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2001/05/13

Cocco『焼け野が原』(2001)

  Coccoの、事実上ラストシングルとなってしまったのがこの"焼け野が原"だ。アルバム「サングローズ」と同時発売だったこともあって、リリースされた印象が薄いが、4/20の「ミュージックステーション」を見た方なら、誰もが耳に(そして目に)焼き付いたはずだ。彼女が最後の挨拶に選んだ曲、最後に唄った曲がこれだ。

  収録曲は過去のマキシシングルでの中では最多の曲数で、シークレットトラックを含めて5曲。最後の作業の中でレコーディングされた楽曲は全てアルバムとシングルに詰め込んだのだろう。表題曲の他に"アネモネ"、"バニラ"、最初で最後のカヴァー曲となる"Rainbow"(根岸や長田の在籍するDr.StrangeLoveの曲)、そしてシークレットトラックである"愛の歌"の5曲。

  まずジャケットに目を奪われる。まるで‥‥こんな事を言ってはファンに失礼かもしれないが‥‥まるで自らの葬式をあげているかのような、白い花に包まれたCocco。黒バックに黒いセーターという姿が、更に拍車をかける。彼女自らのコンセプトなのだろうけど‥‥こんなジャケット、初めてだ。

  楽曲の内容について。まずサビの唄い出しからスタートするという試み。これは今までなかったキャッチーなパターンだ。楽曲はここ数年得意としているソフトサイドの集大成的作風で、徐々に盛り上がっていくアレンジ、特に中盤以降の盛り上がりに血液が逆流しそうになる。曲の出来としては、これよりももっといい曲は今までにあっただろう。しかし‥‥どうしてもあの「Mステ」を見てしまった後となっては‥‥特にラストの「もう 歩けないよ。」というフレーズに涙さえ出そうになる。だけど、それ程悲壮感といったものは感じない。どちらかというと‥‥前のアルバムで感じていた前向きさを、ここでも‥‥更に力強く感じ取る事ができる。

  続く"アネモネ"は根岸のギターだけをバックに唄う小楽曲。前曲が盛り上がって終わった後の空気を浄化するような清々しさが漂う。一転して3曲目"バニラ"はヘヴィなリフでスタートするロックチューン。しかし、ここには前作までのような淀んだ空気、混沌としたイメージはない。もっとカラッとしていて、突き抜けているような感じ。「サングローズ」レビューでも書いているが、このヘヴィネスの質をHOLEに例えると‥‥前作までを「LIVE THROUGH THIS」だとすると、「サングローズ」の楽曲は「CELEBRITY SKIN」なのだ。判ってもらえるだろうか?

  そして4曲目。プロデューサーであり、彼女のよき理解者である根岸のバンド、Dr.StrangeLoveのカヴァー"Rainbow"。彼女が他人の歌詞を唄うのはこれが最初で最後か? 一人称が「僕」で唄われるところに違和感というか、新鮮味を感じた。それまで自分の人生を唄うことしかなかった彼女が、初めて他人の人生を、他人の言葉で唄う。もし彼女に5枚目、6枚目のアルバムが存在していたなら、こういう表現の仕方も出来るようになったのかもしれない。

  そして十数秒の空白の後にスタートする5曲目"愛の歌"。当然トラックリストには明記されていない、シークレットトラックだ。レコーディングクレジットには「県人会の集い(全3名本人含)」とだけ明記されている。足踏みと手拍子だけでリズムがとられ、Coccoの他に男性1人、女性1人の声が確認できる。非常にリラックスしたトラックで、途中で彼女の笑みさえこぼれる。そしてCocco笑い声でトラックは終了する。

  もしこの"愛の歌"がなかったら、幾分重い空気で終わっていた。しかし、この曲があるお陰でまた違った‥‥心が温かいままで聴き終えることができる。事実上引退する彼女に対して、今後の彼女の人生を祝福したい気持ちにさえなった。もしあなたが「どうせアルバム買ったし、シングルも入ってたからいいや」と思ってこのシングルを蔑ろにしているなら、それは間違いだ。アルバムとついで語られるべき小作品集なのだ、このマキシシングルは。



▼Cocco『焼け野が原』
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投稿: 2001 05 13 01:39 午前 [2001年の作品, Cocco] | 固定リンク