TOOL『LATERALUS』(2001)
うわぁ……しっかし凄いアルバムだわ……言葉を失うね。購入してから既に10日経ってるが、必ず毎日家で1回は聴く。しかも78分通して。1度、通勤の車の中で試しに聴いてみたけど……駄目だ、朝からこれは。沈んでしまう。帰り道でも一緒。疲れてるところに更に凹む。う~ん、なんて素晴らしいアルバムなんだ!?(多少自虐的)
というわけで、前作『ÆNIMA』から既に4年半以上もの月日が経ってしまっている。決して彼ら自身がこのインターバルを選んだわけではない。そう……THE STONE ROSESとのケースに最も近いかも。要するに、前作まで所属していたレコード会社との裁判……これが終了するまでは移籍はおろか、音源さえもリリースされることが許されなかったのだ。その間、日本では前のレーベルの日本での配給先が何度か変わったりしたため、ここ数年の間ずっと旧譜が廃盤状態となっている。この文を書いている今現在も、その状態に変わりはない。ただ、喜ばしいことに、この6月末に過去の作品が全て再発されるそうだ。新作が無事リリースされた事、そして初来日が決まったからだろう。
TOOLの凄みってなんだろう? 実は今までそれがちゃんと伝わっていなかったために、これまで「伝説的なカルトバンド」止まりで終わっていたのかもしれない。そう、アメリカでの大成功とは裏腹に(ちなみに前作は全米2位、このアルバムは初登場1位を記録している)。まぁそれも、このアルバムと7月のフジロックで多少は埋められるとは思うのだけど‥‥
このアルバムの楽曲を発売前に、彼らのオフィシャルサイトで視聴した。先行シングルとなる、アルバム5曲目「Schism」がその曲なのだが……6分48秒もある楽曲にも関わらず全く長さを感じさせないし、曲の盛り上げ方も空気間も独特なモノを持ってるし、聴いていて映像が頭に浮かぶんだな。これって最近の音楽(ロック)にはあまりないタイプなんじゃないだろうか? そう……誤解を恐れずに言うなら……一番近いところで、RADIOHEADの最近の作品に近い世界観を感じる。
レディヘと近い世界観……ということで無理矢理こじつけてるように聞こえるかもしれないが、このTOOLも非常に「プログレ的」スタイルのバンドだと思うのだ。当然、過去の作品(特に前作)からもその空気は伝わってきていたが、このアルバムを聴くと特に「いよいよ」という印象を受ける。そうだな……KING CRIMSONとの比較が最も説得力があるんじゃないだろうか? レディヘのプログレ感ってクリムゾンというよりも、PINK FLOYD的なイメージの方が(特に最近は)強いように思う。勿論レディヘもクリムゾンからの影響はあると思うけど、ここではちょっと強引にそう区分させてもらう。
クリムゾンとの比較というけれど、そのクリムゾンも時期によって若干スタイルが異なっている。①デビュー当時、②『RED』前後のヘヴィメタリック路線、③80年代のニューウェーブ路線、④90年代前半の6人編成時代、そして今のような⑤テクノ的手法を用いた路線。各時代でメンバー構成も楽器構成も違うのだから、当たり前かもしれない。では、TOOLはどの時代と比較すべきか?というと‥‥独断と偏見で選ばせてもらうが、②と③時代に一番近いのではないだろうか? アルバムでいえば『STARLESS AND BIBLE BLACK』『RED』、そして『DISCIPLINE』等の3部作との比較ができると思う。ちゃんと両者の音に接している人なら理解してくれると思うが、何も音楽的に似ていると言っているのではない。先にも書いたように、「世界観」だったり「精神性」がこの頃のクリムゾンと近いのではないか?と思うのだ。
俺は『ÆNIMA』を初めて聴いた時、その頃台頭していた他のヘヴィ系バンド‥‥同時期にアルバムをリリースしてヒットさせていたKORN、MARILYN MANSON、NINE INCH NAILSといったバンド達とは、明らかに違う「世界観」を持ったバンドだなと思っていた。勿論、他のどのバンドも独自の「世界観」を持っていて、全く違う音楽をやっているのだが……このTOOLに関しては‥‥なんとも説明できない魅力を持っていた。それは初めて「Stinkfist」のビデオクリップを見た時にも感じていた。だってメンバー出てこないで、モジャモジャした粘土が動き回ってるし。
この独特な「世界観」というのが、もしかしたら「プログレ」というのと関係するのかもしれない。確かにKORNにもその色を感じ取ることができるが、TOOLはまた違うんだな……「押し」と「引き」の具合が絶妙というか。例えば先の「Schism」もそうだし、セカンド収録の「Stinkfist」もそうなのだけど、1曲の中で「起承転結」がはっきりとしている。その構成の上手さが長尺を感じさせない要因なのかもしれない。
それが特にこの新作になると、1~2分程度のインターミッションのような、次の曲への序章的小楽曲が幾つか収録されていて、より楽曲としての構成を際だったものとし、さらにはそれがアルバムの流れをより明確にしているように感じられる。クリムゾンの場合、CDだと1曲としてカウントされてしまっているが、実際には2曲3曲が合体してひとつの「楽曲」として成り立っている曲が数多くある。まぁそれはクリムゾンに限ったことではなくて、多くのプログレバンドに共通するのだか。
「世界観」を構成するもうひとつの要因として、楽器の使い方、アンサンブルも大いに関係してくる。TOOLの場合、特にインストパートが長い曲が多い。下手をしたら歌よりも長いんじゃないか?という曲さえある。自分は楽器をやっているから特にかもしれないが、ドラムひとつとっても、計算されたフレージングやプレイに耳を奪われる。変拍子の曲が多いことからも伺えると思うが、とにかくプレイヤーとしての技術の高さには驚かされる。特にこのアルバムでは、前作以上にもの凄いことをやっていたりする。一聴して今回は地味に聞こえるギターも、実はもの凄く機能的な役割を果たしているし、ドラムもシンバルひとつとってみても、ちゃんと計算されていたりするから、尚驚く。
これだけ書くと、「けっ、プログレとか変拍子とかいって、結局はプレイヤーのオナニーで、頭デッカチで難しいことやってるんじゃねぇの?」と穿った見方をする方もいるだろう。しかし、しかしだ。そこで終わらないのがこのバンド。3つ目の要因‥‥それは「歌メロが非常にポップ」だという点だろう。リスナーとして、これが一番惹かれる魅力じゃないだろうか? とにかくメロウ。先にも書いたが、初めて「Stinkfist」を聴いた時、その世界観や映像にも驚いたが、何よりも歌メロのポップさに驚いたことが大きい。そういえば、クリムゾンも歌メロだけは異常にポップな曲が多かったな……ってのはちょっと強引すぎたか?
まぁ長々と書いてしまったが、これがTOOLの魅力であり、凄みなのだ。結局、この辺がちゃんと伝わっていないからダメだったわけで、そして伝えようにも国内盤が出ていなかったから尚更なのだ。雑誌でも殆どインタビューが載らず、そうなると取り上げられる機会も皆無に近い‥‥昨年、ボーカルのメイナード・キーナンが関わるプロジェクト、A PERFECT CIRCLEがアルバムリリース、そしてフジロックで来日したお陰で、多少TOOLへの認識度も高くなったように思うが、このアルバムとフジロックで更に知名度を上げてもらいたいものだ。
最後に……どうでもいい話をひとつ。このバンド、絶対にジャズやってた人が多いと思う。特にリズム隊ね。そしてベースの方。あなた、IRON MAIDEN好きでしょ? 7曲目の2分33秒あたりのフレーズ、ありゃまさしくメイデンですよ、あんた!‥‥って、結局これが言いたいがために、俺はこんなに長い文を書いてきたのか……いいのか、俺!?(そしてこんなオチでいいのか、俺‥‥)
▼TOOL『LATERALUS』
(amazon:海外盤CD)
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