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2001/06/19

BACKYARD BABIES『MAKING ENEMIES IS GOOD』(2001)

BACKYARD BABIES(以下BYBと略)通算3枚目、まる3年振りと「3ずくめ」な ニューアルバム。プロデュースは前作同様、「爆走ロケンロー界にこの人あり」なプロデューサー、トーマス・スコグスバーグ(初期THE HELLACOPTERSのプロデュースやSUPER$HiT666のベース&プロデュースで有名)。今回からレーベルを「BMG」に移したことによって、よりワールドワイドな展開を図ろうと考えているらしく、レコーディングもストックホルムの他にアメリカ(あのYOSHIKI所有のスタジオだとか)やイギリス等で行われた。更にミックスには有名どころのランディ・ストーブ(ボブ・ロックの愛弟子でMETALLICAやBON JOVIのミックスを手掛ける)とジョー・バレッシを起用。プロモーションにもかなり力を入れているようで、既に母国スウェーデンでは初登場ナンバー1を記録し、これからイギリスやアメリカでも売り出そうと気合い十分。

さて、このアルバムを最初聴き始めた時‥‥「あちゃ~」と正直思った。BYBの良さが十分活かされていないと思ったのだ。BYBといえば、あの活きのいい爆走ぶりと湿り気のある哀愁のメロディー。それがいきなり1曲目「I Love To Roll」‥‥ミディアムテンポの、カラッとした音作り。めちゃくちゃアメリカンな空気感なのだ。しかも続く2曲目「Payback」も同じテンポ。聴く前から「今回はどんな暴れっぷりなんだろう?」と期待してたので、肩すかしを食らう。3曲目「Brand New Hate」になってようやく「らしさ」を感じられるようになるのだが、これってジンジャー(THE WiLDHEARTS)が作曲に絡んでるんだ? 聴きようによってはWiLDHEARTSっぽいなぁ‥‥その後もアルバムはミディアム中心に進んでいく。「うわぁ~かったるいかも」なんて思ってしまったが、いざ15曲(本編13曲、ボーナストラック2曲)を聴き終えた時はなんと‥‥充実感でいっぱいだったりした。「ああ、これでいいのか」って。

実は俺、BYBって好きだけど‥‥これまでは、そこまでのめり込む程ではなかった。前作『TOTAL 13』はいいアルバムだと思うし、実際よくできた曲が多くて今でも聴くことが多いのだけど‥‥アルバムとして考えると、ちょっと辛いなぁって思うことが多々あって。本来の持ち味である「疾走感のある爆走ロケンロー」は好きなんだけど、ずっと攻めてばっかりというイメージが強くて、ボーナストラックを除く13曲を聴き終えた時点で、止めてしまうことも多かった。「何だよこいつ、結局BYBの良さを何も判ってないんじゃないの!?」と思われるかもしれない。いや、実際そうかもしれない。そこまで爆走ロケンローに強い思い入れがあるわけでもないし(そういえば俺、初期HELLACOPTERSに対しても、多くの人が特徴として挙げる点が好きではなかったしなぁ)、単純に曲がよくてカッコイイから好きなわけで。そういう意味では昨今のメロコアとかと同じ扱いかもしれないな、俺にとって。

そういう点からすると、実は今回のアルバムって「俺好み」な作りだったんだわ。最初は先入観があったから面食らったけど、トータルとして今までの彼らのアルバムで一番楽しめるものとなった。

曲に関しては、文句つけようがないだろう。ミディアム~スロウが大半を占めるが、やはりそこはBYB。重いし、それなりに殺傷力がある(他の爆走バンドとはタイプが違うが)。メロディーは文句なしにポップだし、ドレゲンのギターも相変わらずいい味出してる。特に今作はニッケ・ボルグのボーカルが非常にいい感じだ。掠れ具合やブレスがマイケル・モンローっぽくて、俺的には大絶賛。しかも今回、特に実感したのは‥‥楽曲がかなりHANOI ROCKS的だということ。このアルバムからボーカルだけ消してマイケルに歌入れ直させたら、完全にマイケルのソロとして成立すると思う(けどハノイにはならないと思う、残念ながら)。特に12曲目「Painkiller」や4曲目「Colours」みたいなバラードタイプの曲、ぴったりだと思うのだが。

音の質感は今までで一番ビッグプロダクション‥‥というか、メジャーのそれなのだ、今回。ミックスもかなりアメリカンなカラッとした印象で、それが湿り気のあるメロディーに相反して浮いてるのかというと、意外とそうでもない。メロコアのそれ、とまでは言わないが、意外と共通するものはあると思う。そういえば、初回特典として封入されていたイラストステッカーだが、これ恐らくOFFSPRINGなんかのジャケットを描いてる人の作品だと思うのだが‥‥そうか、きっとそういう売り出し方をしたいんだな?

俺は「売れよう」「売れたい」と思うことはごく自然なことだと思うので、否定しない。まぁ前作までのような音で大成功してくれたら、それはそれで痛快だとは思うが‥‥これは売れる音だと思うし、売れなきゃいけないと思う。いや、レコード会社は売らなきゃいけないと思うよ、マジで。そこまでの思いを込めて作られたアルバムだと思うし。だってレコーディングに1年費やしてるんだからさ。

そうそう、このアルバムの話題のひとつとして挙げられるのが、SUPER$HIT666でお馴染みの「Star War Jr」のカヴァー。BYBバージョンはシンプルに「Star War」ってタイトルに変わってるが、アレンジなどはそのまんま。ボーカルもこの曲のみドレゲンだし。ただ、やっぱりS$666バージョンを先に聴いてることと、あの爆走ぶりが素晴らしすぎたので、どうもBYBバージョンの方は「ごく普通の仕上がり」という印象を受ける。とはいっても、これも高水準なんだけど。

さて、タイトルにも書いたように‥‥ドレゲンはこのアルバムのことを「21世紀の『APPETITE FOR DESTRUCTION』だ!」は言ってるらしい。『APPETITE FOR DESTRUCTION』とはご存じの通り、GUNS N'ROSESが1987年にリリースしたデビューアルバムのこと。確かドレゲンは前作の時も同様の発言をしていたような気がするが‥‥このアルバムが内容的に『APPETITE FOR DESTRUCTION』に匹敵するとは正直思えないが(それだけ思い入れも強いアルバムだし、時代背景も違うからね、比べようがないってのが正直な気持ちなんだけど)、それに匹敵するだけのセールスをアメリカで記録できる‥‥その可能性だけは十分に秘めた1枚だと思う。まぁロックが売れる時代ではないので、それ相当の覚悟が必要だと思うが(徹底したプロモーションにハードなツアー)。これだけいいアルバムを作ったんだから、何とかして結果を出してもらいたい。折角「天下無敵!」なんて邦題つけてもらったんだからさぁ?

最後に‥‥このアルバムって、やっぱり前作までの疾走パターンの楽曲が好きだって人にはイマイチって映るのかな? 俺はね、この『MAKING ENEMIES IS GOOD』ってそれまでの2枚のアルバムにはないものがあると思う。それこそがこの新作の魅力だと信じている。

「ROCK」はあっても「ROLL」があるのか?


全てはそこだと確信している。



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投稿: 2001 06 19 12:00 午前 [2001年の作品, Backyard Babies] | 固定リンク