。中には面白いバンドもいるが、大体は‥‥まぁ書かないでおこう。

そんな中、ヘヴィロックの一言では片付けられないような存在も登場している。それが今回紹介するAT THE DRIVE-IN(以下ATDIと略)のメジャー配給第1弾アルバム『RELATIONSHIP OF COMMAND』である。

彼等の音を最初に聴いたのは、今年の8月の「SUMMER SONIC」というイベントでだった。そこに詳しい事は書かれているので要点だけ。第一印象として「歌メロらしいものがしっかりとあり、聴きやすい」という事だった。まぁ普通はここで終わってしまうのだけど、やはり見た目のインパクトが強かった事もあって、アルバムが出たら聴こうとは思っていた。

で、ライヴが終わって暫くしてから、彼等の新譜が「GRAND ROYAL」(BEASTIE BOYSのメンバーが運営するレーベルで、ヒップホップに拘らずいろいろなバンドが所属していたが、2001年初秋に閉鎖。日本のBUFFALO DAUGHTERもアメリカではここからCDをリリースしていた)からリリースされ、そのプロデュースをかのロス・ロビンソン(昨今のヘヴィロック界では有名なプロデューサーで、KORNの初期2枚、LIMP BIZKITの1st、SLIPKNOT等を手掛けた)が手掛ける事を耳にして、期待せずにはいられなくなったわけだ。てなわけで、このアルバムは見つけ次第手に入れてしまったわけである。

とにかく、このアルバムの素晴らしい点は「熱さ」、これに尽きる。「そんな、ヘヴィロックなんてみんな暑苦しいじゃんか」とお思いだろう。が、ちょっと違う。熱いといってもヘヴィロック特有のものではない。確かにRAGE AGAINST THE MACHINEの熱さに通じるモノは多少感じられるが(それはメンバーが皆純粋なアメリカ人ではないからだろう。そういう点はザック・デ・ラ・ロッチャやトム・モレノに似てる)、ここにある「熱さ」は、もっと普遍的なロックバンドの熱さ‥‥そう、U2(それも初期の頃)やPEARL JAMといったバンドに近いと感じるのだ。音だけ聴けば特にロス・ロビンソンが手掛ける必然性というものを感じない。ミックスには大御所アンディ・ウォラスという、まさに「ヘヴィロック界の黄金コンビ」が手掛けたわけだが、個人的にはスティーヴ・リリィホワイト(U2の初期作品で有名)やダニエル・ラノワ辺りが手掛けても何ら問題ないと思う。そう、ATDIはヘヴィロックで括られているものの、普遍的なロックバンド特有の「闘争心」とか「熱さ」を思い出させてくれるのだ。

残念ながら輸入盤の為、歌詞の対訳がないので詳しい内容は判らないのだが‥‥恐らくRAGE AGAINST THE MACHINEに共通するテーマなのではないだろうか、歌詞の面では。南米出身のメンバーが多いらしく、その辺の政治的問題は日常レベルなのだろう。U2もアイルランド出身だし。こういう政治的な事を唄うバンドに対してちょっと引き気味になってしまう人も多いと思うが、俺には今回そういう「胡散臭さ」とか「とっつき難さ」は感じられなかった。昔、同じような「熱さ」を持ったバンドにTHE ALARMという、アイルランド出身のバンドがいたが、このATDIのアルバムを聴いてると、ふとそのTHE ALARMの代表作『STRENGTH』(86年)を思い出す。久し振りに聴きたくなったなぁ‥‥

ヘヴィロック的に感じない/感じさせない点としてもうひとつ、ギターの音色も大きいと思う。昨今のバンドはチューニングを下げ、それでも足りなければ7弦ギターを用いる事が殆どだが、このバンドは聴く限りではノーマルチューニングのままだと思う(いや、あるいは半音下げ程度かも。とにかくヘヴィロック的な1音下げまではいってない)。確かRAGE AGAINST THE MACHINEもノーマルのままだったはず。まぁ彼等はトム・モレノの変態ギターがあるから他のバンドよりも抜きんでてる印象があるが(勿論それだけじゃないのはお判りだろう?)、こいつらの場合は見た目とか動きが変態的だからなぁ。(笑)いや、冗談はさておき‥‥リフやコードワークにしろ、ローエンドを使ったリフが殆どのヘヴィロックが多い中で、このバンドは非常に中音域~高音弦でのリフを多用する。その辺が先に挙げたPEARL JAMのような普遍的なロックバンドを思わせるのかもしれない。

また、ギター2人の役割分担がハッキリしている点も大きい。多くのバンドは2人ギタリストがいれば、大抵同じリフを2人で重ねて弾いて重量感を出すか、違ったリフを重ねて(そう、AC/DCとかストーンズみたいに)独特な和音を奏でるかだ。しかしこのATDIには、ひとりがメインリフを弾き、もうひとりがメロディを弾くというパターンが多い。あれ、これって‥‥初期のU2に多かった手法じゃないか? 勿論、こういう手法を使うバンドは多いが、少なくともヘヴィロックと呼ばれるジャンルの中では少ない。というかあまりお目にかからない。この辺も普遍性を感じさせるポイントかもしれない。

楽曲についてもひとつ。マイナーキーを主軸にした楽曲が殆どで、特に印象に残ったのはピアノを取り入れた楽曲。ライヴでもボーカルがキーボードやらエフェクターやらをいじっていたが、こういうピアノを取り入れた曲では、ギターもまた「いかにもギター」なプレイから離れた、ムーディーなプレイで活躍している。ヘヴィロック特有の「アルバム1枚聴き終える頃にはグッタリ」といった体力消耗を伴わないアルバムだと思う。LIMP BIZKITなんかにもこういうムーディーなサイケナンバーが何曲かあるが、あれともまた違う。ふとU2の『OCTOBER』や『WAR』辺りを思い出してしまう。試しにこのアルバム聴き終えた後にこれらの2枚を続けて聴いてみるのもいいだろう。きっと違和感ないはずだ。

さて‥‥いろいろ分析してしまったが、結論として‥‥彼等は何もヘヴィロックをやろうとしてないのではないだろうか? それにヘヴィロックに無理矢理括る必要も感じないし。RAGE AGAINST THE MACHINEをヘヴィロックで括ってしまった時の違和感、あれと同様のものを感じる。そういうわけで、このバンドはハッキリ言ってそういうヘヴィロックが苦手な人にこそお薦めしたい。先に挙げた2バンドのファンなら間違いなく気に入るし。ただ、これら程メロディアスではないのも事実。「ヘヴィロックのわりにはメロディアス」と書いたように、サビとなるパート以外ではメロディを無視した、叫びに近いボーカルを聴かせるが、それもこの熱さにはピッタリだと思うのだが‥‥この辺は好き嫌いが別れるか? とにかく、これから急成長するであろうバンドには違いない。次の単独公演には是非足を運ぼう、そう思わせるだけのパワーを持ったアルバムだった。今年後半の陰のヘヴィローテーションは、実はこれである♪

そういえばこのアルバム、かのイギー・ポップ氏がゲスト参加しているのだが‥‥どこに?(笑/嘘ウソ、5曲目とか7曲目、あと11曲目にも「それらしき」声は確認できるけど、アフロくんを前にしては御老体も‥‥)。



▼AT THE DRIVE-IN『RELATIONSHIP OF COMMAND』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 10 14 12:00 午前 [2000年の作品, At The Drive-In] | 固定リンク

2000/10/02

Mr.Children『Q』(2000)

  前作「DISCOVERY」から約1年8ヶ月振りとなる新作(限定ライヴ盤「1/42」を含めると通算9作目)。その間の彼等と言えば、前作発表後に42本4ヶ月半に及ぶアリーナツアーに挑み、全公演ソールドアウトを記録。内容も「歌」と「演奏」に再び焦点を当てた素晴らしいものだった。その内の1公演を完全収録した初のライヴアルバムを'99年9月にリリースし、彼等は10月よりニューヨークに完成した小林武史のスタジオにて長期レコーディングを開始した。そこでのセッションを収めたシングル「口笛」を'00年1月にリリース。多くのファンを驚かせた。そこから溢れ出すピースフルな音には、ここ数年の殺伐とした彼等の姿はなかったのだ。初期の作風を思わせる新曲は、多くのファンに「今度のアルバムは凄い‥‥」と期待させる事となる。レコーディングはそのまま6月末にまで及び、7月には完成。8月にはドラマ主題歌となるシングル「NOT FOUND」を発表。桜井曰く「過去最高の楽曲」というこの曲は、久し振りのミリオンセールスに達する勢いだ。

  そして発表されたこの「Q」。「最高傑作」とも「問題作」とも言われるこの新作、皆さんはもう聴かれただろうか? 何故問題作と呼ばれるのか、俺には何となく判るが、楽曲の出来や開放感は過去数作にはないものばかりだ。一聴して思ったのは、前作よりも地味ではないか?という事。前作はモノトーン調の中に初期を思わせる曲が登場したり、デジロックやらファンクやらグランジやら、復活に賭ける彼等の意気込みみたいなものを感じさせる力作だった。しかし今度のはどうだ? 肩の力が抜け、いい意味で自由度/セッション度が高い内容になっている。メジャーキーのポップな楽曲が多い事もあってカラフルな印象を与えているのに、聴き終えた第一印象が「地味」というのも、何だかなぁ‥‥

  まずこのアルバムの前情報として桜井の「rockin'on JAPAN」でのインタビューを目にしたのだが、そこでの発言にギョッとした。「ダーツを投げた合計点で曲のテンポを決めてきました。あ、コード進行もくじ引きでね(笑)」「バンドを生かしながら僕のソングライティングを成熟させてくってのは、非常に難しいバランスになってると感じてた」ど、どうしたんだ!?とも思ったが、逆に考えればそれだけ今の桜井自身がアーティストとして充実しているという事なんだろう。いや、私生活が充実してると言った方がいいか?(苦笑)まぁ冗談はさておき‥‥ある意味楽観的に物事に向き合えるようになった結果、これだけ自由度が高い作品が産まれたのなら、万々歳ではないだろうか?

  更に‥‥前回の同誌でのインタビュー(「DISCOVERY」完成時)の最後に、"Image"や"Simple"みたいな曲が書けるようになったなら、今度は"君がいた夏"(ミスチルのファースト・シングル)みたいなピュアなラブソングが出てくるんじゃない?なんて聞かれて笑っていた桜井だが、ここにはそれに匹敵する"口笛"がある。それだけでも大きな違いだ。ここ最近のシングル曲はどちらかというと「等身大の桜井和寿」を唄った曲を聴き手が受け入れる、というパターンが多かったが、"口笛"は匿名性の高い、ピュアな曲だ。だからこそ、聴き手が自分を重ねやすいのかもしれない。そういう初期の彼等のスタイルがここにはある。意識したわけではないだろうが、これは大きい。俺はこの曲を初めて聴いた時の衝撃を今でも覚えている。

  さて、それでは手っ取り早く‥‥恒例の「全曲解説」に入りますか‥‥簡単に、そう、至極簡単に、ね?


★アルバム「Q」全曲解説★

◎M-1:CENTER OF UNIVERSE
  やけに落ち着いたムードで始まるんだな、新作は?と思わせた曲。どことなく彼等がよく流用する(笑)レニー・クラヴィッツを思わせるサイケなムードがあるけど、2コーラス目で一変。派手なドラムが入り、テンポアップ。ドラムの細かいフレーズと打ち込みの混ざり合ったバックトラックが、どことなくドラムンベース調に聞こえなくもない。狙ったな?と最初からニヤリとさせられる。曲全体のイメージが初期の熱かった頃のU2を思わせる。こういう実験性、前作にもあるにはあったけど、ちょっと質が違うように思う‥‥どっちかっていうと、今回のには「Atomic Heart」の頃の、波に乗った絶頂期と同質のものを感じるのだが‥‥
  それにしても何なんだ、この幸福に満ちた音は?「総てはそう/僕の捕らえ方次第だ」という歌詞といい、最後の「僕こそが中心です/あぁ世界は素晴らしい」といい‥‥言葉遊び(韻の踏み方)も更に磨きがかかっているし。音楽的には前作の成功とツアーの大成功がもたらしたモノが大きかったのだろうが、そこにプラスして私生活の充実振り(ってしつこいか?/苦笑)が大きいんだと思う。こんな前しか見てないような曲、前作にはまだなかったしな‥‥思い出した。このアルバムのタイトル、最初は「Hallelujah」だったんだっけ。それが総てを物語ってるわな?(結局その後に生まれてくる楽曲群にはそのタイトルに当てはまらないものも増えたので、意味性を持たせない為に「Q」というタイトルに変更になった)

◎M-2:その向こうへ行こう
  これまた今までにないようなタイプの楽曲。こういう曲を2曲目に持ってくるから「落ち着いてる」とか「地味」なんて印象を与えちゃうんだよな?(なんて言ってるのは、俺だけか?/笑)珍しくこの曲、作曲クレジットが「Mr.Children」名義になってる事から、セッションで生まれた楽曲なのだと推察できる。それにしても‥‥バンドがセッションして生み出すような楽曲か、これ!? どっちかっていうと、スタジオワークを結集して作り上げたようなイメージの曲なのだけど‥‥サビで一転する、あのゴージャスなパートが大好き。曲の感じとしては前作に入ってても違和感はないような気もするけど、どうだろう?
  それにしても、この新作に伴うツアーではこういう楽曲をどうやって演奏するのかが非常に気になるところ。アルバムではミスチルの4人にプロデューサーの小林氏がキーボーディストとして参加、基本的にはこの5人でのセッションで作られているわけだけど‥‥そうか、小林武史がセッションから絡んでるから、初期の作風(音使い)に近いのか‥‥!?
  あ、この曲での「ギター・田原健一」(笑)と中川のベースはなかなかのもんだと思うのだが‥‥

◎M-3:NOT FOUND
  アルバム3曲目に持ってきたか、この曲を。しっかし‥‥地味に持っていく流れだなぁ。(笑)いや、純粋に「歌と楽曲と演奏」で勝負っていう意気込みが感じられて、俺は嬉しいんだけどね?
  この曲に関しては別項でシングル・レビューやってるので、今回はパス。あれから何十回、何百回聴いたけど、やっぱ名曲中の名曲。そして、カラオケでの難易度高し。(爆)

◎M-4:スロースターター
  またもや地味渋なロックナンバー。ギターの歪み具合やドラムのリズムの引きずり具合が、まんまストーンズ。いや、キースのソロ。(笑)そして歌が入ると‥‥まんま(奥田)民生!(爆)これ、是非民生にカバーして欲しいんだけど‥‥そういえば5~6年前に、民生と桜井が某誌で対談した事があったけど、その後も桜井は「もし今後ソロをやることがあったら/やることになったら、是非一度民生さんとやってみたい」って言ってたっけ。
  それにしても‥‥桜井のストーンズ好きは今に始まった事ではないが、こんなに「まんま」な曲って少なかった、いや、なかったよなぁ‥‥無駄に作り込んだり、考え込んだりしてないんだろうな、きっと。いや、考えてないように計算し尽くされてるのかも‥‥それは俺が考えすぎなのか?(苦笑)とにかく、是非ストーンズの次のジャパンツアーではミスチルに前座を‥‥(爆)

◎M-5:Surrender
  一番古い音源がこれ。レコーディング自体は前作でのセッションでのアウトテイクらしく、昨年5月のシングル「I'LL BE」にカップリングとして収録されている。"I'LL BE"はさすがに前作に別バージョンで収録されてるから、こっちには入れられないだろうし。だったらカップリングだけでも入れておくか、いい曲だし‥‥っていう流れで決まった、のかどうかは知らないが(笑)、非常にいいスパイスとなってる曲だと思う。イントロを聴いた瞬間、ビリー・ジョエルの"Stranger"を思い出す。口笛のせいか?
  そうそう、この曲のタイトル。「I surrender」と「愛されんだ」を引っかけてるの、知ってましたか?(笑)

◎M-6:つよがり
  超名曲、マジで。俺の中では"抱きしめたい"を越えた。何でこれをシングルカットしない!?って思わせるような素晴らしいバラード。多くのファンがきっと、こういう曲を彼等に望んでいたのに、彼等は出来るだけそこから離れようとしてきた。けど、肩の力を抜いた今、ようやくここにたどり着いたわけだ。
  内容的にも"抱きしめたい"のその後みたいなイメージを受けるし、ここは是非、シングルとしてリリースしてもらいたいものだ。絶対に大ヒットするだろうから(いや、だから彼等はそうしないのかも?)。とにかく一度、何も言わずに聴いて欲しい。純粋にいい曲。それ以上でもそれ以下でもないから。

◎M-7:十二月のセントラルパークブルース
  "スロースターター"よりもこっちの方がモロにストーンズだわ。あっちはストーンズっていうよりも、キースのソロに近いかも。こっちは桜井の唄いっぷりもミック・ジャガーに近いし。小林氏のアーシーなホンキートンク調ピアノがまたいい味出してる。
  歌詞の内容は、レコーディングの為に滞在していたニューヨークでの、どうでもいい日常の出来事を唄っているらしい。こういう風に「どうでもいい事」を歌にして唄ってしまう姿勢に、今の彼等の楽観振りっていうか、力の抜け具合が伝わってくる。この楽曲を境に、アルバムの色合いが少しずつ変わってくる。

◎M-8:友とコーヒーと嘘と胃袋
  一種のおふざけソングなのだが‥‥こういうコミカルな曲も、「Atomic Heart」での"雨のち晴れ"かもしれない。中盤に挿入される桜井の語り‥‥というか、セリフ!? これには爆笑させてもらった。(笑)そういえば彼、落研だったんだよな?(爆)歌い方も他の曲とは意図的に変えてるのがよく判る。ラストのシンセの音がどことなく、クリスマスシーズンになると必ず耳にする「例の曲」(笑)を彷彿とさせるのはいいとして、それに絡むコーラスが初期のミスチルっぽくて、ちょっと嬉しかったりする。

◎M-9:ロードムービー
  イントロを聴いて、顎が外れそうな程に驚いた。こ、これは‥‥正しく"君がいた夏"じゃないか!? 小林が製作段階から絡んだ事が大きく影響してるように思うのだが‥‥ちょっとホロリとさせられてしまった。
  曲の内容は大陸的な、いかにもアメリカをイメージさせる曲。浜田省吾にもありそうだな、こういう曲。きっとこういう小楽曲、ライヴじゃ受けるんだろうな‥‥って思わせる、本当にイイ曲。

M-10:Everything is made from a dream
  これまた、バンド名義での作曲。セッションというよりも、先の「ダーツでテンポ」「くじ引きでコード」で作られたような‥‥前半の実験的な曲調から一転して、サビで大爆発。っていっても爆走ロックではない。これこそ初期の彼等が持っていた「甘いポップ感」っていうようなメロディ。ファーストの彼等的とも言えなくもない。中間部にはまたセリフが挿入されるが、これはメンバー全員と女性の声をごちゃ混ぜにしている。ライヴでは間違いなく盛り上がる曲だ。
  このアルバムには昔の彼等が持っていた「純粋にいい曲」という楽曲が沢山入っている。勿論あの頃よりも成長している桜井が歌詞を書いているので、あれと同じものは期待出来ないが、それでも‥‥ここ数作で離れていったファンは、これらの楽曲を聴いてどう思うのだろうか?

◎M-11:口笛
  問題の楽曲。(笑)何故この時期に彼等はこういうピュアなラブソングを送り込んだのだろう? これはミスチルがミッシェルみたいなガレージロックをやるよりも衝撃だった。(爆)
  最初にこの曲を聴いた時、最初に書いた「~JAPAN」での行を思い浮かべた。そうか、桜井はとうとうそこまで行き着いたか、とうとう一周したんだ、と。こういう個人の思想が入らない、匿名性の高い曲ってのは、意外と書くのが難しい。もしかしたら今、こういう時期だったからこそ、今の桜井だからこそ書けた曲なのかもしれない。そして小林氏はプロデューサーという立場から「何故復帰第一弾にこういう曲を持ってこれなかった?」と思った事だろう。(笑)下らないポップロックが乱立する中、どれだけの曲が1年後、5年後、10年後に俺達の心に残っているのだろう? そう考えた時、こういう曲こそが「エヴァーグリーン」と成り得るのではないだろうか? そう、"Innocent World"での「いつの日もこの胸に流れてるメロディー」という行のように‥‥

◎M-12:Hallelujah
  アルバムを象徴する1曲ではないだろうか? ハレルヤ。中村一義にも同名曲があるが、どっちも名曲だわ、こりゃ。きっとライヴでは1番最後に演奏されるのではなかろうか? そんな気がする。
  当初、このタイトルがアルバムタイトルにもなるはずだった。という事は、当初このアルバムには「喜び」が沢山詰まっていたはずなのだ。それが何故桜井は「それだけじゃない」って思ったのだろうか? 「それだけじゃない」ってのは、多分彼が「喜び」だけでは今の自分を表現しきれなかったからだろう。"Everything is made from a dream"からはほんの一握りの危機感をも感じさせるし。これまでのネガ・モードのミスチルが好きだった人には、ただ「ハレルヤ」だけだったらきっと退屈なアルバムになっていたのかもしれない。けど、ここにはプラスの方向へと向かっている人間の感情の動きが、総て詰まっているように感じる。だから人生って面白いんだよ、愛するって事は楽しいんだよ、幸せっていいもんなんだよ?って。

◎M-13:安らげる場所
  うわっ、この流れってセカンド「KIND OF LOVE」における"いつの日にか二人で"じゃねぇか!? 感動的に終わらせるなぁ、今回も。ここにもピュアなラブソング。「孤独とゆう暗い海に/ひとつの灯台を築こう/君はただそれを見ていればいい/一番安らげる場所で」なんて歌詞‥‥キィ~ッ!(笑)まぁ‥‥そういう心境なんでしょう、きっと。けど、こういう詞が素直に出てきて、それを歌として表現出来るというのは、これまでとの大きな違いだろう。今までだったら、きっと却下されていた歌詞だと思うから。
  このアルバムには禁じ手なんて存在しない。これまでなら「こういうピュアな歌詞は今の僕には‥‥」といって却下していた。ところが、今は違う。ダメでもともと、とりあえずやってみようとなる。だから彼等は今度のツアーで、ここ5年くらいやってない‥‥"Cross Road"や"Love"のような初期の楽曲を進んで演奏しようとしてるのかもしれない。つまり、今の彼等は無敵なのだ。失うものは何もない、怖いものなんて何もない‥‥


◎最後に

  ざっと簡単に感想を書いてきたけど、如何だっただろうか? 掲示板にも書いたが、俺はこのアルバムを「桜井和寿のソロアルバム的内容」と表現した。そして「ソングライター桜井VSミスチルというバンド」としての限界が見え隠れしてるとも書いた。もしかしたら、これがバンドとしては臨界点なのかもしれない。桜井自身はどんどん成長している。それに対して他のメンバーは「今までは割と曲に対して、それを支えるポジションを捜す作業が多かったが、今回は強い曲に対してはドラムやベースがなくても成り立つ事を再確認したし、その反対の要素の曲もあった。いちプレイヤーとしては考えさせられる事が多かった」(中川)というように、相当苦労したらしい。これまでは桜井が雛形となる楽曲を持っていき、それにアレンジという形でバンドで肉付けしていったのに、今回は小林を含めた5人でゼロからスタートする事が多かったのだから、面食らったのだろう。しかも、セッションを繰り返して行く中で「別にこの曲、ドラムなくてもいいじゃん」って思うようになったり‥‥バンドとして順調に流れてきただけに、今が過渡期なのは一目瞭然だ。そうなると、今度のツアーで何かを得ない限り、バンドとしては非常に辛いのではないだろうか? きっと桜井は今後暫くは枯れる事はないだろう。この人はある意味天才だし。けど、ひとりの突出したメンバーを含むバンドの行く末を俺達は幾つも目にしている。ミスチルだってそうならないとは限らない。更に前進する為には、ここで再び休止した方がいいのではないだろうか? そう思えて仕方ない。

  もっとも、そういう危惧と作品の評価とは別物だ。一聴した時は「最高傑作?う~ん‥‥」と考え込んでしまったが、これはスルメ的アルバムだ。聴けば聴く程味が出る。うん、今なら言えるわ。これは最高傑作だって。きっと同じ日にリリースされた浜崎あゆみに1位の座は獲られてしまうんだろうけど(笑)、純粋に作品として評価される事を望む。J-POPの歴史に残したい名盤の1枚。いや、4枚目以降のアルバムは全部、歴史的名盤だからね?(笑)



▼Mr.Children『Q』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 10 02 12:00 午前 [2000年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2000/09/29

RADIOHEAD『KID A』(2000)

ロックに求めるモノ。それは人それぞれ違うだろうが、大概にして「興奮/恍惚感」と「非日常」のふたつに絞られるのではないだろうか? ロックにもいろいろなスタイルやアプローチがあるから、興奮や恍惚に達するまでの過程はそれぞれ違うものなのかもしれない。けど、そこに達してしまえば最後は一緒なんじゃないだろうか?

以上は前回(2000年9月度)お薦めしたUNDERWORLDのライヴ盤のレビュー書き出しだ。俺は前回、ロックに求めるモノとして「興奮/恍惚感」と「非日常」と書いた。しかし今回お薦めするアルバムから得る/感じるモノ‥‥それは残酷で、ヒンヤリとしてるにも関わらずどこか生暖かい「現実」だったりする。出来れば避けて通りたい、居心地の悪さ。見て見ぬ振りをしてきた目の前の出来事。でも、俺達はそこから逃げられない。だからこそ現実逃避の手段として、俺達はロックから快楽や非日常的な世界を見出す。なのに、ここにあるのは、日常を更に凝縮した、身動きも取れない、思考や肉体をフリーズ状態にする、なのにそれでいてどこか気持ちいい世界。至福と悪夢の50分間がここにはある。それがRADIOHEADの3年4ヶ月振りの新作「KID A」なのだ。

‥‥って書き方はどこかタ○ソウみたいで嫌だな?(苦笑)けどまぁ、俺の言いたい事、ご理解いただけましたか? 俺は掲示板上でこの作品を「万人向けではない『ロック』アルバム」と書いたけど、そもそも前回のUNDERWORLDだって決して万人向きとは言えないし、前々回のDEFTONESだってそうだと思う。今回だって万人向けという意味ではミスチルの新作もあった。けど、ミスチルはシングルレビューを8月にやってるし、全曲解説とかやりそうな勢いだったので(笑)、敢えてこっちにしてみた。きっと多くのHPでこの作品が取り上げられ、絶賛されるのかもしれない。あるいは酷評されるのだろう。けど、ちょっと待った。このアルバムって本当に巷で騒がれているような『問題作』なのだろうか?今回は、俺なりの視点でこの作品について語ってみたいと思う。

確かに最初にこのアルバムを聴いた時は、ステレオの前に座り込んでヘッドフォンを使って聴いた。時間と心に余裕を持たせた状態で‥‥しかし50分後。俺の動悸は激しく、気持ち悪くなっていた。最後の曲"Motion Picture Soundtrack"を聴き終えるまで、一言も発することもなく(いや、発せなかったのだ)ピクリとも動けなくなってしまった。アルバムにはアップテンポの曲なんて1曲もない。なのに俺の心臓はドキドキしている。もの凄い嫌悪感‥‥あぁ、あの時と同じだ。3年前の5月末、小岩のアパートの1室で、ヘッドフォンで聴いた「OK COMPUTER」の時と。あれから4つも歳を取ったのに、彼等に接する時の感情というのは何一つ変わっていない事に驚き、愕然とした。

トム・ヨークはこのアルバムに対してのインタビューの中で、こう発言した。


「僕は、このアルバムにはまるっきり感情的なところが無いと思うんだ」

「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」


これらの発言がどういう会話の中で発されたものなのかは、判らない。rockin'on2000年10月号でのインタビューらしいが、後で読んでみようと思っている。

この「ロックなんか退屈だ」という行だけ読むと、あたかもRADIOHEADがロックを放棄した、と勘ぐる事も出来る。実際にアルバムを聴いていると、そう解釈出来る楽曲が幾つもある(例えば1曲目"Everything In Its Right Place"とかタイトルトラック"Kid A")。これら個々の曲だけを取り上げてみれば、確かにロックではないのかもしれない。音響系だとかエレクトロニカといった表現も出来るだろう。しかしアルバム全体を通して聴いてみると、俺にはそんなに変わったようにも感じないし、十分ロックしてると思う。「THE BENDS」~「OK COMPUTER」の流れを考えてみれば、こういう方向に流れていくのは必然だと思ったし、何の違和感も感じなかった。

しかし、ヘヴィであるのには何の変わりもない。あまりに現実的過ぎるのだ。そう、あまりに生々し過ぎるのだ、彼等の場合。自分に正直すぎるが為に、こんな化け物‥‥奇形児のような作品を産んでしまうのだ。

トムは「このアルバムにはまるっきり感情的なところが無い」と言った。確かに歌唱にはエモーショナルなものは感じられない。"Creep"や"Exit Music"のような感極まるような歌はここにはない。発する単語は機械的だし、メロディーの抑揚は極力抑えられている。

第一、このアルバムにはあの彼等特有のギターマジックは存在しない。もはやギターロックであることすら避けて通ろうとする。リズム隊はテクノのように反復するビートを繰り返す。要所要所に登場する、シンセサイザー。無機質なホーンセクションの音。確かにここには感情というものが存在しないように感じられる。けど‥‥「逆もまた真なり」という言葉もあるように、彼等が無機質であろうとすればする程、情念の塊のようなものを見出す事が出来るのも確かだ。感情を抑える事によって、より深いエモーションを伝える。彼等は既に前作でこの技法を拾得している。

そしてトムは「ロックは退屈。ゴミ音楽だ」と言う。最近の彼はこのアルバムから想像出来るような音楽に夢中になっているそうだ。だから何?と言い返してやりたい。彼等は常に前進してきた。アルバム毎に同じ事を繰り返さずに、もの凄い歩幅で前進してきた。それはトムが考えるところの『ロック』の定義を既に通り越してしまったのかもしれない。だけど今一度言いたい。このアルバムは『ロック』以外の何者でもない、と。

何をもって『ロック』と定義するかは、個人の価値観や思想によって違いが生じるのは確かだ。ここでトムが定義する『ロック』とは一体どういう音楽を指しているのだろう。俺自身は何となく、この答えが見えている。けど、それを言葉に表してしまうのは怖い。何故なら、その言葉は今の俺の価値観や思想を否定する事になってしまうから。だからここでは言わない事にしておく。

先鋭的である事がロックの条件とは言わないが、最近の『ロック』と呼ばれる音楽の多くは先人達のアイデアを拝借した焼き増しモノだったり、右にならえなコンビニ・ロックだったりする。それを打破したのがNIRVANAでありBECKでありUNDERWORLDでありRAGE AGAINST THE MACHINEであった。RADIOHEADは最初こそこれら先人からアイデアを拝借した形だったが、デビュー後に本当の才能が開花した。それが「THE BENDS」であり「OK COMPUTER」であり、今度の「KID A」なのだ。

前回のUNDERWORLDが'90年代のプログレであるのと同じように、このRADIOHEADも真の意味でプログレバンドなんだと再確認した。ロックだ、ロックじゃないなんていう理由付けは後でいい。これが新しいスタート地点になったという事実が数年後に改めて語られる事になるだろう。けど、何度も言うようにこのアルバムはRADIOHEAD以外の何者でもない音楽をやっている、と。この成長は当然であり、必然なのだ。

万人向けではない、と言い表したこのアルバム。改めて思うのは、より多くの人にこのアルバムを聴いてもらいたいという事。ネームバリューで手にするのではなく、あなたの『現実』と真正面から向き合う為に。聴き終えた後に、初めてあなたにとってこのバンドが必要なのか、消したい存在なのかハッキリするはずだから。

最後に‥‥既に3日で10回以上は聴き込んだが‥‥このアルバムを聴いても、今回の俺は死のうとか考えなかった。現実の醜さを克明に表現しながらも、俺は何となくその世界に身を寄せてるのが気持ちいいのかもしれない。



▼RADIOHEAD『KID A』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 09 29 05:12 午前 [2000年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2000/09/24

エレファントカシマシ『sweet memory~エレカシ青春セレクション~』(2000)

   悲しみの果てに
   何があるかなんて‥‥
   悲しみの果ては
   素晴らしい日々を
   送っていこうぜ

      ("悲しみの果て")


この歴史的名曲から始まった第2期エレカシ。それ以降に発表されたアルバム「ココロに花を」「明日に向かって走れ」「愛と夢」「GOOD MORNING」の4枚の中から、宮本が『青春』という言葉をキーワードにして選出したのが、このセレクション・アルバム(ベストアルバムに非ず)「SWEET MEMORY ~エレカシ青春セレクション~」である。

エレカシは昨年のシングル"ガストロンジャー"によって、また新しいスタートを切ったといっても過言ではない。そういう意味ではこの曲以降を第3期と言う事も出来る。しかしその第3期の楽曲も2曲選ばれている。何故この時期に宮本はこのアルバムをリリースしようと考えたのだろうか?

噂でだが「GOOD MORNING」が思っていた程売れなかった為の補填だという話を聞いた。あながちない話とも言えない。ただ、本当ならベスト盤なんだろうけど、そこで宮本が踏ん張ったのかもしれない。「だったら"ガストロンジャー"とは別の側面を表現した内容にしたい」、と。

シングル"SO MANY PEOPLE"のカップリングには"SWEET MEMORY"というアルバム未収録曲が入っている。これがまた、「ココロに~」「明日に~」辺りの彼等を彷彿とさせるいい曲だった。しかもバンド録音である。何故これがアルバムに入らなかったかというと、やはり色が合わなかったからだろう。そして宮本は再びこの曲にスポットを当て、このセレクションアルバムのタイトルトラックにも選んだ。『青春』というキーワードと共に。

とにかくね、聴いて欲しいんですよ。初期(エピック時代)の楽曲を集めた「BEST」は出ているものの、最近の楽曲をまとめたアルバムは出ていなかっただけに、"ガストロンジャー"でファンになり「GOOD MORNING」に肩すかしを食らったという人には特に聴いて欲しい作品なんですわ。勿論ここに入っていない曲にも名曲は沢山ある。けど、エレカシのテーマ『生活』『青春』といったキーワードに沿って選ばれた、という意味ではこのアルバムはオリジナル作品と考えてもいいとさえ俺は思ってる。『生活』というテーマに沿って作られたのが「GOOD MORNING」なら、もうひとつのテーマである『青春』に沿ったのがこの作品なのだから。

アルバム未収録曲が数曲入っているのも、このアルバムの「売り」のひとつ。このアルバムのテーマ曲とも言える"さらば青春"や、アルバムとはバージョン違いの名曲"月夜の散歩"、そうそう、"悲しみの果て"もアルバムとはミックスが違うシングルバージョンだ。更にこのアルバムの初回盤にはボーナスディスクが付いていて、そこには'94年1月にレコーディングされていたエピック時代の未発表曲が2曲("石橋たたいて八十年"と"始まりはいつも")入っている。アルバムでいえば「東京の空」の時期だ。これがまたオイシイ曲だ。ファンなら絶対に気に入るであろう佳曲だ。意外と最近の路線に近いかもしれない。

まぁ細かいデータはアルバム内に入ってるブックレットに記載されているので、後は買ってのお楽しみ。そうそう、アルバムには元ロッキンオン・ジャパン編集長(現rockin'on編集長)の山崎洋一郎氏の解説も入っていて、これがまた泣かせる。ある意味エレカシと2人3脚だった再契約に到る辺りの話などもあって、当時を知る人間にとってはこの文章からも『青春』臭さを感じてしまう。

近々、"風に吹かれて"が再びCMソングに起用されるそうだ。そして恒例の冬のツアーも始まる。そろそろ新曲に取りかかる時期かもしれない。1年に2枚、こういう形で自らのテーマを具体化した作品をリリースした今、今後のエレカシ、今後の宮本に更に期待するばかりである。



▼エレファントカシマシ『sweet memory~エレカシ青春セレクション~』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 09 24 03:46 午前 [2000年の作品, エレファントカシマシ] | 固定リンク

2000/09/16

UNDERWORLD『LIVE ; EVERYTHING, EVERYTHING』(2000)

ロックに求めるモノ。それは人それぞれ違うだろうが、大概にして「興奮/恍惚感」と「非日常」のふたつに絞られるのではないだろうか? ロックにもいろいろなスタイルやアプローチがあるから、興奮や恍惚に達するまでの過程はそれぞれ違うものなのかもしれない。けど、そこに達してしまえば最後は一緒なんじゃないだろうか?

丁度今から1年半前に、俺はUNDERWORLD「BEAUCOUP FISH」でのレビュー内で『もう彼等のこと、テクノとかで括るの、やめません? ロックでいいじゃない?』てな事を書いた。あれから1年半、現状はどう変化しただろうか‥‥何にも変わっていない。むしろ彼等に対して『KING OF 4つ打ち』とか『トランステクノ』なんて形容詞が増えたくらいだ。そりゃさ、ロックという大きな世界の中の、テクノって国の住人と考えればロックには違いないんだろうけど‥‥誰も彼等をロックの先人達と比べようなんて考えない。まぁその必要もないか?

この作品を9月度のお薦め盤に選出するに際して、改めて声を大にして俺は言いたかった‥‥「いいじゃない、ロックで!?何か文句ある!?」以上‥‥って、これで終わっても何なんで(笑)、もうちょっと俺なりの私感を書かせてもらう。

このライヴ盤を最初に聴いたのは、買った帰り道の車の中で。普段は40分ちょっとで家まで着いてしまう道のりなのに、ちょっと遠回りしてこのCDを最後まで聴き通してしまった。1度聴き出したら止められない‥‥そういう作りになっているせいもあるけど、CDプレイヤーのプレイボタンを押したら最後、ただひたすらそのビートに身体を委ねるしかなくなるのだ。いや、運転中だから踊るわけにはいかないが。(苦笑)

まず最初に驚いたのが、音が非常にクリアだって事。スタジオ盤よりもいい音してるんじゃなかろうか?って位に。まぁこの辺の音質の違いはそれぞれ好みがあるだろうから‥‥俺はこっちの方が好きだ、と。それにしても‥‥昨年のフジロックで見逃してるのだが‥‥こんなにスゲェのか、ライヴ。本当に驚いた。下手なB級ガレージバンドよりもカッコイイ、マジで。

選曲は、正にグレイテスト・ヒッツといえる内容。これで踊れない奴は人間辞め‥‥いや、やめておこう。(苦笑)こうやって改めて彼等の楽曲に耳を傾けていたら、同じロックの中の、あるジャンルとの共通点を見いだしてしまった。プログレッシヴ・ロック、通称プログレと呼ばれるジャンル。そう、テクノってある意味、'70年代末でその言葉の意味すら失ってしまったプログレの真の後継者なんじゃないだろうか? 進化するロック、という意味を持ったプログレが'70年代初頭に登場し、原始的だったロックサウンドは当時の最新のテクノロジーを駆使して、そして楽曲はクラシックの交響曲の如く複雑な展開を取り入れ、肥大していった。しかしロック自体が進化しすぎた為に(普通のポップスでさえもそのテクノロジーを最大限に生かし始め)その本来の言葉の意味がなくなり、衰退していく事となる。と同時にドイツからはKRAFTWORK、日本からはYMOといった所謂テクノバンドが登場する。旧体制の中で正に『恐竜』のように滅んでいった当初のプログレから、ヒト科へと進化したテクノ。その後紆余曲折を経て、時代はUNDERWORLDやCHEMICAL BROTHERSといったバンドへとたどり着いた。確かにテクノというジャンルは確立した。けど、どうもロックとは違う『合成的な/機械加工された』というイメージを持っているのは否めない。何故打ち込みじゃいけないの? 何故ギターがいなくちゃいけないの? 何故ボーカルが必ずメロディを唄わなきゃいけないの? その既成概念を打ち砕くのがロックなのでは? そしていつまでも先のような事に囚われ続けている事の方が全然ロックじゃないじゃない? AC/DCやROLLING STONESは2つもいらない。そしてUNDERWORLDだって幾つもいらない。結局最後に残るのは、オリジナルのみ。それを物語っているのがこのライヴ・ベスト盤なんじゃないだろうか?

最後に、本来この作品はDVDソフトがあって、このCDはそのついでに出されたようなものだ(音源の内容自体は全く同じらしい)。DVDがまだそれ程普及していない今(俺も持ってないし)、やはりCDも出しておこうって事になったんだろうけど‥‥歴史に残したいライヴ盤の1枚だ、これは。



▼UNDERWORLD『LIVE ; EVERYTHING, EVERYTHING』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 09 16 03:59 午後 [2000年の作品, Underworld] | 固定リンク

2000/08/21

LUNA SEA『LUNACY』(2000)

  インディー盤から数えて通算7作目(シングル・コレクション、ライヴ盤を除く)に当たるLUNA SEAの新作は、タイトルに結成当時のバンド名のスペルである「LUNACY」と銘打っている。これは結成10周年を過ぎ、改めて初心に戻る意味と、そして新たな第一歩という意味を掛けて決定されたそうだ。'97年の活動休止から復活し、翌年に「SHINE」というアルバムをリリースしたものの、まだ全力という感じではなかった。メンバーみんながツアー終了後に「次はもっと凄い」と口にしていた。そして彼等は再び'99年のその殆どを曲作りとレコーディングに費やした。そこから生まれたのが、このアルバムの楽曲11曲と、シングルに収められたカップリング曲の4曲、合計15曲であった。当初は「もの凄い内容のアルバムを、2枚作る!」と言っていたが、下手にいい曲が分散してしまうより、こうやって1枚に集めた方が集中して聴く事ができる。第一、2枚同時リリースして内容・セールス共に成功したアーティストなんてGUNS N'ROSESぐらいのもんじゃないか?

  とにかく1曲1曲が濃いアルバムである。聴き込めば聴き込む程、いろんな要素を感じ取れるし、いろんな味が染み出てくる。従来のファンも満足させられるだろうし、新しい挑戦も至る所に見受けられるので、新たなファンも開拓できるだろう。では、簡単ではあるが、以下に1曲毎に簡単な感想をつけていきたいと思う。


M-1. Be Awake (原曲:SUGIZO)
  ライヴを意識した歓声からスタートするこのアルバム。1曲目はSUGIZOの、典型的なLUNA SEAソングだ。曲調こそメジャー・キーで成り立っているが、曲構成は過去の代表曲"Believe"を準えたものだと思う。これを「二番煎じ」と取るか「原点回帰」と取るかで、このアルバム全体の印象も変わってくるのではないだろうか? 少なくとも俺は、'93年のあの曲と2000年のこの曲とでは雲泥の差だと思う。技術や表現力は比にならないし、やはり当時は「内に」向かっていたように感じた『何か』が、この曲では「外へ外へと」向かっているように感じる。とてもポジティヴな、ライヴのオープニングにうってつけの曲だ。そのポジティヴさはタイトルからも感じ取ってもらえる事だろう。今後、"Wish"にとって変わる代表曲のひとつになるかもしれない。

M-2. Sweetest Coma Again feat. DJ KRUSH (原曲:J)
  映画「007」最新作でお馴染みの、いかにもJが書きましたって感じのヘヴィ・ナンバー。俺はこれ1曲聴いただけで、「今度のアルバムは期待出来る!」って信じてたから。曲名にも記載されているが、この曲と4曲目にはかのDJ KRUSHが参加している。彼はINORANのソロにも参加していたから、その流れからルナの方にも絡む事になったのかもしれない。この「第3者の介入」も、新たな挑戦のひとつ。もっともライヴでは全てサンプリングで済ませてしまうだろうが、レコードではこういう新しい実験を幾つも試みている。LUNA SEA流ミクスチャー・ヘヴィロックといったところだろうか?

M-3. gravity (原曲:INORAN)
  シングルのレビューでも紹介してるので詳しい説明は避けるが、本当に実験的というか挑発的というか‥‥こういう曲を今の日本の歌謡界にぶつけてくる心意気が、嬉しかったりするのだ。他の「ビジュアル系」で括られているアーティストには真似出来ない事じゃないかな?(毎回似たり寄ったりの楽曲しか提供できない、某バンドとは大違いだ)こういう曲って今までありそうでなかったよね? 復活後の彼等にはこういう「ありそうでなかった曲」が結構ある。前作でも"Shine"とか"I For You"ってそういう感じだったし。逆に言えば、「これまで出来そうで出来なかった、やることを許されなかった」タイプの楽曲なのかもしれない。いや、本当に名曲。

M-4. KISS feat. DJ KRUSH (原曲:SUGIZO)
  やっぱりSUGIZOの曲ってのは独特な癖があるので、すぐに判る。まぁそれは他のメンバーにも言える事だけど。イントロのギターフレーズが何となく某リュシフェルのヒット曲と似てなくもないな?と最初に感じたのだけど‥‥あ、怒らない、そこそこ。(笑)この曲にもDJ KRUSHが参加。いろんな味付けをしている。ふとここで気づいたのだけど、このアルバムでのJのベースってやけに際だって聞こえる。いや、全ての楽器に対してそれは同じか。SUGIZOのソロも、INORANのアルペジオも、真矢のドラムも、そしてRYUICHIの歌も。全てがそれぞれのパートとバトルしている。自己主張とかそういう次元ではない、これはもう喧嘩だ。それでいて互いが互いをうち消しているのではなく、ぶつかり合う事で更に増長されている感じなのだ。こんなバンド、他にどれだけいる?

M-5. 4:00 AM (原曲:INORAN)
  この曲、ヘッドフォンで聴いてるとイントロの携帯の着信音でドキッとする。本当に側で鳴ってるように聞こえるから。ここで中盤戦突入という感じで、ちょっとクールダウン。これも如何にもINORANが書きそうな曲。ライヴ向きの曲とはいえないが、こうやってステレオの前で、そしてヘッドフォンで聴いてると気分が落ち着く。後ろで鳴ってる楽器は結構派手な事、やってるんだけどなぁ‥‥(笑)後半、いろんなエフェクト音が挿入されたりして(それこそドラムン・ベース的リズムまで)非常に興味深い、スタジオワークの結集的ナンバー。こういう曲が必ずアルバムに1曲はあるから、このバンドは面白いんだよなぁ。

M-6. VIRGIN MARY (原曲:SUGIZO, RYUICHI)
  珍しくSUGIZOとRYUICHIの共作ナンバー。必ずアルバム1枚に1曲はSUGIZOのバイオリンがフィーチャーされる曲が登場するが、これがその曲。
  彼等のアルバムには必ずアルバムのへそにあたる、中盤のど真ん中辺りに大作を持ってくる傾向がある。そしてその曲がそれぞれのアルバムでのツアーのハイライトとなる。きっとこの曲もそうなのだろう。パンキッシュな曲もやりながら、こういう大作指向の複雑な曲も演奏するには、やはりそれ相応のテクニックがなければならない。ギターのボリュームやトーンの微妙な大小が要求される事となるのだ。ライヴを見た事がある人なら判ると思うが、こういった曲を完璧に演奏してしまうから何というか‥‥畜生。(笑)きっとこれまでルナを聴いてこなかった(ヒット曲しか知らない)には、ちょっと意外で驚きのナンバーかもしれない。いや、そういう人にこそこういう曲を聴いて欲しい。

M-7. white out (原曲:INORAN, RYUICHI)
  珍しくINORANとRYUICHIの共作ナンバー。とてもライヴ受けするとは思わないが、アルバムの中の1曲と考えればとてもよく出来た、普遍的なポップ・ナンバー。そういえば前曲では「Maria」とか「Jesus Christ」なんて言葉が出てくるし、ここでも「メシア」って言葉が登場する。何となく‥‥個人的に名作「MOTHER」を意識したのかな、とか考えたりして‥‥それにしても、こういう曲もソロ活動を通過したからこそ出来るんだろうな‥‥最も「河村隆一」の色を感じる楽曲だ。

M-8. a Vision (原曲:J)
  一聴すればすぐに判る、J原曲ナンバー。ここまでの3曲の対比がまた面白いね? 普通のバンドなら並ばないようなタイプの曲が並ぶ‥‥ここがこのバンドの面白い所。中盤のJによる英語による台詞でファンはお判りでしょう‥‥これは間違いなく、Jがマイクスタンドをなぎ倒す為の曲だと。(笑)ドラムのリズムの刻み方がTHE POLICE的というか‥‥普通のパンクバンドには真似出来ない、テクニックを要するパンクナンバー。

M-9. FEEL (原曲:SUGIZO)
  SUGIZO原曲による、非常にムーディーな曲。ソロパートがギターではなく、エレクトリック・バイオリンを使用していて非常に興味深い。メインリフのザクザク感が昨今のヘヴィロックにも通ずるものがあるにも関わらず、メロディは臭すぎる程にメロディアス。結局、メロディーや根本にあるものは何ら変わっていないのだが、そこに向かうまでの気持ちや遊び心によって「新しい音」が加わっていく。いや、遊びというより喧嘩か。(笑)さっきからずっと「凄い」を連発してる気がするけど‥‥聴けば判るよ、俺の気持ちが。

M-10. TONIGHT (原曲:J)
  何も言う事はないでしょう‥‥Jによる、Jの為の曲。(笑)今回のアルバムをすんなり受け入れられたポイントとして、やっぱり「速い曲」の存在が大きいかもしれない。勿論前作にも存在したが、何か違うというか‥‥モッタリした印象を受けたんだわ。けど、ここにはそういうの、全くないし。ミディアムの曲にもモッタリ感は全くない、むしろ疾走感すら感じる。この違いって一体何なのだろうね?

M-11. Crazy About You (原曲:J)
  Jによる、感動的なバラードでこのアルバムは終わる。それにしても、こういうのを普遍的名曲と言うんだろうな? 時代とか流行とか関係ない、歌い継がれる為の名曲。それがこの曲だと思う。前作から彼等はこの手の曲にチャレンジしていたが、ここでひとつの完成型を見たといった印象を受ける。何かさ、BON JOVI的な、大陸的な大きさを感じさせるバラードだな、こりゃ。もしBON JOVIがこの曲プレイしたとしても、何ら違和感はないと思うよ。それくらい名曲。試しに聴いてみな、BON JOVIも? こんな曲でライヴ終わられた日にゃ、涙で目が曇って何も見えなくなっちまうよ‥‥名曲!


●総評
  傑作である。けど、「MOTHER」や「STYLE」を越えたか?と問われれば‥‥そこまでいってないかもしれない。いや、まだ答えを出すには早すぎるかも。まぁ間違いなくこれら2枚に肩を並べる辺りまではきてると思うけど。きっと前作を通過したからこそ、そしてそのツアーを経験したからこそこのアルバムにたどり着いたんだろう。2000年を迎えたLUNA SEAが送る、2度目のデビューアルバムといったところだろうか? ビジュアル系だの何だのって騒いで聴かず嫌いしてる人にこそ聴いて欲しい、アリーナロックとスタジオワークの凝縮された傑作だ。



▼LUNA SEA『LUNACY』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 08 21 12:00 午前 [2000年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/08/20

LUNA SEA『TONIGHT』(2000)

M-1. TONIGHT (原曲:J)

  J原曲の、いかにもな疾走ナンバーを表題曲に持ってきたマキシ第2弾。面白いことに、彼等のシングルナンバーとしては最短の曲である(確か3分前後だったはず)。曲自体の構成もAメロとBメロのみで、コード進行もイントロ含めてこの2つのみ。2枚のシングルに共通してるのは、曲進行自体が比較的シンプルなものが多いという事。"Gravity"もそうだよな? リリース日が悪かったのか、残念ながら「モーニング娘。」に1位の座を阻まれてしまい、最高位2位。

  エフェクトの力もあるのだろうが、ここでのRYUICHIの歌唱は非常に独特で今までにないものだ。最初ラジオで耳にした時、「これ、本当にRYUか!?」って思った程。サビでのアグレッシヴさもまた味わい深し。ラストのサビのリフレイン2回目の頭にうっすら聞こえるJの「イェー!」ってシャウトもまた深し。(笑)

  曲のタイプとしては同じJ原曲の"Storm"タイプなのだけど、俺は最初聴いた時、大ブレイクの切っ掛けとなった"Rosier"をイメージした。爆裂振りが前者よりも後者に近かったのだ。こりゃライヴで盛り上がるわ‥‥恐らく今回のツアーで終盤に演奏されるんだろうな?‥‥なんて思ってたら、実際にそうだったようで。(笑)


M-2. be gone (原曲:INORAN)

  再びINORAN原曲の変拍子(5/4拍子)ナンバー。多分変拍子曲は「STYLE」収録の"Ra-Se-N"以来じゃないかな? 今回の2枚のシングルの中では最も好きな曲。つうかアルバムのプレお披露目ライヴ(5月)はこの曲でスタートしたそうじゃないの!?

  ドラムとベースの絡みがたまらなくセクシー。そこに乗る2本のギターもまたいい。5/4拍子という事でリズム自体は細かい刻みが多いのだけど、上モノ(歌やギター)は大きなノリなので非常に聴きやすい。後半のアコースティックギターのソロはINORANによるものだろうか? どことなく曲のイメージや流れがGUNS N'ROSES "Double Talkin' Jive"を彷彿させる。


M-3. be in agony (原曲:INORAN)

  同じくINORAN原曲。イントロのギターのコードストロークが"I For You"に似ている‥‥というか、最近のUKロック的とも言えるのだが。6曲の中では最もオーソドックスなナンバーなのだが、前作に収録された同タイプの曲と比べても味わいが増している。これもボーカルの表現力、そしてバンドとしての結束がより深まった事が関係してるのだろうか? すごく普通の、ありふれたタイプなのだが、聴き流せない魅力を持っている‥‥今回の彼等の曲にはこういう魅力を持った曲が多い。

  INORANは今回のセッションで最も成長したひとりではないだろうか? アルバムにもいろんなタイプの曲を提供してるし、シングルもまた同様。今彼がソロアルバムを作ったら、どう「想」と違った物を作るのだろうか? 非常に興味深い。


●総評

  同じタイプの曲が全く存在しないのが凄い。同じ疾走タイプの曲でも、"My Lover"ととでは全く違うし、同じINORAN原曲の3曲を聴いても全く違ったタイプだし。今回のセッションには5人が本気でぶつかり合った結果、全員が作曲に積極的に加わったのが伺える。このシングル2枚だけでも圧巻なのに、この後にアルバムが待っている事を考えると‥‥正直な話、ゾッとした。(苦笑)それだけ期待していたし、実際に提供されたアルバムは期待通りの出来だった。まぁ、続きはアルバム・レビューで書くとして‥‥。

  実はLUNA SEAが今回からマキシ形態でシングルをリリースする事を知った時、非常に興味深く感じた。それまで2曲で表現していた世界を、今後は3曲で表現していくわけだ。同タイプの曲を2曲入れる訳にはいかない、さて、どうするのだろうと‥‥結果はこのレビューを読めば判るだろう。本当にこのバンドは怖い。こんなにポップで、しかも爆裂してるバンド、世界中を探しても希じゃないだろうか? BON JOVIのポップさと最近のヘヴィロック勢にも通ずるエキセントリックさを兼ね備えたバンド。最強じゃないか?



▼LUNA SEA『TONIGHT』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 08 20 12:30 午前 [2000年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

LUNA SEA『GRAVITY』(2000)

  1999年は数本のアジア・ツアーと5月のお台場でのライヴを除き、表立った活動を休止していたLUNA SEA。この1年を全て新作のレコーディングに費やし、この年の12月にはいよいよ新曲"Sweetest Coma Again"を映画「007」シリーズ新作の為に提供した。この1曲を聴くだけでも、新作がこれまでになく意欲的な挑戦をいろいろしてる事が伺えた。

  そして2000年に入り、まず3月末に初のマキシ・シングル"Gravity"を発表、続く5月には第2弾マキシ"Tonight"をリリース。7月のアルバム発表までに都合7曲を我々の前に披露する事になった。アルバムにはここから3曲のみが収録されたが、「何でこの曲、アルバムに入れないんだよ!!」てな名曲もあるので、アルバムとは別にシングルのレビューをやりたい‥‥そう俺に思わせたのだった。
  既に"Gravity"リリースから5ヶ月経ってしまったが、アルバム・リリースに合わせて、ちゃんとしたレビューをやりたいと思っていたら‥‥アルバム出てから1ヶ月経ってしまった。(笑)まぁこれはいつもの事なので‥‥つうわけでSLAVEの皆様、ひとつお手柔らかにお願いします♪


M-1. gravity (原曲:INORAN)

  INORAN原曲の、シングル表題曲(LUNA SEAはメジャー第2弾アルバム「EDEN」より、作詞・作曲・編曲者名を全て「LUNA SEA」に統一している。ここでの原曲者は、最初に基となる原曲を作曲した人の名前。これらは正式には公表されていないが、ここでは雑誌等のインタビューでのメンバーの発言を参考にして明記している)。映画&テレビドラマ「アナザヘヴン」主題歌として約2年振りに発表されたシングル(チャートで1位を記録)。INORAN原曲がシングル表題曲になるのは多分"Mother"('95)以来では?

  最近の彼等には珍しい、UKロックにも通ずる曲調と大きなノリが、最近のチャート上でのヒット曲にはないものでとても印象的だった。ギター2本の絡みも相変わらず面白いし、RYUICHIのボーカルも更に深みを増している。ギターソロになると暴走しだすSUGIZOも相変わらずだ。これを2000年にシングルとして切る彼等の心意気やよし、といったところだろうか?

  もういろいろなところで語り尽くされてるだろうし、アルバムレビューでも書くだろうからあまりここではいろいろ書かないが、ひとつだけ。歌番組や映画/ドラマの影響で至る所で耳にしたこの曲、意外と評価が二分したように感じたのは俺だけだろうか? 俺の周りにいた『自称・古くからのファン』(ネット関係以外の人)は「もうダメだね~」とか言ってた。逆に彼等に対してフラットな状態の人達は「今回の曲、よくない?」と言うし。誰もが「いいね~」という曲を敢えて持ってこなかった彼等に、新作への期待感を掻き立てられてしまった俺なのだった。


M-2. inside you (原曲:真矢)

  珍しい、というか初めてじゃないか、真矢が原曲の曲って!? 大体JかINORANかSUGIZOが原曲を持ち寄る事が多いのだが、やっぱりこれはソロ活動を通過した副産物なのだろうか? そういえばアルバムではRYUICHIも共作ながら作曲に加わってるし。彼だってソロや他人への楽曲提供であれだけ評価されてるのだから、もっと増えてもいいのでは‥‥。

  曲調はマイナー~メジャー展開する、「SHINE」以降の流れを汲むポップな小楽曲なのだが、楽器隊の爆裂振りはやっぱ前作以上と言える。ドラマーが書いた曲というとどうしてもリズム中心の曲というイメージが付きまとうが、彼等に関してはそんな事は全くない。あくまで『RYUICHIの歌を中心に置いた』ものだ。味付けにキーボード/シンセを多用しているが、うっすらと聞こえるオルガンの音がまたいい(って個人的趣味の問題だが)。

  メロディ自体はポップなのだけど、実は楽器隊が滅茶苦茶ヘヴィだったりする、このアンバランスさがまた何とも言えない。でもこの曲を決定的にポップにしてしまってるのは、他でもない『RYUICHIの歌』だったりするんだよなぁ。以前SUGIZOが「どんなにヘヴィな曲でも、RYUが唄えばポップになる」なんて事を言ってたけど、それは全くその通りだと思う。つうか、やっぱ上手いし、表現力が更に増したよな、RYUは!?


M-3. My Lover (原曲:SUGIZO)

  SUGIZO原曲の、従来からのLUNA SEA的疾走ナンバー。とはいうものの、味付けの仕方でこれまでとは違った印象を受ける。実はこの曲がこのマキシの中では1番好きだったりする。(笑)何だかんだ言いながら保守的なファン、俺。(笑)

  思えば俺が前作「SHINE」にそれ程のめり込めなかったのって、こういった疾走ナンバーが少なかったからかもしれない。所謂『ヴィジュアル系的な曲』をイメージさせるタイプの曲調だからこそ、前作にはこの手の曲は収録されなかったのかもしれない。それが新機軸を打ち立てようとしてるこの時期に敢えて再びこういう曲を持ってくるのは、非常に興味深い。勿論、ただの『ビジュアル系的な曲』では終わっていない。そこはやはり百戦錬磨のバンド。その辺のB級バンドとは比にならない程の演奏力・アレンジ力・表現力でこの曲を盛り上げている。

  それにしても、こうも違う印象の曲を1枚のシングルに収めてしまう彼等の充実振りには舌を巻くばかりだ。これを最初聴いた時の、アルバムへの期待感の高まりを判ってくれるだろうか?

(『TONIGHT』全曲解説に続く)



▼LUNA SEA『GRAVITY』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 08 20 12:00 午前 [2000年の作品, LUNA SEA] | 固定リンク

2000/08/09

Mr.Children『NOT FOUND』(2000)

  今月(8月)のお薦めには、やはりというか何というか、結局ミスチルの新曲を選んでしまったよ。DECKARDを取り上げるはずだったんだけどね、最初は。でも、やっぱり俺がこれをお薦めせずに誰がお薦めするのさ??って具合に(笑)サクッとやりましょう。2曲入りだけど、マキシシングルです(所謂12cmシングルね?)。過去に彼等は「Mr.Children Bootleg」というタイトルの、"マシンガンをぶっ放せ"をリーダートラックに2曲の「深海」('96年)レコーディング時のアウトテイクを収録したマキシをリリースしているけど、これは4年振りのマキシ形態って事になるのかな? 拘ってたわけでもないのだろうけど、意外と8cmシングルから12cmシングルに移行するのが遅かったかな?って気がする。まぁそんな話はどうでもいいけど‥‥

  内容について語りましょう。2曲。「月9」ドラマの主題歌として既に至るところで耳にしてるだろうタイトルトラック"NOT FOUND"と、7分半もある大作"1999年、夏、沖縄"という、ある意味対極にある2曲が収録されているんだけど‥‥恐らくシングルとしては、過去最高の組み合わせじゃないかな? ここ数年の彼等はカップリングにもアルバム未収録曲を使う傾向があって、意外と「隠れた名曲」が多いのね。アルバム先行シングルの場合だと、そのままアルバムにもC/W曲が入っちゃう場合が多いのだけど、今回はどうだろう? 例えば次のアルバム(2000年9月27日リリース決定)の傾向を想像した場合、前シングル"口笛"や今回のリーダートラックを聴く限りでは、「みんなが望む、最良の形での『現在進行形の』ミスチル」が詰まったアルバムになると思うのだけど‥‥この、"1999年、夏、沖縄"という曲は結構曲者だよ。これまでも桜井和寿が影響を受けたと思われる長渕剛や桑田佳祐の色を感じさせる曲はあったけど、これは‥‥拓郎、そう、吉田拓郎なのですよ。楽曲のタイプや唄い回し・節回しは明らかに拓郎を意識しているんですよ。で、歌詞がかなりプライベートな感情を唄った内容。なのだけど‥‥不覚にも俺、このシングルを買った帰り道に車で早速聴いたのだけど‥‥不覚にも俺、この曲のエンディングで涙してしまった。何故か桜井の書く歌詞に、自分自身を投影してしまうんだよねぇ、何故だか。置かれた立場や環境は全く違うのだけど、意味が凄く理解できるし、共感出来る。年齢が近いからってのもあるのかもしれない。自分と同年代のアーティストでこんなに共感出来る歌詞書く人、他に思いつかないもんなぁ?

  カップリング曲がメインなわけではないのだけど、凄くインパクトが強い曲なのよ。これといった大袈裟な盛り上がりはない曲だけど、歌詞でどんどん盛り上げるタイプの曲‥‥う~ん、うまく言えないけど、とにかく聴いて欲しい。この曲だけの為にこのシングル買っても損はしないと思うからさ。

  さてと、ここで終わるか‥‥って、タイトル曲について殆ど触れずに終わるとこだった。(苦笑)俺はこの曲、とあるルートから既に6月中旬に入手していたのね。けど、殆ど聴いてなくて(忙しくてさ、その頃)初めて通して聴いたの、6月がもう終わるって時期だったかな? 既に新聞とかでは「ミスチル最強の楽曲」「桜井曰く『この曲にたどり着く為に今までがあった』」なんて騒がれてたね? 「月9」の主題歌ってのも話題としては十分だったし、まさ最近桜井のプライベートでのおめでた(再婚)の話題や、9月末に8作目のアルバムリリース、10月からツアー開始の話題とかで盛り上がってた時期だけに、待望の新曲って感じだったのかな? しかも前のシングル"口笛"がいい意味で「闇を抜けて、元いたところに成長して戻ってきた」ような内容だったので、否が応でも期待してしまうって。

  確かに、これは凄い曲だよ。曲のタイプとしては今まであまりなかった6/8拍子のロッカバラードなのだけど、リズム隊のグルーヴ感が今まで以上に強力に感じるし、バックのストリングスも見事にマッチしてる。けど、一番強力なのは桜井の書く「目の前にあるネガティヴなものも受け入れて(引き連れて)前進していこう」っていう、前アルバム「DISCOVERY」('99年)以降からの共通するテーマの完成型ともいえる歌詞と、それを盛り上げるメロディだと思う。「DISCOVERY」より前の、活動休止するまでの歌詞だったら、「ネガならネガで仕方ない。どうしようもないさ。それでも進むしかないし‥‥」てな、一種『迷い』ともとれる内容が多かったが、復活後の桜井は「楽しく生きてくイメージを膨らまして暮らそうよ」「何度へましたっていいさ/起死回生で毎日がレボリューション」と唄い、人生は「もっと大きなはずの自分を探す/終わりなき旅」だと言ってポジティヴ・シンキング出来るまでに成長していた。勿論音楽的にも。そして従来の(「ATOMIC HEART」('94年)辺りの)彼等を彷彿とさせる前シングルでそれは決定打となった。「俺の歌」ではなく「みんなの歌」、あるいは「自分を癒す為に唄う」のではなく「聴き手を温かくさせる為に唄う」歌。それが"口笛"だったように思う。そして今度の"NOT FOUND"。確かに"口笛"よりも歌い手の主張が強い歌詞だけど、これは「DISCOVERY」でやりたかった事のひとつの「答え」なんじゃないだろうか?なんて思うのだけど‥‥「私的歌詞」と「みんなのうた」のギリギリライン、じゃないかなと。"口笛"が「みんなのうた」のマックスで、"1999年、夏、沖縄"が「私的歌詞」のマックス。そして"NOT FOUND"はその両方を兼ね備えた、バランス感覚を持った高性能楽曲。いい意味で桜井のソングライティング力が暴走してるような気がする。だからこそ、次のアルバムが本当の意味での最高傑作になるんじゃないか?と今から毎晩眠れずにドキドキしてるわけよ。(笑)

  冗談はともかく、そういう意味でも本当にこのシングルは優れものだと思うのよ。とにかく歌詞、歌詞読んでよ! レンタルでもいい。歌詞読んで欲しい。そしてアルバム、恐らく10月度のお薦めになってるような気がする(いや、絶対にやってるね!?/笑)



▼Mr.Children『NOT FOUND』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 08 09 11:30 午後 [2000年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2000/07/15

MOTLEY CRUE『NEW TATTOO』(2000)

'90年代のMOTLEY CRUEは、アルバム発表毎にメンバーが入れ替わっている。例えば'91年発表のデビュー10周年を記念したコンピレーション盤「DECADE OF DECADENCE」(既に廃盤)ではオリジナルメンバーの4人(ヴィンス・ニール、ニッキー・シックス、トミー・リー、ミック・マーズ)、翌年ヴィンスが事実上クビとなり、代わりに元SCREAMのジョン・コラビが加入、'94年3月にファンの間では悪名高い(俺は今でも名盤だと思っているが)「MOTLEY CRUE」を発表、'96年末にはヴィンス復帰の噂が囁かれ、翌年1月に再びオリジナルメンバーに戻り、6月に「GENERATION SWINE」をリリース。'98年秋には新曲を含むベスト盤「GREATEST HITS」の発売こそあったものの、'99年春にドラマーのトミーが脱退し、マット・ソーラム(元GUNS N'ROSES)等の名前が挙がりながらも、結局後任には元OZZY OSBOURNE BANDのランディ・カスティロが決定。その面子で作られたのが、オリジナルアルバムとしては8作目にあたる「NEW TATTOO」である。

前々作での近代ヘヴィロックへの歩み寄り、そして前作でのテクノロジーを駆使したダーク且つヘヴィは作風を経た今作でのコンセプトについてニッキーは「原点回帰」だとか「本来の姿」とかよく語っている。だが、待って欲しい。本来、MOTLEY CRUEに「本当の姿」なんてあったか? いい意味で、彼等は作品毎にコンセプトを変え、新たなシーンを築き上げてきた。そんな彼等が'90年代に入り、急にフォロワーに回った。確かに提示された作品はMOTLEY CRUE以外の何者でもなかったが、やはりそれまでジェネレーション・リーダーとして君臨してきた者としては、何やら物足りない内容だったのも事実だ。「MOTLEY CRUE」ではジェラシーさえ感じたというMETALLICAのブラック・アルバム(「METALLICA」)やPANTERA、SOUNDGARDENといった、当時を代表するトップアーティスト達からの影響を伺わせ、「GENERATION SWINE」に至ってはMARILYN MANSONやWHITE ZOMBIE(及びROB ZOMBIE)といったアーティスト達を思い浮かばせた。勿論それまでのMOTLEY CRUEは、決してゼロから新しい音楽を作ってきたわけではない。しかし、それぞれのアルバム・リリース当時、彼等と同じような音を出していたバンドは他にはいなかったはずだ。他人が真似するようになれば、新しいコンセプト・新しい音へと移行する‥‥彼等は'80年代、常にそれをやり遂げてきた。

そんな彼等が「原点回帰」と謳った新作は、一体どういう音になるのだろうか?‥‥ニッキー曰く、『「SHOUT AT THE DEVIL」と「DR.FEELGOOD」の中間的内容』だそうだが‥‥原点というよりは、代表作といったところだろうか? 「DR.FEELGOOD」が発表されるまで、「SHOUT AT THE DEVIL」こそが彼等の代表作であるというのはファンのみならず、普通のHRファンにとっても定説であった。しかし、それを超えるような内容・セールスを記録した「DR.FEELGOOD」が登場した結果、それ以後のファンにとってはこのアルバムこそがMOTLEY CRUEの最高傑作という風に捉えているはずだ。事実、今でも古いファンは「SHOUT AT THE DEVIL」に拘っている(俺も含めて)。そんな彼等を代表する2枚を、ニッキーは自らの「原点」と捉えていたのだ。

この発言により、'90年代の彼等しか知らない「全盛期をリアルタイムで体験していない」新参者は新作に期待を寄せ、その「原点」2枚をリアルタイムで通過してきたオールドファンは「過去の焼き直しになるのか‥‥」と不安を覚えた。少なくとも、俺は後者だった。だから、このアルバムには一切期待もしていなかった。彼等の新作に対して、こんなにも冷たい態度で挑んだのはこれが初めてだ。既にトミー・リーがいないという時点で興味が半減していたし、ランディという、大して上手くもない、そつなくこなすドラマーを迎えた事で、更に興味が後退していたから‥‥アルバムが出れば必ずリリース日に手に入れる、企画盤でさえもそうだったこの俺が、昨年出たライヴ盤「LIVE : ENTERTAINMENT OR DEATH」を未だに持っていないこの事実が、全てを物語っているように思う。

では、聴いた率直な感想を‥‥1曲目であるシングル曲"Hell On High Heels"は既に耳にしていたから、大体の感じは掴めていた。そしてそれは間違いではなかった。先に挙げた名作2枚のイメージは確かに顔を出す。しかし、俺が思い浮かべたのは‥‥'87年の4作目「GIRLS, GIRLS, GIRLS」だった。いい意味でも悪い意味でも「シンプルでストレートなR&R」を目指したこのアルバムに、非常に似ているような気がした。サウンド・プロダクションの生々しさがそれに近いのもあるだろう‥‥しかし、俺はこの新作のキーワードとして、あるバンド名を挙げたいと思う‥‥それは、AC/DCだ。この「NEW TATTOO」と「GIRLS, GIRLS, GIRLS」にはAC/DCという共通項があると思うのだ。

とにかく通して聴いた後の第一印象が「モトリーを聴いてる気がせず、何だかAC/DCの出来の悪いのを聴いてるようだ」だった。それは楽曲のタイプ(バラエティー)の幅が非常に狭い事や、ミドルテンポ~ミドルよりちょっとアップテンポ程度の楽曲が大半を占めている事にも起因する。メロディがそれ程頭の中に残る曲も少ないし‥‥例えばバラードひとつ取ってみても、「DR.FEELGOOD」には"Without You"と"Time For Change"という、タイプの違う2曲が収められていたのに対し、新作の"New Tattoo"と"Hollywood Ending"は共に同系統の楽曲だ。まぁこれまでピアノも受け持ってきたトミーがいないという事もあり、アコギ中心の作りとなるのは致し方ないが、もうちょっと煮詰めて欲しかった‥‥と思う。

ところで、何故俺が「GIRLS, GIRLS, GIRLS」をAC/DCと関連づけるのかというと‥‥作風は決してAC/DC的とは言えないものの、当時彼等はこのアルバムをよくAC/DCと関連づけて語っていたし、実際にこのアルバムのツアーではAC/DCの"Highway To Hell"をアンコールでカヴァーしていた。AC/DC再評価が高まったのも丁度この頃で、実際にその後('88年)にAC/DCは「BLOW UP YOUR VIDEO」で人気・セールス共に盛り返している。何となく、'85年頃にMOTLEY CRUEが「THEATER OF PAIN」をリリースした時にAEROSMITHの名をよく口にしていたのと共通する。(その翌年、エアロはRUN D.M.C.との"Walk This Way"共演で復活する)

また、ただ単にAC/DCという共通項を持ち出さなくても、先に挙げたようにシンプルなR&Rを中心とした内容に非常に共通点があるし、アルバムラスト(ボーナス・トラック除く)を飾るのがそれぞれカヴァー曲だというのも興味深い。(「GIRLS, GIRLS, GIRLS」ではエルヴィス・プレスリーの"Jailhouse Rock"を、「NEW TATTOO」ではTHE TUBESの"White Punks On Dope"をそれぞれカヴァーしている)

そしてこのアルバムでは、11曲(本編のみ)収録で40分少々というトータルタイムも非常に興味深い。MOTLEY CRUEの'80年代の作品は皆9~11曲で35~45分の間で収まっていた。人間が1日に音楽を聴くのに費やす時間を考えれば、アルバム1枚を通して聴くには丁度いい時間だ。逆に言えば、今の時代にこういうトータルタイムの作品を(しかもシンプルな内容で)世に出すという事は、すぐに飽きられる可能性もある。これだけ多くの名盤が出回っていれば(しかも最近は捨て曲一切なしな内容が多い中)その可能性は非常に高い。

ぶっちゃけた話をしてしまえば‥‥このアルバムには「キメ」となる1曲が存在しない。少なくとも、駄作扱いされた前作にもタイトルトラック"Generation Swine"という、非常にパンキッシュで耳に残る曲があった(決して「名曲」とまでは言わないが)。MOTLEY CRUEの中でも自他認める「印象が薄い」アルバムである「THEATER OF PAIN」にさえも、"Home Sweet Home"という歴史的名曲が存在する(この際カヴァーである"Smokin' In The Boys Room"はなしって事で)そういう意味でも、このアルバムはダラダラ聴き流される可能性を持っている。せめて1曲、「そうそう、コレ!」って皆が納得するような曲、ハイライトが欲しかった‥‥"Hell On High Heels"はそれに近い存在だが、正直ちと弱い気も‥‥

多分、このアルバムは‥‥俺達が思っている以上に何も考えないで作られたような気がする。決して「やっつけ仕事」ではないものの、ニッキーやミックがアイディアを持ち寄り、それをバンドでジャムり、大して煮詰めないで「こんな感じでいいや」で完成させてしまった‥‥いい意味で「ラフで生々しい」、悪い意味で「出来たものをそのまま詰め込んだだけ」‥‥ここには、あの頭脳明晰で計算高いニッキー・シックスの姿はない。どのアルバムにも必ず存在した「怒り」や「緊張感」がここには存在しないのだ。何だか微温湯に浸かってるような感覚‥‥決して悪くはないのだけど、どこか物足りない‥‥俺の中ではこのアルバム、「THEATER OF PAIN」とどっこいどっこいなポジションだわ、悪いけど(つうことは、一番下のラインって事か)。正直な話、これなら前作「GENERATION SWINE」の方が面白かったなぁ、と。

まさかMOTLEY CRUEのアルバムに対してこんな酷評をするとは思ってもみなかった。俺、何だかんだ言っても前作、よく聴くし。まぁヴィンスのハイトーンとスクリームにはちとばかし安心したものの‥‥それと作品の評価は別だから。たださぁ、やっぱりかつて愛して心の支えとした存在だからこそ、こんな苦言になっちゃうんだよなぁ。ニッキーはまだ終わってないし、少なくとも他のメンバー(この際ランディは除く/笑)もまだやれると思うんだけど‥‥年末あたりにアルバムに間に合わなかった/収録しきれなかった未発表曲を集めたEPをリリースするというし‥‥あ、所詮この程度の楽曲に負けたレベルの寄せ集めか‥‥(苦笑)ニッキー、ジンジャーと活動を共にすればいいのにねぇ‥‥



▼MOTLEY CRUE『NEW TATTOO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 07 15 05:30 午前 [2000年の作品, Motley Crue] | 固定リンク

2000/07/11

SiLVER GiNGER 5『BLACK LEATHER MOJO』(2000)

「とみ宮」開設以来約1年7ヶ月、ようやく我愛するジンジャーの作品を取り上げることとなった。御存知の通り、俺のここ数年の心の支えともいえるアーティスト‥‥MANIC STREET PREACHERS, RADIOHEAD, WiLDHEARTS。MANICSに関しては開設第1発目に「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」を取り上げた。今後、旧譜やシングルについても続々と取り上げるだろう。RADIOHEADは「OK COMPUTER」を取り上げるつもりでいたが、つい後回しにしてしまい、気付けば10月には新作が出るというところまで来てしまった。まぁ秋には大々的に取り上げる事になるだろう。そして、我らがジンジャー率いるWiLDHEARTS‥‥正直、取り上げるのがこんなに遅くなるとは思ってもみなかった。最初に取り上げるならバンドとしての新作か、ジンジャーのソロを取り上げたかったのだ。旧譜をどんどん取り上げるというのも、何か解散してしまった「過去の遺物」みたいだし。(とはいうもののWiLDHEARTSは既に事実上解散しているわけだが‥‥)

バンドとしてのラストアルバム「ENDLESS, NAMELESS」を発表したのが'97年秋だったから、気付いてみれば3年近くもの歳月が経とうとしている。その間にもWiLDHEARTS関連としてはベスト盤やらボックスセットやらの編集盤、ライヴ盤や未発表曲集がリリースされた。'98年10月にはバンド活動を完結させる為に最後の日本ツアーを行い、その模様を収めたライヴアルバム「TOKYO SUITS ME」も発表された。(そして'99年8月には、イベントの為に日本でのみ「1回こっきりの再結成」も果たしている)

ではこの3年間新曲は一切発表されなかったのかというと‥‥「一切」ということはない。デヴィン・タウンゼントとの共作を始め、CLAM ABUSEとしてのアルバム「STOP THINKING」(これもいずれ取り上げる事になるだろう。評価に困る内容だが/苦笑)、そしてHELLACOPTERSのニッケ、BACKYARD BABIESのドレゲンとのプロジェクト、SUPER$HIT 666のミニアルバム。最後にジンジャーの初ソロ楽曲となる"Motorvate"(オムニバス盤「UP IN FLAMES」収録)。最後のソロを除けば、どれも他の個性の強いアーティストとの共作となっている。つまり、純粋にジンジャーの色が濃く出た内容というわけではなかった。だから、ジンジャーがWiLDHEARTS後の第一手としてどういう音で勝負してくるのかが、いまいち見えていなかった。"Motorvate"にしろ、これ1曲で今後を占うには難しかったし。(ジンジャーという多才なアーティストを前にすれば、たった1曲で判断してしまう事がどれだけ馬鹿馬鹿しい事か)そういう意味で、正当な評価を下すにはこのフルアルバムを待つしかなかった。そして、噂を聞きつけてから早半年、ようやくこうして耳にする事が出来たわけだ。

正直な感想を書こう。最初に一通り聴いた時、肩透かしを食らった。意外とあっさりと聴けてしまったからだ。もっとWiLDHEARTS的な、引っ掛かりのある内容になるものだとばかり思っていた‥‥これは過剰な期待だったのか、それとも単に俺がまだ「ジンジャー」という男のことを解っていなかっただけなのか。とにかくバンド時代よりも、もっとストレートな内容になっていたのだ。そう、とても聴きやすい‥‥

このアルバムに対して、ジンジャーはこう語っている。

「俺がこのアルバムで伝えたいのはエンターテイメント、ただそれだけさ。人を考え込ませるんじゃなくて、お楽しみの時間のサウンドトラックとなるものだよ。ロックンロールには信憑性なんてものはなくていい。ロックンロールは元々バカげたものだし、みんなが楽しんで大騒ぎする時間を過ごすためにある。このアルバムは、アリーナ・クラスの巨大なロックンロール・ショウをアルバムにしたもの、バラードやスケールのデカい曲や最後に爆発音でもってステージを終わるような曲の入ったアルバムを出すバンドを恋しく思うようなロック・リスナーに向けた『経験』なのさ。」
(アルバム・ライナーノーツより引用)

WiLDHEARTS程ひねくれ度が低いのは、こういう理由からだ。つまり、何か新しい音を作り出そうとか、2000年的サウンドをひねり出そうとか、そういったものではない。ジンジャーが子供の頃に慣れ親しんだロックンロール‥‥KISSであったりAEROSMITHであったり、それこそイギリスならSLADEやSWEETやゲイリー・グリッターのようなポップで判りやすく、それでいて聴いてて興奮するような。エンターテイメント性を前面に打ち出した、純粋に楽しむためだけのパーティーロック。今、こういう音が少ないと嘆いていたジンジャーは、だったら自分がやればいい、どうせKISSは今年で引退するんだろ?その座を俺が受け継いでやるよ、というコンセプトの元にこのアルバムを制作したのだった。

そのコンセプトはいきなり1曲目から爆発しまくっている。"Sonic Shake"、これはもう名曲だろう! メロディだけたどれば、どことなくWiLDHEARTSを連想させるが、所々に挿入された新機軸、そしてKISSのライヴを思い出させるようなハイパーロックンロール。OASISが何だって? BLURがどうしたって? 俺はここにいるぜ?と言わんばかりの主張が、それこそ1曲目からボーナストラックの最後の最後までぎっしり詰め込まれている。

音の感触がどことなくボブ・ロックが手掛けた作品に共通するものがあると思う。しかも最近のではなく、'80年代の、BON JOVI「NEW JERSEY」だったり、AEROSMITH「PERMANENT VACATION」だったり、MOTLEY CRUE「DR.FEELGOOD」だったり。とてもゴージャスなのだ。つまり、自分が慣れ親しんだ'70年代のロックンロール、常にエンターテイメント性を重視してきた'80年代のロックバンド、そして自分達が築き上げた'90年代。これらをうまくミックスして消化したものに自然となっているように感じる。ジンジャーが意図しなくても、自然と形として表れる‥‥天才というか、天然というか‥‥(笑)

確かにこれは新しい音楽ではないし、ある意味やり尽くされたタイプの音だろう。2000年を代表する音にはならないかもしれない。それでもこれをやる意味が、今のジンジャーにはあったのだ。そしてリスナーにも‥‥少なくとも、この俺にも意味のあるものだ。

WiLDHEARTS時代の作品と比べて、内容的にパーフェクトまでいっていないのは判ってる。しかし、このアルバムには完全試合は必要ないと思う‥‥言うならば、1発逆転サヨナラを狙った大振り連発‥‥こんなとこだろうか? 決してつまらない曲はないし、どれも標準以上だと思っている。しかし、WiLDHEARTSという「比較対象」が常に存在する限り、今後どんなアルバムを作っても「WiLDHEARTS時代と比べて~」と言われ続けるだろう(それがお門違いな愚問であっても)。KISSのアルバムには必ず1曲は「惜しいなぁ」と思わせる曲があった。作品として考えれば詰めが甘いのかもしれない。けど、KISSにとってアルバムは「新しいライヴをするための、新しい仕掛けを披露するための道具/手段」に過ぎなかった(勿論それらは標準をクリアしている、という最低条件はあったが)。MOTLEY CRUEだって、アルバム毎にコンセプトを変えてそれをライヴに反映してきた。もし今後ジンジャーがSiLVER GiNGER 5を続けているというなら、きっとそういう作品を連発し続けるだろう。

ライヴに関してはまだ何も見えてこないが、やっぱりこのアルバムはライヴと対で評価したいと考えている。これだけのアルバムを作っておきながら、ライヴがバンド時代と何ら変わらないものだったら‥‥俺はちょっと許さないよ。(笑)勿論、WiLDHEARTSのライヴが悪いというわけではない。あのライヴに惹かれたから、今の俺がいるわけだし。けどこのアルバム、このコンセプトに関してはジンジャーには初心を貫いて欲しい。ワールドワイドレベルで成功しているアーティストとは言えないので、セット等にお金をかけられないだろう。しかし、そこは持ち前のアイディアで乗り切って欲しい。そして今回はブリッツよりもデカい会場‥‥日比谷野音だったり渋公だったり‥‥可能なら、武道館で、こんじょ音を再現するスペクタル・エンターテイメント・ショウを俺達に見せて欲しい。

最後に我が儘放題言ってしまったが、ジンジャーならそれが出来ると信じているから。そしてそれをやる義務があると思うから。KISSの後を引き受けるなら、もうそれこそ本当にニッキー・シックスまでをも巻き込んで、何ならMOTLEY CRUEの前座としてワールドツアーに同行すればいい。このアルバムの音は、今必要とされている音だと思う。必要としている人間が沢山いると思う。だから、それを世に知らしめるために、出来る限りの活動をして欲しい。WiLDHEARTSで果たせなかった夢が、今なら実現出来るはずだから。今なら誰も邪魔する人間はいないし、やれない事は何もないはずだから。

今一度言う。俺はエンターテイメント性を重視したこのロックンロールを、断固支持する。「とみぃの宮殿」は今後もジンジャーを全面的に支持していく!!!



▼SiLVER GiNGER 5『BLACK LEATHER MOJO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 07 11 07:47 午後 [2000年の作品, Ginger Wildheart, Silver Ginger 5, Wildhearts, The] | 固定リンク

2000/07/06

DEFTONES『WHITE PONY』(2000)

実はこのバンドに関して、音を聴くのはこのアルバムが初めてだったりする。勿論その名前は何度も耳にしていたし、大体どういう音を出しているのかも把握していたはず。そう、「はず」だった‥‥結局、活字で目にした情報や耳にした噂で判断していたに過ぎないのだが。これはもう、反省する。結局今まで聴かないできた事を、そして聴かずに判断していた事を。

前作同様テリー・デイトがプロデュースしている。実は前作の時も確か「BURRN!」誌でのレビューで知ったのだと思うけど、プロデュースにテリーの名前を見たことで「PANTERAタイプの音に、流行りのヒップホップ調ボーカルが乗ったもの」と勝手に判断してしまっていた。もう、最悪。全然違うじゃんか、これ。とにかく、今までがどうであれこれはもう、素晴らしすぎる!

このバンドがTHE CUREから影響を受けたとか、フェイバリットにRADIOHEADを、よく聴いた('98年当時)アルバムにU.N.K.L.E.といった、ある意味対極にいる先鋭アーティスト達の名を挙げ、「もしバンドを脱退してまでも加入したいバンドがあったら教えてくれ」という問いに対してWEEZERの名前を挙げる。そういう意味では最近のMETALLICAなんかにも共通するものがあるかもしれない。しかしそれらの影響を恐れずに全面に出した結果、このような突然異変的サウンドが生まれたのだろう。音像は確かにヘヴィロックのそれだ。しかし、それだけでは済まされない多彩な要素が所々に顔を出す。メンバーにターンテーブル担当がいる点はLIMP BIZKITやSLIPKNOTと同様だが、その生かし方が他のバンド達とは明らかに違う。ターンテーブルをひとつの楽器と見立てて全面に打ち出すリンプとは逆に、まさに楽曲を生かす為の効果音的役割を果たしているのだ。

そして独特なメロウ感覚。SLIPKNOTのような「ヘヴィな中に存在するメロウ感」ではなく、「メロウの中に存在するヘヴィ感覚」と言った方がいいかもしれない。それくらいこのアルバムには琴線に触れる‥‥いや、胸を掻きむしるような情念を感じさせる。THE CUREといったニューウェーブ/ゴスの影響もあるのだろう。それがうまく生かされている。ある意味、MARILYN MANSONの「MECHANICAL ANIMALS」でのメロウさに通ずるものがあるかもしれない。所謂ヘヴィロックの括りの中で考えれば、恐らく一番うまくメロディと音像とが噛み合った例かもしれない。そしてそれを支えるボーカルがまたいい。この手のバンドには求めるべくもなかった「セクシーさ」まで持ち合わせた、チノ・モレノの声。ガツガツした曲では攻撃的にがなり立て、メロウな曲では感情の赴くままに唄い上げる。KORNにもこういう面はあるが、ここまであからさまにやられると、もうヘヴィロックだの何だのと言ってる事自体、次元が低く感じる。見た目が普通のオヤジなだけに、俺にとってはかなりショッキングな存在だ。

更にこのアルバムを支える、独特な浮遊感。熱い鉄のようなヘヴィ・サウンドの表面を冷たい水で覆ったような感覚‥‥このトリップ感はある意味、U.N.K.L.E.やMASSIVE ATTACKにも通ずるものがある。テクノだ、トリップホップだと言うつもりはない。明らかにこれはヘヴィロックだし。けど、それだけで片付けたくないのも正直な気持ち。この浮遊感は、ほぼ同時期にリリースされたA PERFECT CIRCLEのアルバムからも感じ取る事が出来る。(そういえばこのバンドでも相変わらず素晴らしい歌を聴かせてくれる、TOOLのメイナード・キーナンは「WHITE PONY」にもゲスト参加している。何か運命めいたものを感じるのは俺だけか?)こういうサウンドは、もしかしたら「旬」なのかもしれない。そしてそれがチャートという結果にも表れているようにも思える。(DEFTONESはビルボードのアルバムチャート初登場3位、A PERFECT CIRCLEは初登場4位を記録した。そう、BON JOVIが9位だったのに対して‥‥)

LIMP BIZKIT程ヒップホップ度が強いわけでもなく、RAGE AGAINST THE MACHINE程主義主張があるわけでもなく、SLIPKNOT程攻撃的でもなく、KORN程複雑でもない。明らかにこれらのバンドとは一線を画する、独特なバンドであり、独特なサウンドを持ったアルバムである。もし、これらのバンドがダメでRADIOHEADみたいなサウンドが好きって人がいたら、両手を挙げてお薦めするね? 特に中盤とラスト近くに収録されたミディアム~スロウな曲には、共通する部分も多いんじゃないだろうか?

もうね、俺の中では2000年度のベストアルバムの1枚に決定したね、マジで。昨年のリンプ、レイジ級で俺の中ではヒットしてるしね。今これを聴かずに何を聴く!?って感じ。この時期、梅雨が明ける前のどんよりした天気の朝、このアルバムを聴きながら車を飛ばすと異様な空気に包まれ、そしてそれを心地よく感じるようになる。ある意味マゾか!?とも思うが本当、今の時期にピッタリな空気感を持った作品だ。逆に真冬の雪の中でもいいかもしれない。氷のような冷たさの中で燃え盛る焔(「炎」ではなく、「焔」だ)。「WHITE PONY」というアルバムを喩えるなら、俺はこう表現するだろう。

メロディアス・ロックの復権を願う俺ではあるが、やはりアメリカでの現状は如何ともし難い。けど、逆にメロディアス・ロックだけが取り沙汰される世の中になったとしたら、それはそれで気持ち悪い。こんな性格の俺だから、きっとそうなったらそうなったで、今度はヘヴィ系かテクノの肩を持つだろう。俺自身の理想は、やはり共存だ。どのジャンルにもそれぞれ素晴らしい点は沢山存在する。勿論個人の趣味と生理的なものもあって、BON JOVIのようなバンドを毛嫌いする人もいれば、逆にリンプやレイジをつまらないと思う人もいる。それでいいと思う。けど、時には勇気を出して新しい扉を開けてみるような冒険もいいのではないだろうか? 何も2000円出してCD買え、とは言わない。ここで取り上げたアルバムに少しでも興味を持ったのなら、CDショップに行って手に取ってみるだけでもいい。もし試聴機があったなら、何曲か耳にしてみるのもいいだろう。そう、今回の俺みたいに「活字や噂だけで判断せずに、実際に自分の耳で判断して」欲しい。この絶賛文を読んで気になった人、是非行動に移してもらいたい。もし身近で耳にする手段がない、でもCD買うまではいかないって人がいたら、ご一報いただきたい。俺がどうにかするから(いや、マジな話)。また懐に余裕がある人は、是非周りの人間にもお薦めいただきたい。ボーナスのついでに1枚、御中元に1枚、暑中見舞い・残暑見舞いに1枚。これからのシーズン、酒の肴に1枚もいいだろう。とにかく、聴いてね♪



▼DEFTONES『WHITE PONY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 07 06 12:00 午前 [2000年の作品, Deftones] | 固定リンク

2000/06/07

エレファントカシマシ『GOOD MORNING』(2000)

リリースから既に1ヶ月以上経ったが、未だによく聴くアルバムだ。今年の邦楽は豊作である。あまり絶賛されていないようだが、ミッシェル「CASANOVA SNAKE」は名盤だと思うし、椎名林檎やブランキー等目白押しだ。その中でも特に抜きん出ているのがこのエレカシ「GOOD MORNING」だと、個人的には思っている。

そもそも前作「愛と夢」は殆ど聴かなかった。今でも聴く機会は殆どない。決して悪いアルバムではないし、曲も優れていると思う。では何故? 俺の感想だが、結局復活後の『良い歌を届ける』という意味でのエレカシは既に復活第1弾であった「ココロに花を」で完成していたのだ。あのアルバムの楽曲は、レコード会社から契約を切られた後の1~2年の間に、ライヴハウスでの活動の中で生まれ、そして最初にライヴという『第三者を意識した』形で披露されてきた楽曲ばかりである。そういう意味では『第2期エレファントカシマシ』のデビューアルバムとも言える。そう、だからこそ目的意識‥‥如何にエレカシの楽曲をみんなの心に届けるか?というテーマ‥‥を持って書かれた楽曲は、常に大衆を意識していたのだ。そして練りに練られた楽曲達は日の目を見る‥‥その時点で完成されていたし、目的は達成されていたのだが。彼等が“悲しみの果て”をはじき出した瞬間に、勝負は決まっていたのだ。

続く「明日に向かって走れ」はそのダメ押しともいえる内容だった。これまでの活動を後押しする形で“悲しみの果て”がCMソングに起用され、その後のシングルもタイアップを得るという形で彼等の歌はお茶の間に届き、浸透していった。その決定打となったのは、初のドラマ主題歌“今宵の月のように”だろう。多くの人間が今、エレカシといってイメージする1曲ではないだろうか? そう、この時点で目的は完全に達成され、不動の地位を手に入れたはずなのだ。

だからこそ、更にこの路線を突き詰めようとした「愛と夢」という作品に、俺は違和感を感じたのだ。前2作で得た成功から宮本が出した答え‥‥それは何だったのだろう? 果たして楽曲至上主義の中で、『バンド』という運命共同体を無視してまで打ち込みに走る理由があったのだろうか? 以前から宮本は打ち込みに興味を持っていたようだが、何故それをこの時期に、こういう楽曲の中で試そうとしたのだろうか?

エレカシが再びレコード会社を移籍した、と最初に耳にしたのは昨年暮れ近くだった。と同時に久し振りのシングルが出る事も知った。そしてそれが初期のような攻撃的な楽曲だと聞いてワクワクしたのを、今でも覚えている。その楽曲こそが“ガストロンジャー”であった。これには多くの音楽ファンが衝撃を受けたはずだ。LED ZEPPELIN級のヘヴィ路線の楽曲に載るのは、我々のような古くからエレカシを応援し続けたファンが唸るような内容の、攻撃的な歌詞だった。しかも、もはや『歌』としては機能していない、ラップとも違う、宮本にしか出来ないであろう『叫び』。「今エレカシを聴かないとヤバい」そんな空気さえ流れた。「日本のRAGE AGAINST THE MACHINE」なんて賛辞も挙がった程だ。

それに続くシングルは、久し振りのドラマ主題歌である“so many people”だった。路線としては“悲しみの果て”以降の流れなのだけど‥‥ポップだけど、やはり以前とはどこか違う。特にエンディング近くのサビのリフレイン、俺はここで2作連続で鳥肌が立った。

更に追い打ちをかけるかの如く、彼等はアルバムと同時に“コール アンド レスポンス”という名曲を発表する。既にリリース前からTV番組のテーマ曲として耳にしていたが、最初にフルコーラス‥‥特に後半の、宮本のあのセリフ‥‥


えーご承知のこととは思いますけれども ここで神の意志を発表させて頂きます。
えー発表します。全員死刑です。


に三度鳥肌が立つ。そして泣く。嗚呼、とうとう行き着くとこまで行っちまったなぁ‥‥そんな気持ちでいっぱいだった。この3曲だけで、俺はアルバムが過去最高の、素晴らしい作品になる事は予想出来た。そしてその予想は見事に的中したというわけだ。

アルバムのハイライトとなるのは、やはり先に挙げたシングル3曲だろう。オープニングを“ガストロンジャー”が飾り、エンディングを“so many~”“コール~”で閉めるわけだから。勿論、その間に入った残りの楽曲もそれに引けを取らない、素晴らしい楽曲ばかりである。

ある意味、前作は宮本の『迷い』をそのまま形にしてしまった過渡期だったのかもしれない。何が切っ掛けで現在のような心境になったのかは判らない。詳しい事は最近のインタビューでも読めば判るだろう。決して「ココロに花を」以降のエレカシが、それまでの彼等と違っていたわけでもないし、今のエレカシが前作までの彼等と変わってしまったわけでもない。今やっている事をやり遂げられる環境や精神状態を得ただけで、ここまでビルドアップしてしまったのかもしれない。結果、アルバムでは形だけのバンド体制となってしまったが、それは宮本の才能を認めた他のメンバーの理解があったからなのだ。

「(メンバーが)幼馴染みでなかったら、今頃解散していただろう」という言葉通り、宮本という人間を知り尽くしていたからこそ成し得た産物なのだ、このアルバムは。そう考えれば、全ての楽曲を作り出した人間が全ての楽器、アレンジを受け持った事も納得できるかもしれない。他のメンバーは宮本のアイディアを具体化するための助っ人要員‥‥これではちょっと悲しいが(苦笑)、これも理解あっての事だろう。



▼エレファントカシマシ『GOOD MORNING』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 06 07 03:43 午前 [2000年の作品, エレファントカシマシ] | 固定リンク

2000/05/17

BON JOVI『CRUSH』(2000)

どんなアーティストにも「代表作」といえるアルバム、または楽曲が1枚(1曲)はあるはずだ。10年20年と活動を続けるアーティストになると、何時まで経っても「古いイメージ」、つまり代表作のイメージが固定されてしまう事が多い。特に一般的な音楽ファンや、ごく一般の、普段ヒットチャートものしか聴かないような‥‥方々になると、尚更だ。ビートルズといえば「Yesterday」「Let It Be」、ROLLING STONESなら「Satisfaction」‥‥極端な例だが。小田和正が昔、「どんな凡人(ミュージシャン)でも、一生の内に3曲は名曲を書く事ができる」というような事を言ったと記憶している。どんな奴にでも一生の内に3度はチャンスがあるはずだって事ではないだろうか? 俺はそう解釈している。逆に、誰でも知ってるような曲を3曲も持つ事ができたら、それはミュージシャンとして大成功した証ではないだろうか?

中にはアルバムを出す毎に、必ず1曲はアンセムソングとなるような代表曲を生み続けているアーティストも少なくない。例えばBLUR。例えばRADIOHEAD。例えばMANIC STREET PREACHERS。みんな地道に頑張っている。ところがここに、アルバムを出す毎に世界レベルでの成功の度合いがアップし、必ず毎アルバムに代表曲が3曲以上収録しているバンドがいる。音楽に疎い人にも知られている存在だ。それがBON JOVIである。そして今回紹介するこの最新作(オリジナルアルバムとしては通算7作目)『CRUSH』である。

普通の観点から語れば、BON JOVIの代表作と言えるアルバムは86年にリリースされ、彼等を一躍有名にした『SLIPPERY WHEN WET』(邦題『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』)だろう。そして代表曲と言えば、そのアルバムに収められ全米で4週連続1位を記録し、日本ではカセットテープのCMソングとしてもお馴染みの「Livin' On A Prayer」だったり、同じくCMに使われた「Bad Medicine」なのかもしれない。または日本人アーティストにもカヴァーされたデビュー曲「Runaway」かもしれない‥‥これだけで3曲だ。

ところが彼等はその後もアルバムをリリースする毎に成功のレベルがスケールアップし、多くの代表的ナンバーを生み出している。アルバムに関して言えば、普通頂点を極めた作品をリリースした後は、それに甘んじたレベルの作品を量産し続けるか落ち目になるか、そのどちらかだ。ところが彼等は毎作少しずつレベルアップし、現時点で多くの人間がイメージするBON JOVI像から掛け離れたところまで成長した。

そしてこの『CRUSH』というアルバム‥‥とうとうやってしまったというか‥‥既にその代表作『SLIPPERY WHEN WET』さえも軽く越えてしまう作品を生み出してしまったのだ。あれから14年、彼等は前進し続けここまで辿り着いた。感動というよりも、驚愕である。

BON JOVIを嫌う、良識的な「ロックファン」は数多くいる。それだけでなく、未だに彼等を「HM/HRの範疇」にカテゴライズし、毛嫌いする輩も多い。まずこの誤解を解かない限り話は進まない。みんなが思い描くBON JOVIは、やはり「Livin' On A Prayer」の彼等なのだろう。ところが90年代の彼等はどんどん祖先帰りし、現在では「アレンジとしてのHM/HR色」は感じさせるが、楽曲自体はシンプルな、古くからあるアメリカン・ロックなのである。ジョン・ボン・ジョヴィが影響を受けたブルース・スプリングスティーン、サウスサイド・ジョニーやジョン・メレンキャンプ、そしてトム・ペティー辺りに近い存在なのだ。そこをまず知って欲しい。

そして次に、楽曲のイメージ。メロディーを追えば判るかもしれないが、彼等の曲はR&Bの影響が強い。「You Give Love A Bad Name」でもいいし、新曲「It's My Life」でもいい。これは間違いなくソウルである。勿論、スプリングスティーンが唄っても違和感がない。が、例えばサム・クックが唄ったら‥‥俺は全く違和感がないと思う。これは先にも挙げたアレンジの問題なのであって、アレンジというのはその時代時代に合わせて変わっていくものだから、仕方ないと思う。けど、根本にあるものにもっと目を向けていいのではないだろうか? そういう意味では彼等は現在のAEROSMITHに非常に近い存在なのかもしれない。

新作の話題に戻ろう。1曲目から話題の最新シングル「It's My Life」である。ライヴもこの曲から始まるのだろうか‥‥だとしたら、俺は悶絶死するだろう。なんで‥‥何でデビュー20年近い大物クラスのバンドが、今でもこうやって過去の楽曲を軽く越えてしまうような名曲を作る事が出来るのだろう!? これが出来るアーティストの少ないこと、少ないこと‥‥外部のソングライターとの共作だからダメ!? ふざけるな! 曲が良ければ何やったって構わないだろうが! AEROSMITHだってKISSだってやってる事だろ? 嫌いだからって、それは理由にはならない。

 それにしても‥‥前作「THESE DAYS」も素晴らしかったが、これはどうだろう! 捨て曲が1曲もないアルバムなんて、AEROSMITH「GET A GRIP」以来じゃないだろうか!?正直な話、俺は90年代に入ってからのBON JOVI(ジョンのソロも含む)のアルバム‥‥前半に名曲が固まり過ぎたせいか、後半に入るとテンションが下がったり、楽曲の質が下がったりしているように感じていた。ところが今回の新作は前半は今まで以上に名曲のオンパレードだし、後半に入ると新境地を伝える楽曲が続いたり、ラスト2曲にアップテンポの曲を持ってきたりと、全くダレる事がない。トータルで60分近い作品だが(ボーナストラックを除く)、全く飽きがこない、最後まで緊張感を保った内容になっている。CDの時代になり、60分を超える作品が殆どとなってきたが、これは異例の事じゃないだろうか?

従来のタイプの楽曲が今までの2番煎じになっていない事も凄いが、ここにきて新境地を伝える楽曲が数多くある事も特筆すべき点だろう。「Say It Isn't So」のような風変わりなリフをもったサイケなナンバー‥‥これはBON JOVI流ブリット・ポップへの答えと受け取れるが、如何だろうか? そしてメンバー自らが「THIN LIZZYとグラムロックの融合」と言う「Captain Crash & The Beauty Queen From Mars」。ラジオで初めて聴いた時、一瞬彼等の曲だとは気づかなかった‥‥何のアナウンスもなかったし。地中海的な香りさえ漂う「She's A Mystery」もAORの一言で片付けられてしまう可能性もあるが、聴き流してしまうには存在感がありすぎる名曲だ。

そしてジャニーズファミリーのJ-FRIENDSに提供した楽曲のセルフカヴァーとなる「Next 100 Years」‥‥ここで初めての試みを実行している。それはリッチー・サンボラの3分近くもあるギターソロだ! これには正直腰を抜かした。リッチーは決して上手いギタリストではない。カッティングも下手くそだし、テクニック的にはもっと上手い奴は山程いる。けど彼がここまで残ってこれたのは、例えばKISSのエース・フレーリーのように「楽曲あってのギターソロ」「楽曲の一部としての、口づさめるギターソロ」を心掛けてきたからである。ギターヒーローになる必要はない。あくまでバックに徹すればいい。そのリッチーが今回、いたるところで自己主張しまくっている。前作でもそれは感じられたが、ソロアルバムを通過した今、それが明確になったのかもしれない。もし「Next 100 Years」という曲に軟弱なイメージを持っているなら、一度BON JOVIヴァージョンを耳にして欲しい。これこそこのアルバムからのアンセムナンバーとなるべき曲である。ライヴで盛り上がる事うけあいだ。

そして最後の2曲‥‥珍しくアップテンポのロックナンバーを2曲も続けて収録しているが、これがまたよい。ここまでルーツ的ナンバーをBON JOVI流に料理し、オリジナルとして確立させてしまう実力。さすがである。その2曲‥‥「I Got The Girl」「One Wild Night」‥‥前者はゴスペル、後者はソウルだ。俺は常々言ってきているが、ジョンとリッチーが書く曲には“黒さ”を感じさせる。R&Bというのは、日本で例えれば演歌なのかもしれない。だから浪花節的な「Livin' On A Prayer」や「Born To Be My Baby」のようなベタな曲が日本でウケるのかもしれない。今回の新曲をオーティスやTEMPTATIONSがカヴァーしたら‥‥滅茶苦茶カッコイイはずだ。

THUNDERやOASIS、REEFといったバンドはイギリスの伝統的な音楽を現代的に表現して人気を得た。だったらBON JOVIにも同じ事が言えないだろうか? 彼等は幼い頃から耳にしてきたR&Bやカントリーやポップソングを消化して今風に演奏するバンド‥‥何でこんな簡単な事にみんな気付いてくれないのだろうか? やれ産業ロックだのハードロックだのポップ・メタルだの‥‥くだらないカテゴライズで自分の周りに壁を作る前に、一度ちゃんとアルバム1枚通して聴いてみたらどうだろうか? もう「BON JOVIだから嫌い」という次元ではすまないレベルまで来ている。俺達BON JOVIファンが笑うか、アンチ的存在な「rockin'on」的一般“自称”ロック・ファンが笑うか‥‥答えはじきに判るはずだ。



▼BON JOVI『CRUSH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 05 17 12:00 午前 [2000年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2000/04/25

ZEPPET STORE『DISTANCE』(2000)

  '99年に2枚のアルバム(英語詞アルバム「BRIDGE」と日本語詞オリジナルアルバム「CLUTCH」)をリリースしたゼペットが2000年最初に放つのは、何とマキシシングル2枚時間差発売。間に1週間置いて1ヶ月に2枚、しかも完全初回限定生産だそうだ。こんなことされると‥‥アルバムがもうじき発売ってことなのか?と勘ぐってしまう。(笑)去年の10月だろ、「CLUTCH」って? 6月から7月にかけて全国5ケ所各1回ずつのライヴを行うから、まぁ秋以降かもしれないな。今はレコーディング中の息抜きってとこだろうか?

  何はともあれ、今回はこの時間差リリースの2枚のシングル「EMOTION」「DISTANCE」を「時間差レビュー」しようと思う。(笑)つまり、現在これを書いてる時点では俺の手元には「EMOTION」しかないのでこれについてだけ書き、来週以降に手に入る「DISTANCE」を買ったらその時に続きを書くという形だ。だから1回このページを見て、はい終り、とはならない。つづきものだよ。(笑)

  まずまず、2枚に共通するデータだけ記しておきましょう。プロデュースは朝本氏ではなく、今回からゼペット自身。初のライヴ音源収録。アートワークにはミスチルやサザン等でお馴染みの、進藤三雄氏。しかもジャケット、デカすぎ(爆)。7インチのドーナツ盤よりは大きく、12インチのアルバムよりも小さい‥‥昔、10インチレコードってあったけど、あれくらいかねぇ?とにかく、それくらいデカい紙ジャケの中にCDが入ってるという‥‥こりゃ店頭で目立つわ。けど、収納に困るよ。(苦笑)‥‥こんなとこかね? 新たなミレニアムを迎えて、新しい試みを繰り広げようとしてる感じがする。

  そういえば、2曲共タイトルが英単語のワンワードっての、意識してやってるのかな? 昨年リリースした2枚のシングルが日本語タイトルだったから(「もっと もっと」「遠くまで」)対照的だよね?

●「DISTANCE」レビュー

M-1. DISTANCE
  連発シングル第2弾の1曲目は"EMOTION"以上に勢い重視の曲。このシングル買う前日に「HEY! HEY! HEY!」にて聴いていたので大体の感じは掴んでいた。それにしてもアグレッシヴ。ライヴを想定して作ったな?っていうのが第1印象。Baの中村と木村の共作(作曲のみ)だが、「CLUTCH」でも中村が書く曲ってこういうノリ重視のファストナンバーだったな、と気づく。
  イントロとかサビ前までの煮え切らない感じのメロディ運びや独特な湿り気がイギリスっぽさを感じさせるが、やっぱサビにくるとドカ~ン‥‥とまでは来なかった、今回。(苦笑)いろいろな実験的要素が目に(耳に)つくけど、肝心のサビが、う~ん、平均点。まぁ「ゼペットらしさ」は出てるよな? 一聴して彼等の曲って判る分だけのオリジナリティーはあるって事だし。

M-2. VEX
  このシングル、いや、今回発表された6曲の中で最も「異色作」といえるのがこの曲。これまた英語詞で(柳田が作詞)作曲はバンド名義。イントロのベースの入り方から、何となくSTONE ROSES "I Wanna Be Adored"を思い浮かべるが、こっちはもっとダークな感じ。こんなにへヴィ&ダークな曲、ゼペット史上初でしょう。上で「ファーストの頃とは違った意味でのへヴィさが今後どこまで比重を占めていくのかが興味深い」って書いたけど、これを聴くとその気持ちは更に増す。というか、こういう感じで英語詞アルバム、また作って欲しいなぁ‥‥ないだろうけど。(笑)
  ゼペットというとどうしても「UK色が強いバンド」というイメージがあるけど、この曲に関してはそれは皆無。むしろこれはSOUNDGARDEN辺りの、'90年代前半に多く存在したグランジ/ヘヴィロック系に強く影響を受けたのでは?という感じ。想像でしかないが、途中加入した赤羽根(Gt)の影響ではないだろうか? こういう音でアルバム1枚聴いてみたいという願望も持ちつつ、やはり「バラエティー豊かな」内容のアルバムが最も彼等らしいので、今後も頑張っていろんなタイプの曲に挑戦して欲しいものである。

M-3. EMOTION ram jam world remix
  ゼペットがリミックスものに挑戦するのも初めての事。今回の2連続シングルのコンセプトは確か「新しい挑戦」だったはず。セルフプロデュース、アートディレクターの変更、曲のバラエティー、2枚連続リリース、初のライヴ音源、リミックスもの‥‥うまくいったものもあれば失敗したものもある。けど、それが今後の彼等の指針になるはずだし、これはこれでいいと思う。第一、シングルって最近じゃみんなマキシになってるから最低3曲くらい入ってないと格好悪いし、だったら実験のひとつもしてもらわなくちゃ困る。(笑)
  でこのリミックス、ゼペットとはお馴染となる朝本氏率いるram jam worldによるもの。気心知れた人間が料理するわけだし、しかもそのリミキサーも本職だし。ただ、どうしてもゼペットの場合、『歌』がまず最初にあるから‥‥ねぇ?(苦笑)出来としてはいいと思うんだけど、個人的には‥‥あまりこの手のリミックスものはシングルに入れて欲しくない。だったら新曲入れてくれってマジで思う。まぁ作る方の苦労を考えればこれもありだが。

●総評

  ミニアルバムとして6曲まとめてリリースする事も出来たわけだし、何も初回限定にする必要もない。では、何故? やっぱり2枚連続ってのは話題作りだろうし、初回限定ってのもそうだろう。大体あのジャケットでは1枚作るのにどれだけ経費がかかることか。(苦笑)まぁファンサービスってとこだろう。じゃあ、ファンじゃない人にとっては‥‥これはもう、アルバムまでの繋ぎと考えるのが妥当だろう。近々、本当にリリースされるんじゃなかろうか? 7/7の東京までツアーが続くわけだが、まぁ数本夏のフェスやイベントに出演するとしても、今現在や夏をレコーディングに費やすはずだ。「CLUTCH」が成功したんだから、それに続く作品を早く出したいと思うし‥‥メンバーも、レコード会社も。

  俺の予想では、7~8月にシングルをもう1枚、そして初秋にアルバムというシナリオが出来ていると思う。今回のシングルの内容からは正直アルバムの内容を予想する事は出来ないが、また今度もバラエティー豊かな内容になる事だけは間違いない。

‥‥とかいって、出てみたら実は英語アルバムだったりして。(爆)



▼ZEPPET STORE『DISTANCE』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 04 25 04:03 午後 [2000年の作品, Zeppet Store] | 固定リンク

2000/04/21

ZEPPET STORE『EMOTION』(2000)

  '99年に2枚のアルバム(英語詞アルバム「BRIDGE」と日本語詞オリジナルアルバム「CLUTCH」)をリリースしたゼペットが2000年最初に放つのは、何とマキシシングル2枚時間差発売。間に1週間置いて1ヶ月に2枚、しかも完全初回限定生産だそうだ。こんなことされると‥‥アルバムがもうじき発売ってことなのか?と勘ぐってしまう。(笑)去年の10月だろ、「CLUTCH」って? 6月から7月にかけて全国5ケ所各1回ずつのライヴを行うから、まぁ秋以降かもしれないな。今はレコーディング中の息抜きってとこだろうか?

  何はともあれ、今回はこの時間差リリースの2枚のシングル「EMOTION」「DISTANCE」を「時間差レビュー」しようと思う。(笑)つまり、現在これを書いてる時点では俺の手元には「EMOTION」しかないのでこれについてだけ書き、来週以降に手に入る「DISTANCE」を買ったらその時に続きを書くという形だ。だから1回このページを見て、はい終り、とはならない。つづきものだよ。(笑)

  まずまず、2枚に共通するデータだけ記しておきましょう。プロデュースは朝本氏ではなく、今回からゼペット自身。初のライヴ音源収録。アートワークにはミスチルやサザン等でお馴染みの、進藤三雄氏。しかもジャケット、デカすぎ(爆)。7インチのドーナツ盤よりは大きく、12インチのアルバムよりも小さい‥‥昔、10インチレコードってあったけど、あれくらいかねぇ?とにかく、それくらいデカい紙ジャケの中にCDが入ってるという‥‥こりゃ店頭で目立つわ。けど、収納に困るよ。(苦笑)‥‥こんなとこかね? 新たなミレニアムを迎えて、新しい試みを繰り広げようとしてる感じがする。

  そういえば、2曲共タイトルが英単語のワンワードっての、意識してやってるのかな? 昨年リリースした2枚のシングルが日本語タイトルだったから(「もっと もっと」「遠くまで」)対照的だよね?

●「EMOTION」レビュー

M-1. EMOTION
  イントロのリズム打ち込みが、どことなくマニックスの"You Stole The Sun From My Heart"を思わせる、パワーポップ。いや、もっとストレートなロック色が強いか? シングルとしては久し振りに力強いナンバーを持ってきたな、って気がする。相変わらず柳田のリズムが心地よい。そして木村の紡ぎ出すメロディー。これがまた印象深い。バックはかなりパワフルなのだけど、メロはかなりポップ。最近のUKバンド‥‥マニックスやOASIS、SUEDEあたりにも匹敵すると思う。
  歌詞に目をやると、タイトルが英単語のくせして、歌詞には英語が全く出てこない‥‥次の曲と対照的だな。やっぱこの曲はメロディーだわ、特にサビの。

M-2. SPIN AROUND
  久し振りの英語曲。「BRIDGE」で集大成的に英語曲をまとめた、暫くは日本語詞に拘りたいと言っていたが‥‥あれからまだ1年しか経っていない。(笑)それにしてもこの曲、作曲がバンド名義になってることから、スタジオでジャムってたら出来たのではないだろうか? そんな感じの曲だ。サイケな感じが新作でのOASIS、いや、その本家の(笑)ジョン・レノンが唄うビートルズナンバーってイメージを受ける。木村の歌い方もそれっぽいし。かなりへヴィ。作風としては新曲2曲はアルバム「CLUTCH」の延長線上って感じ。あのアルバムに入ってても違和感はないだろうし。まぁあのアルバム自体かなりバラエティーに富んだ内容だったから、何でもありなんだけどね? へヴィ&サイケ‥‥前作でも"INNOCENCE"っていう曲があったけど、ファーストの頃とは違った意味でのへヴィさが今後どこまで比重を占めていくのかが興味深い。

M-3. ロウソクの炎と青い空 (Live version)
  シングル「もっと もっと」に収録されたc/w曲のライヴバージョン。何と、去年俺が観に行った10/3@日比谷野音での音源。あの時はそれ程感じなかったけど、こうやって聴くとかなりへヴィだったんだな?と再確認。それにしてもいい曲。なんでアルバムに入らなかったのかが不思議でならない。個人的に好きな曲でもあるし、またファンの間でも人気の曲だそうだ。そういう事もあって今回、初のライヴ音源収録に踏み切ったのかもしれない。
  ライヴ音源ということで歓声もそのまま入ってるのだけど‥‥当日、女子供の「キャーッ!」って声しか聞こえなかったんだけど、こうやって改めて聴くと‥‥男の野太い声も入ってるし。(笑)まさか俺の声じゃねぇだろうな?(爆)もし将来、ベストアルバムとかライヴアルバムがリリースされるような事があれば、是非この曲は入れて欲しい‥‥特にゼペットはアルバム未収録のc/w曲が多く、その中には名曲も多く含まれているしね?アルバムで興味を持った人はシングルにも手を出してみるべし!



▼ZEPPET STORE『EMOTION』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 04 21 04:00 午後 [2000年の作品, Zeppet Store] | 固定リンク

2000/01/06

CYBERNAUTS『LIVE』(2000)

現在第一線で活躍する、所謂ビッグネームと呼ばれるアーティストにも、子供の頃憧れたアーティストがいる。そういう人達やその音楽と出会った事によって、そのアーティストのコピーをするためにバンドを始めたり、それを切っ掛けにオリジナルの楽曲を書き始めたり‥‥そう、「影響を受けたのは○×です」みたいな発言をよくインタビュー等で見かける、あれだ。しかし、ある程度プロのミュージシャンとして成功を収めると、急にその「影響」を隠してしまったり封印してしまう人も多い。自身のオリジナリティーのようなものがある程度完成してしまう事により、パクる必要がなくなるわけだ。良く言えば「独自の音楽に拘る」と言えるが、その反面「遊び心がなくなってしまった」という声も聞こえてきたりして‥‥ライヴやシングルのカップリングにカヴァー曲を入れる事はあっても、そういう直球型のカヴァー(所謂元ネタ)はなかなかやってくれない。
  ところが、ここに紹介するCYBERNAUTSというバンド(というユニット)は、その「子供の頃に憧れた存在になりきってしまう」という、究極の遊びバンドだったりする。しかもそのバンドのメンバーが、世界的大ヒットを飛ばし続けるビッググループのメンバーと、そのカヴァーされる側のメンバーの組み合わせというのだから、ある意味反則ともいえる。というか‥‥羨ましいぞ、このヤロー!(笑)

ご存じの通り、このCYBERNAUTSはあのDEF LEPPARDのボーカルであるジョー・エリオットとギタリストのフィル・コリンが中心となって結成されている。ガキの頃に憧れたデヴィッド・ボウイの、しかもTHE SPIDERS FROM MARSを率いていた時代の楽曲に限定されたトリビュートバンドなのだ。そこに加わるリズム隊というのが、そのカヴァーされる側‥‥つまりTHE SPIDERS FROM MARSのベース、トレヴァー・ボールダーとドラマーのウッディ・ウッドマンゼイなのだ。そこにサポートメンバーとしてキーボーディストのディック・ディーセントが加わった5人。これがCYBERNAUTSの正体だ。

事の始まりは、1993年4月30日にガンの為他界した、THE SPIDERS FROM MARS~MOTT THE HOOPLEのギタリストでるミック・ロンソンの追悼コンサートの為に'94年にTHE SPIDERS FROM MARSが1日だけの再結成をした事だった。当然デヴィッド・ボウイは参加するはずもなく、ボーカルとギタリストがいない状態だったところに、当日ゲストとしてジョーとフィルが参加する事を知ったトレヴァーは、旧知の仲である彼らに「一緒にやらないか?」と声をかける。当然2人は大喜びで参加するわけだ。

それから3年後に、今度はミック・ロンソンの地元であるハルでSPIDERS~としてライヴをやらないか、とオフォーが来る。そこで先の4人にキーボーディストのディックが加わったこの5人でショート・ツアーを行った、というわけだ。このライヴアルバムはその時のライヴの模様を完全収録したものなのである。

ここで多くのボウイファンに疑問が湧くと思う。大別して2つ。ひとつは「DEF LEPPARDとミック・ロンソンとの関係、及びSPIDERS~とは彼らにとってどういう存在なのか?」、そして「何故この時期にこんなものをリリースするのか?」。この辺について語っていこうと思う。

まず、DEF LEPPARDの音楽性について。現在の彼らのオリジナリティー溢れる存在からは想像出来ないだろが、彼らは間違いなくグラムロックの影響を受けている。その片鱗は彼らの楽曲からも伺い知る事ができるだろう。数々のヒット曲からT-REX、SPIDERS~時代のボウイ、更にはSLADEやSWEET、ゲイリー・グリッターといったアーティストからの影響が見え隠れするし、インタビューでも普段からそれらのアーティストに影響を受けたと発言している。特にQUEENとボウイというのは、ボーカルのジョー・エリオットが幼少期に最も影響を受けたアーティストだそうだ。

そのLEPPSが'92年4月、その前年に亡くなったQUEENのフレディ・マーキュリー追悼ライヴに出演した際に、かのデヴィッド・ボウイとミック・ロンソンも同ライヴに出演していたのだ。この時を切っ掛けに、ジョーとミックは親しくなり、ミックが当時制作中だったソロアルバムにジョーはゲスト参加する事となった。

しかし、翌年の同時期にミック・ロンソンは亡くなる。アルバムは未完のままだった。そこでジョー・エリオットが立ち上がり、彼がエグゼクティヴ・プロデューサーとなって様々なゲストを迎えて、ミックの遺作を完成させるのだった。それが彼の死後から1年経った日に発売された「HEAVEN AND HULL」だ。

更にLEPPSのメンバーはミック以外にも、トレヴァー・ボールダーとも交流があった。'83年の「PYROMANIA」に伴うツアーで、当時トレヴァーが参加していたURIAH HEEPと一緒にツアーしていたのだ。その時にジョー達はトレヴァーと仲良くなったそうだ。憧れの存在と毎晩のように飲みあかし、SPIDERS~時代の逸話に耳を傾けたそうだ。

以上の事から、何故DEF LEPPARDのメンバーがSPIDERS~トリビュートバンドをやったのかがご理解いただけると思う。残念ながら、当のボウイ本人とLEPPSとの交流については俺は何も知らなかったりする。まぁ現在のボウイから考えれば、何となく想像は出来るが‥‥(苦笑)

さて、第2の疑問点。何故この時期にこういうアルバムをリリースする事にしたのだろうか? 実はこれについては俺も詳しい事は知らなかったりする(笑)。最近の雑誌のジョー・エリオットのインタビューが載っていたそうだが、まぁ早い話が「LEPPSのツアーが終わったので、次のアルバム制作までのお遊び」のつもりなのだろう。そもそもこのアルバムがレコード会社を通して正式にリリースされるのは、ここ日本だけなのだから。

本来、このアルバムはLEPPSのオフィシャルサイトで、インターネット上のみでのリリースという形をとるものなのだ。しかし、海外と比べて日本ではまだインターネットがそれ程普及していない点、いざオフィシャルサイトを覗いてみても英語に弱いので取引しにくい点等々を考慮した日本のレコード会社がジョーに是非日本では一般流通させてくれ、と直訴したそうだ。日本だけなら、という事でメンバーは承諾し、更にアルバムリリースと同時期に日本でライヴもやりたいとも言ってくれたそうだ。やはり一般流通させる以上はプロモーションしなければならない。これはレコード会社にとっても好都合だし、LEPPSファンにとっても貴重な機会になる。噂が噂を呼んだ。2000年9月でバンドとしてのツアーを終えたにも関わらず、年末にLEPPS再来日の噂が急浮上する。カウントダウンなのか?と。それが別プロジェクトだという事が知れ渡るのに、そう時間はかからなかった。彼らのオフィシャルサイトで、CYBERNAUTSのライヴアルバムをインターネット流通する事が発表されたからだ。

現在特に定職(というかバンド)を持たないウッディーとトレヴァーにとっても、この話は好条件だったに違いない。何せ来日も出来るのだから。後ろ向きと言われてしまえばそれまでだが、これは「おもいっきり豪華な遊び」だと割り切ってしまえばいいのだから。自身の次の仕事の為のプロモーションの場と考えれば、これ程オイシイ話はないわけだし。

というわけで、当初の予定より1ヶ月送れてアルバムは日本リリースされ、その10日後には来日を果たすわけだ。

そういうわけだ。納得しただろうか。殆どアルバムの内容について説明していないが‥‥説明するまでもないだろう。ボウイの、最も輝いていた時代の名曲がギッシリ詰まっていて、それをオリジナルメンバーを含むラインアップで演奏している。ジョーはボウイを意識した唄い方をしているし、フィルもミックのプレイを意識しながら、独自のプレイをこれでもか!?と披露するのだから。LEPPSファンにも十分にアピールする作りとなっているし、若いボウイファンにも受け入れられると思う。

けど、最後にひとつ。これだけは大きな声で言っておきたい。これはボウイトリビュートはなく、あくまでミック・ロンソンのトリビュートだという事。それは収録曲の中に唯一収録されている非ボウイ曲、"Angel No.9"(ミック・ロンソンの2ndソロ「PLAY DON'T WORRY」収録)からも伺えると思う。ジョーやフィルにとってミック・ロンソンはヒーローだったのだ。グラム時代のボウイを影ながら支えていたのは、間違いなくこのミック・ロンソンなのだから。彼のファンは英米のみならず、ここ日本にも多い。代表的なところでTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉。彼は先のミックのソロアルバム再発の際には、ライナーノーツも書いていた。

特にここ日本では過小評価をされる事の多いミック・ロンソン。これを機にDEF LEPPARDのファンは初期のデヴィッド・ボウイのアルバムに手を出して欲しいし、逆にボウイに興味を持つファンにはDEF LEPPARDの音楽に改めて触れ、そこからボウイ色を感じ取って欲しい。そして、ミック・ロンソンという偉大なギタリストがいたことを認識して欲しい。プロだからこそ出来る、正にプロの仕事。そして本当の遊び心というのはこういう事を示すのだという、素晴らしいアルバムだ。20世紀最後に届いた贈り物。そして20世紀最後に買ったのがこのアルバムだという事を、俺は決して忘れないだろう。



▼CYBERNAUTS『LIVE』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 01 06 07:20 午前 [2000年の作品, Cybernauts, David Bowie, Def Leppard] | 固定リンク