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2001/03/30

AEROSMITH『JUST PUSH PLAY』(2001)

前作『NINE LIVES』(1997)からぴったり4年振りに発売された、AEROSMITHのオリジナル・スタジオ盤としては13作目にあたる作品。初のセルフプロデュース(「THE BONEYARD BOYS」名義で、スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーの他に、これまでも作曲に加わってきたマーティ・フレデリクセンとマーク・ハドソンが共同プロデュース)。シングル「Jaded」は久々のチャート・トップ10入り(「I Don't Want To Miss A Thing」は1位取ったけど、純粋にアルバムからのシングルとなると、トップ10入りは'90年の「What It Takes」以来、まる11年振りとなる)、アルバムは残念ながら3作連続1位とはならなかった(2位)。現在のアメリカでのブラックミュージック/ヒップホップ、アイドル系、そしてリンプ等のヒップホップ・メタルが上位を占める中で、こういうストレートなロックアルバムが発売2~3週で100万枚を越えたのは、快挙と言っていいだろう。決してエアロのパワーが弱くなったわけではなく、消費者の財布の紐が堅くなっただけだ。ここ日本でも過去最高の売り上げを記録しているそうだ(これもひとえにボーナストラック「I Don't Want To Miss A Thing」効果だろう)。

掲示板に以下のように感想を書いた。「個人的にはここ10数年‥‥復活後の 彼らの作品では一番好きかもしれない。完成度って意味では確かに『GET A GRIP』の方が上だしそこまで到達してないけど、「ピンとくる」という意味では一番。 雑誌等で「真の意味でのファースト」とか言われてるけど、そういうもんでもねぇだろ?とも思う。それよりは伊藤政則の「20世紀のロックの集大成」って方が納得いく。けど、集大成に終わってなくて、それをここ数年の手法(エアロの手法ではなくて、流行の手法という意味)でアレンジしてるのがポイント。バラードも「アルマゲドン」やって吹っ切れたのか、メンバーがソングライトに 全く絡んでない曲まで取り入れてるし。ハッキリ言って、「アルマゲドン」よりもイイ、これ。」

確かに『GET A GRIP』は越えていない。それは発売から約1ヶ月経った今、何度聴き返してもそう思う。けど、越える必要もないだろうし、そもそも作品のタッチが微妙に違うし、1993年と2001年とでは全く違うのだから、比べる必要もないだろうという結論に達した。むしろ比較すべきなのは、前作『NINE LIVES』とだろう。ここでは前作でやろうとしていた事が花結んでいる。例えば1曲目「Beyond Beautiful」は前作がなければ完成しなかった曲だろう。それにしても、こんなヘヴィなミドルチューンを1曲目に持ってくるのも初めての試みじゃないだろうか? 気合いを入れてプレイヤーの前で意気込んでただけに、ちょっとだけ肩すかしを食らった。ここ数作は連続してトップチューンはファストナンバーだったしな。

勿論、前作の色だけではない。復活後の『PERMANENT VACATION』(1987)以降の作品の集大成と呼べるだけの、いろいろな要素が詰まっている。どことなく雰囲気が前のヒット曲に似ていたり、メロの節回しがある曲に似ていたり‥‥ってこれじゃあ「ネタ枯れ」とか「マンネリ」って言われそうだな? けど、それが決して嫌味になってるわけじゃなく、一聴して「あ、エアロだ」と判る安心要素として作用しているのだから、良しとしよう。

で、それらの「過去の集大成」的要素を、単に「懐メロ主義」で終わらせない為のセルフプロデュースというか、とにかく音の実験具合/遊び具合が尋常じゃない。ところどころにサンプリング音を多用しているし、「"Walk This Way" meets HIP HOP」と呼べる「Just Push Play」や、「Drop Dead Gorgeous」のような曲もある。そして新境地と言えるシングル「Jaded」の存在も大きい。バラードもこれまでのエアロのイメージを壊さない程度の、カントリータッチのものが多い。メンバーがソングライトに全く絡んでない「Fly Away From Here」も「I Don't Want To Miss A Thing」以上にエアロの曲として作用しているし。つまり、ここには「他人と共作しようが、自分で曲を書こうが書くまいが、俺ら5人でやればどれもエアロの曲になる」という、半ば開き直りに近い強引さを感じさせる。けどその強引さが心地よいのだから始末に負えない。

結局、彼らは来るべき21世紀に向けての第1弾として、「過去の総括」+「これからの俺達」を融合させた、ヤケクソに近い「始末に負えない」アルバムを提供したのだ。もっともそれは端から望んだ形ではなく、結果としてそうなってしまったという。だから始末に負えないんだけど。だって自宅を改造したホームスタジオで、自身の家族をも巻き込んだ、非常にリラックスした状態で制作に臨んだにも関わらず、だ。今思えば、前作というのはその「始末に負えない」パワーが、本当に始末に負えなくて持て余し気味だったのだろう。だから躁的要素が強い、ちょっと聴くのに体力がいる作品になったのだ(それに曲数も多かったし、長かったからね)。

そうそう、このアルバムの非常に良い点。それはボーナストラック2曲を含めて14曲入りにも関わらず、60分にも満たないトータルランニングだという点だ。つまり、オリジナルのアメリカ盤は全12曲入りで約50分ちょっとという事になる。『GET A GRIP』辺りからCDを意識した曲数/収録時間だった。それら全部が本当によい曲で、よい流れを持っていればいいのだが、それが前作みたいだと苦痛になったりする。そういう意味ではこれは適切な曲数/収録時間だと言えるだろう。以前にMOTLEY CRUEのレビューでも書いたが、結局人ひとりが1日に音楽を聴く時間なんてごく限られている。1時間以内というのが適切なのだ。

それにしても、このジャケット‥‥エアロ史上でも下から1、2を争うモノになってるな? これ、日本人アーティストであるソラヤマ・ハジメ氏の作品だそうで、あの「AIBO」のデザインで有名な方だそう‥‥それでこんなメカ/ロボ・テイストなの? 何度も言うけど、最初はASIAかAUTOGRAPHのジャケットかと思ったよ。まぁ、そんなところも含めて「本気でエアロらしい」アルバムだと思う。結成30年、スティーヴンは50歳を迎え、あと何年この精力を維持できるかは誰にも判らない。けど、ちょっとこのアルバムのツアーは気になる。これらの楽曲をどうやってステージで表現するのか、本当に今からライヴが待ち遠しい。こんな風に思ったのも『GET A GRIP』以来の事だ。



▼AEROSMITH『JUST PUSH PLAY』
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投稿: 2001 03 30 12:00 午前 [2001年の作品, Aerosmith] | 固定リンク