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2001/05/06

Cocco『ラプンツェル』(2000)

  前作「クムイウタ」から2年振りに発表された、Coccoの3作目のアルバム。ここまで順調に来ていただけに、この2年の空白というのはちょっと長く感じた。確かに'98年10月にはシングル"雲路の果て"、'99年4月に"樹海の糸"、同10月に"ポロメリア"、'00年4月に"水鏡"とシングルが半年置きに発表されてきたものの、その度にメディアに登場していたわけではないし、アルバムやツアーへの期待を単に煽るに過ぎなかった。今年の"水鏡"発表後にようやく6月にアルバムリリースの吉報、そして同時に9月から全国ツアーがスタートするという知らせまで届いた。ようやく長いスタジオ籠もりから解放されたわけだ。
  待たされただけあってか、セールス的には過去最高の約100万枚近い売り上げを記録、チャートも前作同様1位を獲得した。サイクルの早い音楽業界の中で、年にシングル2枚のみ、メディアへの露出は一切なしといった状況の中、このセールスは快挙といっていいだろう。Coccoフォロワーと呼ばれる女性アーティストが続々と登場していく中、やはり本家はひと味違うと思わせた作品だった。

  Cocco自身の「Special Thanks To」の欄、このアルバムでは以下の言葉が綴られている。


亡き想いへ
生まれくる想いへ
降り続く想いへ
大潮の夜明けを待つ
わたしの海へ
終りのないキスを込めて


  アルバムに込められたこの言葉からも伝わってくるが、ここには「先へ進もう」という『生への想い』が綴られているように思う。勿論、これまで同様に"けもの道"のような楽曲もあるにはある。音楽的なスタイルとしても、前作よりも若干ファーストに立ち返ったかのようなヘヴィネスが耳につく。"かがり火"のような曲だけでなく、"熟れた罪"のようなジャジーなタイプの楽曲にも重さを感じる。
  実は俺が感じた『生への想い』とは、最後に収録された"しなやかな腕の祈り"という曲だった。しかし、最近知ったのだが、この曲はデビュー前からあった曲だそうだ。今回のアルバムというのは、リリース1年前の1999年夏からレコーディングを開始し、約1年をかけて制作されたそうだ。その時期にあった曲はといえば、デビュー前からあった2曲("しなやかな腕の祈り"と"白い狂気")と、既にシングルとして発表されていた2曲("雲路の果て"と"樹海の糸")の4曲のみで、正にゼロからの出発といってもいい状態だった。しかし、徐々に浮かんでくる楽曲を1曲ずつ、丁寧に仕上げていった結果、1年という製作期間を必要としたわけだ。
  この製作方法というのは、彼女自身が望んだ方法で、ずっと前から「こうやって作れたらいいね?」とスタッフと語っていたらしい。前作がヒットしたお陰でこういう方法が受け入れられたのだろうが、ある意味2年という空白は(シングルリリースはあったものの)危険だったはずだ。にも関わらず、レコード会社やスタッフがそれを受け入れたというのは、如何に彼女が書く曲に自身を持っていたか?という事実を証明する結果となった。

  何度も言うが、スタイル的にはこれまでの延長線上なのだが、明らかに「前向きさ」が高まっている。「生への想い」‥‥それは彼女自身が進んでアルバム制作に参加し、自分が納得いくまで録音し直し、そしてそれまで消極的だったライヴも、自ら「やりたい」と思うようになる‥‥更にこのアルバムの制作終了時にもう「次に進みたい」‥‥つまり、次のアルバムを作りたいと発言しているのだ。彼女は楽曲を生み出すことを、排泄と例えた事がある。アルバムは彼女にとっては「でっかいウンコ」なのだ。しかし、今は違う。彼女には「吐き出す」のではなく、「伝えたい」ことが出来たのだ。俺はそう信じたい。

  音楽的には、先にも書いた通りファースト寄りの、ヘヴィネスさを幾分強調した作りになっている。しかし、セカンドを通過したことにより、またセカンドとこのアルバムの間に発表されたシングル‥‥特に"樹海の糸"や"ポロメリア"といったソフト/メロウ・サイドを強調する楽曲や、先の"しなやかな腕の祈り"等の大らかさが加わることによって、アルバムとして更に深みを増した作りになったと思う。作品トータルとして考えれば、恐らくこれが最高傑作なのでは?と受け取ることも出来る。正直、こんな凄いアルバムを前にしたら、「次はどうなるんだよ!?」とさえ思えてくる。

  最後に‥‥個人的な話をひとつ。このアルバムがリリースされた時期、俺の祖母が亡くなった。この前後1ヶ月は病院に24時間付きっきりで、本当に生と死を彷徨う毎日だった。仕事が終わったら病院へ行き、一旦家に帰って飯食って風呂入って再び病院へ。そのまま朝まで付き添って、そこから会社へ‥‥そんな毎日が続いた。音楽を聴く気力さえ残っていなかった中、それでもこのアルバムを買いにCDショップへ立ち寄った。そしてこのアルバムは2000年6月の、この俺のサウンドトラックとなった。『生への想い』、何もそれはCoccoだけではない。この俺も、そして俺の家族も、そして祖母も‥‥このアルバムを聴く度に、あの日々が蘇ってくる。俺にとって生涯忘れられない1枚となった。



▼Cocco『ラプンツェル』
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投稿: 2001 05 06 12:00 午前 [2000年の作品, Cocco] | 固定リンク